説明

エチルセルロース水分散体の製造方法

【課題】
経日により分離・沈降がなく、経日安定性に優れたエチルセルロース水分散液を得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】
アルキル硫酸塩及び水からなる50℃を超え80℃以下の水相を攪拌しながら、エチルセルロース、1価アルコール及び水不溶性有機溶剤からなる50℃を超え80℃以下の油相を水相に滴下し、同温度で均一混合した後、20〜50℃まで冷却して予備分散体を得ることを含む予備分散工程;予備分散工程の後、高圧分散機を使用して20〜50℃の温度と20〜40MPaの圧力で予備分散体を更に微分散させて微分散体を得る高圧分散工程;並びに高圧分散工程の後、微分散体を15〜45℃の温度で減圧下に脱溶剤してエチルセルロース水分散体を得る脱溶剤工程を含むエチルセルロース水分散体の製造方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチルセルロース水分散体の製造方法及びこの製造方法により得られたエチルセルロース水分散体に関する。さらに詳しくは、エチルセルロースの水分散体の分散安定性を著しく改善することができるエチルセルロース水分散体の製造方法及びこの製造方法により得られた水分散体に関する。本発明の水分散体は、医薬品や食品のコーティング剤等として利用される。
【背景技術】
【0002】
医薬品は、薬効成分の安定性改善、味のマスキング、あるいは薬効成分の徐放化等を目的として、フィルムコーティング剤を用いて、薬効成分(顆粒又は錠剤)をフィルムコーティングすることが多い。
フィルムコーティング剤としては、有機溶剤を含有するものが主であったが、製剤(医薬品)中への有機溶剤の残留、有機溶剤のコスト高、作業環境の改善等の点で、有機溶剤を含まない水分散体に移行しつつある。水分散体の基剤には、合成高分子(アクリル共重合体等)及び天然高分子(セルロース誘導体等)があるが、合成高分子を基剤とするものは、保存安定性が悪い、コーティング時に薬効成分の凝集が発生する、残留モノマーの可能性がある等の問題がある。これに対して、セルロース誘導体を基剤とするものはこれらの問題がない。また近年の天然物嗜好が強まる傾向にあり、セルロース誘導体を基剤として用いることが望ましいと考えられる。
セルロース誘導体を基剤とするフィルムコーティング剤としては、エチルセルロース水分散液が知られており、日本医薬品添加物規格収載の「エチルセルロース水分散液」は30重量%の高濃度でありながら低粘度である為、コーティング時間の短縮ができキュアリングの度合いにより、リリースの時間を調整できるのでさらに自由度の高い溶出制御型製剤の設計が可能である。
【0003】
従来、エチルセルロース水分散液の製法としては、有機溶剤中にエチルセルロースを溶解し、これを乳化剤の存在下に水中に微分散した後、分散液から有機溶剤を留去してエチルセルロース水分散体を得る方法などが提案されている(特許文献1及び2)。
【0004】
【特許文献1】特公平2−7925号公報
【特許文献2】米国特許第4,177,177号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の製法では、エチルセルロース水分散体の経日安定性が悪く、この分散体は経日的に分離もしくは沈降することがあるという問題がある。したがって、この分散体を用いて調製したコーティング製剤は、苦味のマスク、徐放化が不十分となりやすく、十分な苦味マスク、徐放化を施すために、過剰量のエチルセルロース分散体を必要とするという問題がある。
本発明の課題は、経日により分離・沈降がなく、経日安定性に優れたエチルセルロース水分散液を得ることができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発見者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。即ち、本発明のエチルセルロース水分散体の製造方法の特徴は、炭素数10〜18のアルキル硫酸塩及び水からなる50℃を超え80℃以下の溶液状の水相を攪拌しながら、エチルセルロース、炭素数10〜18の1価アルコール及び水不溶性有機溶剤からなる50℃を超え80℃以下の溶液状の油相を水相に滴下し、同温度で均一混合した後、20〜50℃まで冷却して予備分散体を得ることを含む予備分散工程(1);
予備分散工程の後、高圧分散機を使用して20〜50℃の温度と20〜40MPaの圧力で予備分散体を更に微分散させて微分散体を得る高圧分散工程(2);並びに
高圧分散工程の後、微分散体を15〜45℃の温度で減圧下に脱溶剤してエチルセルロース水分散体を得る脱溶剤工程(3)
を含む点を要旨とする。
【0007】
本発明のエチルセルロース水分散体の特徴は、上記の製造方法で得られたエチルセルロース水分散体であって、粒子の体積平均粒子径(動的光散乱法)が0.01〜0.15μmであり、1.0μm以上の粒子径(動的光散乱法)をもつ粒子が存在しない点を要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、粒子径が均一で細かいため、経日により分離・沈降がなく、経日安定性に優れたエチルセルロース水分散体を容易に得ることができる。
また、このエチルセルロース水分散体は、乾燥表面から1価アルコールの析出がないため、コーティング顆粒やコーティング散剤とした場合、表面に粘着性(ベタツキ)が少ないという効果を発揮する。
したがって、本発明の製造方法で得たエチルセルロース水分散体を用いると、薬効成分や食品(顆粒、錠剤等)等にコーティングする際、十分な安定性改善作用、マスキング作用、薬物の徐放化作用を容易に付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<予備分散工程(1)>
炭素数10〜18のアルキル硫酸塩としては、デシル硫酸塩、ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、セチル硫酸塩及びステアリル硫酸塩等が挙げられる。
塩としては、アルカリ金属(ナトリウム及びカリウム等)塩、アルカリ土類金属(カルシウム及びマグネシウム等)塩、アルミニウム塩及びアンモニウム塩等が挙げられる。これらのうち、水への溶解性とエチルセルロースの分散性の観点から、アルカリ金属塩が好ましく、さらに好ましくはナトリウム塩、カリウム塩及びこれらの混合である。
【0010】
水としては、日本薬局方収載の常水(水道水等)及び精製水(脱イオン水及び、蒸留水等)等が使用できる。
【0011】
水相には、アルキル硫酸塩及び水の他に、水相が透明溶液状を保つ限り(かすみが生じたり、濁ったり、分離したりしないこと)、微量の有機溶剤を含有してもよい。
【0012】
有機溶剤としては、炭化水素(トルエン及びシクロへキセン等)、エーテル(イソプロピルエーテル等)、ケトン(メチルエチルケトン等)及びエステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、蟻酸エチル及び蟻酸プロピル等)等が挙げられる。これらのうち、ケトン及びエステルが好ましい。
【0013】
水相に有機溶剤を含有させる場合、この含有量(重量%)は、水の重量に基づいて、0.01〜0.1が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.08である。
【0014】
アルキル硫酸塩の含有量(重量%)は、水相の重量に基づいて、0.1〜2.0が好ましく、さらに好ましくは0.1〜1.0、特に好ましくは0.2〜0.8%である。この範囲であると、油相を水相に分散させる時の分散性及びエチルセルロース水分散体を顆粒又は錠剤にコーティングする時のコーティング性がさらに良好となる。
【0015】
水の含有量(重量%)(有機溶剤を含有する場合、この含有量は水の含有量含まれる。)は、水相の重量に基づい、98.0〜99.9が好ましく、さらに好ましくは99.0〜99.9、特に好ましくは99.2〜99.8%である。この範囲であると、油相を水相に分散させる時の分散性及び脱溶剤時の粗大粒子の発生抑制がさらに良好となる。
【0016】
エチルセルロースとしては、日本医薬品添加物規格収載「エチルセルロース」の規格を満足するもの等が使用できる。
【0017】
炭素数10〜18の1価アルコールとしては、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコール等が挙げられる。これらのうち、錠剤の表面特性(エチルセルロース水分散体を錠剤にコーティングした時の表面の光沢及びベタ付き等)等の観点から、セチルアルコールが好ましい。
【0018】
水不溶性有機溶剤としては、エチルセルロース及び炭素数10〜18の1価アルコールを少なくとも50〜80℃で溶解し、これらの溶液を得るために用いられる溶剤であって、かつ、水と「混和しにくい」有機溶剤が含まれる。ここで水と「混和しにくい」有機溶剤とは、水と自由に混じり合わない溶剤であって、25℃において水不溶性有機溶剤100gに対する水の最大溶解量が20g以下である溶媒を意味する。
【0019】
水不溶性有機溶剤としては、炭化水素(トルエン及びシクロヘキセン等)、エーテル(イソプロピルエーテル等)、ケトン(メチルエチルケトン等)、ハロゲン化炭化水素(クロロホルム及び塩化メチレン等)及びエステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、蟻酸エチル及び蟻酸プロピル等)等が挙げられる。これらのうち、炭化水素が好ましく、さらに好ましくはシクロへキセンである。なお、水不溶性有機溶剤には水を溶解させたものが含まれる。
【0020】
水不溶性有機溶剤は、後工程で留去する必要があるので、沸点が水より低いもの(90℃以下の沸点のものが好ましい)が好ましい。
水不溶性有機溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0021】
エチルセルロースの含有量(重量%)は、水不溶性有機溶剤の種類等により適宜決定すればよいが、油相の重量に基づいて、1〜30が好ましく、さらに好ましくは1〜20、特に好ましくは2〜15である。この範囲であると、経日安定性等がさらに良好となる。
【0022】
炭素数10〜18の1価アルコールの含有量(重量%)は、油相の重量に基づいて、0.1〜3.0が好ましく、さらに好ましくは0.1〜2.0、特に好ましくは0.2〜1.5である。この範囲であると、経日安定性等がさらに良好となる。
【0023】
水不溶性有機溶剤の含有量(重量%)(水を含有する場合、この含有量は水不溶性有機溶剤の含有量含まれる。)は、油相の重量に基づいて、67〜98.9が好ましく、さらに好ましくは78〜98.9、特に好ましくは83.5〜97.8である。この範囲であると、経日安定性等がさらに良好となる。
【0024】
水相は、アルキル硫酸塩及び水を均一混合して、溶液状(水溶液)に調製した後、50℃を超え80℃以下(好ましくは60〜70℃)に保っておく。
【0025】
油相は、エチルセルロース、1価アルコール及び水不溶性有機溶剤を均一混合して、溶液状(有機溶剤溶液)に調整した後、50℃を超え80℃以下(好ましくは60〜70℃)に保っておく。
【0026】
なお、1価アルコールを油相ではなく水相に分散させることは、エチルセルロース水分散体をコーティングする際、1価アルコールがコーティング層表面に析出するため好ましくない。すなわち、1価アルコールをエチルセルロースと共に油相に溶解させておくことにより、経日安定性の良好なエチルセルロース水分散体が得られる。この結果、1価アルコールが、コーティングの際、コーティング表面に析出することがない。
【0027】
予備分散工程は、50℃を超え80℃以下の溶液状の水相を攪拌しながら、50℃を超え80℃以下の溶液状の油相を水相に滴下し、同温度(好ましくは60〜70℃)で均一混合した後、次工程の高圧乳化を行う温度(20〜50℃、好ましくは30〜40℃)まで、攪拌しながら、冷却される。冷却は、均一混合した容器内で行ってもよい。
【0028】
滴下中及び均一混合の際の分散体(水相及び油相の混合体)温度(℃)は、50℃を超え80℃以下であることが重要であり、好ましくは60〜70℃である。
水相及び油相の温度が50℃以下の場合、油相を水相に滴下した時、油相の粘度が上がり分散が不十分となりやすく、一方、80℃を超えると分散状態が悪くなりやすい。
【0029】
油相の滴下速度(Y)(リットル/時)は、製造スケール(特に油相の量)等によって異なるが、式(1)を満たすことが好ましい。

0.64 ≦ Y ≦ 5X0.64 (1)

ただし、Xは油相の容量(リットル)
滴下速度(Y)がX0.64未満であると、滴下に時間が掛かりすぎるため生産性が悪くなりやすく、一方、5X0.64を越えると、滴下が早すぎるため予備分散が不十分となりやすい。
【0030】
攪拌及び均一混合するための攪拌装置としては、水相と油相とを均一混合できれば制限はなく、公知の混合装置(プロペラ式、パドル式、アンカー式等の攪拌軸を付帯した攪拌装置等)等が使用できる。
【0031】
<高圧分散工程(2)>
予備分散工程終了の冷却を始めてから、高圧分散工程に入るまでの時間は、10時間以下が好ましく、さらに好ましくは5時間以下である。この時間を超えると、予備分散体が再合着しやすいため、高圧分散機による高圧分散でも粒子径を小さくしにくく好ましくない。
【0032】
高圧分散機としては、一般に乳化機又は分散機として販売されているもの等を用いることができ、例えば、バッチ式乳化機{ホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製;「ポリトロン」はキネマチカ アーゲーの登録商標である。)及びTKオートホモミキサー(プライミクス株式会社製)等}、連続式乳化機{エバラマイルダー(株式会社荏原製作所製;「エバラマイルダー」は株式会社荏原製作所の登録商標である。)、TKパイプラインホモミキサー(プライミクス株式会社製)、コロイドミル(神鋼パンテック株式会社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機株式会社製)、キャピトロン(株式会社ユーロテック製)、ファインフローミル(太平洋機工株式会社製)等}、高圧乳化機{マイクロフルイダイザー(みずほ工業株式会社製)、ナノマイザー(ナノマイザー社製;「ナノマイザー」はエス・ジーエンジニアリング株式会社の登録商標である。)及びAPVガウリン(ガウリン社製)等}、膜乳化機{膜乳化機(冷化工業株式会社製)等}、振動式乳化機{バイブロミキサー(冷化工業株式会社製)等}並びに超音波乳化機{超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等}等が挙げられる。
【0033】
高圧分散工程(2)の温度は、20〜50(好ましくは30〜40)℃である。
高圧分散工程(2)の圧力は、20〜40(好ましくは25〜35)MPaである。
【0034】
温度及び圧力がこの範囲にすることによって、初めて安定な分散体が得られる(これらの範囲を外れると、安定な分散体が得られない。)。すなわち、20℃未満では水相及び油相からなる混合物の粘度が高くなるため、安定な分散体が得られない。一方、50℃を超えると水や水不溶性有機溶剤が揮発しやすくなるため、安定な分散体が得られない。また、20MPa未満では粒子径が細かくすることができない。一方、40MPaを越えると、水相及び油相からなる混合物が高いエネルギーを受けるため、この混合物の温度が50℃を超え、安定な分散体が得られない。
【0035】
高圧分散は、予備分散工程(1)における均一混合した容器から高圧分散装置機を通して同じ容器に戻す循環式でもよいし、高圧乳化機を通した後、別の容器に移すバッチ式(必要に応じてさらに高圧乳化機を通して均一混合した容器に戻してもよい。)でもよい。これらのうち、バッチ式の方が粒子径が均一になりやすく好ましい。
【0036】
高圧分散工程(2)の終点は、分散粒子の体積平均粒子径(動的光散乱法)が0.15μm以下かつ標準偏差が0.05μm以下となった時とする。体積平均粒子径が0.15μmを越えるか、標準偏差が0.05μmを越えると、エチルセルロース水分散体の経日安定性が悪くなりやすい。
【0037】
体積平均粒子経(動的光散乱法)及び標準偏差は、JIS Z8826:2005に準拠して、測定される(溶媒:イオン交換水、希釈倍率:2倍)。たとえば、次の測定条件で測定される。
【0038】
装 置:HORIBA LB−550(堀場製作所製)
温 度:室温(実測値をインプット,補正機能付き)
分 散 楳:イオン交換水
希釈倍率:2倍
【0039】
高圧分散工程(2)の所要時間は、たとえば、油相が3500kgの時、40時間程度、また油相が3.5kgの時、1時間程度である。
【0040】
<脱溶剤工程(3)>
高圧分散工程(2)に引き続き行われる脱溶剤工程は、15〜45(好ましくは20〜40)℃で減圧下に行われる。この範囲にすることによって、効率よく、初めて安定な分散体が得られる(この範囲を外れると、効率よく安定な分散体は得られない。)。すなわち、15℃未満であると水不溶性有機溶剤が留去しにくくなり、脱溶剤工程が長引き、生産性が低下する。一方、45℃を超えると1.0μm以上の粗大粒子の発生が多くなり安定な分散体が得られない。
【0041】
減圧度は、上記の温度範囲で溶剤を留去できれば制限がないが、101〜0.6KPa程度である。なお、飛沫や泡が機壁に付着して乾燥するような条件は粗大粒子(1.0μm以上)が生成するので好ましくない。
【0042】
脱溶剤工程(3)で発泡がある場合、消泡剤等を添加してもよい。
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤等が挙げられる。消泡剤は、単独で用いてもよいし、2種以上の混合したものを用いてもよい。
【0043】
脱溶剤工程(3)の終点は、キャピラリーガスクロマトグラフィーで残留する有機溶剤(水不溶性有機溶剤、水可溶性有機溶剤及び水溶性有機溶剤)の含有量を測定し、100ppm以下となったときである。100ppm以上の残留溶剤があると溶剤臭が残り好ましくない。
【0044】
有機溶剤の含有量は、JIS K0114:2000に準拠して測定され、たとえば、次の条件で測定される。
【0045】
カ ラ ム :DB−5(30m、0.53mm,1.5μm))
検 出 器 :FID
カ ラ ム 温 度 :50℃→10℃/分昇温→250℃
インジェクション温度:180℃
キャリヤーガス :窒素
【0046】
得られたエチルセルロース水分散体の体積平均粒子径(動的光散乱法)は、0.01〜0.15μmが好ましく、さらに好ましくは0.08〜0.14である。この範囲であると、経日安定性がさらに良好となる。
【0047】
また、エチルセルロース水分散体に、1.0μm以上の粒子径(動的光散乱法)を持つ粒子が存在しないことが好ましい。1.0μm以上の粒子が存在しないと、エチルセルロース水分散体の経日安定性がさらに良好となる。
【0048】
脱溶剤装置は、脱溶剤中の微分散体が均一に保たれるものであればよく、攪拌機付きのバッチ槽でもフィルムエバポレータでもよい。
【0049】
得られたエチルセルロース水分散体には、必要に応じて、可塑剤、溶出制御剤及び/又はその他の添加剤を添加してもよい。
【0050】
本発明の製造方法で得たエチルセルロース水分散体は、公知の方法で、薬効成分(顆粒又は錠剤)等をフィルムコーティングすることができる。フィルムコーティングするための装置としては、パンコーティング機、通気式パンコーティング機、流動層コーティング機、転動流動層コーティング機及びワースター流動層コーティング機等が挙げられる(錠剤のコーティングには、パンコーティング機又は通気式パンコーティング機を用いることが好ましく、顆粒剤や散剤のコーティングには流動層コーティング機、転動流動層コーティング機又はワースター流動層コーティング機を用いることが好ましい。)。
【0051】
コーティング量は、被コーティング物質の形状等により適宜決定すればよいが、顆粒剤の場合、その核粒子の重量に基づいて、5〜50重量%程度であり、錠剤の場合、同様に3〜20重量%程度である。
【0052】
被コーティング物質としては特に限定されず、公知の物質(特開2004-51578号公報、特開平8-198778号公報及び特開平11−209306号公報等)等が含まれる。被コーティング物質の形状としては特に限定されず、たとえば、顆粒剤、丸剤、散剤又は錠剤等の形状が含まれる。
【0053】
本発明のエチルセルロース水分散体は、乾燥フィルム表面からの1価アルコールの析出がないため、コーティング顆粒やコーティング散剤の表面のベタツキが少ないという効果を有する。乾燥フィルム表面からの1価アルコールの析出の有無は、次のようにして測定できる。
【0054】
評価試料(エチルセルロース水分散体)100gに対し、可塑剤(クエン酸トリエチル等)25gの割合で配合して試験液を調製した後、試験液約2.0gをガラス板(10cm×20cm)の上に滴下し、滴下後の試験液を、アプリケーターを用いて、均一に60μm厚みに薄く引き伸ばし、ガラス板を80℃の乾燥機で2時間加熱成膜処理を実施する。引き続き、ガラス板を取り出し後、2時間室温(約25℃)で放置し、ガラス上に成膜したフィルムの表面を目視で観察する。フィルム表面が無色透明であれば1価アルコールの析出はないと判断し、一方、フィルム表面が白濁している場合、表面に析出した白い物質を薬さじでかき取り、フーリエ変換赤外分光分析装置にて1価アルコールのスペクトルと一致することにより、1価アルコールが析出したと判断することができる。
【実施例】
【0055】
以下実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
<実施例1>
予備分散工程(1)
攪拌・加熱・冷却装置を備えた予備分散槽に、ラウリル硫酸ナトリウム(日光ケミカルズ株式会社製)8.0g及びイオン交換水(東京理化器株式会社製イオン交換水製造機で調製した。イオン電導度:0.2μS/cm、以下、同じ。)1800gを仕込み、均一混合しながら65℃に調節して水相を得た。
【0057】
攪拌・加熱・冷却装置を備えた滴下槽に、エチルセルロース(ダウ・ケミカル社製)160g、セチルアルコール(株式会社花王製)16.0g及び水不溶性有機溶剤{シクロヘキセン(株式会社東レ製)2020g}を仕込み、均一混合しながら65℃に調節して、2.7リットルの油相(エチルセルロースの濃度:7.3重量%)を得た。
【0058】
65℃で水相を攪拌しながら、5リットル/時の滴下速度で油相を水相に滴下した後、65℃で30分間均一混合し、さらに、1時間(冷却時間)で35℃(冷却温度)まで攪拌冷却して、予備分散体(1)を得た。
【0059】
高圧分散工程(2)
予備分散体(1)を、高圧分散機(APVガウリン;ガウリン社製、35℃、30MPa)で、微分散させながら、受槽に移送して、微分散体(1)を得た。
【0060】
脱溶剤工程(3)
微分散体(1)を、6〜101kPa、35℃で脱溶剤し、残留する有機溶剤の含有量が100ppm以下であることを確認して、エチルセルロース水分散体(1)を得た。
【0061】
なお、有機溶剤の含有量は、以下の条件で測定した。
カ ラ ム :DB−5(30m、0.53mm,1.5μm))
検 出 器 :FID
カ ラ ム 温 度 :50℃→10℃/分昇温→250℃
インジェクション温度:180℃
キャリヤーガス :窒素
【0062】
微分散体の体積平均粒子径(μm)及び標準偏差、並びにエチルセルロース水分散体の分散粒子の体積平均粒子径(μm)及び粗大粒子(1.0μm以上)の含有量(体積%)を次の条件で測定し、これらの結果を表1に示した(以下同様)。
【0063】
動的光散乱法:
装置:HORIBA LB−550(堀場製作所製)
温度:室温(実測値をインプット,補正機能付き)
分散楳:イオン交換水
希釈倍率:2倍
なお、粗大粒子の含有量は、粒子径分布曲線を描き、1.0μm以上に対応する積算量から算出した。また、標準偏差も本装置に内蔵されており測定後自動的に表示される。
【0064】
<実施例2>
ラウリル硫酸ナトリウムの量を8.0gから10.0kgに変更したこと、イオン交換水の量を1800gから2250kgに変更したこと、エチルセルロースの量を160gから200kgに変更したこと、セチルアルコールの量を16.0gから20.0kgに変更したこと、水不溶性有機溶剤(シクロヘキセン)の量を2020gから2530kgに変更したこと、油相の滴下速度を5リットル/時から550リットル/時に変更したこと、及び冷却時間を1時間から5時間に変更したこと以外、実施例1と同様にして、水相及び3350リットルの油相(エチルセルロースの濃度7.3重量%)を調製し、予備分散体(2)及び微分散体(2)を得た後、エチルセルロース水分散体(2)を得た。
【0065】
<実施例3>
ラウリル硫酸ナトリウムの量を8.0gから2.1gに変更したこと、イオン交換水の量を1800gから1870gに変更したこと、エチルセルロースの量を160gから25gに変更したこと、セチルアルコールの量を16.0gから2.5gに変更したこと、及び水不溶性有機溶剤(シクロヘキセン)の量を2020gから2100gに変更したこと以外、実施例1と同様にして、水相及び2.7リットルの油相(エチルセルロースの濃度1.2重量%)を調製し、予備分散体(3)及び微分散体(3)を得た後、エチルセルロース水分散体(3)を得た。
【0066】
<実施例4>
ラウリル硫酸ナトリウムの量を8.0gから30.2gに変更したこと、イオン交換水の量を1800gから1480gに変更したこと、エチルセルロースの量を160gから740gに変更したこと、セチルアルコールの量を16.0gから73.9gに変更したこと、及び水不溶性有機溶剤(シクロヘキセン)の量を2020gから1680gに変更したこと以外、実施例1と同様にして、水相及び2.9リットルの油相(エチルセルロースの濃度29.6重量%)を調製し、予備分散体(4)及び微分散体(4)を得た後、エチルセルロース水分散体(4)を得た。
【0067】
<実施例5>
予備分散工程(1)
水相の温度、油相の温度及び油相の滴下の際の水相の温度を65℃から50℃に変更したこと、並びに冷却温度を35℃から20℃に変更したこと以外、実施例1と同様にして、水相及び2.7リットルの油相(エチルセルロースの濃度7.3重量%)を調製し、予備分散体(5)を得た。
【0068】
高圧分散工程(2)
高圧分散時の温度を35℃から20℃に変更したこと、高圧分散時の圧力を30MPaから20MPaに変更したこと以外、実施例1と同様にして、微分散体(5)を得た。
【0069】
脱溶剤工程(3)
脱溶剤時の温度を35℃から15℃に変更したこと以外、実施例1と同様にして、エチルセルロース水分散体(5)を得た。
【0070】
<実施例6>
予備分散工程(1)
水相の温度、油相の温度及び油相の滴下の際の水相の温度を65℃から80℃に変更したこと、並びに冷却温度を35℃から50℃に変更したこと以外、実施例1と同様にして、水相及び2.7リットルの油相(エチルセルロースの濃度7.3重量%)を調製し、予備分散体(6)を得た。
【0071】
高圧分散工程(2)
高圧分散時の温度を35℃から50℃に変更したこと、高圧分散時の圧力を30MPaから40MPaに変更したこと以外、実施例1と同様にして、微分散体(6)を得た。
【0072】
脱溶剤工程(3)
脱溶剤時の温度を35℃から45℃に変更したこと以外、実施例1と同様にして、エチルセルロース水分散体(6)を得た。
【0073】
<実施例7>
冷却時間を1時間から10時間に変更したこと以外、実施例1と同様にして、水相及び2.7リットルの油相(エチルセルロースの濃度7.3重量%)を調製し、予備分散体(7)及び微分散体(7)を得た後、エチルセルロース水分散体(7)を得た。
【0074】
<比較例1>
水相の温度、油相の温度及び油相の滴下の際の水相の温度を65℃から40℃に変更したこと以外、実施例1と同様にして、水相及び2.7リットルの油相(エチルセルロースの濃度7.3重量%)を調製し、予備分散体(H1)及び微分散体(H1)を得た後、エチルセルロース水分散体(H1)を得た。
【0075】
<比較例2>
水相の温度、油相の温度及び油相の滴下の際の水相の温度を65℃から85℃に変更したこと以外、実施例1と同様にして、水相及び2.7リットルの油相(エチルセルロースの濃度7.3重量%)を調製し、予備分散体(H2)及び微分散体(H2)を得た後、エチルセルロース水分散体(H2)を得た。
【0076】
<比較例3>
水不溶性有機溶剤(シクロヘキセン)をエチルアルコールに変更したこと以外、実施例1と同様にして、予備分散体(H3)の調製を試みたが、予備分散工程の途中でゲル化したため、予備分散体(H3)を得ることができなかった。したがって、微分散体(H3)及びエチルセルロース水分散体(H3)を得ことができなかった。
【0077】
<比較例4>
高圧分散時の温度を35℃から55℃に変更したこと、高圧分散時の圧力を30MPaから45MPaに変更したこと以外、実施例1と同様にして、水相及び2.7リットルの油相(エチルセルロースの濃度7.3重量%)を調製し、微分散体(H4)を得た後、エチルセルロース水分散体(H4)を得た。
【0078】
<比較例5>
高圧分散時の温度を35℃から15℃に変更したこと、高圧分散時の圧力を30MPaから15MPaに変更したこと以外、実施例1と同様にして、水相及び2.7リットルの油相(エチルセルロースの濃度7.3重量%)を調製し、微分散体(H5)を得た後、エチルセルロース水分散体(H5)を得た。
【0079】
<比較例6>
脱溶剤時の温度を35℃から50℃に変更したこと以外、実施例1と同様にして、水相及び2.7リットルの油相(エチルセルロースの濃度7.3重量%)を調製し、エチルセルロース水分散体(H6)を得た。
【0080】
<比較例7>(特許文献1の実施例1、特許文献2の実施例7に対応する。)
予備分散工程(1)
攪拌・加熱・冷却装置を備えた予備分散槽に、ラウリル硫酸ナトリウム(日光ケミカルズ株式会社製)4g及びイオン交換水600gを仕込み、均一混合しながら55℃に調節して水相を得た。
【0081】
攪拌・加熱・冷却装置を備えた滴下槽に、エチルセルロース(ダウ・ケミカル社製)60g、ベンゼン204g及びエチルアルコール36gを仕込み、均一混合した後、一夜放置し外科用ガーゼで濾過し、n−デカン3.3gを加えてから、55℃に調節して2.7リットルの油相(エチルセルロースの濃度7.3重量%)を得た。
【0082】
55℃で水相を攪拌しながら、1.7リットル/時の滴下速度で油相を水相に滴下した後、55℃で30分間均一混合し、さらに、1時間(冷却時間)で35℃(冷却温度)まで攪拌冷却して、予備分散体(H7)を得た。
【0083】
高圧分散工程(2)
予備分散体(H7)を、高圧分散機(APVガウリン;ガウリン社製、35℃、30MPa)で、微分散させて、微分散体(H7)を得た。
【0084】
脱溶剤工程(3)
微分散体(1)を、6〜101kPa、45℃で脱溶剤し、残留する有機溶剤の含有量が100ppm以下であることを確認して、エチルセルロース水分散体(H7)を得た。
【0085】
実施例又は比較例で得たエチルセルロース水分散体を用いて、コーティング顆粒を調製し、溶出率及び1価アルコール析出の有無を評価し、表1に示した。また、実施例又は比較例で得たエチルセルロース水分散体を用いて、経日安定性を評価し、表2に示した。
【0086】
<コーティング顆粒の溶出率>
1)薬物レイヤリング顆粒の調製
核粒子{セルフィアCP−305(旭化成ケミカルズ株式会社製、「セルフィア」は旭化成ケミカルズ株式会社の登録商標である。)}1500gを、転動流動型コーティング装置(株式会社パウレック製、MP−01)に入れ、スプレーエアー圧:0.16MPa、スプレーエアー流量:40L/分、保護エアー圧:0.2MPa、給気温度:75℃、排気温度:35℃、風量:70m/h、転動盤回転数380rpmの条件で、リボフラビン(三菱ウェルファーマ株式会社製)30g、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、Lタイプ)6g、水264を含む薬物懸濁液を、10.0g/minの供給速度で噴霧し、核粒子1500gに対してリボフラビン30g(2重量%)が被覆した顆粒を得た。得られた顆粒を500μmの篩で篩過し、凝集粒子を取り除き、レイヤリング顆粒を得た。
【0087】
2)フィルムコーティング顆粒の調製
次いで、得られたレイヤリング顆粒1000gを、転動流動型コーティング装置に入れ、スプレーエアー圧:0.16MPa、スプレーエアー流量:40L/分、保護エアー圧:0.2MPa、給気温度:75℃、排気温度:35℃、風量:70m/h、転動盤回転数380rpmの条件で、評価試料(実施例又は比較例で得たエチルセルロース水分散体)10.9重量%、可塑剤{クエン酸トリエチル(東京化成株式会社製)}2.7重量%、溶出制御剤{ヒプロメロース(信越化学工業株式会社製)}1.4重量%及び水85.0重量%の割合で調製したコーティング液を、レイヤリング顆粒1000gに対してコーティング液中の固形分として100gが被覆されるよう、コーティング液667gを20.0gg/minの供給速度で噴霧し、エチルセルロース被覆顆粒を得た。なお、固形分とは、エチルセルロース、可塑剤、溶出制御剤、アルキル硫酸塩及び1価アルコールを意味する。
【0088】
エチルセルロース被覆顆粒を80℃の熱風乾燥機(パーフェクトオーブンPV−211、エスペック株式会社製)で1時間加熱成膜処理を実施した。約25℃まで冷却した後、500μmの篩で篩過し、凝集粒子を取り除き、フィルムコーティング顆粒を得た。
【0089】
3)フィルムコーティング顆粒の溶出率
フィルムコーティング顆粒約0.8gを正確に秤量し、自動溶出試験機(DT−600、日本分光工業株式会社製)を用い、パドル法(100rpm)にて、薬物の1時間後の溶出率(%)を測定した。薬物の定量は、分光光度計(V−530、日本分光株式会社)を用いて、445nmの吸光度から求めた。なお、試験液は第15改正日本薬局方一般試験法崩壊試験法の試験液第1液を用いた。また、測定は3回行い、その平均値をとった。
溶出液が55%以下の場合、溶出制御が十分に良好であり、一方、55%よりも大きい場合、溶出制御が十分でないことを意味する。
【0090】
<1価アルコールの析出の有無>
評価試料(実施例又は比較例で得たエチルセルロース水分散体)100gに対し、可塑剤(クエン酸トリエチル)25gの割合で試験液を調製した。
試験液約2.0gをガラス板(10cm×20cm)の上に滴下し、滴下後の試験液を、アプリケーターを用いて、均一に60μm厚みに薄く引き伸ばした後、ガラス板を、80℃の乾燥機(FC−610、ADVANTEC社製)で2時間加熱成膜処理を実施した。ガラス板を取り出し後、2時間室温(約25℃)で放置した後、ガラス上に成膜したフィルムの表面を目視で観察し、無色透明であれば、1価アルコールの析出はないと判断した。一方、このフィルムの表面が白濁している場合、表面に析出した白い物質を薬さじでかき取り、フーリエ変換赤外分光分析装置(PERKIN ELMER社製)にて1価アルコールのスペクトルと一致したことにより、1価アルコールが析出したと判断した。
【0091】
【表1】



【0092】
比較例3の「−」は、製造途中でゲル化したため、エチルセルロース水分散体を得ことができなかったため、未評価であるという意味である。
比較例7の「−」は、粗大粒子の含有量が高く、レイヤリング顆粒に均一被膜を形成することができず、良好なエチルセルロース被覆顆粒を得ることができなかったため、未評価であるという意味である。
【0093】
<経日安定性>
評価試料(エチルセルロース水分散体)70mlを100mlガラス瓶に入れて密封した後、30℃の孵卵器内に静置した。ついで、1月ごとに、外観を目視観察して、分離界面又は沈殿物が認められるまでの期間(月数)を経日安定性とした。
【0094】
【表2】


【0095】
比較例3の「−」は、製造途中でゲル化したため、エチルセルロース水分散体を得ことができなかったため、未評価であるという意味である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の製法で得られたエチルセルロース水分散体は、医薬品や食品等のコーティング剤として利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数10〜18のアルキル硫酸塩及び水からなる50℃を超え80℃以下の溶液状の水相を攪拌しながら、エチルセルロース、炭素数10〜18の1価アルコール及び水不溶性有機溶剤からなる50℃を超え80℃以下の溶液状の油相を水相に滴下し、同温度で均一混合した後、20〜50℃まで冷却して予備分散体を得ることを含む予備分散工程(1);
予備分散工程の後、高圧分散機を使用して20〜50℃の温度と20〜40MPaの圧力で予備分散体を更に微分散させて微分散体を得る高圧分散工程(2);並びに
高圧分散工程の後、微分散体を15〜45℃の温度で減圧下に脱溶剤してエチルセルロース水分散体を得る脱溶剤工程(3)
を含むことを特徴とするエチルセルロース水分散体の製造方法。
【請求項2】
油相中のエチルセルロースの含有量が油相の重量に基づいて1〜30重量%である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
油相の滴下速度(Y)(リットル/時)が式(1)を満たす請求項1又は2に記載の製造方法。

0.64 ≦ Y ≦ 5X0.64 (1)

ただし、Xは油相の容量(リットル)
【請求項4】
予備分散工程の冷却を始めてから高圧分散工程に入るまでの時間が10時間以下である請求項1〜3のいずれか記載のエチルセルロース水分散体の製造方法。
【請求項5】
微分散体の粒子の体積平均粒子径(動的光散乱法)が0.15μm以下、かつ標準偏差が0.05μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法で得られたエチルセルロース水分散体であって、粒子の体積平均粒子径(動的光散乱法)が0.01〜0.15μmであり、1.0μm以上の粒子径(動的光散乱法)をもつ粒子が存在しないエチルセルロース水分散体。

【公開番号】特開2009−191140(P2009−191140A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32382(P2008−32382)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】