説明

エネルギー貯蔵デバイス用の電極構造

【課題】 体積当たりのエネルギー密度を増加させることによってEDLC、擬似キャパシタ及び電池の性能特性を高めることが望ましい。
【解決手段】 エネルギー貯蔵デバイス電極の製造における使用のための電極材料組成物は、活性物質と、ケッチェンブラックを含む導電物質と、水中に分散した樹脂エマルジョン及び水溶性高分子混合物のうちの少なくとも1つを含むバインダと、界面活性剤とを含む。電極は、活性物質と導電物質とを乾式混合して乾式混合された活性物質混合物を形成することによって製造される。次いで乾式混合された活性物質混合物は、バインダ溶液と混合されてスラリーを形成する。スラリーは集電体上にコーティングされて乾燥され、電極を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2008年5月8日に出願した米国出願第12/151,811号の一部継続出願であり、かつ当該米国出願の優先権を主張し、その全体を本願に参考として組み込む。
【背景技術】
【0002】
[0002] 本発明は、電極に関し、より詳細には、電気二重層コンデンサ用、擬似キャパシタ用又は電池用の電極に関し、この電極は、より少ない導電物質で電極の電気抵抗を低下させてより多くの活性物質を可能とし、それによって容量を増加する。電極を製造する方法、電極を組み込んだ電気二重層コンデンサ、擬似キャパシタ及び電池が提供される。
【0003】
[0003] 電気エネルギーを貯蔵し、かつ産業及び電子機器に電力を供給するために様々な電気化学デバイスが現在使用されている。酸性鉛、ニッケルカドミウム(NiCd)、ニッケル水素(NIH)、ニッケル金属水素(NIH)、リチウムイオン(Liイオン)及びリチウムイオンポリマー(Liイオンポリマー)等の二次電池は、乗物、特に大型又は特殊な乗物、電気装置及び様々な種類の産業機器の電力源として広く使用されており、それらの需要は近年着実に増加している。
【0004】
[0004] 電気二重層コンデンサ(EDLC)は、様々な商業的用途、特に「エネルギー平滑化」及び瞬時負荷デバイスにおける用途を有する。一部の初期の使用は、タンク及び潜水艦内の大きなエンジン用のモータ起動用コンデンサであった。そして費用が下がるにつれてディーゼルトラック及び鉄道機関車にも現れ始めた。ごく最近では、それらはグリーン・エネルギー社会において興味のあるトピックとなり、エネルギーを素早く吸収するその性能は回生ブレーキの用途に特に適する一方、電池は遅い充電速度によりこの用途には困難性を有する。
【0005】
[0005] 電池及びコンデンサ技術を組み合わせたエネルギー貯蔵デバイスの別の例として知られているのは擬似キャパシタである。EDLCはエネルギーを静電気的に貯蔵するだけである一方、擬似キャパシタは、電解液と、電極と、の間にファラデー電荷移動が起こる化学反応を介してエネルギーを貯蔵することもできる。擬似キャパシタは、2つの電極のうちの1つが炭素系コンデンサ電極である一方、もう一方が二次電池で使用されるものと同様の金属酸化物からなるという点で非対称的である。これらのエネルギー貯蔵機構の両方は高度に可逆的であり、何千回も充放電することができるが、電気二重層コンデンサは何百万回の充放電サイクルによるより長い寿命性能を有する。
【発明の概要】
【0006】
[0006] EDLCは電池と比較してかなり高い電力密度を提供するが、そのエネルギー密度はほとんどの電池より低い。擬似キャパシタは一般的にはEDLCより高いエネルギー密度を有するが、それらもまだほとんどの電池より低いエネルギー密度を有する。したがって、体積当たりのエネルギー密度を増加させることによってEDLC、擬似キャパシタ及び電池の性能特性を高めることが望ましい。
【0007】
[0007] 蓄電デバイスのエネルギー密度を増加させる最も簡単な方法は、活性物質の相対量を増加させることである。しかしながら、活性物質の量を増加させるためには導電物質の量を減少させる必要があり、導電物質は、電極の電気抵抗を減少させること、導電性を増加させること、及びそれによって静電気を防止することに必要不可欠である。この方法の欠点は、導電物質を減らすこと及び活性物質の量を増やすことは、電気抵抗を増加するということである。したがって、導電物質の量を減少させると同時に電気抵抗の増加を防止できる方法を開発することが必要であり、それによって活性物質の量、ひいてはエネルギー密度を増加させる。
【0008】
[0008] 様々な導電物質の中で、ケッチェンブラック(Ketjen Black)が優れた導電性を示した。例えば、25wt%ほどのSuper−P又はアセチレンブラック(Acetylene black)と比較してケッチェンブラックは6〜10wt%だけ添加することによって同等又はそれ以上の導電性を得ることができる。しかしながら、ケッチェンブラックは他の導電物質(例えば、Super−P又はアセチレンブラック)より強い疎水性を有しており、スラリーを生成するために活性物質と簡単に混合しない。ケッチェンブラックがこの強い疎水性を全く考慮せずに電極を生成するプロセスに使用された場合、粘度が増加し、流動性は形成されず、及び/又は流動性を有するスラリーは形成されるがプロセスの効率が低下する。
【0009】
[0009] したがって、ケッチェンブラックは優れた導電性及び非常に高い疎水性を有し、かつ活性物質と簡単に混合しないため、電極のスラリー内であまり上手く分散されない。よって、電極を生成するためにケッチェンブラックが使用された場合であっても、アセチレンブラック又はSuper−Pと比較してケッチェンブラックの優れた導電性の効果を得ることは非常に困難である。
【0010】
[0010] 活性物質、導電物質及びバインダを混合することを含む、EDLC用、擬似キャパシタ用又は電池用の電極を製造する方法が提供される。この方法では、ケッチェンブラックを導電物質として使用し、フッ素系界面活性剤を添加剤として使用してスラリーの流動性を高める。更に、EDLC用、擬似キャパシタ用又は電池用の電極、並びに電極を用いたEDLC、擬似キャパシタ又は電池が提供される。この方法によって生成された電極の使用は活性物質の量を増加させ、よって電気抵抗に対する不都合な結果を伴わずにエネルギー密度を高める。
【0011】
[0011] 本発明の一例示的実施形態によると、電極材料組成物は、活性物質と、ケッチェンブラックを含む導電物質と、水中に分散した樹脂エマルジョン及び水溶性高分子混合物のうちの少なくとも1つを含むバインダと、界面活性剤と、を含む。種々の実施形態では、電極材料組成物は、約1.0重量%〜約20重量%のケッチェンブラックを含む。あるいは、電極材料組成物は、約3.0重量%〜約10重量%のケッチェンブラックを含む。
【0012】
[0012] 本発明の一態様では、バインダは、例えば、水中に分散した樹脂エマルジョン又は水溶性高分子混合物であってもよい。種々の実施形態では、バインダは、水溶性セルロースバインダ、PVAを含む水溶性ビニレンバインダ、PTFE分散液又はゴムエマルジョンを含む。
【0013】
[0013] 本発明の更なる態様では、界面活性剤は、例えば、フッ素系界面活性剤であっても、またパーフルオロブタニル基を有してもよい。種々の実施形態では、電極材料は、約0.05重量%〜約2.0重量%のフッ素系界面活性剤を含む。あるいは、電極材料は、約0.5重量%〜約1.5重量%のフッ素系界面活性剤を含む。
【0014】
[0014] 本発明の別の例示的実施形態では、電極を製造する方法は、活性物質及び導電物質を乾式混合して乾式混合された活性物質混合物を形成することと、乾式混合された活性物質混合物をバインダ溶液と混合してスラリーを形成することと、添加剤をスラリーに添加してスラリーの流動性を高めることと、集電体上にスラリーをコーティングすることとを含む。
【0015】
[0015] 本発明の一態様では、導電物質はケッチェンブラックを含む。種々の実施形態では、スラリーは、約1.0重量%〜約20重量%のケッチェンブラックを含む。あるいは、スラリーは、約3.0重量%〜約10重量%のケッチェンブラックを含む。
【0016】
[0016] 本発明の更なる態様では、添加剤は、例えば、フッ素系界面活性剤であっても、またパーフルオロブタニル基を有してもよい。種々の実施形態では、スラリーは、約0.05重量%〜約2.0重量%のフッ素系界面活性剤を含む。あるいは、スラリーは、約0.5重量%〜約1.5重量%のフッ素系界面活性剤を含む。
【0017】
[0017] 本発明の更なる別の態様では、バインダ溶液は、例えば、水溶性セルロースバインダ、PVAを含む水溶性ビニレンバインダ、PTFE分散液又はゴムエマルジョンであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
[0018] 本発明によるある実施形態の態様、課題、特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理及び実施形態を主として示す添付の図面を参照するとともに以下の説明により得られる。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、同じ参照符号はいくつかの図面を通して類似又は関連部分を示す。本発明の図面及び開示される実施形態は例示のみであり、本発明を限定しない。
【0019】
【図1】[0019] 図1は、活性炭、導電性炭素及びバインダを含む電極複合材並びに集電体を含む、本発明による電極の概略図である。
【図2】[0020] 図2は、巻き取り前の正極、負極及びセパレータの概略図である。
【図3】[0021] 図3は、巻き取り後の電気二重層セルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0022] 電気二重層コンデンサ(EDLC)は物品の薄膜上に形成される二重層を有しており、薄膜の一表面に正の電荷、かつ薄膜の反対の表面に負の電荷を有する。正及び負の電荷は、同じ表面密度で連続的に位置決め又は分配され、主に双極子からなる。電荷の再構成は、異なる相を有する材料間の界面で起こり、電気二重層はその界面で形成される。
【0021】
[0023] 電気二重層は、固体電極と、電解液と、の界面における正の電荷又は負の電荷のうちのいずれかの選択的吸着、固体表面からの分子解離、界面の方に向かう双極子の吸着構成等によって形成することができる。そのような電気二重層は様々な界面電気化学的現象(すなわち、電極反応、界面動電現象、コロイドの安定相等)と近い関係を有する。
【0022】
[0024] EDLCは、電気二重層を用いて、セルのように電気エネルギーを蓄積し、活性炭電極と有機電解液との界面における静電層によって形成され、電気二重層状態を誘電体として用いる。EDLCは、固体電極と電解液との界面に、電荷が吸収、又はそこから脱着するという原理を利用する。特に、EDLCは、セルと比較して低いエネルギー密度を有しているが、高電流及び高電力を瞬時に示す優れた放電特性を有し、更に数十万サイクル特性による半永久的な寿命を有する。
【0023】
[0025] EDLCは、急速な充放電特性及び高電力を必要とする、例えば携帯端末、ノートブック・コンピュータ又はPDA等の移動通信機器用の補助電力に適している。EDLCは、ハイブリッド自動車用の主電力又は補助電力、夜道用の信号ランプ又は高い容量を必要とする無停電電源装置に使用されてもよい。
【0024】
[0026] 擬似キャパシタはEDLCと類似した構造及び特性を有するが、擬似キャパシタでは、活性炭よりむしろ金属酸化物が、2つの電極のうちの1つの電極の活性物質として使用される。擬似キャパシタは、EDLCと比較してより高いエネルギー密度を有するより大きなポテンシャルを有する。EDLC内の活性炭はエネルギー貯蔵のために表面積を利用するのでポテンシャルエネルギー密度を制限する。その一方、擬似キャパシタの金属酸化物技術は、エネルギー貯蔵のためのEDLC機構に加えて電池技術と同様の電極表面に対するファラデー反応を利用するのでポテンシャルエネルギー密度を増加させる。擬似キャパシタは電極材料として高密度の金属酸化物を使用するため、酸化物の負荷は同じ被覆領域に対してEDLCの負荷の3倍である。この利点をもって、擬似キャパシタセルは、同じ容量のEDLCと比較してかなり小さい体積を占める。同様に、擬似キャパシタは、同等のサイズのEDLCよりはるかに多いエネルギーを保持する。最後に、擬似キャパシタは、EDLC生産と同じ製造プロセス及び設備を使用する。唯一の大きな違いは、擬似キャパシタ電極がEDLC電極のうちの1つと入れ替わるということである。
【0025】
[0027] 現在、EDLC、擬似キャパシタ及び二次電池用の活性炭電極を生成するために2つの異なるプロセスがある。第1プロセスは、粉末状の活性物質と、少量の水等の溶媒と、糊を作るためのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は同様の材料等のバインダと、を一緒に混合することを含む。糊は、導体上に加圧されて電極を形成する。このプロセスは、電極の密度が高いため、より増加したエネルギー密度を有する。活性物質、溶媒及び結合剤は、粉末の表面特性に関わらず簡単に混合する。しかしながら、この混合物は、電解液を含浸させることが困難であり、30μm未満の厚みを有する薄い電極を得ることも困難である。したがって、このプロセスは、低抵抗特性を必要としない電子回路のためのエネルギーバックアップに主に使用される。
【0026】
[0028] 電極を生成するための第2プロセスは、粉末状の活性物質と、スチレンブタジエンエマルジョンであることが好ましい水中に分散した樹脂エマルジョン又はカルボキシメチルセルロース(CMC)等の水溶性高分子などのバインダ樹脂と、水等の溶媒と、を混合してシャンプーと同様の粘度を有する液体又はスラリーを形成することと、導体上に液体をコーティングすることと、次いで溶媒を揮発させて電極を形成することと、を含む。
【0027】
[0029] 第2プロセスのより詳細な説明を以下に記載する。第2プロセスに使用される材料は、粉末状の活性炭、粉末状のカーボンブラック等の導電物質、スチレンブタジエンエマルジョン等の水中に分散した樹脂エマルジョン、CMC等の粉末状の水溶性樹脂バインダ及び脱イオン水等の溶媒を含む。
【0028】
[0030] 粉末状の活性物質と、粉末状の導電物質と、の乾式混合は、最初に、均一混合のために3時間以上ボールミルを用いて行われる。その後、粉末はバインダ溶液と混合される。
【0029】
[0031] 近年、2つ以上のバインダの混合が頻繁に使用されている。この場合、バインダ溶液は、CMC等のセルロースの水溶性バインダを目標量の半分の水と混合して第1バインダ溶液を得る。その後、エマルジョンを残りの水と混合して第2バインダ溶液を得る。2つのバインダ溶液は、ここで活性物質混合物と順次に混合される。この結果の混合物は、その後再度3時間以上遊星形ミキサーによって混合されて均一の電極スラリー混合物が得られる。
【0030】
[0032] バインダは、活性物質を一緒に結合すること、及び集電体に結合することの両機能を果たす。導電物質は、電極の電気抵抗を低下させる機能を果たす。上記のバインダは典型的には樹脂エマルジョン及び水溶性高分子であり、導電物質は、典型的にはアセチレンブラック又はSuper−P等のカーボンブラックである。
【0031】
[0033] ELDCは、典型的には、75〜85wt%の活性物質、10〜20wt%の導電物質、及び3〜8wt%のバインダを含む。この時、導電物質は、1.5オーム・ファラドより低い電気抵抗特性を有するEDLCを製造するように少なくとも15wt%分だけ含まれる。その後、集電体として使用されるアルミ箔上にコーターを用いてスラリーを薄くコーティングし、電極を生成するプロセスを完了させる。
【0032】
[0034] この第2プロセス、すなわち、所定の粘度を有するスラリーを作成し、低密度の電極を用い、粉末の表面特性に依存する物理的性質の敏感な変化を伴う充分な混合を行うことは、電解液を含浸して10μm未満の厚みの電極を生成することが容易である状況を作り出す。電極の生産のためのプロセスを連続的に行うことができるため、数百メートルより大きい電極を容易に生成することができる。このプロセスは、低抵抗及び高容量を必要とする数百ファラドより大きいパワーバックアップ用のEDLCを生成するために使用される。
【0033】
[0035] スラリーを用いて電極を生成するプロセスにおける重要な工程は、バインダ溶媒と、活性物質混合物と、の混合の部分プロセスである。活性物質混合物は、活性炭及び導電物質を含むため、非常に高い疎水性を有しており、これは水と簡単に混合しない。更に、活性物質は、最初に樹脂エマルジョンと混合されたときには、流動性を有さない糊状態であり得る。この糊は電極を形成することを困難にする。特に、近年頻繁に使用されているケッチェンブラック等の活性炭は、その表面上に不純物を有しておらず、非常に強い疎水性を有する。したがって、水と簡単には混合せず、よって流動性を有するスラリーを作り出すことが困難である。
【0034】
[0036] 上記のEDLCの性能を向上させるためには、体積当たりのエネルギー密度の増加が非常に望ましい。最も簡単な方法は、活性物質の量を増加させることである。これを達成するためには、導電物質の量を減少させることが考えられ得る。この導電物質は、電極の電気抵抗を減少させるために不可欠であり、ポリカーボネート又はポリプロピレン等の絶縁性樹脂にポリマー(例えば、カーボンブラック)を添加することによって作成されて、電気抵抗を減少させ、また導電性を増加させ、それによって静電気を防止する。
【0035】
[0037] この方法の欠点は、導電物質を減少させて活性物質の量を増加させることは電気抵抗を増加させるということである。下記の表1は、導電物質の量に対する活性物質の関数として電気抵抗の変化を示す。
【表1】

【0036】
[0038] 上記の表1から分かるように、活性物質の量が増加するにつれて容量は増加するが、それとともにAC抵抗及びDC抵抗も増加する。したがって、組成物3で示唆するように、導電物質(すなわち、Super−P)の量を6wt%に減少し、活性物質の量を86wt%に増加した場合、電極の容量は増加するが、この方法は電気抵抗の大幅な増加をもたらし、これはEDLCに適していない。組成物3のDC抵抗は、活性物質の量が75wt%であり、かつ導電物質の量が17wt%である組成物1のDC抵抗より3倍大きい。
【0037】
[0039] 従来の導電物質(すなわち、Super−P)を用いる場合、活性物質の量を増加させて電極の容量を増加させるために、導電物質の量を減少させることが考えられ得る。しかしながら、この方法及び材料成分は、電気抵抗の大幅な増加をもたらす。したがって、導電物質の量を減少させると同時に、電気抵抗の増加を防止して活性物質の量を増加できる方法を開発する必要がある。
【0038】
[0040] 様々なカーボンブラックの中で、その優れた導電性から、発明者はケッチェンブラックに注目した。アセチレンブラック又はSuper−Pの半分の量に相当するケッチェンブラックの同等の量は、通常使用される量より良い性能を示した。例えば、25wt%のアセチレンブラックが添加された場合に得られる導電性は、6〜10wt%のみのケッチェンブラックを添加することによって得ることができる。このケッチェンブラックの利点は、広い比表面積及び優れた導電性によることが知られている。
【0039】
[0041] しかしながら、ケッチェンブラックによるSuper−Pの置き換えは、スラリーを形成することを困難にし、少量のケッチェンブラックが添加された場合であっても乏しい電気的性質を示す。これは、ケッチェンブラックが従来の導電物質より強い疎水性を有しているからであり、したがってスラリーが形成される間、活性物質と簡単には混合しない。通常、ケッチェンブラックが従来のEDLCを生成するプロセスに適用される場合、全く何も考慮しないと粘度は増加し、流動性は形成されず、及び/又は流動性を有するスラリーは形成されるが、効率性のためのプロセスは損なわれる。この現象は、スチレンブタジエン等のゴム式エマルジョンがバインダとして使用された場合に顕著に発生する。
【0040】
[0042] したがって、ケッチェンブラックは優れた導電性及び非常に高い疎水性を有し、かつ活性物質と簡単に混合しないので、電極のスラリー内であまり上手く分散されない。よって、ケッチェンブラックがEDLC電極を生成するために使用された場合であっても、実際には、アセチレンブラック又はSuper−Pと比較してケッチェンブラックの効果を確認することは非常に困難である。
【0041】
[0043] 本明細書において以下に開示される実施形態は、電気二重層コンデンサ用の電極、電極を製造する方法、及びより少ない量の導電物質を用いて電極の電気抵抗を低下させて増加した量の活性物質とともに容量を増加することができる電極を用いた電気二重層コンデンサを提供する。
【0042】
[0044] 実施形態は、良好な流動性及び少量の導電物質を有するスラリーを用いて製造される電気二重層コンデンサ用の電極、電極を製造する方法、及び電極を用いた電気二重層コンデンサを更に提供する。
【0043】
[0045] 電気二重層コンデンサ用電極は、活性物質と、導電物質として使用されるケッチェンブラックと、水中で分散した樹脂エマルジョン及び水溶性高分子混合物を含むバインダと、スラリーの流動性を高める界面活性剤と、を含み、当該スラリーは、ケッチェンブラックがバインダと混合されたときに形成される。ケッチェンブラックは、電極の重量全体に対して1〜20wt%の範囲、好ましくは3〜10wt%の範囲で使用されてよい。界面活性剤は、パーフルオロブタニル基を有するフッ素系界面活性剤であってもよい。フッ素系界面活性剤は、電極の重量全体に対して0.05〜2wt%の範囲、好ましくは0.5〜1.5wt%の範囲で使用される。
【0044】
[0046] バインダは、水溶性セルロースバインダ、PVAを含む水溶性ビニレンバインダ、PTFE分散液及び/又はゴムエマルジョンからなってもよい。
【0045】
[0047] 別の実施形態では、電気二重層コンデンサ用電極を製造する方法は、活性物質及び導電物質を乾式混合して乾式混合された活性物質混合物を調製することと、乾式混合された活性物質をバインダ溶液と混合してスラリーを形成することと、集電体上にスラリーをコーティングすることとを含み、スラリーの形成は、活性物質混合物及びバインダによって形成されるスラリーの流動性を高める添加剤によって向上される。
【0046】
[0048] 更なる別の実施形態では、電気二重層コンデンサは、正極及び負極を含む少なくとも2つの電極と、電極を隔離するセパレータと、電解液であって、活性物質を含む電極と接触して電解液と電極の間の接触面に電気二重層を形成する電解液と、バインダと、導電物質として使用されるケッチェンブラックと、スラリーの流動性を高めるための添加剤と、を含んでおり、スラリーは、ケッチェンブラックが活性物質及びバインダと混合されたときに形成される。
【0047】
[0049] 本発明を以下により詳細に説明する。上記したように、ケッチェンブラック等の高い疎水性を有する導電物質がEDLCを製造するために使用された場合、スラリーは所望の流動度を有さない。例えば、スラリーが、ゴムバインダ及び1500m/gより多くの比表面積を有する活性炭を用いて形成された場合、スラリーは、多くの場合、高粘度を有するか、又は流動性を有さない。
【0048】
[0050] これらの課題を解決するために、スラリーへの界面活性剤の添加は、ケッチェンブラックが、スラリー及び導電物質の混合物と良好に混合されることを可能にする。それによって流動性を高めて抵抗を低下させる。この時、電極の物理的性質の変化を起こすことなく満足できる結果を得るためには、溶媒の界面エネルギーをできる限り少量になるように大幅に減少することができる界面活性剤を用いることが好ましい。
【0049】
[0051] 本発明者は、界面活性剤としてフッ素系界面活性剤を使用することが好ましいことを発見した。少量のフッ素系界面活性剤でさえも水の界面エネルギーを大幅に低下させるため、更にフッ素系界面活性剤は電気的反応においても非常に安定しているため、フッ素系界面活性剤は、電極上に残ったままであっても電極に大きな影響を与えない。フッ素系界面活性剤を使用することにより、ケッチェンブラックはスラリーと良好に混合する。
【0050】
[0052] 更に、本発明者は、界面活性剤としてパーフルオロブタニル基を有するフッ素系界面活性剤が使用されることが好ましいことを見出した。この時、パーフルオロオクタニル基を有する界面活性剤が最も良い効果を示したが、自然界におけるこの界面活性剤は環境毒性をもたらすことによりその使用は近年禁止されている。したがって、パーフルオロブタニル基を有するフッ素系界面活性剤を使用することが好ましい。
【0051】
[0053] 特に、フッ素系界面活性剤は、以下の利点によりEDLCの製造プロセスに適している。
【0052】
[0054] 1.フッ素系界面活性剤は、典型的な界面活性剤とは異なる非イオン性界面活性剤である。したがって、フッ素系界面活性剤は溶媒のpHを変化させないため、活性物質及びバインダのpH特性も変化せず、プロセスに容易に適用することができる。炭素粉と水との混合度は、pH値によって大きく影響される。更に、スチレンブタジエンエマルジョンのpH値は5〜6の間の弱い酸を示し、CMCのpH値は9より上であり、よってCMCの溶解性は、pH値が変更するとともに大幅に変化する。したがって、pH値に対して敏感な変化を有さない界面活性剤が必要であり、このようにフッ素系界面活性剤が非常に優れている。
【0053】
[0055] 2.フッ素系界面活性剤は、少量(0.5wt%未満)であってもかなり優れた粘度変化を示す。したがって、有益な効果を得るために多量のフッ素系界面活性剤を添加する必要はない。
【0054】
[0056] 3.フッ素系界面活性剤は、優れた熱安定性及び化学安定性を有する。電極がEDLCに使用された場合、電極は強力な酸化及び還元状態下に置かれる。フッ素系界面活性剤の特性を考慮すると、フッ素系界面活性剤は優れた化学安定性を有するため、分解可能性は低い。更に、電極製造プロセスを考慮すると、フッ素系界面活性剤は約150℃でホットプレス処理を受ける。しかしながら、フッ素系界面活性剤は優れた熱安定性を有するため、分解されない。
【0055】
[0057] フッ素系界面活性剤の中で、3M社によって供給されるFC−4430及びFC−4432が最も有用である。3M社によると、水は通常73ダイン/cmの表面張力を有する。0.2wt%のFC−4430を水に添加した場合、水の表面張力は21ダイン/cmに低下し、0.5wt%のFC−4430を水に添加した場合、水の表面張力は20ダイン/cmに低下する。このように、少量のFC−4430の添加は、水の表面張力を大きく低下させる。この製品が添加剤としてスラリーに添加された場合、流動性をほとんど有さないケッチェンブラックを含むスラリーの粘度は大きく低下して流動性を生成し、それによって加工性を高める。更に、ケッチェンブラックの分散性は改善されるので、8wt%のケッチェンブラックの添加は、17wt%のSuper−Pと同等の抵抗を得ることを可能にする。
【0056】
[0058] このように、フッ素系界面活性剤の使用は、ケッチェンブラックの分散性問題を解決し、よってケッチェンブラックの導電物質を上手く分散させることができる。特に、フッ素系界面活性剤の添加は、少量であっても、分散性を高め、ケッチェンブラックの製品加工性は、電気抵抗を低下させることができる。特に、少量の導電物質の使用は、導電物質の減少した分だけ活性物質を添加して使用することを可能にするため、単位体積当たりの比容量(エネルギー密度)が高まる。本発明のその技術を採用することにより、従来技術と比較して10%より高い比容量の増大が期待される。
【0057】
[0059] 電気二重層コンデンサの製造において、フッ素系界面活性剤の使用は、ケッチェンブラックを含むスラリーの加工性を高め、少量のケッチェンブラックであっても十分に低い抵抗値を有するEDLCを製造することを可能にする。
【0058】
[0060] 本発明による電気二重層コンデンサを製造する方法が水を溶媒として用いて作成されるEDLCに適用されることが好ましい一方、有機溶媒を用いて作成されるEDLCに適用されてもよい。特に、フッ素系バインダは、ほとんどの有機溶媒及び水に作用して粘度を低下させることができる。更に、バインダは、樹脂エマルジョンバインダ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性セルロース、PTFE等の分散液、及びPVA等の水溶性ビニレン高分子に適用されてもよい。
【0059】
[0061] 実施形態
【0060】
[0062] 本発明によるEDLCの電極を用いた実験例を以下により詳細に説明する。
【0061】
[0063] a)従来のSuper−Pを用いたEDLCと本発明のEDLCとの比較。Super−Pを用いて比較例1及び2のEDLCを生成し、実施形態1のEDLCを以下の通りに生成した。
【0062】
[0064] 比較例1の製造
【0063】
[0065] 75gの活性物質であるBP20(クラレケミカル社)と、17gのSuper−M(MMM Carbon社)と、を一緒に混合して第1混合物を形成した。3gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(日本ゼオン社)と12.5gのスチレンブタジエンゴムエマルジョン(日本ゼオン社製の40%エマルジョン)を水に添加することによってバインダ溶液も調製した。次いでこのバインダ溶液を、活性物質と導電物質との第1混合物と混合して、第2混合物を形成した。第2混合物を4時間湿式混合してスラリー溶液を形成した。スラリー溶液は約3000cpsの粘度を有していた。活性物質と、導電物質と、バインダと、を混合することによってスラリー溶液を調製し、次いで集電体として機能し、かつ20μm〜約100μmの厚さを有するエッチングされたアルミ箔(日本アルミ社製のCB20)の両表面にコーティングして電極を生成した。電極を乾燥させてその後負極と、正極と、に形成した。最終電極は幅3cm及び長さ40cmを有していた。アルミコンデンサに通常使用されるアルミ端子を、最終状態の電極上に取り付けた。電極をセパレータ(NKK社製のTF4035)と一緒に巻いた。その後、1Mのテトラエチルアンモニウム・テトラフルオロホウ酸塩((CNBF)を含む炭酸プロピレンを含浸させた。結果として得られた物品を直径18mm及び高さ40mmを有する円筒ケースに配置し、その後計測を行って最終品を完成させた。
【0064】
[0066] 比較例2の製造
【0065】
[0067] 比較例2のEDLCは、活性物質と、導電物質と、の構成比における変化を除いては同様の方法で調製が行われた。85gの活性物質であるBP20(クラレケミカル社)及び7gのSuper−P粉末を使用した。バインダ溶液の組成、プロセス、電解液の状態等を同じ条件下で保持して比較例2のEDLCを製造した。
【0066】
[0068] 本発明例1の製造
【0067】
[0069] 85gの活性物質であるBP20(クラレケミカル社)と、7gの一種のケッチェンブラックであるEC600JD(三菱化学社)と、を混合して第1混合物を形成した。3gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(日本ゼオン社)と、12.5gのスチレンブタジエンゴムエマルジョン(日本ゼオン社製の40%エマルジョン)と、1gのフッ素系界面活性剤であるFC−4430(3M社製のフッ素系界面活性剤)と、を水に添加することによってバインダ溶液も調製した。次いでこのバインダ溶液を、活性物質と導電物質との第1混合物と混合して、最終活性物質スラリーを形成した。形成した最終活性物質スラリーを用いて比較例1と同じ方法で直径18mm及び高さ40mmを有するEDLCを生成した。
【0068】
[0070] 比較例1、比較例2及び本発明例1の組成及び特性を測定して以下の表2で示す結果を得た。
【表2】

【0069】
[0071] 表2から分かるように、本発明例1、比較例1及び比較例2の測定結果を比較することによって本発明の利点を確認することができる。本発明例1は比較例1より多くの活性物質を使用したが、同様の抵抗値が得られた。更に、本発明例1は、比較例1と比較して10%増大した容量が得られた。したがって、本開示内容の技術が採用された場合、抵抗値の大幅な変化を伴わずに同じ体積内の容量が増大する。
【0070】
[0072] b)フッ素系界面活性剤が添加された製品と、フッ素系界面活性剤が添加されていない製品との比較。ここで、各製品はケッチェンブラックを含んでいる。本発明例1と同じ組成を有し、かつフッ素系添加剤を含まない比較例3のEDLCは、フッ素系添加剤の効果を比較するために製造された。
【0071】
[0073] 比較例3の製造
【0072】
[0074] 本発明例1のように、85gのBP20と、7gのEC600JD(三菱化学社製の一種のケッチェンブラックカーボン)と、を混合して混合物を形成した。12.5gのスチレンブタジエンゴムエマルジョンと、3gのカルボキシメチルセルロースナトリウムを300gの水と、混合することよってバインダ溶液も調製した。その後、バインダ溶液を混合物と混合した。上記の条件下において、この混合物は10000cpsより上の非常に高い粘度を有し、かつ流動性を生成しないため、バインダ溶液と混合物粉末とのスラリーはあまり上手く形成されないので、100gよりかなり多くの溶媒を添加して4時間混合した後に最終スラリーを生成することも可能である。本発明例1と同じ条件下で得られた最終スラリーを用いてEDLCを生成した。以下の表3に示すように本発明例1及び比較例3の特性を測定した。
【表3】

【0073】
[0075] 界面活性剤FC−4430を添加することなく生成された比較例3では、同じ容量を有するSuper−Pが導電物質として使用された比較例2と同様の特性を示した。比較例3のAC抵抗は、本発明例1のものより2倍大きいが、容量はほぼ変化していない。これは、ケッチェンブラックの使用が効果を示さないことを意味する。活性物質の増加は容量の増加という結果にはならなかった。これは、溶媒の増加が電極の密度を下げるため、最終EDLCの容量の増加は生成されないことを意味する。
【0074】
[0076] c)一定量のフッ素系界面活性剤が使用された場合のケッチェンブラックの比率に対する効果。本発明例2、3及び4のEDLCが製造され、異なる比率のケッチェンブラックにおける溶媒の全組成に対して0.3wt%のフッ素系界面活性剤を含む。
【0075】
[0077] 本発明例2の製造
【0076】
[0078] 75gのBP20と、17gのEC600JDと、を混合して活性物質粉末を調製した。3gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(日本ゼオン社)と、12.5gのスチレンブタジエンゴムエマルジョン(日本ゼオン社)と、1gのFC−4430(3M社製のフッ素系界面活性剤)と、を300gの水に添加することによってバインダ溶液も調製した。その後、バインダ溶液を活性物質粉末と混合して、最終活性物質スラリーを調製した。形成した最終活性物質スラリーを用いて本発明例1と同じ方法で直径18mm及び高さ40mmを有するEDLCを生成した。
【0077】
[0079] 本発明例3の製造
【0078】
[0080] 80gのBP20と、12gのEC600JDと、を混合して活性物質粉末を調製した。3gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(日本ゼオン社)と、12.5gのスチレンブタジエンゴムエマルジョン(日本ゼオン社)と、1gのFC−4430(3M社製のフッ素系界面活性剤)と、を300gの水に添加することによってバインダ溶液も調製した。その後、バインダ溶液を活性物質粉末と混合して、最終活性物質スラリーを調製した。形成した最終活性物質スラリーを用いて本発明例1と同じ方法で直径18mm及び高さ40mmを有するEDLCを生成した。
【0079】
[0081] 本発明例4の製造
【0080】
[0082] 90gのBP20と、2gのEC600JDと、を混合して活性物質粉末を調製した。3gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(日本ゼオン社)と、12.5gのスチレンブタジエンゴムエマルジョン(日本ゼオン社)と、1gのFC−4430(3M社製のフッ素系界面活性剤)と、を300gの水に添加することによってバインダ溶液も調製した。その後、バインダ溶液を活性物質粉末と混合して活性物質スラリーを調製した。調製した活性物質スラリーは溶媒の高粘度により流動性を示さなかった。したがって、調製した活性物質スラリーに50gの水を添加することによって、最終活性物質スラリーを生成した。形成した最終活性物質スラリーを用いて本発明例1と同じ方法で直径18mm及び高さ40mmを有するEDLCを生成した。
【0081】
[0083] 以下の表4に示すように本発明例2、3及び4の特性を測定した。
【表4】

【0082】
[0084] EDLCは、FC−4430の量を1gに及びバインダを一定量に保持した状態で導電物質の量のみを変更して製造した。その後、製造したEDLCのAC及びDC抵抗を測定した。上記の表4から、導電物質の量が所定値未満に低下した場合、抵抗が大幅に増加することが確認された。更に、導電物質の量が所定量より上に増加した場合、抵抗の減少効果はあまり顕著ではなく、容量は活性物質の比率の低下によって減少することが確認された。したがって、容量及び抵抗を最適化して、活性炭と、導電物質と、の間に適当な比率を維持することがより有利である。
【0083】
[0085] d)ケッチェンブラックの比率が一定であった場合のフッ素系界面活性剤の量に対する効果。本発明例5及び6では、フッ素系界面活性剤の量に基づいて効果が得られた。
【0084】
[0086] 本発明例5の製造
【0085】
[0087] 75gのBP20と、17gのEC600JDと、を混合して活性物質粉末を調製した。3gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(日本ゼオン社)と、12.5gのスチレンブタジエンゴムエマルジョン(日本ゼオン社)と、1gのFC−4430(3M社製のフッ素系界面活性剤)と、を300gの水に添加することによってバインダ溶液も調製した。その後、バインダ溶液を活性物質粉末と混合して、活性物質スラリーを調製した。この時、調製した活性物質スラリーは流動性を有するが高粘度を有したため、30gの水を添加した後に実験を行った。本発明例1と同じ方法で直径18mm及び高さ40mmを有するEDLCを生成した。
【0086】
[0088] 本発明例6の製造
【0087】
[0089] 75gのBP20と、17gのEC600JDと、を混合して活性物質粉末を調製した。3gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(日本ゼオン社)と、12.5gのスチレンブタジエンゴムエマルジョン(日本ゼオン社)と、1gのFC−4430(3M社製のフッ素系界面活性剤)と、を300gの水に添加することによってバインダ溶液も調製した。その後、バインダ溶液を活性物質粉末と混合して最終活性物質スラリーを調製した。本発明例1と同じ方法で直径18mm及び高さ40mmを有するEDLCを生成した。
【表5】

【0088】
[0090] 界面活性剤の量を変更して他の条件を維持した状態でEDLCを製造した後、その性能を評価した。界面活性剤の量が所定量を超えた場合、抵抗及び容量に対する更なる変化は観測されない。したがって、界面活性剤を所定量以上添加する必要はない。本発明例5のように、添加した界面活性剤の量が所定値より低い場合、抵抗は増加し、容量は減少し、加工性は低下することが確認された。したがって、性能の最適化のために適切な量の界面活性剤を使用することが非常に重要である。
【0089】
[0091] 本発明の実施形態を、本発明のいくつかの例示的実施形態を参照しながら説明してきたが、多くの他の修正形態及び実施形態を当業者が考案することができ、それらは本発明の原理の精神及び範囲内に入ることを理解すべきである。より具体的には、本開示、図面、及び添付の特許請求の範囲の範囲内で、対象の組合せ構成の構成部品及び/又は構成に様々な変更及び修正が可能である。構成部品及び/又は構成における変更及び修正に加えて、代替使用も当業者には明らかであろう。
【0090】
[0092] 特定の動作条件及び環境に適合するように変化される他の修正及び変更は当業者に明らかになるため、本発明は本開示の目的のために選ばれた例に限定されると考えない。本発明は、本発明の真の精神及び範囲から逸脱しない全ての変更及び修正を網羅する。
【0091】
[0093] 本発明を上記で説明したが、特許証によって保護されたいものはこの後に続く添付の特許請求の範囲に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)活性物質と、
b)ケッチェンブラックを含む導電物質と、
c)水中に分散した樹脂エマルジョン及び水溶性高分子混合物のうちの少なくとも1つを含むバインダと、
d)界面活性剤と
を含む、電極材料組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤はフッ素系界面活性剤を含む、請求項1に記載の電極材料組成物。
【請求項3】
前記フッ素系界面活性剤はパーフルオロブタニル基を含む、請求項2に記載の電極材料組成物。
【請求項4】
前記バインダは、水中に分散した樹脂エマルジョン及び水溶性高分子混合物を含む、請求項1に記載の電極材料組成物。
【請求項5】
約0.05重量%から約2.0重量%のフッ素系界面活性剤を含む、請求項2に記載の電極材料組成物。
【請求項6】
約0.5重量%から約1.5重量%のフッ素系界面活性剤を含む、請求項2に記載の電極材料組成物。
【請求項7】
約1.0重量%から約20重量%のケッチェンブラックを含む、請求項1に記載の電極材料組成物。
【請求項8】
約3.0重量%から約10重量%のケッチェンブラックを含む、請求項1に記載の電極材料組成物。
【請求項9】
前記バインダは、水溶性セルロースバインダ、PVAを含む水溶性ビニレンバインダ、PTFE分散液及びゴムエマルジョンを含む群から選択される少なくとも1つのバインダを含む、請求項1に記載の電極材料組成物。
【請求項10】
a)活性物質及び導電物質を乾式混合して乾式混合された活性物質混合物を形成することと、
b)前記乾式混合された活性物質混合物をバインダ溶液と混合してスラリーを形成することと、
c)添加剤を前記スラリーに添加して前記スラリーの流動性を高めることと、
d)集電体上に前記スラリーをコーティングすることと
を含む、電極を製造する方法。
【請求項11】
前記導電物質はケッチェンブラックを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記スラリーは、約1.0重量%から約20重量%のケッチェンブラックを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記スラリーは、約3重量%から約10重量%のケッチェンブラックを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記添加剤はフッ素系界面活性剤を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記スラリーは、約0.05重量%から約2.0重量%のフッ素系界面活性剤を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記スラリーは、約0.5重量%から約1.5重量%のフッ素系界面活性剤を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記フッ素系界面活性剤はパーフルオロブタニル基を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記バインダ溶液は水溶性セルロースバインダを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記バインダ溶液は水溶性ビニレンバインダを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記水溶性ビニレンバインダはPVAを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記バインダ溶液はPTFE分散液を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
前記バインダ溶液はゴムエマルジョンを含む、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−522398(P2011−522398A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508700(P2011−508700)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/043259
【国際公開番号】WO2009/137752
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(510127398)イオクサス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】