説明

エネルギー線硬化性樹脂組成物

【課題】ITOに対する密着性、現像性のいずれにも優れ、かつ、ITOに近い高屈折率が得られるエネルギー線硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】このエネルギー線硬化性組成物は、屈折率が1.58以上のカルボキシル基を有するカルド樹脂と、屈折率が1.58以上のフルオレン骨格を有するエネルギー線重合性モノマーと、平均粒径5nm以上200nm以下の金属又はその酸化物からなる微粒子と、エネルギー線重合開始剤と、溶剤とを含有し、金属微粒子と全樹脂成分との質量比であるPV比が0.3以上1.8以下である。この組成物をパターニングされたITO膜上で硬化した絶縁層及び/又は保護層はITOに近い高屈折率が得られるため、ガラス側から使用者が視認した際に、ITOパターンを隠蔽することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー線硬化性樹脂組成物、該エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を絶縁層又は保護層に用いる積層部材、該積層部材を備えるタッチパネル、該タッチパネルを備える光学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルを内蔵するスマートフォン、パソコン、ゲーム機等の光学表示装置は、操作者がその画面に手、ペン等で触れることにより操作ができる。これらの装置は、操作者が画面に表示された部分を押す、滑らせる等、直感的に理解しやすい方法により操作できるため、非常に扱いやすく、その市場は急速に拡大している。
【0003】
図1に示す一例のように、このタッチパネルのセンサー部分は、通常、透明基板1上に、第1のITO電極2、絶縁層3、第2のITO電極4、保護層5を所望の形状にパターニングして積層し、その他取り出し電極6などが形成されている。ここで、絶縁層3又は保護層5の成膜は、パターン形成されたITO電極等の積層体上に、エネルギー線硬化性樹脂組成物をコートし、その後、紫外線露光などのエネルギー線の照射及び加熱することにより行われる。
【0004】
この絶縁層や保護層は、多様な要求性能が求められる。いずれの層もITOに対する密着性や、ITO成膜時の耐熱性が必要であり、また、製造工程中のハンドリング時の破損を防ぐための硬度なども要求される。また、絶縁層や保護層の一部はITO電極を露出させる必要があるために、パターン形成のための現像性も必要とされる。この現像性の付与に関し、特許文献1には、現像性を有するタッチパネルの保護膜形成用感放射線性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−27033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記のパターン形成されたITO電極膜は非常に高屈折率である。このため、他の部材との屈折率差によって、このITOパターンがタッチ面側から透けて見えてしまうという別の問題があり、これを解消する方法が求められていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ITOに対する密着性、現像性のいずれにも優れ、かつ、ITOに近い高屈折率が得られるエネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねたところ、高屈折率で現像性を有するカルド樹脂と、同じく高屈折率のモノマーとを組み合わせ、これに更に、金属またはその酸化物の微粒子を所定のPV比で添加することにより、絶縁層及び/又は保護層としての屈折率を大幅に向上してITOとの屈折率差を小さくすることができ、これによってITOパターンがタッチ面側から透けて見えてしまうことを効果的に防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1)屈折率が1.58以上のカルボキシル基を有するカルド樹脂と、
屈折率が1.58以上のフルオレン骨格を有するエネルギー線重合性モノマーと、
平均粒径5nm以上200nm以下の金属又はその酸化物からなる微粒子と、
エネルギー線重合開始剤と、
溶剤と、を含有し、
前記微粒子と全樹脂成分との質量比であるPV比が0.3以上1.8以下であるエネルギー線硬化性組成物である。
【0010】
(2)前記カルド樹脂が、酸価30mgKOH/g以上である(1)に記載のエネルギー線硬化性組成物。
【0011】
(3)前記エネルギー線重合性モノマーが、9,9−ビスフェノキシフルオレン骨格を有する(1)又は(2)に記載のエネルギー線硬化性組成物。
【0012】
(4)前記微粒子が、酸化ジルコニウムである(1)から(3)のいずれかに記載のエネルギー線硬化性組成物。
【0013】
(5)エネルギー線硬化した後の屈折率が1.65以上である(1)から(4)のいずれかに記載のエネルギー線硬化性組成物。
【0014】
(6)エネルギー線硬化した後の屈折率が1.70以上である(1)から(5)のいずれかに記載のエネルギー線硬化性組成物。
【0015】
(7)パターニングされたITO膜上に、(1)から(6)のいずれかに記載のエネルギー線硬化性組成物を硬化してなる絶縁層及び/又は保護層が形成されている透明積層部材。
【0016】
(8)(7)に記載の透明積層部材を備え、
タッチ面側から、ガラス、前記絶縁層及び/又は保護層、前記ITO膜の順に配置されているタッチパネル。
【0017】
(9)(8)に記載のタッチパネルを備える画像表示装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、絶縁層及び/又は保護層としての屈折率を大幅に向上してITOとの屈折率差を小さくすることができ、これによってITOパターンがタッチ面側から透けて見えてしまうことを効果的に防止できるエネルギー線硬化性組成物を提供できる。このエネルギー線硬化性組成物は、静電容量式タッチパネルの絶縁層及び/又は保護層の材料として特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】タッチパネルの一例を示す、(a)平面図、(b)A−A断面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0021】
<エネルギー線硬化性組成物>
本発明のエネルギー線硬化性組成物(以下単に組成物ともいう)は以下のa)からe)を含有する。以下順に説明する。
a)屈折率が1.58以上のカルボキシル基を有するカルド樹脂
b)屈折率が1.58以上のフルオレン骨格を有するエネルギー線重合性モノマー
c)平均粒径5nm以上200nm以下の金属又はその酸化物からなる微粒子
d)エネルギー線重合開始剤
e)溶剤
f)その他
【0022】
[a)カルド樹脂]
本発明に用いるカルド樹脂は、フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートと多塩基酸無水物との反応により得られるエポキシアクリレート樹脂のことをいい、その質量平均分子量(Mw)は、好ましくは1500〜18000である。なお、本発明における質量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0023】
このようなフルオレン構造を有するカルド樹脂を用いることにより、1.58以上の高屈折率が得られる。また、b)のフルオレン骨格を有するエネルギー線重合性モノマーとの相溶性がよく白濁を防止できる。さらに、ITO膜をスパッタリングなどで形成する際の耐熱性にも優れる。
【0024】
カルド樹脂の屈折率は1.58以上、好ましくは1.60以上であり、上限は1.68である。屈折率が1.58未満であると、たとえ微粒子を添加しても、硬化後の絶縁層及び/又は保護層の屈折率を充分に高くできない。1.68を超えるものは製造が困難である。なお、このカルド樹脂の屈折率とは、硬化後の段階で、実施例に記載の方法により分光光度計により測定した反射率から計算した値であり、JIS K−7142A法による測定値と同様の値が得られる。
【0025】
また、本発明に用いるカルド樹脂はカルボキシル基を有している。このためにアルカリ現像などの現像性を有している。より具体的には、JIS−K0070による酸価が30mgKOH/g以上であり、好ましくは40mgKOH/g以上である。酸価が上記範囲内であれば、十分なアルカリ可溶性を発現させることができるからである。一方、上限は、特に限定されるものではないが、通常150mgKOH/g以下である。なお、酸価は、フェノールフタレインを指示薬として用い、水酸化カリウムエタノール溶液にて滴定し求めた値である。
【0026】
本発明に用いられるカルド樹脂の一例として、下記化学式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0027】
【化1】

【0028】
化学式(1)において、R1およびR2は互いにそれぞれ独立しており、炭素数が1〜5のアルキル基、単環構造又は環の数が2〜3の縮合環構造をもつアリール基、或いは単環構造又は環の数が2〜3の縮合環構造をもつ複素環基を表す。
【0029】
屈折率が1.58以上のカルボキシル基を有するカルド樹脂は、市販品を用いることができ、たとえば、商品名INR−16M、ナガセケムテックス株式会社製を好適に用いることができる。
【0030】
上記カルド樹脂の含有量は、全固形分中の割合で、通常5〜30質量%であり、好ましくは10〜20質量%である。カルド樹脂の含有量が少な過ぎると、充分な光硬化性が得られない場合が生じ、含有量が多過ぎると、現像不良や硬化不良を生じる恐れがあるので好ましくない。
【0031】
[b)エネルギー線重合性モノマー]
本発明に用いるエネルギー線重合性モノマーはフルオレン骨格を有しているので高屈折率である。屈折率は1.58以上、好ましくは1.60以上であり、上限は1.68である。屈折率が1.58未満であると、たとえ微粒子を添加しても、硬化後の絶縁層及び/又は保護層の屈折率を充分に高くできない。1.68を超えるものは製造が困難である。なお、このエネルギー線重合性モノマーの屈折率とは、上記カルド樹脂と同様に、硬化後の段階で、実施例に記載の方法により分光光度計により測定した反射率から計算した値であり、JIS K−7142A法による測定値と同様の値が得られる。
【0032】
本発明に用いられるフルオレン骨格を有するエネルギー線重合性モノマーとしては特に限定されないが、9,9−ビスフェノキシフルオレン骨格とエチレン性不飽和二重結合とを有するモノマーを用いることが好ましい。このモノマーは、下記化学式(2)において基本骨格として表される9,9−ビスフェノキシフルオレン骨格を有するものである。
【0033】
【化2】

【0034】
上記のエネルギー線重合性モノマーは市販品を使用することができ、具体的には、EA−0200、EA-F5003、EA-F5503、EA-F5510、(大阪ガスケミカル社製)、NKエステルA−BPEF、NKエステルA−BPEF―4E(新中村化学社製)、BPEFジアクリレート、BPEFジメタクリレート(長瀬産業社製、大阪ガスケミカル社製、JFEケミカル社製)等が挙げられる
【0035】
上記エネルギー線重合性モノマーの含有量は、全固形分中の割合で、通常10〜70質量%であり、好ましくは20〜50質量%であり、より好ましくは30〜40質量%である。エネルギー線重合性モノマーの含有量が少な過ぎると、充分な光硬化性が得られない場合が生じ、含有量が多過ぎると、硬化収縮による密着不良や現像適性の低下を生じる恐れがあるので好ましくない。
【0036】
[c)微粒子]
本発明に用いる微粒子は、平均粒径5nm以上200nm以下の金属微粒子又は金属酸化物微粒子であり、好ましい平均粒径は5nm以上100nm以下であり、より好ましい平均粒径は10nm以上50nm以下である。そして、この微粒子と全樹脂成分との質量比であるPV比が0.3以上1.8以下であることを特徴としている。屈折率を調整できる点から金属微粒子又は金属酸化物微粒子を用いるが、絶縁性の観点から、絶縁層として用いる場合には金属酸化物粒子が好ましく、より好ましくは非導電性の金属酸化物粒子が好ましい。
【0037】
微粒子の平均粒径(平均一次粒子径を意味する)は5〜200nmである。平均一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて、粒子自身を直接観察することによって測定できる。
【0038】
平均一次粒子径が5nm未満の場合、微粒子同士の凝集力が非常に大きいことから、透明性の高い一次粒子レベルの分散をさせることが非常に困難である。一方、平均一次粒子径が200nmを超える金属酸化物の場合、一次粒子レベルで分散させることは容易になるが、粒子径が大きいことから可視光などの光に対して散乱が生じ易く、硬化膜の透明性を悪化させる問題が生じる。
【0039】
金属酸化物の微粒子としては、チタニウム、亜鉛、ジルコニウム、アンチモン、インジウム、スズ、珪素、及び、アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有するものが好ましい。具体的には、五酸化アンチモン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、アンチモン酸亜鉛(AZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)、酸化スズ、ATO被覆酸化チタン、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛等が挙げられる。これらは公知の市販品が容易に入手できる。金属の微粒子としては、チタニウム、亜鉛、ジルコニウム、アンチモン、インジウム、スズ、珪素、及び、アルミニウムからなる群から選ばれるものが例示できる。これらの微粒子は単独でもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
微粒子の含有量は、微粒子と全樹脂成分との質量比であるPV比が0.3以上1.8以下であり、下限は好ましくは0.6以上、上限は好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下である。これにより、透明性を維持しつつも、絶縁層及び/又は保護層の屈折率をベース樹脂よりも高くしてITO膜の屈折率に近づけることができる点に本発明の特徴があり、また、併せて、現像性の向上を図ることができるという点において、従来ない優れた効果を奏する組成物を提供するものである。
【0041】
PV比が0.3未満であると、たとえ微粒子を添加しても、硬化後の絶縁層及び/又は保護層の屈折率を充分に高くできない。また、現像性も低下する。一方、1.8を超えると、ヘイズ値が増加して透明性が低下する。なお、本発明のPV比におけるPは本発明における微粒子の全質量であり、Vは全固形分からPを除いた差分の質量である。
【0042】
[d)エネルギー線重合開始剤]
本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物には、さらにエネルギー線重合開始剤を配合する。このようなエネルギー線重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−〔4−メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2- ジメチルアミノ-2- (4- メチル- ベンジル)-1- (4- モリフォリン-4- イル- フェニル)- ブタン-1- オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)- フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル- ジフェニル- フォスフィンオキサイド、1,2- オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(0- ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-( 2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-( O-アセチルオキシム)等を挙げることができる。また、感度や透明性、製版適性の観点から2−メチル−1−〔4−メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン−1や1,2- オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O- ベンゾイルオキシム)が好ましい。
【0043】
エネルギー線重合開始剤の配合割合は、全固形分中の割合で1〜10質量%が好ましく、より好ましくは2〜7質量%である。
【0044】
[e)溶剤]
本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物は、適宜溶剤に溶解して固形分調整を行うことができる。溶剤としては、エネルギー線硬化性樹脂組成物の各成分に対して反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であれば特に限定されるものではない。具体的には、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;および、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;などが挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。これらのなかでも、塗布適性や溶解性の観点からPGMEA、PGME、または両者の混合溶媒が好ましい。
【0045】
溶剤量は、目的とする塗布性や分散溶解性に応じて適宜選択可能であるが、好ましくは組成物中の固形分で10〜40質量%となるように調整すればよい。
【0046】
[f)その他]
本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物は、密着助剤、界面活性剤、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、エネルギー線安定剤(光安定剤)、レベリング剤、硬度向上等のため無機微粒子(コロイダルシリカ等)などを適宜使用してもよい。
【0047】
本発明において使用し得る密着助剤としては、例えば、 シランカップリング剤である信越化学社製KBM−403、 KBM―503、 KBM−803等を、全固形分中の割合で0.1〜10質量%配合できる。
【0048】
本発明において使用し得る界面活性剤としては、例えば、フッ素系であるDIC社製「メガファック」R08MH、RS−72−K、RS−75等、シリコーン系であるビックケミー・ジャパン社製BYK−333、BYK−301等を、全固形分中の割合で0.1〜5質量%配合できる。
【0049】
ITO密着性を高めるために、さらに分子中に二重結合を有するリン酸化合物を添加してもよい。本発明に用いられるリン酸化合物としては、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するリン酸化合物であれば特に限定せずに使用することができる。例えば、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(商品名ライトエステルP−1M、ライトエステルP−2M共栄社化学(株)製)、エチレンオキサイド 変性リン酸ジメタクリレート(商品名PM−21日本化薬(株)製)、燐酸含有エポキシメタクリレート(商品名ニューフロンティアS−23A 第一工業製薬(株)製)などのリン酸(メタ)アクリレート類、ビニルホスホン酸(商品名VPA−90,VPA−100 BASF社製)などのリン酸ビニル化合物が挙げられる。
【0050】
<透明積層部材/タッチパネル>
上記の本発明のエネルギー線硬化性組成物は、上記のパターン形成された薄膜のITO電極上に塗布され、紫外線などによって光硬化されて硬化物となり絶縁層及び/又は保護層を形成することで本発明の透明積層部材を構成し、当該透明積層部材がタッチパネルの一部を構成する。
【0051】
図1を再度用いて本発明を説明すると、このタッチパネル10のセンサー部分は、通常、透明基板1上に、第1のITO電極2、絶縁層3、第2のITO電極4、保護層5を所望の形状にパターニングして積層することにより製造されている。本発明における絶縁層及び/又は保護層は、この絶縁層3、保護層5のいずれか又は両方に適用できる。
【0052】
透明基板1としては、可視エネルギー線に対して透明な基材であれば特に限定されるものではない。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、強化ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム(PET等)、エネルギー線学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
【0053】
まず、透明基板1上に公知の方法で所望の形状にパターン化した第1のITO電極2を形成する。その後、第1のITO電極2上に、本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して絶縁層3を形成する。塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えばスプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法等を挙げることができる。
【0054】
次に、エネルギー線硬化性樹脂組成物上に所定形状の開口パターンを有するマスクを載置し、活性エネルギー線の照射を行なう。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線等が挙げられる。照射量は、通常のパターニングに用いる範囲で適宜設定できるが、例えば、30〜300mJ/cm、好ましくは50〜150mJ/cmの範囲で設定できる。活性エネルギー線照射後の塗膜は通常の方法により現像される。現像処理後のエネルギー線硬化性樹脂組成物を加熱(ポストベイク)する。加熱条件は、通常の絶縁層及び/又は保護層の形成と同様の範囲で設定できるが、例えば、200〜300℃、20〜40分間加熱することができる。その結果、当該実施形態においては、本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層3がパターン形成される。絶縁層の膜厚(乾燥時)としては、特に限定されないが、通常、0.5〜5μm、好ましくは0.75〜3μmの範囲で適宜設定できる。
【0055】
その後、上記と同様にして、第2のITO電極4、保護層5を順次形成して、本発明の透明積層部材を製造する。ここで保護層5は上記の絶縁層3と同様の組成物を上記同様の方法で形成すればよい。
【0056】
この透明積層部材を備える本発明のタッチパネルは、タッチ面側から、ガラス、前記絶縁層及び/又は保護層、前記ITO膜の順に配置されている。従来、タッチ面側から、ガラス越に視認した際、従来はITO電極のパターンが透けて見えてしまっていたが、本発明においては、絶縁層及び/又は保護層を高屈折率化して屈折率を1.65以上、好ましくは1.70以上とした。これにより、ITOの屈折率である2.0〜2.2に近づけたので、ITO電極のパターンが透けて見えるのを効果的に防止できる。このように、本発明においては、絶縁層及び/又は保護層そのものに高屈折率性を付与したので、他の高屈折率フィルムなどを併用する必要がなく、簡単な構成でコスト的にも優れるものとなる。なお、本発明における絶縁層及び/又は保護層の屈折率とは、下記の実施例における方法で測定した値である。
【0057】
<画像表示装置>
本発明は、上記タッチパネルを備えた画像表示装置も提供する。かかる画像表示装置としては、例えば、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示装置等が挙げられる。また、本発明の画像表示装置には、上記液晶表示装置を備えたスマートフォン、パソコン、ゲーム機等も含まれる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
下記のa)からf2)を表1の配合(固形分の質量部)として実施例及び比較例における組成物を得た。
a)カルボキシル基を有するカルド樹脂(商品名INR−16M、ナガセケムテックス株式会社製、屈折率1.61、固形分55%)
b)フルオレン骨格を有するエネルギー線重合性モノマー(商品名EA−0200、大阪ガスケミカル社製、屈折率1.62、固形分95質量%)
c)金属酸化物微粒子(平均粒径43nmの酸化ジルコニウム、PGME中に固形分222.5%で分散、酸化ジルコニウムとしての固形分20.1%)
d)エネルギー線重合開始剤(商品名イルガキュア907、BASF社製)
e)溶剤(PGMEA、固形分25%となるように調整)
f1)界面活性剤(商品名メガファックR08MH、DIC社製)
f2)密着助剤(シランカップリング剤、商品名KBM−403、信越化学社製)
【0060】
【表1】

【0061】
<評価項目及び評価方法>
下記の評価を行った結果をまとめて表2に示した。
(1)解像度/現像残渣
ガラス基板上に、実施例および比較例で得られた組成物を乾燥後の厚みが1.5μmとなるようにスピンコートし、100℃ホットプレート上にて2分間静置(予備乾燥)しマスク露光を行った。次いで、現像液として、0.05%水酸化カリウム水溶液を用いて60秒間の現像を行い、未露光部の現像性を評価した。なお、露光条件は以下のとおりとした。また、現像性の評価は、解像度は10〜100umの線幅を有するラインアンドスペース型のパターンを有するマスクを置き、上記の条件にて紫外線を照射後、現像処理を行った。得られた基板について、光学顕微鏡で観察を行い、基板上に残っていて、かつ、解像している最も線幅の小さいパターンの線幅を解像度とした。また、現像残渣の有無を、未露光部が完全に溶解するかどうかで、○:目視で残渣なし、×:目視で残渣あり、の基準で評価した。
(露光条件)
露光機:プロキシ露光機
マスク:クロムマスク
露光ギャップ:150μm
光源:超高圧水銀灯
露光量:100mJ/cm
【0062】
(2)密着性1
ITO基板上に上記「(1)現像性」と同様の条件で製膜した塗膜について、230℃で30分ポストベーク処理を行った後、セロハン粘着テープにて碁盤目剥離試験を行った。ここで、碁盤目剥離試験は、カッターナイフでITO基板の素地に到達するように、直行する縦横11本ずつの平行な直線を1mm間隔で引いて1mm×1mmのマス目を100個作製し、セロハン粘着テープ(商品名:セロテープ(登録商標)、品番:CT405AP−24、ニチバン株式会社製)を消しゴムですって貼り付け、直角に瞬間的に剥離して、マス目の残存数を目視によって評価した。なお、マス目の剥離面積を以下の基準で判定した。
5:剥離面積が0%
4:剥離面積が0%超〜25%以内
3:剥離面積が25%超〜50%以内
3:剥離面積が50%超〜75%以内
1:剥離面積が75%超〜100%
【0063】
(3)密着性2
さらなる加速試験として、密着性1と同様の条件で得られた加熱後の塗膜について、さらに120℃、100%RH、2気圧の条件に3時間供した後、セロハン粘着テープにて碁盤目剥離試験を行った。碁盤目剥離試験は上記と同様の条件で実施及び評価した。
【0064】
(4)視認性
ITOパターン基板上に上記(1)と同様の条件で製膜した塗膜について、230℃で30分ポストベーク処理を行った後、目視にてITOパターンの映り込み度合いを評価し、○:ITOパターンが見えない、△:ITOパターンがやや見える、×:ITOパターンが見える、の3段階で判定した。
【0065】
(5)透明性
ガラス基板上に上記(1)と同様の条件で製膜した塗膜について、230℃で30分ポストベーク処理を行った後、目視にて透明性を評価し、○:透明、△:やや不透明、×:白化の2段階で判定した。
【0066】
(6)屈折率
1)ガラス基板上に製膜した塗膜について、230℃で30分ポストベーク処理を行った。
2)その後、裏面反射を防止するためのガラス面側に黒色テープを貼り、硬化膜面から、島津製作所製分光光度計UV−3150を用い、波長域380から780nmでの反射率を測定し、その平均である平均反射率Rを算出した。
3)Rを用いて下記式より本発明の屈折率n1を計算した。但し、n0は空気の屈折率であり1.000として計算した。
R=(n0−n1)/(n0+n1)
【0067】
【表2】

【0068】
表2から明らかなように、本発明の組成物においては、絶縁層及び/又は保護層を形成した際に、ITOとの密着性と現像性に優れ、しかも、屈折率が1.67以上と高いので、ITOパターンの映り込みがない。
【符号の説明】
【0069】
1 透明基板
2 第1のITO電極
3 絶縁層
4 第2のITO電極
5 保護層
6 取り出し電極
10 タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率が1.58以上のカルボキシル基を有するカルド樹脂と、
屈折率が1.58以上のフルオレン骨格を有するエネルギー線重合性モノマーと、
平均粒径5nm以上200nm以下の金属又はその酸化物からなる微粒子と、
エネルギー線重合開始剤と、
溶剤と、を含有し、
前記微粒子と全樹脂成分との質量比であるPV比が0.3以上1.8以下であるエネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
前記カルド樹脂が、酸価30mgKOH/g以上である請求項1に記載のエネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
前記エネルギー線重合性モノマーが、9,9−ビスフェノキシフルオレン骨格を有する請求項1又は2に記載のエネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
前記微粒子が、酸化ジルコニウムである請求項1から3のいずれかに記載のエネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
エネルギー線硬化した後の屈折率が1.65以上である請求項1から4のいずれかに記載のエネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
エネルギー線硬化性組成物を、エネルギー線硬化した後の屈折率が1.70以上である請求項1から5のいずれかに記載のエネルギー線硬化性組成物。
【請求項7】
パターニングされたITO膜上に、請求項1から6のいずれかに記載のエネルギー線硬化性組成物を硬化してなる絶縁層及び/又は保護層が形成されている透明積層部材。
【請求項8】
請求項7に記載の透明積層部材を備え、
タッチ面側から、ガラス、前記絶縁層及び/又は保護層、前記ITO膜の順に配置されているタッチパネル。
【請求項9】
請求項8に記載のタッチパネルを備える画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−95796(P2013−95796A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237806(P2011−237806)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】