説明

エステル化レシチンを用いたナノリポソーム及びその製造方法、及びこれを含む皮膚疾患の予防又は治療用組成物

本発明は、エステル化レシチンを含有するリポソーム膜と該リポソーム膜の内部空間に内包された1以上の生理活性成分を含むナノリポソーム、その製造方法、及びこれを含む皮膚疾患の予防又は治療用組成物に関する。本発明のナノリポソームは長期安定性及び均一性を有するので、これを利用して保湿性及び浸透性に優れた化粧品、皮膚疾患治療薬などの皮膚用組成物を製造するのに使用できる。特に、本発明の皮膚疾患の予防又は治療用組成物は、ナノリポソームに内包された上皮細胞成長因子を含み、それによって優れた皮膚浸透増進効果及び良好な医薬的安定性を示す。また、リポソーム製造時に使用されるエステル化レシチンは、皮膚軟化効果及び皮膚浸透促進効果を提供することができ、それによって上皮細胞成長因子及び天然抽出物の皮膚浸透を促進させ、またさらなる保湿効果を提供することができるので、皮膚疾患の治療に有利である。さらに、本発明の組成物は、エステル化レシチンをリポソーム膜に含有させて製造されるナノリポソームを含むため、活性成分を高温(70℃以上)に加熱及び分散させること、低安定性及び不均一性などの従来の問題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル化レシチンを含有するリポソーム膜と、該リポソーム膜の内部空間に内包された1以上の生理活性成分とを含むナノリポソーム及びその製造方法、及びこれを含む皮膚疾患の予防又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リポソームは、内部に親水性空間が存在する閉じられた脂質二重層膜を有する微細小胞体である。従って、リポソームは、親水性の内部空間には水溶性物質を含有し、外側の脂質二重層膜には脂溶性物質を捕集することを特徴としている。このようなリポソーム膜を形成する物質をリポイドという。リポイドとしては、ホスホグリセリド(phosphoglycerides)又はスフィンゴ脂質(sphingolipids)などが通例的に使用される。レシチン又はセラミドは保湿性に優れ、人体に無害であるので、化粧品や食品分野で最も普遍的に使用されている。
【0003】
しかし、これらのレシチン及びセラミドは疎水性であるので、アルコール溶液にも水溶液にも分散させることが難しい。従って、これらの化合物をリポイドとして使用するためには、70℃以上の高温に加熱することによって分散させた後、機能性物質を添加しなければならない。従って、コエンザイムQ10及びEGFのような、高温で酸化されるか、又は熱的に不安定な機能性化合物をリポソーム化するには非常に大きな問題点がある。また、このように形成されたリポソームは安定性が非常に低く、リポソームの大きさも均一でないという短所がある。特に、疎水性のコエンザイムQ10及び親水性のEGFのように互いに極性が大きく異なる2種類の機能性物質を、一緒にリポソーム化することは難しい。
【0004】
最近では、レシチンにリン酸や他の極性化合物を反応させて得られる、水溶液に良好な分散性を有するアニオン性界面活性剤形態のリン脂質リポイドが広く利用されている。しかし、リポイドが過度に水溶性の場合には、湿潤性は高められ得るが、皮膚表面成分との極性の差によって皮膚浸透効果が大きく減少される。また、リポイドがアニオン塩形態の場合には、化粧品の粘性を減少させ、それによって増粘剤をされに添加しなければならなくなる。
【0005】
コエンザイムQ10は、もともとは、人体内で細胞のエネルギー生産を促進させるコエンザイムとして知られており、活性酸素に対する強い抗酸化力を有する。従って、これを摂取するか、又は皮膚に塗ることで、細胞の酸化を予防することができ、それによって皮膚弾力性を維持させ、老化を效果的に予防することができる。特に、このようなコエンザイムQ10は20歳までは体内で十分な量が生成されるが、偏食又はストレスなどの種々の要因によって20歳前後をピークとしてその量は減少し、40歳前後にはその減少が加速化されるので、これを補充する必要がある。
【0006】
上皮細胞成長因子(Epidermal Growth Factor;EGF)は、母乳の初乳中に存在する細胞再生及び創傷治癒促進効果に優れたタンパク質であり、糖尿病患者の足部潰瘍治療のために使用される生物製剤である。また、EGFは創傷を瘢痕無しに自然に治癒する機能を有する成分として知られており、皮膚再生効果を有することが知られている。従って、機能性化粧品用原料としても、糖尿性足部潰瘍、熱傷、傷などの創傷治癒のための薬物としても、広く使用されている。
【0007】
特許文献1は抗炎症及び抗酸化活性を有するツバキ(Camellia japonica)抽出物を開示している。特許文献2は抗炎症及び抗酸化活性を有するヤドリギ(Viscum album L. var. coloratum)抽出物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】大韓民国特許公開公報第10−2005−0058635号
【特許文献2】大韓民国特許公開公報第10−2006−0025423号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の開示
本発明の1つの目的は、エステル化レシチンを含有するリポソーム膜と該リポソーム膜の内部空間に内包された1以上の生理活性成分とを含むナノリポソームを提供することにある。本発明によれば、水又はアルコールによく分散し、親水性と疎水性の両方を有するエステル化レシチンを用いることによって脂質二重層膜を形成すれば、コエンザイムQ10又は上皮細胞成長因子のような機能性物質を含有するナノリポソーム溶液を低温でも製造することができ、このように製造されたナノリポソームは長期安定性及び均一性を有するので、優れた保湿性及び浸透性を有する化粧品、皮膚疾患治療薬などの皮膚用組成物の原料として使用できる。
【0010】
本発明の別の目的は、エステル化レシチン及び生理活性成分の混合溶液をナノメートルサイズで分散させることによって、安定なナノリポソームを製造する方法を提供することにある。
【0011】
本発明者らは上皮細胞成長因子をナノリポソームとして製造して抗炎症活性を有する天然抽出物と共に製剤化する場合、安定性が向上し、EGFの皮膚浸透が増進され、優れた皮膚疾患治癒効果を有する組成物が得られることを見出した。
【0012】
従って、本発明の別の目的は、上皮細胞成長因子が内包されたナノリポソームと抗炎症活性を有する1以上の天然抽出物とを含む皮膚疾患の予防又は治療用組成物を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従ってエステル化レシチンを用いて製造したEGF/コエンザイムQ10の二重層の膜を有するナノリポソーム溶液の紫外線/可視光線吸光度(%)を示すグラフである。
【図2】本発明に従ってエステル化レシチンを用いて製造したEGF/コエンザイムQ10の二重層の膜を有するナノリポソーム溶液の紫外線/可視光線線透過度(%)を示すグラフである。
【図3】本発明に従ってエステル化レシチンを用いて製造したEGF/コエンザイムQ10の二重層の膜を有するナノリポソームの粒径分布を示すグラフである。
【図4】放射線治療によって皮膚炎が発生した口腔癌患者及び喉頭癌患者に本発明のナノリポソーム含有組成物を投与した時の治療効果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一側面は、エステル化レシチンを含有するリポソーム膜と該リポソーム膜の内部空間に内包された1以上の生理活性成分とを含むナノリポソームを提供する。
【0015】
本発明の別の側面は、
レシチンを有機酸と反応させてエステル化レシチンを製造する第1工程;
上記エステル化レシチンと1以上の生理活性成分とを溶媒に溶解させる第2工程;及び
生成された溶液を分散させ、ナノメートルサイズのリポソームを得る第3工程;を含むナノリポソームの製造方法を提供する。
本発明の別の側面は、エステル化レシチンを含有するリポソーム膜と該リポソーム膜内部空間に内包された上皮細胞成長因子を含むナノリポソームと、抗炎症活性を有する1以上の天然抽出物とを含む皮膚疾患の予防又は治療用組成物を提供する。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本明細書において、「内包」とは、リポソーム中央の親水性空間に水溶性物質(例えば、上皮細胞成長因子、アスコルビン酸など)を含有(含有された又は含有する)するか、又はリポソームの脂質二重層膜に脂溶性物質(例えば、コエンザイムQ10、レチノール、レチニルパルミテート、アスコルビルパルミテートなど)を捕集することをいう。
【0017】
本明細書において、「ナノリポソーム」とは、直径約100〜200nmのリポソームをいい、マイクロメーターサイズのリポソームを約1000psi以上の圧力条件下で分散させて従来法で製造される。
【0018】
本発明において、上記リポソーム膜はエステル化レシチンを含む。上記リポソーム膜は、必要に応じて、リポソームの製造に従来使用されるリポソーム膜成分(即ち、リポイド)を含んでいてもよい。上記リポイドは、ホスホグリセリド又はスフィンゴ脂質を含み、例えば、ホスファチジルコリン[phosphatidylcholine、即ち、レシチン]、水素化レシチン(hydrogenated lecithin)、ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanolamine)、ホスファチジルイノシトール(phosphatidylinositol)、セラミド(ceramide)、セレブロシド[cerebrosides、即ち、ガラクトシルセラミド(galactosyl ceramide)]、スフィンゴミエリン(sphingomyelin)、ガングリオシド(gangliosides)などを含む。上記リポイドもまた、エステル化レシチンと同様に保湿効果を付与することができる。上記リポイドの中から、水素化レシチン及び/又はセラミドを好ましく使用することができる。上記水素化レシチンとは、レシチンの全ての不飽和炭化水素の還元によって得られる、飽和炭化水素からなるレシチンをいう。
【0019】
上記リポソーム膜に含有されるエステル化レシチンは、水又はアルコールによく分散し、親水性と疎水性の両方を有する。従って、上記エステル化レシチンは、水溶性溶媒に分散させるために十分な極性を有するが、水溶性溶媒に完全に溶解させるために十分な極性は有しないため、上記エステル化レシチンを利用してリポソーム膜を形成する場合、20℃〜60℃のような低温であっても、安定なリポソーム溶液を製造することができる。
【0020】
上記エステル化レシチンは、レシチン又は水素化レシチンを有機酸と反応させて製造することができる。エステル化工程は、レシチンのアルコール基と有機酸が反応して、生成された水分子がそこから除去される縮合反応であり、このように製造されたエステル化レシチンは水溶液中で水と反応し、レシチン(アルコール基)と有機酸の形態に再び解離される。従って、この反応において、エステル化レシチン、レシチン(又は水素化レシチン)、及び有機酸は、酸度によって下記のようなエステル化と解離との間の適切な平衡を維持しながら共存する。
【0021】
RCOOR'(エステル化レシチン)⇔RCOOH(有機酸)+R'OH(レシチン又は水素化レシチン)
【0022】
上記エステル化レシチンの製造に使用される有機酸は、酢酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸、又はシュウ酸などの化粧品及び食品に慣用的に使用される有機酸を含み、好ましくは無水有機酸、より好ましくは、無水リンゴ酸又は無水酢酸が使用される。無水酢酸を使用する場合、無水リンゴ酸を使用する場合よりエステル化レシチンがより高い親水性を示す。従って、添加される親水性又は疎水性機能性物質の相対的な量又は機能性物質の極性の程度によって有機酸を適宜選択することができる。これらの有機酸はまた、皮膚に適用された場合、ケラチン用物質の除去効果又は皮膚軟化効果を示すことができる。
【0023】
エステル化レシチンの使用量は、リポソームが形成されるために十分であれば、特に制限されないが、ナノリポソーム中の生理活性成分1重量部に対して、1〜5重量部の量が好ましい。
【0024】
本発明に係るナノリポソーム膜の内部空間に内包される生理活性成分は、これらに制限されないが、水溶性薬物、脂溶性薬物、又は熱的に不安定な機能性物質などであり得る。好ましくは、生理活性成分は、コエンザイムQ10及び上皮細胞成長因子からなる群から選択される1以上である。
【0025】
本発明のナノリポソームは、トリグリセリド系有機化合物、好ましくはカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;アニオン性界面活性剤、好ましくはジエチルアミンセチルホスフェート、アスコルビルホスフェートナトリウム、ホスファチジルコリン(phosphotidylcholine)又はトリエチルアミンココニル(coconyl)グルタミンナトリウム;水素化飽和炭化水素レシチン;軟化剤、好ましくはブチル化ヒドロキシトルエン;ベタイン系両親媒性界面活性剤、好ましくはラウリルアミンプロピルベタイン、ラウリルベタイン、ラウリルアミンベタイン又はコカミドプロピルベタインなど;及びキレート剤、好ましくはエチレンジアミンテトラアセテートナトリウム塩からなる群から選択される1以上をさらに含んでいてもよい。
【0026】
また、本発明は、レシチンを有機酸と反応させてエステル化レシチンを製造する第1工程;上記エステル化レシチンと1以上の生理活性成分とを溶媒に溶解させる第2工程;及び生成された溶液を分散させ、ナノメートルサイズのリポソームを得る第3工程;を含むナノリポソームの製造方法に関する。
【0027】
第1工程において、エステル化レシチンはレシチンを有機酸と縮合反応させて製造する。有機酸は好ましくは酢酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸及びシュウ酸、並びにこれらの無水物からなる群から選択される。
【0028】
第2工程において、生理活性成分は、これらに制限されないが、水溶性薬物、脂溶性薬物、又は熱的に不安定な機能性物質が好ましく、より好ましくは、コエンザイムQ10及び上皮細胞成長因子からなる群から選択される1以上である。また、生理活性成分として、必要に応じて、コエンザイムQ10、レチノール(retinol)、レチナール(retinal)、レチニルパルミテート(retinyl palmitate)、レチノイン酸(retinoic acid)、アスコルビン酸、アスコルビルホスフェート若しくはその塩、又はアスコルビルパルミテートなどの抗酸化剤をさらに使用してもよい。
【0029】
コエンザイムQ10などの疎水性成分及びEGFなどの親水性成分を同時に使用する場合、好ましくは、上記第2工程は、エステル化レシチンとコエンザイムQ10などの疎水性活性成分を有機溶媒に溶解させて油相溶液を製造する工程;EGFなどの親水性活性成分を水性溶媒に溶解させて水相溶液を製造する工程;及び油相溶液と水相溶液とを混合する工程;を含む。
【0030】
上記油相溶液の製造工程において、エステル化レシチン及びコエンザイムQ10などの疎水性活性成分はエタノールなどの有機溶媒に溶解される。好ましくは、有機溶媒に、水素化飽和炭化水素レシチン;カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドのような親水性のトリグリセリド系有機化合物;ジエチルアミンセチルホスフェート、アスコルビルホスフェートナトリウム、ホスファチジルコリン(phosphotidylcholine)若しくはトリエチルアミンココニルグルタミンナトリウムのようなアニオン性界面活性剤;又はブチル化ヒドロキシトルエンのような軟化剤をさらに加えてもよい。
【0031】
上記水相溶液の製造工程において、EGFなどの親水性活性成分を純水に溶解させて水相溶液を製造する。好ましくは、水相溶液に、ジエチルアミンセチルホスフェート、アスコルビルホスフェートナトリウム、ホスファチジルコリン(phosphotidylcholine)若しくはトリエチルアミンココニルグルタミンナトリウムのようなアニオン性界面活性剤、又はエチレンジアミンテトラアセテートナトリウム塩のようなキレート剤をさらに加えてもよい。
【0032】
上記エステル化レシチンと生理活性成分とを溶媒に溶解させる工程は、20〜60℃の温度で遂行することが好ましい。温度が20℃より低い場合、溶解は行われてもよいが、溶解時間が長く、溶解された後に安定性の問題があり得、また、温度が60℃より高い場合、生理活性成分のコエンザイムQ10及び/又はEGFなどが不安定になり得る。
【0033】
上記のように製造した油相溶液と水相溶液とを混合後、ホモミキサー撹拌機を使用して、混合物をホモジナイズする。この時、ホモジナイズされたリポソーム溶液中のリポソームはマイクロメータースケールの粒径を示す。
【0034】
第3工程において、第2工程で均一に混合された溶液を、1,000psi以上の圧力下でマイクロフルイダイザー(M/F)を1回以上通過させて、ナノメートルサイズのリポソームに分散させ、ナノリポソーム溶液を得る。圧力が1,000psiより小さい場合、ナノメートルサイズのリポソームを形成することが難しいかもしれない。均一に混合された溶液を、マイクロフルイダイザー(M/F)を2回以上通過させることが好ましい。
【0035】
上記のように製造されたナノリポソーム溶液に含まれるリポソームは水溶液中で水相/油相の二重のリポソームを形成して、最も内部に存在する水相の機能性物質、例えばEGF及び任意の水溶性抗酸化剤もまた安定化させることができ、さらに親水性活性成分(例、EGF)及び疎水性活性成分(例、コエンザイムQ10)を同時に安定化させることができる。
【0036】
本発明のエステル化レシチンを用いたコエンザイムQ10及びEGF含有ナノリポソームは、常法によって化粧品、皮膚疾患治療薬などの皮膚用組成物の製造に用いることができる。
【0037】
組成物の製造に用いられる原料の好ましい量は実施例で詳細に説明されている。また、上記で羅列した添加剤は他の互換性添加剤に置き換えてもよく、機能性物質の量によって添加剤の量は適宜調節して、製造条件を最適化することができる。
【0038】
本発明の一態様によれば、本発明はエステル化レシチンを含有するリポソーム膜と該リポソーム膜内部に内包された上皮細胞成長因子を含むナノリポソームと、抗炎症活性を有する1以上の天然抽出物とを含む皮膚疾患の予防又は治療用組成物を提供する。
【0039】
本発明の組成物は、上皮細胞成長因子をナノリポソーム中の包接物の形態で使用することによって、薬物の医薬的安定性、及び皮膚浸透を促進させることができる。また、リポソーム製造に使用されるエステル化レシチンは、さらなる保湿効果を付与することができるので、皮膚疾患の治癒に有利な効果を提供できる。通常、皮膚疾患は熱傷、傷などの創傷から発生するか、又は癌患者に対する放射線治療などによって発生する。従って、創傷部位に保湿効果を提供するエステル化レシチンは、より優れた皮膚疾患治療効果を示すことができる。さらに、上記エステル化レシチンは皮膚軟化効果及び皮膚浸透促進効果を付与することによって、上皮細胞成長因子及び天然抽出物の皮膚透浸透を促進させる。
【0040】
さらに、本発明の組成物はエステル化レシチンをリポソーム膜に含有させて製造したナノリポソームを含むことによって、活性成分を高温(70℃以上)に加熱及び分散させる工程、低安定性、並びに均一性などの従来の問題を解決することができる。
【0041】
本発明の組成物において、上記上皮細胞成長因子は皮膚疾患の治療に十分な含量で使用することができ、治療学的有効量は患者の状態、年齢、性別、感受性などによって異なり得る。本発明の組成物中の上記上皮細胞成長因子の含量は、ナノリポソーム全重量に対して、1〜50重量%であってもよい。
【0042】
本発明の組成物において、EGFを内包するナノリポソームは、抗酸化剤をさらに含んでいてもよい。上記抗酸化剤は、コエンザイムQ10、レチノール、レチナール、レチニルパルミテート、レチノイン酸、アスコルビン酸、アスコルビルホスフェート若しくはそれらの塩、又はアスコルビルパルミテートなどを含み得るが、これらに限定されない。コエンザイムQ10は人体内で細胞のエネルギー生産を促進させるコエンザイムの役割をし、活性酸素に対抗する強い抗酸化力があるので、その摂取又は皮膚への塗布は細胞の酸化の予防に効果的であり、それによって皮膚弾力性を維持させ、老化を效果的に予防することが知られている。本発明の組成物中の抗酸化剤の量はナノリポソームの全重量に対して、0.1〜10重量%であってもよい。
【0043】
抗炎症活性を有する天然抽出物は、抗炎症成分を含有するものと知られている天然物からの抽出物を含むが、特に制限されない。本発明の組成物に有用な抗炎症活性を有する天然抽出物は、ツバキ(Camellia japonica)、ヤドリギ(Viscum album L. var. coloratum)、楡根白皮(Ulmi cortex)、ユリ(Lillium brownii F.E.)、カラスビシャク(Pimellia ternata Thunb Breit)、シラン(Bletilla striata Reichb. fil.)、芍薬(Paeonia lactiflora Pall)、ボニュウコウ(Boswellia carterii Birdw)、知母(Anemarrhena rhizome)、タラノキの樹皮(Aralia cortex)、地黄(Rehmaniae radix)、山薬(Dioscoreae Radix)、山茱萸(Corni Fructus)、茯苓(Hoelen)、牧丹皮(Moutan Cortex Radicis)、ゴミシ(Schizandrae Fructus)、クサスギカラス(Asparagi Tuber)、麥門冬(Liriopsis Tuber)、貝母(Fritillariae Bulbus)、キョウニン(Armeniacae Semen)、半夏(Pinelliae Tuber)、桔梗(Platicodi Radix)、コガネバナ(Scutellariae Radix)、黄連(Coptidis Rhizoma)などの1以上の天然物からの抽出物を含み得る。上記天然抽出物は単独に又は2つ以上の抽出物を組み合わせて使用することができる。好ましくは、上記天然抽出物はツバキ及び/又はヤドリギからの抽出物であり、より好ましくは、大韓民国特許公開公報第10−2005−0058635号に開示されたツバキ抽出物又は大韓民国特許公開公報第10−2006−0025423号に開示されたヤドリギ抽出物である。
【0044】
上記天然抽出物は使われた天然物、抽出方法などによって異なる容量で使用することができる。通常、本発明の組成物における上記天然抽出物の含量は、組成物全重量に対して、0.01〜10重量%であってもよい。
【0045】
本発明に係る皮膚疾患の予防又は治療用組成物は、上述した通りに製造された、エステル化レシチンを含有するリポソーム膜及び上記リポソーム膜の内部空間に内包された上皮細胞成長因子を含むナノリポソームを、上記抗炎症活性を有する天然抽出物と共に製剤化することによって製造することができる。上記製剤化は、上記で得られたナノリポソーム溶液に抗炎症活性を有する天然抽出物を分散及び/又は溶解させることによって遂行することができる。上記分散及び/又は溶解は室温で遂行することが好ましい。
【0046】
さらに、本発明の組成物は、必要に応じて、アミノ酸、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ジナトリウム、ナトリウムビスルフィド、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオウレア、アセトン重亜硫酸ナトリウムなどの安定化剤、セラミド、グリセリン、プロピレングリコール、アンモニウムアルギネート、シクロメチコン、ジメチコン、ポリデキストロース、ヒアルロン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、トリアセチン、トリエタノールアミン、キシリトールなどの保湿剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンステアレート類などの乳化剤、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸(イソ)プロピル、パラオキシ安息香酸(イソ)ブチル、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、ジヒドロ酢酸、ジヒドロ酢酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼントニウム、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコールなどの医学的に許容可能な添加剤を含むことができる。本発明の組成物は、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤などの外用剤に製剤化することができる。
【0047】
また、本発明の組成物は化粧水、栄養ローション、栄養クリーム、マッサージクリーム、栄養エッセンス、パック、メイクアップベース、ファウンデーション、ボディーオイル、ヘアーオイル、シャンプー、リンスなどの様々な化粧品の形態で製造できる。
【0048】
以下、本発明を実施例を通してより詳細に説明する。しかし、下記実施例は本発明を例示することを意図しており、いかなる方法でも本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0049】
エステル化レシチンの合成
<実施例1>
テトラヒドロフラン溶媒200gを70℃の温度に加熱し、そこに水素化飽和炭化水素レシチン31gを添加し、溶解させた。レシチンを明らかに溶解させた後、混合物に無水リンゴ酸3gを添加して溶解させた。無水リンゴ酸を明らかに溶解させた後、そこに触媒としてトリエチルアミン0.5gを添加し、還流下で3時間を超えて反応を持続させた。反応を完了させた後、生成された混合物を45℃、真空下で乾燥して白色粉末形態のエステル化レシチンを得た。
【0050】
<実施例2>
無水リンゴ酸の代わりに無水酢酸2.5gを使用することを除いては、実施例1と同様の方法でエステル化レシチンを合成した。
【0051】
ナノリポソーム溶液の製造
<実施例3>
1)油相溶液の製造
エタノール110gに、エステル化レシチン15g、水素化飽和炭化水素レシチン15g、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(MCT)200g、ジエチルアミンセチルホスフェート10g及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)0.5gを添加し、混合物を約40℃に加熱し、撹拌しながら溶かした。次いで、溶解された混合物を室温に冷却して油相溶液を得た。
2)水相溶液の製造
Na−EDTA0.5g、アスコルビルホスフェートナトリウム(NAP)1g、及びEGF2.0gを室温で撹拌しながら、水650gに溶かして、水相溶液を得た。
3)油相溶液と水相溶液との混合
上記で得た水相溶液を、製造した油相溶液に添加し、混合物をホモミキサーで5分を超えて十分に撹拌して均一な混合物を得た。
4)ナノリポソーム製造
上記で得た均一の混合物を、マイクロフルイダイザーに1,000psiを超える圧力下で1回以上通過させ、ナノメートルサイズのリポソームに分散させることによって、ナノリポソーム溶液を製造した。通過工程の温度条件は、冷却水で室温より低い温度に冷却した。
【0052】
<実施例3'>
EGF2.4gを使用することを除いては、実施例3と同様の方法でナノリポソーム溶液を製造した。
【0053】
<実施例4>
エステル化レシチン30gを使用することを除いては、実施例3と同様の方法でナノリポソーム溶液を製造した。
【0054】
<実施例5>
アニオン性界面活性剤のジエチルアミンセチルホスフェートの代わりにベタイン系両親媒性界面活性剤のラウリルベタイン10gを使用することを除いては、実施例3と同様の方法でナノリポソーム溶液を製造した。
【0055】
<実施例6>
水素化飽和炭化水素レシチン及びジエチルアミンセチルホスフェートをいずれも使用せず、エステル化レシチン50gを使用することを除いては、実施例3と同様の方法でナノリポソーム溶液を製造した。
【0056】
<実施例7>
1)油相溶液の製造
エタノール110gに、エステル化レシチン15g、水素化飽和炭化水素レシチン15g、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(MCT)200g、ジエチルアミンセチルホスフェート10g、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)0.5g、及びコエンザイムQ10 10gを添加し、混合物を約40℃に加熱し、撹拌しながら溶かした。次いで、溶解された混合物を室温に冷却して油相溶液を得た。
2)ナノリポソームの製造
実施例3と同じ方法によって、水相溶液を製造し、その水相溶液と上記のとおり製造した油相溶液とを混合し、混合物をナノメートルサイズに分散させてナノリポソーム溶液を製造した。
【0057】
<実施例8>
水素化飽和炭化水素レシチンを使用せず、エステル化レシチン30gを使用することを除いては、実施例7と同様の方法でナノリポソーム溶液を製造した。
【0058】
<実施例9>
ジエチルアミンセチルホスフェートに代えてベタイン系両親媒性界面活性剤ラウリルベタイン10gを使用することを除いては、実施例7と同様の方法でナノリポソーム溶液を製造した。
【0059】
<実施例10>
水素化飽和炭化水素レシチン及びジエチルアミンセチルホスフェートをいずれも使用せず、エステル化レシチン50gを使用することを除いては、実施例7と同様の方法でナノリポソーム溶液を製造した。
【0060】
<実施例11>
1)エタノール110gに、エステル化レシチン15g、水素化飽和炭化水素レシチン15g、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(MCT)200g、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)0.5g、及びコエンザイムQ10 10gを添加し、混合物を約50℃に加熱し、撹拌しながら溶かした。次いで、溶解された混合物を室温に冷却した。
2)蒸留水10gにEGF2.4gを溶かし、得られた溶液を上記工程1)で製造した溶液に添加した。
3)ホモミキサーを使用して、上記工程2)で製造した混合溶液を10分を超えて十分に撹拌した。
4)上記工程3)で製造した溶液を、1,000psiを超える圧力下でマイクロフルイダイザーを通過させた。
5)ホモミキサーで撹拌しながら、上記工程4)で製造した溶液をNa−EDTA0.5g、及びアスコルビルホスフェートナトリウム1gを含有する水650gに添加した。
6)添加後、混合物を約10分を超えて十分に撹拌した。
7)上記工程6)で製造した溶液を、マイクロフルイダイザーを1回以上通過させて、二重層のナノリポソーム溶液を得た。
【0061】
<実施例12>
水素化飽和炭化水素レシチンを使用せず、エステル化レシチン35gを使用することを除いては、実施例11と同様の方法でナノリポソーム溶液を製造した。
【0062】
<実施例13>
水素化飽和炭化水素レシチンを使用せず、エステル化レシチン50gを使用することを除いては、実施例11と同様の方法でナノリポソーム溶液を製造した。
【0063】
<実施例14>
1)エタノール110gに、ジエチルアミンセチルホスフェート1g、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(MCT)200g、エステル化レシチン10g、ブチル化ヒドロキシトルエン0.5g、及びコエンザイムQ10 10gを添加し、混合物を室温で激しく撹拌しながら溶かして、油相溶液を得た。
2)蒸留水10gにEGF2.3gを溶かし、得られた溶液を上記工程1)で製造した溶液に添加した。
3)ホモミキサーを用いて、上記工程2)で製造した混合溶液を10分を超えて十分に撹拌した。
4)上記工程3)で製造した溶液を、1,000psiを超える圧力下でマイクロフルイダイザーを通過させた。
5)ホモミキサーで撹拌しながら、上記工程4)で製造した溶液を、Na−EDTA0.5g、及びアスコルビルホスフェートナトリウム1gを含有する水650gに添加した。
6)添加後、混合物を約10分を超えて十分に撹拌した。
7)上記工程6)で製造した溶液を、マイクロフルイダイザーを1回以上通過させて、二重層のナノリポソーム溶液を得た。
【0064】
<実施例15>
ジエチルアミンセチルホスフェートの代わりにアスコルビルホスフェートナトリウム1gを使用することを除いては、実施例14と同様の方法でナノリポソーム溶液を製造した。
【0065】
<実施例16>
ジエチルアミンセチルホスフェートの代わりにアニオン性界面活性剤のトリエチルアミンココニルグルタミンナトリウム(MIAMI CT130) 1gを使用することを除いては、実施例14と同様の方法でナノリポソーム溶液を製造した。
【0066】
<実施例17>
ジエチルアミンセチルホスフェートの代わりにベタイン系両親媒性界面活性剤のラウリルアミンプロピルベタイン1gを使用することを除いては、実施例14と同様の方法でナノリポソーム溶液を製造した。
【0067】
<比較例>
エステル化レシチンを使用せず、水素化飽和炭化水素レシチン30gを使用することを除いては、実施例7と同様の方法でナノリポソーム溶液を製造した。
【0068】
外用製剤の製造
<実施例18>
実施例3で製造したナノリポソーム溶液5mLを、大韓民国特許公開公報第10−2005−0058635号の実施例2に従って製造したツバキ抽出物含有栄養ローション基剤95gに添加した。次いで、混合物を室温で20分撹拌し、皮膚疾患の予防又は治療用組成物を得た。
【0069】
<実施例19>
実施例3で製造したナノリポソーム溶液5mLを、大韓民国特許公開公報第10−2006−0025423号の処方例1に従って製造したヤドリギ抽出物含有栄養ローション基剤95gに添加した。次いで、混合物を室温で20分撹拌し、皮膚疾患の予防又は治療用組成物を得た。
【0070】
試験例1
安定性試験
上記実施例8(エステル化レシチンだけを使用した場合)、実施例7(エステル化レシチン及び水素化飽和炭化水素レシチンを使用した場合)、及び比較例(水素化飽和炭化水素レシチンだけを使用した場合)でそれぞれ製造したナノリポソーム溶液の平均粒径及び室温で長期間保存したことによるゲル化現象を比較し、その結果を下記表1に示した。また、溶液中で粒子間の粒径差によってより大きな粒子上に物質が沈着されることによって、粒子が成長するメカニズムの一つであるオストワルド熟成(Ostwald ripening)現象の発生を確認するため観察を行った(文献[Ostwald, Z Phys. Chem. (34), 1900, 495-5031]参照)。
リポソーム溶液を長期間保存すれば、一般的に凝集現象によりゲル化現象が起こる。従って、ゲル化した溶液を再度撹拌しても再度分散・溶解されない時点によってゲル化時点を決定した。
【0071】
【表1】

【0072】
紫外線/可視光線領域におけるナノリポソーム溶液の吸光度及び透過度
上記実施例8で製造した、本発明に従ってエステル化レシチンだけを使用して製造したEGF(水相)/コエンザイムQ10(油相)の二重層膜を有するナノリポソーム溶液の紫外線/可視光線領域での吸光度と透過度を測定し、それぞれ図1及び図2に示した。
図1及び図2に示されるように、400nm〜700nmの波長領域の可視光線は実質的に散乱も吸収もされなかった。これは、製造したナノリポソーム溶液が非常に透明で、リポソームの大きさも非常に均一であったことを示す。
【0073】
粒径分布の測定
上記実施例8で製造した二重層膜を有するナノリポソーム溶液の粒径分布を測定し、その結果を図3に示した。
図3に示されるように、狭い範囲内でナノリポソーム粒子が分布することが分かる。これは、製造したナノリポソーム溶液が非常に透明で、リポソームの大きさも非常に均一であったことを示す。
【0074】
試験例2
EGFがナノリポソーム化され、当該ナノリポソームが化粧品に分散された場合のEGFの安定性を比較するために、EGF10mMのリン酸緩衝溶液(pH7.4)、実施例3のEGFナノリポソーム溶液及び実施例18のEGFナノリポソームが分散された組成物を40℃、75%RHの苛酷条件下で3カ月間保存し、相対安定性を比較した。ELISA法を利用して残留含量を分析した。その結果を下記表2に示す。表2に示されるように、ナノリポソームに内包されたEGFの安定性は、緩衝溶液に比べて有意に増加しており、製剤化した組成物におけるEGF安定性はさらに上昇した。
【0075】
【表2】

【0076】
試験例3
放射線(59.4Gy)治療に33回供され、それによって放射線治療後に皮膚に深刻な炎症が発生した(図4の左側カラム)口腔癌患者に、実施例18で製造した組成物を1日2回、約1.5ヶ月(2006.2.28〜2006.4.17)患部全体が覆われるように塗布した。組成物の投与期間中、患部を毎日観察したところ、投与後5日目に患部の炎症が有意に緩和され始めた。10日後には患部の肌色が変わり始め、約1ヶ月後には患部がほとんど正常の皮膚まで回復した(図4参照)。
皮膚に深刻な炎症が発生した喉頭癌患者2人に、実施例18で製造した組成物を1日2回、それぞれ約1ヶ月(2006.3.29〜2006.4.17)及び約1週間(2006.4.11〜2006.4.18)患部全体が覆われるように塗布した。投与期間中、患部を毎日観察したところ、それぞれ、約1ヶ月及び約1週後には患部がほとんど正常の皮膚まで回復した(図4参照)。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のナノリポソームは、エステル化レシチンを含有するリポソーム膜を形成することによって、熱不安定な機能性物質を低温で安全にリポソーム化でき、親水性物質及び疎水性物質を共に同時に捕集することも可能となる。また、ケラチン様物質を除去するための無水有機酸が官能基として使用されるため、ケラチン様物質除去効果や皮膚軟化効果のような様々な機能性効果を示す利点がある。
また、本発明の皮膚疾患の予防又は治療用組成物はナノリポソームに内包された上皮細胞成長因子を含むことによって、優れた皮膚浸透促進効果及び良好な医学的安定性を示す。さらに、リポソーム製造に使用されるエステル化レシチンはさらなる保湿効果を提供することができるので、皮膚疾患の治癒に有利である。皮膚疾患は、通常熱傷、傷などの創傷から発生するか、又は癌患者に対する放射線治療によって発生する。従って、創傷部位に保湿効果を提供する上記エステル化レシチンはより良い皮膚疾患治療効果を示すことができる。さらに、上記エステル化レシチンは皮膚軟化効果及び皮膚浸透の促進効果を提供することによって、上皮細胞成長因子及び天然抽出物の皮膚浸透を促進させる。さらに、本発明の組成物は、エステル化レシチンをリポソーム膜に含有させて製造したナノリポソームを含むことによって、活性成分を高温(70℃以上)に加熱して分散させること、不安定性及び不均一性などの従来の問題を解決することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル化レシチンを含有するリポソーム膜と、該リポソーム膜の内部空間に内包された1以上の生理活性成分とを含むナノリポソーム。
【請求項2】
生理活性成分が、コエンザイムQ10及び上皮細胞成長因子からなる群から選択される1以上である、請求項1に記載のナノリポソーム。
【請求項3】
エステル化レシチンが、レシチンと有機酸との反応生成物である、請求項1に記載のナノリポソーム。
【請求項4】
有機酸が、無水酢酸、無水リンゴ酸、無水乳酸、無水グリコール酸、無水クエン酸及び無水シュウ酸からなる群から選択される、請求項3に記載のナノリポソーム。
【請求項5】
水素化飽和炭化水素レシチン、アニオン性界面活性剤、トリグリセリド系有機化合物、軟化剤、キレート剤及びベタイン系両親媒性界面活性剤からなる群から選択される1以上をさらに含む、請求項1に記載のナノリポソーム。
【請求項6】
ナノリポソームの製造方法であって:
レシチンを有機酸と反応させてエステル化レシチンを製造する第1工程;
該エステル化レシチン及び1以上の生理活性成分を溶媒に溶解させる第2工程;並びに
生成された溶液を分散させてナノメートルサイズのリポソームを得る第3工程;
を含む、方法。
【請求項7】
生理活性成分が、コエンザイムQ10及び上皮細胞成長因子からなる群から選択される1以上である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第2工程が、
エステル化レシチン及びコエンザイムQ10を有機溶媒に溶解させて油相溶液を製造する工程;
上皮細胞成長因子を水性溶媒に溶解させて水相溶液を製造する工程;並びに
油相溶液と水相溶液とを混合する工程;
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第2工程が、20〜60℃の温度で遂行される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
エステル化レシチンを含有するリポソーム膜と該リポソーム膜の内部空間に内包された上皮細胞成長因子を含むナノリポソームと、抗炎症活性を有する1以上の天然抽出物とを含む、皮膚疾患の予防又は治療用組成物。
【請求項11】
ナノリポソームが、コエンザイムQ10、レチノール、レチナール、レチニルパルミテート、レチノイン酸、アスコルビン酸、アスコルビルホスフェート又はそれらの塩、及びアスコルビルパルミテートからなる群から選択される1以上の抗酸化剤をさらに内包する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
天然抽出物が、ツバキ、ヤドリギ、楡根白皮、ユリ、カラスビシャク、シラン、芍薬、ニュウコウ、知母、タラノキの樹皮、地黄、山薬、山茱萸、茯苓、牧丹皮、ゴミシ、クサスギカラス、麥門冬、貝母、キョウニン、半夏、桔梗、コガネバナ及び黄連からなる群から選択される1以上の天然物からの抽出物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
天然抽出物が、ツバキ又はヤドリギからの抽出物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
リポソーム膜が、エステル化レシチンに加えて、水素化レシチン、セラミド、又はそれらの混合物を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
エステル化レシチンが、レシチンと有機酸との反応生成物である、請求項10〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
有機酸が、酢酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸、シュウ酸、又はそれらの無水物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
ナノリポソームが、アニオン性界面活性剤、トリグリセリド系有機化合物、軟化剤、キレート剤及び両親媒性界面活性剤からなる群から選択される1以上をさらに含む、請求項10〜14のいずれかに記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−545587(P2009−545587A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522716(P2009−522716)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【国際出願番号】PCT/KR2007/003699
【国際公開番号】WO2008/016258
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(504432231)ダエウォン カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】