説明

エチレン系重合体の製造方法及びそれから得られたエチレン系重合体

【課題】成形性、耐久性に優れ、且つ耐衝撃性及び剛性のバランスに優れるポリエチレン系樹脂、特に中空プラスチック成形品に適したエチレン系重合体を効率よく、高い重合活性で製造する方法、並びにその方法で得られたエチレン系重合体またはブロー成形製品の提供。
【解決手段】比表面積が625〜1000m/g、細孔体積が1.0〜5.0cm/gである無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持したクロム担持無機酸化物(c)を非還元性雰囲気、250℃〜550℃で賦活することにより得られる触媒を、当該賦活の後にはクロム担持無機酸化物(c)上に有機アルミニウム化合物を担持させない形態で用いて、エチレン単独重合またはエチレンとα−オレフィンとの共重合を行うことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法により提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系重合体の製造方法及びそれから得られたエチレン系重合体に関し、さらに詳しくは、重合活性に優れたエチレン系重合触媒を用いた、耐久性、衝撃強度、溶融流動性等に優れたエチレン系重合体の製造方法、及び、それから得られたエチレン系重合体またはブロー成形製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種産業分野において、プラスチック製のパイプ、フィルム、射出成型体、及び中空成形体が盛んに用いられるようになった。その中でも、中空成形体に目を向けると、燃料缶及びプラスチックボトルなどの容器にもプラスチックが用いられている。また、自動車部品において、ポリエチレンより作られる中空プラスチック成形品が燃料タンクとして使用され、従来の金属材料製の燃料タンクにとって変わりつつある。プラスチック製の容器および燃料タンクは、金属材料の場合と比べると、重量/体積比が小さいので軽量化の面で有利であり、錆などの腐食が起こりにくく、耐衝撃性が良好であるという特徴を有
しており、ますます広い用途を獲得しつつある。
ポリエチレンより得られるプラスチック燃料タンクにおいては、自動車の安全性を確保するための重要な保安部品とするために、機械的強度、耐久性、耐衝撃性に関して、特に高いレベルが要求されており、これらを十分に高いレベルに向上させるため、更なる材料開発が進められている。
【0003】
一般に、ポリエチレン、すなわち、エチレン系重合体は、重合触媒を用いて、エチレンの単独重合あるいはエチレンとα−オレフィン等のコモノマーとの共重合によって製造されるが、用途に応じた適切な特性を有するエチレン系重合体を製造するために、様々な重合触媒が開発されている。現在、主要な重合触媒として、ラジカル重合触媒、チーグラー触媒、メタロセン触媒と並んで、フィリップス触媒が重用されている。
フィリップス触媒は、クロム化合物をシリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア等の無機酸化物担体に担持させ、非還元性雰囲気で賦活することにより、担持されたクロム原子の少なくとも一部のクロム原子を6価としたクロム触媒であるが、比較的広い分子量分布と長鎖分岐構造に起因する、優れた溶融加工特性を有するエチレン系重合体を生成することから、特に中空成形分野において重要なエチレン系重合触媒となっている。
【0004】
機械的強度、耐久性、耐衝撃性が優れたブロー成形用ポリエチレンを製造するためのフィリップス触媒に関して、従来から以下に述べるような各種の検討がなされている。
例えば、特許文献1には、トリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を用い、水素を共存させながら重合を行うことにより、ブロー成形品、特に大型ブロー成形品に適したポリエチレンを製造する方法が提案されている。また、該文献1には、ジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持クロム触媒を用いてポリエチレンを製造する方法も開示されている(比較例13)。また、該文献1には、焼成活性化後のクロム触媒の比表面積が350m/g以上となるような担体を選択することが好ましく、焼成活性化は400〜900℃の温度範囲にて行うことが開示されている。しかしながら、自動車用燃料タンクに適したポリエチレン及びその製造に好適な高活性のクロム触媒について必ずしも開示されているわけでなく、耐久性が十分なレベルの自動車用燃料タンクが製造できるとは言い難い。
【0005】
また、特許文献2には、助触媒として有機アルミニウム化合物を現場での重合反応器に添加し、クロム触媒を用いてポリエチレンを製造する方法が提案され、トリアルキルアルミニウム及び/又はジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物を含む担持クロム触媒を用いてポリエチレンを製造する方法が開示されている(実施例No.2〜No.6)。また、該文献2には、酸化クロムと(a)孔隙量が約1.1〜約1.8cm/gで表面積が約245〜約375m/g、(b)孔隙量が約2.4〜約3.7cm/gで表面積が約410〜約620m/g、及び(c)孔隙量が約0.9〜約1.4cm/gで表面積が約390〜約590m/gのシリカよりなる群から選択されるシリカを含むシリカ含有担体と、有機アルミニウム化合物とを含み、約400〜約860℃で活性化される担持されたクロム触媒が開示されている。しかしながら、中空プラスチック成形品、特に自動車用燃料タンクに適した耐久性(ESCR等)及び耐衝撃性がともに優れたポリエチレン及びその製造に好適な高活性のクロム触媒については必ずしも開示されているわけでない。
【0006】
また、特許文献3には、トリアルキルアルミニウム及び/又はジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持クロム触媒を用いてポリエチレンを製造する方法が提案されている。また、同文献には、例えばクロムを含有するシリカ−チタニウムコゲル触媒を550℃で活性化した触媒が開示されている(Example17)。しかしながら、該文献3には、担体の具体的性状の開示がなく、また、中空プラスチック成形品、特に自動車用燃料タンクに適したポリエチレン及びその製造に好適な高活性のクロム触媒について、必ずしも開示されているわけでない。
【0007】
特許文献4には、クロム化合物を無機酸化物担体に担持させ非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価としたクロム化合物担持無機酸化物担体に、不活性炭化水素溶媒中で特定の有機アルミニウム化合物(アルコキシド、シロキシド、フェノキシド等)を担持させたクロム触媒を用いるエチレン系重合体の製造方法が提案され、耐環境応力亀裂(ESCR)と剛性のバランスに優れたエチレン系重合体が開示されている。また、該文献4には、無機酸化物担体として、比表面積が100〜1000m/gであって、焼成活性化が400〜900℃で得られたクロム触媒が開示されている。しかしながら、特許文献4による方法では、水素による分子量調節が可能であるものの、分子量を低くすることには限界があり、高活性の触媒が必ずしも開示されているものではない。
【0008】
特許文献5には、クロム化合物を無機酸化物担体に担持し、非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価としたクロム触媒及び特定の有機アルミニウム化合物(アルコキシド、シロキシド等)からなることを特徴とするエチレン系重合体製造触媒が提案され、ESCR又は耐クリープ性に優れたエチレン系重合体が開示されている。また、同文献には、無機酸化物担体として、比表面積が100〜1000m/gであって、焼成活性化が400〜900℃で得られたクロム触媒が開示されている。しかしながら、特許文献5による方法では多段重合により、分子量分布をひろげることができるものの、分子量分布を広げることには限界があり、さらに好適な触媒が開示されているわけではない。
【0009】
さらに、特許文献6には、クロム化合物を無機酸化物担体に担持し非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価としたクロム触媒を用い、直列に連結した複数の重合反応器により連続的にエチレン単独又はエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンの共重合を多段で行うに際し、特定の有機アルミニウム化合物(アルコキシド、シロキシド等)をいずれか一つ又は全ての重合反応器に導入することを特徴とするエチレン系重合体製造方法が提案され、耐環境応力亀裂(ESCR)、耐クリープ性に優れたエチレン系重合体が開示されている。また、該文献6には、無機酸化物担体として、比表面積が100〜1000m/gであって、焼成活性化が400〜900℃で得られたクロム触媒が開示されている。しかしながら、該文献6には、分子量分布(Mw/Mn)が20.9(実施例)のエチレン系重合体が開示されているものの、中空プラスチック成形品、特に自動車用燃料タンクに適した耐衝撃性に優れたポリエチレン及びその製造方法に好適な高活性のクロム触媒が開示されているわけではない。
【0010】
特許文献7には、非還元性雰囲気で賦活することにより、少なくとも一部のクロム原子が6価となるフッ素化クロム化合物に、特定の有機ホウ素化合物を担持させたエチレン系重合用触媒が提案され、該文献7には、トリアルキルアルミニウム及び/又はジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持クロム触媒を用いてポリエチレンを製造する方法も開示されている(比較例6、8)。また、該文献7には、無機酸化物担体として、比表面積が100〜1000m/gであって、焼成活性化が400〜900℃で得られたクロム触媒が開示されている。しかしながら、該文献7には、中空プラスチック成形品、特に自動車用燃料タンクに適したポリエチレン及びその製造方法に好適な高活性のクロム触媒が開示されているわけではない。
【0011】
一方、少なくとも2種類の異なるクロム担持触媒系を用いることにより、より優れたエチレン重合体を得ることが開示されている。
例えば、特許文献8には、得られるポリエチレンの比較的高分子量部分にコモノマーを優先的に導入するのに十分な平均細孔半径差を有する少なくとも異なる2種類のクロム担持触媒系が開示され、この触媒系によって高い密度及び高い耐環境応力亀裂(ESCR)をもつエチレン重合体が得られている。また、該文献8には、支持体が特定の平均細孔半径を有するクロム触媒であって、高濃度の活性化は約750℃〜約900℃の温度で、低温度での活性化は約450℃〜約700℃の温度で行うことを特徴とするクロム触媒系が開示されている。しかしながら、該文献8には、中空プラスチック成形品、特に自動車用燃料タンクに適したポリエチレン及びその製造方法に好適な高活性のクロム触媒が開示されているわけではない。
【0012】
さらに、特許文献9には、一触媒成分をシリカアルミナ、第二触媒成分をシリカチタニアとした2種類のクロム担持触媒系をブレンドした触媒系についても開示されている。この触媒系によって高い耐環境応力亀裂(ESCR)をもつエチレン重合体が得られている。また、該文献9には、担体として、少なくとも350m/gであって、250℃〜950℃で活性化された触媒が開示されている。しかしながら、該文献9には、中空プラスチック成形品、特に自動車用燃料タンクに適したポリエチレン、及び、その製造方法に好適な高活性のクロム触媒が開示されているわけではない。
【0013】
また、特許文献10には、無機担体上に担持されている成分としてクロムと亜鉛を含んだ触媒が開示されているが、中空プラスチック成形品、特に自動車用燃料タンクに適したポリエチレン及びその製造方法に好適な高活性の触媒が開示されているわけではない。
【0014】
さらに、特許文献11には、無機担体上に担持されている成分としてクロムとジルコニウムを含んだ触媒が開示されているが、中空プラスチック成形品、特に自動車用燃料タンクに適したポリエチレン及びその製造方法に好適な高活性の触媒が開示されているわけではない。
【0015】
また、特許文献12には、伸長粘度のストレインハードニングパラメーター等特定の要件を満たす、成形性、耐久性、バリアー性に優れ、且つ耐衝撃性および剛性のバランスに優れたものとすることができ、中でも燃料タンク等に好適に用いられるポリエチレン系樹脂及びその製造方法が開示されている。また、該文献12には、クロム触媒として、比表面積が250m/g以上、通常は1000m/g以下の担体を用い、焼成活性化が400〜900℃の温度にて行われた触媒が開示されている。しかしながら、当該触媒はクロム化合物を担持し焼成活性化した後に、さらに有機アルミニウム化合物を担持するプロセスを含むため、触媒の製造工程が増える。
【0016】
上記のほか、自動車用燃料タンクに用いられる市販ポリエチレンとして、例えば、日本ポリエチレン社製高密度ポリエチレン「HB111R」、Basell社製高密度ポリエチレン「4261AG」などが知られている。
これらは、自動車メーカーの厳しい要求に応え、市場での評価を得た材料であるが、耐久性と剛性のバランス、耐衝撃性、成形性について、更に高いレベルが求められている。こうした状況下に、重合体の物性が優れているとともに、重合活性も更に優れたポリチレンの製造方法が求められており、当該製造に好適なクロム触媒の更なる改良が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2002−080521号公報
【特許文献2】特表2006−512454号公報
【特許文献3】WO94/13708国際公開パンフレット
【特許文献4】特開2003−096127号公報
【特許文献5】特開2003−183287号公報
【特許文献6】特開2003−313225号公報
【特許文献7】特開2006−182917号公報
【特許文献8】特開平6−199920号公報
【特許文献9】WO2001/40326国際公開パンフレット
【特許文献10】特表2008−502757号公報
【特許文献11】特表2008−502760号公報
【特許文献12】WO2010/150410国際公開パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、上記した従来技術の問題点に鑑み、成形性、耐久性に優れ、且つ耐衝撃性及び剛性のバランスに優れるポリエチレン系樹脂、特に中空プラスチック成形品に適したエチレン系重合体を効率よく、高い重合活性で製造する方法を提供すること、さらにはその方法で得られたエチレン系重合体またはブロー成形製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の粒子性状を有する無機酸化物担体にクロム化合物を担持させ、少なくとも一部のクロム原子が6価となる状態で焼成させた後、それを特定の温度、とりわけ比較的低い温度で焼成活性化(賦活)したクロム触媒をエチレン重合用触媒として用いることにより、成形性、耐久性に優れ、且つ耐衝撃性及び剛性のバランスに優れたエチレン系重合体を高活性で得られることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、比表面積が625〜1000m/g、細孔体積が1.0〜5.0cm/gである無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持したクロム担持無機酸化物(c)を非還元性雰囲気、250℃〜550℃で賦活することにより得られる触媒を、当該賦活の後にはクロム担持無機酸化物(c)上に有機アルミニウム化合物を担持させない形態で用いて、エチレン単独重合またはエチレンとα−オレフィンとの共重合を行うことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法が提供される。
【0021】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、賦活温度が300〜500℃であることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、無機酸化物担体(a)は、比表面積が650〜950m/g比表面積が650〜950m/gであることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法が提供される。
【0022】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、無機酸化物担体(a)は、比表面積が700〜900m/gであることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、無機酸化物担体(a)は、細孔体積が1.5〜4.0cm/gであることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法が提供される。
【0023】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、クロム担持無機酸化物(c)は、クロムが0.5〜5.0重量%含まれていることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、無機酸化物担体(a)は、アルミニウムが0.5〜5.0重量%含まれていることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法が提供される。
【0024】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、無機酸化物担体(a)はシリカであることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、前記α−オレフィンは、炭素数が3〜8であることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法が提供される。
【0025】
一方、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明に係る方法により得られるエチレン系重合体が提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、温度190℃、荷重21.6kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が1〜100g/10分、密度が0.935〜0.960g/cmであることを特徴とするエチレン系重合体が提供される。
【0026】
さらに、本発明の第12の発明によれば、第10または11の発明に係るエチレン系重合体から成形されるブロー成形製品が提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明のエチレン系重合体の製造方法を用いることにより、成形性、耐久性(FNCT等)に優れ、且つ耐衝撃性及び剛性のバランスに優れたエチレン系重合体を高活性にて得られ、特に中空プラスチック成形品に適したエチレン系重合体を効率よく高活性にて製造することができる。そして、その中空プラスチック製品は、成形性、耐衝撃性、且つ剛性と耐久性のバランスに優れている。その用途としては、例えば、燃料タンク、灯油缶、ドラム缶、薬品用容器、農薬用容器、溶剤用容器、又はプラスチックボトルが挙げられるが、好適には燃料タンク、特に好適なのは自動車用燃料タンクである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のエチレン系重合体の製造方法は、特定の粒子性状を有する無機酸化物担体にクロム化合物を担持させ、少なくとも一部のクロム原子が6価となる状態で焼成させた後、それを特定の温度、とりわけ比較的低い温度で焼成活性化(賦活)したクロム触媒をエチレン重合用触媒として用いることを特徴とするものである。
また、本発明の方法で製造されたエチレン系重合体は、成形性、耐久性に優れ、且つ耐衝撃性及び剛性のバランスに優れており、特に中空プラスチック成形品に適したエチレン系重合体であることを特徴とする。
以下、本発明を、項目毎に具体的に説明する。
【0029】
[I] エチレン重合用触媒
本発明のエチレン系重合体の製造方法に用いられる触媒は、特定の無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子が6価となるクロム触媒である。本発明で用いる触媒は、フィリップス触媒として分類されるものである。
一般的なフィリップス触媒に関しては、例えば、以下の文献に記載されており、本発明は、これらの触媒の改良に関するものである。
(i)M.P.McDaniel著,Advances in Catalysis,Volume 33,47頁,1985年,Academic Press Inc.
(ii)M.P.McDaniel著,Handbook of Heterogeneous Catalysis,2400頁,1997年,VCH
(iii)M.B.Welchら著,Handbook of Polyolefins:Synthesis and Properties,21頁,1993年,Marcel Dekker
【0030】
1.無機酸化物担体(a)
本発明において、無機酸化物担体(a)としては、周期律表第2、4、13又は14族の金属の酸化物を用いることができる。具体的には、マグネシア、チタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカ、トリア、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナ又はこれらの混合物が挙げられる。
ただし、自動車用燃料タンク用途には、耐久性(FNCT等)及び耐衝撃性が共に要求されるので、無機酸化物担体として、重合活性が高いシリカのみを用いることが好ましい。シリカ以外のものを担体として用いると、重合活性が低下し、ポリエチレン系重合体の低分子量成分が増加して、耐衝撃性が低下するおそれがある。
これらのクロム触媒に適する担体の製法、物理的性質及び特徴は、例えば以下の文献に記載されている。
(i)C.E.Marsden著,Preparation of Catalysts,Volume V,215頁,1991年,Elsevier Science Publishers
(ii)C.E.Marsden著,Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications,Volume 21,193頁,1994年
【0031】
本発明におけるエチレン系重合用クロム触媒は、触媒粒子として高比表面積、高細孔体積を有し、特徴的な性状及び構造を有するものである。この特徴的な性状及び構造は、使用する無機酸化物担体の粒子構造及び粒子内細孔構造等を高度に制御することにより達成される。
本発明において、無機酸化物担体(a)は、比表面積が625〜1000m/g、好ましくは650〜950m/g、さらに好ましくは700〜900m/gであるものを選択することが好ましい。比表面積が625m/g未満の場合、低い温度、例えば250℃〜550℃という温度での賦活により調製した触媒の活性が低下する。また、比表面積が1000m/gを超える場合、当該担体の製造が難しくなる。
【0032】
本発明の無機酸化物担体の細孔体積としては、1.0〜5.0cm/g、好ましくは1.0〜3.0cm/g、さらに好ましくは1.2〜2.5cm/gの範囲のものが用いられる。細孔体積が1.0cm/g未満の場合、重合時に重合ポリマーによって細孔が小さくなり、モノマーが拡散できなくなってしまい活性が低下する。細孔体積が5.0cm/gを超える場合、当該担体の製造が難しくなる。
また、本発明の無機酸化物担体の平均粒径としては、10〜200μm、好ましくは25〜180μm、さらに好ましくは35〜170μmの範囲のものが用いられる。上記範囲を外れると、得られたエチレン系重合体(ブロー成形製品)の耐久性及び耐衝撃性のバランスがとりにくくなる。
【0033】
<比表面積、細孔体積の測定>
無機酸化物担体(a)の比表面積及び細孔体積は、それぞれ、以下の方法によって測定できる。
無機酸化物担体(a)は、加熱、減圧下で十分な前処理を行った後、カンタークローム社製「オートソーブ3B型」を用いて、液体窒素温度下で窒素の吸着等温線測定を行う。測定により得られた吸着等温線の相対圧0.95での吸着量から細孔体積を算出でき、また、BET多点法解析を実施して比表面積を算出することができる。更に、細孔構造を円筒と仮定することで、下記式(1)に従い平均細孔径を算出することができる。この式でDaveは平均細孔径を、Vtotalは細孔体積を、SBETはBET多点法による比表面積を示す。
Dave=4Vtotal/SBET 式(1)
更にBJH法解析によりメソ孔分布を求め、指定範囲の細孔体積を算出することができる。
【0034】
本発明においては、上述のような無機酸化物担体を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、その一つとして、シリカ微粒子の混合スラリーを噴霧造粒して製造する方法が挙げられる。
得られる無機酸化物担体の粒子構造は、噴霧造粒時のノズル径、噴霧速度、原料濃度、原料組成等、従来公知の噴霧造粒条件を適宜選択することによって調整することが可能である。このような製造方法によって、高表面積、高細孔体積をもつシリカが得られる例として、米国特許第5232883号等に記載されている方法が挙げられる。
【0035】
2.クロム化合物(b)
本発明においては、上記無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持させる。クロム化合物(b)としては、担持後に非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子が6価となる化合物であればよく、酸化クロム、クロムのハロゲン化物、オキシハロゲン化物、クロム酸塩、重クロム酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、クロム−1,3−ジケト化合物、クロム酸エステル等が挙げられる。
具体的には、三酸化クロム、三塩化クロム、塩化クロミル、クロム酸カリウム、クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、トリス(2−エチルヘキサノエート)クロム、クロムアセチルアセトネート、ビス(tert−ブチル)クロメート等が挙げられる。なかでも三酸化クロム、酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートが好ましい。酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートのような有機基を有するクロム化合物を用いた場合でも、後に述べる非還元性雰囲気での焼成活性化によって有機基部分は燃焼し、最終的には三酸化クロムを用いた場合と同様に、無機酸化物担体表
面の水酸基と反応し、少なくとも一部のクロム原子は6価となってクロム酸エステルの構造で固定化されることが知られている。このことは、例えば以下の文献に記載されている。
(i)V.J.Ruddickら著,J.Phys.Chem.,Volume 100,11062頁,1996年
(ii)S.M.Augustineら著,J.Catal.,Volume 161,641頁,1996年
【0036】
無機酸化物担体へのクロム化合物の担持は、含浸、溶媒留去、昇華等の公知の方法によって行うことができ、使用するクロム化合物の種類によって適当な方法を用いればよい。その際、担持するクロム化合物の量は、クロム原子として担体に対して、0.5〜5.0重量%、好ましくは0.6〜4.0重量%、さらに好ましくは0.7〜3.0重量%である。
【0037】
3.焼成活性化(賦活)方法
本発明においてはクロム化合物の担持後、必要によってアルミニウム化合物も含んでいる、クロム化合物担持無機酸化物担体を焼成して活性化処理を行う。
焼成活性化は、水分を実質的に含まない非還元性雰囲気、例えば、酸素又は空気下で行うことができる。この際、不活性ガスを共存させてもよい。焼成活性化では、好ましくは、モレキュラーシーブス等を流通させ十分に乾燥した空気を用い、流動状態下で行う。M.P.McDaniel著,Advances in Catalysis,Volume 33,47頁,1985年,Academic Press Inc.文献中のFIG.9.に示されているように、500℃以上の賦活温度で触媒活性が発現することが一般的に知られている。特にこの図において、800〜900℃の賦活温度で高活性になることが示されており、当業者にとって、このような賦活条件が技術常識となっている。
しかしながら、本発明において、焼成活性化は、250℃〜550℃、好ましくは275〜530℃、さらに好ましくは300〜500℃の温度にて、30分〜48時間、好ましくは1時間〜36時間、さらに好ましくは2時間〜24時間行う。この焼成活性化により、無機酸化物担体に担持されたクロム化合物のクロム原子が少なくとも一部は6価に酸化されて担体上に化学的に固定される。従来のクロム担持触媒では焼成活性化を500℃未満で行うと、重合活性が急激に低下するが、本発明の触媒では500℃未満でも高い活性があることが大きな特徴である。
なお本発明において、焼成活性化を250℃以下で行うと重合活性は低下し、900℃を超える温度で焼成活性化を行うと、シンタリングが起こり、活性が低下する。また、550℃を超える温度で焼成活性化を行うと、重合体の分子量分布が狭くなり、耐衝撃性は向上するものの耐久性が低下し、自動車用燃料タンク用途には適さなくなる。
【0038】
米国特許第5232883号には、比表面積700m/g以上と非常に大きく、細孔体積も約1.6cm/gと比較的大きなシリカにクロムを担持して、800℃以上という高賦活温度で活性化した触媒による重合が例示されているが(例1)、低賦活温度でも高活性な触媒であるという知見は得られていない。
また、米国特許第3978002号には、比表面積、細孔体積を大きくしたシリカを担体として用いることにより、フィリップス触媒にした時の活性が高くなることが例示されている(テーブルI、II)。しかしながら、ここで例示されているフィリップス触媒の賦活温度は600℃以上の高温であり、活性の向上についてそれほど大きな効果の差が現れていない。
一方、本発明は、特定の比表面積、細孔体積をもつ担体を250℃〜550℃、好ましくは275〜530℃、さらに好ましくは300〜500℃の低温度にて賦活した触媒でも高重合活性を示すことができる。低温度で賦活化したフィリップス触媒を用いると、分子量が広がったエチレン系重合体が得られるため、本発明の方法によって得られるエチレン系重合体は、耐久性に優れたものとなる。
【0039】
以上により、本発明で使用するクロム触媒が得られるが、本発明に係るポリエチレン系樹脂の製造に際しては、クロム化合物担持前、又はクロム化合物担持後の焼成活性化前に、アルミニウムトリブトキシドのようなアルミニウムアルコキシド類、チタンテトライソプロポキシドのようなチタンアルコキシド類、ジルコニウムテトラブトキシドのようなジルコニウムアルコキシド類、ジアルキルマグネシウムのような有機マグネシウム類などに代表される金属アルコキシド類もしくは有機金属化合物等の炭化水素含有金属化合物や、ケイフッ化アンモニウムのようなフッ素含有塩類等を添加して、エチレン重合活性、α−オレフィンとの共重合性や得られるエチレン系重合体の分子量、分子量分布を調節する公知の方法を併用してもよい。
【0040】
これらの金属アルコキシド類もしくは有機金属化合物等の炭化水素含有金属化合物は、非還元性雰囲気での焼成活性化によって有機基部分は燃焼し、アルミナ、チタニア、ジルコニア、又はマグネシアのような金属酸化物に酸化されて触媒中に含まれる。また、フッ素含有塩類の場合は、無機酸化物担体がフッ素化される。
これらの方法は、例えば、以下の文献に記載されている。
(i)C.E.Marsden著,Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications,Volume 21,193頁,1994年
(ii)T.Pullukatら著,J.Polym.Sci.,Polym.Chem.Ed.,Volume 18, 2857頁,1980年
(iii)M.P.McDanielら著,J.Catal.,Volume 82,118頁,1983年
これらの化合物の含有量は、各金属あるいはフッ素原子の含有量として、それぞれ、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜8重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。
本発明において、ハイロードフローレート(HLMFR)を自動車用燃料タンク用途の範囲にするために、クロム化合物担持前、またはクロム化合物担持後の焼成活性化前にアルミニウム化合物を含有させるのが特に好ましい。
【0041】
低温度での賦活によるフィリップス触媒の場合、分子量が低め(すなわち、ハイロードメルトフローレート(HLMFR)が高め)のエチレン系重合体を製造しにくいという問題点がある。
その解決方法の一つとして、エチレン重合時の重合温度を上げる、あるいは水素を加えることによって、エチレン系重合体の分子量を下げる方法が考えられるが、これらの方法では、製造されるエチレン系重合体の耐久性、耐衝撃性、その他の物性に与える影響を考慮すると必ずしも好ましくない。そこで、HLMFRを高める方法として、触媒を賦活する前に予めアルミニウム化合物で担体を処理する方法が採用される。
本発明においては、賦活前の無機酸化物担体中にアルミニウム原子が0.5〜5.0重量%含まれているのが好ましく、0.5〜3.0重量%含まれるのがより好ましい。
【0042】
本発明においては、クロム化合物とアルミニウム化合物を無機担体に担持した触媒前駆体が好適に用いる。賦活した後に、アルミニウム化合物で担体を処理すること、すなわち賦活の後に有機アルミニウム化合物を担持したクロム化合物/アルミニウム化合物担持触媒の形態は、以下の理由から好ましくない。
触媒コストの面では、通常のフィリップス触媒に有機アルミニウムを処理する分の費用がかかり、触媒コストが高くなる。また、触媒設備の面からもプラントスケールで有機アルミニウム処理をするためには、有機アルミニウムの担持反応、溶媒乾燥ができるプラントの設備が必要となる。さらに焼成活性化したクロム触媒は、酸素、水によって容易に不活性化されてしまうため、窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気下で保存する必要があり、プラントスケールで有機アルミニウム処理を行う操作は容易ではない。
【0043】
[II] エチレン系重合体の製造方法
本発明においては、比較的低い温度で焼成活性化(賦活)したクロム触媒を用い、エチレン単独重合またはエチレンとα−オレフィンとの共重合を行って所望とするエチレン系重合体を製造する。
エチレン系重合体の製造を行うに際しては、スラリー重合、溶液重合のような液相重合法あるいは気相重合法など、いずれの方法も採用することができる。
液相重合法は、通常炭化水素溶媒中で行う。炭化水素溶媒としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
【0044】
また、気相重合法は、不活性ガス共存下にて、流動床、撹拌床等の通常知られる重合法を採用でき、場合により重合熱除去の媒体を共存させる、いわゆるコンデンシングモードを採用することもできる。
【0045】
液相又は気相重合法における重合温度は、一般的には0〜300℃であり、実用的には20〜200℃、好ましくは50〜180℃、さらに好ましくは70〜150℃である。反応器中の触媒濃度及びエチレン濃度は、重合を進行させるのに十分な任意の濃度でよい。例えば、触媒濃度は、液相重合の場合、反応器内容物の質量を基準にして、約0.0001〜約5質量%の範囲とすることができる。同様にエチレン濃度は、気相重合の場合、全圧として0.1〜10MPaの範囲とすることができる。
【0046】
エチレンと共存させる水素とエチレンの濃度比又は分圧比は、水素とエチレンの濃度又は分圧を変えることによって、容易に調整することができる。水素は、連鎖移動剤としての働きも有するので、濃度比(Hc/ETc)又は分圧比(Hp/ETp)を変えた場合、同一HLMFRの製品を得るためには、重合温度も変えなければならない。すなわち、Hc/ETc又はHp/ETpを上げた場合には、重合温度を下げ、Hc/ETcまたはHp/ETpを下げた場合には、重合温度を上げなければならない。ただし、水素濃度又は分圧の絶対値によるので同一HLMFRの製品を得るためには、必ず重合温度を変える必要があるわけではない。
【0047】
本発明の方法により、エチレンの重合を行うに際し、コモノマーとして、α−オレフィンを共重合することが好ましい。α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどを単独又は2種類以上反応器に導入して共重合を行う。好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、さらに好ましくは1−ヘキセンがコモノマーとして好適に用いられる。得られるポリエチレン系樹脂中のα−オレフィン含量は、15mol%以下、好ましくは10mol%以下が望ましい。
【0048】
[III] エチレン系重合体とその用途
本発明の製造方法により得られるエチレン系重合体は、上記の製造方法によって製造される。
該エチレン系重合体は、エチレン単独重合体の場合もあるし、コモノマーとしてプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどのα−オレフィンを1種類以上含むエチレン・α−オレフィン共重合体の場合もあり、このとき得られるエチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含量は15mol%以下、好ましくは10mol%以下とする。α―オレフィンとしては、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、さらに好ましくは1−ヘキセンを用いる。また上述のように少量のジエン類やスチレン類等の改質用モノマーを含有することもできる。
【0049】
本発明のエチレン系重合体は、温度190℃、荷重21.6kgにて測定されるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が1〜100g/10分、密度が0.935〜0.960g/cmである。該エチレン系重合体は、耐久性(FNCT等)と耐衝撃性がともに、高くバランスに優れるので、特にブロー成形製品、なかんずく大型ブロー成形製品で大きな効果を発揮する。ブロー成形製品用のエチレン系重合体のHLMFRは、1〜100g/10分、特に大型ブロー成形製品用のエチレン系重合体は、1〜15g/10分である。ブロー成形製品用のエチレン系重合体の密度は、0.935〜0.960g/cm、特に大型ブロー成形製品用のエチレン系重合体の密度は、0.940〜0.955g/cmである。得られたエチレン系重合体は、混練することも好ましい。混練は単軸又は二軸の押出機又は連続式混練機を用いて行うことができる。また、得られるエチレン系共重合体は、常法によりブロー成形することができる。
【0050】
エチレン系重合体は、HLMFRが1g/10分未満であると、パリソン(ブロー成形において、成形器の口金から押し出されたパイプ状の溶融ポリマー;金型内で空気圧により膨張させる以前の状態)の押出成形時に押出量が不足し、成形不安定な状態となり実用的でないし、また、100g/10分を越えてもパリソンの形成が溶融粘度及び溶融張力の不足のため不安定となり実用的でない。HLMFRは、重合温度や水素濃度の制御などの方法で調整することができる。例えば、重合温度を高くする、又は水素濃度を高くすることによりHLMFRを高くすることができる。ここでHLMFRは、JIS K−7210に準拠し、温度190℃、荷重21.60kgの条件で測定したものである。
【0051】
エチレン系重合体は、密度が0.935g/cm未満であると、中空プラスチック成形品の剛性が不足し、0.960g/cmを越えると中空プラスチック成形品の耐久性が不足する。密度は、α−オレフィンの種類や含有量の制御などの方法で調整することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂中のα−オレフィン含有量を低くする(重合時のα−オレフィン添加量を低くする)、又は同じ含有量であれば、炭素数の小さいα−オレフィンを用いることにより、密度を高くすることができる。密度は、JIS K−7112
に準拠し、ペレットを温度160℃の熱圧縮成形機により溶融後25℃/分の速度で降温し、厚み2mmtのシートを成形し、このシートを温度23℃の室内で48時間状態調節した後、密度勾配管に入れ測定したものである。
得られたエチレン系重合体は、次いで混練することも好ましい。混練は単軸又は二軸の押出機又は連続式混練機を用いて行われる。上記の方法により製造されたエチレン系重合体は、1種類でも複数種類を混合して使用してもよく、常法に従い、ペレタイザーやホモジナイザー等による機械的な溶融混合によりペレット化した後、各種成形機により成形を行って所望の成形品とすることができる。本発明で製造されるエチレン系重合体粒子は、そのきわめて良好な粉体粒子性状を活用することにより、ペレット化を経ることなく、直接各種成形機に供給して成形を行って所望の成形品とすることも可能であり、ペレット化の工程を省略することが可能であるので省エネルギー化の観点で非常に好ましい。
【0052】
本発明で製造されるエチレン系重合体の粒子とは、上述のエチレン重合用触媒を使用してエチレン系重合体の製造を重合反応槽内で行った直後の重合粒子形態を保持したままの状態をいい、重合反応終了後に溶媒等を乾燥留去させる程度に必要な150℃程度の温度、好ましくは130℃程度の温度、更に好ましくは110℃程度の温度より高温で処理されることの無い状態のエチレン系重合体粒子のことをいう。
その粒子嵩密度が0.20〜0.60g/cm、好ましくは0.22〜0.55g/cm、更に好ましくは0.25〜0.50g/cmであって、目開き177μmの篩を通過する粒子が全体の0.8重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.3重量%以下であることが好ましい。下限は0重量%であることはいうまでもない。目開き40μmの篩を通過する粒子が全体の0.8重量%より多くなると、気流輸送時の微粉拡散による汚染が問題となり、また静電気による器壁への付着が酷くなるので好ましくない。
【0053】
本発明のエチレン系重合体及びエチレン系重合体粒子には、必要に応じて、常法に従い、他のオレフィン系重合体やゴム等のほか、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、着色顔料、パール顔料、偏光パール顔料、架橋剤、発泡剤、中和剤、熱安定剤、結晶核剤、無機又は有機充填材、難燃剤等の公知の添加剤を1種又は2種以上配合することができる。
充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、金属粉(アルミニウム、銅、鉄、鉛など)、珪石、珪藻土、アルミナ、石膏、マイカ、クレー、アスベスト、グラファイト、カーボンブラック、酸化チタン等が使用可能である。いずれの場合でも、上記ポリエチレン系樹脂に、必要に応じ各種添加剤を配合し、混練押出機、バンバリーミキサー等にて混練し、成形用材料とすることができる。
【0054】
本発明に係る重合方法によれば、高活性で重合が行われ、同一規格の成形品を安定的に連続生産することができる。従って、本発明のエチレン系重合体の重合方法は、一定品質のポリエチレン系樹脂を連続生産するのに好適な優れた方法である。
【0055】
本発明に係る重合方法としては、反応器を一つ用いてエチレン系重合体を製造する単段重合だけでなく、分子量分布を広げるために少なくとも二つの反応器を連結させて多段重合を行うこともできる。多段重合の場合、二つの反応器を連結させ、第一段の反応器で重合して得られた反応混合物を続いて第二段の反応器に連続して供給する二段重合が好ましい。第一段の反応器から第二段の反応器への移送は、差圧により連結管を通して、第一段反応器からの重合反応混合物の連続的排出により行われる。
【0056】
第一段反応器で高分子量成分、第二段反応器で低分子量成分を、又は第一段反応器で低分子量成分、第二段反応器で高分子量成分を、それぞれ製造するいずれの方法でもよいが、第一段反応器で高分子量成分、第二段反応器で低分子量成分を製造する方が、第一段から第二段への移行にあたり中間の水素のフラッシュタンクを必要としないため、生産性の面で、より好ましい。
【0057】
第一段においては、エチレン単独又は必要に応じてα−オレフィンとの共重合を、水素濃度のエチレン濃度に対する質量比もしくは分圧比(Hc/ETc又はHp/ETp)、重合温度又は両者により分子量を調節しながら、あるいはα−オレフィン濃度のエチレン濃度に対する質量比又は分圧比により密度を調節しながら、重合反応を行う。
【0058】
第二段においては、第一段から流れ込む反応混合物中の水素及び同じく流れ込むα−オレフィンがあるが、必要に応じて、それぞれ新たな水素、α−オレフィンを加えることができる。したがって、第二段においても、水素濃度のエチレン濃度に対する質量比もしくは分圧比(Hc/ETcもしくはHp/ETp)、重合温度又は両者により分子量を調節しながら、あるいはα−オレフィン濃度のエチレン濃度に対する質量比又は分圧比により密度を調節しながら重合反応を行うことができる。
【0059】
二段重合によって製造する場合の高分子量成分と低分子量成分の比率としては、高分子量成分が10〜90質量部、低分子量成分が90〜10質量部、好ましくは高分子量成分が20〜80質量部、低分子量成分が80〜20質量部、さらに好ましくは高分子量成分が30〜70質量部、低分子量成分が70〜30質量部である。
また、高分子量成分のHLMFRは、0.01〜100g/10分、好ましくは0.01〜50g/10分であり、一方、低分子量成分のMFR(JIS K7210(1996年版)の表1、条件4に従い、温度190℃、荷重21.18Nにおける測定値)は、10〜1000g/10分、好ましくは10〜500g/10分である。
【0060】
二段重合で得られるエチレン系重合体のHLMFRは、0.1〜1000g/10分、好ましくは0.5〜500g/10分であるが、ブロー成形製品用樹脂としては1〜100g/10分、特に大型ブロー成形製品用樹脂としては1〜15g/10分である。二段重合で得られるエチレン系重合体の密度は、0.900〜0.980g/cm、好ましくは0.920〜0.970g/cmであるがブロー成形製品用樹脂としては0.935〜0.960g/cm、特に大型ブロー成形製品用樹脂としては0.940〜0.955g/cmである。得られたエチレン系重合体は、混練することが好ましい。混練は
単軸又は二軸の押出機又は連続式混練機を用いて行うことができる。また得られるエチレン系共重合体は、常法によりブロー成形することができる。
【0061】
本発明で製造されたエチレン系重合体は、成形性、耐久性に優れ、且つ耐衝撃性及び剛性のバランスに優れており、特に中空プラスチック成形品に適し、耐久性(FNCT等)と耐衝撃性が共に高く、両特性のバランスに優れている。その用途としては、例えば、燃料タンク、灯油缶、ドラム缶、薬品用容器、農薬用容器、溶剤用容器、又はプラスチックボトルが挙げられる。好適なのは燃料タンクであり、特に自動車用燃料タンクに好ましく用いることができる。
【実施例】
【0062】
以下においては、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明し、本発明の卓越性と本発明の構成における優位性を実証するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0063】
(I)各種測定方法
実施例及び比較例において、使用した測定方法は以下の通りである。
(1)レーザー回折散乱法による担体粒子の粒径分布の測定
装置名MICROTRAC MT3000II型(日機装社製)、屈折率:粒子1.81、分散媒1.33(0.2重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液)、超音波照射40W・120秒の条件にて測定した。
(2)比表面積、細孔体積の測定
各担体試料は、加熱、減圧下で十分な前処理を行った後、カンタークローム社製「オートソーブ3B型」を用いて、液体窒素温度下で窒素の吸着等温線測定を行った。得られた吸着等温線の相対圧0.95での吸着量から細孔体積を算出し、BET多点法解析を実施して比表面積を算出した。更に、細孔構造を円筒と仮定することで、式(1)に従い平均細孔径を算出した。この式でDaveは平均細孔径を、Vtotalは細孔体積を、SBETはBET多点法による比表面積を示す。
Dave=4Vtotal/SBET 式(1)
更にBJH法解析によりメソ孔分布を求め、指定範囲の細孔容量を算出した。
【0064】
(3)ハイロードメルトフローレート(HLMFR)
物性測定のためのポリマー前処理として、サンプルに添加剤としてチバガイギー社製B225を0.2重量%添加し、単軸押出機にて混練しペレタイズした。JIS K−7210(2004年版)の附属書A表1−条件Gに従い、試験温度190℃、公称荷重21.60kgにおける測定値をHLMFRとして示した。
(4)密度
物性測定のためのポリマー前処理として、サンプルに添加剤としてチバガイギー社製B225を0.2重量%添加し、単軸押出機にて混練しペレタイズした。JIS K−7112(2004年版)に従い測定した。
【0065】
(5)耐久性(全周ノッチ式引張クリープ試験による破断時間の測定)
JIS K−6992−2(2004年版)に準拠し、厚さ5.9mmのシートを圧縮成形した後、JIS K−6774(2004年版)附属書5(規定)に示された区分「呼び50」の形状と寸法の試験片を作製し、80℃の純粋中で全周ノッチ式引張クリープ試験(FNCT)を行った。引張荷重は88N、98N、108Nとし、試験点数は各荷重で2点とした。得られた両対数スケールにおける破断時間と公称応力の6点のプロットから最小二乗法により公称応力6MPaにおける破断時間を耐久性の指標とした。
【0066】
(6)シャルピー衝撃強度
JIS K−7111(2004年版)に従ってタイプ1の試験片を作製し、打撃方向はエッジワイズ、ノッチのタイプはタイプA(0.25mm)として、ドライアイス/アルコール中、−40℃で測定した。
【0067】
[実施例1]
(1)クロム触媒前駆体の調製
攪拌装置付き1Lフラスコに、米国特許第5232883号に準拠して作ったシリカゲル(表面積850m/g、細孔体積2.2cm/g、平均粒径100μm)を50gとイオン交換水200mLを加え、回転数50rpmで攪拌しながら、オイルバスにて50℃に加温した。ここへ、別途調製した酢酸クロム(III)(和光純薬社製)2.2gをイオン交換水70mLに溶解した水溶液全量を添加し、回転数を150rpmに上げて4時間攪拌を継続することによりクロム化合物をシリカゲルによく含浸させた。次に、オイルバス温度を155℃として水を全量留去した後、更に120℃で一晩乾燥して、緑白色を呈した流動性のよいクロム触媒前駆体粒子を得た。
【0068】
(2)クロム触媒の焼成活性化
上記(1)で得たクロム触媒前駆体粒子15gを多孔板目皿付き、管径5cmの石英ガラス管に入れ、円筒状焼成用電気炉にセットし、モレキュラーシーブスを通した空気にて流動化させ、線速6cm/sにて450℃で12時間焼成活性化を行った。6価のクロム原子を含有することを示す黄色のクロム触媒が得られた。
【0069】
(3)重合
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに上記(2)で得られたクロム触媒100mgおよびイソブタン0.8Lを仕込み、内温を100℃まで昇温した。1−ヘキセン5.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.0MPaとなるように保ちながら、触媒生産性が3000g−ポリマー/g−触媒となるように重合を行った。ついで内容ガスを系外に放出することにより重合を終結した。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度の測定結果等を表1に示した。エチレンを導入してから重合が開始するまでの、エチレンが消費されない時間を誘導時間とした。誘導時間終了後、重合を終了するまでの時間を重合時間とした。
【0070】
[実施例2]
(1)クロム触媒前駆体の調製
米国特許第5232883号に準拠してシリカゲルを調製した。このシリカゲルは、表面積850m/g、細孔体積2.0cm/g、平均粒径100μmを有していた。
さらに、米国特許第4119773号のEXAMPLES I.Catalyst Preparation Procedureに準拠した方法により、Cr、Alの含量がそれぞれ1重量%、1重量%になるように、酢酸クロム(III)、アルミニウムsec−アルコキシドのジクロロメタン溶液とシリカゲルを反応させ乾燥させることにより、緑白色を呈した流動性のよいクロム触媒前駆体粒子を得た。
(2)クロム触媒の焼成活性化、重合
クロム触媒の焼成活性化、重合については、それぞれ実施例1(2)、(3)と同様の方法で行った。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0071】
[実施例3]
(1)クロム触媒前駆体の調製
米国特許第5232883号に準拠してシリカゲルを調製した。このシリカゲルは、表面積800m/g、細孔体積2.0cm/g、平均粒径100μmを有していた。
さらに、米国特許第4119773号のEXAMPLES I.Catalyst Preparation Procedureに準拠した方法に準拠した方法により、Cr、Alの含量がそれぞれ1重量%、2重量%になるように、酢酸クロム(III)、アルミニウムsec−アルコキシドのジクロロメタン溶液とシリカゲルを反応させ乾燥させることにより、緑白色を呈した流動性のよいクロム触媒前駆体粒子を得た。
(2)クロム触媒の焼成活性化、重合
クロム触媒の焼成活性化については賦活温度を450℃の代わりに500℃で行った以外は実施例1(2)と同様の方法で行い、重合についても実施例1(3)と同様の方法で行った。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0072】
[実施例4]
実施例3で用いた焼成活性化したクロム触媒を用いて、重合を行った。
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに、このクロム触媒100mgおよびイソブタン0.8Lを仕込み、内温を102℃まで昇温した。1−ヘキセン4.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.0MPaとなるように保ちながら、触媒生産性が3000g−ポリマー/g−触媒となるように重合を行った。ついで内容ガスを系外に放出することにより重合を終結した。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0073】
[実施例5]
(1)クロム触媒前駆体の調製、クロム触媒の焼成活性化
実施例3(1)で得られたクロム触媒前駆体粒子を500℃で賦活する代わりに450℃で賦活した以外は、全く実施例3(2)と同様の方法で焼成活性化をすることにより、黄色のクロム触媒が得られた。
(2)重合
実施例1(3)と同様の方法で重合を行った。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0074】
[実施例6]
実施例5で用いた焼成活性化したクロム担持触媒を用いて重合を行った。
用いる1−ヘキセンを7.0g、重合温度を98℃にした以外は実施例1(3)と同様の方法で重合を行った。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0075】
[実施例7]
実施例5で用いた焼成活性化したクロム担持触媒を用いて重合を行った。
用いる1−ヘキセンを6.0g、重合温度を99℃にした以外は実施例1(3)と同様の方法で重合を行った。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0076】
[実施例8]
実施例5で用いた焼成活性化したクロム担持触媒を用いて重合を行った。
用いる1−ヘキセンを6.0g、重合温度を98℃にした以外は実施例1(3)と同様の方法で重合を行った。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0077】
[実施例9]
(1)クロム触媒前駆体の調製、クロム触媒の焼成活性化
実施例3(1)で得られたクロム触媒前駆体粒子を500℃で賦活する代わりに400℃で賦活した以外は、実施例3(2)と同様の方法で焼成活性化をすることにより、黄色のクロム触媒が得られた。
(2)重合
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに、上記(1)で得られたクロム触媒100mg及びイソブタン0.8Lを仕込み、内温を100℃まで昇温した。1−ヘキセン7.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保ちながら、触媒生産性が3000g−ポリマー/g−触媒となるように重合を行った。ついで内容ガスを系外に放出することにより重合を終結した。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0078】
[実施例10]
実施例9で用いた焼成活性化したクロム担持触媒を用いて重合を行った。
用いる1−ヘキセンを10.0g、重合温度を98℃にした以外は実施例9(2)と同様の方法で重合を行った。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0079】
[実施例11]
実施例9で用いた焼成活性化したクロム担持触媒を用いて重合を行った。
用いる1−ヘキセンを9.0gにした以外は実施例9(2)と同様の方法で重合を行った。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0080】
[実施例12]
実施例9で用いた焼成活性化したクロム担持触媒を用いて重合を行った。
用いる1−ヘキセンを8.0g、重合温度を98℃にした以外は実施例9(2)と同様の方法で重合を行った。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0081】
[比較例1]
(1)クロム触媒前駆体の調製
表面積420m/g、細孔体積1.7cm/g、平均粒径80μmを有するシリカゲル50gとイオン交換水200mLを攪拌装置付き1Lフラスコに加え、回転数50rpmで攪拌しながら、オイルバスにて50℃に加温した。ここへ、別途調製した酢酸クロム(III)(和光純薬社製)2.2gをイオン交換水70mLに溶解した水溶液全量を添加し、回転数を150rpmに上げて4時間攪拌を継続することによりクロム化合物をシリカゲルによく含浸させた。次に、オイルバス温度を155℃として水を全量留去した後、更に120℃で一晩乾燥して、緑白色を呈した流動性のよいクロム触媒前駆体粒子を得た。
【0082】
(2)クロム触媒の焼成活性化
上記(1)で得たクロム触媒前駆体粒子15gを多孔板目皿付き、管径5cmの石英ガラス管に入れ、円筒状焼成用電気炉にセットし、モレキュラーシーブスを通した空気にて流動化させ、線速6cm/sにて600℃で12時間焼成活性化を行った。6価のクロム原子を含有することを示す黄色のクロム触媒が得られた。
【0083】
(3)重合
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに上記(2)で得られた焼成活性化したクロム触媒100mgおよびイソブタン0.8Lを仕込み、内温を100℃まで昇温した。1−ヘキセン3.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保ちながら、触媒生産性が3000g−ポリマー/g−触媒となるように重合を行った。ついで内容ガスを系外に放出することにより重合を終結した。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0084】
[比較例2]
比較例1で用いた焼成活性化したクロム担持触媒を用いて重合を行った。
用いるヘキセンを4.0g、重合温度を98℃にした以外は比較例1(3)と同様の方法で重合を行った。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0085】
[比較例3]
(1)クロム触媒前駆体の調製、クロム触媒の焼成活性化
比較例1(1)で得られたクロム触媒前駆体粒子を600℃で賦活する代わりに500℃で賦活した以外は、比較例1(2)と同様の方法で焼成活性化をすることにより、黄色のクロム触媒が得られた。
(2)重合
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに、上記(1)で得られたクロム触媒100mgおよびイソブタン0.8Lを仕込み、内温を102℃まで昇温した。1−ヘキセン4.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保ちながら、触媒生産性が3000g−ポリマー/g−触媒となるように重合を行った。ついで内容ガスを系外に放出することにより重合を終結した。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0086】
[比較例4]
比較例3で用いた焼成活性化したクロム担持触媒を用いて重合を行った。
用いる1−ヘキセンを5.0g、重合温度を101℃にした以外は実施例9(2)と同様の方法で重合を行った。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0087】
[比較例5]
(1)クロム触媒前駆体の調製、クロム触媒の焼成活性化
比較例1(1)で得られたクロム触媒前駆体粒子を600℃で賦活する代わりに400℃で賦活した以外は、比較例1(2)と同様の方法で焼成活性化をすることにより、黄色のクロム触媒が得られた。
(2)重合
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに、上記(1)で得られたクロム触媒100mg及びイソブタン0.8Lを仕込み、内温を100℃まで昇温した。1−ヘキセン5.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保ちながら、触媒生産性が3000g−ポリマー/g−触媒となるように重合を行った。しかし、エチレン重合はほとんど得られなかった。内容ガスを系外に放出することにより重合を終結した。重合結果を表1に示した。
【0088】
[比較例6]
(1)クロム触媒前駆体の調製
表面積500m/g、細孔体積1.5cm/g、平均粒径70μmを有するシリカゲル50gとイオン交換水200mLを攪拌装置付き1Lフラスコに加え、回転数50rpmで攪拌しながら、オイルバスにて50℃に加温した。ここへ、別途調製した酢酸クロム(III)(和光純薬社製)2.2gをイオン交換水70mLに溶解した水溶液全量を添加し、回転数を150rpmに上げて4時間攪拌を継続することによりクロム化合物をシリカゲルによく含浸させた。次に、オイルバス温度を155℃として水を全量留去した後、更に120℃で一晩乾燥して、緑白色を呈した流動性のよいクロム触媒前駆体粒子を得た。
【0089】
(2)クロム触媒の焼成活性化
上記(1)で得たクロム触媒前駆体粒子15gを多孔板目皿付き、管径5cmの石英ガラス管に入れ、円筒状焼成用電気炉にセットし、モレキュラーシーブスを通した空気にて流動化させ、線速6cm/sにて600℃で12時間焼成活性化を行った。6価のクロム原子を含有することを示す黄色のクロム触媒が得られた。
【0090】
(3)重合
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに上記(2)で得られた焼成活性化したクロム触媒100mgおよびイソブタン0.8Lを仕込み、内温を101℃まで昇温した。1−ヘキセン3.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保ちながら、触媒生産性が3000g−ポリマー/g−触媒となるように重合を行った。ついで内容ガスを系外に放出することにより重合を終結した。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表1に示した。
【0091】
[比較例7]
比較例6で用いた焼成活性化したクロム担持触媒を用いて重合を行った。
用いる1−ヘキセンを5.0g、重合温度を100℃にした以外は比較例6(3)と同様の方法で重合を行った。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度の測定結果等を表1に示した。
【0092】
[比較例8]
比較例6で用いた焼成活性化したクロム担持触媒を用いて重合を行った。
用いる1−ヘキセンを5.0g、重合温度を99℃にした以外は比較例6(3)と同様の方法で重合を行った。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度の測定結果等を表1に示した。
【0093】
[比較例9]
(1)クロム触媒前駆体の調製、クロム触媒の焼成活性化
比較例6(1)で得られたクロム触媒前駆体粒子を600℃で賦活する代わりに500℃で賦活した以外は、比較例6(2)と同様の方法で焼成活性化をすることにより、黄色のクロム触媒が得られた。
(2)重合
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに、上記(1)で得られたクロム触媒100mgおよびイソブタン0.8Lを仕込み、内温を103℃まで昇温した。1−ヘキセン3.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保ちながら、触媒生産性が3000g−ポリマー/g−触媒となるように重合を行った。ついで内容ガスを系外に放出することにより重合を終結した。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度の測定結果等を表1に示した。
【0094】
[比較例10]
(1)クロム触媒前駆体の調製、クロム触媒の焼成活性化
比較例6(1)で得られたクロム触媒前駆体粒子を600℃で賦活する代わりに450℃で賦活した以外は、全く比較例6(2)と同様の方法で焼成活性化をすることにより、黄色のクロム触媒が得られた。
(2)重合
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに、上記(1)で得られたクロム触媒100mgおよびイソブタン0.8Lを仕込み、内温を103℃まで昇温した。1−ヘキセン3.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保ちながら、触媒生産性が3000g−ポリマー/g−触媒となるように重合を行った。ついで内容ガスを系外に放出することにより重合を終結した。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度の測定結果等を表1に示した。
【0095】
[比較例11]
(1)クロム触媒前駆体の調製、クロム触媒の焼成活性化
比較例6(1)で得られたクロム触媒前駆体粒子を600℃で賦活する代わりに400℃で賦活した以外は、比較例6(2)と同様の方法で焼成活性化をすることにより、黄色のクロム触媒が得られた。
(2)重合
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに、上記(1)で得られたクロム触媒100mgおよびイソブタン0.8Lを仕込み、内温を103℃まで昇温した。1−ヘキセン3.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように60分保ったがエチレン重合体はほとんど得られなかった。内容ガスを系外に放出することにより重合を終結した。重合結果を表1に示した。
【0096】
[比較例12]
(1)クロム触媒前駆体の調製、クロム触媒の焼成活性化
実施例3で用いた賦活前クロム担持触媒を500℃で賦活する代わりに600℃で賦活した以外は、実施例3と同様の方法で焼成活性化をすることにより、黄色のクロム触媒が得られた。
(2)重合
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに、上記(1)で得られたクロム触媒100mgおよびイソブタン0.8Lを仕込み、内温を98℃まで昇温した。1−ヘキセン3.5gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.0MPaとなるように保ちながら、触媒生産性が3000g−ポリマー/g−触媒となるように重合を行った。ついで内容ガスを系外に放出することにより重合を終結した。重合結果、重合ポリマーのHLMFR、密度の測定結果等を表1に示した。
【0097】
[比較例13]
(1)クロム触媒前駆体の調製、クロム触媒の焼成活性化
実施例3(1)で得られたクロム触媒前駆体粒子を500℃で賦活する代わりに200℃で賦活した以外は、実施例3と同様の方法で焼成活性化をすることにより、黄色のクロム触媒が得られた。
(2)重合
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに、上記(1)で得られたクロム触媒100mgおよびイソブタン0.8Lを仕込み、内温を100℃まで昇温した。1−ヘキセン10.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保った60分保ったがエチレン重合体はほとんど得られなかった。内容ガスを系外に放出することにより重合を終結した。重合結果を表1に示した。
【0098】
【表1】

【0099】
本発明の要件を満たす実施例1〜12では、調製されたクロム触媒はいずれも400℃〜500℃という従来に比較して低賦活温度で活性化したクロム触媒であるにもかかわらず、優れた重合活性を示した。特に400℃賦活において、未だ活性があることを示している実施例9〜12は、その結果得られるエチレン重合体が特に優れた耐久性を示す点からも極めて有用である。
一方、比較例1、2、6,7,8、12の結果より、触媒を賦活する温度が高いため、得られるポリマーの密度(剛性)とFNCTのバランスが悪いことがわかる。また、比較例3、4、5、9,10,11、13の結果より、触媒担体の表面積が小さい時、500℃以下になると如実に活性が小さくなっていくことがわかる。特に比較例5、11では400℃賦活では全く活性が無く、これを実施例9〜12と比較すれば、その効果の差は歴然である。
以上から、本発明の製造方法で使われるエチレン重合用触媒によって重合活性、特に低温賦活した時の重合活性が従来のものと比べて優れ、これを用いることにより、耐久性、耐衝撃性に優れ、且つ成形性のバランスに極めて優れたエチレン系重合体が製造できることが判る。
【0100】
[実施例13]
(1)クロム触媒の焼成活性化
実施例3(1)の方法で得られたクロム触媒前駆体粒子を5kg、多孔板目皿つきの管径5cmの石英ガラス管に入れ、円筒状焼成用電気炉にセットし、モレキュラーシーブスを通した空気にて流動化させ、線速6cm/sにて400℃で12時間焼成活性化を行った。6価のクロム原子を含有することを示す黄色のクロム触媒が得られた。
(2)重合
内容積200Lのパイプループ型反応器にイソブタンを120L/h、上記(1)で得られたクロム触媒を5g/hの速度で連続的に供給し、反応器内容物を所要速度で排出しながら、100℃において液相中の1−ヘキセン濃度のエチレン濃度に対する質量比を0.10に保つようにエチレン、1−ヘキセンを供給し、全圧4.0MPa、平均滞留時間1.5hの条件で、液充満の状態で連続的に重合を行った。触媒生産性=3000g−ポリマー/g−触媒となり、平均重合活性は2000g−ポリマー/g−触媒/hであった。重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表2に示した。
【0101】
[比較例14]
(1)クロム触媒の焼成活性化
実施例3(1)の方法で得られたクロム触媒前駆体粒子を5kg、多孔板目皿つきの管径5cmの石英ガラス管に入れ、円筒状焼成用電気炉にセットし、モレキュラーシーブスを通した空気にて流動化させ、線速6cm/sにて600℃で12時間焼成活性化を行った。6価のクロム原子を含有することを示す黄色のクロム触媒が得られた。
(2)重合
内容積200Lのパイプループ型反応器にイソブタンを120L/h、上記(1)で得られたクロム触媒を5g/hの速度で連続的に供給し、反応器内容物を所要速度で排出しながら、97℃において液相中の1−ヘキセン濃度のエチレン濃度に対する質量比を0.09に保つようにエチレン、1−ヘキセンを供給し、全圧4.0MPa、平均滞留時間1.3hの条件で、液充満の状態で連続的に重合を行った。触媒生産性=3500g−ポリマー/g−触媒となり、平均重合活性は2700g−ポリマー/g−触媒/hであった。重合ポリマーのHLMFR、密度などの測定結果を表2に示した。実施例13に比べ、密度が同じであるにも係わらずFNCTの結果が劣ることがわかる。
【0102】
【表2】

【0103】
本発明の要件を満たす実施例13では、調製されたクロム触媒は400℃という従来に比べ低賦活温度で活性化したクロム触媒であるにもかかわらず、優れた重合活性を示した。その結果、優れた耐久性を有するエチレン重合体が得られている。
一方、比較例14では、賦活温度が600℃で実施例13より高いが、得られるポリマーの耐久性は小さくなっており、その効果の差は歴然である。
以上から、本発明の製造方法で使われるエチレン重合用触媒によって重合活性、特に低温賦活した時の重合活性が従来のものと比べて優れているので、耐久性、耐衝撃性に優れ、且つ成形性のバランスに極めて優れたエチレン系重合体が製造できることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明で提供されるエチレン系重合体の製造方法は、触媒が高い重合活性を発揮するので効率的にエチレン系重合体を製造することができ、しかも、製造されるエチレン系重合体は、成形性、耐久性、バリアー性に優れ、且つ耐衝撃性及び剛性のバランスに優れたものとなるので、中空プラスチック成形品、中でも燃料タンク、特に自動車用燃料タンク等に好適に用いられ、その意味で産業上の意義が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が625〜1000m/g、細孔体積が1.0〜5.0cm/gである無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持したクロム担持無機酸化物(c)を非還元性雰囲気、250〜550℃で賦活することにより得られる触媒を、当該賦活の後にはクロム担持無機酸化物(c)上に有機アルミニウム化合物を担持させない形態で用いて、エチレン単独重合またはエチレンとα−オレフィンとの共重合を行うことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法。
【請求項2】
賦活温度が300〜500℃であることを特徴とする請求項1に記載のエチレン系重合体の製造方法。
【請求項3】
無機酸化物担体(a)は、比表面積が650〜950m/gであることを特徴とする請求項1または2に記載のエチレン系重合体の製造方法。
【請求項4】
無機酸化物担体(a)は、比表面積が700〜900m/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン系重合体の製造方法。
【請求項5】
無機酸化物担体(a)は、細孔体積が1.5〜4.0cm/gであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエチレン系重合体の製造方法。
【請求項6】
クロム担持無機酸化物(c)は、クロムが0.5〜5.0重量%含まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエチレン系重合体の製造方法。
【請求項7】
無機酸化物担体(a)は、アルミニウムが0.5〜5.0重量%含まれていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエチレン系重合体の製造方法。
【請求項8】
無機酸化物担体(a)はシリカであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエチレン系重合体の製造方法。
【請求項9】
前記α−オレフィンは、炭素数が3〜8であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のエチレン系重合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法により得られるエチレン系重合体。
【請求項11】
温度190℃、荷重21.6kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が1〜100g/10分、密度が0.935〜0.960g/cmであることを特徴とする請求項10に記載のエチレン系重合体。
【請求項12】
請求項10または11に記載のエチレン系重合体から成形されるブロー成形製品。

【公開番号】特開2012−214764(P2012−214764A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−75333(P2012−75333)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】