説明

エスシタロプラムの製造方法

【課題】4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを、その単離されたエナンチオマーへと分割するための方法を提供する。
【解決手段】ラセミ混合物または非ラセミエナンチオマー混合物である4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを、O,O'-ジ-p-トルオイル-酒石酸の(+)-(S,S)-または(-)-(R,R)-エナンチオマーとの塩として、1-プロパノール、エタノールまたはアセトニトリルを含む溶剤系において分別結晶することにより、エナンチオマーへと分割できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は周知の抗うつ剤エスシタロプラムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エスシタロプラムは以下の構造を持つ周知の抗うつ薬である。
【0003】
【化1】

【0004】
これは、選択的な中枢作用性セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン;5-HT)再取り込み阻害剤であり、それゆえに抗うつ活性を持っている。
【0005】
エスシタロプラムおよびその薬学的活性は特許文献1に開示されている。二つのエスシタロプラム製造方法が開示されている。そのうちの一つでは、4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルが、(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸との塩として、2-プロパノール中で分別結晶される。この方法で製造された結晶質生成物は、排液が非常に遅く母液を保持しがちな小結晶からなる。
【特許文献1】米国特許第4,943,590号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
母液の不十分な除去は、低いエナンチオマー純度を持つ生成物を与えるので、追加の精製が必要になる。精製は多くの時間と溶剤を必要とする。これらの課題は工業的規模ではより一層顕著になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1モルの4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルにつき0.5モルを超えない(+)-(S,S)-または(-)-(R,R)-O,O'-ジ-p-トルオイル-酒石酸を使って、4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを(+)-(S,S)-または(-)-(R,R)-O,O'-ジ-p-トルオイル-酒石酸との塩として、1-プロパノールを含む溶剤系において分別結晶することによって、4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを分割すると、結晶質生成物が得られ、その結晶は2-プロパノールから得られる結晶よりも大きく、形状も異なることが、ここに見出された。このプロセスは、良好な濾過特性を持つ結晶を製造するためのロバストかつ安定な方法であることが判明した。これは、はるかに良好な排液特性と、大規模生産に重大な影響を与える濾過時間の短縮をもたらす。工業的規模のバッチに関し、典型的な濾過時間は数時間以下である。
【0008】
この分割方法はエスシタロプラムの製造に役立つ。
【0009】
本発明の一態様は、ラセミ混合物または非ラセミエナンチオマー混合物である4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを、その単離されたエナンチオマーへと分割するための方法であって、4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを、O,O'-ジ-p-トルオイル-酒石酸の(+)-(S,S)-または(-)-(R,R)-エナンチオマーとの塩として、1-プロパノール、エタノールまたはアセトニトリルを含む溶剤系において分別結晶するステップを含む方法を提供することである。
【0010】
ある特別な実施形態では、1モルの4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルにつき、1モルを超えない、より具体的には0.5モルを超えない、O,O'-ジ-p-トルオイル-酒石酸の(+)-(S,S)-または(-)-(R,R)-エナンチオマーが使用される。
【0011】
ある実施形態では(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸が使用される。別の実施形態では(-)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(R,R)-酒石酸が使用される。
【0012】
ある特別な実施形態では、1-プロパノールが溶剤系の主要構成成分である。さらに特別な実施形態では、1-プロパノールが溶剤系の少なくとも50%、例えば少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも95%を構成し、最も特別な実施形態では1-プロパノールが唯一の溶剤である。
【0013】
同様に特別な実施形態では、エタノールが溶剤系の主要構成成分である。さらに特別な実施形態では、エタノールが溶剤系の少なくとも50%(v/v)、例えば少なくとも75%、少なくとも90%または少なくとも95%を構成し、最も特別な実施形態では、エタノールが唯一の溶剤である。
【0014】
同様に特別な実施形態では、アセトニトリルが溶剤系の主要構成成分である。さらに特別な実施形態では、アセトニトリルが溶剤系の少なくとも50%(v/v)、例えば少なくとも75%、少なくとも90%または少なくとも95%を構成し、最も特別な実施形態では、アセトニトリルが唯一の溶剤である。
【0015】
別の実施形態では、溶剤系が一つまたはそれ以上の有機共溶剤、具体的にはトルエン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ジクロロメタンおよびアセトニトリルからなる群より選択されるもの、より具体的にはトルエンを含む。さらに特別な実施形態では、共溶剤の量が、溶剤系の0〜20%(v/v)、例えば0〜15%、0〜10%、0.5〜8%、1〜5%または1.5〜3%の範囲にある。
【0016】
さらに別の実施形態では、溶剤系が水を含む。さらに特別な実施形態では、水の量が、溶剤系の0〜8%(v/v)、例えば0.05〜5%、0.1〜3%または0.15〜2%の範囲にある。
【0017】
さらに別の実施形態では、4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルをプロトン化する能力を持つが、本条件下では4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを塩として沈殿させないアキラルな酸を、溶剤系が含む。ある特別な実施形態では、アキラルな酸がギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸およびメタンスルホン酸などの有機酸からなる群より選択され、より具体的には酢酸である。さらに特別な実施形態では、アキラルな酸の量が、4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルの量に対して0〜0.5等量、例えば0〜0.4等量の範囲にある。
【0018】
さらなる実施形態では、溶剤系が、溶解された4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルおよび(+)-(S,S)-または(-)-(R,R)-O,O'-ジ-p-トルオイル-酒石酸と共に、20℃から溶剤系の還流温度までの範囲、具体的には25℃〜70℃、より具体的には30℃〜50℃の範囲にある第1温度から、0℃〜40℃、具体的には10℃〜30℃、より具体的には15℃〜25℃の範囲にある第2温度まで冷却される。ある特別な実施形態では、第1温度と第2温度の間の差が、5℃〜50℃、具体的には10℃〜40℃、より具体的には15℃〜30℃の範囲にある。
【0019】
ある特別な実施形態では、4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル、(+)-(S,S)-または(-)-(R,R)-O,O'-ジ-p-トルオイル-酒石酸および溶剤系の混合物が、冷却前に、0〜4時間、より具体的には0.5〜3時間、最も具体的には1〜2時間の範囲にある期間にわたって第1温度に保たれる。
【0020】
別の特別な実施形態では、4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル、(+)-(S,S)-または(-)-(R,R)-O,O'-ジ-p-トルオイル-酒石酸および溶剤系の混合物に、第1温度で、または冷却中に、所望する塩の結晶が接種される。種晶の量は、典型的には、0.4〜0.8g 種晶/kg 4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルの範囲、より典型的には0.45〜0.7g/kgの範囲、最も典型的には0.5〜0.6g/kgの範囲にある。
【0021】
同様に特別な実施形態では、冷却が8時間以内、具体的には4時間以内、より具体的には2時間以内に行われる。別の同様に特別な実施形態では、沈殿した塩が、沈殿の開始後8時間以内、より具体的には4時間以内に、母液から分離される。さらに別の同様に特別な実施形態では、分離された塩が4時間以内、より具体的には2時間以内に洗浄される。
【0022】
さらに別の実施形態では、分離された塩が、1-プロパノールまたはエタノールを含む溶剤系において、30℃から溶剤の還流温度までの範囲、より具体的には40℃〜60℃の範囲にある温度まで加熱された後、0℃〜40℃、具体的には10℃〜30℃、より具体的には15℃〜25℃の範囲にある温度まで冷却されることによって、1回またはそれ以上、再スラリー化または再結晶される。ある特別な実施形態では、1-プロパノールまたはエタノールが溶剤系の主要構成成分である。さらに特別な実施形態では、1-プロパノールまたはエタノールが、溶剤系の少なくとも50%、例えば少なくとも75%、少なくとも90%または少なくとも95%を構成し、最も特別な実施形態では、1-プロパノールまたはエタノールが唯一の溶剤である。ある特別な実施形態では、再スラリー化に使用される溶剤系の主要構成成分が、結晶化に使用される溶剤系の主要構成成分と同じである。
【0023】
本発明の別の態様は、4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを、そのエナンチオマーへと、上述のように分割することを含む、エスシタロプラムの製造方法を提供することである。
【0024】
ある実施形態では、4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルの単離されたエナンチオマーの一方が、エスシタロプラムへと立体選択的に変換される。
【0025】
特別な実施形態では、S-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルがエスシタロプラムへと立体選択的に変換される。
【0026】
さらに特別な実施形態では、S-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを、酸塩化物または酸無水物などの反応性酸誘導体、具体的にはメタンスルホニルクロリドまたはp-トルエンスルホニルクロリドと、トリエチルアミンまたはピリジンなどの塩基の存在下で反応させる。
【0027】
明細書および特許請求の範囲の全体を通して使用される「分割」および「分割される」という用語は、エナンチオマーのラセミ混合物または非ラセミ混合物のエナンチオマー純度が増加するプロセス、例えば、以下の二つの例によって例示されるように、結果として生じる混合物のエナンチオマー比が所望するエナンチオマーにとって有利であるという条件の下に、混合物中の不要なエナンチオマーの比率が少なくとも20%は低下するようなプロセスを指す:
i)ラセミ混合物(50:50)が少なくとも60:40のエナンチオマー比を持つ混合物に変換される、または
ii)80:20混合物が、少なくとも84:16のエナンチオマー比を持つ混合物に変換される。
【0028】
明細書および特許請求の範囲の全体を通して使用される「ラセミ混合物」という用語がエナンチオマーの50:50混合物を意味するのに対して、「非ラセミ混合物」という用語は、50:50ではないエナンチオマーのあらゆる混合物を意味する。
【0029】
明細書および特許請求の範囲の全体を通して使用される「単離されたエナンチオマー」という用語は、エナンチオマー的に少なくとも95%純粋な、具体的にはエナンチオマー的に少なくとも97%純粋な、より具体的にはエナンチオマー的に少なくとも98%純粋な、最も具体的にはエナンチオマー的に少なくとも99%純粋なエナンチオマーを意味する。
【0030】
明細書および特許請求の範囲の全体を通して使用される「分別結晶」という用語は、一方のエナンチオマーがキラルな酸との塩として他方のエナンチオマーよりも優先的に結晶化するプロセスを指し、前記プロセスでは、結晶化が塩の溶液または塩の懸濁液から始まりうる。
【0031】
明細書および特許請求の範囲の全体を通して使用される「溶剤系」という用語は、有機溶剤および存在する場合には水の組み合わせを意味する。「有機溶剤」という用語は、任意のプロトン性または非プロトン性溶剤、例えばアルコール、エステル、アルカン、エーテルおよび芳香族化合物を包含するが、カルボン酸などの酸およびアミンなどの塩基はこの用語から除外される。
【0032】
明細書および特許請求の範囲の全体を通して使用される「再スラリー化される」という用語は、結晶性物質がある温度で溶剤に懸濁され、それによって結晶性物質が部分的に溶解し、その後、冷却されることで、溶解した物質が部分的に再び結晶化するプロセスを指す。
【0033】
明細書および特許請求の範囲の全体を通して使用される「再結晶される」という用語は、結晶性物質がある温度で溶剤に溶解され、場合によっては不溶物を除去するために濾過され、その後、冷却されることで、溶解した物質が部分的に再び結晶化するプロセスを指す。
【0034】
本明細書に開示する方法によって得られるS-またはR-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル生成物のキラル純度が十分に高くない場合(これは、なかんずく、母液を生成物として使用する場合に起こりうる)は、国際公開第2004/056754号パンフレットに開示されているように、S-またはR-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルが濃縮されている生成物の溶液からラセミ体の4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを沈殿させて、さらに濃縮されたS-またはR-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロ-フェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを溶解した状態で残すことによって、キラル純度をさらに改善させることができる。
【0035】
S-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルは、欧州特許第0347066号明細書に開示されているように、エスシタロプラムへと立体選択的に変換されうる。
【0036】
R-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルは、国際公開第03/000672号パンフレットに開示されているように、エスシタロプラムへと変換されうる。
【0037】
本明細書に開示する方法によって得られるS-シタロプラム生成物のキラル純度が十分でない場合(これは、なかんずく、母液を生成物として使用する場合に起こりうる)は、特許文献4に開示されているように、S-シタロプラムが濃縮されている生成物の溶液からラセミ体のシタロプラムを沈殿させて、さらに濃縮されたS-シタロプラムを溶解した状態で残すことによって、キラル純度をさらに改善させることができる。
【実施例】
【0038】
明細書および特許請求の範囲の全体を通して以下の略号を使用する:eqは等量を意味し、4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルの量に対するモル比として算出される。
【0039】
Vは体積を意味し、4-[4-(ジメチル-アミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル遊離塩基1グラムあたりの溶剤のミリリットル数として算出される。
【0040】
モル収率は、ラセミ型4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル出発物質1モルあたりの、生成物中のS-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルのモル数として算出される。
【0041】
種晶
種晶は、S-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル(10g)の1-プロパノール(9.5mL)溶液を(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸(11.6g)の1-プロパノール(88ml)溶液と混合するか、R-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル(10g)の1-プロパノール(9.5mL)溶液を(-)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(R,R)-酒石酸(11.6g)の1-プロパノール(88ml)溶液と混合することによって、調製することができる。あるいは、溶剤として1-プロパノールの代りにエタノールを使って、同様の方法で種晶を作製してもよい。好ましくは、種晶は、それを使用することになっている結晶化の溶剤と同じ溶剤から結晶化される。下記の実施例に従って製造された結晶も種晶として使用することができる。
【0042】
種晶の調製に使用するS-またはR-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシルメチル)-ベンゾニトリルは、欧州特許第0347066号明細書または国際公開第第03/006449号パンフレットに開示されているようにして、取得することができる。
【0043】
<実験例1>
(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸(0.39eq)を1-プロパノール(3.44V)に溶解した。その混合物を約40℃まで加熱し、酢酸(0.2eq)を加えた。この溶液を、1時間以内に、0.1Vのトルエンを含有する4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル遊離塩基の1-プロパノール(0.95V)溶液に移した。この時点で合計4.4Vの1-プロパノールを含有する分割混合物に、S-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルおよび(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を含む種結晶を接種し、次に40℃で2時間撹拌した。その混合物を2時間以内に20〜25℃まで冷却した。生成物を濾過し、1-プロパノールで2回洗浄した。エナンチオマー純度は典型的には約91%〜約98%Sの範囲にあった。生成物を約50℃の1-プロパノール(2.5V)で2時間、再スラリー化した。その混合物を20〜25℃に冷却した。生成物を濾過し、1-プロパノールで洗浄した。エナンチオマー純度は典型的には約99.3%Sだった。モル収率は典型的には34〜36%だった。
【0044】
<実験例2>
(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸(0.4eq)を1-プロパノール(3.5V)に溶解した。その混合物を約40℃まで加熱し、酢酸(0.2eq)を加えた後、その溶液を、0.1Vのトルエンを含有する4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル遊離塩基の1-プロパノール溶液に移す。この時点で合計4.5Vの1-プロパノールを含有する分割混合物に、S-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルおよび(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を含む種結晶を接種し、次に40℃で2時間撹拌した。その混合物を2時間で20〜25℃まで冷却した。生成物を濾過(濾過反応器)し、1-プロパノールで洗浄した。エナンチオマー純度は典型的には約97%S以上だった。代表的バッチはモル収率:33.8%、エナンチオマー純度:99.0%Sを与えた。
【0045】
<実験例3>
実験例2の一般手法を適用したが、0.5eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル(S,S)-酒石酸および10Vの1-プロパノールを使用した。この系にはトルエンも酢酸も存在しなかった。代表的バッチはモル収率:29.5%;エナンチオマー純度:99.2%Sを与えた。
【0046】
<実験例4>
実験例2の一般手法を適用した。4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル遊離塩基の1-プロパノール溶液に0.05Vの水を加えた。この系にはトルエンも酢酸も存在しなかった。代表的バッチはモル収率:29.3%;エナンチオマー純度:99.3%Sを与えた。
【0047】
<実験例5>
(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を0.25eqだけ使って、実験例2の一般手法を適用した。この系には酢酸は存在しなかった。代表的バッチはモル収率:29.4%;エナンチオマー純度:99.0%Sを与えた。
【0048】
<実験例6>
実験例2の一般手法を適用した。この系には酢酸は存在しなかった。代表的バッチはモル収率:32.6%;エナンチオマー純度:98.0%Sを与えた。
【0049】
<実験例7>
実験例2の一般手法を適用した。この系には酢酸は存在しなかった。この実験例は少量の水(0.01V)を使って行った。代表的バッチはモル収率:32.5%;エナンチオマー純度:98.7%Sを与えた。
【0050】
<実験例8>
実験例2の一般手法を適用した。この系には酢酸は存在しなかった。この実験例は、より多くの水(0.05V)を使って行った。代表的バッチはモル収率:34.7%;エナンチオマー純度:99.0%Sを与えた。
【0051】
<実験例9>
実験例2の一般手法を適用した。さらに、少量の水(0.05V)を、4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル遊離塩基の1-プロパノール溶液に加えた。代表的バッチはモル収率:33.0%;エナンチオマー純度:99.1%Sを与えた。
【0052】
<実験例10>
100g(0.292モル)の4-(4-ジメチルアミノ-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル)-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを150mlの純エタノールに40℃で溶解した。温度を40℃前後に維持しながら、57.5g(0.148モル)の(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸および350mlの純エタノールから構成される溶液を1時間で加えた。その混合物に接種し、室温まで一晩冷却した。その懸濁液を0℃に冷却してから、濾過した。モル収率29.5%、エナンチオマー純度98.2%S。
【0053】
<実験例11>
(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸(0.25eq)を1-プロパノール(200ml)に溶解した。その混合物を約40℃まで加熱し、次にその溶液を、11gのトルエンを含有する4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシル-メチル)-ベンゾニトリル遊離塩基(100g)の1-プロパノール(100ml)溶液に移した。この時点で合計3Vの1-プロパノールを含有する分割混合物に、40℃で、S-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルおよび(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を含む種結晶を接種し、次に40℃で2時間撹拌した。その混合物を2時間で20℃まで冷却し、一晩20℃に保った。生成物を濾過(濾過反応器)し、1-プロパノールで洗浄した。モル収率:31.8%、エナンチオマー純度:95.5%S。
【0054】
<実験例12>
1-プロパノールの総体積を10Vにした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:30.7%、エナンチオマー純度:98.9%S。
【0055】
<実験例13>
1-プロパノールの総体積を4.3Vとし、0.39eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用した点以外は、実験例11を繰り返した。この例を数回繰り返した。結晶化バッチを16時間まで、典型的には8時間まで、20℃に保った。モル収率:約35%、エナンチオマー純度:>98%S。
【0056】
<実験例14>
1-プロパノールの総体積を4.5Vとし、0.50eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を0.5時間にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:36%、エナンチオマー純度:97.2%S。
【0057】
<実験例15>
1-プロパノールの総体積を4.4Vとし、0.60eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を0.5時間にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:38.9%、エナンチオマー純度:82.8%S。
【0058】
<実験例16>
1-プロパノールの総体積を4.5Vとし、0.675eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:35.2%、エナンチオマー純度:76.2%S。
【0059】
<実験例17>
1-プロパノールの総体積を6Vとし、0.75eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を0.5時間にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:24.8%、エナンチオマー純度:99.4%S。
【0060】
<実験例18>
1-プロパノールの総体積を6Vとし、0.75eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:31%、エナンチオマー純度:99.4%S。
【0061】
<実験例19>
1-プロパノールの総体積を4.5Vにし、0.75eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:30.3%、エナンチオマー純度:99.0%S。
【0062】
<実験例20>
1-プロパノールの総体積を4.5Vにし、0.75eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を4日間にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:32.2%、エナンチオマー純度:92.8%S。
【0063】
<実験例21>
アセトニトリルを1-プロパノールの代りに溶剤として10Vの総体積で使用し、0.25eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:30.0%、エナンチオマー純度:96.0%S。
【0064】
<実験例22>
アセトニトリルを1-プロパノールの代りに溶剤として4.5Vの総体積で使用し、0.50eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:24.7%、エナンチオマー純度:99.2%S。
【0065】
<実験例23>
1-プロパノールとジクロロメタンの混合物(50:50)を1-プロパノールの代りに溶剤として2Vの総体積で使用し((+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸および4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロ-フェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシルメチル)-ベンゾニトリル遊離塩基を4.5Vのジクロロメタンに溶解し、3.5Vのジクロロメタンを留去し、1Vの1-プロパノールを加えた)、0.25eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:18.5%、エナンチオマー純度:96.9%S。
【0066】
<実験例24>
1-プロパノールとジクロロメタンの混合物(95:5)を1-プロパノールの代りに溶剤として4.5Vの総体積で使用し、0.35eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:35.7%、エナンチオマー純度:78.8%S。
【0067】
<実験例25>
1-プロパノールとジクロロメタンの混合物(85:15)を1-プロパノールの代りに溶剤として4.5Vの総体積で使用し、0.4eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:31%、エナンチオマー純度:98.2%S。
【0068】
<実験例26>
1-プロパノールとジクロロメタンの混合物(50:50)を1-プロパノールの代りに溶剤として4.4Vの総体積で使用し、0.5eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:16.4%、エナンチオマー純度:98.9%S。
【0069】
<実験例27>
1-プロパノールとジクロロメタンの混合物(75:25)を1-プロパノールの代りに溶剤として4.5Vの総体積で使用し、0.5eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:34.2%、エナンチオマー純度:98.8%S。
【0070】
<実験例28>
結晶化混合物がトルエンを含有せず、1-プロパノールとジクロロメタンの混合物(85:15)を1-プロパノールの代りに溶剤として4.5Vの総体積で使用し、0.5eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:37.8%、エナンチオマー純度:98.8%S.
【0071】
<実験例29>
1-プロパノールとジクロロメタンの混合物(85:15)を1-プロパノールの代りに溶剤として4.5Vの総体積で使用し、0.5eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:36.6%、エナンチオマー純度:97.6%S。
【0072】
<実験例29>
1-プロパノールとジクロロメタンの混合物(90:10)を1-プロパノールの代りに溶剤として4.5Vの総体積で使用し、0.5eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。この実験を2回行って以下の結果を得た。モル収率:38.9%、エナンチオマー純度:97.7%S。モル収率:35.8%、エナンチオマー純度:98.5%S。
【0073】
<実験例30>
1-プロパノールとジクロロメタンの混合物(92.5:7.5)を1-プロパノールの代りに溶剤として6.0Vの総体積で使用し、0.5eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。この実験を2回行って以下の結果を得た。モル収率:35.1%、エナンチオマー純度:98.6%S。モル収率:39.0%、エナンチオマー純度:81.3%S。
【0074】
<実験例31>
1-プロパノールとジクロロメタンの混合物(95:5)を1-プロパノールの代りに溶剤として4.5Vの総体積で使用し、0.5eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を0.5時間にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:35.0%、エナンチオマー純度:98.4%S。
【0075】
<実験例32>
1-プロパノールとジクロロメタンの混合物(90:10)を1-プロパノールの代りに溶剤として4.6Vの総体積で使用し、0.6eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:38.5%、エナンチオマー純度:99.1%S。
【0076】
<実験例33>
1-プロパノールとアセトニトリルの混合物(15:85)を1-プロパノールの代りに溶剤として4.5Vの総体積で使用し、0.5eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を0.5時間にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:25.9%、エナンチオマー純度:99.2%S。
【0077】
<実験例34>
1-プロパノールとアセトニトリルの混合物(85:15)を1-プロパノールの代りに溶剤として4.5Vの総体積で使用し、0.5eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:18.5%、エナンチオマー純度:99.4%S。
【0078】
<実験例35>
1-プロパノールとアセトニトリルの混合物(90:10)を1-プロパノールの代りに溶剤として4.5Vの総体積で使用し、0.5eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を一晩にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:29.9%、エナンチオマー純度:99.3%S。
【0079】
<実験例36>
1-プロパノールと酢酸エチルの混合物(31:69)を1-プロパノールの代りに溶剤として4.5Vの総体積で使用して、そこに2Vの1-プロパノールを追加し、0.25eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を0.5時間にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:28.6%、エナンチオマー純度:98.4%S。
【0080】
<実験例37>
1-プロパノールとエタノールの混合物(50:50)を1-プロパノールの代りに溶剤として4.4Vの総体積で使用し、0.5eqの(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使用し、濾過前の保持時間を0.5時間にした点以外は、実験例11を繰り返した。モル収率:27.4%、エナンチオマー純度:99.4%S。
【0081】
<実験例38>
一連の実験を行って、(+)-(S,S)-DTTによるジオールの分割を検討した。一般手法を以下に説明し、各反応に関する詳細および結果を表1に示す。
【0082】
ラセミ型ジオール(20g、58.4mmol)を、実験に使用する溶剤のおよそ半分に、40℃で溶解した。(+)-(S,S)-DTT.H2O(表に指定した量)を、溶剤の残り半分中の溶液として加えた。その溶液を40℃に保持し、(S)-ジオール.1/2(+)-(S,S)-DTTの結晶(約5mg)を2分以内に接種した。結晶化は典型的には接種後5〜10分以内に始まった。40℃で2時間後に、溶液の温度を2時間かけて20℃まで低下させ、溶液をこの温度でさらに1時間保持した。次に生成物を濾過によって分離し、適当な溶剤(20mL×2)で洗浄し、減圧下に60℃で一晩乾燥した。
【0083】
【表1】

【0084】
上記の実験例は全て、S-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルと一緒に沈殿してR-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシ-ブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルが濃縮されている母液を残す(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸を使って行われたが、R-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルと一緒に沈殿してS-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルが濃縮されている母液を残す(-)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(R,R)-酒石酸も同様に使用できることは、当業者にはわかるだろう。
【0085】
標準的な添加様式では、(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸が4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシル-メチル)-ベンゾニトリルに添加されるが、この添加手法を逆さにすること(4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸に添加すること)もできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラセミ混合物または非ラセミエナンチオマー混合物である4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを、その単離されたエナンチオマーへと分割するための方法であって、4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを、O,O'-ジ-p-トルオイル-酒石酸の(+)-(S,S)または(-)-(R,R)-エナンチオマーとの塩として、1-プロパノール、エタノールまたはアセトニトリルを含む溶剤系において分別結晶するステップを含む方法。
【請求項2】
1モルの4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルにつき、1モルを超えない、具体的には0.5モルを超えない、O,O'-ジ-p-トルオイル-酒石酸の(+)-(S,S)または(-)-(R,R)-エナンチオマーが使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(+)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(S,S)-酒石酸が使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(-)-O,O'-ジ-p-トルオイル-(R,R)-酒石酸が使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
1-プロパノールが溶剤系の主要構成成分であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
エタノールが溶剤系の主要構成成分であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アセトニトリルが溶剤系の主要構成成分であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
溶剤系が、特にトルエン、ジエチルエーテル、酢酸エチルおよびジクロロメタンからなる群より選択される一つまたはそれ以上の有機共溶剤、特にトルエンを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
溶剤系が水を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルをプロトン化する能力を持つが、本条件下では4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを塩として沈殿させないアキラルな酸を、溶剤系が含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
アキラルな酸がギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸およびメタンスルホン酸などの有機酸からなる群より選択され、特に酢酸であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
溶剤系が、溶解された4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルおよび(+)-(S,S)-または(-)-(R,R)-O,O'-ジ-p-トルオイル-酒石酸と共に、20℃から溶剤系の還流温度までの範囲にある第1温度から、0℃〜40℃の範囲にある第2温度まで冷却されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル、(+)-(S,S)-または(-)-(R,R)-O,O'-ジ-p-トルオイル-酒石酸および溶剤系の混合物が、冷却前に、0〜4時間の範囲にある期間にわたって第1温度に保たれることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリル、(+)-(S,S)-または(-)-(R,R)-O,O'-ジ-p-トルオイル-酒石酸および溶剤系の混合物に、第1温度で、または冷却中に、所望する塩の結晶が接種されることを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
冷却が8時間以内に行われることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
沈殿した塩が沈殿の開始後8時間以内に母液から分離されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
分離された塩が4時間以内に洗浄されることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
分離された塩が、1-プロパノールまたはエタノールを含む溶剤系において、30℃から溶剤の還流温度までの範囲、特に40℃〜60℃の範囲にある温度まで加熱された後、0℃〜40℃の範囲にある温度まで冷却されることによって、1回またはそれ以上、再スラリー化または再結晶されることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項の方法を含むエスシタロプラムの製造方法。
【請求項20】
4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルの単離されたエナンチオマーの一方をエスシタロプラムへと立体選択的に変換することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
S-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルがエスシタロプラムに立体選択的に変換される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
S-4-[4-(ジメチルアミノ)-1-(4'-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-(ヒドロキシメチル)-ベンゾニトリルを、酸塩化物または酸無水物などの反応性酸誘導体、特にメタンスルホニルクロリドまたはp-トルエンスルホニルクロリドと、トリエチルアミンまたはピリジンなどの塩基の存在下で反応させる、請求項21に記載の方法。

【公開番号】特開2009−149600(P2009−149600A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−224435(P2008−224435)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】