エチレン/α−オレフィンのコポリマーから製造される繊維
300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復Re(パーセント)、および密度d(g/cm3)であって、次の関係:Re>1481−1629(d)を満たす前記弾性回復および密度によって特徴付けられる、エチレン/α−オレフィン共重合体から得ることができる、またはこうしたエチレン/α−オレフィン共重合体含む繊維。こうした共重合体は、他の特性によって特徴付けることもできる。本繊維は、比較的高い弾性回復および比較的低い摩擦係数を有する。本繊維は、所望される場合には、架橋させることができる。織布または不織布をこうした繊維から製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン/α−オレフィンコポリマーから製造される繊維、および前記繊維の製造方法、および前記繊維から製造される製品に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維は、典型的にはそれらの直径に従って分類される。モノフィラメント繊維は、一般に、単糸で約15デニールより大きい、通常は約30デニールより大きい、個々の繊維直径を有すると定義される。細繊度繊維(fine denier fiber)は、一般に、単糸で約15デニール未満の直径を有する繊維を指す。極細繊度繊維(microdenier fiber)は、一般に、100マイクロメートル未満の直径を有する繊維と定義される。モノフィラメント、連続巻取細フィラメント、ステープルファイバーまたは単繊維、スパンボンド繊維およびメルトブロー繊維など、製造されるプロセスによって繊維を分類することもできる。
【0003】
卓越した弾性を有する繊維は、様々な布を製造するために必要であり、そしてまたそれらの布は、無数の耐久製品、例えば、スポーツウェアおよび椅子張りを製造するために使用される。弾性は1つの性能属性であり、これは、着用者の体になじむまたは製品の構造に順応する布の性能の1つの尺度である。好ましくは、布は、体温および他の高温(例えば、布の洗濯および乾燥中に経験する温度)での反復使用、伸長および収縮の間、その順応性フィットを維持するであろう。
【0004】
繊維は、一般に、それらが付勢力の印加後に高い弾性回復率(すなわち、低い永久ひずみパーセント)を有する場合、弾性として特徴付けられる。理想的には、弾性材料は、3つの重要な特性:(i)低い永久ひずみパーセント、(ii)ひずみ時の低い応力または荷重;および(iii)低い応力または荷重緩和パーセント、によって特徴付けられる。言い換えると、弾性材料は、次の特性:(i)その材料を伸張するための低い応力荷重要求、(ii)その材料が、一旦、伸張されると、無もしくは低応力緩和または無荷重、および(iii)伸張、付勢またはひずみの付与が停止された後の原寸への完全なまたは高度な回復、を有するものとして特徴付けられる。
【0005】
スパンデックスは、ほぼ理想的な弾性特性を示すことが知られているセグメント化ポリウレタン弾性材料である。しかし、スパンデックスは、多数の用途にとってコストが法外に高い。また、スパンデックスは、特に湿気が存在する状態では、オゾン、塩素および高温に対する劣った耐環境性を示す。こうした特性、特に、耐塩素性の欠如は、水着などの服飾品用途において、および塩素漂白剤が存在する状態で望ましくは洗濯される白衣において、スパンデックスが明確に不利になる原因である。
【0006】
様々な繊維および布が、熱可塑性物質、例えば、ポリプロピレン、一般に高圧重合プロセスにおいて製造される高分枝低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖不均一分枝ポリエチレン(例えば、チーグラー触媒を使用して製造された直鎖低密度ポリエチレン)、ポリプロピレンと直鎖不均一分枝ポリエチレンとのブレンド、直鎖不均一分枝ポリエチレンとエチレン/ビニルアルコールコポリマーとのブレンド、から製造されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当分野においてなされた進歩にもかかわらず、柔軟で体の動きに応じるポリオレフィン系弾性繊維が、引き続き必要とされている。好ましくは、こうした繊維は、比較的高い弾性回復を有するであろうし、比較的ハイスループットで製造することができる。さらに、扱いにくい加工段階を必要とせず、さらに粘着性でない柔軟で快適な布を生じさせる繊維の形成は、非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の要求は、本発明の様々な態様によって満たされる。一態様では、本発明は、少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン共重合体から得ることができる、または少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン共重合体含む繊維であって、前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、以下の特性のうちの1またはそれ以上によって特徴付けられる繊維に関する:
【0009】
(a)約1.7から約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm3)を有し、前記Tmおよびdの数値が、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
の関係に相当すること;または
【0010】
(b)約1.7から約3.5のMw/Mnを有し、ならびに融解熱ΔH(J/g)、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークの間の温度差として規定されるデルタ量ΔT(℃)によって特徴付けられ、
前記ΔTおよびΔHの数値が、以下の関係:
ΔHがゼロより大きく、130J/g以下である場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
を有し、ならびに
【0011】
前記CRYSTAFピークが、累積ポリマーのうちの少なくとも5パーセントを用いて決定され、そしてこのポリマーの5パーセント未満が同定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度は30℃であること;または
【0012】
(c)その共重合体の圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復Re(パーセント)を有し、および密度d(g/cm3)を有し、前記Reおよびdの数値が、その共重合体が実質的に架橋相を有さない場合、以下の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たすこと;または
【0013】
(d)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、この同じ温度間で溶出する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量より少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有するという点で特徴付けられる画分有し、前記の比較対象となるランダムエチレン共重合体が、同じコモノマー(単数または複数)と、この共重合体のものから10パーセント以内のメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)とを有すること;または
【0014】
(e)25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)および100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)を有し、前記G’(25℃)対G’(100℃)の比が、約1:1から約10:1であること;
【0015】
(f)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、少なくとも0.5で、かつ約1以下のブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする、少なくとも1つの分子画分を有すること;または
【0016】
(g)ゼロより大きく、かつ約1.0以下である平均ブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有すること。
【0017】
別の態様では、本発明は、エチレンとC3〜C20α−オレフィンの少なくとも1つの共重合体から得ることができる、またはエチレンとC3〜C20α−オレフィンの少なくとも1つの共重合体を含む繊維に関し、この場合の共重合体は、約0.860g/ccから約0.895g/ccの密度、および70℃で約70%未満の圧縮永久ひずみを有する。ある実施形態において、70℃での前記永久ひずみは、約60%未満、約50%未満、約40%未満または約30%未満である。
【0018】
ある実施形態では、前記共重合体は、以下の関係:
Re>1491−1629(d);または
Re>1501−1629(d);または
Re>1511−1629(d)
を満たす。
【0019】
他の実施形態では、前記共重合体は、ASTM D−1238、条件190℃/2.16kgに従って測定した、約0.1から約2000g/10分、約1から約1500g/10分、約2から約1000g/10分、約5から約500g/10分のメルトインデックスを有する。ある実施形態では、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、1.7から3.5のMw/Mnを有し、これは、少なくとも1つのハードセグメントと少なくとも1つのソフトセグメントを含むランダムブロックコポリマーである。好ましくは、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、約0.86から約0.96g/ccまたは約0.86から約0.92g/ccの範囲の密度を有する。他の実施形態では、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、別のポリマーとブレンドされる。
【0020】
本明細書において「エチレン/α−オレフィン共重合体」または「エチレン/α−オレフィン/ジエン共重合体」の中の用語「α−オレフィン」は、C3およびそれより高級のα−オレフィンを指す。ある実施形態において、このα−オレフィンは、スチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン、またはこれらの組み合わせであり、このジエンは、ノルボルネン、1,5−ヘキサジエン、または組み合わせである。
【0021】
本繊維は、弾性または非弾性である。時として、本繊維は、架橋されている。この架橋は、プロトン照射、電子ビーム照射または架橋剤によって行うことができる。ある実施形態において、架橋ポリマーのパーセントは、形成されたゲルの重量パーセントよって測定された場合、少なくとも20パーセント、例えば、約20パーセントから約80パーセント、または約35パーセントから約50パーセントである。時として、本繊維は、複合繊維である。この複合繊維は、鞘芯構造;海島構造;サイドバイサイド構造;マトリックス−フィブリル構造;またはセグメント化パイ(segmented pie)構造を有する。本繊維は、ステープルファイバーまたはバインダー繊維であり得る。ある実施形態において、本繊維は、約1.2未満の摩擦係数を有し、この場合、その共重合体は、いずれの充填剤とも混合されていない。
【0022】
ある実施形態において、本繊維は、約0.1デニールから約1000デニールの範囲の直径を有し、そしてその共重合体は、約0.5から約2000のメルトインデックスおよび約0.865g/ccから約0.955g/ccの密度を有する。他の実施形態において、本繊維は、約0.1デニールから約1000デニールの範囲の直径を有し、そしてその共重合体は、約1から約2000のメルトインデックスおよび約0.865g/ccから約0.955g/ccの密度を有する。さらに他の実施形態において、本繊維は、約0.1デニールから約1000デニールの範囲の直径を有し、そしてその共重合体は、約3から約1000のメルトインデックスおよび約0.865g/ccから約0.955g/ccの密度を有する。
【0023】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の様々な実施形態に従って製造された繊維を含む布に関する。本布は、スパンボンド布;メルトブロー布;ゲル紡糸布;溶融紡糸布;などでありえる。本布は、弾性または非弾性織布または不織布であり得る。ある実施形態において、本布は、100パーセントのひずみで少なくとも50パーセントのMD回復パーセントを有する。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の様々な実施形態に従って製造された繊維を含むカードウェブまたは糸に関する。本糸は、被覆されていることがあり、または被覆されていないことがある。被覆されている場合、それは、綿糸により被覆されていることもあり、ナイロン糸により被覆されていることもある。
【0025】
なお、さらに別の態様において、本発明は、本繊維を製造する方法に関する。本方法は、(a)(本明細書に記載するような)エチレン/α−オレフィン共重合体を溶融すること;およびそのエチレン/α−オレフィン共重合体を繊維に押出すことを含む。この繊維は、溶融紡糸法;スパンボンド法;メルトブロー法などによって形成することができる。ある実施形態において、本繊維から形成された布は、実質的にローピングを有さない。好ましくは、本繊維は、その共重合体のピーク溶融温度より下の温度で延伸される。
【0026】
本発明のさらなる態様ならびに本発明の様々な実施形態の特徴および特性は、以下の説明で明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
一般定義
【0028】
「繊維」は、長さ対直径比が約10より大きい材料を意味する。繊維は、典型的にはその直径に従って分類される。フィラメント繊維は、単糸で約15デニールより大きい、通常は約30デニールより大きい個々の繊維直径を有するものとして一般に定義される。細繊度繊維は、一般に、単糸で約15デニール未満の直径を有する繊維を指す。極細繊度繊維は、一般に、単糸で約100マイクロメートル未満の直径を有する繊維と定義される。
【0029】
「フィラメント繊維」または「モノフィラメント繊維」は、一定の長さの材料の不連続ストランド(すなわち、所定の長さのセグメントに切断または別様に分割されたストランド)である「ステープルファイバー」とは対照的に、不定の(すなわち、あらかじめ決められていない)長さの材料の連続ストランドを意味する。
【0030】
「弾性の」は、繊維が、100%のひずみ(2倍の長さ)まで1回目に引っ張った後および4回目に引っ張った後、その引き伸ばされた長さの少なくとも約50パーセントを回復するであろうということを意味する。弾性は、繊維の「永久ひずみ」によって説明することもできる。永久ひずみは、弾性の逆である。繊維を一定の点まで伸張し、その後、開放して伸張前の原寸にし、その後、再び伸張する。繊維が荷重を引っ張り始める点を永久ひずみパーセントと呼ぶ。「弾性材料」は、当分野において「エラストマー」および「エラストマー材料」とも呼ばれる。弾性材料(時として、弾性品と呼ばれる)としては、コポリマーそれ自体はもちろん、繊維、フィルム、ストリップ、テープ、リボン、シート、コーティング、成形品などの形態のコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい弾性材料は、繊維である。弾性材料は、硬化されることもあり、硬化されないこともあり、照射されることもあり、照射されないこともあり、および/または架橋されることもあり、架橋されないこともある。
【0031】
「非弾性材料」は、上で定義したような弾性ではない材料、例えば繊維、を意味する。
【0032】
「実質的に架橋されている」および類似の用語は、成形されたまたは製品の形態のコポリマーが、70重量パーセント以下のキシレン抽出物(すなわち、30重量パーセント以上のゲル含量)、好ましくは40重量パーセント以下のキシレン抽出物(すなわち、60重量パーセント以上のゲル含量)を有することを意味する。キシレン抽出物(およびゲル含量)は、ASTM D−2765に従って決定される。
【0033】
「ホモフィル(Homofil)繊維」は、単一ポリマー領域またはドメインを有し、かつ(複合繊維が有するような)他の異質なポリマー領域を一切有さない繊維を意味する。
【0034】
「複合繊維」は、2またはそれ以上の異質なポリマー領域またはドメインを有する繊維を意味する。複合繊維は、コンジュゲート繊維または多成分系繊維としても知られている。それらのポリマーは、通常、互いに異なるが、2またはそれ以上の成分が同じポリマーを含むこともある。それらのポリマーは、その複合繊維の断面を交差して実質的に異なるゾーンに配置されており、通常、その複合繊維の長さ方向に沿って継続的に伸長する。複合繊維の構造は、例えば、鞘/芯配置(1つのポリマーを別のポリマーが包囲している)、サイドバイサイド配置、パイ配置または「海島(island-in-the sea)」配置であり得る。複合繊維は、さらに、米国特許第6,225,243号、同第6,140,442号、同第5,382,400号、同第5,336,552号および同第5,108,820号に記載されている。
【0035】
「メルトブロー繊維」は、溶融した熱可塑性ポリマー組成物を、多数の細い、通常は円形のダイキャピラリーを通して、溶融スレッドまたはフィラメントとして収束高速ガス流(例えば、空気)に押出すことにより形成された繊維であり、前記ガス流は、それらのスレッドまたはフィラメントを低減された直径に細める役割を果たす。それらのフィラメントまたはスレッドをその高速ガス流によって運び、捕集面上に堆積させて、10ミクロンより一般には小さい平均直径を有するランダムに分散された繊維のウェブを形成する。
【0036】
「溶融紡糸繊維」は、少なくとも1つのポリマーを溶融し、その後、その溶融状態の繊維を、ダイの直径(または他の断面形状)より小さい直径(または他の断面形状)に延伸することによって形成された繊維である。
【0037】
「スパンボンド繊維」は、溶融した熱可塑性ポリマー組成物を、紡糸口金の多数の細い、通常は円形のダイキャピラリーを通して、フィラメントとして押出すことにより形成された繊維である。押出されたフィラメントの直径を急速に低下させ、その後、それらのフィラメントを捕集面上に堆積させて、一般に約7マイクロメートルと約30マイクロメートルの間の平均直径を有するランダムに分散された繊維のウェブを形成する。
【0038】
「不織布」は、編地の場合のように識別できるようにではなくランダムに互いに置かれている個々の繊維またはスレッドの構造を有するウェブまたは布を意味する。本発明の実施形態の弾性繊維を利用して、不織布構造はもちろんのこと、非弾性材料との組み合わせでの弾性不織布の複合構造を作製することができる。
【0039】
「糸」は、織布または編地および他の物品を製造する際に使用することができる、撚られたまたは別様に交絡されたフィラメントの連続長を意味する。糸は、被覆されていることもあり、または被覆されていないこともある。カバードヤーンは、別の繊維または材料、一般には天然繊維、例えば綿またはウールの外部被覆の中に少なくとも部分的に巻かれている糸である。
【0040】
「ポリマー」は、同じタイプのモノマーか異なるタイプのモノマーであるかにかかわらず、モノマーを重合させることによって作製された高分子化合物を意味する。総称「ポリマー」は、用語「ホモポリマー」、「コポリマー」、「ターポリマー」ならびに「共重合体」を包含する。
【0041】
「共重合体」は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって作製されたポリマーを意味する。総称「共重合体」は、用語「コポリマー」(通常、2つの異なるモノマーから作製されたポリマーを指すために用いられる)、ならびに用語「ターポリマー」(通常、3つの異なるタイプのモノマーから作製されたポリマーを指すために用いられる)を包含する。これは、4またはそれ以上のタイプのモノマーを重合させることによって製造されたポリマーも包含する。
【0042】
用語「エチレン/α−オレフィン共重合体」は、一般に、エチレンと3個またはそれ以上の炭素原子を有するα−オレフィンとを含むポリマーを指す。好ましくは、エチレンが、その全ポリマーの大部分のモル分率を構成する。すなわち、エチレンは、その全ポリマーの少なくとも約50モルパーセントを構成する。さらに好ましくは、エチレンは、少なくとも約60モルパーセント、少なくとも約70モルパーセント、または少なくとも約80モルパーセントを構成し、その全ポリマーの実質的な残部は、好ましくは3個またはそれ以上の炭素原子を有するα−オレフィンである、少なくとも1つの他のコモノマーを含む。多数のエチレン/オクテンコポリマーについては、好ましい組成は、その全ポリマーの約80モルパーセントより多いエチレン含量、およびその全ポリマーの約10から約15、好ましくは約15から約20モルパーセントのオクテン含量を含む。ある実施形態では、エチレン/α−オレフィン共重合体は、低収率でまたは少量でまたは化学プロセスの副生成物として生成されるものを含まない。エチレン/α−オレフィン共重合体を1またはそれ以上のポリマーとブレンドすることができるが、生成されるエチレン/α−オレフィン共重合体は、実質的に純粋であり、多くの場合、重合プロセスの反応生成物の主成分を構成する。
【0043】
エチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンおよび1またはそれ以上の共重合可能なα−オレフィンコモノマーを重合型で含み、これは、化学的または物理的な特性が異なる2またはそれ以上の重合したモノマー単位の複数のブロックまたはセグメントによって特徴付けられる。すなわち、エチレン/α−オレフィン共重合体は、ブロック共重合体、好ましくはマルチブロック共重合体またはコポリマーである。用語「共重合体」および「コポリマー」は、本明細書では互換的に使用される。ある実施形態において、マルチブロックコポリマーは、次の式:
(AB)n
によって表すことができ、この式中、nは、1、好ましくは1より大きい整数、例えば、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上であり、「A」は、ハードブロックまたはセグメントを表し、ならびに「B」は、ソフトブロックまたはセグメントを表す。好ましくは、AおよびBは、実質的に分枝したまたは実質的に星形の様式とは対照的に、実質的に直鎖状の様式で連結している。他の実施形態において、AブロックおよびBブロックは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布している。言い換えると、これらのブロックコポリマーは、通常、次のような構造を有さない:
AAA――AA−BBB――BB
さらに他の実施形態におけるブロックコポリマーは、通常、異なるコモノマー(単数または複数)を含む第三のブロックタイプを、有さない。さらに他の実施形態では、ブロックAおよびブロックBの各々が、そのブロックの中に実質的にランダムに分布しているモノマーまたはコモノマーを有する。言い換えれば、ブロックAもブロックBも、ブロックの残りとは実質的に異なる組成を有する、別個の組成の2または以上のサブセグメント(またはサブブロック)、例えばチップセグメントを含まない。
【0044】
一般に、マルチブロックポリマーは、様々な量の「ハード」および「ソフト」セグメントを含む。「ハード」セグメントは、エチレンが、そのポリマーの重量を基準にして約95重量パーセントより多い量、好ましくは約98重量パーセントより多い量で存在する、重合単位のブロックを指す。言い換えると、ハードセグメント中のコモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)は、そのポリマーの重量を基準にして約5重量パーセント未満、好ましくは約2重量パーセント未満である。ある実施形態において、ハードセグメントは、すべてまたは実質的にすべてエチレンから成る。一方、「ソフト」セグメントは、そのコモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)が、そのポリマーの重量を基準にして約5重量パーセントより大きい、好ましくは約8重量パーセントより大きい、約10重量パーセントより大きい、または約15重量パーセントより大きい、重合単位のブロックを指す。ある実施形態において、ソフトセグメント中のコモノマー含量は、約20重量パーセントより大きくてもよく、約25重量パーセントより大きくてもよく、約30重量パーセントより大きくてもよく、約35重量パーセントより大きくてもよく、約40重量パーセントより大きくてもよく、約45重量パーセントより大きくてもよく、約50重量パーセントより大きくてもよく、または約60重量パーセントより大きくてもよい。
【0045】
ソフトセグメントは、多くの場合、そのブロック共重合体の総重量の約1重量パーセントから約99重量パーセント、好ましくは、そのブロック共重合体の総重量の約5重量パーセントから約95重量パーセント、約10重量パーセントから約90重量パーセント、約15重量パーセントから約85重量パーセント、約20重量パーセントから約80重量パーセント、約25重量パーセントから約75重量パーセント、約30重量パーセントから約70重量パーセント、約35重量パーセントから約65重量パーセント、約40重量パーセントから約60重量パーセント、または約45重量パーセントから約55重量パーセント、ブロック共重合体の中に存在し得る。逆に言えば、ハードセグメントは、同様の範囲で存在し得る。ソフトセグメントの重量パーセンテージおよびハードセグメントの重量パーセンテージは、DSCまたはNMRから得られるデータを基に計算することができる。こうした方法および計算は、Colin L.P.Shan、Lonnie Hazlittらの名で2006年3月15日に出願され、Dow Global Technolgies Inc.に譲渡された、「Ethylene / α- Olefin Block Interpolymers」と題する、米国特許出願第______号(判明すれば挿入)、代理人ドケット番号385063−999558に開示されている。この特許の開示は、その全体が参照によって本明細書に援用されている。
【0046】
用いられる場合、用語「結晶性」は、示差走査熱量測定(DSC)または同等の技法によって判定したときに一次転移または結晶融点(Tm)を有するポリマーを指す。この用語は、用語「半結晶性」と同義で用いられることがある。用語「非晶質」は、示差走査熱量測定(DSC)または同等の技法によって判定したときに結晶融点を有さないポリマーを指す。
【0047】
用語「マルチブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」は、好ましくは直鎖状に接続されている、2またはそれ以上の化学的に異質な領域またセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマー、すなわち、ペンダント式またはグラフト式でではなく重合されるエチレン性官能基に関して端と端とで接続されている、化学的に区別される単位を含むポリマー、を指す。好ましい実施形態において、それらのブロックは、組み込まれているコモノマーの量およびタイプ、そうしたポリマー組成に起因する密度、結晶性の量、結晶サイズ、立体規則性のタイプもしくは程度(イソタクチックまたはシンジオタクチック)、位置規則性(regio-regularity)もしくは位置変則性(regio-irregularity)、分枝化の量(長鎖分枝化もしくは高分枝化を含む)、均質性、または他の任意の化学的または物理的な特性の点で異なる。マルチブロックコポリマーは、これらのコポリマーの独特な製造プロセスのため、両方の多分散指数(PDIもしくはMw/Mn)、ブロック長分布、および/またはブロック数分布の一意的な分布によって特徴付けられる。さらに具体的には、連続プロセスで製造されたとき、これらのポリマーは、望ましくは、1.7から2.9、好ましくは1.8から2.5、さらに好ましくは1.8から2.2、および最も好ましくは1.8から2.1のPDIを有する。バッチまたはセミバッチプロセスにおいて製造されたとき、これらのポリマーは、1.0から2.9、好ましくは1.3から2.5、さらに好ましくは1.4から2.0、および最も好ましくは1.4から1.8のPDIを有する。
【0048】
後続の説明において、本明細書に開示されているすべての数は、それに伴って「約」または「おおよそ」という語が用いられているかどうかにかかわらず、近似値である。それらは、1パーセント、2パーセント、5パーセント、または時として10から20パーセント変動することがある。下限RLおよび上限RUを有する数値範囲が開示されているときは、必ず、その範囲内に入る任意の数が、具体的に開示される。詳細には、その範囲内の次の数が、具体的に開示される:R=RL+k*(RU−RL)[この式中、kは、1パーセント刻みで1パーセントから100パーセントまでの範囲にわたる変数であり、すなわち、kは、1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、…、50パーセント、51パーセント、52パーセント、…、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、または100パーセントである]。さらに、上で定義したように2つの数Rによって定義される任意の数値範囲も、具体的に開示される。特定の参考文献(例えば、特許または雑誌の記事)に言及されている場合、そうした参考文献は、その全体が本明細書に参照によって援用されていることを(それに伴ってこうした表現が用いられているかどうかにかかわらず)理解しなければならない。
【0049】
本発明の実施形態は、独自の特性を有する新規エチレン/α−オレフィン共重合体から得ることができる、またはユニークな特性を有する新規エチレン/α−オレフィン共重合体を含む繊維、ならびにそうした繊維から製造される布および他の製品を提供する。本繊維は、良好な耐摩耗性;低い摩擦係数;高い上限使用温度;高い回復/収縮力;低い応力緩和(高および低温);ソフトストレッチ;高い破断点伸度;不活性;耐薬品性;ならびに/または耐UV性を有し得る。本繊維は、比較的高い紡糸速度および低温で溶融紡糸することができる。加えて、本繊維は、あまり粘着性でなく、その結果、より良好な巻出動作およびより良好な保管安定性が得られ、ならびに本繊維から製造した布は、実質的にローピング(すなわち、繊維集束)を有さない。本繊維は、より高い紡糸速度で紡糸することができるため、繊維の生産スループットが高い。こうした繊維は、広い形成領域および広い加工領域も有する。
【0050】
エチレン/α−オレフィン共重合体
本発明の実施形態において用いられるエチレン/α−オレフィン共重合体(「本発明の共重合体」、「本発明のポリマー」とも呼ばれる)は、エチレンおよび1以上の共重合可能なα−オレフィンコモノマーを重合化された形態で含み、化学的または物理的な特性が異なる2つ以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック共重合体)、好ましくはマルチブロックコポリマーによって特徴付けられる。このエチレン/α−オレフィン共重合体は、下に記載されるような1つまたはそれ以上の態様によって特徴付けられる。
【0051】
一態様では、本発明の実施形態で用いられるエチレン/α−オレフィン共重合体は、約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(グラム/立方センチメートル)を有し、この変数の数値は:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2、そして好ましくは、
Tm≧−6288.1+13141(d)−6720.3(d)2、そして好ましくは、
Tm≧858.91−1825.3(d)+1112.8(d)2
の関係に相当する。
【0052】
このような融点/密度の関係は、図1に図示される。融点が密度とともに低下するエチレン/α−オレフィンの従来のランダムコポリマーとは異なり、特に密度が約0.87g/cc〜約0.95g/ccである場合、本発明の共重合体(ひし形で示す)は、密度とは実質的に独立した融点を示す。例えば、このようなポリマーの融点は、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccにわたる場合、約110℃〜約130℃の範囲である。ある実施形態では、このようなポリマーの融点は、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccにわたる場合、約115℃〜約125℃の範囲である。
【0053】
別の態様では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、重合化された形態で、エチレンおよび1以上のα−オレフィンを含み、そして最高の示差走査熱量測定(「DSC」)ピーク温度から最高の結晶分析分別(Crystallization Analysis Fractionation)(「CRYSTAF」)ピークの温度を減算した温度として規定されるΔT(℃)および融解熱ΔH(J/g)によって特徴付けられ、そしてΔTおよびΔHの数値が、ΔHが130J/g以下の場合、以下の関係:
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、そして好ましくは、
ΔT≧−0.1299(ΔH)+64.38、そしてより好ましくは、
ΔT≧−0.1299(ΔH)+65.95
を満たす。さらに、ΔTは、ΔHが130J/gより大きい場合、48℃以上である。CRYSTAFピークは、累積ポリマーのうちの少なくとも5%を用いて決定され(すなわち、このピークは、累積ポリマーの少なくとも5%に相当するはずである)、そしてこのポリマーの5パーセント未満が同定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度が30℃であり、そしてΔHは、J/gである融解熱の数値である。より好ましくは、最高のCRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも10パーセントを含む。図2は、本発明のポリマーのプロットされたデータ、および比較例を示す。積分されたピーク面積およびピーク温度は、機器製造業者によって供給されるコンピュータ図形作成プログラムによって算出される。ランダムエチレン・オクテン比較例について示される対角線は、方程式ΔT=−0.1299(ΔH)+62.81に相当する。
【0054】
さらに別の態様では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、昇温溶離分別法(Temperature Rising Elution Fractionation)(「TREF」)を用いて分画される場合に40℃と130℃との間で溶離する分子画分を有し、この同じ温度の間で溶離する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも好ましくは少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも10パーセント高いコモノマーモル含量を有するという点で特徴付けられ、ここで、この比較対象となるランダムエチレン共重合体は、同じコモノマー(単数または複数)を有し、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)をそのブロック共重合体のものから10パーセント以内に有する。好ましくは、この比較対象となる共重合体のMw/Mnはまた、そのブロック共重合体のMw/Mnから10パーセント以内にあり、そして/またはこの比較対象となる共重合体は、そのブロック共重合体のMw/Mnから10パーセント以内にMw/Mnを有する。
【0055】
さらに別の態様では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復Re(パーセント)によって特徴付けられ、かつ密度d(グラム/立方センチメートル)を有し、このReおよびdの数値は、エチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を有さない場合、以下の関係、
Re>1481−1629(d);そして好ましくは、
Re≧1491−1629(d);そしてさらに好ましくは、
Re≧1501−1629(d);そしてよれより好ましくは、
Re≧1511−1629(d)
を満たす。
【0056】
図3は、特定の本発明の共重合体および従来のランダムコポリマーから作製された未延伸フィルムについての弾性回復率に対する密度の効果を示す。同じ密度について、本発明の共重合体は、実質的により高い弾性回復率を有する。
【0057】
ある実施形態では、エチレン/α−オレフィン共重合体は、10MPaを超える引張強度、好ましくは11MPa以上の引張強度、より好ましくは13Mpa以上の引張強度、および/または、11cm/分のクロスヘッド分離速度で、少なくとも600パーセント、より好ましくは少なくとも700パーセント、特に好ましくは少なくとも800パーセント、そして最も高度に好ましくは少なくとも900パーセントの破断点伸度を有する。
【0058】
他の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、(1)1〜50、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10という貯蔵弾性率G’(25℃)/G’(100℃);および/または(2)80パーセント未満、好ましくは70パーセント未満、特に60パーセント未満、50パーセント未満、または40パーセント未満という70℃圧縮永久ひずみを、0パーセントの圧縮永久ひずみまで下がって、有する。
【0059】
さらに他の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、80パーセント未満、70パーセント未満、60パーセント未満、または50パーセント未満、という70℃圧縮永久ひずみを有する。好ましくは、共重合体の70℃圧縮永久ひずみは、40パーセント未満、30パーセント未満、20パーセント未満であり、そして約0パーセントまで下がってもよい。
【0060】
ある実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、85J/g未満の融解熱、および/または100ポンド/フィート2(4800Pa)以下、好ましくは50ポンド/フィート2(2400Pa)以下、特に、5ポンド/フィート2(240Pa)以下、そして0ポンド/フィート2(0Pa)程度のペレットブロッキング強度を有する。
【0061】
他の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、重合型で、少なくとも50モルパーセントのエチレンを含み、そして80パーセント未満、好ましくは70パーセント未満、または60パーセント未満、最も好ましくは40〜50パーセント、そしてゼロパーセント近くまで下がるという70℃圧縮永久ひずみを有する。
【0062】
ある実施形態では、このマルチブロックコポリマーは、ポアソン分布よりもシュルツ・フローリー分布にあてはまるPDIを保有する。このコポリマーはさらに、多分散性ブロック分布と多分散性ブロックサイズ分布との両方を有し、かつブロック長の最確分布を保有すると特徴付けられる。好ましいマルチブロックコポリマーは、末端ブロックを含めて、4以上のブロックまたはセグメントを含むものである。さらに好ましくは、このコポリマーは、末端ブロックを含めて、少なくとも5、10もしくは20のブロックまたはセグメントを含む。
【0063】
コモノマー含量は、任意の適切な技術を用いて測定され得、好ましくは核磁気共鳴(「NMR」)分光法に基づく技術による。さらに、比較的広範なTREF曲線を有するポリマーまたはポリマーの混合物については、ポリマーは望ましくは、TREFを用いて、各々が10℃以下の溶離温度範囲を有する画分に最初に分画される。すなわち、各々の溶離画分は、10℃以下という収集温度領域(ウィンドウ)を有する。この技術を用いて、このようなブロック共重合体は、比較対象となる共重合体の対応する画分よりも高モルのコモノマー含量を有する画分を、少なくとも1つ有する。
【0064】
図4はエチレンおよび1−オクテンのブロック共重合体の実施形態をグラフ表示しており、ここではいくつかの比較対象となるエチレン/1−オクテン共重合体(ランダムコポリマー)についてのコモノマー含量対TREF溶離温度のプロットが、(−0.2013)T+20.07(実線)に相当する線に適合する。この式(−0.2013)T+21.07についての線は、破線で示される。本発明のいくつかのブロックエチレン/1−オクテン共重合体(マルチブロックコポリマー)の画分のコモノマー含量も示される。ブロック共重合体画分の全てが、同等の溶離温度でいずれの線より有意に高い1−オクテン含量を有する。この結果は、本発明の共重合体の特徴であって、結晶性および非晶質の両方の性質を有する、ポリマー鎖内の分化型のブロックの存在に起因すると考えられる。
【0065】
図5は、実施例5および下で考察される比較例Fについてのポリマー画分のTREF曲線およびコモノマー含量をグラフ表示する。両方のポリマーについて40〜130℃、好ましくは60℃〜95℃で溶離するピークを、各々の部分が10℃未満の温度範囲にわたって溶離する3つの部分に分画する。実施例5についての実際のデータは三角で示す。異なるコモノマーを含有する共重合体について適切な検量線を作成することができ、それが、同じモノマーの比較の共重合体、好ましくはメタロセンまたは他の均一系触媒組成物を用いて製造されるランダムコポリマーから得られたTREF値とフィッティングさせる比較として用いられる線であり得ることは、当業者には理解され得る。本発明の共重合体は、同じTREF溶離温度で検量線から決定された値より大きい、好ましくは、少なくとも5パーセント大きい、より好ましくは少なくとも10パーセント大きい、コモノマーのモル含量で特徴付けられる。
【0066】
上記の態様および本明細書に記載される特性に加えて、本発明のポリマーは、1以上のさらなる特徴によって特徴付けられ得る。一態様では、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、好ましくは、エチレンおよび1以上の共重合性コモノマーを重合化された形態で含み、化学的または物理的な特性において異なる2またはそれ以上の重合モノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック化された共重合体)によって特徴付けられ、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。このブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画した場合に40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、この画分が、同じ温度の間に溶離する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも高いコモノマーモル含量、好ましくは少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも10、15または25パーセント高いコモノマーモル含量を有するという点で特徴づけられる。ここで、この比較対象となるランダムエチレン共重合体は、同じコモノマー(単数または複数)(好ましくは、これは同じコモノマー(単数または複数)である)およびメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)をそのブロック化された共重合体のものから10パーセント以内に含む。好ましくは、この比較対象となる共重合体のMw/Mnはまた、ブロック化された共重合体のMw/Mnから10パーセント以内であるか、そして/またはこの比較対象となる共重合体は、ブロック化された共重合体の総コモノマー含量から10パーセント以内の総コモノマー含量を有する。
【0067】
好ましくは、上記の共重合体は、エチレンおよび少なくとも1つのα−オレフィンの共重合体であり、特に、それらの共重合体は、約0.855〜約0.935g/cm3の全体ポリマー密度を有し、そしてより詳細には、約1モルパーセントを超えるコモノマーを有するポリマーについては、このブロック化された共重合体は、40〜130℃間に溶離するTREF画分のコモノマー含量を、量(−0.1356)T+13.89以上、より好ましくは量(−0.1356)T+14.93以上、そして最も好ましくは、量(−0.2013)T+21.07以上有し、ここでTは、℃で測定した、比較されているTREF画分のピークATREF溶離温度の数値である。
【0068】
好ましくは、エチレンおよび少なくとも1つのα−オレフィンの上記の共重合体、特に、0.855〜約0.935g/cm3というポリマー全体密度を有する共重合体について、そしてさらに詳細には、約1モルパーセントを超えるコモノマーを有するポリマーについて、ブロック化された共重合体は、40℃〜130℃間に溶離するTREF画分のコモノマー含量を、量(−0.2013)T+20.07以上、より好ましくは量(−0.2013)T+21.07以上有し、ここでTは、℃で測定した、比較されているTREF画分のピーク溶離温度の数値である。
【0069】
さらに別の態様では、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、好ましくは重合化された形態でエチレンおよび1以上の共重合性コモノマーを含み、化学的または物理的な特性が異なる2以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック化された共重合体)によって特徴付けられ、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。このブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画した場合に40℃〜130℃間に溶離する分子画分を有し、少なくとも約6モルパーセントのコモノマー含量を有するあらゆる画分が約100℃より大きい融点を有するという点で特徴付けられる。約3モルパーセント〜約6モルパーセントのコモノマー含量を有する画分については、あらゆる画分が約110℃以上というDSC融点を有する。より好ましくは、このポリマー画分は、少なくとも1モルパーセントのコモノマーを有し、式:
Tm≧(−5.5926)(画分中のコモノマーのモルパーセント)+135.90
に相当するDSC融点を有する。
【0070】
さらに別の態様では、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、好ましくは、重合化された形態でエチレンおよび1以上の共重合性コモノマーを含み、化学的または物理的な特性が異なる2以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック化された共重合体)によって特徴付けられ、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。このブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画した場合に40℃〜130℃間に溶離する分子画分を有し、約76℃以上のATREF溶離温度を有するあらゆる画分が、式:
融解熱(J/gm)≦(3.1718)(ATREF溶離温度(℃))−136.58
に相当する、DSCによって測定された融解エンタルピー(融解熱)を有するという点で、特徴付けられる。
【0071】
本発明のブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画された場合に40℃〜130℃間に溶離する分子画分を有し、40℃と約76℃未満との間のATREF溶離温度を有するあらゆる画分が、式:
融解熱(J/gm)≦(1.1312)(ATREF溶離温度(℃))+22.97
に相当する、DSCによって測定された融解エンタルピー(融解熱)を有するという点で特徴付けられる。
【0072】
赤外線検出器によるATREFピークのコモノマー組成測定
TREFピークのコモノマー組成は、Polymer Char,Valencia,Spain(http://www.polymerchar.com/)から入手可能なIR4赤外検出器を用いて測定され得る。
【0073】
検出器の「組成モード」は、測定センサー(CH2)および組成センサー(CH3)を装備しており、これは2800〜3000cm−1の領域における狭帯域固定型赤外線フィルタである。この測定センサーは、ポリマー上のメチレン(CH2)カーボン(これは、溶液中のポリマー濃度に直接関係する)を検出するが、組成センサーは、ポリマーのメチル(CH3)基を検出する。組成シグナル(CH3)を測定シグナル(CH2)によって除算した算術比は、溶液中の測定されるポリマーのコモノマー含量の影響を受けやすく、その応答は、公知のエチレンα−オレフィンコポリマー標準を用いて較正される。
【0074】
ATREF装置を用いる場合、検出器によって、TREFプロセスの間に溶離されたポリマーの濃度(CH2)および組成(CH3)シグナルの応答の両方が得られる。ポリマー特異的な較正は、コモノマー含量が分かっている(好ましくはNMRによって測定される)を有するポリマーについてCH3対CH2の面積比を測定することによって作成され得る。ポリマーのATREFピークのコモノマー含量は、個々のCH3およびCH2応答に対して面積比の比較較正を適用すること(すなわち、面積比CH3/CH2 対 コモノマー含量)によって推定され得る。
【0075】
ピーク面積は、適切なベースラインを適用してTREFクロマトグラムからの個々のシグナル応答を積分した後、半値全幅(FWHM)計算を用いて算出することができる。この半値全幅算出は、ATREF赤外検出器からのメチル対メチレンの応答面積比[CH3/CH2]の比に基づき、この最も高い(最高の)ピークはベースラインから特定され、次いでFWHM面積が決定される。ATREFピークを用いて測定される分布については、FWHM面積は、T1とT2との間の曲線下面積として規定され、ここでT1およびT2は、ピーク高さを2で割ること、次にATREF曲線の左部分および右部分を横切る、ベースラインに対して水平な線を引くことによって、ATREFピークの左右に対してポイント測定される。
【0076】
このATREF赤外方法においてポリマーのコモノマー含量を測定するための赤外線分光法の適用は、原理的には、以下の引用文献:Markovich,Ronald P.;Hazlitt,Lonnie G.;Smith,Linley;「Development of gel-permeation chromatography-Fourier transform infrared spectroscopy for characterization of ethylene-based polyolefin copolymers」.Polymeric Materials Science and Engineering(1991),65,98-100;およびDeslauriers,P.J.;Rohlfing,D.C.;Shieh,E.T.;「Quantifying short chain branching microstructures in ethylene-1-olefin copolymers using size exclusion chromatography and Fourier transform infrared spectroscopy(SEC-FTIR)」,Polymer(2002),43,59-170、に記載されるようなGPC/FTIRシステムのものと同様であり、その両方の引用文献とも、その全体が本明細書において参照によって援用される。
【0077】
他の実施形態では、本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体は、ゼロより大きくかつ約1.0までである平均ブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnによって特徴付けられる。この平均ブロックインデックスABIは、5℃の増分で、20℃〜110℃の分取TREFで得られたポリマー画分の各々についてのブロックインデックス(「BI」)の重量平均であり:
ABI=Σ(wiBIi)
ここでBIiは、分取TREFで得られた本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体のi番目の画分についてのブロックインデックスであり、そしてwiは、i番目の画分の重量パーセンテージである。
【0078】
各々のポリマー画分について、BIは、以下の2つの式(その両方とも同じBI値を与える)のうちの1つによって規定され:
BI=(1/TX−1/TXO)/(1/TA−1/TAB)またはBI=−(LnPX−LnPXO)/(LnPA−LnPAB)
ここでTxはi番目の画分についての分取ATREF溶離温度(好ましくはケルビン温度で表される)であり、Pxは、i番目の画分のエチレンモル画分であって、上記のようなNMRまたはIRによって測定され得る。PABは、エチレン/α−オレフィン共重合体全体のエチレンモル分率(前の画分)であり、これもNMRまたはIRによって測定され得る。TAおよびPAは、純粋な「ハードセグメント(hard segments)」(これは共重合体の結晶セグメントをいう)についてのATREF溶離温度およびエチレンモル画分である。一次の近似として、このTAおよびPAの値は、この「ハードセグメント」についての実測値を得ることができない場合、高密度ポリエチレン・ホモポリマーについての値に設定される。本明細書において行われる計算については、TAは372°Kであって、PAは1である。
【0079】
TABは、同じ組成であって、PABというエチレンモル画分を有するランダムコポリマーについてのATREF温度である。TABは、以下の式:
LnPAB=α/TAB+β
から計算されてもよく、
ここでαおよびβは多数の公知のランダムエチレンコポリマーを用いる検量によって決定され得る2つの定数である。αおよびβは、装置間で変化し得ることに注意すべきである。さらに、目的のポリマー組成を用いて、そしてそれらの画分と同様の分子量範囲に関しても、それら自体の検量線を作成する必要がある。わずかな分子量効果がある。この検量線が、類似の分子量範囲から得られる場合、このような効果は、本質的に無視できる。ある実施形態では、ランダムエチレンコポリマーは、以下の関係:
LnP=−237.83/TATREF+0.639
を満たし、
Txoは、同じ組成であって、PXというエチレンモル画分を有するランダムコポリマーについてのATREF温度である。TXOは、LnPX=α/TXO+βから算出されてもよい。逆に、PXOは、同じ組成であって、LnPXO=α/TX+βから算出され得る、TXというATREF温度を有するランダムコポリマーについてのエチレンモル画分である。
【0080】
一旦、各々の分取TREF画分についてブロックインデックス(BI)が得られれば、ポリマー全体についての重量平均ブロックインデックスABIが算出され得る。ある実施形態では、ABIは、ゼロより大きいが、約0.3未満、または約0.1〜約0.3である。他の実施形態では、ABIは、約0.3より大きく約1.0までである。好ましくは、ABIは、約0.4〜約0.7、約0.5〜約0.7、約0.6〜約0.9の範囲であるべきである。ある実施形態では、ABIは、約0.3〜約0.9、約0.3〜約0.8、または約0.3〜約0.7、約0.3〜約0.6、約0.3〜約0.5、または約0.3〜約0.4の範囲である。他の実施形態では、ABIは、約0.4〜約1.0、約0.5〜約1.0、または約0.6〜約1.0、約0.7〜約1.0、約0.8〜約1.0、または約0.9〜約1.0の範囲である。
【0081】
本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体の別の特徴は、この本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体が、分取TREFによって得られ得る少なくとも1つのポリマー画分を含み、この画分は約0.1より大きくかつ約1.0までのブロックインデックス、約1.3より大きい分子量分布MW/Mnを有する。ある実施形態では、このポリマー画分は、約0.6より大きくかつ約1.0まで、約0.7より大きくかつ約1.0まで、約0.8より大きくかつ約1.0まで、または約0.9より大きくかつ約1.0までのブロックインデックスを有する。他の実施形態では、このポリマー画分は、約0.1より大きくかつ約1.0まで、約0.2より大きくかつ約1.0まで、約0.3より大きくかつ約1.0まで、約0.4より大きくかつ約1.0まで、または約0.4より大きくかつ約1.0までのブロックインデックスを有する。さらに他の実施形態では、このポリマー画分は、約0.1より大きくかつ約0.5まで、約0.2より大きくかつ約0.5まで、約0.3より大きくかつ約0.5まで、または約0.4より大きくかつ約0.5までのブロックインデックスを有する。さらに他の実施形態では、このポリマー画分は、約0.2より大きくかつ約0.9まで、約0.3より大きくかつ約0.8まで、約0.4より大きくかつ約0.7まで、または約0.5より大きくかつ約0.6までのブロックインデックスを有する。
【0082】
エチレンおよびα−オレフィンのコポリマーについては、本発明のポリマーは好ましくは、
(1)少なくとも1.3、より好ましくは少なくとも1.5、少なくとも1.7、または少なくとも2.0、そして最も好ましくは少なくとも2.6、5.0という最大値まで、より好ましくは3.5の最大値まで、そして特に2.7という最大値までのPDI;
(2)80J/g以下の融解熱;
(3)少なくとも50重量パーセントのエチレン含量;
(4)−25℃未満、より好ましくは−30℃未満というガラス転移温度Tg、および/または
(5)唯一のTm
を保有する。
【0083】
さらに、本発明のポリマーは、log(G’)が100℃の温度で400kPa以上、好ましくは1.0MPa以上であるような貯蔵弾性率G’を単独で、または本明細書に開示される任意の他の特性と組み合わせて有することができる。さらに、本発明のポリマーは、0〜100℃の範囲で温度の関数として比較的平坦な貯蔵弾性率を保有し(図6に図示される)、これは、ブロックコポリマーの特徴であるが、オレフィンコポリマー、特に、エチレンおよび1またはそれ以上のC3−8脂肪族α−オレフィンのコポリマーについては今まで知られていない。((この文脈での「比較的平坦な」という用語は、50と100℃の間、好ましくは0℃と100℃の間でのlogG’(パスカル)の減少が、1ケタ未満であることを意味する)。)。
【0084】
本発明の共重合体は、少なくとも90℃の温度で1mmという熱機械分析針入深度、および3kpsi(20MPa)〜13kpsi(90MPa)という曲げ弾性率によってさらに特徴付けられ得る。あるいは、本発明の共重合体は、少なくとも104℃の温度で1mmという熱機械分析針入深度、そして少なくとも3kpsi(20MPa)という曲げ弾性率を有し得る。それらは、90mm3未満という耐摩耗性(または容積減少)を有することで特徴づけられ得る。図7は、他の公知のポリマーと比較した場合の、本発明のポリマーについてのTMA(1mm)対屈曲弾性率を示す。本発明のポリマーは有意に、他のポリマーよりもずっとよい可撓性−耐熱性のバランスを有する。
【0085】
さらに、エチレン/α−オレフィン共重合体は、0.01〜2000g/10分、好ましくは0.01〜1000g/10分、さらに好ましくは0.01〜500g/10分、そして特に0.01〜100g/10分というメルトインデックスI2を有し得る。特定の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、0.01〜10g/10分、0.5〜50g/10分、1〜30g/10分、1〜6g/10分または0.3〜10g/10分というメルトインデックスI2を有する。特定の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン・ポリマーのメルトインデックスは、1g/10分、3g/10分または5g/10分である。
【0086】
このポリマーは、1,000g/モル〜5,000,000g/モル、好ましくは1,000g/モル〜1,000,000g/モル、より好ましくは10,000g/モル〜500,000g/モル、そして特に10,000g/モル〜300,000g/モルの分子量MWを有し得る。本発明のポリマーの密度は、0.80〜0.99g/cm3であり得、そして好ましくは、エチレン含有ポリマーについては0.85g/cm3〜0.97g/cm3であり得る。特定の実施形態では、このエチレン/α−オレフィンポリマーの密度は、0.860〜0.925g/cm3または0.867g/cm3〜0.910g/cm3におよぶ。
【0087】
このポリマーを作製するプロセスは、以下の特許出願に開示されている:2004年3月17日出願の米国仮出願第60/553,906号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662,937号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662,939号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/5662938号;2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008916号;2005年3月17日出願のPCT出願第2005/008915号;および2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008917号;これらの全てはその全体が本明細書において参照によって援用される。例えば、1つのこうした方法は、エチレンおよび場合によっては1つまたはそれ以上のエチレン以外の付加重合可能なモノマーを付加重合条件下で触媒組成物と接触させることを含み:
【0088】
この触媒組成物は、
(A)高いコモノマー組み込みインデックスを有する第一のオレフィン重合触媒、
(B)触媒(A)のコモノマー組み込みインデックスの90パーセント未満、好ましくは50パーセント未満、最も好ましくは5パーセント未満のコモノマー組み込みインデックスを有する第二のオレフィン重合触媒、および
(C)可逆的連鎖移動剤(chain shuttling agent)
を併せることによって得られる混合物または反応生成物を含有する。
【0089】
代表的な触媒および可逆的連鎖移動剤は以下のとおりである。
触媒(A1)は、WO03/40195、2003US0204017、USSN10/429,024(2003年5月2日出願)、およびWO04/24740の教示に従って調製した、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−イソプロピルフェニル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【化1】
【0090】
触媒(A2)は、WO03/40195、2003US0204017、USSN10/429,024(2003年5月2日出願)、およびWO04/24740の教示に従って調製した、[N−2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−メチルフェニル)(1,2−フェニレン−(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【化2】
【0091】
触媒(A3)は、ビス[N,N’’’−(2,4,6−トリ(メチルフェニル)アミド)エチレンジアミン]ハフニウムジベンジルである。
【化3】
【0092】
触媒(A4)は、US−A−2004/0010103の教示に実質的に従って調製された、ビス((2−オキソイル−3−(ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル)−5−(メチル)フェニル)−2−フェノキシメチル)シクロヘキサン−1,2−ジイルジルコニウム(IV)ジベンジルである。
【化4】
【0093】
触媒(B1)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジル
【化5】
である。
【0094】
触媒(B2)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(2−メチルシクロヘキシル)−イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジル
【化6】
である。
【0095】
触媒(C1)は、米国特許第6,268,444号の教示に実質的に従って調製された、(t−ブチルアミド)ジメチル(3−N−ピロリル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウムジメチル
【化7】
である。
【0096】
触媒(C2)は、US−A−2003/004286の教示に実質的に従って調製された、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウムジメチル
【化8】
である。
【0097】
触媒(C3)は、US−A−2003/004286の教示に実質的に従って調製された、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,8a−η−s−インダセン−1−イル)シランチタニウムジメチル
【化9】
である。
【0098】
触媒(D1)は、Sigma−Aldrichから入手可能なビス(ジメチルジシロキサン)(インデン−1−イル)塩化ジルコニウム
【化10】
である。
【0099】
可逆的移動剤(shuttling agent)。使用される可逆的移動剤としては、ジエチル亜鉛、ジ(i−ブチル)亜鉛、ジ(n−ヘキシル)亜鉛、トリエチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリエチルガリウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)、n−オクチルアルミニウムジ(ピリジン−2−メトキシド)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(n−ペンチル)アミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド、n−オクチルアルミニウムジ(エチル(1−ナフチル)アミド)、エチルアルミニウムビス(t−ブチルジメチルシロキシド)、エチルアルミニウム(ジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、エチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)が挙げられる。
【0100】
好ましくは、前述のプロセスは、相互に交換できない複数の触媒を用いる、ブロックコポリマー、特にマルチブロックコポリマー、好ましくは2以上のモノマーの線状マルチブロックコポリマー、さらに詳細にはエチレンおよびC3−20オレフィンまたはシクロオレフィンの線状マルチブロックコポリマー、そして最も詳細にはエチレンおよびC4−20α−オレフィンの線状マルチブロックコポリマーを形成するための連続溶液プロセスの形態をとる。すなわち、これらの触媒は化学的に別個である。連続的な溶液重合条件のもとで、このプロセスは理想的には、高いモノマー変換でのモノマーの混合物の重合に適している。これらの重合条件のもとで、可逆的連鎖移動剤から触媒への可逆的移動(shuttling)は、鎖成長に比較して有先され、そしてマルチブロックコポリマー、詳細には線状マルチブロックコポリマーが高い効率で形成される。
【0101】
本発明の共重合体は、逐次的モノマー付加、流動触媒、アニオンリビング重合技術またはカチオンリビング重合技術により調製された、従来のランダムコポリマー、ポリマーの物理的混合物、およびブロックコポリマーとは区別することができる。詳細には、同等の結晶性または弾性率で同じモノマーおよびモノマー含量のランダムコポリマーと比較して、本発明の共重合体は、融点で測定した場合にはより優れた(より高い)耐熱性を、動的機械分析によって判定した場合にはより高いTMA針入温度、より高い高温引張強度、および/またはより高い高温ねじり貯蔵弾性率(torsion storage modulus)を有する。同じモノマーおよびモノマー含量を含有するランダムコポリマーと比較して、本発明の共重合体は、より低い圧縮永久ひずみ(特に、高温で)、より低い応力緩和、より高い耐クリープ性、より高い引裂強度、より高い耐ブロッキング性、より高い結晶化(固化)温度に起因する迅速な硬化、より高い回復(特に高温で)、より良好な耐摩耗性、より高い収縮力、ならびにより良好な油および充填剤の受け入れを有する。
【0102】
本発明の共重合体はまた、固有の結晶化および分枝分布関係を示す。すなわち、本発明の共重合体は、特に、同じモノマーおよびモノマーレベルを含むランダムコポリマーまたは等価の総合密度でのポリマーの物理的ブレンド、例えば、高密度ポリマーと低密度コポリマーとのブレンドと比較して、CRYSTAFおよびDSCを用いて測定した融解熱の関数として最高のピーク温度の間に比較的大きな差を有する。本発明の共重合体のこの固有の特徴は、ポリマーの主鎖内のブロックにおけるコモノマーの独特の分布に起因すると考えられる。詳細には、本発明の共重合体は、異なるコモノマー含量(ホモポリマーブロックを含む)の交互のブロックを含んでもよい。本発明の共重合体はまた、異なる密度またはコモノマー含量のポリマーブロックの数および/またはブロックサイズの分布を含んでもよく、これは、シュルツ−フローリー(Schultz-Flory)型の分布である。さらに、本発明の共重合体はまた、固有のピーク融点および結晶化温度プロフィールを有し、これは実質的には、ポリマーの密度、弾性率(modulus)および形態とは独立している。好ましい実施形態では、ポリマーの微結晶性秩序は、特徴的な球晶およびラメラを示し、これは1.7未満、または1.5未満、1.3未満までのPDI値においてでさえ、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーとは区別できる。
【0103】
さらに、本発明の共重合体は、ブロッキネス(blockiness)の程度またはレベルに影響する技術を用いて調製され得る。すなわち、コモノマーの量および各々のポリマーブロックまたはセグメントの長さは、触媒および可逆的移動剤の比およびタイプ、ならびに重合の温度および他の重合の変数を制御することによって変更され得る。この現象の驚くべき利点は、ブロッキネスの程度が増大されるほど、得られたポリマーの光学的特性、引裂強度および高温回復の特性が改善されるという発見である。詳細には、曇りは減少するが、透明度、引裂強度および高温回復の特性は、ポリマーにおけるブロックの平均数の増大につれて増大する。所望の連鎖移送能力(高い可逆的移動(shuttling)速度、低レベルの連鎖停止を伴う)を有する可逆的移動剤および触媒の組み合わせを選択することによって、他の形態のポリマー停止は効率的に抑制される。従って、β水素化物脱離が、本発明の実施形態によるエチレン/α−オレフィンコモノマー混合物の重合でほとんど観察されず、そして得られた結晶ブロックは高度に、または実質的に完全に、線状であり、長鎖分枝をほとんどまたはまったく保有しない。
【0104】
高結晶性連鎖末端を有するポリマーは、本発明に実施形態によって選択的に調製され得る。弾性用途では、非結晶性のブロックで終わるポリマーの相対量を減少させることによって、結晶性領域に対する分子間希薄化効果が減少される。この結果は、水素または他の可逆的連鎖停止因子に対して適切な応答を有する可逆的連鎖移動剤および触媒を選択することによって得ることができる。詳細には、高結晶性ポリマーを生成する触媒が、(例えば、より高いコモノマー組み込み、レジオ−エラー(regio-error)、またはアタクチックポリマー形成によって)より少ない結晶性ポリマーセグメントを生成する原因となる触媒よりも、(例えば、水素の使用により)連鎖停止を受けやすい場合には、高結晶性ポリマーセグメントが、そのポリマーの末端部分を優先的に占める。得られる末端基が結晶性であるだけでなく、高結晶性のポリマー形成触媒部位は、停止の際にポリマー形成の再開始にもう一度利用可能である。従って、最初に形成されたポリマーは、別の高結晶性のポリマーセグメントである。従って、得られたマルチブロックコポリマーの両方の末端は優先的に高度に結晶性である。
【0105】
本発明の実施形態で用いられるエチレンα−オレフィン共重合体は好ましくは、少なくとも1つのC3−C20α−オレフィンを有するエチレンの共重合体である。エチレンおよびC3−C20α−オレフィンのコポリマーが特に好ましい。この共重合体はさらに、C4−C18ジオレフィンおよび/またはアルケニルベンゼンを含んでもよい。エチレンとの重合のために有用な適切な不飽和コモノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和モノマー、共役または非共役ジエン、ポリエン、アルケニルベンゼンなどが挙げられる。このようなコモノマーの例としては、C3−C20α−オレフィン、例えば、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどが挙げられる。1−ブテンおよび1−オクテンが特に好ましい。他の適切なモノマーとしては、スチレン、ハロ−またはアルキル−置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、およびナフテン類(naphthenics)(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセンおよびシクロオクテン)が挙げられる。
【0106】
エチレン/α−オレフィン共重合体が好ましいポリマーであるが、他のエチレン/オレフィンポリマーも用いられ得る。本明細書において用いられるオレフィンとは、少なくとも1つの炭素間二重結合を有する不飽和の炭化水素系化合物のファミリーをいう。触媒の選択に依存して、オレフィンは、本発明の実施形態で用いられ得る。好ましくは、適切なオレフィンは、ビニル不飽和を含むC3−C20脂肪族および芳香族化合物、ならびに環状化合物、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、およびノルボルネンであって、これには、限定はしないが、C1−C20ヒドロカルビル基またはシクロヒドロカルビル基で5位および6位で置換されたノルボルネンが挙げられる。このようなオレフィンの混合物、およびこのようなオレフィンとC4−C40ジオレフィン化合物との混合物も挙げられる。
【0107】
オレフィンモノマーの例としては、限定はしないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンおよび1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン、4−ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、エチルイデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、C4−C40ジエンが挙げられ、これには限定はしないが、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、他のC4−C40α−オレフィンなどが挙げられる。特定の実施形態では、α−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンまたはそれらの組み合わせである。ビニル基を含む任意の炭化水素が本発明の実施形態で用いられてもよいが、実際的な問題、例えば、モノマーの有効性、コスト、および得られたポリマーから未反応のモノマーを都合よく除去する能力は、このモノマーの分子量が大きくなり過ぎると、さらに問題となり得る。
【0108】
本明細書に記載される重合プロセスは、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレンなどのモノビニリデン芳香族モノマーを含むオレフィンポリマーの生成に十分適している。詳細には、エチレンおよびスチレンを含む共重合体は、本明細書の教示に従うことによって調製され得る。必要に応じて、エチレン、スチレンおよびC3−C20αオレフィンを含み、必要に応じてC4−C20ジエンを含み、改善された特性を有するコポリマーが調製され得る。
【0109】
適切な非共役ジエンモノマーは、6〜15個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状炭化水素ジエンであり得る。適切な非共役ジエンの例としては、限定はしないが、直鎖非環式ジエン、例えば、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、分枝鎖非環式ジエン(例えば、5−メチル−1,4−ヘキサジエン;3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン;3,7−ジメチル−1,7−オクタジエンならびにジヒドロミリセンおよびジヒドロオシネンの混合異性体)、単環脂環式ジエン(例えば、1,3−シクロペンタジエン;1,4−シクロヘキサジエン;1,5−シクロオクタジエンおよび1,5−シクロドデカジエン)、ならびに多環脂環式縮合および架橋環ジエン、例えば、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ−(2,2,1)−ヘプタ−2,5−ジエン;アルケニルノルボルネン、アルキリデンノルボルネン、シクロアルケニルノルボルネンおよびシクロアルキリデンノルボルネン(例えば、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB);5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネンおよびノルボルナジエン)が挙げられる。EPDMを調製するために代表的に用いられるジエンのうち、特に好ましいジエンは1,4−ヘキサジエン(HD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニリデン−2−ノルボルネン(VNB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)およびジシクロペンタジエン(DCPD)である。特に好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および1,4−ヘキサジエン(HD)である。
【0110】
本発明の実施形態に従って作製され得る所望のポリマーの1クラスは、エチレン、C3−C20α−オレフィン(特にプロピレン)および必要に応じて1またはそれ以上のジエンモノマーのエラストマー系共重合体である。本発明の実施形態で用いるための好ましいα−オレフィンは、式CH2=CHR*で示され、R*は、1〜12個の炭素原子の直鎖状または分枝したアルキル基である。適切なα−オレフィンの例としては、限定はしないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが挙げられる。特に好ましいα−オレフィンは、プロピレンである。プロピレン系ポリマーは一般に、当分野では、EPポリマーまたはEPDMポリマーと呼ばれる。このようなポリマーを調製する際に使用する適切なジエン、特にマルチブロックEPDM型のポリマーとしては、4〜20個の炭素を含む、共役または非共役の、直鎖または分枝鎖の、環状または多環式のジエンが挙げられる。好ましいジエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエンおよび5−ブチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。特に好ましいジエンは5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0111】
ジエン含有ポリマーは交互のセグメントまたはブロックであって、より大量もしくは少量のジエン(なしも含む)およびα−オレフィン(なしも含む)を含むセグメントまたはブロックを含むので、ジエンおよびα−オレフィンの総量は、その後にポリマーの特性を失うことなく軽減され得る。すなわち、ジエンおよびα−オレフィンのモノマーは、ポリマー全体にわたって均一でもまたはランダムに組み込まれるよりもむしろ、ポリマーのブロックの1タイプに優先的に組み込まれるので、それらは、より効率的に利用され、そして引き続きこのポリマーの架橋密度は、さらに良好に制御され得る。このような架橋可能な弾性および硬化した生成物は、より高い引張強度およびより良好な弾性回復率が挙げられる有利な特性を有する。
【0112】
ある実施形態では、種々の量のコモノマーを組み込んでいる2つの触媒で作製された本発明の共重合体は、それによって形成されたブロックの重量比95:5〜5:95を有する。所望の弾性ポリマーは、ポリマーの総重量に基づいて、20〜90パーセントのエチレン含量、0.1〜10パーセントのジエン含量、そして10〜80パーセントのα−オレフィン含量を有する。さらに好ましくは、マルチブロック弾性ポリマーは、ポリマーの総重量に対して、60〜90パーセントのエチレン含量、0.1〜10パーセントのジエン含量、そして10〜40パーセントのα−オレフィン含量を有する。好ましいポリマーは、高分子量のポリマーであって、これは、10,000〜約2,500,000、好ましくは、20,000〜500,000、より好ましくは20,000〜350,000という平均分子量(Mw)、および3.5未満、より好ましくは3.0未満という多分散性、そして1〜250のムーニー粘度(ML(1+4)125℃)を有する高分子量ポリマーである。さらに好ましくは、このようなポリマーは、65〜75パーセントのエチレン含量、0〜6パーセントのジエン含量、および20〜35パーセントのα−オレフィン含量を有する。
【0113】
エチレン/α−オレフィン共重合体は、そのポリマー構造中に少なくとも1つの官能基を組み込むことによって官能化され得る。例示的な官能基としては、例えば、エチレン不飽和単官能性および二官能性のカルボン酸、エチレン不飽和単官能性および二官能性のカルボン酸無水物、その塩およびそのエステルが挙げられ得る。このような官能基は、エチレン/α−オレフィン共重合体にグラフトされてもよいし、またはこれは、エチレンおよび任意のさらなるコモノマーと共重合されて、エチレンの共重合体、官能コモノマーおよび必要に応じて他のコモノマー(単数または複数)を形成してもよい。ポリエチレンに官能基をグラフトする手段は、例えば、それらの特許の開示がその全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許第4,762,890号、同第4,927,888号および同第4,950,541号に記載される。特に有用な官能基の1つは、リンゴ酸無水物である。
【0114】
官能性共重合体に存在する官能基の量は、変化し得る。官能基は代表的には、少なくとも約1.0重量パーセント、好ましくは少なくとも約5重量パーセント、そしてさらに好ましくは少なくとも約7重量パーセントの量でコポリマー型官能化共重合体に存在し得る。この官能基は代表的には、コポリマー型官能化共重合体中に、約40重量パーセント未満、好ましくは約30重量パーセント未満、そして最も好ましくは約25重量パーセント未満の量で存在する。
【0115】
以下の実施例は、本発明のポリマーの合成を説明するために提供するものである。既存のポリマーとの一定の比較を行う。
【0116】
試験方法
以下の実施例では、以下の分析技術が使用される:
サンプル1〜4およびA〜CについてGPC法
160℃に設定された加熱針を装備した自動化液体処理ロボットを用いて、各々の乾燥ポリマーサンプルに対して300ppmのIonolで安定化した十分な1,2,4−トリクロロベンゼンを添加して、30mg/mLという最終濃度を得る。小さいガラス撹拌ロッドを各々のチューブに入れて、そのサンプルを、250rpmで回転する加熱式旋回シェーカーを用いて160℃で2時間加熱する。次いで濃縮されたポリマー溶液を、自動化液体処理ロボットおよび160℃に設定された加熱針を用いて1mg/mlに希釈する。
【0117】
Symyx Rapid GPCシステムを用いて各々のサンプルについての分子量データを決定する。2.0ml/分の流量に設定したGilson 350ポンプを用いて、直列に配置され、160℃に加熱された3つのPlgel10マイクロメーター(μm)MixedB300mm×7.5mmカラムを通して300ppmのIonolで安定化させヘリウムでパージした1,2−ジクロロベンゼンを移動相としてポンプで送る。エバポレーターを250℃に設定し、ネブライザーを165℃に設定し、および窒素流量を60〜80psi(400〜600kPa)N2の圧で1.8SLMに設定したPolymer Labs ELS 1000 Detectorを用いる。ポリマーサンプルを160℃に加熱して、各々のサンプルを、液体処理ロボットおよび加熱ニードルを用いて250μlのループに注入した。2つの切り替えループおよび重複注入を用いるポリマーサンプルの連続的分析を用いる。このサンプルデータを収集して、Symyx Epoch(商標)ソフトウェアを用いて分析する。ピークを手技的に積分するが、報告された分子量情報は、ポリスチレン標準検量線に対して未補正である。
【0118】
標準的なCRYSTAF方法
分枝分布は、PolymerChar,Valencia,Spainから市販されているCRYSTAF 200ユニットを用いて結晶分析分画(crystallization analysis fractionation:CRYSTAF)によって決定する。このサンプルは、160℃で1,2,4トリクロロベンゼン(0.66mg/mL)に1時間溶解させ、そして95℃で45分間安定化させる。サンプリング温度は、0.2℃/分の冷却速度で95〜30℃におよぶ。赤外線検出器を用いて、ポリマー溶液の濃度を測定する。累積溶解濃度は、温度の低下と同時にポリマーが結晶化する間に測定する。累積されたプロフィールの分析導関数は、そのポリマーの短鎖分枝分布を反映する。
【0119】
CRYSTAFのピーク温度および面積は、CRYSTAFソフトウェア(Version 2001.b,PolymerChar,Valencia,Spain)に含まれるピーク分析モジュールによって特定される。CRYSTAFピーク検出ルーチン(finding routine)は、ピーク温度をdW/dT曲線の最大値として特定し、そしてこの微分曲線におけるその特定したピークの片側の正の最大変曲間の面積を特定する。CRYSTAF曲線を算出するために、好ましい処理パラメーターは、70℃の温度限界を有し、ならびにその温度限界より上では0.1の、およびその温度限界より下では0.3の平滑化パラメーターを有するものである。
【0120】
DSC標準法(サンプル1〜4およびA〜Cを除く)
示差走査熱量測定法の結果は、RCS冷却アクセサリおよびオートサンプラーを装備したTAIモデルQ1000 DSCを用いて決定する。50ml/分という窒素パージガス流を用いる。このサンプルを、薄膜にプレスして、約175℃でプレス内で溶融し、次いで室温(25℃)まで空冷する。次いで3〜10mgの物質を6mmの直径のディスクに切断し、正確に秤量し、軽量アルミのパンに入れ(約50mg)、次いで圧着する。サンプルの熱挙動は、以下の温度プロフィールで検討する。このサンプルを180℃まで急速に加熱して、3分間恒温に保持して、以前の熱履歴を除く。次いで、このサンプルを10℃/分の冷却速度で−40℃まで冷却し、−40℃で3分間保持する。次いで、このサンプルを10℃/分の加熱速度で150℃まで加熱する。その冷却および第二の加熱曲線を記録する。
【0121】
DSC融解ピークは、−30℃と融解終点との間にひいた直線のベースラインに関する熱流量(W/g)における最大として測定される。融解熱は直線のベースラインを用いて−30℃と融解終点との間の融解曲線の下の面積として測定される。
【0122】
GPC法(サンプル1〜4およびA〜Cを除く)
このゲル浸透クロマトグラフィーシステムは、Polymer Laboratories Model PL−210またはPolymer Laboratories Model PL−220のいずれかの装置から構成される。このカラムおよびカルーセルの区画は、140℃で操作される。3つのPolymer Laboratories 10ミクロン Mixed−Bカラムを用いる。この溶媒は、1,2,4トリクロロベンゼンである。サンプルは、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する50ミリリットルの溶媒中に0.1グラムというポリマー濃度で調製する。サンプルは、160℃で2時間、軽く撹拌することによって調製する。用いられる注入容積は、100μlであり、そして流量は1.0ml/分である。
【0123】
GPCカラムセットの較正は、個々の分子量の間の少なくとも10の隔たりがある6つの「カクテル(cocktail)」混合物で準備した、580〜8,400,000におよぶ分子量を有する、21個の狭い分子量分布のポリスチレン標準物質で行われる。この標準物質は、Polymer Laboratories(Shropshire,UK)から購入する。ポリスチレン標準物質は、分子量1,000,000以上については、50ミリリットルの溶媒中に0.025グラムで、そして分子量1,000,000未満については50ミリリットル中に0.05グラムで調製する。このポリスチレン標準物質は、穏やかに撹拌しながら80℃で30分間溶解する。狭い標準物質混合物を最初にランし、そして分解を最小にするために最も高い分子量の成分から低いものへと順番にランする。ポリスチレン標準物質ピーク分子量を、以下の式を用いてポリスチレン分子量に変換する(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載のとおり):Mポリエチレン=0.431(Mポリスチレン)。
【0124】
ポリエチレン等量分子量の計算は、Viscotek TriSECソフトウェアのVersion3.0を用いて行う。
【0125】
圧縮永久ひずみ
圧縮永久ひずみは、ASTMD395に従って測定する。このサンプルは、総厚みが12.7mmに達するまで、3.2mm、2.0mmおよび0.25mmという厚みの25.4mmの直径の丸いディスクを重ねることによって調製する。このディスクは、以下の条件下においてホットプレスで成形した12.7cm×12.7cmの圧縮成形プラックから切り出す:190℃で3分間ゼロ圧、続いて190℃で2分間86MPa、続いてプレス内部で冷水を流しながら86MPaで冷却。
【0126】
密度
密度測定のためのサンプルは、ASTMD1928に従って調製する。測定は、ASTMD792、方法Bを用いて1時間内のサンプルプレスで行う。
【0127】
屈曲/割線弾性率/貯蔵弾性率
サンプルは、ASTMD1928を用いて圧縮成形する。曲げ弾性率および2%の割線弾性率を、ASTM D−790に従って測定する。貯蔵弾性率はASTM D5026−01または等価な技術に従って測定する。
【0128】
光学的特性
0.4mmの厚みのフィルムを、ホットプレス(Carver Model#4095−4PR1001R)を用いて圧縮成形する。このペレットは、ポリテトラフルオロエチレンシートの間に置いて、190℃で55psi(380kPa)で3分間、続いて1.3MPaで3分間、次いで2.6MPaで3分間加熱する。次いで、このフィルムを、1.3Mpaで1分間、冷水を流しながらプレス中で冷却する。この圧縮成形フィルムを、光学測定、引張挙動、回復および応力緩和のために用いる。
【0129】
透明度は、ASTMD1746で特定されたようにBYK Gardner Haze−gardを用いて測定する。
【0130】
45°光沢(gloss)は、ASTM D−2457に特定されたように、BYK Gardner Glossmeter Microgloss45°を用いて測定する。
【0131】
内部の曇り(internal haze)は、ASTMD1003手順Aに基づいてBYK Gardner Haze−gardを用いて測定する。鉱油をこのフィルムの表面に塗布して、表面のスクラッチを除去する。
【0132】
機械的特性−引張、ヒステリシス(履歴現象)および引裂
短軸引張における応力−ひずみ挙動を、ASTMD1708微小引張試験片(microtensile specimens)を用いて測定する。サンプルは、21℃で1分あたり500%でInstronを用いて延伸する。引張強度および破断点伸度は、5つの試験片の平均から報告される。
【0133】
100%および300%のヒステリシスは、Instron(商標)装置でASTMD1708微小引張試験片を用いて100%ひずみおよび300%ひずみまでの循環荷重から決定される。サンプルに、21℃で3サイクル、1分あたり267%で荷重を負荷し、除荷する。300%および80℃でのサイクル実験は、環境チャンバを用いて行う。80℃の実験では、サンプルは、試験の前に試験温度で45分間、平衡化させる。21℃、300%ひずみのサイクル実験では、第一の除荷のサイクルからの150%のひずみでの収縮性応力を記録する。全ての実験についての回復パーセントは、荷重がベースラインに戻るひずみを用いて第一の除荷サイクルから算出する。回復パーセントは以下に規定される:
回復%=(εf−εs)/εf×100
ここでεfは、循環荷重に対してとったひずみであり、εsは、1回目の除荷サイクルの間に荷重がベースラインに戻る場合のひずみである。
【0134】
応力緩和は、環境チャンバを装備したInstron(商標)装置を用いて、50%のひずみおよび37℃で12時間、測定する。ゲージの形状は76mm×25mm×0.4mmであった。環境チャンバ中で37℃で45分間の平衡させた後、サンプルを1分あたり333%で50%ひずみまで延伸した。応力は、時間の関数として12時間記録した。12時間後の応力緩和パーセントは式:
応力緩和%=(L0−L12)/L0×100
を用いて算出した。
ここでL0は、0時点での50%ひずみの荷重であり、そしてL12は、12時間後時点の50%ひずみの荷重である。
【0135】
引張ノッチ付引裂実験(tensile notched tear experiments)は、Instron(商標)装置を用いて0.88g/cc以下の密度を有するサンプルで行う。この形状は、76mm×13mm×0.4mmのゲージ部分からなり、このサンプルにはその試験片の長さの半分の位置に2mmの切込みが入っている。そのサンプルが壊れるまで、21℃で1分あたり508mmで延伸させる。この引裂エネルギーは、最大荷重でのひずみまでの応力−伸長曲線下面積として算出する。少なくとも3つの試験片の平均が報告される。
【0136】
TMA
熱機械的分析(Thermal Mechanical Analysis)(針入温度)は、180℃および10MPa成形圧で5分間形成され、次いで風で急速冷却された、30mm直径×3.3mm厚みの圧縮成形ディスクで行う。用いた装置は、Perkin−Elmerから入手可能なブランド、TMA7である。この試験では、1.5mmの半径の先端を有するプローブ(P/N N519−0416)を、1Nの力を用いてサンプルディスクの表面に適用する。その温度を25℃から1分あたり5℃上昇させる。このプローブ針入距離は、温度の関数として測定される。このプローブがサンプルに1mm針入した時、実験が終わる。
【0137】
DMA
動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis)(DMA)は、180℃で10MPaの圧力で5分間、ホットプレス中において成形され、次いで1分あたり90℃でこのプレス中で水冷された圧縮成形ディスクで測定する。試験は、ねじり試験のための二重カンチレバー固定具を装備したARES制御ひずみレオメーター(TA instrument)を用いて行う。
【0138】
1.5mmのプラックをプレスして、32×12mmの寸法のバーに切断する。そのサンプルを10mm(グリップ間隔ΔL)ずつ隔てた固定具の間において両端でクランプして、−100℃〜200℃の逐次的温度段階(1段階あたり5℃)に供する。各々の温度でねじり弾性率G’を、10rad/sの角周波数で測定し、このひずみ振幅は、トルクが十分であること、そして測定値が直線状態のままあることを保証するために0.1パーセント〜4パーセントの間で維持される。
【0139】
10gという最初の静止力を維持して(自動引っ張り方式)、熱膨張が生じる時のサンプル中のゆるみを防ぐ。結果として、グリップ間隔ΔLは、温度とともに、特に、ポリマーサンプルの融点または軟化点より上で、増大する。試験は、最大温度か、または固定具の間の隙間が65mmに達した時に終わる。
【0140】
メルトインデックス
メルトインデックスI2は、ASTM D1238,条件190℃/2.16kgに従って測定する。メルトインデックスI10はまた、ASTM D1238、条件190℃/10kgに従って測定する。
【0141】
ATREF
分析的昇温溶離分画(analytical temperature rising elution fractionation)(ATREF)分析を、その全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許第4,798,081号およびWilde,L.;Ryle,T.R.;Knobeloch,D.C.;Peat,I.R.;Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymer,J.Polym.Sci.,20,441〜455(1982)に記載された方法に従って行う。分析されるべき組成物を、トリクロロベンゼンに溶解して、1分あたり0.1℃の冷却速度で20℃までゆっくり温度を下げることによって、不活性支持体(ステンレス鋼ショット)を含むカラム中で結晶させる。このカラムには、赤外線検出器が装備されている。次いで、1分あたり1.5℃の速度で20から120℃へ溶離溶媒(トリクロロベンゼン)の温度をゆっくり上昇させることによりカラムから結晶化ポリマーサンプルを溶離することによって、ATREFのクロマトグラフィー曲線を作成する。
【0142】
13C NMR分析
サンプルを、10mmのNMRチューブ中で0.4gのサンプルに対してテトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼンの50/50の混合物の約3gを添加することによって調製する。そのサンプルを、このチューブおよびその内容物を150℃に加熱することによって溶解して、均質化する。100.5MHzという13Cの共鳴周波数に相当する、JEOL ECLIPSE(商標)400MHz分光計、またはVarian Unity PLUS(商標)400MHz分光計を用いてデータを収集する。そのデータを、6秒のパルス繰り返し時間遅延により1データ・ファイルについて4000の減衰シグナルを用いて得る。定量的分析のための最小のシグナル対ノイズ比を達成するために、複数のデータファイルを一緒に加える。スペクトルの幅は25,000Hzであり、最小のファイルサイズは32Kのデータ・ポイントである。このサンプルは、10mmの広帯域プローブ中で130℃で分析する。コモノマーの取り込みは、Randallのトライアッド法(Randall,J.C.;JMS-Rev.Macromol.Chem.Phys.,C29, 201-317(1989)、この文献は本明細書に取り込まれる)を用いて決定される。
【0143】
TREFによるポリマー分画
大規模なTREF分画は、160℃で4時間撹拌することによって2リットルの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)中に15〜20gのポリマーを溶解することによって行う。このポリマー溶液は、30−40メッシュ(600〜425μm)球状の、技術的品質のガラスビーズ(Potters Industries,HC30 Box20,Brownwood,TX,76801から入手可能)およびステンレス鋼、0.028”(0.7mm)の直径のカット・ワイア・ショット(Pellets,Inc.63 Industrial Drive,North Tonawanda,NY,14120から入手可能)の60:40(v:v)混合物をパックした3インチ×4フィート(7.6cm×12cm)のスチール・カラム上に15psig(100kPa)窒素によって圧入する。このカラムを、160℃に最初に設定した、熱制御されたオイルジャケットに浸す。このカラムを125℃に弾道的に最初に冷却し、次いで1分あたり0.04℃で20℃までゆっくり冷却して、1時間保持する。温度を1分あたり0.167℃で上昇させながら、新鮮なTCBを1分あたり約65mlで導入する。
【0144】
分取TREFカラムからの約2000mL分の溶離液を、16のステーションの加熱されたフラクションコレクターに収集する。このポリマーを、約50〜100mlのポリマー溶液が残るまで、ロータリーエバポレーターを用いて各々の画分中で濃縮させる。この濃縮溶液を、一晩静置させて、その後に、過剰のメタノールを添加し、濾過して、洗浄する(最終の洗浄を含む約300〜500mlのメタノール)。濾過工程を、5.0μmのポリテトラフルオロエチレンコーティング濾紙(Osmonics Inc.から入手可能、カタログ番号Z50WP04750)を用いて、3位置の真空利用濾過ステーションで行う。濾過された画分を、60℃で真空オーブン中において一晩乾燥させて、さらなる試験の前に化学天秤で秤量する。
【0145】
触媒
「一晩」という用語を用いる場合、約16〜18時間の時間をいい、「室温」とは、20〜25℃の温度をいい、そして「混合アルカン」という用語は、ExxonMobil Chemical Companyから、IsoparE(登録商標)という商品名で利用可能なC6−9脂肪族炭化水素の商業的に得られる混合物を指す。本明細書において化合物の名称がその構造図に従わない場合には、構造図が優先するものとする。全ての金属錯体の合成および全てのスクリーニング実験の準備を、ドライ・ボックス技術を用いて乾燥窒素雰囲気で行った。用いた全ての溶媒は、HPLC等級であって、その使用前に乾燥させた。
【0146】
MMAOとは、Akzo−Noble Corporationから市販されている、修飾メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサンをいう。
触媒(B1)の調製は、以下のとおり行う。
【0147】
a)(1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)メチルイミンの調製
3,5−ジ−t−ブチルサリチルアルデヒド(3.00g)を10mLのイソプロピルアミンに添加する。この溶液は急速に鮮黄色に変わる。周囲温度での3時間の撹拌後、揮発性物質を減圧下で除去して、鮮黄色の結晶性固体を得る(97パーセント収率)。
【0148】
b)1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルの調製
(1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(605mg、2.2ミリモル)を5mLのトルエンに含有する溶液を、50mLのトルエンにZr(CH2Ph)4(500mg、1.1mmol)を含む溶液にゆっくり添加する。得られた濃黄色の溶液を30分間撹拌する。溶媒を減圧下で除去して、所望の生成物を赤褐色固体として得る。
触媒(B2)の調製は以下のとおり行う。
【0149】
a)(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミンの調製
2−メチルシクロヘキシルアミン(8.44mL、64.0mmol)をメタノール(90mL)に溶解して、ジ−t−ブチルサリチルアルデヒド(10.00g、42.67mmol)を添加する。その反応混合物を3時間撹拌し、次いで−25℃で12時間冷却する。得られた黄色固体沈殿物を濾過によって収集して、冷メタノール(2×15mL)で洗浄し、次いで、減圧下で乾燥させる。収量は、11.17gの黄色固体である。1H NMRは、異性体の混合物として所望の生成物と一致する。
【0150】
b)ビス−(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミノ)ジルコニウムジベンジルの調製
(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(7.63g、23.2mmol)を含有する200mLのトルエンの溶液を、600mLのトルエンに含有されるZr(CH2Ph)4(5.28g、11.6mmol)の溶液にゆっくり添加する。得られた濃黄色の溶液を25℃で1時間撹拌する。その溶液を680mLのトルエンでさらに希釈して、0.00783Mの濃度を有する溶液を得る。
【0151】
触媒1.実質的に米国特許第5,919,9883号、実施例2に開示されるように、長鎖トリアルキルアミン(Armeen(商標)M2HT、Akzo−Nobel,Incから入手可能)、HClおよびLi[B(C6F5)4]の反応によって調製される、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(本明細書において以降ではホウ酸アーメーニウム(armeenium))のメチルジ(C14−18アルキル)アンモニウム塩の混合物。
【0152】
触媒2.米国特許第6,395,671号、実施例16に従って調製された、ビス(トリス(ペンタフルオロフェニル)−アルマネ)−2−ウンデシルイミダゾリドの混合C14−18アルキルジメチルアンモニウム塩。
【0153】
可逆的移動剤。使用される可逆的移動剤としては、ジエチル亜鉛(DEZ、SA1)、ジ(i−ブチル)亜鉛(SA2)、ジ(n−ヘキシル)亜鉛(SA3)、トリエチルアルミニウム(TEA,SA4)、トリオクチルアルミニウム(SA5)、トリエチルガリウム(SA6)、i−ブチルアルミニウム ビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)(SA7)、i−ブチルアルミニウム ビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)(SA8)、n−オクチルアルミニウム ジ(ピリジン−2−メトキシド)(SA9)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム(SA10)、i−ブチルアルミニウム ビス(ジ(n−ペンチル)アミド)(SA11)、n−オクチルアルミニウム ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)(SA12)、n−オクチルアルミニウム ジ(エチル(1−ナフチル)アミド)(SA13)、エチルアルミニウム ビス(t−ブチルジメチルシロキシド)(SA14)、エチルアルミニウム ジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)(SA15)、エチルアルミニウム ビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA16)、n−オクチルアルミニウム ビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA17)、n−オクチルアルミニウム ビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド(SA18)、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)(SA19)およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)(SA20)が挙げられる。
【0154】
実施例1−4、比較例A−C
一般的なハイスループット並列重合条件
重合を、Symyx technologies,Inc.から入手可能なハイスループットの並列式重合反応装置(parallel polymerization reactor)(PPR)を用いて行い、そして米国特許の6,248,540号、同第6,030,917号、同第6,362,309号、同第6,306,658号および同第6,316,663号に実質的に従って操作する。エチレン共重合を、用いた総触媒に基づいて共触媒1の1.2当量(MMAOが存在する場合1.1当量)を用いて、必要時にエチレンを用いて130℃かつ200psi(1.4MPa)で行う。一連の重合を、予め秤量したガラスチューブが取り付けられている48の個々の反応セルを6×8配列で備えている並列式耐圧反応装置(PPR)で行う。各々の反応装置セル中の作業容積は6000μLである。各々のセルは、個々の撹拌パドルによって撹拌されながら、温度および圧力が制御される。モノマーのガスおよびクエンチガスをPPRユニットに直接配管して、自動バルブで制御する。液体試薬を、シリンジによって各々の反応装置セルにロボット制御により添加して、そのリザーバー溶媒は混合アルカンである。添加の順序は、混合アルカン溶媒(4ml)、エチレン、1−オクテンコモノマー(1ml)、共触媒1または共触媒1/MMAO混合物、可逆的移動剤、および触媒または触媒混合物である。共触媒1およびMMAOの混合物、または2つの触媒の混合物を用いる場合、それらの試薬を、反応装置への添加の直前に小さいバイアル中で事前に混合する。実験で試薬が省略される場合、その他は上記の順序の添加が維持される。重合を、所定のエチレン消費に到達するまで、約1〜2分間行う。COでのクエンチング後、その反応装置を冷却して、ガラスチューブを取り外す。そのチューブを遠心分離/真空乾燥ユニットに移して、60℃で12時間乾燥する。乾燥されたポリマーを含むチューブを秤量して、その重量と風袋重量との間の差違で、ポリマーの正味の収量が得られる。結果は表1に含まれる。表1で、そして本出願のどこかでは、比較化合物は、星印(*)によって示される。
【0155】
実施例1〜4は、極めて狭いMWDの形成によって証明される、本発明による線状ブロックコポリマー、特にDEZが存在する場合は単頂性のコポリマー、そしてDEZの非存在下における二頂性の広い分子量分布の生成物(別々に生成されたポリマーの混合物)の合成を実証する。触媒(A1)が触媒(B1)よりもオクテンを多く組み込むことが公知であるという事実に起因して、本発明の得られたコポリマーの種々のブロックまたはセグメントは、分枝または密度に基づいて識別可能である。
【表1】
【0156】
本発明に従って生成されるポリマーは、可逆的移動剤の非存在下で調製したポリマーよりも比較的狭い多分散性(Mw/Mn)および比較的大きいブロック−コポリマー含量(三量体、四量体またはそれ以上)を有することが示され得る。
【0157】
さらなる特性付けのために、図を参照して、表1のポリマーについてのデータを判定する。さらに詳細にはDSCおよびATREFの結果によって、以下が示される:
【0158】
実施例1のポリマーについてのDSC曲線は、158.1J/gという融解熱で115.7℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、34.5℃で最高のピークを示し、52.9パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は81.2℃である。
【0159】
実施例2のポリマーのDSC曲線は、214.0J/gの融解熱で109.7℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、46.2℃で最高のピークを示し、57.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は63.5℃である。
【0160】
実施例3のポリマーのDSC曲線は、160.1J/gの融解熱で120.7℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、66.1℃で最高のピークを示し、71.8パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は54.6℃である。
【0161】
実施例4のポリマーのDSC曲線は、170.7J/gの融解熱で104.5℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃で最高のピークを示し、18.2パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は74.5℃である。
【0162】
比較例AのDSC曲線は、86.7J/gの融解熱で90.0℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、48.5℃で最高のピークを示し、29.4パーセントのピーク面積である。これらの値の両方とも、密度が低い樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間の相違は41.8℃である。
【0163】
比較例BのDSC曲線は、237.0J/gの融解熱で129.8℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、82.4℃で最高のピークを示し、83.7パーセントのピーク面積である。これらの値の両方とも、密度が高い樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間の相違は47.4℃である。
【0164】
比較例CのDSC曲線は、143.0J/gの融解熱で125.3℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、34.7パーセントのピーク面積で81.8℃で最高のピークを、そして52.4℃でより低い結晶ピークを示す。この2つのピークの間の分離は、高結晶性および低結晶性のポリマーの存在と一致する。DSC TmとTcrystafとの間の相違は43.5℃である。
【0165】
実施例5−19、比較例D−F、連続的溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
連続溶液重合は、内部スターラーを装備したコンピュータ制御のオートクレーブ反応装置で行う。精製された混合アルカン溶媒(ExxonMobil Chemical Companyから入手可能なIsopar(商標)E)、エチレン2.70lbs/時間(1.22kg/時間)、1−オクテンおよび水素(用いる場合)を、温度制御のためのジャケットおよび内部熱電対を装備した3.8Lの反応装置に供給する。この反応装置へ供給された溶媒は、マスフローコントローラーによって測定する。変速ダイヤフラムポンプが、溶媒流量および反応装置に対する圧を制御する。ポンプの排出の際に、側流をとって触媒および共触媒1注入ラインのためのフラッシュフローならびに反応装置撹拌を設ける。これらのフローは、Micro−Motionマスフローメーターによって測定して、制御バルブによって、またはニードルバルブの手動調節によって制御する。得られた溶媒を、1−オクテン、エチレンおよび水素(用いる場合)と合わせて、反応装置に供給する。マスフローコントローラーを用いて、必要な場合反応装置に水素を供給する。溶媒/モノマー溶液の温度は、反応装置に入れる前、熱交換器の使用によって制御する。この流れを反応装置の底に入れる。触媒成分溶液を、ポンプおよびマスフロー計を用いて測定して、触媒フラッシュ溶媒とあわせ、そして反応装置の底に入れる。その反応装置を激しく撹拌しながら500psig(3.45MPa)で液体を満たして反応させる。生成物を反応装置の頂部の出口ラインから取り出す。反応装置からの全ての出口ラインは蒸気トレースおよび絶縁が施されている。重合を、任意の安定化剤または他の添加物とともに出口ラインに少量の水を添加すること、および静的ミキサーを通じた混合物の通過によって、停止させる。次いで、この生成物の流れを、揮発分除去(devolatilization)の前に熱交換器を通過させることによって加熱する。ポリマー生成物は、揮発分除去押出機および水冷ペレタイザーを用いる押出によって回収する。プロセスの詳細および結果は表2に含まれる。選択されたポリマーの特性を表3に提供する。
【表2】
【表3】
【0166】
得られたポリマーは、前の実施例と同様に、DSCおよびATREFによって試験される。
結果は以下のとおりである:
【0167】
実施例5のポリマーのDSC曲線は、60.0J/gの融解熱で119.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、47.6℃で最高のピークを示し、59.5パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは72.0℃である。
【0168】
実施例6のポリマーのDSC曲線は、60.4J/gの融解熱で115.2℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、44.2℃で最高のピークを示し、62.7パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは71.0℃である。
【0169】
実施例7のポリマーのDSC曲線は、69.1J/gの融解熱で121.3℃の融点を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、49.2℃で最高のピークを示し、29.4パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは72.1℃である。
【0170】
実施例8のポリマーのDSC曲線は、67.9J/gの融解熱で123.5℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、80.1℃で最高のピークを示し、12.7パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは43.4℃である。
【0171】
実施例9のポリマーのDSC曲線は、73.5J/gの融解熱で124.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、80.8℃で最高のピークを示し、16.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは43.8℃である。
【0172】
実施例10のポリマーのDSC曲線は、60.7J/gの融解熱で115.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、40.9℃で最高のピークを示し、52.4パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは74.7℃である。
【0173】
実施例11のポリマーについてのDSC曲線は、70.4J/gの融解熱で113.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、25.2パーセントのピーク面積で39.6℃で最高のピークを示す。DSC TmとTcrystafとの間のΔは74.1℃である。
【0174】
実施例12のポリマーについてのDSC曲線は、48.9J/gという融解熱で113.2℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃以上のピークを示さない。(従って、さらなる計算の目的のためのTcystafは30℃に設定する)。DSC TmとTcrystafとの間のΔは83.2℃である。
【0175】
実施例13のポリマーのDSC曲線は、49.4J/gの融解熱で114.4℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、33.8℃で最高のピークを示し、7.7パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは84.4℃である。
【0176】
実施例14のポリマーのDSC曲線は、127.9J/gの融解熱で120.8℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、72.9℃で最高のピークを示し、92.2パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは47.9℃である。
【0177】
実施例15のポリマーのDSC曲線は、36.2J/gの融解熱で114.3℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、32.3℃で最高のピークを示し、9.8パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは82.0℃である。
【0178】
実施例16のポリマーのDSC曲線は、44.9J/gの融解熱で116.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、48.0℃で最高のピークを示し、65.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは68.6℃である。
【0179】
実施例17のポリマーについてのDSC曲線は、47.0J/gの融解熱で116.0℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、56.8パーセントのピーク面積で43.1℃で最高のピークを示す。DSC TmとTcrystafとの間のΔは72.9℃である。
【0180】
実施例18のポリマーについてのDSC曲線は、141.8J/gという融解熱で120.5℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、70.0℃で最高のピークを示し、94.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは50.5℃である。
【0181】
実施例19のポリマーのDSC曲線は、174.8J/gの融解熱で124.8℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、79.9℃で最高のピークを示し、87.9パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは45.0℃である。
【0182】
比較例DのポリマーについてのDSC曲線は、31.6J/gの融解熱で37.3℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃以上のピークを示さない。これらの値の両方とも、低密度である樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間のΔは7.3℃である。
【0183】
比較例EのポリマーについてのDSC曲線は、179.3J/gの融解熱で124.0℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、79.3℃で最高のピークを示し、94.6パーセントのピーク面積である。これらの値の両方とも、高密度である樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間のΔは44.6℃である。
【0184】
比較例FのポリマーについてのDSC曲線は、90.4J/gの融解熱で124.8℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、77.6℃で最高のピークを示し、19.5パーセントのピーク面積である。2つのピークの間の隔たりは、高結晶性ポリマーと低結晶性ポリマーの両方の存在と一致する。DSC TmとTcrystafとの間のΔは47.2℃である。
【0185】
物理的特性試験
ポリマーサンプルは、物理的特性、例えば、TMA温度試験によって証明されるような高温耐性の特性、ペレットブロックキング強度、高温回復、高温圧縮永久ひずみ、および貯蔵弾性率G’(25℃)/G’(100℃)について評価される。いくつかの市販のポリマーが、試験に含まれる:比較例Gは実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例Hは、弾性の実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)EG8100、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例Iは、実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)PL1840、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例Jは、水素化スチレン/ブタジエン/スチレントリブロックコポリマー(KRATON(商標)G1652,KRATON Polymersから入手可能)であり、比較例Kは、熱可塑性加硫物(TPV,架橋されたエラストマーをその中に分散して含むポリオレフィンブレンド)である。結果は表4に示す。
【0186】
【表4】
【0187】
表4では、比較例F(触媒A1およびB1を用いる同時の重合から生じる2つのポリマーの物理的な混合物である)は、約70℃という1mm針入温度であるが、実施例5〜9は、100℃以上の1mm針入温度を有する。さらに実施例10〜19は全てが、85℃より大きい1mm針入温度を有し、ほとんどが、90℃を超えるかまたはさらには100℃より大きい1mmのTMA温度を有する。これによって、新規なポリマーは、物理的な混合物に比較して、より高い温度でより良好な寸法安定性を有することが示される。比較例J(市販のSEBS)は、約107℃という良好な1mmのTMA温度を有し、ただし、これは約100パーセントという極めて乏しい(高温70℃)圧縮永久ひずみを有し、そしてまた高温(80℃)300パーセントひずみ回復の間に回復できない(サンプルが壊れた)。従って、例示されたポリマーは、いくつかの市販の高性能の熱可塑性エラストマーにおいてでさえ得ることができない特性の固有の組み合わせを有する。
【0188】
同様に、表4は、本発明のポリマーについて、6以下という低い(良好な)貯蔵弾性率G’(25℃)/G’(100℃)を示すが、物理的混合物(比較例F)は、9という貯蔵弾性率比を有し、そして同様の密度のランダムなエチレン/オクテンコポリマー(比較例G)は、1桁大きい貯蔵弾性率比を有する(89)。ポリマーの貯蔵弾性率比はできるだけ1に近いことが所望される。このようなポリマーは比較的温度によって影響されないし、このようなポリマーから作製される二次加工品は、広範な温度範囲にわたって有用に使用され得る。低い貯蔵弾性率比および温度独立性のこの特徴は、弾性用途において、例えば、感圧粘着剤配合物において、特に有用である。
【0189】
表4のデータによってまた、本発明のポリマーが改善されたペレットブロッキング強度を保有することが実証される。詳細には、実施例5は、0MPaというペレットブロッキング強度を有し、このことは、このポリマーが、かなりのブロッキングを示す比較例Fおよび比較例Gに比較して、試験された条件下で自由流動することを意味する。ブロッキング強度は、重要である。なぜなら、大きいブロッキング強度を有するポリマーの貨物輸送は、貯蔵または出荷の際に製品同上のくっつきまたは粘着を生じ、取り扱いの特性が劣る。
【0190】
本発明のポリマーの高温(70℃)圧縮永久ひずみは一般に良好であって、このことは一般に約80パーセント未満、好ましくは約70%未満、そして特に約60パーセント未満を意味する。対照的に、比較例F、G、HおよびJは全てが、100パーセントという70℃圧縮永久ひずみを有する(最大可能値、回復がないことを示す)。ガスケット、窓枠、O−リングなどのような用途には、良好な高温圧縮永久ひずみ(低い数値)が特に必要である。
【表5】
【0191】
表5は、新規なポリマーについての機械的特性について、そして周囲温度での種々の比較ポリマーについての結果を示す。本発明のポリマーは、ISO4649に従って試験した場合、極めて良好な耐磨耗性を有することが示され得、これは一般に、約90mm3未満、好ましくは約80mm3未満、そして特に、約50mm3未満という容積減少を示す。この試験では、数が大きいほど、大きい容積減少を示し、そして結果として低い耐磨耗性を示す。
【0192】
本発明のポリマーの引張ノッチ付引裂強度によって測定した引裂強度は一般に、表5に示されるように、1000mJ以上である。本発明のポリマーの引裂強度は、3000mJ程度の高さ、または5000mJ程度の高さであってさえよい。比較ポリマーは一般に、750mJ以下の引裂強度を有する。
【0193】
表5によってまた、本発明のポリマーが、いくつかの比較例よりも150パーセントひずみでより良好な収縮応力を有する(より高い収縮応力値によって実証される)ことが示される。比較例F、GおよびHは、400kPa以下という150パーセントひずみでの収縮応力値を有するが、本発明のポリマーは、500kPa(実施例11)から約1100kPa(実施例17)程度の高さという150パーセントひずみでの収縮応力値を有する。150パーセント収縮応力値よりも高い値を有するポリマーは、弾性を有する用途、例えば、弾性の繊維および織物、特に不織物にかなり有用である。他の用途としては、オムツ(diaper)、衛生および医療用衣類ウエストバンドの用途、例えば、タブおよび弾性バンドが挙げられる。
【0194】
表5によってまた、応力緩和(50パーセントひずみ)がまた、例えば、比較例Gに対して比較した場合、本発明のポリマーについて改善される(少ない)ことが示される。応力緩和が低いとは、ポリマーがその力を、長期間にわたって体温における弾性特性の保持が所望されるオムツおよび他の衣類のような用途において、より良好に保持しているということを意味する。
【0195】
光学的試験
【表6】
表6に報告される光学的特性は、実質的に配向性を欠く圧縮成形フィルムに基づく。ポリマーの光学的な特性は、重合において使用される可逆的連鎖移動剤の量の変動から生じる、結晶化サイズにおけるバリエーションに起因して広範な範囲で変化し得る。
【0196】
マルチブロックコポリマーの抽出
実施例5、7のポリマーおよび比較例Eのポリマーの抽出研究を行う。この実験では、ポリマーサンプルは、ガラス円筒濾紙(glass fritted extraction thimble)に秤量して、Kumagawa型の抽出機(extractor)に取り付ける。サンプルを含む抽出機を窒素でパージして、500mLの丸底フラスコに350mLのジエチルエーテルを充填する。次いでフラスコをこの抽出機に取付ける。エーテルを撹拌しながら加熱する。エーテルが円筒濾紙に凝縮し始める時点を書き留めて、抽出を窒素下で24時間進行させる。この時点で、加熱を停止して、溶液を冷却させる。抽出機中に残っている全てのエーテルをフラスコに戻す。フラスコ中のエーテルを周囲温度で減圧下でエバポレートして、得られた固体を窒素でパージ乾燥(purged dry)させる。残渣をヘキサンの連続的な洗浄を用いて秤量ボトルに移す。次いで、合わせたヘキサン洗浄液を別の窒素パージしながらエバポレートさせて、残渣を40℃において減圧下で一晩乾燥させる。抽出機中に残留するエーテルを窒素でパージ乾燥させる。
【0197】
次いで350mLのヘキサンを充填した第二の清浄な丸底フラスコを、この抽出機に接続する。円筒濾紙中でヘキサンの凝縮に最初に気付いた後、ヘキサンを撹拌しながら加熱還流して、還流下で24時間維持する。次いで加熱を停止して、フラスコを冷却させる。抽出機中に残っているヘキサンをフラスコに戻す。そのヘキサンを周囲温度で減圧下でのエバポレーションによって除去して、フラスコ中に残っている残渣を連続的なヘキサン洗浄を用いて秤量ボトルに移す。フラスコ中のヘキサンを窒素パージによってエバポレートして、その残渣を40℃で一晩減圧下で乾燥させる。
【0198】
抽出後に円筒濾紙中に残っているポリマーサンプルを、円筒濾紙から秤量ボトルに移して、40℃で一晩減圧乾燥する。結果は表7に含まれる。
【表7】
追加のポリマー実施例19A〜J、連続溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
実施例19A−Iについて
【0199】
コンピュータ制御完全混合反応装置(computer controlled well-mixed reactor)において連続溶液重合を行う。精製混合アルカン溶媒(ExxonMobil Chemical Companyから購入できるIsopar(商標))、エチレン、1−オクテンおよび(使用する場合には)水素を併せ、27ガロン反応装置に供給する。反応装置への供給量は、マスフローコントローラーによって測定する。供給流の温度は、その反応装置に入る前にグリコール冷却式熱交換器の使用により制御する。触媒成分溶液は、ポンプおよびマスフローメーターを使用して測定する。液体を満たしたその反応装置を約550psigの圧でランする。その反応装置を出次第、そのポリマー溶液に水および添加剤を注入する。その水が、触媒を加水分解し、重合反応を停止させる。その後、二段階脱揮の準備で、後反応器の溶液を加熱する。溶媒および未反応モノマーは、その脱揮プロセス中に除去される。ポリマー溶融物をポンプで水中ペレット切断用のダイに送る。
実施例19Jについて
【0200】
内蔵型攪拌機を装備したコンピュータ制御オートクレーブ反応装置において連続溶液重合を行う。精製混合アルカン溶媒(ExxonMobil Chemical Companyから購入できるIsopar(商標));2.70ポンド/時(1.22kg/時)でエチレン;1−オクテン;および(使用する場合には)水素を、温度制御用のジャケットおよび内蔵型熱電対を供えた3.8L反応装置に供給する。反応装置への溶媒供給量は、マスフローコントローラーによって測定する。変速薄膜ポンプにより、反応装置への溶媒流量および圧力を制御する。そのポンプの吐き出し時に、側流を使って、触媒および助触媒注入ラインおよび反応装置攪拌機にフラッシュフローをもたらす。これらのフローは、Mico−Motionマスフローメーターによって測定し、また、制御弁によってまたはニードル弁の手動調整によって制御する。残りの溶媒を1−オクテン、エチレンおよび(使用する場合には)水素と併せ、反応装置に供給する。必要に応じて、マスフローコントローラーを使用して反応装置に水素を送達する。溶媒/モノマー溶液の温度は、反応装置に入る前に熱交換器の使用により調節する。この流れが、反応装置の底部に入る。ポンプおよびマスフローメーターを使用して触媒成分溶液を計量し、触媒フラッシュ溶媒と併せ、反応装置の底部に導入する。その液体が充満した反応装置を、激しく攪拌しながら、500psig(3.45MPa)でランする。生成物は、その反応装置の頂部の出口ラインから取り出す。その反応装置のすべての出口ラインは、蒸気トレースおよび絶縁が施されている。任意の安定剤および他の添加剤とともにその出口ラインに沿って少量の水を添加し、その混合物をスタティックミキサーに通すことによって、重合を停止させる。その後、その生成物流を熱交換器に通すことによって加熱した後、脱揮する。脱揮押出機および水冷式ペレット製造機を使用する押出しにより、ポリマー生成物を回収する。
【0201】
プロセスの詳細および結果は、表8に含める。選択したポリマーの特性を表9A〜Bに提供する。
【0202】
表9Bにおいて、本発明の実施例19Fおよび19Gは、500%伸長後、約65〜70%の低い直後残留ひずみを示している。
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
繊維および製品
【0203】
ステープルファイバー、スパンボンド繊維またはメルトブロー繊維(例えば、米国特許第4,340,563号、同第4,663,220号、同第4,668,566号または同第4,322,027号に開示されているシステムを使用)およびゲル紡糸繊維(例えば、米国特許第4,413,110号に開示されているシステム)をはじめとする、様々なホモフィル繊維を本発明のブロック共重合体(本発明において以降は「コポリマー(単数または複数)とも呼ばれる)から製造することができる。ステープルファイバーは、さらに延伸することなく、直接、最終繊維直径に溶融紡糸することができ、またはより大きな直径に溶融紡糸し、その後、従来どおりの繊維延伸法を用いて所望の直径に熱もしくは冷延伸することができる。
【0204】
本発明の一部の実施形態のブロックコポリマーから複合繊維を製造することもできる。こうした複合繊維は、その繊維の少なくとも一部分に本発明のブロック共重合体を有する。例えば、鞘/芯型複合繊維(すなわち、その鞘がその芯を同心円状に包囲しているもの)において、本発明ブロック共重合体は、その鞘の中にある場合もあり、その芯の中にある場合もある。典型的におよび好ましくは、本コポリマーは、複合繊維の鞘成分であるが、それが芯成分である場合には、その鞘成分は、その芯の架橋を妨げないようなものでなければならない。すなわち、その鞘成分は、十分なUV線がそれを通り抜けて芯ポリマーを実質的に架橋させることができるように、UV線に対して透明または半透明である。異なるコポリマーを同じ繊維の中の鞘および芯として独立して使用することもでき、この場合、好ましくは、両方の成分が弾性であり、特に、その鞘成分が、その芯成分より低い融点を有する場合にできる。他のタイプの複合繊維も本発明の範囲内であり、そうした繊維としては、サイドバイサイド・コンジュゲート繊維(例えば、分離したポリマー領域を有する繊維であって、その繊維の表面の少なくとも一部分を本発明のブロック共重合体が構成する繊維)のような構造が挙げられる。
【0205】
本繊維の形状は限定されない。例えば、代表的な繊維は、円形断面形状を有するが、時として、繊維は、異なる形状、例えば、三葉形状または扁平(すなわち、「リボン」のような)形状を有する。本明細書に開示する繊維は、繊維の形状による制限を受けない。
【0206】
繊維直径は、様々な仕方で測定し、報告することができる。一般に、繊維直径は、単糸デニールで測定される。デニールは、繊維の長さ9000m当たりのその繊維のグラム数として定義される紡織繊維用語である。モノフィラメントは、一般に、15より大きい、通常は30より大きい原糸デニールを有する押出成形されたストランドを指す。細繊度繊維は、一般に、約15またはそれ以下のデニールを有する繊維を指す。極細繊度繊維(別名、マイクロファイバー)は、一般に、約100マイクロメートル以下の直径を有する繊維を指す。本発明の一部の実施形態の繊維については、その繊維の弾性にほとんど影響を及ぼさずに、その直径を広範に変えることができる。しかし、繊維のデニールは、完成品の性能に適するように調整することができ、従って、好ましくは、メルトブロー繊維については約0.5から約30デニール/単糸、スパンボンド繊維については約1から約30デニール/単糸、および連続巻取フィラメントについては約1から約20,000デニール/単糸である。それにもかかわらず、好ましくは、そのデニールは、40より大きく、さらに好ましくは55以上、および最も好ましくは65以上である。これらの優先性は、一般に耐久性がある服飾品が約40より大きいデニールを有する繊維を使用しているという事実に起因する。
【0207】
弾性コポリマーは、弾性フィルム、コーティング、シート、ストリップ、テープ、リボンなどに成形または二次加工することもできる。こうした弾性フィルム、コーティングおよびシートは、ブローンバブルプロセス(例えば、単純バブルならびに二軸延伸法、例えば、封入バブル、ダブルバブルおよびテンターフレーミング)、キャスト押出、射出成形プロセス、熱成形プロセス、押出コーティングプロセス、異形押出、およびシート押出プロセスをはじめとする当分野では公知の任意の方法によって、二次加工することができる。単純ブローンバブルフィルムプロセスは、例えば、The Encyclopedia of Chemical Technology, Kirk-Othmer, Third Edition, John Wiley & Sons, New York, 1981, Vol. 16, pp. 416-417 and Vol. 18, pp. 191-192に記載されている。キャスト押出法は、例えば、Modern Plastics Mid-October 1989 Encyclopedia Issue, Volume 66, Number 11, pages 256 to 257に記載されている。射出成形、熱成形、押出コーティング、異形押出およびシート押出プロセスは、例えば、Plastics Materials and Processes, Seymour S. Schwartz and Sidney H. Goodman, Van Nostrand Reinhold Company, New York, 1982, pp. 527-563, pp. 632-647, and pp. 596-602に記載されている。
【0208】
弾性ストリップ、テープおよびリボンは、直接押出プロセスをはじめとする任意の公知の方法によって、または押出後スリッチング、切断もしくは打抜き法によって作製することができる。異形押出は、テープ、バンド、リボンなどの作製に特に適する主要押出プロセスの一例である。
【0209】
本発明の実施形態の繊維を他の繊維、例えばPET、ナイロン、綿、Kevlar(商標)など、と共に使用して、弾性布を製造することができる。付加的利点として、一定の繊維の耐熱性(および防湿性)は、通常のPET染色条件でのポリエステルPET繊維の染色を可能にすることができる。他の一般に用いられている繊維、特にスパンデックス(例えば、Lycra(商標))は、特性の劣化を防止するために、あまり苛酷でないPET染色条件でしか使用することができない。
【0210】
本発明の実施形態の繊維から製造される布としては、織布、不織布および編地が挙げられる。不織布は、様々な方法、例えば、ステープルファイバーをカーディングおよび熱接着する方法;1回の連続運転で連続繊維をスパンボンドする方法;または繊維を布にメルトブローし、その後、その得られたウェブをカレンダー処理または熱接着する方法によって製造することができる、例えば、米国特許第3,485,706号および同第4,939,016号に開示されているようなスパンレース(すなわち水流絡合)布。これらの様々な不織布製造技術は、当業者には公知であり、本開示は、いずれの特定の方法にも限定されない。例えば、これらの新規繊維と他の繊維(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)または綿)とのブレンドをはじめとする、こうした繊維から製造される他の構造も、本発明の範囲内に包含される。
【0211】
本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体を溶液紡糸またはフラッシュ紡糸することによって得られた繊維から不織布を製造することができる。溶液紡糸は、湿式紡糸および乾式紡糸を含む。両方の方法において、ポリマーの粘稠溶液をポンプで送ってフィルタに通し、その後、紡糸口金の細い穴に通す。その後、溶媒を除去して、繊維を残す。
【0212】
ある実施形態では、本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体から繊維をフラッシュ紡糸し、シートを形成するために、次のプロセスを用いる。この基本システムは、以前に米国特許第3,860,369号および同第6,117,801号において開示されている。前記特許は、その全体が本明細書において参照によって援用される。このプロセスは、蒸気取出口と、このプロセスにおいて製造された不織シート材料がそこを通して取り出される開口部とを有するチャンバ(時として、スピンセルと呼ばれる)において行われる。ポリマー溶液(または紡糸液)は、高温および高圧で、連続的にまたはバッチ式で作製され、導管によりスピンセルに供給される。溶液の圧は、ポリマーが紡糸剤に完全に溶解して均一単相混合物を形成する最低圧である曇点圧力より高い。
【0213】
この単相ポリマー溶液は、レットダウンオリフィスを通ってより低圧の(またはレットダウン)チャンバに行く。このより低圧のチャンバにおいて、その溶液は、二相液−液分散体に分離する。この分散体の一方の相は、主として紡糸剤を含む紡糸剤リッチ相であり、この分散体の他方の相は、ポリマーの大部分を含有するポリマーリッチ相である。この二相液−液分散体を、紡糸口金を通して、さらに低圧(好ましくは、大気圧)の領域へと進ませ、この領域で、紡糸剤は非常に急速に蒸発(フラッシュ)し、ポリマーは糸(またはプレキシフィラメント)として紡糸口金から出てくる。この糸をトンネル内で延伸し、回転バッフルに突き当たる方向に向ける。この回転バッフルは、約5〜15cm幅である扁平ウェブに糸を変形させる、かつフィブリルを分離してそのウェブをもたらす形を有する。さらに、この回転バッフルは、幅広い前後スワスを生じさせるために十分な大きさを有する前後揺動運動をもたらす。そのウェブを、その紡糸口金より約50cm下に位置する移動ワイヤーレイダウンベルト上に降ろし、一般にはそのベルトを交差するようにその前後揺動運動を構成して、シートを形成する。
【0214】
ウェブが、その移動ベルトへの途中でそのバッフルによってそらされると、そのウェブは、定置式マルチニードルイオンガンと接地回転ターゲットプレートの間のコロナ帯電ゾーンに入る。このマルチニードルイオンガンを適する電圧源によって充電して、DC電位にする。帯電したウェブは、フロントセクションとバックセクションの2つの部分を具備するディフューザを通して、高速紡糸剤蒸気流によって運ばれる。このディフューザが、ウェブの膨張を制御し、それを減速させる。ディフューザのバックセクションは、定置式であって、ターゲットプレートから離れていてもよいし、またはそれと一体式であってもよい。バックセクションとターゲットプレートが一体式である場合、それらは共に回転する。移動するウェブがそのディフューザのバックセクションに粘着しないように、ディフューザのバックセクションには、移動するウェブとディフューザのバックセクションの間の適切なガス流を確保するための吸気穴があけられている。帯電したウェブが、静電気によりそのベルトに引き付けられ、そのベルト上の適所に保持されるように、移動ベルトにロールを押し付ける。移動ベルト上に捕集され、静電力によりそこに保持された、重なり合うウェブスワスを、そのベルト速度により制御される厚さを有するシートに形成する。そのシートをそのベルトと圧密ロールの間で圧縮して、そのチャンバの外部で取り扱うために十分な、またそのチャンバの外部で巻き上げロール上に回収するために十分な強度を有する構造にする。
【0215】
従って、本発明の一部の実施形態は、本明細書に記載の本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体を含む軟質ポリマーフラッシュ紡糸プレキシフィラメント材料を提供する。好ましくは、本エチレン/α−オレフィン共重合体は、約0.1から約50g/10分または約0.4から約10g/10分のメルトインデックス、および約0.85から約0.95g/ccまたは約0.87から約0.90g/ccの密度を有する。好ましくは、本共重合体の分子量分布は、約1より大きいが、約4未満である。さらに、このフラッシュ紡糸プレキシフィラメント材料は、約2m2/gより大きい、または約8m2/gより大きいBET表面積を有する。この軟質ポリマーフラッシュ紡糸プレキシフィラメント材料から軟質フラッシュ紡糸不織シート材料を製造することができる。この軟質フラッシュ紡糸不織シート材料は、スパンボンドされたものであってもよいし、面接着されたものであってもよいし、または点接着されたものであってもよい。本発明の他の実施形態は、高密度ポリエチレンポリマーとブレンドされたエチレン/α−アルファ共重合体(本明細書に記載のもの)を含む、軟質ポリマーフラッシュ紡糸プレキシフィラメント材料を提供し、この場合のエチレン/α−アルファ共重合体は、約0.4g/10分と約10g/10分の間のメルトインデックス、0.87g/ccと0.93g/ccの間の密度、および約4未満の分子量分布を有し、ならびにこの場合のプレキシフィラメント材料は、約8m2/gより大きいBET表面積を有する。この軟質フラッシュ紡糸不織シートは、少なくとも85%の不透明度を有する。
【0216】
上記プロセスまたは類似のプロセスによって製造されたフラッシュ紡糸不織シートは、建築用途における空気侵入障壁のために、航空便用封筒の包装材として、医療用包装材として、バナーとして、ならびに防護服および他の用途のために、Tyvek(登録商標)スパンボンドオレフィンシートの代わりに使用することができる。
【0217】
本発明の実施形態の繊維および布を使用して製造することができる二次加工品としては、弾性部分を有する弾性複合製品(例えば、おむつ)が挙げられる。例えば、弾性部分は、(米国特許第4,381,781号(この開示は、その全体が参照によって本明細書に援用されている)に示されているように)一般に、おむつが落ちるのを防ぐためにおむつのウエストバンド部分に、および漏れを防ぐためにレッグバンド部分にされる。多くの場合、これらの弾性部分は、快適さと信頼性を良好に兼備するために、より良く形状にフィットするおよび/または留まるシステムを助長する。本発明の繊維および布は、弾性と通気性を兼備する構造を生じさせることもできる。例えば、1998年5月1日出願の米国特許仮出願第60/083,784号に開示されている構造に本発明の繊維、布および/またはフィルムを組み込むことができる。本発明の繊維を含む不織布の積層品を形成することもでき、それらを消費財、例えば、服飾品、おむつ、病衣、衛生用途、椅子張り生地などのような耐久財および使い捨て消費財をはじめとする様々な製品において使用することができる。
【0218】
本発明の繊維、フィルムおよび布は、米国特許第2,957,512号に記載されているような様々な構造で使用することもできる。例えば、特に、非弾性材料(平坦なもの、プリーツ加工されたもの、クレープ加工されたもの、けん縮されたものなど)を弾性構造にする場合、前記特許に記載されている構造の層50(すなわち、弾性成分)の代わりに本発明の繊維または布を使用することができる。非繊維、布または他の構造への本発明の繊維および/または布の付着は、溶融接着によって行ってもよいし、または接着剤を用いて行ってもよい。ギャザー弾性構造またはシャーテッド弾性構造は、本発明の繊維および/または布と非弾性成分から、付着前に(米国特許第2,957,512号に記載されているように)その非弾性成分をプリーツ加工することにより、付着前にその弾性成分を予備延伸することにより、または付着後にその弾性成分を熱収縮させることにより、製造することができる。
【0219】
本発明の繊維をスパンレース(すなわち水流絡合)プロセスにおいて使用して、新規構造を作ることもできる。例えば、米国特許第4,801,482号には、本明細書に記載の新規繊維/フィルム/布で今や製造することができる弾性シート(12)が開示されている。
【0220】
本明細書に記載するような連続弾性フィラメントは、高い弾発性が望まれる織物または編物用途においても使用することができる。
【0221】
米国特許第5,037,416号には、弾性リボン(米国特許第5,037,416号の要素19参照)を使用することによる形状にフィットする表面シートの利点が記載されている。本発明の繊維は、米国特許第5,037,416号の要素19の機能にかなう、すなわち、布の形態で使用して、所望の弾性をもたらすことができる。
【0222】
米国特許第4,981,747号(Morman)おいて、可逆的に狭窄された材料(reversibly necked material)を含む複合弾性材料を形成する弾性シート122の代わりに本明細書に開示する本発明の繊維および/または布を使用することができる。
【0223】
本発明の繊維は、米国特許第4,879,170号の図面の参照6に記載されているようなメルトブロー弾性成分であることもできる。
【0224】
本明細書に開示する本発明の繊維および布から弾性パネルを製造することもでき、それらは、例えば、米国特許第4,940,464号の要素18、20、14および/または26として使用することができる。本明細書に記載する本発明の繊維および布は、複合サイドパネルの弾性成分(例えば、前記特許の層86)として使用することもできる。
【0225】
これらの弾性材料は、アペルチャリング(apperturing)、スリッチング、マイクロパーフォレーション、繊維もしくはフォームとの混合など、およびそれらの組み合わせを含む当分野では公知の任意の方法によって、透過性または「通気性」にすることもできる。こうした方法の例としては、Crowe,Jr.による米国特許第3,156,242号、Hartwellによる米国特許第3,881,489号、Sissonによる米国特許第3,989,867号およびBuellによる米国特許第5,085,654号が挙げられる。
【0226】
本発明の特定の実施形態の繊維は、被覆繊維を含む。被覆繊維は、芯およびカバーを含む。一般に、この芯は、1またはそれ以上の弾性繊維を含み、このカバーは、1またはそれ以上の非弾性繊維を含む。被覆繊維の作製時で、それらがそれぞれ未伸長状態の場合、そのカバーは、その芯の繊維より長く、一般には有意に長い。そのカバーは、通常の様式で、典型的には螺旋状に巻き付いている形状で、その芯を包囲している。非被覆繊維は、カバーを有さない繊維である。一般に、編組繊維または糸、すなわち、互いに撚られていないまたは撚られているそれぞれ未伸長状態のほぼ同じ長さの2またはそれ以上の(弾性および/または非弾性)繊維ストランドまたはフィラメントを含む繊維、は、被覆繊維ではない。しかし、これらの糸は、被覆繊維の芯およびカバーのいずれかまたは両方として使用することができる。他の実施形態において、被覆繊維は、弾性カバーに包まれた弾性芯を含む。
【0227】
繊維または繊維から製造された布に付与される熱固定伸長の完全または実質的可逆性は、有用な特性である。例えば、被覆繊維を染色および/または製織前に熱固定することができるならば、繊維が巻取操作中に伸長する可能性が低いので、染色および/または製織プロセスは、より効率的になる。そしてまた、これは、繊維を先ずスプールに巻き取る、染色および製織操作において有用であり得る。染色および/または製織が完了したら、その被覆繊維または被覆繊維を含む布を、弛緩させることができる。この技法は、特定の製織操作に必要な繊維の量を減少させるばかりでなく、その後の縮みの防止にもなるだろう。こうした可逆的、熱固定、弾性繊維、およびそれらの繊維の製造方法、およびそうした繊維から製造される製品は、米国特許出願番号10/507,230(US 20050165193として公開)に開示されている。前記特許は、その全体が参照によって本明細書に援用されている。こうした方法を本発明の実施形態において修正して、または修正せずに用いて、可逆的、熱固定、弾性繊維、それらから製造される布および製品を製造することもできる。
【0228】
米国特許第5,226,992号、同第4,981,747号(KCC,Morman)、および同第5,354,597号の教示に従って、予備活性化品を製造することもできる。前記特許はすべて、それらの全体が参照によって本明細書に援用されている。
【0229】
米国特許第6,113,656号、同第5,846,654号および同第5,840,234号の教示に従って、強力繊維を製造することができる。前記特許はすべて、それらの全体が参照によって本明細書に援用されている。
【0230】
極細繊度繊維を含む低繊度繊維(low denier fiber)を本発明の共重合体から製造することができる。
【0231】
本発明の繊維の好ましい使用は、布(織布と不織布の両方)の形成における使用である。本繊維から形成された布は、卓越した弾性特性を有し、それにより多数の衣料品用途に適することが判明した。それらは、良好なドレープ適性も有する。
【0232】
繊維および布の望ましい特性の一部は、引張弾性率および永久ひずみによって表すことができる。本発明の特定の実施形態のスパンボンド布について、得られる好ましい特性は、次のとおりである:
【0233】
引張弾性率(g)(ASTM−1682)(100%伸長、6サイクル、縦方向(MD)):好ましくは900未満、さらに好ましくは800未満、最も好ましくは100から400;および/または
【0234】
引張弾性率(g)(50%伸長、6サイクル、MD):好ましくは700未満、さらに好ましくは600未満、最も好ましくは100から300;および/または
【0235】
引張弾性率(g)(100%伸長、6サイクル、横方向(TD)):好ましくは600未満、さらに好ましくは500未満、最も好ましくは50から300;および/または
【0236】
引張弾性率(g)(50%伸長、6サイクル、TD):好ましくは370未満、さらに好ましくは40から200;および/または
【0237】
永久ゆがみ(%)(布破損まで伸張を継続するのではなく周期的に繰り返すASTM D−1682の修正法を用いて得られる)(50%伸長、6サイクル、MD):好ましくは30未満、さらに好ましくは約5〜約25%の範囲内、最も好ましくは10〜20未満;および/または
【0238】
永久ゆがみ(%)(50%伸長、6サイクル、TD):好ましくは35%未満、さらに好ましくは約5〜約25%の範囲内;および/または
【0239】
永久ゆがみ(%)(100%伸長、6サイクル、MD):好ましくは40%未満、さらに好ましくは約5〜約35%の範囲内、最も好ましくは8〜20%;および/または
【0240】
永久ゆがみ(%)(100%伸長、6サイクル、TD):好ましくは40%未満、さらに好ましくは約5〜約35%の範囲内、最も好ましくは約5〜25%の範囲内;および/または
【0241】
接着温度(℃)110未満、さらに好ましくは約35〜約105の範囲内、最も好ましくは40〜80。これらの特性は、好ましく、ならびに本発明のすべての布にとって有用であり、ならびに例えば、本発明の特定の実施形態の繊維から製造し、かつ約70から約80g/m2、好ましくは約70g/m2の基本重量を有し、かつ約25〜18μmの直径を有する繊維から形成された布によって実証される。
【0242】
本発明の特定の実施形態のメルトブロー繊維について、好ましい特性は、次のとおりである:
【0243】
永久ゆがみ(%)(50%伸長、6サイクル、MD):好ましくは25未満、さらに好ましくは約10〜約20の範囲内、最も好ましくは15〜18;および/または
【0244】
永久ゆがみ(%)(50%伸長、6サイクル、TD):好ましくは約25未満、さらに好ましくは約10〜約20の範囲内、最も好ましくは15〜18;および/または
【0245】
引張弾性率(g)(50%伸長、6サイクル、MD):好ましくは約300以下、さらに好ましくは約200〜約300の範囲内;および/または
【0246】
引張弾性率(g)(50%伸長、6サイクル、TD):好ましくは約300以下、さらに好ましくは約50〜約150の範囲内;約150;および/または
【0247】
トータルハンド(g):好ましくは約75未満、さらに好ましくは約70未満、最も好ましくは約10〜約20の範囲内。
【0248】
これらの特性は、好ましく、ならびに本発明の一部の実施形態において製造された一定の布にとって有用であり、ならびに例えば、8〜10μmの直径の繊維から製造された、約70g/m2の公称基本重量を有するメルトブロー布によって、実証される。
別のポリマーとのブレンド
【0249】
本エチレン/α−オレフィンブロック共重合体は、少なくとももう1つのポリマー製繊維、例えばポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)とブレンドすることができる。この第二ポリマーは、組成(コモノマーのタイプ、コモノマー含量など)、構造、特性、または両方の組み合わせの点で、本エチレン/α−オレフィン共重合体とは異なる。例えば、エチレン/オクテンブロックコポリマーとエチレン/オクテンランダムコポリマーとは、たとえそれらが同じコモノマー含量を有していたとしても、異なる。エチレン/オクテンブロックコポリマーとエチレン/ブタン・コポリマーとは、そのエチレン/ブタン・コポリマーが、ランダムコポリマーであるのか、ブロックコポリマーであるのかにかかわらず、また同じコモノマー含量を有するかどうかにかかわらず、異なる。また、2つのポリマーは、それらが異なる分子量を有する場合には、たとえ同じ構造および組成を有していたとしても、異なると考える。
【0250】
ポリオレフィンは、2またはそれ以上のオレフィン(すなわち、アルケン)から誘導されたポリマーである。オレフィン(すなわち、アルケン)は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する炭化水素である。オレフィンは、モノエン(すなわち、単一の炭素−炭素二重結合を有するオレフィン)、ジエン(すなわち、2つの炭素−炭素二重結合を有するオレフィン)、トリエン(すなわち、3つの炭素−炭素二重結合を有するオレフィン)、テトラエン(すなわち、4つの炭素−炭素二重結合を有するオレフィン)、および他のポリエンであり得る。オレフィンまたはアルケン、例えばモノエン、ジエン、トリエン、テトラエンおよび他のポリエン、は、3個またはそれ以上の炭素原子、4個またはそれ以上の炭素原子、6個またはそれ以上の炭素原子、8個またはそれ以上の炭素原子を有することができる。ある実施形態において、オレフィンは、3個から約100個の炭素原子、4個から約100個の炭素原子、6個から約100個の炭素原子、8個から約100個の炭素原子、3個から約50個の炭素原子、3個から約25個の炭素原子、4個から25個の炭素原子、6個から約25個の炭素原子、8個から約25個の炭素原子、または3個から10個の炭素原子を有する。ある実施形態において、オレフィンは、2個から約20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状、環式または非環式モノエンである。他の実施形態において、アルケンは、ジエン、例えばブタジエンおよび1,5−ヘキサジエンである。さらなる実施形態において、アルケンの水素原子のうちの少なくとも1個は、アルキルまたはアリールで置換されている。特定の実施形態において、アルケンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、ノルボルネン、1−デセン、ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、スチレンまたはこれらの組み合わせである。
【0251】
繊維を製造するためのポリマーブレンド中のポリオレフィンの量は、そのポリマーブレンドの総重量の約0.5から約99重量%、約10から約90重量%、約20から約80重量%、約30から約70重量%、約5から約50重量%、約50から約95重量%、約10から約50重量%、または約50から約90重量%であり得る。
【0252】
当業者には公知である任意のポリオレフィンを使用して、本明細書に開示するポリマーブレンドを作製することができる。それらのポリオレフィンは、オレフィンホモポリマー、オレフィンコポリマー、オレフィンターポリマー、オレフィンクウォーターポリマーなど、ならびにそれらの組み合わせであり得る。
【0253】
ある実施形態において、少なくとも2つのポリオレフィンのうちの1つは、オレフィンホモポリマーである。このオレフィンホモポリマーは、1つのオレフィンから誘導されたものであり得る。当業者には公知である任意のオレフィンホモポリマーを使用することができる。オレフィンホモポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレン(例えば、超低密度、低密度、線状低密度、中密度、高密度および超高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリブチレン(例えば、ポリブテン−1)、ポリペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリデセン−1、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリ−1,5−ヘキサジエンが挙げられる。
【0254】
さらなる実施形態において、オレフィンホモポリマーは、ポリプロピレンである。当業者には公知である任意のポリプロピレンを使用して、本明細書に開示するポリマーブレンドを作製することができる。ポリプロピレンの非限定的な例としては、ポリプロピレン(LDPP)、高密度ポリプロピレン(HDPP)、高溶融強度ポリプロピレン(HMS−PP)、耐衝撃性ポリプロピレン(HIPP)、イソタクチックポリプロピレン(iPP)、シンジオタクチックポリプロピレン(sPP)など、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0255】
本ポリマーブレンド中のポリプロピレンの量は、そのポリマーブレンドの総重量の約0.5から約99重量%、約10から約90重量%、約20から約80重量%、約30から約70重量%、約5から約50重量%、約50から約95重量%、約10から約50重量%、または約50から約90重量%であり得る。
架橋
【0256】
本繊維は、電子ビーム照射、β線照射、γ線照射、コロナ照射、シラン、過酸化物、アリル化合物、および架橋触媒を伴うまたは伴わないUV線を含む(しかし、これらに限定されない)、当分野では公知の任意の手段によって、架橋させることができる。米国特許第6,803,014号および同第6,667,351号には、本発明の実施形態において用いることができる電子ビーム照射方法が開示されている。
【0257】
照射は、高エネルギー、電離電子、紫外線、X線、γ線、β粒子など、ならびにそれらの組み合わせの使用により、遂行することができる。好ましくは、70メガラド以下の線量の電子が利用される。照射源は、約150キロボルトから約6メガボルトの範囲内で操作される、所望の線量を供給することができる電力出力を有する、いずれの電子ビーム発生器であってもよい。電圧は、適切なレベルに合わせることができ、これは、例えば、100,000、300,000、1,000,000もしくは2,000,000もしくは3,000,000、もしくは6,000,000またはそれ以上もしくはそれ以下であり得る。ポリマー材料を照射するための多くの他の装置が、当分野において公知である。照射は、通常、約3メガラドから約35メガラドの間、好ましくは約8から約20メガラドの間の線量で行われる。さらに、照射は、室温で適便に行うことができるが、より高いおよびより低い温度、例えば0℃から約60℃を用いることもできる。好ましくは、照射は、その製品の成形または二次加工後に行われる。また、好ましい実施形態では、プロ−ラド(pro-rad)添加剤と配合されたエチレン共重合体を約8から約20メガラドの電子ビーム放射で照射する。
【0258】
架橋は、架橋触媒で促進することができ、この機能を提供するであろう任意の触媒を使用することができる。適する触媒としては、一般に、有機塩基、カルボン酸、および有機金属化合物(有機チタン酸塩を含む)、ならびに鉛、コバルト、鉄、ニッケル、亜鉛およびスズの錯体またはカルボン酸塩、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、酢酸第一スズ、オクタン酸第一スズ、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、などが挙げられる。カルボン酸スズ、特に、ジブチルスズジラウレートおよびジオクチルスズマレエートは、とりわけ有効である。触媒(または触媒の混合物)は、典型的には約0.015phrと約0.035phrの間の触媒量で存在する。
【0259】
代表的なプロ−ラド添加剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、グルタルアルデヒド、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルマレエート、ジプロパルギルマレエート、ジプロパルギルモノアリルシアヌレート、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、メチルエチルケトンペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ラウリルペルオキシド、t−ブチルペルアセテート、アゾビスイソブチルニトリルなど、ならびにそれらの組み合わせなどの、アゾ化合物、有機過酸化物および多官能性ビニルまたはアリルが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一部の実施形態における使用に好ましいプロ−ラド添加剤は、C=C、C=NまたはC=Oなどの多官能性(すなわち、少なくとも2つの)部分を有する化合物である。
【0260】
少なくとも1つのプロ−ラド添加剤を、当分野で公知の任意の方法によって、本エチレン共重合体に導入することができる。しかし、好ましくは、プロ−ラド添加剤(単数または複数)は、そのエチレン共重合体と同じまたは異なる原樹脂を含むマスターバッチ濃縮物により導入される。好ましくは、そのマスターバッチのプロ−ラド添加剤濃度は、比較的高く、例えば(その濃縮物の総重量を基準にして)約25重量パーセントである。
【0261】
その少なくとも1つのプロ−ラド添加剤は、任意の有効な量で本エチレンポリマーに導入される。好ましくは、その少なくとも1つのプロ−ラド添加剤の導入量は、(そのエチレン共重合体の総重量を基準にして)約0.001から約5重量パーセント、さらに好ましくは約0.005から約2.5重量パーセントおよび最も好ましくは約0.015から約1重量パーセントである。
【0262】
電子ビーム照射に加えて、UV照射によっても架橋を行うことができる。米国特許第6,709,742号には、UV照射による架橋方法が開示されており、それを本発明の実施形態において使用することができる。この方法は、繊維を形成する前、形成中または形成後に光架橋剤を伴うまたは伴わない光開始剤とポリマーとを混合し、その後、その繊維と光開始剤を、そのポリマーを所望のレベルに架橋するために十分なUV線に暴露することを含む。本発明のこの実施において使用される光開始剤は、芳香族ケトン、例えば、ベンゾフェノン、または1,2−ジケトンのモノアセタールである。前記モノアセタールの主光反応は、アシルラジカルおよびジアルコキシアルキルラジカルをもたらす、α−結合のホモリティック開裂である。このタイプのα−開裂は、ノリッシュI型反応として知られており、これは、W. Horspool and D. Armesto, Organic Photochemistry: A Comprehensive Treatment, Ellis Horwood Limited, Chichester, England, 1992;J. Kopecky, Organic Photochemistry: A Visual Approach, VCH Publishers, Inc., New York, NY 1992;N. J. Turro, et al., Acc. Chem. Res., 1972, 5, 92;and J. T. Banks, et al., J. Am. Chem. Soc., 1993, 115, 2473 においてさらに十分に説明されている。芳香族1,2ジケトンのモノアセタール、Ar−CO−C(OR)2−Ar’の合成は、米国特許第4,190,602号およびGer.Offen.2,337,813に記載されている。この類からの好ましい化合物は、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、C6H5−CO−C(OCH3)2−C6H5であり、これは、Ciba−GeigyからIrgacure 651として市販されている。光開始剤として有用な他の芳香族ケトンの例は、Irgacure 184、369、819、907および2959であり、これらはすべて、Ciba−Geigyから購入できる。
【0263】
本発明の1つの実施形態において、光開始剤は、光架橋剤と併用される。フリーラジカルが生成すると、骨格との二重結合の形成によって2またはそれ以上のオレフィンポリマー骨格を互いに連結させる、任意の光架橋剤を使用することができる。好ましくは、これらの光架橋剤は多官能性であり、すなわち、それらは、活性化するとそのコポリマーの骨格上の一定の部位と共有結合を形成する部位を2またはそれ以上含む。代表的な光開始剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルマレエート、ジプロパルギルマレエート、ジプロパルギルモノアリルシアヌレートなどの多官能性ビニルまたはアリル化合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一部の実施形態での使用に好ましい光架橋剤は、多官能性(すなわち、少なくとも2)部分を有する化合物である。特に好ましい光架橋剤は、トリアリルシアヌレート(TAC)およびトリアリルイソシアヌレート(TAIC)である。
【0264】
特定の化合物は、光開始剤と光架橋剤の両方として作用する。これらの化合物は、UV線に暴露されると2またはそれ以上の反応性化学種(例えば、ラジカル、カルベン、ニトレンなど)を生成する能力、およびその後、2つのポリマー鎖と共有結合する能力によって特徴付けられる。これら2つの作用を行うことができる任意の化合物を本発明の一部の実施形態において使用することができ、代表的な化合物としては、米国特許第6,211,302号および同第6,284,842号に記載されているスルホニルアジドが挙げられる。
【0265】
本発明のもう1つの実施形態において、本コポリマーは、二次架橋、すなわち、光架橋以外の、そして光架橋に加えての架橋、に付される。この実施形態では、光開始剤が非光架橋剤、例えばシランと併用されるか、コポリマーが二次架橋手順に付される、例えば、E−ビーム放射に暴露される。シラン架橋剤の代表例は、米国特許第5,824,718号に記載されており、E−ビーム放射への暴露による架橋は、米国特許第5,525,257号および5,324,576号に記載されている。この実施形態における光架橋剤の使用は、任意である。
【0266】
少なくとも1つの光添加剤、すなわち、光開始剤または任意の光架橋剤を当分野で公知の任意の方法によって本コポリマーに導入することができる。しかし、好ましくは、光添加剤(単数または複数)は、そのコポリマーと同じまたは異なる原樹脂を含むマスターバッチ濃縮物により導入される。好ましくは、そのマスターバッチの光添加剤濃度は、比較的高く、例えば、(その濃縮物の総重量を基準にして)約25重量パーセントである。
【0267】
前記の少なくとも1つの光添加剤は、任意の有効な量で本コポリマーに導入される。好ましくは、その少なくとも1つの光添加剤の導入量は、(そのコポリマーの総重量を基準にして)約0.001から約5、さらに好ましくは約0.005から約2.5および最も好ましくは約0.015から約1重量%である。
【0268】
前記の光開始剤(単数または複数)および任意の光架橋剤(単数または複数)は、本繊維またはフィルム製造プロセスの異なる段階中に添加することができる。光添加剤が、押出温度に耐えることができるならば、オレフィンポリマー樹脂を、例えばマスターバッチ添加により、押出機に供給する前に、添加剤と混合することができる。あるいは、添加剤をそのスロットダイの直前に押出機に導入することができるが、この場合、押出し前の成分の効率的な混合が重要である。もう1つのアプローチでは、オレフィンポリマー繊維を光添加剤なしで延伸することができ、光開始剤および/または光架橋剤は、その押出された繊維に、キスロール、噴霧、添加剤を伴う溶液への浸漬により、または他の工業的後処理方法を用いることにより、塗布することができる。その後、光添加剤(単数または複数)を伴う、その結果として生じた繊維を、連続またはバッチプロセスでの電磁放射により硬化させる。光添加剤は、一軸および二軸スクリュー押出機をはじめとする従来の配合装置を使用して、オレフィンポリマーとブレンドすることができる。
【0269】
電磁放射強度および照射時間は、ポリマーの分解および/または寸法不良を伴わない効率的架橋を可能ならしめるように選択される。好ましいプロセスは、欧州特許第0 490 854号B1に記載されている。十分な熱安定性を有する光添加剤(単数または複数)をオレフィンポリマー樹脂と予備混合し、繊維に押出し、そして1つのエネルギー源または直列に連結された幾つかの単位装置を使用して連続プロセスで照射する。繊維または編地のシートを硬化し、それらをスプールに回収するバッチプロセスと比較して、連続プロセスの使用には幾つかの利点がある。
【0270】
照射は、UV線の使用により遂行することができる。好ましくは、UV線は、100J/cm2以下の強度で用いられる。この照射源は、約50ワットから約25000ワットの範囲内で操作される、所望の線量を供給することができる電力出力を有する、いずれのUV線発生器であってもよい。このワット数は、適切なレベルに合わせることができ、これは、例えば、1000ワットもしくは4800ワットもしくは6000ワットまたはそれ以上もしくはそれ以下であり得る。ポリマー材料をUV照射するための多数の他の装置が、当分野において公知である。照射は、通常、約3J/cm2から約500J/scm2の間、好ましくは約5J/cm2から約100J/cm2の間の線量で行われる。さらに、照射は、室温で適便に行うことができるが、より高いおよびより低い温度、例えば0℃から約60℃を用いることもできる。この光架橋プロセスは、温度が高いほど速い。好ましくは、照射は、その製品の成形または二次加工後に行われる。好ましい実施形態では、光添加剤と配合されたコポリマーを約10J/cm2から約50J/cm2のUV線で照射する。
他の添加剤
【0271】
酸化防止剤、例えば、Ciba Geigy Corp.製のIrgafos 168、Irganox 1010、Irganox 3790、およびchimassorb 944を本エチレンポリマーに添加して、成形もしくは二次加工操作中のundo分解から保護する、および/またはグラフトまたは架橋の程度を良好に制御する(すなわち、過剰なゲル化を抑制する)ことができる。インプロセス添加剤、例えば、ステアリン酸カルシウム、水、フルオロポリマーなども、残留触媒の失活および/または加工性向上などの目的のために使用することができる。Tinuvin 770(Ciba−Geigyから)を光安定剤として使用することができる。
【0272】
本コポリマーに充填剤を入れてもよいし、充填剤をいれなくてもよい。充填剤を入れる場合、存在する充填剤の量は、耐熱性または高温での弾性のいずれかに悪影響を及ぼす量を超えてはならない。存在する場合、典型的に、充填剤の量は、そのコポリマーの総重量(またはコポリマーと1つもしくはそれ以上の他のポリマーのブレンドの場合には、そのブレンドの総重量)を基準にして0.01重量%と80重量%の間である。代表的な充填剤としては、カオリンクレー、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、シリカおよび炭酸カルシウムが挙げられる。充填剤が存在する、好ましい実施形態において、充填剤は、その充填剤が架橋反応に別様に干渉する必要のあるあらゆる傾向を防止または阻止するであろう材料でコーティングされる。ステアリン酸が、こうした充填剤コーティング剤の実例となる。
【0273】
本繊維の摩擦係数を低下させるために、様々な紡糸仕上剤配合物、例えば、繊維油剤に分散された金属石鹸(例えば、米国特許第3,039,895号または同第6,652,599号参照)、基油中の界面活性剤(例えば、米国特許公開第2003/0024052号参照)およびポリアルキルシロキサン(例えば、米国特許第3,296,063号または同第4,999,120号参照)を使用することができる。米国特許出願番号10/933,721(US20050142360として公開)には、紡糸仕上げ剤組成物が開示されており、これを使用することもできる。
【0274】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するために提供するものであり、記載する特定の実施形態に本発明を限定するためのものではない。相反する指示がない限り、すべての部およびパーセンテージは、重量によるものである。すべての数値は、近似値である。数値範囲が与えられている場合、述べられている範囲外の実施形態が、尚、本発明の範囲に入ることもあることは、理解しなければならない。各実施例に記載されている特性の詳細は、本発明の必須特徴と理解すべきではない。
実施例
繊維
【0275】
実施例11、実施例17および比較Gからのポリマーサンプルを、24個の25x1mm 紡糸口金を装備した繊維紡糸ライン(Fourne)において、260℃の紡糸ヘッド温度、302℃の溶融温度および70m/分の巻取速度で、円形断面を有する繊維数24のマルチフィラメント束に紡糸する。他の紡糸条件は、表10に列挙する。結果として生じた束のデニールは、約95から100デニール(g/9000m)である。
【表12】
【0276】
32KGy/通過の電子ビーム線量で操作して192KGyの総線量レベルを与える電子ビーム架橋機に6回通すことにより、繊維を架橋する。各通過と通過の間に繊維を−10℃に冷却する。
【0277】
BISFA Test Methods for Bare Elastic Yarns, Chapter 6: Tensile Propertiesに従って、Option CのクランプおよびOption Aの試験速度を用いて、それらの得られた未架橋繊維および架橋繊維の引張挙動を測定する。5回の反復実験の平均から強力および破断点伸度を報告する。300パーセントのひずみまで繊維に周期的に荷重をかける、BISFA Test Methods for Bare Elastic Yarns, Chapter 7: Viscoelastic Properties Procedure Aを用いて、架橋繊維の回復挙動も測定する。永久変形パーセントは、この試験法に明記されているように第6サイクルのはじめに計算する。
【0278】
架橋繊維の応力緩和を21℃および40℃の交互の温度での10パーセントひずみから測定する。この実験では、324mmの円周を有する束状繊維の13のループを2つのフックによりInstron試験機に取付け、結果として162mmのゲージ長を得る。サンプルを21℃で100パーセント伸度/分の速度で10パーセントのひずみまで伸張し、その後、10分間保持する。その後の熱処理は、水浴中、40℃で10分、空気中、21℃で10分、水浴中、40℃で10分、そして空気中、21℃で10分である。水浴と空気冷却チャンバの間のサンプル移動時間は、6秒である。全プロセスの間、荷重をモニターする。35分での荷重および45分での荷重からの荷重変化パーセントは、式:
荷重変化%=(L(t=35分)−L(t=45分))/(L(t=35分))
を用いて計算し、この式中のL(t=35分)およびL(t=45分)は、最後の40℃水浴と21℃空気暴露の中間時間にそれぞれ相当する35分および45分での荷重である。繊維の特性を表11にも記載する。
【表13】
【0279】
ポリマー実施例11と比較Gの両方から製造した繊維において、架橋は、結果として強力を増大させ、伸度を多少失わせる。両方の実施例が、約135パーセントの同様の変形パーセントを示す。実施例11は、比較Gより低い応力緩和を示し、ならびに低い感温性である。40℃(35分)と21℃(35分)の間の荷重変化パーセントは、表9に列挙されている。実施例11ポリマーから作製した繊維は、4パーセントの荷重の変化しか示さないが、比較Gの繊維は、25パーセントの変化を示す。応力緩和に関する低い感温性は、繊維ボビンの長い保管寿命を維持する点で重要である。繊維は温度の変動に起因して交互に弛緩−収縮するので、応力緩和に関する高い感温性は、環境制御されていない保管施設での保管中にボビンの欠損を招き得る。これは、その繊維のその後の下流での加工の際、繊維巻出挙動不良および繊維破断などの問題を招き得る。
繊維製造
【0280】
実施例19Aおよび実施例19Bならびに比較例19K(Dow AFFINITY(登録商標)EG8100)を使用して、2.7x0.9mmの円形紡糸口金で、40デニールのモノフィラメント繊維を100から300gのボビンに溶融紡糸する。実施例19Aおよび実施例19Bに類似した密度およびメルトインデックスを有する実施例19Kは、ASTM D−792によって判定した場合には0.870g/ccの密度を、およびASTM D−1238、条件190℃/2.16kgに従って判定した場合には1のMIを有するエチレン−オクテンコポリマーである。実施例19Aおよび実施例19Bについての紡糸温度は、280℃から290℃にわたる。実施例19Kは、290℃および300℃でのみ紡糸する。それより低い温度で紡糸すると繊維破断過剰になるためである。紡糸口金と巻取ロールの間には、繊維を凝固させるために長さ2mの冷風急冷チャンバがある。繊維がその溶融物から固化した後、紡糸仕上げ剤塗布装置によりLurol 8517(Goulston Technologies)のシリコーン系紡糸仕上げ剤をその繊維の表面に2重量%で塗布する。その後、その繊維を400から600m/分の範囲の速度でボビンに巻く。この紡糸温度および巻取速度は、結果として生じる繊維の引張応答を調整するために使用される作業変数である。紡糸する前、それらの各実施例からの樹脂を、酸化防止剤としての3000ppmのCyanox 1790(Cytec Industries)および3000ppmのChimasorb 944(Ciba Specialty Chemicals)と配合する。
【実施例1】
【0281】
機械的特性
【0282】
実施例19A、実施例19Bおよび実施例19Kから紡糸した繊維の引張挙動を BISFA Test Methods for Bare Elastic Yarns, Chapeter 6: Tensile Properties Option A に基づき測定する。F繊維は、100mmのゲージ長で、500m/分で試験する。空気クランプを使用する(Model 2712−001、Instron Corp.)。強力、破断点伸度、および300%伸度での荷重を、5回反復実験の平均から報告する。
【0283】
300%のひずみまで繊維に周期的に荷重をかける、BISFA Test Methods for Bare Elastic Yarns, Chapter 7: Viscoelastic Properties Procesure Aを用いて、繊維の回復挙動も測定する。この試験法に明記されているように荷重曲線における第一サイクルおよび第5サイクルの後の永久変形%を計算する。比較として、市販の架橋した40デニールのDow XLA(登録商標)繊維も引張および回復挙動について測定する。
【0284】
実施例19A、実施例19B、比較例19Kおよび比較例19L(これは、40デニールの市販製品 Dow XLA(登録商標)繊維である)から紡糸した繊維の機械的特性を表12に示す。実施例19A、実施例19Bおよび実施例19Kについての紡糸条件は、破断時伸度が実施例19Lにおける市販製品に匹敵するように、選択する。このデータは、同様の破断点伸度を達成するためには実施例19Kおよび実施例19Lより低い温度および高い速度で実施例19Aおよび実施例19Bを紡糸する必要があることを示している。これは、本発明の実施例を使用すると生産を増加させることができる可能性を秘めていることを示唆している。
【0285】
多くの場合、より高い張力が、下流の繊維加工に望まれる。繊維を積極的に巻き出す(一定の延伸比で巻き出す)応用法では、様々な案内装置および要素を繊維が通過するとき、摩擦のためにライン張力が低下する。ライン張力が下がりすぎると、その機械の中で繊維が破断し得る。表12は、実施例19Aおよび実施例19Bが、300%のひずみで実施例19Kおよび実施例19Lのものより高い荷重を有する一方で、同様の破断点伸度を維持することを示している。特に、実施例19Aは、300%で有意に高い荷重を示す(実施例19Lについての7.0gに対して、実施例19Aについては10.2g)。
【0286】
弾性繊維には、伸張後の高い回復度が好まれる。実施例19Aと実施例19Bの両方が、比較例19Kおよび比較例19Lより低い永久ひずみ(高い回復)を示し、実施例19Bは、有意に低い永久ひずみを示す(比較例19Lについての117%に対して、実施例19Bについては5サイクル後48%)。
【0287】
本発明の実施形態の弾性繊維の一部について、約2.5未満のMw/Mnを有する本発明のブロック共重合体から製造された繊維より低い永久ひずみのためには、より高いMw/Mn、例えば、約2.5より大きい、および約5もの高い、好ましくは約4もの高いMw/Mnを有する本発明のブロック共重合体のほうが好ましい。より高いMw/Mnのポリマーから製造されたこれらの繊維についての1ヒステリシスサイクル後の300%の伸度での永久ひずみは、60%以下、好ましくは約50%以下、さらに好ましくは約40%以下であり、0%ほどもの低さである場合もある。可逆的移動剤として使用するジエチル亜鉛はMw/Mnと相関すること、例えば、マルチブロックポリマーを重合するために使用される、ジエチル亜鉛レベルが高いほど、狭いMw/Mnおよび高い永久ひずみを生じさせることが、観察された。
【実施例2】
【0288】
セラミックおよび金属ピンでの動摩擦
【0289】
摩擦特性は、Electronic Constant Tension Transporter、すなわちECTT(Lawson Hemphill)を使用して測定する。その構成の略図を図8に示す。ECTTは、コンピュータ(図示なし)によって独立して制御される巻出ロール(1)および巻取ロール(2)から成る。繊維は、フィーダー付属装置(3)(Model KTF100HP、BTSR)を使用して一定の張力で送られ、他の端で100m/分で巻き取られる。摩擦ピン(4)の前および後の張力は、2つの25cNロードセル(Perma Tens 100p/100cN、Rothschild)で測定される。これらのロードセルの間で、繊維は、90°の抱き角で直径6.4mmの摩擦ピンを通る。繊維が後の紡糸加工中に遭遇し得る表面の範囲をシミュレートするために、2つの異なる摩擦ピンが使用される。第一のタイプは、0.32μm Raの表面粗度を有するセラミックピン(R.250S P2、Heany Industries)である。第二のタイプのピンは、ニッケルめっき磨き鋼から製造された0.14μmのRaを有する、第一のタイプより相当平滑なピンである。摩擦係数は、Euler式:
T2/T1=eμθ
を用いて計算することができ、この式中、μは、摩擦係数であり、T2は、そのピンの後の張力であり、T1は、そのピンの前の張力であり、およびθは、抱き角(π/2)である。
【0290】
動摩擦係数(COF)の結果を表13に列挙する。このデータは、本発明の実施例19Aおよび実施例19Bが、セラミックおよび鋼ピンにおいて実施例19Kおよび実施例19Lより低い摩擦を有することを示している。織編用途では高い摩擦が繊維破断を招くことが多いため、低いCOFを有することは、望ましいことである。本発明の一部の好ましい繊維について、磨き金属でのCOFは、比較的低く、約1.15またはそれ未満ほどもの低さ、好ましくは1.1またはそれ以下、さらに好ましくは1またはそれ以下、および約0.8ほどもの低さであり得る。表13のデータは、たとえそれらの繊維のすべてが同じ量およびタイプの紡糸仕上げ剤を有していたとしても、本発明の繊維は比較繊維より低いCOFを有することを示している。
【実施例3】
【0291】
架橋
【0292】
紡糸後、繊維を窒素下でパッケージし、電子ビーム処理(e−ビーム)により架橋して、耐熱性を付与する。各通過につき32KGyの線量での一連の6回のe−ビームライン(Ionmed、Spain)通過を用いて、192Kgyの線量を紡糸された繊維に照射する。e−ビームプロセス中の加熱のため、各通過と通過の間に繊維を−10℃に冷却する。
【0293】
動的機械的分光分析(Dynamic mechanical spectroscopy)(DMS)をRSA III押出式流動計(TA instruments)で行って、耐熱性を測定した。60個の40デニール繊維束の両末端を10mm離した取付け具に留める。その後、そのサンプルを1段階につき3℃ずつの25℃から200℃の逐次的温度段階に付す。各温度において、貯蔵弾性率、E’を、10rad/秒のひずみ頻度および0.1%と5%の間のひずみ振幅サイクルで測定する。5gの初期静的力をかけて、サンプルのたるみを防止する。温度が200℃に達したら、試験は終わる。
【0294】
図9は、架橋した実施例19A、実施例19B、実施例19Kおよび実施例19Lの動的機械的熱応答を示すものである。このプロットは、実施例19Aおよび実施例19Bが、75℃と100℃の間で実施例19Lより10倍高い弾性率を有することを示している。E’(25℃)/E’(100℃)の貯蔵弾性率比を表14に列挙する。本発明のポリマーからの繊維は、3またはそれ以下の貯蔵弾性率比を有し、これに対して比較例は、10およびそれ以上の貯蔵弾性率比を有する。繊維のこの貯蔵弾性率比は、できるだけ1に近いほうが望ましい。そうした繊維は、温度によって受ける影響が比較的低く、ならびに保管およびe−ビーム処理中の熱に対する改善された許容度などの性能長所を提供することができる。
【実施例4】
【0295】
巻出挙動
【0296】
弾性繊維にとって重要な性能特性は、その繊維をボビンから円滑に、かつ破断することなく巻き出す必要があることである。巻出張力、その変動、およびボビン内での張力の勾配を用いて、糸および織物単位操作におけるボビン巻出性能を推論することができる。図10に示すように、ECTTを使用して、200m/分の巻取速度での真向き巻出張力を測定する。5分の期間のデータを収集し、そのスキャンの最後の3分を用いて巻出張力の平均および標準偏差を得る。300gのボビンを2つの保管条件での試験に使用する。それらは、紡糸後、約1日、21℃で保管するか、促進老化をシミュレートするために12時間、40℃で、オーブンの中で保管する。巻出張力の測定は、そのスプールの3箇所:表面、繊維の約半分が取り去られる0.5cm、および繊維の大部分が取り去られる0.5cm、で行う。
【0297】
結果を図11に示し、この図では巻出張力をスプールサイズに対してプロットする。図11aは、21℃での保管を示しており、これは、実施例19Aと実施例19Lの両方が、スプールサイズに対して比較的一定の巻出張力を有し、実施例19Aが、実施例19Lについての約1.0gに対してそれより高い約1.6gの張力を示すことを示している。しかし、40℃での12時間の保管に付した後、両方のサンプルの巻出張力は、より大きい実施例19Lの程度へと増加する(図11b)。実施例19Aの巻出張力は、2.0から2.3gでスプールサイズに対して比較的一定である。実施例19Lについての表面は、表面で1.4gの巻出張力を有しており、また1.5cmのスプールサイズでほぼ3.0gへと有意に増加する。本発明の実施例では、そのより高い融解温度のため、巻出性能は、保管中にさほど感温性ではなく、また比較例より長い保管寿命を有することができる可能性を秘めている。
【表14】
【表15】
【表16】
不織布
下の表に列挙する樹脂を以下の実施例において使用する:
【表17】
紡糸条件
【0298】
繊維サンプルは、Hills Biocomponent Fiber Lineを使用することによって作製した。この繊維紡糸ラインは、2つの1’’一軸スクリュー押出機、2つのZenithギアポンプ、利用可能な穴を72に減らした144穴の紡糸口金、繊維急冷キャビネット、および巻取ステーションから成る。紡糸口金のキャピラリー穴は、直径が0.65mで、L/D比=3.85:1である。溶融温度は、245℃に設定する。スループットは、1分当たり1穴につき0.6グラム(ghm)である。空気延伸(air drawing)と、特性試験のための繊維パッケージを回収するために巻取機を使用することによる機械的延伸の2つの異なる方法を用いることにより、繊維を紡糸する。
粘着点(Stickpoint)の決定
【0299】
「粘着点」は、繊維が物体に粘着しないほどの固体となる紡糸ラインにおける地点と定義する。通常、粘着点は、固定速度(例えば、1000、2000、3000m/分)で繊維を張り、その後、急冷キャビネットの底部でその繊維束の前面にガラス棒を押し付けることによって測定する。繊維がガラス棒に粘着するまで、ガラス棒をゆっくりと上昇させる。ガラス棒が繊維に粘着したそのキャビネット内の地点までの紡糸口金からの距離を粘着点として記録する。この測定を各紡糸速度で3回繰り返し、それらの粘着点を平均する。粘着点を測定するまたは一成分弾性繊維を回収するときには、A−側の押出機のみを繊維の押出しに使用した。
ローピング研究のためのアスピレータ/移動スクリーン機構
【0300】
図12は、ローピングが発生し得るスパンボンドラインにおける条件をシミュレートするための機構の略図である。これは、アスピレータ(3)により繊維(1A)を空気延伸するように構成されたアスピレータ(3)/移動スクリーン(4)機構である。アスピレータ(3)通過後に繊維(1B)が繊維ウェブ(2)を形成する。この機構は、直径1.625インチの開口部を有するアスピレータ(3)(Transvector IncorporationによるAir Amplifier,model ITW Vortex 912/952)を使用する。繊維(1B)が出て来るダイ前面(図示なし)の60インチ下にこれを配置する。アスピレータ(3)が(目標デニールのために約35インチであると推測される)紡糸ラインの予測粘着点より下になるようにすることもできる。0.3ghmのスループットに100psiの吸入圧を用いる。
【0301】
アスピレータ(3)の約10インチ下に手動式移動スクリーンおよびラックシステム(4)を取り付けて、繊維ウェブ(2)を継続的に回収する。これは、ワイヤーまたはウェブフォーマーをシミュレートするためのものである。アスピレータ(3)内の拘束された空間および空気乱流は、高い繊維−繊維接触確率を生じさせると考えられる。これは、当然、繊維にブロック化する機会を与えると考えられる。衝突し、有意な接着を有さない繊維(1B)は、そのアスピレータの出口での減速により分離する機会を有する。対照的に、繊維がそのアスピレータ(3)により延伸されるにつれて、十分な強さの接着が普及し得る。これは、繊維軸に沿った連続的結合を生じさせ、その結果、ロープとして知られている構造が生じると考えられる。
直後ゆがみおよび残留荷重を決定するための100%ヒステリシス試験
【0302】
72のフィラメントを含む繊維ストランドを作製し、3’’ゲージ長を有するInstronに把持させる。クロスヘッド速度は、1分当たり10インチに設定する。100%のひずみがかかるまでクロスヘッドを上昇させ、その後、そのクロスヘッドを0%のひずみまで同じクロスヘッド速度で戻す。0%のひずみに戻した後、そのクロスヘッドを原型の3インチ長について計算した場合の100%のひずみまで、1分当たり10インチで伸長する。荷重の開始を直後ゆがみと考えた。
【0303】
30%のひずみでのサンプルの第一伸張および第一収縮の間に減少した荷重を測定する。残留荷重は、30%のひずみで第一伸長中に減少した荷重で割り、その後、100をかけた、30%のひずみで第一収縮中に減少した荷重として計算する。
粘着点の測定
【0304】
粘着点は、延伸中の応力誘導/強化結晶化のもとで形成される溶融物凝固点を表す。ローピングを回避するために、(ダイにより近い)より低い粘着点が望まれる。
【表18】
【表19】
【0305】
ウェブ構造に関する視覚的格付け試験において、Aは、ローピングが最小で、良好であり、一方、Cは、ローピングが最大で、不良である。図13は、実施例19I、実施例19N、実施例19Oの3つのウェブの写真である。
【0306】
従って、本発明のブロックコポリマーまたは共重合体から製造した繊維を含む不織布は、類似のランダムコポリマーを含む繊維から製造した不織布(例えば、スパンボンドまたはメルトブロー不織布)より低いローピング度を有する。類似のとは、メルトインデックスおよび密度が互いに10%範囲内であること、および各コポリマーが、同じモノマーを含むことを意味する。改善されたローピングとは、最小限の数のフィラメント/繊維凝集体(束)しか存在しないことを意味する。良好な構造(すなわち、最小限のローピング)を有する布を定量するために、2cm長当たりのフィラメント凝集体の数を測定する。各フィラメント凝集体は、長さが繊維幅の少なくとも10倍である。この2cm長に熱および加圧接着点を含まないことに注意しなければならない。ランダム方向で2cm長にわたって、フィラメント凝集体の直線数を数える。フィラメント凝集体は、互いに融合した平行配向の多数のフィラメントから成る。フィラメントは、繊維の幅の10倍より大きく融合される。フィラメント凝集体は、熱または加圧接着点から離れている。良好なウェブ形成におけるフィラメント凝集体の数は、30/2cm未満、好適には20/2cm未満であり、約5/2ほどもの低さ、好ましくは約1/2cmほどもの低さ、特に0/2cmほどもの低さ(すなわち、ロープなし)である場合もある。
直後ゆがみおよび残留荷重
【0307】
図14は、本発明の実施形態に従って製造した繊維が、100%のひずみでの1回のヒステリシスサイクルで試験した後、低い直後ゆがみも示し得ることを示している。特に、約0.9g/cm3またはそれ以下、好ましくは約0.895g/cm3またはそれ以下、さらに好ましくは0.89g/cm3またはそれ以下の密度および約0.85g/cm3ほどもの低さである場合もある密度を有する本発明のブロックコポリマーまたは共重合体から製造した繊維については、直後ゆがみが、20%ほどもの低さ、好ましくは約10%もの低さである場合もあり、0%ほどもの低さの直後ゆがみである場合もある。
【0308】
本発明のポリマーから製造した繊維が、AFFINITY(登録商標)およびVERSITY(登録商標)繊維より低い直後ゆがみを有することが、図15からわかる。予想通り、高い密度の繊維ほど、高い直後ゆがみを示す。図15および表17において実証されるように、60%のひずみで、本発明の繊維は、AFFINITY(登録商標)およびVERSITY(登録商標)繊維より高い残留荷重を示す。これは、本発明の繊維のほうが低い伸長力を有するためである。
【表20】
【0309】
上で実証したように、本発明の実施形態は、エチレンおよびα−オレフィンのユニークなマルチブロックコポリマーから製造した繊維を提供する。本繊維は、次の利点のうちの1またはそれ以上を有し得る:良好な耐摩耗性;低い摩擦係数;高い上限使用温度;高い回復/収縮力;低い応力緩和(高および低温);ソフトストレッチ;高い破断点伸度;不活性;耐薬品性;耐UV性。本繊維は、比較的高い紡糸速度および低温で溶融紡糸することができる。本繊維は、電子ビームまたは他の照射法により架橋させることができる。加えて、本繊維は、あまり粘着性でなく、その結果、より良好な巻出動作およびより良好な保管寿命が得られ、ならびに実質的にローピング(すなわち、繊維集束)を有さない。本繊維は、より高い紡糸速度で紡糸することができるため、繊維の生産スループットが高い。こうした繊維は、広い形成領域および広い加工領域も有する。他の利点および特徴は、当業者には明らかである。
【0310】
限られた数の実施形態に関して本発明を説明したが、1つの実施形態の特定の特徴が、本発明の他の実施形態に帰することはない。単一の実施形態が、本発明のすべての態様の代表ではない。ある実施形態における組成物または方法は、本明細書において言及されていない非常に多数の化合物または段階を含むことがある。他の実施形態における組成物または方法は、本明細書に列挙されていない任意の化合物または段階を含まない、または実質的に有さない。「少なくとも」1つの成分または段階を含む記載されている実施形態がある一方で、そうした成分または段階を1つだけしか含むことができない実施形態もある。記載されている実施形態からの変形および変更が存在する。樹脂の製造方法は、多数の動作および段階を含むと記載されている。これらの段階または動作は、別の指示がない限り、任意の配列または順序で実施することができる。最後に、本明細書に開示されている任意の数は、その数の説明に「約」または「おおよそ」という語が用いられているかどうかにかかわらず、近似値を意味すると解釈しなければならない。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲内に入るすべての変更および変形を包含すると考える。
【図面の簡単な説明】
【0311】
【図1】従来のランダムコポリマー(丸で示す)およびチーグラー・ナッタコポリマー(三角で示す)と比較して、本発明のポリマー(ひし形で示す)についての融点と密度の関係を示す図である。
【図2】様々なポリマーについてのDSC融解エンタルピーの関数としてのデルタDSC−CRYSTAFのプロットを示す図である。ひし形は、エチレン/オクテンランダムコポリマーを示し;四角は、実施例1〜4のポリマーを示し;三角は、実施例5〜9のポリマーを示し;および丸は、実施例10〜19のポリマーを示す。記号「X」は、ポリマー例A〜Fを示す。
【図3】本発明の共重合体(四角および丸で示す)および従来のコポリマー(三角で示す。これらは、様々なDow AFFINITY(登録商標)ポリマーである)から製造した非延伸フィルムについての弾性回復に対する密度の影響を示す図である。四角は、本発明のエチレン/ブタジエンコポリマーを示し;および丸は、本発明のエチレン/オクテンコポリマーを示す。
【図4】実施例5のポリマー(丸で示す)ならびに比較ポリマーEおよびF(記号「X」で示す)についての、画分のTREF溶出温度に対する、TREFで分画されたエチレン/1−オクテンコポリマー画分のオクテン含量のプロットである。ひし形は、従来のエチレン/オクテンランダムコポリマーを示す。
【図5】実施例5のポリマー(曲線1)および比較例F(曲線2)についての、画分のTREF溶出温度に対する、TREFで分画されたエチレン/1−オクテンコポリマー画分のオクテン含量のプロットである。四角は、例Fを示し、および三角は、実施例5を示す。
【図6】比較エチレン/1−オクテンコポリマー(曲線2)およびプロピレン/エチレン−コポリマー(曲線3)ならびに異なる量の可逆的連鎖移動剤を用いて製造した本発明の2つのエチレン/1−オクテンブロックコポリマー(曲線1)についての温度の関数としての貯蔵弾性率の対数のグラフである。
【図7】幾つかの公知ポリマーと比較して、幾つかの本発明のポリマー(ひし形で示す)についての曲げ弾性率に対するTMA(1mm)のプロットを示す図である。三角は、様々なDOW VERSIFY(登録商標)ポリマーを示;丸は、様々なエチレン/スチレン・ランダムコポリマーを示し;および四角は、様々なDow AFFINITY(登録商標)ポリマーを示す。
【図8】動摩擦係数を測定するための装置の略図である。
【図9】架橋ポリマー実施例19A、実施例19B、実施例19Kおよび実施例19Lの動的機械的熱応答を示す図である。「19A」と表示されている曲線は、ポリマー実施例19Aを示し;「19B」と表示されている曲線は、ポリマー実施例Bを示し;「19K」と表示されている曲線は、Dow AFFINITY(登録商標)EG8100樹脂を示し;および「19L」と表示されている曲線は、40デニールの商品 Dow XLA(登録商標)繊維を示す。
【図10】真向き巻出張力測定機構の略図である。
【図11】a)1日、21℃で保管およびb)12時間、40℃で保管後の本発明の実施例および比較例からの繊維の真向き巻出挙動を示す図である。「巻出張力」の単位は、グラム重である。
【図12】本発明の一部の実施形態において使用したアスピレータ/移動スクリーンシステムの機構を示す略図である。
【図13】不織布例において得られた様々なウェブの写真である。Aは、ポリマー実施例19Iから製造した布を示す写真であり;Bは、ポリマー実施例19Oから製造した布を示す写真であり;およびCは、ポリマー実施例19Nから製造した布を示す写真である。
【図14】100%ひずみでのヒステリシス試験に伴う様々な繊維についての直後残留ひずみを示す図である。
【図15】100%ひずみでのヒステリシス試験に伴う様々な繊維についての60%ひずみでの残留荷重を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン/α−オレフィンコポリマーから製造される繊維、および前記繊維の製造方法、および前記繊維から製造される製品に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維は、典型的にはそれらの直径に従って分類される。モノフィラメント繊維は、一般に、単糸で約15デニールより大きい、通常は約30デニールより大きい、個々の繊維直径を有すると定義される。細繊度繊維(fine denier fiber)は、一般に、単糸で約15デニール未満の直径を有する繊維を指す。極細繊度繊維(microdenier fiber)は、一般に、100マイクロメートル未満の直径を有する繊維と定義される。モノフィラメント、連続巻取細フィラメント、ステープルファイバーまたは単繊維、スパンボンド繊維およびメルトブロー繊維など、製造されるプロセスによって繊維を分類することもできる。
【0003】
卓越した弾性を有する繊維は、様々な布を製造するために必要であり、そしてまたそれらの布は、無数の耐久製品、例えば、スポーツウェアおよび椅子張りを製造するために使用される。弾性は1つの性能属性であり、これは、着用者の体になじむまたは製品の構造に順応する布の性能の1つの尺度である。好ましくは、布は、体温および他の高温(例えば、布の洗濯および乾燥中に経験する温度)での反復使用、伸長および収縮の間、その順応性フィットを維持するであろう。
【0004】
繊維は、一般に、それらが付勢力の印加後に高い弾性回復率(すなわち、低い永久ひずみパーセント)を有する場合、弾性として特徴付けられる。理想的には、弾性材料は、3つの重要な特性:(i)低い永久ひずみパーセント、(ii)ひずみ時の低い応力または荷重;および(iii)低い応力または荷重緩和パーセント、によって特徴付けられる。言い換えると、弾性材料は、次の特性:(i)その材料を伸張するための低い応力荷重要求、(ii)その材料が、一旦、伸張されると、無もしくは低応力緩和または無荷重、および(iii)伸張、付勢またはひずみの付与が停止された後の原寸への完全なまたは高度な回復、を有するものとして特徴付けられる。
【0005】
スパンデックスは、ほぼ理想的な弾性特性を示すことが知られているセグメント化ポリウレタン弾性材料である。しかし、スパンデックスは、多数の用途にとってコストが法外に高い。また、スパンデックスは、特に湿気が存在する状態では、オゾン、塩素および高温に対する劣った耐環境性を示す。こうした特性、特に、耐塩素性の欠如は、水着などの服飾品用途において、および塩素漂白剤が存在する状態で望ましくは洗濯される白衣において、スパンデックスが明確に不利になる原因である。
【0006】
様々な繊維および布が、熱可塑性物質、例えば、ポリプロピレン、一般に高圧重合プロセスにおいて製造される高分枝低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖不均一分枝ポリエチレン(例えば、チーグラー触媒を使用して製造された直鎖低密度ポリエチレン)、ポリプロピレンと直鎖不均一分枝ポリエチレンとのブレンド、直鎖不均一分枝ポリエチレンとエチレン/ビニルアルコールコポリマーとのブレンド、から製造されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当分野においてなされた進歩にもかかわらず、柔軟で体の動きに応じるポリオレフィン系弾性繊維が、引き続き必要とされている。好ましくは、こうした繊維は、比較的高い弾性回復を有するであろうし、比較的ハイスループットで製造することができる。さらに、扱いにくい加工段階を必要とせず、さらに粘着性でない柔軟で快適な布を生じさせる繊維の形成は、非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の要求は、本発明の様々な態様によって満たされる。一態様では、本発明は、少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン共重合体から得ることができる、または少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン共重合体含む繊維であって、前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、以下の特性のうちの1またはそれ以上によって特徴付けられる繊維に関する:
【0009】
(a)約1.7から約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm3)を有し、前記Tmおよびdの数値が、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
の関係に相当すること;または
【0010】
(b)約1.7から約3.5のMw/Mnを有し、ならびに融解熱ΔH(J/g)、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークの間の温度差として規定されるデルタ量ΔT(℃)によって特徴付けられ、
前記ΔTおよびΔHの数値が、以下の関係:
ΔHがゼロより大きく、130J/g以下である場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
を有し、ならびに
【0011】
前記CRYSTAFピークが、累積ポリマーのうちの少なくとも5パーセントを用いて決定され、そしてこのポリマーの5パーセント未満が同定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度は30℃であること;または
【0012】
(c)その共重合体の圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復Re(パーセント)を有し、および密度d(g/cm3)を有し、前記Reおよびdの数値が、その共重合体が実質的に架橋相を有さない場合、以下の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たすこと;または
【0013】
(d)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、この同じ温度間で溶出する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量より少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有するという点で特徴付けられる画分有し、前記の比較対象となるランダムエチレン共重合体が、同じコモノマー(単数または複数)と、この共重合体のものから10パーセント以内のメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)とを有すること;または
【0014】
(e)25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)および100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)を有し、前記G’(25℃)対G’(100℃)の比が、約1:1から約10:1であること;
【0015】
(f)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、少なくとも0.5で、かつ約1以下のブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする、少なくとも1つの分子画分を有すること;または
【0016】
(g)ゼロより大きく、かつ約1.0以下である平均ブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有すること。
【0017】
別の態様では、本発明は、エチレンとC3〜C20α−オレフィンの少なくとも1つの共重合体から得ることができる、またはエチレンとC3〜C20α−オレフィンの少なくとも1つの共重合体を含む繊維に関し、この場合の共重合体は、約0.860g/ccから約0.895g/ccの密度、および70℃で約70%未満の圧縮永久ひずみを有する。ある実施形態において、70℃での前記永久ひずみは、約60%未満、約50%未満、約40%未満または約30%未満である。
【0018】
ある実施形態では、前記共重合体は、以下の関係:
Re>1491−1629(d);または
Re>1501−1629(d);または
Re>1511−1629(d)
を満たす。
【0019】
他の実施形態では、前記共重合体は、ASTM D−1238、条件190℃/2.16kgに従って測定した、約0.1から約2000g/10分、約1から約1500g/10分、約2から約1000g/10分、約5から約500g/10分のメルトインデックスを有する。ある実施形態では、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、1.7から3.5のMw/Mnを有し、これは、少なくとも1つのハードセグメントと少なくとも1つのソフトセグメントを含むランダムブロックコポリマーである。好ましくは、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、約0.86から約0.96g/ccまたは約0.86から約0.92g/ccの範囲の密度を有する。他の実施形態では、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、別のポリマーとブレンドされる。
【0020】
本明細書において「エチレン/α−オレフィン共重合体」または「エチレン/α−オレフィン/ジエン共重合体」の中の用語「α−オレフィン」は、C3およびそれより高級のα−オレフィンを指す。ある実施形態において、このα−オレフィンは、スチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン、またはこれらの組み合わせであり、このジエンは、ノルボルネン、1,5−ヘキサジエン、または組み合わせである。
【0021】
本繊維は、弾性または非弾性である。時として、本繊維は、架橋されている。この架橋は、プロトン照射、電子ビーム照射または架橋剤によって行うことができる。ある実施形態において、架橋ポリマーのパーセントは、形成されたゲルの重量パーセントよって測定された場合、少なくとも20パーセント、例えば、約20パーセントから約80パーセント、または約35パーセントから約50パーセントである。時として、本繊維は、複合繊維である。この複合繊維は、鞘芯構造;海島構造;サイドバイサイド構造;マトリックス−フィブリル構造;またはセグメント化パイ(segmented pie)構造を有する。本繊維は、ステープルファイバーまたはバインダー繊維であり得る。ある実施形態において、本繊維は、約1.2未満の摩擦係数を有し、この場合、その共重合体は、いずれの充填剤とも混合されていない。
【0022】
ある実施形態において、本繊維は、約0.1デニールから約1000デニールの範囲の直径を有し、そしてその共重合体は、約0.5から約2000のメルトインデックスおよび約0.865g/ccから約0.955g/ccの密度を有する。他の実施形態において、本繊維は、約0.1デニールから約1000デニールの範囲の直径を有し、そしてその共重合体は、約1から約2000のメルトインデックスおよび約0.865g/ccから約0.955g/ccの密度を有する。さらに他の実施形態において、本繊維は、約0.1デニールから約1000デニールの範囲の直径を有し、そしてその共重合体は、約3から約1000のメルトインデックスおよび約0.865g/ccから約0.955g/ccの密度を有する。
【0023】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の様々な実施形態に従って製造された繊維を含む布に関する。本布は、スパンボンド布;メルトブロー布;ゲル紡糸布;溶融紡糸布;などでありえる。本布は、弾性または非弾性織布または不織布であり得る。ある実施形態において、本布は、100パーセントのひずみで少なくとも50パーセントのMD回復パーセントを有する。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の様々な実施形態に従って製造された繊維を含むカードウェブまたは糸に関する。本糸は、被覆されていることがあり、または被覆されていないことがある。被覆されている場合、それは、綿糸により被覆されていることもあり、ナイロン糸により被覆されていることもある。
【0025】
なお、さらに別の態様において、本発明は、本繊維を製造する方法に関する。本方法は、(a)(本明細書に記載するような)エチレン/α−オレフィン共重合体を溶融すること;およびそのエチレン/α−オレフィン共重合体を繊維に押出すことを含む。この繊維は、溶融紡糸法;スパンボンド法;メルトブロー法などによって形成することができる。ある実施形態において、本繊維から形成された布は、実質的にローピングを有さない。好ましくは、本繊維は、その共重合体のピーク溶融温度より下の温度で延伸される。
【0026】
本発明のさらなる態様ならびに本発明の様々な実施形態の特徴および特性は、以下の説明で明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
一般定義
【0028】
「繊維」は、長さ対直径比が約10より大きい材料を意味する。繊維は、典型的にはその直径に従って分類される。フィラメント繊維は、単糸で約15デニールより大きい、通常は約30デニールより大きい個々の繊維直径を有するものとして一般に定義される。細繊度繊維は、一般に、単糸で約15デニール未満の直径を有する繊維を指す。極細繊度繊維は、一般に、単糸で約100マイクロメートル未満の直径を有する繊維と定義される。
【0029】
「フィラメント繊維」または「モノフィラメント繊維」は、一定の長さの材料の不連続ストランド(すなわち、所定の長さのセグメントに切断または別様に分割されたストランド)である「ステープルファイバー」とは対照的に、不定の(すなわち、あらかじめ決められていない)長さの材料の連続ストランドを意味する。
【0030】
「弾性の」は、繊維が、100%のひずみ(2倍の長さ)まで1回目に引っ張った後および4回目に引っ張った後、その引き伸ばされた長さの少なくとも約50パーセントを回復するであろうということを意味する。弾性は、繊維の「永久ひずみ」によって説明することもできる。永久ひずみは、弾性の逆である。繊維を一定の点まで伸張し、その後、開放して伸張前の原寸にし、その後、再び伸張する。繊維が荷重を引っ張り始める点を永久ひずみパーセントと呼ぶ。「弾性材料」は、当分野において「エラストマー」および「エラストマー材料」とも呼ばれる。弾性材料(時として、弾性品と呼ばれる)としては、コポリマーそれ自体はもちろん、繊維、フィルム、ストリップ、テープ、リボン、シート、コーティング、成形品などの形態のコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい弾性材料は、繊維である。弾性材料は、硬化されることもあり、硬化されないこともあり、照射されることもあり、照射されないこともあり、および/または架橋されることもあり、架橋されないこともある。
【0031】
「非弾性材料」は、上で定義したような弾性ではない材料、例えば繊維、を意味する。
【0032】
「実質的に架橋されている」および類似の用語は、成形されたまたは製品の形態のコポリマーが、70重量パーセント以下のキシレン抽出物(すなわち、30重量パーセント以上のゲル含量)、好ましくは40重量パーセント以下のキシレン抽出物(すなわち、60重量パーセント以上のゲル含量)を有することを意味する。キシレン抽出物(およびゲル含量)は、ASTM D−2765に従って決定される。
【0033】
「ホモフィル(Homofil)繊維」は、単一ポリマー領域またはドメインを有し、かつ(複合繊維が有するような)他の異質なポリマー領域を一切有さない繊維を意味する。
【0034】
「複合繊維」は、2またはそれ以上の異質なポリマー領域またはドメインを有する繊維を意味する。複合繊維は、コンジュゲート繊維または多成分系繊維としても知られている。それらのポリマーは、通常、互いに異なるが、2またはそれ以上の成分が同じポリマーを含むこともある。それらのポリマーは、その複合繊維の断面を交差して実質的に異なるゾーンに配置されており、通常、その複合繊維の長さ方向に沿って継続的に伸長する。複合繊維の構造は、例えば、鞘/芯配置(1つのポリマーを別のポリマーが包囲している)、サイドバイサイド配置、パイ配置または「海島(island-in-the sea)」配置であり得る。複合繊維は、さらに、米国特許第6,225,243号、同第6,140,442号、同第5,382,400号、同第5,336,552号および同第5,108,820号に記載されている。
【0035】
「メルトブロー繊維」は、溶融した熱可塑性ポリマー組成物を、多数の細い、通常は円形のダイキャピラリーを通して、溶融スレッドまたはフィラメントとして収束高速ガス流(例えば、空気)に押出すことにより形成された繊維であり、前記ガス流は、それらのスレッドまたはフィラメントを低減された直径に細める役割を果たす。それらのフィラメントまたはスレッドをその高速ガス流によって運び、捕集面上に堆積させて、10ミクロンより一般には小さい平均直径を有するランダムに分散された繊維のウェブを形成する。
【0036】
「溶融紡糸繊維」は、少なくとも1つのポリマーを溶融し、その後、その溶融状態の繊維を、ダイの直径(または他の断面形状)より小さい直径(または他の断面形状)に延伸することによって形成された繊維である。
【0037】
「スパンボンド繊維」は、溶融した熱可塑性ポリマー組成物を、紡糸口金の多数の細い、通常は円形のダイキャピラリーを通して、フィラメントとして押出すことにより形成された繊維である。押出されたフィラメントの直径を急速に低下させ、その後、それらのフィラメントを捕集面上に堆積させて、一般に約7マイクロメートルと約30マイクロメートルの間の平均直径を有するランダムに分散された繊維のウェブを形成する。
【0038】
「不織布」は、編地の場合のように識別できるようにではなくランダムに互いに置かれている個々の繊維またはスレッドの構造を有するウェブまたは布を意味する。本発明の実施形態の弾性繊維を利用して、不織布構造はもちろんのこと、非弾性材料との組み合わせでの弾性不織布の複合構造を作製することができる。
【0039】
「糸」は、織布または編地および他の物品を製造する際に使用することができる、撚られたまたは別様に交絡されたフィラメントの連続長を意味する。糸は、被覆されていることもあり、または被覆されていないこともある。カバードヤーンは、別の繊維または材料、一般には天然繊維、例えば綿またはウールの外部被覆の中に少なくとも部分的に巻かれている糸である。
【0040】
「ポリマー」は、同じタイプのモノマーか異なるタイプのモノマーであるかにかかわらず、モノマーを重合させることによって作製された高分子化合物を意味する。総称「ポリマー」は、用語「ホモポリマー」、「コポリマー」、「ターポリマー」ならびに「共重合体」を包含する。
【0041】
「共重合体」は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって作製されたポリマーを意味する。総称「共重合体」は、用語「コポリマー」(通常、2つの異なるモノマーから作製されたポリマーを指すために用いられる)、ならびに用語「ターポリマー」(通常、3つの異なるタイプのモノマーから作製されたポリマーを指すために用いられる)を包含する。これは、4またはそれ以上のタイプのモノマーを重合させることによって製造されたポリマーも包含する。
【0042】
用語「エチレン/α−オレフィン共重合体」は、一般に、エチレンと3個またはそれ以上の炭素原子を有するα−オレフィンとを含むポリマーを指す。好ましくは、エチレンが、その全ポリマーの大部分のモル分率を構成する。すなわち、エチレンは、その全ポリマーの少なくとも約50モルパーセントを構成する。さらに好ましくは、エチレンは、少なくとも約60モルパーセント、少なくとも約70モルパーセント、または少なくとも約80モルパーセントを構成し、その全ポリマーの実質的な残部は、好ましくは3個またはそれ以上の炭素原子を有するα−オレフィンである、少なくとも1つの他のコモノマーを含む。多数のエチレン/オクテンコポリマーについては、好ましい組成は、その全ポリマーの約80モルパーセントより多いエチレン含量、およびその全ポリマーの約10から約15、好ましくは約15から約20モルパーセントのオクテン含量を含む。ある実施形態では、エチレン/α−オレフィン共重合体は、低収率でまたは少量でまたは化学プロセスの副生成物として生成されるものを含まない。エチレン/α−オレフィン共重合体を1またはそれ以上のポリマーとブレンドすることができるが、生成されるエチレン/α−オレフィン共重合体は、実質的に純粋であり、多くの場合、重合プロセスの反応生成物の主成分を構成する。
【0043】
エチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンおよび1またはそれ以上の共重合可能なα−オレフィンコモノマーを重合型で含み、これは、化学的または物理的な特性が異なる2またはそれ以上の重合したモノマー単位の複数のブロックまたはセグメントによって特徴付けられる。すなわち、エチレン/α−オレフィン共重合体は、ブロック共重合体、好ましくはマルチブロック共重合体またはコポリマーである。用語「共重合体」および「コポリマー」は、本明細書では互換的に使用される。ある実施形態において、マルチブロックコポリマーは、次の式:
(AB)n
によって表すことができ、この式中、nは、1、好ましくは1より大きい整数、例えば、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上であり、「A」は、ハードブロックまたはセグメントを表し、ならびに「B」は、ソフトブロックまたはセグメントを表す。好ましくは、AおよびBは、実質的に分枝したまたは実質的に星形の様式とは対照的に、実質的に直鎖状の様式で連結している。他の実施形態において、AブロックおよびBブロックは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布している。言い換えると、これらのブロックコポリマーは、通常、次のような構造を有さない:
AAA――AA−BBB――BB
さらに他の実施形態におけるブロックコポリマーは、通常、異なるコモノマー(単数または複数)を含む第三のブロックタイプを、有さない。さらに他の実施形態では、ブロックAおよびブロックBの各々が、そのブロックの中に実質的にランダムに分布しているモノマーまたはコモノマーを有する。言い換えれば、ブロックAもブロックBも、ブロックの残りとは実質的に異なる組成を有する、別個の組成の2または以上のサブセグメント(またはサブブロック)、例えばチップセグメントを含まない。
【0044】
一般に、マルチブロックポリマーは、様々な量の「ハード」および「ソフト」セグメントを含む。「ハード」セグメントは、エチレンが、そのポリマーの重量を基準にして約95重量パーセントより多い量、好ましくは約98重量パーセントより多い量で存在する、重合単位のブロックを指す。言い換えると、ハードセグメント中のコモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)は、そのポリマーの重量を基準にして約5重量パーセント未満、好ましくは約2重量パーセント未満である。ある実施形態において、ハードセグメントは、すべてまたは実質的にすべてエチレンから成る。一方、「ソフト」セグメントは、そのコモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)が、そのポリマーの重量を基準にして約5重量パーセントより大きい、好ましくは約8重量パーセントより大きい、約10重量パーセントより大きい、または約15重量パーセントより大きい、重合単位のブロックを指す。ある実施形態において、ソフトセグメント中のコモノマー含量は、約20重量パーセントより大きくてもよく、約25重量パーセントより大きくてもよく、約30重量パーセントより大きくてもよく、約35重量パーセントより大きくてもよく、約40重量パーセントより大きくてもよく、約45重量パーセントより大きくてもよく、約50重量パーセントより大きくてもよく、または約60重量パーセントより大きくてもよい。
【0045】
ソフトセグメントは、多くの場合、そのブロック共重合体の総重量の約1重量パーセントから約99重量パーセント、好ましくは、そのブロック共重合体の総重量の約5重量パーセントから約95重量パーセント、約10重量パーセントから約90重量パーセント、約15重量パーセントから約85重量パーセント、約20重量パーセントから約80重量パーセント、約25重量パーセントから約75重量パーセント、約30重量パーセントから約70重量パーセント、約35重量パーセントから約65重量パーセント、約40重量パーセントから約60重量パーセント、または約45重量パーセントから約55重量パーセント、ブロック共重合体の中に存在し得る。逆に言えば、ハードセグメントは、同様の範囲で存在し得る。ソフトセグメントの重量パーセンテージおよびハードセグメントの重量パーセンテージは、DSCまたはNMRから得られるデータを基に計算することができる。こうした方法および計算は、Colin L.P.Shan、Lonnie Hazlittらの名で2006年3月15日に出願され、Dow Global Technolgies Inc.に譲渡された、「Ethylene / α- Olefin Block Interpolymers」と題する、米国特許出願第______号(判明すれば挿入)、代理人ドケット番号385063−999558に開示されている。この特許の開示は、その全体が参照によって本明細書に援用されている。
【0046】
用いられる場合、用語「結晶性」は、示差走査熱量測定(DSC)または同等の技法によって判定したときに一次転移または結晶融点(Tm)を有するポリマーを指す。この用語は、用語「半結晶性」と同義で用いられることがある。用語「非晶質」は、示差走査熱量測定(DSC)または同等の技法によって判定したときに結晶融点を有さないポリマーを指す。
【0047】
用語「マルチブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」は、好ましくは直鎖状に接続されている、2またはそれ以上の化学的に異質な領域またセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマー、すなわち、ペンダント式またはグラフト式でではなく重合されるエチレン性官能基に関して端と端とで接続されている、化学的に区別される単位を含むポリマー、を指す。好ましい実施形態において、それらのブロックは、組み込まれているコモノマーの量およびタイプ、そうしたポリマー組成に起因する密度、結晶性の量、結晶サイズ、立体規則性のタイプもしくは程度(イソタクチックまたはシンジオタクチック)、位置規則性(regio-regularity)もしくは位置変則性(regio-irregularity)、分枝化の量(長鎖分枝化もしくは高分枝化を含む)、均質性、または他の任意の化学的または物理的な特性の点で異なる。マルチブロックコポリマーは、これらのコポリマーの独特な製造プロセスのため、両方の多分散指数(PDIもしくはMw/Mn)、ブロック長分布、および/またはブロック数分布の一意的な分布によって特徴付けられる。さらに具体的には、連続プロセスで製造されたとき、これらのポリマーは、望ましくは、1.7から2.9、好ましくは1.8から2.5、さらに好ましくは1.8から2.2、および最も好ましくは1.8から2.1のPDIを有する。バッチまたはセミバッチプロセスにおいて製造されたとき、これらのポリマーは、1.0から2.9、好ましくは1.3から2.5、さらに好ましくは1.4から2.0、および最も好ましくは1.4から1.8のPDIを有する。
【0048】
後続の説明において、本明細書に開示されているすべての数は、それに伴って「約」または「おおよそ」という語が用いられているかどうかにかかわらず、近似値である。それらは、1パーセント、2パーセント、5パーセント、または時として10から20パーセント変動することがある。下限RLおよび上限RUを有する数値範囲が開示されているときは、必ず、その範囲内に入る任意の数が、具体的に開示される。詳細には、その範囲内の次の数が、具体的に開示される:R=RL+k*(RU−RL)[この式中、kは、1パーセント刻みで1パーセントから100パーセントまでの範囲にわたる変数であり、すなわち、kは、1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、…、50パーセント、51パーセント、52パーセント、…、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、または100パーセントである]。さらに、上で定義したように2つの数Rによって定義される任意の数値範囲も、具体的に開示される。特定の参考文献(例えば、特許または雑誌の記事)に言及されている場合、そうした参考文献は、その全体が本明細書に参照によって援用されていることを(それに伴ってこうした表現が用いられているかどうかにかかわらず)理解しなければならない。
【0049】
本発明の実施形態は、独自の特性を有する新規エチレン/α−オレフィン共重合体から得ることができる、またはユニークな特性を有する新規エチレン/α−オレフィン共重合体を含む繊維、ならびにそうした繊維から製造される布および他の製品を提供する。本繊維は、良好な耐摩耗性;低い摩擦係数;高い上限使用温度;高い回復/収縮力;低い応力緩和(高および低温);ソフトストレッチ;高い破断点伸度;不活性;耐薬品性;ならびに/または耐UV性を有し得る。本繊維は、比較的高い紡糸速度および低温で溶融紡糸することができる。加えて、本繊維は、あまり粘着性でなく、その結果、より良好な巻出動作およびより良好な保管安定性が得られ、ならびに本繊維から製造した布は、実質的にローピング(すなわち、繊維集束)を有さない。本繊維は、より高い紡糸速度で紡糸することができるため、繊維の生産スループットが高い。こうした繊維は、広い形成領域および広い加工領域も有する。
【0050】
エチレン/α−オレフィン共重合体
本発明の実施形態において用いられるエチレン/α−オレフィン共重合体(「本発明の共重合体」、「本発明のポリマー」とも呼ばれる)は、エチレンおよび1以上の共重合可能なα−オレフィンコモノマーを重合化された形態で含み、化学的または物理的な特性が異なる2つ以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック共重合体)、好ましくはマルチブロックコポリマーによって特徴付けられる。このエチレン/α−オレフィン共重合体は、下に記載されるような1つまたはそれ以上の態様によって特徴付けられる。
【0051】
一態様では、本発明の実施形態で用いられるエチレン/α−オレフィン共重合体は、約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(グラム/立方センチメートル)を有し、この変数の数値は:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2、そして好ましくは、
Tm≧−6288.1+13141(d)−6720.3(d)2、そして好ましくは、
Tm≧858.91−1825.3(d)+1112.8(d)2
の関係に相当する。
【0052】
このような融点/密度の関係は、図1に図示される。融点が密度とともに低下するエチレン/α−オレフィンの従来のランダムコポリマーとは異なり、特に密度が約0.87g/cc〜約0.95g/ccである場合、本発明の共重合体(ひし形で示す)は、密度とは実質的に独立した融点を示す。例えば、このようなポリマーの融点は、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccにわたる場合、約110℃〜約130℃の範囲である。ある実施形態では、このようなポリマーの融点は、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccにわたる場合、約115℃〜約125℃の範囲である。
【0053】
別の態様では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、重合化された形態で、エチレンおよび1以上のα−オレフィンを含み、そして最高の示差走査熱量測定(「DSC」)ピーク温度から最高の結晶分析分別(Crystallization Analysis Fractionation)(「CRYSTAF」)ピークの温度を減算した温度として規定されるΔT(℃)および融解熱ΔH(J/g)によって特徴付けられ、そしてΔTおよびΔHの数値が、ΔHが130J/g以下の場合、以下の関係:
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、そして好ましくは、
ΔT≧−0.1299(ΔH)+64.38、そしてより好ましくは、
ΔT≧−0.1299(ΔH)+65.95
を満たす。さらに、ΔTは、ΔHが130J/gより大きい場合、48℃以上である。CRYSTAFピークは、累積ポリマーのうちの少なくとも5%を用いて決定され(すなわち、このピークは、累積ポリマーの少なくとも5%に相当するはずである)、そしてこのポリマーの5パーセント未満が同定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度が30℃であり、そしてΔHは、J/gである融解熱の数値である。より好ましくは、最高のCRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも10パーセントを含む。図2は、本発明のポリマーのプロットされたデータ、および比較例を示す。積分されたピーク面積およびピーク温度は、機器製造業者によって供給されるコンピュータ図形作成プログラムによって算出される。ランダムエチレン・オクテン比較例について示される対角線は、方程式ΔT=−0.1299(ΔH)+62.81に相当する。
【0054】
さらに別の態様では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、昇温溶離分別法(Temperature Rising Elution Fractionation)(「TREF」)を用いて分画される場合に40℃と130℃との間で溶離する分子画分を有し、この同じ温度の間で溶離する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも好ましくは少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも10パーセント高いコモノマーモル含量を有するという点で特徴付けられ、ここで、この比較対象となるランダムエチレン共重合体は、同じコモノマー(単数または複数)を有し、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)をそのブロック共重合体のものから10パーセント以内に有する。好ましくは、この比較対象となる共重合体のMw/Mnはまた、そのブロック共重合体のMw/Mnから10パーセント以内にあり、そして/またはこの比較対象となる共重合体は、そのブロック共重合体のMw/Mnから10パーセント以内にMw/Mnを有する。
【0055】
さらに別の態様では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復Re(パーセント)によって特徴付けられ、かつ密度d(グラム/立方センチメートル)を有し、このReおよびdの数値は、エチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を有さない場合、以下の関係、
Re>1481−1629(d);そして好ましくは、
Re≧1491−1629(d);そしてさらに好ましくは、
Re≧1501−1629(d);そしてよれより好ましくは、
Re≧1511−1629(d)
を満たす。
【0056】
図3は、特定の本発明の共重合体および従来のランダムコポリマーから作製された未延伸フィルムについての弾性回復率に対する密度の効果を示す。同じ密度について、本発明の共重合体は、実質的により高い弾性回復率を有する。
【0057】
ある実施形態では、エチレン/α−オレフィン共重合体は、10MPaを超える引張強度、好ましくは11MPa以上の引張強度、より好ましくは13Mpa以上の引張強度、および/または、11cm/分のクロスヘッド分離速度で、少なくとも600パーセント、より好ましくは少なくとも700パーセント、特に好ましくは少なくとも800パーセント、そして最も高度に好ましくは少なくとも900パーセントの破断点伸度を有する。
【0058】
他の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、(1)1〜50、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10という貯蔵弾性率G’(25℃)/G’(100℃);および/または(2)80パーセント未満、好ましくは70パーセント未満、特に60パーセント未満、50パーセント未満、または40パーセント未満という70℃圧縮永久ひずみを、0パーセントの圧縮永久ひずみまで下がって、有する。
【0059】
さらに他の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、80パーセント未満、70パーセント未満、60パーセント未満、または50パーセント未満、という70℃圧縮永久ひずみを有する。好ましくは、共重合体の70℃圧縮永久ひずみは、40パーセント未満、30パーセント未満、20パーセント未満であり、そして約0パーセントまで下がってもよい。
【0060】
ある実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、85J/g未満の融解熱、および/または100ポンド/フィート2(4800Pa)以下、好ましくは50ポンド/フィート2(2400Pa)以下、特に、5ポンド/フィート2(240Pa)以下、そして0ポンド/フィート2(0Pa)程度のペレットブロッキング強度を有する。
【0061】
他の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、重合型で、少なくとも50モルパーセントのエチレンを含み、そして80パーセント未満、好ましくは70パーセント未満、または60パーセント未満、最も好ましくは40〜50パーセント、そしてゼロパーセント近くまで下がるという70℃圧縮永久ひずみを有する。
【0062】
ある実施形態では、このマルチブロックコポリマーは、ポアソン分布よりもシュルツ・フローリー分布にあてはまるPDIを保有する。このコポリマーはさらに、多分散性ブロック分布と多分散性ブロックサイズ分布との両方を有し、かつブロック長の最確分布を保有すると特徴付けられる。好ましいマルチブロックコポリマーは、末端ブロックを含めて、4以上のブロックまたはセグメントを含むものである。さらに好ましくは、このコポリマーは、末端ブロックを含めて、少なくとも5、10もしくは20のブロックまたはセグメントを含む。
【0063】
コモノマー含量は、任意の適切な技術を用いて測定され得、好ましくは核磁気共鳴(「NMR」)分光法に基づく技術による。さらに、比較的広範なTREF曲線を有するポリマーまたはポリマーの混合物については、ポリマーは望ましくは、TREFを用いて、各々が10℃以下の溶離温度範囲を有する画分に最初に分画される。すなわち、各々の溶離画分は、10℃以下という収集温度領域(ウィンドウ)を有する。この技術を用いて、このようなブロック共重合体は、比較対象となる共重合体の対応する画分よりも高モルのコモノマー含量を有する画分を、少なくとも1つ有する。
【0064】
図4はエチレンおよび1−オクテンのブロック共重合体の実施形態をグラフ表示しており、ここではいくつかの比較対象となるエチレン/1−オクテン共重合体(ランダムコポリマー)についてのコモノマー含量対TREF溶離温度のプロットが、(−0.2013)T+20.07(実線)に相当する線に適合する。この式(−0.2013)T+21.07についての線は、破線で示される。本発明のいくつかのブロックエチレン/1−オクテン共重合体(マルチブロックコポリマー)の画分のコモノマー含量も示される。ブロック共重合体画分の全てが、同等の溶離温度でいずれの線より有意に高い1−オクテン含量を有する。この結果は、本発明の共重合体の特徴であって、結晶性および非晶質の両方の性質を有する、ポリマー鎖内の分化型のブロックの存在に起因すると考えられる。
【0065】
図5は、実施例5および下で考察される比較例Fについてのポリマー画分のTREF曲線およびコモノマー含量をグラフ表示する。両方のポリマーについて40〜130℃、好ましくは60℃〜95℃で溶離するピークを、各々の部分が10℃未満の温度範囲にわたって溶離する3つの部分に分画する。実施例5についての実際のデータは三角で示す。異なるコモノマーを含有する共重合体について適切な検量線を作成することができ、それが、同じモノマーの比較の共重合体、好ましくはメタロセンまたは他の均一系触媒組成物を用いて製造されるランダムコポリマーから得られたTREF値とフィッティングさせる比較として用いられる線であり得ることは、当業者には理解され得る。本発明の共重合体は、同じTREF溶離温度で検量線から決定された値より大きい、好ましくは、少なくとも5パーセント大きい、より好ましくは少なくとも10パーセント大きい、コモノマーのモル含量で特徴付けられる。
【0066】
上記の態様および本明細書に記載される特性に加えて、本発明のポリマーは、1以上のさらなる特徴によって特徴付けられ得る。一態様では、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、好ましくは、エチレンおよび1以上の共重合性コモノマーを重合化された形態で含み、化学的または物理的な特性において異なる2またはそれ以上の重合モノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック化された共重合体)によって特徴付けられ、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。このブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画した場合に40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、この画分が、同じ温度の間に溶離する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも高いコモノマーモル含量、好ましくは少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも10、15または25パーセント高いコモノマーモル含量を有するという点で特徴づけられる。ここで、この比較対象となるランダムエチレン共重合体は、同じコモノマー(単数または複数)(好ましくは、これは同じコモノマー(単数または複数)である)およびメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)をそのブロック化された共重合体のものから10パーセント以内に含む。好ましくは、この比較対象となる共重合体のMw/Mnはまた、ブロック化された共重合体のMw/Mnから10パーセント以内であるか、そして/またはこの比較対象となる共重合体は、ブロック化された共重合体の総コモノマー含量から10パーセント以内の総コモノマー含量を有する。
【0067】
好ましくは、上記の共重合体は、エチレンおよび少なくとも1つのα−オレフィンの共重合体であり、特に、それらの共重合体は、約0.855〜約0.935g/cm3の全体ポリマー密度を有し、そしてより詳細には、約1モルパーセントを超えるコモノマーを有するポリマーについては、このブロック化された共重合体は、40〜130℃間に溶離するTREF画分のコモノマー含量を、量(−0.1356)T+13.89以上、より好ましくは量(−0.1356)T+14.93以上、そして最も好ましくは、量(−0.2013)T+21.07以上有し、ここでTは、℃で測定した、比較されているTREF画分のピークATREF溶離温度の数値である。
【0068】
好ましくは、エチレンおよび少なくとも1つのα−オレフィンの上記の共重合体、特に、0.855〜約0.935g/cm3というポリマー全体密度を有する共重合体について、そしてさらに詳細には、約1モルパーセントを超えるコモノマーを有するポリマーについて、ブロック化された共重合体は、40℃〜130℃間に溶離するTREF画分のコモノマー含量を、量(−0.2013)T+20.07以上、より好ましくは量(−0.2013)T+21.07以上有し、ここでTは、℃で測定した、比較されているTREF画分のピーク溶離温度の数値である。
【0069】
さらに別の態様では、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、好ましくは重合化された形態でエチレンおよび1以上の共重合性コモノマーを含み、化学的または物理的な特性が異なる2以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック化された共重合体)によって特徴付けられ、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。このブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画した場合に40℃〜130℃間に溶離する分子画分を有し、少なくとも約6モルパーセントのコモノマー含量を有するあらゆる画分が約100℃より大きい融点を有するという点で特徴付けられる。約3モルパーセント〜約6モルパーセントのコモノマー含量を有する画分については、あらゆる画分が約110℃以上というDSC融点を有する。より好ましくは、このポリマー画分は、少なくとも1モルパーセントのコモノマーを有し、式:
Tm≧(−5.5926)(画分中のコモノマーのモルパーセント)+135.90
に相当するDSC融点を有する。
【0070】
さらに別の態様では、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、好ましくは、重合化された形態でエチレンおよび1以上の共重合性コモノマーを含み、化学的または物理的な特性が異なる2以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック化された共重合体)によって特徴付けられ、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。このブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画した場合に40℃〜130℃間に溶離する分子画分を有し、約76℃以上のATREF溶離温度を有するあらゆる画分が、式:
融解熱(J/gm)≦(3.1718)(ATREF溶離温度(℃))−136.58
に相当する、DSCによって測定された融解エンタルピー(融解熱)を有するという点で、特徴付けられる。
【0071】
本発明のブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画された場合に40℃〜130℃間に溶離する分子画分を有し、40℃と約76℃未満との間のATREF溶離温度を有するあらゆる画分が、式:
融解熱(J/gm)≦(1.1312)(ATREF溶離温度(℃))+22.97
に相当する、DSCによって測定された融解エンタルピー(融解熱)を有するという点で特徴付けられる。
【0072】
赤外線検出器によるATREFピークのコモノマー組成測定
TREFピークのコモノマー組成は、Polymer Char,Valencia,Spain(http://www.polymerchar.com/)から入手可能なIR4赤外検出器を用いて測定され得る。
【0073】
検出器の「組成モード」は、測定センサー(CH2)および組成センサー(CH3)を装備しており、これは2800〜3000cm−1の領域における狭帯域固定型赤外線フィルタである。この測定センサーは、ポリマー上のメチレン(CH2)カーボン(これは、溶液中のポリマー濃度に直接関係する)を検出するが、組成センサーは、ポリマーのメチル(CH3)基を検出する。組成シグナル(CH3)を測定シグナル(CH2)によって除算した算術比は、溶液中の測定されるポリマーのコモノマー含量の影響を受けやすく、その応答は、公知のエチレンα−オレフィンコポリマー標準を用いて較正される。
【0074】
ATREF装置を用いる場合、検出器によって、TREFプロセスの間に溶離されたポリマーの濃度(CH2)および組成(CH3)シグナルの応答の両方が得られる。ポリマー特異的な較正は、コモノマー含量が分かっている(好ましくはNMRによって測定される)を有するポリマーについてCH3対CH2の面積比を測定することによって作成され得る。ポリマーのATREFピークのコモノマー含量は、個々のCH3およびCH2応答に対して面積比の比較較正を適用すること(すなわち、面積比CH3/CH2 対 コモノマー含量)によって推定され得る。
【0075】
ピーク面積は、適切なベースラインを適用してTREFクロマトグラムからの個々のシグナル応答を積分した後、半値全幅(FWHM)計算を用いて算出することができる。この半値全幅算出は、ATREF赤外検出器からのメチル対メチレンの応答面積比[CH3/CH2]の比に基づき、この最も高い(最高の)ピークはベースラインから特定され、次いでFWHM面積が決定される。ATREFピークを用いて測定される分布については、FWHM面積は、T1とT2との間の曲線下面積として規定され、ここでT1およびT2は、ピーク高さを2で割ること、次にATREF曲線の左部分および右部分を横切る、ベースラインに対して水平な線を引くことによって、ATREFピークの左右に対してポイント測定される。
【0076】
このATREF赤外方法においてポリマーのコモノマー含量を測定するための赤外線分光法の適用は、原理的には、以下の引用文献:Markovich,Ronald P.;Hazlitt,Lonnie G.;Smith,Linley;「Development of gel-permeation chromatography-Fourier transform infrared spectroscopy for characterization of ethylene-based polyolefin copolymers」.Polymeric Materials Science and Engineering(1991),65,98-100;およびDeslauriers,P.J.;Rohlfing,D.C.;Shieh,E.T.;「Quantifying short chain branching microstructures in ethylene-1-olefin copolymers using size exclusion chromatography and Fourier transform infrared spectroscopy(SEC-FTIR)」,Polymer(2002),43,59-170、に記載されるようなGPC/FTIRシステムのものと同様であり、その両方の引用文献とも、その全体が本明細書において参照によって援用される。
【0077】
他の実施形態では、本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体は、ゼロより大きくかつ約1.0までである平均ブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnによって特徴付けられる。この平均ブロックインデックスABIは、5℃の増分で、20℃〜110℃の分取TREFで得られたポリマー画分の各々についてのブロックインデックス(「BI」)の重量平均であり:
ABI=Σ(wiBIi)
ここでBIiは、分取TREFで得られた本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体のi番目の画分についてのブロックインデックスであり、そしてwiは、i番目の画分の重量パーセンテージである。
【0078】
各々のポリマー画分について、BIは、以下の2つの式(その両方とも同じBI値を与える)のうちの1つによって規定され:
BI=(1/TX−1/TXO)/(1/TA−1/TAB)またはBI=−(LnPX−LnPXO)/(LnPA−LnPAB)
ここでTxはi番目の画分についての分取ATREF溶離温度(好ましくはケルビン温度で表される)であり、Pxは、i番目の画分のエチレンモル画分であって、上記のようなNMRまたはIRによって測定され得る。PABは、エチレン/α−オレフィン共重合体全体のエチレンモル分率(前の画分)であり、これもNMRまたはIRによって測定され得る。TAおよびPAは、純粋な「ハードセグメント(hard segments)」(これは共重合体の結晶セグメントをいう)についてのATREF溶離温度およびエチレンモル画分である。一次の近似として、このTAおよびPAの値は、この「ハードセグメント」についての実測値を得ることができない場合、高密度ポリエチレン・ホモポリマーについての値に設定される。本明細書において行われる計算については、TAは372°Kであって、PAは1である。
【0079】
TABは、同じ組成であって、PABというエチレンモル画分を有するランダムコポリマーについてのATREF温度である。TABは、以下の式:
LnPAB=α/TAB+β
から計算されてもよく、
ここでαおよびβは多数の公知のランダムエチレンコポリマーを用いる検量によって決定され得る2つの定数である。αおよびβは、装置間で変化し得ることに注意すべきである。さらに、目的のポリマー組成を用いて、そしてそれらの画分と同様の分子量範囲に関しても、それら自体の検量線を作成する必要がある。わずかな分子量効果がある。この検量線が、類似の分子量範囲から得られる場合、このような効果は、本質的に無視できる。ある実施形態では、ランダムエチレンコポリマーは、以下の関係:
LnP=−237.83/TATREF+0.639
を満たし、
Txoは、同じ組成であって、PXというエチレンモル画分を有するランダムコポリマーについてのATREF温度である。TXOは、LnPX=α/TXO+βから算出されてもよい。逆に、PXOは、同じ組成であって、LnPXO=α/TX+βから算出され得る、TXというATREF温度を有するランダムコポリマーについてのエチレンモル画分である。
【0080】
一旦、各々の分取TREF画分についてブロックインデックス(BI)が得られれば、ポリマー全体についての重量平均ブロックインデックスABIが算出され得る。ある実施形態では、ABIは、ゼロより大きいが、約0.3未満、または約0.1〜約0.3である。他の実施形態では、ABIは、約0.3より大きく約1.0までである。好ましくは、ABIは、約0.4〜約0.7、約0.5〜約0.7、約0.6〜約0.9の範囲であるべきである。ある実施形態では、ABIは、約0.3〜約0.9、約0.3〜約0.8、または約0.3〜約0.7、約0.3〜約0.6、約0.3〜約0.5、または約0.3〜約0.4の範囲である。他の実施形態では、ABIは、約0.4〜約1.0、約0.5〜約1.0、または約0.6〜約1.0、約0.7〜約1.0、約0.8〜約1.0、または約0.9〜約1.0の範囲である。
【0081】
本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体の別の特徴は、この本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体が、分取TREFによって得られ得る少なくとも1つのポリマー画分を含み、この画分は約0.1より大きくかつ約1.0までのブロックインデックス、約1.3より大きい分子量分布MW/Mnを有する。ある実施形態では、このポリマー画分は、約0.6より大きくかつ約1.0まで、約0.7より大きくかつ約1.0まで、約0.8より大きくかつ約1.0まで、または約0.9より大きくかつ約1.0までのブロックインデックスを有する。他の実施形態では、このポリマー画分は、約0.1より大きくかつ約1.0まで、約0.2より大きくかつ約1.0まで、約0.3より大きくかつ約1.0まで、約0.4より大きくかつ約1.0まで、または約0.4より大きくかつ約1.0までのブロックインデックスを有する。さらに他の実施形態では、このポリマー画分は、約0.1より大きくかつ約0.5まで、約0.2より大きくかつ約0.5まで、約0.3より大きくかつ約0.5まで、または約0.4より大きくかつ約0.5までのブロックインデックスを有する。さらに他の実施形態では、このポリマー画分は、約0.2より大きくかつ約0.9まで、約0.3より大きくかつ約0.8まで、約0.4より大きくかつ約0.7まで、または約0.5より大きくかつ約0.6までのブロックインデックスを有する。
【0082】
エチレンおよびα−オレフィンのコポリマーについては、本発明のポリマーは好ましくは、
(1)少なくとも1.3、より好ましくは少なくとも1.5、少なくとも1.7、または少なくとも2.0、そして最も好ましくは少なくとも2.6、5.0という最大値まで、より好ましくは3.5の最大値まで、そして特に2.7という最大値までのPDI;
(2)80J/g以下の融解熱;
(3)少なくとも50重量パーセントのエチレン含量;
(4)−25℃未満、より好ましくは−30℃未満というガラス転移温度Tg、および/または
(5)唯一のTm
を保有する。
【0083】
さらに、本発明のポリマーは、log(G’)が100℃の温度で400kPa以上、好ましくは1.0MPa以上であるような貯蔵弾性率G’を単独で、または本明細書に開示される任意の他の特性と組み合わせて有することができる。さらに、本発明のポリマーは、0〜100℃の範囲で温度の関数として比較的平坦な貯蔵弾性率を保有し(図6に図示される)、これは、ブロックコポリマーの特徴であるが、オレフィンコポリマー、特に、エチレンおよび1またはそれ以上のC3−8脂肪族α−オレフィンのコポリマーについては今まで知られていない。((この文脈での「比較的平坦な」という用語は、50と100℃の間、好ましくは0℃と100℃の間でのlogG’(パスカル)の減少が、1ケタ未満であることを意味する)。)。
【0084】
本発明の共重合体は、少なくとも90℃の温度で1mmという熱機械分析針入深度、および3kpsi(20MPa)〜13kpsi(90MPa)という曲げ弾性率によってさらに特徴付けられ得る。あるいは、本発明の共重合体は、少なくとも104℃の温度で1mmという熱機械分析針入深度、そして少なくとも3kpsi(20MPa)という曲げ弾性率を有し得る。それらは、90mm3未満という耐摩耗性(または容積減少)を有することで特徴づけられ得る。図7は、他の公知のポリマーと比較した場合の、本発明のポリマーについてのTMA(1mm)対屈曲弾性率を示す。本発明のポリマーは有意に、他のポリマーよりもずっとよい可撓性−耐熱性のバランスを有する。
【0085】
さらに、エチレン/α−オレフィン共重合体は、0.01〜2000g/10分、好ましくは0.01〜1000g/10分、さらに好ましくは0.01〜500g/10分、そして特に0.01〜100g/10分というメルトインデックスI2を有し得る。特定の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、0.01〜10g/10分、0.5〜50g/10分、1〜30g/10分、1〜6g/10分または0.3〜10g/10分というメルトインデックスI2を有する。特定の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン・ポリマーのメルトインデックスは、1g/10分、3g/10分または5g/10分である。
【0086】
このポリマーは、1,000g/モル〜5,000,000g/モル、好ましくは1,000g/モル〜1,000,000g/モル、より好ましくは10,000g/モル〜500,000g/モル、そして特に10,000g/モル〜300,000g/モルの分子量MWを有し得る。本発明のポリマーの密度は、0.80〜0.99g/cm3であり得、そして好ましくは、エチレン含有ポリマーについては0.85g/cm3〜0.97g/cm3であり得る。特定の実施形態では、このエチレン/α−オレフィンポリマーの密度は、0.860〜0.925g/cm3または0.867g/cm3〜0.910g/cm3におよぶ。
【0087】
このポリマーを作製するプロセスは、以下の特許出願に開示されている:2004年3月17日出願の米国仮出願第60/553,906号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662,937号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662,939号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/5662938号;2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008916号;2005年3月17日出願のPCT出願第2005/008915号;および2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008917号;これらの全てはその全体が本明細書において参照によって援用される。例えば、1つのこうした方法は、エチレンおよび場合によっては1つまたはそれ以上のエチレン以外の付加重合可能なモノマーを付加重合条件下で触媒組成物と接触させることを含み:
【0088】
この触媒組成物は、
(A)高いコモノマー組み込みインデックスを有する第一のオレフィン重合触媒、
(B)触媒(A)のコモノマー組み込みインデックスの90パーセント未満、好ましくは50パーセント未満、最も好ましくは5パーセント未満のコモノマー組み込みインデックスを有する第二のオレフィン重合触媒、および
(C)可逆的連鎖移動剤(chain shuttling agent)
を併せることによって得られる混合物または反応生成物を含有する。
【0089】
代表的な触媒および可逆的連鎖移動剤は以下のとおりである。
触媒(A1)は、WO03/40195、2003US0204017、USSN10/429,024(2003年5月2日出願)、およびWO04/24740の教示に従って調製した、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−イソプロピルフェニル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【化1】
【0090】
触媒(A2)は、WO03/40195、2003US0204017、USSN10/429,024(2003年5月2日出願)、およびWO04/24740の教示に従って調製した、[N−2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−メチルフェニル)(1,2−フェニレン−(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【化2】
【0091】
触媒(A3)は、ビス[N,N’’’−(2,4,6−トリ(メチルフェニル)アミド)エチレンジアミン]ハフニウムジベンジルである。
【化3】
【0092】
触媒(A4)は、US−A−2004/0010103の教示に実質的に従って調製された、ビス((2−オキソイル−3−(ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル)−5−(メチル)フェニル)−2−フェノキシメチル)シクロヘキサン−1,2−ジイルジルコニウム(IV)ジベンジルである。
【化4】
【0093】
触媒(B1)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジル
【化5】
である。
【0094】
触媒(B2)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(2−メチルシクロヘキシル)−イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジル
【化6】
である。
【0095】
触媒(C1)は、米国特許第6,268,444号の教示に実質的に従って調製された、(t−ブチルアミド)ジメチル(3−N−ピロリル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウムジメチル
【化7】
である。
【0096】
触媒(C2)は、US−A−2003/004286の教示に実質的に従って調製された、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウムジメチル
【化8】
である。
【0097】
触媒(C3)は、US−A−2003/004286の教示に実質的に従って調製された、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,8a−η−s−インダセン−1−イル)シランチタニウムジメチル
【化9】
である。
【0098】
触媒(D1)は、Sigma−Aldrichから入手可能なビス(ジメチルジシロキサン)(インデン−1−イル)塩化ジルコニウム
【化10】
である。
【0099】
可逆的移動剤(shuttling agent)。使用される可逆的移動剤としては、ジエチル亜鉛、ジ(i−ブチル)亜鉛、ジ(n−ヘキシル)亜鉛、トリエチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリエチルガリウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)、n−オクチルアルミニウムジ(ピリジン−2−メトキシド)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(n−ペンチル)アミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド、n−オクチルアルミニウムジ(エチル(1−ナフチル)アミド)、エチルアルミニウムビス(t−ブチルジメチルシロキシド)、エチルアルミニウム(ジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、エチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)が挙げられる。
【0100】
好ましくは、前述のプロセスは、相互に交換できない複数の触媒を用いる、ブロックコポリマー、特にマルチブロックコポリマー、好ましくは2以上のモノマーの線状マルチブロックコポリマー、さらに詳細にはエチレンおよびC3−20オレフィンまたはシクロオレフィンの線状マルチブロックコポリマー、そして最も詳細にはエチレンおよびC4−20α−オレフィンの線状マルチブロックコポリマーを形成するための連続溶液プロセスの形態をとる。すなわち、これらの触媒は化学的に別個である。連続的な溶液重合条件のもとで、このプロセスは理想的には、高いモノマー変換でのモノマーの混合物の重合に適している。これらの重合条件のもとで、可逆的連鎖移動剤から触媒への可逆的移動(shuttling)は、鎖成長に比較して有先され、そしてマルチブロックコポリマー、詳細には線状マルチブロックコポリマーが高い効率で形成される。
【0101】
本発明の共重合体は、逐次的モノマー付加、流動触媒、アニオンリビング重合技術またはカチオンリビング重合技術により調製された、従来のランダムコポリマー、ポリマーの物理的混合物、およびブロックコポリマーとは区別することができる。詳細には、同等の結晶性または弾性率で同じモノマーおよびモノマー含量のランダムコポリマーと比較して、本発明の共重合体は、融点で測定した場合にはより優れた(より高い)耐熱性を、動的機械分析によって判定した場合にはより高いTMA針入温度、より高い高温引張強度、および/またはより高い高温ねじり貯蔵弾性率(torsion storage modulus)を有する。同じモノマーおよびモノマー含量を含有するランダムコポリマーと比較して、本発明の共重合体は、より低い圧縮永久ひずみ(特に、高温で)、より低い応力緩和、より高い耐クリープ性、より高い引裂強度、より高い耐ブロッキング性、より高い結晶化(固化)温度に起因する迅速な硬化、より高い回復(特に高温で)、より良好な耐摩耗性、より高い収縮力、ならびにより良好な油および充填剤の受け入れを有する。
【0102】
本発明の共重合体はまた、固有の結晶化および分枝分布関係を示す。すなわち、本発明の共重合体は、特に、同じモノマーおよびモノマーレベルを含むランダムコポリマーまたは等価の総合密度でのポリマーの物理的ブレンド、例えば、高密度ポリマーと低密度コポリマーとのブレンドと比較して、CRYSTAFおよびDSCを用いて測定した融解熱の関数として最高のピーク温度の間に比較的大きな差を有する。本発明の共重合体のこの固有の特徴は、ポリマーの主鎖内のブロックにおけるコモノマーの独特の分布に起因すると考えられる。詳細には、本発明の共重合体は、異なるコモノマー含量(ホモポリマーブロックを含む)の交互のブロックを含んでもよい。本発明の共重合体はまた、異なる密度またはコモノマー含量のポリマーブロックの数および/またはブロックサイズの分布を含んでもよく、これは、シュルツ−フローリー(Schultz-Flory)型の分布である。さらに、本発明の共重合体はまた、固有のピーク融点および結晶化温度プロフィールを有し、これは実質的には、ポリマーの密度、弾性率(modulus)および形態とは独立している。好ましい実施形態では、ポリマーの微結晶性秩序は、特徴的な球晶およびラメラを示し、これは1.7未満、または1.5未満、1.3未満までのPDI値においてでさえ、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーとは区別できる。
【0103】
さらに、本発明の共重合体は、ブロッキネス(blockiness)の程度またはレベルに影響する技術を用いて調製され得る。すなわち、コモノマーの量および各々のポリマーブロックまたはセグメントの長さは、触媒および可逆的移動剤の比およびタイプ、ならびに重合の温度および他の重合の変数を制御することによって変更され得る。この現象の驚くべき利点は、ブロッキネスの程度が増大されるほど、得られたポリマーの光学的特性、引裂強度および高温回復の特性が改善されるという発見である。詳細には、曇りは減少するが、透明度、引裂強度および高温回復の特性は、ポリマーにおけるブロックの平均数の増大につれて増大する。所望の連鎖移送能力(高い可逆的移動(shuttling)速度、低レベルの連鎖停止を伴う)を有する可逆的移動剤および触媒の組み合わせを選択することによって、他の形態のポリマー停止は効率的に抑制される。従って、β水素化物脱離が、本発明の実施形態によるエチレン/α−オレフィンコモノマー混合物の重合でほとんど観察されず、そして得られた結晶ブロックは高度に、または実質的に完全に、線状であり、長鎖分枝をほとんどまたはまったく保有しない。
【0104】
高結晶性連鎖末端を有するポリマーは、本発明に実施形態によって選択的に調製され得る。弾性用途では、非結晶性のブロックで終わるポリマーの相対量を減少させることによって、結晶性領域に対する分子間希薄化効果が減少される。この結果は、水素または他の可逆的連鎖停止因子に対して適切な応答を有する可逆的連鎖移動剤および触媒を選択することによって得ることができる。詳細には、高結晶性ポリマーを生成する触媒が、(例えば、より高いコモノマー組み込み、レジオ−エラー(regio-error)、またはアタクチックポリマー形成によって)より少ない結晶性ポリマーセグメントを生成する原因となる触媒よりも、(例えば、水素の使用により)連鎖停止を受けやすい場合には、高結晶性ポリマーセグメントが、そのポリマーの末端部分を優先的に占める。得られる末端基が結晶性であるだけでなく、高結晶性のポリマー形成触媒部位は、停止の際にポリマー形成の再開始にもう一度利用可能である。従って、最初に形成されたポリマーは、別の高結晶性のポリマーセグメントである。従って、得られたマルチブロックコポリマーの両方の末端は優先的に高度に結晶性である。
【0105】
本発明の実施形態で用いられるエチレンα−オレフィン共重合体は好ましくは、少なくとも1つのC3−C20α−オレフィンを有するエチレンの共重合体である。エチレンおよびC3−C20α−オレフィンのコポリマーが特に好ましい。この共重合体はさらに、C4−C18ジオレフィンおよび/またはアルケニルベンゼンを含んでもよい。エチレンとの重合のために有用な適切な不飽和コモノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和モノマー、共役または非共役ジエン、ポリエン、アルケニルベンゼンなどが挙げられる。このようなコモノマーの例としては、C3−C20α−オレフィン、例えば、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどが挙げられる。1−ブテンおよび1−オクテンが特に好ましい。他の適切なモノマーとしては、スチレン、ハロ−またはアルキル−置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、およびナフテン類(naphthenics)(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセンおよびシクロオクテン)が挙げられる。
【0106】
エチレン/α−オレフィン共重合体が好ましいポリマーであるが、他のエチレン/オレフィンポリマーも用いられ得る。本明細書において用いられるオレフィンとは、少なくとも1つの炭素間二重結合を有する不飽和の炭化水素系化合物のファミリーをいう。触媒の選択に依存して、オレフィンは、本発明の実施形態で用いられ得る。好ましくは、適切なオレフィンは、ビニル不飽和を含むC3−C20脂肪族および芳香族化合物、ならびに環状化合物、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、およびノルボルネンであって、これには、限定はしないが、C1−C20ヒドロカルビル基またはシクロヒドロカルビル基で5位および6位で置換されたノルボルネンが挙げられる。このようなオレフィンの混合物、およびこのようなオレフィンとC4−C40ジオレフィン化合物との混合物も挙げられる。
【0107】
オレフィンモノマーの例としては、限定はしないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンおよび1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン、4−ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、エチルイデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、C4−C40ジエンが挙げられ、これには限定はしないが、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、他のC4−C40α−オレフィンなどが挙げられる。特定の実施形態では、α−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンまたはそれらの組み合わせである。ビニル基を含む任意の炭化水素が本発明の実施形態で用いられてもよいが、実際的な問題、例えば、モノマーの有効性、コスト、および得られたポリマーから未反応のモノマーを都合よく除去する能力は、このモノマーの分子量が大きくなり過ぎると、さらに問題となり得る。
【0108】
本明細書に記載される重合プロセスは、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレンなどのモノビニリデン芳香族モノマーを含むオレフィンポリマーの生成に十分適している。詳細には、エチレンおよびスチレンを含む共重合体は、本明細書の教示に従うことによって調製され得る。必要に応じて、エチレン、スチレンおよびC3−C20αオレフィンを含み、必要に応じてC4−C20ジエンを含み、改善された特性を有するコポリマーが調製され得る。
【0109】
適切な非共役ジエンモノマーは、6〜15個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状炭化水素ジエンであり得る。適切な非共役ジエンの例としては、限定はしないが、直鎖非環式ジエン、例えば、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、分枝鎖非環式ジエン(例えば、5−メチル−1,4−ヘキサジエン;3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン;3,7−ジメチル−1,7−オクタジエンならびにジヒドロミリセンおよびジヒドロオシネンの混合異性体)、単環脂環式ジエン(例えば、1,3−シクロペンタジエン;1,4−シクロヘキサジエン;1,5−シクロオクタジエンおよび1,5−シクロドデカジエン)、ならびに多環脂環式縮合および架橋環ジエン、例えば、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ−(2,2,1)−ヘプタ−2,5−ジエン;アルケニルノルボルネン、アルキリデンノルボルネン、シクロアルケニルノルボルネンおよびシクロアルキリデンノルボルネン(例えば、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB);5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネンおよびノルボルナジエン)が挙げられる。EPDMを調製するために代表的に用いられるジエンのうち、特に好ましいジエンは1,4−ヘキサジエン(HD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニリデン−2−ノルボルネン(VNB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)およびジシクロペンタジエン(DCPD)である。特に好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および1,4−ヘキサジエン(HD)である。
【0110】
本発明の実施形態に従って作製され得る所望のポリマーの1クラスは、エチレン、C3−C20α−オレフィン(特にプロピレン)および必要に応じて1またはそれ以上のジエンモノマーのエラストマー系共重合体である。本発明の実施形態で用いるための好ましいα−オレフィンは、式CH2=CHR*で示され、R*は、1〜12個の炭素原子の直鎖状または分枝したアルキル基である。適切なα−オレフィンの例としては、限定はしないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが挙げられる。特に好ましいα−オレフィンは、プロピレンである。プロピレン系ポリマーは一般に、当分野では、EPポリマーまたはEPDMポリマーと呼ばれる。このようなポリマーを調製する際に使用する適切なジエン、特にマルチブロックEPDM型のポリマーとしては、4〜20個の炭素を含む、共役または非共役の、直鎖または分枝鎖の、環状または多環式のジエンが挙げられる。好ましいジエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエンおよび5−ブチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。特に好ましいジエンは5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0111】
ジエン含有ポリマーは交互のセグメントまたはブロックであって、より大量もしくは少量のジエン(なしも含む)およびα−オレフィン(なしも含む)を含むセグメントまたはブロックを含むので、ジエンおよびα−オレフィンの総量は、その後にポリマーの特性を失うことなく軽減され得る。すなわち、ジエンおよびα−オレフィンのモノマーは、ポリマー全体にわたって均一でもまたはランダムに組み込まれるよりもむしろ、ポリマーのブロックの1タイプに優先的に組み込まれるので、それらは、より効率的に利用され、そして引き続きこのポリマーの架橋密度は、さらに良好に制御され得る。このような架橋可能な弾性および硬化した生成物は、より高い引張強度およびより良好な弾性回復率が挙げられる有利な特性を有する。
【0112】
ある実施形態では、種々の量のコモノマーを組み込んでいる2つの触媒で作製された本発明の共重合体は、それによって形成されたブロックの重量比95:5〜5:95を有する。所望の弾性ポリマーは、ポリマーの総重量に基づいて、20〜90パーセントのエチレン含量、0.1〜10パーセントのジエン含量、そして10〜80パーセントのα−オレフィン含量を有する。さらに好ましくは、マルチブロック弾性ポリマーは、ポリマーの総重量に対して、60〜90パーセントのエチレン含量、0.1〜10パーセントのジエン含量、そして10〜40パーセントのα−オレフィン含量を有する。好ましいポリマーは、高分子量のポリマーであって、これは、10,000〜約2,500,000、好ましくは、20,000〜500,000、より好ましくは20,000〜350,000という平均分子量(Mw)、および3.5未満、より好ましくは3.0未満という多分散性、そして1〜250のムーニー粘度(ML(1+4)125℃)を有する高分子量ポリマーである。さらに好ましくは、このようなポリマーは、65〜75パーセントのエチレン含量、0〜6パーセントのジエン含量、および20〜35パーセントのα−オレフィン含量を有する。
【0113】
エチレン/α−オレフィン共重合体は、そのポリマー構造中に少なくとも1つの官能基を組み込むことによって官能化され得る。例示的な官能基としては、例えば、エチレン不飽和単官能性および二官能性のカルボン酸、エチレン不飽和単官能性および二官能性のカルボン酸無水物、その塩およびそのエステルが挙げられ得る。このような官能基は、エチレン/α−オレフィン共重合体にグラフトされてもよいし、またはこれは、エチレンおよび任意のさらなるコモノマーと共重合されて、エチレンの共重合体、官能コモノマーおよび必要に応じて他のコモノマー(単数または複数)を形成してもよい。ポリエチレンに官能基をグラフトする手段は、例えば、それらの特許の開示がその全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許第4,762,890号、同第4,927,888号および同第4,950,541号に記載される。特に有用な官能基の1つは、リンゴ酸無水物である。
【0114】
官能性共重合体に存在する官能基の量は、変化し得る。官能基は代表的には、少なくとも約1.0重量パーセント、好ましくは少なくとも約5重量パーセント、そしてさらに好ましくは少なくとも約7重量パーセントの量でコポリマー型官能化共重合体に存在し得る。この官能基は代表的には、コポリマー型官能化共重合体中に、約40重量パーセント未満、好ましくは約30重量パーセント未満、そして最も好ましくは約25重量パーセント未満の量で存在する。
【0115】
以下の実施例は、本発明のポリマーの合成を説明するために提供するものである。既存のポリマーとの一定の比較を行う。
【0116】
試験方法
以下の実施例では、以下の分析技術が使用される:
サンプル1〜4およびA〜CについてGPC法
160℃に設定された加熱針を装備した自動化液体処理ロボットを用いて、各々の乾燥ポリマーサンプルに対して300ppmのIonolで安定化した十分な1,2,4−トリクロロベンゼンを添加して、30mg/mLという最終濃度を得る。小さいガラス撹拌ロッドを各々のチューブに入れて、そのサンプルを、250rpmで回転する加熱式旋回シェーカーを用いて160℃で2時間加熱する。次いで濃縮されたポリマー溶液を、自動化液体処理ロボットおよび160℃に設定された加熱針を用いて1mg/mlに希釈する。
【0117】
Symyx Rapid GPCシステムを用いて各々のサンプルについての分子量データを決定する。2.0ml/分の流量に設定したGilson 350ポンプを用いて、直列に配置され、160℃に加熱された3つのPlgel10マイクロメーター(μm)MixedB300mm×7.5mmカラムを通して300ppmのIonolで安定化させヘリウムでパージした1,2−ジクロロベンゼンを移動相としてポンプで送る。エバポレーターを250℃に設定し、ネブライザーを165℃に設定し、および窒素流量を60〜80psi(400〜600kPa)N2の圧で1.8SLMに設定したPolymer Labs ELS 1000 Detectorを用いる。ポリマーサンプルを160℃に加熱して、各々のサンプルを、液体処理ロボットおよび加熱ニードルを用いて250μlのループに注入した。2つの切り替えループおよび重複注入を用いるポリマーサンプルの連続的分析を用いる。このサンプルデータを収集して、Symyx Epoch(商標)ソフトウェアを用いて分析する。ピークを手技的に積分するが、報告された分子量情報は、ポリスチレン標準検量線に対して未補正である。
【0118】
標準的なCRYSTAF方法
分枝分布は、PolymerChar,Valencia,Spainから市販されているCRYSTAF 200ユニットを用いて結晶分析分画(crystallization analysis fractionation:CRYSTAF)によって決定する。このサンプルは、160℃で1,2,4トリクロロベンゼン(0.66mg/mL)に1時間溶解させ、そして95℃で45分間安定化させる。サンプリング温度は、0.2℃/分の冷却速度で95〜30℃におよぶ。赤外線検出器を用いて、ポリマー溶液の濃度を測定する。累積溶解濃度は、温度の低下と同時にポリマーが結晶化する間に測定する。累積されたプロフィールの分析導関数は、そのポリマーの短鎖分枝分布を反映する。
【0119】
CRYSTAFのピーク温度および面積は、CRYSTAFソフトウェア(Version 2001.b,PolymerChar,Valencia,Spain)に含まれるピーク分析モジュールによって特定される。CRYSTAFピーク検出ルーチン(finding routine)は、ピーク温度をdW/dT曲線の最大値として特定し、そしてこの微分曲線におけるその特定したピークの片側の正の最大変曲間の面積を特定する。CRYSTAF曲線を算出するために、好ましい処理パラメーターは、70℃の温度限界を有し、ならびにその温度限界より上では0.1の、およびその温度限界より下では0.3の平滑化パラメーターを有するものである。
【0120】
DSC標準法(サンプル1〜4およびA〜Cを除く)
示差走査熱量測定法の結果は、RCS冷却アクセサリおよびオートサンプラーを装備したTAIモデルQ1000 DSCを用いて決定する。50ml/分という窒素パージガス流を用いる。このサンプルを、薄膜にプレスして、約175℃でプレス内で溶融し、次いで室温(25℃)まで空冷する。次いで3〜10mgの物質を6mmの直径のディスクに切断し、正確に秤量し、軽量アルミのパンに入れ(約50mg)、次いで圧着する。サンプルの熱挙動は、以下の温度プロフィールで検討する。このサンプルを180℃まで急速に加熱して、3分間恒温に保持して、以前の熱履歴を除く。次いで、このサンプルを10℃/分の冷却速度で−40℃まで冷却し、−40℃で3分間保持する。次いで、このサンプルを10℃/分の加熱速度で150℃まで加熱する。その冷却および第二の加熱曲線を記録する。
【0121】
DSC融解ピークは、−30℃と融解終点との間にひいた直線のベースラインに関する熱流量(W/g)における最大として測定される。融解熱は直線のベースラインを用いて−30℃と融解終点との間の融解曲線の下の面積として測定される。
【0122】
GPC法(サンプル1〜4およびA〜Cを除く)
このゲル浸透クロマトグラフィーシステムは、Polymer Laboratories Model PL−210またはPolymer Laboratories Model PL−220のいずれかの装置から構成される。このカラムおよびカルーセルの区画は、140℃で操作される。3つのPolymer Laboratories 10ミクロン Mixed−Bカラムを用いる。この溶媒は、1,2,4トリクロロベンゼンである。サンプルは、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する50ミリリットルの溶媒中に0.1グラムというポリマー濃度で調製する。サンプルは、160℃で2時間、軽く撹拌することによって調製する。用いられる注入容積は、100μlであり、そして流量は1.0ml/分である。
【0123】
GPCカラムセットの較正は、個々の分子量の間の少なくとも10の隔たりがある6つの「カクテル(cocktail)」混合物で準備した、580〜8,400,000におよぶ分子量を有する、21個の狭い分子量分布のポリスチレン標準物質で行われる。この標準物質は、Polymer Laboratories(Shropshire,UK)から購入する。ポリスチレン標準物質は、分子量1,000,000以上については、50ミリリットルの溶媒中に0.025グラムで、そして分子量1,000,000未満については50ミリリットル中に0.05グラムで調製する。このポリスチレン標準物質は、穏やかに撹拌しながら80℃で30分間溶解する。狭い標準物質混合物を最初にランし、そして分解を最小にするために最も高い分子量の成分から低いものへと順番にランする。ポリスチレン標準物質ピーク分子量を、以下の式を用いてポリスチレン分子量に変換する(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載のとおり):Mポリエチレン=0.431(Mポリスチレン)。
【0124】
ポリエチレン等量分子量の計算は、Viscotek TriSECソフトウェアのVersion3.0を用いて行う。
【0125】
圧縮永久ひずみ
圧縮永久ひずみは、ASTMD395に従って測定する。このサンプルは、総厚みが12.7mmに達するまで、3.2mm、2.0mmおよび0.25mmという厚みの25.4mmの直径の丸いディスクを重ねることによって調製する。このディスクは、以下の条件下においてホットプレスで成形した12.7cm×12.7cmの圧縮成形プラックから切り出す:190℃で3分間ゼロ圧、続いて190℃で2分間86MPa、続いてプレス内部で冷水を流しながら86MPaで冷却。
【0126】
密度
密度測定のためのサンプルは、ASTMD1928に従って調製する。測定は、ASTMD792、方法Bを用いて1時間内のサンプルプレスで行う。
【0127】
屈曲/割線弾性率/貯蔵弾性率
サンプルは、ASTMD1928を用いて圧縮成形する。曲げ弾性率および2%の割線弾性率を、ASTM D−790に従って測定する。貯蔵弾性率はASTM D5026−01または等価な技術に従って測定する。
【0128】
光学的特性
0.4mmの厚みのフィルムを、ホットプレス(Carver Model#4095−4PR1001R)を用いて圧縮成形する。このペレットは、ポリテトラフルオロエチレンシートの間に置いて、190℃で55psi(380kPa)で3分間、続いて1.3MPaで3分間、次いで2.6MPaで3分間加熱する。次いで、このフィルムを、1.3Mpaで1分間、冷水を流しながらプレス中で冷却する。この圧縮成形フィルムを、光学測定、引張挙動、回復および応力緩和のために用いる。
【0129】
透明度は、ASTMD1746で特定されたようにBYK Gardner Haze−gardを用いて測定する。
【0130】
45°光沢(gloss)は、ASTM D−2457に特定されたように、BYK Gardner Glossmeter Microgloss45°を用いて測定する。
【0131】
内部の曇り(internal haze)は、ASTMD1003手順Aに基づいてBYK Gardner Haze−gardを用いて測定する。鉱油をこのフィルムの表面に塗布して、表面のスクラッチを除去する。
【0132】
機械的特性−引張、ヒステリシス(履歴現象)および引裂
短軸引張における応力−ひずみ挙動を、ASTMD1708微小引張試験片(microtensile specimens)を用いて測定する。サンプルは、21℃で1分あたり500%でInstronを用いて延伸する。引張強度および破断点伸度は、5つの試験片の平均から報告される。
【0133】
100%および300%のヒステリシスは、Instron(商標)装置でASTMD1708微小引張試験片を用いて100%ひずみおよび300%ひずみまでの循環荷重から決定される。サンプルに、21℃で3サイクル、1分あたり267%で荷重を負荷し、除荷する。300%および80℃でのサイクル実験は、環境チャンバを用いて行う。80℃の実験では、サンプルは、試験の前に試験温度で45分間、平衡化させる。21℃、300%ひずみのサイクル実験では、第一の除荷のサイクルからの150%のひずみでの収縮性応力を記録する。全ての実験についての回復パーセントは、荷重がベースラインに戻るひずみを用いて第一の除荷サイクルから算出する。回復パーセントは以下に規定される:
回復%=(εf−εs)/εf×100
ここでεfは、循環荷重に対してとったひずみであり、εsは、1回目の除荷サイクルの間に荷重がベースラインに戻る場合のひずみである。
【0134】
応力緩和は、環境チャンバを装備したInstron(商標)装置を用いて、50%のひずみおよび37℃で12時間、測定する。ゲージの形状は76mm×25mm×0.4mmであった。環境チャンバ中で37℃で45分間の平衡させた後、サンプルを1分あたり333%で50%ひずみまで延伸した。応力は、時間の関数として12時間記録した。12時間後の応力緩和パーセントは式:
応力緩和%=(L0−L12)/L0×100
を用いて算出した。
ここでL0は、0時点での50%ひずみの荷重であり、そしてL12は、12時間後時点の50%ひずみの荷重である。
【0135】
引張ノッチ付引裂実験(tensile notched tear experiments)は、Instron(商標)装置を用いて0.88g/cc以下の密度を有するサンプルで行う。この形状は、76mm×13mm×0.4mmのゲージ部分からなり、このサンプルにはその試験片の長さの半分の位置に2mmの切込みが入っている。そのサンプルが壊れるまで、21℃で1分あたり508mmで延伸させる。この引裂エネルギーは、最大荷重でのひずみまでの応力−伸長曲線下面積として算出する。少なくとも3つの試験片の平均が報告される。
【0136】
TMA
熱機械的分析(Thermal Mechanical Analysis)(針入温度)は、180℃および10MPa成形圧で5分間形成され、次いで風で急速冷却された、30mm直径×3.3mm厚みの圧縮成形ディスクで行う。用いた装置は、Perkin−Elmerから入手可能なブランド、TMA7である。この試験では、1.5mmの半径の先端を有するプローブ(P/N N519−0416)を、1Nの力を用いてサンプルディスクの表面に適用する。その温度を25℃から1分あたり5℃上昇させる。このプローブ針入距離は、温度の関数として測定される。このプローブがサンプルに1mm針入した時、実験が終わる。
【0137】
DMA
動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis)(DMA)は、180℃で10MPaの圧力で5分間、ホットプレス中において成形され、次いで1分あたり90℃でこのプレス中で水冷された圧縮成形ディスクで測定する。試験は、ねじり試験のための二重カンチレバー固定具を装備したARES制御ひずみレオメーター(TA instrument)を用いて行う。
【0138】
1.5mmのプラックをプレスして、32×12mmの寸法のバーに切断する。そのサンプルを10mm(グリップ間隔ΔL)ずつ隔てた固定具の間において両端でクランプして、−100℃〜200℃の逐次的温度段階(1段階あたり5℃)に供する。各々の温度でねじり弾性率G’を、10rad/sの角周波数で測定し、このひずみ振幅は、トルクが十分であること、そして測定値が直線状態のままあることを保証するために0.1パーセント〜4パーセントの間で維持される。
【0139】
10gという最初の静止力を維持して(自動引っ張り方式)、熱膨張が生じる時のサンプル中のゆるみを防ぐ。結果として、グリップ間隔ΔLは、温度とともに、特に、ポリマーサンプルの融点または軟化点より上で、増大する。試験は、最大温度か、または固定具の間の隙間が65mmに達した時に終わる。
【0140】
メルトインデックス
メルトインデックスI2は、ASTM D1238,条件190℃/2.16kgに従って測定する。メルトインデックスI10はまた、ASTM D1238、条件190℃/10kgに従って測定する。
【0141】
ATREF
分析的昇温溶離分画(analytical temperature rising elution fractionation)(ATREF)分析を、その全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許第4,798,081号およびWilde,L.;Ryle,T.R.;Knobeloch,D.C.;Peat,I.R.;Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymer,J.Polym.Sci.,20,441〜455(1982)に記載された方法に従って行う。分析されるべき組成物を、トリクロロベンゼンに溶解して、1分あたり0.1℃の冷却速度で20℃までゆっくり温度を下げることによって、不活性支持体(ステンレス鋼ショット)を含むカラム中で結晶させる。このカラムには、赤外線検出器が装備されている。次いで、1分あたり1.5℃の速度で20から120℃へ溶離溶媒(トリクロロベンゼン)の温度をゆっくり上昇させることによりカラムから結晶化ポリマーサンプルを溶離することによって、ATREFのクロマトグラフィー曲線を作成する。
【0142】
13C NMR分析
サンプルを、10mmのNMRチューブ中で0.4gのサンプルに対してテトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼンの50/50の混合物の約3gを添加することによって調製する。そのサンプルを、このチューブおよびその内容物を150℃に加熱することによって溶解して、均質化する。100.5MHzという13Cの共鳴周波数に相当する、JEOL ECLIPSE(商標)400MHz分光計、またはVarian Unity PLUS(商標)400MHz分光計を用いてデータを収集する。そのデータを、6秒のパルス繰り返し時間遅延により1データ・ファイルについて4000の減衰シグナルを用いて得る。定量的分析のための最小のシグナル対ノイズ比を達成するために、複数のデータファイルを一緒に加える。スペクトルの幅は25,000Hzであり、最小のファイルサイズは32Kのデータ・ポイントである。このサンプルは、10mmの広帯域プローブ中で130℃で分析する。コモノマーの取り込みは、Randallのトライアッド法(Randall,J.C.;JMS-Rev.Macromol.Chem.Phys.,C29, 201-317(1989)、この文献は本明細書に取り込まれる)を用いて決定される。
【0143】
TREFによるポリマー分画
大規模なTREF分画は、160℃で4時間撹拌することによって2リットルの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)中に15〜20gのポリマーを溶解することによって行う。このポリマー溶液は、30−40メッシュ(600〜425μm)球状の、技術的品質のガラスビーズ(Potters Industries,HC30 Box20,Brownwood,TX,76801から入手可能)およびステンレス鋼、0.028”(0.7mm)の直径のカット・ワイア・ショット(Pellets,Inc.63 Industrial Drive,North Tonawanda,NY,14120から入手可能)の60:40(v:v)混合物をパックした3インチ×4フィート(7.6cm×12cm)のスチール・カラム上に15psig(100kPa)窒素によって圧入する。このカラムを、160℃に最初に設定した、熱制御されたオイルジャケットに浸す。このカラムを125℃に弾道的に最初に冷却し、次いで1分あたり0.04℃で20℃までゆっくり冷却して、1時間保持する。温度を1分あたり0.167℃で上昇させながら、新鮮なTCBを1分あたり約65mlで導入する。
【0144】
分取TREFカラムからの約2000mL分の溶離液を、16のステーションの加熱されたフラクションコレクターに収集する。このポリマーを、約50〜100mlのポリマー溶液が残るまで、ロータリーエバポレーターを用いて各々の画分中で濃縮させる。この濃縮溶液を、一晩静置させて、その後に、過剰のメタノールを添加し、濾過して、洗浄する(最終の洗浄を含む約300〜500mlのメタノール)。濾過工程を、5.0μmのポリテトラフルオロエチレンコーティング濾紙(Osmonics Inc.から入手可能、カタログ番号Z50WP04750)を用いて、3位置の真空利用濾過ステーションで行う。濾過された画分を、60℃で真空オーブン中において一晩乾燥させて、さらなる試験の前に化学天秤で秤量する。
【0145】
触媒
「一晩」という用語を用いる場合、約16〜18時間の時間をいい、「室温」とは、20〜25℃の温度をいい、そして「混合アルカン」という用語は、ExxonMobil Chemical Companyから、IsoparE(登録商標)という商品名で利用可能なC6−9脂肪族炭化水素の商業的に得られる混合物を指す。本明細書において化合物の名称がその構造図に従わない場合には、構造図が優先するものとする。全ての金属錯体の合成および全てのスクリーニング実験の準備を、ドライ・ボックス技術を用いて乾燥窒素雰囲気で行った。用いた全ての溶媒は、HPLC等級であって、その使用前に乾燥させた。
【0146】
MMAOとは、Akzo−Noble Corporationから市販されている、修飾メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサンをいう。
触媒(B1)の調製は、以下のとおり行う。
【0147】
a)(1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)メチルイミンの調製
3,5−ジ−t−ブチルサリチルアルデヒド(3.00g)を10mLのイソプロピルアミンに添加する。この溶液は急速に鮮黄色に変わる。周囲温度での3時間の撹拌後、揮発性物質を減圧下で除去して、鮮黄色の結晶性固体を得る(97パーセント収率)。
【0148】
b)1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルの調製
(1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(605mg、2.2ミリモル)を5mLのトルエンに含有する溶液を、50mLのトルエンにZr(CH2Ph)4(500mg、1.1mmol)を含む溶液にゆっくり添加する。得られた濃黄色の溶液を30分間撹拌する。溶媒を減圧下で除去して、所望の生成物を赤褐色固体として得る。
触媒(B2)の調製は以下のとおり行う。
【0149】
a)(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミンの調製
2−メチルシクロヘキシルアミン(8.44mL、64.0mmol)をメタノール(90mL)に溶解して、ジ−t−ブチルサリチルアルデヒド(10.00g、42.67mmol)を添加する。その反応混合物を3時間撹拌し、次いで−25℃で12時間冷却する。得られた黄色固体沈殿物を濾過によって収集して、冷メタノール(2×15mL)で洗浄し、次いで、減圧下で乾燥させる。収量は、11.17gの黄色固体である。1H NMRは、異性体の混合物として所望の生成物と一致する。
【0150】
b)ビス−(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミノ)ジルコニウムジベンジルの調製
(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(7.63g、23.2mmol)を含有する200mLのトルエンの溶液を、600mLのトルエンに含有されるZr(CH2Ph)4(5.28g、11.6mmol)の溶液にゆっくり添加する。得られた濃黄色の溶液を25℃で1時間撹拌する。その溶液を680mLのトルエンでさらに希釈して、0.00783Mの濃度を有する溶液を得る。
【0151】
触媒1.実質的に米国特許第5,919,9883号、実施例2に開示されるように、長鎖トリアルキルアミン(Armeen(商標)M2HT、Akzo−Nobel,Incから入手可能)、HClおよびLi[B(C6F5)4]の反応によって調製される、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(本明細書において以降ではホウ酸アーメーニウム(armeenium))のメチルジ(C14−18アルキル)アンモニウム塩の混合物。
【0152】
触媒2.米国特許第6,395,671号、実施例16に従って調製された、ビス(トリス(ペンタフルオロフェニル)−アルマネ)−2−ウンデシルイミダゾリドの混合C14−18アルキルジメチルアンモニウム塩。
【0153】
可逆的移動剤。使用される可逆的移動剤としては、ジエチル亜鉛(DEZ、SA1)、ジ(i−ブチル)亜鉛(SA2)、ジ(n−ヘキシル)亜鉛(SA3)、トリエチルアルミニウム(TEA,SA4)、トリオクチルアルミニウム(SA5)、トリエチルガリウム(SA6)、i−ブチルアルミニウム ビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)(SA7)、i−ブチルアルミニウム ビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)(SA8)、n−オクチルアルミニウム ジ(ピリジン−2−メトキシド)(SA9)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム(SA10)、i−ブチルアルミニウム ビス(ジ(n−ペンチル)アミド)(SA11)、n−オクチルアルミニウム ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)(SA12)、n−オクチルアルミニウム ジ(エチル(1−ナフチル)アミド)(SA13)、エチルアルミニウム ビス(t−ブチルジメチルシロキシド)(SA14)、エチルアルミニウム ジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)(SA15)、エチルアルミニウム ビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA16)、n−オクチルアルミニウム ビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA17)、n−オクチルアルミニウム ビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド(SA18)、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)(SA19)およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)(SA20)が挙げられる。
【0154】
実施例1−4、比較例A−C
一般的なハイスループット並列重合条件
重合を、Symyx technologies,Inc.から入手可能なハイスループットの並列式重合反応装置(parallel polymerization reactor)(PPR)を用いて行い、そして米国特許の6,248,540号、同第6,030,917号、同第6,362,309号、同第6,306,658号および同第6,316,663号に実質的に従って操作する。エチレン共重合を、用いた総触媒に基づいて共触媒1の1.2当量(MMAOが存在する場合1.1当量)を用いて、必要時にエチレンを用いて130℃かつ200psi(1.4MPa)で行う。一連の重合を、予め秤量したガラスチューブが取り付けられている48の個々の反応セルを6×8配列で備えている並列式耐圧反応装置(PPR)で行う。各々の反応装置セル中の作業容積は6000μLである。各々のセルは、個々の撹拌パドルによって撹拌されながら、温度および圧力が制御される。モノマーのガスおよびクエンチガスをPPRユニットに直接配管して、自動バルブで制御する。液体試薬を、シリンジによって各々の反応装置セルにロボット制御により添加して、そのリザーバー溶媒は混合アルカンである。添加の順序は、混合アルカン溶媒(4ml)、エチレン、1−オクテンコモノマー(1ml)、共触媒1または共触媒1/MMAO混合物、可逆的移動剤、および触媒または触媒混合物である。共触媒1およびMMAOの混合物、または2つの触媒の混合物を用いる場合、それらの試薬を、反応装置への添加の直前に小さいバイアル中で事前に混合する。実験で試薬が省略される場合、その他は上記の順序の添加が維持される。重合を、所定のエチレン消費に到達するまで、約1〜2分間行う。COでのクエンチング後、その反応装置を冷却して、ガラスチューブを取り外す。そのチューブを遠心分離/真空乾燥ユニットに移して、60℃で12時間乾燥する。乾燥されたポリマーを含むチューブを秤量して、その重量と風袋重量との間の差違で、ポリマーの正味の収量が得られる。結果は表1に含まれる。表1で、そして本出願のどこかでは、比較化合物は、星印(*)によって示される。
【0155】
実施例1〜4は、極めて狭いMWDの形成によって証明される、本発明による線状ブロックコポリマー、特にDEZが存在する場合は単頂性のコポリマー、そしてDEZの非存在下における二頂性の広い分子量分布の生成物(別々に生成されたポリマーの混合物)の合成を実証する。触媒(A1)が触媒(B1)よりもオクテンを多く組み込むことが公知であるという事実に起因して、本発明の得られたコポリマーの種々のブロックまたはセグメントは、分枝または密度に基づいて識別可能である。
【表1】
【0156】
本発明に従って生成されるポリマーは、可逆的移動剤の非存在下で調製したポリマーよりも比較的狭い多分散性(Mw/Mn)および比較的大きいブロック−コポリマー含量(三量体、四量体またはそれ以上)を有することが示され得る。
【0157】
さらなる特性付けのために、図を参照して、表1のポリマーについてのデータを判定する。さらに詳細にはDSCおよびATREFの結果によって、以下が示される:
【0158】
実施例1のポリマーについてのDSC曲線は、158.1J/gという融解熱で115.7℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、34.5℃で最高のピークを示し、52.9パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は81.2℃である。
【0159】
実施例2のポリマーのDSC曲線は、214.0J/gの融解熱で109.7℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、46.2℃で最高のピークを示し、57.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は63.5℃である。
【0160】
実施例3のポリマーのDSC曲線は、160.1J/gの融解熱で120.7℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、66.1℃で最高のピークを示し、71.8パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は54.6℃である。
【0161】
実施例4のポリマーのDSC曲線は、170.7J/gの融解熱で104.5℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃で最高のピークを示し、18.2パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は74.5℃である。
【0162】
比較例AのDSC曲線は、86.7J/gの融解熱で90.0℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、48.5℃で最高のピークを示し、29.4パーセントのピーク面積である。これらの値の両方とも、密度が低い樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間の相違は41.8℃である。
【0163】
比較例BのDSC曲線は、237.0J/gの融解熱で129.8℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、82.4℃で最高のピークを示し、83.7パーセントのピーク面積である。これらの値の両方とも、密度が高い樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間の相違は47.4℃である。
【0164】
比較例CのDSC曲線は、143.0J/gの融解熱で125.3℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、34.7パーセントのピーク面積で81.8℃で最高のピークを、そして52.4℃でより低い結晶ピークを示す。この2つのピークの間の分離は、高結晶性および低結晶性のポリマーの存在と一致する。DSC TmとTcrystafとの間の相違は43.5℃である。
【0165】
実施例5−19、比較例D−F、連続的溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
連続溶液重合は、内部スターラーを装備したコンピュータ制御のオートクレーブ反応装置で行う。精製された混合アルカン溶媒(ExxonMobil Chemical Companyから入手可能なIsopar(商標)E)、エチレン2.70lbs/時間(1.22kg/時間)、1−オクテンおよび水素(用いる場合)を、温度制御のためのジャケットおよび内部熱電対を装備した3.8Lの反応装置に供給する。この反応装置へ供給された溶媒は、マスフローコントローラーによって測定する。変速ダイヤフラムポンプが、溶媒流量および反応装置に対する圧を制御する。ポンプの排出の際に、側流をとって触媒および共触媒1注入ラインのためのフラッシュフローならびに反応装置撹拌を設ける。これらのフローは、Micro−Motionマスフローメーターによって測定して、制御バルブによって、またはニードルバルブの手動調節によって制御する。得られた溶媒を、1−オクテン、エチレンおよび水素(用いる場合)と合わせて、反応装置に供給する。マスフローコントローラーを用いて、必要な場合反応装置に水素を供給する。溶媒/モノマー溶液の温度は、反応装置に入れる前、熱交換器の使用によって制御する。この流れを反応装置の底に入れる。触媒成分溶液を、ポンプおよびマスフロー計を用いて測定して、触媒フラッシュ溶媒とあわせ、そして反応装置の底に入れる。その反応装置を激しく撹拌しながら500psig(3.45MPa)で液体を満たして反応させる。生成物を反応装置の頂部の出口ラインから取り出す。反応装置からの全ての出口ラインは蒸気トレースおよび絶縁が施されている。重合を、任意の安定化剤または他の添加物とともに出口ラインに少量の水を添加すること、および静的ミキサーを通じた混合物の通過によって、停止させる。次いで、この生成物の流れを、揮発分除去(devolatilization)の前に熱交換器を通過させることによって加熱する。ポリマー生成物は、揮発分除去押出機および水冷ペレタイザーを用いる押出によって回収する。プロセスの詳細および結果は表2に含まれる。選択されたポリマーの特性を表3に提供する。
【表2】
【表3】
【0166】
得られたポリマーは、前の実施例と同様に、DSCおよびATREFによって試験される。
結果は以下のとおりである:
【0167】
実施例5のポリマーのDSC曲線は、60.0J/gの融解熱で119.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、47.6℃で最高のピークを示し、59.5パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは72.0℃である。
【0168】
実施例6のポリマーのDSC曲線は、60.4J/gの融解熱で115.2℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、44.2℃で最高のピークを示し、62.7パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは71.0℃である。
【0169】
実施例7のポリマーのDSC曲線は、69.1J/gの融解熱で121.3℃の融点を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、49.2℃で最高のピークを示し、29.4パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは72.1℃である。
【0170】
実施例8のポリマーのDSC曲線は、67.9J/gの融解熱で123.5℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、80.1℃で最高のピークを示し、12.7パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは43.4℃である。
【0171】
実施例9のポリマーのDSC曲線は、73.5J/gの融解熱で124.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、80.8℃で最高のピークを示し、16.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは43.8℃である。
【0172】
実施例10のポリマーのDSC曲線は、60.7J/gの融解熱で115.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、40.9℃で最高のピークを示し、52.4パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは74.7℃である。
【0173】
実施例11のポリマーについてのDSC曲線は、70.4J/gの融解熱で113.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、25.2パーセントのピーク面積で39.6℃で最高のピークを示す。DSC TmとTcrystafとの間のΔは74.1℃である。
【0174】
実施例12のポリマーについてのDSC曲線は、48.9J/gという融解熱で113.2℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃以上のピークを示さない。(従って、さらなる計算の目的のためのTcystafは30℃に設定する)。DSC TmとTcrystafとの間のΔは83.2℃である。
【0175】
実施例13のポリマーのDSC曲線は、49.4J/gの融解熱で114.4℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、33.8℃で最高のピークを示し、7.7パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは84.4℃である。
【0176】
実施例14のポリマーのDSC曲線は、127.9J/gの融解熱で120.8℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、72.9℃で最高のピークを示し、92.2パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは47.9℃である。
【0177】
実施例15のポリマーのDSC曲線は、36.2J/gの融解熱で114.3℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、32.3℃で最高のピークを示し、9.8パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは82.0℃である。
【0178】
実施例16のポリマーのDSC曲線は、44.9J/gの融解熱で116.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、48.0℃で最高のピークを示し、65.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは68.6℃である。
【0179】
実施例17のポリマーについてのDSC曲線は、47.0J/gの融解熱で116.0℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、56.8パーセントのピーク面積で43.1℃で最高のピークを示す。DSC TmとTcrystafとの間のΔは72.9℃である。
【0180】
実施例18のポリマーについてのDSC曲線は、141.8J/gという融解熱で120.5℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、70.0℃で最高のピークを示し、94.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは50.5℃である。
【0181】
実施例19のポリマーのDSC曲線は、174.8J/gの融解熱で124.8℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、79.9℃で最高のピークを示し、87.9パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは45.0℃である。
【0182】
比較例DのポリマーについてのDSC曲線は、31.6J/gの融解熱で37.3℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃以上のピークを示さない。これらの値の両方とも、低密度である樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間のΔは7.3℃である。
【0183】
比較例EのポリマーについてのDSC曲線は、179.3J/gの融解熱で124.0℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、79.3℃で最高のピークを示し、94.6パーセントのピーク面積である。これらの値の両方とも、高密度である樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間のΔは44.6℃である。
【0184】
比較例FのポリマーについてのDSC曲線は、90.4J/gの融解熱で124.8℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、77.6℃で最高のピークを示し、19.5パーセントのピーク面積である。2つのピークの間の隔たりは、高結晶性ポリマーと低結晶性ポリマーの両方の存在と一致する。DSC TmとTcrystafとの間のΔは47.2℃である。
【0185】
物理的特性試験
ポリマーサンプルは、物理的特性、例えば、TMA温度試験によって証明されるような高温耐性の特性、ペレットブロックキング強度、高温回復、高温圧縮永久ひずみ、および貯蔵弾性率G’(25℃)/G’(100℃)について評価される。いくつかの市販のポリマーが、試験に含まれる:比較例Gは実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例Hは、弾性の実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)EG8100、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例Iは、実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)PL1840、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例Jは、水素化スチレン/ブタジエン/スチレントリブロックコポリマー(KRATON(商標)G1652,KRATON Polymersから入手可能)であり、比較例Kは、熱可塑性加硫物(TPV,架橋されたエラストマーをその中に分散して含むポリオレフィンブレンド)である。結果は表4に示す。
【0186】
【表4】
【0187】
表4では、比較例F(触媒A1およびB1を用いる同時の重合から生じる2つのポリマーの物理的な混合物である)は、約70℃という1mm針入温度であるが、実施例5〜9は、100℃以上の1mm針入温度を有する。さらに実施例10〜19は全てが、85℃より大きい1mm針入温度を有し、ほとんどが、90℃を超えるかまたはさらには100℃より大きい1mmのTMA温度を有する。これによって、新規なポリマーは、物理的な混合物に比較して、より高い温度でより良好な寸法安定性を有することが示される。比較例J(市販のSEBS)は、約107℃という良好な1mmのTMA温度を有し、ただし、これは約100パーセントという極めて乏しい(高温70℃)圧縮永久ひずみを有し、そしてまた高温(80℃)300パーセントひずみ回復の間に回復できない(サンプルが壊れた)。従って、例示されたポリマーは、いくつかの市販の高性能の熱可塑性エラストマーにおいてでさえ得ることができない特性の固有の組み合わせを有する。
【0188】
同様に、表4は、本発明のポリマーについて、6以下という低い(良好な)貯蔵弾性率G’(25℃)/G’(100℃)を示すが、物理的混合物(比較例F)は、9という貯蔵弾性率比を有し、そして同様の密度のランダムなエチレン/オクテンコポリマー(比較例G)は、1桁大きい貯蔵弾性率比を有する(89)。ポリマーの貯蔵弾性率比はできるだけ1に近いことが所望される。このようなポリマーは比較的温度によって影響されないし、このようなポリマーから作製される二次加工品は、広範な温度範囲にわたって有用に使用され得る。低い貯蔵弾性率比および温度独立性のこの特徴は、弾性用途において、例えば、感圧粘着剤配合物において、特に有用である。
【0189】
表4のデータによってまた、本発明のポリマーが改善されたペレットブロッキング強度を保有することが実証される。詳細には、実施例5は、0MPaというペレットブロッキング強度を有し、このことは、このポリマーが、かなりのブロッキングを示す比較例Fおよび比較例Gに比較して、試験された条件下で自由流動することを意味する。ブロッキング強度は、重要である。なぜなら、大きいブロッキング強度を有するポリマーの貨物輸送は、貯蔵または出荷の際に製品同上のくっつきまたは粘着を生じ、取り扱いの特性が劣る。
【0190】
本発明のポリマーの高温(70℃)圧縮永久ひずみは一般に良好であって、このことは一般に約80パーセント未満、好ましくは約70%未満、そして特に約60パーセント未満を意味する。対照的に、比較例F、G、HおよびJは全てが、100パーセントという70℃圧縮永久ひずみを有する(最大可能値、回復がないことを示す)。ガスケット、窓枠、O−リングなどのような用途には、良好な高温圧縮永久ひずみ(低い数値)が特に必要である。
【表5】
【0191】
表5は、新規なポリマーについての機械的特性について、そして周囲温度での種々の比較ポリマーについての結果を示す。本発明のポリマーは、ISO4649に従って試験した場合、極めて良好な耐磨耗性を有することが示され得、これは一般に、約90mm3未満、好ましくは約80mm3未満、そして特に、約50mm3未満という容積減少を示す。この試験では、数が大きいほど、大きい容積減少を示し、そして結果として低い耐磨耗性を示す。
【0192】
本発明のポリマーの引張ノッチ付引裂強度によって測定した引裂強度は一般に、表5に示されるように、1000mJ以上である。本発明のポリマーの引裂強度は、3000mJ程度の高さ、または5000mJ程度の高さであってさえよい。比較ポリマーは一般に、750mJ以下の引裂強度を有する。
【0193】
表5によってまた、本発明のポリマーが、いくつかの比較例よりも150パーセントひずみでより良好な収縮応力を有する(より高い収縮応力値によって実証される)ことが示される。比較例F、GおよびHは、400kPa以下という150パーセントひずみでの収縮応力値を有するが、本発明のポリマーは、500kPa(実施例11)から約1100kPa(実施例17)程度の高さという150パーセントひずみでの収縮応力値を有する。150パーセント収縮応力値よりも高い値を有するポリマーは、弾性を有する用途、例えば、弾性の繊維および織物、特に不織物にかなり有用である。他の用途としては、オムツ(diaper)、衛生および医療用衣類ウエストバンドの用途、例えば、タブおよび弾性バンドが挙げられる。
【0194】
表5によってまた、応力緩和(50パーセントひずみ)がまた、例えば、比較例Gに対して比較した場合、本発明のポリマーについて改善される(少ない)ことが示される。応力緩和が低いとは、ポリマーがその力を、長期間にわたって体温における弾性特性の保持が所望されるオムツおよび他の衣類のような用途において、より良好に保持しているということを意味する。
【0195】
光学的試験
【表6】
表6に報告される光学的特性は、実質的に配向性を欠く圧縮成形フィルムに基づく。ポリマーの光学的な特性は、重合において使用される可逆的連鎖移動剤の量の変動から生じる、結晶化サイズにおけるバリエーションに起因して広範な範囲で変化し得る。
【0196】
マルチブロックコポリマーの抽出
実施例5、7のポリマーおよび比較例Eのポリマーの抽出研究を行う。この実験では、ポリマーサンプルは、ガラス円筒濾紙(glass fritted extraction thimble)に秤量して、Kumagawa型の抽出機(extractor)に取り付ける。サンプルを含む抽出機を窒素でパージして、500mLの丸底フラスコに350mLのジエチルエーテルを充填する。次いでフラスコをこの抽出機に取付ける。エーテルを撹拌しながら加熱する。エーテルが円筒濾紙に凝縮し始める時点を書き留めて、抽出を窒素下で24時間進行させる。この時点で、加熱を停止して、溶液を冷却させる。抽出機中に残っている全てのエーテルをフラスコに戻す。フラスコ中のエーテルを周囲温度で減圧下でエバポレートして、得られた固体を窒素でパージ乾燥(purged dry)させる。残渣をヘキサンの連続的な洗浄を用いて秤量ボトルに移す。次いで、合わせたヘキサン洗浄液を別の窒素パージしながらエバポレートさせて、残渣を40℃において減圧下で一晩乾燥させる。抽出機中に残留するエーテルを窒素でパージ乾燥させる。
【0197】
次いで350mLのヘキサンを充填した第二の清浄な丸底フラスコを、この抽出機に接続する。円筒濾紙中でヘキサンの凝縮に最初に気付いた後、ヘキサンを撹拌しながら加熱還流して、還流下で24時間維持する。次いで加熱を停止して、フラスコを冷却させる。抽出機中に残っているヘキサンをフラスコに戻す。そのヘキサンを周囲温度で減圧下でのエバポレーションによって除去して、フラスコ中に残っている残渣を連続的なヘキサン洗浄を用いて秤量ボトルに移す。フラスコ中のヘキサンを窒素パージによってエバポレートして、その残渣を40℃で一晩減圧下で乾燥させる。
【0198】
抽出後に円筒濾紙中に残っているポリマーサンプルを、円筒濾紙から秤量ボトルに移して、40℃で一晩減圧乾燥する。結果は表7に含まれる。
【表7】
追加のポリマー実施例19A〜J、連続溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
実施例19A−Iについて
【0199】
コンピュータ制御完全混合反応装置(computer controlled well-mixed reactor)において連続溶液重合を行う。精製混合アルカン溶媒(ExxonMobil Chemical Companyから購入できるIsopar(商標))、エチレン、1−オクテンおよび(使用する場合には)水素を併せ、27ガロン反応装置に供給する。反応装置への供給量は、マスフローコントローラーによって測定する。供給流の温度は、その反応装置に入る前にグリコール冷却式熱交換器の使用により制御する。触媒成分溶液は、ポンプおよびマスフローメーターを使用して測定する。液体を満たしたその反応装置を約550psigの圧でランする。その反応装置を出次第、そのポリマー溶液に水および添加剤を注入する。その水が、触媒を加水分解し、重合反応を停止させる。その後、二段階脱揮の準備で、後反応器の溶液を加熱する。溶媒および未反応モノマーは、その脱揮プロセス中に除去される。ポリマー溶融物をポンプで水中ペレット切断用のダイに送る。
実施例19Jについて
【0200】
内蔵型攪拌機を装備したコンピュータ制御オートクレーブ反応装置において連続溶液重合を行う。精製混合アルカン溶媒(ExxonMobil Chemical Companyから購入できるIsopar(商標));2.70ポンド/時(1.22kg/時)でエチレン;1−オクテン;および(使用する場合には)水素を、温度制御用のジャケットおよび内蔵型熱電対を供えた3.8L反応装置に供給する。反応装置への溶媒供給量は、マスフローコントローラーによって測定する。変速薄膜ポンプにより、反応装置への溶媒流量および圧力を制御する。そのポンプの吐き出し時に、側流を使って、触媒および助触媒注入ラインおよび反応装置攪拌機にフラッシュフローをもたらす。これらのフローは、Mico−Motionマスフローメーターによって測定し、また、制御弁によってまたはニードル弁の手動調整によって制御する。残りの溶媒を1−オクテン、エチレンおよび(使用する場合には)水素と併せ、反応装置に供給する。必要に応じて、マスフローコントローラーを使用して反応装置に水素を送達する。溶媒/モノマー溶液の温度は、反応装置に入る前に熱交換器の使用により調節する。この流れが、反応装置の底部に入る。ポンプおよびマスフローメーターを使用して触媒成分溶液を計量し、触媒フラッシュ溶媒と併せ、反応装置の底部に導入する。その液体が充満した反応装置を、激しく攪拌しながら、500psig(3.45MPa)でランする。生成物は、その反応装置の頂部の出口ラインから取り出す。その反応装置のすべての出口ラインは、蒸気トレースおよび絶縁が施されている。任意の安定剤および他の添加剤とともにその出口ラインに沿って少量の水を添加し、その混合物をスタティックミキサーに通すことによって、重合を停止させる。その後、その生成物流を熱交換器に通すことによって加熱した後、脱揮する。脱揮押出機および水冷式ペレット製造機を使用する押出しにより、ポリマー生成物を回収する。
【0201】
プロセスの詳細および結果は、表8に含める。選択したポリマーの特性を表9A〜Bに提供する。
【0202】
表9Bにおいて、本発明の実施例19Fおよび19Gは、500%伸長後、約65〜70%の低い直後残留ひずみを示している。
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
繊維および製品
【0203】
ステープルファイバー、スパンボンド繊維またはメルトブロー繊維(例えば、米国特許第4,340,563号、同第4,663,220号、同第4,668,566号または同第4,322,027号に開示されているシステムを使用)およびゲル紡糸繊維(例えば、米国特許第4,413,110号に開示されているシステム)をはじめとする、様々なホモフィル繊維を本発明のブロック共重合体(本発明において以降は「コポリマー(単数または複数)とも呼ばれる)から製造することができる。ステープルファイバーは、さらに延伸することなく、直接、最終繊維直径に溶融紡糸することができ、またはより大きな直径に溶融紡糸し、その後、従来どおりの繊維延伸法を用いて所望の直径に熱もしくは冷延伸することができる。
【0204】
本発明の一部の実施形態のブロックコポリマーから複合繊維を製造することもできる。こうした複合繊維は、その繊維の少なくとも一部分に本発明のブロック共重合体を有する。例えば、鞘/芯型複合繊維(すなわち、その鞘がその芯を同心円状に包囲しているもの)において、本発明ブロック共重合体は、その鞘の中にある場合もあり、その芯の中にある場合もある。典型的におよび好ましくは、本コポリマーは、複合繊維の鞘成分であるが、それが芯成分である場合には、その鞘成分は、その芯の架橋を妨げないようなものでなければならない。すなわち、その鞘成分は、十分なUV線がそれを通り抜けて芯ポリマーを実質的に架橋させることができるように、UV線に対して透明または半透明である。異なるコポリマーを同じ繊維の中の鞘および芯として独立して使用することもでき、この場合、好ましくは、両方の成分が弾性であり、特に、その鞘成分が、その芯成分より低い融点を有する場合にできる。他のタイプの複合繊維も本発明の範囲内であり、そうした繊維としては、サイドバイサイド・コンジュゲート繊維(例えば、分離したポリマー領域を有する繊維であって、その繊維の表面の少なくとも一部分を本発明のブロック共重合体が構成する繊維)のような構造が挙げられる。
【0205】
本繊維の形状は限定されない。例えば、代表的な繊維は、円形断面形状を有するが、時として、繊維は、異なる形状、例えば、三葉形状または扁平(すなわち、「リボン」のような)形状を有する。本明細書に開示する繊維は、繊維の形状による制限を受けない。
【0206】
繊維直径は、様々な仕方で測定し、報告することができる。一般に、繊維直径は、単糸デニールで測定される。デニールは、繊維の長さ9000m当たりのその繊維のグラム数として定義される紡織繊維用語である。モノフィラメントは、一般に、15より大きい、通常は30より大きい原糸デニールを有する押出成形されたストランドを指す。細繊度繊維は、一般に、約15またはそれ以下のデニールを有する繊維を指す。極細繊度繊維(別名、マイクロファイバー)は、一般に、約100マイクロメートル以下の直径を有する繊維を指す。本発明の一部の実施形態の繊維については、その繊維の弾性にほとんど影響を及ぼさずに、その直径を広範に変えることができる。しかし、繊維のデニールは、完成品の性能に適するように調整することができ、従って、好ましくは、メルトブロー繊維については約0.5から約30デニール/単糸、スパンボンド繊維については約1から約30デニール/単糸、および連続巻取フィラメントについては約1から約20,000デニール/単糸である。それにもかかわらず、好ましくは、そのデニールは、40より大きく、さらに好ましくは55以上、および最も好ましくは65以上である。これらの優先性は、一般に耐久性がある服飾品が約40より大きいデニールを有する繊維を使用しているという事実に起因する。
【0207】
弾性コポリマーは、弾性フィルム、コーティング、シート、ストリップ、テープ、リボンなどに成形または二次加工することもできる。こうした弾性フィルム、コーティングおよびシートは、ブローンバブルプロセス(例えば、単純バブルならびに二軸延伸法、例えば、封入バブル、ダブルバブルおよびテンターフレーミング)、キャスト押出、射出成形プロセス、熱成形プロセス、押出コーティングプロセス、異形押出、およびシート押出プロセスをはじめとする当分野では公知の任意の方法によって、二次加工することができる。単純ブローンバブルフィルムプロセスは、例えば、The Encyclopedia of Chemical Technology, Kirk-Othmer, Third Edition, John Wiley & Sons, New York, 1981, Vol. 16, pp. 416-417 and Vol. 18, pp. 191-192に記載されている。キャスト押出法は、例えば、Modern Plastics Mid-October 1989 Encyclopedia Issue, Volume 66, Number 11, pages 256 to 257に記載されている。射出成形、熱成形、押出コーティング、異形押出およびシート押出プロセスは、例えば、Plastics Materials and Processes, Seymour S. Schwartz and Sidney H. Goodman, Van Nostrand Reinhold Company, New York, 1982, pp. 527-563, pp. 632-647, and pp. 596-602に記載されている。
【0208】
弾性ストリップ、テープおよびリボンは、直接押出プロセスをはじめとする任意の公知の方法によって、または押出後スリッチング、切断もしくは打抜き法によって作製することができる。異形押出は、テープ、バンド、リボンなどの作製に特に適する主要押出プロセスの一例である。
【0209】
本発明の実施形態の繊維を他の繊維、例えばPET、ナイロン、綿、Kevlar(商標)など、と共に使用して、弾性布を製造することができる。付加的利点として、一定の繊維の耐熱性(および防湿性)は、通常のPET染色条件でのポリエステルPET繊維の染色を可能にすることができる。他の一般に用いられている繊維、特にスパンデックス(例えば、Lycra(商標))は、特性の劣化を防止するために、あまり苛酷でないPET染色条件でしか使用することができない。
【0210】
本発明の実施形態の繊維から製造される布としては、織布、不織布および編地が挙げられる。不織布は、様々な方法、例えば、ステープルファイバーをカーディングおよび熱接着する方法;1回の連続運転で連続繊維をスパンボンドする方法;または繊維を布にメルトブローし、その後、その得られたウェブをカレンダー処理または熱接着する方法によって製造することができる、例えば、米国特許第3,485,706号および同第4,939,016号に開示されているようなスパンレース(すなわち水流絡合)布。これらの様々な不織布製造技術は、当業者には公知であり、本開示は、いずれの特定の方法にも限定されない。例えば、これらの新規繊維と他の繊維(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)または綿)とのブレンドをはじめとする、こうした繊維から製造される他の構造も、本発明の範囲内に包含される。
【0211】
本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体を溶液紡糸またはフラッシュ紡糸することによって得られた繊維から不織布を製造することができる。溶液紡糸は、湿式紡糸および乾式紡糸を含む。両方の方法において、ポリマーの粘稠溶液をポンプで送ってフィルタに通し、その後、紡糸口金の細い穴に通す。その後、溶媒を除去して、繊維を残す。
【0212】
ある実施形態では、本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体から繊維をフラッシュ紡糸し、シートを形成するために、次のプロセスを用いる。この基本システムは、以前に米国特許第3,860,369号および同第6,117,801号において開示されている。前記特許は、その全体が本明細書において参照によって援用される。このプロセスは、蒸気取出口と、このプロセスにおいて製造された不織シート材料がそこを通して取り出される開口部とを有するチャンバ(時として、スピンセルと呼ばれる)において行われる。ポリマー溶液(または紡糸液)は、高温および高圧で、連続的にまたはバッチ式で作製され、導管によりスピンセルに供給される。溶液の圧は、ポリマーが紡糸剤に完全に溶解して均一単相混合物を形成する最低圧である曇点圧力より高い。
【0213】
この単相ポリマー溶液は、レットダウンオリフィスを通ってより低圧の(またはレットダウン)チャンバに行く。このより低圧のチャンバにおいて、その溶液は、二相液−液分散体に分離する。この分散体の一方の相は、主として紡糸剤を含む紡糸剤リッチ相であり、この分散体の他方の相は、ポリマーの大部分を含有するポリマーリッチ相である。この二相液−液分散体を、紡糸口金を通して、さらに低圧(好ましくは、大気圧)の領域へと進ませ、この領域で、紡糸剤は非常に急速に蒸発(フラッシュ)し、ポリマーは糸(またはプレキシフィラメント)として紡糸口金から出てくる。この糸をトンネル内で延伸し、回転バッフルに突き当たる方向に向ける。この回転バッフルは、約5〜15cm幅である扁平ウェブに糸を変形させる、かつフィブリルを分離してそのウェブをもたらす形を有する。さらに、この回転バッフルは、幅広い前後スワスを生じさせるために十分な大きさを有する前後揺動運動をもたらす。そのウェブを、その紡糸口金より約50cm下に位置する移動ワイヤーレイダウンベルト上に降ろし、一般にはそのベルトを交差するようにその前後揺動運動を構成して、シートを形成する。
【0214】
ウェブが、その移動ベルトへの途中でそのバッフルによってそらされると、そのウェブは、定置式マルチニードルイオンガンと接地回転ターゲットプレートの間のコロナ帯電ゾーンに入る。このマルチニードルイオンガンを適する電圧源によって充電して、DC電位にする。帯電したウェブは、フロントセクションとバックセクションの2つの部分を具備するディフューザを通して、高速紡糸剤蒸気流によって運ばれる。このディフューザが、ウェブの膨張を制御し、それを減速させる。ディフューザのバックセクションは、定置式であって、ターゲットプレートから離れていてもよいし、またはそれと一体式であってもよい。バックセクションとターゲットプレートが一体式である場合、それらは共に回転する。移動するウェブがそのディフューザのバックセクションに粘着しないように、ディフューザのバックセクションには、移動するウェブとディフューザのバックセクションの間の適切なガス流を確保するための吸気穴があけられている。帯電したウェブが、静電気によりそのベルトに引き付けられ、そのベルト上の適所に保持されるように、移動ベルトにロールを押し付ける。移動ベルト上に捕集され、静電力によりそこに保持された、重なり合うウェブスワスを、そのベルト速度により制御される厚さを有するシートに形成する。そのシートをそのベルトと圧密ロールの間で圧縮して、そのチャンバの外部で取り扱うために十分な、またそのチャンバの外部で巻き上げロール上に回収するために十分な強度を有する構造にする。
【0215】
従って、本発明の一部の実施形態は、本明細書に記載の本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体を含む軟質ポリマーフラッシュ紡糸プレキシフィラメント材料を提供する。好ましくは、本エチレン/α−オレフィン共重合体は、約0.1から約50g/10分または約0.4から約10g/10分のメルトインデックス、および約0.85から約0.95g/ccまたは約0.87から約0.90g/ccの密度を有する。好ましくは、本共重合体の分子量分布は、約1より大きいが、約4未満である。さらに、このフラッシュ紡糸プレキシフィラメント材料は、約2m2/gより大きい、または約8m2/gより大きいBET表面積を有する。この軟質ポリマーフラッシュ紡糸プレキシフィラメント材料から軟質フラッシュ紡糸不織シート材料を製造することができる。この軟質フラッシュ紡糸不織シート材料は、スパンボンドされたものであってもよいし、面接着されたものであってもよいし、または点接着されたものであってもよい。本発明の他の実施形態は、高密度ポリエチレンポリマーとブレンドされたエチレン/α−アルファ共重合体(本明細書に記載のもの)を含む、軟質ポリマーフラッシュ紡糸プレキシフィラメント材料を提供し、この場合のエチレン/α−アルファ共重合体は、約0.4g/10分と約10g/10分の間のメルトインデックス、0.87g/ccと0.93g/ccの間の密度、および約4未満の分子量分布を有し、ならびにこの場合のプレキシフィラメント材料は、約8m2/gより大きいBET表面積を有する。この軟質フラッシュ紡糸不織シートは、少なくとも85%の不透明度を有する。
【0216】
上記プロセスまたは類似のプロセスによって製造されたフラッシュ紡糸不織シートは、建築用途における空気侵入障壁のために、航空便用封筒の包装材として、医療用包装材として、バナーとして、ならびに防護服および他の用途のために、Tyvek(登録商標)スパンボンドオレフィンシートの代わりに使用することができる。
【0217】
本発明の実施形態の繊維および布を使用して製造することができる二次加工品としては、弾性部分を有する弾性複合製品(例えば、おむつ)が挙げられる。例えば、弾性部分は、(米国特許第4,381,781号(この開示は、その全体が参照によって本明細書に援用されている)に示されているように)一般に、おむつが落ちるのを防ぐためにおむつのウエストバンド部分に、および漏れを防ぐためにレッグバンド部分にされる。多くの場合、これらの弾性部分は、快適さと信頼性を良好に兼備するために、より良く形状にフィットするおよび/または留まるシステムを助長する。本発明の繊維および布は、弾性と通気性を兼備する構造を生じさせることもできる。例えば、1998年5月1日出願の米国特許仮出願第60/083,784号に開示されている構造に本発明の繊維、布および/またはフィルムを組み込むことができる。本発明の繊維を含む不織布の積層品を形成することもでき、それらを消費財、例えば、服飾品、おむつ、病衣、衛生用途、椅子張り生地などのような耐久財および使い捨て消費財をはじめとする様々な製品において使用することができる。
【0218】
本発明の繊維、フィルムおよび布は、米国特許第2,957,512号に記載されているような様々な構造で使用することもできる。例えば、特に、非弾性材料(平坦なもの、プリーツ加工されたもの、クレープ加工されたもの、けん縮されたものなど)を弾性構造にする場合、前記特許に記載されている構造の層50(すなわち、弾性成分)の代わりに本発明の繊維または布を使用することができる。非繊維、布または他の構造への本発明の繊維および/または布の付着は、溶融接着によって行ってもよいし、または接着剤を用いて行ってもよい。ギャザー弾性構造またはシャーテッド弾性構造は、本発明の繊維および/または布と非弾性成分から、付着前に(米国特許第2,957,512号に記載されているように)その非弾性成分をプリーツ加工することにより、付着前にその弾性成分を予備延伸することにより、または付着後にその弾性成分を熱収縮させることにより、製造することができる。
【0219】
本発明の繊維をスパンレース(すなわち水流絡合)プロセスにおいて使用して、新規構造を作ることもできる。例えば、米国特許第4,801,482号には、本明細書に記載の新規繊維/フィルム/布で今や製造することができる弾性シート(12)が開示されている。
【0220】
本明細書に記載するような連続弾性フィラメントは、高い弾発性が望まれる織物または編物用途においても使用することができる。
【0221】
米国特許第5,037,416号には、弾性リボン(米国特許第5,037,416号の要素19参照)を使用することによる形状にフィットする表面シートの利点が記載されている。本発明の繊維は、米国特許第5,037,416号の要素19の機能にかなう、すなわち、布の形態で使用して、所望の弾性をもたらすことができる。
【0222】
米国特許第4,981,747号(Morman)おいて、可逆的に狭窄された材料(reversibly necked material)を含む複合弾性材料を形成する弾性シート122の代わりに本明細書に開示する本発明の繊維および/または布を使用することができる。
【0223】
本発明の繊維は、米国特許第4,879,170号の図面の参照6に記載されているようなメルトブロー弾性成分であることもできる。
【0224】
本明細書に開示する本発明の繊維および布から弾性パネルを製造することもでき、それらは、例えば、米国特許第4,940,464号の要素18、20、14および/または26として使用することができる。本明細書に記載する本発明の繊維および布は、複合サイドパネルの弾性成分(例えば、前記特許の層86)として使用することもできる。
【0225】
これらの弾性材料は、アペルチャリング(apperturing)、スリッチング、マイクロパーフォレーション、繊維もしくはフォームとの混合など、およびそれらの組み合わせを含む当分野では公知の任意の方法によって、透過性または「通気性」にすることもできる。こうした方法の例としては、Crowe,Jr.による米国特許第3,156,242号、Hartwellによる米国特許第3,881,489号、Sissonによる米国特許第3,989,867号およびBuellによる米国特許第5,085,654号が挙げられる。
【0226】
本発明の特定の実施形態の繊維は、被覆繊維を含む。被覆繊維は、芯およびカバーを含む。一般に、この芯は、1またはそれ以上の弾性繊維を含み、このカバーは、1またはそれ以上の非弾性繊維を含む。被覆繊維の作製時で、それらがそれぞれ未伸長状態の場合、そのカバーは、その芯の繊維より長く、一般には有意に長い。そのカバーは、通常の様式で、典型的には螺旋状に巻き付いている形状で、その芯を包囲している。非被覆繊維は、カバーを有さない繊維である。一般に、編組繊維または糸、すなわち、互いに撚られていないまたは撚られているそれぞれ未伸長状態のほぼ同じ長さの2またはそれ以上の(弾性および/または非弾性)繊維ストランドまたはフィラメントを含む繊維、は、被覆繊維ではない。しかし、これらの糸は、被覆繊維の芯およびカバーのいずれかまたは両方として使用することができる。他の実施形態において、被覆繊維は、弾性カバーに包まれた弾性芯を含む。
【0227】
繊維または繊維から製造された布に付与される熱固定伸長の完全または実質的可逆性は、有用な特性である。例えば、被覆繊維を染色および/または製織前に熱固定することができるならば、繊維が巻取操作中に伸長する可能性が低いので、染色および/または製織プロセスは、より効率的になる。そしてまた、これは、繊維を先ずスプールに巻き取る、染色および製織操作において有用であり得る。染色および/または製織が完了したら、その被覆繊維または被覆繊維を含む布を、弛緩させることができる。この技法は、特定の製織操作に必要な繊維の量を減少させるばかりでなく、その後の縮みの防止にもなるだろう。こうした可逆的、熱固定、弾性繊維、およびそれらの繊維の製造方法、およびそうした繊維から製造される製品は、米国特許出願番号10/507,230(US 20050165193として公開)に開示されている。前記特許は、その全体が参照によって本明細書に援用されている。こうした方法を本発明の実施形態において修正して、または修正せずに用いて、可逆的、熱固定、弾性繊維、それらから製造される布および製品を製造することもできる。
【0228】
米国特許第5,226,992号、同第4,981,747号(KCC,Morman)、および同第5,354,597号の教示に従って、予備活性化品を製造することもできる。前記特許はすべて、それらの全体が参照によって本明細書に援用されている。
【0229】
米国特許第6,113,656号、同第5,846,654号および同第5,840,234号の教示に従って、強力繊維を製造することができる。前記特許はすべて、それらの全体が参照によって本明細書に援用されている。
【0230】
極細繊度繊維を含む低繊度繊維(low denier fiber)を本発明の共重合体から製造することができる。
【0231】
本発明の繊維の好ましい使用は、布(織布と不織布の両方)の形成における使用である。本繊維から形成された布は、卓越した弾性特性を有し、それにより多数の衣料品用途に適することが判明した。それらは、良好なドレープ適性も有する。
【0232】
繊維および布の望ましい特性の一部は、引張弾性率および永久ひずみによって表すことができる。本発明の特定の実施形態のスパンボンド布について、得られる好ましい特性は、次のとおりである:
【0233】
引張弾性率(g)(ASTM−1682)(100%伸長、6サイクル、縦方向(MD)):好ましくは900未満、さらに好ましくは800未満、最も好ましくは100から400;および/または
【0234】
引張弾性率(g)(50%伸長、6サイクル、MD):好ましくは700未満、さらに好ましくは600未満、最も好ましくは100から300;および/または
【0235】
引張弾性率(g)(100%伸長、6サイクル、横方向(TD)):好ましくは600未満、さらに好ましくは500未満、最も好ましくは50から300;および/または
【0236】
引張弾性率(g)(50%伸長、6サイクル、TD):好ましくは370未満、さらに好ましくは40から200;および/または
【0237】
永久ゆがみ(%)(布破損まで伸張を継続するのではなく周期的に繰り返すASTM D−1682の修正法を用いて得られる)(50%伸長、6サイクル、MD):好ましくは30未満、さらに好ましくは約5〜約25%の範囲内、最も好ましくは10〜20未満;および/または
【0238】
永久ゆがみ(%)(50%伸長、6サイクル、TD):好ましくは35%未満、さらに好ましくは約5〜約25%の範囲内;および/または
【0239】
永久ゆがみ(%)(100%伸長、6サイクル、MD):好ましくは40%未満、さらに好ましくは約5〜約35%の範囲内、最も好ましくは8〜20%;および/または
【0240】
永久ゆがみ(%)(100%伸長、6サイクル、TD):好ましくは40%未満、さらに好ましくは約5〜約35%の範囲内、最も好ましくは約5〜25%の範囲内;および/または
【0241】
接着温度(℃)110未満、さらに好ましくは約35〜約105の範囲内、最も好ましくは40〜80。これらの特性は、好ましく、ならびに本発明のすべての布にとって有用であり、ならびに例えば、本発明の特定の実施形態の繊維から製造し、かつ約70から約80g/m2、好ましくは約70g/m2の基本重量を有し、かつ約25〜18μmの直径を有する繊維から形成された布によって実証される。
【0242】
本発明の特定の実施形態のメルトブロー繊維について、好ましい特性は、次のとおりである:
【0243】
永久ゆがみ(%)(50%伸長、6サイクル、MD):好ましくは25未満、さらに好ましくは約10〜約20の範囲内、最も好ましくは15〜18;および/または
【0244】
永久ゆがみ(%)(50%伸長、6サイクル、TD):好ましくは約25未満、さらに好ましくは約10〜約20の範囲内、最も好ましくは15〜18;および/または
【0245】
引張弾性率(g)(50%伸長、6サイクル、MD):好ましくは約300以下、さらに好ましくは約200〜約300の範囲内;および/または
【0246】
引張弾性率(g)(50%伸長、6サイクル、TD):好ましくは約300以下、さらに好ましくは約50〜約150の範囲内;約150;および/または
【0247】
トータルハンド(g):好ましくは約75未満、さらに好ましくは約70未満、最も好ましくは約10〜約20の範囲内。
【0248】
これらの特性は、好ましく、ならびに本発明の一部の実施形態において製造された一定の布にとって有用であり、ならびに例えば、8〜10μmの直径の繊維から製造された、約70g/m2の公称基本重量を有するメルトブロー布によって、実証される。
別のポリマーとのブレンド
【0249】
本エチレン/α−オレフィンブロック共重合体は、少なくとももう1つのポリマー製繊維、例えばポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)とブレンドすることができる。この第二ポリマーは、組成(コモノマーのタイプ、コモノマー含量など)、構造、特性、または両方の組み合わせの点で、本エチレン/α−オレフィン共重合体とは異なる。例えば、エチレン/オクテンブロックコポリマーとエチレン/オクテンランダムコポリマーとは、たとえそれらが同じコモノマー含量を有していたとしても、異なる。エチレン/オクテンブロックコポリマーとエチレン/ブタン・コポリマーとは、そのエチレン/ブタン・コポリマーが、ランダムコポリマーであるのか、ブロックコポリマーであるのかにかかわらず、また同じコモノマー含量を有するかどうかにかかわらず、異なる。また、2つのポリマーは、それらが異なる分子量を有する場合には、たとえ同じ構造および組成を有していたとしても、異なると考える。
【0250】
ポリオレフィンは、2またはそれ以上のオレフィン(すなわち、アルケン)から誘導されたポリマーである。オレフィン(すなわち、アルケン)は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する炭化水素である。オレフィンは、モノエン(すなわち、単一の炭素−炭素二重結合を有するオレフィン)、ジエン(すなわち、2つの炭素−炭素二重結合を有するオレフィン)、トリエン(すなわち、3つの炭素−炭素二重結合を有するオレフィン)、テトラエン(すなわち、4つの炭素−炭素二重結合を有するオレフィン)、および他のポリエンであり得る。オレフィンまたはアルケン、例えばモノエン、ジエン、トリエン、テトラエンおよび他のポリエン、は、3個またはそれ以上の炭素原子、4個またはそれ以上の炭素原子、6個またはそれ以上の炭素原子、8個またはそれ以上の炭素原子を有することができる。ある実施形態において、オレフィンは、3個から約100個の炭素原子、4個から約100個の炭素原子、6個から約100個の炭素原子、8個から約100個の炭素原子、3個から約50個の炭素原子、3個から約25個の炭素原子、4個から25個の炭素原子、6個から約25個の炭素原子、8個から約25個の炭素原子、または3個から10個の炭素原子を有する。ある実施形態において、オレフィンは、2個から約20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状、環式または非環式モノエンである。他の実施形態において、アルケンは、ジエン、例えばブタジエンおよび1,5−ヘキサジエンである。さらなる実施形態において、アルケンの水素原子のうちの少なくとも1個は、アルキルまたはアリールで置換されている。特定の実施形態において、アルケンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、ノルボルネン、1−デセン、ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、スチレンまたはこれらの組み合わせである。
【0251】
繊維を製造するためのポリマーブレンド中のポリオレフィンの量は、そのポリマーブレンドの総重量の約0.5から約99重量%、約10から約90重量%、約20から約80重量%、約30から約70重量%、約5から約50重量%、約50から約95重量%、約10から約50重量%、または約50から約90重量%であり得る。
【0252】
当業者には公知である任意のポリオレフィンを使用して、本明細書に開示するポリマーブレンドを作製することができる。それらのポリオレフィンは、オレフィンホモポリマー、オレフィンコポリマー、オレフィンターポリマー、オレフィンクウォーターポリマーなど、ならびにそれらの組み合わせであり得る。
【0253】
ある実施形態において、少なくとも2つのポリオレフィンのうちの1つは、オレフィンホモポリマーである。このオレフィンホモポリマーは、1つのオレフィンから誘導されたものであり得る。当業者には公知である任意のオレフィンホモポリマーを使用することができる。オレフィンホモポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレン(例えば、超低密度、低密度、線状低密度、中密度、高密度および超高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリブチレン(例えば、ポリブテン−1)、ポリペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリデセン−1、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリ−1,5−ヘキサジエンが挙げられる。
【0254】
さらなる実施形態において、オレフィンホモポリマーは、ポリプロピレンである。当業者には公知である任意のポリプロピレンを使用して、本明細書に開示するポリマーブレンドを作製することができる。ポリプロピレンの非限定的な例としては、ポリプロピレン(LDPP)、高密度ポリプロピレン(HDPP)、高溶融強度ポリプロピレン(HMS−PP)、耐衝撃性ポリプロピレン(HIPP)、イソタクチックポリプロピレン(iPP)、シンジオタクチックポリプロピレン(sPP)など、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0255】
本ポリマーブレンド中のポリプロピレンの量は、そのポリマーブレンドの総重量の約0.5から約99重量%、約10から約90重量%、約20から約80重量%、約30から約70重量%、約5から約50重量%、約50から約95重量%、約10から約50重量%、または約50から約90重量%であり得る。
架橋
【0256】
本繊維は、電子ビーム照射、β線照射、γ線照射、コロナ照射、シラン、過酸化物、アリル化合物、および架橋触媒を伴うまたは伴わないUV線を含む(しかし、これらに限定されない)、当分野では公知の任意の手段によって、架橋させることができる。米国特許第6,803,014号および同第6,667,351号には、本発明の実施形態において用いることができる電子ビーム照射方法が開示されている。
【0257】
照射は、高エネルギー、電離電子、紫外線、X線、γ線、β粒子など、ならびにそれらの組み合わせの使用により、遂行することができる。好ましくは、70メガラド以下の線量の電子が利用される。照射源は、約150キロボルトから約6メガボルトの範囲内で操作される、所望の線量を供給することができる電力出力を有する、いずれの電子ビーム発生器であってもよい。電圧は、適切なレベルに合わせることができ、これは、例えば、100,000、300,000、1,000,000もしくは2,000,000もしくは3,000,000、もしくは6,000,000またはそれ以上もしくはそれ以下であり得る。ポリマー材料を照射するための多くの他の装置が、当分野において公知である。照射は、通常、約3メガラドから約35メガラドの間、好ましくは約8から約20メガラドの間の線量で行われる。さらに、照射は、室温で適便に行うことができるが、より高いおよびより低い温度、例えば0℃から約60℃を用いることもできる。好ましくは、照射は、その製品の成形または二次加工後に行われる。また、好ましい実施形態では、プロ−ラド(pro-rad)添加剤と配合されたエチレン共重合体を約8から約20メガラドの電子ビーム放射で照射する。
【0258】
架橋は、架橋触媒で促進することができ、この機能を提供するであろう任意の触媒を使用することができる。適する触媒としては、一般に、有機塩基、カルボン酸、および有機金属化合物(有機チタン酸塩を含む)、ならびに鉛、コバルト、鉄、ニッケル、亜鉛およびスズの錯体またはカルボン酸塩、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、酢酸第一スズ、オクタン酸第一スズ、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、などが挙げられる。カルボン酸スズ、特に、ジブチルスズジラウレートおよびジオクチルスズマレエートは、とりわけ有効である。触媒(または触媒の混合物)は、典型的には約0.015phrと約0.035phrの間の触媒量で存在する。
【0259】
代表的なプロ−ラド添加剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、グルタルアルデヒド、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルマレエート、ジプロパルギルマレエート、ジプロパルギルモノアリルシアヌレート、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、メチルエチルケトンペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ラウリルペルオキシド、t−ブチルペルアセテート、アゾビスイソブチルニトリルなど、ならびにそれらの組み合わせなどの、アゾ化合物、有機過酸化物および多官能性ビニルまたはアリルが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一部の実施形態における使用に好ましいプロ−ラド添加剤は、C=C、C=NまたはC=Oなどの多官能性(すなわち、少なくとも2つの)部分を有する化合物である。
【0260】
少なくとも1つのプロ−ラド添加剤を、当分野で公知の任意の方法によって、本エチレン共重合体に導入することができる。しかし、好ましくは、プロ−ラド添加剤(単数または複数)は、そのエチレン共重合体と同じまたは異なる原樹脂を含むマスターバッチ濃縮物により導入される。好ましくは、そのマスターバッチのプロ−ラド添加剤濃度は、比較的高く、例えば(その濃縮物の総重量を基準にして)約25重量パーセントである。
【0261】
その少なくとも1つのプロ−ラド添加剤は、任意の有効な量で本エチレンポリマーに導入される。好ましくは、その少なくとも1つのプロ−ラド添加剤の導入量は、(そのエチレン共重合体の総重量を基準にして)約0.001から約5重量パーセント、さらに好ましくは約0.005から約2.5重量パーセントおよび最も好ましくは約0.015から約1重量パーセントである。
【0262】
電子ビーム照射に加えて、UV照射によっても架橋を行うことができる。米国特許第6,709,742号には、UV照射による架橋方法が開示されており、それを本発明の実施形態において使用することができる。この方法は、繊維を形成する前、形成中または形成後に光架橋剤を伴うまたは伴わない光開始剤とポリマーとを混合し、その後、その繊維と光開始剤を、そのポリマーを所望のレベルに架橋するために十分なUV線に暴露することを含む。本発明のこの実施において使用される光開始剤は、芳香族ケトン、例えば、ベンゾフェノン、または1,2−ジケトンのモノアセタールである。前記モノアセタールの主光反応は、アシルラジカルおよびジアルコキシアルキルラジカルをもたらす、α−結合のホモリティック開裂である。このタイプのα−開裂は、ノリッシュI型反応として知られており、これは、W. Horspool and D. Armesto, Organic Photochemistry: A Comprehensive Treatment, Ellis Horwood Limited, Chichester, England, 1992;J. Kopecky, Organic Photochemistry: A Visual Approach, VCH Publishers, Inc., New York, NY 1992;N. J. Turro, et al., Acc. Chem. Res., 1972, 5, 92;and J. T. Banks, et al., J. Am. Chem. Soc., 1993, 115, 2473 においてさらに十分に説明されている。芳香族1,2ジケトンのモノアセタール、Ar−CO−C(OR)2−Ar’の合成は、米国特許第4,190,602号およびGer.Offen.2,337,813に記載されている。この類からの好ましい化合物は、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、C6H5−CO−C(OCH3)2−C6H5であり、これは、Ciba−GeigyからIrgacure 651として市販されている。光開始剤として有用な他の芳香族ケトンの例は、Irgacure 184、369、819、907および2959であり、これらはすべて、Ciba−Geigyから購入できる。
【0263】
本発明の1つの実施形態において、光開始剤は、光架橋剤と併用される。フリーラジカルが生成すると、骨格との二重結合の形成によって2またはそれ以上のオレフィンポリマー骨格を互いに連結させる、任意の光架橋剤を使用することができる。好ましくは、これらの光架橋剤は多官能性であり、すなわち、それらは、活性化するとそのコポリマーの骨格上の一定の部位と共有結合を形成する部位を2またはそれ以上含む。代表的な光開始剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルマレエート、ジプロパルギルマレエート、ジプロパルギルモノアリルシアヌレートなどの多官能性ビニルまたはアリル化合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一部の実施形態での使用に好ましい光架橋剤は、多官能性(すなわち、少なくとも2)部分を有する化合物である。特に好ましい光架橋剤は、トリアリルシアヌレート(TAC)およびトリアリルイソシアヌレート(TAIC)である。
【0264】
特定の化合物は、光開始剤と光架橋剤の両方として作用する。これらの化合物は、UV線に暴露されると2またはそれ以上の反応性化学種(例えば、ラジカル、カルベン、ニトレンなど)を生成する能力、およびその後、2つのポリマー鎖と共有結合する能力によって特徴付けられる。これら2つの作用を行うことができる任意の化合物を本発明の一部の実施形態において使用することができ、代表的な化合物としては、米国特許第6,211,302号および同第6,284,842号に記載されているスルホニルアジドが挙げられる。
【0265】
本発明のもう1つの実施形態において、本コポリマーは、二次架橋、すなわち、光架橋以外の、そして光架橋に加えての架橋、に付される。この実施形態では、光開始剤が非光架橋剤、例えばシランと併用されるか、コポリマーが二次架橋手順に付される、例えば、E−ビーム放射に暴露される。シラン架橋剤の代表例は、米国特許第5,824,718号に記載されており、E−ビーム放射への暴露による架橋は、米国特許第5,525,257号および5,324,576号に記載されている。この実施形態における光架橋剤の使用は、任意である。
【0266】
少なくとも1つの光添加剤、すなわち、光開始剤または任意の光架橋剤を当分野で公知の任意の方法によって本コポリマーに導入することができる。しかし、好ましくは、光添加剤(単数または複数)は、そのコポリマーと同じまたは異なる原樹脂を含むマスターバッチ濃縮物により導入される。好ましくは、そのマスターバッチの光添加剤濃度は、比較的高く、例えば、(その濃縮物の総重量を基準にして)約25重量パーセントである。
【0267】
前記の少なくとも1つの光添加剤は、任意の有効な量で本コポリマーに導入される。好ましくは、その少なくとも1つの光添加剤の導入量は、(そのコポリマーの総重量を基準にして)約0.001から約5、さらに好ましくは約0.005から約2.5および最も好ましくは約0.015から約1重量%である。
【0268】
前記の光開始剤(単数または複数)および任意の光架橋剤(単数または複数)は、本繊維またはフィルム製造プロセスの異なる段階中に添加することができる。光添加剤が、押出温度に耐えることができるならば、オレフィンポリマー樹脂を、例えばマスターバッチ添加により、押出機に供給する前に、添加剤と混合することができる。あるいは、添加剤をそのスロットダイの直前に押出機に導入することができるが、この場合、押出し前の成分の効率的な混合が重要である。もう1つのアプローチでは、オレフィンポリマー繊維を光添加剤なしで延伸することができ、光開始剤および/または光架橋剤は、その押出された繊維に、キスロール、噴霧、添加剤を伴う溶液への浸漬により、または他の工業的後処理方法を用いることにより、塗布することができる。その後、光添加剤(単数または複数)を伴う、その結果として生じた繊維を、連続またはバッチプロセスでの電磁放射により硬化させる。光添加剤は、一軸および二軸スクリュー押出機をはじめとする従来の配合装置を使用して、オレフィンポリマーとブレンドすることができる。
【0269】
電磁放射強度および照射時間は、ポリマーの分解および/または寸法不良を伴わない効率的架橋を可能ならしめるように選択される。好ましいプロセスは、欧州特許第0 490 854号B1に記載されている。十分な熱安定性を有する光添加剤(単数または複数)をオレフィンポリマー樹脂と予備混合し、繊維に押出し、そして1つのエネルギー源または直列に連結された幾つかの単位装置を使用して連続プロセスで照射する。繊維または編地のシートを硬化し、それらをスプールに回収するバッチプロセスと比較して、連続プロセスの使用には幾つかの利点がある。
【0270】
照射は、UV線の使用により遂行することができる。好ましくは、UV線は、100J/cm2以下の強度で用いられる。この照射源は、約50ワットから約25000ワットの範囲内で操作される、所望の線量を供給することができる電力出力を有する、いずれのUV線発生器であってもよい。このワット数は、適切なレベルに合わせることができ、これは、例えば、1000ワットもしくは4800ワットもしくは6000ワットまたはそれ以上もしくはそれ以下であり得る。ポリマー材料をUV照射するための多数の他の装置が、当分野において公知である。照射は、通常、約3J/cm2から約500J/scm2の間、好ましくは約5J/cm2から約100J/cm2の間の線量で行われる。さらに、照射は、室温で適便に行うことができるが、より高いおよびより低い温度、例えば0℃から約60℃を用いることもできる。この光架橋プロセスは、温度が高いほど速い。好ましくは、照射は、その製品の成形または二次加工後に行われる。好ましい実施形態では、光添加剤と配合されたコポリマーを約10J/cm2から約50J/cm2のUV線で照射する。
他の添加剤
【0271】
酸化防止剤、例えば、Ciba Geigy Corp.製のIrgafos 168、Irganox 1010、Irganox 3790、およびchimassorb 944を本エチレンポリマーに添加して、成形もしくは二次加工操作中のundo分解から保護する、および/またはグラフトまたは架橋の程度を良好に制御する(すなわち、過剰なゲル化を抑制する)ことができる。インプロセス添加剤、例えば、ステアリン酸カルシウム、水、フルオロポリマーなども、残留触媒の失活および/または加工性向上などの目的のために使用することができる。Tinuvin 770(Ciba−Geigyから)を光安定剤として使用することができる。
【0272】
本コポリマーに充填剤を入れてもよいし、充填剤をいれなくてもよい。充填剤を入れる場合、存在する充填剤の量は、耐熱性または高温での弾性のいずれかに悪影響を及ぼす量を超えてはならない。存在する場合、典型的に、充填剤の量は、そのコポリマーの総重量(またはコポリマーと1つもしくはそれ以上の他のポリマーのブレンドの場合には、そのブレンドの総重量)を基準にして0.01重量%と80重量%の間である。代表的な充填剤としては、カオリンクレー、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、シリカおよび炭酸カルシウムが挙げられる。充填剤が存在する、好ましい実施形態において、充填剤は、その充填剤が架橋反応に別様に干渉する必要のあるあらゆる傾向を防止または阻止するであろう材料でコーティングされる。ステアリン酸が、こうした充填剤コーティング剤の実例となる。
【0273】
本繊維の摩擦係数を低下させるために、様々な紡糸仕上剤配合物、例えば、繊維油剤に分散された金属石鹸(例えば、米国特許第3,039,895号または同第6,652,599号参照)、基油中の界面活性剤(例えば、米国特許公開第2003/0024052号参照)およびポリアルキルシロキサン(例えば、米国特許第3,296,063号または同第4,999,120号参照)を使用することができる。米国特許出願番号10/933,721(US20050142360として公開)には、紡糸仕上げ剤組成物が開示されており、これを使用することもできる。
【0274】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するために提供するものであり、記載する特定の実施形態に本発明を限定するためのものではない。相反する指示がない限り、すべての部およびパーセンテージは、重量によるものである。すべての数値は、近似値である。数値範囲が与えられている場合、述べられている範囲外の実施形態が、尚、本発明の範囲に入ることもあることは、理解しなければならない。各実施例に記載されている特性の詳細は、本発明の必須特徴と理解すべきではない。
実施例
繊維
【0275】
実施例11、実施例17および比較Gからのポリマーサンプルを、24個の25x1mm 紡糸口金を装備した繊維紡糸ライン(Fourne)において、260℃の紡糸ヘッド温度、302℃の溶融温度および70m/分の巻取速度で、円形断面を有する繊維数24のマルチフィラメント束に紡糸する。他の紡糸条件は、表10に列挙する。結果として生じた束のデニールは、約95から100デニール(g/9000m)である。
【表12】
【0276】
32KGy/通過の電子ビーム線量で操作して192KGyの総線量レベルを与える電子ビーム架橋機に6回通すことにより、繊維を架橋する。各通過と通過の間に繊維を−10℃に冷却する。
【0277】
BISFA Test Methods for Bare Elastic Yarns, Chapter 6: Tensile Propertiesに従って、Option CのクランプおよびOption Aの試験速度を用いて、それらの得られた未架橋繊維および架橋繊維の引張挙動を測定する。5回の反復実験の平均から強力および破断点伸度を報告する。300パーセントのひずみまで繊維に周期的に荷重をかける、BISFA Test Methods for Bare Elastic Yarns, Chapter 7: Viscoelastic Properties Procedure Aを用いて、架橋繊維の回復挙動も測定する。永久変形パーセントは、この試験法に明記されているように第6サイクルのはじめに計算する。
【0278】
架橋繊維の応力緩和を21℃および40℃の交互の温度での10パーセントひずみから測定する。この実験では、324mmの円周を有する束状繊維の13のループを2つのフックによりInstron試験機に取付け、結果として162mmのゲージ長を得る。サンプルを21℃で100パーセント伸度/分の速度で10パーセントのひずみまで伸張し、その後、10分間保持する。その後の熱処理は、水浴中、40℃で10分、空気中、21℃で10分、水浴中、40℃で10分、そして空気中、21℃で10分である。水浴と空気冷却チャンバの間のサンプル移動時間は、6秒である。全プロセスの間、荷重をモニターする。35分での荷重および45分での荷重からの荷重変化パーセントは、式:
荷重変化%=(L(t=35分)−L(t=45分))/(L(t=35分))
を用いて計算し、この式中のL(t=35分)およびL(t=45分)は、最後の40℃水浴と21℃空気暴露の中間時間にそれぞれ相当する35分および45分での荷重である。繊維の特性を表11にも記載する。
【表13】
【0279】
ポリマー実施例11と比較Gの両方から製造した繊維において、架橋は、結果として強力を増大させ、伸度を多少失わせる。両方の実施例が、約135パーセントの同様の変形パーセントを示す。実施例11は、比較Gより低い応力緩和を示し、ならびに低い感温性である。40℃(35分)と21℃(35分)の間の荷重変化パーセントは、表9に列挙されている。実施例11ポリマーから作製した繊維は、4パーセントの荷重の変化しか示さないが、比較Gの繊維は、25パーセントの変化を示す。応力緩和に関する低い感温性は、繊維ボビンの長い保管寿命を維持する点で重要である。繊維は温度の変動に起因して交互に弛緩−収縮するので、応力緩和に関する高い感温性は、環境制御されていない保管施設での保管中にボビンの欠損を招き得る。これは、その繊維のその後の下流での加工の際、繊維巻出挙動不良および繊維破断などの問題を招き得る。
繊維製造
【0280】
実施例19Aおよび実施例19Bならびに比較例19K(Dow AFFINITY(登録商標)EG8100)を使用して、2.7x0.9mmの円形紡糸口金で、40デニールのモノフィラメント繊維を100から300gのボビンに溶融紡糸する。実施例19Aおよび実施例19Bに類似した密度およびメルトインデックスを有する実施例19Kは、ASTM D−792によって判定した場合には0.870g/ccの密度を、およびASTM D−1238、条件190℃/2.16kgに従って判定した場合には1のMIを有するエチレン−オクテンコポリマーである。実施例19Aおよび実施例19Bについての紡糸温度は、280℃から290℃にわたる。実施例19Kは、290℃および300℃でのみ紡糸する。それより低い温度で紡糸すると繊維破断過剰になるためである。紡糸口金と巻取ロールの間には、繊維を凝固させるために長さ2mの冷風急冷チャンバがある。繊維がその溶融物から固化した後、紡糸仕上げ剤塗布装置によりLurol 8517(Goulston Technologies)のシリコーン系紡糸仕上げ剤をその繊維の表面に2重量%で塗布する。その後、その繊維を400から600m/分の範囲の速度でボビンに巻く。この紡糸温度および巻取速度は、結果として生じる繊維の引張応答を調整するために使用される作業変数である。紡糸する前、それらの各実施例からの樹脂を、酸化防止剤としての3000ppmのCyanox 1790(Cytec Industries)および3000ppmのChimasorb 944(Ciba Specialty Chemicals)と配合する。
【実施例1】
【0281】
機械的特性
【0282】
実施例19A、実施例19Bおよび実施例19Kから紡糸した繊維の引張挙動を BISFA Test Methods for Bare Elastic Yarns, Chapeter 6: Tensile Properties Option A に基づき測定する。F繊維は、100mmのゲージ長で、500m/分で試験する。空気クランプを使用する(Model 2712−001、Instron Corp.)。強力、破断点伸度、および300%伸度での荷重を、5回反復実験の平均から報告する。
【0283】
300%のひずみまで繊維に周期的に荷重をかける、BISFA Test Methods for Bare Elastic Yarns, Chapter 7: Viscoelastic Properties Procesure Aを用いて、繊維の回復挙動も測定する。この試験法に明記されているように荷重曲線における第一サイクルおよび第5サイクルの後の永久変形%を計算する。比較として、市販の架橋した40デニールのDow XLA(登録商標)繊維も引張および回復挙動について測定する。
【0284】
実施例19A、実施例19B、比較例19Kおよび比較例19L(これは、40デニールの市販製品 Dow XLA(登録商標)繊維である)から紡糸した繊維の機械的特性を表12に示す。実施例19A、実施例19Bおよび実施例19Kについての紡糸条件は、破断時伸度が実施例19Lにおける市販製品に匹敵するように、選択する。このデータは、同様の破断点伸度を達成するためには実施例19Kおよび実施例19Lより低い温度および高い速度で実施例19Aおよび実施例19Bを紡糸する必要があることを示している。これは、本発明の実施例を使用すると生産を増加させることができる可能性を秘めていることを示唆している。
【0285】
多くの場合、より高い張力が、下流の繊維加工に望まれる。繊維を積極的に巻き出す(一定の延伸比で巻き出す)応用法では、様々な案内装置および要素を繊維が通過するとき、摩擦のためにライン張力が低下する。ライン張力が下がりすぎると、その機械の中で繊維が破断し得る。表12は、実施例19Aおよび実施例19Bが、300%のひずみで実施例19Kおよび実施例19Lのものより高い荷重を有する一方で、同様の破断点伸度を維持することを示している。特に、実施例19Aは、300%で有意に高い荷重を示す(実施例19Lについての7.0gに対して、実施例19Aについては10.2g)。
【0286】
弾性繊維には、伸張後の高い回復度が好まれる。実施例19Aと実施例19Bの両方が、比較例19Kおよび比較例19Lより低い永久ひずみ(高い回復)を示し、実施例19Bは、有意に低い永久ひずみを示す(比較例19Lについての117%に対して、実施例19Bについては5サイクル後48%)。
【0287】
本発明の実施形態の弾性繊維の一部について、約2.5未満のMw/Mnを有する本発明のブロック共重合体から製造された繊維より低い永久ひずみのためには、より高いMw/Mn、例えば、約2.5より大きい、および約5もの高い、好ましくは約4もの高いMw/Mnを有する本発明のブロック共重合体のほうが好ましい。より高いMw/Mnのポリマーから製造されたこれらの繊維についての1ヒステリシスサイクル後の300%の伸度での永久ひずみは、60%以下、好ましくは約50%以下、さらに好ましくは約40%以下であり、0%ほどもの低さである場合もある。可逆的移動剤として使用するジエチル亜鉛はMw/Mnと相関すること、例えば、マルチブロックポリマーを重合するために使用される、ジエチル亜鉛レベルが高いほど、狭いMw/Mnおよび高い永久ひずみを生じさせることが、観察された。
【実施例2】
【0288】
セラミックおよび金属ピンでの動摩擦
【0289】
摩擦特性は、Electronic Constant Tension Transporter、すなわちECTT(Lawson Hemphill)を使用して測定する。その構成の略図を図8に示す。ECTTは、コンピュータ(図示なし)によって独立して制御される巻出ロール(1)および巻取ロール(2)から成る。繊維は、フィーダー付属装置(3)(Model KTF100HP、BTSR)を使用して一定の張力で送られ、他の端で100m/分で巻き取られる。摩擦ピン(4)の前および後の張力は、2つの25cNロードセル(Perma Tens 100p/100cN、Rothschild)で測定される。これらのロードセルの間で、繊維は、90°の抱き角で直径6.4mmの摩擦ピンを通る。繊維が後の紡糸加工中に遭遇し得る表面の範囲をシミュレートするために、2つの異なる摩擦ピンが使用される。第一のタイプは、0.32μm Raの表面粗度を有するセラミックピン(R.250S P2、Heany Industries)である。第二のタイプのピンは、ニッケルめっき磨き鋼から製造された0.14μmのRaを有する、第一のタイプより相当平滑なピンである。摩擦係数は、Euler式:
T2/T1=eμθ
を用いて計算することができ、この式中、μは、摩擦係数であり、T2は、そのピンの後の張力であり、T1は、そのピンの前の張力であり、およびθは、抱き角(π/2)である。
【0290】
動摩擦係数(COF)の結果を表13に列挙する。このデータは、本発明の実施例19Aおよび実施例19Bが、セラミックおよび鋼ピンにおいて実施例19Kおよび実施例19Lより低い摩擦を有することを示している。織編用途では高い摩擦が繊維破断を招くことが多いため、低いCOFを有することは、望ましいことである。本発明の一部の好ましい繊維について、磨き金属でのCOFは、比較的低く、約1.15またはそれ未満ほどもの低さ、好ましくは1.1またはそれ以下、さらに好ましくは1またはそれ以下、および約0.8ほどもの低さであり得る。表13のデータは、たとえそれらの繊維のすべてが同じ量およびタイプの紡糸仕上げ剤を有していたとしても、本発明の繊維は比較繊維より低いCOFを有することを示している。
【実施例3】
【0291】
架橋
【0292】
紡糸後、繊維を窒素下でパッケージし、電子ビーム処理(e−ビーム)により架橋して、耐熱性を付与する。各通過につき32KGyの線量での一連の6回のe−ビームライン(Ionmed、Spain)通過を用いて、192Kgyの線量を紡糸された繊維に照射する。e−ビームプロセス中の加熱のため、各通過と通過の間に繊維を−10℃に冷却する。
【0293】
動的機械的分光分析(Dynamic mechanical spectroscopy)(DMS)をRSA III押出式流動計(TA instruments)で行って、耐熱性を測定した。60個の40デニール繊維束の両末端を10mm離した取付け具に留める。その後、そのサンプルを1段階につき3℃ずつの25℃から200℃の逐次的温度段階に付す。各温度において、貯蔵弾性率、E’を、10rad/秒のひずみ頻度および0.1%と5%の間のひずみ振幅サイクルで測定する。5gの初期静的力をかけて、サンプルのたるみを防止する。温度が200℃に達したら、試験は終わる。
【0294】
図9は、架橋した実施例19A、実施例19B、実施例19Kおよび実施例19Lの動的機械的熱応答を示すものである。このプロットは、実施例19Aおよび実施例19Bが、75℃と100℃の間で実施例19Lより10倍高い弾性率を有することを示している。E’(25℃)/E’(100℃)の貯蔵弾性率比を表14に列挙する。本発明のポリマーからの繊維は、3またはそれ以下の貯蔵弾性率比を有し、これに対して比較例は、10およびそれ以上の貯蔵弾性率比を有する。繊維のこの貯蔵弾性率比は、できるだけ1に近いほうが望ましい。そうした繊維は、温度によって受ける影響が比較的低く、ならびに保管およびe−ビーム処理中の熱に対する改善された許容度などの性能長所を提供することができる。
【実施例4】
【0295】
巻出挙動
【0296】
弾性繊維にとって重要な性能特性は、その繊維をボビンから円滑に、かつ破断することなく巻き出す必要があることである。巻出張力、その変動、およびボビン内での張力の勾配を用いて、糸および織物単位操作におけるボビン巻出性能を推論することができる。図10に示すように、ECTTを使用して、200m/分の巻取速度での真向き巻出張力を測定する。5分の期間のデータを収集し、そのスキャンの最後の3分を用いて巻出張力の平均および標準偏差を得る。300gのボビンを2つの保管条件での試験に使用する。それらは、紡糸後、約1日、21℃で保管するか、促進老化をシミュレートするために12時間、40℃で、オーブンの中で保管する。巻出張力の測定は、そのスプールの3箇所:表面、繊維の約半分が取り去られる0.5cm、および繊維の大部分が取り去られる0.5cm、で行う。
【0297】
結果を図11に示し、この図では巻出張力をスプールサイズに対してプロットする。図11aは、21℃での保管を示しており、これは、実施例19Aと実施例19Lの両方が、スプールサイズに対して比較的一定の巻出張力を有し、実施例19Aが、実施例19Lについての約1.0gに対してそれより高い約1.6gの張力を示すことを示している。しかし、40℃での12時間の保管に付した後、両方のサンプルの巻出張力は、より大きい実施例19Lの程度へと増加する(図11b)。実施例19Aの巻出張力は、2.0から2.3gでスプールサイズに対して比較的一定である。実施例19Lについての表面は、表面で1.4gの巻出張力を有しており、また1.5cmのスプールサイズでほぼ3.0gへと有意に増加する。本発明の実施例では、そのより高い融解温度のため、巻出性能は、保管中にさほど感温性ではなく、また比較例より長い保管寿命を有することができる可能性を秘めている。
【表14】
【表15】
【表16】
不織布
下の表に列挙する樹脂を以下の実施例において使用する:
【表17】
紡糸条件
【0298】
繊維サンプルは、Hills Biocomponent Fiber Lineを使用することによって作製した。この繊維紡糸ラインは、2つの1’’一軸スクリュー押出機、2つのZenithギアポンプ、利用可能な穴を72に減らした144穴の紡糸口金、繊維急冷キャビネット、および巻取ステーションから成る。紡糸口金のキャピラリー穴は、直径が0.65mで、L/D比=3.85:1である。溶融温度は、245℃に設定する。スループットは、1分当たり1穴につき0.6グラム(ghm)である。空気延伸(air drawing)と、特性試験のための繊維パッケージを回収するために巻取機を使用することによる機械的延伸の2つの異なる方法を用いることにより、繊維を紡糸する。
粘着点(Stickpoint)の決定
【0299】
「粘着点」は、繊維が物体に粘着しないほどの固体となる紡糸ラインにおける地点と定義する。通常、粘着点は、固定速度(例えば、1000、2000、3000m/分)で繊維を張り、その後、急冷キャビネットの底部でその繊維束の前面にガラス棒を押し付けることによって測定する。繊維がガラス棒に粘着するまで、ガラス棒をゆっくりと上昇させる。ガラス棒が繊維に粘着したそのキャビネット内の地点までの紡糸口金からの距離を粘着点として記録する。この測定を各紡糸速度で3回繰り返し、それらの粘着点を平均する。粘着点を測定するまたは一成分弾性繊維を回収するときには、A−側の押出機のみを繊維の押出しに使用した。
ローピング研究のためのアスピレータ/移動スクリーン機構
【0300】
図12は、ローピングが発生し得るスパンボンドラインにおける条件をシミュレートするための機構の略図である。これは、アスピレータ(3)により繊維(1A)を空気延伸するように構成されたアスピレータ(3)/移動スクリーン(4)機構である。アスピレータ(3)通過後に繊維(1B)が繊維ウェブ(2)を形成する。この機構は、直径1.625インチの開口部を有するアスピレータ(3)(Transvector IncorporationによるAir Amplifier,model ITW Vortex 912/952)を使用する。繊維(1B)が出て来るダイ前面(図示なし)の60インチ下にこれを配置する。アスピレータ(3)が(目標デニールのために約35インチであると推測される)紡糸ラインの予測粘着点より下になるようにすることもできる。0.3ghmのスループットに100psiの吸入圧を用いる。
【0301】
アスピレータ(3)の約10インチ下に手動式移動スクリーンおよびラックシステム(4)を取り付けて、繊維ウェブ(2)を継続的に回収する。これは、ワイヤーまたはウェブフォーマーをシミュレートするためのものである。アスピレータ(3)内の拘束された空間および空気乱流は、高い繊維−繊維接触確率を生じさせると考えられる。これは、当然、繊維にブロック化する機会を与えると考えられる。衝突し、有意な接着を有さない繊維(1B)は、そのアスピレータの出口での減速により分離する機会を有する。対照的に、繊維がそのアスピレータ(3)により延伸されるにつれて、十分な強さの接着が普及し得る。これは、繊維軸に沿った連続的結合を生じさせ、その結果、ロープとして知られている構造が生じると考えられる。
直後ゆがみおよび残留荷重を決定するための100%ヒステリシス試験
【0302】
72のフィラメントを含む繊維ストランドを作製し、3’’ゲージ長を有するInstronに把持させる。クロスヘッド速度は、1分当たり10インチに設定する。100%のひずみがかかるまでクロスヘッドを上昇させ、その後、そのクロスヘッドを0%のひずみまで同じクロスヘッド速度で戻す。0%のひずみに戻した後、そのクロスヘッドを原型の3インチ長について計算した場合の100%のひずみまで、1分当たり10インチで伸長する。荷重の開始を直後ゆがみと考えた。
【0303】
30%のひずみでのサンプルの第一伸張および第一収縮の間に減少した荷重を測定する。残留荷重は、30%のひずみで第一伸長中に減少した荷重で割り、その後、100をかけた、30%のひずみで第一収縮中に減少した荷重として計算する。
粘着点の測定
【0304】
粘着点は、延伸中の応力誘導/強化結晶化のもとで形成される溶融物凝固点を表す。ローピングを回避するために、(ダイにより近い)より低い粘着点が望まれる。
【表18】
【表19】
【0305】
ウェブ構造に関する視覚的格付け試験において、Aは、ローピングが最小で、良好であり、一方、Cは、ローピングが最大で、不良である。図13は、実施例19I、実施例19N、実施例19Oの3つのウェブの写真である。
【0306】
従って、本発明のブロックコポリマーまたは共重合体から製造した繊維を含む不織布は、類似のランダムコポリマーを含む繊維から製造した不織布(例えば、スパンボンドまたはメルトブロー不織布)より低いローピング度を有する。類似のとは、メルトインデックスおよび密度が互いに10%範囲内であること、および各コポリマーが、同じモノマーを含むことを意味する。改善されたローピングとは、最小限の数のフィラメント/繊維凝集体(束)しか存在しないことを意味する。良好な構造(すなわち、最小限のローピング)を有する布を定量するために、2cm長当たりのフィラメント凝集体の数を測定する。各フィラメント凝集体は、長さが繊維幅の少なくとも10倍である。この2cm長に熱および加圧接着点を含まないことに注意しなければならない。ランダム方向で2cm長にわたって、フィラメント凝集体の直線数を数える。フィラメント凝集体は、互いに融合した平行配向の多数のフィラメントから成る。フィラメントは、繊維の幅の10倍より大きく融合される。フィラメント凝集体は、熱または加圧接着点から離れている。良好なウェブ形成におけるフィラメント凝集体の数は、30/2cm未満、好適には20/2cm未満であり、約5/2ほどもの低さ、好ましくは約1/2cmほどもの低さ、特に0/2cmほどもの低さ(すなわち、ロープなし)である場合もある。
直後ゆがみおよび残留荷重
【0307】
図14は、本発明の実施形態に従って製造した繊維が、100%のひずみでの1回のヒステリシスサイクルで試験した後、低い直後ゆがみも示し得ることを示している。特に、約0.9g/cm3またはそれ以下、好ましくは約0.895g/cm3またはそれ以下、さらに好ましくは0.89g/cm3またはそれ以下の密度および約0.85g/cm3ほどもの低さである場合もある密度を有する本発明のブロックコポリマーまたは共重合体から製造した繊維については、直後ゆがみが、20%ほどもの低さ、好ましくは約10%もの低さである場合もあり、0%ほどもの低さの直後ゆがみである場合もある。
【0308】
本発明のポリマーから製造した繊維が、AFFINITY(登録商標)およびVERSITY(登録商標)繊維より低い直後ゆがみを有することが、図15からわかる。予想通り、高い密度の繊維ほど、高い直後ゆがみを示す。図15および表17において実証されるように、60%のひずみで、本発明の繊維は、AFFINITY(登録商標)およびVERSITY(登録商標)繊維より高い残留荷重を示す。これは、本発明の繊維のほうが低い伸長力を有するためである。
【表20】
【0309】
上で実証したように、本発明の実施形態は、エチレンおよびα−オレフィンのユニークなマルチブロックコポリマーから製造した繊維を提供する。本繊維は、次の利点のうちの1またはそれ以上を有し得る:良好な耐摩耗性;低い摩擦係数;高い上限使用温度;高い回復/収縮力;低い応力緩和(高および低温);ソフトストレッチ;高い破断点伸度;不活性;耐薬品性;耐UV性。本繊維は、比較的高い紡糸速度および低温で溶融紡糸することができる。本繊維は、電子ビームまたは他の照射法により架橋させることができる。加えて、本繊維は、あまり粘着性でなく、その結果、より良好な巻出動作およびより良好な保管寿命が得られ、ならびに実質的にローピング(すなわち、繊維集束)を有さない。本繊維は、より高い紡糸速度で紡糸することができるため、繊維の生産スループットが高い。こうした繊維は、広い形成領域および広い加工領域も有する。他の利点および特徴は、当業者には明らかである。
【0310】
限られた数の実施形態に関して本発明を説明したが、1つの実施形態の特定の特徴が、本発明の他の実施形態に帰することはない。単一の実施形態が、本発明のすべての態様の代表ではない。ある実施形態における組成物または方法は、本明細書において言及されていない非常に多数の化合物または段階を含むことがある。他の実施形態における組成物または方法は、本明細書に列挙されていない任意の化合物または段階を含まない、または実質的に有さない。「少なくとも」1つの成分または段階を含む記載されている実施形態がある一方で、そうした成分または段階を1つだけしか含むことができない実施形態もある。記載されている実施形態からの変形および変更が存在する。樹脂の製造方法は、多数の動作および段階を含むと記載されている。これらの段階または動作は、別の指示がない限り、任意の配列または順序で実施することができる。最後に、本明細書に開示されている任意の数は、その数の説明に「約」または「おおよそ」という語が用いられているかどうかにかかわらず、近似値を意味すると解釈しなければならない。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲内に入るすべての変更および変形を包含すると考える。
【図面の簡単な説明】
【0311】
【図1】従来のランダムコポリマー(丸で示す)およびチーグラー・ナッタコポリマー(三角で示す)と比較して、本発明のポリマー(ひし形で示す)についての融点と密度の関係を示す図である。
【図2】様々なポリマーについてのDSC融解エンタルピーの関数としてのデルタDSC−CRYSTAFのプロットを示す図である。ひし形は、エチレン/オクテンランダムコポリマーを示し;四角は、実施例1〜4のポリマーを示し;三角は、実施例5〜9のポリマーを示し;および丸は、実施例10〜19のポリマーを示す。記号「X」は、ポリマー例A〜Fを示す。
【図3】本発明の共重合体(四角および丸で示す)および従来のコポリマー(三角で示す。これらは、様々なDow AFFINITY(登録商標)ポリマーである)から製造した非延伸フィルムについての弾性回復に対する密度の影響を示す図である。四角は、本発明のエチレン/ブタジエンコポリマーを示し;および丸は、本発明のエチレン/オクテンコポリマーを示す。
【図4】実施例5のポリマー(丸で示す)ならびに比較ポリマーEおよびF(記号「X」で示す)についての、画分のTREF溶出温度に対する、TREFで分画されたエチレン/1−オクテンコポリマー画分のオクテン含量のプロットである。ひし形は、従来のエチレン/オクテンランダムコポリマーを示す。
【図5】実施例5のポリマー(曲線1)および比較例F(曲線2)についての、画分のTREF溶出温度に対する、TREFで分画されたエチレン/1−オクテンコポリマー画分のオクテン含量のプロットである。四角は、例Fを示し、および三角は、実施例5を示す。
【図6】比較エチレン/1−オクテンコポリマー(曲線2)およびプロピレン/エチレン−コポリマー(曲線3)ならびに異なる量の可逆的連鎖移動剤を用いて製造した本発明の2つのエチレン/1−オクテンブロックコポリマー(曲線1)についての温度の関数としての貯蔵弾性率の対数のグラフである。
【図7】幾つかの公知ポリマーと比較して、幾つかの本発明のポリマー(ひし形で示す)についての曲げ弾性率に対するTMA(1mm)のプロットを示す図である。三角は、様々なDOW VERSIFY(登録商標)ポリマーを示;丸は、様々なエチレン/スチレン・ランダムコポリマーを示し;および四角は、様々なDow AFFINITY(登録商標)ポリマーを示す。
【図8】動摩擦係数を測定するための装置の略図である。
【図9】架橋ポリマー実施例19A、実施例19B、実施例19Kおよび実施例19Lの動的機械的熱応答を示す図である。「19A」と表示されている曲線は、ポリマー実施例19Aを示し;「19B」と表示されている曲線は、ポリマー実施例Bを示し;「19K」と表示されている曲線は、Dow AFFINITY(登録商標)EG8100樹脂を示し;および「19L」と表示されている曲線は、40デニールの商品 Dow XLA(登録商標)繊維を示す。
【図10】真向き巻出張力測定機構の略図である。
【図11】a)1日、21℃で保管およびb)12時間、40℃で保管後の本発明の実施例および比較例からの繊維の真向き巻出挙動を示す図である。「巻出張力」の単位は、グラム重である。
【図12】本発明の一部の実施形態において使用したアスピレータ/移動スクリーンシステムの機構を示す略図である。
【図13】不織布例において得られた様々なウェブの写真である。Aは、ポリマー実施例19Iから製造した布を示す写真であり;Bは、ポリマー実施例19Oから製造した布を示す写真であり;およびCは、ポリマー実施例19Nから製造した布を示す写真である。
【図14】100%ひずみでのヒステリシス試験に伴う様々な繊維についての直後残留ひずみを示す図である。
【図15】100%ひずみでのヒステリシス試験に伴う様々な繊維についての60%ひずみでの残留荷重を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン共重合体から得ることができる、または少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン共重合体含む繊維であって、前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、以下の特性:
(a)約1.7から約3.5のMw/Mn、ならびに少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm3)であって、前記Tmおよびdの数値が、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
の関係に相当する特性;または
(b)約1.7から約3.5のMw/Mn、ならびに融解熱ΔH(J/g)、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークの間の温度差として規定されるデルタ量ΔT(℃)であって、前記ΔTおよびΔHの数値が、以下の関係:
ΔHがゼロより大きく、130J/g以下である場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
を有し、ならびに
前記CRYSTAFピークが、累積ポリマーのうちの少なくとも5パーセントを用いて決定され、そしてこのポリマーの5パーセント未満が同定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度は30℃である特性;または
(c)そのエチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復Re(パーセント)、および密度d(g/cm3)であって、前記Reおよびdの数値が、そのエチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を有さない場合、以下の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たす特性;または
(d)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であり、この同じ温度間で溶出する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量より少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有するという点で特徴付けられる画分であって、前記の比較対象となるランダムエチレン共重合体が、同じコモノマーを含み、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)をこのエチレン/α−オレフィン共重合体のものから10パーセント内で有する特性、
のうちの1またはそれ以上によって特徴付けられる繊維。
【請求項2】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、そのエチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムから測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復Re(パーセント)、および密度d(g/cm3)であって、そのエチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を有さないとき、以下の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たす前記弾性回復および密度によって特徴づけられる、請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm3)を有し、前記変数の数値が、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
の関係に相当し、ならびに前記共重合体が、約1.7から約3.5のMw/Mnを有する、請求項1に記載の繊維。
【請求項4】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、約1.7から約3.5のMw/Mnを有し、ならびに前記共重合体が、融解熱ΔH(J/g)、および最高のDSCピークから最高のCRYSTAFピークを引いた差として規定されるデルタ量ΔT(℃)によって特徴付けられ、この場合、前記ΔTおよびΔHの数値は、以下の関係:
ΔHがゼロより大きく、130J/g以下である場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
を満たし、ならびに前記CRYSTAFピークは、累積ポリマーのうちの少なくとも5パーセントを用いて決定され、そしてこのポリマーの5パーセント未満が同定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度は30℃である、請求項1に記載の繊維。
【請求項5】
少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン共重合体から得ることができる、または少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン共重合体含む繊維であって、前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、以下の特性:(a)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、少なくとも0.5で、かつ約1以下のブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする、少なくとも1つの分子画分を有する特性;または(b)ゼロより大きく、かつ約1.0以下である平均ブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnの特性、のうちの1またはそれ以上によって特徴づけられる繊維。
【請求項6】
エチレンとC3〜C20α−オレフィンの少なくとも1つの共重合体から得ることができる、またはエチレンとC3〜C20α−オレフィンの少なくとも1つの共重合体を含む繊維であって、前記共重合体が、約0.860g/ccから約0.895g/ccの密度、および70℃で約70%未満の圧縮永久ひずみを有する繊維。
【請求項7】
前記α−オレフィンが、スチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセンまたはこれらの組み合わせである、請求項1、2、3、4または5に記載の繊維。
【請求項8】
架橋されている、請求項1、2、3、4または5に記載の繊維。
【請求項9】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、別のポリマーとブレンドされている、請求項1、2、3、4または5に記載の繊維。
【請求項10】
複合繊維である、請求項1、2、3、4または5に記載の繊維。
【請求項11】
前記架橋が、光子照射、電子ビーム照射または架橋剤によってもたらされる、請求項8に記載の繊維。
【請求項12】
前記架橋ポリマーのパーセントが、形成されたゲルの重量パーセントによって測定された場合、少なくとも20パーセントである、請求項8に記載の繊維。
【請求項13】
約1.2未満の摩擦係数を有する繊維であって、前記共重合体が、いずれの充填剤とも混合されない、請求項1、2、3、4、5または6に記載の繊維。
【請求項14】
請求項1、2、3、4、5または6に記載の繊維を含む布。
【請求項15】
溶液紡糸によって製造された繊維を含む不織シートである、請求項14に記載の布。
【請求項16】
弾力性がある、請求項14に記載の布。
【請求項17】
織布である、請求項14に記載の布。
【請求項18】
100パーセントのひずみで少なくとも50パーセントのMD回復パーセントを有する、請求項14に記載の布。
【請求項19】
請求項1、2、3、4、5または6に記載の繊維を含む糸。
【請求項20】
被覆されている、請求項19に記載の糸。
【請求項21】
綿糸またはナイロン糸によって被覆されている、請求項20に記載の糸。
【請求項22】
エチレン/α−オレフィン共重合体を溶融すること;および
そのエチレン/α−オレフィン共重合体を繊維に押出すこと
を含む、繊維または布を製造する方法であって、前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、以下の特性:
(a)約1.7から約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm3)であって、前記Tmおよびdの数値が、
Tm>858.91−1825.3(d)+1112.8(d)2
の関係に相当する特性;または
(b)約1.7から約3.5のMw/Mn、融解熱ΔH(J/g)、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークの間の温度差として規定されるデルタ量ΔT(℃)であって、前記ΔTおよびΔHの数値が、以下の関係:
ΔHがゼロより大きく、130J/g以下である場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
を有し、ならびに
前記CRYSTAFピークが、累積ポリマーのうちの少なくとも5パーセントを用いて決定され、そしてこのポリマーの5パーセント未満が同定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度は30℃である特性;または
(c)そのエチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復Re(パーセント)、および密度d(g/cm3)であって、前記Reおよびdの数値が、そのエチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を有さない場合、以下の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たす特性;または
(d)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であり、この同じ温度間で溶出する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量より少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有するという点で特徴付けられる画分であって、前記の比較対象となるランダムエチレン共重合体が、同じコモノマーを含み、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)をこのエチレン/α−オレフィン共重合体のものから10パーセント内で有する特性、
のうちの1またはそれ以上によって特徴付けられる方法。
【請求項23】
前記繊維から布を形成することをさらに含み、この場合、前記布は実質的にローピングを有さない、請求項22に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン共重合体から得ることができる、または少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン共重合体含む繊維であって、前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、以下の特性:
(a)約1.7から約3.5のMw/Mn、ならびに少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm3)であって、前記Tmおよびdの数値が、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
の関係に相当する特性;または
(b)約1.7から約3.5のMw/Mn、ならびに融解熱ΔH(J/g)、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークの間の温度差として規定されるデルタ量ΔT(℃)であって、前記ΔTおよびΔHの数値が、以下の関係:
ΔHがゼロより大きく、130J/g以下である場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
を有し、ならびに
前記CRYSTAFピークが、累積ポリマーのうちの少なくとも5パーセントを用いて決定され、そしてこのポリマーの5パーセント未満が同定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度は30℃である特性;または
(c)そのエチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復Re(パーセント)、および密度d(g/cm3)であって、前記Reおよびdの数値が、そのエチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を有さない場合、以下の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たす特性;または
(d)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であり、この同じ温度間で溶出する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量より少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有するという点で特徴付けられる画分であって、前記の比較対象となるランダムエチレン共重合体が、同じコモノマーを含み、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)をこのエチレン/α−オレフィン共重合体のものから10パーセント内で有する特性、
のうちの1またはそれ以上によって特徴付けられる繊維。
【請求項2】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、そのエチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムから測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復Re(パーセント)、および密度d(g/cm3)であって、そのエチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を有さないとき、以下の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たす前記弾性回復および密度によって特徴づけられる、請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm3)を有し、前記変数の数値が、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
の関係に相当し、ならびに前記共重合体が、約1.7から約3.5のMw/Mnを有する、請求項1に記載の繊維。
【請求項4】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、約1.7から約3.5のMw/Mnを有し、ならびに前記共重合体が、融解熱ΔH(J/g)、および最高のDSCピークから最高のCRYSTAFピークを引いた差として規定されるデルタ量ΔT(℃)によって特徴付けられ、この場合、前記ΔTおよびΔHの数値は、以下の関係:
ΔHがゼロより大きく、130J/g以下である場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
を満たし、ならびに前記CRYSTAFピークは、累積ポリマーのうちの少なくとも5パーセントを用いて決定され、そしてこのポリマーの5パーセント未満が同定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度は30℃である、請求項1に記載の繊維。
【請求項5】
少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン共重合体から得ることができる、または少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン共重合体含む繊維であって、前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、以下の特性:(a)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、少なくとも0.5で、かつ約1以下のブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする、少なくとも1つの分子画分を有する特性;または(b)ゼロより大きく、かつ約1.0以下である平均ブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnの特性、のうちの1またはそれ以上によって特徴づけられる繊維。
【請求項6】
エチレンとC3〜C20α−オレフィンの少なくとも1つの共重合体から得ることができる、またはエチレンとC3〜C20α−オレフィンの少なくとも1つの共重合体を含む繊維であって、前記共重合体が、約0.860g/ccから約0.895g/ccの密度、および70℃で約70%未満の圧縮永久ひずみを有する繊維。
【請求項7】
前記α−オレフィンが、スチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセンまたはこれらの組み合わせである、請求項1、2、3、4または5に記載の繊維。
【請求項8】
架橋されている、請求項1、2、3、4または5に記載の繊維。
【請求項9】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、別のポリマーとブレンドされている、請求項1、2、3、4または5に記載の繊維。
【請求項10】
複合繊維である、請求項1、2、3、4または5に記載の繊維。
【請求項11】
前記架橋が、光子照射、電子ビーム照射または架橋剤によってもたらされる、請求項8に記載の繊維。
【請求項12】
前記架橋ポリマーのパーセントが、形成されたゲルの重量パーセントによって測定された場合、少なくとも20パーセントである、請求項8に記載の繊維。
【請求項13】
約1.2未満の摩擦係数を有する繊維であって、前記共重合体が、いずれの充填剤とも混合されない、請求項1、2、3、4、5または6に記載の繊維。
【請求項14】
請求項1、2、3、4、5または6に記載の繊維を含む布。
【請求項15】
溶液紡糸によって製造された繊維を含む不織シートである、請求項14に記載の布。
【請求項16】
弾力性がある、請求項14に記載の布。
【請求項17】
織布である、請求項14に記載の布。
【請求項18】
100パーセントのひずみで少なくとも50パーセントのMD回復パーセントを有する、請求項14に記載の布。
【請求項19】
請求項1、2、3、4、5または6に記載の繊維を含む糸。
【請求項20】
被覆されている、請求項19に記載の糸。
【請求項21】
綿糸またはナイロン糸によって被覆されている、請求項20に記載の糸。
【請求項22】
エチレン/α−オレフィン共重合体を溶融すること;および
そのエチレン/α−オレフィン共重合体を繊維に押出すこと
を含む、繊維または布を製造する方法であって、前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、以下の特性:
(a)約1.7から約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm3)であって、前記Tmおよびdの数値が、
Tm>858.91−1825.3(d)+1112.8(d)2
の関係に相当する特性;または
(b)約1.7から約3.5のMw/Mn、融解熱ΔH(J/g)、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークの間の温度差として規定されるデルタ量ΔT(℃)であって、前記ΔTおよびΔHの数値が、以下の関係:
ΔHがゼロより大きく、130J/g以下である場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gより大きい場合、ΔT≧48℃
を有し、ならびに
前記CRYSTAFピークが、累積ポリマーのうちの少なくとも5パーセントを用いて決定され、そしてこのポリマーの5パーセント未満が同定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度は30℃である特性;または
(c)そのエチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復Re(パーセント)、および密度d(g/cm3)であって、前記Reおよびdの数値が、そのエチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を有さない場合、以下の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たす特性;または
(d)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であり、この同じ温度間で溶出する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量より少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有するという点で特徴付けられる画分であって、前記の比較対象となるランダムエチレン共重合体が、同じコモノマーを含み、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)をこのエチレン/α−オレフィン共重合体のものから10パーセント内で有する特性、
のうちの1またはそれ以上によって特徴付けられる方法。
【請求項23】
前記繊維から布を形成することをさらに含み、この場合、前記布は実質的にローピングを有さない、請求項22に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2008−538390(P2008−538390A)
【公表日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502120(P2008−502120)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/009851
【国際公開番号】WO2006/102149
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/009851
【国際公開番号】WO2006/102149
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】
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