説明

エポキシシリコーン樹脂及びそれを用いた硬化性樹脂組成物

【課題】耐熱着色性、耐UV着色性、強度、たわみに優れ、シロキサン骨格を内部に有しながらも線膨張係数が低い熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表され、エポキシ当量(g/eq.)が200〜2000であるエポキシシシリコーン樹脂及びこれを含む熱硬化性樹脂組成物。


1はエポキシ基を有する1価の有機残基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環状シロキサン結合を有するエポキシシリコーン樹脂、およびそれを必須成分とする光学特性、硬度、曲げ特性、耐熱着色性、耐光着色性に優れる熱硬化性樹脂組成物に関し、特に、電子材料分野や光半導体材料分野に適した熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、電気特性、接着性、耐熱性等に優れることから主に塗料分野、土木分野、電気分野の多くの用途で使用されている。特に、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂は、耐水性、接着性、機械物性、耐熱性、電気絶縁性、経済性などが優れることから種々の硬化剤と組み合わせて広く使用されている。しかし、これらの樹脂は芳香環を含むことから、紫外線等により劣化しやすく、耐候性、耐光性を求められる分野では使用上の制約があった。
【0003】
エポキシ樹脂組成物に関しては、硬化物の硬度が高いため、ハンドリング性に優れており、低出力の白色LED封止用途では、必要な耐久性が得られることから、低出力用途では多く用いられている。しかし、高出力LEDにおいては、発光量や発熱量の増加により変色を生じやすく、十分な寿命を得ることが難しい短所を有している。発熱量の増加による変色を防ぐために、高いガラス転移温度を発現するエポキシ樹脂が使用されるが、このようなエポキシ樹脂は高弾性である上、強度、たわみなどの曲げ特性が通常のエポキシ樹脂より低いため、ダイシング等の切削加工や急激な温度変化が起こりうる環境下では封止材が割れやすいなどの課題も有している。加えて近年のLEDの発光波長の短波長化により、連続使用すると変色を生じて発光出力が低下しやすいなどの課題も有している。このため、封止材には更なる耐熱着色性、耐光性の改善と同時に、機械強度を有することが求められる。
【0004】
近年、耐熱・耐光黄変性に優れるシリコーン樹脂をベースにしたLED封止材の開発が行われており、ヒドロシリル基とアルケニル基の付加反応による樹脂組成物や、剛直なイソシアヌル環を構造中に有し、反応性置換基としてエポキシ基を有するシリコーン樹脂と、硬化剤を用いて硬化させて得られる樹脂組成物の報告がなされている。
【0005】
しかし、シリコーン樹脂やシリコーン骨格を主鎖に持つエポキシ樹脂の多くは、シリコーン骨格に由来する高い可とう性を持つが、硬化物の硬度が低く、表面にべたつき性を生じやすいことや、強度が低い短所を有している。このため、埃の付着等による透明性の劣化を生じやすく、LED製造時のハンドリングに難があり、製造方法や構成、デザイン、用途に制限を受けている。また、フェニル基を含有した、硬度の高いシリコーン骨格を有する樹脂は、ハンドリング性は改善されるものの、ガラス転移点温度の低さから、べたつき性が消失しているとはいい難い。また強度、たわみに問題があり、点灯消灯時の急激な温度変化等によって割れを生じやすいなどの短所を有している。また、剛直なイソシアヌル環を構造中に有し、反応性置換基としてエポキシ基を有するシリコーン樹脂は、べたつきのない硬質な硬化物が得られ、通常のエポキシ樹脂と比較して耐熱着色性、耐光着色性が改善するが、未だ改善の余地がある。加えて、LED封止材としたときには柔軟なシリコーン鎖に由来する線膨張率の高さが基材との剥離につながること、チップに接合されているワイヤーが、点灯時またはヒートサイクル試験時、封止材の温度による膨張または収縮から来る応力に耐えられず、チップから断線し導通不良となる等の懸念が高くなる。加えて、機械強度の面では、シリコーン鎖の導入により、弾性率が減少し、たわみは増大するものの、降伏点が比較的早い段階で発生し、絶対的な強度が不足し、応力が集中する部位でのクラックが入りやすい懸念が生じるため、線膨張率、強度の面から改善が求められている。
【0006】
また、携帯電話やモニターのバックライトに搭載されるLEDは数が多いため、回路基板に一括はんだ実装するリフロープロセスを通る必要がある。環境に則した鉛フリーはんだで実装するためには260℃程度のリフロー炉にLEDパッケージ全体が曝されるため、急激な温度変化により封止材の着色、クラック、封止材と接着部位の接着力不足によるハガレ、封止材の膨張によるワイヤーの断線等の損傷が生じ、歩留まり、生産性の向上が求められている。
【0007】
このように、耐候性に優れるシリコーン樹脂をベースにしても、LED封止材に要求される物性を完全に満たしているものは得られておらず、十分な硬度、強度、たわみを有し、耐熱着色、耐UV着色性に優れ、エポキシ樹脂と同様の量産性、ハンドリング性を有する材料が求められている。
【0008】
特許文献1には、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の付加反応による樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、フェニル基を含有する硬化性ポリオルガノシロキサン組成物およびそれを用いた光半導体素子封止剤及び光半導体装置が開示されている。特許文献3には、少なくとも主鎖の両末端にジグリシジルイソシアヌリルアルキル基を有するオルガノポリシロキサン及びそれを含む組成物が開示されている。特許文献4及び5には、樹脂の鎖中にイソシアヌル環を配し、末端にエポキシ基を有するエポキシシリコーン樹脂及びそれを含む組成物が開示されている。しかし、これら特許文献に記載された熱硬化性樹脂組成物も、上記特性を十分に有しているとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−248413号公報
【特許文献2】特開2010−084118号公報
【特許文献3】特開2010−285563号公報
【特許文献4】特開2008−274004号公報
【特許文献5】国際公開WO2007−074813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、硬化物の硬度が高く、耐熱着色性、耐UV着色性、強度、たわみに優れ、シロキサン骨格を内部に有しながらも線膨張係数が低く、リフロー、ヒートサイクル下でもパッケージの損傷が少ない、電子材料分野や光半導体封止に適した熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。他の目的は、上記熱硬化性樹脂組成物の材料として適したエポキシシリコーン樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、一般式(1)で表され、エポキシ当量が200〜2000g/eq.であることを特徴とするエポキシシリコーン樹脂である。
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を表し、各々同一でも異なっていても良い。R2は炭素数1から20の2価の炭化水素基を表し、内部にエーテル結合性酸素原子を1〜3個有していても良い。E1はエポキシ基を少なくとも1つ以上有する1価の有機残基であり、Zは一般式(2)で表されるイソシアヌル環を有する2価の有機残基である。l及びmは独立に0〜3の整数であり、1≦l+m≦4を満たす。nは0<n≦100の数である。)
【化2】

(式中、R3は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R4は水素原子または炭素数1〜10の、芳香族環を含んでいても良い炭化水素基を表す。)
【0012】
一般式(1)中のE1としては、式(3)で表される有機残基が挙げられる。
【化3】

【0013】
また、本発明は、一般式(4)で表される両末端SiH含有環状オルガノシロキサンに、一般式(5)で現される両末端ビニル基含有イソシアヌル酸誘導体を理論量未満で反応させ、ついで残存するSiH基を、1分子中にエポキシ基を少なくとも1つ有し、かつ炭素―炭素2重結合を1分子中にに1つ有するSiH基と反応性のエポキシ樹脂を用いた末端封止反応を行うことを特徴とするエポキシシリコーン樹脂の製造方法である。
【0014】
【化4】

【化5】

(一般式(4)中、R1、l、mは一般式(1)と同意である。一般式(5)中、R4は一般式(2)と同意である。R5は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R6は水素原子またはメチル基を表す。)
【0015】
上記SiH基と反応性のエポキシ樹脂としては、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートが挙げられる。
【0016】
更に、本発明は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び硬化促進剤(C)を必須成分として含む熱硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂成分として上記のエポキシシリコーン樹脂(A1)を含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。以下、熱硬化性樹脂組成物に配合される上記の一般式(1)で表されるエポキシシリコーン樹脂を、エポキシシリコーン樹脂(A1)という。
【0017】
硬化剤(B)としては、酸無水物化合物が挙げられる。また、硬化促進剤(C)としては、4級アンモニウム塩または4級ホスホニウム塩が挙げられる。
【0018】
上記エポキシ樹脂(A)は、エポキシシリコーン樹脂(A1)と室温で液状のエポキシ樹脂(D)を含み、エポキシシリコーン樹脂(A1)100重量部に対し、室温で液状のエポキシ樹脂(D)5〜150重量部を配合され、エポキシ樹脂成分全体を意味するエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が180〜1000g/eq.であることがよい。
【0019】
更に本発明は、(E)白色顔料を含むことを特徴とする光反射用として適した熱硬化性樹脂組成物であり、白色顔料としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム及び無機中空粒子のうち少なくとも1種以上から選ぶことが出来る。
【0020】
上記熱硬化性樹脂組成物は、光学部品用樹脂組成物、電子部品用樹脂組成物または光半導体部品用樹脂組成物として好適である。更に、半導体用液状封止樹脂組成物としても好適である。
【0021】
また、本発明は、上記の熱硬化性樹脂組成物を用いて封止されたLED装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のエポキシシリコーン樹脂は、硬化性樹脂組成物とし、熱を施して得られる硬化樹脂としたときの表面硬度、強度、たわみ、低線膨張性に優れ、透明性を有し、耐熱着色性、耐光着色性に優れる硬化物またはフィルムを得ることができる。したがって、半導体や回路基板などの電子部品材料や、光学レンズ、光学シート、光反射用白色成型材料などの光学部品材料に有用であり、特に昨今LED封止材において課題となっている熱・光による着色、リフロー実装やヒートサイクル環境下におけるクラック、断線、基材との剥離といった問題の改善が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のエポキシシリコーン樹脂(ES1)のIRスペクトル。
【図2】本発明のエポキシシリコーン樹脂(ES2)のIRスペクトル。
【図3】本発明のエポキシシリコーン樹脂(ES4)のIRスペクトル。
【図4】本発明のエポキシシリコーン樹脂(ES5)のIRスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のエポキシシリコーン樹脂は上記一般式(1)で表され、エポキシ当量(g/eq.)が200〜2000である。
【0025】
一般式(1)中、R1は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。炭化水素基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n―ブチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基などがあげられるがこれらに限定されず、各々同一でも異なっていても良い。好ましいR1としては、入手の容易性及び熱硬化性樹脂組成物とし、熱処理を施して得られる硬化物としたときの耐熱着色性、耐光着色性などの物性の観点から、メチル基である。
【0026】
一般式(1)中、l、mは独立に0〜3の整数であり、l+mは1〜4の整数である。好ましいl、mの値は、入手の容易性から、l=1、m=1である。nは平均値(数平均)であり、nは0より大きく、100以下の数を表す。好ましいnの数は硬化物としたときの耐熱着色性、耐光着色性、機械物性の観点から、0.05≦n≦30、より好ましくは0.05≦n≦20であり、更に好ましくは0.1〜10である。本発明のエポキシシリコーン樹脂は、nが異なる分子の混合物であるため、nが0の成分が存在しても良いが、nが0の成分が100%であることはなく、nが0の成分は好ましくは0〜90wt%、より好ましくは0〜70%である。
【0027】
一般式(1)中、R2は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、内部にエーテル結合性酸素原子を1〜3個有していても良い。このような構造としては、たとえば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、イソプロピリデン基、ブチレン基、イソブチレン基、へキシレン基、キシリレン基、ドデシレン基、下記一般式(6)で表される基などがあげられるが、これらに限定されない。好ましいR2としては、硬化物としたときの物性から、好ましくはC1〜6の炭化水素基、より好ましくはプロピレン基である。
【化6】

(式中、hは1〜3の数を表す。)
【0028】
一般式(1)中、Zは上記一般式(2)で表されるイソシアヌル環を内部に含む2価の有機残基である。
【0029】
一般式(2)中、R3は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表す。このような炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、イソプロピリデン基、ブチレン基、イソブチレン基、へキシレン基、デシレン基などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいR3としては、硬化物としたときの物性から、C1〜6の炭化水素基であり、より好ましくはプロピレン基である。
【0030】
一般式(2)中、R4は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表す。この炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル記、イソアミル基、フェニル基、ベンジル基、トルイル基、ナフチル基などがあげられるが、これらに限定されない。フェニル基、ベンジル基等の芳香族環を有する炭化水素基も好ましく挙げられる。好ましいR4としては、原料入手の容易性、硬化物としたときの物性から、好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基である。
【0031】
一般式(1)において、E1はエポキシ基を少なくとも1つ有する1価の有機残基であるが、好ましくは一般式(3)で表されるエポキシイソシアヌル基である。
【0032】
本発明のエポキシシリコーン樹脂は、本発明の製造方法により有利に製造することができる。本発明のエポキシシリコーン樹脂の製造方法は、上記一般式(4)で表される両末端SiH含有環状オルガノシロキサンに、一般式(5)で表される両末端ビニル基含有イソシアヌル酸誘導体を理論量未満で反応させ、ついで残存するSiH基を、1分子中にエポキシ基を少なくとも1つ以上有し、かつ、炭素―炭素2重結合を1分子中に1つ有するSiH基と反応性のエポキシ樹脂を用いて末端封止反応を行うものである。一般式(4)において、一般式(1)と同じ記号は同じ意味を有する。一般式(5)において、R4は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、R5は炭素数1〜8の炭化水素基であり、R6は水素原子またはメチル基である。l
【0033】
一般式(5)で表される、両末端ビニル基含有イソシアヌル酸誘導体化合物としては、公知のものであれば特に限定されず、種々の化合物を選択できる。例えば、ジアリルイソシアヌル酸、ジメタリルイソシアヌル酸、モノメチルジアリルイソシアヌレート、モノメチルジメタリルイソシアヌレート、モノエチルジアリルイソシアヌレート、モノエチルジメタリルイソシアヌレート、モノプロピルジアリルイソシアヌレート、モノプロピルジメタリルイソシアヌレート、モノイソアミルジアリルイソシアヌレート、モノイソアミルジメタリルイソシアヌレート、モノフェニルジアリルイソシアヌレート、モノフェニルジメタリルイソシアヌレート、モノナフチルジアリルイソシアヌレート、モノナフチルジメタリルイソシアヌレートなどが挙げられるが、これらに限定されず、必要に応じて2種以上を併用しても良い。この中で、好ましい構造のイソシアヌル酸誘導体化合物は、ジアリルイソシアヌル酸、モノメチルジアリルイソシアヌレート、モノフェニルジアリルイソシアヌレートであり、特に好ましくは、ジアリルイソシアヌル酸、モノメチルジアリルイソシアヌレートである。
【0034】
なお、前記の両末端ビニル基含有イソシアヌル酸誘導体化合物は、米国特許第2830051号公報に記載のように、例えばトリアリルシアヌレートを、塩化アルミニウム、塩化鉄や活性白土のようなルイス酸の存在下、必要に応じてフェノールなどの受容体を添加しキシレン等の反応溶媒を用いて反応を行うことで、ジアリルイソシアヌル酸を得る手法を適用することで得ることも可能であるし、必要に応じてさらにアルキルハライドと反応させてN−アルキル化を行っても良い。また、Journal of Organic chemistry vol.35,No.7,p.2253−2257(1970)に記載のように、アリルイソシアネートとシアン酸カリウムをジメチルホルムアミドのような非プロトン性の極性溶媒を用いて反応したのち、酸により中和することでジアリルイソシアヌル酸を得る手法を適用することで得ることも可能であるし、必要に応じてさらにアルキルハライドと反応させてN−アルキル化を行っても良い。また、Journal of American Chemical Society vol.51,p.2221(1929)に記載のように、フェニルイソシアネートとメチルカーバメートを反応させることでモノフェニルイソシアヌル酸とした後に、アリルハライドと反応させてモノフェニルジアリルイソシアヌレートを得ることも可能である。しかし、これらに限定されず、当業者にとって好ましい形態で実施し、両末端ビニル基含有イソシアヌル酸誘導体化合物を得ることが出来る。
【0035】
本発明のエポキシシリコーン樹脂の製造方法としては、両末端SiH基含有オルガノシロキサンを先に反応系内に投入しておき、ついで必ず未反応のSiH基が残存する量を用いて両末端ビニル基含有化合物を逐次添加し、反応が完結したことを確認してから、SiH基と反応性のエポキシ樹脂を用い末端停止反応を行うことが特に好ましい。両末端ビニル基含有イソシアヌル酸誘導体化合物の使用量は、一般式(1)で表されるエポキシシリコーン樹脂のみを得ようとする場合は、1分子に2つの未反応のSiH基が残存する量とするが、一般式(1)で表されるエポキシシリコーン樹脂を含む樹脂を得ようとする場合は、2重結合を有するエポキシ樹脂で末端封止して得られるエポキシシリコーン樹脂が上記エポキシ当量を満たすものであれば特に限定されない。好ましくは、両末端ビニル基含有イソシアヌル酸誘導体化合物との反応が終了した際、両末端SiH基含有オルガノシロキサンのSiH基が20〜80%残存していることがよい。また、前述の理由から、一般式(1)において、E1は一般式(3)で表されるエポキシイソシアヌル基、R2がプロピレン基、R1がメチル基、m=1、及びl=1となる原料を使用することが好ましい。また、Zは一般式(2)におけるR3がプロピレン基、R4が水素原子またはメチル基で表される基であることが好ましい。また、一般式(5)で表される両末端ビニル基含有イソシアヌル酸誘導体化合物は、2種以上を併用しても良い。
【0036】
上記SiH基と反応性のエポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を少なくとも1つ以上有し、かつSiH基と反応性を有する炭素―炭素2重結合を1分子中に1つ有するものである。たとえばo−アリルフェニルグリシジルエーテル、2−アリルー4−メチルフェニルグリシジルエーテル、2−アリル‐5−メチルフェニルグリシジルエーテル、2−アリル‐6−メチルフェニルグリシジルエーテルなどの単環型エポキシ樹脂およびその核水素化したエポキシ樹脂、1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセンオキシド、1,4−ジメチル−4−ビニルシクロヘキセンオキシド、4−ビニル−1−シクロヘキセン−1,2−オキシド、ビニルノルボルネンモノオキシド、ジシクロペンタジエンモノオキシドなどの環状構造を含むオレフィン化合物から誘導されるエポキシ樹脂、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートなどの環構造中にヘテロ原子を含むエポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのエポキシ樹脂は2種以上を併用して反応に用いても良い。この中で、特に好ましいSiH基と反応性のエポキシ樹脂は、一般式(3)で表わされる有機残基を与えるモノアリルジグリシジルイソシアヌレートである。
【0037】
上記以外の方法、たとえば反応時、両末端SiH基含有環状オルガノシロキサン、両末端ビニル基含有イソシアヌル酸誘導体化合物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートを一括して反応系内に投入してヒドロシリル化反応を行ったり、SiH基と反応性を有する炭素―炭素2重結合を有する成分である両末端ビニル基含有イソシアヌル酸誘導体化合物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートを混合して反応系内に投入し、ついで両末端SiH基含有ポリオルガノシロキサンを投入してヒドロシリル化を行った場合、ヒドロシリル化反応の反応速度がモノアリルジグリシジルイソシアヌレートに対して両末端ビニル基含有イソシアヌル酸誘導体化合物と異なるため、反応系内にエポキシ基を有さないシロキサン樹脂が系内に生成する。このため、得られるエポキシシリコーン樹脂が相分離を起こし白濁し、透明性が失われること、また白濁を生じなくとも硬化物物性の面で本発明の効果が得られないため好ましくない。
【0038】
ヒドロシリル付加反応は、貴金属触媒の存在下で進行することが広く知られている。触媒としては、公知のものであれば種々の貴金属又はその錯体化合物を使用することができる。貴金属触媒としては、例えば、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム又はイリジウムなどが挙げられるがこれらに限定されず、必要に応じて2種以上用いても良い。また、これらの金属を微粒子状担体材料、例えばカーボン、活性炭、酸化アルミニウム、シリカなどに固定化されたものを用いても良い。
【0039】
貴金属の錯体化合物としては、白金ハロゲン化合物(PtCl4、H2PtCl6・6H2O、Na2PtCl6・4H2O等)、白金―オレフィン錯体、白金―アルコール錯体、白金―アルコラート錯体、白金―エーテル錯体、白金―カルボニル錯体、白金―ケトン錯体、白金―1,3−ジビニルー1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどの白金―ビニルシロキサン錯体、ビス(γ―ピコリン)―白金ジクロライド、トリメチレンジピリジン−白金ジクロライド、ジシクロペンタジエン−白金ジクロライド、シクロオクタジエン−白金ジクロライド、シクロペンタジエン−白金ジクロライド、ビス(アルキニル)ビス(トリフェニルホスフィン)白金錯体、ビス(アルキニル)(シクロオクタジエン)白金錯体、塩化ロジウム、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムクロライド、テトラキスアンモニウムーロジウムクロライド錯体などが挙げられるが特に限定されず、必要に応じて2種以上使用しても良い。
【0040】
上記貴金属触媒はそれぞれ単独で、あるいは溶解する溶媒にあらかじめ溶解させておき、しかる後反応系内に投入してもよい。貴金属触媒の使用割合は特に限定されないが、通常反応に用いた原料の合計重量に対して、0.1ppm〜100000ppm、好ましくは1ppmから10000ppmの範囲である。
【0041】
ヒドロシリル付加反応は、無溶媒でも反応を行うことができるが、必要に応じて有機溶媒にて反応系を希釈してもよく、反応に悪影響を与える化合物でなければ特に制限されない。例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどの脂肪族ケトン類、ベンゼン、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−ブチルなどのエステル類が挙げられる。これらの有機溶媒は、2種以上を選択して混合溶媒として使用してもよい。
【0042】
ヒドロシリル付加反応における温度条件については、特に限定されないが、通常0℃〜200℃、好ましくは30℃〜180℃である。0℃以下では反応の進行に時間を要し経済的ではない。200℃以上で反応を行うとエポキシ基とヒドロシリル部位との付加反応が進行し、反応をコントロールすることが困難となる。
【0043】
本発明のエポキシシリコーン樹脂は、エポキシ当量が200〜2000であることが望ましい。この範囲であることで、透明性、耐熱着色性、ガラス転移点温度、曲げたわみに優れた硬化物を得ることができる。エポキシ当量がこの範囲から外れる場合は、硬化物が脆くなる、または表面硬度が低くなりべたつきを生じる、耐熱着色性が悪くなるなどの理由で好ましくない。
【0044】
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物について説明する。熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び硬化促進剤(C)を必須成分とし、エポキシ樹脂成分として本発明のエポキシシリコーン樹脂(A1)を含む。
【0045】
本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれる硬化剤(B)としては、エポキシ樹脂の硬化剤として公知のものであれば種々の化合物を適用できる。例えば、有機アミン化合物、ジシアンジアミド及びその誘導体、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール及びその誘導体、ビスフェノールA、ビスフェノールF、臭素化ビスフェノールA、ナフタレンジオール、4,4’−ビフェノールなどの2価フェノール化合物、フェノールやナフトール類とホルムアルデヒドあるいはキシリレングリコール類との縮合反応により得られるノボラック樹脂あるいはアラルキルフェノール樹脂、酸無水化合物と多価有機アルコールとの反応により得られる多価カルボン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチル化無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ナジック酸、水素化無水ナジック酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物、アジピン酸ヒドラジドなどのヒドラジド化合物、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンを有する有機カチオン分子と、テトラフルオロほう素アニオン、ヘキサフルオロリンアニオン、ヘキサフルオロひ素アニオン、ヘキサフルオロアンチモンアニオン等のアニオン種で構成されているオニウム塩化合物等からなるカチオン硬化剤を適用することができ、必要に応じて2種類以上を用いてもよい。特に、本発明における透明性、耐熱着色性、耐光着色性を得るための好ましい硬化剤は酸無水物又は室温で液状のアミン化合物であり、更に好ましくは無水ヘキサヒドロフタル酸、メチル化無水ヘキサヒドロフタル酸、水素化無水ナジック酸である。
【0046】
硬化促進剤(C)としては、エポキシ樹脂の硬化促進剤とし公知のものであれば種々の化合物を適用できる。例えば、3級アミン及びその塩類、イミダゾール類及びその塩類、有機ホスフィン化合物及びその塩類、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズなどの有機金属塩が挙げられ、必要に応じて2種類以上を用いてもよい。特に、本発明の効果を得るための好ましい硬化促進剤は、4級アンモニウム塩類、有機ホスフィン化合物、4級ホスホニウム塩類であり、より好ましくは4級アンモニウム塩または4級ホスホニウム塩であり、更に好ましくは4級ホスホニウム塩類である。
である。
【0047】
本発明の熱硬化樹脂組成物は、上記(A1)、(B)及び(C)成分を必須成分とするが、粘度、硬化速度の調整等、当業者に好ましい形態とすることを目的として、(D)成分として、(A1)以外の1分子中に2個以上のエポキシ基を有する室温で液状のエポキシ樹脂またはエポキシ化合物を用いてもよい。このとき、(A1)と(D)の混合物でエポキシ当量が180〜1000の範囲であることで、本発明の効果が得られる。
【0048】
(D)成分は、(A1)成分とは異なるエポキシ樹脂であり、単独あるいは混合して室温で液状を有するものであれば種々の化合物を選択できる。たとえば、レソルシノール、ハイドロキノン、2,5−ジターシャリブチルヒドロキノンなどの単環型二価フェノール類から誘導されるエポキシ樹脂の芳香環を核水素化したもの、1,3−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオールなどのナフタレンジオール類から誘導されるエポキシ樹脂、およびその芳香環を核水素化したもの、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−セカンダリーブチリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−ターシャリーブチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4’−ブチリデンビス(6−ターシャリーブチル−2−メチル)フェノール等のビスフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、およびその芳香族環を核水素化したエポキシ樹脂が挙げられる。
【0049】
(D)成分には、下記一般式(7)〜(11)で表される脂環式エポキシ樹脂や、一般式(12)で表されるエポキシシリコーン樹脂などが挙げられるが、これらに限定されず、必要に応じて2種以上を用いてもよい。
【0050】
【化7】

(式中、g、fは1〜20の整数を表す。)
【0051】
(R7SiO3/2w(R89SiO)x(Me3SiO1/2y (12)
(式中、R7〜R9は、それぞれ内部にエポキシ基を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、芳香族基であり、内部にエーテル性酸素原子を1〜3個有していても良い。ただし、R7〜R9のうち、1つ以上は必ずエポキシ基を含む。また、R8とR9が同時にエポキシ基を有することはない。w〜yは、w+x+y=1,0≦w<1、0<x<1、0<y0.75を満たす数である。)
【0052】
エポキシ樹脂(A)は、エポキシシリコーン樹脂(A1)を必須成分とするエポキシ樹脂成分全体を意味し、エポキシシリコーン樹脂(A1)の他に、必要により配合される液状のエポキシ樹脂(D)及びその他のエポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂(D)の配合量は、エポキシシリコーン樹脂(A1)100重量部に対し、5〜150重量部の範囲がよく、エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が180〜1000の範囲となることがよい。なお、エポキシ樹脂(A)中のエポキシシリコーン樹脂(A1)の含有量は、40wt%以上、好ましくは60wt%以上であることがよい。
【0053】
本発明における熱硬化性樹脂組成物をLED封止用途として使用する際には、酸化防止剤を配合し、加熱時の酸化劣化を防止し着色の少ない硬化物とすることが好ましい。
【0054】
酸化防止剤としては公知のものであれば種々の化合物を適用できる。例えば、2,6−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−tert−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのモノフェノール類、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などのビスフェノール類、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどの高分子型フェノール類、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのオキサホスファフェナントレンオキサイド類、ジラウリル3,3’―ジラウリル3,3’―チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’―ジラウリル3,3’―チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’―ジラウリル3,3’―チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3―ラウリルチオプロピオネート)等のエステル骨格含有チオエーテル化合物系酸化防止剤が挙げられる。これらの酸化防止剤は必要に応じて2種類以上を用いてもよい。
【0055】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物には他の熱硬化性樹脂を配合することもできる。このような熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性アミノ樹脂、熱硬化性メラミン樹脂、熱硬化性ウレア樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、熱硬化性オキセタン樹脂、熱硬化性シアネート樹脂、熱硬化性エポキシ/オキセタン複合樹脂等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0056】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記(A1)を含む(A)成分、(B)成分及び(C)成分を必須成分とするが、樹脂成分(樹脂の他、硬化して樹脂の一部となる成分、例えば、モノマー、硬化剤、硬化促進剤を含むが、溶剤、充填剤は含まない)の60wt%以上、好ましくは80wt%以上、より好ましくは90wt%以上が(A)成分〜(B)成分であることがよい。また、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合は、次のようにして決めることがよい。
【0057】
(B)成分がカチオン硬化剤でない場合は、(A)成分のエポキシ基と(B)成分の硬化剤中の官能基が当量比で0.8〜1.5の範囲であることが好ましい。この範囲外では硬化後も未反応のエポキシ基、又は硬化剤中の官能基が残留し、硬化物としたときの硬度や耐熱性等の機能が低下するため好ましくない。また、硬化促進剤である(C)成分の配合割合としては、(A)成分と(B)成分の合計に対して、0.1wt%〜5wt%の範囲が好ましい。0.1wt%未満ではゲル化時間が遅くなって硬化時の剛性低下による作業性の低下をもたらし、逆に5.0wt%を超えると成形途中で硬化が進んでしまい、未充填が発生し易くなる。
【0058】
(B)成分がカチオン硬化剤である場合、(A)成分100重量部に対し、0.01〜10重量部、好ましくは0.1重量部〜5重量部である。0.01重量部未満の場合は硬化不良が発生しやすくなり、逆に5重量部を超えると透明性、耐熱着色性の点で好ましくない。
【0059】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(E)白色顔料を含むことで、光反射用に適した熱硬化性樹脂組成物とすることができる。
【0060】
白色顔料(E)としては、公知の材料であれば種々のものを選択できる。たとえば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、などの金属酸化物、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、ホウ珪酸ソーダガラス、シラス等の無機中空粒子などがあげられるがこれらに限定されず、必要に応じて2種以上を併用しても良い。好ましい白色顔料としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム及び無機中空粒子から選ばれる少なくとも1種があり、熱伝導性および光反射特性の観点から、アルミナ及び酸化チタンである。
【0061】
上記白色顔料(E)の含有量は、樹脂組成物全量を基準として、10〜85vol%の範囲であることが好ましい。白色顔料(E)の含有量が10vol%以下であると、白色度が不足し硬化物の光反射性が十分に得られない。また、85vol%を超えると、樹脂組成物の混練性、成型性が悪化する可能性がある。
【0062】
光反射用に適した熱硬化性樹脂組成物は、白色顔料(E)との界面接着性等を向上させる目的で、カップリング剤等の添加剤を用いても良い。カップリング剤としては、例えばエポキシ基、アミノ基、チオール基、アクリル基、ビニル基、イソシアネート基のいずれかを有するアルコキシシラン類またはアルコキシチタネート類が挙げられ、公知の材料のものであれば種々のものを選択できる。このような添加剤の使用量は特に限定されず、当業者によって好ましい量を用いることが出来るが、通常は樹脂組成物全量を基準として5wt.%以下である。
【0063】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要により他の添加剤を加えることができる。それにより、光学部品用樹脂組成物、電子部品用樹脂組成物または光半導体部品用樹脂組成物として有利なものとなる。光学部品用樹脂組成物の一例が、光反射用熱硬化性樹脂組成物であり、これは上記のように白色顔料(E)を配合することにより得られる。
【0064】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を均一に分散混合する手法については特に限定されず、当業者にとって好ましい手法で実施することが出来る。例えば、ミキシングロール、押出機、ニーダー、ロール、エクストルーダー、自転/公転攪拌混合機などの装置を用いて各種成分を混練し、ついで得られた混練物を冷却し粉砕する方法が挙げられる。また、混練する場合は、分散性の観点から、樹脂組成物が溶融状態で取り扱いできる温度で行うことが好ましい。
【0065】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、分散混合、冷却粉砕したのち、タブレット状に打錠して、トランスファー成型等の手法を用いることで、成型体として得ることが出来る。このとき、あらかじめ金属配線が施されたリードフレーム上に、凹型成型することで、光半導体搭載用筐体としての適用が可能である。また、銅箔に塗布、プレス成型することで、白色の銅張積層板が得られる。この白色銅張積層板は、光半導体搭載用回路基板として適用することが出来る。
【0066】
本発明の熱硬化性樹脂を電子部品として適用する場合、その用途、製造プロセスについては公知のものであれば特に限定されるものではない。たとえば、半導体封止材料であれば本発明の熱硬化性樹脂組成物にシリカなどのフィラーを混合し、ニーダーや熱3本ロールにて混練したのち、タブレット化して封止用金型のキャビティに送り込み熱硬化させるトランスファーモールド方式をとることができる。また、室温で液状である硬化剤と混合し、必要に応じてシリカ、アルミナ、酸化チタンなどのフィラー等を用いて所望の粘度としたのち、所定の位置に樹脂を注入するディスペンス方式をとることが出来る。
【0067】
また、回路基板としては、たとえばガラスクロスなどの基材に本発明の熱硬化性樹脂組成物を含浸させた後、銅箔をプレス成型により貼り合わせる方法や、銅箔に本発明の熱硬化性樹脂組成物をキャスト法などにより塗布し、所望の基材と貼り合わせる方法をとることが出来る。
【0068】
また、基板と半導体の接合部を封止・保護するアンダーフィル材として使用する場合には、室温で液状である硬化剤と混合し、必要に応じてシリカ、アルミナ、酸化チタン、ゴム粒子などのフィラー等を用いて所望の粘度としたのち、所定の位置に樹脂を注入するディスペンス方式をとることが出来る。
【0069】
また、光学部品用途としては、たとえば光学レンズ、光半導体用封止材、光半導体用白色成型材料、光半導体接着剤などがあげられるがその用途についてはこれらに限定されず、公知の用途、製造プロセスであれば適用が可能である。
【0070】
たとえば、光学レンズ材料としては、ディスペンス方式、トランスファーモールド方式等の公知のプロセスにより製造が可能である。
【0071】
光半導体装置(LED装置)用封止材としては、光半導体素子を金ワイヤー等で外部電極に接続したのち、トランスファーモールド方式、ポッティング方式等公知の技術を用いて充填する方法が適用できる。この際、本発明の熱硬化性樹脂組成物に、光半導体素子から発光する光を変換する目的で、各種公知の蛍光粉末を用いてもよい。また、適度なチクソ性を発現させるため、シリカ、エアロジルなどの公知のフィラーやシランカップリング材、界面活性剤などの公知の添加剤を加えてもよい。本発明の光半導体装置は、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて封止し、硬化させたものである。
【0072】
光半導体装置用接着剤としては、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、必要に応じてシリカ、酸化チタン、アルミナ、銀粉などのフィラーを用いてロール等による混練によりペースト化したものをディスペンス等の方法で基材に塗布、またはさらに公知のフィルム材を用いてフィルム状としたものを、基材の上に貼り合わせ、光半導体素子をマウントし熱硬化させる方法等を適用できる。
【0073】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、フッ素樹脂板、PETフィルム、ポリイミド等の基材上に、スピンコーター、バーコーター等を用いて薄膜状に塗布し、熱硬化させた後、基材をはがすことでフィルム体を得ることが出来る。
【0074】
上記手法により得られた熱硬化性樹脂及び熱硬化フィルムは、公知の電子部品用途、光学部品用途であれば種々の用途に適用でき、フレキシブルプリント配線板、異方性導電フィルム、カバーレイフィルム、ダイアタッチフィルム、層間絶縁材料等の電子部品用途、透明保護フィルム、光導波路用フィルム、光半導体フィルム等の光学部品用途に適用可能である。
【実施例】
【0075】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
原料の合成
ジアリルイソシアヌル酸は、米国特許第2830051号公報を元に、トリアリルシアヌレートをキシレンに溶解させ、活性白土を用いて合成した。
モノメチルジアリルイソシアヌレートは、米国特許第2830051号公報を元に、トリメチルシアヌレートをキシレンに溶解させ、フェノールを添加した後、活性白土を用いてモノメチルイソシアヌル酸を合成した。得られたモノメチルイソシアヌル酸をDMF溶媒中、アリルブロミドと水酸化ナトリウム、相関移動触媒としてテトラエチルアンモニウムを用いて合成した。
【0077】
実施例1
一般式(4)において、R1がメチル基、l=1、m=1である両末端にSiH基を有する環状オルガノシロキサン180重量部(SiH基として1.36当量)、ジオキサン220重量部、カーボン担持白金(白金担持量3%)0.83重量部を攪拌モーター、還流冷却管、窒素ラインを装着した2Lのセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら100℃に昇温した。ついで、ジアリルイソシアヌル酸37重量部(ビニル基として0.35当量)を、1時間かけて反応系内に投入した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、分子量の増大が停止したことを確認した後、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート281重量部(ビニル基として1.00当量)をジオキサン280重量部に溶解させた溶液を1時間かけて投入した。投入終了後、内温を110℃まで昇温し、ジオキサンを還流させながら反応を行った。GPCにて反応追跡を行い、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートのピークが消失したこと、0.1規定の水酸化カリウム/メタノール溶液に反応液を滴下し、水素ガスの発生がなくなったことを確認して、残存する白金触媒をセライトを用いてろ過した。エバポレータを用いて、ろ液の溶媒留去を行うことで、一般式(1)中、l=1、m=1、nの平均値が0.3、R1がメチル基、R2がプロピレン基、E1が一般式(3)で表される有機残基、Zが一般式(2)で表される有機残基、R3がプロピレン基、R4が水素原子である両末端にエポキシ基含有イソシアヌル環を配したエポキシシリコーン樹脂(ES1)を470重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は250で、室温での性状は固形状であり、150℃での粘度は0.12Pa・sであった。この樹脂のIRスペクトルを図1に示す。
【0078】
実施例2
一般式(4)において、R1がメチル基、l=1、m=1である両末端にSiH基を有する環状オルガノシロキサン260重量部(SiH基として1.94当量)、ジオキサン360重量部、カーボン担持白金(白金担持量3%)1.07重量部を攪拌モーター、還流冷却管、窒素ラインを装着した2Lのセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら100℃に昇温した。ついで、ジアリルイソシアヌル酸を99重量部(ビニル基として0.94当量)を、1時間かけて反応系内に投入した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、分子量の増大が停止したことを確認後、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート281重量部(ビニル基として1.00当量)をジオキサン281重量部に溶解させた溶液を1時間かけて投入した。投入終了後、内温を110℃まで昇温し、ジオキサンを還流させながら反応を行った。GPCにて反応追跡を行い、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートのピークが消失したこと、0.1規定の水酸化カリウム/メタノール溶液に反応液を滴下し、水素ガスの発生がなくなったことを確認して、残存する白金触媒をセライトを用いてろ過した。エバポレータを用いて、ろ液の溶媒留去を行うことで、一般式(1)中、l=1、m=1、nの平均値が0.9、R1がメチル基、R2がプロピレン基、E1が一般式(3)で表される有機残基、Zが一般式(2)で表される有機残基、R3がプロピレン基、R4が水素原子である両末端にエポキシ基含有イソシアヌル環を配したエポキシシリコーン樹脂(ES2)を619重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は325で、室温での性状は固形状であり、150℃での粘度は0.56Pa・sであった。この樹脂のIRスペクトルを図2に示す。
【0079】
実施例3
一般式(4)において、R1がメチル基、l=1、m=1である両末端にSiH基を有する環状オルガノシロキサン203重量部(SiH基として1.52当量)、ジオキサン310重量部、カーボン担持白金(白金担持量3%)0.75重量部を攪拌モーター、還流冷却管、窒素ラインを装着した2Lのセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら100℃に昇温した。ついで、ジアリルイソシアヌル酸を106重量部(ビニル基として1.01当量)を、1時間かけて反応系内に投入した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、分子量の増大が停止したことを確認後、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート141重量部(ビニル基として0.51当量)をジオキサン141重量部に溶解させた溶液を1時間かけて投入した。投入終了後、内温を110℃まで昇温し、ジオキサンを還流させながら反応を行った。GPCにて反応追跡を行い、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートのピークが消失したこと、0.1規定の水酸化カリウム/メタノール溶液に反応液を滴下し、水素ガスの発生がなくなったことを確認して、残存する白金触媒をセライトを用いてろ過した。エバポレータを用いて、ろ液の溶媒留去を行うことで、一般式(1)中、l=1、m=1、nの平均値が2.0、R1がメチル基、R2がプロピレン基、E1が一般式(3)で表される有機残基、Zが一般式(2)で表される有機残基、R3がプロピレン基、R4が水素原子である、両末端にエポキシ基含有イソシアヌル環を配したエポキシシリコーン樹脂(ES3)を398重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は455で、室温での性状は固形状であり、150℃での粘度は1.61Pa・sであった。
【0080】
実施例4
一般式(4)において、R1がメチル基、l=1、m=1である両末端にSiH基を有する環状オルガノシロキサン175重量部(SiH基として1.31当量)、ジオキサン210重量部、カーボン担持白金(白金担持量3%)0.82重量部を攪拌モーター、還流冷却管、窒素ラインを装着した2Lのセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら100℃に昇温した。ついで、モノメチルジアリルイソシアヌレート34重量部(ビニル基として0.31当量)を、1時間かけて反応系内に投入した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、分子量の増大が停止したことを確認後、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート281重量部(ビニル基として1.0当量)をジオキサン281重量部に溶解させた溶液を1時間かけて投入した。投入終了後、内温を110℃まで昇温し、ジオキサンを還流させながら反応を行った。GPCにて反応追跡を行い、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートのピークが消失したこと、0.1規定の水酸化カリウム/メタノール溶液に反応液を滴下し、水素ガスの発生がなくなったことを確認して、残存する白金触媒をセライトを用いてろ過した。エバポレータを用いて、ろ液の溶媒留去を行うことで、一般式(1)中、l=1、m=1、nの平均値が0.3、R1がメチル基、R2がプロピレン基、E1が一般式(3)で表される有機残基、Zが一般式(2)で表される有機残基、R3がプロピレン基、R4がメチル基である両末端にエポキシ基含有イソシアヌル環を配したエポキシシリコーン樹脂(ES4)を438重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は250g/eq.室温での性状は固形状であり、150℃での粘度は0.08Pa・sであった。この樹脂のIRスペクトルを図3に示す。
【0081】
実施例5
一般式(4)において、R1がメチル基、l=1、m=1である両末端にSiH基を有する環状オルガノシロキサン257重量部(SiH基として1.91当量)、ジオキサン360重量部、カーボン担持白金(白金担持量3%)1.07重量部を攪拌モーター、還流冷却管、窒素ラインを装着した2Lのセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら100℃に昇温した。ついで、モノメチルジアリルイソシアヌレート102重量部(ビニル基として0.91当量)を、1時間かけて反応系内に投入した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、分子量の増大が停止したことを確認後、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート281重量部(ビニル基として1.0当量)をジオキサン281重量部に溶解させた溶液を1時間かけて投入した。投入終了後、内温を110℃まで昇温し、ジオキサンを還流させながら反応を行った。GPCにて反応追跡を行い、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートのピークが消失したこと、0.1規定の水酸化カリウム/メタノール溶液に反応液を滴下し、水素ガスの発生がなくなったことを確認して、残存する白金触媒をセライトを用いてろ過した。エバポレータを用いて、ろ液の溶媒留去を行うことで、一般式(1)中、l=1、m=1、nの平均値が0.9、R1がメチル基、R2がプロピレン基、E1が一般式(3)で表される有機残基、Zが一般式(2)で表される有機残基、R3がプロピレン基、R4がメチル基である、両末端にエポキシ基含有イソシアヌル環を配したエポキシシリコーン樹脂(ES5)を565重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は327、室温での性状は固形状であり、150℃での粘度は0.11Pa・sであった。この樹脂のIRスペクトルを図4に示す。
【0082】
実施例6
一般式(4)において、R1がメチル基、l=1、m=1である両末端にSiH基を有する環状オルガノシロキサン224重量部(SiH基として1.67当量)、ジオキサン360重量部、カーボン担持白金(白金担持量3%)0.75重量部を攪拌モーター、還流冷却管、窒素ラインを装着した2Lのセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら100℃に昇温した。ついで、モノメチルジアリルイソシアヌレート130重量部(ビニル基として1.17当量)を、1時間かけて反応系内に投入した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、分子量の増大が停止したことを確認後、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート141重量部(ビニル基として0.50当量)をジオキサン141重量部に溶解させた溶液を1時間かけて投入した。投入終了後、内温を110℃まで昇温し、ジオキサンを還流させながら反応を行った。GPCにて反応追跡を行い、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートのピークが消失したこと、0.1規定の水酸化カリウム/メタノール溶液に反応液を滴下し、水素ガスの発生がなくなったことを確認して、残存する白金触媒をセライトを用いてろ過した。エバポレータを用いて、ろ液の溶媒留去を行うことで、一般式(1)中、l=1、m=1、nの平均値が2.0、R1がメチル基、R2がプロピレン基、E1が一般式(3)で表される有機残基、Zが一般式(2)で表される有機残基、R3がプロピレン基、R4がメチル基である両末端にエポキシ基含有イソシアヌル環を配したエポキシシリコーン樹脂(ES6)を397重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は460、室温での性状は固形状であり、150℃での粘度は0.19Pa・sであった。
【0083】
実施例7
一般式(4)において、R1がメチル基、l=1、m=1である両末端にSiH基を有する環状オルガノシロキサン254重量部(SiH基として1.89当量)、ジオキサン410重量部、カーボン担持白金(白金担持量3%)0.92重量部を攪拌モーター、還流冷却管、窒素ラインを装着した2Lのセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら100℃に昇温した。ついで、モノメチルジアリルイソシアヌレート156重量部(ビニル基として1.39当量)を、1時間かけて反応系内に投入した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、分子量の増大が停止したことを確認後、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート141重量部(ビニル基として0.50当量)をジオキサン141重量部に溶解させた溶液を1時間かけて投入した。投入終了後、内温を110℃まで昇温し、ジオキサンを還流させながら反応を行った。GPCにて反応追跡を行い、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートのピークが消失したこと、0.1規定の水酸化カリウム/メタノール溶液に反応液を滴下し、水素ガスの発生がなくなったことを確認して、残存する白金触媒をセライトを用いてろ過した。エバポレータを用いて、ろ液の溶媒留去を行うことで、一般式(1)中、l=1、m=1、nの平均値が2.8、R1がメチル基、R2がプロピレン基、E1が一般式(3)で表される有機残基、Zが一般式(2)で表される有機残基、R3がプロピレン基、R4がメチル基である、両末端にエポキシ基含有イソシアヌル環を配したエポキシシリコーン樹脂(ES7)を486重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は575、室温での性状は固形状であり、150℃での粘度は0.26Pa・sであった。
【0084】
合成例1
下記式(13)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン73重量部(SiH基として0.2当量)、ジオキサン128重量部、カーボン担持白金(白金担持量3%)0.21重量部を攪拌モーター、還流冷却管、窒素ラインを装着した500mLのセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら100℃に昇温した。ついで、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート56.2重量部(ビニル基として0.2当量)をジオキサン56重量部に溶解させた溶液を1時間かけて投入した。投入終了後、内温を110℃まで昇温し、ジオキサンを還流させながら反応を行った。0.1規定の水酸化カリウム/メタノール溶液に反応液を滴下し、水素ガスの発生がなくなったことを確認して、残存する白金触媒をセライトを用いてろ過した。エバポレータを用いて、ろ液の溶媒留去を行うことで、主鎖がジメチルシロキサンのみで構成され、両末端にエポキシ基含有イソシアヌル環を配したエポキシシリコーン樹脂(ES8)を74重量部得た。この樹脂のエポキシ当量は320で、室温で液状であり、25℃の粘度は5.9Pa・sであった。
【0085】
【化8】

【0086】
合成例2
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン72重量部、ジオキサン100重量部、カーボン担持白金(白金担持量3%)0.35重量部を、攪拌モーター、還流冷却管、窒素ラインを装着した1Lのセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら100℃に昇温した。ついで、トリアリルイソシアヌレート25重量部をジオキサン25重量部に溶解させた溶液を1時間かけて滴下した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、分子量の増大が停止したことを確認後、4−ビニルシクロヘキセンオキシド112重量部を2時間かけて滴下した。投入終了後、内温を110℃まで昇温し、ジオキサンを還流させながら反応を行った。GPCにて反応追跡を行い、4−ビニルシクロヘキセンオキシドのピークが消失したこと、0.1規定の水酸化カリウム/メタノール溶液に反応液を滴下し、水素ガスの発生がなくなったことを確認して、残存する白金触媒をセライトを用いてろ過した。この溶液にトリフェニルフォスフィンを0.1重量部添加した後、エバポレータを用いて、ろ液の溶媒留去を行うことで、樹脂の鎖中にイソシアヌル環及び環状オルガノシロキサン骨格を有し、末端にエポキシ基を有するエポキシシリコーン樹脂(ES9)を得た。この樹脂のエポキシ当量は241であった。
【0087】
実施例8〜14
実施例1〜7で得られたエポキシシリコーン樹脂(ES1〜ES7)を、メチル化ヘキサヒドロ無水フタル酸(MH:酸無水物当量168g/eq.)を用いて、両者の当量比が1:1となるように加え、よく混合し、さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0088】
実施例15
(A1)成分として、実施例5で得られたエポキシシリコーン樹脂(ES5)を70重量部使用し、更に(D)成分として3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(EpC:エポキシ当量130)を30重量部配合した樹脂液を調製した。この樹脂液と、MHを用いて、エポキシ当量と酸無水物当量の比が1:1となるように加え、よく混合し、さらに硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o’−ジエチルホスホロジチオネートを全体の0.5重量%投入し、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0089】
比較例1
(A1)成分のエポキシシリコーン樹脂を使用せず、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(EpC)を26重量部,MHを34重量部用いた他は、実施例8と同様の操作を行い厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0090】
比較例2
EpCに代えて、トリグリシジルイソシアヌレート(EpT、エポキシ当量100)を20重量部、MHを34重量部用いた他は、比較例1と同様の操作を行い厚さ1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0091】
比較例3
((Me2CH2=CH)SiO1/21.0(MeSiO3/21.11(Me2SiO)0.05で表されるシリコーンレジン100重量部、ビニル当量が1,400g/eq.である両末端ビニル基含有ジメチルシロキサンオイル20重量部、ヒドロシリル当量が64g/eq.であるメチルハイドロジェンシリコーンオイル48重量部を用い、硬化触媒として白金―テトラビニルジシロキサン錯体のキシレン溶液を、全重量に対し20ppm加え、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0092】
比較例4
(C650.62(CH2=CH)0.38(CH30.38SiO1.31で表されるフェニルシリコーンレジン30重量部と、ヒドロシリル当量が163g/eq.で表されるメチルハイドロジェンシリコーンオイルを16重量部用い、硬化触媒として白金―テトラビニルジシロキサン錯体のキシレン溶液を、全重量に対し20ppm加え、真空脱気して金型内で、120℃で4時間、更に160℃で12時間硬化して厚さ1mm1mm及び4mmの樹脂板を作成した。
【0093】
比較例5
EpCに代えて、合成例1で得られたエポキシシリコーン樹脂(ES8)を32重量部、MHを17重量部用いた他は比較例1と同様の操作を行い厚さ1mmおよび4mmの樹脂板を作成した。
【0094】
比較例6
EpCに代えて、合成例2で得られたエポキシシリコーン樹脂(ES9)を24重量部、MHを17重量部用いた他は比較例1と同様の操作を行い厚さ1mmおよび4mmの樹脂板を作成した。
【0095】
硬化した樹脂板の物性測定は以下の方法にて行った。
(1)硬化物のガラス転移温度(Tg)の測定
セイコー電子工業(株)製熱応力歪測定装置TMA/SS120Uを用いて30℃から270℃の範囲で測定し、線膨張率の変化した温度をガラス転移温度とした。昇温速度は5℃/分とした。
【0096】
(2)線膨張率(CTE)の測定
セイコー電子工業(株)製熱応力歪測定装置TMA/SS120Uを用いて30℃から270℃の範囲で測定し、40℃と60℃の2点で結ばれた直線の傾きから線膨張率を算出した。昇温速度は5℃/分とした。
【0097】
(3)硬化物の初期透過度
日立製作所製自記分光光度計U−3410を用いて、厚さ1mm硬化物の波長400nmの透過度を測定した。
【0098】
(4)耐UV性の測定
厚さ4mmの硬化物をQパネル社製耐候性試験機QUVを用いて、600時間UV照射した後の400nmの透過度を、初期透過度と同様にして測定した。QUVのランプにはUVA340nmを用い、ブラックパネル温度は55℃とした。
【0099】
(5)初期耐熱性の測定
1mm厚の硬化物を150℃の環境下にさらし、72時間後の400nmの透過度を、初期透過度と同様にして測定した。
【0100】
(6)長期耐熱性の測定
1mm厚の硬化物を150℃の環境下にさらし、480時間後の400nmの透過度を、初期透過度と同様にして測定した。
【0101】
(7)硬度の測定
テクロック(株)性硬度計TYPE−Dを用いて、室温での硬化物の表面硬度(ショアーD)を測定した。
【0102】
(8)べたつき性の評価
硬化物をポリエチレン製の袋に入れ、少しでも張り付きがあった場合を、べたつき性有と判断した。表1及び2において、○はべたつき無しを、×はべたつき有りを意味する。
【0103】
(9)金型取り外し後の硬化物形状(外観)
金型を外したとき、硬化物の均一性や硬化収縮による硬化物の割れを目視にて判定した。○:均一な硬化物である。△:金型の形状を保っているが硬化物中にクラックが生じている。×:金型の形状を保たず、樹脂が割れている。
【0104】
(10)曲げ、たわみ特性試験
JIS−7171に準拠し、80mm×10mm×4mmの試験片を用いて、オートグラフ(島津製作所(株)製)により曲げ弾性率、曲げ強度、曲げたわみを測定した。なお、○は破断せずを意味する。
【0105】
実施例8〜15により得られた硬化物の各試験の測定結果を表1に示す。表1及び3中、(A)成分は、(A1)成分を意味する。
【0106】
【表1】

【0107】
比較例1〜6により得られた硬化物の各試験の測定結果を表2に示す。なお、NMは測定不可を意味する。
【0108】
【表2】

【0109】
実施例16〜23、比較例8
実施例8〜15、および比較例2で配合した樹脂液に、白色顔料(E)として、溶融シリカ及び酸化チタンを、配合樹脂液:溶融シリカ:酸化チタン=15:74:11(wt.%)となるような重量比率で配合し、2本ロールを使用して50℃10分溶融混練することで混練物を得た。次に、得られた混練物を冷却し、粉砕することで白色固体状の光反射用熱硬化性樹脂組成物を得た。この組成物を、厚みが2mmの真鍮製のスペーサーを用いて、成型金型温度175℃、成型圧力5MPa、硬化時間300秒の条件でトランスファー成型を行った後、金型から脱型し、150℃12時間硬化して厚み2mmの試験片を作成した。
【0110】
比較例7、9〜12
比較例1、3〜6で配合した樹脂液に、白色顔料(E)として、溶融シリカ及び酸化チタンを、配合樹脂液:溶融シリカ:酸化チタン=15:74:11(wt.%)となるような重量比率で配合し、自転/公転攪拌機を使用して回転数2000rpmで5分こんごうすることにより、白色ペースト状の光反射用熱硬化性樹脂組成物を得た。このペースト状の組成物を、厚みが2mmの真鍮製のスペーサーを用いて、金型温度175℃、成型圧力1MPa、硬化時間300秒の条件でプレス成型を行った後、金型から脱型し、150℃12時間硬化して厚み2mmの試験片を作成した。
【0111】
(11)脱型時の変形の有無
トランスファー成型またはプレス成型を行った後の脱型時に、脱型時の応力による試験片の変形の有無を目視で確認し、成型時の形状保持性の判定を行った。表4及び5において、○は変形無しを、×は変形有りを意味する。
【0112】
(12)初期反射率の測定
日立製作所製自記分光光度計U−3410を用いて、波長460nmにおける光反射率を測定した。
【0113】
(13)初期耐熱性の測定
2mm厚の硬化物を150℃の環境下にさらし、72時間後の460nmの反射率を、初期反射率と同様にして測定した。
【0114】
(14)長期耐熱性の測定
2mm厚の硬化物を150℃の環境下にさらし、480時間後の460nmの反射率を、初期反射率と同様にして測定した。
【0115】
実施例16〜23により得られた白色硬化物の測定結果を表3に示す。
【0116】
【表3】

【0117】
比較例7〜12により得られた硬化物の各試験の測定結果を表4に示す。
【0118】
【表4】

【0119】
実施例24〜31、比較例13〜18
実施例8〜15、比較例1〜6の配合により得られた配合物を、底辺部が銀メッキされ、発光素子がワイヤーボンディングされた青色LED用パッケージに、注型により充填し、100℃2時間、150℃5時間硬化させて封止して、LED装置を作成した。
【0120】
封止されたLED装置の物性測定は以下の方法にて行った。
(10)リフロー試験
封止されたLEDパッケージを、260℃を15秒保持するよう設定されたリフロー炉に連続して3回通過させたとき、封止材の着色、クラック、剥がれの有無を確認した。結果を表5に示す。表5において、○は着色、クラック、剥がれが無いことを、×は着色、クラック、剥がれが有ったことを意味する。
【0121】
(11)熱衝撃試験の測定。
封止されたLEDパッケージを、−40℃〜120℃、500サイクルの試験に供し、顕微鏡にてクラック及び封止材の剥がれ、ワイヤーの断線の有無を確認した。結果を表6に示す。表6において、○は無しを、×は有りを意味する。
【0122】
【表5】

【0123】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表され、エポキシ当量が200〜2000g/eq.であることを特徴とするエポキシシシリコーン樹脂。
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を表し、各々同一でも異なっていても良い。R2は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、内部にエーテル結合性酸素原子を1〜3個有していても良い。E1はエポキシ基を少なくとも1つ有する1価の有機残基であり、Zは一般式(2)で表されるイソシアヌル環を有する2価の有機残基である。l及びmは独立に0〜3の整数であり、1≦l+m≦4を満たす。nは0<n≦100の数である。)
【化2】

(式中、R3は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R4は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
一般式(1)中のE1が、式(3)で表される有機残基であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシシリコーン樹脂。
【化3】

【請求項3】
請求項1に記載のエポキシシリコーン樹脂の製造方法において、一般式(4)で表される両末端SiH含有環状オルガノシロキサンに、一般式(5)で表される両末端ビニル基含有イソシアヌル酸誘導体を理論量未満で反応させ、ついで残存するSiH基を、1分子中にエポキシ基を少なくとも1つ有し、かつ炭素‐炭素2重結合を1分子中に1つ有するSiH基と反応性を有するエポキシ樹脂を用いて末端封止反応を行うことを特徴とするエポキシシリコーン樹脂の製造方法。
【化4】

(式中、R1は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を表し、各々同一でも異なっていても良い。m及びlは独立に0〜3の整数であり、1≦l+m≦4を満たす。)
【化5】

(式中、R4は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表す。R5は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。R6は水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項4】
SiH基と反応性を有するエポキシ樹脂が、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートであることを特徴とする請求項3に記載のエポキシシリコーン樹脂の製造方法。
【請求項5】
エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び硬化促進剤(C)を必須成分として含む熱硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂成分として請求項1又は2に記載のエポキシシリコーン樹脂(A1)を含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
硬化剤(B)が、酸無水物であることを特徴とする請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
硬化促進剤(C)が、4級アンモニウム塩または4級ホスホニウム塩であることを特徴とする請求項5又は6に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
エポキシ樹脂(A)が、エポキシシリコーン樹脂(A1)と、室温で液状のエポキシ樹脂(D)を含み、エポキシシリコーン樹脂(A1)100重量部に対し、エポキシ樹脂(D)を5〜150重量部含有し、エポキシ樹脂成分全体としてのエポキシ当量が180〜1000g/eq.であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物が、さらに白色顔料(E)を含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
白色顔料が、シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム及び無機中空粒子から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項9に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
熱硬化性樹脂組成物が、光学部品用樹脂組成物、電子部品用樹脂組成物または光半導体部品用樹脂組成物であることを特徴とする請求項5〜10のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
光学部品用樹脂組成物が、光反射用熱硬化性樹脂組成物である請求項11に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項11に記載の熱硬化性樹脂組成物が、光半導体用液状封止樹脂組成物であり、この樹脂組成物を用いて封止することを特徴とするLED装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−64087(P2013−64087A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204489(P2011−204489)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000006644)新日鉄住金化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】