説明

エチレン−極性モノマー共重合体シート、並びにこれを用いた合わせガラス用中間膜、合わせガラス、太陽電池用封止膜及び太陽電池

【課題】合わせガラス用中間膜及び太陽電池用封止膜として有用な、透明性が高いエチレン−極性モノマー共重合体シート、並びにこれを用いた合わせガラス及び太陽電池を提供する。
【解決手段】エチレン−極性モノマー共重合体を含む組成物からなるエチレン−極性モノマー共重合体シートであって、当該組成物が、更に、ヒマシ油を含むことを特徴とするエチレン−極性モノマー共重合体シート、並びにこれを用いた合わせガラス用封止膜、合わせガラス、太陽電池用封止膜及び太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラス用中間膜や太陽電池用封止膜等に用いられるエチレン−極性モノマー共重合体を主成分とするシート(エチレン−極性モノマー共重合体シート)に関し、特に、透明性が高いエチレン−極性モノマー共重合体シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAともいう)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)等のエチレン−極性モノマー共重合体を主成分として含む組成物からなるシート(エチレン−極性モノマー共重合体シート)は、安価であり、高い透明性を有することから、合わせガラス用中間膜や太陽電池用封止膜等として利用されている。合わせガラス用中間膜としては、図1に示すように、ガラス板11A及び11Bの間に挟持され、耐貫通性や破損したガラスの飛散防止等の機能を発揮する(特許文献1)。太陽電池用封止膜としては、図2に示すように、太陽電池用セル24とガラス基板等からなる表面側透明保護部材21との間、及び太陽電池用セル24と裏面側保護部材(バックカバー)22との間に配置され、絶縁性の確保や機械的耐久性の確保等の機能を発揮する(特許文献2、3)。そして、合わせガラス用中間膜や太陽電池用封止膜の性質上、エチレン系共重合体シートは、より高い透明性が要求されている。
【0003】
特に、太陽電池においては、発電性能を向上させるため、太陽電池内に光をなるべく効率よく入射させて太陽電池用セルに集光することが必要であり、例えば、特許文献3では、アルキレンオキシ基を有する化合物を配合し、透明性を向上させた封止膜が開発されている。しかしながら、太陽電池の発電効率を更に向上させるため、太陽電池用封止膜の透明性の更なる向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−79848号公報
【特許文献2】特開平09−036405号公報
【特許文献3】特開2008−053379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、合わせガラス用中間膜及び太陽電池用封止膜として有用な、透明性が高いエチレン−極性モノマー共重合体シートを提供することにある。
【0006】
また、本発明の目的は、このエチレン−極性モノマー共重合体シートを用いた合わせガラス用中間膜、及びそれを用いた合わせガラスを提供することにある。
【0007】
更に、本発明の目的は、このエチレン−極性モノマー共重合体シートを用いた太陽電池用封止膜、及びそれを用いた太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、エチレン−極性モノマー共重合体を含む組成物からなるエチレン−極性モノマー共重合体シートであって、当該組成物が、更に、ヒマシ油を含むことを特徴とするエチレン−極性モノマー共重合体シートによって達成される。
【0009】
本発明者らは、種々の添加剤を検討した結果、上記ヒマシ油を含有させることでエチレン−極性モノマー共重合体シートの透明性が向上することを見出した。
【0010】
ヒマシ油は、ヒマ(トウダイグサ科)という植物の種子から得られる油脂であり、脂肪酸とグリセリンとのエステル(トリグリセリド)である。ヒマシ油のトリグリセリドは、構成する脂肪酸の約90%がリシノレイン酸であることが特徴である。リシノレイン酸はOH基と二重結合を含む不飽和脂肪酸である。ヒマシ油を配合することで、エチレン−極性モノマー共重合体シート透明性が向上する要因は明らかではないが、このOH基を含む脂肪酸のトリグリセリドが、樹脂の結晶化を抑制するためと考えられる。
【0011】
本発明に係るエチレン−極性モノマー共重合体シートの好ましい態様は以下の通りである。
【0012】
(1)前記組成物中のヒマシ油の含有量が、前記エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して、0.2〜2.5質量部である。これにより、エチレン−極性モノマー共重合体シートの透明性をより向上させることができ、且つ架橋阻害による接着性の低下等、エチレン極性モノマー共重合体シートに求められる他の物性への悪影響を抑えることができる。
(2)前記エチレン−極性モノマー共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体である。EVAは安価であり、透明性に優れる点でエチレン−極性モノマー共重合体として好ましい。
(3)前記組成物が、更に、架橋剤を含む。これにより強度、接着性及び耐久性を向上したシートとすることができる。
(4)前記架橋剤が、有機過酸化物である。
(5)厚さ0.5mmのシートの波長300〜1200nmの光線透過率が、86%以上である。このような光線透過率を有するエチレン−極性モノマー共重合体シートであれば、更に透明性が向上したシートであるといえる。
(6)前記組成物が、更に、架橋助剤を含む。
(7)前記架橋助剤が、トリアリルシアヌレート、又はトリアリルイソシアヌレートである。
(8)前記組成物が、更に、シランカップリング剤を含む。
(9)150℃、30分間架橋後のゲル分率が、80%以上である。架橋剤を含有させて、上記条件で架橋した後のゲル分率が80%以上であれば、より十分な強度等を有するエチレン−極性モノマー共重合体シートであるといえる。
【0013】
また、上記目的は、本発明のエチレン−極性モノマー共重合体シートであることを特徴とする合わせガラス用中間膜によって達成される。これにより、高い透明性を有する合わせガラス用中間膜を得ることができる。
【0014】
更に、上記目的は、2枚の透明基板の間に本発明の合わせガラス中間膜が挟持され、これらが接着一体化されてなることを特徴とする合わせガラスによって達成される。これにより、高い透明性を有する合わせガラスを得ることができる。
【0015】
また、上記目的は、本発明のエチレン−極性モノマー共重合体シートであることを特徴とする太陽電池用封止膜によって達成される。これにより、高い透明性を有する太陽電池用封止膜を得ることができる。
【0016】
更に、上記目的は、本発明の太陽電池用封止膜により太陽電池素子を封止してなることを特徴とする太陽電池によって達成される。これにより、発電効率が高い太陽電池を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、合わせガラス用中間膜及び太陽電池用封止膜として有用な、透明性が高いエチレン−極性モノマー共重合体シートを、ヒマシ油を配合することで容易に得ることができる。
【0018】
従って、本発明のエチレン−極性モノマー共重合体シートを合わせガラス用中間膜として用いることにより、高い透明性を有する合わせガラスを容易に得ることができる。
【0019】
また、本発明のエチレン−極性モノマー共重合体シートを太陽電池用封止膜として用いることにより、発電効率が高い太陽電池を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一般的な合わせガラスの概略断面図である
【図2】一般的な太陽電池の概略断面図である。
【図3】接着力の評価である、180°ピール試験法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のエチレン−極性モノマー共重合体シートは、少なくともエチレン−極性モノマー共重合体を含む組成物からなり、その組成物が、更に、ヒマシ油を含んでいる。これにより、エチレン−極性モノマー共重合体シートの透明性が向上する。
【0022】
ヒマシ油は、ヒマ(トウダイグサ科)という植物の種子から得られる油脂であり、脂肪酸とグリセリンとのエステル(トリグリセリド)である。ヒマシ油のトリグリセリドは、構成する脂肪酸の約90%がリシノレイン酸であることが特徴である。リシノレイン酸は以下に示す化学式(I)の通り、OH基と二重結合を含む不飽和脂肪酸である。
【0023】
【化1】

【0024】
エチレン−極性モノマー共重合体シート透明性が向上する要因は明らかではないが、このOH基を含む脂肪酸のトリグリセリド(化学式(II)に示す)が、樹脂の結晶化を抑制するためと考えられる。後述する実施例に示すように、ヒマシ油を構成する脂肪酸(ヒマシ油脂肪酸)を配合してもエチレン−極性モノマー共重合体シートの透明性は向上されないため、エステル化していることが必要であると考えられる。なお、リシノレイン酸のトリグリセリドだけでなくジグリセリド、モノグリセリドも同様な効果がある可能性がある。
【0025】
【化2】

【0026】
エチレン−極性モノマー共重合体シートの組成物中のヒマシ油の含有量は、特に制限はない。ヒマシ油の含有量は、少な過ぎると透明性を向上する効果が低く、多過ぎると架橋阻害による接着性の低下等、エチレン−極性モノマー共重合体シートに求められる他の物性に悪影響を及ぼす場合があるため、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して、0.2〜2.5質量部が好ましく、0.2〜2質量部が更に好ましく、特に0.5〜1質量部が好ましい。
【0027】
以下、本発明のエチレン−極性モノマー共重合体シートについて、より詳細に説明する。
【0028】
[エチレン−極性モノマー共重合体]
本発明においてエチレン−極性モノマー共重合体の極性モノマーは、不飽和カルボン酸、その塩、そのエステル、そのアミド、ビニルエステル、一酸化炭素等を例示することができる。より具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸、これら不飽和カルボン酸のリチウム、ナトリウム、カリウムなどの1価金属の塩やマグネシウム、カルシウム、亜鉛などの多価金属の塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、一酸化炭素、二酸化硫黄などの一種又は二種以上などを例示することができる。
【0029】
エチレン−極性モノマー共重合体として、より具体的には、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸共重合体、前記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部又は全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル−メタクリル酸共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸エステル−不飽和カルボン酸共重合体及びそのカルボキシル基の一部又は全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体のようなエチレン−ビニルエステル共重合体等を代表例として例示することができる。
【0030】
エチレン−極性モノマー共重合体としては、JIS K7210で規定されるメルトフローレートが、35g/10分以下、特に3〜6g/10分のものを使用するのが好ましい。このようなメルトフローレート有するエチレン−極性モノマー共重合体を用いたエチレン−極性モノマー共重合体シートによれば、合わせガラス用中間膜や太陽電池用封止膜として、合わせガラスや太陽電池の製造に用いる際に、シートが溶融や位置ズレを起こして基板の端部からはみ出でるのを抑制することができる。
【0031】
なお、本発明において、メルトフローレート(MFR)の値は、JIS K7210に従い、190℃、荷重21.18Nの条件に基づいて測定されたものである。
【0032】
エチレン−極性モノマー共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が特に好ましい。これにより、安価であり、透明性、柔軟性に優れるエチレン−極性モノマー共重合体シートを形成することができる。
【0033】
エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量は、EVAに対して20〜35質量%、さらに22〜30質量%、特に24〜28質量%とするのが好ましい。EVAの酢酸ビニル単位の含有量が低い程、得られるシートが硬くなる傾向がある。酢酸ビニルの含有量が20質量%未満では、高温で架橋硬化させる場合に、得られるシートの透明性が充分でない恐れがある。また、35質量%を超えるとシートの硬さが不十分となる場合がある。
【0034】
本発明の太陽電池封止膜は、エチレン−極性モノマー共重合体に加えて、さらにポリビニルアセタール系樹脂(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール(PVB樹脂)、変性PVB)、塩化ビニル樹脂を副次的に使用しても良い。その場合、特にPVBが好ましい。
【0035】
[架橋剤]
本発明のエチレン−極性モノマー共重合体シートの組成物は、更に架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤は、エチレン−極性モノマー共重合体の架橋構造を形成することができるもので、シートの強度、接着性及び耐久性を向上することができる。架橋剤は、有機過酸化物又は光重合開始剤を用いることが好ましい。なかでも、接着力、透明性、耐湿性、耐貫通性の温度依存性が改善されたエチレン極性モノマー共重合体シートが得られることから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0036】
前記有機過酸化物としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば、どのようなものでも使用することができる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。
【0037】
前記有機過酸化物としては、樹脂の加工温度・貯蔵安定性の観点から例えば、ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、スクシニックアシドパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイル+ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシド、tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサン、tert−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、等が挙げられる。
【0038】
ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであればいずれも使用可能であるが、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが好ましく、調製条件、成膜温度、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して適宜選択できる。使用可能なベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤は1種でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
有機過酸化物として、特に、2,5−ジメチル−2,5ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが好ましい。これにより優れた絶縁性を有するエチレン−極性モノマー共重合体シートが得られる。このようなシートは太陽電池用封止膜として用いた場合に有効である。
【0040】
前記有機過酸化物の含有量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して、好ましくは0.1〜2質量部、より好ましくは0.2〜1.5質量部であることが好ましい。前記有機過酸化物の含有量は、少ないと得られるエチレン−極性モノマー共重合体シートの絶縁性が低下する恐れがあり、多くなるとエチレン−極性モノマー共重合体との相溶性が悪くなる恐れがある。
【0041】
また、光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤でも使用することができるが、配合後の貯蔵安定性の良いものが望ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタ−ルなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレ−トなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のような安息香酸系又は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種単独または2種以上の混合で使用することができる。
【0042】
前記光重合開始剤の含有量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.5〜5.0質量部であることが好ましい。
【0043】
[架橋助剤]
本発明のエチレン−極性モノマー共重合体シートの組成物は、必要に応じて、さらに架橋助剤を含んでいてもよい。前記架橋助剤は、エチレン−極性モノマー共重合体のゲル分率を向上させ、エチレン−極性モノマー共重合体シートの接着性及び耐久性を向上させることができる。
【0044】
前記架橋助剤の含有量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して、一般に10質量部以下、好ましくは0.1〜5質量部、更に好ましくは0.1〜2.5質量部で使用される。これにより、更に接着性に優れるエチレン−極性モノマー共重合体シートが得られる。
【0045】
前記架橋助剤(官能基としてラジカル重合性基を有する化合物)としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、(メタ)アクリルエステル(例、NKエステル等)の単官能又は2官能の架橋助剤等を挙げることができる。なかでも、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが好ましく、特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0046】
[接着向上剤]
本発明のエチレン−極性モノマー共重合体シートの組成物は、更に、接着向上剤を含んでいても良い。接着向上剤としては、シランカップリング剤を用いることができる。これにより、更に優れた接着力を有するエチレン−極性モノマー共重合体シートとすることができる。前記シランカップリング剤としては、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。なかでも、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましく挙げられる。
【0047】
前記シランカップリング剤の含有量はEVA100質量部に対して0.1〜0.7質量部、特に0.3〜0.65質量部であることが好ましい。
【0048】
[その他]
本発明のエチレン−極性モノマー共重合体シートの組成物は、シートの種々の物性(機械的強度、透明性等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整のため、必要に応じて、可塑剤、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物及び/又はエポキシ基含有化合物などの各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0049】
可塑剤としては、特に限定されるものではないが、一般に多塩基酸のエステル、多価アルコールのエステルが使用される。その例としては、ジオクチルフタレート、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ブチルセバケート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジペラルゴネートを挙げることができる。可塑剤は一種用いてもよく、二種以上組み合わせて使用しても良い。可塑剤の含有量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して5質量部以下の範囲が好ましい。
【0050】
アクリロキシ基含有化合物及びメタクリロキシ基含有化合物としては、一般にアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体であり、例えばアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルやアミドを挙げることができる。エステル残基の例としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等の直鎖状のアルキル基、シクロヘキシル基、テトラヒドルフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプオピル基を挙げることができる。アミドの例としては、ジアセトンアクリルアミドを挙げることができる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルも挙げることができる。
【0051】
エポキシ含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(エチレンオキシ)5グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0052】
前記アクリロキシ基含有化合物、前記メタクリロキシ基含有化合物、または前記エポキシ基含有化合物は、それぞれエチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対してそれぞれ一般に0.5〜5.0質量部、特に1.0〜4.0質量部含まれていることが好ましい。
【0053】
更に、本発明のエチレン−極性モノマー共重合体シートの組成物は、紫外線吸収剤、光安定剤および老化防止剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤を含むことにより、照射された光などの影響によってエチレン−極性モノマー共重合体が劣化し、シートが黄変するのを抑制することができる。紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく挙げられる。なお、上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の配合量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0054】
また、光安定剤を含むことによっても、照射された光などの影響によってエチレン−極性モノマー共重合体が劣化し、シートが黄変するのを抑制することができる。光安定剤としてはヒンダードアミン系と呼ばれる光安定剤を用いることが好ましく、例えば、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63LA−63p、LA−67、LA−68(いずれも(株)ADEKA製)、Tinuvin744、Tinuvin 770、Tinuvin 765、Tinuvin144、Tinuvin 622LD、CHIMASSORB 944LD(いずれもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製)、UV−3034(B.F.グッドリッチ社製)等を挙げることができる。なお、上記光安定剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その配合量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
老化防止剤としては、例えばN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ビタミンE系熱安定剤、イオウ系熱安定剤等が挙げられる。
【0055】
[エチレン−極性モノマー共重合体シート]
上述した本発明のエチレン−極性モノマー共重合体シートを形成するには、公知の方法に準じて行えばよい。例えば、上記の各材料をスーパーミキサー(高速流動混合機)、ロールミル等を用いて公知の方法で混合した組成物を通常の押出成形、又はカレンダ成形(カレンダリング)等により成形してシート状物を得る方法により製造することができる。また、前記組成物を溶剤に溶解させ、この溶液を適当な塗布機(コーター)で適当な支持体上に塗布、乾燥して塗膜を形成することによりシート状物を得ることもできる。なお、製膜時の加熱温度は、特に架橋剤を配合する場合、架橋剤が反応しない或いはほとんど反応しない温度とすることが好ましい。例えば、50〜90℃、特に40〜80℃とするのが好ましい。エチレン−極性モノマー共重合体シートの厚さは、特に制限されず、用途によって適宜設定することができる。一般に、50μm〜2mmの範囲である。
【0056】
本発明のエチレン−極性モノマー共重合体シートは透明性が向上されている。透明性としては、厚さ0.5mmのシートで、波長300〜1200nmの光線透過率が、86%以上であることが好ましい。
【0057】
また、透明性の向上とともに、シートの強度や接着性等が低下しないことが好ましく、特に、架橋剤を含有させる場合、150℃、30分間架橋後のゲル分率が、80%以上であることが好ましい。これにより十分な強度等を有するエチレン−極性モノマー共重合体シートとすることができる。
【0058】
[合わせガラス用中間膜]
本発明のエチレン−極性モノマー共重合体シートは、高い透明性を有するので、高い可視光透過率が要求される合わせガラス用中間膜(本発明の合わせガラス用中間膜)として、好ましく使用できる。
【0059】
[合わせガラス]
本発明の合わせガラスは、2枚の透明基板の間に本発明の合わせガラス中間膜が挟持され、これらが接着一体化されていれば良い。上記のように本発明の合わせガラス用中間膜は、高い透明性を有しているので、本発明の合わせガラスは、高い可視光透過率を有する合わせガラスである。
【0060】
本発明の合わせガラスを製造するには、例えば、図1に示したように、本発明の合わせガラス用中間膜12を2枚のガラス板11A及び11Bの間に狭持して、得られた積層体を脱気した後、加熱下に押圧する方法などが用いられる。これらの工程は、例えば、真空袋方式、ニップロール方式等を用いて行われる。これにより、合わせガラス用中間膜12が硬化して、合わせガラス用中間膜12とガラス板11A及び11Bとを接着一体化することができる。製造条件としては、例えば、上記積層体を80〜120℃の温度で予備圧着し、100〜150℃(特に130℃付近)で10分〜1時間加熱処理することによりエチレン−極性モノマー共重合体を架橋させる。また、加熱処理は加圧下で行ってもよい。このとき、積層体を1.0×10Pa〜5.0×10Paの圧力で加圧しながら行うのが好ましい。架橋後の冷却は一般に室温で行われるが、特に、冷却は速いほど好ましい。
【0061】
本発明におけるガラス板は透明基板であれば良く、例えば、グリーンガラス、珪酸塩ガラス、無機ガラス板、無着色透明ガラス板などのガラス板の他、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンブチレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のプラスチック製の基板又はフィルムを用いてもよい。耐候性、耐衝撃性等の点でガラス板が好ましい。ガラス板の厚さは、1〜20mm程度が一般的である。合わせガラスにおいて両側に配置されるそれぞれのガラス板は、同一のもの用いてもよく、異なる基材を組み合わせて用いてもよい。基材の強度と合わせガラスの用途とを考慮して、組み合わせを決定する。
【0062】
本発明の合わせガラスは、建築物や乗り物(自動車、鉄道車両、船舶)用の窓ガラス、プラズマディスプレイなどの電子機器、冷蔵庫や保温装置などのような各種装置の扉や壁部など、種々の用途に使用することができる。
【0063】
[太陽電池用封止膜]
本発明のエチレン−極性モノマー共重合体シートは、高い透明性を有するので、高い光線透過率が要求される太陽電池用封止膜(本発明の太陽電池用封止膜)として、好ましく使用できる。
【0064】
[太陽電池]
本発明の太陽電池の構造は、本発明の太陽電池用封止膜により太陽電池素子(太陽電池用セル、薄膜太陽電池素子を含む)を封止していていれば、特に制限されない。例えば、表面側透明保護部材と裏面側保護部材との間に、本発明の太陽電池用封止膜を介在させて架橋一体化させることにより太陽電池用セルを封止させた構造などが挙げられる。なお、本発明において、太陽電池セルの光が照射される側(受光面側)を「表面側」と称し、太陽電池セルの受光面とは反対面側を「裏面側」と称する。
【0065】
上記のように本発明の太陽電池用封止膜は、高い透明性を有するので、本発明の太陽電池は、高い発電効率を有する太陽電池である。
【0066】
本発明の太陽電池を製造するには、例えば、図2に示すように表面側透明保護部材21、表面側封止膜23A、太陽電池用セル24、裏面側封止膜23B及び裏面側保護部材22を積層し、加熱加圧など常法に従って、封止膜23A及び23Bを架橋硬化させればよい。前記加熱加圧するには、例えば、前記積層体を、真空ラミネータで温度135〜180℃、さらに140〜180℃、特に155〜180℃、脱気時間0.1〜5分、プレス圧力0.1〜1.5kg/cm2、プレス時間5〜15分で加熱圧着すればよい。この加熱加圧時に、表面側封止膜23Aおよび裏面側封止膜23Bに含まれるエチレン−極性モノマー共重合体を架橋させることにより、表面側封止膜23Aおよび裏面側封止膜23Bを介して、表面側透明保護部材21、裏面側保護部材22、および太陽電池用セル24を一体化させて、太陽電池用セル24を封止することができる。
【0067】
なお、本発明の太陽電池用封止膜は、図2に示したような単結晶又は多結晶のシリコン結晶系の太陽電池セルを用いた太陽電池だけでなく、薄膜シリコン系、薄膜アモルファスシリコン系太陽電池、セレン化銅インジウム(CIS)系太陽電池等の薄膜太陽電池の封止膜にも使用することもできる。この場合は、例えば、薄膜シリコン系、薄膜アモルファスシリコン系太陽電池、セレン化銅インジウム(CIS)系太陽電池等の薄膜太陽電池の封止膜にも使用することもできる。この場合は、例えば、ガラス基板、ポリイミド基板、フッ素樹脂系透明基板等の表面側透明保護部材の表面上に化学気相蒸着法等により形成された薄膜太陽電池素子層上に、本発明の太陽電池用封止膜、裏面側保護部材を積層し、接着一体化させた構造、裏面側保護部材の表面上に形成された太陽電池素子上に、本発明の太陽電池用封止膜、表面側透明保護部材を積層し、接着一体化させた構造、又は表面側透明保護部材、表面側封止膜、薄膜太陽電池素子、裏面側封止膜、及び裏面側保護部材をこの順で積層し、接着一体化させた構造等が挙げられる。
【0068】
本発明の太陽電池に使用される表面側透明保護部材21は、通常珪酸塩ガラスなどのガラス基板であるのがよい。ガラス基板の厚さは、0.1〜10mmが一般的であり、0.3〜5mmが好ましい。ガラス基板は、一般に、化学的に、或いは熱的に強化させたものであってもよい。
【0069】
本発明で使用される裏面側保護部材22は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチックフィルムが好ましく用いられる。また、耐熱性、耐湿熱性を考慮してフッ化ポリエチレンフィルム、特にフッ化ポリエチレンフィルム/Al/フッ化ポリエチレンフィルムをこの順で積層させたフィルムでも良い。
【0070】
なお、本発明の太陽電池(薄膜太陽電池を含む)は、上述した通り、表面側及び/又は裏面側に用いられる封止膜に特徴を有する。したがって、表面側透明保護部材、裏面側保護部材、および太陽電池用セルなどの前記封止膜以外の部材については、従来公知の太陽電池と同様の構成を有していればよく、特に制限されない。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0072】
(実施例1〜7、比較例1及び2)
表1に示す各材料を各配合量でロールミルに供給し、70〜100℃で、混練してエチレン−極性モノマー共重合体シートの組成物を調製した。前記太陽電池用封止膜の組成物を、70〜100℃で、カレンダ成形し、放冷後、エチレン−極性モノマー共重合体シートとしてEVAシート(厚さ;0.5mm)を作製した。
【0073】
(評価方法)
(1)加硫試験機によるトルク(キュアトルク)
上記のエチレン−極性モノマー共重合体シートの組成物について、JIS K6300-2に準じた日本合成ゴム社製III型相当の加硫試験機を用い、150℃に設定し、30分後のトルク(N・cm)を測定した。
【0074】
(2)ゲル分率
上記で作製したEVAシート(100mm×100mm×0.5mm厚)を2枚の離型PET(厚さ;0.75μm)で挟み、100℃で仮圧着し、オーブン中で150℃、30分間加熱してEVAを架橋させた。その後、各サンプルを200メッシュ金網袋に1g秤量し、ソックスレー抽出器を用いキシレンで6時間抽出し、残留物を乾燥し秤量した。初期質量と抽出残留物の乾燥質量からゲル分率(%)((抽出残留物の乾燥質量/初期質量)×100)を算出した。
【0075】
(3)接着力
接着力は180°ピール試験(JIS K 6584、1994年)により評価した。まず、ガラス板(厚さ;3mm)/上記で作製した各EVAシート(厚さ;0.5mm)/離型PET(厚さ;0.75μm)をこの順で積層し、100℃、10分間仮圧着し、オーブン中で150℃、30分間加熱してEVAを架橋させた。次いで、図3に示したように、ガラス基板31とEVAシート33との間の一部を剥離して、EVAシート33を180°折り返して引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ)を用いて引っ張り速度100mm/分時の引き剥がし力を測定し、ガラス接着力[N/cm]とした。
【0076】
(4)光線透過率
上記で作製した各EVAシート(50mm×50mm×0.5mm厚)を2枚の白板ガラス(厚さ;3mm)で挟み、(2)と同様に架橋させたサンプルについて、波長300〜1200nmの光線透過率(%)を分光光度計(U−4000(日立製作所社製))を用いて測定した。
【0077】
(評価結果)
評価結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1に示したように、ヒマシ油を配合した実施例1〜7のEVAシートは、ヒマシ油を配合していない比較例1のEVAシートに比べて光線透過率が高く、ヒマシ油を配合することでエチレン−極性モノマー共重合体シートの透明性が向上されることが示された。このような効果はヒマシ油脂肪酸を配合した比較例2では認められず、エステル化されていることが必要であることが示唆された。
【0080】
また、EVAシートの組成物におけるヒマシ油の含有量が、EVA100質量部に対して0.1質量部である実施例1では、透過率の向上効果がやや低く、EVA100質量部に対して2.8質量部である実施例7では、キュアトルクやゲル化分率がやや低下していた。従って、ヒマシ油の含有量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して、0.2〜2.5質量部が好ましいことが示された。
【0081】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明により、透明性が高い合わせガラスや、発電効率が高い太陽電池を容易に提供することができる。
【符号の説明】
【0083】
11A、11B ガラス板
12 合わせガラス用中間膜
21 表面側透明保護部材
22 裏面側保護部材
23A 表面側封止膜
23B 裏面側封止膜
24 太陽電池用セル
31 ガラス基板
33 EVAシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−極性モノマー共重合体を含む組成物からなるエチレン−極性モノマー共重合体シートであって、
当該組成物が、更に、ヒマシ油を含むことを特徴とするエチレン−極性モノマー共重合体シート。
【請求項2】
前記組成物中のヒマシ油の含有量が、前記エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して、0.2〜2.5質量部である請求項1に記載のエチレン−極性モノマー共重合体シート。
【請求項3】
前記エチレン−極性モノマー共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項1又は2に記載のエチレン−極性モノマー共重合体シート。
【請求項4】
前記組成物が、更に、架橋剤を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のエチレン−極性モノマー共重合体シート。
【請求項5】
前記架橋剤が、有機過酸化物である請求項4に記載のエチレン−極性モノマー共重合体シート。
【請求項6】
厚さ0.5mmのシートの波長300〜1200nmの光線透過率が、86%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載のエチレン−極性モノマー共重合体シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のエチレン−極性モノマー共重合体シートであることを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
2枚の透明基板の間に請求項7に記載の合わせガラス中間膜が挟持され、これらが接着一体化されてなることを特徴とする合わせガラス。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のエチレン−極性モノマー共重合体シートであることを特徴とする太陽電池用封止膜。
【請求項10】
請求項9に記載の太陽電池用封止膜により太陽電池素子を封止してなることを特徴とする太陽電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−241169(P2012−241169A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115410(P2011−115410)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】