説明

エチレン/α−オレフィンの共重合体を含む熱可塑性加硫物

【課題】改善された機械的特性を有する熱可塑性加硫物を提供。
【解決手段】熱可塑性加硫物は、少なくとも1つの加硫性エラストマー、少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン共重合体および少なくとも1つの熱可塑性ポリマー、例えばポリオレフィンを含み、架橋剤で加硫された組成物である。エチレン/α−オレフィン共重合体は、少なくとも1つのハードブロックおよび少なくとも1つのソフトブロックを有するブロックコポリマーである。ソフトブロックはハードブロックより多量のコモノマーを含む。ブロック共重合体は、加硫性エラストマーと熱可塑性ポリマーの間の相溶化剤として使用されるか、それがEPDM型である場合には加硫性エラストマーとして使用される。本熱可塑性加硫物は異形材およびガスケットを作製するために異形押出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改善された機械的特性を有する熱可塑性加硫物に関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマーは、比較的低い応力下で大きな可逆的変形を起こす材料と定義される。エラストマーは、典型的には、そのポリマー鎖に構造構造不規則性、無極性構造、または可撓性単位を有すると特徴付けられる。市販されているエラストマーの例をいくつか挙げると、天然ゴム、エチレン/プロピレン(EPM)コポリマー、エチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)コポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、塩素化ポリエチレン、およびシリコーンゴムなどがある。
【0003】
熱可塑性エラストマーは、熱可塑性を有するエラストマーである。すなわち熱可塑性エラストマーは、場合により、その融点または軟化点より高い温度で、成形されるか、他の方法で付形され、再加工される。熱可塑性エラストマーの一例は、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックコポリマーである。SBSブロックコポリマーは、ガラス質のポリスチレンドメインがゴム質のブタジエンセグメントによって連結されてなる二相形態を示す。
【0004】
これに対して、熱硬化性エラストマーは、熱硬化性を有するエラストマーである。すなわち熱硬化性エラストマーは、加熱すると一般的に不可逆的な架橋反応によって不可逆的に凝固または「固化」する。キシレン抽出法で測定したゲル含量がエラストマー全体を基準にして少なくとも約20重量パーセントであれば、熱硬化性であると考えられる。熱硬化性エラストマーの例として、架橋エチレン−プロピレンモノマーゴム(EPM)および架橋エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM)の2つが挙げられる。EPM材料は、エチレンおよびプロピレンの共重合によって作製される。EPM材料は、架橋を引き起こすことによって熱硬化性が誘導するため、典型的にはペルオキシドを用いて硬化される。EPDM材料は、エチレン、プロピレン、および非共役ジエン(例えば1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、またはエチリデンノルボルネン)の線状共重合体である。EPDM材料は典型的には、熱硬化性を誘導するために、硫黄を用いて加硫されるが、ペルオキシドを用いて硬化させることもできる。EPM材料およびEPDM材料は、それらを高温用途に応用することができるという点で有利であるが、EPMおよびEPDMエラストマーは比較的低い素の(green)強度(エチレン含量が低い場合)、比較的低い耐油性、および比較的低い耐表面改質性を有する。
【0005】
熱可塑性加硫物(TPV)は、熱可塑性マトリックス(好ましくは結晶性)を含み、その中に熱硬化性エラストマーが一般的に均一に分布している。熱可塑性加硫物の例として、結晶性ポリプロピレンマトリックス中に分布させたエチレン−プロピレンモノマーゴムおよびエチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム熱硬化性材料が挙げられる。市販TPVの一例はSatoprene(登録商標)熱可塑性ゴムである。これは、Advanced Elastomer Systemsによって生産されており、結晶性ポリプロピレンマトリックス中の架橋EPDM粒子の混合物である。これらの材料は、かつて加硫ゴムが使用されていた多くの用途、例えばホース、ガスケットなどに、有用である。
【0006】
市販のTPVは典型的には、フェノール系樹脂または硫黄硬化系を用いて、ジエン(より一般的にはポリエン)コポリマーゴムが、動的加硫によって、すなわち(典型的には、激しく)混合しながらの架橋によって、熱可塑性マトリックス中で加硫、すなわち架橋されている、加硫ゴムに基づく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非常に多くのタイプの熱可塑性加硫物が知られているが、ゴム状弾性を有する改善された熱可塑性材料は今なお必要とされている。具体的には、改善された引張特性、伸び率、圧縮永久ひずみ、および/または耐油性を有する熱可塑性加硫物を製造する方法が必要とされている。これらの改善された性質は、熱可塑性加硫物の現在の用途にとって有益であるばかりでなく、高い溶融強度を必要とする新しい用途、例えばブロー成形、発泡体およびワイヤケーブルなどにとっても有益である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の必要性は本発明の様々な態様によって満たされる。一態様として、本発明は、(i)加硫性エラストマー;(ii)熱可塑性ポリオレフィン;(iii)架橋剤;および(iv)エチレン/α−オレフィン共重合体を含むか、またはそれらを含む反応混合物から得ることができる熱可塑性加硫物に関する。もう1つの態様として、本発明は、(i)熱可塑性ポリオレフィン;(ii)架橋剤;および(iii)エチレン/プロピレン/ジエン共重合体である加硫性エラストマーを含むか、またはそれらを含む反応混合物から得ることができる熱可塑性加硫物に関する。ある実施形態では、エチレン/α−オレフィン共重合体またはエチレン/α−オレフィン/ジエン共重合体が、以下の性質の1つまたはそれ以上によって特徴付けられる:
(a)約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm)を有し、Tmおよびdの数値が、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)
という関係に合致するか;または
(b)約1.7〜約3.5のMw/Mnを有し、融解熱ΔH(J/g)、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの間の温度差と定義されるデルタ量ΔT(℃)によって特徴付けられ、ΔTおよびΔHの数値が以下の関係:
ゼロより大きくかつ130J/gまでのΔHについては、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81
130J/gより大きいΔHについては、ΔT≧48℃
を有し、ここで、CRYSTAFピークは累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され、特定可能なCRYSTAFピークを有するのがそのポリマーの5パーセント未満である場合、CRYSTAF温度を30℃とするか;または
(c)共重合体の圧縮成形フィルムで測定される、300パーセントひずみおよび1サイクル時の弾性回復率Re(%)を有し、密度d(g/cm)を有し、共重合体が架橋相を実質的に含まない場合、Reおよびdの数値が以下の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たすか;または
(d)TREFを用いて分画した場合に、40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、その画分が、同じ温度の間で溶出する比較用ランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子画分を有し、この比較用ランダムエチレン共重合体は、同じコモノマーを有し、かつその共重合体の値から10パーセント内にあるメルトインデックス、密度およびコモノマーモル含量(ポリマー全体を基準にした値)を有するか;または
(e)25℃における貯蔵弾性率G’(25℃)および100℃における貯蔵弾性率G’(100℃)を有し、G’(25℃)対G’(100℃)の比が約1:1〜約10:1である;
(f)TREFを用いて分画した場合に、40℃と130℃との間で溶出する少なくとも1つの分子画分を有し、その画分が、少なくとも0.5かつ約1までのブロックインデックスおよび約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする分子画分するか;または
(g)ゼロより大きくかつ約1.0までの平均ブロックインデックスおよび約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有する。
【0009】
ある実施形態では、共重合体が以下の関係を満たす:
Re>1491−1629(d);または
Re>1501−1629(d)または
Re>1511−1629(d)。
【0010】
別の実施形態では、ASTM D−1238、条件190℃/2.16kgに従って測定した場合に、共重合体が、約0.1〜約2000g/10分、約1〜約1500g/10分、約2〜約1000g/10分、約5〜約500g/10分のメルトインデックスを有する。ある実施形態では、熱可塑性加硫物における共重合体の存在量が、全組成物の約55重量%〜約90重量%または約5重量%〜約45重量%である。
【0011】
本明細書において「エチレン/α−オレフィン共重合体」または「エチレン/α−オレフィン/ジエン共重合体」中の「α−オレフィン」とは、C以上のα−オレフィンをいう。ある実施形態では、α−オレフィンはスチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン、またはそれらの組み合わせであり、ジエンがノルボルネン、1,5−ヘキサジエン、または組み合わせである。
【0012】
好ましくは、本熱可塑性加硫物に使用されるポリオレフィンは、ホモポリマー、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンである。好ましくは、加硫性エラストマーは、エチレン/高級(higher)α−オレフィンコポリマーまたはターポリマー、例えばエチレン−高級α−オレフィン−ポリエン(EPDM)ポリマーである。
【0013】
本熱可塑性加硫物は、場合により、1つまたはそれ以上の添加剤、例えばスリップ剤、抗ブロック化剤、可塑剤、酸化防止剤、UV安定剤、着色剤または顔料、充填剤、潤滑剤、防曇剤、フローエイド、カップリング剤、架橋剤、核剤、界面活性剤、溶剤、難燃剤、帯電防止剤、またはそれらの組み合わせを含むことができる。本明細書に開示する熱可塑性加硫物組成物からは、様々な物品を生産することができる。さらに、本熱可塑性加硫物組成物を作製する方法、および生産の方法も提供する。
【0014】
本発明のさらなる態様ならびに本発明の様々な実施形態の特徴および性質は、以下の説明によって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、融点/密度の関係を、本発明のポリマー(ひし形で表す)に関して、従来のランダムコポリマー(円で表す)およびチーグラーナッタコポリマー(三角形で表す)と比較して示す。
【図2】図2は、ΔDSC−CRYSTAFをDSC融解エンタルピーの関数としてプロットしたものを、様々なポリマーについて示す。ひし形はランダムエチレン/オクテンコポリマーを表し;正方形はポリマー実施例1〜4を表し;三角形はポリマー実施例5〜9を表し;円はポリマー実施例10〜19を表す。「×」印はポリマー例A〜Fを表す。
【図3】図3は、本発明の共重合体(正方形および円で表す)および従来のコポリマー(これらは種々のDow AFFINITY(登録商標)ポリマーであり、三角形で表す)から作製された未延伸フィルムについて、密度が弾性回復率に及ぼす効果を示す。正方形は本発明のエチレン/ブテンコポリマーを表し;円は本発明のエチレン/オクテンコポリマーを表す。
【図4】図4は、実施例5のポリマー(円で表す)ならびに比較ポリマーEおよびF(「×」印で表す)について、TREFで分画されたエチレン/1−オクテンコポリマー画分のオクテン含量を、その画分のTREF溶出温度に対してプロットした。ひし形は、従来のランダムエチレン/オクテンコポリマーを表す。
【図5】図5は、実施例5のポリマー(曲線1)および比較例F(曲線2)についての、TREFで分画されたエチレン/1−オクテンコポリマー画分のオクテン含量を、その画分のTREF溶出温度に対してプロットである。正方形は例Fを表し、三角形は実施例5を表す。
【図6】図6は、比較のためのエチレン/1−オクテンコポリマー(曲線2)およびプロピレン/エチレンコポリマー(曲線3)、ならびに異なる量の可逆的連鎖移動剤を用いて作製された本発明の2つのエチレン/1−オクテンブロックコポリマー(曲線1)に関して、関数とした貯蔵弾性率の対数グラフである。
【図7】図7は、TMA(1mm)を曲げ弾性率に対してプロットしたものを、いくつかの本発明ポリマー(ひし形で表す)について、いくつかの既知ポリマーと比較して示す。三角形は種々のDow VERSIFY(登録商標)ポリマーを表し;円は種々のランダムエチレン/スチレンコポリマーを表し;正方形は種々のDow AFFINITY(登録商標)ポリマーを表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般的定義
「ポリマー」とは、同じタイプであるか異なるタイプであるかを問わず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物を意味する。「ポリマー」という総称は、用語「ホモポリマー」「コポリマー」「ターポリマー」および「共重合体(interpolymer)」を包含する。
【0017】
「共重合体」とは、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。「共重合体」という総称は、用語「コポリマー」(通常は2つの異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)および用語「ターポリマー」(通常は3つの異なるタイプのモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)を包含する。この用語は、4つまたはそれ以上のタイプのモノマーを重合することによって作製されるポリマーも包含する。
【0018】
用語「エチレン/α−オレフィン共重合体」は、広く、エチレンおよび3つまたはそれ以上の炭素原子を有するα−オレフィンを含むポリマーをいう。好ましくは、エチレンが、ポリマー全体の大半のモル分率を構成する。すなわちエチレンはポリマー全体の少なくとも約50モルパーセントを構成する。より好ましくは、エチレンが少なくとも約60モルパーセント、少なくとも約70モルパーセント、または少なくとも約80モルパーセントを構成し、ポリマー全体の実質的な残りの部分は、少なくとも1つの他のコモノマー(好ましくは3つまたはそれ以上の炭素原子を有するα−オレフィン)を含む。多くのエチレン/オクテンコポリマーに関して、好ましい組成は、ポリマー全体の約80モルパーセントより大きいエチレン含量と、ポリマー全体の約10〜約15モルパーセント、好ましくは約15〜約20モルパーセントのオクテン含量とを含む。ある実施形態では、本エチレン/α−オレフィン共重合体が、低収率で生成するものも、少量に生成するものも、化学プロセスの副生成物として生成するものも含まない。本エチレン/α−オレフィン共重合体は1つまたはそれ以上のポリマーとブレンドすることができるが、製造したままのエチレン/α−オレフィン共重合体は実質的に純粋であり、しばしば、重合プロセスの反応生成物の主要成分を構成する。
【0019】
本エチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンおよび1つまたはそれ以上の共重合可能なα−オレフィンコモノマーを重合された形で含み、化学的または物理的特性が異なる、2つまたはそれ以上の重合されたモノマー単位を有する複数のブロックまたはセグメントを特徴とする。すなわち、本エチレン/α−オレフィン共重合体はブロック共重合体、好ましくはマルチブロック共重合体またはマルチブロックコポリマーである。「共重合体」およびコポリマー」という用語は、本明細書では互換的に用いられる。ある実施形態では、このマルチブロックコポリマーを、以下の式で表すことができる:
(AB)
[式中、nは少なくとも1、好ましくは1より大きい整数、例えば2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、またはそれ以上であり、「A」はハードブロックまたはハードセグメントを表し、「B」はソフトブロックまたはソフトセグメントを表す]。好ましくは、AおよびBは、実質的に分岐した様態または実質的に星状の様態で連結されるのではなく、実質的に線状の様態で連結される。別の実施形態では、AブロックおよびBブロックが、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布する。言い換えると、ブロックコポリマーは、
AAA−AA-BBB−BB
のような構造を、通常は持たない。さらに別の実施形態では、本ブロックコポリマーが、異なるコモノマーを含む第3のタイプのブロックを、通常は持たない。さらに別の実施形態では、ブロックAおよびブロックBのそれぞれが、そのブロック内に実質上ランダムに分布したモノマーまたはコモノマーを有する。言い換えると、ブロックAもブロックBも、組成の異なる2つまたはそれ以上のサブセグメント(またはサブブロック)、例えばそのブロックの残りの部分とは実質的に異なる組成を有するチップセグメントを含まない。
【0020】
マルチブロックポリマーは、典型的には、様々な量の「ハード」セグメントおよび「ソフト」セグメントを含む。「ハード」セグメントとは、重合された単位のブロックであって、エチレンが、ポリマーの重量を基準にして約95重量パーセントより多い量、好ましくは約98重量パーセントより多い量で存在するものをいう。言い換えると、ハードセグメント中のコモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)は、ポリマーの重量を基準にして約5重量パーセント未満、好ましくは2重量パーセント未満である。ある実施形態では、ハードセグメントが、全てまたは実質的に全て、エチレンで構成される。これに対して、「ソフト」セグメントとは、重合された単位のブロックであって、コモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)が、ポリマーの重量を基準にして約5重量パーセントより大きいもの、好ましくは約8重量パーセントより大きいもの、約10重量パーセントより大きいもの、または約15重量パーセントより大きいものをいう。ある実施形態では、ソフトセグメント中のコモノマー含量が約20重量パーセントを上回るか、約25重量パーセントを上回るか、約30重量パーセントを上回るか、約35重量パーセントを上回るか、約40重量パーセントを上回るか、約45重量パーセントを上回るか、約50重量パーセントを上回るか、または約60重量パーセントを上回る場合もある。
【0021】
ソフトセグメントは、ブロック共重合体中に、しばしば、そのブロック共重合体の総重量の約1重量パーセント〜約99重量パーセント、好ましくは約5重量パーセント〜約95重量パーセント、約10重量パーセント〜約90重量パーセント、約15重量パーセント〜約85重量パーセント、約20重量パーセント〜約80重量パーセント、約25重量パーセント〜約75重量パーセント、約30重量パーセント〜約70重量パーセント、約35重量パーセント〜約65重量パーセント、約40重量パーセント〜約60重量パーセント、または約45重量パーセント〜約55重量パーセント、存在することができる。逆に、ハードセグメントは、同様の範囲で存在することができる。ソフトセグメント重量百分率およびハードセグメント重量百分率は、DSCまたはNMRから得られるデータに基づいて算出することができる。そのような方法および計算は、Colin L.P. Shan、Lonnie Hazlittらの名で2006年3月15日に出願され、Dow Global Technologies Inc.に譲渡された、「Ethylene/α-Olefin Block Interpolymers」と題する、同時出願の米国特許出願第___ 号(判明した時に挿入)、代理人整理番号385063−999558に開示されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0022】
「結晶性」という用語を使用する場合、これは、示差走査熱量測定(DSC)または等価な技術によって決定される一次転移点または結晶融点(Tm)を有するポリマーをいう。この用語は、「半晶性」という用語と互換的に使用することができる。「非晶質」という用語は、示差走査熱量測定(DSC)または等価な技術によって決定される結晶融点を欠くポリマーをいう。
【0023】
「マルチブロックコポリマー」または「セグメントコポリマー(segmented copolymer)」という用語は、好ましくは線状に接合された2つまたはそれ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」ともいう)を含むポリマー、すなわち重合されたエチレン官能基に対して、ペンダント的またはグラフト的様式ではなく、末端同士で(end-to-end)結合される、化学的に区別される単位を含むポリマーをいう。好ましい実施形態では、ブロックは、そこに組み込まれているコモノマーの量またはタイプ、密度、結晶化度の量、その組成のポリマーに起因すると考えられる結晶サイズ、タクティシティーのタイプ(アイソタクチックまたはシンジオタクチック)もしくは程度、位置規則性もしくは位置不規則性、分岐(長鎖分岐または超分岐を含む)の量、均質性、または他の任意の化学的特性もしくは物理的特性が異なる。マルチブロックコポリマーは、そのコポリマーに固有の製造プロセスに起因する、多分散指数(PDIまたはMw/Mn)、ブロック長分布、および/またはブロック数分布の固有な分布によって特徴付けられる。より具体的に述べると、連続プロセスで製造した場合は、ポリマーが、望ましくは1.7〜2.9、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.8〜2.2、最も好ましくは1.8〜2.1のPDIを有する。回分法または半回分法で製造した場合は、ポリマーが、1.0〜2.9、好ましくは1.3〜2.5、より好ましくは1.4〜2.0、最も好ましくは1.4〜1.8のPDIを有する。
【0024】
「熱可塑性加硫物」(TPV)という用語は、硬化エラストマー相が熱可塑性マトリックス中に分散されているエンジニアリング熱可塑性エラストマーをいう。典型的には、これは、少なくとも1つの熱可塑性材料と、少なくとも1つの硬化(すなわち架橋性)エラストマー材料とを含む。好ましくは、熱可塑性材料が連続相を形成し、硬化エラストマーが離散相を形成する。すなわち硬化エラストマーのドメインが熱可塑性マトリックス中に分散される。好ましくは、硬化エラストマーのドメインが、約0.1ミクロン〜約100ミクロン、約1ミクロン〜約50ミクロン、約1ミクロン〜約25ミクロン、約1ミクロン〜約10ミクロン、または約1ミクロン〜約5ミクロンの範囲の平均ドメインサイズで、完全かつ均一に分散される。ある実施形態では、TPVのマトリックス相の存在量がTPVの約50容量%未満であり、分散相の存在量はTPVの少なくとも約50容量%である。言い換えると、架橋エラストマー相がTPVの主相(major phase)であるのに対して、熱可塑性ポリマーは副相(minor phase)である。そのような相組成を有するTPVは、良好な圧縮永久ひずみを有する。しかし、主相が熱可塑性ポリマーであり、副相が架橋エラストマーであるTPVも、作製することができる。一般的に、硬化エラストマーは、23℃のシクロヘキサンには不溶性である部分を有する。不溶性部分の量は、好ましくは、約75%または約85%より多い。一部の例では、不溶性部分が、全エラストマーの約90重量%より多いか、約93重量%より多いか、約95重量%より多いか、または約97重量%より多い。
【0025】
分岐インデックス(branching index)は、選択した熱可塑性ポリマーにおける長鎖分岐の程度を定量化する。好ましくは、分岐インデックスは約0.9、0.8、0.7、0.6または0.5未満である。ある実施形態では、分岐インデックスが約0.01〜約0.4の範囲にある。別の実施形態では、分岐インデックスが約0.01未満、約0.001未満、約0.0001未満、約0.00001未満、または約0.000001未満である。これは以下の式によって定義される。
【数1】

【0026】
式中、g’は分岐インデックスであり、IVBrは分岐熱可塑性ポリマー(例えばポリプロピレン)の固有粘度であり、IVLinは、その分岐熱可塑性ポリマーと同じ重量平均分子量を有し、コポリマーおよびターポリマーの場合はモノマー単位の相対的分子比率が実質的に同じである、対応する線状熱可塑性ポリマーの固有粘度である。
【0027】
固有粘度は、極限粘度数とも呼ばれ、その最も一般的な意味で、溶液の粘度を高めるというポリマー分子の能力の尺度である。これは、溶解したポリマー分子のサイズにも形状にも依存する。したがって、非線状ポリマーを実質的に同じ重量平均分子量を有する線状ポリマーと比較する場合、これは非線状ポリマー分子の形状の目安になる。実際、上記の固有粘度比は、非線状ポリマーの分岐度の尺度である。プロピレンポリマー材料の固有粘度を決定するための方法は、Elliottら, J. App. Poly. Sci., 14, pp 2947-2963 (1970)に記述されている。本明細書では、各例における固有粘度を、135℃のデカヒドロナフタレンに溶解したポリマーを用いて決定する。ポリマーの固有粘度を測定するためのもう1つの方法は、ASTM D5225−98「Standard Test Method for Measuring Solution Viscosity of Polymers with a Differential Viscometer」であり、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0028】
以下の説明において、本明細書に開示する数字は全て、それと一緒に「約」または「およそ」という単語が使用されているかどうかにかかわりなく、概略値である。これらは、1パーセント、2パーセント、5パーセント、または時には10〜20パーセント変動しうる。下限RLおよび上限RUを有する数値域が開示される場合は常に、その範囲に収まる任意の数字が具体的に開示される。特に、その範囲の以下の数字が具体的に開示される:R=RL+k×(RU−RL)[式中、kは、1パーセント刻みで1パーセントから100パーセントまで変動する変数である。すなわちkは、1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、…、50パーセント、51パーセント、52パーセント、…、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、または100パーセントである]。さらに、上に定義した2つのR数によって規定される任意の数値域も、具体的に開示される。
【0029】
本発明の実施形態は、二種類の熱可塑性加硫物(TPV)組成物および種々のTPVを作製するためのプロセスを提供する。そのようなTPVは、より低い圧縮永久ひずみ、より低い引張り永久ひずみ、より高い引張強さ、伸び率、引裂強さ、耐摩耗性、より良い動的性質および/または耐油性を有する。第一に、熱可塑性加硫物組成物は、(1)熱可塑性ポリマー、好ましくは1.0未満の分岐インデックスを有する分岐ポリオレフィン;(2)加硫性エラストマー;および(3)前記エラストマーを加硫することができる架橋剤、の混合物または反応生成物を含む。好ましくは、架橋剤は、熱可塑性ポリマーを実質的に分解も架橋もしない。EPDMの形態をした新しいエチレン/α−オレフィン共重合体の一種類を、加硫性エラストマーとして、単独で、または従来のエラストマーと組み合わせて使用する。あるいは、熱可塑性加硫物組成物は、(1)熱可塑性ポリマー、好ましくは1.0未満の分岐インデックスを有する分岐ポリオレフィン;(2)加硫性エラストマー;(3)相溶化剤;および(4)前記エラストマーを架橋することができる架橋剤、の混合物または反応生成物を含み、この場合は、追加成分として、任意の化学的形態をしたエチレン/α−オレフィン共重合体が、熱可塑性ポリマーと加硫性エラストマーの間の相溶化剤として使用される。相溶化剤として使用する場合、TPV中のエチレン/α−オレフィン共重合体の存在量は、組成物全体の50重量パーセント未満であるが、ゼロ重量パーセントよりは多い。好ましくは、エチレン/α−オレフィン共重合体の量は、40重量パーセント未満であるがゼロ重量パーセントよりは多いか、30重量パーセント未満であるがゼロ重量パーセントよりは多いか、20重量パーセント未満であるがゼロ重量パーセントよりは多いか、10重量パーセント未満であるがゼロ重量パーセントよりは多いか、8重量パーセント未満であるがゼロ重量パーセントよりは多いか、6重量パーセント未満であるがゼロ重量パーセントよりは多いか、5重量パーセント未満であるがゼロ重量パーセントよりは多い。ある実施形態では、相溶化剤の量が、約1重量パーセント〜約10重量パーセント、約2重量パーセント〜約9重量パーセント、約3重量パーセント〜約8重量パーセント、約4重量パーセント〜約7重量パーセント、または約5重量パーセント〜約8重量パーセントである。
【0030】
エチレン/α−オレフィン共重合体
本発明の実施形態で使用されるエチレン/α−オレフィン共重合体(「本発明の共重合体」または「本発明のポリマー」ともいう)は、エチレンおよび1つまたはそれ以上の共重合可能なα−オレフィンコモノマーを、重合された形で含み、化学的または物理的特性が異なる、2つまたはそれ以上の重合されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック共重合体)を特徴とし、好ましくはマルチブロックコポリマーである。本エチレン/α−オレフィン共重合体は、以下に記述する態様の1つまたはそれ以上によって特徴付けられる。
【0031】
一態様として、本エチレン/α−オレフィン共重合体は、約1.7〜約3.5のMw/Mn、ならびに少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm)を有し、これらの変数の数値は、
>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)、好ましくは、
≧−6288.1+13141(d)−6720.3(d)、より好ましくは、
≧858.91−1825.3(d)+1112.8(d)
という関係に合致する。
【0032】
そのような融点/密度の関係を図1に例示する。密度の低下と共に融点が低下する従来のエチレン/α−オレフィンランダムコポリマーとは異なり、本発明の共重合体(ひし形で表す)は、特に密度が約0.87g/cc〜約0.95g/ccである場合には、実質的に密度に依存しない融点を示す。例えば、このようなポリマーの融点は、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccの範囲である場合、約110℃〜約130℃の範囲にある。ある実施形態では、このようなポリマーの融点は、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccの範囲である場合、約115℃〜約125℃の範囲にある。
【0033】
もう1つの態様として、本エチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンおよび1つまたはそれ以上のα−オレフィンを、重合された形で含み、最高の示差走査熱量測定(「DSC」)ピークの温度から最高の結晶分析分画(Crystallization Analysis Fractionation)(「CRYSTAF」)ピークの温度を引いた値と定義されるΔT(℃)、および融解熱ΔH(J/g)によって特徴付けられ、130J/gまでのΔHについては、ΔTおよびΔHが、以下の関係を満たす:
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、好ましくは、
ΔT≧−0.1299(ΔH)+64.38、より好ましくは、
ΔT≧−0.1299(ΔH)+65.95。
さらに、ΔHが130J/gより大きい場合、ΔTは48℃以上である。CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され(すなわちそのピークは累積ポリマーの少なくとも5%に相当しなければならない)、特定可能なCRYSTAFピークを有するのがそのポリマーの5パーセント未満である場合には、CRYSTAF温度を30℃とし、ΔHは融解熱(J/g)の数値である。より好ましくは、最高CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも10パーセントを含む。図2に、本発明のポリマーおよび比較例について、プロットしたデータを示す。積分ピーク面積およびピーク温度は、計器メーカーが供給するコンピュータ描画プログラムによって算出される。ランダムエチレンオクテン比較ポリマーについて示した斜めの線は、式:ΔT=−0.1299(ΔH)+62.81に相当する。
【0034】
さらにもう1つの態様として、本エチレン/α−オレフィン共重合体は、昇温溶離分別法(Temperature Rising Elution Fractionation)(「TREF」)を用いて分画した場合に、40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、この分子画分が、同じ温度の間で溶出する比較用ランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも高い(好ましくは少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも10パーセント高い)コモノマーモル含量を有することを特徴とする(ここで、前記比較用ランダムエチレン共重合体は、ブロック共重合体と同じコモノマーを含有し、かつブロック共重合体の値の10パーセント内にあるメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体を基準にした値)を有する)。好ましくは、比較用共重合体のMw/Mnも、ブロック共重合体のMw/Mnから10パーセント内にあり、かつ/または比較用共重合体が、ブロック共重合体の総コモノマー含量から10重量パーセント内にある総コモノマー含量を有する。
【0035】
さらにもう1つの態様として、本エチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定される300パーセントひずみかつ1サイクル時の弾性回復率Re(%)によって特徴付けられ、かつ密度d(g/cm)を有し、エチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を含まない場合に、Reおよびdの数値が、以下の関係を満たす:
Re>1481−1629(d);好ましくは、
Re≧1491−1629(d);より好ましくは、
Re≧1501−1629(d);より好ましくは、
Re≧1511−1629(d)。
【0036】
図3は、特定の本発明共重合体および従来のランダムコポリマーから作製された未延伸フィルムについて、密度が弾性回復率に及ぼす効果を示している。密度が同じ場合は、本発明の共重合体の方が、実質的に高い弾性回復率を有する。
【0037】
ある実施形態では、エチレン/α−オレフィン共重合体が、10MPaを上回る引張強さ、好ましくは11MPa以上の引張強さ、より好ましくは13Mpa以上の引張強さ、および/または11cm/分のクロスヘッド分離速度で少なくとも600パーセント、より好ましくは少なくとも700パーセント、非常に好ましくは少なくとも800パーセント、そして最も好ましくは少なくとも900パーセントの破断点伸度を有する。
【0038】
別の実施形態では、本エチレン/α−オレフィン共重合体が、約1:1〜50:1、約1:1〜20:1、または約1:1〜約10:1の貯蔵弾性率比G’(25℃)/G’(100℃)を有する。好ましくは、貯蔵弾性率比G’(25℃)/G’(100℃)が、約1:1〜約9:1、約1:1〜約8:1、約1:1〜約7:1、約1:1〜約6:1、約1:1〜約5:1、または約1:1〜約4:1の範囲にわたる。
【0039】
さらに別の実施形態では、本エチレン/α−オレフィン共重合体が、80パーセント未満、70パーセント未満、60パーセント未満、または50パーセント未満の70℃圧縮永久ひずみを有する。好ましくは、共重合体の70℃圧縮永久ひずみは、40パーセント未満、30パーセント未満、20パーセント未満であり、下は約0パーセントに達しうる。
【0040】
ある実施形態では、本エチレン/α−オレフィン共重合体が、85J/g未満の融解熱、および/または100ポンド/フィート(4800Pa)以下、好ましくは50lbs/ft(2400Pa)以下、とりわけ5lbs/ft(240Pa)以下、そして下は0lbs/ft(0Pa)という低さの、ペレットブロック化強度(pellet blocking strength)を有する。
【0041】
別の実施形態では、本エチレン/α−オレフィン共重合体が、少なくとも50モルパーセントのエチレンを、重合された形で含み、80パーセント未満、好ましくは70パーセント未満または60パーセント未満、最も好ましくは40〜50パーセント未満、そして下はゼロパーセント近くに達する、70℃圧縮永久ひずみを有する。
【0042】
ある実施形態では、本マルチブロックコポリマーが、ポアソン分布よりもシュルツフローリー分布に適合するPDIを有する。本コポリマーはさらに、多分散ブロック分布およびブロックサイズの多分散分布の両方を有し、かつブロック長の最確分布を有することを特徴とする。好ましいマルチブロックコポリマーは、末端ブロックを含めて、4つまたはそれ以上のブロックまたはセグメントを含有するものである。より好ましくは、本コポリマーは、末端ブロックを含めて、少なくとも5、10または20個のブロックまたはセグメントを含む。
【0043】
コモノマー含量は任意の適切な技術を用いて測定することができ、核磁気共鳴(「NMR」)分光法に基づく技術は好ましい。さらに、比較的幅広いTREF曲線を有するポリマーまたはポリマーのブレンド(blend)については、まず、TREFを用いて、そのポリマーを、それぞれが10℃以下の溶出温度範囲を有する画分に分画する。すなわち、各溶出画分は10℃以下の収集温度ウインドウを有する。この技術を用いた場合、前記ブロック共重合体は、比較用共重合体の対応する画分よりも高いコモノマーモル含量を有する上述のような画分を、少なくとも1つは有する。
【0044】
好ましくは、エチレンと1−オクテンの共重合体の場合、本ブロック共重合体は、(−0.2013)T+20.07以上の量、より好ましくは(−0.2013)T+21.07以上の量である、40℃と130℃との間で溶出するTREF画分のコモノマー含量を有する(式中、Tは、比較しているTREF画分のピーク溶出温度の数値(単位℃で測定した値)である)。
【0045】
図4は、エチレンと1−オクテンのブロック共重合体の実施形態を、グラフに表したものであり、この図では、いくつかの比較用エチレン/1−オクテン共重合体(ランダムコポリマー)に関して、コモノマー含量対TREF溶出温度のプロットが(−0.2013)T+20.07を表す線(実線)に適合している。式:(−0.2013)T+21.07の線を破線で示す。いくつかの本発明のブロックエチレン/1−オクテン共重合体(マルチブロックコポリマー)の画分についても、コモノマー含量を示してある。ブロック共重合体画分は全て、等価な溶出温度において、いずれの線よりも有意に高い1−オクテン含量を有する。この結果は、本発明の共重合体に特有であり、ポリマー鎖内に、区別されるブロックが存在し、結晶性の性質と非晶質の性質とを合わせ有することによるものであると考えられる。
【0046】
図5は、後述する実施例5および比較例Fについて、TREF曲線とポリマー画分のコモノマー含量とを、グラフに表したものである。いずれのポリマーについても、40〜130℃、好ましくは60℃〜95℃で溶出するピークを、各部分の溶出温度範囲が10℃未満になるように、3つの部分に分画する。実施例5に関する実際のデータを三角形で表す。様々なコモノマーを含む共重合体について適切な検量線を作成し、同じモノマーの比較共重合体(好ましくはメタロセンまたは他の均一な触媒組成物を用いて作製されるランダムコポリマー)から得られるTREF値に当てはめた線を、比較対象として使用できることは、当業者であれば理解することができる。本発明の共重合体は、同じTREF溶出温度で検量線から決定される値よりも大きい、好ましくは少なくとも5パーセント大きい、より好ましくは少なくとも10パーセント大きい、コモノマーモル含量を特徴とする。
【0047】
本明細書で述べた上記の態様および性質に加えて、本発明のポリマーは、1つまたはそれ以上のさらなる特徴によって、特徴付けることができる。一態様として、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、値エチレンと1つまたはそれ以上の共重合可能なコモノマーとを重合された形で含み、化学的または物理的特性が異なる2つ以上の重合されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック型共重合体)を特徴とし、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。前記ブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画した場合に、40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、この分子画分が、同じ温度の間で溶出する比較用ランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも高い(好ましくは少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも10、15、20または25パーセント高い)コモノマーモル含量を有することを特徴とする(ここで、前記比較用ランダムエチレン共重合体は、そのブロック型共重合体と同じコモノマーを有し、かつそのブロック型共重合体の値から10パーセント内にあるメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体を基準にした値)を有する)。好ましくは、比較用共重合体のMw/Mnも、ブロック型共重合体のMw/Mnから10パーセント内にあり、かつ/または比較用共重合体は、ブロック型共重合体の総コモノマー含量から10重量パーセント内にある総コモノマー含量を有する。
【0048】
好ましくは、上記の共重合体は、エチレンと少なくとも1つのα−オレフィンとの共重合体、特に約0.855〜約0.935g/cmの全ポリマー密度を有する共重合体であり、特に約1モルパーセントを上回るコモノマーを有するポリマーの場合、本ブロック型共重合体は、(−0.1356)T+13.89以上の量、より好ましくは(−0.1356)T+14.93以上の量、最も好ましくは(−0.2013)T+21.07以上の量である、40℃と130℃との間で溶出するTREF画分のコモノマー含量を有する(式中、Tは、比較されるべきTREF画分のピークのATREF溶出温度数値(単位℃で測定した値)である)。
【0049】
コモノマー含量は任意の適切な技術を用いて測定することができ、核磁気共鳴(NMR)分光法に基づく技術が好ましい。さらに、比較的幅広いTREF曲線を有するポリマーまたはポリマーのブレンドについては、望ましくは最初にTREFを用いてそのポリマーをそれぞれが10℃以下の溶出温度範囲を有する画分に分画する。すなわち、各溶出画分は10℃以下の収集温度ウインドウを有する。この技術を用いた場合、前記ブロック型共重合体は、比較用共重合体の対応する画分よりも高いコモノマーモル含量を有する上述のような画分を、少なくとも1つは有する。
【0050】
もう1つの態様として、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、好ましくはエチレンおよび1つまたはそれ以上の共重合可能なコモノマーを重合された形で含み、化学的または物理的特性が異なる2つまたはそれ以上の重合されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック型共重合体)を特徴し、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。前記ブロック共重合体は、40℃と130℃との間で溶出するピーク(ただし単なる分子画分ではない)を有し(ただし個々の画分を収集および/または単離することはない)、このピークが、半値全幅(FWHM)面積計算を用いて展開した場合に、赤外線分光法によって見積られるコモノマー含量を有し、半値全幅(FWHM)面積計算を用いて展開した同じ溶出温度の比較用ランダムエチレン共重合体ピークの値よりも高い(好ましくは少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも10パーセント高い)平均コモノマーモル含量を有することを特徴とする(ここで、前記比較用ランダムエチレン共重合体は、ブロック型共重合体と同じコモノマーを有し、かつブロック型共重合体の値から10パーセント内にあるメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体を基準にした値)を有する)。好ましくは、この比較用共重合体のMw/Mnも、そのブロック型共重合体のMw/Mnから10パーセント内にあり、かつ/またはこの比較用共重合体は、そのブロック型共重合体の総コモノマー含量から10重量パーセント内にある総コモノマー含量を有する。半値全幅(FWHM)計算は、ATREF赤外線検出器から得られるメチル対メチレンの応答面積比[CH3/CH2]に基づき、ここでは、ベースラインから最も高いピークを特定してから、そのFWHM面積が決定される。ATREFピークを用いて分布を測定する場合、FWHM面積はT1とT2の間の曲線下面積と定義され、ここにT1およびT2は、ピーク高さを2で割ってからATREF曲線の左部分および右部分と交差する線をベースラインに対して水平に引くことによってATREFピークの左側および右側に決定される点である。コモノマー含量に関する検量線は、ランダムエチレン/α−オレフィンコポリマーを使用し、NMRから得られるコモノマー含量をTREFピークのFWHM面積比に対してプロットすることによって作成される。この赤外法の場合は、関心対象と同じコモノマータイプについて、検量線を生成させる。本発明のポリマーのTREFピークのコモノマー含量は、そのTREFピークのFWHMメチル:メチレン面積比[CH3/CH2]を用いて、この検量線を参照することにより、決定することができる。
【0051】
コモノマー含量は、任意の適切な技術を用いて測定することができ、核磁気共鳴(NMR)分光法に基づく技術は好ましい。この技術を用いた場合、前記ブロック型共重合体は、対応する比較用共重合体よりも高いコモノマーモル含量を有する。
【0052】
好ましくは、エチレンと少なくとも1つのα−オレフィンとの上記共重合体、特に約0.855〜約0.935g/cmの全ポリマー密度を有する共重合体の場合、特に約1モルパーセントより多いコモノマーを有するポリマーの場合、本ブロック型共重合体は、(−0.2013)T+20.07以上の量、より好ましくは(−0.2013)T+21.07以上の量である、40℃と130℃との間で溶出するTREF画分のコモノマー含量を有する(式中、Tは、比較しているTREF画分のピーク溶出温度の数値(単位℃で測定した値)である)。
【0053】
さらにもう1つの態様として、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、好ましくはエチレンおよび1つまたはそれ以上の共重合可能なコモノマーを重合された形で含み、化学的または物理的特性が異なる2つまたはそれ以上の重合されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック型共重合体)を特徴とし、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。前記ブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画した場合に、40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、少なくとも約6モルパーセントのコモノマー含量を有する画分がいずれも約100℃より高い融点を有することを特徴とする。約3モルパーセント〜約6モルパーセントのコモノマー含量を有する画分については、いずれの画分も約110℃以上のDSC融点を有する。より好ましくは、少なくとも1モルパーセントのコモノマーを有する前記ポリマー画分が、式:
Tm≧(−5.5926)(その画分中のコモノマーモルパーセント)+135.90
に相当するDSC融点を有する。
【0054】
さらにもう1つの態様として、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、好ましくはエチレンおよび1つまたはそれ以上の共重合可能なコモノマーを重合された形で含み、化学的または物理的特性が異なる2つまたはそれ以上の重合されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック型共重合体)を特徴とし、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。前記ブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画した場合に、40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、約76℃以上のATREF溶出温度を有する画分がいずれも、式:
融解熱(J/gm)≦(3.1718)(ATREF溶出温度(℃))−136.58
に相当する融解エンタルピー(融解熱)(DSCによって測定されるもの)を有することを特徴とする。
【0055】
TREF増分を用いて分画した場合に40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有するブロック共重合体は、40℃〜約76℃未満のATREF溶出温度を有する画分がいずれも、式:
融解熱(J/gm)≦(1.1312)(ATREF溶出温度(℃))+22.97
に相当する融解エンタルピー(融解熱)(DSCによって測定されるもの)を有することを特徴とする。
【0056】
赤外線検出器によるATREFピークコモノマー組成の測定
TREFピークのコモノマー組成は、Polymer Char(スペインバレンシア;http://www.polymerchar.com/)から入手可能なIR4赤外線検出器を用いて測定することができる。
【0057】
検出器の「組成モード(composition mode)」は、2800〜3000cm−1領域の固定狭帯域赤外線フィルタである測定センサ(measurement sensor)(CH2)および組成センサ(composition sensor)(CH3)を装備している。測定センサは、ポリマー上のメチレン(CH2)炭素(これは溶液中のポリマー濃度に直接関係する)を検出し、一方、組成センサは、ポリマーのメチル(CH3)基を検出する。組成シグナル(CH3)を測定シグナル(CH2)で割った数値比は、溶液中の被測定ポリマーのコモノマー含量に敏感であり、その応答は、既知のエチレンα−オレフィンコポリマー標準を用いて較正される。
【0058】
ATREF機器と共に使用した場合、この検出器は、TREFプロセス中に、溶出されるポリマーの濃度(CH2)シグナル応答と組成(CH3)シグナル応答の両方を与える。ポリマー特異的な較正は(好ましくはNMRで測定された)既知のコモノマー含量を有するポリマーについてCH3対CH2の面積比を測定することによって行うことができる。あるポリマーのATREFピークのコモノマー含量は、個々のCH3応答およびCH2応答に関する面積比の参照の較正(すなわちコモノマー含量に対する面積比CH3/CH2)を適用することによって見積ることができる。
【0059】
ピークの面積は、適切なベースラインを適用してTREFクロマトグラムからの個々のシグナル応答を積分した後、半値全幅(FWHM)計算を用いて算出することができる。この半値全幅計算は、ATREF赤外線検出器からのメチル対メチレンの応答面積比[CH3/CH2]に基づき、ここで、ベースラインから最も高いピークを特定してから、そのFWHM面積が決定される。ATREFピークを用いて測定される分布についてはFWHM面積はT1とT2との間の曲線下面積と定義され、ここでT1およびT2は、ピーク高さを2で割ってからATREF曲線の左部分および右部分と交差する線をベースラインに対して水平に引くことによってATREFピークの左側および右側に決定される点である。
【0060】
このATREF−赤外法において、ポリマーのコモノマー含量を測定するための赤外線分光法の応用は、以下の参考文献に記述されているGPC/FTIRシステムと原理上似ている:Markovich, Ronald P.;Hazlitt, Lonnie G.;Smith, Linley「Development of gel-permeation chromatography-Fourier transform infrared spectroscopy for characterization of ethylene-based polyolefin copolymers」Polymeric Materials Science and Engineering (1991),65,98-100、およびDeslauriers, P.J.;Rohlfing, D.C.;Shieh, E.T.「Quantifying short chain branching microstructures in ethylene-1-olefin copolymers using size exclusion chromatography and Fourier transform infrared spectroscopy (SEC-FTIR)」Polymer (2002),43,59-170(これらの文献はいずれも参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。
【0061】
さらにもう1つの態様として、本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体は、ゼロより大きくかつ約1.0までの平均ブロックインデックスABIおよび約1.3より大きいを分子量分布M/Mを特徴とする。平均ブロックインデックスABIは、20℃から110℃まで5℃刻みの分取TREFで得られるポリマー画分のそれぞれについてのブロックインデックスの重量平均である:
ABI=Σ(wBI
【0062】
式中、BIは、分取TREFで得られる本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体のi番目の画分についてのブロックインデックスであり、wは、i番目の画分の重量百分率である。
【0063】
各ポリマー画分について、BIは、以下の2つの式(いずれも同じBI値を与える)のうちの一方によって定義される:
【数2】

【0064】
式中、Tはi番目の画分についての分取ATREF溶出温度(好ましくはケルビンで表した値)であり、Pはi番目の画分についてのエチレンモル分率であり、これは後述のようにNMRまたはIRによって測定することができる。PABは、エチレン/α−オレフィン共重合体全体(分画前)のエチレンモル分率であり、これもNMRまたはIRによって測定することができる。TおよびPは、純粋な「ハードセグメント」(これは共重合体の結晶性セグメントを指す)についてのATREF溶出温度およびエチレンモル分率である。「ハードセグメント」に関して実際の値を利用できない場合、一次近似として、T値およびP値を、高密度ポリエチレンホモポリマーの値に設定する。この場合に行う計算では、Tが372°K、Pが1である。
【0065】
ABは、組成が同じでPABというエチレンモル分率を有するランダムコポリマーのATREF溶出温度である。TABは、以下の式から算出することができる:
LnPAB=α/TAB+β
【0066】
式中、αおよびβは2つの定数であり、これらはいくつかの既知ランダムエチレンコポリマーを用いる較正によって決定することができる。αおよびβは機器毎に変動しうることに注意する必要がある。さらに、目的のポリマー組成を使用し、かつそれらの画分と類似する分子量範囲でそれぞれの検量線を作成する必要がある。わずかな分子量効果が存在する。検量線が類似する分子量範囲から得られる場合、そのような効果は本質的に無視することができるだろう。ある実施形態では、ランダムエチレンコポリマーが以下の関係を満たす。
LnP=−237.83/TATREF+0.639
【0067】
XOは、組成が同じでPというエチレンモル分率を有するランダムコポリマーのATREF温度である。TXOは、LnP=α/TXO+βから算出することができる。逆に、PXOは、組成が同じでTというATREF温度を有するランダムコポリマーのエチレンモル分率であり、これは、LnPXO=α/T+βから算出することができる。
【0068】
各分取TREF画分についてのブロックインデックスが得られたら、ポリマー全体についての重量平均ブロックインデックスABIを算出することができる。ある実施形態では、ABIは、ゼロより大きいが約0.3よりは小さく、または約0.1〜約0.3である。別の実施形態では、ABIが約0.3より大きくかつ約1.0までである。好ましくは、ABIは、約0.4〜約0.7、約0.5〜約0.7、または約0.6〜約0.9の範囲にある必要がある。ある実施形態では、ABIが、約0.3〜約0.9、約0.3〜約0.8、または約0.3〜約0.7、約0.3〜約0.6、約0.3〜約0.5、または約0.3〜約0.4の範囲にある。別の実施形態では、ABIが、約0.4〜約1.0、約0.5〜約1.0、または約0.6〜約1.0、または約0.7〜約1.0、約0.8〜約1.0、または約0.9〜約1.0の範囲にある。
【0069】
本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体のもう1つの特徴は、本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体が、分取TREFによって得ることができる少なくとも1つのポリマー画分を含み、その画分が約0.1より大きくかつ約1.0までのブロックインデックスおよび約1.3より大きい分子量分布M/Mを有することである。ある実施形態では、上記ポリマー画分が、約0.6より大きくかつ約1.0まで、約0.7より大きくかつ約1.0まで、約0.8より大きくかつ約1.0まで、または約0.9より大きくかつ約1.0までのブロックインデックスを有する。別の実施形態では、上記ポリマー画分が、約0.1より大きくかつ約1.0まで、約0.2より大きくかつ約1.0まで、約0.3より大きくかつ約1.0まで、約0.4より大きくかつ約1.0まで、または約0.4より大きくかつ約1.0までのブロックインデックスを有する。さらに別の実施形態では、上記ポリマー画分が、約0.1より大きくかつ約0.5まで、約0.2より大きくかつ約0.5まで、約0.3より大きくかつ約0.5まで、または約0.4より大きくかつ約0.5までのブロックインデックスを有する。さらに別の実施形態では、上記ポリマー画分が、約0.2より大きくかつ約0.9まで、約0.3より大きくかつ約0.8まで、約0.4より大きくかつ約0.7まで、または約0.5より大きくかつ約0.6までのブロックインデックスを有する。
【0070】
エチレンとα−オレフィンのコポリマーの場合、本発明のポリマーは、好ましくは、(1)少なくとも1.3、より好ましくは少なくとも1.5、少なくとも1.7、または少なくとも2.0、最も好ましくは少なくとも2.6、かつ最大値5.0まで、より好ましくは最大値3.5まで、特に最大値2.7までのPDI;(2)80J/g以下の融解熱;(3)少なくとも50重量パーセントのエチレン含量;(4)−25℃未満、より好ましくは−30℃未満のガラス転移温度T、および/または(5)唯一のTを有する。
【0071】
さらに、本発明のポリマーは、log(G’)が温度100℃で400kPa以上、好ましくは1.0MPa以上であるような貯蔵弾性率G’を、単独で、または本明細書に開示する他の任意の性質と組み合わせて有することができる。さらに、本発明のポリマーは、0〜100℃の範囲で温度の関数として比較的平坦な貯蔵弾性率を有する(図6に図解する)。このことは、ブロックコポリマーに特徴的であり、オレフィンコポリマー、特にエチレンと1つまたはそれ以上のC3−8脂肪族α−オレフィンとのコポリマーについては、今まで知られていない。(この文脈において、「比較的平坦な」という用語は、50℃と100℃の間、好ましくは0℃と100℃の間で、logG’(単位:パスカル)の減少が、1桁未満であることを意味する)。
【0072】
本発明の共重合体は、少なくとも90℃の温度で1mmの熱機械分析針入深さ、および3kpsi(20MPa)〜13kpsi(90MPa)の曲げ弾性率によって、さらに特徴付けることができる。あるいは、本発明の共重合体は、少なくとも104℃の温度で1mmの熱機械分析針入深さ、および少なくとも3kpsi(20MPa)の曲げ弾性率を有することができる。本発明の共重合体は90mm未満の耐摩耗性(または容積減少)を有すると特徴付けることができる。図7は、本発明のポリマーについてのTMA(1mm)対曲げ弾性率を他の既知ポリマーと比較して示している。本発明のポリマーは、他のポリマーよりも、有意に優れた可撓性−耐熱性バランスを有する。
【0073】
また、本発明の共重合体は、0.01〜2000g/10分、好ましくは0.01〜1000g/10分、より好ましくは0.01〜500g/10分、特に0.01〜100g/10分のメルトインデックスIを有することができる。本ポリマーは、1,000g/モル〜5,000,000g/モル、好ましくは1000g/モル〜1,000,000g/モル、より好ましくは10,000g/モル〜500,000g/モル、特に10,000g/モル〜300,000g/モルの分子量Mを有することができる。本発明のポリマーの密度は、0.80〜0.99g/cmであることができ、エチレン含有ポリマーの場合、好ましくは、0.85g/cm〜0.97g/cmであることができる。
【0074】
ポリマーを作製するプロセスは、以下の特許出願に開示されている:2004年3月17日出願の米国仮出願第60/553,906号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662,937号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662,939号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/5662938号;2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008916号;2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008915号;および2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008917号(これらはいずれも参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。例えば、そのような方法の1つは、エチレンと、場合により1つまたはそれ以上のエチレン以外の付加重合可能なモノマーとを、
(A)高いコモノマー組み込みインデックス(comonomer incorporation index)を有する第1オレフィン重合触媒、
(B)触媒(A)のコモノマー組み込みインデックスの90パーセント未満、好ましくは50パーセント未満、最も好ましくは5パーセント未満であるコモノマー組み込みインデックスを有する第2オレフィン重合触媒、および
(C)可逆的連鎖移動剤(chain shuttling agent)
を組み合わせることによって得られる混合物または反応生成物を含む触媒組成物と、付加重合条件下で接触させることを含む。
【0075】
代表的な触媒および可逆的連鎖移動剤は次のとおりである。
【0076】
触媒(A1)は、WO03/40195、2003US0204017、2003年5月2日に出願された米国特許出願第10/429,024号、およびWO04/24740の教示に従って調製される[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−イソプロピルフェニル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【化1】

【0077】
触媒(A2)は、WO03/40195、2003US0204017、2003年5月2日に出願された米国特許出願第10/429,024号、およびWO04/24740の教示に従って調製される[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−メチルフェニル)(1,2−フェニレン−(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【化2】

【0078】
触媒(A3)は、ビス[N,N’’’−(2,4,6−トリ(メチルフェニル)アミド)エチレンジアミン]ハフニウムジベンジルである。
【化3】

【0079】
触媒(A4)は、実質的にUS−A−2004/0010103の教示に従って調製されるビス((2−オキソイル−3−(ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル)−5−(メチル)フェニル)−2−フェノキシメチル)シクロヘキサン−1,2−ジイルジルコニウム(IV)ジベンジルである。
【化4】

【0080】
触媒(B1)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジル
【化5】

である。
【0081】
触媒(B2)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(2−メチルシクロヘキシル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルである。
【化6】

【0082】
触媒(C1)は、実質的に米国特許第6,268,444号の技術に従って調製される(t−ブチルアミド)ジメチル(3−N−ピロリル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタンジメチルである。
【化7】

【0083】
触媒(C2)は、実質的にUS−A−2003/004286の教示に従って調製される(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタンジメチルである。
【化8】

【0084】
触媒(C3)は、実質的にUS−A−2003/004286の教示に従って調製される(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,8a−η−s−インダセン−1−イル)シランチタンジメチルである。
【化9】

【0085】
触媒(D1)は、Sigma−Aldrichから入手することができるビス(ジメチルジシロキサン)(インデン−1−イル)塩化ジルコニウムである。
【化10】

【0086】
可逆的移動剤(shuttling agent)
使用される可逆的移動剤として、ジエチル亜鉛、ジ(i−ブチル)亜鉛、ジ(n−ヘキシル)亜鉛、トリエチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリエチルガリウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)、n−オクチルアルミニウムジ(ピリジン−2−メトキシド)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(n−ペンチル)アミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド、n−オクチルアルミニウムジ(エチル(1−ナフチル)アミド)、エチルアルミニウムビス(t−ブチルジメチルシロキシド)、エチルアルミニウムジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、エチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)、およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)が挙げられる。
【0087】
好ましくは、上述のプロセスは、相互変換することができない複数の触媒を用いる、ブロックコポリマー、特にマルチブロックコポリマー、好ましくは2つまたはそれ以上のモノマー、より具体的にはエチレンとC3−20オレフィンまたはシクロオレフィン、最も具体的にはエチレンとC4−20α−オレフィンとの線状マルチブロックコポリマーを形成させるための連続溶液プロセスの形態をとる。すなわち、触媒は化学的に異なる。連続溶液重合条件下で、本プロセスは、高いモノマー転化率でのモノマー混合物の重合に理想的に適している。これらの重合条件では、可逆的連鎖移動剤から触媒への可逆的移動(shuttling)が、連鎖生長反応と比較して有利になり、マルチブロックコポリマー、特に線状マルチブロックコポリマーが、高い効率で形成される。
【0088】
本発明の共重合体は、従来のランダムコポリマー、ポリマーの物理的ブレンド、および逐次モノマー付加、流動触媒(fluxional catalyst)、アニオン性またはカチオン性リビング重合技術によって調製されるブロックコポリマーとは区別することができる。特に、同じモノマーおよび同じモノマー含量のランダムコポリマーと同等の結晶性または弾性率において比較すると、本発明の共重合体は、融点によって測定される耐熱性により優れ(より高く)、動的機械分析によって決定されるTMA針入温度がより高く、高温引張強さがより高く、そして/または高温ねじり貯蔵弾性率がより高い。同じモノマーおよび同じモノマー含量を含むランダムコポリマーと比較すると、本発明の共重合体は、(高温では特に)より小さい圧縮永久ひずみ、より小さい応力緩和、より高い耐クリープ性、より高い引裂強さ、より高い抗ブロック化、より高い結晶化(凝固)温度によるより速い硬化、(高温では特に)より高い回復率、より優れた耐摩耗性、より強い収縮力、ならびにより良好な油および充填剤の許容能を有する。
【0089】
本発明の共重合体はまた、固有の結晶性および分岐分布関係を示す。すなわち、本発明の共重合体は、特に同じモノマーおよび同じモノマーレベルを含むランダムコポリマーまたはポリマーの物理的ブレンド(例えば高密度ポリマーおよび低密度コポリマーのブレンド)と、同等の総合密度において比較した場合、融解熱の関数としてCRYSTAFおよびDSCを用いて測定される最も高いピークの温度の間に、比較的大きな差を有する。本発明の共重合体のこの固有な特徴は、ポリマー主鎖内のブロックにおけるコモノマーの固有な分布によるものであると考えられる。特に、本発明の共重合体は、コモノマー含量が異なるブロック(ホモポリマーブロックを含む)を交互に含みうる。本発明の共重合体は、密度またはコモノマー含量が異なるポリマーブロックの数および/またはブロックサイズの分布が、シュルツ−フローリー型の分布である分布も含みうる。さらに、本発明の共重合体はまた、ポリマーの密度、弾性率および形態には実質的に依存しない、固有のピーク融点および結晶化温度プロファイルを有する。好ましい実施形態では、ポリマーの微結晶秩序が、1.7未満、さらには1.5未満、そして下は1.3未満までのPDI値でさえ、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーとは区別することのできる特徴的な球晶およびラメラを示す。
【0090】
さらに、本発明の共重合体は、ブロッキネス(blockiness)の程度またはレベルに影響を与えるための技術を用いて調製することができる。すなわち、各ポリマーブロックまたはセグメントのコモノマー量および長さは、触媒および可逆的移動剤の比およびタイプ、ならびに重合温度、および他の重合変数を制御することによって変化できる。この現象の驚くべき利益は、ブロッキネスの程度が増加するにつれて、得られるポリマーの光学的特性、引裂強さおよび高温回復特性が改善されるという発見である。特に、ポリマー中の平均ブロック数が増加するにつれて曇りは減少し、その一方で、透明度、引裂強さおよび高温回復特性は増加する。望ましい連鎖移動能力(高率の可逆的移動と低レベルの連鎖停止)を有する可逆的移動剤と触媒の組み合わせを選択することにより、他の形態のポリマー停止が、効果的に抑制される。したがって、本発明の実施形態によるエチレン/α−オレフィンコモノマー混合物の重合では、β−水素脱離が(もしあったとしても)ほぼ観察されず、結果として得られる結晶性ブロックは、高度にまたは実質上完全に線状であり、長鎖分岐をほぼまたは全く持たない。
【0091】
高結晶性鎖末端を有するポリマーを、本発明に実施形態に従って、選択的に調製することができる。エラストマー用途では、非晶質ブロックで終わるポリマーの相対量を減少させると、結晶性領域に対する分子間希釈効果が減少する。この結果は、水素または他の連鎖停止剤に対して適切な応答を有する可逆的連鎖移動剤および触媒を選択することによって得ることができる。具体的に述べると、高結晶性ポリマーを生成させる触媒が、(例えば高いコモノマー組み込み率、レジオエラー(regio-error)、またはアタクチックポリマー形成などによって)低結晶性ポリマーセグメントが生成する原因となる触媒よりも、(例えば水素の使用などによる)連鎖停止反応を受けやすい場合、高結晶性ポリマーセグメントがそのポリマーの末端部分を優先的に占めることになる。結果として生じる末端基が結晶性であるというだけでなく、停止の際、高結晶性ポリマーを形成する触媒部位を、ポリマー形成の再開始にもう一度利用することもできる。それゆえ、最初に形成されるポリマーは、別の高結晶性ポリマーセグメントである。したがって、その結果得られるマルチブロックコポリマーの両端は、優先的に高結晶性になる。
【0092】
本発明の実施形態で使用されるエチレン/α−オレフィン共重合体は、好ましくは、エチレンと少なくとも1つのC−C20α−オレフィンとの共重合体である。エチレンとC−C20α−オレフィンとのコポリマーは特に好ましい。本共重合体は、C−C18ジオレフィンおよび/またはアルケニルベンゼンを、さらに含んでもよい。エチレンとの重合に役立つ適切な不飽和コモノマーとしては、例えばエチレン系不飽和モノマー、共役または非共役ジエン、ポリエン、アルケニルベンゼンなどが挙げられる。そのようなコモノマーの例として、C−C20α−オレフィン、例えばプロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどが挙げられる。1−ブテンおよび1−オクテンは特に好ましい。他の適切なモノマーとして、スチレン、ハロ置換スチレンまたはアルキル置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、およびナフテン系化合物(naphthenics)(例えばシクロペンテン、シクロヘキセンおよびシクロオクテン)が挙げられる。
【0093】
エチレン/α−オレフィン共重合体は好ましいポリマーであるが、他のエチレン/オレフィンポリマーも使用することができる。本明細書にいうオレフィンとは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和炭化水素系化合物のファミリーをいう。触媒の選択に依存して、本発明の実施形態では、任意のオレフィンを使用することができる。好ましくは、適切なオレフィンは、ビニル系不飽和を含有するC3−20脂肪族化合物および芳香族化合物、ならびに環状化合物、例えばシクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、およびノルボルネン(限定されるものではないが、例えば5位および6位がC1−20ヒドロカルビル基またはシクロヒドロカルビル基で置換されているノルボルネンなど)である。そのようなオレフィンの混合物およびそのようなオレフィンとC4−40ジオレフィン化合物との混合物も含まれる。
【0094】
オレフィンモノマーの例として、限定されるものではないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、および1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン、4−ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、C4−40ジエン類(限定されるものではないが、例えば1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンなど)、他のC4−40α−オレフィンなどが挙げられる。本発明の実施形態では、潜在的には、ビニル基を含有する任意の炭化水素を使用することができるが、モノマーの分子量が大きくなり過ぎるにつれて、実際的な問題、例えばモノマーの入手可能性、コスト、および得られたポリマーから未反応のモノマーを都合よく除去できる能力が、より大きな問題になりうる。
【0095】
本明細書に記載する重合プロセスは、モノビニリデン芳香族モノマー(例えばスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレンなど)を含むオレフィンポリマーの製造によく適している。特に、本明細書の教示に従うことにより、エチレンおよびスチレンを含む共重合体を調製することができる。場合により、エチレン、スチレンおよびC3−20α−オレフィンを含み、場合によりC4ー20ジエンを含むコポリマーであって、改善された性質を有するものを、調製することができる。
【0096】
本明細書に開示する性質を有する重合体の好ましい一種類は、エチレン、プロピレン、非共役ジエンを重合してEPDMエラストマーを作製することによって得られる。そのようなEPDMエラストマーを、加硫性エラストマーとして、または加硫性エラストマーと熱可塑性ポリマーの間の相溶化剤として、本発明の実施形態で使用することができる。適切な非共役ジエンモノマーは、6〜15個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状の炭化水素ジエンであることができる。適切な非共役ジエンの例として、限定されるものではないが、直鎖非環式ジエン、例えば1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、分岐鎖非環式ジエン、例えば5−メチル−1,4−ヘキサジエン;3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン;3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、ならびにジヒドロミリセン(dihydromyricene)およびジヒドロオシネン(dihydroocinene)の混合異性体、単環脂環式ジエン、例えば1,3−シクロペンタジエン;1,4−シクロヘキサジエン;1,5−シクロオクタジエンおよび1,5−シクロドデカジエン、ならびに多環脂環式の縮合ジエンおよび架橋環ジエン、例えばテトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ−(2,2,1)−ヘプタ−2,5−ジエン;アルケニルノルボルネン、アルキリデンノルボルネン、シクロアルケニルノルボルネンおよびシクロアルキリデンノルボルネン、例えば5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB);5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、およびノルボルナジエンが挙げられる。EPDMの製造に典型的に使用されるジエンのうち、特に好ましいジエンは、1,4−ヘキサジエン(HD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニリデン−2−ノルボルネン(VNB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、およびジシクロペンタジエン(DCPD)である。とりわけ好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および1,4−ヘキサジエン(HD)である。
【0097】
本発明の実施形態に従って作製することができる望ましいポリマーの一種類は、エチレン、C−C20α−オレフィン、特にプロピレン、および場合により1つまたはそれ以上のジエンモノマーの弾性共重合体である。本発明のこの実施形態で使用される好ましいα−オレフィンは、式:CH=CHRで示される(式中、Rは、炭素原子数1〜12の線状または分岐アルキル基である)。適切なα−オレフィンの例として、限定されるものではないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンが挙げられる。特に好ましいα−オレフィンはプロピレンである。プロピレン系ポリマーは、当技術分野では一般的に、EPポリマーまたはEPDMポリマーと呼ばれる。そのようなポリマー(特にマルチブロックEPDM型ポリマー)の調製に使用される適切なジエンとして、4〜20個の炭素を含有する、共役または非共役、直鎖または分岐鎖の、環状または多環式のジエンが挙げられる。好ましいジエンとして、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、および5−ブチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。特に好ましいジエンは5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0098】
本ジエン含有ポリマーは、ジエン含有量の多寡(含有しないものを含む)およびα−オレフィン含有量の多寡(含有しないものを含む)が異なるセグメントまたはブロックを交互に含有するので、その後のポリマー特性を失わずに、ジエンおよびα−オレフィンの総量を減らすことができる。すなわち、ジエンモノマーおよびα−オレフィンモノマーは、ポリマーの全体にわたって均一にまたはランダムに組み込まれるのではなく、ポリマーのあるタイプのブロック中に優先的に組み込まれるので、それらはより効率よく利用され、続いて、ポリマーの架橋密度を、より良く制御することができる。そのような架橋可能なエラストマーおよび硬化生成物は、有利な性質、例えばより高い引張強さおよびより良い弾性回復率などを有する。
【0099】
ある実施形態では、異なる量のコモノマーを組み込む2つの触媒を用いて作製された本発明の共重合体が、それらによって形成されるブロックを、95:5〜5:95の重量比で有する。弾性ポリマーは、望ましくは、ポリマーの総重量を基準にして、20〜90パーセントのエチレン含量、0.1〜10パーセントのジエン含量、および10〜80パーセントのα−オレフィン含量を有する。さらに好ましくは、マルチブロック弾性ポリマーは、ポリマーの総重量を基準にして、60〜90パーセントのエチレン含量、0.1〜10パーセントのジエン含量、および10〜40パーセントのα−オレフィン含量を有する。好ましいポリマーは、10,000〜約2,500,000、好ましくは20,000〜500,000、より好ましくは20,000〜350,000の重量平均分子量(Mw)、3.5未満、より好ましくは3.0未満の多分散性、および1〜250のムーニー粘度(ML(1+4)125℃)を有する高分子量ポリマーである。より好ましくは、そのようなポリマーは、65〜75パーセントのエチレン含量、0〜6パーセントのジエン含量、および20〜35パーセントのα−オレフィン含量を有する。
【0100】
本エチレン/α−オレフィン共重合体は、そのポリマー構造中に少なくとも1つの官能基を組み込むことによって、官能化することができる。典型的な官能基として、例えばエチレン系不飽和単官能性および二官能性カルボン酸、エチレン系不飽和単官能性および二官能性カルボン酸無水物、その塩およびそのエステルを挙げることができる。そのような官能基は、エチレン/α−オレフィン共重合体にグラフトされ得るか、エチレンおよび任意選択の追加コモノマーと共重合させて、エチレン、官能性コモノマー、および場合により他のコモノマーの共重合体を形成させることができる。ポリエチレンに官能基をグラフトするための手段は、例えば米国特許第4,762,890号、同第4,927,888号および同第4,950,541号に記述されており、これらの特許の開示は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。特に有用な官能基の1つは、無水リンゴ酸である。
【0101】
官能性共重合体中に存在する官能基の量は様々であることができる。官能基は、典型的には、少なくとも約1.0重量パーセント、好ましくは少なくとも約5重量パーセント、より好ましくは少なくとも約7重量パーセントの量で、コポリマー型官能化共重合体中に存在することができる。官能基は、典型的には、コポリマー型官能化共重合体中に、約40重量パーセント未満、好ましくは約30重量パーセント未満、より好ましくは約25重量パーセント未満の量で存在する。
【0102】
本明細書に開示するポリマーブレンド中のエチレン/α−オレフィン共重合体の量は、ポリマーブレンドの総重量の約5〜約95重量%、約10〜約90重量%、約20〜約80重量%、約30〜約70重量%、約10〜約50重量%、約50〜約90重量%、約60〜約90重量%、または約70〜約90重量%であることができる。
【0103】
熱可塑性ポリオレフィン
上述のように、本TPVは、マトリックス相に少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む。適切な熱可塑性ポリマーとして、限定されるものではないが、分岐ポリエチレン(例えば高密度ポリエチレン)、分岐ポリプロピレン、分岐ポリカーボネート、分岐ポリスチレン、分岐ポリエチレンテレフタレート、および分岐ナイロンが挙げられる。他の熱可塑性ポリマーも使用できるが、熱可塑性ポリオレフィン、特に分岐ポリオレフィンは、好ましい。
【0104】
好ましくは、ポリオレフィンは、少なくとも約6cNの溶融強度(「MS」)を有する必要がある。ある実施形態では、ポリオレフィンのMSが少なくとも約7cN、少なくとも約8cN、少なくとも約9cN、少なくとも約10cN、少なくとも約13cN、少なくとも約15cN、少なくとも約17cN、または少なくとも約20cNである。一般的に、ポリオレフィンのMSは約200cN未満、好ましくは約150cN未満、約100cN未満、または約50cN未満である。典型的には、そのようなポリオレフィンの70℃における圧縮永久ひずみは、約50パーセントより大きい。ある実施形態では、70℃での圧縮永久ひずみが約60パーセントより大きいか、約70パーセントより大きいか、約80パーセントより大きいか、または約90パーセントより大きい。
【0105】
適切なポリオレフィンは、1つまたはそれ以上のオレフィンから誘導されるポリマーである。オレフィン(すなわちアルケン)は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する炭化水素である。限定されるものではないが、オレフィンの一例として、2〜約20個の炭素原子を有する線状または分岐、環式または非環式アルケンが挙げられる。ある実施形態では、アルケンが2〜約10個の炭素原子を有する。別の実施形態では、アルケンが少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を含有する(例えばブタジエンおよび1,5−ヘキサジエン)。さらなる実施形態では、アルケンの水素原子の少なくとも1つが、アルキルまたはアリールで置換される。特定の実施形態では、アルケンが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、ノルボルネン、1−デセン、ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、スチレンまたはそれらの組み合わせである。
【0106】
本明細書に開示する様々な基準を満たす任意のポリオレフィンを用いて、本明細書に開示するポリマーブレンドを調製することができる。限定されるものではないが、ポリオレフィンの例として、ポリエチレン(例えば超低密度、低密度、線状低密度、中密度、高密度および超高密度ポリエチレン);ポリプロピレン(例えば低密度および高密度ポリプロピレン);ポリブチレン(例えばポリブテン−1);ポリペンテン−1;ポリヘキセン−1;ポリオクテン−1;ポリデセン−1;ポリ−3−メチルブテン−1;ポリ−4−メチルペンテン−1;ポリイソプレン;ポリブタジエン;ポリ−1,5−ヘキサジエン;オレフィンから誘導される共重合体;オレフィンおよび他のポリマー(例えばポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタンなど)から誘導される共重合体;およびそれらの混合物が挙げられる。ある実施形態では、ポリオレフィンがホモポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテン−1、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリ−1,5−ヘキサジエン、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1およびポリデセン−1である。別の実施形態では、ポリオレフィンがポリプロピレンまたは高密度ポリエチレン(HDPE)である。
【0107】
ポリマーブレンド中のポリオレフィンの量は、ポリマーブレンドの総重量の約5〜約95重量%、約10〜約90重量%、約20〜約80重量%、約30〜約70重量%、約10〜約50重量%、約50〜約80重量%、約60〜約90重量%、または約10〜約30重量%であることができる。
【0108】
ポリオレフィンの好ましい一種類は高MSエチレンポリマーである。少なくとも6cNのMSを有する任意のエチレンポリマーを使用することができる。エチレンポリマーは、エチレンモノマーまたはコモノマーに由来する−CH−CH−繰返し単位を50モルパーセントより多く含む任意のポリマーであることができる。本発明の実施形態で使用される適切なエチレンポリマーとして、任意のエチレン含有ポリマー(ホモポリマーとコポリマーの両方)が挙げられる。エチレンポリマーの例として、限定されるものではないが、エチレンホモポリマーおよびエチレン共重合体、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、不均一に分岐したエチレン/α−オレフィン共重合体(すなわち線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE))、実質的に線状のエチレンポリマー(SLEP)、および均一に分岐したエチレンポリマーが挙げられる。
【0109】
ある実施形態では、エチレンポリマーが、均一に分岐した(「均一」)エチレンポリマー、例えばElstonが米国特許第3,645,992号に記述している均一に分岐した線状エチレン/α−オレフィン共重合体、またはLaiらが米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第5,665,800号および同第5,783,638号に記述している均一に分岐した実質的に線状のエチレンポリマーである(これら米国特許の開示は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0110】
別の実施形態では、ポリプロピレンポリマーを熱可塑性ポリマーとして使用する。ポリプロピレンは分岐型でも非分岐型でもよい。分岐ポリプロピレンの一種類は、カップリング化耐衝撃性(coupled impact)プロピレンポリマーである。本明細書において「カップリング」とは、ポリマーを適切なカップリング剤と反応させることによって、そのポリマーのレオロジーを改変することをいう。「カップリング化ポリマー(coupled polymer)」とは、カップリング反応によって得られるレオロジーが改変されたポリマーである。カップリング化ポリマーは、カップリング前のポリマーと比較して、溶融強度の少なくとも約25%の増加、および溶融流量の減少を特徴とする。カップリング化ポリマーは、カップリング化ポリマーが熱可塑性であり、低いゲルレベル、すなわち約50重量%未満、好ましくは約30重量%未満、約20重量%未満、約10重量%未満、または約5重量%未満のゲル含量を有する点で、多重架橋ポリマー(heavily crosslinked polymer)とは異なる。これに対し、多重架橋(「加硫」とも呼ばれる)は、高いゲルレベル、すなわち約50重量%より多い、好ましくは約70重量%より多い、約80重量%より多い、約90重量%より多い、または約95重量%より多いゲル含量を特徴とする熱硬化性ポリマーをもたらす。
【0111】
適切なカップリング化プロピレンポリマーの一種類として「耐衝撃性カップリング化ポリプロピレンポリマー」として公知のものが挙げられる。そのようなポリマーおよびそれらの生産は、米国特許第6,359,073号、2000年6月23日に出願された米国特許出願第09/017,230号、および2000年6月23日に出願されたPCT出願第WO00/78858号A2に開示されており、これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。耐衝撃性カップリング化プロピレンコポリマーを製造するプロセスには、カップリング剤による耐衝撃性プロピレンコポリマーのカップリングが含まれる。カップリング反応は、カップリング剤を耐衝撃性プロピレンコポリマーと混合することができると共に、カップリング剤と耐衝撃性プロピレンコポリマーとの間にカップリング反応を引き起こすのに十分なエネルギーを加えることができる、反応押出または他の任意の方法によって実行される。好ましくは、このプロセスは、溶融混合機(melt mixer)またはポリマー押出機などの単一容器内で、例えば米国仮特許出願第60/057,713号(1997年8月27日出願)の利益を主張する米国特許出願第09/133,576号(1998年8月13日出願)に記述されているように行われる(これらの文献はいずれも参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。
【0112】
本明細書では、ポリプロピレンが連続相であってエラストマー相がその中に分散している不均一相プロピレンコポリマーを指すために、「耐衝撃性プロピレンコポリマー」という用語を使用する。このエラストマー相が、本発明のこの実施形態においてはエラストマー相の一部とみなされる結晶性領域も含有しうることは、当業者には理解される。耐衝撃性プロピレンコポリマーは物理的ブレンドではなく反応装置内(in-reactor)プロセスによって得られる。通常、耐衝撃性プロピレンコポリマーは、二段階または多段階のプロセスで形成され、このプロセスには、適宜、少なくとも2つのプロセス段階が行われる単一反応装置が関わるか、または適宜、複数の反応装置が関わる。耐衝撃性プロピレンコポリマーは市販されており、例えばE.P.Moore, Jrが「Polypropylene Handbook」(Hanser Publishers, 1996, 220-221頁)に記述しているように、また米国特許第3,893,989号および同第4,113,802号(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)に記述されているように、当業者に周知である。他にも、適切な耐衝撃性プロピレンコポリマーが、以下の米国特許に開示されている:第4,434,264号、第4,459,385号、第4,489,195号、第4,493,923号、第4,508,872号、第4,535,125号、第4,588,775号、第4,843,129号、第4,966,944号、第5,011,891号、第5,034,449号、第5,066,723号、第5,177,147号、第5,314,746号、第5,336,721号、第5,367,022号、第6,207,754号、第6,268,064号(これら各特許における開示の該当部分は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0113】
適切なカップリング剤は、ポリ(スルホニルアジド)、より好ましくはビス(スルホニルアジド)である。本明細書で使用する「ポリ(スルホニルアジド)」という用語は、−C−H基、好ましくは1級または2級−C−H基、および/または不飽和基(例えば−C=C−)と反応するスルホニルアジド基(−SO2N3)を、少なくとも2つは持っている任意の化合物をいう。これは、好ましくは、ポリオレフィンまたはエラストマーの1級または2級−C−H基と反応することができる。ポリ(スルホニルアジド)は、本発明の実施形態において、カップリング剤または架橋剤として使用することができる。ポリ(スルホニルアジド)は、好ましくは、X−R−Xという構造を有し、式中、XはSO2N3であり、Rは、無置換のまたは不活性に置換されたヒドロカルビル、ヒドロカルビルエーテルまたはケイ素含有基、好ましくは、ポリオレフィンとスルホニルアジドの間の反応が容易に起こりうるように、スルホニルアジド基を十分に引き離すべく、十分な数の炭素、酸素またはケイ素(好ましくは炭素)原子を官能基間に有するもの、より好ましくは少なくとも1個、より好ましくは少なくとも2個、最も好ましくは少なくとも3個の炭素、酸素またはケイ素(好ましくは炭素)を官能基間に有するものを表す。「不活性に置換された」という用語は、結果として生じる架橋ポリマーの望ましい反応または望ましい性質に有害な妨害を加えない原子または基による置換をいう。そのような基として、フッ素、脂肪族または芳香族エーテル、シロキサンが挙げられ、2本より多いポリオレフィン鎖を連結しようとする場合には、スルホニルアジド基も挙げられる。適切な構造は、アリール、アルキル、アリールアルカリール、アリールアルキルシラン、または複素環式基、および上述のように不活性であってスルホニルアジド基を引き離す他の基としてのRを含む。より好ましくは、Rは、スルホニル基間に、少なくとも1つのアリール基、最も好ましくは少なくとも2つのアリール基(例えばRが4,4’ジフェニルエーテルまたは4,4’−ビフェニルである場合)を含む。Rが1つのアリール基である場合、その基は、例えばナフチレンビス(スルホニルアジド)の場合のように、1個より多い環を有することが好ましい。ポリ(スルホニル)アジドとして、1,5−ペンタンビス(スルホニルアジド)、1,8−オクタンビス(スルホニルアジド)、1,10−デカンビス(スルホニルアジド)、1,10−オクタデカンビス(スルホニルアジド)、1−オクチル−2,4,6−ベンゼントリス(スルホニルアジド)、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)、1,6−ビス(4’−スルホンアジドフェニル)ヘキサン、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、および1分子あたり平均約1〜8個の塩素原子および約2〜5個のスルホニルアジド基を含む塩素化脂肪族炭化水素の混合スルホニルアジドなどの化合物、ならびにその混合物が挙げられる。好ましいポリ(スルホニルアジド)として、オキシ−ビス(4−スルホニルアジドベンゼン)、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、4,4’−ビス(スルホニルアジド)ビフェニル、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)およびビス(4−スルホニルアジドフェニル)メタン、ならびにその混合物が挙げられる。
【0114】
熱可塑性加硫物に役立つポリ(スルホニルアジド)の例がWO 99/10424に開示されている。ポリ(スルホニル)アジドとして、1,5−ペンタンビス(スルホニルアジド)、1,8−オクタンビス(スルホニルアジド)、1,10−デカンビス(スルホニルアジド)、1,10−オクタデカンビス(スルホニルアジド)、1−オクチル−2,4,6−ベンゼントリス(スルホニルアジド)、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)、1,6−ビス(4’−スルホンアジドフェニル)ヘキサン、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、および1分子あたり平均約1〜8個の塩素原子および約2〜5個のスルホニルアジド基を含む塩素化脂肪族炭化水素の混合スルホニルアジドなどの化合物、ならびにそれらの混合物が挙げられる。好ましいポリ(スルホニルアジド)として、オキシ−ビス(4−スルホニルアジドベンゼン)、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、4,4’−ビス(スルホニルアジド)ビフェニル、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)およびビス(4−スルホニルアジドフェニル)メタン、ならびにその混合物が挙げられる。
【0115】
スルホニルアジドは、市販されるか、またはアジ化ナトリウムと対応する塩化スルホニルとの反応によって便利に調製することができるが、様々な試薬(亜硝酸、四酸化二窒素、ニトロソニウムテトラフルオロボレート)によるスルホニルヒドラジンの酸化が使用されている。
【0116】
ビス(スルホニルアジド)をカップリング剤に使用する場合は、好ましくは、耐衝撃性プロピレンコポリマーの総重量を基準にして少なくとも約100ppmのアジドを、耐衝撃性プロピレンコポリマーのカップリングに使用し、より好ましくは約150ppmのアジド、最も好ましくは少なくとも約200ppmのアジドを使用する。基礎となる比較用非カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーと比較して、延性脆性転移温度の大きな低下が望まれるような一部の例では、耐衝撃性プロピレンコポリマーの総重量を基準にして少なくとも約300ppmのビス(スルホニルアジド)、好ましくは少なくとも約450ppmのビス(スルホニルアジド)を、耐衝撃性プロピレンコポリマーのカップリングに使用する。カップリングに付す耐衝撃性プロピレンコポリマーを選択する際には、望ましい量のカップリング剤でカップリングした後に、そのカップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーが十分に高い溶融流量を持っていて、その結果、加工が容易になるように、十分に高い溶融流量を有するポリマーを選択することが重要である。
【0117】
ある実施形態では、カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーが、以下の式によって特徴付けられる:
X=[(A−C)/(B−D)]≦0.75;
Y≧1.25;および
A≦B−10。
【0118】
式中、Aは、カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマー樹脂から作製された物品に関して、ポリマー射出流方向に垂直なノッチを用いて測定したノッチ付アイゾット値(ASTM D−256に従って測定)から算出される延性脆性転移温度であり;Bは、対応する非カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマー樹脂から作製された物品に関して、ポリマー射出流方向に垂直なノッチを用いて測定したノッチ付アイゾット値(ASTM D−256に従って測定)から算出される延性脆性転移温度であり;Cは、カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマー樹脂から作製された物品に関して、ポリマー射出流方向に平行なノッチを用いて測定したノッチ付アイゾット値(ASTM D−256に従って測定)から算出される延性脆性転移温度であり;Dは、対応する非カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマー樹脂から作製された物品に関して、ポリマー射出流方向に平行なノッチを用いて測定したノッチ付アイゾット値(ASTM D−256に従って測定)から算出される延性脆性転移温度である。
【0119】
Yは、カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマー樹脂の溶融強度の、対応する非カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマー樹脂の溶融強度に対する比である。ある実施形態では、Yが少なくとも約1.5、少なくとも約2、少なくとも約5、または少なくとも約10である。別の実施形態では、Xが約0.5未満、約0.33未満、または0.25未満である。
【0120】
カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーは、非カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーの耐衝撃性と比較して改善された衝撃特性を有すると共に、結果として得られるカップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマー樹脂の溶融強度を、対応する非カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーの値の少なくとも約1.25倍、好ましくは少なくとも約1.5倍のレベルに増加させる。対応する非カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーは、カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーの作製に使用されるポリマーと同じであるが、カップリングされていない。好ましくは、カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマー樹脂は、少なくとも約8cN、少なくとも約15cN、少なくとも約30cN、少なくとも約50cN、または少なくとも約60cNの溶融強度を有する。ある実施形態では、カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーの溶融流量が、ASTM1238に従って230℃および2.16kgで測定した場合に、約0.01〜約100g/10分の範囲にわたりうる。好ましくは、溶融流量は、約0.05〜約50g/10分、約0.1〜約10g/10分、または約0.5〜約5g/10分の範囲にある。
【0121】
対応する非カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーと比較してカップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーで改善される衝撃特性の例として、例えば、カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーから形成された物品が示す低温での高い耐衝撃性、およびカップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーから形成された物品において低下する延性脆性転移温度の改善が挙げられる。
【0122】
「衝撃特性」とは、当技術分野で知られる任意の手段によって測定される衝撃強度、例えばASTM D256に従って測定されるアイゾット衝撃エネルギー、ASTM D3763−93に従って測定されるMTSピーク衝撃エネルギー、およびASTM D−3763に従って測定されるMTS総衝撃エネルギーなどといった、物品の性質をいう。延性脆性転移温度(DBTT)も、ポリマーから作製された物品の衝撃特性である。延性脆性転移温度は、与えられた一組の条件について、対象が主として延性破壊様態から主として脆性破壊様態へと転移する温度を規定する。延性脆性転移温度は、当業者に知られる技法を用いて算出することができる。
【0123】
TPVの作製には、どのような量のカップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーでも、その量が、カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーにとって、熱可塑性マトリックスとなるのに十分な量である限り、使用することができる。典型的には、カップリング化耐衝撃性プロピレンコポリマーは、TPV組成物全体の少なくとも10容量%、好ましくは約15%〜約65%、約20%〜約50%、25%〜約45%、または約30%〜約45%の量で存在する。好ましくは、カップリング化耐衝撃性プロピレンポリマーは副相である(すなわち、TPV組成物の50容量%未満に相当する)。
【0124】
代表的な分岐プロピレンポリマーの例として、Basell Polyolefins(オランダ)のProfax(商標)814およびProfax(商標)611、またはThe Dow Chemical Company(ミシガン州ミッドランド)の匹敵するポリプロピレンが挙げられる。
【0125】
本明細書に記載する分岐プロピレンポリマーの他にも、適切な分岐プロピレンポリマーとして、以下の米国特許に開示されているもの:4,311,628;4,521,566;4,916,198;5,047,446;5,047,485;5,414,027;および5,849,409、ならびに以下のPCT出願に開示されているもの:WO 01/53078;WO 97/20888;WO 97/20889;WO 99/10423;WO 99/10424;およびWO 99/16797も挙げられる。上記の特許または特許出願は全て、それらの分岐プロピレンポリマーの開示に関して参照により本明細書に組み入れられる。
【0126】
加硫性エラストマー
TPVの形成には、どのような加硫性エラストマーでも、それを架橋剤で架橋(すなわち加硫)することができるのであれば、使用することができる。加硫性エラストマーは、未硬化状態では熱可塑性であるものの、通常は熱硬化性に分類される。なぜなら、それらは、加工不可能な状態へと不可逆的な熱硬化プロセスを受けるからである。好ましくは、加硫されたエラストマーを、熱可塑性プラスチックポリマーのマトリックス中に、ドメインとして分散させる。平均ドメインサイズは、約0.1ミクロン〜約100ミクロン、好ましくは約1ミクロン〜約50ミクロン;約1ミクロン〜約25ミクロン;約1ミクロン〜約10ミクロン、または約1ミクロン〜約5ミクロンの範囲にわたりうる。好ましいエラストマーはエチレン−高級α−オレフィンコポリマーおよびターポリマーである。
【0127】
好ましいエラストマーの一種類として、限定されるものではないが、エチレン−高級α−オレフィン−ポリエン(EPDM)ポリマーが挙げられる。フェノール系硬化剤または他の架橋剤を用いて完全に硬化(架橋)させることができるEPDMゴムはどれでも申し分ない。ある実施形態では、EPDM型のエチレン/α−オレフィン共重合体を、加硫性エラストマーとして使用する。適切なモノオレフィンターポリマーゴムは、2つまたはそれ以上のα−モノオレフィンの基本的に非結晶性であるゴム質ターポリマー、好ましくは少なくとも1つのポリエン(通常は非共役ジエン)と共重合させたものを含む。適切なEPDMゴムは、2つのモノオレフィン(一般的にはエチレンとプロピレン)および少量の非共役ジエンを含むモノマーの重合によって得られる生成物を含む。非共役ジエンの量は、通常、ゴムの約2〜約10重量%である。フェノール系硬化剤との反応性が十分であって完全に硬化するEPDMゴムは、どれでも適切である。EPDMゴムの反応性は、ポリマー中に存在する不飽和の量にも不飽和のタイプにも依存して変動する。例えば、エチリデンノルボルネンから誘導されるEPDMゴムは、ジシクロペンタジエンから誘導されるEPDMゴムよりも、フェノール系硬化剤に対する反応性が高く、1,4−ヘキサジエンから誘導されるEPDMゴムは、ジシクロペンタジエンから誘導されるEPDMゴムよりも、フェノール系硬化剤に対する反応性が低い。しかし反応性の相違は、活性の低いジエンを、ゴム分子中に、より多量に重合することによって、克服することができる。例えば、通常の硬化活性化剤を含むフェノール系硬化剤で完全に硬化することができるようにEPDMに十分な反応性を付与するには、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンであれば2.5重量パーセントで十分でありうるのに対して、1,4−ヘキサジエンから誘導されるEPDMゴムで十分な反応性を得るには、少なくとも3.0重量パーセント以上が必要である。本発明の実施形態に適したグレードのEPDMゴムは市販されている;「Rubber World Blue Book 1975 Edition, Materials and Compounding Ingredients for Rubber」406-410頁。
【0128】
一般的にEPDMエラストマーは、約10重量%〜約90重量%のエチレン含量、約10重量%〜約80重量%の高級α−オレフィン含量、および約0.5%〜約20重量%のポリエン含量を有する(重量はいずれもポリマーの総重量を基準とする)。高級α−オレフィンは約3〜約14個の炭素原子を含有する。これらの例は、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−オクテン、2−エチル−1−ヘキセン、1−ドデセンなどである。ポリエンは、共役ジエン、例えばイソプレン、ブタジエン、クロロプレンなど;非共役ジエン;トリエン、またはそれ以上の列挙されたポリエン(higher enumerated polyene)であることができる。トリエンの例は、1,4,9−デカトリエン、5,8−ジメチル−1,4,9−デカトリエン、4,9−ジメチル−1,4,9−デカトリエンなどである。非共役ジエンは、より好ましい。非共役ジエンは5〜約25個の炭素原子を含有する。非共役ジオレフィン、例えば1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエンなど;環状ジエン、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエンなど;ビニル環状エン類、例えば1−ビニル−1−シクロペンテン、1−ビニル−1−シクロヘキセンなど;アルキルビシクロノナジエン、例えば3−メチル−ビシクロ(4,2,1)ノナ−3,7−ジエン、3−エチルビシクロノナジエンなど;インデン類、例えばメチルテトラヒドロインデンなど;アルケニルノルボルネン、例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネン、5−(1,5−ヘキサジエニル)−2−ノルボルネン、5−(3,7−オクタジエンイル)−2−ノルボルネンなど;およびトリシクロジエン、例えば3−メチル−トリシクロ−(5,2,1,02,6)−3,8−デカジエンなどが、その例である。
【0129】
ある実施形態では、EPDMポリマーが、約20重量%〜約80重量%のエチレン、約19重量%〜約70重量%の高級α−オレフィン、および約1%〜約10重量%の非共役ジエンを含有する。より好ましい高級α−オレフィンはプロピレンおよび1−ブテンである。より好ましいポリエンはエチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、およびジシクロペンタジエンである。
【0130】
別の実施形態では、EPDMポリマーが、約50重量%〜約70重量%のエチレン含量、約20重量%〜約49重量%のプロピレン含量、および約1重量%〜約10重量%の非共役ジエン含量を有する(重量はいずれもポリマーの総重量を基準とする)。
【0131】
使用される代表的なEPDMポリマーの例として、DuPont Dow Elastomers(デラウェア州ウィルミントン)から入手することができるNordel IP 4770R、Nordel 3722 IP、およびDSM Elastomers Americas(ルイジアナ州アディス)から入手することができるKeltan 5636Aが挙げられる。
【0132】
EPDMポリマーは、エチレン、高級α−オレフィンおよびポリエンの弾性コポリマーとも呼ばれ、約20,000〜約2,000,000以上の分子量を有する。その物理的形態は、ワックス状材料からゴム質、さらには硬質プラスチック様ポリマーまで様々である。これらは、100ccのトルエンにつき0.1グラムのポリマーという溶液で、30℃において測定した場合に約0.5〜約10の希薄溶液粘度(DSV)を有する。
【0133】
エチレン−α−オレフィンコポリマーも、硬化系が非共役ジエンの存在を必要としないのであれば、熱可塑性加硫物での使用に適している。
【0134】
他にも、適切なエラストマーが、以下の米国特許に開示されている:第4,130,535号;第4,111,897号;第4,311,628号;第4,594,390号;第4,645,793号;第4,808,643号;第4,894,408号;第5,393,796号;第5,936,038号;第5,985,970号;および第6,277,916号(これらの特許はいずれも参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。
【0135】
架橋剤
TPVに使用される熱可塑性ポリマーを実質的に分解および/または硬化することなくエラストマーを硬化することのできる架橋剤はどれでも、本発明の実施形態に使用することができる。好ましい架橋剤はフェノール系樹脂である。他の硬化剤として、限定されるものではないが、ペルオキシド、アジド、アルデヒド−アミン反応生成物、ビニルシラングラフト部分、ヒドロシリル化、置換尿素、置換グアニジン;置換キサンテート;置換ジチオカルバメート;硫黄含有化合物、例えばチアゾール類、イミダゾール類、スルフェンアミド類、チウラミジスルフィド(thiuramidisulfide)類、パラキノンジオキシム、ジベンゾパラキノンジオキシム、硫黄;およびそれらの組み合わせが挙げられる。「Encyclopedia of Chemical Technology」Vol. 17(第2版,Interscience Publishers,1968)および「Oraganic Peroxides」(Daniel Seern, Vol. 1,Wiley−Interscience,1970)を参照されたい(これらは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。別段の明示がない限り、以下に述べる硬化系は、共役または非共役ジエンを含有するエラストマーを必要とする。
【0136】
EPDMゴムを完全に硬化させることができるフェノール系硬化剤系はどれでも適切である。エラストマーを完全に硬化させることが好ましいが、必ずしもその必要はない。ある実施形態では、エラストマーを部分的に硬化または実質的に硬化させる。そのような系の基本成分は、ハロゲン置換フェノール、C−C10アルキル置換フェノールまたは無置換フェノールをアルカリ性媒質中でアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドと縮合させることによって、または二官能性フェノールジアルコール類の縮合によって作製される、フェノール系硬化樹脂である。パラ位がC−C10アルキル基で置換されたジメチロールフェノール類は好ましい。アルキル置換フェノール硬化樹脂のハロゲン化によって調製されるハロゲン化アルキル置換フェノール硬化樹脂もとりわけ好適である。メチロールフェノール系樹脂、ハロゲン供与体および金属化合物を含むフェノール系硬化剤系はとりわけ推奨され、その詳細はGillerの米国特許第3,287,440号およびGerstinらの米国特許第3,709,840号に記述されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。フェノール系硬化剤系のもう1つの適切な種類は、米国特許第5,952,42号に開示されており、この特許は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。非ハロゲン化フェノール硬化樹脂は、ハロゲン供与体と組み合わせて、好ましくはハロゲン化水素スカベンジャーと一緒に使用される。通常、約2〜約10重量パーセントの臭素を含有するハロゲン化(好ましくは臭素化)フェノール系樹脂であれば、ハロゲン供与体を必要としないが、ハロゲン化水素スカベンジャー、例えば金属酸化物、例えば酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素、そして好ましくは酸化亜鉛などは併用され、その存在はフェノール系樹脂の架橋機能を助長するが、フェノール系樹脂では容易に硬化しないゴムの場合は、ハロゲン供与体および酸化亜鉛の併用が推奨される。ハロゲン化フェノール樹脂の調製および酸化亜鉛を含む硬化剤系におけるその使用は、米国特許第2,972,600号および第3,093,613号に記述されており、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。適切なハロゲン供与体の例は、塩化第一スズ、塩化第二鉄、またはハロゲン供与性ポリマー、例えば塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、およびポリクロロブタジエン(ネオプレンゴム)である。本明細書で使用する「活性化剤」という用語は、フェノール系硬化樹脂の架橋効率を著しく増加させる任意の物質を意味し、金属酸化物およびハロゲン供与体(単独で使用または併用)が挙げられる。フェノール系硬化剤系のさらなる詳細については、「Vulcanization and Vulcanizing Agents」(W. Hoffman,Palmerton Publishing Company)を参照されたい。適切なフェノール系硬化樹脂および臭素化フェノール系硬化樹脂は市販されており、例えば、そのような樹脂を、Schenectady ChemicalsからSP−1045、CRJ−352、SP−1055およびSP−1056という商品名で購入することができる。同様の機能的に等価なフェノール系硬化樹脂を他の供給者から入手することもできる。上に説明したとおり、ゴムの本質的に完全な硬化が達成されるように、十分な量の硬化剤を使用する。
【0137】
もちろん、ゴムを完全に硬化するために、好ましくは、十分なフェノール系硬化剤が使用されることは、言うまでもない。ゴムを硬化させるのに必要なフェノール系硬化剤の最少量は、ゴムのタイプ、フェノール系硬化剤、硬化促進剤のタイプ、および温度などの硬化条件に依存して変化する。典型的には、EPDMゴムを完全に硬化させるために使用されるフェノール系硬化剤の量は、100重量部のEPDMゴムにつき約5重量部〜約20重量部のフェノール系硬化剤である。好ましくは、フェノール系硬化剤の量は、100重量部のEPDMゴムにつき約7重量部〜約14重量部のフェノール系硬化剤である。さらに、ゴムの完全な硬化を保証するために、適切な量の硬化活性化剤を使用する。満足のいく硬化活性化剤の量は、100重量部のEPDMゴムにつき約0.01重量部から約10重量部まで変化するが、所望であればさらに多量に使用してもよく、満足のいく硬化が得られる。「フェノール系硬化剤」という用語は、フェノール系硬化剤(樹脂)および硬化活性化剤を包含する。しかし、フェノール系硬化剤の量がブレンドのEPDMゴム含量を基準にしているからといって、フェノール系硬化剤が熱可塑性ポリマー樹脂とは反応しないとか、熱可塑性ポリマー樹脂とEPDMゴムの間に反応は起こらないと、決めてかかってはならない。かなりの反応が関与しうるが、その程度は限られている。すなわち、熱可塑性ポリマー樹脂とEPDMゴムの間に、実質的な量のグラフト形成は起こらない。硬化されたEPDMゴムおよび熱可塑性ポリマー樹脂の本質的に全てを、高温溶媒抽出、例えば沸騰キシレン抽出などによってブレンドから分離および単離することができる。単離された画分の赤外線分析は、EPDMゴムと熱可塑性ポリマー樹脂の間には、グラフトコポリマーが仮に形成されるとしても、ごくわずかに過ぎないことを示した。
【0138】
フェノール系硬化剤だけでなく、アジドも架橋剤として使用することができる。適切なアジドとして、限定されるものではないが、アジドホルメート類、例えばテトラメチレンビス(アジドホルメート)(米国特許第3,284,421号、Breslow、1966年11月8日も参照されたい);芳香族ポリアジド、例えば4,4’−ジフェニルメタンジアジド(米国特許第3,297,674号、Breslowら、1967年1月10日も参照されたい);およびスルホンアジド類、例えばp,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルアジド)が挙げられる。エチレン−α−オレフィンコポリマーまたはエチレン−α−オレフィン−ポリエンターポリマーは、いずれも、この硬化系にとって適切な加硫性エラストマーである。
【0139】
アジドの好ましい種類は、上述のポリ(スルホニルアジド)である。架橋するには、ポリ(スルホニルアジド)を架橋量で、すなわち出発物質と比較してエラストマーを架橋するのに有効な量で、すなわちASTM D−2765A−84に従って試験した場合に沸騰キシレンにおけるゲルの不溶性によって証明される少なくとも約10重量パーセントゲルの形成をもたらすのに十分な量のポリ(スルホニルアジド)を使用する。この量は、エラストマーの総重量を基準にして少なくとも約0.5、より好ましくは少なくとも約1.0、最も好ましくは2.0重量パーセントのポリ(スルホニルアジド)であり、これらの値は、アジドの分子量およびエラストマーの分子量またはメルトインデックスに依存する。無制御な加熱および不必要なコスト、物理的特性の劣化を避けるために、ポリ(スルホニルアジド)の量は、好ましくは約10重量パーセント未満、より好ましくは約5重量パーセント未満である。
【0140】
架橋剤として適切なペルオキシドとして、限定されるものではないが、芳香族ジアシルペルオキシド;脂肪族ジアシルペルオキシド;二塩基酸ペルオキシド;ケトンペルオキシド;アルキルペルオキシエステル;アルキルヒドロペルオキシド(例えばジアセチルペルオシド;ジベンゾイルペルオキシド;ビス−2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド;ジ−tert−ブチルペルオキシド;ジクミルペルオキシド;tert−ブチルペルベンゾエート;tert−ブチルクミルペルオキシド;2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン;2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキシン−3;4,4,4’,4’−テトラ−(t−ブチルペルオキシ)−2,2−ジシクロヘキシルプロパン;1,4−ビス−(t−ブチルペルオキシイソプロピル)−ベンゼン;1,1−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;ラウロイルペルオキシド;コハク酸ペルオキシド;シクロヘキサノンペルオキシド;t−ブチルペルアセテート;ブチルヒドロペルオキシドなどが挙げられる。エチレン−α−オレフィンコポリマーまたはエチレン−α−オレフィン−ポリエンターポリマーのいずれかが、この硬化系にとって適切な加硫性エラストマーである。
【0141】
加硫性エラストマーは、低レベルのペルオキシドの存在下で、別個の反応押出プロセスにより、ビニルシランモノマーにグラフトすることができる。適切なビニルシラン類として、限定されるものではないが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが挙げられる。次に、グラフトされたエラストマーを水と反応させることにより、動的加硫工程の間に、ジブチルスズジラウレートなどの触媒の存在下で、ポリマーを硬化させることができる。適切な水源として、限定されるものではないが、水蒸気、水/エチレングリコール混合物、アルミニウム三水和物、および水酸化マグネシウムが挙げられる。エチレン−α−オレフィンコポリマーまたはエチレン−α−オレフィン−ポリエンターポリマーのいずれかが、この硬化系にとって適切な加硫性エラストマーである。
【0142】
分子中に少なくとも2つのSiH基を有する水素化ケイ素を、ヒドロシリル化触媒の存在下で不飽和ゴム成分の炭素−炭素多重結合と反応させることにより、動的加硫中に有用な架橋を形成させることができる。適切な水素化ケイ素化合物として、限定されるものではないが、メチル水素ポリシロキサン、メチル水素ジメチル−シロキサンコポリマー、メチル水素アルキルメチルポリシロキサン、ビス(ジメチルシリル)アルカンおよびビス(ジメチルシリル)ベンゼンが挙げられる。本組成物のプロセスに有用な水素化ケイ素化合物の量は、ゴム中の炭素−炭素二重結合あたり約0.1〜約10.0モル当量のSiHの範囲にわたることができ、好ましくは、熱可塑性エラストマーのゴム成分中の炭素−炭素二重結合あたり約0.5〜約5.0モル当量の範囲のSiHであり得る。ヒドロシリル化加硫反応用の適切な触媒として、VIII族の遷移金属、例えばパラジウム、ロジウム、白金など(これらの金属の錯体を含む)が挙げられる。米国特許第4,803,244号および米国特許第5,597,867号には、クロロ白金酸が有用な触媒として開示されている。ヒドロシリル化架橋を用いたEPDMの動的加硫によるTPVの製造は、米国特許第6,251,998号(Medskerら,2001年6月26日)に開示されており、この特許は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0143】
一般的にTPV中の熱可塑性エラストマーは完全に硬化される。そのような完全に硬化された加硫物は、熱可塑性樹脂として加工することができるが、そのゴム部分は通常の溶媒にはほぼ全く不溶になるまで架橋される。抽出可能分の決定が硬化状態の適切な尺度である場合は、加硫物が含有する23℃のシクロヘキサンに抽出可能なゴムが約3重量パーセント以下になる程度にブレンドを加硫することによって、好ましくは、加硫物が含有する23℃のシクロヘキサンへの抽出可能分が2重量パーセント未満になる程度にブレンドを加硫することによって、熱硬化性加硫物が製造される。一般的に、抽出可能分が少ないほど、諸性質は良くなり、23℃のシクロヘキサン中に抽出可能なゴムを本質的に持たない(0.5重量パーセント未満である)加硫物は、なおさら好ましい。パーセントゲルとして報告されるゲル含量は米国特許第3,203,937号の手法によって決定され、この手法には、23℃のシクロヘキサンに試験片を48時間浸漬し、乾燥した残留物を秤量し、組成物の知識に基づいて適切な補正を加えることによって不溶性ポリマーの量を決定することが含まれる。したがって、補正された初期重量および最終重量を、初期重量から、ゴム以外のシクロヘキサンに可溶な成分、例えばエキステンダー油、可塑剤およびシクロヘキサンに可溶な樹脂の成分などの重量を差し引くことによって使用する。不溶性顔料、充填剤などはいずれも、初期重量からも最終重量からも差し引く。
【0144】
添加剤
TPVの性質は、加硫の前または後に、EPDMゴム、熱可塑性ポリマー樹脂およびそのブレンドの配合において従来から用いられている成分を添加することによって、改変することができる。そのような成分の例として、粒状充填剤、例えばカーボンブラック、非晶質沈降シリカまたはヒュームドシリカ、二酸化チタン、着色顔料、粘土、タルク、炭酸カルシウム、珪灰石、雲母、モンモリロナイト、ガラスビーズ、中空ガラス球、ガラス繊維、酸化亜鉛およびステアリン酸、安定剤、分解防止剤、難燃剤、加工助剤、接着剤、粘着付与剤、可塑剤、ワックス、不連続繊維、例えば木質セルロース繊維、およびエキステンダー油が挙げられる。カーボンブラック、エキステンダー油、またはその両方を、好ましくは動的加硫の前に添加することが、特に推奨される。カーボンブラックは引張り強さを改善し、フェノール系硬化剤を促進する傾向がある。エキステンダー油は、弾性プラスチック組成物の耐油膨潤性、熱安定性、ヒステリシス、コストおよび永久ひずみを改善することができる。芳香族系、ナフテン系およびパラフィン系エキステンダー油は申し分ない。エキステンダー油の添加は、加工性も改善することができる。適切なエキステンダー油については、前掲の「Rubber World Blue Book」145-190頁を参照されたい。添加するエキステンダー油の量は、所望する性質に依存し、上限はその油およびブレンド成分の相溶性に依存し、エキステンダー油の過剰な滲出が起こる場合は、その限界を超えている。典型的には、オレフィンゴムおよび熱可塑性ポリマー樹脂のブレンド100重量部につき約5〜約300重量部のエキステンダー油が加えられる。一般的には、ブレンド中に存在するゴム100重量につき約30〜約250重量部のエキステンダー油が加えられ、ゴム100重量部あたり約70〜約200重量部の量のエキステンダー油は好ましい。エキステンダー油の量は、少なくとも部分的にはゴムのタイプに依存する。高粘度ゴムはより高度に増量可能である。
【0145】
着色可能な組成物は、カーボンブラックの代わりに非黒色充填剤を組み入れることによって調製される。そのような目的には、無色、オフホワイトまたは白色顔料(充填剤、エキステンダー、または補充顔料)、例えば非晶質沈降シリカまたはヒュームドシリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、カオリン粘土、モンモリロナイト、珪灰石、および二酸化チタンなどが適している。好ましくは、チタネート類またはシラン類などのカップリング剤を、非黒色充填剤、特にカオリン粘土と共に使用する。典型的には、ブレンド中のゴム100重量部につき約5〜約100重量部の非黒色顔料を加える。カーボンブラックにせよ非黒色充填剤にせよ、充填剤の典型的な添加量は、100重量部のEPDMゴムにつき約40〜約250重量部のカーボンブラック、通常は合計100重量部のEPDMゴムおよびエキステンダー油につき約10〜約100重量部の充填剤である。使用することができる充填剤の量は、少なくとも部分的には、充填剤のタイプおよび使用するエキステンダー油の量に依存する。
【0146】
TPVを作製する方法
熱可塑性加硫物は、典型的には、プラスチックおよび硬化ゴムを動的加硫でブレンドすることによて調製される。本組成物は、ゴム質ポリマーを混合するための任意の適切な方法によって、例えばゴム用ロール機での混合、またはバンバリーミキサーなどの密閉式混合機での混合によって、調製することができる。配合手順では、通常の配合成分が組み入れられる。そのような配合成分として、1つまたはそれ以上のタイプのカーボンブラック、追加エキステンダー油、他の充填剤、例えば粘土、シリカなど、粘着付与剤、ワックス、結合用樹脂など、酸化亜鉛、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、加工助剤、および硬化活性剤(cure active agent)などを挙げることができる。一般的に、硬化活性剤は、通常約60℃を越えない温度で運転されるゴム用ロール機または密閉式混合機で行うことができる配合の第二段階で加えられることが好ましい。硬化活性剤としては、硫黄および種々の硫黄含有促進剤を挙げることができる。約150℃〜約200℃の温度で約5〜約60分間加熱することにより、コンパウンドを通常の方法で硬化させて、本明細書に記載するように有用な性質を有する新規エラストマー加硫物を形成させる。本発明の具体的実施形態を、単なる一例として、以下に説明する。
【0147】
動的加硫は、プラスチック、ゴムおよびゴム硬化剤のブレンドを、ゴムを硬化させながら混練するプロセスである。「動的」という用語は、加硫ステップ中に加硫性組成物が(固定された相対空間内で)静止している「静的」加硫とは対照的に、加硫ステップ中に混合物に剪断力が加わることを示している。動的加硫の利点の1つは、ブレンドがプラスチックおよびゴムを適正な比率で含有する場合には、弾性プラスチック(熱可塑性エラストマー)組成物を得ることができるということである。動的加硫の例は、米国特許第3,037,954号;同第3,806,558号;同第4,104,210号;同第4,116,914号;同第4,130,535号;同第4,141,863号;同第4,141,878号;同第4,173,556号;同第4,207,404号;同第4,271,049 4,287,324号;同第4,288,570号;同第4,299,931号;同第4,311,628号および同第4,338,413号に記述されており、これらの特許は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0148】
2000秒−1以上の剪断速度を生成させる能力を有する混合機はいずれも、このプロセスの実行に適している。一般的にこれは、混練部品のチップと壁との間に狭いクリアランスを有する高速密閉式混合機を必要とする。剪断速度は、チップと壁との間の空間の速度勾配である。十分な剪断速度を発生させるには、チップと壁の間のクリアランスに応じて、毎分あたり約100〜約500回転(rpm)という混練部品の回転が、一般的に妥当である。所与の混練部品のチップの数および回転速度に応じて、各部品によって組成物が混練される回数は、毎秒約1〜約30回、好ましくは毎秒約5〜約30回、より好ましくは毎秒約10〜約30回である。これは、材料が、典型的には、加硫中に約200〜約1800回混練されることを意味する。例えば、約30秒間の滞留時間を有する混合機において3つのチップを有するローターが約400rpmで回転する典型的なプロセスでは、材料が約600回混練される。
【0149】
このプロセスを実行するのに申し分のない混合機は、Werner & Pfleiderer(ドイツ)が製造している高剪断混合押出機である。Werner & Pfleiderer(W&P)押出機は、2本のかみ合ったスクリューが同じ方向に回転する双軸スクリュー押出機である。そのような押出機の詳細は、米国特許第3,963,679号および第4,250,292号;ならびにドイツ特許第2,302,546号;同第2,473,764号および同第2,549,372号に記述されており、それらの開示は参照により本明細書に組み入れられる。スクリュー径は約53mmから約300mmまで様々である。また、バレル長さは様々であるが、一般的に最大バレル長さは、約42という長さ/直径比を維持するのに必要な長さである。これらの押出機のシャフトスクリューは、通常、交互に配置された一連の運搬区画と混練区画によって構成される。運搬区画は材料を押出機の各混練区画から前方に移動させる。典型的には、ほぼ同じ数の運搬区画と混練区画とが、バレルの長さに沿って、かなり均等に配置されている。1、2、3または4個のチップを有する混練部品が適切であるが、3個のチップを有する約5〜約30mm幅の混練部品は好ましい。約100〜約600rpmの推奨スクリュー速度および約0.1〜約0.4mmの半径隙間で、これらの混合押出機は少なくとも約2000秒−1〜約7500秒−1以上の剪断速度を与える。このプロセス(均一化および動的加硫化を含む)で消費される正味の混合力(mixing power)は、通常、製造される製品1キログラムあたり約100〜約500ワット時であり、1キログラムあたり約300〜約400ワット時が典型的である。
【0150】
W&P双軸スクリュー押出機モデルZSK−53またはZSK−83を用いて、このプロセスを例示する。別段の指定がない限り、プラスチック、ゴムおよび他の配合成分は、硬化活性化剤を除いて全て、押出機の投入口に供給する。押出機の最初の3分の1では、組成物を混練して、プラスチックを溶融させ、そして本質的に均一なブレンドを形成させる。最初の投入口から下流に向かってバレルの長さの約3分の1の位置にあるもう1つの投入口から、硬化活性化剤(加硫促進剤)を加える。押出機の最後の3分の2(硬化活性化剤投入口から押出機の出口まで)が、動的加硫領域とみなされる。揮発性副生成物を除去するために、減圧下で作動するベントを出口の近くに設置する。場合によっては、追加のエキステンダー油または可塑剤および着色剤を、加硫領域の中央付近に位置するもう1つの投入口から加える。
【0151】
加硫領域内の滞留時間は、与えられた量の材料が上記加硫領域内にある時間である。押出機は典型的には、通常、満充填の約60〜約80パーセントという不足条件(starved condition)下で運転されるので、滞留時間は供給量に本質的に正比例する。したがって、加硫領域における滞留時間は、動的加硫領域の総容積にフィルファクター(fill factor)を積算して容積流量で除算することによって算出される。剪断速度は、スクリューチップによって生じる円の円周にスクリューの毎秒回転数を掛けた積をチップクリアランスで除算することによって算出される。言い換えると、剪断速度はチップ速度をチップクリアランスで割った値である。
【0152】
組成物の調製には、ゴム/熱可塑性ポリマー樹脂ブレンドの動的硬化以外の方法も使用することができる。例えば、熱可塑性樹脂の不在下で、ゴムを動的または静的に完全に硬化し、粉末化し、熱可塑性ポリマー樹脂と、その樹脂の融点または軟化点より高い温度で混合することができる。架橋されたゴム粒子が小さく、よく分散していて、適切な濃度であれば、架橋されたゴムと熱可塑性ポリマー樹脂とをブレンドすることによって、組成物は容易に得られる。架橋されたゴムのよく分散された小さい粒子を含む混合物を得ることが好ましい。よく分散されていないか大きすぎるゴム粒子を含有する混合物は、低温微粉砕によって粉砕して、粒径を約50μm未満、好ましくは約20μm未満、より好ましくは約5μm未満まで減少させることができる。十分な粉砕または粉末化後に、TPV組成物が得られる。よく分散されていないか大きすぎるゴム粒子は、しばしば、肉眼にも明白であり、成形シート中に観察することができる。これは、顔料および充填剤が存在しない場合には、特にそうであると言える。そのような場合は、細粉化および再成形により、ゴム粒子または大きい粒子の凝集塊が明白でないか、または肉眼には全く明白でなく、機械的特性が著しく改善されたシートが得られる。
【0153】
本発明のある実施形態では、TPVの製造と一緒に熱可塑性ポリマーが分岐される1ステップ配合プロセスまたは2ステップ以上の配合プロセスを用いて、TPVが作製される。フェノール系硬化剤を用いる1ステップ配合では、フェノール系硬化剤の分解を避けるために、配合温度は、好ましくは、220℃未満に維持される。2ステップ配合では、フェノール系硬化剤が典型的には第2ステップ中に加えられ、第2ステップ中の温度は220℃未満に維持される。
【0154】
以下に、動的加硫と組み合わされた熱可塑性ポリマーのオンライン分岐のためのプロセスの簡単な例を3つ挙げる。
【0155】
シングルステップ:ポリプロピレン(ホモポリマーまたはコポリマー(ランダムポリマーまたは耐衝撃性コポリマー)、EPDM、安定剤、加工助剤、およびZnOの混合物、ならびにハロゲン供与体、例えば二塩化スズを投入する。油を加えか、油を計量供給する。フェノール系硬化剤(例えばSP1055またはSP1045)を、他の全ての成分を十分に混和し終えて、押出機バレル上の点から、サイドアームフィーダーによって供給する。あるいは、非ハロゲン化フェノール系硬化剤(例えばSP1045)を、ハロゲン供与体の代わりに他の成分と共に加えてもよい。その場合は、下流で、サイドフィーダーにより、ハロゲン供与体を押出機に加える。場合により、長鎖分岐を付加するために、50ppm〜450ppmのDPO−BSA Concentrate Master Batchを、ポリプロピレンおよび/またはEPDMと共に加えてもよい。使用すべき典型的な配合を表1に記載する。押出機または混合機を、押出機の領域内の温度プロファイルが好ましくは220℃を超えないように運転する必要がある。押出機アプローチの場合は、均一な混合が可能になるように、適正な混合スクリューを使用する必要がある。最後に溶融物を冷却し、ペレット化する。
【0156】
押出機における2ステップ:この態様では、高いアスペクト比と2つのフィードホッパーを有するスクリュー配合押出機を利用する。ポリプロピレン(ホモポリマーまたはコポリマー(ランダムまたは耐衝撃性コポリマー))と、場合により0〜450ppmのDPO−BSA Master Batchとを、第1フィーダーによって加える。第1区画の温度は、第2フィードホッパーに達するまで、200〜2500Cに維持する。第2フィードホッパーの近辺で押出機内の温度は190C〜2200Cに低下する。第2フィードホッパーでは、EPDM、安定剤、加工助剤、充填剤およびハロゲン供与体が加えられる。次に、油が計量供給される。フェノール系硬化剤(SP1055またはSP1045)をサイドアームフィーダーによって加える。この場合も、混合プロセス中に、非ハロゲン化フェノール系硬化剤をハロゲン供与体と交換し、ハロゲン供与体を非ハロゲン化フェノール系硬化剤と交換することができる。典型的な配合を表1に記載する。押出機を出た最終溶融物を冷却し、ペレット化する。
【0157】
混合機におけるシングルステップ:混合機(例えばブラベンダーバッチミキサー)に、PP(ホモポリマーまたはコポリマー(ランダムまたは耐衝撃性耐衝撃性コポリマー)、EPDM、安定化剤および加工助剤、ならびにハロゲン供与体を投入する。その調合物に油を加え、トルクが増加する間、さらに2分間混合を続ける。約2分間混合し、フェノール系硬化剤を加える。典型的な配合を表1に記載する。最後に溶融物を冷却し、造粒する。
【0158】
混合機における2ステップ:混合機(例えばブラベンダーバッチミキサー)に、PP(ホモポリマーまたはコポリマー(ランダムまたは耐衝撃性コポリマー)および0〜450ppmのDPO−BSAを投入し、混合して、20℃〜250℃の温度で均一な溶融物にする。その混合物を約190℃まで冷却し、EPDM、安定剤および加工助剤を加える。その調合物に油を加え、トルクが増加する間、さらに2分間混合を続ける。約2分間混合し、フェノール系硬化剤を加える。典型的な配合を表1に記載する。最後に溶融物を冷却し、造粒する。
【0159】
上述の1ステッププロセスおよび2ステッププロセスを用いて作製されるTPV混合物は、先の例で例示したものと類似する性質を有するだろう。
【0160】
ある実施形態では、熱可塑性加硫物組成物が、(1)1.0未満の分岐インデックスを有する分岐ポリプロピレン;(2)エチレン系不飽和を有するEPDMエラストマー;(3)本明細書に開示するエチレン/α−オレフィン共重合体;およびフェノール系樹脂、の混合物または反応生成物を含み、分岐ポリプロピレンが約100,000〜1,000,000の範囲の重量平均分子量を有し、同じ重量平均分子量を有する線状ポリプロピレンの溶融強度よりも少なくとも約50%は高い溶融強度を有する。
【表1】

【0161】
TPVの用途
熱可塑性加硫物組成物は、種々な物品、例えばタイヤ、ホース、ベルト、ガスケット、成形体および成形部品などを作製するのに有用である。これらは、高い溶融強度を必要とする用途、例えば大部品ブロー成形、発泡体、およびワイヤケーブルなどには、とりわけ有用である。これらは、熱可塑性樹脂、特に熱可塑性ポリマー樹脂を改質させるのにも有用である。本組成物は、ゴム改質された熱可塑性樹脂を作製する通常の混合装置を用いて熱可塑性樹脂とブレンドすることができる。改質された熱可塑性樹脂の性質は、ブレンドされる熱可塑性エラストマー組成物の量に依存する。
【0162】
熱可塑性加硫物組成物は、超臨界液(例えばCOまたはN)を用いて微小気泡(microcellular)TPV発泡体を作製するためにも使用することができる。そのような技術は米国特許第5,158,986号;同第5,160,674号;同第5,334,356号;同第5,866,053号;同第6,169,122号;同第6,284,810号;同第6,294,115号に教示されており、それらは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。上記の特許に開示されている方法は、変更を加えて、または変更を加えずに、本発明の実施形態で使用することができる。
【0163】
さらなるTPV用途が、以下の米国特許に開示されている:第6,329,463号、発明の名称「High temperature, oil resistant thermoplastic vulcanizates made from polar plastics and acrylate or ethylene-acrylate elastomers」;第6,288,171号、発明の名称「Modification of thermoplastic vulcanizates using random propylene copolymers」;第6,277,916号、発明の名称「Process for preparing thermoplastic vulcanizates」;第6,270,896号、発明の名称「Elastic fiber」;第6,235,166号、発明の名称「Sealing means for electrically driven water purification units」;第6,221,451号、発明の名称「Synthetic closure」;第6,207,752号、発明の名称「Thermoplastic vulcanizates of carboxylated nitrile rubber and thermoplastic polyurethanes」;第6,174,962号、発明の名称「Free radically cured thermoplastic vulcanizates of a polyolefin and a acrylate modified paraalkylstyrene/isoolefin copolymer」;第6,169,145号、発明の名称「Vulcanization of carboxyl containing elastomers using reductive hydrosilylation with extension into dynamic vulcanization」;第6,150,464号、発明の名称「Preferred process for silicon hydride addition and preferred degree of polymerization for silicon hydride for thermoplastic vulcanizates」;第6,147,160号、発明の名称「Organosilane cured butyl rubber/polypropylene TPV」;第6,100,334号、発明の名称「Thermoplastic vulcanizates from a cyclic olefin rubber, a polyolefin, and a compatiblizer」;第6,084,031号、発明の名称「TPV from hydrosilylation crosslinking of acrylic modified bromo XP-50 butyl rubber」;第6,069,202号、発明の名称「Thermoplastic elastomer triblend from an engineering thermoplastic, functionalized ethylene and or diene polymer, and brominated isobutylene p-methylstyrene copolymer」;第6,066,697号、発明の名称「Thermoplastic compositions containing elastomers and fluorine containing thermoplastics」;第6,028,137号、発明の名称「Elastomeric compounds incorporating silicon-treated carbon blacks」;第6,020,427号、発明の名称「Thermoplastic vulcanizates of carboxylated nitrile rubber and polyester thermoplastics」;第5,977,271号、発明の名称「Process for preparing thermoset interpolymers and foams」;第5,960,977号、発明の名称「Corrugated polymeric filler neck tubing」;第5,957,164号、発明の名称「Refrigerant hose」;第5,952,425号、発明の名称「Preferred structure of phenolic resin curative for thermoplastic vulcanizate」;第5,939,464号、発明の名称「High elasticity foams」;第5,936,038号、発明の名称「Vulcanizable elastomeric composition and thermoplastic vulcanizate employing the same」;第5,869,591号、発明の名称「Thermoset interpolymers and foams」;第5,750,625号、発明の名称「Phenolic resin curatives which form nonstaining thermoplastic elastomers」;第5,744,238号、発明の名称「Dimensionally stable sheet handling shaft assembly and method of making same」;第5,621,045号、発明の名称「Thermoplastic vulcanizates from isobutylene rubber and either EPDM or a conjugated diene rubber」;および第4,783,579号、発明の名称「Flat multi-conductor power cable with two insulating layers」。前記の特許はいずれも参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0164】
異形押出成形は、例えば自動車外装トリムなどとして使用されるしばしば複雑な横断面を有する連続的で均一な熱可塑性アイテムを製造するためによく用いられる方法である。異形材は、選択した押出ダイの形状を呈し、切断され、エンドキャップされて、ボディサイド成形体などの物品を形成する。単一の異形材を、車の多くのモデルに適合するように設計することができ、それが異形押出を一般的なアフターマーケットプロセスにしている。熱可塑性材料の広い加工範囲が、異形押出における高い生産量を可能にしている。押出機の連続運転が、プラスチック製品の均一な製造を可能にする。押出機のバレル、アダプターおよびダイに沿って要求される温度は、実行されるその押出プロセスと、使用するプラスチックの性質に依存する。
【0165】
本発明の実施形態を例示するために、以下に実施例を記載する。全ての数値は概数である。数値域を記載する場合、明示した範囲の外にある実施形態であっても本発明の範囲に含まれる可能性はあると理解する必要がある。各実施例で述べる具体的詳細を、本発明に欠かすことのできない特徴であるとみなしてはならない。
【実施例】
【0166】
試験方法
下記の実施例では、以下の分析技術を使用する。
【0167】
サンプル1〜4およびA〜Cに関するGPC法
160℃に設定された加熱ニードルを装備した自動化液体処理ロボットを用いて、各乾燥ポリマーサンプルに、300ppmのIonolで安定化した1,2,4−トリクロロベンゼンを十分量加えることにより、最終濃度を30mg/mLにする。各チューブに小さなガラス攪拌棒を入れ、250rpmで回転する加熱式オービタルシェーカーで、サンプルを2時間、160℃に加熱する。次に、その濃ポリマー溶液を、自動化液体処理ロボットおよび160℃に設定された加熱ニードルを用いて、1mg/mlに希釈する。
【0168】
Symyx Rapid GPCシステムを用いて、各サンプルについて、分子量データを決定する。2.0ml/分の流量に設定したGilson 350ポンプを用いて、直列に配置され160℃に加熱された3本のPlgel 10マイクロメーター(μm)Mixed B 300mm×7.5mmカラムに、300ppmのIonolで安定化した1,2−ジクロロベンゼン(ヘリウムパージしたもの)を、移動相としてポンプで送出する。Polymer Labs ELS 1000 Detectorは、エバポレーターを250℃に設定し、ネブライザーを165℃に設定し、そして窒素流量を60〜80psi(400〜600kPa)Nの圧力で1.8SLMに設定して使用する。ポリマーサンプルを160℃に加熱し、液体処理ロボットおよび加熱ニードルを用いて、各サンプルを250μlループに注入する。2つの切り替えループと重複注入とを用いたポリマーサンプルの連続的分析を使用する。サンプルデータは、Symyx Epoch(商標)ソフトウェアを用いて、収集し、解析する。ピークは手作業で積分する。報告する分子量情報は、ポリスチレン標準検量線に対して未補正である。
【0169】
標準的CRYSTAF法
分岐分布は、PolymerChar(スペインバレンシア)から市販されているCRYSTAF 200ユニットを用いる結晶分析分別(CRYSTAF)によって決定される。サンプルを1,2,4トリクロロベンゼンに160℃で1時間溶解し(0.66mg/mL)、95℃で45分間安定化する。サンプリング温度は0.2℃/分の冷却速度で95℃から30℃までの範囲にわたる。ポリマー溶液濃度の測定には赤外線検出器を使用する。温度の低下に伴ってポリマーが結晶化する間に、累積可溶物濃度を測定する。累積プロファイルの解析的微分は、ポリマーの短鎖分岐分布を反映する。
【0170】
CRYSTAFソフトウェア(Version 2001.b、PolymerChar(スペインバレンシア))に含まれるピーク解析モジュールによって、CRYSTAFのピーク温度および面積を特定する。CRYSTAFピーク検出ルーチンは、ピーク温度をdW/dT中の最大値として特定し、その微分曲線において特定されたピークのいずれかの側にある正の最大変曲点(largest positive inflections)間の面積を特定する。CRYSTAF曲線を算出するために、好ましい処理パラメーターは、温度限界を70℃とし、その温度限界より上では0.1、その温度限界より下では0.3の平滑パラメーターを用いる。
【0171】
DSC標準法(サンプル1〜4およびA〜Cを除く)
示差走査熱量測定の結果は、RCS冷却アクセサリおよびオートサンプラーを装備したTAIモデルQ1000 DSCを用いて決定する。50ml/分の窒素パージガス流を使用する。サンプルを薄膜にプレスし、プレス中、約175℃で溶融した後、室温(25℃)まで空冷する。次に、3〜10mgの材料を直径6mmのディスクに切断し、正確に秤量し、軽量アルミパン(約50mg)に入れてから、圧着して閉じる。サンプルの熱挙動を以下の温度プロファイルで調べる。以前の熱履歴を取り除くために、サンプルを180℃まで急速に加熱し、3分間恒温に保持する。次に、サンプルを10℃/分の冷却速度で−40℃まで冷却し、−40℃で3分間保持する。次に、サンプルを10℃/分の加熱速度で150℃まで加熱する。その冷却および第二加熱の曲線を記録する。
【0172】
DSC融解ピークは、−30℃と融解終点の間に引いた直線的ベースラインに対して、熱流量(W/g)の最大値として測定される。融解熱は、直線のベースラインを用いて、−30℃と融解終点の間の融解曲線下面積として測定される。
【0173】
GPC法(サンプル1〜4およびA〜Cを除く)
ゲル浸透クロマトグラフィーシステムは、Polymer Laboratories Model PL−210機器またはPolymer Laboratories Model PL−220機器のいずれかで構成される。カラム区画およびカルーセル区画は140℃で操作する。3本のPolymer Laboratories 10ミクロン Mixed−Bカラムを使用する。溶媒は1,2,4トリクロロベンゼンである。サンプルを、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する50ミリリットルの溶媒中に0.1グラムのポリマー濃度で調製する。サンプルを、160℃で2時間、軽く攪拌することによって調製する。使用する注入容積は100マイクロリットルであり、流量は1.0ml/分である。
【0174】
GPCカラムセットの較正は、21個の狭分子量分布ポリスチレン標準を用いて行う。これは、6つの「カクテル」混合物に配された580〜8,400,000にわたる分子量を有し、個々の分子量の間には少なくとも1桁の隔たり(a decade of separation)がある。標準物質を、Polymer Laboratories(英国シュロップシャー)から購入する。ポリスチレン標準を、1,000,000以上の分子量については、溶媒50ミリリットル中に0.025グラムの濃度、1,000,000未満の分子量については溶媒50ミリリットル中に0.05グラムの濃度で調製する。ポリスチレン標準を穏やかに攪拌しながら80℃で30分間溶解する。分解を最小限に抑えるために、まず最初に、狭分子量分布標準物質(narrow standards)混合物を、最も高分子量の成分から低分子量の成分へと順に流す。ポリスチレン標準ピーク分子量を、以下の式を用いて(WilliamsおよびWard, J. Polym. Sci., Polym. Let., 6, 621 (1968)に記述されているように)ポリエチレン分子量に変換する:Mポリエチレン=0.431(Mポリスチレン)。
【0175】
ポリエチレン換算分子量計算は、Viscotek TriSECソフトウェアVersion3.0を用いて行う。
【0176】
圧縮永久ひずみ
圧縮永久ひずみをASTM D395に従って測定する。サンプルは、厚みが3.2mm、2.0mmおよび0.25mmで、直径が25.4mmの円形ディスクを、総厚みが12.7mmに達するまで重ねることによって調製する。以下の条件下にホットプレスで成形した12.7cm×12.7cmの圧縮成形プラックから、ディスクを切り出す:190℃で3分間ゼロ圧、次に190℃で2分間86MPa、次にプレス内部で冷水を流しながら86MPaで冷却。
【0177】
密度
密度測定用のサンプルはASTM D1928に従って調製する。測定は、ASTM D792,Method Bを用いて、サンプルプレスから1時間以内に行う。
【0178】
曲げ/割線モジュラス/貯蔵弾性率
ASTM D1928を用いてサンプルを圧縮成形する。曲げ弾性率および2%割線モジュラスをASTM D−790に従って測定する。貯蔵弾性率をASTM D5026−01または等価な技術に従って測定する。
【0179】
光学的特性
ホットプレス(Carver Model#4095−4PR1001R)を用いて厚さ0.4mmのフィルムを圧縮成形する。ペレットをポリテトラフルオロエチレンシートの間に置いて、190℃、55psi(380kPa)で3分間、次に1.3MPaで3分間、さらに2.6MPaで3分間加熱する。次に、そのフィルムを、1.3Mpaで1分間、冷水を流しながらプレス中で冷却する。この圧縮成形フィルムを、光学的測定、引張挙動、回復および応力緩和に使用する。
【0180】
透明度をBYK Gardner Haze−gardを用いてASTM D1746で指定されているように測定する。
【0181】
45°光沢(gloss)を、BYK Gardner Glossmeter Microgloss 45°を用いて、ASTM D−2457で指定されているように測定する。
【0182】
内部曇り(internal haze)を、BYK Gardner Haze−gardを使用し、ASTM D1003 Procedure Aに基づいて測定する。鉱油をフィルム表面に塗布して、表面の掻き傷を除去する。
【0183】
機械的特性−引張、ヒステリシス、および引裂
ASTM D1708微小引張試験片(microtensile specimens)を用いて単軸張力下で応力−ひずみ挙動を測定する。Instronを使用し、21℃で、毎分500%の割合で、サンプルを延伸する。5つの試験片の平均から引張強さおよび破断点伸度を報告する。
【0184】
100%および300%ヒステリシスは、ASTM D1708微小引張試験片とInstron(商標)機器とを用いて、100%および300%ひずみまでのサイクル式荷重から決定される。サンプルに、21℃で3サイクルにわたって、毎分267%の割合で荷重の負荷および除荷を行う。300%および80℃でのサイクル式実験は環境チャンバを用いて行う。80℃の実験では、サンプルを試験温度で45分間平衡化させてから、試験を行う。21℃、300%ひずみのサイクル式実験では、1回目の除荷サイクルから150%ひずみ時の収縮応力を記録する。回復パーセントは、全ての実験について、1回目の除荷サイクルから、荷重がベースラインに戻った時のひずみを用いて算出する。回復パーセントは以下のように定義される:
【数3】

【0185】
式中、εはサイクル式荷重で採用したひずみであり、εは1回目の除荷サイクルの間に荷重がベースラインに戻る時のひずみである。
【0186】
応力緩和を、環境チャンバを装備したInstron(商標)機器を用いて、50パーセントひずみおよび37℃で12時間にわたって測定する。ゲージの形状寸法は76mm×25mm×0.4mmとした。環境チャンバ中、37℃で、45分間平衡させた後、サンプルを毎分333%の割合で50%ひずみまで延伸した。応力を時間の関数として12時間にわたって記録した。式:
【数4】

[式中、Lは、時刻0における50%ひずみ時の荷重であり、L12は12時間後の50%ひずみ時の荷重である]
を用いて、12時間後の応力緩和パーセントを算出した。
【0187】
引張切込み付引裂実験(tensile notched tear experiments)は、Instron(商標)機器を用いて、0.88g/cc以下の密度を有するサンプルで行う。形状寸法は、76mm×13mm×0.4mmのゲージ片から成り、このサンプルにはその試験片の長さの半分の位置に2mmの切込みが入っている。サンプルが破損するまで、21℃で毎分508mmの割合でサンプルを延伸する。最大荷重時のひずみまでの応力−伸長曲線下面積として、引裂エネルギーを算出する。少なくとも3つの試験片の平均を報告する。
【0188】
TMA
熱機械分析(針入温度)は、180℃および10MPaの成形圧で5分間形成した後、送風急冷した、直径30mm×厚み3.3mmの圧縮成形ディスクで行う。使用する機器は、Perkin−Elmerから入手可能なブランド、TMA7である。この試験では、半径1.5mmのチップを有するプローブ(P/N N519−0416)を、1Nの力で、サンプルディスクの表面に適用する。温度を25℃から5℃/分の速度で上昇させる。プローブ針入距離を温度の関数として測定する。この実験はプローブがサンプルに1mm針入した時点で終了する。
【0189】
DMA
動的機械分析(DMA)の測定は、ホットプレス中、180℃、10MPaの圧力で5分間にわたって形成させた後、そのプレス中に90℃/分で水冷した圧縮成形ディスクで行う。試験は、ねじり試験のための二重カンチレバー固定具を装備したARES制御ひずみレオメーター(TA instruments)を用いて行う。
【0190】
1.5mmプラックをプレスし、32×12mmの寸法を有するバーに切断する。そのサンプルを10mm(グリップ間隔ΔL)離れた固定具の間に両端でクランプし、−100℃から200℃までの逐次的温度ステップ(1ステップあたり5℃)に供する。各温度でねじり弾性率G’を、10rad/sの角周波数で測定し、トルクが十分であること、および測定値が線形領域に留まることを保証するために、ひずみ振幅を0.1パーセント〜4パーセントの間に維持する。
【0191】
10gという最初の静的力を維持して(自動張力モード)、熱膨張が生じた時のサンプルの緩みを防ぐ。結果として、グリップ間隔ΔLは、温度と共に(ポリマーサンプルの融点または軟化点より上では特に)増加する。試験は、最大温度か、または固定具の間の隙間が65mmに達した時に終了する。
【0192】
メルトインデックス
メルトインデックス、すなわちIは、ASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従って測定される。メルトインデックス、すなわちI10も、ASTM D1238、条件190℃/10kgに従って測定される。
【0193】
ATREF
分析的昇温溶離分別(ATREF)分析は、米国特許第4,798,081号およびWilde, L.;Ryle, T.R.;Knobeloch, D.C.;Peat, I.R.「Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymer」J. Polym.Sci., 20, 441-455 (1982)に記載の方法に従って行われ、これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。分析しようとする組成物をトリクロロベンゼンに溶解し、0.1℃/分の冷却速度で、温度を20℃までゆっくり下げることにより、不活性支持体(ステンレス鋼ショット)を収容するカラム中で結晶させる。このカラムには赤外線検出器が装備される。次に、溶出溶媒(トリクロロベンゼン)の温度を1.5℃/分の速度で20℃から120℃までゆっくり上昇させて、結晶化したポリマーサンプルをカラムから溶出させることにより、ATREFクロマトグラム曲線を生成する。
【0194】
13C NMR分析
0.4gのサンプルに対して、約3gの、テトラクロロエタン−d/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物を加えることにより、10mmのNMRチューブにサンプルを調製する。チューブおよびその内容物を150℃に加熱することにより、サンプルを溶解し、均質化する。100.5MHzの13C共鳴周波数に相当するJEOL Eclipse(商標)400MHz分光計またはVarian Unity Plus(商標)400MHz分光計を用いて、データを収集する。6秒のパルス繰り返し時間遅延で、1データファイルあたり4000の減衰シグナルを用いて、データを取得する。定量分析用に最低限のシグナル対ノイズ比を達成するために、複数のデータファイルを足し合わせる。スペクトル幅は25,000Hz、最小ファイルサイズは32Kデータポイントである。このサンプルを、10mm広帯域プローブ中、130℃で分析する。Randallのトライアッド法(Randall, J.C.;JMS-Rev. Macromol. Chem. Phys., C29, 201-317 (1989);この文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)を用いて、コモノマーの取り込みを決定する。
【0195】
TREFによるポリマー分画
大規模なTREF分画は、15〜20gのポリマーを、160℃で4時間の攪拌により、2リットルの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)に溶解することによって行う。30〜40メッシュ(600〜425μm)の球状工業用ガラスビーズ(Potters Industries(76801テキサス州ブラウンウッドHC30 Box20)から入手可能)とステンレス鋼製の直径0.028”(0.7mm)のカットワイヤショット(Pellets,Inc.(14120ニューヨーク州ノーストナワンダ、インダストリアルドライブ63)から入手可能)との60:40(v:v)混合物を充填した3インチ×4フィート(7.6cm×12cm)のスチールカラムに、ポリマー溶液を15psig(100kPa)の窒素によって圧入する。このカラムを160℃に初期設定された熱制御オイルジャケットに浸漬する。このカラムを、まず、125℃まで弾道線状に(ballistically)冷却し、次に毎分0.04℃の速度で20℃までゆっくりと冷却して、1時間保持する。温度を毎分0.167℃の速度で上昇させながら、約65ml/分の速度で、新鮮なTCBを導入する。
【0196】
分取TREFカラムからの溶離液を約2000mLずつ、16ステーション加熱フラクションコレクターで収集する。各画分のポリマーを、約50〜100mlのポリマー溶液が残るまで、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮する。その濃縮溶液を一晩静置してから、過剰のメタノールを加え、濾過し、洗浄する(最終の洗浄を含めて約300〜500mlのメタノール)。濾過ステップは、3位置真空利用濾過ステーション(3 position vacuum assisted filtering station)で、5.0μmポリテトラフルオロエチレンコート濾紙(Osmonics Inc.から入手可能、カタログ番号Z50WP04750)を用いて行う。濾過された画分を60℃の真空オーブンで一晩乾燥し、さらなる試験に先だって、化学天秤で秤量する。
【0197】
溶融強度
溶融強度(MS)は、約45度の流入角で直径2.1mmの20:1ダイを装着したキャピラリーレオメータを用いて測定する。サンプルを190℃で10分間平衡化した後、ピストンを1インチ/分(2.54cm/分)の速度で動かす。標準試験温度は190℃である。サンプルを、2.4mm/秒の加速度で、ダイの100mm下に配置した一組の加速ニップに、単軸上に引っ張る。必要な引張力をニップロールの巻き取り速度の関数として記録する。試験中に達成される最大引張力を溶融強度と定義する。巻引取共振を示すポリマー溶融物の場合は、巻取共振が発生する前の引張力を溶融強度とした。溶融強度をセンチニュートン(「cN」)の単位で記録する。
【0198】
触媒
「一晩」という用語を使用する場合、これは、約16〜18時間の時間を指し、「室温」とは20〜25℃の温度を指し、そして「混合アルカン」という用語は、Exxon Mobil Chemical CompanyからIsopar E(登録商標)という商品名で入手することができるC6−9脂肪族炭化水素の市販混合物をいう。本明細書において化合物の名称がその構造図と合致しない場合には、構造図が優先するものとする。全ての金属錯体の合成および全てのスクリーニング実験の準備は、ドライボックス技術を用いて乾燥窒素雰囲気下で行った。使用した溶媒は全てHPLCグレードであり、使用前に乾燥させた。
【0199】
MMAOとは、修飾メチルアルモキサン、Akzo−Noble Corporationから市販されているトリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサンをいう。
【0200】
触媒(B1)の調製は以下のように行う。
a)(1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)メチルイミンの調製
3,5−ジ−t−ブチルサリチルアルデヒド(3.00g)を10mLのイソプロピルアミンに加える。この溶液は急速に鮮黄色に変わる。周囲温度で3時間攪拌した後、揮発性物質を減圧下で除去することにより、鮮黄色の結晶性固体を得る(収率97パーセント)。
b)1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルの調製
5mLのトルエンに溶解した(1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(605mg、2.2ミリモル)を、50mLのトルエンに溶解したZr(CHPh)(500mg、1.1mmol)にゆっくり加える。得られた暗黄色溶液を30分間攪拌する。溶媒を減圧下で除去することにより、所望の生成物を赤褐色固体として得る。
【0201】
触媒(B2)の調製は以下のように行う。
a)(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミンの調製
2−メチルシクロヘキシルアミン(8.44mL、64.0mmol)をメタノール(90mL)に溶解し、ジ−t−ブチルサリチルアルデヒド(10.00g、42.67mmol)を加える。その反応混合物を3時間攪拌してから、12時間、−25℃に冷却する。得られた黄色固体沈殿物を濾過によって集め、冷メタノール(15mL×2)で洗浄した後、減圧下で乾燥する。収量は11.17gの黄色固体である。H NMRは、異性体の混合物としての所望の生成物と合致する。
b)ビス−(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミノ)ジルコニウムジベンジルの調製
200mLのトルエンに溶解した(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(7.63g、23.2mmol)の溶液を、600mLのトルエンに溶解したZr(CHPh)(5.28g、11.6mmol)の溶液に、ゆっくり加える。得られた暗黄色溶液を25℃で1時間攪拌する。溶液を680mLのトルエンでさらに希釈することにより、0.00783Mの濃度を有する溶液を得る。
【0202】
共触媒1
実質的に米国特許第5,919,9883号の実施例2に開示されているように、長鎖トリアルキルアミン(Armeen(商標)M2HT、Akzo−Nobel,Incから入手することができる)、HClおよびLi[B(C]の反応によって調製される、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのメチルジ(C14−18アルキル)アンモニウム塩の混合物(以下、ホウ酸アーミーニウム(armeenium borate)という)。
【0203】
共触媒2
米国特許第6,395,671号の実施例16に従って調製される、ビス(トリス(ペンタフルオロフェニル)−アルマン(alumane))−2−ウンデシルイミダゾリドの混合C14−18アルキルジメチルアンモニウム塩。
【0204】
可逆的移動剤
使用される可逆的移動剤として、ジエチル亜鉛(DEZ、SA1)、ジ(i−ブチル)亜鉛(SA2)、ジ(n−ヘキシル)亜鉛(SA3)、トリエチルアルミニウム(TEA,SA4)、トリオクチルアルミニウム(SA5)、トリエチルガリウム(SA6)、i−ブチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)(SA7)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)(SA8)、n−オクチルアルミニウムジ(ピリジン−2−メトキシド)(SA9)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム(SA10)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(n−ペンチル)アミド)(SA11)、n−オクチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)(SA12)、n−オクチルアルミニウムジ(エチル(1−ナフチル)アミド)(SA13)、エチルアルミニウムビス(t−ブチルジメチルシロキシド)(SA14)、エチルアルミニウムジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)(SA15)、エチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA16)、n−オクチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA17)、n−オクチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド(SA18)、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)(SA19)およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)(SA20)が挙げられる。
【0205】
実施例1〜4、比較例A〜C
一般的なハイスループットパラレル重合条件
重合は、Symyx technologies,Inc.から入手することができるハイスループットパラレル重合反応装置(PPR)を用いて行い、実質的に米国特許第6,248,540号、同第6,030,917号、同第6,362,309号、同第6,306,658号、および同第6,316,663号に従って操作する。エチレン共重合は、使用する総触媒量を基準にして1.2当量(MMAOが存在する場合は1.1当量)の共触媒1を使用し、要求に応じてエチレンを用いて、130℃および200psi(1.4MPa)で行う。一連の重合は、秤量済のガラスチューブが装着された6×8配置の48個の個別反応装置セルから構成されるパラレル耐圧反応装置(PPR)で行われる。各反応装置セル中の作業容積は6000μLである。各セルは、温度および圧力が制御され、個別の攪拌パドルによって攪拌される。モノマーガスおよびクエンチガスは、PPRユニットに直接配管し、自動弁で制御する。液体試薬を、シリンジにより、各反応装置セルにロボットを用いて加え、リザーバー溶媒を混合アルカンとする。添加の順序は、混合アルカン溶媒(4ml)、エチレン、1−オクテンコモノマー(1ml)、共触媒1または共触媒1/MMAO混合物、可逆的移動剤、および触媒または触媒混合物である。共触媒1およびMMAOの混合物または2つの触媒の混合物を使用する場合は、それらの試薬を、反応装置への添加の直前に小さいバイアル中で前もって混合する。ある実験で、ある試薬を省略する場合、その他については、上記の添加順序を維持する。重合は、所定のエチレン消費量に達するまで、約1〜2分間行う。COでクエンチした後、反応装置を冷却し、ガラスチューブを取り外す。そのチューブを遠心分離/真空乾燥ユニットに移し、60℃で12時間乾燥する。乾燥ポリマーを含有するチューブを秤量すれば、その重量と風袋重量との相違によって、ポリマーの正味の収量が得られる。結果を表2に示す。表2および本願の他の部分では、比較化合物を星印()で示す。
【0206】
実施例1〜4は本発明による線状ブロックコポリマーの合成を実証しており、極めて狭いMWDの形成、特にDEZが存在する場合の単峰性コポリマー、およびDEZが存在しない場合の二峰性広分子量分布生成物(別々に生成したポリマーの混合物)によって明らかにされるとおりである。触媒(A1)は触媒(B1)よりも多くのオクテンを組み込むことがわかっているという事実ゆえに、結果として得られる本発明のコポリマーの異なるブロックまたはセグメントは、分岐または密度に基づいて区別することができる。
【表2】

【0207】
本発明に従って製造されるポリマーは、可逆的移動剤の不在下で調製したポリマーよりも、比較的狭い多分散性(Mw/Mn)および比較的大きいブロック−コポリマー含量(三量体、四量体またはそれ以上)を有することが認めることができる。
【0208】
図を参照することによって、表2のポリマーを特徴付けるさらなるデータが特定される。より具体的に述べると、DSCおよびATREFの結果により、以下の事項が示される。
【0209】
実施例1のポリマーに関するDSC曲線は、115.7℃の融点(Tm)のピークと158.1J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、34.5℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は52.9パーセントである。DSC TmとTcrystafとの差は81.2℃である。
【0210】
実施例2のポリマーに関するDSC曲線は、109.7℃の融点(Tm)と214.0J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、46.2℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は57.0パーセントである。DSC TmとTcrystafとの差は63.5℃である。
【0211】
実施例3のポリマーに関するDSC曲線は、120.7℃の融点(Tm)を有するピークと160.1J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、66.1℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は71.8パーセントである。DSC TmとTcrystafとの差は54.6℃である。
【0212】
実施例4のポリマーに関するDSC曲線は、104.5℃の融点(Tm)を有するピークと170.7J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は18.2パーセントである。DSC TmとTcrystafとの差は74.5℃である。
【0213】
比較例Aに関するDSC曲線は、90.0℃の融点(Tm)と86.7J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、48.5℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は29.4パーセントである。これらの値はいずれも、密度の低い樹脂と合致する。DSC TmとTcrystafとの差は41.8℃である。
【0214】
比較例Bに関するDSC曲線は、129.8℃の融点(Tm)と237.0J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、82.4℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は83.7パーセントである。これらの値はいずれも、密度の高い樹脂と合致する。DSC TmとTcrystafとの差は47.4℃である。
【0215】
比較例Cに関するDSC曲線は、125.3℃の融点(Tm)と143.0J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、81.8℃に、34.7パーセントのピーク面積を有する最も高いピークを示すと共に、52.4℃にも、それより低い結晶ピークを示す。これら2つのピーク間の隔たりは、高結晶性ポリマーおよび低結晶性ポリマーの存在と合致する。DSC TmとTcrystafとの差は43.5℃である。
【0216】
実施例5〜19、比較例D〜F、連続溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
連続溶液重合は、内部スターラーを装備したコンピュータ制御のオートクレーブ反応装置で行う。精製混合アルカン溶媒(ExxonMobil Chemical Companyから入手することができるIsopar(商標)E)、2.70lbs/時間(1.22kg/時間)のエチレン、1−オクテンおよび水素(使用する場合)を、温度制御用のジャケットおよび内部熱電対を装備した3.8L反応装置に供給する。反応装置への溶媒供給量はマスフローコントローラーによって測定する。可変速ダイヤフラムポンプによって溶媒流量および反応装置への圧力を制御する。ポンプの排出部位で側流をとって、触媒および共触媒1注入ライン用ならびに反応装置攪拌機用のフラッシュフローを設ける。これらのフローは、Micro−Motionマスフローメーターによって測定し、制御弁によって、またはニードル弁の手動調節によって制御する。残りの溶媒は、1−オクテン、エチレン、および水素(使用する場合)と合わせて、反応装置に供給する。マスフローコントローラーを用いて、必要に応じて反応装置に水素を供給する。溶媒/モノマー溶液の温度は、反応装置に入る前に、熱交換器を用いて制御する。この流れを反応装置の底に入れる。触媒成分溶液を、ポンプおよびマスフローメーターを用いて計量供給し、触媒フラッシュ溶媒と合わせて、反応装置の底に入れる。反応装置を激しく攪拌しながら500psig(3.45MPa)で液体が充満した状態で運転する。生成物を反応装置の頂部にある出口ラインから取り出す。反応装置からの全ての出口ラインに蒸気トレースおよび絶縁を施す。任意の安定化剤または他の添加剤と共に出口ラインに少量の水を加えること、およびその混合物を静的ミキサーに通すことによって、反応を停止させる。次に、生成物の流れを、揮発物除去に先立ち、熱交換器に通すことによって加熱する。揮発物除去押出機および水冷ペレタイザーを用いた押出によって、ポリマー生成物を回収する。プロセスの詳細および結果を表3に示す。選択したポリマーの性質を表4に記載する。
【表3】

【表4】

【0217】
得られたポリマーを、先の実施例と同様に、DSCおよびATREFFで試験する。結果は次のとおりである。
【0218】
実施例5のポリマーに関するDSC曲線は、119.6℃の融点(Tm)を有するピークと60.0J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、47.6℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は59.5パーセントである。DSC TmとTcrystafの間のΔは72.0℃である。
【0219】
実施例6のポリマーに関するDSC曲線は、115.2℃の融点(Tm)を有するピークと60.4J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、44.2℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は62.7パーセントである。DSC TmとTcrystafの間のΔは71.0℃である。
【0220】
実施例7のポリマーに関するDSC曲線は、121.3℃の融点を有するピークと69.1J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、49.2℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は29.4パーセントである。DSC TmとTcrystafの間のΔは72.1℃である。
【0221】
実施例8のポリマーに関するDSC曲線は、123.5℃の融点(Tm)を有するピークと67.9J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、80.1℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は12.7パーセントである。DSC TmとTcrystafの間のΔは43.4℃である。
【0222】
実施例9のポリマーに関するDSC曲線は、124.6℃の融点(Tm)を有するピークと73.5J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、80.8℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は16.0パーセントである。DSC TmとTcrystafの間のΔは43.8℃である。
【0223】
実施例10のポリマーに関するDSC曲線は、115.6℃の融点(Tm)を有するピークと60.7J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、40.9℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は52.4パーセントである。DSC TmとTcrystafの間のΔは74.7℃である。
【0224】
実施例11のポリマーに関するDSC曲線は、113.6℃の融点(Tm)を有するピークと70.4J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、39.6℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は25.2パーセントである。DSC TmとTcrystafの間のΔは74.1℃である。
【0225】
実施例12のポリマーに関するDSC曲線は、113.2℃の融点(Tm)を有するピークと48.9J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃以上にピークを示さない。(そこで、以後の計算では、Tcystafを30℃に設定する)。DSC TmとTcrystafの間のΔは83.2℃である。
【0226】
実施例13のポリマーに関するDSC曲線は、114.4℃の融点(Tm)を有するピークと49.4J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、33.8℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は7.7パーセントである。DSC TmとTcrystafの間のΔは84.4℃である。
【0227】
実施例14のポリマーに関するDSC曲線は、120.8℃の融点(Tm)を有するピークと127.9J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、72.9℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は92.2パーセントである。DSC TmとTcrystafの間のΔは47.9℃である。
【0228】
実施例15のポリマーに関するDSC曲線は、114.3℃の融点(Tm)を有するピークと36.2J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、32.3℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は9.8パーセントである。DSC TmとTcrystafの間のΔは82.0℃である。
【0229】
実施例16のポリマーに関するDSC曲線は、116.6℃の融点(Tm)を有するピークと44.9J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、48.0℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は65.0パーセントである。DSC TmとTcrystafの間のΔは68.6℃である。
【0230】
実施例17のポリマーに関するDSC曲線は、116.0℃の融点(Tm)を有するピークと47.0J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、43.1℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は56.8パーセントである。DSC TmとTcrystafの間のΔは72.9℃である。
【0231】
実施例18のポリマーに関するDSC曲線は、120.5℃の融点(Tm)を有するピークと141.8J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、70.0℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は94.0パーセントである。DSC TmとTcrystafの間のΔは50.5℃である。
【0232】
実施例19のポリマーに関するDSC曲線は、124.8℃の融点(Tm)を有するピークと174.8J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、79.9℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は87.9パーセントである。DSC TmとTcrystafの間のΔは45.0℃である。
【0233】
比較例Dのポリマーに関するDSC曲線は、37.3℃の融点(Tm)を有するピークと31.6J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃以上にピークを示さない。これらの値はいずれも密度の低い樹脂と合致する。DSC TmとTcrystafの間のΔは7.3℃である。
【0234】
比較例Eのポリマーに関するDSC曲線は、124.0℃の融点(Tm)を有するピークと179.3J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、79.3℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は94.6パーセントである。これらの値はいずれも、密度の高い樹脂と合致する。DSC TmとTcrystafの間のΔは44.6℃である。
【0235】
比較例Fのポリマーに関するDSC曲線は、124.8℃の融点(Tm)を有するピークと90.4J/gの融解熱を示す。対応するCRYSTAF曲線は、77.6℃に最も高いピークを示し、そのピーク面積は19.5パーセントである。2つのピークの間の隔たりは、高結晶性ポリマーおよび低結晶性ポリマーの両方の存在と合致する。DSC TmとTcrystafの間のΔは47.2℃である。
【0236】
物理的特性の試験
ポリマーサンプルを、物理的特性、例えばTMA温度試験によって証明される高温耐性、ペレットブロックキング強度、高温回復率、高温圧縮永久ひずみおよび貯蔵弾性率比G’(25℃)/G’(100℃)などについて評価する。試験にはいくつかの市販ポリマーを含める。比較例Gは、実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(The Dow Chemical Companyから入手することができるAFFINITY(登録商標)KC8852G)であり、比較例Hは、エラストマーであって実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(The Dow Chemical Companyから入手することができるAFFINITY(登録商標)EG8100)であり、比較例Iは、実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(The Dow Chemical Companyから入手することができるAFFINITY(登録商標)PL1840)であり、比較例Jは、水素化スチレン/ブタジエン/スチレントリブロックコポリマー(KRATON(商標) Polymersから入手することができるKRATON(商標)G1652)であり、比較例Kは熱可塑性加硫物(TPV,架橋されたエラストマーをその中に分散して含有するポリオレフィンブレンド)である。結果を表5に記載する。
【表5】

【0237】
表5において、比較例F(触媒A1およびB1を用いる同時重合によって得られる2つのポリマーの物理的ブレンドである)は約70℃の1mm針入温度を有するが、実施例5〜9は100℃以上の1mm針入温度を有する。さらに、実施例10〜19は全てが、85℃より高い1mm針入温度を有し、その大部分が、90℃を上回るかさらには100℃より高い1mm TMA温度を有する。これは、本新規ポリマーが、物理的ブレンドと比較して、より高い温度でより良い寸法安定性を有することを示している。比較例J(市販のSEBS)は、約107℃という良好な1mm TMA温度を有するが、これは約100パーセントという極めて不良な(高温70℃)圧縮永久ひずみを有し、そしてまた、高温(80℃)300パーセントひずみ回復に際して回復することができなかった(サンプルが破損した)。このように、ここに例示したポリマーは、市販されている一部の高性能熱可塑性エラストマーでさえ得ることのできない固有の性質の組み合わせを有する。
【0238】
同様に表5は、本発明のポリマーについて6以下という低い(良好な)貯蔵弾性率比G’(25℃)/G’(100℃)を示しているが、物理的ブレンド(比較例F)は9という貯蔵弾性率比を有し、よく似た密度のランダムエチレン/オクテンコポリマー(比較例G)は1桁大きい貯蔵弾性率比(89)を有する。ポリマーの貯蔵弾性率比は可能な限り1に近いことが望ましい。そのようなポリマーは温度による影響を比較的受けにくく、そのようなポリマーから作製される加工品は、広い温度範囲にわたって有益に使用することができる。低い貯蔵弾性率比および温度非依存性というこの特徴は、エラストマー用途において、例えば感圧粘着剤調合物などにおいて、とりわけ有用である。
【0239】
表5のデータは、本発明のポリマーがペレットブロック化強度の改善を有することも実証している。特に実施例5は0MPaというペレットブロック化強度を有し、このことは、このポリマーが、かなりのブロック化を示す比較例Fおよび比較例Gと比較して、試験された条件下で易流動性であることを意味する。ブロック化強度は重要である。なぜなら、大きいブロック化強度を有するポリマーのバルク輸送では、貯蔵または出荷(shipping)時に製品同士が互いに凝集または粘着して、取扱適性の劣化をもたらす場合があるからである。
【0240】
本発明のポリマーの場合、高温(70℃)圧縮永久ひずみは一般的に良好であり、一般的に約80パーセント未満、好ましくは約70%未満、特に約60パーセント未満であることを意味する。対照的に、比較例F、G、HおよびJは全て、100パーセントの70℃圧縮永久ひずみを有する(回復がないことを示す最大可能値)。例えばガスケット、窓枠、O−リングなどの用途には、良好な高温圧縮永久ひずみ(低い数値)が、特に要求される。
【表6】

【0241】
表6に、本新規ポリマーおよび種々の比較ポリマーについて、周囲温度における機械的特性に関する結果を示す。本発明のポリマーは、ISO4649に従って試験した場合に極めて良好な耐磨耗性を有し、一般的に約90mm未満、好ましくは約80mm未満、特に約50mm未満の容積減少を示すことを認めることができる。この試験では、大きい数字ほど、大きい容積減少を示し、したがって低い耐磨耗性を示す。
【0242】
本発明のポリマーの引張切込み付引裂強さによって測定される引裂強さは、表6に示すとおり、一般的に1000mJ以上である。本発明のポリマーの引裂強さは、3000mJもの高さ、さらには5000mJもの高さになる場合もある。比較ポリマーは一般的に750mJ以下の引裂強さを有する。
【0243】
表6は、本発明のポリマーが、比較対象となるサンプルの一部よりも良好な150パーセントひずみ時の収縮応力を有する(より高い収縮応力値によって実証される)ことも示している。比較例F、GおよびHは、400kPa以下という150パーセントひずみ時の収縮応力値を有するが、本発明のポリマーは500kPa(実施例11)から約1100kPa(実施例17)もの高さの150パーセントひずみ時の収縮応力値を有する。より高い150パーセント収縮応力値を有するポリマーは、弾性用途、例えば弾性繊維および弾性布、特に不織布などにとって、極めて有用であるだろう。他の用途には、オムツ用、衛生用および医療用の衣類ウエストバンド用途、例えばタブおよび弾性バンドなどが挙げられる。
【0244】
さらに表6は、本発明のポリマーでは応力緩和(50パーセントひずみ時)も、例えば比較例Gと比較して改善される(少ない)ことを示している。応力緩和が少ないということは、体温での長期間にわたる弾性の維持が望まれるオムツおよび他の衣類などの用途において、本ポリマーが、その力をより良く保つということを意味する。
【0245】
光学的試験
【表7】

【0246】
表7に報告する光学的特性は、実質的に配向性を欠く圧縮成形フィルムに基づく。ポリマーの光学的特性は、重合時に使用する可逆的連鎖移動剤の量の変化がもたらすクリスタリットサイズの変化ゆえに、広い範囲にわたって変化しうる。
【0247】
マルチブロックコポリマーの抽出
実施例5、7のポリマーおよび比較例Eのポリマーの抽出研究を行う。この実験では、ポリマーサンプルをガラスフリット付円筒濾過器(glass fritted extraction thimble)に秤量し、Kumagawa型抽出機に装着する。サンプルを含む抽出機を窒素でパージし、500mL丸底フラスコに350mLのジエチルエーテルを投入する。次に、そのフラスコを、抽出機に装着する。エーテルを攪拌しながら加熱する。エーテルが円筒濾過器に凝縮し始める時刻を書き留め、抽出を窒素下で24時間進行させる。この時点で、加熱を停止し、溶液を冷ます。抽出機中に残っている全てのエーテルをフラスコに戻す。フラスコ中のエーテルを周囲温度、減圧下で蒸発させ、得られた固体を窒素でパージ乾燥(purged dry)する。残渣を、ヘキサンの逐次洗浄を用いて、秤量済のボトルに移す。次に、合わせたヘキサン洗浄液を、再び窒素パージで蒸発させ、残渣を40℃で一晩、減圧乾燥する。抽出機中の残留エーテルを全て窒素でパージ乾燥する。
【0248】
次に、350mLのヘキサンを投入した第二の清浄な丸底フラスコを、抽出機に接続する。ヘキサンを、攪拌しながら加熱還流し、ヘキサンが円筒濾過器中に凝縮するのを初めて認めてから24時間にわたって、還流状態に保つ。次に、加熱を停止し、フラスコを冷ます。抽出機に残っているヘキサンを全てフラスコに戻す。そのヘキサンを周囲温度、減圧下での蒸発によって除去し、フラスコに残っている残渣を全て、逐次的ヘキサン洗浄によって秤量済のボトルに移す。フラスコ中のヘキサンを窒素パージによって蒸発させ、残渣を40℃で一晩、減圧乾燥する。
【0249】
抽出後に円筒濾過器中に残っているポリマーサンプルを、円筒濾過器から秤量済のボトルに移し、40℃で一晩、減圧乾燥する。結果を表8に示す。
【表8−1】

さらなるポリマー実施例19A〜F、連続溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
コンピュータ制御のよく混合される反応装置で連続溶液重合を行う。精製混合アルカン溶媒(Exxon Mobil Chemical Companyから入手することができるIsopar(商標)E)、エチレン、1−オクテンおよび水素(使用する場合)を組み合わせて、27ガロン反応装置に供給する。反応装置への供給量はマスフローコントローラーによって測定する。供給流の温度は、反応装置に入る前に、グリコール冷却式熱交換器を用いて制御する。触媒成分溶液はポンプおよびマスフローメーターを用いて計量供給する。反応装置を約550psigの圧力で液体が充満した状態で反応させる。反応装置から出た時点で、水および添加剤をポリマー溶液に注入する。水が触媒を加水分解して、重合反応を停止させる。次に、二段階の揮発物除去に備えて、反応装置後の溶液を加熱する。溶媒および未反応のモノマーは揮発物除去プロセス中に取り除かれる。水中ペレット切断を行うために、ポリマー溶融物をダイにポンプで送出する。
プロセスの詳細および結果を表8aに示す。選択したポリマーの性質を表9aに記載する。
【表8−2】

【表9】

【0250】
本発明の実施例1は、本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体(EAO1)を含有する熱可塑性加硫物(TPV)コンパウンドである。成分および量を表10に列挙する。比較例Aは、本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体を含有しないTPVコンパウンドである。その成分および量も表10に列挙する。
【表10】

【0251】
本発明のEAOは、77重量%のコンポジット(composite)1−オクテン含量、0.854g/ccの密度、105℃のDSCピーク融点、10.6J/gの融解熱、73℃のATREF結晶化温度、188,254g/モルの数平均分子量、329,600g/モルの重量平均分子量、1.0dg/分のメルトインデックス(190℃、2.16Kg)、および37.0dg/分のメルトインデックス(190℃、10Kg)を有する、エチレン/1−オクテンオレフィンブロックコポリマーである。
【0252】
EPDMは、125℃で70のムーニー粘度(ML1+4)、70重量%のエチレン含量、および5重量%のエチリデンノルボルネン含量を有するエチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネンターポリマーである。ポリプロピレンは、1.0dg/分のメルトフローインデックス(230℃、2.16Kg)を有する汎用ホモポリマーである。エキステンダー油は、パラフィン精製石油系プロセス油である。酸化防止剤は高分子量フェノール系一次酸化防止剤とホスファイト二次酸化防止剤との1:1ブレンドである。
【0253】
熱可塑性加硫物は、190℃に加熱した310cc容量のバッチミキサーにEPDM、EAO1、およびポリプロピレンを投入することによって製造される。ローター速度を30rpmに設定する。2分後に、酸化防止剤および酸化ポリエチレンワックスを加える。次に、この混合物に油をゆっくり加える。次に、その混合物にメチロールフェノール系硬化樹脂を加えて、そのバッチに混和させる。次に、ローター速度を75rpmに上げてから、塩化第一スズを加える。この時点でゴム部分が架橋を受ける。次に、混合物をさらに5ヶ月間混和させる。次に、ローターを停止し、ミキサーから混合物を取り出し、粗製プラックへの圧縮成形を経て冷却する。190℃で15cm×25cm×1.5mmに圧縮成形した後、圧縮下で冷却することにより、完成プラックを製造する。
【0254】
これらのTPVをASTM D412に従って引張特性について試験する。本発明の実施例1の引張特性は、比較例Aよりも有意に高い。
【0255】
上述のように、本発明の実施形態は、有用な物品を作製するための押出および成形に適した種々のTPV組成物を提供する。それらの製品は、良好な圧縮永久ひずみ、引張永久ひずみ、より高い使用温度、より高い引張強さ、伸び率、引裂抵抗、掻き傷/擦傷、摩耗、より良い動的負荷特性、および/または耐油性を有する。さらなる利点および特徴は当業者には明白である。
【0256】
本発明を限られた数の実施形態について説明したが、ある実施形態の具体的特徴が、本発明の他の実施形態に帰属されるべきではない。本発明の全ての態様を代表する単一の実施形態はない。ある実施形態では、組成物または方法が、本明細書では言及していない数多くの化合物またはステップを含みうる。別の実施形態では、本組成物または本方法は、本明細書に列挙されていない化合物もステップも含まないか、実質的に含まない。ここに記述した実施形態からの変形および変更態様が存在する。最後に、本明細書に開示する数字は、その数字を説明する際に「約」または「およそ」という単語を使用するかどうかにかかわらず、いずれも概数を意味するとみなす必要がある。添付の特許請求の範囲は、これらの変更態様および変形の全てを、それらが本発明の範囲にあるものとして、包含するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)加硫性エラストマー;
(ii)熱可塑性ポリオレフィン;
(iii)架橋剤;および
(iv)エチレン/α−オレフィン共重合体
を含むか、または該(i)、(ii)、(iii)および(iv)を含む反応混合物から得ることができる熱可塑性加硫物であって、
ここで、該エチレン/α−オレフィン共重合体は:
(a)約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm)を有し、Tmおよびdの数値が、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)
という関係に合致するか;または
(b)約1.7〜約3.5のMw/Mnを有し、融解熱ΔH(J/g)、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの間の温度差と定義されるデルタ量ΔT(℃)によって特徴付けられ、ΔTおよびΔHの数値が以下の関係:
ゼロより大きくかつ130J/gまでのΔHについては、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81
130J/gより大きいΔHについては、ΔT≧48℃
を有し、ここで、該CRYSTAFピークは累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され、特定可能なCRYSTAFピークを有するのが該ポリマーの5パーセント未満である場合、該CRYSTAF温度を30℃とするか;または
(c)エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定される、300パーセントひずみおよび1サイクル時の弾性回復率Re(%)によって特徴付けられ、密度d(g/cm)を有し、該エチレン/α−オレフィン共重合体が架橋相を実質的に含まない場合、Reおよびdの数値が以下の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たすか;または
(d)TREFを用いて分画した場合に、40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、該分子画分が同じ温度の間で溶出する比較用ランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有することを特徴とし、ここで該比較用ランダムエチレン共重合体は、該エチレン/α−オレフィン共重合体と同じコモノマーを有し、かつ該エチレン/α−オレフィン共重合体の値から10パーセント内にあるメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体を基準にした値)を有するか;または
(e)25℃における貯蔵弾性率G’(25℃)および100℃における貯蔵弾性率G’(100℃)によって特徴付けられ、G’(25℃)対G’(100℃)の比が約1:1〜約10:1である、
熱可塑性加硫物。
【請求項2】
(i)加硫性エラストマー;
(ii)熱可塑性ポリオレフィン;
(iii)架橋剤:および
(iv)エチレン/α−オレフィン共重合体
を含むか、または該(i)、(ii)、(iii)および(iv)を含む反応混合物から得ることができる熱可塑性加硫物であって、
ここで、該エチレン/α−オレフィン共重合体は、
(a)TREFを用いて分画した場合に、40℃と130℃との間で溶出する少なくとも1つの分子画分を有し、該分子画分が、少なくとも0.5かつ約1までのブロックインデックスおよび約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とするか;または
(b)ゼロより大きくかつ約1.0までの平均ブロックインデックスおよび約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを特徴とする、
熱可塑性加硫物。
【請求項3】
(i)熱可塑性ポリオレフィン;
(iv)架橋剤;および
(iii)エチレン/α−オレフィン/ジエン共重合体である加硫性エラストマー
を含むか、または該(i)、(iv)および(iii)を含む反応混合物から得ることができる熱可塑性加硫物であって、
ここで、該エチレン/α−オレフィン/ジエン共重合体は:
(a)TREFを用いて分画した場合に、40℃と130℃との間で溶出する少なくとも1つの分子画分を有し、該分子画分が少なくとも0.5かつ約1までのブロックインデックスおよび約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする分子画分を有することを特徴とするか;または
(b)ゼロより大きくかつ約1.0までの平均ブロックインデックスおよび約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを特徴とする、
熱可塑性加硫物。
【請求項4】
(i)熱可塑性ポリオレフィン
(iv)架橋剤;および
(iii)エチレン/α−オレフィン/ジエン共重合体である加硫性エラストマー
を含むか、または該(i)、(iv)および(iii)を含む反応混合物から得ることができる熱可塑性加硫物であって、
ここで、該エチレン/α−オレフィン/ジエン共重合体は:
(a)約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm)を有し、Tmおよびdの数値が、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)
という関係に合致するか;または
(b)約1.7〜約3.5のMw/Mnを有し、融解熱ΔH(J/g)、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの間の温度差と定義されるデルタ量ΔT(℃)によって特徴付けられ、ΔTおよびΔHの数値が以下の関係:
ゼロより大きくかつ130J/gまでのΔHについては、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81
130J/gより大きいΔHについては、ΔT≧48℃
を有し、ここで、該CRYSTAFピークは累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され、特定可能なCRYSTAFピークを有するのが該ポリマーの5パーセント未満である場合、該CRYSTAF温度を30℃とするか;または
(c)共重合体の圧縮成形フィルムで測定される、300パーセントひずみおよび1サイクル時の弾性回復率Re(%)によって特徴付けられ、密度d(g/cm)を有し、該共重合体が架橋相を実質的に含まない場合、Reおよびdの数値が以下の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たすか;または
(d)TREFを用いて分画した場合に、40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、該分子画分が、同じ温度の間で溶出する比較用ランダム共重合体画分のコモノマーモル含量よりも少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量することを特徴とし、該比較用ランダム共重合体は、同じコモノマー、ならびに該共重合体の値から10パーセント内にあるメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体を基準にした値)を有するか;または
(e)25℃における貯蔵弾性率G’(25℃)および100℃における貯蔵弾性率G’(100℃)によって特徴付けられ、G’(25℃)対G’(100℃)の比が約1:1〜約10:1である、
熱可塑性加硫物。
【請求項5】
前記共重合体が、約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm)を有し、Tmおよびdの数値が、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)
という関係に合致する、請求項1、2、3、または4に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項6】
前記共重合体が、約1.7〜約3.5のMw/Mnを有し、融解熱ΔH(J/g)、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの間の温度差と定義されるデルタ量ΔT(℃)によって特徴付けられ、ΔTおよびΔHの数値が以下の関係:
ゼロより大きくかつ130J/gまでのΔHについては、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81
130J/gより大きいΔHについては、ΔT≧48℃
を有し、ここで、該CRYSTAFピークは累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され、特定可能なCRYSTAFピークを有するのが該ポリマーの5パーセント未満である場合には、該CRYSTAF温度を30℃とする、請求項1、2、3、または4に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項7】
前記共重合体が、該共重合体の圧縮成形フィルムで測定される、300パーセントひずみおよび1サイクルでの弾性回復率Re(%)によって特徴付けられ、密度d(g/cm)を有し、該共重合体が架橋相を実質的に含まない場合に、Reおよびdの数値が、以下の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たす、請求項1、2、3、または4に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項8】
Reおよびdの数値が、以下の関係:
Re>1491−1629(d)
を満たす、請求項7の熱可塑性加硫物。
【請求項9】
Reおよびdの数値が、以下の関係:
Re>1501−1629(d)
を満たす、請求項7の熱可塑性加硫物。
【請求項10】
Reおよびdの数値が、以下の関係:
Re>1511−1629(d)
を満たす、請求項7の熱可塑性加硫物。
【請求項11】
前記共重合体が、少なくとも0.5のブロックインデックスを有する少なくとも1つの分子画分および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを含む、請求項1、2、3、または4に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項12】
前記共重合体が、25℃における貯蔵弾性率G’(25℃)および100℃における貯蔵弾性率G’(100℃)によって特徴付けられ、G’(25℃)対G’(100℃)の比が約1:1〜約10:1である、請求項1、2、3、または4に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項13】
前記α−オレフィンがスチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン、またはそれらの組み合わせである、請求項1または2に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項14】
前記エチレン/α−オレフィン/ジエン共重合体がエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)コポリマーである、請求項3または4に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項15】
前記ジエンがノルボルネン、1,5−ヘキサジエン、またはそれらの組み合わせである、請求項14に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項16】
前記共重合体が、ASTM D-1238、条件190℃/2.16kgに従って測定した場合に約5〜約500g/10分の範囲のメルトインデックスを有する、請求項1、2、3、または4に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項17】
前記共重合体が、組成物全体の約5重量%〜約95重量%の範囲で存在する、請求項1、2、3、または4に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項18】
前記共重合体が、組成物全体の約5重量%〜約45重量%の範囲で存在する、請求項1、2、3、または4に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項19】
前記ポリオレフィンがホモポリマーである、請求項1、2、3、または4に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項20】
前記ポリオレフィンがポリプロピレンである、請求項1、2、3、または4に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項21】
前記ポリオレフィンがポリエチレンである、請求項1、2、3、または4に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項22】
前記加硫性エラストマーがエチレン−高級α−オレフィンコポリマーまたはターポリマーである、請求項1、2、3、または4に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の熱可塑性加硫物から作製される製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−28810(P2013−28810A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−185699(P2012−185699)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2008−502019(P2008−502019)の分割
【原出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】