説明

エタノール無配合液体口腔用組成物

【解決手段】(A)イソプロピルメチルフェノール、
(B)プロピレングリコール及び/又はグリセリン、
(C)エチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜100モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び炭素鎖長が16〜18でエチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜40モルのポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる少なくとも一種の非イオン界面活性剤、
(D)カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギナン、ヒドロキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも一種の水溶性高分子化合物
を含有してなるエタノール無配合液体口腔用組成物。
更に、(E)トリクロサンを含有する上記エタノール無配合液体口腔用組成物。
【効果】本発明のエタノール無配合液体口腔用組成物は、歯周病原性バイオフィルムに対して優れた浸透殺菌効果を発揮し、低温及び高温での外観安定性が良好で、低刺激であり、口腔内疾患の予防、改善に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周病原性バイオフィルムに対する浸透殺菌効果を発揮し、かつ低温及び高温での外観安定性が良好で、低刺激のエタノール無配合液体口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、う蝕、歯肉炎、歯周炎及び口臭等の原因は、プラーク中の各種細菌によるものと考えられ、口腔内疾患の予防、改善に有効な手段として、プラークコントロール、即ち、口腔内細菌数を低レベルに保つことが有用であることが言われている。
【0003】
口腔内の病原性細菌数を低下させる手段としては、非イオン性殺菌剤やカチオン性殺菌剤を口腔ケア製品に配合することが有効な手段となっており、特に、口腔ケア製品に配合される殺菌剤の中でイソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤は、カチオン性殺菌剤と比較して抗菌スペクトルが広い傾向にある特徴を有することから、幾つかの口腔用組成物に配合され、上市されている。
【0004】
しかしながら、これら非イオン性殺菌剤は油溶性の化合物であり、そのままでは水にほとんど溶けないため、各種界面活性剤やエタノール等の溶剤を配合して可溶化させているが、中でも界面活性剤は、殺菌剤の活性化部位を不活性化するため、配合量が増加すると十分な殺菌力が発現されず、また、殺菌力向上のため界面活性剤の配合量を減じると低温又は高温にて経時で液が白濁し、組成物の外観安定性が損なわれるという課題があることが知られている。
【0005】
一方、可溶化溶剤として使用されるエタノールの配合は、口腔用組成物使用時のぴりぴりとした刺激感を引き起こすため、近年、エタノールを配合しないノンアルコール洗口剤の普及が進んできた。しかし、エタノール無配合の非イオン性殺菌剤を含有する液体口腔用組成物は、エタノール配合時よりも界面活性剤による可溶化力が必要となり、組成物の殺菌力と低温又は高温保存時における経時での外観安定性を両立させることはより困難であった。
【0006】
なお、これまで、イソプロピルメチルフェノールを使用することにより口腔疾患を予防させる技術では、イソプロピルメチルフェノールを低濃度POE硬化ヒマシ油で可溶化しているが(特許文献1;特開平1−305021号公報、特許文献2;特開平7−48237号公報、特許文献3;特開平10−330230号公報参照)、これら組成はいずれもエタノールを含有するため刺激性が高いといった不具合があった。
【0007】
【特許文献1】特開平01−305021号公報
【特許文献2】特開平07−048237号公報
【特許文献3】特開平10−330230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、歯周病原性バイオフィルムに対する浸透殺菌効果を発揮し、かつ低温及び高温での外観安定性が良好で、低刺激のエタノール無配合液体口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、殺菌成分としてイソプロピルメチルフェノールを含有する液体口腔用組成物に、プロピレングリコール及び/又はグリセリンと、エチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜100モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び炭素鎖長が16〜18でエチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜40モルのポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる少なくとも一種の非イオン界面活性剤とを配合し、更に、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギナン、ヒドロキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも一種の水溶性高分子化合物を併用することにより、歯周病原性バイオフィルムに対する高い浸透殺菌効果が発揮され、しかも、低温及び高温保存時においても外観安定性が良好で、低刺激のエタノール無配合液体口腔用組成物が得られること、更に、この液体口腔用組成物にトリクロサンを配合することにより、浮遊菌に対する殺菌効果も向上することを見出した。
【0010】
本発明によれば、上記特定成分を組み合わせて配合することにより、イソプロピルメチルフェノールを含有する液体口腔用組成物において、エタノール無配合の組成で、口腔内細菌への優れた殺菌力と低温及び高温保存時に経時での優れた外観安定性とを両立させることができ、口腔内疾患の予防、改善効果に優れた高品質の液体口腔用組成物が得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
従って、本発明は、
(A)イソプロピルメチルフェノール、
(B)プロピレングリコール及び/又はグリセリン、
(C)エチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜100モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び炭素鎖長が16〜18でエチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜40モルのポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる少なくとも一種の非イオン界面活性剤、
(D)カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギナン、ヒドロキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも一種の水溶性高分子化合物
を含有してなることを特徴とするエタノール無配合液体口腔用組成物、更に、(E)トリクロサンを含有するエタノール無配合液体口腔用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエタノール無配合の液体口腔用組成物は、歯周病原性バイオフィルムに対する優れた浸透殺菌効果を発揮すると共に、低温及び高温での外観安定性が良好で、低刺激なものであり、歯周炎、歯肉炎、口臭等の口腔内疾患の予防、改善に有効であり、エタノール無配合で低刺激であることから子供用などとしても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の液体口腔用組成物は、殺菌成分として(A)イソプロピルメチルフェノールを含有し、湿潤剤として(B)プロピレングリコール及び/又はグリセリン、非イオン界面活性剤として(C)特定のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる少なくとも一種、増粘剤として(D)カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギナン、ヒドロキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも一種の水溶性高分子化合物を含有し、エタノール無配合であることを特徴とする。
【0014】
本発明で使用される成分(A)のイソプロピルメチルフェノールの配合量は、歯周病原性バイオフィルムへの浸透殺菌効果を満足に発揮させる点で組成物全体の0.001〜0.1%(質量%、以下同じ)、特に0.02〜0.08%とすることが好ましく、0.001%未満であるとバイオフィルムに対して十分な殺菌力を発揮できない場合があり、0.1%を超えると組成物が高温で経時で白濁し、外観安定性を損ねる場合がある。
【0015】
本発明で使用される成分(B)の湿潤剤としては、プロピレングリコール、グリセリンを単独で配合しても、プロピレングリコール及びグリセリンを組み合わせて配合してもよい。成分(B)の総配合量(プロピレングリコール、グリセリンの合計配合量)は、イソプロピルメチルフェノール可溶化の点で組成物全体の3〜20%、特に5〜15%が好ましい。配合量が3%未満であると、組成物が低温又は高温保存時に経時で白濁し、外観安定性を損ねる場合があり、20%を超えると苦味の点から洗口等の口腔への適用に適さない場合がある。
【0016】
本発明で使用される成分(C)の非イオン界面活性剤としては、エチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜100モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、炭素鎖長が16〜18のアルキル鎖長でエチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜40モルのポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる少なくとも一種を使用する。これらの中では、特に歯周病原性バイオフィルムに対する浸透殺菌力及びイソプロピルメチルフェノール可溶化の点でエチレンオキサイドの平均付加モル数が60〜100モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、炭素鎖長が16〜18のアルキル鎖長でエチレンオキサイドの平均付加モル数が20〜40モルのポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましく使用される。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイドの平均付加モル数が40モル未満のものを使用した場合は、低温保存時に析出してしまう場合があり、100モルを超えるものは一般に市販されていない。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの平均付加モル数が10モル未満のものを使用した場合は、上記と同様に低温保存時に析出してしまう場合があり、40モルを超えるものは一般には市販されていない。また、上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルにおいて、そのアルキル鎖長が16未満では、苦味や刺激が強い場合があり、18を超えるものは低温又は高温での外観安定性が劣る場合がある。
【0017】
成分(C)の配合量は、歯周病原性バイオフィルムに対する浸透殺菌力及びイソプロピルメチルフェノール可溶化の点で好ましくは組成物全体の0.1〜1.0%、より好ましくは0.2〜0.7%である。配合量が0.1%未満では低温又は高温での外観安定性を維持するのが難しく、1.0%を超えると、殺菌力が損なわれる場合がある。
【0018】
本発明で使用される成分(D)の増粘剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カラギナンから選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子化合物を使用する。特に限定しないが、カルボキシメチルセルロースとしてはエーテル化度2.0〜2.8のもの、ヒドロキシエチルセルロースとしては重量平均分子量が20万〜170万のもの、カラギナンとしてはイオタカラギナン、ラムダカラギナン等が好ましく使用できる。
【0019】
なお、上記エーテル化度は、CMC工業会分析法(灰化法)に従い、カルボキシメチルセルロース1gを精秤し、磁性ルツボに入れて600℃で灰化し、灰化によって生成した酸化ナトリウムをN/10硫酸でフェノールフタレインを指示薬として滴定し、カルボキシメチルセルロース1gあたりの滴定量AmLを次式に入れて計算し、求めたエーテル化度を示す。
エーテル化度=(162×A)/(10,000−80×A)
【0020】
また、ヒドロキシエチルセルロースの重量平均分子量は、東ソー株式会社製GPCシステムLS−8000で、溶媒に0.1M塩化ナトリウム水溶液、標準物質にポリオキシエチレンを使用し、30℃の条件下でGPC分析を行い、求めた重量平均分子量を示す。
【0021】
成分(D)の配合量は、外観安定性及び組成物の使用性の点で好ましくは組成物全体の0.05〜1.0%、より好ましくは0.3〜0.7%である。0.05%未満では低温又は高温での外観安定性を維持するのが難しく、1.0%を超えると、組成物のゲル化により洗口等の口腔への適用に適さず、使用性が損なわれたり、水溶性高分子化合物が低温又は高温保存時に経時で析出し、外観安定性を損なう場合がある。
【0022】
更に、本発明の液体口腔用組成物には、トリクロサンを配合することが好ましく、トリクロサンの併用により浮遊菌への殺菌力を向上させることができ、これにより、歯周病原性バイオフィルムへの浸透殺菌効果と浮遊菌への殺菌効果とを兼ね備え、より優れた口腔内疾患の予防及び改善効果を発揮することができる。
トリクロサンを配合する場合、その配合量は、組成物全体の0.001〜0.1%、特に0.02〜0.08%が好ましい。配合量が0.001%未満であると、浮遊菌に対して満足な殺菌力を発揮できない場合があり、0.1%を超えると組成物が高温保存時に経時で白濁し、外観安定性を損ねる場合がある。
【0023】
本発明の液体口腔用組成物は、洗口剤、液体歯磨などとして調製、適用することができるが、本発明の液体口腔用組成物には、その剤型に応じて、上記必須成分以外に、適宜な任意成分を本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。例えば、上記成分以外の湿潤剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、甘味剤、香料、界面活性剤、有効成分、着色料等を含有できる。
【0024】
上記成分(B)以外の湿潤剤としては、ソルビトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット等が、また、上記成分(D)以外の増粘剤としては、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
【0025】
pH調整剤としては、フタル酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、炭酸やそれらのカリウム塩、ナトリウム塩及びアンモニウム塩、リボ核酸及びその塩類、更に水酸化ナトリウムなどから選ばれる1種又は2種以上を用いることができ、特にリン酸、クエン酸及びそれらのナトリウム塩から選ばれるものを組み合わせて使用することがより好ましい。特に、本発明の液体口腔用組成物は、25℃におけるpHを5.5〜7.5に調整することが好ましく、この付近のpH調整剤としてリン酸二水素ナトリウムとリン酸一水素ナトリウム、あるいはクエン酸とクエン酸ナトリウムを組み合わせたものを用いることが好ましい。
【0026】
防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、塩酸セチルピリジニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ソルビン酸カリウム等を含有することができる。
また、甘味剤としてはサッカリンナトリウム、ステビオサイト等を含有することができる。
【0027】
香料としては、エタノールを含まないものが使用され、ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、クローブ油、タイム油、セージ油、カルダモン油、ローズマリー油、マジョラム油、レモン油、ナツメグ油、ラベンダー油、パラクレス油等の天然精油、及び、l−カルボン、1,8−シネオール、メチルサリシレート、オイゲノール、チモール、リナロール、リモネン、メントン、メンチルアセテート、シトラール、カンファー、ボルネオール、ピネン、スピラントール等の上記天然精油中に含まれる香料成分、また、エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルアセテート、ヘキサナール、ヘキセナール、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ベンツアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、フラネオール、マルトール、エチルマルトール、ガンマ/デルタデカラクトン、ガンマ/デルタウンデカラクトン、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、メンチルラクテート、エチレングリコール−l−メンチルカーボネート等の香料成分、更には、いくつかの香料成分や天然精油を組み合わせて(エタノールを含まない)なる、アップル、バナナ、ストロベリー、ブルーベリー、メロン、ピーチ、パイナップル、グレープ、マスカット、ワイン、チェリー、スカッシュ、コーヒー、ブランデー、ヨーグルト等の調合フレーバーの1種又は2種以上を本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。上記香料の配合量は、組成物全体の0.00001〜3%が好適である。
【0028】
成分(C)以外の界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を使用できる。例えば、ミリスチル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシネート、ラウロイルメチルタウリン、アシルアミノ酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル・ナトリウム、アルキルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの酢酸ベタイン型両性界面活性剤、N−脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩などのイミダゾリン型両性界面活性剤、N−脂肪酸アシル−L−アルギネート塩等のアミノ酸型界面活性剤などの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて、本発明の効果を妨げない範囲で使用することができる。成分(C)以外の界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.01〜5%が好ましい。
【0029】
上記イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン以外の有効成分としては、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸などの抗炎症剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素、リテックエンザイム等の酵素、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アラントイン、アズレン、塩化リゾチーム、アスコルビン酸等のビタミンC類、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン塩類、グリチルレチン酸類、ヒドロコレステロール、クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、タイム、オウゴン、チョウジ、ハマメリス等の植物抽出物、グルコン酸銅、カロペプタイド、ポリリン酸ナトリウム、水溶性無機リン酸化合物、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ラウロイルサルコシンナトリウム、歯石防止剤、歯垢防止剤、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム等を添加することができる。なお、これらの有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0030】
着色料としては、青色1号、緑色3号、黄色4号、赤色105号など安全性の高い水溶性色素を添加することができる。
【0031】
本発明の液体口腔用組成物を収容する容器としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ガラス、ポリプロピレン、ポリエチレンが使用できるが、非イオン性殺菌剤及び香料の吸着抑制の点からPETとガラスの使用が好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、実験例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
また、これらの液体口腔用組成物の調製には、イソプロピルメチルフェノール(大阪化成社製)、トリクロサン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(日光ケミカルズ社製)、ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油(日光ケミカルズ社製)、ポリオキシエチレン(30)セチルエーテル(日本エマルジョン社製)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(日本エマルジョン社製)、クエン酸(扶桑化学社製)、クエン酸ナトリウム(扶桑化学社製)、キシリトール(ロケット・フルーレ社製)、グリセリン(85%、阪本薬品工業社製)、プロピレングリコール(旭硝子社製)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(アーネストガム、ダイセル化学工業社製、エーテル化度2.3)、ヒドロキシエチルセルロース(HECダイセル SE850、ダイセル化学工業社製、重量平均分子量148万)、カラギナン(CSI−1、三栄源FFI社製、イオタカラギナン)を用いた。更に、比較例の調製には、ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油(日光ケミカルズ社製)、ポリオキシエチレン(7)セチルエーテル(日本エマルジョン社製)、アルギン酸ナトリウム(ダックアルギン、鴨川化成工業社製)、キサンタンガム(モナートガムDA、ケルコ社製)、エタノール(日本アルコール販売社製)を使用した。なお、表中のPOEはポリオキシエチレンを示し、下記に示す%は、特に断らない限りいずれも質量%を意味する。
【0033】
〔実験例1〕
表1〜3に示す組成の液体口腔用組成物を常法により調製し、下記方法でモデルバイオフィルムに対する浸透殺菌効果を評価した。結果を表1〜3に示す。
【0034】
(1)モデル歯周病原性バイオフィルムの作製方法
直径7mm×厚さ3.5mmのハイドロキシアパタイト(HA)板(旭光学社製)を0.45μmのフィルターでろ過したヒト無刺激唾液で4時間処理したものをモデルバイオフィルム作製の担体に用い、培養液は、トリプチケースソイブロス(Difco社製)30gを1Lの精製水に溶解した液にヘミン(シグマ社製)5mg、メナジオン(シグマ社製)0.5mgを添加したものを用いた。モデルバイオフィルムを作製するために、口腔常在細菌としてストレプトコッカス ゴルドニアイ ATC51656株及びアクチノマイセス ナエスランディ ATCC51655株、病原性細菌としてポルフィロモナス ジンジバリス ATCC33277株を用いた。これら3菌種をそれぞれ2×107cfu/mL(cfu:colony forming units)になるように上述の培養液に接種し、唾液処理したHA担体と共に37℃、嫌気条件下(5%炭酸ガス、95%窒素)で2週間連続培養(培養液の置換率は10Vol%とした)を行い、HA表面に3菌種混合のモデルバイオフィルムを形成させた。
【0035】
(2)モデルバイオフィルムに対する浸透殺菌効果
形成させたモデルバイオフィルムを表1〜3に示した組成のサンプル2mLに3分間浸漬し、滅菌生理食塩水1mLで6回洗浄した。その後、滅菌生理食塩水4mLで超音波処理(200μA、10秒間)によりモデルバイオフィルムを分散し、10%綿羊脱繊血含有トリプチケースソイ寒天平板(Difco社製)及び硫酸カナマイシン(200mg/L:シグマ社製)含有トリプチケースソイ血液寒天平板に50μL塗沫し、嫌気性条件下で培養した。生育したコロニーを計測し、残存するポルフィロモナス ジンジバリス菌の菌数(cfu)を求め、下記基準に則り、判定した。
【0036】
浸透殺菌効果判定基準:
○:生菌数が107未満
△:生菌数が107以上108未満
×:生菌数が108以上
【0037】
〔実験例2〕
表1〜3に示す組成の液体口腔用組成物について、下記方法で外観安定性を評価した。結果を表1〜3に示す。
(1)外観安定性
表1〜3に示した組成のサンプルを満注量450mLのPET容器に450mL充填し、−5℃及び50℃の恒温槽に1ヶ月保存後の外観安定性を下記基準に則り、目視判定した。
【0038】
外観安定性評価基準:
◎:初期品と比較し、変化が認められない。
○:ごくわずかなオリが認められる。
△:微濁が認められる。
×:かなりの白濁又は沈澱物が認められる。
【0039】
〔実験例3〕
表1〜3に示す組成の液体口腔用組成物について、下記方法で使用感を評価した。結果を表1〜3に示す。
(1)使用感評価
表1〜3に示した組成のサンプル10mLを口に含み、30秒間すすいだ後、洗口後の刺激のなさ、苦味について下記の3段階で評価し、10名の平均点を算出した。
【0040】
洗口後の刺激のなさ:
3:刺激が認められなかった。
2:やや刺激が認められた。
1:刺激が認められた。
【0041】
〔実験例4〕
表3に示す組成の液体口腔用組成物について、下記方法で浮遊菌に対する殺菌効果を評価した。結果を表3に示す。
【0042】
(1)浮遊菌に対する殺菌効果
使用した菌液は、培養液としてトリプチケースソイブロス(Difco社製)30gを1Lの精製水に溶解したものを、口腔常在細菌としてアクチノマイセス ナエスランディ ATCC51655株を用い、37℃、嫌気条件下(5%炭酸ガス、95%窒素)で1日培養した液の550nmでの透過度が20になるように生理食塩水を加えて調製した。表3に示したサンプル2.7mLに菌液0.3mLを加え、撹拌後、37℃で1分間反応させ、再び撹拌後、予め2.7mLの培養液の入った試験管を5本用意し、その1番目の試験管に0.3mLを加え、撹拌した。この液0.3mLを採取し、2番目の試験管に加え、撹拌した。この操作を同様に3〜5番目の試験管に順に行った。1,3,5番目の試験管中の培養液を撹拌後、10%綿羊脱繊血含有トリプチケースソイ寒天平板(Difco社製)に50μL塗沫し、嫌気条件下で培養した。生育したコロニーを計測し、残存するアクチノマイセス ナエスランディ菌の菌数(cfu)を求め、下記基準に則り、判定した。
【0043】
浮遊菌に対する殺菌効果の判定基準:
○:生菌数が103未満
△:生菌数が103以上104未満
×:生菌数が104以上
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
次に、下記実施例の液体口腔用組成物を常法により調製し、上記と同様に評価したところ、いずれも優れた病原性バイオフィルムへの浸透殺菌力、外観安定性、使用感を有していた。なお、香料は、下記表4に示す組成の香料を使用した。
【0048】
〔実施例17〕 洗口剤
A イソプロピルメチルフェノール 0.05%
B プロピレングリコール 4
グリセリン(85%) 2
C ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.4
D カラギナン 0.5
E トリクロサン 0.05
トラネキサム酸 0.04
グリチルリチン酸ジカリウム 0.06
クエン酸 0.06
クエン酸ナトリウム 0.5
パラオオキシ安息香酸メチル 0.1
サッカリンナトリウム 0.01
香料A 0.2
水 残
計 100.0%
【0049】
〔実施例18〕 洗口剤
A イソプロピルメチルフェノール 0.05%
B プロピレングリコール 4
グリセリン(85%) 2
C ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.3
D ヒドロキシエチルセルロース 0.5
E トリクロサン 0.02
キシリトール 4
ε−アミノカプロン酸 0.03
安息香酸ナトリウム 0.3
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.25
香料B 0.2
水 残
計 100.0%
【0050】
〔実施例19〕 洗口剤
A イソプロピルメチルフェノール 0.08%
B プロピレングリコール 2
グリセリン(85%) 10
C ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油 0.7
D カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5
キシリトール 4
酢酸dl−α−トコフェノール 0.05
フッ化ナトリウム 0.1
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.25
香料C 0.3
水 残
計 100.0%
【0051】
〔実施例20〕 洗口剤
A イソプロピルメチルフェノール 0.1%
B プロピレングリコール 5
グリセリン(85%) 5
C ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油 0.7
D ヒドロキシエチルセルロース 0.5
キシリトール 4
アスパルテーム 0.02
ピロリン酸ナトリウム 0.17
ポリ燐酸ナトリウム 0.02
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.8
香料D 0.4
水 残
計 100.0%
【0052】
〔実施例21〕 洗口剤
A イソプロピルメチルフェノール 0.06%
B プロピレングリコール 5
C ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル 0.4
D カラギナン 0.5
E トリクロサン 0.04
ポリエチレングリコール 600 5
サッカリン 0.01
アスパルテーム 0.02
銅クロロフィンナトリウム 0.01
デキストラナーゼ 0.02
アスコルビン酸ナトリウム 0.03
クエン酸 0.06
クエン酸ナトリウム 0.5
香料E 0.2
水 残
計 100.0%
【0053】
〔実施例22〕 洗口剤
A イソプロピルメチルフェノール 0.6%
B プロピレングリコール 3
グリセリン(85%) 7
C ポリオキシエチレン(40)ステアリルエーテル 0.5
D カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.3
キシリトール 2
ソルビトール(70%) 1
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.2
アラントイン 0.01
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.5
香料F 0.2
水 残
計 100.0%
【0054】
【表4】

【0055】
【表5】


表中、部はいずれも質量部である(以下、同様。)。
【0056】
【表6】

【0057】
【表7】

【0058】
【表8】

【0059】
【表9】

【0060】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イソプロピルメチルフェノール、
(B)プロピレングリコール及び/又はグリセリン、
(C)エチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜100モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び炭素鎖長が16〜18でエチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜40モルのポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる少なくとも一種の非イオン界面活性剤、
(D)カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギナン、ヒドロキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも一種の水溶性高分子化合物
を含有してなることを特徴とするエタノール無配合液体口腔用組成物。
【請求項2】
更に、(E)トリクロサンを含有することを特徴とする請求項1記載のエタノール無配合液体口腔用組成物。

【公開番号】特開2007−106728(P2007−106728A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301584(P2005−301584)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】