説明

エゾウコギ抽出物を用いた高血糖値改善作用を有する飲食品

【課題】 エゾウコギ植物体に含有される各種成分を把握すると共に、血中の高血糖値の改善作用を有する成分のみを抽出し、該抽出成分を含有する高血糖値改善作用を有する飲食品を提供する。
【解決手段】 エゾウコギ(Acanthopanax senticosus Harms)の植物体の熱水又は含酸素有機溶媒による抽出物であって、該抽出物中の疎水性成分を除去した親水性成分からなる抽出物を主成分として含有してなることを特徴とする血中の高血糖値を改善する作用を有する飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病による高血糖を改善する機能を有する経口組成物及び飲食品及びその主成分の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、エゾウコギ(Acanthopanax senticosus Harms)の植物体及び同作用を有する成分を含有する同属、亜種、変種を含む抽出物を主成分とする血中の高血糖値の改善作用を有する健康食品、機能性食品、特定保健用食品、又は病者用食品等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
わが国における糖尿病は、生活習慣と社会環境の変化に伴って増加している。平成14年の厚生労働省の調査により、「糖尿病が強く疑われる人」と「糖尿病の可能性を否定できない人」の人口は約1,620万人と推計されている。糖尿病は、放置すると合併症(網膜症・腎症・神経障害など)を引き起こす。これら合併症により、失明したり透析治療が必要となることがあり、医療経済的にも大きな負担を社会に強いている状況にある。
【0003】
こうした状況のなか、平成12年3月には、国による国民健康づくり対策「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」が実施され、この中で取り組むべき健康課題の一つとして糖尿病が取り上げられている。
【0004】
かかる状況下において、多種の糖尿病治療薬が提案されているが、これらの糖尿病治療薬は、副作用の強いものが多く、効果が疑問視されるものも多い。
【0005】
糖尿病は生活環境や遺伝的要因によりインスリンの分泌量や働きが低下し、細胞がインスリン抵抗性となり血液中に糖が留まる病気である。糖尿病の治療薬はアルカボース等、糖の消化・吸収に関係する酵素の働きを阻害して、腸からの糖の吸収を抑える薬と、スルホニル尿素剤等のインスリンの分泌を促進させる薬がある。しかし、これら治療薬は低血糖や疲弊した膵臓に負担をかけるといった副作用がある為、安易に使用できない。そこで、抹消組織でのインスリンの感受性を増加させ、インスリン抵抗性を改善する働きが着目されるに至った。
【0006】
血中の血糖値の上昇を抑える食品として難消化性デキストリンやグァバ葉ポリフェノール等が挙げられる。これらは腸における糖の吸収を穏やかにし、食後の急激な血糖値の上昇を抑制するが、インスリン抵抗性の改善作用は見られない。
【0007】
かかる事情のものに、インスリン抵抗性解除剤として、例えば、抗酸化性ビタミンE,C及び天然カロテノイドを強化した食用人参ジュースにシベリア人参(エゾウコギ)エキスを配合した飲料が提案されている(先行技術1(特許文献1:特開2000-247898公報))。
【0008】
また、エゾウコギの抗糖尿病効果については(株)バイオス医科学研究所の研究グループによればエゾウコギの抽出エキスにα−グルコシダーゼの活性を阻害する働きがあり血糖値の急激な上昇を抑制する効果と、インスリン抵抗性の改善がある事を示唆している(先行技術2(第22回和漢医薬学会大会H17.8-20-21/p.90))。
【0009】
さらに、先行技術3(特許文献3:特開2004−115421号公報)によれば、エゾウコギの植物体を塩類及びアルコールとからなる抽出溶媒と抽出条件下において接触させ、前記抽出工程にて得られた抗糖尿病成分を含有する抽出溶液からクロマトグラフィーにより抗糖尿病成分を分画し、前記分画工程にて得られた抗糖尿病成分含有画分を収得することからなる抗糖尿病成分の抽出分離方法、並びに抽出分離方法により得られるインスリン抵抗性解除成分画分が開示されている。
【0010】
前記の各種先行技術による開発内容によれば、エゾウコギの抽出物にα−グルコシダーゼの活性を阻害する作用とインスリン抵抗性の改善作用があり、糖尿病の治療と改善に効果があることが開示されているが、有効成分については特定されておらず、エゾウコギ中に含まれている微量成分の個々の働きもあまり知られていない。また、血糖値降下に対する効果も未だ十分ではないことなどから、さらに血糖値改善効果の高い抽出成分が切望されてきた。
【特許文献1】特開2000−247898号公報
【特許文献2】特開2004−115421号公報
【非特許文献1】第22回和漢医薬学会要旨集第90頁(平成17年8月20日−21日開催)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の課題は、前記の如き開発状況に鑑み、エゾウコギ植物体に含有される各種成分を把握すると共に、高血糖値改善作用を有する成分のみを抽出し、該抽出成分を含有する高血糖値改善作用を有する飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するため、エゾウコギの抽出物にα−グルコシダーゼの活性に対する阻害作用とインスリン抵抗性に対する改善作用がある点に着目し、鋭意検討を重ねたところ、エゾウコギの抽出物に含有される糖尿病の治療と改善に有効な成分が親水性成分である事実を見出し、同時に疎水性成分に親水性成分の作用とは逆に血糖値を上げる成分も含有されていることを本発明者らによって初めて見出し、かかる知見に基いて本発明の完成に到達した。
【0013】
かくして、本発明によれば、
エゾウコギ(Acanthopanax senticosus Harms)の植物体の熱水又は含酸素有機溶媒による抽出物であって、該抽出物中の疎水性成分を除去した親水性成分からなる抽出物を主成分として含有してなることを特徴とする血中の高血糖値の改善作用を有する飲食品
が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、
1)エゾウコギの植物体を熱水又は含酸素有機溶媒からなる抽出溶媒と抽出条件下におい
て接触させる工程、
2)前記工程にて得られた抽出物を含有する抽出溶液から前記含酸素有機溶媒を除去する
工程、
3)前記工程にて得られる残渣物を充填剤が疎水性担体である液体クロマトグラフィー又
は高速液体クロマトグラフィーに供し、疎水性成分を吸着除去し、水で親水性成分を
溶出させる工程、
4)前記分画工程にて得られた親水性成分含有画分を取得する工程
とからなることを特徴とする血中の高血糖値の改善作用(以下、「高血糖値改善作用」という。)を有する飲食品主成分の製造方法
が提供される。
【0015】
本発明は、前記の通り、エゾウコギの含酸素有機溶媒による抽出物中から疎水性成分を除去することにより得られた親水性成分からなる抽出物を主成分とする高血糖値改善作用を有する飲食品及びエゾウコギの植物体の含酸素有機溶媒による抽出処理及び該抽出物中のクロマトグラフィーによる親水性成分を分画工程を含む高血糖値改善作用を有する飲食品の製造方法を提供するものであるが、好ましい実施の態様として次の1)〜11)に掲げるものを包含する。
【0016】
1)前記親水性成分が、前記抽出物から疎水性担体を充填剤とする液体クロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィーにより水を展開溶媒として溶出される溶出画分である前記高血糖値改善作用を有する飲食品。
2)前記含酸素有機溶媒がアルコール類である前記高血糖値改善作用を有する飲食品。
3)前記親水性成分含有抽出物の有する作用が、2型糖尿病改善にある前記高血糖値改善作用を有する飲食品。
4)前記親水性成分含有抽出物の有する作用が、インスリン抵抗性改善にある前記高血糖値改善作用を有する飲食品。
5)前記親水性成分含有抽出物の作用が、α-グルコシダーゼの活性の阻害による腸管などからの糖類の吸収の抑制にある前記高血糖値改善作用を有する飲食品。
6)前記食品の形態が、ソフトカプセル、ペースト状、粉末状、顆粒状、ハードカプセル又は液状のいずれである前記高血糖値改善作用を有する飲食品。
7)前記食品の用途が、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、又は病者用食品である前記高血糖値改善作用を有する飲食品。
8)エゾウコギの抽出対象の植物体が、根、根茎又は茎である前記高血糖値改善作用を有する飲食品。
9)エゾウコギのアルコール抽出物中の親水性成分が、
(i) 前記アルコール抽出物から該アルコールを除去することにより得られる残留成分
を回収し;
(ii)前記残留成分を濾過分離することにより得られる濾液から疎水性成分を除去した
残成分
である前記高血糖値改善作用を有する飲食品。
10)前記液体クロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィーで用いられるカラム充填剤である疎水性担体が、架橋スチレン系多孔質重合体である前記高血糖値改善作用を有する飲食品。
11)(a)前記エゾウコギ親水性成分含有抽出物と(b)イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクチュロース、ラフィノース、ガラクトマンナン、寒天由来の食物繊維、グアーガム分解物、小麦ふすま、ビール酵母由来の食物繊維、ポリデキストロース、L−アラビノース、グァバ葉ポリフェノール、小麦アルブミン、豆鼓エキス、難消化性デキストリンからなる群より選択される少なくとも一種の飲食品原料とからなる前記高血糖値改善作用を有する飲食品。
【発明の効果】
【0017】
エゾウコギからの糖尿病の治療と改善に効果を奏する有効な成分が親水性成分であることが明らかとなったので、糖尿病の治療効果の高いエゾウコギ抽出物を含有する飲食品を提供することが可能となった。特に、前記親水性成分含有画分は、インスリン抵抗性解除作用を有するものであり、疎水性成分を除くことにより、エゾウコギ抽出物の各成分に比較して、高血糖値改善作用において一層著しく顕著な効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係る高血糖値改善作用を有する飲食品の主成分の抽出用原料として用いられるエゾウコギ(Acanthopanax senticosus Harms)は、別名シベリア人参と称され、朝鮮人参と同様にウコギ科(Arallacae)に属する植物であり、北海道東部、ロシアおよび韓国等には自生しているが、現在では、さらに栽培・増殖方法が検討され、また、実施もされている。
【0019】
エゾウコギに含有されている前記親水性成分の分離にはエゾウコギの植物体、特に、茎又は根の部位が主として用いられる。また、かかる植物体は、採取した生の状態のもの、又は乾燥したもの、さらには蒸焼に供したもの等のいずれの処理によるものでもよいが、乾燥処理したものが抽出処理にとって抽出効率が高く、また取扱い上も簡便で好ましい。
【0020】
本発明に係る高血糖値改善作用を有する飲食品の主成分は、エゾウコギ抽出物から疎水性成分を除去した親水性成分からなる抽出物である。
具体的には、かかる親水性成分は、
1)エゾウコギの植物体を熱水又は含酸素有機溶媒と接触させる工程と、
2)前記工程にて得られる抽出物を濾過する工程と、
3)前記工程にて得られる含酸素有機溶媒含有抽出物(エゾウコギエキス)を有機溶媒除去工程に供し、含酸素有機溶媒を除去する工程と、
4)前記工程にて得られる疎水性成分を含有する液状沈殿物を濾過する工程と、
5)前記工程にて濾液として得られる抽出液(エゾウコギ水溶性エキス)を疎水性担体を充填剤とする液体クロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィーに供し、疎水性成分を吸着除去し、水を展開溶媒として親水性成分を溶出する工程と、
6)前記工程にて得られる親水性成分(エゾウコギ親水性エキス)を回収する工程と
からなる各工程を経て製造することができる。
【0021】
前記エゾウコギ水溶性エキスは、高血糖値改善効果が高いが、さらに、前記エゾウコギ水溶性エキスを、充填剤として疎水性担体を用いるカラムクロマトグラフィーに供し、疎水性成分を吸着除去し、親水性成分は水を展開溶媒として使用し、溶出させることにより分画された親水性エキスはインスリン抵抗性の改善効果が著しく顕著である。
【0022】
前記工程1)のエゾウコギ植物体の熱水又は含酸素有機溶媒による抽出処理は、抽出容器内にエゾウコギの茎、根等を採取し、熱水又は含酸素有機溶媒を添加し、抽出条件下においてミキサーを撹拌し、該植物体の粉砕処理を行なうと共に、含有成分の抽出を行なう。
【0023】
抽出溶媒の含酸素有機溶媒としてはアルコール類が好適であり、具体的には脂肪族アルコール、特に低級アルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等からなる群より選択される少なくとも一種のアルコールを挙げることができるが、抽出効率の観点からはエタノールが好ましい。
【0024】
エゾウコギの植物体に対する抽出溶媒の添加量については、特に限定されるものではなく、植物体が十分浸漬される量であれば、任意に決定することができるが、通常、植物体に対し、重量基準で1〜5倍の割合が好適である。
また、抽出条件としては、環境温度・圧力にて十分な抽出効率を得ることができる。
【0025】
かかる抽出処理により、得られる抽出物(エゾウコギエキス)は、必要な精製処理に供し、植物体その他の破砕物等を除去する。精製処理の方法として濾過静置又は遠心分離等の方法を採用することができる。
【0026】
次に、精製された抽出物を含有する抽出溶液は溶媒除去工程に供され、抽出に使用された溶媒が除去される。溶媒除去方法としては、蒸発、蒸留等の方法を採用することができる。例えば、エバポレーター等を任意に選択し使用することができる。
【0027】
前記抽出溶液から溶媒を除去した後、残渣物として得られる疎水性成分を濾過し、親水性成分を含有する抽出エキス(エゾウコギ水溶性エキス)を得ることができる。
【0028】
前記含酸素有機溶媒が水を含有する場合又は水溶液である場合、溶媒除去により大部分の水は残渣中に残存する。
【0029】
疎水性成分は、有機溶媒に可溶性の極性を分子の一部に有する化合物であり、一方、親水性成分は、水溶性の化合物であるが、本明細書において、「親水性成分」とは、後述の実施例にて示すように疎水性担体をカラム充填剤とするカラムクロマトグラフィーにおいて、水を展開溶媒として用い、充填剤に吸着された化合物のうち溶出された化合物である。
【0030】
前記カラムクロマトグラフィーにおいて用いられるカラム充填剤としての疎水性担体としては、芳香族系、置換芳香族系、又はアクリル系の化学構造を有する多孔性合成吸着剤を使用することができる。
【0031】
芳香族系吸着剤としては、繰り返し単位、
【化1】

【0032】
を有する架橋スチレン系多孔質重合体を、また、置換芳香族吸着剤として、該芳香族重合体の芳香核に臭素原子が結合したものを挙げることができる。市販品としては、例えば、三菱化学社製DIAION(TM) HPシリーズ、SEPABEDAS(TM) SPシリーズ等を選択して使用することができる。カラム充填剤の形態は特に限定されるものではないが、通常、粒状体のものが好ましく、粒度分布として粒径>250μmの粒子が90%以上含有するものを採用することができる。
また、細孔容積1.3ml/g以上、比表面積600m2 /g以上の多孔性吸着剤が好ましい。
【0033】
本発明において抽出物中の親水性成分の分画に用いられるクロマトグラフィーとしては、操作上の形式は任意に選択することができるが、カラムクロマトグラフィーが好適であり、具体的には液体クロマトグラフィー又は高度液体クロマトグラフィー(HPLC)を採用することができる。
【0034】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いる場合の分画条件としては、温度20〜25℃、圧力10〜15kg/cm2 および流通速度0.2〜0.5ml/分の範囲が好ましく、これらの条件は任意に選択することができる。
前記カラムクロマトグラフィーにおいて、カラム内の充填剤に保持された親水性成分の溶出に用いられる展開溶媒としては、通常、水が用いられる。
【0035】
前記分画処理により得られた親水性成分含有画分は、必要に応じ濃縮処理に供され、水分が除去される。濃縮処理には、例えばエバポレーター等の蒸発手段を任意に使用することができる。また、濃縮処理により前記親水性成分画分は液体のほか粉末状または顆粒状とすることもできる。
【0036】
本発明に係る高血糖値改善作用を有する飲食品の親水性成分の投与量としては、0.75mg/体重kg/日から1,000mg/体重kg/日の範囲が好適であり、広範囲にわたり顕著な効果を発揮することができる。
【0037】
前記親水性成分含有画分には、ビタミン類、甘味料および栄養補助剤を配合することによりインスリン抵抗性解除に効果を有する飲食品を提供することができる。特に、糖尿病患者に提供する糖尿病食又は飲料の材料として有用である。前記ビタミン類としてはビタミンA、CおよびビタミンE等を、また、甘味料および栄養補助剤としては通常使用されているものを選択して用いることができる。また、さらに、賦形剤を配合し、例えば錠剤状の成形物を提供することもできる。
【0038】
また、糖尿病の改善及び治療や血糖値の急激な上昇を抑える飲食品として、他の血糖値の上昇を抑える機能を有する飲食品原料例えば、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクチュロース、ラフィノース、ガラクトマンナン、寒天由来の食物繊維、グアーガム分解物、小麦ふすま、ビール酵母由来の食物繊維、ポリデキストロース、L−アラビノース、グァバ葉ポリフェノール、小麦アルブミン、豆鼓エキス、難消化性デキストリンを含む健康食品、機能性食品、特定保健用食品、または病者用食品の提供できる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について実施例により具体的に説明する。もっとも、本発明は、これらの実施例等により限定されるものではない。
なお、血糖値その他の評価方法については次の測定方法を採用した。
血糖値の測定方法
血糖値の測定にはアベンティスファーマ社のグルコカードダイアメータαを用いた。
【0040】
実施例1
エゾウコギ成分を6%含有する下記組成の商品名「エレウテロコック流エキス」(注)(イスクラ産業社輸入)を用意し、これをロータリーエバポレーターで減圧濃縮しエタノールを除き、疎水性成分として沈殿物を得た。沈殿物を濾紙を用いて濾過して除き、濾液としてエゾウコギ水溶性エキスを得た。
【0041】
(注)
エレウテロコック流エキス
成分 含有量
水分 約59%
エタノール 約35%
エゾウコギ成分 6%
【0042】
(薬効評価)
2型糖尿病モデルマウスKK−Ay/Ta Jcl(以下、「KK−Ayマウス」という。)4週齢オス(日本クレア社)を1週間飼育して環境に慣らした。
【0043】
各群を次の1)〜4)の4群;
1)水を投与した群(第1群、n=6)、
2)14%エタノールを投与した群(第2群、n=3)、
3)40%エゾウコギエキス(14%エタノール含む)を投与した群(第3群、n=5)、
4)40%エゾウコギエキスと同量となるように調製した
エゾウコギ水溶性エキスを投与した群(第4群、n=5)
に分け、それぞれ1ヶ月間投与した。投与2週間後、3週間後及び4週間後にそれぞれ尾静脈より採血し、血糖値を測定した。
測定結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示す結果から、第1群と第2群で血糖値の差に有意さが認められないことから14%エタノールによる血糖値の影響は無い事が分かった。
第3群では第1群と比較し、有意な血糖値の降下作用が認められた。エゾウコギエキスに血糖値の降下作用があり、糖尿病の改善に優れた効果があることが確認された。
【0046】
さらに、第4群と第3群を比較すると、第4群は第3群よりも血糖値の降下作用がさらに強まり、4週間後の血糖値は第3群と比較しても有意に降下している。つまり、エゾウコギに含まれる成分から疎水性成分を除くことにより糖尿病の改善効果が著しく顕著であることが判明した。
【0047】
実施例2
すでに糖尿病を発症して高血糖状態になった10〜13週齢のKK−Ayマウスオスを各群4〜5匹の5群に分けて表2に示す溶液を飲水に混合してそれぞれ投与した。投与開始1週間前の平均飲水量から、1日の投与量が表2となるように調製して1週間投与した。投与後、一晩絶食させてから糖負荷試験を行ない血糖値の推移を調べた。各群、1日の投与量となるように調製した溶液をゾンデで単回、経口投与した。マルトース投与前(0分)及び投与後30、60、90、120分後に尾静脈より採血し、血糖値を測定した。測定結果を表3及び図1に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
表3及び図1に示す結果から、第2群では第1群と比較し、マルトース負荷後30分の血糖値の上昇が優位に抑制された。
実施例1のエゾウコギ水溶性エキスにおける血糖値の降下作用が糖負荷試験においても認められた。
【0051】
第2群と第3群を比較すると同等の血糖値の降下作用が見られたことから、エゾウコギ水溶性エキス2〜1,000mg/体重kgで十分に糖尿病の改善作用が認められた。
【0052】
第4群と第1群を比較すると、60分後以後の血糖値の下降が遅く、高血糖の状態が続いていることから、エゾウコギエキスの疎水成分中に血糖値の降下を阻害する作用があることが分かった。
【0053】
第5群では第3群と比較し、30分後の血糖値の上昇は同等であるが、30分から60分にかけての血糖値の降下率が高くなっている。血液中に吸収された糖がエゾウコギ水溶性エキスに含まれる疎水性成分を除いたことから、インスリン抵抗性の改善効果が高まり、細胞の糖の取り込みが盛んに行なわれていることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】表2の第1群〜第5群の糖負荷試験における血糖値の推移を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エゾウコギ(Acanthopanax senticosus Harms)の植物体の熱水又は含酸素有機溶媒による抽出物であって、該抽出物中の疎水性成分を除去した親水性成分からなる抽出物を主成分として含有してなることを特徴とする血中の高血糖値の改善作用を有する飲食品。
【請求項2】
前記親水性成分が、前記抽出物から疎水性担体を充填剤とする液体クロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィーにより水を展開溶媒として溶出される溶出画分である請求項1に記載の血中の高血糖値の改善作用を有する飲食品。
【請求項3】
前記含酸素有機溶媒がアルコール類である請求項1又は2に記載の血中の高血糖値の改善作用を有する飲食品。
【請求項4】
前記親水性成分含有抽出物の有する作用が、2型糖尿病改善にある請求項1又は2に記載の血中の高血糖値の改善作用を有する飲食品。
【請求項5】
前記親水性成分含有抽出物の有する作用が、インスリン抵抗性改善にある請求項1又は2に記載の血中の高血糖値の改善作用を有する飲食品。
【請求項6】
前記親水性成分含有抽出物の作用が、α-グルコシダーゼの活性の阻害による腸管などからの糖類の吸収の抑制にある請求項1又は2に記載の血中の高血糖値の改善作用を有する飲食品。
【請求項7】
前記食品の形態が、ソフトカプセル、ペースト状、粉末状、顆粒状、ハードカプセル又は液状のいずれである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の血中の高血糖値の改善作用を有する飲食品。
【請求項8】
前記食品の用途が、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、又は病者用食品である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の血中の高血糖値の改善作用を有する飲食品。
【請求項9】
1)エゾウコギの植物体を熱水又は含酸素有機溶媒からなる抽出溶媒と抽出条件下において接触させる工程、
2)前記工程にて得られた抽出物を含有する抽出溶液から前記含酸素有機溶媒を除去する工程、
3)前記工程にて得られた残渣物をカラム充填剤が疎水性担体である液体クロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィーに供し、疎水性成分を吸着除去し、水を展開溶媒として親水性成分を分画させる工程、
4)前記分画工程にて得られた親水性成分含有画分を取得する工程
とを少なくとも含むことを特徴とする血中の高血糖値の改善作用を有する飲食品主成分の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−228872(P2007−228872A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54213(P2006−54213)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(301000505)株式会社バイオス医科学研究所 (10)
【Fターム(参考)】