説明

エネルギービームのライン制御装置および方法

本発明は、ビームのライン制御の分野、特に、イオン化ビームおよび前記ビームの磁場によって堆積する線量の測定を可能にする複数の電離箱を備える装置に関する。少なくとも1つの電離箱が、厚さが100nm以下の支持フィルムから形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オンラインビーム監視の分野に関する。より詳細には、本発明は、イオン化ビームおよびこのビームの磁場によって堆積する線量の測定を可能にするいくつかの電離箱を備えた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハドロン治療は、周囲の健全な組織を保存しながら、標的体積、すなわち腫瘍の上に線量を精密に送達することを可能にする放射線治療の支流である。ハドロン治療装置は、荷電粒子のビームを生成する加速器と、ビームを搬送する手段と、放射ユニットとを備えている。放射ユニットは、標的体積に線量分布を送達し、一般に、送達された線量を監視する手段を備えている。ハドロン治療では、粒子のビームを送達する2つの主なモードが使用される。すなわち、1つの第1の送達モードは、いわゆる受動ビーム散乱技法を含み、第2のより細密な治療モードは動的ビーム走査技法を含む。
【0003】
受動散乱法は、粒子の経路を、照射される領域の最大深さ点まで調整するエネルギーデグレーダを用いる。エネルギーデグレーダはまた、レンジシフタホイール、補償器、および標的体積と最適に一致する線量分布を得ることを可能にする患者個別のコリメータと組み合わせて使用される。この技法の1つの主な欠点は、標的体積の上流かつ外側に位置する隣接する健全な組織もまた、高ビーム線量に晒される可能性があるということである。さらに、患者の腫瘍にかつ照射角度に特定の補償器およびコリメータを使用する必要があることにより、この処置が複雑かつ費用がかかるものとなる。
【0004】
動的ビームを送達する1つのモードは、軸zに沿って向けられる粒子の細いビームが、走査磁石によって標的体積にわたってこの軸zに対して直交する平面の上で走査される、いわゆる「PBS」法(ペンシルビームスキャニング)を含む。粒子のビームのエネルギーを変化させることにより、標的体積における種々の層に連続的に照射することができる。このように、放射線量を、標的体積の全体にわたって送達することができる。
【0005】
いわゆるペンシルビームスキャニング技法の1つの第1の方法は、スポットスキャニングと呼ばれる方法である。この方法により、標的体積の層の照射が、規定されたビーム線量をこの体積の個別の位置に送達し、位置が変化する毎にその間ビームを中断することによって向けられる。
【0006】
別のペンシルビームスキャニング法は、ビームが事前に定義されたパターンに従って連続的に走査されるいわゆる連続スキャニング法である。層の走査中、治療計画で指定されるように標的体積の正しい場所に精密な線量を送達するように、ビームの強度を瞬間毎に変化させることができる。他のより高度なビーム送達技法では、ビームの強度を調整する追加の自由度があるように、走査速度を瞬間毎に調節することができる。
【0007】
PBS技法では、均一な分布線量のみでなく非均一な線量もまた、標的体積に送達することができる。通常、隣接する健全な組織を保護しながら標的体積における線量を最大限にする「適合した」放射線量をもたらすために、種々の方向からのビームでのいくつかの治療の組合せが必要である。単一方向における放射線からもたらされる標的体積における3次元線量分布は、一様でない可能性があるが、いくつかの方向における各放射線の寄与により、標的体積に一様な線量がもたらされることが可能である。各ビームの寄与を統合することにより、標的体積において均一な線量を得ることができる、非均一の線量を堆積させるビームを送達する治療は、強度変調粒子線治療(Intensity Modulated Particle Therapy)(IMPT)と呼ばれる。治療の規格は、高度治療計画システムにより、照射対象の各層の各箇所に送達されるビーム治療の回数および方向と粒子強度とを指定する最適化アルゴリズムを用いて作成される。
【0008】
動的技法の別の例は、PBSとは異なる放射線技法であり、均一走査技法と呼ばれ、そこでは、均一な線量が層毎に標的体積に送達され、幾何学的パターンの形態を呈するビームが連続的に走査される。ビームは、標的体積の輪郭の形状を呈さないが、事前に定義された幾何学的表面領域にわたって走査され、いくつかの板を備えたコリメータにより、または患者個別のアパーチャにより、横方向の整合が得られる。
【0009】
これらの種々の技法が複雑であることにより、患者に送られる線量の検証は、非常に重要な点である。ハドロン治療装置の較正は、標準化されており、水ファントムを用いて行われ、水ファントムは主に、水が充填された大型の容器内で移動させることができる場合もあればできない場合もある検出器、一般には電離箱またはピクセルのアレイを備え、水の密度および阻止能は、人間の組織のものに類似している。この較正は、この較正に基づいて治療および治療計画が用意される前に行われる。
【0010】
電離箱は、放射線治療で一般に使用される標準線量測定検出器である。電離箱は、あらゆるタイプの流体を含む間隙によって集電極から分離されている分極電極を備えている。
【0011】
いわゆる円筒形電離箱、および平行板を備えている電離箱等、電離箱にはいくつかのタイプがある。円筒形電離箱は、概して非常に薄い円筒の形態の中心電極または軸方向電極を備え、それは、前記中心電極または軸方向電極を包囲する中空の円筒形状またはキャップ状の第2の電極から絶縁されている。平行板を備える電離箱は、分極電極を支持する第1の板を有し、この第1の板は、分極電極とは反対側に位置する1つまたは複数の集電極を備える第2の板から分離されている。それらの板は、あらゆるタイプの流体を含む間隙によって分離されている。板の上に堆積した各集電極または分極電極の周縁は、絶縁樹脂自体によって包囲されており、それ自体はガード電極によって包囲されている。
【0012】
線量測定で使用される電離箱の集電極および分極電極を分離する間隙に収容される流体は、最も多くの場合ガスである。イオン化ビームが電離箱内を通過する時、電極の間に含まれるガスがイオン化され(電離し)、イオン−電子対が形成される。電離箱の2つの電極間に電位差を与えることにより、電場が生成される。電場が存在することにより、これらのイオン−電極対が分離され、それらはそれぞれの電極に押し流され、それにより、これらの電極に電流が誘導され、それが検出され測定される。
【0013】
治療中、患者に送達される線量を、たとえば電離箱を用いて、線量が治療計画において規定される線量に対応することを確実にして、監視することも必須である。ビームのいかなる偏向も検出することも可能でなければならない。文献「A pixel chamber to monitor the beam performances in hadron therapy」、R.Boninら、Nucl. Instr. & Methods in Phys. Reas. A 519 (2004)674〜686頁は、アルミニウムが堆積しているマイラーフィルムからなる25μm厚さの陰極と、各々35μm厚さの銅の2つのフィルム間に挟装された厚さ100μmのVetroniteフィルムとからなる陽極とを備える電離箱について記載している。PCB技法を用いることにより、前記陽極は、一方の側で32×32ピクセルにセグメント化され、各ピクセルは、Vetroniteフィルムを貫通するビアによって、陽極の他方の側に位置する導電性トレースに接続されている。各トレースは、ピクセルを信号測定装置に接続する。しかしながら、このピクセル電離箱にはいくつかの欠点があり、そのうちの第1の欠点は機械的不安定性である。2つの電極間の距離は、外部電機子によって画定される。機械的変形またはマイクロフォニック効果は、2つの電極の間の距離に著しく影響を与える可能性があり、それにより、測定の正確度および精度に影響を与える。この装置の別の問題は、ビームに関して「透過性」がないことである。陽極に存在する銅のかなりの厚さにより、ビーム散乱がもたらされる。
【0014】
文献、WO2006126084は、各ピクセルを形成している銅層をグラファイト層で置き換えることによってこれらの問題を部分的に解決する。また、陽極と陰極との間に、各ピクセルを包囲する穴で貫通される中間層も設けられ、それにより複数のチャンバが形成される。取付箇所が、空気を通過させかつ陽極と陰極との間の距離を安定化させるように、陽極および陰極に中間層を固定する。それにも関らず、このタイプの検出器は、角度および長手方向のビーム散乱を常にもたらし、そのため、可能な限り最も「透過性の」、言い換えれば、その水等価厚(WET)がビームの特性を劣化させないように最小である検出器を提供することが必要となる。
【0015】
一般に、所与のエネルギーの粒子の所与のビームが通過する厚さlの材料mの一部の水等価厚は、厚さlの材料mのその部分と同じビームのエネルギーの損失をもたらす水厚さとして定義される。エネルギービームが通過する厚さlの材料mの部分の水等価厚は、以下の式によって与えられる。
【0016】
【数1】

【0017】
ここで、ρは、g/cm単位での材料mの密度であり、ρは、g/cm単位での水の密度であり、lは、cm単位での材料の厚さである。
【0018】
【数2】

【0019】
は、MeV・cm/g単位での材料mの密度に対するビームへの材料への阻止能である。
【0020】
【数3】

【0021】
は、Mev・cm/g単位での水の密度に対するビームへの水の阻止能である。
【0022】
電離箱に対する水等価厚の最小化を、電極を支持する板の厚さを低減し、これらの板に対して比較的低い平均原子量の材料を使用することによって、得ることができる。しかしながら、これらの電極支持板には厚さに限界があり、その前にいくつかの問題が発生する可能性がある。
【0023】
考慮しなければならない1つの第1の問題は、支持フィルム上の電極の静電容量の上昇である。1つの同じフィルムの2つの面の間で電荷の差が高すぎる場合、フィルムの破損に至る可能性がある。平面コンデンサの場合、静電容量は以下の式によって与えられる。
【0024】
【数4】

【0025】
ここで、εOは真空誘電率であり、εrは材料の相対誘電率であり、Aは電極の板の面積であり、dは電極の板の厚さである。
【0026】
第2の問題は、電極間の距離に影響を与えかつ測定の精度および確度を低下させる、マイクロフォニック雑音の存在である。
【0027】
さらに、支持板の厚さが低減することにより、板の機械的安定性に影響を与えることなく、1つまたは複数の集電面または分極面を1つまたは複数の導電性トレースで接続するために、ビアを板に貫通させることが困難となる。
【0028】
文献、米国特許第6,011,265号は、平行に配置されかつ互いに間隙によって分離されている複数の支持フィルムを備えた単一電離箱を備える検出器を記載している。記載されている電離箱は、
−電極DEを備える第1の支持フィルムと、
−複数の基本電極からなる集電極CEを備えた第2の支持フィルムと、
−前記第1の支持フィルムと第2の支持フィルムとの間に収容される1つまたは2つの支持フィルム10であって、絶縁材料で作製され、かつ第1の金属被覆11および第2の金属被覆12を形成するように両面が金属化され、前記金属被覆フィルム10が複数の穿孔穴を備え、それら全体が電子増倍管を形成する、支持フィルム10と、
第1の膜に位置する電極D2を分極させる第1の分極手段B1と、
各穴において、濃縮された電場が生成される電場濃縮領域を形成するように、前記第1の金属被覆11と前記第2の金属被覆12との間に電気分極電圧を設定するように適合された第2の分極手段B2であって、前記濃縮された電場が、一次電子であると考えられる、前記光電子から電子なだれを生成するように機能する、第2の分極手段B2と、
−前記電子なだれの検出を可能にするように前記集電極CEに印加される電気分極電圧を生成するように適合された第3の分極手段B3と、
を備えている。
【0029】
米国特許第6,011,265号に記載されている検出器は、2次元検出器を形成するように第2の支持フィルムの第2の面に配置されている基本陽極の第2のアセンブリも備えることができる。しかしながら、特に高強度のビーム電流を使用するハドロン治療技法では、使用されるビーム監視装置は、電荷収集の最大効率のために飽和状態で動作する電離箱である。したがって、電離箱の飽和に、したがって測定の精度に有害である可能性がある電荷再結合の現象を、電離箱内部に存在するガスのイオン化に続いて最小化することができる。結果として、このタイプのビームは、米国特許第6,011,265号に記載されているようなガスのイオン化に続いて生成される電荷の増幅がある電離箱を使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】WO2006126084
【特許文献2】米国特許第6,011,265号
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】「A pixel chamber to monitor the beam performances in hadron therapy」、R.Boninら、Nucl. Instr. & Methods in Phys. Reas. A 519 (2004)674〜686頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
したがって、ビームの散乱および劣化の現象を最小限にして、線量が正確かつ精密に患者に送達されるように放射線治療ビームに対して十分に透過性である検出器を製造することができる必要がある。前記検出器の構造はまた、容量、マイクロフォニック効果および機械的安定性の問題も考慮しなければならない。
【0033】
本発明の目的の1つは、患者に向けられるビームの線量の監視を可能にする電離箱のアセンブリを備えた、従来技術の装置の欠点を有していない線量測定装置を得ることである。
【0034】
より詳細には、本発明の目的は、可能な限り最も正確かつ精密である線量を患者に送達するように、線量測定装置の水等価厚を最小限にすることである。
【0035】
本発明のさらなる目的は、特に、電離箱の支持板の固有容量をなくすかまたは低減しながら、これらの支持板の厚さを低減することにより、優れた検出動的特性を得ることである。
【0036】
本発明のさらなる目的は、集電極が、強電場に晒された厚さの薄いこれらの支持板の変形を防止することにより、それらの表面全体にわたって均一の応答を維持する装置を提供することである。
【0037】
本発明のさらなる目的は、ビームによって堆積した線量とこの同じビームの磁場とをともに精密に測定することができる装置を提供することである。
【0038】
本発明のさらなる目的は、受動送達技法および動的技法の両方を用いて得られるビームの特性の測定を可能にする「汎用的な」装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0039】
第1の態様によれば、本発明は、放射線源によって生成されかつ標的に送達されるイオン化ビームのオンライン監視装置に関し、前記装置は、平行に配置されかつ間隙によって互いに分離されている複数の支持フィルムを備え、前記支持フィルムは、イオン化ビームの中心軸に対して垂直に配置され、かつ少なくとも1つが100μm以下の厚さの支持フィルムを使用して形成される連続した電離箱を形成し、支持フィルムの各々は、その2つの面に、支持フィルムの各々の2つの面が同じ極性を有するような電位に設定された1つまたは複数の電極を有し、支持フィルムは、連続した支持フィルムが交互の分極を有するように配置され、前記装置は、厚さが100μm以下である支持フィルムを使用して形成された前記電離箱の内側に存在する静電気力を平衡させることができる追加の手段をさらに有している。
【0040】
好ましくは、本発明の装置において、少なくとも1つの電離箱は、厚さが、20μm未満、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である支持フィルムを使用して作製される。
【0041】
好ましくは、本発明の装置において、追加の手段は、面の各々に集電極を備える前記支持フィルムに対して平行でありかつそれに面して配置され、かつ厚さが100μm以下である支持フィルムを使用して作製される電離箱の形成に関与する、剛性の板を備え、剛性の板は、電離箱の内側に存在する静電気力を平衡させることができる電位に置かれた少なくとも1つの電極をさらに備えている。
【0042】
好ましくは、本発明の装置において、追加の手段は、面の各々に分極電極を備える支持フィルムに対して平行でありかつそれに面しており、かつ厚さが100μm以下である支持フィルムを使用して形成される前記電離箱の形成に関与する、剛性または可撓性の板、好ましくは可撓性の板を備え、剛性または可撓性の板は、電離箱の内側に存在する静電気力を平衡させることができる電位に設定された少なくとも1つの電極をさらに備えている。
【0043】
好ましくは、本発明の装置において、各支持フィルムの間の間隙は一定である。
【0044】
好ましくは、本発明の装置において、厚さが100μm以下である支持フィルムのうちの少なくとも1つは、その面の少なくとも1つに電極、好ましくは、支持フィルムの前記電極を備えている側と同じ側に位置する導電性トレースを介して測定電子回路に接続された集電極を備えており、それにより、前記支持フィルムの機械的安定性が悪影響を受けない。
【0045】
好ましくは、本発明の装置において、本発明の装置は、2つの面に分極電極を有する支持フィルムと交互である、2つの面に集電極を有する支持フィルムを備えている。
【0046】
好ましくは、本発明の装置において、各集電極は、支持フィルムの前記集電極を備える側と同じ側に位置する導電性トレースによって測定電子回路に接続されている。
【0047】
好ましくは、本発明の装置において、いくつかの集電極は、平行に配置されたストリップの形状を呈している。
【0048】
別の態様によれば、本発明は、イオン化ビームを測定するように意図された装置に関し、本装置は、2つの面を有するとともに、厚さが100μm以下、好ましくは20μm未満、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、最も好ましくは1μm以下である、支持フィルムを備え、支持フィルムは、その面のうちの少なくとも1つに電極、好ましくは、支持フィルムの電極を備える側と同じ側に位置する導電性トレースによって測定電子回路に接続される集電極を備えている。
【0049】
好ましくは、本発明の装置において、電極はディスクの形状を呈し、その周縁は、支持フィルムの残りの部分の上に延在する保護層から間隙または絶縁樹脂によって分離され、ディスク状電極は、前記支持フィルムのディスク状電極を備える側と同じ側に位置するトレースによって測定電子回路に接続され、トレースは、絶縁樹脂によってコーティングされ、絶縁樹脂は、保護層の上に延在する導電性材料の薄層によってコーティングされている。
【0050】
別の態様によれば、本発明は、放射線源によって生成されかつ標的に送達されるイオン化ビームのオンライン監視方法に関し、本方法は、
a)平行に配置されかつ間隙によって互いに分離される複数の支持フィルムを提供するステップであって、支持フィルムが、イオン化ビームの中心軸に対して垂直に配置され、かつ少なくとも1つが100μm以下の厚さの支持フィルムを使用して形成される連続した電離箱を形成し、支持フィルムの各々が、その2つの面に1つまたは複数の電極を有する、ステップと、
b)支持フィルムの各々を、支持フィルムの各々の2つの面が同じ極性を有するような電位に配置するステップと、
c)支持フィルムを、連続した支持フィルムが交互の分極を有するように配置するステップと、
d)厚さが100μm以下である支持フィルムによって形成された電離箱の内側に存在する静電気力を確定するステップと、
e)追加の手段によって静電気力を平衡させるステップと、
を含む。
【0051】
好ましくは、本発明の方法において、少なくとも1つの電離箱は、厚さが、20μm未満、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である支持フィルムを使用して作製される。
【0052】
好ましくは、本発明の方法において、厚さが100μm以下である支持フィルムの少なくとも1つは、その面の少なくとも1つに電極、好ましくは、支持フィルムの前記電極を備えている側と同じ側に位置するトレースによって測定電子回路に接続された集電極を備え、それにより、前記支持フィルムの機械的安定性が悪影響を受けない。
【0053】
好ましくは、本発明の方法において、追加の手段は、前記電離箱の内側に存在する静電気力を平衡させることができる電位に置かれた少なくとも1つの電極を備える剛性または可撓性の板を備える。
【0054】
好ましくは、本発明の方法において、平衡させるステップは、支持フィルムに適切な電圧を印加することをさらに含む。
【0055】
別の態様によれば、本発明は、受動送達技法を用いて得られる粒子のビームのオンライン監視用の上述したような装置の使用に関する。
【0056】
別の態様によれば、本発明は、動的送達技法を用いて得られる粒子のビームのオンライン監視用の上述したような装置の使用に関する。
【0057】
以下の図面は、例示の目的で与えられるものであり、決して、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。また、種々の図面の比率は比例尺で描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】端部に位置する支持フィルムのうちの一方が可撓性であるか剛性であるかに応じて1つまたは2つの一体型電離箱を備える本発明の第1の実施形態を示す図である。
【図2】測定電子回路に接続された集電極を備える支持フィルムの一面を示す図である。
【図3】測定電子回路に接続されたディスク状の集電極を備える支持フィルムの一面を示す図である。
【図4】すべての支持フィルムが可撓性である本発明の第2の実施形態を示す図である。
【図5】2つの一体型電離箱とストリップ形態の2つの電離箱とを備える本発明の第3の実施形態を示す図である。
【図6】一体型電離箱の2つの対とストリップ電離箱の2つの対とを備える本発明の第4の実施形態を示す図である。
【図7】一体型電離箱と、ストリップ電離箱と、2つの基準電離箱とを備える本発明の第5の実施形態を示す図である。
【図8】一体型電離箱と、ストリップ電離箱と、基準電離箱と、ディスク状集電極を備える電離箱とを備える本発明の第6の実施形態を示す図である。
【図9】両側に位置するイオン化の2つのアセンブリによって包囲された2つの基準電離箱と、ストリップ電離箱および一体型電離箱を備えた電離箱の第1のアセンブリと、ストリップ電離箱を備える第2のアセンブリと、ディスク状集電極を備える電離箱とを備える第7の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、少なくとも2つの電離箱を備える本発明の線量測定装置を示し、電離箱は、1つまたは複数の電極を支持しかつ「支持フィルム」10、20と呼ばれる、少なくとも2つの可撓性フィルムを含み、可撓性フィルムは、マイラーとしてより知られる二軸配向ポリエチレンテレフタレート、またはカプトンとしてより知られるポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリットイミド等、優れた可撓性および優れた耐放射線性を有する、平均原子量が20未満である低密度の材料から作製され、これらの材料は、決して、本発明を限定するものではない。好ましくは、少なくとも2つの支持フィルムは、1マイクロメートルと1ミリメートルとの間、より好ましくは1マイクロメートルと100マイクロメートルとの間、さらに好ましくは1マイクロメートルと20マイクロメートルとの間の厚さを有している。
【0060】
第1の電離箱を形成する少なくとも2つの支持フィルム10、20は、2つの面が、電極として作用する導電性材料の層でコーティングされている。好ましくは、前記導電性材料は、1ナノメートルと1ミクロンとの間、好ましくは100ナノメートルと1ミクロンとの間、より好ましくは100ナノメートルと500ナノメートルとの間、より好ましくは100ナノメートルと500ナノメートルとの間の導電性材料の層を得るように堆積技法によって支持フィルムの上に堆積する。好ましくは、前記導電性材料は、金属またはグラファイト、より好ましくは金属である。
【0061】
最先端のかつ一般にPCB技法を用いて得られる既知の支持板と比較して、本発明の支持フィルムは、ビームの散乱および特性の劣化が小さいという利点を有している。それにも関らず、最先端で一般に使用されているものに比較して支持フィルムの厚さが低減することにより、新たな問題が発生し、1つの第1の問題は、信号測定装置に信号を戻すトレースの位置決めであり、第2の問題はフィルムにおける主な容量効果であり、第3の問題は、電位に晒された時のフィルムの振動である。
【0062】
従来、集電極は、電極の表面と支持板との間に配置された絶縁層を貫通するビアによってトレースに接続されており、前記トレースは、信号を測定機器に戻す。厚さが最小化されることが望まれる支持フィルムの場合、この構成は望ましくない。図2は、動的技法を用いて送達されるビームを測定するように意図された集電極11を備える、本発明の支持フィルムを示し、このタイプの電極は「一体型集電極」と呼ばれ、前記集電極11は、支持フィルムの電極11と同じ側に位置するトレース13によって測定電子回路9に接続されている。前記トレースは、電極を堆積させるために用いられるものと同じ堆積技法を用いて各支持フィルムの上に堆積する。好ましくは、各集電極およびそれを測定装置に接続するトレースは、集電極の周縁を包囲している真空14または絶縁樹脂14によって保護層12から分離されている。図3は、受動技法によって送達されるビームを測定するように意図されたディスク状電極を備えた支持フィルムを示す。この集電極のトレースはビームに晒されてはならず、さもなければ、このビームの磁場に応じた測定値を提供することになるため、この前記トレースは、絶縁樹脂の薄層でコーティングされており、薄層自体は、保護層の上に延在する導電性材料の薄層でコーティングされている。
【0063】
コンデンサの静電容量は、コンデンサの面積に正比例し、コンデンサの板を分離する距離に反比例する。一方の面に集電極を備え他方の面に分極電極を備える支持フィルムを、コンデンサになぞらえることができる。本発明の装置におけるような厚さを有する支持フィルムの場合、フィルムの2つの面に位置する2つの電極の間の電位差により、フィルムの破損の危険性が非常に高い。フィルムの破損は、コンデンサの一方の側に非常に多くの電荷が蓄積した場合にコンデンサの2つの絶縁板の間に発生する放電であり、放電はコンデンサの絶縁層を破壊する。
【0064】
また、支持フィルムにおける主な容量効果により、測定電子機器への電荷の伝送が遅延し、検出器の応答時間が増大する結果となる。したがって、ビームによって堆積した線量の検出が、必要な線量がすでに患者に送られた時点で開始されることになり、かつ健全な組織を損傷する過剰な線量が送られるという、危険性がある。
【0065】
図1に示す装置では、支持フィルムにおける電極の配置がこれらの静電容量問題を解決する。各支持フィルム10、20は、その2つの面に、同じ分極を有する電極を備えている。第1の支持フィルム10は、その2つの面に、分極が好ましくは接地に近い集電極11、15を備えている。第2のフィルム20の2つの面は、各々、好ましくは正電位または負電位に置かれた発電機にトレースによって接続されている分極電極21、22を備えている。発電機に分極電極を接続する各導電性トレースは、支持フィルムの前記分極電極と同じ側に位置している。このように、1つの同じ支持フィルムの2つの面が同様に分極されている2つの支持フィルム10、20が得られ、それにより、支持フィルムの両側で容量効果を大幅に低減することができる。
【0066】
各支持フィルム10、20は、支持体、たとえばエポキシ樹脂の支持体に保持され、前記支持体は、各支持フィルムの優れた機械的引張および優れた絶縁を保証する。2つの支持フィルムは、それらの間に間隙が生成されるように固定されている。支持体は、たとえば、電気抵抗が高いスペーサを備え、その寸法は、非常に小さい公差で較正される。支持フィルムを分離する間隙は、高い保証された精度を有していなければならず、それは、電場、したがって静電気力が、印可される電圧に、かつ各支持フィルム間の距離によって決まるためである。
【0067】
有利には、比較的薄い可撓性支持フィルムを備えた検出器の製造はまた、マイクロフォニック効果も考慮しなければならない。本発明の支持フィルム程度に薄い2つの支持フィルム間に生成される電位の差は、これらの支持フィルムを座屈させかつ/または振動させる効果を有しており、それにより、ビームが通過する2つの支持フィルム間に含まれる間隙のイオン化によって生成される電荷の検出の精度が低下し、それは、これら2つの支持フィルム間の間隙が連続的に変化するためである。同様に、外部雑音もまた、前記電離箱に対してマイクロフォニック効果をもたらし、したがって、装置はまた、外部雑音による寄与を最小限にしなければならない。
【0068】
このマイクロフォニック効果を低減するため、より詳細には、集電極のその表面全体にわたる均一な応答を得るため、2つの支持フィルム10、20によって形成された電離箱1の両側に、2つの板またはフィルム16、18が配置されている。これらの2つの板またはフィルム16、18は、電離箱1の支持フィルム10、20の分極によって生成される静電気力FE1と平衡する静電気力FE2を設定するように選択された電位に置かれた電極17、19を備えている。
【0069】
好ましくは剛性の第1の板16が、電離箱1の外側に向かって位置する集電極15に面しかつそれと平行に配置されている。この板16は電極17を備え、電極17は、支持フィルム10に印加され、かつ電離箱1の内側に向かって位置している集電極11と分極電極21との間の極性の差によって設定される電場からもたらされる、静電気力FE1を平衡させるように選択された電位に置かれている。好ましくは、第1の板16の上に含まれる電極17を、支持フィルム10の上に含まれる電極15から分離する間隙は、電離箱1の内側に収容された集電極11および分極電極21を分離する間隙に等しい。より好ましくは、板16の電極17に印加された電圧は、支持フィルム20の分極電極21、22に印加された電圧に等しい。
【0070】
剛性であってもなくてもよい第2の板18は、分極電極21、22を備える支持フィルム20に面しかつ平行に配置されている。この第2の板18は、支持フィルム20の電極21、22の分極によって生成される電気力FE1を平衡させるように選択された電位に置かれる電極19を備えている。この第2の板18の上に含まれる電極19が集電極でない場合、この板18は剛性である必要はなく、したがって、この電極19は電極22とともに電離箱を形成しない。
【0071】
支持フィルム10が、その2つの面に集電極11、15を備えるため、ビームによるガスのイオン化によって生成される電荷が、このフィルムの2つの面において収集される。1つの同じフィルムの各面における電荷の相違が、わずかな容量効果に至る可能性があり、測定電子回路における測定時間を妨げる可能性がある。この不都合を回避するために、2つの集電極11、15において生成されかつガスのイオン化からもたらされる電気信号は、好ましくは、測定電子回路に送られる前に物理的に合計される。したがって、この同じフィルムの各側に2つの集電極11、15が位置している支持フィルム10は、2つの電離箱に共通しており、第1の電離箱1は2つの支持フィルム10、20によって形成され、第2の電離箱2は、集電極および剛性の板16を備える支持フィルム10によって形成されている。したがって、この場合、これらの前記電離箱1、2は同じ間隙を有するべきであることが好ましい。これは、支持フィルム10の集電極15に面して位置している板16が剛性の板であり、それによりマイクロフォニック効果が低減し、正確な精密な線量測定に必要な2つの電離箱1、2における一定の間隙が保証される。
【0072】
図4は、剛性の板16の代りに、2つの面に分極電極を有している支持フィルム30が使用されており、この支持フィルムが、好ましくは、2つの面に分極電極を備えている支持フィルム20と同一である、本発明の一実施形態を示す。これは、これらの2つの電離箱に共通し、かつ同じ量の電荷を収集する集電極を備えた、2つの電離箱1、2のアセンブリを与える。2つのフィルム18、40は、それぞれ、好ましくは集電極の電位と等しいかまたはそれに近い電位に置かれた電極19および41を備えている。これらのフィルム18、40は、電離箱の前記アセンブリの両側に配置され、それらの電極は、たとえば負電位に置かれた分極電極を備える支持フィルム10、30に印加された静電気力FE1に対して反対の方向の平衡させる静電力FE2を生成する。電離箱1、2の前記アセンブリの両側に位置するフィルム18、40は、必ずしも剛性でなくてもよく、それは、これらのフィルム18、40および対向して面している支持フィルム20、30によって形成される空間において、電荷が収集されないためである。
【0073】
先の場合のように、電離箱1および2の集電極に収集される信号は、合計され、測定電子回路、たとえば電荷積分器に向かって送られる。
【0074】
図5は、いわゆるペンシルビームスキャニング技法に対して専用である本発明の別の実施形態を示す。装置は、平行の電離箱のアセンブリを備え、各電離箱は、集電極または分極電極として作用する導電性材料の薄層が蒸着プロセスによって堆積する、可撓性の薄い支持フィルムを備えている。蒸着によって電極が堆積する2つの支持フィルム40、18は、好ましくは接地され、電離箱の前記アセンブリの両側に平行に配置される。電離箱のアセンブリは、電離箱の2つのサブアセンブリを備えている。電離箱の第1のサブアセンブリは、ビームによって堆積した線量を測定する2つの一体型電離箱203、204を備えている。電離箱のこの第1のサブアセンブリは、
−2つの面に分極電極を備えた第1の支持フィルム105と、
−2つの面に集電極を備えた第2の支持フィルム104であって、電離箱の第1のサブアセンブリの2つの電離箱203、204に共通しており、集電極が、支持フィルムの少なくとも90%を覆い、ガード電極によって包囲され、かつその構造が図2に示すものである、第2の支持フィルム104と、
−2つの面に分極電極を備えた第3の支持フィルム103であって、電離箱の第1のサブアセンブリの電離箱203と、かつ電離箱の第2のサブアセンブリの電離箱202のうちの1つと共通している第3の支持フィルム103と、
を備えている。
【0075】
前記集電極および分極電極は、最大量の電荷を生成し収集するようにそれらの支持フィルムの少なくとも90%を覆う領域にわたって延在する。2つの電離箱201、202の第2のサブアセンブリは、
−前記支持フィルム103と、
−ビーム磁場を測定するように、集電極がストリップの形態で堆積し、絶縁材料によってこれらの電極から分離された保護層によって包囲された第2の支持フィルム102であって、支持フィルムの一面の各ストリップが、前記第2の支持フィルムの同じ側に位置する導電性トレースによって測定電子回路に接続される、第2の支持フィルム102と、
−2つの面に分極電極を備える第3の支持フィルム101と、
を備えている。
【0076】
電離箱203、204の第1のサブアセンブリは、電離箱201、202の第2のサブアセンブリに隣接して位置し、第1のサブアセンブリの1つの電離箱203が、電離箱の第2のサブアセンブリの電離箱202と共通する支持フィルム103を有している。電離箱の第1のサブアセンブリは2つの一体型電離箱203、204を備え、それらは、一方の側に分極電極を備えている支持フィルム103、105と2つの電離箱203、204に共通する支持フィルム104とによって形成され、支持フィルム104は、各面に集電極を備えている。
【0077】
好ましくは、本発明の装置の電離箱のアセンブリは、図6に示すように電離箱の第3のサブアセンブリおよび第4のサブアセンブリを備えている。好ましくは、一体型電離箱203、204、205、206は、装置の内側に向かって位置し、ストリップの形態の電極を備えた電離箱201、202、207、208は、装置の端部に向かって位置している。この配置により、ビームによって堆積した線量を測定する一体型電離箱203、204、205、206に安定した精密な信号があることが可能である。好ましくは、集電極を備えているか否かに関らずかつ各側が接地された支持フィルムは、各側に分極電極を備えた支持フィルムと交互になっている。電離箱のこの冗長性により、測定の繰返しが可能となり、装置が正しく機能し、それにより患者に送達される線量の最大の確実な測定を保証することが確実になる。支持フィルムのうちの1つが破損した場合に、患者に送られる線量を制御することが常に可能である。
【0078】
図6は、2つの隣接する一体型電離箱203、204、205、206の2つのサブアセンブリを示し、そこでは、
−支持フィルム104が2つの電離箱203、204に共通しており、その2つの面において、集電極を備えており、
−支持フィルム105が2つの電離箱204、205に共通しており、その2つの面の各々は分極電極を備えており、
−支持フィルム106が2つの電離箱205、206に共通しており、その2つの面の各々に集電極を備えている。
【0079】
2つの電離箱201、202の1つのサブアセンブリは、共通して、2つの面の各々にストリップ形態の集電極を備える支持フィルム102を有している。このサブアセンブリの1つの電離箱202は、一体型電離箱203に隣接して配置され、この電離箱202に共通して、2つの面の各々に分極電極を備える支持フィルム103を有している。
【0080】
2つの電離箱207、208の第2のサブアセンブリは、共通して、2つの面の各々にストリップ形態の集電極を備える支持フィルム108を有している。明確にするために、電極に接続された2つの測定電子装置のみを図示している。このサブアセンブリの1つの電離箱207は、一体型電離箱206に隣接して配置され、この電離箱206と共通して、2つの面の各々に分極電極を備える支持フィルム107を有している。最後に、電離箱のアセンブリの端部に位置する電離箱201、208の外側に向かって配置されている分極電極に面している電極を備えた1つの支持フィルム18、40が、支持フィルム101、103、105、107、109の電極の分極のために電気力の平衡を可能にし、アセンブリの各電離箱の支持フィルムを安定化させることに寄与する。
【0081】
2つの電離箱301、302のさらなるサブアセンブリを、図7に示すように電離箱の前記アセンブリに挿入することができる。好ましくは、電離箱301、302のこのサブアセンブリは、装置の中央の、一体型電離箱203、204および205、206の2つのサブアセンブリの間に配置されている。電離箱301、302のこのさらなるサブアセンブリは、電極が表面の2つの側に堆積する支持フィルムを備え、これらの電極は、装置の内側の静電場を平衡させ、水ファントムにおいて、前記ファントムにおける測定の時点で粒子の流れの全体を阻止することが望まれる非走査ビームを測定する場合に基準信号を提供する集電極として使用されることが可能である。水ファントムにおける従来の測定の場合、その測定を乱すことなく粒子の流れに基準電離箱を配置することは困難である。装置に1つまたは複数の基準電離箱がある場合、前記測定はもはや乱されない。
【0082】
好ましくは、ビームが通過し、かつ装置の入力に配置される、電離箱201、202の第1のサブアセンブリは、ビームの軸に対して直交する軸xに沿って向けられたストリップ形態の集電極を備えている。ビームが通過する電離箱207、208の最後のサブアセンブリは、ビームの軸および前記軸xに対して直交する軸yに沿って向けられたストリップ形態の集電極を備えている。
【0083】
この装置を、放射線ユニットの出力に配置することができ、それは、その水等価厚が低いためにビーム特性をほとんど乱さず、角散乱および長手方向散乱の影響を最小限にする。たとえば、たとえば2.5μm厚さの二軸配向ポリエチレンテレフタレート(マイラー)からなり、かつたとえば厚さ200nmの金またはアルミニウムの薄層で2つの面がコーティングされている13の支持フィルムを備えた、図6の最後の例を考慮することにより、本発明の検出器の水等価厚を計算することができ、各支持フィルムは、例えば5mmの空隙によって互いに分離されている。この本例の種々のパラメータを、装置のこの例を通過する200MeVのビームに対して表1に再現する。
【0084】
【表1】

【0085】
本発明の実施形態のこの例は、13のマイラーフィルム、26の金の層および12の空隙を備えている。したがって、前記検出器の水等価厚は、約6.13cmの検出器長に対して(13*2, 25E−04)+(26*1, 94E−04)+(12*5, 20E−04)=0.014cmである。種々の材料の厚さは単に例として与えられており、本発明を実施するために、場合によっては他の厚さおよび他の材料が選択される。同様に、いくつかの支持フィルムは、選択される厚さおよび材料に関して互いに異なっていてもよい。
【0086】
いわゆる受動送達技法を用いて得られるビームの磁場および線量の測定を可能にする装置を、先の実施形態で説明した装置のうちの1つと同じ構造を再現することにより、かつ集電極が支持フィルムの表面の略すべてを覆う一体型電離箱を支持フィルムの上に含まれる集電極がディスク状である電離箱で置き換えることにより得ることができる。
【0087】
図8は、動的技法を用いて得られる粒子のビームの線量測定と、受動技法を用いて得られるビームの線量測定との両方を可能にする、本発明の別の実施形態を示す。図8に示すこの実施形態は、一体型電離箱203、204、205、206と、集電極がディスク状である電離箱401、402、403、404との両方を備えている。この実施形態では、2つの一体型電離箱の2つのサブアセンブリとディスク状集電極を備えた2つの電離箱の2つのサブアセンブリとが、装置の中央に向かって、たとえば2つの基準電離箱301、302のアセンブリに対して対称的に配置されている。前記装置は、ストリップの形態の電極を備える電離箱201、202、207、208も計数して14の電離箱のアセンブリを備えることができる。装置はまた、電離箱のこのアセンブリの両側に配置され、かつ静電気力の平衡および各支持フィルムの間の距離の安定化を可能にする、2つの支持フィルム18、40もまた備えている。
【0088】
電離箱および支持板の数を低減する一方で、装置の冗長特性と動的方法および受動送達方法の両方で得られるビームを測定する可能性を維持するために、一体型電離箱およびサイズが縮小した電極を備えた電離箱の支持フィルム上に含まれる各集電極が、それ自体の測定電子回路に接続される。本発明の一実施形態を図9に示し、それは、
・ストリップ形態の集電極を備えた2つの第1の電離箱201、202であって、
−2つの面に分極電極を備え、各電極が電圧発生器HV2に接続されている、第1の支持フィルム101と、
−第1の支持フィルム101に面して配置されるとともに、2つの面に同様に配置されたストリップ形態の集電極を備える第2の支持フィルム102であって、支持フィルムの一方の面の各ストリップおよび他方側の各ストリップが1つの同じ測定電子回路に接続されている、第2の支持フィルム102と、
−第2の支持フィルム102に面して配置されるとともに、2つの面に分極電極を備える第3の支持フィルム103であって、各電極が電圧発生器HV2に接続されている、第3の支持フィルム103と、
によって形成される、第1の電離箱201、202と、
・第3の電離箱501であって、
−前記第3の支持フィルム103と、
−第3の支持フィルム103に面して配置されるとともに、支持フィルム103に面している側において一体型集電極を備え、一体型集電極がそれ自体の測定電子回路に接続されている、第4の支持フィルム119と、
によって形成される第3の電離箱501と、
・第4の電離箱502であって、
−第4の支持フィルム119に面して配置されるとともに、2つの面に、電圧発生器HV3に接続された分極電極を備える第5の支持フィルム120と、
−第5の支持フィルム120に面する側に一体型集電極を備え、一体型集電極がそれ自体の測定電子回路に接続されている、第4の支持フィルム119と、
によって形成される、第4の電離箱502と、
・第5の基準電離箱301および第6の基準電離箱302であって、
−前記第5の支持フィルム120と、
−第5の支持フィルム120に面して配置されるとともに、2つの面に集電極を備える第6の支持フィルム111と、
−第6の支持フィルム111に面して配置されるとともに、高電圧発生器HV2に接続された分極電極を備える第7の支持フィルム121と、
によって形成される、第5の基準電離箱301および第6の基準電離箱302と、
・第7の電離箱503であって、
−前記第7の支持フィルム121と、
−第7の支持フィルム121に面して配置されるとともに、ガードによって包囲されるディスク状集電極を備える第8の支持フィルム122であって、電極が、絶縁樹脂によってコーティングされたトレースによってそれ自体の測定電子回路に接続され、電極が前記第7の支持フィルムに面している、第8の支持フィルム122と、
によって形成される、第7の電離箱503と、
・第8の電離箱504であって、
−第8の支持フィルム122に面して配置されるとともに、2つの面に分極電極を備える第9の支持フィルム123と、
−ガードによって包囲されているディスク状集電極を備える前記第8の支持フィルム122であって、電極が、絶縁樹脂によってコーティングされているトレースによってそれ自体の測定電子回路に接続されており、電極が前記第9の支持フィルムに面している、第8の支持フィルム122と、
によって形成される、第8の電離箱504と、
・ストリップ形態の電極を備える第9の電離箱207および第10の電離箱208であって、
−2つの面に分極電極を備える前記第9の支持フィルム123であって、各電極が電圧発生器HV3に接続されている、第9の支持フィルム123と、
−第9の支持フィルム123に面して配置されるとともに、2つの面に同様に配置されたストリップ形態の集電極を備える第10の支持フィルム108であって、支持フィルムの一方の面の各ストリップと支持フィルムの面の他方の側のその反対に面しているストリップとが、1つの同じ測定電子回路に接続されている、第10の支持フィルム108と、
−第10の支持フィルム108に面して配置されるとともに、2つの面に分極電極を備える第11の支持フィルム109であって、各電極が電圧発生器HV3に接続されている、第11の支持フィルム109と、
から形成される、第9の電離箱207および第10の電離箱208と、
を備えている。これらの電離箱のアセンブリは、2つの支持フィルム40、18の間に含まれ、各支持フィルムは、予め集電極と同じ電位に置かれかつ第1の電離箱および第10の電離箱の支持フィルムに面して配置されている、電極を備えている。
【0089】
したがって、この実施形態は全体的に、13の支持板を備え、約6cmの寸法でありかつ種々のタイプのビームの線量および磁場を測定するために使用することができる装置に対して、0.014cmの水等価厚を有する。単一の高電圧発生器が分極電極のすべてを分極させるのに十分であるが、本発明のこの実施形態は、電離箱の冗長性を有し、かつ2つの発生器のうちの一方に問題がある場合、または分極電極を備える支持フィルムのうちの1つが破損した場合に線量の測定を確実にするために、上述した方法で分極電極に接続された2つの高電圧発生器HV2、HV3を備えている。
【符号の説明】
【0090】
1 電離箱
2 電離箱
9 測定電子回路
10 支持フィルム
11 集電極
12 保護層
13 トレース
14 真空または絶縁樹脂
15 集電極
16 第1の板
17 電極
18 第2の板
19 電極
20 支持フィルム
21 分極電極
22 分極電極
30 支持フィルム
40 フィルム
41 電極
101 第3の支持フィルム
102 第2の支持フィルム
103 第3の支持フィルム
104 第2の支持フィルム
105 第1の支持フィルム
106 支持フィルム
107 支持フィルム
108 支持フィルム
109 支持フィルム
111 第6の支持フィルム
119 第4の支持フィルム
120 第5の支持フィルム
121 第7の支持フィルム
122 第8の支持フィルム
123 第9の支持フィルム
201 電離箱
202 電離箱
203 電離箱
204 電離箱
205 電離箱
206 電離箱
207 電離箱
208 電離箱
301 電離箱
302 電離箱
401 電離箱
402 電離箱
403 電離箱
404 電離箱
501 電離箱
502 電離箱
503 電離箱
504 電離箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源によって生成されかつ標的に送達されるイオン化ビームのオンライン監視装置であって、平行に配置されかつ間隙によって互いに分離されている複数の支持フィルムを具備し、前記支持フィルムは、前記イオン化ビームの中心軸に対して垂直に配置され、かつ連続した電離箱であって、少なくとも1つが100μm以下の厚さの支持フィルムを使用して形成された電離箱を形成し、前記支持フィルムの各々が、その2つの面に、前記支持フィルムの各々の前記2つの面が同じ極性を有するような電位に設定された1つまたは複数の電極を有し、前記支持フィルムは、前記連続した支持フィルムが交互の分極を有するように配置され、厚さが100μm以下である支持フィルムを使用して形成された前記電離箱の内側に存在する静電気力を平衡させることができる追加の手段をさらに具備する装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電離箱が、厚さが、20μm未満、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である支持フィルムを使用して形成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記追加の手段は、面の各々に集電極を備える前記支持フィルムに対して平行でありかつそれに面しており、かつ厚さが100μm以下である支持フィルムを使用して形成された前記電離箱の形成に関与している、剛性の板を備え、前記剛性の板が、前記電離箱の内側に存在する静電気力を平衡させることができる電位に置かれた少なくとも1つの電極をさらに備えている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記追加の手段が、面の各々に分極電極を備える前記支持フィルムに対して平行でありかつそれに面して配置され、かつ厚さが100μm以下である支持フィルムを使用して形成された電離箱の形成に関与する、剛性または可撓性の板、好ましくは可撓性の板を備え、前記剛性または可撓性の板が、前記電離箱の内側に存在する静電気力を平衡させることができる電位に置かれた少なくとも1つの電極をさらに備えている、請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
各支持フィルムの間の前記間隙が一定である、請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
厚さが100μm以下である前記支持フィルムのうちの少なくとも1つが、その面の少なくとも1つに電極、好ましくは、前記支持フィルムの前記電極を備えている側と同じ側に位置するトレースによって測定電子回路に接続された集電極を備えている、請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
2つの面に分極電極を有する支持フィルムと交互である、2つの面に集電極を有する支持フィルムを具備する、請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
各集電極が、前記支持フィルムの前記集電極を備える側と同じ側に位置するトレースによって測定電子回路に接続されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
いくつかの集電極が、平行に配置されたストリップの形状を呈している、請求項6〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
イオン化ビームを測定するように意図された装置であって、2つの面を有するとともに、厚さが100μm以下、好ましくは20μm未満、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、最も好ましくは1μm以下である、支持フィルムを備え、前記支持フィルムが、少なくとも1つの面に電極、好ましくは、前記支持フィルムの前記電極を備える側と同じ側に位置するトレースによって測定電子回路に接続される集電極を備えている、装置。
【請求項11】
前記電極がディスク状であり、その周縁が、前記支持フィルムの残りの部分の上に延在する保護層から間隙または絶縁樹脂によって分離され、前記ディスク状電極が、前記支持フィルムの前記ディスク状電極を備える側と同じ側に位置するトレースによって測定電子回路に接続され、前記トレースが、絶縁樹脂によってコーティングされ、前記絶縁樹脂が、前記保護層の上に延在する導電性材料の薄層によってコーティングされている、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
放射線源によって生成されかつ標的に送達されるイオン化ビームのオンライン監視方法であって、
a)平行に配置されかつ間隙によって互いに分離される複数の支持フィルムを提供するステップであって、前記支持フィルムが、前記イオン化ビームの中心軸に対して垂直に配置され、かつ連続した電離箱であって、少なくとも1つが100μm以下の厚さの支持フィルムを使用して形成された電離箱を形成し、前記支持フィルムの各々が、その2つの面に1つまたは複数の電極を有する、ステップと、
b)前記支持フィルムの各々を、前記支持フィルムの各々の前記2つの面が同じ極性を有するような電位に設定するステップと、
c)前記支持フィルムを、前記連続した支持フィルムが交互の分極を有するように配置するステップと、
d)厚さが100μm以下である支持フィルムを使用して形成された前記電離箱の内側に存在する静電気力を確定するステップと、
e)追加の手段によって前記静電気力を平衡させるステップと、
を含む方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの電離箱が、厚さが、20μm未満、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である支持フィルムを使用して形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
厚さが100μm以下である前記支持フィルムの少なくとも1つが、その面の少なくとも1つに電極、好ましくは、前記支持フィルムの前記電極を備えている側と同じ側に位置するトレースによって測定電子回路に接続された集電極を備える、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記追加の手段が、前記電離箱の内側に存在する前記静電気力を平衡させることができる電位に設定された少なくとも1つの電極を備える剛性または可撓性の板を備える、請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記平衡させるステップが、前記支持フィルムに適切な電圧を印加することをさらに含む、請求項12〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
受動送達技法を用いて送達される粒子のビームのオンライン監視のための請求項1〜11のいずれかに記載の装置を使用する方法。
【請求項18】
動的送達技法を用いて送達される粒子のビームのオンライン監視のための請求項1〜11のいずれかに記載の装置を使用する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2013−506823(P2013−506823A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531435(P2012−531435)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064601
【国際公開番号】WO2011/039330
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(509125981)
【Fターム(参考)】