説明

エチレンの製法

【課題】 低温で高活性かつ高選択的にエチレンを製造する方法を提供する。
【解決手段】 エタノールの脱水反応によりエチレンを製造するにあたり、ケイ素/アルミニウム比(原子比)が10未満およびナトリウムとカリウムの合計含有量が0.1wt%以下のプロトン型モルデナイトを用いた触媒の存在下で、反応温度が200〜300℃の範囲でエタノールを接触させることを特徴とするエチレンの製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタノールの脱水反応によるエチレンの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンは、ポリエチレンおよびポリ塩化ビニル等の原料として有用な基礎化成品の一つである。従来、エチレンの製造法として、ナフサの熱分解、エタンの脱水素反応およびエタノールの脱水反応が知られている。特にエタノールの脱水反応によるエチレン製造では、植物由来のエタノールを用いた場合、製造されたエチレンまたはそれを原料とする製品を燃焼する時に放出される二酸化炭素はもともと植物が光合成により取り込んだもので、二酸化炭素排出量にカウントされないため、環境負荷の小さい製造方法となる。
【0003】
従来のエタノールの脱水反応によるエチレンの製造は、触媒としてアルミナまたはシリカアルミナ等の固体酸触媒が用いられており、高活性および高選択性を得るために、反応温度は350〜450℃と高い温度を必要とする(例えば、特許文献1,2)。
【0004】
しかし、300℃を越えると燃焼炉が必要となり、設備費が高くなり、非経済的となる課題がある。
【0005】
また、ゼオライトを触媒として用いたエタノールの脱水反応によるエチレンの製造では、反応温度150〜250℃、触媒としてプロトン型のゼオライトを用いた方法が知られているが(例えば、特許文献3)、工業的には十分なエチレン収率が得られない。
【0006】
さらに、本発明者らによるGibbs自由エネルギーを用いたエタノール、エチレン、ジエチルエーテル、アセトアルデヒドおよび水の5成分の熱力学的平衡組成計算によれば、エチレンの平衡組成は温度200℃で85%、230℃で96%、250℃以上で100%となり、温度が200℃未満では、十分なエチレン収率が得られない。
【0007】
【特許文献1】特許第2911244号公報(第5頁)
【特許文献2】特公昭59−19927号公報(第5頁)
【特許文献3】特開2006−116439号公報(第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、低温で高活性かつ高選択的なエタノールの脱水反応によるエチレンの製法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、エタノールの脱水反応によるエチレンの製造にあたり、特定の組成を持つプロトン型モルデナイトを用いた触媒の存在下で、反応温度が200〜300℃の範囲でエタノールを接触させることで、低温で高活性かつ高選択的にエチレンを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、エタノールの脱水反応によりエチレンを製造するにあたり、ケイ素/アルミニウム比(原子比)が10未満およびナトリウムとカリウムの合計含有量が0.1wt%以下のプロトン型モルデナイトを用いた触媒の存在下で、反応温度が200〜300℃の範囲でエタノールを接触させることを特徴とするエチレンの製法である。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明のエチレンの製法は、ケイ素/アルミニウム比(原子比)が10未満およびナトリウムとカリウムの合計含有量が0.1wt%以下のプロトン型モルデナイトを用いた触媒を使用することを特徴とする。
【0012】
本発明で使用するモルデナイトは、ゼオライトの一種であり、国際ゼオライト学会が規定する構造コードではMORと表記される構造を持つものである。
【0013】
ゼオライトの組成は一般に下記式(1)で表される。
【0014】
xM2/nO・Al・ySiO・zHO (1)
(ここで、nは陽イオンMの原子価、xは0.8〜2の範囲の数、yは2以上の数、zは0以上の数である。)
その基本構造は、ケイ素を中心として4つの酸素がその頂点に配置したSiOで示される四面体構造と、このケイ素の代わりにアルミニウムがその中心にあるAlOで示される四面体とが、酸素/(ケイ素+アルミニウム)の原子比が2となるようにお互いに酸素を共有して、規則性のある三次元的に結合したものである。
【0015】
その結果、この四面体の結合方式の違いによって大きさ、形の異なる細孔を有する三次元的骨格構造が形成される。
【0016】
また、ゼオライトは固体酸性を持つことが知られている。アルミニウムが中心にある四面体の電子価は負に帯電しており、プロトン、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の陽イオンと結合することで電気的に中和されている。特にプロトンと結合した場合では、ブレンステッド酸性を示すことから、プロトン型ゼオライトは固体酸触媒として使用されている。
【0017】
本発明で使用するプロトン型モルデナイトのケイ素/アルミニウム比(原子比)は10未満である。10以上であると低温で高活性かつ高選択的にエチレンを製造できない。低温でより高活性かつ高選択的にエチレンを製造できることから、好ましくは3以上10未満、さらに好ましくは4以上8未満である。
【0018】
本発明で使用するプロトン型モルデナイトのナトリウムとカリウムの合計含有量は0.1wt%以下である。0.1wt%を超えると、ナトリウムおよびカリウムが多く存在してエタノールの脱水素反応によるアセトアルデヒドの生成が促進され、コークの析出や活性および選択性の低下を引き起し、低温で高活性かつ高選択的にエチレンを製造できない。低温でより高活性かつ高選択的にエチレンを製造できることから、好ましくは0.01wt%以下である。
【0019】
本発明で使用するプロトン型モルデナイトは、上記のケイ素/アルミニウム比(原子比)が10未満およびナトリウムとカリウムの合計含有量が0.1wt%以下のものであれば、通常の水熱合成等の調製法で合成したもの等を使用することができる。
【0020】
ナトリウムとカリウムの合計含有量が0.1wt%を越えるプロトン型モルデナイトを入手した際は、ナトリウムとカリウムの合計含有量を0.1wt%以下にするために、ナトリウムおよびカリウムを除去する必要がある。含有するナトリウムおよびカリウムを除去する方法は、特に限定されないが、例えば、ナトリウムを含有するモルデナイトをアンモニウム塩水溶液で処理した後、洗浄し、乾燥後に、熱処理する方法等が挙げられる。
【0021】
アンモニウム塩水溶液の処理方法は、特に限定されないが、例えば、アンモニウム塩水溶液中で加熱撹拌を行い、固形物を分離して取り出して、この操作を数回繰り返す方法等が挙げられる。アンモニウム塩の種類は、特に限定されないが、効率的にナトリウムおよびカリウムを除去できることから、好ましくは塩化アンモニウムおよび硝酸アンモニウムが使用できる。アンモニウム塩水溶液の濃度は、特に制限されないが、効率的にナトリウムおよびカリウムを除去できることから、好ましくは0.5〜5N、さらに好ましくは1〜3Nの濃度である。アンモニウム塩水溶液の量は、特に制限されないが、効率的にナトリウムおよびカリウムを除去できることから、モルデナイトの重量に対し好ましくは5〜100倍量、さらに好ましくは10〜50倍量である。加熱撹拌温度、時間および処理回数は、特に制限されないが、効果的にナトリウムおよびカリウムを除去できることから、加熱撹拌温度は好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは70〜90℃、加熱撹拌時間は、好ましくは0.5〜12時間、さらに好ましくは1〜6時間、処理回数は、好ましくは1〜10回、さらに好ましくは2〜5回である。固形物を分離する方法は、特に限定されないが、例えば、ろ別、遠心分離等の方法が使用できる。
【0022】
洗浄処理の方法は、特に限定されないが、例えば、純水で加熱撹拌を行い、固形物を分離して取り出して、この操作を数回繰り返す方法等が挙げられる。純水の量は、特に制限されないが、効率的にナトリウムおよびカリウムを除去できることから、モルデナイトの重量に対し好ましくは5〜100倍量、さらに好ましくは10〜50倍量である。加熱撹拌温度、時間および処理回数は、特に制限されないが、効果的にナトリウムおよびカリウムを除去できることから、加熱撹拌温度は好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは70〜90℃、加熱撹拌時間は、好ましくは0.5〜12時間、さらに好ましくは1〜6時間、処理回数は、好ましくは1〜10回、さらに好ましくは2〜5回である。固形物を分離する方法は、特に限定されないが、例えば、ろ別、遠心分離等の方法が使用できる。
【0023】
乾燥方法は特に限定されないが、例えば、恒温乾燥器、マッフル炉、環状炉等を用い、80〜120℃で行うことができる。
【0024】
熱処理方法は、特に限定されないが、例えば、マッフル炉、環状炉等が使用できる。熱処理温度は、特に制限されないが、アンモニウムイオンの分解およびモルデナイトの構造を維持することから、好ましくは400〜700℃、さらに好ましくは、450〜600℃である。また、必要に応じ、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴンまたは空気等のガスを流しても良く、これらのガスを単独または二種類以上混合しても良い。
【0025】
本発明で使用するプロトン型モルデナイトを用いた触媒の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、楕円状、円柱状、ハニカム状、粉体、顆粒状等が使用でき、効率的にエタノールを供給しエチレンを製造することができることから、好ましくは、球状、円柱状、ハニカム状、顆粒状である。
【0026】
本発明で使用するプロトン型モルデナイトを用いた触媒の成粒方法は、特に限定されないが、例えば、打錠成型、押出成型、スラリーを乾燥後熱処理し、粉砕してふるい分けする方法が挙げられる。また、必要に応じ、シリカ、シリカゾル、アルミナ、アルミナゾル、グラファイト、セルロース等の成粒助剤を混在させても良い。
【0027】
本発明のエタノールの脱水反応によるエチレンの製造における反応形式は特に制限されず、任意の反応形式で行うことが可能である。例えば、固定床気相流通式、固定床液相流通式または懸濁床回分式で行うことができる。
【0028】
反応温度は200〜300℃である。200℃未満の場合は活性が不十分であり工業的なエチレン収率を得られず、300℃を超えると燃焼炉を建設する必要があり、非経済的となる。好ましくは220〜280℃である。
【0029】
反応圧力は特に制限されないが、効率的にエチレンを製造することができることから、好ましくは絶対圧で0.01〜10MPaであり、さらに好ましくは0.05〜5MPaである。
【0030】
また、固定床流通式反応の際の重量時間空間速度(WHSV)は特に制限されないが、効率的にエチレンを製造することができることから、好ましくは0.01〜100hr−1、さらに好ましくは0.1〜10hr−1である。ここで、重量時間空間速度(WHSV)とは、単位触媒重量当たりの単位時間(hr)に対するエタノールの供給量の合計重量を表すものである。
【0031】
本発明で使用する原料エタノールは、特に限定されないが、例えば、石油由来のエタノールやサトウキビやコーン等の植物由来のエタノールを使用することができる。植物由来のエタノールを使用した場合、製造されたエチレンまたはそれを原料とする製品を燃焼する時に放出される二酸化炭素はもともと植物が光合成により取り込んだもので、二酸化炭素排出量にカウントされないため、環境負荷の小さい製法となる。
【0032】
本発明で使用する原料エタノールの純度は特に限定されないが、効率的にエチレンを製造することができることから、好ましくは50〜100wt%、さらに好ましくは85〜100wt%である。
【0033】
本発明のエタノールの脱水反応では、原料エタノールをそのまま用いても、不活性ガスで希釈して用いても良い。不活性ガスとしては特に限定されないが、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンまたは水蒸気等が挙げられ、これらの不活性ガスは単独で使用するのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0034】
本発明のプロトン型モルデナイトを触媒に用いることで、低温で高活性および高選択的にエチレンを製造することができるので、ジエチルエーテルおよびアセトアルデヒドの分離設備の規模が小さくすることができ、経済的となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明のエチレンの製法によると、低温で高活性かつ高選択的にエチレンを製造できる効果を有する。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
以下の実施例に用いた測定法を示す。
【0038】
<ゼオライト中のナトリウムおよびカリウムの含有量>
ゼオライト中のナトリウムおよびカリウムの含有量は原子吸光分光光度計(AA)(ジャーレルアッシュ製、商品名AA800MarkII)にて定量分析した。
【0039】
<エタノールの脱水反応評価>
エタノールの脱水反応評価は、ガスクロマトグラフ(島津製作所製、商品名GC−14A)を用い、気相パルス反応方式で行った。ガラスインサート部にゼオライトを詰め、キャリアーガスはヘリウムを用い17.3ml/minで通気し、所定の反応温度で実施した。エタノールは0.4μlをマイクロシリンジで注入し、反応ガスをガスクロマトグラフ外部のステンレス製U字管で液体窒素温度にて30分捕集した後、150℃で加熱し、充填カラム(3m×2.3mm(内径)、充填剤:Waters社製、商品名PorapakQ)に導入し、反応ガスを熱伝導度検出器(TCD)で定量した。
【0040】
<エタノール転化率、エチレン選択率および物質収支>
エタノール転化率、エチレン選択率および物質収支は下式で算出した。
【0041】
エタノール転化率(%)=(注入エタノール量(mol)−検出エタノール量(mol))/注入エタノール量(mol)×100 (2)
エチレン選択率(%)=エチレン生成量(mol)/注入エタノール量(mol)×100 (3)
物質収支(%)=(各生成物量(mol)×炭素数/2+検出エタノール量(mol))/注入エタノール量(mol)×100 (4)
実施例1
モルデナイト:HSZ620HOA(東ソー株式会社製、Si/Al比=7.5、ナトリウム含有量=0.37wt%)10.0gを1N−塩化アンモニウム水溶液300mlに懸濁させ、80℃で1時間加熱撹拌した後、ろ別し、白色ケーキ状の物質を分離した。この操作を4回繰り返した。次に純水300mlにケーキ状物質を懸濁させ、80℃で1時間加熱撹拌した後、ろ別し、白色ケーキ状物質を分離した。この操作を5回繰り返した。
【0042】
得られた白色ケーキ状物質を100℃で15時間乾燥させた後、500℃で2時間焼成した。
【0043】
得られたモルデナイトのナトリウム含有量は0.001wt%であった。
【0044】
次に、下記の通りゼオライトを成粒した。得られたモルデナイト1.7gにコロイダルシリカ(スノーテックスN、日産化学社製)1.8gを加え、温風をあてながら混練乾燥した。次に100℃で15時間乾燥させた後、500℃で2時間焼成した。得られた固体を、粒子径0.25から0.52mmに成粒した。
【0045】
得られた粒子0.014gを、ガラスインサートにつめ、気相パルス反応を行った。その結果、反応温度260℃で、エタノール転化率99.5%、エチレン選択率99.4%、物質収支100%であり、反応温度230℃で、エタノール転化率99.1%、エチレン選択率88.8%、物質収支88.8%であった。
【0046】
実施例2
モルデナイト:TSZ600NAA(東ソー株式会社製、Si/Al比=5、ナトリウム含有量=5.2wt%)を使用した以外は、実施例1と同様に塩化アンモニウム処理および洗浄処理を行った。得られたモルデナイトのナトリウム含有量は0.001wt%であった。
【0047】
次に実施例1と同様に成粒し、得られた粒子0.014gを、ガラスインサートにつめ、気相パルス反応を行った。その結果、反応温度230℃で、エタノール転化率99.6%、エチレン選択率82.2%、物質収支82.2%であった。
【0048】
実施例3
焼成条件を500℃5時間にした以外は、実施例2と同様に行った。得られたモルデナイトのナトリウム含有量は0.001wt%であった。
【0049】
次に実施例1と同様に成粒し、得られた粒子0.014gを、ガラスインサートにつめ、気相パルス反応を行った。その結果、反応温度230℃で、エタノール転化率99.4%、エチレン選択率85.8%、物質収支85.9%であった。
【0050】
実施例4
焼成条件を600℃5時間にした以外は、実施例2と同様に行った。得られたモルデナイトのナトリウム含有量は0.001wt%であった。
【0051】
次に実施例1と同様に成粒し、得られた粒子0.014gを、ガラスインサートにつめ、気相パルス反応を行った。その結果、反応温度230℃で、エタノール転化率99.8%、エチレン選択率81.9%、物質収支82.0%であった。
【0052】
比較例1
モルデナイト:HSZ620HOA(東ソー株式会社製、Si/Al比=7.5、ナトリウム含有量=0.37wt%)を400℃で2時間焼成した。
【0053】
得られたモルデナイトのナトリウム含有量は0.29wt%であった。
【0054】
次に実施例1と同様に成粒し、得られた粒子0.014gを、ガラスインサートにつめ、気相パルス反応を行った。その結果、反応温度230℃では、エタノール転化率99.2%、エチレン選択率67.1%、物質収支67.4%であり、エチレン選択性に劣っていた。
【0055】
比較例2
モルデナイト:HSZ620HOA(東ソー株式会社製、Si/Al比=7.5、ナトリウム含有量=0.37wt%)2.2gを400℃で2時間焼成した。次に塩化ナトリウム0.05gを水30mlに溶解し、焼成後のモルデナイトを懸濁させ、80℃で2時間加熱撹拌した後、ろ別し、白色ケーキ状物質を分離した。次に、純水30mlにケーキ状物質を懸濁させ、80℃で15分加熱撹拌した後、ろ別し、白色ケーキ状物質を分離した。この操作を3回繰り返した。
【0056】
得られた白色ケーキ状物質を100℃で15時間乾燥させた後、400℃で2時間焼成した。
【0057】
得られたモルデナイトのナトリウム含有量は0.64wt%であった。
【0058】
次に実施例1と同様に成粒し、得られた粒子0.014gを、ガラスインサートにつめ、気相パルス反応を行った。その結果、反応温度230℃では、エタノール転化率99.5%、エチレン選択率50.0%、物質収支50.2%であり、エチレン選択性に劣っていた。
【0059】
比較例3
モルデナイト:HSZ640HOA(東ソー株式会社製、Si/Al比=10、ナトリウム含有量=0.074wt%)を400℃で2時間焼成した。
【0060】
得られたモルデナイトのナトリウム含有量は0.026wt%であった。
【0061】
次に実施例1と同様に成粒し、得られた粒子0.014gを、ガラスインサートにつめ、気相パルス反応を行った。その結果、反応温度230℃では、エタノール転化率86.8%、エチレン選択率31.9%、物質収支43.7%であり、活性およびエチレン選択性に劣っていた。
【0062】
比較例4
モルデナイト:HSZ690HOA(東ソー株式会社製、Si/Al比=100、ナトリウム含有量=0.037wt%)を400℃で2時間焼成した。
【0063】
得られたモルデナイトのナトリウム含有量は0.003wt%であった。
【0064】
次に実施例1と同様に成粒し、得られた粒子0.014gを、ガラスインサートにつめ、気相パルス反応を行った。その結果、反応温度230℃では、エタノール転化率39.9%、エチレン選択率7.5%、物質収支66.1%であり、活性およびエチレン選択性に劣っていた。
【0065】
比較例5
反応温度を190℃にした以外は、実施例1と同様に行った。その結果、エタノール転化率99.0%、エチレン選択率18.0%、物質収支18.9%であり、活性および選択性に劣っていた。
【0066】
比較例6
反応温度を190℃にした以外は、実施例2と同様に行った。その結果、エタノール転化率99.0%、エチレン選択率20.2%、物質収支20.6%であり、活性および選択性に劣っていた。
【0067】
比較例7
Y型ゼオライト:HSZ−360HUA(東ソー株式会社製、Si/Al=7.5、ナトリウム含有量=0.074wt%)を400℃で2時間焼成した。
【0068】
得られたゼオライトのナトリウム含有量は0.025wt%であった。
【0069】
次に実施例1と同様に成粒し、得られた粒子0.014gを、ガラスインサートにつめ、気相パルス反応を行った。その結果、反応温度230℃では、エタノール転化率46.0%、エチレン選択率7.7%、物質収支63.7%であり、活性およびエチレン選択性に劣っていた。
【0070】
比較例8
L型ゼオライト:HSZ−500KOA(東ソー株式会社製、Si/Al=3、ナトリウム含有量=0.15wt%、カリウム含有量=14wt%)を実施例1と同様に塩化アンモニウム処理および洗浄処理を行った。
【0071】
得られたゼオライトのナトリウム含有量は0.002wt%、カリウム含有量は3.0wt%であった。
【0072】
次に実施例1と同様に成粒し、得られた粒子0.014gを、ガラスインサートにつめ、気相パルス反応を行った。その結果、反応温度230℃では、エタノール転化率42.6%、エチレン選択率24.0%、物質収支70.4%であり、活性およびエチレン選択性に劣っていた。
【0073】
比較例9
特公昭46−10064号公報に準拠してナトリウム型のZSM−5を調製した。すなわち、30重量%シリカゾル(日産化学製、商品名コロイダルシリカN)76gを2.2mol/lのテトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液108gと混合した。次いで、3.2gのアルミン酸ナトリウムを水54mlに溶かし、この水溶液と前記溶液をSUS製オートクレーブに入れた。この混合物を自圧で150℃、6日間攪拌しながら加熱された。冷却後、生成したスラリーをろ別し、蒸留水100mlを用い洗浄し、この洗浄操作を5回繰り返した。次いで、110℃で一晩乾燥後、空気中540℃で焼成し、白色のナトリウム型のZSM−5を得た。粉末X線回折測定の結果、MFI型すなわちZSM−5形構造を有することがわかった。得られたZSM−5のケイ素/アルミニウム比(原子比)=20であった。
【0074】
得られたナトリウム型ZSM−5を実施例1と同様に塩化アンモニウム処理および洗浄処理を行った。
【0075】
得られたゼオライトのナトリウム含有量は0.009wt%であった。
【0076】
次に実施例1と同様に成粒し、得られた粒子0.014gを、ガラスインサートにつめ、気相パルス反応を行った。その結果、反応温度230℃では、エタノール転化率85.5%、エチレン選択率7.3%、物質収支20.9%であり、活性およびエチレン選択性に劣っていた。
【0077】
比較例10
ベータゼオライト:HSZ930NHA(東ソー株式会社製、Si/Al比=10、ナトリウム含有量=0.037wt%)を500℃で6時間焼成した。
【0078】
得られたモルデナイトのナトリウム含有量は0.018wt%であった。
【0079】
次に実施例1と同様に成粒し、得られた粒子0.014gを、ガラスインサートにつめ、気相パルス反応を行った。その結果、反応温度230℃では、エタノール転化率98.1%、エチレン選択率4.2%、物質収支6.1%であり、活性およびエチレン選択性に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールの脱水反応によりエチレンを製造するにあたり、ケイ素/アルミニウム比(原子比)が10未満およびナトリウムとカリウムの合計含有量が0.1wt%以下のプロトン型モルデナイトを用いた触媒の存在下で、反応温度が200〜300℃の範囲でエタノールを接触させることを特徴とするエチレンの製法。
【請求項2】
ナトリウムとカリウムの合計含有量が0.01wt%以下のプロトン型モルデナイトを用いた触媒であることを特徴とする請求項1に記載のエチレンの製法。

【公開番号】特開2009−215243(P2009−215243A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61760(P2008−61760)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】