説明

エネルギー線硬化型樹脂組成物及びそれを用いた塗料

【課題】耐汚染性、耐傷つき性が良好で、吸水性の低いエネルギー線硬化型樹脂組成物及びこれを用いた塗料を提供する。
【解決手段】ブチレンオキサイドの開環重合により得られるポリエーテル鎖部分を含むポリエーテルポリオール及び/又はポリテトラメチレンエーテルグリコール(A)と有機ポリイソシアネート(B)と分子内に水酸基を含有する(メタ)アクリレート(C)とを反応させて得られるウレタンアクリレートであって、前記 (メタ)アクリレート由来の二重結合の含有量が1.8mol/kg以上であるウレタンアクリレートを含有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー線の照射によって硬化可能なエネルギー線硬化型塗料用樹脂組成物及びそれを用いた塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床や壁に代表される建材、構造物、その他各種成型物には、汚れを防ぎ、基材を保護して、美観を保つために、塗料をコーティングするのが一般的である。
【0003】
塗料としては、従来は合成樹脂を溶剤で溶解した溶剤タイプが一般的であったが、作業環境や火気に対する危険性等への配慮から、エネルギー線硬化型樹脂を用いたエネルギー線硬化タイプが種々開発され、化粧板のコーティング、木工塗料、紙コーティング、レジスト用材料、接着剤等の幅広い分野で実用化されている。
【0004】
かかるコーティング用途に対する重要な要求項目としては耐汚染性、傷つきにくさ、耐久性が挙げられる。傷つきにくくするためには、架橋密度を上げることや、顔料の添加等の手段を用いることが一般的である(特許文献1)。また、付着した汚れをとれ易くするため、フッ素系表面改質剤を併用したもの、組成物骨格中に特定構造を有するもの等、様々なタイプの塗料が開発されている(特許文献2,3)。
【0005】
耐久性を左右する要因のひとつに塗料の吸水性があり、吸水性が高いと塗膜のひび割れやはがれの原因となりやすい。
【0006】
耐汚染性、吸水性については、架橋密度を上げることにより、ある程度下げることはできるものの、架橋密度だけでは限界がある。また、架橋密度の上昇に伴い、内部応力により塗膜のクラックが発生しやすくなるという問題が生じる傾向もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−30047号公報
【特許文献2】特開2000−34334号公報
【特許文献3】特開平8−217840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、耐汚染性、耐傷つき性がより向上し、また吸水性が低く、よって塗膜のひび割れやはがれが生じにくく、耐久性に優れた塗膜が得られるエネルギー線硬化型樹脂組成物及び塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物は、ブチレンオキサイドの開環重合により得られるポリエーテル鎖部分を含むポリエーテルポリオール及び/又はポリテトラメチレンエーテルグリコール(A)と有機ポリイソシアネート(B)と分子内に水酸基を含有する(メタ)アクリレート(C)とを反応させて得られるウレタンアクリレートであって、前記 (メタ)アクリレート(C)由来の二重結合の含有量が1.8mol/kg以上であるウレタンアクリレートを含有するものとする。
【0010】
上記において(A)成分と(B)成分との割合は、(A)中のポリエーテルポリオール及び/又はポリテトラメチレンエーテルグリコールの水酸基総モル数(a)と(B)中の有機ポリイソシアネートのイソシアネート基総モル数(b)とのモル比が(a):(b)=1.0:1.1〜1.0:4.0の範囲となる割合であることが好ましい。
【0011】
本発明のエネルギー線硬化型塗料は、上記本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物を含有してしてなるものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物は硬化性が良好であり、これを硬化させて得られる塗膜は良好な耐汚染性、耐薬品性を発現し、傷付きにくく、吸水性が低いため、塗膜のひび割れやはがれが生じにくく、耐久性も良好なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で使用する(A)成分のうち、ブチレンオキサイドの開環重合により得られるポリエーテル鎖部分を含むポリエーテルポリオールの例としては、ポリブチレングリコール、トリメチロールプロパン等のポリオールのブチレンオキサイド付加物が挙げられる。これらポリエーテルポリオール(A)は分子量が200〜3000であることが好ましく、300〜1500であることがより好ましい。分子量が200未満であると硬化塗膜の吸水率が高くなる傾向があり、3000を超えると表面硬度が低くなり、耐汚染性も悪くなる傾向がある。
【0014】
また、他の(A)成分であるポリテトラメチレンエーテルグリコールは、分子量が200〜3000であることが好ましく、300〜1500であることがより好ましい。分子量が200未満であると硬化塗膜の吸水率が高くなる傾向があり、3000を超えると表面硬度が低くなり、耐汚染性も悪くなる傾向がある。
【0015】
また、有機ポリイソシアネート(B)の例としては、水添MDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられ、これらを単独使用または複数種併用することができる。耐候性の観点から、水添MDI又はイソホロンジイソシアネートの単独使用或いはこれらの併用が好ましい。
【0016】
また、水酸基含有(メタ)アクリレート(C)の例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、カプロラクトン変性−2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ポリプロピレングリコールモノアクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられ、これらを単独使用または複数種併用することができる。中でも2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートが好適に用いられる。
【0017】
上記(A)成分と(B)成分の割合は、(A)中のポリエーテルポリオール及び/又はポリテトラメチレンエーテルグリコールの水酸基総モル数(a)と(B)中の有機ポリイソシアネートのイソシアネート基総モル数(b)とのモル比が(a):(b)=1.0:1.1〜1.0:4.0の範囲となる割合であることが好ましく、より好ましくは、1.0:1.2〜1.0:3.0の範囲となる割合とする。(A)成分のモル比が減少し、(A)成分の重量比が小さくなりすぎると、十分な耐汚染性や耐水性が発現できなくなり、一方、(A)成分のモル比が増加して分子量が大きくなりすぎると、やはり十分な耐汚染性や耐水性が発現できなくなる。
【0018】
また、(C)(メタ)アクリレートは、この(C)成分由来の二重結合のウレタンアクリレート中の含有量が1.8mol/kg以上になる割合で使用する。二重結合の量がこれより少ないと表面硬度が低くなり、耐汚染性が悪くなる傾向がある。
【0019】
本発明のウレタンアクリレートは、公知の方法で合成することが可能である。例えば、所定量の(A)成分及び(B)成分を一括で仕込み、70〜80℃で所定の遊離イソシアネート量になるまで反応させ、さらにハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤の存在下、(C)成分を一括で仕込み、70〜80℃で遊離イソシアネートが無くなるまで加温・攪拌することで合成可能である。この時、反応を促進させるために、ジブチルチンジラウレート等のスズ系触媒を添加することもできる。
【0020】
本発明のエネルギー線硬化型塗料は上記ウレタンアクリレートを含有するものであり、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の有機溶剤又はモノマー類で希釈することができる。モノマーで希釈する際は、本発明のウレタンアクリレートの含有率を50重量%以上にすることが好ましい。
【0021】
希釈に用いるモノマーは、公知慣用のものが使用可能であるが、そのうちでも代表的なものとして、2−エチルヘキシルアクリレート、スチレン、メチルメタクリレート、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール−ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール−ジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオール−ジ(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキサイド、以下同様)変性ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、PO(プロピレンオキサイド、以下同様)変性ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数種を併用してもよい。
【0022】
本発明の組成物には活性エネルギー線による重合開始剤を必要に応じ添加する。ここでいう活性エネルギー線による重合開始剤は、光重合開始剤と紫外線等の活性エネルギー線による重合開始剤との双方を含むものとする。
【0023】
光重合開始剤としては、たとえば、ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、アントラセン、α−クロロメチルナフタレン等の芳香族化合物、ジフェニルスルフィド、チオカーバメイト等のイオウ化合物を使用することができる。
【0024】
可視光以外の紫外線などの活性エネルギー線による重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等を挙げることができる。
【0025】
活性エネルギー線による重合開始剤の市販品としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 商品名:イルガキュア184,369,651,500,819,907,784,2959,1000,1300,1700,1800,1850、ダロキュア1116,1173、BASF社製 商品名:ルシリンTPO、UCB社製 商品名:ユベクリルP36、フラテツリ・ランベルティ社製 商品名:エザキュアーKIP150,KIP100F,KT37,KT55,KTO46,TZT,KIP75LT、日本化薬社製 商品名:カヤキュアDETX等を挙げることができる。
【0026】
また必要により、活性エネルギー線開始剤にラジカル重合開始剤を併用することもできる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物を使用することができる。
【0027】
これら重合開始剤の含有量はその種類等によって異なるが、目安としてはウレタンアクリレート100重量部に対して1〜8重量部である。含有量が少なすぎると活性エネルギー線感度が不十分となり、多すぎると塗膜深部まで活性エネルギー線が十分に届かず、塗膜深部の硬化性が低下する傾向がある。
【0028】
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物又は塗料は、上記ウレタンアクリレート、有機溶剤又はモノマー類、各種開始剤以外に、顔料及び塗料組成物に通常含まれる各種添加剤を必要に応じて添加することができる。添加剤の例としては、光安定剤、紫外線吸収剤、触媒、レベリング剤、消泡剤、重合促進剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤等が挙げられる。
【0029】
なお、本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物及びこれを用いた塗料を硬化させるエネルギー線源は特に限定されないが、例としては、高圧水銀灯、電子線、γ線、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が挙げられる。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下において「部」及び「%」は、特に断りのない限り、すべて重量基準であるものとする。
【0031】
1.ブチレンオキサイドの開環重合により得られるポリエーテル鎖部分を含むポリエーテルポリオールの製造例
[ポリブチレングリコール(分子量400)の製造]
ステンレス製オートクレープに1,3−ブチレングリコール90g(1モル)、1,2−ブチレンオキサイド310g(4.3モル)、水酸化カリウム0.45gを添加後、オートクレープ内を窒素置換した。次いで、温度を120℃まで昇温し、この温度で圧力0.1MPaに維持し、12時間反応させた。反応終了後、減圧により未反応の1,2−ブチレンオキサイドを除去し、ポリブチレングリコール(分子量400)を得た。
【0032】
[ポリブチレングリコール(分子量1000)の製造]
1,2−ブチレンオキサイド310g(4.3モル)を910g(12.6モル)に変更した以外は上記と同様に反応させ、ポリブチレングリコール(分子量1000)を得た。
【0033】
[ポリブチレングリコール(分子量3000)の製造]
1,2−ブチレンオキサイド310g(4.3モル)を2910g(40.3モル)に変更した以外は上記と同様に反応させ、ポリブチレングリコール(分子量1000)を得た。
【0034】
[トリメチロールプロパンのブチレンオキサイド7モル付加体の製造]
1,3−ブチレングリコール90g(1モル)をトリメチロールプロパン134.1g(1モル)に、1,2−ブチレンオキサイド310g(4.3モル)を507.7g(7モル)に変更した以外は上記と同様に反応させ、トリメチロールプロパンのブチレンオキサイド7モル付加体を得た。
【0035】
2.ウレタンアクリレートの合成例
[合成例1]
フラスコにトリメチロールプロパンのブチレンオキサイド7モル付加体(TMP−7BO)638g(1モル)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)666g(3モル)を仕込み、70〜80℃で約3時間反応させた。遊離イソシアネート量が9.7±0.3%になっていること確認し、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.8g、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)348g(3.1モル)を仕込み、さらに70〜80℃にて遊離イソシアネート量が0.1%以下になるまで反応させ、ウレタンアクリレートAを得た。
【0036】
[合成例2]
TMP−7BO638g(1モル)をポリブチレングリコール(PBG−400、分子量400)400g(1モル)に、2−ヒドロキシエチルアクリレート348g(3モル)をペンタエリスリトールトリアクリレート(PET−3)255.2g(2.2モル)に、イソホロンジイソシアネート(IPDI)666g(3モル)を444g(2モル)に変更した以外は合成例1と同様に反応させ、ウレタンアクリレートBを得た。
【0037】
[合成例3]
ペンタエリスリトールトリアクリレート255.2g(2.2モル)を2−ヒドロキシエチルアクリレート229.0g(2.04モル)に変更した以外は合成例2と同様に反応させ、ウレタンアクリレートCを得た。
【0038】
[合成例4]
ポリブチレングリコール(分子量400)400g(1モル)をポリブチレングリコール(PBG−1000、分子量1000)1000g(1モル)に変更した以外は合成例2と同様に反応させ、ウレタンアクリレートDを得た。
【0039】
[比較合成例1]
ペンタエリスリトールトリアクリレート255.2g(2.2モル)を2−ヒドロキシエチルアクリレート243.6g(2.1モル)に変更した以外は合成例4と同様に反応させ、ウレタンアクリレートEを得た。
【0040】
[比較合成例2]
ポリブチレングリコール(分子量1000)1000g(1モル)をポリブチレングリコール(PBG−3000、分子量3000)3000g(1モル)に、2−ヒドロキシエチルアクリレート243.6g(2.1モル)を255.2g(2.2モル)に変更した以外は比較合成例1と同様に反応させ、ウレタンアクリレートFを得た。
【0041】
[比較合成例3]
ポリブチレングリコール(分子量400)400g(1モル)をポリプロピレングリコール(分子量1000)1000g(1モル)に変更した以外は合成例3と同様に反応させ、ウレタンアクリレートGを得た。
【0042】
[比較合成例4]
ポリブチレングリコール(分子量400)400g(1モル)をポリエチレングリコール(PEG−600、分子量600)600g(1モル)に変更した以外は合成例3と同様に反応させ、ウレタンアクリレートHを得た。
【0043】
[比較合成例5]
ポリブチレングリコール(分子量400)400g(1モル)をポリエチレングリコール(PEG−1500、分子量1500)1500g(1モル)に、イソホロンジイソシアネート444g(2モル)をトリレンジイソシアネート348g(2モル)に変更した以外は合成例2と同様に反応させ、ウレタンアクリレートIを得た。
【0044】
[比較合成例6]
ポリブチレングリコール(分子量400)400g(1モル)をポリテトラメチレングリコール(PTMG−1000、分子量1000)1000g(1モル)に変更した以外は合成例3と同様に反応させ、ウレタンアクリレートJを得た。
【0045】
3.エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製及び評価
上記合成例、比較合成例で得られたウレタンアクリレートA〜J各100部に対して、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 イルガキュア184)を3部それぞれ配合し、溶解した。これをガラス板上に膜厚が約100μmになるように塗布し、高圧水銀ランプ80W/cmを用いて、積算照度200mJ/cmにて照射して硬化させた。得られた各硬化物につき、以下の方法で耐汚染性、耐薬品性、吸水率、鉛筆硬度を調べた。結果を表1に示す。
【0046】
耐汚染性:JIS K5400に準じて評価した。すなわち硬化塗膜上に表に示した汚染物質をのせ、室温で約18時間放置した。水拭き又はイソプロピルアルコール拭きをそれぞれ行い、拭いた後を目視で観察し、汚染物質が塗膜に残っているもの又は塗膜に変化があるものを×、塗膜に変化はあるが軽微なものを△、汚染物質が残らず塗膜に変化も無いものを○とした。
【0047】
耐薬品性:JIS K5400に準じて評価した。すなわち硬化塗膜上に表に示した薬品をそれぞれ数滴たらし、室温で約18時間放置した。水洗い後、塗膜を目視で観察し、変化が見られるものを×、変化はあるが軽微なものを△、塗膜に変化が無いものを○とした。
【0048】
吸水率:硬化塗膜をガラス板からはがして、蒸留水(23℃)に24時間浸漬した。表面の水を拭取った直後に測定した重量(A)と、105℃で3時間オーブンで乾燥した後に測定した重量(B)とから次式に基づき求めた。
【0049】
吸水率(%)={(A−B)/B}×100
【0050】
鉛筆硬度:JIS K5400に準じ、鉛筆引っかき試験機で荷重1kgかけて引っかき、傷の付かない最も硬い鉛筆の硬さとした。(表中の「<6B」は「6B」より軟らかい硬度を示す。)
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物は、各種建材、構造物、成型物用の塗料に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチレンオキサイドの開環重合により得られるポリエーテル鎖部分を含むポリエーテルポリオール及び/又はポリテトラメチレンエーテルグリコール(A)と有機ポリイソシアネート(B)と分子内に水酸基を含有する(メタ)アクリレート(C)とを反応させて得られるウレタンアクリレートであって、前記 (メタ)アクリレート(C)由来の二重結合の含有量が1.8mol/kg以上であるウレタンアクリレートを含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分と(B)成分との割合が、(A)中のポリエーテルポリオール及び/又はポリテトラメチレンエーテルグリコールの水酸基総モル数(a)と(B)中の有機ポリイソシアネートのイソシアネート基総モル数(b)とのモル比が(a):(b)=1.0:1.1〜1.0:4.0の範囲となる割合であることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物を含有してなるエネルギー線硬化型塗料。

【公開番号】特開2011−132410(P2011−132410A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294672(P2009−294672)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】