エッチング方法、エッチング装置、および記憶媒体
【課題】工程および装置構成を煩雑にすることなく、高エッチングレートで銅を異方性エッチングする装置、及びその方法を実施するプログラムを記憶した媒体を提供する。
【解決手段】チャンバ内に表面に銅膜104を有する基板101を配置し、チャンバ内を真空状態としつつ、チャンバ内に有機化合物106を供給し、銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射し、酸素ガスクラスターイオンビーム中の酸素ガスクラスターイオン107により、銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させて銅膜を異方的にエッチングする。
【解決手段】チャンバ内に表面に銅膜104を有する基板101を配置し、チャンバ内を真空状態としつつ、チャンバ内に有機化合物106を供給し、銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射し、酸素ガスクラスターイオンビーム中の酸素ガスクラスターイオン107により、銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させて銅膜を異方的にエッチングする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Cu膜をエッチングするエッチング方法およびエッチング装置、ならびに記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体集積回路装置の動作の高速化が進展している。動作の高速化は、配線材料の低抵抗化などにより実現される。このため、配線材料は、従来のアルミニウムに代わり、より低抵抗な銅が用いられるようになってきている。
【0003】
銅配線の加工技術としては、銅はアルミニウムと異なりエッチングされ難い材料であることから、あらかじめ配線パターンに応じた溝を層間絶縁膜に形成し、この溝を埋めるように銅薄膜を形成し、CMP法を用いて銅薄膜を化学的機械研磨し、溝の内部のみに銅を残すダマシン法が用いられてきた。
【0004】
しかし、ダマシン法は工程が複雑であることから、アルミニウムと同様のドライエッチング技術で配線の形成を行うことが求められており、銅のドライエッチング技術として、銅膜に対して異方性酸化処理を施した後、それによって形成された酸化銅を有機酸によりドライエッチングする技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−027788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、異方性酸化処理と有機酸ドライエッチングの2段階の工程であり、しかも、ある程度深いホールやトレンチをエッチングする場合には、異方性酸化処理と有機酸ドライエッチングを複数回繰り返す必要があり、工程が煩雑である。また、銅を酸化してから有機酸でエッチングするため、エッチングレートをあまり高くすることができない。また、有機酸ドライエッチングの際に基板を加熱する必要があり、装置構成が煩雑になるとともに、下地にダメージを与えるおそれがある。また、有機酸を多く供給する必要があり、反応効率が悪いとともに副生成物が生じやすい。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、工程および装置構成を煩雑にすることなく、高エッチングレートで銅を異方性エッチングすることができるエッチング方法およびエッチング装置を提供すること、およびそのようなエッチング方法を実施するためのプログラムを記憶した記憶媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、基板表面の銅膜を異方的にエッチングするエッチング方法であって、チャンバ内に表面に銅膜を有する基板を配置し、前記チャンバ内を真空状態としつつ、前記チャンバ内に有機化合物を供給し、前記銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射し、前記酸素ガスクラスターイオンビーム中の酸素ガスクラスターイオンにより、前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させて銅膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング方法を提供する。
【0009】
上記第1の観点の方法において、前記チャンバへの前記有機化合物の供給と、前記酸素ガスクラスターイオンの照射を同時に行って連続的に銅膜を異方性エッチングすることが好ましい。
【0010】
また、前記有機化合物としては有機酸を好適に用いることができる。有機酸としては、酢酸等のカルボン酸が好ましい。
【0011】
上記第1の観点の方法において、前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させる際のエネルギーは、前記酸素ガスクラスターイオンが前記銅膜に衝突した際の熱により供給され、前記基板を加熱することなくエッチングが行われることが好ましい。この場合に、前記基板を加熱しないことにより、前記チャンバ内に供給された有機化合物の分子を前記銅膜の表面に吸着しやすくし、前記酸素ガスクラスターイオンビームが前記有機化合物分子に妨げられない程度の真空度になるような供給量で前記有機化合物を供給するようにすることができる。
【0012】
また、上記エッチング方法において、基板温度を制御するようにしてもよい。基板温度は有機化合物の沸点以下とすることができ、90℃以下であることが好ましく、室温以下がより好ましい。
【0013】
本発明の第2の観点は、基板表面の膜を異方的にエッチングするエッチング方法であって、チャンバ内に基板を配置し、前記チャンバ内を真空状態とし、基板温度を制御した状態で前記膜にガスクラスターイオンビームを照射して前記膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング方法を提供する。
【0014】
上記第2の観点の方法において、前記チャンバ内に有機化合物を供給しつつ前記ガスクラスターイオンビームを照射してもよい。この場合に、前記基板温度は、有機化合物の沸点以下とすることができ、90℃以下であることが好ましく、室温以下がより好ましい。
【0015】
本発明の第3の観点は、基板表面の銅膜を異方的にエッチングするエッチング装置であって、表面に銅膜を有する基板が保持されるチャンバと、前記チャンバ内で基板を保持する基板保持部材と、前記チャンバ内を真空排気する排気機構と、前記チャンバ内に有機化合物ガスを供給する有機化合物ガス供給部と、前記基板保持部材に保持された基板の表面の銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射する酸素ガスクラスターイオンビーム照射機構と、酸素ガスクラスターイオンビームと前記基板との間に平面的な相対移動を生じさせる移動機構とを具備し、前記銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射した際に、前記酸素ガスクラスターイオンビーム中の酸素ガスクラスターイオンにより、前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させて銅膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング装置を提供する。
【0016】
上記第3の観点の装置において、前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させる際のエネルギーは、前記酸素ガスクラスターイオンが前記銅膜に衝突した際の熱により供給され、前記基板保持部材は加熱手段を有さず、前記基板を加熱することなくエッチングが行われることが好ましい。この場合に、前記基板保持部材は加熱手段を有さずにエッチングの際に基板が加熱されないことにより、前記チャンバ内に供給された有機化合物の分子が前記銅膜の表面に吸着しやすくし、前記酸素ガスクラスターイオンビームが前記有機化合物分子に妨げられない程度の真空度になるような供給量で前記有機化合物を供給するようにすることができる。
【0017】
上記第3の観点の装置において、前記基板保持部材上の基板の温度を制御する温度制御機構をさらに有する構成とすることができる。この場合に、前記制御機構は、基板の温度を有機化合物の沸点以下とすることができ、90℃以下に制御することが好ましく、室温以下に制御することがより好ましい。
【0018】
本発明の第4の観点は、基板表面の膜を異方的にエッチングするエッチング装置であって、基板が保持されるチャンバと、前記チャンバ内で基板を保持する基板保持部材と、前記基板保持部材上の基板の温度を制御する温度制御機構と、前記チャンバ内を真空排気する排気機構と、前記基板保持部材に保持された基板の表面の膜にガスクラスターイオンビームを照射するガスクラスターイオンビーム照射機構と、ガスクラスターイオンビームと前記基板との間に平面的な相対移動を生じさせる移動機構とを具備し、前記基板の温度を制御しつつ、前記膜にガスクラスターイオンビームを照射して前記膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング装置を提供する。
【0019】
上記第4の観点の装置において、前記チャンバ内に有機化合物ガスを供給する有機化合物ガス供給部をさらに有し、前記温度制御機構は、基板の温度を前記有機化合物の沸点以下に制御し、前記有機化合物ガス供給部から前記有機化合物を供給しつつ前記膜にガスクラスターイオンビームを照射する構成とすることができる。この場合に、前記温度制御機構は、基板の温度を90℃以下に制御することが好ましく、室温以下に制御することがより好ましい。
【0020】
本発明の第5の観点は、コンピュータ上で動作し、エッチング装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記第1の観点または第2の観点のエッチング方法が行われるように、コンピュータに前記エッチング装置を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、チャンバ内を有機化合物雰囲気とし、基板表面の銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射するので、酸素ガスクラスターイオンが銅を酸化させるための酸素源および酸化銅と有機化合物との反応のための熱源として作用し、銅の酸化および酸化銅と有機化合物との反応を効率よく連続的に行うことができる。このため、工程や装置構成を複雑にすることなく、極めて高いエッチングレートでCu膜をエッチングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るエッチング装置を示す概略断面図である。
【図2】図1の装置における有機化合物ガス供給部の他の例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るエッチング方法に適用される基板の構造例を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るエッチング方法のメカニズムを説明するための図である。
【図5】図3に示す基板に対し、本発明の第1の実施形態に係るエッチング方法を適用してエッチングした状態を模式的に示す図である。
【図6】O2−GCIBを照射してO2−GCIの物理作用のみでCu膜をエッチングする場合のメカニズムを説明するための図である。
【図7】酢酸供給およびO2−GCIB照射の両方を行ってCu膜をエッチングした場合と、O2−GCIB照射のみでCu膜をエッチングした場合のO2−GCIBドーズとエッチング深さとの関係を示す図である。
【図8】酢酸分圧を変化させてO2−GCIB照射を行いCu膜をエッチングした場合の酢酸分圧とエッチング深さとの関係を示す図である。
【図9】エッチング前(イニシャル)、O2−GCIB照射のみでCu膜をエッチングした場合、および酢酸供給およびO2−GCIB照射の両方を行ってCu膜をエッチングした場合の表面状態を示す写真およびRa、Rmsの値を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態において基板の温度制御に用いられる温度制御機構の一例を示す図である。
【図11】銅膜にO2−GCIBを照射して銅膜を酸化させ、酸化銅と酢酸を反応させて銅膜を異方的にエッチングした際の、基板温度とエッチング深さとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について具体的に説明する。
【0024】
[第1の実施形態]
<エッチング装置>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るエッチング装置の概略構成を示す断面図である。このエッチング装置1は、ガスクラスターイオンビーム(GCIB:Gas Cluster Ion Beam)を基板に照射するガスクラスターイオンビーム照射装置として構成されている。
【0025】
このエッチング装置1は、内部でソースガスであるO2ガスが噴射されてクラスター流が形成されるソースチャンバ2と、ソースチャンバ2内で形成されたクラスター流をクラスタービームとし、ターゲットである基板Sに照射するとともに、エッチング反応を生じさせるターゲットチャンバ3とを有している。ソースチャンバ2とターゲットチャンバ3との間は仕切り壁4により仕切られている。
【0026】
ソースチャンバ2内には、O2ガス流を噴射し、これをクラスター化するためのノズル5が設けられている。ノズル5には配管6が接続されており、ソースチャンバ2外のガス源(図示せず)から配管6にO2ガスが供給される。ノズル5から噴射されるO2ガスの圧力はレギュレータ(図示せず)によって制御され、この噴流中のO2分子はファンデルワールス力により数個から数万個凝集してクラスターとなり、クラスター流が形成される。
【0027】
また、ソースチャンバ2内には、ノズル5に対向してスキマー7が設けられている。スキマー7は、仕切り壁4にノズル5側に突出するように設けられ、ノズル5から噴射するクラスター流が通過するアパーチャーを有し、衝撃波を防止するようになっている。
【0028】
ターゲットチャンバ3内には、スキマー7のアパーチャーを介してクラスター流が導入され、クラスター流に沿って、複数の環状電極からなるイオナイザー11が配置され、そこでクラスター流がイオン化される。イオナイザー11の下流側には加速器12が設けられている。このため、クラスター流はイオナイザー11によりイオン化され、加速器12により加速化されて、O2ガスクラスターイオンビーム(O2−GCIB)となる。
【0029】
加速器12の下流側には、第1のアパーチャー13、永久磁石14、および第2のアパーチャー15が設けられている。第1のアパーチャー13および第2のアパーチャー15によりO2−GCIBの径を調整するとともに、永久磁石14により質量の小さい粒子、例えばモノマーイオンや質量の小さいクラスター粒の軌道を曲げて適切なサイズのO2−GCIBが第2のアパーチャー15を通過するようになっている。
【0030】
ノズル5、ノズル配管6、スキマー7、イオナイザー11、加速器12、第1のアパーチャー13,永久磁石14、第2のアパーチャー15等は、O2−GCIB照射機構10を構成している。
【0031】
第2のアパーチャー15の下流側には、表面に銅膜を有する基板Sを保持し、基板Sを二次元的にスキャンさせるXYステージ20が配置されている。基板Sは、ターゲットチャンバ3内に設けられた搬入出口(図示せず)から搬入出されるようになっており、搬入出口はゲートバルブ(図示せず)により開閉可能となっている。基板Sとしては、典型的にはシリコンウエハに代表される半導体ウエハを挙げることができるが、これに限るものではない。XYステージ20には、ヒーター等の加熱手段は設けられておらず、基板Sの加熱は行われないようになっている。
【0032】
ソースチャンバ2およびターゲットチャンバ3には、それぞれ真空ポンプ21および22が設けられており、これらによって真空引きされることにより、ソースチャンバ2およびターゲットチャンバ3内が所定の圧力(真空度)にされるようになっている。
【0033】
ターゲットチャンバ3内には、有機化合物ガス供給部30から有機化合物ガスが供給される。ここでは有機化合物として有機酸の一種である酢酸(CH3COOH)を例示している。有機化合物ガス供給部30は、有機化合物が貯留される貯留容器31と、ターゲットチャンバ3を真空引きすることにより貯留容器31内で気化された有機化合物ガスをターゲットチャンバ3内に導く配管32と、配管32に設けられた流量調整バルブ33とを有している。配管32の先端は、基板Sの近傍に有機化合物ガスを導くノズル32aとなっている。ただし、有機化合物の供給位置は必ずしも基板S近傍に限るものではない。
【0034】
有機化合物としては、真空に保持されたターゲットチャンバ3にそのまままたは加熱により気体供給できるものであればよく、典型的には有機酸を用いることができる。有機酸としては例示した酢酸に代表されるカルボン酸(一般式:R−COOH(Rは水素、又は直鎖もしくは分枝鎖状のC1〜C20のアルキル基もしくはアルケニル基、好ましくはメチル、エテル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシル)を好適に用いることができる。酢酸以外の他のカルボン酸としては、蟻酸(HCOOH)、プロピオン酸(CH3CH2COOH)、酪酸(CH3(CH2)2COOH)、吉草酸(CH3(CH2)3COOH)などを挙げることができる。カルボン酸の中では、蟻酸(HCOOH)、酢酸(CH3COOH)、プロピオン酸(CH3CH2COOH)が特に好ましい。また、H(hfac)等を用いることもできる。
【0035】
ターゲットチャンバ3の基板配置領域の圧力は、圧力計34により計測されるようになっており、圧力制御部35により圧力計34の圧力が所定値になるように流量調整バルブ33を調整するようになっている。有機化合物ガスの供給量は、基板Sに形成された銅膜の表面に十分な有機化合物分子が吸着する量であればよく、ターゲットチャンバ3内の圧力(酢酸の分圧)は10−4〜10−6Torrのオーダーが好ましい。圧力計34としては、イオンゲージ、キャパシタンスマノメータが例示される。
【0036】
有機化合物ガス供給部30は、図2に示すような構成であってもよい。すなわち、有機化合物を貯留する中間容器36およびタンク37を有し、これらの間を接続する配管36aにバルブ37aが設けられている。中間容器36から配管32を介してターゲットチャンバ3に有機化合物が供給されるようになっており、配管32にバリアブルリークバルブ38が設けられている。また、中間容器36にはその中の有機化合物の量を検出するセンサ、例えば液面センサ39が設けられており、中間容器36内の有機化合物量を検出するようになっている。液面が低下して液面センサ39が液面を検出したら、バリアブルリークバルブ38により真空と断絶し、バルブ37aを開けることにより、タンク37から中間容器に有機化合物を供給する。
【0037】
エッチング装置1は装置全体を制御する制御部40を有し、この制御部40により各構成部の制御等を行うようになっている。具体的には、ノズル5からのO2ガスの噴射制御、イオナイザー11、加速器12、アパーチャー13、15の制御、XYステージ20による基板Sのスキャン制御、有機酸ガスの供給制御、真空ポンプ21、22による排気制御等を行う。この制御部40は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたコントローラ41と、ユーザーインターフェース42と、記憶部43とを有している。コントローラ41にはエッチング装置1の各構成部が電気的に接続されて制御される構成となっている。ユーザーインターフェース42は、コントローラ41に接続されており、オペレータがエッチング装置1の各構成部を管理するためにコマンドの入力操作などを行うキーボードや、エッチング装置1の各構成部の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなっている。記憶部43もコントローラ41に接続されており、この記憶部43には、エッチング装置1で実行される各種処理をコントローラ41の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてエッチング装置1の各構成部に所定の処理を実行させるための制御プログラムすなわち処理レシピや、各種データベース等が格納されている。処理レシピは記憶部43の中の記憶媒体(図示せず)に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスク等の固定的に設けられているものであってもよいし、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0038】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース42からの指示等にて所定の処理レシピを記憶部43から呼び出してコントローラ41に実行させることで、コントローラ41の制御下で、エッチング装置1での所望の処理が行われる。
【0039】
<エッチング方法>
次に、上記エッチング装置1を用いて銅膜を異方性エッチングするエッチング方法の一例について説明する。
【0040】
まず、基板Sとして、図3に示すような、シリコン101上に、TEOS等の絶縁膜102、Ta等のバリア膜103、銅(Cu)膜104が順次形成され、さらにその上にエッチングマスク105が形成されたものを用いる。エッチングマスク105としては、有機化合物およびO2−GCIBが供給されてもエッチングされない材料、例えば、SiNやSiCを用いることができる。
【0041】
ターゲットチャンバ3のゲートバルブ(図示せず)を開けて、搬入出口(図示せず)から上記のような構造の基板Sを搬入し、XYステージ20に保持させる。この状態で、ソースチャンバ2およびターゲットチャンバ3を、真空ポンプ21および22により真空排気し、高真空度とする。
【0042】
そして、ターゲットチャンバ3の真空引きによって貯留容器31内の有機化合物(酢酸)が蒸発し、ターゲットチャンバ3に供給される。このとき、圧力計34の計測値に基づいて流量制御バルブ33の開度を制御して有機化合物(酢酸)の蒸発量を制御し、ターゲットチャンバ3内の酢酸の分圧を、例えば10−4〜10−6Torrのオーダーの所定の値となるように制御する。このとき、XYステージ20には加熱手段は設けられておらず、基板Sは加熱されることなく常温に保持されており、基板Sの表面、つまりCu膜104の表面には、有機化合物(酢酸)分子が吸着した状態となる。
【0043】
これと同時に、ソースチャンバ2内のノズル5からO2ガスを噴射してクラスター流を形成させ、これをターゲットチャンバ3内でO2−GCIBとしてXYステージ20に支持された基板Sに照射する。このとき、XYステージ20により基板Sをスキャンすることにより、O2−GCIBが基板S上をスキャンされる。
【0044】
O2−GCIBを形成するに際しては、ソースチャンバ2からターゲットチャンバ3に供給されたクラスター流を、イオナイザー11でイオン化するとともに加速器12で加速してO2−GCIBとする。そして、このO2−GCIBは、第1および第2のアパーチャー13、15を通過させることによりビーム径が調整されるとともに、永久磁石14により質量の小さい粒子がビームの進路から外されて、クラスターの大きさが適切に制御される。このようにビーム径およびクラスターの大きさが制御されたO2−GCIBが基板Sに照射されることとなる。
【0045】
以上のように、ターゲットチャンバ3内へ有機化合物である酢酸を供給するとともに、基板Sを加熱せずに常温に保持した状態で基板SにO2−GCIBを照射することにより、基板SのCu膜104を異方性エッチングする。
【0046】
<エッチングのメカニズムおよび効果>
この際のエッチングのメカニズムについて、図4を参照して説明する。図4は本発明の実施形態に係るエッチング方法の原理を説明するための模式図である。
【0047】
本実施形態では、Cu膜104のエッチングに必要な熱はO2−GCIBの衝突によって供給されるため、基板Sは加熱されずに常温で保持されており、ターゲットチャンバ3内に供給された有機化合物(酢酸)は吸着しやすく、図4(a)に示すようにCu膜104の表面に十分な量の有機化合物(酢酸)分子106が吸着した状態となる。このため、僅かな供給量で必要な反応を進行させることができ、ターゲットチャンバ3内の有機化合物(酢酸)の分圧を10−4〜10−6Torrのオーダーの低い値とすることができるので、有機化合物(酢酸)の供給は気化のための熱源を設けることなく蒸気圧で気化する供給レベルでよい。
【0048】
この状態で、O2−GCIBを照射することにより、図4(b)に示すようにO2ガスクラスターイオン(O2−GCI)107がCu膜104に向かって直進する。そして、図4(c)に示すように、O2−GCI107がCu膜104に衝突すると、その際の衝突エネルギーにより、O2−GCI107の酸素の一部が反跳酸素となるとともに、表面のCuの一部がスパッタされ、酸素の他の一部は(1)式のようなCuの酸化に寄与する。また、衝突エネルギーの残部は熱に変換され、この熱により、(1)の酸化反応がより促進されるとともに、有機化合物である酢酸の場合には(2)式に従って酸化銅と酢酸の反応が促進され、揮発性のCu(CH3COO)とH2Oが生じてCu膜104から酸化銅分子が脱離する。酢酸以外の蟻酸やプロピオン酸等の他の有機化合物(有機酸)も同様な反応が生じる。また、有機化合物の供給およびO2−GCIBの照射を継続的に行うことにより、基板Sを加熱することなく、これら(1)、(2)式の反応が連続的に生じ、これによりCu膜104がエッチングされる。
2Cu+O→Cu2O (1)
Cu2O+2CH3COOH→2Cu(CH3COO)↑+H2O↑ (2)
上記(2)式の反応は、通常、常温では生じないが、O2−GCIの衝突により生じた熱により進行する。
【0049】
このエッチングに際しては、O2−GCI107は直進性があるため、図5に示すように、Cu膜104を異方的にエッチングすることができ、マスク105に対応して所望のエッチング形状を得ることができる。
【0050】
この場合に、O2−GCIは、数個から数万個の酸素分子や酸素原子がファンデルワールス力により緩やかに束縛された状態となっており、サイズが大きいので、O2−GCIがCu膜104に衝突した際に、Cu膜104の内部に入り込み難い。このため、衝突エネルギーは主にCu膜104の表面部分に作用し、表面部分で反応が生じる。このため、下地であるバリア膜103等に対するダメージは極めて小さい。また、上述のように、基本的に常温プロセスであり、有機化合物の量が少なくてよく低圧で処理が可能であるため、有機化合物分子とO2−GCIとの衝突を無視することができ、有機化合物分子がO2−GCIの照射を妨げることがなく、高い反応効率を得ることができる。
【0051】
GCIBは、従来、主に表面をスパッタする技術として用いられており、図6に示すように、Cu膜のエッチングにもそのスパッタ力を適用することが考えられる。すなわち、O2−GCIBを照射してO2−GCI107をCu膜104に向けて直進させ(図6(a))、Cu膜104に衝突した際にCuをスパッタする(図6(b))ことによりエッチングを進行させることが考えられる。しかし、このような物理的作用のみでは、300mmさらには450mmと大型化している半導体ウエハに対するCu膜のエッチングに膨大な時間がかかってしまう。
【0052】
また、上記特許文献1のように、Cu膜の酸化処理と、有機酸によるエッチング処理とを分けて行う場合には、工程が煩雑となるとともに、エッチングレートが低い。また、有機酸によるエッチング処理の際に、基板を加熱する必要があるとともに、大流量の有機酸が必要であり、反応効率が悪いとともに副生成物が生じやすい。
【0053】
これに対して、本実施形態では、上述したように、O2−GCIBを、銅を酸化させるための酸素源および酸化銅と有機化合物との反応のための熱源として用い、銅の酸化および酸化銅と有機化合物との反応を効率よく連続的に行うことができる。このため、工程や装置構成を複雑にすることなく、極めて高いエッチングレートでCu膜をエッチングすることができる。このとき、基板を加熱することなく反応を進行させるので、少ない供給量で有機化合物を供給してもCu膜の表面に有効に吸着し、極めて効率よくCu膜をエッチングすることができる。また、有機化合物の供給量が少なくてよいため、有機化合物のチャンバ壁への付着量や副生成物の生成量も少ない。
【0054】
また、このように有機化合物を供給しつつO2−GCIBを照射してエッチングすることにより、Cu膜表面のラフネスを低下させることができ、半導体装置の配線として有利である。
【0055】
また、有機化合物ガスをノズル32aにより基板S近傍に導くことにより、反応を効率よく進行させることができるとともに、基板S以外への有機化合物の吸着を極力少なくすることができる。さらに、このように有機化合物ガスをノズル32aにより基板S近傍に導く場合には、基板Sの周囲にカバーを設けることができ、カバーに有機化合物が付着するようにすれば、カバーを取り外して洗浄することができ、メンテナンスが容易となる。
【0056】
<実験例>
(実験例1)
ターゲットチャンバ内に電気めっきによりCu膜を形成した基板を配置し、基板近傍に酢酸を供給してチャンバ内の酢酸分圧を2×10−5Torrとし、基板にO2−GCIBを照射してエッチングを行った。加速器における加速電圧Vaは10kVおよび20kVと2水準とし、O2−GCIBのドーズを5×1015〜2×1016(ions/cm2)の間で変化させ、ドーズを変化させた場合のCu膜のエッチング深さを評価した。また、酢酸を供給せずにO2−GCIBの照射のみでエッチングを行ったものについても、ドーズを変化させた場合のエッチング深さを評価した。その結果を図7に示す。
【0057】
図7に示すように、エッチング深さはO2−GCIBのドーズが増加するほど増加しているのがわかる。また、O2−GCIB照射とともに酢酸を供給したものについては、酢酸を供給しなかったものに比べ、著しくエッチング深さが増加しているのがわかる。O2−GCIB照射とともに酢酸を供給したものについては、エッチングレートが17nm/minと極めて大きな値となることが判明した。一方、加速電圧Vaの違いはエッチング深さにあまり大きな影響を与えていないことがわかる。
【0058】
(実験例2)
ここでは、実験例1と同様にCu膜を形成した基板に対し、酢酸分圧を変化させてエッチングを行った。ここでは、酢酸分圧を6×10−6〜6×10−5Torrの間で変化させ、加速器における加速電圧Vaを10kV、O2−GCIBのドーズを1×1016(ions/cm2)として、酢酸分圧を変化させた場合のCu膜のエッチング深さを評価した。その結果を図8に示す。
【0059】
図8に示すように、酢酸の分圧が低い領域ではエッチング深さは酢酸分圧が増加するに従って増加し、酢酸分圧が2×10−5Torrを超えた付近から飽和する傾向にある。すなわち、エッチング深さが飽和する以前の領域では酢酸の供給量が足りていないが、エッチング深さが飽和する分圧領域では、十分な量の酢酸が銅膜表面に吸着した状態でエッチングが進行するものと考えられる。
【0060】
(実験例3)
ここでは、実験例1と同様にエッチングを行ったCu膜サンプルのうち、O2−GCIBのドーズを1×1016(ions/cm2)としたサンプルについて、原子間力顕微鏡(AFM)により視野1μm×1μmで表面状態を評価した。比較のため、エッチング前(イニシャル)のCu膜についても同様に表面状態を評価した。その結果を図9に示す。図9は、これらサンプル表面の写真と、表面状態の指標(Ra、Rms)を示すものである。
【0061】
図9に示すように、O2−GCIBのみでもイニシャルよりも表面のラフネスが小さくなるが、酢酸を供給することにより表面のラフネスがさらに小さくなり、本発明により半導体装置の配線として良好なものとなることが確認された。
【0062】
<第1の実施形態における他の適用>
なお、上記説明では、有機化合物として有機酸である酢酸を用いた例を示したが、本発明の原理上、上述した蟻酸(HCOOH)、プロピオン酸(CH3CH2COOH)、酪酸(CH3(CH2)2COOH)、吉草酸(CH3(CH2)3COOH)などの他の有機酸でも同様の効果が得られることはいうまでもない。また、アルコールやアルデヒド等の酸化銅と反応してCuを除去することができる他の有機化合物も適用可能である。また、O2−GCIBを照射する機構や照射条件、さらには有機酸の供給方法についても、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記装置では、基板保持部としてXYステージを用い、基板保持部を移動させるようにしたが、O2−GCIBと基板保持部との間に相対移動を生じさせる機構であれば適用可能である。さらに、基板は半導体ウエハに限らず、FPD(フラットパネルディスプレイ)等の他の基板であってもよい。
【0063】
上記説明では、基板に形成された銅膜を、有機化合物を供給しつつO2−GCIBを照射することによりエッチングするが、銅膜に限らず、ニッケル膜等の他の遷移金属の膜についても同様の原理でエッチングすることができ、さらに有機化合物の代わりにHF等の無機化合物を用いてもエッチングすることができる。また、ガスクラスターイオンビームを形成するためのガスとしては、酸素ガスに限らず、他の酸化効果を有するガス、あるいは酸素ガスまたは他の酸化効果を有するガスと他のガスとを混合したガスを用いることもできる。
【0064】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るエッチング装置は、基本構成は第1の実施形態と同じであるが、基板を保持するステージの構成が第1の実施形態とは異なっている。すなわち、第1の実施形態では、基板Sを保持するXYステージ20に加熱手段等の温度制御機構が設けられていないが、本実施形態のエッチング装置は、第1の実施形態のXYステージ20の代わりに、図10に示す温度制御機構50を備えたXYステージ20′を用い、基板Sの温度制御が可能となっている。
【0065】
図10に示すように、XYステージ20′は、基板Sを実際に保持するトップステージ20aを有している。温度制御機構50は、トップステージ20a内に設けられたヒーター51および冷媒流路52と、基板Sの温度を検出する熱電対等の温度センサ53と、温度コントローラ54とを有している。温度センサ53の検出信号は温度検出部57を経て温度コントローラ54に送られる。ヒーター51にはヒーター電源55から給電され、冷媒流路52には冷媒循環供給部56から適宜の冷却媒体が循環される。そして、温度コントローラ54は、温度センサ53からの温度信号に基づいて、基板Sが所定の温度となるように、ヒーター電源55の出力および冷媒循環供給部56からの冷却媒体の流量または温度を制御する。
【0066】
第1の実施形態で説明したように、銅膜にO2−GCIBを照射して銅膜を酸化させるとともに、酸化銅を酢酸等の有機化合物と反応させて銅膜を異方的にエッチングする際には、本質的に加熱は必要としない。しかし、このようなエッチング反応におけるエッチングレートは、基板の温度を制御することにより大きく変化することが判明した。
【0067】
図11は、銅膜にO2−GCIBを照射して銅膜を酸化させ、酸化銅と酢酸を反応させて銅膜を異方的にエッチングした際の、基板温度とエッチング深さとの関係を示す図である。この実験では、酢酸分圧を5×10−3Pa(3.75×10−6Torr)、加速器における加速電圧Vaを10kV、O2−GCIBのドーズを1×1016(ions/cm2)とした。
【0068】
図11に示すように、基板温度の上昇にともなってエッチング深さが減少しており、これは基板温度が高いほどエッチングレートが低下することを示している。一般的なエッチング工程では、基板温度を上昇させることにより反応性が上がるためエッチングレートが向上することが知られており、有機化合物を供給しつつO2−GCIBを照射してエッチングする場合も同様な結果が得られることが想定されたが、図11の結果は想定とは逆の結果である。
【0069】
これは、基板温度が高くなることにより、基板上に十分に酢酸を供給することができなくなるため、酢酸を供給することによるエッチングレート向上効果が阻害されてしまうからであると考えられる。
【0070】
このようなメカニズムから考えると、基板温度の上限値は、供給する有機化合物の沸点(酢酸の場合は118℃)ということになる。また、図11に示すように、基板温度が90℃ではエッチングされたが、110℃では対象膜が酸化されてCu2Oが形成されてしまい、かえって膜厚が増えてしまうという現象が見られた。したがって、基板温度は90℃以下が好ましい。このように、供給する有機化合物の沸点以下、好ましくは90℃以下で温度制御することで、任意のエッチングレートでエッチング処理を行うことができる。
【0071】
エッチングレートを高める観点からは基板温度は低い方が好ましく、室温(25℃)よりも低い温度に基板温度を制御することによって、より高いエッチングレートでの処理が可能となる。
【0072】
なお、基板温度を制御する際には、制御方式は問わず、リニア制御でも、段階制御でもよい。
【0073】
本実施形態では、基板温度を制御することから、より広い適用が可能となり、酸素ガスのみならず、他の酸化効果を有するガスあるいは酸素ガスまたは他の酸化効果を有するガスと他のガスとを混合したガスによるGCIBの他、酸化効果を有さないArガス等の不活性ガスによるGCIBも適用可能である。また、有機化合物の代わりにHF等の無機化合物を用いてエッチングが可能であり、さらには、基板温度制御とGCIBとの組み合わせのみでもエッチングが行える場合がある。さらに、基板温度を制御することにより銅膜のみならず、ニッケル膜等の他の遷移金属の膜についても同様にエッチングできる他、その他の膜についても適用可能性を有する。本実施形態は、多層膜を連続してエッチングする場合にも適用することができ、その際に、各膜について基板温度を変更してエッチングしてもよい。
【0074】
本実施形態では、図10の温度制御機構により基板の温度制御を行ったが、これに限らず種々の温度制御機構を用いることができる。例えば、ヒーターのみの温度制御であっても、冷却媒体を循環させるのみの温度制御であってもよい。また、熱電変換素子を用いた温度制御を用いることもできる。
【0075】
また、本実施形態では、基板温度を制御することによりエッチングレートを調整したが、酢酸等の有機化合物の供給量を制御することによってもエッチングレートを調整することができる。
【0076】
さらに、本実施形態においても第1の実施形態と同様、基板は半導体ウエハに限らず、FPD(フラットパネルディスプレイ)等の他の基板であってもよい。また、有機化合物の代わりにHF等の無機化合物を用いてもエッチングすることもできる。
【符号の説明】
【0077】
1…エッチング装置
2…ソースチャンバ
3…ターゲットチャンバ
5…ノズル
7…スキマー
10…O2−GCIB照射機構
11…イオナイザー
12…加速器
13,15…アパーチャー
14…永久磁石
20,20′…XYステージ
20a…トップステージ
30…有機化合物ガス供給部
40…制御部
41…コントローラ
43…記憶部
50…温度制御機構
104…Cu膜
S…基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、Cu膜をエッチングするエッチング方法およびエッチング装置、ならびに記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体集積回路装置の動作の高速化が進展している。動作の高速化は、配線材料の低抵抗化などにより実現される。このため、配線材料は、従来のアルミニウムに代わり、より低抵抗な銅が用いられるようになってきている。
【0003】
銅配線の加工技術としては、銅はアルミニウムと異なりエッチングされ難い材料であることから、あらかじめ配線パターンに応じた溝を層間絶縁膜に形成し、この溝を埋めるように銅薄膜を形成し、CMP法を用いて銅薄膜を化学的機械研磨し、溝の内部のみに銅を残すダマシン法が用いられてきた。
【0004】
しかし、ダマシン法は工程が複雑であることから、アルミニウムと同様のドライエッチング技術で配線の形成を行うことが求められており、銅のドライエッチング技術として、銅膜に対して異方性酸化処理を施した後、それによって形成された酸化銅を有機酸によりドライエッチングする技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−027788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、異方性酸化処理と有機酸ドライエッチングの2段階の工程であり、しかも、ある程度深いホールやトレンチをエッチングする場合には、異方性酸化処理と有機酸ドライエッチングを複数回繰り返す必要があり、工程が煩雑である。また、銅を酸化してから有機酸でエッチングするため、エッチングレートをあまり高くすることができない。また、有機酸ドライエッチングの際に基板を加熱する必要があり、装置構成が煩雑になるとともに、下地にダメージを与えるおそれがある。また、有機酸を多く供給する必要があり、反応効率が悪いとともに副生成物が生じやすい。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、工程および装置構成を煩雑にすることなく、高エッチングレートで銅を異方性エッチングすることができるエッチング方法およびエッチング装置を提供すること、およびそのようなエッチング方法を実施するためのプログラムを記憶した記憶媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、基板表面の銅膜を異方的にエッチングするエッチング方法であって、チャンバ内に表面に銅膜を有する基板を配置し、前記チャンバ内を真空状態としつつ、前記チャンバ内に有機化合物を供給し、前記銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射し、前記酸素ガスクラスターイオンビーム中の酸素ガスクラスターイオンにより、前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させて銅膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング方法を提供する。
【0009】
上記第1の観点の方法において、前記チャンバへの前記有機化合物の供給と、前記酸素ガスクラスターイオンの照射を同時に行って連続的に銅膜を異方性エッチングすることが好ましい。
【0010】
また、前記有機化合物としては有機酸を好適に用いることができる。有機酸としては、酢酸等のカルボン酸が好ましい。
【0011】
上記第1の観点の方法において、前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させる際のエネルギーは、前記酸素ガスクラスターイオンが前記銅膜に衝突した際の熱により供給され、前記基板を加熱することなくエッチングが行われることが好ましい。この場合に、前記基板を加熱しないことにより、前記チャンバ内に供給された有機化合物の分子を前記銅膜の表面に吸着しやすくし、前記酸素ガスクラスターイオンビームが前記有機化合物分子に妨げられない程度の真空度になるような供給量で前記有機化合物を供給するようにすることができる。
【0012】
また、上記エッチング方法において、基板温度を制御するようにしてもよい。基板温度は有機化合物の沸点以下とすることができ、90℃以下であることが好ましく、室温以下がより好ましい。
【0013】
本発明の第2の観点は、基板表面の膜を異方的にエッチングするエッチング方法であって、チャンバ内に基板を配置し、前記チャンバ内を真空状態とし、基板温度を制御した状態で前記膜にガスクラスターイオンビームを照射して前記膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング方法を提供する。
【0014】
上記第2の観点の方法において、前記チャンバ内に有機化合物を供給しつつ前記ガスクラスターイオンビームを照射してもよい。この場合に、前記基板温度は、有機化合物の沸点以下とすることができ、90℃以下であることが好ましく、室温以下がより好ましい。
【0015】
本発明の第3の観点は、基板表面の銅膜を異方的にエッチングするエッチング装置であって、表面に銅膜を有する基板が保持されるチャンバと、前記チャンバ内で基板を保持する基板保持部材と、前記チャンバ内を真空排気する排気機構と、前記チャンバ内に有機化合物ガスを供給する有機化合物ガス供給部と、前記基板保持部材に保持された基板の表面の銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射する酸素ガスクラスターイオンビーム照射機構と、酸素ガスクラスターイオンビームと前記基板との間に平面的な相対移動を生じさせる移動機構とを具備し、前記銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射した際に、前記酸素ガスクラスターイオンビーム中の酸素ガスクラスターイオンにより、前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させて銅膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング装置を提供する。
【0016】
上記第3の観点の装置において、前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させる際のエネルギーは、前記酸素ガスクラスターイオンが前記銅膜に衝突した際の熱により供給され、前記基板保持部材は加熱手段を有さず、前記基板を加熱することなくエッチングが行われることが好ましい。この場合に、前記基板保持部材は加熱手段を有さずにエッチングの際に基板が加熱されないことにより、前記チャンバ内に供給された有機化合物の分子が前記銅膜の表面に吸着しやすくし、前記酸素ガスクラスターイオンビームが前記有機化合物分子に妨げられない程度の真空度になるような供給量で前記有機化合物を供給するようにすることができる。
【0017】
上記第3の観点の装置において、前記基板保持部材上の基板の温度を制御する温度制御機構をさらに有する構成とすることができる。この場合に、前記制御機構は、基板の温度を有機化合物の沸点以下とすることができ、90℃以下に制御することが好ましく、室温以下に制御することがより好ましい。
【0018】
本発明の第4の観点は、基板表面の膜を異方的にエッチングするエッチング装置であって、基板が保持されるチャンバと、前記チャンバ内で基板を保持する基板保持部材と、前記基板保持部材上の基板の温度を制御する温度制御機構と、前記チャンバ内を真空排気する排気機構と、前記基板保持部材に保持された基板の表面の膜にガスクラスターイオンビームを照射するガスクラスターイオンビーム照射機構と、ガスクラスターイオンビームと前記基板との間に平面的な相対移動を生じさせる移動機構とを具備し、前記基板の温度を制御しつつ、前記膜にガスクラスターイオンビームを照射して前記膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング装置を提供する。
【0019】
上記第4の観点の装置において、前記チャンバ内に有機化合物ガスを供給する有機化合物ガス供給部をさらに有し、前記温度制御機構は、基板の温度を前記有機化合物の沸点以下に制御し、前記有機化合物ガス供給部から前記有機化合物を供給しつつ前記膜にガスクラスターイオンビームを照射する構成とすることができる。この場合に、前記温度制御機構は、基板の温度を90℃以下に制御することが好ましく、室温以下に制御することがより好ましい。
【0020】
本発明の第5の観点は、コンピュータ上で動作し、エッチング装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記第1の観点または第2の観点のエッチング方法が行われるように、コンピュータに前記エッチング装置を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、チャンバ内を有機化合物雰囲気とし、基板表面の銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射するので、酸素ガスクラスターイオンが銅を酸化させるための酸素源および酸化銅と有機化合物との反応のための熱源として作用し、銅の酸化および酸化銅と有機化合物との反応を効率よく連続的に行うことができる。このため、工程や装置構成を複雑にすることなく、極めて高いエッチングレートでCu膜をエッチングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るエッチング装置を示す概略断面図である。
【図2】図1の装置における有機化合物ガス供給部の他の例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るエッチング方法に適用される基板の構造例を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るエッチング方法のメカニズムを説明するための図である。
【図5】図3に示す基板に対し、本発明の第1の実施形態に係るエッチング方法を適用してエッチングした状態を模式的に示す図である。
【図6】O2−GCIBを照射してO2−GCIの物理作用のみでCu膜をエッチングする場合のメカニズムを説明するための図である。
【図7】酢酸供給およびO2−GCIB照射の両方を行ってCu膜をエッチングした場合と、O2−GCIB照射のみでCu膜をエッチングした場合のO2−GCIBドーズとエッチング深さとの関係を示す図である。
【図8】酢酸分圧を変化させてO2−GCIB照射を行いCu膜をエッチングした場合の酢酸分圧とエッチング深さとの関係を示す図である。
【図9】エッチング前(イニシャル)、O2−GCIB照射のみでCu膜をエッチングした場合、および酢酸供給およびO2−GCIB照射の両方を行ってCu膜をエッチングした場合の表面状態を示す写真およびRa、Rmsの値を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態において基板の温度制御に用いられる温度制御機構の一例を示す図である。
【図11】銅膜にO2−GCIBを照射して銅膜を酸化させ、酸化銅と酢酸を反応させて銅膜を異方的にエッチングした際の、基板温度とエッチング深さとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について具体的に説明する。
【0024】
[第1の実施形態]
<エッチング装置>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るエッチング装置の概略構成を示す断面図である。このエッチング装置1は、ガスクラスターイオンビーム(GCIB:Gas Cluster Ion Beam)を基板に照射するガスクラスターイオンビーム照射装置として構成されている。
【0025】
このエッチング装置1は、内部でソースガスであるO2ガスが噴射されてクラスター流が形成されるソースチャンバ2と、ソースチャンバ2内で形成されたクラスター流をクラスタービームとし、ターゲットである基板Sに照射するとともに、エッチング反応を生じさせるターゲットチャンバ3とを有している。ソースチャンバ2とターゲットチャンバ3との間は仕切り壁4により仕切られている。
【0026】
ソースチャンバ2内には、O2ガス流を噴射し、これをクラスター化するためのノズル5が設けられている。ノズル5には配管6が接続されており、ソースチャンバ2外のガス源(図示せず)から配管6にO2ガスが供給される。ノズル5から噴射されるO2ガスの圧力はレギュレータ(図示せず)によって制御され、この噴流中のO2分子はファンデルワールス力により数個から数万個凝集してクラスターとなり、クラスター流が形成される。
【0027】
また、ソースチャンバ2内には、ノズル5に対向してスキマー7が設けられている。スキマー7は、仕切り壁4にノズル5側に突出するように設けられ、ノズル5から噴射するクラスター流が通過するアパーチャーを有し、衝撃波を防止するようになっている。
【0028】
ターゲットチャンバ3内には、スキマー7のアパーチャーを介してクラスター流が導入され、クラスター流に沿って、複数の環状電極からなるイオナイザー11が配置され、そこでクラスター流がイオン化される。イオナイザー11の下流側には加速器12が設けられている。このため、クラスター流はイオナイザー11によりイオン化され、加速器12により加速化されて、O2ガスクラスターイオンビーム(O2−GCIB)となる。
【0029】
加速器12の下流側には、第1のアパーチャー13、永久磁石14、および第2のアパーチャー15が設けられている。第1のアパーチャー13および第2のアパーチャー15によりO2−GCIBの径を調整するとともに、永久磁石14により質量の小さい粒子、例えばモノマーイオンや質量の小さいクラスター粒の軌道を曲げて適切なサイズのO2−GCIBが第2のアパーチャー15を通過するようになっている。
【0030】
ノズル5、ノズル配管6、スキマー7、イオナイザー11、加速器12、第1のアパーチャー13,永久磁石14、第2のアパーチャー15等は、O2−GCIB照射機構10を構成している。
【0031】
第2のアパーチャー15の下流側には、表面に銅膜を有する基板Sを保持し、基板Sを二次元的にスキャンさせるXYステージ20が配置されている。基板Sは、ターゲットチャンバ3内に設けられた搬入出口(図示せず)から搬入出されるようになっており、搬入出口はゲートバルブ(図示せず)により開閉可能となっている。基板Sとしては、典型的にはシリコンウエハに代表される半導体ウエハを挙げることができるが、これに限るものではない。XYステージ20には、ヒーター等の加熱手段は設けられておらず、基板Sの加熱は行われないようになっている。
【0032】
ソースチャンバ2およびターゲットチャンバ3には、それぞれ真空ポンプ21および22が設けられており、これらによって真空引きされることにより、ソースチャンバ2およびターゲットチャンバ3内が所定の圧力(真空度)にされるようになっている。
【0033】
ターゲットチャンバ3内には、有機化合物ガス供給部30から有機化合物ガスが供給される。ここでは有機化合物として有機酸の一種である酢酸(CH3COOH)を例示している。有機化合物ガス供給部30は、有機化合物が貯留される貯留容器31と、ターゲットチャンバ3を真空引きすることにより貯留容器31内で気化された有機化合物ガスをターゲットチャンバ3内に導く配管32と、配管32に設けられた流量調整バルブ33とを有している。配管32の先端は、基板Sの近傍に有機化合物ガスを導くノズル32aとなっている。ただし、有機化合物の供給位置は必ずしも基板S近傍に限るものではない。
【0034】
有機化合物としては、真空に保持されたターゲットチャンバ3にそのまままたは加熱により気体供給できるものであればよく、典型的には有機酸を用いることができる。有機酸としては例示した酢酸に代表されるカルボン酸(一般式:R−COOH(Rは水素、又は直鎖もしくは分枝鎖状のC1〜C20のアルキル基もしくはアルケニル基、好ましくはメチル、エテル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシル)を好適に用いることができる。酢酸以外の他のカルボン酸としては、蟻酸(HCOOH)、プロピオン酸(CH3CH2COOH)、酪酸(CH3(CH2)2COOH)、吉草酸(CH3(CH2)3COOH)などを挙げることができる。カルボン酸の中では、蟻酸(HCOOH)、酢酸(CH3COOH)、プロピオン酸(CH3CH2COOH)が特に好ましい。また、H(hfac)等を用いることもできる。
【0035】
ターゲットチャンバ3の基板配置領域の圧力は、圧力計34により計測されるようになっており、圧力制御部35により圧力計34の圧力が所定値になるように流量調整バルブ33を調整するようになっている。有機化合物ガスの供給量は、基板Sに形成された銅膜の表面に十分な有機化合物分子が吸着する量であればよく、ターゲットチャンバ3内の圧力(酢酸の分圧)は10−4〜10−6Torrのオーダーが好ましい。圧力計34としては、イオンゲージ、キャパシタンスマノメータが例示される。
【0036】
有機化合物ガス供給部30は、図2に示すような構成であってもよい。すなわち、有機化合物を貯留する中間容器36およびタンク37を有し、これらの間を接続する配管36aにバルブ37aが設けられている。中間容器36から配管32を介してターゲットチャンバ3に有機化合物が供給されるようになっており、配管32にバリアブルリークバルブ38が設けられている。また、中間容器36にはその中の有機化合物の量を検出するセンサ、例えば液面センサ39が設けられており、中間容器36内の有機化合物量を検出するようになっている。液面が低下して液面センサ39が液面を検出したら、バリアブルリークバルブ38により真空と断絶し、バルブ37aを開けることにより、タンク37から中間容器に有機化合物を供給する。
【0037】
エッチング装置1は装置全体を制御する制御部40を有し、この制御部40により各構成部の制御等を行うようになっている。具体的には、ノズル5からのO2ガスの噴射制御、イオナイザー11、加速器12、アパーチャー13、15の制御、XYステージ20による基板Sのスキャン制御、有機酸ガスの供給制御、真空ポンプ21、22による排気制御等を行う。この制御部40は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたコントローラ41と、ユーザーインターフェース42と、記憶部43とを有している。コントローラ41にはエッチング装置1の各構成部が電気的に接続されて制御される構成となっている。ユーザーインターフェース42は、コントローラ41に接続されており、オペレータがエッチング装置1の各構成部を管理するためにコマンドの入力操作などを行うキーボードや、エッチング装置1の各構成部の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなっている。記憶部43もコントローラ41に接続されており、この記憶部43には、エッチング装置1で実行される各種処理をコントローラ41の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてエッチング装置1の各構成部に所定の処理を実行させるための制御プログラムすなわち処理レシピや、各種データベース等が格納されている。処理レシピは記憶部43の中の記憶媒体(図示せず)に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスク等の固定的に設けられているものであってもよいし、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0038】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース42からの指示等にて所定の処理レシピを記憶部43から呼び出してコントローラ41に実行させることで、コントローラ41の制御下で、エッチング装置1での所望の処理が行われる。
【0039】
<エッチング方法>
次に、上記エッチング装置1を用いて銅膜を異方性エッチングするエッチング方法の一例について説明する。
【0040】
まず、基板Sとして、図3に示すような、シリコン101上に、TEOS等の絶縁膜102、Ta等のバリア膜103、銅(Cu)膜104が順次形成され、さらにその上にエッチングマスク105が形成されたものを用いる。エッチングマスク105としては、有機化合物およびO2−GCIBが供給されてもエッチングされない材料、例えば、SiNやSiCを用いることができる。
【0041】
ターゲットチャンバ3のゲートバルブ(図示せず)を開けて、搬入出口(図示せず)から上記のような構造の基板Sを搬入し、XYステージ20に保持させる。この状態で、ソースチャンバ2およびターゲットチャンバ3を、真空ポンプ21および22により真空排気し、高真空度とする。
【0042】
そして、ターゲットチャンバ3の真空引きによって貯留容器31内の有機化合物(酢酸)が蒸発し、ターゲットチャンバ3に供給される。このとき、圧力計34の計測値に基づいて流量制御バルブ33の開度を制御して有機化合物(酢酸)の蒸発量を制御し、ターゲットチャンバ3内の酢酸の分圧を、例えば10−4〜10−6Torrのオーダーの所定の値となるように制御する。このとき、XYステージ20には加熱手段は設けられておらず、基板Sは加熱されることなく常温に保持されており、基板Sの表面、つまりCu膜104の表面には、有機化合物(酢酸)分子が吸着した状態となる。
【0043】
これと同時に、ソースチャンバ2内のノズル5からO2ガスを噴射してクラスター流を形成させ、これをターゲットチャンバ3内でO2−GCIBとしてXYステージ20に支持された基板Sに照射する。このとき、XYステージ20により基板Sをスキャンすることにより、O2−GCIBが基板S上をスキャンされる。
【0044】
O2−GCIBを形成するに際しては、ソースチャンバ2からターゲットチャンバ3に供給されたクラスター流を、イオナイザー11でイオン化するとともに加速器12で加速してO2−GCIBとする。そして、このO2−GCIBは、第1および第2のアパーチャー13、15を通過させることによりビーム径が調整されるとともに、永久磁石14により質量の小さい粒子がビームの進路から外されて、クラスターの大きさが適切に制御される。このようにビーム径およびクラスターの大きさが制御されたO2−GCIBが基板Sに照射されることとなる。
【0045】
以上のように、ターゲットチャンバ3内へ有機化合物である酢酸を供給するとともに、基板Sを加熱せずに常温に保持した状態で基板SにO2−GCIBを照射することにより、基板SのCu膜104を異方性エッチングする。
【0046】
<エッチングのメカニズムおよび効果>
この際のエッチングのメカニズムについて、図4を参照して説明する。図4は本発明の実施形態に係るエッチング方法の原理を説明するための模式図である。
【0047】
本実施形態では、Cu膜104のエッチングに必要な熱はO2−GCIBの衝突によって供給されるため、基板Sは加熱されずに常温で保持されており、ターゲットチャンバ3内に供給された有機化合物(酢酸)は吸着しやすく、図4(a)に示すようにCu膜104の表面に十分な量の有機化合物(酢酸)分子106が吸着した状態となる。このため、僅かな供給量で必要な反応を進行させることができ、ターゲットチャンバ3内の有機化合物(酢酸)の分圧を10−4〜10−6Torrのオーダーの低い値とすることができるので、有機化合物(酢酸)の供給は気化のための熱源を設けることなく蒸気圧で気化する供給レベルでよい。
【0048】
この状態で、O2−GCIBを照射することにより、図4(b)に示すようにO2ガスクラスターイオン(O2−GCI)107がCu膜104に向かって直進する。そして、図4(c)に示すように、O2−GCI107がCu膜104に衝突すると、その際の衝突エネルギーにより、O2−GCI107の酸素の一部が反跳酸素となるとともに、表面のCuの一部がスパッタされ、酸素の他の一部は(1)式のようなCuの酸化に寄与する。また、衝突エネルギーの残部は熱に変換され、この熱により、(1)の酸化反応がより促進されるとともに、有機化合物である酢酸の場合には(2)式に従って酸化銅と酢酸の反応が促進され、揮発性のCu(CH3COO)とH2Oが生じてCu膜104から酸化銅分子が脱離する。酢酸以外の蟻酸やプロピオン酸等の他の有機化合物(有機酸)も同様な反応が生じる。また、有機化合物の供給およびO2−GCIBの照射を継続的に行うことにより、基板Sを加熱することなく、これら(1)、(2)式の反応が連続的に生じ、これによりCu膜104がエッチングされる。
2Cu+O→Cu2O (1)
Cu2O+2CH3COOH→2Cu(CH3COO)↑+H2O↑ (2)
上記(2)式の反応は、通常、常温では生じないが、O2−GCIの衝突により生じた熱により進行する。
【0049】
このエッチングに際しては、O2−GCI107は直進性があるため、図5に示すように、Cu膜104を異方的にエッチングすることができ、マスク105に対応して所望のエッチング形状を得ることができる。
【0050】
この場合に、O2−GCIは、数個から数万個の酸素分子や酸素原子がファンデルワールス力により緩やかに束縛された状態となっており、サイズが大きいので、O2−GCIがCu膜104に衝突した際に、Cu膜104の内部に入り込み難い。このため、衝突エネルギーは主にCu膜104の表面部分に作用し、表面部分で反応が生じる。このため、下地であるバリア膜103等に対するダメージは極めて小さい。また、上述のように、基本的に常温プロセスであり、有機化合物の量が少なくてよく低圧で処理が可能であるため、有機化合物分子とO2−GCIとの衝突を無視することができ、有機化合物分子がO2−GCIの照射を妨げることがなく、高い反応効率を得ることができる。
【0051】
GCIBは、従来、主に表面をスパッタする技術として用いられており、図6に示すように、Cu膜のエッチングにもそのスパッタ力を適用することが考えられる。すなわち、O2−GCIBを照射してO2−GCI107をCu膜104に向けて直進させ(図6(a))、Cu膜104に衝突した際にCuをスパッタする(図6(b))ことによりエッチングを進行させることが考えられる。しかし、このような物理的作用のみでは、300mmさらには450mmと大型化している半導体ウエハに対するCu膜のエッチングに膨大な時間がかかってしまう。
【0052】
また、上記特許文献1のように、Cu膜の酸化処理と、有機酸によるエッチング処理とを分けて行う場合には、工程が煩雑となるとともに、エッチングレートが低い。また、有機酸によるエッチング処理の際に、基板を加熱する必要があるとともに、大流量の有機酸が必要であり、反応効率が悪いとともに副生成物が生じやすい。
【0053】
これに対して、本実施形態では、上述したように、O2−GCIBを、銅を酸化させるための酸素源および酸化銅と有機化合物との反応のための熱源として用い、銅の酸化および酸化銅と有機化合物との反応を効率よく連続的に行うことができる。このため、工程や装置構成を複雑にすることなく、極めて高いエッチングレートでCu膜をエッチングすることができる。このとき、基板を加熱することなく反応を進行させるので、少ない供給量で有機化合物を供給してもCu膜の表面に有効に吸着し、極めて効率よくCu膜をエッチングすることができる。また、有機化合物の供給量が少なくてよいため、有機化合物のチャンバ壁への付着量や副生成物の生成量も少ない。
【0054】
また、このように有機化合物を供給しつつO2−GCIBを照射してエッチングすることにより、Cu膜表面のラフネスを低下させることができ、半導体装置の配線として有利である。
【0055】
また、有機化合物ガスをノズル32aにより基板S近傍に導くことにより、反応を効率よく進行させることができるとともに、基板S以外への有機化合物の吸着を極力少なくすることができる。さらに、このように有機化合物ガスをノズル32aにより基板S近傍に導く場合には、基板Sの周囲にカバーを設けることができ、カバーに有機化合物が付着するようにすれば、カバーを取り外して洗浄することができ、メンテナンスが容易となる。
【0056】
<実験例>
(実験例1)
ターゲットチャンバ内に電気めっきによりCu膜を形成した基板を配置し、基板近傍に酢酸を供給してチャンバ内の酢酸分圧を2×10−5Torrとし、基板にO2−GCIBを照射してエッチングを行った。加速器における加速電圧Vaは10kVおよび20kVと2水準とし、O2−GCIBのドーズを5×1015〜2×1016(ions/cm2)の間で変化させ、ドーズを変化させた場合のCu膜のエッチング深さを評価した。また、酢酸を供給せずにO2−GCIBの照射のみでエッチングを行ったものについても、ドーズを変化させた場合のエッチング深さを評価した。その結果を図7に示す。
【0057】
図7に示すように、エッチング深さはO2−GCIBのドーズが増加するほど増加しているのがわかる。また、O2−GCIB照射とともに酢酸を供給したものについては、酢酸を供給しなかったものに比べ、著しくエッチング深さが増加しているのがわかる。O2−GCIB照射とともに酢酸を供給したものについては、エッチングレートが17nm/minと極めて大きな値となることが判明した。一方、加速電圧Vaの違いはエッチング深さにあまり大きな影響を与えていないことがわかる。
【0058】
(実験例2)
ここでは、実験例1と同様にCu膜を形成した基板に対し、酢酸分圧を変化させてエッチングを行った。ここでは、酢酸分圧を6×10−6〜6×10−5Torrの間で変化させ、加速器における加速電圧Vaを10kV、O2−GCIBのドーズを1×1016(ions/cm2)として、酢酸分圧を変化させた場合のCu膜のエッチング深さを評価した。その結果を図8に示す。
【0059】
図8に示すように、酢酸の分圧が低い領域ではエッチング深さは酢酸分圧が増加するに従って増加し、酢酸分圧が2×10−5Torrを超えた付近から飽和する傾向にある。すなわち、エッチング深さが飽和する以前の領域では酢酸の供給量が足りていないが、エッチング深さが飽和する分圧領域では、十分な量の酢酸が銅膜表面に吸着した状態でエッチングが進行するものと考えられる。
【0060】
(実験例3)
ここでは、実験例1と同様にエッチングを行ったCu膜サンプルのうち、O2−GCIBのドーズを1×1016(ions/cm2)としたサンプルについて、原子間力顕微鏡(AFM)により視野1μm×1μmで表面状態を評価した。比較のため、エッチング前(イニシャル)のCu膜についても同様に表面状態を評価した。その結果を図9に示す。図9は、これらサンプル表面の写真と、表面状態の指標(Ra、Rms)を示すものである。
【0061】
図9に示すように、O2−GCIBのみでもイニシャルよりも表面のラフネスが小さくなるが、酢酸を供給することにより表面のラフネスがさらに小さくなり、本発明により半導体装置の配線として良好なものとなることが確認された。
【0062】
<第1の実施形態における他の適用>
なお、上記説明では、有機化合物として有機酸である酢酸を用いた例を示したが、本発明の原理上、上述した蟻酸(HCOOH)、プロピオン酸(CH3CH2COOH)、酪酸(CH3(CH2)2COOH)、吉草酸(CH3(CH2)3COOH)などの他の有機酸でも同様の効果が得られることはいうまでもない。また、アルコールやアルデヒド等の酸化銅と反応してCuを除去することができる他の有機化合物も適用可能である。また、O2−GCIBを照射する機構や照射条件、さらには有機酸の供給方法についても、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記装置では、基板保持部としてXYステージを用い、基板保持部を移動させるようにしたが、O2−GCIBと基板保持部との間に相対移動を生じさせる機構であれば適用可能である。さらに、基板は半導体ウエハに限らず、FPD(フラットパネルディスプレイ)等の他の基板であってもよい。
【0063】
上記説明では、基板に形成された銅膜を、有機化合物を供給しつつO2−GCIBを照射することによりエッチングするが、銅膜に限らず、ニッケル膜等の他の遷移金属の膜についても同様の原理でエッチングすることができ、さらに有機化合物の代わりにHF等の無機化合物を用いてもエッチングすることができる。また、ガスクラスターイオンビームを形成するためのガスとしては、酸素ガスに限らず、他の酸化効果を有するガス、あるいは酸素ガスまたは他の酸化効果を有するガスと他のガスとを混合したガスを用いることもできる。
【0064】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るエッチング装置は、基本構成は第1の実施形態と同じであるが、基板を保持するステージの構成が第1の実施形態とは異なっている。すなわち、第1の実施形態では、基板Sを保持するXYステージ20に加熱手段等の温度制御機構が設けられていないが、本実施形態のエッチング装置は、第1の実施形態のXYステージ20の代わりに、図10に示す温度制御機構50を備えたXYステージ20′を用い、基板Sの温度制御が可能となっている。
【0065】
図10に示すように、XYステージ20′は、基板Sを実際に保持するトップステージ20aを有している。温度制御機構50は、トップステージ20a内に設けられたヒーター51および冷媒流路52と、基板Sの温度を検出する熱電対等の温度センサ53と、温度コントローラ54とを有している。温度センサ53の検出信号は温度検出部57を経て温度コントローラ54に送られる。ヒーター51にはヒーター電源55から給電され、冷媒流路52には冷媒循環供給部56から適宜の冷却媒体が循環される。そして、温度コントローラ54は、温度センサ53からの温度信号に基づいて、基板Sが所定の温度となるように、ヒーター電源55の出力および冷媒循環供給部56からの冷却媒体の流量または温度を制御する。
【0066】
第1の実施形態で説明したように、銅膜にO2−GCIBを照射して銅膜を酸化させるとともに、酸化銅を酢酸等の有機化合物と反応させて銅膜を異方的にエッチングする際には、本質的に加熱は必要としない。しかし、このようなエッチング反応におけるエッチングレートは、基板の温度を制御することにより大きく変化することが判明した。
【0067】
図11は、銅膜にO2−GCIBを照射して銅膜を酸化させ、酸化銅と酢酸を反応させて銅膜を異方的にエッチングした際の、基板温度とエッチング深さとの関係を示す図である。この実験では、酢酸分圧を5×10−3Pa(3.75×10−6Torr)、加速器における加速電圧Vaを10kV、O2−GCIBのドーズを1×1016(ions/cm2)とした。
【0068】
図11に示すように、基板温度の上昇にともなってエッチング深さが減少しており、これは基板温度が高いほどエッチングレートが低下することを示している。一般的なエッチング工程では、基板温度を上昇させることにより反応性が上がるためエッチングレートが向上することが知られており、有機化合物を供給しつつO2−GCIBを照射してエッチングする場合も同様な結果が得られることが想定されたが、図11の結果は想定とは逆の結果である。
【0069】
これは、基板温度が高くなることにより、基板上に十分に酢酸を供給することができなくなるため、酢酸を供給することによるエッチングレート向上効果が阻害されてしまうからであると考えられる。
【0070】
このようなメカニズムから考えると、基板温度の上限値は、供給する有機化合物の沸点(酢酸の場合は118℃)ということになる。また、図11に示すように、基板温度が90℃ではエッチングされたが、110℃では対象膜が酸化されてCu2Oが形成されてしまい、かえって膜厚が増えてしまうという現象が見られた。したがって、基板温度は90℃以下が好ましい。このように、供給する有機化合物の沸点以下、好ましくは90℃以下で温度制御することで、任意のエッチングレートでエッチング処理を行うことができる。
【0071】
エッチングレートを高める観点からは基板温度は低い方が好ましく、室温(25℃)よりも低い温度に基板温度を制御することによって、より高いエッチングレートでの処理が可能となる。
【0072】
なお、基板温度を制御する際には、制御方式は問わず、リニア制御でも、段階制御でもよい。
【0073】
本実施形態では、基板温度を制御することから、より広い適用が可能となり、酸素ガスのみならず、他の酸化効果を有するガスあるいは酸素ガスまたは他の酸化効果を有するガスと他のガスとを混合したガスによるGCIBの他、酸化効果を有さないArガス等の不活性ガスによるGCIBも適用可能である。また、有機化合物の代わりにHF等の無機化合物を用いてエッチングが可能であり、さらには、基板温度制御とGCIBとの組み合わせのみでもエッチングが行える場合がある。さらに、基板温度を制御することにより銅膜のみならず、ニッケル膜等の他の遷移金属の膜についても同様にエッチングできる他、その他の膜についても適用可能性を有する。本実施形態は、多層膜を連続してエッチングする場合にも適用することができ、その際に、各膜について基板温度を変更してエッチングしてもよい。
【0074】
本実施形態では、図10の温度制御機構により基板の温度制御を行ったが、これに限らず種々の温度制御機構を用いることができる。例えば、ヒーターのみの温度制御であっても、冷却媒体を循環させるのみの温度制御であってもよい。また、熱電変換素子を用いた温度制御を用いることもできる。
【0075】
また、本実施形態では、基板温度を制御することによりエッチングレートを調整したが、酢酸等の有機化合物の供給量を制御することによってもエッチングレートを調整することができる。
【0076】
さらに、本実施形態においても第1の実施形態と同様、基板は半導体ウエハに限らず、FPD(フラットパネルディスプレイ)等の他の基板であってもよい。また、有機化合物の代わりにHF等の無機化合物を用いてもエッチングすることもできる。
【符号の説明】
【0077】
1…エッチング装置
2…ソースチャンバ
3…ターゲットチャンバ
5…ノズル
7…スキマー
10…O2−GCIB照射機構
11…イオナイザー
12…加速器
13,15…アパーチャー
14…永久磁石
20,20′…XYステージ
20a…トップステージ
30…有機化合物ガス供給部
40…制御部
41…コントローラ
43…記憶部
50…温度制御機構
104…Cu膜
S…基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面の銅膜を異方的にエッチングするエッチング方法であって、
チャンバ内に表面に銅膜を有する基板を配置し、前記チャンバ内を真空状態としつつ、前記チャンバ内に有機化合物を供給し、
前記銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射し、
前記酸素ガスクラスターイオンビーム中の酸素ガスクラスターイオンにより、前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させて銅膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
前記チャンバへの前記有機化合物の供給と、前記酸素ガスクラスターイオンの照射を同時に行って連続的に銅膜を異方性エッチングすることを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記有機化合物は有機酸であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記有機酸はカルボン酸であることを特徴とする請求項3に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させる際のエネルギーは、前記酸素ガスクラスターイオンが前記銅膜に衝突した際の熱により供給され、前記基板を加熱することなくエッチングが行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記基板を加熱しないことにより、前記チャンバ内に供給された有機化合物の分子を前記銅膜の表面に吸着しやすくし、前記酸素ガスクラスターイオンビームが前記有機化合物分子に妨げられない程度の真空度になるような供給量で前記有機化合物を供給することを特徴とする請求項5に記載のエッチング方法。
【請求項7】
基板温度を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項8】
基板温度は有機化合物の沸点以下であることを特徴とする請求項7に記載のエッチング方法。
【請求項9】
基板温度は90℃以下であることを特徴とする請求項8に記載のエッチング方法。
【請求項10】
基板温度は室温以下であることを特徴とする請求項9に記載のエッチング方法。
【請求項11】
基板表面の膜を異方的にエッチングするエッチング方法であって、
チャンバ内に基板を配置し、前記チャンバ内を真空状態とし、
基板温度を制御した状態で前記膜にガスクラスターイオンビームを照射して前記膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング方法。
【請求項12】
前記チャンバ内に有機化合物を供給しつつ前記ガスクラスターイオンビームを照射することを特徴とする請求項11に記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記基板温度は、有機化合物の沸点以下であることを特徴とする請求項12に記載のエッチング方法。
【請求項14】
基板温度は90℃以下であることを特徴とする請求項13に記載のエッチング方法。
【請求項15】
基板温度は室温以下であることを特徴とする請求項14に記載のエッチング方法。
【請求項16】
基板表面の銅膜を異方的にエッチングするエッチング装置であって、
表面に銅膜を有する基板が保持されるチャンバと、
前記チャンバ内で基板を保持する基板保持部材と、
前記チャンバ内を真空排気する排気機構と、
前記チャンバ内に有機化合物ガスを供給する有機化合物ガス供給部と、
前記基板保持部材に保持された基板の表面の銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射する酸素ガスクラスターイオンビーム照射機構と、
酸素ガスクラスターイオンビームと前記基板との間に平面的な相対移動を生じさせる移動機構と
を具備し、
前記銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射した際に、前記酸素ガスクラスターイオンビーム中の酸素ガスクラスターイオンにより、前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させて銅膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング装置。
【請求項17】
前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させる際のエネルギーは、前記酸素ガスクラスターイオンが前記銅膜に衝突した際の熱により供給され、前記基板保持部材は加熱手段を有さず、前記基板を加熱することなくエッチングが行われることを特徴とする請求項16に記載のエッチング装置。
【請求項18】
前記基板保持部材は加熱手段を有さずにエッチングの際に基板が加熱されないことにより、前記チャンバ内に供給された有機化合物の分子が前記銅膜の表面に吸着しやすくし、前記酸素ガスクラスターイオンビームが前記有機化合物分子に妨げられない程度の真空度になるような供給量で前記有機化合物を供給することを特徴とする請求項17に記載のエッチング装置。
【請求項19】
前記基板保持部材上の基板の温度を制御する温度制御機構をさらに有することを特徴とする請求項16に記載のエッチング装置。
【請求項20】
前記温度制御機構は、基板の温度を前記有機化合物の沸点以下に制御することを特徴とする請求項19に記載のエッチング装置。
【請求項21】
前記温度制御機構は、基板の温度を90℃以下に制御することを特徴とする請求項20に記載のエッチング装置。
【請求項22】
前記温度制御機構は、基板の温度を室温以下に制御することを特徴とする請求項21に記載のエッチング装置。
【請求項23】
基板表面の膜を異方的にエッチングするエッチング装置であって、
基板が保持されるチャンバと、
前記チャンバ内で基板を保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材上の基板の温度を制御する温度制御機構と、
前記チャンバ内を真空排気する排気機構と、
前記基板保持部材に保持された基板の表面の膜にガスクラスターイオンビームを照射するガスクラスターイオンビーム照射機構と、
ガスクラスターイオンビームと前記基板との間に平面的な相対移動を生じさせる移動機構と
を具備し、
前記基板の温度を制御しつつ、前記膜にガスクラスターイオンビームを照射して前記膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング装置。
【請求項24】
前記チャンバ内に有機化合物ガスを供給する有機化合物ガス供給部をさらに有し、前記温度制御機構は、基板の温度を前記有機化合物の沸点以下に制御し、前記有機化合物ガス供給部から前記有機化合物を供給しつつ前記膜にガスクラスターイオンビームを照射することを特徴とする請求項23に記載のエッチング装置。
【請求項25】
前記温度制御機構は、基板の温度を90℃以下に制御することを特徴とする請求項24に記載のエッチング装置。
【請求項26】
前記制御機構は、基板の温度を室温以下に制御することを特徴とする請求項25に記載のエッチング装置。
【請求項27】
コンピュータ上で動作し、エッチング装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項15のいずれかのエッチング方法が行われるように、コンピュータに前記エッチング装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
基板表面の銅膜を異方的にエッチングするエッチング方法であって、
チャンバ内に表面に銅膜を有する基板を配置し、前記チャンバ内を真空状態としつつ、前記チャンバ内に有機化合物を供給し、
前記銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射し、
前記酸素ガスクラスターイオンビーム中の酸素ガスクラスターイオンにより、前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させて銅膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
前記チャンバへの前記有機化合物の供給と、前記酸素ガスクラスターイオンの照射を同時に行って連続的に銅膜を異方性エッチングすることを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記有機化合物は有機酸であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記有機酸はカルボン酸であることを特徴とする請求項3に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させる際のエネルギーは、前記酸素ガスクラスターイオンが前記銅膜に衝突した際の熱により供給され、前記基板を加熱することなくエッチングが行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記基板を加熱しないことにより、前記チャンバ内に供給された有機化合物の分子を前記銅膜の表面に吸着しやすくし、前記酸素ガスクラスターイオンビームが前記有機化合物分子に妨げられない程度の真空度になるような供給量で前記有機化合物を供給することを特徴とする請求項5に記載のエッチング方法。
【請求項7】
基板温度を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項8】
基板温度は有機化合物の沸点以下であることを特徴とする請求項7に記載のエッチング方法。
【請求項9】
基板温度は90℃以下であることを特徴とする請求項8に記載のエッチング方法。
【請求項10】
基板温度は室温以下であることを特徴とする請求項9に記載のエッチング方法。
【請求項11】
基板表面の膜を異方的にエッチングするエッチング方法であって、
チャンバ内に基板を配置し、前記チャンバ内を真空状態とし、
基板温度を制御した状態で前記膜にガスクラスターイオンビームを照射して前記膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング方法。
【請求項12】
前記チャンバ内に有機化合物を供給しつつ前記ガスクラスターイオンビームを照射することを特徴とする請求項11に記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記基板温度は、有機化合物の沸点以下であることを特徴とする請求項12に記載のエッチング方法。
【請求項14】
基板温度は90℃以下であることを特徴とする請求項13に記載のエッチング方法。
【請求項15】
基板温度は室温以下であることを特徴とする請求項14に記載のエッチング方法。
【請求項16】
基板表面の銅膜を異方的にエッチングするエッチング装置であって、
表面に銅膜を有する基板が保持されるチャンバと、
前記チャンバ内で基板を保持する基板保持部材と、
前記チャンバ内を真空排気する排気機構と、
前記チャンバ内に有機化合物ガスを供給する有機化合物ガス供給部と、
前記基板保持部材に保持された基板の表面の銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射する酸素ガスクラスターイオンビーム照射機構と、
酸素ガスクラスターイオンビームと前記基板との間に平面的な相対移動を生じさせる移動機構と
を具備し、
前記銅膜に酸素ガスクラスターイオンビームを照射した際に、前記酸素ガスクラスターイオンビーム中の酸素ガスクラスターイオンにより、前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させて銅膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング装置。
【請求項17】
前記銅膜の銅を酸化させて酸化銅とするとともに、酸化銅と有機化合物を反応させる際のエネルギーは、前記酸素ガスクラスターイオンが前記銅膜に衝突した際の熱により供給され、前記基板保持部材は加熱手段を有さず、前記基板を加熱することなくエッチングが行われることを特徴とする請求項16に記載のエッチング装置。
【請求項18】
前記基板保持部材は加熱手段を有さずにエッチングの際に基板が加熱されないことにより、前記チャンバ内に供給された有機化合物の分子が前記銅膜の表面に吸着しやすくし、前記酸素ガスクラスターイオンビームが前記有機化合物分子に妨げられない程度の真空度になるような供給量で前記有機化合物を供給することを特徴とする請求項17に記載のエッチング装置。
【請求項19】
前記基板保持部材上の基板の温度を制御する温度制御機構をさらに有することを特徴とする請求項16に記載のエッチング装置。
【請求項20】
前記温度制御機構は、基板の温度を前記有機化合物の沸点以下に制御することを特徴とする請求項19に記載のエッチング装置。
【請求項21】
前記温度制御機構は、基板の温度を90℃以下に制御することを特徴とする請求項20に記載のエッチング装置。
【請求項22】
前記温度制御機構は、基板の温度を室温以下に制御することを特徴とする請求項21に記載のエッチング装置。
【請求項23】
基板表面の膜を異方的にエッチングするエッチング装置であって、
基板が保持されるチャンバと、
前記チャンバ内で基板を保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材上の基板の温度を制御する温度制御機構と、
前記チャンバ内を真空排気する排気機構と、
前記基板保持部材に保持された基板の表面の膜にガスクラスターイオンビームを照射するガスクラスターイオンビーム照射機構と、
ガスクラスターイオンビームと前記基板との間に平面的な相対移動を生じさせる移動機構と
を具備し、
前記基板の温度を制御しつつ、前記膜にガスクラスターイオンビームを照射して前記膜を異方的にエッチングすることを特徴とするエッチング装置。
【請求項24】
前記チャンバ内に有機化合物ガスを供給する有機化合物ガス供給部をさらに有し、前記温度制御機構は、基板の温度を前記有機化合物の沸点以下に制御し、前記有機化合物ガス供給部から前記有機化合物を供給しつつ前記膜にガスクラスターイオンビームを照射することを特徴とする請求項23に記載のエッチング装置。
【請求項25】
前記温度制御機構は、基板の温度を90℃以下に制御することを特徴とする請求項24に記載のエッチング装置。
【請求項26】
前記制御機構は、基板の温度を室温以下に制御することを特徴とする請求項25に記載のエッチング装置。
【請求項27】
コンピュータ上で動作し、エッチング装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項15のいずれかのエッチング方法が行われるように、コンピュータに前記エッチング装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図9】
【公開番号】特開2013−80901(P2013−80901A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−155696(P2012−155696)
【出願日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【Fターム(参考)】
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