説明

エネルギー変換機器のシミュレーション方法及びエネルギー変換機器のシミュレーションシステム

【課題】エネルギー変換機器を選択し、その動作をシミュレートし、最適な機器、最適な制御の選定を可能とする。
【解決手段】シミュレーション装置は、入力部11で、顧客のニーズをニーズ一覧表31から選定し、機器選択部12では外来業者と交信して充実、最新にしている、機器データ記憶部32の機器データを参照しながら機器を選択し、プログラム選択部13では類似機器で類似な制御を行っている場所制御装置7,70と交信して、充実、最新にしている制御プログラム記憶部33の制御プログラムから選定し、シミュレーション部14では選定された制御プログラムにしたがって、機器データと、制御プログラム記憶部33に記憶されている計算式を参照しながらシミュレーションを実施する。条件、プログラムを取替えながら複数回のシミュレーションを実施して最適な機器、制御を選定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客の要求仕様によって、エネルギーの供給、利用に関係するエネルギー変換換機器を選択し、条件やプログラムに従って動作をシミュレートし、結果を出力するエネルギー変換機器のシミュレーション方法及びエネルギー変換機器のシミュレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産設備を備えた工場やその他の事業所等を含む産業分野や、住宅、建造物、商業施設など、あらゆるエネルギー関連部門において、従前比において、一定量以上の使用エネルギーの削減のために省エネルギー対策が計画され、その達成を目指す取り組みが行われている。このような省エネルギーを達成するため、エネルギーに関連する装置である、例えば燃料電池、太陽光等の発電機器、コーゼレーション機器、住宅の設備機器、ハイブリット駆動機器、空調機器、給湯器、照明などの分野で、エネルギー変換効率を高めた機器の開発や、個々の機器、又は同じ場所で使用されるグループ機器群への最適制御方式の適用など種々の試みがなされている。
【0003】
更に、最近においては、電源を含むエネルギー供給の最適化、更にはエネルギーの最大利用効率を目的として、統合エネルギー供給システムが提案されている。
【0004】
ところで、このように多様化高レベル化するエネルギーの供給、使用に係わる各種のエネルギー変換機器を顧客の要求仕様によって正確に、しかも容易に選定、使用するシステムの必要性は以前から言われているが、その実現のためには高いレベルの技術力と技能、使用経験、それに人手と時間が必要であるため、これに対応できるシステムは殆ど実用化されていない。
【0005】
また、上述の選定やシミュレーションの際に考慮の必要がある懸案事項として、使用エネルギー効率の最適化を図る制御方式がある。この方式はエネルギー変換機器、例えば温水器を単独で制御するか、せいぜい類似した機器グループ、例えばコンビニエンスストア数軒分の冷凍機及び空調機をまとめて制御するか、単独で機能を発揮する機器に含まれる複数の構成グループ、例えば動力源に内燃エンジンと電気モータとを組合せ選択的に用いるようにしたハイブリッド型自動車を構成するガソリンエンジン、電気モータをまとめて制御するものや、商用電源からの充電を可能とした二次電池を備えたプラグイン方式の自動車の二次電池を含む駆動源を制御するような個別的なものに限られている。
【0006】
また、他の使用エネルギー効率の最適化制御方式としてマイクログリッド配電方式がある。これは、小範囲に存在する電気、熱エネルギーの供給、貯留施設群を制御する、主として供給側の方式であって、使用側についての配慮は少なく、小規模な割に制御が複雑であり、費用対効果の点で問題があり実用例も少ない。
【0007】
一方、前述した種々の最適化制御方式の中に、シミュレーションによって最適な制御ルールを生成する方法も提案されているが、これは単独機器が対象で、最適な制御のみを目的としている。
【0008】
なお、使用エネルギー効率の最適化制御方式に関する発明を開示する文献として、特開2007−287063号公報(特許文献1)や、特開2009−281619号公報(特許文献2)に記載されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−287063号公報
【特許文献2】特開2009−281619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように従来用いられ、あるいは提案されている機器の制御方式は、使用エネルギー効率の最適化のための機器の制御方式であり、各種のエネルギー変換機器を顧客の要求仕様によって正確に、しかも容易に選定し、使用するシステムは殆ど実用化されていない。
【0011】
上述したようなエネルギー変換機器(以下は機器と称する)は、製造するメーカも多く、膨大な機種が存在する。しかも、各メーカーが販売し、施工、保守しているのは、自社の関連分野に限定される機器、システムである。一方、顧客の要求は、多岐にわたるため、これら多くのメーカー、機種の中からニーズに合致する最適の機器、システムを選定するのは至難の業である。また、機器はエネルギーを供給する側と、使用する側、更にそれらの組み合わせ製品及びシステムは存在するが、これら全体を考慮に入れた全般にわたる選定システムは実用化されていない。
【0012】
すなわち、顧客のニーズを基に、最適な、機器、システムを広い範囲から選定するには次のような多くの問題がある。第1に、顧客のニーズが多様化、高度化し、不確定要素も多く、特定が困難である。第2に、機器の種類やその特性が多様であり、メーカー数も、類似機器の種類も多く、データ数も厖大になる。第3に、これらのエネルギー変換機器、特にエネルギーを供給する側の機器の進歩速度が速く、データを最新に維持管理するための人手と時間が必要である。第4に、このような最適な選定を効果的に行う方法は殆どなく、これの開発をするとしても多くの人手と時間が必要である。これらを始めとして、このほかにも解決を必要とする問題も多い。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明は、以上の問題点を改善し、最適なエネルギー変換機器の選定とともに、エネルギー変換機器の組合せを効果的に行う方法として、シミュレーションを応用したエネルギー変換機器のシミュレーション方法及びエネルギー変換機器のシミュレーションシステムを提供することを技術課題とする。
【0014】
本発明に係るエネルギー変換機器のシミュレーション方法及びシミュレーションシステムは、まず、顧客のニーズを特定するために、入力するニーズの種類を分類、標準化して、一覧表形式にまとめ、これをデータ化し、顧客はこの中から適合する項目を選定、数値を記入し、入力する。
【0015】
次に、機器の種類、特性、価格などの機器のデータもデータベースに登録し、データベースは外部通信回線を通じて、関係メーカー、商社、工事業者のデータベースからデータの供給を受けてその内容を充実させ、進歩に対応してデータの更新を行う。シミュレーションを実行するシステムにはシミュレーションのためのプログラムや計算式、それらの実行条件となるデータが必要である。これらのプログラムは開発には多くの人手と時間が必要であることを考慮して、実際に稼動している該当機器の運転のためのプログラムと共用化する。この共用化はシミュレーションの開発側だけでなく、該当機器の制御プログラム開発側にとっても、新規開発の手間が省け、何よりも、両方側の最適の域にまでに改善されたプログラムが交換できる利点がある。また、計算式は一般に使用される固有のものや、理論的なもの、経験的なものが存在するので、この中から目的に合致したものを記憶しておき、シミュレーション実施のときに適用する。
【0016】
以上のように、顧客のニーズを特定するために項目を一覧表形式にまとめて、これをデータ化し、機器の種類やその特性、メーカー名のデータ化とその補充、更新、及び実際に稼動している該当機器のプログラムとの共用化、最適化、それらに伴う問題点を解決し、精度がよく、実用的で、開発のために多くの人手と時間を必要としないエネルギー変換機器のシミュレーション方法及びシミュレーションシステムを提供する。
【0017】
本発明は、シミュレーションを担当する本社や営業所など顧客の窓口である事業所に設置されるシミュレーション装置と、これに対し必要に応じて、通信回線を通じて接続される関連する事業所、顧客に設置されるシミュレーション装置への入出力端末、それに、関係メーカ、商社、工事業者のデータベースから機器データの供給を受け、更新を行うための通信回線、及び関連する工場、事業所に設置されている機器制御のための場所制御装置とを結び、制御プログラムの授受及び機器設置場所の内部外部環境条件の受信を行うための通信回線とから構成されている。
【0018】
前述のシミュレーション装置と、これに通信回線を経由して接続され、各事業所に設置される場所制御装置には、複数の機器コントローラと、これら機器コントローラに接続され制御される機器から構成される。
【0019】
そして、機器コントローラによって制御される機器は、エネルギーの状態を変換するエネルギー変換機器であって、例えば光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電機器や、燃料の熱エネルギーを電気及び温湯の熱エネルギーへ変換するコゼネレーション機器、更に、電気動力を冷熱及びそれを搬送する流体運動に変換する空調機器、電気を光エネルギーに変換する照明機器など、エネルギーの形態を各種態様のエネルギーに変換する機器の総称で、本発明の選定の対象となる。
【0020】
上述した機器コントローラは、それが制御するエネルギー変換機器の起動停止やその運転効果を変化させるための制御装置であり、例えば電動機に付属するインバータ又は電磁開閉器と、これを制御する温度調節器やプログラマブルコントローラ等との組み合わせである。これら機器コントローラには、更に、当該エネルギー変換機器が接続され、室外温度等の外部環境条件を検知する外センサ、エネルギー変換機器の運転によって変化する出力や電力、室内温度等の内部環境条件を検知する内センサが接続されている。
【0021】
そして、機器コントローラは、場所制御装置から指令される室内温度等の制御目標値と、当該機器コントローラに接続された室内温度等の内部環境条件を検知する内センサの検出値とを一致させるように、エネルギー変換機器である空調機の電磁開閉器の開閉、若しくはインバータによる空調機の回転数の変化による空調能力の調節を行うことによって自動制御の一種であるループ制御を行う。
【0022】
通常、前述したシミュレーション装置は、管理の中心である管理者の本社や営業所などに設置し、これに必要に応じて、通信回線を通じて接続される入出力端末は顧客の窓口部門である、営業所、代理店などに設置され、担当者や顧客自身によって、エネルギー使用負荷、供給エネルギー、稼動条件などのニーズを、データベースに記憶されている、標準化され、分類されたニーズ一覧表の項目に従って入力し、数値も記入、入力される。
【0023】
上述したニーズ一覧表の項目として考えられる分類項目は、第1に、適用場所としては作業場、家屋、オフイスビル、工場、店舗、病院、集会場、又は業種別、更に細分して、一般構造、断熱構造があり、第2に、供給エネルギーとしては、電力会社、自家発電(又はコジェネレーション)ガス、石油、太陽光、太陽熱、風力、地熱、蓄電池、燃料電池がある。そして、第3に、エネルギー負荷としては、空調、換気、冷凍、冷却、加熱、照明、乾燥、搬送、交通、水道、家電、さらには動力源に内燃エンジンと電気モータとを組合せ選択的に用いるようにしたハイブリッド型自動車、商用電源からの充電を可能とした二次電池を備えたプラグイン方式の自動車などがあげられる。第4に、稼動条件としては、暦日、時刻、運転時間率(%ED)温度、湿度、快適性などがあげられ、更には電力価額、使用エネルギー価額などがあり、第5に目標項目として、省エネルギー、CO2削減、初期投資費用抑制、希望環境条件など、項目とその数値があげられる。
【0024】
これらの項目、数値を可能な限り単純化、標準化し、ニーズ一覧表としてデータベース化し数値とともに入力すれば、機器を選択する際に有利である。
【0025】
また上述したシミュレーション装置はその他のデータベースも備える。このデータベースは前述のニーズ一覧表記憶部のほか、供給エネルギー側、エネルギー負荷側の関連機器全体を包含した機器データ記憶部、及び計算式と制御プログラムとを記憶する制御プログラム記憶部から構成されている。
【0026】
上述の機器データ記憶部は機器の仕様、特性それに価格などのデータが記憶されており、まず機器が選択されると、これらのデータが呼び出されて、内蔵された計算式と制御プログラムに従ってシミュレーション処理され、要求された結果を導出する。
【0027】
また、機器データ記憶部には外部通信回線を経由して、関連する機器メーカや設備メーカそれに工事業者のデータであるカタログ、工事マニュアルや価格など種々な情報が入力され、更新され、データの継続的な改善を行う。
【0028】
次に、前述のデータベース中の制御プログラム記憶部は外部通信回線を経由して、関連する事業所に設置されている場所制御装置に接続され、制御プログラムの授受を行っている。この場所制御装置における制御プログラムの役割をまず説明すると、場所制御装置には、この場所制御装置に機器コントローラを介して接続されるエネルギー変換機器を制御するための予め準備された機器制御プログラムが記憶されている。このプログラムは、場所制御装置に設けられた記憶部に記憶される。
【0029】
場所制御装置に記憶される機器制御プログラムは、この場所制御装置が設置される事業所内に設置されるエネルギー変換機器を構成する機器の種類、季節、時間運転パターン、機器の特性や定格、間欠運転や可変速度運転、機器の組み合わせ運転、電気料金を含むエネルギー化学等の制御条件、実用される外部環境条件の値、内部環境条件の値の範囲、制御目標値などの諸条件を組み合わせて作成される。ここで、制御目標値としてエネルギー使用の削減を目的とするエネルギーの使用の合理化に関する法律(所謂、省エネ法)に基づくエネルギーの削減目標値がある。ここに言う外部環境条件の値とは、外センサによって検出される屋外の気温等を指し、内部環境条件とは、内センサによって検出される、機器の運転の結果により変化する室内温度や機器の出力や電流、温度上昇値等を指す。
【0030】
シミュレーションとは、選定された機器を、入力された負荷条件、例えば空調する部屋の面積、構造などの空調負荷及び外部環境条件のもとで、機器制御プログラムに沿って運転し、運転の結果は内センサによって検出される、という動作を模擬的に実施して結果を得るものであり、以上で述べた、場所制御装置に記憶された機器制御プログラムの役目と何ら変るものではなく、機器制御プログラムとシミュレーションのためのプログラムとを兼用しても何ら支障がない。しかし、シミュレーション時は、プログラムによって指示される機器の運転状態と発熱との関係、部屋の内外温度差と放散熱の関係、発熱と部屋の温度上昇との関係などは計算式によって計算し出力する。
【0031】
以上説明した、そのデータを最新に維持したデータベースを有するシミュレーション装置の入力部には、まず、顧客のニーズを担当者又は顧客自身が、適用場所、供給エネルギー、エネルギー負荷、稼動条件など、標準化され表形式にされデータベースに記憶されているニーズ一覧表に従って入力し、数値も記入して入力する。
【0032】
次の機器選択部は、その中に組み込まれた機器選択プログラムに従って、前記入力した
ニーズ一覧表のニーズ項目と数値に従って入力されたデータと、データベース中の機器データと照合しながら、必要な機器を選出する。
【0033】
次に、この選出された機器に、前記ニーズ一覧表のニーズ項目に含まれる稼動条件及び目標項目及び記入された数値に合致する制御プログラムをデータベースの中から選出し、機器データの中の必要な項目、数値とを照合しながら、また物理量の変化は計算式で算出しながらシミュレーションを実行し、その結果を出力する。また最適制御を考慮しないプログラムを標準プログラムとして準備しておき、最適制御プログラムと標準プログラム両方でのシミュレーションの結果を比較することで、省エネルギー運転の効果を知ることができる。
【0034】
また、最適制御を目指す複数個の制御プログラムを準備しておき、この複数個の制御プログラムに従って、順次複数回のシミュレーションを実行し、最良の結果を出したプログラムを最適制御プログラムとして登録し、以後のシミュレーションや実際の機器の制御に役立てることができる。
【発明の効果】
【0035】
上述したように、本発明は、多様化、高度化し、不確定要素も多い顧客のニーズを標準化したニーズ一覧表によって容易に特定できるので、顧客が容易に、誤りなく本シミュレーションシステムを利用することができる。
【0036】
次に、外部通信回線を経由して、関連メーカや業者のデータを入力、データベースを充実させ、且つ更新してデータベースが継続的に改善されることにより、シミュレーションの精度を向上することができ、且つ、この継続的に改善されたデータベースを関連したメーカや業者も利用できるので、双方の利便性を向上することができる。
【0037】
また、前述したように機器制御プログラムとシミュレーションのためのプログラムとを兼用するので、機器制御を担当する側にとっても、シミュレーションを担当する側にとってもプログラムを開発する手間が半減するうえ、どちらかが最適プログラムを開発したとき、これを他方も利用すればシミュレーション側、機器制御側双方のレベルを向上させることができる。
【0038】
また、最適制御を考慮しない標準プログラムと、最適制御プログラムとのシミュレーションの結果を比較すれば省エネルギー運転の効果を知ることができる。
【0039】
また、外部通信回線を経由して場所制御装置に関連した外部環境条件のデータを入力し、これを条件としてシミュレートし、その結果を、実測値を包含している入力した内部環境条件の値と比較することによって、シミュレーションの精度を確かめ、且つ向上させることができる。
【0040】
このように、従来より、精度を向上した、容易に使用可能な、開発のための費用が少ないエネルギー変換機器のシミュレーション方法、シミュレーションシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明が適用されたエネルギー変換機器のシミュレーションシステムの一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るシミュレーションシステムを構成する場所制御装置の一実施の形態を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明に係る顧客のニーズを標準化し、表にまとめたニーズ一覧表の1例である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を適用したエネルギー変換機器のシミュレーションシステムの実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0043】
図1は、本発明を適用したエネルギー変換機器のシミュレーションシステム100の一実施の形態を示すブロック図である。このシミュレーションシステム100は、シミュレーションを行う管理者の本社、営業所等に設置されたシミュレーション装置1と、このシミュレーション装置1にインターネット等の通信回線4を経由して接続された入出力端末2とを備える。入出力端末2は、必要に応じて設置され、例えば顧客と直接接触がある営業所、代理店内に設置され、顧客のニーズを直接入力し、且つシミュレーションの結果を出力させる端末である。入出力端末2は、通信回線4を介して、シミュレーション装置1の入力部11に接続されている。
【0044】
シミュレーション装置1は、例えばハードディスクドライブによって実現されるデータベース3を備える。このデータベース3は、ニーズ一覧表記憶部31と、機器データ記憶部32と、制御プログラム記憶部33とを備える。ニーズ一覧表記憶部31には、エネルギーの状態を変換するエネルギー変換機器の適用場所に関する情報と、エネルギー変換機器に供給される供給エネルギーの種類に関する情報と、供給エネルギーが供給されるエネルギー変換機器のエネルギー使用負荷に関する情報と、エネルギー変換機器の稼動条件と、使用エネルギーの削減目標値とが少なくとも記憶されている。機器データ記憶部32には、エネルギー変換機器の少なくとも仕様、特性、価額を含むエネルギー変換機器に関する情報が記憶されている。制御プログラム記憶部33には、複数のエネルギー変換機器の駆動のシミュレーションを実施するためのシミュレーション用制御プログラム及び計算式が記憶されている。
【0045】
更に、シミュレーション装置1は、機器選択部12を備える。機器選択部12は、入力部11に入力されたエネルギー変換機器の仕様、特性、価額の少なくともいずれか1つを含む要求項目に基づいて、機器データ記憶部32に記憶されたエネルギー変換機器を選択するとともに、入力された仕様、特性に関連する関連数値を、制御プログラム記憶部33に格納された計算式に入力して定格値又は特性値を算出し、機器データ記憶部32から選択されるエネルギー変換機器を特定する。
【0046】
更に、シミュレーション装置1は、プログラム選択部13を備える。プログラム選択部13は、入力部11に入力された要求項目、上述のようにして選択されたエネルギー変換機器、外部及び内部の環境条件、運転条件、制御条件のうちの1つ以上に基づいて、機器制御プログラムを選択する。
【0047】
更に、シミュレーション装置1は、選択されたエネルギー変換機器、外部及び内部の環境条件、運転条件及び/又は制御条件、並びに選択された機器制御プログラムに基づくシミュレーションを行うシミュレーション部14と、このシミュレーションの結果を出力する出力部15とを備える。
【0048】
また、シミュレーション装置1には、インターネット等の通信回線5を経由して第1の外部業者51、第2の外部業者52等、複数の外部業者が接続されており、これらが、機器データの導入及び書き換えを行う。外部業者は、エネルギー変換機器の新製品の発売、仕様の変更、販売の終了等を知り得る如何なる業者であってもよく、例えば、エネルギー変換機器を製造する製造業者であってもよく、これらを販売する販売業者であってもよく、保守・修理業者であってもよい。
【0049】
また、インターネット等の通信回線6を経由して、複数の場所制御装置7、場所制御装置70以下が接続されている。
【0050】
この場所制御装置7の構成を図2に示す。図2において、複数台の機器コントローラ8間は、通信線10で接続され、機器コントローラ8にはその制御の対象である機器9が接続されている。
【0051】
そして、機器コントローラ8には、例えば、外部の温度湿度などの外部環境条件を検出する外センサ81と、機器9の運転によって変化する室内の温度、湿度、消費電力等の内部環境条件を検出する内センサ82とが接続されている。
【0052】
この形態において、機器コントローラ8に接続され、機器コントローラ8によって制御される機器9は、エネルギー変換を行うエネルギー変換機器であって、本発明のシミュレーションの対象となる機器でもあり、例えば冷熱機器においては、電力や燃料を入力する電動機や原動機で駆動される圧縮機、温冷風や温冷水を搬送する送風機やポンプなどがある。これらの運転によって生じる、温度、湿度等の変化や電力、電力量、機器温度、回転数、流量等、機器9の運転によって発生する変化は内センサ82によって検出される。
【0053】
これらセンサ81,82によって検出された外部内部環境条件のデータは、機器コントローラ8に入力され、機器9の制御の際の条件となり、且つ、通信線10を経由して場所制御装置7内の環境条件記憶部73に記憶され、シミュレーション装置1に送信される。そして、これらのデータは、シミュレーションの際の条件となる。
【0054】
一方、場所制御装置7の制御プログラム記憶部71に前もって準備し、保持している複数の機器制御プログラムの中から、環境条件記憶部73に記録されている外部及び内部環境条件や制御条件記憶部74に記憶されている運転条件及び/又は制御条件によって、制御プログラム選択部72で1個の機器制御プログラムを選出し、機器コントローラ8にダウンロードし、機器9を制御する。
【0055】
機器9の運転結果は、例えば電力、気温などの値で、内センサ82によって内部環境条件の値として検出される。この検出値を参照しながら、複数の機器制御プログラムでの運転を繰返して、最適な結果を得たプログラムを最適制御プログラムとし、その最適制御プログラムによって機器9を最適運転する。このように機器9の運転によって得られた、又はその他の方法で得られた最適制御プログラムをシミュレーション装置1内の制御プログラム記憶部33に転送し、本発明のシミュレーション実行時に適用して、シミュレーションの精度向上を図るものである。
【0056】
次に、本発明の根幹であるシミュレーション装置の動作について、再び図1を参照しながら説明する。
【0057】
まず、上述したシミュレーション装置1のデータベース3内のニーズ一覧表記憶部31には、適用場所、供給エネルギー、エネルギー使用負荷、稼動条件、目標等に関する顧客のニーズを特定するために、入力するニーズの種類を分類、標準化して、例えば、図3に示すような一覧表形式にまとめたニーズ一覧表としてデータ化し登録している。ここで、適用場所には、面積の情報を含み、供給エネルギーには、制限情報として、最大エネルギー供給量を含む。また、シミュレーション装置1には入力部11が設けてあり、顧客は、入力部11の画面に表示されたニーズ一覧表を見ながら、分類項目の中から必要な項目を選択、指示し、数値を記入する。この入力の方法は高度な専門知識がなくても可能であり、間違いが少なく、その後の処理を容易にする。また、上述の通り、項目の入力は、外部の入出力端末2から、インターネットなどの通信回線4を介して行うこともできる。
【0058】
次に、データベース3の中の他の1つである機器データ記憶部32には、エネルギーの供給、エネルギー負荷などに関連する機器の種類と各々の機器の仕様、特性、それに価格などのデータが登録されている。
【0059】
また、機器データ記憶部32は外部通信回線5を経由して、関係メーカ、商社、工事業者などを含む外部業者51,52などのデータベースからデータの供給を受けてその内容を充実させ、進歩に対応してデータの更新を行い、また逆に、外部業者51,52などは、機器データ記憶部32から最新のデータを入手することができる。
【0060】
次に、データベース3の中の最後の1つである 制御プログラム記憶部33には、シミュレーションを実施する際に動作させる1つ以上の制御プログラムが準備、格納され、また動作の結果を、関連するエネルギー出力に変換したり、温度差などの物理量から、種々の条件を組み入れてエネルギー出力に変換するなどエネルギー等に関する計算式も記憶されている。また、動作経過が同じことから、共通使用が可能であり、また開発の時間と人手が少なくなる理由から、このシミュレーションを実施する際に動作させる制御プログラムと、場所制御装置7に付属する制御プログラム記憶部71に記憶させる制御プログラムとを共通なものにしている。
【0061】
加えるに、制御プログラム記憶部33は、外部通信回線6を経由し、エネルギー変換機器の実際の運転を行っている関連する事業所に設置されている場所制御装置7に付属する制御プログラム記憶部71に接続され、制御プログラム記憶部71に記憶されている最適制御プログラムを制御プログラム記憶部33に取り込むことで、その内容を充実、改善を行うことができ、また逆にシミュレーション装置1で開発された最適制御プログラムを場所制御装置7に付属する制御プログラム記憶部71にダウンロードし、機器9の最適制御を行うことができる。
【0062】
図1のシミュレーション装置1の入力部11に入力された顧客要求項目及び関連数値は、機器選択部12に入力され、機器選択部12では、その内部に設定されている、機器選択プログラムによって、入力された顧客要求項目から必要な機器を抽出し、制御プログラム記憶部33に格納されている計算式によって、入力された関連数値から算出された、機器に必要な定格値又は特性値、例えば温度と部屋の面積が入力されると、必要エネルギー出力kWが計算式によって算出され、この出力以上の定格出力を持った空調機を、機器データ記憶部32の中の機器の種々の定格値、特性値などと照合しながら選出する。これは最初の選出であるので、複数の機器が選出されてもよい。
【0063】
また、前記の機器選択プログラムについて説明すると、入力部11に入力された顧客要求項目から、機器を選出するためのもので、例えば、“空調”の入力では、空調機、フアン、ポンプ、インバータなどの機器が選択され、“病院”の入力では、空調機、熱交換機、フアン、ポンプ、インバータのほか、コジェネレーション装置、蛍光灯、LED灯、太陽熱、圧縮機、電熱器などが選択される。
【0064】
次に、図1のプログラム選択部13では、入力部11に入力された顧客要求項目及び関連数値から、機器及びその定格が選択され、顧客要求項目の中の稼動条件及び目標値、それに環境条件を参照しながら機器を運転、停止させる必要がある。これらの条件に合った動きを制御するのが制御プログラムであり、これらの動作条件に合った制御プログラムを、制御プログラム記憶部33に準備されている制御プログラムの中から選択する。
【0065】
この選択されたプログラムはシミュレーション実施の際に動作させる制御プログラムであるが、場所制御装置7に付属する機器コントローラ8にダウンロードされ、機器9を制
御する制御プログラムと共通にしている。
【0066】
この機器制御プログラムとは、例えば、部屋の温度制御を行うものとし、スタート時、目標室内温度と外部環境条件である屋外温度との差がx度以上なら空調機を高速度で運転し、目標室内温度と内部環境条件である室内温度との温度差がy度以下になれば空調機を中速度運転に移行し、温度差が2度以下に達すると運転を停止せよ、という内容のプログラムとしたとき、実際の制御で、このプログラムの実行は機器コントローラ8内に設置された、プログラマブルコントローラなどの制御器で行われ、目標室内温度は顧客の要求により設定され、外部環境条件である屋外温度は図2に示される機器コントローラ8に接続された外センサ81で、内部部環境条件である室内温度は同じ機器コントローラ8に接続された内センサ82によって入力され、高速度運転、中速度運転、停止の命令は機器コントローラ8に設置してあるプログラマブルコントローラを通じてインバータに指令され、機器9がこの命令に従って運転する。この機器9運転時のエネルギー出力である電力は機器コントローラ8に設けられた内センサ82のうちの電力計、電力量は電力量計により計測され、その結果は、場所制御装置7の中の環境条件記憶部73に入力され、最適制御のためのデータとして利用される。
【0067】
従って、図1のシミュレーション部14では、選択された機器制御プログラムに従って、以上述べた実際の制御をシミュレートすればよい。すなわち、上述した例に倣って説明すると、目標室内温度は、図3のニーズ一覧表によって、図1の入力部11に入力され、外部環境条件である屋外温度は、図3のニーズ一覧表の中で顧客が指定する、適用場所、暦日、昼夜などで標準的な温度条件を予め決めておく。各速度で運転したときの機器のエネルギー出力は、図1の機器データ記憶部32を参照すれば判明し、運転したときの機器のエネルギー出力による室内温度の変化は、図3のニーズ一覧表によって、図1の入力部11に入力された使用場所、稼動条件などを参照しながら図1の制御プログラム記憶部33に格納されている計算式によって算出され、この温度変化に従って、機器のエネルギー出力を、選択された機器制御プログラムに従って変化させていけば、選択された機器制御プログラムに従ったシミュレーション運転を実施したことになる。
【0068】
図1の出力部15では、シミュレーション運転を行った条件、シミュレーションの結果値、機器とその定格等を出力する。同じ条件で、複数回機器制御プログラムを変更して、複数回のシミュレーション運転を行い、結果を比較すれば、機器制御プログラムの優劣を判断でき、最適な機器制御プログラムを実際運転に適用することができる。特に、最適制御を考慮しない機器制御プログラムを適用したシミュレーション運転の結果と比較することにより、最適運転の効果を知ることができる。
【0069】
この省エネルギー運転を考慮しない機器制御プログラムとは、例えば、上述したインバータを使用して高速及び中速運転を切り替える運転の代わりに、インバータを使用せず、例えば、室内温度と目標温度との差が例えば5度以上で空調機を高速運転し、1度以下になると停止させる、高速運転と停止を繰返す機器制御プログラムがある。
【0070】
上述したように、本発明に係るエネルギー変換機器のシミュレーションシシステムは、多様化、高度化した顧客のニーズ容易に、誤りなく入力でき、本システムを手軽に利用することができるので、厖大な機器の中からニーズに合致した最適に近い機器の選定が可能となり、しかも実地に適用した際の出力状態まで予測でき、顧客にとっても、製造販売する側にとっても有益である。
【0071】
また、機器の関連メーカや業者と継続的に改善された最新のデータを交換できるので双方の利便性を向上することが可能であり、また、機器制御プログラムとシミュレーションのためのプログラムとを兼用するので、機器制御を担当する側にとっても、シミュレーシ
ョンを担当する側にとってもプログラムを開発する手間と費用を少なくでき、最適プログラムを双方で適用できるので、双方のレベルを向上させ、開発の費用と手間を少なくすることができるので、機器を開発する側にとっても、機器を設置、稼動させる側にとっても有益である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
上述したように、本発明に係るエネルギー変換機器のシミュレーションシシステムは、エネルギーを熱や動力などの他のエネルギーに変換する機器を開発、販売、設置、稼動するあらゆる業者、事業場所にとって有用である。更に、本発明は、エネルギーを供給し、使用するシステムを構成する際に最適な機器、最適な制御プログラムの選定が可能で、エネルギー関連の全業界、特に省エネルギー、CO2削減を目的とする産業界全体の発展に有益である。
【符号の説明】
【0073】
1 シミュレーション装置、2 入出力端末、3 データベース、 4 通信回線、5 通信回線、6 通信回線、7 場所制御装置1、8 機器コントローラ、9 機器、10
通信線 11 入力部、12 機器選択部、13 プログラム選択部、14 シミュレーション部、15 出力部、31 ニーズ一覧表記憶部、32 機器データ記憶部、33
制御プログラム記憶部、51 外部業者1、52 外部業者2、70 場所制御装置2、71 制御プログラム記憶部、72 制御プログラム選択部、73 環境条件記憶部、74 制御条件記憶部、81 外センサ、82 内センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー変換機器の動作をシミュレートするシミュレーションシステムにおいて、
当該シミュレーションシステムに情報を入力するための入力手段と、
エネルギーの状態を変換するエネルギー変換機器の適用場所に関する情報と、上記エネルギー変換機器に供給される供給エネルギーの種類に関する情報と、上記供給エネルギーが供給されるエネルギー変換機器のエネルギー使用負荷に関する情報と、上記エネルギー変換機器の稼動条件と、使用エネルギーの削減目標値とが少なくとも記憶されるニーズ記憶部と、上記エネルギー変換機器の少なくとも仕様、特性、価額を含むエネルギー変換機器に関する情報が記憶される機器データ記憶部と、複数のエネルギー変換機器の駆動のシミュレーションを実施するためのシミュレーション用制御プログラムが記憶された制御プログラム記憶部とを含むデータベースと、
上記入力手段から入力されたエネルギー変換機器の仕様、特性、価額の少なくともいずれか1つを含む要求項目に基づいて、上記機器データ記憶部に記憶されたエネルギー変換機器を選択するとともに、上記入力された仕様、特性に関連する関連数値を、上記制御プログラム記憶部に格納された計算式に入力して定格値又は特性値を算出し、上記機器データ記憶部から選択されるエネルギー変換機器を特定する機器選択部と、
上記入力手段から入力された要求項目、上記選択されたエネルギー変換機器、外部及び内部の環境条件、運転条件及び/又は制御条件のうちの1つ以上に基づいて、機器制御プログラムを選択するプログラム選択部と、
上記選択されたエネルギー変換機器、外部及び内部の環境条件、運転条件及び/又は制御条件、並びに上記選択された機器制御プログラムに基づくシミュレーションを行うシミュレーション部と、
上記シミュレーションの結果を出力する出力部とを備えるシミュレーションシステム。
【請求項2】
データベースを準備するステップと、
前記データベースにエネルギーの供給、使用に関係する項目を登録するステップと、
前記データベースにエネルギーの状態を変換する2機種以上のエネルギー変換機器の動作仕様、導入価格に関する機器データを登録するステップと、
前記データベースに登録されている機器データを、必要に応じて随時更新するステップと、
前記データベースに登録されている機器の動作に関係するエネルギー出力、量、物理量の関係を示す計算式を登録するステップと、
前記データベースに登録されている機器を制御する制御プログラムを登録するステップと、
前記データベースに登録されている制御プログラムを、必要に応じて随時更新するステップと、
前記エネルギーの供給、使用に関係する項目のうち、顧客が選定した項目と顧客が指定した数値と、機器データとから、機器を選択するステップと、
前記ステップで選択された機器に関する前記データベースに登録されている、エネルギーの供給、使用に関係する項目のうち、顧客が選定した項目と顧客が指定した数値と、前記データベースに登録されている機器データと、前記データベースに登録されている機器を制御するために適用される制御プログラムと、前記データベースに登録されている機器の動作に関係するエネルギー出力、量、物理量の関係を示す計算式とから、選択された機器のシミュレーションを行って目的値を導出するステップとを有するエネルギー変換機器のシミュレーション方法。
【請求項3】
前記シミュレーションを、別の制御プログラム及び/又は別の関係値を適用して、複数回実施し、導出された複数の目的値に基づいて、機器及び制御プログラムを選定するステップとを有するエネルギー変換機器のシミュレーション方法。
【請求項4】
前記機器を制御するために適用される制御プログラムと、前記シミュレーションを行うための制御プログラムとを共通にする請求項2記載のエネルギー変換機器のシミュレーション方法。
【請求項5】
前記複数回のシミュレーションの結果得られた最適制御プログラムを機器制御のための制御プログラムとして使用し、及び/又は機器の運転の結果得られた最適制御プログラムをシミュレーションのための制御プログラムとして使用する請求項2記載のエネルギー変換機器のシミュレーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−133465(P2012−133465A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283232(P2010−283232)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(309040790)パトックス.ジャパン株式会社 (8)
【Fターム(参考)】