説明

エステルの製造

本発明は、化合物RCOOR(I)を、エステル交換触媒の存在下で、エステル化合物RCOOR(II)とアルコールROH(III)とのエステル交換反応により作製する方法であって、ここで、Rが、H又はC1−4アルキル又はCH=CR−であり;Rが、C1−4アルキルであり;Rが、少なくとも4個の炭素原子を有するアルキル、少なくとも5個の炭素原子を有するシクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール及びアミノアルキルからなる群より選択され;そしてRが、−H又は−C1−4アルキルであり、アルコールROH(IV)が、副産物として形成され、前記副産物(IV)が、添加溶剤の存在下での蒸留によって除去され、添加溶剤が、化合物(II)と副産物(IV)との共沸混合物の形成を抑制する化合物である方法に関する。この方法は、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなエステルの調製において有用でありうる。本発明は、アルコールとエステルとを分離する方法も提供する。本発明の更なる形態において、エステル交換法によるエステルの調製方法が提供され、ここでエステル交換触媒は同種である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル、特にエチレン性不飽和エステルの合成方法に関する。本方法は、エステル交換触媒の存在下でのアルコールとエステルとの新規エステル交換反応に関わる。本発明は、また、エステルとアルコールを分離する新たな方法に関する。
【0002】
エステルの生成は、多様な工業的方法において重要である。エチレン性不飽和エステルを、例えば、重合して多様な用途のためのポリマーを作製することができる。例えば、2−エチルヘキシルアクリレートをスチレンと共重合して感圧接着剤を作製することができる。長鎖アルコールのアクリレートエステルを、多様な物質のための界面活性材料及び被覆の形成に使用することができる。特に重要な部類のアクリレートには、酸付加塩の形成又は第四級化によってイオン性にすることができるアミノアルキルアクリレートが含まれる。適切なアミノアルキルアクリレートには、ジメチルアミノエチルアクリレート及びジメチルアミノエチルメタクリレートが含まれる。対応するイオン性アクリレート及びメタクリレートは、塩酸のような鉱酸の付加により、又は代替的には例えば塩化メチルを用いる第四級化により作製することができる。特に好ましいイオン性アクリレートには、アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリド及びメタアクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリドが含まれる。これらのエステルを両方ともアクリルアミドと共重合させて、工業的方法における固体と液体の分離、例えば排水の浄化又は製紙における凝集剤として適切な高分子量ポリマーを形成することができる。
【0003】
例えば低級アルキルエステルであることができるエステルと、エステル化されることが望ましい基を有するアルコールとのエステル交換によりエステルを生成すること、その結果として、所望のエステルとアルコール副産物をもたらすことが知られている。この種類の方法において、平衡を、生成物形成に好ましく、したがって反応が前進されるように誘導するために、一般に、反応媒質から副産物アルコールを除去する必要がある。副産物アルコール(IV)は、出発材料エステル化合物(II)と共沸混合物を形成する傾向がある。したがって、副産物アルコール(IV)を除去すると、出発エステル化合物(II)も反応から除去される傾向がある。
【0004】
WO2004/063140において、方法は、メチル(メタ)アクリレートと高沸点アルコールとの連続的触媒エステル交換による、イソブチルメタクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレートの生成を記載する。この方法において、テトライソブチルチタネートを触媒として使用し、費用を低減するためにこの触媒を繰り返し再利用している。副産物アルコールを、メチル(メタ)アクリレートとの共沸混合物として留去する。
【0005】
副産物アルコール(IV)を伴う出発エステル(II)のそのような除去は、変換率、収率及び処理時間に関して反応の効率性を阻害する傾向がある。副産物アルコールの除去を助けるために、8までの炭素鎖長の炭化水素の使用が知られている。
【0006】
例えば、US5763644は、重合阻害系を使用するアクリレートとアルキルアクリレートエステルとのエステル交換合成を記載する。この方法は、塩基性触媒を用い、5〜8個の炭素原子の飽和炭化水素によるか又はメタノールとのメチルメタクリレート共沸混合物として、副産物アルコールを除去することによって促進される。実際には、飽和炭化水素は、メタノール及びメチルメタクリレートの両方と共沸混合物を形成するだろう。
【0007】
JP01299263は、少なくとも1つのスズ化合物をエステル交換触媒として使用するアルキル(メタ)アクリレートとジアルキルアミノアルキルアルコールとの反応による、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの製造のバッチ処理を明らかにする。実施例において、ジメチルアミノエチルアクリレートを、エステル交換触媒としてジ−n−ブチルスズビアセチルアセトネート及び添加溶剤としてn−ヘキサンを使用して、メチルアクリレート及びジメチルアミノエタノールから合成する。メチルアクリレート、メタノール及びヘキサンを、蒸留によって最初に除去する。メチルアクリレート、次にジメチルアミノエタノールを、環流カラムによりバッチ式に蒸留する。ジメチルアミノエチルアクリレートの変換率93.5%が90.4%の収率で報告されている。
【0008】
JP7238058(Daicel Chem)は、テトラヒドロベンジルアルコールとメチル(メタ)アクリレートとのエステル交換反応を使用する、テトラヒドロベンジル(メタ)アクリレートの製造を記載する。この方法は、添加溶剤の存在下で、方程式:T1<T2を満たす温度T1で共沸混合物を有するメタノールによって実施され、式中、T1はメタノールと添加溶剤との共沸温度であり、そしてT2はメタノールとメチル(メタ)アクリレートとの共沸温度である。n−ヘキサン又はシクロヘキサンのような炭化水素が添加溶剤として提案されている。
【0009】
US3784566(Texaco)は、エステル化触媒及び添加溶剤、又はベンゼンのような共沸混合物形成剤の存在下でのメチルメタクリレートとジアルキルアミノエチルエタノールとのエステル交換に言及し、得られた共沸混合物は、反応領域から頭上除去される。
【0010】
US3887609(Deutsche Texaco AG)は、添加溶剤の存在下で3個以上の炭素原子のメチルアクリレート又はメタクリレートアルカノールのエステル交換による、高級アルキルアクリレート及びメタクリレートの生成方法を記載する。メタノールのための添加溶剤は、シクロヘキサン、シクロペンタン、ヘキサン、ベンゼン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン及びジメチルシクロペンタンのうちのいずれかであることができる。
【0011】
ヘキサンのような炭化水素の使用は、低沸点共沸混合物の形成によって、メタノールのような副産物アルコールの除去を助ける場合があるが、炭化水素は、アルコールとエステルの両方と共沸混合物を形成し、加えて、アルコールは、依然として、出発材料エステルと共沸混合物を形成するので、出発材料エステルが除去される傾向がある。そのため、アルコールからエステルを除去する必要がある。炭化水素を使用するそのような方法において、反応から蒸留された共沸混合物を、2相に分離することができ、最初の相は炭化水素を含有し、出発材料エステルが豊富であり、他方の相は、アルコールが豊富である。このエステルが豊富な最初の相を、反応に再利用することができる。しかし、特定の量のエステルが依然としてこの方法において失われることがある。
【0012】
エステルとアルコールの分離は既知である。GB1166928は、添加溶剤を使用するメタノールと低級脂肪族エステルの混合物を分離するそのような方法の一つを記載する。この方法は、少なくとも1つの飽和C〜C炭化水素、好ましくは5〜7個の炭素原子の炭化水素の存在下での共沸蒸留を伴う。この方法は、蒸留カラムから発生する蒸気の少なくとも一部を凝縮し、次に冷却中でのデカンテーションにより縮合留出物の少なくとも一部を2つの別個の液相に分離することを伴う。メタノールが豊富な相の一部を環流して蒸留カラムに入れ、エステルと有機物質を蒸留カラムの下部から水との混合物として抜き取る。構成成分を分離するために混合物をデカンテーションに付し、蒸留によって上部の有機層から水及びメタノールを完全に除去し、次に残留液体を蒸留して、有機物質からエステルを分離する。しかし、炭化水素はメタノールとエステルの両方と共沸混合物を形成するので、そのような念入りな方法であっても、エステルの満足できる分離を達成することは依然として困難である。
【0013】
WO00/18720(GEC)は、反応蒸留及び添加溶剤を使用した芳香族アルコールとの反応により炭酸ジアリールエステルを生成する、炭酸ジアルキルのエステル交換を記載する。添加溶剤は、炭酸ジアルキル又はアルキルアルコールと共沸混合物を形成せず、かつ炭酸ジアルキル又はアルキルアルコールのいずれよりも高い温度で沸騰する化合物の群から選択される。あらゆる適切なエステル交換触媒を使用することができる。好ましい添加溶剤は供給アルコールである。副産物アルコールは留出物として除去される。
【0014】
この方法は、カルボン酸エステルではなく炭酸エステルの製造方法を教示する。好ましい実施態様において、反応体アルコールを添加溶剤として作用する方法にとって、アルコール性添加溶剤はもしそれがなければ望ましくない副反応を生じることが特異的である。
【0015】
エステルの合成において出発材料エステルから副産物アルコールを分離することが困難であることを考慮して、反応において副産物アルコールの形成を避ける代替的な方法が開発された。EP118639は、金属アルコラートを反応中間体として使用する、アクリレート又はメタクリレートエステルの合成を記載する。反応中間体金属アルコラートは、低級アルキル金属アルコラート、例えばテトラメトキシチタンと、所望の基を有するアルコールとの反応により生じる。次に反応中間体金属アルコラートを、低級アルキルアクリレート又はメタクリレート、例えばメチルメタクリレートと反応させる。交換反応が起こり、所望のアクリレート又はメタクリレートエステルが生成され、低級アルキル金属アルコラートが副産物として生じる。そのような方法は、所望のエステルの効率的な生成を提供する。
【0016】
出発エステルと出発アルコールの直接的なエステル交換によるエステルの合成を可能にし、生成物への改善された変換を提供するより効果的な方法を見出すことが望ましいだろう。副産物アルコールを、添加溶剤と副産物アルコールとの共沸混合物の分離に伴う追加的な処理及び費用なしに、実質的に純粋な形態で蒸留することによって除去することができる方法を見出すことも望ましいだろう。このことを生産率の増加と同時に達成することが特に有益であるだろう。
【0017】
本発明によると、化合物RCOOR(I)を、エステル交換触媒の存在下で、エステル化合物RCOOR(II)とアルコールROH(III)とのエステル交換反応により作製する方法であって、ここで、Rが、H又はC1−4アルキル又はCH=CR−であり;Rが、C1−4アルキルであり;Rが、少なくとも4個の炭素原子を有するアルキル、少なくとも5個の炭素原子を有するシクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール及びアミノアルキルからなる群より選択され;そしてRが、−H又は−C1−4アルキルであり、
アルコールROH(IV)が、副産物として形成され、前記副産物(IV)が、添加溶剤の存在下での蒸留によって除去され、添加溶剤が、化合物(II)と副産物(IV)との共沸混合物の形成を抑制する化合物である
方法が提供される。
【0018】
この方法は、都合の良い任意の方法によって実施することができる。例えば、反応を、反応容器の中で起こすことができ、副産物アルコールを、蒸留カラムで蒸留により除去することができる。しかし、好ましくは反応は、反応蒸留によって実施するべきである。この種類の方法において、エステル交換反応の全体を蒸留カラムにおいて実施することができる。
【0019】
本発明の好ましい形態において、エステル交換反応は、添加溶剤の存在下で実施され、副産物アルコール(IV)は、蒸留により留出物として反応から除去される実質的に唯一の化合物である。この方法において、副産物アルコールの分離をエステル交換反応の実施と同時に達成することができる。
【0020】
本発明の代替的形態において、副産物アルコール(IV)及び出発材料エステル化合物(II)は、留出混合物として蒸留により一緒に除去される。混合物は、例えば、アルコールとエステルとの共沸混合物であることができる。次に添加溶剤を留出混合物に導入することができ、このことは留出混合物において共沸混合物の形成を抑制する。次に副産物アルコール(IV)を、エステル化合物から、例えば更なる蒸留によって除去することができる。
【0021】
添加溶剤は、副産物アルコール(IV)の揮発性を増加するか又はエステル化合物(II)の揮発性を減少する物質であることができる。
【0022】
望ましくは、添加溶剤は、345Kで測定したときに2.5を超える無限希釈でエステル化合物(II)と副産物アルコール(IV)との間に分離係数をもたらす物質である。分離係数は、アルコールとエステルの比揮発度の測度である。数値が高いほど、エステル対するアルコールの揮発性が大きい。分離係数は、αinf=γi./γ2.として定義することができ、ここでαinfは、無限希釈での分離係数である。Pは、成分1(副産物アルコール(IV))の飽和蒸気圧であり、Pは、成分2(エステル化合物(II))の飽和蒸気圧であり、γは、成分1の無限希釈での活量係数である。γは、成分2の無限希釈での活量係数である。活量係数及び飽和蒸気圧の測定方法は、出版物Schiller, M.; Gmehling, J. Measurement of Activity Coefficients at Infinite Dilution Using Gas-Liquid Chromatography. 4. Results for Alkylene Glycol Dialkyl Ethers as Stationary Phases. J. Chem. Eng. Data, 1992, Vol. 37, Issue 4, 503-508に従って決定した。
【0023】
好ましくは、分離係数は5を超える。数値が高いほどエステルとアルコールの分離の機会が大きくなるので、最大分離係数は存在しない。分離係数は、100の高さになることができるが、一般に50まで、多くの場合には5〜20の範囲内である。無限希釈でのメチルアクリレートとメタノールの比揮発度の比率に基づいたジベンジルエーテルの分離係数は、345Kで5.366である。ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びトリプロピレングリコールジメチルエーテルを含む他の化合物は、すべて34k5Kでそれぞれ4.18、5.05、3.68、3.10及び2.61の分離係数を有する。
【0024】
一般に、添加溶剤は、アルコール(IV)よりも少なくとも10℃高い沸騰温度を有する液体であるべきである。沸騰温度の差は、一般にこれよりも高く、例えば少なくとも20℃であり、60℃又は70℃ほど又はそれ以上であることができる。添加溶剤により追加的な共沸混合物が導入される場合、通常、副産物アルコールとのものだけであり、これは、最も望ましくは異相である。このことは、理想的には添加溶剤があらゆる化合物と共沸混合物を形成しないことを意味する。添加溶剤は、共沸混合物が異相であれば、副産物アルコールと共沸混合物を形成する場合に使用することができる。通常、副産物アルコール以外の化合物と共沸混合物を形成する場合、添加溶剤として使用するには適切ではないだろう。最も望ましくは、追加の共沸混合物が何も導入されないだろう。
【0025】
典型的には、添加溶剤は、エーテル、少なくとも11個の炭素原子のアルカン、芳香族及び塩素化アルカンからなる群より選択される化合物であることができる。通常、本発明に使用されるアルカンは、例えば、8〜20個又はそれ以上の炭素原子を有することができ、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、2−メチルデカンのような分岐鎖アルカン、及び1,4−ジエチルシクロヘキサンのような環状アルカンなどのような化合物を含むことができる。本発明に有用な芳香族には、n−ブチルベンゼン、n−ペンチルベンゼンのような少なくとも10個の炭素原子を有するアルキル置換ベンゼン、及び4−ブロモトルエンのような7個を超える炭素原子を有する塩素化又は臭素化芳香族のようなハロゲン化芳香族が含まれる。塩素化アルカンには、1−クロロオクタン及び1,6−ジクロロヘキサンのような化合物が含まれる。好ましい添加溶剤には、エーテル、特に芳香族及びグリコールエーテルが含まれる。これらの中で特に好ましいものは、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びトリプロピレングリコールジメチルエーテルからなる群より選択される化合物である。
【0026】
あらゆる従来のエステル交換触媒を使用して本発明の方法を実施することが可能であり、典型的な触媒は、従来技術において、例えば上記の文書において考察されている。適切なエステル交換触媒は、一般に金属化合物である。好ましい触媒には、スズ塩、チタン塩、亜鉛塩、ランタン塩、サマリウム塩及びネオジム塩からなる群より選択される化合物が含まれる。触媒は、反応媒質の全体に容易に分布できることを与える固体であってもよい。適切には、触媒は粒状であることができ、望ましくは、比較的高い表面積を示す。効果的な収量を、固体触媒を用いるそのような異種触媒系により達成することができる。
【0027】
適切なリガンドにより上記の金属触媒化合物の1つ以上に基づく化合物を形成することによって、可溶性の触媒を調製することが可能である。好ましくは、リガンドを形成する化合物には、少なくとも2つのアミノ基を有するアミノアルカン、例えばN,N,N′−トリメチルエチレンジアミン又はN,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミンが含まれる。
【0028】
本発明に使用するのに特に効果的な触媒には、二塩化ジブチルスズ、酸化ジブチルスズ、二酢酸ジブチルスズ、臭化ジブチルスズ、四塩化スズ、トリフルオロメタンスルホン酸スズ、ビスアセト酢酸スズ、チタン酸テトライソプロピル及びテトラジメチルアミノエチルチタネートからなる群より選択される金属化合物が含まれることが見出された。
【0029】
本発明の更なる態様において、触媒が反応媒質と同種である場合、エステル生成物への改善された変換及び処理時間を達成できることが見出された。触媒は、反応媒質において可溶性であり、したがってそれに溶解することができるか、又は反応媒質と混和性であることができる。好ましくは、触媒は液体である。特に好ましいエステル交換触媒は、二酢酸ジブチルスズ、二アクリル酸ジブチルスズ、及びトリメチルエチレンジアミン又はペンタメチルジエチレントリアミンから選択されるリガンドにより可溶性になる金属塩からなる群より選択される。
【0030】
反応中に望ましくない重合を防ぐために少なくとも1つの反応体及び/又は生成物がエチレン性不飽和化合物である場合、反応媒質に重合阻害剤を含めることが望ましいこともありうる。あらゆる従来の重合阻害剤がこの目的のために適切でありうる。特に適切な重合阻害剤にはフェノチアジンが含まれる。不要な重合を防ぐことに加えて、多くの場合に空気の不在下で反応を実施することが必要であり、したがって実質的に酸素を含まない媒質で実施されるだろう。
【0031】
方法の好ましい形態において、エステル交換反応はカラムで実施される。添加溶剤及び触媒をカラムの上端部に、好ましくはできる限り最上部の近くに供給する。添加溶剤及び触媒を供給混合物に組み合わせることができるか、又は代替的にはカラムの上端部に別々に供給することができる。次に添加溶剤及び触媒は、カラムの全体にわたって分布するようにカラムを下って移動することができる。出発材料エステル化合物(II)及び出発材料アルコール(III)を蒸留カラムに供給する。アルコール(III)及びエステル(II)は、蒸留カラムの任意の適切な地点で供給される。しかし一般に、多くの場合、アルコール(III)を蒸留カラムの中頃から上部領域のあたりで供給することが望ましい。このことは、例えば、カラムの最上部から二分の一と四分の一の間、例えば、最上部からおよそ三分の一にある蒸留トレーによって可能である。典型的には、特に、エステルが高揮発性を示し、したがってエステルがカラムの中を上方に移動する傾向がある場合、エステルは、蒸留カラムの下端部に向かって供給されるべきである。典型的には、エステル(II)は、カラムの下半分にある、好ましくは最上部からおよそ三分の二又はそれ以下にある蒸留トレーに対してカラムの中に供給されるべきである。生成物エステル化合物(I)及び副産物アルコール(IV)が蒸留カラム中に形成され、そこでカラムから副産物アルコール(IV)が留出物として蒸発及び除去される。蒸発カラムは、反応中には環流下に維持されるべきであり、減圧又は正圧下であることもできる。
【0032】
典型的には、触媒と添加溶剤の混合物を、蒸留カラムの上端部に、触媒は1時間あたり5〜80(例えば、5〜40)キログラムの速度及び添加溶剤は1時間あたり150〜1500(例えば、150〜700)キログラムの速度で供給することができる。反応を減圧下に維持することが常に必要であるとは限らないが、典型的には、蒸留カラムは環流下にあり、0.4〜3.0バールの圧力で操作される。反応媒質の環流温度は、構成成分及び圧力に応じて決まるだろう。アルコール(III)は、理想的には、蒸留カラムの最上部からほぼ三分の一又はそれ以上にある蒸留トレーに供給される。アルコール(III)の適切な供給速度は、1時間あたり75〜125キログラム、例えば1時間あたりおよそ100キログラムであるだろう。エステル(II)は、好ましくは、蒸留カラムの最上部からほぼ三分の二又はそれ以下で蒸留カラムに供給される。エステル(II)の適切な供給速度は、例えば、1時間あたり100〜250又は350キログラムであるだろう。適切には、方法は、エステル(II)及びアルコール(III)からエステル化合物(I)への変換を達成するために蒸留カラムの中で十分な滞留時間を持って操作されるべきであり、望ましくは95重量%を超えるべきである。滞留時間は、通常少なくとも2分間、多くの場合は少なくとも10分間であり、3又は4時間ほど又はそれ以上であることができる。典型的には、滞留時間は、5分間から1時間であることができる。これは、15分間から1時間であることができる。幾つかの場合において、代替的な範囲は、8〜45分間、例えば30〜45分間であることができる。
【0033】
添加溶剤は、出発材料エステル(II)の揮発性を、副産物アルコール(IV)に対して対応する影響を与えることなく低減することができるか、又は代替的には、副産物アルコール(IV)の揮発性を、出発材料エステル(II)に対して対応する影響を及ぼすことなく増加するか、又は更に代替的な形態において、副産物アルコール(IV)の揮発性を増加し、出発材料エステル(II)の揮発性を低減することが見出された。典型的には、本発明によると、蒸留カラムからの留出物は、出発材料エステル(II)のない又は非常に低い濃度を有する副産物アルコール(IV)である。一般にエステル(II)の濃度は、総留出物の3重量%未満であり、典型的には0.5〜3%の範囲であることができる。
【0034】
本発明のより好ましい形態において、エステル(II)は、化学量論的過剰量で使用されることが望ましい。このことは、実質的に全ての出発材料アルコール(III)が反応で使い果たされることを確実にする。しかし、このより好ましい形態において、エステル(II)、また好ましくはアルコール(III)も少なくとも一部を回収することが望ましい。したがって、生成物エステル(I)、未反応エステル化合物(II)、必要であれば任意の未反応アルコール(III)、添加溶剤及び触媒を、第2蒸留カラムに、又は任意の他の都合の良い分離手段に移動することができる。この第2蒸留カラムにおいて、未反応エステル(II)及び存在する場合はアルコール(III)を蒸発及び除去する。次に、未反応エステル(II)及びあらゆる未反応アルコール(III)を回収し、エステル交換処理に再び使用することができる。例えば、回収されたエステル(II)を第1蒸留カラムに戻すことができ、そこでエステル交換反応が起こる。例えば、エステル(II)供給と合わせて蒸留カラムに入れることができる。
【0035】
一般に、再使用のために添加溶剤及び触媒を回収することが多くの場合に望ましいだろう。いずれにしても、生成物エステル(I)を、触媒及び添加溶剤から分離する必要があるだろう。適切な分離方法を用いることができるが、一般的にこれは蒸留によって達成される。更に好ましい方法において、生成物エステル(I)、添加溶剤及び触媒を、第2蒸留カラムから第3蒸留カラムへ移動し、そこで生成物エステル(I)を添加溶剤及び触媒から分離する。これは、一般に、生成物エステル(I)を蒸発させ、カラムの最上部から除去し、回収し、次に添加溶剤及び触媒をカラムの底から回収することによって達成される。次に、添加溶剤及び触媒を、望ましくは第1蒸留カラムに戻すことができ、そこでエステル交換反応が起こる。
【0036】
さらにより好ましい代替案において、反応蒸留カラムからの生成物エステル(I)、未反応エステル化合物(II)及び未反応アルコール(III)を、最初に添加溶剤及び触媒から蒸発により分離し、これは減圧下であることができる。触媒及び添加溶剤を第1蒸留カラムで再利用することができる。次に生成物エステル(I)を、例えば第2蒸留カラムにおいて、未反応エステル化合物(II)及び未反応アルコール(III)から分離することができる。次に、回収されたエステル化合物(II)及びアルコール(III)を第1蒸留カラムで再利用することができる。
【0037】
エステル交換反応は、バッチ処理であることができるが、好ましくは連続処理である。したがって、好ましくは、成分の出発材料エステル(II)及び出発材料アルコール(III)が連続的に反応に、例えば蒸留カラムに供給され、副産物アルコール(IV)が連続的に除去され、そしてエステル化合物(II)、添加溶剤及び触媒が、反応に連続的に戻されるように、反応は連続的である。
【0038】
本発明の方法を使用して、出発材料エステル及びアルコールからあらゆる適切なエステルを調製することができる。好ましくは、生成物エステルは、Rが、アミノアルキル基、より好ましくはアルキルアミノアルキル基、特にジメチルアミノエチルである化合物である。したがって、本発明の特に好ましい生成物は、ジメチルアミノエチルアクリレート及びジメチルアミノエチルメタクリレートである。したがって、両方の場合において、出発材料アルコール(III)は、ジメチルアミノエタノールであり、出発材料エステル(II)は、適切にはアクリレート又はメタクリレートエステル、例えば、メチルアクリレート又はメチルメタクリレートであるだろう。
【0039】
別の好ましい形態において、出発材料エステル(II)及び副産物アルコール(IV)のRは、低級アルキル基、例えばC1−4アルキル、特にメチル基である。したがって、好ましくは出発材料エステル(II)は、適切な酸のメチルエステル、例えばメチルアクリレート又はメチルメタクリレートであり、副産物アルコールはメタノールであるだろう。
【0040】
本発明の代替的形態において、反応は非連続的である。この形態において、副産物アルコール(IV)を除去することができ、エステル化合物(II)、添加溶剤及び触媒をバッチ蒸留し、次に反応に戻すことができる。
【0041】
本発明を操作するのに最も好ましい形態は、生成物エステル(I)としてのジメチルアミノメチルアクリレートの連続的製造に関する。この方法は、好ましくは出発アルコール(III)としてのジメチルアミノエタノールと、出発材料エステルとしてのメチルアクリレート(II)とのエステル交換により、同種触媒を使用して、反応蒸留カラムで実施されるだろう。触媒は最も好ましくは二酢酸ジブチルスズである。好ましい添加溶剤は、ジベンジルエーテルであり、その使用は、メチルアクリレートとメタノールとで形成される共沸混合物の分離をもたらし、反応体の高い変換を達成する。反応は、好ましくは重合阻害剤、特にフェノチアジンの存在下で実施される。好ましくは、反応は空気の不在下で実施される。
【0042】
この方法の特に好ましい形態において、供給は、1時間あたり5〜40kg、多くの場合、1時間あたり5〜30kg、特に1時間あたり25〜28kgの触媒と、1時間あたり300〜1200kgの添加溶剤の混合物を含む。典型的には、これは、1時間あたり550kgのように1時間あたり300〜600kgであることができるが、多くの場合、これは更に高く、例えば1時間あたり700〜1200kg、特に1時間あたり1150kgであることが好ましい。これは、蒸留カラムの上端部又は最上部に供給され、そこで環流され、0.6〜2.0バールで操作される。1時間あたり75〜125キログラム、特に1時間あたりおよそ100キログラムのジメチルアミノエタノール(III)が、蒸留カラムの最上部からほぼ二分の一と四分の三の間に、特におよそ三分の一にある蒸留トレーに1時間あたり120〜300キログラムで供給される。典型的には、これは、1時間あたり160kgのように1時間あたり120〜200kgであることができるが、多くの場合、これは更に高く、例えば1時間あたり120〜300kg、特に1時間あたりおよそ250kgであることが好ましい。メチルアクリレート(II)を、蒸留カラムの底から二分の一、特に蒸留カラムの最上部からおよそ十分の九で蒸留カラムに供給する。
【0043】
カラムは、99%を超えてジメチルアミノエチルアクリレートを生成する反応体の変換を達成するために、150分までの、特に8〜90分、例えば30〜90分のカラム中での十分な滞留時間で操作される。添加溶剤は、メタノールの分離を改善し、同時に、高い反応率を促進し、メチルアクリレートとメタノールの蒸留による分離を可能にすることが見出され、蒸留カラムの最上部からの留出物は、低濃度の、例えば1.5重量%未満、特に1.1重量%以下のメチルアクリレートを有するメタノールである。
【0044】
本発明の更なる態様において、添加溶剤をエステル化合物RCOOR(II)とアルコールROH(IV)の混合物に導入し、混合物を蒸留条件に付すことによる、前記混合物から蒸留により前記アルコール(IV)を除去する方法であって、Rが、H又はC1−4アルキル又はCH=CR−であり;Rが、C1−4アルキルであり;Rが、−H又は−C1−4アルキルであり、そして添加溶剤が、エーテル、少なくとも11個の炭素原子のアルカン、芳香族及び塩素化アルカンからなる群より選択される方法が提供される。
【0045】
添加溶剤は、副産物アルコール(IV)の揮発性を増加するか又はエステル化合物(II)の揮発性を減少する物質であることができる。
【0046】
望ましくは、添加溶剤は、2.5を超えるか又は(0.4)未満の無限希釈でエステル化合物(II)と副産物アルコール(IV)との間に分離係数をもたらす物質である。分離係数は、アルコールとエステルの比揮発度の測度である。数値が高いほどアルコールの揮発性が大きい。したがって、本発明のこの態様において、アルコールを留去できるように、エステルに対してアルコールの揮発性を増加する化合物、あるいはエステルを留去できるように、エステルに対してアルコールの揮発性を減少する化合物を提供することが望ましい。
【0047】
本方法は、適切な蒸留工程においてアルコールとエステルの都合の良い分離を可能にする。添加溶剤は、本発明の第1の態様に関して確認されている化合物のいずれかあることができる。好ましくは、添加溶剤は、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びトリプロピレングリコールジメチルエーテルからなる群より選択される化合物である。
【0048】
本発明のこの第2の態様において、エステルとアルコールの分離は、本発明の第1の態様に関して実施されたエステル交換法であることができる。したがって、分離は、エステル交換が生じる蒸留カラムで起こるか、又は代替的にはエステル及びアルコールをエステル交換蒸留カラムで除去し、更なる蒸留カラムに移動し、次にそこでエステルとアルコールを添加溶剤の使用によって分離することができる。最も好ましくは、添加溶剤はジベンジルエーテルであり、エステル及びアルコールは、それぞれメチルアクリレート及びメタノールである。
【0049】
本発明の更なる態様において、化合物RCOOR(I)を、エステル交換触媒の存在下、反応媒質中で、エステル化合物RCOOR(II)とアルコールROH(III)とのエステル交換反応により作製する方法であって、ここで、Rが、H又はC1−4アルキル又はCH=CR−であり;Rが、C1−4アルキルであり;Rが、少なくとも4個の炭素原子を有するアルキル、少なくとも5個の炭素原子を有するシクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール及びアミノアルキルからなる群より選択され;そしてRが、−H又は−C1−4アルキルであり、アルコールROH(IV)が副産物として形成され、触媒が反応媒質と同種である方法が提供される。
【0050】
本発明のこの態様において、触媒は反応媒質に溶解すること、又は反応媒質に混和性であることが望ましい。好ましくは、エステル交換触媒は液体触媒である。より好ましくは、触媒は液体であり、二酢酸ジブチルスズ又は二アクリル酸ジブチルスズのいずれかである。あるいは、触媒は、本発明の第1の態様に関して示されているように、リガンドの使用によって可溶性になった金属塩であることができる。適切には、触媒は、少なくとも2つのアミノ基を有するアミノアルカン、例えばN,N,N′−トリメチルエチレンジアミン又はN,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミンを含有するリガンドを有する金属塩であることができる。
【0051】
以下の実施例は、本発明の全範囲どのようにも制限することを意図しないで本発明を説明する。
【0052】
実施例
ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)の調製
実施例A
1000mlのホウケイ酸塩撹拌槽反応器(CSTR)に、DMAE(ジメチルアミノエタノール)178g及びDBE(ジベンジルエーテル)198.2を投入した。試験処理の全体を通して不活性雰囲気が存在することを確実にするため、少量の窒素パージを常にフラスコの中に通した。
【0053】
所望の操作温度の110℃に加熱した後、抜取試料(t=0分)を取り、直ちに二酢酸ジブチルスズ触媒35gを、カニューレを介して加えた。次に344g/時間でメチルアクリレート(MA)の供給を開始した。メチルアクリレートを、液体として、ステンレススチールカニューレを介してCSTRに処理流体の水面下にポンプで送り、カニューレの中で気化し、処理液の中に蒸気として入れた。反応中に形成された軽量材料(メタノール、並びにDMAE及びDMAEAを有するもの)を冷却器を介してフラスコの中に収集した。バルクオーバーヘッド(bulk overhead)及び「抜取」ポット含有物試料を、反応の全体を通して設定した間隔で取った。全ての試料を室温で停止させ、GCで分析した。供給を120分後に停止した。この時点でのDMAEの変換は94.8%であった。
【0054】
実施例B
25kg/時間の触媒及び550kg/時間の添加溶剤の混合物を含む連続供給を、蒸留カラムの最上部に供給し、そこで環流させ、1.4〜1.6バールで操作した。100kg/時間のアルコール(III)を、蒸留カラムの最上部からほぼ1/3離れている蒸留トレーに供給し、160kg/時間のアクリレート(II)を、蒸留カラムの最上部からほぼ9/10離れている蒸留トレーに供給した。カラムを、カラム中の滞留時間40分で操作して、アルコール(III)から生成物(I)への99%を超える変換を達成した。添加溶剤は、(II)の揮発性を、(IV)に対して対応する影響を与えることなく低減し、これは、高い反応率を促進し、(II)及び(IV)の蒸留による分離を可能にする二重の目的を有した。蒸留カラムの最上部からの留出物は、低濃度のMA(1.1%)を有するメタノールであった。反応蒸留カラムの底流を更に蒸留して、構成成分を分離した。過剰量のMA及び少量のDMAEを最初に蒸留し、反応蒸留カラムで再利用した。生成物DMAEAを、蒸留により添加溶剤及び触媒から分離し、これらも反応蒸留カラムで再利用した。
【0055】
実施例C
25kg/時間の触媒及び1000kg/時間の添加溶剤の混合物を含む連続供給を、蒸留カラムの最上部に供給し、そこで環流させ、大気圧で操作した。100kg/時間のアルコール(III)を、蒸留カラムの最上部からほぼ1/3離れている蒸留トレーに供給し、250kg/時間のアクリレート(II)を、蒸留カラムの最上部からほぼ9/10離れている蒸留トレーに供給した。カラムを、カラム中の滞留時間9分で操作して、(III)から生成物(I)への99%を超える変換を達成した。添加溶剤は、(II)の揮発性を、(IV)に対して対応する影響を与えることなく低減し、これは、高い反応率を促進し、(II)及び(IV)の蒸留による分離を可能にする二重の目的を有した。蒸留カラムの最上部からの留出物は、低濃度のMA(1.1%)を有するメタノールであった。反応蒸留カラムの底流を更に蒸留して、構成成分を分離した。過剰量のMA及び少量のDMAEを最初に蒸留し、反応蒸留カラムで再利用した。生成物DMAEAを、蒸留により添加溶剤及び触媒から分離し、これらも反応蒸留カラムで再利用した。
【0056】
実施例D
25kg/時間の触媒及び1000kg/時間の添加溶剤の混合物を含む連続供給を、蒸留カラムの最上部に供給し、そこで環流させ、大気圧で操作した。100kg/時間のアルコール(III)を、蒸留カラムの最上部からほぼ1/3離れている蒸留トレーに供給し、250kg/時間のアクリレート(II)を、蒸留カラムの最上部からほぼ9/10離れている蒸留トレーに供給した。カラムを、カラム中の滞留時間9分で操作して、(III)から生成物(I)への99%を超える変換を達成した。添加溶剤は、(II)の揮発性を、(IV)に対して対応する影響を与えることなく低減し、これは、高い反応率を促進し、(II)及び(IV)の蒸留による分離を可能にする二重の目的を有した。蒸留カラムの最上部からの留出物は、低濃度のMA(1.1%)を有するメタノールであった。反応蒸留カラムの底流を更に蒸留して、構成成分を分離した。過剰量のMA、生成物DMAEA及び少量のDMAEを、最初に、添加溶剤及び触媒から減圧下で蒸発させ、それを反応蒸留カラムで再利用した。生成物DMAEAを、蒸留により過剰量のMA及び少量のDMAEから分離し、これらも反応蒸留カラムで再利用した。
【0057】
実施例E
300kg/時間のジベンジルエーテルを、連続的に操作している蒸留カラムの最上部に供給し、メチルアクリレートを44重量%及びメタノールを56重量%含むメタノールとメチルアクリレートの共沸混合物を100kg/時間でこのカラムの中央に供給し、これを大気圧で操作した。カラムの最上部の流れは、カラムに供給されたメタノールの大部分(99%)を98%の高濃度で含有した。97%の大部分のメチルアクリレートは、カラムの底流にあり、ジベンジルエーテルから蒸発させることができた。
【0058】
実施例F
反応プロフィールは、変更したDean-Stark様装置を使用して決定した(図1を参照すること)。この設定を使用して、実験室規模でメタノールの効率的な除去が達成され、完全な変換が可能であった。最初にDMAE 10.0g(0.11mol)及びMA 20.0g(0.23mol)を室温で反応フラスコの中に入れた。触媒を添加した後、フラスコを熱油浴(110℃)に入れた。MA/メタノール共沸混合物の効率的な蒸発を確実にするために、高温を選択した。メタノールをモレキュラーシーブで除去し、過剰量のMAをフラスコに戻した。試料を最初の1時間に15分毎に取り、GCで分析した。2時間後、反応を停止させた。
【0059】
表1は、提示された触媒によって達成された収率及び選択性を提示する。
【0060】
【表1】

【0061】
ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)の調製
実施例G
1000mlのホウケイ酸塩撹拌槽反応器(CSTR)に、DMAE(ジメチルアミノエタノール)106.8g及びDBE(ジベンジルエーテル)119.1を投入した。試験処理の全体を通して不活性雰囲気が存在することを確実にするため、少量の窒素パージを常にフラスコの中に通した。
【0062】
所望の操作温度の115℃に加熱した後、抜取試料(t=0分)を取り、直ちに二酢酸ジブチルスズ触媒5.34gを、カニューレを介して加えた。次に240g/時間でメチルメタクリレート(MMA)の供給を開始した。メチルメタクリレートを、液体として、ステンレススチールカニューレを介してCSTRに処理流体の水面下にポンプで送り、カニューレの中で気化し、処理液に蒸気として入れた。反応中に形成された軽量材料(メタノール、並びにDMAE及びDMAEMAを有するもの)を冷却器を介してフラスコの中に収集した。バルクオーバーヘッド及び「抜取」ポット含有物試料を、反応の全体を通して設定した間隔で取った。全ての試料を室温で停止させ、GCで分析した。供給を120分後に停止した。この時点でのDMAEの変換は79.8%であった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】Dean-Stark様装置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物RCOOR(I)を、エステル交換触媒の存在下で、エステル化合物RCOOR(II)とアルコールROH(III)とのエステル交換反応により作製する方法であって、ここで、Rが、H又はC1−4アルキル又はCH=CR−であり;Rが、C1−4アルキルであり;Rが、少なくとも4個の炭素原子を有するアルキル、少なくとも5個の炭素原子を有するシクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール及びアミノアルキルからなる群より選択され;そしてRが、−H又は−C1−4アルキルであり、
アルコールROH(IV)が、副産物として形成され、前記副産物(IV)が、添加溶剤の存在下での蒸留によって除去され、添加溶剤が、化合物(II)と副産物(IV)との共沸混合物の形成を抑制する化合物である
方法。
【請求項2】
反応が反応蒸留により実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
エステル交換反応が、添加溶剤の存在下で実施され、副産物(IV)が、蒸留により反応から除去される実質的に唯一の化合物である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
副産物(IV)及びエステル化合物(II)を、留出混合物として蒸留により反応から除去し、次に添加溶剤を留出混合物に導入し、副産物(IV)を、別個の蒸留工程で前記化合物(II)から除去する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
添加溶剤が、エーテル、少なくとも11個の炭素原子のアルカン、芳香族及び塩素化アルカンからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
添加溶剤が、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びトリプロピレングリコールジメチルエーテルからなる群より選択される化合物である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
エステル交換触媒が、スズ塩、チタン塩、亜鉛塩、ランタン塩、サマリウム塩及びネオジム塩からなる群より選択される金属化合物である、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
エステル交換触媒が、トリメチルエチレンジアミン又はペンタメチルジエチレントリアミンから選択されるリガンドにより可溶性になる金属塩である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
エステル交換触媒が、二塩化ジブチルスズ、酸化ジブチルスズ、二酢酸ジブチルスズ、臭化ジブチルスズ、四塩化スズ、トリフルオロメタンスルホン酸スズ、ビスアセト酢酸スズ、チタン酸テトライソプロピル及びテトラジメチルアミノエチルチタネートからなる群より選択される金属化合物である、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
エステル交換触媒が、反応媒質と同種であり、好ましくは触媒が液体である、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
エステル交換触媒が、二酢酸ジブチルスズ、二アクリル酸ジブチルスズ、及びトリメチルエチレンジアミン又はペンタメチルジエチレントリアミンから選択されるリガンドにより可溶性になる金属塩からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
添加溶剤及び触媒を、還流下及び場合により減圧下に維持されている第1蒸留カラムの上部又は最上部に供給し、そしてエステル化合物(II)及びアルコール(III)を、蒸留カラムに供給し、そこで化合物(I)及び副産物(IV)が形成され、そして副産物(IV)を、第1蒸留カラムの最上部から蒸発及び除去する、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
エステル成分(II)を、化学量論的過剰量で使用し、化合物(I)、未反応エステル化合物(II)、添加溶剤及び触媒を、第2蒸留カラムに移動し、そして未反応エステル化合物(II)を、第2蒸留カラムから蒸発及び除去する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
化合物(I)、添加溶剤及び触媒を、第3蒸留カラムに移動し、そして化合物(I)を、添加溶剤及び触媒から分離し、収集する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
エステル成分(II)を、化学量論的過剰量で使用し、化合物(I)、未反応エステル化合物(II)、添加溶剤及び触媒を、蒸発器に移動し、そして未反応エステル化合物(II)及び化合物(I)を、蒸発器から蒸発及び除去する、請求項12記載の方法。
【請求項16】
化合物(I)及びエステル成分(II)を、第2蒸留カラムに移動し、そして化合物(I)を、エステル成分(II)から分離し、収集する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
副産物(IV)を連続的に除去し、そしてエステル化合物(II)、添加溶剤及び触媒を連続的に反応に戻すように反応が連続的である、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
が、アミノアルキル基、好ましくはアルキルアミノアルキル基、より好ましくはジメチルアミノエチルである、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
がメチル基である、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
副産物(IV)を除去し、そしてエステル化合物(II)、添加溶剤及び触媒をバッチ蒸留してから反応に戻すように反応が非連続的である、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
添加溶剤をエステル化合物RCOOR(II)とアルコールROH(IV)の混合物に導入し、混合物を蒸留条件に付すことによる、前記混合物から蒸留により前記アルコール(IV)を除去する方法であって、Rが、H又はC1−4アルキル又はCH=CR−であり;Rが、C1−4アルキルであり;Rが、−H又は−C1−4アルキルであり、そして添加溶剤が、エーテル、少なくとも11個の炭素原子のアルカン、芳香族及び塩素化アルカンからなる群より選択される方法。
【請求項22】
添加溶剤がジベンジルエーテルである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
化合物RCOOR(I)を、エステル交換触媒の存在下、反応媒質中で、エステル化合物RCOOR(II)とアルコールROH(III)とのエステル交換反応により作製する方法であって、ここで、Rが、H又はC1−4アルキル又はCH=CR−であり;Rが、C1−4アルキルであり;Rが、少なくとも4個の炭素原子を有するアルキル、少なくとも5個の炭素原子を有するシクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール及びアミノアルキルからなる群より選択され;そしてRが、−H又は−C1−4アルキルであり、アルコールROH(IV)が副産物として形成され、触媒が反応媒質と同種であり、好ましくは触媒が液体である方法。
【請求項24】
エステル交換触媒が、二酢酸ジブチルスズ、二アクリル酸ジブチルスズ、及びトリメチルエチレンジアミン又はペンタメチルジエチレントリアミンから選択されるリガンドにより可溶性になる金属塩からなる群より選択される、請求項23記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−515914(P2009−515914A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540489(P2008−540489)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010728
【国際公開番号】WO2007/057120
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】