説明

エチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法とその触媒

【課題】高い反応速度をもたらすエチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法を提供する。
【解決手段】パラジウム源と、下式(I)で示される1,2−P,P’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ[3.3.1.1{3.7}デシル)−メチレン−ベンゼン等の二座ジホスフィンと、陰イオン源とを含む新規な触媒の存在下、一酸化炭素およびヒドロキシ基含有化合物である共反応体によりエチレン性不飽和化合物をカルボニル化する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素および共反応体によるエチレン性不飽和化合物のカルボニル化の方法およびその触媒に関する。さらに詳細に述べると、本発明は、エテンと一酸化炭素および水または他の適当な共反応体との反応によりカルボン酸、特にプロピオン酸、またはその誘導体を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願第9842717号は、不飽和化合物のカルボニル化に関する。その実施例3で、酢酸パラジウム(II)0.1ミリモル、1,3−PP’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ−[3.3.1.1{3.7}]デシル)プロパン0.15ミリモルおよびメチルスルホン酸0.2ミリモルを含む触媒の存在下、エテンを水と反応させてプロピオン酸を調製することについて記載している。エテンは、100%の選択率で、平均反応速度1500モル/モル・時でプロピオン酸に完全に変換された。
【0003】
国際特許出願第0172697号は、特定の二座ホスフィン、アルシンまたはスチビン配位子を含む触媒の存在下、ペンテンニトリルをカルボニル化してシアノ吉草酸を調製することに関する。この二座配位子では、リン(P)、ヒ素(As)またはアンチモン(Sb)各原子は、有機架橋基を介して結合され、それぞれが2つの三級アルキル基で置換されている。
【0004】
その記述の中で架橋基として可能な広範な基が記載されている。ちなみに、二価アリール基、すなわち、ジキシリルが記述されているが、好ましいものとしてC〜Cアルキレン基が挙げられている。さらに、三級アルキル基として可能な広範な基が記述されている。ちなみに、三級アルキル基は環状構造を含み、すなわち、アルキルで置換した2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基となることが記述されている。しかしながら、好ましいものとして、t−ブチル基などの非環状三級アルキル基を含む二座ジホスフィンが挙げられている。これらの好ましい基は、実施例の中で確認されている。配位子として1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパンを含む触媒を使用するケース、すなわち、実施例3および8は、配位子として1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼンを含む触媒を使用するケース、すなわち、実施例9より高い反応速度および変換をもたらしている。さらに、配位子として1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパンを含む触媒を使用するケース、すなわち、実施例1は、配位子として1,3−PP’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ−[3.3.1.1{3.7}]デシル)プロパンを含む触媒を使用するケース、すなわち、実施例10より高い反応速度および変換をもたらしている。
【0005】
国際特許出願第0185662号は、ビニル基含有化合物のヒドロホルミル化によってアルデヒドを製造する方法に関する。この発明の目的は直鎖生成物に対して高い選択性を得ることである。ヒドロホルミル化反応は、VIII族金属と架橋Xによって結合された2つの2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3.7}]−デシル基を含有するジホスフィン配位子とを含む触媒の存在下で行われる。架橋として可能な広範囲のものが一般式によって示されている。しかしながら、「エタン」、「プロパン」および「ヘキサン」架橋を有するジホスフィン配位子だけが特に記述されている。実施例が開示しているのは、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナートおよび1,3−PP’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ[3.3.1.1{3.7}]デシル)プロパンを含有する触媒の使用だけである。
【0006】
Robert Pughは、彼の論文「Phospha−adamantanes a new class of bulky alkyl phosphine ligands」(2000年4月にブリストル大学に提出された論文)の3.2節で、1,2−P,P’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ[3.3.1.1{3.7}デシル)−o−キシレンの合成について記述している。この配位子への応用についてはまったく示されていない。
【0007】
国際特許出願第9842717号および国際特許出願第0172697号に記載されたような方法はより満足すべき反応速度をもたらすが、依然として改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第98/42717号
【特許文献2】国際公開第01/72697号
【特許文献3】国際公開第01/85662号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Robert Pugh「Phospha−adamantanes a new class of bulky alkyl phosphine ligands」(2000年4月にブリストル大学に提出された論文)の3.2節
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、もっと高い反応速度をもたらす方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、
a)VIII族金属源と、
b)式I
【0012】
【化1】

の二座ジホスフィンであって、
式中、Rは、Rが結合しているリン原子と共に場合によって置換されている2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デシル基または1つもしくは複数の炭素原子がヘテロ原子で置換されているその誘導体になる二価の基(「2−PA」基)を表し、RおよびRは独立に原子数20までの一価の基を表すかまたは一緒になって原子数20までの二価の基を形成し、AおよびAは独立に場合によって置換されているアルキレン基を表し、Rは場合によって置換されている芳香族基を表す二座ジホスフィン、
c)陰イオン源と
を含む触媒の存在下、一酸化炭素および共反応体によりエチレン性不飽和化合物をカルボニル化する方法を提供するものである。
【0013】
本発明の方法は高い反応速度をもたらす。
【0014】
本発明による方法において、エチレン性不飽和化合物は、炭素数が2から20、より好ましくは2から10、最も好ましくは2から4のアルケンであることが好ましい。このアルケンは直鎖または分岐構造をとることができ、あるいは環状構造を含むことができる。アルケンは1分子当たり1つまたは複数の二重結合を含むことができ、これらの二重結合は内部二重結合であっても末端二重結合であってもよい。アルケンにおいては1つまたは複数の水素原子を、他の原子、たとえば、ハロゲン原子類、硫黄原子、酸素原子または窒素原子、または原子の集団、たとえば、水酸基;シアノ基類;メトキシ基またはエトキシ基などのアルコキシ基類、チオキシ基;ジメチル−およびジエチル−アミノ基などのアミノ基:またはフェニル基、トリル基またはナフチル基などの芳香族基で置換することができる。アルケンはヘテロ原子をまったく含まないことが好ましい。
【0015】
アルケンの例としては、エテン、プロペン、1−もしくは2−ブテン、1−もしくは内部ペンテン、1−もしくは内部ヘキセン、1−もしくは内部ヘプテン、1−もしくは内部オクテン、1−もしくは内部デセン、内部もしくは末端C14〜C18オレフィン、ペンテンニトリル、シクロヘキセンおよびスチレンが挙げられる。好ましいアルケンとしては、エテン、プロペン、1−ブテンおよび2−ブテンが挙げられる。エテンは特に好ましい。
【0016】
本発明による方法において、一酸化炭素はその純粋な形または窒素、二酸化炭素またはアルゴンなどの希ガス等の不活性ガスで希釈した形で使用することができる。エチレン性不飽和化合物がたとえばエテンなどのガスの場合、一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物のガス混合物を使用することができる。共反応物質が水素の場合は、一酸化炭素と水素のガス混合物が使用できる。
【0017】
本発明による方法は、たとえば、分子状水素や水、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよび1−ブタノールなどの一価アルカノール類、およびエチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよびグリセロールなどの多価アルカノール類;チオール類;フェノールなどの芳香族アルカノール類;ジエチルアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミンなどの一級または二級(ポリ)アミン類またはアミド類;および酢酸、ピバル酸およびプロピオン酸などのカルボン酸を含め、広範囲の共反応物質で実施することができる。
【0018】
これらのうち、分子状水素および水などの水酸基含有化合物、アルカノール類およびカルボン酸が好ましい。カルボン酸およびその誘導体の調製には、これらのうちの水酸基含有化合物が特に好ましい。好ましい水酸基含有化合物として、水、メタノール、エタノール、プロパノールおよび1−ブタノールなどの1分子当たり1〜6個の炭素原子を有する一価アルカノール類、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよびフェノールなどの2〜6個の炭素原子を有する二価アルカノール類などがある。共反応物質は水が最も好ましい。
【0019】
この方法は特定の新規な触媒の存在下で遂行される。したがって、本発明は、
a)VIII族金属源と、
b)式I
【0020】
【化2】

の二座ジホスフィンであって、
式中、Rは、Rが結合しているリン原子と共に場合によって置換されている2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デシル基または1つもしくは複数の炭素原子がヘテロ原子で置換されているその誘導体になる二価の基(「2−PA」基)を表し、RおよびRは独立に原子数20までの一価の基を表すかまたは一緒になって原子数20までの二価の基を形成し、AおよびAは独立に場合によって置換されているアルキレン基を表し、Rは場合によって置換されている芳香族基を表す二座ジホスフィン、
c)陰イオン源と
を含む触媒に関するものでもある。
【0021】
使用することができるVIII族金属の例として、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)が挙げられる。Ni、PdまたはPtなどの10族の金属源、または9族の金属のロジウムを使用することが好ましい。これらのうち、パラジウムおよび白金がより好ましい。パラジウムは特に好ましい。
【0022】
好適な金属源の例は、パラジウムまたは白金と炭素数が12までのカルボン酸の塩、パラジウムまたは白金の、たとえば、一酸化炭素またはアセチルアセトナートとの錯体、またはイオン交換体などの固体材料と結合したパラジウムまたは白金などの白金またはパラジウム化合物である。酢酸パラジウム(II)、パラジウムジベンジルアセトンおよび白金(II)アセチルアセトナートは好ましい金属源の例である。
【0023】
式Iのジホスフィンにおいて、Rはアルキレン基を介してリン原子に結合している、場合によって置換されている芳香族基を表す。この芳香族基は、たとえばフェニル基などの単環式の基;またはたとえばナフチル基、アンスリル基またはインジル基などの多環式の基が可能である。芳香族基Rは好ましくは炭素原子だけを含むが、Rは、たとえばピリジン、ピロール、フラン、チオフェン、オキサゾールまたはチアゾール基中の窒素原子、硫黄原子、酸素原子などのヘテロ原子が1つまたは複数炭素鎖に割り込んだ芳香族基であってもよい。芳香族基Rはフェニル基であるのが最も好ましい。
【0024】
場合によっては、芳香族基は置換されている。好適な置換基としては、ハロゲン化物、硫黄、リン、酸素および窒素などのヘテロ原子を含有する基がある。このような基の例には塩化物、臭化物、ヨウ化物、および一般式が−O−H、−O−X、−CO−X、−CO−O−X、−S−H、−S−X、−CO−S−X、−NH、−NHX、−NR、−NO、−CN、−CO−NH、−CO−NHX、−CO−NXおよび−CIであり、XおよびXが独立にメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびn−ブチルなどの炭素数が1から4のアルキル基を表す基がある。
【0025】
芳香族基が置換されている場合は、1つまたは複数の、好ましくは炭素数が1から10のアリール基、アルキル基またはシクロアルキル基で置換するのが好ましい。好適な基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルとi−ブチル、フェニルおよびシクロヘキシルが挙げられる。しかしながら、芳香族基は置換されておらず、それをリン原子と結合させているアルキレン基に単に結合しているのが最も好ましい。アルキレン基は、芳香族基の隣接する位置、たとえば、1および2の位置で結合されているのが好ましい。
【0026】
アルキレン基AおよびAはそれぞれ独立に低級アルキレン基であることが好ましい。低級アルキレン基は炭素原子を1個から4個含むアルキレン基と解釈される。各アルキレン基は独立にたとえば、アルキル基で置換されていても、非置換であってもよい。各アルキレン基は両方とも置換されていないことが好ましい。各アルキレン基は両方が非置換メチレン基またはエチレン基であることがより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
【0027】
式Iのジホスフィン中のRは、Rが結合しているリン原子と共に場合によっては置換されている2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基または1つもしくは複数の炭素原子がヘテロ原子で置換されているその誘導体になる二価の基(「2−PA」基)を表す。
【0028】
トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デカンは、アダマンタンとしてより一般に知られる化合物に対する系統的名称である。したがって、場合によって置換されている2−ホスファ−トリシクロ−[3.3.1.1{3,7}デシル基またはその誘導体は、明細書全体をとおして(2−ホスファダマンチル基の場合のように)「2−PA」基と呼ばれる。
【0029】
2−PA基は1、3、5または7位の1つまたは複数で、20原子までの、好ましくは炭素数が1から10、より好ましくは炭素数が1から6の一価の基Rによって置換されていることが好ましい。Rの例として、メチル、エチル、プロピル、フェニルおよび4−ドデシルフェニルが挙げられる。2−PA基は、好適には同一の基Rによって、1、3、5および7位で置換されていることがより好ましい。
【0030】
2−PA基は、骨格中に2−リン原子以外の他のヘテロ原子に有することが好ましい。好適なヘテロ原子は酸素および硫黄原子である。これらのヘテロ原子は6、9および10位にあることが好ましい。
【0031】
最も好ましい二価の基は、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサダマンチル基である。
【0032】
およびRがそれぞれ独立に原子数20までの一価の基を表す場合は、それらが、炭素数1から10の範囲にある一価の基であることが好ましい。この一価の基は脂肪族、芳香族または脂環式とすることができ、直鎖状でも分岐状でもよい。この基はそれぞれ独立にN、OおよびSなどのヘテロ原子を含むことができるが、炭素原子だけを含むことが好ましい。一価の基としては、たとえば、メチル、エチル、プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、ピリジル、および(置換)トリメチルシリルなどのヒドロカルビル基、またはアルコキシ基などが挙げられる。あるいは、RとRは一緒になって、1,6−ヘキシレン、1,3−または1,4−シクロオクチレンなどの二価の基を形成してもよい。RとRはリン原子と一緒になって、本明細書で前に説明したような2−PA基を形成することが好ましい。RとRがリン原子と一緒になって、Rと同一の2−PA基を形成することが最も好ましい。
【0033】
特に好ましい二座ジホスフィンは、RとRがリン原子と一緒になって、Rと類似の2−PA基、より好ましくはRと同一の2−PA基を形成するジホスフィンであり、2−PAは好ましくはオルトキシリル基によって結合される。この2−PA基にとって好ましいものは本明細書の上記説明で示した。
【0034】
ジホスフィンは式IIに従う化合物であることが最も好ましく、
【0035】
【化3】

式中、Rは炭素数が1から6のアルキル基、好ましくはメチル基を表す。
【0036】
本発明の方法における非常に有利な二座ジホスフィンは、1,2−P,P’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ−[3.3.1.1{3.7}デシル]−メチレン−ベンゼン(時として1,2−P,P’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ[3.3.1.1{3.7}デシル]−オルト−キシレンとも呼ばれる)である。
【0037】
本発明による方法において用いられる二座の配位子は、たとえば、Robert Pughによる論文「Phospha−adamantanes a new class of bulky alkyl phosphine ligands」(2000年4月にブリストル大学に提出された論文)に記載されているように調製することができる。
【0038】
しかしながら、リン基が2つの一級リン基を有するアリールアルキル基によってではなく、2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デカン基またはその誘導体によって導入される方法によって二座配位子が調製されることが好ましい。
【0039】
二座配位子を調製する好ましい方法は3つの合成ステップを含む。
【0040】
第1の合成ステップにおいては、適当な2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デカン基またはその誘導体を、たとえば、B、AlおよびGaを含む13族の金属の水素化物と反応させる。これらのうち、BHが好ましい。この第1ステップの反応は広い範囲の温度で行うことができる。この温度は−150から100℃の範囲内にあることが適切である。この反応は−50から50℃の範囲の温度で行うことが好ましく、−10から10℃の範囲がより好ましい。この反応は以下に規定するように溶媒中で行うことが好ましい。形成された付加物は、その後の第2ステップで使用する前に再結晶化するのが好ましい。
【0041】
第2のその後の合成ステップにおいて、2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デカン基またはその誘導体の13族金属付加物は、第1サブステップで、アルキル化されたIA族金属、好ましくはNaまたはLi、最も好ましくはアルキルリチウムと反応させる。この反応は−150から100℃の範囲の温度で行うことができ、−100から0℃の範囲の温度で行うのが好ましく、−80から−50℃の範囲の温度がより好ましい。第1サブステップで調製されたリチウムリン化物は引き続き第2サブステップで、式、
H−A−R−A−H (III)
(式中、HはF、Cl、Br、I、好ましくはClまたはBrを表し;A、AおよびRは本明細書で前に定義したような基を表す)の適当なハロゲン化アリールアルキル基と反応させる。
【0042】
この反応は−150から100℃の範囲の温度で行うことができる。この反応は0℃以下の温度で行うことが好ましく、−80から−50℃の温度が好ましい。第2合成ステップの反応は、以下に規定するように溶媒中で行うことが好ましい。
【0043】
第3の合成ステップでは、13族保護基が二座ジホスフィン13族付加物から取り除かれる。13族保護基の除去は、アミンで還流することにより好都合なことに第2合成ステップの直後に遂行することができる。使用できるアミンにはモノアミン類またはポリアミン類がある。好適な例として、アルキル基が好ましくは1個から6個の範囲の炭素原子を有する、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミンおよびトリメチルアミンなどのジアルキルアミンまたはトリアルキルアミン;トリフェニルアミンなどのトリアリルアミン;ジエチルフェニルアミンおよびジメチルフェニルアミンなどのアリールアルキルアミン;および1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの窒素原子を含有する環式構造がある。これらのうち、ジメチルアミンおよびジエチルアミンが好ましい。ジエチルアミンが特に好ましい。第2および第3合成ステップは、中間の再結晶化ステップを行わずに実施するのが好ましい。第3合成ステップの反応生成物は、その後、二座ジホスフィン配位子として使用する前に再結晶化することが好ましい。
【0044】
すべての反応は溶媒中で行うことが好ましい。好適な溶媒の例として、パラフィン類およびイソアルカン類などの飽和炭化水素類;2,5,8−トリオキサノナン(ジグリム)、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランおよびアニソールなどのエーテル類;スルホランなどのスルホン類およびトルエンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。第1合成ステップにおいて、ジクロロメタンなどのハロゲン化飽和アルカンを溶媒として使用してもよい。すべての合成ステップに対して好適な溶媒はテトラヒドロフランである。
【0045】
陰イオン源としては、これらの陰イオンを発生するどんな化合物を使用してもよい。好適には、酸類、またはそれらの塩類、たとえば、上に述べた酸の任意のものが陰イオン源として使用され、これらはVIII族金属の塩に関係していてもよい。
【0046】
陰イオン源として、18℃の水溶液中で測定したpKa値が6未満の酸が使用されることが好ましく、5未満の酸がより好ましい。好適な陰イオンの例としては、カルボン酸;リン酸;硫酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、t−ブタン−スルホン酸、p−トルエンスルホン酸および2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸類;トリフルオロ酢酸などのハロゲン化カルボン酸等の陰イオンがある。
【0047】
また、BF、AlCl、SnF、Sn(CFSO、SnClまたはGeClなどのルイス酸と、たとえばCFSOHもしくはCHSOHなどのスルホン酸またはHFもしくはHClなどのハロゲン化水素酸等のプロトン性酸との組み合わせ、またはルイス酸とアルコールの組み合わせによって発生する陰イオンなどの錯体陰イオンが好適である。このような錯体陰イオンの例はBF−、SnCl−、[SnCl・CFSO]−およびPF−である。
【0048】
陰イオン源はカルボン酸であることが好ましい。18℃の水溶液中で測って、pKaが6以下のカルボン酸がより好ましく、2から6の範囲のpKaを持つカルボン酸がより好ましく、4から6の範囲のpKaを持つカルボン酸が最も好ましい。使用できる好ましいカルボン酸としては炭素数が15までのカルボン酸があり、炭素数が10までのカルボン酸が好ましい。このようなカルボン酸は分岐状でも、直鎖でも、もしくは環状でもよく、または飽和でも不飽和でもよい。好適なカルボン酸の例として、ペンタン酸、ピバル酸、プロピオン酸およびプロペン酸がある。
【0049】
本発明による方法を用いてカルボン酸を調製する場合、このカルボン酸は好ましい陰イオン源であり、VIII族金属と錯体を形成する陰イオンはカルボン酸の陰イオンである。たとえば、プロピオン酸を調製するための一酸化炭素と水によるエテンのカルボニル化は、有利なことに陰イオン源としてプロピオン酸を使用して実施される。カルボン酸より「強い」その他の酸、すなわち、使用する溶媒中でカルボン酸のpKaより高いpKaを有する酸の陰イオンが本質的にまったく存在しないことが好ましい。
【0050】
本発明の方法において、出発物質および形成されたカルボニル化生成物が反応希釈剤として機能することができるが、その他の(不活性)溶媒が存在していてもよい。その他の溶媒の例としては、パラフィン類およびイソアルカン類などの飽和炭化水素類があり推奨され、さらに、2,5,8−トリオキサノナン(ジグリム)、ジエチル−エーテルおよびアニソールなどのエーテル類;スルホランなどのスルホン類およびトルエンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。
【0051】
好ましい実施形態においては、カルボン酸を反応希釈剤として使用する。18℃の水溶液中で測ったpKa値が6以下のカルボン酸、より好ましくはpKa値が2から6の範囲のカルボン酸、最も好ましくはpKa値が4から6の範囲のカルボン酸が好ましい。本発明による方法を用いてカルボン酸を調製する場合、このカルボン酸は好ましい反応希釈剤になる。たとえば、一酸化炭素と水によりエテンをカルボニル化してプロピオン酸を調製する反応は溶媒としてのプロピオン酸中で行われるので有利である。
【0052】
1から65バールの範囲の一酸化炭素分圧が好ましい。カルボニル化反応は好都合なことに適度の温度で行われる。したがって、この方法は30から200℃の範囲の温度で好適に行われ、好ましい温度は50から150℃の範囲である。反応圧力は大きく変わる可能性がある。たとえば、反応は1から100バールの範囲の圧力で行うことができ、2から30バールの範囲の圧力が好ましい。
【0053】
エチレン性不飽和化合物と反応物は、10:1から1:10の範囲内、好ましくは5:1から1:5の範囲内、より好ましくは2:1から1:2の範囲内のモル比で好適に供給される。
【0054】
使用する触媒の量は重要ではなく、広い範囲内で変えることができる。実用上の理由で、不飽和化合物1モル当たりVIII族金属10−8から10−1モル原子の範囲、好ましくは10−7から10−2モル原子の範囲の量を使用することができる。
【0055】
本発明の触媒調製のために、二座ジホスフィン配位子の量は、VIII族金属1モル原子当たりの配位子のモル数で表して、VIII族金属の量をある程度超えた量で用いることができる。
【0056】
配位子の量は、VIII族金属1モル原子当たり配位子が0.5から10モル存在するように選択されることが好ましい。VIII族金属1モル当たりの二座ジホスフィン配位子のモル量が1から3の範囲内であることがより好ましく、1から2の範囲内が最も好ましい。酸素の存在下では、わずかに多い量の方が利益になる可能性がある。
【0057】
陰イオン源の量は、カルボン酸が同時に反応生成物もしくは共反応物質でもあるかどうかによってあるいは同時に溶媒としても使用されるかどうかによって大きく変わる可能性がある。実用上の理由で、陰イオン源の量は、VIII族金属1モル当たり少なくとも0.5モルである。陰イオン源の量は、VIII族金属1モル当たり0.5から10の範囲で変わることが好ましく、好ましくはVIII族金属1モル当たり1から10の範囲で変わる。
【0058】
本発明による方法は、バッチ処理的、半連続式および連続式で行うことができる。この方法を半連続式で行った場合は、適度に余分な量の一酸化炭素および/またはエチレン性不飽和化合物および/または共反応物質をプロセスの適当な段階で間欠的に加えることが好ましい。このプロセスは連続式で行われることが好ましい。
【0059】
本発明による方法で調製されたカルボニル化生成物は広範囲の用途に使用することができる。特に好ましい実施形態において、本発明による方法は、一酸化炭素と水でエチレン性不飽和化合物をカルボニル化してカルボン酸を調製するのに使用される。調製されたカルボン酸を用いて、今度は、共反応物質としてカルボン酸を使用し、一酸化炭素でエチレン性不飽和化合物をカルボニル化することによってカルボン酸無水物を調製することができる。
【0060】
したがって、本発明は、
A)本明細書で説明したような方法による触媒の存在下、一酸化炭素と水でエチレン性不飽和化合物をカルボニル化してカルボン酸を得るステップと、
B)触媒の存在下、一酸化炭素とステップA)で得たカルボン酸でエチレン性不飽和化合物をカルボニル化してカルボン酸無水物を得るステップと
を含むカルボン酸およびそれに対応するカルボン酸無水物の調製方法を提供するものでもある。
【0061】
ステップB)の触媒は、
i)VIII族金属源と、
ii)配位子を含むリンと、
iii)陰イオン源とを含む触媒であることが好ましい。
【0062】
VIII族金属源i)は、本明細書で前に説明したようなVIII族金属源であることが好ましい。
【0063】
配位子を含むリンii)は二座のジホスフィンであることが好ましい。好ましい二座ジホスフィンとしては、国際特許出願第9842717号および国際特許出願第0172697号に記載されたものおよび本明細書で前に説明した二座ジホスフィンが挙げられる。特に好ましい二座ジホスフィンとしては、1,3−P,P’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ−[3.3.1.1{3.7}]デシル)プロパンおよび1,2−P,P’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ−[3.3.1.1{3.7}]デシル)−メチレン−ベンゼン(時として1,2−P,P’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ[3.3.1.1{3.7}]デシル)−オルト−キシレンとも呼ばれる)が挙げられる。
【0064】
陰イオン源iii)は、本明細書で前に説明したような陰イオン源であることが好ましい。ステップA)で調製したようなカルボン酸が陰イオン源として特に好ましい。好ましい実施形態においては、カルボン酸より「強い」その他の酸、すなわち、使用する溶媒中でカルボン酸のpKaより高いpKaを有する酸の陰イオンは本質的にまったく存在しない。
【0065】
ステップA)またはステップB)のエチレン性不飽和化合物は、それぞれ独立に本明細書で前に述べた各エチレン性不飽和化合物のいずれかとすることができる。ステップA)およびステップB)のエチレン性不飽和化合物は同じものであってもよく、また異なっていてもよい。
【0066】
ステップA)およびステップB)のエチレン性不飽和化合物が同一のものである場合は、有利なことに、ステップB)で対称なカルボン酸無水物が得られる。
【0067】
特に好ましい実施形態においては、ステップA)およびステップB)におけるエチレン性不飽和化合物はエテンである。この場合、高い反応速度でかつ良好な選択性をもってプロピオン酸およびプロピオン酸無水物が得られる。
【0068】
ステップA)およびステップB)のエチレン性不飽和化合物は、ステップB)で特定の対称カルボン酸無水物が得られるように選択することもできる。
【0069】
ステップB)の反応条件、たとえば、温度および圧力は、本明細書で前にステップA)について説明したような条件が好ましい。
【0070】
ステップA)およびステップB)のプロセスは、本明細書で前に述べたものも含め広い範囲の溶媒中で行うことができる。ステップA)およびステップB)は同一の溶媒中で行うことが好ましく、ステップA)とステップB)の両方の溶媒が、ステップA)で調製したようなカルボン酸であることが最も好ましい。
【0071】
有利なことに、本発明によりステップA)とステップB)を、たとえば、1つの反応器で同時に行わせることが可能になる。このようなプロセスにおいては、有利なことに、出発化合物としてエチレン性不飽和化合物、一酸化炭素および水を使用して高い反応速度でかつ選択性が良好な状態でカルボン酸無水物を調製することができる。
【0072】
この方法で調製されたカルボン酸無水物は、様々な用途に使用することができる。好ましい用途において、カルボン酸無水物は、アシル化剤として使用することができる。カルボン酸無水物は、たとえば、対応するカルボン酸エステルを調製するためにフェノールなどの芳香族アルコールのアシル化に使用することができる。別の実施例として、アミンまたはアミドのアミドまたはイミドへの各アシル化がある。エチレンジアミンおよびプロピレンジアミンなどのジアミンをアシル化することによって、それぞれテトラアセチルエチレンジアミンおよびテトラアセチルプロピレンジアミンなどの漂白活性化剤を調製することができる。
【0073】
調製されたカルボン酸無水物は、平衡反応で酢酸と反応して、他では得ることが困難な化合物である酢酸無水物を調製することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下の非限定実施例によって本発明を説明する。
(比較例A)
オートクレーブにプロピオン酸50ml、水5ml、Pd(OAc)0.1ミリモルおよび1,3−PP’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ−[3.3.1.1{3.7}]デシル)プロパン0.15ミリモルを投入した。フラッシュした後、オートクレーブを分圧15バールの一酸化炭素と10バールのエテンで加圧した。オートクレーブを密封した後、内容物を100℃の温度に加熱し、その温度に1.5時間保持した。冷却後、オートクレーブの内容物からサンプルを取り、気液クロマトグラフィーで分析した。パラジウム1モルにつき1時間当たりの製品モル数で表した平均反応速度も計算で求めた。平均反応速度は、エテンまたは一酸化炭素のどちらか一方がなくなるまでの期間中の一酸化炭素消費の平均速度で定義される。
【0075】
エテンは、平均反応速度2500モル/モルパラジウム・時(mol/mol・h)、選択率100%でプロピオン酸に完全に変換された。平均反応速度は、エテンまたは一酸化炭素のどちらか一方がなくなるまでの期間中の一酸化炭素消費の平均速度で定義された。
【実施例1】
【0076】
1,3−PP’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ[3.3.1.1{3.7}]デシル)プロパン0.15ミリモルの代わりに1,2−P,P’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ[3.3.1.1{3.7}デシル]−メチレン−ベンゼン0.15ミリモルを用い、15バールの一酸化炭素の代わりに10バールの一酸化炭素を用いた以外は比較例Aと同じ手順を繰り返した。1時間後にオートクレーブを冷却した。
【0077】
エテンは、平均反応速度10000mol/mol・h、選択性100%でプロピオン酸に完全に変換された。
(比較例B)
1,2−P,P’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ[3.3.1.1{3.7}デシル]−o−キシレン0.15ミリモルの代わりに1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)−メチレン−ベンゼン0.15ミリモルを用いた以外は実施例1と同じ手順を繰り返した。5時間後にオートクレーブを冷却した。
【0078】
エテンは、平均反応速度800mol/mol・h、選択性100%でプロピオン酸に変換された。
【実施例2】
【0079】
(半連続式)
水5mlの代わりに水32ml、および20バールのエテンと一酸化炭素の1:1ガス混合物を用いた以外は実施例1と同じ手順を繰り返した。ガス混合物は、100℃のプロセス温度で5から15バールの割合で2時間にわたって30回オートクレーブに導入した。
【0080】
エテン/COは、平均反応速度10000mol/mol・h、選択性100%でプロピオン酸に完全に変換された。
【実施例3】
【0081】
オートクレーブにメチル−3−ペンテノアート15mlおよび溶媒としてのトルエン40ml、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナート0.1ミリモルおよび1,2−PP’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ[3.3.1.1{3.7}]デシル)−メチレン−ベンゼン0.15ミリモルを投入した。フラッシュした後、オートクレーブを分圧30バールの一酸化炭素と30バールの水素で加圧した。オートクレーブを密封した後、内容物を100℃の温度に加熱し、その温度に1時間保持した。冷却後、オートクレーブの内容物からサンプルを取り、気液クロマトグラフィーで分析した。メチル−3ペンテノアートの変換率は100%であった。2−ホルミルメチルペンテノアートに対する選択性は3.5%、3−ホルミルメチルペンテノアートに対する選択性は51.3%、4−ホルミルメチルペンテノアートに対しては39.4%および5−ホルミルメチルペンテノアートに対しては4.0%であった。これらの製品に対する平均変換速度は、ロジウム1モルにつき1時間当たり2500モル(mol/mol・h)であった。
【実施例4】
【0082】
(1,2−P,P’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ[3.3.1.1{3.7}デシル]−メチレン−ベンゼンの合成)
合成ステップ1
2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ[3.3.1.1{3.7}]デカン水素化物(H−PA)13g、60ミリモルをテトラヒドロフラン40mlに溶解した溶液に、0℃で5分間にわたってボロン三水素化物73ミリモルをテトラヒドロフランに溶解した1M溶液を加えた。室温(20℃)で4時間攪拌した後、溶媒を除去し、最小体積の高温テトラヒドロフラン20mlから粗製製品を再結晶化し、ヘキサン(5ml、2回)で洗浄し、無色結晶として2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ[3.3.1.1{3.7}]デカンボラン(H−PA.BH)をもたらした。高温テトラヒドロフラン7mlからの濾液の再結晶化によって製品がさらに得られた。H−PA.BHの収率はH−PAベースで86%であった。
合成ステップ2
H−PA.BH3.67g、16ミリモルをテトラヒドロフラン40mlに溶解した溶液に、−75℃でヘキシルリチウム6.4ml(2.5M、16ミリモル)を加えた。1時間攪拌した後、α,α´−ジブロモ−o−キシレン2.1g、8ミリモルをテトラヒドロフラン20mlに溶解した溶液を−75℃で加え、反応物を室温まで温めた。3時間後、ジエチルアミン3ml、28ミリモルを加え、反応物を2時間還流した。冷却後、溶媒を除去し、粗製製品をトルエン60mlに溶解し、水で洗浄した(40ml、4回)。溶媒を除去し、1,2−P,P’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ[3.3.1.1{3.7}]デシル)−メチレン−ベンゼン3.9g、91%の白色固体を得た(NMR特性については2000年4月にブリストル大学に提出されたRobert Pughの論文を参照のこと)。このジホスフィンはメタノールからの再結晶化によってさらに精製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)VIII族金属源と、
b)式I
【化1】

の二座ジホスフィンであって、
式中、Rは、Rが結合しているリン原子と共に場合によって置換されている2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デシル基または1つもしくは複数の炭素原子がヘテロ原子で置換されているその誘導体になる二価の基(「2−PA」基)を表し、RおよびRは独立に原子数20までの一価の基を表すかまたは一緒になって原子数20までの二価の基を形成し、AおよびAは独立に場合によって置換されているアルキレン基を表し、Rは場合によって置換されている芳香族基を表す二座ジホスフィン、
c)陰イオン源と
を含む触媒の存在下、一酸化炭素および共反応体によりエチレン性不飽和化合物をカルボニル化する方法。
【請求項2】
a)VIII族金属源と、
b)式I
【化2】

の二座ジホスフィンであって、
式中、Rは、Rが結合しているリン原子と共に場合によって置換されている2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]−デシル基または1つもしくは複数の炭素原子がヘテロ原子で置換されているその誘導体になる二価の基(「2−PA」基)を表し、RおよびRは独立に原子数20までの一価の基を表すかまたは一緒になって原子数20までの二価の基を形成し、AおよびAは独立に場合によって置換されているアルキレン基を表し、Rは場合によって置換されている芳香族基を表す二座ジホスフィン、
c)陰イオン源とを含む触媒。
【請求項3】
VIII族金属源がニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)またはロジウム(Rh)である請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
およびRがリン原子と共に、Rに等しい2−PA基を形成する請求項2または3に記載の触媒。
【請求項5】
二座ジホスフィンが1,2−P,P’−ジ(2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサトリシクロ[3.3.1.1{3.7}デシル)−メチレン−ベンゼンである請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
陰イオン源がカルボン酸である請求項1から5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
触媒が請求項3から6のいずれか一項に記載の触媒である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
カルボン酸が反応希釈液として使用される請求項1または7に記載の方法。
【請求項9】
A)請求項1、7または8のいずれか一項に記載の方法により一酸化炭素と水でエチレン性不飽和化合物をカルボニル化してカルボン酸を得るステップと、
B)触媒の存在下、一酸化炭素とステップa)で得たカルボン酸でエチレン性不飽和化合物をカルボニル化してカルボン酸無水物を得るステップと
を含むカルボン酸およびそれに対応するカルボン酸無水物の調製方法。
【請求項10】
ステップB)の触媒が、
i)VIII族金属源と、
ii)配位子を含むリンと、
iii)陰イオン源と
を含む触媒である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
陰イオン源iii)がステップA)で調製したカルボン酸である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップA)で調製したようなカルボン酸が、ステップA)およびステップB)の両方で反応希釈液として使用される請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2011−225572(P2011−225572A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−105883(P2011−105883)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【分割の表示】特願2003−569322(P2003−569322)の分割
【原出願日】平成15年2月18日(2003.2.18)
【出願人】(500460209)ルーサイト インターナショナル ユーケー リミテッド (30)
【Fターム(参考)】