説明

エッチング試験方法

【課題】半導体デバイス基板のエッチング過程の品質のスクリーニング試験法を開発する。
【解決手段】本発明は、セラミック基板の上に接合された銅板をエッチングすることにより形成されるDBC基板のエッチングを試験する。電気負性絶縁ガスを加熱して分解したガスを満たした部屋に、DBC基板を所定時間挿入または通過させる。電気負性絶縁ガスのガス分解生成物がDBC基板に残存した銅と反応した生成物を、エッチングの欠陥として判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板の上に接合された銅板をエッチングすることにより形成されるセラミック基板のエッチング試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス用基板として、銅板を接着したセラミック基板DBC(direct bonding copper)が公知である(特許文献1参照)。図2は、特許文献1に開示のセラミック基板(DBC基板)を例示する図である。図2において、セラミック基板の上面にはSiチップ搭載用及び配線用として使用されるCu板が接合され、セラミック基板の下面には熱拡散用及び反り防止用として使用されるCu板が接合されている。セラミック基板上面のCu板の上面中央部には、Siチップがハンダ層を介して接着され、Cu板の配線部とSiチップの接続パッドとはワイヤを用いたワイヤボンディングにより接続されている。セラミック基板下面のCu板の下面にはハンダ層を介してヒートシンクが接着されている。
【0003】
このようなDBC基板は、セラミック基板(AlN,Al2O3など)に銅板を圧溶接した後、この銅板をエッチングすることにより形成される。このため、適切なるデバイス配置をして、高電圧が印加される部分ではこれらのメタライズされた部分の形状が電界強調度を決定する、即ち、耐電圧性を決定する重要な要因となる。例えば、エッチングが不良の場合には、不良部が小さな浮島になること等により、電界が集中して放電を発生させ、セラミック基板の損傷を引き起こすことがある。しかし、このエッチング過程の品質のスクリーニング試験法は現在存在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−74864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DBC基板の配置を実現するために使用されるエッチング過程の間に、このエッチングの品質や時間が適切かどうかの判定は通常の手法では困難である。
【0006】
本発明は、係る問題点を解決して、半導体デバイス基板のエッチング過程の品質のスクリーニング試験法を開発することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエッチング試験方法は、セラミック基板の上に接合された銅板をエッチングすることにより形成されるセラミック基板のエッチングを試験する。電気負性絶縁ガスを加熱して分解したガスを満たした部屋に、前記セラミック基板を所定時間挿入または通過させる。電気負性絶縁ガスのガス分解生成物がセラミック基板に残存した銅と反応した生成物を、エッチングの欠陥として判別する。
【0008】
電気負性絶縁ガスは、六フッ化イオウSF6、或いはパーフルオロシクロブタンC4F8である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体デバイス基板のエッチング過程の品質のスクリーニング試験法が確立される
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】レーザ顕微鏡にて実際に観察された結果を示す写真である。
【図2】特許文献1に開示のDBC基板を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、例示に基づき、本発明のスクリーニング試験方法を説明する。パワー半導体デバイス用等のセラミック基板(DBC基板)は、セラミック基板(AlN,Al2O3など)に銅板を接合(圧溶接)した後、この銅板をエッチングプロセスにより、形成される。エッチングプロセスは、具体的には、エッチング液により、回路パターン以外を溶かすことによって銅電極を形成することで行われる。このようなDBC基板試料に対して、高温ガス中の熱処理によりエッチング品質及びエッチング時間のスクリーニング試験を行う。すなわち、エッチング欠陥は、SF6ガス中の高温処理により図1に示すように、金属の小さな「島」等として現れる。この島になっている部分などは、本来エッチング液で溶けるはずだった部分であり、本来エッチングされない部分の銅板の厚さに比べれば、殆どなくなる寸前の薄い状態になっていることが多く、何も処理をしなければ顕微鏡で見たとしても確認は困難である。
【0012】
この金属の島等により、電界が集中して放電を発生させ、セラミック基板の損傷を引き起こす。この金属の「島」等の発生の有無が、DBC基板の絶縁性能評価にとり重要な情報を提供することとなり、よって、パワー半導体デバイス用基板のスクリーニング手法となる。このように、所定圧力(例えば、1気圧)のある特定な絶縁ガス(SF6など)を、ある特定な温度(例えば、300℃〜400℃)で、ある一定の時間(例えば、1時間)使用して熱処理することにより、DBC基板上に残存した銅の跡を決定できる。
【0013】
例えば六フッ化イオウSF6、パーフルオロシクロブタンC4F8等の電気負性絶縁ガスを400℃に加熱して分解したガスを満たした部屋に、スクリーニングしたい基板を一定時間挿入または通過させる。電気負性絶縁ガス(SF6ガス, C4F8など)はそれらを熱している途中で一部分解し、そのガス分解生成物がDBC(direct bonded copper)基板試料の金属(銅)とのみ反応することを見出した。欠陥がない場合には、金属の島等は発生せず、欠陥があれば金属の島等が発生しているという非常に簡単な工程で良否を判別できる。
【0014】
図1は、レーザ顕微鏡にて実際に観察された結果を示す写真である。図1は、紙の上にセラミック基板を乗せて撮った写真であり、周囲の4個の写真は4か所のエッチングされた銅とセラミックの境を顕微鏡で撮った拡大写真を、セラミック基板の写真の周囲に張り付けたものである。DBC基板は、通常セラミック基板上の銅電極の上にICチップが装着されることになるが、図1は、本発明を確認するために作った基板でありICチップは装着していない状態の写真である。この写真中央の黒い部分が、エッチングされていない銅であり、枠状のグレー部分が銅がエッチングされたことにより見えているセラミックである。
【0015】
図1の周囲に示す4個の顕微鏡写真(銅とセラミックの境を示す)において、銅電極の横に見える濃い色の部分が、本来エッチングにより除去されるべきであった島状化した銅(欠陥)であり、電界が集中して放電発生の拠点となる。この欠陥である島状の銅の存在は、DBC基板を顕微鏡にて観察することにより検出できる。通常、この検査は、製造工程においては、すべてのDBC基板に対して行う必要はなく、必要に応じて抜き取りにより行うことができる。また、回路パタンが異なるDBC基板のそれぞれの試作段階で、欠陥検出ができる。
【0016】
SF6ガスを用いた場合、SF6ガスとCuが、以下のように反応してCuF2ができると推測している。高温でSF6ガスが熱分解してSF4・(ラジカル)とフッ素(F)が遊離して、それとCuが反応してCuF2が発生すると考えられる。
【0017】
SF6 --> SF4・ F + Cu --> CuF2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基板の上に接合された銅板をエッチングすることにより形成されるセラミック基板のエッチング試験方法において、
電気負性絶縁ガスを加熱して分解したガスを満たした部屋に、前記セラミック基板を所定時間挿入または通過させ、
電気負性絶縁ガスのガス分解生成物が前記セラミック基板に残存した銅と反応した生成物を、エッチングの欠陥として判別することから成るエッチング試験方法。
【請求項2】
前記電気負性絶縁ガスは、六フッ化イオウSF6、或いはパーフルオロシクロブタンC4F8である請求項1に記載のエッチング試験方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−155037(P2011−155037A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13961(P2010−13961)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】