説明

エッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物、エッチングマスク用ケイ素含有膜、及び、これを用いた基板加工中間体及び被加工基板の加工方法

【解決手段】被加工基板上に下層膜、その上にケイ素含有膜、更にその上にフォトレジスト膜を形成した後、多段階のエッチングを行う多層レジスト法の中間膜に使用するケイ素含有膜形成用組成物において、下記一般式(1)
(6-m)Si2m (1)
(Rは一価炭化水素基、Xはアルコキシ基、アルカノイルオキシ基又はハロゲン原子、mは6≧m≧3。)
で示されるケイ素−ケイ素結合を有するシラン化合物を含有する、加水分解性シランの単独又は混合物を加水分解縮合して得たケイ素含有ポリマーを含有するエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物。
【効果】本発明の組成物は、その上に形成したフォトレジストの良好なパターンを形成でき、有機材料との間で高いエッチング選択性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工に用いられる多層レジスト法の中間層として使用されるケイ素含有膜に好適なケイ素含有膜形成用組成物、ケイ素含有膜及びそれを用いた被加工基板の加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターン寸法の微細化が急速に進んでいる。リソグラフィー技術は、この微細化に併せ、光源の短波長化とそれに対するレジスト組成物の適切な選択により、微細パターンの形成を達成してきた。その中心となったのは単層で使用するポジ型フォトレジスト組成物である。この単層ポジ型フォトレジスト組成物は、塩素系あるいはフッ素系のガスプラズマによるエッチングに対しエッチング耐性を持つ骨格をレジスト樹脂中に持たせ、かつ露光部が溶解するようなレジスト機構を持たせることによって、露光部を溶解させてパターンを形成し、残存したレジストパターンをエッチングマスクとしてレジスト組成物を塗布した被加工基板をエッチング加工するものである。
【0003】
ところが、使用するフォトレジスト膜の膜厚をそのままで微細化、即ちパターン幅をより小さくした場合、フォトレジスト膜の解像性能が低下し、また現像液によりフォトレジスト膜をパターン現像しようとすると、いわゆるアスペクト比が大きくなりすぎ、結果としてパターン崩壊が起こってしまう。このため微細化に伴いフォトレジスト膜厚は薄膜化されてきた。
【0004】
一方、被加工基板の加工には、通常パターン形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより基板を加工する方法が用いられるが、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるエッチング方法がないため、基板を加工中にレジスト膜もダメージを受け、基板加工中にレジスト膜が崩壊し、レジストパターンを正確に被加工基板に転写できなくなる。そこで、パターンの微細化に伴い、レジスト材料により高いエッチング耐性が求められる。
一方、露光波長の短波長化によりフォトレジスト組成物に使用する樹脂は、露光波長における光吸収の小さな樹脂が求められたため、i線、KrF、ArFへの変化に対し、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、脂肪族多環状骨格を持った樹脂へと変化してきているが、現実的には上記エッチング条件におけるエッチング速度は速いものになってきてしまっており、解像性の高い最近のフォトレジスト組成物は、むしろエッチング耐性が低くなる傾向がある。
このことから、より薄くよりエッチング耐性の弱いフォトレジスト膜で被加工基板をエッチング加工しなければならないことになり、この加工工程に於ける材料及びプロセスの確保は急務になってきている。
【0005】
このような問題点を解決する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜、即ちレジスト上層膜とエッチング選択性が異なる中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、上層レジストパターンをエッチングマスクとして、ドライエッチングにより中間膜にパターンを転写し、更に中間膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0006】
多層レジスト法の一つである2層レジスト法では、例えば、上層レジスト材料にケイ素を含有する樹脂を使用し、中間膜としてノボラック樹脂を使用する方法がある(例えば、特許文献1:特開平6−95385号公報)。ケイ素樹脂は、酸素プラズマによる反応性エッチングに対してはよいエッチング耐性を示すが、フッ素系ガスプラズマを用いると容易にエッチング除去される。一方、ノボラック樹脂は酸素ガスプラズマによる反応性エッチングでは容易にエッチング除去されるが、フッ素系ガスプラズマや塩素系ガスプラズマによるエッチングに対しては、良好なエッチング耐性を示す。そこで、被加工基板上にノボラック樹脂膜をレジスト中間膜として成膜し、その上にケイ素含有樹脂を用いたレジスト上層膜を形成した後、ケイ素含有レジスト膜にエネルギー線の照射及び現像等の後処理によりパターン形成を行い、それをエッチングマスクとして酸素プラズマによる反応性エッチングでレジストパターンが除去されている部分のノボラック樹脂をエッチング除去することでノボラック膜にパターンを転写し、このノボラック膜に転写されたパターンをエッチングマスクとして、被加工基板にフッ素系ガスプラズマや塩素系ガスプラズマによるドライエッチングを用いてパターン転写をすることができる。
【0007】
また、ドライエッチングでは、エッチングマスクのエッチング耐性が十分である場合、比較的良好な形状で転写パターンが得られ、レジスト現像時の現像液による摩擦等を原因としたパターン倒れのような問題が起き難いため、比較的高いアスペクト比のパターンを得ることができる。このため、例えばノボラック樹脂を用いたレジスト膜を中間膜の膜厚に相当する厚さにした場合には、アスペクト比の問題から現像時のパターン倒れ等により直接形成できなかったような微細パターンに対しても、上記の2層レジスト法によれば、被加工基板のエッチングマスクとして十分な厚さのノボラック樹脂パターンが得られるようになる。
【0008】
更に多層レジスト法として、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。これでは、例えば、被加工基板上にノボラック等による有機膜をレジスト下層膜として成膜し、その上にSOG(スピンオンガラス)のようなケイ素含有膜を中間膜として成膜し、その上に通常の有機系レジスト膜をレジスト上層膜として形成する。フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングに対しては、有機系のレジスト上層膜は、SOGに対して良好なエッチング選択比が取れるため、レジストパターンはフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを用いることでSOG膜に転写される。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持ったパターンは形成することが難しいレジスト組成物や、基板を加工するためにはエッチング耐性が十分でないレジスト組成物を用いても、SOG膜にパターンを転写することができれば、2層レジスト法と同様に、加工に十分なエッチング耐性を持つノボラック膜のパターンを得ることができる。
【0009】
上記の通り、3層レジスト法では、中間膜としてケイ素含有膜が使用されるが、中間膜としては、CVDによるケイ素含有無機膜、例えばSiO2膜(例えば、特許文献2:特開平7−183194号公報等)やSiON膜(例えば、特許文献3:特開平7−181688号公報等)、回転塗布により膜を得られるものとしては、SOG膜(例えば、特許文献4:特開平5−291208号公報等)や架橋性シルセスキオキサン膜(例えば、特許文献5:特表2005−520354号公報等)等が使用されており、ポリシラン膜(例えば、特許文献6:特開平11−60735号公報等)も使用できるであろう。これらの中で、SiO2膜やSiON膜は下層の有機膜をドライエッチングする際のエッチングマスクとしての高い性能を持つものの、成膜に特別の装置を必要とする。それに対し、SOG膜や架橋性シルセスキオキサン膜、ポリシラン膜は、回転塗布と加熱のみで成膜でき、高いプロセスの効率を得られる。
【0010】
多層レジスト法の適用範囲は、レジスト膜の解像限界を上げるという試みだけに留まらない。基板加工の一つの方法であるビアファースト法のように、加工中間体基板が大きな段差を持つ場合、単一レジスト膜でパターン形成を行おうとすると、レジスト膜厚に大きな差があることから、レジスト露光時に焦点を正確に合わせることができなくなる等の問題が生じる。このようなケースでは、段差を犠牲膜により埋めて平坦化した後に、その上にレジスト膜を成膜し、レジストパターンの形成を行うが、この場合には必然的に上記のような多層レジスト法を用いることになる(例えば、特許文献7:特開2004−349572号公報等)。
【0011】
3層レジスト法を行う際、回転塗布により得られるケイ素含有膜を中間膜に使用することにより、プロセスの効率を上げることはできるが、従来使用されてきたケイ素含有膜には幾つかの問題がある。
【0012】
例えば、光リソグラフィーによりレジストパターンを形成しようとした場合、露光光が基板で反射し、入射光と干渉して、所謂定在波の問題を引き起こすことはよく知られており、レジスト膜のエッジラフネスのない微細パターンを得るためには、中間膜として反射防止膜を入れてやる必要がある。そこで、3層レジスト法では、レジスト上層膜とケイ素含有中間膜の間に有機反射防止膜を入れてやる必要があることになるが、それを入れた場合、レジスト上層膜をエッチングマスクとして有機反射防止膜をパターン加工する必要が生じ、ドライエッチング時にレジスト上層膜に対する負荷が加わる。従来、この負荷を生じさせないため、ケイ素含有中間膜に芳香族構造のような光吸収構造を持たせる手法が使用されてきた(特許文献8:特開2005−15779号公報)。
【0013】
しかし、光を効率よく吸収するアントラセンのような有機構造は、フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングによるエッチング速度を低下させる働きがあり、レジスト膜に負荷をかけないでケイ素含有膜のドライエッチングを行うためには不利な方向である。そこで、このような置換基を多量に加えることは好ましくない。
【0014】
更に、ケイ素含有中間膜をエッチングマスクとして、レジスト下層膜を加工する際に一般的に使用される酸素ガスプラズマによる反応性エッチングに対する中間膜のエッチング速度は、レジスト中間膜と下層膜のエッチング選択比を高めるためより小さいことが好ましく、そのためにはケイ素含有量がなるべく高いことが望ましい。しかし、光吸収骨格等の機能を側鎖に持たせるような設計をすると、側鎖の占める割合が高くなり、ケイ素含有量が下がってしまう。
【0015】
一方、ポリシラン類は比較的高いケイ素含有量を達成することができ、好適な反射防止膜材料となることが特許文献9(特開2003−140352号公報)に開示されている。また、ケイ素−ケイ素結合はケイ素−酸素−ケイ素結合がかなり短波長の光まで透明であるのに対し、長波長の光を吸収するため、反射防止機能を有するケイ素含有中間膜として好ましいものと考えられた。しかし、ポリシラン類は、ハロゲン系のエッチング条件下では、主鎖のケイ素−ケイ素結合の開裂が発生し、低分子成分に変換され膜強度が低下し、エッチングパターンが崩壊する現象が観察された。
【0016】
【特許文献1】特開平6−95385号公報
【特許文献2】特開平7−183194号公報
【特許文献3】特開平7−181688号公報
【特許文献4】特開平5−291208号公報
【特許文献5】特表2005−520354号公報
【特許文献6】特開平11−60735号公報
【特許文献7】特開2004−349572号公報
【特許文献8】特開2005−15779号公報
【特許文献9】特開2003−140352号公報
【特許文献10】特開平5−310942号公報
【特許文献11】特開平9−73173号公報
【特許文献12】特開2003−84438号公報
【特許文献13】国際公開第00/01684号パンフレット
【特許文献14】特開2000−159758号公報
【特許文献15】特開平8−12626号公報
【特許文献16】特開2005−146252号公報
【特許文献17】特開2005−128509号公報
【特許文献18】特開2004−153125号公報
【非特許文献1】comprehensive organometallic chemistry vol.2,389(1982)
【非特許文献2】Polym. Mater. Sci. Eng. 1997. 77. pp449
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、本発明の課題は、回転塗布により成膜でき、その上にレジスト膜を形成した後レジストパターンを形成した際、良好なパターン形成が可能で、かつ比較的高いケイ素含有量を持つことにより、有機膜との高いエッチング選択性が得られるエッチングマスク用ケイ素含有膜及びエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物、並びにこれを用いた基板加工中間体及び被加工基板の加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
Si−Si結合を持つポリシルセスキオキサンは、特許文献10(特開平5−310942号公報)に開示され、メカニズムについては詳細に開示されていないものの、フォトレジスト組成物や光反応性材料に使用できることが示唆されている。本発明者らは、このような材料は、レジスト膜そのものではなく、上記のような3層レジスト法のエッチングマスク用ケイ素含有膜に使用した場合、上記課題を解決するための一つの方法となり得ることに気付き、鋭意検討を行ったところ、比較的小さな側鎖を有する場合の上記ポリシルセスキオキサンを含む、下記一般式(1)で表される加水分解性シランの加水分解縮合物、特に下記一般式(2)で表される加水分解性シランとの共加水分解縮合物が、上記課題の解決に好適な材料であることを見出した。特に、従来のポリシラン反射防止膜と比較すると、ハロゲン系エッチング条件下で、たとえケイ素−ケイ素結合が開裂しても、非常に強固な結合であるシロキサン結合が非常に多く存在するため、エッチングパターンが崩壊することなく、膜の加工ができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0019】
即ち、本発明は、被加工基板上に下層膜を形成し、その上にケイ素含有膜を形成し、更にその上にフォトレジスト膜を形成した後、多段階のエッチングを行う多層レジスト法の中間膜に使用するケイ素含有膜形成用組成物において、少なくとも1種の下記一般式(1)
(6-m)Si2m (1)
(Rは炭素数1〜12の非置換又は置換一価炭化水素基、Xはアルコキシ基、アルカノイルオキシ基又はハロゲン原子、R、Xは各々同じ置換基でも異なる置換基でもよく、mは6≧m≧3である。)
で示されるケイ素−ケイ素結合を有するシラン化合物を含有する、加水分解性シランの単独又は混合物を加水分解縮合して得たケイ素含有ポリマーを含有することを特徴とするエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物を提供する。
【0020】
また、好ましい態様の一つとして、前記ケイ素含有ポリマーが、上記一般式(1)のシラン化合物に加えて、更に下記一般式(2)
aSiB(4-a) (2)
(Aは水素原子、又は炭素数1〜12の非置換又は置換一価炭化水素基、Bはアルコキシ基、アルカノイルオキシ基又はハロゲン原子、A、Bは各々同じ置換基でも異なる置換基でもよく、aは0又は1である。)
で示される加水分解性シラン化合物を含有する、加水分解性シランの混合物を加水分解縮合して得たケイ素含有ポリマーであることを特徴とするエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物を提供する。
【0021】
また、複数種の一般式(1)で示されるシラン化合物を用いる場合、使用する一般式(1)で示されるシラン化合物中では、mが4又は3であるものを主成分とすると、塗布性がよく保存安定性に優れるポリマーが得られる。mが5又は6の成分が主成分の場合は、シラン化合物を加水分解縮合させたときに、残存シラノールが多くなりすぎ、保存中にシラノール同士の再結合が発生し、異物ができたり、塗布液の膜厚が厚くなったりして、塗布性や保存安定性の低下を招く場合がある。
【0022】
更に、複数種の一般式(1)で示されるシラン化合物を用いる場合、一般式(1)で示されるシラン化合物のうち、mが4であるシラン化合物とmが3であるシラン化合物の混合比がモル比で3:7〜7:3の間に好ましい物性を持ったポリマーが得られる。これは勿論Rの選択にも依存するものであるが、m=4のものは表面に極性効果を与え、上層レジスト膜を倒れ難くし、プロセスウインドウを広くすることができる。m=3のものが増えてくると、シリコーン樹脂の特性である撥油性が高くなり、上層レジスト膜を塗布した際にストリエーションを生じることがある。一方、m=4のものが多すぎる場合、上述したようにポリマー中のシラノール残存量が増えてくる傾向になり、保存安定性の低下を招くおそれがある。
【0023】
また、含有するケイ素含有ポリマーは重量平均分子量が20,000を超えるものを用いると、塗布性が下がる傾向にあり、ケースによっては異物の発生や塗布斑が生じる場合があり、重量平均分子量が20,000以下のものを用いることが好ましく、また重量平均分子量が500以下のものがケイ素含有ポリマー全体の5質量%より多く占めるものを用いた場合には、焼成時の膜減りが大きく、面内均一性の悪い塗布膜が得られることがある。
【0024】
更に、含有するケイ素含有ポリマーが、ポリマー中のSi−O結合の数をL、Si−Si結合の数をM、Si−C結合の数をNとしたとき、0.45≦L/(L+M+N)≦0.95を満たすように原料のシラン化合物を選択した場合、より酸素RIE(酸素反応性エッチング)で基板加工する際のエッチング耐性が高くなる。
【0025】
前記ケイ素含有ポリマーのケイ素含有量は、以下のように定義される。
一般式(1)の加水分解性ケイ素含有モノマーの場合、十分な水を添加して完全に加水分解させたときに得られる反応式は、
(6-m)Si2m+(m/2)H2O→R(6-m)Si2(m/2)
であり、R部分の式量をRwとすると、このときのケイ素含有ポリマーのケイ素含有割合S1(%)は、
1=[28.1×2/{Rw×(6−m)+28.1×2+16×(m/2)}]×100
となる。
同様に、一般式(2)の化合物の場合では、
aSiB(4-a)+{(4−a)/2}H2O→AaSiO{(4-a)/2}
であり、A部分の式量をAwとすると、このときのケイ素含有ポリマーのケイ素含有割合S2(%)は、
2=[28.1/{Aw×a+28.1+16×(4−a)/2)}]×100
となる。
それぞれの化合物のモル比から、全体のケイ素含有割合を求めることができる。
従って、(ケイ素由来質量/樹脂質量)×100として30%以上とすると、100nm以下の膜厚においても下層膜のエッチング加工時に有効に働くエッチングマスク用のケイ素含有膜形成用組成物が得られる。
【0026】
また、前記ケイ素含有ポリマーのケイ素含有量が、(ケイ素由来質量/樹脂質量)×100として40%以上とすると、50nm以下の膜厚においても下層膜のエッチング加工時に有効に働くエッチングマスク用のケイ素含有膜形成用組成物が得られる。
【0027】
上記組成物は、上記ケイ素含有ポリマーに加え、酸発生剤及び架橋剤を含有することができる。この場合、これら成分は有機溶剤に溶解して用いられる。
【0028】
また、本発明は、被加工基板上に成膜した有機膜上に、上記に示した組成物を使用してケイ素含有膜を成膜することで、新規なエッチングマスク用ケイ素含有膜を提供する。
【0029】
本発明のケイ素含有膜は、成膜時に、ケイ素含有ポリマーが架橋結合され、有機溶剤に対し不溶性とされることが好ましい。
【0030】
また、本発明のエッチングマスク用ケイ素含有膜をエッチングマスクとして使用する際には、更にその上に、他の膜を介し又は介することなしに、フォトレジスト膜を積層して被加工基板中間体とする。
【0031】
また、ArFエキシマレーザー光を用いたリソグラフィーにおいて、単層レジスト膜ではエッチング耐性が不十分であるが、特に高い解像性が必須である場合、上記被加工基板中間体に使用するフォトレジスト層を構成する樹脂が、酸不安定基で保護され、アルカリ不溶性化したポリ(メタ)アクリル酸系のアルカリ可溶性樹脂であるフォトレジスト層を用いることが好ましい。更に、フォトレジスト膜が、隣接位炭素がフッ素置換されることにより酸性を示すアルコール官能基を有する側鎖を含有するポリマーを含むことが好ましい。
【0032】
また、本発明の被加工基板中間体を用いた好ましいパターン転写方法として、上記の被加工基板中間体を用い、レジストパターンを形成した後、レジストパターンをエッチングマスクとしてケイ素含有膜をエッチング加工し、次にパターン形成されたケイ素含有膜をエッチングマスクとして有機膜をエッチング加工し、更にパターン形成された有機膜をエッチングマスクとして被加工基板をエッチング加工する被加工基板の加工方法を提供する。この場合、このレジストパターンの形成において、ArFエキシマレーザー光を用いたフォトリソグラフィー法を採用することが好ましい。
【0033】
更に、Si−Si結合はArFエキシマレーザーの波長193nm近傍に十分な吸収を持つことが知られており(非特許文献1:comprehensive organometallic chemistry vol.2,389(1982))、上記レジストパターンの形成において、ArFエキシマレーザー光を用いたフォトリソグラフィー法を用いると、本発明のエッチングマスク用ケイ素含有膜が、エッチングマスクとしてだけではなく、良好な反射防止効果も示す。
【発明の効果】
【0034】
本発明のエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物は、一般式(1)で表される加水分解性シランの加水分解縮合、あるいは一般式(1)で表される加水分解性シラン及び一般式(2)で表される加水分解性シランの共加水分解縮合により、比較的容易に得られる材料を用いることができ、これを用いることにより、その上に形成したフォトレジストの良好なパターン形成を可能とすると共に、有機材料との間で高いエッチング選択性が得られることから、形成されたフォトレジストパターンを、ケイ素含有中間膜、有機下層膜と順にドライエッチングにより転写していくことで、被加工基板に高い精度でパターン転写を行うことを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明のエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物に使用されるポリマーは、少なくとも1種の下記一般式(1)で表されるシラン化合物を含有する加水分解性シラン化合物の単体あるいは混合物を加水分解縮合して得られるシロキサンポリマーである。
(6-m)Si2m (1)
(Rは炭素数1〜12の非置換又は置換一価炭化水素基、Xはアルコキシ基、アルカノイルオキシ基又はハロゲン原子、R、Xは各々同じ置換基でも異なる置換基でもよく、mは6≧m≧3である。)
【0036】
また、該ポリマーは、更に、上記一般式(1)の加水分解性シラン化合物と、少なくとも1種の下記一般式(2)で表される加水分解性シラン化合物とを含有する、加水分解性シランの混合物を加水分解縮合して得たケイ素含有ポリマーでもよい。
aSiB(4-a) (2)
(Aは水素原子、又は炭素数1〜12の非置換又は置換一価炭化水素基、Bはアルコキシ基、アルカノイルオキシ基又はハロゲン原子、A、Bは各々同じ置換基でも異なる置換基でもよく、aは0又は1である。)
【0037】
なお、一般式(1)のジシラン化合物と一般式(2)のモノシラン化合物の使用割合は、RやAの式量により変化し、ポリマー中のケイ素含有量が30質量%以上になるように配合することが好ましい。
【0038】
シラン化合物(1)のRとして好ましいものは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジエチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、エチニル基などのアルキニル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、ベンジル基などのアラルキル基、その他の非置換一価炭化水素基が挙げられる。このうち特に好ましいのはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、ビニル基である。
【0039】
また、これらの基の水素原子の一個又は複数個を官能基で置換した置換一価炭化水素基も好適に用いられる。かかる官能基としては、例えば、水酸基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを挙げることができる。特に好ましいのは、水酸基、エポキシ基である。
【0040】
Xとして好ましいものは、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、2−エチルブトキシ基、3−エチルブトキシ基、2,2−ジエチルプロポキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などのアルコキシ基、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、シクロヘキシルカルボニル基、などのアルカノイルオキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子である。このうち特に好ましいのは、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、アセチル基、塩素などである。
【0041】
一般式(1)で示されるシラン化合物は、Xの数が少ない場合、縮合性が下がる傾向にあり、また縮合性が低い場合、一般式(2)で示される化合物と共加水分解してポリマー骨格にうまく組み込まない場合もある。そこで、複数の一般式(1)で示される化合物を使用する際には、Xの数mは3以上であるものが主成分であることが好ましい。更に、Xの数が5以上であるものが主成分である場合には、縮合後に残存するシラノール量が多すぎる場合があり、得られたケイ素含有ポリマーの保存安定性が低下する場合がある。そこで主成分が持つXの数は3あるいは4であることが好ましい。ここで、主成分とは、全シラン化合物中、40質量%以上、特に50質量%以上を占めることを言う。
【0042】
更に、mが3であるものによる縮合体は、シリコーン樹脂の特性である撥油性である傾向を持ち易く、上層レジスト塗布液をはじいてしまう場合がある。一方、mが4であるものによる縮合体はシラノールが残り易くなる傾向を持つが、ハードマスクとして使用する場合には、Rの選択や、一般式(2)のモノマーの選択や添加量にも依存するが、一般的にはm=4であるものとm=3であるものの比を0.3〜0.7の間に採ると、良好な物性を有するケイ素含有ポリマーが得られる。
【0043】
シラン化合物(2)のAはシラン化合物(1)のR、シラン化合物(2)のBはシラン化合物(1)のXと同様の選択範囲の中から選択されることが好ましいが、複雑な置換基等の導入を図る場合には、Aに導入した方が、シラン化合物の精製等において有利なケースがある。
【0044】
ここでAとしては、炭素−酸素単結合、炭素−酸素二重結合のうち少なくとも1つを有する有機基が好ましい。好ましい例として、以下のものを例示することができる。なお、下記式中において、(Si)はケイ素との結合箇所を示すために記載した。
【化1】

【0045】
また、全体のポリマーの構成を見た際、有機側鎖であるRやAの選択にもよるが、ポリマー中のSi−O結合の数をL、ポリマー中のSi−Si結合の数をM、ポリマー中のSi−C結合の数をNとすると、0.45≦L/(L+M+N)≦0.95を満たす場合には、酸素RIE耐性が十分実用的であり、好ましい。このとき、0.45未満では、Si−CやSi−Siなど酸素RIEで反応する結合が多くなるため、ケイ素含有率の高さの割にはエッチング耐性が高くなく、メリットがない。一方、0.95を超えると、得られたケイ素含有ポリマーが多量のシラノールを有する傾向にあり、膜形成用組成物とした際の保存安定性が低い場合がある。
【0046】
上記置換基の選択と、一般式(2)あるいはその他の加水分解性シラン化合物の混合は、ポリマーに含有されるケイ素含量を基に、調整されることが好ましい。ポリマー中のケイ素含有量は、ケイ素由来質量/樹脂(ケイ素含有ポリマー)質量として15%以上である必要があるが、これを30%以上に調整した場合には、下層膜の加工工程においてエッチングマスクとして使用する際、100nm以下のポリマー膜厚で下層膜を加工することが可能になる。このことにより上層のレジスト膜の膜厚を下げることが可能となり、150〜250nm程度の膜厚のレジスト膜で基板加工が可能となる。また、ケイ素含有量を40%以上に調整した場合には、ケイ素含有膜の膜厚を50nm以下としても下層膜をエッチング加工することができ、この場合、レジスト膜の膜厚は100〜200nmとすることができる。
【0047】
これらのシラン化合物から共加水分解縮合によりシロキサンポリマーを得るときの水の量は、モノマー1モル当たり0.02〜10モルを添加することが好ましい。この時に、触媒を用いることもでき、触媒としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、サリチル酸、安息香酸、シュウ酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、塩酸、硫酸、硝酸、スルホン酸、メチルスルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸、テトラアルコキシチタン、トリアルコキシモノ(アセチルアセトナート)チタン、テトラアルコキシジルコニウム、トリアルコキシモノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、アルミニウムトリアセチルアセトナートなどの金属キレート化合物を挙げることができる。
【0048】
反応操作としては、モノマーを有機溶媒に溶解させ、水を添加し加水分解反応を開始させる。触媒は水に添加していてもよいし、有機溶媒中に添加しておいてもよい。反応温度は0〜100℃、好ましくは10〜80℃である。水の滴下時に10〜50℃に加熱し、その後20〜80℃に昇温させて熟成させる方法が好ましい。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチルラクトン及びこれらの混合物などが好ましい。
【0049】
その後、触媒の中和反応を行い、有機溶媒層を分別し、脱水する。水分の残存は、残存したシラノールの縮合反応を進行させるため、十分に脱水を行う必要がある。硫酸マグネシウムなどの塩やモレキュラーシーブによる吸着法や、溶媒を除去しながらの共沸脱水法が好ましく挙げられる。
【0050】
また、別の操作方法として、有機溶媒に水及び触媒を溶解させ、そこにモノマーを添加してもよい。このとき、モノマーは有機溶媒で希釈しておいてもよい。反応温度は0〜100℃、好ましくは10〜80℃である。有機溶媒としては、水溶性のものが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル及びこれらの混合物などが好ましい。
【0051】
その後、上記の水に難溶又は不溶の有機溶媒を添加し、有機溶媒層を分別、水洗して加水分解縮合に使用した触媒を除去する。このとき、必要に応じて中和してもよい。続いて、分液した有機溶媒層を脱水する。水分の残存は、残存したシラノールの縮合反応を進行させるため、十分に脱水を行う必要がある。硫酸マグネシウムなどの塩やモレキュラーシーブによる吸着法や、溶媒を除去しながらの共沸脱水法が好ましく挙げられる。
【0052】
得られるケイ素含有ポリマーの分子量は、モノマーの選択だけでなく、重合時の反応条件制御により調整することができるが、重量平均分子量が20,000を超えるものを用いると、ケースによっては異物の発生や塗布斑が生じることがあり、20,000以下のものを用いることが好ましい。また、分子量分布の上で、重量平均分子量が500以下のものが占める割合がケイ素含有ポリマー全体の5質量%を超える場合、焼成中に架橋反応を起こす前に蒸散してしまい、塗布膜の面内均一性が悪くなることがあり、5質量%以下のものを使うことが好ましい。なお、上記重量平均分子量に関するデータは、検出器としてRIを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準物質としてポリスチレンを用いて、ポリスチレン換算で分子量を表したものである。
【0053】
本発明の組成物には、改質剤及び有機溶剤を配合することができる。本発明に利用可能な改質剤としては、酸発生剤、架橋剤、界面活性剤、安定剤などを挙げることができる。
熱による架橋反応を更に促進させるため、酸発生剤を添加することができる。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。
【0054】
本発明で使用される酸発生剤としては、
i.下記一般式(P1a−1)、(P1a−2)、(P1a−3)又は(P1b)のオニウム塩、
ii.下記一般式(P2)のジアゾメタン誘導体、
iii.下記一般式(P3)のグリオキシム誘導体、
iv.下記一般式(P4)のビススルホン誘導体、
v.下記一般式(P5)のN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル、
vi.β−ケトスルホン酸誘導体、
vii.ジスルホン誘導体、
viii.ニトロベンジルスルホネート誘導体、
ix.スルホン酸エステル誘導体
等が挙げられる。
【0055】
【化2】


(式中、R101a、R101b、R101cはそれぞれ炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基又はオキソアルケニル基、炭素数6〜20の置換あるいは非置換のアリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部がアルコキシ基等によって置換されていてもよい。また、R101bとR101cとは環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101b、R101cはそれぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示す。K-は非求核性対向イオンを表す。R101d、R101e、R101f、R101gは、R101a、R101b、R101cと同様であるが、水素原子であってもよい。R101dとR101e、R101dとR101eとR101fとは環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101dとR101e及びR101dとR101eとR101fは炭素数3〜10のアルキレン基を示す。)
【0056】
上記R101a、R101b、R101c、R101d、R101e、R101f、R101gは互いに同一であっても異なっていてもよく、具体的にはアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロぺニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基等が挙げられ、2−オキソプロピル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等や、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、p−tert−ブトキシフェニル基、m−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、フェニルエチル基、フェネチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。K-の非求核性対向イオンとしては塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネートが挙げられる。
【0057】
(P1a−1)と(P1a−2)は光酸発生剤、熱酸発生剤の両方の効果があるが、(P1a−3)は熱酸発生剤として作用する。
【0058】
【化3】


(式中、R102a、R102bはそれぞれ炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R103は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示す。R104a、R104bはそれぞれ炭素数3〜7の2−オキソアルキル基を示す。K-は非求核性対向イオンを表す。)
【0059】
上記R102a、R102bとして具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。R103としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、1,4−シクロへキシレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロオクチレン基、1,4−シクロヘキサンジメチレン基等が挙げられる。R104a、R104bとしては、2−オキソプロピル基、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソシクロヘプチル基等が挙げられる。K-は式(P1a−1)、(P1a−2)及び(P1a−3)で説明したものと同様のものを挙げることができる。
【0060】
【化4】


(式中、R105、R106は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20の置換あるいは非置換のアリール基又はハロゲン化アリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基を示す。)
【0061】
105、R106のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、アミル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としてはトリフルオロメチル基、1,1,1−トリフルオロエチル基、1,1,1−トリクロロエチル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。アリール基としてはフェニル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、p−tert−ブトキシフェニル基、m−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基が挙げられる。ハロゲン化アリール基としてはフルオロフェニル基、クロロフェニル基、1,2,3,4,5−ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0062】
【化5】


(式中、R107、R108、R109は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン化アリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基を示す。R108、R109は互いに結合して環状構造を形成してもよく、環状構造を形成する場合、R108、R109はそれぞれ炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。)
【0063】
107、R108、R109のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、アラルキル基としては、R105、R106で説明したものと同様の基が挙げられる。なお、R108、R109のアルキレン基としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0064】
【化6】


(式中、R101a、R101bは上記と同様である。)
【0065】
【化7】


(式中、R110は炭素数6〜10のアリーレン基、炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数2〜6のアルケニレン基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部は更に炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルコキシ基、ニトロ基、アセチル基、又はフェニル基で置換されていてもよい。R111は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は置換のアルキル基、アルケニル基又はアルコキシアルキル基、フェニル基、又はナフチル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部は更に炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基;炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基又はアセチル基で置換されていてもよいフェニル基;炭素数3〜5のヘテロ芳香族基;又は塩素原子、フッ素原子で置換されていてもよい。)
【0066】
ここで、R110のアリーレン基としては、1,2−フェニレン基、1,8−ナフチレン基等が、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、フェニルエチレン基、ノルボルナン−2,3−ジイル基等が、アルケニレン基としては、1,2−ビニレン基、1−フェニル−1,2−ビニレン基、5−ノルボルネン−2,3−ジイル基等が挙げられる。R111のアルキル基としては、R101a〜R101cと同様のものが、アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプレニル基、1−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、ジメチルアリル基、1−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、3−ヘプテニル基、6−ヘプテニル基、7−オクテニル基等が、アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ペンチロキシメチル基、ヘキシロキシメチル基、ヘプチロキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、ペンチロキシエチル基、ヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、プロポキシプロピル基、ブトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシブチル基、プロポキシブチル基、メトキシペンチル基、エトキシペンチル基、メトキシヘキシル基、メトキシヘプチル基等が挙げられる。
【0067】
なお、更に置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が、炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等が、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基又はアセチル基で置換されていてもよいフェニル基としては、フェニル基、トリル基、p−tert−ブトキシフェニル基、p−アセチルフェニル基、p−ニトロフェニル基等が、炭素数3〜5のヘテロ芳香族基としては、ピリジル基、フリル基等が挙げられる。
【0068】
具体的には、例えば下記の酸発生剤が挙げられる。トリフルオロメタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラフェニルアンモニウム、p−トルエンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−メトキシベンジル)ジメチルフェニルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−メトキシベンジル)トリメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、エチレンビス[メチル(2−オキソシクロペンチル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート]、1,2’−ナフチルカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート等のオニウム塩。
【0069】
ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシレンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソアミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−tert−アミルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン等のジアゾメタン誘導体。
【0070】
ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(トリフルオロメタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(1,1,1−トリフルオロエタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(tert−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(パーフルオロオクタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(シクロヘキサンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(ベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−tert−ブチルベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(キシレンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(カンファースルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等のグリオキシム誘導体。
【0071】
ビスナフチルスルホニルメタン、ビストリフルオロメチルスルホニルメタン、ビスメチルスルホニルメタン、ビスエチルスルホニルメタン、ビスプロピルスルホニルメタン、ビスイソプロピルスルホニルメタン、ビス−p−トルエンスルホニルメタン、ビスベンゼンスルホニルメタン等のビススルホン誘導体。
2−シクロヘキシルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、2−イソプロピルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン等のβ−ケトスルホン酸誘導体。
ジフェニルジスルホン、ジシクロヘキシルジスルホン等のジスルホン誘導体。
p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,4−ジニトロベンジル等のニトロベンジルスルホネート誘導体。
1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン等のスルホン酸エステル誘導体。
【0072】
N−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ペンタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−オクタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−メトキシベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−クロロエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド−2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドp−トルエンスルホン酸エステル等のN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体等。
【0073】
これらの中で、特にトリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、1,2’−ナフチルカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート等のオニウム塩、ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン等のジアゾメタン誘導体、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等のグリオキシム誘導体、ビスナフチルスルホニルメタン等のビススルホン誘導体、N−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ペンタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル等のN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体が好ましく用いられる。
【0074】
なお、上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸発生剤の添加量は、ベースポリマー100部(質量部、以下同じ)に対して、好ましくは0.01〜50部、より好ましくは0.1〜40部である。成膜後その上にレジスト組成物溶液等を塗布する際にインターミキシングを生じさせないために、シロキサンポリマー間に十分な結合を形成させる必要があるが、これの添加により、有利に架橋密度が得られる。
【0075】
本発明では改質剤として架橋剤を使用することが可能である。ここで架橋剤とは、酸によりポリマーと架橋する材料であり、例えばメチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、エポキシ化合物、チオエポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基などの2重結合を含む化合物を挙げることができる。
【0076】
前記諸化合物のうち、エポキシ化合物を例示すると、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテルなどが例示される。メラミン化合物を具体的に例示すると、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1〜6個がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1〜5個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。グアナミン化合物としては、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1〜4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1〜4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。グリコールウリル化合物としては、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜4個がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜4個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。ウレア化合物としてはテトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメチロールウレアの1〜4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルウレアなどが挙げられる。
【0077】
アルケニルエーテル基を含む化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテルなどである。
【0078】
R又はAの置換基としてエポキシ基を含有する場合、エポキシ基との反応性を上げ、架橋効率を向上させるためには、ヒドロキシ基を含む化合物の添加が有効である。特に分子内に2個以上のヒドロキシ基を含む化合物が好ましい。例えば、4,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]−デカン、ペンタエリトリトール、1,2,6−ヘキサントリオール、4,4’,4’’−メチリデントリスシクロヘキサノール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスシクロヘキサノール、[1,1’−ビシクロヘキシル]−4,4’−ジオール、メチレンビスシクロヘキサノール、デカヒドロナフタレン−2,6−ジオール、[1,1’−ビシクロヘキシル]−3,3’,4,4’−テトラヒドロキシルなどのアルコール基含有化合物、ビスフェノール、メチレンビスフェノール、2,2’−メチレンビス[4−メチルフェノール]、4,4’−メチリデン−ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−(1−メチル−エチリデン)ビス[2−メチルフェノール]、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−(1,3−ジメチルブチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−オキシビスフェノール、4,4’−メチレンビスフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタノン、4,4’−メチレンビス[2−メチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、4,4’−(1,2−エタンジイル)ビスフェノール、4,4’−(ジエチルシリレン)ビスフェノール、4,4’−[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン]ビスフェノール、4,4’,4’’−メチリデントリスフェノール、4,4’−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、2,6−ビス[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、4,4’,4’’−エチリジントリス[2−メチルフェノール]、4,4’,4’’−エチリジントリスフェノール、4,6−ビス[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール、4,4’−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルフェノール]、4,4’,4’’,4’’’−(1,2−エタンジイリデン)テトラキスフェノール、4,4’,4’’,4’’’−エタンジイリデン)テトラキス[2−メチルフェノール]、2,2’−メチレンビス[6−[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール]、4,4’,4’’,4’’’−(1,4−フェニレンジメチリジン)テトラキスフェノール、2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニルメチル)−1,3−ベンゼンジオール、2,4’,4’’−メチリデントリスフェノール、4,4’,4’’’−(3−メチル−1−プロパニル−3−イリデン)トリスフェノール、2,6−ビス[(4−ヒドロキシ−3−フロロフェニル)メチル]−4−フルオロフェノール、2,6−ビス[4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル]メチル]−4−フルオロフェノール、3,6−ビス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2−ベンゼンジオール、4,6−ビス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール、p−メチルカリックス[4]アレン、2,2’−メチレンビス[6−[(2,5/3,6−ジメチル−4/2−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス[6−[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、4,4’,4’’,4’’’−テトラキス[(1−メチルエチリデン)ビス(1,4−シクロヘキシリデン)]フェノール、6,6’−メチレンビス[4−(4−ヒドロキシフェニルメチル)−1,2,3−ベンゼントリオール、3,3’,5,5’−テトラキス[(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)メチル]−[(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジオール]などのフェノール低核体が挙げられる。
【0079】
一方、R又はAが水酸基を含有する場合、水酸基との反応性を上げ、架橋効率を向上させるためには、エポキシ基を含む化合物の添加が有効である。特に分子内に2個以上のエポキシ基を含む化合物が好ましい。例えば、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0080】
本発明における水酸基含有添加剤、エポキシ基含有添加剤等の架橋剤の配合量は、ベースポリマー100部に対して0.1〜50部が好ましく、特に1〜20部が好ましい。0.1部未満であると架橋が不十分でポリマーの硬化が悪くなり、レジスト上層膜とミキシングを起こす場合がある。一方、50部を超えると反射防止効果が低下したり、架橋後の膜にひび割れが入ったり、膜全体のケイ素含有量が減少し、エッチング耐性が低下することがある。
【0081】
本発明では改質剤として、必要に応じて界面活性剤を配合することが可能である。ここで、界面活性剤としては非イオン性のものが好ましく、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、含フッ素オルガノシロキサン系化合物が挙げられる。例えばフロラード「FC−430」「FC−431」、「FC−4430」(いずれも住友スリーエム(株)製)、サーフロン「S−141」、「S−145」、「KH−10」、「KH−20」、「KH−30」、「KH−40」(いずれも旭硝子(株)製)、ユニダイン「DS−401」、「DS−403」、「DS−451」(いずれもダイキン工業(株)製)、メガファック「F−8151」(大日本インキ工業(株)製)、「X−70−092」、「X−70−093」(いずれも信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。好ましくは、フロラード「FC−4430」(住友スリーエム(株)製)、「KH−20」、「KH−30」(いずれも旭硝子(株)製)、「X−70−093」(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0082】
本発明では改質剤として、必要に応じて安定剤を配合することが可能である。ここで、安定剤とは組成物を保管している際の膜厚変動を抑制するために添加するものである。安定剤としては、シュウ酸、マロン酸、マロン酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、シトラコン酸、グルタル酸、グルタル酸無水物、アジピン酸などのカルボン酸又はカルボン酸無水物を挙げることができる。
【0083】
更に、組成物の安定性を向上させる作用を持つ溶剤を安定剤として添加することも可能である。このような溶剤としては、分子内に1個以上のエーテル結合、カルボニル結合及び/又はエステル結合、及び1個以上のヒドロキシ基を持ち、更に酸発生剤、その他の添加剤等を溶解可能でなければいけない。このような有機溶剤としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(シクロヘキシロキシ)エタノール、プロピレングリコールブチルエーテル、1−tert−ブチル−2−プロパノール、3−エトキシ−1−プロパノール、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジ(プロピレングリコール)−tert−ブチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール、3−エトキシ−1,2−プロパンジオール、3−アリロキシ−1,2−プロパンジオール、ジ(エチレングリコール)、ジ(プロピレングリコール)、ジ(エチレングリコール)モノメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)モノエチルエーテル、ジ(エチレングリコール)モノブチルエーテル、ジ(エチレングリコール)モノプロピルエーテル、ジ(プロピレングリコール)モノメチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)モノエチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)モノブチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)モノプロピルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸tert−ブチル、2−ヒドロキシブタン酸メチル、2−ヒドロキシブタン酸エチル、2−ヒドロキシブタン酸プロピル、2−ヒドロキシブタン酸ブチル、2−ヒドロキシブタン酸イソブチル、2−ヒドロキシブタン酸tert−ブチル、3−ヒドロキシブタン酸メチル、3−ヒドロキシブタン酸メチル、3−ヒドロキシブタン酸エチル、3−ヒドロキシブタン酸プロピル、3−ヒドロキシブタン酸ブチル、3−ヒドロキシブタン酸イソブチル、3−ヒドロキシブタン酸tert−ブチル、ヒドロキシアセトン、1−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、3−アセチル−1−プロパノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0084】
本発明で使用される有機溶剤としては、請求項1乃至4で示されている組成物に含有されるシロキサンポリマー及び改質剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。
また、安定剤として示されている溶剤もまたシロキサンポリマー及び改質剤を溶解することができれば、溶剤として使用することができる。
【0085】
本発明では、これらの有機溶剤の中でもジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、γ−ブチルラクトン及びその混合溶剤が好ましく使用される。
【0086】
有機溶剤の使用量は、ベース樹脂100部に対して400〜10,000部、特に500〜5,000部が好適である。
【0087】
本発明のエッチングマスク用ケイ素含有膜は、ケイ素含有膜形成用組成物からフォトレジスト膜と同様にスピンコート法などで基板上に作製することが可能である。スピンコート後、溶剤を蒸発させ、上層レジスト膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベークをすることが望ましい。ベーク温度は50〜400℃の範囲内で、10〜300秒の範囲内が好ましく用いられる。
【0088】
ここで、本発明においては、被加工基板の被加工部分の上に下層膜を介して上記ケイ素含有膜を形成し、その上にフォトレジスト膜を形成して、パターン形成を行うことができる。
この場合、被加工基板の被加工部分としては、k値が3以下の低誘電率絶縁膜、一次加工された低誘電率絶縁膜、窒素及び/又は酸素含有無機膜、金属膜などを挙げることができる。
【0089】
多層レジスト法において、本発明のケイ素含有膜上に成膜されるレジスト膜は、特に限定されるものではないが、下記の理由から特にArFエキシマレーザー光用レジスト組成物を用いた場合に特に有利に使用される。即ち、リソグラフィーにおいて、非常に高い解像性が要求される場合、露光光の反射による定在波をいかに制御するかという問題になり、レジストの下層には反射防止膜を用いることが必須となる。しかし、一般的な反射防止膜は光吸収機能の殆どを芳香族基に基づいており、そのエッチングではレジスト膜にかなりの負荷が生じる。これに対し、本発明のケイ素含有膜を使用する3層レジスト法は、ケイ素含有膜に、波長190nm付近にSi−Si結合に基づく強い光吸収があり、反射防止膜を更に使用しなくてもよいか、あるいは通常よりも薄い反射防止膜で十分である。そこで、ArFエキシマレーザー等の200nm以下の露光光を使用する3層レジスト法で特に有利に使用でき、また特に、下記のようにエッチング耐性に余裕のないレジストを用いてリソグラフィーを行う場合に、有利に使用できる。
【0090】
本発明のケイ素含有膜をArFエキシマレーザー光による露光プロセスに使用する場合、上層のレジスト膜としては、通常のArFエキシマレーザー光用レジスト組成物はいずれも使用可能である。ArFエキシマレーザー光用レジスト組成物は多数の候補がすでに公知であり、ポジ型であれば、酸の作用により酸不安定基が分解してアルカリ水溶液に可溶性となる樹脂と光酸発生剤及び酸の拡散を制御するための塩基性物質が、ネガ型であれば、酸の作用により架橋剤と反応してアルカリ水溶液に不溶性になる樹脂と光酸発生剤、架橋剤及び酸の拡散を制御するための塩基性物質が主要成分であるが、どのような樹脂を使用するかにより特性に差がある。すでに公知の樹脂を大別すると、ポリ(メタ)アクリル系、COMA系、COMA−(メタ)アクリルハイブリッド系、ROMP系、ポリノルボルネン系等があるが、この内、ポリ(メタ)アクリル系樹脂を使用したレジスト組成物は、側鎖に脂環式骨格を導入することでエッチング耐性を確保しているため、解像性能は、他の樹脂系に比較して優れる。
【0091】
ポリ(メタ)アクリル系樹脂を使用したArFエキシマレーザー用レジスト組成物は多数のものが公知になっているが、ポジ型用としては、いずれも主要機能としてエッチング耐性を確保するためのユニット、酸の作用により分解してアルカリ可溶性に変化するユニット、密着性を確保するためのユニット等の組み合わせ、あるいは場合により1つのユニットが上記の機能の2以上を兼ねるユニットを含む組み合わせによりポリマーが構成される。このうち、酸によりアルカリ溶解性が変化するユニットとしては、アダマンタン骨格を持つ酸不安定基を持つ(メタ)アクリル酸エステル(特許文献11;特開平9−73173号公報)や、ノルボルナンやテトラシクロドセカン骨格を持つ酸不安定基を有する(メタ)アクリル酸エステル(特許文献12:特開2003−84438号公報)は高い解像性とエッチング耐性を与え、特に好ましく使用される。また、密着性を確保するためのユニットとしては、ラクトン環を持つノルボルナン側鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル(特許文献13:国際公開第00/01684号パンフレット)、オキサノルボルナン側鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル(特許文献14:特開2000−159758号公報)や、ヒドロキシアダマンチル側鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル(特許文献15:特開平8−12626号公報)が良好なエッチング耐性と高い解像性を与えることから特に好ましく使用できる。また、更に隣接位がフッ素置換されることにより酸性を示すアルコールを官能基として持つユニット(例えば、非特許文献2:Polym. Mater. Sci. Eng. 1997. 77. pp449)をポリマーが含有するものは、ポリマーに膨潤を抑制する物性を与え、高い解像性を与えることから、特に近年注目されているイマージョン法に対応するレジストポリマーとして注目されているが、ポリマー中にフッ素が含有されることにより、エッチング耐性が低下することが問題になっている。本発明のエッチングマスク用ケイ素含有膜は、このようなエッチング耐性が確保しにくい有機レジスト材料に対して特に有効に使用することができる。
【0092】
上記ポリマーを含有するArFエキシマレーザー用レジスト組成物には、他に酸発生剤、塩基性化合物等が含有されるが、酸発生剤は、本発明のケイ素含有膜形成用組成物に添加可能なものとほぼ同一のものが使用でき、特にオニウム塩が、感度や解像性の点から有利である。また、塩基性物質についても多数のものが公知であり、最近公開となった特許文献16:特開2005−146252号公報に多数例示されており、それらから有利に選択し得る。
【0093】
エッチングマスク用ケイ素含有膜層を作製した後、その上にフォトレジスト組成物溶液を用いてフォトレジスト層を作製するが、エッチングマスク用ケイ素含有膜層と同様にスピンコート法が好ましく用いられる。レジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、80〜180℃で10〜300秒の範囲が好ましい。その後露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得る。
【0094】
エッチングマスク用ケイ素含有膜のエッチングは、フロン系ガス、窒素ガス、炭酸ガスなどを使ってエッチングを行う。本発明のエッチングマスク用ケイ素含有膜は前記ガスに対するエッチング速度が速く、上層のレジスト膜の膜減りが小さいという特徴がある。
【0095】
また、本発明のケイ素含有層を用いる多層レジスト法では、本発明のケイ素含有膜と被加工基板の間に下層膜を設ける。下層膜を被加工基板のエッチングマスクとする場合には、下層膜は芳香族骨格を有する有機膜であることが好ましいが、下層膜が犠牲膜である場合などは、有機膜だけではなく、ケイ素含量が15質量%以下のものであればケイ素含有材料であってもよい。
【0096】
被加工基板のエッチングマスクとなる下層膜として有機膜を使用した3層レジスト法の場合、有機膜は、パターン形成されたレジストパターンをケイ素含有膜に転写した後、更にそのパターンをもう一度転写させる膜であり、ケイ素含有膜が高いエッチング耐性を示すエッチング条件でエッチング加工できるという特性を持つと共に、被加工基板をエッチング加工する条件に対しては高いエッチング耐性を持つという特性が要求される。
【0097】
そのような下層膜としての有機膜はすでに3層レジスト法用、あるいはシリコンレジスト組成物を使用した2層レジスト法用の下層膜として多数公知であり、特許文献17:特開2005−128509号公報記載の4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノールノボラック樹脂(分子量11,000)の他、ノボラック樹脂をはじめとする多数の樹脂が、2層レジスト法や3層レジスト法のレジスト下層膜材料として公知であり、それらをいずれも使用することができる。また、通常のノボラックよりも耐熱性を上げたい場合には、4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノールノボラック樹脂のような多環式骨格を入れることもでき、更にポリイミド系樹脂を選択することもできる(例えば、特許文献18:特開2004−153125号公報)。
【0098】
上記有機膜は、組成物溶液を用い、フォトレジスト組成物と同様にスピンコート法などで基板上に形成することが可能である。スピンコート法などでレジスト下層膜を形成した後、有機溶剤を蒸発させるためベークをすることが望ましい。ベーク温度は80〜300℃の範囲内で、10〜300秒の範囲内が好ましく用いられる。
【0099】
なお、特に限定されるものではないが、下層膜の厚さは10nm以上、特に50nm以上であることが好ましく、本発明に係るケイ素含有膜の厚さは200nm以下であり、フォトレジスト膜の厚さは300nm以下であることが好ましい。
【0100】
本発明のエッチングマスク用ケイ素含有膜を用いた3層レジスト法は、次の通りである。このプロセスにおいては、まず被加工基板上に有機層をスピンコート法などで作製する。この有機層は、被加工基板をエッチングするときのマスクとして作用するので、エッチング耐性が高いことが望ましく、上層のエッチングマスク用ケイ素含有膜とミキシングしないことが求められるので、スピンコートした後に熱あるいは酸によって架橋することが望ましい。その上に本発明エッチングマスク用ケイ素含有膜、フォトレジスト膜を前記方法で成膜する。レジスト膜は、定法に従い、レジスト膜に応じた光源、例えばKrFエキシマレーザー光や、ArFエキシマレーザー光、あるいはF2レーザー光を用いて、パターン露光し、個々のレジスト膜に合わせた条件による加熱処理の後、現像液による現像操作を行うことでレジストパターンを得ることができる。次にこのレジストパターンをエッチングマスクとして、有機系材料に対し、ケイ素含有膜のエッチング速度が優位に高いドライエッチング条件、例えばフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングでのエッチングを行う。反射防止膜と酸化ケイ素膜をエッチング加工すると、レジスト膜のサイドエッチングによるパターン変化の影響を殆ど受けずに、酸化ケイ素膜パターンを得ることができる。次に、上記で得たレジストパターンが転写されたケイ素含有膜パターンを持つ基板に対し、更に酸化ケイ素に対し、下層有機膜のエッチング速度が優位に高いドライエッチング条件、例えば酸素を含有するガスプラズマによる反応性ドライエッチングや、水素−窒素を含有するガスプラズマによる反応性ドライエッチングを行い、下層有機材料をエッチング加工する。このエッチング工程により下層有機膜のパターンが得られるが、同時に最上層のレジスト層は、通常失われる。更に、ここで得られた下層有機膜をエッチングマスクとして、被加工基板のドライエッチング、例えば、フッ素系ドライエッチングや塩素系ドライエッチングを使用することで、被加工基板を精度よくエッチング加工することができる。
【実施例】
【0101】
以下、合成例及び実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【0102】
[合成例1]
300mlのガラス製のフラスコに、テトラエトキシジメチルジシラン27g、トリエトキシトリメチルジシラン23gの混合物及びエタノール10gを仕込み、撹拌しながら0.5N塩酸水溶液15gを室温でゆっくりと加え、その後2時間撹拌した。GC及びGPCでモノマーが完全に消費されたことを確認後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を350g加え、液温を40℃に加熱しながら減圧下で溶媒交換し、ポリマー1のPGME溶液を得た。このポリマー溶液の収率を測定するため所定量の溶液を150℃,1時間乾燥機で乾燥させて蒸発残分を測定したところ、収率=100%であった。このことより、反応に仕込まれた原料がすべてポリマーに変換されており、仕込み組成からこのポリマー中のケイ素含有率及びL/(L+M+N)を求めた。ポリマー1の各物性を表1に示す。
【0103】
[合成例2]
300mlのガラス製のフラスコに、テトラエトキシジメチルジシラン27g、トリエトキシトリメチルジシラン23g、テトラエトキシシラン21g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン7g及びエタノール10gを仕込み、撹拌しながら0.5N酢酸水溶液30gを室温でゆっくりと加え、その後2時間撹拌した。GC及びGPCでモノマーが完全に消費されたことを確認後、乳酸エチル(EL)を350g加え、液温を40℃に加熱しながら減圧下で溶媒交換し、ポリマー2のEL溶液を得た。このポリマー溶液の収率を測定するため所定量の溶液を150℃,1時間乾燥機で乾燥させて蒸発残分を測定したところ、収率=100%であった。このことより、反応に仕込まれた原料がすべてポリマーに変換されており、仕込み組成からこのポリマー中のケイ素含有率及びL/(L+M+N)を求めた。ポリマー2の各物性を表1に示す。
【0104】
[合成例3]
300mlのガラス製のフラスコに、テトラエトキシジメチルジシラン27g、トリエトキシトリメチルジシラン23g、メチルトリメトキシシラン14g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン48g及びエタノール75gを仕込み、撹拌しながら0.5Nシュウ酸水溶液50gを室温でゆっくりと加え、その後2時間撹拌した。GC及びGPCでモノマーが完全に消費されたことを確認後、γ−ブチロラクトン(GBL)を600g加え、液温を40℃に加熱しながら減圧下で溶媒交換し、ポリマー3のGBL溶液を得た。このポリマー溶液の収率を測定するため所定量の溶液を150℃,1時間乾燥機で乾燥させて蒸発残分を測定したところ、収率=100%であった。このことより、反応に仕込まれた原料がすべてポリマーに変換されており、仕込み組成からこのポリマー中のケイ素含有率及びL/(L+M+N)を求めた。ポリマー3の各物性を表1に示す。
【0105】
[合成例4]
300mlのガラス製のフラスコに、テトラエトキシジメチルジシラン53g及びエタノール10gを仕込み、撹拌しながら0.5N塩酸水溶液15gを室温でゆっくりと加え、その後2時間撹拌した。GC及びGPCでモノマーが完全に消費されたことを確認後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を350g加え、液温を40℃に加熱しながら減圧下で溶媒交換し、ポリマー4のPGME溶液を得た。このポリマー溶液の収率を測定するため所定量の溶液を150℃,1時間乾燥機で乾燥させて蒸発残分を測定したところ、収率=100%であった。このことより、反応に仕込まれた原料がすべてポリマーに変換されており、仕込み組成からこのポリマー中のケイ素含有率及びL/(L+M+N)を求めた。ポリマー4の各物性を表1に示す。
【0106】
[合成例5〜9]
300mlのガラス製のフラスコに、テトラエトキシジメチルジシランをそれぞれ12g、17g、27g、37g、41g、トリエトキシトリメチルジシランをそれぞれ42g、35g、24g、14g、9g、以下すべてにつき更にそれぞれテトラエトキシシラン21g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン7g及びエタノール10gを仕込み、撹拌しながら0.5Nシュウ酸水溶液30gを室温でゆっくりと加え、その後2時間撹拌した。GC及びGPCでモノマーが完全に消費されたことを確認後、乳酸エチル(EL)を350g加え、液温を40℃に加熱しながら減圧下で溶媒交換し、ポリマー5〜9のEL溶液を得た。それぞれのポリマー溶液の収率を測定するため所定量の溶液を150℃,1時間乾燥機で乾燥させて蒸発残分を測定したところ、収率=100%であった。このことより、反応に仕込まれた原料がすべてポリマーに変換されており、仕込み組成からこのポリマー中のケイ素含有率及びL/(L+M+N)を求めた。ポリマー5〜9の各物性を表1に示す。
[合成例10]
300mlのガラス製のフラスコに、ペンタエトキシメチルジシラン30g、トリエトキシトリメチルジシラン23g、テトラエトキシシラン21g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン7g及びエタノール10gを仕込み、撹拌しながら0.5N酢酸水溶液30gを室温でゆっくりと加え、その後2時間撹拌した。GC及びGPCでモノマーが完全に消費されたことを確認後、乳酸エチル(EL)を350g加え、液温を40℃に加熱しながら減圧下で溶媒交換し、ポリマー10のEL溶液を得た。このポリマー溶液の収率を測定するため所定量の溶液を150℃,1時間乾燥機で乾燥させて蒸発残分を測定したところ、収率=100%であった。このことより、反応に仕込まれた原料がすべてポリマーに変換されており、仕込み組成からこのポリマー中のケイ素含有率及びL/(L+M+N)を求めた。ポリマー10の各物性を表1に示す。
【0107】
[合成例11]
300mlのガラス製のフラスコに、テトラエトキシラン42g、トリメトキシフェニルシラン4g及びエタノール10gを仕込み、撹拌しながら0.5N硝酸水溶液25gを室温でゆっくりと加え、その後2時間撹拌した。GC及びGPCでモノマーが完全に消費されたことを確認後、PGMEを350g加え、液温を40℃に加熱しながらの減圧下で溶媒交換し、ポリマー11のPGME溶液を得た。このポリマー溶液の収率を測定するため所定量の溶液を150℃,1時間乾燥機で乾燥させて蒸発残分を測定したところ、収率=100%であった。このことより、反応に仕込まれた原料がすべてポリマーに変換されており、仕込み組成からこのポリマー中のケイ素含有率及びL/(L+M+N)を求めた。ポリマー11の各物性を表1に示す。
【0108】
[合成例12]
300mlのガラス製のフラスコに、テトラエトキシラン42g、9−アントラセンカルボキシメチルトリエトキシシラン13g及びメタノール20gを仕込み、撹拌しながら0.5N塩酸水溶液25gを室温でゆっくりと加え、その後2時間撹拌した。GC及びGPCでモノマーが完全に消費されたことを確認後、PGMEを350g加え、液温を40℃に加熱しながらの減圧下で溶媒交換し、ポリマー12のPGME溶液を得た。このポリマー溶液の収率を測定するため所定量の溶液を150℃,1時間乾燥機で乾燥させて蒸発残分を測定したところ、収率=100%であった。このことより、反応に仕込まれた原料がすべてポリマーに変換されており、仕込み組成からこのポリマー中のケイ素含有率及びL/(L+M+N)を求めた。ポリマー12の各物性を表1に示す。
【0109】
[合成例13]
300mlのガラス製のフラスコに、テトラエトキシジメチルジシラン27g、トリエトキシトリメチルジシラン23g、テトラエトキシシラン21g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン7g及びエタノール10gを仕込み、撹拌しながら0.5Nメタンスルホン酸水溶液60gを室温でゆっくりと加え、その後20時間撹拌した。GC及びGPCでモノマーが完全に消費されたことを確認後、液温を40℃に加熱しながら減圧下で、溶媒を留去した。得られたポリマーにPGME350gを加え、完全に溶解させた。このポリマー溶液の収率を測定するため所定量の溶液を150℃,1時間乾燥機で乾燥させて蒸発残分を測定したところ、収率=100%であった。このことより、反応に仕込まれた原料がすべてポリマーに変換されており、仕込み組成からこのポリマー中のケイ素含有率及びL/(L+M+N)を求めた。ポリマー13の各物性を表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
[実施例、比較例]
表2に示すように、上記ポリマー1〜13で示される樹脂、AG1で示される酸発生剤、CL1で示される架橋剤をFC−430(住友スリーエム社製)0.1質量%を含む溶媒中に表2に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによってエッチングマスク用ケイ素含有膜溶液をそれぞれ調製し、それぞれSol 1〜13とした。
次に、上記エッチングマスク用ケイ素含有膜溶液をそれぞれシリコン基板上に塗布して、250℃で60秒間ベークして膜厚193nmのエッチングマスク用ケイ素含有膜を形成し、得られた膜をそれぞれFilm1〜13とした。それぞれの膜は、J.A.ウーラム社製の入射角度可変の分光エリプソメーター(VASE)で波長193nmにおける光学定数(屈折率:n,消衰係数:k)を求め、結果を表2に示した。
【0112】
まず、下層膜材料として、被加工基板上に例えば4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノールノボラック樹脂含有(分子量11,000)(特開2005−128509号公報:特許文献17)組成物(樹脂28質量部、溶剤100質量部)を回転塗布し、200℃で1分間加熱成膜して、膜厚300nmの下層有機膜を形成した。この下層有機膜材料としては、上記の他、ノボラック樹脂をはじめとする多数の樹脂が、多層レジスト法の下層膜材料として公知であり、それらをいずれも使用することができる。
次に、ケイ素含有中間膜材料の溶液(Sol 1〜13)を回転塗布して250℃で60秒間ベークして膜厚100nmの中間層を形成した。
【0113】
更に、上層レジスト膜を形成するため、ArFエキシマレーザー光露光用レジスト組成物(Resist1)として以下のものをFC−430(住友スリーエム社製)0.1質量%を含有するPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)溶液に溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【化8】

10質量部
光酸発生剤 :トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート
0.2質量部
塩基性化合物:トリエタノールアミン 0.02質量部
【0114】
この組成物を中間層の上に塗布し、130℃,60秒間ベークして膜厚200nmのフォトレジスト層を形成した。
次いで、ArF露光装置(ニコン社製;S305B、NA0.68、σ0.85、2/3輪体照明、Crマスク)で露光し、110℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で現像し、ポジ型のパターンを得た。得られたパターンの90nmL/Sのパターン形状を観察し、基板付近で裾引きやアンダーカット、インターミキシング現象を観察し、結果を表3に示した。
【0115】
次いで、ドライエッチング耐性のテストを行った。まず、前記光学定数測定に用いたものと同じエッチングマスク用ケイ素含有膜(Film1〜13)を作製した。これらの膜と、下層膜及びフォトレジスト膜を下記のエッチング条件(1)でエッチング試験を実施した。
(1)CHF3/CF4系ガスでのエッチング試験
装置:東京エレクトロン株式会社製ドライエッチング装置TE−8500P
エッチング条件(1):
チャンバー圧力 40.0Pa
RFパワー 1,300W
ギヤップ 9mm
CHF3ガス流量 30ml/min
CF4ガス流量 30ml/min
Arガス流量 100ml/min
処理時間 10sec
【0116】
次に、上記ArF露光と現像後に得られたレジストパターンをケイ素含有中間膜に下記エッチング条件(2)で転写した。
エッチング条件(2):
チャンバー圧力 40.0Pa
RFパワー 1,000W
ギヤップ 9mm
CHF3ガス流量 20ml/min
CF4ガス流量 60ml/min
Arガス流量 200ml/min
処理時間 30sec
【0117】
次に、中間膜に転写されたパターンを下記の酸素ガスを主体とするエッチング条件(3)で下層膜に転写した。
エッチング条件(3):
チャンバー圧力 60.0Pa
RFパワー 600W
Arガス流量 40ml/min
2ガス流量 60ml/min
ギヤップ 9mm
処理時間 20sec
【0118】
【表2】


AG1;ジ(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロブタンスルホネート
CL1;セロキサイド2021(ダイセル化学工業(株)製)
PGME;プロピレングリコールモノメチルエーテル
EL ;乳酸エチル
GBL ;γ−ブチロラクトン
【表3】

【0119】
本発明で得られた中間層膜はレジストコンパチビリティがよいので、パターン形状は矩形性のよいものが得られたが、比較例で得られたポリマーを使用した中間層膜では、上層レジスト形状は良好ではなかった。
【0120】
次に、表4に示すようにCF4/CHF3ガスのドライエッチングの速度を調べた。下層膜や上層レジスト膜に比べれば十分に速く、上層膜をマスクとしたエッチングでパターン転写することが可能である。また、下層膜エッチングにおけるハードマスクとしての十分な機能を有するものである。
【表4】

【0121】
続いて表5に示すようにO2系ガスのドライエッチングの速度を調べた。下層膜や上層レジスト膜に比べれば十分に遅く、中間層をエッチングマスクとして下層にパターン転写することが可能である。
【表5】

【0122】
また、パターン転写後の下層膜の形状も良好であることが認められた。
【0123】
更に、保存安定性試験を行った。上記で得たケイ素含有膜形成用組成物(Sol 1〜4、Sol 10〜12)を30℃で1ヶ月保管した後、上記の方法による塗布を再度行い、成膜性の変化を生じないかのテストを行った。
【表6】

【0124】
本発明により、レジスト膜に対してエッチング選択比の高い、即ち、エッチングスピードが速いエッチングマスク用ケイ素含有膜が得られた。このエッチングマスク用ケイ素含有膜は十分な反射防止効果を発揮できるだけの吸光係数を有し、また、パターニング後のレジスト形状も逆テーパー、裾引き等の発生がなく垂直形状であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工基板上に下層膜を形成し、その上にケイ素含有膜を形成し、更にその上にフォトレジスト膜を形成した後、多段階のエッチングを行う多層レジスト法の中間膜に使用するケイ素含有膜形成用組成物において、少なくとも1種の下記一般式(1)
(6-m)Si2m (1)
(Rは炭素数1〜12の非置換又は置換一価炭化水素基、Xはアルコキシ基、アルカノイルオキシ基又はハロゲン原子、R、Xは各々同じ置換基でも異なる置換基でもよく、mは6≧m≧3である。)
で示されるケイ素−ケイ素結合を有するシラン化合物を含有する、加水分解性シランの単独又は混合物を加水分解縮合して得たケイ素含有ポリマーを含有することを特徴とするエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物。
【請求項2】
前記ケイ素含有ポリマーが、上記一般式(1)のシラン化合物に加えて、更に下記一般式(2)
aSiB(4-a) (2)
(Aは水素原子、又は炭素数1〜12の非置換又は置換一価炭化水素基、Bはアルコキシ基、アルカノイルオキシ基又はハロゲン原子、A、Bは各々同じ置換基でも異なる置換基でもよく、aは0又は1である。)
で示される加水分解性シラン化合物を含有する、加水分解性シランの混合物を加水分解縮合して得たケイ素含有ポリマーであることを特徴とする請求項1記載のエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物。
【請求項3】
複数種の一般式(1)で示されるシラン化合物を用い、一般式(1)で示されるシラン化合物中では、mが4又は3である化合物が主成分であるシラン混合物を加水分解縮合して得たケイ素含有ポリマーを含有することを特徴とする請求項1又は2記載のエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物。
【請求項4】
一般式(1)で示されるシラン化合物のうち、mが4であるシラン化合物とmが3であるシラン化合物の混合比がモル比で3:7〜7:3であることを特徴とする請求項3記載のエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物。
【請求項5】
含有するケイ素含有ポリマーの重量平均分子量が20,000以下であり、重量平均分子量が500以下のものがケイ素含有ポリマー全体の5質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物。
【請求項6】
含有するケイ素含有ポリマーが、ポリマー単位質量当たりのSi−O結合の数をL、Si−Si結合の数をM、Si−C結合の数をNとしたとき、0.45≦L/(L+M+N)≦0.95を満たすことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物。
【請求項7】
前記ケイ素含有ポリマーのケイ素含有量が、(ケイ素由来質量/樹脂質量)×100として30%以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物。
【請求項8】
前記ケイ素含有ポリマーのケイ素含有量が、(ケイ素由来質量/樹脂質量)×100として40%以上であることを特徴とする請求項7記載のエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物。
【請求項9】
更に、酸発生剤を含有する請求項1乃至8のいずれか1項記載のエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物。
【請求項10】
更に、架橋剤を含有する請求項1乃至9のいずれか1項記載のエッチングマスク用ケイ素含有膜形成用組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項記載のケイ素含有膜形成用組成物を用いて成膜したことを特徴とするエッチングマスク用ケイ素含有膜。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項記載のケイ素含有膜形成用組成物を用いて成膜し、ケイ素含有ポリマーを架橋させることで有機溶剤に対する溶解抑制を行ったことを特徴とするエッチングマスク用ケイ素含有膜。
【請求項13】
被加工基板上に下層膜とレジスト膜の間に他の膜を介し又は介することなしに成膜した請求項11又は12記載のエッチングマスク用ケイ素含有膜。
【請求項14】
被加工基板上に、下層膜、請求項11又は12記載のケイ素含有膜及びフォトレジスト膜を積層したことを特徴とする基板加工中間体。
【請求項15】
フォトレジスト層を構成する樹脂が、酸不安定基で保護されてアルカリ不溶性化したポリ(メタ)アクリル酸系のアルカリ可溶性樹脂であることを特徴とする請求項14記載の基板加工中間体。
【請求項16】
フォトレジスト膜が、隣接位炭素がフッ素置換されることにより酸性を示すアルコール官能基を有する側鎖を含有するポリマーを含有することを特徴とする請求項14又は15記載の基板加工中間体。
【請求項17】
請求項14、15又は16記載の基板加工中間体を用い、レジストパターンを形成した後、レジストパターンをエッチングマスクとしてケイ素含有膜をエッチング加工し、次にパターン形成されたケイ素含有膜をエッチングマスクとして下層膜をエッチング加工し、更にパターン形成された下層膜をエッチングマスクとして被加工基板をエッチング加工することを特徴とする被加工基板の加工方法。
【請求項18】
レジストパターンの形成において、ArFエキシマレーザー光を用いたフォトリソグラフィー法を用いることを特徴とする請求項17記載の被加工基板の加工方法。

【公開番号】特開2007−164148(P2007−164148A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284615(P2006−284615)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】