説明

エッチング性に優れたプリント配線板用銅箔及び積層体

【課題】回路パターン形成の際のエッチング性が良好でファインピッチ化に適し、磁性が良好に抑制されたプリント配線板用銅箔及び積層体を提供する。
【解決手段】プリント配線板用銅箔は、銅箔基材と、銅箔基材の表面の少なくとも一部を被覆し、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上を含む被覆層と、銅箔基材と被覆層との間に形成された酸化層とを備えた銅箔であって、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上の原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とし、酸素の原子濃度(%)をh(x)とし、炭素の原子濃度(%)をi(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をj(x)とすると、h(x)≧5%の酸化層と銅箔基材との境界が表層から0.5〜10nmの範囲に存在し、区間[0、1.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.9で、区間[1.0、4.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.6を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用銅箔及び積層体に関し、特にフレキシブルプリント配線板用のプリント配線板用銅箔及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板はここ半世紀に亘って大きな進展を遂げ、今日ではほぼすべての電子機器に使用されるまでに至っている。近年の電子機器の小型化、高性能化ニーズの増大に伴い搭載部品の高密度実装化や信号の高周波化が進展し、プリント配線板に対して導体パターンの微細化(ファインピッチ化)や高周波対応等が求められている。
【0003】
プリント配線板は、銅箔に絶縁基板を接着、もしくは絶縁基板上にNi合金等を蒸着させた後に電気めっきで銅層を形成させて積層体とした後に、エッチングにより銅箔または銅層面に導体パターンを形成するという工程を経て製造されるのが一般的である。そのため、プリント配線板用の銅箔または銅層には良好なエッチング性が要求される。
【0004】
銅箔は、樹脂との非接着面に表面処理を施さないと、エッチング後の銅箔回路の銅部分が、銅箔の表面から下に向かって、すなわち樹脂層に向かって、末広がりにエッチングされる(ダレを発生する)。通常は、回路側面の角度が小さい「ダレ」となり、特に大きな「ダレ」が発生した場合には、樹脂基板近傍で銅回路が短絡し、不良品となる場合もある。ここで、図6に、銅回路形成時に「ダレ」を生じて樹脂基板近傍で銅回路が短絡した例を示す回路表面の拡大写真を示す。
【0005】
このような「ダレ」は極力小さくすることが必要であるが、このような末広がりのエッチング不良を防止するために、エッチング時間を延長して、エッチングをより多くして、この「ダレ」を減少させることも考えられる。しかし、この場合は、すでに所定の幅寸法に至っている箇所があると、そこがさらにエッチングされることになるので、その銅箔部分の回路幅がそれだけ狭くなり、回路設計上目的とする均一な線幅(回路幅)が得られず、特にその部分(細線化された部分)で発熱し、場合によっては断線するという問題が発生する。電子回路のファインパターン化がさらに進行する中で、現在もなお、このようなエッチング不良による問題がより強く現れ、回路形成上で、大きな問題となっている。
【0006】
これらを改善する方法として、エッチング面側の銅箔に銅よりもエッチング速度が遅い金属又は合金層を形成した表面処理が特許文献1に開示されている。この場合の金属又は合金としては、Ni、Co及びこれらの合金である。回路設計に際しては、レジスト塗布側、すなわち銅箔の表面からエッチング液が浸透するので、レジスト直下にエッチング速度が遅い金属又は合金層があれば、その近傍の銅箔部分のエッチングが抑制され、他の銅箔部分のエッチングが進行するので、「ダレ」が減少し、より均一な幅の回路が形成できるという効果をもたらすという、従来技術と比較して急峻な回路形成が可能となり、大きな進歩があったと言える。
【0007】
また、特許文献2では、厚さ1000〜10000ÅのCu薄膜を形成し、該Cu薄膜の上に厚さ10〜300Åの銅よりもエッチング速度が遅いNi薄膜を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−176242号公報
【特許文献2】特開2000−269619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、回路の微細化、高密度化がさらに進行し、より急峻に傾斜する側面を有する回路が求められている。しかしながら、特許文献1に記載される技術ではこれらには対応できない。
【0010】
また、特許文献1に記載される表面処理層はソフトエッチングにより除去する必要があること、さらには樹脂との非接着面表面処理銅箔は、積層体に加工される工程で、樹脂の貼付け等の高温処理が施される。これは表面処理層の酸化を引き起こし、結果として銅箔のエッチング性は劣化する。
【0011】
前者については、エッチング除去の時間をなるべく短縮し、きれいに除去するためには、表面処理層の厚さを極力薄くすることが必要であること、また後者の場合には、熱を受けるために、下地の銅層が酸化され(変色するので、通称「ヤケ」と言われている。)、レジストの塗布性(均一性、密着性)の不良やエッチング時の界面酸化物の過剰エッチングなどにより、パターンエッチングでのエッチング性、ショート、回路パターンの幅の制御性などの不良が発生するという問題があるので、改良が必要か又は他の材料に置換することが要求されている。
【0012】
さらに、特許文献1及び2に記載される表面処理層はNiやCoを用いて形成されているが、NiやCoはその磁性により電子機器に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0013】
そこで、本発明は、回路パターン形成の際のエッチング性が良好でファインピッチ化に適し、磁性が良好に抑制されたプリント配線板用銅箔及び積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討の結果、微量の貴金属を銅箔のエッチング面に付着させた場合に、形成された回路の裾引きが小さくなることを見出した。これにより、銅箔の厚みが薄くなくても裾引きが小さい回路を形成することが可能となるため、高密度実装基板の形成が可能となる。また、これらの貴金属元素はNiやCoのような強磁性を有しないことに加えて、極微量であるため、電子機器に及ぼす影響はないと期待される。また、極微量の貴金属を銅箔の酸化層の上に直接形成させることで、酸化物が表面に一部露出する。このため、銅箔の表面処理面の初期エッチング性が良好となる。
【0015】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、銅箔基材と、銅箔基材の表面の少なくとも一部を被覆し、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上を含む被覆層と、銅箔基材と被覆層との間に形成された酸化層とを備えた銅箔であって、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上の原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とし、酸素の原子濃度(%)をh(x)とし、炭素の原子濃度(%)をi(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をj(x)とすると、h(x)≧5%の酸化層と銅箔基材との境界が表層から0.5〜10nmの範囲に存在し、区間[0、1.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.9で、区間[1.0、4.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.6を満たすプリント配線板用銅箔である。
【0016】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の一実施形態においては、ポリイミド硬化相当の熱処理を行った時、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上の原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とし、酸素の原子濃度(%)をh(x)とし、炭素の原子濃度(%)をi(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をj(x)とすると、区間[0、1.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.3で、区間[1.0、4.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.3を満たす。
【0017】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の別の一実施形態においては、ポリイミド硬化相当の熱処理が行われたプリント配線板用銅箔であって、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上の原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とし、酸素の原子濃度(%)をh(x)とし、炭素の原子濃度(%)をi(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をj(x)とすると、区間[0、1.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.3で、区間[1.0、4.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.3を満たす。
【0018】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、被覆層に含まれる金属が、白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上である。
【0019】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、被覆層における白金の付着量が1050μg/dm2以下、パラジウムの付着量が600μg/dm2以下、金の付着量が1000μg/dm2以下である。
【0020】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、被覆層における白金の付着量が20〜400μg/dm2、パラジウムの付着量が20〜250μg/dm2、金の付着量が20〜400μg/dm2である。
【0021】
本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に別の一実施形態においては、プリント配線板はフレキシブルプリント配線板である。
【0022】
本発明は別の一側面において、本発明に係る銅箔で構成された圧延銅箔又は電解銅箔を準備する工程と、銅箔の被覆層をエッチング面として銅箔と樹脂基板との積層体を作製する工程と、積層体を塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いてエッチングし、銅の不必要部分を除去して銅の回路を形成する工程とを含む電子回路の形成方法である。
【0023】
本発明は更に別の一側面において、本発明に係る銅箔と樹脂基板との積層体である。
【0024】
本発明は更に別の一側面において、銅層と樹脂基板との積層体であって、銅層の表面の少なくとも一部を被覆する本発明に係る被覆層と、銅層と被覆層との間に形成された本発明に係る酸化層とを備えた積層体である。
【0025】
本発明に係る積層体の一実施形態においては、樹脂基板がポリイミド基板である。
【0026】
本発明は更に別の一側面において、本発明に係る積層体を材料としたプリント配線板である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、回路パターン形成の際のエッチング性が良好でファインピッチ化に適し、磁性が良好に抑制されたプリント配線板用銅箔及び積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】回路パターンの一部の表面写真、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図、及び、該模式図を用いたエッチングファクター(EF)の計算方法の概略である。
【図2】実施例19に係る銅箔のXPSによる深さ方向の濃度プロファイルである。
【図3】実施例21に係る銅箔のXPSによる深さ方向の濃度プロファイルである。
【図4】実施例27により形成された回路およびその断面を示す写真である。
【図5】比較例9により形成された回路を示す写真である。
【図6】銅回路形成時に「ダレ」を生じて樹脂基板近傍で銅回路が短絡した例を示す回路表面の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(銅箔基材)
本発明に用いることのできる銅箔基材の形態に特に制限はないが、典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で用いることができる。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。屈曲性が要求される用途には圧延銅箔を適用することが多い。
銅箔基材の材料としてはプリント配線板の導体パターンとして通常使用されるタフピッチ銅や無酸素銅といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
【0030】
本発明に用いることのできる銅箔基材の厚さについても特に制限はなく、プリント配線板用に適した厚さに適宜調節すればよい。例えば、5〜100μm程度とすることができる。但し、ファインパターン形成を目的とする場合には30μm以下、好ましくは20μm以下であり、典型的には5〜20μm程度である。
【0031】
本発明に使用する銅箔基材は、特に限定されないが、例えば、粗化処理をしないものを用いても良い。従来は特殊めっきで表面にμmオーダーの凹凸を付けて表面粗化処理を施し、物理的なアンカー効果によって樹脂との接着性を持たせるケースが一般的であるが、一方でファインピッチや高周波電気特性は平滑な箔が良いとされ、粗化箔では不利な方向に働くことがある。また、粗化処理をしないものであると、粗化処理工程が省略されるので、経済性・生産性向上の効果がある。
【0032】
(1)被覆層の構成
銅箔基材の絶縁基板との接着面の反対側(回路形成予定面側)の表面の少なくとも一部には、被覆層が形成されている。被覆層は、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上を含んでおり、好ましくは、白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上を含んでいる。また、銅箔基材と被覆層との間には、酸化層が形成されている。酸化層は、XPSで表面分析を行ったとき、酸素原子濃度が5%以上である領域をいう。
なお、銅箔基材の絶縁基板との接着面側には、絶縁基板との接着性向上のために、例えば銅箔基材表面から順に積層した中間層及び表層で構成された別の被覆層を形成してもよい。この場合、中間層は、例えば、Ni、Mo、Ti、Zn、Co、V、Sn、Mn、Nb、Ta及びCrの少なくともいずれか1種を含むのが好ましい。中間層は、金属の単体で構成されていてもよく、例えば、Ni、Mo、Ti、Zn、Co、Nb及びTaのいずれか1種で構成されるのが好ましい。中間層は、合金で構成されていてもよく、例えば、Ni、Zn、V、Sn、Mn、Cr及びCuの少なくともいずれか2種の合金で構成されるのが好ましい。
【0033】
(2)被覆層の同定
被覆層の同定はXPS、若しくはAES等表面分析装置にて表層からアルゴンスパッタし、深さ方向の化学分析を行い、夫々の検出ピークの存在によって同定することができる。
【0034】
(3)被覆層表面の原子濃度
被覆層の貴金属原子濃度が高すぎると、初期エッチング性が悪くなり、本発明に係る良好なエッチング性を得ることが困難となる。また、本発明の効果である良好なエッチング性を得るためには、ある程度の貴金属原子濃度が必要となる。このため、本発明に係る被覆層は、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上の原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とし、酸素の原子濃度(%)をh(x)とし、炭素の原子濃度(%)をi(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をj(x)とすると、区間[0、1.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.9で、区間[1.0、4.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.6を満たす。
また、極微量の貴金属を銅箔の酸化層の上に直接形成させると酸化物が表面に一部露出し、これにより銅箔の表面処理面の初期エッチング性が良好となる。このため、本発明に係る銅箔は、h(x)≧5%の酸化層と銅箔基材との境界が表層から0.5〜10nmの範囲に存在する。
【0035】
また、ポリイミド硬化相当の熱処理(窒素雰囲気、350℃、2時間加熱)を行った時、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上の原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とし、酸素の原子濃度(%)をh(x)とし、炭素の原子濃度(%)をi(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をj(x)とすると、区間[0、1.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.3で、区間[1.0、4.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.3を満たすことが好ましい。
【0036】
また、ポリイミド硬化相当の熱処理(窒素雰囲気、350℃、2時間加熱)が行われたプリント配線板用銅箔であって、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上の原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とし、酸素の原子濃度(%)をh(x)とし、炭素の原子濃度(%)をi(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をj(x)とすると、区間[0、1.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.3で、区間[1.0、4.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.3を満たすことが好ましい。
【0037】
(4)付着量
被覆層が白金で構成されている場合は、白金の付着量が1050μg/dm2以下であり、20〜400μg/dm2であるのがより好ましく、50〜300μg/dm2であるのが更により好ましい。被覆層がパラジウムで構成されている場合は、パラジウムの付着量が600μg/dm2以下であり、20〜250μg/dm2であるのがより好ましく、30〜180μg/dm2であるのが更により好ましい。被覆層が金で構成されている場合は、金の付着量が1000μg/dm2以下であり、20〜400μg/dm2であるのがより好ましく、50〜300μg/dm2であるのが更により好ましい。被覆層の白金の付着量が15μg/dm2未満、被覆層のパラジウムの付着量が10μg/dm2未満、及び、被覆層の金の付着量が10μg/dm2未満であると、それぞれ効果が十分でない。一方、被覆層の白金の付着量が1050μg/dm2、被覆層のパラジウムの付着量が600μg/dm2、及び、被覆層の金の付着量が1000μg/dm2を超えると、それぞれ初期エッチング性に悪影響を及ぼす。
【0038】
さらに、被覆層上には、防錆効果を高めるためにさらにクロム層若しくはクロメート層及び又はシラン処理層を形成することができる。また、被覆層と銅箔との間に、さらに加熱処理による酸化を抑制するため、初期エッチング性に影響を及ぼさない限り、耐加熱変色性の観点から下地層を形成してもよい。下地層としてはニッケル、ニッケル合金、コバルト、銀、マンガンが好ましい。下地層を設ける方法は、乾式法及び湿式法のいずれを用いても良い。
【0039】
(銅箔の製造方法)
本発明に係るプリント配線板用銅箔は、スパッタリング法により形成することができる。すなわち、スパッタリング法によって銅箔基材の表面の少なくとも一部を、被覆層により被覆する。具体的には、スパッタリング法によって、銅箔のエッチング面側に銅よりもエッチングレートの低い白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上からなる被覆層を形成する。被覆層は、スパッタリング法に限らず、例えば、電気めっき、無電解めっき等の湿式めっき法で形成してもよい。
【0040】
(プリント配線板の製造方法)
本発明に係る銅箔を用いてプリント配線板(PWB)を常法に従って製造することができる。以下に、プリント配線板の製造方法の例を示す。
【0041】
まず、銅箔と絶縁基板とを貼り合わせて積層体を製造する。銅箔が積層される絶縁基板はプリント配線板に適用可能な特性を有するものであれば特に制限を受けないが、例えば、リジッドPWB用に紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂等を使用し、FPC用にポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等を使用する事ができる。
【0042】
貼り合わせの方法は、リジッドPWB用の場合、ガラス布などの基材に樹脂を含浸させ、樹脂を半硬化状態まで硬化させたプリプレグを用意する。銅箔を被覆層の反対側の面からプリプレグに重ねて加熱加圧させることにより行うことができる。
【0043】
フレキシブルプリント配線板(FPC)用の場合、ポリイミドフィルム又はポリエステルフィルムと銅箔とをエポキシ系やアクリル系の接着剤を使って接着することができる(3層構造)。また、接着剤を使用しない方法(2層構造)としては、ポリイミドの前駆体であるポリイミドワニス(ポリアミック酸ワニス)を銅箔に塗布し、加熱することでイミド化するキャスティング法や、ポリイミドフィルム上に熱可塑性のポリイミドを塗布し、その上に銅箔を重ね合わせ、加熱加圧するラミネート法が挙げられる。キャスティング法においては、ポリイミドワニスを塗布する前に熱可塑性ポリイミド等のアンカーコート材を予め塗布しておくことも有効である。
【0044】
本発明に係る積層体は各種のプリント配線板(PWB)に使用可能であり、特に制限されるものではないが、例えば、導体パターンの層数の観点からは片面PWB、両面PWB、多層PWB(3層以上)に適用可能であり、絶縁基板材料の種類の観点からはリジッドPWB、フレキシブルPWB(FPC)、リジッド・フレックスPWBに適用可能である。また、本発明に係る積層体は、銅箔を樹脂基板に貼り付けてなる上述のような銅張積層板に限定されない。すなわち、樹脂基板上にスパッタリング又はめっき等で銅層を形成し、上述の表面処理が行われたメタライジング材からなる積層体であってもよい。
【0045】
上述のように作製した積層体の銅箔上に形成された被覆層表面にレジストを塗布し、マスクによりパターンを露光し、現像することによりレジストパターンを形成したものをエッチング液に浸漬する。このとき、エッチングを抑制する白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種からなる被覆層は、銅箔上のレジスト部分に近い位置にあり、レジスト側の銅箔のエッチングは、この被覆層近傍がエッチングされていく速度よりも速い速度で、被覆層から離れた部位の銅のエッチングが進行することにより、銅の回路パターンのエッチングがほぼ垂直に進行する。これにより銅の不必要部分を除去されて、次いでエッチングレジストを剥離・除去して回路パターンを露出することができる。
積層体に回路パターンを形成するために用いるエッチング液に対しては、被覆層のエッチング速度は、銅よりも十分に小さいためエッチングファクターを改善する効果を有する。エッチング液は、塩化第二銅水溶液、又は、塩化第二鉄水溶液等を用いることができるが、特に塩化第二鉄水溶液が有効である。微細回路はエッチングに時間が掛かるが、塩化第二鉄水溶液の方が塩化第二銅水溶液よりもエッチング速度が早いためである。また、被覆層を形成する前に、あらかじめ銅箔基材表面に耐熱層を形成しておいてもよい。
【0046】
(プリント配線板の銅箔表面の回路のラインパターン形状)
上述のように被覆層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路の各ラインパターンは、その長尺状の2つの側面が絶縁基板上に垂直に形成されるのではなく、通常、銅箔の表面から下に向かって、すなわち樹脂層に向かって、末広がりに形成される(ダレの発生)。これにより、長尺状の2つの側面はそれぞれ絶縁基板表面に対して傾斜角θを有している。現在要求されている回路パターンの微細化(ファインピッチ化)のためには、ラインパターンのピッチをなるべく狭くすることが重要であるが、この傾斜角θが小さいと、それだけダレが大きくなり、ラインパターンのピッチが広くなってしまう。また、傾斜角θは、通常、各ラインパターン及びラインパターン内で完全に一定ではない。このような傾斜角θのばらつきが大きいと、回路の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、被覆層側からエッチングされて形成されたプリント配線板の銅箔表面の回路の各ラインパターンは、長尺状の2つの側面がそれぞれ絶縁基板表面に対して65〜90°の傾斜角θを有し、且つ、同一回路内のtanθの標準偏差が1.0以下であるのが望ましい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0048】
(例1:実施例1〜51)
(銅箔への被覆層の形成)
実施例1〜18及び25〜51の銅箔基材として、厚さ17μm及び12μmの粗化処理をしていない圧延銅箔(日鉱金属製C1100)を用意した。圧延銅箔の表面粗さ(Rz)はそれぞれ0.2μm、0.5μmであった。また、実施例19〜24の銅箔基材として、厚さ9μmの電解銅箔(日鉱金属製JTC箔)を用意した。電解銅箔の樹脂との接着面の表面粗さ(Rz)は3.8μm、エッチング面の表面粗さ(Rz)は0.21μmであった。
【0049】
銅箔の表面にAu、Pt、Pdのターゲットを以下の装置及び条件でスパッタリングすることにより、被覆層を形成した。被覆層の厚さは成膜時間を調整することにより変化させた。スパッタリングに使用した各種金属の単体は純度が3Nのものを用いた。
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
・到達真空度:1.0×10-5Pa
・スパッタリング圧:0.2Pa
・スパッタリング電力:50W
・ターゲット:エッチング面用
Au、Pt、Pd(3N)
Au−50wt%Pd、Pt−50wt%Pd
Au−50wt%Pt
Ni、Zn、Co、Cr、Ag、Mo(3N)
Ni−20wt%Zn、Ni−20wt%Sn
・ターゲット:接着面用
Ni、Cr(3N)
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間約0.2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単位時間当たりのスパッタレートを算出した。
ただし、被覆層の形成の前に、銅箔のエッチング面の逆スパッタリングは行わなかった。
【0050】
被覆層を設けた銅箔に対して、被覆層と反対側の表面にあらかじめ付着している薄い酸化被膜を逆スパッタリング(逆スパッタリング電力:100W)によって取り除き、Ni層及びCr層を順に成膜した。
上記手順で表面処理が施された銅箔に、接着剤付ポリイミドフィルム(ニッカン工業製、CISV1215)を7kgf/cm2の圧力、160℃で40分間の加熱プレスで積層させた。一部の銅箔は、窒素雰囲気下で350℃で2時間保持した後に、上記手順でポリイミドフィルムと積層させた。
【0051】
<付着量の測定>
被覆層のAu,Pd、Ptの付着量測定は、王水で表面処理銅箔サンプルを溶解させ、その溶解液を希釈し、原子吸光分析法で行った。
【0052】
<XPSによる測定>
被覆層のデプスプロファイルを作成した際のXPSの稼働条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10-7Pa
・X線:単色AlKαまたは非単色MgKα、エックス線出力300W、検出面積800μmφ、試料と検出器のなす角度45°
・イオン線:イオン種Ar+、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリングレート2.0nm/min(SiO2換算)
・測定はスパッタによる成膜後、接着強度測定時のポリイミド硬化条件(350℃×30分)よりも過酷な条件の熱処理(350℃×120分)を施した状態の被膜層をそれぞれ分析した。
【0053】
(エッチングによる回路形状)
銅箔のエッチング面をアセトンで脱脂し、硫酸(100g/L)に30秒浸漬させて、表面の汚れ及び酸化層を取り除いた。次に、スピンコーターを用いて液体レジスト(東京応化工業製、OFPR−800LB)をエッチング面に滴下し、乾燥させた。乾燥後のレジスト厚みは1μmとなるように調整した。その後、露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を以下の条件で実施した。
【0054】
<エッチング条件>
・塩化第二鉄水溶液:(37wt%、ボーメ度:40°)
・液温:50°C
・スプレー圧:0.25MPa
(50μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=33μm/17μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:25μm
・エッチング時間:10〜130秒
(30μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=25μm/5μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:15μm
・エッチング時間:30〜70秒
・エッチング終点の確認:時間を変えてエッチングを数水準行い、光学顕微鏡で回路間に銅が残存しなくなるのを確認し、これをエッチング時間とした。
エッチング後、45℃のNaOH水溶液(100g/L)に1分間浸漬させてレジストを剥離した。
【0055】
<エッチングファクターの測定条件>
エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。図1に、回路パターンの一部の表面写真と、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。このaは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。このエッチングファクターを用いることにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。さらに、傾斜角θは上記手順で測定したa及び銅箔の厚さbを用いてアークタンジェントを計算することにより算出した。これらの測定範囲は回路長600μmで、12点のエッチングファクター、その標準偏差及び傾斜角θの平均値を結果として採用した。
【0056】
(例2:実施例52〜54)
銅層厚み8μmのメタライジングCCL(日鉱金属製マキナス、銅層側Ra0.01μm、タイコート層の金属付着量Ni1780μg/dm2、Cr360μg/dm2)に例1の手順でAu、Pt、Pdを蒸着させ、エッチング性を評価した。
【0057】
(例3:実施例55〜60)
絶縁基板との接着面に粗化処理、エッチング面に2種類の防錆処理(Niめっき+クロメート、NiZn合金めっき+Znクロメート)を施した厚さ9μmの圧延銅箔(BHYA箔)を用意した。粗化処理面、防錆処理面のRaはともに0.11μmであった。このエッチング面に例1の手順でAu、Pt、Pdを蒸着させ、エッチング性を評価した。
【0058】
(例4:比較例1〜3:ブランク材)
12μm厚、17μm厚及び9μm厚の圧延又は電解銅箔を準備し、エッチング面には表面処理を施さず、接着面には例1と同じ手順で表面処理を施し、それぞれ例1と同じ手順でポリイミドフィルムを接着した。次にエッチング面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を例1の条件で実施した。
【0059】
(例5:比較例4〜9)
例1で使用した銅箔基材のエッチング面にスパッタリング時間を変化させてAu、Pt、Pdの付着量を変化させた。接着面には例1と同じ手順で表面処理を施し、それぞれ例1と同じ手順でポリイミドフィルムを接着した。次にエッチング面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を例1の条件で実施した。
【0060】
(例6:比較例10)
厚み17μmの圧延銅箔の片面に下記条件でNiめっきを施した後、その反対面に例1の手順でスパッタリングによる表面処理を施した。Niめっきを施した面がエッチング面となるよう、この銅箔に例1の手順でポリイミドフィルムを接着させ、エッチングにより回路を形成した。
・Ni:30g/L
・pH:3.0
・温度:50℃
・電流密度:35A/dm2
・時間:4秒
【0061】
(例7:比較例11〜12)
絶縁基板との接着面に粗化処理、エッチング面に2種類の防錆処理(Niめっき+クロメート、NiZn合金めっき+Znクロメート)を施した厚さ9μmの圧延銅箔(BHYA箔)を用意した。これらを例1の手順でエッチングした。
例1〜7の各測定結果を表1〜6に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
<評価>
(実施例1〜60)
実施例1、6、11では、やや裾引きがおおきかったものの、50μmピッチ及び30μmピッチの両方のレジストパターンで回路を形成することができた。
実施例2〜5、7〜10、12〜18では、50μmピッチ及び30μmピッチの両方のレジストパターンでエッチングファクターが大きく且つバラツキもない回路を形成することができた。
実施例19〜21では、樹脂との接着面に粗化処理が施されていても、50μmピッチ及び30μmピッチの両方のレジストパターンで、エッチングファクターが大きく且つバラツキもない回路を形成することができた。
実施例22〜24では、銅箔にポリイミド硬化相当の熱処理を施し、表層の貴金属が拡散した状態でも、50μmピッチ及び30μmピッチの両方のレジストパターンで、エッチングファクターが大きく且つバラツキもない回路を形成することができた。
実施例25〜27では銅箔の厚みが17μmであっても、50μmピッチ及び30μmピッチの両方のレジストパターンで、エッチングファクターが大きく且つバラツキもない回路を形成することができた。
実施例28〜51では、Ni、Zn、Co、Cr、Ag、Sn及びMoを被覆層の下地層とした場合であっても、50μmピッチ及び30μmピッチの両方のレジストパターンで、エッチングファクターが大きく且つバラツキもない回路を形成することができた。
実施例52〜54では、銅箔として厚み8μmのメタライジングCCLを用いた場合であっても、50μmピッチ及び30μmピッチの両方のレジストパターンで、エッチングファクターが大きく且つバラツキもない回路を形成することができた。
実施例55〜60では、通常の2種類の防錆処理(Niめっき+クロメート、NiZn合金めっき+Znクロメート)を施した厚さ9μmの銅箔であって、樹脂との接着面に粗化処理が施されたものであっても、50μmピッチ及び30μmピッチの両方のレジストパターンで、エッチングファクターが大きく且つバラツキもない回路を形成することができた。
図2に、実施例19に係る銅箔のXPSによる深さ方向の濃度プロファイルを示す。図3に、実施例21に係る銅箔のXPSによる深さ方向の濃度プロファイルを示す。図4に、実施例27により形成された回路の写真およびその断面写真を示す。
【0069】
(比較例1〜12)
比較例1〜3は、それぞれ銅箔表面が未処理であるブランク材であり、いずれのレジストパターンでも回路の裾引きが大きくなった。特に比較例2において、30μmピッチのレジストパターンでは、銅箔厚み方向のエッチングが完了する前に回路上方でのサイドエッチが進行したために、回路を形成することができなかった。
比較例4〜9ではPt、Pd、Auの付着量が過剰であったこと、表層の貴金属層が厚くて酸化層が最表層に露出してなかったことから、初期エッチング性が非常に悪く、銅箔エッチング面の耐腐食性が向上したために、30μmピッチのレジストパターンで回路を形成することができなかった。
比較例10〜12では、貴金属の被覆層を形成していないため、エッチング性が不良となり、50μm及び30μmピッチの両方におけるレジストパターンで回路のダレが大きくなった。
図5に、比較例9により形成された回路の写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔基材と、該銅箔基材の表面の少なくとも一部を被覆し、白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上を含む被覆層と、該銅箔基材と該被覆層との間に形成された酸化層とを備えた銅箔であって、
XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上の原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とし、酸素の原子濃度(%)をh(x)とし、炭素の原子濃度(%)をi(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をj(x)とすると、h(x)≧5%の酸化層と前記銅箔基材との境界が表層から0.5〜10nmの範囲に存在し、区間[0、1.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.9で、区間[1.0、4.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.6を満たすプリント配線板用銅箔。
【請求項2】
ポリイミド硬化相当の熱処理を行った時、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上の原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とし、酸素の原子濃度(%)をh(x)とし、炭素の原子濃度(%)をi(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をj(x)とすると、区間[0、1.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.3で、区間[1.0、4.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.3を満たす請求項1に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項3】
ポリイミド硬化相当の熱処理が行われたプリント配線板用銅箔であって、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)の白金族金属、金、及び、銀からなる群から選択される1種以上の原子濃度(%)をf(x)とし、銅の原子濃度(%)をg(x)とし、酸素の原子濃度(%)をh(x)とし、炭素の原子濃度(%)をi(x)とし、その他の金属の原子濃度の総和をj(x)とすると、区間[0、1.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.3で、区間[1.0、4.0]において、0.01≦∫f(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) ≦0.3を満たす請求項1又は2に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項4】
前記被覆層に含まれる金属が、白金、パラジウム、及び、金のいずれか1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項5】
前記被覆層における白金の付着量が1050μg/dm2以下、パラジウムの付着量が600μg/dm2以下、金の付着量が1000μg/dm2以下である請求項4に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項6】
前記被覆層における白金の付着量が20〜400μg/dm2、パラジウムの付着量が20〜250μg/dm2、金の付着量が20〜400μg/dm2である請求項5に記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項7】
プリント配線板はフレキシブルプリント配線板である請求項1〜6のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の銅箔で構成された圧延銅箔又は電解銅箔を準備する工程と、
前記銅箔の被覆層をエッチング面として該銅箔と樹脂基板との積層体を作製する工程と、
前記積層体を塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いてエッチングし、銅の不必要部分を除去して銅の回路を形成する工程と、
を含む電子回路の形成方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の銅箔と樹脂基板との積層体。
【請求項10】
銅層と樹脂基板との積層体であって、
前記銅層の表面の少なくとも一部を被覆する請求項1〜7のいずれかに記載の被覆層と、該銅層と該被覆層との間に形成された請求項1〜7のいずれかに記載の酸化層とを備えた積層体。
【請求項11】
前記樹脂基板がポリイミド基板である請求項9又は10に記載の積層体。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかに記載の積層体を材料としたプリント配線板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−210988(P2011−210988A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77860(P2010−77860)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】