エチレンオキシド又はプロピレンオキシドとイオン性基を有するオキシランとのコポリマー
本発明は、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドとイオン性基を有する少なくとも1種の置換オキシランとのコポリマーに関する。このコポリマーは、その鎖が繰返し単位−O−CH2−CH(−CH2−O−SO3-Li+)−、繰返し単位−O−CH2−CHR−(ここで、RはH又はCH3である)、随意としての繰返し単位−O−CH2−CH(−CH2R')−(ここで、R'は官能基である)を含むことを特徴とする。本発明は、電気化学装置、選択性膜、参照膜における電解質を製造するのに用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドとイオン性基を有する少なくとも1種の置換オキシランとのコポリマー、その調製方法及び様々な用途に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン伝導性材料の製造のために溶媒和性ポリマーを使用することが知られている。エチレンオキシド又はジオキソランポリマーは、カチオン、特にアルカリ金属カチオン、例えばポリマーを電解質とするリチウム電池タイプの充電式電気化学発電機中に存在するLi+イオンに対する溶媒和性ポリマーである。前記ポリマーの半結晶質特徴は、それらを含有する材料の伝導性を低下させるという結果を招く。半結晶質ポリマーの結晶度は、マクロ分子鎖に不規則性を導入することによって、得られるコポリマーの溶媒和特性及び電気化学的安定性に影響を及ぼすことなく、低下させてきた。しかしながら、ポリエーテル鎖に不規則性を導入すると、それに伴って、エチレンオキシドホモポリマーと比較してモル質量が小さくなったり機械的特性(特に高温におけるもの)が低下したりすることがしばしばあることがわかった。
【0003】
この欠点を、生成した後にコポリマーを架橋させて三次元ネットワークを形成させることができる単位をポリマー中に導入することによって取り除くことが試みられてきた。コポリマー中へのこのような単位の導入はまた、様々な基及び特にイオン性基をマクロ分子鎖に結合させることも可能にした。例えばヨーロッパ特許公開第0603370号公報には、オキシランから由来する単位及びジオキソランから由来する単位を含み且つ第3のモノマーとの架橋を可能にする基を随意に有するコポリマーが開示されており、挙げられている第3モノマーの例は、重合性基とイオン性基との間にフッ素化セグメントを含むものである;架橋した材料は、フッ素化セグメントを介して主鎖に連結されるイオン性基を含む。ヨーロッパ特許公開第0657484号公報には、アルキル(ペルフルオロアルキル)スルホネートエーテルタイプの側部(lateral)置換基、例えば−CH2−O−(CF2)p−SO3Liを含むコポリマーが開示されている。ヨーロッパ特許公開第0671386号公報には、ペルフッ素化ジスルホネートモノマー及び該モノマーから得られた鎖末端基がスルホネートであるポリマーが開示されている。両方の場合において、該ポリマーを含有する電解質は、実質的に1のカチオン輸率t+を有する。
【0004】
しかしながら、フッ素化単位の組込みは非常に高価なモノマーの合成を伴い、これは重合の間に完全には消費されない。というのも、ペルフルオロスルホネートタイプのイオン性官能基がポリエーテル主鎖に結合するからである。このようなポリマーは、
・ペルフルオロスルホネートアニオンを有するオキシランを調製し、このオキシランとエチレンオキシド又はプロピレンオキシドとを共重合させる;
・少なくとも1つのC=C二重結合を有し且つこれらの炭素原子の内の一方がペルフルオロスルホネートイオン性基を有する化合物を調製し、架橋させることによって該化合物をC=C二重結合を有するポリエーテルに組み込む:
ことによって得ることができる。
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開第0603370号公報
【特許文献2】ヨーロッパ特許公開第0657484号公報
【特許文献3】ヨーロッパ特許公開第0671386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、良好な機械的強度を有する新規のコポリマーであって、オキシアルキレンタイプの繰返し単位を含み、その中のいくつかはイオン性基を有し、いくつかは随意に様々な官能基を有し、少なくとも従来技術のコポリマーと同様の性能特徴を示し、しかしペルフッ素化モノマーが存在しないために従来技術のものより高価でなく且つ毒性が低いモノマーから調製することができる前記コポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明の1つの主題は、コポリマーにある。本発明の別の主題は、前記コポリマーを調製する方法にある。別の主題は、前記コポリマーから得られる架橋材料(架橋した材料)、前記コポリマーを含有するイオン伝導性材料、並びに電解質及び/又は電極が前記コポリマーを含有する各種の電気化学装置から成る。
【0007】
本発明に従うコポリマーは、その鎖が
・繰返し単位−O−CH2−CHR−(ここで、RはH又はCH3である);
・繰返し単位−O−CH2−CH(−CH2−O−SO3-Li+)−;及び
・随意としての繰返し単位−O−CH2−CH(−CH2R')−(ここで、R'は官能基である):
を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書の残りの部分においては、繰返し単位−O−CH2−CHR−、−O−CH2−CH(−CH2−O−SO3-Li+)−及び−O−CH2−CH(−CH2R')−をそれぞれU(R)、U(Li)及びU(R')と示す。所定コポリマー中におけるそれらのモル割合は、それぞれN(R)、N(Li)及びN(R')と示す。好ましくは、70≦N(R)≦95、2.5≦N(Li)≦15及び0≦N(R')≦20である。
【0009】
本発明に従うコポリマーは、様々な繰返し単位がランダムに分布されたコポリマーであることができる。本発明に従うコポリマーはさらに、U(R)単位から成る1個以上のセグメント、U(Li)単位から成る1個以上のセグメント及び随意としてのU(R')単位から成る1個以上のセグメントを含むブロックコポリマーであることもできる。
【0010】
1つの実施態様においては、そのコポリマーのすべての置換基R'が同じ官能基を表わす。別の実施態様においては、置換基R'が異なる官能基を表わす。
【0011】
官能基R'は、コポリマーが架橋するのを可能にする基又は極性基から選択することができる。コポリマーが架橋するのを可能にする官能基の例としては、OH;エポキシ基;アリルエーテル基CH2=CH−CH2−O−;メタリルエーテル基CH2=C(CH3)−CH2−O−;R1CH=CH2−O−又はR1CH=CR2−O−CH2−CH2−O−タイプのビニルエーテル基(ここで、R1及びR2は互いに独立的にH、アルキル、アルケニル又はアリール基を表わす);アクリレート基CH2=CH−C(O)−O−;メタクリレート基CH2=C(CH3)−C(O)−O−;スチレニル基CH2=CH(Ph)−CH2−;ビニルベンゾエート基CH2=CH(Ph)C(O)−O−;シンナメート基(Ph)−CH=CH−C(O)−O−;並びに−O−CO−NH−R3−Si(OR4)3基(ここで、R4は1〜3個の炭素原子を有するアルキル基であり、R3はアルキレン基、例えば −(CH2)3−である)を挙げることができる。極性基の例としては、−CN、−OH、環状カーボネート基、スルホラン、スルホキシド、スルホン及びスルホンアミドを挙げることができる。
【0012】
本明細書においては、特に相反する記載がなければ、「アルキル基」とは直鎖状又は分岐鎖状の好ましくは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を意味し;「アルケニル基」とは少なくとも1個の二重結合>C=C<を有する直鎖状又は分岐鎖状の好ましくは2〜10個の炭素原子を有する炭化水素基を意味し;「アリール基」とは少なくとも1個の炭化水素芳香環(随意に1個以上の置換基を有するもの)を含む基を意味し;そしてPhはフェニル基を表わす。
【0013】
R'が架橋を可能にする基R'1であるU(R')繰返し単位を含む本発明に従うコポリマーは、イオン伝導性を示す架橋材料を得るために架橋に付すことができる。従って、本発明の別の主題は、主鎖としての−O−CH2−CHR−繰返し単位(ここで、RはH又はCH3である)、−O−CH2−CH(−CH2−O−SO3-M+)−繰返し単位(ここで、Mはアルカリ金属を表わす)、随意としての−O−CH2−CH(R')−繰返し単位(ここで、R'は極性基R'2である)及び−O−CH2−CH(−X−)−繰返し単位(ここで、−X−は主鎖の間の連結鎖である)から成る架橋材料である。上で規定した主鎖を、以下においてはCP鎖と言う。前記連結鎖は、基R'1の性状及び架橋方法に依存する。
【0014】
本発明に従うコポリマーは、R'1がOHである場合には、縮合によって架橋させることができる。例えば、2つの繰返し単位の2つのOH基がジイソシアネートO=C=N−〜〜〜〜−N=C=Oとの反応によってウレタン橋−CO−NH−〜〜〜〜−NH−CO−を形成し、このジイソシアネートは、アルキレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、α,ω−オリゴオキシアルキレンジイソシアネート(例えばPEGジイソシアネート)又はPTHFジイソシアネートであることができる。図1は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を用いた縮合についての反応式を表わす。前記コポリマーから得られる材料の架橋密度は、架橋の際に単一のイソシアネート官能基を有するモノマーを前記コポリマーに添加することによって、制限することができる。また、HMDI及び前記コポリマーに架橋工程の際にα,ω−ポリアルキレンジオールを添加することによって前記架橋密度を制限することもできる。このポリアルキレンジオールはこの場合、スペーサーの役割を果たす。
【0015】
また、OH基を有する本発明に従うコポリマーは、OH基を3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(例えばABCR社よりSII6455の商品番号で販売されている)で処理することによって架橋させることもできる。こうして処理されたU(OH)繰返し単位は、次式U(1)で表わされる繰返し単位を与える。
【化1】
【0016】
かかる繰返し単位U(1)は、−O−C2H5官能基を酸触媒加水分解する(即ち酸を触媒として用いて加水分解する)ことによって架橋が可能になる。その結果として得られる架橋材料は、Xセグメントによって連結されたCP鎖を含み、次の式を満たす。
【化2】
【0017】
別法において、U(1)繰返し単位を含むポリマーにテトラエトキシシランを添加し、次いで−O−C2H5官能基の加水分解/縮合を実施することも可能である。こうして、ポリエーテル鎖と相互結合したシリカネットワークが作られる。
【0018】
本発明に従うコポリマーは、R'がUV下で且つ光開始剤の存在下においてカチオン重合することができるエポキシ基又はビニルエーテル基である場合に、UV照射下でカチオン架橋することができる。
【0019】
R'がビニルエーテル基CHR1=CR2−O−である場合、繰返し単位の側基は−CH2−O−CR2=CHR1である。2個のこのような基の間の反応によって形成される連結基は、次式で表わすことができる。
【化3】
【0020】
前記材料の架橋密度は、架橋工程の際に基R'と同じ性状の単一の重合性官能基を有するモノマー又は基R'と同じ性状の2個の末端官能基を有するオリゴマー[R'がビニルエーテルタイプのものである場合、例えばAldrich社より41,017-9の商品番号で販売されているポリ(1,4−ブタンジオール)ジビニルエーテル]を前記コポリマーに添加することによって、制限することができる。
【0021】
R'がエポキシエーテル基である場合、繰返し単位の側基は
【化4】
である。2個のこのような基の間の反応によって形成される連結基は、次式で表わすことができる。
【化5】
【0022】
R'がビニルエーテル官能基である場合、架橋の際に次の式:
【化6】
(ここで、R5はH、アルキル、アリール、オリゴシロキサン又はN−アルキルマレイミド、N−アリールマレイミド若しくはN−オリゴシリルマレイミドを表わす)
の内の1つを満たすマレイミド、無水マレイン酸若しくはビスマレイミド又はマレイミド/ビスマレイミド混合物を反応媒体に添加することによるドナー/アクセプター反応によってコポリマーを架橋させることができる。また、光開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエチルリンオキシド(TEPO)を250〜440nmの範囲で作動する水銀UV灯と共に用いるのも有利であり得る。
【0023】
得られた架橋ポリマーは、RがHである場合に、次の式で図示できる。
【化7】
ここで、YはO又はNR5を表わし、nは本発明の主題を構成する架橋コポリマーの2つの鎖を連結する交互コポリマーの繰返し単位の数を表わす(nは1〜50、好ましくは1〜10である)。コポリマーの剛性を下げるためには、ビスマレイミド官能基を末端基とするポリジメトキシシランタイプの軟質オリゴマーを用いるのが有利である。
【0024】
本発明に従うコポリマーは、R'がアクリレート、メタクリレート、シンナメート又はスチレニル基を表わす場合、UV照射又は熱的ラジカル架橋によって架橋させることができる。この場合、2つの基が一緒になって連結鎖を形成し、これは下記の式で表わすことができる。
【化8】
ここで、R6は
【化9】
である。
【0025】
ここで再び、本発明に従うイオン伝導性コポリマーを架橋させることによって得られる架橋材料の架橋密度は、架橋工程の際に前記コポリマーのR'基と同じ性状の単一の重合性基を有するモノマーを該コポリマーに添加することによって制限することができる。
【0026】
最後に、本発明に従う数種のコポリマーをブレンドし、次いで同時架橋又は結合させることによって、半相互浸透又は相互浸透(interpenetres)ネットワークを形成させることができる。
【0027】
同時架橋材料は、U(R')単位を有する本発明に従う第1のコポリマーとU(R')単位を有する本発明に従う第2のコポリマーとをブレンドし(これら2つのコポリマーのR'基は、互いに反応することができるものである)、このブレンドを架橋させることによって得ることができる。
【0028】
半相互浸透ネットワークは、好適な触媒の存在下で重合を可能にするU(R')単位を有する第1のコポリマーから成る膜を架橋させ、次いで架橋を可能にしないU(R')単位を有する第2のコポリマーの溶液で前記の膜を膨潤させることによって得られる。
【0029】
相互浸透ネットワークは、適当な触媒の存在下で架橋を可能にするU(R')単位を有する第1のコポリマーから架橋膜(架橋した膜)を調製し、適当な触媒の存在下で架橋を可能にするU(R')単位を有する第2のコポリマーの溶液で前記の架橋膜を膨潤させ、次いでこの第2のコポリマーを架橋させることによって得られる。この場合、2つのネットワークが相互浸透するが、しかしこれらは共有結合によって互いに結合するわけではない。架橋は順次起こり、一方のポリマーがもう一方の前に架橋する。
【0030】
相互浸透ネットワークを調製するための別の方法においては、2つのコポリマーの架橋が同時に実施される。この調製方法は、例えばR'基がラジカル光架橋を可能にする(例えばR'がメタクリレート基である)コポリマーとR'がカチオン光架橋を可能にする(例えばR'がOH基を有する)コポリマーとをブレンドすることから成る。カチオン光架橋に特異的な照射波長での架橋及びラジカル架橋に特異的な波長での架橋の両方のタイプにおいて活性な光開始剤を用いることにより、単一の工程で相互浸透ネットワークを作ることができ、この場合、出発物質として用いた2つのコポリマーは、一方のコポリマーの1つの架橋可能な基(架橋性基)R'が操作条件下においてもう一方のコポリマーの架橋性基R'と共重合しないので、共有結合によって結合することがない。
【0031】
以下に、次式のランダムポリマーP1に基づいて例を与える。
【化10】
【0032】
次式を満たすターポリマーAは、ポリマーP1のOH基の80%をリチウムエステルサルフェート(−O−SO3Li)の形でエステル化することによって調製される。
【化11】
【0033】
ターポリマーBは、ポリマーP1をアルコール基の80%がリチウムアルコラート(−O-Li+)基に転化するように水素化リチウムLiHで処理し、次いで2−クロロアセトニトリルClCH2CNをアルコラート官能基に対して化学量論的量で添加することによって調製される。
【化12】
【0034】
ターポリマーCは、ポリマーP1のCH2OH基の一部を一般式CN−(CH2)n−COOHを満たすシアノアルカン酸でエステル化することによって調製される。
【化13】
【0035】
架橋は、次のようにして達成することができる。まず、ターポリマーAとターポリマーB又はCとをジクロロメタン中で1/1の重量比でブレンドし、次いで触媒としてのジブチルスズジラウレートの存在下でHMDIジイソシアネートを、OH官能基に対してジイソシアネート官能基が化学量論的量となる割合で、添加する。こうして得られた溶液を次いで、テフロン被覆表面上の輪状のガラスによって境界画定された部分に注ぎ、ジクロロメタンを蒸発させ、48時間かけて架橋を起こさせる。
【0036】
相互浸透ネットワークは、次のようにして得ることができる。まず、上記のようにターポリマーAを触媒の存在下で化学量論的量のHMDIジイソシアネート官能基で架橋させる。架橋の後に、架橋膜をジクロロメタン中のターポリマーB又はC、HMDI及び触媒の溶液で膨潤させる。溶剤を蒸発させた後に、前記膜を室温において72時間架橋させる。
【0037】
半相互浸透ネットワークは、次のようにして得ることができる。まず、上記のようにターポリマーAを触媒の存在下で化学量論的量のHMDIで架橋させる。架橋の後に、架橋膜をジクロロメタン中のターポリマーB又はCの溶液で膨潤させる。溶剤を蒸発させた後に、半相互浸透ネットワークが得られる。
【0038】
本発明に従うコポリマーは、イオン伝導性材料を製造するのに特に有用である。
【0039】
本発明に従うイオン伝導性材料は、本発明に従う少なくとも1種のコポリマー又はかかるコポリマーを架橋させることによって得られる材料から成る。かかる材料においては、−CH2−O−SO3-Li+イオン性基がカチオン伝導性を付与する。この伝導性は、O/Li比に依存する。ここで、Oは溶媒和性酸素原子の数を表わし、LiはLi原子の数を表わす。溶媒和性酸素原子の数は、イオン伝導性材料を構成するコポリマーに対して、直接又は架橋の後に、規定される。これは、U(R)単位、U(Li)単位及び随意としてのU(R')単位が有する−O−C−C−基から成る鎖によって提供される酸素原子の数である。Li原子は、U(Li)単位がもたらす。言い換えれば、
【数1】
である。
【0040】
O/Li比が40未満である場合、この材料は、慣用のリチウム塩を添加した場合も添加しない場合も、イオン伝導性材料として用いるのに充分なイオン伝導率を有する。この結果は、U(Li)単位の割合N(Li)が架橋前のコポリマー中の繰返し単位の合計数に対してN(Li)≧2.5%となるような場合に得られる。
【0041】
前記コポリマーのO/Li比が40より大きい場合、即ちN(Li)<2.5%である場合には、イオン伝導性材料を形成するためにリチウム塩を添加するのが好ましい。このリチウム塩は、リチウムイオン交換によって作動する電気化学装置のためのイオン伝導性材料中に慣用的に用いられている塩から選択することができる。例として、(CF3SO2)2NLi(LiTFSI)、(CF3SO2)2CHLi(LiTFSM)、(CF3SO2)3CLi(LiTTFSM)、CF3SO3Li(TFLi)、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiBOB、LiFSI又はLiIを挙げることができる。また、化合物(NC−CH2−CH2)2NCO−CF(CF3)−SO3Li及び(CH3O−CH2−CH2)2NCO−CF(CF3)−SO3Liを挙げることもできる。その調製は、X. Ollivrinらによって報告されている[Electrochimica Acta, 48, 14-16, 1961-69 (2003)]。添加されるリチウム塩の量は、O/Li比が40未満となるようなものとする。ここで、LiはU(Li)単位及び前記塩によって提供されるLi原子の合計数を表わす。
【0042】
所定のO/Li比を有する本発明に従う材料については、極性タイプのR'基を存在させると、この極性基がリチウムサルフェートイオン性基−O−SO3-Li+の解離及び適宜に添加したリチウム塩の解離を促進し、それによってLi+イオンの有効濃度が高められ、その結果として伝導性が改善されるということに注目すべきである。伝導性に対する効果は、R'が極性基であるU(R')単位が5モル%の場合から得ることができる。
【0043】
イオン伝導性材料が本発明に従うコポリマーから成る材料又は本発明に従うコポリマーを架橋させることによって得られる材料である場合には、リチウムイオンに対して高い錯化力を有する化合物、例えばクラウンエーテル又はポリアミンを添加することによってその伝導性をさらに改善することができる。例として、それぞれ次式を有するスパルテイン及びテトラアザシクロテトラデカン(TMTAC)を挙げることができる。
【化14】
【0044】
本発明に従うイオン伝導性材料には、可塑剤、例えば非プロトン性極性液状溶剤から選択される可塑剤をさらに含有させることができ、100℃の温度において用いるのに適合した液状溶剤の量は、材料の総質量に対して30重量%未満、好ましくは5〜10重量%の範囲とする。例として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラアルキルスルファミド、200〜2000g/モルの範囲の質量を有するポリエチレングリコールジメチルエーテル及び一般的に低揮発性極性分子の誘導体を挙げることができる。可塑剤の効果の1つは、コポリマーの粘度を低下させ、それによりイオンの移動性を増進し、結果としてイオン伝導性を増進することである。
【0045】
架橋コポリマーから成るイオン伝導性材料はまた、溶剤又は溶剤混合物、例えば非プロトン性極性液状溶剤によってゲル化させることもでき、液状溶剤の量は、材料の総質量に対して85重量%未満、好ましくは70〜80重量%の範囲とする。例として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラアルキルスルファミド、ジメトキシエタン及びジオキソランを挙げることができる。
【0046】
本発明に従うコポリマーを含有するイオン伝導性材料は、電気化学装置の電解質を形成させることが意図される場合には、フィルムの形で用いるのが一般的である。従って、充分な機械的強度を有していなければならない。100000g/モルを超えるモル質量を有する本発明に従うコポリマーがこの基準を満たし、イオン伝導性材料を構成するためにそのまま用いることができる。
【0047】
100000g/モル未満のモル質量を有する本発明に従うコポリマーをイオン伝導性材料のフィルムを製造するために用いる場合には、後者には機械的強度を改善することが意図される充填剤を含有させるのが好ましい。この場合、各種の繰返し単位のそれぞれの割合は、ポリマーのO/Li比がイオン伝導性を増進させるものとなるように選択される。前記充填剤は、シリカ(例えばDegussa社より販売されている電池用途用のシリカ)、アルミナ、酸化チタン又は例えばフランス国特許第2841255号明細書に記載されたようなセルロースホイスカー若しくはミクロフィブリルから成るセルロース系補強材であることができる。
【0048】
架橋性基を有する繰返し単位を有する本発明に従うコポリマーをイオン伝導性材料のフィルムを製造するために用いる場合、このコポリマーは架橋した形又は架橋していない形で用いることができる。コポリマーのモル質量が100000g/モル未満である場合には、架橋した形でコポリマーを用いること及び/又は前記のように機械的強度を高めることが意図される充填剤をコポリマーに添加することが推奨される。イオン伝導性材料が2〜30%の範囲の架橋性基の割合N(R')を有するコポリマーを架橋させることによって得られたものである場合には、その機械的強度は充分であり、充填剤の添加は任意事項となる。
【0049】
本発明に従うイオン伝導性材料は、フィルムの形で得ることができる。1つの実施態様において、このフィルムは流延又は蒸発によって得られる。この場合、この方法は、溶剤中の材料の各種成分の溶液を調製し、得られた溶液をガス抜きし、次いでこれを基材上に流延し、溶剤を蒸発させることによってフィルムを乾燥させることから成る。溶剤としては、例えばアセトニトリル、メタノール、アセトン、ジメチルホルムアミド又はジクロロメタンのような揮発性溶剤を用いることができる。
【0050】
別の実施態様においては、材料の各種成分の乾燥ブレンドを押出操作に付す。
【0051】
架橋した形のコポリマーを含有する材料が望まれる場合には、フィルムを形成させた後に架橋を実施しなければならない。
【0052】
本発明に従うイオン伝導性材料は、2つの電極の間での電解質を介したLi+イオンの移動によって作動する様々な電気化学装置中で、フィルムの形で電解質として用いることができる。前記コポリマーはさらに、電気化学装置の一方の電極又は両方の電極の構成材料に対する伝導性バインダーとして用いることができる。
【0053】
かかる電気化学装置の中では、充電式又は非充電式電池、エレクトロクロミックシステム、光変調システム及びスーパーキャパシタを挙げることができる。
【0054】
本発明に従う電池は、負極と正極とが本発明に従うイオン伝導性材料を含む固体状ポリマー電解質で隔てられて成る。好ましくは、R'が極性基であるU(R')単位を含む本発明に従うコポリマーから得られた架橋材料を用いる。正極は正極活性材料から成る。これはさらに本発明に従うコポリマーを伝導性バインダーとして含有することができる。これはさらに電子伝導性を与える材料を含有することができる。充電式リチウム電池においては、アノードはリチウム金属、リチウム合金又は金属間リチウム化合物のフィルムから成る。リチウムイオン電池においては、負極は、リチウムイオンを可逆的に挿入することができる材料、例えばグラファイトから成る。
【0055】
本発明に従うエレクトロクロミックシステムは、透明電極及び酸化度によって色が変化する活性材料から成る電極を含み、これら2つの電極が本発明に従うイオン伝導性材料から成る伝導性電解質によって隔てられて成る。透明電極は、例えば酸化インジウムスズ(ITO)又はフッ素ドープ酸化スズ(FTO)から成ることができる。もう一方の電極は、活性材料中にLi+イオンが挿入された場合に色が変化するものであり、この活性材料は酸化タングステンWO3であることができる。
【0056】
スーパーキャパシタは、2つの炭素系電極が電解質によって隔てられて成る。本発明に従えば、前記電解質は、架橋した形の本発明に従うコポリマーを含むイオン伝導性材料に1種以上の有機溶剤が添加されて可塑化されたものから成る。可塑化用溶剤としては、例えばアセトニトリルを用いることができる。本発明に従うサルフェート官能基を有する架橋したコポリマーを電解質中に用いた場合、遊離の塩の添加によってカチオンの移動を調節することができ、且つ液体電解質の場合に必要とされるセパレーターの使用を免れることができる。
【0057】
本発明に従うコポリマーはさらに、選択性膜や例えば溶液中に存在するリチウムイオンの量を測定するための膜センサー中の参照(reference)膜を作るために用いることができる。膜を作るためには、O/Li比が10〜30の範囲である本発明に従う材料を用いるのが好ましい。
【0058】
U(R)単位、U(Li)単位及び随意としてのR'置換基がOHを表わすU(R')単位(以下、U(OH)単位と表わす)から成る本発明に従うランダムコポリマー(以下、CP[U(R),U(Li),U(OH)]と表わす)は、次の工程を含む方法によって得ることができる:
1.U(R)単位及びU(EP)単位から成るCP[U(R),U(EP)]コポリマーを調製する工程(ここで、U(EP)単位は−O−CH2−CH(−CH2Cl)−単位である);
2.CP[U(R),U(EP)]コポリマーのU(EP)単位の−CH2Cl基を−CH2OH基に転化させる工程;並びに
3.−CH2OH基の少なくとも一部を−CH2−O−SO3Li基に転化させる工程。
【0059】
CP[U(R),U(EP)]コポリマーの調製は、特にJ. Furukawa, S. Akutsu及びT. Saegusa[Macromol. Chem. 81, 100 (1965)]によって報告された方法に従って、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドとエピクロロヒドリンとを共重合させることによって実施され、この方法は、プロピレンオキシドとエピクロロヒドリンとを共重合させるために(FeCl3/プロピレンオキシド/d−ボルニルエチルエーテル)錯体を用いる。この調製は、トルエン中の溶液状で、例えばトリアルキルアルミニウム及びマロン酸ジエチルタイプの化合物から選択されるVandenbergタイプの重合開始剤の存在下で実施するのが有利である。
【0060】
−CH2Cl基の転化は、H.L. Cohen[Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition, Vol. 13, 1993-2000 (1975)]によって報告されている方法を用いて実施することができる。この方法は、CP[U(R),U(EP)]コポリマーと酢酸カリウムとをメトキシエトキシエタノール中で反応させて成る。前記コポリマーをアルゴン流下で100℃において溶剤中に溶解させる。この混合物に酢酸カリウムを過剰量(化学量論的量に対して3倍)で添加し、これを175℃に加熱し、この温度に6時間保つ。室温に戻した後に、コポリマーをエーテル中に沈殿させ、真空下で乾燥させる。反応式を下に示す。
【化15】
【0061】
別の実施態様に従えば、RがHであるU(R)単位(U(H)と示す)、上で定義したU(Li)単位及び随意としての上で定義したU(OH)単位から成る本発明に従うブロックコポリマー(以下、CP[U(H),U(Li),U(OH)]と示す)は、次の工程を含む方法によって得ることができる:
1.−O-M+反応性末端基を有するポリ(エチレンオキシド)を調製する工程;
2.−O-M+反応性末端基を有するポリ(エチレンオキシド)と保護されたグリシドール(Pグリシドールと示す)とを反応させることによってポリ(エチレンオキシド−co−Pグリシドール)ブロックコポリマーを調製する工程(ここで、M+はアルカリ金属イオンである);
3.保護されたグリシドールから由来する繰返し単位の側部置換基を脱保護して該側部置換基を−CH2OH置換基に転化させる工程;及び
4.この−CH2OH基の少なくとも一部を−CH2−O−SO3Li基に転化させる工程。
【0062】
−O-M+反応性末端基を有するポリ(エチレンオキシド)の調製は、次の反応式に従ってポリ(エチレンオキシド)とMOHとを反応させることによって実施することができる。
【化16】
【0063】
ポリ(エチレンオキシド−co−Pグリシドール)ブロックコポリマーの調製は、次の反応式に従って−O-M+反応性末端基を有するポリ(エチレンオキシド)と保護されたグリシドールとを反応させることによって実施することができる。
【化17】
【0064】
保護されたグリシドールは、例えばグリシドールとエチルビニルエーテルとをp−トルエンスルホン酸の存在下で反応させることによって得ることができる。
【0065】
保護されたグリシドールから由来する繰返し単位の側部置換基は、
・ポリ(エチレンオキシド−co−Pグリシドール)コポリマーとギ酸とを反応させて前記側部置換基のC2H5−O−CH(CH3)−O−末端基及びかくして主鎖の末端の−O-M+基をO=CH−O−に転化させ;
・得られたコポリマーとKOH(2N)とを反応させてO=CH−O−末端基を−O-K+に転化させ;そして
・イオン交換樹脂を用いてK+イオンをH+に置き換える:
ことから成る一連の工程によって脱保護することができる。この一連の工程は、次の反応式によって表わすことができる。
【化18】
【0066】
上記の2つの実施態様(エチレンオキシド又はプロピレンオキシドとエピクロロヒドリンとから得られるランダムコポリマーの調製及びポリエチレンオキシドとグリシドールとから得られるブロックコポリマーの調製)において、−CH2OH基の−CH2−O−SO3Li基への転化は、2工程で実施される。第1工程の際に、無水媒体中で不活性ガス流下でクロロスルホン酸トリメチルシリル(CH3)3Si−SO3Clを添加することによってOH基をエステル化する。こうして−CH2−O−SO3−Si(CH3)3側基を有するシリル化スルホネートエステルの形のポリマーが得られる。第2工程の際に、このシリル化エステル基をLiOHで処理することによって、リチウムサルフェート基−CH2−O−SO3−Liが生成する。
【0067】
第1工程については、酸に対して敏感ではない又はほとんど敏感ではない溶剤、例えばジクロロメタンのような塩素化溶剤を選択する。この反応は発熱性が高いので、コポリマーにクロロスルホン酸トリメチルシリルをゆっくり添加するのが好ましい。水の痕跡を考慮に入れ、僅かに過剰のクロロスルホン酸トリメチルシリルを用いる。第2工程については、蒸留水を溶剤として用いる。LiOH(例えば1M水溶液の形のもの)を添加することによって中和を行い、pH計を用いて酸−塩基滴定をチェックする。中和後に、水を蒸発させ、リチオ化ポリマーを溶解させるアセトニトリルを添加する。無機不純物(LiCl、LiOH、LiSO4)はアセトニトリル中に不溶であり、従って濾過によって除去できる。
【0068】
意図されるコポリマーがU(R)又はU(H)単位及びU(Li)単位のみを含有するものである場合には、すべての−CH2OH基が−CH2−O−SO3Li基に転化するのに充分な量で反応成分を用いる。反応成分を化学量論的量以下で用いることによって−CH2OH基を残すことができ、これはコポリマー中にそのまま残すこともでき、これを介して別のR'基をコポリマーの主鎖に結合させることもできる。
【0069】
R'がエポキシ基又はビニルエーテル基であるコポリマーを得るためには、R'がOH基であるコポリマーを無水媒体中でLiHと反応させて−CH2OH基をリチウムアルコラートに転化させ、次いでこうして生成したアルコラートをそれぞれエピクロロヒドリン又はクロロエチルビニルエーテルと反応させてエポキシタイプ又はビニルエーテルタイプの最終基R'を得る。その反応式は次のものである。
【化19】
【0070】
R'がアクリレート又はメタクリレート基であるコポリマーを得るためには、R'がOH基であるコポリマーをアクリル酸又はメタクリル酸と反応させる。この場合、この反応は、生成する水を除去してエステル化平衡をシフトさせるために減圧下で、特にディーンスターク(Dean-Stark)トラップを用いてベンゼンと共に共沸蒸留することによって、実施される。別法は、アクリル酸又はメタクリル酸の塩化物又は酸無水物を、随意にエステル化反応触媒としてのピリジンの存在下で、用いることから成る。
【0071】
R'がスチリル基であるコポリマーを得るためには、R'がOH基であるコポリマーをLiHと反応させて−CH2OH基をリチウムアルコラートに転化させ、次いでクロロメチルスチレンと反応させる。また、次の反応式に従ってポリマーの−CH2OH基をp−ビニル安息香酸でエステル化することによってスチリル基を導入することもできる。
【化20】
【0072】
置換基R'がニトリル基であるコポリマーは、R'がOHである繰返し単位をLiOHと反応させることによって転化させ、次いで生成したリチウムアルコラートをクロロアセトニトリルと反応させることによって得ることができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例によって例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
例1
【0075】
ポリ(エチレンオキシド−rand−グリシドール)ランダムコポリマーの調製
【0076】
用いた方法は、Cohenらによって報告された方法(上記)と同様だった。
【0077】
500ミリリットルの三つ口フラスコ中にジエチレングリコールモノメチルエーテル200ミリリットルを導入し、次いでこれをアルゴン流下で撹拌しながら100℃に加熱した。次に、塩素官能基のモル数が0.0であるポリ(エチレンオキシド−co−エピクロロヒドリン)コポリマー10gを導入した。このコポリマーは、次の半展開式(I)で表わすことができる。
【化21】
【0078】
コポリマー(I)が溶解した後に、酢酸カリウム5.88g(0.06モル)を添加し、この反応混合物を175℃に加熱し、この温度に6時間保った。次に、この反応混合物を室温にし、エーテル中で沈殿させた。得られたコポリマーを濾過によって分離し、40℃において12時間真空乾燥した。これは、数を基準としてオキシエチレン単位(前記一般式のU(R)単位に相当)90%及びU(OH)単位の形のU(R')単位10%を含んでいた。これは、次の半展開式(II)で表わすことができる。
【化22】
【0079】
例2
【0080】
ポリ(エチレンオキシド−rand−リチウムグリシジルサルフェート)ランダムコポリマーの調製
【0081】
ジクロロメタン250ミリリットル及びAmberlist 21(登録商標)樹脂1.93gを含有させた500ミリリットルの三つ口フラスコ中にコポリマー(II)3.63g(OH基7.71×10-3モルに相当)を導入した。このフラスコを氷浴中に入れ、合成の全期間を通じてアルゴン流をフラスコ中に流した。
【0082】
滴下漏斗にジクロロメタン40ミリリットル及びクロロスルホン酸トリメチルシリル1.25ミリリットル(化学量論的量に対して5%過剰に相当)を導入し、次いでこの溶液を前記三つ口フラスコに滴下した。クロロスルホン酸トリメチルシリルの添加が完了した後に、この混合物をアルゴン流下に1時間放置した。次に、真空回転式蒸発器を用いて溶剤を除去し、残渣を蒸留水100ミリリットル中に取り出し、次いで得られた溶液を1モル/リットルLiOH水溶液を添加することによって中和した。LiOHの添加はpH計を用いて監視し、蒸留水のpH以上のpHが得られた時にその添加を停止した。
【0083】
次いで真空回転式蒸発器を用いて水を除去し、残渣をアセトニトリル中に取り出し、得られた溶液を遠心分離した。この溶液を次いで、平均多孔度1μmのPVDFフィルター上で2回濾過し、次いで平均多孔度0.45μmのPVDFフィルター上で1回濾過し、そして平均多孔度0.22μmのPVDFフィルター上で1回濾過した。こうして得られたコポリマーをエーテル中に沈殿させ、次いでビューヒ真空チャンバー中で40℃において乾燥させ、最後にグローブボックス中にアルゴン下で貯蔵した。得られたターポリマー(III)は、数を基準としてオキシエチレン単位(前記一般式のU(R)単位に相当)90%及びU(Li)単位10%を含んでいた。これは、次の半展開式(III)で表わすことができる。
【化23】
【0084】
例3
【0085】
ポリ(エチレンオキシド−rand−リチウムグリシジルサルフェート−rand−グリシドール)ランダムコポリマーの調製
【0086】
エチレングリコール単位の一部だけがリチウムサルフェート化エチレングリコール単位に転化するように反応成分のそれぞれの量を変えて、例2の操作条件を数回繰り返した。操作条件の詳細及び各種試験の結果を下記の表に与える:nOHはコポリマー(II)によって提供されるOHのモル数を表わし、%U(Li)はオキシエチレン単位以外の全単位に対するU(Li)単位の割合を表わし、%U(OH)はオキシエチレン単位以外の全単位に対するU(OH)単位の割合を表わす。
【0087】
【表1】
【0088】
得られた各種コポリマーの半展開式を以下に与える。
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【0089】
例4
【0090】
ポリ(エチレンオキシド−rand−リチウムグリシジルサルフェート−rand−シアノメチルグリシジルエーテル) ランダムコポリマーの調製
【0091】
250ミリリットルのフラスコ中に、コポリマーVI1g(OH1.35×10-3モル)、水酸化リチウム0.3g、水5ミリリットル及びジクロロメタン60ミリリットルを導入した。この反応混合物を60℃に1時間加熱し、次いでジクロロメタンと水との共沸蒸留を実施した。水を完全に除去した後に、反応混合物をアルゴン雰囲気下で室温まで冷却した。次に、クロロアセトニトリル0.1ミリリットルを添加した。30分後に、反応混合物を60℃に加熱し、この温度に24時間保った。冷却後に、得られた溶液を遠心分離し、次いで平均多孔度1μmのPVDFフィルター上で2回濾過し、平均多孔度0.45μmのPVDFフィルター上で1回濾過し、そして平均多孔度0.22μmのPVDFフィルター上で1回濾過した後に、ジエチルエーテル中に沈殿させた。沈殿したコポリマーをビューヒ真空チャンバー中で40℃において乾燥させ、最後にグローブボックス中にアルゴン下で貯蔵した。得られたポリマー(VII)は、数を基準としてオキシエチレン単位(前記一般式のU(R)単位に相当)90%、U(Li)単位3.3%及びR'がCNであるU(R')単位6.6%を含んでいた。これは、次の半展開式で表わすことができる。
【化28】
【0092】
例5
【0093】
架橋コポリマーの調製
【0094】
コポリマーIV、V及びVIを、OH基と1,6−ジイソシアナトヘキサン(HMDI)との反応によって架橋させた。
【0095】
グローブボックス中でアルゴン雰囲気下で操作して、ジクロロメタン中のコポリマーの溶液を調製し、触媒としてジブチルスズジラウレートを添加し、次いでテフロン被覆ガラス表面上のテフロン被覆された輪状のガラスによって境界画定された部分にこの溶液を注いだ。ジクロロメタンを蒸発させた後に、系を室温にし、自然に48時間架橋を起こさせた。
【0096】
各コポリマーに対して特異的な条件を、下記の表に与える。
【0097】
【表2】
【0098】
コポリマーIV〜VIを架橋させることによって得られた材料の不溶分含有率を測定し、コポリマーII及びコポリマーIIIを架橋させることによって得られた材料の不溶分含有率と比較した。未架橋コポリマーはジクロロメタン中に可溶である。不溶分含有率は、次の操作手順を用いて測定した。質量miのフィルムの形の架橋コポリマーを採取してジクロロメタン中に12時間浸漬し、このフィルムを次いでフラスコから取り出し、70℃のオーブン中に入れ、次いで計量し、最終質量をmfとする。100×mf/miが不溶分含有率となる。
【0099】
図2に、架橋したOH官能基の含有百分率(%OH)(これはここでは、架橋の際に導入したHMDIの量を考慮に入れた架橋性官能基の百分率に相当する)の関数としての不溶分含有率Txの変化を示す。架橋材料の不溶分含有率は未架橋コポリマーの架橋性OH官能基の割合と共に増大することがわかる。架橋性官能基の割合の影響を検証するためにコポリマーIV〜VIから得られた架橋材料の弾性率を測定し、コポリマーIII(架橋性基を持たないので架橋可能ではない)の弾性率と比較した。図3に、架橋したOH官能基の百分率(%OH)の関数としての100℃における弾性率Me(MPa)の変化を示す。弾性率は、未架橋コポリマーIIIについては0であり、架橋したOH官能基の数と共に、即ちウレタン橋の数と共に、増大する。
【0100】
例6
【0101】
イオン伝導率の測定
【0102】
各種材料のイオン伝導率を、サーモスタット調温型密閉容器中で90℃から20℃まで10℃ごとに測定した。図4〜7は、それぞれの試験した材料についての温度の関数としての伝導率の変化を示す。各図において、伝導率C(S/cmで表わす)をy軸上にプロットし、温度は1000/Tの形(TはK-1)でx軸上にプロットする。次の表は、試験した材料、該材料のO/Li比、様々な温度における伝導率及び伝導率の変化を示す図の番号を示す。
【0103】
【表3】
【0104】
これらの結果は、コポリマー中のイオン性基の数の低減(これは、すべてのことが等しい場合に、材料のイオン伝導率の低下をもたらす)がOH極性基の存在によって補償され、これがアニオンに関する溶媒和力を高めるということを示す。これは、イオン性基の解離を促進し、かくして伝導率を高める効果を有する。これらはまた、コポリマーの架橋がイオン伝導率を無視できないファクターだけ低下させることも示す。
【0105】
例7
【0106】
イオン伝導率に対する可塑剤の影響
【0107】
コポリマーIIIとモル質量500のポリエチレングリコールジメチルエーテル(PEG500)とのPEG500が10質量%を占める混合物から成る材料のイオン伝導率を測定した。この伝導率をコポリマーIII単独のものと比較した。
【0108】
結果を図8に示す。図中、▲で示した曲線はコポリマーIII/PEG500混合物に関し、◆で示した曲線はコポリマーIIIに関する。可塑剤を添加すると伝導性が改善されることがわかる。この結果は、可塑剤の添加が材料の粘度を低下させ、Li+イオンの移動性を増進し、結果として伝導性を増進するという事実から由来する。
【0109】
例8
【0110】
イオン伝導率に対する錯化剤の影響
【0111】
コポリマーIIIとスパルテインとのスパルテインが29質量%を占める混合物(リチウムサルフェート官能基の数とスパルテイン分子の数とのモル比1:1)から成る材料のイオン伝導率を測定した。この伝導率を錯化剤無しで用いたコポリマーIIIのものと比較した。
【0112】
結果を図9に示す。図中、▲で示した曲線はコポリマーIII/スパルテイン混合物に関し、◆で示した曲線はコポリマーIIIに関する。錯化剤を添加すると伝導性が改善されることがわかる。この結果は、錯化剤の添加がおそらく塩の解離を増大させ、また、おそらく材料の粘度を低下させるという事実から由来する。用いた錯化剤の可塑化性状がLi+イオンの移動性を増進し、結果として伝導性を増進する。
【0113】
例9
【0114】
イオン伝導率に対する錯化剤の影響
【0115】
コポリマーIIIとテトラアザシクロテトラデカン(TMTAC)とのTMTACが31.5質量%を占める混合物(リチウムサルフェート官能基の数とTMTACの数とのモル比1:1)から成る材料のイオン伝導率を測定した。この伝導率をコポリマーIII単独のものと比較した。
【0116】
結果を図10に示す。図中、▲で示した曲線はコポリマーIII/MTAC混合物に関し、◆で示した曲線はコポリマーIIIに関する。錯化剤を添加すると伝導性が改善されることがわかる。この結果は、錯化剤の添加がおそらく塩の解離を増大させ、また、おそらく材料の粘度を低下させるという事実から由来する。用いた錯化剤の可塑化性状がLi+イオンの移動性を増進し、結果として伝導性を増進する。
【0117】
例10
【0118】
ポリ[(エチレンオキシド)−block−(グリシドール−rand−リチウムグリシジルサルフェート)]コポリマーの調製
【0119】
保護されたグリシドールの調製
【0120】
冷凍カラムを備えた500ミリリットルの三つ口フラスコ中にグリシドール66.24ミリリットル(74g/1モル)を導入し、次いでエチルビニルエーテル(EVE)204ミリリットル(144 g/2.08モル)を導入した。電磁撹拌機で撹拌しながら、p−トルエンスルホン酸(pTSA)1 g(0.058モル)を添加し、次いで混合物を2時間40分加熱還流した。冷却後、この溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液約215ミリリットルで中和した。有機相を蒸留水で2回洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。残留EVEを蒸留(T=34℃;P=760mmHg)によって除去し、保護されたグリシドール(Pグリシドール)を真空蒸留(T=50℃;P=7mmHg)によって精製した。中心留分だけを採取し、不純物はフラスコ中やトップ留分中に残した。
【0121】
この未精製生成物はオレンジ色を有していたが、蒸留後に透明になった。PGL140gが回収された。収率約96%。
【0122】
マクロ開始剤(macroinitiator)の調製
【0123】
次の式に従ってコポリマー合成のためにマクロ開始剤を調製した。
【化29】
【0124】
蒸留塔を備えた三つ口フラスコ中にトルエン100ミリリットル、ポリエチレンオキシド(PEO4000)2g(5×10-4モル)及び水酸化セシウム0.149?g(10-3モル)を導入した。この混合物を電磁撹拌機で撹拌しながら80℃において3時間反応させた。生成した水をトルエンとの共沸蒸留によって除去した。
【0125】
400〜10000g/モルの範囲の様々なモル質量を有するマクロ開始剤を合成した。対応するnの値を下記の表に示す。
【0126】
ブロックコポリマーの合成
【0127】
上で調製したマクロ開始剤を用いて、様々な数nのオキシエチレン単位及び様々な数mのPグリシドール単位を含むB1〜B8で示されるポリ(エチレンオキシド−block−ポリpグリシドール)ブロックコポリマーを合成した。これらコポリマーを下記の表に示す。「Pグリシドール単位」とは、保護されたグリシドールの開口部(ouverture)に相当する単位を表わす。
【0128】
【表4】
【0129】
蒸留塔を備えた250ミリリットルのフラスコ中にトルエン100ミリリットル及びPGL7.3 g(5×10-2モル)を導入し、次いで電磁撹拌機で撹拌しながら共沸混合物30ミリリットルを蒸留し(大気圧;T=110℃)、塩化カルシウムトラップによって空気の湿分から混合物を保護した。次いでこの溶液をアルゴン下で80℃まで冷ました。
【0130】
前に調製したマクロ開始剤を上記の溶液に添加した。温度を100℃に上昇させ、この溶液をアルゴン雰囲気下で5時間反応させた。次いで溶剤を蒸留によって除去した。CH2−CH2−O繰返し単位のモル濃度対保護されたグリシドール単位のモル濃度の比を適宜選択することによって、所望のトリブロックコポリマーを得ることが可能である。例えば、n=45且つm=100のトリブロックコポリマーを得るためには、質量2000のポリ(エチレンオキシド)ジオール濃度0.01モル/リットル(即ちCH2−CH2−O単位濃度0.45モル/リットル)及び保護されたグリシドール濃度2モル/リットルを用いる。
【0131】
得られるポリマーの色及び粘度は、用いたマクロ開始剤に応じて変化した。
【0132】
コポリマーをH1−NMR及びC13−NMRで特徴付けし、モノマーのエポキシ環に相当するピーク(H1、C13:60.63 ppm、50.63 ppm)の低減及び続いての消失を観察することによって、反応の進行を監視することができた。
【0133】
また、Ultrastyragelカラムを用いたTHF中での25℃におけるGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)によっても反応生成物を分析した。未精製生成物のGPC分析は、反応生成物が1分布又は2分布を有し得ることを示した。2分布の生成は、重合の間に付随的に起こる連鎖移動反応から由来する。得られたコポリマーの一部はヘプタン中に沈殿し、残りは溶解した。ヘプタン中に分離した2つの画分は、1H−NMR特徴付けによって分析することができた。可溶性部分はポリPグリシドールPPGLホモポリマーに相当するものであり、不溶性物質は所期のPPGL−POE−PPGLトリブロックコポリマーに相当するものだった。このホモポリマー及びコポリマーは相溶性だったので、リチウム電池用、エレクトロクロミックシステム用又はスーパーキャパシタ用の電解質を調製するためにそのブレンドをそのまま用いることができ、電解質の性能特徴がそれによって影響を受けることない。
【0134】
「保護されたグリシドール」基の−CH2OH基への転化
【0135】
コポリマーB1を15g含有させたフラスコ中にギ酸100ミリリットルを導入した。この酸とB1とを20℃において20分間反応させた。次いで過剰分の酸を真空蒸発させた(Tamb、P=4〜5mmHg)。次に、THF120ミリリットル及びメタノール70ミリリットルを添加し、次いで2MのKOHを添加することによってこの溶液のpHを12にした。pH計を用いてKOHの添加を監視し、pHが12になった時に添加を停止した。
【0136】
次いで真空下で溶剤を除去した(Tamb;P=4〜5mmHg)。ポリマーの水溶液をイオン(H+)交換カラム(2M塩酸で再生したカチオン樹脂)に通した。次いで真空回転式蒸発器を用いて水を除去し、ポリマーを脱保護し、PGL又はPGL−POE−PGLを真空下で乾燥させた(Tamb、P=4〜5mmHg)。
【0137】
OH基の一部のリチウムスルホネート基による置換
【0138】
ジメチルスルホキシド100ミリリットルを含有させた500ミリリットルの三つ口フラスコ中にコポリマーB7を10g(OH基7.71×10-3モルに相当)導入した。次に、このフラスコを氷浴中に入れ、合成の期間を通じてフラスコ中にアルゴン流を通した。ジメチルスルホキシド80ミリリットル及びクロロスルホン酸トリメチルシリル16.25ミリリットル(化学量論的量に対して5%過剰に相当)を導入するために滴下漏斗を用い、次いでこの溶液を前記三つ口フラスコに滴下した。クロロスルホン酸トリメチルシリルの添加が完了した後に、次いでこの混合物をアルゴン流下に1時間置いた。次に、真空回転式蒸発器を用いて溶剤を除去し、残渣を蒸留水100ミリリットル中に取り出し、得られた溶液を次いで1モル/リットルLiOH水溶液を添加することによって中和した。LiOHの添加はpH計を用いて監視し、pHが7より大きくなった時に添加を停止した。
【0139】
次いで真空回転式蒸発器を用いて水を除去し、残渣をアセトニトリル中に取り出し、得られた溶液を遠心分離し、次いで微孔度1μmのPVDFフィルター上で2回濾過し、次いで微孔度0.45μmのPVDFフィルター上で1回濾過し、そして微孔度0.22μmのPVDFフィルター上で1回濾過した。こうして得られたコポリマーをエーテル中に沈殿させ、次いでビューヒ真空チャンバー中で40℃において乾燥させ、最後にグローブボックス中にアルゴン下で貯蔵した。
【0140】
例11
【0141】
ポリ(エチレンオキシド−rand−リチウムグリシドールサルフェート−rand−シアノメチルグリシドールエーテル)ランダムコポリマーの調製
【0142】
250ミリリットルのフラスコ中に例10の最後に得られたコポリマー1g、水酸化カリウム5ミリリットル(0.01モル)及びトルエン50ミリリットルを導入した。減圧下でトルエンとの共沸蒸留を実施した(T=50℃;P=30〜35mmHg)。トルエンを完全に除去した後に、ナトリウム上で予め乾燥させたTHF40ミリリットルを添加し、この溶液をアルゴン雰囲気下に置き、55℃に加熱した。次に、クロロアセトニトリル0.63ミリリットル(0.01モル)を導入し、その後に反応混合物を加熱還流した(T=60℃)。次いで真空回転式蒸発器を用いて溶剤を除去した。得られたコポリマーは、上記の式VIIIで表わすことができる。
【0143】
例12
【0144】
ポリ(エチレンオキシド−rand−グリシドール)ランダムコポリマーの合成
【0145】
第1工程の際に、ポリ[(エチレンオキシド)−rand−Pグリシドール]ランダムコポリマーを調製した。
【0146】
重合は、100バールの圧力に耐えられるステンレス鋼製オートクレーブ反応器中で実施した。磁気軸受によって機械的撹拌を行い、好適な加熱ジャケットによって加熱を行った。電磁弁によって調節される水冷循環路によって反応器を温度調節した。反応成分は、グローブボックス中でアルゴンで予め満たしたステンレス鋼製気密室から導入した。反応用の溶剤であるTHFは、水素化カルシウム(CaH2)上で前もって蒸留した。これは、反応溶剤として用いただけではなく、使用前に反応器及び気密室をゆすぐのにも用いた。反応はアルゴン下で実施し、反応器の圧力は反応の間に2バールから10バールの間で変化した。
【0147】
質量400のポリ(エチレンオキシド)ジオールから調製したセシウムジアルコラートを用いた。最初にTHF150ミリリットル中のマクロ開始剤0.53g(即ち7.9×10-4モル)を気密室中に導入した。エチレンオキシド60g(1.36モル)及び保護されたグリシドール58g(0.4モル)を相次いで添加した。100℃において12時間の反応の後に、混合物を室温に戻し、水5ミリリットルを添加することによって反応を失活させた。
【0148】
得られたコポリマーSP1はオキシエチレン単位及び保護されたグリシドール単位を含み、そのGPC分析は、ポリスチレン当量で表わした重量平均モル質量Mwが20000g/モル程度であることを示した。
【0149】
C13−NMR及びH1−NMR分析は、オキシエチレン単位特有のピーク(C13において70.5ppm(CH2−CH2−O);H1において3.54ppm(CH2−CH2−O))並びに保護されたグリシドール単位特有のピーク(C13において99.5ppm(O−CH−O)、19.51ppm(CH3−CH<)及び15.04ppm(CH3−CH2−)、並びにH1において4.6ppm(O−CH−O)、1.2ppm(CH3−CH<)及び1.1ppm(CH3−CH2−)の存在を示した(2.6の比)。
【0150】
第2工程の際に、ポリマーSP1の「保護されたグリシドール」基を−CH2OH基に転化させた。
【0151】
コポリマーSP1を15g含有させたフラスコ中にギ酸100ミリリットルを導入した。この酸とSP1とを20℃において20分間反応させた。次いで過剰分の酸を真空蒸発させた(Tamb、P=4.5mmHg)。次に、THF120ミリリットル及びメタノール70ミリリットルを添加し、次いで2MのKOHを添加することによってこの溶液のpHを12にした。pH計を用いてKOHの添加を監視し、pHが12になった時に添加を停止した。
【0152】
次いで真空下で溶剤を除去した(Tamb;P=4〜5mmHg)。ポリマーの水溶液をプロトン(H+)交換樹脂(2M塩酸で前もって再生したカチオン樹脂)で処理した。次いで真空回転式蒸発器を用いて水を除去し、脱保護されたコポリマーS1を真空下で乾燥させた(Tamb、P=4〜5mmHg)。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を用いた縮合についての反応式である。
【図2】架橋したOH官能基の含有百分率(%OH)の関数としての不溶分含有率Txの変化を示すグラフである。
【図3】架橋したOH官能基の百分率(%OH)の関数としての100℃における弾性率Me(MPa)の変化を示すグラフである。
【図4】試験した材料についての温度の関数としての伝導性の変化を示すグラフである。
【図5】試験した材料についての温度の関数としての伝導性の変化を示すグラフである。
【図6】試験した材料についての温度の関数としての伝導性の変化を示すグラフである。
【図7】試験した材料についての温度の関数としての伝導性の変化を示すグラフである。
【図8】イオン伝導性に対する可塑剤の影響を示すグラフである。
【図9】イオン伝導性に対する錯化剤の影響を示すグラフである。
【図10】イオン伝導性に対する錯化剤の影響を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドとイオン性基を有する少なくとも1種の置換オキシランとのコポリマー、その調製方法及び様々な用途に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン伝導性材料の製造のために溶媒和性ポリマーを使用することが知られている。エチレンオキシド又はジオキソランポリマーは、カチオン、特にアルカリ金属カチオン、例えばポリマーを電解質とするリチウム電池タイプの充電式電気化学発電機中に存在するLi+イオンに対する溶媒和性ポリマーである。前記ポリマーの半結晶質特徴は、それらを含有する材料の伝導性を低下させるという結果を招く。半結晶質ポリマーの結晶度は、マクロ分子鎖に不規則性を導入することによって、得られるコポリマーの溶媒和特性及び電気化学的安定性に影響を及ぼすことなく、低下させてきた。しかしながら、ポリエーテル鎖に不規則性を導入すると、それに伴って、エチレンオキシドホモポリマーと比較してモル質量が小さくなったり機械的特性(特に高温におけるもの)が低下したりすることがしばしばあることがわかった。
【0003】
この欠点を、生成した後にコポリマーを架橋させて三次元ネットワークを形成させることができる単位をポリマー中に導入することによって取り除くことが試みられてきた。コポリマー中へのこのような単位の導入はまた、様々な基及び特にイオン性基をマクロ分子鎖に結合させることも可能にした。例えばヨーロッパ特許公開第0603370号公報には、オキシランから由来する単位及びジオキソランから由来する単位を含み且つ第3のモノマーとの架橋を可能にする基を随意に有するコポリマーが開示されており、挙げられている第3モノマーの例は、重合性基とイオン性基との間にフッ素化セグメントを含むものである;架橋した材料は、フッ素化セグメントを介して主鎖に連結されるイオン性基を含む。ヨーロッパ特許公開第0657484号公報には、アルキル(ペルフルオロアルキル)スルホネートエーテルタイプの側部(lateral)置換基、例えば−CH2−O−(CF2)p−SO3Liを含むコポリマーが開示されている。ヨーロッパ特許公開第0671386号公報には、ペルフッ素化ジスルホネートモノマー及び該モノマーから得られた鎖末端基がスルホネートであるポリマーが開示されている。両方の場合において、該ポリマーを含有する電解質は、実質的に1のカチオン輸率t+を有する。
【0004】
しかしながら、フッ素化単位の組込みは非常に高価なモノマーの合成を伴い、これは重合の間に完全には消費されない。というのも、ペルフルオロスルホネートタイプのイオン性官能基がポリエーテル主鎖に結合するからである。このようなポリマーは、
・ペルフルオロスルホネートアニオンを有するオキシランを調製し、このオキシランとエチレンオキシド又はプロピレンオキシドとを共重合させる;
・少なくとも1つのC=C二重結合を有し且つこれらの炭素原子の内の一方がペルフルオロスルホネートイオン性基を有する化合物を調製し、架橋させることによって該化合物をC=C二重結合を有するポリエーテルに組み込む:
ことによって得ることができる。
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開第0603370号公報
【特許文献2】ヨーロッパ特許公開第0657484号公報
【特許文献3】ヨーロッパ特許公開第0671386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、良好な機械的強度を有する新規のコポリマーであって、オキシアルキレンタイプの繰返し単位を含み、その中のいくつかはイオン性基を有し、いくつかは随意に様々な官能基を有し、少なくとも従来技術のコポリマーと同様の性能特徴を示し、しかしペルフッ素化モノマーが存在しないために従来技術のものより高価でなく且つ毒性が低いモノマーから調製することができる前記コポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明の1つの主題は、コポリマーにある。本発明の別の主題は、前記コポリマーを調製する方法にある。別の主題は、前記コポリマーから得られる架橋材料(架橋した材料)、前記コポリマーを含有するイオン伝導性材料、並びに電解質及び/又は電極が前記コポリマーを含有する各種の電気化学装置から成る。
【0007】
本発明に従うコポリマーは、その鎖が
・繰返し単位−O−CH2−CHR−(ここで、RはH又はCH3である);
・繰返し単位−O−CH2−CH(−CH2−O−SO3-Li+)−;及び
・随意としての繰返し単位−O−CH2−CH(−CH2R')−(ここで、R'は官能基である):
を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書の残りの部分においては、繰返し単位−O−CH2−CHR−、−O−CH2−CH(−CH2−O−SO3-Li+)−及び−O−CH2−CH(−CH2R')−をそれぞれU(R)、U(Li)及びU(R')と示す。所定コポリマー中におけるそれらのモル割合は、それぞれN(R)、N(Li)及びN(R')と示す。好ましくは、70≦N(R)≦95、2.5≦N(Li)≦15及び0≦N(R')≦20である。
【0009】
本発明に従うコポリマーは、様々な繰返し単位がランダムに分布されたコポリマーであることができる。本発明に従うコポリマーはさらに、U(R)単位から成る1個以上のセグメント、U(Li)単位から成る1個以上のセグメント及び随意としてのU(R')単位から成る1個以上のセグメントを含むブロックコポリマーであることもできる。
【0010】
1つの実施態様においては、そのコポリマーのすべての置換基R'が同じ官能基を表わす。別の実施態様においては、置換基R'が異なる官能基を表わす。
【0011】
官能基R'は、コポリマーが架橋するのを可能にする基又は極性基から選択することができる。コポリマーが架橋するのを可能にする官能基の例としては、OH;エポキシ基;アリルエーテル基CH2=CH−CH2−O−;メタリルエーテル基CH2=C(CH3)−CH2−O−;R1CH=CH2−O−又はR1CH=CR2−O−CH2−CH2−O−タイプのビニルエーテル基(ここで、R1及びR2は互いに独立的にH、アルキル、アルケニル又はアリール基を表わす);アクリレート基CH2=CH−C(O)−O−;メタクリレート基CH2=C(CH3)−C(O)−O−;スチレニル基CH2=CH(Ph)−CH2−;ビニルベンゾエート基CH2=CH(Ph)C(O)−O−;シンナメート基(Ph)−CH=CH−C(O)−O−;並びに−O−CO−NH−R3−Si(OR4)3基(ここで、R4は1〜3個の炭素原子を有するアルキル基であり、R3はアルキレン基、例えば −(CH2)3−である)を挙げることができる。極性基の例としては、−CN、−OH、環状カーボネート基、スルホラン、スルホキシド、スルホン及びスルホンアミドを挙げることができる。
【0012】
本明細書においては、特に相反する記載がなければ、「アルキル基」とは直鎖状又は分岐鎖状の好ましくは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を意味し;「アルケニル基」とは少なくとも1個の二重結合>C=C<を有する直鎖状又は分岐鎖状の好ましくは2〜10個の炭素原子を有する炭化水素基を意味し;「アリール基」とは少なくとも1個の炭化水素芳香環(随意に1個以上の置換基を有するもの)を含む基を意味し;そしてPhはフェニル基を表わす。
【0013】
R'が架橋を可能にする基R'1であるU(R')繰返し単位を含む本発明に従うコポリマーは、イオン伝導性を示す架橋材料を得るために架橋に付すことができる。従って、本発明の別の主題は、主鎖としての−O−CH2−CHR−繰返し単位(ここで、RはH又はCH3である)、−O−CH2−CH(−CH2−O−SO3-M+)−繰返し単位(ここで、Mはアルカリ金属を表わす)、随意としての−O−CH2−CH(R')−繰返し単位(ここで、R'は極性基R'2である)及び−O−CH2−CH(−X−)−繰返し単位(ここで、−X−は主鎖の間の連結鎖である)から成る架橋材料である。上で規定した主鎖を、以下においてはCP鎖と言う。前記連結鎖は、基R'1の性状及び架橋方法に依存する。
【0014】
本発明に従うコポリマーは、R'1がOHである場合には、縮合によって架橋させることができる。例えば、2つの繰返し単位の2つのOH基がジイソシアネートO=C=N−〜〜〜〜−N=C=Oとの反応によってウレタン橋−CO−NH−〜〜〜〜−NH−CO−を形成し、このジイソシアネートは、アルキレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、α,ω−オリゴオキシアルキレンジイソシアネート(例えばPEGジイソシアネート)又はPTHFジイソシアネートであることができる。図1は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を用いた縮合についての反応式を表わす。前記コポリマーから得られる材料の架橋密度は、架橋の際に単一のイソシアネート官能基を有するモノマーを前記コポリマーに添加することによって、制限することができる。また、HMDI及び前記コポリマーに架橋工程の際にα,ω−ポリアルキレンジオールを添加することによって前記架橋密度を制限することもできる。このポリアルキレンジオールはこの場合、スペーサーの役割を果たす。
【0015】
また、OH基を有する本発明に従うコポリマーは、OH基を3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(例えばABCR社よりSII6455の商品番号で販売されている)で処理することによって架橋させることもできる。こうして処理されたU(OH)繰返し単位は、次式U(1)で表わされる繰返し単位を与える。
【化1】
【0016】
かかる繰返し単位U(1)は、−O−C2H5官能基を酸触媒加水分解する(即ち酸を触媒として用いて加水分解する)ことによって架橋が可能になる。その結果として得られる架橋材料は、Xセグメントによって連結されたCP鎖を含み、次の式を満たす。
【化2】
【0017】
別法において、U(1)繰返し単位を含むポリマーにテトラエトキシシランを添加し、次いで−O−C2H5官能基の加水分解/縮合を実施することも可能である。こうして、ポリエーテル鎖と相互結合したシリカネットワークが作られる。
【0018】
本発明に従うコポリマーは、R'がUV下で且つ光開始剤の存在下においてカチオン重合することができるエポキシ基又はビニルエーテル基である場合に、UV照射下でカチオン架橋することができる。
【0019】
R'がビニルエーテル基CHR1=CR2−O−である場合、繰返し単位の側基は−CH2−O−CR2=CHR1である。2個のこのような基の間の反応によって形成される連結基は、次式で表わすことができる。
【化3】
【0020】
前記材料の架橋密度は、架橋工程の際に基R'と同じ性状の単一の重合性官能基を有するモノマー又は基R'と同じ性状の2個の末端官能基を有するオリゴマー[R'がビニルエーテルタイプのものである場合、例えばAldrich社より41,017-9の商品番号で販売されているポリ(1,4−ブタンジオール)ジビニルエーテル]を前記コポリマーに添加することによって、制限することができる。
【0021】
R'がエポキシエーテル基である場合、繰返し単位の側基は
【化4】
である。2個のこのような基の間の反応によって形成される連結基は、次式で表わすことができる。
【化5】
【0022】
R'がビニルエーテル官能基である場合、架橋の際に次の式:
【化6】
(ここで、R5はH、アルキル、アリール、オリゴシロキサン又はN−アルキルマレイミド、N−アリールマレイミド若しくはN−オリゴシリルマレイミドを表わす)
の内の1つを満たすマレイミド、無水マレイン酸若しくはビスマレイミド又はマレイミド/ビスマレイミド混合物を反応媒体に添加することによるドナー/アクセプター反応によってコポリマーを架橋させることができる。また、光開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエチルリンオキシド(TEPO)を250〜440nmの範囲で作動する水銀UV灯と共に用いるのも有利であり得る。
【0023】
得られた架橋ポリマーは、RがHである場合に、次の式で図示できる。
【化7】
ここで、YはO又はNR5を表わし、nは本発明の主題を構成する架橋コポリマーの2つの鎖を連結する交互コポリマーの繰返し単位の数を表わす(nは1〜50、好ましくは1〜10である)。コポリマーの剛性を下げるためには、ビスマレイミド官能基を末端基とするポリジメトキシシランタイプの軟質オリゴマーを用いるのが有利である。
【0024】
本発明に従うコポリマーは、R'がアクリレート、メタクリレート、シンナメート又はスチレニル基を表わす場合、UV照射又は熱的ラジカル架橋によって架橋させることができる。この場合、2つの基が一緒になって連結鎖を形成し、これは下記の式で表わすことができる。
【化8】
ここで、R6は
【化9】
である。
【0025】
ここで再び、本発明に従うイオン伝導性コポリマーを架橋させることによって得られる架橋材料の架橋密度は、架橋工程の際に前記コポリマーのR'基と同じ性状の単一の重合性基を有するモノマーを該コポリマーに添加することによって制限することができる。
【0026】
最後に、本発明に従う数種のコポリマーをブレンドし、次いで同時架橋又は結合させることによって、半相互浸透又は相互浸透(interpenetres)ネットワークを形成させることができる。
【0027】
同時架橋材料は、U(R')単位を有する本発明に従う第1のコポリマーとU(R')単位を有する本発明に従う第2のコポリマーとをブレンドし(これら2つのコポリマーのR'基は、互いに反応することができるものである)、このブレンドを架橋させることによって得ることができる。
【0028】
半相互浸透ネットワークは、好適な触媒の存在下で重合を可能にするU(R')単位を有する第1のコポリマーから成る膜を架橋させ、次いで架橋を可能にしないU(R')単位を有する第2のコポリマーの溶液で前記の膜を膨潤させることによって得られる。
【0029】
相互浸透ネットワークは、適当な触媒の存在下で架橋を可能にするU(R')単位を有する第1のコポリマーから架橋膜(架橋した膜)を調製し、適当な触媒の存在下で架橋を可能にするU(R')単位を有する第2のコポリマーの溶液で前記の架橋膜を膨潤させ、次いでこの第2のコポリマーを架橋させることによって得られる。この場合、2つのネットワークが相互浸透するが、しかしこれらは共有結合によって互いに結合するわけではない。架橋は順次起こり、一方のポリマーがもう一方の前に架橋する。
【0030】
相互浸透ネットワークを調製するための別の方法においては、2つのコポリマーの架橋が同時に実施される。この調製方法は、例えばR'基がラジカル光架橋を可能にする(例えばR'がメタクリレート基である)コポリマーとR'がカチオン光架橋を可能にする(例えばR'がOH基を有する)コポリマーとをブレンドすることから成る。カチオン光架橋に特異的な照射波長での架橋及びラジカル架橋に特異的な波長での架橋の両方のタイプにおいて活性な光開始剤を用いることにより、単一の工程で相互浸透ネットワークを作ることができ、この場合、出発物質として用いた2つのコポリマーは、一方のコポリマーの1つの架橋可能な基(架橋性基)R'が操作条件下においてもう一方のコポリマーの架橋性基R'と共重合しないので、共有結合によって結合することがない。
【0031】
以下に、次式のランダムポリマーP1に基づいて例を与える。
【化10】
【0032】
次式を満たすターポリマーAは、ポリマーP1のOH基の80%をリチウムエステルサルフェート(−O−SO3Li)の形でエステル化することによって調製される。
【化11】
【0033】
ターポリマーBは、ポリマーP1をアルコール基の80%がリチウムアルコラート(−O-Li+)基に転化するように水素化リチウムLiHで処理し、次いで2−クロロアセトニトリルClCH2CNをアルコラート官能基に対して化学量論的量で添加することによって調製される。
【化12】
【0034】
ターポリマーCは、ポリマーP1のCH2OH基の一部を一般式CN−(CH2)n−COOHを満たすシアノアルカン酸でエステル化することによって調製される。
【化13】
【0035】
架橋は、次のようにして達成することができる。まず、ターポリマーAとターポリマーB又はCとをジクロロメタン中で1/1の重量比でブレンドし、次いで触媒としてのジブチルスズジラウレートの存在下でHMDIジイソシアネートを、OH官能基に対してジイソシアネート官能基が化学量論的量となる割合で、添加する。こうして得られた溶液を次いで、テフロン被覆表面上の輪状のガラスによって境界画定された部分に注ぎ、ジクロロメタンを蒸発させ、48時間かけて架橋を起こさせる。
【0036】
相互浸透ネットワークは、次のようにして得ることができる。まず、上記のようにターポリマーAを触媒の存在下で化学量論的量のHMDIジイソシアネート官能基で架橋させる。架橋の後に、架橋膜をジクロロメタン中のターポリマーB又はC、HMDI及び触媒の溶液で膨潤させる。溶剤を蒸発させた後に、前記膜を室温において72時間架橋させる。
【0037】
半相互浸透ネットワークは、次のようにして得ることができる。まず、上記のようにターポリマーAを触媒の存在下で化学量論的量のHMDIで架橋させる。架橋の後に、架橋膜をジクロロメタン中のターポリマーB又はCの溶液で膨潤させる。溶剤を蒸発させた後に、半相互浸透ネットワークが得られる。
【0038】
本発明に従うコポリマーは、イオン伝導性材料を製造するのに特に有用である。
【0039】
本発明に従うイオン伝導性材料は、本発明に従う少なくとも1種のコポリマー又はかかるコポリマーを架橋させることによって得られる材料から成る。かかる材料においては、−CH2−O−SO3-Li+イオン性基がカチオン伝導性を付与する。この伝導性は、O/Li比に依存する。ここで、Oは溶媒和性酸素原子の数を表わし、LiはLi原子の数を表わす。溶媒和性酸素原子の数は、イオン伝導性材料を構成するコポリマーに対して、直接又は架橋の後に、規定される。これは、U(R)単位、U(Li)単位及び随意としてのU(R')単位が有する−O−C−C−基から成る鎖によって提供される酸素原子の数である。Li原子は、U(Li)単位がもたらす。言い換えれば、
【数1】
である。
【0040】
O/Li比が40未満である場合、この材料は、慣用のリチウム塩を添加した場合も添加しない場合も、イオン伝導性材料として用いるのに充分なイオン伝導率を有する。この結果は、U(Li)単位の割合N(Li)が架橋前のコポリマー中の繰返し単位の合計数に対してN(Li)≧2.5%となるような場合に得られる。
【0041】
前記コポリマーのO/Li比が40より大きい場合、即ちN(Li)<2.5%である場合には、イオン伝導性材料を形成するためにリチウム塩を添加するのが好ましい。このリチウム塩は、リチウムイオン交換によって作動する電気化学装置のためのイオン伝導性材料中に慣用的に用いられている塩から選択することができる。例として、(CF3SO2)2NLi(LiTFSI)、(CF3SO2)2CHLi(LiTFSM)、(CF3SO2)3CLi(LiTTFSM)、CF3SO3Li(TFLi)、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiBOB、LiFSI又はLiIを挙げることができる。また、化合物(NC−CH2−CH2)2NCO−CF(CF3)−SO3Li及び(CH3O−CH2−CH2)2NCO−CF(CF3)−SO3Liを挙げることもできる。その調製は、X. Ollivrinらによって報告されている[Electrochimica Acta, 48, 14-16, 1961-69 (2003)]。添加されるリチウム塩の量は、O/Li比が40未満となるようなものとする。ここで、LiはU(Li)単位及び前記塩によって提供されるLi原子の合計数を表わす。
【0042】
所定のO/Li比を有する本発明に従う材料については、極性タイプのR'基を存在させると、この極性基がリチウムサルフェートイオン性基−O−SO3-Li+の解離及び適宜に添加したリチウム塩の解離を促進し、それによってLi+イオンの有効濃度が高められ、その結果として伝導性が改善されるということに注目すべきである。伝導性に対する効果は、R'が極性基であるU(R')単位が5モル%の場合から得ることができる。
【0043】
イオン伝導性材料が本発明に従うコポリマーから成る材料又は本発明に従うコポリマーを架橋させることによって得られる材料である場合には、リチウムイオンに対して高い錯化力を有する化合物、例えばクラウンエーテル又はポリアミンを添加することによってその伝導性をさらに改善することができる。例として、それぞれ次式を有するスパルテイン及びテトラアザシクロテトラデカン(TMTAC)を挙げることができる。
【化14】
【0044】
本発明に従うイオン伝導性材料には、可塑剤、例えば非プロトン性極性液状溶剤から選択される可塑剤をさらに含有させることができ、100℃の温度において用いるのに適合した液状溶剤の量は、材料の総質量に対して30重量%未満、好ましくは5〜10重量%の範囲とする。例として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラアルキルスルファミド、200〜2000g/モルの範囲の質量を有するポリエチレングリコールジメチルエーテル及び一般的に低揮発性極性分子の誘導体を挙げることができる。可塑剤の効果の1つは、コポリマーの粘度を低下させ、それによりイオンの移動性を増進し、結果としてイオン伝導性を増進することである。
【0045】
架橋コポリマーから成るイオン伝導性材料はまた、溶剤又は溶剤混合物、例えば非プロトン性極性液状溶剤によってゲル化させることもでき、液状溶剤の量は、材料の総質量に対して85重量%未満、好ましくは70〜80重量%の範囲とする。例として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラアルキルスルファミド、ジメトキシエタン及びジオキソランを挙げることができる。
【0046】
本発明に従うコポリマーを含有するイオン伝導性材料は、電気化学装置の電解質を形成させることが意図される場合には、フィルムの形で用いるのが一般的である。従って、充分な機械的強度を有していなければならない。100000g/モルを超えるモル質量を有する本発明に従うコポリマーがこの基準を満たし、イオン伝導性材料を構成するためにそのまま用いることができる。
【0047】
100000g/モル未満のモル質量を有する本発明に従うコポリマーをイオン伝導性材料のフィルムを製造するために用いる場合には、後者には機械的強度を改善することが意図される充填剤を含有させるのが好ましい。この場合、各種の繰返し単位のそれぞれの割合は、ポリマーのO/Li比がイオン伝導性を増進させるものとなるように選択される。前記充填剤は、シリカ(例えばDegussa社より販売されている電池用途用のシリカ)、アルミナ、酸化チタン又は例えばフランス国特許第2841255号明細書に記載されたようなセルロースホイスカー若しくはミクロフィブリルから成るセルロース系補強材であることができる。
【0048】
架橋性基を有する繰返し単位を有する本発明に従うコポリマーをイオン伝導性材料のフィルムを製造するために用いる場合、このコポリマーは架橋した形又は架橋していない形で用いることができる。コポリマーのモル質量が100000g/モル未満である場合には、架橋した形でコポリマーを用いること及び/又は前記のように機械的強度を高めることが意図される充填剤をコポリマーに添加することが推奨される。イオン伝導性材料が2〜30%の範囲の架橋性基の割合N(R')を有するコポリマーを架橋させることによって得られたものである場合には、その機械的強度は充分であり、充填剤の添加は任意事項となる。
【0049】
本発明に従うイオン伝導性材料は、フィルムの形で得ることができる。1つの実施態様において、このフィルムは流延又は蒸発によって得られる。この場合、この方法は、溶剤中の材料の各種成分の溶液を調製し、得られた溶液をガス抜きし、次いでこれを基材上に流延し、溶剤を蒸発させることによってフィルムを乾燥させることから成る。溶剤としては、例えばアセトニトリル、メタノール、アセトン、ジメチルホルムアミド又はジクロロメタンのような揮発性溶剤を用いることができる。
【0050】
別の実施態様においては、材料の各種成分の乾燥ブレンドを押出操作に付す。
【0051】
架橋した形のコポリマーを含有する材料が望まれる場合には、フィルムを形成させた後に架橋を実施しなければならない。
【0052】
本発明に従うイオン伝導性材料は、2つの電極の間での電解質を介したLi+イオンの移動によって作動する様々な電気化学装置中で、フィルムの形で電解質として用いることができる。前記コポリマーはさらに、電気化学装置の一方の電極又は両方の電極の構成材料に対する伝導性バインダーとして用いることができる。
【0053】
かかる電気化学装置の中では、充電式又は非充電式電池、エレクトロクロミックシステム、光変調システム及びスーパーキャパシタを挙げることができる。
【0054】
本発明に従う電池は、負極と正極とが本発明に従うイオン伝導性材料を含む固体状ポリマー電解質で隔てられて成る。好ましくは、R'が極性基であるU(R')単位を含む本発明に従うコポリマーから得られた架橋材料を用いる。正極は正極活性材料から成る。これはさらに本発明に従うコポリマーを伝導性バインダーとして含有することができる。これはさらに電子伝導性を与える材料を含有することができる。充電式リチウム電池においては、アノードはリチウム金属、リチウム合金又は金属間リチウム化合物のフィルムから成る。リチウムイオン電池においては、負極は、リチウムイオンを可逆的に挿入することができる材料、例えばグラファイトから成る。
【0055】
本発明に従うエレクトロクロミックシステムは、透明電極及び酸化度によって色が変化する活性材料から成る電極を含み、これら2つの電極が本発明に従うイオン伝導性材料から成る伝導性電解質によって隔てられて成る。透明電極は、例えば酸化インジウムスズ(ITO)又はフッ素ドープ酸化スズ(FTO)から成ることができる。もう一方の電極は、活性材料中にLi+イオンが挿入された場合に色が変化するものであり、この活性材料は酸化タングステンWO3であることができる。
【0056】
スーパーキャパシタは、2つの炭素系電極が電解質によって隔てられて成る。本発明に従えば、前記電解質は、架橋した形の本発明に従うコポリマーを含むイオン伝導性材料に1種以上の有機溶剤が添加されて可塑化されたものから成る。可塑化用溶剤としては、例えばアセトニトリルを用いることができる。本発明に従うサルフェート官能基を有する架橋したコポリマーを電解質中に用いた場合、遊離の塩の添加によってカチオンの移動を調節することができ、且つ液体電解質の場合に必要とされるセパレーターの使用を免れることができる。
【0057】
本発明に従うコポリマーはさらに、選択性膜や例えば溶液中に存在するリチウムイオンの量を測定するための膜センサー中の参照(reference)膜を作るために用いることができる。膜を作るためには、O/Li比が10〜30の範囲である本発明に従う材料を用いるのが好ましい。
【0058】
U(R)単位、U(Li)単位及び随意としてのR'置換基がOHを表わすU(R')単位(以下、U(OH)単位と表わす)から成る本発明に従うランダムコポリマー(以下、CP[U(R),U(Li),U(OH)]と表わす)は、次の工程を含む方法によって得ることができる:
1.U(R)単位及びU(EP)単位から成るCP[U(R),U(EP)]コポリマーを調製する工程(ここで、U(EP)単位は−O−CH2−CH(−CH2Cl)−単位である);
2.CP[U(R),U(EP)]コポリマーのU(EP)単位の−CH2Cl基を−CH2OH基に転化させる工程;並びに
3.−CH2OH基の少なくとも一部を−CH2−O−SO3Li基に転化させる工程。
【0059】
CP[U(R),U(EP)]コポリマーの調製は、特にJ. Furukawa, S. Akutsu及びT. Saegusa[Macromol. Chem. 81, 100 (1965)]によって報告された方法に従って、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドとエピクロロヒドリンとを共重合させることによって実施され、この方法は、プロピレンオキシドとエピクロロヒドリンとを共重合させるために(FeCl3/プロピレンオキシド/d−ボルニルエチルエーテル)錯体を用いる。この調製は、トルエン中の溶液状で、例えばトリアルキルアルミニウム及びマロン酸ジエチルタイプの化合物から選択されるVandenbergタイプの重合開始剤の存在下で実施するのが有利である。
【0060】
−CH2Cl基の転化は、H.L. Cohen[Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition, Vol. 13, 1993-2000 (1975)]によって報告されている方法を用いて実施することができる。この方法は、CP[U(R),U(EP)]コポリマーと酢酸カリウムとをメトキシエトキシエタノール中で反応させて成る。前記コポリマーをアルゴン流下で100℃において溶剤中に溶解させる。この混合物に酢酸カリウムを過剰量(化学量論的量に対して3倍)で添加し、これを175℃に加熱し、この温度に6時間保つ。室温に戻した後に、コポリマーをエーテル中に沈殿させ、真空下で乾燥させる。反応式を下に示す。
【化15】
【0061】
別の実施態様に従えば、RがHであるU(R)単位(U(H)と示す)、上で定義したU(Li)単位及び随意としての上で定義したU(OH)単位から成る本発明に従うブロックコポリマー(以下、CP[U(H),U(Li),U(OH)]と示す)は、次の工程を含む方法によって得ることができる:
1.−O-M+反応性末端基を有するポリ(エチレンオキシド)を調製する工程;
2.−O-M+反応性末端基を有するポリ(エチレンオキシド)と保護されたグリシドール(Pグリシドールと示す)とを反応させることによってポリ(エチレンオキシド−co−Pグリシドール)ブロックコポリマーを調製する工程(ここで、M+はアルカリ金属イオンである);
3.保護されたグリシドールから由来する繰返し単位の側部置換基を脱保護して該側部置換基を−CH2OH置換基に転化させる工程;及び
4.この−CH2OH基の少なくとも一部を−CH2−O−SO3Li基に転化させる工程。
【0062】
−O-M+反応性末端基を有するポリ(エチレンオキシド)の調製は、次の反応式に従ってポリ(エチレンオキシド)とMOHとを反応させることによって実施することができる。
【化16】
【0063】
ポリ(エチレンオキシド−co−Pグリシドール)ブロックコポリマーの調製は、次の反応式に従って−O-M+反応性末端基を有するポリ(エチレンオキシド)と保護されたグリシドールとを反応させることによって実施することができる。
【化17】
【0064】
保護されたグリシドールは、例えばグリシドールとエチルビニルエーテルとをp−トルエンスルホン酸の存在下で反応させることによって得ることができる。
【0065】
保護されたグリシドールから由来する繰返し単位の側部置換基は、
・ポリ(エチレンオキシド−co−Pグリシドール)コポリマーとギ酸とを反応させて前記側部置換基のC2H5−O−CH(CH3)−O−末端基及びかくして主鎖の末端の−O-M+基をO=CH−O−に転化させ;
・得られたコポリマーとKOH(2N)とを反応させてO=CH−O−末端基を−O-K+に転化させ;そして
・イオン交換樹脂を用いてK+イオンをH+に置き換える:
ことから成る一連の工程によって脱保護することができる。この一連の工程は、次の反応式によって表わすことができる。
【化18】
【0066】
上記の2つの実施態様(エチレンオキシド又はプロピレンオキシドとエピクロロヒドリンとから得られるランダムコポリマーの調製及びポリエチレンオキシドとグリシドールとから得られるブロックコポリマーの調製)において、−CH2OH基の−CH2−O−SO3Li基への転化は、2工程で実施される。第1工程の際に、無水媒体中で不活性ガス流下でクロロスルホン酸トリメチルシリル(CH3)3Si−SO3Clを添加することによってOH基をエステル化する。こうして−CH2−O−SO3−Si(CH3)3側基を有するシリル化スルホネートエステルの形のポリマーが得られる。第2工程の際に、このシリル化エステル基をLiOHで処理することによって、リチウムサルフェート基−CH2−O−SO3−Liが生成する。
【0067】
第1工程については、酸に対して敏感ではない又はほとんど敏感ではない溶剤、例えばジクロロメタンのような塩素化溶剤を選択する。この反応は発熱性が高いので、コポリマーにクロロスルホン酸トリメチルシリルをゆっくり添加するのが好ましい。水の痕跡を考慮に入れ、僅かに過剰のクロロスルホン酸トリメチルシリルを用いる。第2工程については、蒸留水を溶剤として用いる。LiOH(例えば1M水溶液の形のもの)を添加することによって中和を行い、pH計を用いて酸−塩基滴定をチェックする。中和後に、水を蒸発させ、リチオ化ポリマーを溶解させるアセトニトリルを添加する。無機不純物(LiCl、LiOH、LiSO4)はアセトニトリル中に不溶であり、従って濾過によって除去できる。
【0068】
意図されるコポリマーがU(R)又はU(H)単位及びU(Li)単位のみを含有するものである場合には、すべての−CH2OH基が−CH2−O−SO3Li基に転化するのに充分な量で反応成分を用いる。反応成分を化学量論的量以下で用いることによって−CH2OH基を残すことができ、これはコポリマー中にそのまま残すこともでき、これを介して別のR'基をコポリマーの主鎖に結合させることもできる。
【0069】
R'がエポキシ基又はビニルエーテル基であるコポリマーを得るためには、R'がOH基であるコポリマーを無水媒体中でLiHと反応させて−CH2OH基をリチウムアルコラートに転化させ、次いでこうして生成したアルコラートをそれぞれエピクロロヒドリン又はクロロエチルビニルエーテルと反応させてエポキシタイプ又はビニルエーテルタイプの最終基R'を得る。その反応式は次のものである。
【化19】
【0070】
R'がアクリレート又はメタクリレート基であるコポリマーを得るためには、R'がOH基であるコポリマーをアクリル酸又はメタクリル酸と反応させる。この場合、この反応は、生成する水を除去してエステル化平衡をシフトさせるために減圧下で、特にディーンスターク(Dean-Stark)トラップを用いてベンゼンと共に共沸蒸留することによって、実施される。別法は、アクリル酸又はメタクリル酸の塩化物又は酸無水物を、随意にエステル化反応触媒としてのピリジンの存在下で、用いることから成る。
【0071】
R'がスチリル基であるコポリマーを得るためには、R'がOH基であるコポリマーをLiHと反応させて−CH2OH基をリチウムアルコラートに転化させ、次いでクロロメチルスチレンと反応させる。また、次の反応式に従ってポリマーの−CH2OH基をp−ビニル安息香酸でエステル化することによってスチリル基を導入することもできる。
【化20】
【0072】
置換基R'がニトリル基であるコポリマーは、R'がOHである繰返し単位をLiOHと反応させることによって転化させ、次いで生成したリチウムアルコラートをクロロアセトニトリルと反応させることによって得ることができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例によって例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
例1
【0075】
ポリ(エチレンオキシド−rand−グリシドール)ランダムコポリマーの調製
【0076】
用いた方法は、Cohenらによって報告された方法(上記)と同様だった。
【0077】
500ミリリットルの三つ口フラスコ中にジエチレングリコールモノメチルエーテル200ミリリットルを導入し、次いでこれをアルゴン流下で撹拌しながら100℃に加熱した。次に、塩素官能基のモル数が0.0であるポリ(エチレンオキシド−co−エピクロロヒドリン)コポリマー10gを導入した。このコポリマーは、次の半展開式(I)で表わすことができる。
【化21】
【0078】
コポリマー(I)が溶解した後に、酢酸カリウム5.88g(0.06モル)を添加し、この反応混合物を175℃に加熱し、この温度に6時間保った。次に、この反応混合物を室温にし、エーテル中で沈殿させた。得られたコポリマーを濾過によって分離し、40℃において12時間真空乾燥した。これは、数を基準としてオキシエチレン単位(前記一般式のU(R)単位に相当)90%及びU(OH)単位の形のU(R')単位10%を含んでいた。これは、次の半展開式(II)で表わすことができる。
【化22】
【0079】
例2
【0080】
ポリ(エチレンオキシド−rand−リチウムグリシジルサルフェート)ランダムコポリマーの調製
【0081】
ジクロロメタン250ミリリットル及びAmberlist 21(登録商標)樹脂1.93gを含有させた500ミリリットルの三つ口フラスコ中にコポリマー(II)3.63g(OH基7.71×10-3モルに相当)を導入した。このフラスコを氷浴中に入れ、合成の全期間を通じてアルゴン流をフラスコ中に流した。
【0082】
滴下漏斗にジクロロメタン40ミリリットル及びクロロスルホン酸トリメチルシリル1.25ミリリットル(化学量論的量に対して5%過剰に相当)を導入し、次いでこの溶液を前記三つ口フラスコに滴下した。クロロスルホン酸トリメチルシリルの添加が完了した後に、この混合物をアルゴン流下に1時間放置した。次に、真空回転式蒸発器を用いて溶剤を除去し、残渣を蒸留水100ミリリットル中に取り出し、次いで得られた溶液を1モル/リットルLiOH水溶液を添加することによって中和した。LiOHの添加はpH計を用いて監視し、蒸留水のpH以上のpHが得られた時にその添加を停止した。
【0083】
次いで真空回転式蒸発器を用いて水を除去し、残渣をアセトニトリル中に取り出し、得られた溶液を遠心分離した。この溶液を次いで、平均多孔度1μmのPVDFフィルター上で2回濾過し、次いで平均多孔度0.45μmのPVDFフィルター上で1回濾過し、そして平均多孔度0.22μmのPVDFフィルター上で1回濾過した。こうして得られたコポリマーをエーテル中に沈殿させ、次いでビューヒ真空チャンバー中で40℃において乾燥させ、最後にグローブボックス中にアルゴン下で貯蔵した。得られたターポリマー(III)は、数を基準としてオキシエチレン単位(前記一般式のU(R)単位に相当)90%及びU(Li)単位10%を含んでいた。これは、次の半展開式(III)で表わすことができる。
【化23】
【0084】
例3
【0085】
ポリ(エチレンオキシド−rand−リチウムグリシジルサルフェート−rand−グリシドール)ランダムコポリマーの調製
【0086】
エチレングリコール単位の一部だけがリチウムサルフェート化エチレングリコール単位に転化するように反応成分のそれぞれの量を変えて、例2の操作条件を数回繰り返した。操作条件の詳細及び各種試験の結果を下記の表に与える:nOHはコポリマー(II)によって提供されるOHのモル数を表わし、%U(Li)はオキシエチレン単位以外の全単位に対するU(Li)単位の割合を表わし、%U(OH)はオキシエチレン単位以外の全単位に対するU(OH)単位の割合を表わす。
【0087】
【表1】
【0088】
得られた各種コポリマーの半展開式を以下に与える。
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【0089】
例4
【0090】
ポリ(エチレンオキシド−rand−リチウムグリシジルサルフェート−rand−シアノメチルグリシジルエーテル) ランダムコポリマーの調製
【0091】
250ミリリットルのフラスコ中に、コポリマーVI1g(OH1.35×10-3モル)、水酸化リチウム0.3g、水5ミリリットル及びジクロロメタン60ミリリットルを導入した。この反応混合物を60℃に1時間加熱し、次いでジクロロメタンと水との共沸蒸留を実施した。水を完全に除去した後に、反応混合物をアルゴン雰囲気下で室温まで冷却した。次に、クロロアセトニトリル0.1ミリリットルを添加した。30分後に、反応混合物を60℃に加熱し、この温度に24時間保った。冷却後に、得られた溶液を遠心分離し、次いで平均多孔度1μmのPVDFフィルター上で2回濾過し、平均多孔度0.45μmのPVDFフィルター上で1回濾過し、そして平均多孔度0.22μmのPVDFフィルター上で1回濾過した後に、ジエチルエーテル中に沈殿させた。沈殿したコポリマーをビューヒ真空チャンバー中で40℃において乾燥させ、最後にグローブボックス中にアルゴン下で貯蔵した。得られたポリマー(VII)は、数を基準としてオキシエチレン単位(前記一般式のU(R)単位に相当)90%、U(Li)単位3.3%及びR'がCNであるU(R')単位6.6%を含んでいた。これは、次の半展開式で表わすことができる。
【化28】
【0092】
例5
【0093】
架橋コポリマーの調製
【0094】
コポリマーIV、V及びVIを、OH基と1,6−ジイソシアナトヘキサン(HMDI)との反応によって架橋させた。
【0095】
グローブボックス中でアルゴン雰囲気下で操作して、ジクロロメタン中のコポリマーの溶液を調製し、触媒としてジブチルスズジラウレートを添加し、次いでテフロン被覆ガラス表面上のテフロン被覆された輪状のガラスによって境界画定された部分にこの溶液を注いだ。ジクロロメタンを蒸発させた後に、系を室温にし、自然に48時間架橋を起こさせた。
【0096】
各コポリマーに対して特異的な条件を、下記の表に与える。
【0097】
【表2】
【0098】
コポリマーIV〜VIを架橋させることによって得られた材料の不溶分含有率を測定し、コポリマーII及びコポリマーIIIを架橋させることによって得られた材料の不溶分含有率と比較した。未架橋コポリマーはジクロロメタン中に可溶である。不溶分含有率は、次の操作手順を用いて測定した。質量miのフィルムの形の架橋コポリマーを採取してジクロロメタン中に12時間浸漬し、このフィルムを次いでフラスコから取り出し、70℃のオーブン中に入れ、次いで計量し、最終質量をmfとする。100×mf/miが不溶分含有率となる。
【0099】
図2に、架橋したOH官能基の含有百分率(%OH)(これはここでは、架橋の際に導入したHMDIの量を考慮に入れた架橋性官能基の百分率に相当する)の関数としての不溶分含有率Txの変化を示す。架橋材料の不溶分含有率は未架橋コポリマーの架橋性OH官能基の割合と共に増大することがわかる。架橋性官能基の割合の影響を検証するためにコポリマーIV〜VIから得られた架橋材料の弾性率を測定し、コポリマーIII(架橋性基を持たないので架橋可能ではない)の弾性率と比較した。図3に、架橋したOH官能基の百分率(%OH)の関数としての100℃における弾性率Me(MPa)の変化を示す。弾性率は、未架橋コポリマーIIIについては0であり、架橋したOH官能基の数と共に、即ちウレタン橋の数と共に、増大する。
【0100】
例6
【0101】
イオン伝導率の測定
【0102】
各種材料のイオン伝導率を、サーモスタット調温型密閉容器中で90℃から20℃まで10℃ごとに測定した。図4〜7は、それぞれの試験した材料についての温度の関数としての伝導率の変化を示す。各図において、伝導率C(S/cmで表わす)をy軸上にプロットし、温度は1000/Tの形(TはK-1)でx軸上にプロットする。次の表は、試験した材料、該材料のO/Li比、様々な温度における伝導率及び伝導率の変化を示す図の番号を示す。
【0103】
【表3】
【0104】
これらの結果は、コポリマー中のイオン性基の数の低減(これは、すべてのことが等しい場合に、材料のイオン伝導率の低下をもたらす)がOH極性基の存在によって補償され、これがアニオンに関する溶媒和力を高めるということを示す。これは、イオン性基の解離を促進し、かくして伝導率を高める効果を有する。これらはまた、コポリマーの架橋がイオン伝導率を無視できないファクターだけ低下させることも示す。
【0105】
例7
【0106】
イオン伝導率に対する可塑剤の影響
【0107】
コポリマーIIIとモル質量500のポリエチレングリコールジメチルエーテル(PEG500)とのPEG500が10質量%を占める混合物から成る材料のイオン伝導率を測定した。この伝導率をコポリマーIII単独のものと比較した。
【0108】
結果を図8に示す。図中、▲で示した曲線はコポリマーIII/PEG500混合物に関し、◆で示した曲線はコポリマーIIIに関する。可塑剤を添加すると伝導性が改善されることがわかる。この結果は、可塑剤の添加が材料の粘度を低下させ、Li+イオンの移動性を増進し、結果として伝導性を増進するという事実から由来する。
【0109】
例8
【0110】
イオン伝導率に対する錯化剤の影響
【0111】
コポリマーIIIとスパルテインとのスパルテインが29質量%を占める混合物(リチウムサルフェート官能基の数とスパルテイン分子の数とのモル比1:1)から成る材料のイオン伝導率を測定した。この伝導率を錯化剤無しで用いたコポリマーIIIのものと比較した。
【0112】
結果を図9に示す。図中、▲で示した曲線はコポリマーIII/スパルテイン混合物に関し、◆で示した曲線はコポリマーIIIに関する。錯化剤を添加すると伝導性が改善されることがわかる。この結果は、錯化剤の添加がおそらく塩の解離を増大させ、また、おそらく材料の粘度を低下させるという事実から由来する。用いた錯化剤の可塑化性状がLi+イオンの移動性を増進し、結果として伝導性を増進する。
【0113】
例9
【0114】
イオン伝導率に対する錯化剤の影響
【0115】
コポリマーIIIとテトラアザシクロテトラデカン(TMTAC)とのTMTACが31.5質量%を占める混合物(リチウムサルフェート官能基の数とTMTACの数とのモル比1:1)から成る材料のイオン伝導率を測定した。この伝導率をコポリマーIII単独のものと比較した。
【0116】
結果を図10に示す。図中、▲で示した曲線はコポリマーIII/MTAC混合物に関し、◆で示した曲線はコポリマーIIIに関する。錯化剤を添加すると伝導性が改善されることがわかる。この結果は、錯化剤の添加がおそらく塩の解離を増大させ、また、おそらく材料の粘度を低下させるという事実から由来する。用いた錯化剤の可塑化性状がLi+イオンの移動性を増進し、結果として伝導性を増進する。
【0117】
例10
【0118】
ポリ[(エチレンオキシド)−block−(グリシドール−rand−リチウムグリシジルサルフェート)]コポリマーの調製
【0119】
保護されたグリシドールの調製
【0120】
冷凍カラムを備えた500ミリリットルの三つ口フラスコ中にグリシドール66.24ミリリットル(74g/1モル)を導入し、次いでエチルビニルエーテル(EVE)204ミリリットル(144 g/2.08モル)を導入した。電磁撹拌機で撹拌しながら、p−トルエンスルホン酸(pTSA)1 g(0.058モル)を添加し、次いで混合物を2時間40分加熱還流した。冷却後、この溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液約215ミリリットルで中和した。有機相を蒸留水で2回洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。残留EVEを蒸留(T=34℃;P=760mmHg)によって除去し、保護されたグリシドール(Pグリシドール)を真空蒸留(T=50℃;P=7mmHg)によって精製した。中心留分だけを採取し、不純物はフラスコ中やトップ留分中に残した。
【0121】
この未精製生成物はオレンジ色を有していたが、蒸留後に透明になった。PGL140gが回収された。収率約96%。
【0122】
マクロ開始剤(macroinitiator)の調製
【0123】
次の式に従ってコポリマー合成のためにマクロ開始剤を調製した。
【化29】
【0124】
蒸留塔を備えた三つ口フラスコ中にトルエン100ミリリットル、ポリエチレンオキシド(PEO4000)2g(5×10-4モル)及び水酸化セシウム0.149?g(10-3モル)を導入した。この混合物を電磁撹拌機で撹拌しながら80℃において3時間反応させた。生成した水をトルエンとの共沸蒸留によって除去した。
【0125】
400〜10000g/モルの範囲の様々なモル質量を有するマクロ開始剤を合成した。対応するnの値を下記の表に示す。
【0126】
ブロックコポリマーの合成
【0127】
上で調製したマクロ開始剤を用いて、様々な数nのオキシエチレン単位及び様々な数mのPグリシドール単位を含むB1〜B8で示されるポリ(エチレンオキシド−block−ポリpグリシドール)ブロックコポリマーを合成した。これらコポリマーを下記の表に示す。「Pグリシドール単位」とは、保護されたグリシドールの開口部(ouverture)に相当する単位を表わす。
【0128】
【表4】
【0129】
蒸留塔を備えた250ミリリットルのフラスコ中にトルエン100ミリリットル及びPGL7.3 g(5×10-2モル)を導入し、次いで電磁撹拌機で撹拌しながら共沸混合物30ミリリットルを蒸留し(大気圧;T=110℃)、塩化カルシウムトラップによって空気の湿分から混合物を保護した。次いでこの溶液をアルゴン下で80℃まで冷ました。
【0130】
前に調製したマクロ開始剤を上記の溶液に添加した。温度を100℃に上昇させ、この溶液をアルゴン雰囲気下で5時間反応させた。次いで溶剤を蒸留によって除去した。CH2−CH2−O繰返し単位のモル濃度対保護されたグリシドール単位のモル濃度の比を適宜選択することによって、所望のトリブロックコポリマーを得ることが可能である。例えば、n=45且つm=100のトリブロックコポリマーを得るためには、質量2000のポリ(エチレンオキシド)ジオール濃度0.01モル/リットル(即ちCH2−CH2−O単位濃度0.45モル/リットル)及び保護されたグリシドール濃度2モル/リットルを用いる。
【0131】
得られるポリマーの色及び粘度は、用いたマクロ開始剤に応じて変化した。
【0132】
コポリマーをH1−NMR及びC13−NMRで特徴付けし、モノマーのエポキシ環に相当するピーク(H1、C13:60.63 ppm、50.63 ppm)の低減及び続いての消失を観察することによって、反応の進行を監視することができた。
【0133】
また、Ultrastyragelカラムを用いたTHF中での25℃におけるGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)によっても反応生成物を分析した。未精製生成物のGPC分析は、反応生成物が1分布又は2分布を有し得ることを示した。2分布の生成は、重合の間に付随的に起こる連鎖移動反応から由来する。得られたコポリマーの一部はヘプタン中に沈殿し、残りは溶解した。ヘプタン中に分離した2つの画分は、1H−NMR特徴付けによって分析することができた。可溶性部分はポリPグリシドールPPGLホモポリマーに相当するものであり、不溶性物質は所期のPPGL−POE−PPGLトリブロックコポリマーに相当するものだった。このホモポリマー及びコポリマーは相溶性だったので、リチウム電池用、エレクトロクロミックシステム用又はスーパーキャパシタ用の電解質を調製するためにそのブレンドをそのまま用いることができ、電解質の性能特徴がそれによって影響を受けることない。
【0134】
「保護されたグリシドール」基の−CH2OH基への転化
【0135】
コポリマーB1を15g含有させたフラスコ中にギ酸100ミリリットルを導入した。この酸とB1とを20℃において20分間反応させた。次いで過剰分の酸を真空蒸発させた(Tamb、P=4〜5mmHg)。次に、THF120ミリリットル及びメタノール70ミリリットルを添加し、次いで2MのKOHを添加することによってこの溶液のpHを12にした。pH計を用いてKOHの添加を監視し、pHが12になった時に添加を停止した。
【0136】
次いで真空下で溶剤を除去した(Tamb;P=4〜5mmHg)。ポリマーの水溶液をイオン(H+)交換カラム(2M塩酸で再生したカチオン樹脂)に通した。次いで真空回転式蒸発器を用いて水を除去し、ポリマーを脱保護し、PGL又はPGL−POE−PGLを真空下で乾燥させた(Tamb、P=4〜5mmHg)。
【0137】
OH基の一部のリチウムスルホネート基による置換
【0138】
ジメチルスルホキシド100ミリリットルを含有させた500ミリリットルの三つ口フラスコ中にコポリマーB7を10g(OH基7.71×10-3モルに相当)導入した。次に、このフラスコを氷浴中に入れ、合成の期間を通じてフラスコ中にアルゴン流を通した。ジメチルスルホキシド80ミリリットル及びクロロスルホン酸トリメチルシリル16.25ミリリットル(化学量論的量に対して5%過剰に相当)を導入するために滴下漏斗を用い、次いでこの溶液を前記三つ口フラスコに滴下した。クロロスルホン酸トリメチルシリルの添加が完了した後に、次いでこの混合物をアルゴン流下に1時間置いた。次に、真空回転式蒸発器を用いて溶剤を除去し、残渣を蒸留水100ミリリットル中に取り出し、得られた溶液を次いで1モル/リットルLiOH水溶液を添加することによって中和した。LiOHの添加はpH計を用いて監視し、pHが7より大きくなった時に添加を停止した。
【0139】
次いで真空回転式蒸発器を用いて水を除去し、残渣をアセトニトリル中に取り出し、得られた溶液を遠心分離し、次いで微孔度1μmのPVDFフィルター上で2回濾過し、次いで微孔度0.45μmのPVDFフィルター上で1回濾過し、そして微孔度0.22μmのPVDFフィルター上で1回濾過した。こうして得られたコポリマーをエーテル中に沈殿させ、次いでビューヒ真空チャンバー中で40℃において乾燥させ、最後にグローブボックス中にアルゴン下で貯蔵した。
【0140】
例11
【0141】
ポリ(エチレンオキシド−rand−リチウムグリシドールサルフェート−rand−シアノメチルグリシドールエーテル)ランダムコポリマーの調製
【0142】
250ミリリットルのフラスコ中に例10の最後に得られたコポリマー1g、水酸化カリウム5ミリリットル(0.01モル)及びトルエン50ミリリットルを導入した。減圧下でトルエンとの共沸蒸留を実施した(T=50℃;P=30〜35mmHg)。トルエンを完全に除去した後に、ナトリウム上で予め乾燥させたTHF40ミリリットルを添加し、この溶液をアルゴン雰囲気下に置き、55℃に加熱した。次に、クロロアセトニトリル0.63ミリリットル(0.01モル)を導入し、その後に反応混合物を加熱還流した(T=60℃)。次いで真空回転式蒸発器を用いて溶剤を除去した。得られたコポリマーは、上記の式VIIIで表わすことができる。
【0143】
例12
【0144】
ポリ(エチレンオキシド−rand−グリシドール)ランダムコポリマーの合成
【0145】
第1工程の際に、ポリ[(エチレンオキシド)−rand−Pグリシドール]ランダムコポリマーを調製した。
【0146】
重合は、100バールの圧力に耐えられるステンレス鋼製オートクレーブ反応器中で実施した。磁気軸受によって機械的撹拌を行い、好適な加熱ジャケットによって加熱を行った。電磁弁によって調節される水冷循環路によって反応器を温度調節した。反応成分は、グローブボックス中でアルゴンで予め満たしたステンレス鋼製気密室から導入した。反応用の溶剤であるTHFは、水素化カルシウム(CaH2)上で前もって蒸留した。これは、反応溶剤として用いただけではなく、使用前に反応器及び気密室をゆすぐのにも用いた。反応はアルゴン下で実施し、反応器の圧力は反応の間に2バールから10バールの間で変化した。
【0147】
質量400のポリ(エチレンオキシド)ジオールから調製したセシウムジアルコラートを用いた。最初にTHF150ミリリットル中のマクロ開始剤0.53g(即ち7.9×10-4モル)を気密室中に導入した。エチレンオキシド60g(1.36モル)及び保護されたグリシドール58g(0.4モル)を相次いで添加した。100℃において12時間の反応の後に、混合物を室温に戻し、水5ミリリットルを添加することによって反応を失活させた。
【0148】
得られたコポリマーSP1はオキシエチレン単位及び保護されたグリシドール単位を含み、そのGPC分析は、ポリスチレン当量で表わした重量平均モル質量Mwが20000g/モル程度であることを示した。
【0149】
C13−NMR及びH1−NMR分析は、オキシエチレン単位特有のピーク(C13において70.5ppm(CH2−CH2−O);H1において3.54ppm(CH2−CH2−O))並びに保護されたグリシドール単位特有のピーク(C13において99.5ppm(O−CH−O)、19.51ppm(CH3−CH<)及び15.04ppm(CH3−CH2−)、並びにH1において4.6ppm(O−CH−O)、1.2ppm(CH3−CH<)及び1.1ppm(CH3−CH2−)の存在を示した(2.6の比)。
【0150】
第2工程の際に、ポリマーSP1の「保護されたグリシドール」基を−CH2OH基に転化させた。
【0151】
コポリマーSP1を15g含有させたフラスコ中にギ酸100ミリリットルを導入した。この酸とSP1とを20℃において20分間反応させた。次いで過剰分の酸を真空蒸発させた(Tamb、P=4.5mmHg)。次に、THF120ミリリットル及びメタノール70ミリリットルを添加し、次いで2MのKOHを添加することによってこの溶液のpHを12にした。pH計を用いてKOHの添加を監視し、pHが12になった時に添加を停止した。
【0152】
次いで真空下で溶剤を除去した(Tamb;P=4〜5mmHg)。ポリマーの水溶液をプロトン(H+)交換樹脂(2M塩酸で前もって再生したカチオン樹脂)で処理した。次いで真空回転式蒸発器を用いて水を除去し、脱保護されたコポリマーS1を真空下で乾燥させた(Tamb、P=4〜5mmHg)。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を用いた縮合についての反応式である。
【図2】架橋したOH官能基の含有百分率(%OH)の関数としての不溶分含有率Txの変化を示すグラフである。
【図3】架橋したOH官能基の百分率(%OH)の関数としての100℃における弾性率Me(MPa)の変化を示すグラフである。
【図4】試験した材料についての温度の関数としての伝導性の変化を示すグラフである。
【図5】試験した材料についての温度の関数としての伝導性の変化を示すグラフである。
【図6】試験した材料についての温度の関数としての伝導性の変化を示すグラフである。
【図7】試験した材料についての温度の関数としての伝導性の変化を示すグラフである。
【図8】イオン伝導性に対する可塑剤の影響を示すグラフである。
【図9】イオン伝導性に対する錯化剤の影響を示すグラフである。
【図10】イオン伝導性に対する錯化剤の影響を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎖が
・式−O−CH2−CHR−(ここで、RはH又はCH3である)を満たす繰返し単位U(R);
・式−O−CH2−CH(−CH2−O−SO3-Li+)−を満たす繰返し単位U(Li);
・随意としての式−O−CH2−CH(−CH2R')−(ここで、R'は官能基である)を満たす繰返し単位U(R'):
を含むことを特徴とするコポリマー。
【請求項2】
コポリマー中の単位U(R)、U(Li)及びU(R')のそれぞれのモル割合N(R)、N(Li)及びN(R')が、
70≦N(R)≦95、
2.5≦N(Li)≦15、及び
0≦N(R')≦20
であることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
各種繰返し単位がランダムに分布されたことを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項4】
U(R)単位から成る1個以上のセグメント、U(Li)単位から成る1個以上のセグメント及び随意としてのU(R')単位から成る1個以上のセグメントを含むことを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項5】
すべての置換基R'が同じ官能基を表わすことを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項6】
U(R')単位の置換基R'のすべてが同じ官能基を表わすわけではないことを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項7】
官能基R'がコポリマーを架橋させることができる基から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項8】
官能基R'が極性基から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項9】
R'がOH;エポキシ基;アリルエーテル基CH2=CH−CH2−O−;メタリルエーテル基CH2=C(CH3)−CH2−O−;R1CH=CH2−O−又はR1CH=CR2−O−CH2−CH2−O−タイプのビニルエーテル基(ここで、R1及びR2は互いに独立的にH、アルキル、アルケニル又はアリール基を表わす);アクリレート基CH2=CH−C(O)−O−;メタクリレート基CH2=C(CH3)−C(O)−O−;スチレニル基CH2=CH(Ph)−CH2−;ビニルベンゾエート基CH2=CH(Ph)C(O)−O−;シンナメート基(Ph)−CH=CH−C(O)−O−;並びに−O−CO−NH−R3−Si(OR4)3基(ここで、R4は1〜3個の炭素原子を有するアルキル基であり、R3はアルキレン基である)から選択されることを特徴とする、請求項7に記載のコポリマー。
【請求項10】
R'が−CN、−OH、環状カーボネート基、スルホラン基、スルホキシド基、スルホン基及びスルホンアミド基から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のコポリマー。
【請求項11】
U(R)単位、U(Li)単位及び随意としてのU(OH)単位(R'がOHであるU(R')単位)から成る請求項3に記載のコポリマーの製造方法であって、
a.U(R)単位及びU(EP)単位から成るコポリマーを調製する工程(ここで、U(EP)単位は−O−CH2−CH(−CH2Cl)−単位である);
b.前記U(EP)単位の−CH2Cl基を−CH2OH基に転化させる工程;並びに
c.前記−CH2OH基の少なくとも一部を−CH2−O−SO3Li基に転化させる工程:
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
U(H)単位(RがHであるU(R)単位)、U(Li)単位及び随意としてのU(OH)単位(R'がOHであるU(R')単位)から成る請求項4に記載のコポリマーの製造方法であって、
a.−O-M+反応性末端基を有するポリ(エチレンオキシド)を調製する工程(ここで、M+はアルカリ金属イオンである);
b.前記の−O-M+反応性末端基を有するポリ(エチレンオキシド)と保護されたグリシドール(Pグリシドールと示す)とを反応させることによってポリ(エチレンオキシド−co−Pグリシドール)ブロックコポリマーを調製する工程;
c.前記の保護されたグリシドールから由来する繰返し単位の側部置換基を脱保護して該側部置換基を−CH2OH置換基に転化させる工程;及び
d.この−CH2OH基の少なくとも一部を−CH2−O−SO3Li基に転化させる工程:
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項13】
−CH2OH基の−CH2−O−SO3Li基への転化を2工程で、
・第1工程の際に、無水媒体中で不活性ガス流下でクロロスルホン酸トリメチルシリル(CH3)3Si−SO3Clを添加することによってOH基をエステル化して、−CH2−O−SO3−Si(CH3)3側基を有するシリル化エステルの形のポリマーを得て;
・第2工程の際に、前記シリル化エステル基をLiOHで処理することによって−CH2−O−SO3−Li基を得る:
ことによって実施することを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
すべての−CH2OH基が−CH2−O−SO3Li基に転化するのに充分な量で反応成分を用いて、U(OH)単位を含有しないコポリマーを得ることを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項15】
−CH2OH基を−CH2−O−SO3Liに転化させるための化学量論的量以下の量で反応成分を用いて、U(OH)単位を含むコポリマーを得ることを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項16】
U(OH)繰返し単位を含むコポリマーとLiHとを無水媒体中で反応させて−CH2OH基をリチウムアルコラートに転化させ、次いでこうして生成したアルコラートをそれぞれエピクロロヒドリン又はクロロエチルビニルエーテルと反応させてエポキシタイプ又はビニルエーテルタイプの最終基R'を得ることを特徴とする、R'がエポキシ基又はビニルエーテル基であるコポリマーを調製するための請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
U(OH)繰返し単位を含むコポリマーとアクリル酸若しくはメタクリル酸又はアクリル酸若しくはメタクリル酸の塩化物若しくは酸無水物とを随意にエステル化反応触媒としてのピリジンの存在下で反応させることを特徴とする、R'がアクリレート又はメタクリレート基であるコポリマーを調製するための請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
U(OH)繰返し単位を含むコポリマーをLiHと反応させて−CH2OH基をリチウムアルコラートに転化させ、次いでクロロメチルスチレンと反応させること、又は前記コポリマーをp−ビニル安息香酸と反応させることを特徴とする、R'がスチリル基であるコポリマーを調製するための請求項15に記載の製造方法。
【請求項19】
U(OH)繰返し単位を含むコポリマーをLiOHと反応させ、次いでクロロアセトニトリルと反応させることを特徴とする、R'がニトリル基であるコポリマーを調製するための請求項15に記載の製造方法。
【請求項20】
請求項7に記載のコポリマーを架橋させることによって得られる架橋材料。
【請求項21】
主鎖としての−O−CH2−CHR−繰返し単位(ここで、RはH又はCH3である)、−O−CH2−CH(−CH2−O−SO3-M+)−繰返し単位(ここで、Mはアルカリ金属を表わす)、随意としての−O−CH2−CH(R')−繰返し単位(ここで、R'は極性基である)及び−O−CH2−CH(−X−)−繰返し単位(ここで、−X−は主鎖の間の連結基である)から成る、請求項20に記載の架橋材料。
【請求項22】
連結鎖がウレタン橋−CO−NH−〜〜〜〜−NH−CO−であることを特徴とする、請求項21に記載の架橋材料。
【請求項23】
U(OH)単位を含む請求項1に記載のコポリマーとジイソシアネートO=C=N−〜〜〜〜−N=C=Oとの間の縮合反応を実施することから成ることを特徴とする、請求項22に記載の架橋材料の製造方法。
【請求項24】
前記ジイソシアネートがアルキレンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、オリゴオキシアルキレン−α,ω−ジイソシアネート及びPTHFジイソシアネートより成る群から選択されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
連結基Xが次式:
【化1】
を満たすことを特徴とする、請求項21に記載の架橋材料。
【請求項26】
U(OH)単位を有する請求項1に記載のコポリマーのOH基を3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランと反応させ、次いで該シランが有するエトキシ基の酸触媒加水分解を実施することから成ることを特徴とする、請求項25に記載の架橋材料の製造方法。
【請求項27】
連結基Xがシリカネットワークであることを特徴とする、請求項21に記載の架橋材料。
【請求項28】
U(OH)単位を有する請求項1に記載のコポリマーのOH基を3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランと反応させ、次いでOEt官能基の縮合−加水分解を実施することから成ることを特徴とする、請求項27に記載の架橋材料の製造方法。
【請求項29】
結合基Xが次式:
【化2】
のセグメントA及びBのいずれかであることを特徴とする、請求項21に記載の架橋材料。
【請求項30】
UV下で且つ光開始剤の存在下で、結合基Aを得るためにはR'がビニルエーテル基である請求項1に記載のコポリマーを、そして結合基Bを得るためにはR'が次式:
【化3】
のエポキシエーテル基である請求項1に記載のコポリマーを、カチオン架橋させることから成ることを特徴とする、請求項29に記載の架橋材料の製造方法。
【請求項31】
次式:
【化4】
(ここで、YはO又はNR5を表わし、
R5はH、アルキル、アリール、オリゴシロキサン又はN−アルキルマレイミド、N−アリールマレイミド若しくはN−オリゴシリルマレイミドを表わし、
nは繰返し単位の数を表わす)
を満たす、請求項21に記載の架橋材料。
【請求項32】
UV下で且つ光開始剤の存在下で、R'がビニルエーテル基である請求項1に記載のコポリマーを架橋させることから成り、この架橋を次式:
【化5】
の内の1つを満たすマレイミド、無水マレイン酸若しくはビスマレイミドの存在下又はマレイミド及びビスマレイミドの混合物の存在下で実施することを特徴とする、請求項31に記載の架橋材料の製造方法。
【請求項33】
結合基Xが次式:
【化6】
(ここで、R6は
【化7】
である)
で表わされることを特徴とする、請求項21に記載の架橋材料。
【請求項34】
R'がアクリレート、メタクリレート、シンナメート又はスチレニル基を表わす請求項1に記載のコポリマーをUV照射又は熱ラジカル架橋に付すことから成ることを特徴とする、請求項33に記載の架橋材料の製造方法。
【請求項35】
請求項1に記載のコポリマー又は請求項20に記載の架橋材料から本質的に成る、イオン伝導性材料。
【請求項36】
前記コポリマー又は架橋材料のO/Li比が40未満である、請求項35に記載のイオン伝導性材料。
【請求項37】
(CF3SO2)2NLi(LiTFSI)、(CF3SO2)2CHLi(LiTFSM)、(CF3SO2)3CLi(LiTTFSM)、CF3SO3Li(TFLi)、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiBOB、LiFSI又はLiIから選択されるリチウム塩を含有することを特徴とし、また、化合物(NC−CH2−CH2)2NCO−CF(CF3)−SO3Li及び(CH3O−CH2−CH2)2NCO−CF(CF3)−SO3Liを挙げることもできる、請求項35に記載のイオン伝導性材料。
【請求項38】
前記コポリマー又は架橋材料が極性置換基R'を有することを特徴とする、請求項35に記載のイオン伝導性材料。
【請求項39】
液状非プロトン性極性溶剤から選択される可塑剤を含有することを特徴とする、請求項35に記載のイオン伝導性材料。
【請求項40】
2つの電極の間に電解質を含む電気化学装置であって、前記電解質が請求項35に記載のイオン伝導性材料であることを特徴とする、前記電気化学装置。
【請求項41】
O/Li比が10〜30の範囲である請求項1に記載のコポリマーのフィルムから成る、選択性膜。
【請求項42】
O/Li比が10〜30の範囲である請求項1に記載のコポリマーのフィルムから成る、膜センサー用の参照膜。
【請求項1】
鎖が
・式−O−CH2−CHR−(ここで、RはH又はCH3である)を満たす繰返し単位U(R);
・式−O−CH2−CH(−CH2−O−SO3-Li+)−を満たす繰返し単位U(Li);
・随意としての式−O−CH2−CH(−CH2R')−(ここで、R'は官能基である)を満たす繰返し単位U(R'):
を含むことを特徴とするコポリマー。
【請求項2】
コポリマー中の単位U(R)、U(Li)及びU(R')のそれぞれのモル割合N(R)、N(Li)及びN(R')が、
70≦N(R)≦95、
2.5≦N(Li)≦15、及び
0≦N(R')≦20
であることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
各種繰返し単位がランダムに分布されたことを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項4】
U(R)単位から成る1個以上のセグメント、U(Li)単位から成る1個以上のセグメント及び随意としてのU(R')単位から成る1個以上のセグメントを含むことを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項5】
すべての置換基R'が同じ官能基を表わすことを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項6】
U(R')単位の置換基R'のすべてが同じ官能基を表わすわけではないことを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項7】
官能基R'がコポリマーを架橋させることができる基から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項8】
官能基R'が極性基から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項9】
R'がOH;エポキシ基;アリルエーテル基CH2=CH−CH2−O−;メタリルエーテル基CH2=C(CH3)−CH2−O−;R1CH=CH2−O−又はR1CH=CR2−O−CH2−CH2−O−タイプのビニルエーテル基(ここで、R1及びR2は互いに独立的にH、アルキル、アルケニル又はアリール基を表わす);アクリレート基CH2=CH−C(O)−O−;メタクリレート基CH2=C(CH3)−C(O)−O−;スチレニル基CH2=CH(Ph)−CH2−;ビニルベンゾエート基CH2=CH(Ph)C(O)−O−;シンナメート基(Ph)−CH=CH−C(O)−O−;並びに−O−CO−NH−R3−Si(OR4)3基(ここで、R4は1〜3個の炭素原子を有するアルキル基であり、R3はアルキレン基である)から選択されることを特徴とする、請求項7に記載のコポリマー。
【請求項10】
R'が−CN、−OH、環状カーボネート基、スルホラン基、スルホキシド基、スルホン基及びスルホンアミド基から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のコポリマー。
【請求項11】
U(R)単位、U(Li)単位及び随意としてのU(OH)単位(R'がOHであるU(R')単位)から成る請求項3に記載のコポリマーの製造方法であって、
a.U(R)単位及びU(EP)単位から成るコポリマーを調製する工程(ここで、U(EP)単位は−O−CH2−CH(−CH2Cl)−単位である);
b.前記U(EP)単位の−CH2Cl基を−CH2OH基に転化させる工程;並びに
c.前記−CH2OH基の少なくとも一部を−CH2−O−SO3Li基に転化させる工程:
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
U(H)単位(RがHであるU(R)単位)、U(Li)単位及び随意としてのU(OH)単位(R'がOHであるU(R')単位)から成る請求項4に記載のコポリマーの製造方法であって、
a.−O-M+反応性末端基を有するポリ(エチレンオキシド)を調製する工程(ここで、M+はアルカリ金属イオンである);
b.前記の−O-M+反応性末端基を有するポリ(エチレンオキシド)と保護されたグリシドール(Pグリシドールと示す)とを反応させることによってポリ(エチレンオキシド−co−Pグリシドール)ブロックコポリマーを調製する工程;
c.前記の保護されたグリシドールから由来する繰返し単位の側部置換基を脱保護して該側部置換基を−CH2OH置換基に転化させる工程;及び
d.この−CH2OH基の少なくとも一部を−CH2−O−SO3Li基に転化させる工程:
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項13】
−CH2OH基の−CH2−O−SO3Li基への転化を2工程で、
・第1工程の際に、無水媒体中で不活性ガス流下でクロロスルホン酸トリメチルシリル(CH3)3Si−SO3Clを添加することによってOH基をエステル化して、−CH2−O−SO3−Si(CH3)3側基を有するシリル化エステルの形のポリマーを得て;
・第2工程の際に、前記シリル化エステル基をLiOHで処理することによって−CH2−O−SO3−Li基を得る:
ことによって実施することを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
すべての−CH2OH基が−CH2−O−SO3Li基に転化するのに充分な量で反応成分を用いて、U(OH)単位を含有しないコポリマーを得ることを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項15】
−CH2OH基を−CH2−O−SO3Liに転化させるための化学量論的量以下の量で反応成分を用いて、U(OH)単位を含むコポリマーを得ることを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項16】
U(OH)繰返し単位を含むコポリマーとLiHとを無水媒体中で反応させて−CH2OH基をリチウムアルコラートに転化させ、次いでこうして生成したアルコラートをそれぞれエピクロロヒドリン又はクロロエチルビニルエーテルと反応させてエポキシタイプ又はビニルエーテルタイプの最終基R'を得ることを特徴とする、R'がエポキシ基又はビニルエーテル基であるコポリマーを調製するための請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
U(OH)繰返し単位を含むコポリマーとアクリル酸若しくはメタクリル酸又はアクリル酸若しくはメタクリル酸の塩化物若しくは酸無水物とを随意にエステル化反応触媒としてのピリジンの存在下で反応させることを特徴とする、R'がアクリレート又はメタクリレート基であるコポリマーを調製するための請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
U(OH)繰返し単位を含むコポリマーをLiHと反応させて−CH2OH基をリチウムアルコラートに転化させ、次いでクロロメチルスチレンと反応させること、又は前記コポリマーをp−ビニル安息香酸と反応させることを特徴とする、R'がスチリル基であるコポリマーを調製するための請求項15に記載の製造方法。
【請求項19】
U(OH)繰返し単位を含むコポリマーをLiOHと反応させ、次いでクロロアセトニトリルと反応させることを特徴とする、R'がニトリル基であるコポリマーを調製するための請求項15に記載の製造方法。
【請求項20】
請求項7に記載のコポリマーを架橋させることによって得られる架橋材料。
【請求項21】
主鎖としての−O−CH2−CHR−繰返し単位(ここで、RはH又はCH3である)、−O−CH2−CH(−CH2−O−SO3-M+)−繰返し単位(ここで、Mはアルカリ金属を表わす)、随意としての−O−CH2−CH(R')−繰返し単位(ここで、R'は極性基である)及び−O−CH2−CH(−X−)−繰返し単位(ここで、−X−は主鎖の間の連結基である)から成る、請求項20に記載の架橋材料。
【請求項22】
連結鎖がウレタン橋−CO−NH−〜〜〜〜−NH−CO−であることを特徴とする、請求項21に記載の架橋材料。
【請求項23】
U(OH)単位を含む請求項1に記載のコポリマーとジイソシアネートO=C=N−〜〜〜〜−N=C=Oとの間の縮合反応を実施することから成ることを特徴とする、請求項22に記載の架橋材料の製造方法。
【請求項24】
前記ジイソシアネートがアルキレンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、オリゴオキシアルキレン−α,ω−ジイソシアネート及びPTHFジイソシアネートより成る群から選択されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
連結基Xが次式:
【化1】
を満たすことを特徴とする、請求項21に記載の架橋材料。
【請求項26】
U(OH)単位を有する請求項1に記載のコポリマーのOH基を3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランと反応させ、次いで該シランが有するエトキシ基の酸触媒加水分解を実施することから成ることを特徴とする、請求項25に記載の架橋材料の製造方法。
【請求項27】
連結基Xがシリカネットワークであることを特徴とする、請求項21に記載の架橋材料。
【請求項28】
U(OH)単位を有する請求項1に記載のコポリマーのOH基を3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランと反応させ、次いでOEt官能基の縮合−加水分解を実施することから成ることを特徴とする、請求項27に記載の架橋材料の製造方法。
【請求項29】
結合基Xが次式:
【化2】
のセグメントA及びBのいずれかであることを特徴とする、請求項21に記載の架橋材料。
【請求項30】
UV下で且つ光開始剤の存在下で、結合基Aを得るためにはR'がビニルエーテル基である請求項1に記載のコポリマーを、そして結合基Bを得るためにはR'が次式:
【化3】
のエポキシエーテル基である請求項1に記載のコポリマーを、カチオン架橋させることから成ることを特徴とする、請求項29に記載の架橋材料の製造方法。
【請求項31】
次式:
【化4】
(ここで、YはO又はNR5を表わし、
R5はH、アルキル、アリール、オリゴシロキサン又はN−アルキルマレイミド、N−アリールマレイミド若しくはN−オリゴシリルマレイミドを表わし、
nは繰返し単位の数を表わす)
を満たす、請求項21に記載の架橋材料。
【請求項32】
UV下で且つ光開始剤の存在下で、R'がビニルエーテル基である請求項1に記載のコポリマーを架橋させることから成り、この架橋を次式:
【化5】
の内の1つを満たすマレイミド、無水マレイン酸若しくはビスマレイミドの存在下又はマレイミド及びビスマレイミドの混合物の存在下で実施することを特徴とする、請求項31に記載の架橋材料の製造方法。
【請求項33】
結合基Xが次式:
【化6】
(ここで、R6は
【化7】
である)
で表わされることを特徴とする、請求項21に記載の架橋材料。
【請求項34】
R'がアクリレート、メタクリレート、シンナメート又はスチレニル基を表わす請求項1に記載のコポリマーをUV照射又は熱ラジカル架橋に付すことから成ることを特徴とする、請求項33に記載の架橋材料の製造方法。
【請求項35】
請求項1に記載のコポリマー又は請求項20に記載の架橋材料から本質的に成る、イオン伝導性材料。
【請求項36】
前記コポリマー又は架橋材料のO/Li比が40未満である、請求項35に記載のイオン伝導性材料。
【請求項37】
(CF3SO2)2NLi(LiTFSI)、(CF3SO2)2CHLi(LiTFSM)、(CF3SO2)3CLi(LiTTFSM)、CF3SO3Li(TFLi)、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiBOB、LiFSI又はLiIから選択されるリチウム塩を含有することを特徴とし、また、化合物(NC−CH2−CH2)2NCO−CF(CF3)−SO3Li及び(CH3O−CH2−CH2)2NCO−CF(CF3)−SO3Liを挙げることもできる、請求項35に記載のイオン伝導性材料。
【請求項38】
前記コポリマー又は架橋材料が極性置換基R'を有することを特徴とする、請求項35に記載のイオン伝導性材料。
【請求項39】
液状非プロトン性極性溶剤から選択される可塑剤を含有することを特徴とする、請求項35に記載のイオン伝導性材料。
【請求項40】
2つの電極の間に電解質を含む電気化学装置であって、前記電解質が請求項35に記載のイオン伝導性材料であることを特徴とする、前記電気化学装置。
【請求項41】
O/Li比が10〜30の範囲である請求項1に記載のコポリマーのフィルムから成る、選択性膜。
【請求項42】
O/Li比が10〜30の範囲である請求項1に記載のコポリマーのフィルムから成る、膜センサー用の参照膜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−530331(P2008−530331A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555659(P2007−555659)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000295
【国際公開番号】WO2006/087449
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507001612)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000295
【国際公開番号】WO2006/087449
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507001612)
【Fターム(参考)】
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