エチルアルコール検知装置及び検知方法
【課題】被験者の体温に影響されることなく被験者の放射する赤外線から血中のエチルアルコールを正確に検知して酒気帯びの判定精度を高める。
【解決手段】撮像制御部38は、被験者18の赤外線放射光からのエチルアルコールの吸収波長λ1を含む第1波長帯域の受光量Vd1、第1波長帯域の近傍のエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2を含む第2波長帯域の受光量Vd2、第1波長帯域の近傍のエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ3を含む第3波長帯域の受光量Vd3の各々を検知し、エチルアルコール検出部40は受光量Vd1、Vd2の差分ΔVdとしてエチルアルコール含有度を算出し、温度検知部42は受光量Vd2、Vd3から被験者の温度を算出し、判定部はエチルアルコール含有度を検知温度により温度補正して酒気帯び状態であるか否かを判定する。
【解決手段】撮像制御部38は、被験者18の赤外線放射光からのエチルアルコールの吸収波長λ1を含む第1波長帯域の受光量Vd1、第1波長帯域の近傍のエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2を含む第2波長帯域の受光量Vd2、第1波長帯域の近傍のエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ3を含む第3波長帯域の受光量Vd3の各々を検知し、エチルアルコール検出部40は受光量Vd1、Vd2の差分ΔVdとしてエチルアルコール含有度を算出し、温度検知部42は受光量Vd2、Vd3から被験者の温度を算出し、判定部はエチルアルコール含有度を検知温度により温度補正して酒気帯び状態であるか否かを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体から放射する赤外線に基づいて血液中に溶け込んでいるエチルアルコールを検出して、酒気帯び運転などを検知するエチルアルコール検知装置及び検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酒気帯び運転を防止するための装置にあっては、運転者の呼気に含まれるエチルアルコールをガスセンサにより検出し、所定以上のエチルアルコールが検出された場合には自動車を始動させないように構成している。(特許文献1)。
【0003】
一般に、呼気中に含まれるアルコールの濃度は血液中のアルコール濃度と比例関係にある。法規上定められた酒気帯び運転の基準は、呼気中のアルコール濃度0.15mg/Lであり、これは血中アルコール濃度で0.03%に相当する。このため呼気中のアルコール濃度を測定することで、酒気帯び状態を検知してエンジン始動装置等に対し所定の制御を行うことで運転を禁止することができる。
【0004】
しかしながら、このような従来の酒気帯び防止装置にあっては、運転者の位置する頭上近辺の空間の空気をファンにより吸引してガスセンサでアルコールを間接的に検知するようにしているため、呼気を直接採取してアルコール濃度を測定する場合に比べ、測定値が実際の呼気中のアルコール濃度に対し低めの値となり、酒気帯び運転を確実に防止できない恐れがある。
【0005】
またアルコールを検出するガスセンサは使用中にも異物の付着や酸化などにより感度が変化するため、自動的に感度を調整する校正処理が必要であり、更に、定期的に清掃点検などのメンテナンスをしなければ検出精度を維持することができないという問題がある。
【0006】
このような問題を解決するため本願発明者等にあっては、被験者からの赤外線放射光のうちエチルアルコールの吸収波長λ(1)、その近傍のエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ(2)、エチルアルコールと同じ吸収波長を持つ外乱物質の特徴吸収波長λ(3)の各々について赤外線強度を検出器により検出し、波長λ(1)と波長λ(2)の赤外線強度に基づいてエチルアルコール含有度を求め、また波長λ(2)と波長λ(3)の赤外線強度に基づいて外乱物質検出値を求め、被験者の血中エチルアルコール含有度と外乱物質検出値とに基づいてエチルアルコールの検出又は非検出を判定する装置を提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−150853号公報
【特許文献2】特開2009−148401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来のエチルアルコールの吸収波長λ(1)、その近傍のエチルアルコール吸収率の小さな波長λ(2)、及び上述した外乱物質の特徴吸収波長λ(3)の赤外線強度から被験者の血中エチルアルコール含有度及び外乱物質検出値を求めて酒気帯びを判定する方法にあっては、被験者の温度(体温)が大きく変化した場合、波長λ(1)、λ(2)及びλ(3)における検出器の検出値が変化するため、正確なエチルアルコール含有度を求めることができず、酒気帯びの判定精度(検知精度)が低くなるという問題があった。
【0009】
本発明は、被験者の体温に影響されることなく被験者の放射する赤外線から血中のエチルアルコール含有度、或いはそれを示す指標を正確に検知して酒気帯びの判定精度を高めるエチルアルコール検知装置及び検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(検知装置A)
本発明は、エチルアルコール検知装置に於いて、
赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子と、
被験者像を撮像素子に結像させる光学系と、
被験者からのエチルアルコールの吸収波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ3)を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第3透過窓と、
第1透過窓を透過して結像された第1被験者画像、第2透過窓を透過して結像された第2被験者画像、及び第3透過窓を透過して結像された第3被験者画像を、撮像素子により撮像してメモリに格納する撮像制御部と、
メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
メモリに格納された第2被験者画像と第3被験者画像に基づいて被験者の温度を算出する温度検知部と、
エチルアルコール含有度と被験者の検知温度に基づいてエチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
ここで、第1透過窓は、第1波長帯域として波長λ1=9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第2透過窓及び第3透過窓は第1波長帯域を含まない第2波長帯域及び第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0012】
第2透過窓は、第2波長帯域として波長λ2=9.0μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第3透過窓は、第3波長帯域として波長λ3=8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0013】
エチルアルコール検出部は、第1被験者画像と第2被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値(Vd1,Vd2)の差分値(ΔVd=Vd1−Vd2)としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度(ΔVd)を算出する。
【0014】
温度検知部は、第2被験者画像と第3被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値から被験者の温度を算出する。
【0015】
判定部は、所定の温度補正係数(K)に基づき、所定の基準温度(To)で設定した所定の閾値(Vtho)を、被験者の検知温度(T)における閾値(Vth)に温度補正し、エチルアルコール含有度(ΔVd)が温度補正した閾値(Vth)以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、エチルアルコール含有度(ΔVd)が温度補正した閾値(Vth)を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。この場合の閾値の温度補正は次式で補正される。
Vth=Vtho+K(T−To)
【0016】
判定部は、所定の温度補正係数(K)に基づき、被験者の検知温度(T)におけるエチルアルコール含有度(ΔVd)を、所定の閾値(Vtho)を設定した基準温度(To)でのエチルアルコール含有度(ΔVdo)に補正し、温度補正したエチルアルコール含有度(ΔVdo)が閾値(Vtho)以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、温度補正したエチルアルコール含有度(ΔVdo)が閾値(Vtho)を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。この場合のエチルアルコール含有度の温度補正は次式で補正される。
ΔVdo=ΔVd+K(T−To)
【0017】
撮像素子、光学系、第1透過窓、第2透過窓及び第3透過窓を冷却する冷却機構を設ける。
【0018】
(検知装置B)
本発明は、エチルアルコール検知装置に於いて、
赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子と、
被験者像を撮像素子に結像させる光学系と、
被験者からのエチルアルコールの吸収波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
第1透過窓を透過して結像された第1被験者画像および第2透過窓を透過して結像された第2被験者画像を透過して結像された第2被験者画像を、前記撮像素子により撮像してメモリに格納する撮像制御部と、
メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
メモリに格納された第2被験者画像に基づいて前記被験者の温度を算出する温度検知部と、
エチルアルコール含有度と被験者の検知温度に基づいてエチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0019】
ここで、第1透過窓は、第1波長帯域として波長λ1=9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第2透過窓は第1波長帯域を含まない第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0020】
第2透過窓は、第2波長帯域として波長λ2=9.0μm又は8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0021】
エチルアルコール検出部は、第1被験者画像と第2被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【0022】
温度検知部は、第2被験者画像における第1被験者画像と同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値から被験者の温度を算出する。
【0023】
判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、被験者の検知温度における閾値に温度補正し、エチルアルコール含有度が温度補正した閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、エチルアルコール含有度が温度補正した閾値を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。
【0024】
判定部は、所定の温度補正係数に基づき、被験者の検知温度におけるエチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、温度補正したエチルアルコール含有度が閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、温度補正したエチルアルコール含有度が閾値を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。
【0025】
撮像素子、光学系、第1透過窓、及び第2透過窓を冷却する冷却機構を設ける。
【0026】
(検知装置C)
本発明はエチルアルコール検知装置に於いて、
1または複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサと、
被験者像を赤外線センサに結像させる光学系と、
被験者からのエチルアルコールの吸収波長波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ3)を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第3透過窓と、
赤外線センサにより、第1透過窓を透過して受光された第1受光信号、第2透過窓を透過して受光された第2受光信号、及び第3透過窓を透過して受光された第3受光信号を検出してメモリに格納する受光制御部と、
メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
メモリに格納された第2受光信号と第3受光信号に基づいて被験者の温度を算出する温度検知部と、
エチルアルコール含有度と被験者の検知温度に基づいてエチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0027】
ここで、第1透過窓は、第1波長帯域として波長λ1=9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第2透過窓及び第3透過窓は第1波長帯域を含まない第2波長帯域及び第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0028】
第2透過窓は、第2波長帯域としてλ2=9.0μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第3透過窓は、第3波長帯域としてλ3=8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0029】
エチルアルコール検出部は、第1受光信号と第2受光信号の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出する。
【0030】
温度検知部は、第2受光信号と第3受光信号の比率に基づいて被験者の温度を算出する。
【0031】
判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、被験者の検知温度における閾値に温度補正し、エチルアルコール含有度が温度補正した閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、エチルアルコール含有度が温度補正した閾値を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。
【0032】
判定部は、所定の温度補正係数に基づき、被験者の検知温度におけるエチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、温度補正したエチルアルコール含有度が閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、温度補正したエチルアルコール含有度が閾値を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。
【0033】
赤外線センサ、光学系、第1透過窓、第2透過窓及び第3透過窓を冷却する冷却機構を設ける。
【0034】
(検知装置D)
本発明は、エチルアルコール検知装置に於いて、
1または複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサと、
被験者像を赤外線センサに結像させる光学系と、
記被験者からのエチルアルコールの吸収波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
赤外線センサにより、第1透過窓を透過して受光された第1受光信号及び第2透過窓を透過して受光された第2受光信号を検出してメモリに格納する受光制御部と、
メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
メモリに格納された第2受光信号に基づいて被験者の温度を算出する温度検知部と、
エチルアルコール含有度と被験者の検知温度に基づいてエチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0035】
ここで、第1透過窓は、第1波長帯域としてλ1=9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第2透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0036】
第2透過窓は、第2波長帯域としてλ2=9.0μm又は8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0037】
エチルアルコール検出部は、第1受光信号と第2受光信号の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出する。
【0038】
判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、被験者の検知温度における閾値に温度補正し、エチルアルコール含有度が温度補正した閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、エチルアルコール含有度が温度補正した閾値を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。
【0039】
判定部は、所定の温度補正係数に基づき、被験者の検知温度におけるエチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、温度補正したエチルアルコール含有度が閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、温度補正したエチルアルコール含有度が記閾値を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。
【0040】
赤外線センサ、光学系、第1透過窓及び第2透過窓を冷却する冷却機構を設ける。
【0041】
(検知方法A)
本発明は、エチルアルコール検知方法に於いて、
被験者からのエチルアルコールの吸収波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子に結像して撮像した第1被験者画像をメモリに格納し、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して撮像素子に結像して撮像した第2被験者画像をメモリに格納し、
記被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ3)を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を、第3透過窓により選択的に透過して撮像素子に結像して撮像した第3被験者画像をメモリに格納し、
メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
メモリに格納された第2被験者画像と第3被験者画像に基づいて被験者の温度を算出し、
エチルアルコール含有度と被験者の検知温度に基づいてエチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とする。
【0042】
これ以外の特徴は上記の検知装置Aの場合と基本的に同じになる。
【0043】
(検知方法B)
本発明は、エチルアルコール検知方法に於いて、
被験者からのエチルアルコールの吸収波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子に結像して撮像した第1被験者画像をメモリに格納し、
被験者からの第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して撮像素子に結像して撮像した第2被験者画像をメモリに格納し、
メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
メモリに格納された第2被験者画像に基づいて被験者の温度を算出し、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とする。
【0044】
これ以外の特徴は上記の検知装置Bの場合と基本的に同じになる。
【0045】
(検知方法C)
本発明は、エチルアルコール検知方法に於いて、
被験者からのエチルアルコールの吸収波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して1又は複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサに結像して受光した第1受光信号をメモリに格納し、
被験者からの前記第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して赤外線センサに結像して受光した第2受光信号をメモリに格納し、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ3)を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を、第3透過窓により選択的に透過して赤外線センサに結像して受光した第3受光信号をメモリに格納し、
メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
メモリに格納された第2受光信号と第3受光信号に基づいて被験者の温度を算出し、
エチルアルコール含有度と被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とする。
【0046】
これ以外の特徴は上記の検知装置Cの場合と基本的に同じになる。
【0047】
(検知方法D)
本発明は、エチルアルコール検知方法に於いて、
被験者からのエチルアルコールの吸収波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して1又は複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサに結像して受光した第1受光信号をメモリに格納し、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して赤外線センサに結像して受光した第2受光信号をメモリに格納し、
メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
メモリに格納された第2受光信号に基づいて被験者の温度を算出し、
エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいてエチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とする。
【0048】
これ以外の特徴は上記の検知装置Dの場合と基本的に同じになる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、被験者からの赤外線放射光のうち、検出器による、エチルアルコールの吸収波長λ1を含む第1波長帯域の受光量Vd1、第1波長帯域の近傍のエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2を含む第2波長帯域の受光量Vd2、第1波長帯域の近傍のエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ3を含む第3波長帯域の受光量Vd3の各々を検出し、波長λ1、λ2に対応した受光量Vd1、Vd2の差分ΔVdとしてエチルアルコール含有度を算出すると共に、波長λ2、λ3に対応した受光量Vd2、Vd3から被験者の温度(体温)を算出し、エチルアルコール含有度を被験者の温度により温度補正して酒気帯び有無を判定したため、被験者の体温の変化に伴う判定誤差を小さくすることができる。
【0050】
また被験者の温度は、単一の波長に対応した赤外線受光量からも算出可能であることから、波長λ2又はλ3に対応した何れかひとつの波長受光量Vd2又はVd3から被験者の温度を算出してエチルアルコール含有度を温度補正することができ、この場合には波長が2つで済むことから、波長抽出に係る構造や電気回路等を削減でき、装置構成を簡単に、また低コストにすることができる。
【0051】
またエチルアルコールの吸収波長λ1を9.5μm、その近傍のエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2、λ3を例えば9.0μm、8.3μmに設定し、プランクの法則に基づく被験者の分光放射発散度の高い波長帯を使用することで、赤外線カメラや赤外線受光素子に入射する赤外線量を高くして受光出力を大きくとることができる。
【0052】
また撮像素子、光学系、第1透過窓、第2透過窓及び第3透過窓を冷却する冷却機構を設け、例えば常温以下に冷却することにより、赤外線受光量に影響するノイズ成分を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】3波長赤外線検知に基づく本発明によるエチルアルコール検知装置の実施形態を示したブロック図
【図2】本実施形態で使用するフィルタ切替えの赤外線カメラを示した説明図
【図3】本実施形態で使用する冷却機構を示した説明図
【図4】エチルアルコールの波長スペクトラム分布を示した説明図
【図5】プランクの法則による波長に対する分光放射発散度を示した特性グラフ図
【図6】本実施形態における特徴領域の抽出を示した説明図
【図7】平常状態と飲酒状態における被験者の呼気中アルコール濃度と測定箇所温度の測定結果及び2波長赤外線出力差(エチルアルコール含有度)のグラフ分布を示した説明図
【図8】図7の測定結果による被験者の温度と2波長赤外線の出力差分値(エチルアルコール含有度)の測定点の分布を示したグラフ図
【図9】本実施形態における2波長による温度検出特性を示した特性グラフ図
【図10】本実施形態における2波長赤外線の出力差分値2ΔVd(エチルアルコール含有度)の温度補正と、閾値の温度補正を示した特性グラフ図
【図11】図1の実施形態によるエチルアルコールの検知処理を示したフローチャート
【図12】本実施形態で使用する波長可変フィルタを用いた赤外線カメラを示した説明図
【図13】2波長赤外線検知に基づく本発明によるエチルアルコール検知装置の他の実施形態を示したブロック図
【図14】図13の実施形態によるエチルアルコールの検知処理を示したフローチャート
【図15】赤外線センサを用いた3波長赤外線検知に基づく本発明によるエチルアルコール検知装置の他の実施形態を示したブロック図
【図16】図15の赤外線センサを示した説明図
【図17】図15の実施形態によるエチルアルコールの検知処理を示したフローチャート
【図18】赤外線センサを用いた2波長赤外線検知に基づく本発明によるエチルアルコール検知装置の他の実施形態を示したブロック図
【図19】図18の実施形態によるエチルアルコールの検知処理を示したフローチャート
【図20】図15又は図18で使用する複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサを示した説明図
【図21】図15又は図18で使用するマルチ赤外線センサを示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は3波長赤外線検出に基づく本発明によるエチルアルコール検知装置の実施形態について、その要部構成例を示した説明図である。
【0055】
図1において、エチルアルコール検知装置のエチルアルコール検知処理部10はコンピュータのハードウェア環境とソフトウェア環境とを備えて機能構成されており、エチルアルコール検知処理部10に対しては赤外線カメラ12とフィルタ切替ユニット14が設けられている。これは一例であり、各機能の分離、統合は任意に行うことができる。また各機能の一部または全部は、ソフトウェア(プログラム)によって実行されるものであっても、ハードウェアによって実行されるものであっても良い。
【0056】
赤外線カメラ12は例えば自動車車両のダッシュボードなどに内蔵されており、フィルタ切替ユニット14を介して、本実施の形態においては例えば、被験者(被検体)となる運転者18の顔から放射される赤外線放射光による画像を撮像する。
【0057】
波長抽出手段を構成するフィルタ切替ユニット14は、図2に取り出して示すように、赤外線カメラ12の前に配置された回転円盤の例えば盤面3箇所の開口部に、帯域の異なる光学的フィルタとして、本実施形態にあっては第1透過窓を形成するλ1フィルタ20−1、第2透過窓を形成するλ2フィルタ20−2及び第3透過窓を形成するλ3フィルタ20−3を装着し、これらのフィルタを順次切り替えながら、運転者18の顏の赤外線放射光による画像を撮像する。
【0058】
なお、以下でλ1フィルタ20−1、λ2フィルタ20−2、λ3フィルタ20−3を総称するときは「フィルタ20」という。また、本実施の形態においては、各フィルタはそれぞれ他のフィルタと重複しない波長帯を選択透過させるバンドパスフィルタとする。ただし、これにより本発明が限定されるものではなく、本発明の目的の全部また一部を達成できる範囲において、透過波長の重複も許される。
【0059】
再び図1を参照するに、赤外線カメラ12には光学系22と、検出器として、赤外線波長帯域に感度を持つ撮像素子(ここでは例えばCCD)24が設けられている。フィルタ切替ユニット14は、モータなどを備えた駆動部16により上記の円盤を回転してフィルタ切替えを行うことができる。
【0060】
赤外線カメラ12及びフィルタ切替ユニット14に対しては図3に示すように冷却機構が設けられている。図3において、赤外線カメラ12のレンズ開口部には鏡筒76が装着され、赤外線カメラ12の入射系に配置された鏡筒76の前(撮像対象側=レンズの物体面側)には、図2に示したようにλ1フィルタ20−1、λ2フィルタ20−2及びλ3フィルタ20−3を各開口80に配置した回転自在な回転円盤78が配置されている。鏡筒76の側面にはチューブ84を介して外部に設置した冷却ファン82が接続されている。
【0061】
冷却ファン82は外部から吸入した冷却空気を、チューブ84を介して鏡筒76に供給することで、赤外線カメラ12のレンズや回転円盤78のフィルタ20を常温以下に冷却している。
【0062】
全ての物体はその温度に応じた赤外線を放射しており、本実施形態における撮像素子24の前に置かれる光学系22やフィルタ20からもその温度に応じた赤外線が放射されている。この自発赤外線がバックグラウンド光(ノイズ成分)として運転者18からの赤外線に重畳されて撮像素子に入射することで、S/N比を低下させる。そこで図2のような冷却機構を設けて光学系22やフィルタ20を常温以下に冷却することにより、ノイズ成分を小さくする。
【0063】
なお、このような冷却機構に代えて、またはそれに加えて、フィルタ20や光学系22のレンズ部等に、ペルチェ素子等の冷却器を取り付けて冷却するようにして良い。
【0064】
また、λ1フィルタ20の表面において、装置内部からの放射赤外線が反射して撮像素子24に入射することを防ぐため、フィルタ面を光軸に対し直交しないよう斜めに所定角度傾斜させて配置し、内部からの放射赤外線が装置内に再帰し難くなるような構造とすることもできる。なお、図3の冷却機構は、後の説明で明らかにする他の実施形態についても同様に適用される。
【0065】
再び図1を参照するに、エチルアルコール検知処理部10にはCPU26が設けられ、CPU26のバス28に対し、AD変換器30、出力インタフェース32,34,35、及びメモリ36を接続している。
【0066】
AD変換器30には赤外線カメラ12の撮像信号出力線が接続され、撮像素子24で撮像された運転者18の赤外線画像(本実施形態では静止画像)をここでデジタル画像データに変換して取り込み、メモリ36にλ1画像46−1、λ2画像46−2、λ3画像46−3として格納する。このような赤外線カメラ12を用いた画像撮影の制御動作は、CPU26に設けた撮像制御部38により行われる。なお、以下でλ1画像46−1、λ2画像46−2、λ3画像46−3を総称する場合には「画像46」という。
【0067】
出力インタフェース32には駆動部16が接続され、エチルアルコール検知処理部10からの制御信号で駆動部16を切り替え制御し、赤外線カメラ12の撮像動作に連動してフィルタ切替ユニット14のフィルタ切替えを行う。即ち、上記の画像データ取り込みは、各波長に対応してフィルタ20を切り替えつつ、波長毎に順次行われる。
【0068】
出力インタフェース34には表示部52が接続され、また出力インタフェース35には制御部54が接続されている。撮像制御部38による制御を受け、表示部52には、エチルアルコール検知処理部10で処理された検出や判定、検知の結果、例えば運転者18の酒気帯びの有無などが必要に応じて表示される。表示部に代えて、又はこれに加えて、必要に応じ音で各種報知を行う音響報知部を設けても良い。
【0069】
制御部54は、エチルアルコール検知処理部10で運転者18の酒気帯び運転が判別された際に、撮像制御部38による制御を受け、例えばエンジン始動装置等に対してエンジンの始動をできないよう禁止するといった酒気帯び運転防止制御を行う。
【0070】
CPU26には、プログラムの実行により実現される機能として、撮像制御部38、エチルアルコール検出部40、温度検知部42及び判定部44が設けられている。本実施形態のエチルアルコール検知処理部10にあっては、運転者18の酒気帯び状態を顔面などの皮膚直下の毛細血管に表れる含有エチルアルコールから検知する。
【0071】
毛細血管中の含有エチルアルコールの検出は、運転者18の体温による人体からの赤外線放射光から、エチルアルコールによる特定波長の吸収による減衰を検知することを基本としている。
【0072】
図4は検知対象とするエチルアルコールの吸収波長スペクトル分布を示した説明図である。エチルアルコールC2H5OHは、その分子構造に由来し、2.77μm、3.37μm及び9.5μmなどの吸収波長を持っている。例えば吸収波長9.5μmは、エチルアルコール中の−CH3の結合伸縮に伴い、エチルアルコール分子が吸光する波長である。
【0073】
そこで運転者からの赤外光のうち、エチルアルコールの吸収波長λ1として例えば、λ1=9.5μmを含む第1波長帯域を選択的に透過させる第1透過窓を形成する第1フィルタとしてλ1フィルタ20−1を介して赤外光を監視すると、所定量のエチルアルコールが毛細血管中に含まれている状態即ち酒気帯び状態では、1波長帯域の赤外光は毛細血管中のエチルアルコール濃度(含有度)に応じた吸光度を示し、このとき撮像素子24で撮像されたλ1画像46−1における各画素から求められた受光量Vd1は小さくなる。なお、本実施形態においては受光量Vd1、また後述するVd2、Vd3を求める際には、画像46のうち、例えば運転者像の所定領域(後述)における所定の画素群を抽出し、抽出された画素群に基づいて行う。
【0074】
ここで、エチルアルコールの吸収波長λ1として例えば、2.77μmや3.37μm等ではなく、比較的長波長側のλ1=9.5μmを設定している理由を説明する。物体から放射される赤外線は、物体の温度に依存して変化し、波長毎の分光放射発散度はプランクの法則により求められる。いま人体の温度を35℃とすれば、プランクの法則による分光放射発散度は図5に示す特性となる。
【0075】
図5において、人体の温度を35℃での分光放射発散度は、波長3.0μm付近から立ち上がり、9μm付近でピークとなっている。そこで図4のエチルアルコールの吸収波長スペクトル分布にあっては、約3.4μmと9.5μmに吸収スペクトルを持つが、3.4μmでの分光放射発散度は5.59×105(W/m2・m)であり、9.5μmでの分光放射発散度は3.56×107(W/m2・m)である。そこで本発明にあっては、λ1=9.5μmを用いることにより、撮像素子に入射する赤外線量は約3.4μmを用いる場合の64倍程度となり、大きな赤外線受光量を得ることができる。この点は、以下に説明する波長λ2及びλ3についても同様である。
【0076】
次に本実施形態にあっては、エチルアルコールの吸収波長λ1=9.5μm近傍の、エチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2として、例えばλ2=9.0μmを含む第2波長帯域を選択的に透過させる第2透過窓を形成する第2フィルタとしてλ2フィルタ20−2を設け、λ2フィルタ20−2を介して運転者18からの赤外光を監視する。λ2フィルタ20−2を透過して得られる運転者18からの赤外光撮像画像であるλ2画像46−2の所定画素から求められた受光量Vd2は、エチルアルコールの有無に関係なく、運転者から、その体温に応じた赤外線放射量に相当する受光量として得られる。
【0077】
そこで本発明にあっては、毛細血管中のエチルアルコール濃度に応じたエチルアルコール含有度Aとして、エチルアルコールの吸収波長λ1=9.5μmを含む赤外線の受光量Vd1と、エチルアルコールによる吸収の影響を受けないλ2=9.0μmを含む赤外線の受光量Vd2との例えば差分値ΔVdを算出する。
ΔVd=Vd1−Vd2 (1)
【0078】
本実施形態におけるエチルアルコール含有度(を表す指標)ΔVdの算出は、図1のCPU26に設けた撮像制御部38及びエチルアルコール検出部40により行われる。つまり、第2波長帯域が第1波長帯域に近接しているため、第2波長帯域の赤外線受光量Vd2が、エチルアルコールの吸収が無い場合に第1波長帯域から得られるべき赤外線受光量vd1と近似することから、(1)式によりエチルアルコール含有度ΔVを得ることができる。
【0079】
なお、第2波長帯域が第1波長帯域と近接していない場合、またはより正確なエチルアルコール検知を行う場合には、後述のプランクの法則により、エチルアルコールの吸収が無い場合に第1波長帯域から得られるべき赤外線受光量Vd1’を推定し、
ΔVd=Vd1’−Vd2
を求める。
【0080】
撮像制御部38は、例えば運転者18が運転を開始するためにイグニッションキーをオンとしたような所定のタイミングを検出した場合に、出力インターフェース32を介しフィルタ切替ユニット14の駆動部16にフィルタ切替動作させ、図3に示す鏡筒76の入射側に位置し、赤外線カメラ12の光学系に入射する赤外線の波長帯を選択抽出する光学フィルタをλ1フィルタ20−1、λ2フィルタ20−2、更に後の説明で明らかにするλ3フィルタ20−3に順次切り替えながら、各フィルタを介して、赤外線カメラ12により運転者18の顔が撮像されるようにする。
【0081】
そしてλ1フィルタ20−1を透過して撮像された第1被写体画像であるλ1画像46−1、λ2フィルタ20−2を透過して撮像された第2被写体画像であるλ2画像46−2、更にλ3フィルタ20−3を透過して撮像された第3被写体画像であるλ3画像46−3のそれぞれを、AD変換器30でデジタル画像データに変換し、メモリ36に格納する。
【0082】
エチルアルコール検出部40は、メモリ36に格納されたλ1画像46−1とλ2画像46−2とに基づいて、エチルアルコール濃度に対応した前記(1)式で与えられるエチルアルコール含有度ΔVdを算出する。
【0083】
図6は図1のエチルアルコール検出部40でエチルアルコール含有度ΔVd等を計算する際に用いられる運転者18の特徴領域の画像(画素群)抽出イメージを例示している。運転者18の毛細血管中のエチルアルコールの含有度を赤外線受光量から検知するためには、運転者の顔の毛細血管が皮膚表面に表われていてエチルアルコールによる吸収に伴う受光量減衰が十分に得られる領域を特定して、当該領域における画像データに基づいてエチルアルコール含有度Aを算出する必要がある。
【0084】
図6の場合にあっては、エチルアルコールの有無に影響されず運転者18から放射される赤外線量に応じた受光量に基づいて生成されるλ2画像46−2を対象に、体温による赤外線放射が良好に検出できる例えば唇など皮膚の薄い特徴抽出領域50−1や、両目の周囲に設定した特徴抽出領域50−2,50−3等の何れか1つの領域の所定画素群におけるデジタル画像データを使用して、Vd1、Vd2、Vd3、を求め、これらに基づいてエチルアルコール含有度A=ΔVd、温度係数K等を算出する。
【0085】
前記(1)式におけるエチルアルコール含有度ΔVdを算出に用いるλ1画像46−1の受光量Vd1及びλ2画像46−2の抽出画像領域における受光量Vd2の計算は、上記特徴抽出領域画素群に含まれる各画素値(画素毎に受ける光量レベル:ここでは電圧値)の総和または平均値を求め、これをVd1,Vd2として前記(1)式からエチルアルコール含有度ΔVdを算出する(後述するVd3も同様)。もちろん総和や平均値に代わるものを求めてVd1、Vd2、Vd3としても良い。
【0086】
また、前記(1)式にあっては、Vd1とVdI2の減算値(Vd1−Vd2)を計算しているが、この代わりに比率(Vd1/Vd2)、二乗差(Vd1−Vd2)2を計算してエチルアルコール含有度Aとしても良い。
【0087】
この(1)式で与えられるエチルアルコール含有度A=ΔVdが、予め定めた所定の閾値Vth以下であれば、酒気帯びの度合が大きい(或いは酒気帯び状態である)と判断することができる。もちろん、別の閾値との比較によって、酒気帯びよりもアルコール含有度の大きい飲酒状態を判定することもできる。
【0088】
しかしながら、(1)式で与えられるエチルアルコール含有度A=ΔVdは、被験者である運転者18の体温に応じて波長λ1、λ2の赤外線強度が異なるため、酒気帯びの度合を正確に判定することができない。
【0089】
図7(A)は平常状態と飲酒状態における5人の被験者A〜Eの呼気中アルコール濃度と測定箇所温度(体温に相当)の測定結果であり、図7(B)は平常状態と飲酒、酒気帯び状態における2波長赤外線の出力差分値ΔVd(エチルアルコール含有度Aに相当)をプロットしたグラフである。なお、酒気帯びとは呼気1リットル中にアルコール0.15mg以上含まれた場合であり、法規上定められている。
【0090】
図7(B)のグラフを見ると、被験者A〜Eの飲酒、酒気帯び状態の出力差分値に対し、平常状態の出力差分値は概ね小さくなる傾向が見られる。これは血液中に含まれたエチルアルコールによる波長λ1=9.5μmの赤外線吸収によりλ1受光量Vd1が低下し、これに対しエチルアルコールによる吸収の影響を受けにくいλ2受光量Vd2は略変化無く、そのため飲酒、酒気帯び状態の出力差分値ΔVdが小さくなることによる。
【0091】
一方で平常状態と飲酒、酒気帯び状態における出力差分値およびその変化は、個人により異なっており、一律固定の閾値により飲酒、酒気帯び状態か否かを判別することは難しい。これは飲酒量の違いや飲酒行為による体内アルコール含有度の差が現われると共に、各人の体温の違いおよび飲酒、酒気帯び状態と平常状態の体温の変化違いにより、出力差分値が変化することによると推定される。例えば飲酒状態の被検者Eと、平常状態の被検者Aを比べると、そのΔVdはほぼ同じであり、一律固定の閾値では酒気帯びの有無を判定しにくい。
【0092】
しかし、被検者の体温を知ることができれば、体温の影響を排除することができ、酒気帯び状態の正確な判定識別が可能となる。
【0093】
図8は図7(B)の2波長赤外線の出力差分値ΔVd(エチルアルコール含有度Aに相当)を図7(A)の被験者の温度(体温に相当)に対応してプロットしたグラフを示す。図8において、平常時のΔVdは概ね縦軸方向上側に分布し、一方、飲酒時の測定点は同下側に分布し、更に両者とも温度の上昇に応じて右上りに分布している。
【0094】
このため平常時の分布領域と飲酒時の測定点集合分布領域の間に、両者を明確に分けることのできる判定閾値ライン100を設定することができる。判定閾値ライン100は正の温度係数Kとして、
K=(0.1−0.04)/(35−31)=0.012[ボルト/℃]
を持っている。
【0095】
このように判定閾値ライン100の温度係数Kが定まれば、被験者の温度に応じて酒気帯び状態の判定閾値を温度補正し、エチルアルコール含有度ΔVdと比較することにより、温度の影響を受けることなく酒気帯び状態であるか否かを正しく判定することができる。
【0096】
なお、図8の判別閾値ライン100の設定については、実際には充分な数の被験者を対象にしたデータに基づいて各ΔVを図8のようにプロットいしたうえで精度の高い判別閾値ラインを設定して温度補正係数Kを求めることになる。また、性別や年齢に分けて最適な判別閾値ラインを設定して温度補正係数Kを求めるようにしても良い。
【0097】
そこで図1の実施形態にあっては、被験者である運転者18の温度を測定するため、エチルアルコールの吸収波長λ1=9.5μmの近傍にエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ3として、λ2とも異なる例えばλ3=8.3μmを含む第3波長帯域を選択的に透過させる第3透過窓を形成するλ3フィルタ20−3を図2に示すように設け、λ3フィルタ20−3を透過してλ3画像46−3の所定画素群から受光量Vd3を求め、これと、別に求めているλ2画像46−2の受光量Vd2とを用いて2色温度計の原理により運転者18の温度Tを、CPU26に設けた温度検知部42で算出する。この2色温度計の原理による人体の温度測定を説明すると次のようになる。
【0098】
エチルアルコールによる吸収率の小さな2波長λ2、λ3を、例えばλ2=9.0μm、λ3=8.3μmとすると、黒体からの赤外線放射強度は、プランクの法則として知られる以下の式により求められる。
【0099】
即ち、温度T(K)の黒体からの波長λ(m)による放射エネルギー密度Mλ(J/m3)は次式で与えられる。
【0100】
【数1】
ここで
プランクの定数 h=6.63×10−34 (J・Sec)
ボルツマン定数 κB=1.38×10-23 (J/K)
光速 c= 3×108(m/Sec)
てあり、これを代入すると、
【0101】
【数2】
となる。
【0102】
よって、温度が一定であれば、黒体からの放射発散度W(W/m2)は、放射エネルギー密度Mλ(J/m3)の1sec当たりのエネルギーとなり、
W=k・Mλ
となる。ただし、kは比例常数である。
【0103】
いま黒体からの放射発散度をW(W/m2)、黒体の面積をS(m2)、受光器までの距離をL(m)、受光面積をAd(m2)とすると、受光器に受光されるエネルギーWd(W)は次式となる。
Wd=W・S・Ad/πL2(W)
ここで、S、L、Adが一定ならば、
Wd=k‘・W =k・Mλ
となり、Wdはまた、受光出力Vdに比例している。
【0104】
このため2つの波長λ2、λ3における受光エネルギーの比をとれば
Vd2/Vd3=Wd2/Wd3=Mλ2/Mλ3
となる。
【0105】
よって、λ2=9.0×10-6(m)、λ3=8.3×10-6(m)における受光出力から、前出のMλの式により被験者の温度Tを求めることができる。
【0106】
即ち、波長λ2、λ3におけるMλ1、Mλ2は
【0107】
【数3】
となり、
Vd2/Vd3=Mλ2/Mλ3
に赤外線受光出力の比(Vd2/Vd3)を代入することにより、被験者の温度(体温)Tを求めることができる。
【0108】
図9はλ2=9.0×10-6(m)、λ3=8.3×10-6(m)として2つの赤外線の受光出力比Mλ1/Mλ2(=Vd2/Vd3)と被験者の温度T(℃)の関係(理論値)を示している。これにより赤外線の受光出力比(Mλ1/Mλ2)即ち、(Vd2/Vd3)を求めることで、被験者の温度Tとすることができる。
【0109】
体温付近の温度領域では、温度が上がると図5に示した分光放射発散度の特性曲線におけるピークが長波長側に移行する。これにより(Mλ1/Mλ2)は、温度Tが高いほど小さな値となる。
【0110】
このような2色温度計の原理による温度計測は、被験者の放射率の影響を受けにくいため放射率未知の物体の温度を計測でき、また、被験者とセンサ間の媒質(気体、水分等)の影響を比較的受けにくい点で優れている。
【0111】
判定部44は、エチルアルコール検出部40で検出されたエチルアルコール含有度A=ΔVdと、温度検知部42で検知された運転者18の温度Tとに基づいて、酒気帯びを判定する。
【0112】
判定部44による判定には、例えば次の2つの方法がある。
(1) 所定の基準温度Toに対応する閾値Vthoを、検知温度Tに基づいて閾値Vthに温度補正して判定する閾値補正判定方法。
(2) 検知温度Tのエチルアルコール含有度A=ΔVdを、所定の基準温度Toの場合に相当するよう温度補正して判定する含有度補正判定方法。
【0113】
いずれの判定方法にあっても、図8のグラフにおける判定閾値ライン100から求めた温度補正係数Kを使用することになる。
【0114】
図10(A)はこのうちの含有度補正判定方法を示したグラフ図である。ここで基準温度Toとして例えばTo=33℃を設定し、基準温度Toにおける基準閾値Vthoとして図8の判定閾値ライン100からこの場合Vtho=0.07(ボルト)が求められており、これら基準温度、基準閾値を、定数として温度補正係数Kと共にメモリ36に予め記憶している。
【0115】
いま、エチルアルコール検出部40によって、測定点aで示すエチルアルコール含有度A=ΔVdと検知温度Tが求められたとすると、エチルアルコール検出部40は続いてエチルアルコール含有度A=ΔVdを、次式に従って、基準温度Toの測定点bに対応するエチルアルコール含有度ΔVdoに温度補正する。
ΔVdo=ΔVd+K(To−T) (2)
【0116】
このように基準温度Toに対応させて温度補正したエチルアルコール含有度ΔVdoを求めたら、基準閾値Vthoと比較し、基準閾値Vtho以下の場合、即ち
ΔVdo≦Vtho
が成立したら酒気帯びと判定(判断)し、酒気帯び運転をしないように促す警告表示を出力表示したり、制御部54により、イグニッションキーをスタート位置に回してもエンジンを始動させないように禁止制御するなどして、酒気帯び運転を行わせないようにする。
【0117】
なお、(2)式によらず、補正前のエチルアルコール含有度A=ΔVdの値と検知温度Tの値の組み合わせに対し、基準温度Toに対応するよう温度補正したエチルアルコール含有度ΔVdoの値を予め割り付けて格納したメモリテーブルを使用しても良い。
【0118】
また式(2)では1次式(判定閾値ライン100)による温度補正近似を行ったが、これに代わって多次式(判定閾値曲線)による補正を行っても良い。
【0119】
図10(B)はもう一方の判定方法である閾値補正判定方法を示したグラフ図である。ここで基準温度Toとして例えばTo=33℃を設定し、基準温度Toにおける基準閾値Vthoとして図8の判定閾値ライン100からVtho=0.07(ボルト)が求められており、これら基準温度、基準閾値を、定数として温度補正係数Kと共にメモリ36に予め記憶している。
【0120】
いま、エチルアルコール検出部40によって、測定点aで示すエチルアルコール含有度A=ΔVdと検知温度Tが求められたとすると、エチルアルコール検出部40は続いて基準温度Toにおける基準閾値Vthoを、次式に従って、検知温度Tの測定点aにおける閾値Vthに温度補正する。
Vth=Vtho+K(T−To) (3)
【0121】
エチルアルコール検出部40は、このように検知温度Tに対応するよう温度補正した閾値Vthを求めたら、エチルアルコール含有度A=ΔVdと比較し、閾値Vth以下の場合、即ち
ΔVd≦Vth
が成立したら酒気帯びと判定し、酒気帯び運転をしないように促す警告表示を出力したり、制御部54によりイグニッションキーをスタート位置に回してもエンジンを始動させないように禁止制御するなどして、酒気帯び運転を行わせないようにする。
【0122】
なお、この場合にも(3)式によらず、検知温度Tの値ごとに、それぞれ対応して基準温度Toから温度補正した閾値Vthの値を予め割り付けて格納したメモリテーブルを使用しても良い。
【0123】
図11は図1の実施形態における酒気帯びの検知処理例を示したフローチャートである。図1において、運転者18が座席に座ってイグニッションキーをオン位置に操作することによりエチルアルコール検知処理部10およびその周辺装置に電源供給が開始されると、ステップS1で初期化、自己診断、各種設定の読み込み等を実行し、異常がなければステップS2に進みエチルアルコールの検知要求の有無を判別している。この検知要求は、例えば運転者がイグニッションキーをオン位置に回した際、即ち例えば電源投入後の所定タイミングに、検知要求信号がエチルアルコール検知処理部10に出力され、撮像制御部38でこれが判別されて検知処理が開始される。
【0124】
酒気帯び検知処理は、ステップS3でλ1フィルタ20−1を赤外線カメラ12の入射系にセットし撮像動作を行ってλ1画像46−1をメモリ36に保存し、次にλ2フィルタ20−2を赤外線カメラ12の入射系にセットし赤外線カメラ12により撮像動作を行ってλ2画像46−2をメモリ36に保存し、更に続いてλ3フィルタ20−3を赤外線カメラ12の入射系にセットし撮像動作を行ってλ3画像46−3をメモリ36に保存する。このステップS3におけるλ1画像、λ2画像、λ3画像の撮像とメモリ保存は、1回であってもよいし、必要に応じてn回連続的に撮像保存するようにしてもよい。
【0125】
続いてステップS4で、図6に示したように、λ2画像46−2を対象に、例えば特徴抽出領域50−1〜50−3の何れかを抽出する。
【0126】
続いてステップS5で、抽出した特徴抽出領域内の画素群を対象に、λ1画像から受光量Vd1を計算し、次にλ2画像から受光量Vd2を計算し、更にλ3画像から受光量Vd3を計算する。
【0127】
次にステップS6で、前記(1)式によりλ1画像の受光量Vd1とλ2画像の受光量Vd2の差分となるエチルアルコール含有度A=ΔVdを計算する。続いてステップS7で、λ2画像の受光量Vd2とλ3画像の受光量Vd3の比(Vd1/Vd2)に基づき2色温度計の原理に沿って運転者18の温度Tを算出(検知)する。
【0128】
なお、ステップS3で各λ1、λ2、λ3画像を複数回撮像している場合には、各画像データの平均化等加工処理等を行った上で、当該加工処理後のデータに基づいてステップS4以降の処理を行うようにしても良い。
【0129】
続いてステップS8で温度補正処理を行う。この温度補正処理は、図10(A)或いは図10(B)に示した含有度温度補正方法の何れかに従って行うが、例えば図10(A)の方法に依る場合には、ステップS6で算出したエチルアルコール含有度A=ΔVdを、ステップS7で算出した温度Tに基づき、前記(2)式に従って基準温度Toでのエチルアルコール含有度ΔVdoに温度補正し、ステップS9で酒気帯びであるか否かを判定する。この場合には、ステップS8の温度補正処理で求めた基準温度Toに対応するエチルアルコール含有度ΔVdoが予め設定している基準温度Toにおける判定閾値Vtho以下か否か判断する。
【0130】
ステップS9では、温度補正したエチルアルコール含有度ΔVdoが閾値Vtho以下であった場合に酒気帯び状態と判断してステップS10に進み、対応処理を実行する。具体的には、表示部52に酒気帯び運転をしないように促す警告表示を表示したり、制御部54によりエンジン始動装置に対し始動禁止制御を行うなどして、酒気帯び運転を行わせないようにする。
【0131】
一方、ステップS9で温度補正したエチルアルコール含有度ΔVdoが閾値Vtho所を超えていた場合には、酒気帯び状態ではないと判断し、このときは、エンジン始動禁止制御は行われないので、エンジンが始動される。又は、ステップS9で酒気帯びではないと判断された場合、再度ステップS1〜S9の処理を繰り返し、それでもなお酒気帯びではないと判断された場合にエンジンを始動できるようにしても良い。その他、ステップS1〜S9を所定回数繰り返して、酒気帯びであると判断された回数が全体回数の所定割合以上となった場合に、ステップS10の対応処理(エンジン始動禁止制御)を行うようにすることもできる。
【0132】
もちろん、ステップS8の温度補正処理は、例えば図10(B)に示した閾値温度補正方法に従った処理としても良い。
【0133】
図12は本実施形態で使用する波長抽出手段の構成要素として波長可変フィルタを用いた例を示した説明図である。図12において、赤外線カメラ12の対物レンズ22aと結像レンズ22bの間には波長可変フィルタ25が設けられ、波長可変フィルタ25の透過波長は、撮像制御部38の制御を受けて波長可変フィルタコントローラ48により制御される。この場合、図1に示すフィルタ切替ユニット14および駆動部16に代えて波長可変フィルタ25および波長か片コントローラを設けることになる。赤外線カメラ12内には撮像素子24が配置され、波長可変フィルタ25を透過した波長帯域の赤外線が結像レンズ22bにより結像され、これを画像として撮像する。このような波長可変フィルタ25としては、例えば特開平8−285688号のものが使用できる。
【0134】
図13は本発明によるエチルアルコール検知装置の他の実施形態を例示した要部構成ブロック図であり、本実施形態にあっては、使用する波長帯を2つとし(2波長式)、被験者の温度を1色温度計の原理に基づいて検出するようにしたことを特徴とする。
【0135】
図13において、エチルアルコール検知処理部10に対しては赤外線カメラ12とフィルタ切替ユニット14が設けられ、フィルタ切替ユニット14は、図2に示した構造と基本的に同じであるが、赤外線カメラ12の前に配置された回転円盤の例えば2箇所に透過帯域の異なる光学フィルタとして、エチルアルコールの吸収波長λ1=9.5μmを含む第1波長帯域を選択的に透過させる第1透過窓を形成するλ1フィルタ20−1と、波長λ1近傍の、エチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2=9.0μmを含む第2波長帯域を選択的に透過させる第2透過窓を形成するλ2フィルタ20−2を装着しており、図1の実施形態で使用している第3透過窓を形成するλ3フィルタ20−3は除かれている。
【0136】
なお、本実施形態においても、フィルタ切替ユニット14および制御部16に代えて、図12に示した波長か辺フィルタ25および波長可変コントローラ48を設けて波長λ1、λ2を抽出するようにすることが出来る。
【0137】
エチルアルコール検知処理部10にはCPU26が設けられ、CPU26のバス28に対し、AD変換器30、出力インタフェース32,34,35、及びメモリ36を接続し、CPU26には、プログラムの実行により実現される機能として、撮像制御部38、エチルアルコール検出部40、温度検知部42及び判定部44が設けられている。これらの構成及び機能は、撮像制御部38でλ3画像46−3を除く2つの画像、即ちλ1画像46−1とλ2画像46−2のみを撮像して保存する点と温度検知部42が1色温度計の原理に基づいて温度を算出する点以外は図1の実施形態と基本的に同じである。
【0138】
エチルアルコール検出部40は、メモリ36に格納されたλ1画像46−1とλ2画像46−2から求めた受光量Vd1にVd2に基づいて、エチルアルコール濃度に対応した前記(1)式で与えられるエチルアルコール含有度A=ΔVdを算出する。
【0139】
温度検知部42は、メモリ36に格納されたλ2画像46−2に基づいて運転者18の温度を算出する。図1の実施形態における2色温度計の原理による温度検知は、被検体(被験者)の放射率の影響を受けにくいため、放射率未知の物体の温度を検知でき、また、被検体(被験者)とセンサ間の媒質(気体、水分等)の影響を比較的受けにくい点で優れているが、このような影響をあまり受けない状況であれば、より簡便な構成をもつ1色温度計の原理により温度検知が可能である。
【0140】
即ち1つの波長帯域、例えばエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2=9.0μmを含む第2波長帯域の赤外線受光量Vd2を算出することにより、プランクの法則に基づき被検体(被験者)としての運転者18の温度を求めることができる。
【0141】
この場合には次の前提条件が必要となる。
(A) 被検体の放射率を人体の標準的な値(例えば0.95)と仮定する。
(B) 被検体とセンサ間には標準的な大気があると仮定する。
(C) 赤外線センサの全視野が被検体によりカバーされる。即ち被験者の体温以外の赤外線はセンサに入射しない(本項は2色温度計でも同じ)。
【0142】
ここで温度Tは、具体的にはメモリ36のλ2画像46−2から求めた受光量Vd2をMλ2として次式に代入して算出する。
【0143】
【数4】
【0144】
図14は図13の実施形態による酒気帯びの検知処理例を示したフローチャートであり、ステップS13でλ1フィルタ20−1を赤外線カメラ12の入射系にセットして撮像動作を行ってλ1画像46−1をメモリ36に保存し、次にλ2フィルタ20−2を赤外線カメラ12入射系にセットして赤外線カメラ12により撮像動作を行ってλ2画像46−2をメモリ36に保存する点、及びステップS15でλ1画像から受光量Vd1を計算し、次にλ2画像から受光量Vd2を計算する点、更に、ステップS17で1色温度計の原理に基づき受光量Vd2から被験者の温度Tを算出する以外は、図11に示した図1の実施形態による検知処理と同じになる。
【0145】
図15は本発明によるエチルアルコール検知装置の他の実施形態を例示した要部構成ブロック図であり、この実施形態にあっては、赤外線撮像素子に代えて赤外線受光素子を備えた赤外線センサを使用するようにしたことを特徴とする。
【0146】
即ち、図15において、エチルアルコール検知処理部10に対し設けられた赤外線カメラ12は、図1の撮像素子24に代えて赤外線センサ56を設けている。
【0147】
図16は図15の赤外線センサ56の例を示している。この赤外線センサ56はケース62の透光性ガラスなどのウィンドウ64を有し、ウィンドウ64の背後に、図に透視状態で示すように赤外線検出素子65を備えており、赤外線検出素子65は外部のリード66に接続されている。赤外線検出素子65としては、焦電素子、サーモパイル、サーミスタ、ボロメータなどの非冷却型素子を使用できる。またMCT、Insbなどの冷却型素子を用いてもよい。
【0148】
図15の実施形態において、撮像素子24の代わりに赤外線センサ56を設けた以外の構成は、図1の実施形態と基本的に同じである。
【0149】
一方、本実施形態のエチルアルコール検知処理部10に設けたCPU26には、赤外線センサ56に対応して、図1の撮像制御部38に代えて受光制御部60の機能が設けられている。受光制御部60は、図1の実施形態同様にフィルタ切替ユニット14を制御する。そして、赤外線センサ56によりλ1フィルタ20−1を透過して受光された被検体からの第1受光信号であるλ1受光量Vd1をメモリ36に記憶し、またλ2フィルタ20−2を透過して受光された被検体からの第2受光信号であるλ2受光量Vd2をメモリ36に記憶し、更に図示しないλ3フィルタを透過して受光された被検体からの第3受光信号であるλ3受光量Vd3をメモリ36に格納している。
【0150】
エチルアルコール検出部40は、メモリ36に格納されているλ1受光量Vd1とλ2受光量Vd2から前記(1)式によりエチルアルコール含有度ΔVdを算出し、また温度検知部42はメモリ36に格納されているλ2受光量Vd2とλ3受光量Vd3とから2色温度計の原理に基づいて運転者18の温度Tを検知し、判定部44は図10(A)の含有度温度補正方法又は図10(B)の閾値温度補正方法による温度補正を行った後に、閾値との比較により酒気帯び状態か否かを判定し、酒気帯び状態であることを判断した場合は、上記図1他の実施形態同様に対応処理を実行する。
【0151】
図17は図15の実施形態によるエチルアルコール検知処理例を示したフローチャートである。図17において、エチルアルコール検知処理部10およびその周辺装置に電源供給が開始されると、ステップS21で初期化、自己診断、各種設定の読み込み等を実行し、異常がなければステップS22に進み、図11のステップS2における処理同様にエチルアルコールの検知要求の有無を判別している。
【0152】
ステップS22で検知要求有りが判別されると、ステップS23でλ1フィルタ20−1を赤外線カメラ12の入射系にセットして赤外線センサ56で検知したλ1受光量Vd1をメモリ36に保存し、次にλ2フィルタ20−2を赤外線カメラ12の入射系にセットして赤外線センサ56で検知したλ2受光量Vd2をメモリ36に保存し、更にλ3フィルタ20−3を赤外線カメラ12の入射系にセットして赤外線センサ56で検知したλ3受光量Vd3をメモリ36に保存する。このステップS23におけるλ1受光量Vd1、λ2受光量Vd2、λ3受光量Vd3のメモリ保存は、1回であってもよいし、必要に応じてn回連続的に検出して保存するようにしてもよい。なお、複数回検出して保存した場合はその総和または平均等を受光量Vd1、Vd2、Vd3とすることができる。
【0153】
続いてステップS24で、前記(1)式によりλ1受光量Vd1とλ2受光量Vd2の差分となるエチルアルコール含有度A=ΔVdを計算する。
【0154】
続いてステップS25で、λ2受光量Vd2とλ3受光量Vd3の比(Vd2/Vd3)に基づき2色温度計の原理に従って運転者18の温度Tを算出する。続いてこれを用いてステップS26で温度補正処理を行う、この温度補正処理は例えば図10(A)の含有度温度補正方法または図10(B)の閾値温度補正方法に従って行う。
【0155】
続いてステップS27で閾値との比較により酒気帯び状態であるか否かを判定し、酒気帯び状態であると判断した場合は、ステップS28に進み、上記図1他の実施形態同様に対応処理を実行する。
【0156】
図18は図13に示したような、本発明による2波長式のエチルアルコール検知装置の、更に異なる他の実施形態を例示した要部構成ブロック図であり、本実施形態にあっても、被験者の温度を1色温度計の原理に基づいて検出するようにしたことをひとつの特徴とする。そして、本実施形態では撮像素子24および撮像制御部38に代えて、赤外線センサ56および受光制御部60を設けている点が図13のものと異なる。
【0157】
図18において、エチルアルコール検知処理部10に対しては赤外線カメラ12とフィルタ切替ユニット14が設けられており、フィルタ切替ユニット14は、エチルアルコールの吸収波長λ1=9.5μmを含む第1波長帯域を選択的に透過させる第1透過窓を形成するλ1フィルタ20−1と、λ1近傍の、エチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2=9.0μmを含む第2波長帯域を選択的に透過させる第2透過窓を形成するλ2フィルタ20−2の、2種類を切替える。
【0158】
エチルアルコール検知処理部10にはCPU26が設けられ、CPU26のバス28に対し、AD変換器30、出力インタフェース32,34,35、及びメモリ36を接続し、CPU26には、プログラムの実行により実現される機能として、受光制御部60、エチルアルコール検出部40、温度検知部42及び判定部44が設けられている。これらの構成及び機能は、受光制御部60による制御で、赤外線センサ56で被検体である運転者18からの赤外線を受光し、これから画像処理に依らずλ1受光量Vd1とλ2受光量Vd2を取得してメモリ36に保存する点以外は、図13の実施形態と基本的に同じである。
【0159】
図19は図18の実施形態によるエチルアルコールの検知処理を示したフローチャートであり、ステップS33でλ1フィルタ20−1を赤外線カメラ12の入射系にセットして赤外線センサ56で受光したλ1受光量Vd1をメモリ36に保存し、次にλ2フィルタ20−2を赤外線カメラ12の入射系にセットして赤外線センサ56で受光したλ2受光量Vd2をメモリ36に保存する点以外は、図14に示した図13の実施形態による検知処理と基本的に同じになる。
【0160】
図20は例えば図15又は図18のエチルアルコール検知装置で使用する赤外線センサの他の実施形態を例示した説明図であり、赤外線センサに複数の赤外線受光素子を設け、素子が増えたことに対応して、信号出力用のリード線66が増えている。それ以外の構成は、図16に示した実施形態の赤外線センサ56と基本的に同様である。
【0161】
この実施形態にあっては4つの赤外線検出素子65−1〜65−4を配置している。このため、赤外線センサ68に運転者である被写体の像が結像されると、被写体の像即ち運転者の顔の像につき4つに分割した領域ごとに、赤外線検出素子65−1〜65−4に対応した受光量が得られる。この4分割された赤外線検出素子65−1〜65−4からそれぞれ得られた受光量に基づき、その総和あるいは平均値等を算出することで、図15の検知装置に適用した場合にはλ1受光量Vd1、λ2受光量Vd2及びλ3受光量Vd3を求め、図18の検知装置に適用した場合にはλ1受光量Vd1及びλ2受光量Vd2を求めることになる。
【0162】
もちろん、赤外線選出素子65−1〜65−4のうち全ての受光量に依らず、任意の1つ或いは複数の受光量に基づいて同様に処理しても良い。このようにする場合、図6で説明したように、例えば4つの受光素子それぞれに対応する被検体の領域から、本発明の検知処理に適した領域からの赤外線受光量を選択して処理することもできる。
【0163】
図21は例えば図15又は図18の実施形態に示したエチルアルコール検知装置で使用する赤外線センサの、更に異なる他の実施形態を示した説明図であり、本実施形態にあっては赤外線センサ56或いは赤外センサ68に代えて適用できる赤外線センサ72を示している。
【0164】
図21において、赤外線センサ72は、内部構造を透視状態で示しており、受光側にウィンドウ64を備えたケース62内に、例えば3つの赤外線受光素子65−1〜65−3を配置し、その各前方にλ1フィルタ74−1、λ2フィルタ74−2及びλ3フィルタ74−3を配置している。
【0165】
λ1フィルタ74−1は、エチルアルコールの吸収波長λ1=9.5μmを選択透過するフィルタである。λ2フィルタ74−2は、エチルアルコールの吸収波長の近傍の、エチルアルコールの吸収の影響を受けない波長λ2=9.0μmを選択透過するフィルタである。λ3フィルタ74−3は、同じくエチルアルコールの吸収波長の近傍のエチルアルコールの有無の影響を受けない波長λ2=8.3μmを選択透過するフィルタである。
【0166】
ここでは3波長を選択受光できるものとしているが、2つの素子と、それぞれに対応する異なる2波長(λ1、λ2)を選択透過するフィルタを設けた赤外線センサとしても良い。このような赤外線センサ72を用いる場合には、フィルタ切替部14とその駆動部16、また波長可変フィルタ25とその制御部である波長可変フィルタコントローラ48を省略することができる。
【0167】
このようにすれば、赤外線センサ72自体で固定的に波長λ1,λ2,λ3若しくは波長λ1,λ2に対応した受光量を直接検出でき、装置構成が簡単にできると共に、CPU26による処理も簡略化されて処理負荷が低減できる。
【0168】
なお、上記全ての実施形態を含め、このλ2およびλ3は、エチルアルコールの吸収の影響を受けない波長として、本発明の目的の一部または全部適合する範囲で、任意に選択することができる。例えば、λ1、λ2、λ3の3波長を用いる実施形態において、λ2を8.3μm、λ3を9.0μmとしても良いし、λ1とλ2の2波長を用いる実施形態においてλ2を9.0μmとしても良い。
【0169】
また、スペクトル吸収波長λ1についても、使用する赤外線撮像素子または赤外線センサの受光スペクトルに合わせ、他の波長を選択することも可能である。例えば特開2009−148401において使用したλ1=2.77μmまたは3.37μmを用いた場合においても、その近傍にλ2,λ3を設定することにより被検体の温度の影響を受けない、精度の高い酒気帯びの判定が可能となる。
【0170】
また、上記の実施形態にあっては、フィルタ切替ユニットによる機械的なフィルタ切替えや、波長可変フィルタによるフィルタ切替えを例にとるものであったが、これ以外に回析格子などを用いた分光器により、目的とする波長帯域の画像もしくは受光量を測定するようにしてもよい。
【0171】
また、各波長の任意の一部を撮像素子で撮像して処理し、その他の波長を、受光素子を用いて受光して処理するようにしても良い。
【0172】
また、上記実施形態では、フィルタ切替ユニット14に設けた回転円盤に、各波長を選択透過させるフィルタを各1枚ずつ設けているが、複数枚ずつ設けても良いし、各波長につき対応するフィルタの枚数は同数でなくても良い。
【0173】
また、上記実施形態では車載用途に用いるエチルアルコール検知装置として説明したが、電池電源や他の専用電源を備えて可搬型とし、酒気帯びや飲酒状態を検査する装置としても利用できる。或いは、閾値による判定とそれに伴う処理に加えて、又はそれに代えて、エチルアルコール含有度(濃度)を表示する機能等を設け、酒気帯びや飲酒状態の検知以外のエチルアルコール含有度(濃度)検知装置としても利用できる。このような場合、被検体は必ずしも人体である必要は無く、目的に応じた被検体とすることは言うまでもない。
【0174】
また、上記実施の形態で示したプロセッサは、その機能の一部又は全部を、例えばワイヤードロジック等による他の手段に代えることができる。プロセッサを含め他の電気的、機能的構成は適宜に統廃合することもできる。
【0175】
また上記の実施形態における検知処理のフローチャートは処理の概略例を説明したもので、処理の順番等はこれに限定されない。また必要に応じ他の処理を追加、挿入する等ができる。
【0176】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0177】
10:エチルアルコール検知処理部
12:赤外線カメラ
14:フィルタ切替ユニット
16:駆動部
18:被験者
20−1:λ1フィルタ
20−2:λ2フィルタ
20−3:λ3フィルタ
22:光学系
22a:対物レンズ
22b:結像レンズ
24:撮像素子
25:波長可変フィルタ
26:CPU
28:バス
30:AD変換器
32,34,35:出力IF
36:メモリ
38:撮像制御部
40:エチルアルコール検出部
42:温度検知部
44:判定部
46:画像
46−1:λ1画像
46−2:λ2画像
46−3:λ3画像
48:波長可変フィルタコントローラ
50−1〜50−3:特徴抽出領域
52:表示部
54:制御部
56,68:赤外線センサ
60:受光制御部
62:ケース
64:ウインドウ
65,65−1〜65−3:赤外線検出素子
66:リード
72:マルチ赤外線センサ
74−1:λ1フィルタ
74−2:λ2フィルタ
74−3:λ3フィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体から放射する赤外線に基づいて血液中に溶け込んでいるエチルアルコールを検出して、酒気帯び運転などを検知するエチルアルコール検知装置及び検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酒気帯び運転を防止するための装置にあっては、運転者の呼気に含まれるエチルアルコールをガスセンサにより検出し、所定以上のエチルアルコールが検出された場合には自動車を始動させないように構成している。(特許文献1)。
【0003】
一般に、呼気中に含まれるアルコールの濃度は血液中のアルコール濃度と比例関係にある。法規上定められた酒気帯び運転の基準は、呼気中のアルコール濃度0.15mg/Lであり、これは血中アルコール濃度で0.03%に相当する。このため呼気中のアルコール濃度を測定することで、酒気帯び状態を検知してエンジン始動装置等に対し所定の制御を行うことで運転を禁止することができる。
【0004】
しかしながら、このような従来の酒気帯び防止装置にあっては、運転者の位置する頭上近辺の空間の空気をファンにより吸引してガスセンサでアルコールを間接的に検知するようにしているため、呼気を直接採取してアルコール濃度を測定する場合に比べ、測定値が実際の呼気中のアルコール濃度に対し低めの値となり、酒気帯び運転を確実に防止できない恐れがある。
【0005】
またアルコールを検出するガスセンサは使用中にも異物の付着や酸化などにより感度が変化するため、自動的に感度を調整する校正処理が必要であり、更に、定期的に清掃点検などのメンテナンスをしなければ検出精度を維持することができないという問題がある。
【0006】
このような問題を解決するため本願発明者等にあっては、被験者からの赤外線放射光のうちエチルアルコールの吸収波長λ(1)、その近傍のエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ(2)、エチルアルコールと同じ吸収波長を持つ外乱物質の特徴吸収波長λ(3)の各々について赤外線強度を検出器により検出し、波長λ(1)と波長λ(2)の赤外線強度に基づいてエチルアルコール含有度を求め、また波長λ(2)と波長λ(3)の赤外線強度に基づいて外乱物質検出値を求め、被験者の血中エチルアルコール含有度と外乱物質検出値とに基づいてエチルアルコールの検出又は非検出を判定する装置を提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−150853号公報
【特許文献2】特開2009−148401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来のエチルアルコールの吸収波長λ(1)、その近傍のエチルアルコール吸収率の小さな波長λ(2)、及び上述した外乱物質の特徴吸収波長λ(3)の赤外線強度から被験者の血中エチルアルコール含有度及び外乱物質検出値を求めて酒気帯びを判定する方法にあっては、被験者の温度(体温)が大きく変化した場合、波長λ(1)、λ(2)及びλ(3)における検出器の検出値が変化するため、正確なエチルアルコール含有度を求めることができず、酒気帯びの判定精度(検知精度)が低くなるという問題があった。
【0009】
本発明は、被験者の体温に影響されることなく被験者の放射する赤外線から血中のエチルアルコール含有度、或いはそれを示す指標を正確に検知して酒気帯びの判定精度を高めるエチルアルコール検知装置及び検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(検知装置A)
本発明は、エチルアルコール検知装置に於いて、
赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子と、
被験者像を撮像素子に結像させる光学系と、
被験者からのエチルアルコールの吸収波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ3)を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第3透過窓と、
第1透過窓を透過して結像された第1被験者画像、第2透過窓を透過して結像された第2被験者画像、及び第3透過窓を透過して結像された第3被験者画像を、撮像素子により撮像してメモリに格納する撮像制御部と、
メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
メモリに格納された第2被験者画像と第3被験者画像に基づいて被験者の温度を算出する温度検知部と、
エチルアルコール含有度と被験者の検知温度に基づいてエチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
ここで、第1透過窓は、第1波長帯域として波長λ1=9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第2透過窓及び第3透過窓は第1波長帯域を含まない第2波長帯域及び第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0012】
第2透過窓は、第2波長帯域として波長λ2=9.0μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第3透過窓は、第3波長帯域として波長λ3=8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0013】
エチルアルコール検出部は、第1被験者画像と第2被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値(Vd1,Vd2)の差分値(ΔVd=Vd1−Vd2)としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度(ΔVd)を算出する。
【0014】
温度検知部は、第2被験者画像と第3被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値から被験者の温度を算出する。
【0015】
判定部は、所定の温度補正係数(K)に基づき、所定の基準温度(To)で設定した所定の閾値(Vtho)を、被験者の検知温度(T)における閾値(Vth)に温度補正し、エチルアルコール含有度(ΔVd)が温度補正した閾値(Vth)以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、エチルアルコール含有度(ΔVd)が温度補正した閾値(Vth)を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。この場合の閾値の温度補正は次式で補正される。
Vth=Vtho+K(T−To)
【0016】
判定部は、所定の温度補正係数(K)に基づき、被験者の検知温度(T)におけるエチルアルコール含有度(ΔVd)を、所定の閾値(Vtho)を設定した基準温度(To)でのエチルアルコール含有度(ΔVdo)に補正し、温度補正したエチルアルコール含有度(ΔVdo)が閾値(Vtho)以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、温度補正したエチルアルコール含有度(ΔVdo)が閾値(Vtho)を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。この場合のエチルアルコール含有度の温度補正は次式で補正される。
ΔVdo=ΔVd+K(T−To)
【0017】
撮像素子、光学系、第1透過窓、第2透過窓及び第3透過窓を冷却する冷却機構を設ける。
【0018】
(検知装置B)
本発明は、エチルアルコール検知装置に於いて、
赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子と、
被験者像を撮像素子に結像させる光学系と、
被験者からのエチルアルコールの吸収波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
第1透過窓を透過して結像された第1被験者画像および第2透過窓を透過して結像された第2被験者画像を透過して結像された第2被験者画像を、前記撮像素子により撮像してメモリに格納する撮像制御部と、
メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
メモリに格納された第2被験者画像に基づいて前記被験者の温度を算出する温度検知部と、
エチルアルコール含有度と被験者の検知温度に基づいてエチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0019】
ここで、第1透過窓は、第1波長帯域として波長λ1=9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第2透過窓は第1波長帯域を含まない第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0020】
第2透過窓は、第2波長帯域として波長λ2=9.0μm又は8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0021】
エチルアルコール検出部は、第1被験者画像と第2被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【0022】
温度検知部は、第2被験者画像における第1被験者画像と同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値から被験者の温度を算出する。
【0023】
判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、被験者の検知温度における閾値に温度補正し、エチルアルコール含有度が温度補正した閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、エチルアルコール含有度が温度補正した閾値を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。
【0024】
判定部は、所定の温度補正係数に基づき、被験者の検知温度におけるエチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、温度補正したエチルアルコール含有度が閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、温度補正したエチルアルコール含有度が閾値を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。
【0025】
撮像素子、光学系、第1透過窓、及び第2透過窓を冷却する冷却機構を設ける。
【0026】
(検知装置C)
本発明はエチルアルコール検知装置に於いて、
1または複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサと、
被験者像を赤外線センサに結像させる光学系と、
被験者からのエチルアルコールの吸収波長波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ3)を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第3透過窓と、
赤外線センサにより、第1透過窓を透過して受光された第1受光信号、第2透過窓を透過して受光された第2受光信号、及び第3透過窓を透過して受光された第3受光信号を検出してメモリに格納する受光制御部と、
メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
メモリに格納された第2受光信号と第3受光信号に基づいて被験者の温度を算出する温度検知部と、
エチルアルコール含有度と被験者の検知温度に基づいてエチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0027】
ここで、第1透過窓は、第1波長帯域として波長λ1=9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第2透過窓及び第3透過窓は第1波長帯域を含まない第2波長帯域及び第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0028】
第2透過窓は、第2波長帯域としてλ2=9.0μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第3透過窓は、第3波長帯域としてλ3=8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0029】
エチルアルコール検出部は、第1受光信号と第2受光信号の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出する。
【0030】
温度検知部は、第2受光信号と第3受光信号の比率に基づいて被験者の温度を算出する。
【0031】
判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、被験者の検知温度における閾値に温度補正し、エチルアルコール含有度が温度補正した閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、エチルアルコール含有度が温度補正した閾値を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。
【0032】
判定部は、所定の温度補正係数に基づき、被験者の検知温度におけるエチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、温度補正したエチルアルコール含有度が閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、温度補正したエチルアルコール含有度が閾値を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。
【0033】
赤外線センサ、光学系、第1透過窓、第2透過窓及び第3透過窓を冷却する冷却機構を設ける。
【0034】
(検知装置D)
本発明は、エチルアルコール検知装置に於いて、
1または複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサと、
被験者像を赤外線センサに結像させる光学系と、
記被験者からのエチルアルコールの吸収波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
赤外線センサにより、第1透過窓を透過して受光された第1受光信号及び第2透過窓を透過して受光された第2受光信号を検出してメモリに格納する受光制御部と、
メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
メモリに格納された第2受光信号に基づいて被験者の温度を算出する温度検知部と、
エチルアルコール含有度と被験者の検知温度に基づいてエチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0035】
ここで、第1透過窓は、第1波長帯域としてλ1=9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第2透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0036】
第2透過窓は、第2波長帯域としてλ2=9.0μm又は8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0037】
エチルアルコール検出部は、第1受光信号と第2受光信号の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出する。
【0038】
判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、被験者の検知温度における閾値に温度補正し、エチルアルコール含有度が温度補正した閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、エチルアルコール含有度が温度補正した閾値を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。
【0039】
判定部は、所定の温度補正係数に基づき、被験者の検知温度におけるエチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、温度補正したエチルアルコール含有度が閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、温度補正したエチルアルコール含有度が記閾値を超えている場合にエチルアルコールの非検出を判定する。
【0040】
赤外線センサ、光学系、第1透過窓及び第2透過窓を冷却する冷却機構を設ける。
【0041】
(検知方法A)
本発明は、エチルアルコール検知方法に於いて、
被験者からのエチルアルコールの吸収波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子に結像して撮像した第1被験者画像をメモリに格納し、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して撮像素子に結像して撮像した第2被験者画像をメモリに格納し、
記被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ3)を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を、第3透過窓により選択的に透過して撮像素子に結像して撮像した第3被験者画像をメモリに格納し、
メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
メモリに格納された第2被験者画像と第3被験者画像に基づいて被験者の温度を算出し、
エチルアルコール含有度と被験者の検知温度に基づいてエチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とする。
【0042】
これ以外の特徴は上記の検知装置Aの場合と基本的に同じになる。
【0043】
(検知方法B)
本発明は、エチルアルコール検知方法に於いて、
被験者からのエチルアルコールの吸収波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子に結像して撮像した第1被験者画像をメモリに格納し、
被験者からの第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して撮像素子に結像して撮像した第2被験者画像をメモリに格納し、
メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
メモリに格納された第2被験者画像に基づいて被験者の温度を算出し、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とする。
【0044】
これ以外の特徴は上記の検知装置Bの場合と基本的に同じになる。
【0045】
(検知方法C)
本発明は、エチルアルコール検知方法に於いて、
被験者からのエチルアルコールの吸収波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して1又は複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサに結像して受光した第1受光信号をメモリに格納し、
被験者からの前記第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して赤外線センサに結像して受光した第2受光信号をメモリに格納し、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ3)を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を、第3透過窓により選択的に透過して赤外線センサに結像して受光した第3受光信号をメモリに格納し、
メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
メモリに格納された第2受光信号と第3受光信号に基づいて被験者の温度を算出し、
エチルアルコール含有度と被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とする。
【0046】
これ以外の特徴は上記の検知装置Cの場合と基本的に同じになる。
【0047】
(検知方法D)
本発明は、エチルアルコール検知方法に於いて、
被験者からのエチルアルコールの吸収波長(λ1)を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して1又は複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサに結像して受光した第1受光信号をメモリに格納し、
被験者からの第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長(λ2)を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して赤外線センサに結像して受光した第2受光信号をメモリに格納し、
メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
メモリに格納された第2受光信号に基づいて被験者の温度を算出し、
エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいてエチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とする。
【0048】
これ以外の特徴は上記の検知装置Dの場合と基本的に同じになる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、被験者からの赤外線放射光のうち、検出器による、エチルアルコールの吸収波長λ1を含む第1波長帯域の受光量Vd1、第1波長帯域の近傍のエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2を含む第2波長帯域の受光量Vd2、第1波長帯域の近傍のエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ3を含む第3波長帯域の受光量Vd3の各々を検出し、波長λ1、λ2に対応した受光量Vd1、Vd2の差分ΔVdとしてエチルアルコール含有度を算出すると共に、波長λ2、λ3に対応した受光量Vd2、Vd3から被験者の温度(体温)を算出し、エチルアルコール含有度を被験者の温度により温度補正して酒気帯び有無を判定したため、被験者の体温の変化に伴う判定誤差を小さくすることができる。
【0050】
また被験者の温度は、単一の波長に対応した赤外線受光量からも算出可能であることから、波長λ2又はλ3に対応した何れかひとつの波長受光量Vd2又はVd3から被験者の温度を算出してエチルアルコール含有度を温度補正することができ、この場合には波長が2つで済むことから、波長抽出に係る構造や電気回路等を削減でき、装置構成を簡単に、また低コストにすることができる。
【0051】
またエチルアルコールの吸収波長λ1を9.5μm、その近傍のエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2、λ3を例えば9.0μm、8.3μmに設定し、プランクの法則に基づく被験者の分光放射発散度の高い波長帯を使用することで、赤外線カメラや赤外線受光素子に入射する赤外線量を高くして受光出力を大きくとることができる。
【0052】
また撮像素子、光学系、第1透過窓、第2透過窓及び第3透過窓を冷却する冷却機構を設け、例えば常温以下に冷却することにより、赤外線受光量に影響するノイズ成分を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】3波長赤外線検知に基づく本発明によるエチルアルコール検知装置の実施形態を示したブロック図
【図2】本実施形態で使用するフィルタ切替えの赤外線カメラを示した説明図
【図3】本実施形態で使用する冷却機構を示した説明図
【図4】エチルアルコールの波長スペクトラム分布を示した説明図
【図5】プランクの法則による波長に対する分光放射発散度を示した特性グラフ図
【図6】本実施形態における特徴領域の抽出を示した説明図
【図7】平常状態と飲酒状態における被験者の呼気中アルコール濃度と測定箇所温度の測定結果及び2波長赤外線出力差(エチルアルコール含有度)のグラフ分布を示した説明図
【図8】図7の測定結果による被験者の温度と2波長赤外線の出力差分値(エチルアルコール含有度)の測定点の分布を示したグラフ図
【図9】本実施形態における2波長による温度検出特性を示した特性グラフ図
【図10】本実施形態における2波長赤外線の出力差分値2ΔVd(エチルアルコール含有度)の温度補正と、閾値の温度補正を示した特性グラフ図
【図11】図1の実施形態によるエチルアルコールの検知処理を示したフローチャート
【図12】本実施形態で使用する波長可変フィルタを用いた赤外線カメラを示した説明図
【図13】2波長赤外線検知に基づく本発明によるエチルアルコール検知装置の他の実施形態を示したブロック図
【図14】図13の実施形態によるエチルアルコールの検知処理を示したフローチャート
【図15】赤外線センサを用いた3波長赤外線検知に基づく本発明によるエチルアルコール検知装置の他の実施形態を示したブロック図
【図16】図15の赤外線センサを示した説明図
【図17】図15の実施形態によるエチルアルコールの検知処理を示したフローチャート
【図18】赤外線センサを用いた2波長赤外線検知に基づく本発明によるエチルアルコール検知装置の他の実施形態を示したブロック図
【図19】図18の実施形態によるエチルアルコールの検知処理を示したフローチャート
【図20】図15又は図18で使用する複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサを示した説明図
【図21】図15又は図18で使用するマルチ赤外線センサを示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は3波長赤外線検出に基づく本発明によるエチルアルコール検知装置の実施形態について、その要部構成例を示した説明図である。
【0055】
図1において、エチルアルコール検知装置のエチルアルコール検知処理部10はコンピュータのハードウェア環境とソフトウェア環境とを備えて機能構成されており、エチルアルコール検知処理部10に対しては赤外線カメラ12とフィルタ切替ユニット14が設けられている。これは一例であり、各機能の分離、統合は任意に行うことができる。また各機能の一部または全部は、ソフトウェア(プログラム)によって実行されるものであっても、ハードウェアによって実行されるものであっても良い。
【0056】
赤外線カメラ12は例えば自動車車両のダッシュボードなどに内蔵されており、フィルタ切替ユニット14を介して、本実施の形態においては例えば、被験者(被検体)となる運転者18の顔から放射される赤外線放射光による画像を撮像する。
【0057】
波長抽出手段を構成するフィルタ切替ユニット14は、図2に取り出して示すように、赤外線カメラ12の前に配置された回転円盤の例えば盤面3箇所の開口部に、帯域の異なる光学的フィルタとして、本実施形態にあっては第1透過窓を形成するλ1フィルタ20−1、第2透過窓を形成するλ2フィルタ20−2及び第3透過窓を形成するλ3フィルタ20−3を装着し、これらのフィルタを順次切り替えながら、運転者18の顏の赤外線放射光による画像を撮像する。
【0058】
なお、以下でλ1フィルタ20−1、λ2フィルタ20−2、λ3フィルタ20−3を総称するときは「フィルタ20」という。また、本実施の形態においては、各フィルタはそれぞれ他のフィルタと重複しない波長帯を選択透過させるバンドパスフィルタとする。ただし、これにより本発明が限定されるものではなく、本発明の目的の全部また一部を達成できる範囲において、透過波長の重複も許される。
【0059】
再び図1を参照するに、赤外線カメラ12には光学系22と、検出器として、赤外線波長帯域に感度を持つ撮像素子(ここでは例えばCCD)24が設けられている。フィルタ切替ユニット14は、モータなどを備えた駆動部16により上記の円盤を回転してフィルタ切替えを行うことができる。
【0060】
赤外線カメラ12及びフィルタ切替ユニット14に対しては図3に示すように冷却機構が設けられている。図3において、赤外線カメラ12のレンズ開口部には鏡筒76が装着され、赤外線カメラ12の入射系に配置された鏡筒76の前(撮像対象側=レンズの物体面側)には、図2に示したようにλ1フィルタ20−1、λ2フィルタ20−2及びλ3フィルタ20−3を各開口80に配置した回転自在な回転円盤78が配置されている。鏡筒76の側面にはチューブ84を介して外部に設置した冷却ファン82が接続されている。
【0061】
冷却ファン82は外部から吸入した冷却空気を、チューブ84を介して鏡筒76に供給することで、赤外線カメラ12のレンズや回転円盤78のフィルタ20を常温以下に冷却している。
【0062】
全ての物体はその温度に応じた赤外線を放射しており、本実施形態における撮像素子24の前に置かれる光学系22やフィルタ20からもその温度に応じた赤外線が放射されている。この自発赤外線がバックグラウンド光(ノイズ成分)として運転者18からの赤外線に重畳されて撮像素子に入射することで、S/N比を低下させる。そこで図2のような冷却機構を設けて光学系22やフィルタ20を常温以下に冷却することにより、ノイズ成分を小さくする。
【0063】
なお、このような冷却機構に代えて、またはそれに加えて、フィルタ20や光学系22のレンズ部等に、ペルチェ素子等の冷却器を取り付けて冷却するようにして良い。
【0064】
また、λ1フィルタ20の表面において、装置内部からの放射赤外線が反射して撮像素子24に入射することを防ぐため、フィルタ面を光軸に対し直交しないよう斜めに所定角度傾斜させて配置し、内部からの放射赤外線が装置内に再帰し難くなるような構造とすることもできる。なお、図3の冷却機構は、後の説明で明らかにする他の実施形態についても同様に適用される。
【0065】
再び図1を参照するに、エチルアルコール検知処理部10にはCPU26が設けられ、CPU26のバス28に対し、AD変換器30、出力インタフェース32,34,35、及びメモリ36を接続している。
【0066】
AD変換器30には赤外線カメラ12の撮像信号出力線が接続され、撮像素子24で撮像された運転者18の赤外線画像(本実施形態では静止画像)をここでデジタル画像データに変換して取り込み、メモリ36にλ1画像46−1、λ2画像46−2、λ3画像46−3として格納する。このような赤外線カメラ12を用いた画像撮影の制御動作は、CPU26に設けた撮像制御部38により行われる。なお、以下でλ1画像46−1、λ2画像46−2、λ3画像46−3を総称する場合には「画像46」という。
【0067】
出力インタフェース32には駆動部16が接続され、エチルアルコール検知処理部10からの制御信号で駆動部16を切り替え制御し、赤外線カメラ12の撮像動作に連動してフィルタ切替ユニット14のフィルタ切替えを行う。即ち、上記の画像データ取り込みは、各波長に対応してフィルタ20を切り替えつつ、波長毎に順次行われる。
【0068】
出力インタフェース34には表示部52が接続され、また出力インタフェース35には制御部54が接続されている。撮像制御部38による制御を受け、表示部52には、エチルアルコール検知処理部10で処理された検出や判定、検知の結果、例えば運転者18の酒気帯びの有無などが必要に応じて表示される。表示部に代えて、又はこれに加えて、必要に応じ音で各種報知を行う音響報知部を設けても良い。
【0069】
制御部54は、エチルアルコール検知処理部10で運転者18の酒気帯び運転が判別された際に、撮像制御部38による制御を受け、例えばエンジン始動装置等に対してエンジンの始動をできないよう禁止するといった酒気帯び運転防止制御を行う。
【0070】
CPU26には、プログラムの実行により実現される機能として、撮像制御部38、エチルアルコール検出部40、温度検知部42及び判定部44が設けられている。本実施形態のエチルアルコール検知処理部10にあっては、運転者18の酒気帯び状態を顔面などの皮膚直下の毛細血管に表れる含有エチルアルコールから検知する。
【0071】
毛細血管中の含有エチルアルコールの検出は、運転者18の体温による人体からの赤外線放射光から、エチルアルコールによる特定波長の吸収による減衰を検知することを基本としている。
【0072】
図4は検知対象とするエチルアルコールの吸収波長スペクトル分布を示した説明図である。エチルアルコールC2H5OHは、その分子構造に由来し、2.77μm、3.37μm及び9.5μmなどの吸収波長を持っている。例えば吸収波長9.5μmは、エチルアルコール中の−CH3の結合伸縮に伴い、エチルアルコール分子が吸光する波長である。
【0073】
そこで運転者からの赤外光のうち、エチルアルコールの吸収波長λ1として例えば、λ1=9.5μmを含む第1波長帯域を選択的に透過させる第1透過窓を形成する第1フィルタとしてλ1フィルタ20−1を介して赤外光を監視すると、所定量のエチルアルコールが毛細血管中に含まれている状態即ち酒気帯び状態では、1波長帯域の赤外光は毛細血管中のエチルアルコール濃度(含有度)に応じた吸光度を示し、このとき撮像素子24で撮像されたλ1画像46−1における各画素から求められた受光量Vd1は小さくなる。なお、本実施形態においては受光量Vd1、また後述するVd2、Vd3を求める際には、画像46のうち、例えば運転者像の所定領域(後述)における所定の画素群を抽出し、抽出された画素群に基づいて行う。
【0074】
ここで、エチルアルコールの吸収波長λ1として例えば、2.77μmや3.37μm等ではなく、比較的長波長側のλ1=9.5μmを設定している理由を説明する。物体から放射される赤外線は、物体の温度に依存して変化し、波長毎の分光放射発散度はプランクの法則により求められる。いま人体の温度を35℃とすれば、プランクの法則による分光放射発散度は図5に示す特性となる。
【0075】
図5において、人体の温度を35℃での分光放射発散度は、波長3.0μm付近から立ち上がり、9μm付近でピークとなっている。そこで図4のエチルアルコールの吸収波長スペクトル分布にあっては、約3.4μmと9.5μmに吸収スペクトルを持つが、3.4μmでの分光放射発散度は5.59×105(W/m2・m)であり、9.5μmでの分光放射発散度は3.56×107(W/m2・m)である。そこで本発明にあっては、λ1=9.5μmを用いることにより、撮像素子に入射する赤外線量は約3.4μmを用いる場合の64倍程度となり、大きな赤外線受光量を得ることができる。この点は、以下に説明する波長λ2及びλ3についても同様である。
【0076】
次に本実施形態にあっては、エチルアルコールの吸収波長λ1=9.5μm近傍の、エチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2として、例えばλ2=9.0μmを含む第2波長帯域を選択的に透過させる第2透過窓を形成する第2フィルタとしてλ2フィルタ20−2を設け、λ2フィルタ20−2を介して運転者18からの赤外光を監視する。λ2フィルタ20−2を透過して得られる運転者18からの赤外光撮像画像であるλ2画像46−2の所定画素から求められた受光量Vd2は、エチルアルコールの有無に関係なく、運転者から、その体温に応じた赤外線放射量に相当する受光量として得られる。
【0077】
そこで本発明にあっては、毛細血管中のエチルアルコール濃度に応じたエチルアルコール含有度Aとして、エチルアルコールの吸収波長λ1=9.5μmを含む赤外線の受光量Vd1と、エチルアルコールによる吸収の影響を受けないλ2=9.0μmを含む赤外線の受光量Vd2との例えば差分値ΔVdを算出する。
ΔVd=Vd1−Vd2 (1)
【0078】
本実施形態におけるエチルアルコール含有度(を表す指標)ΔVdの算出は、図1のCPU26に設けた撮像制御部38及びエチルアルコール検出部40により行われる。つまり、第2波長帯域が第1波長帯域に近接しているため、第2波長帯域の赤外線受光量Vd2が、エチルアルコールの吸収が無い場合に第1波長帯域から得られるべき赤外線受光量vd1と近似することから、(1)式によりエチルアルコール含有度ΔVを得ることができる。
【0079】
なお、第2波長帯域が第1波長帯域と近接していない場合、またはより正確なエチルアルコール検知を行う場合には、後述のプランクの法則により、エチルアルコールの吸収が無い場合に第1波長帯域から得られるべき赤外線受光量Vd1’を推定し、
ΔVd=Vd1’−Vd2
を求める。
【0080】
撮像制御部38は、例えば運転者18が運転を開始するためにイグニッションキーをオンとしたような所定のタイミングを検出した場合に、出力インターフェース32を介しフィルタ切替ユニット14の駆動部16にフィルタ切替動作させ、図3に示す鏡筒76の入射側に位置し、赤外線カメラ12の光学系に入射する赤外線の波長帯を選択抽出する光学フィルタをλ1フィルタ20−1、λ2フィルタ20−2、更に後の説明で明らかにするλ3フィルタ20−3に順次切り替えながら、各フィルタを介して、赤外線カメラ12により運転者18の顔が撮像されるようにする。
【0081】
そしてλ1フィルタ20−1を透過して撮像された第1被写体画像であるλ1画像46−1、λ2フィルタ20−2を透過して撮像された第2被写体画像であるλ2画像46−2、更にλ3フィルタ20−3を透過して撮像された第3被写体画像であるλ3画像46−3のそれぞれを、AD変換器30でデジタル画像データに変換し、メモリ36に格納する。
【0082】
エチルアルコール検出部40は、メモリ36に格納されたλ1画像46−1とλ2画像46−2とに基づいて、エチルアルコール濃度に対応した前記(1)式で与えられるエチルアルコール含有度ΔVdを算出する。
【0083】
図6は図1のエチルアルコール検出部40でエチルアルコール含有度ΔVd等を計算する際に用いられる運転者18の特徴領域の画像(画素群)抽出イメージを例示している。運転者18の毛細血管中のエチルアルコールの含有度を赤外線受光量から検知するためには、運転者の顔の毛細血管が皮膚表面に表われていてエチルアルコールによる吸収に伴う受光量減衰が十分に得られる領域を特定して、当該領域における画像データに基づいてエチルアルコール含有度Aを算出する必要がある。
【0084】
図6の場合にあっては、エチルアルコールの有無に影響されず運転者18から放射される赤外線量に応じた受光量に基づいて生成されるλ2画像46−2を対象に、体温による赤外線放射が良好に検出できる例えば唇など皮膚の薄い特徴抽出領域50−1や、両目の周囲に設定した特徴抽出領域50−2,50−3等の何れか1つの領域の所定画素群におけるデジタル画像データを使用して、Vd1、Vd2、Vd3、を求め、これらに基づいてエチルアルコール含有度A=ΔVd、温度係数K等を算出する。
【0085】
前記(1)式におけるエチルアルコール含有度ΔVdを算出に用いるλ1画像46−1の受光量Vd1及びλ2画像46−2の抽出画像領域における受光量Vd2の計算は、上記特徴抽出領域画素群に含まれる各画素値(画素毎に受ける光量レベル:ここでは電圧値)の総和または平均値を求め、これをVd1,Vd2として前記(1)式からエチルアルコール含有度ΔVdを算出する(後述するVd3も同様)。もちろん総和や平均値に代わるものを求めてVd1、Vd2、Vd3としても良い。
【0086】
また、前記(1)式にあっては、Vd1とVdI2の減算値(Vd1−Vd2)を計算しているが、この代わりに比率(Vd1/Vd2)、二乗差(Vd1−Vd2)2を計算してエチルアルコール含有度Aとしても良い。
【0087】
この(1)式で与えられるエチルアルコール含有度A=ΔVdが、予め定めた所定の閾値Vth以下であれば、酒気帯びの度合が大きい(或いは酒気帯び状態である)と判断することができる。もちろん、別の閾値との比較によって、酒気帯びよりもアルコール含有度の大きい飲酒状態を判定することもできる。
【0088】
しかしながら、(1)式で与えられるエチルアルコール含有度A=ΔVdは、被験者である運転者18の体温に応じて波長λ1、λ2の赤外線強度が異なるため、酒気帯びの度合を正確に判定することができない。
【0089】
図7(A)は平常状態と飲酒状態における5人の被験者A〜Eの呼気中アルコール濃度と測定箇所温度(体温に相当)の測定結果であり、図7(B)は平常状態と飲酒、酒気帯び状態における2波長赤外線の出力差分値ΔVd(エチルアルコール含有度Aに相当)をプロットしたグラフである。なお、酒気帯びとは呼気1リットル中にアルコール0.15mg以上含まれた場合であり、法規上定められている。
【0090】
図7(B)のグラフを見ると、被験者A〜Eの飲酒、酒気帯び状態の出力差分値に対し、平常状態の出力差分値は概ね小さくなる傾向が見られる。これは血液中に含まれたエチルアルコールによる波長λ1=9.5μmの赤外線吸収によりλ1受光量Vd1が低下し、これに対しエチルアルコールによる吸収の影響を受けにくいλ2受光量Vd2は略変化無く、そのため飲酒、酒気帯び状態の出力差分値ΔVdが小さくなることによる。
【0091】
一方で平常状態と飲酒、酒気帯び状態における出力差分値およびその変化は、個人により異なっており、一律固定の閾値により飲酒、酒気帯び状態か否かを判別することは難しい。これは飲酒量の違いや飲酒行為による体内アルコール含有度の差が現われると共に、各人の体温の違いおよび飲酒、酒気帯び状態と平常状態の体温の変化違いにより、出力差分値が変化することによると推定される。例えば飲酒状態の被検者Eと、平常状態の被検者Aを比べると、そのΔVdはほぼ同じであり、一律固定の閾値では酒気帯びの有無を判定しにくい。
【0092】
しかし、被検者の体温を知ることができれば、体温の影響を排除することができ、酒気帯び状態の正確な判定識別が可能となる。
【0093】
図8は図7(B)の2波長赤外線の出力差分値ΔVd(エチルアルコール含有度Aに相当)を図7(A)の被験者の温度(体温に相当)に対応してプロットしたグラフを示す。図8において、平常時のΔVdは概ね縦軸方向上側に分布し、一方、飲酒時の測定点は同下側に分布し、更に両者とも温度の上昇に応じて右上りに分布している。
【0094】
このため平常時の分布領域と飲酒時の測定点集合分布領域の間に、両者を明確に分けることのできる判定閾値ライン100を設定することができる。判定閾値ライン100は正の温度係数Kとして、
K=(0.1−0.04)/(35−31)=0.012[ボルト/℃]
を持っている。
【0095】
このように判定閾値ライン100の温度係数Kが定まれば、被験者の温度に応じて酒気帯び状態の判定閾値を温度補正し、エチルアルコール含有度ΔVdと比較することにより、温度の影響を受けることなく酒気帯び状態であるか否かを正しく判定することができる。
【0096】
なお、図8の判別閾値ライン100の設定については、実際には充分な数の被験者を対象にしたデータに基づいて各ΔVを図8のようにプロットいしたうえで精度の高い判別閾値ラインを設定して温度補正係数Kを求めることになる。また、性別や年齢に分けて最適な判別閾値ラインを設定して温度補正係数Kを求めるようにしても良い。
【0097】
そこで図1の実施形態にあっては、被験者である運転者18の温度を測定するため、エチルアルコールの吸収波長λ1=9.5μmの近傍にエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ3として、λ2とも異なる例えばλ3=8.3μmを含む第3波長帯域を選択的に透過させる第3透過窓を形成するλ3フィルタ20−3を図2に示すように設け、λ3フィルタ20−3を透過してλ3画像46−3の所定画素群から受光量Vd3を求め、これと、別に求めているλ2画像46−2の受光量Vd2とを用いて2色温度計の原理により運転者18の温度Tを、CPU26に設けた温度検知部42で算出する。この2色温度計の原理による人体の温度測定を説明すると次のようになる。
【0098】
エチルアルコールによる吸収率の小さな2波長λ2、λ3を、例えばλ2=9.0μm、λ3=8.3μmとすると、黒体からの赤外線放射強度は、プランクの法則として知られる以下の式により求められる。
【0099】
即ち、温度T(K)の黒体からの波長λ(m)による放射エネルギー密度Mλ(J/m3)は次式で与えられる。
【0100】
【数1】
ここで
プランクの定数 h=6.63×10−34 (J・Sec)
ボルツマン定数 κB=1.38×10-23 (J/K)
光速 c= 3×108(m/Sec)
てあり、これを代入すると、
【0101】
【数2】
となる。
【0102】
よって、温度が一定であれば、黒体からの放射発散度W(W/m2)は、放射エネルギー密度Mλ(J/m3)の1sec当たりのエネルギーとなり、
W=k・Mλ
となる。ただし、kは比例常数である。
【0103】
いま黒体からの放射発散度をW(W/m2)、黒体の面積をS(m2)、受光器までの距離をL(m)、受光面積をAd(m2)とすると、受光器に受光されるエネルギーWd(W)は次式となる。
Wd=W・S・Ad/πL2(W)
ここで、S、L、Adが一定ならば、
Wd=k‘・W =k・Mλ
となり、Wdはまた、受光出力Vdに比例している。
【0104】
このため2つの波長λ2、λ3における受光エネルギーの比をとれば
Vd2/Vd3=Wd2/Wd3=Mλ2/Mλ3
となる。
【0105】
よって、λ2=9.0×10-6(m)、λ3=8.3×10-6(m)における受光出力から、前出のMλの式により被験者の温度Tを求めることができる。
【0106】
即ち、波長λ2、λ3におけるMλ1、Mλ2は
【0107】
【数3】
となり、
Vd2/Vd3=Mλ2/Mλ3
に赤外線受光出力の比(Vd2/Vd3)を代入することにより、被験者の温度(体温)Tを求めることができる。
【0108】
図9はλ2=9.0×10-6(m)、λ3=8.3×10-6(m)として2つの赤外線の受光出力比Mλ1/Mλ2(=Vd2/Vd3)と被験者の温度T(℃)の関係(理論値)を示している。これにより赤外線の受光出力比(Mλ1/Mλ2)即ち、(Vd2/Vd3)を求めることで、被験者の温度Tとすることができる。
【0109】
体温付近の温度領域では、温度が上がると図5に示した分光放射発散度の特性曲線におけるピークが長波長側に移行する。これにより(Mλ1/Mλ2)は、温度Tが高いほど小さな値となる。
【0110】
このような2色温度計の原理による温度計測は、被験者の放射率の影響を受けにくいため放射率未知の物体の温度を計測でき、また、被験者とセンサ間の媒質(気体、水分等)の影響を比較的受けにくい点で優れている。
【0111】
判定部44は、エチルアルコール検出部40で検出されたエチルアルコール含有度A=ΔVdと、温度検知部42で検知された運転者18の温度Tとに基づいて、酒気帯びを判定する。
【0112】
判定部44による判定には、例えば次の2つの方法がある。
(1) 所定の基準温度Toに対応する閾値Vthoを、検知温度Tに基づいて閾値Vthに温度補正して判定する閾値補正判定方法。
(2) 検知温度Tのエチルアルコール含有度A=ΔVdを、所定の基準温度Toの場合に相当するよう温度補正して判定する含有度補正判定方法。
【0113】
いずれの判定方法にあっても、図8のグラフにおける判定閾値ライン100から求めた温度補正係数Kを使用することになる。
【0114】
図10(A)はこのうちの含有度補正判定方法を示したグラフ図である。ここで基準温度Toとして例えばTo=33℃を設定し、基準温度Toにおける基準閾値Vthoとして図8の判定閾値ライン100からこの場合Vtho=0.07(ボルト)が求められており、これら基準温度、基準閾値を、定数として温度補正係数Kと共にメモリ36に予め記憶している。
【0115】
いま、エチルアルコール検出部40によって、測定点aで示すエチルアルコール含有度A=ΔVdと検知温度Tが求められたとすると、エチルアルコール検出部40は続いてエチルアルコール含有度A=ΔVdを、次式に従って、基準温度Toの測定点bに対応するエチルアルコール含有度ΔVdoに温度補正する。
ΔVdo=ΔVd+K(To−T) (2)
【0116】
このように基準温度Toに対応させて温度補正したエチルアルコール含有度ΔVdoを求めたら、基準閾値Vthoと比較し、基準閾値Vtho以下の場合、即ち
ΔVdo≦Vtho
が成立したら酒気帯びと判定(判断)し、酒気帯び運転をしないように促す警告表示を出力表示したり、制御部54により、イグニッションキーをスタート位置に回してもエンジンを始動させないように禁止制御するなどして、酒気帯び運転を行わせないようにする。
【0117】
なお、(2)式によらず、補正前のエチルアルコール含有度A=ΔVdの値と検知温度Tの値の組み合わせに対し、基準温度Toに対応するよう温度補正したエチルアルコール含有度ΔVdoの値を予め割り付けて格納したメモリテーブルを使用しても良い。
【0118】
また式(2)では1次式(判定閾値ライン100)による温度補正近似を行ったが、これに代わって多次式(判定閾値曲線)による補正を行っても良い。
【0119】
図10(B)はもう一方の判定方法である閾値補正判定方法を示したグラフ図である。ここで基準温度Toとして例えばTo=33℃を設定し、基準温度Toにおける基準閾値Vthoとして図8の判定閾値ライン100からVtho=0.07(ボルト)が求められており、これら基準温度、基準閾値を、定数として温度補正係数Kと共にメモリ36に予め記憶している。
【0120】
いま、エチルアルコール検出部40によって、測定点aで示すエチルアルコール含有度A=ΔVdと検知温度Tが求められたとすると、エチルアルコール検出部40は続いて基準温度Toにおける基準閾値Vthoを、次式に従って、検知温度Tの測定点aにおける閾値Vthに温度補正する。
Vth=Vtho+K(T−To) (3)
【0121】
エチルアルコール検出部40は、このように検知温度Tに対応するよう温度補正した閾値Vthを求めたら、エチルアルコール含有度A=ΔVdと比較し、閾値Vth以下の場合、即ち
ΔVd≦Vth
が成立したら酒気帯びと判定し、酒気帯び運転をしないように促す警告表示を出力したり、制御部54によりイグニッションキーをスタート位置に回してもエンジンを始動させないように禁止制御するなどして、酒気帯び運転を行わせないようにする。
【0122】
なお、この場合にも(3)式によらず、検知温度Tの値ごとに、それぞれ対応して基準温度Toから温度補正した閾値Vthの値を予め割り付けて格納したメモリテーブルを使用しても良い。
【0123】
図11は図1の実施形態における酒気帯びの検知処理例を示したフローチャートである。図1において、運転者18が座席に座ってイグニッションキーをオン位置に操作することによりエチルアルコール検知処理部10およびその周辺装置に電源供給が開始されると、ステップS1で初期化、自己診断、各種設定の読み込み等を実行し、異常がなければステップS2に進みエチルアルコールの検知要求の有無を判別している。この検知要求は、例えば運転者がイグニッションキーをオン位置に回した際、即ち例えば電源投入後の所定タイミングに、検知要求信号がエチルアルコール検知処理部10に出力され、撮像制御部38でこれが判別されて検知処理が開始される。
【0124】
酒気帯び検知処理は、ステップS3でλ1フィルタ20−1を赤外線カメラ12の入射系にセットし撮像動作を行ってλ1画像46−1をメモリ36に保存し、次にλ2フィルタ20−2を赤外線カメラ12の入射系にセットし赤外線カメラ12により撮像動作を行ってλ2画像46−2をメモリ36に保存し、更に続いてλ3フィルタ20−3を赤外線カメラ12の入射系にセットし撮像動作を行ってλ3画像46−3をメモリ36に保存する。このステップS3におけるλ1画像、λ2画像、λ3画像の撮像とメモリ保存は、1回であってもよいし、必要に応じてn回連続的に撮像保存するようにしてもよい。
【0125】
続いてステップS4で、図6に示したように、λ2画像46−2を対象に、例えば特徴抽出領域50−1〜50−3の何れかを抽出する。
【0126】
続いてステップS5で、抽出した特徴抽出領域内の画素群を対象に、λ1画像から受光量Vd1を計算し、次にλ2画像から受光量Vd2を計算し、更にλ3画像から受光量Vd3を計算する。
【0127】
次にステップS6で、前記(1)式によりλ1画像の受光量Vd1とλ2画像の受光量Vd2の差分となるエチルアルコール含有度A=ΔVdを計算する。続いてステップS7で、λ2画像の受光量Vd2とλ3画像の受光量Vd3の比(Vd1/Vd2)に基づき2色温度計の原理に沿って運転者18の温度Tを算出(検知)する。
【0128】
なお、ステップS3で各λ1、λ2、λ3画像を複数回撮像している場合には、各画像データの平均化等加工処理等を行った上で、当該加工処理後のデータに基づいてステップS4以降の処理を行うようにしても良い。
【0129】
続いてステップS8で温度補正処理を行う。この温度補正処理は、図10(A)或いは図10(B)に示した含有度温度補正方法の何れかに従って行うが、例えば図10(A)の方法に依る場合には、ステップS6で算出したエチルアルコール含有度A=ΔVdを、ステップS7で算出した温度Tに基づき、前記(2)式に従って基準温度Toでのエチルアルコール含有度ΔVdoに温度補正し、ステップS9で酒気帯びであるか否かを判定する。この場合には、ステップS8の温度補正処理で求めた基準温度Toに対応するエチルアルコール含有度ΔVdoが予め設定している基準温度Toにおける判定閾値Vtho以下か否か判断する。
【0130】
ステップS9では、温度補正したエチルアルコール含有度ΔVdoが閾値Vtho以下であった場合に酒気帯び状態と判断してステップS10に進み、対応処理を実行する。具体的には、表示部52に酒気帯び運転をしないように促す警告表示を表示したり、制御部54によりエンジン始動装置に対し始動禁止制御を行うなどして、酒気帯び運転を行わせないようにする。
【0131】
一方、ステップS9で温度補正したエチルアルコール含有度ΔVdoが閾値Vtho所を超えていた場合には、酒気帯び状態ではないと判断し、このときは、エンジン始動禁止制御は行われないので、エンジンが始動される。又は、ステップS9で酒気帯びではないと判断された場合、再度ステップS1〜S9の処理を繰り返し、それでもなお酒気帯びではないと判断された場合にエンジンを始動できるようにしても良い。その他、ステップS1〜S9を所定回数繰り返して、酒気帯びであると判断された回数が全体回数の所定割合以上となった場合に、ステップS10の対応処理(エンジン始動禁止制御)を行うようにすることもできる。
【0132】
もちろん、ステップS8の温度補正処理は、例えば図10(B)に示した閾値温度補正方法に従った処理としても良い。
【0133】
図12は本実施形態で使用する波長抽出手段の構成要素として波長可変フィルタを用いた例を示した説明図である。図12において、赤外線カメラ12の対物レンズ22aと結像レンズ22bの間には波長可変フィルタ25が設けられ、波長可変フィルタ25の透過波長は、撮像制御部38の制御を受けて波長可変フィルタコントローラ48により制御される。この場合、図1に示すフィルタ切替ユニット14および駆動部16に代えて波長可変フィルタ25および波長か片コントローラを設けることになる。赤外線カメラ12内には撮像素子24が配置され、波長可変フィルタ25を透過した波長帯域の赤外線が結像レンズ22bにより結像され、これを画像として撮像する。このような波長可変フィルタ25としては、例えば特開平8−285688号のものが使用できる。
【0134】
図13は本発明によるエチルアルコール検知装置の他の実施形態を例示した要部構成ブロック図であり、本実施形態にあっては、使用する波長帯を2つとし(2波長式)、被験者の温度を1色温度計の原理に基づいて検出するようにしたことを特徴とする。
【0135】
図13において、エチルアルコール検知処理部10に対しては赤外線カメラ12とフィルタ切替ユニット14が設けられ、フィルタ切替ユニット14は、図2に示した構造と基本的に同じであるが、赤外線カメラ12の前に配置された回転円盤の例えば2箇所に透過帯域の異なる光学フィルタとして、エチルアルコールの吸収波長λ1=9.5μmを含む第1波長帯域を選択的に透過させる第1透過窓を形成するλ1フィルタ20−1と、波長λ1近傍の、エチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2=9.0μmを含む第2波長帯域を選択的に透過させる第2透過窓を形成するλ2フィルタ20−2を装着しており、図1の実施形態で使用している第3透過窓を形成するλ3フィルタ20−3は除かれている。
【0136】
なお、本実施形態においても、フィルタ切替ユニット14および制御部16に代えて、図12に示した波長か辺フィルタ25および波長可変コントローラ48を設けて波長λ1、λ2を抽出するようにすることが出来る。
【0137】
エチルアルコール検知処理部10にはCPU26が設けられ、CPU26のバス28に対し、AD変換器30、出力インタフェース32,34,35、及びメモリ36を接続し、CPU26には、プログラムの実行により実現される機能として、撮像制御部38、エチルアルコール検出部40、温度検知部42及び判定部44が設けられている。これらの構成及び機能は、撮像制御部38でλ3画像46−3を除く2つの画像、即ちλ1画像46−1とλ2画像46−2のみを撮像して保存する点と温度検知部42が1色温度計の原理に基づいて温度を算出する点以外は図1の実施形態と基本的に同じである。
【0138】
エチルアルコール検出部40は、メモリ36に格納されたλ1画像46−1とλ2画像46−2から求めた受光量Vd1にVd2に基づいて、エチルアルコール濃度に対応した前記(1)式で与えられるエチルアルコール含有度A=ΔVdを算出する。
【0139】
温度検知部42は、メモリ36に格納されたλ2画像46−2に基づいて運転者18の温度を算出する。図1の実施形態における2色温度計の原理による温度検知は、被検体(被験者)の放射率の影響を受けにくいため、放射率未知の物体の温度を検知でき、また、被検体(被験者)とセンサ間の媒質(気体、水分等)の影響を比較的受けにくい点で優れているが、このような影響をあまり受けない状況であれば、より簡便な構成をもつ1色温度計の原理により温度検知が可能である。
【0140】
即ち1つの波長帯域、例えばエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2=9.0μmを含む第2波長帯域の赤外線受光量Vd2を算出することにより、プランクの法則に基づき被検体(被験者)としての運転者18の温度を求めることができる。
【0141】
この場合には次の前提条件が必要となる。
(A) 被検体の放射率を人体の標準的な値(例えば0.95)と仮定する。
(B) 被検体とセンサ間には標準的な大気があると仮定する。
(C) 赤外線センサの全視野が被検体によりカバーされる。即ち被験者の体温以外の赤外線はセンサに入射しない(本項は2色温度計でも同じ)。
【0142】
ここで温度Tは、具体的にはメモリ36のλ2画像46−2から求めた受光量Vd2をMλ2として次式に代入して算出する。
【0143】
【数4】
【0144】
図14は図13の実施形態による酒気帯びの検知処理例を示したフローチャートであり、ステップS13でλ1フィルタ20−1を赤外線カメラ12の入射系にセットして撮像動作を行ってλ1画像46−1をメモリ36に保存し、次にλ2フィルタ20−2を赤外線カメラ12入射系にセットして赤外線カメラ12により撮像動作を行ってλ2画像46−2をメモリ36に保存する点、及びステップS15でλ1画像から受光量Vd1を計算し、次にλ2画像から受光量Vd2を計算する点、更に、ステップS17で1色温度計の原理に基づき受光量Vd2から被験者の温度Tを算出する以外は、図11に示した図1の実施形態による検知処理と同じになる。
【0145】
図15は本発明によるエチルアルコール検知装置の他の実施形態を例示した要部構成ブロック図であり、この実施形態にあっては、赤外線撮像素子に代えて赤外線受光素子を備えた赤外線センサを使用するようにしたことを特徴とする。
【0146】
即ち、図15において、エチルアルコール検知処理部10に対し設けられた赤外線カメラ12は、図1の撮像素子24に代えて赤外線センサ56を設けている。
【0147】
図16は図15の赤外線センサ56の例を示している。この赤外線センサ56はケース62の透光性ガラスなどのウィンドウ64を有し、ウィンドウ64の背後に、図に透視状態で示すように赤外線検出素子65を備えており、赤外線検出素子65は外部のリード66に接続されている。赤外線検出素子65としては、焦電素子、サーモパイル、サーミスタ、ボロメータなどの非冷却型素子を使用できる。またMCT、Insbなどの冷却型素子を用いてもよい。
【0148】
図15の実施形態において、撮像素子24の代わりに赤外線センサ56を設けた以外の構成は、図1の実施形態と基本的に同じである。
【0149】
一方、本実施形態のエチルアルコール検知処理部10に設けたCPU26には、赤外線センサ56に対応して、図1の撮像制御部38に代えて受光制御部60の機能が設けられている。受光制御部60は、図1の実施形態同様にフィルタ切替ユニット14を制御する。そして、赤外線センサ56によりλ1フィルタ20−1を透過して受光された被検体からの第1受光信号であるλ1受光量Vd1をメモリ36に記憶し、またλ2フィルタ20−2を透過して受光された被検体からの第2受光信号であるλ2受光量Vd2をメモリ36に記憶し、更に図示しないλ3フィルタを透過して受光された被検体からの第3受光信号であるλ3受光量Vd3をメモリ36に格納している。
【0150】
エチルアルコール検出部40は、メモリ36に格納されているλ1受光量Vd1とλ2受光量Vd2から前記(1)式によりエチルアルコール含有度ΔVdを算出し、また温度検知部42はメモリ36に格納されているλ2受光量Vd2とλ3受光量Vd3とから2色温度計の原理に基づいて運転者18の温度Tを検知し、判定部44は図10(A)の含有度温度補正方法又は図10(B)の閾値温度補正方法による温度補正を行った後に、閾値との比較により酒気帯び状態か否かを判定し、酒気帯び状態であることを判断した場合は、上記図1他の実施形態同様に対応処理を実行する。
【0151】
図17は図15の実施形態によるエチルアルコール検知処理例を示したフローチャートである。図17において、エチルアルコール検知処理部10およびその周辺装置に電源供給が開始されると、ステップS21で初期化、自己診断、各種設定の読み込み等を実行し、異常がなければステップS22に進み、図11のステップS2における処理同様にエチルアルコールの検知要求の有無を判別している。
【0152】
ステップS22で検知要求有りが判別されると、ステップS23でλ1フィルタ20−1を赤外線カメラ12の入射系にセットして赤外線センサ56で検知したλ1受光量Vd1をメモリ36に保存し、次にλ2フィルタ20−2を赤外線カメラ12の入射系にセットして赤外線センサ56で検知したλ2受光量Vd2をメモリ36に保存し、更にλ3フィルタ20−3を赤外線カメラ12の入射系にセットして赤外線センサ56で検知したλ3受光量Vd3をメモリ36に保存する。このステップS23におけるλ1受光量Vd1、λ2受光量Vd2、λ3受光量Vd3のメモリ保存は、1回であってもよいし、必要に応じてn回連続的に検出して保存するようにしてもよい。なお、複数回検出して保存した場合はその総和または平均等を受光量Vd1、Vd2、Vd3とすることができる。
【0153】
続いてステップS24で、前記(1)式によりλ1受光量Vd1とλ2受光量Vd2の差分となるエチルアルコール含有度A=ΔVdを計算する。
【0154】
続いてステップS25で、λ2受光量Vd2とλ3受光量Vd3の比(Vd2/Vd3)に基づき2色温度計の原理に従って運転者18の温度Tを算出する。続いてこれを用いてステップS26で温度補正処理を行う、この温度補正処理は例えば図10(A)の含有度温度補正方法または図10(B)の閾値温度補正方法に従って行う。
【0155】
続いてステップS27で閾値との比較により酒気帯び状態であるか否かを判定し、酒気帯び状態であると判断した場合は、ステップS28に進み、上記図1他の実施形態同様に対応処理を実行する。
【0156】
図18は図13に示したような、本発明による2波長式のエチルアルコール検知装置の、更に異なる他の実施形態を例示した要部構成ブロック図であり、本実施形態にあっても、被験者の温度を1色温度計の原理に基づいて検出するようにしたことをひとつの特徴とする。そして、本実施形態では撮像素子24および撮像制御部38に代えて、赤外線センサ56および受光制御部60を設けている点が図13のものと異なる。
【0157】
図18において、エチルアルコール検知処理部10に対しては赤外線カメラ12とフィルタ切替ユニット14が設けられており、フィルタ切替ユニット14は、エチルアルコールの吸収波長λ1=9.5μmを含む第1波長帯域を選択的に透過させる第1透過窓を形成するλ1フィルタ20−1と、λ1近傍の、エチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2=9.0μmを含む第2波長帯域を選択的に透過させる第2透過窓を形成するλ2フィルタ20−2の、2種類を切替える。
【0158】
エチルアルコール検知処理部10にはCPU26が設けられ、CPU26のバス28に対し、AD変換器30、出力インタフェース32,34,35、及びメモリ36を接続し、CPU26には、プログラムの実行により実現される機能として、受光制御部60、エチルアルコール検出部40、温度検知部42及び判定部44が設けられている。これらの構成及び機能は、受光制御部60による制御で、赤外線センサ56で被検体である運転者18からの赤外線を受光し、これから画像処理に依らずλ1受光量Vd1とλ2受光量Vd2を取得してメモリ36に保存する点以外は、図13の実施形態と基本的に同じである。
【0159】
図19は図18の実施形態によるエチルアルコールの検知処理を示したフローチャートであり、ステップS33でλ1フィルタ20−1を赤外線カメラ12の入射系にセットして赤外線センサ56で受光したλ1受光量Vd1をメモリ36に保存し、次にλ2フィルタ20−2を赤外線カメラ12の入射系にセットして赤外線センサ56で受光したλ2受光量Vd2をメモリ36に保存する点以外は、図14に示した図13の実施形態による検知処理と基本的に同じになる。
【0160】
図20は例えば図15又は図18のエチルアルコール検知装置で使用する赤外線センサの他の実施形態を例示した説明図であり、赤外線センサに複数の赤外線受光素子を設け、素子が増えたことに対応して、信号出力用のリード線66が増えている。それ以外の構成は、図16に示した実施形態の赤外線センサ56と基本的に同様である。
【0161】
この実施形態にあっては4つの赤外線検出素子65−1〜65−4を配置している。このため、赤外線センサ68に運転者である被写体の像が結像されると、被写体の像即ち運転者の顔の像につき4つに分割した領域ごとに、赤外線検出素子65−1〜65−4に対応した受光量が得られる。この4分割された赤外線検出素子65−1〜65−4からそれぞれ得られた受光量に基づき、その総和あるいは平均値等を算出することで、図15の検知装置に適用した場合にはλ1受光量Vd1、λ2受光量Vd2及びλ3受光量Vd3を求め、図18の検知装置に適用した場合にはλ1受光量Vd1及びλ2受光量Vd2を求めることになる。
【0162】
もちろん、赤外線選出素子65−1〜65−4のうち全ての受光量に依らず、任意の1つ或いは複数の受光量に基づいて同様に処理しても良い。このようにする場合、図6で説明したように、例えば4つの受光素子それぞれに対応する被検体の領域から、本発明の検知処理に適した領域からの赤外線受光量を選択して処理することもできる。
【0163】
図21は例えば図15又は図18の実施形態に示したエチルアルコール検知装置で使用する赤外線センサの、更に異なる他の実施形態を示した説明図であり、本実施形態にあっては赤外線センサ56或いは赤外センサ68に代えて適用できる赤外線センサ72を示している。
【0164】
図21において、赤外線センサ72は、内部構造を透視状態で示しており、受光側にウィンドウ64を備えたケース62内に、例えば3つの赤外線受光素子65−1〜65−3を配置し、その各前方にλ1フィルタ74−1、λ2フィルタ74−2及びλ3フィルタ74−3を配置している。
【0165】
λ1フィルタ74−1は、エチルアルコールの吸収波長λ1=9.5μmを選択透過するフィルタである。λ2フィルタ74−2は、エチルアルコールの吸収波長の近傍の、エチルアルコールの吸収の影響を受けない波長λ2=9.0μmを選択透過するフィルタである。λ3フィルタ74−3は、同じくエチルアルコールの吸収波長の近傍のエチルアルコールの有無の影響を受けない波長λ2=8.3μmを選択透過するフィルタである。
【0166】
ここでは3波長を選択受光できるものとしているが、2つの素子と、それぞれに対応する異なる2波長(λ1、λ2)を選択透過するフィルタを設けた赤外線センサとしても良い。このような赤外線センサ72を用いる場合には、フィルタ切替部14とその駆動部16、また波長可変フィルタ25とその制御部である波長可変フィルタコントローラ48を省略することができる。
【0167】
このようにすれば、赤外線センサ72自体で固定的に波長λ1,λ2,λ3若しくは波長λ1,λ2に対応した受光量を直接検出でき、装置構成が簡単にできると共に、CPU26による処理も簡略化されて処理負荷が低減できる。
【0168】
なお、上記全ての実施形態を含め、このλ2およびλ3は、エチルアルコールの吸収の影響を受けない波長として、本発明の目的の一部または全部適合する範囲で、任意に選択することができる。例えば、λ1、λ2、λ3の3波長を用いる実施形態において、λ2を8.3μm、λ3を9.0μmとしても良いし、λ1とλ2の2波長を用いる実施形態においてλ2を9.0μmとしても良い。
【0169】
また、スペクトル吸収波長λ1についても、使用する赤外線撮像素子または赤外線センサの受光スペクトルに合わせ、他の波長を選択することも可能である。例えば特開2009−148401において使用したλ1=2.77μmまたは3.37μmを用いた場合においても、その近傍にλ2,λ3を設定することにより被検体の温度の影響を受けない、精度の高い酒気帯びの判定が可能となる。
【0170】
また、上記の実施形態にあっては、フィルタ切替ユニットによる機械的なフィルタ切替えや、波長可変フィルタによるフィルタ切替えを例にとるものであったが、これ以外に回析格子などを用いた分光器により、目的とする波長帯域の画像もしくは受光量を測定するようにしてもよい。
【0171】
また、各波長の任意の一部を撮像素子で撮像して処理し、その他の波長を、受光素子を用いて受光して処理するようにしても良い。
【0172】
また、上記実施形態では、フィルタ切替ユニット14に設けた回転円盤に、各波長を選択透過させるフィルタを各1枚ずつ設けているが、複数枚ずつ設けても良いし、各波長につき対応するフィルタの枚数は同数でなくても良い。
【0173】
また、上記実施形態では車載用途に用いるエチルアルコール検知装置として説明したが、電池電源や他の専用電源を備えて可搬型とし、酒気帯びや飲酒状態を検査する装置としても利用できる。或いは、閾値による判定とそれに伴う処理に加えて、又はそれに代えて、エチルアルコール含有度(濃度)を表示する機能等を設け、酒気帯びや飲酒状態の検知以外のエチルアルコール含有度(濃度)検知装置としても利用できる。このような場合、被検体は必ずしも人体である必要は無く、目的に応じた被検体とすることは言うまでもない。
【0174】
また、上記実施の形態で示したプロセッサは、その機能の一部又は全部を、例えばワイヤードロジック等による他の手段に代えることができる。プロセッサを含め他の電気的、機能的構成は適宜に統廃合することもできる。
【0175】
また上記の実施形態における検知処理のフローチャートは処理の概略例を説明したもので、処理の順番等はこれに限定されない。また必要に応じ他の処理を追加、挿入する等ができる。
【0176】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0177】
10:エチルアルコール検知処理部
12:赤外線カメラ
14:フィルタ切替ユニット
16:駆動部
18:被験者
20−1:λ1フィルタ
20−2:λ2フィルタ
20−3:λ3フィルタ
22:光学系
22a:対物レンズ
22b:結像レンズ
24:撮像素子
25:波長可変フィルタ
26:CPU
28:バス
30:AD変換器
32,34,35:出力IF
36:メモリ
38:撮像制御部
40:エチルアルコール検出部
42:温度検知部
44:判定部
46:画像
46−1:λ1画像
46−2:λ2画像
46−3:λ3画像
48:波長可変フィルタコントローラ
50−1〜50−3:特徴抽出領域
52:表示部
54:制御部
56,68:赤外線センサ
60:受光制御部
62:ケース
64:ウインドウ
65,65−1〜65−3:赤外線検出素子
66:リード
72:マルチ赤外線センサ
74−1:λ1フィルタ
74−2:λ2フィルタ
74−3:λ3フィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子と、
被験者像を前記撮像素子に結像させる光学系と、
前記被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第3透過窓と、
前記第1透過窓を透過して結像された第1被験者画像、前記第2透過窓を透過して結像された第2被験者画像、及び前記第3透過窓を透過して結像された第3被験者画像を、前記撮像素子により撮像してメモリに格納する撮像制御部と、
前記メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
前記メモリに格納された第2被験者画像と第3被験者画像に基づいて前記被験者の温度を算出する温度検知部と、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項2】
請求項1記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓及び第3透過窓は、前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域及び第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項3】
請求項2記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第3透過窓は、第3波長帯域として8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項4】
請求項1記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1被験者画像と第2被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項5】
請求項1記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記温度検知部は、前記第2被験者画像と第3被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値から前記被験者の温度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項6】
請求項1記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項7】
請求項1記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項8】
請求項1記載のエチルアルコール検知装置に於いて、前記撮像素子、光学系、第1透過窓、第2透過窓及び第3透過窓を冷却する冷却機構を設けたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項9】
赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子と、
被験者像を前記撮像素子に結像させる光学系と、
前記被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
前記第1透過窓を透過して結像された第1被験者画像および前記第2透過窓を透過して結像された第2被験者画像を透過して結像された第2被験者画像を、前記撮像素子により撮像してメモリに格納する撮像制御部と、
前記メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
前記メモリに格納された第2被験者画像に基づいて前記被験者の温度を算出する温度検知部と、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項10】
請求項9記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項11】
請求項10記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μm又は8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項12】
請求項9記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1被験者画像と第2被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項13】
請求項9記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記温度検知部は、前記第2被験者画像における前記第1被験者画像と同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値から被験者の温度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項14】
請求項9記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項15】
請求項9記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項16】
請求項9記載のエチルアルコール検知装置に於いて、前記撮像素子、光学系、第1透過窓、及び第2透過窓を冷却する冷却機構を設けたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項17】
1または複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサと、
被験者像を前記赤外線センサに結像させる光学系と、
前記被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第3透過窓と、
前記赤外線センサにより、前記第1透過窓を透過して受光された第1受光信号、前記第2透過窓を透過して受光された第2受光信号、及び前記第3透過窓を透過して受光された第3受光信号を検出してメモリに格納する受光制御部と、
前記メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
前記メモリに格納された第2受光信号と第3受光信号に基づいて前記被験者の温度を算出する温度検知部と、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項18】
請求項17記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓及び第3透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域及び第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項19】
請求項18記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第3透過窓は、第2波長帯域として8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項20】
請求項17記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1受光信号と第2受光信号の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項21】
請求項17記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記温度検知部は、前記第2受光信号と第3受光信号の比率に基づいて前記被験者の温度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項22】
請求項17記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項23】
請求項17記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項24】
請求項17記載のエチルアルコール検知装置に於いて、前記赤外線センサ、光学系、第1透過窓、第2透過窓及び第3透過窓を冷却する冷却機構を設けたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項25】
1または複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサと、
被験者像を前記赤外線センサに結像させる光学系と、
前記被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
前記赤外線センサにより、前記第1透過窓を透過して受光された第1受光信号及び前記第2透過窓を透過して受光された第2受光信号を検出してメモリに格納する受光制御部と、
前記メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
前記メモリに格納された第2受光信号に基づいて前記被験者の温度を算出する温度検知部と、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項26】
請求項25記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項27】
請求項26記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μm又は8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項28】
請求項25記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1受光信号と第2受光信号の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項29】
請求項25記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項30】
請求項25記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項31】
請求項25記載のエチルアルコール検知装置に於いて、前記赤外線センサ、光学系、第1透過窓及び第2透過窓を冷却する冷却機構を設けたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項32】
被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子に結像して撮像した第1被験者画像をメモリに格納し、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して前記撮像素子に結像して撮像した第2被験者画像をメモリに格納し、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を、第3透過窓により選択的に透過して前記撮像素子に結像して撮像した第3被験者画像をメモリに格納し、
前記メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
前記メモリに格納された第2被験者画像と第3被験者画像に基づいて前記被験者の温度を算出し、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項33】
請求項32記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓及び第3透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域及び第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項34】
請求項33記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第3透過窓は、第2波長帯域として8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項35】
請求項32記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1被験者画像と第2被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項36】
請求項32記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記温度検知部は、前記第2被験者画像と第3被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値から前記被験者の温度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項37】
請求項32記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項38】
請求項32記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項39】
請求項32記載のエチルアルコール検知方法に於いて、前記撮像素子、光学系、第1透過窓、第2透過窓及び第3透過窓を冷却することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項40】
被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子に結像して撮像した第1被験者画像をメモリに格納し、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して前記撮像素子に結像して撮像した第2被験者画像をメモリに格納し、
前記メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
前記メモリに格納された第2被験者画像に基づいて前記被験者の温度を算出し、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項41】
請求項40記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項42】
請求項41記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μm又は8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項43】
請求項40記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1被験者画像と第2被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項44】
請求項40記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記温度検知部は、前記第2被験者画像と第3被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値から前記被験者の温度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項45】
請求項40記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項46】
請求項40記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項47】
請求項40記載のエチルアルコール検知方法に於いて、前記撮像素子、光学系、第1透過窓及び第2透過窓を冷却することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項48】
被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して1又は複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサに結像して受光した第1受光信号をメモリに格納し、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して前記赤外線センサに結像して受光した第2受光信号をメモリに格納し、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を、第3透過窓により選択的に透過して前記赤外線センサに結像して受光した第3受光信号をメモリに格納し、
前記メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
前記メモリに格納された第2受光信号と第3受光信号に基づいて前記被験者の温度を算出し、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項49】
請求項48記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓及び第3透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域及び第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項50】
請求項49記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第3透過窓は、第3波長帯域として8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項51】
請求項48記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1受光信号と第2受光信号の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項52】
請求項48記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記温度検知部は、前記第2受光信号と第3受光信号の比率に基づいて前記被験者の温度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項53】
請求項48記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項54】
請求項48記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項55】
請求項48記載のエチルアルコール検知方法に於いて、前記赤外線センサ、光学系、第1透過窓、第2透過窓及び第3透過窓を冷却することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項56】
被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して1又は複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサに結像して受光した第1受光信号をメモリに格納し、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して前記赤外線センサに結像して受光した第2受光信号をメモリに格納し、
前記メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
前記メモリに格納された第2受光信号に基づいて前記被験者の温度を算出し、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項57】
請求項56記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域及び第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項58】
請求項57記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μm又は8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項59】
請求項56記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1受光信号と第2受光信号の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項60】
請求項56記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項61】
請求項56記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項62】
請求項56記載のエチルアルコール検知方法に於いて、前記赤外線センサ、光学系、第1透過窓及び第2透過窓を冷却することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項1】
赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子と、
被験者像を前記撮像素子に結像させる光学系と、
前記被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第3透過窓と、
前記第1透過窓を透過して結像された第1被験者画像、前記第2透過窓を透過して結像された第2被験者画像、及び前記第3透過窓を透過して結像された第3被験者画像を、前記撮像素子により撮像してメモリに格納する撮像制御部と、
前記メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
前記メモリに格納された第2被験者画像と第3被験者画像に基づいて前記被験者の温度を算出する温度検知部と、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項2】
請求項1記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓及び第3透過窓は、前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域及び第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項3】
請求項2記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第3透過窓は、第3波長帯域として8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項4】
請求項1記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1被験者画像と第2被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項5】
請求項1記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記温度検知部は、前記第2被験者画像と第3被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値から前記被験者の温度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項6】
請求項1記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項7】
請求項1記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項8】
請求項1記載のエチルアルコール検知装置に於いて、前記撮像素子、光学系、第1透過窓、第2透過窓及び第3透過窓を冷却する冷却機構を設けたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項9】
赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子と、
被験者像を前記撮像素子に結像させる光学系と、
前記被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
前記第1透過窓を透過して結像された第1被験者画像および前記第2透過窓を透過して結像された第2被験者画像を透過して結像された第2被験者画像を、前記撮像素子により撮像してメモリに格納する撮像制御部と、
前記メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
前記メモリに格納された第2被験者画像に基づいて前記被験者の温度を算出する温度検知部と、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項10】
請求項9記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項11】
請求項10記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μm又は8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項12】
請求項9記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1被験者画像と第2被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項13】
請求項9記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記温度検知部は、前記第2被験者画像における前記第1被験者画像と同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値から被験者の温度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項14】
請求項9記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項15】
請求項9記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項16】
請求項9記載のエチルアルコール検知装置に於いて、前記撮像素子、光学系、第1透過窓、及び第2透過窓を冷却する冷却機構を設けたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項17】
1または複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサと、
被験者像を前記赤外線センサに結像させる光学系と、
前記被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第3透過窓と、
前記赤外線センサにより、前記第1透過窓を透過して受光された第1受光信号、前記第2透過窓を透過して受光された第2受光信号、及び前記第3透過窓を透過して受光された第3受光信号を検出してメモリに格納する受光制御部と、
前記メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
前記メモリに格納された第2受光信号と第3受光信号に基づいて前記被験者の温度を算出する温度検知部と、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項18】
請求項17記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓及び第3透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域及び第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項19】
請求項18記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第3透過窓は、第2波長帯域として8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項20】
請求項17記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1受光信号と第2受光信号の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項21】
請求項17記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記温度検知部は、前記第2受光信号と第3受光信号の比率に基づいて前記被験者の温度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項22】
請求項17記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項23】
請求項17記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項24】
請求項17記載のエチルアルコール検知装置に於いて、前記赤外線センサ、光学系、第1透過窓、第2透過窓及び第3透過窓を冷却する冷却機構を設けたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項25】
1または複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサと、
被験者像を前記赤外線センサに結像させる光学系と、
前記被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1透過窓と、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2透過窓と、
前記赤外線センサにより、前記第1透過窓を透過して受光された第1受光信号及び前記第2透過窓を透過して受光された第2受光信号を検出してメモリに格納する受光制御部と、
前記メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
前記メモリに格納された第2受光信号に基づいて前記被験者の温度を算出する温度検知部と、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項26】
請求項25記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項27】
請求項26記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μm又は8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項28】
請求項25記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1受光信号と第2受光信号の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項29】
請求項25記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項30】
請求項25記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項31】
請求項25記載のエチルアルコール検知装置に於いて、前記赤外線センサ、光学系、第1透過窓及び第2透過窓を冷却する冷却機構を設けたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項32】
被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子に結像して撮像した第1被験者画像をメモリに格納し、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して前記撮像素子に結像して撮像した第2被験者画像をメモリに格納し、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を、第3透過窓により選択的に透過して前記撮像素子に結像して撮像した第3被験者画像をメモリに格納し、
前記メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
前記メモリに格納された第2被験者画像と第3被験者画像に基づいて前記被験者の温度を算出し、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項33】
請求項32記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓及び第3透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域及び第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項34】
請求項33記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第3透過窓は、第2波長帯域として8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項35】
請求項32記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1被験者画像と第2被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項36】
請求項32記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記温度検知部は、前記第2被験者画像と第3被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値から前記被験者の温度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項37】
請求項32記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項38】
請求項32記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項39】
請求項32記載のエチルアルコール検知方法に於いて、前記撮像素子、光学系、第1透過窓、第2透過窓及び第3透過窓を冷却することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項40】
被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子に結像して撮像した第1被験者画像をメモリに格納し、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して前記撮像素子に結像して撮像した第2被験者画像をメモリに格納し、
前記メモリに格納された第1被験者画像と第2被験者画像に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
前記メモリに格納された第2被験者画像に基づいて前記被験者の温度を算出し、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項41】
請求項40記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項42】
請求項41記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μm又は8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項43】
請求項40記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1被験者画像と第2被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項44】
請求項40記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記温度検知部は、前記第2被験者画像と第3被験者画像の同一位置の画素間の相関値の総和又は平均値から前記被験者の温度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項45】
請求項40記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項46】
請求項40記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項47】
請求項40記載のエチルアルコール検知方法に於いて、前記撮像素子、光学系、第1透過窓及び第2透過窓を冷却することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項48】
被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して1又は複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサに結像して受光した第1受光信号をメモリに格納し、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して前記赤外線センサに結像して受光した第2受光信号をメモリに格納し、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域とは異なる第3波長帯域の赤外光を、第3透過窓により選択的に透過して前記赤外線センサに結像して受光した第3受光信号をメモリに格納し、
前記メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
前記メモリに格納された第2受光信号と第3受光信号に基づいて前記被験者の温度を算出し、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項49】
請求項48記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓及び第3透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域及び第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項50】
請求項49記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第3透過窓は、第3波長帯域として8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項51】
請求項48記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1受光信号と第2受光信号の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項52】
請求項48記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記温度検知部は、前記第2受光信号と第3受光信号の比率に基づいて前記被験者の温度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項53】
請求項48記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項54】
請求項48記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項55】
請求項48記載のエチルアルコール検知方法に於いて、前記赤外線センサ、光学系、第1透過窓、第2透過窓及び第3透過窓を冷却することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項56】
被験者からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を、第1透過窓により選択的に透過して1又は複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサに結像して受光した第1受光信号をメモリに格納し、
前記被験者からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を、第2透過窓により選択的に透過して前記赤外線センサに結像して受光した第2受光信号をメモリに格納し、
前記メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出し、
前記メモリに格納された第2受光信号に基づいて前記被験者の温度を算出し、
前記エチルアルコール含有度と前記被験者の検知温度に基づいて前記エチルアルコールの検出と非検出を判定する、
ことを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項57】
請求項56記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第1透過窓は、第1波長帯域として9.5μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2透過窓は前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域及び第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項58】
請求項57記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記第2透過窓は、第2波長帯域として9.0μm又は8.3μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項59】
請求項56記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1受光信号と第2受光信号の差分値としてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項60】
請求項56記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、所定の基準温度で設定した所定の閾値を、前記被験者の検知温度における閾値に温度補正し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値以下の場合に前記エチルアルコールの検出を判定し、前記エチルアルコール含有度が前記温度補正した閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項61】
請求項56記載のエチルアルコール検知方法に於いて、
前記判定部は、所定の温度補正係数に基づき、前記被験者の検知温度における前記エチルアルコール含有度を、所定の閾値を設定した基準温度でのエチルアルコール含有度に補正し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値以下の場合にエチルアルコールの検出を判定し、前記温度補正したエチルアルコール含有度が前記閾値を超えている場合に前記エチルアルコールの非検出を判定することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【請求項62】
請求項56記載のエチルアルコール検知方法に於いて、前記赤外線センサ、光学系、第1透過窓及び第2透過窓を冷却することを特徴とするエチルアルコール検知方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−193976(P2012−193976A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56331(P2011−56331)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】
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