説明

エネルギ消費量予測方法、エネルギ消費量予測装置および端末装置

【課題】特定の走行パターン、車両特性に依存しない、リンク固有の量である地形特徴量を利用して車両のエネルギ消費量を予測することを目的とする。
【解決手段】車両がリンクを走行する際に消費される消費エネルギを予測するナビサーバ1が、プローブカー2から収集したエネルギ消費量を基に、前記リンクの地形が消費エネルギに与える影響である地形特徴量をリンク毎に算出し、前記地形特徴量を基に、処理対象として選択されたリンクの予測エネルギ消費量を算出する。ナビ端末3は、この予測エネルギ消費量を取得し、取得した予測エネルギ消費量をコストとして、経路探索を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ消費量予測方法、エネルギ消費量予測装置および端末装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題の拡大などにより、車両におけるエネルギの効率的利用が課題となっている。このため、例えばエネルギ消費量予測を行うナビゲーションシステム(以下、ナビシステムと記載)において、エネルギ消費量が少なくてすむ経路を探索する省エネルギ技術などが考案されている。このような省エネルギ技術では、車両のエネルギ消費量を予測する技術が必要とされている。なお、ここで述べるエネルギ消費量とは、電気エネルギ消費量と燃料消費量双方を含むものである。
【0003】
車両が走行する際のエネルギ消費量を予測する方法として、車両のエネルギ消費量を算出する物理モデルを用いた方法と、過去のエネルギ消費量の実績値に基づいた方法が提案されている。
【0004】
物理モデルを用いた方法では、道路の三次元形状、車両の走行速度や加減速の、走行パターンの予測結果、車両別のエネルギ消費特性を表す車両特性情報などを用いて、運動方程式から算出する方法が提案されている。
【0005】
また、過去のエネルギ消費の実績に基づいた方法としては、プローブカーにより、エネルギ消費量や、速度や車種といった情報を収集し、予測時には、過去の収集データの実績に基づいた予測を行う方法が提案されている。ここでプローブカーとは、車両に搭載されたセンサの情報や、ドライバの操作履歴を無線やLAN(Local Area Network)、あるいは無線LANによるインターネット接続、携帯電話などの通信手段によって、ナビサーバに送信するような車両のことである。
【0006】
プローブカーの収集データ(実績)に基づくエネルギ消費量予測の例として、特許文献1に示す技術が挙げられる。この技術では、はじめにプローブカーにより、道路区間ごとの燃料消費量、車種や型式を区別するための識別情報、車両の速度や加減速や装置の操作情報などを表す作動情報をナビサーバが収集する。そして、ナビサーバでは燃料消費量を識別情報や作動情報別に集計したデータベースを構築する。燃料消費量予測時には、対象車両の識別情報と作動情報に対応するデータをデータベースから検索した結果を燃料消費量予測として用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−20382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記したような物理モデルを用いた方法の場合、道路の三次元形状に関する情報が整備されていない、あるいは精度が低い場合は、エネルギ消費量予測を実施できない、もしくは予測の精度が低くなるという問題がある。
【0009】
また、プローブカーの実績に基づく方法の場合、過去にデータが収集されたことがない、あるいはサンプル数が少ない車種における作動情報から算出されるエネルギ消費量は、エネルギ消費量予測を実施できない、あるいは予測精度が低くなり、さらにすべての車種・作動情報での予測をするには、多数のプローブカーを利用するか、長期間データ収集を行う必要があるという問題がある。
【0010】
このような背景に鑑みて本発明がなされたのであり、本発明は、特定の走行パターン、車両特性に依存しない、リンク固有の量である地形特徴量を利用して車両のエネルギ消費量を予測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、プローブカーから収集したエネルギ消費量を基に、前記リンクの地形が消費エネルギに与える影響である地形特徴量をリンク毎に算出し、前記地形特徴量を基に、処理対象として選択されたリンクの予測エネルギ消費量を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定の走行パターン、車両特性に依存しない、リンク固有の量である地形特徴量を利用して車両のエネルギ消費量を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係るエネルギ消費量予測システムの構成例を示す図である。
【図2】第1実施形態に係るプローブ送信データのフォーマット例を示す図である。
【図3】第1実施形態に係るプローブデータDBのフォーマット例を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る車種特性DBのフォーマット例を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る地形特徴量生成処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態に係る走行パターン推定概念図である。
【図7】第1実施形態に係る走行パターン分析処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態に係る地形特徴量算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】第1実施形態に係る地形特徴量DBのフォーマット例を示す図である。
【図10】ナビ端末から送信される予測エネルギ消費量要求のフォーマット例を示す図である。
【図11】第1実施形態に係るエネルギ消費量予測処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】第1実施形態に係る予測エネルギ消費量配信データのフォーマット例を示す図である。
【図13】第1実施形態に係る経路探索処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】第1実施形態に係る経路表示例を示す図である(その1)。
【図15】第1実施形態に係る経路表示例を示す図である(その2)。
【図16】第2実施形態に係るエネルギ消費量予測システムの構成例を示す図である。
【図17】第2実施形態に係る地形特徴量配信要求のフォーマット例を示す図である。
【図18】第2実施形態に係る地形特徴量更新処理の手順を示すフローチャートである。
【図19】第2実施形態に係る地形特徴量配信データのフォーマット例を示す図である。
【図20】第2実施形態に係る経路探索処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
[第1実施形態]
まず、図1〜図15を参照して、本発明に係る第1実施形態について説明する。
【0016】
(システム構成)
図1は、第1実施形態に係るエネルギ消費量予測システムの構成例を示す図である。
エネルギ消費量予測システムAは、通信ネットワーク4で互いに通信可能なナビゲーションサーバ(以下、ナビサーバ1と記載)、ナビゲーション端末(以下、ナビ端末3と記載)およびプローブカー2を有してなる。通信ネットワーク4は、無線LANあるいはLAN,無線LANを経由したインターネット接続、あるいは携帯電話網などである。
【0017】
プローブカー2は、車種や、リンクデータなどをナビサーバ1に送信する機能を有する。プローブカー2は、通信部201、センサ部202、GPS(Global Positioning System)受信部203、マップマッチング部204、道路地図DB(Data Base)205、処理部206を有してなる。
センサ部202は、プローブカー2自身のエネルギ消費量を測定する機能を有する。エネルギ消費量の測定は、電気自動車であれば、電力量計によって電力の消費量を測定し、内燃機関搭載車であれば、燃料流量計や、インジェクタ開弁時間の計測値に単位時間あたりの噴射量を乗じた結果などから燃料消費量を測定する。
GPS受信部203は時刻と座標を収集するGPS機能を有する。
【0018】
道路地図DB205は、道路地図を格納している記憶装置である。道路地図は、道路を構成するリンクの集合からなり、各リンクには、リンク番号、リンク長、高速、一般道路といった道路種別、リンクの座標、他リンクとの接続関係などのリンク情報が属性情報として付されている。また、リンク情報には、そのリンクでの規制速度などが含まれていてもよい。なお、リンクとは例えば交差点から交差点の間などの、道路上の一定区間を表すものであり、道路地図の構成単位となるものである。本実施形態では、道路の上下線は、別々のリンクとして格納されているものとする。また、本実施形態では、道路地図DBに格納されているリンクに関する情報をリンク情報とし、プローブカー2から送られるリンクに関する情報をリンクデータとして区別することとする。
【0019】
マップマッチング部204は、GPS受信部203による時刻、座標の情報を基に、道路地図に含まれるリンクに、マップマッチングすることで、走行したリンクを特定する。プローブカー2の処理部206は、この結果とセンサ部202によるエネルギ消費量の情報により、各リンクの通過時刻、旅行時間、エネルギ消費量を算出する。
【0020】
プローブカー2によって得られた各リンクの通過時刻、旅行時間、エネルギ消費量などの情報は、プローブカー2を識別する機器IDおよび、自車の車種を識別する車種情報などと共に、プローブ送信データとして、通信部201を介し、通信ネットワーク4を経由して、ナビサーバ1に送信される。プローブ送信データの例は、図2を参照して後記する。
【0021】
ナビサーバ1は、通信部141と、プローブデータDB131と、道路地図DB132と、車種特性DB133と、地形特徴量DB134と、地形特徴量生成部100と、エネルギ消費量予測部120とを有してなる。
通信部141は、通信ネットワーク4を通じて、プローブカー2およびはナビ端末3と通信を行う機能を有する。
プローブデータDB131は、通信部141がプローブカー2から受信したしたプローブ送信データを、図3で後記するフォーマットで保存している記憶装置である。
道路地図DB132は、プローブカー2における道路地図DB205と同様である。
【0022】
車種特性DB133は、車種毎におけるエネルギ消費量特性を表すパラメータ類を、図4で後記するフォーマットで格納している記憶装置である。
地形特徴量生成部100は、プローブカー2から取得したエネルギ消費量や、リンクに関する情報を基に、地形特徴量を算出する地形特徴量算出部101を有している。算出された地形特徴量は、図9で後記するフォーマットで地形特徴量DB134に格納される。
【0023】
エネルギ消費量予測部120は、交通情報予測部121と予測エネルギ消費量算出部122を有してなる。
交通情報予測部121は、過去のリンク旅行時間を日種や時間帯別に分類して、集計することによって作成した統計交通情報から、対象とするリンクの推定通過時刻に対応する旅行時間を取得するなどして、予測リンク旅行時間を算出し、予測エネルギ消費量算出部122にわたす機能を有する。
予測エネルギ消費量算出部122は、交通情報予測部121からわたされた予測リンク旅行時間と、地形特徴量を基に、対象となるリンクにおけるエネルギ消費量を予測する機能を有する。予測されたエネルギ消費量と、予測対象のリンクに関する情報は、通信部141によって、通信ネットワーク4を経由して、ナビ端末3に送信される。
【0024】
ナビ端末3は、通信部301と、出力部302と、入力部303と、GPS受信部304と、経路探索部305と、経路案内部306と、道路地図DB307とを有してなる。
通信部301は、通信ネットワーク4を介してナビサーバ1との通信を行う機能を有する。
出力部302はLCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置であり、任意の図形や文字をカラー表示可能なものである。
入力部303は、ナビ端末3に設けられているボタン、あるいは出力部302のLCDと一体化されたタッチパネルであり、ユーザからの各種入力を受け付けるものである。
GPS受信部304は、GPS機能により、自車の現在の座標を取得する機能を有する。
道路地図DB307は、プローブカー2や、ナビサーバ1に格納されている道路地図DB205,132と同様なので説明を省略する。
【0025】
経路探索部305は、予測エネルギ量をリンクのコストとして、道路地図中のリンク間接続情報と合わせて、ダイクストラ法などの最小コスト経路探索アルゴリズムを用いることにより、出発地と目的地間のエネルギ消費量が最小となる経路(エネルギ消費量最小経路)を探索する機能を有する。探索されたエネルギ消費量最小経路は、経路案内部306にわたされる。
経路案内部306は、経路探索部305からわたされたエネルギ消費量最小経路の情報などを、道路地図DB307やGPS受信部304から取得した自車の現在位置とともに、出力部302に表示する。ナビ端末3の案内に従うことで、ドライバはエネルギ消費量が最小となる経路を走行可能となる。
【0026】
(プローブ送信データ)
図2は、第1実施形態に係るプローブ送信データのフォーマット例を示す図である。
プローブ送信データは、プローブカー2からナビサーバ1に送信されるデータである。
プローブ送信データは、プローブカー2の車種を示す車種情報、プローブカー2に搭載されている情報収集装置(図示せず)の機器ID(Identification)、プローブカー2が走行したリンクに関するリンクデータが組の情報となっている。
さらに、リンクデータは、対象となるリンクのリンク番号、リンクの通過日時、旅行時間([秒])、そのリンクで消費したエネルギ消費量([J])を含んでなる。なお、リンクの通過日時は、一般的にはリンクへの進入時刻だが、リンクの中間地点を通過した時刻や、リンクの出口への到達時刻でもよい。また、エネルギ消費量については、電気自動車と内燃機関搭載車を一括して取り扱えるように、電力消費量あるいは燃料消費量に相当するエネルギ量[J]に規格化するものとする。
【0027】
(プローブデータDB)
図3は、第1実施形態に係るプローブデータDBのフォーマット例を示す図である。
プローブデータDB131は、プローブカー2から送信されたプローブ送信データを逐次的に蓄えておくDBであり、リンク番号、送信してきたプローブカー2の車種情報、送信してきたプローブカー2に搭載されている収集装置(図示せず)の機器ID、リンクの通過日時、リンクの旅行時間([秒])、エネルギ消費量([J])を有してなる。図3に示す各情報は、図2に示す各情報と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0028】
(車種特性DB)
図4は、第1実施形態に係る車種特性DBのフォーマット例を示す図である。
車種特性DB133は、車種毎の特性に関する情報を格納している。
車種特性DB133は、車種情報と、車両タイプと、車重([kg])と、基礎消費係数([J/sec])と、エネルギ変換効率と、伝達効率と、回生効率と、空気抵抗係数([kg/m])とを有してなる。
車種情報は、図2および図3における車種情報に対応する情報である。
車両タイプは、内燃機関搭載車、電気自動車などの、動力源の種別を表す情報である。
車重は、車両のみの重量に、人員の標準的な重量をあらかじめ加えたものである。人員の標準的な重量は、平均乗車人数に、成人の平均体重を乗じることで算出できる。
基礎消費係数とエネルギ変換効率については、後記する地形特徴量の説明を行う際に説明する。伝達効率とは、トランスミッションなどの駆動系での損失を考慮したときに、内燃機関あるいはモータが発生させたエネルギと、実際に走行に利用できるエネルギの比率を表す量である。回生効率とは、電気自動車などにおいて、走行中に、減速や下り坂によって発生した余剰エネルギと、回生されるエネルギの比率を表し、内燃機関搭載車ではこれは0となる。空気抵抗係数は、車両走行中における車両と空気抵抗との抵抗の度合いを示すものである。
なお、基礎消費係数は、後記する式(5)における比例係数Fであり、エネルギ変換効率は後記する式(1)におけるeであり、伝達効率は後記する式(1)におけるηである。さらに、回生効率は、式(4)におけるεである。
【0029】
(地形特徴量の生成手順)
次に、図5から図8を参照して、第1実施形態に係る地形特徴量の生成手順を説明する。なお、第1実施形態では、まず、ナビサーバ1がプローブカー2から収集した情報を基に、定期的に地形特徴量を予め算出しておく(図5〜図8)。次に、ナビサーバ1が、あるリンクについてのエネルギ消費量予測の要求を、ナビ端末3から受けると、予め算出してあった地形特徴量を基に、該当するリンクのエネルギ消費量を予測し、予測結果をナビ端末3へ配信する(図11)。そして、エネルギ消費量の予測結果を受信したナビ端末3は、配信された予測結果を基に経路探索を行う(図13)。
【0030】
図5は、第1実施形態に係る地形特徴量生成処理の手順を示すフローチャートである(適宜図1参照)。
まず、地形特徴量算出部101は、処理対象リンクリストの生成処理を行う(S101)。地形特徴量算出部101は、処理対象リンクを道路地図内の全リンク、あるいは、一定数のプローブデータが集まったリンク、前回の地形特徴量生成処理から一定期間が経過したリンク、エネルギ消費量の予測精度が低いリンクなどの基準に基づいて選択したり、あるいはこれらの組み合わせで選択したりする。また、後記する地形特徴量DB134中に含まれる、データの信頼度の情報を用いて、信頼度が低いリンクを抽出して処理対象リンクとしてもよい。一般に道路リンクは多数存在するため、このような基準で地形特徴量算出を行う処理対象リンクを絞り込むことで、処理量を節減し、効率的な処理を行うことが可能となる。
【0031】
そして、地形特徴量算出部101は、作成した処理対象リンクリスト毎に、ステップS103〜S107の処理をループする(S102)。
さらに、地形特徴量算出部101は、プローブカー2毎にステップS104〜S107の処理をループする(S103)。
地形特徴量算出部101は、処理対象リンクに関するすべてのプローブデータを、プローブデータDB131から読み込む(S104)。ここで、プローブデータとは、図3のプローブデータDB131の1行を指すものとする。この処理では、地形特徴量算出部101が、図3に示すプローブデータDB131に含まれるリンク番号をキーとした抽出を行うが、処理対象リンクの全プローブデータを取得する以外に、所定の時点から、一定期間内のプローブデータのみを抽出することで、最新の道路状況を反映することも可能である。この場合の一定期間の決め方としては、前回処理以降のデータなどとすることが考えられる。
【0032】
次に、地形特徴量算出部101は、ステップS104で取得した各プローブデータに対応する車種特性データを車種特性DB133から読み込む車種特性読込処理を行う(S105)。この処理は、地形特徴量算出部101が、取得したプローブデータに含まれる車種情報をキーとして、車種特性DB133から該当する1行(車種特性データ)を読み込むことで実施される。
なお、プローブデータ中に、プローブカー2に搭載されたセンサ類あるいはドライバの入力から得られた、車重などの情報が含まれている場合は、ステップS105で読み込むデータを、プローブデータ中の車重情報としてもよい。
【0033】
そして、地形特徴量算出部101は、ステップS104で読み込んだ各プローブデータのリンクに対応する道路地図の情報(リンク情報)を道路地図DB132から読み込む道路地図読込処理を行う(S106)。この処理は、地形特徴量算出部101が、プローブデータに含まれるリンク番号をキーとして、道路地図DB132から、該当するリンクに関する情報を読み込むことで実施される。
【0034】
続いて、地形特徴量算出部101は、図6および図7を参照して後記する走行パターン分析処理を行う(S107)。
そして、すべてのプローブカー2毎にステップS104〜S107のループ処理が終了すると(S108)、地形特徴量算出部101は、図8を参照して後記する地形特徴量算出処理を行う(S109)。
さらに、すべての処理対象リンク毎のステップS103〜S109のループ処理が終了すると(S110)、地形特徴量算出部101は、地形特徴量生成処理を終了する。
【0035】
(走行パターン分析処理)
次に、図6および図7を参照して、図5のステップS107における走行パターン分析処理の説明を行う。
図6は、第1実施形態に係る走行パターン推定概念図であり、図7は、第1実施形態に係る走行パターン分析処理の手順を示すフローチャートである。
走行パターン分析処理では、地形特徴量算出部101が、プローブデータと道路地図の情報(リンク情報)から、リンク内における走行パターンの分析を行う。ここでいう走行パターンとは、車両のリンク内での速度と加減速のパターンである。なお、走行パターン分析処理は、ステップS104で読み込んだプローブデータに対して実施される処理である。
【0036】
まず、本実施形態に係る走行パターン分析処理の概要を説明する。
本実施形態は、プローブカー2から収集した、電力消費量([Wh])や燃料消費量([cc])を変換したエネルギ消費量([J])の情報から、走行パターンや、車種の影響を除去することで、地形の影響(地形特徴量)のみを取り出すことを目的としている。従って、地形特徴量算出部101が、走行パターンの分析を行い、エネルギ消費量への影響を算出することが必要である。しかし、プローブデータ(プローブDB)が図2に示すような形式の場合、そこには車両(プローブカー2)の、リンクの通過日時、旅行時間、エネルギ消費量の情報しかないため、平均走行速度以外の情報を、プローブデータから直接的に算出することができない。そこで、プローブデータと道路地図の情報(リンク情報)を利用することで、地形特徴量算出部101が、リンク内での車両の加減速の状況を推定し、走行パターンのエネルギ消費量への影響を算出することを可能にする。
【0037】
なお、プローブデータが図2に示すような形式ではなく、速度の時間変化のような詳細な情報を含む場合も考えられるが、その場合でも本実施形態のように、平均速度の情報のみを利用して、走行パターンを推定することで、プローブカー2、ナビサーバ1間の通信負荷や、分析に要する処理負荷を大幅に削減できるメリットがある。
【0038】
本実施形態において、各プローブカー2のリンク内での走行パターンを、平均速度VAVE、渋滞度J、最高速度VMAX[m/s]、加減速回数N[回]、加減速確率PACCにより指標化して表現する。
図6を参照して、本実施形態における走行パターン推定の概念を説明しつつ、図7に沿って、第1実施形態に係る走行パターン分析処理の手順を説明する。
実際の車両の走行では、速度は多様に変化するが、本実施形態では、最高速度VMAXでの一定速走行と、一定加速度G[m/s]での加減速走行として単純化して表現する。
【0039】
まず、地形特徴量算出部101は、プローブカー2の旅行時間Tと道路地図(リンク情報)から取得したリンク長Lから、平均速度VAVEをVAVE=L/Tとして算出する(S201)。
【0040】
次に、地形特徴量算出部101は、算出した平均速度VAVEから渋滞度Jを算出する(S202)。渋滞度は速度領域ごとに決定し、例えば一般道路では、VAVE≧30km/hのときJ=1、30km/h>VAVE≧10km/hのときJ=2、10km/h>VAVEのときJ=3と定める。同様に、高速道路では、渋滞度Jは、例えば、VAVE≧60km/hのときJ=1、60km/h>VAVE≧40km/hのときJ=2、40km/h>VAVEのときJ=3と定める。つまり、本実施形態において、渋滞度Jは、平均速度から定めるものとする。これは、渋滞していないときは、リンク内の平均速度は速く、渋滞しているときは、リンク内の平均速度は遅いと推測されるからである。
【0041】
そして、地形特徴量算出部101は、リンク内における車両の最高速度VMAXを、渋滞度Jとリンク情報に含まれる道路種別、規制速度より算出する(S203)。例えば、一般道路では、J(渋滞度)=1のときVMAXは、そのリンクの規制速度とし、J=2では、渋滞度J算出時に用いた速度領域の上限値である。VMAX=30km/h、J=3でも同様に、VMAX=10km/hと定める。同様に、高速道路では、J=1のときVMAXは規制速度とし、J=2ではVMAX=60km/h、J=3ではVMAX=40km/hと定める。
【0042】
続いて、地形特徴量算出部101は、加減速回数Nを、N=T/Tから算出する(S204)。この式において、Tはリンク旅行時間であり、Tは道路種別により決まる定数であるとする。ちなみに、一般道路では信号機などの影響を多く受けるので、高速道路に比べ、加減速が多く発生する。従って、一般道路でのTをTCA、高速道路でのTをTCBとし、TCA<TCBとしてもよい。つまり、本実施形態では、旅行時間Tが多いほど、加減速回数が多くなり、旅行時間Tが短いほど、加減速回数が少なくなるものと推定する。
【0043】
次に、地形特徴量算出部101は、ここまでに算出したVMAX,Nを用い、加減速加速度の大きさG,リンク長Lから加減速確率PACCを算出する(S205)。なお、Gはモデルのパラメータとして与えられるものであり、例えばプローブデータから平均の加減速加速度を算出するなどして、設定可能なものである。また、ここで言う加減速確率とは、リンク長と、加速あるいは減速に費やされた距離との割合を表すものである。図6に示す例(N=2、横軸=リンク始端からの距離、縦軸=速度)では、(加速確率)=(B+D)/L、(減速確率)=(A+C)/Lのように算出できる。図6に示すように、A,Cは加速に費やした距離、B,Dは減速に費やした距離である。一般に、加速確率と減速確率は異なると考えられるが、加減速加速度の大きさGが加速時と減速時に等しいと単純化した場合、LACC(加減速に費やした距離)=A=B=C=Dとなり、加速確率と減速確率は等しいとすることができるので、まとめて加減速確率PACCと表す。このとき、LACC=VMAX/2Gと算出できることから、ステップS204で算出したNと併せて、PACC=N×LACC/Lとすることで加減速確率を算出できる。
【0044】
以上のようにして、プローブデータからリンク内での走行パターンを指標化する、走行パターン分析処理の処理が完了する。本実施形態では、渋滞度、最大速度、加減速回数、加減速確率などを単純化しているが、このようにすることで、処理負荷を軽減することができる。もちろん、これらの値の実測値が存在する場合は、それらを使用してもよい。
【0045】
(地形特徴量算出処理)
次に、図5のステップS109に相当する地形特徴量算出処理について説明する。地形特徴量算出処理では、図7の走行パターン分析処理で算出された走行パターンの各指標と、車種特性DB133の情報を利用して、プローブデータ中のエネルギ消費量情報から走行パターンと車種の影響を除し、エネルギ消費量への地形の影響のみを取り出した特徴量である地形特徴量を算出する。
【0046】
地形特徴量算出処理の説明に入る前に、ここで車両のエネルギ消費モデルと、地形特徴量の定義について説明する。
車両のエネルギ消費の内訳は大きく、車両の走行に必要な力学的エネルギに転換される部分と、車両の走行に必要な力学的エネルギに転換されない部分に分けることができる。ここでは前者を走行消費、後者を基礎消費と呼ぶことにすると、下記式(1)のようになる。
【0047】
(車両のエネルギ消費)=((走行消費)/η+(基礎消費))/e ・・・ (1)
【0048】
式(1)におけるeは、電池に蓄えられた電力の消費や、燃料消費といった車両のエネルギ消費から、基礎消費・走行消費といった、実際に車両の運行に利用されたエネルギへの変換効率を示すものである。本実施形態では、これをエネルギ変換効率と呼び、車種特性DB133中に保存する。
【0049】
まず、走行消費について考えると、走行消費の要因内訳としては、地形の影響による消費、空気抵抗による消費、加減速による消費などが挙げられる。ただし、空気抵抗は、高速走行時以外は小さな値しか持たないことから、本実施形態においては、計算に含めないものとする。もちろん、空気抵抗を考慮して走行消費を算出してもよい。
【0050】
ここで、地形の影響による消費とは、リンク内の起伏による位置エネルギ変化による消費と、道路の材質などの影響による摩擦による消費、を含むものである。また、電気自動車などの場合には、リンク内の起伏による位置エネルギからの回生の影響も考えられる。さらに、摩擦は車種による差の影響が大きくないとして、摩擦影響は全車種で共通とすることが可能である。この場合、地形の影響による消費は、車重Wに比例することとなる。
【0051】
走行消費によって、電池に蓄えられた電力量の消費・燃料の消費といった車両のエネルギ消費が発生するのは、上記の各要因の和が正の場合のみであり、負の場合は力学的エネルギの変化に新たなエネルギ消費を必要としない。あるいは電気自動車の場合には、下り坂や減速などのために、上記の各要因の和が負となる場合には、エネルギの余剰が発生していることから、回生が働くことも考えられる。このように、各要因の和の正負によって、エネルギ消費が変化することから、地形の影響は、走行パターンの影響によっても変化する。
【0052】
そこで、本実施形態では、走行パターン分析処理(図7)において、リンク内での加減速確率PACCを算出していることを利用して、地形影響の内、起伏と摩擦による消費の部分Uを、加速時の影響MACC,一定速時の影響MCONST,減速時の影響MDECとを用いて下記式(2)で表す(Wは車重)。
【0053】
U=W×(MACC×PACC+MCONST×(1−2×PACC)+MDEC×PACC) ・・・ (2)
【0054】
さらに、地形影響の内、回生による部分Uaも同様に、加速時の影響KACC,一定速時の影響KCONST,減速時の影響KDECとすると、回生効率εを用いて下記式(3)で表す。
【0055】
Ua=εW×(KACC×PACC+KCONST×(1−2×PACC)+KDEC×PACC)・・・(3)
【0056】
これにより地形の影響全体は、U+Uaで表され、MACC,MCONST,MDEC,KACC,KCONST,KDECは、特定の走行パターン、車両特性に依存しない、リンク固有の量となる。本実施形態においては、これらの量(MACC,MCONST,MDEC,KACC,KCONST,KDEC)を地形特徴量とする。
【0057】
また、走行消費内におけるその他成分について、加減速による消費EACCは、走行パターン分析処理(図7)で得られたVMAXとN,および車両特性の車重Mと回生効率εから、式(4)で算出可能である。
【0058】
ACC=(1−ε)N×W×VMAX/2 ・・・ (4)
【0059】
次に、基礎消費について説明する。基礎消費の要因内訳としては、内燃機関を搭載した車両の場合、内燃機関の内部抵抗による消費が考えられ、また、内燃機関搭載車両・電気自動車共に、エアコンによる消費、ヘッドライトによる消費、ワイパーによる消費、そのほか電気・電子機器による消費などを挙げることができる。
【0060】
ここで、基礎消費の各成分と、地形や走行パターンの関係を考えると、内燃機関の内部抵抗による消費は、内燃機関の回転を維持するための消費であり、アイドリング時にも消費される。従って、走行時間に比例する量であり、速度や加減速との相関は小さいと考えることができる。また、エアコンやヘッドライト、ワイパあるいは電気・電子機器による消費は、作動のON/OFFは発生するものの、速度・加減速とは無関係であり、平均すればエネルギ消費は時間に比例すると考えることができる。
【0061】
以上のことから、基礎消費に関しては、時間に比例する要因であると考えることができ、処理対象リンク内での基礎消費量EBASE[J]は、比例係数をF[J/sec]、旅行時間をT[sec]とすると、下記式(5)で表すことで単純化することができる。
【0062】
BASE=F×T ・・・ (5)
【0063】
なお、比例係数Fは、事前に対象車両が走行していない状態での、時間あたりエネルギ消費量を測定することにより算出可能である。また、この比例係数Fを、本実施形態では基礎消費係数と呼び、車種特性DB133中に保存するものとする。
このように、本実施形態では、基礎消費量を単純化することで、プローブカー2、ナビサーバ1間の通信負荷や、処理負荷の軽減を図っているが、各値の実測値を取得することができるのであれば、実測値を用いてもよい。
【0064】
以上より、車両のエネルギ消費モデルとして、車両のエネルギ消費量をQ[J]としたとき、下記式(6)に示すエネルギ消費モデルを得ることができる。
【0065】
Q=((U+Ua+EACC)/η+EBASE)/e ・・・ (6)
【0066】
この式(6)は、エネルギ消費量を、地形特徴量、走行パターン、車両特性で表現した関数なので、関数をfとして表現すると、下記式(7)のように表現することも可能である。
【0067】
(エネルギ消費量)=f((地形特徴量)、(走行パターン)、(車両特性)) ・・・ (7)
【0068】
プローブデータからエネルギ消費量や、リンク旅行時間を得ることができ、図7の処理から走行パターン(具体的には、加減速確率PACC)を得ることができ、車種特性DB133から車種特性の情報を、プローブカー2毎に複数組得ることができるので、これらの値を式(2)〜式(6)に代入し、代入した式(6)を、連立方程式などの手法を用いて地形特徴量(MACC,MCONST,MDEC,KACC,KCONST,KDEC)に関して解くか、あるいは最小二乗法や、重回帰分析などの近似的な解法によって、地形特徴量の各値について解くことにより、地形特徴量の各値を算出することができる。
【0069】
以上に示した、車両エネルギ消費モデルと地形特徴量の定義を前提とし、図8を参照して地形特徴量算出処理(図5のステップS109に相当)の処理手順について説明する。
図8は、第1実施形態に係る地形特徴量算出処理の手順を示すフローチャートである。
まず、地形特徴量算出部101は、図5のステップS104で読み込んだすべての個別プローブデータ毎にステップS302の処理をループさせる(S301)。
【0070】
地形特徴量算出部101は、車両の内部抵抗および搭載機器によるエネルギ消費量である基礎消費量EBASE、および車両の力学的エネルギの変化に寄与するエネルギ消費量である走行消費量EACCの算出処理を行う(S302)。基礎消費量EBASEは、式(5)で示すように、リンク旅行時間がわかれば、算出できる。また、走行消費量EACCは、プローブカー2から送られたエネルギ消費量から基礎消費量EBASEを減算することで算出できる。
すべての個別プローブデータに対するステップS302の処理が終了すると(S303)、地形特徴量算出部101は、使用したプローブデータ数(データ数)が、予め設定してあるZ個以上であるか否かを判定する(S304)。
地形特徴量を求める際には、基礎消費量EBASE、走行消費量EACCの算出結果と、走行パターン分析処理の結果、車種特性の取得結果を用いて、すべてのプローブデータに対して、式(6)を成立させ、これらの式(6)を地形特徴量の各値に関して連立させたり、最小二乗法などを用いたりすることにより解(地形特徴量)を得る。本実施形態では、地形特徴量が6個あるため、連立方程式を利用して、地形特徴量を算出する場合、最低限6個のプローブデータがあれば(つまり、式(6)が6つあれば)、連立方程式を解くことが可能である。しかし、実際のプローブデータには、様々な要因による誤差が含まれることが考えられることから、少数のデータのみから算出を実施することは、結果の信頼性の点で好ましくない。そこで、ステップS304において、予め定められた個数Z個以上のプローブデータが存在しているかを確認し、データ数がZ個未満の場合(S304→No)、つまりデータ数が過小な場合、地形特徴量算出部101は、地形特徴量算出を行わずに図8の処理を終了し、図5の処理へリターンする。
【0071】
ステップS304において基準となる閾値Zの決定のためには、例えば十分なデータ数が集まっているリンクにおいて、ランダムにX個のデータを抽出して地形特徴量生成を行う作業を複数回実施し、生成された地形特徴量のばらつきが、十分小さくなる個数Xを、閾値Zとして、予め定めるといった方法が考えられる。
【0072】
また、プローブデータに含まれる誤差のために、連立方程式が完全には成立しないことが考えられる。この場合は、例えば最小二乗法や、重回帰分析などの手法を用いることで、最も確からしい値として地形特徴量を決定すればよい。
【0073】
ステップS304において、データ数がZ個以上である場合(S304→Yes)、地形特徴量算出部101は、電気自動車に関するプローブデータ数(データ数)が、予め設定されたZ個以上であるか否かを判定する(S305)。ここで、ステップS305における閾値Zを、ステップS304における閾値Zと同数としたが異なる数としてもよい。
【0074】
ステップS305の結果、電気自動車に関するデータ数がZ個未満である場合(S305→No)、地形特徴量のうち、内燃機関搭載車両に関する地形特徴量MACC、MCONST、MDECのみの算出処理を行う(S306)。
また、ステップS305の結果、電気自動車に関するデータ数がZ個以上である場合(S305→Yes)、全地形特徴量((MACC,MCONST,MDEC,KACC,KCONST,KDEC)の算出処理を行う(S307)。
つまり、例えば内燃機関搭載車のプローブデータしか存在していないか、電気自動車など、回生が発生する車種に関するプローブデータが十分に取得されていない場合、地形特徴量算出部101は、式(3)に関する電気自動車の地形特徴量KACC,KCONST,KDECを算出することができない。しかし、このような場合でも、式(2)に関する内燃機関搭載車の地形特徴量MACC,MCONST,MDECのみを算出することも考えられる。MACC、MCONST、MDECのみであっても、内燃機関搭載車に対するエネルギ消費量予測算出を行うことは可能であり、十分な利用価値を持つといえる。そこで、ステップS305では、地形特徴量算出部101が、取得したプローブデータの車両タイプを基に、各プローブデータの車種を確認し、電気自動車などのデータ個数が、Z個(所定の値)より小さい場合には、ステップS306においてMACC、MCONST、MDECのみ算出処理を行い、Z個より大きい場合には、ステップS307において全地形特徴量の算出処理を行う。
【0075】
ステップS306におけるMACC、MCONST、MDECのみの算出処理、およびステップS307における全地形特徴量算出処理では、前記したように、連立方程式によって地形特徴量を算出してもよいし、最小二乗法などの解法により、最も確からしい地形特徴量を算出してもよい。
【0076】
ステップS306またはステップS307の処理後、地形特徴量算出部101は、算出した地形特徴量の各値を地形特徴量DB134に保存する保存処理を行った(S308)後、図5の処理へリターンする。
【0077】
(地形特徴量DB)
図9は、第1実施形態に係る地形特徴量DBのフォーマット例を示す図である。
地形特徴量DB134には、MACC、MCONST、MDEC、KACC、KCONST、KDECの各地形特徴量がリンク番号、該当する地形特徴量の算出日時である作成日時に対応付けられて格納されている。また、図9に示すように、地形特徴量に信頼度を付与することも可能である。信頼度は例えば、作成に使用したプローブデータのデータ数とすることが考えられる。
【0078】
図5、図7、図8の処理により、プローブカー2の走行実績から、道路リンクまたは道路上区間で地形がエネルギ消費量へ及ぼした影響を表す量である地形特徴量を算出する地形特徴量算出処理が完了する。
【0079】
(エネルギ消費量予測処理)
次に、算出した地形特徴量を利用した、ナビサーバ1でのエネルギ消費量予測方法について説明する。
【0080】
図10は、ナビ端末から送信される予測エネルギ消費量要求のフォーマット例を示す図であり、図11は第1実施形態に係るエネルギ消費量予測処理の手順を示すフローチャートである。
【0081】
エネルギ消費量予測部120は、通信部141が、サービス対象車両のナビ端末3からの予測エネルギ消費量要求を受けた場合に作動し、予測の要求があったリンク、あるいは予測の要請があった地域内のリンクを処理対象リンクとして、以下に示すエネルギ消費量予測を実施する。この際、ナビ端末3は、図10に示すようなフォーマット例の予測エネルギ消費量要求をナビサーバ1に送信することで、エネルギ消費量予測の要求を行う。
図10に示すように、予測エネルギ消費量要求は、ナビ端末3を搭載している車両の車種情報や、ナビ端末3の機器IDや、要求を行った時間である要求実施時間などとともに、エネルギ消費量の予測を行ってほしいリンクのリストである要求リンク番号リストが組となっている。
【0082】
そして、図11に示すように、ナビサーバ1の通信部141が、ナビ端末3から送信された予測エネルギ消費量要求を受信すると(S401)、予測エネルギ消費量算出部122は、受信した予測エネルギ消費量要求の要求リンク番号リストに記述されているリンク番号を処理対象リンクとし、この処理対象リンク毎にステップS403〜S407の処理をループさせる(S402)。
【0083】
エネルギ消費量予測部120の交通情報予測部121は、過去のリンク旅行時間を日種や時間帯別に分類して、集計することによって作成した統計交通情報から、対象とするリンクの推定通過時刻に対応する旅行時間を取得するなどして、予測リンク旅行時間TPREDを算出し、算出した予測リンク旅行時間TPREDを予測エネルギ消費量算出部122にわたす。なお、ここでリンクの推定通過時刻は、交通情報予測部121が、例えば現在位置からリンクまでの直線距離を、あらかじめ統計交通情報により算出しておいて、その地域での平均の車両速度で割って得た時間を、現在時刻に加算するなどして得る方法が考えられる。
【0084】
そして、予測エネルギ消費量算出部122は、交通情報予測部121から処理対象リンクの予測リンク旅行時間を取得する予測リンク旅行時間取得処理を行う(S403)。
【0085】
次に、予測エネルギ消費量算出部122は、エネルギ消費量予測要求に含まれる車種情報をキーとして、車種特性DB133から該当する車種特性データを読み込む車種特性読込処理を行う(S404)。ここで、予測エネルギ消費量要求に、ナビ端末3搭載車でのセンサ情報あるいはユーザ入力などにより入力された車重などの情報が含まれているような場合は、車種特性データの代わりに、予測エネルギ消費量要求に含まれている車種特性を使用してもよい。
【0086】
そして、予測エネルギ消費量算出部122は、処理対象リンクのリンク番号をキーとして、地形特徴量DB134から該当する各地形特徴量を読み込む地形特徴量読込処理を行う(S405)。
【0087】
そして、予測エネルギ消費量算出部122は、ステップS403で交通情報予測部121からわたされた予測リンク旅行時間を用いて、処理対象リンク内での速度、加減速といった走行パターンを予測する走行パターン予測処理を行う(S406)。ステップS406の処理は、図7で前記した走行パターン分析処理において、プローブカー2から得たリンク旅行時間Tを予測リンク旅行時間TPREDにした以外は、図7の処理と同様であるため詳細な説明を省略する。従って、ステップS406の結果は、図7と同様に、平均速度VAVE、渋滞度J、最高速度VMAX[m/s]、加減速回数N[回]、加減速確率PACCとなる。
【0088】
次に、予測エネルギ消費量算出部122は、ステップS403およびステップS404で取得した予測リンク旅行時間や、車種特性データや、ステップS405で取得した地形特徴量や、ステップS406で算出した各値を、式(2)〜(6)の各値に代入することにより、予測エネルギ消費量を算出する予測エネルギ消費量算出処理を行う(S407)。ただし、この際にリンク旅行時間Tの代わりに、予測リンク旅行時間TPREDを用いることとする。
【0089】
そして、処理対象リンク毎におけるステップS403〜S407のループが終了すると(S408)、予測エネルギ消費量算出部122は、図12に示すような予測エネルギ消費量配信データを生成し、この予測エネルギ消費量配信データをステップS401で予測エネルギ消費量要求してきたナビ端末3へ配信する配信処理を行って(S408)、エネルギ消費量予測処理を終了する。
【0090】
(予測エネルギ消費量配信データ)
図12は、第1実施形態に係る予測エネルギ消費量配信データのフォーマット例を示す図である。
図12に示すように、要求元のナビ端末3のIDである宛先機器IDとともに、リンク番号と、予測エネルギ消費量([J])と、ステップS403の段階で算出された予測リンク旅行時間である予測旅行時間とが組の情報となっている予測結果リストを有する。このように、予測エネルギ消費量とともに、予測リンク旅行時間もナビ端末3へ配信することが望ましい。
【0091】
(経路探索処理)
図13は、第1実施形態に係る経路探索処理の手順を示すフローチャートである。
ナビ端末3の経路探索部305は、入力部303を介して出発地・目的地の入力と、経路探索の開始指示を受け付ける出発地・目的地・探索開始指示受付処理を行う(S501)。出発地は、ユーザより入力された出発地でなくても、GPS受信部304を介して取得した自車位置としてもよい。
【0092】
次に、経路探索部305は、エネルギ消費量予測対象リンクリストの生成を行う(S502)。エネルギ消費量予測対象リンクとして、経路探索部305は、出発地・目的地間の経路に含まれる可能性が高いリンクを抽出し、このリンクをエネルギ消費量予測対象リンクとする。これは、例えば、出発地・目的地間を結ぶ直線から、一定距離以内にあるすべてのリンクを道路地図から抽出するといった方法が考えられる。
【0093】
そして、経路探索部305は、ステップS502で生成したエネルギ消費量予測対象リンクリストを含む予測エネルギ消費量要求(図10)を生成し、この予測エネルギ消費量要求を通信部301を介して、ナビサーバ1へ送信する(S503)。なお、予測エネルギ消費量要求に含まれる車種情報は、ユーザまたはナビメーカ、カーメーカなどによって、予め設定されているものとする。
【0094】
そして、通信部301が、予測エネルギ消費量要求に対する応答として予測エネルギ消費量配信データ(図12)を受信すると(S504)、経路探索部305は、配信された予測エネルギ消費量をリンクのコストとして、道路地図DB307中のリンク間接続情報と合わせ、ダイクストラ法などの最小コスト経路探索アルゴリズムを用いて、出発地と目的地間のエネルギ消費量が最小となる経路を探索する経路探索処理を行う(S505)。探索されたエネルギ消費量最小経路は、経路案内部306にわたされる。
【0095】
経路案内部306は、経路探索部305からわたされた経路の情報を、道路地図DB307やGPS受信部304から取得した自車の現在位置とともに、出力部302に表示する。これによりドライバは、ナビ端末3の案内に従うことで、エネルギ消費量が最小となる経路を走行可能となる。
【0096】
(経路表示例)
図14および図15は、第1実施形態に係る経路表示例を示す図である。
図14の例では、経路案内部306が、エネルギ消費量を燃料消費量に換算して、エネルギ消費量最小経路と、最短旅行時間経路との両方を出力部302に比較表示させている。図において、符号1401は、自車位置と走行方向を示すマークである。符号1402は、目的地を示している。そして、経路1411はエネルギ消費量最小経路を示しており、経路1412は最短旅行時間経路を示している。また符号1421は、両経路1411,1412の、旅行時間と燃料消費量と走行距離の予測値を示している、図14はエネルギ消費量最小経路と最短旅行時間経路の比較であるが、最短距離経路と、エネルギ消費量最小経路と最短旅行時間経路のいずれか、あるいは3経路を同時に表示して比較可能としてもよい
【0097】
これらの情報が表示されることで、エネルギ消費量削減、旅行時間削減、走行距離削減といった、個々のドライバの希望に添った経路を選択し、走行することが可能となる。また、この画面において、経路1411,1412のいずれかの経路、あるいは符号1421に表示されているいずれかのルートの結果を、ユーザがタッチパネルなどにより選択することで、どちらかのルートのみを表示するよう表示を変更したり、選択された経路に対して、画面表示や音声による、右左折地点の提示といった、経路案内を開始したりしてもよい。
【0098】
また、経路案内部306は、ナビサーバ1より受信した予測エネルギ消費量を、経路上のみでなく、出力部302に表示されている経路以外の道路に対しても、エネルギ消費量の大小によって色分けするなどして表示してもよい。色分けの方法としては、例えば、車輌の平均的なエネルギ消費量(平均エネルギ消費量)よりもエネルギ消費量が小さい(平均比0%以下)リンクを緑に、エネルギ消費量が平均エネルギ消費量より0%から30%(平均比0〜30%)多いリンクを黄色に、それ以上、エネルギ消費量が大きい(平均比+30%以上)リンクを赤にするなどの方法が考えられる。ここで、エネルギ消費量は、予測エネルギ消費量と、プローブデータに含まれるエネルギ消費量の双方を含むものである。また、平均比とは、例えば、エネルギ消費量(a)と平均エネルギ消費量(b)との差(a−b)を算出し、この差と平均エネルギ消費量(b)に対する比率を算出したものである。つまり、(a−b)/bである。
【0099】
図15に、エネルギ表示例を示す。この例では、画面内の経路をエネルギ消費量が大きい(平均比+30%以上)・普通(平均比0〜30%)・小さい(平均比0%以下)の三段階に分けて表示しており、符号1511にその凡例が示されている。なお、符号1512は自車位置を示すマークである。
【0100】
表示方法としては他に、予測エネルギ消費量が大きいリンクのみを表示することで、ドライバがそのようなリンクを迂回することを容易にする、あるいは予測エネルギ消費量が小さいリンクのみを表示することで、ドライバがそのようなリンクを積極的に選択して走行することを容易にすることも考えられる。
【0101】
以上により、プローブカー2の走行実績に基づいて予測されたエネルギ消費量を、サービス対象車両のナビ端末3で利用可能にすることを特徴とする、エネルギ消費量予測方法およびナビシステムが実現する。
【0102】
(第1実施形態のまとめ)
第1実施形態によれば、予測エネルギ消費量の算出をナビサーバ1側で行うため、ナビ端末3側ではエネルギ消費予測処理を行う必要がない。このため、地形特徴量DB134や車種特性DB133をナビ端末3内に保持する必要がないため、ナビ端末3内のHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの、記憶領域を節約することができる。また、一般にナビサーバ1の処理能力は、ナビ端末3よりも高いと考えられるので、処理時間の短縮やナビ端末3のCPUのコスト削減などを実現できるメリットがある。
【0103】
また、この際に、ナビサーバ1から配信される予測エネルギ配信データに予測旅行時間も含まれていることから、経路探索部305において、予測旅行時間をリンクコストとすることで、最短旅行時間のルートを探索することも可能である。また、最短旅行時間経路だけでなく、道路地図DB307中のリンク長の情報を利用することで、最短距離経路を探索することも可能である。これらを実行した場合、ドライバは画面表示などによって、エネルギ消費量最小経路と、旅行時間最小経路を比較し、選択することが可能となる。
【0104】
さらに、探索された経路上のエネルギ消費量、あるいは旅行時間を足し込むことで、経路での予測エネルギ消費量、あるいは予測旅行時間を表示することが可能である。この結果を画面表示などでドライバに提示することで、ドライバの経路選択を容易にする効果がある。また、この際に、エネルギ消費量そのままではなく、電力消費量あるいは燃料消費量に変換して表示することも可能である。これは、電池に蓄えられた電力からエネルギへの変換係数、あるいは燃料からエネルギへの変換係数をあらかじめナビ端末3で設定しておくことで実現できる。変換係数は、事前にエネルギ消費量が測定可能な車台やテストコースでの走行での結果と、そのときの電力・燃料消費量を比較することで、取得可能である。
【0105】
プローブカー2の走行実績をエネルギ消費量の予測に反映する本実施形態以外の方法として、走行実績のプローブデータを、車種や走行パターンといった条件別に分類し、分類ごとに統計を作成することが考えられる。しかし、この手法では、一つの分類の作成に利用できるプローブデータは、元のデータ個数と比べて、少数になってしまうことが避けられない。
【0106】
これに対して本実施形態は、プローブカー2のプローブデータを、走行パターンや車種によらない地形特徴量に変換する処理であるため、プローブカー2の走行パターンや車種に関係なく、すべてのプローブデータを地形特徴量生成に利用することが可能である。従って、上記の分類ごとに統計を作成する場合に比べて、作成されるデータの信頼性が高くなり、また、少数のプローブカー2からでも(最低、3つのプローブデータがあればいい)、短いデータ収集期間で走行実績を反映した予測を実現できる。
【0107】
また、分類ごとに統計を作成する場合は、一度もデータが取得できていない分類に対しては予測を行うことが不可能であるが、本実施形態によれば、地形特徴量は車種や走行パターンによらないので、プローブデータを取得できていない分類に当たる領域であっても、その分類に対応する車両特性や走行パターン予測を用いることで、エネルギ消費量予測が可能である。
【0108】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図16〜図20を参照して説明する。第1実施形態が、ナビサーバ1で予測エネルギ消費量を算出しているのに対し、第2実施形態ではナビサーバ1aが算出した地形特徴量をナビ端末3aが取得し、取得した地形特徴量を使用してナビ端末3aが予測エネルギ消費量を算出している。
【0109】
(システム構成)
図16は、第2実施形態に係るエネルギ消費量予測システムの構成例を示す図である。
エネルギ消費量予測システムBは、プローブカー2、ナビサーバ1a、ナビ端末3aを有してなる。また、エネルギ消費量予測システムBは、通信ネットワーク4を介してナビサーバ1aと接続しているユーザPC(Personal Computer)5を有してもよい。
プローブカー2は、図1に示す第1実施形態におけるプローブカー2と同様のものであるため、詳細な図示や説明を省略する。。
【0110】
ナビサーバ1aは、通信部141と、プローブデータDB131と、道路地図DB132と、車種特性DB133と、地形特徴量DB134と、地形特徴量生成部100と地形特徴量配信部151を有してなる。
ナビサーバ1aにおいて、通信部141と、プローブデータDB131と、道路地図DB132と、車種特性DB133と、地形特徴量生成部100、地形特徴量DB134は、それぞれ図1に示す各部と同様のものであるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0111】
地形特徴量配信部151は通信部141を通じて、後記するナビ端末3aの地形特徴量更新部310から地形特徴量配信要求を受信したとき、要求のあったリンクの地形特徴量を、通信部141を通じて要求元のナビ端末3aへ向けて配信する機能を有する。あるいは、地形特徴量配信部151はナビ端末3aから地形特徴量配信要求を受けた際に、ナビサーバ1aの通信部141が、ユーザPC5へ向けて地形特徴量を配信し、配信された地形特徴量をCD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、フラッシュメモリなどの媒体を通じて、ナビ端末3aに読み込ませることによって、ナビ端末3a内の地形特徴量DB309を更新する。
【0112】
ナビ端末3aは、通信部301と、出力部302と、入力部303と、GPS受信部304と、道路地図DB307と、外部メディア読取部308と、地形特徴量DB309と、地形特徴量更新部310と、車種特性DB311と、エネルギ消費量予測部320と、経路探索部305と、経路案内部306とを有してなる。
【0113】
これら各部301〜311のうち、通信部301,出力部302、入力部303、GPS受信部304、道路地図DB307、経路探索部305、経路案内部306は、図1に示したものと同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0114】
また、地形特徴量DB309と、車種特性DB311は、第1実施形態における、ナビサーバ1に備えられている地形特徴量DB134と、車種特性DB133に同様のものである。
【0115】
外部メディア読取部308は、CD−ROM、フラッシュメモリなどの媒体を読み取ることが可能なものである。
地形特徴量更新部310は、ユーザからの更新指示があった場合や、定期的に地形特徴量DB309のデータを更新する際に、地形特徴量DB309のデータを更新するための更新要求を、通信部301を介して、ナビサーバ1aに送信する機能を有する。また、地形特徴量更新部310は、ナビサーバ1aから受け取った地形特徴量を地形特徴量DB309に保存して、地形特徴量DB309を更新する機能も有する。
【0116】
エネルギ消費量予測部320(交通情報予測部321、予測エネルギ消費量算出部322)は、図1においてナビサーバ1に備えられていた各部120〜122の機能がナビ端末3に備えられたものである。
つまり、交通情報予測部321は、ナビ内にあらかじめ格納された、統計交通情報を情報源として、各リンクの予測旅行時間TPREDを生成する機能を有する。
予測エネルギ消費量算出部322は、地形特徴量DB309からの地形特徴量、交通情報予測部321からの予測旅行時間、車種特性DB311からの車種特性データを利用して、後記する経路探索部305からの要請に基づいて、図12に示した第1実施形態のナビサーバ1における予測エネルギ消費量算出部322と同様の計算により、各道路リンクでの予測エネルギ消費量を算出する機能を有する。
【0117】
(地形特徴量更新処理)
図17は、第2実施形態に係る地形特徴量配信要求のフォーマット例を示す図であり、図18は、第2実施形態に係る地形特徴量更新処理の手順を示すフローチャートである。
図18の処理は、ナビ端末3aにおける処理である。なお、図19の処理は、ナビサーバ1aにおける地形特徴量の算出(図5、図7、図8)が終了していることが前提となっている。
まず、ナビ端末3aの地形特徴量更新部310は、更新対象リンクリスト作成処理を行う(S601)。更新対象リンクリストは、地形特徴量のデータが無いリンク、地形特徴量の信頼性が低いリンク、地形特徴量のデータ作成日時が古いリンクなどを、地形特徴量更新部310が地形特徴量DB309より抽出し、抽出されたリンクのリンク番号をリストとすることで作成される。信頼性、作成日時の閾値については、あらかじめユーザにより設定されているものとする。
【0118】
次に、地形特徴量更新部310は、地形特徴量配信要求を、通信部301を介してナビサーバ1aへ送信する(S602)。
図17に示すように、地形特徴量配信要求にはナビ端末3a自身を識別する機器IDと、ステップS601で作成された更新対象リンクリストが含まれる。
通信部141を介して地形特徴量配信要求を受信した、ナビサーバ1aの地形特徴量配信部151は、更新対象リンクリストに記述されているリンク番号をキーとして、該当する地形特徴量をナビサーバ1a内の地形特徴量DB134より取得し、地形特徴量配信データを作成すると、通信部141を介して、ナビ端末3aまたはユーザPC5へ配信する。
【0119】
図19は、第2実施形態に係る地形特徴量配信データのフォーマット例を示す図である。
地形特徴量配信データは、図9に示す地形特徴量DB134とほぼ同じであるため、説明を省略する。なお、図18における宛先機器IDは、要求元のナビ端末3aを示すIDである。このように、本実施形態では、地形特徴量だけでなく、作成日時、信頼性の情報も、地形特徴量配信データとして同時に配信するものとする。
【0120】
通信部301を介して、あるいはCD−ROM,フラッシュメモリなどにより、外部メディア読取部308を介して、配信された地形特徴量配信データを地形特徴量更新部310が受信する(S603)。
【0121】
そして、地形特徴量更新部310は、配信データ(地形特徴量配信データ)中のリンク毎に、ステップS605〜S609の処理をループする(S604)。
まず、地形特徴量更新部310は、配信された地形特徴量配信データにおける処理対象となっているリンク番号(対象リンク番号)と、ナビ端末3aの地形特徴量DB309のリンク番号とを比較して、対象リンク番号がナビ端末3aの地形特徴量DB309にないか否かを判定することにより、既存の地形特徴量にデータがないか否かを判定する(S605)。
【0122】
ステップS605の結果、既存の地形特徴量に対象リンク番号に対応するデータがない場合(S605→Yes)、地形特徴量更新部310は、地形特徴量配信データにおいて対象リンク番号と対応している信頼度を参照し、この信頼度が予め設定してある閾値以上であるか否かを判定する(S606)。
ステップS606の結果、信頼度が閾値以上である場合(S606→Yes)、地形特徴量更新部310は、対象リンク番号に対応する地形特徴量を、ナビ端末3aの地形特徴量へ追加するデータ更新処理を行う(S607)。
ステップS606の結果、信頼度が閾値未満である場合(S606→No)、地形特徴量更新部310は、ステップS610へ処理を進め、次の対象リンクについて処理を行う。
【0123】
ステップS605の結果、既存の地形特徴量にデータが存在していた場合(S605→No)、すなわち、対象リンクに関する地形特徴量のデータが、ナビ端末3aの地形特徴量DB309に既に存在している場合、地形特徴量更新部310は、地形特徴量配信データにおける対象リンク番号に対応する作成日時と、ナビ端末3aの地形特徴量DB309における該当する作成日時とを比較し、配信データ(地形特徴量配信データ)の作成日時が、既存データ(ナビ端末3aの地形特徴量DB309)における作成日時より新しいか否かを判定する(S608)。
【0124】
ステップS608の結果、配信データ(地形特徴量配信データ)の作成日時が、既存データ(ナビ端末3aの地形特徴量DB309)における作成日時より新しくない場合(S608→No)、地形特徴量更新部310は、ステップS610へ処理を進め、次の対象リンクについて処理を行う。
【0125】
ステップS608の結果、配信データ(地形特徴量配信データ)の作成日時が、既存データ(ナビ端末3aの地形特徴量DB309)における作成日時より新しい場合(S608→Yes)、地形特徴量更新部310は、配信データ(地形特徴量配信データ)の信頼度が、既存データ(ナビ端末3aの地形特徴量DB309)における該当する信頼度より高いか否かを判定する(S609)。
ステップS609の結果、配信データ(地形特徴量配信データ)の信頼度が、既存データ(ナビ端末3aの地形特徴量DB309)における該当する信頼度より高い場合(S609→Yes)、地形特徴量更新部310は、ステップS607へ処理を進め、ナビ端末3aの地形特徴量DB309において、該当するリンクに対応する地形特徴量を、配信された地形特徴量に置き換えるデータ更新処理を行い(S607)、ステップS610へ処理を進める。
ステップS609の結果、配信データ(地形特徴量配信データ)の信頼度が、既存データ(ナビ端末3aの地形特徴量DB309)における該当する信頼度より高くない場合(S609→No)、地形特徴量更新部310は、データ更新処理を行うことなく、ステップS610へ処理を進める。
【0126】
配信データ中のすべてのリンクについて、ステップS605〜S609のループが終了すると(S610)、地形特徴量更新部310は処理を終了する。
【0127】
このように更新する地形特徴量を選択することで、地形特徴量DB309でのデータ精度が低下する危険を避けることができる。
【0128】
(経路探索処理)
図20は、第2実施形態に係る経路探索処理の手順を示すフローチャートである。
まず、経路探索部305は、ユーザから入力部303を通じて、出発地・目的地の入力と、経路探索の開始指示を入力される出発地・目的地・探索開始指示受付処理を行う(S701)。このとき、出発地は、ユーザからの入力情報に限らず、GPS受信部304により取得した自車位置としてもよい。
【0129】
そして、経路探索部305が、図13のステップS502と同様の処理でエネルギ消費量予測対象リンクリストを作成し(S702)、作成したエネルギ消費量予測対象リンクリストをエネルギ消費量予測部320へわたす。
予測エネルギ消費量算出部322は、わたされたエネルギ消費量予測対象リンクリストを基に、地形特徴量DB309に格納されている地形特徴量などを使用して、各リンクにおける予測エネルギ消費量を算出する予測エネルギ消費量算出処理を行う(S703)。ステップS703の処理内容は、図11で説明した処理と同様であるため、説明を省略する。
そして、経路探索処理部は、予測エネルギ消費量と道路地図DB307の情報から、最小エネルギ消費量の経路を探索する経路探索処理を行う(S704)。ステップS704の処理内容は、図13のステップS505と同様であるため説明を省略する。
ステップS704の結果、出力される経路探索結果は、経路案内部306へわたされる。
【0130】
経路案内部306は、図1に示した第1実施形態のナビ端末3における経路案内部306と同様に、図14に示すようなドライバに経路探索結果に基づいた案内を提供したり、図15に示すような予測エネルギ消費量の画面表示を行ったりする。
【0131】
(第2実施形態のまとめ)
以上の処理により、プローブカー2の走行実績に基づいて予測されたエネルギ消費量を、サービス対象車両のナビ端末3aで利用可能にすることを特徴とするエネルギ消費量予測システムBが、地形特徴量をナビ端末3aに配信することによって、実現する。
【0132】
第1実施形態と第2実施形態のナビシステムの違いについて述べると、第1実施形態ではナビ端末3の要請に応じて、予測エネルギ消費量を配信する。これは、予測エネルギ消費量は、車両特性や時々刻々変化する予測時の交通状況に依存するため、経路探索時に逐次通信を行い、予測エネルギ消費量を取得することが必要なためである。
【0133】
これに対し、第2実施形態では、地形特徴量をナビ端末3aに配信する。地形特徴量は車種や交通情報に依存しないことから、1リンクにつき1組の地形特徴量を配信すれば十分であり、また地形特徴量の再算出が行われない限り、地形特徴量は変化しないため、時々刻々と変化する予測エネルギ消費量と比べて更新頻度が低い。これらの特徴から地形特徴量を配信することで、通信量を抑えることが可能である。
また、ナビ端末3a内に地形特徴量を保存し、ナビ端末3aのみでエネルギ消費量予測を行うことで、探索時に逐次ナビサーバ1aと通信をする必要性がないという効果もある。
【0134】
さらに、本実施形態は、特願2008−281968に記載の地形の高低など地形図から地形特徴量を算出し、予測エネルギ消費量を算出する技術と組み合わせることが可能である。
また、本実施形態では、出力部302に図14や図15に示すような経路案内表示を行っているが、これに限らず、出力部302を音声出力を行う音声装置とし、この音声装置で経路案内を行ってもよいし、出力部302が表示装置の機能と、音声装置の機能を有し、経路案内表示と、音声案内を同時に行ってもよい。
【符号の説明】
【0135】
1,1a ナビサーバ(エネルギ消費量予測装置)
2 プローブカー
3,3a ナビ端末(端末装置)
4 通信ネットワーク
5 ユーザPC
100 地形特徴量生成部
101 地形特徴量算出部
120 エネルギ消費量予測部
121 交通情報予測部
122 予測エネルギ消費量算出部
131 プローブデータDB
132 道路地図DB(ナビサーバ)
133 車種特性DB(ナビサーバ)
134 地形特徴量DB(ナビサーバ)
151 地形特徴量配信部
302 出力部
303 入力部
304 GPS受信部
305 経路探索部
306 経路案内部
307 道路地図(ナビ端末)
308 外部メディア読取部
309 地形特徴量DB(ナビ端末)
310 地形特徴量更新部
311 車種特性DB(ナビ端末)
320 エネルギ消費量予測部(ナビ端末)
321 交通情報予測部
322 予測エネルギ消費量算出部
A,B エネルギ消費量予測システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路予測のための情報を端末装置へ送るエネルギ消費量予測装置と、前記送られた情報を基に、経路表示を行う端末装置と、を有するエネルギ消費量予測システムによるエネルギ消費量予測方法であって、
前記エネルギ消費量予測装置が、
プローブカーから収集したエネルギ消費量を基に、道路を構成するリンクの地形が消費エネルギに与える影響である地形特徴量を前記リンク毎に算出し、
前記地形特徴量を基に、予測対象として選択されたリンクの予測エネルギ消費量を算出し、
前記算出した予測エネルギ消費量を前記端末装置へ送り、
前記端末装置が、
前記送られた予測エネルギ消費量を基に、出力部に経路案内情報を出力させる
ことを特徴とするエネルギ消費量予測方法。
【請求項2】
経路予測のための情報を端末装置へ送るエネルギ消費量予測装置と、前記送られた情報を基に、経路表示を行う端末装置と、を有するエネルギ消費量予測システムによるエネルギ消費量予測方法であって、
前記エネルギ消費量予測装置が、
プローブカーから収集したエネルギ消費量を基に、道路を構成するリンクの地形が消費エネルギに与える影響である地形特徴量を前記リンク毎に算出し、
前記算出した地形特徴量を前記端末装置へ送り、
前記端末装置が、
前記送られた地形特徴量を基に、予測対象として選択されたリンクの予測エネルギ消費量を算出し、
前記算出した予測エネルギ消費量を基に、出力部に経路案内情報を出力させる
ことを特徴とするエネルギ消費量予測方法。
【請求項3】
前記地形特徴量は、加速時のエネルギ消費量への影響値、減速時のエネルギ消費量への影響値、および一定速度走行時のエネルギ消費量への影響値、
を基に算出されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエネルギ消費量予測方法。
【請求項4】
前記エネルギ消費量予測装置が、
前記プローブカーから、前記リンクの旅行時間を取得し、
前記取得した前記リンクの旅行時間から、前記プローブカーの加減速および一定速度のパターンである走行パターンを算出し、
前記走行パターンと、前記エネルギ消費量とを基に、前記地形特徴量を算出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエネルギ消費量予測方法。
【請求項5】
前記走行パターンとは、前記プローブカーにおける、リンク長に対する加速または減速に費やした距離の比である加減速確率である
ことを特徴とする請求項4に記載のエネルギ消費量予測方法。
【請求項6】
前記エネルギ消費量は、走行消費量と、基礎消費量とを含み、
前記走行消費量は、車両の力学的エネルギの変化に寄与するエネルギ消費量であり、
前記基礎消費量は、前記車両における内燃機関の内部抵抗および搭載機器によるエネルギ消費量である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエネルギ消費量予測方法。
【請求項7】
前記エネルギ消費量は、走行消費量と、基礎消費量とを含み、
前記車両が電気自動車である場合、前記走行消費量には回生によるエネルギを含む車両の力学的エネルギであり,
前記基礎消費量は、前記車両における搭載機器によるエネルギ消費量である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエネルギ消費量予測方法。
【請求項8】
前記出力部は、情報を表示する表示装置であり、
前記端末装置は、
前記エネルギ消費量予測装置から送られた予測エネルギ消費量を経路探索の対象となるリンクのコストとして、経路探索を行い、
前記経路探索を行った結果を、前記経路表示として前記出力部に表示する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエネルギ消費量予測方法。
【請求項9】
前記出力部に、前記予測エネルギ消費量に関する情報と、前記予測エネルギ消費量を算出したリンクとを関連付けて前記経路表示する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエネルギ消費量予測方法。
【請求項10】
経路予測のための情報を端末装置へ送るエネルギ消費量予測装置であって、
プローブカーから収集したエネルギ消費量を基に、道路を構成するリンクの地形が消費エネルギに与える影響である地形特徴量をリンク毎に算出する地形特徴量生成部と、
前記地形特徴量を基に、予測対象として選択されたリンクの予測エネルギ消費量を算出する予測エネルギ消費量算出部と、
前記算出した予測エネルギ消費量を前記端末装置へ送る通信部と
を有することを特徴とするエネルギ消費量予測装置。
【請求項11】
経路予測のための情報を端末装置へ送るエネルギ消費量予測装置であって、
プローブカーから収集したエネルギ消費量を基に、道路を構成するリンクの地形が消費エネルギに与える影響である地形特徴量をリンク毎に算出する地形特徴量生成部と、
前記算出した地形特徴量を前記端末装置へ送る地形特徴量配信部と、
を有することを特徴とするエネルギ消費量予測装置。
【請求項12】
経路表示を行う端末装置であって、
請求項10に記載のエネルギ消費量予測装置から送られた、予測対象となっているリンクで消費されるエネルギの予測量である予測エネルギ消費量を基に、出力部に経路案内情報出力させる経路案内部を有することを特徴とする端末装置。
【請求項13】
経路表示を行う端末装置であって、
請求項11に記載のエネルギ消費量予測装置から送られた地形特徴量を基に、予測対象となっているリンクで消費されるエネルギの予測量である予測エネルギ消費量を算出する予測エネルギ消費量算出部と、
前記算出された予測エネルギ消費量を基に、出力部に経路案内情報を出力させる経路案内部を有することを特徴とする端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−59921(P2011−59921A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208001(P2009−208001)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】