説明

エピタキシャル被覆されたシリコンウェハの製造方法

【課題】良好なグローバルフラットネスを有するエピタキシャル被覆されたシリコンウェハを生じる、シリコンウェハをエピタキシャル被覆する方法を提供する
【解決手段】準備されたシリコンウェハのそれぞれ一つをエピタキシー反応器中のサセプタ上に置き、第1の工程で、水素雰囲気下でだけで1〜100slmの水素流量で前処理し、第2工程で、前記水素雰囲気にエッチング媒体を添加しながら、1〜100slmの水素流量で、0.5〜1.5slmのエッチング媒体の流量で、かつ950〜1050℃の平均温度で前処理し、引き続き前記シリコンウェハのポリシングされた前面をエピタキシャル被覆し、前記エピタキシー反応器から取り出し、前記前処理の第2の工程において、前記サセプタの上側及び下側に配置された加熱エレメントの出力を、エピタキシャル被覆すべきシリコンウェハの中心軸の周りの放射形対称の領域と前記シリコンウェハの前記領域の外側にある部分との間に5〜30℃の温度差があるように調節する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャル被覆されたシリコンウェハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エピタキシャル被覆されシリコンウェハは、半導体工業における使用のために、特に高集積電子部品、例えばマイクロプロセッサ又はメモリチップの作製のため適している。グローバルフラットネス及びローカルフラットネス、厚さ分布、片面基準のローカルフラットネス(ナノトポロジー)及び無欠陥性に関して厳格な要求を有する出発材料(基板)が、近年のマイクロエレクトロニクスのために必要である。
【0003】
グローバルフラットネスは、定義されるべき周辺部除外領域を除く半導体ウェハの全体の表面に関する。これは、GBIR(global backsurface-referenced ideal plane/range=裏面基準の理想平面からの半導体ウェハの全体の前面についてのプラス及びマイナスの変動の大きさ)により表され、これは以前に慣用の記載TTV(total thickness variation)規格に一致する。
【0004】
以前に慣用の記載LTV(local thickness variation)規格は、今日ではSEMI規格によりSBIR(site backsurface-referenced ideal plane/range=裏面基準の理想平面からの定義された寸法の個々の部品領域についてのプラス及びマイナスの変動の大きさ)と表され、部品領域(サイト)のGBIR又はTTVに相当する。従って、グローバルフラットネスGBIRとは反対に、このSBIRは前記ウェハの定義された領域に関し、つまり例えば26×8mm2のサイズ(サイト形状寸法)を有する測定ウィンドウのエリア格子のセグメントに関する。最大サイト形状寸法値SBiRmaxは、シリコンウェハ上の考慮される部品領域についての最大のSBIR値を示す。
【0005】
最大サイト基準フラットネス又は形状寸法値、例えばSBiRmaxは、通常では例えば3mmの所定の周辺部除外領域(EE=edge exclusion)を考慮して測定される。基準周辺部除外領域の内側のシリコンウェハ上の領域は、通常では「平坦度適用領域」(省略してFQA)と表される。前記サイトの領域の一部がFQAの外側にあるが、前記サイトの中心はFQAの内側にあるようなサイトは、「パーシャルサイト」といわれる。最大ローカルフラットネスの測定は、しばしば前記「パーシャルサイト」を含めず、いわゆる「フルサイト」だけ、つまり完全にFQA内にある部品領域だけが参照される。最大フラットネス値を比較するために、周辺部除外領域及びそれによるFQAのサイズ、更に前記「パーシャルサイト」を考慮したか又はしないかが必須である。
【0006】
更に、コストの最適化の観点で、今日では頻繁に、シリコンウェハを例えば部品製造元により指定されたSBIRmax値を上回る部品領域に基づいて除くだけでなく、より高い価値を有する部品領域の定義されたパーセント割合、例えば1%を許容することが通常である。通常では、形状寸法パラメータの所定の限界値を下回るか又は下回ることができる前記サイトのパーセント割合は、PUA(percent useable area)値により表され、例えば0.7μm以下のSBIRmax及び99%のPUA値の場合に、前記サイトの99%が0.7μm以下のSBIRmaxを有し、前記サイトの1%についてはより高いSBIR値も許容することを意味する(chip yield)。
【0007】
先行技術によると、シリコンウェハは、シリコン単結晶をウェハに切り分け、機械的に敏感なエッジを丸め、研削又はラッピング、続いてポリシングのような研磨工程を実施するプロセス順序により製造することができる。EP 547894 A1はラッピング法を記載し;研削法はEP 272531 A1及びEP 580162 A1の出願に請求されている。
【0008】
最終的なフラットネスは一般にポリシング工程によって生じる、前記工程の前に、必要な場合に、損傷のある結晶層の除去のため及び不純物の除去のためにエッチング工程を行うことができる。適当なエッチング法は、例えばDE 19833257 C1から公知である。典型的に片面ポリシング法は一般により悪い平行平面性を生じ、両面で行われるポリシング法(両面ポリシング)は改善されたフラットネスを有するシリコンウェハを製造することができる。
【0009】
ポリシングされたシリコンウェハの場合には、従って、研削、ラッピング及びポリシングのような適切な加工工程により必要なフラットネスを達成することが試みられる。
【0010】
しかしながら、シリコンウェハの前記ポリシングは通常ではエッジ方向に向かって平坦なシリコンウェハの厚さの減少が生じる(エッジロールオフ、edge roll-off)。エッチング法も、処理すべきシリコンウェハをエッチ部でより強く攻撃し、この種のエッジロールオフが生じる傾向がある。
【0011】
これに対抗するために、通常では、シリコンウェハは凹面状又は凸面状にポリシングされる。凹面状にポリシングされたシリコンウェハは、中央部でより薄くなり、エッジに向かってその厚さが増大し、外側のエッジ領域で厚さの減少を示す。反対に、凸面状にポリシングされたシリコンウェハは中央部でより厚くなり、エッジに向かってその厚さが減少し、外側のエッジ領域で際立った厚さの減少を示す。
【0012】
DE 19938340 C1は、単結晶シリコンウェハ上に、後に半導体部品が設けられる同じ結晶方位を有するシリコンからなる単結晶層、いわゆるエピタキシャル層を堆積させることを記載している。この種のシステムは、均質な材料からなるシリコンウェハと比べて所定の利点、例えば前記部品の短絡に引き続くバイポーラーCMOS回路中での電荷反転の抑制(「ラッチアップの問題」、latch-up problem)、低い欠陥密度(例えばCOP(crystal-originated particies)の低減された数)並びにかなりの酸素含有量の不在の利点を有し、それにより部品に関連する領域での酸素析出物による短絡の危険性を排除することができる。
【0013】
先行技術によると、エピタキシャル被覆されたシリコンウェハは、適当な中間製品から、一次研磨−仕上研磨−洗浄−エピタキシーのプロセス順序により製造される。
【0014】
DE 10025871 A1は、例えば次のプロセス工程を有する、前面に堆積されたエピタキシャル層を有するシリコンウェハの製造方法を開示している:
(a) 唯一のポリシング工程として一次研磨;
(b) 前記シリコンウェハの(親水性)洗浄及び乾燥;
(c) エピタキシー反応器中で950〜1250℃の温度での前記シリコンウェハの前面の前処理;及び
(d) 前処理されたシリコンウェハの前面にエピタキシャル層を堆積。
【0015】
シリコンウェハをパーティクル負荷から保護するために、シリコンウェハをポリシングの後に親水性洗浄を行うのが通常である。この親水性洗浄は、シリコンウェハの前面及び背面に、極めて薄い(洗浄及び測定の種類に応じて、約0.5〜2nm)自然酸化膜を作製する。
【0016】
この自然酸化膜は、水素雰囲気下でのエピタキシー反応器中での前処理(H2ベークとも言われる)において除去される。
【0017】
第2工程において、通常では、少量のエッチング媒体、例えばガス状の塩化水素(HCl)を前記水素雰囲気に添加することにより、前記シリコンウェハの前面の表面ラフネスを低下させ、かつ前記表面からポリシング欠陥を除去する。
【0018】
ときには、エッチング媒体、例えばHClの他に、シラン化合物、例えばシラン(SiH4)、ジクロロシラン(SiH2Cl2)、トリクロロシラン(TCS、SiHCl3)又はテトラクロロシラン(SiCl4)を、シリコンの堆積とシリコンのエッチング除去とが平衡となる量で、水素雰囲気に添加する。両方の反応は、しかしながら十分に高い反応速度で行われるので、表面上のシリコンは移動可能であり、かつ表面は平滑化され及び欠陥は除去される。
【0019】
特に半導体工業においてシリコンウェハ上のエピタキシャル層の堆積のために使用されるエピタキシー反応器は、先行技術に記載されている。
【0020】
全体の被覆工程又は堆積工程の間に、1枚以上のシリコンウェハを、加熱源を用いて、有利に上側及び下側の加熱源、例えばランプ又はランプバンクを用いて加熱し、引き続き原料ガス、キャリアガス及び必要な場合にドーピングガスからなるガス混合物にさらす。
【0021】
例えば黒鉛、SiC又は石英からなるサセプタは、エピタキシー反応器のプロセス室中でのシリコンウェハのサポートとして用いられる。堆積プロセスの間に、前記シリコンウェハは、均一な加熱を保証しかつ前記シリコンウェハの通常では堆積が行われない背面を原料ガスから保護するために前記サセプタ上に又は前記サセプタの凹設部中に置かれる。先行技術によると、前記プロセス室は1枚以上のシリコンウェハ用に設計されている。
【0022】
比較的大きな直径(150mm以上)を有するシリコンウェハの場合、通常では枚葉型反応器が使用され、前記シリコンウェハは個別に加工される、それというのもこの場合に良好なエピタキシャル層厚の画一性(regularity)が生じるためである。前記層厚の均一性は多様な手段によって、例えばガス流(H2、SiHCl3)の変更により、ガス導入装置(インジェクタ)の組み込み又は位置替えにより、堆積温度の変更により又はサセプタの改変により調節することができる。
【0023】
エピタキシーの場合には、更に、シリコンウェハ上の1つ以上のエピタキシャル堆積の後に、基板なしでのサセプタのエッチング処理が実施されることが通常であり、この場合、前記サセプタ及びプロセス室の他の部分もシリコン沈着物が除去される。例えば塩化水素(HCl)を用いた前記エッチングは、枚葉型反応器の場合に、しばしば数枚のシリコンウェハの加工後(1〜5枚のシリコンウェハの後)に実施され、薄いエピタキシャル層の堆積の場合には部分的により多くのシリコンウェハを加工した後(10〜20枚のシリコンウェハの後)に初めて実施される。通常では、HClエッチング処理だけが実施されるか又はHClエッチング処理が引き続くサセプタの短時間の被覆と共に実施される。
【0024】
良好なグローバルフラットネスを有するエピタキシャル被覆されたシリコンウェハの製造は、極端に困難である、それというのも、前記したように、基板として通常では凹面状又は凸面状にポリシングされたシリコンウェハが存在するためである。
【0025】
凹面状にポリシングされたシリコンウェハの中央部で比較的厚く、前記シリコンウェハの周辺部の方向へ外側に向かって厚さが減少しなければならないエピタキシャル層を堆積させることは、前記シリコンウェハの当初凹面の形が補償され、従って前記シリコンウェハのグローバルフラットネスも改善することができる。しかしながら、エピタキシャル被覆されたシリコンウェハの重要な特性、つまりエピタキシャル層の画一性についての限界値を越えることを避けなければならないため、これはシリコンウェハのエピタキシーの場合に問題にならない。同様のことが、まずウェハの寸法的形状に影響を与えずに、まず画一なエピタキシャル層を凹面状又は凸面状にポリシングされたウェハ上に堆積させ、引き続き前記エピタキシャル層を「適正な形にエッチングする(etch into shape)」か又は他の材料除去法、例えばポリシングを用いてこのように前記エピタキシャル被覆されたウェハの全体の形状を改善することを目標とする方法にも該当する。この場合でも、必要な材料除去の程度に応じて、エピタキシャル被覆されたウェハは不均一なエピタキシャル層厚を生じ、これは許容できない欠点である。従って、この種の方法は、300mm又は450mmの直径を有する単結晶シリコンウェハのエピタキシーの場合、半導体工業における最近の適用のために実際に役に立たない。
【0026】
DE 102005045339 A1は、少なくとも前面がポリシングされた多数のシリコンウェハを準備し、それぞれ順番に個別にエピタキシー反応器中で被覆するエピタキシャル被覆されたシリコンウェハの製造方法において、準備されたシリコンウェハのそれぞれ1つをエピタキシー反応器中のサセプタ上に置き、第1工程で水素雰囲気下で20〜100slmの第1の水素流量で前処理し並びに第2工程で前記水素雰囲気にエッチング媒体を添加しながら、0.5〜10slmの第2の低減された水素流量で前処理し、引き続き前記シリコンウェハのポリシングされた前面をエピタキシャル被覆し、前記エピタキシー反応器から取り出し、さらに所定の数のエピタキシャル被覆の後にその都度サセプタのエッチング処理を行う、エピタキシャル被覆されたシリコンウェハの製造方法が開示されている。
【0027】
DE 102005045339 A1は、同様に、少なくともシリコンウェハの前面がポリシングされていてかつ少なくともその前面にエピタキシャル層が設けられていて、2mmの周辺部除外で、0.07〜0.3μmのグローバルフラットネスGBIRを有する、前面及び背面を有するシリコンウェハを開示している。
【0028】
前記エピタキシャル被覆されたシリコンウェハの比較的良好な形状寸法は、エッチング媒体を添加しながら前記前処理の第2工程での水素流量の低減により、前記シリコンウェハの周辺部の材料を適切にエッチングにより除去し、前記シリコンウェハをエピタキシャル工程の前にクローバルに平坦にすることを達成することから生じる。DE 102005045339に開示された方法の欠点は、低減された水素流量がポリシングされたウェハの周辺部でのエッチング作用を強めるが、しかしながら前記ガス流が半導体ウェハ上で層状ではないことにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】EP 547894 A1
【特許文献2】EP 272531 A1
【特許文献3】EP 580162 A1
【特許文献4】DE 19833257 C1
【特許文献5】DE 19938340 C1
【特許文献6】DE 10025871 A1
【特許文献7】DE 102005045339 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明の課題は、良好なグローバルフラットネスを有するエピタキシャル被覆されたシリコンウェハを生じる、シリコンウェハをエピタキシャル被覆する別の方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前記課題は、少なくとも前面がポリシングされた複数のシリコンウェハを準備し、連続してエピタキシー反応器中でそれぞれ個別に被覆する、エピタキシャル被覆されたシリコンウェハの製造方法において、前記の準備されたシリコンウェハのそれぞれ一つをエピタキシー反応器中のサセプタ上に置き、第1工程で、水素雰囲気下でだけで1〜100slmの水素流量で前処理し、第2工程で、前記水素雰囲気にエッチング媒体を添加しながら、1〜100slmの水素流量で、0.5〜1.5slmのエッチング媒体の流量で、かつ950〜1050℃の平均温度で前処理し、引き続き前記シリコンウェハのポリシングされた前面をエピタキシャル被覆し、前記エピタキシー反応器から取り出し、前記前処理の第2工程において、前記サセプタの上側及び下側に配置された加熱エレメントの出力を、エピタキシャル被覆されるべきシリコンウェハの中心軸の周りの放射形対称の領域と前記シリコンウェハの前記領域の外側にある部分との間に5〜30℃の温度差があるように調節する、エピタキシャル被覆されたシリコンウェハの製造方法により達成される。
【0032】
本発明は、水素及び/又は水素+エッチング媒体を用いたシリコンウェハの処理の際の除去率が温度依存性であることを利用する。このことは、図2に示されている。
【0033】
シリコンウェハの中心軸の周りの放射形対称の領域は、前記シリコンウェハの直径が300mmである場合に、有利に1〜150mmの広がりを有する領域である、例えば、1〜150mmの直径を有する円形領域であることができ、前記領域の中心点は前記シリコンウェハの中心に一致する。
【0034】
本発明の他の有利な実施態様は、引用形式の生産物の請求項に記載されている。
【0035】
本発明にとって重要なことは、シリコンウェハ及びサセプタ(上側又は下側から加熱されている)の中心の周りの内側区域中の温度が、外側区域(周辺部領域)中の温度よりも高い(又は低い)ことである。除去速度の温度依存性のために、これは内側区域か又は周辺部領域で材料の除去が高まることになる。このように、ポリシングされたウェハの凹面状又は凸面上の出発形状寸法は打ち消され、グローバル形状寸法(TTV、GBIR)は改善され、最終的に良好な形状寸法特性を有するエピタキシャル被覆されたシリコンウェハが提供できる。
【0036】
本発明による方法は、初めて、このために950〜1050℃の温度範囲が重要であることを示す。
【0037】
例えばEP 0 445 596 B1に記載のエピタキシー反応器が、前記方法を実施するために適している。前記エピタキシー反応器は、機械的に結合されている第1のドームと、それに向かい合う第2のドームとを有する反応容器によって限定された反応室、シリコンウェハを保持する保持装置;半導体ウェハを加熱するための加熱装置を有し、その際、前記加熱装置は次のものを有する:前記室の外側に存在しかつ第1のドームを通過してシリコンウェハにまでエネルギーを放射するように配置された第1の熱源;及び同様に前記室の外側に存在しかつ第2のドームを通過してシリコンウェハまでエネルギーを放射するように配置された第2の熱源;並びに前記室内へガスを導入するため及び前記室からガスを排出するためのガス導入装置及びガス排出装置。
【0038】
シリコンウェハ及びサセプタの加熱は、従って通常ではサセプタの上側及び下側に配置された加熱エレメントにより行われる。これは慣用のエピタキシー反応器、例えばApplied Materials社のEpi Centuraを使用する場合にはIRランプである、EP 0 445 596 B1参照。前記ランプは、例えば円形に配置することができる。しかしながら、他の種類の加熱エレメントも考えられる。
【0039】
更に、前記加熱エレメントの出力を相互に別個に調節することも可能である。IRランプバンクの場合には、前記熱出力を、適切に反応室の内側領域に及びそれとは別個に前記反応室の外側領域に向けることができる。これは、反応器中のガス流をいわゆる内側区域及び外側区域に配分する既に公知の方法と同様である。
【0040】
本発明の本質の内側区域と外側区域との温度差を、内側領域及び外側領域中の温度に影響を及ぼす加熱エレメントの出力の適切な選択により達成することができる。
【0041】
図2に示したように、平均温度の適切な選択により、例えば前記シリコンウェハの中心領域中での幅及び高さに関する材料除去の程度を決定することができる。
【0042】
従って、シリコンウェハの領域間の温度差及び950〜1050℃の平均温度の選択が、本発明にとって重要である。
【0043】
本発明の詳細な記載
原則として、本発明による方法の場合に、まず少なくとも前面がポリシングされた多数のシリコンウェハが準備される。
【0044】
このため、先行技術により、有利にチョクラルスキー法によるるつぼ引き上げにより製造されたシリコン単結晶を、公知の切断法で、有利に遊離砥粒(スラリー)又は固定砥粒(ダイヤモンドワイヤ)を用いたワイヤソーにより多数のシリコンウェハに切り分ける。
【0045】
更に、機械加工工程、例えば連続する片面研削法(SSG)、同時両面研削法(double-disc grinding、DDG)又はラッピングが行われる。前記シリコンウェハのエッジ部は、場合により存在する機械的マーキング、例えばオリエンテーションノッチ又はシリコン基板周辺部の主に直線状の平坦化箇所(flat)として一般に加工される(エッジ丸め、エッジ−ノッチ−研削)。
【0046】
洗浄工程及びエッチング工程を含む化学的処理工程も、付加的に行われる。
【0047】
研削工程、洗浄工程及びエッチング工程の後に、前記シリコンウェハの表面は一次研磨により平滑にされる。片面ポリシング(SSP)の場合に、シリコンウェハは加工の間に背面をキャリアプレートに、セメントによるか、真空によるか又は接着により保持される。両面ポリシング(DSP)の場合に、シリコンウェハはこのために薄い歯付ディスク内にルーズに挿入され、前面と背面とを同時に研磨布で覆われた上定盤と下定盤との間を「自由に浮動して」ポリシングされる。
【0048】
引き続き、前記シリコンウェハの前面を有利にヘーズフリー法(haze-free manner)で、例えば軟らかい研磨布でアルカリ性ポリシングゾルを用いてポリシングし;この工程までで生じる半導体ウェハのフラットネスを維持するために、前記材料除去はこの場合比較的低く、例えば0.05〜1.5μmである。前記工程は文献中にはしばしばCMPポリシング(ケモメカニカルポリシング(chemo-mechanical polishing))として表される。
【0049】
前記ポリシングの後に、前記シリコンウェハを先行技術により親水性に洗浄し及び乾燥させる。前記洗浄は、バッチ法として浴中で又は噴霧法を用いて多数のシリコンウェハを同時に洗浄しながら又は枚葉式プロセスとして実施することができる。
【0050】
前記の準備されたシリコンウェハは、有利に単結晶シリコン材料からなるウェハ、SOI(silicon-on-insulator)ウェハ、歪みシリコン層を備えたシリコンウェハ(strained silicon)又はsSOI(strained silicon-on-insulator)ウェハである。SOIウェハ又はsSOIウェハの製造方法、例えばスマートカット(SmartCut)並びに歪みシリコン層を備えたウェハの製造方法は、先行技術で公知である。
【0051】
前記の準備されたポリシングされたシリコンウェハは、引き続きエピタキシー反応器中でそれぞれ個別に前処理される。
【0052】
前記前処理は、それぞれ950〜1050℃の温度範囲で、それぞれ水素雰囲気中でのシリコンウェハの処理(H2ベーク)及び水素雰囲気にエッチング媒体を添加しながらのシリコンウェハの処理を有する。
【0053】
エッチング媒体は、有利に塩化水素(HCl)である。
【0054】
水素雰囲気中でのこの前処理は、1〜100slm(標準リットル/分)の、特に有利に40〜60slmの水素流量で行われる。
【0055】
水素雰囲気中での前処理の時間は、有利に10〜120sである。
【0056】
エッチング媒体を用いた前処理の場合に、エッチング媒体の流量は0.5〜1.5slmである。
【0057】
前記水素流量は、エッチング媒体を用いた前処理の場合でも1〜100slm、特に有利に40〜60slmである。
【0058】
前記前処理の第2工程では、サセプタの上側及び下側に配置された加熱エレメントの出力を、1〜150cmの直径を有する、エピタキシャル被覆されるべきシリコンウェハの中心軸の周りの放射形対称の領域が、前記シリコンウェハの前記の領域の外側にある部分に対して、5〜30℃高い温度を有するように調節する。
【0059】
HClエッチング処理の場合に、エピタキシャル被覆されるべきシリコンウェハの周辺部での所望の材料除去に応じて、処理時間は有利に10〜120s、特に有利に20〜60sである。
【0060】
この方法の特別な利点は、前記シリコンウェハの前記前処理により前記シリコンウェハの凹面状又は凸面上の形が補償されるため、前記シリコンウェハが前記前処理工程後に、エピタキシャルシリコン層の引き続く堆積のために最適な形状の前面が得られることである。
【0061】
本発明による方法の場合に、前記内側区域は、前記シリコンウェハの中心の周りの有利に1〜150mmの直径の円に相当し、前記外側区域は、前記シリコンウェハの周辺部を有する1〜150mmの幅のリングに相当する。前記値は、300mmの直径を有するシリコンウェハに関する本発明の適用に相当する。450mmの基板直径を有する次世代のシリコンウェハの使用の場合には、内側区域及び外側区域は相応して選択され、比較的小さな基板、例えば200mmの又は150mmのウェハの場合も同様である。
【0062】
本発明は、前記外側区域をエピタキシャル被覆されるべきシリコンウェハの出発形状寸法に依存して選択することができる。有利に、まず、ポリシングされたウェハの出発形状寸法がエピタキシャル被覆されるべきシリコンウェハのバッチにおいて測定され、次いでエピタキシー反応器中での前記前処理工程のための前記の相応するプロセス設定、つまり特に内側区域の大きさ、ランプ出力及び反応器中でのエッチング処理の間の内側区域と外側区域との間の温度差が選択される。
【0063】
前記前処理工程の後に、エピタキシャル層を前記シリコンウェハの少なくともポリシングされた前面に堆積させる。このために、原料ガスとしてシランソースがキャリアガスとして水素に添加される。前記エピタキシャル層は、使用したシランソースに依存して、900〜1200℃の温度で堆積される。
【0064】
トリクロロシラン(TCS)は有利に、1050〜1150℃の堆積温度でシランソースとして使用され、この温度は、従って、前記前処理工程の際の本質的な温度範囲を上回る。
【0065】
堆積されたエピタキシャル層の厚さは、有利に0.5〜5μmである。
【0066】
前記エピタキシャル層の堆積の後に、エピタキシャル被覆されたシリコンウェハが前記エピタキシー反応器から取り出される。
【0067】
前記シリコンウェハ上のエピタキシャル堆積の所定の数の後に、サセプタから例えばシリコン沈着物を除去するためにエッチング媒体、例えばHClによる前記サセプタの処理を行う。
【0068】
有利に、サセプタエッチングはそれぞれシリコンウェハの1〜15回のエピタキシャル被覆の後に行う。このために、エピタキシャル被覆されたシリコンウェハは取り除かれ、ウェハなしのサセプタをHClで処理する。
【0069】
有利に、シリコン沈着物を除去するために、サセプタ表面の他に、全体のプロセス室を塩化水素で洗浄する。
【0070】
有利に、前記サセプタはサセプタエッチングの後でかつ更なるエピタキシャルプロセスの前に、シリコンにより被覆される。これは、エピタキシャル被覆されるべきシリコンウェハが直接サセプタ上に置かれないために有利である。
【0071】
更に、本発明による方法は、前面及び背面を有し、少なくとも前面がポリシングされ、かつ少なくとも前面にエピタキシャル層が設けられていてかつ2mmの周辺部除外で0.02〜0.06μmのグローバルフラットネスGBIRを有するシリコンウェハを製造するために適していることが明らかとなる。
【0072】
1mmの周辺部除外が考慮される場合、つまりより厳格な基準の場合、0.04〜0.08μmGBIR値が生じる。
【0073】
SBIRmaxにより表されるローカルフラットネスは、本発明によるエピタキシャル被覆されたシリコンウェハにおいて、同様に2mmの周辺部除外領域でかつ26×8mm2のサイズのセグメントのエリア格子の部分領域に関して、0.02μm以上〜0.05μm以下である。この場合、336のセグメントが生じ、その中で52の「パーシャルサイト」が生じる。前記「パーシャルサイト」は、SBIRmaxの測定の際に有利に考慮される。このPUA値は有利に100%である。
【0074】
1mmの周辺部除外では、0.04〜0.07μmのSBIRmaxが生じる。
【0075】
前記シリコンウェハは、有利に、エピタキシャル層が設けられている単結晶シリコン材料からなるウェハ、SOI(silicon-on-insulator)ウェハ、歪みシリコン層を備えたシリコンウェハ(strained silicon)又はsSOI(strained silicon-on-insulator)ウェハである。
【0076】
本発明によるエピタキシャル被覆されたシリコンウェハは、有利に2.0%以下のエピタキシャル層厚画一性を有する。このエピタキシャル層厚画一性は、平均値t及び領域Δt=エピタキシャル層厚のtmax−tminの測定により測定することができる。特に有利にΔt/tは0.5%〜2.0%、更に特に有利に1.0%〜1.5%である。本発明による方法は、請求項に記載されたガス流及びガス流配分の場合に前記エピタキシャル層厚画一性を有するエピタキシャル被覆されたシリコンウェハの製造を可能にする。
【0077】
先行技術において、ポリシングされたシリコンウェハの凹面状の出発形状寸法を、エピタキシーの場合にシリコンウェハの中央部でより厚い(又はより薄い)エピタキシャル層を堆積させることにより修正するか、又はまず十分に画一なエピタキシャル層を堆積させ、前記エピタキシャル被覆されたシリコンウェハの凹面状の形状寸法を引き続きエピタキシャル層の除去エッチングにより修正することを試みる場合には、前記部品製造元にとって極めて重要でかつ決定的なパラメータのエピタキシャル層厚画一性をそれぞれの狭い領域において2%以下に維持することは不可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】この方法で実施するためのエピタキシー反応器の反応室の概略構造を示す。
【図2】多様な処理温度についてのエピタキシー反応器中でのエッチング前処理による300mmの直径を有するポリシングされたシリコンウェハに関する材料除去を示す。
【実施例】
【0079】
この実施例は、Applied Materials社のEpi Centuraタイプのエピタキシー反応器に関する。このような装置の前記反応室の概略構造は図1に示されている。
【0080】
図1は、本発明による方法を実施するための前記反応室の概略構造を示す。加熱エレメント11(上側、外側領域)、12(上側、内側領域)、13(下側、内側領域)及び14(下側、外側領域)が示されている。前記反応器は、エピタキシャル被覆されるべきシリコンウェハを収容するためのサセプタ4、ガス流入装置2、ガス排出装置3、サセプタ又は基板を取り付け及び持ち上げるための装置5(例えばいわゆるリフトピン)並びに前記反応室中の温度を非接触で測定するための高温計61及び62を有する。
【0081】
表1は、Epi Centuraの場合での、本発明の本質の内側区域と外側区域との間の温度差を達成するランプ出力についての例示した典型的な値を示す。
【0082】
この全体のランプ出力はこの場合70kWであり、図1に示された4つのランプバンク(上側/内側、上側/外側、下側/内側、下側/外側)に分けられる。これは、約950〜1050℃の室内の平均温度に相当する。
【0083】
全体出力の60%は、上側ランプバンク又は加熱エレメントによる。
【表1】

【0084】
内側/外側のランプ出力の配分は、エッチング前処理の場合に、エピタキシャル被覆の場合とは異なる。
【0085】
54%/13%の配分は、Epi Centuraの場合にシリコンウェハ及びサセプタに関する均一な温度分布を生じさせる。この場合、シリコンウェハの全領域中の温度はほぼ同じである。均一な温度分布を達成するためには、それぞれの反応室に対して最適なエネルギー配分を決定しなければならない。前記エネルギー配分は、同じ反応器タイプ(例えばEpi Centura)の異なる反応室の場合にも変えることができる。
【0086】
有利に、エピタキシー工程のための最適なエネルギー配分の決定のために次のように行われる:それぞれ基板抵抗>10オームcmを有するp型ウェハのグループ(例えば5枚)を使用する。各ウェハについて、異なるエネルギー配分を調節する(例えばウェハ1:54%/13%…ウェハ2:58%/14%等)。この5枚のウェハを、次いで例えばKLA Tencor社のSP1光散乱測定器で測定し、必要な場合に顕微鏡で調査する。平均設定が他のエピタキシー工程のために選択される。この目的は、エピタキシー工程のためにシリコンウェハにわたりできる限り均一なエネルギー配分を達成することである。この処置は、半導体エピタキシーの分野の当業者には、「スリップウィンドウ運転、running a slip window」としても表される。
【0087】
生産物の進行において、ウェハを規則的に場合によるスリップに関して検査する。ウェハ上にスリップがある場合、新たにエネルギー配分の最適な設定を決定するために、「スリップウィンドウ」が運転される。
【0088】
本発明の場合に、有利にエピタキシープロセスについてのこの種の最適なエネルギー配分から出発し、内部区域と外部区域との間の必要な温度差を達成するために、前記出力は内側区域においてエッチング前処理のために高められる。
【0089】
エピタキシープロセスのために、例えば、54%又は64%の最適化された値が内側区域中の上側加熱エレメントの出力のために(全体のウェハにわたる均質な温度分布のために)得られた場合、エッチング前処理のためには66%又は72%の値が有利である。
【0090】
このエッチング前処理の場合、従って、エネルギー配分は、本発明の本質的の5〜30℃の温度差を達成するために、以前の最適値とは常に異なって選択される。
【0091】
表1からの配分66%/16%は、約20℃の温度差を生じる。この配分の変更は、特許請求の範囲に記載された全体範囲内での温度差の調節を可能にする。
【0092】
図2は、シリコンウェハの平均温度の関数としての、300mmの直径(従って−150mm〜+150ンの軸の表示)を有するシリコンウェハの材料除去を示す。この前処理工程の場合に、表1から66%/16%の配分が使用された。このシリコンウェハの内側区域と外側区域との間の温度差は、従って約20℃であった。
【0093】
前記シリコンウェハの中心(x軸=0)の周りの内側領域での材料除去は、明らかな温度依存性を示すことが明らかである。980℃又は1000℃又は1020℃の温度は、大抵の凸面状にポリシングされたシリコンウェハについての形状寸法を特に有利に修正するために特に適したエッチング除去プロフィールを示す。従って、この温度範囲は本発明による方法のために特に有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前面がポリシングされた複数のシリコンウェハを準備し、連続してエピタキシー反応器中でそれぞれ個別に被覆する、エピタキシャル被覆されたシリコンウェハの製造方法において、前記の準備されたシリコンウェハのそれぞれ一つをエピタキシー反応器中のサセプタ上に置き、第1工程で、水素雰囲気下でだけで1〜100slmの水素流量で前処理し、第2工程で、前記水素雰囲気にエッチング媒体を添加しながら、1〜100slmの水素流量で、0.5〜1.5slmのエッチング媒体の流量で、かつ950〜1050℃の平均温度で前処理し、引き続き前記シリコンウェハのポリシングされた前面をエピタキシャル被覆し、前記エピタキシー反応器から取り出し、前記前処理の第2工程において、前記サセプタの上側及び下側に配置された加熱エレメントの出力を、エピタキシャル被覆されるべきシリコンウェハの中心軸の周りの放射形対称の領域と前記シリコンウェハの前記領域の外側にある部分との間に5〜30℃の温度差があるように調節する、エピタキシャル被覆されたシリコンウェハの製造方法。
【請求項2】
前記水素流量は、両方の前処理工程において40〜60slmである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記前処理の時間は、両方の前処理工程において10〜120sである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
10〜20℃の温度差を、前記シリコンウェハ上に前記前処理の第2工程において生じさせる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
両方の前処理工程を、950〜1050℃の平均温度で行う、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記前処理の第2工程を、980〜1020℃の平均温度で行う、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
エピタキシャル被覆されるべきシリコンウェハの中心軸の周りの放射形対称の領域は、前記シリコンウェハの直径の50%以下の直径である、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
シリコンウェハは300mmの直径を有し、このエピタキシャル被覆されるべきシリコンウェハの中心軸の周りの放射形対称の領域は1〜150mmの直径を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
シリコンウェハは450mmの直径を有し、このエピタキシャル被覆されるべきシリコンウェハの中心軸の周りの放射形対称の領域は1〜250mmの直径を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記エピタキシー工程を950〜1200℃の温度範囲でかつシリコンウェハ及びサセプタに関して均一な温度分布で行う、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
加熱エレメントはIRランプである、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
準備されるシリコンウェハが、それぞれ150mm、200mm、300mm又は450mmの直径を有する、単結晶シリコンからなるウェハ、SOI(silicon-on-insulator)ウェハ、歪みシリコン層を備えたシリコンウェハ又はsSOI(strained silicon-on-insulator)ウェハである、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−199583(P2010−199583A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−34557(P2010−34557)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】