説明

エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体、架橋された当該エチレン系共重合体およびそれからなる成形体

【課題】柔軟性に富み、低硬度であり、制振性に優れたエチレン・α―オレフィン・非共役ポリエン共重合体を提供する。
【解決手段】エチレン[A]、炭素数6〜20のα−オレフィン[B]、および少なくとも一種以上の非共役ポリエン[C]に由来する構造単位を含むエチレン系共重合体であって、(1)炭素数6〜20のα−オレフィン[B]に由来する構造単位が、全構造単位100モル%中、30〜50モル%であり、(2)非共役ポリエン[C]に由来する構造単位が、全構造単位100モル%中、0.5〜10.0モル%であり、(3)135℃のデカリン溶液で測定した極限粘度[η]が、1.0〜5.0dL/gであり、(4)エチレン系共重合体が下記式(I)を満たす。
3*([η]−1)< ML1+4(100℃)<32.85*([η]−1)(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性と制振性を併せ持つエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体、その架橋物およびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建材や自動車の用途における安全性の向上のニーズが高まり、人にやさしい、柔らかく、低硬度であり制振性に優れる材料が強く求められるようになっている。
一方、従来のエチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム(EPT)から低硬度の成形品を得るためには、多量のオイルを添加する必要がある。そのような多量のオイルを含む成形品は、長年の使用によってはオイルが表面からブリードする可能性もあり、その改良が求められている。
【0003】
また、これらのゴム成形体の制振性の改良においては、その指数であるtanδの値を高くするために、液状の低分子量ポリマーを添加する方法が知られているが、液状の低分子量ポリマーを多量に添加する必要があり、上記と同様に成形品の表面からのブリードが懸念される状況であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPT)の場合のように必ずしも多量のオイルを配合しなくとも、柔軟性に富み、低硬度であると共に、制振性に優れた性能を示すエチレン・α―オレフィン・非共役ポリエン共重合体を見出し、その架橋物、およびそれからなる成形体が、同様に柔軟性に富み、低硬度であり、制振性に優れた性能を発揮することを見出し、本発明に到達するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、特定のエチレン、α―オレフィンおよび非共役ポリエン共重合体、それを架橋してなる共重合体、およびそれからなる成形体が、低硬度であり、制振性に優れており、種々の用途に利用可能であることを見出したことに基づく。
【0006】
すなわち、本発明はエチレン[A]、炭素数6〜20のα−オレフィン[B]、および少なくとも1種類以上の非共役ポリエン[C]に由来する構造単位を含むエチレン系共重合体であって、以下の(1)から(4)を満たすエチレン・α―オレフィン・非共役ポリエン共重合体に関する。
(1)炭素数6〜20のα−オレフィン[B]に由来する構造単位が、[A]と[B]の構造単位の合計を100モル%中として、30〜50モル%であり、
(2)非共役ポリエン[C]に由来する構造単位が、[A]、[B]および[C]の構造単位の合計を100モル%として、0.5〜10.0モル%であり、
(3)135℃のデカリン溶液で測定した極限粘度[η]が、1.0〜5.0dL/gであり、
(4)ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が下記式(I)を満たす。
3*([η]−1)< ML1+4(100℃)<32.85*([η]−1)(I)
【0007】
これらのエチレン・α―オレフィン・非共役ポリエン共重合体は架橋することにより、好ましくは架橋剤を用いて架橋することにより得られる架橋物は、その成形性に優れており、またその柔軟性と制振性を併せ持った特性により、種々の成形体に用いられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエチレン・α―オレフィン・非共役ポリエン共重合体、その架橋物、それからなる成形体は、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPT)の場合のように必ずしも多量のオイルを配合しなくとも、柔軟性に富み、低硬度であり、制振性に優れた性能を有しており、種々の用途に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、エチレンと共に少なくとも1種類以上の炭素数6〜20のα−オレフィン[B]に由来する構造単位、および少なくとも1種類以上の非共役ポリエン[C]に由来する構造単位を含む共重合体である。
【0010】
炭素数6〜20のα−オレフィン[B]としては、側鎖の無い直鎖の構造を有する、炭素数6の1−ヘキセンからはじまり、炭素数8の1−オクテン、炭素数9の1−ノネンや炭素数10の1−デセンを経て、炭素数19の1−ノナデセン、炭素数20の1−エイコセン、並びに側鎖を有する4−メチル−1−ペンテン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどがあげられる。これらのα−オレフィンは単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中では、炭素数6〜10のα−オレフィンが好ましく、特に1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、特に1−オクテンが好適である。
【0011】
非共役ポリエン[C]としては、具体的には、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,5−ノルボルナジエン、1,3,7−オクタトリエン、1,4,9−デカトリエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン等のトリエンが挙げられる。
【0012】
これらの非共役ポリエン[C]は、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、または5−エチリデン−2−ノルボルネンと5−ビニル−2−ノルボルネンとの併用が好ましく、中でも5−エチリデン−2−ノルボルネン、または5−エチリデン−2−ノルボルネンと5−ビニル−2−ノルボルネンとの併用が特に好ましい。
【0013】
このように本発明のエチレン系共重合d体としては、以下を挙げることができる。
エチレン・1−ヘキセン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−へプテン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−オクテン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−ノネン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−デセン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−ヘキセン・1−ヘプテン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−ヘキセン・1−オクテン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−ヘプテン・1−オクテン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−ヘキセン・1−ヘプテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ヘキセン・1−オクテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ヘプテン・1−オクテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ヘキセン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−へプテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−オクテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ノネン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−デセン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ヘキセン・1−ヘプテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ヘキセン・1−オクテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ヘプテン・1−オクテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ヘキセン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−へプテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−オクテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ノネン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−デセン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体。
【0014】
これらは必要に応じて1種類、または2種類以上が用いられる。
本発明においては、炭素数6〜20のα−オレフィン[B]に由来する構造単位は、[A]と[B]の構造単位の合計を100モル%として、30〜50モル%であり、好ましくは30〜46モル%であり、特に好ましくは33〜45モル%である。
【0015】
また、非共役ポリエン[C]に由来する構造単位は、[A]、[B]および[C]の構造単位の合計を100モル%として、0.5〜10.0モル%であり、好ましくは1.0〜9.0モル%、更に好ましくは1.5〜8.5モル%、特に好ましくは、1.7〜5.0モル%である。
【0016】
α―オレフィンが30モル%未満では、所定の柔軟性が発現せず、また、50モル%を越えると、加工性が悪化する傾向がある。
非共役ポリエンが0.5モル%未満では、架橋が遅く、また架橋後のゴム弾性が劣る傾向があり、10.0モル%を越えると、合成上の容易さを損なう傾向がある。
【0017】
本発明のエチレン・α―オレフィン・非共役ポリエン共重合体の極限粘度[η](135℃のデカリン溶液で測定)は、1.0〜5.0dL/gであり、好ましくは、1.0〜4.5dL/gであり、特に好ましくは1.0〜4.0dL/gである。
【0018】
極限粘度[η]が1.0dL/g未満では、強度や加工性に劣り、5.0dL/gを越えると粘度が高いことにより加工性を悪化させるので好ましくない。
さらに、本発明のエチレン系共重合体は、上記式(I)を満たすことを特徴としている。
【0019】
ここで、ML1+4(100℃)は、JIS K6300(1994)に準じて測定した100℃におけるムーニー粘度である。
本発明のエチレン系共重合体のムーニー粘度ML1+4(100℃)は、一般に5から120であり、好ましくは、10から100である。この範囲にあると、機械的強度、加工性に優れている。
【0020】
また、上記の式において、ML1+4(100℃)の上限を規定する
ML1+4(100℃)< 32.85*([η]−1)
は、好ましくは
ML1+4(100℃)< 32.85*0.95*([η]−1)
であり、さらに好ましくは、
ML1+4(100℃)< 32.85*0.90*([η]−1)
である。
【0021】
また、上記の式において、ML1+4(100℃)の下限を規定する
3*([η]−1)<ML1+4(100℃)
は、好ましくは
3*1.05*([η]−1)<ML1+4(100℃)
であり、さらに好ましくは、
3*1.10*([η]−1)<ML1+4(100℃)
である。(*は「×(掛算)」の意味である。以下同様。)
【0022】
本パラメータを満たすML1+4(100℃)を得るためには、分子鎖間の絡み合いによる粘度を小さくし、分子鎖長に起因する粘度を支配的にする必要がある。そのためには、十分に長い側鎖を有するα−オレフィンを共重合体し、側鎖の影響によって絡み合いを抑える事が有効であり、中でも柔軟性と制振性をバランスさせるのには、オクテンを共重合したポリマーが好適であり、以下のように特定されたエチレン系共重合体が特に好適である。
【0023】
(5)エチレン[A]の構成単位の割合(モル%)に対する炭素数6〜20のα−オレフィン[B]の構成単位の割合(モル%)の比
本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体において、エチレン[A]の構成単位の割合(モル%)に対する炭素6〜20のα−オレフィン[B]の構成単位の割合(モル%)の比(エチレン[A]/炭素数6〜20のα−オレフィン[B]の比)(モル比)は、1.00(50モル%/50モル%)から2.33(70モル%/30モル%)が好ましく、さら好ましくは1.02〜2.30であり、更に好ましくは、1.05〜2.25である。
【0024】
(6)ヨウ素価[g/100g]
本発明のエチレン系共重合体の非共役ポリエン[C]に由来する構造単位は、[A]、[B]および[C]の構造単位の合計を100モル%として、0.5〜10.0モル%であり、そのヨウ素価[g/100g]は、用いられる非共役ポリエン[C]の分子量、エチレン系共重合体の分子量にも依存するが、一般に本発明のエチレン系共重合体のヨウ素価[g/100g]は、3.0〜50.0[g/100g]であり、好ましくは5.0〜30.0[g/100g]である。
ヨウ素価が3.0[g/100g]未満では架橋が遅く、また架橋後のゴム弾性が劣る傾向があり、50[g/100g]を超えると合成上の容易さを損なう傾向がある。
【0025】
次に、本発明のエチレン系共重合体の製造に好適に使用されるメタロセン触媒およびそれを用いた重合の条件について説明する。
【0026】
<触媒>
(触媒例1)
前記メタロセン触媒としては、下記一般式[I]または[II]で表される遷移金属化合物が挙げられる。
【0027】
【化1】

【0028】
【化2】

一般式[I]および[II]においてYは、ケイ素原子もしくは炭素原子である。
【0029】
また一般式[I]および[II]においてR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数が1〜20の炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R1からR14までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0030】
前記炭素数が1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール(aryl)基および置換アリール(aryl)基などが挙げられる。
【0031】
より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル(allyl)基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ベンジル基およびクミル基を挙げることができ、メトキシ基、エトキシ基およびフェノキシ基などの酸素含有基、ニトロ基、シアノ基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基およびN−フェニルアミノ基などの窒素含有基、ボラントリイル基およびジボラニル基などのホウ素含有基、スルホニル基およびスルフェニル基などのイオウ含有基を含むものも前記炭化水素基の例として挙げられる。
【0032】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、そのようなハロゲン置換炭化水素基として例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基およびクロロフェニル基などを挙げることができる。
【0033】
上記ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基および炭化水素置換シロキシ基などを挙げることができる。より具体的には、例えば、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基およびジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などを挙げることができる。
【0034】
上記一般式[I]および[II]におけるR1からR4を有するシクロペンタジエニル基としては、R1からR4が水素原子である無置換シクロペンタジエニル基、3−t−ブチルシクロペンタジエニル基、3−メチルシクロペンタジエニル基、3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、3−フェニルシクロペンタジエニル基、3−アダマンチルシクロペンタジエニル基、3−アミルシクロペンタジエニル基および3−シクロヘキシルシクロペンタジエニル基などの3位1置換シクロペンタジエニル基、3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル基、3−t−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル基、3−フェニル−5−メチルシクロペンタジエニル基、3,5−ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル基、3,5−ジメチルシクロペンタジエニル基、3−フェニル−5−メチルシクロペンタジエニル基および3−トリメチルシリル−5−メチルシクロペンタジエニル基などの3,5位2置換シクロペンタジエニル基などを挙げることができるが、この限りではない。
遷移金属化合物の合成のし易さ、製造コスト及び非共役ポリエン[C]の共重合能の観点から、無置換(R1〜R4が水素原子)であるシクロペンタジエニル基が好ましい。
【0035】
前記一般式[I]および[II]におけるR5からR12を有するフルオレニル基としては、R5からR12が水素原子である無置換フルオレニル基、2−メチルフルオレニル基、2−t−ブチルフルオレニル基および2−フェニルフルオレニル基などの2位1置換フルオレニル基、4−メチルフルオレニル基、4−t−ブチルフルオレニル基および4−フェニルフルオレニル基などの4位1置換フルオレニル基、あるいは2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル基および3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル基などの2,7位もしくは3,6位2置換フルオレニル基、2,7−ジメチル−3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル基および2,7−ジフェニル−3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル基などの2,3,6,7位4置換フルオレニル基、あるいは下記一般式[V−I]および[V−II]で表されるような、R6とR7とが互いに結合して環を形成し、R10とR11とが互いに結合して環を形成している2,3,6,7位4置換フルオレニル基などが挙げられるが、この限りではない。
【0036】
【化3】

【0037】
【化4】

一般式[V−I]および[V−II]中、R5、R8、R9、R12は前記一般式[I]あるいは[II]における定義と同様であり、
a、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RgおよびRhは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、隣接した置換基と互いに結合して環を形成していてもよい。
【0038】
前記アルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、アミル基およびn−ペンチル基を例示できる。
また、一般式[V−I]中、RxおよびRyはそれぞれ独立に炭素数1〜3の不飽和結合を有してもよい炭化水素基であり、RxがRaまたはRcが結合した炭素と共同して二重結合を形成していてもよく、RyがReまたはRgが結合した炭素と共同して二重結合を形成していてもよく、RxおよびRyがともに炭素数1または2の飽和あるいは不飽和の炭化水素基であることが好ましい。
【0039】
上記一般式[V−I]または[V−II]で表される化合物として、具体的には、下記式[V−III]で表されるオクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基、下記式[V−IV]で表されるテトラメチルドデカヒドロジベンゾフルオレニル基、下記式[V−V]で表されるオクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル基、下記式[V−VI]で表されるヘキサメチルジヒドロジシクロペンタフルオレニル基、及び下記式[V−VII]で表されるb,h−ジベンゾフルオレニル基が挙げられる。
【0040】
【化5】

【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
【化8】

【0044】
【化9】

これらのフルオレニル基を含む上記一般式[I]または[II]で表される遷移金属化合物はいずれも非共役ポリエン[C]の共重合能に優れるが、Yがケイ素原子である場合、2,7位2置換フルオレニル基、3,6位2置換フルオレニル基、2,3,6,7位4置換フルオレニル基、上記一般式[V−I]に表される2,3,6,7位4置換フルオレニル基を有する遷移金属化合物が特に優れる。Yが炭素原子である場合、R5からR12が水素原子である無置換フルオレニル基、3,6位2置換フルオレニル基、2,3,6,7位4置換フルオレニル基、上記一般式[V−I]に表される2,3,6,7位4置換フルオレニル基を有する遷移金属化合物が特に非共役ポリエン[C]の共重合能に優れる。
【0045】
重合活性については、Yがケイ素原子および炭素原子いずれの場合も、2,7位2置換フルオレニル基、3,6位2置換フルオレニル基、2,3,6,7位4置換フルオレニル基、上記一般式[V−I]に表される2,3,6,7位4置換フルオレニル基を有する上記一般式[I]および[II]で表される遷移金属化合物が特に優れる。
【0046】
上記一般式[I]においてR13、R14は相互に同一でも異なってもよい。前述の通りR13、R14は炭化水素基になり得るが、その炭化水素基の中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、フェニル基、m−トリル基、p−トリル基、4−t−ブチルフェニル基、p−クロロフェニル基、4−ビフェニル基、2−ナフチル基、キシリル基、ベンジル基およびm−トリフルオロメチルフェニル基が好ましい。
【0047】
上記一般式[II]で表される遷移金属化合物において、Aは芳香環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の二価の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、YはこのAと結合し、例えば、下記式[VI-I]に表されるシクロヘキシリデン基などのシクロアルキリデン基、下記式[VI-II]に表されるシクロテトラメチレンシリレン基(1−シラシクロペンチリデン基)などのシクロメチレンシリレン基などを構成する。
【0048】
【化10】

(式[VI−I]及び[VI−II]において、●は、上記一般式[II]における(置換)シクロペンタジエニル基および(置換)フルオレニル基との結合点を表す。)
また、一般式[II]においてAはYとともに形成する環を含めて二つ以上の環構造を含んでいてもよい。
【0049】
YがAと結合して形成する環構造としては、上記式[VI−I]に表されるシクロヘキシリデン基以外に具体的には、シクロプロピリデン基、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロオクチリデン基、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン基、ノルボルニリデン基、アダマンチリデン基、テトラヒドロナフチリデン基およびジヒドロインダニリデン基などを挙げることができる。
【0050】
同様に、YがAと結合して形成する環構造としては、上記式[VI−II]に表されるシクロテトラメチレンシリレン基(1−シラシクロペンチリデン基)以外に具体的には、シクロジメチレンシリレン基、シクロトリメチレンシリレン基、シクロペンタメチレンシリレン基、シクロヘキサメチレンシリレン基およびシクロヘプタメチレンシリレン基などを挙げることができる。
【0051】
上記一般式[I]および[II]においてMは、チタニウム原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはチタニウム原子またはハフニウム原子である。
【0052】
一般式[I]および[II]においてQは、ハロゲン原子、炭素数が1〜10の炭化水素基、炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエン、アニオン配位子、および孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれる。
【0053】
前記ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子である。
前記炭素数1〜10の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1、1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1,3−トリメチルブチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基およびベンジル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基およびベンジル基である。
【0054】
前記炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエンの具体例としては、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−2,4−ヘキサジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、およびs−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0055】
前記アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、t−ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基、アセテートおよびベンゾエート等のカルボキシレート基、ならびにメシレートおよびトシレート等のスルホネート基等が挙げられる。
【0056】
前記孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンおよびジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、ならびにテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンおよび1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。
【0057】
最後に、上記一般式[I]および[II]においてjは1〜4の整数であり、jが2以上の場合は、Qは互いに同一でも異なってもよい。
以上説明した遷移金属化合物の例は、特開平2011ー1497号公報に挙げられている。
【0058】
前記遷移金属化合物は公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。製造方法として例えば、J.Organomet.Chem.,63,509(1996)、本出願人による出願に係る公報であるWO2006−123759号公報、WO01/27124号公報、特開2004−168744号公報、特開2004−175759号公報および特開2000−212194号公報等記載の方法が挙げられる。
【0059】
(触媒例2)
また、本発明のエチレン系共重合体の製造に好適に使用可能なメタロセン触媒として、下記一般式(X)で表わされる化合物を挙げることができる。
【0060】
【化11】

式(X)中、R’およびR’’はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のヒドロカルビル基であり、Mはチタンであり、Yは−NR*−であり、Z*は−SiR*2−であり、前記二つのR*はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のヒドロカルビル基であり、pおよびqのうち一方は0であり、他方は1であり、
pが0かつqが1である場合には、Mは+2の酸化状態であり、X’は1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンまたは、1,3−ペンタジエンであり、
pが1かつqが0である場合には、Mは+3の酸化状態であり、Xは2−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジルである。
【0061】
前記一般式(X)で表わされる構造を有する化合物としては、得られるエチレン系共重合体の超低分子量成分によるフォギングおよびベタが抑制されるといった観点から、(t−ブチルアミド)ジメチル(η5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(II)1,3−ペンタジエン(別名:(t−ブチルアミド)ジメチル(η5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(II)1,3−ペンタジエン)(下記式(XI)で表される構造を有する化合物)が特に好ましい。なお、下記式(XI)で表わされる構造を有する化合物は、例えば特表2001−522398号公報に記載された方法で得ることができる。
【0062】
【化12】

前記一般式(X)で表わされる構造を有する化合物は、非共役ポリエン[C]の重合性に優れている。また、このようなメタロセン触媒を用いて合成される本発明のエチレン系共重合体は、分子量分布および組成分布が狭く、均一な分子構造を有するエチレン系共重合体である。このため、本発明のエチレン系共重合体、架橋されたエチレン系共重合体、およびその成形体は、表面外観に優れる傾向がある。
【0063】
(共触媒)
本発明のエチレン系共重合体は、例えば以上挙げたメタロセン触媒を主触媒とし、ホウ素系化合物および/またはトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を共触媒として用いて合成することができる。
【0064】
前記ホウ素系化合物としては、例えば、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(水素化タローアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(s−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムn−ブチルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムベンジルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−(t−ブチルジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−(トリイソプロピルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムペンタフルオロフェノキシトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレートおよびN,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート;
ジ(イソプロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、ジメチル(t−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、およびジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのジアルキルアンモニウム塩;
トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(o−トリル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびトリ(2,6−ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの三置換されたホスホニウム塩;
ジフェニルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(o−トリル)オキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびジ(2,6−ジメチルフェニル)オキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの二置換されたオキソニウム塩;
ジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(o−トリル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびビス(2,6−ジメチルフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの二置換されたスルホニウム塩が挙げられる。
【0065】
前記有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムおよびトリn−オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウム、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、LiAl(C254、LiAl(C7154、さらに有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることができる。
【0066】
前記有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0067】
<重合条件>
本発明のエチレン系共重合体を合成する際の反応温度は、通常−20〜200℃であり、好ましくは0〜150℃である。重合圧力は通常0MPaを超えて8MPa(ゲージ圧)以下、好ましくは0MPaを超えて5MPa(ゲージ圧)以下の範囲である。
【0068】
反応時間(共重合が連続法で実施される場合は平均滞留時間)は、触媒濃度および重合温度などの条件によって異なるが、通常0.5分間〜5時間、好ましくは10分間〜3時間である。さらに、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
【0069】
上記のようなメタロセン触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、上記一般式[I]、[II]および[X]で示した遷移金属化合物は、反応容積1リットル当り、通常10-12〜10-2モル、好ましくは10-10〜10-8モルになるような量で用いられる。
【0070】
前記遷移金属化合物と共に用いられる上記共触媒は、共触媒と、遷移金属化合物中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔共触媒/M〕が、通常0.1/1〜100/1、好ましくは1/1〜50/1となるような量で用いられる。
【0071】
本発明において、エチレン系共重合体の製造は、溶液(溶解)重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施可能であり、特に限定されないが、下記重合反応液を得る工程を有することが好ましい。
【0072】
重合反応液を得る工程とは、脂肪族炭化水素を重合溶媒として用いて、上述のメタロセン触媒および共触媒の存在下に、エチレン[A]、上記α−オレフィン[B]、上記非共役ポリエン[C]および必要に応じて任意にその他のモノマーを共重合し、エチレン[A]・α−オレフィン[B]・非共役ポリエン[C](・その他のモノマー)共重合体の重合反応液を得る工程である。
【0073】
前記重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素、ならびにエチレンクロリド、クロルベンゼンおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0074】
これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、重合に供するα−オレフィン自身を重合溶媒として用いることもできる。
以上説明した重合溶媒のうち、得られるエチレン系共重合体との分離、精製の観点から、ヘキサンが好ましい。
重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0075】
例えば以上説明したようにして重合反応を実施し、反応系内にメタノールなどの酸性アルコールを添加することによって、重合反応を終了させることができる。
【0076】
重合反応により得られるエチレン系重合体の分子量は、重合系内に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。具体的には、重合系内に水素を多く存在させることにより、得られるエチレン系共重合体の分子量を小さくすることができ、その結果、本発明における極限粘度の範囲のエチレン系共重合体を得ることができる。さらに、重合温度をあまり高くせず、穏やかな反応条件に抑えることによって、得られるエチレン系共重合体の分子量を小さく抑え、結果、前記極限粘度の範囲を達成することができる。
【0077】
さらに、使用する共触媒の量により前記エチレン系共重合体の分子量を調節することもできる。
また、エチレンと上記α−オレフィンとの仕込みのモル比(エチレン/α−オレフィン)は、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜80/20である。
【0078】
エチレンと非共役ポリエンとの仕込みのモル比(エチレン/非共役ポリエン)は、好ましくは70/30〜99/1、より好ましくは80/20〜98/2である。
このような本発明のエチレン系共重合体は架橋剤を配合して共重合体組成物とし、これを成形し、架橋することにより、あるいは電子線架橋等により、所望の成形体を得ることができる。
架橋剤を用いる場合は、エチレン系共重合体100重量部に対し、1〜30重量部の範囲で含有するのが通常である。
【0079】
ゴム組成物
本発明のエチレン・α―オレフィン・非共役ポリエン共重合体には、一般に軟化剤、充填剤等を配合したゴム組成物として用いられ、成形し、架橋されることにより所望の成形体を得ることができる。
【0080】
これらの配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共ポリエン共重合体100重量部に対して、一般に軟化剤0.1〜200重量部、充填剤1〜300重量部である。
また、ゴム組成物には、軟化剤、充填剤、架橋剤の他、用途により、目的に応じて他の添加剤、例えば、加工助剤、活性剤、吸湿剤、さらに耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤および増粘剤等を配合することが行われる。
【0081】
また、本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含むゴム組成物には、必要に応じて他のエラストマー、ゴム等を配合することもできる。
ゴム組成物として用いられる場合、ゴム組成物中のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の割合は、一般に20重量%以上、好ましくは30〜90重量%である。
【0082】
ゴム組成物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体と、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えば、ミキサー、ニーダー、ロールなどの混練機を用いて所望の温度で混練することにより調製することができる。本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、混練性に優れているので、ゴム組成物の調製を良好に行うことができる。
【0083】
架橋剤
架橋剤としては、有機過酸化物、フェノール樹脂、硫黄系化合物、ヒドロシリコーン系化合物、アミノ樹脂、キノンまたはその誘導体、アミン系化合物、アゾ系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート等のゴムを架橋する際に一般に使用される架橋剤が挙げられる。これらのうちでは、有機過酸化物、硫黄等の加硫剤が好適である。
【0084】
有機過酸化物としては、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。
【0085】
このうちでは、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート等の2官能性の有機過酸化物が好ましく、中でも、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンが最も好ましい。
【0086】
架橋剤として、有機過酸化物を用いる場合、その配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、一般に0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜15重量部である、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。有機過酸化物の配合量が上記範囲内であると、得られるゴム成形体の表面へのブルームなく、ゴム組成物が優れた架橋特性を示すので好適である。
【0087】
また、有機過酸化物を用いる場合、架橋助剤を併用することが好ましい。このような架橋助剤として、例えば、イオウ、p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;その他マレイミド系架橋助剤;ジビニルベンゼン;酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種、ハクスイテック(株)社製)、酸化マグネシウム、亜鉛華(例えば、「META−Z102」(商品名;井上石灰工業株式会社製)などの酸化亜鉛)等の金属酸化物などが挙げられる。架橋助剤の配合量は、有機過酸化物1モルに対して、通常0.5〜10モル、好ましくは0.5〜7モル、より好ましくは1〜5モルである。
【0088】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、具体例としては、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレン等が挙げられる。
【0089】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、その配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、通常は0.3〜10重量部、好ましくは0.5〜7.0重量部、さらに好ましくは0.7〜5.0重量部である。硫黄系化合物の配合量が上記範囲内であると、成形体の表面へのブルームがなく、優れた架橋特性を示す。
【0090】
次に、上記加硫剤として硫黄系化合物を用いる場合には、加硫促進剤を併用することが好ましい。
【0091】
前記加硫促進剤としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール
(例えば、サンセラーM(商品名;三新化学工業社製))、2−(4−モルホリノジチオ)ペンゾチアゾール(例えば、ノクセラーMDB−P(商品名;大内新興化学工業社製))、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルフォリノチオ)ベンゾチアゾールおよびジベンゾチアジルジスルフィド(例えば、サンセラーDM(商品名;三新化学工業社製))などのチアゾール系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジンおよびジオルソトリルグアニジンなどのグアニジン系加硫促進剤;アセトアルデヒド・アニリン縮合物およびブチルアルデヒド・アニリン縮合物などのアルデヒドアミン系加硫促進剤;2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系加硫促進剤;ジエチルチオウレアおよびジブチルチオウレアなどのチオウレア系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド(例えば、サンセラーTS(商品名;三新化学工業社製))、テトラメチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTT(商品名;三新化学工業社製))、テトラエチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTET(商品名;三新化学工業社製))、テトラブチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTBT(商品名;三新化学工業社製))およびジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(例えば、サンセラーTRA(商品名;三新化学工業社製))などのチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(例えば、サンセラーPZ、サンセラーBZおよびサンセラーEZ(商品名;三新化学工業社製))およびジエチルジチオカルバミン酸テルルなどのジチオ酸塩系加硫促進剤;エチレンチオ尿素(例えば、サンセラーBUR(商品名;三新化学工業社製)、サンセラー22−C(商品名;三新化学工業社製))および N,N'−ジエチルチオ尿素などのチオウレア系加硫促進剤;ジブチルキサトゲン酸亜鉛などのザンテート系加硫促進剤;その他、亜鉛華(例えば、META−Z102(商品名;井上石灰工業社製、酸化亜鉛))などが挙げられる。
【0092】
これらの加硫促進剤の配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体および必要に応じて配合される他の架橋が必要なポリマー(ゴム等)100重量部に対して、一般に0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。この範囲内では、得られるゴム成形体の表面へのブルームなく、優れた架橋特性を示す。
【0093】
加硫助剤
加硫助剤は、架橋剤が硫黄系化合物である場合に用いられ、例えば、酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種、ハクスイテック(株)社製)、酸化マグネシウム、亜鉛華(例えば、「メタZ−102」(商品名;井上石灰工業株式会社製)などの酸化亜鉛)などが挙げられる。
【0094】
その配合量は、通常、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体および必要に応じて配合される他の架橋が必要なポリマー(ゴム等)の合計100重量部に対して、1〜20重量部である。
【0095】
軟化剤
軟化剤の具体例としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール等のコールタール系軟化剤;マシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸またはその塩;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)などが挙げられ、石油系軟化剤が好ましく、中でもプロセスオイルが好ましい。
【0096】
ゴム組成物中の軟化剤の配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体および必要に応じて配合される他のポリマー(エラストマー、ゴム等)成分の合計100重量部に対して、一般に2〜100重量部、好ましくは10〜100重量部である。
【0097】
無機充填剤
無機充填剤の具体例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの1種類または2種類以上が使用され、これらのうちでは、「ホワイトンSB」(商品名;白石カルシウム株式会社)等の重質炭酸カルシウムが好ましい。
【0098】
ゴム組成物が、無機充填剤を含有する場合には、無機充填剤の配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体および必要に応じて配合される他のポリマー(エラストマー、ゴム等)の合計100重量部に対して、通常は2〜50重量部、好ましくは5〜50重量部である。配合量が上記範囲内であると、ゴム組成物の混練加工性が優れており、機械特性に優れた成形体を得ることができる。
【0099】
補強剤
補強剤の具体例としては、カーボンブラック、シランカップリング剤で表面処理したカーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微分ケイ酸などがあり、配合する場合には、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体および必要に応じて配合される他のポリマー(エラストマー、ゴム等)の合計100重量部に対して、一般に30〜200重量部、好ましくは50〜180重量部である。
【0100】
老化防止剤(安定剤)
ゴム組成物に、老化防止剤(安定剤)を配合することにより、これから形成される成形体の寿命を長くすることができる。このような老化防止剤として、従来公知の老化防止剤、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤などがある。
【0101】
さらに、老化防止剤として、フェニルブチルアミン、N,N−ジ−2−ナフチル−pフェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤;ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2−メルカプトベンゾイルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等がある。
【0102】
これらの老化防止剤は、1種単独であるいは2種以上の組み合わせで用いることができ、その配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体および他のポリマー(エラストマー、ゴム等)の合計100重量部に対して、通常は0.3〜10重量部、好ましくは0.5〜7.0重量部である。このような範囲内とすることにより、得られるゴム組成物から得られる成形体の表面のブルームがなく、さらに加硫阻害が発生を抑制することができる。
【0103】
加工助剤
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く用いることができる。
【0104】
加工助剤の具体例としては、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、エステル類などが挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。
【0105】
加工助剤の配合量は、ゴム組成物に含まれるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体およびその共重合体以外のポリマー(エラストマー、ゴム等)100重量部に対して、通常は10重量部以下、好ましくは8.0重量部以下である。
【0106】
活性剤
活性剤の具体例としては、ジ−n−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン等のアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリレート、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の亜鉛化合物等の活性剤;過酸化亜鉛調整物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物などが挙げられる。
【0107】
活性剤を含有する場合は、その配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体およびそれ以外のポリマー(エラストマー、ゴム等)100重量部に対して、通常は0.2〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部である。
【0108】
吸湿剤
吸湿剤の具体例としては、酸化カルシウム、シリカゲル、硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、ホワイトカーボンなどが挙げられる。
【0109】
吸湿剤を含有する場合は、その配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体およびその他のポリマー(エラストマー、ゴム等)100重量部に対して、通常は0.5〜15重量部、好ましくは1.0〜12重量部である。
【0110】
成形体
本発明の成形体は、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体、あるいは、そのエチレン系共重合体を含む組成物、特に上記のゴム組成物から成形し、架橋することにより得ることができる。
架橋の際には、金型を用いても、用いなくてもよい。金型を用いない場合には、この組成物は、通常連続的に成形され、架橋される。
【0111】
本発明のエチレン系共重合体を含む組成物、さらには上記のゴム組成物を架橋させる方法としては、(a)架橋剤を含有する組成物を、通常、押出し成形、プレス成形、インジェクション成形等の成形法や、ロール加工により所望の形状に予備的成形し、成形と同時にまたは成形物を架橋槽内に導入して加熱する方法や、(b)架橋剤を含有する組成物を、(a)の方法と同様の方法で予備成形し、次いで電子線を照射する方法を例示することができる。
【0112】
このうち、(a)の方法では、加熱により組成物中の架橋剤による架橋反応が起こり、架橋された成形体が得られる。また、(b)の方法では、電子線により架橋反応が起こり、架橋体が得られる。(b)の方法においては通常、予備成形が施された組成物に、0.1〜10MeVのエネルギーを有する電子線を、ゴム組成物の吸収線量が通常は0.5〜36Mrad、好ましくは0.5〜20Mrad、さらに好ましくは1〜10Mradになるように照射する。
【0113】
さらには、成形体のうち発泡成形体は、本発明のエチレン系共重合体と、軟化剤、充填剤、架橋剤、および発泡剤を含有する組成物を架橋および発泡することにより得られる。
発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機系発泡剤;N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N'−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、p,p'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)等のヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4'−ジフェニルジスルホニルアジド等のアジド化合物などの有機発泡剤が挙げられる。
【0114】
発泡剤を含有する場合には、その配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、一般に0.2〜30重量部、好ましくは0.5〜25重量部、より好ましくは0.5〜20重量部である。
【0115】
架橋剤と共に発泡剤を含有する組成物は、加熱することによって、架橋剤による架橋反応と共に、発泡剤が分解して炭酸ガスや窒素ガスを発生する。このため、気泡構造を有する発泡体が得られる。
【0116】
本発明のエチレン系共重合体およびそのゴム組成物から得られる成形体は、機械特性、押出し成形性、プレス成形性、インジェクション成形性等の成形性、およびロール加工性に非常に優れており、種々の成形体を好適に得ることができる。
【0117】
本発明のエチレン系共重合体から得られる成形体、たとえば、架橋成形体や架橋発泡体などは、様々な用途に用いることができる。具体的には、タイヤ用ゴム、O−リング、工業用ロール、パッキン(例えばコンデンサーパッキン)、ガスケット、ベルト(例えば、断熱ベルト、複写機ベルト)、ホース(例えば、ウォーターホース、ブレーキリザーバーホース、ラジエターホース)、防止ゴム、スポンジ(例えば、ウェザーストリップスポンジ、断熱スポンジ、プロテクトスポンジ、微発泡スポンジ)、ケーブル(イグニッションケーブル、キャブタイヤケーブル、ハイテンションケーブル)、電線被覆材(高圧電線被覆材、低電圧電線被覆材、舶用電線被覆材)、グラスランチャネル、カラー表皮材、給紙ロール、ルーフィングシート等に好適に用いられる。
【0118】
(実施例)
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例および比較例における各特性の評価方法は次の通りである。
エチレン[A]/α−オレフィン[B]のモル比
エチレン/α-オレフィン比はECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子製)を用いて、測定温度120℃、測定溶媒:ODCB―d4、積算回数:512回にて、1Hのスペクトルを測定して得た。
ヨウ素価 〔g/100g〕
ヨウ素価はJIS K0070に準じて測定した。
極限粘度 [η] 〔dL/g〕
極限粘度[η]〔dL/g〕は、離合社製の全自動極限粘度計を用いて、温度:135℃、測定溶媒:デカリンにて測定した。
ムーニー粘度
ムーニー粘度ML1+4(100℃)は、JIS K6300(1994)に準じて測定した。
【0119】
引張り物性
JIS K6251に従い、測定温度:23℃、引張り速度500mm/分の条件で、加硫ゴムシート(形状:JIS3号ダンベル、厚み:2mm)の破断時の強度TB〔MPa〕、伸びEB〔%〕を測定した。
硬度
JIS K6253に従い、加硫ゴムシートのスプリング硬度HS A硬度)を求めた。
tanδ
tanδは、ティー・エイ・インスツルメント社製の粘弾性試験機(ARES)を用いて測定した。具体的には、加硫ゴムシートを幅:1cm、長さ:3cm、厚み:2mmの短冊状に加工し、以下の条件で測定した。
・Geometry:Torsion、
・測定温度:25℃、
・周波数:10Hz、
・歪率:1.0%
【0120】
混練性(バンバリーミキサー)
ゴム組成物を用いて、バンバリーミキサー(容量1.7リットル、充填率70%)を使用して、混練性を評価した。評価レベルは以下の通りである。合格は△以上とした。
○:十分に混練ができ、ミキサーからの排出も可能である。
△:ゴム成分がローターへ粘着し、ミキサーからの排出が困難である。
×:ゴム成分がローターへ粘着し、十分な混練力が得られない。
混練性(ロール)
ゴム組成物を用いて、6インチオープンロール(前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm、ロール間隙2mm)を使用して、ロールへの巻きつけ性を評価した。評価レベルは以下の通りである。合格は△以上とした。
○:ロールへの巻きつけ性、剥離性はどちらも良好である。
△:ロールへの巻きつけ性、剥離性のどちらかに難がある。
×:巻きつけ、剥離とも困難であり、ロール混練に不適である。
押出し成形性
ゴム組成物を用いて、φ50mm押出機(押出温度:80℃、引き取り速度:2m/分)を使用して、成形性を評価した。評価レベルは以下の通りである。合格は△以上とした。
○:成形品表面が平滑で有り、形状も安定している。
△:成形品表面が荒れているが、形状は安定している。
×:成形品表面が荒れており、形状に欠損が見られる。
トランスファー成形性
ゴム組成物を用いて、トランスファー成形機を使用して、成形性を評価した。評価レベルは以下の通りである。合格は△以上とした。
○:型内での流動性が良好であり、問題なく成形できる。
△:型内での流動性がやや不足しており、成形品の形状にバラつきが見られる。
×:型内での流動性が不足しており、成形が困難である。
【0121】
実施例1(共重合体1)の重合
共重合体の重合は2.0LのSUS製攪拌機付反応機を用いて、温度を80℃に保ち、ヘキサンを毎時2.2kg、エチレンを毎時80g、1−オクテンを毎時300g、5−エチリデンー2−ノルボルネン(ENB)を毎時20gの速度で、また水素を毎時0.40NLの速度で、主触媒としてトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを毎時0.01mmol、共触媒として〔N−(1,1ジメチルエチル)−1,1−ジメチル−1−〔(1,2,3,3a,8a−η)−1,5,6,7−テトラヒドロ−2−メチル−S−インダセン−1−yl〕シランアミネート(2−)−κN〕〔(1,2,3,4−η)−1,3−ペンタジエン〕−チタニウムを毎時0.03ミリモル(mmmol)、有機アルミニウム化合物としてTIBAを毎時0.8ミリモル(mmol)の速度で、反応機に連続的に供給し、エチレンと1−オクテンとENBとの三元共重合体の重合液を得た。
得られた重合液からフラッシュ乾燥により共重合体1を得た。結果を表1に示す。
【0122】
実施例2〜4、比較例1、2(共重合体2〜6)の重合
共重合体1と同様の原料を使用し、原料供給条件を変更し重合した。結果を表1に示す。
【0123】
比較例3、4(共重合体7、8)の重合
共重合体1で使用した1−オクテンをプロピレンに変更し、原料供給条件を変更し重合した。結果を表1に示す。
【0124】
実施例5
MIXTRON BB MIXER(神戸製鋼所社製、BB−4型、容積2.95L、ローター4WH)を用いて、エチレン系共重合体1を100重量部に対して、加硫助剤 として亜鉛華「META−Z102」(商品名;井上石灰工業株式会社製)を5重量部、加工助剤としてステアリン酸を2重量部、補強剤としてカーボンブラック「旭#60G」(商品名;旭カーボン株式会社製)を70重量部、炭酸カルシウム「ホワイトンSB」(商品名;白石カルシウム社製)を30重量部、および軟化剤としてパラフィン系プロセスオイル「ダイアナプロセスオイルPW−380」(商品名;出光興産株式会社製)を40重量部を混練した。
【0125】
混練条件は、ローター回転数が50rpm、フローティングウェイト圧力が3kg/cm2、混練時間が5分間で行った。
得られた組成物に、加硫促進剤としてブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)「サンセラーBZ」(商品名;三新化学工業(株)製)を1部、N−シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド「サンセラーCM」(商品名;三新化学工業(株)製)を 0.5部、テトラメチルチウラムジスルフィド「サンセラーTT」(商品名;三新化学工業(株)製)を 0.5部、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド「サンセラーTRA」(商品名;三新化学工業(株)製)を0.5部、加硫剤として硫黄を0.5部を、6インチオープンロール(前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)で混練しシート状に分出し後、加熱プレスを用い170℃で10分間加熱し加硫した。
この組成物および加硫シートに対し上記の評価試験を実施した。結果を表2に示す。
【0126】
実施例6〜8、比較例5〜8
表2に示すとおりにエチレン系共重合体を変更し、それ以外は実施例1と同条件で調整した。評価結果を表2に示す。
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン[A]、炭素数6〜20のα−オレフィン[B]、および少なくとも1種類以上の非共役ポリエン[C]に由来する構造単位を含むエチレン系共重合体であって、
(1)炭素数6〜20のα−オレフィン[B]に由来する構造単位が、[A]と[B]の構造単位の合計を100モル%とした時、30〜50モル%であり、
(2)非共役ポリエン[C]に由来する構造単位が、[A]、[B]および[C]の構造単位の合計を100モル%とした時、0.5〜10.0モル%であり、
(3)135℃のデカリン溶液で測定した極限粘度[η]が、1.0〜5.0dL/gであり、
(4)ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が下記式(I)を満たすことを特徴とするエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体。
3*([η]−1)< ML1+4(100℃)<32.85*([η]−1)(I)
【請求項2】
炭素原子数6〜20のα−オレフィン[B]が、1−オクテンであることを特徴とする請求項1に記載のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれか一項に記載のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量部に対して、架橋剤を0.1〜30重量部の範囲で含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエチレン・α―オレフィン・非共役ポリエン共重合体。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のエチレン・α―オレフィン・非共役ポリエン共重合体を、架橋剤を用いて架橋させてなることを特徴とする架橋されたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のエチレン・α―オレフィン・非共役ポリエン共重合体を用いて成形されてなることを特徴とする成形体。

【公開番号】特開2012−214577(P2012−214577A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79782(P2011−79782)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】