説明

エストロゲン増加組成物、エストロゲン増加食品、エストロゲン増加薬およびプロゲステロン増加組成物

【課題】エストロゲン増加作用を有する組成物、食品および薬を提供する。
【解決手段】マカエキス末の摂取によって、血液中のエストラジオール量およびプロゲステロン量、成長ホルモン量が増加する。エストロゲン増加作用を有する。更年期の血清中のエストラジオール量の減少を抑制できる。更年期障害を改善する作用を有する。血清エストラジオール量減少の抑制は、女性ホルモンバランスの調整に関係している。月経不順、不妊の改善、月経回復、老化予防などの女性ホルモンに関連する種々の障害の予防および改善作用が期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれか一方を含有するエストロゲン増加組成物、エストロゲン増加食品、エストロゲン増加薬およびプロゲステロン増加組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マカ(Lepidium meyenii-Walp,Cruciferae :Maca)は、南米ペルーなどの中央アンデスの標高4000m〜4500m程度の地域で栽培されているアブラナ科の根菜であり、滋養強壮、栄養不良、貧血症、不妊症および精力減退症などへの有効性が知られている。
【0003】
そして、近年では、これら作用の中でも、老化防止、不妊改善、妊娠促進、男性性機能の回復および増進、女性ホルモンバランスの調整、更年期障害の改善などの性ホルモンに関連する作用が注目されている。そして、これら作用に密接に関連すると考えられている特殊成分としては、ステロイド、フラボノイド、タンニン、トリテルペンおよびサポニンなどが知られている(例えば、特許文献1ないし5参照)。
【0004】
また、マカの新規な有効作用として成長ホルモンや性ホルモンなどの分泌に及ぼす作用の解明が研究されている。
【0005】
そして、これら成長ホルモンや性ホルモンなどは、各種ホルモン調節によって脈動的な分泌動態があり、日内変動が認められるものの恒常性が保たれている。ところが、加齢などによって成長ホルモンの分泌低下が生じると、筋肉量や骨量の減少、体脂肪の増加、脂質代謝異常、血圧上昇、シワあるいは白髪の増加などといった体力・生殖能力・免疫機能・生理機能の低下をはじめとする、いわゆる老化現象が出やすくなると考えられている。
【0006】
一方、性ホルモンについては、加齢によって分泌が低下することが知られている。さらに、若い年代のヒトでもストレスや内分泌攪乱化学物質などの影響によって、性腺機能が低下して性ホルモンの分泌が減少してしまう。したがって、この性ホルモンの分泌減少によって男女ともに老化現象の促進、性機能不全および更年期障害が起きやすくなる。特に女性の場合、この種の性ホルモンの減少は、血清エストラジオール量の減少に起因しており、更年期障害や月経不順、不妊、老化現象などが起きやすくなる。
【特許文献1】特開2002−255822号公報
【特許文献2】特開2004−083476号公報
【特許文献3】特開2004−002237号公報
【特許文献4】特開2000−086489号公報
【特許文献5】特開2003−313107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、マカのエストロゲンに関連する諸機能については未だ明確に解明されていないという問題を有している。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、エストロゲン増加作用を有するエストロゲン増加組成物、エストロゲン増加食品、エストロゲン増加薬およびプロゲステロン増加組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のエストロゲン増加組成物は、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれか一方を含有し、エストロゲン増加作用を有するものである。
【0010】
そして、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれか一方を含有するので、エストロゲン増加作用を期待できる。
【0011】
請求項2記載のエストロゲン増加組成物は、請求項1記載のエストロゲン増加組成物において、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれか一方は、マカに含まれているものである。
【0012】
そして、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかがマカに含まれていることにより、エストロゲン増加組成物をより容易に取得できる。
【0013】
請求項3記載のエストロゲン増加組成物は、請求項1または2記載のエストロゲン増加組成物において、エストラジオール増加作用を有するものである。
【0014】
そして、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、エストラジオール増加作用を期待できる。
【0015】
請求項4記載のエストロゲン増加組成物は、請求項1ないし3いずれか記載のエストロゲン増加組成物において、プロゲステロン増加作用を有するものである。
【0016】
そして、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、プロゲステロン増加作用を期待できる。
【0017】
請求項5記載のエストロゲン増加組成物は、請求項1ないし4いずれか記載のエストロゲン増加組成物において、成長ホルモン増加作用を有するものである。
【0018】
そして、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、成長ホルモン増加作用を期待できる。
【0019】
請求項6記載のエストロゲン増加組成物は、請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物において、更年期障害改善作用を有するものである。
【0020】
そして、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、更年期障害改善作用を期待できる。
【0021】
請求項7記載のエストロゲン増加組成物は、請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物において、女性ホルモンバランス調整作用を有するものである。
【0022】
そして、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、女性ホルモンバランス調整作用を期待できる。
【0023】
請求項8記載のエストロゲン増加組成物は、請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物において、月経不順改善作用を有するものである。
【0024】
そして、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、月経不順改善作用を期待できる。
【0025】
請求項9記載のエストロゲン増加組成物は、請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物において、不妊改善作用を有するものである。
【0026】
そして、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、不妊改善作用を期待できる。
【0027】
請求項10記載のエストロゲン増加組成物は、請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物において、老化予防作用を有するものである。
【0028】
そして、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、老化予防作用を期待できる。
【0029】
請求項11記載のエストロゲン増加組成物は、請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物において、更年期における血中エストラジオール量低下抑制作用を有するものである。
【0030】
そして、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、更年期における血中エストラジオール量低下抑制作用を期待できる。
【0031】
請求項12記載のエストロゲン増加組成物は、請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物において、月経回復作用を有するものである。
【0032】
そして、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、月経回復作用を期待できる。
【0033】
請求項13記載のエストロゲン増加食品は、請求項1ないし12いずれか記載のエストロゲン増加組成物を含むものである。
【0034】
そして、請求項1ないし12いずれか記載のエストロゲン増加組成物を含む食品を食することにより、エストロゲン増加作用を期待できる。
【0035】
請求項14記載のエストロゲン増加薬は、請求項1ないし12いずれか記載のエストロゲン増加組成物を含むものである。
【0036】
そして、請求項1ないし12いずれか記載のエストロゲン増加組成物を含む薬を用いることにより、エストロゲン増加作用を期待できる。
【0037】
請求項15記載のプロゲステロン増加組成物は、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれか一方を含有し、プロゲステロン増加作用を有するものである。
【0038】
そして、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれか一方を含有するので、プロゲステロン増加作用を期待できる。
【発明の効果】
【0039】
請求項1記載のエストロゲン増加組成物によれば、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれか一方を含有するので、エストロゲン増加作用を期待できる。
【0040】
請求項2記載のエストロゲン増加組成物によれば、請求項1記載のエストロゲン増加組成物の効果に加え、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかがマカに含まれているので、エストロゲン増加組成物をより容易に取得できる。
【0041】
請求項3記載のエストロゲン増加組成物によれば、請求項1または2記載のエストロゲン増加組成物の効果に加え、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、エストラジオール増加作用を期待できる。
【0042】
請求項4記載のエストロゲン増加組成物によれば、請求項1ないし3いずれか記載のエストロゲン増加組成物の効果に加え、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、プロゲステロン増加作用を期待できる。
【0043】
請求項5記載のエストロゲン増加組成物によれば、請求項1ないし4いずれか記載のエストロゲン増加組成物の効果に加え、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、成長ホルモン増加作用を期待できる。
【0044】
請求項6記載のエストロゲン増加組成物によれば、請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物の効果に加え、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、更年期障害改善作用を期待できる。
【0045】
請求項7記載のエストロゲン増加組成物によれば、請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物の効果に加え、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、女性ホルモンバランス調整作用を期待できる。
【0046】
請求項8記載のエストロゲン増加組成物によれば、請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物の効果に加え、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、月経不順改善作用を期待できる。
【0047】
請求項9記載のエストロゲン増加組成物によれば、請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物の効果に加え、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、不妊改善作用を期待できる。
【0048】
請求項10記載のエストロゲン増加組成物によれば、請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物の効果に加え、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、老化予防作用を期待できる。
【0049】
請求項11記載のエストロゲン増加組成物によれば、請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物の効果に加え、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、更年期における血中エストラジオール量低下抑制作用を期待できる。
【0050】
請求項12記載のエストロゲン増加組成物によれば、請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物の効果に加え、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれかを含有するので、月経回復作用を期待できる。
【0051】
請求項13記載のエストロゲン増加食品によれば、請求項1ないし12いずれか記載のエストロゲン増加組成物を含む食品を食することにより、エストロゲン増加作用を期待できる。
【0052】
請求項14記載のエストロゲン増加薬によれば、請求項1ないし12いずれか記載のエストロゲン増加組成物を含む薬を用いることにより、エストロゲン増加作用を期待できる。
【0053】
請求項15記載のプロゲステロン増加組成物によれば、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれか一方を含有するので、プロゲステロン増加作用を期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、本発明の一実施の形態のエストロゲン増加組成物について説明する。
【0055】
このエストロゲン増加組成物としては、血清エストラジオール量を上昇させる作用、すなわち更年期における血清中のエストラジオール量の減少を抑制して、更年期障害を改善させる作用を有している。ここで、このエストラジオール(Estradiol)は、エストロゲンの一種であって、女性ホルモンの天然の卵胞ホルモンの中で最も効果が高いホルモンである。また、エストロゲン増加組成物は、女性ホルモンバランス調整作用を有しており、月経不順改善作用や、不妊改善作用、さらには老化予防作用などの女性ホルモンに関連する種々の障害の予防および改善作用を有している。
【0056】
ここで、このエストロゲン増加組成物は、プロゲステロン増加組成物でもある。ここで、プロゲステロン(Progesterone)は、女性ホルモンの1つの黄体ホルモンであって、妊娠を準備する働きを有するとともに、子宮に脱落反応を誘導する作用を有している。さらに、女性の毎月の周期が正常に機能している場合に、排卵に応じてエストロゲンの生成量が低下しプロゲステロンの生成量が上昇する。すなわち、このプロゲステロンは、女性の体内で生成される重要な女性ホルモンである。
【0057】
さらに、このエストロゲン増加組成物には、少なくともベンジル類グルコシノレートとベンジル類イソチオシアネートとのいずれか一方が含有されている。これらベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートは、ハーブであるとともに生薬であるマカ(Lepidium meyenii-Walp,Cruciferae:Maca)に特殊成分として含有されている。ここで、ベンジル類グルコシノレートとしては、主にベンジルグルコシノレートや、ヒドロキシベンジルグルコシノレート、メトキシベンジルグルコシノレートなどが考えられる。また、ベンジル類イソチオシアネートは、ベンジル類グルコシノレートの代謝物であって、このベンジル類イソチオシアネートとしては、主にベンジルイソチオシアネートや、ヒドロキシベンジルイソチオシアネート、メトキシベンジルイソチオシアネートなどが考えられる。また、マカは、南米ペルーなどの中央アンデスの標高4000m〜4500m程度の地域で栽培あるいは自生しているアブラナ科の根菜である。
【0058】
さらに、エストロゲン増加組成物には、マカの含水アルコール抽出エキス粉末であるマカエキス末を含有させることもできる。このマカエキス末は、乾燥させたマカに、含水アルコールを加えて浸漬させてから抽出した溶液にデキストリンを加えた後に噴霧して乾燥させた粉末である。また、このマカエキス末には、質量比で約428mg/100gのベンジルグルコシノレートが含有されている。
【0059】
また、このエストロゲン増加組成物は、このエストロゲン増加組成物を含有するいわゆるサプリメントなどの機能性食品、化粧料、皮膚外用あるいは医薬として用いることもできる。したがって、このエストロゲン増加組成物としては、皮膚外用剤や、機能性食品、医薬品あるいは化粧品として適宜用いることもできる。
【0060】
このため、このエストロゲン増加組成物は、少なくともマカから抽出したエキス末であるマカエキス末を含有し、エストロゲン増加作用を有するものであることを特徴とし、エストロゲン増加のために用いられるものである旨の表示を付した飲食品や、皮膚外用剤、医薬品、化粧品などとして用いられる。
【0061】
そして、このエストロゲン増加組成物を提供する形態としては、散剤、顆粒、錠剤、糖衣錠、カプセル、液剤あるいはシロップ状のいずれであっても良く、これらは適宜助剤および賦香料とともに賦形されてもよい。また、このエストロゲン増加組成物に用いられる賦形剤および希釈剤としては、ゼラチン、糖類、澱粉類、脂肪酸およびこれら塩、油脂、タルク、生理食塩水およびその他のマスキング剤などが挙げられる。これら形態のエストロゲン増加組成物をそのまま服用してもよいが、各種料理品、菓子あるいはキャンディなどの食品に混ぜて服用することもできる。
【実施例1】
【0062】
次に、ベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートとして、ベンジルグルコシノレートおよびベンジルイソチオシアネートが血中性ホルモン量に及ぼす影響についての実施例1を説明する。
【0063】
なお、性ホルモンとして女性ホルモンに着目し、加齢の進んだ雌性ラットを使用して、ベンジルグルコシノレートおよびベンジルイソチオシアネートの静脈投与、特に血管内投与が血中女性ホルモン量に及ぼす影響について実験した。
【0064】
まず、実験方法について説明する。
【0065】
(実験材料および飼料の調製)
ベンジルグルコシノレート(Benzylglucosinolate)は、生理食塩水に2mg/mlの濃度になるよう溶解してベンジルグルコシノレート試験液を調製した。また、ベンジルイソチオシアネート(Benzylisothiocyanate)は、0.0018質量%のベンジルイソチオシアネート試験液を調製した。
【0066】
(実験動物および飼育方法)
実験動物として5適齢の雌性ウィスターラット(日本エスエルシー株式会社より納入)を使用した。そして、これらウィスターラットを通常飼育飼料(CE−2:日本クレア株式会社製)で飼育したものを38週齢(日齢が266日あるいは267日で体重が204g以上249g以下)で使用した。そして、これらウィスターラットを、対照群であるコントロール(control)群と、実験群であるベンジルグルコシノレート投与群およびベンジルイソチオシアネート投与群との3つの群に分けて実験を開始した。
【0067】
ここで、これら各群それぞれのウィスターラットは、温度を22.0±2.0℃とし、湿度を55.0±5.0%とし、7:00から19:00までを明期とし、19:00から7:00までを暗期とした12時間の明暗切り換えをして飼育した。なお、これら各群のウィスターラットの動物実験は、「近畿大学医学部動物実験の指針」に則って実施した。さらに、各ウィスターラットへの飼料および飲水は自由摂取とし、これらウィスターラットの体重を1週に1回測定した。
【0068】
(投与方法、採血条件および血清の分離)
まず、ベンジルグルコシノレート試験液およびベンジルイソチオシアネート試験液は、いずれも無絶食条件のウィスターラットの腹腔内に、麻酔薬としてネンブタール(大日本製薬株式会社製)を50mg/kgの割合で投与して麻酔してから、これらウィスターラットの鎖骨下静脈に投与した。また、この投与実験は、午後2時から開始した。さらに、ベンジルグルコシノレート試験液は0.4ml(0.8mg)/1匹の割合で投与し、ベンジルイソチオシアネート試験液は0.4ml(0.008mg)/1匹の割合で投与した。また、対照群のウィスターラットには、生理食塩水を0.4ml投与した。
【0069】
そして、各群それぞれへの試験液の投与開始前と投与30分後とで、各群のラットの鎖骨下静脈からシリコンコートされたマイクロスピッツに一部採血(約0.4ml〜0.5ml程度)し、血清を2500rpm,15min,4℃の条件で遠心分離した。さらに、各群のラットへ試験液を投与してから60分後である投与60分後には、各ラットの腹部大動脈から全血を採血し、血清を2500rpm,15min,4℃の条件で遠心分離した。そして、これら得られた血清については、測定するまで−40℃で冷凍保存した。
【0070】
(血清中のエストラジオール量の測定)
投与開始前、投与30分後および投与60分後のそれぞれで得られた血清中のエストラジオール量は、エストラジオール酵素免疫アッセイ(Estradiol enzyme immuno assay:EIA)キット(ケイマンケミカル社(Cayman Chemical Company)製,アメリカ)を用いて測定した。さらに、吸光度は、吸光度測定装置(バイオラッドモデル680:バイオラッド社(Bio-Rad)製,アメリカ)を用いて測定した。また、マイクロプレートマネージャーバージョン5.2(Microplate Manager ver.5.2:バイオラッド社(Bio-Rad)製,アメリカ)を用いて定量計算した。
【0071】
(統計処理)
各実験値は、すべて平均値±標準誤差で表した。有意差検定は、スタットビュー(StatView)統計解析プログラム(Ver.4.5,株式会社ヒューリンクス製)を用いて分散分析および対応のないt−検定(unpaired t-test)による解析を用いた。さらに、このとき危険率(P)5%以下(P<0.05)を有意とした。
【0072】
次に、実験結果について説明する。
【0073】
まず、生理食塩水、ベンジルイソチオシアネート試験液(0.008mg/1匹)、およびベンジルグルコシノレート試験液(0.8mg/1匹)それぞれの投与開始前、投与30分後および投与60分後のそれぞれで得られた血清中のエストラジオール量を測定した。
【0074】
この結果、各群の血清エストラジオール量を、投与時間で比較すると、図1に示すように、投与開始前の値では3群間にほとんど差が認められなかった。また、投与30分後の値も3群間にほとんど差が認められず、血清中のエストラジオール含量も投与開始前の値にほぼ等しい値となった。さらに、投与60分後の値では、対照群と比べ、ベンジルイソチオシアネート投与群の血清エストラジオール量が約1.16倍(危険率(p)<0.09)に上昇し、ベンジルグルコシノレート投与群の血清エストラジオール量が約1.18倍(危険率(P)<0.05)に有意に上昇した。
【0075】
また、血清エストラジオール量を各群内で比較すると、図2に示すように、対照群では、投与開始前、投与30分後、投与60分後とわずかに増加の感があるが、ほとんど差が認められなかった。これに対し、ベンジルイソチオシアネート投与群では、投与開始前、投与30分後の値がほぼ同じであるが、投与60分後では投与開始前に比べて有意(危険率(p)<0.01)に増加した。また、ベンジルグルコシノレート投与群では、投与開始前、投与30分後の値がほぼ同じであるが、投与60分後では投与開始前に比べ、かなり増加した(危険率(p)<0.07)。
【0076】
次に、考察について説明する。
【0077】
エストラジオールは、卵巣から分泌され、主要で最も力価が高いエストロゲンである。エストロゲンは、女性の第二次性徴の発達を促進して、子宮発育、膣粘膜の肥厚、子宮頸管粘液の希薄化、乳房の小導管系の発達を誘導するものである。また、エストロゲンは、脂質プロファイルを変化させて心臓血管疾患予防の補助作用を有している。
【0078】
ここで、ベンジルイソチオシアネートおよびベンジルグルコシノレートの投与による血清中のエストラジオール量の動態について検討すると、投与開始前および投与30分後の値は、3群間にほとんど差が認められず、さらに血清中のエストラジオール含量の時間経過による変動もほとんど無く、投与30分後の値も投与開始前の値にほぼ等しい値となった。したがって、投与30分後まではベンジルイソチオシアネートおよびベンジルグルコシノレートいずれも投与による血清中のエストラジオール量への影響がないものと考えられた。
【0079】
これに対して、投与60分後の値では、図1に示すように、対照群に比べ、ベンジルイソチオシアネート投与群で血清中のエストラジオール量が約1.16倍(危険率(p)<0.09)に上昇し、ベンジルグルコシノレート投与群で血清中のエストラジオール量が約1.18倍(危険率(p)<0.05)に有意に上昇した。
【0080】
また、図2に示すように、ベンジルイソチオシアネート投与群では、投与開始前に比べ、投与60分後に血清中のエストラジオール量が有意(危険率(p)<0.01)に上昇し、ベンジルグルコシノレート投与群では、投与開始前に比べ、投与60分後に血清中のエストラジオール量が(危険率(p)<0.07)かなり上昇した。
【0081】
したがって、これらベンジルイソチオシアネートおよびベンジルグルコシノレート投与は、投与量が異なるが、投与60分後に血清エストラジオール量を増加させる作用を有していることが判った。
【0082】
また、今回使用した雌性ラットは38週齢であり、21週齢の雌性ラットに比べ、加齢がかなり進んでおり、図3に示すように、血清エストラジオール量が有意(危険率(p)<0.01)に低くなっていた。したがって、21週齢の雌性ラットでは血清中のエストラジオール量に対するベンジルイソチオシアネートおよびベンジルグルコシノレートの投与による明確な影響が認められないことを考えると、ベンジルイソチオシアネートおよびベンジルグルコシノレートを投与してから60分後の血清エストラジオール量の上昇は、加齢の進んだ血清エストラジオール量の低い雌性ラットに特有であるとも考えられた。
【0083】
以上のことから、血清エストラジオール量が減少した時期におけるベンジルイソチオシアネートおよびベンジルグルコシノレートの投与は、投与60分後で血清中のエストラジオール量を上昇させる作用を有することが判った。そして、この血清中のエストラジオール量が特に低い時期を、人の場合の更年期と考えることができることから、更年期における血清中のエストラジオール量の減少を抑制でき、更年期障害を改善する作用があると考えられる。また、血清中のエストラジオール量の減少の抑制は、女性ホルモンバランスの調整に関係しており、月経不順や不妊の改善、老化予防などの女性ホルモンに関連する種々の障害の予防および改善作用があると考えられる。
【実施例2】
【0084】
次に、少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートを含むマカエキス末が、血中性ホルモン量に及ぼす影響についての実施例2を説明する。
【0085】
まず、実験方法について説明する。
【0086】
(実験材料および飼料の調製)
マカエキス末は、乾燥させたマカの粉末に含水アルコール(40質量%以上90質量%以下のアルコール含有率)を加えて浸漬抽出した溶液にデキストリンを加えてから、噴霧乾燥させて粉末としたものであって、TOWACORPORATION株式会社製を使用した。また、マカエキス末のベンシルグルコシノレート含量は、分析したところ428mg/100gであった。さらに、このマカエキス末は、表1に示すような一般組成を有していた。
【0087】
【表1】

【0088】
また、カゼインを蛋白源(質量比で20%)とするAIN-93G組成に準拠した精製飼料を対照飼料、すなわちコントロール(Control)食とした。さらに、この対照飼料にマカエキス末を質量比で0.5%添加して調製した実験飼料である第1の実験食を、第1の実験群である0.5M群に投与する飼料とした。また、この対照飼料にマカエキス末を質量比で5.0%添加して調製した実験飼料である第2の実験食を、第2の実験群である5.0M群に投与する飼料とした。なお、これら実験飼料の一般組成は、常に対照飼料と同一となるように調製した。ここで、これら対照飼料および各実験飼料の組成を表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
(実験動物及び飼育方法)
実験動物として30週齢以上33週齢以下のリタイヤ雌性スプレイジ−ドゥレイ(Sprague-Dawley)ラット(Jcl:SD rat,日本クレア株式会社より納入)を使用した。そして、これらラットを、通常飼育飼料(CE−2:日本クレア株式会社製)で6週間飼育して馴化させたものを36週齢以上39週齢以下で使用した。そして、これらラットを、1群10匹ずつとし、対照(Control)群と、実験群2群(0.5M群,5.0M群)との計3群に分けて飼育し、これら各群の飼料については、4週間に亘って飲水(水道水)とともに自由摂取させた。
【0091】
ここで、これら各群それぞれのラットは、温度を22.0±2.0℃とし、湿度を55.0±5.0%とし、7:00から19:00までを明期とし、19:00から7:00までを暗期とした12時間の明暗切り換えをして飼育した。なお、これら各群のラットの動物実験は、「近畿大学医学部動物実験の指針」に則って実施した。さらに、各ラットの体重を2日に1回測定した(実験1)。
【0092】
そして、これらラットの血中ホルモン量は、個体差が大きく分泌に日内変動があることから、実験結果の再現性を確認するために、実験1が終了した後に、さらに通常飼育飼料(CE−2:日本クレア株式会社製)で8週間飼育してから、各実験群のラットを交換(それまでの0.5M群を5.0群にし、それまでの5.0M群を0.5M群にした。)して、上記実験1と同様の実験を繰り返した。
【0093】
すなわち、48週齢以上51週齢以下に達したラットを1群9匹ずつ(交換前の実験で麻酔および採血などで不調となった個体を各群より1匹ずつ削除)とし、対照群、0.5M群(それまでの5.0M群)および5.0群(それまでの0.5群)の3群に分けて、上記実験1と同様に実験した(実験2)。
【0094】
(採血条件、血清の分離および生化学検査)
上記実験1および実験2それぞれの開始から4週間後の各ラットに、無絶食条件で麻酔薬としてペントバルビタールナトリウム(商品名:ネンブタール,大日本製薬株式会社製)を50mg/kgの割合で復腔内に投与して麻酔してから、これらラットの鎖骨下静脈から約1mlほど採血した。そして、これら採血した血液の血清を、2500rpm、15min、4℃の条件で遠心分離した。ここで、血中ホルモン量は、個体差が大きく分泌に日内変動があることから、午後1時から採血を開始した。
【0095】
(血清中のエストラジオール量の測定)
上記実験1および実験2で得られた血清中のエストラジオール量の測定としては、エストラジオール酵素免疫アッセイ(Estradiol enzyme immuno assay:EIA)キット(ケイマンケミカル社(Cayman Chemical Company)製,アメリカ)を用いて測定した。さらに、吸光度は、吸光度測定装置(バイオラッドモデル680:バイオラッド社(Bio-Rad)製,アメリカ)を用いて測定した。また、マイクロプレートマネージャーバージョン5.2(Microplate Manager ver.5.2:バイオラッド社(Bio-Rad)製,アメリカ)を用いて定量計算した。
【0096】
(統計処理)
各実験値は、すべて平均値±標準誤差で表した。有意差検定は、スタットビュー(StatView)統計解析プログラム(Ver.4.5,株式会社ヒューリンクス製)を用いて分散分析および対応のないt−検定(unpaired t-test)による解析を用いた。さらに、このとき危険率(P)5%以下(P<0.05)を有意とした。
【0097】
次に、実験結果について説明する。
【0098】
(体重および飼料摂取量の経時的変動)
上記実験における対照群、0.5M群および5.0M群それぞれの交換前の実験(実験1)および交換後の実験(実験2)それぞれの実験期間中の各ラットの体重および飼料摂取量の動向は、図4ないし図7に示すようになった。この結果、これら実験1および実験2のいずれにおいても、実験期間中の体重および飼料摂取量は、3群間に有意な差は認められなかった。また、平均飼料摂取量については、実験1の場合に対照群が21.7±1.0で、0.5M群が20.6±1.2で、5.0M群が20.6±0.8であり、実験2の場合に対照群が23.4±1.2で、0.5M群が22.4±0.9で、5.0M群が22.1±1.1であった。なお、これら各平均飼料摂取量は、いずれも平均値±標準誤差(g/匹/日)を示す。
【0099】
次に、上記実験1での血清エストラジオール量に対する影響について説明する。
【0100】
(エストラジオール量に及ぼす影響)
実験開始から4週間後に得られた血清エストラジオール量を図8に示す。この場合は比較的個体差が小さかった。対照群と0.5M群との間にほとんど差が認められなかったが、5.0M群では他の2群に比べ有意な高値(危険度(p)<0.01)が認められた。
【0101】
次に、上記実験2での血清エストラジオール量に対する影響について説明する。
【0102】
(血清エストラジオール量に及ぼす影響)
上記実験2における血清エストラジオール量を図9に示す。この場合は、実験1と同様に比較的個体差が小さかった。そして、0.5M群では、対照群に比べ若干の上昇傾向が認められた。また、5.0M群では、対照群に比べ有意な高値(危険度(p)<0.01)が認められ、0.5M群に比べ上昇傾向(危険度(p)<0.15)が認められた。
【0103】
次に、考察について説明する。
【0104】
加齢の進んだ雌ラットによるマカエキス末の摂取によって順調な生育が認められた。
【0105】
マカエキス末の摂取量に依存して加齢により低下する血清エストラジオールが上昇する結果が得られた。そして、このエストラジオールが高脂血症改善に作用することが知られている。
【0106】
そして、上記実験1および実験2での血清エストラジオール量は、比較的個体差が小さかった。さらに、これら実験1および実験2のいずれにおいても5.0M群では、対照群に比べ有意な高値が認められたことから、加齢が進み血清エストラジオールが低下した雌性ラットにおいては、5%マカエキス末を4週間摂取することによって血清エストラジオールの上昇が誘導されることが分かった。
【0107】
さらに、実験1では、対照群と0.5M群との間にほとんど差が認められなかったが、実験2では、0.5M群が対照群と比べると若干の増加傾向を示していることから、血清エストラジオール上昇は、マカエキス末の摂取量に依存することが分かった。
【0108】
よって、加齢の進んだ血清エストラジオール量の低い雌性ラットでは、上記実施例1に記載のように、ベンジルイソチオシアネート、ベンジルグルコシノレートを投与してから60分後に血清エストラジオール量が有意に上昇することから、マカエキス末の摂取による血清エストラジオール上昇は、このマカエキス末に含まれるベンジルグルコシノレートに基づく可能性が高い。また、この作用は、加齢の進んだ血清エストラジオール量の低い雌性ラットに特有であると考えられる。
【0109】
以上のことから、血清エストラジオール量が減少した時期におけるマカエキス末の摂取は、摂取量に依存して血清エストラジオール量の上昇に作用すると考えられる。したがって、ヒトの場合では、一般に更年期になると血清エストラジオール量が低下することが知られていることから、マカエキス末の摂取は、更年期における血清エストラジオールの低下を抑制し、血清エストラジオール量の低下に基づく更年期障害を改善する可能性が考えられる。この作用は、女性ホルモンバランスの調整にも関与すると考えられるので、月経不順や不妊の改善、老化防止などの女性ホルモンに関連する種々の障害の予防および改善に繋がると考えられる。
【実施例3】
【0110】
次に、ベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートの少なくともいずれか一方を含むマカエキス末を被験者に摂取させた場合の臨床試験についての実施例3を説明する。
【0111】
まず、実験方法について説明する。
【0112】
(被験者および摂取品)
AからMまでの計13人の35歳から59歳までの女性を被験者とし、これら被験者に、日常生活を何ら制限せずマカエキス末を定期的に摂取させた。これら被験者AないしMのうち、被験者LおよびMとしては更年期で閉経後の女性とした。
【0113】
また、マカエキス末としては、質量比で約1056mg/100gのベンジルグルコシノレートが含有されているマカエキス末を、250mg中平均して200mgほど含んだ錠剤であるマカエキス錠を作成し、このマカエキス錠を朝食摂取後30分以内に2錠摂取させ、夕食摂取後30分以内に1錠摂取させた。すなわち、各被験者AからMまですべてに対して、1日当たりマカエキス錠を3錠ほど摂取させて、1日当たり約600mgのマカエキス末を摂取させた。
【0114】
(採血日)
各被験者に対するマカエキス錠の摂取期間を、12週間(約3ヶ月間)とし、摂取開始1ヶ月前(1回目)、摂取開始直前(2回目)、摂取開始2週後(3回目)、摂取開始4週後(4回目)、摂取開始6週後(5回目)、摂取開始8週後(6回目)、摂取終了時となる摂取開始12週後(7回目)、摂取期間終了2週後(8回目)および摂取期間終了4週後(9回目)の計9回を採血日とし、これら採血日それぞれで被験者AからMまでそれぞれから採血するとともに、予め作成した自覚症状のアンケートに答えさせた。
【0115】
このとき、各被験者AからMまでそれぞれに対して採血前日の飲酒量を制限させて、採血当日の朝食の摂取を制限させた。また、採血期間中のマカエキス錠以外のイソフラボンやビタミンCなどのサプリメントである健康機能食品の摂取を禁止させた。
【0116】
(血液検査項目)
各採血日に被験者から摂取した血液から、成長ホルモン量(単位:ng/ml)、エストラジオール量(単位:pg/ml)およびプロゲステロン量(単位:ng/ml)のそれぞれを測定した。この結果、表3に示す結果となった。
【0117】
このとき、エストラジオールの測定値は、10pg/mlが測定限界であって、実際のエストラジオール量が10pg/ml以下の場合も10pg/mlと表示される。また、プロゲステロンの測定値は、0.03ng/mlが測定限界であって、実際のプロゲステロン量が0.03ng/ml以下の場合も0.03ng/mlと表示される。
【0118】
【表3】

【0119】
(自覚症状)
まず、自覚症状のアンケート項目として、「のぼせ・ほてり」、「発汗」、「肩こり」、「頭痛・めまい」、「動悸・息切れ」、「手足や腰の冷え」、「不眠」、「イライラする」、「うつ気分」および「疲れやすい」の計10項目を作成した。また、これら項目についての症状の度合を、症状のレベルで「0.なし」、「1.弱い」、「2.中くらい」および「3.強い」の4段階に分けて、各被験者AからMまでそれぞれに対して答えさせた。
【0120】
【表4】

【0121】
【表5】

【0122】
【表6】

【0123】
【表7】

【0124】
【表8】

【0125】
【表9】

【0126】
【表10】

【0127】
【表11】

【0128】
【表12】

【0129】
【表13】

【0130】
【表14】

【0131】
【表15】

【0132】
【表16】

【0133】
次に、実験結果について説明する。
【0134】
(血液検査結果)
まず、被験者AからMまでの各採血日での成長ホルモン量、エストラジオール量およびプロゲステロン量を測定したところ、成長ホルモン量については、2回目の採血時と比較すると、表3に示すように、被験者Aが4回目および7回目の採血時にそれぞれ増加し、被験者Bが6回目の採血時に増加し、被験者Cが6回目と9回目の採血時に増加し、被験者Dが7回目の採血時に増加し、被験者Fが6回目の採血時に増加し、被験者Hが4回目および9回目の採血時にそれぞれ増加し、被験者Jが5回目の採血時に増加し、被験者Kが4回目、6回目および9回目の採血時にそれぞれ増加し、被験者Lが7回目の採血時に増加し、被験者Mが4回目、6回目および7回目の採血時にそれぞれ増加した。
【0135】
さらに、エストラジオール量については、被験者Bが6回目の採血時に増加し、被験者Eが4回目の採血時に増加し、被験者Fが9回目の採血時に増加し、被験者Gが4回目、6回目、7回目および9回目の採血時にそれぞれ増加し、被験者Lが4回目および6回目の採血時にそれぞれ増加し、被験者Mが4回目と7回目の採血時にそれぞれ増加した。
【0136】
また、プロゲステロン量については、被験者Bが3回目、7回目および9回目の採血時にそれぞれ増加し、被験者Eが4回目および7回目の採血時にそれぞれ増加し、被験者Gが4回目、6回目、7回目および9回目の採血時にそれぞれ増加し、被験者Lが6回目の採血時に増加した。
【0137】
(自覚症状結果)
まず、表4ないし表16に示す結果を、図10および図11に示すようにまとめた。そして、2回目(摂取開始直前)と7回目(摂取終了時)とを比較した場合には、図10に示すように、アンケート中の「のぼせ・ほてり」の項目については被験者AからMまでの13人中6名が自覚症状ありと答え、そのうち4名が改善ありと答えた。また、「発汗」の項目については、被験者13名中10名が自覚症状ありと答え、そのうちの3名が改善ありと答えた。さらに、「肩こり」の項目については、被験者13名中13名が自覚症状ありと答え、そのうちの7名が改善ありと答えた。
【0138】
また、「頭痛・めまい」の項目については、被験者13名中7名が自覚症状ありと答え、そのうちの6名が改善ありと答えた。さらに、「動悸・息切れ」の項目については、被験者13名中7名が自覚症状ありと答え、そのうちの5名が改善ありと答えた。また、「手足や腰の冷え」の項目については、被験者13名中8名が自覚症状ありと答え、そのうちの5名が改善ありと答えた。さらに、「不眠」の項目については、被験者13名中8名が自覚症状ありと答え、そのうちの4名が改善ありと答えた。
【0139】
さらに、「イライラする」の項目については、被験者13名中9名が自覚症状ありと答え、そのうちの6名が改善ありと答えた。また、「うつ気分」の項目については、被験者13名中5名が自覚症状ありと答え、そのうちの3名が改善ありと答えた。さらに、「疲れやすい」の項目については、被験者13名中11名が自覚症状ありと答え、そのうちの6名が改善ありと答えた。
【0140】
次いで、7回目(摂取終了時)と9回目(摂取終了4週後)とを比較した場合には、図11に示すように、アンケート中の「のぼせ・ほてり」の項目については被験者AからMまでの13人中6名が自覚症状ありと答え、そのうち2名が改善が維持していると答えた。また、「発汗」の項目については、被験者13名中10名が自覚症状ありと答え、そのうちの2名が改善が維持していると答えた。さらに、「肩こり」の項目については、被験者13名中13名が自覚症状ありと答え、そのうちの2名が改善が維持していると答えた。
【0141】
また、「頭痛・めまい」の項目については、被験者13名中9名が自覚症状ありと答え、そのうちの1名が改善が維持していると答えた。さらに、「動悸・息切れ」の項目については、被験者13名中7名が自覚症状ありと答え、そのうちの3名が改善が維持していると答えた。また、「手足や腰の冷え」の項目については、被験者13名中8名が自覚症状ありと答え、そのうちの4名が改善が維持していると答えた。さらに、「不眠」の項目については、被験者13名中9名が自覚症状ありと答え、そのうちの1名が改善が維持していると答えた。
【0142】
さらに、「イライラする」の項目については、被験者13名中9名が自覚症状ありと答え、そのうちの2名が改善が維持していると答えた。また、「うつ気分」の項目については、被験者13名中5名が自覚症状ありと答え、そのうちのだれも改善が維持していると答えなかった。さらに、「疲れやすい」の項目については、被験者13名中11名が自覚症状ありと答え、そのうちの2名が改善が維持していると答えた。
【0143】
また、上記のアンケート項目の下に「その他気づかれた点」との項目を設けたところ、血液運動系として冷えや動悸が改善され、精神神経系として不眠、興奮およびだるさが改善され、消化器系として肌のはり、しみ、しわ、化粧ののり、肌荒れ、口内乾燥、眼球乾燥および便通などが改善され、運動器官系として肩こりおよび関節痛などが改善され、泌尿器・生殖器系として生理痛および月経が周期的(一ヶ月に一度)になるなどが改善されたとの答えがあった。
【0144】
特に、更年期の女性ですでに閉経している被験者Lおよび被験者Mにおいては、マカエキス錠の摂取によって一時的に月経が回復したとの答えがあった。
【0145】
次に、考察について説明する。
【0146】
まず、各回の採血時の血液検査の結果から、マカエキス錠の摂取、すなわちマカエキス末の摂取によって、成長ホルモン量、エストラジオール量およびプロゲステロン量のそれぞれが増加した被験者が認められた。さらに、マカエキス末の摂取を中止しても、一ヶ月程度の間は、成長ホルモン量、エストラジオール量およびプロゲステロン量の増加が継続している被験者が認められた。
【0147】
さらに、各回の採血時のアンケート結果から、マカエキス錠の摂取、すなわちマカエキス末の摂取によって、図10に示すように、自覚症状のアンケート項目中の「のぼせ・ほてり」、「発汗」、「肩こり」、「頭痛・めまい」、「動悸・息切れ」、「手足や腰の冷え」、「不眠」、「イライラする」、「うつ気分」および「疲れやすい」のそれぞれについて改善されていた。
【0148】
また、図11に示すように、マカエキス末の摂取を中止することによって、「のぼせ・ほてり」、「発汗」、「肩こり」、「頭痛・めまい」、「動悸・息切れ」、「手足や腰の冷え」、「不眠」、「イライラする」、「うつ気分」および「疲れやすい」それぞれの項目の改善の継続が低下すると考えられる。
【0149】
ここで、これら自覚症状のアンケート項目のそれぞれについての症状の度合を、症状のレベルで「0.なし」、「1.弱い」、「2.中くらい」および「3.強い」の4段階に分けて各被験者AからMまでに答えさせた結果を、被験者AないしMごとに分け、これら被験者AないしMごとに改善結果を足し算した。
【0150】
【表17】

【0151】
この結果、表17に示すように、被験者AないしMの13人中12人に、摂取開始時(2回目)より摂取終了時(7回目)のポイントが低下し改善が認められた。また、摂取終了4週後も、摂取終了時と比較すると、被験者13人中11人にポイントの低下の維持が認められた。これら結果から、マカエキス末の摂取によって種々の自覚症状が改善されたと考えられる。
【0152】
また、アンケート項目の「その他気づかれた点」の記載から、マカエキス末の摂取によって、血液運動系として冷えや動悸、精神神経系として不眠、興奮およびだるさ、消化器系として肌のはり、しみ、しわ、化粧ののり、肌荒れ、口内乾燥、眼球乾燥および便通、運動器官系として肩こりおよび関節痛、泌尿器・生殖器系として生理痛および月経が周期的(一ヶ月に一度)になるなどが改善されていた。さらに、被験者Lおよび被験者Mの結果から、マカエキス末の摂取によって閉経後の月経の一時的な回復が期待できると考えられる。
【0153】
その他として、マカエキス末の摂取によって、疲れにくく、疲労が回復され、免疫力が増加し、体調が良くなり、目覚めが良くなり、体重が減少し、髪のはりが改善されるなどの効果も期待できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明の実施例1の対照群および実験群の血清中のエストラジオール量を投与時間で比較したグラフである。
【図2】同上血清中のエストラジオール量を対照群および実験群の各群で比較したグラフである。
【図3】21週齢および38週齢のラットでの対照群および実験群の血清中のエストラジオール量を比較したグラフである。
【図4】本発明の実施例2の実験群交換前の対照群および各実験群の飼育期間に対する体重の変動を示すグラフである。
【図5】同上実施例2の実験群交換前の対照群および各実験群の飼育期間に対する飼料摂取量の変動を示すグラフである。
【図6】同上実施例2の実験群交換後の対照群および各実験群の飼育期間に対する体重の変動を示すグラフである。
【図7】同上実施例2の実験群交換後の対照群および各実験群の飼育期間に対する飼料摂取量の変動を示すグラフである。
【図8】同上実施例2の実験群交換前の対照群および各実験群のエストラジオール量を示すグラフである。
【図9】同上実施例2の実験群交換後の対照群および各実験群のエストラジオール量を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例3の摂取開始直前と摂取終了時とでの自覚症状の比較を示すグラフである。
【図11】同上実施例3の摂取終了時と摂取終了4週後とでの自覚症状の比較を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれか一方を含有し、エストロゲン増加作用を有する
ことを特徴としたエストロゲン増加組成物。
【請求項2】
少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれか一方は、マカに含まれている
ことを特徴とした請求項1記載のエストロゲン増加組成物。
【請求項3】
エストラジオール増加作用を有する
ことを特徴とした請求項1または2記載のエストロゲン増加組成物。
【請求項4】
プロゲステロン増加作用を有する
ことを特徴とした請求項1ないし3いずれか記載のエストロゲン増加組成物。
【請求項5】
成長ホルモン増加作用を有する
ことを特徴とした請求項1ないし4いずれか記載のエストロゲン増加組成物。
【請求項6】
更年期障害改善作用を有する
ことを特徴とした請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物。
【請求項7】
女性ホルモンバランス調整作用を有する
ことを特徴とした請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物。
【請求項8】
月経不順改善作用を有する
ことを特徴とした請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物。
【請求項9】
不妊改善作用を有する
ことを特徴とした請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物。
【請求項10】
老化予防作用を有する
ことを特徴とした請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物。
【請求項11】
更年期における血中エストラジオール量低下抑制作用を有する
ことを特徴とした請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物。
【請求項12】
月経回復作用を有する
ことを特徴とした請求項1ないし5いずれか記載のエストロゲン増加組成物。
【請求項13】
請求項1ないし12いずれか記載のエストロゲン増加組成物を含む
ことを特徴としたエストロゲン増加食品。
【請求項14】
請求項1ないし12いずれか記載のエストロゲン増加組成物を含む
ことを特徴としたエストロゲン増加薬。
【請求項15】
少なくともベンジル類グルコシノレートおよびベンジル類イソチオシアネートのいずれか一方を含有し、プロゲステロン増加作用を有する
ことを特徴としたプロゲステロン増加組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−112782(P2007−112782A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367856(P2005−367856)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(300022526)TOWA CORPORATION 株式会社 (8)
【Fターム(参考)】