説明

エステル製造方法

【課題】安価で低毒性の無機化合物を用いたエステル交換反応によりエステル化合物を製造する。
【解決手段】エステル化合物とアルコール化合物とのエステル交換反応を、硝酸ランタン(例えば硝酸ランタン六水和物)とホスフィン化合物(例えばトリ−n−オクチルホスフィン)との存在下で行うことにより、エステル生成物を得る。例えば、炭酸ジメチルとベンジルアルコールとのエステル交換反応を、1mol%の硝酸ランタン六水和物と2mol%のトリ−n−オクチルホスフィンの存在下で行うことにより、ベンジルメチルカーボネートを収率>99%で得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル製造方法に関し、特にエステル交換反応を用いたカルボン酸エステルや炭酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エステル化合物は、天然物として広く存在し、また、各種材料、食品、化粧品添加物等に広く利用されている。こうしたエステル化合物を製造する方法すなわちエステル製造方法としては、エステル交換反応が知られている。例えば、特許文献1には、安息香酸メチルとシクロヘキサノールとを用いるエステル交換反応を、La(Oi-Pr)3とジエチレングリコールモノメチルエーテルとの存在下で行ったところ、80%を超える高い収率で安息香酸シクロヘキシルを得た例が記載されている。また、Sn化合物やHf化合物、Zn化合物、Ti化合物などの存在下でエステル交換反応を行うことによりエステル化合物を得る方法も種々報告されている(非特許文献1〜5)。更に、炭酸ジアルキルと脂肪族アルコールとを第4級アンモニウム塩の存在下にエステル交換させる方法も報告されている(特許文献2)。第4級アンモニウム塩の対イオンとしては、ハロゲンイオン、硝酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、チオアセテートイオンが例示されている。更にまた、ペンタフルオロフェニルアンモニウムトリフラートやトリフェニルホスホニウムトリフラートなどのスルホン酸の有機オニウム塩を触媒として、油脂類とアルコール類とのエステル交換反応を行い、脂肪酸エステルを製造する方法も報告されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−247873
【特許文献2】特開2007−238522
【特許文献3】WO2008/149661
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J. Org. Chem., vol.56, p5307(1991)
【非特許文献2】Science vol.290, p1140(2000)
【非特許文献3】Tetrahedron Lett., vol.39, p4223(1998)
【非特許文献4】Chem. Lett., p246(1995)
【非特許文献5】J. Am. Chem. Soc., vol.130, p2944(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で使用されるLa(Oi-Pr)3は価格が高いという問題があった。また、非特許文献1〜5には、使用する化合物の毒性がLa化合物に比べて高いうえ、第3級アルコールには適用できないという問題があった。更に、特許文献2には、炭酸ジメチルとエタノールとトリオクチルアンモニウムクロライドとをモル比1:1で反応させることにより炭酸エチルメチルを得ているが、反応後の炭酸エステルの組成中には炭酸ジメチルが40〜65モル%も残っており、アンモニウム塩の触媒活性が十分でないという問題があった。更にまた、特許文献3は、出発原料が油脂類に限られるため、汎用性に欠けるという問題があった。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、安価で低毒性の無機化合物を用いたエステル交換反応によりエステル化合物を製造することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明者らは、硝酸ランタン六水和物とトリ−n−オクチルホスフィンとを触媒量用いて、炭酸エステルと種々のアルコールとのエステル交換反応を行ったところ、高収率で反応生成物が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った
【0008】
即ち、本発明の第1のエステル製造方法は、エステル化合物とアルコール化合物とのエステル交換反応を硝酸ランタンとホスフィン化合物との存在下で行うことにより、エステル生成物を得るものである。
【0009】
本発明の第2のエステル製造方法は、エステル化合物とアルコール化合物とのエステル交換反応をオニウム塩の存在下で行うことによりエステル生成物を得るエステル製造方法であって、前記オニウム塩として、アルキルカーボネートを対イオンとするホスホニウム塩又はアンモニウム塩を用いるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1のエステル製造方法によれば、安価で低毒性の無機化合物である硝酸ランタンを用いたエステル交換反応によりエステル生成物を製造することができる。具体的には、硝酸ランタンとホスフィン化合物との混合物をエステル交換反応の触媒として用いる。触媒は、当初、単離同定していなかったため、硝酸ランタンのLa原子にホスフィン化合物のP原子が配位していると予測していたが、その後、鋭意研究した結果、対イオンがアルキルカーボネートであるホスホニウム塩が系内に生成し、このホスホニウム塩が触媒となっているか、あるいはこのホスホニウム塩を含むランタン複合塩が触媒となっている可能性が高いことがわかった。
【0011】
なお、硝酸ランタンは、LD50の値が4500mg/kgであり、この値は塩化ハフニウムの1/2、塩化ジルコニウムの1/3、ジブチルスズオキシドの1/100という低毒性である。また、硝酸ランタンは、1kg入りの試薬で5万円程度であり、塩化ハフニウムや塩化ジルコニウムの数十分の1程度、ランタントリイソプロポキシドの百分の1以下という低価格である。
【0012】
本発明の第2のエステル製造方法によれば、容易に入手可能なオニウム塩を触媒として、種々のエステル化合物と種々のアルコール化合物とのエステル交換反応によりエステル生成物を製造することができる。触媒として使用するオニウム塩は、例えば、炭酸エステルとトリアルキルホスフィンとの反応や炭酸エステルとトリアルキルアミンとの反応により容易に合成することができる。このエステル交換反応は、硝酸ランタンを共存させずに行ってもよいが、硝酸ランタンの共存下に行ってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1のエステル製造方法は、エステル化合物とアルコール化合物とのエステル交換反応を硝酸ランタンとホスフィン化合物との存在下で行うことにより、エステル生成物を得るものである。
【0014】
本発明の第1のエステル製造方法において、エステル交換反応に用いるエステル化合物としては、例えばカルボン酸エステルや炭酸エステルが挙げられる。カルボン酸エステルとしては、芳香族カルボン酸エステル、ヘテロ環カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、脂肪酸エステル、α,β−不飽和カルボン酸エステル、ケトエステルなどが挙げられる。芳香族カルボン酸エステルとしては、安息香酸エステルやその誘導体(例えば安息香酸エステルのベンゼン環上の少なくとも1つの水素原子がニトロ基、シアノ基、アルコキシ基などで置換された化合物)などが挙げられ、ヘテロ環カルボン酸エステルとしては、ニコチン酸エステルやピロールカルボン酸エステルなどが挙げられ、脂環式カルボン酸エステルとしては、シクロヘキサンカルボン酸エステルやシクロペンタンカルボン酸エステルなどが挙げられ、脂肪酸エステルとしては、酢酸エステル、プロピオン酸エステルなどが挙げられ、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルなどが挙げられ、ケトエステルとしては、アセト酢酸エステルなどが挙げられる。また、炭酸エステルとしては、炭酸ジメチルや炭酸ジエチルなどが挙げられる。
【0015】
本発明の第1のエステル製造方法において、エステル交換反応に用いるアルコール化合物は、第1級アルコール、第2級アルコール、第3級アルコールのいずれであっても用いることができる。第1級アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、アリルアルコール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。第2級アルコールとしては、例えばイソプロパノール、sec−ブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。第3級アルコールとしては、例えば1−エチニル−1−シクロプロパノール、1−アダマンタノール、tert−ブタノール、t−アミルアルコールなどが挙げられる。
【0016】
本発明の第1のエステル製造方法において、硝酸ランタンは、硝酸ランタン6水和物(La(NO33・6H2O)や硝酸ランタンx水和物(La(NO33・xH2O)などの市販品を用いることができる。市販の硝酸ランタンx水和物におけるxは通常3〜5であるが、保存状態により0〜10までの整数値をとりうる。
【0017】
本発明の第1のエステル製造方法において、ホスフィン化合物は、特に限定するものではないが、例えば、トリアルキルホスフィン、トリシクロアルキルホスフィン、ビスジアリールホスフィノアルカン、トリアリールホスフィン、2’−ビス(ジアリールホスフィノ)−1,1’−ビナフチル及びそれらの誘導体などが挙げられる。トリアルキルホスフィンは、3つのアルキルが同じであっても異なっていてもよく、例えばトリ−n−ブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィンなどが挙げられる。トリシクロアルキルホスフィンは、3つのシクロアルキルが同じであっても異なっていてもよく、例えばトリシクロヘキシルホスフィンなどが挙げられる。ビスジアリールホスフィノアルカンは、4つのアリールが同じであっても異なっていてもよく、例えばビスジフェニルホスフィノエタン、ビスジフェニルホスフィノプロパン、ビスジフェニルホスフィノブタンなどが挙げられる。トリアリールホスフィンは、3つのアリールが同じであっても異なっていてもよく、例えばトリフェニルホスフィンなどが挙げられる。2’−ビス(ジアリールホスフィノ)−1,1’−ビナフチルは、4つのアリールが同じであっても異なっていてもよく、例えば2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)などが挙げられる。これらの誘導体としては、例えばアルキル、シクロアルキル及びアリールにつき、少なくとも1つの水素原子がニトロ基、シアノ基、アルコキシ基などで置換された化合物などが挙げられる。
【0018】
こうしたホスフィン化合物としてトリアルキルホスフィンを用いる場合、エステル交換反応に用いるアルコールが第1級アルコールや第2級アルコールであれば、トリ−t−ブチルホスフィンやトリシクロヘキシルホスフィンなどのような嵩高いホスフィン化合物であっても良好に反応が進行する。しかし、エステル交換反応に用いるアルコールが第3級アルコールの場合には、こうした嵩高いホスフィン化合物では反応性が低くなることがあるため好ましくなく、トリアルキルホスフィンのアルキルが第1級アルキルのものを用いることが好ましい。その場合、第1級アルキルは炭素数が6以上であることがより好ましい。
【0019】
硝酸ランタンの使用量は、反応基質に対して触媒量用いれば足りる。具体的には、反応基質に対して0.1〜20mol%使用するのが好ましく、1〜10mol%使用するのがより好ましい。また、ホスフィン化合物の使用量は、ホスフィン化合物中のP原子が硝酸ランタンのLa原子に対して1〜3倍モルとなる量が好ましいが、1.8〜2.2倍モルとなる量がより好ましい。例えば、ホスフィン化合物としてトリアルキルホスフィンやトリアリールホスフィンを用いる場合には、硝酸ランタンに対してホスフィン化合物を1.8〜2.2倍モル使用し、ホスフィン化合物としてビスジアリールホスフィノアルカンやBINAPを用いる場合には、硝酸ランタンに対してホスフィン化合物を0.9〜1.1倍モル使用するのが好ましい。
【0020】
本発明の第1のエステル製造方法において、反応溶媒は、特に限定されるものではないが、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、ニトリル系溶媒又はエーテル系溶媒を用いることが好ましい。炭化水素系溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエンなどが挙げられる。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、例えば塩化メチレンやクロロホルム、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタンなどが挙げられる。ニトリル系溶媒としては、例えばアセトニトリルやプロピオニトリルなどが挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)や1,4−ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどが挙げられる。なお、エステル交換反応に用いるエステル化合物を溶媒としても用いてもよい。例えば、エステル化合物として炭酸ジメチルを用いる場合には、炭酸ジメチルを溶媒として用いてもよい。
【0021】
本発明の第1のエステル製造方法において、エステル交換反応に用いるエステル化合物としてカルボン酸エステルを用いる場合には、前もって硝酸ランタンとホスフィン化合物と炭酸エステルとを混合し加熱したあと炭酸エステルを蒸発させたものを触媒として使用するのが好ましい。なお、加熱温度は、触媒が調製できる温度であればいいが、通常50℃〜130℃であり、80℃〜120℃で行うことが好ましく、90℃〜110℃がより好ましい。また、還流温度としてもよい。炭酸エステルの蒸発は常圧、減圧下又は真空下で行うことが好ましい。このような前処理を施すことにより、カルボン酸エステルとアルコール化合物とのエステル交換反応が再現性よく高収率で進行する。ここで生成した触媒は、アルキルカーボネートを対イオンとするホスホニウム塩又はそのホスホニウム塩を含むランタン複合塩である。こうしたホスホニウム塩としては、後述する式(1)の化合物(但し、Zはリン原子)が好ましい。
【0022】
本発明の第1のエステル製造方法において、反応温度は、特に限定されるものではないが、還流温度とすることが好ましい。温度範囲は、触媒が調製できる温度であればいいが、通常40℃〜150℃であり、60℃〜140℃で行うことが好ましく、70℃〜130℃がより好ましい。また、反応時間は、反応基質が消失するか反応の進行が止まるまでの時間とすればよいが、通常は数時間〜数10時間の範囲で設定する。通常0.1時間〜50時間であり、0.5時間〜24時間で行うことが好ましく、1時間〜12時間がより好ましい。
【0023】
本発明の第1のエステル製造方法において、エステル交換反応によって系内に副生するアルコール(元のエステル化合物のカルボニル炭素に結合していたアルコキシが脱離して生成するアルコール)を除去しながらエステル交換反応を行うことが好ましい。例えば、副生するアルコールがメタノールやエタノールの場合、常圧又は減圧下、蒸留にて留去するか、系内にモレキュラーシーブス5A(MS5A)を入れておくか、還流器にMS5Aを入れておくのが好ましい。
【0024】
本発明の第2のエステル製造方法は、エステル化合物とアルコール化合物とのエステル交換反応をオニウム塩の存在下で行うことによりエステル生成物を得るエステル製造方法であって、前記オニウム塩として、アルキルカーボネートを対イオンとするホスホニウム塩又はアンモニウム塩を用いるものである。
【0025】
本発明の第2のエステル製造方法において、エステル交換反応に用いるエステル化合物としては、例えばカルボン酸エステルや炭酸エステル、カルバミン酸エステルが挙げられる。カルボン酸エステルとしては、芳香族カルボン酸エステル、ヘテロ環カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、脂肪酸エステル、α,β−不飽和カルボン酸エステル、ケトエステルなどが挙げられる。芳香族カルボン酸エステルとしては、安息香酸エステルやその誘導体(例えば安息香酸エステルのベンゼン環上の少なくとも1つの水素原子がニトロ基、シアノ基、アルコキシ基などで置換された化合物)などが挙げられ、ヘテロ環カルボン酸エステルとしては、ニコチン酸エステルやピロールカルボン酸エステルなどが挙げられ、脂環式カルボン酸エステルとしては、シクロヘキサンカルボン酸エステルやシクロペンタンカルボン酸エステルなどが挙げられ、脂肪酸エステルとしては、酢酸エステル、プロピオン酸エステルなどが挙げられ、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルなどが挙げられ、ケトエステルとしては、アセト酢酸エステルなどが挙げられる。炭酸エステルとしては、炭酸ジメチルや炭酸ジエチルなどが挙げられる。カルバミン酸エステルとしては、N−フェニルカルバミン酸メチルやN−フェニルカルバミン酸エチルなどが挙げられる。
【0026】
本発明の第2のエステル製造方法において、エステル交換反応に用いるアルコール化合物は、第1級アルコール、第2級アルコール、第3級アルコールのいずれであっても用いることができる。第1級アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、アリルアルコール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。第2級アルコールとしては、例えばイソプロパノール、sec−ブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。第3級アルコールとしては、例えば1−エチニル−1−シクロプロパノール、1−アダマンタノール、tert−ブタノールなどが挙げられる。なお、第1級〜第3級アルコールのいずれを用いるかは、使用するエステル化合物に応じて適宜決定するのが好ましい。
【0027】
本発明の第2のエステル製造方法において、オニウム塩は、ホスホニウム塩又はアンモニウム塩である。こうしたオニウム塩を式で表すと、例えば下記式(1)で表される。
[R1234Z]+[OCO25- …(1)
(R1〜R4 は同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、Zはリン原子又は窒素原子であり、R5はアルキル基である)
【0028】
ここで、アルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基及びそれらの構造異性体などの炭素数1〜20の分岐を有していてもよいアルキル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などの炭素数3〜7のシクロアルキル基が挙げられる。アリール基としては、特に限定するものではないが、フェニル基、ナフチル基及びそれらの少なくとも1つの水素原子が置換基で置換されたものなどが挙げられる。置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、ペルフルオロアルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。アルキル基、シクロアルキル基としては既に例示したものが挙げられ、ペルフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基やペンタフルオロエチル基などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基やエトキシ基などが挙げられる。
【0029】
式(1)において、R1〜R4 はすべてアルキル基(すべて同じでもよいし異なっていてもよい)であってもよいし、すべてシクロアルキル基(すべて同じでもよいし異なっていてもよい)であってもよいし、すべてアリール基(すべて同じでもよいし異なっていてもよい)であってもよいし、アルキル基とシクロアルキル基とが混在していてもよいし、アルキル基とアリール基とが混在していてもよいし、シクロアルキル基とアリール基とが混在していてもよいし、アルキル基とシクロアルキル基とアリール基とが混在していてもよい。R1〜R4 の中にアルキル基が2以上含まれる場合には、それらは同じであっても異なっていてもよく、R1〜R4 の中にシクロアルキル基が2以上含まれる場合には、それらは同じであっても異なっていてもよく、R1〜R4 の中にアリール基が2以上含まれる場合には、それらは同じであっても異なっていてもよい。式(1)において、R4とR5 は同じアルキル基であることが好ましい。この場合、R123ZとO=C(OR42とを反応させることにより[R1234Z]+[OCO24- を容易に得ることができる。この場合、R1〜R3はすべて同じアルキル基であることが好ましい。
【0030】
本発明の第2のエステル製造方法において、硝酸ランタンを更に添加してもよい。単離したオニウム塩にランタンを添加することが活性向上に最も好ましい。例えば、ホスホニウム塩を用いる場合、硝酸ランタンを添加すると、添加しない場合に比べてエステル生成物の収率が向上する傾向がみられる。一方、アンモニウム塩を用いる場合、硝酸ランタンを添加すると、添加しない場合に比べて、エステル生成物の収率が向上することがある。また、α−炭素が不斉炭素の光学活性カルボン酸エステルとアルコール化合物とのエステル交換反応では、オニウム塩と共に硝酸ランタンを存在させると、光学活性のエステル生成物が得られる。
【0031】
オニウム塩の使用量は、反応基質に対して触媒量用いれば足りる。具体的には、反応基質に対して通常は0.01〜50mol%であり、0.1〜20mol%が好ましく、1〜10mol%がより好ましい。また、硝酸ランタンを添加する場合、その添加量は、オニウム塩中のP原子又はN原子が硝酸ランタンのLa原子に対して通常は0.1〜10倍モルであり、1〜5倍モルが好ましく、1.8〜2.2倍モルがより好ましい。
【0032】
本発明の第2のエステル製造方法において、反応溶媒は、特に限定されるものではないが、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、ニトリル系溶媒又はエーテル系溶媒を用いることが好ましい。炭化水素系溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、例えば塩化メチレンやクロロホルム、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタンなどが挙げられる。ニトリル系溶媒としては、例えばアセトニトリルやプロピオニトリルなどが挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)や1,4−ジオキサン、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどが挙げられる。なお、エステル交換反応に用いるエステル化合物を溶媒としても用いてもよい。例えば、エステル化合物として炭酸ジメチルを用いる場合には、炭酸ジメチルを溶媒として用いてもよい。
【0033】
本発明の第2のエステル製造方法において、反応温度は、特に限定されるものではないが、通常40℃〜150℃であり、60℃〜140℃で行うことが好ましく、70℃〜130℃がより好ましい。また、還流温度としてもよい。反応時間は、反応基質が消失するか反応の進行が止まるまでの時間とすればよいが、通常は数時間〜数10時間の範囲で設定する。通常0.1時間〜50時間であり、0.5時間〜24時間で行うことが好ましく、1時間〜12時間がより好ましい。
【0034】
本発明の第2のエステル製造方法において、エステル交換反応によって系内に副生するアルコール(元のエステル化合物のカルボニル炭素に結合していたアルコキシが脱離して生成するアルコール)を除去しながらエステル交換反応を行うことが好ましい。例えば、副生するアルコールがメタノールやエタノールの場合、常圧又は減圧下、蒸留にて留去するか、系内にモレキュラーシーブス5A(MS5A)を入れておくか、還流器にMS5Aを入れておくのが好ましい。
【実施例】
【0035】
A.炭酸エステルとアルコールとのエステル交換反応
[実施例1]
脱脂綿と2.0gの乾燥済みのペレット状モレキュラーシーブス5A(MS5A)を入れたソックスレー還流器に、硝酸ランタン六水和物(La(NO33・6H2O,17.3mg,0.04mmol と、トリ−n−オクチルホスフィン(90% purity,40μL,0.08mmol)と、蒸留して脱水処理した炭酸ジメチル(8mL)を入れ、室温で1〜2分撹拌した。次いで、混合液に第1級アルコールであるベンジルアルコール(4.0mmol)を加え、直ちに反応器を加熱還流条件(バス温110℃)まで加熱した。適宜TLCで反応の進行状態を確認しながら還流を続け、1時間後、反応終了をTLCで確認した。その後、反応混合物を室温まで冷却し、少量の水(0.3〜0.5mL)を添加して、室温で5分撹拌し、反応を停止した。反応混合物を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、ろ液を濃縮した。この際、炭酸ジメチルはロータリーエバポレーターにて容易に回収できた(回収率75〜85%)。濃縮物からシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル)にて生成物(エステル化合物)を単離した。生成物の収率は>99%であった。
【0036】
[比較例1]
表1に示すように、硝酸ランタン六水和物の代わりにランタントリイソプロポキシド、トリ−n−オクチルホスフィンの代わりにジエチレングリコールモノメチルエーテルを用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行ったところ、生成物の収率は>99%であった。
【0037】
[実施例2〜4、比較例2〜4]
表1に示すように、実施例2及び比較例2ではアルコール化合物として第2級アルコールであるシクロヘキサノール、実施例3及び比較例3ではアルコール化合物として第3級アルコールである1−アダマンタノール、実施例4及び比較例4ではアルコール化合物として第3級アルコールである1−エチニル−1−シクロヘキサノールを用いた以外は、実施例1及び比較例1と同様にして生成物を得た。但し、実施例3,4及び比較例3,4では、ランタン化合物及びリガンドの使用量を増量すると共に、反応時間も長くした。それらの結果を実施例1及び比較例1の結果も含めて表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1から、実施例1〜4、比較例1〜4のいずれにおいても、炭酸エステルとアルコール化合物とを用いたエステル交換反応による生成物を非常に高い収率で得られることがわかる。ここで、実施例1〜4で用いた硝酸ランタン六水和物の価格は、比較例1〜4で用いたランタントリイソプロポキシドの百分の1以下にすぎない。このため、同じ生成物を同程度の収率で得る場合、実施例1〜4の方が比較例1〜4に比べて格段に低い価格で済む。なお、実施例1〜4の生成物のスペクトルデータは以下の通り。
【0040】
・実施例1の生成物(ベンジルメチルカーボネート)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.79 (s, 3H), 5.16 (s, 2H), 7.30-7.42 (m, 5H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 54.8, 69.5, 128.2 (2C), 128.4, 128.5 (2C), 135.1. IR (neat) 2958, 1750, 1442, 1269, 948 cm-1. HRMS (ESI+) calcd for C9H10NaO3 [M+Na]+ 189.0528, found 189.0529.
【0041】
・実施例2の生成物(シクロヘキシルメチルカーボネート)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.18-1.60 (m, 6H), 1.75 (m, 2H), 1.91 (m, 2H), 3.76 (s, 3H), 4.61 (m, 1H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 23.5 (2C), 25.1, 31.5 (2C), 54.4, 76.7, 155.2. IR (neat) 2940, 2861, 1746, 1444, 1276, 1258 cm-1.
【0042】
・実施例3の生成物(1−アダマンチルメチルカーボネート)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.66 (s, 6H), 2.11 (s, 6H), 2.19 (s, 3H), 3.70 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 30.8 (3C), 35.9 (3C), 40.9 (3C), 53.7, 81.7, 153.5. IR (KBr) 2911, 1744, 1445, 1311, 1254, 1045 cm-1. HRMS (FAB+) calcd for C12H19O3 [M+H]+ 211.1334, found 211.1335.
・実施例4の生成物(1−エチニルシクロヘキシルメチルカーボネート)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.33 (m, 1H), 1.53 (m, 1H), 1.66 (m, 4H), 1.87 (m, 2H), 2.17 (m, 2H), 2.64 (s, 1H), 3.78 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 22.4 (2C), 24.8, 36.7 (2C), 54.2, 74.7, 77.3, 92.9, 153.3. IR (neat) 3287, 2938, 2862, 1754, 1442, 1274, 1246, 1018 cm-1. HRMS (FAB+) calcd for C10H14NaO3 [M+Na]+ 205.0841, found 205.0845.
【0043】
[実施例5]
実施例2の炭酸ジメチルの代わりに炭酸ジエチルを用いた以外は、実施例2と同様にして反応を行った(下記式参照)。そうしたところ、収率98%で生成物が得られた。
【0044】
【化1】

【0045】
[実施例6〜13、比較例5]
実施例6〜13では、実施例2のトリ−n−オクチルホスフィンの代わりに、表2に示すホスフィン化合物を用いた以外は、実施例2と同様にして炭酸ジメチルと第2級アルコールであるシクロヘキサノールとのエステル交換反応を行った。また、比較例5では、ホスフィン化合物を用いなかった以外は、実施例2と同様にして反応を行った。但し、実施例10〜12では、シクロヘキサノールに対してホスフィン化合物を1mol%使用した。また、実施例13では、シクロヘキサノールに対して硝酸ランタン六水和物を3mol%、(R)−BINAPを6mol%使用し、比較例5では、シクロヘキサノールに対して硝酸ランタン六水和物を3mol%使用した。それらの結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2から、炭酸ジメチルと第2級アルコールとのエステル交換反応では、ホスフィン化合物として、トリアルキルホスフィン(アルキルはt−ブチルのように嵩高くてもよい)、トリシクロアルキルホスフィン、ビスジアリールホスフィノアルカン、トリアリールホスフィン及び2’−ビス(ジアリールホスフィノ)−1,1’−ビナフチルのいずれを用いても、高収率で生成物が得られることがわかった。また、ホスフィン化合物を用いなかった比較例5では、反応性が低く、収率が12%であった。
【0048】
[実施例14〜23,比較例6〜8]
実施例14では、表3に示すように、実施例4の反応時間を10時間から3時間に短縮した以外は、実施例4と同様にして反応を行った。そうしたところ、生成物の収率は44%であった。実施例15〜20では、表3に示すランタン化合物やホスフィン化合物を使用した例であるが、実施例14と同じ反応時間3時間における生成物の収率を調べた。そうしたところ、実施例14のトリ−n−オクチルホスフィンの代わりにトリ−n−ブチルホスフィンを用いた実施例15では、実施例14と同程度の反応性を示した。また、トリ−n−ブチルホスフィンの使用量を9mol%に増やした実施例16や、実施例14のトリ−n−オクチルホスフィンの代わりにビスジフェニルホスフィノアルカンやトリフェニルホスフィンを用いた実施例17〜20では、実施例14と比べてやや収率が低下したものの良好な結果が得られた。一方、実施例14のトリ−n−オクチルホスフィンの代わりにトリエチルホスフェートを用いた比較例6、実施例14の硝酸ランタン六水和物の代わりに塩化ランタンやランタンアセチルアセテートを用いた比較例7,8では、いずれも反応性が著しく低下した。
【0049】
実施例17の反応時間を3時間から30時間に延ばした実施例21では、生成物の収率は93%であった。また、硝酸ランタン六水和物と(R)−BINAPとを用いた実施例22では、反応時間12時間で生成物の収率が97%、硝酸ランタンx水和物とトリ−n−オクチルホスフィンとを用いた実施例23では、反応時間10時間で生成物の収率が89%であった。
【0050】
【表3】

【0051】
表3から、炭酸ジメチルと第3級アルコールとのエステル交換反応では、ホスフィン化合物として、ビスジフェニルホスフィノアルカン及び(R)−BINAPのいずれを用いても、高収率で生成物が得られることがわかった。また、硝酸ランタンx水和物と硝酸ランタン六水和物とでは、反応性に差がないこともわかった。さらに、ホスフィン化合物として、トリアルキルホスフィンのアルキルが第1級アルキル(n−オクチルやn−ブチル)であれば、反応時間3時間での収率から推測して、反応時間を長くすれば高収率で生成物が得られると予測される。一方、トリアルキルホスフィンのアルキルが第2級アルキルや第3級アルキルのように嵩高い場合には、反応性が低くなるため好ましくないこともわかった。
【0052】
なお、表には示さなかったが、実施例14のトリ−n−オクチルホスフィンの代わりに第3級アルキルを持つトリ−t−ブチルホスフィンや第2級アルキルを持つトリシクロヘキシルホスフィンを用いたところ、反応時間3時間の収率は実施例14と比べて低下した。このことから、炭酸エステルと第3級アルコールとのエステル交換反応においては、硝酸ランタンと第1級アルキルを持つトリアルキルホスフィンとの組合せが好ましいことがわかった。
【0053】
B.カルボン酸エステルとアルコールとのエステル交換反応
[実施例24]
脱脂綿と2.0gの乾燥済みのペレット状モレキュラーシーブス5A(MS 5A)を入れたソックスレー還流器に、硝酸ランタン六水和物(La(NO33・6H2O,17.3mg,0.04mmol)と、トリ−n−オクチルホスフィン(90% purity,40μL,0.08mmol)と、蒸留して脱水処理した炭酸ジメチル(8mL)を入れ、室温で1〜2分撹拌した。得られた混合液を加熱還流条件(バス温110℃)で1時間加熱した。その混合液を室温まで冷却し、溶媒成分を減圧留去し、室温下5Torr以下で1時間乾燥し、触媒を調製した。同反応容器に溶媒としてn−ヘキサン(8mL)、カルボン酸エステルとして4−ニトロ安息香酸エステル(4.0mmol)、第1級アルコールとしてベンジルアルコール(4.0mmol)をこの順に加えた。直ちに反応器を加熱還流条件(バス温90℃)まで加熱した。適宜TLCで反応の進行状態を確認しながら還流を続け、5時間後、反応終了をTLCで確認した。その後、反応混合物を室温まで冷却し、少量の水(0.3〜0.5mL)を添加して、室温で5分撹拌し、反応を停止した。反応混合物を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、ろ液を濃縮した。濃縮物からシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル)にて生成物を単離した。収率は99%であった。
【0054】
[比較例9]
硝酸ランタン六水和物の代わりにランタントリイソプロポキシド、トリ−n−オクチルホスフィンの代わりにジエチレングリコールモノメチルエーテルを用いた以外は、実施例24と同様にして反応を行ったところ、生成物の収率は98%であった。
【0055】
[実施例25〜30、比較例10〜15]
実施例25〜29及び比較例10〜14では、カルボン酸エステルとして表4に示す化合物を使用すると共に反応時間を変更した以外は、実施例24と同様にして生成物を得た。また、実施例30及び比較例15では、カルボン酸エステルとして安息香酸メチル、アルコール化合物として第2級アルコールであるシクロヘキサノールを使用すると共に反応時間を変更した以外は、実施例24と同様にして生成物を得た。但し、実施例26,27,29及び比較例11,12,15では、表4に示すように、ランタン化合物及びリガンドの使用量を増量した。それらの結果を実施例24及び比較例9の結果も含めて表4に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
表4から、実施例24〜30でも比較例9〜15でも、カルボン酸エステルとアルコール化合物とを用いたエステル交換反応による生成物を同程度の収率で得られることがわかる。ここで、実施例24〜30で用いた硝酸ランタン六水和物の価格は、比較例9〜15で用いたランタントリイソプロポキシドの百分の1以下にすぎない。このため、同じ生成物を同程度の収率で得る場合、実施例24〜30の方が比較例9〜15に比べて格段に低い価格で済む。ちなみに、硝酸ランタン六水和物とトリ−n−オクチルホスフィンとをエステル交換反応の反応系内に直接存在させた場合には、反応が良好に進行することもあるが進行しないこともあった。これに対して、実施例24〜30のように、硝酸ランタン六水和物とトリ−n−オクチルホスフィンと炭酸ジメチルとを前もって混合し加熱したあと炭酸ジメチルを蒸発させることにより触媒を調製し、この触媒を反応系内に存在させた場合には、エステル交換反応が再現性よく高収率で進行した。なお、実施例24〜30の生成物のスペクトルデータは以下の通り。
【0058】
・実施例24(4−ニトロ安息香酸ベンジル)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.40 (s, 2H), 7.33-7.50 (m, 5H), 7.73 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 8.16 (d, J = 9.0 Hz, 2H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 67.6, 123.5 (2C), 128.4 (2C), 128.6, 128.7 (2C), 130.8 (2C), 135.1, 135.4, 150.5, 164.5. IR (KBr) 1712, 1521, 1348, 1276, 1121 cm-1. HRMS (EI+) calcd for C14H11NO4 [M]+ 257.0688, found 257.0679.
【0059】
・実施例25(4−シアノ安息香酸ベンジル)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.38 (s, 2H), 7.33-7.48 (m, 5H), 7.73 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 8.16 (d, J = 8.1 Hz, 2H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 67.4, 116.4, 117.9, 128.3 (2C), 128.5, 128.7 (2C), 130.1 (2C), 132.2 (2C), 133.9, 135.2, 164.7. IR (neat) 3040, 2231, 1725, 1272, 1105 cm-1. HRMS (EI+) calcd for C15H11NO2 [M]+ 237.0790, found 237.0800.
【0060】
・実施例26(4−メトキシ安息香酸ベンジル)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.84 (s, 3H), 5.33 (s, 2H), 6.91 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.30-7.42 (m, 3H), 7.44 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 8.03 (d, J = 8.7 Hz, 2H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 55.3, 66.3, 113.5 (2C), 122.4, 128.0 (2C), 128.1, 128.5 (2C), 131.6 (2C), 136.2, 163.3, 166.1. IR (neat) 2956, 1713, 1606, 1510, 1257, 1167, 1101, 1029 cm-1. HRMS (EI+) calcd for C15H14O3 [M]+ 242.0943, found 242.0949.
【0061】
・実施例27(ニコチン酸ベンジル)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.40 (s, 2H), 7.36-7.58 (m, 6H), 8.33 (dt, J = 5.1, 2.1 Hz, 1H), 8.78 (dd, J = 5.1, 1.8 Hz, 1H), 9.26-9.27 (m, 1H).
【0062】
・実施例28(アセト酢酸ベンジル)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.24 (s, 3H), 3.49 (s, 2H), 5.17 (s, 2H), 7.30-7.42 (m, 5H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 30.1, 49.9, 67.1, 128.3 (2C), 128.4, 128.5 (2C), 135.1, 166.9, 200.3. IR (neat) 3034, 1743, 1409, 1316, 1149 cm-1. HRMS (EI+) calcd for C11H12O3 [M]+ 192.0786, found 192.0780.
【0063】
・実施例29(シクロヘキサンカルボン酸ベンジル)
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.18-1.36 (m, 2H), 1.38-1.54 (m, 2H), 1.60-1.84 (m, 4H), 1.87-2.02 (m, 2H), 2.36 (tt, J = 11.7, 3.6 Hz, 1H), 5.11 (s, 2H), 7.20-7.42 (m, 5H).
【0064】
・実施例30(安息香酸シクロヘキシル)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.00-2.10 (m, 10H), 4.98-5.09 (m, 1H), 7.40-7.48 (m, 2H), 7.52-7.60 m, 1H), 8.02-8.08 (m, 2H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 23.6 (2C), 25.4, 31.6 (2C), 73.0, 128.2 (2C), 129.4 (2C), 130.9, 132.6, 165.9. IR (neat) 2937, 2858, 1716, 1451, 1315, 1277, 1111 cm-1. HRMS (FAB+) calcd for C13H16NaO2 [M+Na]+ 227.1048, found 227.1055.
【0065】
[参考例1]
Perosaらの報告(Chem. Eur. J., 2009, vol.15, p12273)にしたがって、メチルトリn−オクチルホスホニウムメチルカーボネート([Me(n-octyl)3P]+[OCO2Me]-)を作製した。具体的には、6mLの炭酸ジメチルと4.1g(11.2mmol)のトリn−オクチルホスフィンとを6mLのメタノールに入れ、オートクレーブ中で140℃、20時間反応することにより、上述したホスホニウム塩を得た。ホスホニウム塩の構造は、1HNMR、13CNMR及び31PNMRによって確認した。なお、メチルトリn−ブチルホスホニウムメチルカーボネートやメチルトリn−オクチルアンモニウムメチルカーボネートなどの他のオニウム塩もこれと同様にして作製した。
【0066】
[参考例2]
実施例24の前半部分にしたがって触媒を調製した。その触媒を重THF溶媒にて31PNMR測定を行った。その結果、31PNMR(d8−THF)は+32.60ppmであり、参考例1で得られたメチルトリn−オクチルホスホニウムメチルカーボネートの31PNMR(d8−THF)と一致した。また、1HNMRや質量分析(ESI−MS)も、このホスホニウム塩と一致した。この結果、実施例24で調製した触媒は、メチルトリn−オクチルホスホニウムメチルカーボネートであることが判明した(下記式参照)。
【0067】
【化2】

【0068】
[実施例31]
脱脂綿と1.0gの乾燥済みのペレット状モレキュラーシーブス5A(MS 5A)を入れたソックスレー還流器に、硝酸ランタン六水和物(26.0mg,0.06mmol)と、メチルトリn−オクチルホスホニウムメチルカーボネート(55.3mg,0.12mol)を入れ、n−ヘキサン(4mL)を加えて室温で1〜2分撹拌した。安息香酸メチル(2.0mmol,250μL)、シクロヘキサノール(2.0mmol,211μL)を加え、反応器を加熱還流条件(バス温90℃)まで加熱した。適宜TLCで反応の進行状態を確認しながら還流を続けた。16時間経過後、反応終了をTLCで確認し、反応混合物を室温まで冷却し、少量の水(約0.3mL)を添加して、室温で5分撹拌し、反応を停止した。反応混合物を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、ろ液を濃縮した。濃縮物からシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル)にて生成物を単離した(収率97%,収量397mg)。
【0069】
[実施例32〜39,比較例16〜20]
実施例32〜39,比較例16〜20では、実施例31に準じて、表5に示した条件で安息香酸メチルと第2級アルコールであるシクロヘキサノールとのエステル交換反応を行った。表5から明らかなように、メチルカーボネートを対イオンとするホスホニウム塩やアンモニウム塩の存在下では、エステル交換反応による生成物が高収率で得られた(実施例32〜39)。また、ホスホニウム塩については、ホスホニウム塩を単独で用いた場合(実施例37)に比べて、ホスホニウム塩を硝酸ランタンと共に用いた場合(実施例31)の方が触媒活性が高かった。一方、アンモニウム塩については、アンモニウム塩を硝酸ランタンと共に用いた場合(実施例35,36)に比べて、アンモニウム塩を単独で用いた場合(実施例38,39)の方が触媒活性が高かった。更に、ホスホニウム塩とアンモニウム塩とを比べると、オニウム塩単独の場合には、ホスホニウム塩よりもアンモニウム塩の方が触媒活性が高かったが、硝酸ランタンを併用した場合には、アンモニウム塩よりもホスホニウム塩の方が触媒活性が高かった。なお、ハロゲンイオンやテトラフルオロボレートイオンを対イオンとするオニウム塩の存在下では、エステル交換反応はほとんど進行しなかった(比較例16〜19)。また、実施例33の硝酸ランタンをランタントリフラートに代えた比較例20では、エステル交換反応はほとんど進行しなかった。
【0070】
【表5】

【0071】
ここで、オニウム塩単独で用いた場合に、アンモニウム塩の方が触媒活性が高かった理由について、以下に考察する。N 及びPは同じ15族元素で、Nは第2周期、Pは第3周期に属する。オニウム塩触媒は塩基触媒と位置づけられる。つまり、オニウム塩触媒の作用原理は、塩基作用に基づいたアルコール由来のアルコキシドの求核性の向上にあり、塩基性度が強ければ、対応するオニウムアルコキシドの求核性が高まると考えられる。オニウム塩単独で用いた場合には、アンモニウム塩のほうが活性が高いという実験結果になっているが、これには、系中でアルコキシドアニオンがオニウム塩触媒の対イオンを形成していることが深く関わっていると考えられる。アニオンの塩基性(完全にイコールではないが、求核性、反応性につながる指標)の強弱を決定づけているのは、おそらく、NとPのイオン半径の違いが最も大きな要因と思われる。Nのイオン半径は相対的に短いので、アニオンは込み合っているNカチオン中心に近づけない。その結果、塩基性が強くなっていると解釈できる。一方、Pはその逆で、Pのイオン半径は相対的に長いのでアニオンがPカチオン中心に近づける分、アニオンの塩基性は下がると考えられる。以上の議論をもとにすると、アンモニウム塩アルコキシドの塩基性度はホスホニウム塩アルコキシドの塩基性度より高いことが考えられる。なお、5配位のリン化合物はホスホランと呼ばれる。ホスホニウム塩はアルコキシド存在下ではホスホランになる可能性が高い(参考文献、J. Am. Chem. Soc., 1974, vol.96, p6208, Tetrahedron, 2005, vol.61, p12343.)。ホスホニウム塩がアンモニウム塩よりも触媒活性が低いのは、こうした化学種の生成により、触媒が失活することが一因と考えられる。一方、アンモニウム塩はホスホランに対応する5配位化合物は存在しないため、アンモニウム塩としてとどまり、触媒活性は維持されると考えられる。
【0072】
次に、硝酸ランタン共存下でオニウム塩を用いた場合に、ホスホニウム塩の方が活性が高かった理由について、以下に考察する。硝酸ランタンを共存させると、アルコキシドがランタン上に捕捉されると考えられる。同時に、硝酸イオンはオニウムの対アニオンとなって塩が形成される。このとき、上述した理由と同じ理由で、アンモニウム塩では硝酸イオンのNカチオン中心への配位が妨げられるが、ホスホニウム塩では硝酸イオンのPカチオン中心への配位が可能と考えられる。硝酸イオンのオニウムへの捕捉は、アルコキシドがランタン中心に移ることを促進することに繋がり、最終的に触媒活性が向上することに繋がる。つまり、硝酸ランタン−オニウム塩複合触媒は、活性本体はランタン側にあり、酸・塩基複合触媒として機能していると考えられる。
【0073】
[実施例40〜42]
実施例40〜42では、実施例31に準じて、表6に示した条件で酢酸エチルと第3級アルコールである1−アダマンタノールとのエステル交換反応を行った。表6から明らかなように、メチルカーボネートを対イオンとするホスホニウム塩やアンモニウム塩の存在下では、エステル交換反応による生成物が高収率で得られた(実施例40〜42)。また、ここでは、アンモニウム塩を硝酸ランタンと共に用いた場合(実施例41)の方が、アンモニウム塩を単独で用いた場合(実施例42)に比べて触媒活性が高かった。
【0074】
【表6】

【0075】
[実施例43〜44]
実施例43〜44では、実施例31に準じて、表7に示した条件でプロピオン酸エチルと第1級アルコールである1−オクタノールとのエステル交換反応を行った。表7から明らかなように、メチルカーボネートを対イオンとするホスホニウム塩やアンモニウム塩の存在下では、エステル交換反応による生成物が高収率で得られた(実施例43〜44)。
【0076】
【表7】

【0077】
[実施例45〜47,比較例21]
実施例45〜47,比較例21では、実施例31に準じて、表8に示した条件で安息香酸メチルと第2級アルコールである2−オクタノールとのエステル交換反応を行った。表8から明らかなように、メチルカーボネートを対イオンとするホスホニウム塩やアンモニウム塩の存在下では、エステル交換反応による生成物が高収率で得られた(実施例45〜47)。これに対して、水酸化物イオンを対イオンとするアンモニウム塩の存在下では、エステル交換反応はほとんど進行しなかった(比較例21)。
【0078】
【表8】

【0079】
[実施例48〜49]
実施例48では、表9に示した条件でN−フェニルカルバミン酸メチルと第3級アルコールである1−アダマンタノールとのエステル交換反応を行った。この実施例48では、実施例24と同様、前もって硝酸ランタンとトリn−オクチルホスフィンとを炭酸ジメチルと共に1時間共沸還流し、その後、室温、<5Torr、1時間という条件で炭酸ジメチルを蒸発させて得られた触媒を使用した。実施例49では、実施例31に準じて、表9に示した条件でN−フェニルカルバミン酸メチルと第1級アルコールであるベンジルアルコールとのエステル交換反応を行った。表9から明らかなように、いずれも高収率でエステル交換反応による生成物が得られた。なお、前出の実施例30と実施例31とを比較すると、調製した触媒を単離せずそのまま使用した場合(実施例30)に比べて、単離したホスホニウム塩を触媒として使用した場合(実施例31)の方が好結果を与えている。この点を踏まえると、実施例48において、調製した触媒をそのまま使用する代わりに単離したホスホニウム塩を触媒として使用した場合には、実施例48に比べてエステル生成物がより高い収率で得られると予測される。
【0080】
【表9】

【0081】
[実施例50〜53]
実施例50,51では、実施例31に準じて、表10に示した条件で炭酸ジメチルと第3級アルコールである1−アダマンタノールとのエステル交換反応を行った。そうしたところ、いずれも高収率でエステル生成物が得られた。実施例52,53では、実施例31に準じて、表10に示した条件で炭酸ジメチルと芳香族アルコールであるフェノールとのエステル交換反応を行った。そうしたところ、いずれも高収率でエステル生成物が得られた。なお、ここでは炭酸ジメチルを反応基質兼溶媒として使用したため、収率はアルコール化合物をベースに計算した。
【0082】
【表10】

【0083】
[実施例54〜57,比較例22]
実施例54〜57では、実施例31に準じて、表11に示した条件で、α−炭素が不斉炭素の光学活性カルボン酸エステルである(R)−フェニルグリコール酸メチルと第1級アルコールである1−ベンジルアルコールとのエステル交換反応を行った。メチルカーボネートを対イオンとするオニウム塩(ホスホニウム塩、アンモニウム塩)と硝酸ランタンとを共存させた実施例54,55では、高収率、高エナンチオ選択的に(R)−エステル生成物が得られた。これに対して、メチルカーボネートを対イオンとするオニウム塩を単独で用いた実施例56,57では、エステル生成物が高収率で得られたが、ラセミ化してしまった。こうしたことから、アルキルカーボネートを対イオンとするオニウム塩と硝酸ランタンとの複合触媒の価値は、反応基質がエピ化しないことにもあるといえる。なお、特許文献1を参考にしてランタントリイソプロポキシドとジエチレングリコールモノメチルエーテルを用いた比較例22では、エステル生成物が高収率で得られたが、ラセミ化してしまった。
【0084】
【表11】

【0085】
[実施例58〜61]
実施例58〜61では、α−炭素が不斉炭素の光学活性カルボン酸エステルに対して、アルコール化合物を2当量、硝酸ランタン六水和物を3mol%、メチルトリn−オクチルホスホニウムメチルカーボネートを6mol%使用し、表12に示す条件でエステル交換反応を行った。そうしたところ、いずれも高収率、高エナンチオ選択的に光学活性エステル生成物が得られた。なお、実施例58〜61の硝酸ランタン六水和物とメチルトリn−オクチルホスホニウムメチルカーボネートの代わりに、メチルトリドデシルアンモニウムメチルカーボネートを単独で3mol%用いたところ、エステル生成物は高収率で得られたが、ラセミ化してしまった。
【0086】
【表12】

【0087】
[実施例62〜64]
実施例62〜64では、表13に示すように、重合しやすいエステル化合物であるメタクリル酸メチルとアルコール化合物とのエステル交換反応を行った。実施例62では、実施例24と同様、前もって硝酸ランタンとトリn−オクチルホスフィンとを炭酸ジメチルと共に1時間共沸還流し、その後、室温、<5Torr、1時間という条件で炭酸ジメチルを蒸発させて得られた触媒を使用した。実施例63,64では、メチルトリドデシルアンモニウムメチルカーボネートを単独で使用した。そうしたところ、いずれも高収率でエステル生成物が得られた。なお、実施例62において、調製した触媒をそのまま使用する代わりに単離したホスホニウム塩を触媒として使用した場合には、実施例62に比べてエステル生成物がより高い収率で得られると予測される。また、表13には示さなかったが、触媒としてtert−ブトキシカリウムを用いたところ、種々の副生成物が生成してしまった。
【0088】
【表13】

【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、薬品化学産業に利用可能であり、例えば各種材料や医薬品、農薬、化粧品、食品などに用いられるエステル化合物を製造する際に利用することができる。また、エステル化合物の1種である炭酸エステルは、モノアルコールの保護基や1,2−ジオールの保護基(この場合、環状炭酸エステルとなる)として利用することもできる。特に、炭酸エステルとカルボン酸エステルとの保護及び脱保護の過程の反応差を活用して、特定のアルコールを選択的に合成することに応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル化合物とアルコール化合物とのエステル交換反応を硝酸ランタンとホスフィン化合物との存在下で行うことにより、エステル生成物を得る、エステル製造方法。
【請求項2】
前記エステル化合物は、炭酸エステル又はカルボン酸エステルである、
請求項1に記載のエステル製造方法。
【請求項3】
硝酸ランタンとホスフィン化合物と炭酸エステルとを混合し加熱したあと炭酸エステルを蒸発させることにより触媒を調製し、カルボン酸エステルとアルコール化合物とのエステル交換反応を前記触媒の存在下で行うことにより、エステル生成物を得る、エステル製造方法。
【請求項4】
前記触媒は、アルキルカーボネートを対イオンとするホスホニウム塩又は該ホスホニウム塩を含むランタン複合塩である、請求項3に記載のエステル製造方法。
【請求項5】
前記硝酸ランタンは、硝酸ランタン六水和物又は硝酸ランタンx水和物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエステル製造方法。
【請求項6】
副生するアルコールを反応系外へ除去しながら前記エステル交換反応を実施する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエステル製造方法。
【請求項7】
前記硝酸ランタンと前記ホスフィン化合物とを、La原子1に対しP原子1.8〜2.2となるように用いる、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のエステル製造方法。
【請求項8】
前記アルコール化合物は、第3級アルコールであり、
前記ホスフィン化合物は、トリアルキルホスフィン(3つのアルキルは同じでも異なっていてもよい第1級アルキルである)、ビスジアリールホスフィノアルカン(4つのアリールは同じでも異なっていてもよい)、トリアリールホスフィン(3つのアリールは同じでも異なっていてもよい)、2’−ビス(ジアリールホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(4つのアリールは同じでも異なっていてもよい)及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた1種である、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエステル製造方法。
【請求項9】
エステル化合物とアルコール化合物とのエステル交換反応をオニウム塩の存在下で行うことによりエステル生成物を得るエステル製造方法であって、
前記オニウム塩として、アルキルカーボネートを対イオンとするホスホニウム塩又はアンモニウム塩を用いる、
エステル製造方法。
【請求項10】
前記オニウム塩は、下記式(1)で示される化合物である、
請求項9に記載のエステル製造方法。
[R1234Z]+[OCO25- …(1)
(R1〜R4 は同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、Zはリン原子又は窒素原子であり、R5はアルキル基である)
【請求項11】
前記エステル交換反応を、前記オニウム塩と硝酸ランタンの存在下で行う、
請求項9又は10に記載のエステル製造方法。
【請求項12】
前記エステル交換反応を、単離した前記オニウム塩と硝酸ランタンの存在下で行う、請求項9又は10に記載のエステル製造方法。
【請求項13】
前記エステル化合物は、炭酸エステル、カルボン酸エステル又はカルバミン酸エステルである、
請求項9〜12のいずれか1項に記載のエステル製造方法。
【請求項14】
前記エステル化合物は、α−炭素が不斉炭素の光学活性カルボン酸エステルである、
請求項11又は12に記載のエステル製造方法。
【請求項15】
副生するアルコールを反応系外へ除去しながら前記エステル交換反応を実施する、
請求項9〜13のいずれか1項に記載のエステル製造方法。

【公開番号】特開2012−106982(P2012−106982A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196789(P2011−196789)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 社団法人日本化学会 刊行物名 日本化学会第91春季年会(2011)講演予稿集IV 発行年月日 平成23年3月11日 発行者名 名古屋大学 GLOBAL COE化学 刊行物名 GLOBAL COE−RCMS INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON ORGANIC CHEMISTRY AND 7▲TH▼ YOSHIMASA HIRATA MEMORIAL LECTURE 発行年月日 平成23年3月17日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進委託事業、研究開発項目「酸・塩基複合型超分子動的錯体を鍵とする高機能触媒の創生」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託事業、研究開発項目「グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】