説明

エボラ由来の遺伝子の発現を阻害するための組成物および方法

【課題】高い生物活性およびインビボ安定性の両方を有する細胞のそれ自身のRNAi機構を用いてエボラウイルス中の遺伝子を選択的にかつ効率的に沈静化させ得、エボラ感染により媒介される病理学的過程の治療に用いるためにエボラウイルスの複製を効果的に抑制し得る薬剤を提供する。
【解決手段】本発明は、二重鎖リボ核酸(dsRNA)、ならびに当該dsRNAを用いて細胞または哺乳動物におけるエボラウイルスの発現を阻害するための組成物および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2007年3月29日に出願された、米国仮出願第60/908,793号への優先権を主張する。この仮出願の内容全体は、この出願において参考として援用される。
【0002】
政府の援助
本明細書中に記載の研究は、少なくとも一部が、National Institute of Allergy and Infectious Diseases/National Institutes of Health/Department of Health and Human Services(NIAID/NIH/DHHS)からの契約番号HHSN266200600012C、ADBN01−AI−60012の下で合衆国政府から提供された資金を用いて行われた。従って、政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
【0003】
発明の分野
本発明は、二重鎖リボ核酸(dsRNA)およびエボラウイルスの遺伝子の1つの発現を阻害するためのRNA干渉の媒介におけるその使用、ならびに全身性出血および多臓器不全などのエボラ感染により媒介される病理学的過程を治療するためのdsRNAの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
エボラウイルス
マイナス鎖(−)RNAウイルスは、重大なヒト疾患の流行を引き起こすヒトの苦痛の主要な原因である。ヒトにおいて、これらのウイルスにより引き起こされる疾患には、インフルエンザ(オルトミクソウイルス科)、流行性耳下腺炎、麻疹、上気道および下気道疾患(パラミクソウイルス科),狂犬病(ラブドウイルス科)、出血熱(フィロウイルス科、ブニヤウイルス科およびアレナウイルス科)、脳炎(ブニヤウイルス科)および神経学的疾患(ボマウイルス科)が挙げられる。実質的に、全ヒト集団は、これらのウイルスの多くに感染していると考えられる。
【0005】
エボラウイルスは、マールブルグウイルスと同様、フィロウイルス科ファミリーに由来する。これはアフリカのザイールにおけるEbola川にちなんで命名され、その近辺で、1976年に最初の発症がNgoyMushola博士により観察され、その後、ザイール(現在はコンゴ民主共和国)のYambukuおよびスーダン西部のNzaraで著しい発症が観察された。同定された602症例のうち、死者は397人であった。
【0006】
1976年に同定された2つの株は、Ebola−Zaire(EBO−Z)およびEbola−Sudan(EBO−S)と命名された。スーダンでの発症は、Zaire株の90%の死亡率と比較して、より低い致死率(50%)を示した。次に、1990年に、同様のウイルスが、Virginia州Restonで、フィリピンから輸入したサルの間で同定され、Ebola−Restonと命名された。
【0007】
さらなる発症は、ザイール/コンゴ(1995および2003年)、ガボン(1994、1995および1996年)およびウガンダ(2000)において起こった。新しいサブタイプ(EBO−CI)が、1994年にコートジボワールで、単独のヒトの症例から同定された。
【0008】
1500の同定されたヒトエボラ感染のうち、患者の3分の2が死亡した。発症の間にウイルスを維持する動物(または他の)保菌者は同定されなかった。
【0009】
ヒト間では、エボラウイルスは、血液などの感染した体液に直接接触することにより伝播する。
【0010】
エボラ出血熱の潜伏期間は、2日間〜4週間の間で異なる。症候もまた異なり得るが、発症は、通常は急であり、高熱、衰弱、筋肉痛、関節痛、腹痛および頭痛により特徴付けられる。これらの症候は、嘔吐、下痢、口咽頭の病変、結膜炎、共存する壊死、蛋白尿、ならびに内部および外部の両方での、一般には胃腸管からの出血による器官損傷(腎臓および肝臓で著しい)に進行する。死または回復期への回復は、症候学の開始から6〜10日以内である。
【0011】
エボラウイルスに対する首尾よい治療の開発は、念願であり、一見したところ困難な努力である。それらは毎年全世界で数百人の死亡を引き起こしているにすぎないが、フィロウイルスは、著しい世界的な健康における脅威と考えられ、また、それらは多量に生育され得、かなり安定であり得、エアロゾルとして高度に感染性があり、かつ非常に致命的であるので、一般的に生物兵器に関連する特徴の多くを有する。フィロウイルスは、19Kbゲノムの比較的に単純なウイルスであり、核タンパク質(NP)、糖タンパク質(GP)、4つのより小さなウイルスタンパク質(VP24、VP30、VP35およびVP40)をコードする7つの遺伝子、ならびに全てがネガティブセンスRNAの一本鎖中にあるRNA依存的RNAポリメラーゼ(Lタンパク質)からなる。I型IFN、治療用ワクチン、免疫グロブリン、リバヴィリンおよび他のヌクレオシドアナログの投与は、げっ歯類エボラウイルスモデルにおいて幾分か成功したが、非ヒト霊長類感染モデルでは成功しなかった。
【0012】
従って、(−)RNAウイルス、特にウイルスのフィロウイルス科ファミリーのメンバーにより引き起こされる疾患の重症度、および効率的な予防または治療がないことの観点から、本発明の目的は、(−)RNAウイルスに感染した宿主を治療するための治療用化合物および方法を提供することである。
【0013】
siRNA
二本鎖RNA分子(dsRNA)は、RNA干渉(RNAi)として知られる高度に保存された制御機構の遺伝子発現を阻害することが示されてきた。特許文献1(Fireら)は、少なくとも25ヌクレオチドの長さのdsRNAの使用が、線虫における遺伝子の発現を阻害することを明らかにした。dsRNAはまた、植物(例えば、特許文献2、Waterhouseら;および特許文献3、Heifetzらを参照)、ショウジョウバエ(例えば、非特許文献1を参照)および哺乳動物(例えば、特許文献4、Limmer;およびDE 101 00 586.5、Kreutzerらを参照)などの生物体において標的RNAを分解することが示されてきた。この天然の機構は、現在、遺伝子の異常なまたは望まれない制御により引き起こされる障害を治療するための新規な分類の医薬品の開発の焦点となってきている。
【0014】
最近の報告によれば、RNAiは、インビトロで、エボラの複製の低減およびモルモットにおける保護の提供(非特許文献2)において幾分かの見込みを示し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第99/32619号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/53050号パンフレット
【特許文献3】国際公開第99/61631号パンフレット
【特許文献4】国際公開第00/44895号パンフレット
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Yang,D.ら、Curr.Biol.(2000)10:1191−1200
【非特許文献2】Geisbertら、The Journal of Infectious Diseases(2006)193、1650−1657
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、試験されたRNAi剤は、全ての公知のエボラ株に対して設計されず、また、インビボ治療用のRNAi剤に必要とされる安定性および他の性質について選択されなかった。したがって、RNAiの分野における顕著な進歩にもかかわらず、細胞のそれ自身の高い生物活性およびインビボ安定性の両方を有するRNAi機構を用いてエボラウイルス中の遺伝子を選択的にかつ効率的に沈静化させ得、エボラ感染により媒介される病理学的過程の治療に用いるためにエボラウイルスの複製を効果的に抑制し得る薬剤がなお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の要旨
本発明は、二重鎖リボ核酸(dsRNA)、ならびに当該dsRNAを用いて細胞または哺乳動物におけるエボラウイルスの発現を阻害するための組成物および方法を提供する。本発明はまた、全身性出血および多臓器不全などのエボラウイルス感染により引き起こされる病理学的症状および疾患を治療するための組成物および方法を提供する。本発明で特徴付けられるdsRNAは、ヌクレオチド長が30未満の、一般にヌクレオチド長が19〜24の領域を有するRNA鎖(アンチセンス鎖)を含み、エボラウイルス由来の遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的である。
【0019】
1つの実施形態では、本発明は、エボラウイルスの遺伝子およびウイルス複製の発現を阻害するためのdsRNA分子を提供する。dsRNAは、互いに相補的な少なくとも2つの配列を含む。dsRNAは、第1の配列を含むセンス鎖および第2の配列を含むアンチセンス鎖を含む。アンチセンス鎖は、エボラウイルス由来の遺伝子によりコードされるmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含み、相補性の領域は、ヌクレオチド長が30未満、一般にヌクレオチド長が19〜24である。dsRNAは、エボラウイルスに感染した細胞と接触したときに、ウイルス由来の遺伝子の発現を少なくとも40%阻害する。
【0020】
例えば、本発明のdsRNA分子は、表2のセンス配列からなる群から選択される第1の配列および表2のアンチセンス配列からなる群から選択される第2の配列を含み得る。本発明で特徴付けられるdsRNAは、天然に存在するヌクレオチドを含み得るか、または2’−O−メチル修飾ヌクレオチド、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびコレステリル誘導体に結合した末端ヌクレオチドなどの少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含み得る。あるいは、修飾ヌクレオチドは、2’−デオキシ−2’−フルオロ修飾ヌクレオチド、2’−デオキシ−修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド(locked nucleotide)、脱塩基ヌクレオチド、2’−アミノ修飾ヌクレオチド、2’−アルキル修飾ヌクレオチド、モルフォリノヌクレオチド、ホスホルアミデート、および非天然塩基含有ヌクレオチドの群から選択され得る。一般に、このような修飾配列は、表2のセンス配列からなる群から選択される当該dsRNAの第1の配列および表2のアンチセンス配列からなる群から選択される第2の配列に基づくであろう。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、本発明のdsRNAを有する細胞を提供する。細胞は、一般に、ヒト細胞などの哺乳動物細胞である。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、生物体、一般にヒト対象においてエボラウイルスの複製を阻害するための医薬組成物を提供する。組成物は、1つ以上の本発明のdsRNAおよび医薬上許容され得る担体または送達媒体を含む。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、以下の工程を含む、細胞においてエボラウイルス中の遺伝子の発現を阻害するための方法を提供する:
(a)細胞に、二重鎖リボ核酸(dsRNA)を導入する工程であって、dsRNAは、互いに相補的な少なくとも2つの配列を含む。dsRNAは、第1の配列を有するセンス鎖および第2の配列を有するアンチセンス鎖を含む。アンチセンス鎖は、エボラウイルスによりコードされるmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的な相補性の領域を含み、相補性の領域は、長さが30ヌクレオチド未満であり、一般に長さが19〜24ヌクレオチドであり、必要に応じて、dsRNAは、エボラウイルスに感染した細胞と接触したときに、本明細書中に記載のアッセイ(例えば、蛍光ベースアッセイ)におけるように、エボラウイルス由来の遺伝子の発現を少なくとも40%阻害する;および
(b)工程(a)で産生した細胞を、十分な時間にわたって維持し、エボラ遺伝子のmRNA転写物の分解を得、それによって、細胞中のエボラウイルス由来の遺伝子の発現を阻害する工程。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、全身性出血および多臓器不全などのエボラ感染により媒介される病理学的過程を治療、予防または管理する方法であって、治療、予防または管理上の有効量の1つ以上の本発明のdsRNAを、当該治療、予防または管理を必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、細胞においてエボラウイルス由来の遺伝子の発現を阻害するためのベクターであって、本発明のdsRNAの少なくとも1つの鎖をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結した制御配列を含むベクターを提供する。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、細胞においてエボラウイルスの遺伝子の発現を阻害するためのベクターを含む細胞を提供する。ベクターは、本発明のdsRNAの少なくとも1つの鎖をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結した制御配列を含む。
【0027】
1つの態様では、本発明は、エボラウイルスに感染した対象(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類などの哺乳動物)の寿命を延長させる方法を提供する。方法は、dsRNAを対象に投与する工程を含み、ここで、dsRNAは、長さが30ヌクレオチド未満、一般に長さが19〜24ヌクレオチドであり、エボラウイルス由来の遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的である領域を有するアンチセンスRNA鎖を含む。dsRNAは、対象の寿命を延長するのに十分な量で投与される。1つの実施形態では、dsRNAは、VP30、VP35、NP、L、VP24、VP40およびGP遺伝子から選択される遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的な領域を有するアンチセンスRNA鎖を含む。好ましい実施形態では、dsRNAは、VP35遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的な領域を有するアンチセンスRNA鎖を含む。いくつかの実施形態では、対象は、dsRNAの投与後に、リンパ球または血小板数の一方または両方の減少を経験しない。他の実施形態では、対象は、サイトカインレベル(例えば、IFNαまたはTNFαレベル)の増加を経験しない。
【0028】
他の態様では、本発明は、エボラウイルスに感染した対象(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類などの哺乳動物)のウイルス力価を減少させる方法により特徴付けられる。当該方法は、dsRNAを対象に投与することを含み、ここで、dsRNAは、長さが30ヌクレオチド未満、一般に長さが19〜24ヌクレオチドである領域を有し、エボラウイルス由来の遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的であるアンチセンスRNA鎖を含む。1つの実施形態では、dsRNAは、VP35遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的な領域を有するアンチセンスRNA鎖を含む。いくつかの実施形態では、対象は、dsRNAの投与後に、リンパ球または血小板数の一方または両方の減少を経験しない。他の実施形態では、対象は、サイトカインレベル(例えば、IFNαまたはTNFαレベル)の増加を経験しない。
【0029】
他の態様では、本発明は、エボラウイルスに感染した対象(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類などの哺乳動物)のリンパ球または血小板数を維持させる方法により特徴付けられる。方法は、dsRNAを対象に投与することを含み、ここで、dsRNAは、長さが30ヌクレオチド未満、一般に長さが19〜24ヌクレオチドであり、エボラウイルス由来の遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的である領域を有するアンチセンスRNA鎖を含む。1つの実施形態では、dsRNAは、VP35遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的な領域を有するアンチセンスRNA鎖を含む。他の実施形態では、対象は、サイトカインレベル(例えば、IFNαまたはTNFαレベル)の増加を経験しない。
好ましい実施形態では、本発明は以下のdsRNAなどを提供する:
(項目1)
細胞においてヒトエボラゲノムの発現を阻害するための二重鎖リボ核酸(dsRNA)であって、該dsRNAが、互いに相補的な少なくとも2つの配列を含み、センス鎖が第1の配列を含み、アンチセンス鎖がエボラをコード化するmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的な相補性の領域を含む第2の配列を含み、該相補性の領域の長さが30ヌクレオチド未満である、dsRNA。
(項目2)
前記第1の配列が、表2のセンス配列からなる群から選択され、前記第2の配列が、表2のアンチセンス配列からなる群から選択される、項目1に記載のdsRNA。
(項目3)
前記dsRNAが、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、項目1に記載のdsRNA。
(項目4)
前記dsRNAが、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、項目2に記載のdsRNA。
(項目5)
前記修飾ヌクレオチドが、2’−O−メチル修飾ヌクレオチド、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびコレステリル誘導体またはドデカン酸ビスデシルアミド基に結合した末端ヌクレオチドの群から選択される、項目3に記載のdsRNA。
(項目6)
前記修飾ヌクレオチドが、2’−デオキシ−2’−フルオロ修飾ヌクレオチド、2’−デオキシ−修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’−アミノ修飾ヌクレオチド、2’−アルキル修飾ヌクレオチド、モルフォリノヌクレオチド、ホスホルアミデート、および非天然塩基含有ヌクレオチドの群から選択される、項目3に記載のdsRNA。
(項目7)
前記第1の配列が、表2のセンス配列からなる群から選択され、前記第2の配列が、表2のアンチセンス配列からなる群から選択される、項目3に記載のdsRNA。
(項目8)
前記第1の配列が、表2のセンス配列からなる群から選択され、前記第2の配列が、表2のアンチセンス配列からなる群から選択される、項目6に記載のdsRNA。
(項目9)
項目1に記載のdsRNAを含む、細胞。
(項目10)
生物体においてエボラウイルス由来の遺伝子の発現を阻害するための医薬組成物であって、項目1に記載のdsRNAおよび医薬上許容され得る担体を含む、医薬組成物。
(項目11)
前記dsRNAの前記第1の配列が、表2のセンス配列からなる群から選択され、前記第2の配列が、表2のアンチセンス配列からなる群から選択される、項目10に記載の医薬組成物。
(項目12)
前記dsRNAの前記第1の配列が、配列番号1029の配列からなり、前記第2の配列が、配列番号1030の配列からなる、項目10に記載の医薬組成物。
(項目13)
細胞においてエボラウイルス由来の遺伝子の発現を阻害するための方法であって、
(a)該細胞に、項目1に記載の二重鎖リボ核酸(dsRNA)を導入する工程、および
(b)工程(a)で産生した細胞を、エボラウイルス由来の遺伝子のmRNA転写物の分解を得るのに十分な時間にわたって維持することによって、該細胞中の該エボラウイルス由来の遺伝子の発現を阻害する工程、
を含む、方法。
(項目14)
エボラ発現によって媒介される病理学的過程を治療、予防または管理する方法であって、このような治療、予防または管理を必要とする患者に、治療上または予防上の有効量の項目1に記載のdsRNAを投与することを含む、方法。
(項目15)
細胞においてエボラウイルス由来の遺伝子の発現を阻害するためのベクターであって、項目1に記載のdsRNAをコードするヌクレオチド配列に作動可能に結合した制御配列を含む、ベクター。
(項目16)
項目15に記載のベクターを含む、細胞。
(項目17)
前記dsRNAが、エボラのVP35を標的とする、項目1に記載のdsRNA。
(項目18)
前記dsRNAが、配列番号1029の配列からなるセンス鎖および配列番号1030の配列からなるアンチセンス鎖を有する、項目1に記載のdsRNA。
(項目19)
前記dsRNAが、エボラウイルスに感染した細胞と接触したときに、該ウイルス由来の遺伝子の発現を少なくとも40%阻害する、項目1に記載のdsRNA。
(項目20)
前記相補性の領域の長さが15〜30ヌクレオチドである、項目1に記載のdsRNA。
(項目21)
前記相補性の領域の長さが19および24ヌクレオチドである、項目1に記載のdsRNA。
(項目22)
前記dsRNAが、エボラウイルスに感染した細胞と接触したときに、該ウイルス由来の遺伝子の発現を少なくとも40%阻害する、項目15に記載のベクター。
(項目23)
前記dsRNAの長さが15〜30塩基対である、項目15に記載のベクター。
(項目24)
前記dsRNAの長さが19〜24塩基対である、項目15に記載のベクター。
(項目25)
エボラウイルスに感染した対象の寿命を延長させる方法であって、該対象に、項目1に記載のdsRNAを、該対象の寿命を延長させるのに十分な量で投与する工程を含む、方法。
(項目26)
エボラウイルスに感染した対象のウイルス力価を減少させる方法であって、該対象に、項目1に記載のdsRNAを、該対象のウイルス力価を減少させるのに十分な量で投与する工程を含む、方法。
(項目27)
エボラウイルスに感染した対象の血小板数を維持させる方法であって、該対象に、項目1に記載のdsRNAを、血小板数を維持させるのに十分な量で投与する工程を含む、方法。
(項目28)
前記対象のリンパ球数も維持される、項目27に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】脂質様LNP01と共に製剤化されたsiRNAが、致命的エボラウイルスの攻撃からマウスを保護したことを示すグラフである。
【図2】腹腔内または静脈内送達された、リポソーム製剤化されたsiRNAの単回投与が、致命的エボラウイルスの攻撃からマウスを保護したことを示すグラフである。VP35siRNAは、AD−11570であった。
【図3】NP98脂質の構造である。
【図4】DODMAと共に製剤化されたsiRNAが、致命的エボラウイルスの攻撃からマウスを保護したことを示すグラフである。
【図5】DODMAと共に製剤化されたsiRNAが、0.04mg/kgまで効果的に低減して、エボラを注射されたマウスを保護したことを示すグラフである。
【図6】DODMAと共に製剤化されたsiRNAが、致命的エボラウイルスの攻撃からモルモットを保護するのに有効であったことを示すグラフである。
【図7】エボラのモルモットモデルにおいて、DODMAと共に製剤化された異なるエボラ遺伝子に対するsiRNAの有効性を示すグラフである。
【図8】LNP01−製剤化したVP35siRNAの投与後のマウスの血清におけるウイルス力価の観察された減少を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、dsRNAを用いて細胞または哺乳動物中のエボラウイルス由来の遺伝子の発現を阻害するための二重鎖リボ核酸(dsRNA)ならびに組成物および方法を提供する。本発明はまた、dsRNAを用いて、エボラ感染により引き起こされる哺乳動物の病理学的症状および疾患を治療するための組成物および方法を提供する。dsRNAは、RNA干渉(RNAi)として知られるプロセスにより、mRNAの配列特異的分解を指向する。
【0032】
本発明のdsRNAは、長さが30ヌクレオチド未満、一般に長さが19〜24ヌクレオチドであり、エボラウイルス由来の遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的である領域を有するRNA鎖(アンチセンス鎖)を含む。これらのdsRNAの使用により、エボラウイルスに感染した対象におけるエボラ感染の複製および/または維持、ならびに全身性出血および多臓器不全の発症に関する遺伝子のmRNAの標的とする分解を可能にする。細胞ベースおよび動物アッセイを用いて、本発明者らは、非常に低用量のこれらのdsRNAが特異的かつ効率的にRNAiを媒介し得、その結果、エボラウイルス由来の遺伝子の発現が著しく阻害されることを実証した。従って、これらのdsRNAを含む本発明の方法および組成は、細胞中でのエボラの複製(relication)および/または維持に関与する遺伝子を標的とすることにより、エボラウイルス感染により媒介される病理学的過程を治療するのに有用である。
【0033】
以下の詳細な説明は、dsRNAおよびdsRNAを含む組成物を製造および使用してエボラウイルス由来の遺伝子の発現を阻害する方法、ならびに全身性出血および多臓器不全などのエボラウイルス感染により引き起こされる疾患および障害を治療するための組成物および方法を開示する。本発明の医薬組成物は、医薬上許容され得る担体と共に、長さが30ヌクレオチド未満、一般に長さが19〜24ヌクレオチドであり、エボラウイルス由来の遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的である領域を有するアンチセンスRNA鎖を含むdsRNAを含む。
【0034】
従って、本発明の特定の態様は、本発明のdsRNAを医薬上許容され得る担体と共に含む医薬、組成物を用いてエボラウイルス由来の遺伝子における遺伝子の発現を阻害する方法、およびエボラウイルスへの感染により引き起こされる疾患を治療するための医薬組成物を使用する方法を提供する。
【0035】
I.定義
便宜のため、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で用いられる特定の用語および表現の意味を以下に提供する。本明細書の他の部分における用語と本章で提供されるその定義との間に明らかな矛盾がある場合は、本章における定義が優先するものとする。
【0036】
「G」、「C」、「A」および「U」はそれぞれ、一般に、グアニン、シトシン、アデニンおよびウラシルを塩基としてそれぞれ含むヌクレオチドを意味する。しかしながら、用語「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」はまた、以下にさらに詳細に説明するように修飾ヌクレオチドを意味し得るか、または代用の置換部分を意味し得ることが理解されるであろう。当業者は、グアニン、シトシン、アデニンおよびウラシルが、そのような置換部分を有するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対形成性を実質的に変化させることなく、他の部分によって置換され得ることを十分に承知している。例えば、限定されないが、イノシンをその塩基として含むヌクレオチドは、アデニン、シトシンまたはウラシルを含むヌクレオチドと塩基対形成し得る。従って、ウラシル、グアニンまたはアデニンを含むヌクレオチドは、本発明のヌクレオチド配列中で、例えば、イノシンを含むヌクレオチドにより置換され得る。このような置換部分を含む配列は、本発明の実施形態である。
【0037】
本明細書中で用いられるとき、「エボラウイルス」は、フィロウイルス科のメンバーであり、ヒトおよび非ヒト霊長類における高度に致命的な出血熱の発生に関連する。ヒト病原体には、Ebola Zaire、Ebola SudanおよびEbola Ivory Coastが挙げられる。Ebola Restonは、サルの病原体であるので、有意なヒト病原体であるとは考えられていない。ウイルスの天然の保菌者は未知であり、現在のところ、フィロウイルス感染に対する利用可能なワクチンも有効な治療上の処置も存在しない。エボラウイルスのゲノムは、長さが約19kbのネガティブセンスRNAの一本鎖からなる。このRNAは、感染により8つのmRNAを産生する7つの順に配列した遺伝子を含む。エボラウイルス粒子は、他のフィロウイルスのウイルス粒子と同様に、7つのタンパク質:表面糖タンパク質(GP)、核タンパク質(NP)、4つのウイルス粒子構造タンパク質(VP40、VP35、VP30およびVP24)およびRNA依存性RNAポリメラーゼ(L)(Feldmannら(1992)Virus Res.24,1−19;Sanchezら、(1993)Virus Res.29,215−240;Petersら(1996)In Fields Virology,Third ed.pp.1161−1176に概説、Fields,B.N.,Knipe,D.M.,Howley,P.M.ら編、Lippincott−Raven Publishers,Philadelphia)を含む。エボラウイルスの糖タンパク質は、それが2つの翻訳領域中でコードされるという点で異常である。転写編集は、ウイルス粒子に取り込まれる膜貫通型を発現するのに必要とされる(Sanchezら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93,3602−3607;Volchkovら、(1995)Virology 214,421−430)。
【0038】
本明細書中で用いられるとき、「標的配列」は、一次転写産物のRNAプロセシングの産物であるmRNAなどの、エボラウイルス由来の遺伝子の転写の間に形成されたmRNA分子のヌクレオチド配列の近接する部分を意味する。
【0039】
本明細書中で用いられるとき、用語「配列を含む鎖」は、標準的なヌクレオチド命名法を用いて言及される配列により説明されるヌクレオチドの鎖を含むオリゴヌクレオチドを意味する。
【0040】
本明細書中で用いられるとき、および他に示されない限り、用語「相補的」は、第1のヌクレオチド配列を第2のヌクレオチド配列と関連付けて記載するのに用いられる場合、当業者に理解されるように、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、特定の条件下で、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドにハイブリダイズして二本鎖構造を形成する能力を意味する。このような条件は、例えば、ストリンジェントな条件であり得、ここで、ストリンジェントな条件は、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃または70℃で12〜16時間、およびその後の洗浄を含み得る。生物体の内部で遭遇し得る生理学的に関連する条件などの他の条件が適用され得る。当業者は、ハイブリダイズされたヌクレオチドの最終的な応用に従って、2つの配列の相補性の試験に最も適した条件の設定を決定し得るであろう。
【0041】
これは、第1のおよび第2のヌクレオチド配列の全長にわたる、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに対する塩基対形成を含む。このような配列は、本明細書中で、互いに関して「完全に相補的である」ということができる。しかしながら、本明細書中で、第1の配列が第2の配列に関して「実質的に相補的である」という場合、2つの配列は完全に相補的であり得るか、または、それらは、それらの最終用途に最も関連する条件下でハイブリダイゼーションする能力を保持しながら、ハイブリダイゼーションの際に1個またはそれ以上の、しかし一般的には4、3または2個以下のミスマッチ塩基対を形成し得る。しかしながら、2つのオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイゼーションの際に1個またはそれ以上の一本鎖オーバーハングを形成するよう設計されている場合、そのようなオーバーハングは、相補性の決定に関してミスマッチであると考えるべきではない。例えば、1つの21ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドおよび23ヌクレオチド長の他のオリゴヌクレオチドを含むdsRNAであって、長いほうのオリゴヌクレオチドが、短いほうのオリゴヌクレオチドに完全に相補的である一連の21ヌクレオチドを含む場合は、本発明の目的のために「完全に相補的である」とはいい得ない。
【0042】
本明細書中で用いられるとき、「相補的」配列はまた、非ワトソン・クリック塩基対および/または非天然の修飾ヌクレオチドから形成された塩基対が、それらがハイブリダイゼーションする能力に関する上記要件が満たされる限りにおいて、それらを含むか、またはそれらから完全に形成され得る。
【0043】
本明細書中の用語「相補的」、「完全に相補的」および「実質的に相補的」は、それらの使用の文脈から理解されるように、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖との間の、またはdsRNAのアンチセンス鎖と標的配列との間の塩基マッチングに関して用いられ得る。
【0044】
本明細書中で用いられるとき、メッセンジャーRNA(mRNA)の「少なくとも一部に実質的に相補的」であるポリヌクレオチドとは、目的のmRNAの近接する部分に実質的に相補的である(例えば、エボラをコード化する)ポリヌクレオチドを意味する。例えば、ポリヌクレオチドは、配列がエボラをコード化するmRNAの非断続性部分に実質的に相補的である場合、エボラmRNAの少なくとも一部に相補的である。
【0045】
本明細書中で用いられる用語「二本鎖RNA」または「dsRNA」は、上記で定義したように、2つの逆平行のかつ実質的に相補的な核酸鎖を含む二本鎖構造を有するリボ核酸分子の複合体を意味する。二本鎖構造を形成する2つの鎖は、1つのより大きなRNA分子の異なる部分であり得るか、またはそれらは別個のRNA分子であり得る。2つの鎖が1つのより大きな分子の部分である、従って、一方の鎖の3’末端と、二本鎖構造を形成する対応する他の鎖の5’末端との間のヌクレオチドの中断されていない鎖により結合されている場合、結合しているRNA鎖は、「ヘアピンループ」と呼ばれる。2つの鎖が、一方の鎖の3’末端と、二本鎖構造を形成する他の鎖の5’末端との間のそれぞれのヌクレオチドの中断されていない鎖以外の手段により共有結合的に結合されている場合、結合構造は、「リンカー」と呼ばれる。RNA鎖は、同じまたは異なる数のヌクレオチドを有し得る。塩基対の最大数は、dsRNAの最も短い鎖におけるヌクレオチドの数から、二本鎖中に存在する任意のオーバーハングを減算したものである。二本鎖構造に加えて、dsRNAは、1つ以上のヌクレオチドオーバーハングを含み得る。本明細書中で用いるdsRNAはまた、「siRNA」(短鎖干渉RNA)とも呼ばれる。
【0046】
本明細書中で用いられるとき、「ヌクレオチドオーバーハング」は、dsRNAの一方の鎖の3’末端が他方の鎖の5’末端を超えて伸展する場合、またはその逆の場合のdsRNAの二本鎖構造から突出した不対ヌクレオチドまたはヌクレオチドを意味する。「平滑な」または「平滑断端」は、dsRNAの当該末端に不対ヌクレオチドがない、すなわちヌクレオチドオーバーハングがないことを意味する。「平滑断端」dsRNAは、その全長にわたって二重鎖である、すなわち、分子のいずれの端にもヌクレオチドオーバーハングがないdsRNAを意味する。
【0047】
用語「アンチセンス鎖」は、標的配列に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を意味する。本明細書中で用いられるとき、用語「相補性の領域」は、本明細書中で定義したように、配列、例えば標的配列に実質的に相補的なアンチセンス鎖上の領域を意味する。相補性の領域が標的配列に対して完全に相補的でない場合、ミスマッチは末端領域で最も許容され、存在する場合、それらは、一般に末端領域または領域、例えば、5’および/または3’末端の6、5、4、3または2個以内のヌクレオチド内に存在する。
【0048】
本明細書中で用いられるとき、用語「センス鎖」は、アンチセンス鎖の領域に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を意味する。
【0049】
「細胞内に導入する」は、dsRNAに言及する場合、当業者に理解されるように、細胞への取り込みまたは吸収を促進することを意味する。dsRNAの吸収または取り込みは、補助のない拡散性または活性細胞プロセスにより、または補助的な薬剤もしくは装置により起こり得る。この用語の意味は、インビトロの細胞に限定されず、細胞が生きている生物体の一部である場合にも、dsRNAは「細胞に導入され」得る。このような場合、細胞への導入は、生物体への送達を含む。例えば、インビボ送達については、dsRNAは組織部位に注射されるか、または全身投与される。細胞へのインビトロ導入には、電気穿孔法およびリポフェクションなどの当該分野で公知の方法が挙げられる。
【0050】
用語「沈静化させる」および「発現を阻害する」は、エボラウイルス由来の遺伝子について言及する限り、本明細書中では、エボラウイルス由来の遺伝子が転写され、かつエボラウイルス由来の遺伝子の発現が阻害されるように処理された第1の細胞または細胞の群から単離され得るエボラウイルス由来の遺伝子から転写されたmRNAの量が、第1の細胞または細胞の群と実質的に同一であるが上記のように処理されていない第2の細胞または細胞の群(対照細胞)と比較して減少することにより明示されるように、エボラウイルス由来の遺伝子の発現を少なくとも部分的に抑制することを意味する。阻害の程度は、通常、以下のように表される。
(対照細胞中のmRNA)−(処理した細胞中のmRNA)*100%
(対照細胞中のmRNA)
あるいは、阻害の程度は、エボラゲノム転写に機能的に関連するパラメータ、例えば、エボラウイルス由来の遺伝子によりコードされるタンパク質の量または特定の表現型(例えば、エボラウイルスへの感染)を示す細胞の数の減少の点から得られ得る。原理的には、エボラゲノム沈静化は、標的を発現する任意の細胞中で、恒常的にまたはゲノム工学によってのいずれかで、および任意の適切なアッセイにより、決定され得る。しかしながら、与えられたdsRNAがエボラウイルス由来の遺伝子の発現を阻害するか否かをある程度決定するために参照が必要とされ、そのために本発明に包含される場合、以下の実施例で提供されるアッセイがそのような参照の役割を果たす。
【0051】
例えば、特定の例において、エボラウイルス由来の遺伝子の発現は、本発明の二重鎖オリゴヌクレオチドの投与により、少なくとも約20%、25%、35%または50%抑制される。いくつかの実施形態では、エボラウイルス由来の遺伝子は、本発明の二重鎖オリゴヌクレオチドの投与により、少なくとも約60%、70%または80%抑制される。いくつかの実施形態では、エボラウイルス由来の遺伝子は、本発明の二重鎖オリゴヌクレオチドの投与により、少なくとも約85%、90%または95%抑制される。
【0052】
エボラ発現の文脈において本明細書中で用いられるとき、用語「治療する」、「治療」などは、エボラ感染により媒介される病理学的過程からの解放またはその軽減を意味する。本発明の文脈において、用語「治療する」、「治療」などは、それが本明細書中の以下に記載の他の症状のいずれか(エボラ発現により媒介される病理学的過程以外)に関する限り、そのような症状に関連する少なくとも1つの症状から解放するもしくはそれを軽減するか、またはそのような症状の進行を遅らせるかもしくは逆行させるか、または感染した対照に存在するウイルスの量を減少させることを意味する。
【0053】
本明細書中で用いられるとき、表現「治療有効量」および「予防有効量」は、エボラ感染により媒介される病理学的過程、またはエボラ発現により媒介される病理学的過程の顕性症状、または患者に存在するウイルスの量の治療、予防または管理において治療効果を提供する量を意味する。治療的に有効な特定の量は、通常の医療関係者によって容易に決定され得、当該分野で公知の因子、例えば、エボラ感染により媒介される病理学的過程の型、患者の病歴および年齢、エボラ感染により媒介される病理学的過程の段階、およびエボラ感染により媒介される他の病理学的過程に抗うもの(anti−pathological processes)の投与などに依存して異なり得る。
【0054】
本明細書中で用いられるとき、「医薬組成物」は、薬理学的有効量のdsRNAおよび医薬上許容され得る担体を含む。本明細書中で用いられるとき、「薬理学的有効量」、「治療有効量」、または単なる「有効量」は、意図する薬理学的、治療的または予防的結果を生じるのに有効なRNAの量を意味する。例えば、疾患または障害に関連する測定可能なパラメータが少なくとも25%減少した場合に所定の臨床治療が有効であると考えられる場合、当該疾患または障害の治療についての薬剤の治療有効量は、当該パラメータを少なくとも25%減少させるのに必要とされる量である。さらに、医薬組成物は、エボラ感染に関与する標的細胞、例えば、樹状細胞、マクロファージ、肝細胞および他の実質細胞を増強させるように設計され得る。
【0055】
用語「医薬上許容され得る担体」は、治療薬の投与のための担体を意味する。このような担体には、生理食塩水、緩衝生理食塩水、ブドウ糖、水、グリセリン、エタノールおよびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。この用語は、特に、細胞培養培地を除く。経口投与される薬物については、医薬上許容され得る担体は、不活性希釈液、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味料、香味料、着色料および保存料などの医薬上許容され得る賦形剤を含むが、これらに限定されない。好適な不活性希釈液には、ナトリウムおよび炭酸カルシウム、ナトリウムおよびリン酸カルシウムならびにラクトースが挙げられるが、コーンスターチおよびアルギン酸は、好適な崩壊剤である。結合剤には、デンプンおよびゼラチンが挙げられ得、一方、潤滑剤は、存在する場合、一般にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸または滑石であろう。所望であれば、錠剤は、胃腸管での吸収を遅延させるためのグリセリルモノステアラートまたはグリセリルジステアラートなどの物質で被覆され得る。
【0056】
本明細書中で用いられるとき、「形質転換細胞」は、その中にベクター が導入され、かつそこからdsRNA分子が発現し得る細胞である。
【0057】
II.二重鎖リボ核酸(dsRNA)
1つの実施形態では、本発明は、細胞または哺乳動物においてエボラウイルス由来の遺伝子の発現を阻害するための二重鎖リボ核酸(dsRNA)分子を提供し、ここで、dsRNAは、エボラウイルス由来の遺伝子の発現において形成されるmRNAの少なくとも一部に相補的な領域を含むアンチセンス鎖を含み、相補性の領域は、長さが30ヌクレオチド未満、一般に長さが19〜24ヌクレオチドであり、当該dsRNAは、エボラウイルス由来の遺伝子を発現する細胞と接触したときに、エボラウイルス遺伝子の発現を少なくとも40%阻害する。
【0058】
dsRNAは、ハイブリダイズして二本鎖構造を形成するのに完全に相補的な2つのRNA鎖を含む。dsRNAの一方の鎖(アンチセンス鎖)は、エボラウイルス由来の遺伝子の発現の際に形成されるmRNAの配列に由来する標的配列に実質的に相補的な、および一般には完全に相補的な相補性の領域を含み、他方の鎖(センス鎖)は、アンチセンス鎖に相補的な領域を含み、その結果、2つの鎖は適切な条件下で組み合わせられた場合にハイブリダイズして二本鎖構造を形成する。一般に、二本鎖構造は、長さが15〜30塩基対、より一般的には18〜25塩基対、さらにより一般的には19〜24塩基対、最も一般的には19〜21塩基対である。同様に、標的配列に相補性の領域は、長さが15〜30ヌクレオチド、より一般的には18〜25ヌクレオチド、さらにより一般的には19〜24ヌクレオチド、最も一般的には19〜21ヌクレオチドである。本発明のdsRNAは、さらに、1つ以上の一本鎖のヌクレオチドオーバーハングを含み得る。
【0059】
dsRNAは、以下でさらに考察するように、当該分野で公知の標準的な方法、例えば、Biosearch,Applied Biosystems,Inc.から市販で入手可能な自動化DNA合成装置を用いることにより、合成され得る。1つの実施形態では、エボラウイルス由来の遺伝子は、ヒトエボラゲノムに由来する。特定の実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、表2のセンス配列を含み、第2の配列は、表2のアンチセンス配列からなる群から選択される。表2に提供される標的配列のどこかを標的化する代替のアンチセンス剤は、標的配列および隣接するエボラ配列を用いて容易に決定され得る。
【0060】
さらなる実施形態では、dsRNAは、表2に提供される配列の群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、dsRNAは、この群から選択される少なくとも2つの配列を含み、少なくとも2つの配列の一方は、少なくとも2つの配列の他方に相補的であり、少なくとも2つの配列の一方は、エボラウイルス由来の遺伝子の発現において産生される一連のmRNAの配列に実質的に相補的である。一般に、dsRNAは、2つのオリゴヌクレオチドを含み、一方のオリゴヌクレオチドは表2にセンス鎖として記載した通りであり、第2のオリゴヌクレオチドは、表2にアンチセンス鎖として記載した通りである。
【0061】
当業者は、20〜23であるが特に21の塩基対の二本鎖構造を含むdsRNAは、RNA干渉を誘発するのに特に効果的であると賞賛されてきたことを熟知している(Elbashirら、EMBO 2001,20:6877−6888)。しかしながら、他者は、より短いまたはより長いdsRNAもまた同様に効果的であることを確立した。上記実施形態において、表2に提供されるオリゴヌクレオチド配列の性質のおかげで、本発明のdsRNAは、長さが最小の21ヌクレオチドの鎖を少なくとも1つ含み得る。片端または両端の2、3個のヌクレオチドのみを減じた表2の配列の1つを含むより短いdsRNAもまた、上記dsRNAと比較して同様に効果的であることが適度に期待され得る。従って、表2の配列の1つから少なくとも15、16、17、18、19、20またはそれ以上の近接するヌクレオチドの部分配列を含み、本明細書中の以下に記載のFACSアッセイにおいて、完全な配列を含むdsRNAからエボラウイルス由来の遺伝子の発現を5、10、15、20、25または30%以下阻害するそれらの能力が異なるdsRNAが、本発明により意図される。表2に提供される標的配列内で切断するさらなるdsRNAは、エボラウイルス配列および提供された標的配列を用いて容易に作製され得る。
【0062】
加えて、表2に提供されるRNAi剤は、RNA干渉に基づく切断を受けやすいエボラウイルスmRNAの部位を同定する。従って、本発明は、本発明の剤の1つにより標的化された配列内で標的とするRNAi剤をさらに含む。本明細書中で用いられるとき、第2のRNAi剤は、もし、第2のRNAi剤が、第1のRNAi剤のアンチセンス鎖に相補的なmRNA内のどこかにあるメッセージを切断するならば、第1のRNAi剤の配列内で標的とすると考えられる。このような第2の薬剤は、一般に、エボラウイルス由来の遺伝子において選択された配列に近接する領域から採取された追加のヌクレオチド配列に結合した表2に提供される配列の1つに由来する少なくとも15の近接するヌクレオチドからなるであろう。例えば、標的のエボラゲノム由来の次の6ヌクレオチドと組み合わせた最後の15の配列番号1のヌクレオチドは、表2に提供される配列の1つに基づく21ヌクレオチドの一本鎖剤を産生する。
【0063】
本発明のdsRNAは、標的配列に対して1つ以上のミスマッチを含み得る。1つの実施形態では、本発明のdsRNAは、3以下のミスマッチを含む。dsRNAのアンチセンス鎖が標的配列に対するミスマッチを含む場合、ミスマッチの領域は、相補性の領域の中心に位置しないことが好ましい。dsRNAのアンチセンス鎖が標的配列に対するミスマッチを含む場合、ミスマッチは、いずれかの端から5ヌクレオチド、例えば、相補性の領域の5’または3’末端のいずれかから5、4、3、2または1ヌクレオチドに限定されることが好ましい。例えば、エボラウイルス由来の遺伝子の領域に相補的な23ヌクレオチドのdsRNA鎖については、dsRNAは、一般に中心の13ヌクレオチド内のいかなるミスマッチも含まない。本発明に記載された方法は、標的配列に対するミスマッチを含むdsRNAがエボラウイルス由来の遺伝子の発現を阻害するのに効果的であるかどうかを決定するのに用いられ得る。エボラウイルス由来の遺伝子の発現の阻害におけるミスマッチを有するdsRNAの有効性を考慮することは、特に、エボラウイルス由来の遺伝子の特定の相補性の領域が集団内で多形性の配列多様性を有することが既知である場合、重要である。
【0064】
1つの実施形態では、dsRNAの少なくとも一方の端は、1〜4個の、一般に1または2つのヌクレオチドの一本鎖ヌクレオチドのオーバーハングを有する。少なくとも1つのヌクレオチドオーバーハングを有するdsRNAは、それらの平滑断端の対応物(counterparts)よりも予想外に優れた阻害特性を有する。さらに、本発明者らは、1つのみヌクレオチドオーバーハングの存在することで、dsRNAの全体の安定性に影響することなくその干渉活性を強化することを見出した。1つのみオーバーハングを有するdsRNAは、インビボで、ならびに種々の細胞、細胞培養培地、血液および血清中で特に安定でありかつ効果的であることが証明された。一般に、一本鎖のオーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端に、あるいは、センス鎖の3’末端に位置する。dsRNAはまた、一般にアンチセンス鎖の5’末端に位置する平滑断端を有する。このようなdsRNAは、安定性および抑制活性を改善したので、低用量、すなわち、1日当たり、レシピエントの体重1kg当たり5mg未満での投与を可能とする。一般に、dsRNAのアンチセンス鎖は、3’末端にヌクレオチドオーバーハングを有し、5’末端は平滑化されている。別の実施形態では、オーバーハング中の1つ以上のヌクレオチドは、ヌクレオシドチオホスフェートで置換されている。
【0065】
さらに別の実施形態では、dsRNAを化学的に修飾して安定性を増強させる。本発明の核酸は、当該分野でよく確立された方法、例えば、「Current protocols in nucleic acid chemistry」、Beaucage,S.L.ら(編集)、John Wiley & Sons,Inc.,New York,N.Y.,USA(これは、参照として本明細書中に組み込まれる)に記載の方法により、合成および/または修飾され得る。本発明に有用なdsRNA化合物の特定の例には、修飾骨格を含むまたは天然のヌクレオシド内結合を含まないdsRNAが挙げられる。本明細書中で定義されるように、修飾骨格を含むdsRNAには、骨格にリン原子を有するものおよび骨格にリン原子を有さないものが挙げられる。本明細書の目的のために、そして時々当該分野で参照されるように、リン原子をそれらのヌクレオシド内骨格に有さない修飾dsRNAもまた、オリゴヌクレオシドであると考えられ得る。
【0066】
好ましい修飾dsRNA骨格には、例えば、通常の3’−5’結合を有する、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホネートおよびホスホネートなどのメチルおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデートなどのホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステルおよびボラノホスフェート、それらの2’−5’結合した類似体、ならびにヌクレオシド単位の隣接する対が3’−5’から5’−3’に、または2’−5’から5’−2’に結合した逆の極性を有するものが挙げられる。種々の塩、混合塩および遊離酸型もまた含まれる。
【0067】
上記リン含有結合の調製を教示する代表的な米国特許には、
【0068】
【数1】

(それぞれは本明細書中に参照として組み込まれる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
好ましいリン原子をその中に含まない修飾dsRNA骨格は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド内結合、混合ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド内結合、または1つ以上の短鎖へテロ原子もしくは複素環ヌクレオシド内結合により形成される骨格を有する。これらには、モルフォリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびにN、O、SおよびCH2成分部分を有する他のものが挙げられる。
【0070】
上記オリゴヌクレオシドの調製を教示する代表的な米国特許には、
【0071】
【数2】

(それぞれは本明細書中に参照として組み込まれる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
他の特定のdsRNAミメティックにおいて、糖およびヌクレオシド内結合の両方、すなわち、ヌクレオチド単位の骨格は、新規な基で置換される。基本単位は、適切な核酸標的化合物を用いて、ハイブリダイゼーションのために維持される。1つのこのようなオリゴマー化合物である、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されたdsRNAミメティックを、ペプチド核酸(PNA)と呼ぶ。PNA化合物において、dsRNAの糖骨格は、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格で置換される。核酸塩基は、保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的にまたは間接的に結合される。上記PNAの調製を教示する代表的な米国特許には、米国特許第5,539,082号;同第5,714,331号;および同第5,719,262号(それぞれは本明細書中に参照として組み込まれる)が挙げられるが、これらに限定されない。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsenら、Science,1991,254,1497−1500で見出され得る。
【0073】
本発明において特徴付けられる他の実施形態には、ホスホロチオエート骨格を有するdsRNAおよびヘテロ原子骨格を有するオリゴヌクレオシド、および特に上記で参照した米国特許第5,489,677号の−−CH.sub.2−−NH−−CH.sub.2−−、−−CH.sub.2−−N(CH.sub.3)−−O−−CH.sub.2−−[メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られる]、−−CH.sub.2−−O−−N(CH.sub.3)−−CH.sub.2−−、−−CH.sub.2−−N(CH.sub.3)−−N(CH.sub.3)−−CH.sub.2−−および−−N(CH.sub.3)−−CH.sub.2−−CH.sub.2−−[天然のホスホジエステル骨格は、−−O−−P−−O−−CH.sub.2−−で表される]、ならびに上記で参照した米国特許第5,602,240号のアミド骨格が挙げられる。上記で参照した米国特許第5,034,506号のモルフォリノ骨格構造を有するdsRNAもまた好ましい。
【0074】
修飾dsRNAもまた、1つ以上の置換された糖部分を含み得る。いくつかの実施形態では、dsRNAは、以下のもののうち1つを2’−位に含む:OH;F;O−、S−もしくはN−アルキル;O−、S−もしくはN−アルケニル;O−、S−もしくはN−アルキニル;またはO−アルキル−O−アルキル(式中、アルキル,アルケニルおよびアルキニルは、C.sub.1〜C.sub.10アルキルまたはC.sub.2〜C.sub.10アルケニルおよびアルキニルで置換され得るかまたは未置換であり得る)。特に好ましいものは、O[(CH.sub.2).sub.nO].sub.mCH.sub.3、O(CH.sub.2).sub.nOCH.sub.3、O(CH.sub.2).sub.nNH.sub.2、O(CH.sub.2).sub.nCH.sub.3、O(CH.sub.2).sub.nONH.sub.2およびO(CH.sub.2).sub.nON[(CH.sub.2).sub.nCH.su− b.3)].sub.2(式中、nおよびmは、1〜約10である)である。他の好ましいdsRNAは、以下のもののうち1つを2’−位に含む:C1〜C10低級アルキル、置換された低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O−アルカリールまたはO−アラルキル、SH、SCH.sub.3、OCN、Cl、Br、CN、CF.sub.3、OCF.sub.3、SOCH.sub.3、SO.sub.2CH.sub.3、ONO.sub.2、NO.sub.2、N.sub.3、NH.sub.2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、dsRNAの薬物動態学的特性を改善するための基、またはdsRNAの薬力学的特性を改善するための基、および同様の性質を有する他の置換基。好ましい修飾には、2’−メトキシエトキシ(2’−O−CH.sub.2CH.sub.2OCH.sub.3、2’− O−(2−メトキシエチル)または2’−MOEとしても知られる)(Martinら、Helv.Chim.Acta,1995,78,486−504)、すなわち、アルコキシ−アルコキシ基が挙げられる。さらに好ましい修飾には、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、以下の実施例に記載する、2’−DMAOE としても知られるO(CH.sub.2).sub.2ON(CH.sub.3).sub.2基、ならびに2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該分野で2’−O−ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’−DMAEOEとしても公知である)、すなわち、以下の実施例にも記載される2’−O−−CH.sub.2−−O−−CH.sub.2−−N(CH.sub.2).sub.2が挙げられる。
【0075】
他の好ましい修飾には、2’−メトキシ(2’−OCH.sub.3)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCH.sub.2CH.sub.2CH.sub.2NH.sub.2)および2’−フルオロ(2’−F)が挙げられる。同様の修飾もまた、dsRNAの他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位、または2’−5’結合dsRNAにおいて、および5’末端ヌクレオチドの5’位においてなされ得る。dsRNAはまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖ミメティックを有し得る。このような修飾糖構造の調製を教示する代表的な米国特許には、
【0076】
【数3】

(その特定のものは本願と権利者が共通し、そのそれぞれは本明細書中に参照として組み込まれる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
dsRNAはまた、核酸塩基(当該分野ではしばしば単に「塩基」と呼ばれる)修飾または置換を含み得る。本明細書中で用いられるとき、「無修飾の」または「天然の」核酸塩基には、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が挙げられる。修飾核酸塩基には、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニルウラシルおよびシトシン、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(擬似ウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール,8−チオアルキル、8−ヒドロキシおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン,7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニンおよび3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンなどの、他の合成および天然の核酸塩基が挙げられる。さらなる核酸塩基には、米国特許第3,687,808号に開示されるもの、Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering、第858−859頁、Kroschwitz,J.L,ed.John Wiley & Sons,1990に開示されるもの、Englischら、Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613に開示されるもの、ならびにSanghvi,Y S.,Chapter 15,DsRNA Research and Applications、289−302頁、Crooke,S.T.およびLebleu,B.編、CRC Press,1993に開示されるものが挙げられる。これらの核酸塩基の特定のものは、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を増加させるのに特に有用である。これらには、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンなどの5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンおよびN−2、N−6および0−6置換プリンが挙げられる。5−メチルシトシン置換は、核酸二本鎖安定性を0.6−1.2℃増加させることが示され(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.およびLebleu,B.編、DsRNA Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993、第276−278頁)、現在のところ、より詳細には2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合に、好ましい塩基置換である。
【0078】
「ユニバーサル」塩基などの他のヌクレオチド置換をsiRNA二本鎖に組み込んで、任意の特定のsiRNAがそれに対して相補性でありかつ活性を有する標的配列(すなわち、この場合、異なるエボラ株の数を増加させ得る。ユニバーサル塩基は、伝統的なヌクレオチド(DNAおよびRNAの遺伝的ビルディング・ブロック)の構造を模倣する非標準的な合成分子である。しかしながら、ワトソン/クリック則に従う選択的な(AはTまたはUとの、CはGとの)対形成の代わりに、ユニバーサル塩基は、全ての天然の塩基と等しく良好に「積み重なる」。ユニバーサル塩基をsiRNAに組み込むことにより、siRNAがその標的mRNA内のその特定の部位における変異を許容することを可能にし得る。従って、siRNAとそのmRNA標的との間の絶対的相補性の必要性を減少させることにより、siRNAを含むユニバーサル塩基は、(1)部位特異的ウイルス性変異により引き起こされる薬剤抵抗性の防止、および(2)ウイルス種間にわたり、同様であるが絶対的に保存されていない標的と広範に反応性があり得るsiRNAの創製に対するアプローチであり得る。修飾のなかでも、ユニバーサル塩基として用いられ得るのは、3−ニトロピロール、5−ニトロインドール、イミダゾール−4−カルボキサミド、2,4−ジフルオロトルオイルおよびイノシンである。
【0079】
上記修飾核酸塩基の特定のものおよび他の修飾核酸塩基を教示する代表的な米国特許には、上記米国特許第3,687,808号、ならびに
【0080】
【数4】

(それらは、それぞれが本明細書中に参照として組み込まれる)、ならびに米国特許第5,750,692号(これもまた本明細書中に参照として組み込まれる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本発明のdsRNAの他の修飾には、dsRNAの活性、細胞の分布または細胞の取り込みを増強する1つ以上の部分または複合体をdsRNAに化学的に結合させることを含む。このような部分には、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:コレステロール部分などの脂質部分(Letsingerら、Proc.Natl.Acid.Sci.USA,199,86,6553−6556)、コール酸(Manoharanら、Biorg.Med.Chem.Let.,1994 4 1053−1060)、チオエーテル、例えば、ベリル−l−S−トリチルチオール(Manoharan ら、Ann.N.Y.Acad.Sci.,1992,660,306−309;Manoharanら、Biorg.Med.Chem.Let.,1993,3,2765−2770),チオコレステロール(Oberhauserら、Nucl.Acid Res.,1992,20,533−538)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison−Behmoarasら、EMBO J,1991,10,1111−1118;Kabanovら、FEBSLett.,1990,259,327−330;Svinarchukら、Biochimie,1993,75,49−54)、リン脂質、例えば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセリンもしくはトリエチルアンモニウム 1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−Hホスホネート(Manoharanら、Tetrahedron Lett.,1995,36,3651−3654;Sheaら、Nucl.Acid Res.,1990,18,3777−3783)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharanら、Nucleoside & Nucleotide,1995,14,969−973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharanら、Tetrahedron Lett.,1995,36,3651−3654)、パルミチル部分(Mishraら、Biochim.Biophys.Acta,1995,1264,229−237)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノカルボニルオキシコレステロール部分(Crookeら、J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277,923−937)。好ましい複合体は、感染の初期に関与する樹状細胞およびマクロファージなどのエボラウイルスに感染した細胞の標的化、ならびに感染のより遅いフェーズに関与する肝細胞(epatocytes)および他の実質細胞の標的化を補助する。このような複合体には、マンノースおよび葉酸複合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
このようなdsRNA複合体の調製を教示する代表的な米国特許には、
【0083】
【数5】

【0084】
【数6】

(それらは、それぞれが本明細書中に参照として組み込まれる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
所定の化合物における全ての位置が一律に修飾される必要はなく、実際には、1を超える上記修飾が単一の化合物に、またはdsRNA内の単一のヌクレオシドにおいてさえも取り込まれ得る。本発明はまた、キメラ化合物であるdsRNA化合物を含む。「キメラの」dsRNA化合物または「キメラ」は、本発明の文脈において、dsRNA化合物、特に、それぞれが少なくとも1つのモノマー単位からなる化学的に別の領域を2つ以上含むdsRNAであり、すなわち、dsRNA化合物の場合は、ヌクレオチドである。これらのdsRNAは、代表的には、増加したヌクレアーゼ分解への抵抗性、増加した細胞の取り込みおよび/または増加した標的核酸への結合親和性をdsRNAに与えるようにdsRNAが修飾されている少なくとも1つの領域を含む。dsRNAの追加の領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断し得る酵素の基質として作用し得る。例えば、RNaseHは、RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。従って、RNaseHの活性化の結果として、RNA標的が切断され、それによって遺伝子発現のdsRNA阻害の効率が非常に増強する。その結果、キメラdsRNAを用いた場合、同じ標的領域にハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシdsRNAと比較して、より短いdsRNAを用いて匹敵する結果がしばしば得られ得る。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動により、および必要であれば、当該分野で公知の関連する核酸ハイブリダイゼーション技術を用いて、常套的に検出され得る。
【0086】
特定の例において、dsRNAは、非リガンド基により修飾され得る。多くの非リガンド分子は、dsRNAの活性、細胞の分布または細胞の取り込みを増強するためにdsRNAに複合体化され、このような複合体化を成し遂げるための手順は、科学文献で利用可能である。このような非リガンド部分は、コレステロールなどの脂質部分(Letsingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86:6553)、コール酸(Manoharanら、Bioorg.Med.Chem。Lett.,1994,4:1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル−5−トリチルチオール(Manoharanら、Ann.N.Y.Acad.Sci.,1992,660:306;Manoharanら、Bioorg.Med.Chem.Let.,1993,3:2765)、チオコレステロール(Oberhauserら、Nucl.Acid Res.,1992,20:533)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison−Behmoarasら、EMBO J.,1991,10:111;Kabanovら、FEBS Lett.,1990,259:327;Svinarchukら、Biochimie,1993,75:49)、リン脂質、例えば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム 1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホン酸塩(Manoharanら、Tetrahedron Lett.,1995,36:3651;Sheaら、Nucl.Acid Res.,1990,18:3777)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharanら、Nucleoside & Nucleotide,1995,14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharanら、Tetrahedron Lett.,1995,36:3651)、パルミチル部分(Mishraら、Biochim.Biophys.Acta,1995,1264:229)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crookeら、J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277:923)を含んでいた。このようなdsRNA複合体の調製を教示する代表的な米国特許は、上記に列挙した。代表的な複合体化のプロトコルは、配列の1つ以上の位置にアミノリンカーを有するdsRNAを合成することを含む。次いで、アミノ基を、適切なカップリング剤または活性化剤を用いて、複合体化している分子と反応させる。複合体化反応は、固相支持体になお結合しているdsRNA、または引き続く溶液相中でのdsRNAの切断により、行うことができる。dsRNA複合体のHPLCによる精製は、代表的には、純粋な複合体を生じる。
【0087】
RNAi剤をコード化したベクター
本発明のdsRNAはまた、インビボで、細胞内で組換え型ウイルスベクターから発現され得る。本発明の組換え型ウイルスベクターは、本発明のdsRNAをコード化する配列、およびdsRNA配列を発現するための任意の適切なプロモータを含む。適切なプロモータには、例えば、U6またはH1RNApolIIIプロモータ配列およびサイトメガロウイルスプロモータが挙げられる。他の適切なプロモータの選択は、当該分野での知識の範囲内である。本発明の組換え型ウイルスベクターはまた、特定の組織中または特定の細胞内環境中でdsRNAを発現するための誘導性または調節性プロモータを含み得る。本発明のdsRNAをインビボで細胞に送達するための組換え型ウイルスベクターの使用を、以下でより詳細に検討する。
【0088】
本発明のdsRNAは、2つの別の相補RNA分子として、または2つの相補性領域を有する単一のRNA分子としてのいずれかで、組換え型ウイルスベクターから発現され得る。
【0089】
発現すべきdsRNA分子のコード配列を受容し得る任意のウイルスベクター、例えば、アデノウイルス(AV);アデノ随伴ウイルス(AAV);レトロウイルス(例えば、レンチウイルス(LV)、ラブドウイルス、マウス白血病ウイルス);ヘルペスウイルスなどに由来するベクターが用いられ得る。ウイルスベクターの向性は、ベクターを、エンベロープタンパク質または他のウイルス由来の他の表面抗原でシュードタイピングすることにより、または必要に応じて、異なるウイルス性カプシドタンパク質で置換することにより、修飾され得る。
【0090】
例えば、本発明のレンチウイルスベクターは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病、エボラ、モコラなどに由来する表面タンパク質でシュードタイピングされ得る。本発明のAAVベクターは、ベクターを操作して異なるカプシドタンパク質血清型を発現させることにより、異なる細胞を標的とするように作製され得る。例えば、血清型2ゲノム上で血清型2キャプシドを発現するAAVベクターは、AAV2/2と呼ばれる。AAV2/2ベクター中のこの血清型2キャプシド遺伝子は、血清型5キャプシド遺伝子で置換されて、AAV2/5ベクターを産生し得る。異なるカプシドタンパク質血清型を発現するAAVベクターを構築する技術は、当該分野での知識の範囲内である;例えば、RabinowitzJ Eら、(2002),J Virol 76:791−801(その全開示は、本明細書中に参照として組み込まれる)を参照のこと。
【0091】
本発明での使用に好適な組換え型ウイルスベクターの選択、dsRNAをベクターに発現させるための核酸配列の挿入方法、およびウイルスベクターを目的の細胞に送達する方法は、当該分野での知識の範囲内である。例えば、Dornburg R(1995),Gene Therap.2:301−310;Eglitis M A(1988),Biotechniques 6:608−614;Miller A D(1990),Hum Gene Therap.1:5−14;Anderson W F(1998),Nature 392:25−30;およびRubinson D Aら、Nat.Genet.33:401−406(その全開示は、本明細書中に参照として組み込まれる)を参照のこと。
【0092】
好ましいウイルスベクターは、AVおよびAAVに由来するものである。特に好ましい実施形態では、本発明のdsRNAは、例えば、U6もしくはH1RNAプロモータまたはサイトメガロウイルス(CMV)プロモータのいずれかを含む組換え型AAV由来の2つの別の相補的な一本鎖RNA分子として発現する。
【0093】
本発明のdsRNAを発現するのに好適なAVベクター、組換え型AVベクターを構築する方法、およびベクターを標的細胞に送達する方法は、Xia Hら、(2002),Nat.Biotech.20:1006−1010に記載されている。
【0094】
本発明のdsRNAを発現するのに好適なAAVベクター、組換え型AVベクターを構築する方法、およびベクターを標的細胞に送達する方法は、Samulski Rら、(1987),J.Virol.61:3096−3101;Fisher K Jら、(1996),J.Virol,70:520−532;Samulski Rら、(1989),J.Virol.63:3822−3826;米国特許第5,252,479号;米国特許第5,139,941号;国際特許出願第WO94/13788号;および国際特許出願第WO93/24641号(それらの全開示は、本明細書中に参照として組み込まれる)に記載されている。
【0095】
III.dsRNAを含む医薬組成物
1つの実施形態では、本発明は、本明細書に記載のdsRNAおよび医薬上許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。dsRNAを含む医薬組成物は、全身性出血および多臓器不全などの、エボラウイルス由来の遺伝子の活性の発現および/またはウイルス感染に関連する疾患または障害を治療するのに有用である。このような医薬組成物は、送達の様式に基づいて製剤化される。1つの例は、非経口的送達による全身投与のために製剤化された組成物である。
【0096】
本発明の医薬組成物は、エボラウイルス由来の遺伝子の発現を阻害するのに十分な用量で投与される。1日当たりのレシピエントの体重1kg当たりの5mgのdsRNAの最大用量は、エボラウイルス由来の遺伝子の発現を阻害するかまたは完全に抑制するのに十分である。
【0097】
通常、dsRNAの適切な用量は、1日当たり、レシピエントの体重1kg当たり、0.01〜20.0mg、および最適には1日当たり、体重1kg当たり0.01〜3mgの範囲内にあるであろう。医薬組成物は、1日1回投与され得るか、あるいは、dsRNAは、1日を通して適切な間隔で2、3またはそれ以上の分割用量として、または徐放製剤化により維持点滴または送達を用いて、投与され得る。この場合、合計の1日用量を達成するため、各分割用量に含まれるdsRNAは、相応により小さくなければならない。用量単位はまた、数日間にわたる送達のために、例えば、数日間にわたってdsRNAの徐放を提供する通常の徐放製剤を用いて、調合され得る。この実施形態では、用量単位は、対応する複数の1日用量を含む。
【0098】
当業者は、特定の因子(疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の通常の健康および/または年齢、ならびに存在する他の疾患が挙げられるが、これらに限定されない)が、対象を効率的に治療するのに必要とされる用量およびタイミングに影響し得ることを理解するであろう。さらに、治療有効量の組成物での対象の治療には、単回の治療または一連の治療が含まれ得る。本発明に包含される個々のdsRNAの有効な用量およびインビボでの半減期の概算は、通常の方法を用いて、または、本明細書中に別途記載されるように、適切な動物モデルを用いるインビボ試験に基づき、行われ得る。
【0099】
動物モデル化の進歩は、ヒトエボラ感染に伴う全ての主要な病理学を再現する多くのエボラ感染モデル(マウス、モルモットおよび非ヒト霊長類)を生み出した(Warfield,K.L.ら、(2006)Biodefense:Research Methodology and Animal Modelsの「Chapter 13:Viral Hemorrhagic Fevers」、227−258頁、J.R.Swearengen,Ed.,Taylor & Francis,Boca Ratonに概説)。このようなモデルは、dsRNAのインビボ試験に、および治療有効量を決定するのに用いられる。
【0100】
本発明はまた、本発明のdsRNA化合物を含む医薬組成物および製剤を含む。本発明の医薬組成物は、局所または全身治療のいずれが望まれているか、および治療すべき領域に応じて、多くの方法で投与され得る。投与は、局所的、経肺(例えば、噴霧器によってなどの、粉末またはエアロゾルの吸入またはガス注入による);気管内、鼻腔内、経上皮および経皮)で、経口的または非経口的であり得る。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射または注入が挙げられる。
【0101】
経口投与用の組成物および製剤には、粉末または顆粒、微粒子、ナノ粒子、水または非水系媒体中の懸濁液または溶液、カプセル、ゲルカプセル、サシェ、錠剤または小錠剤が挙げられる。濃厚化剤、香料、希釈液,乳化剤,分散助剤または結合剤もまた望ましくあり得る。
【0102】
非経口、くも膜下腔内または脳室内投与用の組成物および製剤は、無菌水溶液を含み得、これはまた、緩衝液、希釈液、および他の適切な添加剤(浸透促進剤、担体化合物および他の医薬上許容され得る担体または賦形剤などを含み得るが、これらに限定されない)を含み得る。
【0103】
本発明の医薬組成物は、溶液、乳濁液およびリポソーム含有製剤を含むが、これらに限定されない。これらの組成物は、前もって形成された液体、自己乳化固体および自己乳化半流体などを含むがこれらに限定されない種々の成分から製造され得る。
【0104】
単位剤形で簡便に存在し得る本発明の医薬製剤は、医薬品産業で周知の通常の技術に従って調製され得る。このような技術は、活性成分を、医薬用担体または賦形剤と会合させる工程を含む。通常、製剤は、活性成分を液体担体もしくは微細に分割された固体担体または両方と均一にかつ密接に会合させ、次いで、必要であれば、製品を成形することにより調製される。
【0105】
リポソーム
研究されてきたマイクロエマルジョンに加えて、多くの組織化された界面活性剤構造が存在し、薬物の製剤化に用いられる。これらは、単層、ミセル、二重層および小胞を含む。リポソームなどの小胞は、それらが薬物送達の観点から提供するそれらの特異性および作用の維持時間のために、多くの関心を集めてきた。リポソーム送達系は、インビボでsiRNAを、および肝細胞中で沈黙遺伝子を効率的に送達するのに用いられてきた[Zimmermannら、(2006)Nature,441:111−114]。このようなsiRNA−リポソーム製剤はまた、脂質代謝異常[Zimmermannら、(2006)Nature,441:111−114]、HBV感染[Morrisseyら、(2005)Nature Biotech 23:1002−1007]、エボラ感染[Geisbertら、(2006)The Journal of Infectious Diseases,193:1650−1657]および関節リウマチ[Khouryら、(2006)Arthritis&Rheumatism,54:1867−1877]の動物モデルにおける治療の有益性のために用いられてきた。本発明で使用されるとき、用語「リポソーム」は、球状二重層(単数または複数)中に配列された両親媒性脂質から構成される小胞を意味する。
【0106】
リポソームは、親油性物質および水性内部から形成される膜を有する単層または多層状の小胞である。水性部分は、送達すべき組成物を含む。カチオン性リポソームは、細胞壁に融合し得るという利点を有する。非カチオン性リポソームは、細胞壁に効率的に融合し得ないが、インビボでマクロファージおよび他の細胞に貪食される。
【0107】
リポソームのさらなる利点には、以下が挙げられる;天然のリン脂質から得られるリポソームは、生体適合性かつ生分解性である;リポソームは、広範囲の水可溶性薬物および脂質可溶性薬物を取り込み得る;リポソームは、カプセル化された薬物を、それらの内部の区画で、代謝および分解から保護する(Rosoff,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Vol 1,245頁)。リポソーム製剤の調製における重要な考慮事項は、脂質表面の電荷、小胞のサイズおよびリポソームの水体積である。
【0108】
リポソームは、活性成分を作用点に伝達および送達するのに有用である。リポソームの膜は生体膜と構造的に同様であるので、リポソームが組織に適用されると、リポソームは細胞膜と同化し始め、リポソームと細胞との同化が進行するにつれて、リポソームの内容物が細胞内に空けられてそこで活性成分が作用し得る。
【0109】
リポソーム製剤は、多くの薬物についての送達様式として広範な研究の焦点となってきた。局所投与について、リポソームは他の製剤に対していくつかの利点を示すという実証が増加している。このような利点には、投与した薬物の高い全身吸収に関連する副作用の減少、投与した薬物の所望する標的における蓄積の増加、ならびに親水性および疎水性の両方の広範な薬物を皮膚内に投与する能力が挙げられる。
【0110】
いくつかの報告は、高分子量のDNAを含む薬剤を皮膚内に送達する能力を詳述してきた。鎮痛薬、抗体、ホルモンおよび高分子量DNAなどの化合物が、皮膚に投与されてきた。応用の大部分は、結果として上部表皮の標的化をもたらした。
【0111】
リポソームは、2つの広い種類に分類される。カチオン性リポソームは、負に荷電したDNA分子と相互作用して安定な複合体を形成する、正に荷電したリポソームである。正に荷電したDNA/リポソーム複合体は、負に荷電した細胞表面に結合し、エンドソーム内に内部移行する。エンドソーム内の酸性pHのために、リポソームは破裂し、それらの内容物を細胞の細胞質に放出する(Wangら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,1987,147,980−985)。
【0112】
pH感受性または負に荷電したリポソームは、DNAと複合体化するのではなく、捕捉する。DNAおよび脂質はいずれも同様に荷電しているので、複合体形成ではなく反発が起こる。それにもかかわらず、いくつかのDNAは、これらのリポソームの水性内部に捕捉される。pH感受性リポソームは、チミジンキナーゼ遺伝子をコード化するDNAを培地中の細胞単層に送達するのに用いられてきた。外来性遺伝子の発現が標的細胞中で検出された(Zhouら、Journal of Controlled Release,1992,19,269−274)。
【0113】
リポソーム組成物の1つの主要な型は、天然由来のホスファチジルコリン以外のリン脂質を含む。中性リポソーム組成物は、例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成され得る。アニオン性リポソーム組成物は、一般に、ジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成されるが、アニオン性膜融合リポソームは、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から主に形成される。リポソーム組成物の他の型は、例えば、ダイズPCおよび卵PCなどのホスファチジルコリン(PC)から形成される。他の型は、リン脂質および/またはホスファチジルコリンおよび/またはコレステロールの混合物から形成される。
【0114】
リポソームはまた、「立体的に安定化された」リポソームを含み、この用語は、本明細書中で用いられるとき、1つ以上の特定の脂質であって、リポソームに配合した場合、そのような特定の脂質を含まないリポソームと比較して増強された循環寿命をもたらす脂質を意味する。立体的に安定化されたリポソームの例は、リポソームの小胞形成脂質部分の一部が(A)モノシアロガングリオシドGM1などの1つ以上の糖脂質を含む、または(B)ポリエチレングリコール(PEG)部分などの1つ以上の親水性重合体で誘導体化されているものである。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、当該分野では、少なくともガングリオシド、スフィンゴミエリンまたはPEG誘導体化脂質を含む立体的に安定化されたリポソームについては、これらの立体的に安定化されたリポソームの増強された循環半減期は、網内系(RES)の細胞への減少した取り込みに由来すると考えられる(Allenら、FEBS Letters,1987,223,42;Wuら、Cancer Research,1993,53,3765)。1つ以上の糖脂質を含む多様なリポソームは、当該分野で公知である。Papahadjopoulosら(Ann.N.Y.Acad.Sci.,1987,507,64)は、モノシアロガングリオシドGM1、ガラクトセレブロシド硫酸塩およびホスファチジルイノシトールがリポソームの血中半減期を改善する能力を報告した。これらの知見は、Gabizonら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1988,85,6949)に詳述されている。米国特許第4,837,028号および国際公開第88/04924号(いずれもAllenら)は、リポソームが(1)スフィンゴミエリンおよび(2)ガングリオシドGM1またはガラクトセレブロシド硫酸エステルを含むことを開示する。米国特許第5,543,152号(Webbら)は、スフィンゴミエリンを含むリポソームを開示する。1,2−sn−ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームは、国際公開第97/13499号(Limら)に開示されている。
【0115】
1つ以上の親水性重合体で誘導体化された脂質を含む多くのリポソーム、およびその調製方法は、当該分野で公知である。Sunamotoら、(Bull.Chem.Soc.Jpn.,1980,53,2778)は、PEG部分を含む非イオン性界面活性剤2C.sub.1215Gを含むリポソームを記載する。Illumら(FEBS Lett.,1984,167,79)は、ポリスチレン粒子の高分子グリコールでの親水性コーティングが、顕著に増加した血中半減期を有することを述べている。ポリアルキレングリコール(例えば、PEG)のカルボキシル基付加により修飾された合成リン脂質が、Searsにより記載されている(米国特許第4,426,330号および同第4,534,899号)。Klibanovら(FEBS Lett.,1990,268,235)は、PEGまたはPEGステアレートで誘導体化したホスファチジルエタノールアミン(PE)を含むリポソームが、血中半減期の顕著な増加を有することを述べている。Blume ら(Biochimica et Biophysica Acta,1990,1029,91)は、このような知見を、他のPEG誘導体化リン脂質、例えば、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)およびPEGの組み合わせから形成されるDSPE−PEGに発展させた。共有結合で結合したPEG部分をそれらの外面に有するリポソームは、Fisherの欧州特許第0445131号および国際公開第90/04384号に記載されている。PEGで誘導体化されたPEを1〜20モル%含むリポソーム組成物、およびその使用方法は、Woodleら(米国特許第5,013,556号および同第5,356,633号)およびMartinら(米国特許第5,213,804号および欧州特許第0 496813号)により記載されている。多くの他の脂質高分子複合体を含むリポソームは、国際公開第91/05545号および米国特許第5,225,212号(いずれもMartinら)および国際公開第94/20073号(Zalipskyら)に開示される。PEG修飾セラミド脂質を含むリポソームは、国際公開第96/10391号(Choiら)に記載される。米国特許第5,540,935号(Miyazakiら)および米国特許第5,556,948号(Tagawaら)は、それらの表面で官能部分を用いてさらに誘導体化され得るPEG含有リポソームを記載する。
【0116】
リポソームおよび他のナノ粒子もまた、特定の標的化分子を含むように設計されてきた。インビボでのsiRNA送達に用いられる標的化分子は、インテグリン結合RGDペプチド類[Schiffelersら、(2004)Nucleic Acid Research 32:e149]、アニスアミド[LiおよびHuang(2006)Molecular Pharmaceutics 3:579−588]および葉酸[Hu−Lieskovanら、(2005)Cancer Research 65:8984−8992]を含んでいた。初期のエボラ感染に重要であると推定される骨髄細胞および樹状細胞への送達のために、マンノースおよび葉酸などの標的化薬剤をリポソームおよびナノ粒子に取り込むことにより、siRNA送達および治療効果の両方が改善され得る。マンノース複合体化オリゴヌクレオチドは、骨髄系細胞への送達を特に改善することが示され[Rojanasakulら、(1997)Journal of Biological Chemistry 272:3910−3914;Dieboldら(2002)Somatic Cell and Molecular Genetics 27:65−73]、マンノシル化リポソームは、インビボでの有効な標的化剤である[Dieboldら、(2002)Somatic Cell and Molecular Genetics27:65−73;Hattoriら(2006)Journal Gene Medicine 8:824−834;Hattoriら(2006)Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 318:828−834]。葉酸の複合体化は、広範な多様な状況における効果的な送達媒体を証明し[HilgenbrinkおよびLow(2005)Journal Pharmaceutical Sciences 94:2135−2146における概説]、葉酸のリポソームへの取り込みは、DSPE−PEG(2000)葉酸(Avanti Polar Lipids,Alabaster,Alabama)などの市販の試薬を用いて可能である。当該分野で公知の核酸含有リポソームは限られている。Thierryらの国際公開第96/40062号は、高分子量核酸をリポソーム中に封入する方法を開示する。Tagawaらの米国特許第5,264,221号は、タンパク質結合リポソームを開示し、このようなリポソームの内容物はdsRNARNAを含むと断定している。Rahmanらの米国特許第5,665,710号は、オリゴデオキシヌクレオチドをリポソームに封入する特定の方法を記載する。Loveらの国際公開第97/04787号は、raf遺伝子を標的とするdsRNAを含むリポソームを開示する。
【0117】
トランスファーソームは、しかしながら、リポソームの他の型であり、薬物送達媒体の魅力的な候補である高度に変形可能な脂質凝集物である。トランスファーソームは、高度に変形可能なので液滴より小さい孔に容易に浸透し得る脂肪小滴であると説明され得る。トランスファーソームは、それらが使用される環境に適応され得、例えば、それらは自己最適化し(皮膚中の孔の形に順応性がある)、自己修復し、断片化することなくそれらの標的に頻繁に達し、しばしば自己負荷(self−loading)する。トランスファーソームを作製するために、表面縁活性化剤、通常は界面活性剤を、標準的なリポソーム組成物に添加することが可能である。トランスファーソームは、血清アルブミンを皮膚に送達するのに用いられてきた。トランスファーソームが媒介する血清アルブミンの送達は、血清アルブミンを含む溶液の皮下注射と同程度に有効であることが示された。
【0118】
界面活性剤は、乳濁液(マイクロエマルジョンを含む)およびリポソームなどの製剤に広範な用途を見出す。多くの異なる型の界面活性剤(天然および合成の両方)の性質の分類および順位付けの最も一般的な方法は、親水性/親油性バランス(HLB)を用いることによる。親水基(「頭部」としても知られる)の性質は、製剤に用いられる異なる界面活性剤を分類するための最も有用な手段を提供する(Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,285頁)。
【0119】
界面活性剤分子が電離していない場合、非イオン性界面活性剤であると分類する。非イオン性界面活性剤は、医薬品および化粧品に広範な用途を見出し、広範囲のpH値にわたって使用可能である。通常、それらのHLB値は、それらの構造によって2〜約18の範囲にわたる。非イオン性界面活性剤には、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステルおよびエトキシル化エステルなどの非イオン性エステルが挙げられる。エトキシル化脂肪アルコール、プロポキシル化アルコールおよびエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマーなどの非イオン性アルカノールアミドおよびエーテルもまた、この分類に含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤の分類の最も一般的なメンバーである。
【0120】
界面活性剤分子が水に溶解または分散されたときに負電荷を有する場合、界面活性剤はアニオン性に分類される。アニオン性界面活性剤には、セッケンなどのカルボン酸エステル、ラクチル酸アシル、アミノ酸のアシルアミド、アルキルスルフェートおよびエトキシル化アルキルスルフェートなどの硫酸のエステル、アルキルベンゼンスルホネートなどのスルホネート、アシルイセチオネート、アシルタウレートおよびスルホサクシネート、ならびにホスフェート。アニオン性界面活性剤の分類の最も重要なメンバーは、アルキルスルフェートおよびセッケンである。
【0121】
界面活性剤分子が水に溶解または分散されたときに正電荷を有する場合、界面活性剤はカチオン性であると分類される。カチオン性界面活性剤には、四級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンが挙げられる。四級アンモニウム塩は、この分類の最も用いられるメンバーである。
【0122】
界面活性剤分子が陽電荷または負電荷のいずれかを有する能力を有する場合、界面活性剤は両性であると分類される。両性界面活性剤には、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N−アルキルベタインおよびホスファチドが挙げられる。
【0123】
薬物製品、製剤および乳濁液における界面活性剤の使用が概説された(Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,285頁)。
【0124】
dsRNAの取り込みを細胞レベルで増強する剤もまた、本発明の医薬組成物および他の組成物に添加され得る。例えば、リポフェクチンなどのカチオン性脂質(Junichiら、米国特許第5,705,188号)、カチオン性グリセリン誘導体、およびポリリジンなどのポリカチオン性分子(Lolloら、PCT出願国際公開第97/30731号)もまた、細胞のdsRNAの取り込みを増強することが公知である。
【0125】
エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのグリコール、2−ピロールなどのピロール、アゾン、ならびにリモネンおよびメントンなどのテルペンなどの他の剤もまた、投与した核酸の浸透を増強するために利用され得る。
【0126】
担体
本発明の特定の組成物もまた、製剤中に担体化合物を配合する。本明細書中で用いられる「担体化合物」または「担体」は、不活性である(すなわち、それ自体は生物活性を有さない)が、生物活性を有する核酸の生物学的利用能を、例えば、生物学的に活性な核酸を分解するかまたはその循環からの除去を促進することにより減少させるインビボプロセスにより、核酸であると認識される、核酸またはその類似体を意味し得る。核酸と担体化合物とを、代表的には、後者の物質を過剰にして同時投与すると、恐らく共通の受容体に対する担体化合物と核酸との競合のために、肝臓、腎臓または外部循環貯蔵部(extracirculatory reservoir)中に回収される核酸量の実質的な減少が生じ得る。例えば、肝臓組織における部分的ホスホロチオエート化dsRNAの回収は、これがポリイノシン酸、硫酸デキストラン、ポリシチジン酸(polycytidic acid)または4−アセトアミド−4’イソチオシアノ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸と同時投与されるときには、減少する(Miyaoら、DsRNA Res.Dev.,1995,5,115−121;Takakuraら、DsRNA&Nucl.Acid Drug Dev.,1996,6,177−183。
【0127】
賦形剤
担体化合物とは対照的に、「医薬担体」または「賦形剤」は、1つ以上の核酸を動物に送達するための医薬上許容され得る溶媒、懸濁化剤または任意の他の薬理学的に不活性なビヒクルである。賦形剤は液体でも固体でもよく、特定の薬剤組成物の核酸および他の構成成分と組み合わされたときに、所望の嵩(bulk)、コンシステンシーなどを生じることを念頭において計画された投与方法によって選択される。代表的な医薬担体には、結合剤(例えば、アルファ化されたトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);充填剤(例えば、ラクトースと他の糖、微結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレートまたはリン酸水素カルシウムなど);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、金属ステアリン酸塩、水素化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);崩壊剤(例えば、澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウムなど);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
核酸と有害な反応をしない非経口投与に好適な医薬上許容され得る有機または無機の賦形剤もまた、本発明の組成物を製剤化するのに用いられ得る。適切な医薬上許容され得る担体には、水、塩類溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ケイ酸、粘稠性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
適切な医薬上許容され得る賦形剤には、水、塩類溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ケイ酸、粘稠性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
他の成分
本発明の組成物は、医薬組成物中に慣用的に見出される他の補助的構成成分を、それらの技術上確立された使用レベルでさらに含有することができる。したがって、例えば、組成物は、さらなる相溶性の医薬的に活性な物質、例えば、かゆみ止め剤、収斂薬、局部麻酔薬もしくは抗炎症薬を含有し得るか、または本発明の組成物の種々な投与形を物理的に製剤化するために有用なさらなる物質、例えば、染料、香味剤、保存剤、酸化防止剤、不透明化剤、増粘剤および安定剤を含有し得る。しかし、このような物質は、加えたときに、本発明の組成物の構成成分の生物学的活性を不当に妨害してはならない。製剤は無菌化され得、所望であれば、補助剤、例えば、製剤中の核酸と不利に反応しない潤滑剤、保存料、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、影響浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝液、着色剤、香味剤および/または芳香物質などと混合される。
【0131】
水性懸濁液は、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランなどの懸濁液の粘性を増加する物質を含み得る。懸濁液はまた、安定化剤を含み得る。
【0132】
本発明の特定の実施形態は、(a)1つ以上のアンチセンス化合物と、(b)非アンチセンス機構によって機能する1つ以上の他の化学療法剤とを含有する医薬組成物を提供する。このような化学療法剤の例には、例えば、ダウノルビシン、ダウノマイシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、エソルビシン、ブレオマイシン、マホスファミド、イホスファミド、シトシンアラビノシド、ビスクロロエチルニトロソ尿素、ブスルファン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、プレドニゾン、ヒドロキシプロゲステロン、テストステロン、タモキシフェン、ダカルバジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ペンタメチルメラミン、ミトキサントロン、アムサクリン、クロラムブシル、メチルシクロヘキシルニトロソ尿素、窒素マスタード、メルファラン、シクロホスファミド、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−アザシチジン、ヒドロキシ尿素、デオキシコフォマイシン、4−ヒドロキシパーオキシシクロホスホルアミド、5−フルオロウラシル(5−FU)、5−フルオロデオキシウリジン(5−FUdR)、メトトレキサート(MTX)、コルヒチン、タキソール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド(VP−16)、トリメトレキセート、イリノテカン、トポテカン、ゲムシタビン、テニポシド、シスプラチンおよびジエチルスチルベストロール(DES)が挙げられるが、これらに限定されない。一般的には、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,第15版、Berkowら編、1987,Rahway,N.J.,1206−1228頁を参照。本発明の化合物と共に用いられる場合、このような化学療法剤は、個別に(例えば、5−FUおよびオリゴヌクレオチド)、順に(例えば、5−FUおよびオリゴヌクレオチドを一定の時間、その後MTXおよびオリゴヌクレオチド)、または1つ以上のこのような化学療法剤との組み合わせで(例えば、5−FU、MTXおよびオリゴヌクレオチド、または5−FU、放射線療法およびオリゴヌクレオチド)用いられ得る。非ステロイド系抗炎症薬およびコルチコステロイドなど(しかし、これらに限定されない)の抗炎症薬と、リビビリン(ribivirin)、ビダラビン、アシクロビル(acyclovir)およびガンシクロビル(ganciclovir)など(しかし、これらに限定されない)の抗ウイルス薬もまた、本発明の組成物に組み合わせることができる。一般的には、それぞれ、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,第15版、Berkowら編、1987,Rahway,N.J.,2499−2506頁と、46−49頁参照。他の非アンチセンス化学療法剤もまた、本発明の範囲内である。2種類以上の組み合わせた化合物を一緒にまたは連続的に用いることができる。
【0133】
このような化合物の毒性および治療効果は、細胞培養または実験動物における、例えば、LD50(集団の50%に致命的な用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するための標準的な薬学的手順により、決定され得る。毒性および治療効果の間の用量比は、治療の指標であり、LD50/ED50率として表され得る。高い治療上の指標を示す化合物が好ましい。
【0134】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータは、ヒトで使用するための用量の範囲の製剤化に用いられ得る。本発明の組成物の用量は、一般に、毒性が少ないかまたはほとんどないED50を含む循環濃度の範囲内にある。用量は、用いられる剤形および利用される投与の経路に依存して、この範囲内で異なり得る。本発明の方法で用いられる任意の化合物について、治療有効量は、最初に、細胞培養アッセイから概算され得る。用量は動物モデルで製剤化されて、化合物の、または、適切な場合、細胞培養で決定されるIC50(すなわち、症状の最大半量の抑制を達成する試験化合物の濃度)を含む標的配列のポリペプチド産物(例えば、ポリペプチドの減少された濃度を達成する)の、循環血漿濃度の範囲を達成し得る。このような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために用いられ得る。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィにより測定され得る。
【0135】
上記で考察したそれらの単一または複数での投与に加えて、本発明のdsRNAは、エボラ発現により媒介される病理学的過の治療に有効な他の公知の薬剤と組み合わせて投与され得る。いずれにせよ、投与する医師は、当該分野で公知のまたは本明細書中に記載の効力の標準的基準を用いて観察された結果に基づき、dsRNA投与の量およびタイミングを調整し得る。
【0136】
エボラウイルスへの感染により引き起こされる疾患の治療方法
本発明は、特に、エボラ感染に関連する病理学的症状(例えば、全身性出血および多臓器不全)の治療または予防のためにdsRNAまたはそれから調製される医薬組成物を使用することに関する。
【0137】
本発明は、さらに、dsRNAまたはその医薬組成物を、例えば、ウイルス感染および全身性出血の治療に現在用いられているような公知の医薬および/または公知の治療方法を、他の医薬および/または他の治療方法と組み合わせて、全身性出血および多臓器不全の治療に使用することに関する。IFNまたは他の抗ウイルス薬との組み合わせが好ましい。
【0138】
エボラウイルス由来の遺伝子の発現を阻害する方法
さらに他の態様では、本発明は、哺乳動物においてエボラウイルス由来の遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。方法は、標的のエボラゲノムの発現が沈静化するように、哺乳動物に本発明の組成物を投与することを含む。本発明のdsRNAは、それらの高い特異性のために、標的のエボラ遺伝子のRNA(一次または加工)を特に標的とする。dsRNAを用いてこれらのエボラ遺伝子の発現を阻害するための組成物および方法は、本明細書中の他所に記載したように成し遂げられ得る。
【0139】
1つの実施形態では、方法は、エボラウイルス由来の遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列を含むdsRNAを含む組成物を、治療すべき哺乳動物に投与することを含む。治療すべき生物体がヒトなどの哺乳動物である場合、組成物は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、経鼻投与など(しかし、これらに限定されない)の当該分野で公知の任意の手段により投与され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈点滴または注射により投与される。
【0140】
別段に定義しない限り、本明細書中で用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の通常の知識を有する者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載の方法および物質と同様または等価の方法および物質を、本発明の実施または試験に用いることができるが、適切な方法および物質を以下に記載する。本明細書中で言及した全ての刊行物、特許出願、特許および他の参照は、その全体が参照することにより援用される。矛盾がある場合、定義を含めた本明細書が管理するであろう。さらに、物質、方法および実施例は例示に過ぎず、限定することは意図されない。
【実施例】
【0141】
実施例1.dsRNA合成
試薬の供給源
試薬の供給源は特に本明細書中で与えられていないが、このような試薬は、分子生物学での用途のための一定の品質/純度の標準で、分子生物学用の試薬の任意の供給元から入手され得る。
【0142】
siRNA合成
一本鎖RNAを、Expedite8909合成装置(Applied Biosystems,Applera Deutschland GmbH,Darmstadt,Germany)、および多孔性ガラス(CPG,500Å,Proligo Biochemie GmbH,Hamburg,Germany)を固相支持体として用いて、固相合成により作製した。RNAおよび2’−O−メチルヌクレオチドを含むRNAを、対応するホスホロアミダイトおよび2’−O−メチルホスホロアミダイト(Proligo Biochemie GmbH,Hamburg,Germany)をそれぞれ用いて、固相合成により作製した。これらのビルディングブロックを、 nucleic acid chemistryのCurrent protocols,Beaucage,S.L.ら、(Edrs.),John Wiley & Sons,Inc.,New York,N.Y.,USAに記載されるような標準的なヌクレオシドホスホロアミダイト化学を用いてオリゴリボヌクレオチド鎖の配列内の選択した部位に組み込んだ。ホスホロチオエート結合を、Beaucage試薬(Chruachem Ltd,Glasgow,UK)のアセトニトリル(1%)溶液を用いてヨウ素酸化剤溶液で置換することにより導入した。さらなる付属的な試薬は、Mallinckrodt Baker(Griesheim,Germany)から入手した。
【0143】
粗製オリゴリボヌクレオチドの陰イオン交換HPLCによる脱保護および精製は、確立された手順に従って行った。収率および濃度は、それぞれのRNAの溶液のUV吸収により、260nmの波長で、スペクトル光度計(DU 640B,Beckman Coulter GmbH,Unterschleissheim,Germany)を用いて決定した。二重鎖RNAを、相補鎖のアニーリング緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH6.8;100mM塩化ナトリウム)中等モル溶液を混合し、水浴中、85〜90℃で3分加熱し、3〜4時間にわたって室温で冷却することにより作製した。アニールしたRNA溶液を、使用するまで−20℃で貯蔵した。
【0144】
3’コレステロール複合siRNA(本明細書中で−Chol−3’という)の合成については、適切に修飾した固相支持体をRNA合成に用いた。修飾固相支持体は、以下の通り調製した:
ジエチル−2−アザブタン−1,4−ジカルボキシラートAA
【0145】
【化1】

水酸化ナトリウムの4.7M水溶液(50mL)を、水中(50mL)で、攪拌され、氷冷されている塩酸エチルグリシナート(32.19g、0.23mol)溶液に添加した。次いで、アクリル酸エチル(23.1g、0.23mol)を添加し、混合物を、反応の完了がTLCにより確認されるまで、室温で攪拌した。19時間後、溶液を、ジクロロメタン(3×100mL)を用いて分配した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を蒸留して、AA(28.8g、61%)を得た。
【0146】
3−{エトキシカルボニルメチル−[6−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル−アミノ)−ヘキサノイル]アミノ}−プロピオン酸エチルエステルAB
【0147】
【化2】

Fmoc−6−アミノ−ヘキサン酸(9.12g、25.83mmol)をジクロロメタン(50mL)中に溶解し、氷冷した。ジイソプロピルカルボジイミド(diisopropylcarbodiimde)(3.25g、3.99mL,25.83mmol)を、0℃にて、溶液に添加した。次いで、ジエチル−アザブタン−1,4−ジカルボキシラート(5g、24.6mmol)およびジメチルアミノピリジン(0.305g、2.5mmol)を添加した。溶液を室温にし、さらに6時間攪拌した。反応の完了を、TLCにより確認した。反応混合物を減圧下で濃縮し、酢酸エチルを添加してジイソプロピル尿素を沈殿させた。懸濁液を濾過した。濾液を、5%水性塩酸、5%炭酸水素ナトリウムおよび水で洗浄した。合わせた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィ(50%EtOAC/ヘキサン)で精製して、11.87g(88%)のABを得た。
【0148】
3−[(6−アミノ−ヘキサノイル)−エトキシカルボニルメチル−アミノ]−プロピオン酸エチルエステル AC
【0149】
【化3】

3−{エトキシカルボニルメチル−[6−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−ヘキサノイル]アミノ}−プロピオン酸エチルエステルAB(11.5g、21.3mmol)を、ジメチルホルムアミド中の20%ピペリジンに0℃で溶解した。溶液を、1時間連続して攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣に水を加え、生成物を酢酸エチルで抽出した。粗生成物を、その塩酸塩に転化することにより精製した。
【0150】
3−({6−[17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルオキシカルボニルアミノ]−ヘキサノイル}エトキシカルボニルメチル−アミノ)−プロピオン酸エチルエステルAD
【0151】
【化4】

3−[(6−アミノ−ヘキサノイル)−エトキシカルボニルメチル−アミノ]プロピオン酸エチルエステルAC(4.7g、14.8mmol)の塩酸塩をジクロロメタン中に取った。懸濁液を、氷上で0℃に冷却した。懸濁液に、ジイソプロピルエチルアミン(3.87g、5.2mL、30mmol)を加えた。得られた溶液に、コレステリルクロロホルメート(6.675g、14.8mmol)を添加した。反応混合物を、一晩攪拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、10%塩酸で洗浄した。生成物を、フラッシュクロマトグラフィにより精製した(10.3g、92%)。
【0152】
1−{6−[17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルオキシカルボニルアミノ]−ヘキサノイル}−4−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸エチルエステル AE
【0153】
【化5】

カリウムt−ブトキシド(1.1g、9.8mmol)を、30mLの乾燥トルエン中でスラリー化した。混合物を氷上で0℃まで冷却し、5g(6.6mmol)のジエステルADを、撹拌しながら20分以内でゆっくり加えた。添加の間、温度を5℃未満に保持した。撹拌を0℃で30分間続け、1mLの氷酢酸を添加し、直後に40mLの水中の4gのNaHPO・HOを添加した。得られた混合物を、それぞれ100mLのジクロロメタンで2回抽出し、合わせた有機抽出物を、それぞれ10mLのリン酸緩衝液で2回洗浄し、乾燥させ、蒸発乾固させた。残渣を60mLのトルエンに溶解し、0℃に冷却し、3つの50mLの分量の冷却したpH 9.5の炭酸塩緩衝液で抽出した。水性抽出物をリン酸でpH3に調整し、5つの40mLの分量のクロロホルムで抽出し、これらを合わせ、乾燥させ、蒸発乾固させた。残渣を25%酢酸エチル/ヘキサンを用いるカラムクロマトグラフィにより精製して、1.9gのb−ケトエステル(39%)を得た。
【0154】
[6−(3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−イル)−6−オキソ−ヘキシル]カルバミン酸17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルエステルAF
【0155】
【化6】

メタノール(2mL)を、b−ケトエステルAE(1.5g、2.2mmol)および水素化ホウ素ナトリウム(0.226g、6mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)中還流混合物に、1時間にわたって滴下した。撹拌を、還流温度で1時間続けた。室温に冷却した後、1N HCl(12.5mL)を添加し、混合物を酢酸エチル(3×40mL)で抽出した。合わせた酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、生成物を得、これをカラムクロマトグラフィ(10%MeOH/CHCl3)(89%)により精製した。
【0156】
(6−{3−[ビス(4−メトキシフェニル)フェニル−メトキシメチル]−4−ヒドロキシ−ピロリジン−1−イル}−6−オキソ−ヘキシル)カルバミン酸17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルエステルAG
【0157】
【化7】

ジオールAF(1.25gm 1.994mmol)を、真空中でピリジン(2×5mL)を用いて蒸発させることにより乾燥させた。無水ピリジン(10mL)および4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(0.724g、2.13mmol)を、攪拌しながら添加した。反応を、室温で一晩行った。反応を、メタノールの添加により停止させた。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣にジクロロメタン(50mL)を添加した。有機層を、1M水性炭酸水素ナトリウムで洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留するピリジンを、トルエンと共に蒸発させることにより除去した。粗生成物を、カラムクロマトグラフィ(2%MeOH/クロロホルム、5%MeOH/CHCl中でRf=0.5)(1.75g、95%)により精製した。
【0158】
コハク酸モノ−(4−[ビス(4−メトキシ−フェニル)−フェニル−メトキシメチル]−1−{6−[17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1Hシクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルオキシカルボニルアミノ]−ヘキサノイル}−ピロリジン−3−イル)エステルAH
【0159】
【化8】

化合物AG(1.0g、1.05mmol)を、無水コハク酸(0.150g、1.5mmol)およびDMAP(0.073g、0.6mmol)と混合し、減圧中40℃で一晩乾燥させた。混合物を無水ジクロロエタン(3mL)中に溶解し、トリエチルアミン(0.318g、0.440mL、3.15mmol)を添加し、溶液を室温にてアルゴン雰囲気下、16時間攪拌した。次いで、これをジクロロメタン(40mL)で希釈し、氷冷した水性クエン酸(5重量%、30mL)および水(2×20mL)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して乾燥させた。残渣をそのまま次の工程に用いた。
【0160】
コレステロール誘導体化CPGAI
【0161】
【化9】

コハク酸塩AH(0.254g、0.242mmol)を、ジクロロメタン/アセトニトリル(3:2、3mL)の混合物中に溶解した。この溶液に、アセトニトリル(1.25mL)中のDMAP(0.0296g、0.242mmol)、アセトニトリル/ジクロロエタン(3:1、1.25mL)中の2,2’−ジチオ−ビス(5−ニトロピリジン)(0.075g、0.242mmol)を連続的に添加した。得られた溶液に、アセトニトリル(0.6ml)中のトリフェニルホスフィン(0.064g、0.242mmol)を添加した。反応混合物は、明るいオレンジ色に変化した。溶液を、手首運動型振とう機(wrist−action shaker)を用いて、短時間に攪拌した(5分)。長鎖アルキルアミン−CPG(LCAA−CPG)(1.5g、61mmol)を添加した。懸濁液を2時間撹拌した。CPGを、焼結漏斗を通して濾過し、アセトニトリル、ジクロロメタンおよびエーテルで連続的に洗浄した。未反応のアミノ基を、無水酢酸/ピリジンを用いてマスキングした。CPGの達成された負荷を、UV測定(37mM/g)を行うことにより測定した。
【0162】
5’−12−ドデカン酸ビスデシルアミド基(本明細書中で「5’−C32−」という)または5’コレステリル誘導体基(本明細書中で「5’−Chol−」という)を有するsiRNAの合成は、コレステリル誘導体について、ホスホロチオエート結合を核酸オリゴマーの5’末端に導入するために、酸化工程をBeaucage試薬を用いて行ったこと以外は、国際公開第2004/065601号に記載の通りに行った。
【0163】
核酸配列は、標準的な命名法を用いて、および特に表1の略語を用いて、以下に示す。
【0164】
【表1】

実施例2.エボラウイルスからの遺伝子の遺伝子歩行
エボラウイルスを標的とするsiRNAの設計およびイン・シリコでの選択
遺伝子VP30、VP35、NP、L、VP24、VP40およびGPについて、エボラウイルスmRNAを標的とするsiRNAを同定するため、ザイール地域から単離した配列(EBOV−Z)およびスーダンからの配列(EBOV−S)に焦点を当てて、siRNAの設計を行った。siRNAのイン・シリコでの選択により、我々の選択判断基準を満たす521のsiRNAを得た(表2)。
【0165】
エボラザイールの配列AY354458を、NCBIヌクレオチドデータベースからダウンロードし、さらに、EBOV−Zの参照配列として用いた。エボラスーダンの配列AY729654は、それぞれ、EBOV−Sの参照配列として用いた。
【0166】
Genbankファイルの情報による標的遺伝子VP30、VP35、NP、L、VP24、VP40およびGPをコード化する配列領域を、両方の参照配列から抽出し、その後、全ての考えられる19塩基長を各遺伝子について抽出することにより、各別の遺伝子について、候補のsiRNA標的領域(およびsiRNAセンス配列)が得られる。
【0167】
全ての入手可能なEBOV−ZおよびEBOV−S配列を標的とするsiRNAを同定するために、全ての配列決定された単離物から入手可能なエボラ配列を収集することが必要であった。このため、Ebola Zaire参照配列から抽出した7つの標的遺伝子配列のそれぞれを、デフォルトパラメータを有するNCBIにおけるウイルスのblast検索に用い、得られたエボラmRNAヒットをダウンロードした。
【0168】
各候補標的領域を、19塩基長標的領域の存在について関連する標的遺伝子を検索することにより、エボラ配列にわたる保存について試験した。関連する遺伝子についての全てのダウンロードした配列にわたる保存配列の割合を、各候補標的領域について、保存配列の数をダウンロードした配列の全数で割ることにより計算した。
【0169】
実施例3.エボラsiRNAのインビトロスクリーニング
表3は、表2に記載のsiRNAのスクリーニング結果の概要を提供する。GFPを発現するEbola−Zaireウイルスを用いる初期スクリーニングおよびEbola−Sudanウイルスを用いる免疫蛍光スクリーニングに従い、活性を示すsiRNAを、
Ebola−ZaireおよびEbola−Sudan株に対する抗ウイルス活性についてのプラークアッセイにより、さらに試験した。いくつかのsiRNAは、1つ以上のエボラ株に対して顕著な活性を有したことが同定された。100nMの濃度で、同定された多くのsiRNAが、エボラウイルス力価において1対数よりも大きい減少(>90%を超える阻害)を示した。同じ濃度のネガティブコントロールのルシフェラーゼおよびGFPは、ウイルス力価の10〜35%の間の減少を示した(表3)。3つの予め同定されたエボラsiRNA(LS L#1,LS NP#1,LS VP35#1)もまた並行して試験され、エボラウイルスをおよそ70%阻害した。予め同定されたエボラsiRNAは、以下の組成を有する25ヌクレオチド平滑断端二本鎖である:LS L#1、センス:5’
CCAUCUCUGAGACACGACAUAUCUU3’アンチセンス:5’
AAGAUAUGUCGUGUCUCAGAGAUGG3’;LS NP#1、センス:5’
GGUUCAAAGGCAAAUUCAAGUACAU3’アンチセンス5’
AUGUACUUGAAUUUGCCUUUGAACC3’;LS VP35#1、センス5’
CCCAAAUGCAACAAACCAAGCCAAA3’アンチセンス5’
UUUGGCUUGGUUUGUUGCAUUUGGG3’。AD−1955およびAD−5179についてのsiRNA配列は以下の通りである:AD−1955、センス:5’CUUACGCUGAGUACUUCGAdTsdT3’アンチセンス:5’UCGAAGUACUCAGCGUAAGdTsdT3’;AD−5179、センス:5’CcAcAuGAAGcAGcACGACusU3’アンチセンス:5’AAGUCGUGCUGCUUCAUGUGgsusC3’。
【0170】
リードsiRNAもまた、免疫賦活活性(IFNαおよびTNFα)をスクリーニングした。免疫賦活活性は、siRNAをヒト末梢血単核球に形質移入し、Hornungら、Nature Medicine 2005に概説されるように、サイトカイン遊離をELISAにより測定することにより、アッセイされた。サイトカインレベルを、全てのアッセイに含まれるポジティブコントロールsiRNAに対して正規化した。リード候補は。免疫賦活活性を有しなかった。
【0171】
以下の手順を、スクリーニング結果の作製に用いた。
【0172】
GFP Ebola−Zaireアッセイ
VERO細胞を、黒色壁96穴プレートの穴1つ当たり〜2×10E4個の細胞で形質移入した。形質移入は、100、10および1nMのLipofectamine(50 ul体積中、穴1つ当たり1.2ulのリポフェクタミン;複合体生成は、室温で15〜20分行った)と複合体化したsiRNAを用いて、10%FCSを有するEMEM中で一晩行った。
【0173】
翌日、細胞を、10%FCSを含む50ulのEMEM中で、GFP−EBOLAウイルス(株EBOLA−ZaireGFPの1/50希釈物、11OCT05由来の株、USAMRIID)に感染させた。2日後、細胞を、10%中性緩衝化ホルマリン中で3日超にわたって固定した。ホルマリンを、一連のBSL−4から除去する前に取り替えた。次のホルマリンを、PBSで置換した。
【0174】
個々の穴中の細胞の感染レベルを定量するため、細胞を、10〜20ul/穴の10ug/mlのHoescht染料で染色し、Discovery1顕微鏡で読み取った。Hoeschtシグナルに規準化されたGFPシグナルを、感染レベルの測定値として読み取った。
【0175】
免疫蛍光法Ebola−Sudanアッセイ
VERO細胞を、黒色壁96穴プレートの穴1つ当たり〜2×10E4個の細胞で形質移入した。形質移入は、100、10および1nMのリポフェクタミン(50ul体積中、穴1つ当たり1.2ulのリポフェクタミン;複合体生成は、室温で15〜20分行った)と複合体化したsiRNAを用いて、10%FCSを有するEMEM中で一晩行った。
【0176】
翌日、細胞を、10%FCSを含む50ulのEMEM中で、EBOLA−Sudanウイルス(EBOV−Sudan(Boniface)の1/100 希釈物、06年5月23日由来の株GP(1)V(2)E6(2)、USAMRIID)に感染させた。2日後、細胞を、10%中性緩衝化ホルマリン中で3日超にわたって固定した。ホルマリンを、一連のBSL−4から除去する前に取り替えた。次のホルマリンを、PBSで置換した。
【0177】
感染した細胞を検出するために、細胞を、室温で4時間にわたり、マウス抗−Sudan Bonifaceポリクローナル血清を用い(約1000pfuのEBOLA SUDAN−BONIFACE、06年5月23日由来の株GP(1)V(2)V(1)E6(2)、USAMRIIDで感染させたC57BL/6マウスの感染後30日目に、血清を20匹の動物から収集し、貯留した)PBS中1:200希釈で染色した。次いで、細胞をPBS2Xで5分間洗浄した。ヤギ抗マウスIgG−AlexaFluor488(Molecular Probes)を、PBS中1:500希釈で添加した。細胞を再びPBSで5分間洗浄し、100ulのPBSを各穴に添加した。個々の穴中の細胞の感染レベルを定量するため、細胞を、10〜20ul/穴の10ug/mlのHoescht染料で染色し、Discovery1顕微鏡で読み取った。Hoeschtシグナルに対して規準化されたAlexa Fluor 488シグナルを、感染レベルの測定値として読み取った。
【0178】
インビトロアッセイ用のフィロウイルスについてのプラークアッセイ
Vero細胞を、〜1.5×10E5/穴密度の密度で、24穴プレートに形質移入した。形質移入を、10%FCSを含むEMEM中で、一晩、100nMのLipofectamineと複合体化したsiRNA(200ul体積中、穴1つ当たり3ulのLipofectamine;複合体生成は、室温で15〜20分行った)で行った。形質移入を繰り返し行った。24時間後、重複するプレートを、50ul/穴で、1/500希釈Zaire−EBOV[06年6月20日由来の(E6P2)株、USAMRIID]または1/1000希釈EBOV−Sudan[(株Boniface)、06年5月23日由来の株GP(1)V(2)E6(2)、USAMRIID]のいずれかに感染させた。37℃で1時間後、ウイルス接種材料を500ulの新鮮な10%FCS/EMEMで置換した。
【0179】
48〜72時間後、上清を各穴から収集した。
【0180】
プラークアッセイを、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5および10−6希釈での上清を用いて行った。6穴プレート中の新鮮なVero細胞を、プレートを15分毎に激しく揺すりながら、37℃で1時間希釈上清に感染させ、2ml/穴のEMEM 中の0.5%アガロース、5%FCS、Pen/Strepに重層した。6日後、プレートを2mlの重層培地+4%ニュートラルレッド溶液に重層し、後日にプレートを読み取った。
【0181】
プラスミドシステムを用いるsiRNA活性決定
NP(配列番号1043)、GP(配列番号1044)、L、VP24(配列番号1045)、VP30(配列番号1046)、VP35(配列番号1047)、VP40(配列番号1048)の共通配列を、GENEART(Regensburg、Germany)により合成し、GENEART標準ベクターにクローン化した。L遺伝子は、2つの断片(配列番号1049および配列番号1050)として産生した。全ての遺伝子を、XhoIおよびNotI部位により個々のpsiCheck−2(Promega,Mannheim,Germany)ベクターにサブクローン化し、その結果、ウミシイタケルシフェラーゼの終止コドンとポリA−シグナルとの間のflu遺伝子を有する構築物が得られた。訂正クローン化は、GATC Biotech(Konstanz,Germany)により行われた末端配列決定により確認した。
【0182】
形質移入:
Cos−7細胞を、75μlの生育培地中で、透明な底部を有する白色96穴プレート(Greiner Bio−One GmbH,Frickenhausen,Germany)上に1.5×10細胞/穴で播種した。細胞の播種直後、50ngのプラスミド/穴を、全プレートについてのマスターミックスとして調製されたOpti−MEM中で12.5μl/穴の最終体積まで希釈したプラスミドを用いて、siRNAについて以下に記載した通りにLipofectamine2000(Invitrogen)で形質移入した。
【0183】
siRNAの形質移入は、プラスミドの形質移入の4時間後、4回繰り返した。各穴について、0.5μlのLipofectamine2000(Invitrogen GmbH,Karlsruhe,Germany)を12μl Opti−MEM(Invitrogen)と混合し、室温で15分インキュベートした。100μlの形質移入体積中50nMのsiRNA濃度について、穴1つ当たり1μlの5μMsiRNAを11.5μlのOpti−MEMと混合し、Lipofectamine2000−Opti−MEM混合物と合わせ、再び室温で15分インキュベートした。インキュベーションの間、生育培地を細胞から除去し、75μl/穴の新鮮な培地で置換した。siRNA−Lipofectamine2000−複合体を細胞に完全に付与し(各穴当たり25μl)、細胞を、24時間、37℃で、加湿された恒温器(Heraeus GmbH,Hanau,Germany)中5%COでインキュベートした。
【0184】
細胞を、生育培地を除去し、かつDual−Glo Luciferase Assay System(Promega,Mannheim,Germany)の培地およびDual−Gloルシフェラーゼ基質からなる1:1混合物150μlを塗布することにより、収集した。ルシフェラーゼアッセイは、Dual−Glo Luciferaseアッセイについての製造者のプロトコルに従って行い、発光は、Victor−Light 1420 Luminescence Counter(Perkin Elmer,Rodgau−Jugesheim,Germany)中で測定した。ウミシイタケルシフェラーゼを用いて得られた値を、ホタルルシフェラーゼを用いて得られたそれぞれの値に対して規準化した。エボラ遺伝子に対して指向されたsiRNAを用いて得られた値を、100%に設定された非特異的siRNA(ネオマイシン抵抗性遺伝子に対して指向された)を用いて得られた値に対して規準化した。
【0185】
実施例4.インビトロフィロウイルス感染モデル
エボラ遺伝子を標的とするリポソーム製剤化されたsiRNAは、マウスを致命的なエボラウイルス攻撃から保護する。リポソーム製剤化についての詳細は、次章で詳述する。マウスを、エボラ感染の2時間前(5mg/kg静脈内)およびエボラ感染の3日後(3mg/kg腹腔内)に、リポソーム製剤化siRNA(以下に記載)で2回処置した。マウスを、30,000LD50(LD50は、50%の動物が死亡するエボラ感染の致死量である)のEbola−Zaireに腹腔内感染させた。1処置群当たりn=10で、マウスの生存を監視した。ネガティブコントロールは、未処置マウスおよびリポソーム製剤化ルシフェラーゼsiRNA(AD−1955)で処置したマウスを含んだ。EK1は、以前に公開された、ポジティブコントロールとして用いられる、エボラL遺伝子を標的とするsiRNA配列である[Geisbertら、(2006)The Journal of Infectious Disease 193:1950−1657]。EK1についてのsiRNA配列は、以下の通りである:
5’GUACGAAGCUGUAUAUAAAdTdT 3’(センス)および
5’UUUAUAUACAGCUUCGUACdTdT 3’(アンチセンス)。
【0186】
図1は、結果を提供する。全てのネガティブコントロールで処置した動物(未処置およびリポソーム製剤化ルシフェラーゼsiRNAで処置した)は、エボラ感染後6〜8日以内に死亡した。リポソーム製剤化エボラsiRNAのいくつかは、ネガティブコントロールと比較して、生存率の有意な増加を示した。複数のエボラsiRNA(AD−11691、AD−11710、AD−11588、AD−11599、AD−11570)は、致命的エボラ感染に対して、以前に公開されたEK1siRNAよりも高い保護を示した(図1)。
【0187】
異なる投薬経路および治療法を調査するため、活性エボラsiRNAの1つ(AD−11570)を用いて、さらなる実験を行った。エボラ感染(5mg/kg腹腔内)の2時間前に、マウスを、リポソーム製剤化エボラVP35siRNA(AD−11570)またはネガティブコントロールのルシフェラーゼsiRNA(AD−1955)で処置した。マウスを、30,000LD50のEbola−Zaire(LD50は、50%の動物が死亡するエボラ感染の致死量である)に腹腔内で感染させた。マウスを、1処置群当たりn=10で、生存を監視した。
【0188】
図2は、結果を提供する。リポソーム製剤化AD−11570で処置した動物は、ネガティブコントロールで処置した動物(未処置およびリポソーム製剤化ルシフェラーゼsiRNAで処置した)と比較して、致命的エボラ感染に対するほぼ完全な保護を示した(図2)。これらの結果は、静脈内または腹腔内経路のいずれか経由での単一のsiRNAの投与が、生存に対する有意な影響を有し得ることを示す。
【0189】
製剤手順
脂質様ND98−4HCl(MW1487)(図3)、コレステロール(Sigma−Aldrich)およびPEG−Ceramide C16(Avanti Polar Lipids)を用いて、脂質−siRNAナノ粒子を調製した。それぞれのエタノール中のストック溶液を調製した:ND98、133mg/mL;コレステロール、25mg/mL、PEG−セラミドC16、100mg/mL。次いで、ND98、コレステロールおよびPEG−セラミドC16ストック溶液を、42:48:10のモル比で組み合わせた。合わせた脂質溶液を、最終的なエタノール濃度が35〜45%および最終的な酢酸ナトリウム濃度が100〜300mMとなるように、水性siRNA(酢酸ナトリウム中、pH5)と素早く混合した。混合すると、脂質−siRNAナノ粒子が自発的に形成する。所望の粒径分布に応じて、いくつかの場合には、得られたナノ粒子混合物を、サーモバレル押出機(Lipex Extruder,Northern Lipids,Inc)を用いて、ポリカーボネート膜(100nmカットオフ)を通して押出した。他の場合では、押出し工程を省略した。エタノールの除去および同時の緩衝液交換を、透析またはタンジェンシャルフロー濾過により達成した。緩衝液を、pH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に交換した。
【0190】
製剤の特徴付け
標準的なまたは押出しなしの方法のいずれかにより調製した製剤を、同様の方法で特徴付ける。製剤を、まず、視覚的観察により特徴付ける。それらは、凝集物または沈降物を含まない白っぽい半透明の溶液であるはずである。脂質ナノ粒子の粒径および粒径分布 を、Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern,USA)を用いる動的光散乱により測定する。粒子は、サイズが20〜300nm、および理想的には40〜100nmであるはずである。粒径分布は単峰型であるはずである。製剤中の全siRNA濃度、および捕捉された画分を、色素排除アッセイを用いて評価する。製剤されたsiRNAの試料を、RNA結合性色素Ribogreen(Molecular Probes)を用いて、製剤を分離させる界面活性剤である0.5%Triton−X100の存在下または非存在下でインキュベートする。製剤中の全siRNAを、検量線に対する、界面活性剤を含有する試料由来のシグナルにより決定する。捕捉した画分を、全siRNA含有量から「非含有の」siRNA含有量(界面活性剤の非存在下でのシグナルにより測定される)を減算することにより決定する。捕捉されたsiRNAの%は、代表的には85%超である。
【0191】
実施例5.エボラを標的とするsiRNAは、エボラに感染したマウスおよびモルモットの寿命を延長した。
【0192】
異なるエボラ遺伝子に対して指向したsiRNAを、リポソーム中で製剤化した。VP35遺伝子を標的とするsiRNA(AD−11570)の単回用量は、致命的エボラ感染(1000 PFU;30000×LD50)に対してマウスおよびモルモットの両方を保護した。保護は、ウイルス力価の減少に関連し、薬物を予防的または治療的のいずれで投与した場合にも観察された。同様に製剤した無関係のsiRNA(ルシフェラーゼを標的とする)は、ウイルス力価に対し保護効果も影響も示さなかった。
【0193】
マウス、モルモットおよび非ヒト霊長類の致命的エボラ感染モデルにおいて調査を行った。調査を以下に要約する。
【0194】
マウスの調査1:LNP01中で製剤化された複数のsiRNA配列について、エボラのマウスモデルにおける有効性を実証した。siRNAを静脈内注射により第0日目に投与し、その後、第3日目に腹腔内注射した。図1を参照のこと。
【0195】
マウスの調査3:IVまたはIP経路のいずれかで与えられた場合の、エボラのマウスモデルにおけるLNP01製剤中のsiRNAの有効性を実証した。図2を参照のこと。マウスを、1投与群当たりn=10で、生存を監視した。
【0196】
マウスの調査14:IP経路によるエボラのマウスモデルにおけるDODMA中のsiRNAの有効性を実証した。図4を参照のこと。siRNAを、DODMA:DSPC:Chol:PEG−DMG中で製剤化した。マウスを、1処置群当たりn=10で、生存を監視した。10mg/kgDODMAで製剤したAD−11570を用いた処置でも、siRNAはエボラに感染したモルモットを保護するのに効果的であった。
【0197】
マウスの調査15:エボラのマウスモデルにおいて、DODMA製剤中のsiRNAが、効果的に0.04mg/kgまで低減されることを実証した。AD−11570は、一貫して25〜50%の保護を提供したが、明確な用量応答は観察されなかった。対照のsiRNAAD−1955は25〜50%の保護を与えたが、ここでもまた、用量応答は観察されなかった。図5を参照のこと。
【0198】
モルモットの調査6:エボラのモルモットモデルにおけるDODMA製剤中のsiRNAの複数回用量の有効性を実証した。DODMA:DSPC:Chol:PEG−DMG中で製剤されたAD−11570siRNAは、エボラからモルモットを保護するのに効果的であった。図6を参照のこと。
【0199】
モルモットの調査11:エボラのモルモットモデルにおける、DODMAで製剤されかつ異なるエボラ遺伝子を標的とするsiRNAの有効性。図7を参照のこと。
【0200】
LNP01で製剤したVP35siRNAをBALB/cマウス(1群当たりn=5)を投与した後、ウイルス力価の95%の減少もまた観察された(図8)。第0日に、LNP01で製剤したsiRNAを、5mg/kg静脈内でマウスに全身投与し、次いで、3mg/kgを第3日に腹腔内投与した。第0日目のsiRNA注射の2時間後、マウスに1,000pfuのEbola−Zaireウイルスを注射し、生存を監視した。感染後第6日目、マウスを犠牲にし、それらの血液ウイルス力価を、プラークアッセイにより決定した。
【0201】
表3は、細胞ベースのおよびプラークアッセイの結果を示す。
【0202】
表4は、コントロールsiRNAについてのプラークアッセイの結果を示す。
【0203】
表5は、修飾二本鎖の配列を示し、表6は、プラスミドに基づくシステムにおける修飾二本鎖のプラークアッセイ活性およびIC50値への効果を示す。
【0204】
表7は、siRNAのサイトカインレベル(IFNαおよびTNFα)への効果を示す。
【0205】
表8は、プラスミドシステムにおけるsiRNA沈静化および計算されたIC50値を示す。
【0206】
表9は、エボラを標的とするsiRNAを投与された非ヒト霊長類が、リンパ球または血小板の数の減少を実証しなかったことを示す。
【0207】
【表2−1】

【0208】
【表2−2】

【0209】
【表2−3】

【0210】
【表2−4】

【0211】
【表2−5】

【0212】
【表2−6】

【0213】
【表2−7】

【0214】
【表2−8】

【0215】
【表2−9】

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【表2−10】

【0217】
【表2−11】

【0218】
【表2−12】

【0219】
【表2−13】

【0220】
【表2−14】

【0221】
【表2−15】

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【表2−16】

【0223】
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【0224】
【表2−18】

【0225】
【表2−19】

【0226】
【表2−20】

【0227】
【表2−21】

【0228】
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【0229】
【表2−23】

【0230】
【表2−24】

【0231】
【表3−1】

【0232】
【表3−2】

【0233】
【表3−3】

【0234】
【表3−4】

【0235】
【表3−5】

【0236】
【表3−6】

【0237】
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【0238】
【表3−8】

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【表3−9】

【0240】
【表3−10】

【0241】
【表3−11】

【0242】
【表3−12】

【0243】
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【0244】
【表4】

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【0246】
【表5−2】

【0247】
【表6−1】

【0248】
【表6−2】

【0249】
【表7−1】

【0250】
【表7−2】

【0251】
【表7−3】

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【表7−4】

【0253】
【表8−1】

【0254】
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【表8−4】

【0257】
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【0258】
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【表8−7】

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【表8−8】

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【表8−9】

【0262】
【表8−10】

【0263】
【表8−11】

【0264】
【表8−12】

【0265】
【表8−13】

【0266】
【表9】

【0267】
【化10】

【0268】
【化11】

【0269】
【化12】

【0270】
【化13】

【0271】
【化14】

【0272】
【化15】

【0273】
【化16】

他の実施形態は、特許請求の範囲内に存在する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−196237(P2012−196237A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−163285(P2012−163285)
【出願日】平成24年7月24日(2012.7.24)
【分割の表示】特願2010−501154(P2010−501154)の分割
【原出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(505369158)アルナイラム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】ALNYLAM PHARMACEUTICALS, INC.
【出願人】(503291392)
【Fターム(参考)】