説明

エチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体

【課題】腐食性が低減されるとともに、表面のべたつきが低減され、しかも、高発泡かつ柔軟性に優れる、EPDM発泡体を提供すること。
【解決手段】エチレン・プロピレン・ジエンゴム、発泡剤、キノイド系架橋剤および有機過酸化物系架橋剤を配合してゴム組成物を調製し、そのゴム組成物を発泡させることにより、エチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体を得る。得られたEPDM発泡体では、架橋剤として硫黄を用いる場合に比べて、腐食性を低減することができる。また、表面にべたつきが生じることを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体に関し、詳しくは、各種産業製品のシール材として好適に用いられるエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種産業製品のシール材として、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(以下、EPDMと省略することがある。)を発泡してなるEPDM発泡体が知られている。
【0003】
EPDM発泡体は、一般的には、発泡剤によって発泡させるとともに、硫黄によって架橋することにより、製造している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、EPDM発泡体を、発泡剤によって発泡させるとともに、有機過酸化物によって架橋することにより、製造することも知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−182796号公報
【特許文献2】特開2002−179825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、EPDMを硫黄により架橋すると、シールされる部材の種類によっては、EPDM発泡体に残存する硫黄により、その部材が腐食される場合がある。
【0007】
また、EPDMを酸素存在下で有機過酸化物系架橋剤により架橋すると、EPDM発泡体の表面での架橋が不十分となって、表面にべたつきを生じる場合がある。
【0008】
本発明の目的は、腐食性が低減されるとともに、表面のべたつきが低減され、しかも、高発泡かつ柔軟性に優れる、EPDM発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、キノイド系架橋剤および有機過酸化物系架橋剤を含有するゴム組成物を発泡させてなることを特徴としている。
【0010】
本発明のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体では、エチレン・プロピレン・ジエンゴムにおけるジエン類の含有量が、3〜20重量%であることが好適である。
【0011】
本発明のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体では、キノイド系架橋剤が、p−キノンジオキシムを含んでいることが好適であり、さらに、p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムを含んでいることが好適である。また、p−キノンジオキシムが、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して0.05〜2重量部含まれていることが好適であり、p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムが、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して0.05〜10重量部含まれていることが好適である。
【0012】
本発明のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体では、有機過酸化物系架橋剤が、1分半減期温度が160℃を超える有機過酸化物系架橋剤を含んでいることが好適である。
【0013】
本発明のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体では、有機過酸化物系架橋剤が、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して0.05〜20重量部含まれていることが好適である。
【0014】
本発明のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体では、ゴム組成物が、さらに、架橋助剤として、チアゾール類およびチオウレア類を含有することが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のEPDM発泡体では、架橋剤として、キノイド系架橋剤および有機過酸化物系架橋剤が併用されている。そのため、架橋剤として硫黄を用いる場合に比べて、腐食性を低減することができる。また、キノイド系架橋剤および有機過酸化物系架橋剤の併用により、EPDM発泡体の表面での架橋を十分に確保することができ、表面にべたつきが生じることを低減することができる。しかも、本発明のEPDM発泡体は、硫黄で架橋する場合と同等の高発泡かつ柔軟性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のEPDM発泡体は、EPDM、キノイド系架橋剤および有機過酸化物系架橋剤を含有するゴム組成物を発泡させることにより、得ることができる。
【0017】
EPDMは、エチレン、プロピレンおよびジエン類の共重合によって得られるゴムであり、エチレンおよびプロピレンに加えて、さらにジエン類を共重合させることにより、不飽和結合を導入して、架橋剤による架橋を可能としている。
【0018】
ジエン類としては、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0019】
本発明において、EPDMにおけるジエン類の含有量(ジエン含有量)は、例えば、3〜20重量%、好ましくは、9〜20重量%、より好ましくは、9〜12重量%である。ジエン類の含有量が、これより少ないと、得られたEPDM発泡体の表面収縮を生じる場合がある。また、これより多いと、EPDM発泡体に割れが生じる場合がある。
【0020】
また、EPDMのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、例えば、20〜150、好ましくは、30〜80である。
【0021】
キノイド系架橋剤は、キノイド構造を有する有機化合物であって、例えば、p−キノンジオキシム、p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼンなどが挙げられる。キノイド系架橋剤として、好ましくは、p−キノンジオキシム、p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムが挙げられ、さらに好ましくは、p−キノンジオキシムが挙げられる。
【0022】
これらキノイド系架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。好ましくは、p−キノンジオキシムおよびp,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムを併用する。p−キノンジオキシムおよびp,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムを併用すれば、得られたEPDM発泡体の良好な発泡形状を確保することができる。
【0023】
キノイド系架橋剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、0.01〜20重量部、好ましくは、0.05〜15重量部、さらに好ましくは、0.1〜12重量部である。具体的には、p−キノンジオキシムを用いる場合には、そのp−キノンジオキシムの配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、0.05〜2重量部、好ましくは、0.1〜1重量部である。また、p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムを用いる場合には、そのp,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムの配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、0.05〜10重量部、好ましくは、0.5〜7重量部である。
【0024】
また、p−キノンジオキシムおよびp,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムを併用する場合において、p−キノンジオキシムに対するp,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムの重量比率(p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシム/p−キノンジオキシム)は、例えば、0.25〜50、好ましくは、1.1〜40、さらに好ましくは、5〜30である。
【0025】
有機過酸化物系架橋剤は、パーオキサイド構造を有する有機化合物であって、好ましくは、1分半減期温度が160℃を超える有機過酸化物系架橋剤が挙げられ、さらに好ましくは、1分半減期温度が200℃以下の有機過酸化物系架橋剤、とりわけ好ましくは、1分半減期温度が170〜190℃の有機過酸化物系架橋剤が挙げられる。具体的には、ジクミルパーオキシド(1分半減期温度:175℃)、ジメチルジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(1分半減期温度:180℃)、ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(1分半減期温度:175℃)などが挙げられる。好ましくは、ジクミルパーオキシドが挙げられる。これら有機過酸化物系架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。
【0026】
有機過酸化物系架橋剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、0.05〜20重量部、好ましくは、0.2〜5重量部である。
【0027】
また、ゴム組成物は、EPDMを発泡させるための発泡剤を含有する。発泡剤としては、有機系発泡剤および無機系発泡剤が挙げられる。
【0028】
有機系発泡剤としては、例えば、アゾジカルボン酸アミド(ADCA)、バリウムアゾジカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼンなどのアゾ系発泡剤、例えば、N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DTP)、N,N´−ジメチル−N,N´−ジニトロソテレフタルアミド、トリニトロソトリメチルトリアミンなどのN−ニトロソ系発泡剤、例えば、4,4´−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3´−ジスルホニルヒドラジド、2,4−トルエンジスルホニルヒドラジド、p,p−ビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)エーテル、ベンゼン−1,3−ジスルホニルヒドラジド、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのヒドラジド系発泡剤、例えば、p−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4´−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのセミカルバジド系発泡剤、例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタンなどのフッ化アルカン系発泡剤、例えば、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾールなどのトリアゾール系発泡剤、その他公知の有機系発泡剤が挙げられる。なお、有機系発泡剤として、加熱膨張性の物質がマイクロカプセル内に封入された熱膨張性微粒子などを挙げることもでき、そのような熱膨張性微粒子として、例えば、マイクロスフェア(商品名、松本油脂社製)などの市販品を挙げることができる。
【0029】
無機系発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなどの炭酸水素塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸アンモニウムなどの亜硝酸塩、例えば、水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化ホウ素塩、例えば、アジド類、その他公知の無機系発泡剤が挙げられる。好ましくは、アゾ系発泡剤が挙げられる。これら発泡剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。
【0030】
発泡剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、0.1〜50重量部、好ましくは、1〜30重量部である。
【0031】
また、ゴム組成物は、必要により、架橋助剤や発泡助剤を適宜含有する。架橋助剤としては、例えば、チアゾール類(例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールなど)、チオウレア類(例えば、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジブチルチオウレアなど)、ジチオカルバミン酸類(例えば、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛など)、グアニジン類(例えば、ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジンなど)、スルフェンアミド類(例えば、ベンゾチアジル−2−ジエチルスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなど)、チウラム類(例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなど)、キサントゲン酸類(例えば、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛など)、アルデヒドアンモニア類(例えば、アセトアルデヒドアンモニア、ヘキサメチレンテトラミンなど)、アルデヒドアミン類(例えば、n−ブチルアルデヒドアニリン、ブチルアルデヒドモノブチルアミンなど)などが挙げられる。好ましくは、チアゾール類およびチオウレア類が挙げられる。
【0032】
これら架橋助剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。好ましくは、チアゾール類およびチオウレア類を併用する。これらを配合することにより、得られたEPDM発泡体の良好な発泡形状および柔軟性を確保することができる。
【0033】
架橋助剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、0.01〜20重量部、好ましくは、0.02〜10重量部、さらに好ましくは、0.06〜4重量部である。具体的には、チアゾール類を用いる場合には、そのチアゾール類の配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは、0.5〜3重量部である。また、チオウレア類を用いる場合には、そのチオウレア類の配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは、0.1〜1重量部である。
【0034】
また、チアゾール類およびチオウレア類を併用する場合において、チアゾール類に対するチオウレア類との重量比率(チオウレア類/チアゾール類)は、例えば、0.1〜10、好ましくは、0.2〜0.9である。
【0035】
発泡助剤としては、例えば、尿素系発泡助剤、サリチル酸系発泡助剤、安息香酸系発泡助剤などが挙げられる。好ましくは、尿素系発泡助剤が挙げられる。これら発泡助剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。
【0036】
発泡助剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、0.5〜20重量部、好ましくは、1〜10重量部である。
【0037】
また、ゴム組成物は、必要により、EPDM以外のポリマー、加工助剤、顔料、充填剤、軟化剤などを適宜含有することもできる。
【0038】
EPDM以外のポリマーとして、例えば、ゴム系ポリマーや非ゴム系ポリマーが挙げられる。ゴム系ポリマーとしては、例えば、非共役二重結合を有する環状または非環状のポリエンを成分とするゴム系共重合体(例えば、ブテン−1などのα−オレフィン−ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなど)、エチレン−プロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ポリウレタン系ゴム、ポリアミド系ゴム、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリイソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンゴム、スチレン−エチレン−ブタジエンゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンゴム、スチレン−イソプレン−プロピレン−スチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムなどが挙げられる。
【0039】
非ゴム系ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系ポリマー(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど)、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエステル、塩素化ポリエチレン、ウレタン系ポリマー、スチレン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、エポキシ系樹脂などが挙げられる。好ましくは、非ゴム系ポリマー、さらに好ましくは、ポリエチレンが挙げられる。これらEPDM以外のポリマーは、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。
【0040】
EPDM以外のポリマーの配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、100重量部以下、好ましくは、50重量部以下、通常、1重量部以上である。
【0041】
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸やそのエステル類、酸化亜鉛などが挙げられる。これら加工助剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。加工助剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、0.1〜20重量部、好ましくは、1〜10重量部である。
【0042】
顔料としては、例えば、カーボンブラックなどが挙げられる。これら顔料は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。顔料の配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、1〜50重量部、好ましくは、2〜30重量部である。
【0043】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸およびその塩類、クレー、タルク、雲母粉、ベントナイト、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、アルミニウム粉などの無機系充填剤、例えば、コルクなどの有機系充填剤、その他公知の充填剤が挙げられる。これら充填剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。充填剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、10〜300重量部、好ましくは、50〜200重量部、さらに好ましくは、100〜200重量部である。
【0044】
軟化剤としては、例えば、石油系オイル類(例えば、パラフィン系プロセスオイル(パラフィンオイルなど)、ナフテン系プロセスオイル、乾性油類や動植物油類(例えば、アマニ油など)、アロマ系プロセスオイルなど)、アスファルト類、低分子量ポリマー類、有機酸エステル類(例えば、フタル酸エステル(例えば、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP))、リン酸エステル、高級脂肪酸エステル、アルキルスルホン酸エステルなど)、増粘付与剤などが挙げられる。好ましくは、石油系オイル類、さらに好ましくは、パラフィン系プロセスオイルが挙げられる。これら軟化剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。軟化剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、10〜60重量部、好ましくは、20〜50重量部である。
【0045】
さらに、ゴム組成物は、その目的および用途によって、得られるEPDM発泡体の優れた効果に影響を与えない範囲において、例えば、難燃剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤、防カビ剤などの公知の添加剤を適宜含有することができる。
【0046】
そして、ゴム組成物は、上記した各成分を適宜配合して、ニーダー、ミキサーまたはミキシングロールなどを用いて混練りすることにより、混和物として調製する。なお、この混練りでは、適宜加熱することもできる。また、混練りは、例えば、架橋剤、発泡剤、架橋助剤および発泡助剤などの少量添加する添加成分以外の成分を、まず混練してから、その混練物に、添加成分を添加して混練することもできる。
【0047】
そして、調製されたゴム組成物を、発泡させることにより、EPDM発泡体を得ることができる。ゴム組成物を発泡させるには、特に制限されず、公知の方法が用いられ、例えば、混和物を、カレンダー成形機や押出成形機などを用いて、シート状などに成形して発泡することができる。また、射出成形やプレス成形などを用いて、例えば、凹凸などの複雑な形状に成形して発泡することもできる。
【0048】
また、発泡させるための加熱温度は、例えば、配合される架橋剤の架橋開始温度や、配合される発泡剤の発泡温度などによって、適宜選択されるが、例えば、450℃以下、好ましくは、100〜350℃、さらに好ましくは、120〜250℃である。
【0049】
この発泡によって、混和物が発泡しながら架橋して、EPDM発泡体が形成される。
【0050】
このようにして得られるEPDM発泡体の発泡倍率(発泡前後の密度比)は、例えば、10倍以上、好ましくは、15倍以上、通常、30倍以下である。また、EPDM発泡体の密度は、例えば、0.04〜0.20g/cm、好ましくは、0.04〜0.15g/cmである。また、EPDM発泡体の25%圧縮荷重値は、柔軟性の観点より、例えば、0.05〜5.0N/cm、好ましくは、0.05〜3.0N/cmである。
【0051】
そして、このEPDM発泡体では、架橋剤として、キノイド系架橋剤および有機過酸化物系架橋剤が併用されている。そのため、架橋剤として硫黄を用いる場合に比べて、腐食性を低減することができる。また、キノイド系架橋剤および有機過酸化物系架橋剤の併用により、EPDM発泡体の表面での架橋を十分に確保することができ、表面にべたつきが生じることを低減することができる。しかも、本発明のEPDM発泡体は、硫黄で架橋する場合と同等の高発泡かつ柔軟性を確保することができる。
【0052】
そのため、本発明のEPDM発泡体は、防塵、断熱、防音、防振、緩衝、水密および気密などを目的とする、例えば、防塵材、断熱材、防音材、防振材、緩衝材、充填材、止水材などとして、例えば、例えば、自動車、電気製品、住宅製品などのシールが必要な産業製品において、例えば、自動車外装シール材、電気製品シール材、住宅用シール材など、各部材の隙間をシールするためのシール材として、好適に用いることができる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。
1)実施例および比較例の調製
表1に示す配合処方において、まず、EPDM、他のポリマー、加工助剤、顔料、充填剤、軟化剤、N,N´−ジブチルチオウレアを配合し、これを3L加圧ニーダーにて混練し、1次混和物を調製した。
【0054】
別途、架橋剤、架橋助剤(N,N´−ジブチルチオウレアを除く)、発泡剤および発泡助剤を配合し、これを1次混和物に配合して、10インチミキシングロールにて混練して、2次混和物(ゴム組成物)を調製した。
【0055】
その後、このゴム組成物を、一軸押出成形機(45mmφ)を用いて、厚み約10mmのシート状に押し出し、その後、シートを幅100mm×長さ100mmに裁断してシートを作製した。
【0056】
そして、裁断したシートを、熱風循環式オーブンにて、100℃で10分予熱後、15分かけて160℃まで昇温し、160℃で15分加熱して、発泡させることによりEPDM発泡体を得た。
2)評価
各実施例および各比較例のEPDM発泡体について、下記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
(銀腐食性)
各実施例および各比較例のEPDM発泡体0.5gを100mL密閉瓶に入れ、密閉瓶の蓋の内側に、研磨および洗浄した銀(板状)を貼り付けた。これを、85℃の恒温槽に7日間投入し、銀の腐食の有無を確認した。腐食が確認されなかったものを「なし」、腐食が確認されたものを「あり」と評価した。
(表面タック)
各実施例および各比較例のEPDM発泡体の表面を指触して、表面のべたつきの有無を確認した。べたつきの感触がなかったものを「なし」、べたつきの感触があったものを「あり」と評価した。
(発泡形状)
各実施例および各比較例のEPDM発泡体の外観形状を目視により観察した。架橋が明らかに不十分であるものを「××」、ワレが生じているものを「×」、表面収縮が生じているものを「△」、ワレおよび表面収縮のいずれも生じず、良好な外観が確認されたものを「○」にて評価した。
(25%圧縮荷重値)
各実施例および各比較例のEPDM発泡体の上側および下側のスキン層を除去して、厚み10mmの試験片を作製した。その後、JISK6767の圧縮荷重試験に準拠して、圧縮試験機を用いて、圧縮速度10mm/分で圧縮してから、10秒後の圧縮荷重を読み取ることにより求めた。
(密度)
各実施例および各比較例のEPDM発泡体の上側および下側のスキン層を除去して、厚み10mmの試験片を作製した。その後、重量を測定して、単位体積あたりの重量を算出した。
【0057】
【表1】

【0058】
表1中の詳細を以下に示す。
EPDM A:エスプレン505A(ジエン含有量9.5重量%)、住友化学社製
EPDM B:EPT4045(ジエン含有量8.0%)、三井化学社製
EPDM C:エスプレン501A(ジエン含有量4重量%)、住友化学社製
p−キノンジオキシム:大内新興化学工業社製
p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシム:大内新興化学工業社製
パークミルD−40:ジクミルパーオキシドの40重量%粉体、日本油脂社製
ジベンゾチアジルジスルフィド:大内新興化学工業社製
N、N´−ジブチルチオウレア:大内新興化学工業社製
硫黄配合処方:硫黄1.2重量部、ノクセラーPZ(ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、大内新興化学工業社製)1.0重量部、ノクセラーEZ(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、大内新興化学工業社製)1.0重量部、ノクセラーM(2-メルカプトベンゾチアゾール、大内新興化学工業社製)1.2重量部およびアゾジカルボン酸アミドを配合し、これを上記した1次混和物に配合して、10インチミキシングロールにて混練して、2次混和物(ゴム組成物)を調製した。その後、上記と同様に、シートを作製して発泡させることにより、硫黄加硫したEPDM発泡体(比較例3)を得た。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・プロピレン・ジエンゴム、キノイド系架橋剤および有機過酸化物系架橋剤を含有するゴム組成物を発泡させてなることを特徴とする、エチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体。
【請求項2】
エチレン・プロピレン・ジエンゴムにおけるジエン類の含有量が、3〜20重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体。
【請求項3】
キノイド系架橋剤が、p−キノンジオキシムを含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体。
【請求項4】
キノイド系架橋剤が、さらに、p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムを含んでいることを特徴とする、請求項3に記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体。
【請求項5】
p−キノンジオキシムが、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して0.05〜2重量部含まれていることを特徴とする、請求項3または4に記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体。
【請求項6】
p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムが、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して0.05〜10重量部含まれていることを特徴とする、請求項4または5に記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体。
【請求項7】
有機過酸化物系架橋剤が、1分半減期温度が160℃を超える有機過酸化物系架橋剤を含んでいることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体。
【請求項8】
有機過酸化物系架橋剤が、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して0.05〜20重量部含まれていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体。
【請求項9】
ゴム組成物は、さらに、架橋助剤として、チアゾール類およびチオウレア類を含有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体。

【公開番号】特開2012−126920(P2012−126920A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−80182(P2012−80182)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2007−47433(P2007−47433)の分割
【原出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】