説明

エストロン類の高感度測定法

【課題】試料中に含まれるエストロン類を液体クロマトグラフィ−質量分析(LC−MS)で高感度に測定するための化合物及びその化合物を使用した測定方法を提供する。
【解決手段】試料中のエストロン類のフェノール性水酸基にペンタハロゲン化ベンジル基又はペンタハロゲン化ベンゾイル基を導入した後、17位カルボニル基にヒドラジノ−1−低級アルキルピリジンを導入したエストロン誘導体及びその化合物を使用したLC−MS測定法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれる3−ヒドロキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン(エストロン) 類を液体クロマトグラフィー質量分析 (LiquidChromatography−Mass Spetrometry :LC−MS) を用いて高感度に測定するための化合物及びその化合物を使用した測定方法に関する。より詳細には、試料中のエストロンのフェノール性水酸基にペンタハロゲン化ベンジル基又はペンタハロゲン化ベンゾイル基を導入した後、17位カルボニル基に1−低級アルキルヒドラジノピリジニウム塩(以下、ヒドラジノ−1−低級アルキルピリジン) を反応させ、その誘導体をLC−MSで測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エストロゲンは、アンドロゲンからアロマターゼによって産生される。エストロゲンは、乳癌、消化器癌、心血管障害、性ホルモン代謝の先天性疾患、思春期早発、骨粗しょう症等といった、さまざまな疾患との関連が深いとされ、その量をモニターすることは疾患の解明や、薬理効果の判定等に有用である。作用の最も強いエストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール(エストラジオール) は、17β−水酸化ステロイド脱水素酵素2型 (17β−HSD2)によって作用の弱いエストロンへと変換され、エストロンは17β−水酸化ステロイド脱水素酵素1型(17β−HSD1) によってエストラジオールへと再活性化される。成人で妊娠していない閉経前女性の循環血中エストラジオール濃度は、エストロンの1.5〜 4倍ほど高い。それにひきかえ、男性や閉経後女性において、エストラジオールは1/10程度に低下し、エストラジオール/エストロン比が逆転する。よって、思春期前の女児、閉経後女性及び男性については、作用の強いエストラジオールだけでなく主要なエストロゲンであるエストロンをモニターすることにより、代謝や疾患の状態をより正確に把握することができる。
【0003】
多嚢胞性卵巣症候群 (PolycysticOvary Syndrome: PCOS)は、卵胞が嚢胞化し排卵が起こりにくくなる疾患であるが、さまざまな内分泌の不調和によるものと考えられている。この診断法の一つとして、血中のエストロンとエストラジオール比が有用であり、PCOSの検査法に掲げられている。
乳癌でもエストロゲンがその増殖・抑制に大きく関わっていることが知られており、閉経後女性のように血中のエストロゲンの濃度が低いものでも、卵巣以外の臓器で副腎性アンドロゲンや硫酸抱合型エストロンのように比較的量の多いステロイドホルモンから組織中のアロマターゼや17β−HSDによって局所的にエストラジオールやエストロンが産生され、それらが乳癌の発症及び増殖に大きく関与している可能性が示唆されている。(非特許文献1)
また、子宮体癌においては、癌組織中でエストロン量が増え、他の組織と比べてエストロンとエストラジオールの比率が異なるという報告がなされている。(非特許文献2)
【0004】
いずれの場合においても、アロマターゼと病態の因果関係を解析していくことが診断及び病因の解明をする上で肝要であるが、アロマターゼの全体像を把握するには、生理作用の強いエストラジオールのみでなく、エストロンの量も考慮していくことが重要である。しかし、小動物や小児から得られる血液、針生検で採取した組織及び唾液といった検体の中には、エストロゲンがわずかな量しか含まれておらず、これらの測定には高感度が要求される。
【0005】
通常の臨床検査においては、試料中のエストロンは、H−エストロンをリガンドとしたラジオイムノアッセイ、酵素免疫反応などの免疫法により定量されているが、免疫法の一般的な定量限界が10pg/mLであることに加えて、血液中にはエストロンの構造類似化合物や性ホルモン結合グロブリンが共存しているので、使用する定量法やキット間差により定量値が大きく変動し易く、結果が臨床症状と乖離する場合もある。最近になって、検出感度が4.8pg/mLと高感度のエストロンEIA測定キットが発売されているが、低濃度での測定値のばらつきが大きい。
【0006】
他方、ガスクロマトグラフィ−質量分析 (GasChromatography −Mass Spectrometry:GC−MS)で測定する方法も提案されている。GC−MSにおいては、一般に、試料中エストロゲンを揮発性試薬のトリフルオロ酢酸無水物、ヘプタフルオロ酪酸無水物等のアシル化剤や、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド等のシリル化剤と反応させ、その誘導体をGC−MSで測定する。(非特許文献3、4)しかし、これらの誘導体は、いずれも不安定なため誘導体としての精製が困難であり、測定の際に試料中の不純物及び試薬の干渉を受け易い。また、GC−MSによる測定において、試料の注入量が全試料の5〜 10%以下と少なくなりロスが多くなるために十分に感度が得られない上に、分析に長時間を要すること等も大きな欠点である。さらに、GC−MSはLC−MSと比べてダイナミックレンジが狭いという欠点がある。このように、GC−MSを用いた測定には制限が多く、それゆえ、閉経後女性や小動物から得られる生体試料の測定をGC−MSにより行うのは困難である。
【0007】
LC−MSについては、大気圧光イオン化法 (AtmosphericPressure Photo Ionization : APPI) による直接定量法が報告されている。しかし、APPIは、溶離液にアセトニトリルを用いるとイオン化が阻害され易いこと、ドーパント送液の脈流によってベースラインが乱れ易い等といった欠点も多く、エレクトロスプレーイオン化法(Electrospray Ionization :ESI) と比べて、LC−MS用検出器として普遍的とはいえない。(非特許文献5、6)
【0008】
エストロゲンを種々誘導体化し、それをLC−MSで測定する試みも行われている。例えば、エストロゲンのフェノール性水酸基をダンシル化(5−ジメチルアミノナフタレン−1−イルスルホン化) し、正イオン検出ESIを用いて二次元クロマトグラフィーで測定する方法が報告されている。(非特許文献7) しかし、この方法には、化合物由来のプロダクトイオンが得られず特異性に欠けるという欠点がある。
【0009】
また、サンガー試薬がアルカリ存在下でフェノール性水酸基と容易に反応することから、サンガー試薬のピペラジン誘導体をエストロゲンと反応させて、LC−MSで測定する方法が報告されている。(非特許文献8) この方法では、比較的高濃度である妊婦血中エストロゲンの測定は可能であったが、男性の血中エストロゲンは検出できていない。
【0010】
エストロンのカルボニル基をp−トルエンスルホニルヒドラジドで誘導体化して測定する方法も報告されている。 (非特許文献9) この方法では、エストロンを10pg (oncolumn) から測定可能であるが、小児及び更年期の血中エストロンの定量には感度が不十分である。
【0011】
発明者らは、これまでに生体内エストラジオール類のフェノール性水酸基をペンタハロゲン化ベンジル又はペンタハロゲン化ベンゾイル化した後、17位の水酸基をハロゲノ−1−低級アルキルピリジニウム塩(以下、ハロゲノ−1−低級アルキルピリジン) で誘導体化して測定する方法を開発した。(特許文献1) しかし、この方法では、エストロンのようにアルコール性水酸基を有していないエストロゲンを測定するのには適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−138786号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】日本臨床65巻 増刊号 6 (通巻第917号) 106 − 110
【非特許文献2】Clin. Cancer. Res. 15 (2009) 6038 − 6034
【非特許文献3】Steroids 57(1992) 319− 324
【非特許文献4】Endocr. J. 50 (2003) 783 − 792
【非特許文献5】Clin. Chim. Acta 409 (2009) 78 − 84
【非特許文献6】ぶんせき (2009) 278 − 284
【非特許文献7】Am. J. Clin. Pathol. 129 (2009) 530 − 539
【非特許文献8】J. Pharm. Biomed. Anal. 44 (2007) 786 − 795
【非特許文献9】Anal. Chem. 76 (2004) 5829 − 5836
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、試料中に含まれるエストロン類をLC−MSを用いて高感度に測定するための化合物及びその化合物を使用した測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、エストロンのようなカルボニル基を有するエストロゲンを微量測定するため、まず、アルカリ条件下でフェノール性水酸基を選択的にペンタハロゲン化ベンジルエーテル化又はペンタハロゲン化ベンゾイルエステル化した後、17位カルボニル基を種々誘導体化して、その誘導体の測定感度を精査した。その結果、17位カルボニル基を1−低級アルキルピリジニウムヒドラゾン化することにより、カルボニル基を有するエストロゲンをLC−MSにより良好な感度で測定できることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明は、試料中エストロン類をLC−MSで測定するための化合物として、下記式(1)
【化1】

(式中、Rは低級アルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、YはCH又はCOを表す)
で示される化合物を提供するものである。
【0017】
さらに、本発明は、試料中エストロン類のLC−MSによる測定方法であって、
1) 試料からステロイドを抽出する工程、
2) 上記1)で得られた抽出物に対して下記式(2)
【化2】

(式中、Xはハロゲン原子を表し、YはCH又はCOを表し、Lは脱離基を表す)
で示されるペンタハロゲン化ベンジル化合物又はペンタハロゲン化ベンゾイル化合物をアルカリ条件化で反応させる工程、
3) 上記2)で得られた反応物に含まれるエストロン類のペンタハロゲン化ベンジル誘導体又はペンタハロゲン化ベンゾイル誘導体にヒドラジノ−1−低級アルキルピリジンを酸性下で反応させる工程、及び
4) 上記3)で得られた反応物に含まれるエストロン類のペンタハロゲン化ベンジル−又はペンタハロゲン化ベンゾイル−1−低級アルキルピリジニウムヒドラゾンをLC−MSで測定する工程、
を含むことを特徴とする、試料中エストロン類の測定方法を提案するものである。
【0018】
また、本発明は、以下の工程:
1) ペンタハロゲン化ベンジル化合物又はペンタハロゲン化ベンゾイル化合物をアルカリ条件下で反応させた後、順相カラムを用いてエストラジオール類のペンタハロゲン化ベンジル又はペンタハロゲン化ベンゾイル誘導体とエストロン類のペンタハロゲン化ベンジル又はペンタハロゲン化ベンゾイル誘導体を分離する工程、
2) 上記1)で得られたエストラジオール類のペンタハロゲン化ベンジル又はペンタハロゲン化ベンゾイル誘導体にハロゲノ−1−低級アルキルピリジンを反応させる工程、及び
3) エストロン類のペンタハロゲン化ベンジル−又はペンタハロゲン化ベンゾイル−1−低級アルキルピリジニウムヒドラゾンをLC−MSで測定する際に、上記2)で得られたエストラジオール類のペンタハロゲン化ベンジル−又はペンタハロゲン化ベンゾイル−1−低級アルキルピリジニウム誘導体を合わせて同時に測定する工程、
を更に含む、上記記載の試料中エストロン類の測定方法を提案するものである。
【0019】
また、本発明は、固相抽出カラムを用いて試料から中性ステロイドを除去する工程を更に含む、上記記載の試料中エストロン類の測定方法を提案するものである。
【発明の効果】
【0020】
本願発明の化合物及び測定法を用いることにより、試料中に微量に存在するエストロン類を0.25 pg/tube (0.05 pg/on column) のレベルで測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明において、「エストロン類」には、例えば、エストロン、2−ヒドロキシエストロン、4−ヒドロキシエストロン、2−ヒドロキシエストロン3−メチルエーテル、4−ヒドロキシエストロン 3−メチルエーテル、2−メトキシエストロン、4−メトキシエストロン、16α−ヒドロキシエストロン、16オキソエストラジオール等の生体内又は自然界中に存在するエストロゲンを挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「固相抽出カラム」とは、一般的なカートリッジカラムを表し、本発明においては、市販されているものを用いることができる。充填剤の分離モードには吸着、分配、イオン交換、分子ふるい、アフィニティー等が挙げられるが、中でも吸着、分配が好適である。また、移動相と固定相の極性の関係から、逆相、順相に大別されるが、中でも、逆相、順相又はイオン交換が好適である。また、本明細書における「順相カラム」とは、上記「固相抽出カラム」のうち、充填剤の分離モードが吸着であるものを表す。
【0023】
本明細書において、「LC−MS」とは、液体クロマトグラフと質量分析計とを組み合わせた装置を用いて行う分析方法を表すが、その中でも、質量分析部が複数結合したタンデム型の質量分析(Liquid Chromatography−Tandem MassSpectrometry : LC−MS/MS) を用いることが好ましい。LC−MSにおけるイオン化は、例えば、大気圧化学イオン化法 (Atmospheric PressureChemical Ionization) 、ESI、APPI等が挙げられるが、中でも、正イオン検出ESIを用いることが望ましい。
【0024】
また、質量分析部には、例えば、磁場型、四重極型、飛行時間型等が挙げられるが、本発明では、定量性が良く、ダイナミックレンジも広く直線性も良好な四重極型を使用することが好ましい。
【0025】
さらに、定量におけるイオンの検出としては、目的とするイオンのみを選択的に検出する、選択イオンモニタリング (Selected IonMonitoring) や、1つ目の質量分析部で精製したイオン種のうち1つを前駆イオンとして選択し、2つ目の質量分析部で、その前駆イオンの開裂によって生じるプロダクトイオンを検出する、選択反応モニタリング(Selected Reaction Monitoring: SRM)等が挙げられる。本発明では、選択性が増し、ノイズが減ることによってシグナル/ノイズ比が向上するSRMによる測定が好ましい。
【0026】
さらに、本明細書において、「試料」とは、特に限定はなく、生物、環境又は工業製品いずれの由来のものであってもよい。生物由来の試料としては、例えば、ヒトを含む動物の血液、唾液、涙液、汗、尿、糞、胆汁、組織、生体細胞、組織又は細胞培養液又は臓器から得られる調製物、あるいは植物からの抽出物等を挙げることができる。また、環境由来の試料としては、例えば、土壌、汚水、廃水、河川水、海水等が挙げられる。さらに、工業製品由来の試料としては、食料品、医薬品等が挙げられる。中でも、生体由来試料として、ヒトを含む動物の血液、唾液、尿、組織及び生体細胞等が、環境由来試料としては、廃水、河川水等が、工業製品由来試料としては、医薬品等が好ましい。
【0027】
本発明において、使用することのできる下記式(2)
【化3】

で示されるペンタハロゲン化ベンジル化合物において、Xは、具体的には、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子を表す。また、脱離基Lとしては、ハロゲン原子: トシルオキシ、メシルオキシ、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基等の脱離基を挙げることができ、好適には、ハロゲン原子を挙げることができる。上記ペンタハロゲン化ベンジル化合物の具体例としては、例えば、ペンタフルオロベンジルクロライド、ペンタフルオロベンジルブロマイド、ペンタブロモベンジルクロライド、ペンタブロモベンジルブロマイド等を挙げることができ、中でも、ペンタフルオロベンジルブロマイドが好適である。
【0028】
これらのペンタハロゲン化ベンジル化合物及びペンタハロゲン化ベンゾイル化合物は、公知化合物であるか、又は公知化合物から公知の方法で合成することができる。
【0029】
本明細書において、「低級アルキル」は、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を意味する。このような低級アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル等を挙げることができ、好適には、メチル、エチル、n−プロピルを挙げることができる。また、本発明において使用することのできる「ヒドラジノ−1−低級アルキルピリジン」としては、例えば、ジラード試薬P及び2−ヒドラジノ−1−メチルピリジン等が挙げられ、この中でも反応性が良く、感度が優れている、 2−ヒドラジノ−1−メチルピリジンを用いた誘導体化が好ましい。このヒドラジノ−1−低級アルキルピリジンも、公知化合物であるか、公知化合物から公知の方法で合成することができる。
【0030】
本発明について、以下に具体的に説明する。
【0031】
1.ヒドラジノ−1−低級アルキルピリジンの調製
ヒドラジノ−1−低級アルキルピリジンの調製方法については、後記実施例にて詳述するが、ヒドラジンと2−ハロゲノ−1−低級アルキルピリジニウムp−トルエンスルホン酸塩等の一般的な市販合成原料をアセトニトリル等の不活性化溶媒に溶解して反応させることにより得ることができる。この反応は、−10℃乃至50℃の範囲で行うことができるが、反応開始から5〜 15分の間は−5℃乃至5℃の範囲内の温度で行うことが望ましい。その後は、10℃乃至40℃の範囲内が適している。また、反応溶媒としては、一般的な不活性有機溶媒、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0032】
2.試料の調製
血清試料からのエストロゲンの調製方法については、後記実施例において詳述するが、有機溶媒による抽出や固相抽出による簡易カラムクロマトグラフィーにより分離精製する一般的調製方法を適宜選択して用いることができる。また、唾液、尿、糞、培養細胞、臓器及び汚水から得られる調製物等の試料の調製方法も、血清の場合とほぼ同様な手法を用いることができる。また、一般に市販されている固相抽出カラム、例えば、ウォーターズ社製のOasis(登録商標) MAXや、ジーエルサイエンス社製のInertSep(登録商標) MA−1を用いて、フェノール性ステロイドのみを選択的に分取することも必要に応じて行うことができる。
【0033】
3.ペンタハロゲン化ベンジル誘導体又はペンタハロゲン化ベンゾイル誘導体の調製
上記で調製した試料をアセトニトリル等の不活性溶媒に溶解し、アルカリ条件下でペンタハロゲン化ベンジル化合物又はペンタハロゲン化ベンゾイル化合物を反応させることにより、上記で調製したエストロゲンをペンタハロゲン化ベンジル誘導体又はペンタハロゲン化ベンゾイル誘導体に変換する。この反応は、−10℃乃至60℃の範囲内の温度で行うことができ、好ましくは5℃乃至60℃の範囲内の温度が適している。また、ペンタハロゲン化ベンジル化合物又はペンタハロゲン化ベンゾイル化合物の使用割合は、特に制限されるものではないが、一般に、試料1ngに対して1 mg乃至100mgとすることができ、好ましくは2 mg乃至5 mgが適している。さらに、上記反応において、反応液のpHを8〜 14、好ましくは、11〜 13の範囲とすることができ、その際、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム等の塩基の中から、反応液を上記pHの範囲にするのに十分な種類及び量の塩基を適宜選択して用いることができる。ここで、本反応はアルカリ条件下で行うことによって、エストロゲンにおける水酸基のうち、フェノール性水酸基が選択的にペンタハロゲン化ベンジルエーテル化又はペンタハロゲン化ベンゾイルエステル化される。
【0034】
上記3の方法により調製されるエストロゲンのペンタハロゲン化ベンジル誘導体又はペンタハロゲン化ベンゾイル誘導体としては、例えば、次のものを挙げることができる。
エストロン 3−ペンタフルオロベンジルエーテル、
エストロン 3−ペンタフルオロベンゾイルエステル、
2−メトキシエストロン 3−ペンタフルオロベンジルエーテル、
4−メトキシエストロン 3−ペンタフルオロベンジルエーテル、
2−ヒドロキシエストロン 2,3−ジペンタフルオロベンジルエーテル、
4−ヒドロキシエストロン 3,4−ジペンタフルオロベンジルエーテル
16α−ハイドロキシエストロン3−ペンタフルオロベンジルエーテル、
エストラジオール 3−ペンタフルオロベンジルエーテル、
エストラジオール 3−ペンタフルオロベンゾイルエステル、
2−メトキシエストラジオール3−ペンタフルオロベンジルエーテル、
4−メトキシエストラジオール3−ペンタフルオロベンジルエーテル等。
【0035】
以上のように、エストロゲンをペンタハロゲン化ベンジル誘導体又はペンタハロゲン化ベンゾイル誘導体化した後、一般的な順相カラム、例えば、ジーエルサイセンス社製InertSepSI (登録商標)、ウォーターズ社製Sep−Pak (登録商標) シリカカートリッジ等を用いて、エストラジオール類の該誘導体とエストロン類の該誘導体を分離することも必要に応じて行うことができる。
【0036】
4.1−低級アルキルピリジニウムヒドラゾンの調製
上記の方法により調製したエストロン類のペンタハロゲン化ベンジル誘導体又はペンタハロゲン化ベンゾイル誘導体は、アセトニトリル等の不活性溶媒に溶解した後、トリフルオロ酢酸等の酸性下で、1−低級アルキルピリジニウムヒドラゾンへと変換することができる。
【0037】
この反応は、−10℃乃至60℃の範囲内の温度で行うことができ、好ましくは15℃乃至40℃の範囲内の温度が適している。また、反応溶媒としては、一般的な不活性有機溶媒、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0038】
また、エストロン類のペンタハロゲン化ベンジル誘導体又はペンタハロゲン化ベンゾイル誘導体に対するヒドラジノ−1−低級アルキルピリジンの使用割合は、特に制限されるものではないが、一般に、試料1ngに対して0.1 μg乃至500 μgとすることができ、好ましくは、1μg乃至50 μgが適している。
【0039】
上記4.の方法により調製される1−低級アルキルピリジニウムヒドラゾンとしては、例えば、次のものを挙げることができる。
3−ペンタフルオロベンジルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン17−(1’−メチルピリジニウム−2’)−ヒドラゾン、
3−ペンタフルオロベンゾイルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン17−(1’−メチルピリジニウム−2’)−ヒドラゾン、
16α−ヒドロキシ−3−ペンタフルオロベンジルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン17−(1’−メチルピリジニウム−2’)−ヒドラゾン、
16α−ヒドロキシ−3−ペンタフルオロエンゾイルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン17−(1’−メチルピリジニウム−2’)−ヒドラゾン、
2−メトキシ−3−ペンタフルオロベンジルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン17−(1’−メチルピリジニウム−2’)−ヒドラゾン、
4−メトキシ−3−ペンタフルオロベンジルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン17−(1’−メチルピリジニウム−2’)−ヒドラゾン、
2,3−ジペンタフルオロベンジルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン17−(1’−メチルピリジニウム−2’)−ヒドラゾン、
3,4−ジペンタフルオロベンジルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン17−(1’−メチルピリジニウム−2’)−ヒドラゾン等。
【0040】
上記反応及びその他の本発明における反応後の夾雑物や試薬等との分離、精製には、一般的な固相抽出カラム、例えば、InertSep(登録商標) Pharma(ジーエルサイエンス)、Bond Elut (登録商標) C18 (バリアン) 等を用いることができる。
【0041】
なお、本発明の測定方法におけるLC−MS測定は、当業者に一般的な方法により行うことができる。
【0042】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0043】
3−ペンタフルオロベンジルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン17−(1’−メチルピリジニウム−2’)−ヒドラゾンの合成
1−1.2−ヒドラジノ−1−メチルピリジンの調製
80%ヒドラジン水和物溶液132 μLを加えたアセトニトリル30mLと、2−フルオロ−1−メチルピリジニウム p−トルエンスルホン酸塩300 mgを加えたアセトニトリル6mLを0℃で混合し、10分間撹拌した後、室温で20分間窒素下に置いた。その反応液を濃縮し、残渣をアセトニトリル2mLで再溶解し、濾過した。濾液より得られる粗生成物をアセトニトリル−酢酸エチル(5:1)で二回再結晶し、2−ヒドラジノ−1−メチルピリジンを得た。
【0044】
1−2.エストロン 3−ペンタフルオロベンジルエーテルの合成
エストロン276 mgをアセトニトリル15mLに溶解し、ペンタフルオロベンジルブロマイドを361 mg、無水炭酸カリウム0.6 gを添加し、53℃で1時間撹拌した。反応後、濾紙で濾過し、濾液を濃縮し、残渣をクロロホルム60mLに注ぎ、水洗した。有機層を分取して溶媒を留去後、メタノールから再結晶し、エストロン3−ペンタフルオロベンジルエーテル185 mgを得た。
【0045】
1−3.3−ペンタフルオロベンジルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン17−(1’−メチルピリジニウム−2’)−ヒドラゾンの合成
上記1−2で得られたエストロン 3−ペンタフルオロベンジルエーテル50mg及び2−ヒドラジノ−1−メチルピリジン30 mgをトルエン1.5 mLに加えた後、1%トリフルオロ酢酸を13μL加え、60℃で2時間撹拌した。反応後、溶媒を減圧下で留去し、油状物をプレパラティブ薄層クロマトグラフィーにより、クロロホルム−メタノール−トリエチルアミン(20:1:0.05)で分離、酢酸エチル−メタノール (2:1) 混液で溶出した。溶媒を除去後、メタノールから再結晶し、3−ペンタフルオロベンジルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン17−(1’−メチルピリジニウム−2’)−ヒドラゾン(E−PFBZHMP)を、27 mg得た。
得られたE−PFBZHMPの高分解能質量分析(High−resolutionMass Spectrometry: HR−MS)、融点及び核磁気共鳴(NuclearMagnetic Resonance :NMR)データを下記表1に示す。
【表1】

表1. E−PFBZHMPのHR−MS、融点及びNMRデータ
【実施例2】
【0046】
エストロン及びエストラジオールの同時定量の再現性
2−1.検量線作成及びQC試料の作製
検量線試料として、エストロン及びエストラジオールのメタノール溶液 (それぞれ、0.25、0.5、1、10、100、500 pg/50μL、0.1、0.25、1、10、100、500 pg/50 μL) を50 μL添加し、精製水で1 mLにした。QC (QualityControl) 試料として、活性炭処理血清0.25 mLにエストロン及びエストラジオールのメタノール溶液(それぞれ、0.25、0.5、10、500 pg/50 μL、0.1 、0.25、10、500 pg/50μL) を50 μL添加し、精製水で1mLにした。次いで、内標準 (エストロン−13及びエストラジオール−13各100 pg/50μL) 、ジエチルエーテル5mLを加え、10分間振とう後、水層を凍結分離し、得られた溶媒を留去した。
【0047】
2−2.エストロン 3−ペンタフルオロベンジルエーテル及びエストラジオール 3−ペンタフルオロベンジルエーテルの調製
前項2−1で得た残留物に2.5%ペンタフルオロベンジルブロマイドのアセトニトリル溶液を100 μL及び0.8%水酸化カリウム/エタノール溶液50 μLを加えて、53℃で1時間加温した。反応後、反応試薬を加温しながら窒素ガスで留去した後、精製水0.75mLを加え、ジエチルエーテル4 mLで抽出し、溶媒を留去した。
【0048】
2−3.エストロン 3−ペンタフルオロベンジルエーテル及びエストラジオール 3−ペンタフルオロベンジルエーテルの分離
前項2−2で得られた残留物に酢酸エチル0.1 mL及びヘキサン1mLを加えて溶解し、あらかじめ酢酸エチル3 mLとヘキサン3 mLでコンディショニングしたInertSepSIカートリッジへ負荷した。カラムをヘキサン1 mL、酢酸エチル−ヘキサン (3:17)1 mLで順次洗浄した後、酢酸エチル−ヘキサン(3:17) 3.5mLでエストロン 3−ペンタフルオロベンジルエーテルを溶出した。次いで、酢酸エチル−ヘキサン (1:1) 3 mLでエストラジオール 3−ペンタフルオロベンジルエーテルを溶出した。それぞれの溶媒を減圧下で留去した。
【0049】
2−4.17β−(1’−メチルピリジニウム−2’)−オキシ−3−ペンタフルオロベンジルオキシエストラ−1,3,5(10) −トリエンの調製
前項2−3で得たエストラジオール 3−ペンタフルオロベンジルエーテルを含む残留物に、2%2−フルオロ−1−メチルピリジニウム p−トルエンスルホナート/ジクロロメタン溶液を200 μL、次いで、トリエチルアミン−ジクロロメタン(1:9) を30μL加え、室温で1.5時間放置した。反応後、溶媒を窒素下で留去した後、メタノール0.5mLで残留物を溶解し、精製水0.5 mLで希釈した後、あらかじめメタノール6 mL、精製水6mLでコンディショニングしたBond Elut C18カートリッジへ負荷した。カラムを精製水1mL、0.3%アンモニア4 mL、メタノール3 mL、0.1%ギ酸−メタノール(1:1) 3mLで洗浄した後、10%ギ酸−アセトニトリル (1:9) 3 mLで17β−(1’−メチルピリジニウム−2’)−オキシ−3−ペンタフルオロベンジルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン(E−PFBZPY)を溶出した。次いで溶媒を減圧下で留去した。
【0050】
2−5.E−PFBZHMPの調製
前項2−3で得られたエストロン 3−ペンタフルオロベンジルエーテルを含む残留物に上記1−1で得た、2−ヒドラジノ−1−メチルピリジン1mgを1%トリフルオロ酢酸−アセトニトリル (1:1400)で溶解したものを140 μL加え、室温で1時間放置した。反応後、反応液にアセトンを50μL加え、溶媒を減圧下で留去した。その残留物をメタノール0.5mLで溶解した後、精製水0.5 mLで希釈し、あらかじめ酢酸エチル3 mL、メタノール6mL、精製水6 mLでコンディショニングしたInertSepPharmaへ負荷した。次いで、精製水1 mL、0.3%アンモニア2 mL、アセトニトリル−精製水(2:3) 3mLで洗浄した後、E−PFBZHMPを酢酸エチル−アセトニトリル−0.05%ギ酸(40:9:1) 3 mLで溶出した。溶媒を減圧下で留去した後、その残留物に0.3%アンモニア0.5mLを加え、酢酸エチル3 mLで抽出し、減圧下で溶媒を留去した。前項1−4で得られた、E−PFBZPYをアセトニトリル−メタノール−0.1%ギ酸(7:7:6) 115μLに溶解し、さらに、その溶液でE−PFBZHMPを溶解した。
【0051】
2−6.LC−MS/MSによる測定
前項2−5で得られた溶液のうち、20 μLを測定に使用した。LC−MS/MSは、液体クロマトグラフ(島津製作所、Prominence) に接続した質料分析計 (ABSciex、API 5000) を用い、正イオン検出ESIで測定した。測定条件を下記表2に示す。
【表2】

エストロンの検量線は、0.25〜 500pgの範囲において、エストラジオールの検量線は、0.1 〜 500 pgの範囲において、各々相関係数0.999以上と良好な直線性を示した。また、再現性試験結果を下記表3及び表4に示す。
【表3】

【表4】

エストロン及びエストラジオールのいずれも、同時並びに日差再現性ともに真度が80〜 120%並びに精度が20%以内と良好な再現性が得られた。
【実施例3】
【0052】
ヒト血清中のエストロン及びエストラジオールの同時定量
3−1.ヒト血清試料の調製
ヒト血液から得た血清試料0.25 mLに内標準(エストロン−13及びエストラジオール−13各100 pg/50μL) を加え、精製水で1mLにした後にジエチルエーテル5 mLを加え、10分間振とう後、水層を凍結分離し、得られた溶媒を留去した。以下、検量線は上記2−1と同様にして作成し、その他は上記2−2〜 2−6と同様に操作してE−PFBZHMPとE−PFBZPYを定量した。結果を下記表5に示す。
【表5】

【実施例4】
【0053】
ヒト組織中エストロン及びエストラジオール濃度の同時定量
4−1.ヒト組織試料の調製
重量測定した組織を液体窒素中で粉砕した後、精製水1 mLを加えてウルトラターラックスでホモジネートした。内標準(エストロン−13及びエストラジオール−13各100 pg/50μL) 及び3倍量のエタノールを個別のホモジネートした組織へ加えて、50℃で2時間振とうした。その後、冷所で2時間放置した後、4℃、3000rpm、10分間遠心分離した。得られた上清の溶媒を減圧下で留去した。残渣をメタノール0.25mLで溶解後、精製水1 mLで希釈し、あらかじめメタノール6 mL、精製水6mLでコンディショニングしたBond Elut C18カートリッジカラムへ負荷した。精製水1 mL、アセトニトリル−精製水 (3:7)で順次洗浄後、アセトニトリル−精製水 (4:1) でエストロン及びエストラジオールを溶出し、溶媒を減圧下で留去した。得られた残渣をメタノール−精製水(1:4) 1mLで溶解し、あらかじめ、メタノール6 mL、精製水3 mL、0.1 M水酸化ナトリウム溶液2 mL、精製水4 mLでコンディショニングしたOasisMAX カートリッジカラムへ負荷した。メタノール−精製水(1:1) 3mL、メタノール 3 mLで洗浄後、アセトニトリル−精製水(4:1) でエストロゲンを溶出し、溶媒を減圧下で留去した。その後、検量線は上記2−1と同様にして作成し、その他は上記2−2〜 2−6と同様に操作してE−PFBZHMPとE−PFBZPYを定量した。下記表6に結果を示す。
【表6】

【実施例5】
【0054】
ヒト唾液中エストロン及びエストラジオールの同時定量
5−1.ヒト唾液試料の調製
ヒトから採取した唾液試料2 mLに内標準(エストロン−13及びエストラジオール−13各100 pg/50μL) を加え、ジエチルエーテル5mLを加え、10分間振とう後、4℃、3000 rpm、5分間遠心分離した。水層を凍結分離し、得られた溶媒を留去した。その後、検量線は上記2−1と同様にして作成し、その他は上記2−2〜 2−6と同様に操作してE−PFBZHMPとE−PFBZPYを定量した。その結果を下記表7に示す。
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の測定方法によれば、試料中のエストロゲン、特にエストロン類の有無の検出、及びその量の微量測定ができる。本発明は、例えば、医学、薬学、生化学、公衆衛生、食品検査等の分野で利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)(式中、Rは低級アルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、YはCH又はCOを表す。)
で示される化合物。
【化1】

【請求項2】
試料中エストロン類のLC−MSによる測定法であって、
1) 試料からステロイドを抽出する工程、
2) 上記1)で得られた抽出物に対して下記式(2)
【化2】

(式中、Xはハロゲン原子を表し、YはCH又はCOを表し、Lは脱離基を表す。)
で示されるペンタハロゲン化ベンジル化合物又はペンタハロゲン化ベンゾイル化合物をアルカリ条件下で反応させる工程、
3) 上記2)で得られた反応物に含まれるエストロン類のペンタハロゲン化ベンジル誘導体又はペンタハロゲン化ベンゾイル誘導体にヒドラジノ−1−低級アルキルピリジンを酸性条件下で反応させる工程、及び
4) 上記3)で得られた反応物に含まれるエストロン類のペンタハロゲン化ベンジル−又はペンタハロゲン化ベンゾイル−1−低級アルキルピリジニウムヒドラゾンをLC−MSで測定する工程、
を含むことを特徴とする、測定方法。
【請求項3】
以下の工程:
1) ペンタハロゲン化ベンジル化合物又はペンタハロゲン化ベンゾイル化合物をアルカリ条件下で反応させた後、順相カラムを用いてエストラジオール類のペンタハロゲン化ベンジル又はペンタハロゲン化ベンゾイル誘導体とエストロン類のペンタハロゲン化ベンジル又はペンタハロゲン化ベンゾイル誘導体を分離する工程、
2) 上記1)で得られたエストラジオール類のペンタハロゲン化ベンジル又はペンタハロゲン化ベンゾイル誘導体にハロゲノ−1−低級アルキルピリジンを反応させる工程、及び
3) エストロン類のペンタハロゲン化ベンジル−又はペンタハロゲン化ベンゾイル−1−低級アルキルピリジニウムヒドラゾンをLC−MSで測定する際に、上記2)で得られたエストラジオール類のペンタハロゲン化ベンジル−又はペンタハロゲン化ベンゾイル−1−低級アルキルピリジニウム誘導体を合わせて同時に測定する工程、
を更に含む、請求項2に記載の測定方法。
【請求項4】
固相抽出カラムを用いて試料から中性ステロイドを除去する工程を更に含む、請求項2又は3に記載の測定方法。
【請求項5】
ヒドラジノ−1−低級アルキルピリジンが2−ヒドラジノ−1−低級アルキルピリジンである、請求項2〜4に記載の測定方法。
【請求項6】
LC−MS測定において、イオン化が正イオン検出エレクトロスプレーイオン化で行われる請求項2〜5に記載の測定方法。
【請求項7】
試料が、ヒトを含む動物の血液、唾液、尿、組織及び生体細胞又は廃水、河川水又は医薬品からなる群より選択される、請求項2〜4に記載の測定方法。

【公開番号】特開2011−174710(P2011−174710A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36810(P2010−36810)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 第34回日本医用マススペクトル学会年会 2009年9月10日
【出願人】(504125458)株式会社あすか製薬メディカル (6)
【Fターム(参考)】