説明

エネルギー評価装置、エネルギー評価方法、および制御プログラム

【課題】品質管理因子または品質管理因子を制御・維持するために費やされるエネルギーの適切な余裕分を判断・評価する評価装置を実現する。
【解決手段】本発明のエネルギー評価装置4は、管理対象である気温が管理基準を満たすように、気温を調節する空気調節器2について、消費エネルギーを評価するための装置であって、気温の測定値を取得する気温取得部6と、空気調節器2の消費エネルギーの因子となる風量の値を取得する風量取得部7と、あらかじめ取得した風量の変化に対する気温の変化の関係に基づき、気温が管理基準を満たす限界値になるように空気調節器2を動作させるときの、風量の値を風量の限界値として特定する風量限界値特定部8と、風量取得部7が取得した風量の値に対応する空気調節器2の消費エネルギーと、風量の限界値に対応する空気調節器2の消費エネルギーとの差を、過剰エネルギーとして特定する過剰エネルギー特定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質管理基準を満たすために消費されるエネルギーを評価するまたは最適化するエネルギー評価装置またはエネルギー評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題が取りざたされ、工場または家庭等における設備のエネルギー消費量を削減することが重要事項となっている。そのために、工場または家庭等における設備の、環境への影響を評価する方法が必要になってくる。例えば、情報通信サービスの利用形態に起因する環境影響因子と環境負荷との因果関係を評価する方法として、例えば特許文献1の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−065557号公報(2006年3月9日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、生産設備が物品の製造を行う場合、物品の品質および歩留まりを高めるために、要求される環境等の条件がある。要求される条件とは、例えば、生産設備が配置されたクリーンルーム内の粒子濃度を所定の濃度以下に保つ、加工設備の周囲の気温を所定の温度以下に保つ、または、溶接設備に供給される冷却水の排水が所定の温度以下になるように冷却水を溶接設備に供給する等の条件である。これらの条件は、設備の仕様として決められている場合もあれば、設備の使用者が個々に設定する場合もある。
【0005】
上記クリーンルームの例では、粒子濃度が、生産する物品の品質を保つために管理対象となる因子(品質管理因子)となる。また、上記加工設備の例では、加工設備の周囲の気温が、上記溶接設備の例では、冷却水の排水温度が、それぞれ品質管理因子である。
【0006】
また、物品等の品質を管理するために設備に関して設定される、品質管理因子が満たすべき条件が、品質管理基準である。上記クリーンルームの例では、例えば粒子濃度が100個/m以下という条件が品質管理基準である。また、上記溶接設備の例では、例えば冷却水の排水温度が30℃以下という条件が品質管理基準である。
【0007】
生産現場では、これら品質管理因子が、品質管理基準を満たすように、品質管理因子を制御する。そして、品質管理因子を制御するために、エネルギーが消費される。例えば、上記クリーンルームの場合であれば、クリーンルーム内を浮遊する微粒子をエアフィルターで集塵するために、空気調節器がクリーンルーム内の空気を循環させるために電力エネルギーを消費する。また、上記加工設備の場合、加工設備の周囲の気温を下げるために、空気調節器が電力エネルギーを消費する。また、上記溶接設備の場合、溶接設備に供給される冷却水の温度を下げ、冷却水を循環させるために、冷却装置がエネルギーを消費する。
【0008】
ここで、設備に関して設定される品質管理基準は、種々の外乱等を考慮して余裕(バッファ)を持たせて設定される場合がほとんどである。例えば、上記クリーンルームの場合であれば、クリーンルーム内に外から作業員が入ってきた場合、作業員と共に微粒子もクリーンルーム内に入りうる。そのため、一時的にクリーンルーム内の粒子濃度が上昇することはよくある。そのような場合にも、クリーンルーム内の粒子濃度が品質管理基準を外れないように、外乱のない安定時においては、粒子濃度は限界値(例えば100個/m)より余裕を持ったレベル(例えば50個/m)に維持される。ただし、多くの場合、どれぐらいの余裕を持たせるかは経験等から判断されてきた。そのため、品質管理因子(粒子濃度、または冷却水排水温度等)を余裕を持ったレベルに維持するために費やされる(空気調節器、または冷却装置等の)エネルギーは、余裕をみて過剰に費やされることになる。それゆえ、品質管理因子または品質管理因子を制御・維持するために費やされるエネルギーの適切な余裕分を判断・評価することが重要になる。
【0009】
しかしながら、特許文献1の技術は、情報通信サービスに関連する環境負荷を評価する技術であり、工場等における設備のエネルギー消費量を評価することはできない。
【0010】
消費エネルギーの余裕分について、溶接装置に冷却水を循環させる場合を例にとって説明する。図8は、溶接装置の冷却水の排水水温の時間変化を示す図である。ここで、冷却水の排水水温は、30℃以下に維持されるという品質管理基準があるとする。循環する冷却水を冷却・循環させるためにエネルギーを消費する。図8に示す例では、安定時においては冷却水の排水水温は約15℃に保たれ、溶接装置の稼動時には排水水温は23℃〜25℃まで上昇する。図8に、斜線のハッチングで示す領域は、いかなる場合でも品質管理基準を満たすために設けられた余裕分(バッファ)を示すものであり、外乱に備えて過剰に消費されるエネルギーに対応する。このバッファが大きすぎることは、無駄にエネルギーを消費していることを意味する。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、品質管理因子または品質管理因子を制御・維持するために費やされるエネルギーの適切な余裕分を判断・評価する評価装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るエネルギー評価装置は、管理対象である物理量が所定の管理基準を満たすように、エネルギーを消費して上記物理量を調節する調節装置について、消費エネルギーを評価するためのエネルギー評価装置であって、上記の課題を解決するために、上記物理量の測定値を取得する物理量取得部と、上記調節装置の消費エネルギーの因子となるエネルギー因子の値を取得するエネルギー因子取得部と、あらかじめ取得した上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係に基づき、上記物理量が上記管理基準を満たす限界値になるように上記調節装置を動作させるときの、上記エネルギー因子の値を上記エネルギー因子の限界値として特定する限界値特定部と、上記エネルギー因子取得部が取得した上記エネルギー因子の値に対応する上記調節装置の消費エネルギーと、上記エネルギー因子の限界値に対応する上記調節装置の消費エネルギーとの差を、過剰エネルギーとして特定する過剰エネルギー特定部とを備えることを特徴としている。
【0013】
本発明に係るエネルギー評価方法は、管理対象である物理量が所定の管理基準を満たすように、エネルギーを消費して上記物理量を調節する調節装置について、消費エネルギーを評価するためのエネルギー評価方法であって、上記の課題を解決するために、上記物理量の測定値を取得する物理量取得ステップと、上記調節装置の消費エネルギーの因子となるエネルギー因子の値を取得するエネルギー因子取得ステップと、あらかじめ取得した上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係に基づき、上記物理量が上記管理基準を満たす限界値になるように上記調節装置を動作させるときの、上記エネルギー因子の値を上記エネルギー因子の限界値として特定する限界値特定ステップと、上記エネルギー因子取得ステップにて取得した上記エネルギー因子の値に対応する上記調節装置の消費エネルギーと、上記エネルギー因子の限界値に対応する上記調節装置の消費エネルギーとの差を、過剰エネルギーとして特定する過剰エネルギー特定ステップとを含むことを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、現在の上記エネルギー因子の値に対応する上記調節装置の消費エネルギーと、上記エネルギー因子の限界値に対応する上記調節装置の消費エネルギーとの差を、過剰エネルギーとして特定することができる。この過剰エネルギーは、外乱がある場合にも管理対象である物理量が品質基準を満たすために設けられている消費エネルギーの余裕分と考えられる。そのため、余裕分のためにどれだけのエネルギーが消費されているかを特定することができる。
【0015】
また、求めた上記過剰エネルギーを利用者に提示する提示部を備える構成であってもよい。
【0016】
上記の構成によれば、利用者はエネルギー評価装置が特定した過剰エネルギーを確認することができる。よって、利用者は、余裕分のためにどれだけのエネルギーが消費されているかを認識することができ、エネルギー削減を図るための情報として利用することができる。
【0017】
本発明に係るエネルギー評価装置は、管理対象である物理量が所定の管理基準を満たすように、エネルギーを消費して上記物理量を調節する調節装置について、消費エネルギーを評価するためのエネルギー評価装置であって、上記の課題を解決するために、上記物理量の測定値を取得する物理量取得部と、上記調節装置の消費エネルギーの因子となるエネルギー因子の値を取得するエネルギー因子取得部と、外乱がないときの上記物理量の目標値を特定する物理量目標値特定部とを備え、上記物理量目標値特定部は、あらかじめ取得した上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係と、外乱に起因する想定される上記物理量の変化とに基づき、外乱があった場合にも上記物理量が上記管理基準を外れることがないようにするための余裕分を持った上記物理量の値を、上記物理量の目標値として特定することを特徴としている。
【0018】
本発明に係るエネルギー評価方法は、管理対象である物理量が所定の管理基準を満たすように、エネルギーを消費して上記物理量を調節する調節装置について、消費エネルギーを評価するためのエネルギー評価方法であって、上記の課題を解決するために、上記物理量の測定値を取得する物理量取得ステップと、上記調節装置の消費エネルギーの因子となるエネルギー因子の値を取得するエネルギー因子取得ステップと、外乱がないときの上記物理量の目標値を特定する物理量目標値特定ステップとを含み、上記物理量目標値特定ステップでは、あらかじめ取得した上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係と、外乱に起因する想定される上記物理量の変化とに基づき、外乱があった場合にも上記物理量が上記管理基準を外れることがないようにするための余裕分を持った上記物理量の値を、上記物理量の目標値として特定することを特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、あらかじめ取得した上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係と、外乱に起因する想定される上記物理量の変化とに基づき、上記物理量の目標値を特定することができる。よって、外乱がある場合にも管理対象である物理量が品質基準を満たすための適切な上記物理量の目標値を得ることができる。そのため、品質基準を満たしながら、調節装置の消費エネルギーを削減することができる。
【0020】
また、あらかじめ取得した上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係に基づき、上記物理量の目標値に対応する上記エネルギー因子の目標値を特定するエネルギー因子目標値特定部を備える構成であってもよい。
【0021】
上記の構成によれば、上記物理量を目標値に調節するために、調節装置のエネルギー因子をどの値に調節すればよいのかが分かる。よって、上記エネルギー因子を目標値に調節することにより、上記物理量を目標値に調節することができる。
【0022】
また、上記物理量の測定値が上記物理量の目標値になるように、上記エネルギー因子を調節するエネルギー因子調節部を備える構成であってもよい。
【0023】
上記の構成によれば、エネルギー因子を制御し、上記物理量を目標値に調節することができる。よって、品質基準を満たしながら、調節装置の消費エネルギーを削減することができる。
【0024】
また、上記エネルギー因子取得部が取得した上記エネルギー因子の値に対応する上記調節装置の消費エネルギーと、上記エネルギー因子の目標値に対応する上記調節装置の消費エネルギーとの差を、削減可能なエネルギーとして特定する削減可能エネルギー特定部を備える構成であってもよい。
【0025】
上記の構成によれば、削減可能なエネルギーは、管理基準を満たしながら削減することができる消費エネルギーの余裕分に相当する。よって、不必要な消費エネルギーの余裕分を特定することができる。
【0026】
求めた上記削減可能なエネルギーを利用者に提示する提示部を備える構成であってもよい。
【0027】
上記の構成によれば、利用者は不必要で削減可能な消費エネルギーを認識することができ、エネルギー削減を図るための情報として利用することができる。
【0028】
また、外乱がない状態において、上記エネルギー因子を変化させて上記物理量の測定値の変化を取得し、上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係を特定する関係特定部を備える構成であってもよい。
【0029】
上記の構成によれば、あらかじめ外乱がない状態において、上記エネルギー因子を変化させて上記物理量の測定値の変化を取得することにより、上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係を特定することができる。
【0030】
また、上記エネルギー因子調節部は、上記物理量の測定値が上記物理量の目標値から変動すると、上記物理量の変動を抑制するよう上記エネルギー因子を調節し、上記物理量目標値特定部は、あらかじめ取得した上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係と、外乱に起因する想定される上記物理量の変化とに基づき、想定される最大の外乱があった場合に上記物理量が上記管理基準を満たすための最小限の余裕分を持った上記物理量の値を、上記物理量の目標値として特定する構成であってもよい。
【0031】
上記の構成によれば、想定される最大の外乱がある場合にも管理対象である物理量が品質基準を満たすための最小限の余裕を持つ上記物理量の目標値を得ることができる。そのため、品質基準を満たしながら、調節装置の消費エネルギーを削減することができる。
【0032】
また、1つの上記物理量に対して、上記物理量を調節する調節装置が複数あり、外乱がない状態において、上記エネルギー因子を変化させて上記物理量の測定値の変化を取得し、上記複数の調節装置のうち、上記物理量をより少ない消費エネルギーで調節する上記調節装置を特定する調節装置特定部を備え、上記エネルギー因子調節部は、上記調節装置特定部が特定した上記調節装置のエネルギー因子を、優先的に調節する構成であってもよい。
【0033】
上記の構成によれば、上記物理量をより少ない消費エネルギーで調節することができる調節装置を特定し、そのエネルギー効率のよい調節装置のエネルギー因子を優先的に調節することができる。そのため、調節装置および対応するエネルギー因子が複数ある場合に、より消費エネルギーを削減することができる。
【0034】
なお、上記エネルギー評価装置は、一部をコンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各部として動作させる制御プログラム、および上記制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0035】
以上のように本発明によれば、現在の上記エネルギー因子の値に対応する上記調節装置の消費エネルギーと、上記エネルギー因子の限界値に対応する上記調節装置の消費エネルギーとの差を、過剰エネルギーとして求めることができる。そのため、余裕分のためにどれだけのエネルギーが消費されているかを特定することができる。
【0036】
また、本発明によれば、外乱がある場合にも管理対象である物理量が品質基準を満たすための適切な上記物理量の目標値を得ることができる。そのため、品質基準を満たしながら、調節装置の消費エネルギーを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るエネルギー評価装置を含む、気温調節システムの機能的構成を示すブロック図である。
【図2】上記エネルギー評価装置の処理フローを示す図である。
【図3】風量の変化と気温の変化との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の他の実施形態に係るエネルギー評価装置を含む、溶接装置冷却システムの概略構成を示す図である。
【図5】上記エネルギー評価装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態に係るエネルギー評価装置を含む、溶接装置冷却システムの概略構成を示す図である。
【図7】上記エネルギー評価装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図8】溶接装置の冷却水の排水水温の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[実施形態1]
以下、本発明の実施形態について、図1〜図3を参照して詳細に説明する。
【0039】
<気温調節システムの構成>
本実施形態では、空気調節器によって部屋内の気温を所定の基準値以上に維持する場合について説明する。図1は、空気調節器とエネルギー評価装置とを含む、気温調節システム1の機能的構成を示すブロック図である。
【0040】
気温調節システム1は、空気調節器(調節装置)2、気温測定装置3、エネルギー評価装置4、および、表示装置16を備える。空気調節器2、気温測定装置3、および表示装置16は、それぞれエネルギー評価装置4と互いに通信可能に接続されている。
【0041】
空気調節器2は、風量測定部5を備える。空気調節器2は、暖房能力を有し、一定の温度に暖められた空気を部屋内に供給することにより、部屋内の気温を上げるよう動作する。なお、部屋内の気温の維持すべき所定の基準値は、外気温より高いものとする。よって、単位時間当たりに空気調節器2によって供給される空気の量が多ければ、部屋内の気温はより高くなり、単位時間当たりに空気調節器2によって供給される空気の量が少なければ、部屋内の気温はより低くなる。本実施形態において、部屋内の気温は20℃以上に維持する、という品質管理基準が設けられているものとする。ここで、品質管理因子は気温であり、品質管理因子が品質管理基準を満たす限界値である「20℃」を品質管理基準の限界値と表現する。なお、気温を20℃以上30℃以下の範囲に維持するという品質管理基準であれば、限界値は、暖房エネルギーを節約できる方である「20℃」の方を指す。
【0042】
風量測定部5は、空気調節器2が単位時間当たりに供給する空気の量(風量)を測定する。空気調節器2は、一定の温度に暖められた空気を、風量を調節して供給する。よって、空気調節器2の風量は、空気調節器2が消費するエネルギーと密接に関連しており、かつ、部屋内の気温(品質管理因子)を調節するために調節される因子である。品質管理因子となる物理量(気温)を調節するために調節される因子(風量)であり、かつ、品質管理因子を調節する装置のエネルギー消費に密接に関連している因子(風量)を、エネルギー因子と表現する。風量測定部5は、空気調節器2の出力として風量を測定することにより、空気調節器2の消費するエネルギーを間接的に測定する。風量測定部5は、風量測定値をエネルギー評価装置4に出力する。
【0043】
気温測定装置3は、部屋内の気温を測定し、気温測定値をエネルギー評価装置4に出力する。気温測定装置3は、部屋内に複数設けられてもよく、複数の測定値の平均を、気温測定値としてエネルギー評価装置4に出力してもよい。
【0044】
なお、気温測定装置3および風量測定部5は、エネルギー評価装置4に備えられていてもよい。
【0045】
エネルギー評価装置4は、気温取得部(物理量取得部)6、風量取得部(エネルギー因子取得部)7、風量限界値特定部(限界値特定部)8、過剰エネルギー特定部(削減可能エネルギー特定部)9、表示制御部(提示部)10、記憶部11、性能特定部(関係特定部)12、気温目標値特定部(物理量目標値特定部)13、風量目標値特定部(エネルギー因子目標値特定部)14、および、風量制御部(エネルギー因子調節部)15を備える。
【0046】
気温取得部6は、気温測定装置3から気温測定値を取得し、風量限界値特定部8に出力する。風量取得部7は、空気調節器2の風量測定部5から風量測定値を取得し、風量限界値特定部8に出力する。
【0047】
風量限界値特定部8は、気温が品質管理基準の限界値(20℃)になるときの風量を特定し、気温が品質管理基準の限界値になるときの風量を過剰エネルギー特定部9に出力する。
【0048】
過剰エネルギー特定部9は、現在の風量に対応する空気調節器2の消費エネルギーを特定し、気温が品質管理基準値の限界値であるときの風量に対応する空気調節器2の消費エネルギーを特定する。過剰エネルギー特定部9は、現在の風量に対応する空気調節器2の消費エネルギーと、気温が品質管理基準値の限界値であるときの風量に対応する空気調節器2の消費エネルギーとを表示制御部10に出力する。
【0049】
表示制御部10は、外部の表示装置16の表示の制御を行う。なお、エネルギー評価装置4は、表示装置16を含む構成であってもよい。
【0050】
記憶部11は、取得された気温測定値、および風量測定値を記憶する。また、記憶部11は、種々のデータを記憶する。
【0051】
性能特定部12は、空気調節器2の即応性および追従性を特定する。具体的な処理は後述する。特定した即応性および追従性は、記憶部11に記憶させる。
【0052】
気温目標値特定部13は、安定状態において維持すべき気温の目標値を特定し、気温の目標値を風量目標値特定部14および表示制御部10に出力する。
【0053】
風量目標値特定部14は、気温の目標値に対応する空気調節器2の風量を特定し、風量の目標値として風量制御部15および表示制御部10に出力する。
【0054】
風量制御部15は、空気調節器2の風量を制御する。
【0055】
<エネルギー評価装置の処理>
以下に、エネルギー評価装置4の各部の処理について、詳細に説明する。図2は、エネルギー評価装置4の処理フローを示す図である。
【0056】
気温取得部6は、気温測定装置3から気温測定値を取得する(S1)。風量取得部7は、空気調節器2の風量測定部5から風量測定値を取得する(S2)。
【0057】
空気調節器2の暖房風量を少なくすると、気温は低くなり、風量を多くすると、気温は高くなる。ここで、空気調節器2が運転状態にある場合の気温の領域では、通常、風量と気温の関係はリニアの関係にあると想定できる。すなわち、風量の変化に対する気温の変化は、直線的に表すことができると仮定できる。そして、安定状態(定常状態)におけるエネルギー因子と品質管理因子との関係は、事前にエネルギー因子(風量)を様々に変えて、品質管理因子(気温)が安定した時点での品質管理因子の値を記録することにより、取得することができる。安定状態とは、外乱のない、通常想定される使用状態である。このように、エネルギー評価装置4は、あらかじめエネルギー因子の変化と品質管理因子の変化との関係を取得し、エネルギー因子と品質管理因子との関係を例えばテーブルデータとして記憶部11に記憶している。なお、エネルギー因子と品質管理因子との関係を示すデータは、テーブルデータに限らず、関係を表す数式のデータ等であってもよい。また、エネルギー因子と品質管理因子との関係を示すデータは、あらかじめ外部からエネルギー評価装置4に与えられてもよい。
【0058】
風量限界値特定部8は、気温が品質管理基準の限界値(20℃)になるときの風量を推定(特定)する(S3)。ここで、風量の変化と気温の変化とは直線的な関係にあるので、気温および風量の測定値から、気温が品質管理基準の限界値(20℃)になるときの風量(すなわち、消費エネルギーを低減できる風量の限界値)を推定することができる。
【0059】
図3は、風量の変化と気温の変化との関係を示すグラフである。例えば、気温測定装置3および風量測定部5での事前の測定において、点Aの風量xaと気温ya、および点Bの風量xbと気温ybが測定されたとする。なお、点Aおよび点Bの測定は信頼できる測定値である、すなわち、複数回の測定において、点Aと点Bとは統計的に測定点が集中する点である。点Cは、気温取得部6および風量取得部7が取得した現在の気温ycおよび風量xcを示す点である。本実施形態では、風量の変化と気温の変化とは直線的な関係にあると想定できる。点Cは、あらかじめ測定された点Aおよび点Bの測定値と、風量の変化および気温の変化の直線的な関係とから求められる直線の上にほぼ位置する。よって、現在の部屋の気温は安定状態にあると判断できる。それゆえ、部屋の気温が限界値である品質管理基準値の限界値(20℃)になるときの風量xdを、求めた直線に基づいて、特定することができる。気温が品質管理基準値の限界値であるときの気温と風量とを示すのが点Dである。このように、風量限界値特定部8は、あらかじめ風量を変えて複数回測定した気温と風量との関係から、気温が品質管理基準値の限界値であるときの風量xdを特定することができる。求めた風量xdは、品質管理基準を満たしながら下げられる(節約できる)限界の風量に相当する。
【0060】
過剰エネルギー特定部9は、現在の風量xcに対応する空気調節器2の消費エネルギーを特定し、気温が品質管理基準値の限界値であるときの風量xdに対応する空気調節器2の消費エネルギーを特定する。現在の風量xcに対応する空気調節器2の消費エネルギーとは、風量がxcである場合の空気調節器2の消費電力である。エネルギー評価装置4は、空気調節器2における風量と消費電力との関係を示すデータを記憶部11にあらかじめ記憶している。風量と消費電力との関係を示すデータは、例えばテーブルデータでもよいし、数式を示すデータであってもよい。過剰エネルギー特定部9は、記憶部11に記憶されている風量と消費電力との関係を示すデータに基づき、風量がxcである場合の空気調節器2の消費電力を特定する。同様にして、過剰エネルギー特定部9は、記憶部11に記憶されている風量と消費電力との関係を示すデータに基づき、風量がxdである場合の空気調節器2の消費電力を特定する。現在の風量の測定値である風量xcが、外乱に備えて余裕分(バッファ)を持ったものになっている場合、風量xcに対応する消費電力も、余裕分のために過剰に大きいものになっている。そのため、風量xcに対応する消費電力と、気温が品質管理基準値の限界値になるときの風量xdに対応する消費電力との差は、バッファのために過剰に消費されているエネルギーということができる。過剰エネルギー特定部9は、風量xcに対応する消費電力と、気温が品質管理基準値の限界値になるときの風量xdに対応する消費電力との差を、過剰エネルギーとして求める(S4)。過剰エネルギーは、品質管理基準を満たすために消費エネルギーに設けられたバッファということができる。
【0061】
表示制御部10は、求められた過剰エネルギーを表示装置16に表示(提示)させる制御を行う(S5)。なお、表示制御部10は、現在の消費エネルギーおよび気温が品質管理基準値の限界値になるときの消費エネルギーを、表示装置16に表示させてもよい。利用者は表示装置16に表示された過剰エネルギーを確認することで、消費エネルギーのバッファがどれだけ多いか、どれだけのエネルギーが過剰に消費されているかを認識することができる。
【0062】
ただし、通常は、エネルギーの節約のために過剰エネルギーの全てを削減することはできない。過剰エネルギーの全てを削減すると、安定状態においては気温は品質管理基準を満たす限界値の20℃に維持される。しかしながら、この場合、部屋の扉を開けて外部から部屋に人・物等が入る等の外乱があると、気温は20℃を下回り、品質管理基準を満たさなくなる。生産現場等で常に品質管理基準を満たすことが求められる状況では、品質管理基準の限界値に対してある程度の余裕分(バッファ)を設けることが必要になる。エネルギー評価装置4は、消費エネルギーのバッファのうち、削減可能なエネルギーを特定し、それを削減するよう空気調節器2を制御する。以下にその処理について説明する。
【0063】
削減可能なエネルギーを特定するためには、安定状態における気温をどこまで品質管理基準の限界値に近づけてもよいかを決定する必要がある。外乱等によって気温が下降し始めた場合、気温を品質管理基準の限界値以上に維持するために、空気調節器2の暖房の風量を上げる。しかしながら、安定状態における元々の気温が限界値に近ければ、外乱によって一時的に気温が限界値未満になってしまう。そのため、安定状態においてできる限りエネルギーを節約しながら、十分な余裕を持った温度を、安定状態における気温の目標値にする必要がある。
【0064】
安定状態における気温の目標値は、空気調節器2の即応性と追従性とに基づいて設定できる。空気調節器2は、外乱等による部屋の気温の変動(下降)を検知すると、風量を多くして気温を上昇させようと動作する。即応性は、空気調節器2の出力の変化(上昇)により、品質管理因子である気温(気温測定値)に変化が現れるまでの時間を表す。すなわち、安定状態において空気調節器2の風量が増加してから1秒後に気温の測定値が上昇し始めた場合、即応性は「1秒」ということができる。追従性は、空気調節器2の出力を最大にする場合に、品質管理因子が変動し始めてからの品質管理因子の変化の速さを表す。すなわち、安定状態において空気調節器2が気温を1秒(s)間に0.5℃上昇させることができる場合、追従性は「0.5[℃/s]」ということができる。この場合、即応性を1[s]とすると、空気調節器2によるt秒後(t≧1)の気温上昇量は、0.5[℃/s]×(t[s]−1[s])になる。
【0065】
また、空気調節器2の出力の変化自体が時間の関数になる場合がある。例えば、空気調節器2の出力を変化させる場合の、出力の変化の度合いが100W/sであり、空気調節器2の1Wの出力で、1秒間当たりに気温を0.005℃上昇させることができる場合、追従性は、以下となる。
【0066】
(100[W/s])×(0.005[℃/W・s])=0.5[℃/s
この場合、即応性を1[s]とすると、空気調節器2は、t秒後(t≧1)には気温を0.5[℃/s]×(t[s]−1[s])の速度で上昇させることができる。空気調節器2によるt秒後(t≧1)の気温上昇量は、次式で表せる。
【0067】
【数1】

【0068】
この例では、追従性は加速度的であり、気温は時間tの2次関数で変化するが、実際の空気調節器2の出力には上限(例えば1000W)がある。そのため、出力の変化自体が時間の関数になる。
【0069】
そして、空気調節器2の出力が一定の時に、外乱等により気温が最大でどの程度変動するかが分かれば、安定状態において維持すべき気温の目標値を決定することができる。例えば、外乱等により、最大で気温が一定の速度2[℃/s]で下降するとする。すなわち、気温が1[s]で2℃下降する。外乱による気温の下降速度2[℃/s]と、空気調節器2の動作による気温の上昇速度0.5[℃/s]×(t[s]−1[s])とが釣り合うのは、5秒後である。よって、外乱があってから5秒間の間の気温低下量を余裕分(バッファ)とすればよい。部屋の気温が最も低下するのは外乱があってから5秒後である。外乱があってからt秒後(t≧1)の気温低下量は、次式で表すことができる。
【0070】
【数2】

【0071】
よって、5秒後の気温低下量は、−6℃となる。それゆえ、品質管理基準の限界値20℃より6℃高い26℃を、安定状態における気温の目標値として管理すれば、外乱等があった場合でも、気温が常に品質管理基準を満たすように空気調節器2を動作させることができる。よって、安定状態において気温を30℃に維持するよう動作している空気調節器2があれば、気温の目標値を26℃まで低下させて動作させることにより、その差分に対応する風量の消費エネルギーを削減することができる。このようにして求められた気温の目標値は、外乱があった場合にも気温が品質管理基準を満たすという条件において、最も空気調節器2の消費エネルギーを低減することができるものである。
【0072】
性能特定部12は、空気調節器2の即応性および追従性を特定する。具体的には、性能特定部12は、外乱のない安定状態において、空気調節器2の出力を最大に変更させてから品質管理因子(気温)が変化し始めるまでの時間をあらかじめ測定し、即応性として記憶部11に記憶させる。また、性能特定部12は、空気調節器2の出力を最大に変更した場合に、品質管理因子(気温)が変動し始めてからの品質管理因子の時間変化を測定し、追従性として記憶部11に記憶させる。即応性および追従性は、エネルギー因子(風量)の変化に対する品質管理因子(気温)の変化の関係を示す量である。なお、即応性および追従性については、公開されている空気調節器2のスペックに基づいて、利用者が性能特定部12に入力してもよい。また、性能特定部12は、想定される外乱があった場合に、品質管理因子(気温)が最大でどの程度(どれぐらいの速度で)変化するのかをあらかじめ測定し、品質管理因子の最大変化度合いとして記憶部11に記憶させる。なお、即応性、追従性、および品質管理因子の最大変化度合いについては、別に用意した同様の環境であらかじめ測定し、エネルギー評価装置4の記憶部11に記憶させていてもよい。
【0073】
気温目標値特定部13は、安定状態において維持すべき気温の目標値を特定する(S6)。上述したように、安定状態において維持すべき気温の目標値は、外乱がある場合でも品質管理因子である気温が品質管理基準を常に満たすために、品質管理基準の限界値に対してバッファを持った値に設定される。具体的には、気温目標値特定部13は、記憶部11に記憶されている即応性、追従性、および品質管理因子の最大変化度合いに基づいて、気温の目標値を求める。上述の例の場合、気温目標値特定部13は、26℃を気温の目標値として特定する。
【0074】
風量目標値特定部14は、気温目標値特定部13が特定した気温の目標値に対応する空気調節器2の出力(風量)を特定する(S7)。風量目標値特定部14は、風量限界値特定部8と同様に、あらかじめ測定された風量の変化と気温の変化との関係に基づき、部屋の気温を目標値にする風量を求め、風量の目標値として特定する。
【0075】
また、過剰エネルギー特定部9は、記憶部11に記憶されている風量と消費電力との関係を示すデータに基づき、風量の目標値に対応する空気調節器2の消費エネルギーを特定する。過剰エネルギー特定部9は、風量の目標値に対応する空気調節器2の消費エネルギーと現在の風量測定値に対応する空気調節器2の消費エネルギーとの差を、削減可能なエネルギーとして特定する。なお、風量と消費エネルギーがリニアな関係にある場合は、過剰エネルギー特定部9は、風量の目標値と、現在の風量測定値との差を求め、この風量の差に相当する消費エネルギーを削減可能なエネルギーとして求めてもよい。
【0076】
風量制御部15は、空気調節器2の風量が、風量目標値特定部14が特定した風量の目標値になるよう空気調節器2を制御する(S8)。これにより、部屋の気温を気温の目標値である26℃にし、削減可能なエネルギーを削減することができる。なお、風量制御部15は、空気調節器2の風量を徐々に変化(低下)させ、気温の測定値が気温の目標値になるまで、風量を変化させてもよい。
【0077】
なお、気温取得部6が気温の急激な変化(気温が目標値より低くなること)を測定した場合、風量制御部15は、空気調節器2の風量を最大にし、外乱等に起因すると考えられる気温の低下を抑制する。これにより、エネルギー評価装置4は、部屋の気温が常に品質管理基準を満たすように空気調節器2を制御し、かつ、外乱に備えた空気調節器2の消費エネルギーのバッファを必要最小限に抑えることができる。
【0078】
<その他の変形例>
なお、表示制御部10は、気温目標値特定部13が特定した気温の目標値を表示装置16に表示させてもよい。また、表示制御部10は、風量の目標値を表示装置16に表示させてもよい。品質管理基準を満たしつつ、消費エネルギーを低減することができる気温の目標値または風量の目標値を利用者に提示することで、利用者は空気調節器2を適切な出力で動作するよう設定することができる。また、表示制御部10は、過剰エネルギー特定部9が求めた削減可能なエネルギーを表示装置16に表示させてもよい。削減可能なエネルギーを利用者に提示することで、どの程度のエネルギーが過剰に消費されているのかを利用者が認識することができる。
【0079】
本実施形態では、エネルギー評価装置4は、エネルギー因子として空気調節器2の風量を取得したが、代わりに空気調節器2の消費電力等を取得してもよい。
【0080】
なお、本実施形態では、品質管理因子として部屋の気温、エネルギー因子として暖房の風量を想定した場合について説明したが、これに限らない。例えば、品質管理因子は、冷却水の水温、生産設備の排熱温度、またはクリーンルームの粒子濃度等、調節可能な物理量であればよい。また、例えば、エネルギー因子は、冷却水の流量、冷却水の水温、生産設備の排気風量、または空気調節器の電力等、品質管理因子の調節およびエネルギーに結びついた物理量であればよい。
【0081】
また、部屋に複数の空気調節器が備えられ、エネルギー評価装置が複数の空気調節器の風量を群制御によって制御してもよい。この場合エネルギー評価装置は、各空気調節器について風量の測定値を取得し、各空気調節器の風量を制御する。ここで、空気調節器に限らず一般の装置は、最大出力で動作させた方がエネルギー効率がよいことがある。例えば、部屋に3つの空気調節器が設置されており、気温を目標値に維持するために1つの空気調節器の最大出力の180%に相当する出力が合計で必要な場合、3つの空気調節器を60%ずつで動作させるよりは、100%の出力の空気調節器と、80%の出力の空気調節器と、0%の出力の空気調節器とに分けて動作させた方がエネルギー効率がよいことがある。エネルギー評価装置は、エネルギー評価装置は、複数の空気調節器のうちの1つの空気調節器の風量を様々に変化させたときの、部屋の気温の変化を測定することができる。そのため、エネルギー評価装置の風量目標値特定部は、各空気調節器において出力(風量)レベル毎のエネルギー効率を特定することができる。ここで、エネルギー効率は、風量当たりのまたは消費エネルギー当たりの気温の変化度合いに相当する。よって、エネルギー評価装置の風量制御部は、各空気調節器の出力がエネルギー効率がよい出力レベルに優先的になるよう、各空気調節器の風量を台数制御することができる。
【0082】
また、同じ風量、同じ消費エネルギーであっても、空気調節器毎に、気温を調節する能力が異なる場合がある。エネルギー評価装置は、複数の空気調節器のうちの1つの空気調節器の風量を変化させたときの、部屋の気温の変化を測定することができる。そのため、エネルギー評価装置の風量目標値特定部は、いずれの空気調節器を動作させれば、より少ない風量、すなわちより少ないエネルギーで気温を調節することができるかを認識することができる。風量目標値特定部(調節装置特定部)は、よりエネルギー効率のよい空気調節器を特定する、またはよりエネルギー効率のよい空気調節器の出力レベル(例えば、出力レベル80%が最も効率がよい等)を特定することができる。よって、エネルギー評価装置の風量制御部は、よりエネルギー効率のよい空気調節器を優先的に動作させ、全体での消費エネルギーの無駄を削減することができる。
【0083】
[実施形態2]
本実施の形態では、複数の溶接装置に冷却水を循環させ、各溶接装置の冷却水の排水時の水温を品質管理因子として管理する場合について説明する。なお、説明の便宜上、実施の形態1にて説明した図面と同じ機能を有する部材・構成については、同じ符号を付記し、その詳細な説明を省略する。以下、本発明の実施形態について、図4〜図5を参照して詳細に説明する。
【0084】
<溶接装置冷却システムの構成>
図4は、溶接装置冷却システム20の概略構成を示す図である。溶接装置冷却システム20は、複数(3つ)の溶接装置21と冷却装置(調節装置)22とエネルギー評価装置23とを含む。
【0085】
溶接装置21は、基板等のはんだ付けを行う溶接装置であり、装置の動作時には熱を発生させる。そのため、発生した熱を排熱するために、冷却装置22から各溶接装置21に冷却水の配管が配されている。図4における矢印は、冷却水の流れる方向を示す。各溶接装置21を冷却して温度が高くなって排出された冷却水は、冷却装置22に回収される。
【0086】
冷却装置22は、冷却部24と冷却水圧送ポンプ25とを備える。冷却部24は、電力駆動する冷媒圧縮ポンプを備え、回収されて温まった冷却水を一定の温度に冷却する。冷却水圧送ポンプ25は、冷却水に圧力を加えて流れさせ冷却水を各溶接装置21に供給する。冷却装置22は、冷却部24と冷却水圧送ポンプ25とにおいて、溶接装置21を冷却するためにエネルギー(電力)を消費する。
【0087】
本実施形態の例では、溶接装置21の内部の温度が高くなりすぎないように、溶接装置21が排出した時点における冷却水の水温が30℃以下になるようにするという品質管理基準が設けられている。
【0088】
従来の溶接装置冷却システムでは、一定水温(例えば15℃)の冷却水を一定の流量で各溶接装置に供給していた。しかしながら、溶接装置は動作時により多くの熱を発生させ、その動作状態によっても発生させる熱量は変化する。そのため、溶接装置が動作しているか否かに関わらず一定の水温の冷却水を一定の流量で供給する従来の構成では、冷却水の水温または流量により多くの余裕(バッファ)を見込んでおく必要があった。そのため、冷却装置が消費するエネルギーの無駄があった。
【0089】
そこで、本実施形態では、エネルギー評価装置23が、各溶接装置21について最適な冷却水の流量を特定し、各溶接装置21に流れる冷却水の流量を調節する。
【0090】
溶接装置冷却システム20では、溶接装置21毎に、冷却水の配管に流量調節バルブ26と、流量温度センサ27とが設置されている。
【0091】
流量調節バルブ26は、エネルギー評価装置23からの命令によって各溶接装置21に流入する冷却水の流量を調節する。
【0092】
流量温度センサ27は、各溶接装置21からの排水の流量と水温とを測定する。流量温度センサ27は、流量と水温の測定値をエネルギー評価装置23に出力する。
【0093】
エネルギー評価装置23は、各流量調節バルブ26および各流量温度センサ27に通信可能に接続されている。
【0094】
図5は、エネルギー評価装置23の機能的構成を示すブロック図である。エネルギー評価装置23は、水温取得部(物理量取得部)28、流量取得部(エネルギー因子取得部)29、記憶部11、性能特定部30、水温目標値特定部(物理量目標値特定部)31、流量目標値特定部(エネルギー因子目標値特定部)32、および、流量制御部(エネルギー因子調節部)33を備える。
【0095】
水温取得部28は、流量温度センサ27から、排水された冷却水の水温を取得する。流量取得部29は、流量温度センサ27から、冷却水の流量を取得する。
【0096】
記憶部11は、取得された水温測定値、および流量測定値を記憶する。また、記憶部11は、種々のデータを記憶する。
【0097】
性能特定部30は、冷却水による冷却の即応性および追従性を特定する。具体的な処理は後述する。特定した即応性および追従性は、記憶部11に記憶させる。
【0098】
水温目標値特定部31は、各溶接装置21について安定状態において維持すべき水温の目標値を特定し、水温の目標値を流量目標値特定部32に出力する。
【0099】
流量目標値特定部32は、各溶接装置21の水温の目標値に対応する冷却水の流量を特定し、各溶接装置21の冷却水の流量の目標値として流量制御部33に出力する。
【0100】
流量制御部33は、流量調節バルブ26を調節し、各溶接装置21の冷却水の流量を制御する。
【0101】
<エネルギー評価装置の処理>
以下に、エネルギー評価装置23の各部の処理について、詳細に説明する。
【0102】
水温取得部28は、流量温度センサ27から、排水された冷却水の水温を取得する。流量取得部29は、流量温度センサ27から、冷却水の流量を取得する。
【0103】
各溶接装置21に流入する冷却水の流量を少なくすると、排水時の冷却水の温度は高くなり、冷却水の流量を多くすると、排水時の冷却水の温度は低くなる。本実施形態では、各溶接装置21について、排水時の冷却水の水温が品質管理因子であり、各溶接装置21に流入する冷却水の流量がエネルギー因子である。そして、溶接装置21が高レベルで動作している状態(より多くの熱を発生させている状態)が外乱のある状態に対応する。エネルギー評価装置23は、実施形態1と同様に、溶接装置21が待機状態(または低レベルで動作している状態)のときに、事前にエネルギー因子(流量)を様々に変えて、品質管理因子(水温)の値を記録することにより、安定状態におけるエネルギー因子と品質管理因子との関係を取得することができる。エネルギー評価装置23は、あらかじめエネルギー因子の変化と品質管理因子の変化との関係を取得し、エネルギー因子と品質管理因子との関係を例えばテーブルデータとして記憶部11に記憶している。
【0104】
性能特定部30は、冷却水の流量の変化による即応性および追従性を特定する。具体的には、性能特定部30は、安定状態(各溶接装置21が待機状態または低レベルで動作している状態)において、ある溶接装置21の冷却水の流量を最大に変更させてから品質管理因子(排水水温)が変化し始めるまでの時間をあらかじめ測定し、即応性として記憶部11に記憶させる。また、性能特定部30は、当該溶接装置21の冷却水の流量を最大に変更した場合に、品質管理因子(排水水温)が変動し始めてからの品質管理因子の時間変化を測定し、追従性として記憶部11に記憶させる。また、性能特定部30は、溶接装置21が高レベルで動作した場合に、品質管理因子(排水水温)が最大でどの程度(どれぐらいの速度で)変化するのかをあらかじめ測定し、品質管理因子の最大変化度合いとして記憶部11に記憶させる。なお、複数の溶接装置21の性能が互いに異なる場合、動作時の最大の発熱量等も異なる。そのため、性能特定部30は、複数の溶接装置21毎に、即応性、追従性、および品質管理因子の最大変化度合いを求めて、それらを記憶部11に記憶させる。なお、即応性、追従性、および品質管理因子の最大変化度合いについては、別に用意した同様の環境であらかじめ測定し、エネルギー評価装置23の記憶部11に記憶させていてもよい。
【0105】
水温目標値特定部31は、安定状態において維持すべき排水水温の目標値を特定する。実施形態1と同様にして、水温目標値特定部31は、記憶部11に記憶されている即応性、追従性、および品質管理因子の最大変化度合いに基づいて、各溶接装置21の排水水温の目標値を求める。複数の溶接装置21毎に、即応性、追従性、および品質管理因子の最大変化度合いが異なる場合、溶接装置21毎に排水水温の目標値を求める。
【0106】
流量目標値特定部32は、水温目標値特定部31が特定した排水水温の目標値に対応する冷却水の流量を特定する。流量目標値特定部32は、あらかじめ測定された冷却水の流量の変化と排水水温の変化との関係に基づき、各溶接装置21について、排水水温を目標値にする冷却水の流量を求め、冷却水の流量の目標値として特定する。冷却水の流量の目標値も、溶接装置21毎に異なりうる。
【0107】
流量制御部33は、各溶接装置21に流入する冷却水の流量が、各溶接装置21についての冷却水の流量の目標値になるよう、流量調節バルブ26を制御し、冷却水の流量を調節する。これにより、エネルギー評価装置23は、各溶接装置21に供給する冷却水の流量を最適に制御することができる。全体の冷却水の流量が少なくなれば、冷却装置22の冷却部24が循環する冷却水の冷却を行うために消費するエネルギーも小さくなる。そのため、エネルギー評価装置23は、品質管理基準を常に満たせる状態で、冷却装置22の消費エネルギーを最適化することができる、すなわち、消費エネルギーにおける余裕分(バッファ)を必要最小限に抑えることができる。
【0108】
なお、水温取得部28がいずれかの溶接装置21の排水水温の急激な変化(排水水温が目標値より高くなること)を測定した場合、流量制御部33は、当該溶接装置21の冷却水の流量を最大にし、溶接装置21の動作に起因する排水水温の上昇を抑制する。
【0109】
[実施形態3]
本実施の形態では、1つの品質管理因子に対してエネルギー因子が2つある場合について説明する。なお、説明の便宜上、実施の形態2にて説明した図面と同じ機能を有する部材・構成については、同じ符号を付記し、その詳細な説明を省略する。以下、本発明の実施形態について、図6〜図7を参照して詳細に説明する。
【0110】
<溶接装置冷却システムの構成>
図6は、溶接装置冷却システム40の概略構成を示す図である。溶接装置冷却システム40は、1つの溶接装置21と冷却装置22とエネルギー評価装置42とを含む。
【0111】
溶接装置21の構成は、実施形態2と同様である。
【0112】
冷却装置22は、冷却部41と冷却水圧送ポンプ25とを備える。冷却部41は、回収されて温まった冷却水を、エネルギー評価装置42によって指定された所定の温度に冷却する。実施形態2とは異なり、冷却部41は、エネルギー評価装置42からの命令に従って冷却水の水温を調節する。また、冷却部41は、冷却して供給する冷却水の水温をエネルギー評価装置42に出力する。冷却水圧送ポンプ25は、冷却水に圧力を加えて流れさせ冷却水を溶接装置21に供給する。冷却装置22は、冷却部41と冷却水圧送ポンプ25とにおいて、溶接装置21を冷却するためにエネルギーを消費する。
【0113】
本実施形態の例では、溶接装置21の内部の温度が高くなりすぎないように、溶接装置21が排出した時点における冷却水の水温が30℃以下になるようにするという品質管理基準が設けられている。
【0114】
本実施形態では、エネルギー評価装置42が、溶接装置21について最適な冷却水の供給時の水温と流量とを特定し、溶接装置21に流れる冷却水の水温および流量を調節する。
【0115】
溶接装置冷却システム40では、溶接装置21毎に、冷却水の配管に流量調節バルブ26と、流量温度センサ27とが設置されている。
【0116】
流量調節バルブ26は、エネルギー評価装置42からの命令によって溶接装置21に流入する冷却水の流量を調節する。
【0117】
流量温度センサ27は、溶接装置21からの排水の流量と水温とを測定する。流量温度センサ27は、流量と水温の測定値をエネルギー評価装置42に出力する。
【0118】
エネルギー評価装置23は、冷却装置22、流量調節バルブ26および流量温度センサ27に通信可能に接続されている。
【0119】
図7は、エネルギー評価装置42の機能的構成を示すブロック図である。エネルギー評価装置42は、水温取得部28、流量取得部29、記憶部11、冷却温度取得部(エネルギー因子取得部)43、性能特定部44、水温目標値特定部45、流量冷却温度目標値特定部(エネルギー因子目標値特定部)46、流量制御部47、および、冷却温度制御部(エネルギー因子調節部)48を備える。
【0120】
水温取得部28は、流量温度センサ27から、排水された冷却水の水温を取得する。流量取得部29は、流量温度センサ27から、冷却水の流量を取得する。冷却温度取得部43は、冷却装置22の冷却部41から冷却した冷却水の温度(冷却温度)を取得する。なお、冷却温度取得部43は、温度の実測値ではなく、冷却部41の冷却温度の設定値を取得してもよいし、冷却温度制御部48等から冷却部41に指示する冷却温度の設定値を取得してもよい。
【0121】
記憶部11は、取得された水温測定値、流量測定値、冷却温度を記憶する。また、記憶部11は、種々のデータを記憶する。
【0122】
性能特定部44は、冷却水による冷却の即応性および追従性を特定する。具体的な処理は後述する。特定した即応性および追従性は、記憶部11に記憶させる。
【0123】
水温目標値特定部45は、溶接装置21について安定状態において維持すべき水温の目標値を特定し、水温の目標値を流量冷却温度目標値特定部46に出力する。
【0124】
流量冷却温度目標値特定部46は、溶接装置21の水温の目標値に対応する冷却水の流量および冷却温度を特定し、溶接装置21の冷却水の流量の目標値および冷却温度の目標値として、それぞれ流量制御部47および冷却温度制御部48に出力する。
【0125】
流量制御部47は、流量調節バルブ26を調節し、溶接装置21の冷却水の流量を制御する。
【0126】
冷却温度制御部48は、冷却装置22の冷却部41に冷却温度の設定値を出力し、冷却部41の冷却温度を制御する。
【0127】
<エネルギー評価装置の処理>
以下に、エネルギー評価装置42の各部の処理について、詳細に説明する。
【0128】
水温取得部28は、流量温度センサ27から、排水された冷却水の水温を取得する。流量取得部29は、流量温度センサ27から、冷却水の流量を取得する。冷却温度取得部43は、冷却装置22の冷却部41から冷却した冷却水の温度(冷却温度)を取得する。
【0129】
溶接装置21に流入する冷却水の流量を少なくすると、排水時の冷却水の温度は高くなり、冷却水の流量を多くすると、排水時の冷却水の温度は低くなる。また、冷却部41の冷却温度を低くすると、排水時の冷却水の温度は低くなり、冷却部41の冷却温度を高くすると、排水時の冷却水の温度は高くなる。本実施形態では、溶接装置21の排水時の冷却水の水温が品質管理因子であり、溶接装置21に流入する冷却水の流量および冷却部41の冷却温度がエネルギー因子である。エネルギー評価装置40は、実施形態2と同様に、溶接装置21が待機状態(または低レベルで動作している状態)のときに、事前に2つのエネルギー因子(流量および冷却温度)をそれぞれ独立に変化させ、品質管理因子(排水水温)の値を記録することにより、安定状態における2つのエネルギー因子と品質管理因子との関係を取得することができる。エネルギー評価装置40は、あらかじめ各エネルギー因子の変化と品質管理因子の変化との関係を取得し、各エネルギー因子と品質管理因子との関係を例えばテーブルデータとして記憶部11に記憶している。
【0130】
性能特定部44は、冷却水の流量の変化による即応性および追従性と、冷却部41の冷却温度の変化による即応性および追従性とを特定する。具体的には、実施形態2と同様に、性能特定部44は、安定状態(溶接装置21が待機状態または低レベルで動作している状態)において、溶接装置21の冷却水の流量を最大かつ冷却部41の出力を最大(冷却温度を最低)に変更させてから品質管理因子(排水水温)が変化し始めるまでの時間をあらかじめ測定し、即応性として記憶部11に記憶させる。また、性能特定部44は、溶接装置21の冷却水の流量を最大かつ冷却部41の出力を最大に変更した場合に、品質管理因子(排水水温)が変動し始めてからの品質管理因子の時間変化を測定し、追従性として記憶部11に記憶させる。また、性能特定部44は、溶接装置21が高レベルで動作した場合に、品質管理因子(排水水温)が最大でどの程度(どれぐらいの速度で)変化するのかをあらかじめ測定し、品質管理因子の最大変化度合いとして記憶部11に記憶させる。
【0131】
水温目標値特定部45は、安定状態において維持すべき排水水温の目標値を特定する。実施形態2と同様にして、水温目標値特定部45は、記憶部11に記憶されている即応性、追従性、および品質管理因子の最大変化度合いに基づいて、排水水温の目標値を求める。
【0132】
流量冷却温度目標値特定部46は、水温目標値特定部45が特定した排水水温の目標値に対応する冷却水の流量および冷却部41の冷却温度を特定する。流量冷却温度目標値特定部46は、あらかじめ測定された冷却水の流量の変化と排水水温の変化との関係および冷却温度の変化と排水水温の変化との関係に基づき、溶接装置21について、排水水温を目標値にする冷却水の流量と冷却温度の組み合わせを求める。ここで、独立に調節可能なエネルギー因子が2つ(流量および冷却温度)あるので、排水水温を目標値にするような冷却水の流量と冷却温度の組み合わせは、1つだけではなく、複数あることが考えられる。そこで、流量冷却温度目標値特定部46は、排水水温を目標値にするような冷却水の流量と冷却温度の複数の組み合わせの中から、対応する消費エネルギー(冷却装置22の消費エネルギー)がより低くなる(最も低くなる)組み合わせを特定する。そして、流量冷却温度目標値特定部46は、特定した組み合わせの冷却水の流量を、冷却水の流量の目標値として特定し、特定した組み合わせの冷却温度を、冷却温度の目標値として特定する。
【0133】
なお、実施形態1と同様に、エネルギー評価装置42は、冷却装置22における流量および冷却温度と、消費電力との関係を示すデータを記憶部11にあらかじめ記憶している。流量および冷却温度と消費電力との関係を示すデータは、例えばテーブルデータでもよいし、数式を示すデータであってもよい。流量冷却温度目標値特定部46は、記憶部11に記憶されている流量および冷却温度と消費電力との関係を示すデータに基づき、排水水温を目標値にするような冷却水の流量と冷却温度の複数の組み合わせの中から、対応する消費エネルギーがより低くなる組み合わせを特定する。
【0134】
流量制御部47は、溶接装置21に流入する冷却水の流量が、冷却水の流量の目標値になるよう、流量調節バルブ26を制御し、冷却水の流量を調節する。
【0135】
冷却温度制御部48は、冷却装置22の冷却部41に冷却温度の設定値を出力し、冷却部41の冷却温度が、冷却温度の目標値になるよう制御する。
【0136】
これにより、エネルギー評価装置42は、供給する冷却水の流量および冷却温度を最適に制御することができる。エネルギー評価装置42は、安定状態において冷却水の流量を絞ることと冷却温度を上げることとのバランスを考慮して、最もエネルギー効率がよい(余裕分(バッファ)のために消費するエネルギーが最も小さい)冷却水の流量と冷却温度の組み合わせを特定する。そのため、エネルギー評価装置42は、品質管理基準を常に満たせる状態で、冷却装置22の消費エネルギーを最適化することができる、すなわち、消費エネルギーにおける余裕分(バッファ)を必要最小限に抑えることができる。
【0137】
最後に、エネルギー評価装置4、23、42の各ブロック、特に気温取得部6、風量取得部7、風量限界値特定部8、過剰エネルギー特定部9、表示制御部10、記憶部11、性能特定部12、30、44、気温目標値特定部13、風量目標値特定部14、風量制御部15、水温取得部28、流量取得部29、性能特定部30、水温目標値特定部31、45、流量目標値特定部32、流量制御部33、47、冷却温度取得部43、流量冷却温度目標値特定部46、および、冷却温度制御部48は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPU(central processing unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0138】
すなわち、エネルギー評価装置4、23、42は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるエネルギー評価装置4、23、42の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記エネルギー評価装置4、23、42に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU(microprocessor unit))が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0139】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM(compact disc read-only memory)/MO(magneto-optical)/MD(Mini Disc)/DVD(digital versatile disk)/CD−R(CD Recordable)等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM(erasable programmable read-only memory)/EEPROM(electrically erasable and programmable read-only memory)/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0140】
また、エネルギー評価装置4、23、42を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN(local area network)、ISDN(integrated services digital network)、VAN(value-added network)、CATV(community antenna television)通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE(institute of electrical and electronic engineers)1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(asynchronous digital subscriber loop)回線等の有線でも、IrDA(infrared data association)やリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR(high data rate)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。
【0141】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、消費エネルギーを評価するまたは最適化するエネルギー評価装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0143】
1 気温調節システム
2 空気調節器(調節装置)
3 気温測定装置
4、23、42 エネルギー評価装置
5 風量測定部
6 気温取得部(物理量取得部)
7 風量取得部(エネルギー因子取得部)
8 風量限界値特定部(限界値特定部)
9 過剰エネルギー特定部(削減可能エネルギー特定部)
10 表示制御部(提示部)
11 記憶部
12、30、44 性能特定部(関係特定部)
13 気温目標値特定部(物理量目標値特定部)
14 風量目標値特定部(エネルギー因子目標値特定部、調節装置特定部)
15 風量制御部(エネルギー因子調節部)
16 表示装置
20、40 溶接装置冷却システム
21 溶接装置
22 冷却装置(調節装置)
24、41 冷却部
25 冷却水圧送ポンプ
26 流量調節バルブ
27 流量温度センサ
28 水温取得部(物理量取得部)
29 流量取得部(エネルギー因子取得部)
31、45 水温目標値特定部(物理量目標値特定部)
32 流量目標値特定部(エネルギー因子目標値特定部)
33、47 流量制御部(エネルギー因子調節部)
43 冷却温度取得部(エネルギー因子取得部)
46 流量冷却温度目標値特定部(エネルギー因子目標値特定部)
48 冷却温度制御部(エネルギー因子調節部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象である物理量が所定の管理基準を満たすように、エネルギーを消費して上記物理量を調節する調節装置について、消費エネルギーを評価するためのエネルギー評価装置であって、
上記物理量の測定値を取得する物理量取得部と、
上記調節装置の消費エネルギーの因子となるエネルギー因子の値を取得するエネルギー因子取得部と、
あらかじめ取得した上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係に基づき、上記物理量が上記管理基準を満たす限界値になるように上記調節装置を動作させるときの、上記エネルギー因子の値を上記エネルギー因子の限界値として特定する限界値特定部と、
上記エネルギー因子取得部が取得した上記エネルギー因子の値に対応する上記調節装置の消費エネルギーと、上記エネルギー因子の限界値に対応する上記調節装置の消費エネルギーとの差を、過剰エネルギーとして特定する過剰エネルギー特定部とを備えることを特徴とするエネルギー評価装置。
【請求項2】
管理対象である物理量が所定の管理基準を満たすように、エネルギーを消費して上記物理量を調節する調節装置について、消費エネルギーを評価するためのエネルギー評価装置であって、
上記物理量の測定値を取得する物理量取得部と、
上記調節装置の消費エネルギーの因子となるエネルギー因子の値を取得するエネルギー因子取得部と、
外乱がないときの上記物理量の目標値を特定する物理量目標値特定部とを備え、
上記物理量目標値特定部は、あらかじめ取得した上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係と、外乱に起因する想定される上記物理量の変化とに基づき、外乱があった場合にも上記物理量が上記管理基準を外れることがないようにするための余裕分を持った上記物理量の値を、上記物理量の目標値として特定することを特徴とするエネルギー評価装置。
【請求項3】
あらかじめ取得した上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係に基づき、上記物理量の目標値に対応する上記エネルギー因子の目標値を特定するエネルギー因子目標値特定部を備えることを特徴とする請求項2に記載のエネルギー評価装置。
【請求項4】
上記物理量の測定値が上記物理量の目標値になるように、上記エネルギー因子を調節するエネルギー因子調節部を備えることを特徴とする請求項2に記載のエネルギー評価装置。
【請求項5】
上記エネルギー因子取得部が取得した上記エネルギー因子の値に対応する上記調節装置の消費エネルギーと、上記エネルギー因子の目標値に対応する上記調節装置の消費エネルギーとの差を、削減可能なエネルギーとして特定する削減可能エネルギー特定部を備えることを特徴とする請求項3に記載のエネルギー評価装置。
【請求項6】
外乱がない状態において、上記エネルギー因子を変化させて上記物理量の測定値の変化を取得し、上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係を特定する関係特定部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のエネルギー評価装置。
【請求項7】
上記エネルギー因子調節部は、上記物理量の測定値が上記物理量の目標値から変動すると、上記物理量の変動を抑制するよう上記エネルギー因子を調節し、
上記物理量目標値特定部は、あらかじめ取得した上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係と、外乱に起因する想定される上記物理量の変化とに基づき、想定される最大の外乱があった場合に上記物理量が上記管理基準を満たすための最小限の余裕分を持った上記物理量の値を、上記物理量の目標値として特定することを特徴とする請求項4に記載のエネルギー評価装置。
【請求項8】
1つの上記物理量に対して、上記物理量を調節する調節装置が複数あり、
外乱がない状態において、上記エネルギー因子を変化させて上記物理量の測定値の変化を取得し、上記複数の調節装置のうち、上記物理量をより少ない消費エネルギーで調節する上記調節装置を特定する調節装置特定部を備え、
上記エネルギー因子調節部は、上記調節装置特定部が特定した上記調節装置のエネルギー因子を、優先的に調節することを特徴とする請求項4に記載のエネルギー評価装置。
【請求項9】
管理対象である物理量が所定の管理基準を満たすように、エネルギーを消費して上記物理量を調節する調節装置について、消費エネルギーを評価するためのエネルギー評価方法であって、
上記物理量の測定値を取得する物理量取得ステップと、
上記調節装置の消費エネルギーの因子となるエネルギー因子の値を取得するエネルギー因子取得ステップと、
あらかじめ取得した上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係に基づき、上記物理量が上記管理基準を満たす限界値になるように上記調節装置を動作させるときの、上記エネルギー因子の値を上記エネルギー因子の限界値として特定する限界値特定ステップと、
上記エネルギー因子取得ステップにて取得した上記エネルギー因子の値に対応する上記調節装置の消費エネルギーと、上記エネルギー因子の限界値に対応する上記調節装置の消費エネルギーとの差を、過剰エネルギーとして特定する過剰エネルギー特定ステップとを含むことを特徴とするエネルギー評価方法。
【請求項10】
管理対象である物理量が所定の管理基準を満たすように、エネルギーを消費して上記物理量を調節する調節装置について、消費エネルギーを評価するためのエネルギー評価方法であって、
上記物理量の測定値を取得する物理量取得ステップと、
上記調節装置の消費エネルギーの因子となるエネルギー因子の値を取得するエネルギー因子取得ステップと、
外乱がないときの上記物理量の目標値を特定する物理量目標値特定ステップとを含み、
上記物理量目標値特定ステップでは、あらかじめ取得した上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係と、外乱に起因する想定される上記物理量の変化とに基づき、外乱があった場合にも上記物理量が上記管理基準を外れることがないようにするための余裕分を持った上記物理量の値を、上記物理量の目標値として特定することを特徴とするエネルギー評価方法。
【請求項11】
管理対象である物理量が所定の管理基準を満たすように、エネルギーを消費して上記物理量を調節する調節装置について、
上記物理量の測定値を取得する物理量取得ステップと、
上記調節装置の消費エネルギーの因子となるエネルギー因子の値を取得するエネルギー因子取得ステップと、
あらかじめ取得した上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係に基づき、上記物理量が上記管理基準を満たす限界値になるように上記調節装置を動作させるときの、上記エネルギー因子の値を上記エネルギー因子の限界値として特定する限界値特定ステップと、
上記エネルギー因子取得ステップにて取得した上記エネルギー因子の値に対応する上記調節装置の消費エネルギーと、上記エネルギー因子の限界値に対応する上記調節装置の消費エネルギーとの差を、過剰エネルギーとして特定する過剰エネルギー特定ステップとをコンピュータに実行させる制御プログラム。
【請求項12】
管理対象である物理量が所定の管理基準を満たすように、エネルギーを消費して上記物理量を調節する調節装置について、
上記物理量の測定値を取得する物理量取得ステップと、
上記調節装置の消費エネルギーの因子となるエネルギー因子の値を取得するエネルギー因子取得ステップと、
あらかじめ取得した上記エネルギー因子の変化に対する上記物理量の変化の関係と、外乱に起因する想定される上記物理量の変化とに基づき、外乱があった場合にも上記物理量が上記管理基準を外れることがないようにするための余裕分を持った上記物理量の値を、外乱がないときの上記物理量の目標値として特定する物理量目標値特定ステップとをコンピュータに実行させる制御プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−58781(P2012−58781A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198215(P2010−198215)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)