説明

エネルギー消費評価システム

【課題】建物の用途に密接な関連がある変動因子が反映した原単位を用いて建物の省エネルギーの活動を評価するエネルギー消費評価システムを提供する。
【解決手段】エネルギー消費評価システムは、管理対象の建物から送られてくる上記建物内で消費される二次エネルギー消費量を格納するエネルギー消費量格納手段と、上記建物の延床面積および上記建物の使用状況の所定の評価期間内のデータを格納する基礎データ格納手段と、上記所定の評価期間毎に上記建物毎の上記二次エネルギー消費量を一次エネルギー消費量に換算する換算手段と、上記一次エネルギー消費量を上記延床面積と上記使用状況のデータとの積で除算して原単位を算出する原単位算出手段と、上記延床面積と使用状況のデータとの積に対する原単位の近似直線を上記建物の用途別に算出する近似直線算出手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物におけるエネルギー消費の優劣を評価するエネルギー消費評価システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製造業などでは生産に要したエネルギー消費量を生産した商品の数量または売上高により除算して商品1個当たりまたは単価当たりに消費したエネルギーを用いて、同業者におけるエネルギー消費の平均値に対する差分を生産における省エネルギーの目標値としている。しかし、業務用ビルでは生産が一元的ではなく生産高または生産額を定量化することができないため延床面積を基底値として原単位を求めて建物毎の省エネルギーの目標値を定量化している(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】財団法人省エネルギーセンター編、省エネチューニングガイドブック、[平成20年2月1日検索]、インターネット(URL:http://www.eccj.or.jp/b_tuning/gdbook/
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、延床面積を基底値としたときの原単位には、建物の用途に係わる変動因子が反映していないために、比較する統計値としては大雑把であり、それに基づいた省エネルギーの目標値を用いても適切な評価ができないという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、建物の用途に密接な関連がある変動因子が反映した原単位を用いて建物の省エネルギーの活動を評価するエネルギー消費評価システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエネルギー消費評価システムは、管理対象の建物から送られてくる上記建物内で消費される二次エネルギー消費量を格納するエネルギー消費量格納手段と、上記建物の延床面積および上記建物の使用状況の所定の評価期間内のデータを格納する基礎データ格納手段と、上記所定の評価期間毎に上記建物毎の上記二次エネルギー消費量を一次エネルギー消費量に換算する換算手段と、上記一次エネルギー消費量を上記延床面積と上記使用状況のデータとの積で除算して原単位を算出する原単位算出手段と、上記延床面積と使用状況のデータとの積に対する原単位の近似直線を上記建物の用途別に算出する近似直線算出手段と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るエネルギー消費評価システムの効果は、建物の用途に関連性が高い使用状況のデータを基底値に反映して算出したエネルギー消費量に関する原単位を用いて建物のエネルギー消費を評価するので、建物の実体に即した評価を行えることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、この発明を実施するための最良の形態に係るエネルギー消費評価システムの構成を示す構成図である。図2は、端末のモニタに表示される使用状況のデータを入力するための画像である。
この発明を実施するための最良の形態に係るエネルギー消費評価システムは、図1に示すように、管理対象の建物1毎に配置されているとともに建物1内で所定の期間、例えば1日の間に消費される二次エネルギー消費量を集計してデータセンター2に送信する遠隔監視装置3、建物1の事務所4に配置されるとともに建物1の使用状況のデータが入力され入力された使用状況のデータをデータセンター2に送信する端末5、各建物1から送られてくる二次消費エネルギー量および使用状況のデータを用いて建物1毎の省エネルギーのレベルを用途の同じ建物群内で位置付けるとともにデータセンター2に配置されるエネルギー消費評価装置6を備える。
【0009】
遠隔監視装置3とエネルギー消費評価装置6との間、および端末5とエネルギー消費評価装置6との間は、公衆回線7を介して接続されている。
遠隔監視装置3は、建物1内で1日の間に消費される二次エネルギー消費量、すなわち電力量、ガス量、油量、地域熱源量を収集して公衆回線7を介してエネルギー消費評価装置6に送信する。
【0010】
端末5は、起動されるとモニタ8にメニューが表示される。そして、メニューには、建物1の使用状況のデータを入力するときに選択する使用状況入力メニューが含まれており、使用状況入力メニューを選択すると、建物1の使用状況のデータを入力できる図2に示すような画面が表示される。図2に示す画面は、建物1の用途が事務所の場合であり、使用状況として空調時間が採用されている。なお、建物1の用途が店舗の場合レジ数、ホテルの場合宿泊客数、病院の場合入院患者数や来院患者数、学校の場合開講数を使用状況のデータとして使用される。但し、これらは例であってこれらに限るものではない。
【0011】
図3は、エネルギー消費評価装置の機能を示す機能ブロック図である。
エネルギー消費評価装置6は、管理対象の建物1から送られてくる1日の間に建物1内で消費される二次エネルギー消費量を格納するエネルギー消費量格納手段11、建物1の延床面積および建物の用途に係る使用状況の1月の間のデータを格納する基礎データ格納手段12、建物1毎に二次エネルギー消費量を一次エネルギー消費量に換算する換算手段13、一次エネルギー消費量を延床面積と使用状況のデータとの積で除算して原単位を算出する原単位算出手段14、建物1の延床面積と使用状況のデータとの積に対する原単位の近似直線を建物の用途別に算出する近似直線算出手段15、および、建物1毎に当該建物の延床面積と使用状況のデータとの積に対する近似直線上の値と算出された建物1の原単位との差を算出するベンチマーク手段16、分析レポートを作成する分析レポート作成手段17を有する。
なお、エネルギー消費評価装置6は、CPU、ROM、RAM、インターフェース回路を含むコンピュータである。
【0012】
エネルギー消費量格納手段11は、建物1から送られてくる二次エネルギー消費量を電力量、ガス量、油量および地域熱源量など種類毎に格納する。
基礎データ格納手段12は、建物1毎に建物1の延床面積を格納するとともに建物1の使用状況のデータを格納する。
換算手段13は、換算表を内蔵しており、換算表には二次エネルギーの種類毎に二次エネルギー消費量を一次エネルギー消費量に換算する換算係数が格納されている。そして、換算手段13は、評価期間、例えば1ヶ月間の種類毎の二次エネルギー消費量を算出し、種類毎に1ヶ月間の二次エネルギー消費量を1ヶ月間の一次エネルギー消費量に換算し、すべての種類の一次エネルギー消費量を加算して評価期間での一次エネルギー消費量を算出する。
【0013】
原単位算出手段14は、延床面積に評価期間での使用状況のデータを乗算してエネルギーの使用量に密接な関係を有する基底値を算出し、算出した基底値で評価期間での一次エネルギー消費量を除算して評価期間での原単位を算出する。そして、原単位算出手段14は、管理対象の全ての建物の評価期間での原単位を算出する。
近似直線算出手段15は、事務所、店舗、ホテル、病院、学校など用途毎に基底値に対する原単位の近似直線を例えば最小二乗法を用いて算出する。
【0014】
例えば、図4に示すように、用途が事務所の建物の原単位を縦軸に取り、延床面積と空調時間との積である基底値を横軸に取った場合、ある建物Aの原単位が近似直線の上側にあり、建物Aでのエネルギー消費が平均的なエネルギー消費より多く、省エネルギーの余地があることが分かる。一方、延床面積だけを基底値とした原単位で建物Aのエネルギー消費を評価すると、図5に示すように、建物Aの延床面積を基底値とした原単位が近似直線の下側にあり、エネルギー消費の評価を誤ってしまうことになる。
【0015】
また、図6に示すように、用途がホテルの建物の原単位を縦軸に取り、延床面積と宿泊客数との積である基底値を横軸に取った場合、原単位の近似直線に対する相関係数が0.67と小さく原単位がばらついている。そして、建物Bでのエネルギー消費が平均的なエネルギー消費よりかなり多く、省エネルギーの余地があることが分かる。一方、延床面積だけを基底値とした原単位の近似直線に対する相関係数が0.95と延床面積に原単位が強く相関している。建物Bのエネルギー消費を評価すると、図7に示すように、建物Bの延床面積を基底値とした原単位が近似直線の上にあり、エネルギー消費の評価を誤ってしまうことになる。
【0016】
ベンチマーク手段16は、エネルギー消費を評価する建物1の基底値に対する近似直線上の原単位を平均原単位とし、建物1の原単位と平均原単位とを比較して建物1でのエネルギー消費が平均的なエネルギー消費に対して優れたレベルにあるのか劣ったレベルにあるのかを評価する。建物1の原単位が平均原単位より大きいときには建物1でのエネルギー消費が平均的なエネルギー消費に対して劣っていると評価する。また、建物1の原単位が平均原単位より小さいときには建物1でのエネルギー消費が平均的なエネルギー消費に対して優れていると評価する。
【0017】
分析レポート作成手段17は、建物1毎に分析レポートを作成する。分析レポートには、基底数を横軸、原単位を縦軸に取ったグラフに建物1と同じ用途の建物1の原単位をプロットし、且つ近似直線を図示する。その上で、エネルギー消費の評価の対象の建物1の原単位を明示して、省エネルギーの余地の有無を示す。
【0018】
この発明に係るエネルギー消費評価システムは、建物の用途に関連性が高い使用状況のデータを基底値に反映して算出したエネルギー消費量に関する原単位を用いて建物のエネルギー消費を評価するので、建物の実体に即した評価を行えることである。
また、例えば、1ヶ月毎に用途の同じ他の建物でのエネルギー消費に対して自身のエネルギー消費の状況が位置づけられるので、速やかに対策を施すことができるし、気候変動などに対しても適切な対応を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明を実施するための最良の形態に係るエネルギー消費評価システムの構成を示す構成図である。
【図2】端末のモニタに表示される使用状況のデータを入力するための画像である。
【図3】エネルギー消費評価装置の機能を示す機能ブロック図である。
【図4】用途が事務所の建物の延床面積と空調時間との積を基底値とした原単位の分布を示す分布図である。
【図5】用途が事務所の建物の延床面積を基底値とした原単位の分布を示す分布図である。
【図6】用途がホテルの建物の延床面積と宿泊客数との積を基底値とした原単位の分布を示す分布図である。
【図7】用途がホテルの建物の延床面積を基底値とした原単位の分布を示す分布図である。
【符号の説明】
【0020】
1 建物、2 データセンター、3 遠隔監視装置、4 事務所、5 端末、6 エネルギー消費評価装置、7 公衆回線、8 モニタ、11 エネルギー消費量格納手段、12 基礎データ格納手段、13 換算手段、14 原単位算出手段、15 近似直線算出手段、16 ベンチマーク手段、17 分析レポート作成手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象の建物から送られてくる上記建物内で消費される二次エネルギー消費量を格納するエネルギー消費量格納手段と、
上記建物の延床面積および上記建物の使用状況の所定の評価期間内のデータを格納する基礎データ格納手段と、
上記所定の評価期間毎に上記建物毎の上記二次エネルギー消費量を一次エネルギー消費量に換算する換算手段と、
上記一次エネルギー消費量を上記延床面積と上記使用状況のデータとの積で除算して原単位を算出する原単位算出手段と、
上記延床面積と使用状況のデータとの積に対する原単位の近似直線を上記建物の用途別に算出する近似直線算出手段と、
を有することを特徴とするエネルギー消費評価システム。
【請求項2】
上記建物毎に当該建物の延床面積と使用状況のデータとの積に対する近似直線上の値と上記算出された原単位との差を算出するベンチマーク手段を有することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー消費評価システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−199233(P2009−199233A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38793(P2008−38793)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)