説明

エプラツズマブを用いる自己免疫疾患及び炎症性疾患の治療

本発明は、CD22に対する抗体を用いる自己免疫障害又は炎症性障害の治療に関する。特に、本発明は、新しい投与計画によるエプラツズマブを用いた自己免疫障害又は炎症性障害の治療に関する。より詳しくは、本発明はSLEの治療に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗CD22抗体、とりわけエプラツズマブ(epratuzumab)を用いる自己免疫疾患及び炎症性疾患、とりわけ全身性エリテマトーデスの治療に関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患は80を超える慢性疾患を含んでおり、一般集団の約5%〜8%が罹患する。最近数十年の間、免疫系の理解において大きな進歩があり、先天性免疫及び適応免疫の相互作用におけるB細胞の役割、リンパ球活性化及び抗原プロセシング、免疫寛容の原理、B細胞及びT細胞のクロストーク、サイトカインシグナル伝達、並びに同時刺激の遮断を含めたB細胞の枯渇又は調節による自己免疫疾患の治療という新規アプローチのより優れた評価をもたらしている。B細胞は、関節リウマチ、血清反応陰性脊椎関節炎、原発性シェーグレン症候群、血管炎、及び全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患の免疫病原性において最も重要であると考えられている。B細胞は、自己免疫疾患の治療のための標的である。現在まで、リツキシマブ(抗CD20キメラ抗体)、オクレリズマブ(ヒト化抗CD20抗体)、オファツムマブ(ヒト抗CD20抗体)、及びベリムマブ(抗BlyS又はBAFFヒト抗体)など、B細胞を枯渇させる又は調節するためにB細胞に特異的な抗原を標的にする数々の治療用抗体が存在している。リツキシマブを用いた臨床試験は、リツキシマブの短期投与計画の後に循環B細胞が検出できないことを指摘している。抗CD20抗体によるB細胞の枯渇は、自己免疫疾患の治療において新しい方法である。しかし、B細胞枯渇に伴う持続的な免疫抑制は、感染性疾患及び新生物疾患の発生率の増大に関して患者を危険にさらす。現在まで、限られた長期の安全性データが入手可能である。したがって、当技術分野において、治療の安全性を増大させるために、B細胞を大幅に枯渇させずにB細胞活性の調節を行う、関節リウマチ、SLE、シェーグレン症候群、又は血管炎などのB細胞の関与を有する自己免疫疾患のための治療を開発する必要性が存在する。
【0003】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、炎症性多系統リウマチ性障害又は膠原血管病として、多くの器官系に影響を及ぼし得る自己免疫疾患と分類されている。欧州及び米国において、推定罹患者数は、いくつかの研究において、人口100000人あたり24症例から65症例の範囲である。全身性エリテマトーデスに対する素因には、アジア人種又はアフリカ人種、及び女性が含まれる。全身性エリテマトーデスを有する患者の90%が女性であり、症状の開始は通常、年齢15歳から50歳の間に生じる。全身性エリテマトーデスは均一な疾患ではなく、広範囲の症状、身体系統の関与の程度、及び臨床経過を有する関連症状の一群であると考えられる。SLEに通常見られる臨床上の特徴には、血液及びリンパの障害(リンパ節症)、心臓障害(例えば、心筋症、心膜滲出液、心膜炎)、眼障害(例えば、乾性角結膜炎)、消化管障害(例えば、口腔潰瘍形成、膵炎、腹膜炎、咽頭炎)、全身障害(例えば、倦怠感、疲労、発熱、体重減少)、神経系障害(例えば、脳血管障害、認知障害、片頭痛、頭痛、末梢神経障害)、筋骨格系及び結合組織の障害(例えば、関節痛、関節炎(びらん性又は破壊性ではないもの)、線維筋痛症、骨折、筋肉炎、骨壊死、骨粗鬆症、骨減少症)、精神医学的障害(例えば、情動障害、不安、うつ、神経症、全身性の医学的状態による精神障害、精神病性障害)、腎臓及び泌尿器の障害(例えば、ループス腎炎、ネフローゼ症候群)、呼吸器、胸部、及び縦隔の障害(例えば、胸膜炎、間質性肺炎、肺高血圧症)、皮膚及び皮下組織の障害(例えば、脱毛症、皮膚エリテマトーデス、皮膚炎、全身化した紅斑、網状皮斑、皮下脂肪組織炎、斑点状丘疹の発疹、全身性エリテマトーデス発疹、じんま疹)、並びに血管障害(例えば、高血圧症、レイノー現象、末梢血管拡張、血小板減少症、血栓静脈炎、血管炎)がある。さらに、SLE患者のほとんどは、抗核(ANA)抗体及び抗二本鎖DNA(抗dsDNA)抗体の存在を含めた、異常な抗体パターンを示す。
【0004】
SLEの臨床経過は突発性であり、根底となる能力障害及び器官の損傷が増大する際に紅斑が繰り返し起こる。コルチコステロイドが治療の礎であるが、コルチコステロイドの長期間使用中に最も頻繁に見られる多数の副作用が付随する。低レベルの活性の状況において用いられる他の薬物には、鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、局所ステロイド、及び抗マラリヤ薬(例えば、クロロキン又はヒドロキシクロロキン)が含まれ、一般的な支持的薬物療法には、腎性高血圧又はレイノー症候群に対する血管拡張薬(カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬)、発疹又は乾燥症候群に対する局所治療、輸液、血球減少症に対する静脈内(i.v.)グロブリン、抗痙攣薬、抗片頭痛薬の薬物療法、再発性血栓症に対する抗凝固薬、及び抗うつ薬が含まれる。高投与量のコルチコステロイド、例えば、経口プレドニゾン(若しくは同等物)0.5から1.0mg/kg/日、又はメチルプレドニゾロン500mgから1gの毎日パルスi.v.が急性SLE紅斑を管理するのに用いられ、他の治療が無効である場合、又は疾患若しくはコルチコステロイドの使用から長期の主要器官の損傷を制限若しくは防止するのに、免疫抑制薬(例えば、アザチオプリン、シクロホスファミド、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド)が中等度及び重度の症例において一般的に用いられる(「ステロイド節約」)。限られた有効性及び/又は有害事象プロファイルのため、この現在の治療用装備は不十分である。安全性プロファイルが良好なSLEの新しい有効な治療の医学的必要性が高いにもかかわらず、これらの治療法の開発はとりわけ困難であることが証明されており、多くの治療候補が失敗している(Eisenberg、2009年)。
【0005】
シアロアドヘシンCD22は、末端のシアル酸残基でグリカンに対する結合を示す、免疫グロブリンスーパーファミリー内の一群の細胞接着分子のメンバーである。CD22は、細胞外免疫グロブリン様ドメイン7個、短い膜貫通配列、及びアミノ酸78個の細胞質側尾部を含む、130kDaのタンパク質である。CD22は、B細胞及びB細胞由来の腫瘍細胞上に唯一位置している細胞表面糖タンパク質である。B細胞を活性化すると細胞表面CD22の発現レベルが最初に増大するが、抗体産生細胞に分化するときにその後下方制御される。B細胞活性化におけるCD22の本質的な役割は、B細胞媒介性免疫反応を妨害する薬剤の開発に優れた可能性をもたらす。
【0006】
マウスモノクローナル抗体であるLL22(最初はEPB−2と命名された)は、ラジバーキットリンパ腫細胞に対して産生されるB細胞(CD22)特異的IgG2aモノクローナル抗体であり、正常なB細胞及びB細胞腫瘍に対して高度に選択的であるが、ホジキン病、固形腫瘍、又は非リンパ系組織とは反応性でないことが見出されている(Pawlak−Byczkowskaら、1989年)。LL22をキメラ化した後(Leungら、1994年)、ヒト化IgG1(κ)型のマウスLL22が臨床使用のために開発され、エプラツズマブ(hLL2)と命名された(Leungら、1995年)。エプラツズマブをコードする構築物は、ヒトIgG1遺伝子のバックボーンにおけるマウス親起源抗体の相補性決定領域(CDR)をグラフティングすることによって作製された。得られたエプラツズマブは、分子の約10%を含む抗原結合性部位のみにもとのマウス配列を含んでおり、残りはヒトフレームワーク配列である。
【0007】
エプラツズマブでの、限定的な非盲検第I相臨床試験が、原発性シェーグレン症候群(Steinfeldら、2006年)並びにSLE(Steinfeld及びYouinou、2006年)で行われている。両方の試験において、体表1mあたりエプラツズマブ360mgの投与量を隔週で1回、4回連続投与した投与計画を適用した。結果は、SLEに対するイギリス諸島ループス評価群(British Isles Lupus Assessment Group)(BILAG)スコアを含めたいくつかのパラメータによって決定された、上記の自己免疫障害の治療におけるエプラツズマブの臨床的有効性を示唆していた。関与したのが限られた数の患者であり、これらのパイロット試験にはプラセボ対照又は実薬対照のアームがなかったという事実のため、エプラツズマブの有効性を確証するために、特に自己免疫疾患及び炎症性疾患、とりわけSLEの治療においてエプラツズマブを使用するのに好ましい投与量及び投与計画を決定するために、さらなる試験が当然必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
活動性の疾患を有する、血清学的に陽性のSLE患者における、エプラツズマブの安全性及び有効性の、第IIb相無作為化二重盲検プラセボ対照投与量及び投与計画範囲探索臨床試験を行った。この試験を、UCB試験SL0007とする。
【0009】
興味深いことに、この試験は、SLEなどの炎症又は自己免疫疾患をエプラツズマブで治療した場合、投与した投与量と観察された有効性との間に非線形の関係が存在し、したがって最大レベルの投与量の投与が最も有効ではないことを指摘するものであった。実際、投与量と有効性との間の関係は、ベル型の分布とよりよく特徴付けられる。驚くべきことに、投与した最大の投与量では、有効性は中間の投与量で観察されたものよりも低く、全体的に、この高投与量の患者の反応はプラセボに対して観察されたものよりもわずかに高いにすぎなかった。さらに、8週及び12週のBILAG改善スコアを見ると、最大の投与量はプラセボよりも劣っていた。
【0010】
試験の結果、自己免疫疾患及び炎症性疾患、とりわけSLEの治療におけるエプラツズマブに対する新しい投与計画が現在見出されている。驚くべきことに、最良の結果をもたらす新しい投与計画は、治療を必要とする患者に対して最大投与量の投与を必要とせず、中間の投与量を必要とする。
【0011】
一実施形態において、本発明は、治療を必要とするヒト対象に、4週から20週、好ましくは8週から16週、より好ましくは12週の治療サイクルにおいて1週間に1回、4回にわたってエプラツズマブ又はエプラツズマブを含む組成物を投与することを含む投与計画において、400mgから800mg、好ましくは600mgの量のエプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を投与するステップを含む、ヒト対象における自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関する。
【0012】
さらに、この試験は、隔週で1回、治療計画において用いるのに最も有効な投与量を確立した。興味深いことに、隔週で1回投与した場合(投与1回あたり1200mg)でも、この投与量はプラセボを上回る統計学的に有意な有効性を示した。
【0013】
したがって、さらなる一実施形態において、本発明は、治療を必要とするヒト対象に、4週から20週、好ましくは8週から16週、より好ましくは12週の治療サイクルにおいて隔週で1回、2回にわたってエプラツズマブ又はエプラツズマブを含む組成物を投与することを含む投与計画において、1000mgから1400mg、好ましくは1200mgの量のエプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を投与するステップを含む、ヒト対象における自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関する。
【0014】
さらなる一実施形態において、本発明は、治療を必要とするヒト対象に、12週の治療サイクルの少なくとも1サイクルの間、1週間に1回、4回にわたって組成物を投与することを含む投与計画において、400mgから800mg、好ましくは600mgの量のエプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を投与するステップを含む、ヒト対象における自己免疫障害又は炎症性障害、とりわけ関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、血管炎、又はシェーグレン症候群を治療する方法に関する。
【0015】
さらなる一実施形態において、本発明は、治療を必要とするヒト対象に、12週の治療サイクルにおいて、隔週で1回、2回にわたって組成物を投与することを含む投与計画において、1000mgから1400mg、好ましくは1200mgの量のエプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を投与するステップを含む、ヒト対象における自己免疫障害又は炎症性障害、とりわけ関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、血管炎、又はシェーグレン症候群を治療する方法に関する。
【0016】
さらなる一実施形態において、本発明は、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を投与するステップを含む、ヒト対象における自己免疫疾患又は炎症性疾患、とりわけ関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、血管炎、又はシェーグレン症候群を治療する方法に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を、1週間に1回又は隔週で1回エプラツズマブ2400mgの蓄積投与量で、好ましくは1週間に1回、4回にわたってエプラツズマブ600mgの投与量で、又は隔週で1回、2回にわたってエプラツズマブ1200mgの投与量で投与する。
【0017】
さらなる一実施形態において、本発明は、(a)本発明の実施形態のいずれかにおいて記載される量のエプラツズマブ、及びそれぞれ本発明の実施形態のいずれかに記載の(a)の組成物を投与するための指示を含むキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】試験デザインを示す図である。BILAG2004装置(instrument)によって確定された高度中等度から重度の疾患活動性を有する患者を、2週間以内のスクリーニング期間、1週間に1回盲検化した輸液を全4回投与する、二重盲検プラセボ対照無作為化補助的治療デザインにおいて治療した。患者は、アメリカリウマチ学会基準(American College of Rheumatology Criteria)及びSLEの検査マーカー(例えば、抗核抗体に対して陽性)の両方によってSLEの確定診断を有することが必要とされた。フォローアップの安全性及び有効性評価を4週毎に行った。主要エンドポイント(合わせた指標反応(Combined Index Response))を12週目に測定した。コルチコステロイドを漸減する必要はなかった。試験は、治療アーム間で個々に統計的に比較するために強化しなかった。試験の目的は、多くの異なる投与レベルからデータを集めることによって全体の投与量の反応を予期し、したがって最良のエプラツズマブの投与量及び投与計画の同定を可能にすることであった。
【図2】主要有効性エンドポイントに基づく包括解析(ITT)集団における12週目の合わせた指標反応を示す図である。エプラツズマブ1200mgを隔週で1回(EOW)投与したアームにおける患者37人中2人は無作為化したが投与しなかった。主要分析において、治療期間を早期に終了した対象を非反応者と分類する。95%信頼区間(CI)を示す。
【図3】12週目の合わせた指標反応率(主要有効性変数)によって決定した、ITT集団における反応者のパーセント値を示す図である。エプラツズマブ(Emab)1200mgを隔週で1回(EOW)投与したアームにおける患者37人中2人は無作為化したが投与しなかった。主要分析において、治療期間を早期に終了した対象を非反応者と分類する。主要分析において評価した、全体の治療効果に対する全6個の治療アームに対するP値はP=0.148であり、P値は多重比較に対して調整していない。
【図4】ロジスティック回帰分析によって分析した、包括解析(ITT)群における12週目の合わせた指標反応を示す図である。治療期間を早期に終了した対象を非反応者と分類した。治療群、ベースライン時の疾患の重症度、及びベースライン時の併用の免疫抑制薬の使用に対するファクターを有するロジスティックモデルを適用した。エプラツズマブ1週間に1回600mgを、投与量効果に対するオッズ比を決定する目的で、投与量1200mgとして分析した。95%信頼区間(CI)を示す。
【図5】8週目及び12週目の合わせた指標反応率によって決定した反応者のパーセント値を示す図である。すでに、Emab1週間に1回600mg(QW)及びEmab隔週で1回1200mg(EOW)での治療アームにおける8週目の反応は、他の治療アームより良好である。
【図6】ロジスティック回帰分析によって分析した、ITT群における12週目の合わせた指標反応を示す図である。12週目のデータのない対象は、繰り越された最後の観察(LOCF)によって帰属させられる。治療群、ベースライン時の疾患の重症度、及びベースライン時の併用の免疫抑制薬の使用に対する因子を用いたロジスティックモデルを適用した。95%信頼区間(CI)を示す。
【図7】来所によるBILAG改善を示す図である。試験エントリー時のBILAG「A」スコアが「B」、「C」、「D」スコアに改善し、試験エントリー時のBILAG「B」スコアが「C」又は「D」スコアに改善したものをBILAG改善と定義した。さらに、患者は他のBILAG器官系において「BILAG悪化なし」でなければならず、したがって新たなBILAG「A」スコアが存在せず、又は2つの新たなBILAG「B」スコアが存在しない。
【図8】ベースライン〜12週目からのBILAG全スコア−最小二乗法平均値変化を示す図である。治療群、ベースラインの全BILAGスコア、及びベースライン時の疾患の重症度、及びベースライン時の併用の免疫抑制薬の使用に対する効果を有するANCOVAモデルをさらに示す。
【図9】ITT群におけるBILAG全スコア−経時の平均スコアを示す図である。
【図10】6個の治療アームとプラセボとの間のオッズ比、並びに95%信頼区間(CI)を示す図である。オッズ比及び95%CIは、Emab1週間に1回600mg(QW)及びEmab隔週で1回1200mg(EOW)での治療アームでは、他の治療アームに比べて有意に高い。
【図11】治療アームにおける12週目のBILAG及びBILAG改善の増強を示す図である。BILAG改善は、試験エントリー時のBILAG AがB/C/Dに改善し、試験エントリー時のBILAG BがC/Dに改善したものと定義する。さらに、患者は他のBILAG器官系において「BILAG悪化なし」でなければならず、したがって新たなBILAG Aが存在せず、又は2つの新たなBILAG Bが存在しない。BILAG反応の増強は、試験エントリー時のBILAG AがC/Dに改善し、試験エントリー時のBILAG BがC/Dに改善したものと定義する。さらに、BILAG反応の増強に対して、患者は他のBILAG器官系において「BILAG悪化なし」でなければならず、したがって新たなBILAG Aが存在せず、又は2つの新たなBILAG Bが存在しない。Emab1週間に1回600mg(QW)及びEmab隔週で1回1200mg(EOW)での治療アームは、12週目に明らかなBILAG反応及びBILAG反応の増強を示した。
【図12】エプラツズマブの軽鎖のアミノ酸配列を示す図である(配列番号1)。
【図13】エプラツズマブの重鎖のアミノ酸配列を示す図である(配列番号2)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、エプラツズマブの投与が有益である自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関する。本発明の様々な実施形態は、自己免疫疾患又は炎症性疾患のエプラツズマブを用いる治療に関する。
【0020】
活動性の疾患を有する、血清学的陽性のSLE患者における、エプラツズマブの安全性及び有効性の、第IIb相無作為化二重盲検プラセボ対照投与量及び投与計画範囲探索臨床試験を行った。
【0021】
エプラツズマブ治療アームは全て、12週目の治療サイクル後に測定した主要エンドポイント時に、プラセボに比べて優れた反応率を有する。驚くべきことに、エプラツズマブでの治療に対する最良の反応は、特定の投与量及び投与計画で達成された。最も有効な投与量及び投与計画は、試験した蓄積投与量の最大である3600mgを必要とせず、わずか2400mgの蓄積投与量しか必要としなかった。1週間に1回600mgを4回及び隔週で1回1200mgを2回の投与計画の両方とも、他の試験アームに比べて有意に高い有効性を示した。それでもやはり、200mgほどの低い蓄積投与量が、試験において有効性を示した。
【0022】
活動性のSLEを有する患者における反応に関する最大の効果は、12週の治療サイクルにおいてエプラツズマブ1週間に1回600mgを4回の投与で達成した。
【0023】
本発明がより容易に理解され得るために、ある種の語を最初に定義する。
【0024】
本明細書で用いる「投与(dosing)」の語は、治療目的(例えば、自己免疫疾患若しくは炎症性疾患の治療)を達成するための、物質(例えば、エプラツズマブ)、又はそれを含む医薬組成物の投与を意味する。
【0025】
本明細書で用いる「蓄積投与量」の語は、12週の1治療サイクルの間など、規定された期間にわたって投与される全量のエプラツズマブを意味する。
【0026】
本明細書で用いる「1週間に1回」の語は、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物での治療、その投与(administration)、又はその投与(dosing)に関して、エプラツズマブ、又は前記組成物を5日、6日、又は好ましくは7日毎に投与することを意味する。
【0027】
本明細書で用いられる「隔週で1回」の語は、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物での治療、その投与(administration)、又はその投与(dosing)に関して、エプラツズマブ、又は前記組成物を9日〜19日毎、より好ましくは11日〜17日毎、さらにより好ましくは13日〜15日毎、最も好ましくは14日毎に投与することを意味する。隔週で1回投与での投与計画には、1週間に1回の投与の投与計画は含まれないものとする。
【0028】
本明細書で用いられる「治療サイクル」の語は、エプラツズマブを投与し、その後エプラツズマブを投与しない期間が続く期間を意味する。典型的には、12週の治療サイクルにおいて、エプラツズマブを、治療を必要とするヒト対象に、12週の治療サイクルの最初の4週以内に投与し[例えば、1週間に1回を4回(即ち、最初の4週以内に1週間に1回の投与を4投与)、又は隔週で1回投与し(即ち、最初の4週以内に隔週で1回の投与を2投与)]、その後治療サイクルの最後の8週までエプラツズマブを投与しない。
【0029】
本明細書で用いられる「エプラツズマブ」の語は、当技術分野において国際一般的名称(INN)の下エプラツズマブで知られており、米国特許第5,789,554号においてヒト化LL2と記載されるヒト化抗体を意味する。エプラツズマブは、配列番号1において示すアミノ酸配列を有する軽鎖及び配列番号2において示すアミノ酸配列を有する重鎖を有する。
【0030】
「BILAGスコア」又は「BILAG」指標の語は、それぞれイギリス諸島ループス評価群スコア及び指標を意味する。BILAG指標は、SL0007試験においてSLEを有する患者における治療の有効性を評価するのに用いた。BILAG指標は、SLE疾患の活動性を測定するための包括的な指標である。BILAG指標の2004バージョンを試験に用いた(Eisenberg、2009年;Isenbergら、2005年)。このバージョンは、8つの身体系統(全身、皮膚粘膜、神経、筋骨格、心血管及び呼吸器、血管炎、腎臓、並びに血液学的)における86の質問からなる。いくつかの質問は患者の病歴に基づくものであり、いくつかは試験所見に基づき、他は検査結果に基づくものであった。各身体系統スコアはEからAまでの範囲であり、Aが最も重度な疾患活動性である。身体系統スコアの解釈は以下の通りである:A(「活動性」)=重度に活動性の疾患(疾患修飾性の治療、例えば、20mg/日を超えるプレドニゾン、免疫抑制薬、細胞毒を必要とするのに十分である);B(「注意(Beware)」=中等度に活動性の疾患(対症治療のみを必要とする、例えば、20mg/日以下のプレドニゾン又は抗マラリヤ薬;C(「満足」)=軽度の安定した疾患(治療の変更に対する指示なし);D=以前に活動性の疾患があったが現在はない;E=前の疾患活動性がない。BILAGアルファベット式器官身体系統スコアを数値に変換し、合計する場合(各BILAG A=9、各BILAG B=3、各BILAG C=1、及び各BILAG D又はEは0のルールを用いて)、これはBILAG合計スコアを意味する。
【0031】
「SLEDAIスコア」又は「SLEDAI」指標の語は、全身性エリテマトーデス疾患活動性スコア/指標をそれぞれ意味する(Hawkerら、1993年)。
【0032】
本明細書で用いられる「自己免疫疾患(単数若しくは複数)」、又は「炎症性疾患(単数若しくは複数)」の語は、B細胞が疾患の病理及び/又は症状に関係する自己免疫疾患又は炎症性疾患を意味する。このような自己免疫疾患及び炎症性疾患は、B細胞媒介性自己免疫疾患又は炎症性疾患とも呼ばれることがあり、B細胞が、様々な自己免疫疾患又は炎症性疾患の病理における役割を果たすことと関係づけられている(Browning、2006年;Browning、2006年)。例えば、自己免疫疾患及び炎症性疾患には、それだけには限定されないが、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、ANCA関連血管炎、抗リン脂質症候群、特発性血小板減少性紫斑、自己免疫性溶血性貧血、ギランバレー症候群、慢性免疫性多発ニューロパチー、自己免疫性甲状腺炎、I型糖尿病、アジソン病、膜性糸球体腎症、グッドパスチャー病、自己免疫性胃炎、悪性貧血、尋常性天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、皮膚筋炎−多発性筋炎、重症筋無力症、セリアック病、免疫グロブリンA腎症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、慢性移植片拒絶、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー、全身性強皮症、多発性硬化症、ライム神経ボレリア症、潰瘍性大腸炎、間質性肺疾患が含まれる。
【0033】
第一の実施形態において、本発明は、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブは、4週から20週、好ましくは8週から16週、例えば、9、10、11、12、13、14、又は15週、より好ましくは12週の治療サイクルにおいて1週間に1回、4回にわたって400mgから800mgの量で投与するためのものである。
【0034】
第二の実施形態において、本発明は、本発明の第一の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は、500mgから700mgの量で投与するためのものである。
【0035】
第三の実施形態において、本発明は、本発明の第二の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は、550mgから650mgの量で投与するためのものである。
【0036】
第四の実施形態において、本発明は、本発明の第三の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は、600mgの量で投与するためのものである。
【0037】
第五の実施形態において、本発明は、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブらを含む組成物は、4週から20週、好ましくは8週から16週、例えば、9、10、11、12、13、14、又は15週、より好ましくは12週の治療サイクルにおいて隔週で1回、2回にわたって1000mgから1400mgの量で投与するためのものである。
【0038】
第六の実施形態において、本発明は、本発明の第五の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は1100mgから1300mgの量で投与するためのものである。
【0039】
第七の実施形態において、本発明は、本発明の第六の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は1150mgから1250mgの量で投与するためのものである。
【0040】
第八の実施形態において、本発明は、本発明の第七の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は1200mgの量で投与するためのものである。
【0041】
SLEを含む炎症性疾患及び自己免疫疾患などの慢性疾患の治療は、治療サイクルの繰返しを伴うことがある。治療サイクルは、例えば、数年にわたって繰り返されてよく、例えば、本明細書に開示する12週の治療サイクルが、炎症性疾患及び自己免疫疾患の治療のために繰り返されてよい。
【0042】
したがって、第九の実施形態において、本発明は、本発明の第一から第八の実施形態のいずれか一つによる自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は、4週から20週、好ましくは8週から16週、より好ましくは12週の治療サイクルの複数サイクルにおいて投与するためのものである。
【0043】
第十の実施形態において、本発明は、本発明の第一から第九の実施形態のいずれか一つによる自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は静脈内投与するためのものである。
【0044】
第十一の実施形態において、本発明は、本発明の第十の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は、8から12mg/ml、好ましくは9から11mg/ml、好ましくは10mg/mlの濃度のエプラツズマブを投与するためのものである。
【0045】
第十二の実施形態において、本発明は、本発明の第一から第九の実施形態のいずれか一つによる自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は皮下投与するためのものである。
【0046】
第十三の実施形態において、本発明は、本発明の第一から第九の実施形態のいずれか一つによる自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は筋肉内投与するためのものである。
【0047】
第十四の実施形態において、本発明は、本発明の第十三の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、疾患は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、又は血管炎である。
【0048】
第十五の実施形態において、本発明は、本発明の第一から第十四の実施形態のいずれか一つによる自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は、10週から14週、好ましくは12週の治療サイクルの少なくとも2サイクルにおいて投与するためのものである。さらなる実施形態において、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は、本発明による、治療サイクルの終生の繰返しを含めた、3、4、5、6、7、8、10、12、15、20、30、40、50、又はそれを超える治療サイクルにおいて投与するためのものである。
【0049】
第十六の実施形態において、本発明は、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を投与することを含む、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は、4週から20週、好ましくは8週から16週、例えば、9、10、11、12、13、14、又は15週、より好ましくは12週の治療サイクルにおいて、1週間に1回又は隔週で1回、エプラツズマブ蓄積投与量2400mgを投与するためのものである。
【0050】
第十七の実施形態において、本発明は、本発明の第十六の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は、1週間に1回エプラツズマブ600mgの投与量で、又は隔週で1回エプラツズマブ1200mg投与量で投与するためのものである。
【0051】
第十八の実施形態において、本発明は、本発明の第十七の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、自己免疫疾患又は炎症性疾患は、関節リウマチ、SLE、シェーグレン症候群、又は血管炎である。
【0052】
第十九の実施形態において、本発明は、本発明の第十七又は第十八の実施形態のいずれか一つによる自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は、4週から20週、好ましくは8週から16週、例えば、9、10、11、12、13、14、又は15週、より好ましくは12週の治療サイクルの複数サイクルにおいて投与するためのものである。
【0053】
第二十の実施形態において、本発明は、(a)本発明の第一から第一九の実施形態のいずれか一つに記載の量のエプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物、及びそれぞれ本発明の第一から第一九の実施形態のいずれか一つによる(a)のエプラツズマブを投与するための指示を含むキットに関する。
【0054】
第二十一の実施形態において、本発明は、他の活性化合物と組み合わせて、自己免疫疾患又は炎症性疾患、とりわけ関節リウマチ、SLE、シェーグレン症候群、血管炎の治療において用いるための、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を提供する。
【0055】
第二十二の実施形態において、本発明は、4週から20週、好ましくは8週から16週、例えば、9、10、11、12、13、14、又は15週、より好ましくは12週の治療サイクルにおいて1週間に1回、4回にわたってエプラツズマブを投与することを含む投与計画において、400mgから800mgの量で、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を、治療を必要とするヒト対象に投与するステップを含む、ヒト対象における自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関する。
【0056】
第二十三の実施形態において、本発明は、本発明の第二十二の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を500mgから700mgの量で投与する。
【0057】
第二十四の実施形態において、本発明は、本発明の第二十三の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を550mgから650mgの量で投与する。
【0058】
第二十五の実施形態において、本発明は、本発明の第二十四の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を600mgの量で投与する。
【0059】
第二十六の実施形態において、本発明は、4週から20週、好ましくは8週から16週、例えば、9、10、11、12、13、14、又は15週、より好ましくは12週の治療サイクルにおいて隔週で1回、2回にわたってエプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を投与することを含む投与計画において、1000mgから1400mgの量で、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を、治療を必要とするヒト対象に投与するステップを含む、ヒト対象における自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関する。
【0060】
第二十七の実施形態において、本発明は、本発明の第二十六の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を1100mgから1300mgの量で投与する。
【0061】
第二十八の実施形態において、本発明は、本発明の第二十七の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を1150mgから1250mgの量で投与する。
【0062】
第二十九の実施形態において、本発明は、本発明の第二十八の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を1200mgの量で投与する。
【0063】
SLEを含む炎症性疾患及び自己免疫疾患などの慢性疾患の治療は、治療サイクルの繰返しを伴うことがある。治療サイクルは、例えば、数年にわたって繰り返されてよく、例えば、本明細書に開示する12週の治療サイクルが、炎症性疾患及び自己免疫疾患の治療のために繰り返されてよい。
【0064】
したがって、第三十の実施形態において、本発明は、本発明の第二十二から第二十九の実施形態のいずれか一つによる自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、治療方法は、4週から20週、好ましくは8週から16週、より好ましくは12週の治療サイクルの複数サイクルを含む。
【0065】
第三十一の実施形態において、本発明は、本発明の第二十二から第三十の実施形態のいずれか一つによる自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を静脈内投与する。
【0066】
第三十二の実施形態において、本発明は、本発明の第三十一の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、組成物中のエプラツズマブは、8から12mg/ml、好ましくは9から11mg/ml、好ましくは10mg/mlのエプラツズマブ濃度である。
【0067】
第三十三の実施形態において、本発明は、本発明の第二十二から第三十の実施形態のいずれか一つによる自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を皮下投与する。
【0068】
第三十四の実施形態において、本発明は、本発明の第二十二から第三十の実施形態のいずれか一つによる自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を筋肉内投与する。
【0069】
第三十五の実施形態において、本発明は、本発明の第二十二から第三十四の実施形態のいずれか一つによる自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、疾患は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、又は血管炎である。
【0070】
第三十六の実施形態において、本発明は、本発明の第二十二から第三十五の実施形態のいずれか一つによる自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、投与計画は、10週から14週、好ましくは12週の治療サイクルの少なくとも2サイクルを含む。さらなる実施形態において、治療は、本発明による、治療サイクルの終生の繰返しを含めた、3、4、5、6、7、8、10、12、15、20、30、40、50、又はそれを超える治療サイクルを含む。
【0071】
第三十七の実施形態において、本発明は、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を投与することを含む、自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を、4週から20週、好ましくは8週から16週、例えば、9、10、11、12、13、14、又は15週、より好ましくは12週の治療サイクルにおいて、1週間に1回、又は隔週で1回、蓄積投与量2400mgのエプラツズマブを投与する。
【0072】
第三十八の実施形態において、本発明は、本発明の第三十七の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物を、1週間に1回エプラツズマブ600mgの投与量で、又は隔週で1回エプラツズマブ1200mgの投与量で与する。
【0073】
第三十九の実施形態において、本発明は、本発明の第三十八の実施形態による自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、自己免疫疾患又は炎症性疾患は、関節リウマチ、SLE、シェーグレン症候群、又は血管炎である。
【0074】
第四十の実施形態において、本発明は、本発明の第三十八又は第三十九の実施形態のいずれか一つによる自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法に関し、治療方法は、4週から20週、好ましくは8週から16週、例えば、9、10、11、12、13、14、又は15週、より好ましくは12週の治療サイクルの複数サイクルを含む。
【0075】
第四十一の実施形態において、本発明は、(a)本発明の第二十二から第四十の実施形態のいずれか一つに記載した量のエプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物、及びそれぞれ本発明の第一から第十九の実施形態のいずれか一つによる(a)のエプラツズマブを投与するための指示を含むキットに関する。
【0076】
第四十二の実施形態において、本発明は、他の活性化合物と組み合わせて自己免疫疾患又は炎症性疾患、とりわけ関節リウマチ、SLE、シェーグレン症候群、血管炎を治療するための方法を提供する。
【0077】
さらなる一実施形態において、さらなる活性化合物が、本発明によるエプラツズマブを含む組成物中に組み入れられる。ある実施形態において、エプラツズマブは、1つ又は複数のさらなる治療薬と同時に処方され、及び/又は同時投与される。例えば、エプラツズマブは、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、メトトレキセート、レフルノミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、クロラムブシル、及びシクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、CD20アンタゴニスト、例えば、リツキシマブ、オクレリズマブ、ベルツズマブ又はオファツムマブ、アバタセプト、TNFアンタゴニスト、例えば、エタネルセプト、タクロリムス、デヒドロエピアンドロステロン、レナリドマイド、CD40アンタゴニスト、例えば、抗CD40L抗体、アベチムスナトリウム(abetimus sodium)、及び/又はベリムマブと同時に処方され、及び/又は同時投与されてよい。
【0078】
さらなる一実施形態において、エプラツズマブ、又はエプラツズマブを含む組成物は、1つ又は複数の先の治療薬と組み合わせて、本発明の実施形態にしたがって用いることができる。このような組合せ療法は、投与する治療薬のより低い投与量を有利に利用することができ、したがって様々な単独療法に付随する可能な毒性又は合併症を避けることができる。
【0079】
本発明の方法により用いるためのエプラツズマブは、誘導体化することができ、又は別の機能性分子(例えば、毒素又は放射性核種)と連結することができる。したがって、本発明の抗体及び抗体部分は、本明細書に記載するエプラツズマブの誘導体型及び他の方法の修飾型を含むものとされる。例えば、エプラツズマブは、検出薬、細胞毒性薬、薬剤、及び/又はエプラツズマブの別の分子(例えば、ストレプトアビジンのコア領域若しくはポリヒスチジンタグ)との会合を媒介することができるタンパク質若しくはペプチドなどの1つ又は複数の他の分子実体に(化学的結合、遺伝子融合、非共有性の会合、若しくはその他の方法によって)機能的に連結していてよい。
【0080】
本発明の方法により用いるためのエプラツズマブは、細胞毒性薬(例えば、ジフテリア毒素、メイタンシン、メイタンシノイド、ドキソルビシン、カリケアマイシン、オゾガマイシン、オーリスタチン、オーリスタチンの誘導体(例えば、モノメチルオーリスタチン)、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、リシン(ricin)、リシンA鎖、ブリン(brin)、アブリン、セイヨウヤドリギのレクチン、モデシン(modeccin)、ヨウシュヤマゴボウの抗ウイルスタンパク質、PAP、サポリン、ブリオジン1、ブーガニン、ゲロニン、若しくはαサルシンなどの毒素)、放射性核種(例えば、スカンジウム−47、銅−64、銅−67、ガリウム−67、イットリウム−90、イットリウム−91、パラジウム−103、ロジウム−105、インジウム−111、スズ−117、ヨウ素−125、ヨウ素−131、サマリウム−153、ジスプロシウム−166、ホルミウム−166、イッテルビウム−175、レニウム−186、レニウム−188、ルテチウム−177、イリジウム−192、オスミウム−194、金−198、若しくはビスマス−213)、又はサイトカイン(例えば、IL−2若しくはTNF)などの別の薬剤に場合によりコンジュゲートしている。本発明の方法により用いるためのエプラツズマブはまた、化学療法薬、治療用ポリペプチド、ナノ粒子、リポソーム若しくは治療用核酸などの治療用薬剤に、又は酵素、放射性核種、若しくはフルオロフォアなどの造影剤にコンジュゲートしていてもよい。
【0081】
エプラツズマブは、宿主細胞における免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖の遺伝子の組換え発現によって調製することができる。抗体を組換えで発現させるために、宿主細胞中で軽鎖及び重鎖が発現され、好ましくは宿主細胞が培養されている培地中に分泌され、その培地から抗体が回収され得るように抗体の免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖をコードするDNAフラグメントを保有する1つ又は複数の組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトする。Sambrook、Fritsch、及びManiatis(編集)、「分子クローニング;検査室マニュアル(Molecular Cloning;A Laboratory Manual)」、第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.、(1989年)、Ausubel,F.M.ら(編集)「分子生物学における最新のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、Greene Publishing Associates、(1989年)、並びに米国特許第4,816,397号に記載されているものなど、標準の組換えDNA法を用いて抗体の重鎖及び軽鎖の遺伝子を得、これらの遺伝子を組換え発現ベクター中に組み入れ、ベクターを宿主細胞中に導入する。
【0082】
エプラツズマブを発現させるために、当技術分野では知られている組換えDNA技術によって得られた軽鎖及び重鎖をコードするDNAを、遺伝子が転写及び翻訳の調節配列に作動可能に連結するように発現ベクター中に挿入する。この文脈において「作動可能に連結する」の語は、抗体遺伝子がベクター中にライゲートされ、したがってベクター内の転写及び翻訳の調節配列が、エプラツズマブ遺伝子の転写及び翻訳を制御するこれらの意図される機能を果たすことを意味するものとされる。発現ベクター及び発現調節配列は、用いる発現宿主細胞と適合性であるように選択される。エプラツズマブ軽鎖遺伝子及びエプラツズマブ重鎖遺伝子を別々のベクター中に挿入することができ、又は、より典型的には、両方の遺伝子とも同じ発現ベクター中に挿入する。抗体遺伝子を、標準方法(例えば、エプラツズマブ遺伝子フラグメント及びベクター上の相補性制限部位のライゲーション、又は制限部位が存在しない場合は平滑末端のライゲーション)によって発現ベクター中に挿入する。組換え発現ベクターは、宿主細胞から抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗体鎖遺伝子を、シグナルペプチドがエプラツズマブ鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結するように、ベクター中にクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドであってもよく、又は異種性のシグナルペプチド(即ち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)であってもよい。
【0083】
エプラツズマブの抗体鎖遺伝子の他に、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中で抗体鎖遺伝子の発現を調節する制御配列を保有する。「制御配列」の語は、プロモーター、エンハンサー、及び抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を調節する他の発現調節エレメント(例えば、ポリアデニレーションシグナル)を含むものとされる。このような制御配列は、例えば、Goeddel、「遺伝子発現技術;酵素学における方法(Gene Expression Technology:Methods in Enzymology)」、185、Academic Press、San Diego、カリフォルニア州、(1990年)に記載されている。当業者であれば、制御配列の選択を含めた発現ベクターのデザインは、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどのファクターに依存し得ることを理解されよう。哺乳動物の宿主細胞の発現に好ましい制御配列には、サイトメガロウイルス(CMV)に由来するプロモーター及び/又はエンハンサー(例えば、CMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)に由来するプロモーター及び/又はエンハンサー(例えば、SV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルスに由来するプロモーター及び/又はエンハンサー(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、及びポリオーマに由来するプロモーター及び/又はエンハンサーなど、哺乳動物細胞において高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメントが含まれる。
【0084】
抗体鎖遺伝子及び制御配列の他に、組換え発現ベクターは、宿主細胞中でベクターの複製を制御する配列(例えば、複製開始点)、及び選択マーカー遺伝子など、さらなる配列を保有していてよい。選択マーカー遺伝子は、その中にベクターが導入される宿主細胞の選択を促進する(例えば、米国特許第5,179,017号を参照されたい)。
【0085】
軽鎖及び重鎖を発現させるために、重鎖及び軽鎖をコードしている発現ベクター(単数又は複数)を、標準法によって宿主細胞中にトランスフェクトする。様々な形態の「トランスフェクション」の語は、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降、DEAE−デキストラントランスフェクションなど、外来性のDNAを原核生物又は真核生物の宿主細胞中に導入するのに通常用いられる広範囲の技術を包含するものとされる。本発明の抗体を原核生物又は真核生物いずれかの宿主細胞中で発現させるのは理論的に可能であるが、真核細胞、最も好ましくは哺乳動物の宿主細胞中での抗体の発現が最も好ましい、というのはこのような真核細胞、とりわけ哺乳動物の細胞は、適切にフォールディングされ、免疫学的に活性な抗体をアセンブリ及び分泌する可能性が原核細胞よりも高いからである。
【0086】
本発明の方法により用いるための組換えのエプラツズマブを発現するのに好ましい哺乳動物の宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、NSOミエローマ細胞、COS細胞、及びSP2細胞が含まれる。抗体遺伝子をコードしている組換えの発現ベクターを哺乳動物の宿主細胞中に導入する場合、抗体を、宿主細胞中で抗体を発現させるのに十分な期間宿主細胞を培養することによって生成し、又はより好ましくは宿主細胞を増殖する培地中に抗体を分泌させる。抗体を、標準のタンパク質精製法を用いて培地から回収することができる。
【0087】
エプラツズマブの組換え発現に好ましい一システムにおいて、抗体重鎖及び抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターを、リン酸カルシウムが媒介するトランスフェクションによってdhfr−CHO細胞中に導入する。組換え発現ベクター内では、抗体重鎖及び抗体軽鎖の遺伝子は、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター制御エレメントに各々作動可能に連結して、遺伝子の高レベルの転写を駆動する。この組換え発現ベクターはDHFR遺伝子も保有しており、この遺伝子は、メトトレキセート分泌/増幅を用いてベクターをトランスフェクトしているCHO細胞の選択を可能にする。選択された形質転換体の宿主細胞を培養して抗体重鎖及び軽鎖を発現させ、インタクトな抗体を培地から回収する。標準の分子生物学技術を用いて、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培地から抗体を回収する。
【0088】
本発明の実施形態による方法のためにヒト対象に投与するのに適する好ましい組成物は、エプラツズマブ、及び薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定化剤を含んでいる。本明細書で用いられる「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合性であり、本明細書に記載する方法のために対象に投与するのに適するあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤などが含まれる。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベン若しくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(アミノ酸残基約10個以下)ペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む、単糖、二糖、及び他の炭水化物;キレート化剤、例えば、EDTA;糖、例えば、ショ糖、マンニトール、トレハロース、又はソルビトール;塩形成性の対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);並びに/或いは非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN、PLURONICS、又はポリエチレングリコールが含まれる。
【0089】
治療用組成物は典型的に、無菌でなければならず、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならない。組成物は、溶液又は凍結乾燥の形態において調合することができる。
【0090】
エプラツズマブは、本発明の投与計画による投与量で自己免疫疾患又は炎症性疾患、とりわけ関節リウマチ、リウマチ様脊椎炎、血清反応陰性脊椎関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、血管炎、アレルギー、多発性硬化症、I型糖尿病、自己免疫性ぶどう膜炎、及びネフローゼ症候群を治療するのに用いることができる。
【0091】
本明細書の文脈における含んでいる(comprising)は、含んでいる(including)を意味するものとされる。
【0092】
技術的に好適である場合、本発明の実施形態を組み合わせることができる。
【0093】
次に、本発明を以下の実施例を参照して記載するが、これらは例示的なものにすぎず、本発明の範囲を限定するものと決して解釈すべきでない。
【実施例】
【0094】
(例1)
エプラツズマブの安全性及び有効性の第IIb相無作為化二重盲検プラセボ対照、投与量及び投与計画範囲探索試験における、活動性疾患を有するSLE患者の治療。
【0095】
本試験において、活動性のSLEを有する患者189人を、以下のスキームにしたがってエプラツズマブで治療した。38人の患者はプラセボで治療した。
【表1】

【0096】
エプラツズマブを、ヒト化抗体の配列を含むベクターをトランスフェクトした哺乳動物細胞系(SP2/0ミエローマ細胞)中で生成した。抗体生成性細胞を、調節されているバイオリアクターにおいて、懸濁液中で増殖させた。細胞を回収し、抗体を一連のクロマトグラフィーのステップを用いて精製した。精製プロセスには、複数の不活性化、並びにウイルス、レトロウイルス、及び細菌の汚染を確実になくすための除去ステップが含まれる。エプラツズマブを、0.075%ポリソルベート80を含む0.04Mリン酸ナトリウム−0.15M塩化ナトリウム、pH7.4バッファー中調合した。エプラツズマブは、単回使用剤形において0.075%ポリソルベート80を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)中9mg/mLから11mg/mLのタンパク質濃度で、バイアル中、無菌で無色澄明な保存料を含まない液体製剤として用いた。
【0097】
エプラツズマブを、低速注入(≦1時間)として静脈内(i.v.)投与した。エプラツズマブはボーラスとして投与すべきでない。注入の間に有害反応が観察される場合は、治療担当の医師が好適であるとみなす限り、注入速度を遅くしてもよく、中断してもよく、又は終了してもよい。
【0098】
本試験に参加していた患者の平均疾患活動性スコア(合計BILAGスコア[A=9である場合])は15.2であり、SLEDAIスコアの平均は14.8であった。ベースライン時、患者の70%が重度の活動性SLE疾患であり、30%が中等度の活動性SLE疾患であった。
【0099】
SL0007試験の臨床エンドポイントは、試験12週目の合わせた反応指標(Combined Response Index)によって決定した反応であった。以下の診断基準の全てが、合わせた反応指標にしたがって、反応者について満たされている必要があった。
−BILAG改善:試験エントリー時の全てのBILAGスコア「A」(重度の身体系統)がスコア「B」、「C」、又は「D」に改善し、試験エントリー時の全てのBILAGスコア「B」(中等度の身体系統)がスコア「C」又は「D」に改善していることが必要とされた。
−BILAG悪化なし:他の身体系統においてBILAGスコアが悪化していてはならず、したがって新たなBILAG「A」スコアが存在せず、又は2つの新たなBILAG「B」スコアが存在しない。
−試験エントリー時に比べて、SLEDAI合計スコアの悪化は許容されなかった。
−試験エントリー時に比べて100mmVASに対する10%未満の悪化によって規定される、医師の包括的な疾患活動性評価における悪化は許容されなかった。
【0100】
治療の失敗には、ベースライン治療レベル、又は漸減レベルを上回って免疫抑制薬若しくは抗マラリヤ薬を追加、若しくは投与量を増大し、又はコルチコステロイドを増大した患者は含まれ得ない。
【0101】
エプラツズマブ治療アームは全て、12週目に測定して、主要エンドポイント上のプラセボに比べて優れた反応率を有する。プラセボに対する臨床上意味のある治療の差が、エプラツズマブ2400mg蓄積投与量アーム(1週間に1回600mg及び隔週で1回1200mg)の両方に対して達成された。2400mgを1週間に1回の4回にわたる分割投与量として送達したものは、2400mgを隔週で1回の2回にわたる分割投与量として投与したものより全般的に優れていると考えられる。200mg、800mgのエプラツズマブの2つの低用量アーム、及び最大投与量の3600mgは、プラセボとの臨床的に意味のある反応率の差を実証せず、エプラツズマブは耐容性がよく、有害事象のデータ間に有意な新たな安全性のシグナルは同定されなかった。エプラツズマブ治療は、プラセボに比べて、有害事象、注入反応、重度の有害事象、及び感染の同様な発生率をもたらした。さらに、エプラツズマブに対する低発生率のヒト抗体が検出された(曝露された患者187人中3人が、試験の治療時期間にエプラツズマブに対するヒト抗ヒト抗体を示した)。
【0102】
等価物:当業者であれば、常法通りの実験を用いるだけで、本明細書に記載する本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識し、又は確認することができよう。このような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されるものとされる。
(参考文献)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エプラツズマブが12週の治療サイクルにおいて1週間に1回、4回にわたって400mgから800mgの量で投与される、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するためのエプラツズマブ。
【請求項2】
エプラツズマブが500mgから700mgの量で投与するためのものである、請求項1に記載のエプラツズマブ。
【請求項3】
エプラツズマブが550mgから650mgの量で投与するためのものである、請求項2に記載のエプラツズマブ。
【請求項4】
エプラツズマブが600mgの量で投与するためのものである、請求項3に記載のエプラツズマブ。
【請求項5】
エプラツズマブが12週の治療サイクルにおいて隔週で1回、2回にわたって1000mgから1400mgの量で投与される、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するためのエプラツズマブ。
【請求項6】
エプラツズマブが1100mgから1300mgの量で投与するためのものである、請求項5に記載のエプラツズマブ。
【請求項7】
エプラツズマブが1150mgから1250mgの量で投与するためのものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
エプラツズマブが1200mgの量で投与するためのものである、請求項7に記載のエプラツズマブ。
【請求項9】
エプラツズマブが静脈投与用である、請求項1から8までのいずれか一項に記載のエプラツズマブ。
【請求項10】
エプラツズマブが10mg/mlの濃度の組成物中で投与するためのものである、請求項9に記載のエプラツズマブ。
【請求項11】
エプラツズマブが皮下投与用である、請求項1から8までのいずれか一項に記載のエプラツズマブ。
【請求項12】
エプラツズマブが筋肉内投与用である、請求項1から8までのいずれか一項に記載のエプラツズマブ。
【請求項13】
エプラツズマブが12週の治療サイクルにおいて1週間に1回又は隔週で1回、エプラツズマブ2400mgの蓄積投与量で投与するためのものである、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療において使用するためのエプラツズマブ。
【請求項14】
エプラツズマブが1週間に1回エプラツズマブ600mgの投与量で、又は隔週で1回エプラツズマブ1200mgの投与量で投与するためのものである、請求項13に記載のエプラツズマブ。
【請求項15】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、又は血管炎である、請求項1から13までのいずれか一項に記載のエプラツズマブ。
【請求項16】
エプラツズマブが12週の治療サイクルの複数サイクルにおいて投与するためのものである、請求項1から15までのいずれか一項に記載のエプラツズマブ。
【請求項17】
a)請求項1から16までのいずれか一項に記載の量のエプラツズマブ、及び
b)それぞれ請求項1から16までのいずれか一項に記載の(a)のエプラツズマブを投与するための指示
を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−505205(P2013−505205A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529137(P2012−529137)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005225
【国際公開番号】WO2011/032633
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】