説明

エストロゲン受容体モジュレーター

【課題】エストロゲン受容体モジュレーターの提供。
【解決手段】下記式の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
天然及び合成エストロゲンは更年期症候群の緩和、座瘡の治療、月経困難症及び不正子宮出血の治療、骨粗鬆症の治療、多毛症の治療、前立腺癌の治療、ホットフラッシュの治療並びに心臓血管疾患の治療等の広範な治療用途がある。エストロゲンは治療価値が非常に高いため、エストロゲン応答組織でエストロゲン様作用に似た作用をもつ化合物の発見に多大な関心が寄せられている。
【0002】
エストロゲン受容体はERα及びERβの2形態があることが分かっている。リガンドはこれらの2形態と別々に結合し、各形態は結合するリガンドに対して異なる組織特異性をもつ。従って、ERα又はERβに選択的な化合物が得られるため、特定リガンドに対してある程度の組織特異性を付与することが可能である。
【0003】
副作用なしにエストロゲン補充療法と同一のプラスの応答を生じることができる化合物が当分野で必要とされている。身体の各種組織に対して選択的効果を発揮するエストロゲン様化合物も必要とされている。
【0004】
本発明の化合物はエストロゲン受容体のリガンドであり、従って、骨量減少、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、パジェット病、歯周病、軟骨変性、子宮内膜症、子宮筋腫、ホットフラッシュ、LDLコレステロール値上昇、心臓血管疾患、認知機能障害、加齢による軽度認知障害、脳変性疾患、再狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満症、失禁、不安症、エストロゲン欠乏による鬱病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、性機能不全、高血圧、網膜変性並びに癌、特に乳癌、子宮癌及び前立腺癌等のエストロゲン機能に関連する各種症状の治療又は予防に有用であると思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はエストロゲン機能に関連する各種症状の治療又は予防に有用な化合物及び医薬組成物に関する。本発明の1態様は下式:
【0006】
【化1】

の化合物とその医薬的に許容可能な塩及び立体異性体によるエストロゲン関連障害の治療又は予防である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明はエストロゲン機能に関連する各種症状の治療又は予防に有用な化合物及び医薬組成物に関する。本発明の1態様は下式:
【0008】
【化2】

[式中、XはO、N−OR、N−NR又はC1−6アルキリデンであり、前記アルキリデン基は場合によりヒドロキシ、アミノ、O(C1−4アルキル)、NH(C1−4アルキル)又はN(C1−4アルキル)で置換されており;
は水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C3−6シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリール基は場合によりフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ及びORから構成される群から選択される1、2又は3個の基で置換されており;
は水素、(C=O)R、(C=O)OR又はSOであり;
は水素、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヒドロキシであり;
は水素、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヒドロキシであるか;
あるいはRとRは一緒になってそれらが結合している炭素原子と共にカルボニル基を形成し;
は水素、フルオロ、クロロ又はC1−5アルキルであり、前記アルキルは場合によりクロロ、ブロモ、ヨード、OR又は1〜5個のフルオロで置換されており;
は水素、C1−4アルキル、及びフェニルから構成される群から選択され、前記アルキル及びフェニル基は場合によりヒドロキシ、アミノ、O(C1−4アルキル)、NH(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)、クロロ、ブロモ又は1〜5個のフルオロで置換されており、2個以上のRが存在する場合には、独立して選択される]の化合物とその医薬的に許容可能な塩及び立体異性体又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体である。
【0009】
前記態様の1類において、XはO又はN−ORである。前記態様のサブクラスにおいて、XはO又はN−OHである。前記態様の別のサブクラスにおいて、XはOである。
【0010】
前記態様の1類において、Rは水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はC1−4アルキルであり、前記アルキル基は場合によりフルオロ、クロロ又はブロモから構成される群から選択される1、2又は3個の基で置換されている。
【0011】
前記態様の1類において、Rは水素である。
【0012】
前記態様の1類において、Rは水素である。
【0013】
前記態様の1類において、Rは水素である。
【0014】
前記態様の1類において、Rは水素である。
【0015】
本発明の非限定的な例としては限定されないが、
6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
6−クロロ−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
6−ブロモ−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
6−フェニル−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
6−クロロ−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンオキシム;
6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンオキシム;
6−フェニル−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンオキシム;
(8R,10aS)−6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
(8R,10aS)−6−クロロ−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
(8R,10aS)−6−ブロモ−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
(8R,10aS)−6−フェニル−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
(8R,10aS)−6−クロロ−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンオキシム;
(8R,10aS)−6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンオキシム;
(8R,10aS)−6−フェニル−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンオキシム;
並びにその医薬的に許容可能な塩及び立体異性体が挙げられる。
【0016】
上記化合物と医薬的に許容可能なキャリヤーから構成される医薬組成物も本発明の範囲に含まれる。本発明は許容可能なキャリヤーと本明細書に具体的に開示する任意化合物から構成される医薬組成物も含むものとする。本発明は本発明の医薬組成物の製造方法にも関する。本発明は本発明の化合物及び医薬組成物の製造に有用な方法と中間体にも関する。本発明の以上及び他の側面は本明細書の教示から自明である。
【0017】
(用途)
本発明の化合物はエストロゲン受容体の選択的モジュレーターであるため、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるエストロゲン受容体機能に関連する各種疾患又は症状を治療又は予防するために有用である。
【0018】
本発明の化合物は当分野で公知の同様の化合物よりも望ましい代謝プロフィルをもつという利点がある。薬物代謝はヒト肝ミクロソームアッセイでin vitro測定することができる。例えば、Regina W.Wang,“Validation of(−)−N−3−benzyl−phenobarbital as a selective inhibitor of CYP2C19 in human liver microsomes,”DMD 32:584−586,2004参照。更に、本発明の化合物はトリプトファンヒドロキシラーゼ遺伝子の誘導レベルにより測定した場合に当分野で公知の類似化合物よりも強力なin vivo ERβアゴニスト効果を示すという利点もある(国際公開WO2004027031、出願人Merck & Co.,Inc.参照)。
【0019】
エストロゲン受容体機能に関連する各種疾患及び症状としては限定されないが、骨量減少、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、パジェット病、歯周病、軟骨変性、子宮内膜症、子宮筋腫、ホットフラッシュ、LDLコレステロール値上昇、心臓血管疾患、認知機能障害、加齢による軽度認知障害、脳変性疾患、再狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満症、失禁、不安症、エストロゲン欠乏による鬱病、閉経周辺期鬱病、出産後鬱病、月経前症候群、躁鬱病、不安症、痴呆症、強迫行為、注意欠陥障害、睡眠障害、神経過敏、衝動性、アンガーマネージメント、多発性硬化症及びパーキンソン病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、性機能不全、高血圧、網膜変性並びに癌、特に乳癌、子宮癌及び前立腺癌が挙げられる。このような症状を本発明の化合物で治療する場合、治療に必要な量は特定疾患により異なり、当業者が容易に確認することができる。治療と予防の両者が本発明の範囲に含まれるが、これらの症状の治療が好ましい用途である。
【0020】
本発明は更に本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、処置を必要とする哺乳動物にエストロゲン受容体調節作用を誘起する方法に関する。
【0021】
本発明は更に本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、処置を必要とする哺乳動物にエストロゲン受容体アンタゴニスト作用を誘起する方法に関する。エストロゲン受容体アンタゴニスト作用はERαアンタゴニスト作用、ERβアンタゴニスト作用、又はERα及びERβ混合アンタゴニスト作用のいずれでもよい。
【0022】
本発明は更に本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、処置を必要とする哺乳動物にエストロゲン受容体アゴニスト作用を誘起する方法に関する。エストロゲン受容体アゴニスト作用はERαアゴニスト作用、ERβアゴニスト作用、又はERα及びERβ混合アゴニスト作用のいずれでもよい。本発明の好ましい方法はERβアゴニスト作用を誘起する。
【0023】
本発明は更に本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、処置を必要とする哺乳動物におけるエストロゲン機能に関連する障害、骨量減少、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、パジェット病、歯周病、軟骨変性、子宮内膜症、子宮筋腫、ホットフラッシュ、LDLコレステロール値上昇、心臓血管疾患、認知機能障害、加齢による軽度認知障害、脳変性疾患、再狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満症、失禁、不安症、エストロゲン欠乏による鬱病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、性機能不全、高血圧、網膜変性及び癌、特に乳癌、子宮癌及び前立腺癌を治療又は予防する方法に関する。本発明の具体例は鬱病の治療又は予防方法である。本発明の具体例は不安症の治療又は予防方法である。本発明の具体例はホットフラッシュの治療又は予防方法である。本発明の具体例は癌の治療又は予防方法である。本発明の具体例は心臓血管疾患の治療又は予防方法である。
【0024】
本発明の1態様は本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における癌、特に乳癌、子宮癌又は前立腺癌を治療又は予防する方法である。乳癌、子宮癌又は前立腺癌を治療するためにSERMが有用であることは文献公知である。T.J.Powles,“Breast cancer prevention,”Oncologist 2002;7(1):60−4;Park,W.C.and Jordan,V.C.,“Selective estrogen receptor modulators(SERMS)and their roles in breast cancer prevention,”Trends Mol Med.2002 Feb;8(2):82−8;Wolff,A.C.ら,“Use of SERMs for the adjuvant therapy of early−stage breast cancer,”Ann N Y Acad Sci.2001 Dec;949:80−8;Hou,Y.F.ら,“ERbeta exerts multiple stimulative effects on human breast carcinoma cells,”Oncogene 2004 Jul 29;23(34):5799−806;Steiner,M.S.ら,“Selective estrogen receptor modulators for the chemoprevention of prostate cancer,”Urology 2001 Apr;57(4 Suppl 1):68−72;Lai,J.S.ら,“Metastases of prostate cancer express estrogen receptor beta,”Urology 2004 Oct;64(4):814−20参照。
【0025】
本発明の別の態様は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における転移性骨疾患を治療又は予防する方法である。転移性骨疾患の治療におけるSERMの有用性は文献公知である。Campisi,C.ら,“Complete resoultion of breast cancer bone metastasis through the use of beta−interferon and tamoxifen,”Eur J Gynaecol Oncol 1993;14(6):479−83参照。
【0026】
本発明の別の態様は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における女性化乳房を治療又は予防する方法である。女性化乳房の治療におけるSERMの有用性は文献公知である。Ribeiro,G.and Swindell R.,“Adjuvant tamoxifen for male breast cancer.”Br J Cancer 1992;65:252−254;Donegan,W.,“Cancer of the Male Breast,”JGSM Vol.3,Issue 4,2000参照。
【0027】
本発明の別の態様は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における閉経後骨粗鬆症、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、悪性腫瘍による高カルシウム血症、骨量減少及び骨折を治療又は予防する方法である。骨粗鬆症、悪性腫瘍による高カルシウム血症、骨量減少又は骨折を治療又は予防するためにSERMが有用であることは文献公知である。Jordan,V.C.ら,“Selective estrogen receptor modulation and reduction in risk of breast cancer,osteoporosis and coronary heart disease,”Natl Cancer Inst 2001 Oct;93(19):1449−57;Bjarnason,NHら,“Six and twelve month changes in bone turnover are realted to reduction in vertebral fracture risk during 3 years of raloxifene treatment in postmenopausal osteoporosis,”Osteoporosis Int 2001;12(11):922−3;Fentiman,I.S.,“Tamoxifen protects against steroid−induced bone loss,”Eur J Cancer 28:684−685(1992);Rodan,G.A.ら,“Therapeutic Approaches to Bone Diseases,”Science Vol 289,1 Sept.2000参照。
【0028】
本発明の別の態様は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における歯周病又は歯の喪失を治療又は予防する方法である。哺乳動物における歯周病又は歯の喪失を治療するためにSERMを使用することは文献公知である。Rodan,G.A.ら,“Therapeutic Approaches to Bone Diseases,”Science Vol 289,1 Sept.2000 pp.1508−14参照。
【0029】
本発明の別の態様は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物におけるパジェット病を治療又は予防する方法である。哺乳動物におけるパジェット病を治療するためにSERMを使用することは文献公知である。Rodan,G.A.ら,“Therapeutic Approaches to Bone Diseases,”Science Vol 289,1 Sept.2000 pp.1508−14参照。
【0030】
本発明の別の態様は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における子宮筋腫を治療又は予防する方法である。子宮筋腫又は子宮平滑筋腫を治療するためにSERMを使用することは文献公知である。Palomba,S.ら,“Effects of raloxifene treatment on uterine leiomyomas in postmenopausal women,”Fertil Steril.2001 Jul;76(1):38−43参照。
【0031】
本発明の別の態様は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における肥満症を治療又は予防する方法である。肥満症を治療するためにSERMを使用することは文献公知である。Picard,F.ら,“Effects of the estrogen antagonist EM−652.HCl on energy balance and lipid metabolism in ovariectomized rats,”Int J Obes Relat Metab Disord.2000 Jul;24(7):830−40参照。
【0032】
本発明の別の態様は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における軟骨変性、関節リウマチ又は変形性関節症を治療又は予防する方法である。軟骨変性、関節リウマチ又は変形性関節症を治療するためにSERMを使用することは文献公知である。Badger,A.M.ら,“Idoxifene,a novel selective estrogen receptor modulator,is effective in a rat model of adjuvant−induced arthritis.”J Pharmacol Exp Ther.1999 Dec;291(3):1380−6参照。
【0033】
本発明の別の態様は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における子宮内膜症を治療又は予防する方法である。子宮内膜症を治療するためにSERMを使用することは文献公知である。Steven R.Goldstein,“The Effect of SERMs on the Endometrium,”Annals of the New York Academy of Sciences 949:237−242(2001)参照。
【0034】
本発明の別の態様は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における尿失禁を治療又は予防する方法である。尿失禁を治療するためにSERMを使用することは文献公知である。Goldstein,S.R.,“Raloxifene effect on frequency of surgery for pelvic floor relaxation,”Obstet Gynecol.2001 Jul;98(1):91−6参照。
【0035】
本発明の別の態様は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における心臓血管疾患、再狭窄症を治療又は予防し、LDLコレステロール値を低下させ、血管平滑筋細胞増殖を抑制する方法である。エストロゲンはコレステロールの生合成と心臓血管系の健康に作用すると思われる。統計的に、心臓血管疾患の発生率は閉経後の女性と男性でほぼ等しいが、閉経前の女性は男性よりも心臓血管疾患の発生率が著しく低い。閉経後の女性はエストロゲンが欠乏しているため、エストロゲンは心臓血管疾患の予防に有益な役割を果たすと考えられる。機序は十分に解明されていないが、エストロゲンは肝臓で低密度脂質(LDL)コレステロール受容体をアップレギュレートし、過剰のコレステロールを除去することが立証されている。心臓血管疾患、再狭窄症の治療又は予防、LDLコレステロール値の低下及び血管平滑筋細胞増殖の抑制にSERMが有用であることは文献公知である。Nuttall,MEら,“Idoxifene:a novel selective estrogen receptor modulator prevents bone loss and lowers cholesterol levels in ovariectomized rats and decreases uterine weight in intact rats,”Endocrinology 1998 Dec;139(12):5224−34;Jordan,V.C.ら,“Selective estrogen receptor modulation and reduction in risk of breast cancer,osteoporosis and coronary heart disease,”Natl Cancer Inst 2001 Oct;93(19):1449−57;Guzzo JA.,“Selective estrogen receptor modulators−a new age of estrogens in cardiovascular disease?,”Clin Cardiol 2000 Jan;23(1):15−7;Simoncini T,Genazzani AR.,“Direct vascular effects of estrogens and selective estrogen receptor modulators,”Curr Opin Obstet Gynecol 2000 Jun;12(3):181−7参照。
【0036】
本発明の別の態様は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における認知機能障害、加齢による軽度認知障害、又は脳変性疾患を治療又は予防する方法である。モデルにおいて、エストロゲンは認知機能に有益な効果があることが示されている(例えば不安症や鬱病の緩和及びアルツハイマー病の治療又は予防)。エストロゲンはコリン作動性機能、ニューロトロフィン及びニューロトロフィン受容体発現を増加することにより中枢神経系に作用する。エストロゲンは更にグルタミン作動性シナプス伝達を増加し、アミロイド前駆体蛋白質プロセシングを変化させ、神経保護作用を生じる。従って、本発明のエストロゲン受容体モジュレーターは認知機能を改善するか又は加齢による軽度認知障害、注意欠陥障害、睡眠障害、神経過敏、衝動性、アンガーマネージメント、多発性硬化症及びパーキンソン病を治療するのに有益であると思われる。その開示内容全体を参考資料として本明細書に組込むSawada,H and Shimohama,S,“Estrogens and Parkinson disease:novel approach for neuroprotection,”Endocrine.2003 Jun;21(1):77−9;McCullough LD,and Hurn,PD,“Estrogen and ischemic neuroprotection:an integrated view,”Trends Endocrinol Metab.2003 Jul;14(5):228−35参照。認知機能障害を予防するためにSERMが有用であることは文献公知である。Yaffe,K.,K.Krueger,S.Sarkarら2001.Cognitive function in postmenopausal women treated with raloxifene.N.Eng.J.Med.344:1207−1213参照。
【0037】
本発明の別の態様は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における鬱病を治療又は予防する方法である。鬱病を予防するためにエストロゲンが有用であることは文献に記載されている。Carranza−Liram S.,Valentino−Figueroa ML,“Estrogen therapy for depression in postmenopausal women,”Int J Gynnaecol Obstet 1999 Apr;65(1):35−8参照。具体的に、エストロゲン受容体β(ERβ)選択的アゴニストは鬱病、閉経周辺期鬱病、出産後鬱病、月経前症候群、躁鬱病、不安症、痴呆症、及び強迫行為等の不安又は抑鬱性障害の治療に単剤又は他の物質との併用剤として有用である。各種抑鬱性障害の治療に天然エストロゲンである17β−エストラジオールが有効であることは臨床試験により実証されている。参考資料として本明細書に組込むSchmidt PJ,Nieman L,Danaceau MA,Tobin MB,Roca CA,Murphy JH,Rubinow DR.Estrogen replacement in perimenopause−related depression:a preliminary report.Am J Obstet Gynecol 183:414−20,2000;及びSoares CN,Almeida OP,Joffe H,Cohen LS.Efficacy of estradiol for the treatment of depressive disorders in perimenopausal women:a double−blind,randomized,placebo−controlled trial.Arch Gen Psychiatry.58:537−8,2001参照。参考資料として本明細書に組込むBetheaら(Lu NZ,Shlaes TA,Gundlah C,Dziennis SE,Lyle RE,Bethea CL.Ovarian steroid action on tryptophan hydroxylase protein and serotonin compared to localization of ovarian steroid receptors in midbrain of guinea pigs.Endocrine 11:257−67,1999はエストロゲンの抗鬱活性が背側縫線核に集中したセロトニン含有細胞におけるセロトニン合成の調節により媒介されることを示唆している。
【0038】
本発明の別の態様は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における不安症を治療又は予防する方法である。不安症等の感情プロセスの調節にエストロゲン受容体が関与していることは文献に記載されている。Krezel,W.ら,“Increased anxiety and synaptic plasticity in estrogen receptor beta−deficient mice,”Proc Natl Acad Sci USA 2001 Oct 9;98(21):12278−82参照。
【0039】
本発明の別の態様は炎症、炎症性腸疾患又は過敏性腸症候群の治療又は予防方法である。クローン病や潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患は腸(腸管)が炎症する慢性疾患であり、再発性腹部痙攣及び下痢を生じることが多い。炎症及び炎症性腸疾患を治療するためにエストロゲン受容体モジュレーターを使用することは文献に記載されている。Harris,H.A.ら,“Evaluation of an Estrogen Receptor−β Agonist in Animal Models of Human Disease,”Endocrinology,Vol.144,No.10 4241−4249参照。
【0040】
本発明の別の態様は高血圧の治療又は予防方法である。エストロゲン受容体βは血管機能及び血圧の調節に役割を果たすことが報告されている。Zhuら,“Abnormal Vacular Function and Hypertension in Mice Deficient in Estrgoen Receptor β,”Science,Vol 295,Issue 5554,505−508,18 January 2002参照。
【0041】
本発明の別の態様は男性又は女性における性機能不全の治療又は予防方法である。性機能不全を治療するためにエストロゲン受容体モジュレーターを使用することは文献に記載されている。Baulieu,E.ら,,“Dehydroepiandrosterone(DHEA),DHEA sulfate,and aging:Contribution of the DHEAge Study to a scociobiomedical issue,”PNAS,April 11,2000,Vol.97,No.8,4279−4282;Spark,Richard F.,“Dehydroepiandrosterone:a springboard hormone for female sexuality,”Fertility and Sterility,Vol.77,No.4,Suppl 4,April 2002,S19−25参照。
【0042】
本発明の別の態様は網膜変性の治療又は予防方法である。エストロゲンは進行型加齢黄斑変性症の危険を低減するのに有益な効果があることが示されている。Snow,K.K.ら,“Association between reproductive and hormonal factors and age−related maculopathy in postmenopausal women,”American Journal of Ophthalmology,Vol.134,Issue 6,December 2002,pp.842−48参照。
【0043】
本発明の具体例は、処置を必要とする哺乳動物における骨量減少、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、パジェット病、歯周病、軟骨変性、子宮内膜症、子宮筋腫、ホットフラッシュ、心臓血管疾患、認知機能障害、脳変性疾患、再狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満症、失禁、不安症、鬱病、閉経周辺期鬱病、出産後鬱病、月経前症候群、躁鬱病、不安症、痴呆症、強迫行為、注意欠陥障害、睡眠障害、神経過敏、衝動性、アンガーマネージメント、多発性硬化症及びパーキンソン病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、性機能不全、高血圧、網膜変性、エストロゲン依存性癌の治療又は予防用医薬の製造における上記化合物のいずれかの使用である。
【0044】
本発明の化合物は標準医薬プラクティスに従って単独又は、好ましくは医薬的に許容可能なキャリヤーもしくは希釈剤と、場合によりミョウバン等の公知アジュバントと共に医薬組成物として哺乳動物、好ましくはヒトに投与することができる。化合物は経口投与してもよいし、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸内及び局所投与経路等で非経口投与してもよい。
【0045】
経口用錠剤の場合には、一般に使用されるキャリヤーとしてはラクトース及びコーンスターチが挙げられ、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤を一般に添加する。カプセル形態の経口投与には、有用な希釈剤としてはラクトースとドライコーンスターチが挙げられる。本発明の治療用化合物の経口使用には、選択された化合物を例えば錠剤もしくはカプセル剤、又は水溶液もしくは水性懸濁液の形態で投与することができる。錠剤又はカプセル剤の形態で経口投与する場合には、活性薬剤成分をラクトース、澱粉、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸2カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール等の医薬的に許容可能な非毒性不活性経口キャリヤーと配合することができ、液体形態で経口投与する場合には、経口薬剤成分をエタノール、グリセロール、水等の任意の医薬的に許容可能な非毒性不活性経口キャリヤーと配合することができる。更に、所望又は必要に応じて適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤及び着色剤を混合物に添加してもよい。適切な結合剤としては澱粉、ゼラチン、天然糖類(例えばグルコース又はβ−ラクトース、コーン甘味料)、天然及び合成ガム(例えばアラビアガム、トラガカントガム又はアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウ等が挙げられる。これらの剤形で使用される滑沢剤としてはオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。崩壊剤としては限定されないが、澱粉、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム等が挙げられる。水性懸濁液が経口使用に必要な場合には、活性成分を乳化剤及び懸濁剤と配合する。所望により、所定甘味剤又は香味剤を添加してもよい。筋肉内、腹腔内、皮下及び静脈内用には、一般に活性成分の滅菌溶液を調製し、溶液のpHを適切に調整及び緩衝する必要がある。静脈内用では、製剤を等張にするように溶質の総濃度を調節する必要がある。
【0046】
本発明の化合物は小さな一枚膜ベシクル、大きな一枚膜ベシクル及び多重膜ベシクル等のリポソーム送達システムの形態で投与することもできる。リポソームはコレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリン等の各種リン脂質から形成することができる。
【0047】
本発明の化合物は化合物分子を結合する個々のキャリヤーとしてモノクローナル抗体を使用することにより送達することもできる。本発明の化合物は標的化可能な薬剤キャリヤーとしての可溶性ポリマーと結合することもできる。このようなポリマーとしてはポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシ−エチルアスパルトアミド−フェノール、又はパルミトイル残基で置換したポリエチレンオキシド−ポリリジンが挙げられる。更に、本発明の化合物は薬剤の制御放出を達成するのに有用な類の生分解性ポリマー(例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマー)と結合することもできる。
【0048】
本発明の化合物は骨量減少、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、パジェット病、歯周病、軟骨変性、子宮内膜症、子宮筋腫、ホットフラッシュ、LDLコレステロール値上昇、心臓血管疾患、認知機能障害、加齢による軽度認知障害、脳変性疾患、再狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満症、失禁、不安症、エストロゲン欠乏による鬱病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、性機能不全、高血圧、網膜変性並びに癌、特に乳癌、子宮癌及び前立腺癌の治療又は予防に有用な公知物質と併用しても有用である。本明細書に開示する障害の治療又は予防に有用な他の物質と本明細書に開示する化合物の併用も本発明の範囲に含まれる。当業者は薬剤の特徴及び該当疾患に基づいてどの薬剤の組み合わせが有用であるかを識別することができる。このような物質としては、有機ビスホスホネート;カテプシンK阻害剤;エストロゲン又はエストロゲン受容体モジュレーター;アンドロゲン受容体モジュレーター;破骨細胞プロトンATPase阻害剤;HMG−CoAレダクターゼ阻害剤;インテグリン受容体アンタゴニスト;骨芽細胞同化剤(例えばPTH);カルシトニン;ビタミンD又は合成ビタミンDアナログ;選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI);アロマターゼ阻害剤;並びにその医薬的に許容可能な塩及び混合物が挙げられる。好ましい組み合わせは本発明の化合物と有機ビスホスホネートである。別の好ましい組み合わせは本発明の化合物とカテプシンK阻害剤である。別の好ましい組み合わせは本発明の化合物とエストロゲンである。別の好ましい組み合わせは本発明の化合物とアンドロゲン受容体モジュレーターである。別の好ましい組み合わせは本発明の化合物と骨芽細胞同化剤である。
【0049】
「有機ビスホスホネート」としては限定されないが、化学式:
【0050】
【化3】

(式中、nは0〜7の整数であり、AとXはH、OH、ハロゲン、NH、SH、フェニル、C1−30アルキル、C3−30分岐鎖又はシクロアルキル、2又は3個のNを含む2環式環構造、C1−30置換アルキル、C1−10アルキル置換NH、C3−10分岐鎖又はシクロアルキル置換NH、C1−10ジアルキル置換NH、C1−10アルコキシ、C1−10アルキル置換チオ、チオフェニル、ハロフェニルチオ、C1−10アルキル置換フェニル、ピリジル、フラニル、ピロリジニル、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、及びベンジルから構成される群から独立して選択され、但しnが0であるときにはAとXは同時にH又はOHから選択されず;あるいはAとXは一緒になってそれらが結合している1又は複数の炭素原子と共にC3−10環を形成する)の化合物が挙げられる。
【0051】
上記化学式において、化学式に十分な原子が選択される限り、アルキル基は直鎖、分岐鎖、又は環状のいずれでもよい。C1−30置換アルキルは多様な置換基を含むことができ、非限定的な例としてはフェニル、ピリジル、フラニル、ピロリジニル、イミダゾニル、NH、C1−10アルキル又はジアルキル置換NH、OH、SH、及びC1−10アルコキシから構成される群から選択されるものが挙げられる。
【0052】
上記化学式はA又はX置換基に複雑な炭素環、芳香族及びヘテロ原子構造も含み、非限定的な例としてはナフチル、キノリル、イソキノリル、アダマンチル、及びクロロフェニルチオが挙げられる。
【0053】
本発明ではビスホスホネートの医薬的に許容可能な塩及び誘導体も有用である。塩の非限定的な例としてはアルカリ金属、アルカリ性金属、アンモニウム、及びモノ−、ジ−、トリ−、又はテトラ−C1−30−アルキル置換アンモニウムから構成される群から選択されるものが挙げられる。好ましい塩はナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアンモニウム塩から構成される群から選択されるものである。ナトリウム塩がより好ましい。誘導体の非限定的な例としてはエステル、水和物及びアミドから構成される群から選択されるものが挙げられる。
【0054】
なお、本発明の治療剤に関して本明細書で使用する「ビスホスホネート」なる用語はジホスホネート、ビホスホン酸、及びジホスホン酸と、これらの材料の塩及び誘導体も含むものとする。ビスホスホネートに関する特定学名の使用は特に指定しない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0055】
ビスホスホネートの非限定的な例としてはアレンドロネート、シマドロネート、クロドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、インカドロネート、ミノドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、パミドロネート、ピリドロネート、リセドロネート、チルドロネート、及びゾレンドロネートとその医薬的に許容可能な塩及びエステルが挙げられる。特に好ましいビスホスホネートはアレンドロネートであり、特にアレンドロン酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム又はアンモニウム塩である。好ましいビスホスホネートの例はアレンドロン酸のナトリウム塩、特にアレンドロン酸の水和ナトリウム塩である。塩は自然数モルの水又は非自然数モルの水で水和することができる。好ましいビスホスホネートの別の例は、特に水和塩がアレンドロン酸一ナトリウム三水和物である場合のアレンドロン酸の水和ナトリウム塩である。
【0056】
有機ビスホスホネートの厳密な用量は投薬スケジュール、選択する特定ビスホスホネート、哺乳動物又はヒトの年齢、寸法、性別及び状態、治療する障害の種類と重篤度、並びに他の関連医学的及び物理的因子により異なる。ヒトの場合には、ビスホスホネートの有効経口用量は一般に約1.5〜約6000μg/kg体重、好ましくは約10〜約2000μg/kg体重である。代替投薬レジメンでは、毎日以外の間隔、例えば週1回、週2回、隔週、月2回の間隔でビスホスホネートを投与することができる。週1回投薬レジメンではアレンドロン酸一ナトリウム三水和物を35mg/週又は70mg/週の用量で投与する。ビスホスホネートは月1回、半年に1回、1年に1回あるいは更に低頻度で投与してもよい。WO01/97788(公開日2001年12月27日)及びWO01/89494(公開日2001年11月29日)参照。
【0057】
「エストロゲン」としては限定されないが、天然エストロゲン[7−エストラジオール(E)、エストロン(E)、及びエストリオール(E)]、合成結合型エストロゲン、経口避妊薬及びエストロゲン硫酸が挙げられる。Gruber CJ,Tschugguel W,Schneeberger C,Huber JC,“Production and actions of estrogens”N Engl J Med 2002 Jan 31;346(5):340−52参照。
【0058】
「エストロゲン受容体モジュレーター」とはメカニズムに関係なく、エストロゲンと受容体の結合を妨害又は阻害する化合物を意味する。エストロゲン受容体モジュレーターの例としては限定されないが、エストロゲン、プロゲストゲン、エストラジオール、ドロロキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、TSE−424、タモキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン、及びSH646が挙げられる。
【0059】
「カテプシンK阻害剤」とはシステインプロテアーゼカテプシンKの活性を妨害する化合物を意味する。カテプシンK阻害剤の非限定的な例はPCT公開WO00/55126(Axys Pharmaceuticals)及びWO01/49288(Merck Frosst Canada & Co.及びAxys Pharmaceuticals)に記載されている。
【0060】
「アンドロゲン受容体モジュレーター」とはメカニズムに関係なく、アンドロゲンと受容体の結合を妨害又は阻害する化合物を意味する。アンドロゲン受容体モジュレーターの例としてはフィナステリド及び他の5αレダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール、並びに酢酸アビラテロンが挙げられる。
【0061】
「破骨細胞プロトンATPアーゼ阻害剤」とは破骨細胞の頂端膜に存在しており、骨吸収プロセスに重要な役割を果たすことが報告されているプロトンATPアーゼの阻害剤を意味する。このプロトンポンプは骨粗鬆症及び関連代謝疾患の治療及び予防に潜在的に有用な骨吸収抑制剤の設計の魅力的なターゲットである。その開示内容全体を参考資料として本明細書に組込むC.Farinaら,“Selective inhibitors of the osteoclast vacuolar proton ATPase as novel bone antiresorptive agents,”DDT,4:163−172(1999)参照。
【0062】
「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」とは3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼの阻害剤を意味する。HMG−CoAレダクターゼに対して阻害活性をもつ化合物は当分野で周知のアッセイを使用することにより容易に確認することができる。例えば、米国特許第4,231,938号の6欄、及びWO84/02131の30−33頁に記載又は引用されているアッセイ参照。「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」なる用語と「HMG−CoAレダクターゼの阻害剤」なる用語は本明細書で使用する場合には同義である。
【0063】
使用可能なHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の例としては限定されないが、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標);米国特許第4,231,938号、4,294,926号及び4,319,039号参照)、シンバスタチン(ZOCOR(登録商標);米国特許第4,444,784号、4,820,850号及び4,916,239号参照)、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標);米国特許第4,346,227号、4,537,859号、4,410,629号、5,030,447号及び5,180,589号参照)、フルバスタチン(LESCOL(登録商標);米国特許第5,354,772号、4,911,165号、4,929,437号、5,189,164号、5,118,853号、5,290,946号及び5,356,896号参照)、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標);米国特許第5,273,995号、4,681,893号、5,489,691号及び5,342,952号参照)及びセリバスタチン(リバスタチン及びBAYCHOL(登録商標)とも言う;米国特許第5,177,080号参照)が挙げられる。上記及び本発明の方法で使用することができる他のHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の構造式はM.Yalpani,“Cholesterol Lowering Drugs”,Chemistry & Industry,pp.85−89(5 February 1996)の87頁と米国特許第4,782,084号及び4,885,314号に記載されている。本明細書で使用するHMG−CoAレダクターゼ阻害剤なる用語は医薬的に許容可能な全ラクトン及び開環酸形態(即ちラクトン環を開環して遊離酸を形成する場合)とHMG−CoAレダクターゼ阻害活性をもつ化合物の塩及びエステル形態を含み、従って、このような塩、エステル、開環酸及びラクトン形態の使用が本発明の範囲に含まれる。ラクトン部分とその対応する開環酸形態の1例を構造I及びIIとして下記に示す。
【0064】
【化4】

【0065】
開環酸形態が存在し得るHMG−CoAレダクターゼ阻害剤では、開環酸から塩及びエステル形態を形成できることが好ましく、このような全形態が本明細書で使用する「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」なる用語の意味に含まれる。好ましくはHMG−CoAレダクターゼ阻害剤はロバスタチン及びシンバスタチンから選択され、シンバスタチンが最も好ましい。本明細書においてHMG−CoAレダクターゼ阻害剤に関して「医薬的に許容可能な塩」なる用語は一般に遊離酸を適切な有機又は無機塩基と反応させることにより製造される本発明で使用される化合物の非毒性塩を意味し、特にナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛及びテトラメチルアンモニウム等のカチオンから形成される塩と、アンモニア、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、1−p−クロロベンジル−2−ピロリジン−1’−イル−メチルベンズ−イミダゾール、ジエチルアミン、ピペラジン、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等のアミンから形成される塩が挙げられる。HMG−CoAレダクターゼ阻害剤の塩形態のその他の例としては限定されないが、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、硼酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、蓚酸塩、パモ酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、亜酢酸塩、琥珀酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド及び吉草酸塩が挙げられる。
【0066】
記載するHMG−CoAレダクターゼ阻害剤化合物のエステル誘導体は温血動物の血流に吸収されると分解して薬剤形を放出し、改善された治療効果を薬剤に発揮させるプロドラッグとして作用することができる。
【0067】
上記に使用した「インテグリン受容体アンタゴニスト」とは生理的リガンドがαβインテグリンと結合するのを選択的に阻害、抑制ないし妨害する化合物、生理的リガンドがαβインテグリンと結合するのを選択的に阻害、抑制ないし妨害する化合物、生理的リガンドがαβインテグリン及びαβインテグリンの両者と結合するのを阻害、抑制ないし妨害する化合物、並びに毛細血管内皮細胞で発現される特定インテグリンの活性を阻害、抑制ないし妨害する化合物を意味する。この用語は更にαβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンのアンタゴニストも意味する。この用語は更にαβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンの任意組み合わせのアンタゴニストも意味する。H.N.Lodeら,PNAS USA 96:1591−1596(1999)は自然腫瘍転移の根治における抗血管新生αvインテグリンアンタゴニストと腫瘍特異的抗体−サイトカイン(インターロイキン−2)融合蛋白質の相乗作用について検討している。その結果、この組み合わせは癌及び転移性腫瘍増殖の治療に潜在的に有効であることが示唆された。αβインテグリン受容体アンタゴニストは現在入手可能な全薬剤と異なる新規メカニズムにより骨吸収を抑制する。インテグリンは細胞−細胞及び細胞−マトリックス相互作用を媒介するヘテロダイマートランスメンブレン接着受容体である。α及びβインテグリンサブユニットは非共有的に相互作用し、2価カチオン依存的に細胞外マトリックスリガンドと結合する。破骨細胞に最も多量に存在するインテグリンはαβ(>10/破骨細胞)であり、細胞移動及び分極に重要な細胞骨格構成で律速機能を果たすと思われる。αβアンタゴニスト作用は骨吸収の抑制、再狭窄の抑制、黄斑変性の抑制、関節炎の抑制、並びに癌及び転移性増殖の抑制から選択される。
【0068】
「骨芽細胞同化剤」とはPTH等の骨を形成する物質を意味する。副甲状腺ホルモン(PTH)又はそのアミノ末端フラグメント及び類似体を断続投与すると、動物及びヒトで骨量減少を予防、阻止、部分的に逆行させ、骨形成を刺激することが判明した。詳細については、D.W.Dempsterら,“Anabolic actions of parathyroid hormone on bone,”Endocr Rev 14:690−709(1993)参照。副甲状腺ホルモンは骨形成を刺激することにより骨量及び強度を増加する臨床効果があることが立証されている。結果はRM Neerら,New Eng J Med 344 1434−1441(2001)に報告されている。
【0069】
更に、PTHrP−(1−36)等の副甲状腺ホルモン関連蛋白質フラグメント又は類似体は強力なカルシウム尿治療効果をもつことが立証されており[M.A.Syedら,“Parathyroid hormone−related protein−(1−36)stimulates renal tubular calcium reabsorption in normal human volunteers:implications for the pathogenesis of humoral hypercalcemia of malignancy,”JCEM 86:1525−1531(2001)参照]、骨粗鬆症の治療用同化剤としても潜在効果があると考えられる。
【0070】
カルシトニンは主に甲状腺で産生される32アミノ酸ペブチドであり、カルシウムとリンの代謝に関与することが知られている。カルシトニンは破骨細胞の活性を阻害することにより骨吸収を抑制する。従って、カルシトニンは骨芽細胞をより有効に機能させ、骨を形成させることができる。
【0071】
「ビタミンD」としては限定されないが、天然に存在しており、ビタミンDの生物学的に活性な水酸化代謝産物(1α−ヒドロキシビタミンD;25−ヒドロキシビタミンD、及び1α,25−ジヒドロキシビタミンD)の生物学的に不活性な前駆体であるビタミンD(コレカルシフェロール)とビタミンD(エルゴカルシフェロール)が挙げられる。ビタミンDとビタミンDはヒトで同一生物効果をもつ。ビタミンD又はDが循環に流入すると、シトクロムP450−ビタミンD−25−ヒドロキシラーゼにより水酸化され、25−ヒドロキシビタミンDとなる。25−ヒドロキシビタミンD代謝産物は生物学的に不活性であり、腎臓でシトクロムP450−モノオキシゲナーゼ25(OH)D−1α−ヒドロキシラーゼにより更に水酸化され、1,25−ジヒドロキシビタミンDとなる。血清カルシウムが減少すると、カルシウム恒常性を調節し、25−ヒドロキシビタミンDから1,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換を増加することにより血漿カルシウム値を増加する副甲状腺ホルモン(PTH)の産生が増加する。
【0072】
1,25−ジヒドロキシビタミンDはカルシウム及び骨代謝に及ぼすビタミンDの作用に関与していると考えられる。1,25−ジヒドロキシ代謝産物はカルシウム吸収と骨格完全性を維持するために必要な活性ホルモンである。カルシウム恒常性は単球幹細胞を破骨細胞に分化するように誘導すると共にカルシウムを正常範囲に維持することにより1,25−ジヒドロキシビタミンDにより維持され、その結果、カルシウムヒドロキシアパタイトが骨表面に沈着することにより骨石灰化を生じる。Holick,MF,Vitamin D photobiology,metabolism,and clinical applications,In:DeGroot L,Besser H,Burger HGら編,Endocrinology,第3版,990−1013(1995)参照。しかし、1α,25−ジヒドロキシビタミンD値が増加すると、血中カルシウム濃度が増加し、骨代謝によるカルシウム濃度の制御に異常をきたし、高カルシウム血症となる可能性がある。1α,25−ジヒドロキシビタミンDは更に骨代謝における破骨細胞活性を間接的に調節し、濃度が上昇すると、骨粗鬆症の過剰な骨吸収を増加すると予想される。
【0073】
「合成ビタミンDアナログ」としてはビタミンDと同様に作用する非天然化合物が挙げられる。
【0074】
選択的セロトニン再取込み阻害剤は脳内セロトニン量を増加することにより作用する。SSRIは米国で10年間にわたって鬱病の治療に使用され、成果を上げている。SSRIの非限定的な例としてはフルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、及びフルボキサミンが挙げられる。SSRIは月経前症候群や月経前不機嫌性障害等のエストロゲン機能に関連する障害の治療にも使用されている。Sundstrom−Poromaa I,Bixo M,Bjorn I,Nordh O.,“Compliance to antidepressant drug therapy for treatment of premenstrual syndrome,”J Psychosom Obstet Gynaeco1,2000 Dec;21(4):205−11参照。
【0075】
本明細書で使用する「アロマターゼ阻害剤」なる用語はアロマターゼを阻害することが可能な化合物を意味し、例えばアミノグルテミド(CYTANDREN(登録商標))、アナストラゾール(ARMIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))、フォルメスタン(LENATRON(登録商標))、エクセメスタン(AROMASIN(登録商標))、アタメスタン(1−メチルアンドロスタ−1,4−ジエン−3,17−ジオン)、フェドロゾール(4−(5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン−5−イル)−ベンゾニトリル,一塩酸塩)、フィンロゾール(4−(3−(4−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−プロピル)−ベンゾニトリル)、ボロゾール(6−[(4−クロロフェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル]−1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール)、YM−511(4−[N−(4−ブロモペンジル)−N−(4−シアノフェニル)アミノ]−4H−1,2,4−トリアゾール)等の市販阻害剤が挙げられる。
【0076】
一定用量として製剤化する場合、このような併用製剤は下記用量範囲内の本発明の化合物と、その許容用量範囲内の他の医薬活性剤を使用する。あるいは、併用製剤が不適切な場合には本発明の化合物を医薬的に許容可能な公知物質と逐次使用することができる。
【0077】
本発明の化合物に関して「投与」なる用語とその活用形(例えば、化合物を「投与する」)は治療を必要とする動物の系に化合物又は化合物のプロドラッグを導入することを意味する。本発明の化合物又はそのプロドラッグを1種以上の他の活性剤(例えばビスホスホネート等)と併用する場合には、「投与」とその活用形は各々化合物又はそのプロドラッグと他の物質の同時及び逐次導入を含むものとする。本発明は本発明の化合物のプロドラッグをその範囲に含む。一般に、このようなプロドラッグは必要な化合物に容易にin vivoで変換可能な本発明の化合物の機能的誘導体である。従って、本発明の治療方法において、「投与する」なる用語は具体的に開示する化合物又は具体的に開示しないとしても、患者に投与後に特定化合物にin vivo変換する化合物で各種記載症状を治療することを意味する。適切なプロドラッグ誘導体を選択及び製造するための従来の方法は例えば参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込む“Design of Prodrugs,”H.Bundgaard編,Elsevier,1985に記載されている。これらの化合物の代謝産物としては、本発明の化合物を生体環境に導入することにより生産される活性種が挙げられる。
【0078】
本発明は更に医薬的に許容可能なキャリヤー又は希釈剤の存在下又は不在下で治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む、本明細書に記載する疾患の治療に有用な医薬組成物にも関する。本発明の適切な組成物としては、本発明の化合物と薬理的に許容可能なキャリヤー(例えばpHレベルが例えば7.4の食塩水)を含有する水溶液が挙げられる。溶液は局所ボーラス注射により患者の血流に導入することができる。
【0079】
本発明の化合物をヒト対象に投与する場合には、1日用量は一般に処方医により決定され、用量は一般に個々の患者の年齢、体重、及び応答と、患者の症状の重篤度により異なる。
【0080】
1適用例では、治療中の哺乳動物に適量の化合物を投与する。指定効果のために使用する場合、本発明の経口用量は約0.01mg/kg体重/日(mg/kg/日)〜約100mg/kg/日、好ましくは0.01〜10mg/kg/日、最も好ましくは0.1〜5.0mg/kg/日である。経口投与の場合、組成物は治療する患者の症状に合わせて活性成分0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100及び500mgを含有する錠剤とすることが好ましい。薬剤は一般に活性成分約0.01mg〜約500mg、好ましくは活性成分約1mg〜約100mgを含有する。静脈内投与に最適な用量は定速輸液中に約0.1〜約10mg/kg/分である。本発明の化合物は1日1回投与してもよいし、合計1日用量を1日2回、3回又は4回に分けて投与してもよいという利点がある。更に、本発明の好ましい化合物は適切な鼻腔内ビークルの局所使用により鼻腔内形態で投与してもよいし、当業者に周知の経皮パッチ形態を使用して経皮経路で投与してもよい。経皮送達システムの形態で投与するには、当然のことながら投薬レジメンを通して断続的ではなく連続的に投与する。
【0081】
本発明の化合物はエストロゲンに媒介される症状の治療に有用な他の物質と併用することができる。このような併用剤の個々の成分は治療期間中の異なる時点で別々に投与することもできるし、分割又は単回併用形態で同時投与することもできる。従って、本発明はこのような全同時又は交互投与レジメンを含むものであり、「投与」なる用語は相応に解釈すべきである。当然のことながら、本発明の化合物とカテプシンに媒介される症状の治療に有用な他の物質の併用の範囲は原則としてエストロゲン機能に関連する障害の治療に有用な任意医薬組成物との任意併用を含む。
【0082】
従って、本発明の範囲は本発明の化合物と、有機ビスホスホネート;カテプシンK阻害剤;エストロゲン;エストロゲン受容体モジュレーター;アンドロゲン受容体モジュレーター;破骨細胞プロトンATPase阻害剤;HMG−CoAレダクターゼ阻害剤;インテグリン受容体アンタゴニスト;骨芽細胞同化剤;カルシトニン;ビタミンD;合成ビタミンDアナログ;選択的セロトニン再取込み阻害剤;アロマターゼ阻害剤;並びにその医薬的に許容可能な塩及び混合物から選択される第2の物質の併用を含む。
【0083】
本発明の上記及び他の側面は本明細書の教示から自明である。
【0084】
(定義)
本明細書で使用する「組成物」なる用語は特定量の特定成分を含有する製剤と、特定量の特定成分の組み合わせにより直接又は間接的に得られる任意製剤を意味する。
【0085】
本明細書で使用する「治療有効量」なる用語は研究者、獣医、医師又は他の臨床医により求められる生物又は医学的応答を組織、系、動物又はヒトに誘発する活性化合物又は薬剤の量を意味する。
【0086】
本明細書で使用する疾患「を治療する」又は「の治療」なる用語は疾患の予防、即ち疾患になる危険又は素因があるが、まだ疾患の症状を発現していない哺乳動物に疾患の臨床症状が生じないようにすること;疾患の抑制、即ち疾患又はその臨床症状の発生を阻止又は低減すること;あるいは疾患の緩和、即ち疾患又はその臨床症状を逆行させることを含む。
【0087】
本明細書で使用する「骨吸収」なる用語は破骨細胞が骨を分解するプロセスを意味する。
【0088】
「アルキル」なる用語は直鎖又は分岐鎖非環式飽和炭化水素から水素原子1個を形式的に除去することにより誘導される一価置換基を意味する(即ち−CH、−CHCH、−CHCHCH、−CH(CH、−CHCHCHCH、−CHCH(CH、−C(CH等)。
【0089】
「アルケニル」なる用語は直鎖又は分岐鎖非環式不飽和炭化水素から水素原子1個を形式的に除去することにより誘導される一価置換基を意味する(即ち−CH=CH、−CH=CHCH、−C=C(CH、−CHCH=CH等)。
【0090】
「アルキニル」なる用語は炭素−炭素三重結合を含む直鎖又は分岐鎖非環式不飽和炭化水素から水素原子1個を形式的に除去することにより誘導される一価置換基を意味する(即ち−C≡CH、−C≡CCH、−C≡CCH(CH、−CHC≡CH等)。
【0091】
「アルキリデン」なる用語は同一炭素原子から水素原子2個を形式的に除去することにより直鎖又は分岐鎖非環式飽和炭化水素から誘導される二価置換基を意味する(即ち=CH、=CHCH、=C(CH等)。
【0092】
「シクロアルキル」なる用語は飽和単環式炭化水素から水素原子1個を形式的に除去することにより誘導される一価置換基を意味する(即ちシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、又はシクロヘプチル)。
【0093】
本明細書で使用する「アリール」なる用語は単環式又は二環式芳香族炭化水素から水素原子1個を形式的に除去することにより誘導される一価置換基を意味する。アリール基の例としてはフェニル、インデニル、及びナフチルが挙げられる。
【0094】
本明細書で使用する「ヘテロアリール」なる用語はN、O、又はSから選択される1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含む単環式又は二環式芳香族環系から水素原子1個を形式的に除去することにより誘導される一価置換基を意味する。ヘテロアリール基の例としては限定されないが、ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ベンズイミダゾリル、インドリル、及びプリニルが挙げられる。ヘテロアリール置換基は炭素原子に結合してもよいし、ヘテロ原子を介して結合してもよい。
【0095】
「ハロ」なる用語はヨード、ブロモ、クロロ及びフルオロを含む。
【0096】
「置換」なる用語は指定置換基による置換の多重度を含むものとする。複数の置換基部分を開示又は請求の範囲に記載する場合には、置換される化合物は単数形又は複数形で開示又は請求の範囲に記載する置換基部分の1種以上で独立して置換することができる。独立して置換とは、(2個以上の)置換基が同一でも異なっていてもよいことを意味する。
【0097】
本発明は本明細書に開示する化合物の保護誘導体も含む。例えば、本発明の化合物がヒドロキシル又はカルボニル等の基を含む場合には、これらの基を適切な保護基で保護することができる。適切な保護基の包括的リストは参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込むT.W.Greene,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,Inc.1981に記載されている。本発明の化合物の保護誘導体は当分野で周知の方法により製造することができる。
【0098】
本発明の化合物は(E.L.Eliel and S.H.Wilen,Stereochemistry of Carbon Compounds,John Wiley & Sons,New York,1994,1119−1190頁に記載されているように)不斉中心、キラル軸、及びキラル面をもつことができ、ラセミ化合物、ラセミ混合物、及び個々のジアステレオマーとして存在することができ、光学異性体を含むその可能な全異性体及び混合物が本発明に含まれる。更に、本明細書に開示する化合物は互変異性体として存在することができ、一方の互変異性体構造しか示していない場合にも両方の互変異性形態を本発明の範囲に含むものとする。例えば、下記化合物Aに関する任意記載は互変異性体構造Bとその混合物も含み、その逆も同様である。
【0099】
【化5】

【0100】
任意可変要素(例えばR,R,R等)が任意成分中に2回以上出現する場合には、出現毎のその定義は各々独立している。また、置換基と変数の組み合わせはこのような組み合わせにより安定な化合物が得られる場合のみに許容可能である。置換基から環系の内側に引いた線は指定する結合が置換可能な任意環炭素原子に結合できることを意味する。環系が多環式である場合には、結合は近接環上のみの適切な任意炭素原子と結合するものとする。
【0101】
当然のことながら、本発明の化合物上の置換基及び置換パターンは容易に入手可能な出発材料から当分野で公知の技術及び下記方法により容易に合成可能な化学的に安定な化合物が得られるように当業者が選択することができる。置換基自体が2個以上の基で置換されている場合には、当然のことながら、安定な構造が得られる限り、これらの複数の基は同一炭素上にあってもよいし、異なる炭素上にあってもよい。「場合により1個以上の置換基で置換された」なる表現は「場合により少なくとも1個の置換基で置換された」なる表現と同義であり、このような場合には、好ましい態様は0〜3個の置換基をもつ。
【0102】
本発明の化合物を選択する際には、当業者に自明の通り、各種置換基、即ちR,R,Rは化学構造結合性の周知原理に従って選択すべきである。
【0103】
本発明の代表的な化合物は一般にα及び/又はβエストロゲン受容体に対してマイクロモル未満の親和性を示し、好ましくはβエストロゲン受容体のアゴニストとして作用する。従って、本発明の化合物はエストロゲン機能に関連する障害をもつ哺乳動物の治療に有用である。
【0104】
本発明の化合物はラセミ形でも個々のエナンチオマーとしても入手可能である。便宜上、構造によっては単一エナンチオマーとして図示する場合もあるが、特に指定しない限り、ラセミ形と純エナンチオマー形の両者を含むものとする。本発明の化合物のシス−トランス立体配置を指定する場合には、特に指定しない限り、立体配置は相対的であると解釈すべきであることに留意されたい。例えば、(+)又は(−)の表記は指定するような絶対立体配置をもつ指定化合物を表すと解釈すべきである。
【0105】
ラセミ混合物は多数の慣用方法の任意のものによりその個々のエナンチオマーに分離することができる。これらの方法としては限定されないが、キラルクロマトグラフィー、キラル助剤による修飾後にクロマトグラフィー又は結晶化により分離する方法、及びジアステレオマー塩の分別結晶化が挙げられる。プロキラル中間体アニオン等のエナンチオマープロトン化等の脱ラセミ化も利用することができる。
【0106】
融合五員トリアゾール環は3個の窒素原子を含むため、互変異性体(Rは水素である)と位置異性体(Rは水素以外の基である)が考えられる。以下に示すようなこれらの異性形が本発明の範囲に含まれると考えられる。
【0107】
【化6】

【0108】
本発明の化合物はエストロゲンに媒介される症状の治療に有用な他の物質と併用することができる。このような併用剤の個々の成分は治療期間中の異なる時点で別々に投与することもできるし、分割又は単回併用形態で同時投与することもできる。従って、本発明はこのような全同時又は交互投与レジメンを含むものであり、「投与」なる用語は相応に解釈すべきである。当然のことながら、本発明の化合物とエストロゲンに媒介される症状の治療に有用な他の物質の併用の範囲は原則としてエストロゲン機能に関連する障害の治療に有用な任意医薬組成物との任意併用を含む。
【0109】
本発明の化合物を使用する投薬レジメンは患者の型、種、年齢、体重、性別及び病態、治療する症状の重篤度、投与経路、患者の腎及び肝機能、並びに使用する特定化合物又はその塩等の種々の因子に従って選択される。通常の技術をもつ医師、獣医又は臨床医は症状の進行を予防、抑制又は阻止するために必要な薬剤の有効量を容易に決定及び処方することができる。
【0110】
本発明の方法では、本明細書に詳細に記載する化合物は活性成分を形成することができ、所期投与形態(即ち経口錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ等)に関して適切に選択され、従来の医薬プラクティスと整合する適切な医薬希釈剤、賦形剤又はキャリヤー(本明細書では「キャリヤー」材料と総称する)と混合して一般に投与される。
【0111】
本発明の化合物の医薬的に許容可能な塩としては無機又は有機酸から形成されるような本発明の化合物の慣用非毒性塩が挙げられる。例えば、慣用非毒性塩としては塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等の無機酸から誘導される塩と、酢酸、プロピオン酸、琥珀酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、蓚酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸から製造される塩が挙げられる。上記医薬的に許容可能な塩及び他の典型的な医薬的に許容可能な塩の製造は参考資料として本明細書に組込むBergら,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,1977:66:1−19に詳細に記載されている。本発明の化合物の医薬的に許容可能な塩は塩基性又は酸性部分を含む本発明の化合物から従来の化学的方法により合成することができる。一般に、塩基性化合物の塩はイオン交換クロマトグラフィーにより製造されるか、あるいは適切な溶媒又は各種併用溶媒中で遊離塩基を化学量論的量又は過剰の所望塩形成無機又は有機酸と反応させることにより製造される。同様に、酸性化合物の塩は適切な無機又は有機塩基との反応により形成される。
【0112】
下記スキーム及び実施例において、各種試薬記号及び略語は以下の意味をもつ。
AcOH:酢酸
AgOAc:酢酸銀
AlCl:塩化アルミニウム
AIBN:2,2−アゾビスイソブチロニトリル
BBr:三臭化ホウ素
BnNH:ベンジルアミン
BrCHCHF:1−ブロモ−2−フルオロエタン
BrCHCHOBn:1−ブロモ−2−ベンジルオキシエタン
CCl:四塩化炭素
CHCl:ジクロロメタン
CuBr:臭化銅
CuCN:シアン化銅
CuI:ヨウ化銅
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン
DBN:1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン
DIEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMAC:N,N−ジメチルアセトアミド
DMAP:4−(ジメチルアミノ)ピリジン
DMF:ジメチルホルムアミド
EtOH:エタノール
EtN:トリエチルアミン
EtSH:エタンチオール
EVK:エチルビニルケトン
HCl:塩酸
HOAc:酢酸
CO:炭酸カリウム
KI:ヨウ化カリウム
KN(TMS):カリウムビス(トリメチルシリル)アミド
LiCl:塩化リチウム
LDA:リチウムジメチルアミド
LiN(TMS):リチウムビス(トリメチルシリル)アミド
MeCO:炭酸メチル
MeCN:シアン化メチル
MeOH:メタノール
MFSDA:(フルオロスルホニル)ジフルオロ酢酸メチル
MsCl:塩化メシル
MVK:メチルビニルケトン
NaH:水素化ナトリウム
NaI:ヨウ化ナトリウム
NaNO:亜硝酸ナトリウム
NaOH:水酸化ナトリウム
NaOMe:ナトリウムメチラート
NaOt−Bu:ナトリウムt−ブトキシド
NCCOEt:シアノギ酸エチル
NBS:N−ブロモスクシンイミド
NCS:N−クロロスクシンイミド
NIS:N−ヨードスクシンイミド
NMO:N−メチルモルホリンN−オキシド
NMP:M−メチル−2−ピロリドン
PdCl(PPh:塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)
PdCl(dppf)・CHCl:[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)
Pd(dba):トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
Pd(OAc):酢酸パラジウム
Pd(PPh:テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
PhB(OH):フェニルボロン酸
PhCH:トルエン
PhH:ベンゼン
PhMe:トルエン
PMB−Cl:塩化パラメトキシベンジル
SEM−Cl:塩化2−(トリメチルシリル)エトキシメチル
SMe:硫化ジメチル
SnMe:テトラメチル錫
TfO:トリフルオロメタンスルホン酸無水物
THF:テトラヒドロフラン
TsOH:p−トルエンスルホン酸
TPAP:過ルテニウム酸トリプロピルアンモニウム
XANTPHOS:4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン。
【0113】
本発明の新規化合物は適当な材料を使用して下記スキーム及び実施例の手順に従って製造することができ、下記特定実施例により更に例証する。しかし、実施例に例証する化合物が本発明としてみなされる唯一の類を形成すると解釈すべきではない。下記実施例は本発明の化合物の製造の詳細を更に例証する。当業者に容易に理解されるように、以下の製造手順の条件及び工程の公知変形を使用してこれらの化合物を使用することもできる。全温度は特に指定しない限り、摂氏である。
【0114】
本発明の化合物はスキームI〜XIに要約する一般方法により製造される。これらのスキームにおいて、RはR又はその前駆体を表し;RIa及びRIbは水素以外のR又はその前駆体を表し;RIIはR又はその前駆体を表し;RIIIa及びRIIIbは水素以外のR及び/又はR又はその前駆体を表し;RIVはOR及びNRを表し;Rは水素、C1−5アルキル基又は置換C1−5アルキル基を表し;R及びRは独立して水素又はアニリン窒素のN保護基(例えばメチル、エチル、アリル又はベンジル)を表し;Rは水素又はベンゾトリアゾール基のN保護基を表し;Rは水素又はフェノールヒドロキシルの脱離可能な保護基(例えばメチル、メトキシメチル又はベンジル)を表し;Rはメチル、トリフルオロメチル、ノナフルオロブチル、フェニル又はトリルを表し;Yは置換可能な脱離基(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メタンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ、トリフルオロメチルスルホニルオキシ等)又はその前駆体(例えばヒドロキシル、ベンジルオキシ又はアセトキシ)を表し;Zは水素又は脱離可能なアリールブロッキング基(例えばクロロ又はブロモ)を表す。他のR基はこれらの基が出現するスキーム中に定義する。
【0115】
本発明の最終化合物はスキームI〜IVに要約する方法により製造される置換インダノン化合物から合成される。スキームIの合成の出発材料は5−アミノ−1−インダノン誘導体(1)であり、公知化合物であるか、又は当分野で公知の従来方法により製造される。スキームIのステップ1では、保護5−アミノ−1−インダノン(1)を塩基の存在下でシアノギ酸エチルやクロロギ酸エチル等のカルボキシル化剤と反応させ、β−ケトエステル(2)を得る。ステップ2では、β−ケトエステル(2)を次に塩基の存在下でアルキル化剤L−CHCH−Y(式中、Lは置換可能な脱離基を表す)と反応させ、中間体(3)を得る。Yも置換可能な脱離基を表す場合には、Lがより容易に置換される基となるようにこれらの2個の基の相対反応性を適宜選択する。ステップ3では、エステルの加水分解又は他の分解後に脱カルボキシル化することにより中間体(3)のカルボキシル基を除去し、(4)を得る。ステップ4は−CHCH−Y部分の代替導入を示す。この場合には、置換は(1)を塩基性条件下で置換アルデヒドY−CHCHOと反応させた後に得られたアルキリデン中間体を水素化する還元アルキル化反応により実施される。この場合には、Yは合成の後期点で置換可能な脱離基に変換することができる前駆体基であることが最も適切である。あるいは、−CHCH−Y部分の導入はインダノン(1)を塩基の存在下でアルキル化剤L−CHCH−Y(式中、Zは置換可能な脱離基を表す)と反応させて中間体(4)を得ることにより実施することもできる。Yも置換可能な脱離基を表す場合には、Lがより容易に置換される基となるようにこれらの2個の基の相対反応性を適宜選択する。
【0116】
【化7】

【0117】
スキームIにステップ1〜4として示す代表的試薬及び反応条件は以下の通りである。
ステップ1
i)LiN(TMS),THF,−78〜40℃
ii)NCCOEt,−78℃〜室温,R=Et
MeCO,NaH,PhH,60℃,R=Me
ステップ2
BrCHCHF,KCO,KI,DMAC,65℃,Y=F
BrCHCHOBn,KCO,KI,DMAC,60〜100℃,Y=OBn
ステップ3
NaOH,HO,MeOH,THF,0〜40℃又は
6N HCl,HOAc,90〜100℃,
ステップ4
BnOCHCHO,NaOMe,MeOH,H,Pd/C,Y=OBn
(HOCHCHO),NaOMe,MeOH,H,Pd/C,Y=OH。
【0118】
スキームIIの合成は5−アルコキシ−1−インダノン(5)から出発して2置換5−アルコキシ−1−インダノン(8)を製造する以外はスキームIの合成と同様である。スキーム2の5−アルコキシ−1−インダノン出発材料は公知化合物であるか又は当分野で公知の従来方法により製造することができる。
【0119】
【化8】

【0120】
スキームIIIはスキームIVの出発材料であるトリアゾロ−インダノン(13)の合成を示す。スキームIIIの合成の出発材料は保護5−アミノ−1−インダノン誘導体(1a)であり、公知化合物であるか、又は当分野で公知の従来方法により製造される。スキームIIIのステップ1では、化合物(Ia)を従来手段によりニトロ化し、ニトロ化合物(9)を得る。ステップ2で(9)から保護基Rを除去し、ニトロ−アニリン誘導体(10)を得る。ステップ3では、(10)のニトロ基を還元し、ジアミノ化合物(11)を得る。4,5−ジアミノ−インダノン(11)をジアゾ化し(ステップ4)、トリアゾロ−インダノン(12)を生成する。Rにより表される多数の周知基の任意のものを使用して(12)の融合トリアゾール環をN保護する。融合ヘテロアリール環は3個の窒素原子を含むので、構造(13a)、(13b)及び(13c)により示すような位置異性体が考えられる。これらの異性体を混合物として使用してもよいし、分離し、後期段階で各々使用してもよい。構造(13)はこれらの可能性を表す。
【0121】
【化9】

【0122】
ステップ1
90% HNO,−78〜0℃
ステップ2
6N HCl,MeOH,還流,R=Ac
ステップ3
(1気圧),10%Pd/C,KOAc,EtOAc
ステップ4
NaNO,HCl,HO,EtOH,0℃
ステップ5
SEM−Cl,NaH,DMF,0℃〜室温,R=SEM
PMB−Cl,NaH,DMF,0℃〜室温,R=PMB。
【0123】
スキームIVの合成はトリアゾロ−インダノン(13)から出発して2置換4,5−トリアゾロ−1−インダノン(17)を生成する以外はスキームIの合成と同様である。トリアゾロ−インダノン(13)はスキームIIIに従って製造される。
【0124】
【化10】

【0125】
スキームVは本発明の五環式3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン化合物の製造方法を示す。ステップ1では、2置換1−インダノン(4)を塩基の存在下でビニルケトンと反応させ、ジケトン(18)を得る。ジケトンを次に塩基性又は酸性条件下で環化し(ステップ2)、テトラヒドロフルオレノン生成物(19)を得る。ステップ3では、塩基の存在下及び/又は加熱下で内部アルキル化反応によりエチリデン架橋を形成し、(20)を生成する。この段階の前又はこの段階と同時にYを反応性脱離基に変換することが必要な場合もある。ステップ4は任意段階である窒素の保護、脱保護、又は脱保護−再保護段階であり、化合物(20)に実施すると、所望R基に応じて中間体(21)が得られる。中間体(21)でR=Hの場合には、スキームVIIIで以下に詳述するように合成のこの時点で水素以外の各種R基を導入することができる。ステップ5では、インダノン(21)をニトロ化し、(22)を生成する。化合物(21)が非置換6位をもつ場合(Z=H)には、位置異性ニトロ化合物も形成される場合があるが、従来手段(例えばクロマトグラフィーや結晶化)により所望生成物から分離することができる。ステップ6で(22)のニトロ基を還元し、アミノ化合物(23)を得る。ステップ7では、(23)をジアゾ化し、トリアゾロ化合物(24)を得る。Zが中間体(24)で水素以外のアリールブロッキング基を表す場合には、ステップ8で除去し、最終化合物(25)を得る。Rが保護基である場合には、Zの除去前、除去と同時、又は除去後に脱保護段階を実施することができる。
【0126】
【化11】

【0127】
スキームVにステップ1〜8として示す代表的試薬及び反応条件は以下の通りである。
ステップ1
MVK,NaOMe,MeOH,室温〜60℃又は
MVK,DBN,THF,室温〜60℃,R=H
EVK,NaOMe,MeOH,室温〜60℃,R=Me
ステップ2
ピロリジン,HOAc,PhMe,60〜85℃又は
NaOH,HO,MeOH又はEtOH,室温〜85℃又は
6N HCl,HOAc,90〜100℃又は
TsOH−HO,PhMe,60〜100℃
ステップ3
LiCl,DMF,150℃,Y=F
i)BBr,CHCl,−78℃
ii)KN(TMS),THF,−78℃,Y=F
ピリジン−HCl,190℃,Y=OBn
i)NaOMe,MeOH
ii)MsCl,EtN,CHCl
iii)LDA,THF,−78℃〜室温,Y=OAc
ステップ4
i)ピリジン−HCl,180〜195℃,R=Bn,R=Bn
ii)AcCl,KCO,CHCl,R=Ac,R=H
ステップ5
2,3,5,6−テトラブロモ−4−メチル−4−ニトロシクロヘキサ−2,5−ジエノン,TFA,室温又は
NaNO,TFA,室温〜80℃
ステップ6
(1気圧),10%Pd/C,KOAc,MeOH,EtOAc
ステップ7
NaNO,HCl,HO,EtOH,0℃
ステップ8
(1気圧),20%Pd(OH)/C,5%Pd/CaCO,DMF,Z=Cl。
【0128】
スキームVIはスキームIIからの2置換5−アルコキシ−1−インダノン(8)から出発する本発明の五環式3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン化合物の代替製造方法を示す。ステップ1〜3はスキームVの対応段階と同様に実施し、テトラヒドロフルオレノン(28)を生成する。ステップ4では、フェノールヒドロキシルから保護基Rを除去する。場合により、この脱保護をステップ3中に実施すると、ステップ4で別に脱保護する必要がなくなり、簡便になる。ステップ5でフェノール(29)をスルホニル化剤と反応させ、スルホン酸塩中間体(30)を得る。ステップ6では、パラジウム触媒アミド化反応でスルホン酸塩(30)をアニリン誘導体(21)に変換する。このようなアミド化反応は当分野で周知である(例えばJ.Am.Chem.Soc.2003,125,6653−6655;J.Org.Chem.2003,68,9563−9573;J.Org.Chem.2000,65,1158−1174参照)。所望R基に応じて、化合物(21)に窒素の保護、脱保護、又は脱保護−再保護を実施することができる。中間体(21)でR=Hの場合には、スキームVIIIで以下に詳述するように合成のこの時点で水素以外の各種R基を導入することができる。その後、スキームVで上述した方法により化合物(21)を最終化合物(25)に変換する。
【0129】
【化12】

【0130】
スキームVにステップ4〜6として示す代表的試薬及び反応条件は以下の通りである。
ステップ4
LiCl,DMF,150℃又は
BBr,CHCl,−78℃〜室温,R=Me
ステップ5
TfO,EtN(i−Pr),CHCl,0℃〜室温,R=CF
ステップ6
Pd(dba),XANTPHOS,CsCO
MeCONH,PhMe,80〜100℃,R=Ac
Pd(OAc),(o−ビフェニル)P(t−Bu),NaOt−Bu,
BnNH,PhMe,室温〜80℃,R=Bn
Pd(OAc),2−[(Cy)P]−2’,4’,6’−[トリ−i−Pr]−1,1’−ビフェニル
CO,PhB(OH),HNCOt−Bu,t−BuOH,室温〜110℃,R=COtBu。
【0131】
スキームVIIはスキームIVからの2置換4,5−トリアゾロ−1−インダノン(17)から出発する本発明の五環式3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン化合物の代替製造方法を示す。ステップ1〜3はスキームVの対応段階と同様に実施し、テトラヒドロフルオレノン(33)を生成する。中間体(33)でR=Hの場合には、スキームVIIIで以下に詳述する方法と同様の方法で合成のこの時点で水素以外の各種R基を導入することができる。Zが中間体(33)で水素以外のアリールブロッキング基を表す場合には、ステップ4で除去し、化合物(34)を得る。この段階はスキームVのステップ8と同様に行われる。Zの除去前、除去と同時、又は除去後にR保護基を除去することができる。スキームVIIにはその後の可能性を示す。
【0132】
【化13】

【0133】
スキームVIIIはスキームV又はスキームVIに従って製造されるC4非置換(R=H)テトラヒドロフルオレノン中間体(21a)に水素以外のR基を導入するための方法を示す。エノン(21a)を塩素化、臭素化、又はヨウ素化し(ステップ1)、4−ハロ中間体(21b)を得る。中間体(21b)を確立方法(ステップ2)によりRIbが特にアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール又はアリールアルキル基である各種新規誘導体(21c)に変換する。場合により、これらの2段階を「ワンポット」シーケンスで実施すると、(21b)の単離が不要になるので簡便になる。RIb基が更に修飾可能な官能基であるか又はこのような基を含む場合には、このような修飾を実施し、付加誘導体を生成することができる。例えば、RIbがアルケニル基である場合には、接触水素化によりアルキル基に還元することができる。スキームVで上述した手順により中間体(21b)及び(21c)を夫々最終化合物(25a)及び(25b)に変換する。同様に、スキームVIIに従って製造したC4非置換(R=H)中間体(33)に水素以外のR基を導入することができる。
【0134】
【化14】

【0135】
スキームVにステップ1〜2として示す代表的試薬及び反応条件は以下の通りである。
ステップ1
NCS,DMF,室温〜50℃,RIa=Cl
Br,NaHCO,CHCl又はCCl,0℃〜室温,RIa=Br又は
NIS,DMF,70〜100℃又は
,NaHCO,HO,CHCl,室温,RIa=I
ステップ2
FSOCFCOMe,CuI,EtN(i−Pr),DMF,70〜100℃,RIb=CF
IbSnBu,PdCl(PPh,PhMe,100〜110℃又は
IbSnBu,Pd(PPh,PhMe,100℃又は
IbB(OH),PdCl(PPh,CsCO,DMF,100℃又は
IbB(OH),Pd(PPh,NaCO水溶液,PhMe,80℃,RIb=アルケニル,アリール又はヘテロアリール
(RIbB,PdCl(dppf)・CHCl
PhAs,CsCO,HO,THF,DMF,60℃,RIb=アルキル
IbSn(CHCHCHN,Pd(PPh
PhMe,100℃,RIb=アルケニル,アルキル又はアリールアルキル
CuCN,NMP,160℃,RIb=CN。
【0136】
スキームIXはスキームI及びスキームVに示した合成の変形例として、RII置換基を導入する場合を示す。スキームIXのステップ1ではインダノン(1)を塩基性条件下で置換アルデヒドY−CHCHOと反応させ、アルキリデン中間体(35)を得る。この段階は還元段階を省略する以外はスキームIのステップ4と同様である。この場合には、Yは後で置換可能な脱離基に変換することができる前駆体基が最適である。RII置換基の導入はステップ2で(35)を適当な有機金属種と反応させて1,4−共役付加反応により(36)を得ることにより実施される。その後、スキームVに上述した手順によりインダノン(36)を最終化合物(37)に変換する。
【0137】
【化15】

【0138】
スキームIXにステップ1〜2として示す代表的試薬及び反応条件は以下の通りである。
ステップ1
BnOCHCHO,KOH,MeOH又は
i)LiN(TMS),THF,−78℃〜室温
ii)BnOCHCHO
iii)MsCl,EtN,CHCl,Y=OBn
ステップ2
IIMgBr,CuBr・SMe,THF,−78℃〜室温又は
IICuLi,THF,−78℃〜室温。
【0139】
10位に置換基をもつ最終化合物はスキームXに要約する方法により製造される。中間体(38)(式中、Rは水素又は窒素保護基を表す)をN−ハロスクシンイミド試薬等により酸化し(ステップ1)、10−ハロ生成物(39)を得る。その後、必要に応じて最終脱保護を行うと、最終化合物(40)が得られる。10−ハロ化合物(39)を適切な求核試薬と置換反応させる(ステップ2)と、付加生成物(41)が得られる。その後、必要に応じて最終脱保護を行うと、最終化合物(42)が得られる。所望により、10,10−ジ置換物が製造されるまでこの方法を延長することができる。10−オキソ生成物(43)は(38)の過硫酸カリウム酸化により得られる。(18)を還元すると、10−ヒドロキシ化合物(41,RIIIb=OH)が得られる。必要に応じて(43)の最終脱保護を行うと、最終化合物(44)が得られる。
【0140】
【化16】

【0141】
スキームXにステップ1〜4として示す代表的試薬及び反応条件は以下の通りである。
ステップ1
NCS,AIBN,CCl,室温〜80℃,RIIIa=Cl
NBS,AIBN,CCl,室温〜80℃,RIIIa=Br
ステップ2
ピリジン−HF,TFA,室温〜50℃,RIIIb=F
AgOAc,DMF,HO,室温〜100℃,RIIIb=OAc
i)AgOAc,DMF,室温〜100℃
ii)NaOH,HO,MeOH,RIIIb=OH
ステップ3
,HO,MeCN,室温〜80℃
ステップ4
NaBH,MeOH,0℃〜室温,RIIIb=OH。
【0142】
(38)のC−6ケトンの修飾をスキームXIに要約する。ステップ1では、ケトンをヒドロキシルアミン、アルコキシルアミン又はヒドラジン試薬と反応させ、6−イミノ生成物(45)を得る。ケトン(9)をイリド試薬と反応させる(ステップ2)と、6−アルキリデン誘導体(47)が得られる。必要に応じて脱保護すると、最終生成物(46)及び(48)が得られる。
【0143】
【化17】

【0144】
スキームXIにステップ1〜2として示す代表的試薬及び反応条件は以下の通りである。
ステップ1
NHOR・HCl,ピリジン,室温〜60℃,RIV=OR
NHNR,EtOH,室温,RIV=NR
ステップ2
PhCHVIBr,BuLi,THF,0〜50℃。
【0145】
スキームI〜XIにおいて、多くの場合に各種R基は従来方法によりデブロッキングされる保護官能基を含む。デブロッキング手順は合成シーケンスの最終段階に実施してもよいし、中間段階に実施してもよい。多数の周知保護−脱保護スキームを使用して各種R置換基に含まれる官能基の望ましくない反応を防ぐことができる。
【0146】
スキームI〜XIに従って製造された最終化合物はキラル中心をもち、公知方法(例えばキラルHPLC)により個々のエナンチオマーに分離することができる。個々のエナンチオマーへの分離は合成の多数の中間段階で実施することもできる。
【0147】
以下、特定実施例により本発明の化合物の製造方法を例証するが、これらの実施例により限定するものではない。
【0148】
(実施例1)
(8R,10aS)−6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンの合成
【0149】
【化18】


【0150】
ステップ1:6−クロロ−5−メトキシインダン−1−オン
1−クロロ−2−メトキシベンゼン(12.8mL,100mmol)と塩化3−クロロプロパノイル(10.5mL,110mmol)の0℃ CHCl(100mL)溶液にAlCl(14.6g,110mmol)を約1分間滴下した。30分間後に硫酸(300mL)を反応混合物に約3分間ゆっくりと注入した。CHClをロータリーエバポレーターで減圧除去し、粘性残渣を100℃で2時間撹拌した。〜50℃まで冷却後、粘性反応混合物を氷1.5Lに慎重に注ぎ、一晩放置した。混合物を濾過し、粗生成物ケーキを水洗した。粗生成物をCHCl中2%MeOH 500mLに溶かし、NaCO(〜10g)とNaSO(〜20g)の混合物で乾燥し、濾過し、減圧濃縮すると、6−クロロ−5−メトキシインダン−1−オンがオフホライト固体として得られた。
【0151】
ステップ2:6−クロロ−5−メトキシ−1−オキソインダン−2−カルボン酸エチル
6−クロロ−5−メトキシインダン−1−オン(27.6g,141mmol)の−78℃ THF(630mL)溶液にリチウムビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M THF(309mL,309mmol)溶液を加えた後、溶液を約−50℃までゆっくりと1時間昇温させた。−78℃まで再冷却後、シアノギ酸エチル(21.3mL,216mmol)を導入し、反応混合物を室温まで2時間昇温させた。1N HCl 300mLでクエンチ後、THFの大半をロータリーエバポレーターで減圧除去した。残留混合物をEtOAcで抽出し、有機層を希NaHCO水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥した。シリカパッドで濾過し、溶媒を減圧除去すると、6−クロロ−5−メトキシ−1−オキソインダン−2−カルボン酸エチルが茶色油状物として得られた。
【0152】
ステップ3:6−クロロ−2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシインダン−1−オン
6−クロロ−5−メトキシ−1−オキソインダン−2−カルボン酸エチル(前段階からの粗生成物,〜141mmol)の無水ジメチルアセトアミド(540mL)溶液にKCO(39g,282mmol)、KI(46.8g,282mmol)及び1−ブロモ−2−フルオロエタン(13.5mL,183mmol)を加え、混合物を65℃で6時間加熱撹拌した。反応混合物をTHF(540mL)と水(540mL)で希釈した後、0℃まで冷却し、5N NaOH水溶液(84mL,423mmol)で処理した。0℃で2時間後に反応を1N HCl水溶液(〜450mL)でクエンチした。THFの大半をロータリーエバポレーターで減圧除去し、水性残渣をEtOAcで抽出した。有機層を飽和NaHCOで洗浄し、MgSOで乾燥し、シリカゲルパッドで濾過し、濃縮すると、6−クロロ−2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシインダン−1−オンが得られた。
【0153】
ステップ4:6−クロロ−2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシ−2−(3−オキソブチル)インダン−1−オン
6−クロロ−2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシインダン−1−オン(34g,140mmol)のトルエン(1500mL)溶液にN−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]シンコニニウムブロミド(13g,24mmol)を加え、混合物を室温で30分間撹拌した。0℃まで冷却後、メチルビニルケトン(20mL,240mmol)と水酸化カリウムペレット(85%,34g,〜52mmol)を順次加え、混合物を90分間激しく撹拌した。反応混合物をジクロロメタン(1000mL)で希釈し、MgSOで乾燥し、濾過した。濾液をシリカゲルパッドで濾過し、EtOとEtOAcで洗浄した。濾液を減圧濃縮し、残渣ををシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液30%→50% EtOAc/ヘキサン)に付すと、6−クロロ−2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシ−2−(3−オキソブチル)インダン−1−オンが黄色油状物として得られた。キラルHPLC分析によると、エナンチオマー比約2:1で所望(2S)−エナンチオマーが過剰であることが判明した。このエナンチオマーリッチな材料をその後の合成に使用した。
【0154】
ステップ5:6−クロロ−9a−(2−フルオロエチル)−7−メトキシ−1,2.9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オン
6−クロロ−2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシ−2−(3−オキソブチル)インダン−1−オン(32g,102mmol)のトルエン(1000mL)溶液に酢酸(7.0mL,120mmol)とピロリジン(10mL,120mmol)を加え、溶液を95℃に2時間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物をEtOAc(1000mL)で希釈し、水と飽和NaHCO水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥した。シリカゲルパッドで濾過し、溶媒を減圧除去すると、6−クロロ−9a−(2−フルオロエチル)−7−メトキシ−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オンが固体として得られた。
【0155】
ステップ6:3−クロロ−2−ヒドロキシギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン
6−クロロ−9a−(2−フルオロエチル)−7−メトキシ−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オン(18.5g,63mmol)と塩化リチウム(26.5g,630mmol)の混合物にDMF(250mL)を加え、混合物を150℃で2日間加熱撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物をEtOAcと水に分配した。有機相を水(2×)とブラインで洗浄し、MgSOで乾燥した。溶媒を減圧除去すると、固体が得られ、一部を5%MeOH/CHCl(300mL)に溶かし、得られた懸濁液を濾過すると、3−クロロ−2−ヒドロキシギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オンが茶色固体として得られた。濾液を減圧濃縮し、残渣の一部をCHCl 200mLに溶かし、濾過すると、2回目の3−クロロ−2−ヒドロキシギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オンが得られた。濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離液10→100%EtOAc/ヘキサン)に付すと、更に3−クロロ−2−ヒドロキシギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オンが得られた。
【0156】
ステップ7:トリフルオロメタンスルホン酸3−クロロ−6−オキソギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−2−イル
3−クロロ−2−ヒドロキシギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン(5.71g,21.2mmol)のジクロロメタン(80mL)懸濁液にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(4.0mL,23.2mmol)を加えた。得られた茶色溶液を0℃まで冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(3.9mL,23.2mmol)を加えた。35分後に、反応混合物をシリカゲルカラムに直接ロードし、クロマトグラフィー(溶離液10→100%EtOAc/ヘキサン)に付すと、生成物が茶色油状物として得られた。油状物をジクロロメタンに溶かし、MgSOで乾燥した。減圧蒸発させると、固体が得られ、トルエンに溶かした後、減圧蒸発させると、トリフルオロメタンスルホン酸3−クロロ−6−オキソギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−2−イルが茶色固体として得られた。
【0157】
ステップ8:N−[3−クロロ−6−オキソギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−2−イル]アセトアミド
トリフルオロメタンスルホン酸3−クロロ−6−オキソギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−2−イル(6.04g,15.4mmol)、炭酸セシウム(11.01g,33.9mmol)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(xantphos,1.33g,2.31mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)[Pd(dba),0.704g,0.77mmol]及びアセトアミド(2.00g,33.9mmol)の混合物にトルエン(77mL)を加えた。反応フラスコを圧栓し、反応混合物を窒素下に100℃で加熱撹拌した。16時間加熱後、xantphos(0.233g,0.403mmol)、Pd(dba)(0.140g,0.153mmol)及びアセトアミド(1.00g,16.9mmol)を追加した。更に24時間加熱後、反応混合物を室温まで冷却し、5%MeOH/CHClで希釈し、シリカゲルパッドで濾過した。減圧蒸発させると、油状茶色固体が得られた。固体をジクロロメタン(60mL)に溶かし、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.8mL,16mmol)と塩化アセチル(1.4mL,19mmol)を順次加えた。10分後に、溶液をシリカゲルカラムに直接ロードし、クロマトグラフィー(溶離液10→100%EtOAc/ヘキサン)に付すと、N−[3−クロロ−6−オキソギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−2−イル]アセトアミドがオレンジ色固体として得られた。
【0158】
ステップ9:N−[3−クロロ−6−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−2−イル]アセトアミド
N−[3−クロロ−6−オキソギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−2−イル]アセトアミド(3.85g,12.8mmol)の85℃ DMF溶液にN−ヨードスクシンイミド(4.00g,17.7mmol)を加えた。18時間加熱後、反応混合物を室温まで冷却し、DMF(160mL)で希釈した。ヨウ化銅(I)(3.65g,19.2mmol)、(フルオロスルホニル)ジフルオロ酢酸メチル(11.5mL,90mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(15.8mL,90mmol)を加え、混合物を75℃まで加熱した。140分後に、反応混合物を室温まで冷却し、シリカゲルパッドで濾過し、EtOAcで洗浄した。濾液をEtOAcと水に分配し、有機層を5%NaHCO水溶液、水及びブラインで洗浄した。MgSOで乾燥し、減圧蒸発させると、油状物が得られ、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液10→85%EtOAc/ヘキサン)に付すと、N−[3−クロロ−6−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−2−イル]アセトアミドがオレンジ色フォームとして得られた。
【0159】
ステップ10:2−アミノ−3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ギバ−l,3.4a(10a),4b−テトラエン−6−オン
N−[3−クロロ−6−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−2−イル]アセトアミド(3.80g,10.3mmol)の酢酸(40mL)溶液に6N塩酸(40mL)を加え、溶液を80℃に加熱した。85分後に、反応混合物を室温まで冷却し、EtOAcと5%NaHCO水溶液に分配した。多少のオレンジ色沈殿が形成され、EtOAcで十分に抽出した。オレンジ色溶液を合わせて水とブラインで洗浄し、MgSOで乾燥した。溶媒を減圧除去すると、2−アミノ−3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オンがオレンジ色固体として得られた。
【0160】
ステップ11:2−アミノ−3−クロロ−1−ニトロ−5−(トリフルオロメチル)ギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン
2−アミノ−3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン(2.9g,8.9mmol)のトリフルオロ酢酸(19mL)溶液に2,3,5,6−テトラブロモ−4−メチル−4−ニトロシクロヘキサ−2,5−ジエノンを加え、粘稠懸濁液を室温で撹拌した。70分後に、混合物を0℃まで冷却し、濾過し、冷トリフルオロ酢酸で洗浄した。濾液を減圧濃縮し、残渣をEtOAc/CHCl(10:1)と10%KCO水溶液に分配した。有機相を10%KCO水溶液、5%NaHCO水溶液及びブラインで順次十分に洗浄した。MgSOで乾燥後、溶媒を減圧蒸発させると、2−アミノ−3−クロロ−1−ニトロ−5−(トリフルオロメチル)ギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オンが黄褐色固体として得られた。
【0161】
ステップ12:1,2−ジアミノ−3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン
2−アミノ−3−クロロ−1−ニトロ−5−(トリフルオロメチル)ギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン(3.3g,8.9mmol)の1:1MeOH/EtOAc(270mL)懸濁液に酢酸カリウム(1.86g,19mmol)を加えた。混合物を温和に昇温させると、茶色溶液となり、炭素(1.25g)担持10%パラジウム上で大気圧にて水素化した。35分後に、シリカゲルパッドの頂部にNaHCOを添加して混合物を濾過し、5%MeOH/CHClで洗浄した。濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液ヘキサン中25%→100%EtOAc)に付すと、1,2−ジアミノ−3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オンがオレンジ色固体として得られた。
【0162】
ステップ13:4−クロロ−6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン
1,2−ジアミノ−3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ギバ−1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン(2.1g,6.1mmol)のエタノール(120mL)懸濁液に水(2mL)と12N塩酸(6.2mL)を加えた。得られたオレンジ色溶液を0℃まで冷却し、3M亜硝酸ナトリウム水溶液(6.2mL,18.6mmol)を加えた。40分後に、溶液をEtOAcと水に分配した。有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、減圧蒸発させると、4−クロロ−6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンがオレンジ色固体として得られた。
【0163】
ステップ14:6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン
4−クロロ−6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン(2.3g,前段階からの粗生成物,〜6.1mmol)のDMF(230mL)溶液に炭素(1g)担持20%Pd(OH)と炭酸カルシウム(1g)担持5%パラジウムを加え、混合物を大気圧で水素化した。29時間後に炭素(175mg)担持20%Pd(OH)と炭酸カルシウム(175mg)担持5%パラジウムを追加した。更に24時間後に、混合物をCelite(登録商標)パッドで濾過し、EtOAcで十分に洗浄した。濾液をEtOAcと少量の1N塩酸で酸性化しておいた水に分配した。水層をEtOAcで十分に抽出し、有機層を合わせて1N塩酸、水及びブラインで洗浄した。MgSOで乾燥後、溶媒を減圧除去すると、油状固体が得られ、ジクロロメタンに溶かし、蒸発させると、固体が得られた。シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液1:1 EtOAc/ヘキサン+0.1%HOAc→99:99:2 EtOAc/ヘキサン/メタノール+0.1%HOAc)に付すと、6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンが薄黄色固体として得られた。
【0164】
ステップ15:(8R,10aS)−6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン
6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン[1.8g,(8R,10aS):(8S,10aR)エナンチオマー比〜2:1]を1/1エタノール/メタノール(130mL)に溶かし、2.0×25cm Daicel Chiralcel OJカラム(注入量4mL,溶離液35%EtOH:ヘプタン,流速7.5mL/min,310nmでフラクションをモニター)でキラルHPLCにより分離した。最初に溶出したエナンチオマー(エナンチオマーA)を含む純フラクションを合わせて濃縮すると、(8R,10aS)−6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンが負の旋光度をもつ白色固体として得られた。2番目に溶出したエナンチオマー(エナンチオマーB)を含むフラクションを合わせて濃縮すると、(8S,10aR)−6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンが正の旋光度をもつ固体として得られた。
【0165】
エナンチオマーA:[α]=−263°(MeOH)。
【0166】
H NMR(CDCN,600MHz):δ1.61(dddd,1H),1.74−1.79(m,1H),1.95−2.05(m,1H),2.05(dd,1H),2.12(brd,1H),2.32−2.38(m,1H),3.02(dd,1H),3.55(d,1H),3.68(d,1H),7.77(d,1H),7.87(dq,1H)。
【0167】
質量スペクトル:(ESI)m/z=320(M+H)。
【0168】
(実施例2〜7)
上記実施例に記載したと同様の方法を使用して以下の化合物を製造した。
【0169】
【化19】

【0170】
【表1】

【0171】
【化20】

【0172】
【表2】

【0173】
【化21】

【0174】
【表3】

【0175】
エストロゲン受容体結合アッセイ
エストロゲン受容体リガンド結合アッセイはトリチウム化エストラジオールと組換え発現させたエストロゲン受容体の使用を利用するシンチレーション近接アッセイとして設計する。全長組換えヒトER−α及びER−β蛋白質をバキュロウイルス発現システムで生産する。6mM α−モノチオグリセロールを加えたリン酸緩衝食塩水でER−α又はER−β抽出液を400倍に希釈する。希釈した受容体調製液の200μLアリコートを96ウェルFlashplateの各ウェルに加える。プレートをサランラップ(登録商標)で覆い、4℃で一晩インキュベートする。
【0176】
翌朝、10%ウシ血清アルブミンを加えたリン酸緩衝食塩水の20ulアリコートを96ウェルプレートの各ウェルに加え、4℃で2時間インキュベートする。次に、20mM Tris(pH7.2)、1mM EDTA、10%グリセロール、50mM KCl、及び6mM α−モノチオグリセロールを加えた緩衝液200ulでプレートを洗浄する。これらの受容体被覆プレートでアッセイを設定するために、96ウェルプレートの各ウェルに同一緩衝液178ulを加える。次に、H−エストラジオールの10nM溶液20ulをプレートの各ウェルに加える。
【0177】
0.01nM〜1000nMの濃度範囲で試験化合物を評価する。試験化合物ストック溶液はアッセイの試験に所望される最終濃度の100倍となるように100%DMSOで調製する。96ウェルプレートの試験ウェル内のDMSOの量は1%以下とする。アッセイプレートへの最終添加は100%DMSOで調製した試験化合物の2ulアリコートとする。プレートを密閉し、室温で3時間平衡化する。96ウェルプレートをカウントするように配備したシンチレーションカウンターでプレートをカウントする。
【0178】
実施例1〜7の化合物はエストロゲン受容体αサブタイプに対してIC50=13〜>10,000nm、エストロゲン受容体βサブタイプに対してIC50=3〜146nmの結合親和性を示す。
【0179】
医薬組成物
本発明の特定態様として、合計量580〜590mgとするために十分な微粉状ラクトースと実施例1の化合物25mgを配合し、サイズ0ハードゼラチンカプセルに充填する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

[式中、XはO、N−OR、N−NR又はC1−6アルキリデンであり、前記アルキリデン基は場合によりヒドロキシ、アミノ、O(C1−4アルキル)、NH(C1−4アルキル)又はN(C1−4アルキル)で置換されており;
は水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C3−6シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリール基は場合によりフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ及びORから構成される群から選択される1、2又は3個の基で置換されており;
は水素、(C=O)R、(C=O)OR又はSOであり;
は水素、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヒドロキシであり;
は水素、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヒドロキシであるか;
あるいはRとRは一緒になってそれらが結合している炭素原子と共にカルボニル基を形成し;
は水素、フルオロ、クロロ又はC1−5アルキルであり、前記アルキルは場合によりクロロ、ブロモ、ヨード、OR又は1〜5個のフルオロで置換されており;
は水素、C1−4アルキル、及びフェニルから構成される群から選択され、前記アルキル及びフェニル基は場合によりヒドロキシ、アミノ、O(C1−4アルキル)、NH(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)、クロロ、ブロモ又は1〜5個のフルオロで置換されており、2個以上のRが存在する場合には、独立して選択される]の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項2】
XがO又はN−ORである請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項3】
XがO又はN−OHであり;
が水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はC1−4アルキルであり、前記アルキル基は場合によりフルオロ、クロロ、又はブロモから構成される群から選択される1、2又は3個の基で置換されており;
が水素である請求項2に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項4】
が水素であり;Rが水素であり;Rが水素である請求項3に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項5】
6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
6−クロロ−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
6−ブロモ−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
6−フェニル−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
6−クロロ−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンオキシム;
6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンオキシム;
6−フェニル−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンオキシムである請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項6】
(8R,10aS)−6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
(8R,10aS)−6−クロロ−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
(8R,10aS)−6−ブロモ−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
(8R,10aS)−6−フェニル−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン;
(8R,10aS)−6−クロロ−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンオキシム;
(8R,10aS)−6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンオキシム;
(8R,10aS)−6−フェニル−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オンオキシムである請求項5に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項7】
(8R,10aS)−6−(トリフルオロメチル)−3,9,10,11−テトラヒドロ−8,10a−メタノシクロヘプタ[1,2]インデノ[4,5−d][1,2,3]トリアゾール−7(8H)−オン。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物と、有機ビスホスホネート;カテプシンK阻害剤;エストロゲン;エストロゲン受容体モジュレーター;アンドロゲン受容体モジュレーター;破骨細胞プロトンATPase阻害剤;HMG−CoAレダクターゼ阻害剤;インテグリン受容体アンタゴニスト;骨芽細胞同化剤;カルシトニン;ビタミンD;合成ビタミンDアナログ;選択的セロトニン再取込み阻害剤;アロマターゼ阻害剤;又はその医薬的に許容可能な塩もしくは混合物から構成される群から選択される別の物質を含有する医薬組成物。
【請求項10】
骨量減少、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、パジェット病、歯周病、軟骨変性、子宮内膜症、子宮筋腫、ホットフラッシュ、心臓血管疾患、認知機能障害、加齢による軽度認知障害、脳変性疾患、再狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満症、失禁、不安症、鬱病、閉経周辺期鬱病、出産後鬱病、月経前症候群、躁鬱病、不安症、痴呆症、強迫行為、注意欠陥障害、睡眠障害、神経過敏、衝動性、アンガーマネージメント、多発性硬化症及びパーキンソン病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、性機能不全、高血圧、網膜変性又はエストロゲン依存性癌の治療に有用な医薬の製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項11】
骨量減少、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、パジェット病、歯周病、軟骨変性、子宮内膜症、子宮筋腫、ホットフラッシュ、心臓血管疾患、認知機能障害、加齢による軽度認知障害、脳変性疾患、再狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満症、失禁、不安症、鬱病、閉経周辺期鬱病、出産後鬱病、月経前症候群、躁鬱病、不安症、痴呆症、強迫行為、注意欠陥障害、睡眠障害、神経過敏、衝動性、アンガーマネージメント、多発性硬化症及びパーキンソン病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、性機能不全、高血圧、網膜変性又はエストロゲン依存性癌の治療に有用な医薬の製造における請求項9に記載の組成物の使用。

【公開番号】特開2012−92103(P2012−92103A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−237399(P2011−237399)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【分割の表示】特願2007−545542(P2007−545542)の分割
【原出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】