説明

エチルアルコール検知装置

【課題】運転者の放射する赤外線から血中のエチルアルコールを検知して酒気帯び防止などに利用可能とする。
【解決手段】撮像制御部42は、フィルタ16を切替えて被写体20の赤外線放射または反射光からのエチルアルコールの吸収波長λ1を含む第1波長帯域の第1被写体画像と、エチルアルコールと同じ第1波長帯域に吸収波長を持つ外乱物質の他の吸収波長λ2を含む第2波長帯域の第2被写体画像を撮像してメモリ38に格納する。基準画像登録部40は、登録モードの設定時に、撮像制御部42で結像された第1被写体画像を基準画像として不揮発メモリ36に予め格納している。エチルアルコール検出部44は、第1被写体画像と基準画像に基づいてエチルアルコール含有度を算出し、外乱物質検出部46は第2被写体画像と基準画像に基づいて外乱度を算出する。判定部44はエチルアルコール含有度と外乱度に基づいてエチルアルコールの検出を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲酒により血液中に溶け込んでいるエチルアルコールを人体から放射する赤外線に基づいて検知して酒気帯び運転などを判定するエチルアルコール検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酒気帯び運転を防止するための装置にあっては、運転者の呼気に含まれるエチルアルコールをガスセンサにより検知し、自動車を始動させないように構成している(特許文献1)。
【0003】
一般に、呼気中に含まれるアルコールの濃度は血液中のアルコール濃度と比例関係にある。法規上定められた酒気帯び運転の基準は、呼気中のアルコール濃度0.15mg/Lであり、これは血中アルコール濃度で0.03%に相当する。このため呼気中のアルコール濃度を測定することで、酒気帯び状態を検知して運転を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−150853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の酒気帯び防止装置にあっては、運転者の位置する頭上近辺の空間の空気をファンにより吸引してガスセンサでアルコールを間接的に検知するようにしているため、呼気を直接採取してアルコール濃度を測定する場合に比べ、測定値が実際の呼気中のアルコール濃度に対し低めの値となり、確実に酒気帯び運転を防止できない恐れがある。
【0006】
またアルコールを検知するガスセンサは使用中に異物の付着や酸化などにより感度が変化するため、自動的に感度を調整する校正処理が必要であり、更に、定期的に清掃点検などのメンテナンスをしなければ検出精度を維持することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、運転者の放射する赤外線から血中のエチルアルコールを検知して酒気帯び防止などに利用可能で且つメンテナンスフリーなエチルアルコール検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(赤外線撮像素子を用いた装置)
本発明は赤外線撮像素子を用いたエチルアルコール検知装置を提供する。本発明のエチルアルコール検知装置は、
赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子と、
被写体像を撮像素子に結像させる光学系と、
被写体からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1フィルタと、
被写体からのエチルアルコールと同じ第1波長体域に吸収波長を持つ外乱物質の他の吸収波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2フィルタと、
第1のフィルタを透過して結像された第1被写体画像、及び第2フィルタを透過して結像された第2被写体画像を、撮像素子により撮像してメモリに格納する撮像制御部と、
登録モードの設定時に、撮像制御部により第1のフィルタを透過して結像された第1被写体画像を基準画像として不揮発メモリに格納して保持するする基準画像登録部と、
メモリの第1被写体画像と不揮発メモリの基準画像に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
メモリに格納された第2被写体画像と不揮発メモリの基準画像に基づいて外乱物質の濃度に対応した外乱度を算出する外乱物質検出部と、
エチルアルコール含有度と外乱度とに基づいてエチルアルコールの検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、第1フィルタは第1波長帯域として2.77μm又は3.37μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第2フィルタは、外乱物質がメントールの場合、第2波長帯域として3.28μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、外乱物質がステアリン酸の場合、第2波長帯域として5.88μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0010】
基準画像登録部は、基準画像を構成する画素の値の総和又は平均値として基準受光量を算出して不揮発メモリに格納し、
エチルアルコール検出部は、第1被写体画像の画素値の総和または平均値として算出した第1被写体受光量と、不揮発メモリの基準受光量に基づいて、エチルアルコール含有度を算出し、
外乱物質検出部は、第2被写体画像の画素値の総和または平均値として算出した第2被写体受光量と、不揮発メモリの基準受光量に基づいて、外乱度を算出する。
【0011】
エチルアルコール検出部は、アルコール含有度を、第1被写体受光量との基準受光量の減算値又は除算値、所定係数を乗じた減算値又は除算値、若しくは二乗誤差値の総和又は平均値として算出し、
外乱物質検出部は、外乱度を、第2被写体受光量との基準受光量の減算値又は除算値、所定係数を乗じた減算値又は除算値、若しくは二乗誤差値の総和又は平均値として算出する。
【0012】
(赤外線検出素子を用いた装置)
本発明は1又は複数の赤外線検出素子を用いたエチルアルコール検知装置を提供する。本発明のエチルアルコール検知装置は、
1又は複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサと、
被写体像を赤外線受光センサに結像させる光学系と、
被写体からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1フィルタと、
被写体からのエチルアルコールと同じ第1波長体域に吸収波長を持つ外乱物質の他の吸収波長であり、かつエチルアルコールの吸収波長ではない波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2フィルタと、
赤外線センサにより、第1フィルタを透過して受光された被写体の第1受光信号、及び第2フィルタを透過して受光された被写体の第2受光信号を検出してメモリに格納する受光制御部と、
登録モードの設定時に、受光制御部により第1フィルタを透過して受光された第1受光信号を基準受光信号として不揮発メモリに格納して保持するする基準受光信号登録部と、
メモリの第1受光信号と不揮発メモリの基準受光信号に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
メモリの第2受光信号と不揮発メモリの基準受光信号に基づいて外乱物質の濃度に対応した外乱度を算出する外乱物質検出部と、
エチルアルコール含有度と外乱度とに基づいてエチルアルコールの検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
ここで、第1フィルタは第1波長帯域として2.77μm又は3.37μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第2フィルタは、外乱物質がメントールの場合、第2波長帯域として3.28μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、外乱物質がステアリン酸の場合、第2波長帯域として5.88μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0014】
エチルアルコール検出部は、メモリの第1被写体受光信号と不揮発メモリの基準受光信号に基づいてエチルアルコール含有度を算出し、
外乱物質検出部は、メモリの第2被写体受光信号と不揮発メモリの基準受光信号に基づいて外乱度を算出する。
【0015】
エチルアルコール検出部は、エチルアルコール含有度を、第1被写体受光信号との基準受光信号の減算値又は除算値、所定係数を乗じた減算値又は除算値、若しくは二乗誤差値の総和又は平均値として算出し、
外乱物質検出部は、外乱度を、第2被写体受光信号との基準受光信号の減算値又は除算値、所定係数を乗じた減算値又は除算値、若しくは二乗誤差値の総和又は平均値として算出する。
【0016】
赤外線センサは、第1フィルタと、1又は複数の第2フィルタの各々と赤外線受光素子を組み合わせてセンサ筐体に組込み配置する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、運転者の体温による人体からの赤外線放射光、特に、皮膚が露出している顔からの赤外線放射光から毛細血管中のエチルアルコールによる特徴的な吸収スペクトルを検知して、血中アルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を得ることができ、このエチルアルコール含有度から運転者の酒気帯び運転などを正確に判定して注意喚起や運転防止などの適切な措置をとることができる。
【0018】
また化粧品に含まれるメントールは、エチルアルコールと同じ波長にも吸収スペクトルをもつことで外乱要因となるが、エチルアルコールにはないメントール固有波長の吸収スペクトルを外乱度として検知することで、化粧品などによるエチルアルコールの誤検出を確実に防止することができる。
【0019】
またエチルアルコール含有度を、エチルアルコール固有波長の吸収スペクトルの受光量と吸収スペクトルのない別波長の受光量との比率、差分などの値として検出しているため、赤外線放射量の強弱の影響を受けることなく、高いS/N比により毛細血管中のエチルアルコールを正確に検知することができる。
【0020】
また、被写体からの赤外光におけるエチルアルコール吸収スペクトルからエチルアルコール含有度を検知しているため、従来のガスセンサによるアルコール検知のような感度調整や清掃点検などのメンテナンスが不要であり、長期間に亘り安定した高い精度で酒気帯び運転の原因である人体のエチルアルコール含有度を検知することができる。
【0021】
また、エチルアルコール含有度や外乱度を求める際に使用するエチルアルコールが血中にない正常時の被写体の撮像で得られたエチルアルコール吸収波長の被写体画像を基準として使用開始時の登録モードで取得して不揮発メモリに予め登録しておくことで、その都度、エチルアルコールの吸収スペクトルが存在しない別の波長帯域の被写体画像を基準として撮像する必要がなく、エチルアルコール吸収波長と外乱要因となるメントールなどに固有な吸収波長の2波長帯域について被写体画像を取得すればよいため、被写体赤外線画像を撮像する光学系とその切替え制御を簡単し、コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるエチルアルコール検知装置の実施形態を示したブロック図
【図2】本実施形態で使用する赤外線カメラを示した説明図
【図3】エチルアルコールの波長スペクトラム分布を示した説明図
【図4】本実施形態における特徴領域の抽出を示した説明図
【図5】図1の実施形態によるエチルアルコールの検出処理を示したフローチャート
【図6】図5のステップS1における基準画像受光量登録処理の詳細を示したフローチャート
【図7】本実施形態で使用するフィルタ切替ユニットを用いた赤外線カメラを示した説明図
【図8】赤外線センサを用いたエチルアルコール検知装置の他の実施形態を示したブロック図
【図9】図8の赤外線センサを示した説明図
【図10】図8の実施形態によるエチルアルコールの検出処理を示したフローチャート
【図11】図10のステップS33における基準受光信号登録処理の詳細を示したフローチャート
【図12】マルチ赤外線センサを用いたエチルアルコール検知装置の他の実施形態を示したブロック図
【図13】図12の赤外線センサを示した説明図
【図14】図12の実施形態によるエチルアルコールの検出処理を示したフローチャート
【図15】図14のステップS54における基準受光信号登録処理の詳細を示したフローチャート
【図16】フィルタ内蔵のマルチ赤外線センサを用いたエチルアルコール検知装置の他の実施形態を示したブロック図
【図17】図16の赤外線センサを示した説明図
【図18】図16の実施形態によるエチルアルコールの検出処理を示したフローチャート
【図19】図18のステップS81における基準受光信号登録処理の詳細を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は車両に搭載される本発明によるエチルアルコール検知装置の実施形態を示したブロック図である。図1において、エチルアルコール検知装置10にはコンピュータのハードウェア環境を代表して示すCPU26が設けられ、CPU26に対しては撮像装置として、光学系22とCCD撮像素子24を備えた赤外線カメラ12、カメラ制御部14、波長可変フィルタ16及びフィルタ駆動部18が設けられている。
【0024】
図2は図1の第1実施形態で使用する波長可変フィルタを用いた赤外線カメラを示した説明図である。図2において、赤外線カメラ12の対物レンズ64と結像レンズ66を備えた光学系の間には波長可変フィルタ16が設けられ、波長可変フィルタ16の透過波長はフィルタ駆動部18により制御される。
【0025】
赤外線カメラ12内には赤外線波長帯域に感度を持つCCD撮像素子24が配置され、結像レンズ66により結像された波長可変フィルタ16を透過した波長帯域の赤外線画像を撮像する。
【0026】
波長可変フィルタ16はファブリペロー型干渉フィルタとして知られており、例えば200〜300オングストローム程度の厚みを有するAuなどの反射膜となる透過性の金属膜を対向する面に蒸着した一対のガラス基板を有し、一対のガラス基板を間に圧電素子を介して対向配置し、その間に微小間隔を設定している。ガラス基板の間の圧電素子は、フィルタ駆動部18による直流電圧の印加を受けて基板間隔を変化させることができる。
【0027】
波長可変フィルタ16は、一方のガラス基板側からの入射光に対し、透過性を持つ金属膜の間で多重反射によって生ずる干渉作用に起因して複数の透過スペクトルが分布して光を透過する。このような波長可変フィルタ16としては、例えば特開平8−285688号のものが使用できる。
【0028】
再び図1を参照するに、エチルアルコール検知装置10に設けたCPU26に対してはバス28を介してIF30、出力IF32,34、フラッシュメモリやEEPROMを用いた不揮発メモリ36、RAMを用いたメモリ38を接続している。
【0029】
IF30にはカメラ制御部14が接続され、車両のエンジン始動時などのエチルアルコール検出要求が発生した際に、波長可変フィルタ16と赤外線カメラ12を動作して撮像された運転者18の画像をデジタル画像データに変換し、メモリ38にλ1画像56及びλ2画像58として格納する。この赤外線カメラ12を用いた画像撮影の制御動作は、CPU26に設けた撮像制御部42により行われる。
【0030】
出力IF32には表示部60が接続され、また出力IF34には制御部62が接続されている。表示部60には、エチルアルコール検知装置10で処理された検出結果、例えば運転者20の酒気帯びの有無などが表示される。なお、表示部60には音声出力機能が合わせて設けられる。制御部62は、エチルアルコール検知装置10で運転者20の酒気帯び運転が判別された際に、例えばエンジンの始動をできないようにするような酒気帯び運転防止制御などを行う。
【0031】
CPU26には、プログラムの実行により実現される機能として、基準画像登録部40、撮像制御部42、エチルアルコール検出部44、外乱物質検出部46及び判定部48が設けられている。
【0032】
本実施形態のエチルアルコール検知装置10にあっては、運転者20の酒気帯び状態を顔面などの皮膚直下の毛細血管に表れる含有エチルアルコールを検出する。毛細血管中の含有エチルアルコールの検出は、運転者の体温による人体からの赤外線放射光または赤外線反射光におけるエチルアルコールによる特定波長の吸収スペクトルによる減衰を検知することを基本としている。
【0033】
図3は本実施形態で検知するエチルアルコールの波長スペクトル分布を示した説明図である。エチルアルコールC25OHは、その分子構造に由来する吸収スペクトルを2.77μm、3.37μm及び9.5μmなどの特定波長に持っている。例えば波長2.77μmの吸収スペクトルは、エチルアルコール中の−CH3の結合伸縮に伴い、エチルアルコール分子が吸光する波長帯である。
【0034】
そこで運転者からの赤外光のうち、エチルアルコールの吸収波長λ1として、λ1=2.77μmを含む第1波長帯域を選択的に透過させる第1フィルタとしてλ1フィルタに波長可変フィルタ16を制御して赤外光を監視すると、エチルアルコールが毛細血管中に含まれている状態即ち酒気帯び状態では、λ1=2.77μmを含む第1波長帯域の赤外光は毛細血管中のエチルアルコール濃度に応じた吸光度を示し、このときの撮像素子で撮像されたλ1画像における各画素から求められた受光量I1は小さくなる。
【0035】
また本実施形態にあっては、装置の使用を開始する際の登録モードにおいて、毛細血管中にエチルアルコールが含まれていない正常時のエチルアルコールの吸収スペクトルを与える波長λ1=2.77μmを含むλ1フィルタに波長可変フィルタ16を制御して撮像したλ1画像を基準画像50として不揮発メモリ36に格納し、この基準画像50から求めた受光量Ithを基準受光量52として不揮発メモリ36に格納している。
【0036】
ここで、装置使用前の状態にあっては、装置製造の段階で設計値として求められた基準受光量がデフォルト値(Ith)0として不揮発メモリ36に予め格納されており、登録モードの実行によりデフォルト値(Ith)0がユーザ固有の値Ithに更新されることになる。
【0037】
登録モードにより基準画像から得られた基準受光量Ithは、エチルアルコールが含まれていない正常時に人体より放射(または反射)される赤外線放射量に相当する受光量が得られる。
【0038】
ここで、エチルアルコールによる吸収スペクトルがある飲酒時のλ1受光量をI1とすると、エチルアルコール含有度Aは、正常時の基準受光量Ithとの比として次式で与えられる。
A=Ith/I1 (1)
【0039】
(1)式のλ1受光量I1がエチルアルコール濃度の増加に応じて低下するため、エチルアルコール含有度Aは、エチルアルコール濃度に応じて増加する関係にある。また、正常時はλ1受光量I1は基準受光量Ithにほぼ等しいことからアルコール含有度チはA=1付近の値となる。
【0040】
この(1)式で与えられるエチルアルコール含有度Aが、予め定めた所定の閾値Ath以上であれば、エチルアルコールの検出と判断でき、閾値未満であればエチルアルコールの非検出と判断できる。この場合の閾値Athは、正常時のアルコール含有度をA0とすると、これに誤差を吸収するために1以上の所定の係数αを乗じて
Ath=αA0
とすれば良い。例えばα=1.2とすれば、Ath=1.2A0で与えられる。
【0041】
このような本実施形態におけるエチルアルコール含有度Aの算出は、図1のCPU26に設けた基準画像登録部40、撮像制御部42及びエチルアルコール検出部44により行われる。
【0042】
基準画像登録部40は、車両に搭載されたエチルアルコール検知装置10の使用を開始する登録モードの設定時に、撮像制御部42によりカメラ制御部14を制御し、フィルタ駆動部18の動作で波長可変フィルタ16をエチルアルコールの吸収波長λ1=2.77μmを含む第1波長帯域を選択的に透過させるλ1フィルタに切替え、波長可変フィルタ16を透過して結像された被写体画像を基準画像50として不揮発メモリ36に格納する。
【0043】
また、基準画像登録部40は、基準画像50を構成する画素の値の総和又は平均値をIthとして算出し、これを基準受光量52としてその値Ithを不揮発メモリ36に格納する。
【0044】
なお、登録を行う使用開始前の段階にあっては、不揮発メモリ36には設計値として求められたデフォルトの基準受光量(Ith)0が予め登録されている。このため、登録モードの設定による登録処理を行わない場合には、デフォルトの基準受光量(Ith)0がエチルアルコールの検出処理に使用されることになる。
【0045】
更に、基準画像登録部40は、基準画像50からエチルアルコール検出に用いる運転者の特徴領域を抽出するための特徴領域抽出画像54を生成し、これをテンプレートとして格納している。特徴領域抽出画像54は基準画像50から基準受光量を求める際の特徴領域の抽出にも使用される。
【0046】
撮像制御部42は、車両のエンジン始動に伴うエチルアルコール検出要求の発生時に動作し、フィルタ駆動部18による波長可変フィルタ16の切替え動作でλ1フィルタ、更に後の説明で明らかにするλ2フィルタとしての波長帯域に切り替えながら、運転者の顔の画像を赤外線カメラ12により撮像し、λ1フィルタを透過して結像された第1被写体画像であるλ1画像56及びλ2フィルタを透過して結像された第2被写体画像であるλ2画像58をメモリ38に格納する。
【0047】
ここで、本実施形態にあっては、人体から体温により発せられる赤外線の、血液中エチルアルコールによる吸収スペクトル特性を検知することで、血中アルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を得ているが、CCD撮像素子の信号量が不足する場合には、補助光源として赤外線光源を用いることができる。
【0048】
CCD撮像素子の信号量が不足する理由としては、赤外線カメラ12と人体との距離が長い、赤外線カメラ12のレンズ径が十分大きくできない等の、カメラ配置上の制限条件が挙げられる。赤外線光源を用いた場合、人体で反射される赤外線の、血液中エチルアルコールによる反射スペクトル特性を検知することにより、血中アルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度Aを得ることができる。
【0049】
エチルアルコール検出部44は、メモリ38に格納されたλ1画像56と不揮発メモリ36に格納されている基準画像50から求めた基準受光量52(=Ith)に基づいて、エチルアルコール濃度に対応した前記(1)式で与えられるエチルアルコール含有度Aを算出する。
【0050】
図4は図1の基準画像登録部40により生成されてエチルアルコール検出部44でエチルアルコール含有度Aを計算する際に用いられる運転者の特徴領域抽出画像54を示している。運転者20の毛細血管中のエチルアルコールの濃度を赤外線受光量から検出するためには、運転者の顔の毛細血管が皮膚表面に表われていてエチルアルコールによる吸収スペクトルの減衰が十分に得られる場所を特定して、エチルアルコール含有度Aを算出する必要がある。
【0051】
図4の場合にあっては、エチルアルコールが血中に存在しない正常状態で行われる基準画像登録処理の際に、λ1フィルタを透過して得られた基準画像50を対象に、毛細血管からの体温による赤外線放射が出易い例えば唇などの皮膚の薄い特徴抽出領域72−1や、両目の周囲に特徴抽出領域72−2,72−3を設定した特徴領域抽出画像54を生成して不揮発メモリ36に格納する。
【0052】
特徴領域抽出画像54が運転者について生成できたならば、基準画像登録処理部40は、特徴領域抽出画像54に設定している特徴抽出領域72−1〜72−3の画素値の総和または平均値に基づいて基準受光量52を求める。
【0053】
またエチルアルコール検出部44は、前記(1)式におけるエチルアルコール含有度Aを算出するためのλ1画像56の受光量I1の計算として、特徴領域抽出画像54の特徴抽出領域72−1〜72−3に含まれる画素値の総和または平均値を求め、これをI1として、既に不揮発メモリ36に格納している基準受光量52の値であるIthを用いて前記(1)式からエチルアルコール含有度Aを算出する。
【0054】
前記(1)式にあっては、基準画像50の基準受光量Ithとλ1画像56の受光量I1の除算値(Ith/I1)を計算しているが、この代わりに減算値(Ith−I1)を計算しても良いし、二乗除算値(Ith/I12や二乗誤差(Ith−I12を計算しても良い。
【0055】
更に本実施形態にあっては、波長可変フィルタ16を更にλ2フィルタとしての波長帯域に切替えて撮像したλ2画像58から、外乱物質検出部46により外乱度Bを算出し、エチルアルコール検出部44で算出されたエチルアルコール含有度Aの適否を判定部48で判定するようにしている。
【0056】
これは被写体となる運転者20が例えば女性であった場合には、撮影対象とする顔には化粧が施されており、この化粧品に含まれる物質として例えばメントールC1020Oが存在した場合には、エチルアルコールが存在しないにも関わらず、メントールについてλ1画像56にλ1=2.77μmの吸収スペクトルが存在し、エチルアルコール含有度Aを誤検出する場合がある。
【0057】
即ち、化粧品などに含まれるメントールC1020Oはエチルアルコールと同様、2.77μmと3.37μmに吸収スペクトルを持っている。これに加え、メントールのベンゼン殻に由来する波長λ2=3.28μmにも固有の吸収スペクトルを持っている。
【0058】
そこで本実施形態にあっては、化粧品などに含まれるメントールをエチルアルコール検出に対する外乱物質と見なし、エチルアルコールと同じ吸収波長λ1=2.77μm及び3.37μm以外の固有の吸収波長λ2=3.28μmを選択的に透過させる第2フィルタとしてのλ2フィルタの波長帯域に波長可変フィルタ16を切替え、λ2フィルタを透過した赤外線放射光の撮像画像、即ちλ2画像58から受光量I2を算出し、メチルアルコールが血中に存在しない正常状態の人体よりの赤外線放射量に相当する受光量が得られる基準画像50から得られた基準受光量Ithを使用してメントールを判定するための外乱度Bとして
B=Ith/I2 ・・・(2)
を算出する。
【0059】
この(2)式で与えられる外乱度Bが予め定めた所定の閾値Bth以上であれば、それはメントールであり、エチルアルコールではないと判断することができる。なお閾値Bthの決め方は、エチルアルコール含有度Aの場合と同じである。
【0060】
即ち、図1のCPU26に設けた外乱物質検出部46は、不揮発メモリ36に格納されたエチルアルコールが血中に存在しない正常時にλ1フィルタを透過して得られた基準画像50の受光量Ithと、λ2フィルタを透過して得られたλ2画像58から得られた受光量I2に基づき、前記(2)式に従って外乱度Bを算出する。
【0061】
判定部48は、エチルアルコール検出部44で検出されたエチルアルコール含有度Aと、外乱物質検出部46で検出された外乱度Bに基づいて、エチルアルコール検出による酒気帯び状態と、メチルアルコール非検出による正常状態を判定する。
【0062】
具体的には、判定部48はエチルアルコール含有度Aが所定の閾値Ath以上で外乱度Bが所定の閾値Bth未満の場合にエチルアルコール検出ありと判定し、酒気帯び状態を判定する。一方、エチルアルコール含有度Aが所定の閾値Ath以上で外乱度Bも所定の閾値Bth以上の場合には、エチルアルコールではなく、外乱物質である例えば化粧品などに含まれるメントールであることからエチルアルコールの非検出と判定し、正常状態を判定する。
【0063】
本実施形態における外乱物質は、メントール以外に、同じく化粧品などに多く使用されているステアリン酸C1735COOHが対象となる。ステアリン酸はエチルアルコールと同じ波長2.77μmと3.37μmに吸収スペクトルを持つが、エチルアルコールにはない−C00Hに起因した波長5.88μmに吸収スペクトルが表れる。
【0064】
したがって、ステアリン酸については更に波長λ3=5.88μmを選択的に透過するように波長可変フィルタ16を切替えて第3フィルタとしてのλ3フィルタを準備し、この状態で赤外線カメラ12で撮像したλ3画像をメモリ38に格納する。
【0065】
このステアリン酸の吸収スペクトルに対応したλ3画像についての外乱物質検出部46の処理は、λ3画像から受光量I3を算出し、λ2画像の場合と同様、前記(2)式からステアリン酸についての外乱度Bを算出し、判定部48で外乱度Bが所定の閾値Bth以上であればステアリン酸であり、エチルアルコールではないと判断できる。
【0066】
更に、エチルアルコールに対する外乱物質としてグリセリンC35(OH)3の場合には−CH3に由来する吸収スペクトルの波長2.77μmが表れないため、グリセリンについてはλ1フィルタのλ1画像56につき、その受光量I1に減衰が起きず、前記(1)式で算出されるアルコール含有度Aが所定の閾値Ath以上となることでエチルアルコールでないことが確認でき、したがってグリセリンについては外乱物質として考慮する必要はない。
【0067】
本実施形態は外乱物質として化粧品などに多く含まれるメントールとステアリン酸を例に取っているが、これ以外のエチルアルコールと同じ波長にスペクトル吸収を持つ物質が存在する場合には、それぞれの物質につきエチルアルコールの吸収波長以外の固有の波長につき、その波長固有のフィルタによる画像を取得して外乱度を求めることで、外乱物質によるエチルアルコールの誤検出を確実に回避することができる。
【0068】
なお、-CH3と−OHをもつ物質は無数にあり、その内、積極的に顔に付着させる可能性がある物質として、化粧品に含まれるメントールとステアリン酸を例示している。他にも、糖尿病患者の体内で生成されるアセト酢酸も、−CH3と−OHを持ち、エタノールと同じスペクトル吸収帯を持つが、エタノールにはない5.83μmの吸収帯を第3波長帯域として測定することにより、外乱物質であることを認識できる。
【0069】
図5は図1の実施形態によるエチルアルコール検出処理を示したフローチャートである。図5において、まずステップS1でエチルアルコールの検知要求の有無をチェックしている。この検知要求は、例えば運転者が座席に座ってエンジンを始動するためにイグニッショクーンキーをオン位置に回した際に、検知要求信号がエチルアルコール検知装置10に出力され、検知処理が開始される。
【0070】
ステップS1で検知要求が判別されると、ステップS2に進み、不揮発メモリ36に対する基準画像50、基準受光量52及び特徴領域抽出画像54の初期登録が済んでいるか否かチェックする。
【0071】
納入された車両を最初にユーザが利用する際には初期登録済みでないことから、ステップS3に進み、基準画像登録部40により基準画像受光量の登録処理が実行される。このステップS3の基準画像受光量の登録処理の詳細は図6のフローチャートに示される。
【0072】
一方、ステップS2で初期登録が済んでいることが判別されると、ステップS4に進み、更新タイミングか否かチェックする。更新タイミングとしては例えば1ヶ月の周期が設定され、1ヶ月を経過するごとに更新タイミングがステップS4で判別され、ステップS3に進んで基準画像受光量の登録処理を再度行い、前回行った登録内容を更新することになる。
【0073】
続いて、ステップS5で波長可変フィルタ16をλ1フィルタとしての波長帯域にセットし、ステップS6で赤外線カメラ12の撮影動作を行い、λ1画像56を取得してメモリ38に保存する。このとき、もし赤外線光源を設けている場合には、赤外線光源を点灯して、補助的に赤外線光を運転者20に照射し、その反射光によりλ1画像56を取得して保存する。
【0074】
次にステップS7で波長可変フィルタ16をλ2フィルタとしての帯域にセットし、ステップS8の撮影動作によりλ2画像58をメモリ38に保存する。
【0075】
このステップS5〜S8におけるλ1画像、λ2画像の撮像によるメモリ保存は、1回であってもよいし、必要に応じてn回、連続的に撮像保存するようにしてもよい。
【0076】
続いてステップS9で、図4に示したように、運転者の唇、目などの毛細血管からの熱の表れ易い場所につき、設定した特徴抽出領域72−1〜72−3を持つ不揮発メモリ36に格納している特徴領域抽出画像54を使用し、メモリ38に保存しているλ1画像56及びλ2画像58に設定し、特徴領域72−1〜72−3に含まれる画素につき受光量の算出を行う。
【0077】
まずステップS10でλ1画像56から受光量I1を計算し、次にステップS11でλ2画像から受光量I2を計算する。次にステップS12で前記(1)式によりアルコール含有度Aを計算する。そしてステップS13で、算出したアルコール含有度Aが閾値Ath以上か否かチェックし、閾値Ath以上であった場合には毛細血管中にエチルアルコールが含有していると判断して、ステップS14に進み、一方、エチルアルコール含有度Aが閾値Ath未満の場合にはエチルアルコールによるスペクトル吸収はないことから、エチルアルコール非検出としてステップS1に戻る。
【0078】
アルコール含有度Aが閾値Ath以上であった場合に進むステップS14にあっては、外乱度Bを前記(2)式から算出し、次のステップS15で、算出した外乱度Bが閾値bth以上であることを判別すると、これはエチルアルコール以外の外乱物質によるエチルアルコール含有度Aの誤検出と判断し、エチルアルコール非検出状態となる正常状態であるとして、ステップS1に戻る。
【0079】
一方、ステップS15で外乱度Bが閾値Bth未満の場合には、外乱物質によるエチルアルコールの誤検出はないものと判定し、ステップS16に進み、エチルアルコール検出による酒気帯び状態と判定し、対応処理を実行する。
【0080】
酒気帯び状態と判定した場合の対応処理は、図1において表示部60に酒気帯び運転をしないように促す警告表示を出力表示したり、音声メッセージを出力し、更には制御部62によりイグニッションキーをスタート位置に回してもエンジンを始動させないように禁止動作をかけるなどして、酒気帯び運転を行わせないようにする。
【0081】
図6は図5のステップS3における基準画像受光量登録処理の詳細を示したフローチャートである。図6において、基準画像受光量登録処理は、まずステップS17で表示部60や音声出力機能を利用し、登録処理を行うためのガイダンスを出力する。このガイダンスは例えば「運転者の基準となる画像の登録を行います。化粧品を使用していない状態でハンドルに手を掛け、正面を向いて下さい。撮影を行います」を出力する。
【0082】
続いてステップS18で波長可変フィルタ16をλ1フィルタとしての帯域にセットし、ステップS19で赤外線カメラ12の撮像動作を行い、λ1画像をワークメモリとして使用しているメモリ38に保存する。
【0083】
次にステップS20で、メモリ38に保存したλ1画像を対象に、図4に示すように、運転者20の目や唇を含む特徴抽出領域72−1〜72−3を設定した特徴領域抽出画像54を生成してメモリ38上に保存する。
【0084】
次にステップS21で、メモリ38上のλ1画像に対しステップS20で作成した特徴領域抽出画像54を設定して、その特徴抽出領域72−1〜72−3に含まれる画素値の総和または平均値としてλ1画像受光量I1を計算する。
【0085】
続いて、登録対象となっている運転者の顔に化粧品によるメントールなどの外乱物質が存在するか否かの判定処理を行う。この処理は、ステップS22で波長可変フィルタ16をλ2フィルタとしての帯域にセットし、ステップS23で赤外線カメラ12の撮像動作によりλ2画像をワークメモリとして使用しているメモリ38に保存する。
【0086】
次にステップS24で、λ2画像に対しステップS20で作成した特徴領域抽出画像54を適用して、その特徴抽出領域72−1〜72−3に含まれる画素値の総和または平均値としてλ2画像受光量I2を計算する。
【0087】
次にステップS25で、不揮発メモリ36に予め格納されているデフォルトの基準受光量(Ith)0とステップS24で計算したλ2受光量I2から前記(2)式を用いて外乱度Bを計算する。
【0088】
続いてステップS26で、計算した外乱度Bが閾値Bth未満であれば、初期登録の対象としている運転者の顔には化粧が施されておらず、初期登録のための適正な画像であると判断し、ステップS27でメモリ38に保存しているλ1画像受光量I1を基準受光量Ithとして不揮発メモリ36に保存する。更にステップS28において、ステップS19で保存したλ1画像及びステップS20で求めた特徴領域抽出画像につき、それぞれ不揮発メモリ36に基準画像50及び特徴領域抽出画像54として保存する。
【0089】
一方、ステップS26で外乱度Bが閾値Bth以上であった場合には、初期登録の対象としている運転者の顔面に化粧が施され、エチルアルコール吸収波長となるλ1画像に吸収スペクトルを持つ画像を対象に基準受光量となるλ1画像受光量I1が計算されていることから、この場合にはステップS29でエラーを判定し、予め不揮発メモリ36に格納されているデフォルトの基準受光量(Ith)0を有効化し、登録処理による運転者に依存した基準受光量Ithの更新は行わない。このエラー判定となった場合についても、ステップS28で特徴領域抽出画像54については不揮発メモリ36に格納する。
【0090】
この図6に示すような基準画像受光量登録処理により、エチルアルコールが血中に存在しない正常状態でのλ1画像から求めた基準となる運転者に固有の基準受光量Ithを正しく取得することができ、その後の運用中においても基準画像受光量登録の更新処理を行うことで、運転者の体調などの変化に追従した正しい基準受光量Ithが得られ、エチルアルコール検出処理の信頼性を保証することができる。
【0091】
また、基準画像受光量登録処理に失敗した場合であっても、製造段階の設定値として準備されたデフォルトの基準受光量を使用することができるため、運転者に依存した基準受光量に比べるとエチルアルコールの検出精度はやや劣るが、基準受光量登録処理に失敗しても、基本的にはデフォルトの基準受光量(Ith)0を用いてエチルアルコール検出処理を有効に行うことができる。
【0092】
図7は図1の波長可変フィルタに代えて使用する回転円盤を用いたフィルタ切替えの赤外線カメラを示した説明図である。赤外線カメラ12は、図2と同様、対物レンズ64と結像レンズ66を持つ光学系に波長可変フィルタを配置しており、カメラ本体側にはCCD撮像素子24が設けられている。
【0093】
赤外線カメラ12の前には図1の波長可変フィルタ16に代えてフィルタ切替ユニット74が配置され、回転円盤の例えば2箇所に、帯域の異なるフィルタとして、本実施形態にあってはλ1フィルタ76−1とλ2フィルタ76−2を装着し、これらのフィルタをモータを備えたフィルタ駆動部により順次切り替えながら、運転者の顔の赤外線放射光または赤外線反射光による画像を撮像する。
【0094】
図8は赤外線センサを用いたエチルアルコール検知装置の他の実施形態を示したブロック図である。図8において、エチルアルコール検知装置10に対し設けられた赤外線カメラ12には、図1のCCD撮像素子24に代えて赤外線センサ78を設けている。
【0095】
図9は図8の赤外線センサ78を示している。赤外線センサ78はケース90の開口部にガラスなどのウィンドウ92を有し、ウィンドウ92の内部に、透視状態で示すように赤外線検出素子94を設けており、赤外線検出素子94は外部のリード96に接続されている。
【0096】
赤外線検出素子94としては、焦電素子、サーモパイル、サーミスタ、ボロメータなどの非冷却型素子を使用できる。またMCT、Insbなどの冷却型素子を用いてもよい。
【0097】
再び図8を参照するに、赤外線カメラ12に赤外線センサ78を設けたことに伴い、図1のカメラ制御部14に代えてセンサ受光制御部77が設けられ、センサ受光制御部77によりフィルタ駆動部18を動作し、波長可変フィルタ16に帯域をセットするようにしている。
【0098】
またエチルアルコール検知装置10のCPU26には、赤外線センサ78に対応して基準受光信号登録部80と受光制御部82が設けられる。CPU26に設けたエチルアルコール検出部44、外乱物質検出部46及び判定部48は、図1と同じである。
【0099】
基準受光信号登録部80は、車両の使用を最初に開始する際に動作し、受光制御部77によるフィルタ駆動部18の動作で、波長可変フィルタ16をエチルアルコールの吸収波長であるλ1=2.77μmを含むλ1フィルタにセットした状態で、赤外線カメラ12の赤外線センサ78で検出された受光信号を基準受光信号84(値はIth)として、不揮発メモリ36に保存する。
【0100】
受光制御部82は、波長可変フィルタ16をλ1フィルタにセットした状態で、赤外線カメラ12の赤外線センサ78で検出されたλ1受光信号86をメモリ38に格納する。また波長可変フィルタ16をλ2フィルタにセットした状態で、赤外線センサ78で得られたλ2受光信号88をメモリ38に格納する。
【0101】
即ち、赤外線センサ78を使用した場合には、波長可変フィルタ16によるフィルタ帯域の切替えに伴う受光制御でメモリ38に直接、λ1受光量86としてのI1、λ2受光量88としてのI2のそれぞれを得ることができる。
【0102】
このため、エチルアルコール検出部44にあっては、不揮発メモリ36に予め格納されている基準受光信号Ithとメモリ38に格納されているλ1受光量I1から、前記(1)式によりエチルアルコール含有度Aを算出する。また外乱物質検出部46は、不揮発メモリ36に格納されている基準受光信号Ithとメモリ38に格納されているλ2受光信号I2から、前記(2)式により外乱度Bを算出し、最終的に判定部48でエチルアルコール含有度Aと外乱度Bから、エチルアルコールの検出、非検出を判定することができる。
【0103】
図10は図8の実施形態によるエチルアルコール検出処理を示したフローチャートである。図10において、ステップS31で検知要求を判別すると、ステップS32で初期登録済か否かチェックし、初期登録済でない場合にはステップS33に進み、基準受光信号登録処理を実行する。この基準受光信号登録処理の詳細は図11のフローチャートに示す。
【0104】
ステップS32で初期登録済みであった場合には、ステップS34で更新タイミングか否かチェックし、例えば1ヶ月周期の更新タイミングであった場合には、ステップS33で再度、基準受光信号登録処理を実行し、基準受光信号の更新を行う。更新タイミングでなければ、ステップS33の処理はスキップする。
【0105】
次にステップS35で波長可変フィルタ16をλ1フィルタにセットして、ステップS36で赤外線カメラ12の赤外線センサ78からλ1受光信号I1を取得してメモリ38に保存する。次にステップS37で波長可変フィルタ16をλ2フィルタにセットし、ステップS38で赤外線センサ78からλ2受光信号I2を取得してメモリ38に保存する。
【0106】
次にステップS39でエチルアルコール含有度Aを(1)式により算出する。次にステップS40で含有度Aが閾値Ath未満であれば、エチルアルコール非検出としてステップS31に戻る。含有度Aが閾値Ath以上であれば、ステップS41に進み、外乱度B1を前記(2)式により計算する。
【0107】
次にステップS42で外乱度Bが閾値Bth以上であれば、エチルアルコールによるアルコール含有度Aではなくメントールといった外乱物質によるアルコール含有度Aであることから、エチルアルコール非検出としてステップS31に戻る。ステップS42で外乱度が閾値bth未満であった場合には、エチルアルコールの検出と判断し、ステップS43で酒気帯び状態と判定して対応処理を行う。
【0108】
図11は図10のステップS33の基準受光信号登録処理の詳細を示したフローチャートである。図11において、基準受光信号登録処理は、ステップS44で運転者に対し基準受光信号の登録処理を行うための表示または音声によるガイダンスを行った後、ステップS45で波長可変フィルタ16をλ1フィルタにセットし、ステップS46で赤外線センサ78によるλ1受光信号I1を取得してワークメモリとしてのメモリ38に保存する。
【0109】
次にステップS47で波長可変フィルタ16をλ2フィルタにセットし、ステップS48で赤外線センサ78からλ2受光信号I2を取得してワークメモリとしてのメモリ38に保存する。次にステップS49で、不揮発メモリ36に予め格納されているデフォルトの基準受光信号Ithを用いて、前記(2)により外乱度Bを計算する。
【0110】
次にステップS50で外乱度Bが強い基地Bth未満であった場合には、運転者に化粧が施されていない基準受光信号登録処理に適合した状態にあることから、ステップS51でメモリ38に保存したステップS46におけるλ1受光信号I1を基準受光信号Ithとして不揮発メモリ36に保存する。
【0111】
一方、ステップS50で外乱度Bが閾値Bth以上であった場合には、登録対象としている運転者の顔に化粧が施され、エチルアルコール吸収スペクトルが外乱物質により生じたものであることから、ステップS52でエラーを判定し、ステップS53で不揮発メモリ36に予め格納しているデフォルトの基準受光信号(Ith)0を有効化し、図10のメインルーチンにリターンした際、デフォルトの基準受光信号を用いてエチルアルコール含有度Aや外乱度Bを計算可能とする。
【0112】
このように赤外線カメラ12に赤外線センサを用いた場合についても、エチルアルコール含有度A及び外乱度Bの計算に用いる基準受光信号Ithが運転者20の顔からの放射赤外線あるいは赤外線光源を使用した際の反射赤外線の実際の受光信号に基づいて設定でき、運転者に依存した基準受光信号を使用することでエチルアルコール検出処理の制度を高めることができる。
【0113】
図12はマルチ赤外線センサを用いたエチルアルコール検知装置の他の実施形態を示したブロック図である。図12において、赤外線カメラ12には光学系22に続いてマルチ赤外線センサ98が設けられている。
【0114】
図13は図11のマルチ赤外線センサ98を示している。マルチ赤外線センサ98は、受光側にウィンドウ92を設けたケース90の内部に透過的に示すように、この実施形態にあっては4つの赤外線検出素子94−1〜94−4を配置している。
【0115】
このため、マルチ赤外線センサ98に運転者である被写体の像が結像されると、被写体の像即ち運転者の顔の像につき、4つに分割した領域ごとに赤外線検出素子94−1〜94−4に対応した受光信号が得られる。そこで、4分割された赤外線検出素子94−1〜94−4から得られた受光信号につき、その総和あるいは平均値を算出することで、λ1受光量I1、λ2受光量I2を求めることができる。
【0116】
また基準受光信号登録部100による登録処理にあっては、4分割された赤外線検出素子94−1〜94−4から得られた4つの受光信号につき、その総和あるいは平均値を算出することで、求めたλ1受光量I1を基準受光量Ithとする。この処理は、図12のCPU26にマルチ赤外線センサ98に対応して設けた基準受光信号登録部100及び受光制御部102により行われることになる。それ以外の構成は、図8に示した単一の赤外線検出素子を用いた実施形態と同じである。
【0117】
図14は図12の実施形態によるエチルアルコール検出処理を示したフローチャートである。図14において、ステップS54〜S57は図10のステップS31〜S34と同じである。また図14のステップS64〜S68は図10のステップS39〜S43と同じである。
【0118】
相違点は、図14のステップS58〜S63において、図13に示す4つの赤外線検出素子94−1〜94−4の受光信号から受光量を計算している点である。即ち、ステップS58で波長可変フィルタ16をλ1フィルタにセットし、ステップS58でマルチ赤外線センサ98の赤外線検出素子94−1〜94−4から4つの受光信号からなるλ1受光信号群106を取得してメモリ38に保存する。
【0119】
次にステップS60で波長可変フィルタ16をλ2フィルタにセットし、マルチ赤外線センサ98の赤外線検出素子94−1〜94−4からの4つの受光信号からなるλ2受光信号群108を取得してメモリ38に保存する。
【0120】
次にステップS62で、λ1受光信号群106から4つの受光信号の総和または平均値として受光量I1を計算し、同様にステップS63でλ2受光信号群108の4つの信号から総和または平均値として受光量I2を計算する。
【0121】
このように、例えば4つの赤外線検出素子94−1〜94−4を備えたマルチ赤外線センサ98を用いて、複数の受光信号の総和または平均値からλ1受光信号群106、λ2受光信号群108を求めていることで、図9の単一の赤外線検出素子94を用いた場合に比べ、赤外線の検出感度と分解能を高めることができる。なお、赤外線検出素子の数は、4素子以外に、8素子、16素子、32素子と必要に応じて増加させても良い。
【0122】
図15は図14のステップS56における基準受光信号登録処理の詳細を示したフローチャートである。この基準受光信号登録処理はステップS69〜S80からなり、基本的に図11に示した単一の赤外線検出素子94の場合と同じであるが、ステップS70〜S72のように、波長可変フィルタ16にλ1フィルタをセットし、複数の受光信号からなるλ1受光信号群を取得してワークメモリに保存した後、λ1受光信号群からλ1受光信号I1を計算している点、及びステップS73〜S75において波長可変フィルタ16にλ2フィルタをセットし、複数の受光信号を含むλ2受光信号を取得して、そこからλ2受光量I2を計算している点が相違する。
【0123】
図16はフィルタ内蔵のマルチ赤外線センサを用いたエチルアルコール検知装置の他の実施形態を示したブロック図である。赤外線カメラ12には、光学系22に続いて、フィルタを内蔵したマルチ赤外線センサ112が設けられている。
【0124】
図17は図16のマルチ赤外線センサ112を取り出して内部構造を透視状態で示している。マルチ赤外線センサ112は、受光側にウィンドウ92を備えたケース90内に例えば3つの赤外線受光素子94−1〜94−3を配置し、その前方にλ1フィルタ126−1、λ2フィルタ126−2及びλ3フィルタ126−3を配置している。
【0125】
λ1フィルタ126−1は、エチルアルコールのスペクトル吸収波長λ1=2.77μmを透過するフィルタである。λ2フィルタ126−2は、外乱物質であるメントールに固有な波長λ2=3.28μmを透過するフィルタである。更にλ3フィルタ126−3は、外乱物質であるステアリン酸に固有な波長λ3=5.88μmを透過するフィルタである。
【0126】
このようにフィルタと赤外線受光素子を1:1に対応して組み合わせたマルチ赤外線センサ112によれば、図8及び図2の実施形態に示すような波長可変フィルタ16によるフィルタ制御が不要となり、マルチ赤外線センサ112自体で固定的に波長λ1,λ2,λ3に対応した受光信号を直接検出でき、その分、装置構成が簡単にできると共に、CPU26による処理も簡略化されて処理負荷を低減することができる。
【0127】
図18は図16の実施形態によるエチルアルコール検出処理を示したフローチャートである。図18において、ステップS81〜S83は図14のステップS54〜S56と同じである。次のステップS85〜S87にあっては、波長可変フィルタを設けずに、図17のようにマルチ赤外線センサ112自体にフィルタが内蔵されているため、直接的にλ1受光信号I1、λ2受光信号I2、更にλ3受光信号I3を取得して、メモリ38に保存できる。
【0128】
続いてステップS88でアルコール含有度Aを計算し、ステップS89で含有度Aが閾値Ath以上であれば、ステップS90で外乱度B1を計算し、ステップS91で外乱度B1が閾値Bth未満であれば、ステップS92で外乱度B2を計算し、ステップS93で外乱度B2が閾値Bth未満であればアルコール検出と判定し、ステップS94で酒気帯び運転を判定して対応処理を行う。
【0129】
図19は図18のステップS83の基準受光信号登録処理の詳細を示したフローチャートである。この基準受光信号登録処理にあっては、ステップS95で登録処理のためのガイダンスを行った後、ステップS96,S97で、それぞれマルチ赤外線センサ112のλ1フィルタ126−1及びλ2フィルタ126−2に対応した赤外線検出素子94−1,94−2から直接、λ1受光信号I1及びλ2受光信号I2を取得して、ワークメモリとしてのメモリ38に保存する。
【0130】
続いてステップS98で、デフォルトの基準受光信号Ithとλ2受光信号I2を用いて(2)式から外乱度Bを計算し、ステップS99で外乱度Bが閾値Bth未満であれば、ステップS100に進み、外乱物質による影響がないことから、λ1受光信号を基準受光信号Ithとして不揮発メモリ36に保存する。ステップS99で外乱度Bが閾値Bth以上であれば、ステップS101でエラーと判定し、ステップS102でデフォルトの基準受光信号(Ith)0を有効化し、図18のメインルーチンにリターンする。
【0131】
なお上記の実施形態は、波長可変フィルタや機械的なフィルタ切替ユニットによるフィルタ切替えを例に取るものであったが、これ以外に、解析格子などを用いた分光器により、目的とするスペクトル帯域の画像もしくは受光量を測定するようにしてもよい。
【0132】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0133】
10:エチルアルコール検知装置
12:赤外線カメラ
14:カメラ制御部
16:波長可変フィルタ
18:フィルタ駆動部
20:運転者
22:光学系
24:CCD撮像素子
26:CPU
28:バス
30,32,34:IF
36:不揮発メモリ
38:メモリ
40:基準画像登録部
42:撮像制御部
44:エチルアルコール検出部
46:外乱物質検出部
48:判定部
50:基準画像
52:基準受光量
54:特徴領域抽出画像
56:λ1画像
58:λ2画像
60:表示部
62:制御部
64:対物レンズ
66:結像レンズ
72−1〜72−3:特徴抽出領域
74:フィルタ切替ユニット
76−1,126−1:λ1フィルタ
76−2,126−2:λ2フィルタ
77:センサ受光制御部
78:赤外線センサ
80,100,114:基準受光信号登録処理部
82,102,116:受光制御部
84,104:基準受光信号
86:λ1受光信号
88:λ2受光信号
90:ケース
92:ウィンドウ
94,94−1〜94−3:赤外線検出素子
96:リード
98,112:マルチ赤外線センサ
106,120:λ1受光信号群
108,122:λ2受光信号群
124:λ3受光信号群
126−3:λ3フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子と、
被写体像を前記撮像素子に結像させる光学系と、
前記被写体からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1フィルタと、
前記被写体からの前記エチルアルコールと同じ前記第1波長体域に吸収波長を持つ外乱物質の他の吸収波長であり、かつエチルアルコールの吸収波長ではない波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2フィルタと、
前記第1のフィルタを透過して結像された第1被写体画像、及び前記第2フィルタを透過して結像された第2被写体画像を、前記撮像素子により撮像してメモリに格納する撮像制御部と、
登録モードの設定時に、前記撮像制御部により前記第1フィルタを透過して結像された第1被写体画像を基準画像として不揮発メモリに格納する基準画像登録部と、
前記メモリの第1被写体画像と前記不揮発メモリの基準画像に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
前記メモリに格納された第2被写体画像と前記不揮発メモリの基準画像に基づいて前記外乱物質の濃度に対応した外乱度を算出する外乱物質検出部と、
前記エチルアルコール含有度と前記外乱度とに基づいて前記エチルアルコールの検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項2】
請求項1記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第1フィルタは第1波長帯域として2.77μm又は3.37μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2フィルタは、前記外乱物質がメントールの場合、前記第2波長帯域として3.28μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、前記外乱物質がステアリン酸の場合、前記第2波長帯域として5.88μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項3】
請求項1記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記基準画像登録部は、前記基準画像を構成する画素の値の総和又は平均値として基準受光量を算出して前記不揮発メモリに格納し、
前記エチルアルコール検出部は、前記第1被写体画像の画素値の総和または平均値として算出した第1被写体受光量と、前記不揮発メモリの基準受光量に基づいて、前記エチルアルコール含有度を算出し、
前記外乱物質検出部は、前記第2被写体画像の画素値の総和または平均値として算出した第2被写体受光量と、前記不揮発メモリの基準受光量に基づいて、前記外乱度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項4】
請求項3記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記エチルアルコール含有度を、前記第1被写体受光量との基準受光量の減算値又は除算値、所定係数を乗じた減算値又は除算値、若しくは二乗誤差値の総和又は平均値として算出し、
前記外乱物質検出部は、前記外乱度を、前記第2被写体受光量との基準受光量の減算値又は除算値、所定係数を乗じた減算値又は除算値、若しくは二乗誤差値の総和又は平均値として算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項5】
1又は複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサと、
被写体像を前記赤外線受光センサに結像させる光学系と、
前記被写体からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1フィルタと、
前記被写体からの前記エチルアルコールと同じ前記第1波長体域に吸収波長を持つ外乱物質の他の吸収波長であり、かつエチルアルコールの吸収波長ではない波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2フィルタと、
前記赤外線センサにより、前記第1フィルタを透過して受光された被写体の第1受光信号、及び前記第2フィルタを透過して受光された被写体の第2受光信号を検出してメモリに格納する受光制御部と、
登録モードの設定時に、前記受光制御部により前記第1フィルタを透過して受光された第1受光信号を基準受光信号として不揮発メモリに格納して保持する基準受光信号登録部と、
前記メモリの第1受光信号と前記不揮発メモリの基準受光信号に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
前記メモリの第2受光信号と前記不揮発メモリの基準受光信号に基づいて前記外乱物質の濃度に対応した外乱度を算出する外乱物質検出部と、
前記エチルアルコール含有度と前記外乱度とに基づいて前記エチルアルコールの検出を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項6】
請求項5記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記第1フィルタは第1波長帯域として2.77μm又は3.37μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2フィルタは、前記外乱物質がメントールの場合、前記第2波長帯域として3.28μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、前記外乱物質がステアリン酸の場合、前記第2波長帯域として5.88μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項7】
請求項5記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記メモリの第1被写体受光信号と前記不揮発メモリの基準受光信号に基づいて前記エチルアルコール含有度を算出し、
前記外乱物質検出部は、前記メモリの第2被写体受光信号と前記不揮発メモリの基準受光信号に基づいて前記外乱度を算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項8】
請求項7記載のエチルアルコール検知装置に於いて、
前記エチルアルコール検出部は、前記エチルアルコール含有度を、前記第1被写体受光信号との基準受光信号の減算値又は除算値、所定係数を乗じた減算値又は除算値、若しくは二乗誤差値の総和又は平均値として算出し、
前記外乱物質検出部は、前記外乱度を、前記第2被写体受光信号との基準受光信号の減算値又は除算値、所定係数を乗じた減算値又は除算値、若しくは二乗誤差値の総和又は平均値として算出することを特徴とするエチルアルコール検知装置。
【請求項9】
請求項5記載のエチルアルコール検知装置に於いて、前記赤外線センサは、第1フィルタと、1又は複数の第2フィルタの各々と赤外線受光素子を組み合わせてセンサ筐体に組込み配置したことを特徴とするエチルアルコール検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−46763(P2013−46763A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−209241(P2012−209241)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2008−96887(P2008−96887)の分割
【原出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】