エッチング液再生システム
【課題】エッチング処理が行われる処理槽内のエッチング液中の溶存物質の含有量が精度良く一定にコントロールされるようにエッチング液を再生できるエッチング液再生システムを提供すること。
【解決手段】エッチング槽又は循環経路内のエッチング液に溶存する物質の含有量を測定する溶存物質含有量測定手段310を設け、溶存物質含有量測定手段310で測定される溶存物質の含有量に基いてエッチング液再生手段からエッチング槽へ戻される再生エッチング液の液量を決定する。溶存物質含有量測定手段310はエッチング液Mとの界面をなすプリズム312の境界面312bに光源からの光を入射させて、該プリズム境界面312bからの反射光R2の反射度を検出する光学部1と、該光学部1の検出信号に基づいて、エッチング液中の溶存物質含有量を算出するデータ処理部2とで構成する。
【解決手段】エッチング槽又は循環経路内のエッチング液に溶存する物質の含有量を測定する溶存物質含有量測定手段310を設け、溶存物質含有量測定手段310で測定される溶存物質の含有量に基いてエッチング液再生手段からエッチング槽へ戻される再生エッチング液の液量を決定する。溶存物質含有量測定手段310はエッチング液Mとの界面をなすプリズム312の境界面312bに光源からの光を入射させて、該プリズム境界面312bからの反射光R2の反射度を検出する光学部1と、該光学部1の検出信号に基づいて、エッチング液中の溶存物質含有量を算出するデータ処理部2とで構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエッチング液再生システムに関し、特にエッチング処理が行われる処理槽内のエッチング液中の溶存物質の含有量が精度良く一定にコントロールされるようにエッチング液を再生できる、エッチング液再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置製造分野では、シリコンウエハ等の半導体材料上に形成されるSi3N4膜およびSiO2膜のうち、SiO2膜を残してSi3N4膜を選択的にエッチング除去し、且つその選択比率を均一に維持するといった精密なエッチング処理が要求されている。
【0003】
Si3N4膜およびSiO2膜のエッチング選択比は、エッチング液として用いられる燐酸(H3PO4)と純水(H2O)の混合溶液(以下、「燐酸水溶液」ともいう)中に生成されるケイ素化合物の濃度に依存して変化するため、安定したエッチングを続けるためには、エッチング処理が行われる処理槽内のエッチング液中のケイ素化合物の濃度を最適な一定濃度に維持管理する必要がある。
【0004】
かかる問題について、本願の出願人は、Si3N4膜のエッチング処理においてエッチング液中に副生成物として生成されてくる、溶存するケイ素化合物の一部をエッチング液中で析出させて固形物とすることによって回収し、エッチング液中のSi成分(Siイオン)の濃度を一定に維持できる装置を提案した(特許文献1)。この装置は、エッチング液の一部を処理槽から抜き出して、エッチングプロセスで生成したケイ素化合物の一部又は全部を析出除去した後、再び処理槽に戻すことによってエッチング液を再生し、エッチング液のライフを長く、しかも、Si3N4膜およびSiO2膜のエッチング選択比を一定に維持管理しながらエッチング処理を行なえるようにしている。
【0005】
ところで、上記のようなエッチング処理システムでは、Si3N4膜およびSiO2膜のエッチング選択比をより高い精度で一定に維持するためには、エッチング液中のSi成分(Siイオン)の濃度をプロセスのインラインでリアルタイムに把握して、析出除去・再生を可能な限り短時間のサイクルでフィードバック制御することが望まれる。しかしながら、エッチング液中のSi成分の量(濃度)は、原子吸光分析法、イオンクロマトグラフィー、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP分析法)などによって測定することは可能であるが(特許文献2〜5等)、これらの方法は、測定のためにエッチング液を希釈したり燃焼したりする必要があるために、インラインでの測定には不向きであった。また、特許文献6には、プロセスのインラインでの測定が可能な、紫外線の吸光分析を用いた濃度測定方法及び測定装置が提案されている。しかしながら、この方法は、エッチング液と溶存成分の組み合わせ(例えば、燐酸水溶液とケイ素)によっては、紫外線吸光度と溶存成分濃度との間に十分な相関係数が得られず、十分に高い測定精度が得られない。このため、本出願人は、さらに、燐酸とケイ素の組み合わせにおいてもインラインで測定が行えるように、エッチング液に溶解するSi成分の濃度を定量する新たな技術を提案した(特許文献7)。この方法は、エッチング液に溶解するSi成分が飽和溶解度を超えて析出したときの析出物による光散乱によってエッチング液の透過率が変化することから、エッチング液の温度を低下させながら透過率が最初に変化する温度を見つけることで、Si成分の濃度を定量するものである。しかし、当該方法でも、測定のためにはリン酸溶液をサンプリングして冷却するという付属設備と操作が必要となり、より簡便な測定方法が望まれる。
【0006】
一方、特許文献8には、エッチング液の劣化度合いに応じて処理時間を調整して、劣化したエッチング液でも適切なエッチング処理を行えるようにしたエッチング装置が提案されている。すなわち、この装置は、エッチング液の使用履歴からエッチング液の劣化度を推定し、あらかじめ求めておいた劣化度と処理レートの関係からエッチング液の劣化度に見合った処理時間を延長して補正処理を行うものであり、エッチング液を再生処理して使用するものではないが、エッチング液の劣化度を左右するケイ素化合物(Siイオン)の濃度を測定出来ないため、経験則から補正処理時間が決定されている。従って、実際の処理環境の変動に対応できないため、高精度の処理を行えているとはいい難いものである。また、特許文献9には、エッチング液中の所定物質の濃度を検出し、所定物質の濃度が所定濃度に達した際に、処理槽内のエッチング液の所定量を排出し、新規エッチング液を処理槽内に補充して、エッチング液中の所定物質の濃度を調整するエッチング方法及び装置が記載されている。しかし、エッチング液中の所定物質の濃度を検出する濃度検出手段(濃度検出センサ)については具体的に説明されておらず、また、エッチング液の濃度コントロールは、新規なエッチング液(の溶質成分)補充によって行っており、エッチング液を再生することは行っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3842657号公報
【特許文献2】特開平7−21973号公報
【特許文献3】特開平7−280725号公報
【特許文献4】特開平10−267836号公報
【特許文献5】特開平11−326280号公報
【特許文献6】特開2004−294205号公報
【特許文献7】特開2009−58306号公報
【特許文献8】特開2004−288963号公報
【特許文献9】特開2001−23952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑み成されたものであり、その解決しようとする課題は、エッチング液中の溶存物質の含有量をプロセスのインラインでリアルタイムに把握して、エッチング処理が行われる処理槽内のエッチング液中の溶存物質の含有量が精度良く一定にコントロールされるようにエッチング液を再生することができるエッチング液再生システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために、エッチング液中の溶存物質の含有量(濃度)をプロセスのインラインでリアルタイムに把握して、エッチング液の再生を可能な限り短時間のサイクルでフィードバック制御することについて検討したところ、液体とそれに接触するプリズムの屈折率が近接している場合、液体との界面をなすプリズムの境界面での光の反射率が、液体中の溶存物質の含有量の変化に伴う液体の屈折率の変化に対して高感度に変化することを知見し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めた結果、エッチング槽又は循環経路内のエッチング液にその屈折率が該エッチング液の屈折率に近接するプリズムを接触させて、エッチング液との界面をなすプリズムの境界面に所定の入射角度で光を入射させて得られる反射光の強度を知ることで、エッチング液中の溶存物質(例えばSiイオン等)の含有量を短時間で高精度に測定できて、上記のフィードバック制御が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の内容を含むものである。
(1)被エッチング材料を没入浸漬させて収容するエッチング槽内の高温エッチング液を槽外に循環経路を通して取り出し、該循環経路の経路途中にて濾過、再加熱しながら槽内に戻すエッチング液の圧送循環を繰り返しながら、前記被エッチング材料にエッチング処理を施すエッチング処理装置に付設されるエッチング液の再生システムであって、
前記エッチング槽、又は、循環経路の経路途中から取り出したエッチング液中の溶存物質をエッチング液から強制的に分離し、溶存物質が除去又は減量された再生エッチング液を生成するエッチング液再生手段と、
前記エッチング槽又は循環経路内のエッチング液に溶存する物質の含有量を測定する溶存物質含有量測定手段と、
前記溶存物質含有量測定手段で測定されたエッチング液中の溶存物質の含有量に基いて、前記エッチング液再生手段からエッチング槽へ戻されるエッチング液の量を決定する制御手段とを有し、
前記溶存物質含有量測定手段が、プリズムとして、その屈折率(N1)とエッチング液の屈折率(N2)の差の絶対値(|N1−N2|)が0.30以下となるプリズムを使用し、エッチング液との界面をなすプリズムの境界面に光源からの光を入射させて、該プリズム境界面からの反射光の反射度を検出する光学部と、該光学部の検出信号に基づいて、上記エッチング液中の溶存物質含有量を算出するデータ処理部とを具備することを特徴とする、エッチング液再生システム。
(2)被エッチング材料が、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜が形成された半導体材料であり、エッチング処理が、当該半導体材料上のシリコン窒化膜を選択的に除去するエッチング処理であり、エッチング液が燐酸水溶液であり、プリズムが石英プリズムである、上記(1)記載のエッチング液再生システム。
【0011】
本発明における「エッチング液」としては、例えば、燐酸、フッ酸、塩酸、酢酸、硝酸、硫酸等の水溶液等の酸溶液;アンモニア水溶液;過酸化水素水溶液およびこれらの混合液が挙げられる。
【0012】
また、エッチング液中の溶存物質は、エッチング処理による副生成物や該副生成物由来の物質であり、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ケイ素(Si)、リン(P)等の金属元素(イオン)や金属性を示す類金属元素(イオン)である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液中の溶存物質の含有量を測定する手段(溶存物質含有量測定手段)は、実質的に光源とプリズムと受光素子でよいことから、プロセス(システム)中に簡単に組み込むことができ(すなわち、プロセスのインラインでの測定が可能であり)、リアルタイムにエッチング液中の溶存物質含有量(濃度)を測定することができる。このため、本発明のエッチング液再生システムでは、エッチング液再生装置にてエッチング液中に溶存するエッチング残渣を強制的に分離して得られた再生エッチング液を再利用してエッチング液中の溶存物質濃度を一定に管理するエッチング液の再生処理を短時間サイクルで高精度に実施することができ、その結果、エッチング液のライフを長く、しかも、エッチング選択比等を一定に管理維持しながら高精度で効率的なエッチング処理を繰り返し実施することができる。また、溶存物質含有量測定手段がエッチング液との界面をなすプリズムの境界面に入射させた光の反射光に基づいてエッチング液中の溶存物質濃度を算出するため、例えば、Si3N4膜とSiO2膜が形成されたシリコンウエハからSiO2膜を残してSi3N4膜を選択エッチングするエッチング処理に使用される燐酸水溶液のような、その光透過率や散乱光強度と溶存成分(ケイ素化合物)の濃度との間に十分な相関係数が得られない液体であっても、エッチング液中の溶存成分の濃度を高精度に検出することができ、エッチング選択比等を一定に維持管理しながら高精度で効率的なエッチング処理を繰り返し実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のエッチング液再生システムを備えるエッチング処理装置の一例の模式図である。
【図2】図1中の溶存物質含有量測定手段のエッチング槽への装着部の拡大図である。
【図3】図1中の溶存物質含有量測定手段のシステム構成図である。
【図4】溶存物質含有量測定手段における光学部の別実施例の模式図である。
【図5】図(a)〜(d)は本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液再生装置の第1〜第4実施形態の概略図である。
【図6】本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液再生装置の第5実施形態の概略図である。
【図7】本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液再生装置の第6実施形態の概略図である。
【図8】本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液再生装置の第7実施形態の概略図である。
【図9】本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液再生装置の第8実施形態の概略図である。
【図10】本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液再生装置の第9実施形態の概略図である。
【図11】本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液再生装置の第10実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。
図1は本発明のエッチング液再生システムを備えるエッチング処理装置の一例の模式図である。なお、以下の説明では、Si3N4膜及びSiO2膜が形成された半導体材料に対する燐酸水溶液によるエッチング処理を例に挙げて、当該エッチング処理装置100における使用済みエッチング液を再生ししつつ循環利用する動作について説明する。
【0016】
エッチング槽41は、エッチング液Mを収容し、被エッチング材料(図示せず)がエッチング液M中に没入浸漬されて、エッチング処理が成される処理槽41−1と、該処理槽41−1からオーバーフローするエッチング液Mを受けるオーバーフロー槽41−2を有する。具体的には、処理槽41−1内は、エッチング液Mとして、150〜175℃に加熱コントロールされている燐酸水溶液(H3PO4+H2O)が満たされており、そこにSi3N4膜及びSiO2膜が形成された半導体材料(図示せず)を没入浸漬することで、半導体材料上からSi3N4膜を選択的にエッチング除去し、SiO2膜を残すエッチング処理が行われる。該エッチング処理によって副生成物としてケイ素化合物(エッチング残渣)が生成されて、徐々に蓄積増大するためにエッチング液(燐酸水溶液)M中のSiイオン濃度が高くなる。
【0017】
処理槽41−1からエッチング液Mがオーバーフロー槽41−2にオーバーフローし、オーバーフローしたエッチング液Mをポンプ43にて循環して、処理槽41−1に戻すようになっており、その間に異物を取り除く濾過フィルター44と、150〜175℃に加熱して循環経路42を一定の温度に保つラインヒーター45が取り付けられている。また循環経路42から、分岐配管による分岐経路46を形成し、その経路途中に、エッチング液Mの一部を取り出してエッチング液中に溶存するケイ素化合物(エッチング残渣)をエッチング液から強制的に分離し、ケイ素化合物(エッチング残渣)が除去又は減量された再生エッチング液を生成するエッチング液再生装置47を取り付けている。
【0018】
エッチング槽41における処理槽41−1は、石英等の所望な材料により製作されるもので、複数枚の半導体材料を垂直並列状に収容し得る大きさの平面視略矩形状を呈する有底箱型に形成された槽である。処理槽41−1内の底部側には整流板(図示せず)が内設されており、底部中央から圧送循環されてくるエッチング液が、垂直並列状に支持収容する全ての半導体材料に対し、被エッチング物が効果的にエッチングされるのに最適な流速(m/s)で接触しながら流れる(上昇する)ようになっている。
【0019】
分岐経路(分岐配管)46は、通常、循環経路42の管径よりも細い管径からなり、オーバーフローしたエッチング液と共に循環経路42に入り込んでくる空気を外部に排気することにより、循環経路42におけるエッチング液の流れを円滑に尚且つその流量及び流速を一定に維持する役目を成すもので、濾過フィルター44と処理槽41−1との間を接続する循環経路42の経路の一部に一端を接続し、他端側を処理槽41−1の周囲のオーバーフロー槽41−2の上部開口に臨ませた解放状態で循環経路42から分岐配管させている。
【0020】
オーバーフロー槽41−2に溢れて循環ポンプ43で循環経路42を通して槽外に取り出されて圧送循環されるエッチング液の一部は分岐経路46に流入し、該径路46に流入したエッチング液Mはエッチング槽41の上部開口に臨む解放吐出口から処理槽41−1に戻される。この時、エッチング液Mが処理槽41−1に吐出戻される流れにより、エッチング液Mに混じり込んでいる空気がエッチング液から分離される。そして、この分岐経路46の経路途中にはエッチング液再生装置47を接続装備して、このエッチング液再生装置47によりエッチング液M中に溶存するケイ素化合物(エッチング残渣)をエッチング液Mから分離し、エッチング液を再生する。なお、図1では、エッチング液再生装置47を分岐経路46の経路途中に取り付けているが、エッチング槽からエッチング液Mの一部を直接とり出して再生するようにエッチング液再生装置47を取り付けてもよい。
【0021】
図中の符号50は、循環経路42に対する分岐経路46の接続側に配管接続した開閉バルブであり、エッチング液再生装置47の保守点検やその交換等の作業を行う際に該経路46を一時的に閉じることができるようにしている。
【0022】
エッチング液再生装置(以下、単に「再生装置」ともいう。)47は、石英又はテフロン(登録商標)等の所望な材料から製作され、エッチング液Mを冷水若しくは空冷で冷却するか、酸化するか、或いは、霧化することによって分岐経路46を通って導入されてくるエッチング液M中に溶存するケイ素化合物(エッチング残渣)を強制的に析出させて、エッチング液から分離(回収除去)する。
【0023】
図5(a)は第1実施形態に係る再生装置47であり、適宜大きさの箱型に形成した析出容器51の外側に冷水等の冷却媒体を循環させる冷却パイプ52を螺旋状に巻回せしめると共に、分岐経路(分岐配管)46に着脱自在に接続する出入り用の接続口管53、54を前記容器51内に夫々挿入せしめた状態で備え、更に前記容器51内にはエッチング液中のケイ素化合物を積極的に且つ効率的に析出させて回収するための析出核用メッシュ55を内在させてなる。尚、図示を省略しているが、分岐経路46に対する両接続口管53、54の着脱構造としては簡単に行うことができる例えばカップリング等のジョイント手段を用いることが好ましい。
【0024】
而して、かかる再生装置47によれば、分岐経路46から入口用接続口管53を通って析出容器51内に導入されてくるエッチング液Mは冷却される。すると、エッチング液M中のケイ素化合物は強制的に析出されて析出核用メッシュ55に付着する。これにより、エッチング液M中からケイ素化合物が効率的且つ確実に回収除去される。ケイ素化合物が回収除去されたエッチング液Mは、出口用接続口管54から分岐経路46に戻され、該経路46を通って処理槽41−1に戻される。
【0025】
また、図5(b)は第2実施形態に係る再生装置47であり、前述の第1実施形態で詳述の析出容器51に挿入接続した入口用接続口管53の容器51内吐出口に無数の小孔(図示せず)を有する略ラッパ形状の吐出口56を取り付ける一方、容器51の外に位置する入口用接続口管53の管部には小型吐出ポンプ57を配管接続することにより、吐出ポンプ57でエッチング液Mを容器51内に拡散吐出させるように構成している。即ち、吐出ポンプ57でエッチング液Mを吐出口56から容器51内に拡散吐出させることでエッチング液Mを膨張冷却せしめ、該エッチング液M中のケイ素化合物を強制的に析出させながら析出核用メッシュ55に付着させることにより、エッチング液M中からケイ素化合物を効率的且つ確実に回収除去し得る様に構成している。尚、前述の実施例詳述と同じ構成部分においては同じ符号を用いることで重複説明は省略する。
【0026】
また、図5(c)は第3実施形態に係る再生装置47であり、前述の第1実施形態で詳述の入口用接続口管53を挿入接続して該接続口管53から導入されて貯溜されるエッチング液Mに純水等の希釈液を加える希釈容器58に、導入管59を介して前述した第1実施例詳述の出口用接続口管54を挿入接続すると共に析出核用メッシュ55を内在する析出容器60を接続装備して、この析出容器60内にて前述したようにエッチング液Mを空冷(雰囲気温度)により冷却せしめることで、該液M中のケイ素化合物を強制的に析出させて析出核用メッシュ55に付着させることにより回収除去するように構成している。図中、符号61は、希釈容器58に挿入接続した希釈補給管であり、62は、同補給管61に配管装備した補給バルブであり、この補給バルブ62により希釈容器58への純水等の希釈液の補給量を任意に変更・設定し得るようにしてある。
【0027】
また、図5(d)は第4実施形態に係る再生装置47であり、前述の第1実施形態で詳述の出入口用の両接続口管53、54を備えると共に析出核用メッシュ55を内在する析出容器63に、前記入口用接続口管53の容器63内吐出口に向けてクリーンなエアーを吹き出すエアー供給管64とこの供給管64に連通接続させた状態でエアー冷却ノズル65を接続装備すると共に、析出容器63の内圧等を一定の雰囲気に維持するために前記エアー供給管64からのエアーの吹き出しに伴い該容器63内から余分のエアーを排気するエアー排気管66を接続せしめてなる。図中、符号67は、エアー供給管64に配管装備したエアーバルブであり、このバルブ67によりエアーの吹き出し量を任意に変更・設定し得るようにしている。68は、エアー排気管66内に内在した気液分離フィルターであり、このフィルター68によりエッチング液Mは外部に排水させることなく、余分なエアーのみが外部に排気されるようにしてある。
【0028】
而して、かかる構成の再生装置47によれば、分岐経路(分岐配管)46から入口用接続口管53を通って析出容器63内に吐出導入されてくるエッチング液Mにはクリーンなエアーが吹き付けられる。すると、エッチング液M中のケイ素化合物(Siイオン)は酸化により強制的に析出されて析出核用メッシュ55に付着し、エッチング液M中から回収除去される。ケイ素化合物が回収除去されたエッチング液Mは、回収容器63内の底部近くに向けて挿入接続する出口用接続口管54から分岐経路46に戻され、該経路46を通って処理槽41−1に戻される。
【0029】
なお、図5(a)〜(d)において再生装置47は分岐経路46の経路途中に取り付けているが、エッチング槽41(41−1)からエッチング液Mの一部を直接とり出して再生するように取り付けてもよい。
【0030】
以上説明した第1〜第3実施形態の再生装置(図5(a)〜(c))ではエッチング液を冷水若しくは空冷することによってエッチング液中のケイ素化合物(エッチング残渣)を強制的に析出させ、また、第4実施形態の再生装置(図5(d))ではエッチング液を酸化することによってエッチング液中のケイ素化合物(エッチング残渣)を強制的に析出させて、ケイ素化合物を分離(回収除去)している。ただし、これらの再生装置では、大量のシリコンウエハをエッチング処理する過程では、エッチング液中へのケイ素化合物の蓄積を避けることができず、ケイ素化合物の除去効率が十分に高いとはいえない。従って、最終的には定期的にエッチング液を新しいエッチング液に交換せざるを得なくなり、新しいエッチング液を用いることによる処理コストの増大や産業廃棄物となるエッチング液の処分について問題が残る。以下に説明するエッチング液再生装置は、エッチング処理装置(分岐経路、エッチング槽)から取り出されたエッチング液を霧化して(好ましくは、エッチング処理装置から取り出されたエッチング液の温度調整を行なう温度調整手段を有し、温度調整されたエッチング液を霧化して)、エッチング液中に溶存するケイ素化合物を析出および/または凝集させてエッチング液から分離する構成を採るものであり、上記第1〜第4実施形態の再生装置の問題点を解消し得るものである。
【0031】
なお、以下の説明では、エッチング液再生装置のエッチング処理装置100内での取り付け位置は特に明記しないが、上記第1〜第4実施形態の再生装置と同様に、分岐経路46の経路途中に取り付けられるか、或いは、エッチング槽41(41−1)からエッチング液Mの一部を直接とり出して再生するように取り付けられる。
【0032】
図6は第5実施形態に係るエッチング液再生装置10を示し、当該再生装置10は、図1に示すエッチング処理装置100にエッチング処理槽41(41−1)、または、循環経路42の途中などから取り出されるエッチング液を霧化する霧化手段11と、この霧化手段11による霧化によって析出および/または凝集されるエッチング液中のSiO2を、エッチング液から分離して再生エッチング液を得る分離手段12とを備えて構成されている。
【0033】
霧化手段11は、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液に対して霧化処理を行うもので、図6に示すように、霧化槽11Aと、この霧化槽11A内に配備される混合霧化部11Bと、この混合霧化部11Bに設定流量で気体を供給する気体供給部11Cとを備えている。
【0034】
混合霧化部11Bは、図6に示すような外部混合方式や、図示省略の内部混合方式などの各種構造の噴霧ノズルによって構成されている。そして、この混合霧化部11Bには、エッチング処理装置100 からの液取出し経路13と、気体供給部11Cからの気体供給経路14とがそれぞれ接続されており、気体供給部11Cから設定流量で供給される気体をエッチング液に混合させて、霧化したエッチング液を噴霧するものである。
【0035】
ここで、供給気体の種類としては特に限定されないが、乾燥したドライガスや除塵したクリーンガスが適し、窒素N2、酸素O2などが適する。
そして、混合霧化部11Bによる霧化の状態(微細化の状態)は、気体供給部11Cからの気体の供給流量とエッチング液の供給流量によって設定することができる。気体の供給流量は、気体供給経路14に備えられている開閉バルブ15の開閉調整などによって設定することができ、エッチング液の供給流量は、液取出し経路13に備えられている供給ポンプ16の吐出量などによって設定することができる。
【0036】
なお、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液の混合霧化部11Bへの供給は、供給ポンプ16を介して行われる場合と、供給ポンプ16を介さずに行われる場合とがある。そのために、本実施形態では、図6に示すように、液取出し経路13を二経路とし、その一方の経路13a側に供給ポンプ16と切替えバルブ18を備え、もう一方の経路13b側には切替えバルブ17のみを備えている。
【0037】
つまり、エッチング処理装置100からのエッチング液の取り出しが、循環ポンプ43近傍の循環経路42から分岐させて行われる場合は、循環ポンプ43の圧送力をもって所定の供給流量にてエッチング液を混合霧化部11Bに供給することができるために、供給ポンプ16を通さずに行うことができる。他方、エッチング処理槽41(オーバーフロー槽41−2の底部など)に接続されて行われる場合には、エッチング液の混合霧化部11Bへの所定の供給流量を得るために供給ポンプ16を通して行う必要がある。
【0038】
分離手段12は、フィルタなどからなる分離器12Aと、分離器12Aを通過してきたエッチング液を一時貯留するための貯留槽12Bとを備えている。
これにより、霧化槽11A内のエッチング液が、霧化槽11Aと分離器12Aとを連絡する連絡経路19の圧送ポンプ20で分離器12Aに送られ、霧化手段11による析出および/または凝集によって結晶が肥大化されたケイ素化合物が分離器12Aによってエッチング液中から分離除去される。ケイ素化合物が取り除かれて 、ケイ素化合物濃度の低い再生エッチング液(リン酸水溶液)は、貯留槽12Bに貯留(収集)される。そして、貯留槽12Bに貯留された再生エッチング液は、貯留槽12Bとエッチング処理装置100 (エッチング処理槽41)とを連絡する液戻し経路21の液戻しポンプ22によってエッチング処理装置100に戻される。
【0039】
このように構成されているエッチング液再生装置10によると、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液中に溶け込んでいる大半のケイ素化合物を、霧化手段11の混合霧化部11Bにおける気体との混合による霧化によって効率的に肥大化析出および/または凝集されることができる。これにより、分離手段12の分離器12Aによるケイ素化合物(成分結晶)のエッチング液中からの分離除去を高い除去率で行うことができる。
【0040】
図7は第6実施形態に係るエッチング液再生装置10−1を示し、当該再生装置10−1では、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液の温度調節を行う温度調整手段23を備えている。他の構成要素においては、前記の第5の実施形態と基本的に同じことから、同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
すなわち、図7に示すように、エッチング処理装置100と霧化手段11との間に温度調節手段23を備えて、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液を所定の温度に調節した後に、霧化手段11へと供給されるようにしている。
【0041】
温度調整手段23は、図7に示すように、エッチング処理装置100から液取出し経路13によって取り出されたエッチング液が一旦貯められる温調槽23Aと、この温調槽23Aの底部から該温調槽23A内にエッチング液が戻されるように配管される温調経路24に備えられている温調・循環ポンプ23Bと、同じく温調経路24に備えられる加熱と冷却との双方の機能を兼ね備えている温度調整器23Cとを備えている。
これにより、温調槽23Aに貯められたエッチング液が、温調・循環ポンプ23Bによって温度調整器23Cに送られ、温度調整器23Cを経由して、温調槽23Aに戻される循環が繰り返されることで、エッチング液の温度が、霧化手段11の混合霧化部11Bにおける析出および/または凝集を促進させる温度に調整されるようにしている。
【0042】
また、温調経路24における温調・循環ポンプ23Bと温度調整器23Cとの間から分岐されて霧化手段11の混合霧化部11Bにわたり接続される液供給経路25が配管されており、この液供給経路25の分岐部と温度調整器23Cとの間の温調経路24、液供給経路25にはそれぞれ切替えバルブ26、27が備えられている。
これにより、切替えバルブ26を開き、切替えバルブ27を閉じた状態で温調槽21Aに貯められたエッチング液が温調・循環ポンプ23Bによって温度調整器23Cに送られ、温度調整器23Cを経由して、温調槽23Aに戻される温調循環が繰り返される。そして、切替えバルブ27を開き、切替えバルブ26を閉じることで、霧化手段11における析出および/または凝集に適した一定の温度に調整された温調槽23A内のエッチング液が温調・循環ポンプ23Bによって霧化手段11の混合霧化部11Bに所定の供給流量にて送られるようにしている。
【0043】
このように構成されている第6の実施形態に係るエッチング液再生装置10−1によると、温度調整手段23と霧化手段11を効果的に組み合わせて、一定の温度状態で霧化処理を行うことで、ケイ素化合物の過飽和成分の大半をより一層効果的に肥大化析出および/または凝集させることができる。これにより、分離手段12の分離器12Aによるケイ素化合物(成分結晶)のエッチング液からの分離除去を制御された残留濃度に調整することができる。
【0044】
図8は第7実施形態に係るエッチング液再生装置10−2を示し、当該再生装置10−2では、図8に示すように、濃度制御部28を備えている。他の構成要素においては、前記の第6の実施形態と基本的に同じことから、同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
すなわち、図8に示すように、濃度制御部28は、設定人力によって、温度調整器23C、温調・循環ポンプ23B、あるいは、気体供給部11Cの供給速度を調整する気体供給調整部29を選択的に制御できるようにしている。
【0045】
このように構成されている第7の実施形態に係るエッチング液再生装置10−2によると、例えば、温度調整手段23の温度調整器23Cの温度の制御、または、温調・循環ポンプ23B、による霧化手段11の混合霧化部11Bへのエッチング液の供給流量の制御、あるいは、気体供給調整部29による混合霧化部11Bへの気体の供給流量の制御をすることで、霧化手段12の混合霧化部11Bにおけるエッチング液の霧化状態を制御することができる。そして、これらの一方または両方を制御することで、再生エッチング液のケイ素化合物濃度を制御することができる。
つまり、濃度制御部28への設定入力によって、再生エッチング液のケイ素化合物濃度を任意に制御することが可能になる。このケイ素化合物濃度の制御によって、新規なエッチング液の追加やエッチング液の一部廃棄を行うことなく、任意にケイ素化合物濃度を調整することができる。例えば、シリコンウエハWのエッチング処理を行う各処理業者のエッチング選択比に応じたそれぞれのケイ素化合物濃度に調整することが可能となる。
【0046】
図9は第8実施形態に係るエッチング液再生装置10−3を示し、当該再生装置10−3では、図9に示すように、分離手段12によるエッチング液からのケイ素化合物の分離を数回繰り返すようにしている。他の構成要素においては、前記の第6の実施形態と基本的に同じことから、同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
すなわち、図9に示すように、霧化手毅11の霧化槽11Aと分離手段12の分離器12Aとを接続する連絡経路19の途中部位と、分離手段12の貯留槽12Bからエッチング処理装置への液戻し経路21の途中部位とを分離循環経路30によって接続している。
【0047】
分離循環経路30は、連絡経路19における圧送ポンプ20と分離手段12の分離器12Aとの間においてその一端側が分岐接続されており、他端側が液戻し経路21における液戻しポンプ22よりエッチング処理装置100側において分岐接続されている。
そして、図9に示すように、連絡経路19からの分離循環経路30の分岐接続部近傍における両経路19、30と、液戻し経路21からの分離循環経路30の分岐接続部近傍における両経路21、30とにはそれぞれ切替えバルブ31〜34が備えられている。
これにより、切替えバルブ31、33を閉じ、切替えバルブ32、34を開いた状態で、液戻しポンプ22を作動させることで、分離器12Aを通して貯留槽12Bに貯留されているエッチング液が、分離循環経路30を通って再度分離器12Aに送られて貯留槽12Bに戻されることが繰り返されるようにしている。つまり、分離器12Aによるエッチング液からのケイ素化合物の分離除去が繰り返されるようにしている。
【0048】
このように構成されている第8の実施形態に係るエッチング液再生装置10−3によると、前記した第5〜第7実施形態のように、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液を、霧化手段11の混合霧化部11Bによる霧化によって、該エッチング液中に溶け込んでいる大半のケイ素化合物を析出および/または凝集させ、折出されたケイ素化合物を分離手段12の分離器12Aによってエッチング液から分離除去する再生処理がなされて分離手段12の貯留槽12Bに貯留されているエッチング液を、分離循環経路30を通して循環させることを繰り返すことで、析出および/または凝集されたケイ素化合物をエッチング液から分離除去することを繰り返すことができる。
これにより、霧化手段11によってエッチング液中の析出および/または凝集されたケイ素化合物の除去率を100%に近づけることが可能となる。
【0049】
図10は第9実施形態に係るエッチング液再生装置10−4を示し、当該再生装置10−4では、霧化手段11−1として、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液に圧力を付与することで、エッチング液を霧化する圧縮霧化部11−1を備えている。他の構成要素においては、前記の第6の実施形態と基本的に同じことから、同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
すなわち、図10に示すように、霧化槽11−1Aと、この霧化槽11−1A内に配備され、エッチング液が送り込まれる圧縮霧化部11−1Bと、この混合霧化部11−1Bに設定された圧力を掛けてエッチング液を供給する液加圧ポンプ11−1Cとを備えている。
【0050】
圧縮霧化部11−1Bは、各種構造のスプレーノズルあるいはオリフィスなどによって構成されている。そして、この圧縮霧化部11−1Bには、液加圧ポンプ11−1Cと切替えバルブ27とを備えている温調経路24から分岐させた供給経路25が接続される。
これにより、温度調整手段23により温調された後に、液加圧ポンプ11−1Cによって圧力が付与されて圧縮霧化部11−1Bに送り込まれたエッチング液は、該圧縮霧化部11−1Bによって霧化される。
【0051】
このように構成されている第9の実施形態に係るエッチング再生装置10−4によると、温度調整手段23と霧化手段11−1を効果的に組み合わせて、一定の温度状態で霧化処理を行うことで、ケイ素化合物の過飽和成分の大半をより一層効果的に肥大化析出および/または凝集させることができる。これにより、分離手段12の分離器12Aによるケイ素化合物(成分結晶)のエッチング液からの分離除去を制御された残留濃度に調整することができる。
【0052】
図11は第10実施形態に係るエッチング液再生装置10−5を示す。ここでは、図7を適宜参照しながら説明する。
この第10の実施形態では、霧化手段11−2として、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液に超音波振動を付与することで、エッチング液を霧化する超音波霧化部(11−2B〜11−2C)を備えている。他の構成要素においては、前記の第6の実施形態と基本的に同じことから、同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
すなわち、霧化手段11−2は、図11に示すように、霧化槽11−2Aに、超音波振動子11−2Bと、この超音波振動子11−2Bを駆動させる駆動源11−2Cおよびエッチング液供給部11−2Dとを備えて構成されている。
【0053】
このように構成されている第10の実施形態に係るエッチング液再生装置10−5によると、図7に示す温度調整手段24から供給されたエッチング液がエッチング液供給部11−2Dに供給されると、そのエッチング液に超音波振動子11−2Bによって超音波振動が付与されることで、エッチング液が霧化される。霧化されたエッチング液は霧化槽11−2Aに一旦貯留されて、図7に示すポンプ20によって分離手段12に送られる。
つまり、超音波振動を利用してエッチング液の微細位子の霧化を実現することができる。
これにより、効率よくエッチング液中に溶け込んでいるケイ素化合物を効率よく析出および/または凝集させることができる。また、駆動源11−2Cの駆動周波数を適宜に変更することで、最適な霧化状態を駆動周波数の調整によって得ることができる。
また、霧化手段11−2の霧化状態は、霧の微細化を制御することを含み、前記の第6および第7の実施形態では、混合霧化部12Bに供給される気体の供給流量によって制御することができるが、第10の実施形態では、超音波振動子11−2Bの振動周波数とその印加エネルギーによって制御することができる。
【0054】
以上の第5〜10の実施形態のエッチング液再生装置によると、エッチング処理装置100の循環経路42から分岐させて、該循環経路42に当該エッチング液再生装置10(10−1〜10−4)の液取出し経路13を接続して、エッチング液再生装置10(10−1〜10−4)をエッチング処理装置100の循環経路5の途中に直接組み込んだ場合には、エッチング処理によってエッチング液中に溶け込んでいるケイ素化合物を、エッチング処理中に容易、かつ、高い精度でリン酸水溶液から除去することができる。したがって、図1に示したようなエッチング処理装置100に適用した場合には、濾過フィルタ3の目詰まりが無く、大量の継続処理に対してもエッチング処理装置を連続運転させることができるので、エッチング処理装置100の作業効率を向上させることができる。
【0055】
特に、エッチング処理装置100の循環経路42に組み込むことで、エッチング処理時におけるリン酸水溶液のケイ素化合物濃度を一定に維持することができ、一定のエッチング選択比で大量のロットを連続的にエッチング処理することができる。したがって、均一性の高いエッチング処理を多数ロットに亘って継続することが可能になる。
【0056】
更に、エッチング処理中に高純度のリン酸水溶液への再生を行うことができるので、新しいリン酸水溶液への交換作業を少なくし、エッチング処理装置100の停止時間を減らすことができ、生産性の高いエッチング処理を実現することができる。特に、エッチング液の再利用によって、エッチング液の廃棄を減らすため、自然環境保護の観点からも好ましく、新たなエッチング液への交換が少ないので経済的にも有利な作業が可能になる。
【0057】
また、エッチング液をバッチ処理で再生処理する場合には、濃度制御部28による制御によって、ケイ素化合物濃度を最適化した再生エッチング液を生成することができる。これによって、ダミーエッチングを行わなくても所望のエッチング選択比で当初からのエッチング処理を行うことができることになり、エッチング処理作業の効率化も図ることができる。
【0058】
本発明のエッチング液再生システムでは、上述のエッチング液再生装置で再生された再生エッチング液がエッチング処理装置100のエッチング槽41に戻されて再利用されるが、エッチング処理が行われる処理槽内のエッチング液中に溶存するケイ素化合物の濃度(含有量)が精度良く一定にコントロールされるように、エッチング液に溶存するケイ素化合物の濃度(含有量)をプロセスのインラインでリアルタイムに把握して、エッチング液再生装置で再生された再生エッチング液のエッチング槽41への供給量(返還量)を決定する。
【0059】
すなわち、エッチング槽41のオーバーフロー槽41−2には、溶存物質含有量測定手段310が装着されており、当該測定装置310にて、オーバーフロー槽41−2中のエッチング液M(燐酸水溶液)中に溶存するケイ素化合物(Siイオン)の含有量が測定され、かかる含有量に基づいて、エッチング液再生装置で再生された再生エッチング液のエッチング槽41への供給量(返還量)が決定される。
【0060】
図1中の溶存物質含有量測定手段310は、後記で詳述する動作により、常時、エッチング液M(燐酸水溶液)のSiイオンの含有量(Siイオン濃度)を算出し、その算出されたSiイオン濃度に基づいて、再生装置47で再生されたエッチング液(再生エッチング液)のエッチング槽41へ戻される液量が決定される。すなわち、分岐経路46に設けた再生装置47の出口用接続口管には電子制御バルブ70が取り付けられており、溶存物質含有量測定手段3で算出されたSiイオンの含有量(算出データC)がCPU61に送られ、CPU61が、かかるSiイオンの含有量と予め記憶された情報から、処理槽41−1内のエッチング液M中のSiイオン濃度を一定濃度とするために、再生装置47からエッチング槽41へ戻すエッチング液の量を決定して、電子制御バルブ70へ制御信号Sを送り、バルブの開閉命令を行う。これにより、CPU61で決定された液量の再生エッチング液が再生装置47からエッチング槽41の処理槽41−1へ戻される。この動作が短時間で繰り返されることで、処理槽41−1内のエッチング液M中のSiイオン濃度が精密かつ一定にコントロールされて、エッチングレートが一定に維持管理され、エッチング液のライフタイムも長くなる。具体的には、Si3N4膜及びSiO2膜に対するSi3N4膜のエッチング選択比を一定に管理維持しながら高精度で効率的なエッチング処理を行うことができる。
【0061】
図2は上述の溶存物質含有量測定手段310のエッチング槽41(オーバーフロー槽41−2)への装着部の拡大図、図3は溶存物質含有量測定手段310のシステム構成図である。
【0062】
本発明で使用する溶存物質含有量測定手段310は、実質的に、光学部1と、データ処理部2とで構成されている。
【0063】
光学部1は、光源311、プリズム312、受光素子313を備える。光源311としては、例えば、所定波長の単一波長光を発光する紫外線LEDや連続波長光を発光する重水素ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ等が使用される。なお、重水素ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ等の連続波長光を発光する光源を使用する場合、通常、所定波長の光を取り出すための紫外線分光器(グレーティング)等が使用される。また、紫外線の波長は通常120〜400nmの範囲から選択される。
【0064】
オーバーフロー槽41−2の底壁48の一部が切除され、そこにプリズム132が埋め込まれている(すなわち、オーバーフロー槽41−2の底壁48の一部がプリズム312による窓部になっている)。プリズム312の一方側の面312aに配置された光源311からプリズム312内に入射した紫外線R1がエッチング液Mとの界面をなすプリズム312の境界面312bを透過する透過光R2と境界面32bで反射する反射光R3とに分かれる。そして、反射光R3はプリズム312の他方側の面312cに配置された受光素子313で受光されて、その強度に対応する光電流に変換されて、電気信号として出力される。
【0065】
スネルの法則により、屈折率が異なる2つの媒質の一方の媒質(屈折率:n1)から他方の媒質(屈折率:n2)に光が入射する場合、n1>n2で入射角が全反射角より小さい場合や、n1<n2の場合には光は全反射せず、光が透過して反射率は極端に低下するが、本発明者等は、光の入射角度を一定に保持して反射率の測定を行うと、n1とn2が近接した範囲にある場合は、n1とn2の屈折率差が大きくなると反射率が増加し、屈折率差が小さくなると反射率が小さくなるという変化が起こること、つまり全反射条件を満たさない状態では、光の反射率(透過率)は両媒質の屈折率の変化に対して敏感に変化し、燐酸水溶液中のケイ素(Si)の含有量変化が燐酸水溶液とプリズムの境界面での光の反射率の変化として表われ、両者の相関性が非常に高いことが分かった。
【0066】
溶存物質含有量測定手段310は、このような知見に基づいて完成させ、配置したものであり、エッチング液M(燐酸水溶液)中のSiイオンの含有量(濃度)の変化が、エッチング液M(燐酸水溶液)とプリズム312の境界面312bでの光の反射率の変化として表われる。すなわち、エッチング液Mにその屈折率に近接する屈折率を有するプリズム312を接触させ、エッチング液Mとの界面をなすプリズム312の境界面312bに所定の入射角度(θ)で光を入射させて得られる反射光R3の強度から、エッチング液M中のSiイオンの含有量(濃度)を検出できるようにしたものである。
【0067】
ここで、プリズム312はその屈折率(N1)がエッチング液Mの屈折率(N2)との間でN1<N2の関係にあるもの、或いは、N1>N2の関係にあるもののいずれでもよい(なお、ここでのN1とN2は、測定系の温度及び光源波長(入射光R1の波長)における屈折率である。)。
【0068】
なお、N1<N2の関係にある場合、入射光R1の入射角(θ)に関係なく、反射光R3が得られるが、この場合、入射角(θ)は装置構成上の実効的な光学部品配置の制約から75〜15°程度に設定されるのが一般的である。一方、N1>N2の関係にある場合、入射光R1の入射角(θ)を全反射角より小さい角度にすることが必要であり、この場合、入射光R1の入射角(θ)は全反射角との角度差が概ね45°以内であることが望ましい。
【0069】
ただし、プリズム312は、その屈折率(N1)とエッチン液Mの屈折率(N2)の差の絶対値(|N1−N2|)が0.30以下(好ましくは0.15以下、より好ましくは0.05以下)の関係にあることが重要である。これは、かかる屈折率差の絶対値(|N1−N2|)が0.30を超える場合、エッチング液Mの屈折率の僅かな変化が反射光R3の強度変化として顕著に現れにくくなるためである。
【0070】
エッチング液Mが燐酸水溶液の場合、プリズム312としては例えば石英プリズムが使用される。光源波長(入射光R1の波長)が250nmの場合、燐酸水溶液(燐酸濃度:86±0.5重量%)の屈折率(25℃)は1.469、石英プリズム(25℃)の屈折率は1.508であり、光の全反射角は77度である。この場合、入射光R1の入射角(θ)を75度にすると、反射率は10%となり、燐酸の屈折率が0.001変化した場合の反射率の変化から計算される吸光度の変化量は0.046となる。
【0071】
プリズムの材質が石英である場合には、入射光R1の波長を190nm以下にすると、石英と燐酸水溶液との屈折率差が小さくなり、反射率の変化がより高感度に観測できる。例えば、入射光R1の波長が187nmの場合、燐酸水溶液(燐酸濃度:86±0.5重量%)の屈折率(25℃)は1.548であり、石英プリズムの屈折率(25℃)は1.571で、全反射角は80度である。この場合、入射光R1の入射角を75度にすると、反射率は1.6%となり、燐酸の屈折率が0.001変化した場合の反射率の変化から計算される吸光度の変化量は0.057となる。
【0072】
また、入射光R1の波長が190nm以下になると、燐酸水溶液中に含まれる水の屈折率が大きくなり、水分率の変化や水温の変化が測定結果に合わせて反映されるようになる。従って、入射光Rを波長190nmを境にして複数選択し(すなわち、波長が170〜190nmの範囲内の少なくとも1つと、当該波長域外(190nm超)の少なくとも1つを含む2波長以上を選択し)、これらの光において観測されるスペクトル変化を利用して、水分率の変化やサンプルの温度変化による測定誤差を補正することができる。
【0073】
なお、プリズムの材質をサファイアとした場合には、入射光R1の波長を250nmとした場合の全反射角は53度となり、この場合に入射光R1の入射角(θ)を45度にすると、上記石英プリズムを使用した実施形態と同様に反射率は10%以下となるが、サファイアの屈折率とサンプルの屈折率の差が0.377と大きいので、燐酸の屈折率が0.001変化した場合の反射率変化から計算される吸光度の変化量は0.004と小さくなり、試料の僅かな屈折率変化が吸光度の顕著な変化として現れにくい傾向となる。
【0074】
データ処理部2は、光学部1の受光素子313から出力された、反射光R3の強度に対応する光強度信号を増幅する増幅器14、該増幅器14から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器15、及び該A/D変換器15からデジタル信号を受け入れるデータ処理装置16を備えている。
【0075】
データ処理装置16は、実質的に、マイクロプロセッサ17と、RAM18と、ROM19と、入力装置210を備えており、マイクロプロセッサ17は、エッチング液M中の溶存物質の含有量を導出するための演算を行う。RAM18は、検量線式や各種データを記憶している。ROM19は、マイクロプロセッサ17を動作させるためのプログラム等を格納している。入力装置20は、データや各種の命令を入力するキーボード等を備えている。
【0076】
データ処理装置16でのデータ処理は次のようにして行なわれる。
光源311が所定波長の紫外線を発光すると、受光素子313は、オーバーフロー槽41−2内のエッチング液Mとの界面をなすプリズム312の境界面312bで反射する反射光R3の強度に比例する信号を生成する。この信号は増幅器14で増幅された後、A/D変換器15でデジタル信号に変換され、データ処理装置16のマイクロプロセッサ17に入力される。
【0077】
マイクロプロセッサ17は、A/D変換器15から入力されたデジタル信号に対して、次の式1による演算処理を実行し、吸光度S(反射光R3の強度)を演算する。
[数1]
S=−log10A/B………………………式1
【0078】
式1において、Aはエッチング液Mから得られた反射強度値(実測値)、Bは溶存物質を含まない基準液から得られた反射強度値である。なお、Bは予め測定されたデータであり、データ処理装置16のRAM18に格納されている。エッチング液Mが燐酸水溶液である場合、基準液はエッチング処理に供されていない未使用の燐酸水溶液である。
【0079】
次に、式1により得られた吸光度(反射強度)Sに基づいて、次の式2の演算を行い、エッチング液M中の溶存物質の含有量(濃度)Cを演算する。
[数2]
C=F(S)……………………式2
【0080】
式2において、F(S)は溶存物質(例えば珪素(Si))の検量線式であり、Sについての1次項及び高次項を含み、例えば次の式3で表される。
[数3]
C=ΣαS+ΣβS2+ΣγS3+……+Z0……………………式3
【0081】
式3において、Sは、式1により得られたデータである。α、β及びγは、検量線式の係数である。Z0は定数項である。式3に含まれる各データは、溶存物質の含有量が既知の試料液の標準サンプルを用いて当該測定装置3により予め求められたものであり、データ処理装置16のRAM18に格納されている。
【0082】
このようにしてデータ処理装置16で算出された溶存物質の含有量(濃度)Cのデータは、前述した再生装置47の出口用接続口管に設けた電子制御バルブ70の開閉を制御するCPU61に送られ、CPU61は、前述のとおり、再生装置47からエッチング槽41へ戻す再生エッチング液の量を決定して、電子制御バルブ70へ制御信号を送り、バルブの開閉命令を行う。
【0083】
以上の動作が短時間で繰り返されることで、処理槽41−1内のエッチング液M中のSiイオン濃度が精密かつ一定にコントロールされる。
【0084】
本発明において、溶存物質含有量測定手段3の光学部には図4に示す光学部1’を用いてもよい。図4中の図1と同一符号は同一または相当する部分を示す。
【0085】
該光学部1’では、プリズム312に入射させる紫外線を、プリズム312のエッチング液Mとの界面をなす境界面312bと該境界面312bに対向する対向面312dとの間で多重反射させる構成にしている。このような構成とすることで、エッチング液Mの屈折率の変化に対する反射光R3’の強度変化を大きくすることができ、測定精度を高めることができる。
【0086】
このように本発明のエッチング液再生システムでは、エッチング処理に使用されたエッチング液中の溶存物質をエッチング液から強制的に分離し、溶存物質が除去又は減量された再生エッチング液を再度エッチング処理に使用するエッチング液の循環利用において、エッチング処理が行われる処理槽内のエッチング液の溶存物質の濃度が精密かつ一定にコントロールされるため、エッチングレートが一定に維持管理され、高精度で効率的なエッチング処理を行うことができる。
【0087】
なお、図1の装置では、エッチング槽41のオーバーフロー槽41−2の底壁部に溶存物質含有量測定手段310を組み込んで処理槽41−1内のエッチング液中の溶存物質の含有量(濃度)を測定するようにしたが、循環経路42の一部に溶存物質含有量測定手段310を組み込んで、循環経路42を流れるエッチング液中の溶存物質の含有量(濃度)を測定する構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 光学部
2 データ処理部
10、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、47 エッチング液再生装置
14 増幅器
16 データ処理装置
17 マイクロプロセッサ
41−1 処理槽
41−2 オーバーフロー槽
42 循環経路
46 分岐経路
48 底壁
61 CPU
70 電子制御バルブ
310 溶存物質含有量測定手段
311 光源
312 プリズム
312b プリズムの境界面
313 受光素子
R1 紫外線
R2 反射光
M エッチング液
【技術分野】
【0001】
本発明はエッチング液再生システムに関し、特にエッチング処理が行われる処理槽内のエッチング液中の溶存物質の含有量が精度良く一定にコントロールされるようにエッチング液を再生できる、エッチング液再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置製造分野では、シリコンウエハ等の半導体材料上に形成されるSi3N4膜およびSiO2膜のうち、SiO2膜を残してSi3N4膜を選択的にエッチング除去し、且つその選択比率を均一に維持するといった精密なエッチング処理が要求されている。
【0003】
Si3N4膜およびSiO2膜のエッチング選択比は、エッチング液として用いられる燐酸(H3PO4)と純水(H2O)の混合溶液(以下、「燐酸水溶液」ともいう)中に生成されるケイ素化合物の濃度に依存して変化するため、安定したエッチングを続けるためには、エッチング処理が行われる処理槽内のエッチング液中のケイ素化合物の濃度を最適な一定濃度に維持管理する必要がある。
【0004】
かかる問題について、本願の出願人は、Si3N4膜のエッチング処理においてエッチング液中に副生成物として生成されてくる、溶存するケイ素化合物の一部をエッチング液中で析出させて固形物とすることによって回収し、エッチング液中のSi成分(Siイオン)の濃度を一定に維持できる装置を提案した(特許文献1)。この装置は、エッチング液の一部を処理槽から抜き出して、エッチングプロセスで生成したケイ素化合物の一部又は全部を析出除去した後、再び処理槽に戻すことによってエッチング液を再生し、エッチング液のライフを長く、しかも、Si3N4膜およびSiO2膜のエッチング選択比を一定に維持管理しながらエッチング処理を行なえるようにしている。
【0005】
ところで、上記のようなエッチング処理システムでは、Si3N4膜およびSiO2膜のエッチング選択比をより高い精度で一定に維持するためには、エッチング液中のSi成分(Siイオン)の濃度をプロセスのインラインでリアルタイムに把握して、析出除去・再生を可能な限り短時間のサイクルでフィードバック制御することが望まれる。しかしながら、エッチング液中のSi成分の量(濃度)は、原子吸光分析法、イオンクロマトグラフィー、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP分析法)などによって測定することは可能であるが(特許文献2〜5等)、これらの方法は、測定のためにエッチング液を希釈したり燃焼したりする必要があるために、インラインでの測定には不向きであった。また、特許文献6には、プロセスのインラインでの測定が可能な、紫外線の吸光分析を用いた濃度測定方法及び測定装置が提案されている。しかしながら、この方法は、エッチング液と溶存成分の組み合わせ(例えば、燐酸水溶液とケイ素)によっては、紫外線吸光度と溶存成分濃度との間に十分な相関係数が得られず、十分に高い測定精度が得られない。このため、本出願人は、さらに、燐酸とケイ素の組み合わせにおいてもインラインで測定が行えるように、エッチング液に溶解するSi成分の濃度を定量する新たな技術を提案した(特許文献7)。この方法は、エッチング液に溶解するSi成分が飽和溶解度を超えて析出したときの析出物による光散乱によってエッチング液の透過率が変化することから、エッチング液の温度を低下させながら透過率が最初に変化する温度を見つけることで、Si成分の濃度を定量するものである。しかし、当該方法でも、測定のためにはリン酸溶液をサンプリングして冷却するという付属設備と操作が必要となり、より簡便な測定方法が望まれる。
【0006】
一方、特許文献8には、エッチング液の劣化度合いに応じて処理時間を調整して、劣化したエッチング液でも適切なエッチング処理を行えるようにしたエッチング装置が提案されている。すなわち、この装置は、エッチング液の使用履歴からエッチング液の劣化度を推定し、あらかじめ求めておいた劣化度と処理レートの関係からエッチング液の劣化度に見合った処理時間を延長して補正処理を行うものであり、エッチング液を再生処理して使用するものではないが、エッチング液の劣化度を左右するケイ素化合物(Siイオン)の濃度を測定出来ないため、経験則から補正処理時間が決定されている。従って、実際の処理環境の変動に対応できないため、高精度の処理を行えているとはいい難いものである。また、特許文献9には、エッチング液中の所定物質の濃度を検出し、所定物質の濃度が所定濃度に達した際に、処理槽内のエッチング液の所定量を排出し、新規エッチング液を処理槽内に補充して、エッチング液中の所定物質の濃度を調整するエッチング方法及び装置が記載されている。しかし、エッチング液中の所定物質の濃度を検出する濃度検出手段(濃度検出センサ)については具体的に説明されておらず、また、エッチング液の濃度コントロールは、新規なエッチング液(の溶質成分)補充によって行っており、エッチング液を再生することは行っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3842657号公報
【特許文献2】特開平7−21973号公報
【特許文献3】特開平7−280725号公報
【特許文献4】特開平10−267836号公報
【特許文献5】特開平11−326280号公報
【特許文献6】特開2004−294205号公報
【特許文献7】特開2009−58306号公報
【特許文献8】特開2004−288963号公報
【特許文献9】特開2001−23952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑み成されたものであり、その解決しようとする課題は、エッチング液中の溶存物質の含有量をプロセスのインラインでリアルタイムに把握して、エッチング処理が行われる処理槽内のエッチング液中の溶存物質の含有量が精度良く一定にコントロールされるようにエッチング液を再生することができるエッチング液再生システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために、エッチング液中の溶存物質の含有量(濃度)をプロセスのインラインでリアルタイムに把握して、エッチング液の再生を可能な限り短時間のサイクルでフィードバック制御することについて検討したところ、液体とそれに接触するプリズムの屈折率が近接している場合、液体との界面をなすプリズムの境界面での光の反射率が、液体中の溶存物質の含有量の変化に伴う液体の屈折率の変化に対して高感度に変化することを知見し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めた結果、エッチング槽又は循環経路内のエッチング液にその屈折率が該エッチング液の屈折率に近接するプリズムを接触させて、エッチング液との界面をなすプリズムの境界面に所定の入射角度で光を入射させて得られる反射光の強度を知ることで、エッチング液中の溶存物質(例えばSiイオン等)の含有量を短時間で高精度に測定できて、上記のフィードバック制御が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の内容を含むものである。
(1)被エッチング材料を没入浸漬させて収容するエッチング槽内の高温エッチング液を槽外に循環経路を通して取り出し、該循環経路の経路途中にて濾過、再加熱しながら槽内に戻すエッチング液の圧送循環を繰り返しながら、前記被エッチング材料にエッチング処理を施すエッチング処理装置に付設されるエッチング液の再生システムであって、
前記エッチング槽、又は、循環経路の経路途中から取り出したエッチング液中の溶存物質をエッチング液から強制的に分離し、溶存物質が除去又は減量された再生エッチング液を生成するエッチング液再生手段と、
前記エッチング槽又は循環経路内のエッチング液に溶存する物質の含有量を測定する溶存物質含有量測定手段と、
前記溶存物質含有量測定手段で測定されたエッチング液中の溶存物質の含有量に基いて、前記エッチング液再生手段からエッチング槽へ戻されるエッチング液の量を決定する制御手段とを有し、
前記溶存物質含有量測定手段が、プリズムとして、その屈折率(N1)とエッチング液の屈折率(N2)の差の絶対値(|N1−N2|)が0.30以下となるプリズムを使用し、エッチング液との界面をなすプリズムの境界面に光源からの光を入射させて、該プリズム境界面からの反射光の反射度を検出する光学部と、該光学部の検出信号に基づいて、上記エッチング液中の溶存物質含有量を算出するデータ処理部とを具備することを特徴とする、エッチング液再生システム。
(2)被エッチング材料が、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜が形成された半導体材料であり、エッチング処理が、当該半導体材料上のシリコン窒化膜を選択的に除去するエッチング処理であり、エッチング液が燐酸水溶液であり、プリズムが石英プリズムである、上記(1)記載のエッチング液再生システム。
【0011】
本発明における「エッチング液」としては、例えば、燐酸、フッ酸、塩酸、酢酸、硝酸、硫酸等の水溶液等の酸溶液;アンモニア水溶液;過酸化水素水溶液およびこれらの混合液が挙げられる。
【0012】
また、エッチング液中の溶存物質は、エッチング処理による副生成物や該副生成物由来の物質であり、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ケイ素(Si)、リン(P)等の金属元素(イオン)や金属性を示す類金属元素(イオン)である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液中の溶存物質の含有量を測定する手段(溶存物質含有量測定手段)は、実質的に光源とプリズムと受光素子でよいことから、プロセス(システム)中に簡単に組み込むことができ(すなわち、プロセスのインラインでの測定が可能であり)、リアルタイムにエッチング液中の溶存物質含有量(濃度)を測定することができる。このため、本発明のエッチング液再生システムでは、エッチング液再生装置にてエッチング液中に溶存するエッチング残渣を強制的に分離して得られた再生エッチング液を再利用してエッチング液中の溶存物質濃度を一定に管理するエッチング液の再生処理を短時間サイクルで高精度に実施することができ、その結果、エッチング液のライフを長く、しかも、エッチング選択比等を一定に管理維持しながら高精度で効率的なエッチング処理を繰り返し実施することができる。また、溶存物質含有量測定手段がエッチング液との界面をなすプリズムの境界面に入射させた光の反射光に基づいてエッチング液中の溶存物質濃度を算出するため、例えば、Si3N4膜とSiO2膜が形成されたシリコンウエハからSiO2膜を残してSi3N4膜を選択エッチングするエッチング処理に使用される燐酸水溶液のような、その光透過率や散乱光強度と溶存成分(ケイ素化合物)の濃度との間に十分な相関係数が得られない液体であっても、エッチング液中の溶存成分の濃度を高精度に検出することができ、エッチング選択比等を一定に維持管理しながら高精度で効率的なエッチング処理を繰り返し実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のエッチング液再生システムを備えるエッチング処理装置の一例の模式図である。
【図2】図1中の溶存物質含有量測定手段のエッチング槽への装着部の拡大図である。
【図3】図1中の溶存物質含有量測定手段のシステム構成図である。
【図4】溶存物質含有量測定手段における光学部の別実施例の模式図である。
【図5】図(a)〜(d)は本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液再生装置の第1〜第4実施形態の概略図である。
【図6】本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液再生装置の第5実施形態の概略図である。
【図7】本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液再生装置の第6実施形態の概略図である。
【図8】本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液再生装置の第7実施形態の概略図である。
【図9】本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液再生装置の第8実施形態の概略図である。
【図10】本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液再生装置の第9実施形態の概略図である。
【図11】本発明のエッチング液再生システムにおけるエッチング液再生装置の第10実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。
図1は本発明のエッチング液再生システムを備えるエッチング処理装置の一例の模式図である。なお、以下の説明では、Si3N4膜及びSiO2膜が形成された半導体材料に対する燐酸水溶液によるエッチング処理を例に挙げて、当該エッチング処理装置100における使用済みエッチング液を再生ししつつ循環利用する動作について説明する。
【0016】
エッチング槽41は、エッチング液Mを収容し、被エッチング材料(図示せず)がエッチング液M中に没入浸漬されて、エッチング処理が成される処理槽41−1と、該処理槽41−1からオーバーフローするエッチング液Mを受けるオーバーフロー槽41−2を有する。具体的には、処理槽41−1内は、エッチング液Mとして、150〜175℃に加熱コントロールされている燐酸水溶液(H3PO4+H2O)が満たされており、そこにSi3N4膜及びSiO2膜が形成された半導体材料(図示せず)を没入浸漬することで、半導体材料上からSi3N4膜を選択的にエッチング除去し、SiO2膜を残すエッチング処理が行われる。該エッチング処理によって副生成物としてケイ素化合物(エッチング残渣)が生成されて、徐々に蓄積増大するためにエッチング液(燐酸水溶液)M中のSiイオン濃度が高くなる。
【0017】
処理槽41−1からエッチング液Mがオーバーフロー槽41−2にオーバーフローし、オーバーフローしたエッチング液Mをポンプ43にて循環して、処理槽41−1に戻すようになっており、その間に異物を取り除く濾過フィルター44と、150〜175℃に加熱して循環経路42を一定の温度に保つラインヒーター45が取り付けられている。また循環経路42から、分岐配管による分岐経路46を形成し、その経路途中に、エッチング液Mの一部を取り出してエッチング液中に溶存するケイ素化合物(エッチング残渣)をエッチング液から強制的に分離し、ケイ素化合物(エッチング残渣)が除去又は減量された再生エッチング液を生成するエッチング液再生装置47を取り付けている。
【0018】
エッチング槽41における処理槽41−1は、石英等の所望な材料により製作されるもので、複数枚の半導体材料を垂直並列状に収容し得る大きさの平面視略矩形状を呈する有底箱型に形成された槽である。処理槽41−1内の底部側には整流板(図示せず)が内設されており、底部中央から圧送循環されてくるエッチング液が、垂直並列状に支持収容する全ての半導体材料に対し、被エッチング物が効果的にエッチングされるのに最適な流速(m/s)で接触しながら流れる(上昇する)ようになっている。
【0019】
分岐経路(分岐配管)46は、通常、循環経路42の管径よりも細い管径からなり、オーバーフローしたエッチング液と共に循環経路42に入り込んでくる空気を外部に排気することにより、循環経路42におけるエッチング液の流れを円滑に尚且つその流量及び流速を一定に維持する役目を成すもので、濾過フィルター44と処理槽41−1との間を接続する循環経路42の経路の一部に一端を接続し、他端側を処理槽41−1の周囲のオーバーフロー槽41−2の上部開口に臨ませた解放状態で循環経路42から分岐配管させている。
【0020】
オーバーフロー槽41−2に溢れて循環ポンプ43で循環経路42を通して槽外に取り出されて圧送循環されるエッチング液の一部は分岐経路46に流入し、該径路46に流入したエッチング液Mはエッチング槽41の上部開口に臨む解放吐出口から処理槽41−1に戻される。この時、エッチング液Mが処理槽41−1に吐出戻される流れにより、エッチング液Mに混じり込んでいる空気がエッチング液から分離される。そして、この分岐経路46の経路途中にはエッチング液再生装置47を接続装備して、このエッチング液再生装置47によりエッチング液M中に溶存するケイ素化合物(エッチング残渣)をエッチング液Mから分離し、エッチング液を再生する。なお、図1では、エッチング液再生装置47を分岐経路46の経路途中に取り付けているが、エッチング槽からエッチング液Mの一部を直接とり出して再生するようにエッチング液再生装置47を取り付けてもよい。
【0021】
図中の符号50は、循環経路42に対する分岐経路46の接続側に配管接続した開閉バルブであり、エッチング液再生装置47の保守点検やその交換等の作業を行う際に該経路46を一時的に閉じることができるようにしている。
【0022】
エッチング液再生装置(以下、単に「再生装置」ともいう。)47は、石英又はテフロン(登録商標)等の所望な材料から製作され、エッチング液Mを冷水若しくは空冷で冷却するか、酸化するか、或いは、霧化することによって分岐経路46を通って導入されてくるエッチング液M中に溶存するケイ素化合物(エッチング残渣)を強制的に析出させて、エッチング液から分離(回収除去)する。
【0023】
図5(a)は第1実施形態に係る再生装置47であり、適宜大きさの箱型に形成した析出容器51の外側に冷水等の冷却媒体を循環させる冷却パイプ52を螺旋状に巻回せしめると共に、分岐経路(分岐配管)46に着脱自在に接続する出入り用の接続口管53、54を前記容器51内に夫々挿入せしめた状態で備え、更に前記容器51内にはエッチング液中のケイ素化合物を積極的に且つ効率的に析出させて回収するための析出核用メッシュ55を内在させてなる。尚、図示を省略しているが、分岐経路46に対する両接続口管53、54の着脱構造としては簡単に行うことができる例えばカップリング等のジョイント手段を用いることが好ましい。
【0024】
而して、かかる再生装置47によれば、分岐経路46から入口用接続口管53を通って析出容器51内に導入されてくるエッチング液Mは冷却される。すると、エッチング液M中のケイ素化合物は強制的に析出されて析出核用メッシュ55に付着する。これにより、エッチング液M中からケイ素化合物が効率的且つ確実に回収除去される。ケイ素化合物が回収除去されたエッチング液Mは、出口用接続口管54から分岐経路46に戻され、該経路46を通って処理槽41−1に戻される。
【0025】
また、図5(b)は第2実施形態に係る再生装置47であり、前述の第1実施形態で詳述の析出容器51に挿入接続した入口用接続口管53の容器51内吐出口に無数の小孔(図示せず)を有する略ラッパ形状の吐出口56を取り付ける一方、容器51の外に位置する入口用接続口管53の管部には小型吐出ポンプ57を配管接続することにより、吐出ポンプ57でエッチング液Mを容器51内に拡散吐出させるように構成している。即ち、吐出ポンプ57でエッチング液Mを吐出口56から容器51内に拡散吐出させることでエッチング液Mを膨張冷却せしめ、該エッチング液M中のケイ素化合物を強制的に析出させながら析出核用メッシュ55に付着させることにより、エッチング液M中からケイ素化合物を効率的且つ確実に回収除去し得る様に構成している。尚、前述の実施例詳述と同じ構成部分においては同じ符号を用いることで重複説明は省略する。
【0026】
また、図5(c)は第3実施形態に係る再生装置47であり、前述の第1実施形態で詳述の入口用接続口管53を挿入接続して該接続口管53から導入されて貯溜されるエッチング液Mに純水等の希釈液を加える希釈容器58に、導入管59を介して前述した第1実施例詳述の出口用接続口管54を挿入接続すると共に析出核用メッシュ55を内在する析出容器60を接続装備して、この析出容器60内にて前述したようにエッチング液Mを空冷(雰囲気温度)により冷却せしめることで、該液M中のケイ素化合物を強制的に析出させて析出核用メッシュ55に付着させることにより回収除去するように構成している。図中、符号61は、希釈容器58に挿入接続した希釈補給管であり、62は、同補給管61に配管装備した補給バルブであり、この補給バルブ62により希釈容器58への純水等の希釈液の補給量を任意に変更・設定し得るようにしてある。
【0027】
また、図5(d)は第4実施形態に係る再生装置47であり、前述の第1実施形態で詳述の出入口用の両接続口管53、54を備えると共に析出核用メッシュ55を内在する析出容器63に、前記入口用接続口管53の容器63内吐出口に向けてクリーンなエアーを吹き出すエアー供給管64とこの供給管64に連通接続させた状態でエアー冷却ノズル65を接続装備すると共に、析出容器63の内圧等を一定の雰囲気に維持するために前記エアー供給管64からのエアーの吹き出しに伴い該容器63内から余分のエアーを排気するエアー排気管66を接続せしめてなる。図中、符号67は、エアー供給管64に配管装備したエアーバルブであり、このバルブ67によりエアーの吹き出し量を任意に変更・設定し得るようにしている。68は、エアー排気管66内に内在した気液分離フィルターであり、このフィルター68によりエッチング液Mは外部に排水させることなく、余分なエアーのみが外部に排気されるようにしてある。
【0028】
而して、かかる構成の再生装置47によれば、分岐経路(分岐配管)46から入口用接続口管53を通って析出容器63内に吐出導入されてくるエッチング液Mにはクリーンなエアーが吹き付けられる。すると、エッチング液M中のケイ素化合物(Siイオン)は酸化により強制的に析出されて析出核用メッシュ55に付着し、エッチング液M中から回収除去される。ケイ素化合物が回収除去されたエッチング液Mは、回収容器63内の底部近くに向けて挿入接続する出口用接続口管54から分岐経路46に戻され、該経路46を通って処理槽41−1に戻される。
【0029】
なお、図5(a)〜(d)において再生装置47は分岐経路46の経路途中に取り付けているが、エッチング槽41(41−1)からエッチング液Mの一部を直接とり出して再生するように取り付けてもよい。
【0030】
以上説明した第1〜第3実施形態の再生装置(図5(a)〜(c))ではエッチング液を冷水若しくは空冷することによってエッチング液中のケイ素化合物(エッチング残渣)を強制的に析出させ、また、第4実施形態の再生装置(図5(d))ではエッチング液を酸化することによってエッチング液中のケイ素化合物(エッチング残渣)を強制的に析出させて、ケイ素化合物を分離(回収除去)している。ただし、これらの再生装置では、大量のシリコンウエハをエッチング処理する過程では、エッチング液中へのケイ素化合物の蓄積を避けることができず、ケイ素化合物の除去効率が十分に高いとはいえない。従って、最終的には定期的にエッチング液を新しいエッチング液に交換せざるを得なくなり、新しいエッチング液を用いることによる処理コストの増大や産業廃棄物となるエッチング液の処分について問題が残る。以下に説明するエッチング液再生装置は、エッチング処理装置(分岐経路、エッチング槽)から取り出されたエッチング液を霧化して(好ましくは、エッチング処理装置から取り出されたエッチング液の温度調整を行なう温度調整手段を有し、温度調整されたエッチング液を霧化して)、エッチング液中に溶存するケイ素化合物を析出および/または凝集させてエッチング液から分離する構成を採るものであり、上記第1〜第4実施形態の再生装置の問題点を解消し得るものである。
【0031】
なお、以下の説明では、エッチング液再生装置のエッチング処理装置100内での取り付け位置は特に明記しないが、上記第1〜第4実施形態の再生装置と同様に、分岐経路46の経路途中に取り付けられるか、或いは、エッチング槽41(41−1)からエッチング液Mの一部を直接とり出して再生するように取り付けられる。
【0032】
図6は第5実施形態に係るエッチング液再生装置10を示し、当該再生装置10は、図1に示すエッチング処理装置100にエッチング処理槽41(41−1)、または、循環経路42の途中などから取り出されるエッチング液を霧化する霧化手段11と、この霧化手段11による霧化によって析出および/または凝集されるエッチング液中のSiO2を、エッチング液から分離して再生エッチング液を得る分離手段12とを備えて構成されている。
【0033】
霧化手段11は、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液に対して霧化処理を行うもので、図6に示すように、霧化槽11Aと、この霧化槽11A内に配備される混合霧化部11Bと、この混合霧化部11Bに設定流量で気体を供給する気体供給部11Cとを備えている。
【0034】
混合霧化部11Bは、図6に示すような外部混合方式や、図示省略の内部混合方式などの各種構造の噴霧ノズルによって構成されている。そして、この混合霧化部11Bには、エッチング処理装置100 からの液取出し経路13と、気体供給部11Cからの気体供給経路14とがそれぞれ接続されており、気体供給部11Cから設定流量で供給される気体をエッチング液に混合させて、霧化したエッチング液を噴霧するものである。
【0035】
ここで、供給気体の種類としては特に限定されないが、乾燥したドライガスや除塵したクリーンガスが適し、窒素N2、酸素O2などが適する。
そして、混合霧化部11Bによる霧化の状態(微細化の状態)は、気体供給部11Cからの気体の供給流量とエッチング液の供給流量によって設定することができる。気体の供給流量は、気体供給経路14に備えられている開閉バルブ15の開閉調整などによって設定することができ、エッチング液の供給流量は、液取出し経路13に備えられている供給ポンプ16の吐出量などによって設定することができる。
【0036】
なお、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液の混合霧化部11Bへの供給は、供給ポンプ16を介して行われる場合と、供給ポンプ16を介さずに行われる場合とがある。そのために、本実施形態では、図6に示すように、液取出し経路13を二経路とし、その一方の経路13a側に供給ポンプ16と切替えバルブ18を備え、もう一方の経路13b側には切替えバルブ17のみを備えている。
【0037】
つまり、エッチング処理装置100からのエッチング液の取り出しが、循環ポンプ43近傍の循環経路42から分岐させて行われる場合は、循環ポンプ43の圧送力をもって所定の供給流量にてエッチング液を混合霧化部11Bに供給することができるために、供給ポンプ16を通さずに行うことができる。他方、エッチング処理槽41(オーバーフロー槽41−2の底部など)に接続されて行われる場合には、エッチング液の混合霧化部11Bへの所定の供給流量を得るために供給ポンプ16を通して行う必要がある。
【0038】
分離手段12は、フィルタなどからなる分離器12Aと、分離器12Aを通過してきたエッチング液を一時貯留するための貯留槽12Bとを備えている。
これにより、霧化槽11A内のエッチング液が、霧化槽11Aと分離器12Aとを連絡する連絡経路19の圧送ポンプ20で分離器12Aに送られ、霧化手段11による析出および/または凝集によって結晶が肥大化されたケイ素化合物が分離器12Aによってエッチング液中から分離除去される。ケイ素化合物が取り除かれて 、ケイ素化合物濃度の低い再生エッチング液(リン酸水溶液)は、貯留槽12Bに貯留(収集)される。そして、貯留槽12Bに貯留された再生エッチング液は、貯留槽12Bとエッチング処理装置100 (エッチング処理槽41)とを連絡する液戻し経路21の液戻しポンプ22によってエッチング処理装置100に戻される。
【0039】
このように構成されているエッチング液再生装置10によると、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液中に溶け込んでいる大半のケイ素化合物を、霧化手段11の混合霧化部11Bにおける気体との混合による霧化によって効率的に肥大化析出および/または凝集されることができる。これにより、分離手段12の分離器12Aによるケイ素化合物(成分結晶)のエッチング液中からの分離除去を高い除去率で行うことができる。
【0040】
図7は第6実施形態に係るエッチング液再生装置10−1を示し、当該再生装置10−1では、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液の温度調節を行う温度調整手段23を備えている。他の構成要素においては、前記の第5の実施形態と基本的に同じことから、同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
すなわち、図7に示すように、エッチング処理装置100と霧化手段11との間に温度調節手段23を備えて、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液を所定の温度に調節した後に、霧化手段11へと供給されるようにしている。
【0041】
温度調整手段23は、図7に示すように、エッチング処理装置100から液取出し経路13によって取り出されたエッチング液が一旦貯められる温調槽23Aと、この温調槽23Aの底部から該温調槽23A内にエッチング液が戻されるように配管される温調経路24に備えられている温調・循環ポンプ23Bと、同じく温調経路24に備えられる加熱と冷却との双方の機能を兼ね備えている温度調整器23Cとを備えている。
これにより、温調槽23Aに貯められたエッチング液が、温調・循環ポンプ23Bによって温度調整器23Cに送られ、温度調整器23Cを経由して、温調槽23Aに戻される循環が繰り返されることで、エッチング液の温度が、霧化手段11の混合霧化部11Bにおける析出および/または凝集を促進させる温度に調整されるようにしている。
【0042】
また、温調経路24における温調・循環ポンプ23Bと温度調整器23Cとの間から分岐されて霧化手段11の混合霧化部11Bにわたり接続される液供給経路25が配管されており、この液供給経路25の分岐部と温度調整器23Cとの間の温調経路24、液供給経路25にはそれぞれ切替えバルブ26、27が備えられている。
これにより、切替えバルブ26を開き、切替えバルブ27を閉じた状態で温調槽21Aに貯められたエッチング液が温調・循環ポンプ23Bによって温度調整器23Cに送られ、温度調整器23Cを経由して、温調槽23Aに戻される温調循環が繰り返される。そして、切替えバルブ27を開き、切替えバルブ26を閉じることで、霧化手段11における析出および/または凝集に適した一定の温度に調整された温調槽23A内のエッチング液が温調・循環ポンプ23Bによって霧化手段11の混合霧化部11Bに所定の供給流量にて送られるようにしている。
【0043】
このように構成されている第6の実施形態に係るエッチング液再生装置10−1によると、温度調整手段23と霧化手段11を効果的に組み合わせて、一定の温度状態で霧化処理を行うことで、ケイ素化合物の過飽和成分の大半をより一層効果的に肥大化析出および/または凝集させることができる。これにより、分離手段12の分離器12Aによるケイ素化合物(成分結晶)のエッチング液からの分離除去を制御された残留濃度に調整することができる。
【0044】
図8は第7実施形態に係るエッチング液再生装置10−2を示し、当該再生装置10−2では、図8に示すように、濃度制御部28を備えている。他の構成要素においては、前記の第6の実施形態と基本的に同じことから、同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
すなわち、図8に示すように、濃度制御部28は、設定人力によって、温度調整器23C、温調・循環ポンプ23B、あるいは、気体供給部11Cの供給速度を調整する気体供給調整部29を選択的に制御できるようにしている。
【0045】
このように構成されている第7の実施形態に係るエッチング液再生装置10−2によると、例えば、温度調整手段23の温度調整器23Cの温度の制御、または、温調・循環ポンプ23B、による霧化手段11の混合霧化部11Bへのエッチング液の供給流量の制御、あるいは、気体供給調整部29による混合霧化部11Bへの気体の供給流量の制御をすることで、霧化手段12の混合霧化部11Bにおけるエッチング液の霧化状態を制御することができる。そして、これらの一方または両方を制御することで、再生エッチング液のケイ素化合物濃度を制御することができる。
つまり、濃度制御部28への設定入力によって、再生エッチング液のケイ素化合物濃度を任意に制御することが可能になる。このケイ素化合物濃度の制御によって、新規なエッチング液の追加やエッチング液の一部廃棄を行うことなく、任意にケイ素化合物濃度を調整することができる。例えば、シリコンウエハWのエッチング処理を行う各処理業者のエッチング選択比に応じたそれぞれのケイ素化合物濃度に調整することが可能となる。
【0046】
図9は第8実施形態に係るエッチング液再生装置10−3を示し、当該再生装置10−3では、図9に示すように、分離手段12によるエッチング液からのケイ素化合物の分離を数回繰り返すようにしている。他の構成要素においては、前記の第6の実施形態と基本的に同じことから、同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
すなわち、図9に示すように、霧化手毅11の霧化槽11Aと分離手段12の分離器12Aとを接続する連絡経路19の途中部位と、分離手段12の貯留槽12Bからエッチング処理装置への液戻し経路21の途中部位とを分離循環経路30によって接続している。
【0047】
分離循環経路30は、連絡経路19における圧送ポンプ20と分離手段12の分離器12Aとの間においてその一端側が分岐接続されており、他端側が液戻し経路21における液戻しポンプ22よりエッチング処理装置100側において分岐接続されている。
そして、図9に示すように、連絡経路19からの分離循環経路30の分岐接続部近傍における両経路19、30と、液戻し経路21からの分離循環経路30の分岐接続部近傍における両経路21、30とにはそれぞれ切替えバルブ31〜34が備えられている。
これにより、切替えバルブ31、33を閉じ、切替えバルブ32、34を開いた状態で、液戻しポンプ22を作動させることで、分離器12Aを通して貯留槽12Bに貯留されているエッチング液が、分離循環経路30を通って再度分離器12Aに送られて貯留槽12Bに戻されることが繰り返されるようにしている。つまり、分離器12Aによるエッチング液からのケイ素化合物の分離除去が繰り返されるようにしている。
【0048】
このように構成されている第8の実施形態に係るエッチング液再生装置10−3によると、前記した第5〜第7実施形態のように、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液を、霧化手段11の混合霧化部11Bによる霧化によって、該エッチング液中に溶け込んでいる大半のケイ素化合物を析出および/または凝集させ、折出されたケイ素化合物を分離手段12の分離器12Aによってエッチング液から分離除去する再生処理がなされて分離手段12の貯留槽12Bに貯留されているエッチング液を、分離循環経路30を通して循環させることを繰り返すことで、析出および/または凝集されたケイ素化合物をエッチング液から分離除去することを繰り返すことができる。
これにより、霧化手段11によってエッチング液中の析出および/または凝集されたケイ素化合物の除去率を100%に近づけることが可能となる。
【0049】
図10は第9実施形態に係るエッチング液再生装置10−4を示し、当該再生装置10−4では、霧化手段11−1として、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液に圧力を付与することで、エッチング液を霧化する圧縮霧化部11−1を備えている。他の構成要素においては、前記の第6の実施形態と基本的に同じことから、同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
すなわち、図10に示すように、霧化槽11−1Aと、この霧化槽11−1A内に配備され、エッチング液が送り込まれる圧縮霧化部11−1Bと、この混合霧化部11−1Bに設定された圧力を掛けてエッチング液を供給する液加圧ポンプ11−1Cとを備えている。
【0050】
圧縮霧化部11−1Bは、各種構造のスプレーノズルあるいはオリフィスなどによって構成されている。そして、この圧縮霧化部11−1Bには、液加圧ポンプ11−1Cと切替えバルブ27とを備えている温調経路24から分岐させた供給経路25が接続される。
これにより、温度調整手段23により温調された後に、液加圧ポンプ11−1Cによって圧力が付与されて圧縮霧化部11−1Bに送り込まれたエッチング液は、該圧縮霧化部11−1Bによって霧化される。
【0051】
このように構成されている第9の実施形態に係るエッチング再生装置10−4によると、温度調整手段23と霧化手段11−1を効果的に組み合わせて、一定の温度状態で霧化処理を行うことで、ケイ素化合物の過飽和成分の大半をより一層効果的に肥大化析出および/または凝集させることができる。これにより、分離手段12の分離器12Aによるケイ素化合物(成分結晶)のエッチング液からの分離除去を制御された残留濃度に調整することができる。
【0052】
図11は第10実施形態に係るエッチング液再生装置10−5を示す。ここでは、図7を適宜参照しながら説明する。
この第10の実施形態では、霧化手段11−2として、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液に超音波振動を付与することで、エッチング液を霧化する超音波霧化部(11−2B〜11−2C)を備えている。他の構成要素においては、前記の第6の実施形態と基本的に同じことから、同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
すなわち、霧化手段11−2は、図11に示すように、霧化槽11−2Aに、超音波振動子11−2Bと、この超音波振動子11−2Bを駆動させる駆動源11−2Cおよびエッチング液供給部11−2Dとを備えて構成されている。
【0053】
このように構成されている第10の実施形態に係るエッチング液再生装置10−5によると、図7に示す温度調整手段24から供給されたエッチング液がエッチング液供給部11−2Dに供給されると、そのエッチング液に超音波振動子11−2Bによって超音波振動が付与されることで、エッチング液が霧化される。霧化されたエッチング液は霧化槽11−2Aに一旦貯留されて、図7に示すポンプ20によって分離手段12に送られる。
つまり、超音波振動を利用してエッチング液の微細位子の霧化を実現することができる。
これにより、効率よくエッチング液中に溶け込んでいるケイ素化合物を効率よく析出および/または凝集させることができる。また、駆動源11−2Cの駆動周波数を適宜に変更することで、最適な霧化状態を駆動周波数の調整によって得ることができる。
また、霧化手段11−2の霧化状態は、霧の微細化を制御することを含み、前記の第6および第7の実施形態では、混合霧化部12Bに供給される気体の供給流量によって制御することができるが、第10の実施形態では、超音波振動子11−2Bの振動周波数とその印加エネルギーによって制御することができる。
【0054】
以上の第5〜10の実施形態のエッチング液再生装置によると、エッチング処理装置100の循環経路42から分岐させて、該循環経路42に当該エッチング液再生装置10(10−1〜10−4)の液取出し経路13を接続して、エッチング液再生装置10(10−1〜10−4)をエッチング処理装置100の循環経路5の途中に直接組み込んだ場合には、エッチング処理によってエッチング液中に溶け込んでいるケイ素化合物を、エッチング処理中に容易、かつ、高い精度でリン酸水溶液から除去することができる。したがって、図1に示したようなエッチング処理装置100に適用した場合には、濾過フィルタ3の目詰まりが無く、大量の継続処理に対してもエッチング処理装置を連続運転させることができるので、エッチング処理装置100の作業効率を向上させることができる。
【0055】
特に、エッチング処理装置100の循環経路42に組み込むことで、エッチング処理時におけるリン酸水溶液のケイ素化合物濃度を一定に維持することができ、一定のエッチング選択比で大量のロットを連続的にエッチング処理することができる。したがって、均一性の高いエッチング処理を多数ロットに亘って継続することが可能になる。
【0056】
更に、エッチング処理中に高純度のリン酸水溶液への再生を行うことができるので、新しいリン酸水溶液への交換作業を少なくし、エッチング処理装置100の停止時間を減らすことができ、生産性の高いエッチング処理を実現することができる。特に、エッチング液の再利用によって、エッチング液の廃棄を減らすため、自然環境保護の観点からも好ましく、新たなエッチング液への交換が少ないので経済的にも有利な作業が可能になる。
【0057】
また、エッチング液をバッチ処理で再生処理する場合には、濃度制御部28による制御によって、ケイ素化合物濃度を最適化した再生エッチング液を生成することができる。これによって、ダミーエッチングを行わなくても所望のエッチング選択比で当初からのエッチング処理を行うことができることになり、エッチング処理作業の効率化も図ることができる。
【0058】
本発明のエッチング液再生システムでは、上述のエッチング液再生装置で再生された再生エッチング液がエッチング処理装置100のエッチング槽41に戻されて再利用されるが、エッチング処理が行われる処理槽内のエッチング液中に溶存するケイ素化合物の濃度(含有量)が精度良く一定にコントロールされるように、エッチング液に溶存するケイ素化合物の濃度(含有量)をプロセスのインラインでリアルタイムに把握して、エッチング液再生装置で再生された再生エッチング液のエッチング槽41への供給量(返還量)を決定する。
【0059】
すなわち、エッチング槽41のオーバーフロー槽41−2には、溶存物質含有量測定手段310が装着されており、当該測定装置310にて、オーバーフロー槽41−2中のエッチング液M(燐酸水溶液)中に溶存するケイ素化合物(Siイオン)の含有量が測定され、かかる含有量に基づいて、エッチング液再生装置で再生された再生エッチング液のエッチング槽41への供給量(返還量)が決定される。
【0060】
図1中の溶存物質含有量測定手段310は、後記で詳述する動作により、常時、エッチング液M(燐酸水溶液)のSiイオンの含有量(Siイオン濃度)を算出し、その算出されたSiイオン濃度に基づいて、再生装置47で再生されたエッチング液(再生エッチング液)のエッチング槽41へ戻される液量が決定される。すなわち、分岐経路46に設けた再生装置47の出口用接続口管には電子制御バルブ70が取り付けられており、溶存物質含有量測定手段3で算出されたSiイオンの含有量(算出データC)がCPU61に送られ、CPU61が、かかるSiイオンの含有量と予め記憶された情報から、処理槽41−1内のエッチング液M中のSiイオン濃度を一定濃度とするために、再生装置47からエッチング槽41へ戻すエッチング液の量を決定して、電子制御バルブ70へ制御信号Sを送り、バルブの開閉命令を行う。これにより、CPU61で決定された液量の再生エッチング液が再生装置47からエッチング槽41の処理槽41−1へ戻される。この動作が短時間で繰り返されることで、処理槽41−1内のエッチング液M中のSiイオン濃度が精密かつ一定にコントロールされて、エッチングレートが一定に維持管理され、エッチング液のライフタイムも長くなる。具体的には、Si3N4膜及びSiO2膜に対するSi3N4膜のエッチング選択比を一定に管理維持しながら高精度で効率的なエッチング処理を行うことができる。
【0061】
図2は上述の溶存物質含有量測定手段310のエッチング槽41(オーバーフロー槽41−2)への装着部の拡大図、図3は溶存物質含有量測定手段310のシステム構成図である。
【0062】
本発明で使用する溶存物質含有量測定手段310は、実質的に、光学部1と、データ処理部2とで構成されている。
【0063】
光学部1は、光源311、プリズム312、受光素子313を備える。光源311としては、例えば、所定波長の単一波長光を発光する紫外線LEDや連続波長光を発光する重水素ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ等が使用される。なお、重水素ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ等の連続波長光を発光する光源を使用する場合、通常、所定波長の光を取り出すための紫外線分光器(グレーティング)等が使用される。また、紫外線の波長は通常120〜400nmの範囲から選択される。
【0064】
オーバーフロー槽41−2の底壁48の一部が切除され、そこにプリズム132が埋め込まれている(すなわち、オーバーフロー槽41−2の底壁48の一部がプリズム312による窓部になっている)。プリズム312の一方側の面312aに配置された光源311からプリズム312内に入射した紫外線R1がエッチング液Mとの界面をなすプリズム312の境界面312bを透過する透過光R2と境界面32bで反射する反射光R3とに分かれる。そして、反射光R3はプリズム312の他方側の面312cに配置された受光素子313で受光されて、その強度に対応する光電流に変換されて、電気信号として出力される。
【0065】
スネルの法則により、屈折率が異なる2つの媒質の一方の媒質(屈折率:n1)から他方の媒質(屈折率:n2)に光が入射する場合、n1>n2で入射角が全反射角より小さい場合や、n1<n2の場合には光は全反射せず、光が透過して反射率は極端に低下するが、本発明者等は、光の入射角度を一定に保持して反射率の測定を行うと、n1とn2が近接した範囲にある場合は、n1とn2の屈折率差が大きくなると反射率が増加し、屈折率差が小さくなると反射率が小さくなるという変化が起こること、つまり全反射条件を満たさない状態では、光の反射率(透過率)は両媒質の屈折率の変化に対して敏感に変化し、燐酸水溶液中のケイ素(Si)の含有量変化が燐酸水溶液とプリズムの境界面での光の反射率の変化として表われ、両者の相関性が非常に高いことが分かった。
【0066】
溶存物質含有量測定手段310は、このような知見に基づいて完成させ、配置したものであり、エッチング液M(燐酸水溶液)中のSiイオンの含有量(濃度)の変化が、エッチング液M(燐酸水溶液)とプリズム312の境界面312bでの光の反射率の変化として表われる。すなわち、エッチング液Mにその屈折率に近接する屈折率を有するプリズム312を接触させ、エッチング液Mとの界面をなすプリズム312の境界面312bに所定の入射角度(θ)で光を入射させて得られる反射光R3の強度から、エッチング液M中のSiイオンの含有量(濃度)を検出できるようにしたものである。
【0067】
ここで、プリズム312はその屈折率(N1)がエッチング液Mの屈折率(N2)との間でN1<N2の関係にあるもの、或いは、N1>N2の関係にあるもののいずれでもよい(なお、ここでのN1とN2は、測定系の温度及び光源波長(入射光R1の波長)における屈折率である。)。
【0068】
なお、N1<N2の関係にある場合、入射光R1の入射角(θ)に関係なく、反射光R3が得られるが、この場合、入射角(θ)は装置構成上の実効的な光学部品配置の制約から75〜15°程度に設定されるのが一般的である。一方、N1>N2の関係にある場合、入射光R1の入射角(θ)を全反射角より小さい角度にすることが必要であり、この場合、入射光R1の入射角(θ)は全反射角との角度差が概ね45°以内であることが望ましい。
【0069】
ただし、プリズム312は、その屈折率(N1)とエッチン液Mの屈折率(N2)の差の絶対値(|N1−N2|)が0.30以下(好ましくは0.15以下、より好ましくは0.05以下)の関係にあることが重要である。これは、かかる屈折率差の絶対値(|N1−N2|)が0.30を超える場合、エッチング液Mの屈折率の僅かな変化が反射光R3の強度変化として顕著に現れにくくなるためである。
【0070】
エッチング液Mが燐酸水溶液の場合、プリズム312としては例えば石英プリズムが使用される。光源波長(入射光R1の波長)が250nmの場合、燐酸水溶液(燐酸濃度:86±0.5重量%)の屈折率(25℃)は1.469、石英プリズム(25℃)の屈折率は1.508であり、光の全反射角は77度である。この場合、入射光R1の入射角(θ)を75度にすると、反射率は10%となり、燐酸の屈折率が0.001変化した場合の反射率の変化から計算される吸光度の変化量は0.046となる。
【0071】
プリズムの材質が石英である場合には、入射光R1の波長を190nm以下にすると、石英と燐酸水溶液との屈折率差が小さくなり、反射率の変化がより高感度に観測できる。例えば、入射光R1の波長が187nmの場合、燐酸水溶液(燐酸濃度:86±0.5重量%)の屈折率(25℃)は1.548であり、石英プリズムの屈折率(25℃)は1.571で、全反射角は80度である。この場合、入射光R1の入射角を75度にすると、反射率は1.6%となり、燐酸の屈折率が0.001変化した場合の反射率の変化から計算される吸光度の変化量は0.057となる。
【0072】
また、入射光R1の波長が190nm以下になると、燐酸水溶液中に含まれる水の屈折率が大きくなり、水分率の変化や水温の変化が測定結果に合わせて反映されるようになる。従って、入射光Rを波長190nmを境にして複数選択し(すなわち、波長が170〜190nmの範囲内の少なくとも1つと、当該波長域外(190nm超)の少なくとも1つを含む2波長以上を選択し)、これらの光において観測されるスペクトル変化を利用して、水分率の変化やサンプルの温度変化による測定誤差を補正することができる。
【0073】
なお、プリズムの材質をサファイアとした場合には、入射光R1の波長を250nmとした場合の全反射角は53度となり、この場合に入射光R1の入射角(θ)を45度にすると、上記石英プリズムを使用した実施形態と同様に反射率は10%以下となるが、サファイアの屈折率とサンプルの屈折率の差が0.377と大きいので、燐酸の屈折率が0.001変化した場合の反射率変化から計算される吸光度の変化量は0.004と小さくなり、試料の僅かな屈折率変化が吸光度の顕著な変化として現れにくい傾向となる。
【0074】
データ処理部2は、光学部1の受光素子313から出力された、反射光R3の強度に対応する光強度信号を増幅する増幅器14、該増幅器14から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器15、及び該A/D変換器15からデジタル信号を受け入れるデータ処理装置16を備えている。
【0075】
データ処理装置16は、実質的に、マイクロプロセッサ17と、RAM18と、ROM19と、入力装置210を備えており、マイクロプロセッサ17は、エッチング液M中の溶存物質の含有量を導出するための演算を行う。RAM18は、検量線式や各種データを記憶している。ROM19は、マイクロプロセッサ17を動作させるためのプログラム等を格納している。入力装置20は、データや各種の命令を入力するキーボード等を備えている。
【0076】
データ処理装置16でのデータ処理は次のようにして行なわれる。
光源311が所定波長の紫外線を発光すると、受光素子313は、オーバーフロー槽41−2内のエッチング液Mとの界面をなすプリズム312の境界面312bで反射する反射光R3の強度に比例する信号を生成する。この信号は増幅器14で増幅された後、A/D変換器15でデジタル信号に変換され、データ処理装置16のマイクロプロセッサ17に入力される。
【0077】
マイクロプロセッサ17は、A/D変換器15から入力されたデジタル信号に対して、次の式1による演算処理を実行し、吸光度S(反射光R3の強度)を演算する。
[数1]
S=−log10A/B………………………式1
【0078】
式1において、Aはエッチング液Mから得られた反射強度値(実測値)、Bは溶存物質を含まない基準液から得られた反射強度値である。なお、Bは予め測定されたデータであり、データ処理装置16のRAM18に格納されている。エッチング液Mが燐酸水溶液である場合、基準液はエッチング処理に供されていない未使用の燐酸水溶液である。
【0079】
次に、式1により得られた吸光度(反射強度)Sに基づいて、次の式2の演算を行い、エッチング液M中の溶存物質の含有量(濃度)Cを演算する。
[数2]
C=F(S)……………………式2
【0080】
式2において、F(S)は溶存物質(例えば珪素(Si))の検量線式であり、Sについての1次項及び高次項を含み、例えば次の式3で表される。
[数3]
C=ΣαS+ΣβS2+ΣγS3+……+Z0……………………式3
【0081】
式3において、Sは、式1により得られたデータである。α、β及びγは、検量線式の係数である。Z0は定数項である。式3に含まれる各データは、溶存物質の含有量が既知の試料液の標準サンプルを用いて当該測定装置3により予め求められたものであり、データ処理装置16のRAM18に格納されている。
【0082】
このようにしてデータ処理装置16で算出された溶存物質の含有量(濃度)Cのデータは、前述した再生装置47の出口用接続口管に設けた電子制御バルブ70の開閉を制御するCPU61に送られ、CPU61は、前述のとおり、再生装置47からエッチング槽41へ戻す再生エッチング液の量を決定して、電子制御バルブ70へ制御信号を送り、バルブの開閉命令を行う。
【0083】
以上の動作が短時間で繰り返されることで、処理槽41−1内のエッチング液M中のSiイオン濃度が精密かつ一定にコントロールされる。
【0084】
本発明において、溶存物質含有量測定手段3の光学部には図4に示す光学部1’を用いてもよい。図4中の図1と同一符号は同一または相当する部分を示す。
【0085】
該光学部1’では、プリズム312に入射させる紫外線を、プリズム312のエッチング液Mとの界面をなす境界面312bと該境界面312bに対向する対向面312dとの間で多重反射させる構成にしている。このような構成とすることで、エッチング液Mの屈折率の変化に対する反射光R3’の強度変化を大きくすることができ、測定精度を高めることができる。
【0086】
このように本発明のエッチング液再生システムでは、エッチング処理に使用されたエッチング液中の溶存物質をエッチング液から強制的に分離し、溶存物質が除去又は減量された再生エッチング液を再度エッチング処理に使用するエッチング液の循環利用において、エッチング処理が行われる処理槽内のエッチング液の溶存物質の濃度が精密かつ一定にコントロールされるため、エッチングレートが一定に維持管理され、高精度で効率的なエッチング処理を行うことができる。
【0087】
なお、図1の装置では、エッチング槽41のオーバーフロー槽41−2の底壁部に溶存物質含有量測定手段310を組み込んで処理槽41−1内のエッチング液中の溶存物質の含有量(濃度)を測定するようにしたが、循環経路42の一部に溶存物質含有量測定手段310を組み込んで、循環経路42を流れるエッチング液中の溶存物質の含有量(濃度)を測定する構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 光学部
2 データ処理部
10、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、47 エッチング液再生装置
14 増幅器
16 データ処理装置
17 マイクロプロセッサ
41−1 処理槽
41−2 オーバーフロー槽
42 循環経路
46 分岐経路
48 底壁
61 CPU
70 電子制御バルブ
310 溶存物質含有量測定手段
311 光源
312 プリズム
312b プリズムの境界面
313 受光素子
R1 紫外線
R2 反射光
M エッチング液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被エッチング材料を没入浸漬させて収容するエッチング槽内の高温エッチング液を槽外に循環経路を通して取り出し、該循環経路の経路途中にて濾過、再加熱しながら槽内に戻すエッチング液の圧送循環を繰り返しながら、前記被エッチング材料にエッチング処理を施すエッチング処理装置に付設されるエッチング液の再生システムであって、
前記エッチング槽、又は、循環経路の経路途中から取り出したエッチング液中の溶存物質をエッチング液から強制的に分離し、溶存物質が除去又は減量された再生エッチング液を生成するエッチング液再生手段と、
前記エッチング槽又は循環経路内のエッチング液に溶存する物質の含有量を測定する溶存物質含有量測定手段と、
前記溶存物質含有量測定手段で測定されたエッチング液中の溶存物質の含有量に基いて、前記エッチング液再生手段からエッチング槽へ戻されるエッチング液の量を決定する制御手段とを有し、
前記溶存物質含有量測定手段が、プリズムとして、その屈折率(N1)とエッチング液の屈折率(N2)の差の絶対値(|N1−N2|)が0.30以下となるプリズムを使用し、エッチング液との界面をなすプリズムの境界面に光源からの光を入射させて、該プリズム境界面からの反射光の反射度を検出する光学部と、該光学部の検出信号に基づいて、上記エッチング液中の溶存物質含有量を算出するデータ処理部とを具備することを特徴とする、エッチング液再生システム。
【請求項2】
被エッチング材料が、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜が形成された半導体材料であり、エッチング処理が、当該半導体材料上のシリコン窒化膜を選択的に除去するエッチング処理であり、エッチング液が燐酸水溶液であり、プリズムが石英プリズムである、請求項1記載のエッチング液再生システム。
【請求項1】
被エッチング材料を没入浸漬させて収容するエッチング槽内の高温エッチング液を槽外に循環経路を通して取り出し、該循環経路の経路途中にて濾過、再加熱しながら槽内に戻すエッチング液の圧送循環を繰り返しながら、前記被エッチング材料にエッチング処理を施すエッチング処理装置に付設されるエッチング液の再生システムであって、
前記エッチング槽、又は、循環経路の経路途中から取り出したエッチング液中の溶存物質をエッチング液から強制的に分離し、溶存物質が除去又は減量された再生エッチング液を生成するエッチング液再生手段と、
前記エッチング槽又は循環経路内のエッチング液に溶存する物質の含有量を測定する溶存物質含有量測定手段と、
前記溶存物質含有量測定手段で測定されたエッチング液中の溶存物質の含有量に基いて、前記エッチング液再生手段からエッチング槽へ戻されるエッチング液の量を決定する制御手段とを有し、
前記溶存物質含有量測定手段が、プリズムとして、その屈折率(N1)とエッチング液の屈折率(N2)の差の絶対値(|N1−N2|)が0.30以下となるプリズムを使用し、エッチング液との界面をなすプリズムの境界面に光源からの光を入射させて、該プリズム境界面からの反射光の反射度を検出する光学部と、該光学部の検出信号に基づいて、上記エッチング液中の溶存物質含有量を算出するデータ処理部とを具備することを特徴とする、エッチング液再生システム。
【請求項2】
被エッチング材料が、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜が形成された半導体材料であり、エッチング処理が、当該半導体材料上のシリコン窒化膜を選択的に除去するエッチング処理であり、エッチング液が燐酸水溶液であり、プリズムが石英プリズムである、請求項1記載のエッチング液再生システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−263053(P2010−263053A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112286(P2009−112286)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【出願人】(592073938)株式会社ケミカルアートテクノロジー (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【出願人】(592073938)株式会社ケミカルアートテクノロジー (4)
【Fターム(参考)】
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