説明

エネルギー貯蔵装置の電極材料としてのイミダゾリジノンニトロキシド

本発明は、能動素子として立体障害イミダゾリジノンニトロキシドラジカルの酸化と還元のサイクルを利用した、電気化学コンデンサー又は二次電池のような、電気エネルギー貯蔵装置に関する。本発明のさらなる態様は、このようなエネルギー貯蔵装置を提供する方法、エネルギー貯蔵装置におけるそれぞれの化合物の能動素子としての使用、及び選択された新規なイミダゾリジノンニトロキシド化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動素子として立体障害イミダゾリジノンニトロキシドラジカルの酸化と還元のサイクルを利用した、電気化学コンデンサー又は二次電池のような、電気エネルギー貯蔵装置に関する。本発明のさらなる態様は、このようなエネルギー貯蔵装置を提供する方法、エネルギー貯蔵装置におけるそれぞれの化合物の能動素子としての使用、及び選択された新規なイミダゾリジノンニトロキシド化合物である。
【0002】
例えば、二次電池の電極材料における有効成分としてのニトロキシドラジカルのような、種々のラジカルの使用は、EP1128453に開示されている。電池電解質中の電極材料は、低溶解性又は不溶性であることが好ましいので、ポリマーの又はオリゴマーのニトロキシドは、特に興味深い。
【0003】
有機ラジカル電池におけるカソード活物質としてのニトロキシドポリマーは、すでに、例えば、Electrochimica Acta 50,827(2004)に開示されている。4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの調製、そのフリーラジカルの重合、及び続いての、対応するポリマーニトロキシドへのそのポリマーの酸化が記載されている。
【0004】
携帯電話及び携帯パソコン(ラップトップ)のような、電子デバイス市場の急速な成長により、近年、小型かつ大容量で、エネルギー密度の高い二次電池に対するニーズが高まってきている。
【0005】
今日このような用途に最もよく使用されている二次電池は、リチウムイオン二次電池である。このようなリチウムイオン二次電池は、活物質として、陽極(カソード)にリチウム含有遷移金属酸化物を、陰極(アノード)に炭素を使用し、これら活物質へのLiの挿入及び活物質からのLiの脱離により、充電及び放電を行っている。
【0006】
しかし、リチウムイオン二次電池は、比重の大きい遷移金属酸化物を、特に陽極に使用するので、単位重量当たり望ましくない二次電池容量を有する。このため、軽量の電極材料を使用して、大容量の二次電池を開発する試みがなされてきた。例えば、米国特許第4,833号及び第2,715,778号は、ジスルフィド結合を有する有機化合物を陽極に使用する二次電池を開示しており、その電池は、二次電池の原理として、ジスルフィド結合の生成及び解離を伴う電気化学酸化還元反応を利用している。
【0007】
上記のとおり、EP1128453も同様に、例えば、ニトロキシドラジカルを、二次電池の電極材料における有効成分として開示している。
【0008】
最近、中国特許出願第CN1741214−A号は、ニトロキシドラジカルが、スーパーコンデンサーにおける電極材料としても使用できることを開示した。
【0009】
驚くべきことに、イミダゾリジノンニトロキシドラジカルが、非常に高い充電容量を有する活性電極材料をもたらすことが今や見出された。本発明の1態様は、したがって、最大約200Ah/kgの充電容量と、現技術水準の2,2,6,6−テトラメチルピペリジンN−オキシド系ポリマーに比べて有意に優れたエネルギー密度とを有する、新規なイミダゾリジノンニトロキシド及びそれらから誘導されたポリマーである。
【0010】
驚くべきことに、イミダゾリジノンニトロキシドを含有する電池の電圧は、文献に明示された、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルニトロキシド(TEMPO)に基づく電池に比較して高いことが分かった。さらに、イミダゾリジノンニトロキシドの酸化還元電位は、その置換パターンにより調整が可能であり、それにより電池の電圧をさらに高めることも可能である。
【0011】
例えば、TEMPO系電池の起電力(EMF)は、約3.6Vである。イミダゾリジノンニトロキシド系電池のEMFは、TEMPO系システムに比べ、有意に高くすることができる。このエネルギー含量の増大の可能性は、明らかに興味深い。
【0012】
さらに、イミダゾリジノンニトロキシドは、対応するオキソアンモニウム塩への酸化及びニトロキシドへの逆還元に繰り返し付されると、完全に可逆性の酸化還元挙動を示す。この可逆性は、二次電池に適用するための必要条件である。
【0013】
したがって、イミダゾリジノンニトロキシドは、スーパーコンデンサー又は二次有機ラジカル電池のようなエネルギー貯蔵装置における電極材料として使用された場合、有意な利点を提供する。
【0014】
本発明の1態様は、陽極又は陰極の少なくとも一方における、可逆性の酸化/還元サイクルにおける活物質の電極反応を利用する、改善された容量を有する電気エネルギー貯蔵装置であり、その活物質は、式(I)
【化1】


[式中、Gは、
【化2】


であり;*は、原子価を示す;
Anは、有機又は無機酸のアニオンであり;
はLiであるが、但し、式(I)の構造要素は、1,3,5トリアジン環に結合していない]の構造要素を有する、電気エネルギー貯蔵装置である。
【0015】
本発明は、電極活物質としてラジカル化合物を使用する二次電池のような、エネルギー貯蔵装置を提供する。ラジカル化合物が、炭素、水素及び酸素のような、より軽量な元素からなるとき、重量当たりのエネルギー密度の高い二次電池を提供することが期待されるであろう。
【0016】
本明細書において電極活物質とは、充電及び放電反応のような電極反応に直接寄与する物質を意味し、二次電池システムにおいて主要な役割を演じる。本発明の活物質は、陽極活物質又は陰極活物質のいずれかとして使用されてよいが、メタルオキシド系に比べ、軽量で優れたエネルギー密度を特徴とするので、より好ましくは陽極の活物質として使用されるであろう。
【0017】
エネルギー貯蔵の基礎にある機序は、スキーム1に記載のニトロキシドラジカルの可逆性酸化/還元である:
【化3】

【0018】
オキソアンモニウムカチオンの対イオン、Aは、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO及びLIC(CSOから誘導されたアニオンであってよい。
【0019】
たとえ、完全なレドックスウィンドウ(酸化還元窓)(ヒドロキシルアミンアニオン←→オキソアンモニウムカチオン)の使用が可能であっても、現在の好ましい電池には、酸化還元対ニトロキシドラジカル<―>オキソアンモニウムカチオンが使用されている。したがって、電子は、酸化状態のN=Oと還元状態のN−O・間で交換される。
【0020】
本発明において、成分間の結合を補強するために、結合剤を使用してもよい。
【0021】
結合剤の例には、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンとブタジエンとのコポリマーゴム、及びポリプロピレン、ポリエチレン及びポリイミドのような樹脂結合剤が含まれる。
【0022】
本発明によれば、陽極と陰極の少なくとも一方における活物質は、その量に制限のないラジカル化合物を含む。しかし、二次電池としての容量は、電極に含有されるラジカル化合物の量に依存するので、適切な効果を達成するために、その量は、望ましくは10〜100重量%、好ましくは20〜100%及び特に50〜100%である。
【0023】
1種類を超えるラジカル化合物を活性電極材料として使用することも可能である。本発明による化合物は、錯体活物質として機能するために、例えば、公知の活物質と混合されてよい。
【0024】
陽極に本ラジカル化合物を使用する場合、陰極層の材料の例には、グラファイト及び無定形炭素のような炭素材料、リチウム金属又はリチウム合金、リチウム−イオン吸蔵炭素及び導電性ポリマーが含まれる。これらの材料は、フィルム、塊、粒状粉末、繊維及びフレークのような適切な形状を取ってよい。
【0025】
電極層を形成する際のインピーダンスを低減するために、導電性補助材料又はイオン導電性補助材料をさらに添加してもよい。これら材料の例には、グラファイト、カーボンブラック及びアセチレンブラックのような炭素質粒子、及び導電性補助材料としての、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリアセンのような導電性ポリマー並びにイオン−導電性補助材料としてのゲル電解質及び固体電解質が含まれる。
【0026】
電極反応を加速させるために、触媒を使用してもよい。触媒の例には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリアセンのような導電性ポリマー;ピリジン誘導体、ピロリドン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体及びアクリジン誘導体のような塩基化合物;並びに金属−イオン錯体が含まれる。
【0027】
本発明におけるラジカル化合物の濃度は、好ましくは1019スピン/g以上、より好ましくは1021スピン/g以上に維持される。二次電池の容量に関しては、できるだけ高いスピン数/gが望ましい。
【0028】
一般に、ラジカル濃度は、スピン濃度として表される場合がある。即ち、スピン濃度は、単位重量当たりの不対電子(ラジカル)の数を意味し、これは、例えば、電子スピン共鳴スペクトルにおける吸収領域強度(以下、「ESR」スペクトルと称する)から、次の手順で決定される。第一に、ESR分光法で測定する試料は、例えば、乳鉢にて砕くことにより粉末化されるが、これにより、試料は、表皮効果、すなわち、マイクロ波が試料を通過しない現象、を無視することができる粒子径に粉砕されであろう。一定量の粉末試料を内径2mm以下、好ましくは1〜0.5mmの石英ガラス毛細管に満たし、10〜5mmHg以下に減圧し、密閉してESR分光法に付す。ESR分光法は、市販の任意のモデルで実施することができる。スピン濃度は、得られたESRシグナルを2回積分し、較正曲線と比較して決定されるであろう。スピン濃度が正確に測定されるのであれば、分光計や測定条件に制約はない。二次電池の安定性のために、ラジカル化合物は、安定であることが望ましい。本明細書において、安定なラジカルとは、そのラジカル形態が長寿命である化合物を意味する。
【0029】
例えば、式(I)の構造要素は、式(a1)又は(a2):
【化4】


[式中、Gは、
【化5】


であり;
、R、R及びRは、独立して、C〜Cアルキル、−COOM、−COOR、−CONHR、−CON(R、−OR、F、Clで置換されたC〜Cアルキル、−O−、−NR−で中断されたC〜Cアルキル;又は
〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキリデン、C〜Cフェニルアルキル、−COO、−COOR、−CONHR、−CON(Rであるか、あるいは
とRもしくはRとR、又はRとR及びRとRは、基:
【化6】


であり;
ここで
は、Liであり、
Anは、有機酸又は無機酸のアニオンであり;
はC〜Cアルキル、−Nで置換されたC〜Cアルキル;又はC〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、C〜Cフェニルアルキルであるか、又は、基:
【化7】


であり;
はH、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、C〜Cフェニルアルキル、−O、−OR、−OC(O)R、−C(O)R、−COOR、−CONHR、−CON(Rであるか;又はRは−O−、−NR−、又は基:
【化8】


で中断されたC〜Cアルキル;F、Cl、−COO、−COOR、−CONHR、−CON(R、OR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NHR、−OC(O)N(R、−NHC(O)R、−NRC(O)R、−NCO、−N、NHC(O)NHR、−NRC(O)N(R、−NHCOOR、−N(R、−NRCOOR、−N(RAn、S(RAn、P(RAnで置換されたC〜Cアルキルであり;
yは、2〜4の数であり;
yが2であるとき、
Eは、二価の基:
【化9】


(ここで、nは、0〜6の数、nは、0〜4の数であり;Xは、−O−、−NH−又は−NR−;Xは、−OR、−NH、−NHR、又は−N(Rである);
yが3であるとき、
Eは、三価の基:
【化10】


であり;
yが4であるとき、
Eは、式
【化11】


(ここで*は、原子価を示す)の四価の基である]の構造要素である。
【0030】
が、−O−、−NR−又は基:
【化12】


で中断されたC〜Cアルキルであるとき、同時に上記のように置換されることもできる。
【0031】
適切なアニオンAnは、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO及びLiC(CSOのようなC〜Cカルボン酸又は錯酸から誘導される。
【0032】
例えば、Gは、
【化13】


であり;
、R、R及びRは、独立してメチル、CF又はC〜Cシクロアルキリデンであり;あるいはR及びRもしくはR及びR、又はRとRとRとRが、基:
【化14】


であり;
は、C〜Cアルキル又はC〜Cアルケニルであり;
は、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル又は−C(O)R;Clで置換されたC〜Cアルキルであり;
yは、2であり;
Eは、二価の基:
【化15】


(ここでnは、0〜4の数であり;*は、原子価を示す。)
【0033】
例えば、Gは、
【化16】


であり;
、R、R及びRは、メチルであるか;又は
及びRは、基:
【化17】


であり;
は、C〜Cアルキル(例えば、メチル)又はC〜Cアルケニル(例えば、Cアルケニル)であり;
は、H、C〜Cアルキル(例えば、メチル)、C〜Cアルケニル(例えば、ビニル)、C〜Cアルキニル(例えば、プロパルギル)又は−C(O)R;Clで置換されたC〜Cアルキル(例えば、エチル)であり、;
yは、2であり;
Eは、二価の基:
【化18】


(ここで、nは、0〜4(例えば、0)の数であり;*は、原子価を示す)である。
【0034】
例えば、化合物は、式(a1):
【化19】


[式中、Gは、
【化20】


であり;
、R、R及びRは、メチル、CF又はC〜Cシクロアルキリデンであるか;あるいはR及びRもしくはR及びR、又はRとRとRとRが、基:
【化21】


であり;
は、H、メチル又はC〜Cシクロアルキルである]の化合物である。
【0035】
本発明のもう1つの実施態様において、式(I)の構造要素は、ポリマーの繰返し単位であり、式(b1)、(b2)、(b3)、(b4)又は(b5):
【化22】


[式中、R、R、R及びRは、メチル又はC〜Cシクロアルキリデンであるか;あるいは
とR又はRとR、又はRとRとRとRは、基:
【化23】


であり;繰返し指数mは、2〜50000、好ましくは5〜5000、最も好ましくは、5〜500の数字である]の構造要素である。
【0036】
例えば、式(I)の構造要素は、ポリマーの繰返し単位であり、式(b5):
【化24】


[式中、R、R、R及びRは、メチルであるか;又は
及びRは、基:
【化25】


であり;
繰返し指数mは、2〜50000、好ましくは5〜5000、最も好ましくは、5〜500の数字である]の構造要素である。
【0037】
ポリマー又はオリゴマーは、対応して官能化されたモノマーから、標準の方法で調製することができる。
【0038】
好ましくは、電気エネルギー貯蔵装置は、二次電池である。
【0039】
スキーム1に概説されたとおり、エネルギー貯蔵の基礎となる機序は、ニトロキシドラジカルの可逆性の酸化/還元である。これは、充電及び放電の間、常に二種、すなわち、ニトロキシドラジカル及びその酸化形態又は還元形態(陽極又は陰極いずれの活物質であるかに依存)が存在することを意味する。
【0040】
好ましくは、電極反応は、陽極における電極反応である。
【0041】
二次電池の好ましい実施態様において、Gは、ニトロキシドラジカル:
【化26】


である。
【0042】
本発明の好ましい実施態様の1つは、活物質が式(I)の構造要素を含有する化合物を10〜100重量%含む、電気エネルギー貯蔵装置である。
【0043】
好ましくは、活物質が少なくとも1021スピン/gのスピン濃度を有する、電気エネルギー貯蔵装置である。
【0044】
本発明による二次電池は、例えば、EP1128453に記載された構成を有する。その構成では、陰極層及び陽極層が、電解質を含有するセパレーターを介して積み重ねられる。陰極層又は陽極層に使用される活物質は、上記のような構造要素を有するラジカル化合物である。
【0045】
ラミネート型二次電池のもう1つの構成では、陽極コレクター、陽極層、電解質を含有するセパレーター、陰極層及び陰極コレクターを、順に積み重ねる。二次電池は、複層ラミネート、すなわち、両側に層を重ねたコレクター及びロール状ラミネートの組み合わせであってもよい。
【0046】
陰極コレクター及び陽極コレクターは、例えば、ニッケル、アルミニウム、銅、金、銀、アルミニウム合金及びステンレス鋼製の金属箔又は金属板;メッシュ電極;及び炭素電極であってよい。コレクターは、触媒として活性であってよく、又は活物質がコレクターに化学的に結合していてよい。上記の陽極が陰極と接触するのを防ぐために、多孔質膜製又は不織布製のセパレーターを使用してよい。
【0047】
セパレーター中に含まれる電解質は、電荷キャリアを電極間で、すなわち、陰極と陽極の間で移動させ、通常、室温で10−5〜10−1S/cmの電解質イオン伝導率を示す。本発明において使用される電解質は、例えば、電解質塩を溶媒に溶解して調製した電解質溶液であってよい。このような溶媒の例には、エチレンカーボナート、プロピレンカーボナート、ジメチルカーボナート、ジエチルカーボナート、メチルエチルカーボナート、y−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチル−2−ピロリドンのような有機溶媒が含まれる。本発明において、これらの溶媒は、単独で使用されるか、2種以上を組み合わせて使用してよい。電解質塩の例には、LiPF、LiClO、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO及びLiC(CSOが含まれる。
【0048】
電解質は、固体であってよい。固体電解質に使用されるポリマーの例には、ポリフッ化ビニリデンのようなフッ化ビニリデンポリマー、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、フッ化ビニリデンとエチレンとのコポリマー、フッ化ビニリデンとモノフルオロエチレンとのコポリマー、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとのコポリマー、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー及びフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとのターポリマー;アクリロニトリルとメチルメタクリラートとのコポリマー、アクリロニトリルとメチルアクリラートとのコポリマー、アクリロニトリルとエチルメタクリラートとのコポリマー、アクリロニトリルとエチルアクリラートとのコポリマー、アクリロニトリルとメタクリル酸とのコポリマー、アクリロニトリルとアクリル酸とのコポリマー、及びアクリロニトリルとビニルアセタートとのコポリマーのようなアクリロニトリルポリマー;ポリエチレンオキシド;エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー;これらアクリラート又はメタクリラートのポリマーが含まれる。ポリマーは、電解質溶液を含んでゲルを形成してもよく、又は、ポリマーを単独で使用してもよい。
【0049】
本発明の二次電池は、例えば、電極ラミネート又はロール式ラミネートを、例えば、金属ケース、樹脂ケース又はアルミニウム箔のような金属箔製及び合成樹脂フィルム製のラミネートフィルムに密封した従来の構造を有していてよい。
【0050】
本発明による二次電池は、従来の方法で調製してよい。例えば、活物質を溶媒に入れたスラリーを電極ラミネートに塗布したものから調製する。これにセパレーターを介して対極を積み重ねる。あるいは、ラミネートをロール状に巻き、ケースに設置し、次に電解質溶液を満たす。二次電池は、ラジカル化合物それ自体を利用して、又は、上記のとおり、酸化還元反応でラジカル化合物に変換できる化合物を使用して、調製してよい。
【0051】
イミダゾリジノンニトロキシドの前駆体化合物は、基本的に公知であり、一部は市販されている。そのすべてが、公知の方法により調製することができる。それらの調製は、例えば、A. Khalaj et al., Monatshefte fur Chemie, 1997, 128, 395-398; S. D. Worley et al., Biotechnol. Prog., 1991, 7, 60-66; T. Toda et al., Bull. Chem. Soc. Jap., 1972, 45, 557-561に開示されている。
【0052】
酸化は、米国特許第5,654,434号に記載の、過酸化水素を使った4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの酸化と同様に行ってよい。もう1つの同様に適切な酸化プロセスは、WO00/40550に記載されており、過酢酸を使用するものである。
【0053】
ニトロキシドケミストリーに関する包括的記載は、例えば、L.B. Volodarsky, V.A. Reznikov, V.I. Ovcharenko.: "Synthetic Chemistry of Stable Nitroxides", CRC Press, 1994に見出すことができる。
【0054】
WO2004/031150に記載の方法を、オキソアンモニウム塩の調製に使用することができる。
【0055】
本発明のさらなる態様は、上記のとおり、陽極又は陰極の少なくとも一方に上記に定義した式(I)の構造要素を含有する活物質を組み込むことを含む、電気エネルギー貯蔵装置を提供する方法;及び電気エネルギー貯蔵装置の陽極又は陰極の少なくとも一方における、式(I)の構造要素を活物質として含有する化合物の使用、である。
【0056】
本発明のさらなる態様は、本発明において特に有用な、新規なニトロキシルラジカル化合物である。
【0057】
例えば、化合物は、式(a1)又は(a2):
【化27】


[式中、Gは、
【化28】


であり;
【0058】
、R、R及びRは、独立して、−COOH又は−COO(C〜Cアルキル);又は、F、Cl、OH、−COOH、−COO(C〜Cアルキル)、−O−CO(C〜Cアルキル)で置換されることができるメチルであるか;あるいは
とRもしくはRとR、又はRとRとRとRは、基:
【化29】


であり;
【0059】
好ましくはR、R、R及びRは、F、Cl、OH、−COOH、−COOCH、−O−COCHで置換されることができるメチルであるか;あるいはRとRもしくはRとR、又はRとRとRとRは、基:
【化30】


であり;
【0060】
ここで、
は、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、C〜Cフェニルアルキル、−O、−OR6、−OC(O)R、−OC(O)Cl、−C(O)Cl、−C(O)R、−COOR、−CONHR、−CON(Rであるか;又は
は、−O−、−NR−又は基:
【化31】


により中断されるC〜Cアルキルであるか;又はF、Cl、−COO、−COOR6、−CONHR、−CON(R、−C(O)Cl、OR、−OC(O)R、−OC(O)OR6、−OC(O)Cl、−OC(O)NHR、−OC(O)N(R、−NHC(O)R、−NRC(O)R、−NCO、NHC(O)NHR、−NRC(O)N(R、−NHCOOR、−N(R、−NRCOOR、−N(RAn、S(RAn、P(RAnにより置換されるC〜Cアルキルであり;
【0061】
例えば、Rは、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、C〜Cフェニルアルキル、−O、−OR、−OC(O)R、−C(O)R、−COOR、−CONHR、−CON(Rであるか;又は、Rは、−O−、−NR−もしくは、基:
【化32】


で中断されるC〜Cアルキルであるか;又はF、Cl、−COO、−COOR、−CONHR、−CON(R、OR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NHR、−OC(O)N(R、−NHC(O)R、−NRC(O)R、−NCO、NHC(O)NHR、−NRC(O)N(R、−NHCOOR、−N(R、−NRCOOR、−N(RAn、S(RAn、P(RAnで置換されるC〜Cアルキルであり;
【0062】
例えば、Rは、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cフェニルアルキル、−O、−OR、−OC(O)R、−OC(O)Cl、−C(O)Cl、−C(O)R、−COOR、−CONHR、−CON(Rであるか;又はRは、基:
【化33】


で中断されるC〜Cアルキルであるか;又は−COO、−COOR、−CONHR、−CON(R、−C(O)Cl、OR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)Cl、−OC(O)NHR、−OC(O)N(R、−NHC(O)R、−NRC(O)R、−NCO、NHC(O)NHR、−NRC(O)N(R、−NHCOOR、−N(R、−NRCOOR、−N(RAn、S(RAn、P(RAnで置換されるC〜Cアルキルであり;
【0063】
例えば、Rは、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cフェニルアルキル、−O、−OR、−OC(O)R、−OC(O)Cl、−C(O)Cl、−C(O)R、−COOR、−CONHR、−CON(Rであるか;又はRは、基:
【化34】


で中断されるC〜Cアルキル;又は−COO、−CONHR、−CON(R、−C(O)Cl、−OC(O)OR、−OC(O)Cl、−OC(O)NHR、−OC(O)N(R、−NHC(O)R、−NRC(O)R、−NCO、NHC(O)NHR、−NRC(O)N(R、−NHCOOR、−NRCOOR、−N(RAn、S(RAn、P(RAnで置換されるC〜Cアルキルであり;
【0064】
は、−H、C〜Cアルキル、−Nで置換されるC〜Cアルキルであるか;又はC〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、C〜Cフェニルアルキル又は基:
【化35】


であり;
【0065】
例えば、Rは、−Nで置換されるC〜Cアルキル;又はC〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cフェニルアルキル又は基:
【化36】


であり;
【0066】
例えば、Rは、C〜Cアルキル又は−Nで置換されるC〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cフェニルアルキル又は基:
【化37】


であり;
【0067】
yは、2〜4の数であり;
yが2であるとき、
Eは、二価の基:
【化38】


(ここで、nは、0〜6の数、nは、0〜4の数であり;Xは、−O−、−NH−又は−NR−;Xは、−OR、−NH、−NHR又は−N(Rである)であり;
【0068】
yが3であるとき、
Eは、三価の基:
【化39】


であり;
【0069】
yが4であるとき、
Eは、式
【化40】


(ここで、*は、原子価を示す)の四価の基である]の化合物であるが、
但し、下記の化合物:
【化41】


を除く。
【0070】
好ましくは、
Gが、
【化42】


であり;
、R、R及びRが、F、Cl、OH、−COOH、−COOCH又は−O−COCHで置換されることができるメチルであるか;あるいは
とR又はRとR、又はRとRとRとRが、基:
【化43】


であり;
【0071】
例えば、R、R、R及びRが、独立して、−COOH、−COO(C〜Cアルキル)、F、Cl、OH、−COOH、−COO(C〜Cアルキル)、−O−CO(C〜Cアルキル)で置換されることができるメチルであるか、あるいは
とRもしくはRとR、又はRとRとRとRが、基:
【化44】


であり;
ここで、
が、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、C〜Cフェニルアルキル、−OH、−OLi、OR、−C(O)R、−OC(O)R、−COOR、−CONHR、−CON(Rであるか;又は、Rが、−O−もしくは−NR−で中断されるC〜Cアルキル;又はF、Cl、−COO、−COOR、−CONHR、−CON(R、OH、OR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NHR、−OC(O)N(R、−NHC(O)R、−NRC(O)R、−NCO、−N、NHC(O)NHR、−NRC(O)N(R、−NHCOOR、−N(R、−NRCOOR、−N(RAn、S(RAn、P(RAnで置換されるC〜Cアルキルであり;
【0072】
例えば、Rが、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cフェニルアルキル、−OH、−OLi、OR、−C(O)R、−OC(O)R、−COOR、−CONHR、−CON(Rであるか;又は、Rが、−COO、−COOR、−CONHR、−CON(R、OH、OR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NHR、−OC(O)N(R、−NHC(O)R、−NRC(O)R、−NCO、−N、NHC(O)NHR、−NRC(O)N(R、−NHCOOR、−N(R、−NRCOOR、−N(RAn、S(RAn、P(RAnで置換されるC〜Cアルキル;
【0073】
例えば、Rが、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cフェニルアルキル、−OH、−OLi、OR、−C(O)R、−OC(O)R、−COOR、−CONHR、−CON(Rであるか;又は、Rが、−COO、−CONHR、−CON(R、−OC(O)NHR、−OC(O)N(R、−NHC(O)R、−NRC(O)R、−NCO、−N、NHC(O)NHR、−NRC(O)N(R、−NHCOOR、−NRCOOR、−N(RAn、S(RAn、P(RAnで置換されるC〜Cアルキルであり;
【0074】
例えば、Rが、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、C〜Cフェニルアルキル、−OH、−OLi、OR、−C(O)R、−C(O)Cl、−OC(O)R、−COOR、−CONHR、−CON(Rであるか;又は、Rが、−O−もしくは−NR−で中断されるC〜Cアルキル、F、Cl、−COO、−COOR、−CONHR、−CON(R、OH、OR、−OC(O)R、−OC(O)−ハロゲン、−OC(O)OR、−OC(O)NHR、−OC(O)N(R、−NHC(O)R、−NRC(O)R、−NCO、−N、NHC(O)NHR、−NRC(O)N(R、−NHCOOR、−N(R、−NRCOOR、−N(RAn、S(RAn、P(RAnで置換されるC〜Cアルキルであり;
【0075】
は、Liであり、
Anは、有機酸又は無機酸のアニオンであり;
【0076】
が、−H、C〜Cアルキルもしくは−Nで置換されるC〜Cアルキルであるか;又はC〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cフェニルアルキル又は基:
【化45】


であり;
【0077】
例えば、Rが、−Nで置換されるC〜Cアルキルであるか;又はC〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cフェニルアルキル又は基:
【化46】


であり;
【0078】
例えば、Rが、C〜Cアルキルもしくは−Nで置換されるC〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cフェニルアルキル又は基:
【化47】


であり;
【0079】
yが、2であり;
Eが、二価の基:
【化48】


(ここでnは、0〜4の数である);
である化合物であるが、
但し、下記の化合物:
【化49】


を除く。
【0080】
最も好ましくは、
Gが、
【化50】


であり;
、R、R及びRが、メチルであるか;又は
及びRが、基:
【化51】


であり;
が、H、C〜Cアルケニル(例えば、ビニル)、C〜Cアルキニル(例えば、プロパルギル)又は−C(O)Rであるか;又はClで置換されたC〜Cアルキル(例えば、エチル)であり;
が、C〜Cアルキル(例えば、メチル)又はC〜Cアルケニル(例えば、Cアルケニル)であり;
【0081】
yが、2であり;
Eが、二価の基:
【化52】


(ここで、nが、0〜4(例えば、0)の数である);
である化合物であるが、
但し、下記の化合物:
【化53】


を除く。
【0082】
特に好適であるのは、式(b1)、(b2)、(b3)、(b4)又は(b5)
【化54】


[式中、R、R、R及びRは、独立してメチル、CF又はC〜Cシクロアルキリデンであるか;あるいは、RとRもしくはRとR、又はRとRとRとRが、基:
【化55】


であり;
繰返し指数mは、2〜50000(例えば、50〜50000)、好ましくは5〜5000、最も好ましくは5〜500の数である]の繰り返し単位を有するポリマーである。
【0083】
最も好適であるのは、式(b5)
【化56】


[式中、R、R、R及びRは、メチルであるか;又は
及びRは、基:
【化57】


であり;
繰返し指数mは、2〜50000(例えば、50〜50000)、好ましくは5〜5000、最も好ましくは5〜500の数である]の繰り返し単位を有するポリマーである。
【0084】
本発明における好適な個々の化合物の例を、表1に示す。
【表1】

【0085】
上記の定義及び好ましさの順位は、本発明のすべての態様に適用される。
【0086】
以下の実施例は、本発明を説明する。
【0087】
A)調製例
実施例A1:2,2,3,5,5−ペンタメチル−イミダゾリジン−4−オン−1−N−オキシル(表1の化合物番号1)
過酸化水素(水性、30%、2.5g、22mmol)を、EDTA(0.0497g、0.17mmol)及びNaWOx2HO(0.0495g、0.15mmol)を含有する酢酸(15ml)中の2,2,3,5,5−ペンタメチル−イミダゾリジン−4−オン(1.85g、10mmol)の溶液に徐々に加え、得られた淡黄色の懸濁液を室温(25℃)で一晩撹拌した。追加の過酸化水素(2.4g、21mmol)を入れ、橙色の溶液をさらに2日間撹拌した。反応混合物をpH7(水性NaOH、30%)に調整し、得られた橙色の懸濁液をCHCl(2×40ml)で抽出した。有機相をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレーターで留去し、赤い油状物を放置して凝固させた。クロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/エチルアセタート4/6)で精製し、標記化合物0.4gを融点67〜69℃の橙色の結晶として得た。MS: C8H15N2O2 (171.22)に関する実測値 M+ = 171.
【0088】
中間体:
A)2,2,5,5−テトラメチル−イミダゾリジン−4−オン
EP−A−1283240(2003; D. Lazzari et al, Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.; CAN 138:154404)に記載のとおり調製した。
【0089】
B)2,2,3,5,5−ペンタメチル−イミダゾリジン−4−オン
ヨウ化メチル(3.6g、25mmol)を、カリウムtert−ブトキシド(2.9g、25mmol)を含有するトルエン(10ml)中の2,2,5,5−テトラメチル−イミダゾリジン−4−オン(3.55g、25mmol)の氷冷懸濁液に徐々に加えた。氷浴を除去し、反応混合物を一晩撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーターでろ過し、蒸発させて、黄色を帯びた油状物を得た。Kugelrohrオーブンを使って、分取短経路の減圧蒸留で、標記化合物2gを無色の液体として得た。MS: C8H16N2O (156.23)に関する実測値 M+ = 156. 1H-NMR (300MHz, CDCl3), δ[ppm]: 2.81 (s, 3H), 1.78 (br s, 1H), 1.39 (s, 6H), 1.33 (s, 6H).
【0090】
実施例A2:1−(2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−エタノン−1,8−N−オキシル(表1の化合物番号2)
過酸化水素(水性、30%、0.61g、9mmol)を、EDTA(0.01g、0.035mmol)及びNaWOx2HO(0.02g、0.06mmol)を含有する水(2.5ml)の中の1−(2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−エタノン(0.53g、2mmol)の溶液に徐々に加え、得られた淡黄色の懸濁液を室温(25℃)で一晩撹拌した。追加のNaWOx2HO(0.02g、0.06mmol)をアセトニトリル(1g)と一緒に入れ、橙色の溶液をさらに24時間撹拌した。反応混合物をCHCl(20ml)で抽出し、有機相を水酸化ナトリウム(水性、1モル)及びブラインで洗浄した。MgSOで乾燥させた後、溶媒をロータリーエバポレーターで留去し、赤い油状物を得て、それをヘキサンの添加により固化させた。ヘキサン/エチルアセタートによる分別結晶化により、標記化合物0.1gを融点111〜115℃の赤色固体として得た。MS: C15H27N3O3 (297.40)に関する実測値 M+ = 297.
【0091】
中間体:
A)4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−カルボニトリル
実施例A4に記載のとおり調製した(中間体A)。
【0092】
B)4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−カルボニトリル
実施例A4に記載のとおり調製した(中間体B)。
【0093】
C)N−(4−シアノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−アセトアミド
無水酢酸(99%、3.88g、37.6mmol)を、CHCl(40ml)中の4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−カルボニトリル(92.5%、7.37g、37.6mmol)の氷冷溶液に徐々に加えた。氷浴を除去し、反応混合物を一晩撹拌した。エタノール(35ml)を加えて、固化した反応塊を溶解し、溶媒をロータリーエバポレーターで留去した。残留固体を水(25ml)に溶解し、pH12(水性NaOH、4モル)に調整し、NaClで飽和させ、CHCl(50ml)で抽出した。有機相をNaSOで乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレーターで留去し、標記化合物7.9gを、融点153〜160℃のオフホワイト色の固体として得た。MS: C12H21N3O (223.32)に関する実測値 M+ = 223. 1H-NMR (300MHz, CDCl3), δ[ppm]: 5.90 (br s, 1H), 2.46 (d, J = 13.5Hz, 2H), 2.02 (s, 3H), 1.53 (d, J = 13.5Hz, 2H), 1.44 (s, 6H), 1.19 (s, 6H), 0.86 (br s, 1H).
【0094】
D)4−アミノメチル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イルアミン
N−(4−シアノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−アセトアミド(6g、27mmol)、メタノール(15ml)及びRaney−Ni(0.6g)の混合物を100℃/60bar水素圧で24時間水素化した。冷却し圧力を解除した後、オートクレーブから出して、触媒を濾別し、溶媒を蒸発させ、2,7,7,9,9−ペンタメチル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカ−2−エン(major; MS: C12H23N3 (209.34)に関する実測値 M+ = 209)とN−(4−アミノメチル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−アセトアミド(minor; MS: C12H25N3O (227.35) に関する実測値M+ = 227)との混合物からなる黄色の油状物を得た。NaOH(水性、30%、36.5g)を、メタノール(26g)中に溶解した粗油状物に徐々に加え、反応混合物を還流させ、一晩撹拌した。メタノールを留去し、残留水溶液をNaClで飽和し、ジエチルエーテルで抽出した。有機相をNaSOで乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレーターで留去し、橙色の油状物を得た。Kugelrohrオーブンを使って、分取短経路の減圧蒸留で標記化合物1.5gを、一部結晶化が進行している無色の液体として得た。MS: C10H23N3 (185.31)に関する実測値 M+ = 185. 13C-NMR (75MHz, CDCl3), δ[ppm]:57.92, 52.95, 50.19, 46.12, 35.86, 31.59.
【0095】
E)2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン
アセトン(0.33g、5.7mmol)を、CHCl(5.3g)中の4−アミノメチル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イルアミン(1.06g、5.7mmol)の懸濁液に加え、反応混合物を室温(25℃)で2.5時間撹拌したが、その間に、懸濁液は溶液に変化した。溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させ、標記化合物1.1gを、僅かに黄色を帯びた油状物として得た。MS: C13H27N3 (225.38)に関する実測値 M+ = 225.
【0096】
F)1−(2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−エタノン
無水酢酸(0.5g、5mmol)を、クロロホルム中の2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン(1.1g、5mmol)の氷冷溶液に徐々に加え、反応混合物を2時間撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで留去し、得られた固体残留物を水(8ml)にとった。溶液をpH12(水性NaOH、4モル)に調整し、NaClで飽和し、CHCl(3×15ml)で抽出した。有機相をNaSOで乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレーターで留去し、標記化合物1.2gを、僅かに黄色を帯びた油状物として得た。MS: C15H29N3O (267.42)に関する実測値 M+ = 267.
【0097】
実施例A3:酢酸3,7,7,9,9−ペンタメチル−1−オキサ−4,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル−メチルエステル−4,8−N−オキシル(表1の化合物番号3、比較例)
ジクロロメタン50ml中の酢酸3,7,7,9,9−ペンタメチル−1−オキサ−4,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル−メチルエステル(9.6g、0.033mol、Bに記載のとおり調製)の溶液に、固体NaHCO(17g、0.2mol)と水25mlとを一緒に加えた。過酢酸(21.8g、酢酸中40%、0.115mol)を次に20分間、撹拌混合物に滴下して加え、その後、室温で17時間撹拌し続けた。2M NaCO溶液を次に加え、有機層を分離し、水10mlずつで3回洗浄し、MgSOで乾燥させ、蒸発させた。残留物をシリカゲル(ヘキサン−EtOAc 2:1)のクロマトグラフィーにより精製し、ジクロロメタン−ヘキサンから結晶させ、標記化合物5.72gを、融点93〜95℃の赤色の結晶として得た。C15H26N2O5 (314.38)に関する計算値/実測値:C 57.31/57.39, H 8.34/8.53, N 8.91/8.88. MS: M+=314.
【0098】
中間体
A)(3,7,7,9,9−ペンタメチル−1−オキサ−4,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−メタノール
トリアセトンアミン(62.1g、0.4mol)及び2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(21.0g、0.2mol)をDean-Stark水分離器で11時間、キシレン100ml中に還流した。反応混合物を室温に冷却し、沈殿した固体を濾別し、トルエン50mlですすぎ、廃棄した。ロータリーエバポレーターで濾液を蒸発させ、残留物(67.7g)を、減圧下(0.01mbar、30〜40℃)で蒸留して、黄色の粘性液体37.4gを得た。−20℃でヘキサンから結晶化させ、標記化合物15.3gを、融点90〜92℃の無色の結晶として得た。MS: C13H26N2O2 (242.36)に関する実測値 M+ = 242.
【0099】
B)酢酸3,7,7,9,9−ペンタメチル−1−オキサ−4,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル−メチルエステル
ジクロロメタン30ml中の4−ジメチルアミノピリジン(0.37g)及び3,7,7,9,9−ペンタメチル−1−オキサ−4,8−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル)−メタノール(9g、0.037mol)の溶液に、ジクロロメタン5ml中の塩化アセチル(3.2g、0.041mol)の溶液を0℃で加えた。混合物を1時間室温で撹拌し、その後、水20ml中のNaOH 1.8gの溶液を加えた。有機層を分離し、水10mlで2回洗浄し、MgSOで乾燥させ、蒸発させて、標記化合物9.75gを、黄色の油状物として得た。
【0100】
実施例A4:2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン−1,8−N−オキシル(表1の化合物番号4)
750mlのフラスコに、2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン(23.95g、0.1mol、Dに記載のとおり調製)、ジクロロメタン250ml、水60ml及びNaHCO(50.4g、0.6mol)を仕込んだ。過酢酸(60.8g、酢酸中40%、0.32mol)を、次に、5℃で25分間、撹拌混合物に滴下して加え、その後、室温で3時間撹拌し続けた。追加の過酢酸(22.9g、0.12mol)を次に加え、室温で15時間撹拌を続けた。さらに過酢酸(5.73g、0.03mol)を加えて、24時間撹拌を続けた。有機層を次に分離し、2M−NaCO 50mlで洗浄し、MgSOで乾燥させ、蒸発させた。残留物をメタノールから結晶させて、標記化合物20.7gを、融点132〜134℃の赤色の結晶として得た。MS: C13H23N3O3 (269.35)に関する実測値 M+ = 269.
【0101】
中間体
A)4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−カルボニトリル
750mlの4つ口フラスコに、トリアセトンアミン(155.2g、1mol)及びアセトンシアンヒドリン(154.4g、1.81mol)を仕込んだ。懸濁液を75〜80℃で1時間撹拌し、反応で発生したアセトンを継続的に留去した。混合物を次に室温に冷却し、メチル−t−ブチルエーテル100mlを加えた。スラリーを5℃に冷却し、濾過し、冷メチル−t−ブチルエーテル150mlで洗浄し、乾燥させ、標記化合物149.7gを、白色の結晶として得た。
【0102】
B)4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−カルボニトリル
NHガス(230g、16.6重量%NH)のメタノール溶液に、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−カルボニトリル(148.8g、0.816mol)を加え、懸濁液を室温で17時間撹拌した。形成された無色の溶液を減圧下、最高25℃で蒸発させ、粗標記化合物163gを無色の油状物として得て、それを放置して徐々に結晶化させた。
【0103】
C)4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−カルボン酸アミド
1500mlのフラスコに、水(16.8ml)及びHSO(420ml、98%、7.73mol)を仕込んだ。酸を10℃に冷却し、温度を40℃未満に保ちつつ1時間激しく撹拌しながら、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−カルボニトリル(160g、〜0.8mol、粗)を徐々に加えた。混合物を、次に50℃で23時間撹拌し、35℃に冷却し、氷3.5kg上に注いだ。固体NaOH(640g、16mol)を加え、300ml THF+200ml EtOAc、250ml THF+100ml EtOAc、350ml THF、250ml THF+100ml EtOAc、300ml EtOAcで溶液を続けて抽出した。合わせた抽出物を飽和NaCl 100mlで洗浄し、KCOで乾燥させ、蒸発させた。残留物を、冷EtOAcで粉砕し、標記化合物87.1gを、融点142〜144℃の無色の結晶として得た。MS: C10H21N3O (199.3)に関する実測値 M+= 199.
【0104】
D)2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン
250mlのオートクレーブに、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−カルボン酸アミド(40g、0.2mol)、アセトン(46.4g、0.8mol)、アセトンジメチルケタール(25g、0.24mol)及びフルキャット(Fulcat)22B触媒(4g)を仕込んだ。混合物を次に150℃で17時間加熱し、次に冷却し、メタノール800mlに溶解し濾過した。濾液をEtOAc300mlで希釈し、次に188gになるまで蒸発させた。結晶スラリーを3℃に冷却し、濾過し、冷EtOAc50mlで洗浄し、乾燥させ、標記化合物43.6gを、融点247〜250℃の白色の結晶として得た。MS: C13H25N3O (239.36)に関する実測値 M+= 239.
【0105】
実施例A5:2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−3−(2−メチル−アクリロイル)−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン−1,8−N−オキシル(表1の化合物番号5)
ジクロロメタン12ml中の2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン−1,8−N−オキシル(0.94g、0.0035mol)、4−ジメチルアミノピリジン0.021g及びトリエチルアミン(0.56ml、0.004mol)に、塩化メタクリロイル(0.4g、0.0038mol)を2℃で滴下した。混合物を3時間室温で撹拌し、次に水5mlで3回洗浄し、有機層をMgSOで乾燥させ、蒸発させた。メタノールからの結晶化により、標記化合物0.95gを、融点108〜110℃の赤色の結晶として得た。
【0106】
実施例A6:3−アセチル−2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン−1,8−N−オキシル(表1の化合物番号6)
ジクロロメタン30ml中の2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン−1,8−N−オキシル(2.7g、0.01mol)、4−ジメチルアミノピリジン0.069g及びトリエチルアミン(1.5ml、0.0108mol)の溶液に、塩化アセチル(0.86g、0.011mol)を3℃で滴下した。混合物を室温で10時間撹拌し、次に水15mlで3回洗浄し、有機層をMgSOで乾燥させ、蒸発させた。シリカゲル(CHCl−EtOAc(8:1)のクロマトグラフィー及びメタノールからの結晶化により、標記化合物2.12gを、融点124〜127℃の赤色の結晶として得た。
【0107】
実施例A7:2,2,5,5−テトラメチル−3−(2−メチル−アクリロイル−イミダゾリジン−4−オン−1−N−オキシル(化合物番号7
塩化メタクリロイル(1.27g、12.1mmol)をジクロロメタン(12ml)中の2,2,5,5−テトラメチル−イミダゾリジン−4−オン−1−N−オキシル(1.73g、11mmol)、トリエチルアミン(1.7ml、12.1mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(67mg)の溶液に0〜5℃で徐々に加えた。混合物を次に室温で2時間攪拌し、水(3×10ml)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、次に溶媒を蒸発させた。残留物をメタノールから再結晶化し、標記化合物2.0gを、融点93〜96℃の赤色の結晶として得た。C11H17N2O3 [225.2] に関するMSの実測値 MH+ = 226.
【0108】
中間体
A)2,2,5,5−テトラメチル−イミダゾリジン−4−オン−1−N−オキシル、Todda et al.: Bull. Chem. Soc. Jap. 45, 1802 (1972)に記載のとおり調製。
【0109】
実施例A8:2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−3−プロパ−2−イニル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン−1,8−N−オキシル(化合物番号8)
水素化ナトリウム(0.46g、10.5mmol、鉱油中55%)を乾燥ジメチルホルムアミド(60ml)中の2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン−1,8−N−オキシル(化合物4、2.7g、10mmol)の溶液に加え、混合物を40℃で1時間撹拌した。次に3℃に冷却し、プロパルギルブロミド(1.35g、11mmol)を徐々に加えた。混合物を2時間室温で撹拌し、次に水(250ml)で希釈した。沈殿物を濾別し、乾燥させ、ジクロロメタン−ヘキサンから再結晶化させ、標記化合物2.8gを、融点139〜141℃の赤色の結晶として得た。C16H25N3O3 [307.4] に関するMSの実測値 MH+ = 308. ATR-IR: 3253 cm-1で-C≡C-H, 1705 cm-1で>C=O.
【0110】
実施例A9:1,2−ビス−(2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−4−オキソ−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカ−3−イル−1,8−N−オキシル)−エタン−1,2−ジオン(化合物番号9)
塩化オキサリル(0.51g、4mmol)を、ジクロロメタン(25ml)中の2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン−1,8−N−オキシル(化合物4、2.4g、9mmol)、トリエチルアミン(1.4ml、10mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(200mg)の溶液に5℃で徐々に加えた。混合物を室温で22時間撹拌し、次に水(3×20ml)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、次に溶媒を蒸発させた。残留物をメタノールから再結晶化し、標記化合物1.88gを、融点195〜197℃の赤色の結晶として得た。C28H44N6O8 [592.4]に関するMSの実測値 MH+ = 593.
【0111】
実施例A10:2,2,5,5−テトラメチル−3−プロパ−2−イニル−イミダゾリジン−4−オン−1−N−オキシル(化合物番号10)
水素化ナトリウム(0.7g、15.75mmol、鉱油中55%)を乾燥ジメチルホルムアミド(15ml)中の2,2,5,5−テトラメチル−イミダゾリジン−4−オン−1−N−オキシル(実施例7、中間体A、2.36g、15mmol)の溶液に加え、混合物を40℃で1.5時間撹拌した。次にこれを3℃に冷却し、プロパルギルブロミド(1.96g、16.5mmol)を徐々に加えた。混合物を室温で2時間撹拌し、次に水(150ml)で希釈した。沈殿物を濾別し、乾燥させ、ジクロロメタン−ヘキサンから再結晶化させ、標記化合物1.5gを、融点119〜121℃の赤色の結晶として得た。C10H15N2O2 [195.2] に関するMSの実測値MH+ = 196. ATR-IR:3233cm-1で-C≡C-H,1696cm-1で>C=O.
【0112】
実施例A11:ポリ(2,2,5,5−テトラメチル−3−プロパ−2−イニル−イミダゾリジン−4−オン−1−N−オキシル)(化合物番号11
A)非架橋性ポリマー
ジメチルホルムアミド(20ml)中の2,2,5,5−テトラメチル−3−プロパ−2−イニル−イミダゾリジン−4−オン−1−N−オキシル(化合物10、1.952g、10mmol)の溶液を、アルゴンで10分間パージした。触媒Rh(ノルボルナジエン)B(C(52mg. 0.1mmol、R. R. Schrock, J. A. Osborn, Inorg. Chem. 9, 2339, (1970))の記載のとおり調製)を次に加え、混合物をアルゴン下、室温で17時間撹拌した。それを次にメタノール(200ml)に注ぎ、2時間撹拌し、橙色の沈殿物を濾別し、メタノールで洗浄し、50℃/100mbarで72時間乾燥させ、標記ポリマー1.94gを、橙色の粉末として得た。
【0113】
B)架橋性ポリマー
ジメチルホルムアミド(25ml)中の2,2,5,5−テトラメチル−3−プロパ−2−イニル−イミダゾリジン−4−オン−1−N−オキシル(化合物10、2.93g、15mmol)及び架橋剤N,N’−プロパルギルオキサルアミド(74mg、0.45mmol、H. Reimlinger.: Justus Liebigs. Ann. Chem. 713, 113 (1968)に記載のとおり調製)の溶液をアルゴンで10分間パージした。触媒、Rh(ノルボルナジエン)B(C(77mg.0.15mmol、R. R. Schrock, J. A. Osbornによる, Inorg. Chem. 9, 2339, (1970)に記載のとおり調製)を次に加え、混合物をアルゴン下、室温で20時間撹拌した。赤色のゲルを次にジクロロメタン(100ml)中に移し、4時間撹拌した。沈殿物を濾別し、メタノール(100ml)中に再拡散し、4時間撹拌した。橙色の沈殿物を濾別し、メタノール中に再び再拡散し、12時間撹拌し、濾別し、メタノールで洗浄し、50℃/100mbarで72時間乾燥させ、標記ポリマー2.94gを、橙色の粉末として得た。
ATR−IR:非架橋性ポリマー:−C≡C−H吸収剤不在,1705cm−1で>C=O;架橋性ポリマー:−C≡C−H吸収剤不在,1700cm−1で>C=O。3233cm−1での−C≡C−H吸光帯の不在が、モノマー(化合物10)で観察されたが、これは重合の成功を示している。
TGA(窒素下10℃/minで25〜350℃):非架橋性ポリマー:事実上、190℃まで質量損失なし、分解は、200〜350℃;架橋性ポリマー:事実上、190℃まで質量損失はなし、分解は、200〜350℃。
【0114】
実施例A12:ポリ(2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−3−プロパ−2−イニル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン−1,8−N−オキシル)(化合物番号12)
A)非架橋性ポリマー
ジメチルホルムアミド(10ml)中の2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−3−プロパ−2−イニル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン−1,8−N−オキシル(化合物8、1.537g、5mmol)の溶液をアルゴンで10分間パージした。触媒Rh(ノルボルナジエン)B(C(52mg.0.1mmol、R. R. Schrock, J. A. Osbornによる, Inorg. Chem. 9, 2339, (1970)に記載のとおり調製)を次に加え、混合物をアルゴン下40℃で20時間撹拌した。混合物を次にメタノール(250ml)に注ぎ、2時間撹拌し、橙色の沈殿物を濾別し、メタノールで洗浄し、50℃/100mbarで12時間乾燥させ、標記ポリマー1.49gを橙色の粉末として得た。
【0115】
B)架橋性ポリマー
ジメチルホルムアミド(25ml)中の2,2,7,7,9,9−ヘキサメチル−3−プロパ−2−イニル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン−1,8−N−オキシル(化合物8、3.074g、10mmol)及び架橋剤N,N’−プロパルギルオキサルアミド(49.2mg、0.3mmol、R. R. Schrock, J. A. Osbornによる, Inorg. Chem. 9, 2339, (1970)に記載のとおり調製)の溶液をアルゴンで15分間パージした。触媒Rh(ノルボルナジエン)B(C(51mg.0.1mmol、R. R. Schrock, J. A. Osborn, Inorg. Chem. 9, 2339, (1970)に記載のとおり調製)を次に加え、混合物をアルゴン下、室温で23時間撹拌した。赤色ゲルを次に水(400ml)に移し、3時間撹拌した。沈殿物を濾別し、メタノール(300ml)中に再拡散し、90時間撹拌した。橙色の沈殿物を濾別し、メタノールで洗浄し、50℃/100mbarで72時間乾燥させ、標記ポリマー2.9gを、橙色の粉末として得た。
ATR−IR:非架橋性ポリマー:−C≡C−H吸収剤不在,1705cm−1で>C=O;架橋性ポリマー:−C≡C−H吸収剤不在,1705cm−1で>C=O。3253cm−1での−C≡C−H吸光帯の不在が、モノマー(化合物8)で観察されたが、これは重合の成功を示している。
TGA(窒素下10℃/minで25〜350℃):非架橋性ポリマー:事実上、210℃まで質量損失はなし、分解は、220〜350℃;架橋性ポリマー:事実上、210℃まで質量損失はなし、分解は、220〜350℃。
【0116】
実施例A13:3−(2−クロロ−エチル)−2,2,5,5−テトラメチル−イミダゾリジン−4−オン−1−N−オキシル(化合物番号13
水素化ナトリウム(55%;1.4g、32mmol)を、DMF(55ml)中の2,2,5,5−テトラメチル−イミダゾリジン−4−オン−1−N−オキシル(4.7g、30mmol)の懸濁液に徐々に加え、反応混合物を25℃で2時間撹拌した。反応混合物を氷冷し、1−ブロモ−2−クロロエタン(97%;6.65g、45mmol)を徐々に供給した。氷浴を除去し、反応混合物を一晩撹拌した。エタノール(10ml)を加え、反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、残留物をオイルポンプで乾燥させた。残留物をクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/エチルアセタート/1/1)で精製し、標記化合物2.0gを、融点58〜59℃の橙色の結晶として得た。C16ClN(219.69)に関する算出元素分析:C、49.21%;H、7.34%;Cl、16.14%;N、12.75%;実測値:C、49.88%;H、7.38%;Cl、15.8%;N、12.63%。
【0117】
実施例A14:2,2,5,5−テトラメチル−3−ビニル−イミダゾリジン−4−オン−1−N−オキシル(化合物番号14)
ナトリウムメトキシド(MeOH中5.4モル;0.92ml、5.0mmol)を、トルエン(10ml)中の3−(2−クロロ−エチル)−2,2,5,5−テトラメチル−イミダゾリジン−4−オン−1−N−オキシル(化合物番号13、1.0g、4.6mmol)の撹拌溶液に25℃で徐々に加え、反応の進行をGLCでモニターした。追加のナトリウムメトキシド(MeOH中5.4モル;0.92ml、5.0mmol)を24時間後に供給し、さらに2日間撹拌し続けた。混合物をシリカゲルのプラグを通して濾過し、溶媒を留去し、残留物をクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/エチルアセタート/4/1)で精製し、標記化合物0.4gを、融点76〜78℃の橙色の固体として得た。MS: C9H15N2O2 (183.2) に関する実測値 M+ = 183。
【0118】
B)適用例
略語:作用電極(working electrode)WE;対向電極(counter electrode)CE;参照電極(reference electrode)RE;標準カロメル電極(standard calomel electrode)SCE;標準水素電極(normal hydrogen electrode)NHE;アノードピーク電位Ep,a;mol/liter M.
【0119】
サイクリックボルタンメトリー(Cyclic voltammetry)(CV)− 一般条件:
CVは、三電極ガラス電池(WE、CE、RE)及びコンピューター制御ポテンシオスタットを用い、直線電位掃引(例えば、 B. Schoellhorn et al., New Journal of Chemistry, 2006, 30, 430-434; CAN144:441363を参照)を適用して実施した。使用化合物ごとのMultiple CV-scanを記録し、ピーク電位の平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0120】
【表2】

【0121】
【表3】

【0122】
上記のCV実験は、他の五環複素環とは対照的に、本発明のイミダゾリジノン化合物が、可逆性の酸化/還元サイクルを示すことを明確に示している。さらに、TEMPOに対するイミダゾリジノンニトロキシドの高い調整可能な酸化電位が実証された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極又は陰極の少なくとも一方における可逆性の酸化/還元サイクルにおける活物質の電極反応を利用した、改善された容量を有する電気エネルギー貯蔵装置であって、その活物質は、式(I):
【化58】


[式中、
Gは、
【化59】


であり;*は、原子価を示し;
Anは、有機又は無機酸のアニオンであり;
はLiであるが、但し、式(I)の構造要素は、1,3,5トリアジン環に結合していない]の構造要素を含む、電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
式(I)の構造要素が、式(a1)又は(a2):
【化60】


[式中、Gは、
【化61】


であり;
、R、R及びRは、独立して、C〜Cアルキル、−COOM、−COOR、−CONHR、−CON(R、−OR、F、Clで置換されたC〜Cアルキル、−O−、−NR−で中断されたC〜Cアルキル;又は
〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキリデン、C〜Cフェニルアルキル、−COO、−COOR、−CONHR、−CON(R、あるいは
とRもしくはRとR、又はRとRとRとRは、基:
【化62】


であり;
ここで、
は、Liであり
Anは、有機酸又は無機酸のアニオンであり;
は、C〜Cアルキル、−Nで置換されたC〜Cアルキル;又は、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、C〜Cフェニルアルキル又は基:
【化63】


であり;
は、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、C〜Cフェニルアルキル、−O、−OR、−OC(O)R、−C(O)R、−COOR、−CONHR、−CON(R;又はRは−O−、−NR−もしくは基:
【化64】


で中断されたC〜Cアルキル;又はF、Cl、−COO、−COOR、−CONHR、−CON(R、OR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NHR、−OC(O)N(R、−NHC(O)R、−NRC(O)R、−NCO、−N、NHC(O)NHR、−NRC(O)N(R、−NHCOOR、−N(R、−NRCOOR、−N(RAn、S(RAn、P(RAnで置換されたC〜Cアルキルであり;
yは、2〜4の数であり;
yが2であるとき
Eは、二価の基:
【化65】


(ここでnは0〜6の数、nは0〜4の数であり;Xは、−O−、−NH−又は−NR−であり;Xは、−OR、−NH、−NHR、又は−N(Rである);
yが3であるとき、
Eは、三価の基:
【化66】


であり;
yが4であるとき、
Eは、式
【化67】


(ここで*は、原子価を示す)の四価の基である]の構造要素である、請求項1記載の電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項3】
Gが、
【化68】


であり;
、R、R及びRが、独立してメチル、CF又はC〜Cシクロアルキリデンであるか;あるいはR及びRもしくはR及びR、又はRとRとRとRが、基:
【化69】


であり;
が、C〜Cアルキル又はC〜Cアルケニルであり;
が、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル又は−C(O)Rであるか;Clで置換されたC〜Cアルキルであり;
yが2であり;
Eが、二価の基:
【化70】


(ここで、nは、0〜4の数;*は、原子価を示す)である、請求項2記載の電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項4】
式(I)の構造要素が、ポリマーの繰返し単位であり、式(b1)、(b2)、(b3)、(b4)又は(b5):
【化71】


[式中、R、R、R及びRは、メチル又はC〜Cシクロアルキリデンであるか;あるいは、RとRもしくはRとR、又はRとRとRとRは、基:
【化72】


であり;繰返し指数mが、2〜50000である]の構成要素である請求項1記載の電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項5】
二次電池である、請求項1記載の電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項6】
電極反応が陽極における電極反応である、請求項1記載の電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項7】
活物質が、式(I)の構造要素を含有する化合物を10〜100重量%含む、請求項1記載の電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項8】
活物質が、少なくとも1021スピン/gのスピン濃度を有する、請求項1記載の電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項9】
請求項1記載の活物質を陽極又は陰極の少なくとも一方に組み込むことを含む、請求項1記載の電気エネルギー貯蔵装置の提供方法。
【請求項10】
請求項1記載の式(I)の構造要素を含有する化合物の、電気エネルギー貯蔵装置の陽極又は陰極の少なくとも一方における活物質としての使用。
【請求項11】
式(a1)又は(a2):
【化73】


[式中、Gは、
【化74】


であり;
、R、R及びRは、独立して、−COOH又は−COO(C〜Cアルキル);又はF、Cl、OH、−COOH、−COO(C〜Cアルキル)、−O−CO(C〜Cアルキル)で置換されることができるメチルであるか;あるいは、
とRもしくはRとR、又はRとRとRとRは、基:
【化75】


(ここで、Rは、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、C〜Cフェニルアルキル、−O、−OR6、−OC(O)R、−OC(O)Cl、−C(O)Cl、−C(O)R、−COOR、−CONHR、−CON(Rであるか;又は
は、−O−、−NR−もしくは基:
【化76】


により中断されるC〜Cアルキルであるか;又はF、Cl、−COO、−COOR6、−CONHR、−CON(R、−C(O)Cl、OR、−OC(O)R、−OC(O)OR6、−OC(O)Cl、−OC(O)NHR、−OC(O)N(R、−NHC(O)R、−NRC(O)R、−NCO、NHC(O)NHR、−NRC(O)N(R、−NHCOOR、−N(R、−NRCOOR、−N(RAn、S(RAn、P(RAnにより置換されるC〜Cアルキルであり;
は、−H、C〜Cアルキル、−Nで置換されるC〜Cアルキルであるか;又はC〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、C〜Cフェニルアルキル又は基:
【化77】


であり;
yは、2〜4の数であり;
yが2であるとき、
Eは、二価の基:
【化78】


(ここで、nは、0〜6の数、nは、0〜4;Xは、−O−、−NH−又は−NR−;Xは、−OR、−NH、−NHR、又は−N(Rである)であり;
yが3であるとき、
Eは、三価の基:
【化79】


であり;
yが4であるとき、
Eは、式:
【化80】


(ここで、*は、原子価を示す)の四価の基である]化合物であるが、
但し下記の化合物:
【化81】


を除く化合物。
【請求項12】
Gが、
【化82】


であり;
、R、R及びRが、F、Cl、OH、−COOH、−COOCH又は−O−COCHで置換されることができるメチルであるか;あるいは、
とRもしくはRとR、又はRとRとRとRは、基:
【化83】


(ここで、Rは、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、C〜Cフェニルアルキル、−OH、−OLi、OR、−C(O)R、−OC(O)R、−COOR、−CONHR、−CON(Rであるか;又は
は、−O−もしくは−NR−で中断されるC〜Cアルキル;又はF、Cl、−COO、−COOR、−CONHR、−CON(R、OH、OR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NHR、−OC(O)N(R、−NHC(O)R、−NRC(O)R、−NCO、−N、NHC(O)NHR、−NRC(O)N(R、−NHCOOR、−N(R、−NRCOOR、−N(RAn、S(RAn、P(RAnで置換されるC〜Cアルキルであり;
は、Liであり、
Anは、有機酸又は無機酸のアニオンであり;
は、−H、C〜Cアルキルもしくは−Nで置換されるC〜Cアルキルであるか;C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、グリシジル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cフェニルアルキル又は基:
【化84】


であり;
yは、2であり;
Eは、
【化85】


(ここでnは、0〜4の数である)の二価の基であるが、但し、下記の化合物:
【化86】


を除く、請求項1記載の式1の化合物。
【請求項13】
式(b1)、(b2)、(b3)、(b4)又は(b5):
【化87】


[式中、R、R、R及びRは、独立してメチル又はC〜Cシクロアルキリデンであるか;あるいは、RとRもしくはRとR、又はRとRとRとRは、基:
【化88】


であり;繰返し指数mは、2〜50000である]の繰り返し単位を有するポリマー。

【公表番号】特表2010−503183(P2010−503183A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527774(P2009−527774)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059156
【国際公開番号】WO2008/031733
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】