説明

エステルの不斉加水分解方法

【課題】人工触媒を用いたエステルの不斉加水分解方法を提供する。
【解決手段】下式(Ia)で表される四級アンモニウム塩を触媒として、常圧下、−60℃〜50℃で、塩基性水溶液または金属水酸化物の存在下に非水溶性溶媒中で加水分解するエステルの不斉加水分解方法。


(式中、R1は水素原子等を表し、R2はアリール基等を表し、R3は水素原子等を表し、R4は水素原子等を表し、R5は低級アルキル基等を表し、X-はハロゲン原子等を表し、kは1または2の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四級アンモニウム塩を相間移動触媒として用いた新規なエステルの不斉加水分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子内に不斉をもつ化合物は、互いに鏡像関係となる光学異性体(エナンチオマー)が存在する。この一対の光学異性体は旋光性以外のほとんどの化学的、物理的性質が同じであるため、一般に不斉を持たない化合物で利用されている精製法による分離が不可能である。しかし、それぞれの光学異性体は生体内において大きく異なる生理活性を示すことが多いため、医薬、農薬および香料等の分野で利用される際、光学的に純粋な化合物を用いることが強く求められている。
【0003】
また、加水分解反応は安全かつ安価な水を反応剤とした効率的で優れた反応である。近年、工業的に重要な化学反応であるエステルの加水分解においても、触媒を用いてエステルを立体選択的に加水分解(不斉加水分解)し、光学異性体の一方を選択的に生成するという試みがなされている。
【0004】
従来のエステルの不斉加水分解方法としては、ラセミ体α−トリフルオロメチル乳酸エステルをエナンチオ選択的に加水分解するエステル加水分解酵素を用いる方法がある(特許文献1参照)。また、エステラーゼ活性を示す新規タンパク質およびその突然変異体を用いる立体選択的エステル加水分解法がある(特許文献2参照)。また、加水分解酵素を生産する微生物の菌体または微生物の菌体処理物の存在下でラセミ体エステルを不斉加水分解する方法がある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−67962号公報
【特許文献2】特表2009−540848号公報
【特許文献3】特開平11−235195号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Bleslow, R.; Dong, S. D. Chem. Rev. 1998, 98, 1997-2011.
【非特許文献2】Bunton, C. A.; Robinson, L.; Stam, C.F. Tetrahedron Lett. 1971, 2,121
【非特許文献3】Trainor, G.L.; Breslow, R. J. Am. Chem. Soc. 1981, 103, 154
【非特許文献4】Tokunaga, M.; Larrow, J. F.; Kakiuchi, F.; Jacobsen, E. N. Science.1997, 277, 936-938.
【非特許文献5】Soorukram, D.; Knochel, P. Angew. Chem. 2006, 45, 3686-3689.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のエステルの不斉加水分解方法は、酵素を用いてエステルを不斉加水分解させるが、酵素反応はミカエリス・メンテン式(Michaelis-Menten kinetics)に従うことから、酵素による加水分解速度は、ある基質濃度を越えると殆ど増加しなくなる。このため、酵素反応は、分子触媒に比べて体積当たりの生産効率が著しく低いという課題を有する。さらに、酵素は高価である上に、酵素反応は高希釈条件および緩衝剤の添加を要することから、生産性を下げる要因が多いという課題も有する。
【0008】
酵素以外の触媒を用いる例としては、超分子触媒を用いたニトロフェニルエステルの不斉加水分解反応(非特許文献1参照)、キラル界面活性触媒反応(非特許文献2参照)、およびβ−シクロデキストリン触媒反応(非特許文献3参照)等があるが、いずれも、基質が反応性の高いエステルに限定されることや大過剰量の触媒が必要(基質に対して10〜100倍の触媒濃度)であることにより実用化できるレベルには至っていない。
【0009】
本発明者らは先に、人工触媒であるコバルト錯体を用いたエポキシドの不斉加水分解反応を達成し、非常に実用性が高い技術を実現しているが(非特許文献4参照)、このような人工触媒を用いたエステルの不斉加水分解方法は、未だに知られていない。
【0010】
本発明の目的は、上記課題を解決するために、人工触媒を用いたエステルの新規の不斉加水分解反応系を確立し、高い立体選択性を有するエステルの不斉加水分解方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、人工触媒を用いたエステルの不斉加水分解について鋭意研究を重ねた結果、光学活性な四級アンモニウム塩を相間移動触媒として用いることにより、液―液または固―液二相系におけるエステル類の塩基加水分解が高立体選択的に進行することを見出した。
【0012】
かくして、本発明に従えば、上記課題を解決するものとして、下記の式(Ia)で表される光学活性な四級アンモニウム塩を触媒として、常圧下、−60℃〜50℃の反応温度で、塩基性水溶液または金属水酸化物の存在下、非水溶性溶媒中でエステルを反応させ、光学活性なケトンやヒドロキシカルボン酸およびアミノ酸をはじめとする種々の有用な光学活性体を製造することを特徴とするエステルの不斉加水分解方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の四級アンモニウム塩は、次の一般式(Ia)で表すことができる。
【0014】
【化1】

【0015】
上記式(Ia)中、R1は、水素原子、酸素原子、低級アルキル基、または低級アルキル基で置換されていてもよいアリール基を表し、R2は、低級アルキル基、低級アシル基、トリフルオロメチル基、もしくはハロゲン基で置換されていてもよいアリール基、N−オキシ−ピリジル基、または低級アルキル基を表し、R3は、水素原子、トリアルキルシリル基で置換されていてもよいアルコキシ基、またはジアルキルホスホリル基もしくはジアリルホスホリル基で置換されていてもよい低級アルコキシ基を表し、Rは、水素原子、アルケニル基、低級アルキル基で置換されていてもよいアミド基、低級アルキル基もしくはトリフルオロメチル基もしくは低級アルコキシ基で置換されていてもよいアリール基もしくはアダマンチル基で置換されていてもよい低級アシル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基で置換されていてもよいチオアミド基、ジメチルアミノ基で置換されていてもよいホスフィンオキシド基、またはカルボキシレート基を表し、Rは、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アリールアルキニル基を表し、RとRは、一体となって相互に結合した環状構造であってもよく、Xは、ハロゲン基、ヒドロキシ基、フルオロリン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、またはハロゲン基で置換されていてもよいアルコキシドを表し、kは、1〜2の整数を表す。
【0016】
上記の四級アンモニウム塩は、天然物または合成物由来のいずれのものも使用することができるが、化学合成の容易性から天然物由来のものを使用することが好ましく、特にシンコナアルカロイド類から合成することが好ましい。
【0017】
シンコナアルカロイド類としては、特に制約は無く、例えば、キニーネ、キニジン、シンコニンおよびシンコニジンを使用することができる。例えば、このうちシンコニジンを使用することで、本発明に係る四級アンモニウム塩である(1S,2S,4S,5R)-1-(アントラセン-9-イルメチル)-2-((R)-(2-(tert-ブチル)キノリン-4-イル) -(ヒドロキシ)メチル)-5-ビニルキヌクリジン-1-イウム
ブロミドを以下反応により合成することができる(反応の詳細は後述の実施例1に記載する)。
【0018】
【化2】

【0019】
上記のアリール基とは、単環または多環の芳香族炭化水素から1つの水素原子が脱離した構造を表す。アリール基は、上記式(Ia)中、R1、R2、R4およびR5に含まれるが、その環の大きさは、特に限定されるものではない。しかしながら、嵩高いアリール基を有する四級アンモニウム塩を用いると、合成の容易性、取り扱い易さなどの観点から利点が少ない。
【0020】
このようなことから、該アリール基を構成する芳香環としては、一般に、5員環または6員環からなる芳香環が6つ以内、好ましくは、3つ以内からなるものが望ましい。また、上記の低級アルキル基、および低級アルコキシ基における「低級」とは、炭素数1〜4、好ましくは、炭素数1〜3を有するものを表す。
これらの点からR1、R2、RおよびRによって表される置換されていてもよいアリール基としては、好ましくは、次のものが挙げられる。
【0021】
1においては、(1)フェニル基、ナフチル基、チエニル基、ピリジル基、ビフェニル基、アンスラニル基、テルフェニル基等のアリール基;(2)トリル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,6−ジメチルフェニル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、オクチルフェニル基、ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、n−ブチルフェニル基、3,5−ジtert−ブチルフェニル基、2,4,6−トリtert−ブチルフェニル基、2−メチル−1−ナフチル基、3−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、5−メチル−1−ナフチル基、6−メチル−1−ナフチル基、7−メチル−1−ナフチル基、8−メチル−1−ナフチル基、1−メチル−2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基、5−メチル−2−ナフチル基、6−メチル−2−ナフチル基、7−メチル−2−ナフチル基、8−メチル−2−ナフチル基、2−エチル−1−ナフチル基、ジtert−ブチルアントラセニル基等の低級アルキル基により置換されたアリール基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
においては、(1)フェニル基、ナフチル基、チエニル基、ピリジル基、ビフェニル基、アンスラニル基、テルフェニル基、テトラフェニルフェニル基等のアリール基;(2)トリル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,6−ジメチルフェニル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、オクチルフェニル基、ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、n−ブチルフェニル基、3,5−ジtert−ブチルフェニル基、2,4,6−トリtert−ブチルフェニル基、2−メチル−1−ナフチル基、3−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、5−メチル−1−ナフチル基、6−メチル−1−ナフチル基、7−メチル−1−ナフチル基、8−メチル−1−ナフチル基、1−メチル−2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基、5−メチル−2−ナフチル基、6−メチル−2−ナフチル基、7−メチル−2−ナフチル基、8−メチル−2−ナフチル基、2−エチル−1−ナフチル基、ジtert−ブチルアントラセニル基、9−メチルアントラセニル基等の低級アルキル基により置換されたアリール基等の低級アシル基により置換されたアリール基;ベンゾフェノン基等の低級アシル基により置換されたアリール基;o-トリフルオロメチルフェニル基、m-トリフルオロメチルフェニル基、p-トリフルオロメチルフェニル基、3,5,3",5"−トリフルオロメチルテルフェニル基、ジトリフルオロメチルフェニルアントラセニル基、ペンタフルオロフェニルアントラセニル基等のトリフルオロメチル基により置換されたアリール基;ブロモフェニル基、ジブロモフェニル基、トリブロモフェニル基、テトラブロモフェニル基、ペンタブロモフェニル基、ペンタフルオロフェニルアントラセニル基等のハロゲン基により置換されたアリール基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
において、アセチル基を置換するアリール基は、(1)フェニル基、ナフチル基、チエニル基、ピリジル基、ビフェニル基、ナフチルフェニル基等のアリール基;(2)トリル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,6−ジメチルフェニル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、オクチルフェニル基、ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、n−ブチルフェニル基、3,5−ジtert−ブチルフェニル基、2,4,6−トリtert−ブチルフェニル基、2−メチル−1−ナフチル基、3−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、5−メチル−1−ナフチル基、6−メチル−1−ナフチル基、7−メチル−1−ナフチル基、8−メチル−1−ナフチル基、1−メチル−2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基、5−メチル−2−ナフチル基、6−メチル−2−ナフチル基、7−メチル−2−ナフチル基、8−メチル−2−ナフチル基、2−エチル−1−ナフチル基、ジtert−ブチルアントラセニル基等の低級アルキル基により置換されたアリール基;o-トリフルオロメチルフェニル基、m-トリフルオロメチルフェニル基、p-トリフルオロメチルフェニル基等のトリフルオロメチル基により置換されたアリール基;o-メトキシフェニル基、m-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、o-エトキシフェニル基、m-エトキシフェニル基、p-エトキシフェニル基等の低級アルコキシ基により置換されたアリール基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
において、メチレンジオキシ基を置換するアリール基は、3,3'-ビス(ジフェニル)-1,1'-ビナフチル、2,2'-ビス(ジフェニル)-1,1'-ビナフチル等のビナフチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本発明の四級アンモニウム塩をエステルの不斉加水分解に使用する人工触媒として用いる点から好ましいR1は、tert-ブチル基、n-ブチル基、水素原子であり、特に好ましいのは、tert-ブチル基である。Rは、フェニル基、アントラセニル基が好ましく、特に好ましいのは、アントラセニル基である。Rは、メトキシ基、水素原子が好ましく、特に好ましいのは、水素原子である。
【0026】
また、Rは、p-フェニルアセチル基、p-トリフルオロメチルフェニルアセチル基、p-メトキシフェニルアセチル基、水素原子が好ましく、特に好ましいのは、p-フェニルアセチル基、水素原子である。Rは、エチル基、ビニル基、アルキニルフェニル基が好ましく、特に好ましいのは、ビニル基である。
【0027】
なお、本発明の四級アンモニウム塩を表す上記一般式(I)において、R1とR5は、一体となって相互に結合した環状構造であってもよく、そのR1とR5が一体となった炭素鎖の炭素数は、好ましくは6〜12(例えば、炭素数11)である。
【0028】
本発明の四級アンモニウム塩を表す上記一般式(I)において、X-は、対イオンを構成する陰イオン基を表す。該陰イオン基としては、X-は、ハロゲン基、ヒドロキシ基、フルオロリン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、またはハロゲン基で置換されていてもよいアルコキシドなどを例示することができる。
【0029】
実用上好ましい陰イオン基の例としては、ハロゲン基であり、このうち特に、臭化物イオン、塩化物イオンが挙げられる。
本発明の不斉加水分解方法の対象となるエステルとしては、一般的なカルボン酸エステルに限定されることなく、エノールエステル、アリールエステル、環状エステルが含まれる。環状エステルとしては、環状構造を持つ有機化合物のうち、ラクトンや窒素原子を有するアズラクトンが含まれる。
【0030】
反応条件
反応温度としては、−60℃〜50℃の範囲で選定することができ、好ましくは、−20℃〜40℃であり、例えば、常温とすることができる。
【0031】
塩基性水溶液もしくは金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、リン酸カリウム、炭酸カリウム等の水溶液が挙げられるが、一般には0.5〜2当量もしくは体積率50%の水酸化カリウム水溶液または炭酸カリウム水溶液が好ましい。特に、エノールエステルの加水分解では、体積率50%水酸化カリウム水溶液または1当量の水酸化カリウム水溶液が好ましく、アリールエステルの加水分解では、2当量の炭酸カリウム水溶液が好ましく、ラクトンの加水分解では、1.5当量の水酸化カリウム水溶液が好ましく、ラクトンの加水分解では、0.5当量の水酸化カリウム水溶液が好ましい。
【0032】
また、非水溶性溶媒とは、水と混ざらない(水と完全に均一な溶液を形成しない)性質の溶媒であることを意味し、例えば、クロロホルム、トルエン、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、ジメチルエーテル(DME)、ジイソプロピルエーテル等があり、有意なエナンチオ選択性が得られる観点から、好ましくは、クロロホルムである。
【0033】
さらに、本反応の立体選択性を向上させる観点から、ハロゲン基で置換されていてもよい低級アルキルアルコールまたは非イオン性界面活性剤を添加することもできる。これらの例としては、例えば、エタノール、2−クロロエタノール、トリトンX−100などが挙げられるが、特に有意な効果を奏する添加剤として、特に2−クロロエタノールが好ましい。
【0034】
このようにして、本発明の四級アンモニウム塩を相間移動触媒として、エステル類の不斉加水分解が行われる。相間移動触媒とは、有機溶媒と水との二相系において、有機溶媒に可溶な有機化合物と水に可溶な化合物(主に無機化合物)との不均一系反応を可能とするものである。
【0035】
光学活性ケトンの製造方法
前記エステルを、一般式(IIa)で表される2位置換環状ケトンから誘導したエノールエステルとして、一般式(IIb)で表される光学活性ケトンを製造することができる。反反応条件としては、例えば、本発明の四級アンモニウム塩(10mol%)を触媒として用い、水酸化カリウム水溶液(50wt%)の存在下、クロロホルム中、常温常圧で1時間攪拌することにより目的の光学活性ケトンを製造することができる。反応温度としては、−60℃〜50℃の範囲で選定することができ、好ましくは、−40℃〜30℃であり、例えば、常温とすることができる。
【0036】
【化3】

【0037】
上記式(IIa)中、Rは、低級アルキル基、低級シクロアルキル基、またはハロゲン基もしくはトリフルオロメチル基で置換されていてもよいアリール基を表し、Rは、水素原子または低級アルキル基を表し、Rは、ハロゲン基で置換されていてもよい低級アルキル基、トリフルオロメチル基で置換されていてもよいアリール基、または低級アルコキシ基で置換されていてもよいアリール基を表し、lは0〜3の整数を表す。
【0038】
【化4】

上記式(IIb)中、R6、R7、およびlは、上記式(IIa)で定義したものと同じであり、*は不斉点を表す。
【0039】
は、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1〜6の鎖状または分枝状の飽和炭化水素基(特に十分な立体選択能を発揮するために、炭素数3以上が好ましい)低級アルキル基;シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素数5〜7の低級シクロアルキル基;6-クロロ(o-トリル)フェニル基、6-クロロ(m-トリル)フェニル基、6-クロロ(p-トリル)フェニル基等のハロゲン基で置換されたアリール基;6-トリフルオロメチル(o-トリル)フェニル基、6-トリフルオロメチル(m-トリル)フェニル基、6-トリフルオロメチル(p-トリル)フェニル基等のトリフルオロメチル基で置換されたアリール基、特にフェニル基が挙げられる。
【0040】
は、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基が挙げられる。Rは、クロロメチル基、クロロエチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基等のハロゲン基で置換されていてもよい炭素数1〜4の低級アルキル基;o-トリフルオロメチルフェニル基、m-トリフルオロメチルフェニル基、p-トリフルオロメチルフェニル基等のトリフルオロメチル基で置換されていてもよいアリール基、特にフェニル基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基等の炭素数1〜4の低級アルコキシ基で置換されていてもよいアリール基、特にフェニル基が挙げられる。また、lで示された主環は、5員環から8員環までの大きさの環を使用することができる。
【0041】
光学活性アルコールの製造方法(1)
前記エステルを、一般式(IIIa)で表されるアリールエステルとして、一般式(IIIb)で表される光学活性アルコールを製造することができる。反応条件としては、例えば、本発明の四級アンモニウム塩(10mol%)を触媒として、1
mol/Lの炭酸カリウム水溶液(1.5当量)の存在下で、クロロホルム中、常温常圧下、1時間攪拌することにより目的の光学活性アルコールを製造することができる。反応温度としては、−60℃〜50℃の範囲で選定することができ、好ましくは、−20℃〜40℃であり、例えば、常温とすることができる。
【0042】
【化5】

【0043】
上記式(IIIa)中、Rは、低級アルキル基、ニトロ基で置換されていてもよいアリール基を表し、R10は、水素原子、ハロゲン基、またはアリール基を表し、R11は、低級アルキル基を表す。R12は、低級アルキル基、アダマンチル基で置換されていてもよい低級アシル基、低級アルキル基で置換されていてもよいホスホリル基、または低級アリール基で置換されていてもよいスルホニル基を表し、*は不斉点を表し、aは、0〜1の整数を表す。
【0044】
【化6】

上記式(IIIb)中、R10、R11、R12、*およびaは、上記式(IIIa)で定義したものと同じである。
【0045】
は、メチル基、エチル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ニトロフェニル基、ニトロナフチル基等のニトロ基で置換されていてもよい環数1〜3のアリール基が挙げられる。R10は、水素原子;塩素原子、臭素原子等のハロゲン基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の環数1〜3のアリール基が挙げられる。R11は、エチル基、メチル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基を表す。R12は、メチル基、エチル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基;アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、アダマンチルアセチル基、アダマンチルピバロイル基、アダマンチルベンゾイル基等のアダマンチル基で置換されていてもよい低級アシル基(特にアセチル基、ピバロイル基、チルベンゾイル基);ジメチルホスホリル、ジエチルホスホリル等の炭素数1〜4の低級アルキル基で置換されていてもよいホスホリル基;スルホニル基、フェニルスルホニル基、プロピルフェニルスルホニル基、ジプロピルフェニルスルホニル基、トリプロピルフェニルスルホニル基等の低級アリール基(特にフェニル基)で置換されていてもよいスルホニル基が挙げられる。
【0046】
光学活性アルコールの製造方法(2)
前記エステルを、一般式(IVa)で表されるアリールエステルとして、一般式(IVb)で表される光学活性アルコールを生成することができる。反応条件としては、例えば、本発明の四級アンモニウム塩(10mol%)を触媒として、1 mol/Lの炭酸カリウム水溶液(1当量)の存在下で、ジイソプロピルエーテル中、常温常圧で1時間攪拌することにより目的の光学活性アルコールを製造することができる。反応温度としては、−60℃〜50℃の範囲で選定することができ、好ましくは、−20℃〜40℃であり、例えば、常温とすることができる。
【0047】
【化7】

上記式(IVa)中、R13は、低級アシル基を表し、R14は、低級アルキル基を表す。
【0048】
【化8】

上記式(IVb)中、R13およびR14は、上記式(IVa)で定義したものと同じであり、*は不斉点を表す。
【0049】
13は、アセチル基、ピバロイル基等の低級アシル基が挙げられる。また、R14は、エチル基、メチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基を表す。
ラクトンの製造方法
前記エステルを、一般式(Va)で表されるラクトンとして、一般式(Vb)で表される光学活性ヒドロキシカルボン酸と一般式(Va)で表される光学活性ラクトンを生成することができる。反応条件としては、例えば、本発明の四級アンモニウム塩(10mol%)を触媒として、1 mol/Lの水酸化カリウム水溶液(1.5当量)の存在下、クロロホルム中、常圧0℃で10分間攪拌することにより、目的の光学活性ヒドロキシカルボン酸および光学活性ラクトンを製造することができる。反応温度としては、−60℃〜50℃の範囲で選定することができ、好ましくは、−20℃〜40℃であり、例えば、0℃とすることができる。
【0050】
【化9】

上記式(Va)中、R15は、低級アルキル基を表し、*は不斉点を表し、rは、1〜3
の整数を表す。
【0051】
【化10】

上記式(Vb)中、R15、*、およびrは、上記式(Va)で定義したものと同じである。
15は、エチル基、メチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基を挙げることができる。rで表される主環は、4員環〜6員環の環を使用することができる。
【0052】
アズラクトンの製造方法
前記エステルを、一般式(VIa)で表されるアズラクトンとして、一般式(VIb)で表される光学活性アミノ酸を生成することができる。反応条件としては、例えば、本発明の四級アンモニウム塩(10mol%)を触媒として、1 mol/Lの水酸化カリウム水溶液(1.5当量)の存在下、クロロホルム中、常圧下、0℃で10分間攪拌することにより目的の光学活性アミノ酸を合成することができる。反応温度としては、−60℃〜50℃の範囲で選定することができ、好ましくは、−20℃〜40℃であり、例えば、常温とすることができる。
【0053】
【化11】

上記式(VIa)中、R16は、低級アルキル基で置換されていてもよいアリール基を表し、R17は、低級アルキル基、または低級アルキル基で置換されていてもよいアリール基を表し、sおよびtは、s+t=0〜2を満たす0以上の整数を表し、*は、不斉点を表す。
【0054】
【化12】

上記式(VIb)中、R16、R17、s、tおよび*は、上記式(VIa)で定義したものと同じである。
【0055】
16は、フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基で置換されていてもよいアリール基(特にフェニル基)が挙げられる。R17は、メチル基、エチル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基;フェニル基、トリル基、キシキル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基で置換されていてもよいアリール基(特にフェニル基)が挙げられる。 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
なお分析は下記装置で実施した。
1H-NMR、13C-NMR:JEOL製ECS-400、ECS-600、AL-400。
GC分析:アジレントGC6850シリーズII(アジレント・テクノロジー社製)
HPLC分析:LC-2000
Plusシリーズ(日本分光製)
旋光性:DIP-1000のデジタル偏光計(日本分光製)
クロマトグラフィー用シリカゲル:粒径40−100μm球体シリカゲル60N(関東ケミカル製)
NMR分析溶剤:CDCl3
、CD3OD
無水溶媒:ピリジン(無水、アルドリッチ製)、CH2Cl2(無水、アルドリッチ製)、THF(和光ケミカル製、無水、安定剤無)
【0057】
(実施例1)
(四級アンモニウム塩の製造)
(1S,2S,4S,5R)-1-(アントラセン-9-イルメチル)-2-((R)-(2-(tert-ブチル)キノリン-4-イル)
-(ヒドロキシ)メチル)-5-ビニルキヌクリジン-1-イウム ブロミドの製造
以下の化学反応式に従い、表題の化合物を製造した。各反応毎の結果を以下に記載する。
【0058】
【化13】

【0059】
(R)-(2-(tert-ブチル)キノリン-4-イル)((1S,2S,4S,5R)-5-ビニルキヌクリジン-2-イル)メタノールの製造
(-)-シンコニジン(883mg、3mmol(1当量))をジエチルエーテル(15 mL)に懸濁し、−25℃に冷却した後、t-ブチルリチウム(tBuLi) (ペンタン中1.57M,
5.73 mL, 9 mmol, 3当量)を加え、10分間攪拌した。引き続き、反応溶液を室温まで温め、さらに1時間攪拌した。反応の進行をTLCで追跡し、原料の消失を確認した(トルエン:メタノール:トリエチルアミン=10:1:1、tBu付加体はUV照射で青く発色する)。原料消失後、反応溶液を氷冷しながら酢酸を添加して反応を停止し、続いて酢酸エチル(30mL)と水(30mL)を加えたのち、攪拌しながらヨウ素を加えた(ヨウ素は茶色の発色が持続するまで添加した)。その後、混合溶液に飽和次亜硫酸ナトリウム水溶液を加えた。有機相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出した。有機相をひとまとめにし、硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。乾燥剤をろ別した後、溶媒を減圧留去して得られた濃縮混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:メタノール:トリエチルアミン=20:1:1)により精製し、目的のアミン(704mg、1.92mmol、64%、白色固体)を得た。
【0060】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 8.07 (d, J = 8.2 Hz, 1 H), 7.90
(d, J = 8.7 Hz , 1 H), 7.72, (s, 1 H), 7.63 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.39 (t, J
=7.4 Hz, 1H), 5.71 (ddd, J =7.8, 10.1, 17.4 Hz, 1 H), 5.66 (s, 1 H), 4.93 (d, J
= 17.4 Hz, 1 H), 4.88
(d, J = 10.1 Hz, 1 H), 3.53-3.43 (m, 1 H), 3.12-3.00 (m, 2 H), 2.70-2.59 (m, 2
H), 2.29-2.20 (m, 1 H), 1.80-1.65 (m, 4 H), 1.50-1.40 (m, 11 H). 13C
NMR (150 MHz, CDCl3):δ= 169.0, 148.3, 147.7, 142.0, 130.4, 128.7,
125.9, 123.9, 122.6, 115.2, 114.4, 72.4, 60.3, 57.2, 43.4, 40.1, 38.3, 30.2 (3
carbons), 28.1, 27.7, 21.4.
【0061】
(2)(1S,2S,4S,5R)-1-(アントラセン-9-イルメチル)-2-((R)-(2-(tert-ブチル)キノリン-4-イル)-(ヒドロキシ)メチル)-5-ビニルキヌクリジン-1-イウム ブロマイドの製造
(R)-(2-(tert-ブチル)キノリン-4-イル)((1S,2S,4S,5R)-5-ビニルキヌクリジン-2-イル)メタノール (73mg,0.2
mmol, 1当量)をCHCl3-THF (1:1)に溶解し、 9-ブロモメチルアントラセン(57 mg, 0.21 mmol, 1.05 当量) を加えた。引き続き反応溶液を80 oCまで温めながら窒素ガスを吹き込み、溶媒を0.2mL程度まで留去した。その後、容器の蓋を閉め、80℃で10分攪拌したのち、該混合物を室温まで冷却した。得られた沈殿物を少量のクロロホルムに溶解し、該溶液をジエチルエーテル(100
mL)に滴下した。得られた沈殿物を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄することにより目的の四級アンモニウム塩(118 mg, 0.19 mmol, 95%、薄桃色粉末)を得た。
【0062】
1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ= 8.81 (d, J = 8.9 Hz, 1 H),
8.68 (s, 1 H), 8.16-8.09 (m, 4 H), 7.82-7.70 (m, 4 H), 7.60-7.52 (m, 2 H), 7.01
(s, 1 H), 6.36 (d, J = 14.4 Hz, 1 H), 5.86 (d, J = 13.7 Hz, 1 H), 5.66 (ddd, J
= 7.6, 9.6, 17.2Hz, 1 H), 5.00 (d, J = 17.2 Hz, 1 H), 4.92 (d, J = 10.3 Hz, 1
H), 4.66-4.59 (m, 1 H), 4.48-4.40 (m, 1 H), 3.90-3.84 (m, 1 H), 3.29 (s, 1 H),
3.13 (t, J = 11.7 Hz, 1 H), 2.76-2.66 (m, 1 H), 2.36 (br s, 1 H), 2.24-2.14 (m,
1 H), 2.12-2.00 (m, 1 H),
1.87 (s, 1 H), 1.66-1.20 (m, 12 H). 13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ=
169.0, 147.5, 145.1, 137.5, 133.4, 133.3, 132.3, 131.60, 131.55, 129.8, 129.7,
129.6, 129.2,
127.93, 127.88, 126.9, 125.2, 124.5, 123.9, 123.1, 122.7, 118.0, 117.0, 116.3,
78.2, 68.6, 66.2, 62.3, 55.4, 51.9, 38.3, 38.0, 29.2 (3 carbons), 26.0, 24.9,
21.8.
【0063】
(実施例2)
(四級アンモニウム塩の製造)
(1S,2S,4S,5R)-1-((3',6'-ジフェニル-[1,1':2',1''-テルフェニル]-4'-イル)メチル)-2-((R)-ヒドロキシ(6-メトキシキノリン-4-イル)メチル)-5-ビニルキヌクリジン-1-イウム
ブロマイドの製造
以下の化学反応式に従い、表題の化合物を製造した。各反応毎の結果を以下に記載する。
【0064】
【化14】

【0065】
(1)1-ブロモメチル-2,3,4,5-テトラフェニルベンゼンの製造
テトラフェニルシクロペンタジエノン(3.85 g、10 mmol(1当量))のトルエン溶液(10 mL)に、臭化プロパルギル(3.01 mL、40
mmol(4当量))を加えた。反応混合物を110℃で8時間攪拌後、室温まで冷却した。 得られた白色沈殿物をヘキサンで濾過洗浄し、目的の化合物(4.36 g、9.1
mmol、91%、白色固体)を得た。
【0066】
1H NMR (600MHz, CDCl3): δ= 7.64 (s, 1 H), 7.20-7.11 (m, 10 H),
6.92-6.88 (m,
3 H), 6.86-6.81 (m, 3 H), 6.81-6.77 (m, 2 H), 6.76-6.72(m, 2 H), 4.40 (s, 2 H).
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ= 142.2, 141.5,141.4, 140.9, 140.6, 139.8, 139.6,
138.7, 135.1, 131.5, 131.4(2 carbons), 131.2 (2 carbons), 130.3 (2 carbons),
129.9 (2 carbons), 127.7 (2 carbons), 127.6 (2 carbons), 127.0 (2 carbons),
126.8, 126.7 (2carbons), 126.5, 125.8, 125.6, 32.8. Anal. Calcd for C31H23Br:
C, 78.32; H,
4.88. Found: C, 78.29; H,4.86.
【0067】
(2)(1S,2S,4S,5R)-1-((3',6'-ジフェニル-[1,1':2',1''-テルフェニル]-4'-イル)メチル)-2-((R)-ヒドロキシ(6-メトキシキノリン-4-イル)メチル)-5-ビニルキヌクリジン-1-イウム ブロマイドの製造
上記で得られた1-ブロモメチル-2、3、4、5-テトラフェニルベンゼン(1 mmol、475 mg(1当量))を、DMF:EtOH:CHCl3(9:7.5:1、200
μL)中のキニーネ(1 mmol、324 mg(1当量))の攪拌溶液に加え、100℃まで加熱した。2時間後、該混合物を室温に冷却したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製することにより、目的の四級アンモニウム塩(344mg、0.43mmol、43%、薄桃色粉末)を得た。
【0068】
1H NMR (400 MHz,CD3OD) δ=8.73-8.67 (m, 1 H), 7.97 (d, J
= 9.2 Hz, 1 H), 8.00-7.95 (m, 2 H), 7.77 (d, J = 4.6 Hz,1H) 7.48 (dd, J = 2.3,
9.6 Hz, 1 H), 7.31-7.10 (m, 8 H), 6.91-6.71 (m, 12 H), 6.49 (s, 1 H),
5.63-5.52(m, 1H), 5.59 (d, J = 12.4 Hz, 1 H), 4.96-4.84 (m, 3 H), 4.05 (s, 3
H), 3.95-3.85 (m, 1 H), 3.78 (t, J =11.4 Hz, 1 H), 3.64-3.55 (m, 1 H),
3.55-3.44 (m, 1 H), 3.28 (s, 1 H), 3.04-2.94
(m, 1 H), 2.76 (s, 1 H),2.16-2.24 (m, 2 H), 1.98 (s, 1 H), 1.95-1.84 (m, 1 H),
1.31-1.20 (m, 1 H). 13C NMR (100 MHz,CDCl3):δ= 158.7,
146.9, 144.5, 144.0, 143.6, 143.3, 143.1, 141.7, 140.8, 139.6, 139.2, 138.6,
137.5,135.6, 131.6, 131.4, 131.0, 131.04, 131.00, 130.9, 130.6, 129.7, 128.1,
128.0, 127.6, 127.1, 126.8,126.6, 125.9, 125.6, 124.4, 121.4, 120.2, 115.8,
101.4, 68.4, 64.9, 61.8, 61.1, 55.4, 53.5, 51.6, 48.5,48.3, 48.1, 47.9, 47.7,
47.5, 47.2, 47.0, 37.6, 26.3, 24.5, 21.2. HRMS (FAB+) m/z calculated for C51H47N2O2
719.3632 found 719.3641 [M-Br]
【0069】
(実施例3)
(その他の四級アンモニウム塩の製造)
従来から知られた方法により、以下の各種の四級アンモニウム塩を合成した。
【0070】
【化15】

【0071】
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ 0.82-0.95 (m, 2H), 1.52-1.70 (m,
2H), 1.97-2.08 (m, 1H), 2.22-2.27 (m, 1H), 2.28-2.36 (m, 1H), 2.37-2.46 (m, 1H),
2.84-2.93 (m, 1H), 3.31-3.43 (m, 1H), 4.31-4.42 (m, 1H), 4.72 (d, 1H, J = 12.4
Hz), 5.40 (d, 1H, J = 12.4 Hz), 6.15-6.23 (m, 1H), 6.54 (d, 1H, J = 16.0 Hz),
6.67 (s, 1H), 6.75-6.86 (m, 2H), 7.32-7.69 (m, 8H), 7.89 (d, 1H, J = 4.6 Hz),
8.00 (d, 1H, J = 9.2 Hz), 8.76 (d, 1H, J = 4.6 Hz).
【0072】
【化16】

【0073】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.78 (t, 3H, J = 7.3 Hz ),
1.15-1.42 (m, 4H), 1.45-1.53 (m, 1H), 1.61-1.75 (m, 1H), 1.75-1.90 (m, 1H),
2.00-2.10 (m, 1H), 2.21-2.40 (m, 2H), 2.90-3.01 (m, 1H), 3.05-3.18 (m, 1H), 3.31-3.40
(m, 1H), 3.75-3.86 (m, 1H), 3.94 (s, 3H), 4.83 (d, 1H, J = 12.4 Hz ), 5.09-5.21
(m, 1H), 6.44 (d, 1H, J = 6.9 Hz), 6.63 (d, 1H, J = 12.4 Hz), 6.70 (d, 1H, J =
6.9 Hz), 7.32 (dd, 1H, J = 2.3, 9.2, Hz), 7.73 (d, 1H, J = 4.8 Hz), 7.97-8.05
(m, 2H), 8.43
(s, 2H), 8.73 (d, 1H, J = 4.8 Hz).
【0074】
【化17】

【0075】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.20-1.29 (m, 1H), 1.64-1.76
(m, 1H), 1.79-1.96 (m, 3H), 2.16-2.25 (m, 1H), 2.31-2.45 (m, 2H), 3.04-3.14 (m,
3H), 4.08 (s, 3H), 4.60 (dd, 1H, J = 1.6, 17.4 Hz), 4.92 (dd, 1H, J = 1.6, 10.6
Hz), 4.93 (d, 1H,
J = 12.2 Hz), 5.03-5.14 (m, 1H), 5.27-5.38 (m, 1H), 6.40 (d, 1H, J = 12.2 Hz),
6.52 (d, 1H, J = 7.0 Hz), 6.74 (d, 1H, J = 7.0 Hz), 7.16 (d, 1H, J = 2.4 Hz),
7.34-7.60 (m, 9H), 7.74 (d, 1H, J = 4.4 Hz), 8.11 (d, 1H, J = 9.2 Hz),
8.35-8.40 (m, 1H), 8.74 (d, 1H, J = 4.4 Hz).
【0076】
【化18】

【0077】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.53-1.67 (m, 1H), 1.93-2.02(m,
1H), 2.06-2.12 (m, 1H), 2.13-2.21 (m, 2H), 2.78-2.87 (m, 1H), 3.29-3.40 (m,
2H), 3.58-3.67 (m, 1H), 3.77-3.86 (m, 1H), 4.12-4.26 (m, 1H), 5.04 (d, 1H, J =
12.0 Hz), 5.13 (d, 1H, J = 17.4 Hz), 5.71-5.84 (m, 1H), 6.49 (s, 1H), 6.66-6.78
(m, 2H), 8.23 (t, 1H, J = 8.5 Hz), 8.28 (d, 1H, J = 6.4 Hz), 8.44 (t, 1H, J =
8.5 Hz), 8.85-8.92 (m, 2H), 8.99 (d, 1H, J = 8.7 Hz).
【0078】
【化19】

【0079】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.24-1.35 (m, 1H), 1.97-2.02
(m, 2H), 2.06-2.16 (m, 2H), 2.70-2.79 (m, 1H), 2.95-3.03 (m, 1H), 3.42-3.53 (m,
1H), 3.55-3.63 (m, 1H), 3.71-3.81 (m, 1H), 3.86-3.97 (m, 1H), 4.04 (s, 3H),
4.84-4.97 (m, 3H), 5.45-5.64 (m, 2H), 6.40 (s, 1H), 6.74-6.93 (m, 10H),
7.12-7.31 (m, 11H), 7.53 (dd, 1H, J = 1.4, 9.2 Hz), 7.76 (d, 1H, J = 4.6 Hz),
7.86 (s, 1H), 8.00 (d, 1H, J = 9.2 Hz), 8.71 (d, 1H, J = 3.7 Hz).
【0080】
【化20】

【0081】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.18-1.57 (m, 6H), 1.69-1.91
(m, 3H), 1.95-2.10 (m, 4H), 2.12-2.29 (m, 3H), 2.81-3.92 (m, 1H), 3.36-3.42 (m,
1H), 3.53-3.66 (m, 3H), 3.77-3.85 (m, 1H), 3.87-3.95 (m, 1H), 4.21-4.33 (m,
1H), 4.98 (d, 1H,
J = 10.6 Hz), 5.11 (d, 1H, J = 17.0 Hz), 5.61-5.73 (m, 1H), 7.70-7.79 (m, 1H),
7.80-7.85 (m, 1H), 7.86-7.90 (m, 1H), 8.03-8.12 (m, 2H), 8.91 (d, 1H, J = 4.6
Hz).
【0082】
【化21】

【0083】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.34 (s, 18H), 1.39-1.55 (m,
1H), 1.83-1.97 (m, 1H), 2.012.13 (m, 1H), 2.162.34 (m, 2H), 2.662.79 (m, 1H),
3.333.42 (m, 1H), 3.433.54 (m, 1H), 3.553.64 (m, 1H), 3.894.00 (m, 1H),
4.374.49 (m, 1H), 4.94 (d, 1H, J = 12.4 Hz), 4.99 (d, 1H, J = 10.0 Hz),
5.055.17 (m, 2H), 5.625.75 (m, 1H), 6.63 (s, 1H), 7.49 (s, 2H), 7.64 (s, 1H),
7.737.94 (m, 3H), 8.11 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 8.22 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 8.92 (d,
1H, J = 4.6 Hz).
【0084】
【化22】

【0085】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.33-1.46 (m, 1H), 2.00-2.10
(m, 2H), 2.11-2.22 (m, 1H), 2.23-2.34 (m, 1H), 2.80-2.89 (m, 1H), 3.35-3.47 (m,
1H), 3.48-3.57 (m, 1H), 4.52-4.63 (m, 1H), 4.77-4.86 (m, 1H), 5.00 (d, 1H, J =
11.0 Hz), 5.29 (d, 1H, J = 17.0 Hz), 5.325.42 (m, 1H), 5.725.83 (m, 1H), 6.36
(s, 1H), 7.577.69
(m, 3H), 7.76 (t, 1H, J = 6.9 Hz), 7.84 (d, 1H, J = 4.6 Hz), 7.877.96 (m, 2H),
7.978.02 (d, 1H, J = 8.3 Hz), 8.508.60 (m, 1H), 8.82 (d, 1H, J = 5.0 Hz).
【0086】
【化23】

【0087】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.19-1.40 (m, 2H), 1.77-1.89
(m, 1H), 2.08-2.15 (m, 1H), 2.16-2.25 (m, 1H), 2.62-2.71 (m, 1H), 3.38-3.51 (m,
1H), 3.61-3.72 (m, 1H), 3.94-4.05 (m, 1H), 4.06-4.12 (m, 1H), 4.23-4.39 (m,
1H), 4.86-4.96 (m, 1H), 5.01 (d, 1H, J = 17.9 Hz), 5.24 (d, 1H, J = 12.8 Hz),
5.53-5.67 (m, 2H), 6.55 (s, 1H), 7.54-7.60 (m, 2H), 7.61-8.02 (m, 10H), 8.09
(d, 1H, J = 8.7 Hz), 8.16 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 8.90 (d, 1H, J = 4.6 Hz).
【0088】
【化24】

【0089】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.26-1.39 (m, 1H), 2.03-2.21 (m,
3H), 2.22-2.31 (m, 1H), 2.87-2.99 (m, 1H), 3.50-2.60 (m, 1H), 3.79-3.87 (m,
1H), 3.91-4.02 (m, 2H), 4.56-4.68 (m, 1H), 4.75 (d, 1H, J = 17.0 Hz), 4.96-5.11
(m, 2H), 5.15 (d, 1H, J = 17.0 Hz), 5.65-5.77 (m, 1H), 6.42 (s, 1H), 6.93 (t,
1H, J = 7.3 Hz),
7.47-7.73(m, 6H), 7.90 (d, 1H, J = 4.6 Hz), 8.03 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 8.23 (d,
1H, J = 8.2 Hz), 8.90 (d, 1H, J = 4.6 Hz).
【0090】
【化25】

【0091】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 0.78 (t, 3H, J = 7.3 Hz),
1.20-1.36 (m, 2H), 1.42-1.53 (m, 1H), 1.77-1.94 (m, 2H), 2.01-2.07 (m, 1H),
2.23-2.36 (m, 2H), 3.39-3.58 (m, 3H), 3.96-4.02 (m, 1H), 4.03 (s, 3H),
4.54-4.65 (m, 1H), 5.23 (d, 1H,
J = 12.4 Hz), 5.39 (d, 1H, J = 12.4 Hz), 6.60 (s, 1H), 7.37 (d, 1H, J = 2.8
Hz), 7.49 (dd, 1H, J = 2.3, 9.2 Hz), 7.60-7.72 (m, 2H), 7.88 (d, 1H, J = 4.6
Hz), 7.96-8.04 (m, 2H), 8.48 (dd, 1H, J = 1.4, 6.4 Hz), 8.76 (d, 1H, J = 4.6
Hz).
【0092】
【化26】

【0093】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.18-1.34 (m, 1H), 1.51-1.75
(m, 2H), 1.90-2.01 (m, 1H), 2.36-2.51 (m, 2H), 2.52-2.63 (m, 1H), 2.76-2.90 (m,
1H), 3.16-3.25 (m, 1H), 3.67-4.78 (m, 1H), 4.45-4.62 (m, 2H), 4.93-5.05 (m,
2H), 5.62-5.76 (m, 1H), 5.89 (d, 1H, J = 13.8 Hz), 6.60 (d, 1H, J = 13.8 Hz),
7.42 (s, 1H), 7.51-7.69 (m, 3H), 7.71-7.79 (m, 1H), 7.83-7.92 (m, 2H),
8.04-8.11 (m, 1H), 8.12-8.25 (m, 3H), 8.58-8.71 (m, 2H), 8.74-8.86 (m, 3H),
8.98 (d, 1H, J = 4.6 Hz).
【0094】
【化27】

【0095】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.63-1.95 (m, 10H), 1.96-2.05
(m, 1H), 2.06-2.30 (m, 9H), 2.35-2.44 (m, 1H), 2.82-2.93 (m, 1H), 3.61-3.70 (m,
1H), 3.80-3.91 (m, 1H), 4.53-4.64 (m, 1H), 4.93 (d, 1H, J = 12.4 Hz), 4.97 (d,
1H, J = 5.5 Hz),
5.60-5.73 (m, 1H), 5.80 (d, 1H, J = 14.0 Hz), 6.41 (d, 1H, J = 14.0 Hz),
7.47-7.66 (m, 3H), 7.71-7.92 (m, 4H), 8.09-8.27 (m, 4H), 8.49 (d, 1H, J = 8.7
Hz), 8.56 (d, 1H, J = 8.7 Hz), 8.89 (s, 1H), 8.97 (d, 1H, J = 4.6 Hz).
【0096】
【化28】

【0097】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.04-1.16 (m, 21H), 1.35-1.46
(m, 1H), 1.70-1.81 (m, 1H), 1.99-2.04 (m, 1H), 2.24-2.37 (m, 1H), 2.51-2.61 (m,
1H), 2.83-2.91 (m, 1H), 3.08-3.18 (m, 1H), 3.45-3.54 (m, 1H), 3.58-3.66 (m,
1H), 4.34 (d, 1H, J = 12.0 Hz), 4.96-5.09 (m, 3H), 5.46-5.57 (m, 1H), 6.42 (d,
1H, J = 12.0 Hz), 6.64 (s, 1H), 7.29-7.35 (m, 2H), 7.42-7.51(m, 1H), 7.73-7.78
(m, 1H), 7.80
(d, 1H, J = 4.6 Hz), 8.02 (d, 1H, J = 9.2 Hz), 8.74 (d, 1H, J = 4.6 Hz).
【0098】
【化29】

【0099】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.46-1.58 (m, 1H), 1.81-1.92
(m, 1H), 2.02-2.09 (m, 1H), 2.24-2.40 (m, 2H), 2.63-2.73 (m, 1H), 3.29-3.39 (m,
1H), 3.49 (d, 1H,
J = 8.2 Hz), 3.82-3.89 (m, 1H), 4.01 (s, 3H), 4.31-4.40 (m, 1H), 4.69 (d, 1H,
J = 12.4 Hz), 5.01 (d, 1H, J = 10.6 Hz), 5.10 (d, 1H, J = 10.6 Hz), 5.32 (d,
1H, J = 12.4 Hz), 5.64-5.75 (m, 1H), 6.60 (s, 1H), 7.37-7.40 (m, 1H), 7.47-7.58
(m, 4H), 7.61-7.67 (m, 2H), 7.86 (d, 1H, J = 4.8 Hz), 8.00 (d, 1H, J = 9.2 Hz),
8.74 (d, 1H, J = 4.8 Hz).
【0100】
【化30】

【0101】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 0.71-0.93 (m, 1H), 1.24-1.38
(m, 1H), 1.56-1.69 (m, 3H), 2.50-2.59 (m, 1H), 3.03 (s, 3H), 3.10 (d, 1H, J =
11.2 Hz), 3.16 (s, 3H), 3.21 (s, 3H), 3.31-3.35(m, 1H), 3.56 (d, 2H, J = 11.2
Hz), 3.92-4.01 (m, 1H), 4.34 (d, 1H, J = 12.8 Hz), 4.44 (d, 1H, J = 13.8 Hz),
7.32-7.62 (m, 12H).
【0102】
(実施例4)
(不斉加水分解反応; 光学活性ケトンの製造)
2-プロピル-シクロヘキサノンの製造
実施例1と同様の方法で製造されたN-9アントラセニルメチル シンコニジニウム塩化物(6.1 mg、0.01 mmol、10 mol%)のクロロホルム/メシチレン(267
μL/133 μL)溶液に2-クロロエタノール(6.7 μL、0.10 mmol(1当量))と50wt%KOH水溶液(200 μL)を添加し、-40℃に冷却した。10分間攪拌した後、2-プロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル
2-クロロアセテート(21.6 mg、20.5、L、0.10 mmol(1当量))を基質として添加した。反応混合物は-40℃で12時間攪拌した。反応後の溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の光学活性ケトン(13.9mg、収率99%、84%
ee)を得た。
【0103】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 2.39-2.2.31 (m, 1 H),
2.31-2.20 (m, 2H), 2.12-1.92
(m, 2 H), 1.86-1.56 (m, 4 H), 1.42-1.08 (m, 4 H), 0.87 (t, J = 6.9 Hz, 3 H). 13C
NMR (100 MHz, CDCl3):δ= 213.7, 50.6, 42.0, 33.9, 31.7, 28.1, 24.9,
20.4, 14.3. Anal. Calcd for C9H16O: C, 77.09; H, 11.50.
Found: C, 77.01; H, 11.50.
[α]D22.5= + 33.5, (c 1.0, CHCl3)
【0104】
【化31】

【0105】
(実施例5)
(光学活性ケトンの製造)
4,4-ジメチル-2-プロピル-シクロヘキサノンの製造
4,4-ジメチル-2-プロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル 2-クロロアセテートを基質として用い、上記と同様の手順で、(+)-4,4-ジメチル-2-プロピル-シクロヘキサノン(99%、84%
ee、無色液体)を得た。
【0106】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 2.44 (td, J = 6.4, 14.2 Hz, 1 H), 2.36
(dt, J = 6.0, 6.0 Hz, 1 H),2.22 (dt, J = 3.2, 14.2 Hz, 1 H), 1.80-1.55 (m, 4
H), 1.34-1.22
(m, 3 H), 1.19 (s, 3 H), 1.06 (tq, 6.9,6.9 Hz, 1 H), 0.99 (s, 3 H), 0.87 (t, J
= 7.4 Hz, 3 H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3):δ= 214.1, 46.8,45.8, 40.2,
38.6, 31.6,
31.2, 30.9, 24.7, 20.3, 14.3. Anal. Calcd for C11H20O: C,
78.51; H, 11.98.Found: C, 78.24; H, 11.98.
[α]D25.9= + 26.6, (c 1.0, CHCl3)
【0107】
【化32】

【0108】
(実施例6)
(光学活性ケトンの製造)
2-プロピル-シクロヘプタノンの製造
2-プロピルシクロヘプト-1-エン-1-イル 2-クロロアセテートを基質として用い、上記と同様の手順で、(+)-2-プロピル-シクロヘプタノン(91%、90%
ee、無色液体)を得た。
【0109】
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ= 2.54-2.34 (m, 3 H), 1.89-1.76 (m, 4 H),
1.68-1.48 (m,2H), 1.40-1.17 (m, 6 H), 0.86 (t, J = 7.4 Hz, 3 H). 13C
NMR (100 MHz, CDCl3): δ=216.8, 52.3,42.7, 34.6, 31.3, 29.7, 28.5, 24.8, 20.5,
14.2. Anal. Calcd for C10H18O: C, 77.87; H, 11.76. Found:
C,78.01; H, 11.83.
[α]D25.3= + 49.7, (c 1.0, CHCl3)
【0110】
【化33】

【0111】
(実施例7)
(光学活性ケトンの製造)
2-ブチル-シクロヘプタノンの製造
2-ブチルシクロヘプト-1-エン-1-イル 2-クロロアセテートを基質として用い、上記と同様の手順で、(+)-2-ブチル-シクロヘプタノン(91%、90%
ee、無色液体)を得た。
【0112】
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ= 2.53-2.32 (m, 3 H), 1.90-1.77
(m, 4 H), 1.68-1.50 (m,2H), 1.38-1.14 (m, 8 H), 0.86 (t, J = 6.9 Hz, 3 H). 13C
NMR (100 MHz, CDCl3):δ=216.9, 52.5,42.7, 32.2, 31.3, 29.7, 29.5, 28.5, 24.8,
22.9, 14.1. Anal. Calcd
for C11H20O: C, 78.51; H, 11.98.Found: C, 78.44; H,
11.96.
[α]D25.3= + 49.7, (c 1.0, CHCl3)
【0113】
【化34】

【0114】
(実施例8)
(光学活性ケトンの製造)
(S)-(+)-2-エチル-シクロヘキサノンの製造
2-エチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル 2-クロロアセテートを基質として用い、上記と同様の手順で、(S)-(+)-2-エチル-シクロヘキサノン(98%
GC収率、74% ee)を得た。
【0115】
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ= 2.40-1.90 (m, 5 H), 1.90-1.54
(m, 4 H), 1.44-1.29 (m, 1 H), 1.29-1.15 (m, 1 H), 0.86 (t, J = 7.3 Hz, 3 H). 13C
NMR (400 MHz, CDCl3):δ= 213.6, 52.4, 42.1, 33.5, 28.1, 24.9, 22.5, 11.8.
Anal. Calcd for C8H14O: C, 76.14; H, 11.18. Found: C,
76.30; H, 11.21.
[α]D25.6= + 36.1, (c 0.5, CHCl3)
【0116】
【化35】

【0117】
(実施例9)
(光学活性ケトンの製造)
(R)-(+)-2-シクロヘキシル-シクロヘキサノンの製造
[1,1'-ビ(シクロヘキサン)]-1-エン-1-イル 2-クロロアセテートを基質として用い、上記と同様の手順で、(R)-(+)-2-シクロヘキシル-シクロヘキサノン
(96%、74% ee、無色液体)を得た。
【0118】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 2.39-2.29 (m, 1 H),
2.28-2.18 (m, 1 H), 2.11-2.01 (m, 1 H), 1.98-1.45 (m, 12 H), 1.33-1.18 (m, 2
H), 1.16-0.80 (m, 3 H). 13C NMR
(400 MHz, CDCl3):δ= 213.8, 56.6, 41.9, 36.1, 31.6, 29.42, 29.37,
28.0, 26.6, 26.5, 24.0. Anal. Calcd for C12H20O: C,
79.94; H, 11.18. Found: C, 79.78; H, 11.27.
[α]D24.8= + 46.1, (c 1.0, CHCl3)
【0119】
【化36】

【0120】
(実施例10)
(光学活性ケトンの製造)
(R)-2-ベンジル-シクロヘプタノンの製造
2-ベンジルシクロヘプト-1-エン-1-イル 2-クロロアセテートを基質として用い、上記と同様の手順で、(R)-(+)-2-ベンジル-シクロヘプタノン(99%、78%
ee、無色液体)を得た。
【0121】
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ = 7.29-7.22 (m, 2 H), 7.21-7.11
(m, 3 H), 3.06 (dd, J = 6.0, 13.8 Hz, 1 H), 2.86-2.75 (m, 1 H), 2.54 (dd, J =
8.7, 13.8 Hz, 2 H), 2.48-2.40 (m, 2H), 1.90-1.70 (m, 1 H), 1.68-1.54 (m, 1 H),
1.38-1.22 (m, 3 H). 13C
NMR (400 MHz, CDCl3):δ = 215. 7, 140.1, 129.2, 128.4, 126.1, 53.7,
43.3, 38.0,
30.4, 29.4, 28.7, 24.3. Anal. Calcd for C14H18O: C,
83.12; H, 8.97. Found: C, 82.87; H, 8.88.
[α]D26.7= + 54.1, (c 1.0, CHCl3)
【0122】
【化37】

【0123】

(実施例11)
(光学活性ケトンの製造)
(+)-イソプロピル-シクロヘプタノンの製造
2-イソプロピルシクロヘプト-1-エン-1-イル 2-クロロアセテートを基質として用い、上記と同様の手順で、(+)-イソプロピル-シクロヘプタノン(97%、90%
ee、無色液体)を得た。
【0124】
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ = 7.29-7.22 (m, 2 H),
7.21-7.11 (m, 3 H), 3.06 (dd,
J = 6.0, 13.8 Hz, 1 H), 2.86-2.75 (m, 1 H), 2.54 (dd, J = 8.7, 13.8 Hz, 2 H),
2.48-2.40 (m, 2H), 1.90-1.70 (m, 1 H), 1.68-1.54 (m, 1 H), 1.38-1.22 (m, 3 H). 13C
NMR (400 MHz, CDCl3):δ = 215. 7, 140.1, 129.2, 128.4, 126.1, 53.7,
43.3, 38.0, 30.4, 29.4, 28.7, 24.3. Anal. Calcd for C14H18O:
C, 83.12; H, 8.97. Found: C, 82.87; H, 8.88.
[α]D30.0= + 95.5, (c 1.0, CHCl3)
【0125】
【化38】

【0126】
(実施例12)
(光学活性ケトンの製造)
(R)-(+)-2-(4-メチルペンチル)シクロヘプタノンの製造
2-(4-メチルペンチル)シクロヘキサ-1-エン-1-イル 2-クロロアセテートを基質として用い、上記と同様の手順で、(R)-(+)-2-(4-メチルペンチル)シクロヘプタノン
(96%、84%
ee、無色液体)を得た。この光学活性ケトンはバイヤー・ビリガー酸化(例えば、非特許文献5参照)によりストレプトマイセス属(streptomyces)から得られる生物活性ラクトンに変換することが可能である。
【0127】
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ = 2.40-2.32 (m, 1 H), 2.32-2.18
(m, 2H), 2.13-2.04 (m, 1 H), 2.04-1.92 (m, 1 H), 1.88-1.79 (m, 1 H), 1.79-1.57
(m, 4 H),(dsep, J = 6.4, 6.4 Hz, 1 H) 1.42-1.31 (m, 1H), 1.31-1.08 (m, 5 H),
0.84 (d, J = 6.9 Hz, 6 H). 13C NMR (400 MHz, CDCl3):δ =
213.8, 50.9, 42.1, 39.1, 33.9, 29.7, 28.1, 27.9, 25.0, 24.9, 22.71, 22.66.
Anal. Calcd for C12H22O: C, 79.06; H, 12.16. Found: C,
79.03; H, 12.12.
[α]D24.4= + 20.1, (c 1.0, CHCl3)
【0128】
【化39】

【0129】
(実施例13)
(光学活性ケトンの製造)
上記実施例4において反応条件を、触媒10 mol%、2-クロロエタノール0.5当量、クロロホルム:メシチレン(=2:1)、50wt%水酸化カリウム水溶液(有機溶媒の1/2
体積量)−40℃として、2-プロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル 2-クロロアセテートを基質として用い、以下に示す本発明の複数の触媒で実施した。各触媒における収率(yield)と鏡像体過剰率(ee)の結果を示す。
【0130】
【化40】

【0131】
(実施例14)
(光学活性ケトンの製造)
上記実施例12において反応条件を、触媒10mol%、2-クロロエタノール1当量、クロロホルム:メシチレン(=2:1)、50wt%水酸化カリウム水溶液(有機溶媒の1/2体積量)−40℃、反応時間24時間として、以下に示す複数の基質([1,1'-ビ(シクロヘプト)]-1-エン-1-イル 2-クロロアセテート、2-o-トリフルオロベンジルシクロヘプト-1-エン-1-イル
2-クロロアセテート、2-o-クロロベンジルシクロヘプト-1-エン-1-イル 2-クロロアセテート、2-プロピルシクロペンタ-1-エン-1-イル 2-クロロアセテート、2-プロピルシクロオクタ-1-エン-1-イル
2-クロロアセテート)で光学活性ケトンを製造した。各基質における収率(yield)と鏡像体過剰率(ee)の結果を示す。
【0132】
【化41】

【0133】
(実施例15)
以下に示す本発明の複数の触媒を用い、実施例4と同様に、2-プロピルシクロヘキサ-1
-エン-1-イル 2-クロロアセテートを基質として、2-プロピル-シクロヘキサノンを製造した。
(触媒番号1〜22は、触媒10 mol%、1.5当量の水酸化カリウム水溶液、クロロホルム下の常温で反応させた。触媒番号27〜37は、触媒10 mol%、1当量の2−クロロエタノール水溶液、クロロホルム:50wt%水酸化カリウム水溶液(=2:1)、-40℃で反応させた。)各触媒における鏡像体過剰率(ee)の結果を示す。
【0134】
【化42】

【0135】
【化43】

【0136】
【化44】

【0137】
【表1】

【0138】
(実施例16)
(光学活性ケトンの製造)
上記実施例12において反応条件を、上記実施例14の触媒を用いて、触媒10mol%、塩基1.5当量、安定剤(0.3-1%EtOH)含有のクロロホルム(wako製)を用いて、常温で反応させ、以下の各基質に対して実施して光学活性ケトンを得た。各基質および反応条件における光学活性ケトンの収率(yield)と鏡像体過剰率(ee)の結果を示す。なお、クロロホルムに添加されているエタノールは、本反応の立体選択性に有意な効果をもたらしていると推察される。
【0139】
【表2】

【0140】
(実施例17)
(光学活性アルコールおよびエステルの製造(1))
上記で得られた触媒(1S,2S,4S,5R)-1-(アントラセン-9-イルメチル)-2-((R)-(2-(tert-ブチル)キノリン-4-イル) -(ヒドロキシ)メチル)-5-ビニルキヌクリジン-1-イウム
ブロミド(0.01mmol、10molの%)と1N 炭酸カリウム水溶液(200μL、0.2mmol(2当量))の混合物を、20℃で攪拌した。20分後、rac-2'-アセトキシ-[1,1'-ビナフタレン]-2-イル
ピバレイト (0.1mmol、1当量)を加え、該混合物を同温度で攪拌した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン:ジエチルエーテル=20:6.5:1)を実施し、(R)-2'-ヒドロキシ-[1,1'-ビナフタレン]-2-イル
ピバレイト(収率15%、56%ee)、(S)-2'-アセトキシ-[1,1'-ビナフタレン]-2-イル
ピバレイト(収率80%、13%ee)を生成した。
HPLC分析: CHIRALPAK AD-H(+)、ヘキサン/2-プロパノール=20/1 流速1.0mL/分、25℃, 回収基質: tmajor = 7.9 min, tminor = 17.4 min, 生成物: tmajor = 10.6 min, tminor = 16.5 min)生成物:
[α]D25.5 = + 35.1,(c 0.5, CHCl3), 回収基質: [α]D24.5 = -3.63, (c
1.0, CHCl3)
【0141】
回収基質:(S)-2'-アセトキシ-[1,1'-ビナフタレン]-2-イル ピバレイト
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 0.76 (s, 9H), 1.79 (s, 3H),
7.20-7.32 (m, 4H),
7.37-7.48 (m, 4H), 7.90 (d, 3H, J = 9.2 Hz), 7.92 (d, 1H, J = 9.2 Hz), 7.96 (d,
1H, J=9.2 Hz), 7.98 (d, 1H, J = 8.8 Hz); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3)
δ = 20.7, 26
.5 (3carbons), 38.8, 121.9, 122.0, 123.6, 123.7, 125.7, 125.8, 126.1, 126.2,
126.8, 128.0,128.1, 129.4, 129.5, 131.5, 131.6, 133.4, 133.5, 146.9, 147.0,
169.2, 176.6;elemental analysis calcd for C27H24O4:
C 78.62, H 5.86; found: C 78.60, H 5.86.
【0142】
【化45】

【0143】
生成物(R)-2'-ヒドロキシ-[1,1'-ビナフタレン]-2-イル ピバレイト
1H NMR (400 MHz,CDCl3) δ= 8.06 (d, J = 6.0 Hz, 1 H), 7.97 (d, J =
5.5 Hz, 1 H), 7.87 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.50(t, J =
5.5 Hz, 1H), 7.39-7.28 (m, 5H), 7.26-7.21 (m,1 H), 7.05 (d, J = 5.5 Hz, 1 H),
5.14 (s, 1 H), 0.78 (s, 9 H). 13C NMR (150 MHz,CDCl3) δ=
177.9, 151.8, 148.4, 133.7, 133.6, 132.3, 130.8, 130.4, 129.1, 128.4,128.0,
127.5, 126.7, 126.3, 125.7, 124.6, 123.6,
123.1, 121.9, 118.3, 114.3, 38.8,26.5(3 carbons). elemental analysis calcd for
C25H22O3: C, 81.06; H, 5.99; found: C, 81.11,
H,5.99.
【0144】
【化46】

【0145】
(実施例18)
上記実施例17と同様の手順で、以下に示す本発明の複数の触媒で(R)-2'-ヒドロキシ-[1,1'-ビナフタレン]-2-イル ピバレイトを製造した。各触媒、ならびに各触媒における収率と鏡像体過剰率(ee)の結果を示す。
【0146】
【化47】

【0147】
【表3】

上記一覧の触媒において、触媒1を用いた場合に比べて、選択性は触媒3を用いた場合は向上し、触媒8を用いた場合は低下した。このことから、選択性の観点から、電子供与性よりも電子求引性の置換基を持つ触媒のほう好ましく、特に触媒6が好ましい。
【0148】
(実施例19)
上記実施例17と同様の手順で、以下に示す触媒ならびに複数の基質で光学活性アルコールを製造した。触媒、ならびに各基質における収率と鏡像体過剰率(ee)の結果を示す。
【0149】
【化48】

【0150】
【表4】

【0151】
(実施例20)
(光学活性アルコールの製造(2))
光学活性アルコールの製造(1)と同様の手順で、以下に示す触媒で光学活性アルコールの製造を実施した。触媒、ならびに各基質における収率(yield)と鏡像体過剰率(ee)の結果を示す。
【0152】
【化49】

【0153】
【化50】

【0154】
【化51】

【0155】
【化52】

【0156】
(実施例21)
(光学活性ヒドロキシカルボン酸の製造)
光学活性アルコールの製造(1)と同様の手順で、以下に示す触媒で光学活性ヒドロキシカルボン酸の製造を実施した。4-メチル-2-オキセタノンを基質とし、触媒、ならびに収率(yield)と鏡像体過剰率(ee)の結果を示す。
【0157】
【化53】

【0158】
【化54】

【0159】
上記の反応条件については、−20℃から40℃で行うことが好ましく、より好ましくは、0℃以下であり、冷却コストの観点から、特に0℃が好ましい。また、塩基については、特に制限は無いが、例えば、1.5当量の水酸化カリウムを使用することができる。溶媒については、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、ベンゾニトリル、クロロホルム等の一般的な溶媒を使用することができるが、取扱い易さの観点から、このうちクロロホルムが好ましい。また、反応性・選択性の向上を図るために、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の種々のアルコール類を添加することもできる。
【0160】
(実施例22)
(光学活性N-ベンゾイルアミノ酸の製造)
光学活性アルコールの製造(1)と同様の手順で、以下に示す光学活性な四級アンモニウム塩を触媒として用い、以下反応により光学活性N−ベンゾイルアミノ酸の製造を実施した。触媒、ならびに各基質における収率(yield)と鏡像体過剰率(ee)の結果を示す。なお、生成物の鏡像体過剰率は、N−ベンゾイルカルボン酸をメチルエステル化した後のHPLC分析により決定した。
【0161】
【化55】

【0162】
【化56】

【0163】
なお、上記のアリールエステルおよびラクトンの不斉加水分解の場合では、光学的に純粋な生成物と基質とが同時に得られている。すなわち、これらの反応によって、速度論的光学分割を行うことができる(例えば、ラセミ体エステルを光学分割した場合には、光学活性なエステルおよびアルコールもしくはカルボン酸が得られる)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)で表される四級アンモニウム塩を触媒として、エステルを、常圧下において−60℃〜50℃の反応温度で、塩基性水溶液または金属水酸化物の存在下で、非水溶性溶媒下に反応させることを特徴とするエステルの不斉加水分解方法。
【化1】

(上記式(Ia)中、R1は、水素原子、酸素原子、低級アルキル基、または低級アルキル基で置換されていてもよいアリール基を表し、R2は、低級アルキル基、低級アシル基、トリフルオロメチル基、もしくはハロゲン基で置換されていてもよいアリール基、N−オキシ−ピリジル基、または低級アルキル基を表し、R3は、水素原子、トリアルキルシリル基で置換されていてもよいアルコキシ基、またはジアルキルホスホリル基もしくはジアリルホスホリル基で置換されていてもよい低級アルコキシ基を表し、R4は、水素原子、アルケニル基、低級アルキル基で置換されていてもよいアミド基、低級アルキル基もしくはトリフルオロメチル基もしくは低級アルコキシ基で置換されていてもよいアリール基もしくはアダマンチル基で置換されていてもよい低級アシル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基で置換されていてもよいチオアミド基、ジメチルアミノ基で置換されていてもよいホスフィンオキシド基、またはカルボキシレート基を表し、R5は、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アリールアルキニル基を表し、R1とR5は、一体となって相互に結合した環状構造であってもよく、X-は、ハロゲン基、ヒドロキシ基、フルオロリン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、またはハロゲン基で置換されていてもよいアルコキシドを表し、kは、1〜2の整数を表す。
【請求項2】
ハロゲン基で置換されていてもよい低級アルキルアルコールまたは非イオン性界面活性剤を添加して反応させることを特徴とする請求項1に記載のエステルの不斉加水分解方法。
【請求項3】
前記エステルが、一般式(IIa)で表される2位置換環状ケトンから誘導したエノールエステルであり、一般式(IIb)で表される光学活性ケトンを生成することを特徴とする請求項1に記載のエステルの不斉加水分解方法。
【化2】

(式(IIa)中、R6は、低級アルキル基、低級シクロアルキル基、またはハロゲン基もしくはトリフルオロメチル基で置換されていてもよいアリール基を表し、R7は、水素原子または低級アルキル基を表し、R8は、ハロゲン基で置換されていてもよい低級アルキル基、トリフルオロメチル基で置換されていてもよいアリール基、または低級アルコキシ
基で置換されていてもよいアリール基を表し、lは0〜3の整数を表す。)
【化3】

(式(IIb)中、R6、R7、およびlは、上記式(IIa)で定義したものと同じであり、*は不斉点を表す。)
【請求項4】
前記エステルが、一般式(IIIa)で表されるアリールエステルであり、一般式(IIIb)で表される光学活性アルコールを生成することを特徴とする請求項1に記載のエステルの不斉加水分解方法。
【化4】

(式(IIIa)中、R9は、低級アルキル基、ニトロ基で置換されていてもよいアリール基を表し、R10は、水素原子、ハロゲン基、またはアリール基を表し、R11は、低級アルキル基を表す。R12は、低級アルキル基、アダマンチル基で置換されていてもよい低級アシル基、低級アルキル基で置換されていてもよいホスホリル基、または低級アリール基で置換されていてもよいスルホニル基を表し、*は不斉点を表し、aは、0〜1の整数を表す。)
【化5】

(式(IIIb)中、R10、R11、R12、*およびaは、上記式(IIIa)で定義したものと同じである。)
【請求項5】
前記エステルが、一般式(IVa)で表されるアリールエステルであり、一般式(IVb)で表される光学活性アルコールを生成することを特徴とする請求項1に記載のエステルの不斉加水分解方法。
【化6】

(式(IVa)中、R13は、低級アシル基を表し、R14は、低級アルキル基を表す。)
【化7】

(式(IVb)中、R13およびR14は、上記式(IVa)で定義したものと同じであり、*は不斉点を表す。)
【請求項6】
前記エステルが、一般式(Va)で表されるラクトンであり、一般式(Vb)で表される光学活性ヒドロキシカルボン酸を生成することを特徴とする請求項1に記載のエステルの不斉加水分解方法。
【化8】

(式(Va)中、R15は、低級アルキル基を表し、*は不斉点を表し、rは、1〜3の整数を表す。)
【化9】

(式(Vb)中、R15、*、およびrは、上記式(Va)で定義したものと同じである。)
【請求項7】
前記エステルが、一般式(VIa)で表されるアズラクトンであり、一般式(VIb)で表される光学活性アミノ酸を生成することを特徴とする請求項1に記載のエステルの不斉加水分解方法。
【化10】

(式(VIa)中、R16は、低級アルキル基で置換されていてもよいアリール基を表し、R17は、低級アルキル基、または低級アルキル基で置換されていてもよいアリール基を表し、sおよびtは、s+t=0〜2を満たす0以上の整数を表し、*は、不斉点を表す。)
【化11】

(式(VIb)中、R16、R17、s、tおよび*は、上記式(VIa)で定義したものと同じである。)

【公開番号】特開2012−148983(P2012−148983A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6529(P2011−6529)
【出願日】平成23年1月16日(2011.1.16)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】