説明

エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマーからの微小多孔性材料とその製造方法

エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーから製造された球顆マトリックスを有する微小多孔性材料は、約0.01マイクロメートル超の平均孔径を有する複数の孔を有する。この材料は、熱誘導相分離(TIPS)プロセスによって製造され、これにはエチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、希釈剤及び成核剤を融解混合して融解混合組成物を提供する工程と、この融解混合組成物を成形する工程と、この成形した融解混合物を冷却してエチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの相分離を誘導し、相分離した材料を提供する工程と、この相分離した材料を延伸して微小多孔性材料を提供する工程とが含まれる。この微小多孔性材料は、物品に組み込むことができ、この物品には微小多孔性材料の1つ、2つ又はそれ以上の層が含まれ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマーから製造される微小多孔性材料、及びそのような材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、耐溶媒性材料であるエチレンクロロトリフルオロエチレン(「ECTFE」)コポリマーから作製される微小多孔性材料の潜在的有用性は、当該分野において認識されている。微小多孔性材料は一般に、「熱誘導相分離」(「TIPS」)などの相分離プロセスを使用して製造され得る。しかしながら。TIPSプロセスは、高い多孔性を付与するための、例えば希釈剤の除去及び材料の延伸などの更なる処理に耐えることができるECTFE微小多孔性材料の製造における使用では成功を収めていない。ECTFE膜は典型的に、例えばフィルターカートリッジ内に設置するのに好適な、表面積の大きなフィルター材料を作製するのに必要な様式で折り畳みプリーツを作るのに耐えるだけの強さに欠けている。
【0003】
微小多孔性材料の調製には、成核剤が使用されてきた。特定の材料が、さまざまなポリマー系において成核剤として採用され成功を収めているが、既知の成核剤では、更なる処理(延伸、折り畳みなど)に耐えるのに十分な強さを有するような、望ましい形態のECTFE微小多孔性材料を提供できていない。
【0004】
ポリマー/希釈剤系に成核剤を導入するための方法には、「事前混合」方法が挙げられ、この方法では最初に、典型的には高剪断ミキサーを使用して、希釈剤中での成核剤の分散液の調製が必要である。別の方法としては、成核剤を最初にポリマー中に分散させて、調合された「マスターバッチ」を作製してもよい。
【0005】
しかしながら、押出成形によりECTFE微小多孔性材料を製造するためのTIPSプロセスに成核剤を用いた場合、成核剤はしばしば凝集し、及び/又は押出成形システムを通過している間に溶液/分散液から分離する。事前混合技法は一般に、ECTFE結晶化が十分な速さでないか、又は望ましい形態(例えば球顆マトリックス)を提供できていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
改善されたECTFE微小多孔性材料及びそのような材料を含む物品に対するニーズ、並びにTIPSプロセスにおいて成核剤を使用してそのようなECTFE微小多孔性材料を製造することに対するニーズが存在する。
【0007】
一態様において、本発明は微小多孔性材料の製造方法を提供し、この方法は、
エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、希釈剤及び成核剤を含む融解混合組成物を成形する工程であって、成核剤が融解混合組成物内に均一に分散している、工程と、
融解混合組成物を冷却して、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの相分離を誘導することによって、相分離した材料を提供する工程と、
相分離した材料を延伸することによって、微小多孔性材料を提供する工程と、
を含み、この材料は、
エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、マトリックスを通って延在し約0.01マイクロメートルを超える平均孔径を有する複数の孔とを含む球顆マトリックスを含み、
成核剤は、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー全体にほぼ均一に分散している。
【0008】
別の一態様において、本発明は、
エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、マトリックスを通って延在し約0.01マイクロメートルを超える平均孔径を有する複数の孔とを含む球顆マトリックスと、
エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー内にほぼ均一に分散された成核剤と、
を含む、微小多孔性材料を提供する。
【0009】
別の一態様において、本発明は、
前述の微小多孔性ECTFE材料を含む第1層と、
第1層に付着された、前述の微小多孔性ECTFE材料を含む第2層と、
を含む、微小多孔性材料を提供する。
【0010】
更に別の一態様において、本発明は、
エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、マトリックスを通って延在する複数の孔とを含む球顆マトリックスと、
エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー内にほぼ均一に分散された成核剤と、
を含む、微小多孔性材料を提供し、
この材料は、曲げ、折り畳み、又はプリーツに折ることに破壊なしに耐えるのに十分な強さを有する。
【0011】
更に別の一態様において、本発明は、
入口と出口とを有するハウジングと、
そのハウジング内に配置された、プリーツに折られた、前述の微小多孔性材料と、
を含む、組立品を提供する。
【0012】
更に別の一実施形態において、本発明は、多層微小多孔性ECTFE材料の製造方法を提供し、この方法は、
少なくとも第1融解混合組成物及び第2融解混合組成物を含む複数の融解混合組成物を成形して、第1融解混合組成物の層と第2融解混合組成物の層とからなり共通境界面に沿って共に接合されている多層シートを形成する工程であって、第1融解混合組成物は、第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、第1希釈剤及び第1成核剤を含み、第2融解混合組成物は、第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、第2希釈剤及び第2成核剤を含む、工程と、
この多層シートを冷却して、第1融解混合組成物中における第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの相分離、及び第2融解混合組成物中における第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの相分離を誘導することによって、相分離した多層材料を提供する工程と、
この相分離した多層材料を延伸することによって、第1及び第2層を有する多層微小多孔性材料を提供する工程であって、第1層は、第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、第1マトリックスを通って延在し約0.01マイクロメートルを超える平均孔径を有する複数の第1孔とを有する第1球顆マトリックスを含み、第1成核剤は、第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー全体にほぼ均一に分散し、第2層は、第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、第2マトリックスを通って延在し約0.01マイクロメートルを超える平均孔径を有する複数の第2孔を有する第2球顆マトリックスを含み、第2成核剤は、第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー全体にほぼ均一に分散している、工程と、
を含む。
【0013】
更に別の一態様において、本発明は、
第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、第1球顆マトリックスを通って延在し約0.01マイクロメートルを超える平均孔径を有する複数の第1孔とを含む第1球顆マトリックスからなる第1層と、
第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー内にほぼ均一に分散された第1成核剤と、
第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、第2球顆マトリックスを通って延在し約0.01マイクロメートルを超える平均孔径を有する複数の第2孔とを含む第2球顆マトリックスからなる第2層と、
第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー内にほぼ均一に分散された第2成核剤と、
を含む微小多孔性材料を提供し、
第1球顆マトリックスの平均孔径と前記第2球顆マトリックスの平均孔径とは異なる。
【0014】
別に記載がない限り、本明細書で使用されている用語は、本発明が関係する当業者の理解と一致する意味を有することを意図する。明確にするため、以下の用語は、ここに示す意味を有するものとして理解される。
【0015】
「コポリマー」は、2つ以上の異なるモノマーの重合によって生じるポリマーを指す。
【0016】
ポリマーが「結晶化された」ことを説明する場合、これはポリマーが少なくとも部分的に結晶性又は半結晶性であることを意味すると理解される。
【0017】
「結晶化温度」は、材料(例えばポリマー)が結晶化する温度を指す。
【0018】
「希釈剤」とは、(1)ECTFEコポリマーと混合できる、(2)その混合物をECTFEコポリマーの溶解温度を超えて加熱した場合に、ECTFEコポリマーと共に溶液を形成可能である、及び(3)ECTFEコポリマーの結晶化温度未満まで溶液を冷却した場合に、その溶液から相分離する材料を指す。「希釈剤」は、室温で固体又は液体である材料を包含する。
【0019】
「ECTFE」コポリマーは、エチレンクロロトリフルオロエチレンの1つ以上のコポリマーを指す。
【0020】
「成核剤」は、ポリマー結晶化の開始及び速度を制御するためにポリマー系に添加される材料を指す。
【0021】
「球顆」は、ポリマーの個々のノード又は領域を指し、「球顆マトリックス」は、放射状の微細繊維によって互いに連結されている、間隔をおいてランダムに分散した複数の球顆を含む構成体を指す。
【0022】
本発明のこれら及び他の態様は、開示されている実施形態の詳細な説明及び添付の請求項を検討することによってより容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の実施形態は、さまざまな図を参照して説明される。
【図1】本発明の実施形態による、微小多孔性ECTFE材料を製造するための一装置の概略図。
【図2】本発明の別の実施形態による、微小多孔性ECTFE材料を製造するための一装置の概略図。
【図3】本明細書中の比較例Eによって調製された微小多孔性ECTFE材料の表面の顕微鏡写真。
【図4】本明細書中の実施例21によって調製された微小多孔性ECTFE材料の表面の顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、微小多孔性ECTFE材料、及びそのような材料の製造のための方法を目的とする。
【0025】
I.微小多孔性材料
本発明のECTFE材料は、微小多孔性球顆マトリックスを有し、この球顆マトリックスは、放射状の微細繊維によって互いに連結されている、間隔をおいてランダムに分散したECTFEコポリマーの複数のノード又は領域と、この微小多孔性マトリックス全体にほぼ均一に分散した少なくとも1つの成核剤とを含む。微小多孔性ECTFE材料は、約0.01マイクロメートル(μm)を超える平均孔径を有する材料を形成するための、熱誘導相分離(「TIPS」)プロセスを使用して形成される。いくつかの実施形態において、平均孔径は約0.01μm〜約10.0μmの範囲であるが、ただし一部の材料は、0.01μm未満の孔径及び/又は10.0μmを超える孔径を含んでもよい。いくつかの実施形態において、微小多孔性ECTFE材料は、材料の単一層として形成され得る。いくつかの実施形態において、ECTFE材料の2つ以上の微小多孔性層が、単一の多層物品中にある別々の層として、垂直方向に(互いに上下に)重ねられている。そのような多層材料において、ECTFE材料の別々の微小多孔性層は、異なる孔径を有し得る。本発明の他の実施形態は、ECTFEコポリマー以外の材料からなる基材上に、1つ以上の微小多孔性ECTFE材料を含んでもよい。いくつかの実施形態において、この微小多孔性ECTFE材料は、チューブ又は中空繊維として形成され得る。微小多孔性ECTFE材料は、本明細書に記述されるように、さまざまな用途のうちのいずれかに使用するのに好適である。
【0026】
1.ECTFEコポリマーマトリックス材料
本発明の範囲内の微小多孔性材料は、少なくとも1つのECTFEコポリマーを含む。ECTFEコポリマーは熱可塑性であり、通常の融解処理条件下で融解する。好適なECTFEコポリマーは、本明細書に限定されず、TIPSプロセスにおいて前記の球顆マトリックス材料を提供することができる任意のECTFEコポリマー又はECTFEコポリマーの組み合わせを含む。一般に、好適なECTFEコポリマーは、機械的特性の組み合わせを有する、部分的にフッ素化された半結晶性(例えば少なくとも部分的に結晶性である)ポリマーを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、好適なECTFEコポリマーには、例えばSolvay Solexis,Inc.(West Deptford,NJ)から商品名「Halar」(例えばHALAR 300、901及び902 ECTFEコポリマー材料)として入手可能なものなど、市販源から入手できる樹脂が含まれる。
【0028】
メルトフローインデックスはECTFEコポリマーの融解粘度に対して逆の関係があり、いくつかの実施形態において、ECTFEコポリマーは、中程度〜高い融解粘度を有する、すなわち低いメルトフローインデックスを有するよう選択される(例えば275℃及び2.16kgでの値)。いくつかの実施形態において、好適なECTFEコポリマーは、メルトインデックスが約2.0未満、又は約1.5未満である。
【0029】
2.希釈剤材料
本発明による微小多孔性材料の製造において、ECTFEコポリマーは有機希釈剤と組み合わせられる。好適な希釈剤には有機エステル、例えばセバシン酸エステル(例えばセバシン酸ジブチル(DBS)など)、フタル酸エステル(例えばフタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジエチル(DEP)など)、トリメリット酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル、アゼライン酸エステル、及び上記の2つ以上の組み合わせが挙げられる。本発明の微小多孔性材料を調製するのに使用される希釈剤の量は、場合によって異なり得る。本発明の実施形態において、ECTFEコポリマーと希釈剤との混合物は、ECTFEコポリマー/希釈剤の重量比が約70/30〜約30/70の範囲で調製される。
【0030】
3.成核剤
本発明により調製された微小多孔性材料は、少なくとも1つの成核剤を利用して、TIPSプロセス中のECTFEコポリマーの結晶化を誘発、加速、及び強化し、また、ECTFEコポリマーが融解物から結晶化する際に形成される、コポリマー領域(例えば球顆マトリックス)の強く均一なミクロ構造を有するフィルム又は膜製品を提供する。このミクロ構造は非常に多孔質であり、これまで入手可能であったECTFE材料に比べて、より大きな伸縮性、及び改善された引張り強さを呈する。
【0031】
成核剤は、例えば米国特許第6,632,850号及び同第4,726,989号に記述されており、これらの開示は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
本発明に有用な成核剤は、いくつかの形態のうちの1つで提供され得る。いくつかの実施形態において、好適な成核剤は、1つ以上のポリマー(例えばECTFEコポリマー以外のポリマー)から選択される。他の実施形態において、成核剤は、ポリマーベース中に懸濁した微粒子を含む。成核剤は、前述の球顆マトリックスを生成するために、十分な核生成部位でECTFEコポリマーの結晶化を開始させるのに十分な量で、ECTFEコポリマー/希釈剤中に均一に分散させることができる。
【0033】
本発明の実施形態において、必要な成核剤の量は、ECTFE/希釈剤混合物の約2.0重量%以下である。いくつかの実施形態において、成核剤の量はECTFE/希釈剤混合物の約0.01重量%(100ppm)〜約2.0重量%である。他の実施形態において、成核剤の量は、ECTFE/希釈剤混合物の約1.0重量%以下、又は約0.05重量%〜約1.0重量%、又は約0.25重量%〜約1.0重量%である。
【0034】
更に、ECTFE微小多孔性材料のTIPS形成において特定の成核剤を使用することにより、ECTFEコポリマーに比べてより多量の希釈剤を使用することが可能になる。これは、DBSを希釈剤として含む混合物において特に当てはまる。例えば、成核剤を使用しない場合は、Halar 902 ECTFEに対してわずか約30〜50重量%の希釈剤濃度が混合可能である。しかしながら、好適な成核剤を含むことにより、DBS希釈剤の量は約70重量%まで増やすことができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態において、TIPS希釈剤溶液からECTFEポリマーを結晶化させるための有効な成核剤は、さまざまなフルオロポリマーのいずれかを含み、これにはテトラフルオロエチレン及びエチレンのコポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンのコポリマー(THV)、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(FEP)、並びに前記の2つ以上の組み合わせから選択されるものが挙げられる。成核剤としての使用に好適な市販のフルオロポリマーには、商品名「ETFE 6235Z」としてDyneon LLC(Oakdale,Minnesota)から入手可能なETFEコポリマー、商品名「THV 815Z」としてDyneon LLCから入手可能なTHVコポリマー、商品名「FEP 6322Z」としてDyneon LLCから入手可能なFEPコポリマー、及び商品名「Tefzel」(例えばTefzel 200、Tefzel 750、及びTefzel 2188)としてDuPont(Wilmington,Delaware)から入手可能なETFEコポリマーが挙げられる。
【0036】
本明細書に記述されるTIPSプロセスに使用するための成核剤としてフルオロポリマーを選択する際は、フルオロポリマーのさまざまな特性が考慮されるべきである。一態様において、成核剤として使用する目的の材料は、本質的に均質の融解混合組成物が形成されるように、ECTFEコポリマー中にほぼ均一に分散可能である必要がある。加えて、成核剤の結晶化温度はECTFEコポリマーの結晶化温度よりも高くなければならず、その結果、本明細書で記述されるように、融解混合組成物の冷却中に成核剤が最初に結晶化する。このようにして、フルオロポリマーの結晶質粒子が形成され、ECTFEコポリマーがそれ自体の結晶化温度に達したときに真の成核剤として作用するよう利用される。理論に束縛されるものではないが、フルオロポリマー成核剤による粒子状物形成は、フルオロポリマーが、ECTFEコポリマーの結晶化に影響を及ぼしかつ結晶化を制御し、それにより本明細書に記述される望ましい球顆マトリックスを形成するために必要であると考えられている。
【0037】
いくつかの実施形態において、好適な成核剤は、ECTFEコポリマー及び希釈剤に分散可能な熱可塑性ポリマーと組み合わせたいくつかの粒子状物質のいずれかから選択されて、成核剤(例えば粒子状物)が実質的に凝集せずに極めて分散した状態が維持されるような製剤を提供する。そのような実施形態において、成核剤は、室温(例えば20℃)で粒子状物質である。熱可塑性ポリマーは、ポリプロピレン又はポリエチレンのホモポリマー又はコポリマーを含み、これらは上述の粒子状物と混合されて粒子状物/ポリマー混合物をもたらし、この中で粒子状物は均一に分散している。好適な市販の粒子状物でとしては、青色銅フタロシアニン色素「C.I.15:3」(オレフィンはポリプロピレン/ポリエチレンコポリマーであり、Tokyo Printing Ink Co.(Japan)から入手可能)、及びポリプロピレン中の成核剤(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二ナトリウム塩)の濃縮マスターバッチ形態である「HI5−5」(Milliken Chemical Co(Spartanburg,SC)から入手可能)が挙げられる。成核剤としての粒子状物の使用は、約0.01μmを超える平均孔径、及びいくつかの実施形態においては約0.01μm〜約10.0μmの範囲内にある平均孔径を有する微小孔からなる球顆マトリックスを有する微小多孔性ECTFE材料を提供するために、選択された粒子状物質が、ECTFEコポリマーの処理中に顕著な凝集が起こることなくECTFEコポリマー内に実質的に均一に分散する能力による以外は、限定されない。
【0038】
4.他の添加剤
ECTFEコポリマー/希釈剤配合物に対し、成核剤に対し、又はECTFEコポリマー/希釈剤/成核剤の配合物に対し、追加の成分を加えることができる。更に、本明細書に記述されるように、材料の流延後又は延伸後に、その材料に添加剤を加えることができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、任意成分が、ECTFEコポリマー/希釈剤の配合物に、融解添加剤として追加され、これには界面活性剤、静電気防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、有機又は無機の着色剤(例えば染料若しくは色素)、安定剤、抗菌剤、防汚化合物、及び前記のうち任意の2つ以上の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0040】
任意成分が存在する場合は、通常はこのコポリマー配合物(例えばECTFEコポリマー/希釈剤/成核剤)に対して約10重量%以下の濃度で含まれる。いくつかの実施形態において、任意成分が存在する場合は、約5重量%以下の濃度で含まれる。
【0041】
II.微小多孔性ECTFE材料の製造方法
記載されるように、本発明の微小多孔性ECTFE材料は、熱誘導相分離(TIPS)のプロセスを用いて調製される。TIPSプロセスは通常、熱可塑性ポリマーを希釈剤及び成核剤と融解配合することによって形成される融解混合組成物を伴う。この希釈剤及び熱可塑性ポリマーは、高温で均質な溶液を形成する。この組成物を混合物の相分離温度未満に冷却すると、均質な溶液相が分離して、富ポリマー相及び富希釈剤相を形成する。
【0042】
相分離は、最も典型的には固−液相分離として、(i)熱可塑性ポリマーと(ii)希釈剤との間で起こる。相分離の後、結果として得られる材料(例えばフィルム、膜など)は、相互連結した微小孔からなる網状組織を形成するよう、少なくとも一方向に任意に配向される。希釈剤は、この配向調整の前又は後に、材料から除去することができる。TIPSプロセスは、米国特許第5,976,686号、同第4,726,989号及び同第4,539,256号、並びに米国特許出願第2005/0058821号にも記述されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
本発明の微小多孔性ECTFE材料を提供するにあたって、TIPSプロセスは次の工程を伴う:(1)ECTFEコポリマー/希釈剤及び成核剤の混合物を含む、1つ以上の実質的に均一かつ均質な融解混合組成物を形成する工程、(2)各融解混合組成物を成形する工程、(3)その成形した融解混合組成物を相分離して、1つ以上の微小多孔層を有する相分離した材料を形成する工程、(4)その相分離した材料の孔から希釈剤を抽出する工程、及び(5)その相分離した材料を所望により延伸して、微小多孔性ECTFEコポリマー材料の多孔率を最大限にする工程。
【0044】
本発明の実施形態において、ECTFEコポリマー/希釈剤及び成核剤の混合物を含む組成物を形成する工程(1)には、ECTFEコポリマーと希釈剤とを融解混合することと、この配合物に成核剤を均一に分散させて融解混合組成物を得ることとが含まれる。希釈剤は、ECTFEコポリマーの融解温度を上回る温度において、ECTFEコポリマーと相溶性である。さまざまな構成成分の濃度は、広範囲に変化し得る。いくつかの実施形態において、ECTFEコポリマーは、融解混合組成物中に約30重量%〜約70重量%の範囲の濃度で存在し、希釈剤は、融解混合組成物中に約70重量%〜約30重量%の範囲の濃度で存在し、成核剤は最大約5重量%の量で存在する。
【0045】
一般に、成核剤は、十分な数の核生成部位でECTFEコポリマーの結晶化を開始させるのに十分な量で、融解混合組成物中に存在し、これにより球顆マトリックスが生成され、好適な微小多孔性材料が得られる。成核剤の実際の量は、融解混合組成物の0.1重量%未満であり得、いくつかの実施形態では、融解混合組成物の0.05重量%未満であり得る。特定の実施形態において、成核剤の量は融解混合組成物の約0.01重量%(100ppm)〜約2重量%であるか、又は融解混合組成物の約0.02重量%〜約1重量%である。
【0046】
成核剤は、液体状態からのECTFEコポリマーの結晶化を誘導する機能、及びポリマー結晶化部位の開始を強化する機能の役割をし、これらによりECTFEコポリマーの結晶化速度が速くなり、及び/又は融解状態から冷えるときに形成される結晶核の数が増える。よって成核剤は、ECTFEコポリマーの結晶化温度で固体又は部分的に固体である。成核剤がフルオロポリマーの場合は、その結晶化温度がECTFEコポリマーの結晶化温度よりも高くなるように選択され、このことによって、ECTFEコポリマーが結晶化するより前に、成核剤が結晶化する及び固体粒子状物質が形成される可能性が高い。加えて、成核剤が融解混合組成物中に存在すると、ECTFEコポリマーの濃度に比べて、より高い濃度での希釈剤の使用を促進すると見られる。例えば、成核剤なしでは希釈剤が約30〜50重量%の濃度でECTFEコポリマーと混合できるが、成核剤存在下では最高約70重量%の希釈剤濃度が観察されている。
【0047】
この融解混合組成物は、結果として得られる微小多孔性材料に望ましい特性をもたらすように調整することができる。例えば、最終的材料の特性は、ECTFEコポリマー対希釈剤の比の変化、使用する成核剤の種類と量、冷却速度の変化、及びより高い多孔率を付与するために使用される延伸率によって調整することができる。
【0048】
粒子状物を成核剤として使用する実施形態においては、事前混合工程を採用して、熱可塑性ポリマー中に成核剤を均一に「あらかじめ分散」させて「マスターバッチ」をもたらし、これを次いでECTFEコポリマー及び希釈剤と配合することができる。他の実施形態において、この事前混合工程は、融解混合組成物中又は結果として得られる微小多孔性材料内に実質的に均一な成核剤分散を得るのに必要とはされない。例えば、混合は2軸押出成形機に高剪断混合要素を使用して達成することができ、これによりECTFEコポリマー/希釈剤融解ストリーム内に成核剤を均一に分配し、実質的に均一な融解混合組成物を得ることができる。
【0049】
本発明の実施形態において、組成物の成形工程(2)は、押出成形により達成される。そのような実施形態において、融解混合も押出成形機内で達成される。融解混合されたECTFE組成物は次に、押出ダイを通して押し出すことにより、形に流延される。融解混合組成物は、例えばシートダイを用いてフィルムに成形することができ、又は中空繊維ダイを用いて中空繊維に成形することができる。当業者には認識されるように、他の形状及び構成も想到される。融解混合組成物は、基材上、急冷槽内、流延ホイール上などに流延することができる。いくつかの実施形態において、融解配合組成物から得た微小多孔性ECTFE材料は、その組成物が冷却ロール表面に接触しない領域を提供するパターン化された冷却ロール上に流延される。結果として得られる材料は、実質的に均一な厚さのものであるがパターン化された表面を有し、このパターン化された表面は、高い微多孔性を有する実質的に皮膜のない領域と、微多孔性の低い皮膜付き領域とを提供する。そのような方法は、米国特許第5,120,594号に記述されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
いくつかの実施形態において、多層の融解混合組成物が成形され、互いに上下に重ねられて、多層シートが提供される。押出成形を利用する実施形態において、2つ以上の押出成形機を単一システム内に含めて、異なる組成のECTFEコポリマー/希釈剤/成核剤を融解混合することができる。融解混合組成物は、共押出成形されて多層シートを形成し、このシートでは融解混合組成物のそれぞれが別の層に存在する。
【0051】
このように、融解混合組成物は、加熱環境から冷却環境へと移行し、典型的には組成物の冷却が始まると同時に(例えば押出成形ダイから出る際に)相分離(工程(3))が開始される。融解混合組成物が冷えると、ECTFEコポリマーが結晶化及び希釈剤からの相分離を開始して、結晶性ECTFEが固体の球顆マトリックスが形成される。押出成形を利用し成核剤としてフルオロポリマーを採用する本発明の実施形態において、押出成形ダイと冷却表面(例えば流延ホイール、急冷槽など)との間の隙間は、融解配合組成物が少なくともフルオロポリマー成核剤の結晶化温度まで冷えるのに十分な長さのものである。このようにして、成核剤が最初に結晶性領域(例えば粒子状物)を形成し、これは更に冷却される際にECTFEコポリマーの結晶化を促進するか、又は結晶化の「種」となる。
【0052】
ECTFE組成物の冷却及び結晶化の誘導のためのTIPSプロセスにおいて、変形が想到される。いくつかの実施形態において、融解配合組成物の更なる冷却は、組成物を直接に急冷槽に流延することによって達成される。他の実施形態において、冷却は、融解混合組成物を流延ホイールに流延することによって達成される。この流延ホイールの温度は、純ECTFEの融解温度より低い望ましい温度に保持される。いくつかの実施形態において、融解混合組成物は、模様付きロール上に流延することにより冷却される。
【0053】
相分離の工程(3)の後、結果として得られる成形物品を、工程(4)に従って、例えば商品名「Vertrel 423」としてDuPont(Wilmington,Delaware)から市販されている溶媒などの揮発性溶媒を使用して、ECTFEコポリマー物品から希釈剤を抽出することにより更に処理する。希釈剤抽出の後、揮発性溶媒を蒸発させると、それまで希釈剤によって占められていたコポリマーの孔に空隙が残される。材料の多孔率は、工程(5)に従って、物品を任意に延伸することにより更に強化することができる。材料は、少なくとも1方向、又はウェブ下流方向(長手方向又は機械方向とも呼ばれる)と横断方向若しくはウェブ横断方向との両方向に延伸することができる。更なる延伸により材料の孔が開き、空隙の容積が増大する。いくつかの実施形態において、材料は、機械方向及び/又は横断方向の一方又は両方に、約1×1(MD×TD)〜約3×3の範囲の延伸率で延伸される。具体的な材料、その厚さ、使用目的、望ましい多孔率などに応じて、他の延伸率も使用し得ることが、当業者には認識されよう。
【0054】
微小多孔性ECTFE材料のミクロ構造は、さまざまなプロセス変数、例えば(1)急冷速度(すなわち、融解混合組成物が冷却され相分離するための時間)、(2)使用する急冷のタイプ(例えば水浴、空気中急冷、又は融解混合組成物を平坦若しくはパターン化された流延ホイール上に堆積させるなど)、(3)急冷の温度、(4)融解混合組成物中のECTFEコポリマー/希釈剤/成核剤の重量比の変化、及び/あるいは(5)異なる延伸率の使用、の操作によって制御できることが、当業者には認識されよう。
【0055】
押出成形された融解混合組成物の冷却においては、その物品がECTFEの結晶化温度に達するまで、融解混合組成物から熱が除去される。その温度で、ECTFEコポリマーの結晶化及び相分離が開始する。
【0056】
成形された微小多孔性ECTFE材料(希釈剤除去及び配向の前)は通常、固体で透明である。成形された材料のミクロ構造は、(i)(a)ECTFEコポリマーと(b)ECTFEコポリマー内に均一に分散した成核剤とを含む、球顆及び球顆の凝集体を有するものとして記述され得る。この成形された材料はまた、(ii)ECTFE球顆間の孔空間を占めECTFEコポリマーの非晶質部分を伴う希釈剤を含む。ECTFE球顆の大きさは、例えば、希釈剤の濃度、成核剤のタイプ、成核剤の濃度、ポリマーマトリックス全体の成核剤の分散度、及び急冷温度に依存する。
【0057】
成形された材料は、1つ以上の工程で配向又は延伸され得る。そのような配向工程によって、ECTFEコポリマーが引き延ばされ、ECTFEコポリマーを、微細な空隙を間に有し、相互連結された微小孔の網状組織を形成する、特徴的なノード及び微細繊維構造を有するより明確な球顆マトリックスに減衰する。本発明で使用するとき、「配向する」又は「配向」とは、物品の永久歪又は伸びをもたらして、典型的には長さの増大が少なくとも約10%又は比で表わした場合に約1.1〜1.0となるように、材料の弾性限度を超えて延伸させること意味する。いくつかの実施形態において、2方向のうちの一方又はそれぞれにおいて、約10%〜約300%の伸びをもたらす延伸が典型的である。
【0058】
微小多孔性ECTFE材料の配向は、少なくとも1方向に、またいくつかの実施形態においては機械方向及び横断方向の両方向に、望む程度の延伸を行うことができる任意の装置を用いて達成される。材料を2方向に配向することは、材料を順次又は同時のいずれかで両方向に延伸することによって、達成され得る。一般に、物品の配向は、実質的に均一かつ制御された多孔率をもたらすような方法で、材料を延伸することによって達成される。配向の後、微小多孔性ECTFE材料は、既知の焼きなまし技法を使用して寸法を安定化させることができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、材料を高温で横方向又は横断方向に延伸すると、結果として得られる孔径及び最終ECTFE材料の全体的多孔率に顕著な影響をもたらし得る。そのような実施形態においては、温度を上げるにつれて、最終ECTFE材料の孔径及び全体的多孔率も増大する。驚くべきことに、場合によっては、延伸したECTFE材料の厚さが増大し得る。更に、横断方向に延伸されたECTFE材料は、横断方向への延伸中に複数の温度に曝される可能性がある。そのような複数の温度は、例えば、本明細書で例示するように、マルチゾーンのテンター炉でもたらされることができる。
【0060】
有核(nucleated)材料は、均一に分散し、等軸で、ノードポリマー粒子が相互接続微細繊維により互いに連結しているように見える、顕微鏡で識別可能な多数の球顆によって特徴付けられる微小多孔性構造を有する。そのような構造において、成核剤はECTFE構成体全体にほぼ均一に分散されている。本発明で使用するとき、用語「等軸」とは、全方法にほぼ同じ寸法を有することを意味する。希釈剤の抽出及びその次に行われる延伸の後、材料の孔はほぼクリアに見える。
【0061】
ここで図1を参照すると、システム100は、本発明による、TIPSプロセスを介した微小多孔性ECTFE材料製造の概略図である。システム100には、ホッパー12を備えた押出成形機10が含まれ、これは複数の加熱ゾーン14a〜hを含む。ECTFEコポリマーがホッパー12を通ってシステム100へ導入され、これにより構成成分が押出成形機10へと導かれる。希釈剤は、リザーバ13から、ホッパー12と押出成形機出口17との間の押出成形機の壁にあるポート11を通って、押出成形機10へとポンプで送られることによって、ECTFEコポリマーに加えられる。ポート11は、押出成形機10の長さに沿って他の位置に配置することができる。いくつかの実施形態において、ポート11は、例えばホッパー12の近位にあってもよい。成核剤は、希釈剤とあらかじめ混合しておき、最初にリザーバ13内に収容されていてもよく、又はホッパー12内でECTFEコポリマーとあらかじめ混合しておいてもよい。
【0062】
押出成形機10内にあるとき、この構成成分は、押出成形機のスクリュー(図示せず)によって加熱ゾーン14a〜hを通って導かれる。押出成形機10は、8つの加熱ゾーン14a〜hを含んで示されているが、当業者による設計選択によって、これより多いか又は少ない数の加熱ゾーンが含まれることが認識されよう。加熱ゾーン14a〜hは、任意の望ましい温度プロファイルを提供するよう設定することができる。いくつかの実施形態において、第1ゾーン14a〜14dはゾーン14e〜14hよりも高い温度に設定され、ここにおいてこの高い温度とは、すべての構成成分を融解して均質な融解配合組成物にするのに十分な温度である。ゾーン14e〜14hにおける低い温度とは、ECTFEコポリマー又はその他の構成成分を劣化させることなく、均質な融解配合組成物を維持するのに十分な温度である。ポリマー押出成形の当事者には知られているように、ゾーン14a〜hの実際の温度プロファイルは、使用される構成成分の具体的な特性、融解配合組成物の粘度、及びさまざまな処理考慮事項によって変わってくることが認識されよう。いくつかの実施形態において、加熱ゾーン14a〜hのすべてが、実質的に同じ温度に維持される。また別の実施形態において、ゾーン14a〜hは、個々のゾーン全てが固有の温度で設定される温度プロファイルを提供する(例えば、ゾーン14a〜hのいずれも、他のゾーンと同じ温度を有していないなど)。更に別の実施形態において、ゾーン14a〜hは、徐々に低下する温度に維持される(例えばゾーン14aが最高温度を有する)。他の温度プロファイルも想到される。押出成形機10のゾーン14a〜hを通過する間、融解混合組成物は、ECTFEコポリマーの融解温度より少なくとも約5℃高いが熱分解温度よりは低い温度まで加熱される。
【0063】
ECTFEコポリマー、希釈剤及び成核剤は、融解配合組成物がゾーン14a〜hを進み押出成形機の出口17に向かうに従って、押出成形機10内で融解配合される。押出成形機10の次に配置されているスロットダイ19は、適切な隙間幅を有するようあらかじめ設定され、これはいくつかの実施形態において、約25〜約2000マイクロメートルである。スタティックミキサー18は、押出成形機出口17とスロットダイ19との間に配置されて、融解混合組成物の更なる配合を促進する。
【0064】
フルオロポリマーが成核剤として使用される本発明の実施形態においては、スロットダイ19から急冷ホイール20まで測定される隙間26の長さは、融解混合組成物25がまだ隙間26にある間(例えば、急冷ホイール20に載るまでの間)に、フルオロポリマー成核剤が結晶化し始めることができる程度に、この組成物が十分に冷却されるのに好適な長さである。フルオロポリマーは、ECTFEコポリマーの結晶化温度よりも高い結晶化温度を有するよう選択されているため、融解混合組成物は冷却プロセス中にまずフルオロポリマーの結晶化温度に達し、その後にECTFEコポリマーの結晶化温度に達することになる。ゆえに、隙間26にある間の融解混合組成物25の冷却は、ECTFEコポリマーを結晶化させることなく、フルオロポリマー成核剤が結晶化するのに十分でなければならない。融解混合組成物25が隙間26に滞在する時間は、ダイ19から出る際の融解混合組成物の温度、急冷ホイール20の回転速度の制御、隙間26の長さの変更などによって影響を受けることが、当業者には認識されよう。
【0065】
押し出された融解混合組成物25は急冷ホイール20上に層として堆積され、この急冷ホイールはECTFEコポリマーの結晶化温度より低い温度に維持されている。組成物は、急冷ホイール20に接触して運ばれている間、冷やされ続ける。ECTFE結晶化温度以下になると、ECTFEコポリマーは成核剤の粒子又は結晶の周囲で結晶化する。結晶化する際に、ECTFEコポリマーの相が分離し、孔の網状構造を有する球顆マトリックスを形成するが、この孔には希釈剤が残っており、ECTFEコポリマー全体に成核剤が実質的に均一に分散した状態である。このように冷却された融解混合組成物は、相分離した物品に変化し、急冷ホイール20から溶媒槽21へと運ばれて、ここでこの材料は溶媒27(例えば、商品名「Vertrel 423」としてDuPont(Wilmington,Delaware)から入手可能な溶媒)に曝されて希釈剤の抽出が行われ、次いで空気乾燥される。相分離された材料は次に、任意の機械方向(「MD」)延伸装置22、及び順次整列された任意の横断方向(「TD」)延伸装置23に運ばれ、これにより、完全に開いた孔構造を備えた球顆マトリックスからなる、多孔質で、本質的に希釈剤を含まない、微小多孔性ECTFEコポリマー材料が得られる。この微小多孔性材料は、テークアップローラー24に運ばれ、ロール28に巻き取られる。他の実施形態において、機械方向延伸装置22及び横断方向延伸装置23は、材料の2軸(MD×TD)延伸を行うための同時2軸延伸装置で置き換えることができる。
【0066】
前記システム100の変形では、このシステムは、TD延伸装置23とテークアップローラー24との間に配置されたインラインコーティングステーション(図示せず)及び/又は乾燥炉(図示せず)を含むように構成されることができ、これにより延伸された材料の片面又は両外面にコーティングを提供することができる。更に、溶媒槽21は、TD延伸装置23とテークアップローラー24との間になるように再配置して、1回以上の延伸工程を行った後に希釈剤を抽出することができる。
【0067】
他の実施形態において、システム100は、中空繊維の形態の微小多孔性ECTFE材料の製造を可能にするために再構成することができる。そのような構成では、ダイ19は中空繊維ダイである。
【0068】
図2を参照すると、本発明による多層微小多孔性ECTFE材料の製造のために構成されたシステム200の別の実施形態が図示されており、ここに説明される。「多層」材料とは、共通境界面に沿って共に接合されている2層以上の微小多孔性層を有する材料である。システム200の説明において、前に記述された第1押出成形機10が含まれる。システム200の構成要素で、システム100(図1)で前に記述されたものと本質的に同じ構成要素は、限定的な追加説明と共に、同じ参照番号で識別されることに注意されたい。システム100の説明で参照されたECTFEコポリマー、希釈剤及び成核剤の参照については、そのような材料は、本明細書において、「第1 ECTFEコポリマー」、「第1希釈剤」及び「第1成核剤」として参照され得る。同様に、第1 ECTFEコポリマー、第1希釈剤及び第1成核剤の組み合わせから得られた融解混合組成物は、「第1融解混合組成物」として参照され得る。
【0069】
システム200には、ホッパー112を備えた第2押出成形機110と、複数の加熱ゾーン114a〜hが含まれる。第2 ECTFEコポリマーがホッパー112を介してシステム200へ導入され、これにより構成成分が押出成形機110へと導かれる。第2希釈剤は、第2リザーバ113から、ホッパー112と押出成形機出口117との間の押出成形機の壁にあるポート111を通って、押出成形機110へとポンプで送られることによって、ECTFEコポリマーに加えられる。ポート111は、押出成形機110の長さに沿って他の位置に配置することができる。いくつかの実施形態において、ポート111は、例えばホッパー112の近位にあってもよい。第2成核剤は、希釈剤とあらかじめ混合しておき、最初にリザーバ113内に収容されていてもよく、又はホッパー112内で第2 ECTFEコポリマーとあらかじめ混合しておいてもよい。いくつかの実施形態において、ホッパー112に加えられる第2 ECTFEコポリマー、第2希釈剤及び第2成核剤のうちの1つ以上は、ホッパー12に加えられる第1 ECTFEコポリマー、第1希釈剤及び第1成核剤と同じであるが、ただし重量パーセント又は重量比は変化してもよい。他の実施形態において、ホッパー112に加えられる第2 ECTFEコポリマー、第2希釈剤及び第2成核剤は、第1 ECTFEコポリマー、第1希釈剤及び第1成核剤とは異なる。
【0070】
押出成形機110内にあるとき、この構成成分は、押出成形機のスクリュー(図示せず)によって加熱ゾーン114a〜hを通って導かれる。押出成形機110は8つの加熱ゾーン114a〜hを含んで示されているが、当業者による設計選択によって、これより多いか又は少ない数の加熱ゾーンが含まれ得ることが認識されよう。加熱ゾーン114a〜hは、任意の望ましい温度プロファイルを提供するよう設定することができる。いくつかの実施形態において、第1ゾーン114a〜114dはゾーン114e〜114hよりも高い温度に設定され、ここにおいてこの高い温度とは、すべての構成成分を融解して均質な第2融解配合組成物にするのに十分な温度である。ゾーン114e〜114hにおける低い温度とは、第2 ECTFEコポリマー又はその他の第2構成成分を劣化させることなく、均質な第2融解配合組成物を維持するのに十分な温度である。ポリマー押出成形の当業者には知られているように、ゾーン114a〜114hの実際の温度プロファイルが、使用される第2構成成分の具体的な特性、第2融解配合組成物の粘度、及びさまざまな処理考慮事項によって変わってくることが認識されよう。いくつかの実施形態において、加熱ゾーン114a〜hのすべてが、実質的に同じ温度に維持される。また別の実施形態において、ゾーン114a〜hは、個々のゾーン全てが固有の温度で設定される温度プロファイルを提供する(例えば、ゾーン114a〜hのいずれも、他のゾーンと同じ温度を有していないなど)。更に別の実施形態において、ゾーン114a〜hは、徐々に低下する温度に維持される(例えばゾーン114aが最高温度を有する)。他の温度プロファイルも想到される。押出成形機110のゾーン114a〜hを通過する間、第2融解混合組成物は、第2 ECTFEコポリマーの融解温度より少なくとも約5℃高いがその熱分解温度よりは低い温度まで加熱される。第2 ECTFEコポリマー、第2希釈剤及び第2成核剤は、第2融解配合組成物がゾーン114a〜hを進み押出成形機の出口117に向かうに従って、押出成形機110内で融解配合される。スタティックミキサー118は、押出成形機出口117とマルチゾーンダイ119との間に配置されて、融解混合組成物の更なる配合を促進する。
【0071】
マルチゾーンダイ119は、両方の押出成形機10及び110から来る融解配合組成物の供給物を受け取り、この供給物がダイを通過し隙間26に入る際に別のストリームとして維持するよう配置されている。ダイ119は、各融解配合組成物に1つずつ、2つの隙間幅が備わっている。いくつかの実施形態において、隙間幅は約25〜約2000マイクロメートルであり、この2つの幅は同一に又は異なって設定できる。さまざまな実施形態において、押出成形機10及び110でそれぞれ生成された第1及び第2の融解配合組成物は、少なくとも1つの機能又は1つの構成要素が互いに異なるよう配合され、これにより融解配合組成物それぞれによって生成される結果として得られる材料は、他方の融解配合組成物から得られる材料とは異なる平均孔径又は孔径分布を有する。例えば、2つの融解配合組成物は、異なるECTFEコポリマー、又は異なる希釈剤、又は異なる成核剤で配合され得る。いくつかの実施形態において、融解配合組成物の配合は、同じ構成成分を利用するが、それらの構成成分の1つ以上の濃度が異なっている。他のそのような可能な変形は、当業者には明らかとなろう。
【0072】
この2つの融解配合組成物は、マルチゾーンダイ119を通って2つのストリームに押し出し、これらは互いに接着して多層シート125を形成し、これは2つの異なる層を有し、各層が融解配合組成物の一方によって形成されている。融解配合組成物の一方又は両方にフルオロポリマーが成核剤として使用される本発明の実施形態においては、ダイ119から急冷ホイール20まで測定される隙間26の長さは、多層シート125がまだ隙間26にある間(例えば、急冷ホイール20に接触する前)に、多層シート内の融解混合組成物が十分に冷却されてフルオロポリマー成核剤が結晶化するのを可能にするのに好適な長さである。フルオロポリマーは、ECTFEコポリマーの結晶化温度よりも高い結晶化温度を有するよう選択されているため、多層シートは冷却プロセス中にまずフルオロポリマーの結晶化温度に達し、その後にECTFEコポリマーの結晶化温度に達することになる。ゆえに、隙間26にある間の多層シート125の冷却は、ECTFEコポリマーが結晶化することなく、フルオロポリマーが結晶化するのに十分でなければならない。多層シート125が隙間26に滞在する時間は、ダイ19から出る際の融解混合組成物の温度、急冷ホイール20の回転速度の制御、隙間26の長さの変更などによって影響を受けることが、当業者には認識されよう。
【0073】
多層シート125は、急冷ホイール20上に堆積され、この急冷ホイールはECTFEコポリマーの結晶化温度より低い温度に維持される。多層シート125は、急冷ホイール20に接触して運ばれている間、冷やされ続ける。ECTFE結晶化温度以下になると、ECTFEコポリマーは成核剤の結晶質粒子の周囲で結晶化する。結晶化する際に、各融解混合組成物中のECTFEコポリマーの相が分離し、孔の網状構造を有する球顆マトリックスを形成するが、この孔には希釈剤が残っており、ECTFEコポリマー全体に成核剤が実質的に均一に分散した状態である。このように冷却された融解混合組成物は、多層シートを多層相分離材料に変化させ、これが急冷ホイール20から溶媒槽21へと運ばれて、ここで溶媒27に曝されて希釈剤の抽出が行われ、材料は次いで空気乾燥される。多層の相分離された材料は次に、任意の機械方向(「MD」)延伸装置22、及び順次整列された任意の横断方向(「TD」)延伸装置23に運ばれ、これにより、2つの異なる多孔質ゾーンを形成する第1層及び第2層を含む多層微小多孔性ECTFEコポリマー材料が得られる。多層微小多孔性ECTFEコポリマー材料は、本質的に希釈剤を含まず、各ゾーンは、完全に開いた孔構造を備えた球顆マトリックスからなる。この多層微小多孔性材料は、次にテークアップローラー24に運ばれ、ロール28に巻き取られる。他の実施形態において、機械方向延伸装置22及び横断方向延伸装置23は、材料の単一2軸(MD×TD)延伸を行うための同時2軸延伸装置で置き換えることができる。
【0074】
結果として得られるマルチゾーン微小多孔性ECTFE材料は、第1微小多孔性ゾーン及び第2微小多孔性ゾーンからなり、共通境界面に沿って共に接合されている複合材料である。第1及び第2の融解混合組成物の配合における違いは、これら2つのゾーンの平均孔径及び/又は孔径分布の違いをもたらし、これにより第1ゾーンは典型的に、第2ゾーンの平均孔径よりも大きな平均孔径を有する。
【0075】
いくつかの実施形態において、マルチゾーン微小多孔性ECTFE材料は、ECTFE材料の2つを超える微小多孔性ゾーンを含むことができ(例えば最高3ゾーン、4ゾーン、5ゾーンなど)、さまざまなゾーンそれぞれが固有の平均孔径を有することができる。いくつかの実施形態において、2つ以上の層が、実質的に同じ孔径を有し得る。他の実施形態において、マルチゾーン微小多孔性ECTFE材料は、ラミネーション又は同様物によって基材(微小多孔性ECTFE材料以外)に付着されることができる。そのような物品の他の変形は、当業者には明らかであり得る。
【0076】
本発明の微小多孔性ECTFE材料は、通常、高い多孔率(例えば60%以上)をもたらし、平均孔径は約0.1μm〜約10μmの範囲内である。微小多孔性ECTFE材料は、医療、飲食物、及び/又は産業用市場での用途向けの、超精密濾過及び精密濾過装置を含むがこれらに限定されないさまざまな用途の任意の使用に好適である。微小多孔性ECTFE材料は、さまざまな物品のいずれかにおいて、膜、フィルム、及び/又は構成要素として使用することができる。そのような微小多孔性ECTFE材料の代表的な用途には、微小粒子濾過(例えば赤血球及び酵母)、燃料電池及びバッテリーセパレーター用途、並びに換気フィルターが挙げられる。本発明で提供される微小多孔性ECTFE材料は、典型的に、これまで入手可能であったECTFE材料に比べ、非常に強い。本発明のECTFE材料は、通常、触ったときに破壊や崩れを起こすことなしに、曲げ、折り畳み、又はプリーツに折ることが可能であり、このため濾過用途などのために大きな表面積材料を必要とするフィルターカートリッジやその他の装置に使用するのに好適である。
【0077】
微小多孔性ECTFE材料は、例えばフィルターカートリッジなど他の物品に組み込むことができる。この微小多孔性ECTFE材料のための他の可能性のある用途も想到される。
【0078】
加えて、微小多孔性ECTFE材料は、特定の機能を提供するよう、更に処理を行うことができる。いくつかの実施形態において、希釈剤除去の後、ECTFE材料に他の材料を吸収させる。微小多孔性ECTFE材料の吸収は、例えば複数回の短時間浸漬、長時間浸漬、減圧、水圧プレス及び蒸発などの既知の方法によって達成することができる。微小多孔性ECTFE材料には、医薬品、抗菌剤、静電気防止剤、界面活性剤、農薬、固体粒子状物質など、さまざまな材料のいずれかを吸収させることができる。これらの材料は、微小多孔性ECTFE材料の孔空隙を少なくとも部分的に充填するよう、微小多孔性ECTFE材料に添加される。
【0079】
いくつかの実施形態において、本明細書に記述されている微小多孔性ECTFE材料は、既知のコーティング又は堆積技法を使用して、さまざまな組成物のいずれかを堆積させることにより(希釈剤除去の前又は後のいずれかで)、更に改変することができる。例えば、微小多孔性ECTFE材料は、気相蒸着又はスパッタリング技法を使用して金属コーティングすることができ、あるいは微小多孔性材料は、例えば接着剤、水性若しくは溶媒系のコーティング組成物、又は染料でコーティングを行うことができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、微小多孔性ECTFE材料を別の構造体又は材料、例えば他のシート材料(例えば布地層、織布、不織布、編地、又はメッシュ地)、ポリマーフィルム層、金属ホイル層、フォーム層、又はこれらの任意の組み合わせにラミネートして、複合体構造を得ることにより、独自の物品が提供される。ラミネートは、接着剤結合、スポット溶接などの従来技法を使用して、又はその他の、多孔性の破壊や阻害を起こすことがない技法技術によって、実施することができる。
【実施例】
【0081】
本発明の追加の実施形態は、以下の非限定的な実施例において更に例示される。
【0082】
微小多孔性ECTFE材料の製造
微小多孔性ECTFE材料は、融解ポンプ、ネックチューブ、及びパターン化された流延ホイールの上に配置したシートダイ又は水を充填した急冷槽の上に配置した中空繊維ダイを備えた、2軸押出成形機を使用して製造された。この微小多孔性材料は、融解押出成形、流延/急冷、溶媒洗浄による希釈剤除去、乾燥による溶媒除去、及び延伸からなる工程で製造された。次にこのサンプルを、孔径、多孔率、厚さ、及び流動抵抗について特性を調べた。
【0083】
材料
さまざまな実施例において、以下の材料が参照される。
【0084】
ポリマー:商標名「Halar 902」、「Halar 901」及び「Halar 300 DA」としてSolvay Solexis(New Jersey,USA)から市販されているECTFEフルオロポリマー。
【0085】
希釈剤:Vertellus Performance Materials(Greensboro,NC)から市販されているセバシン酸ジブチル(「DBS」)。
【0086】
成核剤
HI5−5:濃縮マスターバッチ形態の、ポリプロピレン中のHyperform(登録商標)HPN68L成核剤(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二ナトリウム塩)。Milliken Chemical Co.(Spartanburg,SC)から入手。
【0087】
オレフィン/ブルー:メルトフローインデックスが12であるポリプロピレン/ポリエチレンコポリマー中の20重量%の青色銅フタロシアニン色素C.I.15:3(Tokyo Printing Ink Co.(Japan))のマスターバッチ。
【0088】
フルオロポリマー:3M Company(St.Paul,Minnesota)から商品名「ETFE 6235」、「THV 815」、「FEP 6322」で入手。
【0089】
ETFEフルオロポリマー:Dupont(Wilmington,Delaware)から商品名「Tefzel 200」、「Tefzel 750」、「Tefzel 2188」で入手。
【0090】
試験方法
以下の試験方法を使用して、実施例で作製された微小多孔性材料を特徴付けた。
【0091】
試験方法−厚さ:材料の厚さは、TMIキャリパーゲージ(Testing Machines Inc.(Amityville,New York))を使用して1インチ(2.54センチメートル)の千分の一単位まで測定した。測定値をマイクロメートルに換算した。
【0092】
試験方法−泡立ち点:泡立ち点孔径は、ASTM−F−316−80による、サンプル中の最大有効孔径を示す泡立ち点値(マイクロメートル単位)である。
【0093】
試験方法−多孔率:多孔率は、以下の式を使用して、測定した嵩密度と既知である純ECTFEコポリマー密度とから計算された。
【0094】
多孔率=(1−嵩密度/ECTFEコポリマー密度)×100
嵩密度は、直径47mmのディスクの材料の重量に、換算率22.69を掛け、その値を以下のように材料のインチ(センチメートル)単位の厚さで割って、決定された。
【0095】
嵩密度=(47mmディスクの重量)×(換算率22.69インチ(57.63cm))/厚さ(インチ(cm))。
【0096】
試験方法−流動抵抗:
流動抵抗試験とは、約580mmHg(77.3kPa)の減圧下にて、脱イオン水100ccが47mmディスクの材料を通過するのに要する秒単位での時間を測定するものである。必要であれば、膜はアルコールにてあらかじめ濡らして、水による濡れを開始させる。低い値(秒単位)は、流動量が多いことを示す。
【0097】
実施例1〜10
微小多孔性ECTFE材料は、表1に示す構成成分及び濃度を使用して調製された。この実施例の材料は、本明細書に記載の試験方法に従って特性が検査された。その検査結果を表2に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
実施例11
微小多孔性ECTFE材料は、融解混合組成物(Halar 902 ECTFEコポリマー、0.22重量%DBS、及び実施例5のオレフィン/青色成核剤)を、中空繊維ダイを通して押出成形し、水を満たし120°F(49℃)に維持した急冷槽内に流延して作製された。結果として得られた材料は多孔質ECTFE中空繊維であった。この中空繊維を溶媒中で洗浄してDBS希釈剤を除去し、乾燥し、250°F(121℃)の高温空気中で機械方向に2:1の比で延伸した。イソプロピルアルコールが繊維をすぐに濡らしたことから、多孔質であることが示された。
【0101】
比較例A
ECTFEコポリマー(Halar 901樹脂)及び希釈剤(DBS)を実施例1と同じ比で、ただし成核剤なしで、融解配合組成物を調製した。この組成物をシートに押し出した。結果として得られた材料は一体性がなかったため、触ると破壊又は崩れるであろう。
【0102】
比較例B
融解混合組成物を、実施例1と同様に、同じHalar 901 ECTFE及びDBS希釈剤の比を用いて、ただし青色銅色素だけを成核剤(ポリプロピレンなし)として使用して、調製した。この青色銅色素は高剪断ミキサーを使用してDBS希釈剤内にあらかじめ分散しておいた。この分散物をギヤポンプを使って、8つのゾーンの2軸押出成形機の第2ゾーンに供給し、ECTFE/DBSと融解混合して、融解混合組成物を得た。融解混合組成物が2軸押出成形機のスクリューから出て、シートダイに達する前に、成核剤は懸濁液から分離し、ダイから出る別のストリームを形成して、ECTFEコポリマーを核化できない粒子状物を残す。結果として得られた材料は一体性がなかったため、触るとバラバラに破壊し、崩れた。
【0103】
比較例C
実施例1と同じ比のHalar 901及びDBSを押出成形し、ただし純粋な12 MFI PP約3.2重量%(マスターバッチ配合物を作るのに使用される典型的な樹脂)を押出成形機に供給し、ECTFE/DBSと融解混合し、フィルムに形成した。これは一体性がなかったため、破壊や崩れを起こさずに触ることはできなかった。NAをあらかじめ分散させていないPPは、急冷してもECTFEを核化しなかった。
【0104】
実施例12
ホッパー、独立温度制御付きの8つのゾーン、及び押出成形機に希釈剤を供給するための液体リザーバを備えた、25mm 2軸押出成形機を使用して、微小多孔性ECTFE材料が調製された。Halar 902 ECTFEコポリマーペレット及びETFE 6235成核剤が固体フィーダーを用いてホッパーに導入され、材料が押出成形機に供給された。押出成形機は送り速度150rpmに維持された。DBS希釈剤は、リザーバから押出成形機内に別個に供給された。ECTFEコポリマー/希釈剤/成核剤の重量比は54.5/45.0/0.5であった。全体的な押し出し速度は約2.72kg/時間であり、押出成形機の8つのゾーンは、ゾーン1〜8が204℃、254℃、260℃、260℃、227℃、227℃、227℃、及び227℃の温度プロファイルを提供するよう設定された。結果として得られた融解混合組成物は、均一に混合され、続いて227℃に維持された二重クロムのコートハンガースロットフィルムダイを通ってポンプで送り出され、ホイール温度77℃、流延速度0.82m/分に維持されたパターン化された流延ホイール上に流延して、シート様形状の融解混合組成物を形成した。
【0105】
フィルムダイと流延ホイールとの間の隙間は1.9cmであり、これは、ECTFEコポリマーの顕著な結晶化の前に、ETFEポリマー成核剤が結晶化するのに十分大きいと考えられた。融解ポリマー混合物が流延ホイールに触れる前に、空隙内の混合物内に、かすかな不透明のフロストラインが生じた。結果として得られたフィルムをフレームに取り付けて縮むのを防ぎ、オフラインで、商品名「Vertrel 423」としてDuPontから市販されている溶媒中で洗浄し、次いで空気乾燥させた。洗浄したフィルムを、ラボストレッチャー2.0×2.25上にて、137℃で、長さ方向及び横断方向に順に配向させた。
【0106】
この微小多孔性ECTFE材料を評価したところ、非常に強く、触っても破壊や崩れを起こさずに、曲げ、折り畳み、又はプリーツに折ることが可能であることがわかった。これは、平均フィルム厚さ46μm、泡立ち点孔径0.38μm、多孔率58.0%、及び流動抵抗106秒/100ccであった。
【0107】
実施例13
ECTFEの微小多孔性中空繊維が、実施例12と同様の融解配合組成物から作製されたが、ただし組成物は中空繊維ダイを通して押出成形され、空気中で約1メートル紡いだ後に回収された。結果として得られた材料を、溶媒中で洗浄してDBS希釈剤を除去し、乾燥させ、160℃の高温空気中で機械方向に延伸率2:1で延伸した。この微小多孔性ECTFE材料は、泡立ち点孔径0.74μm、及び流動抵抗16.2秒/cc/cm2(584mmHg(77.9kPa)のとき)であった。
【0108】
実施例14
ECTFEの微小多孔性中空繊維が、前の実施例13と同様の融解配合組成物から作製されたが、ただし132℃の高温空気中で、機械方向に延伸率2:1倍で延伸した。この微小多孔性ECTFE材料は、泡立ち点孔径0.18μm、及び流動抵抗146秒/cc/cm2(584mmHg(77.9kPa)のとき)であった。
【0109】
比較例D
微小多孔性ECTFE材料が実施例12と同様に、ただし成核剤なしで調製された。ECTFEコポリマー/希釈剤比は55/45であった。フィルムダイと流延ホイールとの間の空隙にフロストラインが観察された。流延フィルムを洗浄し、結果として得られた材料を延伸すると、次の特性を有していた:平均フィルム厚さ99μm、泡立ち点孔径0.50μm、多孔率75.8%、及び流動抵抗212秒/100cc。曲げ、折り畳み、及びプリーツに折ったときに、この材料は破壊した。
【0110】
実施例15
微小多孔性材料が実施例12と同様に調製されたが、ただし成核剤としてTefzel 200 ETFEポリマーを使用し、押出成形機ゾーン3〜6の温度を260℃に維持して、適切に融解し、均一に分散した融解混合組成物中に成核剤を均一に混合した。結果として得られた微小多孔性材料は、次の特性を有していた:平均フィルム厚さ46μm、泡立ち点孔径0.20μm、多孔率58.0%、及び流動抵抗308秒/100cc。材料は非常に強く、破壊や崩れなしに曲げ、折り畳み、又はプリーツに折ることができた。
【0111】
実施例16
微小多孔性材料が実施例12と同様に調製されたが、ただし成核剤としてTHV 815フルオロポリマーを使用し、押出成形機ゾーン3〜6の温度を260℃に維持した。結果として得られた微小多孔性材料は、次の特性を有していた:平均フィルム厚さ48μm、泡立ち点孔径0.40μm、多孔率69.8%、及び流動抵抗78秒/100cc。この材料を評価したところ、非常に強く、破壊や崩れを起こさずに、曲げ、折り畳み、又はプリーツに折ることが可能であることがわかった。
【0112】
実施例17
微小多孔性材料が実施例12と同様に調製されたが、ただし成核剤としてFEP 6322フルオロポリマーを使用し、押出成形機ゾーン3〜6を288℃に維持した。この微小多孔性材料は、次の特性を有していた:平均フィルム厚さ71μm、泡立ち点孔径4.5μm、多孔率60.1%、及び流動抵抗76秒/100cc。この材料は中程度の強さのものであり、曲げ、折り畳み、及びプリーツに折ると破壊した。
【0113】
実施例18
微小多孔性材料が実施例12と同様に調製されたが、ただし成核剤としてTefzel 2188 ETFEフルオロポリマーを使用し、押出成形機ゾーン3〜6の温度を260℃に維持した。結果として得られた微小多孔性材料は、次の特性を有していた:平均フィルム厚さ46μm、泡立ち点孔径0.29μm、多孔率61.4%、及び流動抵抗120秒/100cc。材料は非常に強く、触っても破壊や崩れなしに曲げ、折り畳み、又はプリーツに折ることができた。
【0114】
実施例19
微小多孔性材料が実施例12と同様に調製されたが、ただし成核剤としてTefzel 750 ETFEフルオロポリマーを使用し、押出成形機ゾーン3〜6の温度を260℃に維持した。結果として得られた微小多孔性材料は、次の特性を有していた:平均フィルム厚さ38μm、泡立ち点孔径0.18μm、多孔率57.0%、流動抵抗432秒/100cc。材料は非常に強く、触っても破壊や崩れなしに曲げ、折り畳み、又はプリーツに折ることができた。
【0115】
実施例20
微小多孔性材料が実施例12と同様に調製されたが、ただしECTFEコポリマーとしてHalar 901を使用し、成核剤としてETFE Tefzel 200フルオロポリマーを使用した。ポリマー/希釈剤/成核剤の比は64.5/36/0.5重量%であり、押出成形機ゾーン3〜6の温度は260℃に維持され、流延ホイール速度は1.2m/分であり、フィルム延伸比は2×2であった。結果として得られた微小多孔性材料は、次の特性を有していた:平均フィルム厚さ23μm、泡立ち点孔径0.30μm、多孔率57.1%、及び流動抵抗162秒/100cc。材料は非常に強く、触っても破壊や崩れなしに曲げ、折り畳み、又はプリーツに折ることができた。
【0116】
実施例21
微小多孔性材料が実施例20と同様に調製されたが、ただし成核剤としてETFE 6235フルオロポリマーを使用した。結果として得られた微小多孔性材料は、次の特性を有していた:平均フィルム厚さ23μm、泡立ち点孔径0.280μm、多孔率51.2%、及び流動抵抗178秒/100cc。材料は非常に強く、触っても破壊や崩れなしに曲げ、折り畳み、又はプリーツに折ることができた。
【0117】
実施例22
微小多孔性材料が実施例20と同様に調製されたが、ただしECTFEコポリマーとしてHalar 300 DAを使用し、成核剤としてETFE Tefzel 200フルオロポリマーを使用した。結果として得られた微小多孔性材料は、次の特性を有していた:平均フィルム厚さ25μm、泡立ち点孔径0.70μm、多孔率63.0%、及び流動抵抗54秒/100cc。材料は非常に強く、触っても破壊や崩れなしに曲げ、折り畳み、又はプリーツに折ることができた。
【0118】
実施例23
ホッパー、独立温度制御付きの8つのゾーン、及び押出成形機に希釈剤を供給するための液体リザーバを備えた、40mm 2軸押出成形機を使用して、微小多孔性ECTFE材料の連続ロールを調製した。Halar 902 ECTFEコポリマーペレット及びETFE 6235成核剤が固体フィーダーを用いてホッパーに導入され、材料が押出成形機に供給された。押出成形機は送り速度150rpmに維持された。DBS希釈剤は、リザーバから押出成形機内に別個に供給された。ECTFEコポリマー/希釈剤/成核剤の重量比は59.5/40.0/0.5であった。全体的な押し出し速度は9.07kg/時間であり、押出成形機の8つのゾーンは、ゾーン1〜8が200℃、254℃、260℃、243℃、227℃、227℃、227℃、及び227℃の温度プロファイルを提供するよう設定された。融解組成物は均一に混合され、続いて227℃に維持された二重クロムのコートハンガースロットフィルムダイを通ってポンプで送り出され、66℃のホイール温度に維持されフィルムダイと流延ホイールとの間の隙間が2.5cmのパターン化された流延ホイール上に流延した。流延速度は2.14m/分であり、フィルムをインラインで連続的に洗浄して、Vertrel 423内のDBSを除去し、空気乾燥させ、温度137℃において、長さ方向及び横断方向に順次1.7×2.0に配向させた。
【0119】
有核微小多孔性ECTFE材料の連続ロールは、非常に強かった。図4の顕微鏡写真に示すように、この材料には表面被膜がなく、触っても破壊又は崩れを起こさずに曲げ、折り畳み、又はプリーツに折ることができた。この材料は平均フィルム厚さが53μm、泡立ち点孔径が0.20μm、多孔率が56.2%、及び流動抵抗が323秒/100ccであった。
【0120】
実施例24
微小多孔性ECTFEフラットシート材料が実施例23と同様の押出プロセスを使用して調製されたが、(1)ECTFE/DBS/ETFE重量比は56.2/43.3/0.5、(2)全体の押し出し速度は13.6kg/時間、(3)押出成形機の送り速度は230rpm、及び(4)流延速度は3.58m/分とした。このフィルムをインラインで連続的に洗浄してVertrel 423中のDBSを除去し、空気乾燥させ、微小多孔性ECTFE材料の4つのサンプル(A〜D)を長さ方向配向装置で1.5:1の延伸比に順次配向し、また8つの温度ゾーンを備えたテンター炉内で横断方向に2.45:1の延伸比に延伸した。全ての場合において、長さ方向延伸は121℃で行われた。テンター炉内の各サンプルA〜Dについて、表3に示すように、1つ以上のゾーンにおける温度をサンプルごとに変えた。テンター炉への曝露後、結果として得られた材料を試験対象とした。試験結果は、サンプルのそれぞれの孔の特性が延伸温度によって影響を受けたことを示していた。
【0121】
【表3】

【0122】
比較例E
微小多孔性ECTFE材料の連続ロールを、実施例21と同様に、ただし成核剤なしで調製した。延伸するのに十分な強さを有する無核(non-nucleated)フィルムを得るために、希釈剤を40重量%に減らし、流延ホイールを77℃に維持した。流延フィルムを洗浄し、2.0×2.9に延伸した。図3の顕微鏡写真に示すように、無核フィルムは密な表面孔を有していた。この材料は次の特性を有していた:平均フィルム厚さ37μm、泡立ち点孔径0.30μm、多孔率61.1%、及び流動抵抗1350秒/100cc。
【0123】
比較例Eの材料は比較的薄いにもかかわらず、実施例23の有核膜に比べて、泡立ち点孔径がより大きく、より多孔性であり、密な表面孔のため100ccの水を孔に通過させるのに1000秒超長く時間がかかったことが注目された。
【0124】
本発明の具体的な実施形態が詳しく記述されているが、記述された実施形態に対する変形は、当業者によって達成され得る。加えて、そのような変形は、添付の「請求項」に示されている本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく獲得可能であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小多孔性材料の製造方法であって、前記方法が、
エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、希釈剤及び成核剤を含む融解混合組成物を成形する工程であって、前記成核剤が前記融解混合組成物内に均一に分散している、工程と、
前記融解混合組成物を冷却することにより、前記エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの固−液相分離を誘導して、相分離した材料を提供する工程と、
前記相分離した材料を延伸して、前記微小多孔性材料を提供する工程と、
を含み、前記材料は、
エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、該マトリックスを通って延在し約0.01マイクロメートルを超える平均孔径を有する複数の孔とを含む球顆マトリックスと、
前記エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー全体にほぼ均一に分散された前記成核剤と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記相分離した材料から希釈剤を抽出することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記融解混合組成物を提供するために、前記エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、希釈剤及び成核剤を加熱環境で合わせることを含む融解混合を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱環境が押出成形機であり、前記融解混合組成物の成形が、前記融解混合組成物をダイスロットを通して押し出すことにより達成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記融解混合が、希釈剤及び成核剤を選択することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記希釈剤が、セバシン酸エステル、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル、アゼライン酸エステル、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される材料を含み、融解混合組成物中のエチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー/希釈剤の重量比が約70/30〜約30/70の範囲内である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記セバシン酸エステルがセバシン酸ジブチルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記フタル酸エステルが、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジエチル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記成核剤が、前記エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの結晶化温度よりも高い結晶化温度を有するフルオロポリマーである、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
相分離の誘導のための前記融解混合組成物の冷却が、前記エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの結晶化の前に、前記成核剤の少なくとも一部を結晶化させることを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
相分離の誘導のための前記融解混合組成物の冷却が、前記成核剤の少なくとも一部を結晶化させた後に前記融解混合組成物を急冷ホイールの表面上に流延することを更に含み、前記表面が前記融解混合組成物を冷却することにより前記エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの結晶化が誘導される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
相分離の誘導のための前記融解混合組成物の冷却が、前記成核剤の少なくとも一部を結晶化させた後に前記融解混合組成物を急冷槽に流延することを更に含み、前記急冷槽が前記融解混合組成物を冷却することにより前記エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの結晶化が誘導される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレンと、フッ化ビニリデンとのコポリマー、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記成核剤が室温で粒子状物であり、前記融解混合が前記成核剤、前記エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー及び希釈剤を合わせることを含み、前記成核剤が熱可塑性ポリマー内に分散されてから前記エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー及び希釈剤と合わせられる、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記成核剤が銅フタロシアニン色素である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記成核剤がビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二ナトリウム塩である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、該マトリックスを通って延在し約0.01マイクロメートルを超える平均孔径を有する複数の孔とを含む球顆マトリックスと、
前記エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー内にほぼ均一に分散された成核剤と、
を含む、微小多孔性材料。
【請求項18】
前記平均孔径が約0.01マイクロメートル〜約10マイクロメートルである、請求項17に記載の微小多孔性材料。
【請求項19】
前記材料が膜である、請求項17に記載の微小多孔性材料。
【請求項20】
前記材料が中空繊維である、請求項17に記載の微小多孔性材料。
【請求項21】
前記材料が、曲げ、折り畳み又はプリーツに折ることに破壊なしに耐えるのに十分な強さをもつ、請求項17に記載の微小多孔性材料。
【請求項22】
前記微小多孔性材料の孔に、医薬品、芳香剤、抗菌剤、静電気防止剤、界面活性剤、農薬、固体粒子材料、及び同様物からなる群から選択される別の物質を吸収させている、請求項17に記載の微小多孔性材料。
【請求項23】
前記微小多孔性材料が、金属、接着剤、水性コーティング組成物、溶媒系コーティング組成物及び染料からなる群から選択される物質でコーティングされている、請求項17に記載の微小多孔性材料。
【請求項24】
前記微小多孔性材料が、織布、不織布、編地、若しくは布地、ポリマーフィルム、金属ホイル、フォーム、又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択されるシート材料にラミネートされている、請求項17に記載の微小多孔性材料。
【請求項25】
請求項17に記載の微小多孔性材料を含む第1層と、
前記第1層に付着された、請求項17に記載の微小多孔性材料を含む第2層と、を含む、複合材料。
【請求項26】
第1微小多孔性材料及び第2微小多孔性材料が、異なる平均孔径を含む、請求項25に記載の複合材料。
【請求項27】
前記第2層に付着された、請求項17に記載の微小多孔性材料を含む第3層を更に含む、請求項25に記載の複合材料。
【請求項28】
前記第3層に付着された、請求項17に記載の微小多孔性材料を含む第4層を更に含む、請求項27に記載の複合材料。
【請求項29】
請求項1に記載の方法によって製造された、微小多孔性材料。
【請求項30】
エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、該マトリックスを通って延在する複数の孔とを含む球顆マトリックスと、
前記エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー内にほぼ均一に分散された成核剤と、
を含む微小多孔性材料であって、
前記材料は、曲げ、折り畳み、又はプリーツに折ることに破壊なしに耐えるのに十分な強さを有する、微小多孔性材料。
【請求項31】
入口と出口とを有するハウジングと、
前記ハウジング内に配置された、プリーツに折られた、請求項30に記載の微小多孔性材料と、
を含む、組立品。
【請求項32】
多層微小多孔性材料の製造方法であって、前記方法が、
少なくとも第1融解混合組成物及び第2融解混合組成物を含む複数の融解混合組成物を成形して、第1融解混合組成物の層と第2融解混合組成物の層とからなり共通境界面に沿って共に接合されている多層シートを形成する工程であって、前記第1融解混合組成物は、第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、第1希釈剤及び第1成核剤を含み、前記第2融解混合組成物は、第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、第2希釈剤及び第2成核剤を含む、工程と、
前記多層シートを冷却して、前記第1融解混合組成物中における前記第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの相分離、及び前記第2融解混合組成物中における前記第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの相分離を誘導することによって、相分離した多層材料を提供する工程と、
前記相分離した多層材料を延伸することによって、第1及び第2層を有する多層微小多孔性材料を提供する工程であって、前記第1層は、第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、該第1マトリックスを通って延在し約0.01マイクロメートルを超える平均孔径を有する複数の第1孔とを有する第1球顆マトリックスを含み、前記第1成核剤は、前記第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー全体にほぼ均一に分散し、前記第2層は、第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、該第2マトリックスを通って延在し約0.01マイクロメートルを超える平均孔径を有する複数の第2孔を有する第2球顆マトリックスを含み、前記第2成核剤は、前記第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー全体にほぼ均一に分散している、工程と、
を含む、方法。
【請求項33】
前記相分離した多層材料から希釈剤を抽出することを更に含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記複数の融解混合組成物を提供するための融解混合を更に含み、融解混合が、
第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、第1希釈剤及び第1成核剤を第1加熱環境で合わせる工程と、
第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、第2希釈剤及び第2成核剤を第2加熱環境で合わせる工程と、
を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記第1加熱環境が第1押出成形機であり、前記第1融解混合組成物の成形が前記第1融解混合組成物をダイを通して押し出すことにより達成され、前記第2加熱環境が第2押出成形機であり、前記第2融解混合組成物の成形が前記第2融解混合組成物をダイを通して押し出すことにより達成される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第1希釈剤及び前記第2希釈剤が、互いに独立して、セバシン酸エステル、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル、アゼライン酸エステル、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記セバシン酸エステルがセバシン酸ジブチルである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記フタル酸エステルが、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジエチル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記第1成核剤が、前記第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの結晶化温度より高い結晶化温度を有するフルオロポリマーであり、前記多層シートの冷却が、前記第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの結晶化の前に、前記第1成核剤の少なくとも一部を結晶化させることを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記第2成核剤が、前記第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの結晶化温度より高い結晶化温度を有するフルオロポリマーであり、前記多層シートの冷却が、前記第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの結晶化の前に、前記第2成核剤の少なくとも一部を結晶化させることを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記多層シートの冷却が、第1成核剤及び第2成核剤の少なくとも一部を結晶化させた後、前記多層シートを急冷ホイールの表面上に流延するか又は前記多層シートを急冷槽内に流延することを更に含み、これにより前記多層シートの冷却で第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー及び第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーの結晶化が誘導される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレンと、フッ化ビニリデンとのコポリマー、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレンと、フッ化ビニリデンとのコポリマー、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記第1成核剤と前記第2成核剤のうち少なくとも1つが室温で粒子状物である、請求項32に記載の方法。
【請求項45】
前記第1成核剤と前記第2成核剤のうち少なくとも1つが銅フタロシアニン色素である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記第1成核剤と前記第2成核剤のうち少なくとも1つがビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二ナトリウム塩である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、該第1球顆マトリックスを通って延在し約0.01マイクロメートルを超える平均孔径を有する複数の第1孔とを含む第1球顆マトリックスからなる第1層と、
前記第1エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー内にほぼ均一に分散された第1成核剤と、
第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、該第2球顆マトリックスを通って延在し約0.01マイクロメートルを超える平均孔径を有する複数の第2孔とを含む第2球顆マトリックスからなる第2層と、
前記第2エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー内にほぼ均一に分散された第2成核剤と、
を含む微小多孔性材料であって、
前記第1球顆マトリックスの平均孔径と前記第2球顆マトリックスの平均孔径とが異なる、微小多孔性材料。
【請求項48】
前記材料が、曲げ、折り畳み又はプリーツに折ることに破壊なしに耐えるのに十分な強さをもつ、請求項47に記載の微小多孔性材料。
【請求項49】
前記第2層に付着された第3層を更に含み、前記第3層が、第3エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、該第3球顆マトリックスを通って延在し約0.01マイクロメートルを超える平均孔径を有する複数の第3孔とを含む第3球顆マトリックスと、
前記第3エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー内にほぼ均一に分散された第3成核剤と、
からなる、請求項47に記載の微小多孔性材料。
【請求項50】
前記第3層に付着された第4層を更に含み、前記第4層が、第4エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーと、該第4球顆マトリックスを通って延在し約0.01マイクロメートルを超える平均孔径を有する複数の第4孔とを含む第4球顆マトリックスと、
前記第4エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー内にほぼ均一に分散された第4成核剤と、
からなる、請求項49に記載の複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−512947(P2012−512947A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542293(P2011−542293)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/067807
【国際公開番号】WO2010/071764
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】