説明

エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/ビニリデン化合物共重合体の製造方法

【課題】工業的により容易に合成でき、かつ高い重合活性と高い共重合性を有する遷移金属触媒系および該触媒を用いるエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/ビニリデン化合物共重合体の製造方法の提供。
【解決手段】特定の構造を有する3〜5属金属錯体(好ましくはチタン)と特定の構造を有する活性化剤との組み合わせによる遷移金属触媒系と該触媒系を用いるエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンとビニリデン化合物との共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンとビニリデン化合物からなる共重合体の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、合成が容易でかつ高い重合活性と高い共重合性を有する遷移金属触媒を用いてエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンとビニリデン化合物との共重合体を効率よく製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンの共重合体(例えば、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−オクテン共重合体など)は、透明性、耐薬品性、耐水性、耐候性及び耐熱老化性等に優れる熱可塑性エラストマーとして産業的に非常に有用である。従って、種々のエチレン/α−オレフィンの組み合わせに対し、該共重合体を得るための種々の製造方法が提案されている。
一方、エチレンとビニリデン化合物との共重合で得られる熱可塑性樹脂は、上記樹脂と比較して熱安定性の改良が期待されるにも関わらず現在までエチレンとの共重合に利用されてこなかった。これは、ビニリデン化合物の化学的反応性に起因している。従来、ビニリデン化合物の単独重合にはラジカル発生剤(例えば、過酸化水素、有機化酸化物など)によるラジカル重合法、プロトン酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、硫酸など)、ルイス酸(例えば、三塩化アルミニウム、四塩化スズ、三フッ化ホウ素など)を開始剤とするカチオン重合法が用いられている。また近年、遷移金属化合物を触媒とするリビングラジカル重合法、リビングカチオン重合法(例えば、特許文献1、特許文献2)などが開発されているが、これらの重合方法ではビニリデン化合物の単独重合に限られ、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンとビニリデン化合物との間にランダム共重合を進行させエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/ビニリデン化合物共重合体(例えば、エチレン/ビニリデン化合物共重合体)を得ることは困難
であった。
【0003】
最近、ある特定構造をもつ遷移金属触媒を用いるとエチレンとビニリデン化合物との共重合が進行し、かつビニリデン化合物がランダムに取り込まれたエチレン/ビニリデン化合物共重合体が得られるという報告がなされた。1つは、ケイ素あるいは炭素原子等で架橋した2分子のシクロペンタジエニル骨格を有する遷移金属錯体とアルミノキサン化合物からなる、いわゆる架橋メタロセン触媒を用いる方法(例えば、非特許文献1参照)であり、1つは、アミド基等の供与性分子がシクロペンタジエン骨格と架橋した構造を有する、架橋型のハーフメタロセン化合物を用いる方法(例えば、非特許文献2参照)である。
しかし、ここで用いられる遷移金属触媒は、全て架橋型のメタロセン触媒あるいは架橋型のハーフメタロセン触媒であり、その合成経路は2〜5段階以上と多く、煩雑であり、かつ技術的にも難しいという問題がある。さらに、その重合活性が工業的に充分でないこと、得られるエチレン/ビニリデン化合物共重合体中のビニリデン化合物の含量が少ないといった問題もある。
従って、合成が容易で、かつ高い重合活性と高いビニリデン化合物共重合性の両者を満足させる遷移金属触媒を用いたエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/ビニリデン化合物共重合体の製造方法の開発が望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−48704号公報
【特許文献2】特開昭64−62308号公報
【非特許文献1】Macromolecules, 31, 5145(1998)
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society, 125, 10788(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は工業的に用いる上でより容易に合成でき、高い重合活性と高い共重合性を有する遷移金属触媒を用いたエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンとビニリデン化合物の共重合体の製造方法を見出すことを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、合成の容易な、特定のシクロペンタジエニル骨格を含む配位子1分子と、少なくとも1個のアリロキシ基が金属に配位した遷移金属化合物と活性化剤からなる触媒が、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンとビニリデン化合物の共重合に対して、高い重合活性を有しかつ共重合性に極めて優れるという驚くべき事実に基づいてなされたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される遷移金属化合物(A)および有機アルミニウムオキシ化合物または有機ホウ素化合物から選ばれる1種以上の活性化剤(B)からなる遷移金属触媒の存在下、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンと下記一般式(2)で表される少なくとも1種類のビニリデン化合物との共重合を行うことを特徴とする、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/ビニリデン化合物共重合体の製造方法に関する。
ここでいうビニリデン化合物は、下記一般式(2)で表される。
【化1】

(式中、Mは周期律表3〜5族の遷移金属を表す。Xは、Xが複数有る場合、複数のXはそれぞれ同じでも異なっていても良く、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリロキシ基またはハロゲンからなる。nは1〜3の整数である。R〜Rはそれぞれ同じでも異なっていても良く、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリロキシ基またはハロゲンからなり、任意の2つまたは3つが結合し環を形成していても良い。環には共役2重結合を含んだ芳香族性を有するものも含む。mは0〜3の整数である。)
【化2】

(式中、R〜R10は各々独立して互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、酸素を含む置換基、窒素原子を含む置換基または置換、未置換のフェニル基を示す。)
さらに本発明は、前記一般式(1)で表される遷移金属化合物において、Mで表される遷移金属がTi、ZrまたはHfである、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンと前記一般式(2)で表されるビニリデン化合物との共重合体の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、工業的に用いる上でより容易に合成でき、かつ高い重合活性と高い共重合性を有する遷移金属触媒、および該遷移金属触媒を用いるより効率的なエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンとビニリデン化合物との共重合体の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に関わるエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/ビニリデン化合物共重合体の製造方法について詳細に説明する。
本発明のエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンとビニリデン化合物の共重合に用いる遷移金属触媒の遷移金属化合物(A)については、前記式(1)で表されるが、式中、Mは周期律表3〜5族の遷移金属を表す。好ましくは周期律表4族の遷移金属を表す。より好ましくはTi,ZrまたはHfを表す。最も好ましくはTiである。Xは、Xが複数有る場合、複数のXはそれぞれ同じでも異なっていても良く、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリロキシ基またはハロゲンからなる。好ましくは炭素数1〜20のアルキル基またはハロゲンからなる。nは1〜3の整数である。R〜Rはそれぞれ同じでも異なっていても良く、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリロキシ基またはハロゲンからなり、任意の2つまたは3つが結合し環を形成していても良い。環には共役2重結合を含んだ芳香族性を有するものも含む。好ましくは水素または炭素数1〜20のアルキル基からなる。mは0〜3の整数である。なかでも1〜3置換のシクロペンタジエン環を有する場合は、さらに好適である。
【0010】
前記式(1)におけるX及びR〜Rのアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリロキシ基のアルキル、アリール部分の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、1−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、1,1−エチルメチルプロピル、2−エチルブチル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、4−メチルヘキシル、1,2−ジメチルペンチル、2−エチルペンチル、2,4−ジメチルペンチル、1−エチル−3−メチルブチル、3−メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、1,1,3−トリメチルブチル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、イソオクチル、4−エチルヘキシル、4,4−ジメチルヘキシル、1,3−ジメチルヘキシル、2,3−ジメチル
ヘキシル、1−エチル−3−メチルペンチル、2,2−エチルメチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、2−メチル−1−プロピルブチル、4−エチルシクロヘキシル、3,4−ジメチルシクロヘキシル、1,1,2−トリメチルペンチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、n−ノニル、イソノニル、1−メチルオクチル、4−エチルヘプチル、1,4−ジメチルヘプチル、1,1,3−トリメチルヘキシル、2,2−エチルメチルヘキシル、1,1−ジエチルペンチル、2,2−メチルプロピルペンチル、n−デシル、イソデシル、1−メチルノニル、2−エチルオクチル、2,2−ジメチルオクチル、1,2−ジメチルオクチル、n−ウンデシル、n−ドデシル、フェニル、ベンジル、p−トリル、m−トリル、キシリル、メシチリル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,6−ジメトキシフェニル、2,4,6−トリメトキシフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニル、2,4,6−トリイソプロピルフェニル、ナフチル、2−メトキシフェニル、2−イソプロポキシフェニル、2−t−ブトキシフェニル、2,6−ジ−t−ブチルフェニル、2−メチルフェニル、2−イソプロピルフェニル、2−t−ブチルフェニル、2−メチル−6−イソプロピルフェニル、2−メチル−6−t−ブチルフェニルなどが挙げられる。これらの炭化水素基は水素原子を任意にハロゲン原子で置換していてもよい。ハロゲン原子で置換した炭化水素基の例としては、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、ジクロロメチル、クロロメチル、o−クロロフェニル、ペンタフルオロフェニルなどがあげられる。これらは単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0011】
前記式(1)で表される具体的な金属錯体として、例えば、CpTi(O−2,6−Pr)Cl、Cp*Ti(O−2,6−Pr)Cl、MeCpTi(O−2,6−Pr)Cl、1,3−MeCpTi(O−2,6−Pr)Cl、1,2,3−MeCpTi(O−2,6−Pr)Cl、1,2,4−MeCpTi(O−2,6−Pr)Cl、n−BuCpTi(O−2,6−Pr)Cl、t−BuCpTi(O−2,6−Pr)Cl、1,3−n−BuCpTi(O−2,6−Pr)Cl、1,3−t−BuCpTi(O−2,6−Pr)Cl、CpZr(O−2,6−Pr)Cl、Cp*Zr(O−2,6−Pr)Cl、MeCpZr(O−2,6−Pr)Cl、1,3−MeCpZr(O−2,6−Pr)Cl、1,2,3−MeCpZr(O−2,6−Pr)Cl、1,2,4−MeCpZr(O−2,6−Pr)Cl、n−BuCpZr(O−2,6−Pr)Cl、t−BuCpZr(O−2,6−Pr)Cl、1,3−n−BuCpZr(O−2,6−Pr)Cl、1,3−t−BuCpZr(O−2,6−Pr)Cl、CpHf(O−2,6−Pr)Cl、Cp*Hf(O−2,6−Pr)Cl、MeCpHf(O−2,6−Pr)Cl、1,3−MeCpHf(O−2,6−Pr)Cl、1,2,3−MeCpHf(O−2,6−Pr)Cl、1,2,4−MeCpHf(O−2,6−Pr)Cl、n−BuCpHf(O−2,6−Pr)Cl、t−BuCpHf(O−2,6−Pr)Cl、1,3−n−BuCpHf(O−2,6−Pr)Cl、1,3−t−BuCpHf(O−2,6−Pr)Cl、CpTiMe(O−2,6−Pr)、Cp*TiMe(O−2,6−Pr)、MeCpTiMe(O−2,6−Pr)、1,3−MeCpTiMe(O−2,6−Pr)、1,2,3−MeCpTiMe(O−2,6−Pr)、1,2,4−MeCpTiMe(O−2,6−Pr)、n−BuCpTiMe(O−2,6−Pr) 、t−BuCpTiMe(O−2,6−Pr)、1,3−n−BuCpTiMe(O−2,6−Pr)、1,3−t−BuCpTiMe(O−2,6−Pr
)(前記構造式中、Cpはシクロペンタジエニル基を、Cp*はペンタメチルシクロペンタジエニル基を、Prはイソプロピル基を表す。)等を例示することが出来る。これらは単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
【0012】
本発明で用いることのできる有機アルミニウムオキシ化合物としては下記一般式(3)、(4)、(5)および(6)で示される有機アルミニウムオキシ化合物のうち少なくとも1つの化合物があげられる。
【化3】

(式中、R11〜R13はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜8の炭化水素基、nは1〜50までの整数を表す。)
【化4】

(式中、R14〜R16はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜8の炭化水素基、nは1〜50までの整数を表す。)
【0013】
【化5】

(式中、R17は炭素数1〜8の炭化水素基、nは1〜50までの整数を表す。)
【化6】

(式中、R18〜R21はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜8の炭化水素基、nは1〜50までの整数を表す。)
これら有機アルミニウムオキシ化合物の具体例としては、メチルアルミノキサン、エチ
ルアルミノキサン、プロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、メチルエチルアルミノキサン、メチルブチルアルミノキサン、メチルイソブチルアルミノキサン等が挙げられる。特に、メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、メチルイソブチルアルミノキサンが好適に使用できる。これらは2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、これら有機アルミニウムオキシ化合物には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物を含んでいてもよい。
【0014】
また、本発明で用いることのできる有機ホウ素化合物としては下記一般式(7)または(8)で示される有機ホウ素化合物のうち少なくとも1つの化合物があげられる。
(BR222324)n・・・(7)
(式中、R22〜R24はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜14のハロゲン化アリール基またはハロゲン化アリロキシ基を含む炭化水素基、nは1〜4までの整数を表す。)
Q(BR25262728)n・・・(8)
(式中、Qは4級アミンまたは4級アンモニウム塩またはカルボカチオンまたは価数+1〜+4の金属カチオンであり、R25〜R28はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜14のハロゲン化アリール基またはハロゲン化アリロキシ基を含む炭化水素基、nは1〜4までの整数を表す。)
前記一般式(7)および(8)の炭化水素基の具体例としてはフェニル、ベンジル、p−トリル、m−トリル、キシリル、メシチリル、2,6−ジメチルフェニル,2,4,6−トリメチルフェニル,2,6−ジメトキシフェニル,2,4,6−トリメトキシフェニル,2,6−ジイソプロピルフェニル,2,4,6−トリイソプロピルフェニル、ナフチル、o−イソプロポキシフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタフルオロベンジル、テトラフルオロフェニル、テトラフルオロトリル等があげられる。
また、前記一般式(8)のQの具体例としてはピリジニウム、2,4−ジニトロ−N,N−ジエチルアニリニウム、p−ニトロアニリニウム、2,5−ジクロロアニリン、p−ニトロ−N,N−ジメチルアニリニウム,キノリニウム、N,N−ジメチルアニリニウム,メチルジフェニルアンモニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、8−クロロキノリニウム、トリメチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、アンモニウム、トリフェニルメチル、ナトリウム、リチウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム等があげられる。
【0015】
これら有機ホウ素化合物の具体例としては、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。これらは2種以上組み合わせて用いてもよい。最も好ましくはトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
本発明において使用するのに好適な触媒は(A)遷移金属化合物および(B)アルキルアルミニウムオキシ化合物または有機ホウ素化合物から選ばれる1種以上の活性化剤を任意の順序でかつ任意の好適な方法で組み合わせることによって製造される。
前記(A)成分と(B)成分の触媒組成比(モル比)は、好ましくは(A):(B)=1:0.01〜1:10000であり、更に好ましくは1:100〜1:3000である。
触媒調製はあらかじめ、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、好適な溶媒中で混合することにより行ってもよいし、(A),(B)それぞれの成分を別々にモノマーが共存するリアクター内に導入して、リアクター内において調製してもよい。触媒調製に好適な
溶媒はヘキサン、シクロヘキサン等のアルカンをはじめとする炭化水素系溶媒とトルエン、ベンゼン、エチルベンゼン等の芳香族系の溶媒があげられる。またこれらの溶媒は前処理において水分等を除去しておくことが好ましい。触媒の調製温度としては、−20℃〜150℃が最適である。
【0016】
本発明で使用できるビニリデン化合物としては、下記一般式(2)で表すことができる。
【化7】

(式中、R〜R10は各々独立して互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、酸素を含む置換基、窒素原子を含む置換基または置換、未置換のフェニル基を示す。)
前記一般式(2)のハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基としては具体的には、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン基、クロロメチル基、ブロモメチル基、クロロエチル基等の炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基、炭素数1〜20のハロゲン非置換アルキル基等を挙げることができる。
また、前記一般式(2)の酸素を含む置換基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、フェノキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基等を挙げることができる。
さらに、前記一般式(2)の窒素原子を含む置換基としては具体的には、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1〜20のアルキルアミノ基やシアノ基等を挙げることができる。
加えて、前記一般式(2)の置換、未置換のフェニル基としては具体的には、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、o−メチルフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基等を挙げることができる。
前記一般式(2)で表されるビニリデン化合物の具体例としては、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘプテン、2−エチル−1−ブテン、2−フェニル−1−ブテン、α−メチルスチレン、α−フェニルスチレン、メタアクリル酸メチル、メタアクリロニトリル等が例示される。これらは1種単独または2種以上組み合わせて用いることが出来る。ビニリデン化合物として好ましくはイソブテン、または2−メチル−1−ペンテン、またはα−メチルスチレンであり、特に好ましくは2−メチル−1−ペンテンである。
【0017】
本発明の共重合方法は、モノマー類と触媒の存在下、減圧、大気圧、加圧のいずれかの条件のもと、バルク、溶液、スラリーのいずれの方法でも行うことができる。
共重合を行うのに好適な温度範囲としては−30℃〜260℃であり、好ましくは0℃〜200℃である。また、共重合においては、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、エチレン雰囲気下で行ってもよい、またエチレンおよび/またはα−オレフィン類と上記の不活性ガスの混合雰囲気下でもかまわない。さらに、分子量調節のために上記のガスに加えて、水素を共存させてもかまわない。また、触媒成分をアルミナ、塩化マグネシウム、シリカのような好適な担体に担持させて用いてもかまわない。また所望ならば、共重合に際して溶媒を用いることも出来る。共重合に用いるのに好適な溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン等のアルカンをはじめとする炭化水素系溶媒とトルエ
ン、ベンゼン、エチルベンゼン等の芳香族系の溶媒があげられる。
共重合における好適な触媒量は[(生成ポリマー重量)kg]/[触媒(A)成分1mol]=10kg/1mol〜1000000kg/1mol程度のポリマーを与える量である。本発明における共重合後のポリマーの分離方法としては、例えば共重合液にアセトンまたは酸もしくはアルカリを混合したアルコール等の貧溶媒となる極性溶媒を加えて共重合体を沈澱させて回収する方法、反応液を撹拌下、熱湯中に投入後、溶媒と共に蒸留回収する方法、または直接反応液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。
【0018】
本発明のエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/ビニリデン化合物共重合体の製造方法において、3種類以上の成分を使用してもよく三元あるいは四元以上の共重合体の製造も可能である。
本発明のエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/ビニリデン化合物共重合体の製造方法において、上記モノマー以外にも必要に応じてプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンのような炭素数3〜20のα−オレフィン、α−シクロヘキセン、シクロペンテンのような環状オレフィン、スチレンのような芳香族ビニル化合物を共重合モノマーとして共重合することも可能である。
本発明のエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/ビニリデン化合物共重合体の製造方法において、共重合体中の組成は、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン1〜99mol%に対し、ビニリデン化合物類99〜1mol%の範囲で共重合できる。
【実施例】
【0019】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
重合活性は重合終了後に得られたポリマー量から求めた。ポリマー中のコモノマー含有量はMacromolecules, 31, 5145(1998) に記載されている共重合体の帰属結果を参考に、13C−NMRスペクトルを用いて行った。NMR測定はベンゼン−d/1,2−ジクロロベンゼン−d(1/1vol比)溶液中で行った。ポリマーの融点(Tm)及びガラス転移温度(Tg)の測定は示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素雰囲気下20℃/分の昇温速度で求めた。ポリマーの分子量はGPC法により140℃において、o−ジクロルベンゼンを測定溶媒として、RIにより検出し、ポリスチレン換算により求めた。
重合触媒として用いた金属錯体は、Cp* Ti(O−2,6−Pr)Cl(以下、金属錯体−1)、t−BuCpTi(O−2,6−Pr)Cl(以下、金属錯体−2)及びCp* TiMe(O−2,6−Pr)(以下、金属錯体−3)であり、Macromolecules, 31, 7588(1998)、Inorg. Chim. Acta., 345,
37(2003) 等記載の方法で合成した。
【0020】
[実施例1]
内部を真空脱気し、窒素置換した100mlのオートクレーブに白色固体MAO(メチルアルミノキサン)(Al換算で2mmol、東ソーアクゾ社製:PMAO−Sから溶媒のトルエンとAlMeを真空下で除いて使用した。)を導入した。次いで、活性アルミナカラムを通し脱水、窒素置換により脱酸素処理を施した2−メチル−1−ペンテンのトルエン溶液(濃度:1.64mol/l)を30ml仕込んだ。オートクレーブの内温を室温に保ち、金属錯体−1を0.2μmol含むトルエン溶液2mlをオートクレーブに加えた。直ちに0.6MPaのエチレンガスを導入し、重合反応を開始させた。オートクレーブの内温およびエチレン圧を保ちつつ、30分間重合した。重合終了後、オートクレーブの内容物を大量の塩酸酸性メタノール中に移しポリマーを析出させた。共重合活性=4700kg/mol−Ti・hであった。GPC測定より、Mn=1.0×10(Mw/Mn=3.0)であった。DSC測定より、Tm=130℃、Tg=−31℃であっ
た。13C−NMRから共重合体中の2−メチル−1−ペンテン含有量は3.0mol%と見積もられた。
13C−NMR:41.389(3B)、38.819(αδ)、34.078(Q)、29.750(γδ)、28.657(δδ)、23.793(1B)、22.669(βδ)、15.856(2B)、13.891(1B
このものの13C−NMRスペクトルを図1に示す。
【0021】
[実施例2]
内部を真空脱気し、窒素置換した100mlのオートクレーブに白色固体MAO(メチルアルミノキサン)(Al換算で3mmol、東ソーアクゾ社製:PMAO−Sから溶媒のトルエンとAlMeを真空下で除いて使用した。)を導入した。次いで、活性アルミナカラムを通し脱水、窒素置換により脱酸素処理を施した2−メチル−1−ペンテンのトルエン溶液(濃度:4.05mol/l)を30ml仕込んだ。オートクレーブの内温を室温に保ち、金属錯体−1を1.0μmol含むトルエン溶液2mlをオートクレーブに加えた。直ちに0.4MPaのエチレンガスを導入し、重合反応を開始させた。オートクレーブの内温およびエチレン圧を保ちつつ、30分間重合した。重合終了後、オートクレーブの内容物を大量の塩酸酸性メタノール中に移しポリマーを析出させた。共重合活性=2600kg/mol−Ti・hであった。GPC測定より、Mn=4.8×10(Mw/Mn=2.2)であった。DSC測定より、Tm=113℃、Tg=−37℃であった。13C−NMRから共重合体中の2−メチル−1−ペンテン含有量は7.8mol%と見積もられた。
【0022】
[実施例3]
内部を真空脱気し、窒素置換した100mlのオートクレーブに白色固体MAO(メチルアルミノキサン)(Al換算で9mmol、東ソーアクゾ社製:PMAO−Sから溶媒のトルエンとAlMeを真空下で除いて使用した。)を導入した。次いで、活性アルミナカラムを通し脱水、窒素置換により脱酸素処理を施した2−メチル−1−ペンテンのトルエン溶液(濃度:1.64mol/l)を30ml仕込んだ。オートクレーブの内温を室温に保ち、金属錯体−2を3.0μmol含むトルエン溶液2mlをオートクレーブに加えた。直ちに0.6MPaのエチレンガスを導入し、重合反応を開始させた。オートクレーブの内温およびエチレン圧を保ちつつ、10分間重合した。重合終了後、オートクレーブの内容物を大量の塩酸酸性メタノール中に移しポリマーを析出させた。共重合活性=430kg/mol−Ti・hであった。GPC測定より、Mn=5.3×10(Mw/Mn=2.9)であった。DSC測定より、Tm=133℃、Tg=−30℃であった。13C−NMRから共重合体中の2−メチル−1−ペンテン含有量は2.0mol%と見積もられた。
【0023】
[実施例4]
内部を真空脱気し、窒素置換した100mlのオートクレーブに活性アルミナカラムを通し脱水、窒素置換により脱酸素処理を施した2−メチル−1−ペンテンのトルエン溶液(濃度:1.64mol/l)を30ml仕込んだ。オートクレーブを氷浴にひたし温度を一定に保持しながら、次いで、金属錯体−3および[PhC][B(C]を1.0μmol:1.2μmol含むトルエン溶液2mlをオートクレーブに加えた。直ちに0.6MPaのエチレンガスを導入し、重合反応を開始させた。オートクレーブの内温およびエチレン圧を保ちつつ、10分間重合した。重合終了後、オートクレーブの内容物を大量の塩酸酸性メタノール中に移しポリマーを析出させた。共重合活性=900kg/mol−Ti・hであった。GPC測定より、Mn=3.7×10(Mw/Mn=2.7)であった。DSC測定より、Tm=116℃、Tg=−36℃であった。13C−NMRから共重合体中の2−メチル−1−ペンテン含有量は6.9mol%と見積もられた。
【0024】
[実施例5]
内部を真空脱気し、窒素置換した100mlのオートクレーブに活性アルミナカラムを通し脱水、窒素置換により脱酸素処理を施したイソブテンのトルエン溶液(濃度:1.64mol/l)を30ml仕込んだ。オートクレーブを氷浴にひたし温度を一定に保持しながら、次いで、金属錯体−3および[PhC][B(C]を1.0μmol:1.2μmol含むトルエン溶液2mlをオートクレーブに加えた。直ちに0.6MPaのエチレンガスを導入し、重合反応を開始させた。オートクレーブの内温およびエチレン圧を保ちつつ、10分間重合した。重合終了後、オートクレーブの内容物を大量の塩酸酸性メタノール中に移しポリマーを析出させた。共重合活性=190kg/mol−Ti・hであった。GPC測定より、Mn=2.7×10(Mw/Mn=2.5)であった。DSC測定より、Tm=115℃、Tg=−36℃であった。13C−NMRから共重合体中のイソブテン含有量は33.3mol%と見積もられた。
本発明を好ましい実施態様に関連して説明してきたが、当業者が容易に理解されるように本発明の原理及び範囲を逸脱することなく改変及び変更を実施し得ることを理解すべきである。従って、前記改変は本発明の範囲内で実施され得る。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の方法によって、透明性、耐薬品性、耐水性、耐候性及び耐熱老化性等に優れた新規なエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/ビニリデン化合物共重合体を工業的に効率良く製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】エチレン/2−メチル−1−ペンテン共重合体の13C−NMRスペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される遷移金属化合物(A)および有機アルミニウムオキシ化合物または有機ホウ素化合物から選ばれる1種以上の活性化剤(B)からなる重合触媒の存在下、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンと少なくとも1種類のビニリデン化合物との共重合を行うことを特徴とするエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/ビニリデン化合物共重合体の製造方法。
【化1】

(式中、Mは周期律表3〜5族の遷移金属を表す。Xは、Xが複数有る場合、複数のXはそれぞれ同じでも異なっていても良く、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリロキシ基またはハロゲンからなる。nは1〜3の整数である。R〜Rはそれぞれ同じでも異なっていても良く、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリロキシ基またはハロゲンからなり、任意の2つまたは3つが結合し環を形成していても良い。環には共役2重結合を含んだ芳香族性を有するものも含む。mは0〜3の整数である。)
【請求項2】
前記ビニリデン化合物が下記一般式(2)で表されることを特徴とする、請求項1記載のエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/ビニリデン化合物共重合体の製造方法。
【化2】

(式中、R〜R10は各々独立して互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、酸素を含む置換基、窒素原子を含む置換基または置換、未置換のフェニル基を示す。)
【請求項3】
前記ビニリデン化合物がイソブチレン、または2−メチル−1−ペンテン、またはα−
メチルスチレンであることを特徴とする、請求項1又は2記載のエチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン/ビニリデン化合物共重合体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−160965(P2006−160965A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357636(P2004−357636)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】