説明

エチレンの製造方法

【課題】 触媒活性の低下を起こすことなく安定にエチレンを製造する方法を提供する。
【解決手段】 エタノールの脱水反応によりエチレンを製造するにあたり、固体酸触媒にエタノールを液相状態で接触させることを特徴とするエチレンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタノールの脱水反応によるエチレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンは、ポリエチレンおよびポリ塩化ビニル等の原料として有用な基礎化成品の一つである。従来、エチレンの製造方法として、ナフサの熱分解、エタンの脱水素反応およびエタノールの脱水反応が知られている。特にエタノールの脱水反応によるエチレン製造では、植物由来のエタノールを用いた場合、製造されたエチレンまたはそれを原料とする製品を燃焼する時に放出される二酸化炭素はもともと植物が光合成により取り込んだもので、二酸化炭素排出量にカウントされないため、環境負荷の小さい製造方法となる。
【0003】
従来のエタノールの脱水反応によるエチレンの製造は、触媒としてアルミナまたはシリカアルミナ等の固体酸触媒を用い、反応形式が固定床気相流通式で反応を行っており、高活性および高選択性を得るために、反応温度は350〜450℃と高い温度を必要とする(例えば、特許文献1,2)。
【0004】
また、ゼオライトを触媒として用いたエタノールの脱水反応によるエチレンの製造では、反応形式が固定床気相流通式を用い、反応温度150〜250℃、触媒としてプロトン型のゼオライトを用いた方法が知られている(例えば、特許文献3)。
【0005】
これらの反応形式は、固定床気相流通式の反応器であるため、エタノールの脱水反応を行うと、コーキングによる活性劣化を起こし、触媒の再生操作が必要となる。
【0006】
エタノールの脱水反応によるエチレン製造方法として、固定床気相流通式以外の反応形式として、流動床気相流通式を用いたエチレン製造方法があるが、反応温度は400℃と高く、コーキングにより活性劣化した触媒を触媒再生塔で処理する必要がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
また、反応温度が300℃以下では、反応器の加熱にはオイルヒーターが使用できるが、300℃を越えると燃焼炉が必要となり、設備費が高くなり、非経済的となる課題がある。したがって、エタノールの脱水反応におけるエチレンの製造は200〜240℃の低温で反応を行い、しかも触媒活性低下を起こさないことが重要である。ここで、エタノールの脱水反応は、エタノールから中間体ジエチルエーテルを経てエチレンが生成することが知られており(例えば、非特許文献2参照)、中間体のジエチルエーテルが生成した場合は、原料系にリサイクルすれば良い。しかし、固定床気相流通式で反応を行っているため、コークの析出により活性が低下する。
【0008】
【特許文献1】特許第2911244号公報(第5頁)
【特許文献2】特公昭59−19927号公報(第5頁)
【特許文献3】特開2006−116439号公報(第3頁)
【非特許文献1】Hydrocarbon Processing57(2)(Feb.1978)、p133−6(第3頁)
【非特許文献2】Chem.Eng.Technol.17(1994)p176−186(第6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、エタノールの脱水反応によりエチレンを製造するにあたり、触媒活性の低下を起こすことなく安定にエチレンを製造できる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、エタノールの脱水反応によりエチレンを製造するにあたり、固体酸触媒にエタノールを液相状態で接触させることで、触媒活性の低下を起こすことなく安定にエチレンを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、エタノールの脱水反応によりエチレンを製造するにあたり、固体酸触媒にエタノールを液相状態で接触させることを特徴とするエチレン製造方法である。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明のエチレンの製造方法は、固体酸触媒にエタノールを液相状態で接触させることを特徴とする。
【0013】
本発明で使用される固体酸触媒は、特に限定されないが、例えば、結晶性アルミノシリケート、アルミナ、チタニア、シリカアルミナ、シリカジルコニア、シリカイットリア、シリカランタニア、アルミナジルコニア、チタニアアルミナ、チタニアシリカ、チタニアジルコニア、ヘテロポリ酸、硫酸アルミニウム、硫酸鉄、硫酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、リン酸鉄、硫酸根担持ジルコニア、硫酸根担持チタニア等が挙げられるが、エタノールの脱水反応において、低温で活性が得られることから、好ましくは結晶性アルミノシリケートが挙げられる。
【0014】
本発明で使用される結晶性アルミノシリケートとは、ゼオライトおよびゼオライト類似物質の一種であり、その組成は一般に下記式(1)で表される。
【0015】
xM2/nO・Al・ySiO・zHO (1)
(ここで、nは陽イオンMの原子価、xは0.8〜2の範囲の数、yは2以上の数、zは0以上の数である。)
その基本構造は、ケイ素を中心として4つの酸素がその頂点に配置したSiOで示される四面体構造と、このケイ素の代わりにアルミニウムがその中心にあるAlOで示される四面体とが、酸素/(ケイ素+アルミニウム)の原子比が2となるようにお互いに酸素を共有して、規則性のある三次元的に結合したものである。
【0016】
その結果、この四面体の結合方式の違いによって大きさ、形の異なる細孔を有する三次元的骨格構造が形成される。
【0017】
また、結晶性アルミノシリケートは固体酸性を持つことが知られている。アルミニウムが中心にある四面体の電子価は負に帯電しており、プロトン、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の陽イオンと結合することで電気的に中和されている。特にプロトンと結合した場合では、ブレンステッド酸性を示すことから、結晶性アルミノシリケートは固体酸触媒として使用されている。
【0018】
ここに、結晶性アルミノシリケートは、例えば、ABW型ゼオライト[国際ゼオライト学会が規定する構造コード、以下同じ:ABW]、アフガナイト(Afghanite)[AFG]、アナルサイム(Analcime)[ANA]、リューサイト(Leucite)[ANA]、ベータ(Beta)[*BEA]、ビキタイト(Bikitaite)[BIK]、ボグサイト(Boggsite)[BOG]、ブリュスター沸石(Brewsterite)[BRE]、ECR−5、カンクリナイト(Cancrinite)[CAN]、EU−20b[CAS]、CIT−5[CFI]、チャバサイト(Chabazite)[CHA]、ダッキャルド沸石(Dachiardite)[DAC]、Sigma−1[DDR]、ZSM−58[DDR]、TMA−E[EAB]、ベルバーガイト(Bellbergite)[EAB]、エディングトナイト(Edingtonite)[EDI]、EMC−2[EMT]、CSZ−1[EMT]、ZSM−20[EMT]、剥沸石(Epistilbite)[EPI]、エリオナイト(Erionite)[ERI]、ERS−7[ESV]、EU−1[EUO]、ZSM−50[EUO]、X型[FAU]、Y型[FAU]、ホージャサイト(Faujasite)[FAU]、フェリエライト(Ferrierite)、ZSM−35[FER]、フラジナイト(Franzinite)(FRA]、ギスモンダイト(Gismondine)[GIS]、グメリナイト(Gmelinite)[GME]、グースクリーカイト(Goosecreekite)[GOO]、ヒューランダイト(Heulandite)[HEU]、クリノプチロライト(Clinoptilolite)[HEU]、SSZ−42[IFR]、SSZ−36[ITE]、JBW型ゼオライト[JBW]、ZK−5[KFI]、濁沸石(Laumontite)[LAU]、レビ沸石(Levyne)[LEV]、リオタイト(Liottite)[LIO]、Losod[LOS]、ビストライト(Bystrite)[LOS]、A型[LTA]、L型[LTL]、ペルリアライト(Perlialite)[LTL]、N型(LTN)、マッツアイト(Mazzite)[MAZ]、ZSM−4[MAZ]、ZSM−18[MEI]、ZSM−11[MEL]、メルリーノ沸石(Merlinoite)[MER]、W型[MER]、ミューティナアイト(Mutinaite)[MFI]、ZSM−5[MFI]、ZSM−57[MFS]、マンテソマイト(Montesommaite)[MON]、モルデナイト(Mordenite)[MOR]、MCM−61[MSO]、MCM−35[MTF]、ZSM−35[MTN]、ZSM−23[MTT]、ZSM−12[MTW]、MCM−22[MWW]、ナトロライト(Natrolite)[NAT]、ゴンナルダイト(Gonnardite)[NAT]、NU−87[NES]、ゴッタルディ鉱(Gottardiite)[NES]、ZSM−51[NON]、オフレタイト(Offretite)[OFF]、パーシアイト(Partheite)[−PAR]、ポーリンジャイト(Paulingite)[PAU]、フィリプサイト(Phillipsite)[PHI]、Rho型ゼオライト[RHO]、SSZ−48[SFE]、SSZ−44[SFF]、SSZ−58[SFG]、ソーダライト(Sodalite)[SOD]、SSZ−65[SSF]、SSZ−35[STF]、スティルバイト(Stilbite)[STI]、バレライト(Barrerite)[STI]、SSZ−23[STT]、テルラノバアイト(Terranovaite)[TER]、ムソナイト(Thomsonite)[THO]、シータ−1[TON]、ZSM−22[TON]、Tschortnerite[TSC]、UZM−5[UFI]、ウェンカイト(Wenkite)[−WEN]、ユガワラライト(Yugawaralite)[YUG]等が挙げられ、エタノールの脱水反応によるエチレン製造において、低温で高活性を得られることから、好ましくはフェリエライトおよびモルデナイト、さらに好ましくはフェリエライトが挙げられる。
【0019】
本発明で使用する結晶性アルミノシリケートのケイ素/アルミニウム比(原子比)は、低温で高活性を得られることから、好ましくは3〜20、さらに好ましくは4〜10である。
【0020】
本発明で使用する結晶性アルミノシリケートのナトリウムおよびカリウムの含有量は、エタノールの脱水素反応によるアセトアルデヒドの生成を抑制し、エチレン選択性の低下を防止し、低温で高活性が得られることから、各々が好ましくは0.1wt%以下、さらに好ましくは0.01wt%、特に好ましくは0.005wt%以下である。
【0021】
本発明で使用する固体酸触媒は、上記に該当するものであれば、通常の水熱合成法、沈殿法、共沈法等の合成法で製造したもの等を使用することができる。
【0022】
ナトリウムとカリウムの両方またはどちらか一方の含有量が0.1wt%を越える結晶性アルミノシリケートを入手した際は、ナトリウムとカリウムの各々の含有量を0.1wt%以下にするために、ナトリウムおよびカリウムを除去することが好ましい。含有するナトリウムおよびカリウムを除去する方法は、特に限定されないが、例えば、ナトリウムおよびカリウムを含有する結晶性アルミノシリケートをアンモニウム塩水溶液で処理した後、洗浄し、乾燥後に、熱処理する方法等が挙げられる。
【0023】
アンモニウム塩水溶液の処理方法は、特に限定されないが、例えば、アンモニウム塩水溶液中で加熱撹拌を行い、固形物を分離して取り出して、この操作を数回繰り返す方法等が挙げられる。アンモニウム塩の種類は、特に限定されないが、効率的にナトリウムおよびカリウムを除去できることから、好ましくは塩化アンモニウムおよび硝酸アンモニウムが使用できる。アンモニウム塩水溶液の濃度は、特に制限されないが、効率的にナトリウムおよびカリウムを除去できることから、好ましくは0.5〜5N、さらに好ましくは1〜3Nの濃度である。アンモニウム塩水溶液の量は、特に制限されないが、効率的にナトリウムおよびカリウムを除去できることから、結晶性アルミノシリケートの重量に対し好ましくは5〜100倍量、さらに好ましくは10〜50倍量である。加熱撹拌温度、時間および処理回数は、特に制限されないが、効果的にナトリウムおよびカリウムを除去できることから、加熱撹拌温度は好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは70〜90℃、加熱撹拌時間は、好ましくは0.5〜12時間、さらに好ましくは1〜6時間、処理回数は、好ましくは1〜10回、さらに好ましくは2〜5回である。固形物を分離する方法は、特に限定されないが、例えば、ろ別、遠心分離等の方法が使用できる。
【0024】
洗浄処理の方法は、特に限定されないが、例えば、純水で加熱撹拌を行い、固形物を分離して取り出して、この操作を数回繰り返す方法等が挙げられる。純水の量は、特に制限されないが、効率的にナトリウムおよびカリウムを除去できることから、結晶性アルミノシリケートの重量に対し好ましくは5〜100倍量、さらに好ましくは10〜50倍量である。加熱撹拌温度、時間および処理回数は、特に制限されないが、効果的にナトリウムおよびカリウムを除去できることから、加熱撹拌温度は好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは70〜90℃、加熱撹拌時間は、好ましくは0.5〜12時間、さらに好ましくは1〜6時間、処理回数は、好ましくは1〜10回、さらに好ましくは2〜5回である。固形物を分離する方法は、特に限定されないが、例えば、ろ別、遠心分離等の方法が使用できる。
【0025】
乾燥方法は特に限定されないが、例えば、恒温乾燥器、マッフル炉、環状炉等を用い、80〜120℃で行うことができる。
【0026】
熱処理方法は、特に限定されないが、例えば、マッフル炉、環状炉等が使用できる。熱処理温度は、特に制限されないが、アンモニウムイオンの分解および結晶性アルミノシリケートの構造を維持することから、好ましくは400〜700℃、さらに好ましくは、450〜600℃である。また、必要に応じ、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴンまたは空気等のガスを流しても良く、これらのガスを単独または二種類以上混合しても良い。
【0027】
本発明で使用する固体酸触媒の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、楕円状、円柱状、ハニカム状、粉体、顆粒状等が使用でき、効率的にエタノールを供給しエチレンを製造することができることから、好ましくは、球状、円柱状、ハニカム状、顆粒状である。
【0028】
本発明で使用する固体酸触媒の成粒方法は、特に限定されないが、例えば、打錠成型、押出成型、スラリーを乾燥後熱処理し、粉砕してふるい分けする方法が挙げられ、触媒の物理的強度が得られることから、打錠成型または押出成型が好ましい。また、必要に応じ、シリカ、シリカゾル、アルミナ、アルミナゾル、グラファイト、セルロース等の成粒助剤を混在させても良い。
【0029】
本発明のエチレンの製造方法は、固体酸触媒にエタノールを液相状態で接触させることを特徴とする。
【0030】
本発明の反応形式は、エタノールを液相状態で維持することができれば特に限定されないが、例えば、固定床液相流通式、液相懸濁床式、反応蒸留式、固定床液相交流式が挙げられる。これらの内、反応形式が簡便または生成したエチレンは気相に、未反応のエタノールおよび生成水は液相に分離され、後流側の分離設備の規模を小さくすることができ、設備コストが低いことから、固定床液相流通式、反応蒸留式、固定床液相交流式が好ましい。
【0031】
また、エタノールの脱水反応におけるエチレン製造において、中間生成物であるジエチルエーテルが副生するが、リサイクルにより、再度反応させればよい。
【0032】
本発明において反応温度は、エタノールを液相状態で維持することができれば特に限定されないが、燃焼炉を建設することなく、経済的にエチレンを製造することができることから、好ましくは200〜240℃、さらに好ましくは200〜230℃である。
【0033】
反応圧力はエタノールを液相状態で維持することができれば特に限定されないが、効率的にエチレンを製造することができることから、好ましくは4〜10MPa、さらに好ましくは、5〜7MPaである。
【0034】
また、固定床液相流通式反応の際の重量時間空間速度(WHSV)は特に制限されないが、効率的にエチレンを製造することができることから、好ましくは0.01〜100hr−1、さらに好ましくは0.1〜10hr−1である。ここで、重量時間空間速度(WHSV)とは、単位触媒重量当たりの単位時間(hr)に対するエタノールの供給量の合計重量を表すものである。
【0035】
本発明で使用する原料エタノールは、特に限定されないが、例えば、石油由来のエタノールやサトウキビやコーン等の植物由来のエタノールを使用することができる。植物由来のエタノールを使用した場合、製造されたエチレンまたはそれを原料とする製品を燃焼する時に放出される二酸化炭素はもともと植物が光合成により取り込んだもので、二酸化炭素排出量にカウントされないため、環境負荷の小さい製造方法となる。
【0036】
本発明で使用する原料エタノールの純度は特に限定されないが、効率的にエチレンを製造することができることから、好ましくは50〜100wt%、さらに好ましくは85〜100wt%である。
【0037】
本発明のエタノールの脱水反応では、原料エタノールをそのまま用いても、不活性ガスで希釈して用いても良い。不活性ガスの種類は、特に限定されないが、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンまたは水蒸気等が挙げられ、これらの不活性ガスは単独で使用するのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0038】
本発明では、固体酸触媒にエタノールを液相状態で接触させることで、コーキングによる活性低下を抑制することができ、安定にエチレンを製造することができるので、触媒の再生の回数が減少または触媒再生塔が不要となり、効率的にエチレンを製造することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明のエチレンの製造方法によると、触媒活性の低下を起こすことなく安定にエチレンを製造できる効果を有する。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
以下の実施例に用いた測定法を示す。
【0042】
<ゼオライト中のナトリウムおよびカリウムの含有量>
ゼオライト中のナトリウムおよびカリウムの含有量は原子吸光分光光度計(AA)(ジャーレルアッシュ製、商品名AA800MarkII)にて定量分析した。
【0043】
<熱分析>
反応後の触媒の熱分析は、熱重量計(マックサイエンス社製、商品名TG−DTA2000S)を用い、空気200ml/min通気雰囲気下で測定を行った。
【0044】
<エタノールの脱水反応評価>
エタノールの気相および液相での脱水反応評価は、連続流通反応装置を用い、触媒はステンレス製の直管(内径14mm)に充填して行った。反応ガスの分析は、ガスクロマトグラフ(島津製作所製、商品名GC-14A)、パックドカラム(3m×2.3mm(内径)、充填剤:Waters社製、商品名PorapakQ)、熱伝導度検出器(TCD)および水素炎イオン化検出器(FID)を用い定量した。反応液の分析は、ガスクロマトグラフ(島津製作所製、商品名GC-14A)、キャピラリーカラム(GLサイエンス社製、商品名TC−1、60m×0.25mm(内径)、膜厚1.0μm)および水素炎イオン化検出器(FID)を用い定量した。
【0045】
実施例1
フェリエライト:HSZ720KOA(東ソー株式会社製、Si/Al比=8.9、ナトリウム含有量=0.89wt%、カリウム含有量=4.7wt%)56.1gを1N−塩化アンモニウム水溶液1.5lに懸濁させ、80℃で2時間加熱撹拌した後、ろ別し、白色ケーキ状の物質を分離した。この操作を4回繰り返した。次に純水1.5lにケーキ状物質を懸濁させ、80℃で2時間加熱撹拌した後、ろ別し、白色ケーキ状物質を分離した。この操作を5回繰り返した。
【0046】
得られた白色ケーキ状物質を100℃で15時間乾燥させた。
【0047】
乾燥後のゼオライトの一部を500℃で2時間、空気中で熱処理した。熱処理後のフェリエライトのナトリウム含有量は0.003wt%、カリウム含有量は0.001wt%であった。
【0048】
乾燥したゼオライト51.1gに、粉砕したSiO19.4g(富士シリシア製、商品名キャリアクト30)を混合し、打錠機(畑鉄工所製、商品名HU−A)を用い、直径5mm×高さ2mmの円柱状のペレットに成粒した。100℃で15時間乾燥させた後、500℃で5時間熱処理した。
【0049】
得られた固体12.1gをステンレス製の直管に充填し、反応温度230℃、5MPaで、エタノール(和光純薬製、純度99.5%)を液体状態で42μl/min供給し、液相状態でエタノールの脱水反応を行った。13時間目のエチレン収率は45.1%であり、40時間までのエチレン収率の低下率は2.4%であった。
【0050】
40時間反応した触媒は、白色であり反応前と同じ色であった。反応後触媒の熱分析の結果、240〜670℃までの重量減少は1.6wt%であり、触媒上へのコーク析出は微量であった。
【0051】
実施例2
モルデナイト:TSZ600NAA(東ソー株式会社製、Si/Al比=5、ナトリウム含有量=5.2wt%)を使用した以外は、実施例1と同様に塩化アンモニウム処理、洗浄処理を行った。得られたモルデナイトのナトリウム含有量は0.001wt%であった。
【0052】
乾燥したゼオライト50.8gに、粉砕したSiO19.4g(富士シリシア製、商品名キャリアクト30)を混合し、実施例1と同様に成粒し、100℃で15時間乾燥させた後、500℃で5時間熱処理した。
【0053】
得られた固体12.1gをステンレス製の直管に充填し、実施例1と同様に液相状態でエタノールの脱水反応を行った。13時間目のエチレン収率は43.8%であり、40時間までのエチレン収率の低下率は3.2%であった。
【0054】
40時間反応した触媒は、白色であり反応前と同じ色であった。反応後触媒の熱分析の結果、240〜670℃までの重量減少は2.6wt%であり、触媒上へのコーク析出は微量であった。
【0055】
実施例3
シリカアルミナ:N632HN(日揮化学株式会社製、SiO=63.1wt%、Al=27.5wt%、直径3mm、長さ3mm円柱状)を用いた以外は、実施例1と同様に液相状態でエタノールの脱水反応を行った。3時間目のエチレン収率は20.5%であり、15時間までのエチレン収率の低下率は1.3%であった。
【0056】
15時間反応した触媒は、白色であり反応前と同じ色であった。反応後触媒の熱分析の結果、240〜670℃までの重量減少は2.0wt%であり、触媒上へのコーク析出は微量であった。
【0057】
比較例1
実施例1で得られたプロトン型フェリエライトを用い、常圧で、エタノールを気体状態で16ml/min、窒素50ml/minを供給し、気相状態で反応を行った。15時間目のエチレン収率は92.5%であり、40時間までのエチレン収率の低下率は20.7%であった。
【0058】
40時間反応した触媒は、褐色に変化していた。反応後触媒の熱分析の結果、240〜670℃までの重量減少は7.1wt%であり、触媒上へのコーク析出が確認された。
【0059】
比較例2
実施例2で得られたプロトン型モルデナイトを用いた以外は比較例1と同様に気相状態で反応を行った。3時間目のエチレン収率は95.2%であり、23時間までのエチレン収率の低下率は9.6%であった。
【0060】
23時間反応した触媒は、褐色に変化していた。反応後触媒の熱分析の結果、240〜670℃までの重量減少は9.0wt%であり、触媒上へのコーク析出が確認された。
【0061】
比較例3
実施例3で使用したシリカアルミナを用いた以外は比較例1と同様に気相状態で反応を行った。3時間目のエチレン収率は31.2%であり、15時間までのエチレン収率の低下率は4.3%であった。
【0062】
15時間反応した触媒は、褐色に変化していた。反応後触媒の熱分析の結果、240〜670℃までの重量減少は3.2wt%であり、触媒上へのコーク析出が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールの脱水反応によりエチレンを製造するにあたり、固体酸触媒にエタノールを液相状態で接触させることを特徴とするエチレンの製造方法。
【請求項2】
固体酸触媒が結晶性アルミノシリケートであることを特徴とする請求項1に記載のエチレンの製造方法。
【請求項3】
結晶性アルミノシリケートがフェリエライトおよび/またはモルデナイトであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエチレン製造方法。
【請求項4】
結晶性アルミノシリケートがケイ素/アルミニウム比(原子比)が3〜20およびナトリウムの含有量が0.1wt%以下でカリウムの含有量が0.1wt%以下であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のエチレンの製造方法。
【請求項5】
反応形式が固定床液相流通式であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載のエチレンの製造方法。
【請求項6】
反応温度が200〜240℃を維持することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかの項に記載のエチレンの製造方法。

【公開番号】特開2009−234983(P2009−234983A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82902(P2008−82902)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】