説明

エッチング装置、エッチング方法及びエッチングプログラム、並びに成膜装置

【課題】良好に任意の形状に加工することが可能なエッチング装置、エッチング方法及びエッチングプログラム、並びに成膜装置を提供する。
【解決手段】エッチング装置30は、イオンガン11とXYステージ12と制御部13とPC15とを備える。予め測定されたエッチングが施される基板31の厚みの分布から、升目状に区分された基板31の各領域の被エッチング量を算出し、この被エッチング量に達するようにPC15は各領域におけるエッチング時間を判別する。このエッチング時間に負となる領域がある場合、当該領域にシャッタ40を覆うことにより、エッチング時間に負となる領域での過剰なエッチングを防ぎ、基板31を任意の形状に加工することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造に利用されるエッチング装置、エッチング方法及びエッチングプログラム、並びに成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体、電子部品製造の分野では基板上に薄膜を形成し、デバイスとする技術が一般に用いられている。例えば圧電素子を例に挙げると、圧電材料からなるウエハ又は基板上に電極膜を成膜し、数十〜数千個の複数の素子を形成した後、個々の素子に切り分けることにより、圧電素子が製造される。
【0003】
圧電素子は、利用する振動モードによっても異なるが、例えば厚みすべり振動を利用した振動素子では、その基板の厚み、電極膜の厚みによって周波数が決まるため、これらの厚みの精度によって周波数精度が決まる。なお、表面弾性波素子でも、その電極膜の厚みの精度によって周波数精度が決まる。従って、これらの素子で所望の周波数精度を得るためには、基板、電極膜の厚みを制御することが重要である。
【0004】
しかし、現在基板に用いられる研磨技術の精度は十分でなく、基板内での厚みの分布が生じる。更にスパッタ蒸着で成膜された電極膜にも厚み分布が生ずるため、同一基板内に形成された素子は周波数特性にばらつきが生ずる問題がある。
【0005】
そこで、基板内の厚みのばらつきを抑制するため、基板の各領域において必要な被エッチング総量を事前に算出し、被エッチング総量に達するエッチング時間を領域毎に算出する構成がある(例えば、特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開2007−214215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示されているように必要な被エッチング総量を事前に算出し、領域毎のエッチング時間を算出すると、エッチング時間の解がない、つまりエッチング時間が負となる領域が発生するという問題がある。このような場合に、エッチングを行うと、解のない領域では必要以上にエッチングされてしまうという問題があった。なお、上記の問題は、成膜においては、過剰に成膜される領域が生ずるという点で同様に同様である。
【0008】
このため、被エッチング総量に達するエッチング時間を領域毎に算出した際に生ずる、解のない領域での必要以上のエッチングを防止し、良好に厚み分布のばらつきを減らし、良好に任意の形状に加工することが可能なエッチング装置、エッチング方法及びエッチングプログラム、並びに成膜装置が求められている。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、良好に任意の形状に加工することが可能なエッチング装置、エッチング方法及びエッチングプログラムを提供することを目的とする。同時に、良好に任意の形状に膜形成をすることが可能な成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るエッチング装置は、
所定のエッチング分布を有し、粒子ビームを照射するエッチング源と、
エッチング対象物を載置するステージと、
前記エッチング源と前記ステージとの相対位置を調整する相対位置調整手段と、
エッチング対象物とエッチング源との間に設置される少なくとも1つのシャッタと、
前記エッチング源と、前記相対位置調整手段と、前記シャッタとを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記エッチング対象物の被エッチング量の分布と、前記エッチング源のエッチング分布とに基づいて、前記エッチング対象物の各位置におけるエッチング総量が被エッチング量に対応するように、前記エッチング対象物の前記各位置での前記粒子ビームの照射量を算出し、前記照射量に基づき前記相対位置調整手段又は/及び前記エッチング源を制御し、
更に、前記照射量が負となる場合、少なくとも前記照射量が負となる位置に前記シャッタが配置するよう、前記シャッタを制御することを特徴とする。
【0011】
前記シャッタは、前記照射量が負となる位置の周辺領域にも配置されてもよい。
【0012】
前記制御手段は、
前記エッチング源を制御して、前記粒子ビームを連続的に照射させ、
前記相対位置調整手段を制御して、前記エッチング対象物を前記エッチング源に対してピッチ送りで移動させ、各ピッチ位置での停止時間を調節することによって、各ピッチ位置での粒子ビームの照射時間を制御してもよい。
【0013】
前記制御手段は、
前記相対位置調整手段を制御して前記エッチング対象物を前記エッチング源に対して所定ピッチで移動させ、
前記エッチング源を制御して、各ピッチ位置での粒子ビームの照射強度を制御してもよい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係るエッチング方法は、
既知のエッチング分布を有するエッチング源によりエッチング対象物のエッチング対象エリアに粒子ビームを生成すると共に前記エッチング源と前記エッチング対象物との相対位置を移動させることにより、前記エッチング対象エリアをエッチングするエッチング方法において、
前記エッチング対象エリアの各位置において、前記エッチング用粒子の強度の積分値が被エッチング量の分布に一致するように、前記エッチング源と、前記エッチング源と前記エッチング対象との相対位置と照射量と、を制御し、
前記照射量が負となる位置が生じた場合、前記エッチング源と前記エッチング対象物との間にシャッタが位置するよう、該シャッタを制御する、ことを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るエッチングプログラムは、
コンピュータによる、
既知のエッチング分布を有するエッチング源によりエッチング対象物のエッチング対象エリアに粒子ビームを生成すると共に前記エッチング源と前記エッチング対象物との相対位置を移動させることにより、前記エッチング対象エリアをエッチングするエッチング方法の制御であって、
前記エッチング対象エリアの各位置において、前記エッチング用粒子の強度の積分値が被エッチング量の分布に一致するように、前記エッチング源と、前記エッチング源と前記エッチング対象との相対位置と照射量と、の制御と、
前記照射量が負となる位置が生じた場合、前記エッチング源と前記エッチング対象物との間にシャッタが位置するよう、該シャッタの制御と、
を実行させることを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の第4の観点に係るエッチング装置は、
所定のエッチング分布を有し、粒子ビームを照射するエッチング源と、
複数のエッチング対象物を載置するステージと、
前記エッチング源と前記ステージとの相対位置を調整する相対位置調整手段と、
前記エッチング対象物の位置を変更する位置変更手段と、
前記エッチング源と、前記相対位置調整手段と、前記位置変更手段とを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記エッチング対象物の被エッチング量の分布と、前記エッチング源のエッチング分布とに基づいて、前記エッチング対象物の各位置におけるエッチング総量が被エッチング量に対応するように、前記エッチング対象物の前記各位置での前記粒子ビームの照射量を算出し、前記照射量に基づき前記相対位置調整手段又は/及び前記エッチング源を制御し、
更に、前記照射量が負となる場合、当該照射量が負となる位置に設置された前記エッチング対象物を、その他の位置に設置された前記エッチング対象物と変更するよう、位置変更手段を制御することを特徴とする。
【0017】
前記制御手段は、前記位置変更手段によって前記エッチング対象物の位置を変更した後、再度前記エッチング対象物の被エッチング量の分布と、前記エッチング源のエッチング分布とに基づいて、前記エッチング対象物の各位置におけるエッチング総量が被エッチング量に対応するように、前記エッチング対象物の前記各位置での前記粒子ビームの照射量を算出してもよい。
【0018】
前記制御手段は、
前記エッチング源を制御して、前記粒子ビームを連続的に照射させ、
前記相対位置調整手段を制御して、前記エッチング対象物を前記エッチング源に対してピッチ送りで移動させ、各ピッチ位置での停止時間を調節することによって、各ピッチ位置での粒子ビームの照射時間を制御してもよい。
【0019】
前記制御手段は、
前記相対位置調整手段を制御して前記エッチング対象物を前記エッチング源に対して所定ピッチで移動させ、
前記エッチング源を制御して、各ピッチ位置での粒子ビームの照射強度を制御してもよい。
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の第5の観点に係るエッチング方法は、
既知のエッチング分布を有するエッチング源によりエッチング対象物のエッチング対象エリアに粒子ビームを生成すると共に前記エッチング源と前記エッチング対象物との相対位置を移動させることにより、前記エッチング対象エリアをエッチングするエッチング方法において、
前記エッチング対象エリアの各位置において、前記エッチング用粒子の強度の積分値が被エッチング量の分布に一致するように、前記エッチング源と、前記エッチング源と前記エッチング対象との相対位置と照射量と、を制御し、
前記照射量が負となる位置が生じた場合、前記照射量が負となる位置の前記エッチング対象物と、その他の位置の前記エッチング対象物とを入れ替えるよう、位置変更手段を制御する、ことを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成するため、本発明の第6の観点に係るエッチングプログラムは、
コンピュータによる、
既知のエッチング分布を有するエッチング源によりエッチング対象物のエッチング対象エリアに粒子ビームを生成すると共に前記エッチング源と前記エッチング対象物との相対位置を移動させることにより、前記エッチング対象エリアをエッチングするエッチング方法の制御であって、
前記エッチング対象エリアの各位置において、前記エッチング用粒子の強度の積分値が被エッチング量の分布に一致するように、前記エッチング源と、前記エッチング源と前記エッチング対象との相対位置と照射量と、の制御と、
前記照射量が負となる位置が生じた場合、前記照射量が負となる位置の前記エッチング対象物と、その他の位置の前記エッチング対象物とを入れ替えるよう、位置変更手段の制御と、
を実行させることを特徴とする。
【0022】
上記目的を達成するため、本発明の第7の観点に係るエッチング装置は、
所定のエッチング分布を有し、粒子ビームを照射するエッチング源と、
複数のエッチング対象物を載置するステージと、
前記エッチング源と前記ステージとの相対位置を調整する相対位置調整手段と、
前記エッチング源と、前記相対位置調整手段とを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記エッチング対象物の被エッチング量の分布と、前記エッチング源のエッチング分布とに基づいて、前記エッチング対象物の各位置におけるエッチング総量が被エッチング量に対応するように、前記エッチング対象物の前記各位置での前記粒子ビームの照射量を算出し、前記照射量に基づき前記相対位置調整手段又は/及び前記エッチング源を制御し、
更に、前記照射量が負となる場合、当該照射量が負となる位置の周辺で前記粒子ビームの照射範囲を狭めるよう、前記エッチング源を制御又は切り換えることを特徴とする。
【0023】
前記制御手段は、再度、前記エッチング対象物の被エッチング量の分布と、前記エッチング源のエッチング分布と、前記照射範囲を狭めたエッチング分布とに基づいて、前記エッチング対象物の各位置におけるエッチング総量が被エッチング量に対応するように、前記エッチング対象物の前記各位置での前記粒子ビームの照射量を算出してもよい。
【0024】
前記制御手段は、
前記エッチング源を制御して、前記粒子ビームを連続的に照射させ、
前記相対位置調整手段を制御して、前記エッチング対象物を前記エッチング源に対してピッチ送りで移動させ、各ピッチ位置での停止時間を調節することによって、各ピッチ位置での粒子ビームの照射時間を制御してもよい。
【0025】
前記制御手段は、
前記相対位置調整手段を制御して前記エッチング対象物を前記エッチング源に対して所定ピッチで移動させ、
前記エッチング源を制御して、各ピッチ位置での粒子ビームの照射強度を制御してもよい。
【0026】
上記目的を達成するため、本発明の第8の観点に係るエッチング方法は、
既知のエッチング分布を有するエッチング源によりエッチング対象物のエッチング対象エリアに粒子ビームを生成すると共に前記エッチング源と前記エッチング対象物との相対位置を移動させることにより、前記エッチング対象エリアをエッチングするエッチング方法において、
前記エッチング対象エリアの各位置において、前記エッチング用粒子の強度の積分値が被エッチング量の分布に一致するように、前記エッチング源と、前記エッチング源と前記エッチング対象との相対位置と照射量と、を制御し、
前記照射量が負となる位置が生じた場合、当該照射量が負となる位置の周辺で前記粒子ビームの照射範囲を狭めるよう、前記エッチング源を制御又は切り換えることを特徴とする。
【0027】
上記目的を達成するため、本発明の第9の観点に係るエッチングプログラムは、
コンピュータによる、
既知のエッチング分布を有するエッチング源によりエッチング対象物のエッチング対象エリアに粒子ビームを生成すると共に前記エッチング源と前記エッチング対象物との相対位置を移動させることにより、前記エッチング対象エリアをエッチングするエッチング方法の制御であって、
前記エッチング対象エリアの各位置において、前記エッチング用粒子の強度の積分値が被エッチング量の分布に一致するように、前記エッチング源と、前記エッチング源と前記エッチング対象との相対位置と照射量と、の制御と、
前記照射量が負となる位置が生じた場合、当該照射量が負となる位置の周辺で前記粒子ビームの照射範囲を狭めるよう、前記エッチング源の制御又は切り換えと、
を実行させることを特徴とする。
【0028】
上記目的を達成するため、本発明の第10の観点に係る成膜装置は、
所定の成膜分布を有し、成膜粒子を生成する成膜源と、
成膜対象物を載置するステージと、
前記成膜源と前記ステージとの相対位置を調整する相対位置調整手段と、
成膜対象物と成膜源との間に設置される少なくとも1つのシャッタと、
前記成膜源と、前記相対位置調整手段と、前記シャッタとを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記成膜対象物の被成膜量の分布と、前記成膜源の成膜分布とに基づいて、前記成膜対象物の各位置における成膜総量が被成膜量に対応するように、前記成膜対象物の前記各位置での成膜量を算出し、前記成膜量に基づき前記相対位置調整手段又は/及び前記成膜源を制御し、更に、前記成膜量が負となる場合、少なくとも前記成膜量が負となる位置に前記シャッタが配置するよう、前記シャッタを制御することを特徴とする。
【0029】
上記目的を達成するため、本発明の第11の観点に係る成膜装置は、
所定の成膜分布を有し、成膜粒子を生成する成膜源と、
複数の成膜対象物を載置するステージと、
前記成膜源と前記ステージとの相対位置を調整する相対位置調整手段と、
前記成膜対象物の位置を変更する位置変更手段と、
前記成膜源と、前記相対位置調整手段と、前記位置変更手段とを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記成膜対象物の被成膜量の分布と、前記成膜源の成膜分布とに基づいて、前記成膜対象物の各位置における成膜総量が被成膜量に対応するように、前記成膜対象物の前記各位置での成膜量を算出し、前記成膜量に基づき前記相対位置調整手段又は/及び前記成膜源を制御し、
更に、前記成膜量が負となる場合、当該成膜量が負となる位置に設置された前記成膜対象物を、その他の位置に設置された前記成膜対象物と変更するよう、位置変更手段を制御することを特徴とする。
【0030】
上記目的を達成するため、本発明の第12の観点に係る成膜装置は、
所定の成膜分布を有し、成膜粒子を生成する成膜源と、
複数の成膜対象物を載置するステージと、
前記成膜源と前記ステージとの相対位置を調整する相対位置調整手段と、
前記成膜源と、前記相対位置調整手段とを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記成膜対象物の被成膜量の分布と、前記成膜源の成膜分布とに基づいて、前記成膜対象物の各位置における成膜総量が被成膜量に対応するように、前記成膜対象物の前記各位置での成膜量を算出し、前記成膜量に基づき前記相対位置調整手段又は/及び前記成膜源を制御し、
更に、前記成膜量が負となる場合、当該成膜量が負となる位置の周辺で前記成膜粒子の照射範囲を狭めるよう、前記成膜源を制御又は切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、被エッチング総量に達するエッチング時間を算出した際、エッチング時間が負となる領域での過剰なエッチングを防止することで、良好に任意の形状に加工することが可能なエッチング装置、エッチング方法及びエッチングプログラムを提供することができる。また、被成膜総量に達する成膜時間を算出した際、成膜時間が負となる領域での過剰な成膜を防止することで、良好に任意の形状に膜形成することが可能な成膜装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の各実施形態に係るエッチング装置、エッチング方法及びエッチングプログラム並びに成膜装置について図面を参照して説明する。
【0033】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るエッチング装置30の構成を図1に示す。また、図2に本実施形態のエッチング装置30によってエッチングされる基板31を模式的に示す。
【0034】
図1に示すようにエッチング装置30は、イオンガン11と、XYステージ12と、制御部13と、真空槽14と、PC15と、シャッタ40と、を備える。イオンガン11とXYステージ12とは、真空槽14内に設置され、真空槽14によって大気から遮断されている。
【0035】
イオンガン11は、イオンビームを生成する装置である。イオンガン11のチャンバ内には例えばArが導入され、チャンバ内でアノードとフィラメントの間に直流電圧を印加し、直流熱陰極放電を起こすことによりArプラズマを発生させる。続いてArの正イオンを加速器によって加速させ、引き出し孔からイオンビームとして取り出す。イオンガンは直流熱陰極放電を利用するものに限らず、RFイオン源やマイクロ波イオン源を用いてもよい。イオンビームの電流密度、即ち、イオン密度は、引き出し孔の数、形状等により変化する。また、これらの引き出し孔を用いた場合の電流密度分布を図5に示す。図5(a)の電流密度分布は図4(a)の引き出し孔を用いた場合に対応し、図5(b)は図4(b)、図5(c)は図4(c)に対応する。なお、点は実測値であり、図5(a)及び(b)に示す線はガウス分布による近似である。なお、いずれのグラフも、イオンガン11とエッチング対象の基板31とを対向して配置して、基板31のイオンガン11の中心と対向する位置を原点としたときの原点からの距離と照射されるイオンビームの電流密度との関係を示すものである。
【0036】
詳細に後述するように、本実施形態ではイオンガン11から照射されるイオンビームの電流密度分布をガウス分布で近似し、エッチングレートを算出することによりエッチング時間を算出する。従って、電流密度分布は、図5(a)又は(b)に示すようにガウス分布で近似することができることが好ましい。このため、本実施形態では図4(a)、(b)のようにほぼ同径の孔が形成された引き出し孔を用いるのが好ましい。また、図5(a)及び(b)から明らかなように孔の数を増やすと電流密度分布は横に広がる傾向を示す。従って、実施するエッチングの細密さ等に応じて孔の数を調節すると良い。また、電流密度分布は、孔の形状、数、配置、放電電流、エッチング源とエッチング対象との距離等を調節することにより制御できるため、ガウス分布、三角関数等で演算する場合は、所望の分布を得ることができるように、予めこれらの条件を調整しておけばよい。なお、電流密度分布は必ずしもガウス分布、三角関数等を用いた波形として表す必要はなく実測値を用いることも可能である。この場合、図4(c)のように径の異なる孔が形成された引き出し孔を用いることができる。
【0037】
XYステージ12は、載置台12a、シーケンサ等からなるステージ制御部、モータ等から構成されるステージ駆動部等を備える。図1に示すように載置台12aのイオンガン11に対向する面上には、エッチングが施される基板31が設置される。XYステージ12のステージ駆動部は、ステージ制御部によって制御され、更にステージ制御部は制御部13によって制御される。ステージ駆動部によって載置台12aはX軸及びY軸方向(図1の水平面)に移動する。XYステージ12の移動形態は、ピッチ送り(一定距離だけ移動して一旦停止する動作を繰り返す処理)でも、等速又は速度を変動させながら連続的に移動させる形態も可能である。本実施形態ではエッチング源であるイオンガン11が固定されているため、このXYステージ12の移動によって、基板31とイオンガン11との相対位置を調節する。
【0038】
シャッタ40は、図1に示すように基板31と、イオンガン11との間に設置される。シャッタ40は、図3(a)に示すように、シャッタ部41と、シャッタ駆動部42と、ガイドレール43、44と、を備える。シャッタ部41は、基板31上の一つの領域に対応する面積を備え、エッチングを行う際に基板31を覆うことによって、基板31の過度なエッチングを抑制する。また、シャッタ部41はX軸方向に並んで設置されたガイドレール43,44の間に設置され、モータ等からなるシャッタ駆動部42によって、シャッタ部41はガイドレール43,44に沿って移動する。シャッタ駆動部42は、制御部13によって制御されており、所望の場所に所望のタイミングで位置する。また、ガイドレール43,44は、図3(a)に示すようにエッチング時に基板31上に配置されるため、エッチングの支障とならない幅に形成されている。なお、詳細に後述するように、同時に複数の領域を覆う場合もあるため、シャッタ部41は、複数設置されることもある。或いは、図3(a)とは逆に、基板31上の一つの領域に対応する面積を露出するマスク形状のシャッタを用いてもよい。図3(b)に一例を示すがこれに限らず、基板31上の複数の領域に対応する面積を露出する形状としてもよい。図3(b)に示すシャッタには、露出面を基板31上の任意の領域に位置させる例えばXYステージのような図示しない移動機構を設けてもよい。
【0039】
なお、本実施形態のようにシャッタ部41を設置しエッチングする場合、イオンビームによってシャッタ部41の表面も消耗される。この際、パーティクルが発生する可能性があるが、シャッタ部41が設けられているのは全エッチング時間に対してわずかであり、このようなパーティクルは問題とならない。
【0040】
制御部13は、例えばマイクロプロセッサ等から構成され、PC15によって算出されたエッチング時間等のエッチング条件、シャッタによって基板を覆う条件に沿ってイオンガン11と、XYステージ12と、シャッタ40と、を制御する。
【0041】
PC15は、パーソナルコンピュータ等から構成される。PC15は、詳細に後述するように、予めエッチング装置30とは独立して設けられたFTIR(フーリエ変換赤外分光計)等の測定装置によって測定された基板31の厚み分布を基に、基板31のエッチング対象領域で必要となる被エッチング量の分布を判別する。基板の厚みを測定する手段はFTIR(フーリエ変換赤外分光計)に限らず、例えば測定光の透過率又は反射率から厚み測定してもよい。或いは基板に圧電素子を用いる場合は周波数を測定してもよい。さらに、PC15は、この被エッチング量の分布、エッチングビームの電流密度分布(エッチング分布)、XYステージ12の移動速度等から、基板31の各領域にエッチングを施す時間等を算出する。算出した結果、エッチングを施す時間が負の値となる領域が存在する場合、シャッタ40を基板31とイオンビーム間に配置するタイミング、位置とを算出する。本実施形態ではPC15はエッチング分布を一定としてエッチング時間を算出しているが、エッチング分布を可変として、エッチング時間とエッチング強度を算出してもよい。エッチング照射量を算出しエッチング時間とエッチング強度の双方を制御すればよい。或いは、エッチング時間を一定としてエッチング強度を算出してもよい。
【0042】
次に、上述した構成を採るエッチング装置30の動作を図及び数式を用いて説明する。
【0043】
本実施形態では、図12のフローチャートに示すように、エッチング時間の算出を行った上で(ステップS31)、エッチング時間にマイナスの解がある場合(ステップS32;Yes)、解のない領域でシャッタを覆う時間、タイミングを判別し(ステップS33)、エッチング処理を行う(ステップS34)の流れでエッチング処理を行う。各処理を以下に詳細に記述する。
【0044】
まず、エッチングを施す基板31を用意する。基板31は図2に点線で示すように複数の素子を形成することができる面積を備える。
【0045】
次に、基板31の厚みの分布を例えば、FTIR(フーリエ変換赤外分光計)等によって測定する。また、図5(a)、(b)に示すようなイオンガン11の電流密度分布を予め得ておく。
【0046】
続いて、測定装置等で測定された基板31の厚み分布に基づき、PC15は、基板31上に仮想的に形成したメッシュの各領域で必要な被エッチング量を算出する。さらにPC15は、以下に示す数式に従って、各領域で必要な被エッチング量と、イオンビームの電流密度分布(エッチング分布)等から、エッチング処理の制御パターンを算出する。
【0047】
理解を容易にするため、まず一次元のモデルを用いて説明する。図6に示すように、エッチングが施される対象は、一定のピッチpで、ピッチpと同じ辺を備える正方形状の領域がN個一列に並んだ構成であると仮定する。なお、ピッチpはイオンガン11と基板31との移動ピッチに相当する。本実施形態ではピッチpはイオンガン11の電流密度分布の標準偏差σから、p=σ/2と設定する。なお、ピッチpの設定は正方形状に限らず任意であって、製造する素子のサイズに設定することも可能である。
【0048】
エッチング装置30は、XYステージ12を制御して、図8に示すようにイオンガン11のイオンビームの中心位置を、エッチング対象の各矩形領域の停止位置に順々に停止させ、イオンビームを適当な時間照射する。それぞれの位置で停止した際にエッチングされる総量が各領域のエッチング総量となる。
【0049】
ここでイオンビームの中心の停止位置をPとおく。なお本実施形態では、それぞれの端の領域が十分にエッチングされるように、ビームの停止位置を各領域の端からいくつか多く設定する。従って、ビームの停止位置は図6に示すようにP−i,…,P−2,P−1、P,P,P…,P,…,P,PN+1…,PN+iとなる。停止位置Pは基板上に仮想的に形成したメッシュの各領域に等しくなるように、P,P…,P,…,PN−1,Pと設定してもよい。或いは、基板の端の領域に必要な被エッチング総量が小さい場合には、基板上に仮想的に形成したメッシュの各領域よりもいくつか少なくなるように、停止位置PをP,Pi+1,…,P,…,PN-(i+1),PN―iとしてもよい。停止位置Pの範囲が小さいほど、イオンビームをより有効に利用できる。次に、それぞれの停止位置でエッチングを施す時間をTとすると、各停止位置でのエッチング時間は、T−i,…,T−2,T−1、T,T,T…,T,…,T,TN+1…,TN+iで示される。また、各領域のエッチング総量をE,E…,E,…,Eとする。なお、本実施形態ではピッチ送りの際の移動距離は一定であり、各領域の停止位置で停止する時間は、各領域ごとに設定される。従って、エッチング時間Tとは、停止位置Pにおけるビームの停止時間を示す。
【0050】
また、一般にエッチング量Eは、以下に示す数式1で与えられる。なお、数式1のTはイオンガン11によるエッチング時間であり、Cは、スパッタ率S、分子量M、アボガドロ数NA、密度D、電子の素電荷e等で決まる比例定数である。
【0051】
【数1】

【0052】
また、上述したようにイオンビームの電流密度分布は既知であり、この分布はガウス分布により下記数式2に示すように近似することが可能である。なお、数式2のAはガウス分布における曲線と基線の間の全面積であり、wは標準偏差σの2倍である。
【0053】
【数2】

【0054】
次に、図7(a)に示すようにイオンビームの中心がある停止位置Pにあるとき、イオンビームの中心に相当する領域のエッチングレートaを、a=Ibd・Cとする。このとき停止位置Pの周辺領域のエッチングレートa,a,a,…,a及びa−1,a−2,…,a−mは、数式2のxにエッチング中心からの離間する距離pmを代入することにより、下記数式3のように示すことができる。
【0055】
【数3】

【0056】
以上から、イオンビームが停止位置Pにあって照射時間がTである場合の各領域のエッチング量は、それぞれの停止位置ごとに下記数式4のように示すことができる。なお、イオンビームが停止位置Pに位置する際、停止位置Pのエッチングレートに対する各領域のエッチングレートの比を予め求めておき、図11(a)に示すようにテーブルとしておくと、エッチングレートaを更に容易に算出することができ、好ましい。例えば、図11(a)に示す例では、停止位置の1つ隣の領域は0.8、2つ隣の領域は0.6であるため、エッチングレートa、aはそれぞれ、a=0.8・a、a=0.6・aとaを用いて表すことができる。
【0057】
(数式4)

n−2;a−2
n−1;a−1
;a
n+1;a
n+2;a

【0058】
また、図7(b)に示すようにイオンビームの中心が停止位置Pn+1にあって、照射時間がTn+1である場合、それぞれの領域のエッチング量は、下記数式5に示される。
【0059】
(数式5)

n−2;a−3n+1
n−1;a−2n+1
;a−1n+1
n+1;an+1
n+2;an+1

【0060】
更に、図7(c)に示すようにイオンビームの中心が停止位置Pn−1にあって、照射時間がTn−1である場合、それぞれの領域のエッチング量は、下記数式6に示される。
【0061】
(数式6)

n−2;a−1n−1
n−1;an−1
;an−1
n+1;an−1
n+2;an−1

【0062】
以上を全ての停止位置(P−i,…,P−2,P−1、P,P,P…,P,…,P,PN+1…,PN+i)に応用することによって、基板31の各領域の全エッチング量は下記数式7に示され、更にこれを行列式で示す下記数式8で示すことができる。
【0063】
(数式7)

n−2;En−2=an−m−2+…+a−1n−1+a−3n+1+…+a−mn+m−2
n−1;En−1=an−m−1+…+an−1 +a−2n+1+…+a−mn+m−1
;E=an−m +…+an−1 +a−1n+1+…+a−mn+m
n+1;En+1=an−m+1+…+an−1 +an+1 +…+a−mn+m+1
n+2;En+2=an−m+2+…+an−1 +an+1 +…+a−mn+m+2

【0064】
【数4】

【0065】
ここで、上述するようにエッチングレートaはイオンガン11の中心からの距離が定まれば定数として与えられるものであるから、数式7及び数式8はエッチング時間Tの多元連立一次方程式に相当する。従って、ガウス・ジョルダンの消去法、LU分解法、ガウス・ザウデルの反復法等、既知の解法によって十分な近似解を得ることが可能である。このようにして各停止位置Pにおけるエッチング時間Tを求めることができる。
【0066】
次に、以上の一次元のモデルを二次元に応用する。まず、図10に示すようにエッチングを施す基板31を升目状に区切り、一辺がピッチpの複数の正方形状の領域に区分する。次に基板31の領域上および基板31の周辺領域上のイオンガン11の停止位置をPと設定し、一次元の場合と同様に1行1列の領域の停止位置をP(1,1)、1行2列をP(1,2)…n行m列をP(n,m)と設定する。本実施形態では、エッチングの際に基板31の周縁領域を良好にエッチングできるよう、基板31より広い領域に停止位置を設け、例えば図10に示すように上下左右にそれぞれ行及び列を増加させる。停止位置Pは基板に等しい領域としてもよく、或いは基板より狭い領域としてもよい。基板の端の領域に必要な被エッチング総量が小さいことが前提となるが、イオンビームをより有効に利用できる。
【0067】
次に、イオンガン11が所定の停止位置にある場合のそれぞれの領域のエッチングレートを数式2及び数式3を用いて求める。一次元モデルでは、数式3のみでピッチの間隔pと停止位置からのピッチ数mを用いてビームからの距離をpmで表記することができたが、二次元モデルではこのような表記ができるのはイオンガンの停止位置の同行もしくは同列のみである。従って、停止位置に対して同列もしくは同行にない領域のエッチングレートは、数式2のxに停止位置からの距離(例えば各領域間の中心の距離)を代入することにより、エッチングレートを求める。イオンビームの中心が停止位置P(n,m)にあるとき、イオンビームの中心に相当する領域のエッチングレートを、a0,0とする。このとき停止位置P(n,m)の周辺領域(n+i,m+j)のエッチングレートをai,jとし、テーブルとして算出したものを図9に示す。図9は、エッチング照射領域をピッチpの升目状に区切ったものである。ピッチpはイオンガン11と基板31との移動ピッチに相当する。なお、イオンガン11が所定の停止位置P(n,m)にある際、停止位置の中心におけるエッチングレートa0,0(n,m)に対する周辺領域のエッチングレートai,j(n+i,m+j)の比を、予め図11(b)に示すようにテーブルとして算出しておくと、各領域のエッチングレートの算出が容易となって好ましい。例えば、図11に示す例では、イオンガン11の停止する領域の強度が1であり、停止位置に隣接する上下、左右の領域の強度が0.8、斜め上、下の各領域の強度が0.6である。これを用いると、P(n,m)に隣接するP(n−1,m)のエッチングレートは、a-1,0=0.8・a0,0のようにa0,0を用いて表すことができる。
【0068】
次に、それぞれの領域のエッチング時間をTとし、数式8と同様の式を立てる。一次元と二次元では項の数が増加するのみで、二次元モデルでも一次元モデルと同様に多元一次連立方程式がたつ。従って、ガウス・ジョルダンの消去法、LU分解法、ガウス・ザウデルの反復法等、既知の解法によって十分な近似解を得ることが可能である。このようにして二次元モデルでも基板31の各領域のエッチング時間を算出することができる。
【0069】
なお、上述した二次元モデルでは領域の分割の仕方、ピッチ送りの移動距離等の設定によって、多元連立一次方程式は数十〜数千の次元となるが、次数は一次であるため、PC15を構成するパーソナルコンピュータの処理能力で十分近似解を求めることが可能である。この際、エッチング源(イオンガン11)の分布としては、単純な偶関数の方が計算は容易であり、ガウス分布、三角関数で表される分布が好ましい。
【0070】
このようにして、PC15は各停止位置Pにおけるエッチング時間Tを算出する(ステップS31)。
【0071】
次に、エッチング時間Tの解に負となる領域がない場合(ステップS32;No)は、算出した時間に基づきエッチング処理を行う(ステップS34)エッチング時間Tに解がない、つまり時間が負となる(計算法によっては0となる)領域がある場合(ステップS32;Yes)、実際にはこの領域にイオンガン11が設置されていてもエッチングは行えないため、当該領域及び、この周辺領域が過度にエッチングを受けることを意味する。従って、これを補償する必要がある。ここで、エッチング時間Tの解に負となる領域が生じた場合に、解のない領域に0を代入して(負となるエッチング時間を0として)再計算すれば、エッチング時間が0となる領域のみが過度のエッチングを受け、周辺領域が過度にエッチングを受けることはなくなる。本実施形態では、エッチング時間中にシャッタで覆うことによって、エッチング時間を実質的に短縮させる。
【0072】
具体的には、N×Mの領域を備える基板で、領域P(x,y)の総エッチング量E(x,y)は、下記の数式9で表される。ここで、Ex,yは領域P(x,y)の総エッチング量E(x,y)を意味し、ai,jは領域P(x−i,y−j)にイオンガンの中心が位置している際の領域P(x,y)のエッチングレートを意味し、Tx,yは領域P(x,y)にイオンガンの中心が位置している際のエッチング時間を意味する。各位置におけるエッチングレートは図9に示す通りである。
【0073】
(数式9)
x,y=aK,L・Tx-K,y-L+…+a0,0・Tx,y+…+ai,j・Tx-i,y-j+ai,j+1・Tx-i,y-j-1+…+a-K,-L・Tx+K,y+L
【0074】
領域P(x,y)のエッチング時間T(x,y)が負となる場合、数式9でa0,0・Tx,yがマイナスとなる。つまり、このa0,0・Tx,yを除いたEx,yは、a0,0・Tx,yの絶対値分多い、つまり過剰なエッチングを受けていることを意味する。従って、領域P(x,y)においてイオンビームを停止し、更にP(x,y)以外の領域にイオンガン11が位置している際に、領域P(x,y)のエッチングを|a0,0・Tx,y|だけ、防ぐ必要がある。そこで、例えば、|a0,0・Tx,y|に近い値を有する、ai,j・Tx-i, y-j を判別し、このTx-i, y-jをエッチングするタイミングでP(x,y)上にシャッタ部41を配置させる。なお、2以上の複数の領域でシャッタ部41を覆ってもよい。
【0075】
なお、解のない領域に0を代入して再計算していない場合は、領域P(x,y)だけでなく、イオンガン11が領域P(x,y)に位置している際にイオンビームが照射される周辺領域でも、同様にT(x,y)が負となることにより、a・T(x,y)だけ過剰なエッチングを受けている。従って、周辺領域にも領域P(x,y)と同様の対処が必要となる。このため、シャッタ40のシャッタ部41は複数設置される場合もある。もっとも、この過剰なエッチング量が、所定の許容量の範囲内に入る場合は、このような対処は不要である。
【0076】
PC15は、このようにして求めた各停止位置Pとその位置でのエッチング時間Tとを対応付ける情報(制御パターン情報)と、シャッタを覆う領域の位置情報及び設置する時間の情報(シャッタ情報)とを算出し(ステップS33)、制御部13に送信する。制御部13は、制御パターン情報を用いてXYステージ12、イオンガン11及びシャッタ40を制御し、各領域に所定のエッチングを施す(ステップS34)。
【0077】
具体的には、制御部13は、i)XYステージ12を制御して、エッチング対象の基板31を所定ピッチpで移動する動作、ii)ピッチ送り完了後、XYステージ12を制御して所定の停止時間Tだけ停止し、基板31にイオンビームを照射する、という制御を繰り返す。なお、イオンビームはエッチング開始から終了まで連続的に照射される。加えて、所定のタイミングでシャッタ部41を、基板31上の所定の領域に移動させる。
【0078】
なお、XYステージ12の移動パターンとしては、例えば、図10に示すP(−i,−i)からP(−i,M+i)へと順番に移動し、続いてP(−i+1,M+i)からP(−i+1,−i)に移動する、というように各列を移動する動作を全ての行について行えばよい。なお、エッチングを施す方向、順序等は任意である。
【0079】
このように、本実施形態によれば、イオンガン11から出射されるイオンがほぼ全体を基板31に照射し、基板31上の各位置での総エッチング量(照射量の積分値)が、その位置の被エッチング量(期待値)に一致するように、イオンガン11と基板31との相対位置及び各相対位置での停止時間、換言すればイオンガン11からのイオンビームの照射時間を制御する。この際に、照射時間の解が存在しない場合、その領域について、その他の領域をエッチングしている際にシャッタ部41で覆うことにより、過度のエッチングを防ぐことができる。これにより、過剰なエッチングを防ぎ、所望の形状に基板31をエッチングすることができる。
【0080】
特に本実施形態では、シャッタ部41によって基板31を所定の時間だけ覆うので、複雑な操作が不要であり、一体の基板をエッチングする際に適用することが可能である。図12に示す実施形態では、一度算出したエッチング時間Tに基づいてシャッタを操作するが、PC15がシャッタ情報に基づいて、エッチング処理時間を再計算してもよい。例えばシャッタによる遮蔽領域及び遮蔽時間を決定した後、エッチング処理時間Tを再算出すればよい。エッチング時間に解がない領域の周辺には、必要な被エッチング総量が大きい領域が存在しているため、例えば、被エッチング総量の大きい領域をエッチングする際に図3(b)に示すマスク形状のシャッタを配置してもよい。過剰にエッチングされる領域のみでなく他の領域もシャッタで遮蔽する場合には、エッチング処理時間の再計算が必要になる。
【0081】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るエッチング装置、エッチング方法及びプログラムについて説明する。本実施形態が上述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態ではエッチング時間の解のない領域にシャッタを設け、所望以上のエッチングを防止する構成であったが、本実施形態では解のない領域に設置されているエッチング対象物(例えば、水晶振動子などの圧電素子)をエッチング量が少ない領域に設置されているエッチング対象物と入れ替え、再計算を行うことにより、解のない領域の発生をなくすという点にある。このため、本実施形態では、エッチングされる対象が一体の基板ではなく、複数の被加工物を備え、被加工物の入れ替えが可能とされている点にある。
【0082】
第2実施形態に係るエッチング装置50の構成を図13に示す。また、図13に本実施形態のエッチング装置50によってエッチングされるエッチング対象物51を模式的に示す。
【0083】
図13に示すようにエッチング装置50は、イオンガン11と、XYステージ12と、制御部13と、真空槽14と、PC15と、ロボットアーム53と、を備える。イオンガン11とXYステージ12と、ロボットアーム53とは、真空槽14内に設置され、真空槽14によって大気から遮断されている。
【0084】
本実施形態では、図14(a)及び(b)に示すようにエッチングを受ける対象となる、例えば水晶振動子等の被加工物51aは、被加工物51aの形状に対応する窪みを備える載置部51c内に設置されている。なお、更にエッチングを受ける際には被加工物51aの形状に対応する開口を有するマスク51bが設置される。
【0085】
ロボットアーム53は、真空槽14内に設置されており、制御部13によって制御される。ロボットアーム53によって、図14(a)及び(b)に示す被加工物51aを入れ替える。例えば、第1実施形態の様にしてエッチング時間を算出した際、図15に示すようにエッチング時間が負となる(計算法によっては0となる)領域が発生した場合、この領域の被加工物51aを、一旦算出した被エッチング量より、更にエッチングを受けることが可能な被加工物、つまりエッチング量に許容範囲がある領域の被加工物51aと入れ替える。
【0086】
次に、本実施形態のエッチング処理について、図16のフローチャートを用いて説明する。
まず、上述した第1実施形態と同様に、各領域(各被加工物)の総エッチング量を算出し、各領域のエッチング時間を算出する(ステップS51)。
【0087】
算出した時間にマイナスがない場合(ステップS52;No)は、算出したエッチング時間で処理を行う(ステップS58)。これに対し、算出したエッチング時間にマイナスの解がある場合(ステップS52;Yes)、ロボットアーム53を駆動させ、被加工物の入れ替えを行う(ステップS53)。この際、マイナスの領域の被加工物と入れ替える被加工物は、エッチング量に許容範囲があるものを選択する。エッチング量に許容範囲がある被加工物がある場合は、より許容範囲の広いものを選択する。例えば、停止位置Pの領域を基板領域に対して十分に大きくとっていない場合は、基板の周縁領域に設置された被加工物は、イオンガン11のイオンビームの照射範囲に入ることが少なく、エッチング量の許容範囲が広い場合が多い。
【0088】
次に、入れ替えた後、再度エッチング時間を算出する(ステップS54)。これにより、マイナス解が存在しない場合(ステップS55;No)は、算出したエッチング時間でエッチング処理を行う(ステップS58)。マイナスの解が存在する場合(ステップS55;Yes)で、所定回数の再計算を行っていない場合(ステップS56;No)は、再度、被加工物の入れ替えを行い(ステップS53)、再計算を行う(ステップS54)。なお、所定回数の再計算を行った場合(ステップS56;Yes)は、エラーを発信し、処理を停止する。
【0089】
本実施形態では、総エッチング量からエッチング時間を算出した場合に、解のない領域が発生した場合、当該解のない領域の被加工物と、エッチング量の許容範囲のある被加工物とを入れ替え、再度エッチング時間を算出することにより、解のない領域の発生をなくすことができる。従って、エッチング時間にマイナスの解が発生した場合であっても、過剰なエッチングを防ぎ、エッチング対象物を任意の形状に加工することができる。
【0090】
解のない領域の被加工物は、隣接する領域の被加工物に比べて被エッチング総量が小さいため、解のない領域から離れた範囲で、隣接する領域の被加工物に比べて被エッチング総量が大きい領域の被加工物と交換してもよい。また、基板の厚み(基板に水晶振動子を用いる場合は周波数)を測定し各領域に必要な被エッチング総量を算出した後、PC15により、隣接する周囲の領域に比べて極端に被エッチング総量が大きい領域、もしくは小さい領域を検出し、この領域に配置された被加工物を他の領域と交換してから、エッチング時間を算出してもよい。この場合、PC15は隣接する領域間の被エッチング総量の差から入れ替えの必要な被加工物を検出し、被エッチング総量の分布がなだらかになるようにする。
第2実施形態では被加工物を自動で入れ替えするが、手動で入れ替えてもよい。
【0091】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るエッチング装置、エッチング方法及びプログラムについて説明する。本実施形態が上述した各実施形態と異なるのは、本実施形態ではシャッタを設けず、更にエッチング対象物の入れ替えを行わず、イオンビームそのものの照射範囲を変化させ、再計算を行う点にある。このため、本実施形態では、エッチングされる対象は一体の基板であってもよく、更に第2実施形態のように被加工物間の入れ替えが可能とされていてもよい。
【0092】
図17に示すようにエッチング装置60は、イオンガン61と、XYステージ12と、制御部13と、真空槽14と、PC15と、を備える。イオンガン61とXYステージ12とは、真空槽14内に設置され、真空槽14によって大気から遮断されている。
【0093】
本実施形態のイオンガン61は、例えばイオンビームを引き出すグリッド部分に印加する電圧又は及び放電電圧を変化させることによって、イオンビームの照射範囲を変化させる点に特徴がある。例えば、イオンガン61から照射されるイオンビームの幅を、図18に示すようにビーム幅Aとビーム幅Bとに変化させる。このようにビーム幅を変化させることにより、図19(a)及び(b)に示すようにエッチングレートの比が変化する。例えば、ビーム幅Aに対応する図19(a)では、イオンガン61が設置される中心領域のエッチングレートの比は1.0であり、中心領域に隣接する領域では0.8である。更に、隣接する領域の隣、つまり中心領域から斜め上、斜め下の領域では、エッチングレートの比は0.6である。これに対し、ビーム幅Bに対応する図19(b)では、イオンガン61が設置される中心領域のエッチングレートの比が1.0であるのに対し、中心領域に隣接する領域では0.4、中心領域の斜め上、斜め下の領域では0.2となる。
【0094】
エッチング時間がマイナスとなることは、当該領域の周辺領域をエッチングしている際に、当該領域が過剰なエッチングを受けていることを意味する。従って、周辺領域におけるビーム幅を狭めることにより、マイナス解が発生した領域が受けるエッチング量を低下させることができる。
【0095】
本実施形態のエッチング処理について、図20のフローチャートを用いて説明する。
まず、上述した第1実施形態と同様に、各領域(各被加工物)の総エッチング量を算出し、各領域のエッチング時間を算出する(ステップS61)。
【0096】
算出した時間にマイナスがない場合(ステップS62;No)は、算出したエッチング時間で処理を行う(ステップS65)。これに対し、算出したエッチング時間にマイナスの解がある場合(ステップS62;Yes)、マイナスの解が発生した領域の周辺領域では、イオンビームの幅を狭く設定する。例えば、図19(a)で計算したエッチングレートを、図19(b)に示すレートに置き換える(ステップS63)。次に、ビーム幅を狭くしたエッチングレートでエッチング時間の再計算を行い(ステップS64)、このエッチング時間に基づきエッチング処理を行う(ステップS65)。
【0097】
このように、本実施形態では、エッチング時間にマイナスの解が発生した場合、当該領域を含む周辺領域でのエッチングの際のイオンガンのビーム幅を狭くし、再計算を行いエッチング時間を再度算出し、エッチングを行う。これにより、エッチング時間にマイナスの解が発生した場合であっても、過剰なエッチングを防ぎ、エッチング対象物を任意の形状に加工することができる。
【0098】
図17に示す例では、グリッドに印加する電圧を変化させてイオンビーム幅Aとイオンビーム幅Bを得るが、イオンビーム幅の異なる複数のイオンガンを準備し、イオンガンを入れ替えて処理してもよい。又は、グリッドを交換する機構、もしくは、グリッドに形成した孔の少なくとも一部を開閉可能な機構を設けて、イオンビーム幅を変えてもよい。或いは、図21に示すイオンガンのように遮蔽グリッド115と、加速グリッド116と、減速グリッド117と、を備え、加速グリッド116は分割加速グリッド116aと116bとに分割されていても良い。また、分割加速グリッド116a,116bに夫々異なる形状の孔群を形成し、電圧印加するグリッドを切り換えてもよい。例えば図22に示す分割加速グリッド116aに加速電位を、分割加速グリッド116bに正電位を印加することでイオンビーム幅Aを得て、分割加速グリッド116bに加速電位を、分割加速グリッド116aに正電位を印加することでイオンビーム幅Bを得る等の構成としてもよい。なお、図21に示すイオンガンは特願特願2008−054137号の図1に対応しており、グリッド電位の切り換えは、特願特願2008−054137号を参照すれば良く、特願2006−320764の構成を参照しても良い。
【0099】
本発明は上述した実施形態に限られず様々な変形及び応用が可能である。
例えば、上述した第1実施形態では、一体の基板31を例に挙げて説明したが、これに限られず、第2実施形態のように複数の加工物をエッチングする場合にも適用することが可能である。
【0100】
また、イオンガン11から出射されるイオンビームの電流密度(イオン密度)の分布は、図5に示すものに限定されず、より急峻な勾配或いはより穏やかな勾配でもよく、さらには、より狭い照射範囲でもより広い照射範囲でもよい。さらに、電流密度のピーク値もより大きくても或いは小さくてもよい。ただし、エッチング性能を有することが前提となる。
【0101】
また、上記実施形態では、XYステージ12により、基板31を一定のピッチで移動し、各停止位置における停止時間を変化させイオンビームの照射時間を変化させる動作例を説明した。ただし、この制御パターンに限定されず、例えば、基板31を連続的な速度vで移動させつつ、イオンガン11を制御しイオンビームを照射する時間Tを各領域ごとに変化させることにより、全体として所望のエッチング量の分布を得るようにしてもよい。この場合、例えば所定の領域内にエッチング中心がある場合、その領域の中心を停止位置と仮定し、各領域内にエッチング中心が存在する時間を、上述した実施形態のピッチ送り間隔と考えることにより、上述した数式を用いてイオンガンによるエッチング時間を算出することができる。また、イオンガン11をエッチング開始から終了まで連続的に照射させ、エッチング対象である基板31を速度vで移動させ、この速度vを変化させることにより、全体として所望のエッチング量の分布を得るようにしてもよい。
【0102】
また、上述した実施形態では、XYステージ12を移動させる移動距離を一定とし、停止時間を制御しイオンガン11からイオンビームを照射する時間を制御させたが、これに限られず、XYステージ12の移動速度、もしくはピッチ送りの時間間隔を一定にし、イオンガン11による照射時間を変化させ、エッチング時間を調節することもできる。例えば、制御部13は、i)XYステージ12を制御して、エッチング対象の基板31を所定ピッチpで移動する動作、ii)ピッチ送り完了後、一定の時間XYステージを停止し、イオンガン11を制御して、基板31にイオンビームを各停止位置に応じた時間Tだけ照射するという制御を繰り返す。
【0103】
なお、基板31とXYステージ12との相対位置の移動速度、イオンガン11によるエッチング時間、エッチング強度は、必ずしも2つを一定にする必要はなく、これらのうちいずれか2つを変化させても良いし、全てを変化させても良い。
【0104】
また、PC15による制御パターンの計算手法も上述の手法に限定されず、任意である。即ち、エッチング工程の開始か全体のエッチングが終了するまでの間に、エッチング対象である基板31の各位置(仮想メッシュ上の各点)に照射されるエッチング用粒子(ただし、エッチングに寄与できるレベルのエネルギーを有するもの)の総量(時間積分値)が予め求められている被エッチング量(期待値)に全体として(ほぼ)一致するように、移動速度、送り速度、照射時間、照射強度、電流密度分布などの時系列パターンを求めればよい。そして、制御部13は、この制御パターンにあわせて制御を行えばよい。
【0105】
また、上述した実施形態では、PC15によって算出されたエッチング時間に基づき、制御部13がXYステージのステージ制御部及びイオンガン11を制御する場合を例に挙げたが、XYステージ12及びイオンガン11の制御方法はこれに限られない。例えば、シーケンサからなるステージ制御部を介さず、制御部13によってXYステージ12を制御することも可能であるし、PC15に制御部13の機能を持たせることも可能である。また、XYステージ12の移動量を制御部13もしくはPC15にフィードバックさせてもよい。
本実施形態ではエッチング源であるイオンガンを固定し、XYステージによって基板を移動させるが、基板を固定し、XYステージによってイオンガンを移動させる構成としてもよい。或いは、基板をX軸方向に移動させ、イオンガンをY軸方向に移動させる等の構成としてもよい。
【0106】
また、上述した実施形態ではエッチング源としてイオンガンを例に挙げて説明したが、エッチング用粒子を生成するものであればこれに限られずプラズマ等のエッチング源、電子ビーム、反応性プラズマエッチングなどを用いることが可能である。
【0107】
以上説明した実施形態のエッチング方法によれば、エッチング対象物が、隣接する領域は不連続であって全体としてみれば連続的であるような準連続的に形状が変化しているものに対しても所望の形状を得ることが可能である。また基板の平面形状も方形の基板31を例に挙げたがこれに限られず、例えば円形、楕円形、多角形等であっても良い。更に連続的に形状が変化するものであれば、平板状に限られず曲面状であってもよい。
【0108】
また、エッチングの対象として半導体ウエハなどの基板31を例示したが、エッチングの対象は任意であり、半導体ウエハ、該ウエハ上に形成された任意の材質の膜、任意の材質の基体、その上に形成された層、等、任意である。
第1乃至第3の実施形態では、エッチング源を用いているが、蒸着やスパッタ等の成膜に応用することも可能である。上記実施形態における被エッチング総量を、目的の膜厚までに必要な被成膜量とし、上記実施形態におけるエッチング(質量除去)を成膜(質量付加)として、解のない領域における過剰成膜を避けるよう同様の処理をすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】第1実施形態に係るエッチング装置の構成例を模式的に示す図である。
【図2】第1実施形態に係るエッチング装置によってエッチングされる基板を模式的に示す図である。
【図3】(a)は、シャッタを説明する図である。(b)はシャッタの変形例を示す図である。
【図4】図4(a)〜(c)はイオンガンの引き出し孔のノズルを示す図である。
【図5】(a)は、図4(a)に示す引き出し孔を用いた際の電流密度分布を示す図である。(b)は図4(b)に示す引き出し孔を用いた際の電流密度分布を示す図である。(c)は、図4(c)に示す引き出し孔を用いた際の電流密度分布を示す図である。
【図6】エッチング源が一次元方向のみに移動しエッチングが施される場合の基板を示す図である。
【図7】(a)は停止位置Pnにおける電流密度分布を示す図である。(b)は停止位置Pn+1における電流密度分布を示す図である。(c)は停止位置Pn-1における電流密度分布を示す図である。
【図8】イオンガンの各停止位置における電流密度分布を示す図である。
【図9】テーブルとして算出したエッチングレートaを示す図である。
【図10】エッチング源が二次元方向に移動しエッチングが施される場合の基板を示す図である。
【図11】(a)はエッチング源が一次元方向にのみ移動する際のエッチングレートの比のテーブルを模式的に示す図である。(b)はエッチング源が二次元方向に移動する際のエッチングレートの比のテーブルを模式的に示す図である。
【図12】第1実施形態のエッチング処理のフローチャートである。
【図13】第2実施形態に係るエッチング装置の構成例を模式的に示す図である。
【図14】(a)は、第2実施形態に係るエッチング装置によってエッチングされるエッチング対象物を模式的に示す図である。(b)は、図14(a)に示すB−B線断面図である。
【図15】加工物の入れ替えを説明する図である。
【図16】第2実施形態のエッチング処理のフローチャートである。
【図17】第3実施形態に係るエッチング装置の構成例を模式的に示す図である。
【図18】ビーム幅を模式的に示す図である。
【図19】(a)はビーム幅Aのエッチングレートの比のテーブルを模式的に示す図である。(b)はビーム幅Bのエッチングレートの比のテーブルを模式的に示す図である。
【図20】第3実施形態のエッチング処理のフローチャートである。
【図21】イオンガンを模式的に示す図である。
【図22】図21に示すイオンガンの分割加速グリッドを示す図である。
【符号の説明】
【0110】
30,50,60 エッチング装置
11,61 イオンガン(エッチング源)
12 XYステージ
13 制御部
14 真空槽
15 PC
31 基板
40 シャッタ
41 シャッタ部
42 シャッタ駆動部
43,44 ガイドレール
51 エッチング対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエッチング分布を有し、粒子ビームを照射するエッチング源と、
エッチング対象物を載置するステージと、
前記エッチング源と前記ステージとの相対位置を調整する相対位置調整手段と、
エッチング対象物とエッチング源との間に設置される少なくとも1つのシャッタと、
前記エッチング源と、前記相対位置調整手段と、前記シャッタとを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記エッチング対象物の被エッチング量の分布と、前記エッチング源のエッチング分布とに基づいて、前記エッチング対象物の各位置におけるエッチング総量が被エッチング量に対応するように、前記エッチング対象物の前記各位置での前記粒子ビームの照射量を算出し、前記照射量に基づき前記相対位置調整手段又は/及び前記エッチング源を制御し、更に、前記照射量が負となる場合、少なくとも前記照射量が負となる位置に前記シャッタが配置するよう、前記シャッタを制御することを特徴とするエッチング装置。
【請求項2】
前記シャッタは、前記照射量が負となる位置の周辺領域にも配置されることを特徴とする請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記エッチング源を制御して、前記粒子ビームを連続的に照射させ、
前記相対位置調整手段を制御して、前記エッチング対象物を前記エッチング源に対してピッチ送りで移動させ、各ピッチ位置での停止時間を調節することによって、各ピッチ位置での粒子ビームの照射時間を制御する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエッチング装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記相対位置調整手段を制御して前記エッチング対象物を前記エッチング源に対して所定ピッチで移動させ、
前記エッチング源を制御して、各ピッチ位置での粒子ビームの照射強度を制御する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエッチング装置。
【請求項5】
既知のエッチング分布を有するエッチング源によりエッチング対象物のエッチング対象エリアに粒子ビームを生成すると共に前記エッチング源と前記エッチング対象物との相対位置を移動させることにより、前記エッチング対象エリアをエッチングするエッチング方法において、
前記エッチング対象エリアの各位置において、前記エッチング用粒子の強度の積分値が被エッチング量の分布に一致するように、前記エッチング源と、前記エッチング源と前記エッチング対象との相対位置と照射量と、を制御し、
前記照射量が負となる位置が生じた場合、前記エッチング源と前記エッチング対象物との間にシャッタが位置するよう、該シャッタを制御する、ことを特徴とするエッチング方法。
【請求項6】
コンピュータによる、
既知のエッチング分布を有するエッチング源によりエッチング対象物のエッチング対象エリアに粒子ビームを生成すると共に前記エッチング源と前記エッチング対象物との相対位置を移動させることにより、前記エッチング対象エリアをエッチングするエッチング方法の制御であって、
前記エッチング対象エリアの各位置において、前記エッチング用粒子の強度の積分値が被エッチング量の分布に一致するように、前記エッチング源と、前記エッチング源と前記エッチング対象との相対位置と照射量と、の制御と、
前記照射量が負となる位置が生じた場合、前記エッチング源と前記エッチング対象物との間にシャッタが位置するよう、該シャッタの制御と、
を実行させることを特徴とするエッチングプログラム。
【請求項7】
所定のエッチング分布を有し、粒子ビームを照射するエッチング源と、
複数のエッチング対象物を載置するステージと、
前記エッチング源と前記ステージとの相対位置を調整する相対位置調整手段と、
前記エッチング対象物の位置を変更する位置変更手段と、
前記エッチング源と、前記相対位置調整手段と、前記位置変更手段とを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記エッチング対象物の被エッチング量の分布と、前記エッチング源のエッチング分布とに基づいて、前記エッチング対象物の各位置におけるエッチング総量が被エッチング量に対応するように、前記エッチング対象物の前記各位置での前記粒子ビームの照射量を算出し、前記照射量に基づき前記相対位置調整手段又は/及び前記エッチング源を制御し、
更に、前記照射量が負となる場合、当該照射量が負となる位置に設置された前記エッチング対象物を、その他の位置に設置された前記エッチング対象物と変更するよう、位置変更手段を制御することを特徴とするエッチング装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記位置変更手段によって前記エッチング対象物の位置を変更した後、再度前記エッチング対象物の被エッチング量の分布と、前記エッチング源のエッチング分布とに基づいて、前記エッチング対象物の各位置におけるエッチング総量が被エッチング量に対応するように、前記エッチング対象物の前記各位置での前記粒子ビームの照射量を算出することを特徴とする請求項7に記載のエッチング装置。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記エッチング源を制御して、前記粒子ビームを連続的に照射させ、
前記相対位置調整手段を制御して、前記エッチング対象物を前記エッチング源に対してピッチ送りで移動させ、各ピッチ位置での停止時間を調節することによって、各ピッチ位置での粒子ビームの照射時間を制御する、ことを特徴とする請求項7又は8に記載のエッチング装置。
【請求項10】
前記制御手段は、
前記相対位置調整手段を制御して前記エッチング対象物を前記エッチング源に対して所定ピッチで移動させ、
前記エッチング源を制御して、各ピッチ位置での粒子ビームの照射強度を制御する、ことを特徴とする請求項7又は8に記載のエッチング装置。
【請求項11】
既知のエッチング分布を有するエッチング源によりエッチング対象物のエッチング対象エリアに粒子ビームを生成すると共に前記エッチング源と前記エッチング対象物との相対位置を移動させることにより、前記エッチング対象エリアをエッチングするエッチング方法において、
前記エッチング対象エリアの各位置において、前記エッチング用粒子の強度の積分値が被エッチング量の分布に一致するように、前記エッチング源と、前記エッチング源と前記エッチング対象との相対位置と照射量と、を制御し、
前記照射量が負となる位置が生じた場合、前記照射量が負となる位置の前記エッチング対象物と、その他の位置の前記エッチング対象物とを入れ替えるよう、位置変更手段を制御する、ことを特徴とするエッチング方法。
【請求項12】
コンピュータによる、
既知のエッチング分布を有するエッチング源によりエッチング対象物のエッチング対象エリアに粒子ビームを生成すると共に前記エッチング源と前記エッチング対象物との相対位置を移動させることにより、前記エッチング対象エリアをエッチングするエッチング方法の制御であって、
前記エッチング対象エリアの各位置において、前記エッチング用粒子の強度の積分値が被エッチング量の分布に一致するように、前記エッチング源と、前記エッチング源と前記エッチング対象との相対位置と照射量と、の制御と、
前記照射量が負となる位置が生じた場合、前記照射量が負となる位置の前記エッチング対象物と、その他の位置の前記エッチング対象物とを入れ替えるよう、位置変更手段の制御と、
を実行させることを特徴とするエッチングプログラム。
【請求項13】
所定のエッチング分布を有し、粒子ビームを照射するエッチング源と、
複数のエッチング対象物を載置するステージと、
前記エッチング源と前記ステージとの相対位置を調整する相対位置調整手段と、
前記エッチング源と、前記相対位置調整手段とを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記エッチング対象物の被エッチング量の分布と、前記エッチング源のエッチング分布とに基づいて、前記エッチング対象物の各位置におけるエッチング総量が被エッチング量に対応するように、前記エッチング対象物の前記各位置での前記粒子ビームの照射量を算出し、前記照射量に基づき前記相対位置調整手段又は/及び前記エッチング源を制御し、
更に、前記照射量が負となる場合、当該照射量が負となる位置の周辺で前記粒子ビームの照射範囲を狭めるよう、前記エッチング源を制御又は切り換えることを特徴とするエッチング装置。
【請求項14】
前記制御手段は、再度、前記エッチング対象物の被エッチング量の分布と、前記エッチング源のエッチング分布と、前記照射範囲を狭めたエッチング分布とに基づいて、前記エッチング対象物の各位置におけるエッチング総量が被エッチング量に対応するように、前記エッチング対象物の前記各位置での前記粒子ビームの照射量を算出することを特徴とする請求項13に記載のエッチング装置。
【請求項15】
前記制御手段は、
前記エッチング源を制御して、前記粒子ビームを連続的に照射させ、
前記相対位置調整手段を制御して、前記エッチング対象物を前記エッチング源に対してピッチ送りで移動させ、各ピッチ位置での停止時間を調節することによって、各ピッチ位置での粒子ビームの照射時間を制御する、ことを特徴とする請求項13又は14に記載のエッチング装置。
【請求項16】
前記制御手段は、
前記相対位置調整手段を制御して前記エッチング対象物を前記エッチング源に対して所定ピッチで移動させ、
前記エッチング源を制御して、各ピッチ位置での粒子ビームの照射強度を制御する、ことを特徴とする請求項13又は14に記載のエッチング装置。
【請求項17】
既知のエッチング分布を有するエッチング源によりエッチング対象物のエッチング対象エリアに粒子ビームを生成すると共に前記エッチング源と前記エッチング対象物との相対位置を移動させることにより、前記エッチング対象エリアをエッチングするエッチング方法において、
前記エッチング対象エリアの各位置において、前記エッチング用粒子の強度の積分値が被エッチング量の分布に一致するように、前記エッチング源と、前記エッチング源と前記エッチング対象との相対位置と照射量と、を制御し、
前記照射量が負となる位置が生じた場合、当該照射量が負となる位置の周辺で前記粒子ビームの照射範囲を狭めるよう、前記エッチング源を制御又は切り換えることを特徴とするエッチング方法。
【請求項18】
コンピュータによる、
既知のエッチング分布を有するエッチング源によりエッチング対象物のエッチング対象エリアに粒子ビームを生成すると共に前記エッチング源と前記エッチング対象物との相対位置を移動させることにより、前記エッチング対象エリアをエッチングするエッチング方法の制御であって、
前記エッチング対象エリアの各位置において、前記エッチング用粒子の強度の積分値が被エッチング量の分布に一致するように、前記エッチング源と、前記エッチング源と前記エッチング対象との相対位置と照射量と、の制御と、
前記照射量が負となる位置が生じた場合、当該照射量が負となる位置の周辺で前記粒子ビームの照射範囲を狭めるよう、前記エッチング源の制御又は切り換えと、
を実行させることを特徴とするエッチングプログラム。
【請求項19】
所定の成膜分布を有し、成膜粒子を生成する成膜源と、
成膜対象物を載置するステージと、
前記成膜源と前記ステージとの相対位置を調整する相対位置調整手段と、
成膜対象物と成膜源との間に設置される少なくとも1つのシャッタと、
前記成膜源と、前記相対位置調整手段と、前記シャッタとを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記成膜対象物の被成膜量の分布と、前記成膜源の成膜分布とに基づいて、前記成膜対象物の各位置における成膜総量が被成膜量に対応するように、前記成膜対象物の前記各位置での成膜量を算出し、前記成膜量に基づき前記相対位置調整手段又は/及び前記成膜源を制御し、更に、前記成膜量が負となる場合、少なくとも前記成膜量が負となる位置に前記シャッタが配置するよう、前記シャッタを制御することを特徴とする成膜装置。
【請求項20】
所定の成膜分布を有し、成膜粒子を生成する成膜源と、
複数の成膜対象物を載置するステージと、
前記成膜源と前記ステージとの相対位置を調整する相対位置調整手段と、
前記成膜対象物の位置を変更する位置変更手段と、
前記成膜源と、前記相対位置調整手段と、前記位置変更手段とを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記成膜対象物の被成膜量の分布と、前記成膜源の成膜分布とに基づいて、前記成膜対象物の各位置における成膜総量が被成膜量に対応するように、前記成膜対象物の前記各位置での成膜量を算出し、前記成膜量に基づき前記相対位置調整手段又は/及び前記成膜源を制御し、
更に、前記成膜量が負となる場合、当該成膜量が負となる位置に設置された前記成膜対象物を、その他の位置に設置された前記成膜対象物と変更するよう、位置変更手段を制御することを特徴とする成膜装置。
【請求項21】
所定の成膜分布を有し、成膜粒子を生成する成膜源と、
複数の成膜対象物を載置するステージと、
前記成膜源と前記ステージとの相対位置を調整する相対位置調整手段と、
前記成膜源と、前記相対位置調整手段とを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記成膜対象物の被成膜量の分布と、前記成膜源の成膜分布とに基づいて、前記成膜対象物の各位置における成膜総量が被成膜量に対応するように、前記成膜対象物の前記各位置での成膜量を算出し、前記成膜量に基づき前記相対位置調整手段又は/及び前記成膜源を制御し、
更に、前記成膜量が負となる場合、当該成膜量が負となる位置の周辺で前記成膜粒子の照射範囲を狭めるよう、前記成膜源を制御又は切り換えることを特徴とする成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−98051(P2010−98051A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266364(P2008−266364)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000146009)株式会社昭和真空 (72)
【Fターム(参考)】