説明

エストロゲン受容体β媒介性疾患の治療のためのニアソールおよびその類似体

ニアソールおよびその類似体を含むエストロゲン様組成物を提供する。また、特にヒト、例えばヒト女性においてエストロゲン様効果を得るための前記エキスの使用方法も提供する。一部の実施形態において、該方法は更年期症状の治療を含む。一部の実施形態では、該方法は、エストロゲン受容体陽性の癌(エストロゲン応答性の乳癌など)の治療を含む。一部の実施形態では、該方法は骨粗鬆症の治療または予防を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エストロゲン受容体β(ERβ)媒介性の病状の治療のための医薬の調製のためのニアソールおよびその類似体の使用方法に関する。さらに、本発明は、ERβ媒介性の病状の治療のためのニアソールおよびその類似体の使用方法に関する。
【0002】
(関連出願の参照)
本出願は、2008年6月13日に出願された米国特許仮出願第61/061,494号(引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)の恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
ホルモン補充療法(HRT)は、さまざまな病状、例えば、骨粗鬆症、閉経後女性における心血管疾患リスクの増大、ならびに更年期症状(例えば、のぼせ、性欲減退および鬱)などを治療するために好成績で使用されている。しかしながら、エストラジオール(E)を用いたHRTでは、単独またはプロゲスチンとの組合せのいずれの場合も、望ましくない効果がもたらされることがあり得る。実際、最近、予備試験結果によりHRTが35%高い乳癌リスクと関連していることが示された時点で、女性の健康イニシアチブ(Women’s Health Initiative)(WHI)の研究が急遽停止された。
【0004】
乳癌は、タモキシフェンなどの、いわゆる選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)を使用することにより治療または予防され得る(タモキシフェンの承認前は、閉経前女性の乳癌治療には、多くの場合、エストロゲンの癌刺激効果を低減させるために卵巣除去が含められた)。タモキシフェンは、閉経前女性の乳房組織において、エストロゲンの癌誘導性効果を選択的にブロックするようである。別のSERMであるラロキシフェンは、エストロゲン置換療法剤の代替薬として、骨粗鬆症の治療に承認されている。骨組織におけるエストロゲン様効果の選択的誘導に加え、ラロキシフェンの長期投与は、ラロキシフェン評価の多面的アウトカム(Multiple Outcomes of Raloxifene Evaluation)(MORE)試験において、乳癌の割合の低減と関連していることも示された。
【0005】
タモキシフェンおよびラロキシフェンなどのSERMは、乳房においてエストロゲンの癌誘導効果の選択的低減をもたらすが、リスクがないことはない。例えば、タモキシフェン療法およびラロキシフェン療法はともに、のぼせの発生率の増大と関連しており、タモキシフェン療法は、子宮(子宮内膜)癌のリスクを増大させることが示されている。
【0006】
骨粗鬆症、冠状動脈性心臓病および更年期症状の治療においてエストロゲン補充療法が好成績であり、乳癌および骨粗鬆症の治療において、タモキシフェンおよびラロキシフェンなどのSERMが好成績であるにもかかわらず、依然として、エストロゲン様特性を有する組成物の必要性が存在している。また、薬物化合物の製造コストの増大を考慮すると、天然供給源から得られ得るさらなるエストロゲン様組成物の必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、エストロゲン受容体と関連する1つ以上の疾患状態の治療に有用なエストロゲン様組成物の必要性を確認した。また、本発明者は、組成物を投与された患者が、エストロゲン受容体と関連する別の疾患状態に罹患するリスクまたは尤度を増大させないエストロゲン様組成物の必要性を確認した。また、本発明者は、1つ以上のエストロゲン受容体媒介性疾患状態のリスクを低下させると同時に、別のエストロゲン受容体媒介性疾患状態が治療されるエストロゲン様組成物の必要性を認識した。また、本発明者は、天然供給源から容易に得られるエストロゲン様組成物の必要性、ならびにかかるエストロゲン様組成物の作製方法および使用方法の必要性を確認した。本明細書における開示は、かかる必要性を満たすとともに、関連する利点を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本明細書に記載の実施形態では、化合物(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h):
【化1】


からなる群の少なくとも1つの単離精製された構成員を、多細胞生物においてエストロゲン受容体β(ERβ)がモジュレートされるのに充分な量で含む医薬組成物を提供する。
【0009】
以下、本明細書において、化合物(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)を、単に(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)と称することがあるが、用法は文脈から明白である。
【0010】
一部の実施形態において、該組成物は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの2種類以上、3種類以上または4種類全てを含む。一部の実施形態では、医薬の製造のためのかかる組成物の使用を提供する。特に、本明細書に記載の組成物または医薬は、エストロゲン受容体βアゴニスト効果を有する。一部の実施形態において、該組成物または医薬は、選択的エストロゲン受容体βアゴニスト効果を有する。一部の実施形態において、該組成物または医薬は、エストロゲン受容体αに対して拮抗作用を示すか、またはエストロゲン受容体αに対して測定可能な効果をほとんど、もしくは全くもたない。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、少なくとも1つの更年期症状の治療または予防;骨粗鬆症の治療または予防;子宮癌の治療または予防;および心血管疾患の治療または予防からなる群より選択される少なくとも1つの効果である。一部の実施形態において、エストロゲン様果は、のぼせ、不眠、膣乾燥、性欲減退、尿失禁および鬱の治療または予防からなる群より選択される少なくとも1つの更年期症状の治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は骨粗鬆症の治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、のぼせの治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は子宮癌または乳癌の治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、乳腺過形成、乳腺腫瘍、子宮過形成、子宮腫瘍、頚部過形成、頚部腫瘍、卵巣過形成、卵巣腫瘍、ファローピウス管過形成、ファローピウス管腫瘍のリスクの増大を含まない。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、乳腺過形成、乳腺腫瘍、子宮過形成、子宮腫瘍、頚部過形成、頚部腫瘍、卵巣過形成、卵巣腫瘍、ファローピウス管過形成、ファローピウス管腫瘍のリスクの低下を含む。一部の実施形態では、医薬の調製のための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。
【0011】
本明細書に記載の一部の実施形態では、被検体に、化合物(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h):
【化2】


からなる群の少なくとも1つの単離精製された構成員を、多細胞生物においてエストロゲン受容体β(ERβ)がモジュレートされるのに充分な量で含む組成物の1つをエストロゲン様有効量で投与することを含む、エストロゲン様効果の誘発方法を提供する。
【0012】
一部の実施形態において、該組成物は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの2種類以上、3種類以上または4種類全てを含む。一部の実施形態では、医薬の製造のためのかかる組成物の使用を提供する。特に、本明細書に記載の組成物または医薬は、エストロゲン受容体βアゴニスト効果を有する。一部の実施形態において、該組成物または医薬は、選択的エストロゲン受容体βアゴニスト効果を有する。一部の実施形態において、該組成物または医薬は、エストロゲン受容体αに対して拮抗作用を示すか、またはエストロゲン受容体αに対して測定可能な効果をほとんど、もしくは全くもたない。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、少なくとも1つの更年期症状の治療または予防;骨粗鬆症の治療または予防;子宮癌の治療または予防;および心血管疾患の治療または予防からなる群より選択される少なくとも1つの効果である。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、のぼせ、不眠、膣乾燥、性欲減退、尿失禁および鬱の治療または予防からなる群より選択される少なくとも1つの更年期症状の治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は骨粗鬆症の治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、のぼせの治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は子宮癌または乳癌の治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、乳腺過形成、乳腺腫瘍、子宮過形成、子宮腫瘍、頚部過形成、頚部腫瘍、卵巣過形成、卵巣腫瘍、ファローピウス管過形成、ファローピウス管腫瘍のリスクの増大を含まない。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、乳腺過形成、乳腺腫瘍、子宮過形成、子宮腫瘍、頚部過形成、頚部腫瘍、卵巣過形成、卵巣腫瘍、ファローピウス管過形成、ファローピウス管腫瘍のリスクの低下を含む。一部の実施形態において、医薬の調製のための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。
【0013】
本明細書に記載の一部の実施形態では、エストロゲン応答エレメントの制御下にある遺伝子の活性化方法であって、該遺伝子に作動可能に連結させたエストロゲン応答エレメントとエストロゲン受容体を有する細胞に、前記遺伝子が活性化されるのに充分な量の本明細書に記載の組成物を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、前記細胞はインビトロである。一部の実施形態では、前記細胞はインビボである。一部の実施形態では、前記細胞はERα+乳房組織内に存在するものである。一部の実施形態では、前記細胞はERβ+乳房組織内に存在するものである。一部の実施形態では、前記細胞はERα/ERβ+乳房組織内に存在するものである。一部の実施形態では、前記エストロゲン応答エレメントを形質転換細胞において発現させる。一部の実施形態では、エストロゲン応答エレメントとエストロゲン受容体を形質転換細胞において発現させる。一部の実施形態では、前記エストロゲン応答エレメントを該細胞において異種発現させる。一部の実施形態では、エストロゲン応答エレメントとエストロゲン受容体を該細胞において異種発現させる。一部の実施形態において、該細胞は、ERE制御型遺伝子で形質転換させたU937、U2OS、MDA−MB−435およびMCF−7細胞からなる群より選択される。一部の実施形態において、該細胞は、ERαを発現するものである。一部の実施形態において、該細胞は、ERβを発現するものである。一部の実施形態において、ERE制御型遺伝子はERE−tk−Lucである。
【0014】
本明細書に記載の一部の実施形態では、TNF応答エレメントの制御下にある遺伝子とエストロゲン受容体を含む細胞に、TNF RE制御型遺伝子が抑制されるのに有効な量の本明細書に記載の組成物を投与することを含む、TNF RE制御型遺伝子の発現の抑制方法を提供する。一部の実施形態において、TNF RE制御型遺伝子はTNF−αである。一部の実施形態において、TNF RE制御型遺伝子はTNF RE−Lucである。一部の実施形態において、前記細胞はインビトロである。一部の実施形態では、前記細胞はインビボである。一部の実施形態では、前記細胞はER+乳房組織内に存在するものである。一部の実施形態では、前記細胞はERα+乳房組織内に存在するものである。一部の実施形態では、前記細胞はERβ+乳房組織内に存在するものである。一部の実施形態において、前記TNF応答エレメントは該細胞において内生的に発現される。一部の実施形態では、TNF応答エレメントとエストロゲン受容体の両方が該細胞において内生的に発現される。一部の実施形態では、前記TNF応答エレメントを該細胞において異種発現させる。一部の実施形態では、TNF応答エレメントとエストロゲン受容体を該細胞において異種発現させる。一部の実施形態では、前記細胞はエストロゲン受容体遺伝子を含み、TNF応答エレメント制御型遺伝子で形質転換され、U937、U2OS、MDA−MB−435およびMCF−7細胞からなる群より選択される。一部の実施形態において、エストロゲン受容体遺伝子はERα発現遺伝子である。一部の実施形態では、エストロゲン受容体遺伝子はERβ発現遺伝子である。
【0015】
本明細書に記載の一部の実施形態では、
(a)4−ヨードフェノールのヒドロキシ基をMOMClで保護し、保護型中間体:
【化3】

を形成すること;
(b)3をトリメチルシリルアセチレンと、ジエチルアミン中、ビス[トリフェニルホスフィン]パラジウム二塩化物およびCuIの存在下で接触させ:
【化4】

を形成すること;
(c)4−ヒドロキシベンズアルデヒド(benzadehyde)をMOMClと反応させ:
【化5】

を形成すること;
(d)6をエチニルマグネシウム(magnecium)ブロミドと反応させ:
【化6】

を形成すること;
(e)4と7を反応させて8:
【化7】

を形成すること;
(f)8の三重結合を環元して9:
【化8】

を形成すること;ならびに
(g)MOM保護基を除去して1(ニアソール):
【化9】

を形成すること
を含む、ニアソールの調製方法を提供する。
【0016】
文献の引用
本明細書において挙げた刊行物および特許出願はすべて、引用により、個々の各刊行物および特許出願が、引用により組み込まれて、あたかも具体的に個々に示されているのと同程度に本明細書に組み込まれる。
【0017】
本発明の新規な特徴は、特に、添付の特許請求の範囲に示したものである。本発明の原理を用いた例示的実施形態を示した以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することにより、本発明の特徴および利点のより良好な理解が得られよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】最小限のチミジンキナーゼ(tk)プロモーターに連結させたエストロゲン応答エレメントコードDNAとルシフェラーゼ(Luc)コード配列で形質転換したU937(ヒト単球)細胞における、エストロゲン受容体α(ERα)、エストロゲン受容体β(ERβ)のいずれか、または両方の存在下での種々の濃度のエストラジオール(E)に応答したルシフェラーゼ発現のグラフである。Eの存在下では、ERβは、EREに対する刺激効果がERαよりもずっと小さい。
【図2】最小限のチミジンキナーゼ(tk)プロモーターに連結させたエストロゲン応答エレメントコードDNAとルシフェラーゼ(Luc)コード配列で形質転換したMDA−MB−435(ヒト転移性乳癌)細胞における、エストロゲン受容体α(ERα)、エストロゲン受容体β(ERβ)のいずれか、または両方の存在下での種々の濃度のエストラジオール(E)に応答したルシフェラーゼ発現のグラフである。Eの存在下では、ERβは、EREに対する刺激効果がERαよりもずっと小さい。注目すべきことに、ERαとERβをこの細胞株において共発現させると、ERβ発現により、Eの存在下でのERαのERE刺激効果が大きく低減される。
【図3】最小限のチミジンキナーゼ(tk)プロモーターに連結させたエストロゲン応答エレメントαコードDNAとルシフェラーゼ(Luc)コード配列で形質転換した細胞における、エストロゲン受容体α(ERα)またはエストロゲン受容体β(ERβ)いずれかの存在下での種々の濃度のニアソールに応答したルシフェラーゼ発現を比較するグラフである。ERαの存在下に対するERβの存在下でのルシフェラーゼ発現の増強は、ニアソールが選択的エストロゲン受容体βアゴニストであることを示す。
【図4】TNF−EREのERβ選択的抑制を示す。
【図5】最小限のチミジンキナーゼ(tk)プロモーターに連結させたエストロゲン応答エレメントαコードDNAとルシフェラーゼ(Luc)コード配列で形質転換した細胞における、エストロゲン受容体β(ERβ)の存在下でのニアソール+EtOH、ニアソール+ラロキシフェン、ニアソール+タモキシフェンおよびニアソール+エストラジオール(E)に応答したルシフェラーゼ発現を比較したものである。
【図6】ERβおよびERαでのニアソールの濃度結合曲線を示す。
【図7】腎被膜のMCF−7乳癌細胞異種移植片に対するエストラジオール(E)、ニアソールおよび対照(担体)の効果の比較を示す。MCF−7異種移植片は、ヌードマウスの腎臓内に導入した。マウスを3つの処置群に無作為化した。エストラジオール群には0.5mg/時のE(生理食塩水中)を与え、ニアソール群には2.5mg/時のニアソール(生理食塩水中)を与え、対照群には生理食塩水のみを与えた。各処置群を28日間処置した後、マウスを安楽死させ、異種移植片を含む腎臓を摘出し、写真撮影し、重量を計測した。図に示されるように、エストラジオールは、対照と比べて腫瘍異種移植片の増殖に対して拮抗作用を示すが、ニアソールは、MCF−7乳癌異種移植片の増殖を阻害する。
【図8】子宮重量に対するインビボでのE、ニアソールおよび対照の効果の比較を示す。雌ヌードマウスをいずれかのEで処置した。マウスを3つの処置群に無作為化した。エストラジオール群には0.5mg/時のE(生理食塩水中)を与え、ニアソール群には2.5mg/時のニアソール(生理食塩水中)を与え、対照群には生理食塩水のみを与えた。28日後、各マウスを安楽死させ、子宮を取り出し、重量を計測した。図に示されるように、対照と比べ、Eは子宮増殖に対して拮抗作用を示すが、ニアソールは反対の効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において開示する実施形態では、化合物(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)からなる群の少なくとも1つの単離精製された構成員を、多細胞生物においてエストロゲン受容体β(ERβ)がモジュレートされるのに充分な量で含む医薬組成物を提供する。
【化10】


【0020】
一部の実施形態において、該組成物は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの2種類以上、3種類以上または4種類全てを含む。一部の実施形態では、医薬の製造のためのかかる組成物の使用を提供する。特に、本明細書に記載の組成物または医薬は、エストロゲン受容体βアゴニスト効果を有する。一部の実施形態において、該組成物または医薬は、選択的エストロゲン受容体βアゴニスト効果を有する。一部の実施形態において、該組成物または医薬は、エストロゲン受容体αに対して拮抗作用を示すか、またはエストロゲン受容体αに対して測定可能な効果をほとんど、もしくは全くもたない。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、少なくとも1つの更年期症状の治療または予防;骨粗鬆症の治療または予防;子宮癌の治療または予防;および心血管疾患の治療または予防からなる群より選択される少なくとも1つの効果である。一部の実施形態において、エストロゲン様果は、のぼせ、不眠、膣乾燥、性欲減退、尿失禁および鬱の治療または予防からなる群より選択される少なくとも1つの更年期症状の治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は骨粗鬆症の治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、のぼせの治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は子宮癌または乳癌の治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、乳腺過形成、乳腺腫瘍、子宮過形成、子宮腫瘍、頚部過形成、頚部腫瘍、卵巣過形成、卵巣腫瘍、ファローピウス管過形成、ファローピウス管腫瘍のリスクの増大を含まない。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、乳腺過形成、乳腺腫瘍、子宮過形成、子宮腫瘍、頚部過形成、頚部腫瘍、卵巣過形成、卵巣腫瘍、ファローピウス管過形成、ファローピウス管腫瘍のリスクの低下を含む。一部の実施形態において、医薬の調製のための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。
【0021】
本明細書に記載の一部の実施形態では、被検体に、化合物(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)からなる群の少なくとも1つの単離精製された構成員を、多細胞生物においてエストロゲン受容体β(ERβ)がモジュレートされるのに充分な量で含む組成物の1つ(one)をエストロゲン様有効量で投与することを含む、エストロゲン様効果の誘発方法を提供する。
【化11】


【0022】
一部の実施形態において、該組成物は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの2種類以上、3種類以上または4種類全てを含む。一部の実施形態では、医薬の製造のためのかかる組成物の使用を提供する。特に、本明細書に記載の組成物または医薬は、エストロゲン受容体βアゴニスト効果を有する。一部の実施形態において、該組成物または医薬は、選択的エストロゲン受容体βアゴニスト効果を有する。一部の実施形態において、該組成物または医薬は、エストロゲン受容体αに対して拮抗作用を示すか、またはエストロゲン受容体αに対して測定可能な効果をほとんど、もしくは全くもたない。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、少なくとも1つの更年期症状の治療または予防;骨粗鬆症の治療または予防;子宮癌の治療または予防;および心血管疾患の治療または予防からなる群より選択される少なくとも1つの効果である。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、のぼせ、不眠、膣乾燥、性欲減退、尿失禁および鬱の治療または予防からなる群より選択される少なくとも1つの更年期症状の治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は骨粗鬆症の治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、のぼせの治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は子宮癌または乳癌の治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、乳腺過形成、乳腺腫瘍、子宮過形成、子宮腫瘍、頚部過形成、頚部腫瘍、卵巣過形成、卵巣腫瘍、ファローピウス管過形成、ファローピウス管腫瘍のリスクの増大を含まない。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、乳腺過形成、乳腺腫瘍、子宮過形成、子宮腫瘍、頚部過形成、頚部腫瘍、卵巣過形成、卵巣腫瘍、ファローピウス管過形成、ファローピウス管腫瘍のリスクの低下を含む。一部の実施形態において、医薬の調製のための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。
【0023】
本明細書に記載の一部の実施形態では、エストロゲン応答エレメントの制御下にある遺伝子の活性化方法であって、該遺伝子に作動可能に連結させたエストロゲン応答エレメントとエストロゲン受容体を有する細胞に、前記遺伝子が活性化されるのに充分な量の本明細書に記載の組成物を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、前記細胞はインビトロである。一部の実施形態では、前記細胞はインビボである。一部の実施形態では、前記細胞はERα+乳房組織内に存在するものである。一部の実施形態では、前記細胞はERβ+乳房組織内に存在するものである。一部の実施形態では、前記細胞はERα/ERβ+乳房組織内に存在するものである。一部の実施形態では、前記エストロゲン応答エレメントを形質転換細胞において発現させる。一部の実施形態では、エストロゲン応答エレメントとエストロゲン受容体を形質転換細胞において発現させる。一部の実施形態では、前記エストロゲン応答エレメントを該細胞において異種発現させる。一部の実施形態では、エストロゲン応答エレメントとエストロゲン受容体を該細胞において異種発現させる。一部の実施形態において、該細胞は、ERE制御型遺伝子で形質転換させたU937、U2OS、MDA−MB−435およびMCF−7細胞からなる群より選択される。一部の実施形態において、該細胞は、ERαを発現するものである。一部の実施形態において、該細胞は、ERβを発現するものである。一部の実施形態において、ERE制御型遺伝子はERE−tk−Lucである。
【0024】
本明細書に記載の一部の実施形態では、TNF応答エレメントの制御下にある遺伝子とエストロゲン受容体を含む細胞に、TNF RE制御型遺伝子が抑制されるのに有効な量の本明細書に記載の組成物を投与することを含む、TNF RE制御型遺伝子の発現の抑制方法を提供する。一部の実施形態において、TNF RE制御型遺伝子はTNF−αである。一部の実施形態において、TNF RE制御型遺伝子はTNF RE−Lucである。一部の実施形態において、前記細胞はインビトロである。一部の実施形態では、前記細胞はインビボである。一部の実施形態では、前記細胞はER+乳房組織内に存在するものである。一部の実施形態では、前記細胞はERα+乳房組織内に存在するものである。一部の実施形態では、前記細胞はERβ+乳房組織内に存在するものである。一部の実施形態において、前記TNF応答エレメントは該細胞において内生的に発現される。一部の実施形態では、TNF応答エレメントとエストロゲン受容体の両方が該細胞において内生的に発現される。一部の実施形態では、前記TNF応答エレメントを該細胞において異種発現させる。一部の実施形態では、TNF応答エレメントとエストロゲン受容体を該細胞において異種発現させる。一部の実施形態では、前記細胞はエストロゲン受容体遺伝子を含み、TNF応答エレメント制御型遺伝子で形質転換され、U937、U2OS、MDA−MB−435およびMCF−7細胞からなる群より選択される。一部の実施形態において、エストロゲン受容体遺伝子はERα発現遺伝子である。一部の実施形態では、エストロゲン受容体遺伝子はERβ発現遺伝子である。
【0025】
本明細書に記載の一部の実施形態では、
(a)4−ヨードフェノールのヒドロキシ基をMOMClで保護し、保護型中間体:
【化12】

を形成すること;
(b)3をトリメチルシリルアセチレンと、ジエチルアミン中、ビス[トリフェニルホスフィン]パラジウム二塩化物およびCuIの存在下で接触させ:
【化13】

を形成すること;
(c)4−ヒドロキシベンズアルデヒドをMOMClと反応させ:
【化14】

を形成すること;
(d)6をエチニルマグネシウムブロミドと反応させ:
【化15】

を形成すること;
(e)4と7を反応させて8:
【化16】

を形成すること;
(f)8の三重結合を環元して9:
【化17】

を形成すること;ならびに
(g)MOM保護基を除去して1(ニアソール):
【化18】

を形成すること
を含む、ニアソールの調製方法を提供する。
【0026】
乳房の新生物は、女性において診断される最も一般的な癌である。2000年では、新たに184,000例の乳癌が診断され、45,000名の女性が乳癌で死亡している。乳癌の原因は、おそらく多因子性であるが、エストロゲンが乳癌を促進させることを示す有力な臨床的、疫学的および生物学的研究がある:(a)ホルモン補充療法(HRT)は、51例の研究のメタアナリシスによると、乳癌のリスクが35%高いことと関連している;(b)乳癌は、乳房細胞においてERに結合し、エストロゲンの作用に対して拮抗作用を示すタモキシフェンまたはラロキシフェンにより予防することができる;(c)乳癌を有する閉経前女性において両側卵巣摘出すると、生存の増大がもたらされる;(d)エストロゲンに対する曝露が長いほど(早い初経または遅い閉経では、それぞれ、相対リスク=1.3および1.5〜2.0)、乳癌の発生率が高い;(e)エストロゲンによりER陽性乳癌細胞の増殖が増大する;ならびに(f)エストロゲンにより、増殖促進遺伝子(サイクリンD1、c−mycおよびc−fosなど)の生成が増大する。
【0027】
乳腺腫瘍の約60〜70%はエストロゲン受容体を含む。ここ数十年の間、乳腺腫瘍は、ERの存在について解析されてきた。ER+腫瘍の約70%は、抗エストロゲン療法に応答性である。この観察結果により、ER+腫瘍はER陰性腫瘍よりも良好な予後を有するという考えがもたらされた。しかしながら、ERβの発見により、この解釈は複雑となり、いくつかの難解な臨床上の疑問が生じた。腫瘍がER+であるかどうかを調べる現行の方法は、ERαのみが検出される抗体を使用するものであるため、ERαとERβの役割を理解することは非常に重要である。したがって、乳腺腫瘍内のERの臨床転帰に対する効果を調べるほとんどの研究は、ERαの状態しか反映していない。しかしながら、いくつかの最近の研究により、ヒト乳腺腫瘍においてERβ mRNAの存在が検出された。ERβに対する特異的で感度のよい抗体がないため、ほとんどの研究ではERβの測定をRT−PCRに依存していた。Dotzlawらにより、RT−PCRによって乳腺腫瘍生検材料中にERβが最初に検出された。彼らにより、乳腺腫瘍の70%がERβを発現し、90%がERαを発現することが見出された。さらに、彼らにより、いくつかのER陰性細胞株もまたERβ mRNAを発現することが示された。このような所見は、ERβが乳腺腫瘍において高度に発現されていること、および多くの腫瘍でたいていERαとERβの両方が共発現されていることを示唆する。実際、一部のER−腫瘍はERβを含む。また、Dotzlawらにより、ERβ mRNAは、ER+/PR−(PRはプロゲスチン受容体である)腫瘍において、ER+/PR+腫瘍と比べて有意に低いことが示された。この著者により、この観察結果は、ER+/PR+の方がタモキシフェンに対して応答し易いため、ERβ発現が予後不良と関連していることを示すことが示唆された。他の研究では、ERβの存在によって予後不良がもたらされることが示唆されている。Speirsらにより、ほとんどの乳腺腫瘍がERβ mRNAを単独またはERα mRNAとの組合せで発現していることが見出された。ERαとERβの両方のmRNAを発現している腫瘍は、陽性リンパ節と関連しており、腫瘍の悪性度が高いと特性評価される傾向にあった。さらに、ERβ発現の増大は、発癌化学物質で処理したMCF−10F細胞において起こり、これは、ERβの発現が乳癌の開始と進行の一因であり得ることを示唆する。最近、Jensenらにより、免疫組織化学検査(IHC)によって、29例の浸潤性乳腺腫瘍においてERβの発現が解析された。彼らにより、ERβ発現が、細胞増殖の特異的マーカーであるKi67とサイクリンAの上昇と関連していることが見出された。さらに、これらの増殖マーカーの最も高い発現はERα+/ERβ+腫瘍に存在した。ERα−/ERβ+である症例の数は非常に少ない(n=7)が、該著者により、ERβが乳腺腫瘍における細胞増殖を媒介することが示唆された。また、Speirsらにより、ERβ mRNAがタモキシフェン抵抗性腫瘍において、タモキシフェン感受性腫瘍と比べて有意に上昇していることが報告された。
【0028】
対照的に、別の研究では、ERβの存在により良好な予後がもたらされることが示されている。Iwaoらにより、乳腺腫瘍が前浸潤性から浸潤性の腫瘍へと進行するにつれて、ERα mRNAは上方調節され、ERβ mRNAは下方調節されることが示された。凍結腫瘍切片のIHCを用いて、Jarvinenらにより、ERβ発現は、無腋窩節状態、低悪性度、および低S期画分と関連していることが見出された。また、Omotoらによる研究により、ERβを含む腫瘍での方が無疾患生存率が高かったため、ERβ陽性腫瘍はERβ陰性腫瘍よりも良好な予後と相関していることが見出された。また、ERβ発現では、プロゲステロン受容体の存在および乳腺腫瘍の充分な分化との強い関連性が示された。また、ERβのレベルが正常乳腺組織において最も高いこと、およびこのレベルは、腫瘍が前癌性から癌性の病変へと進行するにつれて低下することが報告されている。このような研究は、ERβが腫瘍抑制因子としての機能を果たしているのかもしれないこと、およびERβの減少によって乳房での発癌が促進されることを示す。Mannらによる研究では、癌細胞の10%より多くでのERβの発現が、タモキシフェンで治療された女性の良好な生存と関連していることが示された。このような研究を総合すると、ERβの存在により良好な予後がもたらされることが示される。RT−PCRおよびIHCデータは、アデノウイルス媒介性ERβ発現によって、ER陰性細胞株であるMDA−MB−231の増殖のリガンド非依存性阻害がもたらされることが示された報告と整合する。
【0029】
この結果は、乳癌の病因および予後におけるERβの役割が不明確であることを示す。いくつかの理由によって、これらの研究間の明白な矛盾が説明され得る。第1に、ERβ mRNAとERβタンパク質間の相関性が不充分であるかもしれないことである。この考えは、リガンド結合アッセイによって検出可能なERをもたない一部のER陰性細胞株におけるERβ mRNAの存在と整合する。第2に、IHC試験において、特異性および感度に関する特性評価が不充分であった種々の市販のERβ抗体が使用されたことである。第3に、結論のほとんどが、数例の乳癌症例に基づいたものであったことである。乳癌におけるERαとERβの役割を明確にするためには、明らかに、より多くの研究が必要である。
【0030】
乳癌における補助療法剤および予防的化学療法剤としてのSERMの役割:エストロゲンは乳癌細胞の増殖を促進させるため、乳腺腫瘍に対するエストロゲンのこの効果をブロックするために、いくつかの治療的アプローチが実施されている。このようなストラテジー、例えば、卵巣切除、抗エストロゲン、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体またはアロマターゼ阻害薬は、エストロゲン産生の低減またはエストロゲンの作用のブロックのいずれかによって奏功する。これらのストラテジーはすべて、ERαとERβの両方の作用を非選択的にブロックする。乳腺腫瘍を予防および治療するために臨床的に使用されている最も一般的なアプローチは、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)、タモキシフェンおよびラロキシフェンである。
【0031】
タモキシフェンは、非ステロイド系のトリフェニルエチレン誘導体であり、乳房などの一部の組織ではアンタゴニスト作用を示すが、子宮内膜および骨などの別の一部の組織ではアゴニスト作用を有するため、基本型のSERMである。タモキシフェンは、エストロゲン受容体陽性乳癌を有する女性において乳腺腫瘍の再発を低下させるための補助療法剤としての臨床的有効性が広く研究されている。5年間のタモキシフェン療法により、再発リスクは42%低下し、乳癌による死亡率は22%低下し、続発性の対側性原発乳腺腫瘍が低下する。ほぼER陽性乳腺腫瘍の3分の2はタモキシフェンに応答するが、ER陰性腫瘍を有する女性が補助的タモキシフェンの恩恵を受けることを示す証拠は非常に少ない。ごく最近、米国乳癌予防治験(BCPT)により、タモキシフェンは、乳癌のリスクが高いとみなされる女性において、浸潤性の原発乳癌のリスクを49%低下させることが示された。この研究は、タモキシフェンが、乳癌の病歴を有する女性に有効な第一の補助療法剤であり、乳癌発症リスクが高い女性に有効な予防的化学療法剤であることを示す。
【0032】
ラロキシフェンは、ベンゾチオフェン類型のSERMの一構成員であり、最近、骨粗鬆症の予防および治療に対して承認された。ラロキシフェンは、乳癌の女性に対する補助療法剤としての有効性については評価されていない。しかしながら、ラロキシフェンの多面的アウトカム(MORE)試験では、乳癌予防に対するラロキシフェンの効果が評価された。MORE治験は、骨粗鬆症を有する7705名の閉経後女性の無作為化プラセボ対照3年試験であった。このMORE治験では、40ヶ月のメジアン追跡後、ラロキシフェン治療群の5129名の女性のうち13例に乳癌がみられたのに対し、プラセボを受けた2576名の女性では27例にみられた(RR=0.24)。タモキシフェンと同様、ラロキシフェンは、エストロゲン受容体陽性腫瘍の発生率の低下には有効であるが、エストロゲン受容体陰性腫瘍ではそうでない。ラロキシフェンは、検出可能なレベルの血清エストラジオールを有する閉経後女性において乳癌のみを予防することを示す最近の研究により、乳癌の促進におけるエストロゲンの役割に関するさらなる証拠が得られている。
【0033】
エストロゲン受容体の構造:SERMがER陽性腫瘍においてのみ奏功するという事実は、SERMが乳房に対して保護効果を発揮するためには、エストロゲン受容体と相互作用することが必要であることを示す。既知のエストロゲン受容体にはERαとERβの2種類があり、これらはステロイド核受容体スーパーファミリーの構成員である。ERαは1986年に最初にクローニングされたが、驚いたことに、第2のERが約10年後に発見され、ERβと命名された。ERαは、595個のアミノ酸を含み、一方、ERβは530個のアミノ酸を含む。どちらの受容体も、3つの相違するドメインで構成されたモジュラータンパク質である。アミノ末端ドメイン(A/Bドメイン)は、最も保存されていない領域であり、ERαとERβ間に示される相同性はわずか15%である。このドメインは、エストラジオールの非存在下で遺伝子転写を活性化することができる活性化機能(AF−1)を有する。ERの中央領域は2つのジンクフィンガーモチーフを含み、該モチーフは、標的遺伝子のプロモーター内に存在する3つのヌクレオチドによって分断されたパリンドローム逆位反復配列に結合する。ERαおよびERβのDNA結合ドメイン(DBD)は、事実上同一であり、95%の相同性を示す。カルボキシ末端ドメインは、いくつかの不可欠な機能を実行するリガンド結合ドメイン(LBD)を含む。LBDは、エストロゲン様化合物が結合する大型疎水性ポケットおよびERの二量体化に関与する領域を構成する領域を含む。また、LBDは、補助調節タンパク質と相互作用する第2の活性化機能(AF−2)も含む。AF−2は、エストロゲンの活性化と遺伝子転写の抑制の両方に必要とされる。ERαおよびERβのLBDの相同性はわずか約55%である。ERαとERβのLBDのアミノ酸組成の顕著な違いは、転写における役割が相違するERがもたらされるように進化したものであり得る。これにより、ERαとERβが異なる遺伝子の活性を調節し、異なる生理学的効果が誘発されることが可能となり得る。この考えは、ERαおよびERβのノックアウトマウスの研究によって裏付けられている。例えば、ERαノックアウトマウスは、始原的(primitive)乳房および子宮の発達を有するが、ERβノックアウトマウスでは正常な乳腺および子宮が発達する。この観察結果は、これらの組織の発達にはERαのみが必要とされることを示す。さらに、本発明者らは、遺伝子の活性化では、ERαがERβよりも有効であるが、遺伝子転写の抑制では、ERβがERαよりも有効であることを見出した。
【0034】
エストロゲンの作用機序:エストロゲンは、遺伝子転写を活性化または抑制し得る。遺伝子転写の活性化には、特性評価された2つの経路、古典的ERE(エストロゲン応答エレメント)経路とAP−1経路がある。エストロゲンが遺伝子の転写を調節するのに必要な不可欠な成分は、:ER(ERαおよび/またはERβ)、標的遺伝子内のプロモーターエレメント、および補助調節タンパク質の少なくとも3つである。ERに対するエストラジオールの結合により、コンホメーションの変化が生じ、これにより、転写経路を開始させるいくつかの重要な工程がもたらされる。第1に、EとERの相互作用により、ERからのシャペロンタンパク質の解離がもたらされる。これにより、ERの二量体化表面とDNA結合ドメインが露出する。シャペロンタンパク質の喪失により、ERは、標的遺伝子のプロモーター領域内のEREと二量体化および結合することが可能になる。
【0035】
第2に、Eの結合によってERのLEDのヘリックス12が移動し、ERのAF−2機能を構成する表面がもたらされる。AF−2は、ERのヘリックス3、5および12で構成された保存された疎水性ポケットからなり、ERの該ヘリックスは、一緒になって、p160クラスのコアクチベータタンパク質(コアクチベータ)(ステロイド受容体コアクチベータ−1(SRC−1)またはグルココルチコイド受容体相互作用タンパク質1(GRIP 1)など)に対する結合表面を構成する。コアクチベータ(「補助調節因子としても知られる))は、AF−2のヘリックスに囲まれた疎水性裂溝内に突出するLXXLLで構成されたいくつかの反復アミノ酸モチーフを含む。コアクチベータは、ヒストンアセチラーゼ活性を有する。遺伝子の活性化は、ERとコアクチベータタンパク質がEREにおいて複合体を形成し、これにより、DNAに結合されたヒストンタンパク質のアセチル化が引き起こされた後に起こると考えられる。このヒストンのアセチル化によってクロマチン構造が変化し、それにより、ER/補助調節因子複合体によって、EREと、標的遺伝子のTATAボックス領域で合成された基礎転写タンパク質との間に架橋が形成され、遺伝子の転写が開始され得る。
【0036】
ERE経路に対するSERMの効果:エストロゲンとは異なり、SERMはERE経路を活性化しない。代わりに、SERMは、ERE経路に対するエストロゲンの効果を競合的にブロックする。エストロゲンと同様、SERMは、ERαとERβに高親和性で結合し、シャペロンタンパク質の解離、ERの二量体化およびEREに対するERの結合を引き起こす。したがって、SERMのアンタゴニスト作用は、プロモーター領域に対するERの結合に遠位の工程で生じる。SERMのアンタゴニスト作用の分子機構は、ERαおよびERβのLBDの結晶化によって明確になった。ER LBDの構造から、E、タモキシフェンおよびラロキシフェンは同じ結合ポケットに結合することが明白である。しかしながら、タモキシフェンとラロキシフェンはバルキーな側鎖を含むが、Eには存在しない。ERのx線構造により、このSERMのバルキーな側鎖によってLBDの動きが障害され、そのために機能性AF−2表面の形成が妨げられることが明らかになった。注目すべきことに、SERMがERαに結合すると、ヘリックス12内の配列(LXXML)(これは、LXXLLモチーフと類似している)がAF−2表面の疎水性裂溝と相互作用し、コアクチベータ認識部位を閉塞させる。したがって、エストロゲンとは異なり、SERMは、機能性AF−2表面をもたらさない。これにより、コアクチベータの結合が妨げられる。コアクチベータタンパク質はSERMの存在下でAF−2表面に結合しないため、活性化経路は急激に停止される。コアクチベータが漸増するのではなく、SERMがリガンド結合したERによって、コリプレッサ(N−CoRなど)が漸増される。
【0037】
これらの研究により、SERMのアンタゴニスト特性は、少なくとも3つの要素によるものであることが示された。第1に、SERMは、エストロゲンと同じ結合ポケットに結合し、そのERに対する結合を競合的にブロックすることである。第2に、SERMは、ERが、ERE経路の転写活性化に必要とされるコアクチベータタンパク質と相互作用することを妨げることである。第3に、SERMは、遺伝子の転写活性化を妨げるコリプレッサを漸増させることである。このようなSERMの作用により、たいていの場合、ラロキシフェンとタモキシフェンが、どのようにして乳房細胞においてアンタゴニストとして作用し、乳癌の発生を抑止するのかが説明される。
【0038】
また、SERMはEよりも、AP−1エレメントを有する遺伝子の活性化において有効である。実際、Eは、AP−1エレメントのSERM媒介性活性化のアンタゴニストである。SERMは、AP−1経路を活性化させることにより、骨および子宮内膜などの組織ではアゴニスト作用を示すことが前提とされている。興味深いことに、SERMは、ERβの存在下でのAP−1経路の活性化においてより強力であり、これは、SERMが、ERβを多く含む組織において、より効率的にAP−1経路を誘発することを示す。エストロゲンは、SERMと比較すると、AP−1経路の活性化においてずっと弱いため、エストロゲン媒介性乳房発癌におけるAP−1経路の役割は不明である。しかしながら、AP−1経路は、乳腺腫瘍のタモキシフェンに対する抵抗性に関与しているかもしれないことが示唆されている。
【0039】
本発明の態様により、ERE−tkLucの活性化では、ERβはERαよりも弱い;TNF−RE−tkLucの抑制では、ERβはERαよりも有効である;およびERβは、ERE−tkLucのERα媒介性転写活性化を阻害することを示す研究を行なった。実験の詳細は、本明細書において後述する実施例のセクションに論考する。
【0040】
エストロゲン受容体βモジュレート組成物の製造
ニアソールの全合成は、以下のスキーム1に示すようにして行なわれ得る。
【化19】

試薬および条件:
(i)MOMCl,NaH,DMF,室温90%;(ii)CuI,[(Ph)P]PdCl2,EtNH,トリメチルシリルアセチレン,還流,94%;(iii)MOMCl,KCO,アセトン,還流,88%;(iv)エチニルMgBr,エーテル,還流,96%;(v)InCl,1,2−ジクロロエタン,還流,62%;(vi)Pd/CaCO,キノリン,ヘキサン,Hガス,室温95%;(vii)濃度HCl,MeOH,還流,98%

【0041】
前述のスキーム1によれば、ニアソールの調製方法の一例は、
(a)4−ヨードフェノールのヒドロキシ基をMOMClで保護し、保護型中間体:
【化20】

を形成すること;
(b)3をトリメチルシリルアセチレンと、ジエチルアミン中、ビス[トリフェニルホスフィン]パラジウム二塩化物およびCuIの存在下で接触させ:
【化21】

を形成すること;
(c)4−ヒドロキシベンズアルデヒドをMOMClと反応させ:
【化22】

を形成すること;
(d)6をエチニルマグネシウムブロミドと反応させ:
【化23】

を形成すること;
(e)4と7を反応させて8:
【化24】

を形成すること;
(f)8の三重結合を環元して9:
【化25】

を形成すること;ならびに
(g)MOM保護基を除去して1(ニアソール):
【化26】

を形成すること
を含む。
【0042】
化合物(b)〜(h)は、ヒドロキシ基の1つを選択的にブロックし、ブロックされていないヒドロキシ基に適切なコンジュゲート(conjugate)基をカップリングさせ、保護されたヒドロキシ基を脱ブロックすることにより調製され得る。一部の択一的な実施形態では、出発物質2と5が、異なる条件下で除去され得る異なるヒドロキシブロック基で保護され得る。次いで、一方または他方の保護基を選択的に除去し、得られた脱保護ヒドロキシ基を適切な試薬とカップリングさせ、次いで、残留保護基を除去して適切な化合物(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)または(h)を生成させることにより反応を進行させる。あるいはまた、反応スキームIIに従ってもよい。
【化27】

【0043】
この場合、PG1は、第1の組の条件下で除去可能な第1の保護基であり、PG2は、第2の相違する組の条件下で除去可能な第2の保護基である。次いで、以下のスキームIIIaまたはIIIb:
【化28】

の一方の下で反応を進行させ得る。
【0044】
ここで、Xは脱離基であり、Aは、化合物(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)または(h)内のコンジュゲート基の1つに対応するコンジュゲート基である。好適な保護基は既知であり、前記保護基を除去する識別的方法もそうである。好適なコンジュゲート試薬X−Aもまた既知である。
【0045】
医薬組成物
本明細書に記載の医薬組成物は、本明細書に記載の化合物:
【化29】


の1種類以上を含む。
【0046】
(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む医薬組成物は、上記のようにして、溶液形態または乾燥形態のいずれかに調製され得る。溶液形態では、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む医薬組成物は、フレーバーティーまたはノンフレーバーティーの形態で投与され得る。一部の実施形態では、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む医薬組成物の苦味を弱めるために、なんらかのフレーバー(例えば、甘味料)が望ましい場合があり得る。また、該溶液形態は、お茶またはエリキシル剤の形態に調製され得る。この場合も、甘味料などのフレーバーが望ましい場合があり得る。該医薬組成物の患者の許容性を改善するため、味覚マスキング剤を使用してもよい。
【0047】
(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む医薬組成物は、経口利用可能な形態、例えば、カプセル剤、錠剤、キャプレット剤などとして製剤化され得る。カプセル剤は、(a)、(b)、(c).(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む医薬組成物の適当な量を1つ以上のゼラチンカプセルのシェルに測り入れ、カプセル(1つまたは複数)を構成することにより調製され得る。錠剤およびキャプレット剤は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む医薬組成物を1種類以上の結合剤および任意選択で1種類以上の崩壊剤と合わせることにより調製され得る。錠剤、キャプレット剤、カプセル剤などは、例えば、胃の不調を抑制するために腸溶コーティングでコーティングしてもよい。
【0048】
(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む医薬組成物を、1種類以上のゲル化剤と合わせ、ゲルカプセル内に挿入してもよい。あるいはまた、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む医薬組成物を、ゲル化剤と、任意選択で1種類以上のフレーバー剤と合わせ、経口投与のための食用ゲルとしてもよく、フレーバーなしの形態を、経直腸坐薬のゲル剤またはゲルカプセル剤として投与してもよい。
【0049】
(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物の単位用量は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を1mg〜約10gを含む量であり得る。一部の実施形態において、単位用量は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を約1mg〜約10mg、約1mg〜約100mg、約1mg〜約1000mg(1g)、約1mg〜約10000mg(10g)含む。一部の実施形態において、単位用量は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を約10mg〜約100mg、約10mg〜約1000mgまたは約10mg〜約10000mg含む。一部の実施形態において、単位用量は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物を、約100mg〜約5000、約100mg〜約2500mg、約100mg〜約2000mg、約100mg〜約1500mg、約100〜約1000、約100〜約800mg、またはその同等量含む。
【0050】
(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む医薬組成物は、エストロゲン応答エレメント(ERE)の制御下にある遺伝子のERβ選択的エストロゲン様活性化をもたらすものである。したがって、EREとERβを含む一部の細胞では、該細胞を、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物と接触させると、EREの制御下にある遺伝子の刺激がもたらされる。インビトロ細胞系では、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物によるERE媒介性活性化により、EREに作動可能に連結させた遺伝子の発現がもたらされる。特定の実施形態では、ERと、最小限のチミジンキナーゼプロモーターおよびルシフェラーゼ遺伝子に連結させたEREとのエストロゲン様相互作用により、ルシフェラーゼ発現の増強がもたらされる。したがって、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む本発明の組成物は、レポーター遺伝子(ルシフェラーゼなど)に作動可能に連結させたERE含有プロモーターを有するERα+細胞株、ERβ+細胞株および/またはERα+/ERβ+細胞株を同定するために使用され得る。また、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物は、アッセイ試薬(例えば、ER+細胞株においてエストロゲン様効果を有する化合物を同定するための標準物質)として使用され得る。
【0051】
かかるアッセイ法の一例では、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物を、まず、既知の活性または濃度で調製する。
【0052】
一般的には、ER+細胞を、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物と接触させ、エストロゲン様活性に関するシグナルを記録する。特に、ER+細胞は、EREの制御下にあるレポーター遺伝子を有する。このER+細胞を、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む本発明の組成物と接触させると、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物の添加量に比例するレポーターシグナルが生成する。この工程は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物の濃度が同じ、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物の濃度が異なる、または両方の多数の試料を用いて行なってもよい。一例として、9例の試料:第1濃度の最初の3例、第1濃度より半対数(half log)大きい濃度の次の3例、および第1濃度より全対数(whole log)大きい濃度の次の3例が試験され得る。次いで、レポーターシグナルを観察して記録し、得られたデータ点(レポーターシグナル強度に対する(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物の濃度)を、慣用的な曲線フィット法(例えば、最小2乗法)によって標準曲線にフィットさせる。
【0053】
候補化合物のエストロゲン様効果を評価するため、候補化合物を、EREの制御下にあるレポーター遺伝子を有するE+細胞と接触させる。レポーター遺伝子のシグナルを観察し、標準曲線と比較して候補化合物の相対エストロゲン様効果を定量する。
【0054】
前述の方法に使用されるER+細胞株は、天然でERを発現する細胞株、例えば、ヒト由来ER+乳房細胞癌腫細胞株であり得る。一部の実施形態において、ER+組織は、ヒト不死化細胞株、例えば、骨髄または乳房の不死化細胞株である。例示的な細胞株としては、ヒト単球、骨芽細胞、悪性乳癌腫および乳房上皮不死化細胞株が挙げられる。挙げられ得る具体的な細胞株の一例には、U937、U2OS、MDA−MB−435およびMCF−7細胞株がある。他のER+細胞株(不死化細胞株を含む)もまた、使用され得る。あるいはまた、ER+細胞株は、天然ではERを発現しない細胞株(ER発現ベクターで形質転換した細菌細胞株など)であってもよい。
【0055】
ER+細胞株は、レポーター遺伝子を制御するEREを含むプロモーターを有するベクターで形質転換する。例えば、該ベクターは、ERE、最小限のチミジンキナーゼプロモーター(tk)およびルシフェラーゼ遺伝子(Luc)を含むウイルスベクターであり得る。例示的なERE−tk−Luk構築物を配列番号:1に示す。ここで、EREはヌクレオチド1−で示し、tkはヌクレオチドnn−で示し、Lukはヌクレオチドmm−で示す。この構築物で標的細胞を既知の方法によってトランスフェクトし、ER−ERE−tk−Luk系の発現を、例えば、既知量のEの存在下で、推定ER+細胞に対して前述のアッセイを行なうことにより確認する。ER+細胞の成功裡の形質転換を確認する他の方法としては、既知のER抗体を用いた免疫染色が挙げられる。
【0056】
ERE含有プロモーターは、ERE配列とプロモーター配列を含むDNAである。プロモーター配列は、当該技術分野で認知されたプロモーター配列、例えば、最小限のチミジンキナーゼ(tk)プロモーター配列(配列番号:1,ヌクレオチドnn−参照)などである。他のERE含有プロモーターも可能であり、本発明の範囲に含まれる。EREとプロモーター配列は、一緒に作動してレポーター遺伝子の発現を制御する。本明細書に記載のように、エストロゲン様化合物(例えば、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物)は、ERに結合してERの二量体をもたらし、AF−2表面を形成する。次いで、ER二量体はEREに結合し、該プロモーターの制御下にある該遺伝子を活性化させる。一部の実施形態において、EREは、該プロモーターのすぐ上流(5’側)に存在し、該プロモーターに直接ライゲートされている。一例として、ERE−tkプロモーター構築物を配列番号:1,ヌクレオチド1−nn−1に示す。
【0057】
レポーター遺伝子は、発現されると、検出可能なシグナルをもたらす遺伝子である。ルシフェラーゼ遺伝子は、単独の試薬ルシフェリンの存在下で検出可能な光シグナルを生成するタンパク質ルシフェラーゼを生成させるため、好適なレポーター遺伝子である。特に、ルシフェラーゼ遺伝子のcDNAが発現させると、62kDaの酵素タンパク質ルシフェラーゼが生成される。ルシフェラーゼ酵素は、Mg2+と酸素の存在下でルシフェリンとATPとの反応を触媒し、オキシルシフェリン、AMP、ピロリン酸塩(PPi)の形成と、放射光をもたらす。放射される光は黄緑色(560nm)であり、標準的な光量測定器を用いて容易に検出され得る。ATP、OおよびMg2+は既に細胞内に存在しているため、検出可能なシグナルの生成に必要なことは、このレポーター遺伝子に試薬ルシフェリンを添加することだけであり、本発明のアッセイにおける使用に特によく適している。当該技術分野において利用可能であるものとして挙げられ得る他のレポーター遺伝子の一例には、クロラムフェニコールトランスアセチラーゼ(CAT)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)およびβ−グルクロニダーゼ(GUS)がある。
【0058】
本発明の一部のアッセイ法では、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む標準的な組成物(standard a composition)を、1種類以上のエストロゲン様化合物(SERMなど)との比較によって、さらに特性評価することが有用である。かかるアッセイ法は、該方法の適切な部分において、標準エストロゲン様化合物および/またはSERMを、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物で適正に置き換えることにより、本質的に上記のようにして行なわれる。
【0059】
また、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む本発明による組成物は、TNF RE媒介性経路によって遺伝子発現を抑制するものである。一部の場合において、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物は、遺伝子発現をインビトロで、特に、TNF REの制御下にあるレポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ遺伝子、Luc)を有する細胞において抑制するものである。一部の場合において、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物は、主に単球およびマクロファージによって産生されるサイトカインであるTNF−αの発現を抑制するものである。このサイトカインは、種々の組織の滑膜細胞およびマクロファージに見られ、関節リウマチ(RA)に大きく関与している。また、TNF−αは、他の炎症性疾患でも発現されており、また、細菌由来の内毒素に対する応答としても発現される。TNF RE抑制経路によるTNF発現の抑制因子として、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物は、TNFレベルの上昇と関連している炎症性障害の治療において重要である。
【0060】
本発明の一部の実施形態では、ERαとERβの一方または両方と、TNF REの制御下にあるレポーター遺伝子とを発現する細胞株を調製する。TNF REは、一般的にはレポーター遺伝子の上流(5’側)に存在し、シグナル検出は、本明細書において先に記載のようにして行なう。TNF REの制御下にあるレポーター遺伝子(本件ではルシフェラーゼ遺伝子)を有するDNAの配列を配列番号:2に示す。ヌクレオチド1−はTNF REに相当し、一方、ヌクレオチドnn−はルシフェラーゼ遺伝子に相当する。
【0061】
前述の細胞、TNF RE含有細胞系は、さらに、1コピー以上のER遺伝子、すなわち、ERα、ERβまたは両方を含む。前述の方法に使用されるER+細胞株は、天然でERを発現する細胞株、例えば、ヒト由来ER+乳房細胞癌腫細胞株であり得る。一部の実施形態において、ER+組織は、ヒト不死化細胞株、例えば、骨髄または乳房の不死化細胞株である。例示的な細胞株としては、ヒト単球、骨芽細胞、悪性乳癌腫および乳房上皮不死化細胞株が挙げられる。挙げられ得る具体的な細胞株の一例には、U937、U2OS、MDA−MB−435およびMCF−7細胞株がある。他のER+細胞株(不死化細胞株を含む)もまた、使用され得る。あるいはまた、ER+細胞株は、天然ではERを発現しない細胞株(ER発現ベクターで形質転換した細菌細胞株など)であってもよい。
【0062】
所定量のルシフェリンの存在下、およびエストロゲン様化合物(例えば、Eまたは(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物)の非存在下において、該細胞系は黄色光(560nm)を、所与の強度(「対照強度」または「ベースライン強度」と称する)で放射する。560nmの光放射は、光学密度単位(O.D.560nm)で簡便に定量される。エストロゲン様化合物、例えば、Eまたは(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物の1つを添加すると、560nmの光放射の強度は、対照と比べて減衰される。注目すべきことに、タモキシフェンまたはラロキシフェンなどのSERMの存在下では、ルシフェラーゼ発現は増大し、560nmの光放射の強度も増大する。したがって、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物は、遺伝子発現のエストロゲン様TNF RE制御型抑制を誘導し得るものである。
【0063】
TNF RE含有細胞系は、本発明によるアッセイ法において使用され得る。本発明のアッセイ法において、ルシフェラーゼ活性の減衰(すなわち、560nmの光の放射の低減)は、エストロゲン様活性の増大と相関しており、一方、ルシフェラーゼ活性の賦活(すなわち、560nmにおける放射の増大)は、抗エストロゲン様活性と相関している。標準曲線は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物を既知量で使用し、本明細書に記載のようにして作成され得る。他の既知のエストロゲン様または抗エストロゲン様標準物質(Eなど)あるいはいくつかの他の既知のエストロゲン様化合物および/または抗エストロゲン様SERM(タモキシフェンもしくはラロキシフェン)を使用することにより、かかる標準曲線を、さらに増やしてもよい。
【0064】
次いで、形質転換E+細胞株由来の細胞を、本明細書に記載のようにして候補化合物に曝露し、ルシフェラーゼシグナルを観察し、シグナルを、事前に作成した標準曲線(1つまたは複数)と比較する。対照(ベースライン)と比べてルシフェラーゼ活性の増大を引き起こす化合物は、抗エストロゲン様SERMと特性評価され、一方、対照と比べてルシフェラーゼ活性の低下を引き起こす化合物は、エストロゲン様に分類される。次いで、エストロゲン様または抗エストロゲン様効果が、ルシフェラーゼ発現の低下または増大の程度を、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物によってもたらされる低下と比較することにより、任意選択で、それぞれE、タモキシフェンおよび/またはラロキシフェンによってもたらされるシグナルの低下または増大と比較することにより定量され得る。
【0065】
また、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(1)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む本発明の医薬組成物は、E−ERとEREとの相互作用に対して拮抗作用を示すものである。特に、タイツリオウギ(Astragalus membranaceus)のエキスは、ERβとERαの直接相互作用によるEによるERE−tk−Lucの活性化に対して拮抗作用を示すことが示されている。ERE制御型遺伝子のE−ER活性化のアンタゴニストとして、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上の組成を含む組成物は、タモキシフェンと効果が類似しているとみなされ、乳癌および子宮癌に対して予防的、待機的および/または抗増殖性の活性を有する。
【0066】
本明細書において開示する実施形態では、インビボでの本発明の組成物のエストロゲン様使用法を提供する。一般に、該インビボ法は、被検体に、該被検体においてエストロゲン様効果がもたらされるのに充分な量の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物を投与することを含む。該インビボ法は、エストロゲン様のERE制御型遺伝子の活性化、TNF RE制御型遺伝子の抑制(例えば、TNF−α抑制)、または両方をもたらすものである。したがって、該インビボ法は、インビボで種々の陽性表現型効果をもたらすものである。
【0067】
被検体は哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、サル、チンパンジー、イヌ、ネコまたはヒツジなどであり得、一般的には雌である。また、被検体はヒトであり得、特に女性である。一部の実施形態において、被検体は、閉経後または卵巣摘出後の女性であって、エストロゲン療法を必要とする女性である。かかる場合において、被検体は、更年期症状、例えば、のぼせ、不眠、膣乾燥、性欲減退、尿失禁および鬱などに罹患する被検体であり得る。他のかかる場合では、被検体は、骨粗鬆症になりやすい、または骨粗鬆症に罹患する被検体であり得る。好適なインビボ法としては、エストロゲン補充療法に応答性である医療適応症の治療および/または予防が挙げられる。
【0068】
本発明による組成物の投与は、一般に使用されている投与経路によるものであるが、該経路によって、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物の1種類以上が標的組織に対して利用可能であるものとする。挙げられ得る投与経路の一例には、経口、経鼻、口腔内、経直腸、経膣および/または経表面(経皮)がある。あるいはまた、投与は、同所性(orthotopic)、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内または静脈内注射によるものであってもよい。かかる組成物は、通常、薬学的に許容され得る組成物として投与され得る(上記)。
【0069】
疾患、障害、症候群、病状または症状の治療(およびその文法的語尾変化形、例えば、治療する(treat,to treat,treating)、治療される(treated)など)としては、臨床医が、かかる治療を受ける被検体を特定するため、および本発明の組成物を該被検体に投与するために採用し得る措置が挙げられる。したがって、治療は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含むエストロゲン様組成物を被検体に投与することにより、おそらく回復、緩和、改善、解消、治癒されるであろう疾患、症候群、病状または症状の診断を包含する。また、治療は、疾患、障害、症候群、病状または症状の回復、緩和、改善、解消または治癒の同時存在を包含する。一部の実施形態において、治療は、疾患、障害、症候群、病状もしくは症状の発病の防止もしくは遅延(すなわち、予防)、疾患、障害、症候群、病状もしくは症状の進行の防止もしくは遅延、および/または疾患、障害、症候群、病状もしくは症状の重症度の低減を含意する。新生物増殖の場合は特に、治療は、新生物増殖の緩和ならびに逆転、停止また遅延を包含する。これに関連して、治療はまた、寛解(完全寛解および一部寛解を含む)も包含する。更年期症状の場合、治療は、種々の症状の予防および緩和を包含する。
【0070】
疾患、障害、症候群、病状または症状の予防(およびその文法的語尾変化形)としては、該疾患、障害、症候群、病状または症状を発症するリスクのある被検体を特定し、該被検体に、おそらく前記疾患、障害、症候群、病状または症状の発病が回避または遅延されるであろう充分な量の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物を投与することが挙げられる。一部の場合において、予防は、臨床医が、医療ケアの適格基準を適用してホルモン補充療法の必要があると考える閉経後女性を特定し、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む本発明の医薬組成物を該女性に投与し、それにより1つ以上の更年期症状をブロックまたは遅延することを包含する。一部の実施形態において、骨粗鬆症の予防は、臨床医が、医療ケアの適格基準を適用して、骨粗鬆症を発症するリスクがあると考える閉経後女性を特定し、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む本発明の医薬組成物を該女性に投与し、それにより骨量減少の発生をブロックまたは遅延することを包含する。
【0071】
緩和は、疾患、障害、症候群、病状または症状の発生の重症度、数および/または頻度の低減を包含する。更年期症状の緩和としては、のぼせ、不眠、失禁、鬱などの頻度および/または重症度の低減が挙げられる。
【0072】
骨粗鬆症の治療としては、骨量減少のリスクのある人(閉経後女性など)を特定し、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む本発明の医薬組成物を該女性に投与し、それにより、骨量減少の重症度を低減、発生を遅延もしくは予防することが挙げられる。一部の実施形態において、骨粗鬆症の治療には骨量の増量も含まれ得る。
【0073】
本明細書において開示するさらなる実施形態では、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む医薬組成物の作製方法を提供する。詳しくは、本発明は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む本発明のエストロゲン様医薬組成物の作製方法を提供する。該方法は、種タイツリオウギの植物から所与の量の植物体を得ること、任意選択で、該植物体を細かく砕くこと、前記植物体を抽出媒体と接触させること、および該植物体を抽出媒体から分離することを含む。
【0074】
タイツリオウギエキスはエストロゲン様活性を有し、これは、該エキスが被検体において、特に、閉経周辺期および閉経後の女性においてエストロゲン様効果をもたらし得ることを特徴とすることを意味する。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、少なくとも1つの更年期症状の治療または予防;骨粗鬆症の治療または予防;子宮癌の治療または予防;および心血管疾患の治療または予防からなる群より選択される少なくとも1つの効果を意味する。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、のぼせ、不眠、膣乾燥、性欲減退、尿失禁、頭痛および鬱からなる群より選択される少なくとも1つの更年期症状の治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は骨粗鬆症の治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、のぼせの治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は子宮癌または乳癌の治療または予防を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、過形成または癌のリスクの増大を含まない。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、乳腺過形成、乳腺腫瘍、子宮過形成、子宮腫瘍、頚部過形成、頚部腫瘍、卵巣過形成、卵巣腫瘍、ファローピウス管過形成、ファローピウス管腫瘍のリスクの増大を含まない。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、過形成または癌のリスクの低下を含む。一部の実施形態において、エストロゲン様効果は、乳腺過形成、乳腺腫瘍、子宮過形成、子宮腫瘍、頚部過形成、頚部腫瘍、卵巣過形成、卵巣腫瘍、ファローピウス管過形成、ファローピウス管腫瘍のリスクの低下を含む。
【0075】
一部の実施形態において、該植物種は、種々の品種のタイツリオウギの植物種タイツリオウギのものである。
【0076】
植物体(plant matter)は、種タイツリオウギの少なくとも1つの植物の任意の一部分(1つまたは複数)を意味する。植物体としては、完全体の植物または該植物の任意の一部分(1つまたは複数)、例えば、根、樹皮、樹木、葉、花(もしくは花の萼片、花弁、雄蕊、雌蕊など)、果実、種子および/または前述のものの任意の一部分もしくは混合物が挙げられる。植物体は、切ったばかりのもの、乾燥させたもの(フリーズドライを含む)、凍結したものなどであり得る。また、植物体は完全体であってもよく、小部分に分離したものであってもよい。例えば、葉は切り刻まれたり、千切りされたり、すり潰されたりされ得る。根は切り刻まれたり、すり潰されされ得る。果実は切り刻まれたり、スライスされたり、ブレンドされたりされ得る。種子は切り刻まれたり、すり潰されたりされ得る。茎は千切りされたり、切り刻まれたり、すり潰されたりされ得る。本発明の特別な実施形態では、使用される植物部分は、タイツリオウギの葉である。
【0077】
(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む本発明の医薬組成物は、タイツリオウギの少なくとも1種類のエキスを含む。「エキス」は、植物部分を抽出溶媒と、該植物由来の1種類以上の化合物が該植物体から抽出溶媒中に分配されるのに適した条件下で接触させた場合の結果としての溶液、濃縮液または残渣である。次いで、該溶液を任意選択で濃縮すると、濃縮液または残渣が形成される。
【0078】
本発明に好適な抽出媒体としては、水およびエチルアルコールが挙げられる。具体的には、水が抽出溶媒である場合、精製水が好適である。精製水としては、蒸留水、脱イオン水、注射用水、限外濾過水、および他の形態の精製水が挙げられる。使用されるエチルアルコールは、本発明の一部の実施形態では、穀物エタノール、特に、非変性エタノール(例えば、純粋な穀物エタノール、任意選択で、いくらかの水分、例えば、約10%までの水分を含有する)である。一部の実施形態において、抽出溶媒は水、エタノールまたはその混合物である。濃縮液または残渣は、抽出溶液を減少(例えば、エバポレートまたは凍結乾燥)させることにより調製され得る。最初の抽出溶媒であれ、濃縮還元液であれ、残渣形態であれ、これらの各調製物は、本発明の解釈上、「エキス」とみなされる。
【0079】
(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物の作製方法は、任意選択で、表面積−体積比を増大させると同時に、抽出プロセス効率を増大させるために、最初に植物体を細かく砕くことを含む。植物体を細かく砕く方法としては、すり潰す、切り刻む、ブレンドする、千切りする、粉砕する、磨砕するなどが挙げられる。
【0080】
次いで、抽出媒体(溶媒)を植物体と、1種類以上のフィトケミカル、特にエストロゲン様フィトケミカルが植物体から抽出媒体中に分配されるのに適した条件下で接触させる。かかる条件としては、一部の場合において、室温より上の温度までの抽出媒体の加熱、攪拌、接触時間などが挙げられる。例示的な抽出温度は、約50℃から抽出溶媒の沸点までである。水が抽出溶媒である場合、抽出温度は、一般的に室温から約100℃であり、約50℃〜約80℃の温度が特に好適であり、約75℃の温度が特別に好適である。抽出溶媒がエタノールの場合、抽出温度は、一般的にほぼ室温から約78.5℃であり、約50℃〜約78℃の温度が特に好適であり、約75℃の温度が特別に好適である。当業者には、一方において抽出効率と、他方においてフィトケミカルの化合物安定性との間に適正な均衡がもたらされるべきであることが認識されよう。
【0081】
抽出媒体と植物体を合わせたら、これらを任意選択で、植物体から抽出媒体中へのエストロゲン様化合物の効率的な交換を確実にするために攪拌し、有用な量のフィトケミカル化合物が植物体から抽出媒体中に抽出されるのに充分な時間、接触させたままにする。かかる時間の経過後(例えば約5分〜約10時間、より特別には約10分〜約5時間、特に約30分〜約2時間)、フィトケミカル化合物を含有する抽出媒体を植物体から分離する。かかる分離は、当該技術分野で認知された方法によって、例えば、濾過、デカンテーションなどによって行なわれる。
【0082】
本発明による組成物は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物、または(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む本発明の組成物を含む組成物を包含する。かかる実施形態において、本発明の組成物は、任意選択で、1種類以上のさらなる成分を含む。かかるさらなる成分は不活性であっても活性であってもよい。不活性成分としては、溶媒、賦形剤および他の担体が挙げられる。活性成分としては、活性医薬成分(API)、例えば、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物との組合せで相乗活性を示すものが挙げられる。
【実施例】
【0083】
本発明は、以下の例示的な非限定的実施例を参照すると、より充分に認識され得よう。
【実施例1】
【0084】
実施例1:ニアソールの全合成
【化30】

試薬および条件:
(i)MOMCl,NaH,DMF,室温90%;(ii)CuI,[(Ph)P]PdCl2,EtNH,トリメチルシリルアセチレン,還流,94%;(iii)MOMCl,KCO,アセトン,還流,88%;(iv)エチニルMgBr,エーテル,還流,96%;(v)InCl,1,2−ジクロロエタン,還流,62%;(vi)Pd/CaCO,キノリン,ヘキサン,Hガス,室温95%;(vii)濃HCl,MeOH,還流,98%
【0085】
1−ヨード−4−(メトキシメトキシ)ベンゼン(3)の調製:
4−ヨードフェノール(2)(15.0g,68.18mmol)の無水DMF(40.0mL)攪拌溶液に、NaH(2.6g,75%)を添加した。30分後、7.6mLのMOMClを滴下した。攪拌を3時間継続した。EtOAcと水の添加によって反応液をクエンチした。生成物をEtOAcで抽出し、合わせた有機層を水で洗浄し、無水MgSO上で乾燥させた。溶媒のエバポレーションにより、3を薄黄色液状物として得た(16.2g,90%):H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.57(d,J=9.2Hz,2H),6.82(d,J=8.8Hz,2H),5.14(s,2H),3.46(s,3H);13C NMR(100.00MHz,CDCl)δ157.33,138.52,118.84,94.60,84.53,56.26;m/z(M+H),264.96.
【0086】
4−(メトキシメトキシ)エチニルトリメチルシラン(4)の調製:
3(15.28g,58.3mmol)、ビス[トリフェニルホスフィン]パラジウム二塩化物(920mg,1.3mmol)およびCuI(140mg,1.4mmol)とジエチルアミン(300ml)の混合物に、トリメチルシリルアセチレン(9.5mL,72.2mmol)を添加した。反応混合物を窒素下、室温で6時間攪拌し、次いで、溶媒を減圧除去した。残渣をベンゼン(300ml)中に抽出し、合わせた有機層をMgSO上で乾燥させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し(EtOAc/ヘキサン;0.5:9.5)、4を無色の液状物として得た(12.91、94%):H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.40(d,J=9.2Hz,2H),6.95(d,J=8.8Hz,2H),5.16(s,2H),3.46(s,3H),0.23(s,9H);13C NMR(100.00MHz,CDCl)δ157.58,133.63,116.71,116.20,105.21,94.48,92.94,56.29;m/z(M+H),235.11.
【0087】
4−(メトキシメトキシ)ベンズアルデヒド(benzaldhyde)(5)の調製:
4−ヒドロキシベンズアルデヒド(5)(15.03g,123.2mmol)の無水アセトン(700.0mL)攪拌溶液に、KCO(51.9g,376mmol)を添加した。30分後、20.0mLのMOMClを滴下した。反応混合物を3時間還流した。反応液を室温まで冷却し、固形物を濾別した。溶媒のエバポレーションにより粗製生成物を得た。反応混合物のフラッシュカラムクロマトグラフィーにより(EtOAc/ヘキサン;1:9)、薄黄色液状物4−(メトキシメトキシ)ベンズアルデヒド(6)を得た(18.1g,88%);H−NMR(400MHz,CDCl)δ9.90(s,1H),7.84(d,J=8.8Hz,2H),7.15(d,J=8.4Hz,2H),5.25(s,2H),3.49(s,3H);13C NMR(100.00MHz,CDCl)δ191.11,162.42,132.09,130.94,116.49,94.31,56.55;m/z(M+H),166.66.
【0088】
1−(4−メトキシメトキシ−)ペニルプロ(penylpro)−2−イン−1−オール)(7)の調製:
6(15.0g,90.2mmol)の無水エーテル(300mL)攪拌溶液に、エチニルマグネシウムブロミドのTHF溶液(0.5M,330mL)を窒素下で添加した。反応混合物を60℃で4時間還流した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、10%HClで中和し、エーテルで抽出し、ブライン、次いで水で洗浄し、MgSO上で乾燥させた。溶媒を減圧除去し、フラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し(EtOAc/ヘキサン;15:85)、褐色液状物を得た(16.72g,96%);H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.48−7.46(dd,J=8.8,2.4Hz,2H),7.05−7.03(dd,J=8.8,2.0Hz,2H),5.41(m,1H),5.17(s,2H),3.46(s,3H),2.66(d,J=2.0Hz,1H);13C NMR(100.00MHz,CDCl)δ157.60,133.85,128.26,116.56,94.57,83.87,74.87,64.19,56.20;m/z(M+H),192.08.
【0089】
4と7のカップリング反応:
4(5.57、29.0mmol)および7(10.99g,47.0mmol)と1,2−ジクロロエタン(40mL)との混合物に、InCl(350.9mg,1.5mmol)を添加した。反応混合物を60℃で4時間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物を一部濃縮し、次いで直接、フラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン;8:2)に供し、7(5.98g,61.6%)を薄黄色粘性塊として得た;H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.52−7.49(dd,J=9.6.0.8Hz,2H),7.39−7.37(dd,J=8.8,2.0Hz,2H),7.05−7.03(dd,J=8.8,2.0Hz,2H),6.96−6.94(dd,J=8.8,2.4Hz,2H),5.17(s,2H),5.16(s,2H),4.91(d,J=2.4Hz,1H),3.47(s,3H),3.46(s,3H),2.39(d,J=2.8Hz,1H);13C NMR(100.00MHz,CDCl)δ157.46,156.92,133.39,131.07,128.53,116.69,116.35,116.27,94.70,94.51,85.20,82.77,81.88,70.89,56.29,56.20,28.81;m/z(M+H),337.14.
【0090】
8の制御型還元:
7(2.6g,7.7mmol)のEtOAc(20.0mL)と無水ヘキサン(200mL)の攪拌溶液に、キノリン(96.0mg,0.74mmol)とPd/CaCO(191.0mg)を添加した。反応混合物をHバルーン(2方向アダプター)で、TLCによって出発物質の消耗が観察されるまで4時間水素化した。固形物を濾別し、溶媒を減圧除去し、フラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し(EtOAc/ヘキサン;30:70)、主要化合物が9(1.7g,65%)である無色の粘性塊(4種類の異性体の混合物)(2.51g,95%)を得た;H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.23(d,J=8.4Hz,2H),7.15−7.13(d,J=7.8Hz,2H),7.01−6.96(m,1H),6.55(d,J=11.2,Hz,1H),6.05−5.97(m,1H),5.74−5.70(dd,10.0,11.6,1H),5.19(s,2H),5.15(s,2H),4.54−4.09(m,1H),3.65(s,3H),3.47(s,3H),2.04(s,1H);13C NMR(100.00MHz,CDCl)δ156.41,156.18,140.86,136.95,132.16,131.10,130.10,129.57,128.85,128.27,116.62,116.36,116.12,94.77,94.65,56.24,47.12,28.81;m/z(M+H),341.17.
【0091】
MOM基の脱保護:
9(異性体の混合物)(3.0g,8.8mmol)の無水MeOH(30mL)攪拌溶液に、濃HCl(4滴)を添加し、混合物を、TLCによって出発物質がニアソールに変換されたことが観察されるまで65℃で1.5時間加熱した。溶媒を減圧下で一部エバポレートし、次いで、EtOAcで抽出し、HPLCによって精製し、ニアソール 1(無色の粘性塊として)(1.37g,65%)および他の異性体(0.7g,35 %)を得た;H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.09(d,J=8.0Hz,2H),7.02−7.13(dd,J=8.8,0.8Hz,2H),6.72−6.69(m,1H),6.44(d,J=11.2Hz,1H),5.98−5.90(m,1H),5.60−5.55(dd,10.0,10.4,1H),5.10−5.05(m,2H),4.44−4.40(m,1H),;13C NMR(100.00MHz,CDCl)δ155.36,154.80,141.09,135.31,131.74,130.18,129.54,129.00,128.85,115.53,115.26,115.09,47.05;m/z(M+H),345.17.
【実施例2】
【0092】
実施例2:ERβは、ERE−tkLucの活性化においてERαよりも弱い:
ルシフェラーゼレポーターcDNAに連結させた最小限のチミジンキナーゼ(tk)プロモーターの上流の古典的EREを含むプラスミドと、ERαまたはERβの発現ベクターをトランスフェクトすることにより、転写活性化に対するE2の効果を調べた。E2により、ERαの存在下ではERβと比べて、ヒト単球U937細胞において10倍大きいEREの活性化がもたらされたが、EC50の値は類似していた。図1参照。
【実施例3】
【0093】
実施例3:ERβは、TNF−RE−tkLucの抑制においてERαよりも有効である:
次いで、ERαおよびERβ媒介性の転写抑制に対するE2の効果を、腫瘍壊死因子応答エレメント(TNF−RE)として知られるTNF−αプロモーターの−125〜−82領域を用いて比較した。TNF−αにより、tkプロモーターの上流の3コピーのTNF−RE(−125〜−82)(TNF−RE tkLuc)の5〜10倍の活性化がもたらされた。E2により、ERαおよびERβの存在下では、TNF−RE tkLucのTNF−αの活性化が60〜80%抑制された。しかしながら、ERβは、抑制においてERαよりもほぼ20倍有効であった(IC50は、それぞれ、ERαで241pMに対してERβでは15pM)。また、ERβは、天然のTNF−αプロモーターの−1044〜+93の抑制においてERαよりも有効であることがわかった。したがって、ERαは、転写活性化においてERβよりもずっと有効であるが、ERβは、転写抑制においてERαよりも有効である。E2とは対照的に、抗エストロゲン、タモキシフェン、ラロキシフェンおよびICI 182780では、TNF−RE tkLucの2倍の活性化がもたらされた。さらに、これらの抗エストロゲンにより、E2によって誘導される抑制が無効にされた。
【実施例4】
【0094】
実施例4:ERβは、ERE−tkLucのERα媒介性転写活性化を抑止する:
驚くべきことに、ERαまたはERβをU937細胞において共発現させると、ERαによる活性化が顕著に抑止される。図1。このデータは、ERβが、ERE−tkLucのERα活性化に対して抑制効果を発揮することを示す。同様の結果が、乳癌細胞株MDA−MB−435において観察された。図2参照。他の研究者らにより、種々の細胞型においてERαトランス活性化に対するERβの同様の抑制効果が見い出された。これらの研究は、ERE−tkLucに対するERαとERβの活性化が異なること、およびERα媒介性転写に対するERβの抑制効果が細胞型特異的ではなく、ERの固有の特性に起因していることを示す。二量体化を妨げるERβの第11ヘリックスにおける変異によって抑制活性が阻害されるため(データ表示せず)、ERβによるERαの抑制にはERα/ERβヘテロ二量体の形成が必要とされる。
【実施例5】
【0095】
実施例5:ニアソールによる遺伝子発現のERβ媒介性活性化/抑制(1)
図3は、ニアソールにより、EREが、ERE−tkLucおよびERβで形質転換された細胞において、エストロゲン受容体β(ERβ)によって選択的に活性化されることを示す。図4は、ニアソールにより、インビトロで、LucのTNFα−RE関連発現が選択的に抑制されることを示す。図5は、ERβを共発現するERE−tkLuc形質転換細胞における、ルシフェラーゼの発現に対するニアソールの効果を示す。対照はEtOHとした。ニアソールにより、EREが、共発現させたERβによって活性化され、それによりルシフェラーゼが発現された。既知のERβアンタゴニスト、ラロキシフェンおよびタモキシフェンによって、この活性化は低減されたが、エストラジオールを添加すると、EREの活性化およびルシフェラーゼの発現がもたらされた。図6は、ERβおよびERαとニアソールとの結合を示す。図に示されるように、ERβおよびERαはともにニアソールに結合する。しかしながら、図3〜5の遺伝子発現データは、この結合では、ニアソールとエストロゲン受容体間の相互作用が充分に説明されないことを示す。
【実施例6】
【0096】
実施例6:MCF−7腎被膜異種移植片
図7は、腎被膜のMCF−7乳癌細胞異種移植片に対するエストラジオール(E)、ニアソールおよび対照(担体)の効果の比較を示す。MCF−7異種移植片は、ヌードマウスの腎臓内に導入した。マウスを3つの処置群に無作為化した。エストラジオール群には0.5mg/時のE(生理食塩水中)を与え、ニアソール群には2.5mg/時のニアソール(生理食塩水中)を与え、対照群には生理食塩水のみを与えた。各処置群を28日間処置した後、マウスを安楽死させ、異種移植片を含む腎臓を摘出し、写真撮影し、重量を計測した。図に示されるように(図7A,7B)、エストラジオールは、対照と比べて腫瘍異種移植片の増殖に対して拮抗作用を示すが、ニアソールは、MCF−7乳癌異種移植片の増殖を阻害する。
【実施例7】
【0097】
実施例7:ヌードマウスにおける子宮増殖に対するニアソールの効果
図8は、子宮重量に対するインビボでのE、ニアソールおよび対照の効果の比較を示す。雌ヌードマウスをいずれかのEで処置した。マウスを3つの処置群に無作為化した。エストラジオール群には0.5mg/時のE(生理食塩水中)を与え、ニアソール群には2.5mg/時のニアソール(生理食塩水中)を与え、対照群には生理食塩水のみを与えた。28日後、各マウスを安楽死させ、子宮を取り出し、重量を計測した。図に示されるように、対照と比べ、Eは子宮増殖に対して拮抗作用を示すが、ニアソールは反対の効果を有する。
【実施例8】
【0098】
実施例8:別表AおよびB
これらの実験については、別表AおよびBを参照されたい。
【実施例9】
【0099】
実施例9:非盲検用量漸増投薬試験
(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの1種類以上を含む組成物の安全性および最大耐用量(MTD)を評価するため、非盲検用量漸増投薬試験を実施する。試験薬物は、以下の組成物:I:単独活性成分として(a);II:単独活性成分として(b);III:単独活性成分として(c);IV:単独活性成分として(d);V (a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)の1:1:1:1混合物のうちの1種類を含むものとする。
【0100】
試験薬物は、1mg(第1週)、10mg(第2週)、100mg(第3週)または1000mg(第4週)のI、II、III、IVまたはVを、適当な大きさのゼラチン製カプセルに含めたものとする。用量は、必要であれは、2つ以上のゼラチン製カプセルに分割してもよい。年齢が18歳から60歳の正常な健常志願者に、1mg/日の試験薬物を第1週に、10mg/日の試験薬物を第2週に、100mg/日の試験薬物を第3週に、および1000mg/日の試験薬物を第4週に投与する。被検体を、有害事象(あれば)の出現についてモニタリングする。任意の時点で、被検体が使用中の用量に対して耐容性でないと思われる場合、担当医師はかかる不耐性を記録する。各被検体が耐容性である最大用量または、どの被検体も不耐性とならない場合は試験薬物1000mg/日を最大耐用量とみなす。
【実施例10】
【0101】
実施例10:二重盲検有効性試験
エストロゲン性疾患状態の治療に対する試験薬物の有効性を実証するため、以下の二重盲検試験を行なう。
【0102】
目的:のぼせ(hot flashesとしても知られている)の治療に対するERβ選択的漢方薬草エキス(試験薬物)の至適用量を決定し、安全性と有効性を調べること。
【0103】
方法:1日に少なくとも7回または1週間に50回の中等度から重度ののぼせを訴える、年齢が40〜60歳の100〜300名の概ね健常な閉経後女性における多施設無作為化盲検、フェーズII、プラセボ対照比較治験。女性を、5g(SG5)または10g(SG10)/日の試験薬物または同一のプラセボ(PG)を12週間に無作為化する。のぼせの頻度と重症度を日誌に毎日記録する。
【0104】
結果:参加者を、平均年齢と人種によって特性評価する。また、試験薬物とプラセボの両方を受けた参加者を、12週間の治療後、のぼせの頻度の減少割合(±S.D.およびp値)によって特性評価する。子宮内膜の厚さを、各参加者および各群(全体、PG、SG5、SG10)について評価する。また、有害事象も、各参加者および各群(全体、PG、SG5、SG10)について評価する。
【0105】
結論:評価は、健常な閉経後女性におけるのぼせの頻度と重症度の低減ならびに用量滴定効果に基づいたものである。
【0106】
方法
設計および設定:これは、試験薬物が、のぼせの頻度と重症度の低減において安全で有効であるかどうかを調べるために設計された多施設無作為化盲検プラセボ対照比較治験である。この治験は、独立した第3機関(コーディネートセンター)によってコーディネートされたものであり、参加者は多数の臨床現場で募集する。
【0107】
参加者
適格参加者は、1日に少なくとも7回または1週間に50回の中等度から重度ののぼせを訴える40〜60歳の概ね健常な閉経後女性である。除外した女性:乳癌、子宮癌もしくは卵巣癌;黒色腫;静脈血栓塞栓症;心血管疾患、または重度の食物もしくは薬物アレルギーの既往歴を有する女性。また、活発な肝臓疾患もしくは胆嚢疾患;異常な子宮内出血;妊娠もしくは授乳期を報告した女性、およびマンモグラム、乳房検査、パパニコロー塗抹での異常を有する女性または内診で癌が示唆される女性も除外する。経膣超音波での測定時に5mmより厚い子宮内膜厚さを有する女性、のぼせに影響を及ぼすことがわかっている、または影響を及ぼすことが疑われている投薬物(エストロゲン、タモキシフェン、ラロキシフェン、プロゲスチン、選択的セロトニン再取り込み阻害薬またはガバペンチン)を受けている女性もまた除外する。
【0108】
スクリーニング時、プラセボ投薬物およびのぼせ、出血および薬物投与指示順守度の記録の日誌を、1週間の導入期間に得る。正しく日誌に記録し終え、プラセボ投薬物の少なくとも80%を摂取させ、身体検査、放射線学的検査および臨床検査のスクリーニング後も依然として適格である参加者を無作為化する。
【0109】
薬物の安全性は、データ安全性モニタリング委員会で評価する。
【0110】
データ収集
データは、コーディネートセンターで収集し、クリーニングし、解析する。
【0111】
無作為化
無作為化は、最後の月経時からの期間(<24ヶ月対>24ヶ月)および臨床現場によって層別化する。層内において、処置は、3〜6つの無作為置換ブロックに1:1:1の比で無作為に割り当てる。コーディネートセンターの試験担当薬剤師がBionovo,Inc.(Emeryville,CA)から試験投薬物を受領し、コーディネートセンターの統計担当者が作成した処置識別番号のラベルを貼り、試験投薬物を各臨床現場に発送する。試験投薬物は、無作為化スキームに従って逐次、適格参加者に割り当てられる。
【0112】
試験投薬物および盲検:試験薬物は、濾過して乾燥させた本明細書に記載のハーブエキスである。この乾燥粉末に、米国食品医薬品局によって承認されているカラメル着色用食用色素を添加して色を均一にし、フレーバーと甘味料を添加してハーブの風味をマスキングする。同様の色と風味の賦形剤を不活性固形希釈剤に添加し、活性投薬物と同じ外観、風味および粒状度を有するプラセボ粉末を作製する。
【0113】
参加者には、粉末剤としてパッケージングしたプラセボまたは2つの用量の試験薬物の一方を与え、パッケージ(packet)内の内容物を少なくとも3オンスの非柑橘系の液体に溶解させ、飲料として1日2回飲用するように指示する。治験担当者、治験スタッフ、臨床検査担当者および参加者はすべて、試験投薬物の状態について知らされていない。
【0114】
測定:ベースライン時、参加者は、人口統計、病歴、投薬物、生活の質、更年期症状、不眠(不眠重症度指数(Insomnia Severity Index))および性機能(女性の性機能指数(Female Sexual Function Index))に関する質問票の全項目に記入する。参加者は全員、身体検査(例えば、血圧および心拍数)、乳房検査および内診、ならびに、子宮摘出をしていない女性では子宮内膜の壁厚倍増を測定するための経膣超音波を受ける。安全性を評価するため、血清血液検査、クレアチニンおよび尿素窒素、肝機能および尿検査はすべて、各患者に対して行なう。ベースライン測定はすべて、12週間の治療後または最後の治験来院時に再度行なう。
【0115】
のぼせの頻度と重症度を、先の試験で広く使用した日誌の後の規範的な(modeled)日誌に記録する。7日間の日誌に記録し終えた後、無作為化および第4週目と第12週目に試験薬物投与を行なう。各のぼせについて、重症度を、1(軽度)、2(中等度)または3(重度)でランク付けする。のぼせスコアは、各のぼせについてランク付けした重症度を加算し、のぼせの回数で除算することにより算出する。
【0116】
試験薬物投与期間中、第2週目と第8週目に参加者と連絡をとり(電話で、または診療室内で)、第4週目に診療室に来院させて、指示順守度と有害事象をモニタリングする。投薬物のパッケージを計数して指示順守度を評価し、有害事象を記録する。
【0117】
試験薬物投与を中止して4週間後、各参加者と電話で連絡をとり、有害事象に関する情報を確認する。自己報告された有害事象を、医薬規制用語集(MedDRA)システムを用いて分類する。
【0118】
参加者が膣からの血のにじみもしくは出血を報告した場合、または経膣超音波検査での測定時の最終子宮内膜壁厚が5mmより厚いか、あるいはベースラインから2mm以上厚くなっている場合には、試験中に診断用の子宮内膜生検を行なう。2名の盲検病理検査担当者が独立して、生検被検物質(あれば)を評価する。組織学検査に関して病理検査担当者の意見が一致しない場合、別の第3の盲検病理検査担当者が当該スライドを検査し、最終診断を行なう。
【0119】
統計解析:180名の参加者のサンプルを評価し、ベースラインから12週間までののぼせの頻度の変化割合における20個のパーセントポイントの群間差の80%検出力を得る。
【0120】
解析はすべて、無作為割り当てに従って、指示順守度に関係なく、また、欠測値を帰属または繰り越すことなく処理することを意図したものである。多重検定のための調整は行わない。参加者のベースライン時の特徴を、臨床施設および閉経期からの年数についての比較対照となる線形回帰もしくはロジスティック回帰または比例オッズモデルを用いて比較する。
【0121】
一次解析では、のぼせの頻度およびのぼせスコアのベースラインから第4週目および第12週目までの変化を、各試験薬物群(SG5およびSG10)とプラセボ(PG)間で比較する。転帰は、時間(第4週または第12週対ベースライン)に対して、右に歪んだ反復測定logリンクポアソン一般化線形モデルであるため、処置および期間と処置との交互作用、ならびに臨床施設および閉経期からの年数を使用する。副次的転帰(生活の質、性機能および不眠スコア)の一次解析でも、同様の方法を使用する。
【0122】
二次解析では、ANCOVAを用いて場所と閉経期からの期間の比較対照とし、のぼせの回数の順位変換した変化割合を、処置群とプラセボ群間で比較する。臨床現場および閉経期からの年数について調整したロジスティック回帰モデルを使用し、各処置群においてベースラインから12週間まででのぼせの頻度が50%以上低下した割合を比較する。
【0123】
いずれかの処置群で2%超で起こった有害事象の頻度を、カイ2乗法および正確確率法を用いて処置群間で比較し、適切な場合は、臨床施設および閉経期からの年数によって層別化する。
【0124】
指定探索的解析において、交互作用の項目を使用し、亜群、例えば、年齢(45〜50歳;50〜55歳;55〜60歳)民族(白色人種、その他)、閉経期からの年数(2年未満;2年以上)、両側卵巣摘出(はい;いいえ)、エストロゲン使用歴(はい;いいえ)、喫煙(現在も;経験ありまたは経験なし)、現在飲酒する(はい、いいえ)、ボディマス指数(三分位値)、ベースライン血清エストラジオールレベル(5pg/ml以下;5pg/mlより高い)、およびベースラインのぼせの頻度(三分位値)における処置効果(第12週目でののぼせの変化割合)の差を調べる。
【0125】
結果
結果には、無作為化した適格女性の数;各群(PG、SG5、SG10)の女性の数;試験を終了した全参加者ならびに各群および層の参加者の数;割り当てられた投薬物をすべて摂取した全参加者および各群の参加者の数;白色人種および非白色人種の全参加者および各群の参加者の数;1日のベースラインメジアンおよび平均のぼせの頻度(±S.D.,p);1日のメジアンおよび平均のぼせスコア(±S.D.,p);のぼせの頻度のメジアンおよび平均変化(±S.D.,p)、ならびに各評価期間でのメジアンおよび平均のぼせスコア(±S.D.,p)を含める。
【0126】
また、生活の質、睡眠の質および性機能の測定値に対する試験薬物での治療の効果も、プラセボと比較して評価する。
【0127】
ベースライン時および試験終了時に経膣超音波を受けた参加者の数も記録する。治験終了時に子宮内膜超音波を受けた参加者の数も記録する。平均子宮内膜厚(+S. D.)は、ベースライン時と第12週目に測定する。必要と思われる場合は、子宮内膜の生検も行なう。膣からの出血または血のにじみを報告した参加者の数も記録し、子宮内膜の生検は、これらの参加者のうち同意が得られたできるだけ多くで行なう。生検材料は、子宮内膜の過形成および癌の徴候について評価する。
【0128】
治験中の深刻な有害事象(あれば)も記録する。
【0129】
考察
試験薬物での治療により、中等度から重度の症状を有する健常な閉経後女性において、のぼせの頻度と重症度が低減すると考えられる。この試験の結果は、試験薬物を、同じまたはさらに高い用量の試験薬物が試験され得るさらなる臨床試験に進めるために使用され得る。
【0130】
また、試験薬物は選択的ERβアゴニストであるため、エストロゲン補充療法に関連する有害事象(子宮過形成および癌など)は、試験薬物では観察されないはずであると考えられる。
【0131】
エストラジオールは、閉経期ののぼせに対する有効な治療剤であるが、現在承認されている選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERMS)であるタモキシフェンおよびラロキシフェンは、閉経期ののぼせの発生率を増大させる。エストラジオールもSERMもエストロゲン受容体サブタイプに選択的でないため、ERαまたはERβのどちらのエストロゲン受容体がこの効果を媒介しているのかは不明である。ヒト乳癌細胞において、エストロゲンによってERαが活性化されると、増殖および腫瘍形成がもたらされるが、ERβが活性化されると、増殖阻害がもたらされ、腫瘍形成はもたらされないことが示された。この試験は、のぼせが試験薬物によって軽減され得ることを実証するためのデータを得るために設計されたものである。さらに、この試験は、試験薬物に関連するものであり得る有害事象に関する予備データを得るために設計されたものである。
【0132】
結論:
試験薬物での治療により、健常な閉経後女性においてのぼせの頻度と重症度が低減されることが予測され、試験薬物は、低用量よりも高用量の方が、より有効であることが予測される。さらに、この試験により、ERβ経路がのぼせの治療に役割を果たしている可能性があるという、さらなる確認が得られることが予測される。
【0133】
本発明を、一部の特定の実施形態および実施例に関して説明したが、当業者には、本発明の範囲内である他の実施形態も想定されることが認識されよう。
【0134】
結び
本発明の好ましい実施形態を本明細書において示し、記載したが、かかる実施形態は単なる一例として示したものであることは、当業者に自明であろう。本明細書において本発明を逸脱することなく、数多くの変形例、変更例および置換例が当業者に想起されよう。本発明の実施において、本明細書に記載の本発明の実施形態に対する種々の択一例が使用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定し、この特許請求の範囲の範囲に含まれる方法および構造ならびにその均等物は、特許請求の範囲に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)からなる群の少なくとも1つの単離精製された構成員を、多細胞生物においてエストロゲン受容体β(ERβ)がモジュレートされるのに充分な量で含む医薬組成物。
【化1】


【請求項2】
(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの2種類以上を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの3種類以上を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)の各々を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
医薬の製造における使用のための請求項1〜4いずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
該医薬がエストロゲン受容体βアゴニスト効果を有するものである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
該医薬が選択的エストロゲン受容体βアゴニスト効果を有するものである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
該医薬が、エストロゲン受容体αに対して拮抗作用を示すか、またはエストロゲン受容体αに対して測定可能な効果をほとんど、もしくは全くもたない、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
該エストロゲン様効果が、少なくとも1つの更年期症状の治療または予防;骨粗鬆症の治療または予防;子宮癌の治療または予防;および心血管疾患の治療または予防からなる群より選択される少なくとも1つの効果である、請求項6、7または8に記載の組成物。
【請求項10】
該エストロゲン様効果が、のぼせ、不眠、膣乾燥、性欲減退、尿失禁および鬱の治療または予防からなる群より選択される少なくとも1つの更年期症状の治療または予防を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
該エストロゲン様効果が骨粗鬆症の治療または予防を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
該エストロゲン様効果がのぼせの治療または予防を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
該エストロゲン様効果が子宮癌または乳癌の治療または予防を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
該エストロゲン様効果が、乳腺過形成、乳腺腫瘍、子宮過形成、子宮腫瘍、頚部過形成、頚部腫瘍、卵巣過形成、卵巣腫瘍、ファローピウス管過形成、ファローピウス管腫瘍のリスクの増大を含まない、請求項4〜13いずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
該エストロゲン様効果が、乳腺過形成、乳腺腫瘍、子宮過形成、子宮腫瘍、頚部過形成、頚部腫瘍、卵巣過形成、卵巣腫瘍、ファローピウス管過形成、ファローピウス管腫瘍のリスクの低下を含む、請求項4〜13いずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
医薬の調製のための請求項1〜15いずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
被検体に、化合物(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(1)、(g)および(h):
【化2】


からなる群の少なくとも1つの単離精製された構成員を、多細胞生物においてエストロゲン受容体β(ERβ)がモジュレートされるのに充分な量で含む組成物の1つをエストロゲン様有効量で投与することを含む、エストロゲン様効果の誘発方法。
【請求項18】
該組成物が、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの2種類以上を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該組成物が、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)のうちの種類以上を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
該組成物が、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)および(h)の各々を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
該エストロゲン様効果が、少なくとも1つの更年期症状の治療または予防;骨粗鬆症の治療または予防;子宮癌の治療または予防;および心血管疾患の治療または予防からなる群より選択される少なくとも1つの効果である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
該エストロゲン様効果が、のぼせ、不眠、膣乾燥、性欲減退、尿失禁および鬱の治療または予防からなる群より選択される少なくとも1つの更年期症状の治療または予防を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
該エストロゲン様効果が骨粗鬆症の治療または予防を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
該エストロゲン様効果がのぼせの治療または予防を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
該エストロゲン様効果が子宮癌の治療または予防を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
該エストロゲン様効果が、乳腺過形成、乳腺腫瘍、子宮過形成、子宮腫瘍、頚部過形成、頚部腫瘍、卵巣過形成、卵巣腫瘍、ファローピウス管過形成、ファローピウス管腫瘍のリスクの増大を含まない、請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
該エストロゲン様効果が、乳腺過形成、乳腺腫瘍、子宮過形成、子宮腫瘍、頚部過形成、頚部腫瘍、卵巣過形成、卵巣腫瘍、ファローピウス管過形成、ファローピウス管腫瘍のリスクの低下を含む、請求項17〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
エストロゲン応答エレメントの制御下にある遺伝子の活性化方法であって、該遺伝子に作動可能に連結させたエストロゲン応答エレメントとエストロゲン受容体を有する細胞に、前記遺伝子が活性化されるのに充分な量の請求項1〜4いずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項29】
前記細胞がインビトロである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞がインビボである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞がERα+乳房組織内に存在するものである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞がERβ+乳房組織内に存在するものである、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞がERα/ERβ+乳房組織内に存在するものである、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記エストロゲン応答エレメントを形質転換細胞において発現させる、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
該エストロゲン応答エレメントと該エストロゲン受容体の両方を形質転換細胞において発現させる、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記エストロゲン応答エレメントを該細胞において異種発現させる、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
該エストロゲン応答エレメントと該エストロゲン受容体の両方を該細胞において異種発現させる、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞が、ERE制御型遺伝子で形質転換させたU937、U2OS、MDA−MB−435およびMCF−7細胞からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
該細胞がERαを発現する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
該細胞がERβを発現する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
該ERE制御型遺伝子がERE−tk−Lucである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
TNF応答エレメントの制御下にある遺伝子とエストロゲン受容体を含む細胞に、前記TNF RE制御型遺伝子が抑制されるのに有効な量の請求項1〜4いずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、TNF RE制御型遺伝子の発現の抑制方法。
【請求項43】
該TNF RE制御型遺伝子がTNF−αである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
該TNF RE制御型遺伝子がTNF RE−Lucである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記前記細胞がインビトロである、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記細胞がインビボである、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞がER+乳房組織内に存在するものである、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記細胞がERα+乳房組織内に存在するものである、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞がERβ+乳房組織内に存在するものである、請求項42に記載の方法。
【請求項50】
前記TNF応答エレメントが該細胞において内生的に発現される、請求項42に記載の方法。
【請求項51】
該TNF応答エレメントと該エストロゲン受容体の両方が該細胞において内生的に発現される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記TNF応答エレメントを該細胞において異種発現させる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
該TNF応答エレメントと該エストロゲン受容体の両方を該細胞において異種発現させる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記細胞が、エストロゲン受容体遺伝子を含み、TNF応答エレメント制御型遺伝子で形質転換され、U937、U2OS、MDA−MB−435およびMCF−7細胞からなる群より選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項55】
該エストロゲン受容体遺伝子がERα発現遺伝子である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
該エストロゲン受容体遺伝子がERβ発現遺伝子である、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
(a)4−ヨードフェノールのヒドロキシ基をMOMClで保護し、保護型中間体:
【化3】

を形成すること;
(b)3をトリメチルシリルアセチレンと、ジエチルアミン中、ビス[トリフェニルホスフィン]パラジウム二塩化物およびCuIの存在下で接触させ:
【化4】

を形成すること;
(c)4−ヒドロキシベンズアルデヒドをMOMClと反応させ:
【化5】

を形成すること;
(d)6をエチニルマグネシウムブロミドと反応させ:
【化6】

を形成すること;
(e)4と7を反応させて8:
【化7】

を形成すること;
(f)8の三重結合を環元して9:
【化8】

を形成すること;ならびに
(g)MOM保護基を除去して1(ニアソール):
【化9】

を形成すること
を含む、ニアソールの調製方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−529421(P2012−529421A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513741(P2011−513741)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/047277
【国際公開番号】WO2010/053600
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(507200569)バイオノボ・インコーポレーテッド (24)
【Fターム(参考)】