説明

エスシタロプラムを含む結晶性組成物

【課題】直接圧縮するのに適したエスシタロプラムシュウ酸塩の大きな結晶性粒子を提供すること。
【解決手段】少なくとも40μmの粒度を有するエスシタロプラムシュウ酸塩の結晶性粒子が開示される。前記結晶性粒子の製造方法、及び前記結晶性粒子を含む薬学的組成物も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周知の抗うつ薬であるシタロプラムのS−エナンチオマーである化合物、すなわちエスシタロプラム(INN名)のオキサレート塩、すなわち(S)−1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−1−(4−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロ−5−イソベンゾフランカルボニトリルシュウ酸塩の結晶性調合物に関する。
【背景技術】
【0002】
シタロプラムは、次の構造を有する周知の抗うつ薬である。
【0003】
【化1】

【0004】
この化合物は、選択的中枢作用性セロトニン(5−ヒドロキシトリプタミン;5−HT)再取り込み阻害剤であり、それゆえ、抗うつ活性を有する。
【0005】
シタロプラムが最初に開示されたのは特許文献1であり、これは特許文献2に対応する。この特許明細書は、一つの方法によりシタロプラムを製造する方法を開示している他、シタロプラムの製造に使用できる更に別の方法を略述している。製造されたシタロプラムは、シュウ酸塩、臭化水素酸塩または塩酸塩として結晶性の形で単離されている。更に、シタロプラム塩基が、油性物(B.P.175℃/0.03mmHg)として得られる。上記明細書は、更に、シタロプラムの塩を含む錠剤の製造方法を略述している。シタロプラムは、臭化水素酸塩または塩酸塩として販売されている。
【0006】
エスシタロプラム、それの薬学的活性及び結晶性エスシタロプラムシュウ酸塩は、特許文献3に開示されている。エスシタロプラムの薬学的調合物の製造方法が略述されている。
【0007】
シタロプラムは、造粒されたシタロプラム臭化水素酸塩、ラクトース及び他の賦形剤を圧縮することによって製造される錠剤の形で多くの国で販売されている。
【0008】
再現可能な組成を有する錠剤の製造には、全ての乾燥成分が良好な流動性を有することが必要であることは広く認識されている事実である。有効成分が良好な流動性を有する場合は、各成分を直接圧縮することによって錠剤を製造できる。しかし、有効物質の粒度が小さい多くの場合には、有効物質は凝集性であるかまたは流動性が劣っている。
【0009】
更に、粒度が小さい有効物質と、それより大きい粒度を有する賦形剤とが混合されたものは、典型的には、錠剤化工程の間に分離もしくは解混合してしまう。
【0010】
粒度が小さいこと及び流動性が低いことに伴う問題は、従来は、有効物質の粒度を大ききすることによって解決されている。これは、通常は、有効成分を、単独で顆粒化するか、またはフィラー及び/または他の慣用の錠剤成分と組み合わせて顆粒化することによって行われる。
【0011】
このような造粒方法の一つは、“湿式”造粒法である。この方法では、乾燥固形物(有効成分、フィラー、バインダーなど)を混合し、そして水もしくは他の湿潤剤(例えばアルコール)で湿らせ、そしてこの含湿固形物から集塊物または顆粒物を作る。湿式塊状化(wet massing) は、所望の均一な粒度が得られるまで続け、そうした上でその顆粒状製品を乾燥する。
【0012】
“湿式”造粒法の代替法は“溶融”造粒法である。これは“熱可塑”造粒法とも知られている。この方法では、低融点の固形物を造粒剤として使用する。先ず、乾燥固形物を混合し、そしてバインダーが溶融するまで加熱する。バインダーが液化しそして粒子の表面全体に広がると、粒子が互いに粘着して顆粒物を形成する。バインダーは冷却すると固化し、そして乾燥顆粒状製品が生成される。
【0013】
湿式造粒法及び溶融造粒法のどちらも、エネルギー集約的な単位操作であり、これらは、複雑で費用のかかる装置並びに熟練した技術を必要とする。
【0014】
しかし、有効成分が好適な流動性を有する場合は、造粒段階は避けることができ、より低廉な製造方法である直接圧縮法によって錠剤を製造することができる。
【0015】
シタロプラム臭化水素酸塩を製造するために使用されている方法は、約2〜20μmの非常に小さい粒度の製品を与え、このような製品は、粒度が小さい他の多くの粒状製品と同じように、流動性が非常に悪い。それゆえ、錠剤化の際にシタロプラム臭化水素酸塩を適切に計量添加し得るようにするためには、より大きな粒度を有するシタロプラム臭化水素酸塩の顆粒物を製造し、流動性を向上させることが必要と考えられていた。
【0016】
販売されているシタロプラム錠剤は、造粒されたシタロプラム臭化水素酸塩と様々な賦形剤から製造された錠剤である。
【0017】
本発明者らは、エスシタロプラムが、かなり異なる溶解性及びシタロプラムラセメートからの塩形成性を有することを見出した。例えば、これまで公知の唯一の薬学的に結晶性の塩はシュウ酸塩であるが、シタロプラムラセメートは結晶性臭化水素酸塩及び塩酸塩も形成する。
【0018】
特許文献3に略述されているようにアセトンから結晶化することによって製造されるエスシタロプラムシュウ酸塩製品は、上記のシタロプラム臭化水素酸塩製品と同じように、約2〜20μmの非常に小さな粒度を有し、その結果、同様に流動性に劣る。
【0019】
造粒工程を含む方法と比べて、直接圧縮する方法の方がかなりより簡単で低廉であるということから、エスシタロプラムまたはそれの薬学的に許容可能な付加塩のより大きな結晶に対する要望がある。
【0020】
本発明者が鋭意努力して研究したすえ、エスシタロプラムシュウ酸塩のより大きな結晶性粒子、すなわちフィラーの大きさと同じくらいの大きさの粒子を製造できる新規でかつ発明的な結晶化方法が見出された。この粒子は、直接圧縮された錠剤の製造に有用である。また、このような大きな粒子を用いることでカプセル中に正確に計量添加することも可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】ドイツ特許第2,657,013号
【特許文献2】米国特許第4,136,193号
【特許文献3】米国特許第4,943,590号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の課題の一つは、直接圧縮するのに適したエスシタロプラムシュウ酸塩の大きな結晶性粒子を提供することである。
【0023】
本発明の第二の課題は、エスシタロプラムシュウ酸塩の大きな結晶性粒子の製造方法を提供することである。
【0024】
本発明の第三の課題は、エスシタロプラムシュウ酸塩の大きな結晶性粒子を含む新規の薬学的単位投薬形を提供することである。この単位投薬形は、錠剤(これは、好ましくは直接圧縮することによって製造することができる)またはカプセルであることができる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、特に、以下の事項を単独でもしくは組み合わせて含む。
【0026】
少なくとも40μmのメジアン粒径を有しそして固形の単位投薬形に使用するのに好適な、エスシタロプラムシュウ酸塩の結晶性粒子。
【0027】
少なくとも40μmのメジアン粒径を有しそして固形単位投薬形に使用するのに好適な、エスシタロプラムシュウ酸塩の結晶性粒子の製造方法。この方法は、適当な溶剤系中のエスシタロプラムシュウ酸塩の溶液を、第一の温度から第二の温度まで徐冷し、この際、制御された冷却プロフィルを維持しながら行い、なおかつ前記冷却の間に少なくとも一度、エスシタロプラムシュウ酸塩の結晶を添加することによって結晶化バッチを種付けし、その後、上記の第二の温度の保持時間がこれに続き、そうした上で、得られた結晶を、慣用の固形物/液体分離技術によって単離することを含む。
【0028】
エスシタロプラム塩基またはそれの薬学的に許容可能な塩と薬学的に許容可能な賦形剤との混合物を直接圧縮するか、あるいは前記の混合物を硬質ゼラチンカプセル内に充填することによって製造される、エスシタロプラムからなる固形の単位投薬形。
【0029】
エスシタロプラム、フィラー及び他の薬学的に許容可能な賦形剤を直接圧縮して錠剤とすることは、造粒及び乾燥段階を無しで済ませることができるという大きな利点を有する。更に、造粒段階が避けられるために、バインダーを加える必要はもはやない。
【0030】
本明細書で使用される“エスシタロプラムシュウ酸塩”という用語は、エスシタロプラム、シュウ酸及び場合によっては水から構成される付加塩を意味する。このような塩の例は、エスシタロプラムのシュウ酸水素塩、すなわちシュウ酸一分子当たりエスシタロプラム一分子からなる塩、並びにエスシタロプラムのシュウ酸塩、すなわちシュウ酸一分子当たりエスシタロプラム二分子からなる塩である。
【0031】
本明細書で使用される“結晶性粒子”とは、単結晶、凝集物(aggregates)及び集塊物(agglomerates)のいずれの組み合わせでも意味するものである。
【0032】
本明細書で使用される“直接圧縮”とは、固形の単位投薬形が、有効成分と賦形剤との単純な混合物が圧縮されて製造され、この際、有効成分を、より大きな粒子中に埋め込みそしてそれの流動性を向上させるための中間的な造粒工程に付さずに行われることを意味する。
【0033】
本明細書で使用される“バインダー”とは、湿式もしくは溶融造粒工程で使用され、顆粒状製品においてバインダーとして働く剤を意味する。
【0034】
本明細書で使用される“粒度分布”とは、Sympatec Helos装置で1barの分散圧下にレーザー回折によって測定される、同等の球直径の累積体積粒度分布を意味する。“メジアン粒径”は、これに相応して、上記の粒度分布のメジアンを意味する。
【0035】
本明細書で使用する“還流温度”とは、溶剤または溶剤系が、大気圧下に還流または沸騰する温度を意味する。
【0036】
本明細書で使用する“冷却プロフィル”とは、時間を軸とした結晶化バッチの温度を意味する。
【0037】
本明細書で使用する“冷却速度”とは、単位時間当たりの温度低下を意味する。
【0038】
本発明の態様の一つでは、エスシタロプラムシュウ酸塩の結晶性粒子は、少なくとも40μm、好ましくは50〜200μmの範囲のメジアン粒径を有する。
【0039】
流動性、分離及び解混合性及びそれゆえエスシタロプラムシュウ酸塩結晶の直接圧縮に対する適合性は、メジアン粒径の他、粒度分布にも依存する。
【0040】
本発明の他の態様の一つでは、少なくとも40μm、好ましくは50〜200μmの範囲のメジアン粒径を有しかつ固形単位投薬形に使用するのに適したエスシタロプラムシュウ酸塩の結晶性粒子は、適当な溶剤系中のエスシタロプラムシュウ酸塩の溶液から結晶化される。前記溶剤系は、一種または二種以上のアルコール及び場合によってはこれに加えて水からなることができ、好ましくは前記溶剤系はエタノールである。エスシタロプラムシュウ酸塩は、好ましくは、50℃〜溶剤系の還流温度の範囲の温度、好ましくは60℃〜還流温度、より好ましくは70℃〜還流温度の範囲の温度で溶剤系に溶解させる。好適には、エスシタロプラムシュウ酸塩は還流温度下に溶解させる。エスシタロプラムの薬学的に許容可能な塩及び溶剤の使用量は、好ましくは、0.05:1〜0.6:1、より好ましくは0.1:1〜0.5:1、最も好ましくは0.2:1〜0.4:1の範囲の溶質:溶剤重量比に相当する。エスシタロプラムシュウ酸塩の溶液は、0〜20℃、好ましくは0〜15℃、より好ましくは7〜15℃の範囲の、結晶が母液から単離される温度に徐冷する。この冷却は、初期冷却期間における冷却速度が0.6℃/分を超えないように、好ましくは冷却速度が0.2〜0.4℃/分の範囲に維持されるように制御された冷却プロフィルを維持しながら行い、そしてこの際、前記初期冷却期間は、結晶化バッチの温度が60℃未満、好ましくは50℃未満、より好ましくは40℃未満になるまで続き、そして好適には、冷却速度は、全冷却期間にわたってこの範囲に維持され得る。上記結晶化バッチは、エスシタロプラムシュウ酸塩の過度の過飽和と、同時に起こる小さな結晶性粒子を生じさせる結晶化とを避けるために、上記冷却時間の間少なくとも一度、エスシタロプラムシュウ酸塩の結晶を加えることによって種付けする。好ましくは、冷却の間に結晶性エスシタロプラムシュウ酸塩が一定して存在することを確実にするために、上記の種付けを繰り返して行い、そして好適には、結晶化バッチは、結晶化が始まるまで半連続的に種付けする。結晶化バッチは、少なくとも1時間、好ましくは4〜24時間、より好ましくは6〜12時間の保持時間の間、結晶の成長のために上記の第二の温度に維持する。この保持時間の後、エスシタロプラムの結晶性粒子を、慣用の分離技術、例えば濾過によって母液から単離する。
【0041】
本発明の態様の一つでは、本発明は、少なくとも40μm、好ましくは50〜200μmの範囲のメジアン粒径を有するエスシタロプラムシュウ酸塩の大きな結晶性粒子と、薬学的に許容可能な賦形剤との混合物から製造される錠剤に関する。好ましくは、この錠剤は、直接圧縮することによって製造される。
【0042】
他の態様の一つでは、本発明は、少なくとも40μm、好ましくは50〜200μmの範囲のメジアン粒径を有するエスシタロプラムシュウ酸塩の大きな結晶性粒子と薬学的に許容可能な賦形剤とを含む混合物を、硬質のゼラチンカプセルに充填することによって製造されるカプセルに関する。
【0043】
好ましくは、本発明の固形単位投薬形は、バインダーを含まない。
【0044】
本発明の固形単位投薬形は、エスシタロプラム塩基として計算して1〜60%w/w、好ましくは4〜40%w/w、より好ましくは6〜10%w/wの割合で有効成分を含むことができる。好適には、本発明の固形単位投薬形は、エスシタロプラム塩基として計算して8%w/wの割合で有効成分を含む。
【0045】
本発明の固形単位投薬形は、ラクトース、または他の糖類、例えばソルビトール、マンニトール、デキストロース及びスクロース、リン酸カルシウム類(二塩基性、三塩基性、含水物及び無水物のもの)、デンプン、加工デンプン、微結晶性セルロース、硫酸カルシウム及び/または炭酸カルシウムからなる群から選択されるフィラーを含むことができる。好ましい態様の一つでは、本発明の固形単位投薬形はラクトースを含まない。
【0046】
好適には、フィラーは、微結晶性セルロース、例えばPenwest Pharmaceuticalsが販売するProSolv(プロソルブ)SMCC90またはFMCCorporationが販売するAvicel(アビィセル)PH200である。
【0047】
有効成分及びフィラーの他、本発明の固形の薬学的単位投薬形は、他の種々の慣用の賦形剤、例えば崩壊剤及び場合によっては少量の潤滑剤、着色料及び甘味料を含むことができる。
【0048】
本発明に従い使用される潤滑剤は、好適には、ステアリン酸金属塩(マグネシウム、カルシウム、ナトリウム)、ステアリン酸、ワックス、水素化された植物油、タルク及びコロイダルシリカからなる群から選択される一種または二種以上のものであることができる。
【0049】
好ましくは、潤滑剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムからなる群から選択される一種または二種以上のものである。好適には、潤滑剤は、タルクとステアリン酸マグネシウムとの組み合わせである。本発明の固形単位投薬形中でのステアリン酸マグネシウムの重量%は、好ましくは0.4%〜2%、より好ましくは0.7%〜1.4%の範囲である。
【0050】
崩壊剤には、グリコール酸デンプンナトリウム、クロスカルメロース、クロスポビドン、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、加工コーンスターチ、予備ゼラチン化したデンプン及び天然デンプンが包含される。好適には、崩壊剤は、クロスカルメロース、例えばFMC社から販売されるAc−Di−Solである。
【0051】
場合によっては、本発明の固形の薬学的単位投薬形はコーティングされていてもよい。好適には、このコーティングは、慣用のコーティング用混合物、例えばColorcon社から販売されるOpadry(オパドライ)OY−S−28849,ホワイトに基づくフィルムコーティングである。
【0052】
本発明の固形の薬学的単位投薬形は、強制供給能力(forced feed capability)を持つ打錠機を用いて慣用の方法によって製造することができる。
【0053】
本発明の充填された硬質ゼラチンカプセルは、粉末充填に好適なカプセル充填機を用いて慣用の方法によって製造することができる。
【0054】
以下には、例を示すことによって本発明を説明する。しかし、これらの例は、本発明を例示することを意図したものに過ぎず、本発明を限定するものとは解釈するべきではない。
【実施例】
【0055】
例1
エスシタロプラム及びシュウ酸の各エタノール溶液を混合することによって粗製エスシタロプラムシュウ酸塩を析出させて得られた、エスシタロプラムシュウ酸塩を約35kg含む含湿フィルターケーキを、エタノール322L中に懸濁させた。この材料を、還流温度に加熱することによって溶解し、そして蒸留して150Lのエタノールを除去した。冷却を行い、80℃から40℃に至るまでの温度間隔において0.2〜0.5℃/分の冷却速度を用いて上記混合物を還流温度から15℃に冷却した。冷却中、75℃、65℃及び60℃の温度の時にこの混合物をエスシタロプラムシュウ酸塩で種付けした(各々、10g加えた)。この結晶化混合物は、結晶性エスシタロプラムシュウ酸塩が単離されるまで、10時間15℃に維持した。この結晶化混合物を濾過し、エタノールで洗浄し、そしてフィルターケーキを乾燥することによって、精製されたエスシタロプラムシュウ酸塩(27.7kg、理論値の58.2%)が得られた。得られたエスシタロプラムシュウ酸塩の粒度分布を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
例2
エスシタロプラムシュウ酸塩の大きな結晶性粒子を直接圧縮することによって製造した錠剤
【0058】
【表2】

【0059】
例1のエスシタロプラムシュウ酸塩の結晶性粒子及びタルクを、710μm篩を通して篩い分けし、そして100リットル容積のボール(Bohle)PTM200ミキサー中で6rpmで15分間混合した。ProSolvSMC90及びAc−Di−Solを加え、そして混合を15分間続けた。ステアリン酸マグネシウムを710μm篩を通して篩い分けし、その後、これを加えそして混合を3分間続けた。
【0060】
得られた混合物25kgを、エンボス加工されそして刻み目が付けられた矩形の5.5
×8mmパンチを備えたコルシュ(Korsch)PH230打錠機で錠剤化した(1時
間当たり125,000錠)。錠剤心材の重量は125mgに設定した。公称収量は20
0,000錠であった。打錠機は、混合物の高さが強制供給装置を超えるまで運転した。
すなわち、最終量の混合物において起こりうる分離傾向を確認するために錠剤化をできる
だけ長く続けた。製造された錠剤は満足な技術的性質を有していた。
本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包
含し得る。
1.結晶のメジアン粒径が少なくとも40μmであることを特徴とする、エスシタロプラ
ムシュウ酸塩の結晶性粒子。
2.結晶のメジアン粒径が50〜200μmの範囲であることを特徴とする、上記1の結
晶性粒子。
3.適当な溶剤系中のエスシタロプラムシュウ酸塩の溶液を第一の温度から第二の温度ま
で徐冷し、この際、この冷却は、制御された冷却プロフィルを維持し、なおかつ上記冷却
の間にエスシタロプラムシュウ酸塩の結晶を加えることによってエスシタロプラムシュウ
酸塩の上記溶液を種付けしながら行い、その後、上記の第二の温度での保持時間がこれに
続くことを含むことを特徴とする、上記1または2に記載のエスシタロプラムシュウ酸塩
の結晶性粒子の製造方法。
4.結晶のメジアン粒径が少なくとも40μm、好ましくは50〜200μmの範囲であ
ることを特徴とする、上記3の方法。
5.溶剤系が一種または二種以上のアルコール及び場合によっては水を含むことを特徴と
する、上記3または4の方法。
6.溶剤系がエタノールであることを特徴とする、上記5の方法。
7.溶質:溶剤の重量比が、0.05:1〜0.6:1、好ましくは0.1:1〜0.5
:1、より好ましくは0.2:1〜0.4:1であることを特徴とする、上記3〜6のい
ずれか一つの方法。
8.上記の第一の温度が50℃〜溶剤系の還流温度の範囲、好ましくは60℃〜還流温度
の範囲、より好ましくは70℃〜還流温度の範囲であることを特徴とする、上記3〜7の
いずれか一つの方法。
9.上記の第二の温度が0〜20℃、好ましくは0〜15℃、より好ましくは7〜15℃
の範囲であることを特徴とする、上記3〜8のいずれか一つの方法。
10.上記の制御された冷却プロフィルが初期冷却期間を含み、この間、冷却速度を所定
の範囲内に維持することを特徴とする、上記3〜9のいずれか一つの方法。
11.上記の初期冷却期間が、温度が60℃未満、好ましくは50℃未満、より好ましく
は40℃未満になるまでの期間に及ぶことを特徴とする、上記10の方法。
12.上記の冷却速度が、0〜0.6℃/分、好ましくは0.2〜0.4℃/分の範囲に
維持されることを特徴とする、上記10または11の方法。
13.上記の種付けが、初期冷却の間に二度または三度以上行われることを特徴とする、
上記3〜12のいずれか一つの方法。
14.上記の保持時間が、少なくとも1時間、好ましくは4〜24時間、より好ましくは
6〜12時間であることを特徴とする、上記3〜13のいずれか一つの方法。
15.上記の保持時間の後の結晶性粒子を、慣用の固形物/液体分離技術、好ましくは濾
過によって母液から単離する、上記3〜14のいずれか一つの方法。
16.上記1または2のエスシタロプラムシュウ酸塩の結晶性粒子を含む、固形単位投薬
形。
17.エスシタロプラムシュウ酸塩と薬学的に許容可能な賦形剤とを含む混合物を直接圧
縮することによって製造される錠剤であることを特徴とする、上記16の固形単位投薬形

18.タブレットがコーティングされていることを特徴とする、上記17の固形単位投薬
形。
19.エスシタロプラムシュウ酸塩と薬学的に許容可能な賦形剤とを含む混合物を硬質の
ゼラチンカプセル内に充填することによって製造されることを特徴とする、上記16の固
形単位投薬形。
20.バインダーを含まないことを特徴とする、上記16〜19のいずれか一つの固形単
位投薬形。
21.エスシタロプラム塩基として計算して有効成分を1〜30%w/w、好ましくは4
〜20%w/w、より好ましくは6〜10%w/wの割合で含むことを特徴とする、上記
16〜20のいずれか一つの固形単位投薬形。
22.ラクトース、糖類、好ましくはソルビトール、マンニトール、デキストロース及び
/またはスクロース、リン酸カルシウム類、好ましくは二塩基性、三塩基性、含水及び/
または無水リン酸カルシウム、デンプン、加工デンプン、微結晶性セルロース、硫酸カル
シウム及び/または炭酸カルシウムから選択されるフィラーを含むことを特徴とする、上
記16〜21のいずれか一つの固形単位投薬形。
23.フィラーが微結晶性セルロース、例えばProSolv SMCC90またはAv
icel PH 200であることを特徴とする、上記22の固形単位投薬形。
24.ステアリン酸金属塩(マグネシウム、カルシウム、ナトリウム塩)、ステアリン酸
、ワックス、水素化された植物油、タルク及びコロイダルシリカから選択される潤滑剤を
含むことを特徴とする、上記16〜23のいずれか一つの固形単位投薬形。
25.潤滑剤が、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウムの群か
ら選択される一種または二種以上のものであることを特徴とする、上記24の固形単位投
薬形。
26.潤滑剤が、タルクとステアリン酸マグネシウムとの組み合わせであることを特徴と
する、上記25の固形単位投薬形。
27.固形投与形態の重量に基づいて計算してステアリン酸マグネシウムの重量%が、好
ましくは0.4%〜2%の範囲、より好ましくは0.7%〜1.4%の範囲であることを
特徴とする、上記26の固形単位投薬形。
28.ラクトースを実質的に含まないことを特徴とする、上記16〜27のいずれか一つ
の固形単位投薬形。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下:
・エタノールを溶剤系とし、エスシタロプラムシュウ酸塩の溶液を還流温度(第一の温度
)下に溶解させ、この時エスシタロプラムシュウ酸塩:エタノールの重量比が0.2:1
〜0.4:1になるようにすること、
・ 次いで、この溶液を第一の温度から7〜15℃の範囲の結晶が母液から単離される温
度(第二の温度)まで徐冷すること、
・この際、この冷却は、制御された冷却プロフィルを維持した初期冷却期間を含み、当該
初期冷却期間は、温度が40℃未満になるまでの期間に及び、ここで当該初期冷却期間に
冷却速度を0.2〜0.5℃/分の範囲に維持すること、
・当該初期冷却期間にエスシタロプラムシュウ酸塩の結晶を少なくとも1回加えることに
よってエスシタロプラムシュウ酸塩の当該溶液に対して種付けすること、
・結晶の成長のために前記の第二の温度での6〜12時間の保持時間を有すること、およ

・その後、エスシタロプラムシュウ酸塩の結晶性粒子を母液から単離すること、
の工程を含む製造方法によって得られる、結晶のメジアン粒径が50〜200μmの範囲
であるエスシタロプラムシュウ酸塩の結晶性粒子。
【請求項2】
前記の種付けが、初期冷却期間に結晶化が始まるまで半連続的に二度または三度以上行われることを特徴とする、請求項1のエスシタロプラムシュウ酸塩の結晶性粒子。
【請求項3】
前記の第二の温度が、15℃であることを特徴とする、請求項1または2のエスシタロ
プラムシュウ酸塩の結晶性粒子。
【請求項4】
前記の種付けが、初期冷却期間に75℃、65℃及び60℃の時に行われることを特徴
とする、請求項1〜3のいずれか一つのエスシタロプラムシュウ酸塩の結晶性粒子。
【請求項5】
薬学的に許容可能な賦形剤を添加してなる、請求項1〜4のいずれか一つのエスシタロ
プラムシュウ酸塩の結晶性粒子を使用して得られる医薬組成物。
【請求項6】
直接圧縮することによって製造される錠剤であることを特徴とする、請求項5の医薬組成物。
【請求項7】
タブレットがコーティングされていることを特徴とする、請求項6の医薬組成物。
【請求項8】
硬質のゼラチンカプセル内に充填することによって製造されることを特徴とする、請求
項5の医薬組成物。
【請求項9】
バインダーを含まないことを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一つの医薬組成物。
【請求項10】
エスシタロプラム塩基として計算して有効成分を1〜30%w/wの割合で含むことを
特徴とする、請求項5〜9のいずれか一つの医薬組成物。
【請求項11】
ラクトース、糖類、リン酸カルシウム類、デンプン、加工デンプン、微結晶性セルロー
ス、硫酸カルシウム及び/または炭酸カルシウムから選択されるフィラーを含むことを特
徴とする、請求項5〜10のいずれか一つの医薬組成物。
【請求項12】
フィラーが微結晶性セルロースであることを特徴とする、請求項11の医薬組成物。
【請求項13】
ステアリン酸金属塩(マグネシウム、カルシウム、ナトリウム塩)、ステアリン酸、ワ
ックス、水素化された植物油、タルク及びコロイダルシリカから選択される潤滑剤を含む
ことを特徴とする、請求項5〜12のいずれか一つの医薬組成物。
【請求項14】
潤滑剤が、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウムの群から選
択される一種または二種以上のものであることを特徴とする、請求項13の医薬組成物。
【請求項15】
潤滑剤が、タルクとステアリン酸マグネシウムとの組み合わせであることを特徴とする
、請求項14の医薬組成物。
【請求項16】
医薬組成物の重量に基づいて計算してステアリン酸マグネシウムの重量%が、0.4%
〜2%の範囲であることを特徴とする、請求項15の医薬組成物。
【請求項17】
ラクトースを含まないことを特徴とする、請求項5〜16のいずれか一つの医薬組成物

【請求項18】
少なくとも以下:
・エタノールを溶剤系としエスシタロプラムシュウ酸塩の溶液を還流温度(第一の温度)
下に溶解させ、この時エスシタロプラムシュウ酸塩:エタノールの重量比が0.2:1〜
0.4:1になるようにすること、
・ 次いで、この溶液を第一の温度から7〜15℃の範囲の結晶が母液から単離される温
度(第二の温度)まで徐冷すること、
・この際、この冷却は、制御された冷却プロフィルを維持した、初期冷却期間を含み、当
該初期冷却期間は、温度が40℃未満になるまでの期間に及び、ここで当該初期冷却期間
に冷却速度を0.2〜0.5℃/分の範囲に維持すること、
・当該初期冷却期間にエスシタロプラムシュウ酸塩の結晶を少なくとも1回加えることに
よってエスシタロプラムシュウ酸塩の当該溶液に対して種付けすること、
・結晶の成長のために前記の第二の温度での6〜12時間の保持時間を有すること、およ

・その後、エスシタロプラムシュウ酸塩の結晶性粒子を母液から単離すること、
の工程を含む、メジアン粒径が50〜200μmの範囲であるエスシタロプラムシュウ酸
塩の結晶性粒子の製造方法。
【請求項19】
前記の種付けが、初期冷却期間に結晶化が始まるまで半連続的に二度または三度以上行
われることを特徴とする、請求項18の方法。
【請求項20】
前記の第二の温度が、15℃であることを特徴とする、請求項18または19の方法。
【請求項21】
前記の種付けが、初期冷却期間に75℃、65℃及び60℃の時に行われることを特徴
とする、請求項18〜20のいずれか一つの方法。

【公開番号】特開2011−195591(P2011−195591A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120483(P2011−120483)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【分割の表示】特願2010−59368(P2010−59368)の分割
【原出願日】平成14年7月25日(2002.7.25)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】