説明

エポキシド樹脂組成物のための熱で活性化可能な硬化剤としての、シラン/尿素化合物

本発明は、昇温により活性化可能なエポキシ樹脂のための硬化剤としての、式(I)のシラン、または表面が式(I)のシランで被覆もしくは誘導体化された基材の使用に関する。
このような熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、その貯蔵安定性を大きく低下させることなく、硬化温度を大きな低下させることができる。それゆえ、これらは、特に耐衝撃改良剤を含む、車両の製造のための車体の外殻の接着剤としての、単成分の熱硬化性エポキシ接着剤に非常に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性エポキシ樹脂のためのシランおよび硬化剤の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
シランは、接着剤のための結合剤として、長い間知られている。
【0003】
尿素シランは、Russ、J. Appl. Chem.、2006、79、981-986およびRuss、J. Gen. Chem.、2004、74、1658-1664に開示されている通り、ゾルゲルおよびキセロゲルを生成するために使用されている。尿素シランは、テトラエトキシシランと縮合し、均一なゾルまたはゲルを生成する。
【0004】
熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、長い間知られている。この目的のために、昇温により活性化される硬化剤が使用される。尿素化合物は、エポキシ樹脂のためのこのような熱で活性化可能な硬化剤の重要な種類である。このような尿素化合物は、しばしばエポキシ樹脂を含めた他の熱で活性化可能な硬化剤に対する促進効果を有する。
【0005】
熱硬化性樹脂組成物の1つの重要な用途は、特に車体の外殻(body shell)における接着結合のための、または車体の外殻における空洞の発泡のための、車両の製造において見出される。両方の場合において、エポキシ樹脂組成物の塗布後、車体はカソードのディップコーティング(CDC)オーブンで加熱され、これにより硬化され、および場合によって熱硬化性エポキシ樹脂組成物を発泡する。例えば、WO 2004/106402 A2およびWO 2004/055092 A1は、熱で活性化可能な硬化剤としての尿素化合物を含む熱硬化性エポキシ樹脂組成物を開示している。
【0006】
しかしながら、硬化温度を大きく下げるための取り組みが、現在、産業において進んでいる。したがって、産業において、より低い温度において、つまり180℃未満の温度において、非常に短い時間後、典型的には10から15分後に硬化する熱硬化性エポキシ樹脂組成物への大きな要求が存在する。この理由のために、その構造により非常に反応性の高い芳香族尿素類が使用される。しかしながら、このような芳香族尿素類の使用は、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性に大きな問題をもたらすことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2004/106402 A2
【特許文献2】WO 2004/055092 A1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Russ、J. Appl. Chem.、2006、79、981-986
【非特許文献2】Russ、J. Gen. Chem.、2004、74、1658-1664
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、本発明の目的は、低い温度においてエポキシ樹脂を硬化することができ、さらにこれらの熱で活性化可能な硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の優れた貯蔵安定性を確保することができる、エポキシ樹脂のための熱で活性化可能な硬化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、驚くべきことに、請求項1に係る式(I)のシランを使用することによって達成された。
【0011】
このようなシランは、エポキシ樹脂組成物のための熱で活性化可能な硬化剤として、非常に適している。さらにこれらは、基材(特にフィラーまたは平らな基材)のコーティングまたは誘導体化のために満足に使用されてもよく、これらはその後、熱で活性化可能な硬化剤として使用されてもよい。
【0012】
式(I)、特に式(Ia)のシランは、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の成分として、貯蔵安定性を損なうことなく、硬化温度を大きく低下させることができるということを特徴とする。それゆえ、これらは、車両の製造のための車体の外殻の接着剤として、特に耐衝撃改良剤を含む単成分の熱硬化性エポキシ接着剤に非常に好適である。式(I)のシランをさらなる熱で活性化可能な硬化剤と一緒に使用することが、特に有利であることが示された。
【0013】
式(I)のシランは、様々な表面化の増加した接着力をもたらすことも示された。
【0014】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立請求項の主題である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第一の態様において、本発明は、昇温により活性化可能なエポキシ樹脂のための硬化剤としての、式(I)のシランの使用、またはその表面が式(I)のシランで被覆または誘導体化された基材の使用に関する。
【0016】
【化1】

【0017】
ここで、Aは、場合によって分岐した1から4個のC原子を含むアルキレン基、またはフェニレン基を表す。
【0018】
Z1は、Hまたは1から4個のC原子を含むアルキル基、特にメチルまたはエチル基を表す。
【0019】
Z2は、Hまたはフェニル基、あるいは1から8個のC原子を含むアルキル基、特にメチル基を表す。
【0020】
Z3は、Hあるいは場合によって少なくとも1つのカルボキシレート基、ニトリル基、ニトロ基、ホスホネート基、またはスルホン基もしくはスルホネート基を含む、1から8個のC原子を含む単官能の芳香族基または脂環式基もしくは脂肪族基を表すか、またはA-Si(Z2)3-a(OZ1)aを表す。
【0021】
Z4は、Hまたは1から8個のC原子を含む単官能の芳香族基または脂環式基もしくは脂肪族基を表す。
【0022】
Z5は、1から40個のC原子を含むb-官能の芳香族基または脂環式基もしくは脂肪族基、またはA-Si(Z2)3-a(OZ1)aを表す。
【0023】
さらに、XはOまたはSを表し、aは1または2もしくは3を表し、bは1または2または3もしくは4を表す。
【0024】
最後に、Z3またはZ4のどちらかはHを表すという条件を適用する。
【0025】
したがって、尿素基(NCON)またはチオ尿素基(NCSN)に結合されたZ3およびZ4の2つの基のうち1つはHを表すが、両方ではない。
【0026】
すなわち、式(I)中に存在する尿素基またはチオ尿素基は、二置換されても四置換されてもおらず、三置換された尿素基またはチオ尿素基であることが、本発明にとって重要である。
【0027】
本明細書において、置換基、基(radical)、または基(group)に関連した用語「独立に」の使用は、同じ分子において、同じ意味を有することが、同時に異なる意味で存在してもよいことを示す、置換基、基(radical)、または基(group)を意味するものと解釈される。
【0028】
本明細書全体において、例えば「ポリイソシアネート」、「ポリチオイソシアネート」、「ポリアミン」、「ポリオール」、「ポリフェノール」および「ポリメルカプタン」における接頭語「ポリ」は、2つ以上の特定の官能基を形式的に含む分子を表す。
【0029】
本明細書において、「耐衝撃改良剤」は、低い添加量、特に0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜40質量%において、マトリクスが破裂または破壊する前に、靱性の明確な増加をもたらし、それゆえ高い衝撃または衝撃応力を吸収することができる、エポキシ樹脂マトリクスへの添加剤を意味するものと理解される。
【0030】
それぞれの場合において、本明細書における式中の点線は、特定の置換基と関連する分子部分との間の結合を表す。
【0031】
本明細書において、用語「ポリマー」には、一方で、化学的に均一であるが、重合速度、モル質量、および鎖長の点で異なる重反応(polyreaction)(重合、重付加、重縮合)によって生成される高分子(macromolecule)の集合体が含まれる。他方で、この用語には、重反応からの高分子のこのような集合体の誘導体、つまり、例えば特定の高分子の官能基の付加または置換などの反応から得られた化合物も含まれ、これらは化学的に均一であってもよく、または化学的に不均一であってもよい。この用語には、いわゆる「プレポリマー」、つまり、反応性オリゴマーのプレポリマーがさらに含まれ、この官能基は高分子の合成に関与する。
【0032】
用語「ポリウレタンポリマー」には、いわゆるジイソシアネートの重付加プロセスによって生成される全てのポリマーが含まれる。この用語には、ほとんどまたは完全にウレタン基を含まないポリマーも含まれる。ポリウレタンポリマーの例は、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレア、ポリウレア、ポリエステルポリウレア、ポリイソシアヌレート、およびポリカルボジイミドである。
【0033】
aは2または3を表すことが好ましい。最も好ましくは、aは3の値を表す。
【0034】
基Aは、好ましくは、場合によって分岐した1から4個のC原子を含むアルキレン基を表す。特に、Aは、メチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、またはイソブチレン基を表す。Aは、特に好ましくは、プロピレン基を表す。
【0035】
bは1または2を表すことが好ましい。
【0036】
メチル基は、1から8個のC原子を含む単官能の脂肪族基としてのZ3またはZ4もしくはZ5のための好ましい基である。
【0037】
式(I)のシランが芳香族置換基を含まない場合、特に有利であることが示された。
【0038】
Z3が、少なくとも1つのカルボキシレート基、ニトリル基、ニトロ基、ホスホネート基、またはスルホン基もしくはスルホネート基を含む、1から8個のC原子を含む単官能の芳香族基または脂環式基もしくは脂肪族基を表す場合、Z3は、特に式(III)の気を表す。
【0039】
【化2】

【0040】
ここで、
Z8およびZ6は、独立に、水素原子または-Z9、-OOOZ9、および-CNを含む群から選択される基を表し、
Z7は水素原子または-CH2-COOZ9、-COOZ9、-CONHZ9、-CON(Z9)2、-CN、-NO2、-PO(OZ9)2、-SO2Z9、および-SO2OZ9を含む群から選択される基を表し、
ここで、
Z9は、特に1から6のC原子を含み、場合によって少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単官能の炭化水素基を表す。
【0041】
式(I)のシランは、様々な方法で容易に合成されてもよい。
【0042】
第一の変形例において、式(II a)のイソシアネートまたはチオイソシアネートが、式(II b)の第二級アミノシランと反応し(つまり、この場合、Z3がHとは異なる)、式(I)のシランを生成する。
【0043】
【化3】

【0044】
第二の変形例において、式(II c)の第二級アミンが(つまり、この場合、Z4がHとは異なる)、式(II d)のイソシアネートシランまたはチオイソシアネートシランと反応し、式(I)のシランを生成する。
【0045】
【化4】

【0046】
第三の変形例において、式(II e)の化合物が式(II f)のアミノシランと反応し、式(I)のシランを生成する。
【0047】
【化5】

【0048】
第一の変形例が、特に複数の尿素基またはチオ尿素基を有するシラン、つまりb>1のものを生成するために好適である。この目的のために必要なポリイソシアネートは、容易に得ることができる。
【0049】
モノ-またはポリイソシアネートは、式(II a)のイソシアネートとして好適である。モノ-またはポリイソシアネートは、芳香族または脂肪族であってもよい。
【0050】
好適な芳香族ポリイソシアネートの例は、モノマーのジ-またはトリイソシアネート、例えば2,4-および2,6-トルイエンジイソシアネートならびにこれらの異性体(TDI)の任意の所定の混合物、4,4’-、2,4’-、および2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートならびにこれらの異性体(MDI)の任意の所定の混合物、MDIとMDIの同族体(ポリマーのMDIまたはPMDI)との混合物、1,3-および1,4-フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ジイソシアネートベンゼン、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアネートジフェニル(TODI)、ジアニシジンジイソシアネート(DADI)、1,3,5-トリス-(イソシアネートメチル)ベンゼン、トリス-(4-イソシアネートフェニル)メタン、トリス-(4-イソシアネートフェニル)チオホスホネート、上記で挙げたイソシアネートのオリゴマーおよびポリマー、ならびに上記で挙げたイソシアネートの任意の所定の混合物である。MDIおよびTDIが好ましい。
【0051】
好適な脂肪族ポリイソシアネートの例は、モノマーのジ-またはトリイソシアネート、例えば1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン-1,5-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-および2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,10-デカメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネートおよびリシンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-および-1,4-ジイソシアネート、1-メチル-2,4-および-2,6-ジイソシアネートシクロヘキサン、ならびにこれらの異性体(HTDIまたはH6TDI)の所定の混合物、1-イソシアネート-3,3,5-トリメチル-5-イソシアネートメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、ペルヒドロ-2,4’-および-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDIまたはH12MDI)、1,4-ジイソシアネート-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3-および1,4-ビス-(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、m-およびp-キシリレンジイソシアネート(m-およびp-XDI)、m-およびp-テトラメチル-1,3-ならびに-1,4-キシリレンジイソシアネート(m-およびp-TMXDI)、ビス-(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ナフタレン、二量体および三量体の脂肪酸イソシアネート、例えば3,6-ビス-(9-イソシアネートノニル)-4,5-ジ-(1-ヘプテニル)シクロヘキセン(ジメリルジイソシアネート)、α,α,α’,α’,α”,α”-ヘキサメチル-1,3,5-メシチレントリイソシアネート、上記で挙げたイソシアネートのオリゴマーおよびポリマー、ならびに上記で挙げたイソシアネートの任意の所定の混合物である。HDIおよびIPDIが好ましい。
【0052】
別の実施形態において、モノマーのジ-またはトリイソシアネート、あるいはモノマーのジイソシアネートのオリゴマーの形態のポリイソシアネートは、ポリイソシアネートとして好適であり、上記で挙げた芳香族および脂肪族のジ-ならびにトリイソシアネートは、例えば、モノマーのジ-またはトリイソシアネートとして好適である。HDI、IPDI、およびTDIのオリゴマーは、モノマーのジイソシアネートのオリゴマーとして特に好適である。実際には、このようなオリゴマーは、たいてい、異なるオリゴマー化速度および/または化学構造を有する物質の混合物を表す。オリゴマーは、好ましくは、2.1から4.0の平均NCO官能性を有し、特にイソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン、ウレトジオン、ウレタン、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトンイミン、またはオキサジアジントリオン基を含む。オリゴマーは、好ましくは、低い含有量のモノマーのジイソシアネートを有する。商業的に利用可能な種類は、特にHDIビウレット、例えばDESMODUR N 100およびDESMODUR N 3200(Bayerから)、TOLONATE HDBおよびTOLONATE HDB-LV(Rhodiaから)、ならびにDURANATE 24A-100(Asahi Kaseiから); HDIイソシアヌレート、例えばDESMODUR N 3300、DESMODUR N 3600、およびDESMODUR N 3790 BA(Bayerから)、TOLONATE HDT、TOLONATE HDT-LV、およびTOLONATE HDT-LV2(Rhodiaから)、DURANATE TPA-100およびDURANATE THA-100(Asahi Kaseiから)、ならびにCORONATE HX(Nippon Polyurethaneから); HDIウレトジオン、例えばDESMODUR N 3400(Bayerから); HDIイミノオキサジアジンジオン、例えばDESMODUR XP 2410(Bayerから); HDIアロファネート、例えばDESMODUR VP LS 2102(Bayerから); IPDIイソシアヌレート、例えばDESMODUR Z 4470(Bayerから)およびVESTANAT T1890/100(Evonikから); TDIオリゴマー、例えばDESMODUR IL(Bayerから); ならびにTDI/HDIに基づく混合されたイソシアヌレート、例えばDESMODUR HL(Bayerから)である。
【0053】
モノイソシアネートとして特に好適なのは、ブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、メチルシクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、2-メトキシフェニルイソシアネート、またはp-トルエンスルホニルイソシアネートである。
【0054】
モノ-またはポリチオイソシアネートは、式(II a)のチオイソシアネートとして好適である。モノ-またはポリチオイソシアネートは、芳香族または脂肪族であってもよい。
【0055】
チオイソシアネートとして特に好適なのは、上記で挙げたモノ-またはポリイソシアネートと類似した化合物であり、これはイソシアネート基の代わりにチオイソシアネート基を含む。
【0056】
式(II b)の第二級アミノシランは、時として商業的に入手可能であるか、または式(II f)から、特に式(III a)または(III b)のマイケル受容体へのマイケルタイプの付加によって調製されてもよい。
【0057】
【化6】

【0058】
本明細書において、用語「マイケル受容体」は、マイケル付加(ヘテロマイケル付加)と類似の方法において、電子受容基によって活性化される二重結合により、第一級アミノ基(NH2基)との求核付加反応に関与することができる化合物を表す。
【0059】
特に好ましい式(III a)または(III b)のマイケル受容体は、アクリロニトリル、アクリレートおよびメタクリレート、アクリルアミドまたはメタクリルアミド、マレイン酸およびフマル酸のジエステル、シトラコン酸ジエステル、ならびにイタコン酸ジエステルである。
【0060】
したがって、マイケルタイプの付加を介して得られる好ましい式(II b)の第二級アミノシランは、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノコハク酸ジメチルエステルおよびジエチルエステル、ならびにケイ素原子上のメトキシ基の代わりにエトキシ基またはイソプロポキシ基を有するこれらの類似体であり、最も好ましくはN-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノコハク酸ジエチルエステルである。
【0061】
また、式(II b)の第二級アミノシランとして特に好適なのは、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、およびN-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0062】
一実施形態において、Z3がA-Si(Z2)3-a(OZ1)aを表す式(II b)の第二級アミノシランが使用される。このような第二級アミノシランは、好ましくは、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミンまたはビス(3-トリエトキシシリルプロピルアミン)である。
【0063】
式(II c)の第二級アミンとして特に好適なのは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、N-メチルエチルアミン、N-メチルブチルアミン、N-エチルブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、およびジベンジルアミンである。
【0064】
式(II d)のイソシアネートシランまたはチオイソシアネートシランとして特に好適なのは、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルジメトキシメチルシラン、チオイソシアネートメチルトリメトキシシラン、チオイソシアネートメチルジメトキシメチルシラン、3-チオイソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-チオイソシアネートプロピルジメトキシメチルシラン、およびケイ素原子上のメトキシ基の代わりにエトキシ基またはイソプロポキシ基を有するこれらの類似体を含む群から選択されるものである。3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランおよび3-チオイソシアネートプロピルトリメトキシシラン、特に3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランが、式(II d)のイソシアネートシランまたはチオイソシアネートシランとして好ましい。
【0065】
式(II e)の化合物は、容易に得ることができるか、または商業的に入手可能である。N,N-ジメチルカルバモイルクロリドが、式(II e)の化合物として特に好ましい。
【0066】
式(II f)のアミノシランとして特に好適なのは、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノ-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルジメトキシメチルシラン、4-アミノ-3-メチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、2-アミノエチルトリメトキシシラン、2-アミノエチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルメトキシジメチルシラン、およびケイ素原子上のメトキシ基の代わりにエトキシ基またはイソプロポキシ基を有するこれらの類似体を含む群から選択されるアミノシランである。式(II f)のアミノシランは、特に好ましくは、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、または3-アミノプロピルジエトキシメチルシランである。
【0067】
したがって、例えば、好適な式(I)のシランは、3-アミノプロピルトリメトキシシランとN,N-ジメチルカルバモイルクロリドとの付加生成物、N-メチル-3-アミノプロピルトリエトキシシランとブチルイソシアネートまたはHDIもしくはIPDIとの付加生成物、N-シクロヘキシル-3-アミノプロピルトリメトキシシランとフェニルイソシアネートまたはブチルイソシアネートまたはHDIもしくはMDIとの付加生成物、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランとジメチルアミンとの付加生成物、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシランとブチルイソシアネートまたはフェニルイソシアネートとの付加生成物、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシランとHDIまたはMDIとの付加生成物、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミンとブチルイソシアネートまたはフェニルイソシアネートまたはHDIもしくはMDIとの付加生成物、3-アミノプロピルメチルジメトキシシランとN,N-ジメチルカルバモイルクロリドとの付加生成物、またはN-メチル-3-アミノプロピルジメトキシシランとブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、HDI、またはMDIとの付加生成物として調製されてもよい。
【0068】
一方、特に好ましいのは、bが1とは異なり、かつZ4がHを表す式(I)のシランである。
【0069】
式(I)の特定のシラン、すなわち式(I a)のシランも、本発明の主題である。
【0070】
【化7】

【0071】
式(I a)のシランは、3つの分類に分けられてもよい。
【0072】
シランは、第一の分類(分類1)、第二の分類(分類2)、または第三の分類(分類3)のいずれかの一員である。
【0073】
式(I a)の分類1のシランにおいて、
AはCH2-CH2-CH2であり、Z1はCH3であり、Z3はHであり、Z4はCH3であり、Z5はCH3であり、XはOであり、bは1である。
【0074】
式(I a)の分類2のシランにおいて、
AはCH2-CH2-CH2であり、Z1はCH3であり、Z3はCH3であり、Z4はHであり、Z5はCH3であり、XはOであり、bは1である。
【0075】
式(I a)の分類3のシランにおいて、
AはCH2であり、Z1はCH3またはCH2CH3であり、Z3はHであり、Z4は1から12個のC原子を含む単官能の脂肪族基であり、Z5は1から12個のC原子を含む単官能の脂肪族基であり、XはOであり、bは1である。
【0076】
完全性のために、この時点において、これらの式(I a)のシランは式(I)のシランから選択されるという事実により、たとえ特定の場合において直接の参照が式(I a)にされていなくても、当然、本明細書において式(I)のシランに関してされた記述は、式(I a)のシランにも適用されると理解されることに注意されたい。
【0077】
式(I)のシランは、昇温により活性化可能なエポキシ樹脂のための硬化剤として直接使用されてもよく、または、式(I)のシランは、基材の表面に存在し、昇温により活性化可能なエポキシ樹脂のための硬化剤として使用されてもよい。基材の表面は、式(I)のシランで被覆されてもよく、または同じもので誘導体化されてもよい、つまり化学的に結合されてもよい。基材の種類が、基材の表面の被覆または誘導体化が式(I)のシランを使用して可能かどうかを主に決定する。
【0078】
したがって、式(I)のシランで表面が被覆または誘導体化された基材も、本発明の主題である。
【0079】
シラン基、例えば式(I)のシラン中に存在するものは、少なくとも1つのSi-O-Z1官能基を有し、水の加水分解の影響下でシラノール基(-Si-OH)を形成する。このようなシラノール基は、その後、表面の基、特に表面のOH基と縮合することができ、式(I)のシランの基材の表面への化学的な結合(式(I)のシランでの基材の表面の誘導体化)をもたらす。もちろん、当業者にはシラノール基がお互いに縮合し、場合によりシロキサンを形成してもよいことは明らかである。しかしながら、基材によって、シランは基材の表面において変化せずに存在してもよい。
【0080】
表面に結合または存在する式(I)のシランを使用することによって、このシランは連続的に、または少なくとも一時的に、基材表面に固定される。このような固定は、硬化剤が特定の位置において選択的に使用されるという利点を有する。
【0081】
一方でフィラー、他方で平らな基材が、このような基材として主に使用される。
【0082】
好ましい一実施形態において、基材は平らな基材である。このような平らな基材は、特に接着によって結合されているものである。例えば、このような平らな基材は、シート、ディスク、またはフランジなどの平面の基材; フェンダー(fender)、ヘッドライトのハウジング、パイプ、または空洞などの曲がった基材である。
【0083】
このような被覆または誘導体化された平らな基板の1つの特に好適な用途は、以下の工程を含む、接着結合のための以下の方法である:
α) 式(I)のシランを平らな基材に塗布して接着によって結合する工程;
β) 分子ごとに平均で1つより多いエポキシド基を有する、少なくとも1つのエポキシ樹脂EHを含むエポキシ樹脂組成物を、式(I)のシランで被覆または誘導体化された表面に塗布する工程;
γ) エポキシ樹脂組成物を接着によって結合される別の基材の表面と接触させる工程;
δ) 平らな基材および/またはエポキシ樹脂組成物を、100〜220℃、特に120〜200℃、好ましくは160〜190℃に加熱する工程。
【0084】
加熱の結果、工程δ)における平らな基板および/またはエポキシ樹脂組成物、平らな基材の表面に存在する熱で活性化可能な硬化剤、つまりシランまたはその誘導体は、活性化され、接触しているエポキシ樹脂の硬化をもたらす。硬化反応の結果としてのエポキシ樹脂組成物のさらなる熱が、その後、基材表面などから離れた距離におけるエポキシ樹脂組成物の硬化をもたらす。したがって、基材から始まるエポキシ樹脂接着剤組成物の選択的な硬化が行われ、エポキシ接着剤の機械的特性において、時として意図的かつ選択的に生成可能な勾配をもたらす。工程γ)からの基材の表面が、同様に式(I)のシランで被覆または誘導体化される場合、結合する複合体は、特定の基材の中心と境界において、接着が異なる機械的特性を有するものが得られてもよい。
【0085】
工程α)における接着によって結合される式(I)のシランの平らな基材の表面への塗布は、溶剤、および場合によって式(I)のシランのSi-O-Z1基の加水分解ならびに/またはシラノール基の加水分解の縮合のための触媒を使用して行われてもよい。このような触媒はシランの分野における当業者によく知られている。揮発性溶媒および場合によって触媒、特に有機酸とシランとの混合物が典型的には使用される。特に、水、アルコール、ケトン、アルデヒド、カルボン酸エステル、および炭化水素が溶媒として使用される。標準圧力における沸点は、特に100℃以下である。この目的のために特に好ましい溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ヘキサン、ヘプタン、およびメチルエチルケトンである。塗布は、特にスプレー、スプリンクル(sprinkling)、ワイプ(wiping)、ブラッシング、ロール、または浸漬によって行われる。塗布は、好ましくは、小さな層の厚みで、典型的には100ミクロン未満でされる。
【0086】
少なくとも1分間、典型的には5分間から30分間の間の時間、工程α)とβ)の間に経過することが有利である。これは、工程α)におけるシランが溶媒中で塗布される場合に、特に有利である。溶媒は、この時間の間に、完全にまたは少なくとも大幅に蒸発されることができる。表面に存在するシランの層の厚みは、工程β)の開始前に、好ましくは100ミクロン未満である。
【0087】
さらにより好ましい実施形態において、式(I)のシランで被覆または誘導体化された基材は、フィラー、好ましくは無機フィラー、特にCaおよび/またはSiならびに/もしくはAl原子、好ましくはSiおよび/またはAl原子を含む無機フィラーである。
【0088】
このタイプの特に適したフィラーは、炭酸カルシウム、シリカ、特に焼成ケイ酸、カオリン、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、およびアルモキサン(alumoxane)である。焼成ケイ酸およびアルモキサンが最も好ましい。フィラーは、好ましくは乾燥しているか、または、少なくとも表面のみが湿っている。均一な表面の被覆または誘導体化を得るために、フィラーが自由に流動する(free-flowing)ことが特に有利である。
【0089】
フィラーは、工程α)において平らな基材の被覆または誘導体化のために上記に記載した通りと同じ方法で被覆または誘導体化される。しかしながら、フィラーは、式(I)のシラン中、好ましくはシラン(I)、少なくとも1つの上記で挙げた溶媒、および場合によって上記で挙げた触媒を含む混合物中で攪拌されてもよく、その後、被覆または誘導体化後に濾過されてもよい。少なくとも1分間、典型的には5分間から30分間の間の所定の時間、式(I)のシランの塗布とエポキシ樹脂組成物中またはエポキシ樹脂組成物のためのフィラーの使用との間に経過することが好ましい。
【0090】
式(I)のシランで被覆または誘導体化された基材にとって、表面のみが被覆または誘導体化されていることが重要である; つまり、式(I)のシランが、フィラーの製造、例えばゾルゲルまたはキセロゲルの製造のために直接使用される任意のプロセスは、本発明の主題ではない。すなわち、本発明の本質にとって、表面のみが被覆または誘導体化されていることが重要である。一方、存在するフィラーは、容易に商業的に得ることができるか、全て安価なものを使用してもよい。他方、基材の被覆または誘導体化は、非常に容易に管理されるプロセスであり、一方、in situのフィラーの製造、例えばゾルゲルまたはキセロゲルのプロセスは非常に複雑であり、高価であり、かつ誤りの影響を受けやすい。
【0091】
これらのフィラーは、特に好ましくは、微細なフィラーである; つまり、フィラーの平均粒子サイズは、好ましくは50ミクロン未満、特に1ミクロン未満である。1ナノメートルから1ミクロの平均粒子サイズを有するいわゆるナノフィラーが最も好ましい。
【0092】
上記で記載した式(I)のシランまたは式(I)のシランで被覆もしくは誘導体化されたフィラーは、特に熱硬化性エポキシ樹脂組成物の一部である。
【0093】
それゆえ、さらなる態様において、本発明は
- 分子あたり平均で1つより多いエポキシド基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂EH;
- 上記で詳細に記載した通りの、少なくとも1つの式(I)のシランまたは式(I)のシランで被覆または誘導体化されたフィラー
を含む熱硬化性エポキシ樹脂組成物に関する。
【0094】
分子あたり平均で1つより多いエポキシド基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂EHは、好ましくは、液体エポキシ樹脂または固体エポキシ樹脂である。用語「固体エポキシ樹脂」は、エポキシドの分野における当業者によく知られており、「液体エポキシ樹脂」と対比して使用される。固体樹脂のガラス(転移)温度は室温より高い; つまり、固体樹脂は室温で粉末状になり、自由に流動するパウダーを形成する。
【0095】
好ましい固体エポキシ樹脂は、式(V)を有する:
【0096】
【化8】

【0097】
ここで、置換基R’およびR”は、独立に、HまたはCH3のどちらかを表す。さらに、下付きのsは>1.5、特に2から12の値を表す。
【0098】
このような固体エポキシ樹脂は、例えばDow、Huntsman、またはHexionから商業的に入手可能である。
【0099】
1から1.5の間の下付きのsを有する式(V)の化合物は、当業者によって、「半固体エポキシ樹脂」と表される。本発明のために、これらも固体樹脂とみなす。しかしながら、狭い意味において、固体エポキシ樹脂、つまり下付きのsが>1.5の値を有するものが好ましい。
【0100】
好ましい液体エポキシ樹脂は、式(VI)を有する:
【0101】
【化9】

【0102】
ここで、置換基R’およびR”は、独立に、HまたはCH3のどちらかを表す。さらに、下付きのrは0から1の値を表す。rは0.2未満の値を表すことが好ましい。
【0103】
これらは、好ましくは、ビスフェノール-A(DGEBA)、ビスフェノール-Fおよびビスフェノール-A/Fのジグリシジルエーテルである。このような液体樹脂は、例えばARALDITE GY 250、ARALDITE PY 304、ARALDITE GY 282(Huntsman)、D.E.R. 331またはD.E.R. 330(Dow)、あるいはEpikote 828(Hexion)として入手可能である。
【0104】
また、エポキシ樹脂EHとして適したものは、特に以下の式を有する、いわゆるノボラックである:
【0105】
【化10】

【0106】
ここで、R2 =
【化11】

またはCH2であり、R1 = Hまたはメチルであり、およびz = 0から7である。
【0107】
これらは、特にフェノールまたはクレゾールノボラックである(R2 = CH2)。
【0108】
このようなエポキシ樹脂は、EPNまたはECN、同様にHuntsmanからのTACTIX 556の商標名で、またはDow ChemicalからのD.E.N.製品シリーズで、商業的に入手可能である。エポキシ樹脂EHの割合は、好ましくは、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の質量に対して、10〜85質量%、特に15〜70質量%、好ましくは15〜60質量%である。
【0109】
組成物中の、式(I)のシランまたは表面が式(I)のシランで被覆もしくは誘導体化されたフィラーの割合は、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の質量に対して、0.001〜20質量%、特に0.1〜15質量、好ましくは0.5〜10質量%である。明確さのために、この時点において、式(I)のシランとしてフィラー上に存在するシランに加えて、フィラーに化学的に結合した式(I)のシランは、用語「フィラーのシランの割合」のための「シラン」とみなす。したがって、フィラーのシランの割合を決定するために、フィラーの表面においてシランが自由であるか化学的に結合しているか、つまり、フィラーが式(I)のシランで被覆されているか誘導体化されているかは重要ではない。
【0110】
本発明による組成物は、好ましくは、特にジシアンジアミド、グアナミン、グアニジン、アミノグアニジン、およびこれらの誘導体; 置換された尿素類、特に3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチルウレア(クロルトルロン)、またはフェニルジメチルウレア、特にp-クロロフェニル-N,N-ジメチルウレア(モヌロン)、3-フェニル-1,1-ジメチルウレア(フェヌロン)、3,4-ジクロルフェニル-N,N-ジメチルウレア(ジウロン)、N,N-ジメチルウレア、N-イソブチル-N’,N’-ジメチルウレア、1,1’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(3,3’-ジメチルウレア)、およびイミダゾール、イミダゾール塩、イミダゾリン、ならびにアミン錯体を含む群から選択される、少なくとも1つの熱で活性化可能な硬化剤Bを含む。
【0111】
この熱で活性化可能な硬化剤Bは、式(I)のシランと同じまたは異なる温度において活性化されてもよい。
【0112】
ジシアンジアミドは、硬化剤Bとして特に好ましい。
【0113】
硬化剤Bの全割合は、有利には、全体の組成物の質量に対して、1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%である。
【0114】
熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、尿素誘導体に基づくチキソトロピック剤(thixotropic agent)Cを含んでもよい。尿素誘導体は、特に、芳香族モノマーのジイソシアネートと脂肪族アミン化合物との反応生成物である。複数の異なるモノマーのジイソシアネートと1つまたは複数の脂肪族アミン化合物とを反応させることも可能であり、また、1つのモノマーのジイソシアネートと複数の脂肪族アミン化合物とを反応させることも可能である。4,4’-ジフェニルメチレンジイソシアネート(MDI)とブチルアミンとの反応生成物は、特に有利であることが証明された。
【0115】
尿素誘導体は、好ましくは、担体物質中に存在する。担体物質は、軟化剤、特にフタレートまたはアジペート、好ましくはジイソデシルフタレート(DIDP)またはジオクチルアジペート(DOA)であってもよい。担体の薬剤は、非拡散の担体の薬剤であってもよい。これは、硬化後に未反応の成分の最小限の移動を確かにするために好ましい。ブロック化したポリウレタンプレポリマーが、非拡散の担体の薬剤として好ましい。
【0116】
このような好ましい尿素誘導体および担体物質の調製は、特許出願US 2002/0007003 A1に詳細に記載されており、その内容は参照により本明細書に援用する。担体物質は、有利には、ブロック化したポリウレタンプレポリマー、特に三官能性ポリエーテルポリオールとIPDIとを反応させ、その後イソシアネート基の末端の位置をε-カプロラクタムでブロック化することによって得られるものである。
【0117】
チキソトロピック剤Cの全割合は、有利には、全体の組成物の質量に対して、0〜40質量%、好ましくは5〜25質量%である。尿素誘導体の質量の、場合によって存在する担体の薬剤の質量との比は、好ましくは2/98から50/50、特に5/95から25/75である。
【0118】
熱硬化性の単成分エポキシ樹脂組成物が少なくとも1つの耐衝撃改良剤を含む場合、特に有利であることも示された。
【0119】
耐衝撃改良剤Dは、固体または液体であってもよい。
【0120】
耐衝撃改良剤Dは、有利には、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の質量に対して、特に0.1〜50質量%、特に0.5〜35質量%、好ましくは1〜20質量%の量で、ブロック化ポリウレタンポリマー、液体ゴム、エポキシ樹脂で変性した液体ゴム、ブロックコポリマー、およびコア-シェルポリマーを含む群から選択されることが示された。
【0121】
一実施形態において、この耐衝撃改良剤Dは、カルボキシル-またはエポキシド-末端アクリロニトリル/ブタジエンコポリマーまたはその誘導体である、液体ゴムD1である。このような液体ゴムは、例えばNanoresins AG、GermanyまたはEmerald Performance Materials LLCからのHYPRO(以前はHYCAR) CTBN、CTBNX、およびETBNの名称で、商業的に入手可能である。Struktol(Schill+Seilacher Groups、Germany)からの製品ラインPOLYDIS、好ましくは製品ラインPOLYDIS 36で、または製品ラインAlbipox(Nanoresins、Germany)で市販されている、特にエポキシ基を含む、エラストマーで変性したプレポリマーは、誘導体として好適である。
【0122】
別の実施形態において、耐衝撃改良剤Dは、液体エポキシ樹脂と完全に混和し、エポキシ樹脂マトリクスが硬化されるまで分離して微液滴を形成しない、ポリアクリレートの液体ゴムD2である。このようなポリアクリレートの液体ゴムは、例えば、Rohm and Haas から20208-XPAの商標名で入手可能である。
【0123】
当業者には、液体ゴムの混合物、特にカルボキシル-またはエポキシド-末端アクリロニトリル/ブタジエンコポリマーまたはその誘導体とエポキシド末端ポリウレタンプレポリマーとの混合物が、もちろん使用されてもよいことが明らかである。
【0124】
別の実施形態において、耐衝撃改良剤Dは、有機のイオン交換された層状鉱物DE1である、固体の耐衝撃改良剤である。
【0125】
イオン交換された層状鉱物DE1は、カチオン交換された層状鉱物DE1cまたはアニオン交換された層状鉱物DE1aのどちらかであってもよい。
【0126】
カチオン交換された層状鉱物DE1cは、カチオンの少なくとも一部が有機カチオンで交換された層状鉱物DE1’から得られる。このようなカチオン交換された層状鉱物DE1cの例は、特にUS 5,707,439またはUS 6,197,849で挙げられたものである。引用された文献は、これらのカチオン交換された層状鉱物DE1cを製造するための方法も記載している。層状シリケートは、層状鉱物DE1’として好ましい。層状鉱物DE1’は、特に好ましくは、フィロシリケート、特にUS 6,197,849、2段目の38行目から3段目の5行目に記載されたベントナイトである。層状鉱物DE1’、例えばカオリナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、またはイライトは、特に好適であることが示された。
【0127】
層状鉱物DE1’におけるカチオンの少なくとも一部は、有機カチオンによって交換される。このようなカチオンの例には、n-オクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、ジメチルドデシルアンモニウム、またはビス(ヒドロキシエチル)オクタデシルアンモニウム、あるいは天然の脂肪および油から得られてもよいアミンの類似の誘導体; またはグアニジニウムカチオンもしくはアミジニウムカチオン; またはピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、もしくはチオモルホリンのN-置換された誘導体のカチオン; または1,4-ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)および1-アゾビシクロ[2.2.2]オクタンのカチオン; またはピリジン、ピロール、イミダゾール、オキサゾール、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、ピラジン、インドール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、フェナジン、および2,2’-ビピリジンのN-置換された誘導体のカチオンが含まれる。また、好適なのは、環状アミジニウムカチオン、特にUS 6,197,849、3段目の6行目から4段目の67行目に開示されたものである。直鎖のアンモニウム化合物と比較して、環状アンモニウム化合物は、熱的なHoffmann分解反応を受けることができないため、増加した熱安定性によって特徴付けられる。
【0128】
好ましいカチオン交換された層状鉱物DE1cは、用語「有機粘土」または「ナノ粘土(nanoclay)」で当業者に知られており、例えばTIXOGELまたはNANOFIL(Sudchemie)、CLOISITE(Southern Clay Products)、NANOMER(Nanocor Inc.)、あるいはGARMITE(Rockwood)のグループ名で商業的に入手可能である。
【0129】
アニオン交換された層状鉱物DE1aは、アニオンの少なくとも一部が有機アニオンで交換された層状鉱物DE1”から得られる。このようなアニオン交換された層状鉱物DE1aの1つの例は、中間の層のカーボネートアニオンの少なくとも一部が有機アニオンで交換されたハイドロタルサイトDE1”である。
【0130】
組成物は、カチオン交換された層状鉱物DE1cとアニオン交換された層状鉱物DE1aの両方を含むことができる。
【0131】
別の実施形態において、耐衝撃改良剤Dは、ブロックコポリマーDE2である固体の耐衝撃改良剤である。ブロックコポリマーDE2は、アニオン性重合、またはメタクリレートと、オレフィン性二重結合を含む少なくとも1つのさらなるモノマーとの制御されたラジカル重合から得られる。オレフィン性二重結合を含むモノマーとして特に好ましいのは、二重結合が直接へテロ原子または少なくとも1つのさらなる二重結合に結合したモノマーである。特に適したものは、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、および酢酸ビニルを含む群から選択されるモノマーである。GE PlasticsからGELOY 1020の名称で得ることができるアクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマー(ASA)が、例えば好ましい。
【0132】
特に好ましいブロックコポリマーDE2は、メチルメタクリレート、スチレン、およびブタジエンのブロックコポリマーである。このようなブロックコポリマーは、例えば、ArkemaからのSBMのグループ名でのトリブロックコポリマーとして入手可能である。
【0133】
別の実施形態において、耐衝撃改良剤Dは、コア-シェルポリマーDE3である。コア-シェルポリマーは、弾性のコアポリマーと剛性のシェルポリマーから構成される。特に適したコアシェルポリマーは、柔軟性のない熱可塑性ポリマーの剛性のシェルを含む、弾性のアクリレートポリマーまたはブタジエンポリマーのコアから構成される。このコア-シェル構造は、ブロックコポリマーの分離の結果として自発的に形成されるか、または続けてグラフト化されるラテックスもしくは懸濁重合として重合の制御によって特定される。好ましいコア-シェルポリマーは、AtofinaからのCLEARSTRENGTH、Rohm and HaasからのPARALOID、またはZeonからのF-351の商標名で商業的に入手可能である、いわゆるMBSポリマーである。
【0134】
乾燥したポリマーラテックスとしてすでに存在するコア-シェルポリマー粒子が、特に好ましい。このようなものの例には、ポリシロキサンのコアおよびアクリレートのシェルを有するWackerからのGENIOPERL M23A、Eliokemにより製造されたNEPシリーズの放射線で架橋されたゴム粒子、LanxessからのNanoprene、またはRohm and HaasからのParaloid EXLが含まれる。
【0135】
コア-シェルポリマーのさらに同等の例は、Nanoresins AG、GermanyからALBIDURの名称で市販されている。
【0136】
また、好適なのは、Nanoresins AG、GermanyからNONOPOXの商標名で市販されているエポキシマトリクス中のナノスケールのシリケートである。
【0137】
別の実施形態において、耐衝撃改良剤Dは、カルボキシル化された固体のニトリルゴムと過剰のエポキシ樹脂との反応の生成物DE4である。
【0138】
別の実施形態において、耐衝撃改良剤Dは、式(IV)のブロック化ポリウレタンポリマーである。
【0139】
【化12】

【0140】
ここで、mおよびm’は、それぞれ0から8の間の値を表し、ただしm+m’は1から8の値を表す。
【0141】
mは、好ましくは0とは異なる。
【0142】
さらに、Y1は、m+m’のイソシアネート基を末端に有する直鎖または分岐したポリウレタンポリマーPU1から全ての末端の位置のイソシアネート基を取り除いた後の基を表す。
【0143】
Y2は、独立に、100℃を超える温度において開裂する、ブロック化基を表す。
【0144】
Y3は、独立に、式(IV’)の基を表す。
【0145】
【化13】

【0146】
ここで、R4は、第一級または第二級ヒドロキシル基を含む、脂肪族、脂環式、芳香族、または芳香脂肪族(araliphatic)のエポキシ基から、その水酸化基(hydroxide group)およびエポキシ基を取り除いた後の基を表し、pは1、2、または3を表す。
【0147】
本明細書において、「芳香脂肪族基」は、アラルキル基、つまりアリール基で置換されたアルキル基を表す(「Aralkyl」、Rompp、CD Rompp’s Chemical Lexicon、Version 1、Stuttgart/New York、Georg Thieme Verlag、1995を参照)。
【0148】
特に、Y2は、独立に、
【化14】

を含む群から選択される置換基を表す。
【0149】
ここで、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立に、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、またはアリールアルキル基を表し、またはR5はR6と一緒に、もしくはR7はR8と一緒に、場合によって置換されてもよい4-から7-員環の一部を形成する。
【0150】
さらに、R9、R9’、およびR10は、それぞれ独立に、アルキル、アラルキル、またはアリールアルキル基を表すか、あるいはアルキルオキシ、アリールオキシ、またはアラルキルオキシ基を表し、R11はアルキル基を表す。
【0151】
R12、R13、およびR14は、それぞれ独立に、2から5個の炭素原子を含み、場合によって二重結合を有するか、または置換されたアルキレン基を表し、あるいはフェニレン基または水素化フェニレン基を表し、R15、R16、およびR17は、それぞれ独立に、Hまたはアルキル、アリール、またはアラルキル基を表す。
【0152】
最後に、R18は、アラルキル基を表すか、または場合によって芳香族ヒドロキシル基を含む、単核の置換されたもしくは置換されていない芳香族基を表す。一方、R18は、特にヒドロキシル基の除去後のフェノール類またはビスフェノール類を表す。このようなフェノール類およびビスフェノールの好ましい例は、特にフェノール、クレゾール、レゾルシノール、ピロカテコール、カルダノール(3-ペンタデセニルフェノール(cashew shell oilから))、ノニルフェノール、スチレンまたはジシクロペンタジエンと反応したフェノール類、ビスフェノール-A、ビスフェノール-F、および2,2’-ジアリルビスフェノール-Aである。
【0153】
他方、R18は、特に、ヒドロキシル基の除去後のヒドロキシベンジルアルコールおよびベンジルアルコールを表す。
【0154】
R5、R6、R8、R9、R9’、R10、R11、R15、R16、またはR17が、アルキル基を表す場合、この基は、特に、直鎖または分岐したC1〜C20のアルキル基である。
【0155】
R5、R6、R8、R9、R9’、R10、R15、R16、R17、またはR18が、アラルキル基を表す場合、この基は、特に、芳香族基、特にメチレンを介して結合したベンジル基である。
【0156】
R5、R6、R8、R9、R9’、またはR10が、アルキルアリール基を表す場合、この基は、特に、C1〜C20のアルキル基、例えばフェニレンを介して結合したトリルまたはキシリルである。
【0157】
特に好ましいY2基は、
【化15】

を含む群から選択される基である。
【0158】
ここで、基Yは、1から20個のC原子、特に1から15個のC原子を含む、飽和またはオレフィン性不飽和炭化水素基を表す。アリル、メチル、ノニル、ドデシル、または1から3個の二重結合を含む不飽和のC15アルキル基は、Yとして特に好ましい。
【0159】
基X’は、Hまたはアルキル、アリール、もしくはアラルキル基、特にHまたはメチルを表す。
【0160】
下付きのz’およびz”は、0、1、2、3、4、または5の値を表すが、ただし、z’+z”の合計は1から5の間の値である。
【0161】
式(IV)のブロック化ポリウレタンポリマーは、イソシアネート基によって末端化された、直鎖または分岐したポリウレタンポリマーPU1を、1つまたは複数のイソシアネート反応性化合物Y2Hおよび/またはY3Hと反応させることによって調製される。1つ以上のこのようなイソシアネート反応性化合物が使用される場合、反応は、連続してまたはこれらの化合物の混合物を使用して行われてもよい。
【0162】
反応は、1つまたは複数のイソシアネート反応性化合物Y2Hおよび/またはY3Hが化学量論的に使用されるか、または確実に全てのNCO基が反応されるために化学量論的に過剰に使用されて行われる。
【0163】
イソシアネート反応性化合物Y3Hは、式(IVa)のモノヒドロキシルエポキシ化合物である。
【0164】
【化16】

【0165】
1つより多いこのようなモノヒドロキシルエポキシ化合物が使用される場合、反応は、連続してまたはこれらの化合物の混合物を使用して行われてもよい。
【0166】
式(IVa)のモノヒドロキシルエポキシ化合物は、1、2、または3つのエポキシ基を含む。このモノヒドロキシルエポキシ化合物(IVa)のヒドロキシル基は、第一級または第二級ヒドロキシル基を表してもよい。
【0167】
このようなモノヒドロキシルエポキシ化合物は、例えば、ポリオールとエピクロロヒドリンとの反応によって調製されてもよい。反応の制御によって、対応するモノヒドロキシルエポキシ化合物は、多官能性アルコールとエピクロロヒドリンとの反応における副生成物として、様々な濃度で形成される。これらの副生成物は、通常の分離操作を使用して単離されてもよい。しかしながら、一般的に、ポリオールのグリシジル化反応において得られる、完全にまたは部分的に反応してグリシジルエーテルを形成するポリオールから構成される生成混合物を使用すれば十分である。このようなヒドロキシル含有エポキシドの例は、ブタンジオールモノグリシジルエーテル(ブタンジオールジグリシジルエーテル中に存在する)、ヘキサンジオールモノグリシジルエーテル(ヘキサンジオールジグリシジルエーテル中に存在する)、シクロヘキサンジメタノールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル(トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル中の混合物として存在する)、グリセリンジグリシジルエーテル(グリセリントリグリシジルエーテル中の混合物として存在する)、およびペンタエリトライトトリグリシジルエーテル(ペンタエリトライトテトラグリシジルエーテル中の混合物として存在する)である。好ましく用いられるのは、通常調製したトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル中に比較的高い割合で存在する、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルである。
【0168】
しかしながら、他の同様のヒドロキシル含有エポキシド、特にグリシドール、3-グリシジルオキシベンジルアルコール、またはヒドロキシメチルシクロヘキセンオキシドも、使用されてもよい。また、好ましくは、ビスフェノール-A(R = CH3)とエピクロロヒドリンから製造される、商業的に入手可能な液体エポキシ樹脂中に最大約15%の割合で含まれる、式(IVb)のβ-ヒドロキシエーテル、同様にビスフェノール-F(R = H)またはビスフェノール-Aとビスフェノール-Fとの混合物がエピクロロヒドリンと反応した場合に形成される、対応する式(IVb)のβ-ヒドロキシエーテルである。
【0169】
【化17】

【0170】
また、好ましくは、高純度の蒸留された液体エポキシ樹脂の調製において生成される、蒸留残渣である。このような蒸留残渣は、商業的に入手可能な蒸留されていない液体エポキシ樹脂中より、1から3倍高い濃度のヒドロキシル含有エポキシドを有する。さらに、単官能性求核剤、例えばカルボン酸、フェノール類、チオール、または第二級アミンの不足した(ポリ-)エポキシドの反応によって調製される、β-ヒドロキシエーテル基を含む様々なエポキシドを使用してもよい。
【0171】
R4基は、特に好ましくは、以下の式の三官能性基である。
【化18】

ここで、RはメチルまたはHを表す。
【0172】
式(IVa)のモノヒドロキシルエポキシドの遊離した第一級または第二級OH官能基は、不均衡に過剰なエポキシド成分を使用する必要なく、ポリマーの末端イソシアネート基と効率的に反応することができる。
【0173】
Y1に基づくポリウレタンポリマーPU1は、少なくとも1つのジイソシアネートまたはトリイソシアネートと、末端位置のアミノ、チオール、もしくはヒドロキシル基を含む少なくとも1つのポリマーQPMから、ならびに/あるいは場合によって置換されたポリフェノールQPPから調製されてもよい。
【0174】
好適なジイソシアネートの例には、脂肪族、脂環式、芳香族、または芳香脂肪族ジイソシアネート、特に式(II a)のジイソシアネートとして前に挙げたものが含まれる。HDI、IPDI、MDI、またはTDIが好ましい。
【0175】
好適なトリイソシアネートの例は、脂肪族、脂環式、芳香族、または芳香脂肪族のジイソシアネートの三量体またはビウレット、特に式(II a)のポリイソシアネートとして前に挙げたイソシアネートおよびビウレットである。
【0176】
もちろん、ジ-またはトリイソシアネートの好適な混合物が使用されてもよい。
【0177】
2つまたは3つの末端位置のアミノ、チオール、もしくはヒドロキシル基を含むポリマーQPMは、末端位置のアミノ、チオール、もしくはヒドロキシル基を含むポリマーQPMとして特に好適である。
【0178】
ポリマーQPMとして特に適したものは、例えば、その内容を参照により特に援用する、WO 2008/049857 A1において、特に7頁の25行目から11頁の20行目のQPMとして開示されているものである。
【0179】
ポリマーQPMは、有利には、300〜6000、特に600〜4000、好ましくは700〜2200g/等量NCO-反応基の等量を有する。
【0180】
ポリマーQPMとして特に適したものは、ポリエーテルポリオールとしても表されるポリオキシアルキレンポリオール、ヒドロキシ末端ポリブタジエンポリオール、スチレン-アクリロニトリルグラフト化ポリエーテルポリオール、ポリヒドロキシ末端アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、ポリエステルポリオール、およびポリカーボネートポリオールである。
【0181】
少なくとも1つのヒドロキシル基を含む両親媒性ブロックコポリマー、特にFORTEGRAの商標名で市販されているもの、特にDow ChemicalからのFORTEGRA 100は、ポリマーQPMとして特に好適であることが示された。
【0182】
ポリフェノールQPPとして特に適したものは、ビス-、トリス-、およびテトラフェノールである。これらは純粋なフェノールだけでなく、場合によって置換されたフェノール類を意味するものと理解される。様々なタイプの置換が使用されてもよい。これは、フェノールのOH基が結合した芳香族の環における直接の置換を特に意味するものと理解される。さらに、用語「フェノール類」は、単核の芳香族だけでなく、芳香族またはヘテロ芳香族上の直接のフェノールのOH基を含む、多核または縮合した芳香族もしくはヘテロ芳香族も表す。
【0183】
ビス-およびトリスフェノールは、特に適している。好適なビスフェノールまたはトリスフェノールの例には、1,4-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシトルエン、3,5-ジヒドロキシベンゾエート、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノール-A)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(=ビスフェノール-F)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン(=ビスフェノール-S)、ナフトレゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラキノン、ジヒドロキシビフェニル、3,3-ビス(p-ヒドロキシフェニル)フタリド、5,5-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダン、フェノールフタレイン、フルオレセイン、4,4’-[ビス-(ヒドロキシフェニル)-1,3-フェニレン-ビス-(1-メチルエチリジン)](=ビスフェノール-M)、4,4’-[ビス-(ヒドロキシフェニル)-1,4-フェニレン-ビス-(1-メチルエチリデン)](=ビスフェノール-P)、2,2’-ジアリルビスフェノール-A、フェノール類またはクレゾール類を、2.0から3.5のOH官能性を有する、ジ-イソプロプリデンベンゼン、フロログルシン、没食子酸エステル、フェノールまたはクレゾールノボラックと反応することによって調製される、ジフェノールおよびジクレゾール、ならびに上記で挙げた化合物の全ての異性体が含まれる。
【0184】
場合によって組成物中に存在してもよい耐衝撃改良剤Dとして特に適したものは、その内容を参照により本明細書に援用する、以下の記事または特許文献に開示されているものである: EP0308664 A1、特に式(I)、特に5頁の14行目から13頁24行目; EP0338985 A1、EP0353190 A1、WO00/20483 A1、特に式(I)、特に8頁の18行目から12頁の2行目; WO01/94492 A1、特にD)およびE)として表される反応生成物、特に10頁の15行目から14頁の22行目; WO03/078163 A1、特にB)として表されるアクリレート末端ポリウレタン樹脂、特に14頁の6行目から14頁の35行目; WO2005/007766 A1、特に式(I)または(II)、特に4頁の5行目から11頁の20行目; EP1728825 A1、特に式(I)、特に3頁の21行目から4頁の47行目; WO2006/052726 A1、特にb)として表される両親媒性ブロックコポリマー、特に6頁の17行目から9頁の10行目; WO2006/052729 A1、特にb)として表される両親媒性ブロックコポリマー、特に6頁の25行目から10頁の2行目; T.J. Hermel-Davidock et al.、J. Polym. Sci. Part B: Polym. Phys.、2007、45、3338-3348、特に両親媒性ブロックコポリマー、特に3339頁の2段目から3341頁の2段目; WO2004/055092 A1、特に式(I)、特に7頁の28行目から13頁の15行目; WO2005/007720 A1、特に式(I)、特に8頁の1行目から17頁の10行目; WO2007/020266 A1、特に式(I)、特に3頁の1行目から11頁の6行目; WO2008/049857 A1、特に式(I)、特に3頁の5行目から6頁の20行目; WO2008/049858 A1、特に式(I)および(II)、特に6頁の1行目から12頁の15行目; WO2008/049859 A1、特に式(I)、特に6頁の1行目から11頁の10行目; WO2008/049860 A1、特に式(I)、特に3頁の1行目から9頁の6行目; ならびにDE-A-2 123 033、US 2008/0076886 A1、WO 2008/016889、およびWO 2007/025007。
【0185】
複数の耐衝撃改良剤が、有利には、組成物中に存在することが示された。
【0186】
耐衝撃改良剤Dの割合は、有利には、組成物の質量に対して、1〜45質量%、特に1〜35質量%の量で使用される。
【0187】
別の好ましい実施形態において、組成物は少なくとも1つのフィラーFも含む。このようなものとして好ましいものは、マイカ、滑石、カオリン、珪灰石、長石、閃長岩、緑泥石、ベントナイト、モンモリロナイト、炭酸カルシウム(沈殿されたまたは粉砕された)、ドロマイト、石英、ケイ酸(焼成または沈殿された)、クリストバライト、酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、酸化マグネシウム、中空セラミックビーズ、中空ガラスビーズ、有機の中空ビーズ、ガラスビーズ、および着色顔料である。商業的に入手可能であり、当業者に周知の、有機的に被覆された、同様に被覆されていない形態も、フィラーFとして意図される。
【0188】
US 6,322,890に記載された、官能基化されたアルモキサンは、例えば、別の例を表す。
【0189】
全フィラーの全体の割合は、有利には、全体の組成物の質量に対して、3〜50質量%、好ましくは5〜35質量%、特に5〜25質量%である。
【0190】
別の実施形態において、組成物は、物理的または化学的発泡剤、例えばAkzo NobelからEXPANCEL、またはChemturaからCELOGENの商標名で入手可能なものを含む。発泡剤の割合は、有利には、組成物の質量に対して、0.1〜3質量%である。
【0191】
別の好ましい実施形態において、組成物は、少なくとも1つのエポキシド基を含む、反応性希釈剤Gも含む。これらの反応性希釈剤は、特に以下のものである:
- 特に、ブタノールグリシジルエーテル、ヘキサノールグリシジルエーテル、2-エチルヘキサノールグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、テトラヒドロフルフリルおよびフルフリルグリシジルエーテル、ならびにトリメトキシシリルグリシジルエーテルを含む群から選択される、単官能の、飽和または不飽和の、分岐したまたは分岐していない、環式または開鎖のC4〜C30アルコールのグリシジルエーテル。
- 特に、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、およびオクタンジオールグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ならびにネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルを含む群から選択される、二官能の、飽和または不飽和の、分岐したまたは分岐していない、環式または開鎖のC2〜C30アルコールのグリシジルエーテル。
- 三官能または多官能の、飽和または不飽和の、分岐したまたは分岐していない、環式または開鎖のC2〜C30アルコールのグリシジルエーテル、例えばエポキシ化ヒマシ油、エポキシ化トリメチロールプロパン、エポキシ化ペンタエリトロール、または脂肪族ポリオール、例えばソルビトール、グリセリンもしくはトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテル。
- 特に、フェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェノールグリシジルエーテル、3-n-ペンタデセニルグリシジルエーテル(カシューの殻の油から)、N,N-ジグリシジルアニリン、およびp-アミノフェノールのトリグリシジルエーテルを含む群から選択される、フェノールおよびアニリン化合物のグリシジルエーテル。
- エポキシ化アミン、例えばN,N-ジグリシジルシクロヘキシルアミン。
- エポキシ化モノ-またはジカルボン酸、特に、ネオデカン酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、安息香酸グリシジルエステル、フタル酸、テトラ-およびヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ならびに二量体の脂肪酸およびテレフタル酸のジグリシジルエステル、ならびにトリメリット酸グリシジルエステルを含む群から選択されるもの。
- エポキシ化二官能または三官能の、低分子から高分子ポリエーテルポリオール、特にポリエチレングリコール-ジグリシジルエーテルまたはポリプロピレングリコール-ジグリシジルエーテル。
【0192】
特に好ましいのは、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、クレシルジグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、およびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0193】
エポキシド基を含む反応性希釈剤Gの全体の割合は、有利には、全体の組成物の質量に対して、0.1〜20質量%、好ましくは1〜8質量%である。
【0194】
組成物は、さらなる構成成分、特に触媒、安定化剤、特に熱および/または光安定化剤、チキソトロピック剤、軟化剤、溶媒、鉱物または有機フィラー、発泡剤、染料および顔料、防食剤、界面活性剤、消泡剤、ならびに結合剤を含んでもよい。
【0195】
軟化剤として特に適したものは、それぞれMESAMOLLおよびDELLATOL BBSとしてBayerから商業的に入手可能な、フェノールアルキルスルホネートおよびN-ブチルベンゼンスルホンアミドである。
【0196】
安定化剤として特に適したものは、場合によって置換されてもよいフェノール類、例えばブチルヒドロキシトルエン(BHT)またはWINGSTAY T(Elikem)、立体障害のアミン、あるいはTEMPON-オキシル化合物、例えばTEMPO(Evonik)である。
【0197】
記載された硬化後の熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、高い衝撃強度および典型的には100℃を超えるガラス転移温度によって特徴付けられる。
【0198】
記載された熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、単成分の接着剤として特に適している。このような単成分の接着剤は多くの用途を有する。特に、熱硬化性の単成分の接着剤が得られてもよく、高い衝撃強度によって特徴付けられる。このような接着剤は、熱に安定な物質を結合させるために必要である。熱に安定な物質は、100〜220℃、好ましくは120〜200℃において、少なくとも硬化時間の間、寸法的に安定な物質を意味するものと理解される。これらには、特に、金属、ならびにABS、ポリアミド、およびポリフェニレンエーテルなどのプラスチック、SMC、GFRP不飽和ポリエステル、およびエポキシまたアクリレート複合体などの複合体物質が含まれる。少なくとも1つの物質が金属である用途が好ましい。特に好ましい使用は、特に自動車産業における車体の外殻のための同一または異なる金属の接着結合である。特に典型的には自動車の製造において使用される変形例において、好ましい金属は、主に鋼、特に電気亜鉛めっきされた鋼、溶融亜鉛めっき鋼、潤滑鋼、Bonazincで被覆された鋼、および続けてリン酸で処理された鋼、同様にアルミニウムである。
【0199】
このような接着剤は、特に、10℃から80℃の間、特に10℃から60℃の間において、最初に結合される物質に接触され、続けて、典型的には100〜220℃、好ましくは120〜200℃の温度において硬化される。
【0200】
本発明のさらなる態様は、以下の工程を有する、熱に安定な基材を接着によって結合するための方法に関する。
i) 上記で詳細に記載した通りに、熱硬化性エポキシ樹脂組成物を、熱に安定な基材S1、特に金属の表面に塗布する工程;
ii) 塗布した熱硬化性エポキシ樹脂組成物を、さらなる熱に安定な基材S2、特に金属の表面と接触させる工程;
iii) エポキシ樹脂組成物を、100〜220℃、特に120〜200℃、好ましくは160〜190℃の温度に加熱する工程;
ここで、基材S2は、基材S1と同一または異なる物質で構成される。
【0201】
基材S2は、基材S1と同一または異なる物質で構成される。
【0202】
結合された物品は、熱に安定な物質を接着によって結合するためのこのような方法によって生じる。このような物品は、好ましくは、車両または実装された車両の部品である。
【0203】
もちろん、熱硬化性接着剤に加えて、封止剤またはコーティングが、本発明による組成物を使用して実現されてもよい。さらに、本発明による組成物は、自動車の製造に加えて他の用途に好適である。関連する用途の例として、特に、輸送手段、例えば船、トラック、バス、または鉄道車両の製造、あるいは日用品、例えば洗濯機の製造が挙げられる。
【0204】
本発明による組成物を使用して、接着によって結合した物質は、典型的には、120℃から-40℃の間、好ましくは100℃から-40℃の間、特に80℃から-40℃の間の温度において使用される。
【0205】
車両の製造における車体の外殻のための熱硬化性接着剤として、本発明による熱硬化性エポキシ樹脂組成物を使用することが、特に好ましい。
【0206】
したがって、本発明のさらなる態様は、上記で詳細に記載した熱硬化性エポキシ樹脂組成物を加熱することによって得られる、硬化したエポキシ樹脂組成物に関する。
【0207】
式(I)、特に式(I a)のシランを含む組成物は、その貯蔵安定性を大きく低下させることなく、硬化温度を大きな低下することができることが示された。したがって、非常に短い時間、典型的には10から15分後でさえ、180℃未満の温度への硬化温度の低下のため、産業の望まれている必要性に適合することができる。特に車両の製造のための車体の外殻の接着剤としての、これらの単成分の熱硬化性エポキシ樹脂組成物の使用のために必要である、100℃を超える高いガラス転移温度、同様に増加した衝撃強度が達成されることも示された。
【0208】
さらに、式(I)のシランは、様々な表面下に増加した接着をもたらす。これは、エポキシ接着剤またはコーティングの領域のみではなく、同様に他の領域の場合もである。
【0209】
したがって、式(I)のシランは、一般的に、結合剤、例えば接着剤のための、特に単成分のポリウレタン接着剤を湿潤硬化するためのプライマーにおいて使用されてもよい。
【実施例】
【0210】
(1,1-ジメチル-3-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)ウレアの調製)
5.0g(46.5mmol)のN,N-ジメチルカルバモイルクロリド(Sigma-Aldrich、Switzerland)および40mLの乾燥したジオキサン(Sigma-Aldrich、Switzerland)を、還流冷却器を備えた250mLの丸底二口フラスコに加えた。4.71g(46.5mmol)のトリエチルアミン(Sigma-Aldrich、Switzerland)および8.34g(46.5mmol)の3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest A-1110、Momentive Performance Materials Inc.、USA)を、窒素下で攪拌しながら滴下で加えた。発熱反応が弱まった後、得られた白っぽい懸濁液を、90℃で3時間攪拌した。オレンジへの徐々の色の変化が観察された。50℃に冷却した後、固体を二重濾過によって分離し、溶媒をロータリーエバポレーターで、60℃で1時間除去した。9.6gの所望のシランを、茶色の液体として得た。シランをDMA1100と指定し、さらなる精製なしで使用した。
【0211】
DMA1100の赤外スペクトルを、Perkin-Elmer 1600 FT-IR装置(ZnSe結晶を使用するATR測定ユニット、波数(cm-1)で表される吸収帯、測定範囲: 4000〜650cm-1)で測定した。
【0212】
IR(cm-1): 3343 ν(NH)、2938 ν(CH)、2838 ν(CH)、1631 ν(CO)、1532 δ(CNH)+ν(CN)、1268 ν(CN)+δ(CNH)、1226 ν(CN)+δ(CNH)、1074 ν(SiO)+ν(SiC)、805 ν(SiO)+ν(SiC)、767 ν(SiO)+v(SiC)。
【0213】
(3,3’-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(1,1-ジメチルウレア)(「HS参照1」))
【化19】

Sigma-Aldrich、Switzerlandからの3,3’-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(1,1-ジメチルウレア)を使用した。この尿素化合物は、本発明によらない。
【0214】
(SM1耐衝撃改良剤の調製)
150gのポリ-THF2000(OH数57mg/gKOH、BASF)および150gのLiquiflex H(OH価46 mg/g KOH、Krahn)を、真空下の150℃で30分間乾燥した。温度が90℃に低下した後、64.0gのイソホロンジイソシアネート(Evonik)および0.13gのジラウリン酸ジブチルスズを加えた。反応は、真空下の90℃で、NCO含有量が2.5時間後に3.30%(計算されたNCO含有量: 3.38%)において一定になるまで行った。その後、103.0gのCARDOLITE NC-700(Cardanol、Cardolite)をブロック化剤として加えた。混合物の攪拌を、NCO含有量が3.5時間後に0.1%未満に下がるまで、真空下で105℃において続けた。
【0215】
(熱硬化性エポキシ樹脂組成物の調製)
表1に示した比較組成物の参照1および参照2、同様に本発明による組成物1を調製した。それぞれの場合において、構成成分は、質量で与えられている。尿素化合物DMA1100およびHS参照1を、同じ量の尿素基を含む態様で使用した。
【0216】
試験方法
(引張せん断強度(TSS)(DIN EN 1465))
試験片を、25×10mmの接着表面および0.3mmの層の厚みを有する100×25×0.8mmの寸法を有する電気亜鉛めっきされたDC04鋼(eloZn)を使用して、記載された実施例組成物から作成した。硬化を、175℃で30分間行った。引張速度は10mm/分であった。測定した値を「TSS175℃」と指定した。
【0217】
焼付け不足での耐性を比較するため、引張せん断強度試験片を、それに応じて作成および測定し、これは165℃で15分間加熱することによって硬化させた。
【0218】
(衝撃負荷下の割裂抵抗(ISO11343))
試験片を、25×30mmの接着表面および0.3mmの層の厚みを有する90×20×0.8mmの寸法を有する電気亜鉛めっきされたDC04鋼(eloZn)を使用して、記載された実施例組成物から作成した。硬化を、180℃で30分間行った。衝撃負荷下の割裂抵抗を、室温におけるそれぞれの場合において測定した。衝撃速度は2m/秒であった。測定曲線の下の領域(ISO 11343により25%から90%)を、破壊エネルギー(FE)としてジュールで与える。
【0219】
(粘度)
接着剤サンプルを、Bohlin CVO 120粘度計、プレート/プレート(直径25mm、ギャップ幅1mm)、周波数5Hz、0.01偏差、温度23〜53℃、10℃/minで測定した。粘度を、25℃における複素粘性率として測定した曲線から決定した。
【0220】
(貯蔵安定性)
高温における促進した手順を、室温における貯蔵安定性を決定するために使用した。室温における組成物の粘度を、生成後すぐに測定し(「η0」)、60℃で7日間しっかりと密封した容器中で貯蔵した後の室温における値(「ηΔ」)と比較した。式(ηΔ0)-1による値Δηを、貯蔵安定性の見かけの値として決定した。
【0221】
(ガラス転移温度(Tg))
ガラス転移温度を、Mettler DSC822e装置を使用してDSCによって決定した。それぞれの場合において、10〜20mgの組成物をアルミニウムのるつぼに量り入れた。175℃で30分間DSC中でサンプルが硬化した後、それを-20℃に冷却し、その後10℃/分の速度で150℃まで加熱した。ガラス転移温度を、DSCソフトウェアを使用して、測定したDSC曲線から変極点として決定した。
【0222】
(硬化特性)
DSCを、混合したそれぞれのエポキシ樹脂組成物に対して、この方法(10K/分の加熱速度で、25℃から250℃まで加熱)でMettler DSC822E装置で行った。測定した曲線を、TPeak-DSCとしての反応のピークの最大値、同様に曲線から計算した開始TOnset-DSCを決定するために使用した。
【0223】
【表1】

【0224】
表1からの結果は、比較例 参照1が、実施例1と本質的に同じ貯蔵安定性を有するが、実施例1とは対照的に、低い硬化温度(165℃、15分間)において硬化しなかったことを示す。比較例 参照2は、芳香族尿素HS参照1を使用して低い硬化温度における硬化が可能であるが、このような組成物は貯蔵下で安定ではないことを示す。一方、実施例1は貯蔵下で安定であり、また、低い温度において硬化可能である。低い温度における硬化は、低いDSC値からも明らかである(TPeak-DSCおよびTOnset-DSC)。
【0225】
さらに、表1からの値は、高いガラス転移温度および高い衝撃強度に加えて、実施例1が、自動車製造のための車体の外殻としての使用のために非常に適した、優れた機械的特性を有することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇温により活性化可能な、エポキシ樹脂のための硬化剤としての、式(I)のシラン、または表面が式(I)のシランで被覆もしくは誘導体化された基材の使用:
【化1】

ここで、Aは、1から4個のC原子を含む場合によって分岐していてもよいアルキレン基、またはフェニレン基を表し;
Z1は、Hまたは1から4個のC原子を含むアルキル基、特にメチル基またはエチル基を表し;
Z2は、Hまたはフェニル基、あるいは1から8個のC原子を含むアルキル基、特にメチル基を表し;
Z3は、Hまたは場合によって少なくとも1つのカルボキシレート基、ニトリル基、ニトロ基、ホスホネート基、またはスルホン基もしくはスルホネート基を含んでいてもよい、1から8個のC原子を含む単官能の芳香族基または脂環式基もしくは脂肪族基を表すか、あるいはA-Si(Z2)3-a(OZ1)aを表し;
Z4は、Hまたは1から8個のC原子を含む単官能の芳香族基または脂環式基もしくは脂肪族基を表し;
Z5は、1から40個のC原子を含むb-官能の芳香族基または芳香脂肪族基または脂環式基もしくは脂肪族基、あるいは基A-Si(Z2)3-a(OZ1)aを表し;
XはOまたはSを表し;
aは1または2もしくは3、特に2または3を表し;
bは1または2または3もしくは4を表し;
ただし、Z3またはZ4のどちらかはHを表す。
【請求項2】
Aがプロピレン基を表すことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
bが1とは異なり、かつZ4がHを表すことを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
bが1を表すことを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
式(I)のシランが芳香族置換基を含まないことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
表面が式(I)のシランで被覆または誘導体化された基材:
【化2】

ここで、Aは、1から4個のC原子を含む場合によって分岐していてもよいアルキレン基、またはフェニレン基を表し;
Z1は、Hまたは1から4個のC原子を含むアルキル基、特にメチル基またはエチル基を表し;
Z2は、Hまたはフェニル基、あるいは1から8個のC原子を含むアルキル基、特にメチル基を表し;
Z3は、Hまたは場合によって少なくとも1つのカルボキシレート基、ニトリル基、ニトロ基、ホスホネート基、またはスルホン基もしくはスルホネート基を含んでいてもよい、1から8個のC原子を含む単官能の芳香族基または脂環式基もしくは脂肪族基を表すか、あるいはA-Si(Z2)3-a(OZ1)aを表し;
Z4は、Hまたは1から8個のC原子を含む単官能の芳香族基または脂環式基もしくは脂肪族基を表し;
Z5は、1から40個のC原子を含むb-官能の芳香族基または芳香脂肪族基または脂環式基もしくは脂肪族基、あるいは基A-Si(Z2)3-a(OZ1)aを表し;
XはOまたはSを表し;
aは1または2もしくは3、特に2または3を表し;
bは1または2または3もしくは4を表し;
ただし、Z3またはZ4のどちらかはHを表す。
【請求項7】
前記基材が、無機フィラー、特にCaおよび/またはSiならびに/もしくはAl原子、好ましくはSiおよび/またはAl原子を含む無機フィラーであることを特徴とする、請求項6に記載の基材。
【請求項8】
前記フィラーの平均粒子サイズが、50ミクロン未満、特に1ミクロン未満であることを特徴とする、請求項7に記載の基材。
【請求項9】
式(I a)のシラン:
【化3】

ここで、
AはCH2-CH2-CH2であり、Z1はCH3であり、Z3はHであり、Z4はCH3であり、Z5はCH3であり、XはOであり、bは1である;
または、
AはCH2-CH2-CH2であり、Z1はCH3であり、Z3はCH3であり、Z4はHであり、Z5はCH3であり、XはOであり、bは1である;
もしくは、
AはCH2であり、Z1はCH3またはCH2CH3であり、Z3はHであり、Z4は1から12個のC原子を含む単官能の脂肪族基であり、Z5は1から12個のC原子を含む単官能の脂肪族基であり、XはOであり、bは1である。
【請求項10】
- 分子あたり平均で1つより多いエポキシド基を有する、少なくとも1つのエポキシ樹脂EH;
- 少なくとも1つの式(I)のシラン、または請求項7もしくは8に記載のフィラー
【化4】

ここで、Aは、1から4個のC原子を含む場合によって分岐していてもよいアルキレン基、またはフェニレン基を表し;
Z1は、Hまたは1から4個のC原子を含むアルキル基、特にメチル基またはエチル基を表し;
Z2は、Hまたはフェニル基、あるいは1から8個のC原子を含むアルキル基、特にメチル基を表し;
Z3は、Hまたは場合によって少なくとも1つのカルボキシレート基、ニトリル基、ニトロ基、ホスホネート基、またはスルホン基もしくはスルホネート基を含んでいてもよい、1から8個のC原子を含む単官能の芳香族基または脂環式基もしくは脂肪族基を表すか、あるいはA-Si(Z2)3-a(OZ1)aを表し;
Z4は、Hまたは1から8個のC原子を含む単官能の芳香族基または脂環式基もしくは脂肪族基を表し;
Z5は、1から40個のC原子を含むb-官能の芳香族基または芳香脂肪族基または脂環式基もしくは脂肪族基、あるいは基A-Si(Z2)3-a(OZ1)aを表し;
XはOまたはSを表し;
aは1または2もしくは3、特に2または3を表し;
bは1または2または3もしくは4を表し;
ただし、Z3またはZ4のどちらかはHを表す;
を含む、熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
前記組成物中の、式(I)のシラン、または請求項7もしくは8に記載のフィラーの割合は、式(I)のシランまたは基材のシランの割合が、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の質量に対して、0.001〜20質量%、特に0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%である態様で選択されることを特徴とする、請求項10に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
前記熱硬化性エポキシ樹脂組成物が、少なくとも1つの熱で活性化可能な硬化剤Bも含み、前期硬化剤Bは、特に、ジシアンジアミド、グアナミン、グアニジン、アミノグアニジン、およびこれらの誘導体; 置換された尿素類、特に3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチルウレア(クロルトルロン)、またはフェニルジメチルウレア、特にp-クロロフェニル-N,N-ジメチルウレア(モヌロン)、3-フェニル-1,1-ジメチルウレア(フェヌロン)、3,4-ジクロルフェニル-N,N-ジメチルウレア(ジウロン)、N,N-ジメチルウレア、N-イソブチル-N’,N’-ジメチルウレア、1,1’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(3,3’-ジメチルウレア)、およびイミダゾール、イミダゾール塩、イミダゾリン、ならびにアミン錯体を含む群から選択されることを特徴とする、請求項10または11に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
前記熱硬化性エポキシ樹脂組成物が、少なくとも1つの耐衝撃改良剤Dも含むことを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
前記耐衝撃改良剤Dが、ブロック化ポリウレタンポリマー、液体ゴム、エポキシ樹脂で変性した液体ゴム、ブロックコポリマー、およびコア-シェルポリマーを含む群から選択され、特に、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の質量に対して、0.1〜50質量%、特に0.5〜35質量%、好ましくは1〜20質量%の量であることを特徴とする、請求項13に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
前記耐衝撃改良剤Dが、式(IV)のブロック化ポリウレタンポリマー:
【化5】

ここで、
Y1は、m+m’のイソシアネート基を末端に有する直鎖または分岐したポリウレタンポリマーPU1から全ての末端の位置のイソシアネート基を取り除いた後の基を表し;
Y2は、独立に、100℃を超える温度において開裂する、ブロック化基を表し;
Y3は、独立に、式(IV’)の基を表し;
【化6】

ここで、R4は、第一級または第二級ヒドロキシル基を含む、脂肪族、脂環式、芳香族、または芳香脂肪族のエポキシ基から、その水酸化基およびエポキシ基を取り除いた後の基を表し;
pは1、2、または3を表し; かつ、
mおよびm’は、それぞれ0から8の間の値を表し、ただしm+m’は1から8の値を表す;
であることを特徴とする、請求項14に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項16】
以下の工程:
i) 請求項10から15のいずれか一項に記載した熱硬化性エポキシ樹脂組成物を、熱に安定な基材S1、特に金属の表面に塗布する工程;
ii) 塗布した熱硬化性エポキシ樹脂組成物を、別の熱に安定な基材S2、特に金属の表面と接触させる工程;
iii) 熱硬化性エポキシ樹脂組成物を、100〜220℃、特に120〜200℃、好ましくは160〜190℃の温度に加熱する工程;
(ここで、基材S2は、基材S1と同一または異なる物質で構成される)
を含む、熱に安定な基材の接着結合のための方法。
【請求項17】
請求項10から15のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物を加熱することによって得られる、硬化されたエポキシ樹脂組成物。

【公表番号】特表2012−500879(P2012−500879A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524374(P2011−524374)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061027
【国際公開番号】WO2010/023234
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】