説明

エチレン/α−オレフィンの共重合体から作製された三次元ランダムループの構造(three−dimensionalrandomloopedstructures)およびその使用

クッション性ネット構造は、互いに結合された、三次元のランダムループのようなランダムループを含み、このループは、エチレン/α−オレフィン共重合体から作製された連続繊維を、溶融状態で互いに接触させるように屈曲させること、そしてほとんどの接点で熱結合させることによって形成される。本明細書で提供されるこの構造は、所望の耐熱性、耐久性およびクッション特性を有する。このクッション構造は、家具、乗り物のシートなどに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン/α−オレフィン共重合体から作製されたランダムループのクッション性ネット構造(cushioning net structures)であって、家具、ベッド、乗り物のシート、遠洋航海用船舶のシートのために必要な所望の耐久性およびクッション特性を有するクッション性ネット構造、このネット構造を作製する方法、ならびにそれから作製される製品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマー、発泡ウレタン、非弾性けん縮繊維の詰め物、非弾性けん縮繊維から作製された樹脂結合されるかまたは硬化された織布などが現在、家具、ベッド、列車、自動車などのためのクッション性物質として用いられている。
【0003】
発泡架橋ウレタンは、一方では、クッション性物質として優れた耐久性を有するが、他方では、湿気および水の透過性が劣り、そして蓄熱して硬化を生じる。さらに、熱可塑性ではないので、この物質のリサイクルは困難であって、廃棄物のウレタンは一般に焼却される。しかし、ウレタンの焼却は焼却炉に大きな損傷を与え、そして毒ガスの除去が必要であり、従って、大きな費用がかかる。これらの理由によって、廃棄ウレタンはしばしば地面に埋められる。これも、この土地の安定化が困難であるという別の問題を生じ、その結果、埋め立て地は、必要な費用が上昇するので、特定の場所に限られる。さらに、ウレタンは優れた加工可能性を示すが、その製造に用いられる化学物質は、環境汚染を生じ得る。
【0004】
入口マットなどの使用のためには塩化ビニルから作製されたネット構造が提唱されているが、プラスチックの変形が容易に生じ、そして焼却の際に毒性のハロゲン化水素が生じるという事実に照らせばクッション性物質としては適切ではない。
【0005】
熱可塑性のエラストマーは、良好な弾性および高耐熱性の組み合わせを有するが、それらは代表的には比較的高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、良好な耐熱性、耐久性およびクッション性機能を有しており、かつ費用効率が高いクッション性ネット構造、ならびにその製造方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の要件は、本発明の種々の態様によって満たされる。本明細書において提供されるのは、複数のランダムループを含むクッション性ネット構造であって、各々のランダムループが少なくとも1つのさらなるループに対して溶融結合されており、このランダムループが連続繊維を含み、この繊維がエチレン/α−オレフィン共重合体を含む。一実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm3)を有し、このTmおよびdの数値は、
Tm≧858.91−1825.3(d)+1112.8(d)2
の関係に相当する。
【0008】
別の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、約1.7〜約3.5のMw/Mnを有し、かつ融解熱ΔH(J/g)、および最高のDSCピークと最高のCRYSTAFピークとの間の温度差として定義される、デルタ量ΔT(℃)によって特徴付けられ、このΔTおよびΔHの数値が、以下の関係:
ΔHがゼロより大きくかつ最大130J/gまでの場合、
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81
ΔHが130J/gより大きい場合、
ΔT≧48℃
を有し、
ここでこのCRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを用いて決定され、かつこのポリマーの5パーセント未満が特定可能なCRYSTAFピークを有するならば、このCRYSTAF温度は30℃である。
【0009】
一実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、このエチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでのパーセントである、弾性回復率Reによって特徴付けられ、かつ密度d(g/cm3)を有し、このReおよびdの数値が、このエチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を有さない場合、以下の関係を満たす。
【0010】
Re>1481−1629(d)
別の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃との間で溶出する分子画分であって、この同じ温度の間で溶出する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする画分を有し、この比較対象となるランダムエチレン共重合体が同じコモノマー(単数または複数)を有し、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)をこのエチレン/α−オレフィン共重合体のものの10パーセント内で有する。
【0011】
一実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、25℃での貯蔵弾性率であるG’(25℃)、および100℃での貯蔵弾性率であるG’(100℃)によって特徴付けられ、このG’(100℃)に対するG’(25℃)の比が約1:1〜約10:1である。
【0012】
別の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃との間で溶出する少なくとも1つの分子画分であって、少なくとも0.5かつ最大約1というブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする少なくとも1つの分子画分を有する。別の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、ゼロより大きくかつ最大約1.0までの平均ブロックインデックスおよび約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有する。
【0013】
一実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体中のα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンまたはそれらの組み合わせである。
【0014】
ある実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、ASTM D-1238、状態190℃/2.16kgに従って測定した、10分あたり約0.1〜約2000g、10分あたり約1〜約1500g、10分あたり約2〜約1000g、10分あたり約5〜約500g、10分あたり約0.5〜約50gまたは10分あたり約1〜約30gという範囲のメルトインデックスを有する。ある実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、ASTM D-1238、状態190℃/2.16kgに従って測定した、10分あたり約3gまたは10分あたり約5gのメルトインデックスを有する。
【0015】
ある実施形態では、このクッション性ネット構造は、約35%、20%、15%または10%以下という70℃での残留永久ひずみを有する。一実施形態では、このクッション性ネット構造は、約0.005g/cm3〜約0.30g/cm3、約0.005g/cm3〜約0.20g/cm3、約0.01g/cm3〜約0.10g/cm3、または約0.01g/cm3〜約0.05g/cm3の範囲のみかけ密度を有する。
【0016】
別の実施形態では、このクッション性ネット構造における連続繊維は、約100デニール〜約100000デニール、約200デニール〜約100000デニール、約300デニール〜約100000デニール、約400デニール〜約100000デニール、または約500デニール〜約50000デニールの繊度を有する。
【0017】
ある実施形態では、このクッション性ネット構造におけるランダムループは、約100mm以下の平均直径を有する。一実施形態では、このランダムループの平均直径は、約1mm〜約50mm、約2mm〜約40mm、または約2mm〜約30mmの範囲である。ある実施形態では、このクッション性ネット構造は、約5mm、3mm、または2mm以上の厚みを有する。
【0018】
ある実施形態では、このクッション性ネット構造における繊維は、少なくとも1つの他のポリマー、例えば、熱可塑性エラストマー、非弾性ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む。ある実施形態では、この繊維はさらに、少なくとも1つの添加物、例えば、抗酸化剤、UV安定化剤、色素、難燃剤、帯電防止剤またはそれらの組み合わせを含む。
【0019】
また本明細書で提供されるのは、上記および本明細書のいずれかに記載されるクッション性ネット構造を含む、クッション性物質、乗り物のシート、または家具である。
【0020】
さらに提供されるのは、クッション性ネット構造を生成するための方法であって、この方法は、エチレン/α−オレフィン共重合体を含む出発物質を融解する工程と、複数の開口部から下向きにこの溶融共重合体を放出して、連続繊維のループを溶融状態で得る工程と、各々のループを互いに接触させて、熱結合させ、それによってランダムループ構造をループとして形成させて、テイクオフユニットの間に保持させる工程と、この構造を冷却させる工程と、を含む。本発明において用いられるこのエチレン/α−オレフィン共重合体は、上記に、または本明細書のいずれかに記載される。
【0021】
本発明のさらなる態様、ならびに本発明の種々の実施形態の特徴および特性は、以下の説明で明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
一般定義
「ポリマー(polymer)」は、同じまたは異なるタイプにかかわらず、モノマーを重合することによって作製されたポリマー化合物を意味する。「ポリマー」という総称は、用語「ホモポリマー(homopolymer)」、「コポリマー(copolymer)」、「ターポリマー(terpolymer)」ならびに「共重合体(interpolymer)」も含む。
【0023】
「共重合体(interpolymer)」は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。「共重合体」という総称は、用語「コポリマー」(これは通常は、2つの異なるモノマーから調製されたポリマーを指すために利用される)、ならびに用語「ターポリマー」(これは通常は、3つの異なるモノマーから調製されたポリマーを指すために利用される)も含む。この「共重合体」は4つまたはそれ以上のタイプのモノマーを重合することによって作製したポリマーも含む。
【0024】
「結晶性(crystalline)」という用語を使用する場合、この用語は、示差走査熱量測定(DSC)または同等の技術によって決定される、一次転移または結晶融点(Tm)を保有するポリマーを指す。この用語は、「半結晶性(semicrystalline)」という用語と同義的に用いられ得る。「非結晶性、アモルファス(amorphous)」という用語は、示差走査熱量測定(DSC)または同等の技術によって決定される、結晶融点(Tm)を欠くポリマーを指す。
【0025】
「エチレン/α−オレフィン共重合体(ethylene/α-olefin interpolymer)」という用語は一般に、エチレンおよび3個以上の炭素原子を有するα−オレフィンを含むポリマーを指す。好ましくは、エチレンはポリマー全体の大部分のモル画分を構成し、すなわちエチレンはポリマー全体の少なくとも約50モルパーセントを構成する。より好ましくは、エチレンは少なくとも約60モルパーセント、少なくとも約70モルパーセント、または少なくとも約80モルパーセントを構成し、ポリマー全体の実質的な残りは少なくとも1つの他のコモノマーを含み、このコモノマーは好ましくは3個以上の炭素原子を有するα−オレフィンである。多くのエチレン/オクテンコポリマーでは、好ましい組成物は、ポリマー全体の約80モルパーセントを超えるエチレン含量およびポリマー全体の約10〜約15モルパーセントの、好ましくは約15〜約20モルパーセントのオクテン含量を含む。ある実施形態では、エチレン/α−オレフィン共重合体は、低収量または微量で、あるいは化学工程の副生成物として生じた共重合体を含まない。エチレン/α−オレフィン共重合体は1つ以上のポリマーとブレンドできるが、このように製造されたエチレン/α−オレフィン共重合体は実質的に純粋であり、重合工程の反応生成物の主要な成分を構成することが多い。
【0026】
エチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンおよび1つ以上の共重合性α−オレフィンコモノマーを重合化された形態で含み、化学的または物理的特性が異なる2つ以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメントによって特徴付けられる。すなわちエチレン/α−オレフィン共重合体は、ブロック共重合体、好ましくはマルチブロック(multi-block)共重合体またはマルチブロックコポリマーである。「共重合体」および「コポリマー」という用語は、本明細書では互換的に使用される。ある実施形態では、マルチブロックコポリマーは、以下の式によって表すことができる:
(AB)n
ここでnは少なくとも1、好ましくは1を超える整数、例えば2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100以上であり、「A」は、ハードなブロックまたはセグメントを示し、「B」はソフトなブロックまたはセグメントを示す。好ましくはAおよびBは、実質的に直鎖の様式で連結され、実質的に分枝した様式または実質的に星型の様式とは対照的である。他の実施形態では、AブロックおよびBブロックはポリマー鎖に沿ってランダムに分布される。言い換えれば、ブロックコポリマーは通常、以下のような構造を持たない。
【0027】
AAA−AA−BBB−BB
なお他の実施形態では、ブロックコポリマーは通常、異なるコモノマー(単数または複数)を含む第3のタイプのブロックを有さない。また他の実施形態では、ブロックAおよびブロックBのそれぞれが、ブロック内に実質的にランダムに分布されたモノマーまたはコモノマーを有する。言い換えれば、ブロックAもブロックBも、ブロックの残りとは実質的に異なる組成を有する、別個の組成の2つまたはそれ以上のサブセグメント(またはサブブロック)、例えばチップセグメントを含まない。
【0028】
一般に、マルチブロックポリマーは、様々な量の「ハード」セグメントおよび「ソフト」セグメントを含む。「ハード」セグメントは、そのポリマーの重量を基準にして約95重量パーセントより多い量、好ましくは約98重量パーセントより多い量でエチレンが存在する重合単位のブロックを指す。言い換えると、ハードセグメント中のコモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)は、そのポリマーの重量を基準にして約5重量パーセント未満、好ましくは約2重量パーセント未満である。ある実施形態において、ハードセグメントは、すべてまたは実質的にすべてエチレンを含む。一方、「ソフト」セグメントは、そのコモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)が、そのポリマーの重量を基準にして約5重量パーセントより大きい、好ましくは約8重量パーセントより大きい、約10重量パーセントより大きい、または約15重量パーセントより大きい、重合単位のブロックを指す。ある実施形態において、ソフトセグメント中のコモノマー含量は、約20重量パーセントより大きくてもよく、約25重量パーセントより大きくてもよく、約30重量パーセントより大きくてもよく、約35重量パーセントより大きくてもよく、約40重量パーセントより大きくてもよく、約45重量パーセントより大きくてもよく、約50重量パーセントより大きくてもよく、または約60重量パーセントより大きくてもよい。
【0029】
ソフトセグメントは多くの場合、ブロック共重合体の総重量の約1重量パーセント〜約99重量パーセント、好ましくはブロック共重合体の総重量の約5重量パーセント〜約95重量パーセント、約10重量パーセント〜約90重量パーセント、約15重量パーセントから約85重量パーセント、約20重量パーセント〜約80重量パーセント、約25重量パーセント〜約75重量パーセント、約30重量パーセント〜約70重量パーセント、約35重量パーセント〜約65重量パーセント、約40重量パーセント〜約60重量パーセント、または45重量パーセント〜約55重量パーセントでそのブロック共重合体中に存在できる。逆に、ハードセグメントは同様の範囲で存在し得る。ソフトセグメント重量パーセンテージおよびハードセグメント重量パーセンテージは、DSCまたはNMRから得たデータに基づいて計算できる。そのような方法および計算は、Colin L. P. Shan, Lonnie Hazlitt, et.al.の名前で2006年3月15日に出願され、Dow Global Technologies Inc.に譲渡された、「Ethylene/α-Olefin Block Interpolymers」という題名の、同時出願米国特許出願第______号(判明時に挿入)、出願人整理番号385063-999558に開示されており、その開示はその全体が参照によって本明細書に援用される。
【0030】
「マルチブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」という用語は、好ましくは直鎖方式で接合された2つまたはそれ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマー、すなわちペンダント方式またはグラフト方式ではなく、重合エチレン官能基に関して末端間接合される化学的に識別された単位を含むポリマーを指す。好ましい実施形態では、ブロックは、それに包含されるコモノマーの量またはタイプ、そのような組成のポリマーに起因する密度、結晶化度の量、晶子サイズ、立体規則性のタイプまたは程度(アイソタクチックまたはシンジオタクチック)、位置規則性または位置不規則性、長鎖分枝または過剰分枝を含む分枝の量、均質性、または他のいずれかの化学的もしくは物理的特性が異なる。マルチブロックコポリマーは、コポリマーを作製する独自の工程による、両方の多分散インデックス(PDIまたはMw/Mn)の独自の分布、ブロック長分布および/またはブロック数分布によって特徴付けられる。さらに詳細には、連続工程で製造されるとき、ポリマーは望ましくは1.7〜2.9の、好ましくは1.8〜2.5の、より好ましくは1.8〜2.2の、最も好ましくは1.8〜2.1のPDIを有する。バッチまたはセミバッチ工程で製造されるとき、ポリマーは1.0〜2.9の、好ましくは1.3〜2.5の、より好ましくは1.4〜2.0の、最も好ましくは1.4〜1.8のPDIを有する。
【0031】
以下の説明では、本明細書で開示されるすべての数字は、「約(about)」または「おおよそ(approximate)」という単語がそれに関連して使用されるかどうかにかかわらず、おおよその値である。それらは1パーセント、2パーセント、5パーセント、または場合により10〜20パーセント変わることがある。下限RLおよび上限RUのある数値範囲が開示されるときは必ず、その範囲に当てはまるいずれかの数が詳細に開示される。詳細には、範囲内の次の数が詳細に開示される:R=RL+k*(RU−RL)、式中、kは1パーセントの増分で1パーセントから100パーセントまでの範囲で変化する変数であり、すなわちkは、1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、…、50パーセント、51パーセント、52パーセント、・・・、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、または100パーセントである。さらに上で定義した2個のR数によって定義されたいずれの数値範囲も、詳細に開示される。
【0032】
ランダムループの構造(Random Looped Structures)
本明細書で提供されるのは、クッション性ネット構造であって、これはある実施形態では、エチレン/α−オレフィン共重合体を含む連続繊維から作製された3次元のループを含む。このランダムループの構造は、ある実施形態では、3次元であるループの構造は、互いに結合するが、ここでこのループは、連続繊維を、溶融状態で互いに接触させるように屈曲させること、そしてほとんどの接点で熱結合させることによって形成される。ランダムループの構造、例えば、三次元ループの構造は、クッション性を有する用途において有用である。
【0033】
本明細書で提供されるネット構造は、クッション性を有する用途において耐熱耐久性の改善および高い弾性を付与する。特定の実施形態では、この耐熱耐久性は、約40%以下、特定の実施形態では、約35%、30%、25%、20%、15%、10%または5%以下という例えば、70℃での残留永久ひずみ(以下に詳細に記載)に関して、測定した。
【0034】
本明細書において用いる場合、70℃の残留永久ひずみ(residual strain permanent set)とは、(i)15cm×15cmのサイズで試験片を切り出す工程、(ii)これを厚さ方向にその50%に圧縮する工程、(iii)この試験片を70℃で22時間加熱乾燥させる工程、(iv)この試験片を冷却して圧縮によって生じるひずみを取り除く工程、および(v)この試験片を1日間おいておく工程の後に測定した場合、処理前のパーセントに対する(処理前の試験片の厚み−処理後の試験片の厚み)の比を表すパーセントの値を意味する。
【0035】
本明細書で開示されるマルチブロックエチレン/α−オレフィン共重合体を含む押出繊維から作製された三次元クッション性ネット構造は、類似の密度およびメルトインデックスでかつ同じタイプのコモノマーを有するランダムエチレン/α−オレフィン共重合体に比較して、より低い、70℃で測定された残留永久ひずみを示す。「類似の密度およびメルトインデックス(similar density and melt index)」とは、各々のポリマーの密度およびメルトインデックスが10%内であることを意味する。70℃で測定した低い残留永久ひずみは、クッション性を有する用途において所望の特性であって、これは現在代表的には、比較的高価なポリマー、例えば、コ−ポリエステルエラストマー(例えば、DupontのHytrel(登録商標))によって実現される。
【0036】
エチレン/α−オレフィン共重合体
本発明の実施形態において用いられるエチレン/α−オレフィン共重合体(「本発明の共重合体(inventive interpolymer)」、「本発明のポリマー(inventive polymer)」とも呼ばれる)は、エチレンおよび1以上の共重合可能なα−オレフィンコモノマーを重合化された形態で含み、化学的または物理的な特性が異なる2つ以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック共重合体)、好ましくはマルチブロックコポリマーによって特徴付けられる。このエチレン/α−オレフィン共重合体は、下に記載されるような1つまたはそれ以上の態様によって特徴付けられる。
【0037】
一態様では、本発明の実施形態で用いられるエチレン/α−オレフィン共重合体は、約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(グラム/立方センチメートル)を有し、この変数の数値は:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2、そして好ましくは、
Tm≧−6288.1+13141(d)−6720.3(d)2、そして好ましくは、
Tm≧858.91−1825.3(d)+1112.8(d)2
の関係に相当する。
【0038】
このような融点/密度の関係は、図1に図示される。融点が密度とともに低下するエチレン/α−オレフィンの従来のランダムコポリマーとは異なり、特に密度が約0.87g/cc〜約0.95g/ccである場合、本発明の共重合体(ひし形で示す)は、密度とは実質的に独立した融点を示す。例えば、このようなポリマーの融点は、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccにわたる場合、約110℃〜約130℃の範囲である。ある実施形態では、このようなポリマーの融点は、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccにわたる場合、約115℃〜約125℃の範囲である。
【0039】
別の態様では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、重合化された形態で、エチレンおよび1以上のα−オレフィンを含み、そして最高の示差走査熱量測定(「DSC」)ピーク温度から最高の結晶分析分別(Crystallization Analysis Fractionation)(「CRYSTAF」)ピークの温度を減算した温度として規定されるΔT(℃)および融解熱ΔH(J/g)によって特徴付けられ、そしてΔTおよびΔHの数値が、ΔHが130J/g以下の場合、以下の関係:
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、そして好ましくは、
ΔT≧−0.1299(ΔH)+64.38、そしてより好ましくは、
ΔT≧−0.1299(ΔH)+65.95
を満たす。さらに、ΔTは、ΔHが130J/gより大きい場合、48℃以上である。CRYSTAFピークは、累積ポリマーのうちの少なくとも5%を用いて決定され(すなわち、このピークは、累積ポリマーの少なくとも5%に相当するはずである)、そしてこのポリマーの5パーセント未満が同定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度が30℃であり、そしてΔHは、J/gである融解熱の数値である。より好ましくは、最高のCRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも10パーセントを含む。図2は、本発明のポリマーのプロットされたデータ、および比較例を示す。積分されたピーク面積およびピーク温度は、機器製造業者によって供給されるコンピュータ図形作成プログラムによって算出される。ランダムエチレン・オクテン比較例について示される対角線は、方程式ΔT=−0.1299(ΔH)+62.81に相当する。
【0040】
さらに別の態様では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、昇温溶離分別法(Temperature Rising Elution Fractionation)(「TREF」)を用いて分画される場合に40℃と130℃との間で溶離する分子画分を有し、この同じ温度の間で溶離する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも好ましくは少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも10パーセント高いコモノマーモル含量を有するという点で特徴付けられ、ここで、この比較対象となるランダムエチレン共重合体は、同じコモノマー(単数または複数)を有し、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)をそのブロック共重合体のものから10パーセント以内に有する。好ましくは、この比較対象となる共重合体のMw/Mnはまた、そのブロック共重合体のMw/Mnから10パーセント以内にあり、そして/またはこの比較対象となる共重合体は、そのブロック共重合体のMw/Mnから10パーセント以内にMw/Mnを有する。
【0041】
さらに別の態様では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復率Re(パーセント)によって特徴付けられ、かつ密度d(グラム/立方センチメートル)を有し、このReおよびdの数値は、エチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を有さない場合、以下の関係、
Re>1481−1629(d);そして好ましくは、
Re≧1491−1629(d);そしてさらに好ましくは、
Re≧1501−1629(d);そしてよれより好ましくは、
Re≧1511−1629(d)
を満たす。
【0042】
図3は、特定の本発明の共重合体および従来のランダムコポリマーから作製された未延伸フィルムについての弾性回復率に対する密度の効果を示す。同じ密度について、本発明の共重合体は、実質的により高い弾性回復率を有する。
【0043】
ある実施形態では、エチレン/α−オレフィン共重合体は、10MPaを超える引張強度、好ましくは11MPa以上の引張強度、より好ましくは13Mpa以上の引張強度、および/または、11cm/分のクロスヘッド分離速度で、少なくとも600パーセント、より好ましくは少なくとも700パーセント、特に好ましくは少なくとも800パーセント、そして最も高度に好ましくは少なくとも900パーセントの破断点伸度を有する。
【0044】
他の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、(1)1〜50、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10という貯蔵弾性率G’(25℃)/G’(100℃);および/または(2)80パーセント未満、好ましくは70パーセント未満、特に60パーセント未満、50パーセント未満、または40パーセント未満という70℃圧縮永久ひずみを、0パーセントの圧縮永久ひずみまで下がって、有する。
【0045】
さらに他の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、80パーセント未満、70パーセント未満、60パーセント未満、または50パーセント未満、という70℃圧縮永久ひずみを有する。好ましくは、共重合体の70℃圧縮永久ひずみは、40パーセント未満、30パーセント未満、20パーセント未満であり、そして約0パーセントまで下がってもよい。
【0046】
ある実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、85J/g未満の融解熱、および/または100ポンド/フィート2(4800Pa)以下、好ましくは50ポンド/フィート2(2400Pa)以下、特に、5ポンド/フィート2(240Pa)以下、そして0ポンド/フィート2(0Pa)程度のペレットブロッキング強度を有する。
【0047】
他の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、重合型で、少なくとも50モルパーセントのエチレンを含み、そして80パーセント未満、好ましくは70パーセント未満、または60パーセント未満、最も好ましくは40〜50パーセント、そしてゼロパーセント近くまで下がるという70℃圧縮永久ひずみを有する。
【0048】
ある実施形態では、このマルチブロックコポリマーは、ポアソン分布よりもシュルツ・フローリー分布にあてはまるPDIを保有する。このコポリマーはさらに、多分散性ブロック分布と多分散性ブロックサイズ分布との両方を有し、かつブロック長の最確分布を保有すると特徴付けられる。好ましいマルチブロックコポリマーは、末端ブロックを含めて、4以上のブロックまたはセグメントを含むものである。さらに好ましくは、このコポリマーは、末端ブロックを含めて、少なくとも5、10もしくは20のブロックまたはセグメントを含む。
【0049】
コモノマー含量は、任意の適切な技術を用いて測定され得、好ましくは核磁気共鳴(「NMR」)分光法に基づく技術による。さらに、比較的広範なTREF曲線を有するポリマーまたはポリマーの混合物については、ポリマーは望ましくは、TREFを用いて、各々が10℃以下の溶離温度範囲を有する画分に最初に分画される。すなわち、各々の溶離画分は、10℃以下という収集温度領域(ウィンドウ)を有する。この技術を用いて、このようなブロック共重合体は、比較対象となる共重合体の対応する画分よりも高モルのコモノマー含量を有する画分を、少なくとも1つ有する。
【0050】
別の態様では、本発明のポリマーはオレフィン共重合体であって、好ましくは、重合化された形態でエチレンおよび1以上の共重合性コモノマーを含み、化学的または物理的な特性が異なる2以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロック(すなわち、少なくとも2つのブロック)またはセグメント(ブロック化された共重合体)によって特徴付けられ、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。このブロック共重合体は、40℃〜130℃間に溶離するピーク(ただし単なる分子画分ではない)を有し(しかし、個々の画分を収集および/または単離しない)、このピークが、半値全幅(full width/half maximum)(FWHM)面積計算を用いて展開される場合に赤外線分光法によって評価されるコモノマー含量を有し、同じ溶離温度において半値全幅(FWHM)面積計算を用いて展開された比較対象となるランダムエチレン共重合体のピークのコモノマー含量よりも高いコモノマー平均モル含量、好ましくは少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも10パーセント高いコモノマー平均モル含量を有する点で特徴づけられる。ここで、この比較対象となるランダムエチレン共重合体は、同じコモノマー(単数または複数)を有し、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーのモル含量(ポリマー全体に基づく)をそのブロック化共重合体のものから10パーセント以内に有する。好ましくは、この比較対象となる共重合体のMw/Mnはまた、ブロック化共重合体のMw/Mnから10パーセント以内にあるか、そして/またはこの比較対象となる共重合体は、ブロック化共重合体の総コモノマー含量から10重量パーセント以内に総コモノマー含量を有する。半値全幅(FWHM)計算は、ATREF赤外検出器由来のメチレンに対するメチルの応答面積の比[CH3/CH2]に基づき、ここで、最も高(最高)のピークがベースラインから特定され、次いでこのFWHM面積が決定される。ATREFピークを用いて測定された分布については、FWHM面積は、T1とT2との間の曲線下面積として規定され、このT1とT2は、ピーク高さを2で割ること、次にATREF曲線の左部分および右部分を横切る、ベースラインに対して水平な線を引くことによって、ATREFピークの左右に対してポイント決定される。コモノマー含量についての検量線は、ランダムエチレン/α−オレフィンコポリマーを用い、TREFのピークのNMR対FWHM面積の比からコモノマー含量をプロットして作成される。この赤外方法については、この検量線は、目的の同じコモノマータイプについて作成される。本発明のポリマーのTREFピークのコモノマー含量は、TREFピークのFWHMのメチル:メチレン面積比[CH3/CH2]を用いてこの検量線を参照することによって決定され得る。
【0051】
コモノマー含量は、任意の適切な技術を用いて測定され得、好ましくは核磁気共鳴(「NMR」)分光法に基づく技術による。この技術を用いて、このブロック化共重合体は、対応する比較対象となる共重合体よりも高モルのコモノマー含量を有する。
【0052】
好ましくは、エチレンおよび1−オクテンの共重合体について、このブロック共重合体は、40℃と130℃の間で溶離するTREF画分のコモノマー含量を量(−0.2013)T+20.07以上、より好ましくは量(−0.2013)T+21.07以上有し、このTとは、℃で測定した、比較されているTREF画分のピーク溶離温度の数値である。
【0053】
図4はエチレンおよび1−オクテンのブロック共重合体の実施形態をグラフ表示しており、ここではいくつかの比較対象となるエチレン/1−オクテン共重合体(ランダムコポリマー)についてのコモノマー含量対TREF溶離温度のプロットが、(−0.2013)T+20.07(実線)に相当する線に適合する。この式(−0.2013)T+21.07についての線は、破線で示される。本発明のいくつかのブロックエチレン/1−オクテン共重合体(マルチブロックコポリマー)の画分のコモノマー含量も示される。ブロック共重合体画分の全てが、同等の溶離温度でいずれの線より有意に高い1−オクテン含量を有する。この結果は、本発明の共重合体の特徴であって、結晶性および非晶質の両方の性質を有する、ポリマー鎖内の分化型のブロックの存在に起因すると考えられる。
【0054】
図5は、実施例5および下で考察される比較例F*についてのポリマー画分のTREF曲線およびコモノマー含量をグラフ表示する。両方のポリマーについて40〜130℃、好ましくは60℃〜95℃で溶離するピークを、各々の部分が10℃未満の温度範囲にわたって溶離する3つの部分に分画する。実施例5についての実際のデータは三角で示す。異なるコモノマーを含有する共重合体について適切な検量線を作成することができ、それが、同じモノマーの比較の共重合体、好ましくはメタロセンまたは他の均一系触媒組成物を用いて製造されるランダムコポリマーから得られたTREF値とフィッティングさせる比較として用いられる線であり得ることは、当業者には理解され得る。本発明の共重合体は、同じTREF溶離温度で検量線から決定された値より大きい、好ましくは、少なくとも5パーセント大きい、より好ましくは少なくとも10パーセント大きい、コモノマーのモル含量で特徴付けられる。
【0055】
上記の態様および本明細書に記載される特性に加えて、本発明のポリマーは、1以上のさらなる特徴によって特徴付けられ得る。一態様では、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、好ましくは、エチレンおよび1以上の共重合性コモノマーを重合化された形態で含み、化学的または物理的な特性において異なる2またはそれ以上の重合モノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック化された共重合体)によって特徴付けられ、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。このブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画した場合に40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、この画分が、同じ温度の間に溶離する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも高いコモノマーモル含量、好ましくは少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも10、15または25パーセント高いコモノマーモル含量を有するという点で特徴づけられる。ここで、この比較対象となるランダムエチレン共重合体は、同じコモノマー(単数または複数)(好ましくは、これは同じコモノマー(単数または複数)である)およびメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)をそのブロック化された共重合体のものから10パーセント以内に含む。好ましくは、この比較対象となる共重合体のMw/Mnはまた、ブロック化された共重合体のMw/Mnから10パーセント以内であるか、そして/またはこの比較対象となる共重合体は、ブロック化された共重合体の総コモノマー含量から10パーセント以内の総コモノマー含量を有する。
【0056】
好ましくは、上記の共重合体は、エチレンおよび少なくとも1つのα−オレフィンの共重合体であり、特に、それらの共重合体は、約0.855〜約0.935g/cm3の全体ポリマー密度を有し、そしてより詳細には、約1モルパーセントを超えるコモノマーを有するポリマーについては、このブロック化された共重合体は、40〜130℃間に溶離するTREF画分のコモノマー含量を、量(−0.1356)T+13.89以上、より好ましくは量(−0.1356)T+14.93以上、そして最も好ましくは、量(−0.2013)T+21.07以上有し、ここでTは、℃で測定した、比較されているTREF画分のピークATREF溶離温度の数値である。
【0057】
好ましくは、エチレンおよび少なくとも1つのα−オレフィンの上記の共重合体、特に、0.855〜約0.935g/cm3というポリマー全体密度を有する共重合体について、そしてさらに詳細には、約1モルパーセントを超えるコモノマーを有するポリマーについて、ブロック化された共重合体は、40℃〜130℃間に溶離するTREF画分のコモノマー含量を、量(−0.2013)T+20.07以上、より好ましくは量(−0.2013)T+21.07以上有し、ここでTは、℃で測定した、比較されているTREF画分のピーク溶離温度の数値である。
【0058】
さらに別の態様では、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、好ましくは重合化された形態でエチレンおよび1以上の共重合性コモノマーを含み、化学的または物理的な特性が異なる2以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック化された共重合体)によって特徴付けられ、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。このブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画した場合に40℃〜130℃間に溶離する分子画分を有し、少なくとも約6モルパーセントのコモノマー含量を有するあらゆる画分が約100℃より大きい融点を有するという点で特徴付けられる。約3モルパーセント〜約6モルパーセントのコモノマー含量を有する画分については、あらゆる画分が約110℃以上というDSC融点を有する。より好ましくは、このポリマー画分は、少なくとも1モルパーセントのコモノマーを有し、式:
Tm≧(−5.5926)(画分中のコモノマーのモルパーセント)+135.90
に相当するDSC融点を有する。
【0059】
さらに別の態様では、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、好ましくは、重合化された形態でエチレンおよび1以上の共重合性コモノマーを含み、化学的または物理的な特性が異なる2以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック化された共重合体)によって特徴付けられ、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。このブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画した場合に40℃〜130℃間に溶離する分子画分を有し、約76℃以上のATREF溶離温度を有するあらゆる画分が、式:
融解熱(J/gm)≦(3.1718)(ATREF溶離温度(℃))−136.58
に相当する、DSCによって測定された融解エンタルピー(融解熱)を有するという点で、特徴付けられる。
【0060】
本発明のブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画された場合に40℃〜130℃間に溶離する分子画分を有し、40℃と約76℃未満との間のATREF溶離温度を有するあらゆる画分が、式:
融解熱(J/gm)≦(1.1312)(ATREF溶離温度(℃))+22.97
に相当する、DSCによって測定された融解エンタルピー(融解熱)を有するという点で特徴付けられる。
【0061】
赤外線検出器によるATREFピークのコモノマー組成測定
TREFピークのコモノマー組成は、Polymer Char, Valencia, Spain (http://www.polymerchar.com/)から入手可能なIR4赤外検出器を用いて測定され得る。
【0062】
検出器の「組成モード」は、測定センサー(CH2)および組成センサー(CH3)を装備しており、これは2800〜3000cm-1の領域における狭帯域固定型赤外線フィルタである。この測定センサーは、ポリマー上のメチレン(CH2)カーボン(これは、溶液中のポリマー濃度に直接関係する)を検出するが、組成センサーは、ポリマーのメチル(CH3)基を検出する。組成シグナル(CH3)を測定シグナル(CH2)によって除算した算術比は、溶液中の測定されるポリマーのコモノマー含量の影響を受けやすく、その応答は、公知のエチレンα−オレフィンコポリマー標準を用いて較正される。
【0063】
ATREF装置を用いる場合、検出器によって、TREFプロセスの間に溶離されたポリマーの濃度(CH2)および組成(CH3)シグナルの応答の両方が得られる。ポリマー特異的な較正は、コモノマー含量が分かっている(好ましくはNMRによって測定される)を有するポリマーについてCH3対CH2の面積比を測定することによって作成され得る。ポリマーのATREFピークのコモノマー含量は、個々のCH3およびCH2応答に対して面積比の比較較正を適用すること(すなわち、面積比CH3/CH2 対 コモノマー含量)によって推定され得る。
【0064】
ピーク面積は、適切なベースラインを適用してTREFクロマトグラムからの個々のシグナル応答を積分した後、半値全幅(FWHM)計算を用いて算出することができる。この半値全幅算出は、ATREF赤外検出器からのメチル対メチレンの応答面積比[CH3/CH2]の比に基づき、この最も高い(最高の)ピークはベースラインから特定され、次いでFWHM面積が決定される。ATREFピークを用いて測定される分布については、FWHM面積は、T1とT2との間の曲線下面積として規定され、ここでT1およびT2は、ピーク高さを2で割ること、次にATREF曲線の左部分および右部分を横切る、ベースラインに対して水平な線を引くことによって、ATREFピークの左右に対してポイント測定される。
【0065】
このATREF赤外方法においてポリマーのコモノマー含量を測定するための赤外線分光法の適用は、原理的には、以下の引用文献:Markovich,Ronald P.;Hazlitt,Lonnie G.;Smith,Linley;「Development of gel-permeation chromatography-Fourier transform infrared spectroscopy for characterization of ethylene-based polyolefin copolymers」.Polymeric Materials Science and Engineering(1991),65,98-100;およびDeslauriers,P.J.;Rohlfing,D.C.;Shieh,E.T.;「Quantifying short chain branching microstructures in ethylene-1-olefin copolymers using size exclusion chromatography and Fourier transform infrared spectroscopy(SEC-FTIR)」,Polymer(2002),43,59-170、に記載されるようなGPC/FTIRシステムのものと同様であり、その両方の引用文献とも、その全体が本明細書において参照によって援用される。
【0066】
他の実施形態では、本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体は、ゼロより大きくかつ約1.0までである平均ブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnによって特徴付けられる。この平均ブロックインデックスABIは、5℃の増分で、20℃〜110℃の分取TREFで得られたポリマー画分の各々についてのブロックインデックス(「BI」)の重量平均であり:
ABI=Σ(wiBIi
ここでBIiは、分取TREFで得られた本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体のi番目の画分についてのブロックインデックスであり、そしてwiは、i番目の画分の重量パーセンテージである。
【0067】
各々のポリマー画分について、BIは、以下の2つの式(その両方とも同じBI値を与える)のうちの1つによって規定され:
BI=(1/TX−1/TXO)/(1/TA−1/TAB)または、
BI=−(LnPX−LnPXO)/(LnPA−LnPAB
ここでTxはi番目の画分についての分取ATREF溶離温度(好ましくはケルビン温度で表される)であり、Pxは、i番目の画分のエチレンモル画分であって、上記のようなNMRまたはIRによって測定され得る。PABは、エチレン/α−オレフィン共重合体全体のエチレンモル分率(前の画分)であり、これもNMRまたはIRによって測定され得る。TAおよびPAは、純粋な「ハードセグメント(hard segments)」(これは共重合体の結晶セグメントをいう)についてのATREF溶離温度およびエチレンモル画分である。一次の近似として、このTAおよびPAの値は、この「ハードセグメント」についての実測値を得ることができない場合、高密度ポリエチレン・ホモポリマーについての値に設定される。本明細書において行われる計算については、TAは372°Kであって、PAは1である。
【0068】
ABは、同じ組成であって、PABというエチレンモル画分を有するランダムコポリマーについてのATREF温度である。TABは、以下の式:
LnPAB=α/TAB+β
から計算されてもよく、
ここでαおよびβは多数の公知のランダムエチレンコポリマーを用いる検量によって決定され得る2つの定数である。αおよびβは、装置間で変化し得ることに注意すべきである。さらに、目的のポリマー組成を用いて、そしてそれらの画分と同様の分子量範囲に関しても、それら自体の検量線を作成する必要がある。わずかな分子量効果がある。この検量線が、類似の分子量範囲から得られる場合、このような効果は、本質的に無視できる。ある実施形態では、ランダムエチレンコポリマーは、以下の関係:
LnP=-237.83/TATREF+0.639
を満たし、
xoは、同じ組成であって、PXというエチレンモル画分を有するランダムコポリマーについてのATREF温度である。TXOは、LnPX=α/TXO+βから算出されてもよい。逆に、PXOは、同じ組成であって、LnPXO=α/TX+βから算出され得る、TXというATREF温度を有するランダムコポリマーについてのエチレンモル画分である。
【0069】
一旦、各々の分取TREF画分についてブロックインデックス(BI)が得られれば、ポリマー全体についての重量平均ブロックインデックスABIが算出され得る。ある実施形態では、ABIは、ゼロより大きいが、約0.3未満、または約0.1〜約0.3である。他の実施形態では、ABIは、約0.3より大きく約1.0までである。好ましくは、ABIは、約0.4〜約0.7、約0.5〜約0.7、約0.6〜約0.9の範囲であるべきである。ある実施形態では、ABIは、約0.3〜約0.9、約0.3〜約0.8、または約0.3〜約0.7、約0.3〜約0.6、約0.3〜約0.5、または約0.3〜約0.4の範囲である。他の実施形態では、ABIは、約0.4〜約1.0、約0.5〜約1.0、または約0.6〜約1.0、約0.7〜約1.0、約0.8〜約1.0、または約0.9〜約1.0の範囲である。
【0070】
本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体の別の特徴は、この本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体が、分取TREFによって得られ得る少なくとも1つのポリマー画分を含み、この画分は約0.1より大きくかつ約1.0までのブロックインデックス、約1.3より大きい分子量分布MW/Mnを有する。ある実施形態では、このポリマー画分は、約0.6より大きくかつ約1.0まで、約0.7より大きくかつ約1.0まで、約0.8より大きくかつ約1.0まで、または約0.9より大きくかつ約1.0までのブロックインデックスを有する。他の実施形態では、このポリマー画分は、約0.1より大きくかつ約1.0まで、約0.2より大きくかつ約1.0まで、約0.3より大きくかつ約1.0まで、約0.4より大きくかつ約1.0まで、または約0.4より大きくかつ約1.0までのブロックインデックスを有する。さらに他の実施形態では、このポリマー画分は、約0.1より大きくかつ約0.5まで、約0.2より大きくかつ約0.5まで、約0.3より大きくかつ約0.5まで、または約0.4より大きくかつ約0.5までのブロックインデックスを有する。さらに他の実施形態では、このポリマー画分は、約0.2より大きくかつ約0.9まで、約0.3より大きくかつ約0.8まで、約0.4より大きくかつ約0.7まで、または約0.5より大きくかつ約0.6までのブロックインデックスを有する。
【0071】
エチレンおよびα−オレフィンのコポリマーについては、本発明のポリマーは好ましくは、
(1)少なくとも1.3、より好ましくは少なくとも1.5、少なくとも1.7、または少なくとも2.0、そして最も好ましくは少なくとも2.6、5.0という最大値まで、より好ましくは3.5の最大値まで、そして特に2.7という最大値までのPDI;
(2)80J/g以下の融解熱;
(3)少なくとも50重量パーセントのエチレン含量;
(4)−25℃未満、より好ましくは−30℃未満というガラス転移温度Tg、および/または
(5)唯一のTm
を保有する。
【0072】
さらに、本発明のポリマーは、log(G’)が100℃の温度で400kPa以上、好ましくは1.0MPa以上であるような貯蔵弾性率G’を単独で、または本明細書に開示される任意の他の特性と組み合わせて有することができる。さらに、本発明のポリマーは、0〜100℃の範囲で温度の関数として比較的平坦な貯蔵弾性率を保有し(図6に図示される)、これは、ブロックコポリマーの特徴であるが、オレフィンコポリマー、特に、エチレンおよび1またはそれ以上のC3-8脂肪族α−オレフィンのコポリマーについては今まで知られていない。((この文脈での「比較的平坦な」という用語は、50と100℃の間、好ましくは0℃と100℃の間でのlogG’(パスカル)の減少が、1ケタ未満であることを意味する)。)。
【0073】
本発明の共重合体は、少なくとも90℃の温度で1mmという熱機械分析針入深度、および3kpsi(20MPa)〜13kpsi(90MPa)という曲げ弾性率によってさらに特徴付けられ得る。あるいは、本発明の共重合体は、少なくとも104℃の温度で1mmという熱機械分析針入深度、そして少なくとも3kpsi(20MPa)という曲げ弾性率を有し得る。それらは、90mm3未満という耐摩耗性(または容積減少)を有することで特徴づけられ得る。図7は、他の公知のポリマーと比較した場合の、本発明のポリマーについてのTMA(1mm)対屈曲弾性率を示す。本発明のポリマーは有意に、他のポリマーよりもずっとよい可撓性−耐熱性のバランスを有する。
【0074】
さらに、エチレン/α−オレフィン共重合体は、0.01〜2000g/10分、好ましくは0.01〜1000g/10分、さらに好ましくは0.01〜500g/10分、そして特に0.01〜100g/10分というメルトインデックスI2を有し得る。特定の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、0.01〜10g/10分、0.5〜50g/10分、1〜30g/10分、1〜6g/10分または0.3〜10g/10分というメルトインデックスI2を有する。特定の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン・ポリマーのメルトインデックスは、1g/10分、3g/10分または5g/10分である。
【0075】
このポリマーは、1,000g/モル〜5,000,000g/モル、好ましくは1,000g/モル〜1,000,000g/モル、より好ましくは10,000g/モル〜500,000g/モル、そして特に10,000g/モル〜300,000g/モルの分子量MWを有し得る。本発明のポリマーの密度は、0.80〜0.99g/cm3であり得、そして好ましくは、エチレン含有ポリマーについては0.85g/cm3〜0.97g/cm3であり得る。特定の実施形態では、このエチレン/α−オレフィンポリマーの密度は、0.860〜0.925g/cm3または0.867g/cm3〜0.910g/cm3におよぶ。
【0076】
このポリマーを作製するプロセスは、以下の特許出願に開示されている:2004年3月17日出願の米国仮出願第60/553,906号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662,937号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662,939号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/5662938号;2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008916号;2005年3月17日出願のPCT出願第2005/008915号;および2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008917号;これらの全てはその全体が本明細書において参照によって援用される。例えば、1つのこうした方法は、エチレンおよび場合によっては1つまたはそれ以上のエチレン以外の付加重合可能なモノマーを付加重合条件下で触媒組成物と接触させることを含み:
この触媒組成物は、
(A)高いコモノマー組み込みインデックスを有する第一のオレフィン重合触媒、
(B)触媒(A)のコモノマー組み込みインデックスの90パーセント未満、好ましくは50パーセント未満、最も好ましくは5パーセント未満のコモノマー組み込みインデックスを有する第二のオレフィン重合触媒、および
(C)可逆的連鎖移動剤(chain shuttling agent)
を併せることによって得られる混合物または反応生成物を含有する。
【0077】
代表的な触媒および可逆的連鎖移動剤は以下のとおりである。
【0078】
触媒(A1)は、WO03/40195、2003US0204017、USSN10/429,024(2003年5月2日出願)、およびWO04/24740の教示に従って調製した、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−イソプロピルフェニル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【0079】
【化1】

触媒(A2)は、WO03/40195、2003US0204017、USSN10/429,024(2003年5月2日出願)、およびWO04/24740の教示に従って調製した、[N−2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−メチルフェニル)(1,2−フェニレン−(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【0080】
【化2】

触媒(A3)は、ビス[N,N’’’−(2,4,6−トリ(メチルフェニル)アミド)エチレンジアミン]ハフニウムジベンジルである。
【0081】
【化3】

触媒(A4)は、US-A-2004/0010103の教示に実質的に従って調製された、ビス((2−オキソイル−3−(ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル)−5−(メチル)フェニル)−2−フェノキシメチル)シクロヘキサン−1,2−ジイルジルコニウム(IV)ジベンジルである。
【0082】
【化4】

触媒(B1)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルである。
【0083】
【化5】

触媒(B2)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(2−メチルシクロヘキシル)−イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルである。
【0084】
【化6】

触媒(C1)は、米国特許第6,268,444号の教示に実質的に従って調製された、(t−ブチルアミド)ジメチル(3−N−ピロリル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウムジメチルである。
【0085】
【化7】

触媒(C2)は、US-A-2003/004286の教示に実質的に従って調製された、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウムジメチルである。
【0086】
【化8】

触媒(C3)は、US-A-2003/004286の教示に実質的に従って調製された、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,8a−η−s−インダセン−1−イル)シランチタニウムジメチルである。
【0087】
【化9】

触媒(D1)は、Sigma-Aldrichから入手可能なビス(ジメチルジシロキサン)(インデン−1−イル)塩化ジルコニウムである。
【0088】
【化10】

可逆的移動剤(shuttling agent)
使用される可逆的移動剤としては、ジエチル亜鉛、ジ(i−ブチル)亜鉛、ジ(n−ヘキシル)亜鉛、トリエチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリエチルガリウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)、n−オクチルアルミニウムジ(ピリジン−2−メトキシド)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(n−ペンチル)アミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド、n−オクチルアルミニウムジ(エチル(1−ナフチル)アミド)、エチルアルミニウムビス(t−ブチルジメチルシロキシド)、エチルアルミニウム(ジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、エチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)が挙げられる。
【0089】
好ましくは、前述のプロセスは、相互に交換できない複数の触媒を用いる、ブロックコポリマー、特にマルチブロックコポリマー、好ましくは2以上のモノマーの線状マルチブロックコポリマー、さらに詳細にはエチレンおよびC3-20オレフィンまたはシクロオレフィンの線状マルチブロックコポリマー、そして最も詳細にはエチレンおよびC4-20α−オレフィンの線状マルチブロックコポリマーを形成するための連続溶液プロセスの形態をとる。すなわち、これらの触媒は化学的に別個である。連続的な溶液重合条件のもとで、このプロセスは理想的には、高いモノマー変換でのモノマーの混合物の重合に適している。これらの重合条件のもとで、可逆的連鎖移動剤(chain shuttling agent)から触媒への可逆的移動(shuttling)は、鎖成長に比較して有利になり、そしてマルチブロックコポリマー、詳細には線状マルチブロックコポリマーが高い効率で形成される。
【0090】
本発明の共重合体は、逐次的モノマー付加、流動触媒、アニオンリビング重合技術またはカチオンリビング重合技術により調製された、従来のランダムコポリマー、ポリマーの物理的混合物、およびブロックコポリマーとは区別することができる。詳細には、同等の結晶性または弾性率で同じモノマーおよびモノマー含量のランダムコポリマーと比較して、本発明の共重合体は、融点で測定した場合にはより優れた(より高い)耐熱性を、動的機械分析によって判定した場合にはより高いTMA針入温度、より高い高温引張強度、および/またはより高い高温ねじり貯蔵弾性率(torsion storage modulus)を有する。同じモノマーおよびモノマー含量を含有するランダムコポリマーと比較して、本発明の共重合体は、より低い圧縮永久ひずみ(特に、高温で)、より低い応力緩和、より高い耐クリープ性、より高い引裂強度、より高い耐ブロッキング性、より高い結晶化(固化)温度に起因する迅速な硬化、より高い回復(特に高温で)、より良好な耐摩耗性、より高い収縮力、ならびにより良好なオイル許容性およびフィラー(充填剤)許容性を有する。
【0091】
本発明の共重合体はまた、固有の結晶化および分枝分布関係を示す。すなわち、本発明の共重合体は、特に、同じモノマーおよびモノマーレベルを含むランダムコポリマーまたは等価の総合密度でのポリマーの物理的ブレンド、例えば、高密度ポリマーと低密度コポリマーとのブレンドと比較して、CRYSTAFおよびDSCを用いて測定した融解熱の関数として最高のピーク温度の間に比較的大きな差を有する。本発明の共重合体のこの固有の特徴は、ポリマーの主鎖内のブロックにおけるコモノマーの独特の分布に起因すると考えられる。詳細には、本発明の共重合体は、異なるコモノマー含量(ホモポリマーブロックを含む)の交互のブロックを含んでもよい。本発明の共重合体はまた、異なる密度またはコモノマー含量のポリマーブロックの数および/またはブロックサイズの分布を含んでもよく、これは、シュルツ−フローリー(Schultz-Flory)型の分布である。さらに、本発明の共重合体はまた、固有のピーク融点および結晶化温度プロフィールを有し、これは実質的には、ポリマーの密度、弾性率(modulus)および形態とは独立している。好ましい実施形態では、ポリマーの微結晶性秩序は、特徴的な球晶およびラメラを示し、これは1.7未満、または1.5未満、1.3未満までのPDI値においてでさえ、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーとは区別できる。
【0092】
さらに、本発明の共重合体は、ブロッキネス(blockiness)の程度またはレベルに影響する技術を用いて調製され得る。すなわち、コモノマーの量および各々のポリマーブロックまたはセグメントの長さは、触媒および可逆的移動剤の比およびタイプ、ならびに重合の温度および他の重合の変数を制御することによって変更され得る。この現象の驚くべき利点は、ブロッキネスの程度が増大されるほど、得られたポリマーの光学的特性、引裂強度および高温回復の特性が改善されるという発見である。詳細には、ポリマーにおけるブロックの平均数の増大につれて、曇りは減少するが、透明度、引裂強度および高温回復の特性は増大する。所望の連鎖移送能力(高い可逆的移動(shuttling)速度、低レベルの連鎖停止を伴う)を有する可逆的移動剤および触媒の組み合わせを選択することによって、他の形態のポリマー停止は効率的に抑制される。従って、β水素化物脱離が、本発明の実施形態によるエチレン/α−オレフィンコモノマー混合物の重合でほとんど観察されず、そして得られた結晶ブロックは高度に、または実質的に完全に、線状であり、長鎖分枝をほとんどまたはまったく保有しない。
【0093】
高結晶性連鎖末端を有するポリマーは、本発明に実施形態によって選択的に調製され得る。弾性用途では、非結晶性のブロックで終わるポリマーの相対量を減少させることによって、結晶性領域に対する分子間希薄化効果が減少される。この結果は、水素または他の可逆的連鎖停止因子に対して適切な応答を有する可逆的連鎖移動剤および触媒を選択することによって得ることができる。詳細には、高結晶性ポリマーを生成する触媒が、(例えば、より高いコモノマー組み込み、レジオ−エラー(regio-error)、またはアタクチックポリマー形成によって)より少ない結晶性ポリマーセグメントを生成する原因となる触媒よりも、(例えば、水素の使用により)連鎖停止を受けやすい場合には、高結晶性ポリマーセグメントが、そのポリマーの末端部分を優先的に占める。得られる末端基が結晶性であるだけでなく、高結晶性のポリマー形成触媒部位は、停止の際にポリマー形成の再開始にもう一度利用可能である。従って、最初に形成されたポリマーは、別の高結晶性のポリマーセグメントである。従って、得られたマルチブロックコポリマーの両方の末端は優先的に高度に結晶性である。
【0094】
本発明の実施形態で用いられるエチレンα−オレフィン共重合体は好ましくは、少なくとも1つのC3−C20α−オレフィンを有するエチレンの共重合体である。エチレンおよびC3−C20α−オレフィンのコポリマーが特に好ましい。この共重合体はさらに、C4−C18ジオレフィンおよび/またはアルケニルベンゼンを含んでもよい。エチレンとの重合のために有用な適切な不飽和コモノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和モノマー、共役または非共役ジエン、ポリエン、アルケニルベンゼンなどが挙げられる。このようなコモノマーの例としては、C3−C20α−オレフィン、例えば、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどが挙げられる。1−ブテンおよび1−オクテンが特に好ましい。他の適切なモノマーとしては、スチレン、ハロ−またはアルキル−置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、およびナフテン類(naphthenics)(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセンおよびシクロオクテン)が挙げられる。
【0095】
エチレン/α−オレフィン共重合体が好ましいポリマーであるが、他のエチレン/オレフィンポリマーも用いられ得る。本明細書において用いられるオレフィンとは、少なくとも1つの炭素間二重結合を有する不飽和の炭化水素系化合物のファミリーをいう。触媒の選択に依存して、オレフィンは、本発明の実施形態で用いられ得る。好ましくは、適切なオレフィンは、ビニル不飽和を含むC3−C20脂肪族および芳香族化合物、ならびに環状化合物、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、およびノルボルネンであって、これには、限定はしないが、C1−C20ヒドロカルビル基またはシクロヒドロカルビル基で5位および6位で置換されたノルボルネンが挙げられる。このようなオレフィンの混合物、およびこのようなオレフィンとC4−C40ジオレフィン化合物との混合物も挙げられる。
【0096】
オレフィンモノマーの例としては、限定はしないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンおよび1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン、4−ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、エチルイデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、C4−C40ジエンが挙げられ、これには限定はしないが、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、他のC4−C40α−オレフィンなどが挙げられる。特定の実施形態では、α−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンまたはそれらの組み合わせである。ビニル基を含む任意の炭化水素が本発明の実施形態で用いられてもよいが、実際的な問題、例えば、モノマーの有効性、コスト、および得られたポリマーから未反応のモノマーを都合よく除去する能力は、このモノマーの分子量が大きくなり過ぎると、さらに問題となり得る。
【0097】
本明細書に記載される重合プロセスは、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレンなどのモノビニリデン芳香族モノマーを含むオレフィンポリマーの生成に十分適している。詳細には、エチレンおよびスチレンを含む共重合体は、本明細書の教示に従うことによって調製され得る。必要に応じて、エチレン、スチレンおよびC3−C20αオレフィンを含み、必要に応じてC4−C20ジエンを含み、改善された特性を有するコポリマーが調製され得る。
【0098】
適切な非共役ジエンモノマーは、6〜15個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状炭化水素ジエンであり得る。適切な非共役ジエンの例としては、限定はしないが、直鎖非環式ジエン、例えば、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、分枝鎖非環式ジエン(例えば、5−メチル−1,4−ヘキサジエン;3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン;3,7−ジメチル−1,7−オクタジエンならびにジヒドロミリセンおよびジヒドロオシネンの混合異性体)、単環脂環式ジエン(例えば、1,3−シクロペンタジエン;1,4−シクロヘキサジエン;1,5−シクロオクタジエンおよび1,5−シクロドデカジエン)、ならびに多環脂環式縮合および架橋環ジエン、例えば、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ−(2,2,1)−ヘプタ−2,5−ジエン;アルケニルノルボルネン、アルキリデンノルボルネン、シクロアルケニルノルボルネンおよびシクロアルキリデンノルボルネン(例えば、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB);5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネンおよびノルボルナジエン)が挙げられる。EPDMを調製するために代表的に用いられるジエンのうち、特に好ましいジエンは1,4−ヘキサジエン(HD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニリデン−2−ノルボルネン(VNB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)およびジシクロペンタジエン(DCPD)である。特に好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および1,4−ヘキサジエン(HD)である。
【0099】
本発明の実施形態に従って作製され得る所望のポリマーの1クラスは、エチレン、C3−C20α−オレフィン(特にプロピレン)および必要に応じて1またはそれ以上のジエンモノマーのエラストマー系共重合体である。本発明の実施形態で用いるための好ましいα−オレフィンは、式CH2=CHR*で示され、R*は、1〜12個の炭素原子の直鎖状または分枝したアルキル基である。適切なα−オレフィンの例としては、限定はしないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが挙げられる。特に好ましいα−オレフィンは、プロピレンである。プロピレン系ポリマーは一般に、当分野では、EPポリマーまたはEPDMポリマーと呼ばれる。このようなポリマーを調製する際に使用する適切なジエン、特にマルチブロックEPDM型のポリマーとしては、4〜20個の炭素を含む、共役または非共役の、直鎖または分枝鎖の、環状または多環式のジエンが挙げられる。好ましいジエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエンおよび5−ブチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。特に好ましいジエンは5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0100】
ジエン含有ポリマーは交互のセグメントまたはブロックであって、より大量もしくは少量のジエン(なしも含む)およびα−オレフィン(なしも含む)を含むセグメントまたはブロックを含むので、ジエンおよびα−オレフィンの総量は、その後にポリマーの特性を失うことなく軽減され得る。すなわち、ジエンおよびα−オレフィンのモノマーは、ポリマー全体にわたって均一でもまたはランダムに組み込まれるよりもむしろ、ポリマーのブロックの1タイプに優先的に組み込まれるので、それらは、より効率的に利用され、そして引き続きこのポリマーの架橋密度は、さらに良好に制御され得る。このような架橋可能な弾性および硬化した生成物は、より高い引張強度およびより良好な弾性回復率が挙げられる有利な特性を有する。
【0101】
ある実施形態では、種々の量のコモノマーを組み込んでいる2つの触媒で作製された本発明の共重合体は、それによって形成されたブロックの重量比95:5〜5:95を有する。所望の弾性ポリマーは、ポリマーの総重量に基づいて、20〜90パーセントのエチレン含量、0.1〜10パーセントのジエン含量、そして10〜80パーセントのα−オレフィン含量を有する。さらに好ましくは、マルチブロック弾性ポリマーは、ポリマーの総重量に対して、60〜90パーセントのエチレン含量、0.1〜10パーセントのジエン含量、そして10〜40パーセントのα−オレフィン含量を有する。好ましいポリマーは、高分子量のポリマーであって、これは、10,000〜約2,500,000、好ましくは、20,000〜500,000、より好ましくは20,000〜350,000という平均分子量(Mw)、および3.5未満、より好ましくは3.0未満という多分散性、そして1〜250のムーニー粘度(ML(1+4)125℃)を有する高分子量ポリマーである。さらに好ましくは、このようなポリマーは、65〜75パーセントのエチレン含量、0〜6パーセントのジエン含量、および20〜35パーセントのα−オレフィン含量を有する。
【0102】
エチレン/α−オレフィン共重合体は、そのポリマー構造中に少なくとも1つの官能基を組み込むことによって官能化され得る。例示的な官能基としては、例えば、エチレン不飽和単官能性および二官能性のカルボン酸、エチレン不飽和単官能性および二官能性のカルボン酸無水物、その塩およびそのエステルが挙げられ得る。このような官能基は、エチレン/α−オレフィン共重合体にグラフトされてもよいし、またはこれは、エチレンおよび任意のさらなるコモノマーと共重合されて、エチレンの共重合体、官能コモノマーおよび必要に応じて他のコモノマー(単数または複数)を形成してもよい。ポリエチレンに官能基をグラフトする手段は、例えば、それらの特許の開示がその全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許第4,762,890号、同第4,927,888号および同第4,950,541号に記載される。特に有用な官能基の1つは、リンゴ酸無水物である。
【0103】
官能性共重合体に存在する官能基の量は、変化し得る。官能基は代表的には、少なくとも約1.0重量パーセント、好ましくは少なくとも約5重量パーセント、そしてさらに好ましくは少なくとも約7重量パーセントの量でコポリマー型官能化共重合体に存在し得る。この官能基は代表的には、コポリマー型官能化共重合体中に、約40重量パーセント未満、好ましくは約30重量パーセント未満、そして最も好ましくは約25重量パーセント未満の量で存在する。
【0104】
繊維(ファイバー)
本発明の実施形態では、固有の特性を有するエチレン/α−オレフィン共重合体から作製される連続繊維(continuous fibers)が提供される。エチレン/α−オレフィン共重合体の種々の繊維を作製する方法は、その内容が全体として本明細書に参照によって援用される、2005年9月16日出願の米国仮特許出願第60/718,917号に開示される。本明細書における使用のためのブロックコポリマーの総合密度は、約0.93g/cc未満、約0.91g/cc未満、または約0.90g/cc未満である。
【0105】
特定の実施形態では、連続繊維は、エチレン/α−オレフィン共重合体および少なくとも1つの他のポリマーの混合物から作製される。他のポリマーは、熱可塑性エラストマー、熱可塑性非弾性ポリマー、またはその組み合わせ(ポリマー混合物)であってもよい。特定の実施形態では、連続繊維は、エチレン/α−オレフィン共重合体および熱可塑性エラストマーの複合繊維、エチレン/α−オレフィン共重合体および熱可塑性非エラストマーの複合繊維、またはエチレン/α−オレフィン共重合体、熱可塑性エラストマーおよび熱可塑性非弾性ポリマーの複合繊維である。複合繊維としては、例えば、シース−コア(sheath-core)構造の繊維、サイド−バイ−サイド(side-by-side)構造の繊維、偏芯状シース−コア構造繊維などが挙げられる。ある実施形態では、この三次構造のネット構造は、エチレン/α−オレフィン共重合体、および以下のうちの少なくとも1つのから作製された繊維から構成され得る:1.熱可塑性エラストマーから作製された繊維、2.熱可塑性非弾性ポリマーから作製された繊維、または3.熱可塑性エラストマーおよび熱可塑性非エラストマーから作製される繊維から作製される繊維の組み合わせ。
【0106】
エチレン/α−オレフィン共重合体繊維および熱可塑性非弾性ポリマー繊維からなるネット構造の複合または積層(統合的結合構造)の例としては、エチレン/α−オレフィン共重合体層/非エラストマー層/エチレン/α−オレフィン共重合体エラストマー層のサンドイッチ構造、エチレン/α−オレフィン共重合体層/非エラストマー層の二重構造、およびその中に非エラストマー層を含むエチレン/α−オレフィン共重合体のマトリックスの複合構造が挙げられる。
【0107】
本明細書で提供されるネット構造は、所望の特性を満たすように、適切に選択されるような、異なるサイズ、異なるデニール、異なる組成、異なる密度などを有するループからなる種々のネット構造の積層または複合であってもよい。
【0108】
存在する場合、本明細書における使用のための連続繊維における他のポリマーの量は、ポリマーの総重量の約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、約5%未満である。
【0109】
熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーの例としては、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマーおよびポリアミドエラストマーが挙げられる。このポリエステルエラストマーは、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとして、そしてポリアルキレンジオールをソフトセグメントとして含む、ポリエステル−エーテルブロックコポリマー、ならびに熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとして、そして脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとして含む、ポリエステル−エーテルブロックコポリマーによって例示される。ポリエステル−エーテルブロックコポリマーの具体的な例としては、三次ブロックコポリマーが挙げられ、このコポリマーは、芳香族ジカルボン酸、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、ナフタレン2,7−ジカルボン酸およびジフェニル4,4’−ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、例えば、1,4−シクロヘキセンジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸および二量体酸、ならびにそのエステル形成誘導体から選択される少なくとも1つのジカルボン酸;脂肪族ジオール、例えば、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコールおよびヘキサメチレングリコール、脂環式ジオール、例えば、1,1−シクロヘキサンジメタノールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールならびにそのエステル形成誘導体から選択される少なくとも1つのジオール成分;そして約300〜5000という平均分子量を有するポリアルキレンジオール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびエチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーから選択される少なくとも1つの化合物が挙げられる。このポリエステルブロックコポリマーの例としては、上述のジカルボン酸、上述のジオールおよび約300〜3000という平均分子量を有するポリエステルジオール(例えば、ポリラクトン)の各々に由来する少なくとも1つの化合物を含む三次ブロックコポリマーが挙げられる。熱結合、加水分解に対する耐性、伸縮性および耐熱性を考慮して、三次ブロックコポリマーは、テレフタル酸および/またはナフタレン2,6−ジカルボン酸をジカルボン酸として;1,4−ブタンジオールをジオール成分として;そしてポリテトラメチレングリコールをポリアルキレングリコールとして、またはポリラクトンを、ポリエステルジオールとして含む。ある実施形態では、ソフトセグメントのためにポリシロキサンを含むポリエステルエラストマーが用いられてもよい。上述のポリエステルエラストマーは、単独でまたは組み合わせて用いられてもよい。また、ポリエステルエラストマーおよび非エラストマー成分の混合物またはコポリマーが、本明細書で提供されるランダムループの、ある実施形態では、三次元ループの構造の連続繊維で用いられてもよい。
【0110】
ポリアミドエラストマーの例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12またはそれらのコポリマーナイロンを、ハードセグメントの骨格として、そして約300〜5000という平均分子量を有する少なくとも1つのポリアルキレンジオール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールまたはエチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーをソフトセグメントとして含むブロックコポリマーが挙げられ、これは単独で用いられても、組み合わせて用いられてもよい。また、ポリアミドエラストマーおよび非エラストマー成分の混合物またはコポリマーが、連続繊維で用いられてもよい。
【0111】
ポリウレタンエラストマーの代表的な例は、(A)1000〜6000という平均分子量を有しかつ末端にヒドロキシル基を有するポリエーテルおよび/またはポリエステル、ならびに(B)主な成分として有機ジイソシアネートを含有するポリイソシアネートと、(C)従来の溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)中にまたは溶媒なしで、主な成分としてジアミンを含有するポリアミンとを、反応させることによって得られている、イソシアネート基を両端に有するプレポリマーを鎖延伸することによって作製されたポリウレタンエラストマーである。ポリエステルおよびポリエーテル(A)の例としては、約1000〜6000、好ましくは1300〜5000という平均分子量を有する、アジピン酸ポリブチレンおよびポリアルキレンジオール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびエチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーと共重合されたポリエステルが挙げられ、ポリイソシアネート(B)のいくつかの例としては、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートから主に構成され、必要に応じて、少量の公知のトリイソシアネートなどを添加された従来公知のポリイソシアネートおよびイソシアネートが挙げられ;そしてポリアミン(C)の例としては、少量のトリアミンまたはテトラアミンを必要に応じて添加された、公知のジアミン、例えば、エチレンジアミン、および1,2−プロピレンジアミンが挙げられる。これらのポリウレタンエラストマーは、単独で用いられても、または組み合わせて用いられてもよい。
【0112】
特定の実施形態では、エラストマーは、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマーおよびポリウレタンエラストマーであって、これは、ソフトセグメントとして300〜5000という分子量を有する、ポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコールまたはポリカーボネートグリコールのブロック共重合化によって得られる。熱可塑性エラストマーの使用によって、再融解による再生が可能になり、これによってリサイクルの使用が促進される。
【0113】
特定の実施形態では、本明細書において用いるための熱可塑性エラストマーの融点は、170℃以上かつ350℃以下であって、他の実施形態では、140℃以上でかつ300℃以下であって、この範囲であれば耐熱耐久性の範囲は、満足に維持され得る。
【0114】
存在する場合、本明細書における使用のための連続繊維における熱可塑性エラストマーの量は、ポリマーの総重量の約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、約5%未満である。
【0115】
熱可塑性非弾性ポリマー
特定の実施形態では、連続繊維の出発材料としてエチレン/α−オレフィン共重合体とともに必要に応じて用いられる熱可塑性の非弾性ポリマーは、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンなどによって例示される。
【0116】
ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCHDT)、ポリシクロヘキシレンジメチレンナフタレート(PCHDN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、それらのコポリマーなどによって例示される。
【0117】
ポリアミド樹脂は、ポリカプロラクタム(NY6)、ポリヘキサメチレンアジポアミド(NY66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(NY6-10)、それらのコポリマーなどによって例示される。
【0118】
特定の実施形態で用いられるべき熱可塑性非エラストマーの融点は、約150℃〜350℃、他の実施形態では、約200℃〜300℃、他の実施形態では240℃〜300℃の範囲である。
【0119】
存在する場合、本明細書における使用のための連続繊維における熱可塑性非弾性ポリマーの量は、ポリマーの総重量の約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、約5%未満である。
【0120】
添加物
必要に応じて、本明細書で提供されるネット構造は、その処理性、外観、物理的、化学的および/もしくは機械的な特性を改善ならびに/または制御する目的のために少なくとも1つの添加物を含んでもよい。当業者に公知の任意のポリマー添加物は、本明細書で提供されるクッション性ネット構造で用いられ得る。適切な添加物の非限定的な例としては、抗酸化剤、UV安定化剤、着色剤または顔料、難燃剤、帯電防止剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。添加物の総量は、ポリマーの総重量のほぼ0%を超えて約30%まで、約0.001%〜約20%、約0.01%〜約20%、約0.1%〜約20%、約1%〜約15%、または約1%〜約10%の範囲であり得る。いくつかのポリマー添加物は、その全体が参照によって本明細書に援用される、Zweifel Hans et al.,「Plastics Additives Handbook,」Hanser Gardner Publications,Cincinnati,Ohio,5th edition(2001)に記載されている。
【0121】
本明細書で提供される連続繊維を配合するには、各々の添加物は、本明細書で用いられるエチレン/α−オレフィン共重合体から、特に溶融状態で、相分離しないように、そのエチレン/α−オレフィン共重合体と相溶性であることが所望される。一般には、エチレン/α−オレフィン共重合体との添加物の相溶性は、ヒルデブランド(Hildebrand)溶解度パラメーターのような溶解度パラメーターの間の相が減少するにつれて増大する。いくつかのヒルデブランド溶解度パラメーターは、溶媒については、Barton, A.F.M.Hanbook of Solubility and Other Cohesion Parameter, 2nd Ed.CRC Press, Boca Raton, FL(1991)に、モノマーおよび代表的なポリマーについては、Polymer Handbook,3rd Ed., J.Brandrup & E.H.Immergut, Eds.John Wiley, NY, pages 519-557(1989)に、そして多くの市販のポリマーについては、Barton, A.F.M.Handbook of Polymer-Liquid Interaction Parameters and Solubility Parameters, CRC Press, Boca Raton, FL(1990)において表にされており、その全てが参照によって本明細書に援用されている。コポリマーのヒルデブランド溶解度パラメーターは、Barton A.F.M., Handbook of Solubility Parameters and Other Cohesion Parameters, CRC Press, Boca Raton, page 12(1990)において二成分コポリマーについて記載されたように、モノマーを含有する各々のコポリマーについて個々のヒルデブランド溶解度パラメーターの体積分率重み付けを用いて算出され得る。ポリマー材料のヒルデブランド溶解度パラメーターの大きさは、Barton, pages 446〜448に注記されるように、ポリマーの分子量にあまり依存していないことも公知である。従って、所与のエチレン/α−オレフィン共重合体については好ましい分子量範囲があり、そして接着強度は、エチレン/α−オレフィン共重合体または添加物の分子量を操作することによってさらに制御され得る。ある実施形態では、エチレン/α−オレフィン共重合体と添加物、例えば、抗酸化剤との間のヒルデブランド溶解度パラメーターの絶対的な差は、ほぼ0を超えて約10MPa1/2、約0.1〜約5MPa1/2、約0.5〜約4.0MPa1/2、または約1〜約3.0MPa1/2の中におさまる。
【0122】
本明細書で提供される連続繊維における使用のための抗酸化剤または安定化剤としては、当業者に公知の任意の抗酸化剤が挙げられる。適切な抗酸化剤の非限定的な例としては、アミンに基づく抗酸化剤、例えば、アルキルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルまたはアラルキル置換フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化p−フェニレンジアミン、テトラメチル−ジアミノジフェニルアミンなど;およびヒンダードフェノール化合物、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;テトラキス[(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート)]メタン(例えば、Ciba Geigy, New YorkのIRGANOX(商標)1010);オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシシンナメート(例えば、Ciba Geigyから市販のIRGANOX(商標)1076)、Cyanox(登録商標)1790、トリス(2,4−ditert−ブチルフェニル)ホスフィット(Irgafos168)、PEPQ(Sandoz Chemicalの商品名)およびそれらの組み合わせが挙げられる。用いられる場合、連続繊維中の抗酸化剤の量は、共重合体の総重量の約0を超えて約10重量%、約0.1〜約5重量%、または約0.5〜約2重量%であってもよい。
【0123】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるクッション性ネット構造は、UV照射によるネット構造の分解を妨げるかまたは軽減し得る、UV安定化剤を含む。当業者に公知の任意のUV安定化剤が本明細書で用いられ得る。適切なUV安定化剤の非限定的な例としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、アリールエステル、オキサニリド、アクリル酸エステル、ホルムアミジンカーボンブラック、ヒンダードアミン、ニッケルクエンチャー、ヒンダードアミン、フェノール系抗酸化剤、金属塩、亜鉛化合物およびそれらの組み合わせが挙げられる。用いられる場合、組成物中のUV安定化剤の量は、共重合体の総重量の約0を超えて約10重量%、約0.1〜約5重量%、または約0.5〜約2重量%であってもよい。
【0124】
さらなる実施形態では、本明細書における使用のための連続繊維は必要に応じて、ヒトの眼に対するネット構造の様子を変化し得る着色料または顔料を含む。当業者に公知の任意の着色料または顔料が、本明細書で提供される繊維に添加されてもよい。適切な着色料または顔料の非限定的な例としては、無機顔料、例えば、金属酸化物、例えば、酸化鉄、酸化亜鉛および二酸化チタン、混合された金属酸化物、カーボンブラック、有機顔料、例えば、アントラキノン、アンタントロン(anthanthrones)、アゾおよびモノアゾ化合物、アリールアミド、ベンズイミダゾロン、BONAレーク、ジケトピロロ−ピロール、ジオキサジン、ジサゾ化合物、ジアリライド(diarylide)化合物、フラバントロン、インダントロン、イソインドリノン、イソインドリン、金属錯体、モノアゾ塩、ナフトール、b−ナフトール、ナフトールAS、ナフトールレーク、ペリレン、ペリノン、フタロシアニン、ピラントロン、キナクリドン、およびキノフタロンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。適切な着色料または顔料のさらなる例としては、無機顔料、例えば、二酸化チタンおよびカーボンブラック、フタロシアニン顔料、および他の有機顔料、例えば、IRGAZIN(登録商標)、CROMOPHTAL(登録商標)、MONASTRAL(登録商標)、CINQUASIA(登録商標)、IRGALITE(登録商標)、ORASOL(登録商標)が挙げられ、その全てがCiba Specialty Chemicals, Tarrytown, NYから入手可能である。用いられる場合、繊維中の着色料または顔料の量は、共重合体の総重量の約0を超えて約10重量%、約0.1〜約5重量%、または約0.5〜約2重量%であってもよい。用いられる場合、クッション性ネット構造中の着色料または顔料の量は、このクッション性ネット構造の総重量の約0を超えて約10重量%、約0.1〜約5重量%、または約0.25〜約2重量%であってもよい。いくつかの着色料は、参照によって本明細書に援用される、Zweifel Hans et al., "Plastics Additives Handbook," Hanser Gardner Publications, Cincinnati, Ohio, 5th edition, Chapter 15, pages 813-882(2001)に記載されている。
【0125】
クッション性ネット構造を作製するための一般的方法
本明細書で提供されるクッション性ネット構造は、当分野で公知の任意の方法によって作製され得、このような方法の例は、参照によって本明細書に援用される、米国特許第5,639,543号および同第6,378,150号に記載される。
【0126】
図8に示されるとおり、本明細書で提供される例示的なクッション性ネット構造は、100デニール以上の連続繊維2を、溶融状態でそれぞれのループが互いに接触するように巻かせること、そして接点4のほとんどで熱結合させることによって形成された多数のループ3によって提供される三次元ランダムループ構造1を有する。重大な変形を生じる大きい応力が与えられる場合でさえ、この構造は、それ自体を変形することによって融解統合された(melt-integrated)三次元ランダムループからなる全体的なネット構造で応力を吸収する;そしてその応力が一旦解除されれば、エラストマーのゴム弾力によって、それ自体が構造のもとの形状に回復される。公知の非弾性ポリマーからなる連続繊維から構成されるネット構造がクッション性物質として用いられる場合、塑性変形が進行して、回復は行われ得ず、これによって耐熱耐久性が劣ることになる。繊維が接点で溶融結合されない場合、その形状は、保持され得ず、そして構造はその形状を一体として変化させず、応力の集中に起因して疲労現象が生じるという結果を伴い、これによって不利なことに耐久性および変形抵抗性が低下する。特定の実施形態では、溶融結合とは全ての接点が溶融結合される状態である。
【0127】
クッション性ネット構造を生成するための例示的な方法は、図9に記載される。この方法は、(a)一般的な溶融押出機において共重合体の融点よりも10℃〜80℃高い温度で、溶融エチレン/α−オレフィン共重合体を加熱する工程と、(b)複数の開口部を有するノズル(5)から下向きに溶融共重合体を放出して、繊維を自然に落とさせることによってループを形成させる工程とを含む。この共重合体は、熱可塑性エラストマー、熱可塑性非弾性ポリマーと組み合わせて、または必要に応じて、それらの組み合わせとともに用いられ得る。ノズル表面と繊維を凝固するために冷却ユニット上に配置されたテイクオフコンベヤー(7)との間の距離、共重合体の溶融粘度、開口部の直径、および放出される量が、ループの直径および繊維の繊度を決める要素である。ループ(3)は、供給された溶融繊維(2)を、冷却ユニット(6)上のテイクオフコンベヤーセットの対の間に保持して置くこと(その距離はその間で調節可能)、このようにして形成されたループを、この末端に対する開口部の間の距離を調節することにより互いに接触させることによって形成され、その結果接触したループは、それが三次元ランダムループ構造を形成する際に熱結合される。次いで、この連続繊維は、ループが三次元のランダムループ構造を形成する際に接点が熱結合され、ネット構造を得るための凝固のために冷却ユニットに連続的に入れられる。その後に、その構造は、所望の長さおよび形状に切断されて、クッション性物質としての使用のために必要な場合、積層に処理される。この方法は、共重合体が溶融されて、共重合体の融点よりも10℃〜80℃高い温度で加熱され、複数の開口部を有するノズルから溶融状態で下向きに供給されるという点で特徴付けられる。共重合体が、融点よりも10℃未満高い温度で放出される場合、この供給された繊維は、冷えて、流動性が少なく、繊維の接点で生じる熱結合が不十分である。
【0128】
特性、例えば、本明細書で提供されるクッション性ネット構造を構成する繊維のループ直径および繊度は、ノズル表面と、共重合体を凝固するために冷却ユニット上に配置されたテイクオフコンベヤーとの間の距離、共重合体の溶融粘度、開口部の直径、およびそれから供給されるべき共重合体の量に依存する。例えば、供給される共重合体の量の減少および供給の際の融点粘度がより低いことによって、繊維の繊度がより小さくなり、そしてランダムループの平均ループ直径がより小さくなる。逆に、ノズル表面と、共重合体を凝固するために冷却ユニット上に配置されたテイクオフコンベヤーとの間の距離が短くなれば、繊維の繊度がわずかに大きくなり、そしてランダムループの平均ループ直径がより大きくなる。これらの条件を組み合わせて、100デニール〜100000デニールという連続繊維の所望の繊度、そして100mm以下、10〜50または2〜25mmというランダムループの平均直径が得られる。前述のコンベヤーに対する距離を調節することによって、その構造の厚みは制御され得るが、熱結合されたネット構造は、溶融状態であって、このコンベヤーによって形成された所望の厚みおよび平坦な表面を有する構造を得ることができる。コンベヤーの速度が大きすぎれば、冷却が熱結合の前に進行するせいで、接点を熱結合することができない。他方では、速度が遅すぎれば、溶融物質が過度に長く滞留することに起因して、より高い密度になり得る。いくつかの実施形態では、コンベヤーへの距離およびコンベヤーの速度は、0.005〜0.1g/cm3または0.01〜0.05g/cm3という所望のみかけ密度が達成され得るように選択されなければならない。
【0129】
ネット構造の使用
本明細書で提供されるネット構造は、限定はしないが、表層の詰め物、中間層クッション性物質、乗り物のシート、遠洋航海用シート、ベッド、ソファ、イスおよび家具における使用のためを含む、当分野で公知の種々のクッションの用途で用いられる。
【0130】
本明細書で提供されるネット構造をクッション性物質として用いる場合、用いられるべきポリマー、繊度、ループ直径および嵩密度は、使用の目的およびそれがどこに用いられるかに依存して選択されるべきである。例えば、この構造が表層の詰め物に用いられる場合、柔らかい手触り、十分な沈み込みおよび張力による拡張を付与するために、低密度、小さい繊度、および小さいループ直径が所望され;中間層クッション性物質として用いられる場合、共鳴振動を減少させるために、中程度の密度、大きい繊度およびある程度大きいループ直径が所望され、これが次に圧縮下でのヒステリシスの十分な硬度および線状の変化の補助により形状保持を改善し、耐久性を保持する。さらに、本発明の構造は、金型の使用によってこの構造を適切な形状へ形成する際に、三次元構造が正常に機能する程度まで、乗り物のシート、遠洋航海用シート、ベッド、イス、家具などのために、そしてこれらを外側の包装で覆うために用いられ得る。
【0131】
所望の用途を満たすための所望の特性を達成するために、他のクッション物質、例えば、硬化されたクッション物質または短い繊維のアセンブリから作製された不織布と一緒にこの構造を用いることも可能である。さらに、難燃加工、殺虫−抗菌加工、熱および水に対する耐性、撥油性、色、芳香などは、ポリマーの作製から成形品へポリマーを加工するまでの任意の段階の間に付与され得る。
【0132】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するために提示されるが、本発明を説明する特定の実施形態に限定するものではない。逆に示さない限り、全ての部分および割合は重量による。全ての数値は近似である。数値範囲が与えられる場合、言及される範囲の外側の実施形態は、本発明の範囲内にやはりおさまり得るということが理解されるべきである。各々の実施例において記載される特定の詳細は、本発明の必須の特徴として解釈されるべきではない。
【実施例】
【0133】
試験方法
以下の実施例では、以下の分析技術が使用される:
サンプル1〜4およびA〜CについてGPC法
160℃に設定された加熱針を装備した自動化液体処理ロボットを用いて、各々の乾燥ポリマーサンプルに対して300ppmのIonolで安定化した十分な1,2,4−トリクロロベンゼンを添加して、30mg/mLという最終濃度を得る。小さいガラス撹拌ロッドを各々のチューブに入れて、そのサンプルを、250rpmで回転する加熱式旋回シェーカーを用いて160℃で2時間加熱する。次いで濃縮されたポリマー溶液を、自動化液体処理ロボットおよび160℃に設定された加熱針を用いて1mg/mlに希釈する。
【0134】
Symyx Rapid GPCシステムを用いて各々のサンプルについての分子量データを決定する。2.0ml/分の流量に設定したGilson 350ポンプを用いて、直列に配置され、160℃に加熱された3つのPlgel 10マイクロメーター(μm)Mixed B 300mm×7.5mmカラムを通して300ppmのIonolで安定化させヘリウムでパージした1,2−ジクロロベンゼンを移動相としてポンプで送る。エバポレーターを250℃に設定し、ネブライザーを165℃に設定し、および窒素流量を60〜80psi(400〜600kPa)N2の圧で1.8SLMに設定したPolymer Labs ELS 1000 Detectorを用いる。ポリマーサンプルを160℃に加熱して、各々のサンプルを、液体処理ロボットおよび加熱ニードルを用いて250μlのループに注入した。2つの切り替えループおよび重複注入を用いるポリマーサンプルの連続的分析を用いる。このサンプルデータを収集して、Symyx Epoch(商標)ソフトウェアを用いて分析する。ピークを手技的に積分するが、報告された分子量情報は、ポリスチレン標準検量線に対して未補正である。
【0135】
標準的なCRYSTAF方法
分枝分布は、PolymerChar, Valencia, Spainから市販されているCRYSTAF 200ユニットを用いて結晶分析分画(crystallization analysis fractionation:CRYSTAF)によって決定する。このサンプルは、160℃で1,2,4トリクロロベンゼン(0.66mg/mL)に1時間溶解させ、そして95℃で45分間安定化させる。サンプリング温度は、0.2℃/分の冷却速度で95〜30℃におよぶ。赤外線検出器を用いて、ポリマー溶液の濃度を測定する。累積溶解濃度は、温度の低下と同時にポリマーが結晶化する間に測定する。累積されたプロフィールの分析導関数は、そのポリマーの短鎖分枝分布を反映する。
【0136】
CRYSTAFのピーク温度および面積は、CRYSTAFソフトウェア(Version 2001.b, PolymerChar, Valencia, Spain)に含まれるピーク分析モジュールによって特定される。CRYSTAFピーク検出ルーチン(finding routine)は、ピーク温度をdW/dT曲線の最大値として特定し、そしてこの微分曲線におけるその特定したピークの片側の正の最大変曲間の面積を特定する。CRYSTAF曲線を算出するために、好ましい処理パラメーターは、70℃の温度限界を有し、ならびにその温度限界より上では0.1の、およびその温度限界より下では0.3の平滑化パラメーターを有するものである。
【0137】
DSC標準法(サンプル1〜4およびA〜Cを除く)
示差走査熱量測定法(Differential Scanning Calorimetry)の結果は、RCS冷却アクセサリおよびオートサンプラーを装備したTAIモデルQ1000 DSCを用いて決定する。50ml/分という窒素パージガス流を用いる。このサンプルを、薄膜にプレスして、約175℃でプレス内で溶融し、次いで室温(25℃)まで空冷する。次いで3〜10mgの物質を6mmの直径のディスクに切断し、正確に秤量し、軽量アルミのパンに入れ(約50mg)、次いで圧着する。サンプルの熱挙動は、以下の温度プロフィールで検討する。このサンプルを180℃まで急速に加熱して、3分間恒温に保持して、以前の熱履歴を除く。次いで、このサンプルを10℃/分の冷却速度で−40℃まで冷却し、−40℃で3分間保持する。次いで、このサンプルを10℃/分の加熱速度で150℃まで加熱する。その冷却および第二の加熱曲線を記録する。
【0138】
DSC融解ピークは、−30℃と融解終点との間にひいた直線のベースラインに関する熱流量(W/g)における最大として測定される。融解熱は直線のベースラインを用いて−30℃と融解終点との間の融解曲線の下の面積として測定される。
【0139】
GPC法(サンプル1〜4およびA〜Cを除く)
このゲル浸透クロマトグラフィーシステムは、Polymer Laboratories Model PL-210またはPolymer Laboratories Model PL-220のいずれかの装置から構成される。このカラムおよびカルーセルの区画は、140℃で操作される。3つのPolymer Laboratories 10ミクロン Mixed-Bカラムを用いる。この溶媒は、1,2,4トリクロロベンゼンである。サンプルは、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する50ミリリットルの溶媒中に0.1グラムというポリマー濃度で調製する。サンプルは、160℃で2時間、軽く撹拌することによって調製する。用いられる注入容積は、100μlであり、そして流量は1.0ml/分である。
【0140】
GPCカラムセットの較正は、個々の分子量の間の少なくとも10の隔たりがある6つの「カクテル(cocktail)」混合物で準備した、580〜8,400,000におよぶ分子量を有する、21個の狭い分子量分布のポリスチレン標準物質で行われる。この標準物質は、Polymer Laboratories(Shropshire,UK)から購入する。ポリスチレン標準物質は、分子量1,000,000以上については、50ミリリットルの溶媒中に0.025グラムで、そして分子量1,000,000未満については50ミリリットル中に0.05グラムで調製する。このポリスチレン標準物質は、穏やかに撹拌しながら80℃で30分間溶解する。狭い標準物質混合物を最初にランし、そして分解を最小にするために最も高い分子量の成分から低いものへと順番にランする。ポリスチレン標準物質ピーク分子量を、以下の式を用いてポリスチレン分子量に変換する(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載のとおり):Mホ゜リエチレン=0.431(Mホ゜リスチレン)。
【0141】
ポリエチレン等量分子量の計算は、Viscotek TriSECソフトウェアのVersion3.0を用いて行う。
【0142】
圧縮永久ひずみ(Compression Set)
圧縮永久ひずみは、ASTMD 395に従って測定する。このサンプルは、総厚みが12.7mmに達するまで、3.2mm、2.0mmおよび0.25mmという厚みの25.4mmの直径の丸いディスクを重ねることによって調製する。このディスクは、以下の条件下においてホットプレスで成形した12.7cm×12.7cmの圧縮成形プラックから切り出す:190℃で3分間ゼロ圧、続いて190℃で2分間86MPa、続いてプレス内部で冷水を流しながら86MPaで冷却。
【0143】
密度
密度測定のためのサンプルは、ASTMD 1928に従って調製する。測定は、ASTMD792、方法Bを用いて1時間内のサンプルプレスで行う。
【0144】
屈曲/割線弾性率/貯蔵弾性率
サンプルは、ASTMD 1928を用いて圧縮成形する。曲げ弾性率および2%の割線弾性率を、ASTM D-790に従って測定する。貯蔵弾性率はASTM D5026-01または等価な技術に従って測定する。
【0145】
光学的特性
0.4mmの厚みのフィルムを、ホットプレス(Carver Model#4095-4PR1001R)を用いて圧縮成形する。このペレットは、ポリテトラフルオロエチレンシートの間に置いて、190℃で55psi(380kPa)で3分間、続いて1.3MPaで3分間、次いで2.6MPaで3分間加熱する。次いで、このフィルムを、1.3Mpaで1分間、冷水を流しながらプレス中で冷却する。この圧縮成形フィルムを、光学測定、引張挙動、回復および応力緩和のために用いる。
【0146】
透明度は、ASTM D1746で特定されたようにBYK Gardner Haze-gardを用いて測定する。
【0147】
45°光沢(gloss)は、ASTM D-2457に特定されたように、BYK Gardner Glossmeter Microgloss45°を用いて測定する。
【0148】
内部の曇り(internal haze)は、ASTMD 1003手順Aに基づいてBYK Gardner Haze-gardを用いて測定する。鉱油をこのフィルムの表面に塗布して、表面のスクラッチを除去する。
【0149】
機械的特性−引張、ヒステリシス(履歴現象)および引裂
短軸引張における応力−ひずみ挙動を、ASTM D1708微小引張試験片(microtensile specimens)を用いて測定する。サンプルは、21℃で1分あたり500%でInstronを用いて延伸する。引張強度および破断点伸度は、5つの試験片の平均から報告される。
【0150】
100%および300%のヒステリシスは、Instron(商標)装置でASTM D1708微小引張試験片を用いて100%ひずみおよび300%ひずみまでの循環荷重から決定される。サンプルに、21℃で3サイクル、1分あたり267%で荷重を負荷し、除荷する。300%および80℃でのサイクル実験は、環境チャンバを用いて行う。80℃の実験では、サンプルは、試験の前に試験温度で45分間、平衡化させる。21℃、300%ひずみのサイクル実験では、第一の除荷のサイクルからの150%のひずみでの収縮性応力を記録する。全ての実験についての回復パーセントは、荷重がベースラインに戻るひずみを用いて第一の除荷サイクルから算出する。回復パーセントは以下に規定される:
回復%={(εf−εs)/εf}×100
ここでεfは、循環荷重に対してとったひずみであり、εsは、1回目の除荷サイクルの間に荷重がベースラインに戻る場合のひずみである。
【0151】
応力緩和を、環境チャンバを装備したInstron(商標)装置を用いて、50%のひずみおよび37℃で12時間、測定する。ゲージの形状は76mm×25mm×0.4mmであった。環境チャンバ中で37℃で45分間の平衡させた後、サンプルを1分あたり333%で50%ひずみまで延伸した。応力は、時間の関数として12時間記録した。12時間後の応力緩和パーセントは式:
応力緩和%={(L0−L12)/L0}×100
を用いて算出した。
【0152】
ここでL0は、0時点での50%ひずみの荷重であり、そしてL12は、12時間後時点の50%ひずみの荷重である。
【0153】
引張ノッチ付引裂実験(tensile notched tear experiments)を、Instron(商標)装置を用いて0.88g/cc以下の密度を有するサンプルで行う。この形状は、76mm×13mm×0.4mmのゲージ部分からなり、このサンプルにはその試験片の長さの半分の位置に2mmの切込みが入っている。そのサンプルが壊れるまで、21℃で1分あたり508mmで延伸させる。この引裂エネルギーは、最大荷重でのひずみまでの応力−伸長曲線下面積として算出する。少なくとも3つの試験片の平均が報告される。
【0154】
TMA
熱機械的分析(Thermal Mechanical Analysis)(針入温度)は、180℃および10MPa成形圧で5分間形成され、次いで風で急速冷却された、30mm直径×3.3mm厚みの圧縮成形ディスクで行う。用いた装置は、Perkin-Elmerから入手可能なブランド、TMA7である。この試験では、1.5mmの半径の先端を有するプローブ(P/N N519-0416)を、1Nの力を用いてサンプルディスクの表面に適用する。その温度を25℃から1分あたり5℃上昇させる。このプローブ針入距離は、温度の関数として測定される。このプローブがサンプルに1mm針入した時、実験が終わる。
【0155】
DMA
動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis)(DMA)は、180℃で10MPaの圧力で5分間、ホットプレス中において成形され、次いで1分あたり90℃でこのプレス中で水冷された圧縮成形ディスクで測定する。試験は、ねじり試験のための二重カンチレバー固定具を装備したARES制御ひずみレオメーター(TA instrument)を用いて行う。
【0156】
1.5mmのプラックをプレスして、32×12mmの寸法のバーに切断する。そのサンプルを10mm(グリップ間隔ΔL)ずつ隔てた固定具の間において両端でクランプして、−100℃〜200℃の逐次的温度段階(1段階あたり5℃)に供する。各々の温度でねじり弾性率G’を、10rad/sの角周波数で測定し、このひずみ振幅は、トルクが十分であること、そして測定値が直線状態のままあることを保証するために0.1パーセント〜4パーセントの間で維持される。
【0157】
10gという最初の静止力を維持して(自動引っ張り方式)、熱膨張が生じる時のサンプル中のゆるみを防ぐ。結果として、グリップ間隔ΔLは、温度とともに、特に、ポリマーサンプルの融点または軟化点より上で、増大する。試験は、最大温度か、または固定具の間の隙間が65mmに達した時に終わる。
【0158】
メルトインデックス
メルトインデックスI2は、ASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従って測定する。メルトインデックスI10はまた、ASTM D1238、条件190℃/10kgに従って測定する。
【0159】
ATREF
分析的昇温溶離分画(analytical temperature rising elution fractionation)(ATREF)分析を、その全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許第4,798,081号およびWilde,L.;Ryle,T.R.;Knobeloch,D.C.;Peat,I.R.;Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymer,J.Polym.Sci.,20,441〜455(1982)に記載された方法に従って行う。分析されるべき組成物を、トリクロロベンゼンに溶解して、1分あたり0.1℃の冷却速度で20℃までゆっくり温度を下げることによって、不活性支持体(ステンレス鋼ショット)を含むカラム中で結晶させる。このカラムには、赤外線検出器が装備されている。次いで、1分あたり1.5℃の速度で20から120℃へ溶離溶媒(トリクロロベンゼン)の温度をゆっくり上昇させることによりカラムから結晶化ポリマーサンプルを溶離することによって、ATREFのクロマトグラフィー曲線を作成する。
【0160】
13C NMR分析
サンプルを、10mmのNMRチューブ中で0.4gのサンプルに対してテトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼンの50/50の混合物の約3gを添加することによって調製する。そのサンプルを、このチューブおよびその内容物を150℃に加熱することによって溶解して、均質化する。100.5MHzという13Cの共鳴周波数に相当する、JEOL ECLIPSE(商標)400MHz分光計、またはVarian Unity PLUS(商標)400MHz分光計を用いてデータを収集する。そのデータを、6秒のパルス繰り返し時間遅延により1データ・ファイルについて4000の減衰シグナルを用いて得る。定量的分析のための最小のシグナル対ノイズ比を達成するために、複数のデータファイルを一緒に加える。スペクトルの幅は25,000Hzであり、最小のファイルサイズは32Kのデータ・ポイントである。このサンプルは、10mmの広帯域プローブ中で130℃で分析する。コモノマーの取り込みは、Randallのトライアッド法(Randall, J.C.; JMS-Rev. Macromol. Chem. Phy., C29, 201-317 (1989)、その全てが参照され、本明細書に引用される)を用いて決定される。
【0161】
TREFによるポリマー分画
大規模なTREF分画は、160℃で4時間撹拌することによって2リットルの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)中に15〜20gのポリマーを溶解することによって行う。このポリマー溶液は、30−40メッシュ(600〜425μm)球状の、技術的品質のガラスビーズ(Potters Industries, HC30 Box20, Brownwood, TX, 76801から入手可能)およびステンレス鋼、0.028”(0.7mm)の直径のカット・ワイア・ショット(Pellets, Inc. 63 Industrial Drive, North Tonawanda, NY, 14120から入手可能)の60:40(v:v)混合物をパックした3インチ×4フィート(7.6cm×12cm)のスチール・カラム上に15psig(100kPa)窒素によって圧入する。このカラムを、160℃に最初に設定した、熱制御されたオイルジャケットに浸す。このカラムを125℃に弾道的に最初に冷却し、次いで1分あたり0.04℃で20℃までゆっくり冷却して、1時間保持する。温度を1分あたり0.167℃で上昇させながら、新鮮なTCBを1分あたり約65mlで導入する。
【0162】
分取TREFカラムからの約2000mL分の溶離液を、16のステーションの加熱されたフラクションコレクターに収集する。このポリマーを、約50〜100mlのポリマー溶液が残るまで、ロータリーエバポレーターを用いて各々の画分中で濃縮させる。この濃縮溶液を、一晩静置させて、その後に、過剰のメタノールを添加し、濾過して、洗浄する(最終の洗浄を含む約300〜500mlのメタノール)。濾過工程を、5.0μmのポリテトラフルオロエチレンコーティング濾紙(Osmonics Inc.から入手可能、カタログ番号Z50WP04750)を用いて、3位置の真空利用濾過ステーションで行う。濾過された画分を、60℃で真空オーブン中において一晩乾燥させて、さらなる試験の前に化学天秤で秤量する。
【0163】
溶融強度
溶融強度(MS)を、2.1mmの直径、約45度の入口角を有する20:1のダイと適合されたキャピラリー・レオメータを用いることによって測定する。190℃で10分間サンプルを平衡化した後、このピストンを1分あたり1インチ(2.54cm/分)の速度で動かす。標準試験温度は190℃である。サンプルを2.4mm/秒2の加速を有するダイの100mm下に配置される1セットの加速ニップに一軸に圧伸する。必要な張力を、ニップ・ロールの巻き取り速度の関数として記録する。試験の間に到達する最大張力が、溶融強度として規定される。引取共振を示すポリマー溶融の場合、引取共振の発生の前の張力を溶融強度とした。溶融強度は、センチニュートン(centiNewton)(「cN」)で記録される。
【0164】
触媒
「一晩(overnight)」という用語を用いる場合、約16〜18時間の時間をいい、「室温(room temperature)」とは、20〜25℃の温度をいい、そして「混合アルカン(mixed alkanes)」という用語は、Exxon Mobil Chemical Companyから、Isopar(登録商標)Eという商品名で利用可能なC6-9脂肪族炭化水素の商業的に得られる混合物を指す。本明細書において化合物の名称がその構造図に従わない場合には、構造図が優先するものとする。全ての金属錯体の合成および全てのスクリーニング実験の準備を、ドライ・ボックス技術を用いて乾燥窒素雰囲気で行った。用いた全ての溶媒は、HPLC等級であって、その使用前に乾燥させた。
【0165】
MMAOとは、Akzo-Noble Corporationから市販されている、修飾メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサンをいう。
【0166】
触媒(B1)の調製は、以下のとおり行う。
【0167】
a) (1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)メチルイミンの調製
3,5−ジ−t−ブチルサリチルアルデヒド(3.00g)を10mLのイソプロピルアミンに添加する。この溶液は急速に鮮黄色に変わる。周囲温度での3時間の撹拌後、揮発性物質を減圧下で除去して、鮮黄色の結晶性固体を得る(97パーセント収率)。
【0168】
b) 1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルの調製
(1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(605mg、2.2ミリモル)を5mLのトルエンに含有する溶液を、50mLのトルエンにZr(CH2Ph)4(500mg、1.1mmol)を含む溶液にゆっくり添加する。得られた濃黄色の溶液を30分間撹拌する。溶媒を減圧下で除去して、所望の生成物を赤褐色固体として得る。
【0169】
触媒(B2)の調製は以下のとおり行う。
【0170】
a) (1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミンの調製
2−メチルシクロヘキシルアミン(8.44mL、64.0mmol)をメタノール(90mL)に溶解して、ジ−t−ブチルサリチルアルデヒド(10.00g、42.67mmol)を添加する。その反応混合物を3時間撹拌し、次いで−25℃で12時間冷却する。得られた黄色固体沈殿物を濾過によって収集して、冷メタノール(2×15mL)で洗浄し、次いで、減圧下で乾燥させる。収量は、11.17gの黄色固体である。1H NMRは、異性体の混合物として所望の生成物と一致する。
【0171】
b) ビス−(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミノ)ジルコニウムジベンジルの調製
(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(7.63g、23.2mmol)を含有する200mLのトルエンの溶液を、600mLのトルエンに含有されるZr(CH2Ph)4(5.28g、11.6mmol)の溶液にゆっくり添加する。得られた濃黄色の溶液を25℃で1時間撹拌する。その溶液を680mLのトルエンでさらに希釈して、0.00783Mの濃度を有する溶液を得る。
【0172】
共触媒1
実質的に米国特許第5,919,9883号、実施例2に開示されるように、長鎖トリアルキルアミン(Armeen(商標)M2HT、Akzo-Nobel,Incから入手可能)、HClおよびLi[B(C654]の反応によって調製される、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(本明細書において以降ではホウ酸アーメーニウム(armeenium))のメチルジ(C14-18アルキル)アンモニウム塩の混合物。
【0173】
共触媒2
米国特許第6,395,671号、実施例16に従って調製された、ビス(トリス(ペンタフルオロフェニル)−アルマネ)−2−ウンデシルイミダゾリドの混合C14-18アルキルジメチルアンモニウム塩。
【0174】
可逆的移動剤
使用される可逆的移動剤としては、ジエチル亜鉛(DEZ、SA1)、ジ(i−ブチル)亜鉛(SA2)、ジ(n−ヘキシル)亜鉛(SA3)、トリエチルアルミニウム(TEA,SA4)、トリオクチルアルミニウム(SA5)、トリエチルガリウム(SA6)、i−ブチルアルミニウム ビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)(SA7)、i−ブチルアルミニウム ビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)(SA8)、n−オクチルアルミニウム ジ(ピリジン−2−メトキシド)(SA9)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム(SA10)、i−ブチルアルミニウム ビス(ジ(n−ペンチル)アミド)(SA11)、n−オクチルアルミニウム ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)(SA12)、n−オクチルアルミニウム ジ(エチル(1−ナフチル)アミド)(SA13)、エチルアルミニウム ビス(t−ブチルジメチルシロキシド)(SA14)、エチルアルミニウム ジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)(SA15)、エチルアルミニウム ビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA16)、n−オクチルアルミニウム ビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA17)、n−オクチルアルミニウム ビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド(SA18)、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)(SA19)およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)(SA20)が挙げられる。
【0175】
実施例1−4、比較例A*−C*
一般的なハイスループット並列重合条件
重合を、Symyx technologies, Inc.から入手可能なハイスループットの並列式重合反応装置(parallel polymerization reactor)(PPR)を用いて行い、そして米国特許の6,248,540号、同第6,030,917号、同第6,362,309号、同第6,306,658号および同第6,316,663号に実質的に従って操作する。エチレン共重合を、用いた総触媒に基づいて共触媒1の1.2当量(MMAOが存在する場合1.1当量)を用いて、必要時にエチレンを用いて130℃かつ200psi(1.4MPa)で行う。一連の重合を、予め秤量したガラスチューブが取り付けられている48の個々の反応セルを6×8配列で備えている並列式耐圧反応装置(PPR)で行う。各々の反応装置セル中の作業容積は6000μLである。各々のセルは、個々の撹拌パドルによって撹拌されながら、温度および圧力が制御される。モノマーのガスおよびクエンチガスをPPRユニットに直接配管して、自動バルブで制御する。液体試薬を、シリンジによって各々の反応装置セルにロボット制御により添加して、そのリザーバー溶媒は混合アルカンである。添加の順序は、混合アルカン溶媒(4ml)、エチレン、1−オクテンコモノマー(1ml)、共触媒1または共触媒1/MMAO混合物、可逆的移動剤、および触媒または触媒混合物である。共触媒1およびMMAOの混合物、または2つの触媒の混合物を用いる場合、それらの試薬を、反応装置への添加の直前に小さいバイアル中で事前に混合する。実験で試薬が省略される場合、その他は上記の順序の添加が維持される。重合を、所定のエチレン消費に到達するまで、約1〜2分間行う。COでのクエンチング後、その反応装置を冷却して、ガラスチューブを取り外す。そのチューブを遠心分離/真空乾燥ユニットに移して、60℃で12時間乾燥する。乾燥されたポリマーを含むチューブを秤量して、その重量と風袋重量との間の差違で、ポリマーの正味の収量が得られる。結果は表1に含まれる。表1で、そして本出願のどこかでは、比較化合物は、星印(*)によって示される。
【0176】
実施例1〜4は、極めて狭いMWDの形成によって証明される、本発明による線状ブロックコポリマー、特にDEZが存在する場合は単頂性のコポリマー、そしてDEZの非存在下における二頂性の広い分子量分布の生成物(別々に生成されたポリマーの混合物)の合成を実証する。触媒(A1)が触媒(B1)よりもオクテンを多く組み込むことが公知であるという事実に起因して、本発明の得られたコポリマーの種々のブロックまたはセグメントは、分枝または密度に基づいて識別可能である。
【0177】
【表1】

本発明に従って生成されるポリマーは、可逆的移動剤の非存在下で調製したポリマーよりも比較的狭い多分散性(Mw/Mn)および比較的大きいブロック−コポリマー含量(三量体、四量体またはそれ以上)を有することが示され得る。
【0178】
さらなる特性付けのために、図を参照して、表1のポリマーについてのデータを判定する。さらに詳細にはDSCおよびATREFの結果によって、以下が示される:
実施例1のポリマーについてのDSC曲線は、158.1J/gという融解熱で115.7℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、34.5℃で最高のピークを示し、52.9パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は81.2℃である。
【0179】
実施例2のポリマーのDSC曲線は、214.0J/gの融解熱で109.7℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、46.2℃で最高のピークを示し、57.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は63.5℃である。
【0180】
実施例3のポリマーのDSC曲線は、160.1J/gの融解熱で120.7℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、66.1℃で最高のピークを示し、71.8パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は54.6℃である。
【0181】
実施例4のポリマーのDSC曲線は、170.7J/gの融解熱で104.5℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃で最高のピークを示し、18.2パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は74.5℃である。
【0182】
比較例A*のDSC曲線は、86.7J/gの融解熱で90.0℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、48.5℃で最高のピークを示し、29.4パーセントのピーク面積である。これらの値の両方とも、密度が低い樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間の相違は41.8℃である。
【0183】
比較例B*のDSC曲線は、237.0J/gの融解熱で129.8℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、82.4℃で最高のピークを示し、83.7パーセントのピーク面積である。これらの値の両方とも、密度が高い樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間の相違は47.4℃である。
【0184】
比較例C*のDSC曲線は、143.0J/gの融解熱で125.3℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、34.7パーセントのピーク面積で81.8℃で最高のピークを、そして52.4℃でより低い結晶ピークを示す。この2つのピークの間の分離は、高結晶性および低結晶性のポリマーの存在と一致する。DSC TmとTcrystafとの間の相違は43.5℃である。
【0185】
実施例5−19、比較例D*−F*、連続的溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
連続溶液重合は、内部スターラーを装備したコンピュータ制御のオートクレーブ反応装置で行う。精製された混合アルカン溶媒(Exxon Mobil Chemical Companyから入手可能なIsopar(商標)E)、エチレン2.70lbs/時間(1.22kg/時間)、1−オクテンおよび水素(用いる場合)を、温度制御のためのジャケットおよび内部熱電対を装備した3.8Lの反応装置に供給する。この反応装置へ供給された溶媒は、マスフローコントローラーによって測定する。変速ダイヤフラムポンプが、溶媒流量および反応装置に対する圧を制御する。ポンプの排出の際に、側流をとって触媒および共触媒1注入ラインのためのフラッシュフローならびに反応装置撹拌を設ける。これらのフローは、Micro−Motionマスフローメーターによって測定して、制御バルブによって、またはニードルバルブの手動調節によって制御する。得られた溶媒を、1−オクテン、エチレンおよび水素(用いる場合)と合わせて、反応装置に供給する。マスフローコントローラーを用いて、必要な場合反応装置に水素を供給する。溶媒/モノマー溶液の温度は、反応装置に入れる前、熱交換器の使用によって制御する。この流れを反応装置の底に入れる。触媒成分溶液を、ポンプおよびマスフロー計を用いて測定して、触媒フラッシュ溶媒とあわせ、そして反応装置の底に入れる。その反応装置を激しく撹拌しながら500psig(3.45MPa)で液体を満たして反応させる。生成物を反応装置の頂部の出口ラインから取り出す。反応装置からの全ての出口ラインは蒸気トレースおよび絶縁が施されている。重合を、任意の安定化剤または他の添加物とともに出口ラインに少量の水を添加すること、および静的ミキサーを通じた混合物の通過によって、停止させる。次いで、この生成物の流れを、揮発分除去(devolatilization)の前に熱交換器を通過させることによって加熱する。ポリマー生成物は、揮発分除去押出機および水冷ペレタイザーを用いる押出によって回収する。プロセスの詳細および結果は表2に含まれる。選択されたポリマーの特性を表3に提供する。
【0186】
【表2】

【0187】
【表3】

得られたポリマーは、前の実施例と同様に、DSCおよびATREFによって試験される。結果は以下のとおりである:
実施例5のポリマーのDSC曲線は、60.0J/gの融解熱で119.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、47.6℃で最高のピークを示し、59.5パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは72.0℃である。
【0188】
実施例6のポリマーのDSC曲線は、60.4J/gの融解熱で115.2℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、44.2℃で最高のピークを示し、62.7パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは71.0℃である。
【0189】
実施例7のポリマーのDSC曲線は、69.1J/gの融解熱で121.3℃の融点を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、49.2℃で最高のピークを示し、29.4パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは72.1℃である。
【0190】
実施例8のポリマーのDSC曲線は、67.9J/gの融解熱で123.5℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、80.1℃で最高のピークを示し、12.7パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは43.4℃である。
【0191】
実施例9のポリマーのDSC曲線は、73.5J/gの融解熱で124.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、80.8℃で最高のピークを示し、16.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは43.8℃である。
【0192】
実施例10のポリマーのDSC曲線は、60.7J/gの融解熱で115.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、40.9℃で最高のピークを示し、52.4パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは74.7℃である。
【0193】
実施例11のポリマーについてのDSC曲線は、70.4J/gの融解熱で113.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、25.2パーセントのピーク面積で39.6℃で最高のピークを示す。DSC TmとTcrystafとの間のΔは74.1℃である。
【0194】
実施例12のポリマーについてのDSC曲線は、48.9J/gという融解熱で113.2℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃以上のピークを示さない。(従って、さらなる計算の目的のためのTcystafは30℃に設定する)。DSC TmとTcrystafとの間のΔは83.2℃である。
【0195】
実施例13のポリマーのDSC曲線は、49.4J/gの融解熱で114.4℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、33.8℃で最高のピークを示し、7.7パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは84.4℃である。
【0196】
実施例14のポリマーのDSC曲線は、127.9J/gの融解熱で120.8℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、72.9℃で最高のピークを示し、92.2パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは47.9℃である。
【0197】
実施例15のポリマーのDSC曲線は、36.2J/gの融解熱で114.3℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、32.3℃で最高のピークを示し、9.8パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは82.0℃である。
【0198】
実施例16のポリマーのDSC曲線は、44.9J/gの融解熱で116.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、48.0℃で最高のピークを示し、65.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは68.6℃である。
【0199】
実施例17のポリマーについてのDSC曲線は、47.0J/gの融解熱で116.0℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、56.8パーセントのピーク面積で43.1℃で最高のピークを示す。DSC TmとTcrystafとの間のΔは72.9℃である。
【0200】
実施例18のポリマーについてのDSC曲線は、141.8J/gという融解熱で120.5℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、70.0℃で最高のピークを示し、94.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは50.5℃である。
【0201】
実施例19のポリマーのDSC曲線は、174.8J/gの融解熱で124.8℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、79.9℃で最高のピークを示し、87.9パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは45.0℃である。
【0202】
比較例D*のポリマーについてのDSC曲線は、31.6J/gの融解熱で37.3℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃以上のピークを示さない。これらの値の両方とも、低密度である樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間のΔは7.3℃である。
【0203】
比較例E*のポリマーについてのDSC曲線は、179.3J/gの融解熱で124.0℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、79.3℃で最高のピークを示し、94.6パーセントのピーク面積である。これらの値の両方とも、高密度である樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間のΔは44.6℃である。
【0204】
比較例F*のポリマーについてのDSC曲線は、90.4J/gの融解熱で124.8℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、77.6℃で最高のピークを示し、19.5パーセントのピーク面積である。2つのピークの間の隔たりは、高結晶性ポリマーと低結晶性ポリマーの両方の存在と一致する。DSC TmとTcrystafとの間のΔは47.2℃である。
【0205】
物理的特性試験
ポリマーサンプルは、物理的特性、例えば、TMA温度試験によって証明されるような高温耐性の特性、ペレットブロックキング強度、高温回復、高温圧縮永久ひずみ、および貯蔵弾性率G’(25℃)/G’(100℃)について評価される。いくつかの市販のポリマーが、試験に含まれる:比較例G*は実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例H*は、弾性の実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)EG8100、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例I*は、実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)PL1840、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例J*は、水素化スチレン/ブタジエン/スチレントリブロックコポリマー(KRATON(商標)G1652、KRATON Polymersから入手可能)であり、比較例K*は、熱可塑性加硫物(TPV,架橋されたエラストマーをその中に分散して含むポリオレフィンブレンド)である。結果は表4に示す。
【0206】
【表4】

表4では、比較例F*(触媒A1およびB1を用いる同時の重合から生じる2つのポリマーの物理的な混合物である)は、約70℃という1mm針入温度であるが、実施例5〜9は、100℃以上の1mm針入温度を有する。さらに実施例10〜19は全てが、85℃より大きい1mm針入温度を有し、ほとんどが、90℃を超えるかまたはさらには100℃より大きい1mmのTMA温度を有する。これによって、新規なポリマーは、物理的な混合物に比較して、より高い温度でより良好な寸法安定性を有することが示される。比較例J*(市販のSEBS)は、約107℃という良好な1mmのTMA温度を有し、ただし、これは約100パーセントという極めて乏しい(高温70℃)圧縮永久ひずみを有し、そしてまた高温(80℃)300パーセントひずみ回復の間に回復できない(サンプルが壊れた)。従って、例示されたポリマーは、いくつかの市販の高性能の熱可塑性エラストマーにおいてでさえ得ることができない特性の固有の組み合わせを有する。
【0207】
同様に、表4は、本発明のポリマーについて、6以下という低い(良好な)貯蔵弾性率G’(25℃)/G’(100℃)を示すが、物理的混合物(比較例F*)は、9という貯蔵弾性率比を有し、そして同様の密度のランダムなエチレン/オクテンコポリマー(比較例G*)は、1桁大きい貯蔵弾性率比を有する(89)。ポリマーの貯蔵弾性率比はできるだけ1に近いことが所望される。このようなポリマーは比較的温度によって影響されないし、このようなポリマーから作製される二次加工品は、広範な温度範囲にわたって有用に使用され得る。低い貯蔵弾性率比および温度独立性のこの特徴は、弾性用途において、例えば、感圧粘着剤配合物において、特に有用である。
【0208】
表4のデータによってまた、本発明のポリマーが改善されたペレットブロッキング強度を保有することが実証される。詳細には、実施例5は、0MPaというペレットブロッキング強度を有し、このことは、このポリマーが、かなりのブロッキングを示す比較例F*および比較例G*に比較して、試験された条件下で自由流動することを意味する。ブロッキング強度は、重要である。なぜなら、大きいブロッキング強度を有するポリマーの貨物輸送は、貯蔵または出荷(shipping)の際に製品同上のくっつきまたは粘着を生じ、取り扱いの特性が劣る。
【0209】
本発明のポリマーの高温(70℃)圧縮永久ひずみは一般に良好であって、このことは一般に約80パーセント未満、好ましくは約70%未満、そして特に約60パーセント未満を意味する。対照的に、比較例F*、G*、H*およびJ*は全てが、100パーセントという70℃圧縮永久ひずみを有する(最大可能値、回復がないことを示す)。ガスケット(gaskets)、窓枠、O−リングなどのような用途には、良好な高温圧縮永久ひずみ(低い数値)が特に必要である。
【0210】
【表5】

表5は、新規なポリマーについての機械的特性について、そして周囲温度での種々の比較ポリマーについての結果を示す。本発明のポリマーは、ISO4649に従って試験した場合、極めて良好な耐磨耗性を有することが示され得、これは一般に、約90mm3未満、好ましくは約80mm3未満、そして特に、約50mm3未満という容積減少を示す。この試験では、数が大きいほど、大きい容積減少を示し、そして結果として低い耐磨耗性を示す。
【0211】
本発明のポリマーの引張ノッチ付引裂強度によって測定した引裂強度は一般に、表5に示されるように、1000mJ以上である。本発明のポリマーの引裂強度は、3000mJ程度の高さ、または5000mJ程度の高さであってさえよい。比較ポリマーは一般に、750mJ以下の引裂強度を有する。
【0212】
表5によってまた、本発明のポリマーが、いくつかの比較例よりも150パーセントひずみでより良好な収縮応力を有する(より高い収縮応力値によって実証される)ことが示される。比較例F*、G*およびH*は、400kPa以下という150パーセントひずみでの収縮応力値を有するが、本発明のポリマーは、500kPa(実施例11)から約1100kPa(実施例17)程度の高さという150パーセントひずみでの収縮応力値を有する。150パーセント収縮応力値よりも高い値を有するポリマーは、弾性を有する用途、例えば、弾性の繊維および織物、特に不織物にかなり有用である。他の用途としては、オムツ(diaper)、衛生および医療用衣類ウエストバンドの用途、例えば、タブおよび弾性バンドが挙げられる。
【0213】
表5によってまた、応力緩和(50パーセントひずみ)がまた、例えば、比較例G*に対して比較した場合、本発明のポリマーについて改善される(少ない)ことが示される。応力緩和が低いとは、ポリマーがその力を、長期間にわたって体温における弾性特性の保持が所望されるオムツおよび他の衣類のような用途において、より良好に保持しているということを意味する。
【0214】
光学的試験
【0215】
【表6】

表6に報告される光学的特性は、実質的に配向性を欠く圧縮成形フィルムに基づく。ポリマーの光学的な特性は、重合において使用される可逆的連鎖移動剤の量の変動から生じる、結晶化サイズにおけるバリエーションに起因して広範な範囲で変化し得る。
【0216】
マルチブロックコポリマーの抽出
実施例5、7のポリマーおよび比較例E*のポリマーの抽出研究を行う。この実験では、ポリマーサンプルは、ガラス円筒濾紙(glass fritted extraction thimble)に秤量して、Kumagawa型の抽出機(extractor)に取り付ける。サンプルを含む抽出機を窒素でパージして、500mLの丸底フラスコに350mLのジエチルエーテルを充填する。次いでフラスコをこの抽出機に取付ける。エーテルを撹拌しながら加熱する。エーテルが円筒濾紙に凝縮し始める時点を書き留めて、抽出を窒素下で24時間進行させる。この時点で、加熱を停止して、溶液を冷却させる。抽出機中に残っている全てのエーテルをフラスコに戻す。フラスコ中のエーテルを周囲温度で減圧下でエバポレートして、得られた固体を窒素でパージ乾燥(purged dry)させる。残渣をヘキサンの連続的な洗浄を用いて秤量ボトルに移す。次いで、合わせたヘキサン洗浄液を別の窒素パージしながらエバポレートさせて、残渣を40℃において減圧下で一晩乾燥させる。抽出機中に残留するエーテルを窒素でパージ乾燥させる。
【0217】
次いで350mLのヘキサンを充填した第二の清浄な丸底フラスコを、この抽出機に接続する。円筒濾紙中でヘキサンの凝縮に最初に気付いた後、ヘキサンを撹拌しながら加熱還流して、還流下で24時間維持する。次いで加熱を停止して、フラスコを冷却させる。抽出機中に残っているヘキサンをフラスコに戻す。そのヘキサンを周囲温度で減圧下でのエバポレーションによって除去して、フラスコ中に残っている残渣を連続的なヘキサン洗浄を用いて秤量ボトルに移す。フラスコ中のヘキサンを窒素パージによってエバポレートして、その残渣を40℃で一晩減圧下で乾燥させる。
【0218】
抽出後に円筒濾紙中に残っているポリマーサンプルを、円筒濾紙から秤量ボトルに移して、40℃で一晩減圧乾燥する。結果は表7に含まれる。
【0219】
【表7】

追加のポリマー実施例19A−F、連続溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
連続溶液重合は、コンピュータ制御完全混合反応装置で行う。精製された混合アルカン溶媒(Exxon Mobil Chemical Companyから入手可能なIsopar(商標)E)、エチレン、1−オクテンおよび水素(用いる場合)を合わせ、27ガロンの反応装置に供給する。この反応装置への供給物は、マスフローコントローラーによって測定する。供給流の温度は、反応装置に入れる前、グリコール冷却熱交換器の使用によって制御する。触媒成分溶液を、ポンプおよびマスフローメーターを用いて測定する。反応装置を圧力約550psigで液体を満たして反応させる。反応装置を出るときに、水および添加剤をポリマー溶液に注入する。水は触媒を加水分解して、重合反応を停止させる。反応装置後溶液を次いで加熱し、2段階の揮発物除去に備える。溶媒および未反応モノマーは、揮発物除去工程中に除去される。ポリマー溶融物は水中ペレット切断のために、ダイへポンプ送りされる。
【0220】
プロセスの詳細および結果は表8に含まれる。選択されたポリマー特性を表9および表9Aに与える。
【0221】
【表8】

【0222】
【表9】

【0223】
【表9A】

物品の製造および試験
低ヒステリシスおよび低応力緩和を有する物品
例示的な共重合体由来の圧縮成形フィルム(0.878g/cc密度および0.9メルトインデックスを有する19A)を、弾性ヒステリシス試験および応力緩和測定のために作製した。Dow Chemical Companyによって作製されたポリウレタンエラストマーENGAGE(登録商標)8100樹脂(1MI、0.875g/cc)を比較の実施例として用いた。
【0224】
応力緩和測定は、本明細書においていずれかに記載されるように行った。図10によって、共重合体がENGAGE(登録商標)ポリエチレンエラストマーよりも低い応力緩和を示すことが図示される。低いヒステリシスの挙動および低い応力緩和は、クッション性を有する用途で有利である。
【0225】
これらの3つのポリマー上での1サイクルのヒステリシスを、4インチのゲージ長で10インチ/分で図11に示す。この共重合体は、ENGAGE(登録商標)ポリエチレンエラストマーよりも低い荷重力および高い除荷(低いヒステリシス)を示す。
【0226】
例示的な3次元のネット構造
本明細書で提供されるネット構造の評価は、参照によって本明細書に援用される、米国特許第5,639,543号に記載される方法のような、当分野で公知の方法によって行われ得る。この方法の一部は本明細書に記載される:
1.融点(Tm)および融点より低い温度での吸熱ピーク
吸熱ピーク(融解ピーク)温度は、20℃/分の温度上昇速度で、示差走査熱量計TA50、DSC50(Shimadzu Seisakusho, Japanが製造)で決定した熱吸収および発光曲線から決定し得る。
【0227】
2.Tanδ
110HzでOrientech Corp.,によって製造されたVibron DDVIIおよび1℃/分という温度上昇速度を用いて測定した、ゴム弾性領域からTanδの溶融領域への転移温度に相当するα拡散の上昇温度(実数M’を用いて虚数弾性M”を割ることによって得られる比M”/M’)
3.見掛け密度
サンプル物質を、15cm×15cmのサイズの四角い小片に切断する。この小片の容積は、4つのポイントで測定した厚みから計算する。重量を容積によって割って、見かけの密度を得る(4つの測定値の平均をとる)。
【0228】
4.熱結合
サンプルを視覚的に観察して、結合したループが離れるか否かをみるために、それらの結合したループを手で引き離すことによって熱結合をチエックする。離れないものは、熱結合しているとみなす。
【0229】
5.繊度(fineness)
サンプル物質を20cm×20cmのサイズの四角い小片に切断する。サンプル由来の10の部位から収集されて40℃で測定された密度勾配管に基づく、繊維の比重を、その繊維の30倍の大きさの写真から計算されるその繊維の断面積と掛けることによって計算される繊維の長さを、その9000mの重量に変換する(10回の測定の平均をとる)。
【0230】
6.ランダムループの平均直径
サンプル物質を20cm×20cmのサイズの四角い小片に切断する。長軸方向に形成される、不規則に形成されたランダムループを360°で旋回することによって描いた内接する円および外接する円の平均直径を計算する(20回の測定の平均をとる)。
【0231】
7.耐熱耐久性(70℃での圧縮後の永久ひずみ(permanent set))
サンプル物質を15cm×15cmのサイズの四角い小片に切断する。この小片を厚さ方向に50%圧縮し、続いて70℃で22時間、加熱乾燥下に静置し、冷却し、圧縮ひずみを除く。70℃での圧縮後の永久ひずみは以下の式によって決定される:
70℃での圧縮後の永久ひずみ(%)=A−B/A × 100
ここでBは、1日静置後の厚みであって、Aはその圧縮前のもとの厚みである(3回の測定の平均をとる)。
【0232】
8.反復圧縮後の永久ひずみ
サンプル物質を、15cm×15cmのサイズの四角い小片に切断する。この小片を、65%の相対湿度下において2570℃で室内で、1HzのサイクルでServo-Pulse(Shimadzu Seisakusho, Japanが製造)を用いて50%の厚みに繰り返し圧縮する。20,000回の繰り返し圧縮後、反復圧縮後の永久ひずみは以下の式によって決定される:
反復圧縮後の永久ひずみ(%)=A−B/A × 100
ここでBは、1日静置後の厚みであって、Aは圧縮前のもとの厚みである(3回の測定の平均をとる)。
【0233】
9. 50%圧縮に対する反発力
サンプル物質を20cm×20cmのサイズの四角い小片に切断する。この小片をTensilo(Orientech Corp.によって製造される)を用いてphi.150mmのディスクで65%に圧縮させ、そして50%圧縮に対する反発力は、得られた応力ひずみ曲線から決定する(3回の測定の平均をとる)。
【0234】
10. 100g/cm2の負荷下のみかけ密度
サンプル物質を、20cm×20cmのサイズの四角い小片に切断する。この小片を、Tensilo(Orientech Corp.によって製造される)を用いて25cm×25cmの圧縮プレートで40kgに圧縮させ、その厚みを測定する。見かけの容積は、それから決定して、切り出した小片の重量で割る(4回の測定の平均をとる)。
【0235】
11.ランダムなループの構造を作製する
エチレン/α−オレフィン共重合体は、共重合体の融点よりも40℃高い温度で溶融して0.5mmの開口部を有するノズルから供給するが、この開口部は50cm幅の上に5mmの開口部ピッチで配列され、5cm長のノズル有効面積上で、0.5〜1.5g/分のマルチドットホールの単独開口部供給量(スループット)である。冷却水は、ノズル表面の50cm下に置かれ、そして末端の無いステンレスネットの60cm幅の一対のテイクオフコンベヤーの対は、5cmの距離で互いに平行な関係に配置され、その様式ではその部分は水面から突出する。供給された共重合体は、コンベヤーによって受け取られて、そのコンベヤーの間で保持されている接点で熱結合され、そして70℃に加熱された冷却水に、凝固および同時擬似結晶化処理のために1m/分の速度で輸送され、その後に、得られた構造を所望のサイズに切断してネット構造が得られる。このように得られた平坦な表面のネット構造の特性は、当分野において公知でかつ本明細書に記載される方法によって試験する。ネット構造は、十分な沈み込みを付与し、そして良好な耐熱耐久性を有し、これはクッション性物質としての使用に適切である。
【0236】
本発明を制限された数の実施形態に関して説明したが、一実施形態の具体的な特徴を本発明の他の実施形態に帰するべきではない。いずれの一実施形態も本発明のすべての態様を代表するものではない。ある実施形態では、組成物または方法は、本明細書で言及していない多数の化合物およびステップを含みうる。他の実施形態では、組成物および方法は、本明細書で列挙されないいずれの化合物およびステップも含まないか、実質的に含まない。説明した実施形態からの変形および変更が存在する。最後に、本明細書で開示したいずれの数も、その数を説明するのに「約(about)」または「おおよそ(approximately)」という語が使用されるかどうかにかかわらず、概算値を意味するとして解釈すべきである。添付請求項は、本発明の範囲に含まれるすべての変更および変形を対象とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0237】
【図1】図1は、従来のランダムコポリマー(丸で示す)およびチーグラー・ナッタコポリマー(三角で示す)と比較した、本発明のポリマー(ひし形で示す)の融点/密度関係を示す。
【図2】図2は、各種ポリマーのDSC溶融エンタルピーの関数としてのデルタDSC−CRYSTAFのプロットを示す。ひし形は、ランダムエチレン/オクテンコポリマーを示す;四角は、ポリマー実施例1〜4を示す;三角は、ポリマー実施例5〜9を示す;そして丸は、ポリマー実施例10〜19を示す。記号「X」は、ポリマー実施例A*〜F*を示す。
【図3】図3は、本発明の共重合体(四角および丸によって示す)および従来のコポリマー(三角形によって示す。これらは、Dow AFFINITY(登録商標)ポリマーである。)から作製された未延伸フィルムについての弾性回復率に対する密度の効果を示す。四角は、本発明のエチレン/ブテンコポリマーを示す;そして丸は、本発明のエチレン/オクテンコポリマーを示す。
【図4】図4は、実施例5のポリマー(丸によって示す)、ならびに比較例E*およびF*(記号「X」によって示す)のポリマーの、画分のTREF溶離温度に対する、TREF分画エチレン/1−オクテンコポリマー画分のオクテン含量のプロットである。ひし形は、従来のエチレン/オクテンコポリマーを示す。
【図5】図5は、実施例5のポリマー(曲線1)および比較例F*のポリマー(曲線2)の画分のTREF溶離温度に対する、TREF分画エチレン/1−オクテンコポリマー画分のオクテン含量のプロットである。四角は、比較例F*を示す;そして三角は、実施例5を示す。
【図6】図6は、比較のエチレン/1−オクテンコポリマー(曲線2)およびエチレンコ/プロピレンポリマー(曲線3)についての、ならびに異なる量の可逆的連鎖移動剤を用いて作製した本発明の2つのエチレン/1−オクテンブロックコポリマー(曲線1)についての、温度の関数としての貯蔵弾性率の自然対数のグラフである。
【図7】図7は、ある公知のポリマーと比較した場合の、ある本発明のポリマー(ひし形によって示す)のTMA(1mm) 対 屈曲弾性率のプロットを示す。三角は、Dow VERSIFY(登録商標)ポリマーを示す;丸は、ランダムエチレン/スチレンコポリマーを示す;そして四角は、Dow AFFINITY(登録商標)ポリマーを示す。
【図8】本明細書で提供されるクッション性ネット構造の一実施形態を示す。
【図9】クッション性ネット構造の例示的な生成プロセスを示す。
【図10】例示的なポリマーについての37℃での応力緩和曲線のプロットである。曲線1は、本発明の共重合体19A(密度:0.878g/cc;I2:0.9)を示し;曲線2は、Dow ENGAGE(登録商標)8100ポリマー(密度:0.870g/cc;I2:1.0)を示す。
【図11】例示的なポリマーについての1サイクルの300%ヒステリシスのデータのプロットを示す。曲線1は、本発明の共重合体19Aを示し;曲線2は、Dow ENGAGE(登録商標)8100ポリマーを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のランダムループを含むクッション性ネット構造であって、各々のランダムループが少なくとも1つのさらなるループに対して熱結合されており、
前記ランダムループが連続繊維を含み、前記繊維がエチレン/α−オレフィン共重合体を含み:
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、
(a)約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm3)を有し、ここで、このTmおよびdの数値が以下の関係に相当する、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
(b)約1.7〜約3.5のMw/Mnを有し、かつ融解熱ΔH(J/g)、および最高のDSCピークと最高のCRYSTAFピークとの間の温度差として定義される、デルタ量ΔT(℃)によって特徴付けられ、ここで、このΔTおよびΔHの数値が以下の関係を有し、
ΔHがゼロより大きくかつ最大130J/gまでの場合、
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81
ΔHが130J/gより大きい場合、
ΔT≧48℃
ここで前記CRYSTAFピークが累積ポリマーの少なくとも5パーセントを用いて決定され、かつ前記ポリマーの5パーセント未満が特定可能なCRYSTAFピークを有するならば、前記CRYSTAF温度は30℃である;または、
(c)前記エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復率Re(パーセント)によって特徴付けられ、かつ密度d(g/cm3)を有し、ここで、前記エチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を有さない場合、前記Reおよびdの数値が以下の関係を満たす:
Re>1481−1629(d);または、
(d)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃との間で溶出する分子画分であって、前記同じ温度の間で溶出する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子画分を有し、ここで、前記比較対象となるランダムエチレン共重合体が同じコモノマー(単数または複数)を有し、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)を前記エチレン/α−オレフィン共重合体のものの10パーセント内で有する;または、
(e)25℃での貯蔵弾性率であるG’(25℃)、および100℃での貯蔵弾性率であるG’(100℃)によって特徴付けられ、ここで、G’(100℃)に対するG’(25℃)の比が約1:1〜約10:1である、
クッション性ネット構造。
【請求項2】
請求項1に記載のクッション性ネット構造であって、
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm3)を有し、ここで、このTmおよびdの数値が以下の関係に相当する、クッション性ネット構造。
Tm≧858.91−1825.3(d)+1112.8(d)2
【請求項3】
請求項1または2に記載のクッション性ネット構造であって、
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、約1.7〜約3.5のMw/Mnを有し、かつ融解熱ΔH(J/g)、および最高のDSCピークと最高のCRYSTAFピークとの間の温度差として定義される、デルタ量ΔT(℃)によって特徴付けられ、ここで、このΔTおよびΔHの数値が以下の関係を有し、
ΔHがゼロより大きくかつ最大130J/gまでの場合、
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81
ΔHが130J/gより大きい場合、
ΔT≧48℃
ここで前記CRYSTAFピークが累積ポリマーの少なくとも5パーセントを用いて決定され、かつ前記ポリマーの5パーセント未満が特定可能なCRYSTAFピークを有するならば、前記CRYSTAF温度は30℃である、クッション性ネット構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のクッション性ネット構造であって、
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、前記エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復率Re(パーセント)によって特徴付けられ、かつ密度d(g/cm3)を有し、ここで、前記エチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を有さない場合、前記Reおよびdの数値が以下の関係を満たす、クッション性ネット構造。
Re>1481−1629(d)
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のクッション性ネット構造であって、
前記Reおよびdの数値が以下の関係を満たす、クッション性ネット構造。
Re>1491−1629(d)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のクッション性ネット構造であって、
前記Reおよびdの数値が以下の関係を満たす、クッション性ネット構造。
Re>1501−1629(d)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のクッション性ネット構造であって、
前記Reおよびdの数値が以下の関係を満たす、クッション性ネット構造。
Re>1511−1629(d)
【請求項8】
複数のランダムループを含むクッション性ネット構造であって、各々のランダムループが少なくとも1つのさらなるループに対して溶融結合されており、
前記ランダムループが連続繊維を含み、かつ前記繊維がエチレン/α−オレフィン共重合体を含み:
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、
(a)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃との間で溶出する少なくとも1つの分子画分であって、少なくとも0.5および最大約1というブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする少なくとも1つの分子画分、または
(b)ゼロより大きくかつ最大約1.0までの平均ブロックインデックスおよび約1.3より大きい分子量分布Mw/Mn、
を有するクッション性ネット構造。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のクッション性ネット構造であって、
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃との間で溶出する分子画分であって、前記同じ温度の間で溶出する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子画分を有し、ここで、前記比較対象となるランダムエチレン共重合体が同じコモノマー(単数または複数)を有し、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)を前記エチレン/α−オレフィン共重合体のものの10パーセント内で有する、
クッション性ネット構造。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載のクッション性ネット構造であって、
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、25℃での貯蔵弾性率であるG’(25℃)、および100℃での貯蔵弾性率であるG’(100℃)によって特徴付けられ、G’(100℃)に対するG’(25℃)の比が約1:1〜約10:1である、
クッション性ネット構造。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のクッション性ネット構造であって、前記α−オレフィンがプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンまたはそれらの組み合わせである、クッション性ネット構造。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のクッション性ネット構造であって、前記構造が約35%以下という70℃での残留永久ひずみを有する、クッション性ネット構造。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のクッション性ネット構造であって、前記構造が約0.005g/cm3〜約0.30g/cm3という範囲のみかけ密度を有する、クッション性ネット構造。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のクッション性ネット構造であって、前記構造が約0.005g/cm3〜約0.20g/cm3という範囲のみかけ密度を有する、クッション性ネット構造。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載のクッション性ネット構造であって、前記繊維が少なくとも1つの他のポリマーをさらに含む、クッション性ネット構造。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載のクッション性ネット構造であって、前記他のポリマーが、熱可塑性エラストマー、非弾性ポリマーまたはそれらの組み合わせである、クッション性ネット構造。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載のクッション性ネット構造を含む、クッション性物質。
【請求項18】
クッション性ネット構造を生成するための方法であって、
a.エチレン/α−オレフィン共重合体を含む出発物質を融解する工程と、
b.複数の開口部(orifices)を有するノズルから下向きに溶融共重合体を放出して、連続繊維のループを溶融状態で得る工程と、
c.各々のループを互いに接触させて、熱結合させ、それによってランダムループ構造を前記ループとして形成させて、テイクオフユニットの間に保持させる工程と、そして、
d.前記構造を冷却させる工程と、を含み、
ここで、前記共重合体が、
(a)約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm3)を有し、ここで、このTmおよびdの数値が以下の関係に相当する:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2;または、
(b)約1.7〜約3.5のMw/Mnを有し、かつ融解熱ΔH(J/g)、および最高のDSCピークと最高のCRYSTAFピークとの間の温度差として定義される、デルタ量ΔT(℃)によって特徴付けられ、ここで、このΔTおよびΔHの数値が以下の関係を有し、
ΔHがゼロより大きくかつ最大130J/gまでの場合、
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81
ΔHが130J/gより大きい場合、
ΔT≧48℃
ここで前記CRYSTAFピークが累積ポリマーの少なくとも5パーセントを用いて決定され、かつ前記ポリマーの5パーセント未満が特定可能なCRYSTAFピークを有するならば、前記CRYSTAF温度は30℃である;または、
(c)前記エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復率Re(パーセント)によって特徴付けられ、かつ密度d(g/cm3)を有し、ここで、前記エチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を有さない場合、前記Reおよびdの数値が以下の関係を満たす:
Re>1481−1629(d);または、
(d)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃との間で溶出する分子画分であって、前記同じ温度の間で溶出する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子画分を有し、ここで、前記比較対象となるランダムエチレン共重合体が同じコモノマー(単数または複数)を有し、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)を前記エチレン/α−オレフィン共重合体のものの10パーセント内で有する;または、
(e)25℃での貯蔵弾性率であるG’(25℃)、および100℃での貯蔵弾性率であるG’(100℃)によって特徴付けられ、ここで、G’(100℃)に対するG’(25℃)の比が約1:1〜約10:1である、
クッション性ネット構造を生成するための方法。
【請求項19】
クッション性ネット構造を生成するための方法であって、
a.エチレン/α−オレフィン共重合体を含む出発物質を融解する工程と、
b.複数の開口部(orifices)を有するノズルから下向きに溶融共重合体を放出して、連続繊維のループを溶融状態で得る工程と、
c.各々のループを互いに接触させて、熱結合させ、それによってランダムループ構造を前記ループとして形成させて、テイクオフユニットの間に保持させる工程と、そして、
d.必要に応じて、前記構造を冷却させる工程と、を含み、
ここで、前記共重合体が、
(a)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃との間で溶出する少なくとも1つの分子画分であって、少なくとも0.5および最大約1というブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする少なくとも1つの分子画分、または
(b)ゼロより大きくかつ最大約1.0までの平均ブロックインデックスおよび約1.3より大きい分子量分布Mw/Mn、
を有する、クッション性ネット構造を生成するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−545066(P2008−545066A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502020(P2008−502020)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/009407
【国際公開番号】WO2006/101929
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】