説明

エスゾピクロン及びO−デスメチルベンラファキシンの組み合わせ、並びに閉経期並びに気分、不安、及び認知障害の治療方法

本発明の一つの態様は、一緒に投与されるとき、例えば、閉経期、気分障害、不安障害、又は認知障害を治療するために使用され得る2つ以上の活性薬剤を含む医薬組成物に関する。医薬組成物のうちの第1の成分は、鎮静剤エスゾピクロンである。医薬組成物のうちの第2の成分は、O−デスメチルベンラファキシンである。本発明は更に、閉経期、閉経周辺期、気分障害、不安障害、及び認知障害を治療する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、組成物、並びに閉経期(menopause)並びに気分、不安、及び認知障害の治療方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
閉経期は、典型的にはおよそ50歳で起きるがそれよりもかなり早い年齢で又は遅い年齢で起きることもある、女性ホルモンの産生低下により引き起こされるものであり、浮腫、顔面潮紅(又はのぼせ)、発汗(sweating)発作、筋肉痛及びおそらく関節痛、睡眠障害、発声困難、緊張感、気分変動、頭痛、動悸(心拍数の増加)、乾燥粘膜、性交時の痛み及び排尿障害などの諸障害を引き起こすことがある。のぼせ又は顔面潮紅は顔と首におけるしばしば胸まで進行する突発性温感発現により特徴付けられる。エピソードは一般に数分間続き、皮膚の目に見える顔面潮紅により証明される。多くの場合そのようなエピソードは、発汗(sweating)、目まい、吐き気、動悸及び多量発汗(diaphoresis)を伴う。前記症状は睡眠を中断することがあり、生活の質を妨害することがある。
【0003】
のぼせの原因は完全には理解されていないけれども、エストロゲンレベル低下の結果である視床下部内体温調節障害であると考えられている。エストロゲンなどの女性ホルモンの投与はこれらの症状を軽減するのに有効であるが、ホルモン療法は望ましくない副作用を伴う。5人の女性のうち4人が少なくとも1年間の厄介な閉経期障害(menopause disorders)を経験し、25%の女性が5年間を超える閉経期障害を経験する。全女性の半数が重度の障害を経験する。男性もまた、転移性前立腺癌のためのアンドロゲン枯渇療法の後に(両側性睾丸摘出又はゴナドトロピン放出ホルモンアゴニストを用いる治療から)のぼせを経験することがある。閉経期及び閉経周辺期(perimenopause)はまた、うつ病又は不安症などの気分障害と関連することがある。
【0004】
臨床医は中枢神経系疾患間の区別を認識するが、精神障害を分類する多くのスキームが存在している。American Psychiatric Associationによって発行され、参照することにより本明細書に組み込まれる、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Fourth Ed.,Text Revision(以下「DSM−IV−TR(商品名)」という)は、当業者が信頼する標準的診断システムを提供する。DSM−IV−TR(商品名)の枠組みによれば、第1軸(Axis I)のCNS障害には、幼児期に診断される障害(例えば注意欠陥障害又は「ADD」及び注意欠陥/過活動性障害又は「ADHD」)及び成人期に診断される障害が含まれる。成人期に診断される障害には、(1)統合失調症及び精神異常;(2)認知障害;(3)気分障害;(4)不安関連障害;(5)摂食障害;(6)物質関連障害;(7)人格障害;並びに(8)スキームに「未だ含まれない障害」が含まれる。
【0005】
気分障害は、単極性(うつ病性)及び双極性(躁うつ病性)障害を含む不均質性の典型的な再発性疾患の一群であり、全般的気分障害、精神運動機能障害、及び自律神経症状によって特徴付けられる。
【0006】
その完全な症候群的発現において、臨床的うつ病は、エピソード的経過及びエピソード間の様々な程度の残留徴候を伴って、大うつ病性障害として現れる。その気分は典型的には、抑うつ、焦燥、及び/又は不安である。患者は、眉間に皺を寄せ、口の両端をへの字に曲げ、姿勢は前かがみで、視線をほどんど合わせず、発語は単音節(又は欠如)という状態で、惨めに見えることがある。病的な気分は、罪の意識へのこだわり、自虐的考え、集中力減少、優柔不断、通常活動への興味低下、引きこもり、無力、絶望、及び死と自殺について繰り返し考えることを伴うことがある。睡眠障害が一般的である。ある患者では、病的な気分が非常に深くて、涙が枯渇する;患者は、普通の情動−例えば悲しみ、喜び、及び快楽−を感じることができないと訴え、世界が無色になり、生気がなくなり、死んだようになったと訴える。
【0007】
メランコリー(melancholia)(かつての内因性うつ病)は、著しい精神運動遅延(思考及び活動の)若しくは激越(例えば落ち着きのなさ、両手をもみ絞ること、切迫発語)、体重減少、不合理な罪悪感、及び快楽を経験する能力の喪失によって特徴付けられる。 気分及び活動は日周的に変化し、朝は絶望状態になる。ほとんどのメランコリー患者(melancholic patients)は、入眠困難、複数回の覚醒、及び夜中若しくは早朝の不眠を訴える。性的欲求はしばしば低下するか又は失われる。無月経が起こることがある。無月経及び体重減少は、るい痩(emaciation)及び電解質バランスの二次的障害をもたらすことがある。
【0008】
非定型うつ病において、逆自律神経症状が臨床像を支配する;それには、不安−恐怖症症状、夕方悪化、初期不眠症、しばしば日中まで達する睡眠過剰、及び体重増加を伴う過食症が含まれる。メランコリーを伴う患者と異なり、非定型うつ病患者は、潜在的に陽性の出来事に対して晴れやかな気分を示すが、しばしばちょっとした困難が原因で麻痺的抑うつ状態(paralyzing depression)に落ち込む。非定型うつ病障害と双極II型障害はかなり重なり合うものである。
【0009】
気分変調性障害において、抑うつ症状は、典型的には幼児期又は青年期に知らぬ間に始まり、何年又は何十年にもわたり間欠性の又は低度の経過をたどる;大うつ病エピソードがそれを複雑にすることがある(二重うつ病)。純粋な気分変調症において、抑うつ徴候は、閾値下レベルで起こり、以下のような抑うつ気質の徴候、即ち、常習的に憂うつで、悲観的で、ユーモアがなく、又は楽しむことができない;消極的及び無気力であり;内向的;懐疑的、酷評的で、又は不平を言い;自己批判的、自己非難的、及び自己軽蔑的であり;並びに自己不全感、失敗、及び否定的出来事にとらわれるという徴候と、かなり重なり合う。
【0010】
多くのうつ病患者の詳細な評価により、双極性の特性が明らかになる、そして抑うつ障害患者の5人中1人は、明らかな軽躁病又は躁病も発症している。単極性障害から双極性障害への転換の大部分は、抑うつ徴候開始の5年以内に起こる。転換の予測因子には、うつ病の早期開始(<年齢25歳)、産後抑うつ症、頻回のうつ病エピソード、身体治療(例えば抗うつ薬、光線療法、睡眠剥奪療法、電気痙攣療法)による迅速な気分明朗化、及び連続3世代にわたる気分障害の家族歴が含まれる。
【0011】
エピソードの間に、双極性障害患者は、抑うつ性不機嫌を示し、時には高エネルギー活動を示す;発育機能及び社会的機能の障害は、単極性障害の場合よりも一般的である。双極性障害において、単極性障害の場合よりも、エピソードが短く(3〜6ヶ月)、開始年齢が若く、エピソードの開始が突然であり、そして周期(一つのエピソード開始から次のエピソード開始までの期間)が短い。周期性は、双極性障害の急速交代型(通常、>=4エピソード/年と定義される)において特に強調される。
【0012】
双極I型障害において、本格的な躁病エピソードと大うつ病性障害が交代する。双極I型障害は一般に、うつ病で始まり、その経過中少なくとも1つの躁期又は興奮期により特徴付けられる。うつ期は、躁病の直接的前兆若しくは余波であり得、又はうつ病と躁病が数ヶ月若しくは数年隔てられることがある。
【0013】
双極II型障害において、うつ病エピソードが軽躁病(比較的軽度の非精神病性期間が通常<1週間)と交代する。軽躁病性期間中、気分が明るくなり、睡眠の必要性が減少し、精神運動活動が患者の通常レベルを超えて加速する。しばしば転換は、概日因子により誘導される(例えば、抑うつ状態で就寝し、軽躁病性状態で早朝起床する)。睡眠過剰及び過食が特徴的であり、季節によって再発することがある(例えば秋又は冬);不眠症と食欲不振がうつ期中に起こる。一部の人々にとっては、軽躁病性期間が高エネルギー、自信、及び正常を超える社会的機能を伴うので、軽躁病性期間は適応できる。多くの患者は、通常うつ病終期に、愉快な気分向上を経験するが、特に質問されない限り、そのことを報告しない。
【0014】
大うつ病エピソードを有する患者で双極性障害の家族歴を有する患者(非公式には双極III型という)は、しばしばわずかな軽躁病性傾向を示す;その気質は、気分高揚的(即ち、意欲的、野心的、及び達成志向的)と呼ばれる。
【0015】
気分循環性障害において、より重症度の低い軽躁病性及び小うつ病性期間が不規則な経過をたどり、各期間は数日間続く。気分循環性障害は一般に、双極II型障害の前駆障害である。しかし、それは、大気分障害を合併しない極端な不機嫌としても起こり得る。そのような場合には、自己自信低下及び睡眠増加を伴う短周期の遅延抑うつ症(retarded depression)が、意気高揚又は熱中増加及び睡眠短縮と交代する。もう一つの形態において、低度の抑うつ特性が優勢である;双極傾向は主として、抗うつ薬により如何に容易に意気高揚又は焦燥が誘導されるかによって示される。臨床的にまれに見られる一つの型である慢性軽躁病において、高揚期間が優勢であり、6時間未満までの習慣的な睡眠減少を伴う。この型の人々は、いつも過度に陽気で、自己満足的で、過度に精力的で、計画が一杯あり、先のことを考えず、過度に関与し、そしてお節介である;彼(女)らは、落ち着かない衝動をもって飛び出して、人々に近づいて話しかける。
【0016】
不安障害は、任意の他のクラスの精神障害よりも一般的である。パニック発作は、一般的であり、単一年において人口の>1/3に影響を及ぼしている。大部分の人々は治療しないで回復するが、少数の人々がパニック障害を発症する。パニック障害は、珍しいものであり、6ヶ月において人口の<1%に影響を及ぼしている。パニック障害は、通常、青年期後期又は成人期初期に始まり、男性よりも2〜3倍の頻度で女性に影響を及ぼす。恐怖性障害は、パニック障害の漠然とした不安症と異なり、外部の状況又は刺激に付随する、頑固な現実的でないけれども極めて強い不安症に関連する。恐怖症に罹っている人々は、そのような状況若しくは刺激を回避するか、又はただ大きな苦悩をもってそのような状況若しくは刺激に耐え抜く。しかしながら、彼(女)らは、病識を保持し、彼(女)らの不安が過度であることを認識している。広場恐怖症において、パニックが発症する場合、容易な逃げ道がない状況又は場所に閉じ込められることについての不安又はそのことの回避。広場恐怖症は、パニック障害よりも一般的である。それは、任意の6ヶ月期間の間に、女性の3.8%及び男性の1.8%に影響を及ぼす。始まりのピーク年齢は、20代初期であり、40歳の後に最初に出現することは異例である。特定恐怖症において、臨床的に重大な不安症は、特定の状況又は対象への暴露により誘導され、しばしば回避(avoidance)に帰着する。特定恐怖症は、最も一般的な不安障害であるが、しかししばしば他の不安障害よりも厄介なものではない。特定恐怖症は、任意の6ヶ月期間の間に、女性の7%及び男性の4.3%に影響を及ぼす。
【0017】
不安障害の一形態は、対人恐怖症であり、これは特定の社会的又は行動的状況への暴露により誘導される臨床的に重大な不安症であり、しばしば回避(avoidance)に帰着する。対人恐怖症は、任意の6ヶ月期間の間に、女性の1.7%及び男性の1.3%に影響を及ぼす。しかしながら、最近の疫学的研究は、約13%という実質的により高い生涯有病率を示唆する。女性よりも男性の方が、社会不安症の最も重度の形態である回避性人格障害に罹りやすい。
【0018】
更にもう一つの不安障害は、強迫性障害(OCD)であり、ばかげた、奇妙な、陰険な、又は恐ろしいように見える、再発性の、望ましくない、侵入的な観念、心象、又は衝動(強迫観念)により、及び強迫観念による不快感を小さくする何事かをするための強い衝動(強迫的な欲求)により特徴付けられる障害である。強迫性障害は、男性にも女性にもおよそ等しく起こり、任意の6ヶ月期間の間に、人口の1.6%に影響を及ぼす。
【0019】
心的外傷後ストレス障害は、もう一つの不安障害である。それは、抗し難い外傷性の出来事が再体験されて、強い恐怖、無力感、戦慄、及び精神的外傷に関連する刺激の回避を引き起こす障害である。ストレスの多い出来事は、患者若しくは他人に対する重度の傷害若しくは危うく死ぬような出来事又は実際の他人の死を含む;その出来事の間、患者は、強い恐怖、無力感、又は戦慄を経験する。生涯の有病率は少なくとも1%であり、戦争退役軍人又は犯罪的暴力の被害者などのハイリスク母集団において、有病率は3%〜58%であると報告されている。
【0020】
急性ストレス障害は、次の点で心的外傷後ストレス障害に似ている。即ち患者が精神的外傷を受けており、精神的外傷を再体験し、患者に精神的外傷を想起させる刺激を回避し、覚醒増加に罹っているという点である。しかしながら、定義によれば、急性ストレス障害は、外傷性の出来事の4週以内に始まり、最小2日間続くが、4週間を超えて続くことはない。この障害を有する患者は、次の解離性症状のうち3つ以上を有する:無感覚感、孤立感、又は情緒反応の欠如;周囲認識の減少(例えば放心状態);物事が実在しないという感覚;自分が実在しないという感覚;及び精神的外傷の重要部分についての記憶喪失。急性ストレス障害の有病率は知られていないが、しかし恐らくは外傷の重症度及び外傷暴露の程度に比例する。
【0021】
全般性不安障害は、多数の活動又は出来事についての、6ヶ月間以上の、過度のほとんど毎日の不安及び心配である。全般性不安障害は一般的であり、1年期間以内に人口の3〜5%に影響を及ぼす。女性は、男性の2倍罹りやすい。この障害はしばしば、幼児期又は青年期に始まるが、しかし任意の年齢でも始まり得る。
【0022】
不安症は、神経障害(例えば脳損傷、感染症、内耳障害)、心臓血管障害(例えば心不全、不整脈)、内分泌障害(例えば副腎機能亢進又は甲状腺機能亢進)、及び呼吸器障害(例えば喘息、慢性閉塞性肺疾患)などの身体障害の二次的なものであり得る。不安症は、アルコール、覚醒剤、カフェイン、コカイン、及び多くの処方薬などの薬物の使用により引き起こされることがある。更に、投薬中止は一般に、不安症に関連する。
【0023】
推測で4〜5百万人のアメリカ人(全年齢のうちの約2%及び65歳を超える人々のうちの15%)は、ある形態及び程度の認知不全(認知障害)を経験している。認知不全(知識が獲得され、保持され、そして使用されるプロセス−即ち認知機能、の機能障害又は喪失)は、最も一般的には、せん妄(時には急性錯乱状態と呼ばれる)又は認知症に起因している。それはまた、うつ病などの情動障害と関連しても起こり得る。
【0024】
せん妄(急性錯乱状態)は、認知、気分、注意、覚醒、及び自己認識に関する動揺性の障害を特徴とする臨床状態であり、以前に知的障害がなくても、又は慢性知的障害に重なり合う場合にも、急性に発症する。一部の開業医は、せん妄という用語を使用し、急性錯乱状態を同意語として使用する;別の開業医は、活動亢進を有する混乱した人々の下位集合を指すためにせん妄という用語を使用する。更に別の開業医は、本格的な錯乱状態を指すためにせん妄という用語を使用し、軽度の見当識障害を指すために錯乱状態という用語を使用する。
【0025】
認知症は、日常生活の活動を行なう能力を妨害するのに十分に重度な、慢性の知的機能及びその他の認知能力の低下である。認知症は、いずれの年齢でも起こり得、損傷又は低酸素症の結果として若い人々を冒すことがある。しかしながら、それは、大部分は高齢者の疾患であり、65歳を超える人々のうちの15%を超える人々に影響を及ぼし、80歳を超える人々のうち40%もの人々に影響を及ぼす。それは、介護施設への入所者の半数を超える割合を占め、年老いてきた人々に最も恐れられている病態である。
【0026】
アルツハイマー病は、大脳皮質及び皮質下灰白質の老人斑の過剰数と関連し、更にβアミロイド及び神経原線維変化(タウタンパク質からなる)を含有する進行性の、止めがたい認知機能喪失である。
【0027】
レビー小体認知症は、アルツハイマー病の次に第2の最も一般的な認知症であり得る。レビー小体は、パーキンソン病の退行性ニューロンの顕著な病変であり、パーキンソン病の特性を伴う又は伴わない認知症に生じる。レビー小体認知症において、レビー小体は、目に見えて優勢であり得るか、又はアルツハイマー病の古典的病理変化と混ざり合っていることがある。レビー小体認知症の症状、徴候、及び経過は、アルツハイマー病のそれらと似ているが、但し、幻覚(主に視覚的な)がより一般的であり、患者は抗精神病薬に誘導された錐体外路性副作用に鋭敏な感受性を有するように見える。
【0028】
脳血管疾患は、機能低下に十分なほど脳組織を破壊し得る。血管性認知症は、単一の戦略的位置にある梗塞による機能障害か、又は小型若しくは中型の血管疾患からの多発性小梗塞による機能損傷を含むが、男性においてより一般的であり、一般に年齢70歳後に始まる。それは、よりしばしば、高血圧症患者及び/又は糖尿病患者又はタバコを乱用する人々に起こる。進行性血管性認知症は、一般に、血圧を制御することにより、血糖値を調節することにより(90〜150mg/dL)、及び喫煙を止めることにより遅くすることができる。認知症患者の検死解剖のうちの20%までに、ある程度の血管損傷が見出される。
【0029】
ビンスワンガー型認知症(皮質下動脈硬化性脳症)はまれであり、重度の高血圧症及び全身性血管疾患と関連する大脳半球白質深部の多発性梗塞を含む。臨床的には血管性認知症と類似しているけれども、ビンスワンガー型認知症は、急性脳卒中及びより迅速な変質過程と関連するより局所性の神経症状によって特徴付けることができる。MRI及びCTは、皮質に隣接した大脳半卵円に白質脳症領域を示す。
【0030】
25%を超えるパーキンソン病患者が認知症に罹っている;80%もの高率の見積もりもある(Ch.179を参照のこと)。検死解剖において、パーキンソン病患者は、アルツハイマー病患者に見られる神経病理学的脳所見のいくつか及び生化学的変化の多くを有していることがある。より重度でない皮質下認知症もパーキンソン病と関連する。
【0031】
進行性核上麻痺を伴う認知症では、一般に、他の神経症状、例えば多発性転倒(multiple falls)、ジストニー軸性硬直、後屈性斜頸、核上性眼筋麻痺、嚥下障害、及び構音障害が先行する。
【0032】
ハンチントン病(舞踏病)患者もまた認知症の症状を示すことがあるが、しかし診断は通常、家族歴、若年齢開始、及びこの疾患に特徴的な運動異常により明らかにされる。疑わしい場合には、遺伝分析が診断に役立ち得る。
【0033】
ピック病は、認知症のより一般的でない形態であり、皮質の前部及び側頭部領域に影響を及ぼす。患者は、顕著な無気力症及び記憶障害を有する;患者は、不注意増加、乏しい個人衛生、及び注意持続時間減少を示すことがある。ピック病の臨床像及びCT所見はかなり特徴的であり得るが、決定的診断は検死解剖においてのみ可能である。クリューバー・ビューシー症候群は、感情鈍化、性欲過剰行動、口愛過度(過食症、並びに唇しゃぶり及び唇鳴らし)、及び視覚失認症を伴い、ピック病の過程の初期に起こり得る。
【0034】
前頭葉認知症症候群は、内在的病変(intrinsic pathology)、原発腫瘍若しくは転移性腫瘍、これまでの外科的取り扱い、脳への放射線照射、又は重度の頭部外傷性傷害に起因し得る。ボクサー認知症の反復性頭部外傷は、職業的ファイターに起こるが、遺伝学的にアポEの4対立遺伝子に関連しているように見える。
【0035】
正常圧水頭症は、進行性認知症、失禁、及び不安定な遅いガニ股歩行の三主徴により特徴付けられる。発病は通常徐々に起こり、大部分は中年後期又は老年に起こる。この疾患は男性においてより一般的であり、しばしば事前の髄膜炎、くも膜下出血、頭部損傷、又は脳神経外科的介入に関連する。ほとんどの場合、先行する損傷のエビデンスが欠けている。正常圧水頭症は、脳円蓋部上のくも膜絨毛の瘢痕に起因することがあり、それがCSF(脳脊髄液)の緩徐な吸収、脳室拡張、及び前頭葉運動異常に帰着する。検査室診断は、正常高値CSF圧(150〜200mmHg)並びにくも膜下腔の拡張を伴わない脳頂部における脳室拡張及び大脳溝狭窄のCTエビデンスに基づく。CSF短絡術治療の結果は矛盾している。この認知症は、時には可逆的である;一部の専門家は、約30mLのCSFを除去するための治療的腰椎穿刺を推奨する。数時間又は数日間の歩行及び認知の改善は、シャント設置の価値を示唆する。
【0036】
硬膜下血腫は、昏睡、せん妄、又は認知症症候群を形成して、精神状態の変化を引き起こすことがある。認知変化は、血液が堆積し始めた後、いつでも始まる可能性があり、血腫の大きさと場所によって、迅速に又は徐々に進行し得る。この慢性症候群は、局所神経学的徴候及び認知変化を伴い、血管性認知症に似ていることがある。血腫を除去することにより機能を回復することができ、又は更なる知的機能喪失を防止することができる。しかしながら、ある専門家は、血腫が長期間(恐らく1年又は複数年)脳に圧力を及ぼした後では、血腫の除去により認知機能を改善することはほとんどないと考えている。
【0037】
最もよく知られている感染性の認知症原因は、クロイツフェルト・ヤコブ病であり、この場合、記憶障害、脳波変化、間代性筋痙攣、及び時に運動失調が顕著である。感染性病原体は、プリオンと呼ばれる異常タンパク質(corrupted protein)であり、遺伝学的に、組織移植術により、食人風習により、及び明らかに感染したウシ(狂牛病の)からの産物を食べることにより、獲得され得る。ほとんどの症例は散発的に起こる。それは、アルツハイマー病の変化とは全く異なる特徴的な海綿状脳症を生じる。経過は、アルツハイマー病の経過よりも迅速であり、通常6〜12ヶ月続く。
【0038】
プリオン関連の原因によるもう一つの認知症であるゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病の患者は、典型的に運動失調の症状を示し、そのあとで認識衰退を示す。この症候群は、若年者を冒して、クロイツフェルト・ヤコブ病よりも長い持続期間を有する。
【0039】
神経梅毒の一形態である全身不全麻痺は、かつては西欧社会の一般的な認知症の原因であった。それは、今なお先進諸国において広く存在する。知的衰退に加えて、振顫及び瞳孔変化が起こり得る。蛍光トレポネーマ抗体(FTA)試験を用いて、CSFが試験される。梅毒に対するFTA試験陽性は、診断を確証する。
【0040】
AIDS認知症は、HIV感染症の後期を複雑にすることがある。認知症は、HIVにより、進行性の多病巣性白質脳症を引き起こすJCウイルスにより、又はその他の多様な日和見感染病原体、例えば検死解剖で確認され得る菌類、バクテリア、ウイルス、若しくは原虫により引き起こされ得る。初期の徴候には、温存された洞察力及び僅かのうつ病徴候とともに、思考及び表現の遅延、集中困難、及び無気力が含まれる。運動性活動は緩徐である;運動失調及び衰弱が明らかなことがある。伸展性足底反応を含む反射神経は異常になる。ジドブジンによる治療は、しばしば改善を促し、時には劇的に近い改善を促す。従って、上にリストアップした障害のための有効且つ副作用最小の治療法を開発する必要性が存在する。
【本発明の要約】
【0041】
本発明は一般に、エスゾピクロン又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物(clathrate)、多形体(polymorph)、若しくは共結晶、及びO−デスメチルベンラファキシン(desmethylvenlafaxine)又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶、を含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、閉経期、閉経周辺期、気分障害、不安障害、及び認知障害の治療において有用である。
【0042】
更に、本発明は、治療的有効量のエスゾピクロン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶を患者に投与することを含む、患者の抗うつ薬治療の増強方法に関する。本発明は更に、O−デスメチルベンラファキシンで治療を受ける患者の用量節約効果を引き出す方法であって、治療的有効量のエスゾピクロン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶を患者に投与することを含む、前記方法に関する。
【0043】
更に、本発明は、O−デスメチルベンラファキシン治療を受けた患者のうつ病再発を減少させる方法であって、治療的有効量のエスゾピクロン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶を患者に投与することを含む前記方法に関する。
【0044】
O−デスメチルベンラファキシンと一緒にエスゾピクロン(鎮静剤)を併用投与することは、閉経期、閉経周辺期、気分障害、不安障害、及び認知障害のような障害の治療において有益である。
【0045】
本発明は一般に、一緒に投与されるときに閉経期、閉経周辺期、気分障害、不安障害、又は認知障害の治療に利点を有する2つ以上の活性薬剤を含有する医薬組成物に関する。特定の実施態様において、本発明は、エスゾピクロン及びO−デスメチルベンラファキシンを含む医薬組成物に関する。或る実施態様において、上にリストアップされた実施態様のエスゾピクロンは、薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、又は共結晶として存在している。その他の実施態様において、O−デスメチルベンラファキシンは、薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、又は共結晶として存在している。或る好ましい実施態様において、O−デスメチルベンラファキシンは、(±)−O−デスメチルベンラファキシンである。その他の好ましい実施態様において、O−デスメチルベンラファキシンは、(−)−O−デスメチルベンラファキシンである。
【0046】
本発明のその他の観点は、閉経期、閉経周辺期、気分障害、不安障害、又は認知障害に罹っている患者を治療する方法であって、2つ以上の活性薬剤(一緒に投与された場合に、前記患者の睡眠の質又は睡眠障害を改善する)を含有する治療的有効用量の医薬組成物を前記患者に投与する工程を含む前記方法に関する。
【0047】
本発明の更なる観点は、閉経期、閉経周辺期、気分障害、不安障害、又は認知障害に罹っている患者を治療する方法であって、2つ以上の活性薬剤(一緒に投与された場合に、患者の治療を改善する)を含有する治療的有効用量の医薬組成物を前記患者に投与する工程を含む前記方法に関する。
【0048】
その他の実施態様において、本発明は、患者のO−デスメチルベンラファキシン治療の増強方法であって、治療的有効量のエスゾピクロン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶を患者に投与することを含む前記方法に関する。
【0049】
本発明は更に、O−デスメチルベンラファキシンで治療を受けている患者の用量節約効果を引き出す方法であって、治療的有効量のエスゾピクロン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶を患者に投与することを含む前記方法に関する。
【0050】
更に、本発明は減少させる方法に関する。
【0051】
治療的有効量のエスゾピクロン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶を患者に投与することを含む、O−デスメチルベンラファキシン治療を受けた患者のうつ病再発。
【0052】
エスゾピクロン
エスゾピクロンは、化学名(+)6−(5−クロロピリド−2−イル)−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニルオキシ−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3−4−b]ピラジン又は(+)6−(5−クロロ−2−ピリジニル)−6,7−ジヒドロ−7−オキソ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン−5−イル4−メチルピペラジン−1−カルボキシレートを有するシクロピロロンである。エスゾピクロンの化学構造を下に示す:
【化1】

【0053】
エスゾピクロンは、化合物ゾピクロンのS−(+)−光学異性体であり、米国特許第6,319,926号及び第6,444,673号明細書に記載されている。ラセミ体のゾピクロンは、Goa and Heel,[Drugs,32:48−65(1986)]並びに米国特許第3,862,149号及び第4,220,646号明細書に記載されている。S−(+)−ゾピクロンは、以下において、そのUSAN承認一般名によりエスゾピクロンというが、光学的に純粋な及び実質的に光学的に純粋な(例えば、光学純度90%、95%又は99%)S−(+)−ゾピクロン異性体を含む。
【0054】
ゾピクロンは、ベンゾジアゼピン類と類似の効力と副作用の精神療法プロフィールを提供する化学的に識別可能なクラスの睡眠薬及び抗不安薬化合物の最初のものであった。このクラスの化合物のいくつかの構成員であるシクロピロロン類は、ベンゾジアゼピン類よりも残留鎮静作用及び反応時間遅延を引き起こすことが少ないように見え、ベンゾジアゼピン類を超える改善された治療指数の見込みを提供する。最近、USFDAは、不眠症の治療用にエスゾピクロン(LUNESTA(商品名))の使用を承認した。
【0055】
エスゾピクロンは、不眠症などの睡眠障害の治療において強力な活性を所有する。エスゾピクロンは更に、通常の副作用(眠気、翌朝の疲労効果、集中不能及び頭痛が含まれるがこれに限定されるものではない)を回避しながら、睡眠障害の治療において強力な活性を所有する。米国特許第5,786,357号明細書は、更に癲癇などの痙攣性障害を治療するためにエスゾピクロンを使用する方法に関する。
【0056】
疾患の急性期又は慢性期管理において、エスゾピクロンの予防的(prophylactic)又は治療的投与量のサイズは、治療されるべき病態の重症度及び投与経路とともに変化するものである。投与量、及び恐らく投与頻度は、個々の患者の年齢、体重、及び応答性によっても変化するものである。一般に、本明細書に記載する病態について、1日当たり総投与量範囲は、約0.25mg〜約10mgである。好ましくは、1日当たり投与量範囲は、約0.5mg〜約5mgである。最も好ましくは、1日当たり投与量範囲は、約0.5mg〜約3.0mgである。或る実施態様において、1日当たり投与量は、0.5mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、又は3.0mgである。患者の管理において、治療は、低い方の投与量、恐らく約0.5mg〜約2mgで開始し、患者の全体的な応答性に応じて増加することができる。更に、小児及び65歳を超える患者、並びに腎臓又は肝臓機能障害を伴う患者では、始めに低い投与量を受け、全体的応答性及び血中レベルに基づいて漸増することが推奨される。ある場合には、これらの範囲外の投与量を用いることが必要となることがある。
【0057】
経口組成物を用いる場合には、使用に適した投与量範囲は、約0.25mg〜約10.0mgであり、通常の場合、低い方の投与量は一般的不眠症により役立ち、高い方の投与量は、分割投与量で与えられ、精神障害の制御のために残して置かれる。好ましくは、約0.5mg〜約5mgの投与量範囲が、1日1回投与として与えられ、又は必要なら分割投与量で与えられる;最も好ましくは、約0.5mg〜約3mgの投与量範囲が、1日1回投与としてか又は必要なら分割投与量としてかいずれかで、与えられる。患者は、この投与量範囲未満から上向きにこの投与量範囲内まで、必要に応じて満足できる症状の制御の方に向かって、漸増することができる。
【0058】
化学名(±)−1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル]−シクロヘキサノールの非三環系化合物ベンラファキシン(nontricyclyc compound venlafaxine)は抗うつ薬であり、広範囲にわたって研究され、そして、例えば、米国特許第4,761,501号明細書及びPento, J. T. Drugs of the Future 13(9):839-840 (1988)中に記載されている。その塩酸塩は、商用名EFFEXOR(商標)で米国において現在入手可能である。EFFEXOR(商標)は、ベンラファキシンの(+)及び(−)鏡像体のラセミ体混合物であり、うつ病の治療に使用される。ベンラファキシンは、不斉炭素原子を含んでおり、そして、ラセミ化合物(racemate)として販売されるが、その(−)鏡像体は、ノルエピネフリンシナプトソームの取り込みのより有効な阻害剤であり、それに対して、(+)鏡像体は、セロトニン取り込み阻害においてより選択的である。(Howell, S. R. et al. Xenobiotica 24(4):315-327 (1994)).
【0059】
O−デスメチルベンラファキシン(O−DMV)は、ベンラファキシンの主な代謝産物である。その化学名は、(±)−1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]−シクロヘキサノールであり、その構造を以下に示す。
【化2】

【0060】
ラセミ体(±)−O−デスメチルベンラファキシンを、米国特許出願公開第2004/0106576号明細書及び米国特許第6,689,912号明細書に記載の方法により調製することができる。In vitro研究では、O−デスメチルベンラファキシンが、親化合物ベンラファキシンよりも、ノルエピネフリン及びドーパミン取り込みのより有効な阻害剤であるということが示唆されている。(Muth, E. A. et al. Drug Develop. Res. 23:191-199 (1991)).O−デスメチルベンラファキシンは、約10時間の半減期(t1/2)を有することが報告されており、前記半減期は、ベンラファキシンのもののおよそ2.5倍の長さである。Klamerus, K. J. et al. J. Clin. Pharmacol. 32:716-724 (1992).
【0061】
ラセミ体(±)−O−デスメチルベンラファキシンは、以下に示される(+)鏡像体((+)−O−DMV)及び(−)鏡像体((−)−O−DMV)からなる。
【化3】

(+)−O−デスメチルベンラファキシンを、米国特許第6,197,828号明細書に記載の方法によって調製することができる。(−)−O−デスメチルベンラファキシンは、米国特許第6,342,533号明細書に記載の方法により調製することができる。あるいは、(−)−O−デスメチルベンラファキシンは、以下の反応工程式1及び添付の説明中に示されるように調製することができる。
【化4】

【0062】
《1−((R)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル)シクロヘキサノール ヘミ−ジトルオイル酒石酸塩の製造》
1−((R)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル)シクロヘキサノール塩酸(約4.1kg)、酢酸エチル(約28kg)及び1N水酸化ナトリウム(約21kg)を適当な反応器に入れて、中和が完了するまで攪拌した。相を分離して、水で有機相を洗浄した。酢酸エチル(約13kg)及びメタノール(約4kg)中のdi−p−トルオイル−D−酒石酸(DTTA;約2.9kg)の溶液とともに有機相を入れて、前記混合物を還流まで加熱して、次に、約0℃まで冷却した。得られるスラリーをろ過し、酢酸エチル及びエタノールで洗浄して、所望の生成物(約2.4kg)を得た。前記生成物を、酢酸エチル:メタノール溶液(6.5:1wt:wt,酢酸エチル:メタノール)(約20kg)から再結晶化して、1−((R)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル)シクロヘキサノール ヘミ−ジトルオイル酒石酸塩(>99%ee)(約2kg)を得た。
【0063】
《1−((R)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)シクロヘキサノールの製造》
【0064】
1−((R)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル)シクロヘキサノール ヘミ−ジトルオイル酒石酸塩(約2kg)、メチル−t−ブチルエーテル(約12kg)、及び1N水酸化ナトリウム(約6kg)を適当な反応器に入れ、反応が完了するまで攪拌した。相を分離し、有機相を水(約6kg)で2回洗浄して、次に、乾燥するまで前記有機層を濃縮した。残基を次にTHF(約7kg)中に溶解して、濃縮した。残基を次にTHF(約7kg)中に溶解して、溶液を保持した。ジフェニルホスフィン(約2.2kg)及びTHF(約23kg)を適当な反応器へ入れた。溶液を約0℃まで冷却し、そして、n−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M;約6.7kg)をゆっくりと添加した。THF中の1−((R)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル)シクロヘキサノールの調製された前記溶液をリチウムジフェニルホスフィンの前記溶液へ添加した。前記混合物を約60℃まで加熱して、反応が完了するまで攪拌した。前記混合物を約15℃まで冷却し、水(約12kg)でクエンチした。水相のpHを、6N HCl(約4kg)で4未満まで調節した。有機層を除去し、水層をCHCl(約8kg)で2回洗浄した。水酸化アンモニウム(約1.6kg)で水層をpH10〜11まで中和させて、得られる混合物を約55℃まで加熱した。スラリーを室温まで冷まして、ろ過した。固体を水(約2kg)で洗浄し、酢酸エチル(約2.5kg)で2回洗浄して、1−((R)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル)シクロヘキサノール(>99%ee)(約930g)を得た。
【0065】
疾患の急性期又は慢性期管理において、O−デスメチルベンラファキシン、好ましくは、(±)−O−デスメチルベンラファキシン、又は(−)−O−デスメチルベンラファキシンの予防又は治療の大きさ(magnitute)は、治療されるべき状態の重症度及び投与経路とともに変化する。投与及び恐らく投与頻度は、個々の患者の年齢、体重、応答性、及び病歴によっても変化するものである。一般に、本明細書に記載する病態のための1日当たりの理想的な投与量範囲は、約10mg〜約1000mgであり、これは、一日一回の朝に投与されるものであるが、好ましくは、食事とともに1日何回かに分けて投与される。好ましくは、1日当たり投与量範囲は、約50mg〜約500mgであり、より好ましくは、約75mg〜約350mgの間である。患者の管理においては、治療は、低い方の投与量、恐らく約50mg〜約75mgで開始し、必要な場合には、単一用量又は分割された用量のいずれかとして約250mg〜約325mgまでを、患者の全体的な応答性に応じて増加することができる。投与量を増加する場合には、少なくとも4日隔てて約75mgの間隔で行われることが好ましい。
【0066】
併用療法
本発明の或る観点は、併用療法に関する。この型の療法は、活性成分(複数)の併用投与が、唯一つの治療剤により達成される治療効果よりも大きい治療効果を達成するという理由で有利である。或る実施態様において、2つ以上の治療剤の併用投与は、相乗効果、即ち組み合わせの個々の成分の治療効果の和よりも大きい治療効果、を達成する。その他の実施態様において、2つ以上の治療剤の併用投与は、増強効果を達成する。
【0067】
併用療法を構成する活性成分は、単位投与形態により一緒に、又は各活性薬剤の個別投与により投与することができる。特定の実施態様において、第1及び第2の治療剤は、単位投与形態で投与される。薬剤は、単一の錠剤、ピル、カプセル剤、又は非経口投与用液剤などに製剤化することができる。あるいは、第1の治療剤及び第2の治療剤は、別個の組成物として、例えば別個の錠剤又は液剤として投与することができる。第1の活性薬剤を第2の活性薬剤と同時に投与することができ、又は第1の活性薬剤を第2の活性薬剤と間欠的に投与することができる。第1及び第2の治療剤投与の間の時間の長さは、所望の治療効果を達成するように調節することができる。特定の事例において、第2の治療剤は、第1の治療剤投与後ほんの数分(例えば1、2、5、10、30、又は60分)後に投与することができる。あるいは、第2の治療剤は、第1の治療剤投与後数時間(例えば2、4、6、10、12、24、又は36時間)後に投与することができる。特定の実施態様において、第1の治療剤投与(複数)の間に1投与を超える第2の治療剤を投与することが有利である。例えば、第2の治療剤を第1の治療剤投与に続いて2時間時点で及び次いで再度10時間時点で投与することができる。あるいは、第2の治療剤投与(複数)の間に1投与を超える第1の治療剤を投与することが有利である。重要なことには、併用療法の全体の治療効果がある程度は併用療法の総合効果又は相乗効果に起因するように、各活性成分の治療効果が、各治療剤の持続時間のうちの少なくとも一部分の間で重なり合うということが好ましい。
【0068】
活性薬剤(複数)の投与量は、一般に、多数の因子、例えば組み合わせの各薬剤の薬理学的特性、活性薬剤(単数又は複数)の投与様式及び経路、治療される患者の健康状態、所望の治療の範囲、もしあれば併用療法の本質及び種類、並びに治療頻度及び所望の効果の本質に依存するものである。一般には、活性薬剤(複数)の投与量範囲は、しばしば、約0.001〜約250mg/kg体重/日の範囲である。例えば、体重約70kgを有する標準成人に対して、約0.1〜約25mg/kg体重の範囲の投与量が、典型的には好ましい。しかしながら、治療される対象の年齢及び体重、目的の投与経路、投与される特定の薬剤などに応じて、この一般的投与量範囲には、ある可変性が必要であり得る。併用療法においては2つ以上の活性薬剤が一緒に使用されているので、各薬剤の効能及びそれらを一緒に用いて達成される相互作用の効果が考慮されなければならない。重要なことには、特定の哺乳動物に対して投与量範囲及び最適投与量を決定することは、本開示の利益を受ける当業者の能力の範囲内にも十分にあるということである。
【0069】
特定の実施態様において、医薬的組み合わせは第2の成分に比べて比較的大量の第1の成分を有することが有利であることができる。特定の事例において、第1の活性薬剤対第2の活性薬剤の比は、30:1、20:1、15:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、又は5:1である。特定の実施態様において、医薬品(複数)のより均等な分布を有することが好ましくあり得る。特定の事例において、第1の活性薬剤対第2の活性薬剤の比は、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、又は1:4である。特定の実施態様において、医薬的組み合わせは第1の成分に比べて比較的大量の第2の成分を有することが有利であることができる。特定の事例において、第2の活性薬剤対第1の活性薬剤の比は、30:1、20:1、15:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、又は5:1である。重要なことには、上に特定される第1の治療剤及び第2の治療剤の組み合わせのいずれかを含む組成物は、1日当たり1、2、3、4、5、6回、又はそれを超える回数の分割投与量で、又は所望の結果を得るのに有効な放出速度を与える形態で投与することができる。好ましい実施態様において、投与形態は第1の活性薬剤及び第2の活性薬剤の両方を含有する。より好ましい実施態様において、投与形態は、1日当たり1回投与する必要があるだけであり、投与形態は、第1の活性薬剤及び第2の活性薬剤の両方を含有する。
【0070】
例えば、ヒトへの経口投与を対象とした製剤は、第1の治療剤0.1mg〜5g及び第2の治療剤0.1mg〜5gを含有することができ、その両方とも、全組成物の約5から約95パーセントまで変化する適当な便利な量の担体物質と混合される。単位投与形態は、一般に、第1の治療剤約0.5mg〜約1500mg及び第2の治療剤約0.5mg〜約1500mgを含有するものである。好ましい実施態様において、投与形態は、第1の治療剤0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg、又は1000mgなど、1500mgまでを含む。好ましい実施態様において、投与形態は、第2の治療剤0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg、又は1000mgなど、1500mgまでを含む。第1及び第2の治療剤の最適割合は、技術的に知られている標準的アッセイにより決定することができる。
【0071】
本発明の組成物の毒性及び治療効果は、例えばLD50(母集団の50%致死量)及びED50(母集団の50%における治療的有効量)を決定するための細胞培養での又は実験動物での標準的薬学手法により決定することができる。毒性と治療効果の用量比は治療指数であり、それはLD50/ED50比として表現することができる。大きい治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物実験から得るデータは、ヒトに使用する様々な投与量を製剤化するのに使用することができる。そのような化合物の投与量は、毒性をほとんど又は全く伴わないED50を含む循環濃度の範囲内に在るのが好ましい。投与量は、用いる投与形態及び利用する投与経路に応じてこの範囲内で変化することができる。本発明の方法に使用する任意の化合物に対して、治療的有効量は、最初に細胞培養アッセイから見積もることができる。IC50(即ち、細胞培養で決定される、未処理対照に比べて感染細胞からの最大の半分のRT産生阻害を達成する試験化合物濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて、投与量を決定することができる。そのような情報は、ヒトに有用な投与量をより正確に決定するために使用することができる。血漿レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することができる。
【0072】
相乗効果及び増強
用語「相乗効果」は、任意の2つ以上の単一の薬剤の相加効果よりも効果的な組み合わせを指す。相乗効果は、どちらか一方の個別治療よりも低い量(用量)を用いて有効な疾患治療を可能にする。より低い用量は、効力減少を伴わずにより低い毒性に帰着する。加えて、相乗効果は、効力改善、例えば抗うつ薬活性改善に帰着し得る。最後に、相乗効果は、任意の単一の治療に比べて疾患の回避又は減少の改善に帰着し得る。
【0073】
併用療法は、いずれかの薬物を単独で使用するときに正常に必要とされるよりも、より低い用量の第1の治療剤又は第2の治療剤の使用(本明細書では「見かけの一方向性相乗効果」という)、又はより低い用量の両方の治療剤の使用(本明細書では「二方向性相乗効果」という)を可能にし得る。
【0074】
特定の実施態様において、第2の治療剤と第1の治療剤の間に示される相乗効果は、第2の治療剤を投与しないで投与した場合、第1の治療剤の投与量では治療効果を示すのに足らないほどのものである。あるいは、第2の治療剤と第1の治療剤の間に示される相乗効果は、第1の治療剤を投与しないで投与した場合、第2の治療剤の投与量では治療効果を示すのに足らないほどのものである。
【0075】
用語「増強」又は「増強する」は、化合物(複数)のうちの1つが、患者に投与される別の化合物(単数)又は化合物(複数)の治療効果を増加させるか又は高める場合の組み合わせを指す。ある事例において、増強は、特定の治療について、効力、許容量、若しくは安全性、又はその任意の組み合わせの改善に帰着し得る。
【0076】
特定の実施態様において、本発明は、第1の治療剤の治療効果を増強するのに有効な用量の第2の治療剤と一緒に治療的有効量の第1の治療剤を含む医薬組成物に関する。その他の実施態様において、本発明は、患者に第2の治療剤を投与することにより、第1の治療剤の患者における治療効果を増強する方法に関する。その他の実施態様において、本発明は、第2の治療剤の治療効果を増強するのに有効な用量の第1の治療剤と一緒に治療的有効量の第2の治療剤を含む医薬組成物に関する。その他の実施態様において、本発明は、患者に第1の治療剤を投与することにより、第2の治療剤の患者における治療効果を増強する方法に関する。
【0077】
特定の好ましい実施態様において、本発明は、一つには、第2の治療剤と一緒に、治療効果を与えるのに十分な量の第1の治療剤との相乗効果的組み合わせに向けられる。例えば、特定の実施態様において、第1の治療剤単独の投与量で得られる効果よりも少なくとも約2(又は少なくとも約4、6、8、又は10)倍大きい治療効果が得られる。特定の実施態様において、相乗効果的組み合わせは、第1の治療剤単独の投与量で得られるよりも、約20、30又は40倍まで大きい治療効果を与える。そのような実施態様において、相乗効果的組み合わせは、本明細書において「見かけの一方向性相乗効果」と呼ばれるものを表す。これが意味するものは、第2の治療剤の投与量が第1の治療剤の効果を相乗的に高めるが、しかし第1の治療剤の投与量が第2の治療剤の効果を有意に高めるようには見えないということである。
【0078】
特定の実施態様において、活性薬剤の組み合わせは、二方向性相乗効果を示す。これが意味するものは、第2の治療剤が第1の治療剤の効果を高め、且つ第1の治療剤が第2の治療剤の効果を高めるということである。従って、本発明のその他の実施態様は、各薬物の投与量が薬物(複数)間の相乗効果により減少し、減少投与量の薬物(複数)の組み合わせに由来する治療効果が高められるという、第2の治療剤と第1の治療剤の組み合わせに関する。二方向性相乗効果は、第1の治療剤対第2の治療剤の効能比のために、実際の投与量においては必ずしも容易に明白であるとは限らない。例えば、一方の治療剤が他方の治療剤に比較して非常に大きい治療効能を表す場合は、二方向性相乗効果を検出するのは困難であり得る。
【0079】
併用療法の相乗効果は、生物学的活性アッセイにより評価することができる。例えば、治療剤(複数)を、EC90値に基づいて、ほぼ等価な治療効果を与えるように設計されたモル比で混合する。次いで、各組み合わせについて相対的効能の評価の可変性を可能にするために、3つの異なるモル比を使用する。これらのモル比を希釈系列の全体にわたって維持する。対応する単剤療法もまた、標準的一次アッセイ形式を用いて、併用療法と並行して評価される。単剤療法の治療効果に対する併用療法の治療効果の比較が相乗効果の大きさを与える。組み合わせ解析の設計についての更なる詳細は、B E Korba(1996)Antiviral Res.29:49に見出すことができる。相乗効果、相加効果、又は拮抗効果の解析は、CalcuSyn(商品名)プログラム(Biosoft,Inc.)を用いて、前記データの解析により判断することができる。このプログラムは、広く受け入れられているChou and Talalayの方法の使用により、モンテカルロ統計的パッケージを用いる統計的評価と組み合わせて、薬物相互作用を評価する。データは、中央値−効果プロット及び用量−効果プロット、アイソボログラム、並びに標準偏差を含む併用指数[CI]プロットを含むいくつかの異なる形式で表される。後者の解析に対しては、1.0を超えるCIは拮抗効果を示し、1.0未満のCIは相乗効果を示す。
【0080】
本発明の組成物は、中等度から重度の疾患例の軽減を得る機会を与える。本発明の第1及び第2の治療剤の組み合わせにより提供される相乗及び/又は相加効果により、治療剤のそれぞれの投与量を減少させて使用することが可能であり得る。他方の又は両方の薬物をより少量で使用することにより、それぞれに関連する副作用を数と程度において減少させることができる。更に、本発明の組み合わせは、ある患者がそれに対して特に敏感に反応する副作用を回避する。
【0081】
製剤及び定義
本発明の医薬組成物は、患者に治療的有効投与量の活性成分を与えるのに適した任意の投与経路により投与することができる。典型的には、本明細書に記載する医薬組成物は、経口投与用又は吸入用に製剤化されるものである。適合する投与形態には、錠剤、トローチ剤、カシェ剤、カプレット、カプセル剤(硬及び軟ゼラチンカプセル剤を含む)などが含まれる。しかしながら、錠剤形態は、患者に与える利点(例えば正確な投与量、コンパクト性、携帯性、淡白な味及び投与容易性)及び製造業者に与える利点(例えば製造の簡単性及び経済性、安定性並びに包装、発送及び販売の便利性)の両方のために、依然として好ましい投与形態である。
【0082】
医薬組成物は更に、「薬学的に許容可能な不活性担体」を含むことができ、この表現は、1つ又は複数の不活性成分(これには、デンプン、ポリオール、造粒剤、微結晶性セルロース、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが含まれる)を含むことを意味する。必要なら、開示される組成物の錠剤形態は、標準的な水性又は非水性技術によりコーティングすることができる。或る実施態様において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含むコーティングが使用される。「薬学的に許容可能な担体」は更に、制御放出手段も包含する。本発明の組成物は更に任意に、その他の治療成分、アンチケーキング剤、保存剤、甘味剤、着色剤、香味剤、乾燥剤、可塑剤、染料などを含むことができる。しかしながら、そのような任意の成分はいずれも、製剤の安定性を保証するために、活性成分の組み合わせと両立するものでなければならない。
【0083】
用語「薬学的に許容可能な塩」は、無機酸及び無機塩基並びに有機酸及び有機塩基を含む、薬学的に許容可能な非毒性の酸又は塩基から調製される塩を指す。本発明の化合物が塩基性であるとき、塩は、無機酸及び有機酸を含む薬学的に許容可能な非毒性の酸から調製されることができる。本発明の化合物に適した薬学的に許容可能な酸付加塩には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシレート)、安息香酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、エテンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、粘液酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などが含まれる。化合物が酸性の側鎖を含有するとき、本発明の化合物に適した薬学的に許容可能な塩基付加塩には、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛からつくられる金属塩、又は、リシン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)及びプロカインからつくられる有機塩が含まれる。或る実施態様において、エスゾピクロンはコハク酸塩として製剤化される。その他の実施態様において、エスゾピクロンはフマル酸塩として製剤化される。
【0084】
エスゾピクロン、及びO−デスメチルベンラファキシンは、キラル化合物であり、ラセミ混合物、鏡像体の非等量混合物、又は単一の鏡像体として存在することができる。重要なことには、ラセミ混合物、鏡像体の非等量混合物、又は単一の鏡像体として存在することができる化合物の詳述は、別に記載されない限り、前記3形態のすべてを包含することを意味する。用語「鏡像体過剰率」は、技術的によく知られており、abのa+bへの分割に対して次のように定義される。
《式1》

【0085】
用語「鏡像体過剰率」は、旧来の用語「光学純度」に関連するものであり、両方とも同じ現象の指標である。eeの値は、0から100までの数であり、0はラセミ体であり、100は純粋な単一の鏡像体である。過去において98%光学的に純粋と呼ばれた化合物は、今はより精密に96%eeと記載される。換言すれば、90%eeは、問題の物質において、一方の鏡像体95%及び他方の鏡像体5%の存在を表す。特定の鏡像体(例えばエスゾピクロン)が本発明の組成物又は方法において使用するために詳述される場合には、このことは、組成物が、非特定の鏡像体に比較して特定の鏡像体を著しく大きい割合で含有するということを表す。好ましい実施態様において、特定の鏡像体を含む組成物は、その特定の鏡像体を少なくとも90%e.e.で含有する。より好ましくは、特定の鏡像体を含むそのような組成物は、その特定の鏡像体を少なくとも95%e.e.で含有する。更により好ましくは、特定の鏡像体を含むそのような組成物は、その特定の鏡像体を少なくとも98%e.e.で含有する。最も好ましくは、特定の鏡像体を含むそのような組成物は、その特定の鏡像体を少なくとも99%e.e.で含有する。
【0086】
例えば、エスゾピクロンを含む組成物は、ゾピクロンのS−鏡像体を少なくとも90%e.e.で含有する。より好ましくは、エスゾピクロンを含む組成物は、ゾピクロンのS−鏡像体を少なくとも95%e.e.で含有する。更により好ましくは、エスゾピクロンを含むそのような組成物は、ゾピクロンのS−鏡像体を少なくとも98%e.e.で含有する。最も好ましくは、エスゾピクロンを含むそのような組成物は、ゾピクロンのS−鏡像体を少なくとも99%e.e.で含有する。
【0087】
本明細書で使用するラセミ体化合物、アンビスケールミック(ambiscalemic)化合物及びスケールミック(scalemic)化合物又は鏡像体的に純粋な化合物の図式的表現は、Maehr J.Chem.Ed.62,114−120(1985)を引用している:楔形の実線及び破線は、キラル要素の絶対配置を示すために使用され;波線は、それが表す結合が生み出す立体化学的意味合いを何も示さず;実線及び破線の太線は、図示されている相対配置を示すがしかし絶対的立体化学のどれも示さない幾何学的記述子であり;並びに楔形の輪郭線及び点線又は破線は不定の絶対配置の鏡像体的に純粋な化合物を示す。
【0088】
本明細書中で使用される用語「O−デスメチルベンラファキシン」は、ラセミ体の(±)−O−デスメチルベンラファキシンと、個々の鏡像体の(−)−O−デスメチルベンラファキシン及び(+)−O−デスメチルベンラファキシンとの両方を含む。
【0089】
用語「アンタゴニスト」は、受容体結合部位に結合するがしかし受容体を活性化させない化合物、受容体に結合して受容体結合部位を遮断する化合物、又は受容体上のアロステリック部位に結合してそのリガンドによる受容体活性化を妨害する化合物(非競合的アンタゴニスト)を指す。得られる受容体阻害は、程度及び持続時間において変化し得る。
【0090】
用語「患者」は、特定の治療を必要とする哺乳動物を指す。好ましい実施態様において、患者は霊長類の動物、イヌ科の動物、ネコ科の動物、又はウマ科の動物である。もう一つの好ましい実施態様において、患者はヒトである。
【0091】
用語「併用投与」及び「併用投与する」は、治療剤(複数)がある程度まで同時に患者中に存在する限り、同時投与(2つ以上の治療剤を同時に投与すること)及び時間差投与(1つ又は複数の治療剤の投与を付加的治療剤(単数又は複数)の投与時と異なる時に投与すること)の両方を指す。
【0092】
用語「溶媒和物」は、1つ又は複数の溶媒分子を有する特定の化合物の薬学的に許容可能な形態であり、そのような化合物の生物学的有効性を保持する形態を指す。本発明の化合物と組み合わせて存在する溶媒和物の例としては、例えば水(水和物を形成する)、イソプロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、酢酸、エタノールアミン、又はアセトンの溶媒を挙げることができる。2つ以上の溶媒と組み合わせて存在する本発明の化合物などの溶媒和物混合物(複数)の製剤を、更に挙げることができる。
【0093】
本明細書に使用される用語「障害」には、閉経期、閉経周辺期、気分障害、不安障害、及び認知障害が含まれる。
【0094】
本明細書に使用される用語「閉経期」には、閉経期及び閉経周辺期の様々な症状(例えば、のぼせ、のぼせによる覚醒、夜間覚醒)及び、閉経期又は閉経周辺期に伴う気分障害(例えば、うつ病及び不安症)が含まれる。
【0095】
本明細書に使用される用語「気分障害」には、大うつ病(major depression)、大うつ病障害(major depressive disorder)、軽度うつ病(mild depression)、精神病を伴わない重度うつ病(severe depression without psychosis)、精神病を伴う重度うつ病(severe depression with psychosis)、メランコリー(melancholia)(かつての内因性うつ病)、非定型うつ病(atypical depression)、気分変調性障害(dysthymic disorder)、躁うつ病(manic depression)、双極性障害(bipolar disorder)、双極I型障害(bipolar I disorder)、双極II型障害(bipolar II disorder)、双極III型障害(bipolar III disorder,)、気分循環性障害(cyclothymic disorder)、及び慢性軽躁病(chronic hypomania)が含まれる。
【0096】
本明細書に使用される用語「気分障害」には更に、月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)、月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder:PMDD)、出産前うつ病(prenatal depression)、及び産後抑うつ症(postpartum depression)が含まれる。
【0097】
本明細書に使用される用語「不安障害」は、パニック発作(panic attacks)、パニック障害(panic disorder)、恐怖性障害(phobic disorders)(例えば広場恐怖症、特定恐怖症、対人恐怖症、回避性人格障害)、強迫性障害(obsessive-compulsive disorder:OCD)、心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder)、急性ストレス障害(acute stress disorder)、及び全般性不安障害(generalized Anxiety Disorder)を指す。
【0098】
本明細書に使用される用語「認知障害」は、せん妄(delirium)(急性錯乱状態)、認知症(dementia)、アルツハイマー病(Alzheimer's Disease)、レビー小体認知症(Lewy body dementia)、血管性認知症(vascular dementia)、ビンスワンガー型認知症(Binswanger's dementia)(皮質下動脈硬化性脳症)、パーキンソン病(Parkinson's disease)、進行性核上麻痺(progressive supranuclear palsy)、ハンチントン病(Huntington's disease)(舞踏病)、ピック病(Pick's disease)、クリューバー・ビューシー症候群(Kluver-Bucy syndrome)、前頭葉認知症症候群(frontal lobe dementia syndromes)、正常圧水頭症(normal-pressure hydrocephalus)、硬膜下血腫(subdural hematoma)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(Gerstmann-Straussler-Scheinker disease)、全身不全麻痺(general paresis)、及びAIDS認知症(AIDS dementia)を指す。本明細書に使用される用語「認知障害」には更に、認知機能低下(decreased cognitive function)及び記憶喪失(memory loss)が含まれる。
【0099】
用語「治療する」は、障害との関連で使用されるとき、その障害と関連する症状及び/又は影響からの改善、予防(prevention)又は除去軽減を意味し、病態の可能性又は重症度を実質的に減少させるために、本発明の組成物、又は薬学的に許容可能なその塩を予防的(prophylactic)に投与することを含む。
【0100】
本発明を一般的に記載したが、本発明は以下の実施例を参照することによりいっそう容易に理解されるであろう。以下の実施例は、本発明の特定の観点及び実施態様の説明の目的のためにだけ含まれるものであり、本発明を限定することを意図していない。
【実施例】
【0101】
実施例1.製剤
以下の製剤は、エスゾピクロン及びO−デスメチルベンラファキシンの組み合わせの錠剤又はカプセル剤製剤の好例である。
【表1】

【表2】

【0102】
上に示した製剤は、次の工程を実行することにより製造することができる。
1.80メッシュを通してエスゾピクロンを篩い分ける。
2.40メッシュを通してO−DMVコハク酸塩を篩い分ける。
3.#20又は#30メッシュ篩を通して残りの成分を篩い分ける。
4.エスゾピクロンをMCC(微結晶性セルロース)の一部とブレンドする。
5.O−DMVコハク酸塩を工程4からのブレンド物とブレンドする。
6.工程5からの混合物を残りのMCCと3段階でブレンドする。
7.工程6からの混合物を第二リン酸カルシウムとブレンドする。
8.クロスカルメロースを二酸化ケイ素と混合し、次いで工程7からの混合物とブレンドする。
9.工程8からの混合物をステアリン酸マグネシウムとブレンドする。
10.錠剤用に、適当な錠剤圧縮機上で圧縮する。
11.カプセル剤用に、適当なカプセル充填機上で硬ゼラチンカプセル中に充填する。
12.錠剤用に、工程10からの錠剤コアを、適当な慣用の錠剤コーティング機でオパドライIIを用いてコーティングする。
【0103】
実施例2.エスゾピクロンによる閉経期又は閉経周辺期治療に関する臨床研究
本研究は、閉経周辺期又は閉経期に続発する不眠症の治療においてエスゾピクロン3mgの効力をプラセボと比較して観察することを目的とした。
【0104】
試験は、多施設、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、平行群間試験であった。試験では、1週間の単純盲検プラセボ導入期間、そのあと4週間の二重盲検治療、そして1週間の単純盲検プラセボウォッシュアウトを行なった。最初の解析方法では、2つの治療群間の事後ランダム化結果を比較した。
【0105】
対象は、閉経周辺期又は閉経期に続発する不眠症を有する女性(複数)であった。対象は、閉経周辺期又は閉経期にあり、睡眠潜時(SL)45分、及び全睡眠時間(TST)6時間を含む不眠症の症状を有していた。閉経周辺期/閉経期の症状は、睡眠障害の症状発現より前から存在した。患者母集団は、大部分は白色人種(77.2%)であった。平均年齢は49歳、範囲は40〜60歳であった。
【0106】
総数410人の対象をランダム化した。そのうち201人が4週間毎夜(就寝前に)3mgのエスゾピクロン(ESZ)投与を受け、209人が対応するプラセボ(PBO)投与を受けた。中止の割合は中程度であり、ESZ群で11.9%、PBO群で12.9%であった。
【0107】
ESZ群はPBOと比較して、第1週の間、のぼせによる夜間覚醒は有意に少なかった(ESZ及びPBOについて、1夜当たりのLS平均値はそれぞれ0.3及び0.5;p=0.0016)。この効果はその他の週については有意でなかったが、DB平均については、マージナルに有意であった(p=0.059)。ベースラインからの変化を解析したとき、ESZはPBOと比較して、第1週におけるのぼせによる夜間覚醒数を有意に減少させた(p<0.0001)。第2週について差は有意でなかったが、第3週及び第4週についてはマージナルに有意であり(それぞれp=0.094及び0.055)、DB平均について有意であった(p=0.0045)。表3を参照のこと。
【表3】


【0108】
医師の全体的評価が、二重盲検終了の第4週に施行された。ESZ患者はこの時点でPBOと比較して有意に良好な得点を得た(ESZ及びPBOに対するLS平均は、それぞれ2.7及び3.3;p<0.0001)。表4を参照のこと。
【表4】

【0109】
上に解析した対象410人のうち11人からなる一つの現場からのデータが現場監査時の否定的所見のため除外されるであろうという理由で、研究結果はわずかに変化するであろう。これらの11人の対象を除外した後、研究の結論は変化しないであろうことが予想される。
【0110】
本明細書に引用される引用文献のそれぞれの内容は、一次引用文献内に引用される引用文献の内容を含み、その全体において参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0111】
このように本発明を記載したが、前記のことが様々に変化することができることは明白である。かかる変形形態は、本発明の精神及び範囲からの逸脱とは見なし得ず、当業者に自明であるすべてのかかる修正形態及び等価形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスゾピクロン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶、及び
O−デスメチルベンラファキシン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶、
を含む医薬組成物。
【請求項2】
O−デスメチルベンラファキシンが、(±)−O−デスメチルベンラファキシン又は(−)−O−デスメチルベンラファキシンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
治療的有効量のエスゾピクロン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶、及び治療的有効量のO−デスメチルベンラファキシン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶を、その治療を必要とする患者に併用投与する工程を含む、閉経期又は閉経周辺期に罹っている患者を治療する方法。
【請求項4】
O−デスメチルベンラファキシンが、(±)−O−デスメチルベンラファキシン又は(−)−O−デスメチルベンラファキシンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
治療的有効量のエスゾピクロン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶、及び治療的有効量のO−デスメチルベンラファキシン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶を、その治療を必要とする患者に併用投与する工程を含む、気分障害に罹っている患者を治療する方法。
【請求項6】
O−デスメチルベンラファキシンが、(±)−O−デスメチルベンラファキシン又は(−)−O−デスメチルベンラファキシンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
治療的有効量のエスゾピクロン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶、及び治療的有効量のO−デスメチルベンラファキシン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶を、その治療を必要とする患者に併用投与する工程を含む、不安障害に罹っている患者を治療する方法。
【請求項8】
O−デスメチルベンラファキシンが、(±)−O−デスメチルベンラファキシン又は(−)−O−デスメチルベンラファキシンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
治療的有効量のエスゾピクロン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶、及び治療的有効量のO−デスメチルベンラファキシン、又は薬学的に許容可能なその塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、若しくは共結晶を、その治療を必要とする患者に併用投与する工程を含む、認知障害に罹っている患者を治療する方法。
【請求項10】
O−デスメチルベンラファキシンが、(±)−O−デスメチルベンラファキシン又は(−)−O−デスメチルベンラファキシンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
気分障害が、大うつ病、大うつ病障害、軽度うつ病、精神病を伴わない重度うつ病、精神病を伴う重度うつ病、メランコリー、非定型うつ病、気分変調性障害、躁うつ病、双極性障害、双極I型障害、双極II型障害、双極III型障害、気分循環性障害、慢性軽躁病、月経前症候群、月経前不快気分障害、出産前うつ病、及び産後抑うつ症から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
不安障害が、パニック発作、パニック障害、恐怖性障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、及び全般性不安障害から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
認知障害が、せん妄、認知症、アルツハイマー病、レビー小体認知症、血管性認知症、ビンスワンガー型認知症、パーキンソン病、進行性核上麻痺、ハンチントン病、ピック病、クリューバー・ビューシー症候群、前頭葉認知症症候群、正常圧水頭症、硬膜下血腫、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、全身不全麻痺、AIDS認知症、認知機能低下及び記憶喪失から選択される、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2009−500420(P2009−500420A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520358(P2008−520358)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/026185
【国際公開番号】WO2007/005961
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(502337516)セプラコア インコーポレーテッド (14)
【Fターム(参考)】