エッチング方法およびそれを用いた光/電子デバイスの製造方法
【課題】本発明は、比較的簡単なプロセスにより例えばIII−V族窒化物半導体のようなエッチングが困難な半導体層でも容易にエッチングが可能な半導体エッチング方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基体(1,2)の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、金属フッ化物層3等の固体層を形成する工程と、前記固体層をレジスト組成物等で処理する工程と、前記固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程とを有することを特徴とするエッチング方法。
【解決手段】基体(1,2)の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、金属フッ化物層3等の固体層を形成する工程と、前記固体層をレジスト組成物等で処理する工程と、前記固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程とを有することを特徴とするエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング方法およびそれを用いた光/電子デバイスの製造方法に関する。特に、InxAlyGa(1−x−y)N系III−V族化合物半導体(但し、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)等の化合物半導体のエッチングに最適なエッチング方法、そのエッチング方法による発光ダイオード(LED)、スーパールミネッセントダイオード、半導体レーザ等の発光デバイス、フォトダイオード、太陽電池等の受光デバイス、ダイオード、トランジスタ等の電子デバイスなどの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりIII−V族化合物半導体を用いた電子デバイスおよび発光デバイスが知られている。特に発光デバイスとしては、GaAs基板上に形成されたAlGaAs系材料やAlGaInP系材料による赤色発光、GaP基板上に形成されたGaAsP系材料による橙色または黄色発光等が実現されてきている。また、InP基板上ではInGaAsP系材料を用いた赤外発光デバイスも知られている。
【0003】
これらデバイスの形態としては、自然放出光を利用する発光ダイオード(light emitting diode: LED)、さらに誘導放出光を取り出すための光学的帰還機能を内在させたレーザダイオード(laser diode: LD)、および半導体レーザが知られており、これらは表示デバイス、通信用デバイス、高密度光記録用光源デバイス、高精度光加工用デバイス、さらには医療用デバイスなどとして用いられてきている。
【0004】
1990年代以降において、V族元素として窒素を含有するInxAlyGa(1−x−y)N系III−V族化合物半導体(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の研究開発が進み、これを用いたデバイスの発光効率が飛躍的に改善され、高効率な青色LED、緑色LEDが実現されている。その後の研究開発によって、紫外領域においても高効率なLEDが実現され、現在では、青色LDも市販されるに至っている。
【0005】
紫外または青色LEDを励起光源として蛍光体と一体化すると白色LEDが実現できる。白色LEDは、次世代の照明デバイスとしての利用可能性があるために、励起光源となる紫外、近紫外または青色LEDの高出力化、高効率化の産業的な意義は極めて大きい。現在、照明用途を念頭にした、青色、近紫外または紫外LEDの高効率化、高出力化の検討が精力的になされている。
【0006】
ここで、素子の高出力化、すなわち、全放射束を向上させるためには、素子の大型化と大きな投入電力に対する耐性の確保は必須である。また、通常のLEDが点光源であるのに対して十分な大型化がなされた素子は、面光源としての発光特性を示す様になり、特に照明用途には好適となる。
【0007】
しかし、通常の小型LEDの面積を単に相似形的に大きくしただけの素子では、一般に素子全体の発光強度の均一性が得られない。そこで、同一基板上にLEDを集積することが提案されている。例えば、特開平11−150303号公報(特許文献1)には、面光源として適する発光部品として、個々のLEDが直列接続された集積型の発光部品が開示されている。また、特開2002−26384号公報(特許文献2)には、大面積で発光効率の良い集積型窒化物半導体発光素子を提供する目的で、LEDの集積方法が開示されている。集積化には、単一の発光ユニットである1対のpn接合を、他の発光ユニットと電気的に分離する必要があり、窒化物半導体層に実効的な「溝」を形成する技術が非常に重要である。
【0008】
特開平11−150303号公報(特許文献1)では、単一の発光ユニットである1対のpn接合を、ユニット間で完全に電気的に分離するために、絶縁性基板が露出するまで、Niマスクを使用してGaN層をエッチングすることが記載されている(特許文献1、段落0027参照)。また、特開2002−26384号(特許文献2)においても、単一の発光ユニットである1対のpn接合部分を、他の発光ユニットと分離するために、RIE(反応性イオンエッチング)法によってSiO2をマスクとしてGaN系材料をサファイア基板に到達するまでエッチングして、ユニット間の分離溝を形成している(特許文献2、図2、図3、および段落0038参照)。
【0009】
しかし、特許文献1で使用しているNi等の金属マスク、特許文献2で使用しているSiO2等の酸化物、さらに公知のSiN等の窒化物マスクは、GaN系材料のエッチングマスクとしてはエッチング耐性が不十分であり、選択比がとれず、エッチングの形状制御等に問題がある。また、現実問題として、数μmを越える厚膜GaN系エピタキシャル層をSiO2等の酸化物マスクでエッチングするためには、極めて膜厚の厚いSiO2マスクが必要となり、生産性にも問題がある。
【0010】
ところで、上記金属マスク、酸化物マスクおよび窒化物マスクに加えて、フッ化物系のマスクが提案されている。
【0011】
例えば、ジャーナルオブバキュームサイエンスアンドテクノロジー B (J. Vac. Sci. Technol. B )第8巻、p.28、1990年(非特許文献1)には、GaN系材料の分離溝形成、AlGaAs系材料のエッチング、再成長実施等のためのマスクとして、PMMAレジストを用いたリフトオフ法によってSrF2マスクおよびAlF3マスクを形成すること、さらに、室温におけるMBE法によってAlSrFマスクを形成することが記載されている。しかし、本発明者の検討では、室温で成膜されたフッ化物系マスクの品質は十分ではなく、AlGaAs系材料のような比較的エッチングが容易な材料のエッチングマスクとしては機能するものの、GaN系材料のような非常にエッチングしにくい材料のエッチングマスクとしては、その耐性は十分でない。また、室温で形成されたSrF2単体のマスクは、後述するように、意図しないサイドエッチングの発生や、SrF2そのものをパターニングする際に使用するフォトマスクやレジストマスク形状からSrF2自体への形状の転写精度低下などが問題となる。
【0012】
また、同様に、特開平6−310471号公報(特許文献3)においても、GaAs、InGaAs、InGaAsP系材料の微細エッチングにリフトオフ法で作製したSrF2とAlF3が使用可能であることが記載されている。この文献にはエッチングマスクの成膜条件に関する記述がないが、マスクのパターニング方法が、電子線露光可能なレジストを用いたリフトオフ法によるものであることから、マスクの成膜温度は、室温からたかだか100℃程度の温度で成膜された膜であると推定される。前述のとおり、室温程度で成膜されたマスクでは、GaN系材料のエッチングマスクとしては耐性が不十分で、また、意図しないサイドエッチングの発生や、SrF2そのものをパターニングする際に使用するフォトマスクやレジストマスク形状からSrF2自体への形状の転写精度低下などが問題となる。
【0013】
さらに、特開平5−36648号公報(特許文献4)においても、リフトオフ法でパターニングした金属マスク、SrF2マスクを用いてGaAs系材料をエッチングする手法が開示されている。この文献においても、SrF2マスクの成膜条件の記載がないが、マスクのパターニングがリフトオフ法によるものであることから、マスクの成膜温度は、室温からたかだか100℃程度の温度で成膜された膜であると推定される。
【特許文献1】特開平11−150303号公報
【特許文献2】特開2002−26384号公報
【特許文献3】特開平6−310471号公報
【特許文献4】特開平5−36648号公報
【非特許文献1】ジャーナルオブバキュームサイエンスアンドテクノロジー B (J. Vac. Sci. Technol. B )第8巻、p.28、1990年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたものであり、比較的簡単なプロセスにより例えばIII−V族窒化物半導体のようなエッチングが困難な半導体層でも容易に且つ精度良くエッチングが可能なエッチング方法を提供することを目的とする。
【0015】
さらに本発明の異なる目的は、前記エッチング方法を1工程として有する半導体装置、特に半導体発光装置等の光/電子デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、以下の事項に関する。
【0017】
1. 基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、金属フッ化物からなる固体層を形成する工程と、
前記固体層を液体で処理する工程と、
前記液体で処理された固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程と
を有することを特徴とするエッチング方法。
【0018】
2. 前記液体が、レジスト組成物である上記1記載のエッチング方法。
【0019】
3. 前記レジスト組成物処理工程は、
サブ工程(1):前記固体層にレジスト組成物を塗布する塗布工程、および
サブ工程(6):レジスト組成物の除去工程
を必須の工程として有することを特徴とする上記2記載のエッチング方法。
【0020】
4. 前記レジスト組成物処理工程は、
サブ工程(2):第1の加熱工程、
サブ工程(3):第1の露光工程、
サブ工程(4):第2の加熱工程、および
サブ工程(5):第2の露光工程
からなるサブ工程群から選ばれる少なくとも1つの工程をさらに有し、前記サブ工程(1)およびサブ工程(6)と合わせて、番号の小さい方から実施されることを特徴とする上記3記載のエッチング方法。
【0021】
5. 前記液体処理工程の後、
前記固体層上に、パターニングされたレジストマスクを形成する工程と、
前記レジストマスクをエッチングマスクとして、前記固体層をエッチングする工程と、
を有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のエッチング方法。
【0022】
6. 前記レジストマスクがフォトレジストにより形成されることを特徴とする上記5記載のエッチング方法。
【0023】
7. 前記固体層をエッチングする工程が、ウェットエッチングにより行われることを特徴とする上記5または6記載のエッチング方法。
【0024】
8. 前記ウェットエッチングに使用するエッチャントが、塩酸、フッ酸および濃硫酸からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有することを特徴とする上記7記載のエッチング方法。
【0025】
9. 前記固体層を150℃〜480℃の温度で形成することを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のエッチング方法。
【0026】
10. 前記固体層が、SrF2、AlF3、MgF2、BaF2、CaF2およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載のエッチング方法。
【0027】
11. 前記基体をエッチングする工程が、ドライエッチングで行われることを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載のエッチング方法。
【0028】
12. 前記ドライエッチングが、少なくとも塩素原子を含有するガス種を用いたプラズマ励起ドライエッチングであることを特徴とする上記11記載のエッチング方法。
【0029】
13. 前記基体のエッチング工程の後に、酸またはアルカリを含有するエッチャントにより前記固体層を除去する工程を有することを特徴とする上記1〜12のいずれかに記載のエッチング方法。
【0030】
14. 前記基体上に形成されるエッチングマスクが、前記固体層と、前記固体層を構成する物質以外の第2のマスク層との多層構造部分を有することを特徴とする上記1〜13のいずれかに記載のエッチング方法。
【0031】
15. 前記基体が、III−V族窒化物層を含むことを特徴とする上記1〜14のいずれかに記載のエッチング方法。
【0032】
16. 前記固体層をエッチングする際に発生する、パターニングされたレジストマスク端から計測したサイドエッチ量が、6μm以下であることを特徴とする上記5記載のエッチング方法。
【0033】
17. 前記固体層をエッチングする際に発生する、パターニングされたレジストマスク端から計測したサイドエッチ量が、2μm以下であることを特徴とする上記16記載のエッチング方法。
【0034】
18. 基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、微粒子間空隙を有する固体層を形成する工程と、
前記固体層を液体で処理する工程と、
前記液体で処理された固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程と
を有することを特徴とするエッチング方法。
【0035】
19. 上記1〜18のいずれかに記載のエッチング方法を1工程として有する光/電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、比較的簡単なプロセスにより、例えばIII−V族窒化物半導体のようなエッチングが困難な半導体層でも、容易にエッチングが可能なエッチング方法を提供することができる。特に、本発明によれば、フォトマスク、メタルマスク等に形成されている原形状が、たとえ緻密な微細パターンであっても、従来と比較して、より忠実に、より精度よく、エッチング終了後のエッチング対象物の平面形状として転写可能となる。具体的には、たとえば、フォトマスクに形成されている原形状の寸法を、エッチング対象物のエッチング後の寸法として、従来と比較して格段に高い精度で一致させること、あるいは所望の投影倍率で高精度に投影することが可能となる。総じていうと、加工プロセス全体における「転写精度」が格段に向上する。よって、半導体装置、半導体発光装置、特にIII−V族窒化物半導体のエッチングを伴う光/電子デバイスの製造方法に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本明細書において、「積層」または「重なる」の表現は、もの同士が直接接触している状態に加え、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、互いに接触していなくても、一方を他方に投影した際に空間的に重なる状態をも指す場合がある。また、「〜の上(〜の下)」の表現も、もの同士が直接接触して一方が他方の上(下)に配置されている状態に加え、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、互いに接触していなくても、一方が他方の上(下)に配置されている状態にも使用する場合がある。さらに、「〜の後(前、先)」との表現は、ある事象が別の事象の直後(前)に発生する場合にも、ある事象が別の事象との間に第三の事象を挟んだ後(前)発生する場合にも、どちらにも使用する。また、「接する」の表現は、「物と物が直接的に接触している場合」に加えて、本発明の趣旨に適合する限りにおいて、「物と物が直接的には接触していなくても、第三の部材を介して間接的に接している場合」、「物と物が直接的に接触している部分と、第三の部材を介して間接的に接している部分が混在している場合」などを指す場合もある。加えて「数値1〜数値2」との表現は数値1以上数値2以下との意味に使用する。
【0038】
さらに、本発明において、「エピタキシャル成長」とは、いわゆる結晶成長装置内におけるエピタキシャル層の形成に加えて、その後のエピタキシャル層の熱処理、荷電粒子処理、プラズマ処理など等によるキャリアの活性化処理等も含めてエピタキシャル成長と記載する。
【0039】
本発明のエッチング方法は、前述の通り、
(a)基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、金属フッ化物層からなる固体層または微粒子間空隙を有する固体層(以下、それぞれを、または、あわせて単に「固体層」と記すことがある。)を形成する工程と、
(b)前記固体層を液体で処理する工程と、
(e)前記液体で処理された固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程とを有する。
【0040】
上記本発明のエッチング方法において、液体は、好ましくはレジスト組成物である。
【0041】
固体層は、現象的に見てレジスト組成物等による液体処理により、化学的および/または物理的状態に何らかの変化(表面コーティング等の可能性も含む)が生じている。これは、レジスト組成物等による液体処理に使用した成分が化学的および/または物理的に結合して残存している可能性も考えられる。それらの変化を適切に利用することで、上記固体層は、精度のよいエッチングマスクとして極めて有用である。
【0042】
より具体的には、固体層をレジストを用いてパターニングする際に、固体層自体の、レジスト端からのサイドエッチングが抑制されパターン精度が向上する。加えて、基体表面にパターン化された固体層を形成し、その後に液体(例えばレジスト組成物)で処理するプロセスでも、その後サイドエッチングが問題になるような工程等を有する場合、または固体層の溶解が問題となるような工程を有する場合にも、本発明は有効であると考えられる。
【0043】
本発明の好ましい態様では、
(a)基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、固体層を形成する工程、
(b)前記固体層を液体(代表的にはレジスト組成物)で処理する工程、
(c)前記固体層上に、パターニングされたレジストマスク(固体層エッチング用)を形成する工程、
(d)前記レジストマスクをエッチングマスクとして、前記固体層をエッチングする工程、
(e)前記固体層をマスク(基体エッチング用)として、前記基体をエッチングする工程
を有する。
【0044】
ここで、工程(c)で形成されるレジストマスクは、固体層を精密パターニングするためのレジストマスクであり、これにより工程(d)で固体層をパターニングし、そのパターニングされた固体層をマスクとして基体をエッチングする。一方、工程(b)の液体処理工程で使用する液体は、固体層を処理するためのものであり、従って、液体がレジスト組成物であるときも、工程(c)で形成されるレジストマスクとは異なる。即ち、工程(d)の直後に、エッチングされてパターニングされた固体層に注目すると、少なくとも1回は固体層上にレジストが塗布されてその後除去され、その後固体層上にレジスト層が形成されたことになる。
【0045】
以下、(a)〜(e)の工程順に沿って、図1〜図7を適宜参照しながら本発明を説明する。
【0046】
<基体>
本発明において、基体(base structure=object to be etched)は、本発明のエッチング方法によりエッチングの対象となるもの、詳細には固体層をマスクとしてエッチングされる対象を意味する。後述の基板(substrate)は、層(例えば半導体層)をサポートしたり、結晶成長のために使用される通常の意味のsubstrateを意味する。後述するように、基板(substrate)がエッチング対象の基体(base structure=object to be etched)である場合もある。本発明において、エッチングの対象となる基体の材料、形状、積層構造等の構成は、種々の形態が可能である。
【0047】
基体の材料に関しては、特に限定されず、半導体、金属、並びに酸化物および窒化物等の無機材料が挙げられる。本発明は、固体層エッチングマスク(以下、パターニングされた固体層をいう。)を用いて、特にドライエッチングでエッチングすることのできる基体であればどのようなものにも適用できる。但し、金属フッ化物からなる固体層エッチングマスクは、ドライエッチング耐性が極めて高いので、ドライエッチングによるエッチングが難い基体に適用した場合であっても、大きなエッチング選択比を確保できるので、本発明の効果を最大に発揮することができる。
【0048】
例えば、半導体材料として特に限定されないが、シリコン、ゲルマニウム、ダイヤモンド、GaN等のIII−V族化合物半導体およびII−VI化合物半導体等の一般に半導体装置に使用される半導体が挙げられる。また、サファイア、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素等の酸化物、窒化物、また、酸窒化物材料のエッチングにも適している。さらに、金属等のエッチングも可能である。
【0049】
基体の形状、構成に関しても特に限定はないが、例えばエッチング対象が半導体層を含む場合には、基体は、半導体基板そのもの、基板(半導体基板、またはサファイア等の酸化物基板等)とその上に形成された半導体層、必要により絶縁層および/または金属層等との組み合わせであってもよい。この場合、半導体層(必要により絶縁層等のその他の層を含む)部分のみをエッチングしてもよいし、その下の基板も含めてエッチングしてもよい。
【0050】
半導体層の形成方法も制限はなく、どのような方法で形成された半導体層にも適用可能である。本発明を発光素子の製造に適用する場合には、好ましくは、基板上にエピタキシャル成長などの薄膜結晶成長技術により形成された層である。ここで、「薄膜結晶成長」とは、いわゆる、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)、MBE(Molecular Beam Epitaxy)、プラズマアシストMBE、PLD(Pulsed Laser Deposition)、PED(Pulsed Electron Deposition)、PSD(Pulsed sputtering Deposition)、VPE(Vapor Phase Epitaxy)、LPE(Liquid Phase Epitaxy)法等の結晶成長装置内における薄膜層、アモルファス層、微結晶、多結晶、単結晶、あるいはそれらの積層構造の形成に加えて、その後の薄膜層の熱処理、プラズマ処理等によるキャリアの活性化処理等も含めて薄膜結晶成長と記載する。
【0051】
有用性が高くかつドライエッチングが一般に困難な半導体層の材料として、即ち本発明のエッチング方法を適用することが好ましい半導体としては、構成する元素にIn、Ga、Al、Bおよびそれらの2以上組み合わせから選ばれる元素が含まれることが好ましく、さらに半導体層にV族原子として窒素原子が含まれることが好ましく、最も好ましくは半導体層にV族原子として窒素原子のみが含まれる。半導体層として具体的には、GaN、InN、AlN、BN、InGaN、AlGaN、InAlN、InAlGaN、InAlBGaN等のIII−V族窒化物半導体(以下、簡単のためにGaN系半導体ということもある。)が挙げられる。これらは、必要によりドーパントとしてSi、Mg等の元素が含まれていてもよい。
【0052】
なお、本発明は、III−V族窒化物半導体以外の半導体、例えばGaAs系、GaP系、InP系、Si系等のエッチングにも好適に利用可能である。
【0053】
半導体層は多層構造でもよく、本発明を用いて、III−V族窒化物半導体(GaN系)発光素子を作製する場合には、半導体層としては薄膜結晶成長(代表的にはエピタキシャル成長)されたバッファ層、第一導電型クラッド層、第一導電型コンタクト層、活性層構造、第二導電型クラッド層、第二導電型コンタクト層等を含むことが望ましい。本発明に適用可能な、好ましい基体としては、サファイア基板上のGaN系エピタキシャル層や、GaN基板上のGaN系エピタキシャル層を挙げることができる。
【0054】
以下の説明では、図1に示すように、エッチング対象の基体が、基板1とその上に形成した半導体層2を有し、エッチングされる部分が半導体層2のみである場合を代表例として説明する。しかし、半導体層2が存在しなくて基板そのものがドライエッチングの対象の基体である場合、基板1と半導体層2が共にドライエッチングの対象である場合にも適用可能である。この場合の好ましい基体としては、上述と同様、サファイア基板上のGaN系エピタキシャル層や、GaN基板上のGaN系エピタキシャル層を挙げることができる。
【0055】
半導体層が基板上に形成される場合の基板としては、目的の半導体層を形成可能な基板であれば、特に制限はなく、半導体基板およびセラミック基板、絶縁性基板および導電性基板、並びに透明基板および不透明基板等の使用が可能である。目的とする半導体装置、半導体製造プロセス等を考慮して適宜選ぶことが好ましい。
【0056】
例えば、基板側からも光取り出しを意図したGaN系発光素子構造を作製する場合には、光学的に素子の発光波長に対しておおよそ透明である基板を用いることが望ましい。ここでおおよそ透明とは、発光波長に対する吸収が皆無であるか、あるいは、吸収が存在しても、その基板の吸収によって光出力が50%以上低減しないものである。また、GaN系発光素子の製造には、電気的には絶縁性基板が好ましい。これは、いわゆるフリップチップマウントをすると仮定した場合に、たとえハンダ材などが基板周辺に付着しても半導体発光装置への電流注入には影響を与えないからである。この場合の具体的な材料としては、例えばInAlGaN系発光材料またはInAlBGaN系材料をその上にエピタキシャル成長させるためには、サファイア、SiC、GaN、LiGaO2、ZnO、ScAlMgO4、NdGaO3およびMgOから選ばれることが望ましく、特にサファイア、GaN、ZnO基板が好ましい。特にGaN基板を用いる際には、そのSiのドーピング濃度は意図的にアンドープ基板を用いる場合には、1×1018cm−3のSi濃度以下が望ましく、さらに望ましくは8×1017cm−3以下であることが、電気抵抗の観点と結晶性の観点からが望ましい。
【0057】
本発明で使用される基板は、いわゆる面指数によって完全に確定されるジャスト基板だけではなく、エピタキシャル成長の際の結晶性を制御する観点から、いわゆるオフ基板(miss oriented substrate)であることも望ましい。オフ基板は、その上に形成される半導体層がエピタキシャル層である場合には、ステップフローモードでの良好な結晶成長を促進する効果を有するため、半導体層のモフォロジ改善にも効果があり、基板として広く使用される。たとえば、サファイアのc+面基板を基板としてGaN系材料の結晶成長用基板として使用する際には、m+方向に0.2度程度傾いた面を使用することが好ましい。オフ基板としては、0.1〜0.2度程度の微傾斜を持つものが広く一般的に用いられるが、サファイア上に形成されたGaN系材料においては、活性層構造内の発光ポイントである量子井戸層にかかる圧電効果による電界を打ち消すために、比較的大きなオフ角度をつけることも可能である。
【0058】
基板には、MOCVDやMBE等の結晶成長技術を利用して半導体層を製造するために、あらかじめ化学エッチングや熱処理等を施しておいてもよい。また、基板の半導体層成長面に意図的に凹凸をつける加工を行い、これによってエピタキシャル層と基板との界面で発生する貫通転移を、発光素子の活性層近傍に導入しないようにすることも可能である。この場合は、凹凸のある表面に、エッチングマスク層を形成することになるが、本発明ではその場合にも、良好なエッチングマスク層を形成することができる。
【0059】
基板の厚みは、目的とする半導体装置および半導体プロセスを考慮して選ばれるが、装置作成初期においては、例えば250〜700μm程度にしておき、半導体装置の結晶成長、素子作製プロセスにおける機械的強度が確保されるようにしておくのが通常は好ましい。これを用いて半導体層をスパッタ、蒸着、あるいはエピタキシャル成長などの方法で形成した後に、適宜各々の素子に分離しやすくするために、研磨工程によってプロセス途中で薄くしてもよい。
【0060】
<固体層>
本発明のエッチング方法では、基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、金属フッ化物からなる固体層または微粒子間空隙を有する固体層を形成する。金属フッ化物は、良好な膜質を有し、その後の金属フッ化物層のエッチング、および基体のエッチングを良好に行うことができるという観点から、好ましい材料として用いられる。一方、材料的視点とは独立して、前記固体層を電子顕微鏡レベルの構造的視点でとらえると、微粒子間空隙を有する固体層が好ましい構造として用いられる。
【0061】
まず、金属フッ化物からなる固体層を形成する場合について詳細に説明する。
【0062】
即ち、第一の本発明のエッチング方法は、
(a)基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、金属フッ化物からなる固体層を形成する工程と、
(b)前記固体層を液体で処理する工程と、
(e)前記液体で処理された固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程とを有することを特徴とする。
【0063】
<金属フッ化物層の成膜>
図2に、半導体層2上にエッチングマスク層3を形成した様子を示す。エッチングマスク層には、少なくとも1層の金属フッ化物層が含まれる。この例では、エッチングマスク層3は、金属フッ化物層の1層構造である。
【0064】
金属フッ化物層を構成する材料は、2価または3価金属のフッ化物が挙げられ、特に長周期律表の2族(2A族)、3族(3A族)、12族(2B族)および13族(3B族)から選ばれる金属元素のフッ化物が好ましい。具体的には、SrF2、CaF2、MgF2、BaF2、AlF3等が挙げられ、ドライエッチング耐性とウェットエッチング性のバランスを考慮すると、SrF2、CaF2、MgF2が好ましく、この中でもCaF2およびSrF2が好ましく、SrF2が最も好ましい。
【0065】
前述のとおり、SrF2等の金属フッ化物をエッチングマスクとして使用する提案は従来より存在したが、マスクパターンはフォトレジストを使用したリフトオフ法によって形成されている。リフトオフ法でマスクパターンを形成するには、フォトレジストを高温にさらすことができないために、SrF2等の金属フッ化物を高温で形成することができない。常温近傍で成膜した金属フッ化物層は、一般的には膜質は良好ではない。本発明の好ましい態様では、金属フッ化物層のパターニングをエッチング法、好ましくはウェットエッチング法で行う。このため、成膜温度の設定範囲が広がり、より高温での成膜が可能になり、より良好な膜質の金属フッ化物パターニングマスクを形成することができる。
【0066】
金属フッ化物層は好ましくは150℃以上の温度で成膜される。150℃以上で成膜されたものは、下地との密着性に特に優れ、緻密な膜が形成される。同時に、金属フッ化物層のエッチングにより、レジストパターンの平面形状を金属フッ化物層の平面形状へ精度よく転写することができる。たとえば、直線状の開口を形成する場合やストライプ状パターンを形成する場合には、金属フッ化物層は、その側壁の直線性やレジストパターンからの平面形状の転写精度に優れている。但し、後述する液体処理(レジスト組成物処理等)に使用される液体の種類によっては、金属フッ化物層が常温近傍〜150℃未満の範囲で成膜されても、転写精度に優れるために使用可能である。
【0067】
一般に、成膜温度は、比較的高い温度であることが好ましい。即ち、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上、最も好ましくは350℃以上である。特に350℃以上で成膜された金属フッ化物層は、あらゆる下地との密着性に優れ、かつ、相対的に低温で成膜したものと比較して緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示す。レジストマスクや金属マスク等異種材料をエッチングマスクとして金属フッ化物をエッチングした場合の、金属フッ化物自体のパターニング形状についても、転写精度(パターンが直線である場合は、側壁部分の直線性)に非常に優れ、開口部の幅の制御性も確保されるようになる。このような金属フッ化物層は基体のエッチングマスクとして最も好ましい。本発明では、後述する液体処理の効果と相俟って、パターニングする際の開口部の幅の制御性、形状制御性が極めて優れている。尚、以下の説明で、150℃以上の温度での成膜を、略して「高温成膜」ということもある。
【0068】
このように、下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、転写精度に非常に優れたエッチングマスクとするためには、高温で成膜することが好ましいが、一方、成膜温度が高すぎると、後述するウェットエッチングのエッチャントに対する耐性が必要以上になり、フォトレジストを使用したパターニング、あるいはその除去が容易でなくなる。特に、後述するようにSrF2等のマスクは半導体層のドライエッチング時に塩素等のプラズマにさらされると、その後に実施するマスク層の除去時のエッチングレートが、塩素等のプラズマにさらされる前に比較して低下する傾向を有している。このため、金属フッ化物の過度の高温での成膜はそのパターニングと最終除去の観点から好ましくない。
【0069】
まず半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされる前の金属フッ化物にあっては、低温成膜した層ほど塩酸等のエッチャントに対するエッチングレートが大きくエッチングが速く進行し、成膜温度を高くするほどエッチングレートが低下し、エッチングの進行が遅くなる。成膜温度が300℃以上になると、成膜温度が250℃程度の膜よりエッチングレートの低下が目立ってくるが、350℃から450℃程度では、非常に都合の良いエッチング速度の範囲にある。しかし、成膜温度が480℃を超えるとエッチング速度の絶対値が必要以上に小さくなり、金属フッ化物層のパターニングに過剰な時間を費やすこととなり、また、レジストマスク層等が剥離しない条件でのパターニングが困難になる事もある。さらに、半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされた後の金属フッ化物層にあっては、除去時の塩酸等に対するウェットエッチングレートは低下する性質があり、過度の高温での成膜は、半導体層エッチング後に不要になった金属フッ化物層の除去を困難にしてしまう。
【0070】
さらに、金属フッ化物の成膜を過剰な高温で実施すると、基板や半導体層、あるいは後述するように半導体層に形成された金属層などに過剰な熱履歴を与えることとなり、半導体発光素子等を作製する際には、マスク作製プロセスがデバイスに対して悪影響をあたえる可能性がある。
【0071】
このような観点から、金属フッ化物層の成膜温度は、好ましくは480℃以下であり、さらに好ましくは470℃以下、特に好ましくは460℃以下である。
【0072】
半導体層のエッチング条件において、半導体層等の基体と金属フッ化物層とのエッチング選択比は、40以上、好ましくは200以上であり、さらに好ましくは400以上であり、これがIII−V族窒化物半導体でも可能である。
【0073】
金属フッ化物層の形成方法としては、スパッタ法、電子ビーム蒸着法および真空蒸着法等の通常の成膜方法を採用することができる。しかし、スパッタ法、電子ビーム蒸着法等の方法では選択比の低いエッチングマスクとなることがある。これは、フッ化物に、直接電子、イオン等が衝突するので、条件によってはおそらくフッ化物を金属とフッ素に解離させてしまうことによると考えられる。従って、これらの成膜方法では、成膜条件を適切に選ぶ必要があり、製造条件に制約が生じる。一方、例えば抵抗加熱による真空蒸着法では、このような問題がないので、最も望ましい。なお、電子ビームを利用した蒸着法であっても、直接フッ化物材料に電子ビームを当てるのではなく、材料をいれたるつぼを電子ビームで加熱するなどの間接的な加熱であれば、抵抗加熱法と同じく望ましい。これらの蒸着法により成膜すると、ドライエッチング耐性に優れた金属フッ化物層を容易に成膜することができる。
【0074】
さらに、SrF2等の金属フッ化物層の成膜レートとしては、0.03nm/secから3nm/sec程度の範囲が好ましく、さらに、0.07nm/secから2.0nm/sec程度が好ましく、さらには0.10nm/secから1.0nm/sec程度が最も好ましい。この範囲で成膜された金属フッ化物層は、下地との密着性に富み、対プラズマ耐性が確保された膜となるため、より望ましい。
【0075】
<構造的視点から見た固体層の特徴>
以上のように、本発明のエッチング方法について、エッチングマスクの少なくとも一部として形成する固体層を、金属フッ化物という材料的視点で詳述した。一方、本発明者らは、材料的視点とは独立して、前記固体層を電子顕微鏡レベルの構造的視点でとらえることも可能であることを見出した。
【0076】
即ち、第二の本発明のエッチング方法は、
(a)基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、微粒子間空隙を有する固体層を形成する工程と、
(b)前記固体層を液体で処理する工程と、
(e)前記液体で処理された固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程とを有することを特徴とする。
【0077】
ここで、微粒子間空隙とは、一度の製膜によって、材料、形成条件等を選択することにより、自然発生的に形成される比較的マクロな空隙をいう。比較的マクロな空隙は、図21、図22、図23および図24で見られるような固体層を構成する微粒子同士の間に存在し、より具体的には例えば数nm〜数十nm程度のサイズ(通常1〜50nm)の空隙をいう。比較的マクロな空隙は、例えばSiNx膜を通常のフォトリソグラフィープロセスで人工的に穴あけ加工してパターニングしたような空隙を意味するものではない。また、いわゆる多結晶にみられる単なる結晶粒界のような、いわゆる多結晶を構成する個々の結晶同士の隙間ない連結部分を意味するものでもない。
【0078】
このような微粒子間空隙は、図21や図22(断面写真)、または図23や図24(表面写真)にみられるようにSEM等で拡大視した際に、確認することができる。
【0079】
また、前記固体層の上側表面に存在する微粒子間空隙の量は、下記により測定される表面空隙率で見積もることが可能である。
【0080】
ここにおいて本発明の第二のエッチング方法で用いられる固体層の表面空隙率は、通常0.5%以上であり、通常15%以下、好ましくは8%以下である。表面空隙率が大きすぎると固体層の緻密性が劣り、ドライエッチング耐性が低下する場合がある。表面空隙率が小さすぎると本発明における液体の処理効果が不十分になる場合がある。例えば、図23のSrF2層、および図24のCaF2における表面空隙率は、それぞれ約2.7%、約0.9%である。
【0081】
<表面空隙率の測定方法>
(i)SEM等の電子顕微鏡で固体層の膜を撮影し、撮影した部分のうち、空隙部分の面積の和を測定、計算する。この際に、写真等の画像にした固体層の表面は、微粒子部分と微粒子間空隙部分は、像のコントラストとして認識可能となる。これを元に空隙部分の面積の和を求める。
(ii)撮影した部分(空隙部分を含む固体層全体)の面積を測定、計算する。
(iii)下記式により、表面空隙率を算出する。
【0082】
表面空隙率=前記空隙部分の面積の和/前記撮影した部分の面積
なお、SEM等を用いて測長する場合には一般に10%の誤差があることが知られている。また、表面の凹凸によってSEMの像の焦点があわない場合の誤差や、画像のコントラスト処理により、空隙のエッジ部分の位置が変化して見える誤差が存在する。これらにより、表面空隙率の測定値には、±50%程度以内の誤差の可能性がある。
【0083】
微粒子間空隙を有する固体層を構成する材料は特に限定はないが、前述のように、良好な膜質を担保し、その後の固体層のエッチング、および基体のエッチングを良好に行うという観点から、金属フッ化物であることが好ましい。
【0084】
微粒子間空隙を有する固体層は、高いドライエッチング耐性を担保するために緻密な膜が形成される必要があるが、例えば、SrF2のようなエッチング耐性の高い固体層であっても、図21、図22、図23または図24に記載されるように成長した微粒子間に空隙が存在する。サイドエッチング抑制効果のメカニズムの詳細は不明であり推測の域を出ないが、エッチャントに対する耐性の向上、エッチャントをはじく効果(疎水性)の向上、フォトレジスト(固体層エッチング用)に対する親和性および/または浸透性の向上、微粒子脱落抑制効果等が単独または複合的に生じていると考えられ、その効果は特に微粒子間に空隙が存在し、この空隙に液体が接触することにより、化学的および/または物理的変化が起こることにより奏されるものと考えられる。本発明においては、前記液体は、レジスト組成物を含む液体であることが好ましい。
【0085】
以下、金属フッ化物からなる固体層を形成する場合(第一の本発明のエッチング方法)および微粒子間空隙を有する固体層を形成する場合(第二の本発明のエッチング方法)に共通する実施形態について詳述する。なお、以下で記載する「固体層」は、特に記載のない限り、金属フッ化物からなる固体層および微粒子間空隙を有する固体層の両方を意味するものとする。
【0086】
本発明において、エッチングマスク層は、固体層の単層膜でもよいし、それらの多層膜でもよいし、また固体層を構成する物質以外の第2のマスク層との多層構造でもよい。本発明では、半導体層のエッチングの際に固体層が表面に露出して下部の構造を保護できるように形成されていればよい。従って、半導体層側に、半導体または半導体上に形成した部品を保護するため、またはその他の目的で、他の層を形成してもよい。本発明の1実施形態では、例えば後述の例のように、固体層を最終的に除去するときに、半導体層の表面に形成された金属層が除去されてしまわないように、第2のマスク層としてSiNx、SiOx等の膜を固体層の下部に形成した多層膜とすることも好ましい。また、固体層の下部に形成した第2のマスク層に加えて、固体層の上部に第3のマスク層などを有してもかまわない。これらは目的に応じて、適宜選択可能である。
【0087】
<固体層の液体による処理>
次に、成膜された前記固体層を液体によって処理する。本発明の好ましい態様としては、成膜された固体層をレジスト組成物によって処理する。このレジスト組成物処理工程は、後述する他のマスク材を利用した固体層のパターニングの際にサイドエッチングを抑制する効果を有し、転写精度を向上させるために必須の工程である。「レジスト組成物処理工程」は、レジスト組成物を固体層に接触させることを含み、通常、サブ工程(1):固体層にレジスト組成物を塗布する塗布工程、およびサブ工程(6):レジスト組成物の除去工程を含む。
【0088】
本発明において、用語「レジスト組成物」は、サブ工程(1)において固体層に塗布可能な状態から、サブ工程(6)において除去される直前の状態まで、すべての状態を意味するものとして使用される。但し、特定の状態を表す場合には、明示されるか、または用語が使用される文脈から明らかである。
【0089】
さらに詳細には、レジスト組成物処理工程は、サブ工程(1)および(6)を必須の工程として有し、任意の工程としてサブ工程(2)〜(5)を有する。
【0090】
サブ工程(1):前記固体層にレジスト組成物を塗布する塗布工程、
サブ工程(2):第1の加熱工程、
サブ工程(3):第1の露光工程、
サブ工程(4):第2の加熱工程、
サブ工程(5):第2の露光工程、および
サブ工程(6):レジスト組成物の除去工程。
【0091】
通常のポジ形レジストプロセスおよび一部のネガレジストプロセス(塗布、露光、現像によるパターン形成)では、一般に上記サブ工程の(1)(2)(3)(4)(6)が必須であり、一方、他のネガレジストプロセスでは、(1)〜(6)のすべてが必須である。しかし、本発明では、パターンを形成することが目的ではないので、サブ工程(2)〜(5)は、任意であり、省略することが可能であり、適宜実施すればよい。実施するときは、必須のサブ工程(1)および(6)と合わせて、番号の小さい方から実施する。
【0092】
レジスト組成物は、サブ工程(1)において塗布するときは、液状であり、レジストベース樹脂、感光剤および有機溶媒等を含有する。一般に流通しているこの状態のレジスト組成物を、区別して言及する場合には、用語「レジスト溶液」を使用する場合もある。
【0093】
サブ工程(1)において、レジスト組成物(レジスト溶液)を固体層に塗布する方法は、どのような方法を採用してもよいが、例えば、スピンコート法、スクリーン印刷法、ディップコート法、スプレイコート法、カーテンコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディスペンサー塗布、その他どのような方法でもよい。このとき、レジスト組成物が固体層の表面(微粒子間空隙の表面も含む)に充分に接触するように、振動を加えたりしてもよい。塗布の温度は、溶液状のレジスト組成物が塗布できれば特に制限はなく、含有される溶媒の融点、沸点等を考慮して決めればよいが、一般的には室温(10℃程度〜35℃程度)を採用すればよい。
【0094】
サブ工程(2)は、第1の加熱工程である。一般的なレジスト溶液を使用し、スピンコーティング等により比較的薄い塗膜を形成した場合に、塗布工程後、レジスト組成物中の溶媒の大部分は蒸発し、レジスト組成物は固形状膜となっているが、未だ溶媒を含んでおり、膜質が柔らかくべたついている場合がある。そこで、乾燥、膜質硬化のために一般的レジストプロセスでは、プリベークと言われる加熱工程を行う。本発明のサブ工程(2)の第1の加熱工程は、いわゆるプリベーク工程に相当する。通常、50〜150℃の温度であるが、本発明の場合は、このレジスト組成物処理により精密パターンを形成することを意図していないので、室温より高温で、後のサブ工程(6)でレジスト組成物を剥離可能な温度以下であればよく、例えば40℃〜200℃、好ましくは40℃〜160℃程度であり、より好ましくは50〜150℃である。
【0095】
第1の加熱工程における加熱時間も適宜選べばよいが、例えば10秒〜1時間、好ましくは20秒〜30分程度である。
【0096】
サブ工程(3)は、第1の露光工程である。第1の露光工程は、一般的レジストプロセスにおいて、フォトマスクまたは縮小投影等を使用するパターン露光に対応する。露光波長は、レジスト材料の種類に応じて適宜選定され、例えば、紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー、X線、電子線等が挙げられ、通常i線、g線やKrF、ArF、F2等のエキシマレーザーなどを使用し、公知の方法で露光することができる。本発明のレジスト組成物処理工程においては、この露光工程を実施してもしなくてもどちらでもよく、従って、実施する場合にも全面露光でも、フォトマスクまたは縮小投影等を使用するパターン露光のどちらでもよく、またレジストがポジ型かネガ型かに関わらず実施してもしなくてもよい。
【0097】
サブ工程(4)は、第2の加熱工程である。一般的レジストプロセスにおいて、ポジ型の露光後ベーク、ネガ型(像反転型)の画像反転ベーク(reversal Bake)等に対応し、80℃程度〜150℃程度が採用されるが、本発明の場合は、このレジスト組成物処理により精密パターンを形成することを意図していないので、室温より高温で、後のサブ工程(6)でレジスト組成物を剥離可能な温度以下であればよく、40℃〜200℃、好ましくは40℃〜160℃程度、より好ましくは50〜150℃である。但し、第1の加熱工程と第2の加熱工程の両方を実施する場合、特に、サブ工程(3)の露光工程が無くて、第1の加熱工程と第2の加熱工程を実施する場合には、第1の加熱工程の温度より第2の加熱工程の温度を高くすることも好ましい。
【0098】
第2の加熱工程における加熱時間も適宜選べばよいが、例えば10秒〜1時間、好ましくは20秒〜30分程度である。
【0099】
サブ工程(5)は、第2の露光工程である。一般的レジストプロセスにおいて、ネガ型(像反転型)を用いたプロセスにおける全面露光(Flood exposure)に対応し、本発明では、ネガ型(像反転型)レジストを使用したときに、実施してもよいし、実施しなくてよい。ポジ型、または架橋型のネガ型等のレジストプロセスでは、一般に、この工程は不要であるか、実施することに意味を有さないが、実施しても差し支えない。
【0100】
サブ工程(6)は、レジスト組成物の除去工程であり、固体層上から少なくとも部分的に、または固体層上の全面から除去する。レジスト組成物の除去には、後工程((c)レジストマスク(固体層エッチング用)形成、(d)固体層エッチング)の妨げにならず、かつレジスト組成物処理の効果が発現しうるような方法および条件が選択されればよい。
【0101】
例えば、現像液処理、有機溶媒洗浄、プラズマアッシングおよびそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0102】
主として現像液処理によってレジスト組成物を除去するには、第1の露光工程および必要により第2の露光工程とを適切に組み合わせる必要がある。現像液は、一般にテトラメチルアンモニウムヒドロキシドのようなアルキルアンモニウムヒドロキシドを含有するアルカリ水溶液、有機溶媒が使用される。ポジ型レジストの場合、露光部分(全面露光の場合は全面)のレジスト組成物が溶解除去され、ネガ型レジストの場合、第1の露光工程における非露光部分(露光なしの場合は全面)のレジスト組成物が溶解除去される。ここで、現像液処理は、使用するレジストに対して現像液として機能する液に接触させることを意味し、像を作ることを意味するものではない。但し、露光との組み合わせにより、必要箇所のレジスト組成物のみを除去することは可能である。現像工程の後、必要により水等により洗浄してもよい。
【0103】
尚、現像液処理において除去される部分が無くてもよく、その場合はレジスト組成物の除去は、他の方法により実質的に実施される。
【0104】
レジスト組成物の除去に使用可能な有機溶媒としては、基体等に影響を与えず残存するレジスト組成物層を溶解可能なものであれば、いずれの溶剤でも使用することができる。具体的には、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール(好ましくは炭素数4以下)、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等を用いることができる。また、2種以上の有機溶媒を組み合わせて使用してもよく、この場合、混合しておよび/または逐次的に使用することができる。有機溶媒でレジスト組成物の残存物を除去した後、水洗することも好ましい。その後、適宜乾燥させてから、次のレジストマスク(固体層のエッチング用)の形成工程に進む。乾燥は、スピンドライ、乾燥空気吹きつけ等により行えばよい。
【0105】
レジスト組成物の除去方法として、そのほかの例えば酸素プラズマアッシング等も使用することが可能である。
【0106】
サブ工程(2)〜(5)の中で、サブ工程(2)の第1の加熱工程およびサブ工程(4)の第2の加熱工程は、少なくとも一方、好ましくは両方を実施することが好ましい。
【0107】
以上のレジスト組成物処理工程で使用できるレジスト材料としては、近紫外(g線、i線等;nearUV)、深紫外(deepUV)、真空紫外(vacuumUV)、極端紫外(extremeUV)等の光、電子線、熱等のエネルギー線照射により現像液に対する溶解性が変化する公知のレジストを使用することができ、ポジ型でもネガ型でもよい。
【0108】
例えば、i線、g線等用の代表的レジスト材料は、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック系樹脂を主成分とするベース樹脂、感光剤としてナフトキノンジアジドスルホニルクロライド等のキノンジアジド類、および有機溶剤を主成分として含有する。また、これらに添加物を加えてネガ型にしたレジスト材料も好ましい。
【0109】
さらに、ポリマーと、露光により酸を発生する酸発生剤を含有する短波長光源用の化学増幅型レジスト等を用いることができる。このタイプのレジストに含有されるポリマーは、ポリヒドロキシスチレンのOHをt−ブトキシカルボニル等の保護基で修飾した(共)重合体、ポリメタクリル酸エステル誘導体の(共)重合体等が知られているが、これらに限定されない。
【0110】
具体的には、シプレイ・ファーイースト社製MCPRシリーズ、東京応化工業社製OFPRシリーズ、OAPシリーズ、AZエレクトロニックマテリアルズ社製AZシリーズ等の市販品を使用することができる。
【0111】
これらのレジスト組成物に含有されることが好ましい溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ポリオキシエチレン等の多価アルコール;
【0112】
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
【0113】
アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2‐ヘプタノンなどの炭素数が好ましくは20以下、より好ましくは10以下のケトン類;
【0114】
酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ぎ酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル等のアルキルエステル類(好ましくは炭
素数が20以下、さらに好ましくは炭素数12以下);2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸ブチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート等のアルコキシまたはオキサアルキル基を有する置換アルキルエステル類(好ましくは炭素数が20以下、さらに好ましくは炭素数12以下);ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類のエステル類;
【0115】
ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等の直鎖または分岐状ジアルキルエーテル;およびテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オキセタン、ジオキサンのよう環状エーテル類を挙げることができる。
【0116】
特に、プロピレングリコールモノメチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、乳酸プロピル等が好ましい。
【0117】
本発明において特徴的なレジスト組成物処理を行うことにより達成できるサイドエッチング抑制効果のメカニズムの詳細は不明であり推測の域を出ないが、エッチャントに対する耐性の向上、エッチャントをはじく効果(疎水性)の向上、フォトレジスト(固体層エッチング用)に対する親和性および/または浸透性の向上、微粒子脱落抑制効果等が単独または複合的に生じていると考えられる。
【0118】
<固体層のパターニング>
上述のようにして、レジスト組成物等による液体処理した固体層を、好ましくはエッチングによって、所望の形状にパターニングする。この固体層のエッチングは、固体層がエッチング可能でかつ半導体層のエッチング条件とは異なる条件が選ばれ、特に酸またはアルカリを用いたウェットエッチング法が好ましい。本発明では、上記の液体処理を施すことにより、固体層のサイドエッチングが抑制される。
【0119】
固体層を含むエッチングマスク層のパターニングには、他のマスクを用いて行うことが好ましい。たとえば、図3に示すように、フォトレジスト材料によるレジストマスク層4をエッチングマスク層3の上に形成し、露光、現像等の通常のフォトリソグラフィー法によってレジストマスク層4を図4のようにパターニングする。使用されるフォトレジストは、ポジ型、ネガ型のどちらでもよい。また、前述のレジスト組成物処理に使用したレジスト材料と同一のものを使用してもよいし、異なるものを使用してもよい。
【0120】
その後図5Aのように、パターニングされたレジストマスク層4をマスクとして、固体層を含むエッチングマスク層3をエッチングする。
【0121】
ウェットエッチングのエッチャントとしては、塩酸、フッ酸、硫酸、燐酸、硝酸等の酸を含有する水溶液が好ましく、必要によりさらに過酸化水素等の酸化剤、エチレングリコール等の希釈剤等を含有したものを挙げることができる。エッチャントは、固体層の材料および成膜条件等も考慮して選択されるが、特に少なくとも塩酸、濃硫酸、フッ酸等を含有することが好ましく、例えばSrF2をパターニングするときには、塩酸が望ましく、CaF2をパターニングするためには濃硫酸、塩酸が望ましく、特に濃硫酸が望ましい。また、アルカリによるエッチングも可能であり、いずれのエッチングにおいても光照射、加熱等を併用してもかまわない。
【0122】
ウェットエッチングは一般に等方性エッチングであるので、通常は好ましくないサイドエッチングを伴う。図5Bに模式的に示すように、サイドエッチングのために、レジストマスク層4のマスク端より、固体層を含むエッチングマスク層3の端が後退する。後退した距離を、サイドエッチ量Lとする。サイドエッチ量Lが小さいほど、レジストマスク層4のパターンが忠実に転写されることになるので、精密なパターン形成が可能になる。
【0123】
本発明では、固体層を液体処理することにより、サイドエッチ量が極めて小さくなり、その結果、固体層を含むエッチングマスク層3を、レジストパターンに忠実に精密にパターニングすることが可能になる。従って、エッチングマスク層3をマスクとしてエッチングによりパターニングされる半導体層2(=基体)の形状も、レジストパターンに対する転写精度が向上する。
【0124】
さらに、液体処理により、パターニング後、固体層のパターン境界が非常にシャープに現れるため、固体層をマスクとして使用する基体のドライエッチングにおいて、転写精度がより高くなる。
【0125】
本発明においては、400nm程度の固体層をエッチングする際に、サイドエッチ量Lが6μm以下とすることが可能になり、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下、特に好ましくは2μm以下のサイドエッチ量Lが達成可能である。このため、III−V族窒化物半導体のように、比較的エッチングが困難であるために、微細な形状のパターニングが困難であった基体であっても、微細パターンの形状が可能になる。
【0126】
このようにして、エッチングマスク層3のウェットエッチングが終了し、図5Aの構造が形成された後、通常は不要となったレジストマスク層4を除去し、図6に示すように半導体層上にパターニングされたエッチングマスク層3が形成された構造を得る。
【0127】
<半導体層のエッチング>
半導体層のエッチング工程では、図7に示すように、エッチングマスク層3をマスクとして半導体層2をエッチングする。
【0128】
半導体層のエッチングには、望ましくはドライエッチング法が用いられる。ドライエッチング法は、半導体層の材料、結晶性、その他の性質に基づいて、そのガス種、バイアスパワー、真空度等の条件を適宜選択可能である。半導体層がIII−V族窒化物半導体である場合においては、ドライエッチングのガス種としては、ガスを構成する分子としてCl元素を含む塩素系ガスが好ましく、Cl2、BCl3、SiCl4、CCl4およびこれらの組み合わせから選ばれるものが望ましい。これらのガス種によって生成される塩素系プラズマは、ドライエッチングの際に、GaN系材料と高温成膜された固体層を形成する材料の間で大きな選択比を実現することが可能であり、従って、高温成膜された固体層形成材料をほとんどエッチングせずに窒化物半導体層をエッチングすることができる。その結果、形状制御性にすぐれた半導体層のエッチングが実現できる。なお、ドライエッチングの際に、固体層の厚みはほとんど目減りしないが、膜の特性、特にそのウェットエッチング時の耐性は変化し、ウェットエッチングレートが低下する傾向がある。
【0129】
ここで、ドライエッチング時のプラズマ生成方式は、容量結合型のプラズマ生成(CCP型)、誘導結合型のプラズマ生成(ICP型)、電子サイクロトロン共鳴を基礎としたプラズマ生成(ECR型)等のどのような方式でも適応可能である。しかし、本発明においては、誘導結合型のプラズマ生成によって塩素系プラズマを生成することが望ましい。これは、プラズマ密度が他の方式と比べて高くすることが可能で、III−V族窒化物半導体材料等をエッチングする際に好都合であるからである。ここで、ドライエッチングの際のプラズマ密度は、好ましくは、0.05×1011(cm−3)〜10.0×1011(cm−3)であり、さらに好ましくは1×1011(cm−3)〜7.0×1011(cm−3)である。そして、本発明で高温成膜した固体層は、エッチング耐性が高いため、誘導結合方式によって形成した高プラズマ密度のプラズマであっても、十分な耐性を示す。
【0130】
例えばSiNxやSiOx等の窒化物や酸化物、Ni等の金属をマスクとした際には、窒化物半導体層とマスクの選択比は5〜20程度であるが、本発明の固体層マスクでは窒化物半導体層に対しても100以上の選択比が実現可能である。よって、本発明の方法によれば、III−V族窒化物半導体層を深くエッチングする際に特に好ましく利用される。III−V族窒化物半導体層の場合でも、エッチングの深さとしては、1μm以上、好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上、最も好ましくは5μm以上、さらには10μmを超えても適用可能である。さらに、固体層マスクの材質、厚み、半導体層の材質にも依存するが、十分に厚いSrF2マスクを形成して半導体層をエッチングする場合には、非常に厚い層のエッチングも可能である。エッチングする半導体層の厚さは、一般には50mm以下であり、好ましくは35mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは1mm以下であり、500μm以下が最も好ましい。極度に厚い半導体層をエッチングする場合として、SrF2マスクを用いて、厚み3mmから35mm程度の厚膜のGaN基板をエッチングする場合、さらには当該基板上に成長されたGaNエピタキシャル層などを、基板の厚みのほとんどと薄膜結晶成長層を同時にエッチングする場合などが挙げられる。また、基板のエッチングは行わずに、7μm程度の薄膜結晶成長層のみをエッチングする事も、当然可能である。またそのとき、その選択比が大きいことから、エッチングによる溝の幅を短くすることも適宜可能であり、例えば、100μm以下、好ましくは10μm以下、さらには3μm以下にすることが可能である。溝の深さと溝の開口幅のアスペクト比(深さ/幅)でも適宜自在に選択可能であって、III−V族窒化物半導体層の場合でも0.1以上、好ましくは2以上が可能であり、また50程度まで、例えば30程度は可能である。
【0131】
また、本発明における半導体層をエッチングする深さは、適宜選択可能であって、図7では半導体層を基板まですべてエッチングした場合を示したが、半導体層の途中までエッチングすることも可能であり、また、エッチングガス種等を変化させることで、基板(サファイア等の半導体でない材料でもよい)の一部を連続的にエッチングすることも可能である。どの程度、あるいは半導体層を構成するどの層までエッチングするかは適宜選択が可能である。
【0132】
図7に示された半導体層のエッチングが終了した後には、必要に応じて、エッチングマスク層を除去してもよいし、エッチングマスク層を残したまま、異なるプロセスを実施してもかまわない。一般的には、エッチングマスク層を除去する方が好ましい。
【0133】
図8に、エッチングマスク層3を除去した後の構造を示す。エッチングマスク層3を構成する固体層を除去するには、どのような方法で行っても良いが、例えば、固体層を酸またはアルカリを含有するエッチャントにより除去することができる。前述の固体層のパターニング工程では、固体層が容易にエッチングされ、半導体層がエッチングされ難い条件が選ばれたが、固体層を除去する工程でも、パターニングと同様な条件を採用することができる。
【0134】
従って、ウェットエッチングのエッチャントとしては、塩酸、フッ酸、硫酸、燐酸、硝酸等の酸を含有する水溶液が好ましく、必要によりさらに過酸化水素等の酸化剤、エチレングリコール等の希釈剤等を含有したものを挙げることができる。固体層の材料および成膜条件等も考慮して選択されるが、特に少なくとも塩酸、濃硫酸、フッ酸等を含有することが好ましい。例えばSrF2を除去するときには、塩酸が望ましい。また、CaF2を除去するためには濃硫酸、塩酸が望ましく、特に濃硫酸が望ましい。また、アルカリによる除去も可能であり、いずれのエッチングにおいても反応の促進または選択性の向上等のために適宜、光照射、加熱等を併用してもよい。
【0135】
また、固体層は、半導体層のドライエッチング時のマスク層として使用された後に、ウェットエッチングレートが低下する傾向、即ちエッチャントに対する溶解性が低下する傾向があるので、この点を考慮して、プロセス全体の各条件を決めることが好ましい。
【0136】
不要になったエッチングマスク層は以上のようにして除去されるが、エッチングマスク層を除去しないで、エッチングマスク層を例えば選択成長用のマスクとして使用し、さらに半導体層を形成することも可能である。特にエピタキシャル成長を実施する場合には、SrF2などの金属フッ化物材料は、選択成長用マスクとしても使用できる。
【0137】
〔異なる実施形態の説明〕
本発明の特定の1実施形態について説明する。この形態では、本発明のエッチング方法を、図9に示すように、基板1上の半導体層2がすでに段差を有し、またその半導体層上に、金属層で形成された電極7、8が形成されている構造に適用した例である。
【0138】
例えばアルミニウム等により電極、配線等の金属層が形成されている半導体層を本発明のエッチング方法によりエッチングする場合、エッチングが終了した後に固体層を除去する際に、酸またはアルカリを含有するエッチャントにより電極、配線等の金属層が侵され、除去されてしまうことがある。このような場合には、エッチングマスク層を固体層と、固体層を構成する物質以外の物質で構成された第2のマスク層とを含む多層構造とすることが好ましい。ここにおいて第2のマスク層は、前述の通り、固体層を構成する物質以外の物質で構成された層であって、固体層をエッチングするエッチャントに対して耐性がある物質とすることが好ましい。第2のマスク層は、さらに金属層を侵食しない条件で除去される必要がある。第2のマスク層としては、SiOx、AlOx、TiOx、TaOx、HfOxおよびZrOx等の酸化物、SiNx、AlNx等の窒化物およびこれら組み合わせが挙げられる。これら、ウェットエッチング耐性があり、同時に金属等をエッチングしないドライエッチング法でも最終除去が可能であるので、非常に好ましいものである。特に好ましくは、製造が比較的容易であることから、SiNxおよびSiOxであり、特にSiNxが好ましい。
【0139】
例えば、以下、固体層が金属フッ化物からなる層の場合について説明する。
【0140】
図10は、金属層(電極7、8)を有する半導体層2上に、半導体層側から、SiNx等の金属フッ化物でない層と金属フッ化物層の多層構造のエッチングマスク層9を形成した状態である。
【0141】
通常は、この状態で、液体処理を行う。処理の条件等は、エッチングマスク層が金属フッ化物層の単層である場合に準じて実施することができる。金属フッ化物層が液体処理されることでサイドエッチが抑制されるため、図11に示す開口10を形成する際に、パターン精度が向上する。そして、半導体層2をドライエッチングするときに、図11、図12に示すように、表面の金属フッ化物層がマスクとして機能する。
【0142】
その後、エッチングマスク層9を除去するには、まず酸またはアルカリにより金属フッ化物層を除去するが、このときは、SiNx等の金属フッ化物でない第2のマスク層が、アルミニウム等の電極7、8を保護している。次に、SiNx等の金属フッ化物でない層をドライエッチングにより、金属層を侵食することなく除去して、図13の構造を得ることができる。
【0143】
尚、エッチングマスク層は、その一部、たとえば金属層(例えば電極7、8)の上部のみが多層構造として形成され、金属層でない部分の上部が単層として形成されてもよい。さらに、多層化エッチングマスク層は半導体装置の製造の際のいずれの場面でも使用可能であるが、特にプロセス全体の整合性を考慮したうえで使用することが望ましい。
【0144】
そこで、プロセスの整合性を考慮し、部分的に多層構造となるエッチングマスクによりエッチングする例を示す。まず、図14は、金属フッ化物以外のマスク材料で形成した第2のエッチングマスク21を形成し、基板1上に形成された半導体層2をエッチングして、凹部25を形成した様子を示す図である。第2のエッチングマスク21は、例えばSiNxで形成され、金属層(電極7)を含む領域をマスクしている。第2のエッチングマスク21により覆われていない領域がエッチングされ凹部25が形成される。半導体層2がGaNのようなエッチングされにくい材料であっても、凹部25の深さが浅い場合には、SiNxのような公知のマスク材料で十分にエッチングが可能である。
【0145】
次に、金属フッ化物層をマスクとする深いエッチングを行う際に、第2のエッチングマスク21を除去することなく、図15に示すように、金属フッ化物マスク22を形成する。そのため、金属層(電極7)上およびその付近の半導体層表面は、金属フッ化物マスクと第2のエッチングマスクの2層構造となっている。この金属フッ化物マスク22は、エッチングによりパターニングされる前にレジスト組成物処理され、その後、通常のフォトレジストプロセスに従ってパターニングされたエッチングマスクによりパターニングされる。
【0146】
次に、図16Aに示すように、金属フッ化物マスク22をマスクとして、半導体層2を深くエッチングして溝26を形成する。前述のとおり、金属フッ化物層は、ドライエッチング耐性が高いので、深いエッチングが可能である。また、このときに、図16Bに示すように基板1を含めてエッチングしてもよく、これも好ましい形態の1つである(他の実施形態・実施例において同様である。)。次に、金属フッ化物マスク22を例えば酸により除去すると、図17に示すように、第2のエッチングマスク21が残る。このため、ウェットエッチングによる金属フッ化物マスク22の除去の際に金属層が浸食されない。最後に第2のエッチングマスク21を、金属層(電極7)も半導体層もダメージを受けない方法で除去して、図18に示すような、半導体層2に浅い凹部25と深い溝26が形成された構造が得られる。このような方法は半導体層の材質、金属層の材質等で選択が可能であるが、たとえば、金属層の表面がAl等の場合であって、半導体層がGaN層等であって、第2のエッチングマスクがSiNx等である場合には、フッ素系ガスを反応性ガスとして用いた反応性イオンエッチング等のドライエッチングを実施することが好ましい。このように、半導体装置の製造工程中、半導体層を浅くエッチングする第1エッチング工程と、半導体層を深くエッチングする第2エッチング工程を有するときに、第1エッチング工程にてマスクとして金属フッ化物以外の第2のマスクを用いて、エッチング後にマスクを除去することなく、第2のエッチング工程にてその上に金属フッ化物層マスク層を形成し、部分的にまたは全部を多層構造とすることで、金属層を有効に保護しながら、製造方法を簡略化することができる。
【0147】
さらに、本発明において、金属フッ化物層の形成を真空蒸着法、特に抵抗加熱方式等の電子、プラズマ等の荷電粒子を材料に直接当てる事なく加熱する方法で行うことは、金属材料とフッ素の乖離を抑制し、好ましいものであるが、段差被覆性、特に側壁の被覆性をさらに改良するために、エッチングマスク層として、上述と同様の多層構造を適用することも好ましい。
【0148】
たとえば、プラズマCVD法で成膜した酸化物層、窒化物層は段差基板の側壁の被覆性に優れる。このような層としては、SiOx、AlOx、TiOx、TaOx、HfOxおよびZrOx等の酸化物、SiNx、AlNx等の窒化物およびこれら組み合わせが挙げられる。特に好ましくは、製造が比較的容易であることから、SiNxおよびSiOxであり、特にSiNxが好ましい。
【0149】
このように、エッチングマスク層を、金属フッ化物層と金属フッ化物層以外の層との多層構造とすることは、金属層の保護と段差被覆の両方の点で好ましい。特に、プロセスの整合性を考慮し、部分的な多重マスクを採用することにより、金属層の保護を図りながら製造工程を簡略化することができる。
【0150】
以上説明した本発明のエッチング方法は、種々の半導体装置の製造に適用可能であり、半導体製造工程のエッチング工程において使用できる。
【0151】
また、本発明のエッチングマスクは、以上の説明のように、エッチング方法および半導体の製造プロセスに極めてよく適合する。
【実施例】
【0152】
以下に実験例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実験および実施例、参考例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。また、以下の実施例、参考例において参照している図面は、構造を把握しやすくするために敢えて寸法を変えている部分があるが、実際の寸法は以下の文中に記載されるとおりである。
【0153】
<<参考実験1>>
サファイア基板上にMOCVD法で成長したSiドープGaN半導体層上に、異なる種々の基板温度でSrF2層を抵抗加熱法によって真空蒸着した。形成したSrF2層について、GaN層をドライエッチングするための、エッチングマスクとしてのパターニング特性、ドライエッチング時の耐性、その後の除去プロセス時のウェットエッチング特性などを詳細に調べた。
【0154】
成膜後のSrF2層のパターニングには、レジストをマスクとし塩酸(塩化水素36%含有)と水を体積比で1対10で混合したエッチャントを用い、室温でウェットエッチングを実施し、そのときのエッチングレート、形成されたSrF2層パターンの側壁の直線性、開口幅の絶対値の制御性を評価した。尚、ここで使用したパターンは、ストライプ状であり、側壁の直線性によって、レジスト平面形状からSrF2平面形状へのパターン転写性を評価している。また、そのようにしてパターニングしたSrF2マスクによるSiドープGaN層のドライエッチングをCl2プラズマによって実施し、SrF2マスクのドライエッチング時の適性を評価した。さらに、SiドープGaN半導体層の塩素プラズマによるドライエッチングの履歴を受けたSrF2層の塩酸(塩化水素36%含有)と水(体積比で1対10)のエッチャントに対する除去時の室温でのエッチングレートも測定した。
【0155】
また、SrF2成膜時には、同一のチャンバーにSiドープGaN半導体層上にTi/Al/Au金属とさらにその上にSiNx層を形成したサンプルをセットし、SrF2マスク形成時の熱履歴による金属電極部分の耐性、表面状態の変化も確認した。金属の表面状態の確認は、SrF2層形成後に、SrF2層を除去し、さらにSiNx層も除去した後に観察した。
【0156】
エッチングレート測定および評価結果を表1に示す。
【0157】
【表1】
表1より、150℃以上の基板温度で成膜されたSrF2層は、ドライエッチングに使用されるエッチングマスクとして適当であることが明らかである。また、ドライエッチング後にSrF2層を実用的な速度で除去すること、および下層に金属層が存在する場合等を考慮すると、480℃以下の基板温度で成膜されたSrF2層が好ましいことが判る。
【0158】
<<実験1>>
<実施例1>
参考実験1と同様にして、サファイア基板上にMOCVD法で成長したSiドープGaN半導体層上に、基体温度450℃で抵抗加熱法による真空蒸着により400nm厚のSrF2層を成膜した。このときのSrF2層の表面状態を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。この結果を図23に示す。図23に見られるとおり、固体層であるSrF2層には微粒子間空隙が観察され、その表面空隙率は約2.7%であった。次いで、SEMを観察した部分以外のSrF2層を成膜した当該基体をスピンコーターに載置し、成膜したSrF2層上にポジ型フォトレジスト溶液(OFPR−800LB(商品名)、東京応化工業(株)製)を滴下し、スピンコートして、レジスト組成物の塗膜を形成した。その後85℃にて15分間加熱し(第1の加熱工程)を行い、露光せずに、120℃にて15分間加熱(第2の加熱工程)した。次いで、アセトン洗浄、イソプロパノール洗浄および水洗を、順にそれぞれ3分間ずつ行った。
【0159】
室温にて乾燥後、SrF2層のパターニングのために、ポジ型フォトレジスト組成物(MCPR2200X、ロームアンドハース社製)をSrF2層上にスピンコートし、プリベーク後、所定のパターンを有するフォトマスクを通して露光した。露光後ベーク(post exposure baking)の後、現像・洗浄後、ポストベークして、フォトレジストのパターニングを終了した。ついで、エッチャントとして参考実験1と同じものを使用し、室温にて3分間SrF2層をウェットエッチングした。
【0160】
ウェットエッチング後、光学顕微鏡観察により、サイドエッチ量Lを観察した。図19に顕微鏡画像を示すように、SrF2層3の境界X2はフォトレジスト膜4の境界X1よりわずかに後退しており、サイドエッチ量Lは、0.6μmであった。
【0161】
<参考例1>
実施例1で、レジスト組成物処理を行わなかった以外は、実施例1を繰り返した。図20に顕微鏡画像を示すように、フォトレジスト膜4の境界X1より、SrF2層3の境界X2が後退しており、サイドエッチ量Lは、7.1μmであった。また、境界部の劈開断面SEM写真を図22に示す。境界の形状を実施例2(図21)と比べると、シャープさの点で劣っている。
【0162】
<実施例2〜8>
表2に示すレジスト組成物処理を行った。実施例1、参考例1の結果も合わせて示す。また、実施例2の境界部の劈開断面SEM写真を図21に示す。境界が非常にシャープであり、基体のドライエッチング時にパターン転写精度に優れる。
【0163】
【表2】
【0164】
<<実験2>>
<参考例2、3、実施例9〜12>
この実験では、実験1において、SrF2層の成膜時の基板温度を450℃から表3に示す温度に変更した以外は実験1に準じて実験を行った。表3に示すように、参考例2および3はレジスト組成物処理無しで、実施例9〜12は表中に示すフォトレジスト溶液を用いて処理を行った。その結果を表3に併せて示す。
【0165】
【表3】
【0166】
<<実験3>>
<実施例13〜16>
実施例2と同様に、ポジ型フォトレジスト組成物(MCPR2200X、ロームアンドハース社製)を用いて、レジスト組成物処理を行った。表4のように、第1の加熱、露光、第2の加熱、現像の有無による影響を調べた。
【0167】
【表4】
【0168】
<参考例4>
半導体発光装置を構成する半導体層にエッチングにより素子間分離溝を形成した参考例を、図1から図8を参照しながら説明する。この参考例において、SrF2層を形成後にレジスト組成物等の液体で処理し、必要により洗浄することで、本発明を適用することができる。
【0169】
厚みが430μmのc+面サファイア基板1を用意し、この上に、半導体層2を次のように形成した。まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層として厚み10nmの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に第2のバッファ層として厚み1μmのアンドープGaN層を1040℃で形成した。さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層としてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を4μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層としてSiドープ(Si濃度1×1019cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層としてSiドープ(Si濃度5.0×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で5層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層としてMgドープ(Mg濃度1×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層としてMgドープ(Mg濃度1×1019cm−3)GaN層を0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層としてMgドープ(Mg濃度1×1019cm−3)GaN層を0.02μmの厚さに形成した。
【0170】
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、エピタキシャル成長を終了し、図1の半導体層形成までの構造を作製した。
【0171】
ついで、図2に示すように、エッチングマスク層3として単層のSrF2を450℃において、蒸着レート0.2nm/secで真空蒸着法によって400nm形成した。ついで、図3に示すとおり、レジストマスク層4をスピンコーティングによって形成し、その後フォトリソグラフィー法によってストライプ状のレジストパターンを形成した。ついで、エッチングマスク層3(SrF2単層)をレジストパターン4を用いてパターニングするために、塩酸(塩化水素36%含有)と水を体積比1:10のエッチャントに240秒浸し、SrF2層を図5Aのようにエッチングした。エッチングされたSrF2層はフ
ォトマスクパターンを反映し直線性に優れ、意図しない剥離等も発生せず、高い密着性を保持していた。ついで、アセトンと酸素プラズマアッシングによって、図6のようにレジスト層を除去し、SrF2層のエッチングマスクを表面に露出させた。ついで、誘導結合性の塩素プラズマを用いて、素子間の分離用の溝に相当する部分のすべての半導体エピタキシャル層を、図7に示されるとおりにエッチングした。ドライエッチング工程中には、5.8μmを越える厚膜(平均5.868μm)のGaN系材料をドライエッチングしたにもかかわらず、SrF2層はほとんどエッチングされなかった。最後に図8に示すとおり、塩酸と水の体積比1:10のエッチャントに300秒浸して、不要となったSrF2層を完全に除去し、半導体発光装置の素子間の分離用の溝の形成を完了した。製造された素子間分離用の溝の幅は、100μmであった。
【0172】
<参考例5>
図1、および図9〜図12を参照しながら異なる参考例を説明する。この参考例においても、SrF2層を形成後にレジスト組成物等の液体で処理し、必要により洗浄することで、本発明を適用することができる。
【0173】
厚みが430μmのc+面サファイア基板1を用意し、この上に半導体層2を次のように形成した。まず、MOCVD法を用いて、第1バッファ層として、厚み20nmの低温成長したアンドープのGaNを形成し、この後に第2バッファ層2として厚み1μmのアンドープGaNを1040℃で形成した。連続して、第一導電型(n型)第二クラッド層としてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を5μm形成し、第一導電型(n型)コンタクト層としてSiドープ(Si濃度1×1019cm−3)のGaN層を0.5μmの厚さに形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層としてSiドープ(Si濃度1.0×1019cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μm形成した。さらに活性層構造として、バリア層として850℃で13nmに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として715℃で3nmに成膜したアンドープIn0.06Ga0.94N層を、量子井戸層が全部で6層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層としてMgドープ(Mg濃度1×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層としてMgドープ(Mg濃度1×1019cm−3)GaN層を0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層としてMgドープ(Mg濃度1×1019cm−3)GaN層を0.02μmの厚さに形成した。
【0174】
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、エピタキシャル成長を終了した(図1の構造)。
【0175】
エピタキシャル成長が終了した半導体の積層構造に対して、第一導電型(n型)コンタクト層を露出させる第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、真空蒸着法を用いて基板温度を200℃、蒸着レート0.5nm/secでSrF2層を半導体層の全面に成膜した。次にフォトリソグフィー工程により、フォトレジストパターンをSrF2層上に形成し、SrF2層を塩酸によって一部エッチングしてパターニングし、第一エッチング用のマスクを作製した。ついで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層、p−GaN第二クラッド層、p−AlGaN第一クラッド層、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造、n−AlGaN第一クラッド層、n−GaNコンタクト層の途中まで、BCl3ガスを用いた誘導結合性プラズマによるエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層を露出させた。
【0176】
誘導結合性プラズマによるプラズマエッチング終了後は、SrF2マスク層を塩酸によってすべて除去した。ここにおいて、基板温度200℃で成膜したSrF2マスクは、パターニングの際にはフォトマスクパターンを反映し直線性にすぐれたマスクが形成され、かつ、プラズマエッチングによってもほとんどエッチングされず、塩素系プラズマに対するエッチング耐性も良好であった。
【0177】
次に、形成された段差の上に、p側電極7をリフトオフ法でパターニングするために、フォトリソグラフィー法によりレジストパターンを形成した。p側電極7形成のための金属層Aとして、Pd20nmおよびAu1000nmを真空蒸着法によって積層し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。ついで、その後、熱処理してp側電極を完成させた(図9中のp側電極7形成)。このように、p側電極7をプラズマプロセス等に曝すことなく形成したため、p側電流注入領域にはダメージが入らなかった。
【0178】
ついで、さらにn側電極8をリフトオフ法でパターニングするために、フォトリソグラフィー法によりレジストパターンを形成した。ここでn側電極形成のための金属層としてTi(20nm厚)/Al(1500nm厚)を真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。ついで、その後熱処理を実施してn側電極8を完成させた(図9中のn側電極8形成)。
【0179】
ここまでの工程によって図9までの構造を形成した。
【0180】
ひきつづき、エッチングマスク層9をSiNx膜とSrF2膜の多層膜で形成するために、まず、400℃の成膜温度でp−CVD法を用いてSiNx膜を200nmの厚さに形成した。ついで、400℃の高温において、SrF2層マスクを400nmの厚さに形成した。この際、SrF2マスクは0.5nm/secの蒸着レートでサンプルを装着したドームを自公転させながら形成し、図10の形状を得た。
【0181】
さらに、発光素子間を分離するために、フォトリソグラフィー法を用いて分離溝形成部分に開口を有するフォトレジストパターンを形成し、このレジストマスクを用いて、SrF2とSiNxの積層構造のエッチングマスク層9をウェットエッチングして、開口10を形成した。SrF2層のエッチングには塩酸(塩化水素36%含有):水=1:10の体積比で混合したエッチャントを用いて240秒選択的にエッチングを実施し、ついでSiNx層のエッチングには、フッ酸とフッ化アンモニウムを体積比1:5のエッチャントを用いて3分の間選択的にエッチングを実施した。この際に、SrF2部分、SiNx部分ともフォトマスクパターンを反映し直線性と密着性に優れたパターニングされたエッチングマスク層が得られた(図11)。
【0182】
ついで、図11の構造において、エッチングマスク層9の開口10から、半導体層2を、Cl2ガスを用いた誘導結合性のプラズマ励起によってドライエッチングして、分離溝11を形成した。エッチング中には、エッチングマスクとして使用した多層マスクはほとんどエッチングされなかった(図12)。
【0183】
最後に、塩酸に5分間浸すことよってSrF2部分をすべて除去した。この際には、SiNxマスク部分は全くエッチングされなかった。従って、塩酸によって電極層が侵されることがなかった。ついで不要となったSiNxマスクを除去するために、SF6ガスを用いたリアクティブエッチングを1分間実施し、SiNxマスクを除去し図13の形状を得た。
【0184】
ついで、形成した素子間の分離用溝にそって、素子を切り出し、発光装置を完成させた。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図2】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図3】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図4】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図5A】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図5B】サイドエッチングを説明する図である。
【図6】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図7】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図8】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図9】表面に金属層が形成されている半導体層に本発明のエッチング方法を適用した1実施形態を説明する工程断面図である。
【図10】表面に金属層が形成されている半導体層に本発明のエッチング方法を適用した1実施形態を説明する工程断面図である。
【図11】表面に金属層が形成されている半導体層に本発明のエッチング方法を適用した1実施形態を説明する工程断面図である。
【図12】表面に金属層が形成されている半導体層に本発明のエッチング方法を適用した1実施形態を説明する工程断面図である。
【図13】表面に金属層が形成されている半導体層に本発明のエッチング方法を適用した1実施形態を説明する工程断面図である。
【図14】表面に金属層が形成されている半導体層のエッチングの簡略化された1実施形態を説明する工程断面図である。
【図15】表面に金属層が形成されている半導体層のエッチングの簡略化された1実施形態を説明する工程断面図である。
【図16A】表面に金属層が形成されている半導体層のエッチングの簡略化された1実施形態を説明する工程断面図である。
【図16B】表面に金属層が形成されている半導体層のエッチングの簡略化された1実施形態を説明する工程断面図である。
【図17】表面に金属層が形成されている半導体層のエッチングの簡略化された1実施形態を説明する工程断面図である。
【図18】表面に金属層が形成されている半導体層のエッチングの簡略化された1実施形態を説明する工程断面図である。
【図19】実施例1の顕微鏡画像およびその断面模式図である。
【図20】参考例1の顕微鏡画像およびその断面模式図である。
【図21】実施例2の断面SEM写真画像である。
【図22】参考例1の断面SEM写真画像である。
【図23】SrF2層表面のSEM写真画像である。
【図24】CaF2層表面のSEM写真画像である。
【符号の説明】
【0186】
1 基板
2 半導体層
3 エッチングマスク層(固体層)
4 レジストマスク層
7 電極
8 電極
9 エッチングマスク層(固体層)
10 開口
11 溝
21 第2のエッチングマスク(SiNx等)
22 金属フッ化物マスク
25 凹部
26 溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング方法およびそれを用いた光/電子デバイスの製造方法に関する。特に、InxAlyGa(1−x−y)N系III−V族化合物半導体(但し、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)等の化合物半導体のエッチングに最適なエッチング方法、そのエッチング方法による発光ダイオード(LED)、スーパールミネッセントダイオード、半導体レーザ等の発光デバイス、フォトダイオード、太陽電池等の受光デバイス、ダイオード、トランジスタ等の電子デバイスなどの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりIII−V族化合物半導体を用いた電子デバイスおよび発光デバイスが知られている。特に発光デバイスとしては、GaAs基板上に形成されたAlGaAs系材料やAlGaInP系材料による赤色発光、GaP基板上に形成されたGaAsP系材料による橙色または黄色発光等が実現されてきている。また、InP基板上ではInGaAsP系材料を用いた赤外発光デバイスも知られている。
【0003】
これらデバイスの形態としては、自然放出光を利用する発光ダイオード(light emitting diode: LED)、さらに誘導放出光を取り出すための光学的帰還機能を内在させたレーザダイオード(laser diode: LD)、および半導体レーザが知られており、これらは表示デバイス、通信用デバイス、高密度光記録用光源デバイス、高精度光加工用デバイス、さらには医療用デバイスなどとして用いられてきている。
【0004】
1990年代以降において、V族元素として窒素を含有するInxAlyGa(1−x−y)N系III−V族化合物半導体(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の研究開発が進み、これを用いたデバイスの発光効率が飛躍的に改善され、高効率な青色LED、緑色LEDが実現されている。その後の研究開発によって、紫外領域においても高効率なLEDが実現され、現在では、青色LDも市販されるに至っている。
【0005】
紫外または青色LEDを励起光源として蛍光体と一体化すると白色LEDが実現できる。白色LEDは、次世代の照明デバイスとしての利用可能性があるために、励起光源となる紫外、近紫外または青色LEDの高出力化、高効率化の産業的な意義は極めて大きい。現在、照明用途を念頭にした、青色、近紫外または紫外LEDの高効率化、高出力化の検討が精力的になされている。
【0006】
ここで、素子の高出力化、すなわち、全放射束を向上させるためには、素子の大型化と大きな投入電力に対する耐性の確保は必須である。また、通常のLEDが点光源であるのに対して十分な大型化がなされた素子は、面光源としての発光特性を示す様になり、特に照明用途には好適となる。
【0007】
しかし、通常の小型LEDの面積を単に相似形的に大きくしただけの素子では、一般に素子全体の発光強度の均一性が得られない。そこで、同一基板上にLEDを集積することが提案されている。例えば、特開平11−150303号公報(特許文献1)には、面光源として適する発光部品として、個々のLEDが直列接続された集積型の発光部品が開示されている。また、特開2002−26384号公報(特許文献2)には、大面積で発光効率の良い集積型窒化物半導体発光素子を提供する目的で、LEDの集積方法が開示されている。集積化には、単一の発光ユニットである1対のpn接合を、他の発光ユニットと電気的に分離する必要があり、窒化物半導体層に実効的な「溝」を形成する技術が非常に重要である。
【0008】
特開平11−150303号公報(特許文献1)では、単一の発光ユニットである1対のpn接合を、ユニット間で完全に電気的に分離するために、絶縁性基板が露出するまで、Niマスクを使用してGaN層をエッチングすることが記載されている(特許文献1、段落0027参照)。また、特開2002−26384号(特許文献2)においても、単一の発光ユニットである1対のpn接合部分を、他の発光ユニットと分離するために、RIE(反応性イオンエッチング)法によってSiO2をマスクとしてGaN系材料をサファイア基板に到達するまでエッチングして、ユニット間の分離溝を形成している(特許文献2、図2、図3、および段落0038参照)。
【0009】
しかし、特許文献1で使用しているNi等の金属マスク、特許文献2で使用しているSiO2等の酸化物、さらに公知のSiN等の窒化物マスクは、GaN系材料のエッチングマスクとしてはエッチング耐性が不十分であり、選択比がとれず、エッチングの形状制御等に問題がある。また、現実問題として、数μmを越える厚膜GaN系エピタキシャル層をSiO2等の酸化物マスクでエッチングするためには、極めて膜厚の厚いSiO2マスクが必要となり、生産性にも問題がある。
【0010】
ところで、上記金属マスク、酸化物マスクおよび窒化物マスクに加えて、フッ化物系のマスクが提案されている。
【0011】
例えば、ジャーナルオブバキュームサイエンスアンドテクノロジー B (J. Vac. Sci. Technol. B )第8巻、p.28、1990年(非特許文献1)には、GaN系材料の分離溝形成、AlGaAs系材料のエッチング、再成長実施等のためのマスクとして、PMMAレジストを用いたリフトオフ法によってSrF2マスクおよびAlF3マスクを形成すること、さらに、室温におけるMBE法によってAlSrFマスクを形成することが記載されている。しかし、本発明者の検討では、室温で成膜されたフッ化物系マスクの品質は十分ではなく、AlGaAs系材料のような比較的エッチングが容易な材料のエッチングマスクとしては機能するものの、GaN系材料のような非常にエッチングしにくい材料のエッチングマスクとしては、その耐性は十分でない。また、室温で形成されたSrF2単体のマスクは、後述するように、意図しないサイドエッチングの発生や、SrF2そのものをパターニングする際に使用するフォトマスクやレジストマスク形状からSrF2自体への形状の転写精度低下などが問題となる。
【0012】
また、同様に、特開平6−310471号公報(特許文献3)においても、GaAs、InGaAs、InGaAsP系材料の微細エッチングにリフトオフ法で作製したSrF2とAlF3が使用可能であることが記載されている。この文献にはエッチングマスクの成膜条件に関する記述がないが、マスクのパターニング方法が、電子線露光可能なレジストを用いたリフトオフ法によるものであることから、マスクの成膜温度は、室温からたかだか100℃程度の温度で成膜された膜であると推定される。前述のとおり、室温程度で成膜されたマスクでは、GaN系材料のエッチングマスクとしては耐性が不十分で、また、意図しないサイドエッチングの発生や、SrF2そのものをパターニングする際に使用するフォトマスクやレジストマスク形状からSrF2自体への形状の転写精度低下などが問題となる。
【0013】
さらに、特開平5−36648号公報(特許文献4)においても、リフトオフ法でパターニングした金属マスク、SrF2マスクを用いてGaAs系材料をエッチングする手法が開示されている。この文献においても、SrF2マスクの成膜条件の記載がないが、マスクのパターニングがリフトオフ法によるものであることから、マスクの成膜温度は、室温からたかだか100℃程度の温度で成膜された膜であると推定される。
【特許文献1】特開平11−150303号公報
【特許文献2】特開2002−26384号公報
【特許文献3】特開平6−310471号公報
【特許文献4】特開平5−36648号公報
【非特許文献1】ジャーナルオブバキュームサイエンスアンドテクノロジー B (J. Vac. Sci. Technol. B )第8巻、p.28、1990年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたものであり、比較的簡単なプロセスにより例えばIII−V族窒化物半導体のようなエッチングが困難な半導体層でも容易に且つ精度良くエッチングが可能なエッチング方法を提供することを目的とする。
【0015】
さらに本発明の異なる目的は、前記エッチング方法を1工程として有する半導体装置、特に半導体発光装置等の光/電子デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、以下の事項に関する。
【0017】
1. 基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、金属フッ化物からなる固体層を形成する工程と、
前記固体層を液体で処理する工程と、
前記液体で処理された固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程と
を有することを特徴とするエッチング方法。
【0018】
2. 前記液体が、レジスト組成物である上記1記載のエッチング方法。
【0019】
3. 前記レジスト組成物処理工程は、
サブ工程(1):前記固体層にレジスト組成物を塗布する塗布工程、および
サブ工程(6):レジスト組成物の除去工程
を必須の工程として有することを特徴とする上記2記載のエッチング方法。
【0020】
4. 前記レジスト組成物処理工程は、
サブ工程(2):第1の加熱工程、
サブ工程(3):第1の露光工程、
サブ工程(4):第2の加熱工程、および
サブ工程(5):第2の露光工程
からなるサブ工程群から選ばれる少なくとも1つの工程をさらに有し、前記サブ工程(1)およびサブ工程(6)と合わせて、番号の小さい方から実施されることを特徴とする上記3記載のエッチング方法。
【0021】
5. 前記液体処理工程の後、
前記固体層上に、パターニングされたレジストマスクを形成する工程と、
前記レジストマスクをエッチングマスクとして、前記固体層をエッチングする工程と、
を有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のエッチング方法。
【0022】
6. 前記レジストマスクがフォトレジストにより形成されることを特徴とする上記5記載のエッチング方法。
【0023】
7. 前記固体層をエッチングする工程が、ウェットエッチングにより行われることを特徴とする上記5または6記載のエッチング方法。
【0024】
8. 前記ウェットエッチングに使用するエッチャントが、塩酸、フッ酸および濃硫酸からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有することを特徴とする上記7記載のエッチング方法。
【0025】
9. 前記固体層を150℃〜480℃の温度で形成することを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のエッチング方法。
【0026】
10. 前記固体層が、SrF2、AlF3、MgF2、BaF2、CaF2およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載のエッチング方法。
【0027】
11. 前記基体をエッチングする工程が、ドライエッチングで行われることを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載のエッチング方法。
【0028】
12. 前記ドライエッチングが、少なくとも塩素原子を含有するガス種を用いたプラズマ励起ドライエッチングであることを特徴とする上記11記載のエッチング方法。
【0029】
13. 前記基体のエッチング工程の後に、酸またはアルカリを含有するエッチャントにより前記固体層を除去する工程を有することを特徴とする上記1〜12のいずれかに記載のエッチング方法。
【0030】
14. 前記基体上に形成されるエッチングマスクが、前記固体層と、前記固体層を構成する物質以外の第2のマスク層との多層構造部分を有することを特徴とする上記1〜13のいずれかに記載のエッチング方法。
【0031】
15. 前記基体が、III−V族窒化物層を含むことを特徴とする上記1〜14のいずれかに記載のエッチング方法。
【0032】
16. 前記固体層をエッチングする際に発生する、パターニングされたレジストマスク端から計測したサイドエッチ量が、6μm以下であることを特徴とする上記5記載のエッチング方法。
【0033】
17. 前記固体層をエッチングする際に発生する、パターニングされたレジストマスク端から計測したサイドエッチ量が、2μm以下であることを特徴とする上記16記載のエッチング方法。
【0034】
18. 基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、微粒子間空隙を有する固体層を形成する工程と、
前記固体層を液体で処理する工程と、
前記液体で処理された固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程と
を有することを特徴とするエッチング方法。
【0035】
19. 上記1〜18のいずれかに記載のエッチング方法を1工程として有する光/電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、比較的簡単なプロセスにより、例えばIII−V族窒化物半導体のようなエッチングが困難な半導体層でも、容易にエッチングが可能なエッチング方法を提供することができる。特に、本発明によれば、フォトマスク、メタルマスク等に形成されている原形状が、たとえ緻密な微細パターンであっても、従来と比較して、より忠実に、より精度よく、エッチング終了後のエッチング対象物の平面形状として転写可能となる。具体的には、たとえば、フォトマスクに形成されている原形状の寸法を、エッチング対象物のエッチング後の寸法として、従来と比較して格段に高い精度で一致させること、あるいは所望の投影倍率で高精度に投影することが可能となる。総じていうと、加工プロセス全体における「転写精度」が格段に向上する。よって、半導体装置、半導体発光装置、特にIII−V族窒化物半導体のエッチングを伴う光/電子デバイスの製造方法に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本明細書において、「積層」または「重なる」の表現は、もの同士が直接接触している状態に加え、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、互いに接触していなくても、一方を他方に投影した際に空間的に重なる状態をも指す場合がある。また、「〜の上(〜の下)」の表現も、もの同士が直接接触して一方が他方の上(下)に配置されている状態に加え、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、互いに接触していなくても、一方が他方の上(下)に配置されている状態にも使用する場合がある。さらに、「〜の後(前、先)」との表現は、ある事象が別の事象の直後(前)に発生する場合にも、ある事象が別の事象との間に第三の事象を挟んだ後(前)発生する場合にも、どちらにも使用する。また、「接する」の表現は、「物と物が直接的に接触している場合」に加えて、本発明の趣旨に適合する限りにおいて、「物と物が直接的には接触していなくても、第三の部材を介して間接的に接している場合」、「物と物が直接的に接触している部分と、第三の部材を介して間接的に接している部分が混在している場合」などを指す場合もある。加えて「数値1〜数値2」との表現は数値1以上数値2以下との意味に使用する。
【0038】
さらに、本発明において、「エピタキシャル成長」とは、いわゆる結晶成長装置内におけるエピタキシャル層の形成に加えて、その後のエピタキシャル層の熱処理、荷電粒子処理、プラズマ処理など等によるキャリアの活性化処理等も含めてエピタキシャル成長と記載する。
【0039】
本発明のエッチング方法は、前述の通り、
(a)基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、金属フッ化物層からなる固体層または微粒子間空隙を有する固体層(以下、それぞれを、または、あわせて単に「固体層」と記すことがある。)を形成する工程と、
(b)前記固体層を液体で処理する工程と、
(e)前記液体で処理された固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程とを有する。
【0040】
上記本発明のエッチング方法において、液体は、好ましくはレジスト組成物である。
【0041】
固体層は、現象的に見てレジスト組成物等による液体処理により、化学的および/または物理的状態に何らかの変化(表面コーティング等の可能性も含む)が生じている。これは、レジスト組成物等による液体処理に使用した成分が化学的および/または物理的に結合して残存している可能性も考えられる。それらの変化を適切に利用することで、上記固体層は、精度のよいエッチングマスクとして極めて有用である。
【0042】
より具体的には、固体層をレジストを用いてパターニングする際に、固体層自体の、レジスト端からのサイドエッチングが抑制されパターン精度が向上する。加えて、基体表面にパターン化された固体層を形成し、その後に液体(例えばレジスト組成物)で処理するプロセスでも、その後サイドエッチングが問題になるような工程等を有する場合、または固体層の溶解が問題となるような工程を有する場合にも、本発明は有効であると考えられる。
【0043】
本発明の好ましい態様では、
(a)基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、固体層を形成する工程、
(b)前記固体層を液体(代表的にはレジスト組成物)で処理する工程、
(c)前記固体層上に、パターニングされたレジストマスク(固体層エッチング用)を形成する工程、
(d)前記レジストマスクをエッチングマスクとして、前記固体層をエッチングする工程、
(e)前記固体層をマスク(基体エッチング用)として、前記基体をエッチングする工程
を有する。
【0044】
ここで、工程(c)で形成されるレジストマスクは、固体層を精密パターニングするためのレジストマスクであり、これにより工程(d)で固体層をパターニングし、そのパターニングされた固体層をマスクとして基体をエッチングする。一方、工程(b)の液体処理工程で使用する液体は、固体層を処理するためのものであり、従って、液体がレジスト組成物であるときも、工程(c)で形成されるレジストマスクとは異なる。即ち、工程(d)の直後に、エッチングされてパターニングされた固体層に注目すると、少なくとも1回は固体層上にレジストが塗布されてその後除去され、その後固体層上にレジスト層が形成されたことになる。
【0045】
以下、(a)〜(e)の工程順に沿って、図1〜図7を適宜参照しながら本発明を説明する。
【0046】
<基体>
本発明において、基体(base structure=object to be etched)は、本発明のエッチング方法によりエッチングの対象となるもの、詳細には固体層をマスクとしてエッチングされる対象を意味する。後述の基板(substrate)は、層(例えば半導体層)をサポートしたり、結晶成長のために使用される通常の意味のsubstrateを意味する。後述するように、基板(substrate)がエッチング対象の基体(base structure=object to be etched)である場合もある。本発明において、エッチングの対象となる基体の材料、形状、積層構造等の構成は、種々の形態が可能である。
【0047】
基体の材料に関しては、特に限定されず、半導体、金属、並びに酸化物および窒化物等の無機材料が挙げられる。本発明は、固体層エッチングマスク(以下、パターニングされた固体層をいう。)を用いて、特にドライエッチングでエッチングすることのできる基体であればどのようなものにも適用できる。但し、金属フッ化物からなる固体層エッチングマスクは、ドライエッチング耐性が極めて高いので、ドライエッチングによるエッチングが難い基体に適用した場合であっても、大きなエッチング選択比を確保できるので、本発明の効果を最大に発揮することができる。
【0048】
例えば、半導体材料として特に限定されないが、シリコン、ゲルマニウム、ダイヤモンド、GaN等のIII−V族化合物半導体およびII−VI化合物半導体等の一般に半導体装置に使用される半導体が挙げられる。また、サファイア、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素等の酸化物、窒化物、また、酸窒化物材料のエッチングにも適している。さらに、金属等のエッチングも可能である。
【0049】
基体の形状、構成に関しても特に限定はないが、例えばエッチング対象が半導体層を含む場合には、基体は、半導体基板そのもの、基板(半導体基板、またはサファイア等の酸化物基板等)とその上に形成された半導体層、必要により絶縁層および/または金属層等との組み合わせであってもよい。この場合、半導体層(必要により絶縁層等のその他の層を含む)部分のみをエッチングしてもよいし、その下の基板も含めてエッチングしてもよい。
【0050】
半導体層の形成方法も制限はなく、どのような方法で形成された半導体層にも適用可能である。本発明を発光素子の製造に適用する場合には、好ましくは、基板上にエピタキシャル成長などの薄膜結晶成長技術により形成された層である。ここで、「薄膜結晶成長」とは、いわゆる、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)、MBE(Molecular Beam Epitaxy)、プラズマアシストMBE、PLD(Pulsed Laser Deposition)、PED(Pulsed Electron Deposition)、PSD(Pulsed sputtering Deposition)、VPE(Vapor Phase Epitaxy)、LPE(Liquid Phase Epitaxy)法等の結晶成長装置内における薄膜層、アモルファス層、微結晶、多結晶、単結晶、あるいはそれらの積層構造の形成に加えて、その後の薄膜層の熱処理、プラズマ処理等によるキャリアの活性化処理等も含めて薄膜結晶成長と記載する。
【0051】
有用性が高くかつドライエッチングが一般に困難な半導体層の材料として、即ち本発明のエッチング方法を適用することが好ましい半導体としては、構成する元素にIn、Ga、Al、Bおよびそれらの2以上組み合わせから選ばれる元素が含まれることが好ましく、さらに半導体層にV族原子として窒素原子が含まれることが好ましく、最も好ましくは半導体層にV族原子として窒素原子のみが含まれる。半導体層として具体的には、GaN、InN、AlN、BN、InGaN、AlGaN、InAlN、InAlGaN、InAlBGaN等のIII−V族窒化物半導体(以下、簡単のためにGaN系半導体ということもある。)が挙げられる。これらは、必要によりドーパントとしてSi、Mg等の元素が含まれていてもよい。
【0052】
なお、本発明は、III−V族窒化物半導体以外の半導体、例えばGaAs系、GaP系、InP系、Si系等のエッチングにも好適に利用可能である。
【0053】
半導体層は多層構造でもよく、本発明を用いて、III−V族窒化物半導体(GaN系)発光素子を作製する場合には、半導体層としては薄膜結晶成長(代表的にはエピタキシャル成長)されたバッファ層、第一導電型クラッド層、第一導電型コンタクト層、活性層構造、第二導電型クラッド層、第二導電型コンタクト層等を含むことが望ましい。本発明に適用可能な、好ましい基体としては、サファイア基板上のGaN系エピタキシャル層や、GaN基板上のGaN系エピタキシャル層を挙げることができる。
【0054】
以下の説明では、図1に示すように、エッチング対象の基体が、基板1とその上に形成した半導体層2を有し、エッチングされる部分が半導体層2のみである場合を代表例として説明する。しかし、半導体層2が存在しなくて基板そのものがドライエッチングの対象の基体である場合、基板1と半導体層2が共にドライエッチングの対象である場合にも適用可能である。この場合の好ましい基体としては、上述と同様、サファイア基板上のGaN系エピタキシャル層や、GaN基板上のGaN系エピタキシャル層を挙げることができる。
【0055】
半導体層が基板上に形成される場合の基板としては、目的の半導体層を形成可能な基板であれば、特に制限はなく、半導体基板およびセラミック基板、絶縁性基板および導電性基板、並びに透明基板および不透明基板等の使用が可能である。目的とする半導体装置、半導体製造プロセス等を考慮して適宜選ぶことが好ましい。
【0056】
例えば、基板側からも光取り出しを意図したGaN系発光素子構造を作製する場合には、光学的に素子の発光波長に対しておおよそ透明である基板を用いることが望ましい。ここでおおよそ透明とは、発光波長に対する吸収が皆無であるか、あるいは、吸収が存在しても、その基板の吸収によって光出力が50%以上低減しないものである。また、GaN系発光素子の製造には、電気的には絶縁性基板が好ましい。これは、いわゆるフリップチップマウントをすると仮定した場合に、たとえハンダ材などが基板周辺に付着しても半導体発光装置への電流注入には影響を与えないからである。この場合の具体的な材料としては、例えばInAlGaN系発光材料またはInAlBGaN系材料をその上にエピタキシャル成長させるためには、サファイア、SiC、GaN、LiGaO2、ZnO、ScAlMgO4、NdGaO3およびMgOから選ばれることが望ましく、特にサファイア、GaN、ZnO基板が好ましい。特にGaN基板を用いる際には、そのSiのドーピング濃度は意図的にアンドープ基板を用いる場合には、1×1018cm−3のSi濃度以下が望ましく、さらに望ましくは8×1017cm−3以下であることが、電気抵抗の観点と結晶性の観点からが望ましい。
【0057】
本発明で使用される基板は、いわゆる面指数によって完全に確定されるジャスト基板だけではなく、エピタキシャル成長の際の結晶性を制御する観点から、いわゆるオフ基板(miss oriented substrate)であることも望ましい。オフ基板は、その上に形成される半導体層がエピタキシャル層である場合には、ステップフローモードでの良好な結晶成長を促進する効果を有するため、半導体層のモフォロジ改善にも効果があり、基板として広く使用される。たとえば、サファイアのc+面基板を基板としてGaN系材料の結晶成長用基板として使用する際には、m+方向に0.2度程度傾いた面を使用することが好ましい。オフ基板としては、0.1〜0.2度程度の微傾斜を持つものが広く一般的に用いられるが、サファイア上に形成されたGaN系材料においては、活性層構造内の発光ポイントである量子井戸層にかかる圧電効果による電界を打ち消すために、比較的大きなオフ角度をつけることも可能である。
【0058】
基板には、MOCVDやMBE等の結晶成長技術を利用して半導体層を製造するために、あらかじめ化学エッチングや熱処理等を施しておいてもよい。また、基板の半導体層成長面に意図的に凹凸をつける加工を行い、これによってエピタキシャル層と基板との界面で発生する貫通転移を、発光素子の活性層近傍に導入しないようにすることも可能である。この場合は、凹凸のある表面に、エッチングマスク層を形成することになるが、本発明ではその場合にも、良好なエッチングマスク層を形成することができる。
【0059】
基板の厚みは、目的とする半導体装置および半導体プロセスを考慮して選ばれるが、装置作成初期においては、例えば250〜700μm程度にしておき、半導体装置の結晶成長、素子作製プロセスにおける機械的強度が確保されるようにしておくのが通常は好ましい。これを用いて半導体層をスパッタ、蒸着、あるいはエピタキシャル成長などの方法で形成した後に、適宜各々の素子に分離しやすくするために、研磨工程によってプロセス途中で薄くしてもよい。
【0060】
<固体層>
本発明のエッチング方法では、基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、金属フッ化物からなる固体層または微粒子間空隙を有する固体層を形成する。金属フッ化物は、良好な膜質を有し、その後の金属フッ化物層のエッチング、および基体のエッチングを良好に行うことができるという観点から、好ましい材料として用いられる。一方、材料的視点とは独立して、前記固体層を電子顕微鏡レベルの構造的視点でとらえると、微粒子間空隙を有する固体層が好ましい構造として用いられる。
【0061】
まず、金属フッ化物からなる固体層を形成する場合について詳細に説明する。
【0062】
即ち、第一の本発明のエッチング方法は、
(a)基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、金属フッ化物からなる固体層を形成する工程と、
(b)前記固体層を液体で処理する工程と、
(e)前記液体で処理された固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程とを有することを特徴とする。
【0063】
<金属フッ化物層の成膜>
図2に、半導体層2上にエッチングマスク層3を形成した様子を示す。エッチングマスク層には、少なくとも1層の金属フッ化物層が含まれる。この例では、エッチングマスク層3は、金属フッ化物層の1層構造である。
【0064】
金属フッ化物層を構成する材料は、2価または3価金属のフッ化物が挙げられ、特に長周期律表の2族(2A族)、3族(3A族)、12族(2B族)および13族(3B族)から選ばれる金属元素のフッ化物が好ましい。具体的には、SrF2、CaF2、MgF2、BaF2、AlF3等が挙げられ、ドライエッチング耐性とウェットエッチング性のバランスを考慮すると、SrF2、CaF2、MgF2が好ましく、この中でもCaF2およびSrF2が好ましく、SrF2が最も好ましい。
【0065】
前述のとおり、SrF2等の金属フッ化物をエッチングマスクとして使用する提案は従来より存在したが、マスクパターンはフォトレジストを使用したリフトオフ法によって形成されている。リフトオフ法でマスクパターンを形成するには、フォトレジストを高温にさらすことができないために、SrF2等の金属フッ化物を高温で形成することができない。常温近傍で成膜した金属フッ化物層は、一般的には膜質は良好ではない。本発明の好ましい態様では、金属フッ化物層のパターニングをエッチング法、好ましくはウェットエッチング法で行う。このため、成膜温度の設定範囲が広がり、より高温での成膜が可能になり、より良好な膜質の金属フッ化物パターニングマスクを形成することができる。
【0066】
金属フッ化物層は好ましくは150℃以上の温度で成膜される。150℃以上で成膜されたものは、下地との密着性に特に優れ、緻密な膜が形成される。同時に、金属フッ化物層のエッチングにより、レジストパターンの平面形状を金属フッ化物層の平面形状へ精度よく転写することができる。たとえば、直線状の開口を形成する場合やストライプ状パターンを形成する場合には、金属フッ化物層は、その側壁の直線性やレジストパターンからの平面形状の転写精度に優れている。但し、後述する液体処理(レジスト組成物処理等)に使用される液体の種類によっては、金属フッ化物層が常温近傍〜150℃未満の範囲で成膜されても、転写精度に優れるために使用可能である。
【0067】
一般に、成膜温度は、比較的高い温度であることが好ましい。即ち、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上、最も好ましくは350℃以上である。特に350℃以上で成膜された金属フッ化物層は、あらゆる下地との密着性に優れ、かつ、相対的に低温で成膜したものと比較して緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示す。レジストマスクや金属マスク等異種材料をエッチングマスクとして金属フッ化物をエッチングした場合の、金属フッ化物自体のパターニング形状についても、転写精度(パターンが直線である場合は、側壁部分の直線性)に非常に優れ、開口部の幅の制御性も確保されるようになる。このような金属フッ化物層は基体のエッチングマスクとして最も好ましい。本発明では、後述する液体処理の効果と相俟って、パターニングする際の開口部の幅の制御性、形状制御性が極めて優れている。尚、以下の説明で、150℃以上の温度での成膜を、略して「高温成膜」ということもある。
【0068】
このように、下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、転写精度に非常に優れたエッチングマスクとするためには、高温で成膜することが好ましいが、一方、成膜温度が高すぎると、後述するウェットエッチングのエッチャントに対する耐性が必要以上になり、フォトレジストを使用したパターニング、あるいはその除去が容易でなくなる。特に、後述するようにSrF2等のマスクは半導体層のドライエッチング時に塩素等のプラズマにさらされると、その後に実施するマスク層の除去時のエッチングレートが、塩素等のプラズマにさらされる前に比較して低下する傾向を有している。このため、金属フッ化物の過度の高温での成膜はそのパターニングと最終除去の観点から好ましくない。
【0069】
まず半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされる前の金属フッ化物にあっては、低温成膜した層ほど塩酸等のエッチャントに対するエッチングレートが大きくエッチングが速く進行し、成膜温度を高くするほどエッチングレートが低下し、エッチングの進行が遅くなる。成膜温度が300℃以上になると、成膜温度が250℃程度の膜よりエッチングレートの低下が目立ってくるが、350℃から450℃程度では、非常に都合の良いエッチング速度の範囲にある。しかし、成膜温度が480℃を超えるとエッチング速度の絶対値が必要以上に小さくなり、金属フッ化物層のパターニングに過剰な時間を費やすこととなり、また、レジストマスク層等が剥離しない条件でのパターニングが困難になる事もある。さらに、半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされた後の金属フッ化物層にあっては、除去時の塩酸等に対するウェットエッチングレートは低下する性質があり、過度の高温での成膜は、半導体層エッチング後に不要になった金属フッ化物層の除去を困難にしてしまう。
【0070】
さらに、金属フッ化物の成膜を過剰な高温で実施すると、基板や半導体層、あるいは後述するように半導体層に形成された金属層などに過剰な熱履歴を与えることとなり、半導体発光素子等を作製する際には、マスク作製プロセスがデバイスに対して悪影響をあたえる可能性がある。
【0071】
このような観点から、金属フッ化物層の成膜温度は、好ましくは480℃以下であり、さらに好ましくは470℃以下、特に好ましくは460℃以下である。
【0072】
半導体層のエッチング条件において、半導体層等の基体と金属フッ化物層とのエッチング選択比は、40以上、好ましくは200以上であり、さらに好ましくは400以上であり、これがIII−V族窒化物半導体でも可能である。
【0073】
金属フッ化物層の形成方法としては、スパッタ法、電子ビーム蒸着法および真空蒸着法等の通常の成膜方法を採用することができる。しかし、スパッタ法、電子ビーム蒸着法等の方法では選択比の低いエッチングマスクとなることがある。これは、フッ化物に、直接電子、イオン等が衝突するので、条件によってはおそらくフッ化物を金属とフッ素に解離させてしまうことによると考えられる。従って、これらの成膜方法では、成膜条件を適切に選ぶ必要があり、製造条件に制約が生じる。一方、例えば抵抗加熱による真空蒸着法では、このような問題がないので、最も望ましい。なお、電子ビームを利用した蒸着法であっても、直接フッ化物材料に電子ビームを当てるのではなく、材料をいれたるつぼを電子ビームで加熱するなどの間接的な加熱であれば、抵抗加熱法と同じく望ましい。これらの蒸着法により成膜すると、ドライエッチング耐性に優れた金属フッ化物層を容易に成膜することができる。
【0074】
さらに、SrF2等の金属フッ化物層の成膜レートとしては、0.03nm/secから3nm/sec程度の範囲が好ましく、さらに、0.07nm/secから2.0nm/sec程度が好ましく、さらには0.10nm/secから1.0nm/sec程度が最も好ましい。この範囲で成膜された金属フッ化物層は、下地との密着性に富み、対プラズマ耐性が確保された膜となるため、より望ましい。
【0075】
<構造的視点から見た固体層の特徴>
以上のように、本発明のエッチング方法について、エッチングマスクの少なくとも一部として形成する固体層を、金属フッ化物という材料的視点で詳述した。一方、本発明者らは、材料的視点とは独立して、前記固体層を電子顕微鏡レベルの構造的視点でとらえることも可能であることを見出した。
【0076】
即ち、第二の本発明のエッチング方法は、
(a)基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、微粒子間空隙を有する固体層を形成する工程と、
(b)前記固体層を液体で処理する工程と、
(e)前記液体で処理された固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程とを有することを特徴とする。
【0077】
ここで、微粒子間空隙とは、一度の製膜によって、材料、形成条件等を選択することにより、自然発生的に形成される比較的マクロな空隙をいう。比較的マクロな空隙は、図21、図22、図23および図24で見られるような固体層を構成する微粒子同士の間に存在し、より具体的には例えば数nm〜数十nm程度のサイズ(通常1〜50nm)の空隙をいう。比較的マクロな空隙は、例えばSiNx膜を通常のフォトリソグラフィープロセスで人工的に穴あけ加工してパターニングしたような空隙を意味するものではない。また、いわゆる多結晶にみられる単なる結晶粒界のような、いわゆる多結晶を構成する個々の結晶同士の隙間ない連結部分を意味するものでもない。
【0078】
このような微粒子間空隙は、図21や図22(断面写真)、または図23や図24(表面写真)にみられるようにSEM等で拡大視した際に、確認することができる。
【0079】
また、前記固体層の上側表面に存在する微粒子間空隙の量は、下記により測定される表面空隙率で見積もることが可能である。
【0080】
ここにおいて本発明の第二のエッチング方法で用いられる固体層の表面空隙率は、通常0.5%以上であり、通常15%以下、好ましくは8%以下である。表面空隙率が大きすぎると固体層の緻密性が劣り、ドライエッチング耐性が低下する場合がある。表面空隙率が小さすぎると本発明における液体の処理効果が不十分になる場合がある。例えば、図23のSrF2層、および図24のCaF2における表面空隙率は、それぞれ約2.7%、約0.9%である。
【0081】
<表面空隙率の測定方法>
(i)SEM等の電子顕微鏡で固体層の膜を撮影し、撮影した部分のうち、空隙部分の面積の和を測定、計算する。この際に、写真等の画像にした固体層の表面は、微粒子部分と微粒子間空隙部分は、像のコントラストとして認識可能となる。これを元に空隙部分の面積の和を求める。
(ii)撮影した部分(空隙部分を含む固体層全体)の面積を測定、計算する。
(iii)下記式により、表面空隙率を算出する。
【0082】
表面空隙率=前記空隙部分の面積の和/前記撮影した部分の面積
なお、SEM等を用いて測長する場合には一般に10%の誤差があることが知られている。また、表面の凹凸によってSEMの像の焦点があわない場合の誤差や、画像のコントラスト処理により、空隙のエッジ部分の位置が変化して見える誤差が存在する。これらにより、表面空隙率の測定値には、±50%程度以内の誤差の可能性がある。
【0083】
微粒子間空隙を有する固体層を構成する材料は特に限定はないが、前述のように、良好な膜質を担保し、その後の固体層のエッチング、および基体のエッチングを良好に行うという観点から、金属フッ化物であることが好ましい。
【0084】
微粒子間空隙を有する固体層は、高いドライエッチング耐性を担保するために緻密な膜が形成される必要があるが、例えば、SrF2のようなエッチング耐性の高い固体層であっても、図21、図22、図23または図24に記載されるように成長した微粒子間に空隙が存在する。サイドエッチング抑制効果のメカニズムの詳細は不明であり推測の域を出ないが、エッチャントに対する耐性の向上、エッチャントをはじく効果(疎水性)の向上、フォトレジスト(固体層エッチング用)に対する親和性および/または浸透性の向上、微粒子脱落抑制効果等が単独または複合的に生じていると考えられ、その効果は特に微粒子間に空隙が存在し、この空隙に液体が接触することにより、化学的および/または物理的変化が起こることにより奏されるものと考えられる。本発明においては、前記液体は、レジスト組成物を含む液体であることが好ましい。
【0085】
以下、金属フッ化物からなる固体層を形成する場合(第一の本発明のエッチング方法)および微粒子間空隙を有する固体層を形成する場合(第二の本発明のエッチング方法)に共通する実施形態について詳述する。なお、以下で記載する「固体層」は、特に記載のない限り、金属フッ化物からなる固体層および微粒子間空隙を有する固体層の両方を意味するものとする。
【0086】
本発明において、エッチングマスク層は、固体層の単層膜でもよいし、それらの多層膜でもよいし、また固体層を構成する物質以外の第2のマスク層との多層構造でもよい。本発明では、半導体層のエッチングの際に固体層が表面に露出して下部の構造を保護できるように形成されていればよい。従って、半導体層側に、半導体または半導体上に形成した部品を保護するため、またはその他の目的で、他の層を形成してもよい。本発明の1実施形態では、例えば後述の例のように、固体層を最終的に除去するときに、半導体層の表面に形成された金属層が除去されてしまわないように、第2のマスク層としてSiNx、SiOx等の膜を固体層の下部に形成した多層膜とすることも好ましい。また、固体層の下部に形成した第2のマスク層に加えて、固体層の上部に第3のマスク層などを有してもかまわない。これらは目的に応じて、適宜選択可能である。
【0087】
<固体層の液体による処理>
次に、成膜された前記固体層を液体によって処理する。本発明の好ましい態様としては、成膜された固体層をレジスト組成物によって処理する。このレジスト組成物処理工程は、後述する他のマスク材を利用した固体層のパターニングの際にサイドエッチングを抑制する効果を有し、転写精度を向上させるために必須の工程である。「レジスト組成物処理工程」は、レジスト組成物を固体層に接触させることを含み、通常、サブ工程(1):固体層にレジスト組成物を塗布する塗布工程、およびサブ工程(6):レジスト組成物の除去工程を含む。
【0088】
本発明において、用語「レジスト組成物」は、サブ工程(1)において固体層に塗布可能な状態から、サブ工程(6)において除去される直前の状態まで、すべての状態を意味するものとして使用される。但し、特定の状態を表す場合には、明示されるか、または用語が使用される文脈から明らかである。
【0089】
さらに詳細には、レジスト組成物処理工程は、サブ工程(1)および(6)を必須の工程として有し、任意の工程としてサブ工程(2)〜(5)を有する。
【0090】
サブ工程(1):前記固体層にレジスト組成物を塗布する塗布工程、
サブ工程(2):第1の加熱工程、
サブ工程(3):第1の露光工程、
サブ工程(4):第2の加熱工程、
サブ工程(5):第2の露光工程、および
サブ工程(6):レジスト組成物の除去工程。
【0091】
通常のポジ形レジストプロセスおよび一部のネガレジストプロセス(塗布、露光、現像によるパターン形成)では、一般に上記サブ工程の(1)(2)(3)(4)(6)が必須であり、一方、他のネガレジストプロセスでは、(1)〜(6)のすべてが必須である。しかし、本発明では、パターンを形成することが目的ではないので、サブ工程(2)〜(5)は、任意であり、省略することが可能であり、適宜実施すればよい。実施するときは、必須のサブ工程(1)および(6)と合わせて、番号の小さい方から実施する。
【0092】
レジスト組成物は、サブ工程(1)において塗布するときは、液状であり、レジストベース樹脂、感光剤および有機溶媒等を含有する。一般に流通しているこの状態のレジスト組成物を、区別して言及する場合には、用語「レジスト溶液」を使用する場合もある。
【0093】
サブ工程(1)において、レジスト組成物(レジスト溶液)を固体層に塗布する方法は、どのような方法を採用してもよいが、例えば、スピンコート法、スクリーン印刷法、ディップコート法、スプレイコート法、カーテンコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディスペンサー塗布、その他どのような方法でもよい。このとき、レジスト組成物が固体層の表面(微粒子間空隙の表面も含む)に充分に接触するように、振動を加えたりしてもよい。塗布の温度は、溶液状のレジスト組成物が塗布できれば特に制限はなく、含有される溶媒の融点、沸点等を考慮して決めればよいが、一般的には室温(10℃程度〜35℃程度)を採用すればよい。
【0094】
サブ工程(2)は、第1の加熱工程である。一般的なレジスト溶液を使用し、スピンコーティング等により比較的薄い塗膜を形成した場合に、塗布工程後、レジスト組成物中の溶媒の大部分は蒸発し、レジスト組成物は固形状膜となっているが、未だ溶媒を含んでおり、膜質が柔らかくべたついている場合がある。そこで、乾燥、膜質硬化のために一般的レジストプロセスでは、プリベークと言われる加熱工程を行う。本発明のサブ工程(2)の第1の加熱工程は、いわゆるプリベーク工程に相当する。通常、50〜150℃の温度であるが、本発明の場合は、このレジスト組成物処理により精密パターンを形成することを意図していないので、室温より高温で、後のサブ工程(6)でレジスト組成物を剥離可能な温度以下であればよく、例えば40℃〜200℃、好ましくは40℃〜160℃程度であり、より好ましくは50〜150℃である。
【0095】
第1の加熱工程における加熱時間も適宜選べばよいが、例えば10秒〜1時間、好ましくは20秒〜30分程度である。
【0096】
サブ工程(3)は、第1の露光工程である。第1の露光工程は、一般的レジストプロセスにおいて、フォトマスクまたは縮小投影等を使用するパターン露光に対応する。露光波長は、レジスト材料の種類に応じて適宜選定され、例えば、紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー、X線、電子線等が挙げられ、通常i線、g線やKrF、ArF、F2等のエキシマレーザーなどを使用し、公知の方法で露光することができる。本発明のレジスト組成物処理工程においては、この露光工程を実施してもしなくてもどちらでもよく、従って、実施する場合にも全面露光でも、フォトマスクまたは縮小投影等を使用するパターン露光のどちらでもよく、またレジストがポジ型かネガ型かに関わらず実施してもしなくてもよい。
【0097】
サブ工程(4)は、第2の加熱工程である。一般的レジストプロセスにおいて、ポジ型の露光後ベーク、ネガ型(像反転型)の画像反転ベーク(reversal Bake)等に対応し、80℃程度〜150℃程度が採用されるが、本発明の場合は、このレジスト組成物処理により精密パターンを形成することを意図していないので、室温より高温で、後のサブ工程(6)でレジスト組成物を剥離可能な温度以下であればよく、40℃〜200℃、好ましくは40℃〜160℃程度、より好ましくは50〜150℃である。但し、第1の加熱工程と第2の加熱工程の両方を実施する場合、特に、サブ工程(3)の露光工程が無くて、第1の加熱工程と第2の加熱工程を実施する場合には、第1の加熱工程の温度より第2の加熱工程の温度を高くすることも好ましい。
【0098】
第2の加熱工程における加熱時間も適宜選べばよいが、例えば10秒〜1時間、好ましくは20秒〜30分程度である。
【0099】
サブ工程(5)は、第2の露光工程である。一般的レジストプロセスにおいて、ネガ型(像反転型)を用いたプロセスにおける全面露光(Flood exposure)に対応し、本発明では、ネガ型(像反転型)レジストを使用したときに、実施してもよいし、実施しなくてよい。ポジ型、または架橋型のネガ型等のレジストプロセスでは、一般に、この工程は不要であるか、実施することに意味を有さないが、実施しても差し支えない。
【0100】
サブ工程(6)は、レジスト組成物の除去工程であり、固体層上から少なくとも部分的に、または固体層上の全面から除去する。レジスト組成物の除去には、後工程((c)レジストマスク(固体層エッチング用)形成、(d)固体層エッチング)の妨げにならず、かつレジスト組成物処理の効果が発現しうるような方法および条件が選択されればよい。
【0101】
例えば、現像液処理、有機溶媒洗浄、プラズマアッシングおよびそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0102】
主として現像液処理によってレジスト組成物を除去するには、第1の露光工程および必要により第2の露光工程とを適切に組み合わせる必要がある。現像液は、一般にテトラメチルアンモニウムヒドロキシドのようなアルキルアンモニウムヒドロキシドを含有するアルカリ水溶液、有機溶媒が使用される。ポジ型レジストの場合、露光部分(全面露光の場合は全面)のレジスト組成物が溶解除去され、ネガ型レジストの場合、第1の露光工程における非露光部分(露光なしの場合は全面)のレジスト組成物が溶解除去される。ここで、現像液処理は、使用するレジストに対して現像液として機能する液に接触させることを意味し、像を作ることを意味するものではない。但し、露光との組み合わせにより、必要箇所のレジスト組成物のみを除去することは可能である。現像工程の後、必要により水等により洗浄してもよい。
【0103】
尚、現像液処理において除去される部分が無くてもよく、その場合はレジスト組成物の除去は、他の方法により実質的に実施される。
【0104】
レジスト組成物の除去に使用可能な有機溶媒としては、基体等に影響を与えず残存するレジスト組成物層を溶解可能なものであれば、いずれの溶剤でも使用することができる。具体的には、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール(好ましくは炭素数4以下)、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等を用いることができる。また、2種以上の有機溶媒を組み合わせて使用してもよく、この場合、混合しておよび/または逐次的に使用することができる。有機溶媒でレジスト組成物の残存物を除去した後、水洗することも好ましい。その後、適宜乾燥させてから、次のレジストマスク(固体層のエッチング用)の形成工程に進む。乾燥は、スピンドライ、乾燥空気吹きつけ等により行えばよい。
【0105】
レジスト組成物の除去方法として、そのほかの例えば酸素プラズマアッシング等も使用することが可能である。
【0106】
サブ工程(2)〜(5)の中で、サブ工程(2)の第1の加熱工程およびサブ工程(4)の第2の加熱工程は、少なくとも一方、好ましくは両方を実施することが好ましい。
【0107】
以上のレジスト組成物処理工程で使用できるレジスト材料としては、近紫外(g線、i線等;nearUV)、深紫外(deepUV)、真空紫外(vacuumUV)、極端紫外(extremeUV)等の光、電子線、熱等のエネルギー線照射により現像液に対する溶解性が変化する公知のレジストを使用することができ、ポジ型でもネガ型でもよい。
【0108】
例えば、i線、g線等用の代表的レジスト材料は、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック系樹脂を主成分とするベース樹脂、感光剤としてナフトキノンジアジドスルホニルクロライド等のキノンジアジド類、および有機溶剤を主成分として含有する。また、これらに添加物を加えてネガ型にしたレジスト材料も好ましい。
【0109】
さらに、ポリマーと、露光により酸を発生する酸発生剤を含有する短波長光源用の化学増幅型レジスト等を用いることができる。このタイプのレジストに含有されるポリマーは、ポリヒドロキシスチレンのOHをt−ブトキシカルボニル等の保護基で修飾した(共)重合体、ポリメタクリル酸エステル誘導体の(共)重合体等が知られているが、これらに限定されない。
【0110】
具体的には、シプレイ・ファーイースト社製MCPRシリーズ、東京応化工業社製OFPRシリーズ、OAPシリーズ、AZエレクトロニックマテリアルズ社製AZシリーズ等の市販品を使用することができる。
【0111】
これらのレジスト組成物に含有されることが好ましい溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ポリオキシエチレン等の多価アルコール;
【0112】
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
【0113】
アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2‐ヘプタノンなどの炭素数が好ましくは20以下、より好ましくは10以下のケトン類;
【0114】
酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ぎ酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル等のアルキルエステル類(好ましくは炭
素数が20以下、さらに好ましくは炭素数12以下);2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸ブチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート等のアルコキシまたはオキサアルキル基を有する置換アルキルエステル類(好ましくは炭素数が20以下、さらに好ましくは炭素数12以下);ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類のエステル類;
【0115】
ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等の直鎖または分岐状ジアルキルエーテル;およびテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オキセタン、ジオキサンのよう環状エーテル類を挙げることができる。
【0116】
特に、プロピレングリコールモノメチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、乳酸プロピル等が好ましい。
【0117】
本発明において特徴的なレジスト組成物処理を行うことにより達成できるサイドエッチング抑制効果のメカニズムの詳細は不明であり推測の域を出ないが、エッチャントに対する耐性の向上、エッチャントをはじく効果(疎水性)の向上、フォトレジスト(固体層エッチング用)に対する親和性および/または浸透性の向上、微粒子脱落抑制効果等が単独または複合的に生じていると考えられる。
【0118】
<固体層のパターニング>
上述のようにして、レジスト組成物等による液体処理した固体層を、好ましくはエッチングによって、所望の形状にパターニングする。この固体層のエッチングは、固体層がエッチング可能でかつ半導体層のエッチング条件とは異なる条件が選ばれ、特に酸またはアルカリを用いたウェットエッチング法が好ましい。本発明では、上記の液体処理を施すことにより、固体層のサイドエッチングが抑制される。
【0119】
固体層を含むエッチングマスク層のパターニングには、他のマスクを用いて行うことが好ましい。たとえば、図3に示すように、フォトレジスト材料によるレジストマスク層4をエッチングマスク層3の上に形成し、露光、現像等の通常のフォトリソグラフィー法によってレジストマスク層4を図4のようにパターニングする。使用されるフォトレジストは、ポジ型、ネガ型のどちらでもよい。また、前述のレジスト組成物処理に使用したレジスト材料と同一のものを使用してもよいし、異なるものを使用してもよい。
【0120】
その後図5Aのように、パターニングされたレジストマスク層4をマスクとして、固体層を含むエッチングマスク層3をエッチングする。
【0121】
ウェットエッチングのエッチャントとしては、塩酸、フッ酸、硫酸、燐酸、硝酸等の酸を含有する水溶液が好ましく、必要によりさらに過酸化水素等の酸化剤、エチレングリコール等の希釈剤等を含有したものを挙げることができる。エッチャントは、固体層の材料および成膜条件等も考慮して選択されるが、特に少なくとも塩酸、濃硫酸、フッ酸等を含有することが好ましく、例えばSrF2をパターニングするときには、塩酸が望ましく、CaF2をパターニングするためには濃硫酸、塩酸が望ましく、特に濃硫酸が望ましい。また、アルカリによるエッチングも可能であり、いずれのエッチングにおいても光照射、加熱等を併用してもかまわない。
【0122】
ウェットエッチングは一般に等方性エッチングであるので、通常は好ましくないサイドエッチングを伴う。図5Bに模式的に示すように、サイドエッチングのために、レジストマスク層4のマスク端より、固体層を含むエッチングマスク層3の端が後退する。後退した距離を、サイドエッチ量Lとする。サイドエッチ量Lが小さいほど、レジストマスク層4のパターンが忠実に転写されることになるので、精密なパターン形成が可能になる。
【0123】
本発明では、固体層を液体処理することにより、サイドエッチ量が極めて小さくなり、その結果、固体層を含むエッチングマスク層3を、レジストパターンに忠実に精密にパターニングすることが可能になる。従って、エッチングマスク層3をマスクとしてエッチングによりパターニングされる半導体層2(=基体)の形状も、レジストパターンに対する転写精度が向上する。
【0124】
さらに、液体処理により、パターニング後、固体層のパターン境界が非常にシャープに現れるため、固体層をマスクとして使用する基体のドライエッチングにおいて、転写精度がより高くなる。
【0125】
本発明においては、400nm程度の固体層をエッチングする際に、サイドエッチ量Lが6μm以下とすることが可能になり、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下、特に好ましくは2μm以下のサイドエッチ量Lが達成可能である。このため、III−V族窒化物半導体のように、比較的エッチングが困難であるために、微細な形状のパターニングが困難であった基体であっても、微細パターンの形状が可能になる。
【0126】
このようにして、エッチングマスク層3のウェットエッチングが終了し、図5Aの構造が形成された後、通常は不要となったレジストマスク層4を除去し、図6に示すように半導体層上にパターニングされたエッチングマスク層3が形成された構造を得る。
【0127】
<半導体層のエッチング>
半導体層のエッチング工程では、図7に示すように、エッチングマスク層3をマスクとして半導体層2をエッチングする。
【0128】
半導体層のエッチングには、望ましくはドライエッチング法が用いられる。ドライエッチング法は、半導体層の材料、結晶性、その他の性質に基づいて、そのガス種、バイアスパワー、真空度等の条件を適宜選択可能である。半導体層がIII−V族窒化物半導体である場合においては、ドライエッチングのガス種としては、ガスを構成する分子としてCl元素を含む塩素系ガスが好ましく、Cl2、BCl3、SiCl4、CCl4およびこれらの組み合わせから選ばれるものが望ましい。これらのガス種によって生成される塩素系プラズマは、ドライエッチングの際に、GaN系材料と高温成膜された固体層を形成する材料の間で大きな選択比を実現することが可能であり、従って、高温成膜された固体層形成材料をほとんどエッチングせずに窒化物半導体層をエッチングすることができる。その結果、形状制御性にすぐれた半導体層のエッチングが実現できる。なお、ドライエッチングの際に、固体層の厚みはほとんど目減りしないが、膜の特性、特にそのウェットエッチング時の耐性は変化し、ウェットエッチングレートが低下する傾向がある。
【0129】
ここで、ドライエッチング時のプラズマ生成方式は、容量結合型のプラズマ生成(CCP型)、誘導結合型のプラズマ生成(ICP型)、電子サイクロトロン共鳴を基礎としたプラズマ生成(ECR型)等のどのような方式でも適応可能である。しかし、本発明においては、誘導結合型のプラズマ生成によって塩素系プラズマを生成することが望ましい。これは、プラズマ密度が他の方式と比べて高くすることが可能で、III−V族窒化物半導体材料等をエッチングする際に好都合であるからである。ここで、ドライエッチングの際のプラズマ密度は、好ましくは、0.05×1011(cm−3)〜10.0×1011(cm−3)であり、さらに好ましくは1×1011(cm−3)〜7.0×1011(cm−3)である。そして、本発明で高温成膜した固体層は、エッチング耐性が高いため、誘導結合方式によって形成した高プラズマ密度のプラズマであっても、十分な耐性を示す。
【0130】
例えばSiNxやSiOx等の窒化物や酸化物、Ni等の金属をマスクとした際には、窒化物半導体層とマスクの選択比は5〜20程度であるが、本発明の固体層マスクでは窒化物半導体層に対しても100以上の選択比が実現可能である。よって、本発明の方法によれば、III−V族窒化物半導体層を深くエッチングする際に特に好ましく利用される。III−V族窒化物半導体層の場合でも、エッチングの深さとしては、1μm以上、好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上、最も好ましくは5μm以上、さらには10μmを超えても適用可能である。さらに、固体層マスクの材質、厚み、半導体層の材質にも依存するが、十分に厚いSrF2マスクを形成して半導体層をエッチングする場合には、非常に厚い層のエッチングも可能である。エッチングする半導体層の厚さは、一般には50mm以下であり、好ましくは35mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは1mm以下であり、500μm以下が最も好ましい。極度に厚い半導体層をエッチングする場合として、SrF2マスクを用いて、厚み3mmから35mm程度の厚膜のGaN基板をエッチングする場合、さらには当該基板上に成長されたGaNエピタキシャル層などを、基板の厚みのほとんどと薄膜結晶成長層を同時にエッチングする場合などが挙げられる。また、基板のエッチングは行わずに、7μm程度の薄膜結晶成長層のみをエッチングする事も、当然可能である。またそのとき、その選択比が大きいことから、エッチングによる溝の幅を短くすることも適宜可能であり、例えば、100μm以下、好ましくは10μm以下、さらには3μm以下にすることが可能である。溝の深さと溝の開口幅のアスペクト比(深さ/幅)でも適宜自在に選択可能であって、III−V族窒化物半導体層の場合でも0.1以上、好ましくは2以上が可能であり、また50程度まで、例えば30程度は可能である。
【0131】
また、本発明における半導体層をエッチングする深さは、適宜選択可能であって、図7では半導体層を基板まですべてエッチングした場合を示したが、半導体層の途中までエッチングすることも可能であり、また、エッチングガス種等を変化させることで、基板(サファイア等の半導体でない材料でもよい)の一部を連続的にエッチングすることも可能である。どの程度、あるいは半導体層を構成するどの層までエッチングするかは適宜選択が可能である。
【0132】
図7に示された半導体層のエッチングが終了した後には、必要に応じて、エッチングマスク層を除去してもよいし、エッチングマスク層を残したまま、異なるプロセスを実施してもかまわない。一般的には、エッチングマスク層を除去する方が好ましい。
【0133】
図8に、エッチングマスク層3を除去した後の構造を示す。エッチングマスク層3を構成する固体層を除去するには、どのような方法で行っても良いが、例えば、固体層を酸またはアルカリを含有するエッチャントにより除去することができる。前述の固体層のパターニング工程では、固体層が容易にエッチングされ、半導体層がエッチングされ難い条件が選ばれたが、固体層を除去する工程でも、パターニングと同様な条件を採用することができる。
【0134】
従って、ウェットエッチングのエッチャントとしては、塩酸、フッ酸、硫酸、燐酸、硝酸等の酸を含有する水溶液が好ましく、必要によりさらに過酸化水素等の酸化剤、エチレングリコール等の希釈剤等を含有したものを挙げることができる。固体層の材料および成膜条件等も考慮して選択されるが、特に少なくとも塩酸、濃硫酸、フッ酸等を含有することが好ましい。例えばSrF2を除去するときには、塩酸が望ましい。また、CaF2を除去するためには濃硫酸、塩酸が望ましく、特に濃硫酸が望ましい。また、アルカリによる除去も可能であり、いずれのエッチングにおいても反応の促進または選択性の向上等のために適宜、光照射、加熱等を併用してもよい。
【0135】
また、固体層は、半導体層のドライエッチング時のマスク層として使用された後に、ウェットエッチングレートが低下する傾向、即ちエッチャントに対する溶解性が低下する傾向があるので、この点を考慮して、プロセス全体の各条件を決めることが好ましい。
【0136】
不要になったエッチングマスク層は以上のようにして除去されるが、エッチングマスク層を除去しないで、エッチングマスク層を例えば選択成長用のマスクとして使用し、さらに半導体層を形成することも可能である。特にエピタキシャル成長を実施する場合には、SrF2などの金属フッ化物材料は、選択成長用マスクとしても使用できる。
【0137】
〔異なる実施形態の説明〕
本発明の特定の1実施形態について説明する。この形態では、本発明のエッチング方法を、図9に示すように、基板1上の半導体層2がすでに段差を有し、またその半導体層上に、金属層で形成された電極7、8が形成されている構造に適用した例である。
【0138】
例えばアルミニウム等により電極、配線等の金属層が形成されている半導体層を本発明のエッチング方法によりエッチングする場合、エッチングが終了した後に固体層を除去する際に、酸またはアルカリを含有するエッチャントにより電極、配線等の金属層が侵され、除去されてしまうことがある。このような場合には、エッチングマスク層を固体層と、固体層を構成する物質以外の物質で構成された第2のマスク層とを含む多層構造とすることが好ましい。ここにおいて第2のマスク層は、前述の通り、固体層を構成する物質以外の物質で構成された層であって、固体層をエッチングするエッチャントに対して耐性がある物質とすることが好ましい。第2のマスク層は、さらに金属層を侵食しない条件で除去される必要がある。第2のマスク層としては、SiOx、AlOx、TiOx、TaOx、HfOxおよびZrOx等の酸化物、SiNx、AlNx等の窒化物およびこれら組み合わせが挙げられる。これら、ウェットエッチング耐性があり、同時に金属等をエッチングしないドライエッチング法でも最終除去が可能であるので、非常に好ましいものである。特に好ましくは、製造が比較的容易であることから、SiNxおよびSiOxであり、特にSiNxが好ましい。
【0139】
例えば、以下、固体層が金属フッ化物からなる層の場合について説明する。
【0140】
図10は、金属層(電極7、8)を有する半導体層2上に、半導体層側から、SiNx等の金属フッ化物でない層と金属フッ化物層の多層構造のエッチングマスク層9を形成した状態である。
【0141】
通常は、この状態で、液体処理を行う。処理の条件等は、エッチングマスク層が金属フッ化物層の単層である場合に準じて実施することができる。金属フッ化物層が液体処理されることでサイドエッチが抑制されるため、図11に示す開口10を形成する際に、パターン精度が向上する。そして、半導体層2をドライエッチングするときに、図11、図12に示すように、表面の金属フッ化物層がマスクとして機能する。
【0142】
その後、エッチングマスク層9を除去するには、まず酸またはアルカリにより金属フッ化物層を除去するが、このときは、SiNx等の金属フッ化物でない第2のマスク層が、アルミニウム等の電極7、8を保護している。次に、SiNx等の金属フッ化物でない層をドライエッチングにより、金属層を侵食することなく除去して、図13の構造を得ることができる。
【0143】
尚、エッチングマスク層は、その一部、たとえば金属層(例えば電極7、8)の上部のみが多層構造として形成され、金属層でない部分の上部が単層として形成されてもよい。さらに、多層化エッチングマスク層は半導体装置の製造の際のいずれの場面でも使用可能であるが、特にプロセス全体の整合性を考慮したうえで使用することが望ましい。
【0144】
そこで、プロセスの整合性を考慮し、部分的に多層構造となるエッチングマスクによりエッチングする例を示す。まず、図14は、金属フッ化物以外のマスク材料で形成した第2のエッチングマスク21を形成し、基板1上に形成された半導体層2をエッチングして、凹部25を形成した様子を示す図である。第2のエッチングマスク21は、例えばSiNxで形成され、金属層(電極7)を含む領域をマスクしている。第2のエッチングマスク21により覆われていない領域がエッチングされ凹部25が形成される。半導体層2がGaNのようなエッチングされにくい材料であっても、凹部25の深さが浅い場合には、SiNxのような公知のマスク材料で十分にエッチングが可能である。
【0145】
次に、金属フッ化物層をマスクとする深いエッチングを行う際に、第2のエッチングマスク21を除去することなく、図15に示すように、金属フッ化物マスク22を形成する。そのため、金属層(電極7)上およびその付近の半導体層表面は、金属フッ化物マスクと第2のエッチングマスクの2層構造となっている。この金属フッ化物マスク22は、エッチングによりパターニングされる前にレジスト組成物処理され、その後、通常のフォトレジストプロセスに従ってパターニングされたエッチングマスクによりパターニングされる。
【0146】
次に、図16Aに示すように、金属フッ化物マスク22をマスクとして、半導体層2を深くエッチングして溝26を形成する。前述のとおり、金属フッ化物層は、ドライエッチング耐性が高いので、深いエッチングが可能である。また、このときに、図16Bに示すように基板1を含めてエッチングしてもよく、これも好ましい形態の1つである(他の実施形態・実施例において同様である。)。次に、金属フッ化物マスク22を例えば酸により除去すると、図17に示すように、第2のエッチングマスク21が残る。このため、ウェットエッチングによる金属フッ化物マスク22の除去の際に金属層が浸食されない。最後に第2のエッチングマスク21を、金属層(電極7)も半導体層もダメージを受けない方法で除去して、図18に示すような、半導体層2に浅い凹部25と深い溝26が形成された構造が得られる。このような方法は半導体層の材質、金属層の材質等で選択が可能であるが、たとえば、金属層の表面がAl等の場合であって、半導体層がGaN層等であって、第2のエッチングマスクがSiNx等である場合には、フッ素系ガスを反応性ガスとして用いた反応性イオンエッチング等のドライエッチングを実施することが好ましい。このように、半導体装置の製造工程中、半導体層を浅くエッチングする第1エッチング工程と、半導体層を深くエッチングする第2エッチング工程を有するときに、第1エッチング工程にてマスクとして金属フッ化物以外の第2のマスクを用いて、エッチング後にマスクを除去することなく、第2のエッチング工程にてその上に金属フッ化物層マスク層を形成し、部分的にまたは全部を多層構造とすることで、金属層を有効に保護しながら、製造方法を簡略化することができる。
【0147】
さらに、本発明において、金属フッ化物層の形成を真空蒸着法、特に抵抗加熱方式等の電子、プラズマ等の荷電粒子を材料に直接当てる事なく加熱する方法で行うことは、金属材料とフッ素の乖離を抑制し、好ましいものであるが、段差被覆性、特に側壁の被覆性をさらに改良するために、エッチングマスク層として、上述と同様の多層構造を適用することも好ましい。
【0148】
たとえば、プラズマCVD法で成膜した酸化物層、窒化物層は段差基板の側壁の被覆性に優れる。このような層としては、SiOx、AlOx、TiOx、TaOx、HfOxおよびZrOx等の酸化物、SiNx、AlNx等の窒化物およびこれら組み合わせが挙げられる。特に好ましくは、製造が比較的容易であることから、SiNxおよびSiOxであり、特にSiNxが好ましい。
【0149】
このように、エッチングマスク層を、金属フッ化物層と金属フッ化物層以外の層との多層構造とすることは、金属層の保護と段差被覆の両方の点で好ましい。特に、プロセスの整合性を考慮し、部分的な多重マスクを採用することにより、金属層の保護を図りながら製造工程を簡略化することができる。
【0150】
以上説明した本発明のエッチング方法は、種々の半導体装置の製造に適用可能であり、半導体製造工程のエッチング工程において使用できる。
【0151】
また、本発明のエッチングマスクは、以上の説明のように、エッチング方法および半導体の製造プロセスに極めてよく適合する。
【実施例】
【0152】
以下に実験例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実験および実施例、参考例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。また、以下の実施例、参考例において参照している図面は、構造を把握しやすくするために敢えて寸法を変えている部分があるが、実際の寸法は以下の文中に記載されるとおりである。
【0153】
<<参考実験1>>
サファイア基板上にMOCVD法で成長したSiドープGaN半導体層上に、異なる種々の基板温度でSrF2層を抵抗加熱法によって真空蒸着した。形成したSrF2層について、GaN層をドライエッチングするための、エッチングマスクとしてのパターニング特性、ドライエッチング時の耐性、その後の除去プロセス時のウェットエッチング特性などを詳細に調べた。
【0154】
成膜後のSrF2層のパターニングには、レジストをマスクとし塩酸(塩化水素36%含有)と水を体積比で1対10で混合したエッチャントを用い、室温でウェットエッチングを実施し、そのときのエッチングレート、形成されたSrF2層パターンの側壁の直線性、開口幅の絶対値の制御性を評価した。尚、ここで使用したパターンは、ストライプ状であり、側壁の直線性によって、レジスト平面形状からSrF2平面形状へのパターン転写性を評価している。また、そのようにしてパターニングしたSrF2マスクによるSiドープGaN層のドライエッチングをCl2プラズマによって実施し、SrF2マスクのドライエッチング時の適性を評価した。さらに、SiドープGaN半導体層の塩素プラズマによるドライエッチングの履歴を受けたSrF2層の塩酸(塩化水素36%含有)と水(体積比で1対10)のエッチャントに対する除去時の室温でのエッチングレートも測定した。
【0155】
また、SrF2成膜時には、同一のチャンバーにSiドープGaN半導体層上にTi/Al/Au金属とさらにその上にSiNx層を形成したサンプルをセットし、SrF2マスク形成時の熱履歴による金属電極部分の耐性、表面状態の変化も確認した。金属の表面状態の確認は、SrF2層形成後に、SrF2層を除去し、さらにSiNx層も除去した後に観察した。
【0156】
エッチングレート測定および評価結果を表1に示す。
【0157】
【表1】
表1より、150℃以上の基板温度で成膜されたSrF2層は、ドライエッチングに使用されるエッチングマスクとして適当であることが明らかである。また、ドライエッチング後にSrF2層を実用的な速度で除去すること、および下層に金属層が存在する場合等を考慮すると、480℃以下の基板温度で成膜されたSrF2層が好ましいことが判る。
【0158】
<<実験1>>
<実施例1>
参考実験1と同様にして、サファイア基板上にMOCVD法で成長したSiドープGaN半導体層上に、基体温度450℃で抵抗加熱法による真空蒸着により400nm厚のSrF2層を成膜した。このときのSrF2層の表面状態を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。この結果を図23に示す。図23に見られるとおり、固体層であるSrF2層には微粒子間空隙が観察され、その表面空隙率は約2.7%であった。次いで、SEMを観察した部分以外のSrF2層を成膜した当該基体をスピンコーターに載置し、成膜したSrF2層上にポジ型フォトレジスト溶液(OFPR−800LB(商品名)、東京応化工業(株)製)を滴下し、スピンコートして、レジスト組成物の塗膜を形成した。その後85℃にて15分間加熱し(第1の加熱工程)を行い、露光せずに、120℃にて15分間加熱(第2の加熱工程)した。次いで、アセトン洗浄、イソプロパノール洗浄および水洗を、順にそれぞれ3分間ずつ行った。
【0159】
室温にて乾燥後、SrF2層のパターニングのために、ポジ型フォトレジスト組成物(MCPR2200X、ロームアンドハース社製)をSrF2層上にスピンコートし、プリベーク後、所定のパターンを有するフォトマスクを通して露光した。露光後ベーク(post exposure baking)の後、現像・洗浄後、ポストベークして、フォトレジストのパターニングを終了した。ついで、エッチャントとして参考実験1と同じものを使用し、室温にて3分間SrF2層をウェットエッチングした。
【0160】
ウェットエッチング後、光学顕微鏡観察により、サイドエッチ量Lを観察した。図19に顕微鏡画像を示すように、SrF2層3の境界X2はフォトレジスト膜4の境界X1よりわずかに後退しており、サイドエッチ量Lは、0.6μmであった。
【0161】
<参考例1>
実施例1で、レジスト組成物処理を行わなかった以外は、実施例1を繰り返した。図20に顕微鏡画像を示すように、フォトレジスト膜4の境界X1より、SrF2層3の境界X2が後退しており、サイドエッチ量Lは、7.1μmであった。また、境界部の劈開断面SEM写真を図22に示す。境界の形状を実施例2(図21)と比べると、シャープさの点で劣っている。
【0162】
<実施例2〜8>
表2に示すレジスト組成物処理を行った。実施例1、参考例1の結果も合わせて示す。また、実施例2の境界部の劈開断面SEM写真を図21に示す。境界が非常にシャープであり、基体のドライエッチング時にパターン転写精度に優れる。
【0163】
【表2】
【0164】
<<実験2>>
<参考例2、3、実施例9〜12>
この実験では、実験1において、SrF2層の成膜時の基板温度を450℃から表3に示す温度に変更した以外は実験1に準じて実験を行った。表3に示すように、参考例2および3はレジスト組成物処理無しで、実施例9〜12は表中に示すフォトレジスト溶液を用いて処理を行った。その結果を表3に併せて示す。
【0165】
【表3】
【0166】
<<実験3>>
<実施例13〜16>
実施例2と同様に、ポジ型フォトレジスト組成物(MCPR2200X、ロームアンドハース社製)を用いて、レジスト組成物処理を行った。表4のように、第1の加熱、露光、第2の加熱、現像の有無による影響を調べた。
【0167】
【表4】
【0168】
<参考例4>
半導体発光装置を構成する半導体層にエッチングにより素子間分離溝を形成した参考例を、図1から図8を参照しながら説明する。この参考例において、SrF2層を形成後にレジスト組成物等の液体で処理し、必要により洗浄することで、本発明を適用することができる。
【0169】
厚みが430μmのc+面サファイア基板1を用意し、この上に、半導体層2を次のように形成した。まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層として厚み10nmの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に第2のバッファ層として厚み1μmのアンドープGaN層を1040℃で形成した。さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層としてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を4μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層としてSiドープ(Si濃度1×1019cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層としてSiドープ(Si濃度5.0×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で5層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層としてMgドープ(Mg濃度1×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層としてMgドープ(Mg濃度1×1019cm−3)GaN層を0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層としてMgドープ(Mg濃度1×1019cm−3)GaN層を0.02μmの厚さに形成した。
【0170】
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、エピタキシャル成長を終了し、図1の半導体層形成までの構造を作製した。
【0171】
ついで、図2に示すように、エッチングマスク層3として単層のSrF2を450℃において、蒸着レート0.2nm/secで真空蒸着法によって400nm形成した。ついで、図3に示すとおり、レジストマスク層4をスピンコーティングによって形成し、その後フォトリソグラフィー法によってストライプ状のレジストパターンを形成した。ついで、エッチングマスク層3(SrF2単層)をレジストパターン4を用いてパターニングするために、塩酸(塩化水素36%含有)と水を体積比1:10のエッチャントに240秒浸し、SrF2層を図5Aのようにエッチングした。エッチングされたSrF2層はフ
ォトマスクパターンを反映し直線性に優れ、意図しない剥離等も発生せず、高い密着性を保持していた。ついで、アセトンと酸素プラズマアッシングによって、図6のようにレジスト層を除去し、SrF2層のエッチングマスクを表面に露出させた。ついで、誘導結合性の塩素プラズマを用いて、素子間の分離用の溝に相当する部分のすべての半導体エピタキシャル層を、図7に示されるとおりにエッチングした。ドライエッチング工程中には、5.8μmを越える厚膜(平均5.868μm)のGaN系材料をドライエッチングしたにもかかわらず、SrF2層はほとんどエッチングされなかった。最後に図8に示すとおり、塩酸と水の体積比1:10のエッチャントに300秒浸して、不要となったSrF2層を完全に除去し、半導体発光装置の素子間の分離用の溝の形成を完了した。製造された素子間分離用の溝の幅は、100μmであった。
【0172】
<参考例5>
図1、および図9〜図12を参照しながら異なる参考例を説明する。この参考例においても、SrF2層を形成後にレジスト組成物等の液体で処理し、必要により洗浄することで、本発明を適用することができる。
【0173】
厚みが430μmのc+面サファイア基板1を用意し、この上に半導体層2を次のように形成した。まず、MOCVD法を用いて、第1バッファ層として、厚み20nmの低温成長したアンドープのGaNを形成し、この後に第2バッファ層2として厚み1μmのアンドープGaNを1040℃で形成した。連続して、第一導電型(n型)第二クラッド層としてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を5μm形成し、第一導電型(n型)コンタクト層としてSiドープ(Si濃度1×1019cm−3)のGaN層を0.5μmの厚さに形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層としてSiドープ(Si濃度1.0×1019cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μm形成した。さらに活性層構造として、バリア層として850℃で13nmに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として715℃で3nmに成膜したアンドープIn0.06Ga0.94N層を、量子井戸層が全部で6層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層としてMgドープ(Mg濃度1×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層としてMgドープ(Mg濃度1×1019cm−3)GaN層を0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層としてMgドープ(Mg濃度1×1019cm−3)GaN層を0.02μmの厚さに形成した。
【0174】
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、エピタキシャル成長を終了した(図1の構造)。
【0175】
エピタキシャル成長が終了した半導体の積層構造に対して、第一導電型(n型)コンタクト層を露出させる第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、真空蒸着法を用いて基板温度を200℃、蒸着レート0.5nm/secでSrF2層を半導体層の全面に成膜した。次にフォトリソグフィー工程により、フォトレジストパターンをSrF2層上に形成し、SrF2層を塩酸によって一部エッチングしてパターニングし、第一エッチング用のマスクを作製した。ついで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層、p−GaN第二クラッド層、p−AlGaN第一クラッド層、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造、n−AlGaN第一クラッド層、n−GaNコンタクト層の途中まで、BCl3ガスを用いた誘導結合性プラズマによるエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層を露出させた。
【0176】
誘導結合性プラズマによるプラズマエッチング終了後は、SrF2マスク層を塩酸によってすべて除去した。ここにおいて、基板温度200℃で成膜したSrF2マスクは、パターニングの際にはフォトマスクパターンを反映し直線性にすぐれたマスクが形成され、かつ、プラズマエッチングによってもほとんどエッチングされず、塩素系プラズマに対するエッチング耐性も良好であった。
【0177】
次に、形成された段差の上に、p側電極7をリフトオフ法でパターニングするために、フォトリソグラフィー法によりレジストパターンを形成した。p側電極7形成のための金属層Aとして、Pd20nmおよびAu1000nmを真空蒸着法によって積層し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。ついで、その後、熱処理してp側電極を完成させた(図9中のp側電極7形成)。このように、p側電極7をプラズマプロセス等に曝すことなく形成したため、p側電流注入領域にはダメージが入らなかった。
【0178】
ついで、さらにn側電極8をリフトオフ法でパターニングするために、フォトリソグラフィー法によりレジストパターンを形成した。ここでn側電極形成のための金属層としてTi(20nm厚)/Al(1500nm厚)を真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。ついで、その後熱処理を実施してn側電極8を完成させた(図9中のn側電極8形成)。
【0179】
ここまでの工程によって図9までの構造を形成した。
【0180】
ひきつづき、エッチングマスク層9をSiNx膜とSrF2膜の多層膜で形成するために、まず、400℃の成膜温度でp−CVD法を用いてSiNx膜を200nmの厚さに形成した。ついで、400℃の高温において、SrF2層マスクを400nmの厚さに形成した。この際、SrF2マスクは0.5nm/secの蒸着レートでサンプルを装着したドームを自公転させながら形成し、図10の形状を得た。
【0181】
さらに、発光素子間を分離するために、フォトリソグラフィー法を用いて分離溝形成部分に開口を有するフォトレジストパターンを形成し、このレジストマスクを用いて、SrF2とSiNxの積層構造のエッチングマスク層9をウェットエッチングして、開口10を形成した。SrF2層のエッチングには塩酸(塩化水素36%含有):水=1:10の体積比で混合したエッチャントを用いて240秒選択的にエッチングを実施し、ついでSiNx層のエッチングには、フッ酸とフッ化アンモニウムを体積比1:5のエッチャントを用いて3分の間選択的にエッチングを実施した。この際に、SrF2部分、SiNx部分ともフォトマスクパターンを反映し直線性と密着性に優れたパターニングされたエッチングマスク層が得られた(図11)。
【0182】
ついで、図11の構造において、エッチングマスク層9の開口10から、半導体層2を、Cl2ガスを用いた誘導結合性のプラズマ励起によってドライエッチングして、分離溝11を形成した。エッチング中には、エッチングマスクとして使用した多層マスクはほとんどエッチングされなかった(図12)。
【0183】
最後に、塩酸に5分間浸すことよってSrF2部分をすべて除去した。この際には、SiNxマスク部分は全くエッチングされなかった。従って、塩酸によって電極層が侵されることがなかった。ついで不要となったSiNxマスクを除去するために、SF6ガスを用いたリアクティブエッチングを1分間実施し、SiNxマスクを除去し図13の形状を得た。
【0184】
ついで、形成した素子間の分離用溝にそって、素子を切り出し、発光装置を完成させた。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図2】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図3】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図4】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図5A】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図5B】サイドエッチングを説明する図である。
【図6】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図7】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図8】1実施形態のエッチング方法を説明する工程断面図である。
【図9】表面に金属層が形成されている半導体層に本発明のエッチング方法を適用した1実施形態を説明する工程断面図である。
【図10】表面に金属層が形成されている半導体層に本発明のエッチング方法を適用した1実施形態を説明する工程断面図である。
【図11】表面に金属層が形成されている半導体層に本発明のエッチング方法を適用した1実施形態を説明する工程断面図である。
【図12】表面に金属層が形成されている半導体層に本発明のエッチング方法を適用した1実施形態を説明する工程断面図である。
【図13】表面に金属層が形成されている半導体層に本発明のエッチング方法を適用した1実施形態を説明する工程断面図である。
【図14】表面に金属層が形成されている半導体層のエッチングの簡略化された1実施形態を説明する工程断面図である。
【図15】表面に金属層が形成されている半導体層のエッチングの簡略化された1実施形態を説明する工程断面図である。
【図16A】表面に金属層が形成されている半導体層のエッチングの簡略化された1実施形態を説明する工程断面図である。
【図16B】表面に金属層が形成されている半導体層のエッチングの簡略化された1実施形態を説明する工程断面図である。
【図17】表面に金属層が形成されている半導体層のエッチングの簡略化された1実施形態を説明する工程断面図である。
【図18】表面に金属層が形成されている半導体層のエッチングの簡略化された1実施形態を説明する工程断面図である。
【図19】実施例1の顕微鏡画像およびその断面模式図である。
【図20】参考例1の顕微鏡画像およびその断面模式図である。
【図21】実施例2の断面SEM写真画像である。
【図22】参考例1の断面SEM写真画像である。
【図23】SrF2層表面のSEM写真画像である。
【図24】CaF2層表面のSEM写真画像である。
【符号の説明】
【0186】
1 基板
2 半導体層
3 エッチングマスク層(固体層)
4 レジストマスク層
7 電極
8 電極
9 エッチングマスク層(固体層)
10 開口
11 溝
21 第2のエッチングマスク(SiNx等)
22 金属フッ化物マスク
25 凹部
26 溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、金属フッ化物からなる固体層を形成する工程と、
前記固体層を液体で処理する工程と、
前記液体で処理された固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程と
を有することを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
前記液体が、レジスト組成物である請求項1記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記レジスト組成物処理工程は、
サブ工程(1):前記固体層にレジスト組成物を塗布する塗布工程、および
サブ工程(6):レジスト組成物の除去工程
を必須の工程として有することを特徴とする請求項2記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記レジスト組成物処理工程は、
サブ工程(2):第1の加熱工程、
サブ工程(3):第1の露光工程、
サブ工程(4):第2の加熱工程、および
サブ工程(5):第2の露光工程
からなるサブ工程群から選ばれる少なくとも1つの工程をさらに有し、前記サブ工程(1)およびサブ工程(6)と合わせて、番号の小さい方から実施されることを特徴とする請求項3記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記液体処理工程の後、
前記固体層上に、パターニングされたレジストマスクを形成する工程と、
前記レジストマスクをエッチングマスクとして、前記固体層をエッチングする工程と、
を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記レジストマスクがフォトレジストにより形成されることを特徴とする請求項5記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記固体層をエッチングする工程が、ウェットエッチングにより行われることを特徴とする請求項5または6記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記ウェットエッチングに使用するエッチャントが、塩酸、フッ酸および濃硫酸からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有することを特徴とする請求項7記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記固体層を150℃〜480℃の温度で形成することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記固体層が、SrF2、AlF3、MgF2、BaF2、CaF2およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記基体をエッチングする工程が、ドライエッチングで行われることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記ドライエッチングが、少なくとも塩素原子を含有するガス種を用いたプラズマ励起ドライエッチングであることを特徴とする請求項11記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記基体のエッチング工程の後に、酸またはアルカリを含有するエッチャントにより前記固体層を除去する工程を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項14】
前記基体上に形成されるエッチングマスクが、前記固体層と、前記固体層を構成する物質以外の第2のマスク層との多層構造部分を有することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項15】
前記基体が、III−V族窒化物層を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項16】
前記固体層をエッチングする際に発生する、パターニングされたレジストマスク端から計測したサイドエッチ量が、6μm以下であることを特徴とする請求項5記載のエッチング方法。
【請求項17】
前記固体層をエッチングする際に発生する、パターニングされたレジストマスク端から計測したサイドエッチ量が、2μm以下であることを特徴とする請求項16記載のエッチング方法。
【請求項18】
基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、微粒子間空隙を有する固体層を形成する工程と、
前記固体層を液体で処理する工程と、
前記液体で処理された固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程と
を有することを特徴とするエッチング方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載のエッチング方法を1工程として有する光/電子デバイスの製造方法。
【請求項1】
基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、金属フッ化物からなる固体層を形成する工程と、
前記固体層を液体で処理する工程と、
前記液体で処理された固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程と
を有することを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
前記液体が、レジスト組成物である請求項1記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記レジスト組成物処理工程は、
サブ工程(1):前記固体層にレジスト組成物を塗布する塗布工程、および
サブ工程(6):レジスト組成物の除去工程
を必須の工程として有することを特徴とする請求項2記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記レジスト組成物処理工程は、
サブ工程(2):第1の加熱工程、
サブ工程(3):第1の露光工程、
サブ工程(4):第2の加熱工程、および
サブ工程(5):第2の露光工程
からなるサブ工程群から選ばれる少なくとも1つの工程をさらに有し、前記サブ工程(1)およびサブ工程(6)と合わせて、番号の小さい方から実施されることを特徴とする請求項3記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記液体処理工程の後、
前記固体層上に、パターニングされたレジストマスクを形成する工程と、
前記レジストマスクをエッチングマスクとして、前記固体層をエッチングする工程と、
を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記レジストマスクがフォトレジストにより形成されることを特徴とする請求項5記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記固体層をエッチングする工程が、ウェットエッチングにより行われることを特徴とする請求項5または6記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記ウェットエッチングに使用するエッチャントが、塩酸、フッ酸および濃硫酸からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有することを特徴とする請求項7記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記固体層を150℃〜480℃の温度で形成することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記固体層が、SrF2、AlF3、MgF2、BaF2、CaF2およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記基体をエッチングする工程が、ドライエッチングで行われることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記ドライエッチングが、少なくとも塩素原子を含有するガス種を用いたプラズマ励起ドライエッチングであることを特徴とする請求項11記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記基体のエッチング工程の後に、酸またはアルカリを含有するエッチャントにより前記固体層を除去する工程を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項14】
前記基体上に形成されるエッチングマスクが、前記固体層と、前記固体層を構成する物質以外の第2のマスク層との多層構造部分を有することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項15】
前記基体が、III−V族窒化物層を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項16】
前記固体層をエッチングする際に発生する、パターニングされたレジストマスク端から計測したサイドエッチ量が、6μm以下であることを特徴とする請求項5記載のエッチング方法。
【請求項17】
前記固体層をエッチングする際に発生する、パターニングされたレジストマスク端から計測したサイドエッチ量が、2μm以下であることを特徴とする請求項16記載のエッチング方法。
【請求項18】
基体の表面に、エッチングマスクの少なくとも一部として、微粒子間空隙を有する固体層を形成する工程と、
前記固体層を液体で処理する工程と、
前記液体で処理された固体層をマスクとして、前記基体をエッチングする工程と
を有することを特徴とするエッチング方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載のエッチング方法を1工程として有する光/電子デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2009−135474(P2009−135474A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281652(P2008−281652)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
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